○正森
委員 大蔵
大臣、きのうからの
議論が一時間中断していますから、おわかりにくいと思うのですが、私もちょっとやりにくいのですけれども、念のために言いますと、
主税局長の
議論には、きのう私が指摘したことを再度無視した
議論があるのと、それから、私が言ってもおらない前提を、おまえは多分そういうことを言うんだろうということで早とちりをして、そして見えない敵に対して大砲を撃っておるというところがあるのですね。その二点がありますから、えらい重複するようで申しわけありませんが、
大臣に御説明したいと思うのです。
まず第一に、
主税局長は、企業会計原則でこうなっておる、商法でこうなっておる、税法も当然こうなんだという
意味に近いことを言われましたね。これが実は誤りである。
大臣は御専門ですから、企業会計原則を私のような弁護士から言うのは申しわけないのですけれども、企業会計原則とか財務諸表規則というのは、企業の経理というのをできるだけ健全に保つということから定められているものですね。それから商法というのは、私はそこにおられる政務次官と同じように弁護士ですから比較的知っておりますが、株式会社、株主、債権者、そういう利害
関係者の利害を調節するという目的でつくられているものです。税法というのは、これは国が税金を安定的に得る、公平の原則から得るという目的でつくられているのですね。ですから、企業会計原則と商法と税法というのは、ほぼ同じ分野を扱っているのですが、同じ規定をしている部分もあれば違う規定をしている部分もあり、それは、それぞれ三つの存在理由が違うわけですから、当然のことなんですね。
それで、私がきのう説明しましたのは、多分
主税局長がそう言うだろうと思って、「財務諸表新論」という河合信雄さんの本を持ってきた。この二百八十ページには、この三つの
関係について論ぜられた部分がある。ここにずいぶんたくさんあるのですけれども、時間の
関係で
一つだけ説明すると、たとえば会社更生等による固定資産評価差益というのは、企業会計原則では資本剰余金になっておる。しかし、商法では何ら規定がない。実務上は任意積立金としておるようであります。そして税法では、欠損てん補に充てんした部分を除いて全部益金として税を課するというようになっているのですね。つまり、三つはそれぞれ目的が違うから、同じように規定されている部分もあるけれども、それぞれ違って規定されている部分もあるのですね。
あえてほかの点を言えば、資本的支出に充てた国庫補助金とか工事
負担金というのも、企業会計原則では資本剰余金などに挙げておるが、税法では圧縮記帳を認められますが益金だというようなことで、それぞれ違うわけです。ですから、企業会計原則がこうだからとか、商法にこう書いてあるからというだけでは
本当の説明にならないので、それらを全部統合して、そして公平の原則から、あるいは税法の目的からどうあるのが正しいかということをやはり考えてみる必要があるんではないかということを私が言っているわけです。
これが、
主税局長が言いました最初の部分に対して、きのうも言ってわかっておられると思っておったのですけれども、どうもわかっておられないみたいですから、もう一度説明したわけです。
それからもう
一つは、これはあくまで資本であって、そしていろいろな
意味で課税するということになれば、それは利益還元を促進するんじゃなしに、逆にプレミアムを資本準備金として積み立てたものが減ってしまうことになるという
意味のことをいま言いまして、だから、そういうものは認められないんだという発言なんですね。
これはどういう発想から来ているかと言いますと、
主税局長がそういう見解を持たれるのも無理はないと思うのです、わが党の政策にもそれに近いことを書いてある部分がありますから。しかし、私がいま質問しているのは、そういうことに立って質問しているのじゃなしに、お互いにどういうぐあいにこのプレミアムの分を考えたらいいか考えてみようということを、きのう質問の冒頭に言ったわけです。ですから、私は、プレミアム分は利益なんだ、だから利益に対して課税しろというような、そういう
議論をいましているわけじゃないのです。
私の意見は、プレミアムを資本準備金として積み立てるなら積み立ててもよろしい、商法は、そのうち二分の一以上を資本に組み入れなければいかぬというのだから、それはそれでもよろしい。ですから、資本も資本準備金も何年たっても減らないわけですね。何年たっても減らないのだけれども、プレミアムとしていまだ資本に組み入れられない部分については資本準備金として残っているわけですが、それを企業は配当もしない、利息も払わなくてもいいということで、非常に安いコストで運用できるわけです。
それからまた、株主の側から言いますと、これに対して利益還元で株式として配当を受け、株式として無償交付か何かでもらう、そうすると、それには当然配当が行われますね。おわかりですね。配当が行われれば、当然
所得税が課税せられますね。もし
所得税が三〇%なら配当の三〇%分、あるいは五〇%、六〇%、七〇%という高い税率を課せられる人がおるかもしれない。そういう人は、これは当然
所得税を納めなければならないのに、納めないでそれを活用していくという利益を得ることになるわけでしょう。これはおわかりになりますね。
ですから、そういう不公平が残るわけだから、少なくともそういう不公平をなくすために、企業としてはやらずぶったくりみたいに坊主まるもうけで使っておる、そういう利益に着目して、株主の側から言えば、もし無償交付を受けてそれに配当をもらえば当然かかるべき
所得税を払わないで、株主の集合体である企業の中でそれを運用しているという利益を得ているのだから、それに着目して一定の低い税率の税金を課されても当然ではないかというのが、私の
一つの意見であります。
そして、この意見が決してとんでもない意見ではないということは、シャウプ
税制まで、あるいはシャウプ
税制でも、このプレミアムはそのときには行われておりませんでしたけれども、当時は配当性向がだんだんと少なくなって、企業の内部留保が多くなっていたのですね。それに着目をして——内部留保というのは、個人企業の場合には全部
所得税として税がかかるわけでしょう。それが株式会社等の場合には内部留保でどんどん利用できるのだから、これに対して利子賦課税というて税金を課する必要があるのではないかという声が出まして、利子賦課税というのを一定の期間取ったことがあるのですね。これは、同族会社に対しては約七%、同族以外には大体二%の利子賦課税を取ったわけです。
そのときの考え方はどうかと言えば、もしこれが配当されておれば、三〇%なり五〇%なり、その人の
所得によって税金がかかるはずである。それを税金がかからずに無償で利用しているのだから、それ掛ける平均利子率、平均利子率が八%とすれば、三〇%の
所得税を課せられる人は二・四%、五〇%なら四%、それぐらいの税金は課せられて当然ではないかという考えから、二%とか七%とかいう税率が出てきて税金が課せられたというのが、ここに本を持ってきましたけれども、あえて読みませんが、出された考え方なんですね。
私は、こういう考え方をもっともっと広げるとすれば、いま企業が持っている膨大な内部利潤全部にだって、かけようと思えばかけられるかもしれないけれども、いまはそこまで言わないが、少なくとも坊主まるもうけでぬれ手にアワのプレミアム分に対しては、資本準備金ないし資本金として積み立てるのはいいけれども、それによって無コストの資金を利用しているという利益に着目をして、それに対して二%とか五%とか低い税率の税をかけても決して不当でないではないか。そして、それは公、平を保つゆえんではないかということを言っているわけです。仮に七兆あるとすれば、それに三%とすれば二千億円でしょう。五%とすれば三千五百億円でしょう。大蔵
大臣にとって結構うれしい
財源になるのですね。ですから、そういうことも考えられるのではないか。それは資本取引であるとかなんとかいう
議論が仮にあるとしても、それに抵触せずに実行できる、そういう考え方ではないかということを申し上げているわけです。
ちょっと、きのうからの続きがありますので大分長くなりましたが、
主税局長、
大臣、どちらでもよろしいから御
答弁を願います。