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1982-03-31 第96回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月三十一日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 森  喜朗君    理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君    理事 小泉純一郎君 理事 中西 啓介君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 鳥居 一雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    麻生 太郎君       木村武千代君    熊川 次男君       笹山 登生君    椎名 素夫君       中村正三郎君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       毛利 松平君    柳沢 伯夫君       山中 貞則君    山本 幸雄君       与謝野 馨君    大島  弘君       佐藤 観樹君    塚田 庄平君       戸田 菊雄君    野口 幸一君       平林  剛君    堀  昌雄君       柴田  弘君    玉置 一弥君       正森 成二君    蓑輪 幸代君       小杉  隆君  出席政府委員         大蔵政務次官  山崎武三郎君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      前川 春雄君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  村本 周三君         参  考  人         (日本証券業協         会会長)    植谷 久三君         参  考  人         (中央大学経済         学部教授)   岩波 一寛君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 三月二十九日  新一般消費税導入反対等に関する請願(池端  清一君紹介)(第一六三〇号)  同(小野信一紹介)(第一六三一号)  同(金子みつ紹介)(第一六三二号)  同(川俣健二郎紹介)(第一六三三号)  同(井上泉紹介)(第一六六一号)  同(金子みつ紹介)(第一六六二号)  同(長谷川正三紹介)(第一七一三号)  同(中路雅弘紹介)(第一七一四号)  所得税課税最低限度額引き上げ、一兆円減税  に関する請願高沢寅男紹介)(第一六三四  号)  税制改革に関する請願外一件(中西積介君紹  介)(第一六五五号)  一兆円所得減税に関する請願中西積介君紹  介)(第一六五六号)  同(堀昌雄紹介)(第一六五七号)  同(武藤山治紹介)(第一六五八号)  同(山本幸一紹介)(第一六五九号)  同(米田東吾紹介)(第一六六〇号)  同(阿部助哉君紹介)(第一七〇九号)  同(枝村要作紹介)(第一七一〇号)  同(井上普方紹介)(第一七二九号)  同外一件(新盛辰雄紹介)(第一七三〇号)  同(日野市朗紹介)(第一七三一号)  同(山田耻目君紹介)(第一七三二号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願小川国彦紹介)  (第一六七九号)  同(小杉隆紹介)(第一七四五号)  大企業優遇税制の改正に関する請願木島喜兵  衞君紹介)(第一七〇七号)  同(中村茂紹介)(第一七〇八号)  大幅減税に関する請願野間友一紹介)(第  一七一一号)  同(正森成二君紹介)(第一七一二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度の公債発行特例に関する法  律案内閣提出第九号)      ————◇—————
  2. 森喜朗

    森委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、日本銀行総裁前川春雄君、全国銀行協会連合会会長村本周三君、日本証券業協会会長植谷久三君、中央大学経済学部教授岩波一寛君の御出席をいただいております。  この際、参考人各位にごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本案につきまして、参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、議事の進め方といたしましては、初めに参考人各位から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  それでは、前川参考人からお願い申し上げます。
  3. 前川春雄

    前川参考人 当面の内外経済情勢並びに政策運営に関します日本銀行考え方を申し述べさせていただきます。  国内経済情勢でございますけれども、全体としまして景気がきわめて緩やかながら回復をたどっているというこれまでの基調に大きな変化が生じているわけではございませんけれども輸出伸び悩みから回復がやや足踏みぎみとなっております。昨年の十−十二月のGNPは、国内需要の緩やかな回復にもかかわらず、輸出の落ち込みによりましてかなりマイナス成長となりました。この間、消費一進一退を続けます一方、住宅投資も不振を続けるなど個人関連需要伸び悩んでおりまして、このために、個人消費関連の深い中小企業設備投資も依然停滞を示しております。  しかし、反面では在庫調整はおおむね完了しておりまして、在庫生産を圧迫する状況ではございません。また、大企業設備投資も底がたく推移しており、企業収益基調も比較的堅調でございます。これらの点から申しまして、景気がこの先落ち込んでいくような情勢とは考えられませんけれども輸出伸び悩みから景気回復足踏みぎみとなっておりますだけに、引き続き今後の景気動向につきましては十分慎重に見守っていく必要があると思います。  海外状況でございますが、先進国開発途上国とも景気停滞が強まる傾向にございます。アメリカは比較的高水準経済活動を続けてまいりましたけれども、昨年の夏ごろから景気後退に入り、経済成長率は、昨年十−十二月に続きまして本年一−三月もかなりマイナスになる可能性があります。欧州諸国景気は、総じて底入れしつつあると見られますけれども回復ははかばかしくなく、生産消費などの動きを見ましても一進一退状況にございます。また、開発途上国の多くも世界景気後退による輸出伸び悩みから、経済活動スローダウン傾向を強めております。  こうした状況のもとで、各国で雇用情勢悪化傾向にございまして、アメリカでは失業者数が九百六十万人、失業率が八・五%と、リセッション入りしてわずか二四半期の間に戦後最悪の状況に近づきつつあるほか、ヨーロッパでも失業者数がEC全体では一千万人を超え、一九三〇年代以来の深刻な失業問題を抱えているわけでございます。欧米諸国貿易摩擦の問題あるいは経済政策の問題でわが国に対してきわめて厳しい姿勢を維持しておりまする背景には、こうした欧米諸国の深刻な経済情勢があることは改めて申し上げるまでもないところでございます。  この間、為替市場におきまして円相場が年初来じりじりと下落し、最近では二百四十円台の推移となっております。ヨーロッパ通貨との関係でも、最近はやや円安ぎみに動いております。  こうした円安の基本的な背景は、アメリカ金利が高水準を続け、それにつれまして欧州諸国金利もなかなか下がりにくい状況にあります一方、わが国金利がこれまでの金融緩和政策の結果から先進国の中でも最も低い水準になっており、こうした大幅な内外金利差から資本が流出しがちであることにあると考えます。この間、物価であるとか国際収支といったいわゆる経済の基礎的な諸条件につきましては、これまでわが国は諸外国に比べまして引き続き良好に推移してまいりましたが、このところ、欧米諸国との貿易摩擦問題が深刻化する一方、輸出伸び悩みから経常収支黒字幅が縮小するなど、基礎的な諸条件にも若干の変化が出てきている点は注意しなければならない点と思います。  こうした円安は、国内的には物価上昇要因となります。すでに卸売物価にはその影響があらわれておりまするが、また、円安の進展に伴いまして貿易摩擦問題は一層深刻化させるという問題がございます。  当面の経済政策運営につきましては、さきに述べましたような景気実態から申しまして、物価の安定を維持しつつ、内需中心にもう少し高目経済成長を実現するように努力していくことが望ましいことは申すまでもないところでございます。しかし、すでに述べましたように、わが国経済を取り巻きます内外の諸環境はきわめて厳しく、財政金融政策の運用の余地は非常に限られたものとなっており、当面は細かな対策を積み上げていくほかにはない状況でございます。  まず金融政策につきましては、日本銀行は一昨年の夏以降、公定歩合を四回にわたって通算で三・五%引き下げました。金利水準全般低下をこうして促してまいりましたほか、窓口指導につきましても漸次緩和を図りまして、現在では金融機関自主計画を全面的に尊重する方針をとっております。こうした金融緩和政策の推進の結果、現在金利あるいは金融の量、いずれから見ましても十分に金融緩和した状態になっており、金融面からは、着実な景気回復に必要な条件は整ってきているものと判断しております。今後の政策運営につきましても、基本的には現在の緩和基調を維持していくことは適当と考えておりまするが、現在の大幅な内外金利差の存在が円安の大きな原因となっており、海外からは人為的に円安を誘導しているという批判も見られる状況のもとで、日常の金融調節あるいは金融機関指導等に当たりましては、十分その点を注意を払ってまいる考えでございます。  アメリカにおきましては、インフレ率ははっきりと鈍化してきております。この面からは米国金利低下は期待できるわけでございまするけれども、一方、アメリカ財政が向こう数年間大幅赤字を続ける見通しにありますため、インフレ心理が十分に鎮静を示す情勢ではございません。また、米国金融情勢にいろいろと不安定な面が出ていることなどから申しまして、アメリカ高金利が相当長引く可能性考えておかなくてはならない状態であります。  こうした情勢のもとで円相場の軟化を防いでまいりますためには、為替市場におきまして必要に応じ大胆かつ強力な平衡介入を行いますとともに、金融政策運営に当たりましては、これ以上内外金利差拡大しないよう配慮していくことが必要であると思います。こうした観点から、日本銀行といたしましては、当面、短期金融市場運営につきまして売りオペ等余剰資金吸収を図り、過当な金利先安観が形成されることのないよう調節してまいる方針でございます。  また、金融政策運営に当たりましては、マネーサプライ伸びを適切な範囲にとどめるよう管理することが、将来の物価安定のためにあるいはひいては経済の安定を維持するためにぜひとも必要でございまして、日本銀行マネーサプライの適切な管理を最大の責務と考えております。現在、マネーサプライは前年比一〇%台で推移しておりまして、経済実態との関係では上限に近いところにあると申すことができます。いまのところ、緩和の行き過ぎに伴う問題が生じておるわけではございませんけれども、今後ともマネーサプライ動きにつきましては十分注意して見守っていく必要があると思います。  最後に、財政政策につきましては、目下当委員会におきまして審議中の昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案、いわゆる特例法とも関連いたしますが、私どもといたしましては、現在の財政再建基本方針を堅持していただきたいと考えております。  財政再建金融のかかわり合いにつきまして申し上げれば、大幅な財政赤字国際大量発行が持続いたしますると、政府信用増加に基づきましてマネーサプライがふえがちとなります。また長い目で見ますと、民間設備投資に必要な資金を確保できなくなるということが心配されるわけでございます。現在、米国におきまして、長年にわたる大幅な財政赤字の持続が不況下高金利経済インフレ体質化をもたらしておる状況にかんがみましても、わが国財政再建はどうしても進めなければならない課題であると思います。  以上で私の陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手
  4. 森喜朗

    森委員長 ありがとうございました。  次に、村本参考人にお願いいたします。
  5. 村本周三

    村本参考人 御指名をいただきました全国銀行協会連合会村本でございます。  昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案に関し、私ども意見を申し上げよとのお話でございますので、本日は、特例国債並びに国債一般につきまして、日ごろ私の考えておりますことを三点ほど申し上げさせていただき、御理解を賜り、また御指導を賜りたいと存じます。  最初に申し上げたいことは、国債発行量の抑制がますます重要な意味を持ち始めたということでございます。予想されます五十七年度経済の中で、財政景気刺激を期待する意見があることもよくわかりますが、より長い目でバランスのとれた経済運営を展望いたしますと、財政赤字を極力抑え、特例国債建設国債かを問わず、国債発行量をできるだけしぼり込んで、行財政改革に一歩踏み出すことがより大切であろうかと思います。  その意味で、昭和五十七年度一般会計予算経費節減を重視して編成され、国債発行額が前年度当初予定より一兆八千三百億円減額されて十兆四千四百億円にとどめられたことを私は高く評価いたしたいと思います。その結果、昭和五十年代に入ってから歳入の二五%ないし三五%を占めてきた国債依存度は、五十七年度には二一%にまで低下いたします。  しかしながら、この間、GNPに対する国債残高比率は一〇%から三四%に、一般会計に占める国債費の割合も五%から一六%に、それぞれ急激な上昇をいたしております。わずか六、七年という短期間でありますのに、明年には九十三兆円もの国債が累積し、国民経済全体の大きな部分を占めるという点に、国債をめぐる問題の重大さ、むずかしさがあるように思われます。  昨年十二月、政府の発表された見通しによりますと、昭和五十七年度の実質経済成長率は五・二%とされております。同じころ発表されました民間企業研究機関各種見通しでは、平均して四%を割り込んでおります。その後判明いたしました昨年十−十二月のGNP低下、年率一二・五%に及ぶマイナスを織り込んで私どもで計算いたしますと、五十七年度に三%成長を確保することはなかなかむずかしいのではないかという予測が出てまいりました。  個人消費企業設備投資など民間需要が少しずつ回復に向かうものの、海外経済の不振と貿易摩擦を反映して輸出伸び悩み、政府需要はむしろ前年度を下回る、これが五十七年度経済が低成長にとどまりそうな背景であります。内外需要の弱さ、エネルギーや原材料など国際商品市況の軟調をあわせ考えますと、物価は比較的安定を保つでありましょう。としますと、何らかの手段で財源を確保して政府需要をふやし、対外摩擦を避けつつ、わが国経済成長率を高めるべきであるという主張は、一見わかりやすい議論だと言えるかもしれません。  しかし、これはきわめて危険な選択ではないかと私には思われます。財源を確保するために増税を行うことは、個人企業需要自体を抑えることになりかねません。すでに昨年後半の勤労者家計の非消費支出、税金や社会保険料は前年を一三%も上回り、実収入の伸び四%の三倍以上の増加率となっております。この結果、物価上昇を差し引いた可処分所得伸び実質マイナスを続け、これが個人消費低迷をもたらしている最大原因であります。  経済成長政府見通しを大幅に下回ることになりますと、予算に計上した税収さえ実際には上がらぬかもしれないのであります。現に、昭和五十六年度については、相当の歳入欠陥を生じかねないと憂慮しております。残念ながら、そうしたおそれは五十七年度にも避けられない、ここで安易に国債増発に頼れば、予想もしなかった多額の国債発行に追い込まれかねないと思います。  行財政改革の第一年度として、苦しくとも十兆四千四百億円という枠を超えて国債発行しないよう、厳正な予算執行を強くお願い申し上げる次第であります。このことは、長期的に見て、財政破綻インフレの定着を未然に防ぐという国家百年の計のために、ぜひ守っていただきたいところであります。  同じことは、国債消化中心を占めておりますわれわれ銀行資金繰りからも指摘できましょう。可処分所得実質的減少から、家計黒字、特に金融資産伸びは鈍化しており、売り上げの伸び悩みから企業手元流動性の積み上げにも限りがございます。マネーサプライ伸びを予想してみましても、五十七年度の預金環境は必ずしも楽観できないと思います。  金融機関経営を預かる者といたしましては、国債市中消化減額をフルに生かし、民間企業個人の多様な資金需要にこたえるとともに、銀行資金ポジションを改善し、経営安定性回復に努め、新しい金融ニーズに積極的に対応できるよう体力を強めていきたいと考えます。  第二に申し上げたい点は、大量の国債発行に当たって、従来以上に市場メカニズムを生かすことに十分配慮していただきたいということであります。市場実勢を反映した国債発行条件は、常に変わらぬ私どものお願いでありますが、今年は、特にその重要性が増しているように思われます。  一つは、昨今の金利動きであります。米国では、巨額の財政赤字のもとで根強いインフレに対処するため依然高金利が持続し、これがわが国円安をもたらす大きな要因になっていることは、ただいま総裁もおっしゃったとおりであります。一方、先ほど述べましたわが国経済の現況と見通しから申せば、景気刺激のためには低金利が望ましいということになります。残念ながら、外の環境が内の要請をむしろ妨げる方向に働いておるわけであります。  また、短期資金を中核に、わが国自由金利市場が次第にそのシェア拡大していること。加えて、新年度からは新たな自由金利商品として、海外のCPやCD、コマーシャルペーパー譲渡性預金が持ち込まれ、金利自由化弾力化を一層促進しようとしていること、これらも無視できません。  ただいま、私ども国債引き受けシンジケート団では、四月債の引き受けについて協議しておるところでありますが、市場実勢を正しく反映した発行条件と、金融市場に一挙に負担をかけない適正な発行額の配分が、従来以上に重要となっておると考えます。  このように眺めてまいりますと、私ども参考にすべき国債流通市場や、あるいは入札による中期債発行市場が、実はかなり狭い特殊の要因動き、真の需給関係から離れやすい性格を持ち合わせていることに若干の不安を禁じ得ないのであります。これを、より幅広い、奥深い市場にし、適切な金利が成り立つようにするには、実は、市場参加者をより広くすることが欠かせないところでありましょう。適切な国債発行条件を定め、実態に即した流通利回りを実現させる市場の形成には、たとえば発行条件決定に当たってシ団と十分に意思疎通を図り、市場メカニズムの現状の不備を補うよう御配慮いただきたいのであります。と同時に、われわれ銀行が、証券会社と協力して同じ条件中期国債入札に参加し、また、流通市場においても活躍できる日が一日も早く到来することを望んでいるのであります。  第三に、この機会に申し上げたい点は、民間金融機関資金吸収郵便貯金によって阻害され、私ども国債引き受け能力が弱められていることであります。この際、郵貯懇報告を厳正に守り、官業民業圧迫を抑え、民間金融機関活力を発揮できるようにしていただきたい。この点を改めて訴えたいと存じます。  私ども理解では、郵貯懇報告は、郵便局がその業務分野拡大し、民間金融機関の活躍の場を狭めることに否定的な見解を明確にしておられました。残念ながら、この報告尊重を明言されたはずでありますのに、再三にわたりこれが守られていないように見受けられます。ゆうゆうローンの枠拡大に続いて、今回は公共料金等自動振替実施を発表され、新聞の伝えるところでは、さらに国債窓口販売まで計画しておられるとのことであります。特に、公共料金等自動振替につきましては、国の機関としての租税負担免除などの特典をフルに生かし、振替に要するコストを民間を大きく下回るようにするということであります。  このような形で、私ども民間金融機関は、自分たちが開拓してきた市場をいままさに失おうとしているのであります。郵貯懇報告を無視し、郵便貯金肥大化を放置しておきますれば、広い意味金融市場が大きな混乱に陥ることは避けがたいでありましょう。  最初の項でも申し上げましたように、ただでさえ家計金融資産蓄積のスピードは鈍っております。その上、より多くの資金郵便局に流れ込むことになりますれば、遠からずして銀行は期待されるだけの国債を消化することができなくなりましょう。そればかりか、個人企業に対する金融にも円滑を欠くおそれが強いのであります。  民間とは別の動機によって行動する官業が、民間企業と直接競合する市場でより大きくシェアを伸ばしていけば、金利自由化にも大きな障害となることは必定であると思われます。ぜひとも、郵貯懇報告意味合いと重みをいま一度考え直していただきたいと存じます。  以上、国債をめぐって重要と思われます三点を中心に、私の考えを率直に申し上げました。財政を取り巻く情勢を見ますれば、昭和五十七年度特例国債を三兆九千二百四十億円発行することはやむを得ない措置と考えます。しかし、歳入欠陥可能性が残され、一方、景気刺激を望む声があるなど国債増発の誘惑が強いことを考えますと、ともかく予算の線に特例国債建設国債発行額を抑えることに五十七年度は全力投球していただきたいというのが私たちの気持ちであります。  と同時に、民間金融機関活力を高め、国債の取り扱いを一日も早く銀行にも開放することによって、初めて、市場メカニズムを活用した、したがって経済全体と整合性を持った国債発行が可能になることに思いをいたしていただきたいと考えます。  これをもちまして、私の意見公述を終わります。ありがとうございました。(拍手
  6. 森喜朗

