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1982-02-26 第96回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十六日(金曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 森  喜朗君    理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君    理事 小泉純一郎君 理事 中西 啓介君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 鳥居 一雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    麻生 太郎君       木村 守男君    熊川 次男君       笹山 登生君    中村正三郎君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       森田  一君    柳沢 伯夫君       山中 貞則君    与謝野 馨君       大島  弘君    佐藤 観樹君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       野口 幸一君    平林  剛君       柴田  弘君    渡部 一郎君       玉置 一弥君    正森 成二君       蓑輪 幸代君    田島  衞君  出席政府委員         大蔵政務次官  山崎武三郎君         大蔵大臣官房審         議官      矢澤富太郎君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君  委員外出席者         参  考  人         (成蹊大学経済         学部教授)   肥後 和夫君         参  考  人         (全日本労働総         同盟生活福祉局         長)      中根 康二君         参  考  人         (法政大学短期         大学部学長)  鷲見 友好君         参  考  人         (神戸大学工学         部教授)    早川 和男君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         参  考  人         (立教大学経済         学部教授)   和田 八束君         参  考  人         (日本経済新聞         社東京本社編集         局次長)    鈴木  隆君         参  考  人         (東京経済法律         研究所所長)  飯田久一郎君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     木村 守男君   小杉  隆君     田島  衞君 同日  辞任         補欠選任   木村 守男君     今枝 敬雄君   田島  衞君     小杉  隆君     ――――――――――――― 二月二十五日  昭和五十七年度の公債の発行の特例に関する法  律案内閣提出第九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十四日  所得税減税に関する陳情書  (第二〇号)  昭和五十七年度税制改正に関する陳情書外三件  (第二一号)  塩専売制度存続に関する陳情書外三件  (第二二号)  同(第一一七  号)  たばこ専売制度存続に関する陳情書外二件  (第二三号)  同(  第一一六号)  塩及びたばこ専売制度存続に関する陳情書外五  件(第二四  号)  金融機関の週休二日制に関する陳情書外三百九  十九件  (第二五  号)  同外六十五件  (第一一五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一六号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一七号)      ――――◇―――――
  2. 森喜朗

    森委員長 これより会議を開きます。  法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人に御出席をお願いいたしておりますが、まず午前の参考人として、成蹊大学経済学部教授肥後和夫君、全日本労働同盟生活福祉局長中根康二君、法政大学短期大学部学長鷲見友好君、神戸大学工学部教授早川和男君の四名の方々に御出席を願っております。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。両案について、参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、議事の進め方といたしましては、初めに参考人各位から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、その後委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず肥後参考人からお願い申し上げます。
  3. 肥後和夫

    肥後参考人 成蹊大学肥後でございます。  法人税法並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案について、参考意見を申し上げます。  法人税法の一部を改正する法律案は、法人税延納制度縮減を行うとともに、全共連に適格退職年金の取り扱いを信託銀行生命保険会社並みに認めることを内容としております。また、租税特別措置法の一部を改正する法律案は、租税特別措置整理合理化交際費課税強化長期安定的な土地住宅税制確立等を図ることを内容とするものであります。これら二つ法律案を通じまして、私は、次の二つの点に注目し、それについて意見を述べたいと思います。  すなわち第一点は、五十七年度税制増収措置としてのこれら二つ法律案意義ないし役割りでございます。それから第二点は、土地供給及び住宅建築促進するための税制改正としての今回の改正案意義効果についてであります。  さて、第一点の五十七年度税収増収措置としての性格でございますが、予算総額において三千四百八十億円の税収増加が、法人税関連の本法及び租税特別措置法改正によってすべて賄われているわけでございますが、その中には、交際費課税強化のように五十九年度までの財政再建期間中の特例とされているものもあり、財政再建との関連における税収確保役割りを担っているものであると言うことができると思います。  すなわち、法人税法関連で、一、法人税延納制度縮減による増収千四百四十億円、二、法改正ではなく政令改正によるものではありますが、貸し倒れ引当金の法定繰入率の引き上げによって九百五十億円、それから租税特別措置法関連で、三、価格変動準備金整理によって五百八十億円、四、交際費課税強化によって四百六十億円等であります。  このうち、法人税延納制度縮減による増収効果は、一年度限りのもので五十八年度からはなくなりますが、それは価格変動準備金整理交際費課税強化による増収によって五十八年度以降補充されることになっており、また、交際費課税強化は三年間の特例措置になっております。これらの増収措置のそれぞれは、法人関係税適正化を進めるための前向きの措置もしくはやむを得ざる措置として評価すべきものと考えます。また、今後とも適正化を図るべきものも、あるいは記帳の義務化促進するとか経費の適正化を図るとか租税特別措置整理合理化等を含めて、なお法人税について検討すべき余地が残っているものと思います。  しかし、税収を確保し赤字公債を減らすことは財政健全化にとって絶対必要ではありますが、五十六年度及び五十七年度両年度の税収増加を図る措置が、もっぱらもしくは主として法人税によっているという点につきましては、法人税あるいは事業税法人住民税等につきまして、今後とも徴収すべき税はきちんと徴収するよう努めるべきではありますが、諸外国に比べて、わが国の法人税の比重が格段に大き過ぎるという点をどう考えるかということと関連しまして、税体系のバランスは果たしてこれでとれているのかどうかという点は、これからの問題ではなかろうかと思います。長期的な課題としましては、所得課税財産課税消費課税を含めて、体系のあり方をさらに検討すべきではなかろうかと思うのであります。  次に、第二点でございますが、土地供給及び住宅建築促進するための税制改正につきましては、それが果たして所期の目的を達成できるかどうか、また負担の公平との関連はどうかという問題があります。  宅地供給及び住宅建築促進という目的に対する政策効果を見ます場合には、以上の国税改正と、それに関連する地方住民税改正のほかに、固定費産税及び特別保有地税課税強化効果をあわせて考える必要があります。  国税関連改正は、土地を保有する個人及び法人土地を売りやすいようにするために、土地譲渡所得に対する課税を緩和することが主たる目的であります。そのために、一、長期短期現行の厳しい区分を緩和し、所有期間十年以上を一律に長期所得とすること。二、課税累進制を緩和して、所得の大小にかかわらず一律に二分の一総合課税とすること。三、優良住宅地等のために土地供給した場合の長期譲渡所得税を緩和し、四千万円を超える所得の二分の一総合課税を緩和して、二五%の分離課税にすること。四、三年限りの措置として、特定市街化区域農地住宅用に譲渡した場合の長期譲所得分離課税は、優良宅地に関する前述の優遇よりもさらに五%低い優遇税率を適用すること。五、所有期間十年を超える居住用財産の買いかえ制度を創設すること等という内容であります。  関連して、地方税関連では、土地維持費負担を重くすることによって、土地供給促進するための固定資産税及び都市計画税特別土地保有税改正があります。  五十七年度は固定資産税及び都市計画税の評価がえの年でありますが、その際の負担調整措置を従来よりもややきめ細かにした点は別としまして、すでに大都市圏特定都市においてA農地及びB農地に対して適用されている宅地並み課税C農地にまで適用を拡大することになりました。また、特別土地保有税については、昭和四十八年度に法定普通税として創設され、昭和四十四年一月以降に取得された土地保有者及び四十八年七月一日以降新たに土地を取得した者に、上記の固定資産税及び都市計画税のほかに、取得価格を標準に特別土地保有税を賦課するというものでありますが、五十七年度からは一般保有期間が十年を超えた土地については特別土地保有税課税対象にしないこととし、かつ、今後は昭和六十年三月三十一日までに取得されたものについて、やむを得ないと認められる場合を除き、二年以内に住宅を建てない場合は、以後の十年間特別土地保有税を賦課するというものであります。  現行の国の土地譲渡所得税及び地方特別土地保有税は、空前の土地投機熱を需要と供給の両面において税制面から厳しく抑制しようとして四十八年度に改正されたものでありましたが、五十七年度の改正は、三大都市圏における特定都市市街化区域内の農地宅地並み課税C農地にまで拡大することを含め、国及び地方土地関連税制宅地供給促進という視点から見直そうとするものと解されます。  負担の公平の見地から見ますと、譲渡所得に関する分離課税よりは総合課税の方が望ましいわけでありますが、四十八年の改正は緊急対策的な意味を持つ改正であったから、そろそろもう少し平常に戻してもよいのではないかという考え方もわからぬではありません。また、アメリカでは長短の区分がきわめて短く、二分の一総合課税主義であるというような面もあります。また、輸出中心経済成長内需中心に転換しつつ、実質五・二%、名目八・四%のGNP成長を達成するためには、民間投資と並んで個人住宅建設促進がきわめて望ましいことも理解できます。  しかし、果たしてこの措置でどの程度宅地供給されるかという点については、十年以上営農の農地課税対象外になっている措置であること、農地保有者はすでに十分な現金、資産を有しているのではないかという点、勤労者購買力が追いつかないこと、税制という手段には限界があること等を考えますと、なおその効果については楽観を許さないものがあります。特に、二分の一総合課税はともかくとしましても、一五%ないし二〇%あるいは二五%という分離課税が、給与所得者平均実効税率あるいは利子配当分離課税の三五%の税率等に比べても著しく優遇され過ぎている点については、そこまで優遇する必要があるのか、公平の視点が軽視されているのではなかろうかという感じを持つものであります。  以上をもって意見陳述を終わります。
  4. 森喜朗

    森委員長 ありがとうございました。  次に、中根参考人にお願いいたします。
  5. 中根康二

    中根参考人 同盟中根でございます。  私は、労働者立場から、次の二つについて意見を申し上げたいと思います。  一つは、五十七年度に一兆円規模の減税をぜひ実施していただきたいというものでございます。  私どもの可処分所得がどのように推移してきたかということをまず述べさせていただきたいと思いますが、昭和五十三年以降所得税並びに地方税課税最低限が据え置かれたことから、私どもの可処分所得年ごとに低下をいたしております。労働省の賃金実態調査によりましても、このことがはっきりあらわれておりまして、五十五年は実収入、可処分所得とも前年対比でマイナスに転落いたしておりますし、五十六年は、十一月までしかまだ出ておりませんが、五十五年に続き二年連続してマイナスになることは避けられないというのが定説となっております。同じ資料で、収入別五分位の階級別にどうなっているかを見てみますと、第一分位から第三分位まで比較的所得の低い層にそのマイナスが大きく目立っておるというのが現状でございます。  このことについては、私ども独自の調査もしてチェックをいたしております。その結果を見てみましても、可処分所得の目減りははっきりいたしております。年収が一%増加すると、税金は約二%から二・五%増加しておりまして、しかも働き盛りである三十五歳から四十五歳層に税の重みがのしかかっているという感じがつかまれたわけでございます。年収四百万から六百万で扶養家族三人のいわゆる標準的な中年層を見てみますと、社会保険料等引き上げも手伝って、毎年、名目収入伸び率よりも可処分所得伸び率の方が一%も下回るという結果が出てまいりました。  次に、視点を変えて、税の捕捉率の問題について見てみたいわけでございますが、大蔵省が今国会に提出しておられます資料ということで、去る二十一日の朝日新聞に載っておるところを見ますと、五十七年度ではサラリーマンの八五・四%の者が納税者になるということでございます。課税最低限が据え置かれた結果、五十二年度から見ると一一・二%も上昇したことになるわけでございます。五十七年度予算案で見ますと、給与所得者は四千百二十万人でございますが、五十六年度より六十五万人ふえたことになるわけでございます。これに対しまして、納税者数は三千五百十八万人になりまして、五十六年度より百二万人もふえ、納税者割合でも五十六年度より一・二%ふえるということが示されておるわけでございます。給与所得者伸びより納税者数伸びの方が高いのは、言うまでもなく、これまで課税最低限に達しなかったサラリーマンが、名目所得伸び納税者に加わったためであるということでございます。  これに対しまして、専業農家と第一種兼業農家農業所得者数は、五十五年度で百六十三万人でありましたが、納税者はわずか十六万人でございます。納税者割合は九・八%にしかなっていないということでございます。また、商店主中小製造業者などの事業所得者は、五十五年度で六百九十八万人であったのが、このうち納税者は二百六十二万人で、納税者割合は三七・五%となっておりまして、私ども給与所得者と比べますと、著しく低いという数字が出ておるわけでございます。同じ時期のサラリーマン納税者割合は八三%であったわけですから、よく言われますクロヨンどころか、朝日新聞の表現によりますと、ヤヨイ、つまり八対四対一と、税の捕捉率の不公平が一層拡大しているということが言われておりますし、これは、いままで申し上げた数字が証明しておると思うわけでございます。  また、所得減税を求める声は、私ども労働者ばかりでなく、最近では財界や学者グループの方まで急速に高まっておるのではないかと判断いたしております。税負担公平化を含め、ぜひ減税措置を講じていただきたいというふうに考えておるわけでございます。  第二点は、租税特別措置廃止対象となっております住宅貯蓄控除についてお願いしたいと思うのでございます。  財形制度改正によりまして、勤労者が従来住宅積み立てを行っております場合に、一定期間税額控除援助を受けることができておったわけでありますが、今回の財形制度改正により、借入金の返済利息について国が補助するかわりに、積み立て時の税額控除廃止するというものでございます。ところが、最近の住宅価格の高騰から、特に都市部では、私ども勤労者住宅の資金を手当てしようとする場合、一千万円程度準備が必要であることは御承知のとおりだと思います。そうなりますと、かなり若い時期から積み立てをする必要があります。しかも、毎月かなり高い積み立てが必要となるわけでございます。  昨今のように、老後が長くなった現在では、以前のように退職金住宅多額に充てるということは不可能でございまして、公的年金の水準の伸びというものを勘案した場合、長い老後退職金公的年金で生活していくということを考え合わせますと、なおさらのこと、住宅を取得しましてその返済を終わるという時期は、現役の間に済まさなければならないというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、比較的給料の低い間に多額積み立てをしなくてはならない苦しい時期を、従来どおり税額控除によって援助を続けていただきたいというのが私どものお願いでございます。  私どもは、減税に関しましては、きょう労働四団体の共同行動といたしまして、都内の主要八カ所で都民に訴えたいと思いますし、二十八日の日曜日には、全国各地メーデー並み運動を展開してまいりたいと思います。私ども減税の要求が決してはね上がったものではないということを、国民の皆さんに知ってもらいながら運動を展開するものでございます。  以上申し上げましたように、可処分所得マイナス分だけでも少なくとも回復をさせていただきたいというのが私どもの切なる願いでございます。  以上をもちまして、私の意見を終わりたいと思います。
  6. 森喜朗

    森委員長 ありがとうございました。  次に、鷲見参考人にお願いいたします。
  7. 鷲見友好

    鷲見参考人 鷲見でございます。  今回の法人税法租税特別措置法の一部改正案につきまして、一部は賛成でありますが、多くの問題を抱えており、今後の御審議の中で問題のある部分の再検討が行われることを希望しまして、幾つかの点について意見を述べさせていただきます。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席〕  税制についての私の基本的な考え方は、できるだけ単純でわかりやすく、例外をつくらない方が望ましいということであります。特例をつくりますと矛盾が生じがちであり、また課税の公正が損なわれることになるからであります。しかし、個人に対する課税に関して言えば、国民生活の安定についての配慮企業課税について言えば、競争力がすべての面において弱い中小企業には一定配慮は不可欠であります。言いかえれば、その点の配慮は必要でありますが、それ以外の特例は設けないことが望ましいということであります。  今回の改正につきましても、法人税延納制度縮減については、資金繰りの苦しい中小企業に対する配慮は必要であります。したがって、中小企業には現行どおりとした上で改正が行われるならば賛成であります。貸し倒れ引当金の法定繰入率の引き下げについても同様であります。諸引当金のうち、中小企業利用率が比較的高いのがこの引当金でありますから、この点御検討していただく必要があると考えます。  租税特別措置につきましては、交際費課税強化賛成であります。しかし同時に、交際費認定強化あるいは使途不明金に対する何らかの措置強化が伴うことが必要であると考えられます。また、先ほど述べられたように、これは財政再建期間ということで三年間の時限措置として行われたと考えられますが、これは時限措置ではなくて、いま言った点を考慮した上で恒久的な措置にすることが望ましいと考えられます。価格変動準備金縮減については一歩前進と評価することができますが、これは最近利用率が低下してきているものでありまして、これもまた中小企業に対する一定措置を残して、むしろ全廃するのが望ましいのではないかと考えられます。  以上の点は、徹底さを欠くところがあるとはいえ、積極的に評価できる部分であります。  しかし、期限の切れたにもかかわらず延長されているもの、あるいはさらに、数は少ないわけでありますが、新設、拡充されているものもあり、全体としては多くの問題を抱えております。  新設された国際科学博覧会出展準備金は、出展できるのはまさに少数巨大企業でありまして、その少数企業だけが対象になるものでありまして、新設する必要はないものと考えます。  期限が到来したにもかかわらず延期されたもの、たとえば海外投資等損失準備金試験研究費特別税額控除など、これらはその利用割合は九五%から九八%程度が大企業でありますが、こうしたものは、そのまま手を加えることなしに延長されているわけであります。  若干の手直しと引きかえに延長されたもの、たとえば特別償却のうち公害防止用設備特別償却初年度償却率百分の二十七を百分の二十五に縮減するというものがありますが、これだけを縮減することによって、それと引きかえに延長されているわけでありますが、現在、PPP、ポリューター・ペイズ・プリンシプルというのは国際的な原則でありまして、特別な優遇措置をすべき性質のものではないと考えられます。こうしたものが若干の手直しの上延長されているわけでありまして、この点については同意できないものであります。  総体として、企業関係特別措置五十七件のうち、廃止されたものは四件にすぎませんが、この四件は、いずれも巨大な企業には関係のないものであり、かつ利用度が少ないものであります。したがって、実態的には廃止によって生ずる影響がほとんどないものが廃止されたということであります。若干の手直しによる延期あるいは新設によりまして、不公平は存続するだけではなく、逆に一層拡大している側面もあるわけであります。  なお一層問題なのは、今回全く手をつけられていないことによる不公平の存続、たとえば退職給与引当金、これは一度問題になったけれども取りやめになったといういきさつがあるわけでありますが、あるいは株式プレミアムに対する非課税などの問題、それと国民負担増大、すなわち、いまも述べられましたように、所得税減税見送りによる租税負担増大の問題であります。  増税なき財政再建と言われております。私たち一般国民は、大衆課税強化には反対でありますが、不公正是正による増税なしに財政再建は不可能であると考えます。不公正を是正してもなお国民福祉、教育の充実、国民生活及び国民経済安定的発展のために必要な支出に使われる財源が不足する場合であれば、応分の公平な負担を避けることを主張するものではありません。  今回の増税なき再建についてもう一言だけ申し上げれば、法人税に関しては、これは所得に対する比例税でありますから、実質増税というのは、当然のことでありますが、ないわけであります。しかし所得税に関して言えば、控除制度があり、課税所得三百万円までは六十万円刻みの税率のアップがあるわけでありますから、名目所得増大、これはインフレのもとでは不可避でありますが、この名目所得増大によって実質増税が生ずるわけであります。したがいまして、増税なき再建というのは、所得税について言えば、これは当てはまらないわけでありまして、所得税については増税が行われているわけであります。どういう理由であろうと税金がふえれば、これは増税だという議論がありましたが、まさに所得税にこそそれは当てはまるべき問題であります。  私たちは、歳出及び歳入においてやるべきことを行い、そして、いま述べたような形で不足する場合には負担に応じますが、しかし、それをやらないで国民に犠牲を要求しても、国民的な合意は得られるものでないこともまた明らかであります。  現在、消費不況が深刻となり、貿易摩擦の激化による日本の孤立化という状況のもとで、国民生活の安定とそれから日本経済の安定的な発展のために、今回不十分である改正を是正し、今回見送られた税制改正、特に所得税、住民税の減税をお願いして、発言を終わらせていただきます。
  8. 中西啓介

    中西(啓)委員長代理 ありがとうございました。  次に、早川参考人にお願いいたします。
  9. 早川和男

    早川参考人 神戸大学の早川でございます。私の専門は住宅問題、都市計画でございます。その観点から、参考意見を申し述べさせていただきます。  今回の税制改正に関する法律案の提案理由を拝見いたしますと、土地供給及び住宅建設を促進する等の見地から、所要の措置を講ずるというふうにあります。しかしながら、このような税制手直しするという観点からは、提案に盛り込まれております供給促進、いい住宅をつくっていくということは不可能であると私は思います。  言うまでもなく、現在の住宅政策は持ち家が中心になっております。しかし御承知のように、先ほども御説明がありましたように、とても現在の土地の値段、住宅の価格は私たち庶民の買えるものではございません。また、少しでも安くしないと売れないという状況があるものでありますから、ミニ開発住宅、また非常に小さなマンションが出ております。日照問題というものが頻発しておりますけれども、あれは用地を節約して土地代を少なくするということと非常に関係があるわけであります。また、ローンの負担が家計を圧迫し、ローン悲劇といったことが生じていることも御承知のとおりであります。現在の住宅は、私たちの生活環境をよくしていくということではなく、不良資産を蓄積していっているというふうに私は思わざるを得ません。  改めて考えてみますと、私たちの住んでおりますのは自由主義経済の社会でありますけれども、したがいまして、あらゆる生活資材は市場の原理によって供給されております。それによって企業が適正な競争を行い、品質のいいものが安い価格で供給されるという機構を持っております。しかしながら、土地でありますとか住宅というのは、第一に限られた資源であります。また社会的存在であります。こういうものを市場原理によって良好な形で供給していくことができないということは、先進資本主義国が百年あるいは二百年の歴史を通じて経験してきたところであります。  したがいまして、たとえばイギリスを例に申し上げますと、戦前からもそうでありますけれども、イギリスはナチによって都市が破壊されたわけでありますが、戦後のイギリスの住宅建設を見ますと、実にイギリスにおける総住宅建設戸数の五九%は公共賃貸住宅であります。−最近、サッチャー内閣のもとで若干変化が起こっておりますが、この一、二年前までは、毎年建設される住宅の四〇%ないし四五%が依然として公共賃貸住宅でありました。今日では、イギリスの住宅ストック戸数の三二%は公共住宅であります。また、西ドイツは同じように国土を破壊されたわけでありますが、戦後建設された住宅総戸数の四二%は社会住宅と称される公共住宅であります。  ちなみに、日本は戦後建設された住宅の約一〇%が公共住宅であります。ストックでは七・五%であります。こういうことでは、日本のような自力建設、自己の能力によって住宅を建設するということは不可能であるということは、先進国の長い経験に照らして改めていかないといけないのではないかと私は思います。  現在の土地住宅政策の第二の問題点は、住宅は計画的な町づくりのもとで行わないと、人間らしい暮らしを保障するものができないという観点が根本的に欠如していることであります。残念ながらそうであります。たとえば、現在の宅地供給の中心的な論点となっております宅地並み課税による土地供給という問題がありますが、これは先ほど来御指摘のような問題がありますが、同時に、仮に農民が土地を、農地を手放したといたしましても、それによってつくられる住宅は、冒頭に申し上げましたミニ開発住宅であり、スプロール的な住宅建設であります。私たちが人間にふさわしい暮らしのできる住宅宅地並み課税によって形成されるという保障、根拠は全くございません。私は、宅地並み課税住宅、宅地政策の中心的な論点として今日議論されておりますけれども、これは問題の焦点をそらしているのではなかろうかというふうに思います。  先ほど申し上げました先進資本主義国、欧米諸国の経験はもとより、私たちがいい都市をつくり、住宅をつくっていくには、自治体が中心になって公共的、社会的に地域社会づくりの一環としての住宅供給をやらねばならない、そういう政策を基本に据えなければならないと思います。欧米諸国の土地住宅政策は自治体が絶対的な権限を持っております。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  政府予算を見ますと、五十七年度では公庫住宅が五十四万戸、公的な住宅が、公営では五万四千戸、住宅都市整備公団では三万五千戸となっております。今日、住宅公団の団地は高、遠、狭と言われまして、一方で批判を浴びておりますけれども、しかし、戦後日本で建設された最も良質な住宅は、私は、こういう公団や公的な住宅地開発にあったと思います。公庫住宅は公的住宅と私は言えないのではないかと思います。単にお金を融資しているだけでありまして、そういう融資を通じて良好な住宅地が形成されるという保障は全くございません。  第三の論点といたしまして申し上げたいことは、住宅福祉の基礎という認識が日本では著しく欠けているという点であります。本委員会は大蔵委員会でございますので、特に私は申し述べさせていただきたいのでありますけれども住宅が悪いと健康が守れません。したがって医療費がかさみます。高齢化社会を迎えまして老人医療が問題になっておりますけれども、仮に医療費が無料化いたしましても、薄暗い小さな部屋で老人が住んでいては健康は守れないわけであります。また、そのようなことでは医療費がかさむ一方であります。また、年金だけで生活が支えられません。住居を整備しなければ、将来どれだけの社会保障費が必要になるか見当もつかないのであります。これでは社会福祉は機能いたしません。経済的苦しさはありますけれども、現時点において公的な住宅を整備していく必要があるかと思います。  最後に、もう一言つけ加えさせていただきたいのは、西欧の自由主義諸国では、住居は市民社会の基礎という認識があります。アメリカを含め、ヨーロッパ諸国はすべて住居法というのを持っております。これは、悪い住宅に住んでおりますと、ちょうど食品の監視官が回ってくるように、改善命令を出したり、補助をいたします。それは、麦飯を食ったり貧しい服を着ていても社会的には影響はないけれども、悪い住宅のままに放置しておきますと、都市はスラム化いたします。都市というのは、一つ一つの住宅がよくなければいい都市はできません。したがって、そういう住宅に対しては監視をし、改善を勧告し、補助を与えるわけであります。また、貧しい住宅のもとでは人間らしい人間が育ってきません。一人一人の市民が人間らしくならなければ、その国家も人間にふさわしい状態になりません。市民社会や民主主義社会もつくれません。そういう認識が欧米諸国にはございます。  日本は自由主義圏第二の大国に今日なったわけでありまして、ECの指摘や、最近のニューヨークタイムズがもっと日本の住宅をよくせよということを言っておりますけれども、そういう指摘を待つまでもなく、私たちは、日本の住居をよくし、市民社会の基礎を築き、将来に向けて福祉の基盤をつくり、いい都市をつくり、私たちの生活環境をよくしていくことを目指していかねばならないというふうに私は思います。  以上で私の陳述を終わります。
  10. 森喜朗

