○正森
委員 禿河証券局長には多少失礼なことを申しましたが、実は、私はあなたに非常に敬意を表しているのです。
それは、これから申しますが、八二年一月十四日の朝日新聞の夕刊に「ことしの課題」という欄がありますね。その中に、
禿河さん、これは徹映さんとおっしゃるのですか、あなたのお名前は非常にいい名前ですね、
大蔵省証券局長という肩書きで書いておられるのですが、その中で、わが
禿河徹映氏はこう言うておられる。「今年の課題としては、とくに二つの問題を
指摘したい。第一は時価
発行増資の問題だ。昨年は時価
発行増資ブームで、規模は一兆二千億円にも達した。時価
発行増資では、株主、
投資家の立場を十分に尊重してほしい。コストの低い資金が調達できる、といった安易な考えでいくと絶対に定着しない。
配当性向の重視、増資プレミアムの還元などをさらに徹底させていくことが必要だ。」こう言っておられるのですね。これは非常に正当な
指摘であるというように私は思うわけです。
さらに言うておきますと、第二の
指摘がありまして、「第二の問題は個人の持ち株比率が三割を割っている点だ。なぜ比率が下がったかを関係者は真剣に考え、対応策を地道に行っていかなくてはならない。」こういうことも言っておられますね。これは両方とも正論であります。
こういう
意見を言っておられる方は
禿河さんだけではないのです。たとえば御
承知のように、去年も申しましたが、
東京証券取引所の谷村裕
理事長、あなた方
大蔵省のお役人の大先輩ですね。この人も同じことを言っておられまして、ある新聞に「公募増資で調達した金は、資本準備金という名目になっていても、株主の持ち分であることに変わりはなく、無コストの資金と考えてはいけない」公募増資で
配当負担の少ない資金がどっさり入ってくると企業が喜んでいるとすればとんでもない考え違いだ、こう言っているのですね。これは基本的には
禿河証券局長と同じ思索的基盤に立つものであろうというように私は考えるわけであります。
そこで、私がなぜこういうことをるる申したかといいますと、ここからは主税
局長ですよ。企業が公募増資をやる、その性格については、いま述べましたように、これは本来株主のものなんですね。それを企業が一時預かっておるというかっこうのものだというのが学者も言っていることですし、識者も
指摘していることなんですね。そして、そういうぐあいにあからさまな形ではありませんが、
禿河さんやあるいは谷村さんも、そういう考えを背景に持っているからこそ、企業が自分の金だ、無コストの資金だなんて思っていたら大間違いですよということを言っているわけですね。
しかし、
現実はどうであるかと言えば、企業は、これを全部無コストの資金だ。なぜなら、プレミアム
部分については、後でまた言いますが、一部例外的に還元している
部分はありますけれ
ども、原則として資本準備金であって資本に組み入れられないわけですから、
配当はしなくていいでしょう、
銀行から借りたわけじゃないから利息は払わなくていいでしょう、だから無コストの金である。そんな結構なものはないということで、新株の
発行増資の前になると、これは資料がありますから後で言ってもよろしいが、株価をずっと上げて、そしてプレミアム獲得
部分を非常に多くする。それで増資が済んだら、プレミアムが済んだ後で新株
発行の価格を割る会社がどんどん出てきているのですね。これは資料を持っていますから後で御
説明します。
そういうことを野放しにしておいていいのかという問題があるわけですね。これは
経済学的にもそうだし、あるいは
経済学が基礎にある税制においてもその点は考えなくてはならない。企業が、ということは企業を支配している特定の支配的株主が、中小の株主を犠牲にして自分たちが企業を自由にできるからいい、無コストの金がどっさり入ってくるんだ、
配当はしなくていい、
銀行に利息は払わなくていい、こんな結構な金があるかということで使いまくっておるというような
状況を許しておると、これは個人株主が逃げるのはあたりまえですよ。だから、いま個人株主が三割を割るというような
状況が起こっているわけです。
それに対して、どういうように株式会社として手当てするかという点については、去年商法の
改正が行われて、おくればせながら、ことしの十月からは二分の一資本組み入れをしなきゃならないということで歯どめをしたのですが、そうしたら企業でどういう反応が起こったかと言えば、十月以降は二分の一資本に組み入れなきゃならぬから無コストの金の割合が減る、だから、いまこそ駆け込みをやって自由に使える割合を残さなきゃならぬということで、ものすごく新株プレミアム
発行のブームが去年、ことしと起こっているのですね。しかも、この商法
改正を行っても、依然として資本準備金に組み入れたままで資本に組み入れなくていい金は残る。これについては依然としてぬれ手にアワで、
配当しなくていい、
銀行に利息を払わないでいい、税金もかからぬということになるわけですね。
だから、これに対して税制面からも、こういう
経済学的な問題に着目して、そういうような企業のぬれ手にアワは許さない。一方は、何らかの形で株主に還元しなさい、一方は、それをやらない分については税制上、余りにも不当な、
配当もしない、
利子も払わないという金に対しては国に対して納めてもらいますよというのが両々相まって、こういう企業支配集団の横暴を防ぐことができる。これは長い目で見れば、コミュニストの私が言うべきことじゃないかもしれないが、資本主義社会の永続にもつながるのですね。だから、本当はこんなことを言わない方がいいのだけれ
ども、そういう関係にあるのですね。だから、それについて財政当局あるいは税務当局は真剣な反省をして、やはり抜本的な
対策を講じる必要がある。ましてや、これが現在税収欠陥なんか言われておるときに有力な財源になるわけですから。
そこで、こういう私の
指摘に対して、政務次官でもよろしいし主税
局長でもよろしいが、御
見解をお述べいただきたい。
なおついでに、あらかじめ資料
提出をお願いしておきましたが、
昭和四十三年から
昭和五十五年までの、なし得れば五十六年の、現在判明している段階でのプレミアム増資額とプレミアム分及びその還元分について、数字を報告していただきたい。同じような性格を持っている転換社債のプレミアム分についても、私
どもに明らかにしていただきたいと思います。