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1982-03-19 第96回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月十九日(金曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 枝村 要作君    理事 麻生 太郎君 理事 楢橋  進君    理事 渡辺 省一君 理事 岡田 利春君    理事 中西 績介君 理事 田中 昭二君    理事 小渕 正義君       金子 岩三君    北口  博君       古賀  誠君    三原 朝雄君       山下 徳夫君    塚田 庄平君       細谷 治嘉君    岡本 富夫君       小沢 和秋君    石原健太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  安倍晋太郎君  出席政府委員         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君  委員外出席者         農林水産省構造         改善局農政部農         地業務課長   河合 正彭君         通商産業大臣官         房参事官    檜山 博昭君         参  考  人         (石炭鉱害事業         団理事長)   町田 幹夫君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  臨時石炭鉱害復旧法及び石炭鉱害賠償等臨時措  置法の一部を改正する法律案内閣提出第二三  号)      ————◇—————
  2. 枝村要作

    枝村委員長 これより会議を開きます。  臨時石炭鉱害復旧法及び石炭鉱害賠償等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査中、参考人として石炭鉱害事業団理事長町田幹夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 枝村要作

    枝村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 枝村要作

    枝村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中西績介君。
  5. 中西績介

    中西(績)委員 鉱害復旧法及び賠償法の二法について十年の延長ということでありますので、いろいろな角度から政府意見なりをただしたいと思っています。  そこで、まず私は大臣に二、三の点について質問を申し上げたいと存じます。  その一つは、昨年十二月十七日、石岩鉱業審議会から答申が出されております中に、鉱害量調査実施をされたということが示され、その総額は六千六百七十億円程度ということになっています。ただその際に、その量的なもの、内容等についてはまだ具体的に示されておりませんし、これは一昨年から相当長期間にわたって調査され、その都度私たち質問を重ねてまいったわけでありますけれども、そのことがまだ明らかにされておりません。したがって、きょうここでお聞きしたいと思いますのは、こうした調査なりが大変遅延をしてきた、それはどういう理由なのか、この点を大臣からぜひ明らかにしていただきたいと思います。  そして二つ目に、こうした問題につきましては四十七年以降十年間にわたって具体的に長期にわたる計画が立案され、それによって実施されてまいりましたけれども、まだまだ不十分な面がたくさん残されています。したがって、こうした問題につきまして、被害者の側から申し上げますと、大変な被害感あるいはそのことによって起こる多くの問題が派生をしているわけであります。ところが、実際にはこの中身を見てみますと、この復旧の部分につきましても、実質的には、農地あるいは家屋等を集約いたしましてもその率はまだまだ七〇%台にしか達しておらないという、多くの量を残しておるわけです。こうした復旧遅延理由が何なのか、そうしたことを政府としては十分把握をしておるかどうかということを考えてみた場合に、大臣がそうした点で十分な御理解をいただいているかどうかについて、ぜひお答えをいただきたいと思います。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全国鉱害量調査に相当時間がかかったが、その理由はどういうことか、鉱害量調査の結果はどうなっているかという御質問であろうと思います。  鉱害調査については昭和五十四年七月から全通産局において一斉に開始をされ、その結果が昭和五十六年初頭に通産省報告をされたわけでございます。通産省は、この報告を受けた後に内容審査調整分析を行ってこれを最終的に取りまとめて、その概要昭和五十六年六月二十九日の石炭鉱業審議会鉱害部会に御報告をいたしたわけでございます。  調査を開始いたしましてから取りまとめを完了するまで約二年を要したわけですが、これは何分調査対象地域が広範にわたり、かつ調査対象者も多数であったことが一つ原因であります。また、鉱害存否について判定が困難な地区については、ボーリング調査とか学識経験者意見を聞くなどの措置を講じなければならなかった、こういうことが第二点でございます。さらに第三点としては、図面整備を行い、これを最大限に活用するなど調査に慎重を期した、こういうことでございます。  調査結果については、石炭鉱業審議会鉱害部会に対する報告にもありますとおり、五十四年度価格ですが、六千六百七十億円程度となっておるわけであります。
  7. 福川伸次

    福川政府委員 第二点の御質問の、前回の法延長以後の復旧工事進捗状況がどうであったかという御指摘でございます。  昭和四十七年に策定されました鉱害復旧長期計画においては、十年間で、農地については七千二百三ヘクタール、家屋等については二万五千九百五十八戸の復旧計画を行う予定でございました。五十六年度まだ最終的な集計は終わっておりませんが、その進捗率を計算してみますと、農地等について見ますと六〇%強、家屋等については九七%程度公共施設については、これは評価がなかなかむずかしいわけですけれども復旧費を基準にして考えてみますと八七%程度、全体で七七、八%程度になっておるのではないかと思うわけでございます。  先ほど大臣が御答弁申し上げました六千六百七十億円という鉱害の中にはいろいろな要因が含まれておりますが、従来、進捗をいたすべきでありましたこの計画がおくれました理由は、二回にわたる石油ショックで、物価の上昇等によって工事費の値上がりを来したといったような問題が出てまいったためにこのような進捗になったわけであります。さらにまた、このほかに、新しい鉱害発生したというようなことも原因として加わっておるわけでございます。
  8. 中西績介

    中西(績)委員 そこで問題は、いま大臣が答えられましたが、地域が非常に広い、あるいは判定が困難な場合にボーリングあるいは学者、そうしたものを含めて科学的な調査とか、こうしたことを含めて慎重を期してやったということでありますけれども、そうした中では特に私がお聞きをしたいと思いますのは、六千六百七十億円という額が出ましたけれども、そうしたこの内容についてはこれから後さらに整理され、そして一定内容が私たちのところに発表され、われわれがそれを内容的に追及できる状況になるのかどうかですね、この点だけお聞かせいただきたいと思います。
  9. 福川伸次

    福川政府委員 ただいまの点に関しましては、私ども調査も、これはこの法律の取り扱い、延長をどのようにするかということの政策的な判断をいたす資料として得たいということでございまして、それで一応現在発表されております程度鉱害量に相なるであろうということを前提にいたしまして、これはその政策判断を下す、そのために審議会で御検討を願った、こういうわけでございます。一応十年の延長ということで法律が成立いたしましたあかつきにおきましては、こういった全国のベースを集計いたしまして、なお、さらに現在やっておりました調査というのは、先生もいま御指摘のとおりに概数でございますので、これをさらに地域別あるいは工種別につきまして私どもとしても精査を進めてまいるつもりであります。法律が国会を通過いたしました後に、今度は鉱害復旧長期計画を定めて、その概要を公表することにいたしておるわけでございます。  とりあえず地域別あるいは工種別鉱害につきましては、そのような形で発表をいたしていくということでございますが、じゃ現実にどの鉱害復旧に取り上げるかどうかという個別の問題によって事業団基本計画あるいは実施計画に入ってまいるわけでございますので、ごく具体、個別的な点は別といたしまして、たとえば大まかな形での工種別あるいは府県別程度内容は、復旧基本計画ができます段階で公表し得るのではないかと思っております。
  10. 中西績介

    中西(績)委員 それはいつごろ発表できるのですか。
  11. 福川伸次

    福川政府委員 この点につきましては、法律が通りまして、そして、その基本計画関係府県等々とも意見調整をしたりいたしますので、大体秋ごろにはできるのではないかと思っております。
  12. 中西績介

    中西(績)委員 この点はいろいろ細かい内容等についてはあると思いますので困難かと思いますけれども、やはりいままで私たち論議をしてきた段階の中でこうした内容がなかなかっかみにくい、そして、先ほど大臣お答えいただきましたように、二年間にわたる長い期間を要した、それくらいに緻密にやったからこそこの後の答申内容としては、一定安定化があり、そして精密度があり、正確にやったということでもって、これくらいのものだということを自信を持って示されたからこうした答申が出てきたと私は思いますね。ですから、これらの問題については、そうなればなるほど後々に、じゃ果たしてこれから後そうした問題がないのかどうかということにあわせて大変大きな問題を持つものでありますだけに、調査というのはそうしょっちゅうやれるものじゃありませんね、ですから、正確さを期するということも含めてやられたと思いますけれども、われわれとしても、この点論議するに際して、この内容がこれからどうなって、われわれとして把握できるのか、そうした問題等についてある程度持たないと論議のしようがないと思うのです。ここでの論議の仕方が正確を期するためにも、私、できるだけそうしたものが明らかになればという期待がありますだけに、要求がありますだけに、この点はまた秋口になれば、わかり次第お知らせをいただきたいと思います。  そこで、大臣にお聞きしますけれども、いま先ほど調査結果というものは大臣の方では十分認識をされたと思いますが、この答申の中に「鉱害安定化しつつある現状と今回の調査の高い精度を考えると、今後処理すべき鉱害量としては、今回の調査結果に即して判断してよいものと思われる。」とこう記述されているわけですね。そうなりますと、それに基づいて今度の基調が確立され、そしてこの答申がなされたということになるわけです。  ところが、私なりに考えますと、不安材料はあるのではないかと私は思うのです。なぜ私はそのことを申し上げるかと申しますと、この答申の中に、鉱害二法を十年間延長するに当たっての、そして六千六百七十億のこれが策定をされるその根拠になる理由の中の第二というところにいろいろ示されています。ここでは、いわゆる全面閉山によるところの鉱害が新たに出てきたとか、あるいは坑内の崩落あるいは坑木腐敗地下水水位変化、いろいろなものがあるということが書かれておりますけれども、これがいま完全に停止をするということにはならないんではないか。将来これは動くのではないかということ。さらに、その際にいろんなところでいま坑内水揚水をしておるところがまだ依然としてあるわけであります。こうしたものの変化などについても、これは直ちに地下水水位、そうしたことと非常に関係があるわけでありますから、こうしたものの原因による沈下、あるいはこの理由の中の第三のところに書かれておる追加認定をされたものが千億程度あるというように書かれておりますように、いままでまだまだ——安定はしたということでありましたけれども、これはこうして断じてよろしいかどうかということを私、大変懸念をするものです。したがって、そうした点で、特に十年延長する、そして今度この十年間の基本計画を立てていかれるという、こうした断定的なもので果たしてよろしいだろうかというこの点についてどうお考えなのか。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の調査につきましては、現地調査及びその後の分析評価を非常に入念に行ったわけであります。  今回調査実施した地域においては、新規採掘によるところの鉱害発生はほとんど見込まれなくなってきており、また、すでに閉山をした炭鉱にかかる鉱害についても、閉山相当年数が経過しておる、こういうことから安定をしておるというふうに判断できるのではないかと考えております。もとより鉱害量の最終的な確定は、これは賠償一般に共通する性格として、個々の案件の具体的な処理を待たなければならない、こういうふうに思いますけれども、いま申し上げましたようなことから、今次調査の方法及びその結果にかんがみますと、今回把握した鉱害量というのは大きく変動することはない、こういうふうに考えておるわけであります。
  14. 中西績介

    中西(績)委員 この点、もう少し専門的に部長の方にお聞きしますけれども、いま私が挙げたようないろいろな点から、これは大きく狂いはないだろうという大臣お答えのようでありますけれども、私は、その点が大変不安材料があるために確認しにくいと思うのです。でないと、これから後十年間の延長ということになってまいりまして、それからこれをさらにまた見直さなければならぬとか、途中で計画なりを変更しなければならぬというようなことになるわけであります。そうしたことが最初一番大事ですから、この点をあわせてお聞きしますけれども、どういうお考えですか。
  15. 福川伸次

    福川政府委員 いま先生も御指摘のとおりに、自然現象にかかわることでございますから、現在予想しておりますことと違った現象が起こり得ることは当然否定できないと思います。  いま答申の第二を引用されながら、地下水水位変動がどのような影響を与えるかということの御指摘がございました。確かに筑豊地域では最盛時には二千万トンを超える石炭が生産をされておりましたし、炭鉱数も二百あるいは三百という炭鉱があったわけでございます。それが全面的に閉山になったわけでございますので、その当時揚水等でくみ上げておりました水位が、その後全面閉山によって変動するというようなことがございました。そういうことのために、たとえば湧水被害等新しい形態が出たわけであります。さらにまた浅所陥没といったようなことで、深度の浅い採掘の場合には、かえって相当年数を経た後において坑道壁風化等によって地盤が緩む、こういうケースがあったわけでございます。  そういったことから、いま御指摘坑木腐敗とか地下水位変動等によって出てまいったわけでございますが、これもいま大臣が御答弁申し上げましたように、閉山が行われましてからかなり日数がたって安定をいたしております。通常のケースで申しますと、大体三年程度でこの鉱害現象は安定に向かうということが鉱害理論からよく指摘されておるわけでございます。そういった閉山等関係からまいりますと、現在の時点でおおむね安定に向かったと判断してよいのではないだろうかというのがこの御答申趣旨でございました。私どももそれを尊重してまいりたいと思っております。  さらにもう一点、採掘影響範囲等判断についてまた新しいものが入ってきたのじゃないか、したがって、今後もそういった採掘影響範囲によって鉱害が出てくるのではないだろうかという点の御指摘もございました。もちろん、これも先ほど申しましたような自然条件変化にかかわることでございますから断定はいたしかねますけれども、その後の鉱害認定科学調査あるいはまた裁定等で、その辺の鉱害判断にいたします科学的な手法も進捗をいたしておるわけでございまして、特にたとえば軟弱地盤であるとかいろいろ問題がございます。しかし、それも学識経験者お願いをいたしましたりしながら、その判断をかなり精緻に進められるようになってまいっておるわけでございます。したがいまして、こういったことからいまの鉱害量調査がある程度判定の中に入ってまいりましたが、これまでの三十年の鉱害復旧経験にかんがみまして、一応現在出てまいりました調査結果を、先ほど大臣が申しましたように大きく変わることはないと判断してよろしいのではないだろうかというふうに考えております。
  16. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、またもとに返るようですけれども、この調査を私が特に重視しますのは、いままで私の経験の中から申し上げますと、そこには鉱害はないんだという、あるいはいまあなたが言われた三年を経過すれば一定の安定、その結果その地域鉱害認定されなかったというのが、いろいろ科学的調査などで指摘をしてやることによってまた新たにそこに、たとえば空洞があったとかあるいは鉄柱もあったとか、いろいろなものが出てくるわけなんですね。ですから、炭鉱自身が持っておる、資本の側が持っておるいろいろな図面、どうもそうしたものとの違いがあるのじゃないかというふうなことを、直接いままで手がけてきた中から指摘できる面があるわけなんですね。ですから、先ほど大臣が答えられました大変重要なところなんですけれども、おくれた理由の中に、ボーリングだとか試錐だとか、あるいはそれぞれ学者皆さん意見を聴取する等含めて大変慎重にやったということでおくれたということになって、しかも、今度のこれを材料にしてこうした安定した状況にあるんだということを認めておるわけであります。これは政府も認め、こうした審議会皆さんも認めておる。ということになってくると、いままでの経験からいたしますと、経験主義に陥ってはならないとは思いますけれども、果たしてそうした細かい調査がなされたのかどうかということが私たちにはわからないわけですね。そういう点はどの程度自信をお持ちなのか、お答えいただきたいと思います。
  17. 福川伸次

    福川政府委員 今回の調査におきましては、有資力炭鉱四百余、それから無資力炭鉱、これは二百八十前後、さらに地方公共団体百六十六団体調査表を記入していただきまして、さらにいま大臣お答え申し上げましたように、鉱害存否について判定の困難な地区につきましては、ボーリング調査とかあるいは鉱害認定科学調査員の御意見を伺うといったようなことでその精密を期してまいったわけであります。図面整備等もいろいろやってまいりました。先生も御承知のとおりに、鉱害認定判断というのは非常にむずかしい点がございますが、いまいろいろお話し申し上げましたようなことで、私どもとしては現在の能力の範囲の中では最大を尽くしてやったつもりでございます。  もちろん、将来発生の予想ということがございます。これをどの程度見込むかということは一つの大きな問題でございます。もちろん、今回の鉱害量調査には、鉱害認定をすでにしたものだけでありませんで、まだ未認定のものあるいは将来発生の予測ということである程度織り込んだわけでございます。現実にこれを鉱害認定をし、鉱害復旧対象にするかどうかという問題は、先ほど大臣が申し上げましたように、賠償問題一般に通ずることとして最終的には個別の判断、個別の解決を見なければわからないわけでございますが、一応今回、十年延長するということにつきましては、全調査鉱害量の一割前後に近い量ということはある程度確定要因、将来発生する可能性があるということで、一応織り込んでございます。しかし、これも先ほど申しましたように、では現実にどうであるかということにつきましては、これは個別の解決に待たざるを得ない、こういうことでございまして、将来のことでございますから、まさに先生指摘のように、不確定要素というのはぬぐい切れない面がございますが、それをなるべく不確定要素を少なく精緻にいたした、こういうことで、私どもは、今回これを一応十年延ばすということの判断材料にしてよろしいのではないだろうか、かように考えているわけでございます。
  18. 中西績介

    中西(績)委員 いずれにしましても、もう少し私たちが納得できる一つ要因というのは、いま私が指摘をしましたように、いろいろな調査状況だとか——ただ、これがいろいろ発表されると、将来、地域ごとに大変な問題等が起こることも予測されますので、いろいろあるだろうと思いますけれども、そうした細かい手だてが尽くされた中でこうしたものになっていかないと、この審議会皆さんの場合には、それを直接手がけた方ではないわけであります。ただ、その中には専門家の方もいらっしゃるかと思いますけれども、失礼になるかと思いますが、そうした抜けがあるということを私たちは知っておいて論議をしていかないと、ここに挙げられておる方々は余りそうした細かい点を知っておられる方ではないのじゃないかという気がするわけです。そうしたことを考え合わせてまいりますと、私なりの危惧があります。特にこの十年延長ということの意味をもう一度深くとらえ直したときに大変重要なことではないかと私は思っておりますので、これ以上論議はいたしませんけれども、この点は十分これから後の長期計画なりを立てる中で組み入れていただいて、慎重にやっていただくようにお願いをしたいと思っております。  そこで大臣最後にもう一つ私お聞きしたいと思いますのは、今度の答申を出すに当たって、十年間の延長をするということで、いままで論議してきましたいろいろな鉱害量調査などを基礎にいたしまして、法律的、行政的観点を初めさまざまな角度から検討を加えて提言をするのだということになっています。そのことはよろしいわけでありますけれども、これを受けとめる側の政府の方の対応がこれから大変重要だろう、私はこう考えるわけであります。  そうしたときに、特に私が指摘をしたいと思いますのは、いま財政事情が大変厳しいということもあるわけでありますから、答申を受けて政府は十年間延長の提案をしておるけれども、この十年間、財政的にいろいろな問題からいたしますと果たして確信が持てるのか。こうした復旧なりあるいは効用回復が可能だと考えられておるだろうかということが一つあります。  それとあわせまして、特に少ない財政活用をするわけでありますから、総合的な計画というものがどうこれから後考えられていくかということが大変重要だろうと私は思っています。特にこれから長期計画を立てられて、そして基本計画実施計画というのを鉱害関係皆さん立てていくわけであります。さらにまた産炭地振興の側では、昨年の十年間の法の延長によってこれが立てられてまいる。こういうような状況の中で、産炭地振興施策あるいは土地政策、農業、すべてのものを網羅した総合的な計画というものが練られ、そしてきわめて効率的なものにしていかなくちゃならぬということがこの中にも書かれています。そうした点についての決意なり信念的なものを大臣からひとつお答えいただきたいと思います。
  19. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 五十六年の十二月でございましたが、石炭鉱業審議会鉱業二法を十年間延長して、累積鉱害の最終的な解消を目指して、その処理計画的、効率的に行うべきであるということを答申いたしたわけでありますが、その前提としては、賠償当事者間の合意が円滑に進むよう関係者の積極的な協力が不可欠であります。それに加えまして、地元の地方公共団体においても、地域振興という観点から基本的な責任を有しているとの認識に立って鉱害処理が円滑に進むように意見調整等において積極的な役割りを果たすことを期待いたしておるわけであります。政府としましては、石炭鉱業審議会答申趣旨を十分踏まえまして、今回が最後答申である、最後延長であるとの決意のもとに、累積鉱害早期解消に向けまして積極的に取り組んでいく決意でございます。  なお、法律の運用に当たりましては、累積鉱害早期解消のための他の公共事業やあるいは土地利用計画等十分調整を進めながら、従来にも増して計画的、効率的にその処理に当たっていきたいと考えております。
  20. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、これは部長の方でお答えいただきたいと思いますが、いま産炭地の場合を考えてみますと、たとえば鉱害にかかわる雇用の関係から見ますと、二年くらい前だったと思いますが、われわれの要求の中から、たとえば鉱害関係で働いておられる就労者の数というものを見た場合に、政府の方の八千二百七十人程度というのはいま変化があっていると思いますけれども、その数は、鉱害復旧状況からいいますと量的には余り変わらぬくらい進行していますから、余り大きな変動はないと思います。ところが、この波及効果係数というのを見ますと大体二倍になっている。ですから、九州全体ではいま約二万人を超える数のこれにかかわる就労者がいるのではないかということが言われています。それと同時に失業対策の関係、それからさらに、きのう衆議院の内閣委員会で可決されて、きょう本会議にかけられる同和対策事業、特に筑豊を中心とする産炭地は同和対策が物すごく必要とされておるところでありますから、ここの場合もやはり同じ程度の就労者がいると言われています。ですから、こうしたものの関係とそれから産炭地がどう復興していくか、再生をしていくかということとあわせて大変重要な課題になっています。こうしたものが一つの基盤になりながらいま支えておるわけですから、それをこれからさらに再生をさせるためにはどう発展計画を、あるいはまた開発を遂げていくかということになってくるわけでありますから、そうした点で、いままでのただ出てきている現象面を穴埋めするということでなしに、これから立てられる計画の中でこうしたものが大変重要なものになってくるわけであります。その際に、いま大臣お答えいただきましたような効率的あるいは計画的にということを考え合わせてまいりますと、産炭地振興計画の中でこれの位置づけ、相互的なものが大変重要ですが、この点についでどうお考えになっているのか、お答えいただきたい。
  21. 福川伸次