    森委員長 ありがとうございました。  以上で、参考人からの御意見の開陳は一応終わりました。     —————————————
  11. 森喜朗

    森委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  12. 沢田広

    ○沢田委員 本日は、御多用の中をおいでをいただきまして厚くお礼を申し上げます。また、質問の中で失礼な点がありましたら、これまた御了承をいただきたいと思います。  順不同でございますが、肥後先生にまずお伺いをいたします。  先生がいろいろ言われた中の、企業のある程度の資本の蓄積というか、そういう条件を前提としながら、私たちが考えておりまする不公正な税制というものの視点とのとらえ方には若干違いがあるのじゃなかろうかという気がしているわけであります。いわゆる不公正とわれわれが称している、いまもお話がありました貸し倒れ引当金の圧縮であるとか、あるいは価格変動準備金であるとか、あるいは先ほど鷲見先生もおっしゃられましたが、その他の引当金、渇水準備金にしてもそのとおりでありますが、そういうものがどうしても大企業に偏り過ぎてしまって利益を受ける割合が多くて、一般的には貸し倒れなどにしてみれば、さっきもお話がありましたけれども、実際は一%から三%ぐらいしかない。それに対して引当金は一三%、今度下げましても一三%程度までも内部留保として残っていく。そういうことについてはやはり実態に合わしていく、金融機関なんか一%ぐらいしかないのであります。それでも大体三倍ぐらいの引当金が留保される。こういうことは、言うならば課税されるべき金が会社の内部留保として残されていっている、こういうふうに理解をしますと、もっと実態に合わしていくことの方が不公正をなくすことにつながるのではないかというふうな理解をいたしております。  まあ、不公平、不公正、どっちも言われておりますが、不公平税制という言葉の認識なんでありますが、その点は先生はどういうふうにお考えになっておられるか。  それから、鷲見先生は単刀直入に不公平税制の大体の輪郭をおっしゃられましたけれども、あえてこの点も不公平税制一般的に言われている、クロヨンもそのうちの一つですし、今度はヤヨイと言われたのでありますが、そういうことも不公平税制の一つだというふうに受けとめておりますが、まことに恐縮ですが、肥後先生、それから中根先生、鷲見先生、それぞれのお立場で不公平税制に対する考え方、これをひとつおっしゃっていただきたい。順は肥後先生、中根先生、鷲見先生、この順でお願いを申し上げます。
  13. 肥後和夫

    肥後参考人 それではお答えを申し上げたいと思います。  非常に本質的な問題についての鋭い御質問であったと思うわけでございますが、土地関係税制法人税関係税制の両方に触れましたために非常に舌足らずになりまして、あるいは私の意図するところが十分にお聞き取り願えなかったかもしれないということを恐れているわけでございますけれども、今回の税制改正は、私は望ましくないとは思っていないわけでございます。  法人税を中心にして三千四百八十億円の増収を図られていることそれ自体は、それは結構であり、やむを得ないと思うわけでございます。そして、その中身につきましても、たとえば延納制度縮減あるいは貸し倒れ引当金の法定繰入率の引き下げ、価格変動準備金整理交際費課税強化、これはすべて適当であり、あるいはやむを得ないと思っております。  ただ、特に貸し倒れ引当金、まあこれは本来の法人税法上の経費でございますが、これを貸し倒れが実際に発生したときに引けば一番よろしいわけですけれども、それも実際上非常にむずかしいわけですから、一応貸し倒れを売り上げとの関連である程度統計的に推定して、適出な繰入率を定めなければならない。問題はその繰入率が適当かどうかという点の実際的な判断でございまして、これについては実情に照らして行うべきである。  それから価格変動準備金は、これは租税特別措置ではありますが、これについて従来とかく実際には要らないものまで繰り入れているのじゃないかという批判もありましたので、今回のような措置が進んでいるということは結構だと思います。  それから交際費課税については、従来とかく批判があったものでございますから、適切な強化を図るということは、これは必要であると思います。ただ、実は強いて私、かなり一般の現在の世論に逆らうようなことをちょっと申し上げてみたのは、今回の法人税改正につきまして、五十六年度の法人税率の引き上げと今回の改正につきまして、法人税負担が別にそれで重くなったとは思っていないわけで、国際的に見て決して重くなったとは見ていないわけでございますが、日本の税制の中での法人税の比重というのを見ますと、日本は大体三割、三〇%を超えておりますが、イギリス、西ドイツ、フランスは一割そこそこになっている。  これはどういう理由であろうかということを考えてみたわけでございます。そうしますと、法人税は国際相場並みに取っているのに比べると、法人の利潤が国民所得の中で占める割合については、外国と比べて特に日本が大きいということはないように思います。法人の数が多いと申しましても、中小法人は余り税収には寄与しておりませんので、そういう意味では、法人利潤が国民所得に占める割合は、割合としては外国とそう変わらないのに、法人税がなぜ重いかというと、これはほかの税金が相対的に低いからではないか。  ほかの税金が相対的に低いからといって、給与所得課税が別に高いと私は申し上げているわけではございませんで、これは中根さんほか皆さんがおっしゃっているように、五十二年以来据え置かれているわけでございますから、自然増税になっているわけでございますが、給与所得以外の所得に対する課税はむしろずいぶん軽くなっているといいますか、課税が振りかえられているのじゃないか、あるいは消費に関する課税が振りかえられているのじゃないか。  したがいまして、いま行革が大きな課題でございますが、むだな経費をできるだけ削るということは大事でありますけれども、むだな経費を削ってなお必要な経費については、民主主義社会では税金は払うものだ、払うべきものだという認識を持つ必要がある。そういう意味では、給与所得以外の税源に関する課税について、税金はなるべく払わない方がいいというような考え方については、特に財政再建を進めなければ、むしろインフレによって将来、年金を当てにしている人たちの生活が脅かされる危険がある。財政再建についての前途は非常に困難になっているところでもありますので、あえてそのような形で申し上げたわけでございます。負担の公平と申しますときに、私は、払う税金とそれからそれによって受けるサービス、両方総合したもので考えなくちゃならぬということを考えている次第であります。
  14. 中根康二

    中根参考人 ただいまの先生の御質問でございますが、私ども勤労者の場合にも基礎控除等を認められておるわけでございますが、事業所得の方ですとか農業所得の方の場合は、作柄の問題ですとか経費増などによって所得として最後につかまれる部分というのにかなり弾力性があって、私どもよりかなり大きくなっておることによって、いわゆる税負担で大きな開きが出てきておるというふうに感じております。先ほど申し上げましたように、私どもの場合は、五十三年以降課税最低限が据え置かれたということから、この点がますます広がっておるというふうに判断をいたしております。
  15. 鷲見友好

    鷲見参考人 先生も御承知のように、租税原則としては、有名なスミスの租税原則だとかワグナーの租税原則があるわけでありますが、スミスの場合の租税の原則というのは、中身は比例税を考えていたわけであります。しかし、この比例税は租税利益説に立った上で展開されているわけでありますが、しかし、それはスミスの当時の時代を反映しているわけでありまして、巨大企業がそれほどないという条件のもとで、そういう議論があったわけであります。  それが時代が進んでまいりますと、ワグナーの原則になるわけでありますが、あそこでワグナーが公正の内容としているのは、これは個人課税のことが内容になると思いますが、高所得者には重課し、それから低所得者には軽課または免税にするとか、あるいはぜいたく品には重く、必需品には免税あるいは軽課、そして不労所得には重く、勤労所得には軽課というようなことが公正の中身として言われているわけでありますが、私も、現代的な意味での公正というのは、そういうことを指していると思います。  日本の場合には、そういう点から見ると、かなり所得課税においてはその原則に反する点があるのではないかと考えております。企業課税について言いますと、正しい税源の選択ということになると思いますが、これは資本をかけてはならないということだと思います。それは現在でもそのとおりだと思いますが、現在、企業課税について私が不公平と言っているのは、先ほど先生もおっしゃったように、実態以上に優遇していることを指している。実態とかなりかけ離れて、費用でないものを費用にするというようなことであれば、これは不公平であると考えているわけであります。  それから、先生がクロヨン、ヤヨイについてもお触れになりましたけれども、現在、この問題はかなり大きく問題になっているわけであります。しかし、私はこの実態を正確に私自身が把握しているわけではありませんが、これは税制の問題というよりは徴税上の問題でありまして、不公正税制という場合には、先ほど申し上げたようなことが中身であろうと考えます。  ただ、クロヨン問題に関してもう一つつけ加えさせていただきますと、クロヨンが強調されますけれども、たとえば日本で所得税課税最低限が問題になる場合には、給与所得者がいつでも問題になるわけであります。しかし、事業所得者の場合には、二十九万円の基礎控除ということであります。青色でなければそれだけ、あと社会保険料が加わるわけでありますが、それにしても、これは年間四十万円以下である。こういうところを超えれば課税されているという、まさに憲法違反ではないか。  最近、何か納税者同盟とかなんとかで、給与所得者に対して減税されないのは憲法違反ではないかというような訴訟を起こしているというようなことが新聞に載っておりましたが、しかし、事業所得者課税がなぜ問題にならないのか。そうした控除の低さがなぜ問題にならないのか。実際にはそれだけでは生活してないから、それ以上の所得で食べているだろうからということなのか知りませんが、しかし、論理的に言えば、こういう控除しか置いてないことは大変問題でありまして、その結果、いま正確な数字は記憶しておりませんが、たとえば配当所得だけの標準世帯の場合には、現在約四百四十万円くらいまでは、計算上の所得ではありますけれども、事実上ゼロである。しかし、同じ所得であれば、給与所得者の場合であれば約十八万円くらいの所得税になったと思います。それが事業所得者の場合は——事業所得者給与所得者は、必要経費が控除されているのとそうでないのと一緒にすることができない点がありますけれども、それにしても、同じ所得収入であれば、これは約四十二万円くらいになるんじゃないでしょうか。そういう点を放置したままクロヨンだけを問題にすることは、私はいかがかというふうに考えているわけであります。
  16. 沢田広

    ○沢田委員 ありがとうございます。  続いてお伺いしますが、さっき肥後先生が記帳義務の問題についてちょっとお触れになりました。これは商法上の決めがあるわけでございますが、この記帳義務は、諸外国等から比較すると日本は甘いとも言われております。もっとこれは徹底してやるべきだとお考えになっておられるのかどうか、その点ちょっとお伺いします。
  17. 肥後和夫

    肥後参考人 私は、記帳義務は強化すべきであるというふうに思っております。と申しますのは、所得があれば、その所得に対して適切な税負担が賦課されるべきであるということ。所得がないのに課税をするのはおかしいわけでございますが、所得があるのに記帳が不十分であるために所得がごまかされている、こういうようなことは不公平の最たるものではないか。  そういう意味で、給与所得の場合には、クロヨンとかヤヨイとかいうお言葉が出ましたように、確実に課税されるわけでございます。事業の場合には、経費等で落とせるものもありますし、特に青色申告の場合に専従者控除のようなものがありまして、家族全部で働いている場合には、給与所得者に比べますと負担が軽くなるというような面もございます。  そういう意味で、私は、どちらかというと聖域に最近までなっておりましたけれども、特に所得がない人に課税するというのではなくて、所得があったらみんな平等に、公平に負担すべきではないか。そして、これから必要なサービス、特に福祉サービス等について、とにかく全部で負担していこうというように考えるべきじゃなかろうかと思っております。
  18. 沢田広

    ○沢田委員 きょうおいでをいただきました諸先生は、それぞれの分野で御活躍いただいているので、きょう問題となっておりまする法人税は本当の一部改正でありますし、租税特別措置法の方も一部改正でありますが、平素お持ちになっておられる御経験、御研究あるいはお考えを、この法案等にはかかわらず、ある意味においてはまた御披瀝をいただきたい、こういうふうに思っております。  大変率直な質問なのでありますが、きのうも私が質問したのですが、法人で現在百六十万、これは五十四年度決算で百六十万ある中で、六十六万がいわゆる赤字法人である。大体三分の一程度は赤字法人として、税は国税としては納めていない。地方税にいきますと、これは若干固定資産税その他が入ってまいります。これは果たして妥当なのかどうか。実態を示しているのかどうか。それにも加えて、各種引当金は当然考慮している。もちろん減価償却もある。結果的に帳面としては六十六万の法人が赤字となって出てきている。  これは、世の中の一般の庶民から見れば、さっき言ったように、二百一万五千円に抑えられている課税最低限以上の人たちが八五%にも達している。そういう状況を考えると、何かこの辺に税制の上において甘さがありはしないかという気がするわけであります。しかし、これはもうかってないということだからしようがないというのが結論なのであります。  これについて肥後先生はどうお考えになるか。中根先生は労働者立場から見てどうお考えになられるか、あるいは企業立場もあるかと思いますが。それから鷲見先生はこれらの点についてはどう判断なさっておられるのか、少しずつで結構です。早川先生には後で土地の問題だけで専門的にお伺いいたしたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。どうぞお願いいたします。
  19. 肥後和夫

    肥後参考人 いまの御質問に対して、私、実態に即して正確にお答えする十分な知識がないのでございます。  それで、結局原則論を申し上げておるわけでございまして、要するに、税法に照らして適正な所得がある場合には、それに対して当然に税金は賦課されるべきである。ところが、売り上げの正確な把握、それからその売り上げに対する経費の正確な査定というようなものが、高度成長時代には税の自然増収が豊富でありましたから、とかく手を抜くといいますか、おうように扱われてきたということが言えるのではなかろうか。と申しましても、外国に比べて実調率等では決して日本は低いわけではありませんで、外国に比べればかなり高いようでありますが、そういたしますと、やはり記帳義務を強化して、売り上げとそれから経費とをきちっと出してもらうような指導を今後強化するということは必要ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  20. 中根康二

    中根参考人 私も、先生がおっしゃいました前段の御質問に対しましては、専門でもありませんし、また、きょうその資料も持ってきておりませんが、先ほど申し上げましたように、所得というものの把握をもっと厳密にしていただきたい。そうすれば、赤字なのか納税するだけのものがあるのかということがもう少しはっきりするのではないかと思います。私たちの所得に対しても、事業を行っておられる方についても、同じような尺度で行っていただきたいということでございます。
  21. 鷲見友好

    鷲見参考人 いまの先生の御質問に対しては、ほぼ前に述べたところがお答えの中身になると思います。  これも正確に記憶してなくて、ただそういう事実があったという記憶をしているだけでありますが、たとえば法人の場合に、具体的な企業名も挙げて問題になった記憶があるわけであります。たとえば、政治献金がかなり多いのに赤字で法人住民税の三万円か四万円しか払っていなかったという事実もあるわけでありますから、そうしますと、そうした損金として認めるべきものはどういうものかということは、かなり洗い直してみる必要があるのではないかというふうに考えております。  それから、先ほど肥後先生が日本の法人税は多いというふうにおっしゃった中では、私、これもいまちょっと正確な数字を持っておりませんし、いままでそのことを特に調べたわけじゃありませんから、あるいは正しくないかもしれませんけれども、日本の場合においては法人税制が有利であった時期がかなりあったわけであります。法人成りという現象がかなり広範に行われたことのあったことを見ても、それはわかるわけでありますが、そういうために法人の数が非常にふえたということが、全体としての法人税収が多いということとかなり関係が深いのではなかろうかというふうに考えております。  必ずしも十分なお答えになっていないと思いますけれども……。
  22. 沢田広

    ○沢田委員 早川先生にお伺いいたします。  この四千万あるいは二分の一総合課税分離課税、それぞれいろいろありますが、これで土地供給住宅建設は不可能だろう、こういうふうに言われました。これは大変失礼な質問なのでありますが、土地政策としてあるべき姿というものはどうあるべきか。これは先生の見解をお伺いいたしまして、税制の上で、これは私の年来の主張なのでありますが、土地というものの価格はどんなところに行っても一定であるべきである。これは自分の努力で価格が上昇したものではない。あくまでも客観的に、駅ができたあるいはマーケットができた、銀行ができた、下水道ができたというような周りの都市環境によって上昇するものである。とすれば、相当の部分を社会に還元してしかるべきである。これは本人の努力の分に相当するものではない。こういうのが私の年来の主張なのであります。ですから、土地がどんどん値上がりしている場合には、かえって税金をだんだん重くするというのが当然必要な条件になるのではないか。これでは土地は出さない、出すためにあめを出すということの悪循環がいまの土地税制の歩んでいる道だと思われます。  私もあえて自分の見解を述べましたけれども、先生の土地政策のあるべき方向あるいは土地税制のあるべき方向についての御見解を承りたいと思います。
  23. 早川和男

    早川参考人 基本的な視点を申し上げさせていただきますと、私は、土地税制宅地供給でありますとか土地政策の中心をなす土地利用の問題とは、分けて考えるべきではなかろうかと思うのです。  地価の上昇というのは、鉄道ができますとか、さまざまな社会資本投資によって使用価値が上がり、それが経済的に反映して地価となって上昇しているわけでありますから、これを単に土地を所有しているからといって、その地主がすべて吸収するというのは、社会的正義、社会的公正に反するものであります。したがいまして、私は、それを社会的に還元していくということはぜひとも必要な制度だと思います。それは全くいま御指摘の御意見と同感であります。  しかしながら、そのことと、土地供給するあるいは住宅建設の用地を確保していくということとは分けて考えなければいけないのではなかろうかと私は思うのであります。いまも御指摘ございましたように、土地というのは地域社会の基盤でありまして、私たちの生活環境を形成する基礎をなしているものであります。したがいまして、地域社会の管理に責任を持ちます自治体が、土地の先買い権を初めとする公有化をふやして、地域社会のために土地を利用していくという権限を強化していくということがぜひとも必要でありまして、ヨーロッパでは、そういう土地の公有化ということは、西ドイツでもイギリスでもスウェーデンでもどこでもそうでありますけれども土地政策の基本的な柱としております。したがいまして、私は、農地を売ったりする場合でも現在も自治体に売る場合には若干の租税の特別措置が講じられておりますけれども、自治体に売る場合の租税対策、それから先買い権の強化というものをもっと確立する必要があるのではなかろうかというふうに思います。  それで、若干補足させていただきますと、私は、公共住宅を整備していくことが必要であるということを先ほど申し上げましたけれども、これは自治体が必ずしも全面的にすべてをやる必要もないのではないかと思うのであります。西ドイツの公共住宅というのは、社会住宅と申しまして、民間が所有している土地住宅建設に利用していくために無利子の金を融資しております。建設に必要な金額の半分以上を原則として無利子とする一方で、非常に厳しい住宅の基準を設けます。それによって低家賃の住宅供給していくということであります。  もう一つは、これも土地政策の一環と考えるべきだと私は思いますけれども、日本では、住宅を事務所に転用していろ例が非常に多く存在いたします。しかしながら、たとえば西ドイツでは、住宅を他の用途に転用いたしますと、一万マルク以上、百万円以上の罰金と即刻退去ということが法律に制度化されております。また、フランスでも用途別容積率ということで、単に土地に限らず、空間の用途を制限しております。二〇〇%の容積率の場合には、五〇%まで事務所だ、残り一五〇%は住宅であるというふうに用途別の容積規定をしないと、これは郊外に幾ら住宅を建てましても、都心の住宅がそういうふうに転用していきますと、住宅不足はいよいよ著しくなるわけでありますから、こういうことも広義の土地政策として含めていくべきではなかろうかと私は思います。  以上であります。
  24. 沢田広

    ○沢田委員 これは諸先生に一言ずつお伺いいたしますが、日本のこれからの家族構成というか家族形態というものが、いわゆる核家族化へ准んでいくのが正しいのか、そうではなくて、同居していく、お年寄りを含めまして家族構成がだんだん大きくなって世帯がつくられていく、大きくなってというのは、いわゆる核化を防いでいく、そういう方向がとられることが望ましいのか、これは一言ずつなんでありますが、先生方は、どういうふうにこれからの社会が、親子は全部分離して生活をしていくという形態が今後は望ましい、そうじゃなくて、年寄りと子供というものは一緒に同居していくことが望ましいというふうに、どちらかと言われたならば、どちらを選択なされるか、一言ずつ諸先生に順次お答えいただきたいと思います。
  25. 肥後和夫

    肥後参考人 婦人の社会進出がますますふえていくという傾向の中で、核家族化はますます進行するであろうと思います。それから、所得の高い人といいますか経済的に余裕のある人は、むしろ親子は別れて住んで、近くでときどき会えるというようなことを好むのではなかろうか、そういうふうに思っております。
  26. 中根康二

    中根参考人 私は、可能であれば親子が住むような環境が整備されたらいいではないかというふうに考えております。
  27. 鷲見友好

    鷲見参考人 私は、それぞれの世代が独立しながらも、できるだけ近いところで住めるというのが望ましいというふうに考えます。
  28. 早川和男

    早川参考人 同居、別居は、私は選択できることが必要だと思います。どちらかというふうに私は一概に言いたくございません。同居したければ同居できる。現在は家が小さいために核家族化を強制されております。一緒に住もうにも住めない。これは各種の調査でもそういうふうに出ておりますが、どちらか選択して、同居もできるし別居して生活もできるということが望ましいと思います。
  29. 沢田広

    ○沢田委員 若干前提でお伺いしたのですが、とにかく高度成長時代に二DKがほとんど住宅のシビルミニマム的な発想でつくられてきた。子供が大きくなると一人部屋を要求するようになってきた。結果的に三DKなり四LDKなりというものが今日は国民の要望の一つの大きな要素になってきた。そういうことで、核家族化になってみても、買いかえがどうしても多くなる、あるいは一部屋増築が必要になってくる。これがいまの現状だと思うのです。  早川先生にお伺いします。これは非常にとっぴな、建築基準法上の問題なんでありますが、日本の住宅の建蔽率の立て方というものが都市構造上果たしていいのかどうか。一戸建てであろうとマンションであろうと、これは同じなんであります。  これは、若干私の見解を述べておかないとお答えできないかと思うのですが、容積率は別としまして、建て面積、床面積は厳しくする、空間を大きくするという必要性はあるのじゃないか。これは緑対策も公害対策も入りますし、植樹対策というものも含めるのでありますが、あるいは大根をつくったり菜っぱをつくるという面積も含まれるかもわかりませんが、いずれにしても、建て面積というか床面積は相半厳しく小さくする、これの必要性がある。容積卒はそれほど厳しくしなくてもいい。これは日照の問題、日影の問題は当然起きてくるわけでありますが、しかし、建て面積を小さくすれば、高さは七階になろうが八階になろうが、ある意味においては相当空間を持っていればその部分の被害は少なくなる。  いまの建築基準法では、容積率で規制をして、面積いっぱいに床面積を使っていく可能性が強い。そのことはかえって植樹を抑えていったり、あるいは美観を損ねたり環境を悪くしていく、こういうことになるわけでありまして、専門であられる先生でありますから、植樹の問題はいま特に触れませんけれども、空間をより多くしていくという都市構造、そういうものが住宅建築の中に必要なんじゃないか。別荘地帯では相当、四割とか三割に制限いたしておりますが、非常に国土の狭い日本であっても、このことは必要になってきているのじゃないか、こういうふうに思いますが、早川先生はどうでしょうか。
  30. 早川和男

    早川参考人 お答えがちょっと外れるかもしれませんが、いまの御質問は、建築基準法の改正前は建蔽率は三十平米引いてから六割ということになっておりましたけれども、現在は三十平米引くというのをやめたものですから、非常に過密住宅地ができているわけであります。そういう意味で、建蔽率をもっと厳しくしていくという点には私は賛成であります。  しかしながら、後の問題は若干もう少し検討しなければいけないことと思いますが、その際に大事なことは、先ほども申し上げましたように、容積率全体の前に用途別容積率ということを規定しないといけないと思うのです。日本は混合地域制でありまして、たとえば住居地域といいましても、ピルも建てば商店もできる、何でもできるわけであります。まして商業や準工業になりますと、これは何でもできます。  アメリカでは、用途地域といいますと六十六種類に分かれていたり、西ドイツ——もう諸外国の例は挙げませんけれども土地の利用から空間に至るまで全部用途が決まっております。先ほどもフランスの例で申し上げましたけれども、用途別の容積をつくらないと、力のあるものが、その力のあるものといいますと営業的利用でありますけれども、営業的利用のできるものが空間を利用していくという制度にいまなっているわけです。それを建築基準法あるいは都市計画法で変えていかないとだめなんではなかろうかと私は思います。その次にいま御指摘の建蔽率、そして容積率の問題も取り上げていくべきではなかろうかというふうに思います。
  31. 沢田広