    森委員長 ありがとうございました。  次に、植谷参考人にお願いいたします。
  7. 植谷久三

    植谷参考人 日本証券業協会植谷でございます。  本日は、昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案につきまして意見を申し述べよとのことでございましたので、証券界立場から若干意見を申し上げ、御審議の御参考に供したいと存じます。  最近のわが国経済状況を見ますと、御高承のとおり、個人消費が低調に推移しております。また、中小企業中心とする設備投資停滞するなどによりまして国内需要低迷が続く一方、海外経済不況対外経済摩擦の激化に伴いまして、輸出伸び悩みの状況にございますとともに、米国高金利を反映いたしまして大幅な円安傾向が続くなど、きわめて厳しい状況に直面しておるのでございます。  このような状況のもとにありまして、今後、わが国経済安定成長を引き続き維持していくためには、内需拡大を通じまして景気の着実な回復を実現することが必要でございます。また、この意味から、財政金融の両面にわたって機動的な政策運営を展開していくことが強く望まれるのでございます。  このような考えに立ちまして、ただいま御審議されておりますところの昭和五十七年度予算案を拝見いたしますと、五十七年度の国債発行額は十兆四千四百億円で、前年度当初予算案に比べまして一兆八千三百億円の減額でございますが、こういった財政再建既定方針を貫いておられる一方、財源につきましては重点的かつ効率的な配分がなされておりまして、現下の諸情勢考えました場合、大筋においては妥当なものと存じます。  したがいまして、昭和五十七年度予算案と表裏一体をなします昭和五十七年度の公債特例法案につきましても、わが国経済の現状を考慮いたしますとやむを得ないものであり、予算の円滑な執行を図るため、本法案の早期成立が期待されるのでございます。  しかしながら、わが国経済をめぐる内外の諸情勢変化はまことに著しいものがありますので、五十七年度の国債発行につきましては、今後の経済情勢の推移に応じまして、その発行の時期、発行量等について十分な配慮をされることが肝要かと存じます。  私ども証券界におきましては、昭和五十七年度も引き続き国債個人消化に努力を重ねてまいる所存でございます。御高承のとおり、近年証券会社を通ずる国債の消化は順調に推移しております。昭和五十六年度の証券会社の取扱額は三兆六千四百億円となっております。市中公募の総額に占める割合は約四〇%に達しておるのでございます。  特に、中期国債証券会社の取扱額は二兆二千二百億円と、市中消化額に対しましてその割合は八七・五%を占めておるのでございます。  私ども証券界におきましては、国債発行が再開されて以来長年にわたって培ってきた経験を生かしまして、今後とも国債個人消化に一段の努力を傾けてまいる所存でございますが、国債の円滑な消化を図るためには、何と申しましても、発行条件市場実勢に即して機動的に決定されることが不可欠の要件でございます。  最近、公社債流通市場資金需給関係緩和を反映いたしまして堅調に推移している状況にかんがみ、四月債からの発行条件の引き下げについて話し合いが行われていることは御高承のとおりでございます。  しかしながら、わが国をめぐる国際的な経済環境はきわめて厳しいものがあります。また、わが国経済の国際化の進展に伴いまして、公社債市場海外経済金融情勢変化による影響を直接反映する状況にありますので、今後、内外の諸情勢の推移によりまして市場状況変化しました場合には、市場実勢に即応して国債発行条件を機動的に改定されるようお願いいたしたいのでございます。  次に、せっかくの機会でございますので、国債の円滑な消化、流通の拡大を図る観点から、二、三の点について要望を申し上げ、委員の皆様方の御理解をちょうだいいたしたいと思います。  まずその第一は、ただいま申し述べましたとおり、国債発行条件市場実勢に即して機動的に変更していただくとともに、さきにも若干触れましたが、国債発行の多様化、弾力化を一層推進していただきたいということでございます。  すなわち、今後の国債発行に際しましては、国際市場状況に応じまして、国債発行額の枠内で、長期国債あるいは中期国債及び割引国債発行額及びこれらの発行の時期について機動的に調整するなど、弾力的な取り扱いをされるよう御配慮をちょうだいいたしたいと思います。  要望の第二は、税制の改善についてでございます。  現在のマル優、特別マル優の非課税限度額それぞれ三百万円につきましては、個人金融資産が著しく増加しているにもかかわらず、昭和四十八年十二月以降据え置かれたままになっておりますので、今後、国債個人消化を一層拡大して国民の資産形成を促進していきますためには、現行の非課税限度額を少くとも五百万円程度に引き上げられたいということでございます。  また、信託財産の一定割合以上を国債中心とする公共債に投資する証券投資信託につきましても、これを特別マル優の適用対象に加えるなど、現行の非課税制度の改善を図られるようお願い申し上げる次第でございます。  次に、有価証券取引税について申し上げたいと存じます。  有価証券取引税は流通税でございます。有価証券を売却する都度課税されることを考慮いたしますと、その税率は本来低率でなければならないと思うのでございます。しかしながら、現行の有価証券取引税の税率につきましては、昭和四十八年以降三回にわたって大幅な引き上げが行われました。その結果、先進主要国の中でも最も高い水準になっております。現在のような高率の有価証券取引税が継続いたしますと、株式、公社債の円滑な流通、消化を阻害することが憂慮されるわけでございます。  したがいまして、株券及び公社債に対する税率を大幅に引き下げるとともに、国債につきましては課税を撤廃されるようお願い申し上げたいと思います。  特に、債券の短期売買市場であります現先市場につきましては、有価証券取引税の課税が大きな負担となっております。コール、CD、手形などの短期金融取引との間に課税上著しい不均衡が生じておりまして、これが現先市場拡大の大きな阻害要因になっております。つきましては、国債中心とする現先取引に対する課税を早急に撤廃するよう強くお願い申し上げる次第でございます。  以上、昭和五十七年度の公債特例法案につきまして意見を申し述べますとともに、国債個人消化、流通の円滑化に資するための措置についてお願い申し上げた次第でございますが、今後、国債発行額減額される方向にありますものの、なお引き続いて大量の発行が行われ、さらに昭和六十年からは国債の借りかえなどが本格化してまいります。  また、国債発行残高は、本年度末で約八十兆円に達しまして、国債発行残高に占める個人投資家などの保有額の割合も著しく増加しております。国債金融資産の中核として国民の間に定着しておるのでございます。  このような状況から、国債発行、流通さらには借りかえの円滑化を図り、投資家並びに公社債市場に無用の混乱が生ずることを避けるために、今後とも、国債管理政策を初め、諸般の政策について一層きめ細かい御配慮をちょうだいいたしたいということをお願い申し上げて、私の陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手
  8. 森喜朗

    森委員長 ありがとうございました。  次に、岩波参考人にお願いいたします。
  9. 岩波一寛

    岩波参考人 御紹介いただきました岩波でございます。  私は、特例公債発行財政法の理念に抵触するとともに、現在の予算編成の意思決定を左右する政治的な土壌のもとでは、政策的な合理性さえもしばしば無視されることになるという原則的な立場からだけではなくて、もう少し現実に即してみましても、特例公債発行あるいは公債発行に依存する従来の発想の転換が必要になっているのではないかという観点から、若干の意見を述べさせていただきたいと思います。  この審議されている法案は、昭和五十七年度予算において三兆九千二百四十億円の特例公債発行するためのものであり、その提案理由によりますと、臨時行政調査会の行政改革に関する第一次答申を最大限に尊重して予算編成の努力を払った結果特例公債発行が必要になったのだ、こう述べられております。確かに、昭和五十七年度予算案における公債発行額は、前年度当初予算に比較しましても、総額で一兆八千三百億円、特例公債で一兆五千六百十億円減額されております。そして、そのために公債依存度が総額で二六・二%から二一・〇%へ、特例公債だけの場合でも一四・四%から九・五%へと低下させられております。また、特例公債発行が恒常化される中で、満期時における借りかえができるようにすべきではないかというなし崩し的な意見が話題となっている中で、当然のこととはいえ、これを禁ずる歯どめも明らかにされております。これらの措置については、私としても評価できるかと思います。  しかしながら、昭和五十七年度予算関連して発行される予定の特例公債は、五十六年度分とともに、次に述べますような問題点を持っており、その意味で抜本的な見直しをすべきではないかというふうに考えておるわけであります。  提案理由によるまでもなく、昭和五十七年度予算編成は行財政改革方針基調として行われており、その予算案に組み込まれている特例公債もその意図を貫くためのもの、あるいはそうした性格を持つ予算の収支の帳じりを最終的に整えるために発行されたという意味を持っているのであります。しかも、昭和五十九年度までに特例公債発行を漸次ゼロにするということが財政再建の戦略的な目標として公約されているのでありまして、特例公債の動向はいわば行革による財政再建の性格を象徴するものだということになっております。  そこで、昭和五十七年度予算案に三兆九千二百四十億円の特例公債発行が組み込まれた事情を政府から発表されておる資料によって一応見ておくことにしたいわけであります。  昭和五十六年三月発表の中期展望によりますと、五十七年度の予算は、公債発行額を十兆四千四百億円計上しても、なお要調整額という形での財源不足が二兆七千七百億円発生すると推測されておりました。ところが、五十七年度の予算を前提にして修正された新しい中期展望によりますと、歳出面における一般歳出がいわゆるゼロシーリングによって平均一・八%の伸びに圧縮され、総額が三十五兆三千九百億円から三十二兆六千二百億円に減額されており、この減額分がちょうどさっきの要調整額二兆七千七百億円に等しくなっているために、公債発行総額に変更なく全体の収支バランスが一応とれるかっこうになっております。それだけで見る限り、行政改革の方針が一応貫かれ、公債減額も実施され、しかも財政収支のつじつまも合っているということになるわけであります。  しかしながら、果たして本当にそうであろうかということが問題であります。すでに昭和五十六年度補正予算において税収額を下方修正し、三千七百五十億円の特例公債の増発を行っております。行革元年の五十六年度予算の見積もりは、これによって大きく崩れ始めたわけであります。しかも、政府はまだその後の状況を正式に発表していないと思われますので、正確なことはなかなか私どもに言えませんけれども、五十六年度の税収実績は補正予算の際の下方修正水準をもかなり下回って、一兆円ないしそれを超える規模の歳入欠陥が生ずるのではないかというふうに言われております。もしそうだといたしますと、この歳入欠陥がたとえ財政処理の上では決算調整資金の取り崩しやあるいは国債整理基金からの借り入れというような形で処理されたといたしましても、それはあくまで便宜的な、一時的な措置でありまして、本来ならば特例公債の増発にまたなければならない性格の歳入欠陥であるという本質は、いささかも変わっていないのではないかと思われます。  行革元年の予算がこのように破綻をし始めでいるのでありますが、実は行革二年度の昭和五十七年度の予算は、この五十六年度予算を基礎にして組み上げられており、第一のボタンをかけ違えた結果は当然次年度に波及せざるを得ないのであります。仮に、補正予算による修正税収額がさらに一兆円落ち込むと仮定いたしますと、政府見通しの基礎数を踏襲するにしても、五十七年度の税収欠陥は一兆二千億程度と試算されますし、各種研究機関、大学等の経済予測のように名目成長率を六%水準といたしますと、実に二兆四千億円の税収の落ち込みが出てきてしまうということになるのであります。  これだけの大きな食い違いというのは、単なる予測の誤りということで済ませる問題ではないのではないかと思われます。日本経済の現局面から見まして、景気沈滞の最大要因である消費需要の冷え込みと、それを増税と民生的経費の圧縮という形で助長している財政政策の反作用によるものというふうに言えましょう。そういたしますと、こうした適合性を失いつつある財政運営の最終的な帳じり合わせで特例公債発行するということは、やはり政策の見直しとともに根本的に検討し直さなければならない問題ではないかということであります。  第二に指摘しなければならない点は、こうして特例公債発行を組み込んだ財政国民経済のバランシングファクターとして有効に機能し得なくなっているままに公債発行拡大生産していくことによって財政負担増加し、インフレ要因を蓄積し、あるいは国債管理政策の矛盾を深化させてしまうということになる点であります。  国債管理政策に関しては、国債発行形態の多様化であるとか入札制度の採用、債券市場への放出の制限緩和など、わが国固有の構造的な管理政策を部分的に修正する措置がとられてきております。しかし基本的な性格は変わっておらないわけですし、とりわけアメリカ高金利体制のもとで国際的な規模で進展している金融情勢変化も絡んで、国債管理政策は新しい複雑な矛盾を生み出しているようであります。  また、インフレにつきましても、実物資本の蓄積とはかけ離れた形で国債中心にした金融資産金融市場に加速的に蓄積されておりますし、しかも今後その償還をめぐって公債の資産の短期流動化が進行いたします。そういたしますと、大きな遊休過剰生産力を抱える状況のもとでも物価が一定程度進行しているという意味でのインフレ体質のもとで、これが将来大きなインフレ加速要因になることは十分予測されるわけであります。しかしながらここでは、特に特例公債を問題にするということもありまして、いまだ打開の展望が見出されないままに六十年度以降大きな問題になると考えられておる償還問題に関連して、特例公債のこうした発行がその困難性を一層強めていくことになるということを改めて注意しておきたいと思うのであります。  昭和四十年代のように相対的に国債発行規模が小さく、しかもシンジケート団に引き受けられた国債の大部分が一年経過した後日銀の買いオペで吸い上げられていき、金融機関に手持ちの国債市場放出は事実上禁止されているという状況での単純な国債保有構造のもとでは、保有者乗りかえ方式を貫くことが比較的容易であったでありましょう。しかし、五十年代以降の大量国債発行に加えて、国債の買いオペの抑制や公債の種類や発行形式の多様化など、国債管理政策の手直しによって民間機関国債保有量の増大と保有構造の複雑化が同時に進行してきております。とうてい従来の方式で借りかえを進めていくということはできないわけでありまして、しかも、六十年度以降、借りかえを禁止されている特例公債の本格的な償還が始まるために、元利償還額は年間二十兆円から三十兆円規模に達してしまうというふうに予測されております。  償還された資金国債購入のためにどのように還流してくるか、その辺はまだ不確かな問題がありますが、何より、現行の国債整理基金の財政運営方式でこれが賄い切れないことだけは明白であります。あらかじめ負担平準化を準備するにせよ、しないにせよ、六十年代には、予算繰り入れを必要とする額が巨額になることは避けがたいわけであります。そして、それが果たして財政的に可能なのか。木下和夫教授を座長とする国債借換問題懇談会の検討などを見ましても、この辺につきましてはまだ見通しが立っていないことも、それがいかに困難な問題かということを物語っているように思われます。  国債償還を著しく困難にする特例公債は、このような観点からも、この際、抜本的に政策見直しと関連して検討をする必要があるのではないかということを私の意見として申し上げさしていただいた次第であります。どうもありがとうございました。(拍手
  10. 森喜朗