    福川政府委員 いま御指摘のとおりに、いま特に筑豊を中心にいたしまして九州の鉱害復旧で働いておられる方、これは先生が御指摘のとおりにかなりの人数にも上っておりますし、その雇用効果、経済波及効果という点は、私どもとしても地元経済に無視し得ない要因になるというふうに思っておるわけであります。もちろん鉱害復旧はかつての石炭鉱山の後遺症でございますので、もとより有資力賠償義務者あるいはまた国、地方公共団体が協力をいたしまして、国土の保全と民生の安定の見地から早期に復旧を図らねばならないわけでございますが、同時に、この地域の経済的、社会的疲弊をいかに解消していくかということが、さらに次のこの地域の飛躍を図る上での重要な問題でございます。  答申の中でも言っておりますように、鉱害の今後の復旧基本計画あるいは実施計画の作成に当たりましては、重鉱害地を初めといたしまして地域を広域的にとらえて、そして他の公共事業との調整に留意していかなければならぬということが御指摘されておるわけでございます。いま産炭地域振興基本計画を定め、実施計画、さらに地域の発展計画へとその実施段階を展開をしてまいるわけでございますが、そういった今後新しく経済的に発展をしていくということの中で、やはりそこには社会資本の整備ということが重要でございますから、そういった鉱害復旧をいたしますときに、可能な限りそういった産炭地域の振興に役立つような形に持っていくということが特に事業の効率化の見地から必要不可決であるというふうに考えるわけでございます。もちろん後遺症は後遺症として復旧しなければなりませんが、そういった費用を最小にしながら効用を高めていくということがこの事業実施の重要な要因に相なっておるというわけであろうと思うわけであります。その上に立ちまして、できる限り地域の広域的な発展を図り、適正な、経済的なその地域の特性に合った機能分担をしていくということが重要であるというふうに思うわけでございまして、産炭地域振興基本計画の中でも、この解消せざるを得ない鉱害復旧ということにつきましてはそれなりに早期に解消を図るという考え方であるわけでございますが、いま申し上げましたような整合的かつ効率的な実施ということを産炭地域の振興施策をより効果あらしめるかっこうにこの鉱害事業もあわせ実施していくということが必要であるというふうに考えております。
  22. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、この文章の中に出しておる内容等も含めまして質問をしていきたいと思っていますが、特に、こうしたものの早期解消のため取り組むに当たっての心構えみたいなものが八ページにはずっと述べられています。特に真ん中辺あたりに、地方公共団体の積極的役割りを強調しておるのではないかと思いますけれども、この地方公共団体の積極的役割り、何を期待しておるのか、そうした具体的なものを私は明らかにしておく必要があるのではないかと思いますが、何でしょう。
  23. 福川伸次

    福川政府委員 ここで「地元地方公共団体は、地域振興に基本的責務を有しているとの認識に立ち、鉱害処理が円滑に進むよう意見調整等において、積極的役割を果たすことが期待される。」というふうに答申として指摘されておるわけでございます。もとより鉱害復旧がかつての石炭鉱業の後遺症ということでございますので、国土の保全、民生の安定といった見地から、地元の責務、地元の努力ということもその地方公共団体一つの責務であるというふうに思うわけでありますし、同時にまた、地域の振興、いま先生がまさに御指摘になられましたような産炭地域振興という立場からも、地域の振興をひとつぜひ地方の自主性と自発性を根幹に置きながらやっていこう、こういうことでございますので、そういった地域の振興と密接な関連を有する事業ということでございますので、そういったまず基本的な責務の認識に立って努力、協力をしてほしい、こういうことでございます。たとえば計画の立案等々につきましても、地方のそういった考え方を伸ばしていくということが期待されておるわけであります。さらにまた、鉱害処理が円滑に進むように、意見調整等において地元の事情に通じております地方公共団体といたしましては、そこにおいても積極的な役割りを果たしていくということが必要になるというふうに思うわけであります。さらに三番目には、工事の施行につきまして、今後実施をしていくに当たりまして、先ほどお話がございましたような他の公共事業、他の事業との調整、他の地域振興事業との調整といったようなことも効率的にしていくために、地方公共団体の積極的な取り組みも必要であろうと思うわけでございます。さらにまた、復旧の工事にかかわりまして地方公共団体の財政上の負担ということも法令上定められておるわけでございますが、この点につきましても地域の積極的な役割り、協力を期待をいたしておるわけでございます。
  24. 中西績介

    中西(績)委員 いまお答えいただいた財政上の負担等についてはまだ私も意見を持っていますけれども、この点は、また後日こうした機会に同僚の委員からお聞きすると思いますのできょうは私は省いていきますが、たとえば県の段階だとか市町村の段階におきまして、そうした協力姿勢なりあるいは全体のこうした計画の中に果たす役割りは大変なものがあるわけでありますから、そうしたところとの連携あるいは政府の指導的な役割りをさらに強めていただいて、これが完遂できるように努力をしていただきたいと思っています。  次に入りますが、農地制度との関係についてお聞きをしたいと思います。  農地制度との関係の中で、これには「復旧不適農地制度の適用に至らなかった事情もあって」云々ということが書かれ、最後に「これにかかる共同省令を制定する必要がある。」こういう文章表現があります。至らなかったのはなぜ至らなかったのか。この経過なりについてお答えをいただきたいのが一つです。それから二つ目に、共同省令制定は可能かどうか。きょうは農林省から来ていただくことはよろしいということで私お断りしておりますので、通産当局の方でそうした見解なりがあればお聞かせをいただきたいと思います。具体的にそうした取り組みがどうなっていくのかお答えください。
  25. 福川伸次

    福川政府委員 いま御指摘のとおりに、答申におきましては、復旧不適農地の適用に至らなかった事情もあるわけでありますが、今後そういった共同省令をぜひ制定するように——実は十年前の四十七年にもそのような指摘がなされたわけでございます。  このような省令が制定されなかった理由でございますけれども復旧法の制定以来法律の上では制度ができたわけでございますが、いままでのところこの復旧不適農地の要件に該当する農地が見当たらなかったといったような事情があってこの省令を共同省令として現実的に定める——この共同省令は補償基準を定めるものでございます。したがいまして、実際上のそういった要件に該当する農地が見当たらなかったために、現実に補償基準等を定める議論が進まなかったというのが現状でございます。しかし、今後たとえば一部の果樹園等におきまして保水力の低下等の被害に関連いたしまして場合によっては復旧不適農地制度にようて処理する必要性が認められる事情もございます。したがいまして、今後、こういった実態上の必要性等を見て、私どもとしても、審議会の御答申趣旨に沿いまして、その鉱害復旧いたします効率的な処理観点から共同省令の制定に努めてまいりたいというふうに思うわけであります。農林省の方も、この点につきましてはこの御答申の際にもいろいろ御意見を述べられ、御議論をしていただきましたが、今後はそのように努力をしていこうというふうなお考えでございます。また同時に、農地全体の復旧を効率的に進める見地からそれぞれ、たとえば農用地利用計画でありますとかその他の土地利用計画といったような制度、これも農林省の方も十分お考えになっていかれるというふうに理解をいたしております。
  26. 中西績介

    中西(績)委員 この点は農業生産者の意識とのかかわり等があるようでありますから、いま指摘された、たとえば果樹園の漏水による状況からいたしまして不適農地として認定をして、そうした話が進めば確かに必要であるわけでありますだけに、そうしたものを十分に活用できる体制というのは必要であろうと思います。ぜひこの点は進めていただきたいと思います。  それから次に、みなし復旧制度の活用をする必要があるということが出ておりますけれども、いままでこのみなし復旧制度を活用された具体的な例、この点についてお答えください。
  27. 福川伸次

    福川政府委員 このみなし復旧制度は昭和三十八年の六月の法律改正によりまして追加された制度でございます。最近の実績を申してみますと、五十一年度で九・一ヘクタール、五十二年度七・六ヘクタール、五十三年度九ヘクタール、五十四年度一一・四ヘクタール、五十五年度六・九ヘクタールといった推移をなしておるわけでございます。年平均全体の農地復旧量は五百ヘクタール程度でございますから、量としてはそれほどいいウエートではございませんが、最近の実例といたしますと、年間大体十ヘクタール前後をみなし復旧ということで処理をいたしております。
  28. 中西績介

    中西(績)委員 この点も、いままで具体的にそうしたことを活用してきておるだけに、そうしたものが活用されることによって計画がさらに進んでいくということであれば、これはぜひ活用すべきではないかと思っております。  そこで、次に移りますが、山林原野及び干潟などに発生する鉱害につきましては、いままでこれは臨鉱法に適用されておらないというのが実態であります。ところが、実際には私たちの周囲にも、たとえば裏山、山林あるいは竹林あたり、しょっちゅうその地域の人たちが踏み込むところですね。そうした生活と非常にかかわりの深いようなところにある山林原野、そうしたところにこうした浅所陥没だとかいろいろなものが起こりまして、間隔が二十メーター、三十メーター程度くらいにあって、しかも深い穴になっておるという状況等が出てます。これは大変危険なものであります。したがって、私は、こうした問題については、現在のところでは石炭放置坑口閉塞事業などという別の方策でもって措置がされておるようでありますけれども、この点はある程度法的にこれを補償する、あるいはこの修復を規制をすることのできるようなものをつくるべきではないかと思っておりますけれども石炭放置坑口閉塞事業くらいでこれが片づくのかどうか、それで十分であるのかどうか、この点お聞きをしておきたいと思います。
  29. 福川伸次

    福川政府委員 この点、審議会の審議の過程におきましても地元関係者から御指摘がございました点でございます。いろいろ委員の間でも御議論がございましたが、復旧法に基づきます復旧、これは国費あるいは地方公共団体の財政資金を投入をいたすわけでございます。本来賠償ということになりますと、これは鉱害処理鉱害は当事者で処理するということが法律的には大原則でございますが、いま国土の保全とか民生の安定といった見地から、こういった臨時石炭鉱害復旧法等によりまして公共的にこの処理を助成推進していく、こういうことになっておるわけであります。そのためにこそ公共的な必要性の高いものに限ってこれを実施していく、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、非常に社会的な影響の大きいもの、民生の安定ということに役立つものといったようなことでこの対象範囲を選定をいたしておるわけでございます。  いま御指摘のような山林原野に発生いたしました浅所陥没等のうち周辺住民に危害を及ぼすおそれがある陥没等につきましては、いま無資力でありますものにつきまして従来から地方公共団体が危害防止工事をいたしているわけでございまして、これにつきましては、いま先生指摘の助成制度で三分の二の補助金を交付をいたしております。五十六年度での事業費は大体三千万円程度のものを実施をいたすことに相なっておるわけでございます。もちろん当事者間での鉱害であるわけでありますが、そういった公共的な必要性、特に危害防止工事の必要性、こういったものにつきましては、地方公共団体実施しやすくなるような形でいま補助金を出しておるわけでございますが、私どもとしてはこれを適正に運用いたしますことによりまして、いま御指摘のような住民に対する危険というものは防止し得るわけでございます。これは実情に応じまして地方公共団体と連絡をとりながら適切な処理を図ってまいりたいと思っております。
  30. 中西績介

    中西(績)委員 この点は、先ほど私申し上げましたように、いまお答えの中では公共性の高いものということでありますけれども、民家にすぐ隣接をするボタ山があって、そのすぐ隣接地域、山林になりまして、そしてその下は民家なんです。そうすると空洞ができる、そこに今度は、九州ですから、集中豪雨なりいろいろな状況が出てまいりますと、そこに流れ込む、それが盤ぶくれみたいにして今度は土砂崩れなどを引き起こして民家にというような状況等も出てくるわけなんですね。だから、そうしたものが、もう直接的に危害がある可能性があるというようなところだって、いま言うような交付金制度による措置だけで果たしてよろしいのかどうかという私は大変疑念を持っものなんです。ですから、今回の場合にはこうした点についての手は入れてはおりませんし、また、この答申を見ますと、この点については対象とすることは不適切だ、こういう文章表現がなされておりますけれども、この点は私は現地を余りにも知らないものでないかということを感じるわけであります。したがって、この点についてはここで法律対象とする、そうしたことをやはり今後考えなくてはならぬのじゃないかということを感じるわけであります。したがって、この点はさらに調査を進めていただいて、そうしたもののとらえ方を、私たち現地でのそういう実態とかみ合わしてもう少し論議ができるようにしていただきたいと思っています。もうこれより以上言いません。  次に、金銭賠償問題について質問を申し上げますが、金銭賠償済みということでもって大変多くの問題を残しています。したがって、この審議会におきましても、この答申の中に項を設け、それに対する一定の見解を示したものと思います。この点、私従来から指摘をしてまいったわけでありますが、金銭賠償の中には、企業によってあるいは賠償の状況によって、その後の推移によっていろいろ多くの問題が出ておると私は思うのですけれども、そうした内容別分類なり整理がされておるのかどうか。これは私、大変必要じゃないかと思っておったのですけれども、どうなんでしょうか。
  31. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のとおり、金銭賠償済みの物件の取り扱いは審議会でもいろいろ議論があったわけでございます。ただ、答申におきましては、法律論と実際の現実的な解決をどう組み合わせてやるかということが一つの大きな議論になったわけでございます。法律論の立場からいきますと、その審議会の御答申の中にもございますように、賠償法の体系上これを取り上げることには問題がある、賠償関係の法的安定性が害されるといった等の問題が指摘されておるわけでございます。その理由は、一応金銭賠償によって当事者間の権利義務関係が消滅しておるということがその一つの根拠とされておるわけでございます。しかし、この金銭賠償済みの物件の中でももちろんいろいろな問題があるケースがあるわけでございます。たとえば周辺の鉱害復旧との関連で排水不良等の損害が生ずるといったような場合には、これはまた適切な防除措置を講じていく、あるいは場合によってはかさ上げ等の復旧をやっていく、こういうようなことで対処をしていくことが適切ではないだろうかということでございます。  いま先生の御指摘の金銭賠償済みの物件の類型化という点、どう分類していくかという点については、私ども先生の御趣旨を十分理解してないのかもしれませんけれども、こういった金銭賠償済みの物件ということは法律論としては取り上げるのは困難である、しかし、その中で実情に応じて他の鉱害復旧との関連で処理をしなければならないケースというものを具体的な形で解決をしていくことが一つ考え方であろうということがこの答申趣旨に相なっておるわけでございます。
  32. 中西績介

    中西(績)委員 私がこれを内容別に分類をしておく必要があるんじゃないかということを指摘いたしましたのは、何と申しましても、こうした炭鉱閉山当時における資本の側が、閉山交付金を交付させるために農民の皆さんだとか、あるいは家屋関係からいいますと個人の皆さんにそのときの状況を全く——現在であれば多くの人も知っておるのですけれども、ほとんどの人たちがそういう細かい法的なものだとか何とかを知らずに、極端な場合には知識のない被害者に対して恐喝的にあるいは詐欺的な行為によって捺印をさせるというようなことが所々方々で出てきておるわけであります。ところが、いまの論議からいたしますと、法律論からするといま言われたとおりであります。そのことを私は否定するものではありません。ですから、この点にどう対応するかということになるわけでありますけれども、できればそうした法律関係の修正ができれば一番いいのだけれども、全体的なものに及ぼす影響等から考えればこれは大変困難だという前回からの意見でありますから、この点はわかります。したがって、ここで一つ例を挙げるので、この点についてお答えをいただきたいと思うのですが、確かに終わっておる。ですから、その当時の賠償金なら賠償金を現在の貨幣価値なりに換算をして、そしてそれを今度は、返還を求めるとかなんとかというような手続上のものがあればできるのかどうか。また、できないとしても、そうした何らかの措置を具体的にとることの方が、ほかの方法によってそれを措置するということよりももう少し合理的な意味を持つのではないかという気が私はするわけですけれども、そうした点について何か検討した経緯があればお答えください。
  33. 福川伸次

    福川政府委員 通常のケースで見ますと、いま被害者から金銭賠償相当額を——受益者負担というお考えかと思いますが、そういう形で徴収するということになると、賠償当事者間で一応打ち切りの賠償が行われることによって、これは賠償義務者の負担を国の補助を通じて納税者、国民一般に肩がわらせるという法律上の結果に相なるわけでございます。これを防ぐために、従来納付金として納めるべき額から受益者負担金額を差し引いたものを加害者から納付金として徴収したわけでありますけれども、そういうことになると、今度は賠償義務者の方の地位が不安定なものに相なってくるということで、議論としてはこれもなかなかむずかしいのではないだろうかという感じがいたすわけであります。  いまの御指摘のように、非常に詐欺的なものあるいは脅迫的なものでやったという御指摘がございました。この点については、鉱害に限らず全体の賠償の問題に相なるわけでございますが、もしそういった意思表示に問題がございますれば、これは司法上の関係として処理するのが法律的には適切なのではないだろうかと考えます。
  34. 中西績介

    中西(績)委員 最後に言われたところはもうすでに年限的に私はむだだろうと思うのです、いまそれを起こすことは。大変困難だろうと思います。ですから、そうしたいま言うように賠償義務者の位置を不安定にするということで返還を求めることが困難だとするなら、ではそれにかわるべきもの、何をすればということを——いま言うように具体的な例として、たとえば未賠償地がありますね、ここは鉱害復旧するわけです。それから金銭賠償の済んだところがあります。その次、また未賠償のところがある。ここだけは、ぐんと深いところで言うとわれわれのところでは五メートルも十メートル近くもあるようなところがあるわけですから、たとえばそれだけが残ったとするとその地域全体の鉱害復旧は大変困難だということで、これはここに書かれておる内容でもってされておると思うのですね。当該復旧工事の附帯工事的なものとして云々というようなことがありますから、そうしたもので、いま冒頭にお答えいただいたように関連工事的なものとしてこれをやる。  ところが、それが今度は逆転しておる場合、未賠償地が少なくて賠償地域が多い場合にはそこだけぽんと突出をしてしまうわけですね。少なければそれは当然だということになるけれども、それが今度は賠償が多くて、全体的な工事の関係からするとなかなか困難だというような場合においても、大変具体的になりますけれども、そうしたものを附帯的あるいは関連として考えられるのかどうか。そうしないと未賠償のところの復旧工事がなかなか困難だということだってあり得るわけですね。その点どうなんでしょう。
  35. 福川伸次

    福川政府委員 いま御指摘のようなケースをどのように対応して解決していくかという問題でございます。いま非常に未賠償のものが少なくて、賠償済みのものが非常に多いときに、未賠償のものを工事したときにどの程度まで連携復旧ということで取り上げるかということでございますが、これは実は私どもケースに即して判断せざるを得ないというふうに思うわけでございます。いまお話しのように、未賠償のものを復旧いたしまして附帯しましたところ、金賠済みのところに、排水不良だとかあるいは水がたまるだとか、いろいろな損害が生じた場合には、全体の附帯工事というかっこうで私どもとして復旧をいたしておるわけでございますが、そういったようなケースに類するような影響が出るケースであるのかどうかがその判断の基準になるということであろうと思います。したがいまして、いま御指摘の具体的なケースではございますが、それじゃそれがすぐ連携復旧で現在やっておりますようなかっこうの中で適用し得るものがあるかどうか、これは今後の法律延長されました場合の具体的なケースごとで対応いたしたいと思っておるわけであります。いずれにいたしましても、法律論を前提にいたしながら、効率的かつ合理的な処理を図っていくということで、ケースごとで対応させていくということで御理解いただきたいと思います。
  36. 中西績介

    中西(績)委員 いずれにしましても、個々具体的なケースによってこれを検討するということにならざるを得ないということはよくわかりますが、こうしたことによって、総合的な計画なり何なりをこれから起こしていこうとする場合に、これがやはり将来的に一つの大きな障害になってくるわけですね。したがって、そうした点をよほどそれぞれの県あるいは農地であれば農林省関係だとか、こうしたところあたりと連携なりをとっていかないと、大変これは困難だろうと思いますし、また、これが将来障害になって残っていくということになるわけでありますから、ぜひむしろ前向きでこうした問題についても連携工事として考えていくということをここで御確認いただければと思うわけでありますが、これはよろしいですね。
  37. 福川伸次

    福川政府委員 もし延長法律が改正、成立しました暁は、私どもとしても、ケースに応じまして、答申趣旨に沿いながら適切に対処してまいりたいと思います。
  38. 中西績介

    中西(績)委員 それじゃもう一つ困難な問題について、十二ページにありますところの社有地にある個人所有の家屋については複雑なものがあります。したがって、未解決のものも多いわけです。ここで特に無資力の場合に、社有地における個人家屋、これを処理する場合にどういう方法があるのかということで、ここで「「無資力鉱害家屋等自己復旧奨励金」の交付対象とすることを検討すべきである。」こういうふうに記述されています。したがって、この点、いままでの例なりそうしたこととあわせてこのことは可能だと思いますけれども、この点はどうでしょう。
  39. 福川伸次