    ○沢田委員 質問が逆になったわけなんですが、日本の用途地域指定というものは、ある意味においては非常に甘い面もありますし、それから都市計画が百年計画だということになっておりますから、その間はきわめて雑居の形態を示す。公共の福祉に反せざる限りという憲法の条文はあるわけでありますが、その条項の適用というものが、言うならば投資資本が追いついていかないという現状でこうなってきているんだろう。これは何も自民党を弁護しようと思って言っているわけじゃないのでありますが、いわゆる地方財政がそれだけ潤沢でないというところに原因があるんだろうと思うのであります。それを前提にして、実はそれが適用されるとすればということで言ったわけです。  なお、先生にもう一つお伺いしたいのは、日本の国土の農耕面積あるいは畜産面積、それからいわゆる可住面積、これはまあ白書等で大ざっぱに見る程度なんでありますが、果たして現状でこの一戸建てがどの程度国民の何割ぐらいを充足できるのであろうかということが一つ政策上課題になると思うのですね。全部一戸建てを希望していけば、これからの日本の農業それ自身がとにかくどうにもならなくなっていくであろう。そうしますと、可住される面積というものは、おのずからある一種の限定されてくるものがある。その点について、これは肥後先生も先ほど若干触れておられました。それから早川先生、ひとつお答えいただきまして、中根先生はお立場の違いもあるかと思いますが、ひとつそれについての御見解を、これは達観的な御見解で結構ですからお願いをいたしたいと思います。  それでは早川先生からお願いいたします。
  32. 早川和男

    早川参考人 これからの日本の住宅は、御指摘のように、平面的な一戸建ては困難かと思います。空間を高度に立体的に利用していくということは不可避だと思います。したがって、公共住宅を中心に立体的な住宅供給が必要であると思います。ただし私は、職住近接という意味から、都心に建てていくということと同時に、郊外でも職場を誘致して一体化した高度利用が必要だろうというふうに思います。
  33. 肥後和夫

    肥後参考人 方向としましては、やはり早川先生の言われたように、公営かどうか知りませんが、高層化するということよりほかには、広いスペースをとって、しかも環境、緑地を十分にとるということはむずかしいのではなかろうかというふうに思っております。
  34. 中根康二

    中根参考人 私も、やはり現在の土地の実情からいきますと、高層化はやむを得ないのではないかと思います。ただ、余り環境を考えないで高層化いたしますと、やはりいろいろな問題を生じてまいります。  機会がありまして、西ドイツの高層住宅を見たわけでありますが、ノイエ・ハイマートなんかが行っております高層住宅群を見ますと、やはり十分な緑地、空き地等を持っておりますので、そういう方向へ持っていく形での高層化ということにするのであれば、ぜひしていただきたいという希望を持っております。
  35. 沢田広

    ○沢田委員 そうなりますと、農家なんかは別といたしまして、一部の特権的な富裕階級は一戸建て住宅がある程度、大都市の中でも目白邸みたいなのができる。一方ではマンションの中に居住しなければならぬ。富の格差といいますかコンプレックスといいますか、あるいは権力意識というか、そういうものが社会の構造の中にどうしても生まれてくる可能性がある。  そうしますと、ある一定の区域はどっちかに一本化していかなければならないのではないか。そういうところは通勤には若干遠いけれども、そこは一戸住宅である。都市の真ん中に住む場合はもうマンション以外は認められないとか区分しませんと、いわゆる社会の不公正あるいは正義感というようなもの、不満感というものに連動してくるおそれがある、こういうふうに私にはちょっと考えられるわけですが、その点は早川先生はどう、あるいは中根先生は労働者立場でどういうふうにお考えになられるか、お伺いいたしたいと思います。
  36. 早川和男

    早川参考人 これは短い時間でなかなか言い尽くせないと思いますが、先進国の住宅地計画、都市計画を見ますと、先ほども言いましたように、二十二でありますとか六十六という用途地域を決めまして、ここは二階建て地域、ここは四階建て地域、ここは独立地域というふうに決めているわけであります。それによって整然とした町並みをつくるというのが都市計画の原則になっております。私は、それは必要なことだと思います。  ただ、みんなが一律に、たとえば中野区の住民は全部四階建てに住むとか、ちょっとそれはなかなかそうは言いがたいのではなかろうか。やはり場所だとか環境といった面から考えていかないといけない。ただし、独立家屋に住む人は非常に大きな家だけれども、中高層に住む人は小さいというのではいけないわけで、同じような居住性を持たないといけないというふうに思います。  それから、ちょっと先ほどの話で申し忘れたことがあるのでありますけれども、高層住宅にしていくというのは、これはかなり慎重な検討を要するのであります。ヨーロッパでは、いま高層住宅を禁止している国がどんどんふえております。これは老人や子供は孤立化するということです。  それからもう一つは、高層住宅をつくる、中高層住宅にする場合には、後で社会的に管理し建てかえることのできるものが必要でありまして、現在のようなマンション形式になりますと、これは、ある者は維持管理する能力を持っておりますけれども、ある者は、たとえば老人などはできないということになりますと、その建物は老朽化せざるを得ない。非常に社会的な問題を噴出させます。  ですから、中高層化するに際しては、住宅というのは社会的に所有し、社会的に管理していく、その中で居住者が使用していくという制度がなければ、中高層化していきますと、現在非常に問題になっておりますけれども住宅の管理問題というのが社会的に爆発的に起こってくるかと思います。そういう点の注意が必要だと思います。
  37. 中根康二

    中根参考人 私も、いま先生がおっしゃいました方法は大変望ましいことではないかというふうに考えております。
  38. 沢田広

    ○沢田委員 次に、住宅の問題はもう一つで終わりますが、結果的にいま三LDKがいわゆる国民のナショナルミニマム的な水準になっている。それに入るためには、どうしても三千万以上の金が必要になってくる。まあ三千二、三百万の金がどうしても必要になる。これはいまの勤労一般サラリーマン所得では非常に遠い夢みたいな条件であります。  では、三LDKを満足させるための必要な要件はどこにあるんだろうか。何と何だと三つぐらいを挙げていただけば結構なんでありますが、その三LDKを満足させる要件を、どこに当面の問題としてとらえていくことが必要なんだろうか。あるいは税制の問題もありましょうし、あるいは違った法律化の問題もあるでしょう。あるいは、いわゆる五分五厘よりもっと下げた融資という問題もあるだろうと思いますが、いずれにしてもその程度が、国民が取得できる条件、それは何と何に問題があるか、これはひとつ住宅の問題にお触れになった先生、肥後先生、中根先生、鷲見先生もひとつ一言ずつ、この三LDKを満足させるべき方法はどこにあるか、これを三つずつの要件で結構ですが、ひとつちょっと、思いつきで結構です、お答えいただきたいと思います。
  39. 肥後和夫

    肥後参考人 私は、住宅問題についてなかなかそこまで突っこんで考えておりませんので、こういう非常に公的な責任の重い場所で答えることは非常に軽率ではないかと思うのでございますが、ただ、いま御質問になられましたのは、マンションの分譲を……(沢田委員一般的にです、一戸建ても同じくらいです」と呼ぶ)  要するに、自分の持ち家として取得するのにどうしたらいいかということでございますが、住宅については、所得に関する不公平だけじゃなくて、世代間の不公平がありまして、年輩の者は、普安いときに手に入れた一戸建てに住んでいるとか、わりに広いマンションに住めているわけでございまして、これからの若い人は、自分でマンションを買うというよりも賃貸しというような形にだんだんなっていくんじゃないかというような気がしております。どうもお答えにならなかったかと思います。
  40. 中根康二

    中根参考人 私も専門ではありませんので、十分なお答えにはならないかとも思いますが、私は、やはり土地政策に尽きるという感じを持っております。
  41. 鷲見友好

    鷲見参考人 私も全くこれは本当に思いつきでしかないのですが、基本的には持ち家主義というものはもうだめなんじゃないかというように考えます。  これは、先ほど早川先生もおっしゃったけれども、公的な優良な住宅をいかにして供給するかということが、住宅政策の基本にならなければいけないんじゃないか。持ち家では東京ではもう個人の庭つき一戸建てをあきらめるということは、五年くらい前から東京都は公的に宣言しているくらいですから、まして、もし持てたとしても、先生はいまかなり安い水準をおっしゃったわけですが、実際はもっと高い。事実上不可能か、そのために生活のあらゆる便利さを犠牲にして家族ともに住宅だけにかけるというような、実に人間として、家を持ったけれども惨めな生活にならざるを得ない。したがって、いま問題は土地政策を、先ほど早川先生おっしゃったように、地方自治体の先買い権とかそういうものをきちんとしていくと同時に、基本的には持ち家政策ではない方向へ住宅政策を転換していかなければいけないのではないかと思います。
  42. 早川和男

    早川参考人 私も同じ意見でございまして、公共住宅中心にやらなければ三LDKは実現しない。マンションでは三LDKといいましても三畳とか四畳半では仕方ないわけでありまして、社会的に公共的にやらないと実現しないと思います。
  43. 沢田広

    ○沢田委員 時間がなくなって、ちょっと肥後先生、思いつきで言われたのですから詰める話じゃないですよ。たとえば、三LDKのマンションを借りますと、どうしても十万円くらい家賃がかかりますね。いまの給料で十万円を払っていける水準というのは、どの程度なんだろうかというふうに考えますと、エンゲル係数三割削ったと仮定しましても、相当な高給者でないと十万円の賃貸料を払って住めるという条件はないと思うのですね。  ですから、たとえば賃貸マンションにしても、昔のように地代家賃統制令というようなものでもつくらぬと、これはとてもじゃないが、一般サラリーマンにはこれまたほど遠い夢物語になる可能性がある。そこの点は、先生も賃貸と言われたのはそこまで考えてのことじゃないでしょうが、そういう必要な政策が伴わないと、そこへいけないという条件があるんじゃないかと思うのです。これは肥後先生と早川先生にお答えいただいて、次に移りたいと思いますが、ちょっとお願いいたします。どちらからでも結構です。
  44. 肥後和夫

    肥後参考人 この点につきましては、要するに、土地が高くなり過ぎたために建物のコストが高くなり過ぎて、したがって賃貸住宅でも、いま御指摘のように十万円は払わないと、公団でさえそれに近い家賃を払わないと住めない。これはやはり非常に社会的に困った問題ではなかろうか。これをいまどうしたらいいかといっても、すでに地価は上がっておりますし、それから一般の給料ではそれに十分追いついていないわけでございますから、したがって非常に困った状態が当分続くのはどうも仕方がない。やはり何とか直さなくちゃならないんですが、時間をかけなければ、なかなかすぐに対応策が出てこないんじゃなかろうかというような気がしているのでございます。
  45. 早川和男

    早川参考人 日本は、住宅に対する国家的な見地からの財政援助というものは極端に貧困であります。こういう状態のままで低家賃の三LDKをつくるということは不可能なわけでありますね。やはり超低利融資を住宅公団にせよ民間の企業にせよ融資して安くできるという住宅建設の体制をとらないとだめで、先ほど申し上げましたように、西ドイツの場合は戦後無利子の金を融資してきているわけでありますし、イギリスでは戦後十年間は毎年建つ住宅の八割を公的住宅でやってきているわけであります。  それからもう一点は、私は、必ずしも住宅の家賃がむちゃくちゃに安いという必要もないと思うのです。イギリスの公共住宅も決してそう安くありません。ただし、俗に六分の一と言われておりますけれども収入の六分の一を超えると、レートリベートといいまして、政府が家賃を返してくれるわけであります。それから、それでは不公平だということで、民間の借家に対しても新しい家賃統制をしまして、その人たちには住宅手当を渡すということをやっておりますが、そういう措置がなければ、いろいろ工夫というか頭を痛めても不可能で、そういう財政的な措置が必要かと思います。  それからもう一言ですが、企業が現在のように持ち家をたくさん建設するために土地を競合して買っておりますと、これは需要と供給関係で上がるのは当然であります。したがいまして、自治体の先買い権を徹底的に強化して、長期土地保有は自治体だけしか買えない、民間企業が事業の目的のために事務所で使うんだということ以外は、いまのデベロッパーがやっておりますような長期保有の土地はやはり改めるべきではなかろうか、そうすれば地価の問題もかなり様子が変わってくるんではなかろうかというふうに私は思っております。
  46. 沢田広

    ○沢田委員 最後になりましたが、いま実はわれわれ一兆円減税を政府に対して要求をいたしているさなかであります。  これは時間がありませんから、報道で御存じになっておられると思うのですが、ともかく扶養家族控除を三万円引き上げよう、それから給与所得控除について、百五十万を百八十万、これは四割の分でありますが、三割の分を六十万引き上げて、二〇%の分は六百万で据え置き、一千万円は一〇%据え置きということ、基礎の五十万を六十万に上げていこう、これはクロヨンとかトーゴーサンと言われております関係の分に対する是正を含めて要求しているわけであります。  先生方、この税の関係でおいでになっていただいたわけでありますから、最後に、今日の景気あるいは庶民感情あるいは国民の政治的な要求、そういうものを総合的に判断をされまして、これはむべなるかな、非常によろしい、まあしようがないのかな、まあ無理だな、どういうふうに御判断なされるか、一言ずつお答えをいただいて私の質問を終わりたいと思います。先生、並んだ順で申しわけございませんが、どういうふうにお考えか、ひとつ本当に率直な御見解で結構でありますから、お願いいたしたいと思います。
  47. 肥後和夫

    肥後参考人 私は、無理であろうかなと思っております。むしろ公債を減らすことを先になさるべきだ。したがって、住宅の補助のお話が出ましたが、そういうような給付をいまの税負担ですることはとてもできなかろうということです。  それからもう一つは、所得控除を上げるというような減税の仕方が果たして中低所得層に有利な減税の方法であるのであろうかなというようなことを疑問に感じております。
  48. 中根康二

    中根参考人 ぜひ実現していただきたい、かように考えております。
  49. 鷲見友好

    鷲見参考人 私も、ぜひ減税は行うべきだと考えております。ただ、いま肥後先生のおっしゃったように、所得控除というのは、八千万超のところだと七五%の部分が税金が安くなるわけですから、やはり税額控除にした方が、先ほど述べた意味での公正の考え方により近くなるのではないかというふうに考えます。
  50. 早川和男

    早川参考人 私は、税の専門家ではございませんけれども、一人の庶民としては、所得税が高いということを最近痛感しております。
  51. 肥後和夫

    肥後参考人 私は、逆らうようでございますけれども、むしろ、ほかの十分に取り足りてない税金をきちっと取る努力をするのが先じゃなかろうか、そう思っております。
  52. 沢田広

    ○沢田委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  53. 森喜朗

    森委員長 柴田弘君。
  54. 柴田弘

    ○柴田委員 どうもきょうは、各参考人の先生にはお忙しいところ大変御苦労さまでございます。時間が少ないので簡単にお聞きしますので、どうかひとつ簡潔に御答弁をいただければと思います。  一つは、先ほどもお話がありました所得税減税のことであります。  御案内のように、いま所得減税は各界各層の国民的な要求になっていると私も判断をしている一人でありまして、景気回復のため、あるいは不公平税制是正のため、あるいはまたいろいろな意味から、減税が要求をされているわけであります。政府は、こういった私ども減税要求に対して、一つは財源がない、それから一つは個人所得所得税負担割合あるいは課税最低限の国際比較というものも持ち出して、まだ日本は諸外国に比べて低いからその必要はないんだ、こういうふうに否定をしているわけであります。  しかし私は、減税問題を論ずるのは、ただかたくなにそういったことで否定するのではなくて、やはり一つには減税の可能性を探っていくという問題あるいはまた中長期の展望に立って減税の政策的な効果というものを探っていかなければいけない。本年の一月初頭に日本経済新聞社が、減税効果ということで経済成長率との関係で一つのモデルケースを発表しております。民間ですらそういった努力をしておるのに、これだけの国民的な要求に対して、また、いまの社会情勢に合わせた減税要求というものについて否定するということはいかがかと私は思うのでありまして、やはり一兆円減税に対しては、少なくとも政府は財源対策を初めといたします具体的な諸施策というものをここで明確に示して、そして国民の選択というものをいまここで求めていかなければいけない、こういうときにいま来ているわけであると思います。  この辺について私は、肥後先生、中根先生、鷲見先生の三先生に対しまして、一言ずつで結構でございますけれども、政府の今後の姿勢というものについてひとつ御意見を賜れれば、こういうように思うわけであります。よろしくお願いします。
  55. 肥後和夫

    肥後参考人 御指摘のとおりでございまして、いま私どもが当面している選択は、公共サービスを減らして減税をするか、それともむだなものはともかくとして、たとえば社会保障関連の年金関係の国庫補助金が足りないとかあるいは国民健康保険の補助金が足りないとかいう形で、そしてそれを、年金積立金の一応取り崩しという形の借り入れ、実質は借り入れであろうかと思いますが、そういう形でありますとか、あるいは十二カ月の負担を十一カ月分にするとか、そういう形で結局は繰り述べているわけでございます。  ですから、現在の福祉水準を維持するのに金が足りないで、しかもいろいろなやりくりで、借り入れでごまかしているような状態でございますから、そうしますと、福祉所得税というものを考えました場合に、いまの福祉水準を維持するあるいは国民経済に見合う福祉水準を維持するために税収を確保するのか、あるいは調整インフレをやるのか、あるいは思い切ってサービスの水準を削るのか、その辺の選択を国民が認識されて、そしてお決めになるべき段階なのではなかろうか、こう思っております。
  56. 中根康二

    中根参考人 私は、冒頭意見の中で申し上げましたように、やむにやまれぬ気持ちできょうから国民の理解を得るための行動に移したわけでございまして、きょうこちらに参りましてから、野党の方々でつくり上げられました一兆円減税共同要求案を見せていただいたわけでありますが、財源としても何とかめどがつくというようなものを見せていただいておりますので、ぜひとも実行していただきたいというのが気持ちでございます。
  57. 鷲見友好

    鷲見参考人 私も、先ほどから申し上げているように、少なくとも一兆円の減税はぜひ行っていただきたいと考えております。  減税する財源がないといって、ここのところ五年間所得税減税をされてきていないわけでありますが、その結果、五十六年度だけを見ましても、いまのところまだはっきりしておりませんが、二兆円とも一兆円ともあるいは一兆五千億円とも言われる収入不足が生じようとしているわけでありますから、やはり現在のこの消費不況というのを打開することが、収入をふやす意味でも必要になってきている段階でありますから、ぜひ今年度はその程度減税はしていただきたいと考えております。
  58. 柴田弘

    ○柴田委員 どうもありがとうございます。  続いて、中根参考人鷲見参考人にお伺いしていきますが、不公平の是正という観点、税制改正という観点といいますかね、最近総理府が世論調査をいたしました。それで七三%の人が不公平感を持っている、サラリーマンでは八一%の人が税に不公平感を持っているという結果が出ている。  それから、あわせて国税庁も調査をいたしました。その結果、国税庁はクロヨンはないということを言っているわけでありますね。しかし、制度上問題があるのではないかというわけですね。国税庁が言っておりますのは、たとえば収入より課税対象となる所得を算出する過程を見てみると、源泉徴収でごまかしようのないサラリーマンに対して、自主申告の自営業者は必要経費が認められておりますので、所得を調整することができる。また、実質的には個人企業であっても、法人組織にしたり青色申告の専従者給与制度を利用して家族にも高額な所得を支給し、所得を分散することなどをして、世帯当たりの税金を節約することができる。いわゆる合法的な節税といいますか、この点について、私はきちっと合法的にやっていらっしゃれば問題がないと思います。しかし一方、サラリーマンとの間に、こういったことからいわゆる税負担の格差が生じているのではないだろうか、私はこんなふうに思うわけであります。  ですから、この際こういった制度上の問題、所得の分散ができる、経費計算などの制度面に格差があるという状況からかんがみまして、サラリーマンに対する給与所得控除の引き上げですとか、あるいは二分二乗方式といいまして、これは説明するまでもないと思いますが、収入の半分を妻の所得とみなして累進税率を緩和して税負担を軽くするような方式ということでございますが、こういったこと、あるいはその他これ以外に、こういったふうにしていけばこの制度というものも是正されますよ、格差というものも是正されますよ、こういうようなものがあればひとつお示しをいただければ、こんなふうに思っているわけですけれども、いかがでしょうか。
  59. 中根康二

    中根参考人 私ども、具体的にこのようなというものを持っておるわけではございませんが、先生がおっしゃいますように、私ども日常の生活の中で、事業所得の方とわれわれ給与所得の者との間に、やはり所得というものの把握に矛盾を感ぜざるを得ないわけであります。  たとえば保育園なんか、所得割による保育料のようなものを払う場合、雨が降れば自動車で送られてくるような家庭の負担勤労者よりも低いという現実を見てみますと、やはりその辺に矛盾があるのではないかというようなことしかわからないわけでございますが、それを一度きちっと改めてみていただきたいというのが私どもの気持ちでございます。
  60. 鷲見友好

    鷲見参考人 先ほど申し上げましたように、一番問題なのは、いまの問題に関して言えば、事業所得者課税最低限がそんな低いところで、それでそれを是正しないで所得の把握の不公平だけを問題にすることは正しいかどうか。  それの実態がどうかということは、先ほど申し上げたように、私は詳しく知っているわけではありませんが、年四十万円社会保険料を含めてあれば所得税がかかるというようなことであって、もし本当にそこまでの所得しかない人がいるとする、あるいは四十五万の所得しかない人がいるとする、何らかの病気その他で借金してでも生活しなければならないこともあるかもしれません。それにも所得税をかけるというようなこと、そのことがなぜ問題にならないのか、先ほど申し上げたように、私はそのことが不思議なわけであります。  事業所得者のクロヨンが問題になりますけれども法人税でも、これは先生方御存じのように、航空機疑獄で問題になった企業個人で脱税と関係のなかったものはほとんどいない。しかも、それは億単位の脱税である。国税庁の資料によりましても、法人の場合の脱税の実調率、これは同じでしょうけれども、増差率といいますか、これは非常に多いというような数字も出ておりまして、先ほど言った制度上の不公正に加えて、そういうのがあるのをきちんとすることが必要である。現実にそういうデータも出ているわけですから、それをしないで、本当にそれほど多くの所得でないところだけ問題にするのが、しかもそういう実態はないというふうに政府もおっしゃっているような問題を、なぜそこだけを問題にしなければならぬのか、そこのところが私がどうも理解できないわけであります。
  61. 柴田弘

    ○柴田委員 あと時間がわずかになりましたので、最後に、早川参考人住宅投資の問題でお聞きしたいと思います。  御案内かと思いますが、経企庁の昭和五十年から五十六年度のデータを見てみますと、要するに、政府が見込んだ住宅投資、これは実質あるいは名目の両方でございますが、政府見通しというものを達成していない。しかも今回昭和五十七年度は、名目で一四・三%、実質で一〇・四%、十七兆七千億の住宅投資を見込んでいるわけでございます。果たして今回のこの住宅投資が政府の見込みどおりいくかどうか、私は正直言いまして非常に危惧をいたしております。  この辺のところを参考人にお聞きしたいわけでありますが、五十五年度の場合あるいは五十六年度の場合、いろいろと見てまいりますと、伸びなかったのは、一つは住宅の地価上昇の問題がある。それから一つは、いわゆるサラリーマン階層を初めとする所得伸び悩みがあった。こういった二点が、住宅伸び悩みということになっているわけであります。そういった中で、果たして、今日の政府の住宅政策といったもので五十七年度この目標が達成されるであろうか。  しかも、経企庁が国民生活白書の中で言っております住宅取得能力も低下をいたしておりますし、あるいは出生率、婚姻件数の低下といったこと、あるいは大都市への人口流入というものが年々減少いたしておりまして、Uターン現象というのがいま社会現象として起こっている。  こういったいろんな条件を考えてまいりますと、果たしてこの政府目標というものが達成できるであろうか、非常に危惧をするとともに、今回政府は、土地税制の緩和ということで土地供給を非常に期待をいたしているわけでありますが、私は、下手をすると不労所得の単なる優遇策に今回の土地税制というものが終わってしまう懸念があるのではないかという心配をいたしておるわけであります。  そういった心配、果たして目標が達成できるであろうかどうであろうかという点と、もう一つは、住宅投資というのは今日の景気を浮揚していく一つの大きな柱である、こういうふうに私は考えるわけでありますが、そういった観点から、いま政府としてとり得る抜本的な土地対策なり住宅対策というものが何かあれば、ひとつ先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。  それをもちまして私の質問を終わりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  62. 早川和男

    早川参考人 結論から申し上げさせていただきますと、現在の住宅政策の体系のもとでは、百三十万戸、一〇・四%の住宅投資は無理だろうと私は思います。  そのことは、すでに第三期住宅建設五カ年計画、昭和五十一年度から五十五年度の経験からも統計的に十分出ておりますし、最近の持ち家建設の停滞、これは、御指摘のように所得伸び悩み、価格の上昇ということによって、その延長線につながる政策のもとでは不可能だと思うわけであります。これに対しては、所得が回復するであろうということとか、あるいは融資額をふやせばいいのではなかろうかということで、今度の住宅金融公庫の融資額も若干ふやしているわけでありますが、こういうことでは、ミサイルの戦争の時代に鉄砲玉を大量生産するというような政策ではなかろうかと私は思います。  私は、職業柄、デベロッパーの団体の方々ともつき合いが非常に多いわけでございますけれども、この方々は、融資額をふやすとか所得伸びるということを期待するということではもはやだめだ、値段が余りにも上がってしまったということは、今日のわりあい良心的なデベロッパーの人たちの口をそろえておっしゃることでありまして、私は不可能であろうと思います。  それから、景気浮揚もしたがいまして不可能であります。土地住宅投資が吸い上げられるわけでありますから、現在の持ち家、個人の力量に依存した住宅建設では、住宅建設の戸数達成も景気浮揚も不可能だと私は思います。百万戸もむずかしいのではなかろうかというふうに思います。  これは、何度も繰り返しますが、公共住宅を中心にやらなければいけない。それには、じゃ土地をどうするのかということでございますけれども、その公共住宅が建ちやすい土地政策を改めて本格的に検討していかなければいけない。そういう政策に対する検討というのは、ほとんどなされていないのではなかろうかというふうに私は思っております。
  63. 柴田弘