    森委員長 ありがとうございました。  以上で、参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 森喜朗

    森委員長 これより、参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。
  12. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 参考人の皆さん方には、大変お忙しいところ御出席をいただきまして、また、貴重な御意見をありがとうございました。  最初に、前川日銀総裁にお伺いをしたいのでございますが、本法案でございます財政特例法とは直接関係ないのでありますが、私は、日本経済というのは世界の経済の中で生きているわけでありますので、その意味では、いまのアメリカ高金利政策、これに対してももう少し物を言ってもいいのではないかと、かねがね思っているわけでございます。過日、大蔵大臣にも、サミットに行くときには、この問題についてはECと一緒になってさらに大きな声を出すべきではないかということを申し上げたわけでありますけれども、いずれにしろ、結果として出てくるマネーサプライ金融政策を御していくというのは技術的にはむずかしいのではないか。  どうもアメリカ状況を見ていますと、あれはたしか毎週金曜日でございましたか、マネーサプライの発表があると、わずかな額しか動いてなくても金利が大変はね上がるということで、マネーゲーム的な状況に少しなっているんじゃないだろうか。これには、アメリカインフレを抑えるために金融は緩めないんだぞというかたい決意の一つのあらわれとして、どんな事態になっても少しがんばるんだということが前提にあるかと思うのですが、いずれにいたしましても、いまのようなことでは、たとえばECの景気の問題で景気の刺激策と言っても、アメリカ高金利に阻まれて、大事な金融政策というので一つ手を押さえられてしまう。  日本も、いまの状況というのはどういう状況で、これが金融政策でどういうふうに景気刺激をすることができるかという問題については、後でちょっとお伺いをいたしますが、しかし、いずれにしろ、財政金融という大変重要な景気刺激策あるいは経済の発展の政策の中で、財政的にはどこも大変赤字が多くなってきている。しかも金融政策の面では、アメリカ高金利に阻まれて、にっちもさっちもいかないということが現状じゃないかと思うのです。  そういうことから考えてみますと、マネタリストが考えているようなマネーサプライアメリカインフレを抑えるということが、結果的に一体効果があるのだろうか。また、中央銀行同士、もう少しこの問題で、なお一層アメリカにも反省や変更を求めていく必要があるのではないかと私はかねがね思っているのですが、このことについてまずお伺いさせていただきたいと思います。
  13. 前川春雄

    前川参考人 アメリカ金融政策は、いまから約二年半前、七九年の秋以来強力な引き締め政策をとっておるわけでございまするが、その引き締め政策の目標をマネーサプライのコントロールに置いておるということは、いまお話しのとおりでございます。その結果は、金利の方につきましては、かなり大きくはね上がるあるいは変動するということがあっても、それは目をつぶるのだというのが、簡単に言えばいまのアメリカの態度でございます。  こういうふうにマネーサプライのコントロールを手段としてインフレを抑制していくという考え方自体は、基本的には間違っておらないというふうに私は思っております。現にアメリカインフレも、一昨年から昨年にかけましてまだ二けたのインフレ率でございましたけれども、最近はもう一けたになっております。消費物価も二月は七%台まで下がってきている。卸売物価につきましても、工業製品につきましては五%台、二けたではなくて一けた、かなりいいところまで下がってきておるということでございますから、インフレ抑制にその効果が出てきておるということは認めていいというふうに思います。  ただ、いまお話のございましたように、金利がいかにも高い。昨年まで、まだ物価が二けたでありましたときに金利も二けたであるということは、十分これは理解し得るところでございまして、そういう事態、物価が二けた上がっているようなときには、金利もやはりそれ以上に高くしておきませんと、金を借りて物を買った方が得だというふうになりますから、それは理解できるところでございまするけれども、最近のように物価インフレ率が一けた台になっておるのに、なおかつ二けたの金利であるということは、いかにも異常であるというふうに私どもも思います。  また、マネーサプライのコントロールというのは、余り短期でなくて中長期的に見てコントロールすべきもので、マネーサプライを短期の間にコントロールするということは技術的にもなかなかできないわけでございます。そういう意味におきまして、アメリカマネーサプライは、先ほどお話にございましたように、毎週発表されるマネーサプライの数字に伴って金利が上がったり下がったりするという状態はいかにも異常であり、そういう点に何らかの改善が施されるべきであるということにつきましては、アメリカの通貨当局もこれを認めておるわけでございます。私ども、いまのアメリカ高金利が、日本ばかりでございません、ヨーロッパにとっても景気回復にとって非常に大きな障害になっておりますので、これが下げられるべきであるということを期待もしておりますし、また、そういうことをアメリカにも常に言っておるわけでございます。  ただ一つ、最近になって非常にぐあいの悪くなってまいりましたことは、アメリカ財政赤字が非常に大きい。レーガン政権は、昨年政権をとりましたときに、八四年までには財政の赤字をゼロにするということを一月に公約しておったわけでございまするが、ことしの二月の予算教書では、八四年はおろか、八五年においてもなおかつ七百億ドルの赤字になる見通しだということを申しました。こういう状態金利の先高観というものをいまあおっておるわけでございます。マネーサプライにつきましてはまだ若干高いところでございますが、これもかなりおさまってまいりまして、目標値にそろそろ入りかけておるわけでございますので、そういう点から申しますと、金融的には金利が下がる環境にはなってきておると思います。  財政面のそういう大きな赤字につきまして、いまアメリカの議会で予算案審議がされておりますので、そういう財政の赤字についても何らかの施策がとられることが必要であり、そういうことがまた期待されるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  14. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いま相互主義法案等がたくさん出ておりますけれども、一方では日本に学べということがアメリカの議員の中でも大変多くなってきておるようでありますので、そういった意味では、アメリカもいまのマネタリストが言うようないわばマネーサプライをコントロールする、重視をするまでは私はわかるのですが、コントロールするということは非常にむずかしいのじゃないか。しかも総裁言われたように、これは一週間ごとに発表するというようなことでできるのだろうか。日本だって、公定歩合と窓口規制というので、いわばマネーサプライをいろいろな形でコントロールというか重視をしながら運営をしているわけで、そういった意味でも、アメリカは日本に少し学ぶべきではないかと私は思っております。  それはさておきまして、次に、日本経済景気状況見通しについて相反する二つの意見があるわけですね。そしていま総裁からもお話がございましたように、きわめて緩やかな回復基調にある、きわめて緩やかなというところが非常に重要なコメントであると思います。しかし、この先落ち込んでいくとは考えられないということが、間に輸出の問題等がございましたが、結論的になっているわけであります。このことは、三月二日に発表になりました日銀の短観でも大体そういう基調で述べられているわけであります。  こういう見方と、それに相反しまして政府の中でも、いや、これはとにかく大変だ、十−十二月期がマイナス〇・九、七年ぶりにマイナス成長になった、大変だからとにかく五十七年度は七五%いや八〇%公共事業を前倒しをしてやらなければだめだ。それをやれば必ず下期は息切れがくる、息切れがくるから今度は建設国債でも発行して少し補わなければいかぬ、財政再建はちょっとわきだというような、きわめてファナティックなというのでしょうか、性急な考え方というのが片方では、これはかなりいろいろ政治絡みかと思うのですが、起こってきているわけです。  しかし、一方では先行きわからないので、いま経済企画庁が頭を痛めているのは、国民所得統計とおのおのの経済の先行きを見ます指数とが合わない。先行指標、一致指標あるいは後にくる方の指標、これはどうも逆方向を行っていてよく読めないということが出てきているわけです。それで当委員会でも問題になったのでありますが、五十六年度経済というのは大体三%を割るのじゃないだろうかということであります。三%経済、これだけ世界各国マイナス成長だあるいは大変な失業者を抱えているという中で、日本は失業者が百三十五万と言われておりますけれども、有効求人倍率が〇・六とかなんとか、〇・五を境にして上下しているという状況、そういう世界経済の中で、日本だけがそれ以上、より大きく成長が果たしてできるだろうか、こういう見方も当然あるわけであります。  こういったことから考え、なおかつ景気が悪いのだから、悪いのだからということで景気刺激策をやれば、といってもそんなに手があるわけではないので、これまた金利を下げるということになれば円安になり、それが先ほどお話があったように、さらに輸出伸びていくということにも結果的になるでありましょうし、いろいろな矛盾がそういった意味で出てくる。財政再建も少しわきに置かなければならぬという別の矛盾が出てくると思うのです。  その意味では、いまの時点というのは、景気見通しをどういうふうに見ていくかというのが大変大きなターニングポイントになり得る点だと思うのです。そういった意味で、基調についてはお話があったわけでありますが、いま総裁といたしましては、政府部内で言われておりますような、かねと太鼓をたたいて景気対策をしなければいかぬというところまでは必要ないのではないか、こういうお考えだというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  15. 前川春雄

    前川参考人 経済状況の判断が大変むずかしい時期でございます。私ども昨年来、経済活動を、非常に緩慢ではあるけれども、下の方にはいっていない、上の方にいっているという判断を持っておりました。  いろいろな指標から、そういうことを判断したわけでございますが、同時に、いわゆる短観と申しまするか、あの短観は、三カ月ごとに各企業からアンケートをちょうだいして、もうすでに三十年くらい続けておるわけでございますから、非常に連続性もございまして、そのときどきの企業の方々がどういうふうに先を判断し、また現状についてどういうふうな気持ちを持っておられるかということが如実に出ますものですから、私ども情勢の判断にはあの短観をかなり重視しておるわけでございます。したがいまして、私どももいろいろ資料に基づいて判断もいたしまするけれども、一方、そういうふうな短観、各企業の方のお考えも入れて判断しておったわけでございます。  なかなか思ったほどに景気回復しておらないということは、率直に申しまして認めざるを得ないことでございます。たとえば個人消費につきましても、昨年のいまごろは、消費物価が安定すれば必ず実質消費はふえるであろうという見方を持っておりました。昨年ちょうど春闘の数字も出てまいりまして、一昨年より高い数字になったということもございまするので、消費物価の安定基調ということが確保される見通しがつきましたので、消費回復するであろうという見通しを持っておったわけでございまするが、その後の実績は御案内のとおりでございまして、いま一つ伸びない。いろいろの要素が働いておると思いますが、一つはやはり名目所得がふえてない、春闘の数字ほどにはふえてない、また可処分所得が御案内のとおりふえなかったということが大きな要素であったというふうに思います。そういうことで、いま一つ景気回復が順調でないということは御指摘のとおりでございます。  ただ、いろいろの資料を見ておりましても、企業が減量経営ということを非常に徹底しておやりになって、またその間血のにじむような努力をしておられることは敬服に値するところでございますが、その結果、こういうふうな低成長にもある程度自信を持ってきておられる、したがって企業マインドがそれほど落ちてないという事実がございます。中小企業の方は大企業より若干悪いわけでございますが、それでも非常な危機感が出ているというような感じでもまだございません。これは私どももちろんマクロで見ておりまするので、業種別あるいは地域別にいろいろな跛行性があることは十分承知しておりまするけれども、マクロで判断する限りにおいては、そういう状態であるというふうに思います。何分海外景気が非常に悪いものでございまするから、なかなか国内だけで発展をしにくい、そういうような制約があることは事実でございます。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕 そういう中で、現状の判断につきましては、企業マインドがわりあいしっかりしているというようなところから見ましても、景気がどんどん落ちていくというような環境ではないというふうに思います。  それでは、これをどう評価するのか、これでしょうがないと見るのかどうかということでございます。何さま、そういう事態に対しまする政策対応の選択の余地というものが非常に狭い、財政面はもう御案内のとおりでございます。金融面も、いま御指摘がございましたように、金融は十分緩和しておると思いますが、この先さらに金融政策をそういう緩和の方向に推進しますると、円相場その他について非常に悪い影響が出るのではないかというふうに考えられます。そういう意味で、この際施策をとろうとしてもその選択の幅は狭いので、私は、先ほど申しましたように余り大きな政策的な対応というのは困難なのではないか、するにしても、小さい施策を積み重ねていくということがせいぜいではないかというふうな感じを一般的に持っております。
  16. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 まさに総裁が言われましたように、次に、金融政策について若干もう少しお伺いしたいのであります。  いま総裁は、十分緩和をしている、そういう表現をされたわけでありますけれども、たとえばマーシャルのkを見てみましても、アメリカは上向いているけれども日本は下向きである。いま長期金利を下げた方がいいのではないかということも話としてはあるわけです。ただ、円安の問題ももちろんありますけれども金融は、かなり緩和をしているというよりも、むしろだぶついているのではないか。これが、いわば中小企業の倒産を若干なりとも少なくしていることも一面ではあると私は思うのです。ただ、余り緩和をすることはいろいろな面でマイナスも出てくるわけですね。そういった意味でも、円安の問題もありますけれども、これから金利を下げていくということは、景気対策という面からもきわめて幅が狭いのではないかと思わざるを得ぬのでありますが、そう考えてよろしゅうございますか。
  17. 前川春雄

    前川参考人 金融政策の中で金利政策と量的な対応の二つが大きな要素でございますが、その中の量的な面につきましては、窓口規制も全く金融機関の自主的な判断に任せておるわけでございまして、その結果、マネーサプライが非常にふえておる。前年度に比べましてM2プラスCDでは一〇%台の上昇でございます。いまの名目成長率等から申しますと、こういうマネーサプライ状態というのは、私ども立場から申しますと許容できる範囲の上限にあると思います。これ以上マネーサプライが加速して増加するという状態は望ましい状態ではないと考えております。  ただ、こういうふうに景気全体、経済活動が沈滞しておりますときは、通貨の回転率がどうしても遅くなってくる。金が詰まっているときはどんどん回転いたしますけれども、そうでないときは回転率が遅くなってきている。したがって、残高が多少大きくなりましても、こういうふうな不況のときには、常にマネーサプライ経済活動あるいは名目成長率との間では若干マーシャルのk等は高くなるという傾向を持っておるわけでございます。そういう意味におきまして、いまの状態が私どもはもうすでに危険な状態だとは判断しておりませんけれども、先ほど申しましたように、これ以上加速することは望ましい状態ではないと考えます。  金利につきましては、もちろん内外金利差ということが円安を誘発するということから、内外金利差がこれ以上拡大しない方がいいという段階までもう来ていると考えておるわけでございます。長期金利につきましても、長期金利は長期債の利回りによって決まってまいるわけでございますから、本当に安定した市場実勢が示す水準になるのならば、長期金利というものは改定してもいい環境であると思います。ただ、いまの内外金利差がとかく円安を誘発しがちだという環境のもとでは、長期金利の改定に当たりましても、十分市場実勢が安定的に決まっておるということを見きわめる必要があること。それから条件の改定、これはもう市場実勢に基づきまして当事者の間で御相談になることでございますから、私がとやかく申し上げるべきことではございませんけれども条件の改定のやり方につきましても、クーポンレートあるいは発行価格のあんばいという点にいろいろ工夫の余地もあるのではないかと考えております。金融政策全体としては、金利資金の配分機能というものを持っておるわけでございますので、ただ借り手の立場から言えば低ければ低いほどいいということにもなりますけれども、預金するという立場から言えば高ければ高い方がいいということになる。これが郵貯問題を誘発した一つの背景でもございますので、金利政策はその間の資金配分機能として一番適当であるというところを常に判断しながら運営してまいらなければならないことであろうと考えております。
  18. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もう一点お伺いしておきたいのは、先ほど私も触れましたけれども、公共事業の前倒しで下期にはとにかく一兆ないしは一兆五千億の建設国債発行してでも景気の下支えをすべきであるという意見が、いまかなり新聞等をにぎわしておるわけですね。これは、先ほどちょっと触れたように、いろいろな意味での閣内の政治問題もありやとも思うのでありますが、それは別としても、何となく通りやすいのですね。しかし、金さえあれば公共事業というものは、社会資本がおくれているところですから、やっても構わないと思うのでありますが、先ほど岩波先生から言われましたように、しょせん財政の限度は限られているわけでありますし、いや、それどころか、いま財政再建に向かっているときだから、このいかにも入りやすい議論というのは大変危険性を持っていると私は思うのであります。  そういった意味で、公共事業というのはいわばアヘンだ、それはやるにこしたことはないけれども、やっていると、いつもいつもやっていないと、これは景気の下支えができない、本当に民間の自力の景気回復ができない、やりにくくさせる、こういう機能を持っているのではないかと私は思うのです。  そうして、総裁の御発言の中に、マネーサプライは一〇%台で上限ではないかというお話がございましたけれども、これはちょっと時期が——では具体的に建設国債をさらに増発なんという問題になるのは約半年後でございますので、そのときにはマネーサプライがそのくらいになっているのかどうか、これは景気見通しともいろいろ関係してくるので、質問の正確さは少し欠くと思うのでありますが、一〇%ぐらいでかなり上限だという認識の中で、さらに建設国債を、たとえばそういったものを増発をして、数字として一兆五千億とか一兆とかいうものを増発をしていくということはいかがなものだろうか。大変な金融的なインフレ傾向を助長する方向にいくのではないだろうか。きわめて仮定の問題で、質問自身も時期的に少しずれがあることを私も承知をして、あえてお伺いをしておきたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  19. 前川春雄