    福川政府委員 社有地上の家屋等についてどのようにするかということも、いま先生指摘のとおりにいろいろな議論がございましたわけでございます。やや法律的になって恐縮でございますけれども、被害発生時に宅地を賠償義務者が所有していたということになりますと、これは宅地にかかる被害が他人に与えた損害ではございませんで、自己へ与えた損害ということになりますので賠償関係が存在しない。したがいまして、復旧対象とすることは困難であるということになるわけでございます。しかしながら、鉱害発生前から社有地上に個人が所有していた家屋で現在においても賠償関係が存在をいたし、しかも賠償義務者が無資力、こういうことになりました場合には、これは有資力の場合と違いましてそれの請求する方途がないわけでございます。そういったことから、いまこのために家屋の補修等の相当分につきましてこの自己復旧奨励金の対象とする、こういうことによって救済してはいかがかというのがこの審議会の御趣旨であろうと思うわけでございます。  社有地上の個人の所有家屋というのは今後なおさらにいろいろと調査をいたしてみなければならないわけでございますが、社有地上の個人所有家屋の無資力対象のものは二百数十戸あろうかと思いますが、こういうものにつきましては、今後賠償関係あるいは建設の時期、賃貸の時期、どういう契約関係があったかというようなことを十分調査をしてまいらなければならないことになりますが、私どもとしても、今後この御答申趣旨を踏まえながらそういう調査をしながら所要の検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  40. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、いま言われましたけれども、ここで一番問題は、そうしたものは長くずっと残ってきておるわけです。何と申しましても、調査という言葉でいつもこれが延ばされたり何かするわけですけれども、積極的にそうした問題については取り組んでいただくということを前提にしていただかないとなかなか解決が困難だろうと思っています。ですからこの点ぜひそうした方向で努力していただく、こういうことを確認したいと思います。  そこで、あとの復旧工事が済んだ分について二、三の点を質問申し上げますが、その一つは、追加工事の必要なものが現在までどれくらいあったのか、そして将来どれくらいまたこれが出てくるのか。現在わかっておるところで結構ですが、特に農地を中心にしていろいろ多くの問題があります。こうした点についてぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  41. 福川伸次

    福川政府委員 昭和四十三年度から五十六年度に至ります農地の追加工事の実績は六百五十七ヘクタールでございます。昭和五十七年度以降も、個々のケースに応じましてこの追加工事の必要性が出てくるものもあるということでございますが、今後これは法律にも追加工事に関する規定が整備されていることは御高承のとおりでございますが、今度五十七年度以降の個々のケースにつきまして追加工事の必要性を慎重に検討して実施してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、今回の鉱害量調査でも約千ヘクタール程度のものが追加工事が必要になり得るものと見込んでございますが、これは個別の今後の必要性等を検討いたしまして、個別ごとに判断をしてまいることで考えておるわけであります。
  42. 中西績介

    中西(績)委員 この点後でまた数字等については細かくお教えいただきたいと思います。  二つ目に、有資力の場合に特にこのことが混乱しておると思いますけれども、どのように処置をしておるのか。無資力の場合なんかにおきましては、いま言われたような中身でもってこれからやられようとしておるわけでありますけれども、有資力の場合には、やはり何と申しましても財政的な問題等大変多くの問題が出てくるものですから、この点は政府の指導なりあるいは助言なりということなしに、企業と関係者、当事者間における話し合いだけによってやられておるのか。その場合に、こうしたことについて具体的に追加工事なんかはやられておるかどうかについてどう把握をされておるのか。この点おわかりですか。
  43. 福川伸次

    福川政府委員 いまの御質問の御趣旨は、有資力の場合の追加工事、これをどういうふうにやっておるかということでございますが、現在のところその有資力の追加工事をこれは当事者で処理をするということにいたしておりますので、私どもとしてはいま十分把握はいたしておりませんが、今後、有資力に関しましてもいろいろ融資制度の活用等もございますので、そういう点につきましてはその融資制度の運用等を通じながら、実情に応じまして、また法律的な諸制度に応じまして、それぞれ適切に対処をしてまいりたいと思っております。
  44. 中西績介

    中西(績)委員 これはまた後で、有資力問題については午後の質問の際にさせていただきます。残り時間もわずかになってまいりましたから、これで一応打ち切ります。  この部分の最後になりますけれども復旧対象に関連した問題として農地復旧に伴いまして揚排水のポンプがありますね。さらに私のところでもあるのですが、可動井ぜきなどが設置されています。そうしたときにこの維持管理を有資力の場合には積立金によってなされておりますし、無資力の場合は事業団がこれを負担をしておるわけです。ところがこの揚排水ポンプが、これから十年後みたいなことになるのですけれども、十年を設定をしますので、もしこうしたものが十年後切れるということになった場合には、こうした揚排水のポンプがいよいよ三十年近くになるわけですから更新を必要とすることになってまいります。そうしたときにはこれはだれの負担になるのか。あるいはその他の管理費、電力料金からいろいろなものが全部必要になるわけでありますけれども、この点はどうなるのでしょうか。
  45. 福川伸次

    福川政府委員 ただいま御指摘の施設の更新ということでございますが、二つのことがその御質問の御趣旨に含まれておるかと思います。ポンプ自身の更新ということで現在無資力で事業団がやっておりますものの更新でございますれば、これは維持管理費用の中に含めて対応いたしておるわけでございます。第二番目の御質問は、そういった事業団がさらにその存立の形態に将来において変更が加えられるというような事態になったときの維持管理費がどういうふうに相なるのかという御趣旨であろうかと思いますが、第二番目のそのポイントに関しましては、これをどのような形態でやっていくのがいいのか。これは答申の中でも、この十年の間にしかるべき時期に今後の方向について検討すべしということを言っておりますけれども、今後そういった事後処理のあり方という点は、今度延長が認められますればその十年の中で、どういうかっこうがその処理の仕方として一番適切であるのかという点は今後の問題として考え検討してまいりたいと思っております。
  46. 中西績介

    中西(績)委員 この点は、この十年の法律確定するときにある程度そうした見通しなり何なりを示していただかないと、現地では大変な問題になって残るわけですから、これはきょう結論を出す必要はありませんけれども、ぜひ近いうちにそうした問題についての御回答がいただけるように検討しておいてください。これはお預けしておきますから。  そこで、私はもう一つだけ申し上げておきますけれども坑内水揚水問題について、五十五年三月だったと思いますが、私が質問をして、地下水の問題について流動的だ、だからそれが大きく影響するだろうということを指摘をした際に、時の課長が答弁をしています。「この原因行為によって生じた鉱害ということには相ならぬのではないかというふうに考えております。」こういう答弁をしたわけです。私は、これは問題だけれども時間的な余裕がないので後日討論をするということにしています。今度のこの中では、そうした問題についてもある程度、たとえばさっき出ておりました四ページの第二のところに、地下水位が上昇するとかいろいろこうした問題等があるのでということになって、そのことは認めなくてはならぬということになり、そうしたものに従って今度の提案が、十年間のものがなされておると思うのですけれども、この点どのようにお考えなのか。少なくとも坑内水を上に引き揚げれば地盤影響が出てくるというのは当然なんでして、ところがそれを否定するようなことをこの前答弁しているのです。ですから、私はこの点を少なくとも変更していただかないと困ると思うのですけれども、この点どうでしょう。
  47. 福川伸次

    福川政府委員 坑内水揚水、これはどう考えるか、どこが責任を持つのか、こういう問題であろうと思うわけでありますが、特に閉山炭鉱実施しておりますような、現在も揚げております坑内水揚水というのは鉱害処理の一形態としてやっておるものでございますので、これは将来とも賠償義務者が責任を持って実施する、こういうことであるのではないだろうかというふうに思っております。現在二つの企業がそのような揚水実施をいたしておるわけでございますが、これは一つ鉱害の形態として、必要のあります揚水というのはしてまいらねばならないというふうに思います。その上で、今度それが地表上どのような変化が生じて新たな鉱害があるかどうかという点につきましては、これは別途の鉱害の問題として判断すべきであるというふうに思っておるわけであります。いま御指摘の排水、揚水をいたしました水の水質問題よく赤水等々で地元でも問題になっておりまして、これはまた、それはそれなりの一つ鉱害として処理をしていく、こういうことになろうかと思います。
  48. 中西績介

    中西(績)委員 あと関連の質問がありますので、私のこの時間の質問はこれで終わらせていただいて、あと残り、いま出ました赤水の問題だとかいろいろな問題以降は、また午後から質問をさせていただきます。
  49. 枝村要作

    枝村委員長 岡田利春君。
  50. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 若干関連質問を申し上げたいと思います。  去る十一日の当委員会において、ちょうど大臣出席できなかったわけですが、北炭問題についてるる御質問申し上げたわけであります。そこで、きょうせっかく大臣もお見えでありますし、その後の状況の進行等もあろうと判断をいたしますので、二、三点御質問申し上げたいと思うわけです。  まずその第一点は、弔慰金について一体三月中に支払いが本当にできるかどうか。答弁はそういう感触を得ておるということで終わったわけであります。伝えられるところによりますと、三井銀行初め金融機関が十億程度の融資をして、三月中に弔慰金は支払いが完了できるとも実は言われておるわけですが、改めてこの弔慰金の支給は三月中に支払いが確実に行われるかどうか、確認を求めたいと思うわけです。
  51. 福川伸次

    福川政府委員 会社側といたしましては、関連グループからの担保提供を受けまして、そして関係の金融機関から資金の調達をいたしまして、三月中に支払うということでいま最大の努力をしておるというふうに伺っておるわけでございます。私どもとしても、会社が被害者にそのようなことを従来から約束いたしております以上、最大の努力をさせるように会社に対して指導をしてまいりたいと思っております。
  52. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 もう四月も近づいてまいるわけです。北炭の問題というのは、管財人をいかに早く選任ができるか、いわば今月中が恐らくタイムリミットではないのか、それを推移するとこの再建はむしろ野たれ死にのようなかっこうで終わるのではないか、実は関係者はこういう心配をいたしておるわけです。したがって、裁判所としても札幌商工会議所に対する管財人の推薦方についての要請等もございました。しかしまた炭鉱の特異性という面から見ると、管財人の選任はなかなか難航しておるし、今日まで難航してきた、こう思うわけであります。そこで、北炭の管財人のその後の選任についての状況についてこの機会に承っておきたいと思うわけです。
  53. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにいま問題の焦点は管財人を早く選ぶ、こういうことでございます。私も管財人の選定が一日も早く行われるようにこれまで努力をしてきたわけでございます。  御承知のように、裁判所の方から北海道の商工会議所の方に正式に人選が依頼されまして、商工会議所の責任者から私に対しても相談があったわけでございます。ぜひともお願いをしたいということで商工会議所も努力を重ねてこられたわけでございますが、きのうの段階になりまして、会頭がお見えになりまして、商工会議所としては八方手を尽くしたけれども適当な管財人候補がいないということで、事態が非常に困難な説明があったわけでございます。そこで、私は昨日の夕方に有吉会長、御承知のように石炭協会の会長でございますが、有吉会長をお呼びいたしまして、こういうふうな事態になって商工会議所としてもなかなか人選ができないような状況になっておるので、この北炭問題は石炭産業全体の問題としてとらえて、有吉会長としてもこの管財人の選考に当たってぜひともひとつ協力をしてほしいということを強く要請いたしたわけでございます。その際に有吉会長から、大臣の要請にこたえて、協会として業界全体の立場から企業の将来の展望を早急に検討しながら適切な人材を管財人として推薦すべく努力をする旨の表明がございました。私も有吉さんのそうした決断に大変感謝をいたしたわけでございます。  私どもとしては、この協会におきまして早急に検討が進められまして、石炭鉱業における事業経験に富み、公正でかつ実行力のある人を推薦されるように期待をいたしておるわけでございます。また、この協会からの回答が可能な限り早急に行われることを望んでおりまして、今後協会内で選任を進めるに当たって種々の検討に相当な時間はかかると思うわけでありますが、少なくとも二、三週間以内には具体的な推薦があるもの、こういうふうに期待をいたしております。この人選を受けまして商工会議所の正式な推薦という形で裁判所の方へお返事をしていただく、こういう順序にしたい、こういうふうに考えております。
  54. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いまの北炭問題を議論した中で、幾つかの点について私どもからも意見を述べてあるわけであります。  その第一点は、普通の更生会社の場合には、装置工業でありますと、原料を持ってきて生産が再開されて製品ができる。それを生産を続けながら会社更生計画を立て、会社の再建を図るということが一般論として考えられるわけでありますけれども炭鉱の場合には営業フィールドが非常に豊富で広いという場合にはある程度相当期間考えられますが、何せ地下でありますから、どうしても新たな投資というものが伴う宿命が実はあるわけであります。そういう意味で、炭鉱の会社更生の特異性というものはほかの場合とは違うという点が特に特筆されるのではないか、こう思うわけであります。  第二点は、重大災害を起こした炭鉱の再建でありますから、まず第一に安全な体制で再建ができること、そして、それが安定的に再建が進行していく、いわば安全、安定再建の方向でなければならないということ。そうしますと、ここは新たに平安八尺に展開をしなければならない。それには制度資金に乗ったとしても資金が伴う。同時にまた原因が究明されてきた五片を対象にしてみても、やはり同様趣旨のことが言えるわけであります。そういう意味で、この更生会社に対して投資をどう得るのか、あるいはまた、投資を確保し得る再建はどういう方法がいいのかという点が私は第二点として強調されると思うわけであります。  そして第三点としては、地域経済社会を守るということと同時に、国民の合意を得なければならない。エネルギー政策といっても、やはり国民の合意を得ながら、そして地域経済が守られる、こういう路線の上に再建の方向がなければならない。したがって、そのためには重層的な発想というものも必要ではないのか、実はこういう意見を述べているわけです。  特に当鉱の場合に留意されることは、第五次政策のときに第三次肩がわりが行われておるわけです。北炭関係の第三次肩がわりは当鉱に負債として残っておるわけでありますけれども、北炭の場合には第三次以降五つの炭鉱閉山いたしているわけです。それ以外の炭鉱で、第五次政策の第三次肩がわりが終わった以降閉山したという炭鉱会社はないのであります。北炭だけが五山も閉山しているという一つの特異性が実は北炭の場合にはあるわけであります。この点は特に留意をしておかなければならない問題ではないか、私はこう思います。そして私は、この安全、安定再建路線というものは、一つの使命をも持ったキャプティブ的な、ある一つの使命を持ったキャプティブマインといいますか、そういうような面も判断されていいのではないのか、こう総括的に考えて思うわけであります。したがって、管財人が選任されたとしても、そう普通の場合のようにするすると更生計画が立てられるという筋合いのものではないだろう。したがって、関係方面のこれに対する対応の仕方、意見、そういうものが調整され、そして、いま述べたような方向で再建の方針が決められるということが最も望ましいと私は思うわけであります。  改めて私なりの見解を申し上げたわけでありますけれども、この点について御感想があればこの機会に承っておきたいと思います。
  55. 福川伸次

    福川政府委員 ただいま基本的な視点につきまして岡田委員の御指摘がございました。前回も岡田委員からは、今後の取り組みにつきましてむしろ石炭鉱業の特殊性、さらに投資し得る体制をどのように考えるかということを踏まえられて今後の北炭のあり方を抜本的に見直す、そして、むしろ石炭協会あるいは石炭業界全体としてこの再建に取り組む経営体制の改善見直しも含めた形でやってはどうかという御示唆がございました。私どもとしてはまだそこまで判断すべき時期には至っていない、それは裁判所で判断すべきことだということを申し上げた次第でございますが、今後この管財人が考えていく場合あるいはまた管財人を選任するために、いま大臣が御答弁申し上げましたように業界内で検討していくという過程の中で、企業の将来の展望、企業のあり方という点はいろいろな検討が進められるというふうに私どもも思っているわけでございます。  実は石炭鉱業につきましてはすでに相当十分な助成制度があり、まだ現に一人当たりの従業員で見ますれば相当、他に例を見ない財政資金の投入の仕組みと実績があるわけでございますが、そういう意味で地域経済を守る前提として国民的な合意を得るということは非常に重要なことであるというふうに思うわけでございます。そういった意味で、昨日札幌商工会議所の会頭が大臣のところにお見えになりましたときにも、私どもの安倍通産大臣からは、むしろ、今後あっせんに協力はするけれども地元経済界等は十分協力をしてくれるようにということをお願い申し上げました趣旨も、そういった地域経済を守るということの国民的合意を得る前提としてそれまた非常に重要なことであろうと思うわけであります。  さらにまた、関係金融機関との協力ということも、いま申し上げた今後の体制を形づくっていく上での非常に重要なポイントでございます。いま大臣から関係金融機関からの信用のあるような人を選んでもらいたいということを御答弁申し上げましたのも、そういった関連であろうと思うわけであります。  いろいろな御指摘がございましたが、各方面の協力を得られる一番の問題は当事者の努力でございます。また、その努力を発現していく企業の経営のあり方という点もまた十分メスを入れて考え直さなければならない。そういったことが、いままさに委員から御指摘ありましたような安全でかつ安定的な体制、これは果たして何であるか、それをまた地元経済界、関係金融機関等を糾合し得るような形でしていく。御指摘のとおり、石炭鉱業はそれなりに保安面あるいは技術面で特異性のある産業でございますので、私どもとしても、一番そういう経験のある石炭協会がいま申し上げました諸点を考えた展望を踏まえながら、それを前提にしてまた管財人が選ばれて、それが札幌商工会議所から裁判所に推薦され、裁判所から再建に向けての意思表示決定があるということを期待いたしておる次第でございます。
  56. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  57. 枝村要作

    枝村委員長 田中昭二君。
  58. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 まずお断りしておきますが、重ねての質問にもなるかと思いますが、よろしくお願いします。  まず最初に、大臣に率直にお尋ね申し上げたいと思いますが、このたびこの法案が出まして、今後十年間で鉱害を本当に最終的に処理することができるのかどうか。というのは、前回の四十七年の延長のときにも十年間で処理を終わるとしておったわけでございます。ところが、今日さらに延長が必要となってきておる。政府石炭鉱業審議会から今後十年間で鉱害を最終的に解消するようにとの答申を受けておられますが、どのような考え方で今後の復旧を進めていかれるつもりなのか、大臣決意と御所信をお聞かせ願いたいと思います。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 五十六年十二月に石炭鉱業審議会は、鉱害二法を十年間延長をして、累積鉱害の最終的な解消を目指してその処理計画的、効率的に進めるべきであるということを答申いたしたわけであります。その前提としては、賠償当事者間の合意が円滑に進むよう関係者の積極的な協力がまず不可欠でございます。加えまして、地元地方公共団体におきましても地域振興に基本的な責務を有しているとの認識に立って、鉱害処理が円滑に進むよう意見調整等において積極的な役割りを果たすことを期待いたしております。政府といたしましても、石炭鉱業審議会答申趣旨を十分踏まえまして、今回が最後延長であるという決意のもとに累積鉱害早期解消に向けて積極的に取り組む考えでございます。  なお、法の運用に当たりましては、累積鉱害早期解消のため、他の公共事業や土地利用計画十分調整を進め、従来にも増して計画的、効率的にその処理に当たる決意であります。
  60. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 全国鉱害量調査によりますと、鉱害量の七六%が福岡県に集中しておるわけでございますが、その理由は何なのか。また、福岡県の鉱害を重点的に復旧しないと十年間で鉱害の最終処理ができないのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  61. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のとおりに、鉱害量の四分の三程度のものが福岡県に集中していると考えられるわけであります。これは福岡県内筑豊を中心にいたしまして、昭和三十年代の前半には炭鉱数にいたしましておおむね三百程度、年間出炭量では二千万トンを超える二千二、三百万トン程度の出炭をしておったわけでございます。このように当時筑豊におきましては、特に平野部におきまして良質な炭層が賦存しておりまして、いま申し上げましたような数の炭鉱が稼働し、相当規模の出炭があったということであろうと思います。それが順次、採掘の結果地盤沈下等を起こす、さらにまたそれが終閉山に進んでまいりましたために、地下水変動等によりまして新しい鉱害も誘発するに至ったということでございます。  従来から福岡県の鉱害復旧につきましては、鉱害復旧事業団の業務あるいは有資力賠償の鉱害復旧等につきましても重点的に行ってきたわけでございますが、今後におきましてもかなりの部分が福岡県に残っておるということから考えますと、それぞれの地域ごとの残存の鉱害量と今後の緊急性を十分考慮しながら福岡県の鉱害復旧の推進を図ってまいらなければならないと考えております。
  62. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 この答申に述べられております地方公共団体の積極的な役割りを果たす必要もあるわけであると思いますが、これがまた行き過ぎるような状態では地方公共団体に不当なしわ寄せがなされることになるわけです。鉱害復旧事業における地元の公共団体役割りについては政府はどのように考えておられますか。
  63. 福川伸次

    福川政府委員 この答申にも述べられておるわけでございますが、鉱害復旧に当たりまして、これは地方公共団体の基本的な責務でございます関係地域の振興と密接に関連をいたす事業でございます。したがいまして、地方公共団体が、鉱害処理が円滑に進むようにこの意見調整等の面において積極的な役割りを果たしてもらいたいということを期待をいたしておるわけであります。  さらにまた、工事の施行に当たりましても、石炭鉱害事業団の限時的性格その他諸般の事情を考慮いたしますと、今後とも地方公共団体が一層取り組んでいただかなければならないわけでありますし、また、この鉱害復旧事業は、産炭地域と申しますか、その地域の振興ということとこれまた密接に関連をいたすわけでありまして、その地域の経済的なあるいは社会的な疲弊を解消いたしますために今後とも社会資本の整備充実を図ってまいらなければならない。そういったことに関しまして地方公共団体の工事の施行ということとは十分調整を図り、効率的にやっていかなければならないというふうに思うわけであります。  三番目には、さらに視点を広くとりまして、地方公共団体の基本的な責務であります地域の振興を図る、こういう観点で今後の全体の地域の広域的な発展を図っていく計画性の付与、こういうあたりに地域の自発性、自主性を持った形でこの事業全体の位置づけも考えてもらい、私どもとしても、今後のその施策の展開に当たって、それを取り入れて効率性と整合性を図っていくということの期待をいたしておるわけであります。  さらに、いま委員指摘のとおりに、地方にさらに期待をするというようなことでいろいろな負担が地域に行き過ぎてはいかぬじゃないかという御指摘がございました。現在地方公共団体の財政負担というのは、復旧工事にかかります負担と申しますのはそれぞれ法令によって定められておるわけでありますが、それなりに現在も地方交付税等の措置での負担の軽減が図られておるわけでございまして、私どもとしても、現在そういった制度の中で地方公共図体も適正な負担を図っていただくということを考えておる次第でございます。
  64. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 答申におきましても、累積鉱害の最終的処理を図るために延長期間内の適当な時期に円滑にその終了を図るための方策について検討するようにという指摘がなされておりますが、これはどういう意味に受けとっておられるのか、また、これに対する政府考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  65. 福川伸次