    ○柴田委員 どうもありがとうございました。時間が参りましたので、これで終わります。
  64. 森喜朗

    森委員長 和田耕作君。
  65. 和田耕作

    和田(耕)委員 きょうは長時間にわたりましていろいろと教えていただきまして、ありがとうございます。  国会というところはなかなか厳しいところでございまして、数が物を言うところで、多数を占めた自民党が政権を独占するということは御案内のとおりですが、こういう審議でも、社会党さんは一時間、私どもは十八分ということで、十八分ではなかなか貴重な御意見が聞かれないということになりまして、要点だけの御質問になると思います。よろしくお願いいたします。  まず、この二つ法律案、これは、今年度の税収が非常に落ち込んだ、この歳入欠陥を何とかカバーしなければならないという政策の目的を持っておるわけなんですね。その中で、このような問題を考える場合にも、先ほどから同僚委員の人たちが問題にしておりますように、不公正な状態を是正するという観点は失ってはならない、私はこういうふうに思う一人であります。  不公正な税制ということになると、いろいろのことがありますけれども、大ざっぱに言って、お金持ちで余裕のある人にはこの際少しはしんぼうしてもらって、そして生活の苦しい勤労君には援助をするという観点になるわけだと思うのですが、そういう面からこの二つの法案を見てみると、そういう面が非常に欠けておるのですね。ただ何とかして税収を上げる、増税の面もなきにしもあらずですけれども、いろいろな工夫をして税収を上げるということと、何とか景気の浮揚を図りたい、これは宅地に対する政策に出てくるわけですけれども勤労者そのものに対しての政策としてはごくわずか、つまり財形問題だけなんですね。こういうところに、全般としての非常に不十分な点があると思います。  一つ一つお聞きすることができないので残念でありますけれども、財形の問題は一番最後に御質問することにして、先生方は、この段階で景気を浮揚させなければならないということは、いろいろな方法について意見の相違はあっても御異論はないと思うのですが、いま問題になっておりますのは、この段階での景気浮揚というものを考えた場合に、減税というものが大事だ、こう野党あるいは組合の人たち、私どもも考えている。もう一つは公共事業の前倒し、これは必ず来年になって四条公債、建設国債を増発することが予定されるわけですけれども、公共投資というものを重視すると減税はできないという、二つの大きな考え方の違いがあるわけですが、現在の段階で景気を浮揚するということをテーマにして、どちらが効果があるのか、どちらがいろいろ問題点を含んでおるのか、この二つの問題について、ひとつ先生方の御意見を簡潔にお伺いしたい。肥後先生からひとつ。
  66. 肥後和夫

    肥後参考人 いまの御質問は、減税と公共事業の増加と、どちらが景気浮揚に効果があると思うかという御指摘であったと思うのですが、私は、減税につきましては、一般国民が将来に対する漠然とした不安感を持っており、それから所得が当面そうふえないというふうに考えている状況では、すなわち長期期待所得がふえない、そういう状況では、減税したら、減税は貯蓄に回ってしまうのではなかろうかと思っております。  それから公共事業については、それはふやすにこしたことはありませんが、現在、その選択の裁量の幅はきわめて小さいのではないか。とにかく公債を減らすのが先決だということであれば、選択の幅が小さいのではないか。したがいまして、財政が動く余地というのは非常に小さい。  所得税減税も、大幅にやればそれは効いてくるかと思いますが、今回の五十七年度予算案を見ますと、大体主な支出は全部、全部というと語弊がございますが、相当大幅に五十八年度に繰り延べていて、五十八年度に相当な支出増加を予定されているような状況で五十七年度に減税をした場合に、五十八年度どうなるかという見通しが非常に厳しいと私は思います。  したがいまして、私は、民間の景気の年度後半からの活発化というものを期待するよりほかない。たとえば在庫投資が回復しつつあるとかあるいは石油の値段がかなり下がる、石油の値段が上がったために景気が悪くなったわけですから、石油の値段が下がるということは、きっと民間にいい影響を与えるに違いない。あるいは金利も、アメリカの高金利が若干おさまってきますと、日本も、現在も若干下げましたが、金利政策に若干選択の幅が広がるだろう、そういうようなことによるところの景気の活発化というものを期待する。むしろ、財政面ではいまはじっとがまんをして、給付と負担との整合性を確保するように努力をすべき時期ではないか、そのように感じております。
  67. 中根康二

    中根参考人 景気浮揚につきましては、先生がおっしゃいますように、公共投資も大変重要なことだと思いますが、NHKが行いました企業に対するアンケートによりまして、なるべく早く本格的所得減税を行うべきだという数字が、五十六年九月からことしの一月の間に十九社が四十社になったということを言っておりますが、その理由として、やはり企業としても消費を活発にしてほしいということを言っておりますし、私どもも消費活動というのは大切なものだというふうに考えております。
  68. 鷲見友好

    鷲見参考人 先ほどから私も申し上げておりますように、現在の不況の一番の原因はやはり個人消費が伸びないことだということ、これは周知の事実でありまして、政府の中でもそういうことを強く主張している方もおられるわけであります。  そういう状況ですから、ここで減税をしないと、先ほど申し上げたように、税収の不足を一層加速化することにさえもなるわけであります。したがって現在は、やり方はいろいろあると思いますが、かなり大幅な減税はぜひ必要であるというふうに考えております。
  69. 早川和男

    早川参考人 私は専門でございませんので、どちらが景気浮揚により寄与するかということに対して、ちょっとお答えできないかと思います。  ただし、公共事業の中でも住宅建設は、鉄やセメントのような基幹建築資材から畳、建具それから布団など非常にすそ野が広く、一九三〇年のニューディール以来、住宅建設は景気浮揚に寄与するところが非常に大きいというふうに今日も言われてきております。そういう意味で、住宅建設を促進するということは非常に大切だと思います。
  70. 和田耕作

    和田(耕)委員 私どもも、この両方とも現在の段階で必要だというふうに考えておるものであります。  特に減税という問題は、景気浮揚というものに欠くことのできない要素だとは思います。それに加えて不公正税制、不公正をなくするという観点からもぜひとも必要なことになるわけです。景気浮揚という面から見ると、大きければ大きいほどいいわけですけれども、それは現在の状態では許されない問題があります。不公正税制の是正という観点から見ると、額の問題についてもいろいろ考慮の余地があるわけで、少なくとも五十七年、今年から減税の頭を必ず出す。そして来年、再来年につないでいくという考え方も出てくるわけなんです。そういうような意味で、ぜひとも減税は必要だと思うのです。  公共事業の問題で、これは非常に大事だし、即効性においては、景気という面では減税以上に効果があると私は思うのです。だから私は、これは決して否定するものではありませんが、これを大幅に、たとえば八〇%の前倒しをやれば、来年は必ず一兆円以上あるいは二兆円になるかもわからぬが、建設国債を誘発してくるということで、いまの状態だと、建設国債と赤字国債との違いを強調するよりは、迫ってきた元利払いという問題が一番中心なんですから、同じような問題ですね。  形は赤字国債をなくすることができても、実際内容的には同じような問題を、つまり解決できないようなことになってくるわけであります。公共事業も余り度を過ぎるということになると、逆に財政再建なんというものはできないということになるわけでありますから、このバランスのとれた形でぜひとも政府も考慮してもらわなければならぬというふうに考えているものなんですが、その大ざっぱな考え方について先生方の、それはそうだ、いやちょっと問題がある、それだけの答えでいいんですが、ひとつお願いいたします。
  71. 肥後和夫

    肥後参考人 租税負担の公平ということを重視すべきであるという御指摘は、私も全くそのとおりだと思います。租税負担の公平ということを確保しないで、何で国民にがまんしてくれと言えるかと思うわけでございます。  ただ、冒頭から私そういう立場で申し上げているわけでございますけれども給与所得者負担が非常にふえているということ、そして国民がそういう意味で給与所得減税をやれというふうに要望しているという、そういう空気はよくわかっているわけでございますけれども、五十七年度から五十八年度あるいはその後の財政を大体見て、それからいま減税をして、それが消費につながって生産の増加につながっていくというような、経済の勢いが高度成長時代とは違うんじゃないかというようなことを考えますと、いま税負担の公平を確保する道は、給与所得者増加している負担を減らすという方向ではなくて、むしろ給与所得者に比べて負担が軽くなっているほかの所得者の負担を、その所得に見合ってきちっと取って、そしてそれで、いま金が足りなくていろいろつじつま合わせに苦労しているような重要な経費についてきちっと出すことだ、そういうふうに思っているわけでございます。
  72. 中根康二

    中根参考人 先生がおっしゃいますように、不公平の税制はぜひ正していただきたいというふうに考えております。  それから、公共投資の前倒しによって元利を返す件でございますが、私ども労働組合として経済学者の方と意見交換をしておるわけでございますが、一〇%の前半くらいの数字の依存度であれば、そんなに心配する必要はないんではないか、むしろ景気浮揚が重要ではないかということをお聞きしておりますが、私自身が専門ではございませんので断定はできませんが、私どもは、それらの先生の指導に従っていきたいというふうに考えております。
  73. 鷲見友好

    鷲見参考人 租税負担の公平というのは、もちろん一番重要なことの一つであります。そのほかに景気の問題も重要ではありますが、その点で公共事業の前倒しというのは、直ちにそれが効果を及ぼすよりは、むしろ年度後半になっての、先生おっしゃったように、国債の発行につながる危険性の方が強いのではないかというふうに思います。  それから、減税の場合に一番問題なのは、一番問題というか重要なのは、いま言った負担の公平、それから景気に対する効果、それと同時に、やはり国民の生活が非常に悪化してきておる。これをどうしてもここのところで是正しなければいけないという点があるのではないか。この三つの点から考えていく必要があると考えます。
  74. 早川和男

    早川参考人 私は特に専門でございませんので、意見を差し控えさせていただきますけれども、不公平税制ということは、肥後先生からも御指摘ありましたように税制の基本でありまして、欧米と比べて日本の税金が必ずしも重くないのにかかわらず重税感が強いのは、そういう不公平税制が底辺にあるのではないかと一人の庶民としては思っております。
  75. 和田耕作

    和田(耕)委員 もう時間がなくなりましたが、宅地の問題について、私も実はこれは困っておる問題なんです。  私も、十年近く前の第一次石油ショックの後の狂乱物価のあの状態のときには、これは公有化ということは避けられないというふうに考えたのであります。しかし、その観点でいろいろと具体的に政策等を考えてみますと、なかなか問題が多いのですね。といって野放しはできない。もう野放しでいいという御意見の方はほとんどないと思うのですが、一部公的な一つのコントロールというものにとどめて、しかし、できるだけ自由な発意の余裕を残した方がいいという二つ考え方があると思うのですね。  その問題の判断で、先生方は、公有化を目指して少しずつ制限を強化したらいいとお思いになるのか、あるいは現在の一部チェックの状態で、できるだけ私的なイニシアチブを残した方がいいというふうにお思いになるのか。たとえば、そのためにはいまの一戸建て、持ち家制度というような多少問題になる制度がある。持ち家でもいろいろ持ち方があるわけですね。たとえば都市の中心街、どこを中心街と言うかという問題もありますが、都市の中心街では高層化を決める。つまり、高さの制限じゃなくて低さの制限を決めて高い建物を、住宅を決めるという方向でやれば、私は、宅地に対する需要は非常に減ってくるんじゃないかというふうにも思うのですね。  そういうことをやれば、いまの土地の公有化的な観点も緩和されてくるということにもなると思うわけで、そういうことを考える前提にしながら、やはりいまの一部公的なコントロールをする中で、その中でもできるだけ私的なイニシアチブを残した方がいいというふうにお考えか、そのことを、もう時間がございません、それこそ簡単にひとつお答えいただきたいと思うのです。
  76. 肥後和夫

    肥後参考人 私、住宅問題について突っ込んで研究しておりませんので、こういう場所で申し上げるのはなかなかはばかられるわけでございますが、考え方の問題としましては、高層化を目指せば確かに土地の余裕はできるだろうと思うのですが、その場合に、早川先生は公有化という点を強調されたわけでございます。それなりの御研究に基づいて御主張になられていると思いますので、私はそれを耳に置いてこれから考えたいと思いますが、方向としては、もし自由の余地が残されるならば、やはり個人のそういう自発性というものを残せるような方法も含めて考えたいというような気はしております。
  77. 和田耕作

    和田(耕)委員 時間がもう三分過ぎておりますので、他の委員の皆さん方に御迷惑がかかりますから、お答えはこれでストップさしていただきたいと思います。  きょうはどうもありがとうございました。
  78. 森喜朗

    森委員長 正森成二君。
  79. 正森成二

    ○正森委員 いま和田委員も言われましたけれども、国会というところは後から出てくる党ほど時間が少なくなっておりますので、諸先生には非常に失礼ですけれども、全部の先生方にお聞きできないかもしれませんので、それはあらかじめお許し願いたいと思います。  まず鷲見先生に伺いますが、今度の法人税租税特別措置では、法案の改正として出てきていることもさることながら、むしろ、それに税制改正として触れられないところが問題であるというようにお話しになりましたし、また、その同趣旨のことをおっしゃった参考人もおられますが、私どもが見ておりましても、退職給与引当金というのは、当初はやると言っておりましたのが、財界筋から何か意見がございましたら中止になるとか、あるいは貸し倒れ引当金については、私どもから見て一番問題があると思われる金融機関の分は除外するとかいろいろございますし、そのほか株式の時価発行の問題もありますが、全部はおっしゃれないでしょうが、そのうちの一つなり二つなりについて御意見がございましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  80. 鷲見友好

    鷲見参考人 今度の税制改正で一番問題なのは、退職給与引当金及びいま正森先生がおっしゃったようなのが抜けているというのが一番大きな問題ではないか。金額としてもこれが非常に大きいわけですね。一番大口を除外して、そして実際には、これができなかったから、ほかのものを何かつじつま合わせにやったというのが実態ではないかというふうに考えます。  退職給与引当金は、先生も十分御存じのところでありますが、前は百分の五十であったのが百分の四十になりました。しかし、これは改正には違いありませんけれども、実態を見ると、有価証券報告書などをもとにした研究によりますと、大体、大企業では全従業員の六%から七%が退職しているというのが普通であります。それと比べますと、やはり四〇%というのは開きがちょっとあり過ぎるわけですね。大蔵省の方でも十分そのことは御承知であるから、したがって少なくとも、一遍に二〇%にするとか一〇%にするというのは無理だけれども、三〇%ぐらいにはしなければいけないだろうということをお考えになったんだと思います。  それが、ああいう増税一切まかりならぬという、臨調会長なのか財界の代表か知りませんけれども、そういう方の意見などが取り入れられてだめになってしまったということですと、国民の方から見ていたら、やはりこれは不公正というのは是正されなくて、財界の言うように運営されているんではないかという気持ちを抱かざるを得ない。そうなれば、先ほど申し上げたように、必要な負担は拒むものではないけれども、そういうことをきちんとしないで、われわれに負担を負わせても無理ではないかというふうに思ってもやむを得ないと思います。したがって、本当に必要な財政再建のための国民的合意というものが得られないことになるんではないかと思います。  それから、いまのプレミアムのことでありますが、これは国会でも問題になりまして、これは資本取引に核当するわけであって、したがって益金には入っていないんだ、資本準備金として資本の部に表示されているんで、資本に税金をかけるということはないんだという趣旨の御説明が政府の側からあったわけであります。しかし、これは資本市場のメカニズムを通じて得られた利益であると考えるのが正しいのではないかと思います。擬制資本というのは、現実に企業で機能している資本、これが現物形態であれ貨幣形態であれ、機能している資本とは別であって、株式が商品として売買される、そのことによって生ずるものでありますから、資本とは言えないのではないか。  事実、日本でもこれが課税されなくなったのは昭和二十四年だと思います。そのときに大蔵委員会でやはり問題になりまして、この趣旨が説明されたときに、これは臨時的な措置としてこれを非課税にするということが言われたはずです。したがいまして、これを資本だから課税しないというのは、過去の例から見ても必ずしもそうは言えない。この部分は最近ではかなり巨額になりまして、一社で三百億円とか四百億円とかいうプレミアムを得ている。これに課税しない方法はないのではないかというふうに考えております。  まだ、そのほか幾つかありますけれども、一応これで終わります。
  81. 正森成二

    ○正森委員 時間の関係がございますので、早川先生にお伺いいたしますが、私の承知しておりますところでは、たしか先生は、昨年四月二十九日から三日間ロンドンで開かれました国際住宅都市問題研究会議に出られたと承知しておりますが、その問題について幾つか論文もお書きになっておられるようでございます。  その中で「わが国では土地が私企業の、投機的買い占め、利潤追求の手段になっているが、そのようなことが許されている国は資本主義国でも日本しかない。」というような御意見もお書きになっておられるようですが、短い時間で結構ですが、この関係について簡単に御意見を承りたいと思います。
  82. 早川和男

    早川参考人 これはそのとおりでありまして、土地は社会的な資材、資本でありますから、また国民の生活の基盤でありますから、資本主義の社会においても土地対象にお金もうけをしてはいけないというのは、先進資本主義国のコンセンサスを得た考え方であります。  たとえば、さきの労働内閣のときに、私はいまちょっと手元にデータを持っておりませんが、これはイギリスの話ですが、ある大臣の奥さんの弟が若干土地投機じみたことをしたわけであります。その際、それがその大臣のスキャンダルになりまして、その出処進退問題にまで発展したわけでありますが、それほどに、土地を買い占めてもうけるということは社会正義に反するという考えになっているわけであります。そういうわけで、日本のように土地住宅を利潤追求の対象にしていくということはあってはならないことではなかろうかというふうに思っております。
  83. 正森成二

    ○正森委員 いまのお話を伺っておりますと、ある国の元総理などは、とてもその地位にとどまれないというような印象がいたしますが、さらに先生の御意見では、これは私も存じませんでしたが、西ドイツでは社会住宅というものがあって、その供給主体というのは個人でもよい、企業でもいい、それから非営利団体、つまり労働組合でもいい、自治体はもちろんいいということだそうでございますね。  そして、西ドイツでは居住者を保護するために三重の措置がとられているというように書いてございまして、このうちの一つについては、建設資金の半分は無利子なんだということをおっしゃいましたが、残る二つについても御説明願えればありがたいと思います。
  84. 早川和男

    早川参考人 第二の措置は、半額を無利子にしまして、残りの半額を市中銀行などから四%ないし五%で借ります。それで建設された家賃の原価が、これは年間によって変わりますが、一九八〇年の統計ですと一平方メートル当たり五・三五マルク、つまり一平方メートル五百三十五円ですから、百平方メートルにすると五万三千五百円を超えますと、その分に対して補助が政府から自治体を通して行われます。  第三に、その百平方メートルの家の家賃が五万三千五百円でありますが、そこに入居した人、この入居の際も家族構成によって決まっておりまして、夫婦と十歳ぐらいの異性の子供二人ですと、必ず三寝室の住宅にしか割り当てない。三寝室プラス居間のある住宅が割り当てられるわけでありますけれども、その家族の収入に対して五万三千五百円がネットインカムの二〇%を超えますと、さらに家賃補助が出る、こういうことによって、快適な住居とそれに対する負担が過重にならないように保障しているわけであります。
  85. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございます。私どもも、今後いろいろ参考にさせていただきたいと思います。  時間が少なくなってまいりましたが、肥後参考人に一言伺いたいと思います。  先ほど先生は、社会党の方から減税についての意見を求められたのに対して、減税は無理であろうとおっしゃいました。われわれが聞いているのは、無理かどうかということももちろんですが、望ましいかどうかということを聞いているわけですけれども、無理であろう、むしろ取られないものをきちっと取ることが大切だという意味のことをおっしゃいました。  非常に短い時間で恐縮でございますが、先生の言われる取られないものをきちっと取るという中には、たとえば鷲見参考人が言われた退職給与引当金がいまのところ四〇%というのは少し高過ぎるというようなことも含めておっしゃっているのでございましょうか。御意見を簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  86. 肥後和夫

    肥後参考人 先ほど言葉が足りなくて触れませんでしたが、私は、それも当然入ると思います。  これにつきましては、御承知のように、退職金が年金化してまいりまして税制適格の年金になりますと、生命保険とか信託会社という社外にちゃんと積み立てることになっております。ところが退職給与引当金は、実質企業の内部留保資金として使われている。だから、うっかりすると、その運用がうまくいかなくて、結局退職しても退職金をもらえないというようなことになるおそれもありますから、そういう面で、その管理はきちっとしなくてはならない。  それから、退職給与引当金はコストであるということは、私はコストだと思います。ですから、適正な退職給与引当金はコストとして控除すべきであるが、現在の引き当て率が適正であるかどうかという点については、もっと下げる余地があるのではないかと思っております。
  87. 正森成二

    ○正森委員 いまの先生の御議論は、負債性引当金ということについての学者の間の議論をおっしゃったのだと思いますが、ありがとうございます。  中根参考人に伺います。いまの退職引当金について、特に勤労者立場として伺いたいのですが、私どもは、勤労者が退職するときに退職給与引当金企業にないようでは困る、だから、その一定額は何らかの形で企業に確保してもらっていなければ困るというのは当然のことだと思うのですね。ただ残念なことに、たとえば山陽特殊鋼とか大型の倒産がございましたときに、企業の会計上は積み立てたことになっているのだけれども、いざとなると労働者の手に入らないというので皆非常に困ったわけですね。そういうような点について、どうしたらいいというような現場の労働者の御意見がございましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  88. 中根康二

    中根参考人 先生がおっしゃいますように、倒産等によってやむを得ず退職する者が当然の退職金をもらえないということは大変なことでございまして、賃確法を制定していただきまして、退職金の保全ということについての緩やかな行政指導が始まっておるわけでございますが、私どもとしましては、必ずしも企業年金だとか調整年金が望ましいという見方はしておりませんで、一時金といえどもきちっと確保されておれば、それでいいと思いますので、そういうものが企業年金と言われておるものと同様な形で保全されるような方向へ持っていっていただきたいというふうに考えております。
  89. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。終わります。
  90. 森喜朗

    森委員長 これにて午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午後二時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  91. 森喜朗

    森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案の両案について、午前に引き続き、参考人から御意見を聴取いたします。  午後の参考人として、税制調査会会長小倉武一君、立教大学経済学部教授和田八束君、日本経済新聞社東京本社編纂局次長鈴木隆君、東京経済法律研究所所長飯田久一郎君の四名の方々の御出席を願っております。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。両案について、参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、議事の進め方といたしましては、初めに参考人各位から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、その後委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず小倉参考人からお願い申し上げます。
  92. 小倉武一

    ○小倉参考人 私は小倉と申します。  税制調査会長の席を汚しておりますが、五十七年度の税制改正について所見を述べるようにという御要請でこちらへ参ったのであります。したがいまして、五十七年度の税制改正に関する答申を中心にして、その答申に盛られている税制改正考え方について申し上げることにいたしたいと思います。  まず、五十七年度の税制改正に関する答申の中身に入ります前に、それに至るごく近年の考え方税制調査会としての考え方などを御参考にちょっと申し上げます。  財政再建ということが緊急のいわば国民的な課題になっておる、こういうような状況を踏まえまして、税制調査会では、五十五年の十一月にいわゆる中期答申というものを政府に答申いたしまして、財政再建の進め方またそれに伴っての税制のあり方等についてお答えをいたしておるわけであります。この中期答申の考え方を踏まえまして、五十六年度におきましては、現行税制の枠内で徹底した見直しを行うという方向で、法人税を初めとして、既存の税目について必要な増収措置を講ずるように答申をいたしたわけであります。  この後、このような増収措置を通じて、財政再建の緊要性が広く一般に理解されることになったやに思います。また五十七年度におきましては、臨時行政調査会の第一次答申におきまして、いわゆる増税なき財政再建というようなことが答申されて、政府もその趣旨で措置するということになったわけであります。  ところが、税制関係におきましては、かねてから問題のございました租税特別措置につきまして、これに含まれているようないわゆる政策税制につきましては、税負担の公平を確保するという観点から、たとえ増税になりましても、これについてはしかるべき是正を図っていく、また、税制調査会で言う政策税制でないものにつきましても、社会経済の進展に即する実態に応じまして、不断の見直しをするということは必要かと存じておった次第であります。  したがいまして、五十七年度におきましては、かような観点から、既存税制の見直しの必要性、これを踏まえまして、また厳しい財政の事情にかんがみまして、一方において徹底した歳出の削減ということが行われることを期待し、また税外収入につきましても、その確保のための努力がなされるというようなことをにらみ合わせまして、所要の税制上の措置も講ずることはやむを得ない、そういう税制上の措置を講じたらよかろうということにいたしたのでございます。  そこで、五十七年度の税制改正についての中身でございますけれども、まず第一に、先ほど申しました租税特別措置整理合理化でございます。  御案内のとおり、租税特別措置につきましては、特に昭和五十一年度以来積極的にこの整理合理化を進めてまいってきたところでありまして、先ほど申しました五十五年十一月の中期答申におきましても、税負担の公平を確保する見地から、いわゆる政策税制整理合理化はおおむね一段落したというような認識に到達したのでありますが、しかしながら、昨今の非常に厳しい財政事情、また税負担の公平を図ることが必要であるという一般の要請、こういうことを踏まえまして、企業関係特別措置等につきまして、さらに見直しをすることにいたしたのであります。  次に、交際費課税強化についてでありますが、交際費につきましては、これまた御案内のとおり、累次にわたりまして課税強化を図ってまいったのであります。しかるところ、交際費はそれにもかかわらず年々巨額に達するように増大してまいっておる、これについての社会的批判というものも依然厳しいものがあったわけであります。したがいまして、この際、交際費については原則として全額課税をするという全面的な課税強化を図るという必要をうたったのであります。  次は、貸し倒れ引当金の法定繰入率の引き下げでありますが、引当金租税特別措置のようないわゆる政策税制とは税制調査会では考えていないのでありますけれども、繰入率等について、負担の不均衡が生ずることのないよう、常に実態に即した見直しをする必要があるという考え方に立ちまして、今回は金融保険業以外の各種の業種につきましての貸し倒れ引当金の繰入率につきまして、平均の貸し倒れの実績率と相当乖離をしていると認められるものにつきましては、その引き下げを行うということが適当と考えたのであります。  次、は法人税延納制度のことでありますが、その延納の制度の短縮を図る、圧縮を図るということにいたしました。法人税延納制度につきましては、所得税延納制度と比べまして、若干アンバランスであるというような事情などもございますので、それらを考慮しまして、現行法人税における延納割合縮減を図るということにいたしたのであります。  最後に、昨今特に論議の行われております所得税減税についてでありますが、これについては、五十七年度の税制改正についての答申におきましても、どう措置すべきか論議を重ねて、税制調査会としては、多くの意見といたしまして、五十七年度においては厳しい現下の財政事情にかんがみまして所得税減税を見合わせるほかはなかろうという結論に達した次第であります。  次に、この所得税の問題につきましては、現在の課税最低限でありますとかあるいは税率構造というものが相当長きにわたって固定をされておるというような実情、これについて、これを適当とするというわけでは無論ございませんので、歳出あるいは歳入両面にわたりまして、今後とも徹底した見直しを行う、そして課税最低限あるいは税率構造の見直しを行うことができるような財政状況をできるだけ早く実現するということが望ましい。その際のことといたしまして、現段階では所得税減税を見合わせるほかはなかろうというのが、答申のおおよその骨子であったわけであります。  以上、簡単でございますが、冒頭陳述にかえて御説明申し上げたわけであります。
  93. 森喜朗

