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野呂参考人 炭労の
野呂です。
常日ごろ
石炭産業の発展のために、絶大な御
協力をいただいております
石炭対策特別
委員会に所属する諸
先生方に、
日本炭鉱労働組合を代表いたしまして厚くお礼を申し上げるとともに、本日、
石炭鉱業合理化臨時措置法等の
改正法案に対する
意見を述べさせていただく機会を与えていただきましたことを、心から感謝を申し上げる次第であります。
さて、初めに
石炭鉱業合理化臨時措置法の
改正点を中心として、若干
意見を申し述べたいと思います。
その第一は、同法の
廃止期限の
延長問題であります。
第七次
石炭政策の
対策期間が一応五カ年とされており、これとの
関係から見て、
昭和六十二年三月三十一日まで
延長するという措置は妥当なものと考えます。
ただ、
政府や
石炭企業は、この第七次
石炭政策を通して、今後五カ年ほどで
石炭鉱業の
自立を図ることを目指していますが、私たちは、本当に
自立できるのか、いろいろと疑問を持っているところであります。たとえば、
深部化、
奥部化の進展に伴なう
コストアップを果たして
合理化努力で吸収していけるのかどうか、また、労働時間の短縮が社会的趨勢となっている中で、
石炭企業も何らかの形でこれに対応していくことが迫られていること、加えて、現場までの往復時間が
増大し、実労働時間が短くなっていくこと、特に自然条件、立地条件に起因して、経常損益から見た企業間格差が拡大しており、すでに黒字転化した山もある反面、ますます赤字幅が
増大しているところもあるわけであります。このような実態一つをとらえてみても
石炭鉱業の
自立は容易なわざではなく、
現状を
最善と考えての
自立では問題があると断定せざるを得ません。したがって、次の検討時期が到来し、さらに
延長を要する実態が明らかとなった場合は、しかるべく措置されることを御
要望したいと思います。
その第二は、新
エネルギー総合開発機構による
電力用炭購入販売制度の廃止問題についてであります。
これは、御承知のように、第七次
石炭政策で廃止の方向で検討すべきことが提起されているわけであります。このような措置がとられる背景について、
提案理由の中で「
基準炭価制度も
需給両
業界に十分定着した」との判断があることが明らかにされています。しかし、本当に
基準炭価制度が定着しているのか、この点について、私たちは大きな疑問を持たざるを得ません。
今日までの経過を見ますと、確かに毎年のように
基準炭価が改定、告示され、
石炭の
購入販売が行われてきています。この限りでは、定着していると見ることができると思います。しかし、問題なのは、この
制度の運営の中身であると考えます。
石炭鉱業合理化臨時措置法では、
基準炭価の
設定に当たっては、1
石炭の
生産費 2輸入炭の
価格 3他の燃料の
価格 4その他
経済事情を考慮して決めるべきものとされていることは、御承知のとおりであります。しかし、実際には、
石炭企業側とユーザー側の
炭価交渉が先行して値上げ幅が決められ、これを告示で追認するという結果に終わっているのが実態であります。そして、この場合、基準の一つとなっている
生産費——私たちは、これこそ最大の基準とされるべきだと考えているわけですが、この
生産費については事実上考慮が払われず、もっぱら競合燃料
価格との対比で決定されているというのが実態であります。このような中で、弱体企業である
石炭側がユーザー側に押し切られ、その指し値どおりの額でのまされることとなり、この結果、各山元には採算ベースに乗らない買い取り
価格が押しつけられ、赤字を累積させているというのが
現状であります。
したがって、当面、1国の
指導により、
基準炭価決定に当たっては、
生産費が補償されるよう運営すること 2また、
炭価交渉に当たっては、力量の弱い
石炭生産側の意向も十分取り入れられるシステムを採用することが重要ではなかろうかと考える次第であります。このような具体的な裏づけがないまま、この
制度の廃止が進められれば、将来大きな問題を残すことになるのではないか、私たちはこの点について深く危惧するものであります。この問題は、主として行
政府の問題であろうと考えますが、立法府としても、法の適正な運用という観点から、十分な御
指導を
お願いする次第であります。
その第三は、鉱区消滅区域における