    福川政府委員 石炭鉱業審議会答申は、いま御指摘のとおりに「累積鉱害の最終的処理を図るため、期間中の適当な時期に、円滑にその終了を図るための方策について検討することが望ましい。」こういうことでございます。もとより十年以内に最終的な処理を図るということがこの基本答申の底流を流れる思想でございますが、しかし、十年後のその後のそのときの状態の幾つかの問題の処理ということをいまの時点から決めていくということはまだ時期尚早ではなかろうか、こういうことでございまして、じゃ具体的に十年で最終的な処理が終わったときに、たとえばいまの鉱害事業団をどういうふうにするのか、あるいはいろいろな施設ができておりますが、その維持管理費用の負担をどのようにするのがいいのか、そのほかこれが最終的な終了に向かっていく場合いろいろな問題が出てまいります。そういったことを考えてみますると、いますぐ具体的にそういった処理のための方策について結論を出すということはまだむずかしい状況にはあるのであろう、もう少し事態の推移を見てその辺の検討をしていこうというのが審議会の大勢であったと理解をいたしておるわけでございます。  その点につきまして、鉱害量復旧対象の見直しはどうかということも当然御議論になろうかと思うわけでありますが、答申にもうたわれておりますように、累積の鉱害地におきまして鉱害がかなり安定してきているというような状況、それから、復旧対象につきましてはそれなりに調査を行い、答申にもございますようにかなり詳細な検討をいただいた経緯を考えてみますると、その点につきまして、現時点でそういった復旧対象だとかあるいは鉱害量とかを見直す必要はなかろうというふうに考えておるわけでありますが、いずれにいたしましても、最終的な処理を図っていくということについてのいま申し上げましたような処理体制、その後の方策、こういったものを考えていけ、こういう趣旨であると理解をいたしております。
  66. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 確かにいまのお話もそのとおりかとも思いますが、過去二回延長したこと、それから審議会がここで言っていることを考えますと、やはりいまのことにも少し踏み込んでといいますか、いわゆる期間が最終に来てからではどうしようもない。その過去二回延長したときに、この前の延長のときも鉱害量が千七百億ぐらいですか、現在の価格に見積もるといまの六千億も同じようなこと。ですから、やはり過去の延長のときの反省に立って、期間に入る前にも、こういうことが予想される、こういうことが適当ではないかという方向ぐらいはお示しになった方がいいのではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  67. 福川伸次

    福川政府委員 過去二回延長、特に前回四十七年の延長のときには千七百億円を最終的な処理を図るということで長期計画をつくるといったような諸制度のことがございました。しかしながら、当時はまだ稼働中の炭鉱がございましたり、その鉱害がまだ安定し得なかった事情といったようなことにつきまして必ずしも十分に予見し得なかったという反省をいたしておるわけでございますが、今後これを十年延ばすに当たりまして、それじゃ十年後最終的に処理を図った場合の手続がどういうふうに相なっていくかということにつきましては、いますぐその手続まで決めてしまうということにつきましては、十年の先のことでございますのでかなりその辺が推定がむずかしい。いまたとえば十年先の鉱害事業団をどういうふうにするかということはなかなか決めにくいわけでございます。少なくともこれを早期に処理をするということでございますれば、私どもとしては、なるべくこの十年の延長の前半に精力的にこの鉱害処理をできるだけ図っていくということが必要であると思うわけであります。そうして、ある程度の期間が過ぎました段階でどの程度実施状況になっていくのか、さらにそれを前提にいたしましてこれの最後のいろいろな諸手続、諸体制等々を考えていくということの方が現実的ではなかろうか。委員の御指摘も大変ごもっともで、先のことをどうするのか、いまから明らかにした方がいいという御主張も私どもとしても十分御趣旨としてわかるわけですが、しかしいまからそういった組織的な問題、手続的な問題、これがなかなか決めにくいものでございますから、あるいはまだ不十分という御感触かとは思いますが、できるだけ前半に大きく処理を重点的に行いまして、そのときの実績を踏まえてその後の処理体制をうまく考えてまいりたいというのがこの答申趣旨であり、私どももそれで対応いたしたいと思っている次第でございます。
  68. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 やはり事をやる場合は行政の責任とか行政の問題ではないかという指摘が多いわけですから、ぜひひとつこの期間の前半に努力をしてもらいたいということを要望しておきます。  次に、これは農林省の方のお尋ねになるかと思いますが、復旧不適農地については現在まで農林、通産の共同省令が制定されていないわけでございますが、それはどうしてなのか。今度は制定する必要があるという答申が出ておりますが、そのためにはそれではどういう準備をなさっておるのか、その準備の進めぐあい、進めるための手当て等、また、その省令がいつごろ制定される見通しにお立ちになっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  69. 河合正彭

    ○河合説明員 お答えいたします。  昭和四十七年の臨鉱法の一部改正によりまして、復旧基本計画の作成段階において、復旧することが著しく困難または不適当なため復旧の目的としない農地につきまして、同基本計画にその概要等を記載することになっております。そこで、その運用基準といたしまして、昭和四十七年に通産省と協議して復旧不適農地の具体的な要件を定めたところでございますが、これまでのところ復旧不適農地の要件に該当する農地が見当たらなかったという事情等もございまして、共同省令が制定に至らなかったわけでございます。  しかしながら、最近一部のミカン園におきまして、復旧不適農地の制度による処理が必要と見込まれる事情等もございます。そこで、共同省令の制定につきましては、現地の鉱害の実態をさらに見きわめつつ通産省と協議いたしまして、これに適正に対応することができるように努めてまいりたいと考えている次第でございます。
  70. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 もう少し親切に答えられませんかね。というのは、いまあなたが言ったように、四十七年当時にもそういう復旧不適農地はないだろう、こう言われておったけれども現実、ミカンというようなことを言われましたけれども、最近起こってきた。ですから、特に鉱害状況が安定したといいましても、安定すればなおさらこういうものは必要であるから、この審議会でも制定する必要があると言われておりますから、大体制定するお気持ちがあるとは思いますが、その具体的な進め方と、いつごろになるのか、それはまだわかりませんか。
  71. 河合正彭

    ○河合説明員 このことにつきましては、現地の実態等も十分に見ながら通産省と十分に協議いたしまして、行政需要に適切に対応できるように対処することとしておりますので、御了承賜りたいと思います。
  72. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それは了承はしますけれども鉱害の主管は通産省の方ですから、通産省としても農林水産省の方に働きかけなければいかぬと思いますが、どうでしょう。
  73. 福川伸次

    福川政府委員 私どもとしても御答申をいただいておることでございます。この鉱害復旧を早期かつ効率的に処理するということからいきますと、この制度の活用を図り得べきケースということも考えられますので、私どもといたしましては、いま農林省がお答えになられましたが、できるだけ早くこの実情を把握した上で省令の制定につきまして農林省と相談してまいります。
  74. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次は、金賠に係る問題ですが、先ほども具体的な細かい問題がありましたが、この答申の中にも、山林原野等金銭賠償済みの物件を初め復旧対象についてさまざまな意見がまとめられております。これは将来にわたっても変更する考えはないのですか、いかがですか。
  75. 福川伸次

    福川政府委員 私どもといたしましては、いまここで御指摘になられました山林原野、干潟あるいは金銭賠償済み物件あるいは社有地上の家屋等々、個別のケースにつきまして、いろいろ審議会として詳細に御検討をいただいた次第でございます。これを法律論の立場あるいは実際の運用の立場、双方から御答申をちょうだいいたしたわけでございます。  私どもとしても、それぞれいろいろ実情についての問題点があることも十分把握してまいるつもりでございますが、いま答申におきましてはいろいろ慎重な調査と御審議をいただいたわけでございますので、私どもとしてはこのラインに沿って、もちろん実情を十分把握しながらそれぞれ適正に対処をしてまいりたい。この答申のラインに沿って十年間で最終的な改修ができるということで最大努力してまいるつもりでございます。
  76. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 金銭賠償済みの物件についてはここにもありますが、いわゆる浅所陥没、浅いところの陥没とか新規の採掘に伴う二次的鉱害発生した場合、そういうときにも私は復旧対象とすべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  77. 福川伸次

    福川政府委員 いま御指摘のことは、一応金銭賠償済みのところに新規に浅所陥没とか新規に採掘に伴う二次鉱害といったことが発生した場合、どう取り扱うかという御趣旨かと思うわけでございます。  もちろん、いま当事者間で交わされました金銭賠償契約の内容と新たに発生いたします鉱害との関係は、ケースに応じまして慎重な判断をしなければならないわけでありますが、過去に金銭賠償によって償われていない新しい形の鉱害ということでございますれば、それはいま先生の御指摘のように復旧対象として取り上げて検討するということで対応したいと思います。
  78. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 これはいろいろな形であると思います。私の身近にも、たとえば百年ぐらいたった家屋が、十五、六年ぐらい前に金賠になったかどうか、結局その家族構成の中でもうはっきりしない。頑丈な百年ぐらいたった建物ですが、ここ二、三年ぐらいどうも傾きが出ている。聞いてみますとどうも金賠のようですが、ところがそのときに幾らもらったかもよくわからない。資力者ももちろん無資力になっている。こういうことですが、私は現実そこにおりまして、不思議だな、何とかならぬかなという感じもしたのですが、何せつまびらかでないものですから……。そういう場合は具体的にはどんなことでしょう。
  79. 福川伸次

    福川政府委員 いまお話しのように、かなり年数のたった家屋ということになりますと、果たしてその被害の原因鉱害であるのかあるいは歳月が経過した自然の被害であるのか判定がなかなかむずかしいケースが出てくるだろうと思うのでございます。したがいまして、いま新規の鉱害という原因でその被害が生じた場合には、先ほど申しましたように復旧法の対象となり得るわけでございますが、いまお話しのように数十年あるいは百年たったときの傾いてきた原因が何であるかという点についてはなかなかむずかしい問題があると思います。したがって、これが鉱害であるかないかを判定するときの科学的な調査という点もいまいろいろ地元で問題になっておりますが、いわゆる経過的な形でなったものかあるいは鉱害原因であるのか、また、その鉱害原因といまの被害との因果関係がどうであるのかという点は科学的な調査でいろいろやってみなければならないわけでございます。したがって、いま御指摘ケースがどのようなことであるのか、個別ケースごとにその被害の原因が何であるかという点を十分調査して、ケースごとに対応せざるを得ないということではなかろうかと思います。
  80. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 ぜひ個別的なことで対応してもらいたいと思うのです。これはそこの家の主体者は実は炭鉱に勤めておった人で、その炭鉱の幹部になった人で、間違いなく自分の下を坑道が坑口の入口のすぐ近くで走っている、よく知っているのですよ。ですから、これはもう鉱害以外ない、こういうふうに本人は言っているのですが、もう何さま八十を越した年なものですから、またそういう問題で相談を受けましたときにはひとつ対応してもらうように、よろしくお願いしたいと思います。  次に、これは鉱害事業団の方になると思いますが、鉱害復旧進捗につれまして事業団の組織、人員をどう対処させていかれるのか、また、終結に向けていつごろから準備を始められるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  81. 町田幹夫

    町田参考人 鉱害復旧進捗に伴いまして事業団の組織、人員をどういうふうにして配置していくかという御質問でございますが、事業団に対する御要求と申しますかは非常に多うございまして、なるべくひとつ事業団でやってくれというお話があるわけでございますけれども事業団も、御承知のような行政改革等の事情もございまして、なかなか人間をふやすというわけにはまいりません。われわれといたしましては限度いっぱいに現在仕事を進めておるわけでございますが、今後事業団をどういう形に持っていくかということは、先ほど政府の方からお話しございましたように、長期計画というものができるわけでございまして、その長期計画の中で事業団の受け持つべき役割りが決まってまいると思います。御承知のように、全部の鉱害復旧につきまして、基本計画は全部事業団がつくります。また、事業団が施行いたしておりますのは、現在本年度で六百二十億程度鉱害復旧でございますが、本年度はそのうちの三百六十六億、約五七%をやっておりますが、この比率が今後どういうふうになるのか、事業団はどこまで受け持つのかということが決まりますれば、それに基づきまして、事業団の今後の人員なりあるいは組織なりの計画を立ててまいりたい。  先ほどからも将来どうなるかというお話がございましたが、これが会社でございますれば、十年先に仕事がなくなるということになりますれば、その間に何か別の仕事を考えておくということもできるわけでございますが、われわれの方は目的法人でございまして、とにかく現在の与えられた仕事を期限内に一生懸命やる以外に方法がないわけでございます。確かにいまおります職員等につきましても、将来、十年先になくなるということになれば不安があることは事実でございますけれども、それならばいまこれをどうするかといいましても、ちょっとわれわれ考えましてもうまい案がないわけでございます。私といたしましては、先ほど石炭部長のお話にございましたように、なるべく前倒しに仕事を進めて、だんだんと人間を減耗していきまして、最終的に終了する時期までにはなるべく人間は少なく持っていきたい、こういうふうに配置したいわけでございますが、予算の事情等もございましてなかなかそうもいきませんので、結局事業団復旧計画が終了する最後まで事業団の人間は相当多く残るということにならざるを得ないだろうと思います。  その際、その人間を、これは有能な技術集団でございますので、これをどういうふうに活用するのか、あるいは解体してその人間をいろいろ関連の同じような政府特殊法人等に配転するのか、あるいは民間等にその人間を配置するのか、いろいろ案があると思いますが、私としては、現在職員に、事業団の仕事を一生懸命やりますが、同時に、平素からなるべくひとつ資格を取って技術を練磨して、いかなる事態に応じましてもほかの方に使えるように勉強しておいてくれ、こういうことで指導もし、またそれに応ずる研修等も行い、またそれに要する費用等についてもこれを援助するというようなことで、できるだけ建築士とか測量士とかあるいは造園士とか、とにかく一般社会に通用するような資格をできるだけ事業団におる間に勉強しておけ、こういうことで指導してまいっておるわけであります。
  82. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 これは細かい問題かと思いますが、一つの例としてこれは調査お願いしたいわけですが、私もはっきりしたものをここに持ってお尋ねするわけじゃありませんが、たしか福岡県内で事業団が造成した土地に来た企業がその後分けてもらった宅地が大変な陥没といいますか、建物自体も大変な問題になっておる。誘致された企業と事業団の方で問題が起こっておるというようなことを聞いたわけですが、たしか福岡県内の筑豊地区の問題だったと思います。これは報告でございますから、そういう問題についての経過がどうなっておるか教えていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  83. 町田幹夫

    町田参考人 いまお話しの案件は十分調査いたしますけれども、私の方で造成いたしましてそこに企業なり会社なりを誘致したということは私の方の事業団ではございません。恐らく地域振興公団の方で造成された土地ではないかというふうに考えておりますが、よく調査いたします。
  84. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、この答申にもございます基本計画の作成等に関しまして、いわゆる高度な技術的、専門的観点を踏まえてより的確な判断を下すためには学識経験者意見を聞く、そういう体制を整備せよということがございますが、具体的にはどのようなことを考えておられますか。特にその人選はどうされるのかお聞かせ願いたいと思います。
  85. 福川伸次

    福川政府委員 復旧基本計画の作成に当たりまして、復旧すべき物件を選定する際に、その地域が宅地化しているといったようなことで周辺地域の環境が変化している、あるいはまた、家屋の場合では、先ほどもちょっと委員から御指摘になったような形で経年変化によって老朽化が進んでいるというような事情がございまして、鉱害であるかどうかの判定がなかなか困難なケースが増加しつつございます。このために従来からもいろいろ実施してまいったわけですが、たとえば臨鉱法の九十七条の二にありますような鉱害認定科学調査制度あるいは鉱害認定精密測定調査といったものを最大限に活用して、必要に応じて水理解析調査とかいったいわゆる基本計画立案のための基礎調査実施してまいりたいというふうに思うわけでございます。そういったことで、こういう科学的な判定を下していくということをまず第一に考えてまいりたいと思うわけであります。あわせて、特にこれが御質問趣旨であろうかと思いますが、特に判断がむずかしい地区を取り上げるかどうかの選定あるいはまた、他の公共事業地域施策との関連におきまして整合性のとれた復旧基本計画を作成するということにつきまして、学識経験者等の意見を聞く体制を整備した方がいいんではないだろうかというふうに思っておるわけであります。  じゃ具体的にどういう人を人選するかという点につきましては、いまのところまだ成案を得ておるわけではございませんけれども鉱害事業団あるいは通産局その他の関連のところの協力体制を求めながらこの学識経験者、これにつきましては十分この方面に御理解、御経験のある方を人選してまいりたいということで、いまのところまだ具体的な体制をつくるところまで準備しておりませんが、今後諸般の諸情報を収集しながら努力してその体制づくりに努めてまいりたいと思います。
  86. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、紛争処理についてでございますが、いわゆる裁定、和解の仲介制度等の役割りがますます増大するというふうに思われます。特に裁定制度についてその中立、公正を確保するためには、具体的にはどのようなことを考えておられますか、お聞かせを願いたいと思います。
  87. 福川伸次

    福川政府委員 先ほど申し上げましたように、鉱害判定が非常にむずかしくなっているということから、鉱害存否等をめぐりまして、今後ともその紛争の事案というのがふえていく可能性があろうかと思うわけでございます。答申におきましてもそういった点を指摘をいたしておるわけでございます。裁定委員会の権限につきましては、これは現行法令におきましても、当事者あるいは利害関係人、こういった方たちからの報告、資料の提出を求め、また事実関係につきましては実施調査もできるというようなことになっておるわけでございまして、仕組みとしては現在一応円滑な裁定がなされ得るような仕組みになっておるというふうに思うわけでございます。  先生指摘のように、今後とも中立、公正を確保するということが非常に重要でございます。従来とも私どもとしては、この委員会に十分中立、公正を確保するということで人選、制度の運用を考えてまいったわけでありますが、従来にも増してその点は配慮をしてまいらなければならないと思っております。  また、裁定の事務手続に関しましては、これが非常に手続がおくれるというようなこともございまして、たとえば不受理規定の整理とか、あるいは相手方の居所不明の場合の取り扱いの面等で改善すべき点が多々あると思われますので、今後とも、この法律延長の暁には、そういった実情に即しまして、十分中立、公正を確保するような運用を図ってまいるべく検討を進める所存でございます。
  88. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 最後に、ボタ山対策についてお尋ねをしたいと思います。  福岡県へ行きますと、ボタ山がたくさんある。ある人に言わせると、国の産業政策による産業廃棄物で、あれがあるだけでも地域に大変な悲しい状態をつくり出しておる、こういうふうに言われておりますが、このボタ山が常に流出、崩壊というようなことの危険をはらんでおります。  そういうことに関連して、やはり生命、財産の安全の観点からもこれは除くことが当然でございますし、望まれておるわけでございますが、ボタを除去するということは、またその跡地の有効利用、周辺環境の整備等が図られましてい地域社会の発展に大きく寄与できるものでございます。しかし、実際現状は、いま申し上げましたように、ボタ山の除去が全然進んでいない危険な状態の野放しの山については、もう地元市町村、公共団体も必死になってやっておる。こういうようなことがあるわけですが、このボタ山対策は一体どうなっておるのか、ボタ除去についてはどういうふうな見通しをお持ちになっておるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  89. 福川伸次

    福川政府委員 全国に存在いたしますボタ山の数は、昭和五十年前後が一番多かったわけでありますが、そのころの調査によりますと、約九百あったと言われておるわけでございます。その中で、ボタ山を管理すべき義務者が不存在または無資力といったボタ山の数は約七割でありたというふうに言われておるわけでございます。これがいま先生指摘のように非常に危険であるというようなことから、実は昭和三十九年度から、この義務者が不存在または無資力のボタ山についてぼた山災害防止工事費補助金制度ということを始めまして、防災工事を行っておるわけでございます。現在までかなりの、累計で百五のボタ山の処理に着手をいたした次第でございます。本来、有資力のボタ山の防災工事というのは、基本的には義務者が実施すべきものでございまして、この点につきましては、鉱山保安監督局あるいは鉱山保安監督部が監督指導を行い、義務者に必要な保安措置を講じさせておるわけでございます。  ボタ山は、いまもちょっとお話がございましたように、経年変化によりまして状態があるいは大きくなったりあるいはまた変わったりもいたします。また、ボタの資源としての再利用といったようなことも出てまいりますし、また、ボタの敷地の利用その他の手段によりまして実質的な危害の除去も進んでおるわけでございます。それで、前回の調査時点に比べますとかなり実情も変わってきているということでございますので、昭和五十六年度から有資力を含めました総合的なボタ山実態調査実施をいたしておるわけでございます。  当面、危害防止等に十分の措置を講じますとともに、いま申し上げましたこういった実態調査の結果を踏まえまして、個別に問題のあるものにつきましては具体的な計画を立てて、その処理の促進を図ってまいるように指導をしてまいる所存でございます。
  90. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 このボタもまた福岡県が大変多いということで、ここに地元からの要望書の中にもございますが、全国的には九百ぐらいの中で百かそのくらいのボタをなくしたというようなことのようでございますが、福岡県はまだ三百を超えるボタが残っておる。その中で放置されているのがまた九割、二百五、六十あるということですね。まあ最近になって調査もされておるようでございますが、私はやはり抜本的な何か対策を立てないと解決しないのではないかと思いますが、もう少しこのボタに対する対策についてございますればお聞かせを願いたいと思います。
  91. 福川伸次