    森委員長 ありがとうございました。  次に、和田参考人にお願いいたします。
  94. 和田八束

    和田参考人 立教大学の和田でございます。財政学を担当しております。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席〕  まず、五十七年度税制改正関連いたしまして全般的な問題を申し上げまして、それから後、個別的な点について触れたいと思います。  最近のいわゆる租税負担率を見ますと、かなり急テンポで上昇してきているということが言えるわけであります。昭和五十年度一八・四%が、五十七年度、予算ベースでありますけれども、二五・四%というところに来ておりまして、社会保険料を加えますと三五%を上回るというところになってきているわけであります。これは、現在の日本の税財政の状況から言いますと、かなり大きな政府に到達しつつあるというふうに言わざるを得ないわけでありまして、やはり全体として、この租税負担率の指標から考えましても、抑制をする必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。そろそろブレーキを踏むべき時期ではなかろうか、そういう点で歳出歳入にわたって見直しをする必要がある、こういうふうにまず考えるわけであります。  特に、租税負担増大の中身を見てまいりますと、所得税の占める位置が大きい、所得税においても給与所得税のウエートが高いというところが一つの問題点だろうと思います。これは納税者数を見ましても、あるいは税額を見ましても、いずれを見ましても、給与所得税のシェアというものが拡大をしてきているわけであります。  昭和五十七年度の租税収入予算を見ましても、総額三十七兆円見込みのうち、所得税が十五兆円、うち源泉分が十一兆円というふうな数値になっておりますけれども、やはりかなり給与所得税へのウエートが高くなってきているわけであります。このところは、増税なき財政再建というふうに言われているにもかかわらず、実質的には給与所得者に対する増税が行われて、増税による財政再建といいますか、こういう形になってきているというふうに言えるわけでありますし、また、そのことによって、かなり租税負担のアンバランスが増大してきているということが言えるのではないかと思うのです。この給与所得への課税の傾斜では、いま申し上げましたように、税の不均衡、アンバランスというものが生じてくるわけですけれども、それだけではなくて、自然増収が実態よりも過大に出てくるということによって、財政にとってもゆがみを生ずる結果になるということが指摘できようかと思います。  そしてまた、給与所得者で言いますと、五百万円から一千万円層での納税人員が増大しており、また、そこでの納税額が増大しているわけでありますけれども、いわゆる中堅サラリーマンといいますか、こういうところでの租税負担が急速に上昇し、かつ負担率が一〇%ないしそれ以上というふうなところに高くなってきておりまして、いわゆる重税感が非常に強くなってきているということが言えるわけであります。そして、そのことが実質処分所得の減少となっていて消費支出の減退を導き出しており、内需の不振をいま招来しているという結果になっていると思います。  そういうところから見まして、特に強調いたしたいのは、ここで物価調整減税をぜひやる必要があるということであります。言うまでもなく、現行所得税制では、税率昭和四十九年の変更以来変わっておりませんし、課税最低限昭和五十二年の引き上げ以来据え置きになっているというところから、累進税率の影響によって所得伸びを上回る税負担の上昇が生じているということ、それから低所得者に対するタックスネットが大幅になっているというような事態が生じているわけであります。  課税最低限だけで言いましても、昭和五十二年に二百一万円になったわけでありますけれども、これ以降ほぼ物価上界率が二二%程度でありますので、現行で言いますと、二百四十五万円程度所得層は税負担の必要がないわけでありますけれども、これがタックスネットに繰り入れられているということで、実質的に納税者がふえているというのは、このところからきていると言えるわけであります。諸外国でも何らかの形でこうした物価調整は行われているわけでありまして、このように長期にわたって物価調整が行われないということは、きわめて大きな弊害を生み出してきているわけでありまして、課税最低限を消費者物価上昇率で修正する必要があるということを強調したいと思うのです。  当面の調整減税といたしましては、五十二年度以降課税最低限引き上げられていないという点にかんがみまして、物価上昇率程度引き上げを行うということで、緊急的な調整を行うべきではなかろうかというふうに考えます。なお、五十八年度以降につきましては、消費者物価上昇があった場合に、それに対応して調整が行われるような、いわゆるスライド制の導入を考えるべきであろうというふうに思います。ただ五十七年度につきましては、過去の蓄積分、累積分がございますので、これを調整するというところから、かなり大幅な調整減税が必要ではなかろうかというふうに考えるわけであります。この大幅な物価調整減税が行われることによって可処分所得の減少を食いとめて、個人消費の拡大、民間住宅建設の増大というものにもつながるという経済政策的効果も同時に持つことができよう、こういうふうに考えるわけであります。  調整減税におきましても財源問題がよく言われるわけでありますけれども、財源問題といたしましては、一般的に五通りぐらいの方法論があるというふうに言えるわけです。  一つは歳出をカットするということであります。ただ、現在の経済情勢からいいまして、デフレ効果のできるだけない歳出をカットすべきであろう、こういうふうに思います。その代表的なものとしては防衛関係費である、こういうふうに思います。第二番目は不公平税制を是正する、租税特別措置縮減などを進めるということであります。三番目は新しい課税を実施するということでありまして、広告費課税とか超過利益税、富裕税というふうな税制が考えられる。四番目は国債を増発するということでありまして、特例債の減額を延長するないしは建設国債を上乗せするというふうな形で、国債の増発ないし減額の延長ということを図る。五番目は景気浮揚による自然増収に期待する。  こういう五通りあると思います。どれをどれくらい見るか、あるいはどういう組み合わせをするかということは、多分に政策的な問題でありますけれども、これらの組み合わせによって実現すべきであろう、こういうふうに私は考えるわけであります。  次に、個別的な問題について簡単に申し上げますと、第一に法人税延納制度縮減が今回行われましたけれども、これはおおむね賛成であって、今後は延納制度そのものの廃止にまで進める必要があるのではなかろうかと思います。  第二番目に特別措置縮減でありますが、企業関係特別措置につきましては、この数年縮減合理化が進められてきておりまして、この縮減合理化の方向は評価し得るところだと思います。これらによって増収があるというのは、必ずしも増税であるというふうには言えないわけで、増税なき財政再建と矛盾するものではないというふうに考えております。ただ、この内容といたしましては、なお不十分であるというふうに言わざるを得ないわけでありまして、その他貸し倒れ引当金縮減、退職引当金縮減、これらは特別措置ではないということでありますけれども、それらも広い意味で含めて貸し倒れ引当金、退職引当金縮減、その他価格変動準備金廃止特別償却制度廃止、医師優遇制度廃止というふうなものに対してはもっと積極的な姿勢を示す必要がある、こういうふうに考えます。  それから、特別措置の中で土地税制改正が行われておりますけれども、その効果には疑問があるわけであります。それは、まず需要後退期でありますので、税制改正しても売却が多くならないわけであります。それから、土地税制が頻繁にこのように変わっているために、むしろ将来への軽減の期待感が大きいということで、税制としては、もっと安定した税制をとる必要があるというふうに思います。  それから、固定資産税強化が一方で事実上行われていないわけでありまして、これがなくて、つまり市街化農地への課税強化がなくて譲渡所得課税の軽減があるということは、余り土地税制としては効果がないのではなかろうかという点で、土地税制改正については疑問を持っており、このことは、むしろ税制上の不公平を助長するだけであって好ましくないのではないかというふうに考えるわけであります。  以上、簡単でありますけれども、私の意見を申し上げさせていただきました。
  95. 中西啓介

    中西(啓)委員長代理 ありがとうございました。  次に、鈴木参考人にお願いいたします。
  96. 鈴木隆

    ○鈴木参考人 日本経済新聞の鈴木であります。本日は、土地税制についてのみ意見を述べるというふうに申されております。  今回の土地税制改正につきましては、住宅不況の急速な進展と無関係には考えられない、このように私は見ております。皆さん御存じのように、住宅建設は、昭和四十七年度は百八十六万戸の住宅建設があったのでありますが、その後大幅に減ってまいりまして、五十一年度から五十四年度にかけまして、毎年約百五十万戸の建設がございました。これが五十五年度には百二十一万戸に減ってまいりまして、五十六年、去年一年間には百十五万戸まで減ってきたというのが実態でございます。現在のような状態が続けば、恐らく遠くない将来において、わが国の住宅建設は百万戸を割るのではないかという見通しがあるわけであります。  こうしたことは、住宅業者が困っているだけで、別に大したことはないじゃないかというような考え方もできないわけではございませんが、わが国の住宅業界の規模はきわめて大きなものでございまして、五十六年度の政府見通しによりますと、民間住宅建設だけで十六兆四千億円、GNPの六・二%を占めておりまして、これに関連する住宅関連産業も含めますと四十一兆円、GNPの一六%を占めるという大きな産業になっているわけでございます。したがいまして、住宅不況が進むということは、わが国の不況がさらに一層深化するということになるので、何らかの対策が必要であるという状況であるというふうに判断いたします。  しかも現在の段階で、わが国で住宅がすでに満足すべき状態であるかどうかという点につきましては、それぞれ自分の住んでいる住宅のことを考えれば皆納得がいきますように、ほとんど自分の住宅については満足しているわけではない。建設省の住宅需要実態調査によりますと、全世帯の四〇%、千三百万戸が住宅に対して不満を述べている。そのうち第一位が狭いということで不満を述べているということであります。  こういった住宅産業の不振、住宅建設戸数の急速な低減は何によるか、いろいろな原因があります。ただいま和田先生がおっしゃられましたように、国民実質所得の低下というようなことも大きな原因になっていることは覆えませんが、原因の一つとして、住宅地の供給が減少してきているということが挙げられております。住宅地の供給は、例の列島改造ブームでありました昭和四十七年度に一万四千五百ヘクタールの供給があったのを頂点にいたしまして、年々住宅地供給は減りまして、五十三年、五十四年度には八千六百ヘクタールまで減ってきているというのが実態でございます。住宅地の供給は、大体二、三年間の保有の後に住宅になってあらわれてくるのでありますが、現在、住宅業者が推定しておるところによりますと、恐らく今後五年後には三千ヘクタール程度土地が不足してくるであろう、こういった予測があるわけであります。三千ヘクタールの土地は、大体東京都の杉並区と同じ大きさであります。  こういった土地不足の状態と税制との関係でありますが、これが税制と密接な関係にあるという意見を述べる人もいますが、税制とはほとんど関係がないという意見を述べる人もおりまして、この辺の判断はきわめてむずかしいところであります。不動産協会と申しますデベロッパーが出していますデータによりますと、売ったときの税金が安くなると土地の譲渡がふえる、こういう統計を出しております。また建設省は、五十四年調査土地税制に関する地主の意識調査を行いまして、売ったときの税金が高いから売らないんだというのが七〇%を占めているという数字を出しております。  しかし一方で、きょう参考人にも来ておみえになります飯田先生を初めとしまして、売ったときの税金が安くなれば、かえっていい資産であるからますます売らなくなるんだ、こういった意見の方もかなりおられるわけでございまして、税金を下げることによって土地供給がふえるかどうかということについては、現在のわが国では定説はないというのが確かなところかと思います。税金を下げれば土地がふえると言う人もおり、いや、そうなってもふえないと言う人もいるというのが現状であるように思われます。しかし、デベロッパーを初めとしますところの関係の業者の間では、定説はないものの、この税が高いから土地が出てこないんだ、住宅不況が起こってくるんだという意見が強いことは事実であります。  さらにもう一歩を進めまして、これは私が大蔵省当局に取材いたしました数字でございまして、公表数字でも何でもないのでありますが、昭和五十五年度中に土地建物を譲渡した個人の譲渡価格は、私が取材いたしましたところによりますと十三兆円ある。ところが、実際に今回の課税の緩和措置対象になりました長期譲渡所得の一件譲渡所得八千万円超に該当するものは一千億円しかなかった、こういうことを聞きました。また同時に、短期譲渡におきましては四兆二千億円の売買があったにもかかわらず、課税所得対象となったのは二千億円しかなかった、こういう数字も聞きました。もっとも、これは大蔵省から公式に数字をとったものではありません。  なぜ、そんなに少なくなってしまうのかと申しますと、これは、八千万円を超過するような売買については分けて売る、あるいは居住用資産の三千万円の控除ないしは収用等の三千万円の控除等を利用することによって、巧みに税を逃れているから、このような現象が起こっている、このように申しております。と申しますことは、現行税制が実際には働いていないということでありまして、働いてないものを変えるということは、大きな問題がないようにも思われるわけであります。  最後に、五年間にわたりまして所得税減税もやってない状況で、土地の所有者に対してのみこういった恩典を与えることについては、不動産不況の折とはいいながら、はなはだ問題があるという意見には私も賛成であります。したがいまして、このような税制改正を行います以上は、これを推進してまいりました建設省を中心とする政府当事者は、厳しく業界を監督するとともに、当該業界も自粛をして、仮にもこれによって土地価格が上がることのないように安定を期されたいと思う次第であります。  以上です。
  97. 中西啓介

    中西(啓)委員長代理 ありがとうございました。  次に、飯田参考人にお願いいたします。
  98. 飯田久一郎

    ○飯田参考人 飯田でございます。  本日は、税制改正の中で土地税制の問題だけについて私見を述べてみたいと思います。  土地税制改正につきましては、いわゆるあめと言われます緩和の部分と、むちと言われます強化部分と、二つ部分があるわけでありますが、このあめとむちの相乗効果によって宅地の供給をふやし、地価を抑制しようというのが改正目的だと言われております。しかし、私は、その効果というものはほとんどないのではないか、その上に、むしろ現在言われております不公平税制の是正ということに逆行するような望ましくない副作用が出てくるのではないか、こんなふうに考えているわけであります。  最初に、税制緩和の部分について意見を述べてみますと、緩和は、個人法人の譲渡益に対する課税を緩和することになっているのでありますが、その中心となるものは、個人譲渡所得に対する税の軽減であります。その根拠は、結局地主が土地を売らないということの根本原因は、譲渡所得税が重過ぎるからである、それで、もしこれを軽くすれば地主は土地を売るであろうということなんでありますが、この考え方自体に私は大きな疑問を持っているわけであります。  それは、地主が土地を売らないということは、税が重いからではなく、土地が最良の資産である、将来必ず大幅に値上がりするというふうに確信しているからではないかと思うからであります。仮に、土地が今後絶対に上がらない、あるいは少しずつ下がっていくかもしれぬというふうに地主が考えました場合には、税金が重かろうと軽かろうと、これはもちろん非常に税金が重くて売ってもほとんど手取りが残らないというような場合は別でありますが、そういう場合を除きましては、地主は恐らく一日も早く売りたいと思うに違いありません。後になればなるほど値下がりして、税金が重い軽いに関係なく損をすることになるからであります。また一方、地価は必ず絶対上がるというふうに確信している場合は、仮に譲渡所得税がゼロであっても、これを売ることはないと思うのであります。ということは、この場合、土地を売ってほかの資産に取りかえても、土地ほどいい資産はないということのために、結局土地を持っている方が得であるということになるからであります。  このように、地価が上がらないあるいは下がるおそれがあるという場合には、税が重くても軽くても早く売ろうとする、逆に、地価が絶対上がると確信している場合は、税が軽くても、たとえばゼロであっても売らない方が得であり売ろうとしない、こういうことを考えますと、税金の重さというものが土地供給を妨げているとはどうしても考えられないわけであります。  しかし、こういう言い方に対しましては、たとえば先ほどちょっとお話もありましたように、調査をやると、地主さんは税金が重いから売らないんだと言っているというような結果が出てまいります。それともう一つは、地主は必ずしも本音を言うものではない、政策に若干でも影響するようなアンケートに対して本音を言うとは限らないということを考えますと、そういう地主の発言というのは、土地をいつまでも、たとえば農家が荒らしづくりをして土地を持っているというような場合の売り惜しみの口実であるというふうに考える、あるいは、いつかは土地を売らなければならぬことがあるが、そのときに税金が軽ければ軽いほどいい、そのためには税が重いから売らないんだということを言って、それで税金はなるべく軽くしておいてもらうということのために、本音でない戦略的な発言をしているんだと考えるのが妥当なのではないかと思うのであります。  また、住宅産業の方から言いますと、たとえば税金分を負担してそれで土地が買えたという実例もあるじゃないか、その場合に、税金が軽ければそれだけ買収価格が安くて済んだのではないかと言われますが、この場合も、税金という名目で時価よりも高く買った、とにかく時価より高く売ればこれはだれでも得するわけでありますから、そういう税金を負担させるという名目土地を高く売ることができたので売ったのだというふうに考えるのが妥当なのではないかと思うわけであります。  それで、もし税制改正によってすべての人の税金が軽くなれば、これは地主としては、時価で売ったのでは決して得ではない、先ほど申し上げたとおり、持っている方が得だということになりますから、そうなると全体が軽くなれば売らない、もしそれを強いて買いに行けば、また今度は別な名目をつけてひとつ時価より高く買ってくれということを言ってくるのではないか、こう私は思うわけであります。  いま申し上げたことは、これは必ずしも理屈の上だけでなく、実績もそれを示しているような事実が相当あるわけであります。たとえば五十五年の土地譲渡所得は、五十五年度には相当大幅な税制の軽減があったのでありますが、それにもかかわらず、実質的には逆に減少しているわけであります。不動産協会の出されているデータには、五十五年の数字を出しておられません。五十四年までの数字しか出ておりませんが、五十五年の数字について言えば、相当大幅な軽減があったにかかわらず、実質的にはかえって減っているというデータがあります。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  また、市街化区域農地の中でA農地B農地だけは、宅地並み課税を若干やっているということに対する代償として、金額に関係なく分離課税、しかも軽い税率分離課税という特典を与えているわけでありますが、それと、そういう特典のないC農地との間に売却率の差がない、むしろ、場合によっては税金の安いA農地B農地の方が土地を売っていないというような事実もあるわけであります。  また、それでは、四十四年当時に税制を大幅に軽減した場合に相当土地が出たことをどうして説明するのかという御疑問があると思うのでありますが、この場合は、結局いまから考えますと、地主が初めての税の軽減という経験に錯覚を起こしまして、実は売らない方が得なのに、税金が軽くなったから売った方が得だと考えて売ったのだというふうに考えられるのじゃないかと思うわけであります。  そのことは、その後いろいろ農村の人たちの意見を聞いてみますと、あのときに売った人は皆大変損した、そういう人が、たとえばいわゆる豪邸をつくったり、あるいは道楽をして金をなくした、これはもう論外なんですが、そうでなく、土地を全部売って、それを預貯金にかえたあるいは国債にかえたという人でも、その財産というのはわずかしかふえていない、二倍か三倍にしかなっていない。ところが、売らなかった人たちというのは、同じ村の中で見ても五倍とか十倍とかいうふうに財産はふえている。これは明らかに土地を売らない方が得であるということであって、そういう人たちのまねをするばかな者はもういないですよというようなことを言う人が相当いるわけであります。そういうような例から見まして、今度の税制改正土地供給効果があるということについては、かなり大きな疑問があると言わざるを得ないわけであります。  その上に、先ほどもちょっとお話がございましたが、一般所得税についての軽減を行わない中で、譲渡所得だけはむしろ優遇に過ぎるようなことをやることになる。これも、わが国の土地税制というものは欧米各国に比べて非常に過酷である、いわゆる四分の三総合方式というものは外国に例を見ないようなものであるという御意見もあるのでありますが、そういう比較は、地価がわが国よりもはるかに安い、しかも事情も全く違うヨーロッパやアメリカと比べるのではなく、わが国のほかの所得税制と比べてどうかということで考えるべきではないかと思うのであります。  それを考えますと、わが国の譲渡所得税というものは、現在でもむしろ優遇されておる。たとえば、居住用不動産を持っていれば三千万円の基礎控除がある、四千万円までは分離課税であるというような優遇措置があるということで、これをさらに今回の改正のように軽減いたしますと、著しい優遇になるのではないか。譲渡所得というものは一年で得られるものじゃない、何年かかかって、長い間に積み上げた利益が売却時に一遍に出てくるのであるから、普通の所得とは区別して考えるべきだというのが一般論でありまして、私もそれはそう思うのでありますが、そのことを考慮いたしましても、なお優遇し過ぎになるのじゃないか。  一例を申し上げますと、たとえば一億円で土地を買って、十年間置いておいて、その結果として十億円もうけたという場合を考えてみます。その場合、今度の改正によりますと、それでも税負担は大体四四%くらいにしかならないわけであります。ところが、毎年一億円ずつ稼いで、それを十年間続けてそれで合計十億円になった、そういう課税所得を得た給与所得者の場合、その場合に、その人は最初の年から所得は全部預金にして積んでいく、利殖していくということを考えても、現在の利子分離課税制度のもとでも、税負担率は七一%くらいになる。今後もしグリーンカード制が実行されますと、税負担率は七五%になるということを考えますと、不労所得である土地譲渡所得に対して、勤労とかあるいは事業所得というようなものに比べて、はるかに安い税率を適用することになる、これは大きな問題じゃないかと私は考えておるわけであります。  それから次に、宅地並み課税のことについて簡単に触れたいと思いますが、宅地並み課税につきましては、これはいわゆるむちということでありますが、今度の改正程度のものでは実効を上げられないのじゃないかというふうに思うわけであります。  これもいろいろ理由がありますが、時間の関係もありますので、一番主な理由を申し上げますと、農地課税を宅地並みにするといっても、宅地自体の現在の保有税では、土地供給にほとんど効果を上げていないということであります。なぜ効果を上げていないかといいますと、宅地自身の課税が、供給という面から言えば非常に軽いということであります。それは固定資産税が軽いとか重いとかということではなく、供給効果という点から考えてみますと、非常に軽いということは、たとえば東京都の例で言いますと、宅地の保有税のいわゆる課税評価額は時価の大体二〇%である。そうしますと、税率固定資産税都市計画税を合わせて一・七%であるといっても、実際は〇・三四%にしかならない。たとえば十億円の農地を持っている人に宅地並み課税をやって、宅地と同じように課税するといっても、その税額は十億円に対して一年に三百四十万円である、これは〇・三四%にしかならないわけであります。  もし、その農家にほかに全然所得がなく、土地を売ってしか払えないということにしまして、土地を売った場合の譲渡所得税を計算しましても、全体の土地の〇・四五%売ればいい。たとえば一千坪の農地を持っている農家は、年に四坪半売れば税金が完全に払えてしまう。そうすると、五年かかっても、五年分まとめても二十二坪くらい売れば済んでしまう。これでは供給増加とは言えないし、しかも、そういう切り売りをやることになりますと、結局その敷地はミニ開発住宅の敷地になって、いろいろな面で問題が起こってくるというようなことがあるのじゃないか。もし宅地並み課税強化するのであれば、宅地を含めて土地の時価評価によって課税する。  それからもう一つ、いわゆる選択制といいますか、営農を継続すれば税を猶予ないし免除するという規定がありますが、これももっとシビアなペナルティーをつけるべきじゃないか。しかし私は、このことについては、一般的には実は賛成でないわけであります。土地供給をふやすためには、宅地並み課税というような方法でなく、もっと別の方法を使うべきではないか。その案については、時間がございませんので、ここでは申し上げませんが、そういう別の方法があるし、またそれを使うべきではないか。宅地並み課税という方法でやることについては、どうも問題があるのじゃないかというのが私の意見でございます。  結論を申し上げますと、今度の改正には、たとえば特別土地保有税強化するあるいは買いかえ制度をつくるというような点には、評価すべき点が相当あると思うのでありますが、主要な点である大幅軽減あるいは宅地並み課税という点については、効果に相当疑問があるのじゃないか。そして、一方で副作用もあるのじゃないかというふうに思っているわけでございます。  以上をもって、私の陳述を終わります。
  99. 森喜朗

