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町田参考人 事業団に仕事を一元化しろというお話がいろいろあるわけでございますが、これは二つございまして、
一つは、賠償交渉とそれから施行と両方一元化しろ、こういう御議論もございます。それからまた、賠償交渉は別にいたしまして、施行だけを一元化しろ、こういう御
意見もございます。
鉱害賠償は損害賠償でございますので、加害者が賠償をするというのが一般の民事法なりあるいは
鉱業法の大原則でございますので、これは賠償義務者が有資力であれば有資力が賠償するというのが当然でございまして、この賠償交渉まで
事業団がやれという議論はちょっと理論的にも成り立たないのじゃないかと思います。
ただ、それならば施行を一元化しろという点でございますが、これは、有資力、無資力、いろいろばらばらでは整合性を欠くとかあるいは時間的にも差がありまして総合的な
計画的な
復旧ができないから
事業団で一元化しろ、こういう御議論かと思いますが、これにつきましては、現在それならば
復旧は実際どういうふうな施行になっておるかということをちょっと御説明申しますと、本年度の総
鉱害復旧量は六百三十億円でございますが、このうちの六十三億円は公共物件の
復旧でございます。そうしまして、公共物件は公共物件の維持管理者がこれを
復旧するというのが大体原則でございまして、専門的な技術も要しますので、これは従来とも国、これは建設省でございますが、国とか県とか
地方公共団体、こういうところが
復旧しておりますので、これはちょっと別にいたしまして、残りの五百六十七億でございますが、これをどういうふうにやっておるかと申しますと、有資力賠償義務者が六十五億円やっております。それから、これは有資力ではございませんけれ
どもいわゆる特閉会社というふうなもの、もうかって
閉山はいたしまして現在清算
段階でございますが、まだ清算
段階で人員もおるし
鉱害の
復旧の
経験もある、こういう会社が六十億円
復旧をやっております。それから市町村が、これは公共物件以外に
農地、
家屋等を
復旧いたしておりますのが七十五億円でございます。したがいまして、残りを
事業団が三百六十六億円いま仕事をしておりまして、全体の五七%の
復旧をやっておるわけでございますが、公共物件は別にいたしまして、これを仮に
農地、家屋全部
事業団がやるといたしますと、現在三百六十六億にさらに二百億円の工事をやるということになりまして、現在約三百八十人
程度でございますが、その人間を約二百人ばかりふやさなければいかぬということになりまして、これは現在のいろいろ行政改革等の事情から申しますれば、人間をふやすということは非常に困難だと申しても差し支えないのでございまして、そういう人員確保の面からむずかしいのじゃないか、こういうふうに
考えております。
それからまた、現在、
先ほど来市町村に大いに協力してもらったらどうかというふうなことが
答申にもございますが、市町村が七十五億現在やっております。一例を申しますと、たとえば長崎県等は
農地、家屋も全部市町村で
復旧をやっていただいております。福岡県等でも、たとえば水巻町、中間市とかそういうところはやっていただいております。それから、たとえば佐賀県でも多久市とか、あるいは常磐等につきましても北茨城市とか、仙台の方でもいろいろ市町村でやっていただいておる。そういうふうに
鉱害復旧という仕事は非常に地元に密着しておる仕事でございますので、市町村でやってやれぬこともない。市町村でも現在公共物件を現にやっておられるわけでございますので、私は
事業団に一元化するというよりは、むしろもう少し市町村に積極的にやっていただいたらいいのじゃないかというふうに
考えておりまして、そういうことを現に市町村に
お願いしておりまして、たとえば宇部とか小野田とかあるいは常磐とか、そういうところでもひとつ
検討してみよう、こういうことを
考えておられる市もございます。ただ、これは率直に申しまして、福岡県等は非常に賠償交渉がむずかしゅうございますので、市町村もとても引き受けられぬということでございまして、ほかの県等ではそれほど
被害者折衝がむずかしくないものですから、ひとつやってみよう、こういうところもあるわけでございまして、
事業団に何でも一元化するという必要は必ずしも
現実的でないのじゃないかというふうに私は
考えます。
ただ、総合的にやるという点は確かにありますので、そういう面で、
答申にもございますように、たとえば現在彦山川左岸というふうなところはなかなか進んでないという点もございますので、有資力同士の
調整がむずかしいとか、あるいは有資力と無資力の
調整がむずかしいとか、そういう点等につきましては、
事業団なりあるいは行政庁が間に入りましてそういう総合的な
計画をつくって、そして賠償義務者もあるいは
被害者の方もだんだんその
計画に追い込んでいくということは必要で、そういう
調整は
事業団は大いにやるべきだと思いますけれ
ども、みずから
事業団がやるということはやはりおのずから限度があるのじゃないか、こういうふうに
考えております。