    福川政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、このボタの問題も、これは社会的に非常に大きな問題でございます。もちろんこれは地すべり等の災害防止ということもございましょうし、さらにまた、このボタを利用いたしました資源の再利用という観点もありますし、また、団地造成等の関連でそのボタ山の処理ということも必要になってまいるわけであります。  いま実施いたしておりますボタ山の実態調査等を踏まえまして、私どもとしても、そのボタの危害の防止あるいは処理といったことにつきまして、今後とも十分精力的に取り組んでまいるつもりでおります。
  92. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 終わります。
  93. 枝村要作

    枝村委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十八分休憩      ————◇—————     午後一時四十三分開議
  94. 枝村要作

    枝村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小渕正義君。
  95. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 まず最初に、前回昭和四十七年にこれが改正、延長されたわけでございますが、その後、今回の鉱害復旧について十年間の復旧事業が実施されてきたわけでありますが、今日段階でまだ残存鉱害量が六千億円に達する程度あると言われているわけであります。そういうふうな状況の中で、四十七年当時の残存の鉱害量といたしましては一千億円程度あるということが言われておったわけでありますが、そういう意味で四十七年、前回の改正、延長される場合における当時の状況の中で、四十七年以後に鉱害発生するものを大体どの程度というふうに推定といいますか考えられて、見込んでおられたのか、そういった点について、まず第一にお伺いしたいと思います。
  96. 福川伸次

    福川政府委員 四十七年当時、筑豊炭田におきましてはなお二十程度炭鉱が稼働し、二百数十万トンの出炭を上げておったわけでございます。この当時、なお稼働中の炭鉱の生産に伴って将来発生するであろう鉱害につきましては、当時の採掘計画、それから企業に対します調査に基づきまして、四十七年価格で七十億円程度になるものと見込まれて、織り込まれておりました。さらにそのほかに将来発生予想の鉱害といたしまして、既発生鉱害量の一割程度、四十七年価格で百七十七億円程度をこれに上乗せをいたしたわけでございます。なお、今回調査結果でその後新規に発生した鉱害量千億円程度先生指摘のようなことに相なっておるわけでございますが、これにつきましてはなお五十七年度以降に発生することが予想されるものも一部含んでおるわけでございます。したがいまして、御質問にあります四十七年当時にどうであったかということになりますと、採掘中の炭鉱から出てくるであろうものが七十億円、それに将来発生予想鉱害量として百七十七億円、これを大体見込んでおったわけでございます。
  97. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 四十七年以降十年間の中でそれぞれ鉱害復旧事業が行われたわけでありますが、そういう中で、なお今日再度の調査の結果は残存鉱害量約六千億円と言われておるわけでありますが、余りにもそういう意味での食い違いがあるわけでありますが、そういう点についてはなぜこういうふうな大きなずれが生じたのか。その要因は一体何なのか。当時のそういう調査といいますか、そういったものが果たして正しかったのかどうか。そこら辺非常に疑問を持つわけでありますが、その点についての御見解を承りたいと思います。
  98. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のように、いろいろな要因で五十四年度初めの時点で六千六百七十億円、最近の時価で大体六千億円程度残っておるわけであります。なぜこんなに残ったかという点につきまして大体三点ないし四点要因があったわけであります。  第一点は、四十七年以降新たな鉱害発生したということでございます。これは、まだ当時九州では海底以外で、内陸部で採掘が行われておったわけでございまして、こういう生産に伴って新規の鉱害量発生した。またさらに、閉山した炭鉱におきましてその後新たに鉱害発生したというのが第一の要因でございます。  それから、第二の要因といたしましては、特に筑豊地域が全面的に閉山したということで、当時予想していなかったような湧水あるいは浅所陥没といった新しい形態、揚水が中止されましたための地下水水位変動といった形で新しい湧水被害、新しい形態の鉱害が出てきたわけでございます。また、深度の浅い採掘の場合に、相当年数経過した後におきまして、いわゆる坑道壁風化等地盤が緩むいわゆる浅所陥没と言われたような現象があったわけでありますが、これもまた地下水水位変動によりましてそういう現象が多発してきたというのが第二の要因でございます。  第三の要因は、四十七年の長期計画に想定されました鉱害のうち予定どおり復旧されなかった鉱害があるわけであります。これは二度にわたります石油危機で物価が上昇して復旧工事の単価が上がる、あるいはまた復旧工事内容が充実するといったようなことで、当時予想いたしました鉱害が十分復旧し得なかったといったような要因がございます。  さらに第四番目には、採掘影響範囲判断等に関連いたしまして、その後の鉱害認定科学調査裁定等によって復旧すべきであるという鉱害判定されたものが加わるというわけでございまして、私どももぜひ千七百億円程度鉱害処理することでやってまいったわけでありますが、いま申し上げましたような要因によりまして、なお現在時点で言えば六千億円程度処理すべき累積鉱害が残っておるという事情にあるわけでございます。
  99. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 いま御説明いただいたのですが、私ども素人から見ますれば、四十七年当時過小に見積もって改正でともかくスタートさせたんじゃないかという、そういう懸念、疑いさえ持たれるような余りの大きなずれがあるわけでありますが、それについてはいまの説明がありました。しからば、今度この法がまた十年間延長するということになった場合に、災害復旧長期計画というもの、政府としては改めてこの五十四年度調査に基づいた現在六千億円と言われている残存鉱害に対する長期的な復旧計画、そういうものが早急につくられてスタートするのじゃないかというふうに思うわけでありますが、その点についてはどのような状況にあるのか、その点お尋ねいたします。
  100. 福川伸次

    福川政府委員 長期計画につきましては、延長法律が成立いたしました暁におきましては、従来実施してまいりました調査をもとにいたしまして、関係地方公共団体意見も聴取して、この十年間に処理をするための長期基本計画、これを見直しまして今後の計画の効率性と整合性を確保する形でこれを発表いたすということにいたしたいと思っておりますが、大体その時期は、これからの作業等もございますので、秋ごろにはこれをまとめて発表いたすような手順にいたしたいと考えております。
  101. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それからあと一つ、残存鉱害の六千億と言われておるのは、今日までの鉱害復旧工事をやりながら新たにいろいろなものが発生してきたわけでありますが、そういった要因が今後も考えられるわけでありますので、将来また新たにそういう意味で発生が予想されるようなものもある程度鉱害量の中では見込まれて六千億になるのか、現在の調査段階においてその実態だけで六千億という程度の残存鉱害というふうになるのか、その辺の兼ね合いといいますか関係、また、そういったこれからの十年間の中でいままでの実態の上に立ってある程度予想されるべきものがあるのではないかと思うわけでありますが、そういったものに対してはどのようにお考えなのか、その点をお尋ねいたします。
  102. 福川伸次

    福川政府委員 鉱害量調査におきましては、すでに鉱害認定をしてまだ復旧できていない——いままで鉱害認定をしたものにとどまりませんで、まだ認定の行われていないもの、あるいはまた将来発生のもの等将来の予測の要素を織り込んで集計をいたしておるわけでございます。もちろん、将来発生鉱害量につきましては、自然現象でございますから必ずしも予測が当たるというわけではありませんで誤差が当然あり得るわけでございますが、そういった将来起こり得るであろう鉱害量も一応予想といたしまして一割前後程度の量を見込んでおるわけでございます。
  103. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これは将来いろいろ予測しがたい事態が発生するかもわかりませんが、今日までの復旧工事の実態からいって一つの想定も予想された上でのことだということでありますので、物価上昇が大きく急激な変動がない限りにおいては大体六千億残存鉱害ということを目標として解決すれば間違いない、大体そのように考えていいのかどうか、その点いかがでしょうか。
  104. 福川伸次

    福川政府委員 私どもといたしましては、石炭鉱業審議会鉱害部会におきましてその調査結果をもとにいろいろ御検討をいただいたわけでございます。もちろん鉱害量と申しますのは、賠償についての共通の性格といたしまして個々の案件処理を待たなければ最終的には確定し得ないものではございますけれども鉱害が最近では大体安定化しつつある、閉山した炭鉱というのもかなりの年数をたってきたというようなことから鉱害が安定しつつございます。それからまた、いまの調査におきましてもかなり精密な地形図、採掘図をもとに検討いたしたというような経緯を考えてみますると、答申でも言っておられますように、一応今回の調査結果、昭和五十四年度時点で六千六百七十億、最近の時点で見ますると大体六千億程度ということを今後処理すべき累積鉱害量として考えていいのではないか、これを効率的に計画的に実施することによりまして累積鉱害解消が図れるということで、私どもとしても鋭意その解消に努力をしてまいる所存でございます。
  105. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 そこで、こういった鉱害復旧事業の中では、それぞれの関係先から、この答申にもありますが、復旧工事の一元化といいますか、工事施行についての一元化というのを強く実は言われ、期待されているわけであります。したがって、そういった立場から考えて、これから鉱害復旧事業団のあり方としてそういった一元化の方向にどのように対応していこうとされておるのか、事業団のこれからのそういった取り組みといいますか、そういうものについて何かお考えがありますればひとつお伺いいたしたいと思います。
  106. 町田幹夫

    町田参考人 事業団に仕事を一元化しろというお話がいろいろあるわけでございますが、これは二つございまして、一つは、賠償交渉とそれから施行と両方一元化しろ、こういう御議論もございます。それからまた、賠償交渉は別にいたしまして、施行だけを一元化しろ、こういう御意見もございます。  鉱害賠償は損害賠償でございますので、加害者が賠償をするというのが一般の民事法なりあるいは鉱業法の大原則でございますので、これは賠償義務者が有資力であれば有資力が賠償するというのが当然でございまして、この賠償交渉まで事業団がやれという議論はちょっと理論的にも成り立たないのじゃないかと思います。  ただ、それならば施行を一元化しろという点でございますが、これは、有資力、無資力、いろいろばらばらでは整合性を欠くとかあるいは時間的にも差がありまして総合的な計画的な復旧ができないから事業団で一元化しろ、こういう御議論かと思いますが、これにつきましては、現在それならば復旧は実際どういうふうな施行になっておるかということをちょっと御説明申しますと、本年度の総鉱害復旧量は六百三十億円でございますが、このうちの六十三億円は公共物件の復旧でございます。そうしまして、公共物件は公共物件の維持管理者がこれを復旧するというのが大体原則でございまして、専門的な技術も要しますので、これは従来とも国、これは建設省でございますが、国とか県とか地方公共団体、こういうところが復旧しておりますので、これはちょっと別にいたしまして、残りの五百六十七億でございますが、これをどういうふうにやっておるかと申しますと、有資力賠償義務者が六十五億円やっております。それから、これは有資力ではございませんけれどもいわゆる特閉会社というふうなもの、もうかって閉山はいたしまして現在清算段階でございますが、まだ清算段階で人員もおるし鉱害復旧経験もある、こういう会社が六十億円復旧をやっております。それから市町村が、これは公共物件以外に農地家屋等復旧いたしておりますのが七十五億円でございます。したがいまして、残りを事業団が三百六十六億円いま仕事をしておりまして、全体の五七%の復旧をやっておるわけでございますが、公共物件は別にいたしまして、これを仮に農地、家屋全部事業団がやるといたしますと、現在三百六十六億にさらに二百億円の工事をやるということになりまして、現在約三百八十人程度でございますが、その人間を約二百人ばかりふやさなければいかぬということになりまして、これは現在のいろいろ行政改革等の事情から申しますれば、人間をふやすということは非常に困難だと申しても差し支えないのでございまして、そういう人員確保の面からむずかしいのじゃないか、こういうふうに考えております。  それからまた、現在、先ほど来市町村に大いに協力してもらったらどうかというふうなことが答申にもございますが、市町村が七十五億現在やっております。一例を申しますと、たとえば長崎県等は農地、家屋も全部市町村で復旧をやっていただいております。福岡県等でも、たとえば水巻町、中間市とかそういうところはやっていただいております。それから、たとえば佐賀県でも多久市とか、あるいは常磐等につきましても北茨城市とか、仙台の方でもいろいろ市町村でやっていただいておる。そういうふうに鉱害復旧という仕事は非常に地元に密着しておる仕事でございますので、市町村でやってやれぬこともない。市町村でも現在公共物件を現にやっておられるわけでございますので、私は事業団に一元化するというよりは、むしろもう少し市町村に積極的にやっていただいたらいいのじゃないかというふうに考えておりまして、そういうことを現に市町村にお願いしておりまして、たとえば宇部とか小野田とかあるいは常磐とか、そういうところでもひとつ検討してみよう、こういうことを考えておられる市もございます。ただ、これは率直に申しまして、福岡県等は非常に賠償交渉がむずかしゅうございますので、市町村もとても引き受けられぬということでございまして、ほかの県等ではそれほど被害者折衝がむずかしくないものですから、ひとつやってみよう、こういうところもあるわけでございまして、事業団に何でも一元化するという必要は必ずしも現実的でないのじゃないかというふうに私は考えます。  ただ、総合的にやるという点は確かにありますので、そういう面で、答申にもございますように、たとえば現在彦山川左岸というふうなところはなかなか進んでないという点もございますので、有資力同士の調整がむずかしいとか、あるいは有資力と無資力の調整がむずかしいとか、そういう点等につきましては、事業団なりあるいは行政庁が間に入りましてそういう総合的な計画をつくって、そして賠償義務者もあるいは被害者の方もだんだんその計画に追い込んでいくということは必要で、そういう調整事業団は大いにやるべきだと思いますけれども、みずから事業団がやるということはやはりおのずから限度があるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  107. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 この鉱害復旧事業の主力は何といっても福岡県筑豊地帯だと思います。私も現地に昨年行ってみまして、関係者の人たちにいろいろお話を承ったわけでありますが、いまも事業団でお話がありましたが、有資力、無資力関係の工事の一元化というのは非常に多く期待を持たれておったわけであります。そういう点で、市町村またはそれぞれ関係者の代表の御要望もみんな、そういう工事をひとつぜひ一元化の方向でやってもらえぬかということでありましたが、いまお話がありましたように、有資力、無資力関係のそういった関係における調整役を何とか積極的に事業団が受け持ってやっていかれようということについては、そういう方向の中で生かしていただく以外ないと思いますけれども事業団の方に直接、率直にお尋ねしますが、いままでのそういった鉱害復旧事業について、大体一つの目標といいますか計画に基づいてやられているわけでありますが、そのペースというものが大体計画どおりのペースで進んできたものかどうか、その点率直にお伺いいたします。いかがでしょうか。
  108. 町田幹夫

    町田参考人 午前中に政府からお話がございましたように、農地の方は復旧計画に対して六割、それから家屋は九七%というお話がございましたので、家屋の方は当初の長期計画の数字だけは大体こなしたという感じでございますが、農地の方が率直に言って六割程度でおくれている。ただ、御承知のようにまたその後いろいろ残存鉱害量がふえましたものですから、現在残存鉱害量が相当残っておりますけれども、こなした量は家屋の方は大体計画どおりこなしたけれども農地の方はおくれておるというのが現状でございます。
  109. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 こういった鉱害復旧事業の中で一つの大きなネックになっているのに、それぞれ関係者の、農地なら農地、特に農地だと思いますが、本人の同意を得る、このことがなかなか得られないで、そのためにたとえば有資力なら有資力の中で、無資力なら無資力の中で何とか早くやろうというような意図があるにもかかわらず、それがずっと足踏み状態にあるということを強く私ども指摘されたわけであります。そういった点で、たとえば農地の場合には、とりあえずその農地が正常な農業として米でもつくった場合にどれくらいの収穫があるか、それを大体推定して、その分に対する補償が毎年行われる。したがって、そのお金さえもらっておけば、いつでも農地はずっと毎年そういう形でいくので、何と言っておりましたか、現地では鉱害年金とかなんとかそういう言葉まで言って、要するに復旧してもらわぬのがいいんだ、そうすれば毎年毎年ずっとそういう一定の想定のもとにお金がもらえるのだ。だから、そういう点で農地関係についての復旧がかなり足踏み状態にあるというようなことを実は陳情の中でお聞きしたことがあるのです。  だから、そういった点を考えますならば、もちろんほかに地域のいろいろな振興計画との兼ね合いの中でのいろいろな問題もあったようでありますが、いずれにいたしましても、鉱害復旧事業をやる上において大きなポイントの一つは、本人の同意をいかに得るかということが一つの大きなネックになっているということが言われております。したがって、これに対する対策について、この答申の中でも一つの方向を一応言われておるわけでありますが、そういう意味での何らかの第三者機関的なもので、ある一定の年限が来てそれでもなおそういうものに応じない場合には何とか処理をするような、そういった何らかの方向をやらないと、この鉱害復旧事業はある部分においては遅々として進まぬのじゃないかという気もするわけでありますが、その点に対しての何か御見解がございますればお聞きしたいと思います。
  110. 福川伸次

    福川政府委員 いま御指摘のとおりに、被害者との理解、合意を得るということに、いろいろな手続に時間がかかるということがあるわけでございます。もちろん被害者のお立場からしてみれば、復旧事業をなるべくよりよいものにということでございます。また、いろいろなことで隣近所との比較もするというようなこともあるわけでございます。そういったことで、今後計画的にこの処理を進めていくということになりますと、この復旧を施行いたします復旧事業団、有資力企業あるいはその他の施行者が、これをどういう形で復旧をしていくか、あるいはどういう程度復旧していくのが一番適正であるかということを十分強調いたしまして、そして、その被害者との間の交渉を全体として調整をとりながらやっていくということが一番大事なことではないだろうかということを考えているわけであります。  さらにまた、復旧計画に取り上げるかどうかということにつきましても、今回ちょうだいいたしました答申の中でも、もう少し取り上げるべきものを選定する地区の選定、それからまた基本計画に取り上げるべき対象といったようなことにつきまして、学識経験者意見を聞く組織、仕組みをつくれというような御指摘もいただいておるわけでございます。  そういったわけで、施行面あるいは被害者との理解の面、さらに復旧基本計画として取り上げるか否かといったものについての客観性の保持ということが非常に重要な問題になってくるわけでございまして、今後その点につきましても、私どもこの答申趣旨に沿って、いま委員の御指摘のようなことで、十年間で何とか最終的な処理を図ることで最大の努力をする所存でございます。
  111. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 その点は、予算的裏づけは別として、これからの十年間で残存鉱害量復旧事業を全部やってしまおうということでありますが、ぜひそういったものについて一つのある程度権威あるものをつくって促進しないことには、結果的にはまたかなり残ってしまうのではないかという危惧がありますので、特にその点積極的に取り組んでいただきたいと思います。  それからあと一つ、これは現地でのお話でお聞きしたのですが、結局原状回復までが鉱害復旧考え方の基本でありましょうが、お互いに社会環境が変わり、生活環境がどんどん変わって向上していく。そうすると、施行する工事の中で、五年ぐらい前に無資力で鉱害事業団がたとえば人家なら人家を復旧してやったものと五年後のものと比較するとかなり格差が出てきておる。ランクと言えば悪いのですが、非常に内容が質的に変わってくる。鉱害事業団の方が、そういう意味で、基本的な原状回復という線にかかわらず、そういう四囲の事情の中でだんだん水準が上がっていく。それに並行して有資力の復旧事業をやろうという関係の中では、無資力の鉱害復旧と有資力とまたその差がついてはいけないということで、それが一つのトラブルというか一つのネックになってくる。そういうことが復旧工事をやるについての足踏みといいますか、なかなか進まない、話し合いがなかなかうまくまとまらない、そういう要因一つに挙げられておったわけです。これらのものについて鉱害事業団としては、関係者のこういう悩みといいますか一つの問題点といいますか、そういうことを非常に指摘されておるわけでありますが、この点については担当事業団としてはいかがお考えですか。
  112. 町田幹夫