    森委員長 ありがとうございました。  以上で、参考人からの御意見の開陳は一応終わりました。     —————————————
  100. 森喜朗

    森委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  101. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 参考人の皆様には、お越しいただきまして大変御苦労さまでございます。きょうも国会は、所得減税の問題をめぐって紛糾している状態でありまして、税に関する国民の関心が非常に高まっているところであろうと思います。若干お伺いをさせていただきますので、率直な御意見を賜りたいと思います。  テーマで税制一般となっておりますので、恐縮ですが、まず小倉さんと和田さんにお伺いをさせていただきたいと思います。  まず最初に小倉さんにお伺いをしたいのですが、先ほどのほかの参考人のお話にもございましたが、日本の租税負担率はこのところ急テンポで高まっているというわけでありまして、たしか五十五年十一月の税調の中期答申、先ほど小倉さんからお話がございましたが、それによれば、当然五十五年度対比だと思いますが、昭和五十九年度に、GNP比租税負担三ポイントアップが必要である、そのうち一ポイントは自然増収、二ポイントは増税、そしてその内容といたしましては、現実いま強く否定をされている大型消費税が前提という答申になっていたと思います。  ところが、現実には五十五年度GNP対比一八・五という数字が統計で出ておりますが、それから、五十七年度予算の試算でいけば二〇・八、この間すでに二・三%上昇いたしているわけでありまして、このままでまいりますと、五十九年度までというあなたがおやりになった税調の中期答申、この数字は五十八年度には当然達成をされるということになるのではないだろうか。言うならば、繰り上げ達成という姿に実はなっているわけでありまして、そういう状態のもとで、これからの御審議なり、これからの税制の目標を一体どうなさるのだろうか。  前提とした消費税構想抜きで、急テンポにそう繰り上げ達成されるという数字でありますから、もうここでストップするのか、あるいはこれからの審議を通じて新たな目標、まあ「財政の中期展望」などの一一・九という伸び率に対比をしましても相当大きくなると思いますが、新たな大きな負担目標をお立てになってやられるということになるのか、税調の中期答申を読み直してみますとちょっと疑問に思いますので、最初にお伺いいたします。
  102. 小倉武一

    ○小倉参考人 将来の税負担のあり方につきましての中期税制のあり方の答申につきましてのお尋ねでございますが、いまもお話にもございましたように、税負担率を今後三%ぐらい上げる必要がある、一%は自然増収でしたか、二%は増税というような趣旨だったかと思いますが、他方また同時に、歳出総額のうち八割程度は税及び税外収入でもって、国債によらないで賄うというような必要があるのではなかろうか、当時の入手し得るいろいろな資料でもって、そういうような見通しを立てたわけであります。  しかし、その後いろいろ事情がございまして、いまお話しのような、税負担伸びから言えば、もうすぐそのぐらいになるじゃないかというようなこともございますが、他方、しかし国債から脱却するという程度に歳入における税負担割合がふえるというまでにはまだ至っていないというようなことでございますので、無論いずれかの機会には、少し先行きの全体の税制のあり方、また歳入における税収入の割合等について、さらにまた検討を深めるというような必要も生じてまいると思います。まだしかし、その時期がいつだかということは申し上げられませんけれども、以上のようなことでございます。
  103. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 小倉さん、少なくともことしの税調の議論、それから年末にはまた五十八年度の答申となってまいりますね。  そのときには、その中期答申の目標というものに触れて、ここでとめるべきなのか、新たな目標を立てるのか、それから中期答申にもございました予算における二〇%のめどという問題も、現在の国債比率からすれば、ほぼその線までいっているわけですから、今年じゅうにはほぼそのめどを立てなければならない、二年、三年、四年先のことではないだろうというふうに思うわけでありまして、税調会長としては、ことしのテーマとしてそれを考えなければならないということに必然的になるだろうと思いますが、よろしゅうございますか。
  104. 小倉武一

    ○小倉参考人 まだ税制調査会としまして、新年度になってからどういうふうな取り運びをし、どういうふうなことを審議するかということは、しかと相談はいたしておりません。  したがいまして、私限りといいますか、去年の暮れに五十七年度の税制のあり方について答申をいたしました節にいろいろ御意見の出ましたところなどを頭に置いて申し上げますれば、当然五十八年度の税制改正というようなものが、今年度の春から、あるいは春過ぎから審議されるのではないかと思いますが、その際には、中期税制というものが、どの程度生きているかどうかは別にしまして、趣旨としては、税制調査会としてはあれに準じて物を考えるということでありましょうから、その中で、本年度から来年度にかけて、その事態に合わないようなことにつきましては、ある程度の調整を加えた上の考慮をして、そして来年度の、来年度と申しましても、もう一つ先の来年度についての税制のあり方を討議しよう、こういうことになろうかと思います。
  105. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 次に、小倉さんと和田さんと両方に同じテーマでお伺いいたしますが、いま一番大きな国会での問題は所得減税、私は物価調整を要求しているので、取り過ぎにならない是正を私ども野党では要望しているので、これは減税という本来の概念ではないんじゃないだろうかというふうにも思っておりますが、社会的通念の言葉になっておりますから所得減税という言葉を使わしていただきますが、税調会長も言われましたように、五十七年度の税制についての答申の中には、まあ五十七年度は見合わさなければならないという理由が書いてございます。先ほど小倉さんからも、また重ねてそのお話を伺いました。また同時に、できるだけ早くそういうことが可能となるような状況をつくるようにしなければならないと考えるという趣旨のことも述べられております。  去年の暮れに出すときには、そういう御判断であっただろうと思いますが、世論調査を見ても、七割、八割という数字が不公平の最大焦点として出されている、しかも、ことしに入ってますます大きな世論となっているというふうな状態でございますが、答申に述べられたお考えは、いまでも依然として同じでございましょうか。  それから、できるだけ早く可能となるような状況を、これはこれからの税調の審議の関係もあると思いますが、政府部内にも五十八年度にはという、いろいろなところからそういう意見も実はあるわけでありますが、ことしやらないで来年ということ、私ども賛成しているわけではありませんけれども、その辺のめどなどについて、これは会長個人としてで結構でございますから、気持ちとしてお考えのあるところをお伺いしたいというのが一点。  それからもう一つは、先ほど和田参考人からもお話がございましたが、物価調整制度の問題があるわけでありまして、国際的にも相当幅広い潮流となっているというのが現状だというふうに私どもも考えているわけであります。その是非をいきなりここで伺うわけではありませんが、少なくとも政府税制調査会において、国際的な事例、それからそれらの諸問題、日本で一体それではどうだろうかということは、これだけ大きな世論があるわけでありますから、これからの税調審議の重要なテーマに据えていただきたいと思うわけでありますが、いかがかということであります。  それから、関連するテーマでございますから和田さんにも伺いたいのですが、先ほど来、物価調整制度について当然ではないかという冒頭のお話がございました。私どももそのとおりに思うわけであります。その場合に、幾つか言われる問題があるわけでありますが、たとえば、そういう制度を導入すると、物価高、インフレにつながるのではないだろうかという意見があります。あるいはまた、十数カ国、すでに実例を私ども勉強しているわけでありますが、それらのすでに実行している国でも、最近は改めて再検討期に入っているというような意見もあります。私は、そうではないと思いますし、よくわからぬところもありますけれども、その辺は専門家の立場でどうお考えになりますでしょうか。  それから、いまは財源がないから減税はできないという論理が言われているわけでありまして、私は、理論から言えば、財源あるなしの問題ではない、もともと公平のベースの上の問題だ、不公平なベースの上の財政国民の信頼は生まれるはずはないだろうという気がするわけでありますけれども、現実問題として、これは税制あるいは財政改革と相伴わなければ実現できないというのも事実であろうと思いますが、その辺のポイントのところをどうお考えになりますか。済みませんが、お二方に二つずつお願いいたします。
  106. 小倉武一

    ○小倉参考人 物価調整減税あるいは所得税減税についてのお尋ねでございますが、個人としてというお尋ねでございましたが、個人としてということで申し上げますれば、これはやはり長い間課税最低限なりあるいは税率構造をそのまま据え置くというのは忍びないことだと思います。  ただ、税制調査会として御審議した際には、まだ今日のようなホットな政治的な問題になっておらなかった時期でもあります。今日の状況を踏まえて税制調査会で討議すればどういうことになるのか、これはちょっと想像しにくい。というのは、去年の暮れに政府に答申申し上げたときにも、物価調整減税ないし所得税減税について強い意見がございまして、来年度は物価調整減税所得税減税は見送ることにならざるを得ないというような意見が多かったのでございますけれども、今日どういうことになるかということになると、これまたにわかにこうだというふうにはちょっと私申し上げられませんので、いまのところ、公の立場としては、税調の答申にありましたように、やはり来年度はひとつ国民各位にがまんを願いたい、こういうふうに申し上げるほかはない、こう思います。  それから、インデクセーションの御質問がございまして、これを税制調査会で討議の課題にしたらどうかという御趣旨だったかと思いますが、これは無論そういう意見があることは承知しておりますし、恐らく委員の方の中にもそういう御意見を持っておられる方があることも承知しています。政府からそういう提案があるとはちょっと思えませんけれども委員の中から、そういうことを審議すべしとしかるべき提言がございますれば、これは審議をするということになるかと思います。
  107. 和田八束

    和田参考人 物価調整減税の件でお尋ねですが、お話しのように、減税というよりもむしろ調整というふうに言うべきだろう、私はそう考えるわけでありますが、一般減税減税というふうに言われておりますので、それはそれとして別に減税と言うことは差し支えないと思うのですけれども、意味する内容といたしますと、あくまでも調整であって実質減税とは区別して考えるべきであるというふうに私はかねがね考えているわけです。  この物価調整減税につきましては、御承知と思いますけれども、ヨーロッパ各国あるいは中南米諸国などの一部、それからオーストラリアなどにおいて幾つかの国で、いろいろ形はありますけれども、インデクセーションといいますか、そういう形で導入されているわけです。  これにつきましてはメリット、デメリットが指摘されておりまして、メリットといたしますと、インフレ下における税負担の不均衡の是正あるいは税における中立性というふうなことが言われておりますし、デメリットといたしますと、御指摘のような物価高につながるのではないか、逆にそういう結果になるのではないか。あるいは財政の弾力性が失われるのではないかというふうなこと。あるいは特殊的には、これは特にわが国の場合でのデメリットと考えられる点といたしますと、地方財政に対して影響を与えるのではないかというふうな点などが言われるわけであります。  しかし、このデメリットの内容につきましては必ずしもはっきりしないわけでありまして、いま申し上げました点では物価高につながるというわけですけれども、物価高と物価調整とはそういう関係になるということは必ずしもはっきりしないわけでありまして、むしろ物価直の結果として名目所得の上昇があり、調整減税の必要性が出てくるわけでありますので、調整減税をやっていると安心して物価が上げられるということにはならないのではないかと思うのです。  むしろ、これは逆でありまして、政府の立場からいたしますと、調整減税をしなければならないという義務づけが行われるわけですから、インデクセーションの場合に、法律的な形で、あるいは制度的に法律的に義務づけられるわけでありますので、できるだけ財政収入を安定させようというふうに思うならば、物価抑制策をとるということになるわけでありまして、逆に、政府の物価政策という立場から言えばプラスになるというふうに考えられるわけであります。ただ、かなり悪性のインフレーションのもとではどうかということになりますと、これは悪循環ということもないわけではないわけでありますけれども、いま申し上げましたようなところで政府の政策的判断というレベルで考えるならば、やはり積極的な物価抑制政策につながるということが言えるのではないかと思うのです。  それから、財政の弾力性が失われるのではないかという点については言われておりまして、また、イギリスがスライド制といいますかインデクセーション方式を見合わせているとか、あるいはフランスにおいても再検討が言われているというふうなことは、この点から来ていると思われるわけであります。ヨーロッパ諸国あるいはその他の諸国におきましても、やはり赤字財政の問題というのはあるわけでありまして、赤字財政下で財政を均衡させようとする場合に、物価調整といえども減税を避けたい、こういう財政事情があるわけでありまして、そういうところから再検討という問題が出てきているのではないかと思われるわけであります。  それは、各国において財政事情というものがありますので、一概に物価上昇に完全スライドで調整が行われるということにこだわるかどうかというのは、それぞれの政策的判断に属するものだと私は思います。ただ、言えますことは、余り長期にわたって調整が行われないということは、かえって財政上の弊害が大きくなるわけでありまして、その点では、再検討ということでいっても、長期にわたる据え置きということでは恐らくないのではないか。あるいは、そういうことはかえってまずい結果が出てくるのではないかと思うわけであります。  わが国の場合には、課税最低限だけからいいましても、昭和五十二年度が最後ということでありますので、やはりかなり長期期間にわたって調整が行われていないということになっているわけでありまして、一年ないし二年くらいでありましたら、財政的事情ということもやむを得ないかと思うのですけれども、このくらい長期になってまいりますと、逆に弊害が大きいわけであります。そのために、過去にさかのぼって行われる調整財源というものもかえって大きくなってくるわけでありまして、最近の物価上昇率をとってみますと、だんだん鎮静化している状況にあるわけです。将来にわたっても、それほど物価上昇率が高いとは思えないわけでありますので、この辺で過去の上昇率というものを一たん調整、修正しておくということにならないと、そういうことが行われないと、かえってだんだんと調整幅が大きくなってくるわけです。毎年度にならしていくと、財源難のもとでも比較的行いやすい金額の範囲、二千億円から三千億円程度というところでできるわけでありますけれども長期にわたりますと、かえってこれは累積していくという逆の弊害が出てくるように思います。  財源の有無によって判断されるのかどうかということでありますけれども、筋論から言いますと、名目所得上昇による取り過ぎ分ということでありますので、取り過ぎ分が財源の有無で左右されるということでは、理屈の上から言うとおかしいわけでありまして、予算編成の前提として、物価上昇による自然増分というのはあらかじめ控除して、その控除した上での財源で予算編成が行われるということがむしろ妥当であって、取り過ぎ分を一たん歳入と見込んだ上で減税する、こういう立場は理屈から言うとおかしい、こういうふうに思うわけであります。  しかし、現実の上ではそれも一つの有力な財源は財源でありますので、財源の有無ということは関係してまいりますけれども、現在の日本の財政状況から言いますと、いろいろな要素というものはあるわけでありますけれども、その財源がないということは考えられないわけでありまして、私が先ほど申し上げました幾つかの、五つぐらいの点を申し上げましたけれども、これらの組み合わせによって一定の財源を確保することは不可能なことではない、こういうふうに考えます。
  108. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 小倉さんにお伺いいたしますが、最近、直間比率ということが当委員会でもまたマスコミでもいろいろと話題となっております。  先般、二月二十日ごろの臨調の第一部会でも、直間比率を変えなければならない、変えるということは七、三の間接税の比率をもっと高めなければならないという意味でありますが、そういう意見が多数であったという報道を伺っております。税調会長としては、一体その直間比率という問題についてどうお考えになりますか。政府の方では、本来直間比率五、五がいいと思うけれども、当面六、四ぐらいという答弁を大臣からも伺っておりますが、その辺のお考え。  それから、もし政府と同じように間接税の比率を高めなければならないとお考えの場合に、一体どういう方法が考えられるだろうか。  それからもう一つ、消費税と所得減税のセット論という構想も実は一部にあるやに聞くわけでありますが、これは国会での総理の答弁などを伺いますと、大型新税ということは考えないで財政再建をやりたいということを総理も言明をされているわけでありますが、先ほど申し上げました政府税調の中期答申は、そういう消費税構想を含めて残っているわけでありまして、昨年はそういう具体的な審議はなさらなかったようでございますけれども、一応残っている。その辺は依然としてやはり残るべきとお考えなんだろうかどうなんだろうか、直間比率に関係をしてお伺いしたい。  それから、ちょっとさっき質問の中でお答えがございませんでしたのですが、五十七年度税制についての答申の中で、できるだけ早く所得減税が可能となるような状況をという表現がございます。できるだけ早くと言っても、こういう公式の答申の言葉ですから、場合によっては三年後でもできるだけ早くかもしらぬし、五年後でもそう言えるかもしらぬししますが、今年度の税制の答申についてなくて、五十八年度でもないとすれば、六年越し課税最低限所得減税の調整もない。今日でもこの状態でございまから、世論調査を見ても七割、八割の数字が不満を示しているということでございますから、もし万一そんなことがあったら大変なことになるだろうという気がするわけでありまして、会長としても、できるだけ早くということは、とにかくことしはできなくても来年はというふうなつもりではないだろうか、そう思うのが自然ではないだろうかという気もするわけでありますが、その点もつけ加えてお願いいたします。
  109. 小倉武一

    ○小倉参考人 まず直間比率の問題でございますけれども税制調査会としまして、直間比率そのものをずばりと、これはどの程度が妥当であるかということを審議したことは余りございません。それは結果として、いろいろな税制を改定をしたりあるいは物品税なり消費税をどうこうするということの結果として、直間比率がどうなるということではなかろうかというのが、別にそういうことを決めたわけではありませんが、どうもそういう審議の仕方だったろうかと思うのです。  ところが、最近は世の中の方がむしろ直間比率というのをずいぶん討議されておられるのでございまして、恐らくまた、先ほどから伺いますれば、国会でもそういうことがわりと討議されておるということでございますから、今国会におけるそういう御議論を踏まえて、税制調査会としても直間比率の問題を検討するということについてはやぶさかではございませんけれども、これは結局、一般消費税的なものあるいは大型消費税的なものを導入するかしないかというような問題とじかに結びつくような、あるいは物品税というものの現在のあり方を根本的に考え直してみるとか、そういったことと結びつくものでありますから、ただ抽象的に直間比率と言っているだけならいいかもしれませんけれども、そういう具体的な新税と結びつくことがどうも必然的に起こってくるということでございますので、なかなか取り扱い方はむずかしいと思います。  しかし、そういう日本の直間比率が、アメリカの連邦政府は一応別にしまして、ほかの諸外国と比べましても間接税のウエートが低い。また日本の過去と比べましても、今日の間接税のウエートは低いというようなことになっておりまして、これでいいのだろうか、特に財政再建を必要とされるというこの段階において、それでいいのだろうかというものでこれはあろうかと思います。これは今後の私どもの検討課題にしていきたいと思います。したがって、直間比率の是正を必要とするという場合に、どういうふうな方法でやったらいいと考えているかというお尋ねでございますが、これもいまお答えしたようなところでひとつ御理解を賜りたい、こう思います。  それからもう一つ、次は所得税減税、物価調整減税ですか、あれに関連して、これも考え方によれば非常に大幅な減税ということになるような御意見も多いのでございますので、そうすれば、他方それに見合う歳入、特に税収をどうするかという問題は、うらはらの問題としてこれは起こってくるのじゃなかろうか。必ずしも、どういうセットにするかということは別問題としまして、一方において、歳出の本当に厳しい節減というようなことから財源が浮いてくることもあり得るでしょうけれども税制調査会プロパーの問題としては、歳出をどういうふうに削って財源がどれくらい浮くから、それをもって所得税減税をというふうにはちょっと言いにくいのでございますので、税制調査会としては、お尋ねのございましたように、仮にセットとして考えるとすれば、大型消費税といいますか大型間接税といいますか、そういうものとのセットとしてどういうことが考えられるのだろうかということを検討することになるのじゃなかろうかと思いますが、しかし、それはいま私に対するお尋ねによりましてちょっと申し上げただけのことでございまして、別にそういう方針が税調として決まっておるというわけではございません。  それから、先ほどのお尋ねでお答えするのを忘れまして恐縮でございましたが、所得税を根本的にといいますか大きく改定を考えてみる時期として、そういうことができる環境ができるだけ早く来るのが望ましいというのは、いつごろをめどにしておるのかということでございます。いつごろをめどということについては、しかとした御返答はしにくいと思うのでありますが、財政再建のめどがつくというのがやはり一つの目安じゃなかろうかという気がいたします。
  110. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 重ねて恐縮でございますが、小倉さんと和田さんに、一つずつ別々のテーマでお伺いいたします。  小倉さん、五十七年度税制についての政府税調の答申、それから中期答申、両方を見ますと、今後具体化をされなければならない税目の指摘、あるいはもっと基本的に検討すべきであるという指摘などが幾つかございます。それをずっと読んで勉強いたしますと、そういう中でも、これは当面、たとえば今年中に審議をして、明年度、五十八年度中にも具体化をされるべき問題ではないだろうか、今日の財政状況からしても必要ではないだろうかという気がするものがございます。  たとえば退職給与引当金の問題につきましても、あり方の問題も含めて、答申の中には基本的な検討を行っていくべきであるとございますし、私ども考えてみましても、引当金の残高が過大であるということはよく言われております。また、答申にもあるように、支払い保全措置といいますか、そういうことももっと検討されなければならない。基本的には、内部留保として企業活動に使われるような性格のものではないはずだということもございます。そういう検討もあるでありましよう。しかし、いずれにしても、これは不合理の最たるものの一つに数えられるわけでありまして、早期にやられなければならないということであろうと思います。  また、広告費とかギャンブル税などについての話題もあったようであります。広告費も二兆円以上、ギャンブルにいたしましても一兆五、六千億ぐらいの規模になりますし、諸外国のギャンブル税の平均を見ましても、ヨーロッパの場合もアメリカの場合も、しかるべき負担をお願いするような仕組みができている。日本でも現在あるわけでありますが、それと比べてもっとあってもいいのではないだろうか。  また、答申にはございませんけれども、いわゆる医師税制の問題も、五段階にするときに、当委員会でも満場一致の附帯決議をいたしまして、あるべき近代的な合理的な税制をつくらなければならないということを言われましたが、これらについても、もうそろそろ新たな検討がなされるべき時期ではないだろうか。  退職給与引当金、広告費、ギャンブル税、医師税制の問題、四つだけ申し上げましたが、これらは、今日の財政状況からしますと、来年度の具体化をされるべき問題として考えなければならぬのじゃないだろうか。当委員会での政府側とのやりとりの中でも、大蔵省の方も、全部が全部ではありませんけれども、何かそういうふうに考えているのじゃないかというふうな気がいたすわけでありますが、いかがでありましょう。  それから、違うテーマで質問させていただいて恐縮でございますけれども和田参考人にいわゆるクロヨン問題についてお伺いいたします。  午前中の参考人意見陳述の中でも、クロヨンというよりはヤヨイという方が今日の状態ではないかというのがございましたが、何かマスコミ、社会用語として非常にたくさん使われているわけでありますが、私は、その内容をもっと科学的合理的にとらえていくことが必要ではないだろうか。何かサラリーマン対農民みたいな単純な言葉遣いにされるのもいかがだろうかという気もするわけであります。  たとえば税捕捉率という関係からいけば、税務署の対応とか記帳義務の問題とか、制度面その他での打開の仕方もさまざま出てくるであろうと考えなければならないという気がするわけであります。そうではなくて、片っ方は税金をいっぱい納めているのに、片っ方は何か脱税しているみたいな、税額の印象としてクロヨンとかヤヨイとかという話になると、これは違うのだろうと思うのですね。GNPの中の所得構造からいってもやはり非常に違うということだろうと思うので、私はむしろ、本来は今日の税制全般、特に企業税の関係などにメスを加えるべきであると思うわけでありまして、クロヨンをとらえる視点というものをもうちょっと冷静に考える必要があるのじゃないかと思いますが、別々のテーマでお伺いいたしまして恐縮でございますが、お答えいただきたいと思います。
  111. 小倉武一

    ○小倉参考人 税制の個々の項目につきまして、要検討項目についてのお尋ねでございますが、例としてお挙げになりましたものは、多く税制調査会でも引き続き検討するということに相なっております。  ただ医師税制については、ちょっとお言葉を返すようでございますが、税制調査会として、いますぐこれを再検討してどうこうしなければならぬというような意味においての検討事項にはしておりません。現在のあの七二から五二の段階区分をいたしましてやりましたときから数年を経ておりまして、五二%に該当するお医者さん、社会保険診療医の数がたしか三分の一くらいにもなっている。始めたころは数%だったようですけれども、現在はもう三分の一くらいになっておるというようなこともありますので、あれをさらに再検討してどうこうするという必要性が緊急にあるというふうには考えにくいのじゃないかと思います。しかし、せっかくの御意見でございまするから、その辺がどうなっているのか、税制調査会としても確認をした上で、必要な検討事項があれば検討するというふうにしたらどうかと、いま気がついたわけであります。
  112. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 あと二十分くらいの時間でございますので、鈴木参考人と飯田参考人土地税制を中心にして伺いたいと思います。  先ほど冒頭のお話の中で、それぞれ貴重な御意見をいただきました。また、飯田さんのお話も非常に共鳴しながら伺っていたわけであります。  まず、お二方に共通のテーマでお伺いしたいのですが、連続して譲渡税の見直しを行ってきた、緩和を行ってきた。しかし、先ほど御指摘がございましたように、五十五年、昨年度には供給がかえって減っているというのも現実の姿であります。いずれにしても、土地政策について税調答申でも指摘をしておりますように、税制はあくまでも補完的なもので、総合的な土地政策が早急に確立されなければならないというのは当然のことであろうと私も思うわけでありますが、そういう状況を踏まえて、まず宅地の供給という観点、地価の問題も当然加わりますが、宅地の供給を中心といたしまして、現制度の今回の改正にはいろいろと問題がある。それでは一体どうしたらいいのか、どうしたら社会の需要にこたえられるような宅地の供給ができるのか。とにかく、先ほどお話がありましたように、持っていれば最高の財産というよりも、もっと公共性の認識が出るような措置が必要だろうと思います。また計画性のある展望、土地対策も必要だろうと思いますし、自治体の先買い権の問題などなど、いろいろなものを含めた対策が必要ではないかなという気もするわけでありますが、特に、地価あるいは宅地供給という面を含めて、現状の問題点は一体どうあるべきか、どうしたらいいのだろうかということをお伺いしたいのです。
  113. 鈴木隆