    前川参考人 財政政策にも景気調節の機能はございますから、財政政策をそのときどきの景気状況の判断に基づいて運営していくということは、それ自体は否定すべきことではないと思います。  下期にそういう追加の四条公債を出すことがどうかということでございますが、下期の景気状況に対応して判断すべきもので、仮に一般論から言えば、そのときの状況がどういう状況であるかということに応じて判断すべきことでございますので、増発するのがいいのかどうかということについては、まだ私どもも判断しかねるわけでございます。  ただ、財政政策景気調節機能というのはございますけれども、そういう機能を発揮する余地が非常になくなってきているというのが、いまの財政再建がこれだけ唱えられている背景でございます。したがいまして、財政金融も両方とも政策選択の幅がきわめて乏しいと申しましたのはそういう意味でございまして、景気調節機能を否定するつもりはございませんけれども、それをなかなか発動し得るような環境ではないのではないかというのが、私どもの基本的な考え方でございます。  マネーサプライとの関連でございますが、確かに財政支出がふえますとマネーサプライをとかくふやす方向に働きます。もちろん、その財政資金の調達方法にもよるわけでございまして、もし一般的に国債が公募されておりますれば、マネーサプライというのは必ずしもそれだけふえることにはならないのかもしれませんけれども、いまの日本の方式でございますと、とかくマネーサプライをふやす方向に働くわけでございます。ただ、景気あるいはそういうふうな財政政策財政施策をとらなければならない環境というのを想像しますと、財政政策以外の面のマネーサプライを押し上げる力というのは非常に弱いということがあるのではないかと想像されます。これも仮定の問題でございまするから、私もなかなか責任を持ってお答えもいたしかねるわけでございまするが、マネーサプライといたしましてはそういういろいろの要素の上で出てまいりまするので、必ずしもそのことだけでマネーサプライがまた非常にふえるのではないかとも言えない。しかし、一般的にはそういう傾向を持つことは事実でございます。
  20. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次に、全銀協の村本会長にお伺いをしたいのでございます。  来年の四月から、皆さん方は待ちに待ったというか、いや遅きに失したというか、国債窓口販売をする。これは三人委員会でそういう時期に決まったわけでございますので、証券業協会も全銀協も、双方とも不満がある裁きでありますから、恐らく両方とも完全に満足ということにはならぬと思うのです。それは別といたしましても、私が国債問題としてわからないのは、いまの銀行で窓販をやった場合にどういうことになるのだろうかということが、少しイメージとしてわからない点があるので、簡単にちょっとお答え願いたいと思うのです。  個人意見でも結構でございますが、これはグリーンカードの問題とも関係してまいりますけれども、皆さん方の窓口へ来て国債を買われる方というのは、銀行あるいは郵便局のマル優が全部終わって、国債の特別マル優があいている、そういうことで、どうでしょうかと皆さん方がお勧めになる。そのときに、皆さん方のところに入れてある預金を取り崩して、それでは税金がかかる預金よりもマル優の国債にするかという方向で、いわば皆さん方の預金の取り崩しが国債へ行くのかな、そういうことになるのかなということと、いまの個人消化というのは、少なくも諸外国に比べてみるとまあまあ遜色のない数字まで来ているわけですね。その上に、銀行で窓販をやった場合に、私はあえて押しつけられたと申すのでありますが、いままで銀行が持たされていた国債のうちの幾らかは個人に持ってもらえるのじゃないだろうか。数字の細かいことはいいのですが、どういうことになるのだろうかということが一点であります。  それから二点目に、そのときに何らかの事情で、銀行側から言えば買い戻しですね、一年ぐらいで買い戻しをされる。このときの価格というのは、一物二価じゃ困りますので、市場価格ということになると思うのですね。そうしますと、買った方が損をする場合が当然そのときの市況によってある。これは銀行というイメージを著しく歴史的に変えていくのじゃないか。銀行はとにかく、インフレによる目減りはあったとしましても、リスキーなものをかつて売ったことはないわけで、そういった意味では、価格は市場価格ということに、理論価格じゃなくて市場価格ということにするならば、当然リスクが発生する。これは何となく銀行というもののイメージを変えてくる、かつて日本人が持っていた銀行のイメージと変わってくるのじゃないかというふうに思うのですが、その辺はどういうふうに考えていらっしゃるのか。  それから三番目に、中小企業の方々によく言われるのでありますけれども銀行が窓販しますと、正直言いまして、これだけ金融のめんどうを見るかわりに、銀行の手持ちの国債、それも将来ともなかなかいい方向に向かう市況のときの国債ならいいのだけれども、先行きどうもよくないぞ、これは長く持っていればいいけれども、短期のものでいくと損が出るというようなものを、片方で融資するかわりに、それではちょっとおたくの方も条件がよくないから国債持ってくださいよということで、押しつけ販売というのが第二の歩積み両建てとして起こるのではないかということを中小企業の方々は大変心配をしているわけです。  その辺は、全銀協の会長として、ひとつ絶対に中小企業に押しつけ販売しないという御確認を公の場でしていただきたいと思うのでありますが、その辺のイメージが銀行国債の窓販というのを行った場合に一体どうなっていくだろうかということについては、私たちもよくわからない点がありますので、簡単で結構でございますが、その辺のことについて考えていらっしゃることあるいは銀行協会の中で話していらっしゃることについて、少しお聞かせを願いたいと思うのです。
  21. 村本周三

    村本参考人 お答え申し上げます。  ただいまの佐藤先生の御質問は、見通しのむずかしい点も含んでおりますので、私どもにもなかなかお答えしにくい面もあるのでございますが、私ども考えを率直に申し上げてみたいと思います。  私どもが、銀行でもぜひ国債を窓販したいと思うようになりました最大原因は、昭和六十年以降の借換債の重みということでございます。御高承のように、昭和四十年に赤字国債が初めて出ましたときに、当時証券業界はいろんな意味の苦境にあったこともございまして、証券業界育成のためにと言っては口幅ったいのでございますが、証券業界が御発展あそばしますように、われわれの方は、旧銀行法の有権解釈でも販売はできるのだけれども、それはやめておこうではないかということをいたしたわけでありますが、その裏には、当時の国債発行高であるならば、それで十分賄えるだろうということもあったわけでございます。しかし、昭和六十年度から来ます昭和五十年度以降に発行された大量国債の借りかえの大きさというものから考えますと、これはもう銀行、証券の垣根の争いではなくて、銀行と証券とが相携えてこの問題に立ち向かわなければ、とてもそうはいかないというふうに考えたから、われわれはそういたしたいと思っておるわけでございます。  したがいまして、銀行界がいま期待しておりますお客と、証券界が従来販売してこられたお客とは、われわれは客先が少し違うと思うのでございます。私どもの方は、確かに国民の多くの方々に対する触れ合いの窓口は多いのでございますが、これからわれわれが国債を買っていただこうという方々は、いまおっしゃったようにマル優がいっぱいになった、したがって、これから特例国債をお勧めしたらいいんだということを、われわれがいわば家庭のコンサルタントとして伺っておりますうちに、そういう情勢になったときお勧めしたらいい。それは従来もそういう方々が証券会社に行っておられたわけでございますが、こうして十年たって現在程度のマル特の残高ということ、口数ということから考えますと、私どもが幅広い接触の中で、そういう国民大衆の家計動きの中で、この辺から長期に寝かしておけるお金は国債をお持ちになってはいかがでございましょうかとお勧めする余地が多分にあると私ども考えておるわけでございます。  したがいまして、先生がおっしゃったように預金の取り崩しになるのではないかということはないとは申せないわけでございますが、そこでお考え願いたいことは、それはそういうところまで来ておられるお客様方の新しくことし預金される額、ことし貯金される額、そういうものがまずそこへ向かっていくということが一つあるわけでございます。したがいまして、必ずしも取り崩しにはならない。  それからもう一つは、グリーンカード問題と絡みまして、従来分離課税をしておられた方々は、マル特になさった方がいいのではないかという場合もあろうかと思います。  また、銀行は多額の国債を一方でお引き受けをしておりまして、それを産業界の資金需要ができますと、その方にお金を回すために売却しなければならないわけでございますが、その持っている国債がそのために減るならば、それはわれわれにとっても同じような効果がある。こういうことで、必ずしも預金の取り崩しということの心配はしていないわけでございます。  しかし、それならばどのくらいの枠だとおっしゃると、これは大変お答えをしにくいのでございますが、まず多分初年度におきましては、長期国債だけでありますならば、まあウン千億円、下の方のウン千億円、中期国債も扱わせていただけるということであれば、ウン千億円も上の方のウン千億円、こういうふうなぐあいになるのではなかろうかとひそかに考えておる次第でございます。  それから次に、いわゆるわれわれがはね返り玉と申しておりますが、皆様にお持ち願ったのがはね返ってくるという問題でございます。これは、いま申し上げましたように、お客様の預貯金がそういう線までいきましたときに、これから十年間お持ちになれるものということで、なるべくお持ち願えるようにしたいと私どもは思いますので、はね返り玉がないようになるべくしたいと思っております。それでもしかし、はね返り玉がないとは申せまいと思います。その際も、資金をお貸ししてある期間お持ちこたえになれば、それでやれるのであれば、そういうことにして国債を担保にしてお貸し出しをするということにいたしたいと思います。  さて、それでもなおはね返り玉があるではないかという先生の御質問だと思いますが、確かにそういうことはあると思います。そして、そのときは市場価格によってお扱いするほかないと思います。これはおっしゃいましたように一物一価ということと相なると思います。そうすると、銀行のイメージが壊れるのではないか、こうおっしゃったわけでございますが、確かに銀行は従来、先生がおっしゃいましたようなインフレによる目減りは別としてというお言葉がございました、それ以外は、いわゆる名目価格はそのままで来ておるわけでございます。しかし、ここもと消費者のニーズが多様化いたしまして、銀行がいわゆる譲渡可能定期預金証書あるいはそのほかにも外貨預金等をお扱いしております。これはやはりそのときの利率の動き、それからまた為替相場の動きによりまして、必ずしも名目価格を保持し得ない商品をすでに取り扱っておるということは事実でございます。つまり、そういうふうに消費者の方々のニーズが拡大すれば、銀行が扱わなければならない商品も多少そういうふうなものまで踏み込んでいくのはやむを得ないかと、かように考えておるわけでございます。そういうのが新しい銀行の概念ということであろうかと思います。  それから三番目に、中小企業に押しつけをするようなことはないかという御質問でございます。私ども、ただいま申し上げましたように、家計の中で余ってきたお金をそういう意味国債に投資していただきたいと考えております。第二の歩積み両建てに等しいような国債の押しつけ販売は断じて自粛するつもりと、ここではっきり申し上げておきたいと思います。どうか将来ともそのように御指導願いたいと思います。
  22. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 大分時間がなくなりましたので、少し詰めてお伺いしたいと思うのであります。  そこで、非常に大事なことは、これは私からも言ってしまいますけれども銀行にしろ証券にしろ、いま村本さんの方から、銀行と証券が相携えてやる問題だということで、鈴木総理、渡辺大蔵大臣が泣いて喜ぶような御答弁があったわけでございますけれども銀行といえ証券といえ、これは銀行、証券のために存在するわけではないわけですね。これは資金の必要な産業界と国民とを結ぶ一つのパイプ役だと私は思っているのであります。その意味から、資金を出す国民の側から見て、その証券と銀行の争いというよりも国債、いま具体的には国債というものが媒介になっているわけでありますけれども、媒介にして必要な資金を供給をする。それによって当然金利を得るということになっていかなければならぬと私は思うのであります。  その意味では、証券会社に行ったらこうだった、銀行に行ったらこうだったということで、だんだん垣根が少なくなっていく新銀行法、新証取法のもとでは、少なくとも国債というものを挟んで国民が考える場合に、どちらかの窓口に行った場合に全然扱いが違うということでは、国債というものの持っているイメージが大変違ってくると私は思うのであります。そういった意味で、私は、この部分におけるイコールフッティングというものが今後確立をされていかなければならぬだろうと思うのであります。  そういった意味で、たとえばいま問題になっております国債の担保貸し付けあるいは総合口座、これとて私は、双方でひとつできるようにしていくことが国民にとっても大変便利なことなのじゃないだろうか。あるいは産業構造審議会の中にも出てまいりますけれども国内CPの発行の問題、これはいわば産業界が要請している問題なんですね。いま外国CPを売る、売らない、これはいま円安の問題がございますから、いま少し待とうじゃないかということは私もわからぬわけじゃありませんが、海外CPの問題はさておき、国内のCPの問題も、これはやはり双方とも円滑に発行し、できる体制というのをそろえていただくことが、国民の側から見て当然果たすべき銀行、証券という資本市場金融市場をつかさどる企業の責任ではないか、私はそう思うのであります。  本来なら、もう少し個々に細かくお伺いしたいと思ったのでありますが、時間が大変迫ってまいりましたので、ひとつそういった意味で、国債の担保貸し付けの問題あるいは総合口座設置の問題あるじはCP、CDの発行の問題について、双方の御意見をそういった立場からお伺いをさしていただきたいと思うのでございます。
  23. 村本周三

    村本参考人 お答え申し上げます。  ただいまの最初のイコールフッティングのことでございますが、銀行と証券の垣根が次第に低くなってきておることは、それは御高承のとおり世界的な傾向で、アメリカでもそういうふうになっております。欧州は前からほとんどないといってもいい状態でございます。そういう中で今度の国債、公共債の販売が銀行法に規定されたということは、いわば私どもはその垣根を真ん中にして両方の入会地というものができたというふうに考えておるのでございます。  しかしながら、銀行は、御高承のとおり銀行法に、預金、貸し付け、為替をする者は銀行とすると、こう書いてございますように、銀行としての一つのはっきりしたいわば特色と申しますか、最後のとりでがあるわけでございます。証券側も同様であろうと思います。したがいまして、この入会地ではほぼ同じような売り方をいたしておるわけでございますけれども、それぞれが持っております特質を生かしてそれぞれサービスするという違いはやはり残っていこうかと存じております。で、私どもは、ただいまおっしゃいました国債担保の貸し付けあるいは総合口座というものは、われわれのサービスの仕方として大変興味深い商品である、かように考えておるわけでございます。  それからCPの問題でございますが、これは御高承のとおり、昨年度の銀行法制定の過程におきましても、先生方から附帯決議でCPについても研究せよということに相なっておることでございます。  ただ、CPというものはどういうものかということを考えてみますと、御高承のとおり、これは米国並びにカナダに発達した一つの制度でございます。ということは、アメリカの特殊性、たとえば州際と申しますかインターステートバンキングが禁じられておるというアメリカの特殊の情勢、そのほかのいろんなことをやはり反映しておるものだと思います。わが国はその点が違っておりますので、従来から商業手形というものが流通してまいっておるんだと思います。したがいまして、CPというものをわが国に入れることが金融制度上果たしていいのかどうかということにつきましては、もう一度金融制度調査会なり何なりでよく検討していただきたい、かように考えております。
  24. 植谷久三