    町田参考人 確かに先生の御指摘のように、鉱害の過去の復旧昭和三十五年ごろから復旧いたしておりますが、その当時の復旧と現在の復旧と格差のあることは事実でございます。社会水準、生活水準が非常に上がったということでございまして、同じ鉱害復旧と申しましても相当基準というものが上がっていることも事実でございます。  それともう一つ、最近はいわゆる超過工事というのが非常に多いわけでございます。これがちょっと誤解を招くわけでございますが、この超過工事と申しますのは、効用回復、いわゆる原形復旧に対しまして、政府事業団の負担する分以上に本人が自分で負担いたしまして工事をする。したがいまして、とにかく非常にりっぱなものになる。ただ、本来の復旧であればそれほどでもないのでございますけれども、最近はこの超過工事の中に解体新築といって、ぶっ壊して新しいものをつくる。そういたしますと非常にりっぱなものになるわけでございます。しかし、それは全部鉱害復旧でやっているのではなくて、相当本人の、被害者の金が入っているわけでございます。それがちょっと一見いたしますと、鉱害復旧で非常によくなるというふうな誤解もございまして、過去の人がああいうふうにやりたい、こういう御希望もございますけれども、これはもう鉱害復旧が一遍済んだわけでございますので、格差があると申しましても、それをまたもう一遍やり直せということはできないことでございまして、そういう過去のものをまたやり直すということは現在はやっておりません。
  113. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 この鉱害復旧工事ですか、一つ鉱害復旧事業と言ってもいいと思いますが、こういう事業が特にああいう福岡県の筑豊地帯においてはかなり大きな産業というわけにはいかぬですけれども、かなり大きなウエートを占めた一つの事業になっているのではないかと思います。そういう意味で地域経済に与えている影響はどの程度というふうにお考えなのか、そこらあたりわかっておりますれば、一つ判断でも示されておりますならお示しいただきたいと思います。
  114. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のとおりに、特に筑豊地域の経済が公的な支出に大きく依存している中で、鉱害復旧費がその中で相当のウエートを占めておるということは御指摘のとおりでございます。したがいまして、それが雇用あるいは所得の面で地域経済の下支えをする効果があるということは否定できないところでございます。そして、雇用効果につきましては、直接効果のみならず間接的な波及効果ということがあるわけでございます。もちろん、まだそれは正確にはなかなか測定はむずかしいわけではございますが、いま復旧事業への直接の従業員はかなりの数であろうと言われておるわけでございます。数千人あるいは一万人といったことが言われておるわけでございますが、そういうことから申しますと、鉱害復旧費につきましてはそれがまたさらに生産誘発効果を持って、復旧事業費の二倍程度のものということになっていく効果があるわけでございます。そういうことになりますと、かなりの雇用がこの鉱害復旧事業によって吸収されておる、こういうことになるわけでございます。たとえば仮に一万人と計算をいたしますと、間接効果を入れると二万人の従業員規模、こういうことになるわけでありますが、それに御家族を含めて筑豊の人口等で考えてみれば、かなりの方がこの鉱害事業で下支えの対象になっておるということは事実であろうと思うわけであります。  そういったことから、しかしこの鉱害復旧というのはこれまでの石炭採掘のいわゆる後処理でございますので、これはできるだけ早く処理はすべき。しかし同時に、処理はしながらも、この地域経済の振興に役立つような形に全体として調整を図りつつその事業を実施し、経済の回復、浮揚を図っていくということが非常に必要になってくるわけでございます。したがって、こういった鉱害復旧の促進ということと同時に、他の事業の整合性を図りながら地域経済の回復を図っていく、こういうことで考えていかなければならないものと思っております。
  115. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 大臣、ちょっとお尋ねしますが、実は私も現地へ行ってこんな話を聞いたのです。ある中小の中くらいの炭鉱ですが、もう現在は閉山して、会社は清算してしまって無資力に変わってしまった。ところがその炭鉱主の家が、自分の鉱区の鉱害だということで自分の持ち分だった炭鉱鉱害で家が傾く、そのための復旧工事鉱害事業団がやったという形で、あれ見てくれと御殿のような家を見せられたのです。それはかなり自分のお金を出してつくったのだと私は思いますからいいのですけれども、ただ、われわれ素人というか納税者の一国民から見まして、そういう行き方は余りにも行き過ぎじゃないかという気もするわけですね。自分の炭鉱鉱害発生したということを私はお聞きしたのです。いずれにいたしましても、法はあらゆるものに平等でなければならないということかもしれませんが、われわれ納税者から見ると、余りにもそこらあたりは行き過ぎじゃないかなという感じをどうしてもぬぐえないわけですけれども、この点、大臣、いかがお考えになりますか。
  116. 町田幹夫

    町田参考人 ちょっと先に……。  いまお話しの点は、事実関係がいま詳細にはっきりいたしませんので何とも言えませんけれども、御承知のように鉱害は、自分に対する鉱害復旧しないというのが原則でございますので、もし仮にそれが事実であったとすれば、これはおかしいということになるわけでございますが、恐らくそれが復旧されるためには、その前段階といたしまして鉱害認定されておるということだと思いますが、どういう理由認定されたのか、あるいは、いわゆる関連と申しまして、その地方に道路ができるとかそういうことで、道路の復旧をしてその家が非常に低くなったとか、恐らくそういうふうな関連等のことで認定されたのではないかと私は考えておりまして、事実をよく調べませんと何とも申し上げられませんけれども、それが復旧されるについてはやはり相当厳密に認定をやっておりますので、恐らく何らかの事情で鉱害認定されたのではないか、こういうふうに考えます。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま公団の理事長からお答えいたしましたが、私もそういう実情がもう少しはっきりしないと返答のしようもないわけでありますけれども、私の地域鉱害地区がずいぶんあるわけで、それらの炭鉱主の人もずいぶん住んでおりますけれども、そんな話は聞いたことはありませんで、果たして鉱害の資金を何か特別に自分で流用するといいますか、特別に使ったということになれば、私は非常に問題だと思いますけれども地域全体の鉱害復旧という中で、その関連で対策の一環として行われたということであって、その家自体が自分の資力で建てた、こういうことになれば、これはそう問題はないのではないか。ですから具体的に実態をよくお聞きしないとちょっと判断がつかない、こういうふうに思います。
  118. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 いま事業団の方からの御説明を承って理解するわけでありまして、私も、恐らく少なくともそういうばかなことはなかろう、そういうことでおったのでありますが、しかし、そこの周辺ではみんなそういうことを言っているわけですね。それで私も実はびっくりしたのでありますが、いまお話しのように、自分の鉱害は本人には適用しないのだということでありますので、そういう点で理解いたします。ただ、そういう誤っていろいろ伝えられ、ともかく鉱害復旧事業がそのために変な形での支障があってはいけないので、そういう意味からちょっとただしてみたわけでありますので、その点ひとつ御理解いただきたいと思います。  時間もありませんので、あと一つだけお尋ねいたします。  最近、赤水とか湧水とか、十年前と比べると、今度はそういう関係の新しい鉱害がいろいろ出てきているというようなお話を聞いているわけでありますが、当時想定できなかったような新しく発生したこういった鉱害に対しての復旧対策というものはどのように事業団としてはお考えになっておるのか。それと、やはりこういったものは有資力、無資力、それぞれ関係者の中で個別に処理するというようなお考えなのかどうか。こういった赤水とか湧水という問題は、これはかなり広範囲にわたってくるのじゃないかという気もするわけでありまして、そういう意味では何か一元的な中でやられるべきではないかという考えもするわけでありますが、それに対しての御見解があれば承りたいと思います。
  119. 町田幹夫

    町田参考人 赤水湧水の取り扱いでございますが、これにつきましては、一般的に言いまして、赤水湧水があるというだけでは鉱害復旧としては取り上げることはできないのでございまして、それが農地や農業用施設に被害を与えております場合には、被害物件の効用を図るという意味から過去に復旧対象として取り上げた例がございます。これは宮城県の仙台の近くの農村にそういう施設をつくったケースがございます。今後とも同じような考えで対処していくわけでございますが、具体的には、赤水の発生いたしておりまする地区の水量、水質等に応じまして、施設の設置場所、スラッジの捨て場等が確保できるかどうかというふうな点を検討いたしたいと思いますが、実際問題として、仙台等の田舎でございますれば、土地の確保等も比較的容易でございますが、筑豊地区で実際に土地を確保することは非常にむずかしい問題もございますし、それからまた一番厄介な問題は、スラッジをどこに捨てるか、これはいろいろ最近いわゆる一般公害の問題が起きまして、なかなかスラッジの捨て場に困るというふうなケースもございますので、今後そういう水質処理施設をつくる等の場合には、ひとつ十分研究いたして善処してまいりたい。  なお、現在いわゆる赤水処理施設には秋水、秋の水と称しておりますが、大牟田等で、あるメーカーでいろいろ機械等をつくっているのもございますので、そういうものもいまいろいろ試験的に研究しておるというふうな事情でございますが、いずれにいたしましても、後々また考えましてやりませんと間違いを起こしますので、ひとつよく慎重に検討して対処してまいりたい、こう思っております。
  120. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 最後大臣お願いしますが、またこれが十年間延長されることになりまして、現在の残存鉱害量推定六千億円からいくと、今年度予算は六百億ですから、十年間で大体処理できるようには数字的にはなりますが、そういう意味では、政府が本当に、この十年間で一切こういった種のものは解決してしまうんだというかたい決意がないことには、私は、次に残されて、またこの問題を論議しなければいけなくなるのではないかと思います。したがって、そういう意味では、そういう財政的裏づけをどうきちっとしていくかということが一つ。それから、今日までの実績の上に立った貴重な経験に立って、もっとスピードアップしたそういう鉱害復旧工事が施行されるような、そういう意味でのいろいろの新しい工夫をこらしたものが必要じゃないかと私は思いますし、先ほどお尋ねいたしました、やはりある程度の本人の同意が得られなくても、ある時期が来たら何らかそういう形について決着をつけるような、何かそういうものも並行的に考えられていかないと、私は、これは本当に所期の十年間の中で目的を達成するようにはならぬのじゃないかと思います。したがって、そういった点について、何らか新しいそういう施策を盛り込みながら、ひとつこの問題をやらないことにはいかぬのじゃないかと思うわけでありますが、その点、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 答申によりまして、今回この十年間延長させていただく法律を提出して御審議いただいておるわけですが、われわれとしては、十年以内にこの鉱害の残存量は完全にけりをつける、十年仕上はもう延ばさない、こういう強い決意のもとで取り組んでいくわけでございます。それには各方面の御協力も必要でございます。財政面においては、本年五十七年度予算で大体復旧規模六百八十四億円ということで対策を講じておるわけでございますし、十年間でこれは着実に実行していかなければならない。いろいろ困難はあると思いますけれども、これは乗り越えて、この法案の延長をしていただけばきちっとやらなければならぬわけでございます。今後とも、いろいろとこうした問題を処理していくために学識経験者等の意見も十分聞くようなことも考えてみたい、こういうふうに思っておりますが、われわれの十年間に鉱害を完全に消滅させるという決意は変わらないわけであります。
  122. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 終わります。
  123. 枝村要作

    枝村委員長 小沢和秋君。
  124. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 初めに、総論でありますから大臣にお伺いをいたしたいと思うのです。  いまも話が出たことですけれども、この法律は十年の延長ということになっております。この十年を最後の十年とするべく全力を挙げるという決意を表明していただいているわけですが、この十年間で間違いなく収束できるという大臣決意の根拠になっているものは何かということをもう一遍お尋ねしておきたいと思います。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 石炭鉱業審議会におきまして、御存じのように、鉱害二法を十年間延長して累積鉱害の最終的な解消を目指して、その処理計画的、効率的に進めるべしという答申をいただいておるわけでございます。その御答申に基づきまして今回法案の改正をお願いいたしておるわけでございます。またそのためには、やはり賠償当事者間の合意が円滑に進むように関係者の積極的な協力が必要である。加えまして、やはり地元地方公共団体の協力が非常に必要である。地域振興に基本的な責任を地方公共団体というのは有しておるわけでございますから、鉱害処理が円滑に進むように、意見調整等におきましても積極的な役割りを果たしていただかなければならない、こういうふうに考えますし、政府といたしましても、この石炭鉱業審議会答申を踏まえて、これが最後延長である、もうこれ以上は延長をしない、こういう決意のもとに累積鉱害早期解消に向けて積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えておるわけでございますが、法の運用をするに当たりましては、累積鉱害解消のために他の公共事業あるいは土地利用計画等と十分な調整を進めることが必要であろう、こういうふうに考えます。したがって、従来にも増して計画的、効率的に行わなければならない、そういうことでその処理に当たっていきたい、こういうふうに存じております。
  126. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 私は、やはり財源の問題というのがきわめて重要ではないかと思うのです。今度の五十七年度の予算を見ますと、全体として財政事情が苦しい中ではそれなりに努力をしていただいている数字だというふうに私考えますけれども、しかしまだ、これで十年間大丈夫だろうかという気もするわけです。先ほど部長が、できるだけ前半テンポを上げて、前半で勝負をつけたいという大変耳寄りな話をされたのです。いまのテンポでは、前半で勝負がつくというようなテンポにこの五十七年度の予算でのったというふうには、私まだちょっと評価できないのですが、そういうような現実的な展望というのを部長はどうお持ちなのでしょうか。
  127. 福川伸次

    福川政府委員 先ほども申しましたように、この十年間の延長の途中で最後処理体制をどういうふうにするか見直せという答申をちょうだいいたしたわけでございます。もちろん石特会計の財源の苦しいことは先生も御高承のとおりでございます。したがいまして、鉱害事業団最後どういうふうにしていくかということもさらに検討してもらわなければならないわけですけれども、私どもとしては、一応前半にある程度のものを処理して、その推移を見て今後のあり方を検討しようということで考えておるわけでございます。もちろんこれからどの程度物価上昇を見込むかという不確定要因がございますけれども、事業をまた定員をふやしたりいたしますと、後で減らすということは摩擦が非常に大きいことになるわけでございますので、私どもとしてはなるべく前半に現在程度の実質的な規模は維持していく、それで後半少しずつそれをおろしていくということで、なるべく前半にある程度の、十年間の後の展望がつけられるように工事を進めるという形で、しかしまた、いきなり事業団の組織を大きくするということはできませんので、現在程度の実質的な規模をやっていく過程で後半の展望を持ちたい、こういうことを考えております。
  128. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それはなかなか結構だと思うのですが、端的にお尋ねします。この法の延長に当たって大蔵省と、通産としてはそういう姿勢でおるが、今後の財源などについてぜひそういう配慮をお願いしたいということで、通産がそういう姿勢に立つことについて話が行われているのでしょうか。
  129. 福川伸次

    福川政府委員 財政当局は、先生も御承知のように単年度主義をとっておるものですから、後年度負担はなかなか約束してくれないというのが通常の態度でございますし、それはまた予算制度上やむを得ないことだと思っております。しかし、私どもとしては当面、前半は大体現状程度の実質の規模は維持していくということでこの十年を処理していく、こういうことで今後とも努力をしてまいりたいと思っております。
  130. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 では次に、答申に関連してお尋ねをしたいと思うのですが、私はこの答申全体を拝見して、積極的な改善策もずいぶん盛り込まれておるというふうに考えております。法律としては十年延長ということだけが提案をされているのですけれども、この改善の内容全体を運用で消化していくということで通産当局としては検討して、そういう結論をすでにお持ちなのでしょうか。
  131. 福川伸次

    福川政府委員 この御答申の中で、たとえば施行者間で連絡調整を密にするように、あるいはまた、基本計画で取り上げるところの判断が非常にむずかしい場合には学識経験者意見を聞くようにといったような改善点が示されておるわけでございます。いろいろ法律論あるいは実際論等を御調整いただきながらおまとめをいただいた答申でございます。私どもとしても、この運用上の改善を図って、その計画性、効率性を高めていくということで対処をいたしたい、またそういう決意で、法律自身としては単純延長ではございますけれども、十年の解消ということに努力をしていく所存でございます。
  132. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それでは、この答申を逐次追って質問をしていきたいと思うのですが、最初の部分で残存鉱害量のことに触れております。六千六百七十億円という推定がなされておるのですが、先ほどからの議論を伺っておりますと、現在までに認定をしておる分だけでなしに、私の周辺でもまだ、いまから申請したいという話も出てくるような状況もあります。ですから、今後もそういうようなことがある程度あるということも含めてこの推測がなされておるのかどうか。先ほどからのお話ですと、そういうことを含めて、この六千六百七十億のうち一割ぐらいはそういうことでふくらむこともいわば予測をしたようなお話だったように思うのですが、そう理解してよろしゅうございましょうか。
  133. 福川伸次

    福川政府委員 先ほども申し上げましたように、今回の鉱害量調査の総額の金額の中には、すでに鉱害認定をしたものだけではございませんで、未認定のものあるいは将来発生のもの等、将来予測の要素を織り込んでございます。もちろん将来発生はどう評価するか、自然現象に訴えるところでもございますし、あるいはまた同時に、当事者間での話し合いということがございますから、これは最終的には鉱害賠償の通弊と同様にいろいろ確定しない面がございますけれども、そういった将来出てくるであろう予想量もある程度のものは見込んでおりまして、いま先生指摘のとおり、一割前後のものがこの調査鉱害量の中にはあり得るということで考えております。しかし、それは最終的には個々の案件処理にまたなければならない要素があることは御理解いただきたいと思います。
  134. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 次に、この答申は、復旧のあり方として計画的、効率的な鉱害処理の推進ということを強く求めていると思うのです。これを見ますと「地域別鉱害復旧計画的に進める」とか、あるいは「地域を広域的にとらえ、他の公共事業との調整に留意しつつ、整合性と効率性に配慮していく」とかいろいろ書いてあるわけですけれども、私の記憶では、四十七年の答申のときにも、同じように効率的なまた計画的な復旧ということが言われておったと思うのです。しかし実際には、言われはしたけれどもなかなかそういうように進まなかったというのが現実じゃないかと思うのですけれども、どの辺が障害でそうならなかったのか、今度はそれをどういうふうにして実現をしていこうというふうにお考えか、お尋ねをします。
  135. 福川伸次

    福川政府委員 先生の御指摘のとおりに、前回四十七年の延長の際にも、今後計画的にやっていこうということは御答申の中にも入っておりましたし、私どももそういう意気込みでやってまいったわけでございます。しかしながら、いま先生指摘のように、現実の問題を見ますると、必ずしもそのときのいろいろな事情によりまして計画的に進み得ていないのではないかという御指摘をいただくようなのが確かに出ておるわけであります。もちろん地域によりあるいは被害者によりましては、一刻も早く復旧してほしいという御要請があるのもこれまた無理からぬことでございます。そういう意味では、順次地域的に展開してくるというよりも、やや飛んだ形で飛び石的に復旧するというようなことがあって、あるいは必ずしも広域的な計画のもとで効率的に復旧を進めていったかどうかという点については反省すべき点があるものということから、そこをもう少しさらにしっかり腰を据えてやれというのがこの御答申の御趣旨であろうというふうに思います。したがいまして、今後施行面に当たりまして関係者間で調整、協議をする場を設けるとか、あるいはさらに地域的に広域的にやっていく点について地方公共団体の理解、協力を求めて賠償当事者間での合意が円滑に進むような協力体制をつくるというような運用面での改善点が指摘されておるわけでございまして、そういうわけで、私どもとしても、この計画性あるいは効率性、こういうことが絵にかいたもちにならないように運用面で十分考慮し、努力をし、また関係者の理解、協力を求めてまいりたいというふうに思います。
  136. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 この十年間見ていると、実際にはほとんどその面で進歩がなかったように思うのですけれども、それは言い過ぎでしょうか。
  137. 福川伸次

    福川政府委員 私どもとしては、いろいろな具体的なケースに応じて事業団あるいは賠償義務者、有資力賠償義務者等々にそれなりにいろいろな努力は求めておったわけで、私どもとしても順次改善はしつつあるというふうには思っておりますけれども、ただ、四十七年の答申のときに予想あるいは期待したような形では必ずしもなかった、それが今回の御答申でさらに計画的、効率的鉱害処理の推進ということを強く求められたゆえんではなかろうかと思っております。
  138. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そういう反省の上に立って私ひとつ申し上げたいと思いますが、今後はたとえば地域別鉱害復旧計画的に進めるという場合には、やはり非常に重要な要素として水の問題があります。水がついたりしたら話にならぬわけですから、水系ごとに地域別鉱害復旧を進めていくような計画をきちんと持って、そしてずっとその流れに沿って、高さもちゃんと整合性を持ったような形で鉱害復旧が進んでいく、こういったような特に水系別の鉱害復旧というような考え方というのを重視すべきでなかろうか、あるいはほかの公共事業のいろいろなものとこの鉱害復旧とを結合していくというような点についても、かけ声の割りには余り進んでなかったと思うのですが、この点などもぜひ今度は積極的に各省などとも相談しながら展開していくということでやっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  139. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のように水系ごとに考えまして、上流から下流にかけて順次復旧を進めていくということは私どもも非常に重要な御指摘であると思います。もちろん鉱害復旧事業団被害者からの申し出により調査をして、鉱害を受けていると認定した物件の中から、被害の程度被害者の意向はもとよりといたしまして、地域全体の復旧計画に沿って技術的に先に復旧すべきものから順次復旧していく、こういう考え方でやっていくべきものでございます。私どもそれなりに努力はしてまいりましたが、今後も、いまも先生指摘のように、現地の情勢を現実的に踏まえながら極力計画的、効率的に整合性のとれた形でこの復旧を進めてまいるということで、いまの御指摘いただいたお考え方は私どもとしてもこれを十分胸に含めて努力をしてまいりたいと思います。
  140. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 では次に、復旧対象の問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、金銭賠償済み物件のことについては先ほどからもいろいろと議論があっておりますけれども、私どもが聞いておりますものはずいぶん同情すべきケース、たとえば暴力団みたいなものが間に立って押さえつけられたのだとか、会社が閉山というのでもうこのくらいで泣いてくれというのでどうにもならなくて押しつけられたのだとか、いろいろ事情を聞いてみると、気の毒というかもっともなケースがずいぶんあると思うのです。ただ民法上の原則から言えば、金銭賠償をやったのだから権利は消滅した、こういうことだけでは私はちょっと、実情から見て余りにも気の毒なケースがあちこちあるのじゃないかというふうに思うのですが、こういうようなことについての救済というのは全く考慮の余地がないものでしょうか。
  141. 福川伸次

    福川政府委員 この点にはいろいろな議論が審議会の中で展開をされてまいったわけであります。法律論の立場、さらにまた御指摘のような現実的なバランスの問題、いろいろな御議論があったわけでございます。もちろんいま先生の言われたように、同意をさせられたときにこれは十分司法上さらに救済を求めるべきようなケースの引例もございましたが、これはもしそういう脅迫等々でございますれば、司法上の解決の道も法律上残されているわけでございますが、一応金銭賠償済みの物件ということになりますと、先生も御高承のとおりの賠償法理論から言って、これを取り上げるという点は法律上困難があるわけであります。しかし、この答申の中でも触れておりますように、復旧の工事に伴いまして排水の不良その他周辺地域復旧工事を行いましたために金銭賠償済みのところに排水不良等の被害が生ずる、そういったような場合には、その工事の附帯工事としてその復旧を行っておるわけでございますが、いろいろ今後、一部を復旧していったということのために隣の金銭済み賠償というところに別のある損害が及んでいく、こういうときには連携とした形で復旧するという措置考え得るわけでございますが、この点につきましては、それぞれのケースに応じまして現実的な解決を図っていくということになるものと考えております。
  142. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いまあなたが後段で言われました田を復旧したために排水不良などの被害が起こるような場合には考える、これは運用によってはずいぶん救済の道もまた開けるのではなかろうかと私は考えます。私の地元の直方市に植木というところがあるのですが、この植木というのはかなり古くから町を形成している地域なのですが、この下を三菱が掘っておりましてその地域一帯に鉱害発生した。昭和の初めにこのことについては金銭賠償を支払っておるのです。その後永田鉱業がこの鉱区をもらい受けて昭和三十七、八年ごろまで掘っておったりしたという歴史があるのですが、かつて金銭賠償を受けておるからということで大部分が泣き寝入りをしておった。ところが、周辺の農地などがずっと復旧をしてまいりましたし、すぐ横手のところを遠賀川が流れておるのですが、ここにあります花の木井ぜきという井ぜきの改修が行われまして、いままでに比べますと、井ぜきの水位がうんと上がるようになってそこから水が流れてくるようになりましたために、この植木という地域は、ここのところを毎年町全体が水浸しというようなひどい状態になってきたわけです。幸いこういう状態について地元の皆さんの熱心な運動に耳を傾けていただいて、通産、建設、農水それから地元の市、こういうような関係者で、これは何とかしなければいかぬじゃないかということでいまいろいろ検討がされておるというところまできたわけです。ここの事態については、こういうふうになってきていること、私は大変喜んでいるわけです。これはもう鉱害というような単純なことではなくて、とにかくそれが実態だから何とかしてやろうじゃないかということで、そういう関係がみんな寄っているわけですが、こういう手法も含めて、かつて金銭賠償などをもらったけれども、いまにっちもさっちもいかないというような状態にある方々については、ぜひ現実的な温かい手を打っていただきたいと私は考えるのですが、この点についてのお考えを伺いたいと思うのです。
  143. 福川伸次