    ○鈴木参考人 私は、飯田さんのように土地の問題の専門家ではありませんが、現在の日本の土地私有制度を前にいたしまして、何らかの一つの方法によりまして一挙に土地が大量に世の中に出てくる、あるいは値下がりするという方法はないのではないだろうか、このように考えております。  ですから、いろいろな方法を併用いたしまして、土地を少しずつでも供給する。その意味で、私も、先ほど宅地供給税制との間に密接な関係があるとは考えていないというふうに申し上げたのでございますが、たとえば税制を使いましたところで、飯田先生がおっしゃるように、土地は最高の資産であるからそれは売らないであろう、こういう意見も当然あるわけでありますが、しかし一方で、土地とその他の資産との比較でなくて、たとえば土地を持っている人が何か仕事をやる場合に、土地を売ることと土地を担保にすることとの比較というような資産の選択もあるのではないかと思いまして、いろいろな方法によるところの宅地供給についての努力が必要ではないかと考えているわけであります。したがいまして、今度の税制改正につきましては、これはいいのではないかなと考えているわけであります。
  114. 飯田久一郎

    ○飯田参考人 私は、税制を利用して土地供給をふやすということは、必ずしも不可能ではないと思っておるのでありますが、なかなか合意が得にくいという問題がございます。政治的に実行がむずかしい。  そこで、いま考えられますのは、もちろんいま鈴木さんのおっしゃいましたように、いろいろな方法をコンパウンドして、組み合わせてやっていくのが適当なんじゃないかと思っておりますが、その中でかなり重要なことは、むしろ需要を一時抑制するということじゃないかというふうに思っております。  いままで、土地問題といいますと、何か供給だけを考える、いかにして供給をふやすか、それを税でやるあるいはほかの方法でやろということなんでありますが、土地という普通の商品と違った特殊な資産については、買いに行けばむしろ売り手は強くなるという関係もございます。それで、むしろ若干の期間は需要を抑制して、極端に言えば余り買いに行かないということで、地主さんの方も、これは余り買い手がないからそう高いことも言えないというようなことで、土地に対する考え方が次第に変わっていくというようなことをやってみる手があるのじゃないか。  その一例といたしまして、最近、五十二年、五十三年ぐらいから地価が大変上昇いたしまして、大体地価も住宅価格も五割ぐらいは上がったというふうに言われておるのでありますが、その原因は、四十九年以降五十二年ぐらいまで全く安定していたと言われるのに、なぜそういうふうなことが起こったかといいますと、ほかに理由はない、もっぱら需要をふやし過ぎたことだというふうに私は思うわけであります。その需要をふやしたということは、当時、景気対策ということで、住宅金融公庫の持ち家融資を倍近くまでこの二、三年間にふやしていった。これとほとんど時期を同じくして、住宅金融公庫の持ち家融資の増加の半年おくれぐらいの形で地価がたちまち上昇を始めて、その結果として大変な地価の暴騰が起こってきた。  これを見ましても、住宅事情の改善ということは非常に重要でありますが、持ち家だけで土地を何とか吐き出させて、それで問題を解決していこうという姿勢には問題があるのじゃないか。むしろ、すでに持っている人間に建物をつくらして、それを住宅事情の改善に使うというようなことで、宅地に対する需要をある程度抑制していくということが必要なんじゃないか、それによってむしろ供給がふえてくるのじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  115. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 飯田さんの先ほどの話を興味深く伺っていたのですが、時間の関係で言い足りなかったのではないかと思いますが、宅地並み課税の問題です。  飯田さんのお書きになった論文で、今回の宅地並み課税の取り扱いについての御見解なども拝見をいたしました。同時に、市街地の中における農地というものの取り扱い、言うならば、このあり方の問題ですね。いろいろな意見がございまして、市街化の中でも、市街化区域に一応編入されているけれどもどうしても農業をやるんだ、あるいは緑が必要だからほっぽっておくんだということならば、線引きをし直してもう一遍調整区域に入れたらどうかというふうな意見とか、その他やや現実的な話とか、いろいろあるわけでありますが、この宅地並み課税の問題点、それから、それじゃ一体どういうあり方、何か別の方法という言葉もございましたけれども、その辺御意見をお伺いいたします。
  116. 飯田久一郎

    ○飯田参考人 時間の関係もございますので簡単に申し上げますが、私は、市街化区域の中の農地を全部宅地化すべきだという意見を以前には持っておりました。しかし、その後いろいろ情勢の変化を見まして、やはり営農を本当に希望する人たちには、食糧生産の意味からいってもあるいは環境保全の意味からいっても、営農を認めるべきだ。その場合は当然、保有税は営農が続けられる程度に軽くするということは必要なんじゃないか。  ただ非常にむずかしいことは、そういう本当に営農をやるという人と、それから実はそうでない、値上がり益を目当てにして営農をやっている仮装農家といいますか擬装農家といいますか、この人たちをどうやって区別するかという問題があるわけなんです。その区別をするのに、私は、何年か前に衆議院の予算委員会で、公述人として選択的宅地並み課税という方法を提案してみたことがあるのでありますが、そのときは、いま考えられているようなことに近い、営農を希望する人とそうでない人を単純に分けて、ただ営農を希望して、なお実は途中で都合がよければぱっと売ってしまうというような人には、今回の改正よりももっと厳しいペナルティーをつけて、これを選別したらいいのじゃないかということを提案したことがあるのでございますが、いまではこれは事実上なかなかむずかしいのじゃないか。  そこで私は、昨年ある研究会をつくりまして、そこには農業側の人も加わってもらいまして、保有税でなく譲渡所得税を、今回の改正とは逆にごく多額譲渡所得を持っている人だけに思い切って強化するというような案をつくりまして、これは全国農協中央会の方も賛成でしたし、特に東京都の農協中央会長にもこの案に賛成してもらいまして、提案したことがあったのです。そういう値上がり益目当てに土地を持っている場合は、営農を続ければある意味ではほとんど意味がなくなってしまうというようなことを所得税を使ってやれば、むしろ相当大量の農地が急速に宅地に転換されるのじゃないかということを考えたのでありますが、いかんせん、皆さんの直ちに御賛同を得るわけにはなかなかいきませんで、そのままになっておるわけであります。  いろいろ討議してみたわけでありますが、そのときのいきさつからいっても、宅地並み課税という方法はかなりむずかしいのじゃないかという気がしているわけであります。そういうことでございます。
  117. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もっと鈴木さん、飯田さんにもお伺いしたいことがいろいろあるのですが、時間が少ししかございませんので、お二方に最後にお伺いしたいのです。  先ほどお話がございましたが、私はいずれにしても、広い視野から土地住宅政策全体をトータルとして考え直さなければいかんともしがたいであろう。この点は税調答申にも言っているのと私は同じ意見であります。  私は田園都市線沿線に住んでおりますけれども、線路の名前からすれば非常にうららかな田園を想像するわけでありますけれども、そうデラックスでない、普通程度の規模の建て売り住宅でも、とにかく七千万円台、八千万円台、九千万円台というような調子ですね。ですから、この間も当委員会で申し上げたのですが、単に異常であるというよりも、もう何か社会全体がおかしくなるんじゃないかという気がします。  私の友人がある雑誌に論文を書いておりましたけれども、五十坪の区割りのある空き地がある、子供がそこで遊ばないというのですね。空き地があってもキャッチボールをしない。非常に高いものだということが頭にあるものだから、さくをしなくても、そこに空き地があっても、そこで遊ばない。何か子供の気持ちにまでも影響が出てくるんじゃないだろうか。  本当にこれは考えなければならない問題だろうと思いますが、端的に言って、今日の土地住宅問題をお考えになりますときに、両参考人立場からいって、優先順位で一、二、三とか、三つとか二つとか、特にこれをまずやらなければならないということを考えるとしたら、どういう御感想をお持ちでしょう。参考にさせていただきたいと思います。
  118. 鈴木隆

    ○鈴木参考人 私は、現在のような財政状況のもとでははなはだ困難かと思いますが、もし財政状況が大幅に改善するようなことがあれば、官民一体の大型の土地供給の体制をつくることによってそれが可能になるのではないか、こう考えております。
  119. 飯田久一郎

    ○飯田参考人 私は、いますぐ実行できることといたしましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、土地所有者、たとえば農家あるいは木造アパートの経営者、そういう人たちに土地を買わないで住宅をつくってもらう、それを安く貸すようにする。  そのためには、若干の低利融資というようなことで財政資金が要りますが、私の試算したところでは、たとえば年に百五十億円ぐらいの利子補給をやれば、五万戸ぐらいの良質で耐火の賃貸住宅ができる。そのことはGNPに対しても非常に大きな、私の試算では〇・三七%ぐらいのGNP浮揚効果がある。税収も、それによって二千億円ぐらいの税収が入ってくる。それに対して歳出の方は、最初の年度百五十億円ぐらいの利子補給をやっておればいいというようなことで、住宅事情の改善、それからいま問題の景気浮揚、内需拡大あるいは都市の防災対策、それから一番肝要な、一番恵まれていない人たちの住宅事情の改善というようなものに、同町に効果があるんじゃないかというふうに思っております。
  120. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 一番最後に、小倉参考人に一つだけお伺いいたします。  先ほどのお話を伺っておりますと、五十七年度税制答申の中で述べられている今日の所得税のさまざまな諸問題、また減税問題と課税最低限税率構造、それも含めてできるだけ可能となるような状況という言葉がありまして、私は、会長としては当然、相当庶民の声を受けて切実なお考えをもって取り組まなければならぬという気持ちであろうかと思ったわけでありますけれども、お話を伺っておりますと、財政再建期間というのがめどであろう、政府の答弁と全く同じで、昭和五十九年度までだめというふうな印象に聞こえるわけでありまして、私は、その点だけではありませんが、そのほかのことも含めて、政府税制調査会がもっと社会的権威を持つ、社会的権威というのは、やはり意見はいろいろ幅があり、意見はストレートでなくても国民とつながっている、諸階層の意見がそのままオーケーでなくとも、国民の信頼感に支えられてつながっている、そういうことが私は、政府税調の社会的権威であろう、また、そういう立場で税調会長も御活躍を願うことが大事ではないだろうかという気がするわけでありまして、そういう意味からいいますと、昨年もそうでありましたけれども、いろいろな新聞報道その他がございまして、相当手厳しい表現などがございました。  私は、より一層深刻な今日の事態でありますから、もっと国民諸階層、さまざまな諸団体ともフェアな議論がある、オープンドアシステムでさまざまな意見も広くこの際求める、地方に行かれる、その他の御努力も、いままでもあったようでありますけれども、思い切ったそういう努力が基礎になって意見の集約が求められないと、何か信頼感がますます欠如をする、不信の焦点として、ということになったら非常に大変だと思いますから、その辺を会長としてどうお考えか、つけ加えて具体的なことを質問申し上げて恐縮でありますが、いま申し上げた、できるだけ早い機会に今日の所得税の諸問題を解決できるようなということからいいますと、課税最低限税率構造と両方言われております。それぞれ全体に影響はするわけでありますけれども、主として中低所得者との関係の問題と、それから中以上、高額所得者の関係と影響が集中することは御承知のとおりでありまして、答申にはその二つが言葉を並べて並行して書いてございますけれども、会長としては、いまの諸問題からすれば、どちらに一体重点を置いて考えるべきとお考えになるのか、その辺どういうお気持ちを持っておられるのか、最後にお伺いしたいと思います。
  121. 小倉武一

    ○小倉参考人 特にどちらに重点を置くというようには、実はそこまで審議しておりませんから申し上げにくいですけれども、しかし書いている順序がありますから、ひとつそこでお察し願いたいと思います。
  122. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 今後の税調の運営についてはいかがですか。
  123. 小倉武一

    ○小倉参考人 いろいろ御注意いただきましてありがとうございます。ひとつ、できるだけ御趣旨に反しないようにいたしたいと思います。
  124. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 では、参考人の皆さんにはありがとうございました。
  125. 森喜朗

    森委員長 鳥居一雄君。
  126. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 参考人の皆様には大変御苦労さまでございます。引き続きまして質問をさせていただきます。順次伺ってまいりますが、まず小倉参考人に伺います。  今日、総合的な土地住宅政策というのは、国土利用法であるとか都市計画法、こんな程度のもので見るべきものがない。そういう中で、土地税制だけを頼りにして、土地供給あるいは地価の安定を図っていこうというような意味合いの政策がとられる、こういうことに非常に疑問を抱くものであります。  かつて、昭和四十三年の政府税調の答申の中にこういう部分があります。あくまでも土地税制というのは補完的、誘導的なものにとどまること、そして土地政策全般との整合性において、その政策の配慮が十分に行われないままに土地税制だけが先行した形で措置されていく場合には、かえって将来に土地政策全般の遂行の阻害となる、こういう指摘がありますし、今回、五十七年度税制改正に当たっての政府税調の答申の中にも指摘をされているのでありますが、いまだに、この土地税制というのはあくまで補完的なものであり、むしろ総合的な土地政策の確立が必要だ、こういうふうにございます。  総合的土地政策、これについてどういうふうにお考えでしょうか。税調答申のたびに、税制手直しのたびに、この土地政策を要求しなければならない、この辺の御所見について伺いたいと思います。
  127. 小倉武一

    ○小倉参考人 ただいまお尋ねの、この税調の答申の中に言っておりました総合的土地政策の必要性と、それから土地税制というのはそういう政策が樹立された上での、要すれば補完的な措置というようなことであるべきであるというのは、税制調査会のかねての考え方でございます。そこで、それじゃ総合的土地政策というのはどういうものかということにつきましては、税制調査会では深く審議しておりません。しかし何となく、税制について、土地関係についていろいろの御要望があり、関係省から土地税制をこういうふうにしたいという申し出があって、役所を通じて税制調査会で審議いたした場合に、どうも根本がしっかりしていないのじゃなかろうか、そういう不満がいつもございまして、その不満が総合的土地政策の樹立の必要というようなことになってあらわれておる。しかし残念ながら、それじゃその骨子といったようなものはどういうものであるかということまで、税制調査会で実は審議はしておりませんです。  今日の土地というのは、先ほども他の参考人のお話にございましたが、一般の商品というふうに土地を考えても性格が非常に違っておるものではないかという認識が、一体土地政策を取り扱っている行政当局にあるのかないのか、それが普通の商品と同じように市場の機能に任せておいて、しかるべく土地が配分されるのだというふうに実態はできないのではないか、これは私の個人的な考えですが。  その上に立って、じゃどういう措置を講じているかというと、若干の規制はあるようでありますけれども、しかし、先ほどお話しになりましたように、ちょっとした住宅を手に入れるにしても何千万というものが東京近郊ではかかるというような状態は、これは本当に少し異常な状況で、日本の限られた土地資源から見れば当然だということなんでしょうけれども、しかし、それを当然だというふうにしないで、そこに何か是正する措置がないのだろうかというようなことについての考慮が少し足りないのではないかという気が実はいたしております。
  128. 和田八束

    和田参考人 大変むずかしい問題でございまして、税制との関連で言いますと、私も、税制によって土地住宅問題を解決する、あるいはそのすべてを解決することは不可能だと考えております。その一部として考えられる点はあると思いますけれども、やはり補完的なものであるというのはそういう感じがいたします。  では、基本的な土地住宅政策は何かということでありますけれども、現状からいいますと、これはかなり手おくれという感じがしないでもないわけであります。いままでも抜本的あるいは総合的ということが二十年、三十年来言われてまいりましたけれども、その都度、それが実行されないで今日に来ているということは、もう相当手おくれという感じがしないでもないわけであります。しかし、それであれば、なおさら基本に返った政策を行うべきではないかというふうにも言えるわけであります。  わが国は、福祉国家としてここ十数年の間かなりなレベルに達してきていると思うのですけれども、しかし、福祉国家として最大の未熟な点はやはり住宅の問題であって、住宅が安定していないあるいは住生活が安定していないという点が最も未熟な点だろうと思います。ここのところを今後最重点に行うことが福祉国家として重要なわけでありますけれども、その土地住宅政策が非常にむずかしい、非常に大きなネックであって、公営住宅あるいは公団住宅という政府が直接行う住宅政策すら、もはや壁にぶつかっているという現状でありますので、悲観的にならざるを得ないわけであります。  従来、公有土地の活用あるいは交付公債による土地の買い上げによる土地の公有化というふうな形で土地の公有化を拡大していく、そして、それによって安価で利便性の高い住宅を大量に建てていくことが基本であるということが言われていたわけでありますけれども、その基本のところをもう一度考えていく、その政策を行うような努力をしていくということが、やはり土地住宅政策にとっては原点ではなかろうかと思いますし、そこのところからスタートしていくというのが、福祉国家としては最も重要なところだろうと思います。  そのように土地の公有化ということを基本に置くならば、税制土地の公有化を促進できるようなところに最重点を置くべきであって、現在の土地税制というのは、どちらかというとその点がはっきりしないわけでありまして、むしろ持ち家政策といいますか、土地の私有化といいますか、あるいは市場での土地の流通売買というのを前提にして、それを促進させるという意味での税制でありまして、その税制が従来ことごとく失敗してきているわけです。失敗してきている税制が今日なお行われているということが、私は非常に疑問に思っておるところであります。余り具体的ではありませんけれども、そんな感じです。
  129. 鈴木隆

    ○鈴木参考人 先ほどのお話の、私権の制限を伴わずに大量の土地供給することはいま非常にむずかしいということなんでありますが、実は私ども、第三セクターの研究会をやっておりまして、現在、木更津と川崎の間に橋をつくろうということを言っております。現在の建設省や道路公団が考えております木更津と川崎の間に橋をつくる計画は、十一年間を要しまして、約一兆円の金がかかるということになっているのでありますが、これを民間の力で、五年程度で一兆円でつくったらどうだろう、そうしますと、千葉の向こう側に大量の宅地ができるのではないか、こういうことを私たちは言っております。  いずれにいたしましても、現行の体制のままで大きな宅地の供給ができるということはむずかしいのではないかというふうに考えております。
  130. 飯田久一郎

    ○飯田参考人 税制以外のいろいろの方法ということになりますと、たとえば土地利用計画を確立するとかあるいは私権の制限というような問題がございます。国土法等はその一部をやっておるわけでありますが、なかなか実行がむずかしいということで、悲観的に言えば、先ほど和田先生のおっしゃったとおり、そういう非常にむずかしい状況になっているような気がするわけでありますが、私は、全く望みを捨てているわけではございません。  一つは、先ほど申し上げたような土地所有者、たとえば市街化区域の農家というような人たちは、助成を相当にやれば、非常に安い値段でどんどん良質な賃貸住宅供給しようという意欲を持っているということもございますし、それをもっとやっていくべきではないか。  それからもう一つ、抜本的な点からいいますと、私権の制限ということをよく言われますが、その中の一つとして、土地といういわゆる公共財を手段にして限りなくもうけていく、五億もうければ十億もうけたい、十億もうければ二十億もうけたいというような行動を制約するという私権の制限ですね、それによってかなり問題が解決するのではないか。  たとえば東京都の場合で言いますと、十億円以上の土地を持っている人は農家だけで数千戸いるわけです。この人たちに、たとえば十億円ぐらいのところでひとつもうけはやめてください、あとは、場合によってはこれを税金で取りますよという税制を加味した方法でやることによって、相当大量の農地の宅地転換ができるのではないか、こんなふうに考えているわけであります。  以上でございます。
  131. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それでは、和田参考人と飯田参考人にお伺いしたいと思うのですが、時間の制約がございまして大変失礼でございますが、住宅不況が言われて大変久しいわけであります。  ここ数年の推移を見てみますと、昭和四十八年ピークで年間百九十一万戸建設ができた。それから下降線をたどりまして、百五十万戸からことしは百十万戸台である。この原因は、昭和五十四年、五十五年とこの二年間で住宅取得価格が四割上昇した。その背景には、土地の二けた上昇、構造的な要因として挙げられるものは新世帯の形成率が非常に下がっているとか、あるいはここ最近になりまして空家率が二けた、つまり過剰傾向に出てきている。  このような背景の中で、いまここで大幅な土地税制の緩和策をとろうとしているわけですが、住宅不況という観点から、これを克服しなければならないという点からいって、果たしてこの税制がどんな効果をもたらすものであろうか。つまり、地価の安定それから供給量、この上からいって今度の改正は有効なんだろうか、こう疑問を持つのですが、お二方の御意見を伺いたいと思うのです。
  132. 和田八束

    和田参考人 結論的に言いますと、最初に私がここで申し上げましたように、有効ではないというふうに私は考えているわけです。  現在、住宅建設ですが、民間住宅建設に対して特に有効であろうと思われるのは、第一には可処分所得の問題であって、従来も住宅建設戸数の伸びと可処分所得伸びとはかなり強い相関にありますので、この可処分所得の停滞というのが最も大きな影響力を持っているであろう。それから、もう一つは実質利子率の問題でありまして、実質利子率は現在非常に高いわけであります。実質利子率とは、いろんな解釈がありますが、この場合所得伸びを割り引いた利子率なんでありますけれども、現在いわゆる市場利子率はそれほど高くないわけでありますけれども所得伸びが非常に低いというところから、いわゆる住宅ローンに対して手控えが生じているということであります。この両者が現在の住宅不況の一番大きな原因である、こういうふうに考えておるわけです。
  133. 飯田久一郎

    ○飯田参考人 やはり住宅価格と取得能力との間の乖離というよく言われている現象でありますが、これが極端になってしまったというところに原因があると思います。  これは、実は四十年代の終わりごろにも同じような現象が起こりまして、本来ならその辺で急激に住宅建設は落ちたはずなんですが、たまたま第一次オイルショックによる名目所得の大幅増加、それからその際の不況による地価の安定ということがございまして、これは住宅産業にとって言えば神風が吹いたような形で、乖離現象が大分縮小したわけでございますね。そのために、また第何次かのいわゆるマンションブームというような住宅建設の増加が出たわけでありますが、それがまた地価が上がり始めて、所得の方は逆にインフレが鎮静して伸びないということで、二度目の乖離現象が生まれてきたわけであります。  これは、もう一度そういうスタグフレーションみたいなものが起これば、また解決されるわけでありますが、それでないと、いまのままですと、物価の方は鎮静して所得もそう伸びない、地価の方はやはりある程度上がっていくということになりますと、ちょっとこのままでは悲観的にならざるを得ないというふうな感じがいたします。
  134. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 最後に、四参考人に伺いたいと思うのですが、国会では、けさから予算委員会分科会はもうとまっております。野党五会派の自民党に対する要求がまとまりまして、一兆円減税の要求、こういうことで返事待ちに実はなっているわけです。  これは所得税の調整減税、まあ五年据え置き、あるいは、このところ伸び悩みの内需拡大のため、個人消費拡大のためにはどうしても可処分所得をふやさなければならない。一兆円規模の減税といいますと、ちょうどベースアップに換算しまして一・五%程度、こういうことで目下のところの最大の政治課題であります。一兆円減税に対して、率直な御意見をお願いしたいと思います。
  135. 小倉武一

    ○小倉参考人 大変な大きな政治問題にいまなっていることでございますので、私から特に感想めいたことを申し上げるのは失礼でございますので、御遠慮申し上げたいと思います。
  136. 和田八束

    和田参考人 私は、先ほども申し上げましたように、物価調整減税をすべきであるという意見でございます。具体的には一兆円程度の規模ということで提案が行われているように承っているわけでありますけれども、金額的にいいまして、いろいろ総合したところ妥当ではなかろうか、一兆円程度はいろいろ総合した判断として妥当ではなかろうか、こういうふうに考えます。
  137. 鈴木隆

    ○鈴木参考人 私は、政府税調の委員としまして、せんだっての答申の際には、長年にわたって減税を行わないのはきわめて残念ではありますが、現在の財政再建がきわめて重要な折であるので、一刻も早く減税ができる環境をつくることが望ましい、このように意見を述べました。現在でも同じに考えております。
  138. 飯田久一郎

    ○飯田参考人 一兆円減税の、その一兆円という数字が適当かどうかということは、かわりの財源との関係もございまして、私としては、ちょっとまだはっきり判断ができないわけでありますが、しかし、ある程度の調整減税というのはいろんな意味でやるべきじゃないか、こう思っております。
  139. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ありがとうございました。
  140. 森喜朗