    植谷参考人 お答え申し上げます。  ただいまの佐藤先生の御質問で、とりあえずCPの問題について、私どもの方といたしましては、先生のお言葉にもありましたように、まず国民に十分な需要というかニーズがある。その意味は、発行する方、発行を要望する側つまり産業界にもニーズがあり、また投資家にもニーズがあるといったようなものは、それが国民経済上害にならない限り、当然に私はいろいろ工夫があってしかるべしという気持ちでおるわけでございます。したがって、それがアメリカに学んだとか、そういうことも重要なことでございますけれども、学んでいいことは日本にどんどん持ち込まれて、必要に応じてお役に立てば大変いいのではなかろうかというふうに考えております。  それから、イコールフッティングの問題として、国債をお買いになった方が何らかの形で資金需要がある場合に金を貸していただきたい、これは当然非常にあり得る問題だと思います。そういう中で、私ども国債を売り、それから、私は好ましいことだとは思っておりませんけれども、今後銀行でもお売りになる。これは法律で決まったことでございますからもちろんあれですが、同じように同じ品物を売る場合に、私の方はこういうこととこういうことができるんですよという付録つきになります。私どもの方はその付録がついていないわけなんです。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕 私は、これは公平の原則を欠くと思います。たとえば、今日銀行さんも大変サービスよくなられまして、総合口座という、これはもう先生御指摘のとおりなんです。利札はとってあげますよ。そして、とったらすぐ総合口座へ入れて、ちゃんと利子もつけますよ。これは私大変結構なことだと思います。これを否定するつもりは私全然ございません。  ところが、私どもずいぶん長い間国債販売に協力というか努力してまいりまして、今日かなりたくさんのお客様の国債を各証券会社がお預かりしているわけです。その利札時期が来ると大変な混乱状態に陥ることは、これは新聞にも報ぜられたところでございます、一度に皆さん利札をおとりになるわけですから。これがもし銀行さんのようなサービスの道が開けますならば、こういう混雑もございませんし、投資者に御迷惑をかけることはなくなるわけです。また同時に、投資者の方々は国債を買って、利子をちゃんととってもらって、それがすぐまた有効に働いていくということなら大変結構なことじゃないかということで、国債の消化にも便益になると考えております。このことはぜひお願い申し上げたい。これは私ども、たとえば中国ファンド等を利用して、それに相当することをやらせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  25. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 最後に、金利自由化の問題についてお伺いしておきたいのでございますけれども、冒頭お伺いしましたように、国内外資金移動が大変激しくなってきている。あるいは日本国内を見ましても、期間の短い国債の残高構成が大変高くなってきているというようなことがございます。そういった傾向からいくならば、さらに金利自由化というのを推し進めていく必要があるんではないだろうか。  それが発行条件実勢に合った本来の姿につながっていくと私は思うのでありますが、いま金利自由化ということを妨げている要因は一体どうだろうかということをお伺いをし、あわせて政府の短期証券について、ことしは昨年に比べて二兆円ふやしているわけですね。七兆四千億円短期証券が出るという。昨年六月に国債が三カ月休債になった。実勢にいろいろ合わないということでシンジケート団と条件が折り合わなかったことで三カ月間休債になって、国庫の方も三千億くらい残すだけで大変苦しんだという経験があって、二兆円ふやしたということであります。  いずれにしろ、七兆四千億もの短期証券が今年度発行を許されているという中で、従来のように公定歩合より〇・一二五低いというような発行条件で日銀に押しつけているということで、国債側の残存期間がだんだん短くなり、それが大量になっておるという中で、一体TBというものをこんな形で発行していて、本当に金利自由化ということはいいんだろうか。国にとっても事実上、市中売却すればそこに日銀は損が出、日銀の納付金が少なくなるということで、国にまたはね返ってくるわけでありますから、そういう無理をしない方が私はいい。これが本当の金融のあり方ではないかと思うのであります。  そういった点について、二点にわたりますけれども、日銀総裁村本さん、植谷さんに御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
  26. 前川春雄

    前川参考人 御案内のように為替管理法も自由化してまいりましたので、膨大な資金内外市場にわたって常に移動しておるという環境でございますから、これからの金融政策は、金利機能というものを活用してまいるよりほかに方法はないわけでございます。  そういう意味におきまして、金利機能の活用という点から申しますると、金利が自由にそのときそのときの状況に応じて動くということが必要なわけでございまして、金利自由化ということをかねがね私どもが主張しておりますのは、そういうことが背景にあるわけでございます。いまその金利自由化を進めますことが金融機関の競争をさらに促進するということにもなりますので、金融政策金利政策の有効性を確保する上からまいりましても必要なわけでございます。  ただ一方、アメリカのいわゆる金融革命ということが一昨年から昨年にかけていろいろございました。そういう面も考えなければいけない。ただ自由で、どういう金利でもつけて構わないというわけではない。金融機関の健全性ということを一方で考えてまいらなければいけないというふうに考えております。  そういう意味におきまして、金利自由化を私どもも念願しておりますけれども、やはり自由化を進めてまいりますテンポあるいはその方向ということにつきましては、そのときどきの状況に応じました慎重な配慮が必要であろうというふうに思います。  金利自由化を妨げている事情はどういうことがあるかということでございますが、その一つは、金利自由化が行われ金融機関の競争がそこで行われるためには、同じ基盤に立っていただかないと困る。郵貯問題というのは昨年非常に問題になりましたけれども、そういうことが基本に一つあろうかというふうに思います。  それからもう一つの問題といたしましては、金利自由化をしてまいります上に、規制金利を少しずつ撤廃していくということになるわけでございますが、そのときに、金融機関の健全性という点から考えまして、そのテンポあるいはその程度というものを常に慎重に考えてみなければいけない。これは自由化を妨げている事情と申しますか、私ども自由化を進めてまいりまする際の政策的な配慮というものをそういうふうに考えていかなければならないと考えております。  TBの問題のお話がございました。政府短期証券というのは、どこの国でも先進国では一番信用のある優良な短期の金融資産でありまして、これが短期の金融資産市場における一番取引高の多いものになるべきであろうと思っております。そういう意味におきまして、現状では、残念ながら政府短期証券というのはほとんど市場に持たれておりませんけれども、将来はそういうふうになることが望ましい状態であろうというふうに私ども考えております。
  27. 村本周三

    村本参考人 大変恐縮なお答えでございますが、私にも御質問があったわけでございますが、ただいまの前川総裁の御答弁で尽きておると思います。私は全く同感でございます。
  28. 植谷久三

    植谷参考人 これは専門はお二人の方でございまして、私はむしろ専門外の方ですけれども、私の所感を簡単に申し上げさせていただきます。  証券市場というものはもともと自由市場でございますが、むしろ戦後、ことに戦後三十年間、いろいろな意味で、いい意味ではコントロール経済だったと思うのですけれども、その中で私どもが、自由市場だけにはみ出したようなかっこうで、その間のつなぎの接点のところで非常に苦労した面が大変多うございます。たとえば国債発行一つとっても、低金利政策という大きな金融政策の中で、われわれは発行価格を甘んじて実勢よりも大変低い条件でお引き受けすることで損を出しておった。これは皆さん、かつてのあれで十分御承知だと思う。  これは一つの例でございまして、そういう意味で、私ども本来的に自由市場でございますので、TB等に関しても、今日のような世界経済の中で日本が生活していくということになれば、できるだけ世界市場並みに自由市場原理に沿って行われた方がよろしいんじゃないか。これは私、金融政策のことまで踏み込むようなことで大変失礼でございますけれども、したがってそういう意味から、もちろんいますぐには、いろいろ今日の経済体制の中でこれを改善していく時間もありましょうから、政策的な配慮のもとに行われておると思いますが、できるだけ早く、たとえば公募できるような環境をおつくりいただいていくことが、国益にもいいのではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。  それから、自由化の問題につきましては、もちろん今日までの、戦後特殊な経済体制の中で金融構造もそれに合ってきたのですから、いまさらこれをいけないといったような批判はいたしませんが、とにかくいろいろな金融構造が硬直化していることは事実でございますので、これをなるべく早く、速いテンポで自由化の方向へ行きますように、それの阻害要因を一つ一つ努力して外していくようにしないと、日本が世界経済の中でうまくかみ合っていかないのではなかろうかというふうに考えております。  また、国債はとにかく十年ものも五年たてば五年ものになり、八年たてば二年ものになるということで、今日でも五年未満の十年債の国債ほか短期のものを入れますと大体二十六、七兆円ぐらいはあるのじゃなかろうか。六十年になりますと、恐らくこれが六十五兆を超えるのではなかろうかという気がいたしますので、これは自由市場で大きく動いていくわけですから、いつまでも、たとえば発行価格も余り実勢を離れたかっこうにもならないだろう、また、それでは不可能だろうと思います。それにつれて、ほかの面でも自由化が進んでいくのではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。
  29. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 参考人の皆さん方どうもありがとうございました。終わります。
  30. 森喜朗

    森委員長 柴田弘君。
  31. 柴田弘

    ○柴田委員 きょうは各参考人には大変御苦労さまでございます。また、貴重な御意見を伺いましてありがとうございました。  そこで私は、まず前川参考人に現在の円安問題についてお話をお伺いしたいと思います。  二百四十七円七十銭ということで二年ぶりの安値をつけたということでありますが、これについて日銀としても為替市場に対する積極的な介入あるいはコール金利などの短期市場金利高目に誘導していくというような方策等をとられているようでございますが、今後の円安の対策、果たして今日のこのような対策で十分に円安に歯どめがかけられるのかどうか。それから今後の見通し、特に五月にはガットの閣僚理事会あるいはIMFの暫定委員会、六月のパリ・サミット等々がありまして、日本は円安問題について欧米からたたかれる懸念があるのではないかというふうに心配をいたしておるわけであります。  そこで、この円安の対策、これで歯どめがかかればいいわけでありますが、昨日の参議院の予算委員会においては、大蔵省の国際金融局長が、今後、有事規制の発動も円安の次第によってはしていかなければならないのじゃないか、たとえば円建てローンの枠あるいは円建て外債の発行限度額の大幅な圧縮ですとか、あるいはまた対外資本取引を一時的に禁止する有事規制の発動、こういったことを検討していかなければならないのじゃないかということを言うておるということが、マスコミ等の報道であるわけでございます。これで歯どめがかかるのかどうか、あるいは歯どめがかからない場合にはどうするのか、そういった有事規制の発動も考えられているのかどうか、あるいはまた、円は底を打って、先行きはどういった見通しを日銀としては立てられているのか、この辺についてお伺いをしたいと思います。
  32. 前川春雄

    前川参考人 円相場は日本の円の対外的価値でございますから、通貨価値の安定を職務としております日本銀行といたしましては、国内物価の安定と同様に、為替相場はぜひ安定させてまいらなければいけないというふうに考えておるわけでございます。  それで基本的には、為替相場というのは、その国の経済のいわゆるファンダメンタルズ、基礎的な状況によって決まるべきものでございまするから、これからも日本の円相場というものが安定してまいります上におきましては、第一に経済の基礎的な条件というものを安定さしていく必要がある。たとえば国内物価が上がるとかあるいは大きな国際収支の赤字になるとかいうようなことになりますれば、通貨価値が対外的に弱くなるのは当然のことでございまするから、そういうことを念願としてまいらなければいけないというふうに思います。  ただ、現在の円相場は、そういうふうないわゆるファンダメンタルズということのほかに、金利差で資本が流出することによって円安になっておるという面がかなりございます。それともう一つは、最近、輸出にちょっとかげりが出てきたというようなことから、日本のファンダメンタルズに対する、いままで非常によかったいわゆるファンダメンタルズに対して、若干そうではないのではないかというふうな感じが海外からも出てきたということも一つの要素でございまして、それが心理的に相場を円安の方によけい振れさせているという環境にあると思います。  この内外金利差という点は、御案内のように、アメリカインフレ抑制のために強度の金融引き締めをとりました結果、先ほども申し上げましたように、実勢以上に金利が上がっておるということからきておるわけでございまして、そういう点である程度資本が流出するのは、経済の原則からいいますとやむを得ないところではございまするけれども、いまの円相場を安定させていくというたてまえから申しますと、これ以上内外金利差拡大するということは防止しなければいけないというふうに私ども考えておるわけでございます。もう一つ、心理的な要素というものはございまするので、円相場円安の方に特にマーケットで余分に振れるというようなときには、介入をするとかいうことによって、そういうふうな市場の地合いによって円安に特に振れるということは防いでまいらなければいけないというふうに考えます。  ただ、介入によってある一定の水準に相場水準を維持するということは非常に困難なことでございまするので、介入だけではなかなかそういう目的は達せられない、それ以外の施策も講じなければいけないわけでございますが、現在、お話がございましたように、これから金融が大幅な政府資金の支払いによって緩和してまいりまするので、私どもは、そういう点で短期金利が余り弱くならないように高目資金調節をしております。また、これからもある程度してまいるつもりでございます。  これから先、円相場を維持できるかどうかということにつきましては、そのときどきの状況に応じて臨機応変に対応してまいらなければいけないわけでございまするが、有事規制ということも一つの手段としてはございます。ただ、有事規制というのは、やはりいまの日本の経済政策の基本である自由化ということ、あるいは為替管理を撤廃いたしました大きな政策に逆行するものでございまするから、これを発動いたしますのは十分慎重に対応してまいらなければいけないと思います。対外的にもいろいろ悪い影響もあるわけでございまするから、そういう必要がどうしても起これば、ほかに方法はないということでございますれば、この発動もいたし方ないわけでございまするけれども、ほかに方法がないかどうか、それからまた、最大の効果がそれによって得られるかどうかということにつきまして、十分慎重に判断してまいる必要があろうと思います。円相場は、私どもも基本的には、先ほどもおっしゃいました対外的な通貨価値の安定という点から申しまして、また、円安になりますると国内物価を押し上げるあるいは貿易摩擦をさらに激化するというおそれもございまするので、これからも円安にならないように、できるだけの努力をしてまいるつもりでございます。とかく円安誘導論というのが海外にございまして、われわれにとっては非常に心外な批判もあるわけでございまするので、できるだけ円高の方向に安定させるように、あらゆる手段を講じてまいるつもりでございます。
  33. 柴田弘

    ○柴田委員 確かにいま総裁おっしゃいましたように、有事規制の発動というのは金融市場自由化に相反することになりますし、また景気浮揚と逆行する場合も出てくる可能性もある、だから慎重に対応されるということでございまして、私はそうだと思いますが、しかし、円安が続けば対日批判もますます大きくなってまいりましょうし、また貿易摩擦の問題も出てまいりましょうし、あるいはまた物価の問題も非常に注意しなければいけない。現在とっていらっしゃる対策によって歯どめがかかればこれで問題ないと思います。  だから、私がお聞きしたのは、そういった歯どめがかかるのかどうかという問題と、果たしてそれによって先行きもうこれで円が円安の底を打って円高基調に向かうのかどうか、端的に言えばそういうことなんですけれども、それは非常にむずかしい質問かもしれませんが、簡単で結構でございますので、ひとつそこら辺の見通しを御答弁をいただければと思っております。
  34. 前川春雄

    前川参考人 内外金利差の面につきましては、アメリカインフレ率がああいうふうに一けた台まで非常に下がってきたという環境から見ますると、アメリカ金利がこれ以上上がることはないということが一応推定されるわけでございます。一刻も早くそういう事態が出現することを私どもはこいねがっておるわけでございまするが、なかなか思ったとおりにいかないというのは御案内のとおりでございます。しかし、大きな流れから言えば、アメリカもあれだけ不況でございますし、失業もあれだけ多いわけでございますから、あんなに高い金利が続けられる環境ではないというふうに思っておるわけでございます。そういう点で、内外金利差につきましては、われわれの方が下げるというようなことをしなければ、これ以上拡大するということにはならないということが一応考えられるわけでございます。  そういう中で、日本のファンダメンタルズ自身はそれほど悪いわけではございませんから、そういうことがマーケットに反映してまいりまして、日本の政府当局も円安放任あるいは円安誘導ということはしてないということが市場に徹底してまいりますれば、円安のいまのような動きについては歯どめがかかることを願望を込めまして期待しておるわけでございます。
  35. 柴田弘