    福川政府委員 その件につきましては、御指摘のとおり金銭済みで解決いたしたものでございますが、いまお話しのようにかなりの省庁に関係をいたすことでございます。農地に関しては農林省、河川については建設省、さらにまたこの本件の取り扱いの方途につきまして、これは鉱害関連というのをどの程度かませて考えるべきかという点については私どもとしてまだいろいろ問題がございますし、関係者の間でいろいろ調査が進められているところでございます。御指摘のように連絡会もできておるようでございます。私どもといたしましても、もう少し実態の調査が進みあるいは関係者自体の事実の解明が進んでまいるわけでございますので、今後そういった調査あるいは連絡会での対応等々を見ながら、これが一体鉱害としてどの程度範囲考えるべきか、科学的あるいは技術的にも十分調査検討もいたさねばならないと思っているわけでありますが、そういったことで私どもとしても現実にどういうことに相なっておるか、十分調査の上適切な対応を考えたいと思っております。
  144. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 ほかにもそういうようなケースはいろいろあると思いますので、それはぜひそういうような現実的な対処をしていただきたいと思っております。  それから、その次の「家屋等に関する鉱害のうち、被害発生時に宅地を賠償義務者が所有していたもの」これは具体的には炭鉱の社宅などが例として考えられると思うのですが、これにつきましても私もいろいろなケースを承知しておりますけれども、たとえば中間市の九州採炭の跡の社宅などの場合には、ほかの鉱区にその地域がなっておったというので、その関係ではこれは鉱害として部分的にではあるけれども認定をしていいじゃないかというような形で救っていただいたりもしておるのですが、そういうような弾力性のある運用をこの項についてもぜひ今後ともやっていただきたいと思いますが、この点も確認をしていただきたいと思います。
  145. 福川伸次

    福川政府委員 いまお話しのように、会社所有の炭住の中には当該会社と関係のない第三者の採掘によって鉱害を受けた、そういうケースを指していらっしゃるものと思いますが、この場合にはもとより当事者間の鉱害賠償契約等がどうなっておるか等いろいろ慎重に検討して取り扱いを決めなければならないわけでございますが、理論的に考えますれば、会社所有の炭住でございましてもその会社以外の他人の採掘によって鉱害を受けた、そして賠償関係が存在しているという場合には、復旧工事対象になり得る場合があるものと思っております。
  146. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 では次に、復旧体制の問題でお尋ねしたいと思います。  このことについては一元化が非常に強い関係者の要請だったと思うのです。私も、効率的また整合性のある鉱害復旧を進めていく上ではぜひ一元化が望ましいと考えておったのですが、残念ながらそういう答申になっておらないようなんですが、この点についてはどうしてそういうことが実現できなかったのか、御説明願いたいと思います。
  147. 福川伸次

    福川政府委員 先ほど町田参考人からもお話がございましたように、この工事の施行の一元化、この点につきましては、その事業団の施行能力の問題、さらにはまた、本来考え方の基本には鉱害処理というのは賠償義務者がこれを行うべきであるといった考え方、そういった制約から、今回一元化は行うべきではない、むしろ現在の施行体制の中でこれを効率的に図っていくあるいはまたその間の連絡調整を十分図っていくことが適切だろうということでございます。先ほどもお話が出ました中で、今年度六百三十億円程度のものの中で事業団実施をいたしておりますのは全体の五七%程度の施行でございますが、現在鉱害事業団といたしましてもその施行上手いっぱいになっておるわけでございまして、そのほかの有資力あるいは関係市町村その他が分担をいたしまして、それぞれ適切に分担して施行する、しかしその間の調整は十分図って、それで施行上アンバランスが生じないようにあるいは計画性、効率性を損うことのないような体制をつくってやっていくのが適切であるという御判断であったと思っております。
  148. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 私も一元化が実現できなかったのは残念ですけれども、賠償義務者、県市町村、石炭鉱害事業団などの関係者の協議の場を設けるというようなことも提言されておりますし、この協議の場などを必要に応じて積極的に設けて、こういう形で、その一元化ができなかったものについてはぜひカバーをしていっていただくように要請しておきたいと思います。  そこで、石炭鉱害事業団の問題についても私は一言お尋ねをしたいと思うのですけれども、いままだまだ復旧をやっていただかなければならぬということで非常に要求が強いわけですね。私は鉱害事業団皆さんは手いっぱい以上の仕事をしておるというふうに考えておるのです。労働強化で追いまくられたようなこともあって、職員の方が自殺に追い込まれるというような痛ましい事態も起こったことを本当に私は残念に思っております。そうだとすると、これからもっと前半に前倒しででもやっていきたいというようなお考えでもあるということから考えてみますと、もっと事業団の体制を強化することを政府としても考えてやらないといかぬのじゃないかというふうに私は思いますが、政府のお考えはいかがでしょうか。
  149. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、これから事業団役割りは大きくなってくると思うわけでございます。そのためにはやはり能力を重視するということが必要であることは申し上げるまでもないわけで、業務の効率化あるいは簡素化を進めながら、職員の研修等を通じて質的な強化を図っていくということが必要であろうというふうに考えております。そうして、総力を挙げて復旧に取り組んで、十年間の鉱害復旧の大目的を達成しなければならぬ。ただ、現在は行財政改革という時期でございますから、なかなかいまお話しのように人員の増ということは困難な状況にもあるわけでございますから、そういうことも客観情勢として踏まえながら、中身の充実というか、質的強化ということにひとつ重点をしぼってやらなければいけないというふうに思います。
  150. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いま事務の簡素化や効率化を進めて何とか切り抜けたいというお話だったように思うのですが、この事業団がやっている仕事というのは、一人一人態様の違うものについて折衝をしてというようなことで非常に大変なんですね。だから、何か定型的な事務があって、コンピューターか何かを入れたらぱっと能率が上がるというようなものじゃない。ここが非常に苦しいところだと思うのですね。いまもうどうにもならないために臨時の職員とか嘱託とかいうような形でいろいろやりくりをしておられるようですけれども、しかし、私はそういうような形ではどうしてもその職員の人たちの士気が高まってこないのじゃないかと思うのですね。しかし、そういう形で実際には入れざるを得ない。入れざるを得ないのだったら、その人たちの処遇についてももっと考えてあげたらそういう人たちのエネルギーがもっと発揮されはしないかということも含めて私は考えるのですが、いかがですか。
  151. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 鉱害復旧の事業を推進するという上においていまの人員でやれるかどうかということになりますと、確かに一つの限界はあるでしょうし、大変な仕事だと私も思うわけでございますが、しかし、何分にもいまは行財政改革ということで、特に定員等については削減するという基本方針が出ておるわけですし、それに従って一斉にやっておるわけでございますから、定員をふやすということはなかなか容易なことではないわけでございますから、いろいろと知恵をしぼって、現在の陣容の中で能率を上げていくということにひとつ事業団皆さん方も工夫をしていただいてがんばっていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。知恵をしぼればできる。しかし、これでもって能率が落ちるというようなことになっては大変でございますから、その辺については政府の方も連絡を十分緊密にしてまいりたい、私はこういうふうに思っております。
  152. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 現実にはそこに臨時とか嘱託という形にせよ人を入れざるを得なくて、現に入れているから、どうせ入れているのならその人たちの処遇を考えたらどうだということを申し上げたわけです。この点について、事業団、何かお考えがあるんじゃないですか。
  153. 町田幹夫

    町田参考人 先ほどから事業団の運営につきましていろいろ御支援をいただいておるわけでございますが、先ほど大臣のお話にございましたように、なかなか定員というものをふやすということは困難だというのは御承知のとおりでございます。  われわれといたしましては、事業団の職員の質的な向上を図る。このためには積極的に研修を行いまして、そしていわゆる技術力、いわゆる交渉力、まあ交渉力というのが非常に大変なのでございますので、そういう交渉力を高める。あるいはまた、できるだけコンピューターその他機械と施設とを導入いたしまして、そういうもので処理できる面はできるだけ処理いたしまして省力化を図って交渉の方に振り向ける。あるいはこれは非常にむずかしいことでございますけれども、われわれの方からお願いするのは、現在も役所あるいは会社等からいろいろ出向していただいておりますけれども、今後も優秀な人材をひとつ官庁あるいは地方公共団体等から派遣していただきまして質的な充実を図る。  それから、臨時、嘱託の問題でございますが、これは定員がふえませんので、言うなれば一遍会社あるいは官庁等を卒業された方で、いわば中高年の方でございますが、こういう方を嘱託という形で雇って、もちろんこれも枠がございまして、お役所の了解を得てお願いしておるわけでございますが、これもやはり財源等がございますし、また職員とのバランスもございます。それから、いわば第二の人生ということでございますので、中には年金等をもらっておられる方もあるわけでございまして、これをすぐ職員と同じ待遇をするというわけにもまいりません。しかし、過去から見ますれば、だんだんと待遇はできるだけひとつ改善をしたいということでやっておるわけでございます。
  154. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 事業団の職員の人たちの士気という点では、先ほどから議論されておりますように、もう最後の十年だというふうに言われると、では十年先はどうなるかという不安をそこで働いている人としてはどうしても持ちますね。だから、十年一生懸命働いてもらった先のことについては、それは政府としてはちゃんとそれなりに見るんだという基本的な考え方だけはいまの段階でもはっきりさせておいた方がいいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  155. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘のとおりに、将来におきます事業団の職員の処遇が不安定になることによりまして、現時点で職員の間に士気の低下とか不安な気持ちとかいうようなことが起こりますという点は、私どもとしてはそういうことがあってはならぬことだと思います。このために、この復旧進捗に応じまして、これはもちろん単に事業団に限ることなく、地方公共団体を含めました関係施行者相互間においていろいろの役割り、分担を考えていくというようなことで、いま先生もおっしゃったような不安あるいは士気の低下ということがないように、私どもとしてもこの十年の展開の過程の中で、そのときに不安にならないような措置ということはいろいろ考えてまいらなければならない。その辺は慎重かつ万全に配慮してまいりたいと思っております。
  156. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それでは最後に、有資力の鉱害復旧の促進のことで一言お尋ねをしたいと思います。  私が伺っておるところでは、大手の有力な炭鉱企業がむしろ鉱害復旧が非常におくれておるという状態だということで、大変けしからぬことだと思っておるのです。ところが、この前参考人意見を伺ったときには、石炭協会の会長としてお見えになった有吉さんは、住民の同意がなかなか得られないからというようなことをおっしゃって、何かむしろ住民が消極的であることが鉱害復旧のネックになっているようなお話だったのですが、私はこれはちょっと承服しかねるのです。一生懸命鉱害復旧に取り組んでいる企業は、有資力であってもどんどん進んでいるところもたくさんあるわけですし、私は、これはやはり企業の姿勢の問題が根本じゃなかろうかというふうにこの進まない原因を見ておりますが、政府としてはどうお考えか。それから、今後十年間で有資力の分も全部やり上げるということになるならば、特にいま私が念頭に置いているような大手の企業は格段に努力をさせないと、この十年間ではとても終わらないんじゃないかと思うのですね。政府としてはどういうふうに指導していかれるか、このことをお尋ねして、終わります。
  157. 福川伸次

    福川政府委員 御指摘の有資力鉱害につきましては、特に重鉱害地あるいは賠償義務者が錯綜しているような地域、こういったあたりで、特に被害者あるいは賠償義務者の間で合意が得られにくい、こういった地域がなお残存しているわけでございます。私どもといたしましては、今後、この石炭鉱業審議会答申にもございますけれども賠償当事者さらに地方公共団体関係者が積極的に意見調整を図ることによって、そして早期の復旧に着手できるように、また企業、賠償義務者もそういった合意の取りつけに努力するということを期待いたしておるわけであります。  またあわせて、この有資力賠償義務者の中には膨大な鉱害債務を有しておりますために資金繰りが困難な企業も見えるわけでございます。そのために、私どもといたしましては、その有資力賠償義務者の資金繰りを改善することによりまして有資力の鉱害復旧促進を図るというふうなことで、長年念願としておりました鉱害賠償資金の融資条件の改定ということを五十七年度予算から行うというようなことで努力をいたしたわけでございます。償還期間を、いままで三年据え置き八年を四年据え置き十五年という長期にいたしておりますし、融資比率も現在七〇ないし八〇を八五%というようなことで、相当大きくこれを引き上げ改善をさせたいということで、いま予算案を国会でお諮りをいたしておるわけでございます。私どもといたしましても、こういう非常に手厚い助成の中で、いま申した運用の改善と同時に、こういった融資事業も通じまして、有資力がこの十年間に改善するように最善の指導もし、また助言をし、努力をしてまいりたいと思っております。
  158. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 終わります。
  159. 枝村要作

  160. 中西績介

    中西(績)委員 先ほど質問に続きまして申し上げたいと存じますが、先ほどのあれで坑内水揚水問題について触れていきたいと思いますが、いま坑内水揚水しておるところはどことどこになっていますか。
  161. 福川伸次

    福川政府委員 現在坑内水揚水実施いたしております炭鉱は、三井の田川鉱業所と三井の山野、それから日鉄嘉穂の三カ所であります。
  162. 中西績介

    中西(績)委員 この三つの個所から揚水をしておるようでございますけれども、この分、毎分どれくらい上がっておるかの調査結果はございますか。
  163. 福川伸次

    福川政府委員 これはケースによって違いますけれども、現在処理しております量は毎分三立米程度のものから十八立米程度のものというふうにそのケースに応じて差がございます。
  164. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、たとえば一つの例を挙げますが、私は聞いたところでは、三井山野の場合には毎分大体六、七トンくらいじゃないかと思いますけれども、六、七トンであっても一日揚水を停止した結果は二十四センチくらい水位が上昇したという結果を生じています。ですからこのことは間違いないと思います。こうなってまいりますと、先ほど私がお聞きした五十五年の三月の段階で討論をした際に、こうした坑内水問題井戸だとかあるいはこのような水位の上昇、下降、そうしたものが鉱害とのかかわりがないなどということはとうてい考えられないわけですけれども、これは大きな要因としてあるがゆえに揚水をしておるわけですから、その点はそのように理解してよろしいですか。
  165. 福川伸次

    福川政府委員 閉山炭鉱実施しておりますいまの坑内水揚水というのは、私ども鉱害処理の一形態としてやっておるものと考えております。
  166. 中西績介

    中西(績)委員 それではそのことを確認をいたしまして、特にまたそれ以外に排水路などで、聞くところによると百カ所近くもそうした揚水などを行っておるという状況がありますだけに、さきに申し上げました揚排水のポンプだとかあるいは可動井ぜきなどの問題につきましても、この予算確定する前後くらいまでにはこれから後の大体の方針等につきましても十分御検討いただいて御回答いただくようにしていただきたいと思います。  そこで赤水湧水の問題ですが、聞くところでは傾向はだんだん落ちついてきておるということを聞いておりますけれども、現在のところでは何カ所あり、そしてどのような処理をいたしておるのか、この点についてお答えください。
  167. 福川伸次

    福川政府委員 現在赤水処理を行っているのは四カ所でございます。そのうち二カ所は無資力の扱いにいたしておるわけでありますが、あと二カ所は有資力の扱いで赤水の処理をいたしております。
  168. 中西績介

    中西(績)委員 四カ所、そして無資力の場合には二カ所でやられておると言われますけれども、その処理は、先ほど事業団理事長答えておりましたように、処理の仕方によってスラッジ処理などが大変困っておるということを言っておりましたけれども、四カ所だけでこれが済んでおるのか、それとも他にまだたくさん湧水個所があってそれはそのまま放置しておるのか、この点はどうなんですか。
  169. 福川伸次

    福川政府委員 現在四カ所で赤水処理実施をいたしておりますが、さらにそれ以外の赤水の処理、これがどういう被害を及ぼしておるのか、そのほかどういう水質になっておるのか、これはいろいろ調査しなければならない点がございますが、現在のところ十三カ所につきまして調査実施をいたしておるところでございます。
  170. 中西績介

    中西(績)委員 先ほど私が指摘いたしましたように、傾向としては安定的なものになりつつあると言われますけれども、このようにして十三カ所、赤水は経験した方でなければなかなかわかりにくいと思うのですけれども、大変な実害を持っておるわけでありますから、この点いち早く完全な調査を終えられまして、一定の方向なりを出していただくよう特に期待をしたいと思うわけであります。したがって、これらの問題については大体調査なりはいつごろ終えられるのか、これらについておわかりの面があれば答えていただいて、特にその点についての決意なりを申し述べていただきたいと思います。
  171. 福川伸次

    福川政府委員 赤水湧水の点につきましては、これはそれが農地や農業用施設に被害を与えている場合には被害物件の効用回復を図るという観点で過去でも対象にいたしましたし、今後とも同様の考え方で対処していく方針でございます。現在も十三カ所調査をいたしておるわけでございますが、それにつきましても個所ごとに水質、水量、処理方法といったようなものをいま具体的な調査実施をしているところでございます。調査の結果復旧を必要とするというものにつきましては、その工法の見通しのついたところから逐次復旧工事実施していく計画でございます。全体をいつまでに調査が完了できるかという計画はまだ具体的に立っておりませんが、いま申し上げましたような現状の分析七その対応策ができましたところから、その復旧見通しの整ったところから逐次工事を実施するように指導をし、努力をしてまいりたいと思います。
  172. 中西績介

    中西(績)委員 では次に、有資力関係鉱害問題について二、三点お聞きをしたいと思うわけでありますが、残存鉱害量調査をいたした結果、正確には有資力関係でどれだけのものがあるのか、その量的なものを発表できますか。
  173. 福川伸次

    福川政府委員 もちろん有資力鉱害につきましては、賠償義務者、地方公共団体を初めとする関係者が積極的に意見調整を図ることによって早期に復旧着手したいということで考えておるわけでございますが、いま調査結果の中で有資力がどのくらいあるかということでございますが、私どもといたしましては、政策判断をするための調査として全体六千六百七十億円ということを調査をいたしたわけでありますが、いまそれの内容を、これが有資力、これが無資力ということを十分正確に発表する状況にはございません。ただ、感触を申してみますると、有資力鉱害は大体全体の一五%を若干超える程度のものとなるものと推測いたしております。正確な数字につきましては、法の延長の後に鉱害復旧長期計画を策定するまでに取りまとめたいと思いますが、感触としてはその程度でございます。
  174. 中西績介

    中西(績)委員 それでは、会社別にいままで復旧した量、これはおわかりになるでしょう。
  175. 福川伸次

    福川政府委員 いま有資力賠償義務者が幾らしたかという数字はちょっと手元にございませんのでまた後ほど御説明させていただきますが、特に鉱害量が多いとされておりますのは非常に限定された数社であろうと思っております。
  176. 中西績介

    中西(績)委員 私が本来知りたかったのは、いままで会社別に復旧された量、それがわかれば、これから残っているもの——そうするといままで全体的にどれだけのものを長い期間に何%復旧したかということが明らかになるからです。それがわからないと、おくれておる、おくれておるということは言うけれども、実際に内容がどのようになっておるかということを私たちも知らなければこれから後大変困難だろうから、鉱害賠償資金融資制度なるものが本当に適切なものであるかどうかということの判断等において、そうしたものがなければ私たちできないわけですね。ですから、こうした点やはりもう少し親切にいち早くわれわれに提示できるようにしていただかないと論議するのに大変な困難があるわけです。したがって、この点ひとつ事後でも結構ですから出してほしいと思います。  委員長、この点よろしいですか。
  177. 枝村要作

    枝村委員長 はい。
  178. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、あることは事実なんですから、お聞きしますけれども、いままで有資力の場合には先般四十七年から十年間というもの何か計画か何かを出させて、それに基づいてこれを実施していったのか、この点が一つ。それからもう一つは、こうした事態でありますだけに、先ほど大臣があと十年だということを盛んに言っているわけでありますから、将来そうした十年間の計画などをつくらして可能な限り達成をしていく、同時達成ということを目指すのかどうか、そうしたところあたりちょっとお聞かせください。
  179. 福川伸次