    森委員長 和田耕作君。
  141. 和田耕作

    和田(耕)委員 参考人の先生方には、大変長時間にわたりましていろいろと教えていただきまして、ありがとうございました。三つほどの問題を簡潔にお伺いしたいと思っております。  まず第一に、税金の問題ですけれども、鈴木総理も渡辺大蔵大臣も、この問題をいろいろの角度から質問をしますと、日本は外国の先進国に比べて税の負担がまだまだ低いんだ、したがってまだ負担を強めてもらってもというような感じの答弁が非常に多いのですね。恐らくそういうふうに本当に考えておられると思うのですけれども、これはどうも私の考えでは、そういうふうに考えるべきではなくて、先進国に比べて負担が低いから、民間が活力を持って国民が大いにがんばっておるというふうに考えなきゃならないのじゃないか。その政府の規模あるいは社会の公共的な援助による国民生活のバックアップというような問題を考えた場合に、ちょうどこの自由諸国としての日本の状態というのは、ある意味で限界みたいなところに来ておるんじゃないか、そういうふうな感じもするのでございますけれども、その課税という、負担率という問題についての基本的な考え方、私がいま申し上げたような見当は間違っておるのかどうか、ひとつ先生方皆さんに教えていただきたいと思います。  まず小倉先生からひとつ。
  142. 小倉武一

    ○小倉参考人 税負担がどういうふうになっているか、国際的な比較はどうかというようなことでは、よく国際的比較でもって税負担は他の先進国と比べて日本は必ずしもそう高くないのだというような計数もございますし、それが個人所得あるいは国民所得関係においてもよく言われます。  他方、と言いながら、これに反論する方は、生活様式といいますか、先ほど住宅の問題、土地の問題が非常にございましたけれども、そういうような生活条件を考慮してみれば、日本の税負担が他の国ほど重くないとしましても、住居費といいますかあるいは地代に相当する部分については日本は大変な負担をしておる。だから、そういうことまで考えなくては、いきなり税負担の軽重ということは軽々に論ずることができないという考え方もございまして、これはただ外国との計数を比較して、計数上日本が軽いからといって、当然税負担が軽いんだというふうに簡単に結論できるものでもなかろうというふうに私は思います。  ただ、比較の仕方というものは非常にむずかしゅうございますので、たとえば生活水準というものを国際的に比較してというようなことになりますと、これはなかなか容易ならざる仕事にもなりますので簡単に言えませんけれども、ただ、一応の国際比較によれば、他の先進国に比べて日本の税負担はそう重くないということは言えそうだという感じはいたしております。
  143. 和田八束

    和田参考人 おっしゃるように、租税負担率が低い状態、いわゆるチープガバメントの状態のもとで高度成長が行われてきたというのが、かつてのわが国の経済の実情であったと思うのです。これは、やはり戦後日本経済の高度成長の一つの大きな要因であって、軍事支出が少なかったということとあわせて、特に民間投資促進が見られた大きな要因であったと思うのです。  これが、昭和四十年代の末から五十年代になりまして状況が変わってきているわけでありまして、現在必ずしも、かつてのようなチープガバメント、つまりGNP比二〇%程度負担率に戻せば、この成長力が回復するかどうかということは言えないわけでありまして、経済の質が変わってきたというふうに考えざるを得ないわけです。  しからば、どこまでも大きな政府になっていっても差し支えないのかということになりますと、そうではないわけであって、そこのところは、具体的なその国その国の経済状況に応じて見なければならないわけでありまして、わが国の状況から言いますと、社会保障もかなり進んではきましたけれども、やはり未熟である。それから軍事支出も低いのですけれども、やや増大ぎみにある。それから民間設備投資も停滞したとはいえ、なお諸外国に比べればやや高い水準の可能性があるというふうなことを総合的に考えますと、これはちょっと感じの問題になって恐縮なんですけれども、ややその中間的なところといいますか、ヨーロッパの国民総生産に対して四〇%ないし五〇%を占めるようなビッグガバメントのところと、かつての高度成長期のような二〇%程度という両方を見てみますと、大体その中間あたりのところで現時点での選択はあり得るのではないかというふうに考えます。  そのような中間的なところでの選択といいますと、租税及び社会保険料負担率が三〇ないし三五というあたりではなかろうかというのが、私の感じとして持っているところでありまして、そういう点で、冒頭にも申し上げましたように、現時点で租税負担率二五%、社会保険料を含めて三五%というのは、今日のわが国の状況として選択し得るぎりぎりの限度に来ているのではないか、こういう感じを持っているわけです。
  144. 和田耕作

    和田(耕)委員 私は税負担と申しましたが、やはりその他の社会保障諸関係の公的な負担という意味を持って質問をしたのでございますけれども、こういう問題をきょうの先生方のような権威者の方々で一つの目安をつくっていただくということが、この税金問題を解決していくために非常に大事なことではないか。まだ税金の負担が低いからという、本会議でも総理も大蔵大臣も必ずそういう答弁をなさる。そういうふうな観点を整理するということがまず第一に大事なことです。     〔委員長退席、粕谷委員長代理着席〕  そして、もう一つの問題は、今度のこの二つ法律案を見ましても、かなり大幅な税収入の欠陥をカバーするための方法として、この問題を出してきている。もう一つは、景気浮揚という問題をかなり念頭に置いた二つの法案だと思うのですけれども、その場合に大事なことは、こういうふうな一つの政策的な意欲を持った法案の場合は、不公正な状態はできるだけ直していくという観点をいつも失ってはならないということが一つあると思います。  そしてまた、景気浮揚という場合に、現在減税という問題と公共投資という問題はどのようなウエートで考えたらいいか。二つとも景気浮揚だけではありません。一つは社会的な公正を確立していく。現在のサラリーマンがかなり不当な税負担をしているということを是正しなければなりませんけれども、いまの減税問題は、景気浮揚という問題を片一方で持っての要求になっている。片一方は公共投資という問題。  確かに、景気浮揚という面から見れば、減税よりは公共投資の方が私も効果的だと思っております。しかし、この問題は、反面で一年後には必ず建設国債のかなり大きな額を出していくということがすぐ裏にあるわけで、もしそういうことをやれば、五十九年までの財政再建、赤字国債からの脱却という問題と内容的に見ればほとんど同じような弊害が出てくる。確かに赤字国債ではないのですけれども、現在国債の問題の焦点は、もう元利払いが追っておって財政でもって公債費の負担をするという問題なんですから、そういう問題からすれば、建設国債であろうが赤字国債であろうが同じことなんです。そういうふうな問題を抱えての景気刺激としての公共専業費という問題があると思うのです。  この二つの問題を含んで、ひとつ先生方に、この段階でどちらをどのような判断、選択をした方がいいのかという問題について、大所高所の御意見で結構ですから、お述べをいただきたいと思います。
  145. 和田八束

    和田参考人 それでは私からちょっと申し上げます。  おっしゃるとおりだと思うのです。それぞれ二つの選択があり得ると思います。それで乗数効果が同じであるとするならば、公共投資と減税はどちらでも同じだということになり得ると思うのです。ただ、公共投資の場合には、従来からわが国の公共投資の規模は非常に高いわけでありまして、現時点でも公共投資の対GNP比は欧米諸国の大体倍ぐらいあるわけでありますので、国民経済的に見てやや過大であるという点から言いますと、不況に対して伸び率一定確保するということの効果はあるにしても、これをなお高めていくということは、国民経済的には余り好ましくないというふうに考えるわけです。同じ効果があるとすれば、長らく減税が行われないで税負担にアンバランスなり何なりが生じている減税の方を選択する方がベターである、こういうことだろうと思うのです。  それと、公共投資の場合にはロスがあるのではないかということが従来言われておりまして、これは、一つの土地に対して用地購入、用地補償にロスが生ずる。それから、ほとんど補助金で行われるわけでありますので、補助金を通ずる手続上、中央政府から地方政府に流れていく過程で事務的、人員的ロスがかなり生じるということでありまして、果たして公共投資がどれだけの景気浮揚効果を持つかはもう一度見直してみなければならないということ、減税の方はかなりその点ではストレートであるという点で、私は、現時点では減税の方が好ましいと思っております。  それから、建設国債と赤字国債とはどちらを出しても同じじゃないかということでありますが、私も、それは同じだろうと思います。ですから、減税の財源といたしまして、赤字国債の減額を延長するかあるいは建設国債をここでふやすかということは、さまざまな組み合わせがあるわけでありまして、それはどちらでもよろしいんじゃないかと思うのです。  ただ問題は、赤字国債の場合には償還年限が十年であり、建設国債の場合には六十年ということになっております。これも明らかな根拠というのがないわけでありますので、財政事情によれば、赤字国債の場合も償還年限をふやす、つまり借換債を発行するということは十分考えていいところだろう、私はこういうふうに考えております。
  146. 和田耕作

    和田(耕)委員 最後に、ひとつ宅地に対する政策についてお伺いしたいと思います。  午前中から、この問題が非常に重要なテーマになっておるのですけれども、これをめぐって、もっと公有化への方向を強めなければならないという感じ意見と、しかし、これはある程度の公的なコントロールは避けられないとしても、もうここのあたりが公的なものと私的なものとの関連はいいところだという感じ意見があるのです。現在まだ、この二つの議論の選択に持っていく前に、私的な土地の所有そして住宅の所有という問題の考えの中で、もっと解決できる方法がありはしないか。そういう問題をもっと具体的に考えてみる必要があると思うのです。  その意味で、今度の法案にある自分の住宅の買いかえですね、売って、そして新しいものを買う、この制度は非常にいい制度だと私は考えておるのです。というのは、都市の中心地における再開発の問題は、これなんかも政府がもっと責任を持ってやってくるべき問題だったと私は思うのですけれども、こういう問題を本格的にやっていけば、まだ、土地に対する余り深刻な問題あるいは地価の問題なんかも出てこないで、住宅の問題をある程度まで緩和することができるという感じもするのです。  この前物価狂乱のとき、地価の狂乱の中心だったときには、これは公有化はやむを得ないなという感じを私も持ったことがあるのです。しかし、土地の公有化への方向というのは、自由な経済状態を前提にすれば、決して建設的なものにならないですね。何かじゅくじゅくしたものをつくっていく可能性がある。土地の担保力の問題もそうです。資金の導入の問題もそうです。何とかしてその問題を解決する道を、もっと工夫の道がありはしないか。それは、やはり一つの再開発、高層化という問題を本気に考えてみるということが必要だと思うのですけれども、いかがでしょう。
  147. 飯田久一郎

    ○飯田参考人 いまの買いかえ制度ということは、私も先ほど最初に申し上げたのですけれども、買いかえ制度の復活、これは前にあったのですけれども、復活は、これは今度の改正案の中では評価すべき点の一つだと思っております。ただ、それだけで非常に大きな効果があるかというと、これはかなり疑問なような気がいたします。  それから、いわゆる高層化の問題でございますが、住宅地の再開発ということが、都市再開発法ができてずいぶんなるのでありますが、成功した例はほとんどないわけです。ということは、やはり日照権の問題とか、それから土地は最良の資産であるという地価神話がある中で、たとえば十軒の人を集めて、お互いに土地を出し合って、そこへ中高層のビルをつくろうじゃないかといっても、中高層ビルの中に入ってしまうと、結局土地との縁が大分薄くなるわけですね。一種の共有になってしまうわけですからね。そうなりますと、十人いれば、必ず一人や二人は絶対反対だという人が出てくるわけです。そうなると、これは強制できることじゃありませんから、実際上プランがだめになってしまうということで、東京の場合で言うと、たとえば杉並とか中野あたりで純然たる住宅地の再開発は成功した例はほとんど皆無に近いということなんで、やはりその辺に何かメスを入れないといけないのじゃないか。  ということは、簡単に言いますと、地価神話をなくしてしまうといいますか、土地を持っていれば絶対もうかる、土地は預金よりも国債よりも何よりも最もいいものであるという考え方が、いま日本じゅうにびまんしているわけですけれども、これを何らかの方法で抑えてしまうということになれば、これは当然再開発によって、老朽化した住宅がいっぱいあって、火事にでもなったら大変だというときに、それを拠出して、不燃耐火の共同住宅にすれば、遊び場もできますし、火災に対する安全性も非常に高まるということでいくと思うのですけれども、残念ながらそういう地価神話が支配している。  これは、最初に御質問があって、私どもお答えしなかったのですけれども税負担率の問題にも関連するわけなんですけれども税負担率といっても、私は、平均してすべての税について、それを金持ちも貧乏人も全部含めての平均税負担率というのは余り意味がないような気がするのです。わが国の場合は、平均税負担率ももちろん問題なんですけれども、たとえば土地について、土地を持っていることあるいは土地を売ったときの税金がものすごく安いということですね。  ところが土地というものは、たとえば政府の発表するいわゆる国富統計によりますと、これは非常に評価の安い地価を基準にしておりますから違いますが、現実の時価を基礎にいたしますと、恐らく東京の二十三区だけでも百兆円とか百五十兆円ぐらいの民有の土地資産がある。これは、一年に一〇%上がれば十兆円ないし十五兆円資産がふえるわけです。これも、株が上がったとか下がったというのではなく、株は上がっても下がることがありますから、これはふえたということになりませんけれども土地の場合は一遍も値下がりしてないということで、預金の利子がついたようなものなんですね。  そういうものに対する税制というのは非常に弱いといいますか、その辺をもうちょっと強化することによって、土地は最良の資産であるという考え方を解消していくことが先決問題じゃないかというような気がしているわけであります。     〔粕谷委員長代理退席、委員長着席〕
  148. 和田耕作

    和田(耕)委員 もう時間も大分オーバーしたようでございますから、どうもありがとうございました。
  149. 森喜朗

    森委員長 正森成二君。
  150. 正森成二

    ○正森委員 まず小倉税調会長に伺いたいと思います。  あなたは、昨年十二月の政府税調の答申をなさったときに、新聞報道によりますと、記者会見で、財政再建期間中の五十九年度まで所得税減税できないのは困る、五十八年度じゅうにも実施すべきだとたしかおっしゃっているところであります。新聞の見出しなどでは「所得減税、五十八年度にも 財政再建完了まで待てぬ」となっているんですね。あなたがこういうように強調なさったお考えの底にあるものを、ここでお述べいただきたいと思います。
  151. 小倉武一

    ○小倉参考人 私、いまの新聞の記事のことをよく覚えておりませんけれども、どうもそのときに私がお話ししたことと必ずしも表現が同じじゃないという気もいたします。  五十八年とか五十九年というようなことを明瞭に申し上げられるような数字ではないわけです。私見としてもそうですし、税制調査会でも、そこを詰めた議論ではなかったわけです。ですから、抽象的に申し上げますれば、先ほど伊藤先生の御質問にお答えしましたが、財政再建のめどがついてからというか、つけば、またつく前に、ということもあり得るわけで、それは少し幅広く考えるべき筋合いのものであろう、こういうわけです。
  152. 正森成二

    ○正森委員 何か妙なわけのわからぬような話になってきたのですけれども、当時は一般に、税調を代表して会長がそういうように言われた、もちろんそれには裏のお考えがいろいろあるわけですけれども、それは順次聞きますが、言われたと思ったのですけれども、非常に控え目な御答弁だったことを残念に思います。  それで和田先生に伺いたいと思いますが、その後で、ことしの二月十二日に衆議院の予算委員会の公聴会で、小倉さんの代理で出席されたと思われる木下さん、答申を出すために設けられた臨時小委員会委員長でありますが、ここに速記録も持ってきておりますけれども、その方が、所得税が持っている長所をいろいろ強調されている。たとえば再配分機能があるとか、いろいろ四つぐらい挙げられまして、挙げられるのはいいのですが、その後で、調整減税をやれ、あるいは所得減税をやれという主張を批判されて、大幅減税の主張はこの長所を否認することになる、所得増加よりも税額の増加が大きく、その負担に耐えがたいということは、まさに所得税に特有の累進性を緩和せよという要求にほかならぬ、このような主張は、保守的な財界人からならわかるが、そうでない場合は理解に苦しむというように、現在野党が行っている調整減税に対して、真っ向から挑戦的に意見を述べておられるわけです。  これは、ある意味では、ずいぶん詭弁であるというように思われるのですが、私は私なりの考えを持っておりますけれども和田参考人の御意見を承りたいと思います。
  153. 和田八束

    和田参考人 私は、速記録も見ておりませんので、木下先生がどういうふうにおっしゃったかわからないのですが、同じ財政学者として判断いたしますと、所得税の長所としては、所得弾力性があるという点と累進性、垂直的公平、この二つの点が従来言われておりますが、恐らく、その点を強調されて、大幅な減税があった場合そういうものが損なわれるということは所得税のメリットを弱めることである、こういうふうなことでおっしゃったのではなかろうかというふうに推測するわけであります。  もし、そういうふうなことであるとすれば、それほど所得税の長所を損なうほどの減税ということは、現在問題になっているわけではないわけであって、物価上昇程度の幅で課税最低限なり税率なりを修正するということでありますので、その弾力性なり累進性なりを基本として損なうものではないわけであります。もっとも、現在弾力性は余りにも高過ぎてやや取り過ぎという感がありますので、そこのところを修正したらどうかという話でありますので、所得税の基本的性格を損なうというようには私は考えないわけでございます。
  154. 正森成二

    ○正森委員 そこで会長にも伺いますが、一般的には、あなたの代理として出たのではないか、実際はそうでないかもしれませんが、木下教授がそういうように言われていることについて、小倉さんはどう思われますか。
  155. 小倉武一

    ○小倉参考人 国会にお出になるときは、恐らく私の代理ということでお出になったのだろうと思います。  ただ、いまお示しの木下会長代理の説明は、税制調査会で多くの委員の方がそういう理解をしておるというような趣旨でお話をされたのではなくて、和田さんがおっしゃったように、いわば財政学者ですか租税の専門家としてのお考えを申し述べられたのだと思うのですけれども、ちょっとしかし、和田さんがいまおっしゃったようなことで多少修正する必要があるのじゃなかろうか、これは私の個人的なコメントでございます。
  156. 正森成二

    ○正森委員 今度は修正する必要があるんじゃないかというように率直に意見を言われたことを私は当然だと思うのです。幾ら、所得税所得再配分機能があり垂直的公平があるということを御強調になって、それを少しでも減税で直そうというのは財界が言うならいざ知らずとおっしゃっても、たとえば極端な例を言いますと、もう一年か二年たてば地方税課税最低限よりも国の所得税課税最低限の方が下になるという事態ですし、それから計算をいたしますと、この割合で生活保護が上げられるとすれば、ことしも上がっておりますから、三年もすれば生活保護の水準よりも下になるということになるんですね。  そういうような場合に、それを是正するというようなことは、所得税の有利な点を直すことには、あるいは失うことにはならないわけで、むしろ行き過ぎを妥当な線に是正するということにとどまるわけですから、幾ら本年度所得税減税をしないと言っても、あなたの代理と見られる木下さんが、こういう、あなたでさえ多少修正しなければいけないと言うような議論を、予算委員会の公述人として出てきて非常に挑戦的におっしゃるということについては、非常に遺憾に思うということを申し上げておきたいと思うのです。  それからもう一つ申し上げますが、これも新聞に出ておりますので、小倉さんとしては、そんなことは言ってないと言われるかもしれませんが、これは二月十八日の毎日新聞の夕刊です。  関係筋が明らかにしたところによると、とこうなっておりますから、今度はあなたが記者会見でおっしゃったことではないのですけれども、五十八年度に所得税減税を実施するために、物品税を中心とした間接税の増税の検討に着手することになった。税制調査会に特別委員会を設置して四月ごろから審議を開始する予定だが、現在八十品目について課税している物品税の対象品目を大幅に拡大して、日用品以外の工業製品は軒並みに対象にして、大体五割ぐらい増税する、七千億円ぐらい検討しているんだということが出ているんですね。  これは、先ほど私が言いましたのと違って、あなたが記者会見でおっしゃったことではなしに、税調筋の関係者が明らかにしたところによると、とこうなっておりますから、あなたのもろの御意見ではありませんが、これについて率直な御意見を承りたいと思います。
  157. 小倉武一

    ○小倉参考人 私がそういうふうなことを毎日新聞の方に申し上げたということはございませんのですけれども、たしか、その新聞に出る二、三日前に、毎日新聞から私に会見の申し込みがあったのです。税調会長としての意見を聞きたいことがあるからというインタビューを申し込まれたのですが、税調会長として、いま現実にやっておるわけでもありませんし、恐らく大幅な間接税とか所得税減税のことだろうから、税制調査会の会合を踏まえないままに、会長としての意見を聞くと言われましても、これは困るということで、直接ではありませんけれども、秘書を通じてお断りしまして、したがって、そういうお話はしておりません。  ただし、事柄の内容について御質問でございますれば、そういう考え方は確かにあるわけです。ただし、これまでの税制調査会では、どちらかというと否定的であったわけです。と申しますのは、何も法律には書いていないのですけれども、物品税というものは、そもそも一般に広く物品税をかける性質のものではないというふうに従来理解されていた。ぜいたく品であるとか不要不急であるとか、そういったものにできるだけ選択的にかける。それを一般的にするということは、物品税の性格の変更を意味するということで適当でないというふうな、また、個別に物品をねらってそれを物品税の対象にするということは、いろんな利害が伴いましてなかなか実務上困難である、立法上も困難であるということもありまして、税制調査会としては、どちらかというと否定的だったように思います。  ただし、これから間接税云々というような場合に、あり方として、幅の広い一般消費税というふうなもののかわりに、そういう項目、物品税を拡大するというふうなことの検討が行われるかもしれませんけれども、従来のいきさつはそういうことでございます。
  158. 正森成二

    ○正森委員 率直な御意見を承ってありがとうございました。  もう一つ、また小倉会長で申しわけございませんが、同じく報道によりますと、土地税制については、実は来年度に改正する必要はないと思っているというように言われたり、そもそも、そんなものを答申する気はなかったんだというように言われている報道が十二月には広く出ているのですね。  そうしますと、本当は税調としては、宅地供給促進にも余りならないし、あるいはまた、所得税減税をネグっているのに、資産家が売った場合にそれに減税するというようなことは、いまの実情から見ていかがかという意見があったのに、自民党税調がどんどんと先に走って、そして政府税調ついてこいと言わんばかりの態度だったから、やむなくやったのだというニュアンスが、新聞からはありありと読み取れるわけですね。  これについての率直な御意見と、そのときにあなたが、この前の日なり二日前に自民党税調が出して、その後追いのようなかっこうで政府税調が答申を出すというようなことは好ましくないので、やり方を変えなければならぬというようなことも言われておりますが、この二つを含めて、小倉参考人の御意見を承りたいと思います。
  159. 小倉武一

    ○小倉参考人 土地税制につきましては、税制調査会の会長としての御説明と個人的な所見と入りまじっていって、どちらがどうだかはっきりしない点がございます。  いまの新聞の記事なんかは、まさにそういうようなことかと思いますが、実はこれは、昨年の十二月の答申の際に、答申のそのときというよりは、土地税制について審議しておったときのことでありますけれども、やはり税制調査会の中にも両論ございまして、景気浮揚だとか宅地政策の重要性だとかいうようなことで、税制上しかるべき措置を講じて、それに寄与するようなことをしたらいいのじゃないかという説と、他方、税制ばかりいじくって、またぞろ土地の税金が軽減されるということであれば、かえって逆効果じゃなかろうか。  また、お話にございましたように、所得税減税についてシリアスな要望があるにかかわらず、それはできないと言いながら、どちらかというと有資産家の税負担を軽減する、結果的にそうなるようなことを仕組むのは好ましくないということで、どちらが少数、多数ということでなくて両論ございまして、だから税制調査会としては、どちらともはっきり結論はつけなくなったわけです。  そこで、私の感じとしては、去年の土地税制改正のときに、これでおしまいだという感じを何となく私受けたわけです。また来年をめどにしまして、五十七年度の税制改正の中に土地税制を入れるということはないんじゃないかという、何か漠然と予感がしておったのですが、それにかかわらずと言っちゃうとおかしいのですが、これは個人的な予感ですが、土地税制が取り上げられまして、しかも実際上緊急のことだったらしいのですね。だから税制調査会としては、前広に検討する応問的余裕もなかったわけです。前広に検討する時間的余裕もなかったというようなことで、統一した結論に達し得なかった。  そういった事情が、ことしの答申の際の記者会見の言葉にあるいはあらわれておるんじゃなかろうかというように思います。
  160. 正森成二

    ○正森委員 率直な御意見を承ってありがとうございます。その、突如、ほとんどその日と言ってもいいぐらいにそういうことをお願いした関係者も当大蔵委員にもおりますので、きょうはいまおられませんが、率直な御意見を承って非常にありがたいと思っています。  鈴木さんと飯田さんに、もう時間がございませんので一問だけですがお聞きして、私の持ち時間が終わりますから終わりたいと思います。  新聞等にも広く出ているのですけれども、今度の土地税制改正について、いろいろな意見があるのです。三つほど申しますので、それについての御感想なり御意見をお聞かせください。  一つは、地主が土地を手放さない最大の理由が、土地が株よりも預金よりもずっと資産として価値があるためで、いまのように年一〇%もの地価上昇が続いている限り、譲渡税が少々軽くなっても、土地はほとんど出てこないという意見があるのですね。それから、あるいはまた宅地供給促進策で業界の主張をほとんどそのまま認めるのなら、その見返りとして、企業が更地を適正な価格で買い、適正な利潤で一般に売り出すよう指導の方も強化すべきだという意見。それからまた、企業の方も、社会的な資産である土地の優先的な利用を主張するからには、それによってどれだけもうけたか、経営内容を公開する義務がある。それでなければ、農家が得るはずであった値上がり益を吐き出させておりながら、結果としてはそれを買うた企業が宅地を造成し、そして建物を建てて、いいところは全部取ったと言われることになりかねないというような主張があるのですね。  これらについて、率直な御意見を両参考人から伺いたいと思います。
  161. 鈴木隆

    ○鈴木参考人 いま申されました三つの点について、三つともそのとおりであると思っております。
  162. 飯田久一郎

    ○飯田参考人 私も大体そのとおりだと思います。
  163. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。
  164. 森喜朗

    森委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、来る三月二日火曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十九分散会