    ○柴田委員 円安傾向ですが、総裁も御承知のように金ブーム、ゼロクーポン債ブームが起こって、これがグリーンカード制の導入に関連をしているという意見もあるわけであります。つまり、こういったことが資本の海外流出を招いて円安に拍車をかけている。  これはマスコミの報道でございますから、その真意を一遍ここでお尋ねしたいと思いますが、総裁からそのような発言がされたのではないかというふうに私思います。果たしてグリーンカード制の導入ということによって金ブームあるいはゼロクーポン債ブームが起こって、資本の流出が起こっているのかどうか。起こっていったとすれば、それはどの程度起こっているのか。あるいは円安の幅は、二百四十円台ということでありますが、どの程度円安に影響しているのか、円安の幅ですね。あるいはまた、そういう発言はしたことがないとおっしゃればそれまででございますが、その辺どうでしょうか。
  36. 前川春雄

    前川参考人 金に対する投資が非常に多い、金の輸入がしたがって多いということは事実でございます。これがグリーンカードに関係があるかどうかということについては必ずしもよくわからない。金は値上がりする、インフレ心理というものが世界じゅうにいまあるものでございまするから、そういう意味で、金は金利を生みませんけれども値上がりする値上がり益をねらうということが一つあるというふうに思います。いま金は一オンスきょうあたりは三百二十ドルぐらいでございましょうか、一昨年の一月には八百五十ドルまでいったということもございまするので、あるいは、金は金利は生まないけれども値上がりする可能性があるということから、インフレになるなら、そういう金を買っておこうかというような感じがないとは言えないというふうに思います。  また、ゼロクーポン債につきましては、これは何分金利が高い。物によって違いまするけれども、大体一四、五%でございましょう。国内の短期金利というのはいま非常に安い。六、七%ということでございまするから、内外金利差が八%から九%あるということが主因であろうというふうに思います。ああいうふうなドル資産を買いますれば為替のリスクがあるわけでございまして、何年かたってその金が返ってくるときに為替が円高になっておれば、それだけ損するわけでございますから、為替のリスクを伴うわけでございまするけれども、何さま内外金利差というものが非常に大きいために、ゼロクーポン債というものに対して異常な人気が出たというふうに思います。  果して内外金利差だけであるかどうかという点につきましては、いろいろいまお示しになりましたようなグリーンカードというようなことが言われておりまするけれども、そうであるかどうかということがなかなか断定できないということではないかというふうに思います。金利差だけであるかどうかということについても、私どもも必ずしも断定はいたしませんけれども、ゼロクーポン債がグリーンカードに関係があるかどうかということにつきましても、これは必ずしも断定はできないというふうに考えております。
  37. 柴田弘

    ○柴田委員 それで、そういったブームが円安に影響しているのかということですが、どうでしょう。
  38. 前川春雄

    前川参考人 日本の国債収支の経常収支は表面ではまだ黒字でございまするので、こういうふうに国際収支が大きく赤になりまするのは資本勘定の流出でございます。海外からの資本の流入は依然として続いておりまするけれども国内の資本が流出する分が非常に大きいために資本勘定が大きな赤になる。したがって、経常勘定が黒になってなおかつ大きな赤が出ているというのが現状でございます。  したがいまして、そういう点から申しますると、日本の資本の流出というのは最近の円安の大きな要因であり、それが主として内外金利差によってもたらされておるということは言えると思います。
  39. 柴田弘

    ○柴田委員 では、次に村本参考人にお尋ねをいたします。  これはやはりグリーンカードの問題で、これもマスコミ報道でございまするが、先ほど私が総裁にお尋ねいたしましたゼロクーポン債の売れ行きがよく、それからグリーンカード対象外のものにお金が流れている、海外に出るという危惧が幾つかあれしている、こういったようなことでグリーンカード制に不満を表明され、その見直しを求められている、このように報道をされているわけであります。  それから、これは確かな情報でございますけれども、全銀協の副会長の星野さんが自民党のグリーンカード対策議員連盟で陳述されたそうですが、貯蓄率の低下とかあるいは海外への資本流出など強烈な資金逃避エネルギーが働いている、こういうふうに陳述をされておるわけでございます。  私ども、大蔵省からいろいろ説明を聞いておるわけでありますが、昨年の雇用所得の伸びは六%で、それから個人金融資産伸びというのは三十五兆円、これは一一・四%、ことしに入っても一月が一一・七、二月が一一・八ですか、貯蓄は向上しているわけであります。こういった現状であり、あるいはまたゼロクーポン債だ、金ブームだといっても、それは一年間の伸び率の一・五%程度である、決して金融秩序に混乱が起こったり、あるいは国民経済に混乱を起こしているような現状ではない、こんなような大蔵省の説明であるわけでありますが、そこら辺のところをどのようにお考えになっているかということが一つです。  それから、銀行としてはグリーンカードの導入は郵貯との関係でオーケーだ、ところが分離課税というのは存続をしてもらいたい、総合課税は反対だ、こういうことのようでございますが、この辺の真意を一遍お聞かせいただきたい。  この分離課税の存続の問題につきましては、たしか全銀協として、昭和五十五年の税制改正の要望の中で、総合課税にするということについては、利子配当所得の公平な課税の実現を図るということから異論はない、こういうふうにおっしゃっておったわけですね。だから、いま分離課税の存続を求められるということは、そういった要望に対して矛盾するものではないかというふうに私は思うわけでありますが、そういった点を含めてこのグリーンカード制、いま廃止とか延期とかいろいろその見直し論が出ているわけでございますが、その辺についてひとつ御説明を賜りたいと思います。  これはあわせて植谷参考人にも、ひとつその辺の御見解をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  40. 村本周三

    村本参考人 お答え申し上げます。  利子の総合課税ということは、明治以来の長い日本の資本主義の歴史の中で、ほんのわずかな時期を除いては実現されたことがないわけでございます。私どもは、これは明治からの日本の資本蓄積の過程における貯蓄奨励という一つの考え方と、それから実際の徴税コストと徴税収入の対比ということにおいて、源泉課税の方が容易であったということの二つの所産であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。  にもかかわりませず、昭和五十年代の初めにおきまして、ただいま先生御指摘のとおり、私どもが利子配当の総合課税に異論はないと申し上げましたのは、そのときに不公平税制の是正ということが、一般消費税の導入に絡みまして、そのためには行政改革と不公平税制の是正が絶対必要であるという議論が政府の税調においても行われまして、その一つとして利子配当の総合課税ということが出てきたわけであります。したがいまして、私どもは、租税の公平という大義の前には利子配当の総合課税に全く異論はないと申し上げたわけであります。  それでは、そのように強行されて、ただそれだけでいいかということについて、われわれはその総合課税の実施について幾多のお願いをいたしましたし、それがグリーンカードについての法律、所得税法の改正の場合にも先生方にお認めいただいて附帯決議ともなっておるわけでございますが、私どもはその中で、庶民が不安を感じるようなやり方ではなさらないでいただきたい、また所得の捕捉率が違って利子配当だけが目のかたきになるようなことは困ります、そしてまた金融資産の中で新たなる不公平が行われて、そのため現在積み上がっている金融資産が非常に動くということは困ります、またこれは手前勝手で申しわけないのでありますが、金融機関に大変な事務負担がかかることはどうかなさらないようにしていただきたい、こういうお願いをいたしたわけでございます。  したがいまして、銀行協会の現在の態度は、そのときに所得税法の改正が行われグリーンカードが実施をされるということで進んできておりますが、昨年の銀行法の改正のときもここで申し上げましたとおり、われわれは法治国の一員としてそういう事態を現実に受け入れており、そういった準備を進めておるわけでございます。ただ、グリーンカードによるいわゆる枠の取り合いについては、六月末までみんなそういうことは自粛しよう、こういうことで過ごしてきておるわけでございます。  そこへ昨年の暮れごろから、ただいま先生御指摘になりました金への投資の問題、それからゼロクーポン債の売れ行きの問題、こういうことが生じてきたわけでございます。おっしゃるとおり、ゼロクーポン債はそれまでの総計で十一億ドルだから大したことはないではないかというお考えもできるかもしれません。しかし二月だけでかなりの年率に上ったということは、私どもはやはり庶民の不安として、これをこのまま無視して予定どおりだからと突っ走っていいのだろうかということに大変疑問を感ずるわけでございます。その点が、実際問題としてマル優の枠一人九百万、家族四人といたしまして、それは贈与税の問題もありますから四人が四人九百万ということではないのでしょうが、そういうのが普通には庶民の枠としては十分だと思います。しかるに、たとえばテレビでそういう金の購入のところを見てみますと、皆さんがグリーンカード対策であるとおっしゃっているということは、そういう意味でやはり何か一般的な不安を国民に与えているのではなかろうか、それは一つはやはりPRの不足ではなかろうか、そういうままで推し進めていくことには疑問を感ずる、こういうふうに申し上げたわけであります。星野副会長が議員連盟に行って申し上げましたことは、いま私が申し上げたような銀行協会の態度と銀行協会の心配について申し上げ、その際、経団連から昨年出ております税制改正についての意見書のことを申し上げた、そういうことでございます。
  41. 植谷久三

    植谷参考人 まず、グリーンカードに対する先生の御質問にお答えしたいと思うのです。  いま全銀協の会長がお答えになりました点、私もほぼ同感でございます。したがって、その点は余り重複しないように申し上げたいと思うのです。ただしかし、とにかくグリーンカード問題ができましてから、このゼロクーポンにしろあるいは金にしろ、私はこれが全部原因だとは思いませんけれども、こういったようなことも急速に起きてきたということ、それからわれわれとして今後もそういう問題が起こり得る懸念をしておりますのは、たとえば金融機関、証券も含めまして相互に、このグリーンカードを施行することによって急速に金融機関から金融機関へ移動が行われる。これは今後の問題だと思うが、それは非常に予想される問題なんですが、それからいままで、たとえば銀行さんで言うなら普通預金に安定していたものがあわててどこかへ行くといったような、商品間の移動がかなり行われるであろうといったようなこと、こういうことが、とにかく経済の原則に従ってそれはもう当然だと言えばしまいですけれども、これが急激かつ大規模に行われるということは、国民経済を一時的にもかなり混乱に陥れることだろうと思いますので、これにはどこか欠陥といいましょうか、少し足りないところがあるのではなかろうか。  したがって、このグリーンカードが当初ねらわれた本当の所期の目的は大変尊重してしかるべきと思うんですけれども、その方法において、なおもう少しきめ細かく補修するといおうか、そういうことの起きないようなことを十分配慮する必要があるなというふうに私は考えております。  それから、もう一つゼロクーポンのことをちょっと、これは証券界がどうも悪者になっておりますので、ここで一言申し上げたいと思います。  このゼロクーポン、これも別に悪いことをしたわけでなく、経済の必然性からきた一つの動きだと思うのです。ある意味においては当然だと思うんです。しかし、これも先ほどの話で急速かつ規模が大きいということになりますと、多少自粛しろと言われれば、それも協力にやぶさかでないという考え方で今日自粛をしておるわけですけれども、またもう一方の観点で、これはひとつ絶えず考えていただきたいと思うのは、これが本当に今後も大規模に動いていくかどうかについては、私かなり疑問に思っております。  こういう自由商品というものは、ある種の人気である限度までいきますけれども、それはちょうど株式等の動きと同じように、それはある限度ないし時期が来ますと平静化していって戻っていくものですから、そういったような価格の動く、ことに先ほど問題になった自由化の時期に、わずかとは言いませんけれども、二月あたりに多少こうなってきたというので、あわてていろいろな国際的に関係のある事柄に反応を示し過ぎることは、結局日本に対する外国の信頼を失うこと、一種の金融摩擦的なもの、現にそういう非難も出ておりますけれども、むしろ円安等にそういう行動があるいは将来大きな意味で響きはしないかなということを憂慮しているところです。
  42. 柴田弘

    ○柴田委員 どうもありがとうございました。時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。
  43. 森喜朗

    森委員長 和田耕作君。
  44. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 きょうは、長時間にわたりましていろいろ教えていただきましてありがとうございます。  まず第一に、先進国のどこにもない膨大な国債がいま発行されておるわけでございます。先ほどもお話がありました、赤字特例公債発行されてからまだ六年ぐらいしかならぬのに、見る見るうちに膨大なものになってしまった。今年度、五十六年度には八十兆円をずっと超しておる。五十七年度には九十兆を超していく。五十八年度には百兆を超していく。つまり、大変大きな国債に対する心配も次第にふえてきておるのです。  そこで御質問なんですけれども、先ほど、国債の消化はわりあい順調に進んでおるというお話がございました。そしてまた、インフレというのはどなたも心配しておるのですけれどもインフレという状況がまだあらわれてはいない。これはどういう理由によるものでしょう。日銀総裁から、一言でいいのですが、ひとつお教えいただきたい。
  45. 前川春雄

    前川参考人 財政の赤字が非常に大きいことは、インフレの面からいきますと非常に危険性があるわけでございまするが、もちろん財政の赤字の大きさを判断いたしまするのに、公債依存度であるとかGNPに対する比率であるとかあるいは全体の貯蓄との関係とか、いろいろ判断の基準があるわけでございますが、GNPに対する比率は非常に大きい。アメリカよりむしろ日本の方が大きいわけでございますが、貯蓄率との関係から申しますると、アメリカは貯蓄率が非常に低いために、そういう点で日本の方がいい環境にある。いいとも言えませんけれどもアメリカに比べれば、その点は違うわけでございます。  ただ、いかに貯蓄率が高いといいましても、もし、いまのように景気停滞しておりますれば別でございまするけれども、一遍民間資金需要が出てきた場合には、よく世間で言われるクラウディングアウトというような問題になりがちでございます。特に財政資金というのは金利の調節機能がなかなか働かない。民間資金であれば、金利が高くなればそれを借りるということが抑制されるわけでございまするけれども財政資金の方は、一遍予算に組まれますると金利が高くても借りざるを得ないというようなことがございますので、金利に対しても非常に硬直性がある、そういう点から非常に危険があるということであろうと思います。  したがいまして、いま幸いにして物価が上がってないから将来も大丈夫だということは決して言えない。財政につきましては、十分慎重に考えていかなければいけないものだというふうに考えております。
  46. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 同じ質問につきまして、村本さんはどういうふうな御感想を持っていらっしゃいますか。
  47. 村本周三

    村本参考人 お答え申し上げます。  私、別に前川総裁と異なった意見を持っているわけではございませんが、先ほどの公述の中でも申し上げましたように、私ども国債の残高ということについて非常な危機感を持っております。現在、日本の経済の規模の中で余り無理なく国債が消化できる程度が幾らぐらいかというのはいろいろ考え方があるかと思いますが、いま先生がおっしゃいましたように百兆円を超える残高になり、その利払いだけで日本の中で国債発行できる金額を超えるということになりますと、これはその辺から非常にインフレの危険性が加速してまいる、かように考えて心配をしております。
  48. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 植谷先生、同じ質問に対しましてちょっと……。
  49. 植谷久三

    植谷参考人 私も前のお二人と大して意見の違いはございません。ことに村本さんがおっしゃった消化の方はともかくとして、残高に対しては将来に問題を大きく残しておりますので、これは財政のやりくりも大変でしょうし、われわれ税で負担するか何にするか、とにかくそういった問題、将来出てくる問題ですから、これはやはり余り大きくはない方がいいと思います。  今日の消化状況をちょっと申し上げますと、今日時点では比較的順調に消化いたしております。ことに証券の方もだんだん力もついてきておることと、国民一般に国債というものに対する認識がよく行き渡ってきたこと、それから一番重要なことは条件の設定のことでございますけれども、弾力さはまだ十分ではございませんが、それでもかなりかつてから見ると弾力的に対応していただけるようになった、こういうことが私どもの消化を非常に高めておりまして、今日では国債発行の大体四割ぐらいを証券界だけで消化をしておる状況でございます。
  50. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 岩波先生に同じ質問です。
  51. 岩波一寛