    福川政府委員 四十七年から過去十年を実施してまいりました際、長期計画をつくるということでやって処理をしてまいったわけですが、もちろんその十年間で鉱害の最終的な処理を図るということをいろいろ指導はしてまいったわけでございますが、従来はその十年間において具体的な鉱害復旧計画についてかなり不確定要素も強かったわけでありますし、さらにまた、当時まだ操業中であったというようなこともございまして、十年の計画というようなことを作成をして指導をしてまいったわけではございませんでした。しかし、今後の十年間、この点につきまして、鉱害処理はもちろん基本的にはその賠償義務者が責任を持って行うべきである点は答申でも述べておるところでございまして、有資力賠償義務者がやはり同様に鉱害二法の最後延長であるとの認識を持って、被害者の賠償交渉等を積極的に行って処理を図るというようなことでございまして、いま先生の御指摘もございましたように、これはやはり同時的にこの有資力賠償も解消を図るということで処理をいたしたいと思っております。賠償資金の融資条件の改善等も行ったわけでありますが、今後この十年を処理をするときに、こういった融資条件等の改善も行っておりますので、今後とも計画的に有資力賠償義務者が鉱害処理するということが必要でございますので、いま先生の御指摘のように、計画をつくるということも含めまして今後の鉱害が最終的に処理できますように指導をしてまいる考えであります。
  180. 中西績介

    中西(績)委員 これはぜひそのようにして一定計画性を持たしてやられるように要望をしておきます。  そこで、次に、遅延した理由は何なのかということをお聞きしたいと思いますが、いままで、やはり有資力の場合に遅延をする大きな理由は、先般も有吉会長が答弁しておりましたように、被害者との間における合意が困難だということを言っておりましたけれども、そこには私は大変なごまかしがあると思うのです。なぜなら、効用回復を求める側の被害者がなかなか納得をしないということは、従前の原形回復あるいは効用回復するというそうした原則的なものが壊されて容認できないがゆえにこれを納得しない、だから合意ができ上がらない、ここに私は問題があるのだと思います。ですから、結局幅をめぐって復旧程度をそれぞれ話し合いをするわけでありますから、ここらが私は一番問題が出てくるところだと思います。特に大型重鉱害地区が大部分ですからね。いま残っておると言われるところあたりは特にそうなんですけれども、私はきょうは企業名は挙げませんけれども、われわれが見るところ、大変な状況が依然として残っている。それがそのまま放置されたようなかっこうに、放置というと語弊がありますけれども、依然として残されておる。ですから私に言わせると、どうもサボる理由をここに求めておるような感じがしてならないわけであります。こうしたところを考えますと、何としても効用回復を求める原則、この原則をどうここで確認をするのかということが一番大事だと思いますが、その点について御意見があれば……。
  181. 福川伸次

    福川政府委員 前回の当委員会での参考人からの意見聴取におきましてそのような御見解が述べられておったわけでありますが、確かに被害者と賠償義務者の間で合意が得られにくい鉱害地がある。もちろん重鉱害地というようなことであるわけでありますから、いろいろ複雑な利害関係がそこにひそんでおったということはあろうかとは思います。しかし、いま先生もお話しのように、これは確かに賠償の義務者の方あるいは被害者の方、それぞれいろいろ立場があって、それぞれの主張がおありになるわけでございますが、それを何とか調整をしながら適正な効用回復を図るということになるわけでございまして、その間どういうことがいいかという施行上の問題に関して言えば、賠償義務者とか地方公共団体等あるいは関係者が積極的な意見調整を図るということも必要に相なるわけでございます。またこれを取り上げるかどうか、いろいろな点につきまして、この復旧基本計画をつくります際、今後学識経験者等の意見も聴取するような機会を設けるようにということも、これはそういった解決の一助になるというふうに思うわけであります。そういうわけで、今後、いろいろな点で意見調整が進まなかったという現実に対しまして、いま申し上げましたような幾つかの点で改善点を見ながら、その合意ができるように効用回復ということの適正なあり方ということを研究、探究してまいりたいと思います。
  182. 中西績介

    中西(績)委員 私たち経験からいたしますと、たとえば私の住んでおる近くの彦山川右岸、左岸の問題等考えてみましても、特にあれは右岸あたりになりますか、一番下流の方から、これだけ下がっておるからそれを全部上げていかなければならぬといったらこれは膨大なものになってしまうわけですね。だから、途中でちゃんとそこを効用回復したということで押さえて、そしてかさ上げする分を押さえ込んでいくとか、いろいろなあれがなされているわけですよ。そうなってまいりますと、効用的な面からいうと、ある程度、これを復旧する側の方はそれでいいじゃないかという言い方になるだろうし、片っ方の方は、いやそれではということになってくるでしょう。ですから、そうしたことを考え合わせてまいりますと、この下流から約五、六キロぐらいの間を本来ならば全面的に一様にやっていかなければならぬけれども、それを区切り区切りしていく過程の中では、本当に私たちが子供の時分から見たらまだまだ問題が残っていますね。  そうしたことを考えますと、先ほどから申し上げるようないろいろな原則的なものをもう一度そこに整理をし直して、そして、これでいくんだということを納得いけるように被害者側に示し得るように提示をしないと、この問題については、いつまでもこれをサボる理由に使われていくということを私は感じるわけであります。先般有吉さん、ああいうことを言ったけれども、私たち質問するあれがありませんでしたから黙っておったけれども、あれは大変な問題だと私は思うのですね。しかも正式のこういう場で、参考人として、それを全部片づけていくということになれば、それはとうてい許される中身じゃないと思います。今度参考人おいでになりますから、その点はっきりしていただきますけれども、そうした点あたりを十分勘案しておくことをぜひ要望しておきたいと思います。  そこで、もう一つ問題は、中小鉱の場合に個人名義になっておる炭鉱がたくさんありました。こういうところの場合に、依然としてそのまま続いておるためにどういう問題が出ておるかといいますと、鉱業権者がもういまはすでに資力もなく、また回復をする意思が全くないという状況になってしまっている。こういうので大変困っておるところがたくさん出ています。こうなってまいりますと、よく私たちが国政調査で参りました際に、先願主義でやられておるこうした鉱業権の取得問題だとか、さらにこういう人たちの資格だとか、負担を明確にしなければこうした鉱業権者としての資格を与えてはならないのではないかなどということが盛んに言われておるわけですね。そうしたこと等考えてまいりますと、この個人名義であるようなととろ、そして意思のないところ、資力のないところ、こういうところあたりはもともと、どうなんですか、復旧物件に対する積み立てなどはこの人たちはやってきたのですか。この点どうでしょう。
  183. 福川伸次

    福川政府委員 いまの中小炭鉱の問題、これは私の方としても、現実の問題として二十社程度が余り復旧が進んでないという問題がある点は私どもも耳にいたしておるわけでございますが、個々のケースに即しまして検討を進めて、この賠償義務者の協力を促しておるというのがこれまでの私どもの努力でございます。  もちろんこの賠償法に基づきます賠償担保のための積立金は、当該鉱区の被害者のために積み立てられたものでございますが、これはいずれにいたしましても中小炭鉱でございますので、積み立ててはまいりましたが少額であったと思われます。もちろんその鉱区の被害者は、賠償義務者が事業の廃止等によって賠償の義務を履行することが著しく困難となりましたときは、またはその所在が不分明になりましたときは、このいまの賠償積立金の弁済を受けるための申し立てを行うことができることになっております。これはそれなりに積み立てはしてはおったと思いますけれども、やはりその生産量が少なかったり等ございますから、積み立ててはおりましたが少額であったかと記憶しております。
  184. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、そうなってまいりますと、少額のものでそれを認めておるということになれば、もう当然復旧工事等の対象を、そうした義務を果たすことができないということは前々からわかっておるわけでありますから、現行法の中では大変困難であろうと思うけれども、これらの処置をいまどうしていくかということを検討する時期にもうすでに入っておると思いますけれども、この点についてはまだ明確な答弁なりあっておりませんから、これはぜひ一つの問題として、この処置をするよう短期間に研究をして、その結果を今国会中くらいに発表していただくなり御回答いただければと思います。これは要求しておきますから、また後こうした機会がございますから、そのときにまた論議していきたいと思っております。  そこで、もう一つは、有資力賠償義務者に対する鉱害賠償資金融資制度なるものがありまして、予算書を見ますと、本年の場合には五十六年度に比較をいたしますと六億円を十二億八千万円に増額をいたしています。倍額になっています。そして条件は、融資比率あるいは償還期間、特に償還期間など倍にいたしておりますが、要求しておった利子の問題については従前どおりになっておるようであります。いずれにしましても、こうした措置をとりました。この予算が成立するということになれば、先ほどから言っておるように、十年間なら十年間という計画の中で、これだけあれば有資力の各炭鉱がこれらの残存鉱害量処理できる裏づけにこの金額が果たしてなるのかどうか、そこら辺を持たないと、私は本当に誠意のある、いま被害で一番困っておる、しかもおくれておるという人たちを救済することにはなり得ないのではないかと思うわけでありますけれども、この点はどうでしょうか。
  185. 福川伸次

    福川政府委員 今回の融資条件の改定によりまして私どもとしては有資力鉱害復旧を促進したい、また促進し得るものと思っておるわけでありますが、有資力賠償義務者が復旧に取り組みますために、また五十七年度の復旧費の補助も昭和五十六年度よりかなりの増額をするといったようなことで、いろいろお話も承っておるわけであります。今度鉱害二法の延長を御承認賜りますれば、私どもとしても早急に作成をいたす予定にいたしております鉱害復旧長期基本計画におきまして、向こう十年間で累積鉱害を最終的に処理するということの具体的な計画をつくることに相なるわけでございます。もちろん今後予算制度で、単年度主義でございますから、いまここで幾ら幾ら取る、つくるということは申し上げかねますが、十年間に最終的に処理し得るその計画に沿って予算の措置を講ずるように努力をしてまいりたいと考えております。
  186. 中西績介

    中西(績)委員 この点はぜひそうした措置をとっていただきたいと思います。ですから先般私がお聞きしたのは、こうした融資制度なりをとることによって、その効果は事業規模から言うなら六十三億、こういうものになるのだということまで出ておりますから、そのことが果たして十分であるのか、そうした問題点どうなのかということが聞きたかったわけだし、先般もその波及効果がそうしたものになるのかどうかということをお聞きしましたけれども、そのことについては十分お答えいただけなかったのでありますので、この点ぜひそうしたことが波及効果が上がるように、そして十年間でそれを片づける大きな力になり得るように、その中身を充実させていただきたいと思うのです。そうしないと、現行法ではできないような有資力に対して無資力と同じような措置をとれとか、いろいろな声が出てくるわけですね。確かに炭鉱経営者、こういう方々に対する助成という意味で言われておると思うけれども、そのことが大変な誤りをまた犯す結果にもなりかねないわけですから、ぜひそうした点の拡充を図っていただきたいと思います。  そこで、今度は石炭鉱害事業団の方にお聞きしたいと思います。  事業団の事業遂行を図るために、現状でよいのかどうかについてお聞かせ願いたいと思うわけですけれども、現在の構成人員、それから年齢構成など資料を要求しております。まだついておりませんが、これはどうなっていますか。
  187. 町田幹夫

    町田参考人 事業団の現在の定員、これは四月一日でございますが、実員が三百六十六名でございます。男子が三百三十六名、それから女子が三十名でございます。定員は三百八十名ぐらいございますけれども、時間的な経過がございまして、新しく臨職等から職員に登用するというふうな場合も考えまして若干欠員をつくっておきまして、ある一定時点で補充するという形になりますので、この時点では若干欠員になっておりますけれども、三百六十六名ということになっております。
  188. 中西績介

    中西(績)委員 私はその人員構成だとか、先ほど答弁があっておりました他の社からの派遣だとかあるいは他の官公庁からの派遣だとか出向だとか、いろいろなそうしたものまで含めて詳細に知った上でこれを論議してみたいと思っておったけれども、それが出ておりません。もう短時間ですから、それまで全部聞くとそれだけで時間いっぱいになりますからやめにしますけれども、そうしたもろもろのことを勘案した場合に、いまの事業量とこの人員配置で——いま行政改革なりが叫ばれておる時期で、臨調委員皆さんから指摘されるように、公団あるいは事業団等についてはどんどん、あるいは公務員については五%減らせとかいろいろ出ておりますけれども、この事業量、それからこの人員構成、組織面でのいろいろな状況からいたしまして、皆さんはどうお考えになっていますか。私はむしろいまの事業量からいたしますと、現場の実態等からすると大変人手不足ではないかということを感じるわけでありますけれども、その点どうでしょうか。
  189. 町田幹夫

    町田参考人 確かに昭和四十七年当時総復旧費が百六十四億でございましたのですが、当時事業団の団営工事が六十四億であったわけでございます。それから今年度は、先ほどもお話し申し上げましたように、六百三十億で三百六十六億でございます。しかも人員はほとんど横ばいということでございます。もちろん、その間にわれわれといたしましても何回か人員要求はいたしたわけでございまして、若干の人員の増員は途中で認められたわけでございますけれども、一方において、また御承知のように一律の定員削減というふうなことがございますので、なかなか人員はふえない、仕事量はふえるというのが現状でございます。  確かに先生指摘のように、いっぱいいっぱいにやっておるということは間違いないわけでございますけれども、ただ先ほど来お話がございますように、実際問題として定員をふやすことはなかなかむずかしいということもわかっておりますので、現在の人員をもって、いずれ長期計画ができますれば、その中で事業団の受け持つべき役割りというものがはっきり決まると思いますが、それに基づきまして事業団長期計画というものを立てまして、そして、いまの人員の質的な向上あるいはまた機械化の導入、さらには、いまのシステムが能率阻害になっておる面があるとしますならば、そういう点もできるだけ改善するということで、とにかく新しい計画ができますれば、それにマッチするように不退転の決意を持ってひとつ進めてまいりたい。とかく事業団等は、創立当初はやはり職員も相当使命感に燃えて張り切ってくるわけでございますが、これがある程度年月がたちますと、どうしてもある程度マンネリズムになるという傾向もございますので、今回十年の延長をいただきました機会に、再出発の意味で全員が襟を正して、ひとつ何とかこの大事な仕事に邁進する、仕事を完遂するということで力を合わせてまいりたい、こういうふうに考えております。
  190. 中西績介

    中西(績)委員 私は、精神訓話だけではなかなか困難だろうと思いますから、やはり限られておるということに対する一つの問題、先ほど指摘があっておりましたけれども、その中においてどうするかということが問題なのであって、いま言われるように、いろいろ構成する人員構成の中の現状がいいのかどうか。先ほどから申し上げているように、いろいろなところから派遣されておる人、それからそこで育ってきた人、それも年齢的に、いままで入れなかったから年配の格差がずっと出てきている。そうしたいろいろなものをどう最高に発揮するかということを考えなくちゃならぬと思いますので、そこら辺は私はやはり大胆にやらなくちゃならぬのじゃないかと思うんですね。お役所の方ばかり向いておるのじゃなくて、あるいは行政改革をやらせる側の方ばかり向くのでなくて、主体的にやはりその仕事というのは対象がだれであるかということを考えなくてはならぬわけですから、ここいらをひとつ考えられて、今後の組織、人員配置のあり方、そして将来にわたっての、十年先にどうするのか、そこいらまでを含めて、今度この計画ができ上がれば、それに沿ったやはり一つの案が出されなくちゃならぬわけですね。その中で、これからの事業団のあり方というものをみずからがつくり出していくことがいま大変重要ではないかと私は思っておりますだけに、この点ぜひはっきりしていただきたいと思うわけです。そうしないと、現場で働いている人たちというのはもうたまったものじゃないですね。われわれは十分にそのことを知っておるがゆえに、そのことを特に希望いたしておきたいと思っています。
  191. 町田幹夫

    町田参考人 ただいま先生の御指摘になりましたように、率直に申しまして、確かに私の団体は混成旅団、非常にいろいろな方面から人が来ておる混成旅団でございます。それからまた、何と申しましてもいままで時限団体ということでございまして、やはり今回延長をいただくことになりそうでございますが、五十七年が期限だということで、それを頭に職員も考え、また理事者側も人員配置を考える。したがいまして、私も四十七年からやっておりますけれども、とにかく余り若い人をどんどん入れても困るぞということで、なるべく中高年の人等で賄うというようなことでやっておりましたけれども、どうしてもやはり若い人を入れませんと活力が出ないということで、両三年来若干若い人も採用いたしておりますけれども、そのときどきの必要に応じていままで人員を充足してまいっておりますので、管理職等におきましても断層等も起こるというようなことで、なかなか人員の配置がむずかしいわけでございますけれども先生のいまの御指摘も踏まえまして、今後十年の計画を立てます場合に、やはりその間をひとつ何とかうまくつないでいくような方法を考えて、計画の実行にそごがないようにしてまいりたいと思います。
  192. 中西績介

    中西(績)委員 ぜひそのことを検討してください。  それでは、最後になりますが、ボタ山の問題について、先ほどもちょっと質問があっておりましたけれども、さらに加えて質問を申し上げます。  ボタ山の、先ほども答弁があっておりましたように九百と言っておりましたけれども、先般からわれわれ確認をしておるのは九百七になっておりますね。そうしますと、防災工事の必要数のものは現在どれだけになっていますか。
  193. 檜山博昭

    ○檜山説明員 防災工事が必要であるというボタ山の数でございますが、これは現段階では百十六が要防災工事ということになっております。ただ、このボタ山は御承知のように経年変化がございまして、状況が変わるという問題と、それからもう一つは、ボタの資源としての再利用あるいはボタ敷地の利用、そういったような別な要因から、この危険なボタ山についてそれを除去するというような方向も出てきております。そういうことで、前回そういうふうな調査によって、防災工事が必要なボタ山は百十六ということになっておりますけれども、これは若干見直しが必要なんじゃないかということで、ただいまその総合的な調査をしておるという状況でございまして、その調査の結果、また個別具体的に、いろいろと問題のボタ山についてはその処理の促進を図るということで対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  194. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、前回からある程度工事が終えて、こうした百十六ということになっておるようでありますけれども、これは有資力も含めての数ですか、それとも無資力だけですか。
  195. 檜山博昭

    ○檜山説明員 先ほど百十六というふうに申し上げましたのは、有資力は入ってございませんです。それで、当初、これだけのボタ山を工事をすればいいのじゃないかということで百十六という数字が出ましたが、その後、補助金工事によりまして防災工事が進捗いたしまして、現段階では、この百十六のうち、もうすでに百五着手しておりまして、そしてすでに完了したものが七十二、これは五十六年度末の見込みでございますけれども、今年度末には七十二が大体完了ということになりますので、大体半分以上が完了というふうな、六〇%になりましょうか、そのぐらいの完了率になるということでございます。
  196. 中西績介

    中西(績)委員 それから、この調査をするというのは、先ほど部長お答えになった五十六年度に実態調査という、これと合うわけですね。
  197. 檜山博昭

    ○檜山説明員 その点、合っております。
  198. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、防災工事が必要な数、百十六のうち百五着手をし、そして七十二完了するということになれば、残る数はわりあい少なくなってくるようだけれども、それぞれ地域からいろいろ要請される内容を聞いておりますと、まだ依然としてあるやに聞いています。ですから、この調査結果が出なければ、いまこの問題についてまた細かく指摘をしても、調査した結果こうでしたということになれば、いま論議することが当たっておるかどうか懸念をいたしますので、きょうはこれくらいにしておきまして、ただ私、ぜひと思ってきょうここに出しましたのは、いままで五十五年度末ぐらいに終了する分が五十八だということを先般からの論議の中で聞いておるわけです。それがここに、完了したものが七十二だということで出ておりますから、五十六年になってさらにそれが加わってきたというように理解をします。  私がきょう申し上げたかったのは、補助金を出して、それを今度は県が担当し、そこでやられるために——先ほど質問の過程の中では、地方自治体は大変熱心にというようなこともあるようでありますけれども、そこにまた一つのネックがあるような感じもするわけです。結局、持ち出し部分が自治体にあるものですから、なかなかその点で国の責任だということのみによって困難さがある、また実施がおくれておるという実態がいままであったと思うのです。そうした点がどうなっておるのか。これは私たちが討論をする際に重要な問題ですから、そうしないと、これから後特に都市開発をするにしましても、あるいは炭住の改良住宅をつくるにしましても、町の真ん中にどっかり座っておる地域があるわけです。そういうところあたりは、この問題を本当にやる気になってもらわないと解消はできないわけです。そして、新しく産炭地振興云々といったって、そこに新しい構想というものは生まれてこないわけなんです。ですから、そうした点はいま大体どういう傾向にあるのか、実態、この点だけお聞かせください。
  199. 檜山博昭

    ○檜山説明員 おっしゃる点は、たとえば県別にちょっと考えてみますと、県によって非常に進捗率が異なっているというような状況です。端的に申しますと、福岡県の場合は財政負担の問題とか国の役割り論とか、そういったようなお考えが若干背景にあるのじゃないかと思いますけれども、ややスタートも遅かったというようなことで、福岡県の場合には非常に進捗率が低い。それに引きかえまして、佐賀県あるいは長崎県は早くからスタートして、地方公共団体も非常に熱心にこの問題に取り組んできたということで、現在大体七、八〇%の完了ということになっております。  これからの問題といたしまして、市町村あるいは県の負担というものはこの事業に当然伴うわけでございますけれども、制度的にもこれまで若干改善をしてきているということで、こういう制度の中で地域の振興にも結果的につながることがある。もちろんこの事業自体は被害防止工事ということで被害の防止のためにこういう助成制度があるわけでございますけれども、結果的にそういう面もあるということで御協力を願って促進をしてまいりたいというふうに考えております。
  200. 中西績介

    中西(績)委員 終わりますが、最後石炭部長大臣がいませんからなんですけれども、これは産炭地の振興、その計画の中で大変重要な問題ですから、ただ被害防止ということの発想だけでこれを処理しようとしますと、今度は障害になりネックになる可能性もあるわけですから、この点は他の方策も考え処理をしていく、こうしたことをひとつ考えておいていただきたい。きょうはもう特別に回答はよろしいのですけれども、また後日こうした機会がございますので、それまでに十分勘案していただくようお願いしておきます。
  201. 枝村要作

    枝村委員長 次回は、来る二十五日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五分散会