    岩波参考人 私にお尋ねの、現在大量な国債発行され消化されている、にもかかわらず消費物価指数はそれほど上がっていない、これはどういうふうに理解をすべきかという問題に対しては、私も大体いままでのお三方の意見と同じであります。  しかしながら、若干違う点は、先ほども申し上げましたように、私どものような経済の理論を踏まえて考える者にとっては、不況期に過剰生産力がかなりあるという状況のもとでは、むしろ物価というのは下がるのが戦前の状況でありますし、それが経済法則ではないかと思うのです。ところが、戦後需要管理政策がとられている中で、不況局面に入って物価上昇のテンポが落ちることはあっても上昇が続くという変化は、やはり需要管理政策とのかかわり合いで、ある意味でのインフレ体質がそこに働いておるというふうに見ておかないと——これは物価が高騰する局面の理解のためにも大事なことではないか。  そういうふうに考えますと、GNPに対してもそうですが、国債金融市場金融資産として累積し、しかも次第に長期国債が年次を追うごとに増加してきておりますので、そういう長期債の構成から見ますと、時を追うに従って公債の構成の短期化が進行する。さらに、今後中期利付公債あるいは五年割引債というようなものが償還されていきますと、ますます公債のストックの構成は短期化されていく、そういう状況景気局面との関連資金需要が出てくるということになりますと、先ほど御指摘のように、今度はかなりのテンポでインフレが進行するということになる可能性は十分あるというふうに考えなければならないだろうと思っております。
  52. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いろいろ心配される面があるわけですけれども、いままでは何とか順調に膨大な国債にもかかわらず消化され、そしてインフレも起こさないでやってきた。ある学者は、余り国債をたくさん出すからといって心配せぬでもいいじゃないかというようなことをおっしゃる人もおるのですけれども、結局のところ、日本の経済の基礎的な条件がしっかりしておるということが、いままで百兆近い国債にもかかわらずこれを順調に消化してきたという面もあるんじゃないかと思うのですね。  たしか去年の初めでしたか、国債の消化について心配されたようなことがありました。総裁がおっしゃったときに、民間資金需要が大きくなれば、その形で国債の消化が困難になる。まだこの場合は堅実な面があるんですね、片一方需要がある、景気がいいわけですから。しかし、そういう状態なんかを考えてみても、日本の経済の基礎的な諸条件がしっかりしているということがいままでの日本の国債を順調に消化してきた一番大きな理由じゃないかと思うのですね。先ほど総裁も、基礎的な諸条件に若干の変化が出てきたというお話がありましたけれども、いまの円安の問題でも、単にアメリカ金利高ということではなくて、やはり日本の経済の先行き、特に貿易問題についての不安感というものがだんだんと織り込まれてきておるのじゃないかという感じがしてならないんです。  日本経済の力をもってすれば、円は二百二十円台あるいはそれ以内だというふうな見方をたくさんの人がしておったにもかかわらず、ごく最近四十円をずっと超していくということは、やはり基礎的な諸条件についての不安感、特に輸出問題の不安感というものが出てきているんじゃないか。しかもこの不安感というものは、先ほど総裁もおっしゃったように、アメリカ景気も必ずしもよくはなっていない、ヨーロッパ諸国は無論そうだ、共産国もそうだし、あるいはアラブ諸国だって、産油国だって油の値下がりによってだんだんとおかしくなってくる、そういうことになると、一番大きな影響を受けるのは日本であるわけであって、そういうふうな要素が最近の円安背景には根強く影響しているんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょう。
  53. 前川春雄

    前川参考人 確かに昨年の十一月ぐらいから輸出伸びが、前年に比べますとふえてはおりまするけれども一けた台になってきたわけであります。これは、海外景気が悪いということも一つございまするけれども貿易摩擦で日本側の輸出の自粛ということもある程度響いておるというふうに思います。  そういうことから、そういうふうな輸出伸び悩む状態というものはまだ依然として続いておるわけでございまして、それが、最近の日本の国際収支が発表されますると、表面の数字はともかくとして、季節調整をしてみると余りよくない。したがって、いままで基礎的な諸条件の中の一つの有力な材料として考えられておりました国際収支について、経常勘定が余りいままでみたいな黒が出ないのじゃないか。そういうときに資本勘定は、内外金利差からいって金がどんどん出れば円安はどうしても直らないじゃないかというファンダメンタルズいわゆる基礎条件に対する若干の懸念材料が出ていることは事実でございます。これは海外景気が非常に悪い、失業が非常に多いということのために、必ずしも円安になっても前のように輸出がふえるというような環境でない。そういうことから申しまして、いままでと違いまして、日本の経済を取り巻いておりまする環境には、これから少しずつ変化が出てくるということは十分考えてまいらなければいけないことであろうというふうに思っております。
  54. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 次の質問ですけれども政府財政再建、五十九年度には赤字特例をゼロにするという基本方針で、渡辺大蔵大臣も大いにがんばっているようです。総裁もその財政再建方針の堅持を望みたいというお話もありましたし、そして他の参考人の方々も、大変危惧を持ちながらも、それは発表されておりませんが、とにかくこれはやってもらいたいという趣旨の御意見だと思うのですが、果たしてこれはできるでしょうか。  たとえば五十六年度の歳入欠陥、それ以上に五十七年度の欠陥が心配されているという問題がある。現に、この特例だってその欠陥の補充という意味を持っているということがあるし、また景気が何ともならぬので政府は公共事業の八〇%の前倒しをやろうということで、これはまだそういうふうな議論は公式には出てないけれども、当然相当額の建設公債という問題が出てくる。五十九年度末には実際上の赤字国債をゼロにするという条件は、いろいろな言葉上のつじつま合わせば別にして、内容的に見ては非常にむずかしいというふうな感じがするのです。これは感じとしてで結構です。非常に困難に思うということであればそういうお答えで結構ですけれども、ひとつ御感想を聞かせていただきたい。
  55. 前川春雄

    前川参考人 大変むずかしい御質問でございますが、総理も政治生命をかけておられるということでございますから、私どもは全くそれにおすがりするよりしようがない。  財政政策につきましては、先ほど私も申し上げましたけれども財政景気調節機能というものを働かせることができないほどになりましたので、財政再建ということがいまこれだけ叫ばれておるわけでございます。そういう点から申しまして、財政再建の必要がなければ、いろいろ財政景気調節機能というのは発揮できたと思いますけれども、いまは何分にもそういうことでなくて、財政再建をしないと、むしろ財政ばかりでなしにほかの経済ももたないじゃないかということ、金融政策にも非常に大きな影響があるということでございますので、私どもは、政府がここまで決心して財政再建ということを旗頭に掲げて言っておられるわけでございますから、ぜひその方向で御尽力いただきたい。そうは言うけれどもむずかしいだろうというお話でございましたが、むずかしいことをやるのが政治でございます。
  56. 村本周三

    村本参考人 私どもも、いま総裁のお言葉のとおり、大変心配しながら、ぜひ御成功をとお祈りしている次第でございます。
  57. 植谷久三

    植谷参考人 私も全く同感でございます。大変むずかしいことだろうと思いますけれども、しかし、これだけりっぱな国民がおるのだから、その気で政府の方々も政治家の方々も先頭になっていただけば、国民はついていくし、われわれはそれに耐えていくだけの覚悟を持っているわけでございます。どうぞひとつお願いいたしたいと思います。
  58. 岩波一寛

    岩波参考人 お三方と違って私は若干フリーな立場でありますので、少ししゃべらせていただきたいと思いますが、少なくとも景気政策を高度成長段階での政策に逆戻りさせるというふうな考え方は、とうてい許されるべき状況ではないわけです。  したがって、いままでの参考人のお三方も、一方では行政改革を進めながら、したがって財政を再建させながら、その中で財政政策あるいは金融政策をきめ細かく進めていく、そういう中で何らかの展望を見出すべきであろうというふうな考え方に立っておられるようであります。確かに、従来の政策の枠の中で考える場合にはそういう考え方になるだろうと思います。  しかしながら、それにもかかわらず、財政政策にしても金融政策にしても、あるいはそれをミックスしたポリシーミックス政策にしても、非常に限られた選択肢しか残されていないということもまた明白でありますし、その残された選択肢を追求した場合にも、好転することを願う以外にないというふうな率直な判断をお示しにならざるを得ない状況なので、私はむしろ、少なくとも五十六年度の実績を見ましても五十七年度の推計をしてみても、現在進められている財政再建という基本路線の中で選択できる財政政策金融政策をもってしては、恐らく五十九年度に赤字公債から完全に脱皮するということは、その限り困難だろうと思います。したがって、それに対してどのような新しい施策が講じられるかということは、また別の問題として出てこようかと思います。
  59. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、このごろ政府、これは鈴木総理も渡辺大蔵大臣もそうですが、最高の可能性みたいなところを目標に置くという少し楽観的な面が目立っておると思うのです。これは経済企画庁の河本さんでもそうですね。GNPの問題についても、去年は違っておったし、今度も大きく違うようだし、来年でもそうですね。つまり、これを私は非常に心配をしておるのです。  というのは、五十九年まで鈴木総理は総理大臣をしてないわけですね。そして無論大蔵大臣も大蔵大臣をしてないということもあって、いまの問題の非常に困難性、非常に矛盾に満ちておる、これをやってはこっちがぐあいが悪い、こっちをやってはこっちがぐあいが悪いというところで、余り楽観論を吐き過ぎるという感じがしてならないのです。つまり、そういう楽観論ばかりしておりますと、国民の協力を得たいとこう言っていますけれども、協力する人はおりはしませんよ。この問題は特に政府に猛省を促したいと私は思っておるのですけれどもかなり真剣な、確かな見通しのもとに行動しないと、今年度の五・二のGNPなんというのはもってのほかじゃないですか。いまのお話にもありましたが、三%がむずかしいという話もあった。これによっていろいろな税収の見通しも立てるわけですが、そういうふうな行動が非常に目立っておると思うのです。  これは政府に対する批判でありますから、参考人の皆さん方にはお答えは望みませんけれども、そういうことをぜひとも今後とも勇敢に述べていただかないと、国民の協力は得られませんよ、五十九年までの財政再建とかということは。もうきのうあたり、行革と財政再建は別のものだなんということを言い出しておりますから、ひとつこういう問題をぜひともお願いをいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  60. 森喜朗

    森委員長 正森成二君。
  61. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に、岩波参考人に伺いたいと思います。  先ほど、先生の最初の十分間のお話の中で、いろいろおっしゃいましたが、五十六年の税収実績が恐らく一兆円以上欠陥が出るだろう、そうすると、五十七年は五十六年を基礎にして税収が出てくるわけですから、五十七年は一兆二千億円に達するだろう、しかもそれはGNP伸び民間の調査ということに依拠すると、GNP伸びに税収の弾性値を掛けますから、先生の先ほどお挙げになった数字では二兆四千億円ぐらいになるのではないか。その後で、これは単なる予測の誤りではないという、与党にとっては非常にぎょっとするようなことを言われて、財政運営を根本的に見直すべきである、適合性を失いつつある財政運営を根本的に見直すべきであるということを言われましたが、実は私も先生の予測あるいはお考えに非常に近い考えを持っておりますので、この点についてなお詳しく、御意見がございましたらおっしゃっていただきたいと思います。
  62. 岩波一寛

    岩波参考人 それでは、いまの御質問に対して若干補足させていただきたいと思います。  私の予測の根拠については特に申し上げる必要はないと思います。問題は、このような歳入欠陥が五十五年度、五十六年度にわたって出てきた、これは確かに、一面では予算編成に当たっての政府経済見通し、これが楽観的に過ぎたという面を否定するわけにはまいらないと思います。にもかかわらず、それなりの財政金融面を通じて需要管理政策というものがとられているにもかかわらず、結果として大きなそごが発生してきた。これは突き詰めていきますと、やはり日本の現在の経済体質というか、経済の当面している状況から見まして、かつてのようにスペンディングポリシーをある程度発動すれば、それなりに経済成長物価上昇を伴いながらも出てくる、あるいは、金利政策あるいは金融政策を発動すれば、それに応じて民間設備投資が誘発されてくる、そういう状況にないわけなんでありまして、そこのところが、施策にかかわらず経済成長の落ち込み、そしてそれが税収入の欠陥ということになってきておるだろうというふうに考えるわけであります。これは、最近では多くのエコノミストがかなり実証的な分析を踏まえて明らかにしておるところでありまして、私もそう考えるのが妥当であろうというふうに思っております。  要するに、現局面において、これは諸外国の経済体質と比較してみてもわかることでありますけれども、日本の場合に、総需要に占める最終消費の比重は先進資本主義国の中では非常に小さいわけであります。したがって、経済成長というのは、言ってみれば民間設備投資輸出によって誘導されてきた。そういう意味では西ドイツと似ておるわけであります。  しかし今度は、西ドイツと違う点では、西ドイツの場合には輸出依存度がかなり高いと同時に輸入依存度も高い。その点、日本の輸入依存度が西ドイツよりも若干小さい。そういうことを考えてみますと、基本的にはやはり消費需要を引き上げて、そうして景気回復を図るという政策の転換をしない限り、もはや従来のような輸出依存型、これは貿易摩擦の深刻化される状況の中でネックに突き当たり、設備投資も最終的な消費需要や輸出が今後伸びていくことが困難であるという状況のもとでは基本的に誘発される可能性はないわけでありまして、この点に対する認識が政策上欠けておるということ、それから輸入については、依存度は確かに西ドイツに比べれば低いわけでありますけれども、これにはそれなりの日本の経済の二重構造体質というものもあるわけでありまして、その点を考えますと、単純にこれを西ドイツ型に移行するということはやはり大きな問題であると言わざるを得ない。  そうしますと、選択肢はもう限られてくるわけでありまして、この点の転換がない限り、このような歳入欠陥のそごというのは、繰り返し繰り返し出てこざるを得ない。そうして、日本経済を浮揚させないだけではなくて、財政の危機を深化させてしまうという悪循環をたどることになるだろう。大体、基本的にはそんなふうに考えておるわけであります。
  63. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんので、もっと伺いたいと思いますが、終わらしていただきますが、先ほど岩波参考人が、一兆円以上の欠陥で決算調整資金あるいは国債整理基金に手をつけることになるだろうが、これは本来特例公債発行をすべきものである、こう言われましたが、五十六年度の補正予算で三千七百五十億円の特例公債発行しましたが、本来は、厳しく税収欠陥を見ればもっと発行しなければならない状況だったのですね。しかし、これを発行してしまいますと五十七年度予算が編成できない。そこでそういう政治上の必要があって、大蔵省の知恵者などがいろいろ制度があるではないかということで、発行せずに済ました。しかし、これは必ず本年の六、七月ごろには税収欠陥は明らかになりますし、その手当てはしなければならない。それは五十八年度の予算編成にもツケとしては回ってくるということにならざるを得ないわけで、きょうは参考人の皆さんで、追及すべき政府がおりませんので、私はこの問題点だけを指摘しておきたいと思います。  総裁に伺いたいと思います。  時間がございませんので、非常に簡単な質問で申しわけございませんが、伝えられるところによりますと、この四月から六月ごろは財政資金の散布も非常に多うございますので、市中に余剰資金が、報道によりますと大体五、六兆ぐらい出るのじゃなかろうか。日銀がこれを非常に御心配になりまして、新聞紙上によりますと、資金吸収するために国債を売却しなければならないのじゃないか。いままで買いオペというのはございましたけれども、売りオペというのは四十六年にほんのちょっとあっただけでほかはございませんが、そういうことをお考えになった。大蔵省がさまざまの理由でこれに異論を唱えたらしくて、どうやら政府短期証券のTBを二兆円とか三兆五千億円とか売却することによって余剰資金を回収しようというようなことが報ぜられておりますが、この点の実際について、またこれが金利自由化等に与える影響について、総裁の御意見を承われればありがたいと思います。
  64. 前川春雄

    前川参考人 この年度が変わりますると、四月から五月にかけまして、かなり政府資金の散布がございます。それは例年あるわけでございます。ことしがどのぐらいかということにつきましては、引き揚げの方も、あるいは国債をどのぐらい出すかということによっても変わってまいりまするから、幾らぐらいかということは、的確にいまは私の立場からは予想ができませんが、昨年の四月、五月に政府資金が大体五兆円ぐらい出ましたので、私どもも、ことしもそのくらいの見当を考えておかなくてはいけないというふうに思っております。  そういうふうな政府資金の散布がございましたときに、それが金融面に及ぼす影響を除去するために、私どもは、金融調節としてそれを吸い上げることは、これはもう金融の常道でございまして、特別のことではございません。昨年も、そういう巨額の財政資金の散布額をいろいろな手段で吸収したわけでございます。ことしは昨年よりちょっと基礎的な環境が変わっておりまするけれども、この資金は大部分を吸収しなければいけないというふうに思っております。  そのときに何でやるかということでございますが、いろいろな手段がございますが、もちろんいま御指摘の長期の国債を売るということも一つの方法でございます。ただ、四月から五月、六月前半にかけまして緩みまするけれども、六月の後半から七月、八月とむしろ今度は金が詰まってくるときでございますので、一時的な資金調節をして、その資金を不足期につないでいくというわけでございまするから、長期の国債を売りオペするということは余り適当でない、むしろ短期のもので調節することが適当だというふうに判断しております。  昨年も政府短期証券と日本銀行の売り出し手形、そういうもので吸収をいたしましたが、ことしも主としてこの二つの手段によりまして、その余剰資金吸収してまいりたいというふうに考えております。長期の国債まではやる必要がないし、またその六、七月の資金不足期との関係から申しますると、むしろ短期のもので調節することの方が適当であるというふうに判断しております。
  65. 正森成二

    ○正森委員 従来、短期の政府証券の売却というのが行われたわけですが、それは量もある程度限定されておりますし、回収の期限もほぼ同一のものでしたから、それが市場に大量に残存して、そして売買についての市場を形成するというところまでには至らなかったのですけれども、本年は、それが多少さま変わりして、政府短期証券についての市場が成立するのじゃないか。そうすると、そこではどうしても自由な金利というのが発生してまいりますし、それは、ひいては日銀が大蔵省から政府短期証券を引き受けるその金利に影響するのじゃないか。それが結局、いろいろな意味で新規国債発行にもはね返っていくのじゃないかという意見がございますが、それについてはどのようにお考えになっておられますか。
  66. 前川春雄

    前川参考人 ただいま申し上げましたように、四、五、六月の上旬までは非常に緩和期でございますが、その以降は不足期に入りますものでございまするから、今回売却いたします政府短期証券も、そのころには残高が恐らくゼロになっておるというふうに思います。その間、二カ月あるいは二カ月ちょっとの間に政府短期証券が市中に保有されまするので、その意味で若干の市場的な要素というのは出てくると思いまするけれども、それほど長期に滞留するものではないというふうに思います。また、私ども資金調節は、そのときの市場レートでいたしまするものですから、政府短期証券がそういう市場レートによって売買されるということが起こります。ただ、いま申し上げましたように、それはあくまで不足期までの一時的な現象であるというふうに思っております。
  67. 正森成二

    ○正森委員 時間がなくなりましたので、村本参考人に伺おうと思ったのをちょっと省略いたしまして、植谷参考人に伺いたいと思います。  いろいろ新聞その他を拝見しておりますと、国債の保有額は、金融機関は逆に減少して、一般投資家が三八・三%ぐらいで首位に立っておる。しかも前年度比七二%余りふえておる。しかも、この一般投資家の五割は個人の所有だというふうに言われているんですね。つまり金融についての選好から個人がその方へ出ていく。  ところが一方、株式の方はどうであろうかといいますと、調べてみますと、昭和二十二年は実に六九%という個人の保有割合だったのです。それが昭和三十年は五三%になり、昭和四十年は四三%余りになり、昭和四十五年は三九%余りになり、現在は二九・二%というように個人株主がどんどん離れていって、大部分が法人所有になっておる。これは兜町の秘密というように株式評論家は言われているぐらいなんですね。これは、私たちはコミュニストですから、兜町の栄えることを別に望んでいるわけではございませんけれども、しかし、これは資本主義社会を前提とする限りは非常に憂慮すべき事態ですね。しかも一方、国債へはある程度シフトしているのに、なぜそれだけ株式から逃げるかということを考えますと、非常に言われているところは……(「全部郵貯だ」と呼ぶ者あり)実は郵貯にも行っておりますけれども、郵貯だけではございませんで、郵貯は、去年はふえたけれども、ことしはずっと落ちついてきておりますからね。  その一番大きな原因は、企業を支配している支配的な株主といいますか経営者が配当性向を必ずしも高めない。そして一般株主の利益を考えない。あるいはプレミアム増資をやる場合に、プレミアム増資の還元をやらないというところに大きな原因があるということで、証券取引審議会でも問題になっているようであります。  それで、私は植谷さんに、時間はございませんが、マル優の枠を三百万から五百万にふやすということをお考えになるのも大事ですけれども、当局のお調べによれば、一般世帯の預金あるいは金融資産残高というのは五百万に達するかどうかということですから、九百万枠があれば、それ以上ふやすという必要もそうはないので、そこへお考えをお向けになるよりは、こういう兜町の死活にかかわることについて是正する方にお考えをめぐらされるべきではないかと思うのですが、一言御意見を承って質問を終わります。
  68. 植谷久三

    植谷参考人 時間もございませんようで、私も説明をしたいことはたくさんございますけれども、申し上げる時間がございませんので……。  いろいろな物の本に、個人が株式から離れているということについてはたくさん書いてある。株式の魅力論とか配当性向がどうのこうのと。だから、こういう皆さんが御承知のようなことはもうここで省略させていただいて、私はむしろ一番の原因だと思っていること、私はですよ、個人の見解は多少違うかもわからない、私が一番重要な問題だと思っていることを、意外に世の中の皆さん方は御承知ないのか、知っていても知らない顔をするのかわかりませんけれども、お考えになっていない。  それは何かといいますと、日本の経済が今日まで来たについては、やや特殊な状況下にあったと思います、戦後だけ考えて。その中で、それは間接金融によらざるを得ないから、いろいろな政策でもそうだし、現実の企業家もそうせざるを得ない。そうやってきたわけだ。それがまた成功して、今日の強力な日本経済をつくり上げた。その結果、これは善意、悪意の問題ではなくて、その結果どういうことになったかというと、残念ながら総資本の中で株主資本の占める比率はきわめて小さくなってしまった。私どもの言ういわゆる資本金比率というのは、御承知のように六%を切るぐらいのところに来ている。アメリカでも昔から見れば多少減っておる、欧州でも多少ずつ減っておりますけれども、それでも大体一七、八%から二〇%ぐらい。  そうしますと、今日のように豊かなる経済、ゆとりのある経済になって投資もかなり自由にできる経済になって、国民経済がそれほどの大きさになってきているにもかかわらず、それを構成する企業のバランスシートは、ほかはどんどん大きくなって、これにつれて国民経済も大きくなる、潜在投資力も大きくなっているにもかかわらず、それの分子になる株主資本、株を買うということは分子になる、その数が相対的にぐっと小さくなる。ちょうど日本の土地で物をつくるのとオーストラリアでつくるのと、ほかが同一条件だったら、オーストラリアの方はできなくて、日本の高い土地で建てたらばっと五倍も六倍もいいものができるというわけじゃない。にもかかわらず、土地の値段は世界一高い。株式の需給論も、目先の需給論もありますけれども、そういった構造的な需給論、これをしっかり見詰めていただきたい。僕は一番の原因はそこにあると思う。  したがって、たとえばよく買い占めなどの問題にしても証券会社は行儀が悪いと言われるのですけれども、(正森委員「言ってないですよ」と呼ぶ)それなら結構ですけれども、それは浮動株が少ないからどうしても起きてくる。したがって、いたずらな恣意買い占めもしやすいからお客様がなさるわけですね。そういうふうな現象が出てくる。基本的に問題を考えていくと、現象論ではいろいろなことをおっしゃるのですが、一番のもとはそこにあるということを申し上げて、御理解を深めていただいたらまことにありがたいと思います。
  69. 正森成二

    ○正森委員 非常に御熱演をいただきましたけれども、時間が不十分なようで申しわけございませんでした。  これで終わります。
  70. 森喜朗

  71. 小杉隆

    小杉委員 大分時間もたちましたし、お疲れのことと思います。また、私の持ち時間がきわめて限られておりますから、私は、いままでの質疑の中で出てきた疑問の中で二、三端的に質問をしたいと思います。  まず日銀総裁に、いまのアメリカ高金利政策に対する対応ということについてお伺いしたいと思うのです。  いまの円安、ドル高というのは、先ほど来言われているアメリカと日本のいわゆるファンダメンタルズから見て非常に不当なものである。どこの国と比べても日本の経済成長は比較的順調でありますし、物価も安定しているし失業も少ない。こういうことに対しまして、アメリカとかヨーロッパは全く逆だ。こういう非常に不自然なドル高、円安ということがいま日本の経済にもあるいは世界の経済にも非常に影響を与えているということで、私は、アメリカ高金利政策に対して、日本の政府あるいは日銀がもっと積極的な対応をすべきではないかと考えているわけですが、先ほど総裁は非常に楽観論を述べられまして、アメリカ高金利政策がこれ以上続くはずがないというふうに言われました。  私、先週アメリカへ行って、国会議員あるいは政府の要人あるいはまた銀行関係者の話を聞いて帰ってきましたが、総合して、総裁が言われるほどそう簡単にいまの金利政策を変更する状態にないということを強く印象づけられたわけです。総裁が言われる楽観論の根拠をひとつ教えていただきたいと思うのです。  それから、銀行協会と証券業協会の皆さんにお伺いをしたいのですが、これも本当に端的な質問だけにとどめておきます。  先ほど、六十年以降国債残高あるいはその償還のことを考えると、もう証券業界だけじゃなくて銀行業界も相携えて当たらなければいかぬというお話が出ました。そういうことを考えるならば、恐らく郵便局も将来必ず自分たち国債を販売したいということは言ってくるだろうと思いますし、そういう参入を希望した場合に、銀行協会並びに証券業協会はどういうお考えでおられるか一それから、今回の国債の販売について銀行は当分の間長期国債のみに限定されているわけであります。いま証券業の場合は中期国債、割引国債その他も扱えるわけですが、将来、銀行と証券業との国債販売についての役割り分担はどうあるべきであるかという点について、両者の御意見を伺っておきたいと思います。
  72. 前川春雄

    前川参考人 アメリカ金利の先行きにつきまして、私自身はそんなに楽観をしているわけではございません。先ほど申し上げましたように、インフレ率が下がってきたので、経済的な見方からすれば金利がああいうふうに二けたである必要もないし、二けたであれば実質金利負担が非常に高くなっているわけで、実質負担金利がいま七、八%になっているわけですから、そんな高い金利負担ではなかなかアメリカ企業経営できないということもございまするので、そういう点から申しまして、経済的には下がる環境にあるというふうに申し上げたつもりでございます。  ただ、その際申し上げましたけれどもアメリカ財政赤字がさらに悪化しているということから、そういう財政赤字が続く限り金利の先高観はなかなか消えない。そういう意味で、アメリカの議会筋あるいは財界筋も、アメリカのいまの財政赤字をこのまま放任しておいていいかどうかということに対して非常な反省、批判が出ておるわけでございまして、アメリカの議会の予算審議の内容を私はつまびらかにいたしておりませんけれども、そういう批判あるいは意見が出ておることから申しますると、いまの財政赤字に対しましても、アメリカの議会内で何らかの対策、赤字削減の施策がとられていくことが期待できるのではないかということで、そういう願望も含めて期待しておるというふうに申し上げたわけでございます。  私ども、実際金融政策に携わっておる者から申しますると、事態は常に客観的に見ておるつもりでございまして、決して楽観的な願望に基づいて施策をするつもりもございません。一言申し上げておきたいと思います。
  73. 村本周三

    村本参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、国債の安定的消化に役立ち、また金融資産を多様にしたいという国民のニーズにこたえるという意味では、郵便局国債販売もいいことかもしれません。しかし、私たちはこれに対して別の哲学を持って考えております。つまり、民間ですでにやっていることを官業がやるのがいいかどうかという考え方であります。私どもは、郵貯懇報告はこれに反しておると考えておりますし、私どももそういう意味で反対でございます。  それから、証券と銀行の将来の債券についての役割り分担ということでございますが、これは先ほども申し上げましたように、そういった公共債の販売、公共債の市場が証券と銀行との間のいわば入会地になっていくわけで、そこにお互いが参画して、国債管理政策につきまして、そしてまた公正な価格の市場の取引につきまして、また国民がそういった国債を買う便益を両方で提供する、ただし恐らくその対象とする顧客層はやや異っているであろう、そういう形の協力関係で成り立っていくものと考えております。
  74. 植谷久三

    植谷参考人 簡単にお答え申し上げます。  郵貯の問題につきましては、村本さんと同様に、こういう自由に動くような社会をだんだんとより一層進めなければならぬ時代に官業拡大していくということは、日本の経済をだんだん硬直化せしめることになり、金融政策一つなかなか動かないようなことになってくる危険を感じますので、好ましいと思いません。それになお、国債を便宜的に売ることは窓口が広いからいいじゃないかという議論は、わかりやすいようですけれども、その後その流通市場をどうするのだ、いろいろなはね返りもありましょうし、それからまた、いろいろ転々流通する証券のことでございますから、流通市場をうまく健全に持っていくには、広ければいいのだということにはつながらないというふうに私は考えておりますので、結論的には好ましいことではないと考えます。  それから、銀行さんの中国あるいは短期の割引債、国債の扱いについては、先ほど村本さんも、もう民間でやっていることに余り官業は手を出すなとおっしゃったのですけれども、われわれ証券で十分お役目を果たしているところへ新しく銀行さんにお手伝いいただかなくても、私は国民経済的に十分機能していると思っておりますので、証券は反対をいたしておる次第でございます。
  75. 小杉隆

    小杉委員 もう時間が来ましたからやめますが、アメリカ高金利が結局自動車販売にもブレーキをかけていますし、また住宅とか設備投資の足も引っ張っておる。しかも、財政赤字の返済にも高金利で相当負担になってくるわけですし、いまの景気を刺激するという面でも非常にマイナス要因なわけです。  ですから、総裁の言われるように、本来から考えたら、そんなに長く続けて一体アメリカ経済は大丈夫なのかというのが一般の感想だと思うのですね。ところが、アメリカの当時者の意見というのは、もう全く一言で言ってインフレ恐怖症です。過去の金利政策が非常に揺れ動いてきて、その間にインフレがたびたび起こってきたということに対する、何といいますか肉体的ともいうべき恐怖症があるわけです。しかし、いま総裁が客観的にと申されましたが、世界情勢を見ましても、やはりOPEC諸国の原油の値段も低迷しつつありますし、また、アメリカの労働者の賃金も自動車産業を中心にだんだん低くなりつつあるわけで、従来ほどインフレ要因は恐れる必要がないという状況になっているわけです。  そういう面から考えて、いま日銀も、アメリカの連銀に対し、あるいはEC諸国がいわれなき円安攻撃をやっておるわけですが、それに対して、十分に説明して納得をさせるという努力が必要かと私は思うのです。日本は、いま貿易摩擦のために、関税の前倒しとか非関税障壁の撤廃とか、最近は農産物の自由化まで検討しているという段階ですから、逆に、こういう金利政策については私たちの主張をどしどしアメリカなりヨーロッパにぶつけて正しい認識を持ってもらうという姿勢が必要だと思うのですが、日銀総裁から最後に一言いただいて終わりたいと思います。
  76. 前川春雄

    前川参考人 先ほども申し上げましたけれども、いまのアメリカ金利は、アメリカ経済のファンダメンタルズに比べますと非常に高い。非常に高いことが世界経済に非常に悪い影響を及ぼしておるということはおっしゃるとおりであり、それは日本ばかりではございません、ヨーロッパ諸国の私どもの同僚の間でも同じ認識でございます。  御承知のように、毎月BISというところでそういう会議がございまして、そういう点では毎回その問題が蒸し返されておるわけでございますが、アメリカの態度は、いまもお話がございましたように、一九六五年以来続いておるインフレ体質というものを何とかここで根こそぎにしてしまおうという考え方で、アメリカインフレがおさまることはまた世界経済にとって最も必要なことでございますので、その辺の兼ね合いからいって、アメリカはもうちょっとのしんぼうだからということで今日まで続いておるのが現状でございます。しかし、おっしゃるようにアメリカ高金利が及ぼしておる世界経済に対する悪い方の影響についても、各国の間では認識がそろってきておりますので、いままでもそうではございましたけれども、私どもといたしましては、さらにそういう方向で十分努力はいたします。
  77. 小杉隆

    小杉委員 終わります。
  78. 森喜朗

    森委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、来る四月二日金曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十六分散会