石炭掘採制限の緩和問題であります。
国内資源の有効活用あるいは深部移行の緩和策の一環として、現在すでに一定条件下にある鉱区消滅区域の再
開発の道が開かれておりますが、これとの横並びで、今回
重複鉱区についてもこの道を開く、これが法
改正の
趣旨と存じます。これについては、私たちとしては当を得た措置であると考える次第であります。
石炭鉱業合理化臨時措置法の
改正点を中心として私
どもの
考え方を述べたわけですが、以上のほかに、この機会に、同法に
関係する幾つかの問題点について二、三私たちの
意見をつけ加えたいと存じます。
その第一は、新鉱
開発に関する問題であります。
現行法では、この問題をめぐり、1国による調査を踏まえ、新鉱
開発の地域を指定、告示すること 2
通産大臣が、指定地域における
石炭開発計画を策定すること 3以上の手続を経て、当該指定地域に鉱業権を
設定している鉱業権者が、国が定めた
開発計画に準拠して事業計画を定めること等々きわめて積極的な規定が盛り込まれていると考えます。つまり新鉱
開発に当たっては、国が
開発可能性調査から
開発の
基本構想の策定まで、十分
指導性、積極性を発揮して
実施していくという
趣旨が
制度化されていると考えます。しかし、実態は、このような積極的な
制度は、たとえ諸般の
事情があるにせよ、生かされていないまま推移してきているのが実態です。
他方、鉱業法との
関係を見ると、鉱業法では、鉱業権の
設定登録後六カ月以内に事業に着手することが鉱業権者に義務づけられているわけですが、
石炭を目的とする鉱業権者に対しては、
石炭鉱業合理化臨時措置法第五十七条により、この規定を適用除外しております。確かに、
昭和三十年当時の
石炭事情から見て、このような措置をとらざるを得なかった背景は理解できますが、エネルギー
事情が百八十度転換し
石炭時代を迎えたいま、このような措置が存置されていることは、全く理解に苦しむものであります。
国内炭が新たな時代の要請にこたえていくためにもこのような措置は
見直し、しかるべき方向を確立すべきであると考える次第であります。
この場合、六カ月で果たしてよいのかどうか疑問も持たれるところであり、これを一年あるいは二年と読みかえることとあわせて適用除外規定を外すこと、これにより貴重なエネルギー資源を休眠させる根源の一つを改善させることが大切ではなかろうか、私たちはこのように考える次第であります。
その第二は、
石炭鉱業合理化臨時措置法という名称についてであります。
過去二十数年にわたり、
合理化の名においてあらしのようなスクラップ化が推進され、この結果、多数の山がつぶされ、大量の
炭鉱労働者が職場を奪われてきました。のみならず、
合理化の名において劣悪な労働条件でがまんせざるを得なかった苦い経験を持っています。このような中で、
合理化という言葉に暗い印象しかないというのが率直な気持ちです。特に
国内炭が新しい時代の要請にこたえて果たすべき
役割りを考えると、この
法律をもって
国内石炭産業の長期安定化の土台を築いていくこと、そういう観点に立つことが必要であると考える次第であります。このような
意味で、この際、
法律名を
石炭鉱業安定法と改称してみてはどうか、いささか愚見を申し述べた次第です。
また同時に、このような
趣旨を踏まえ、この
法律の全面的な
見直しを行い、
内容の充実を図られるよう特に
お願い申し上げます。
その他、
関係法案の
延長につきましては、特に
意見はありません。
最後に、
北炭夕張新
炭鉱の再建問題について触れたいと考えます。
この問題については、すでに国政調査団も派遣され、いろいろと御心配と御迷惑をかけ、同時に議論が重ねられてきており、
現状については十分御承知のことと思います。
現地では、事故
発生以来、遺体の早期収容と復旧、再建の達成を目指して全力を挙げた取り組みを行ってきたわけですが、会社側は、昨年十二月十五日、
会社更生法による更生手続の申し立てを行い、自らの手による収容、復旧、再建作業を放棄するという無責任な挙に出たわけです。このような
状況の中で、再建が成るのか成らないのかは札幌地裁の判断にゆだねられることになっていますが、私たちは、どのような事態となろうとも、いまだに坑底に残されている四十三名の仲間の遺体を収容すること、また、貴重な
国内エネルギー資源である
石炭を
開発し、国民生活や産業活動に役立てていくこと、同時に
夕張新
炭鉱の再建によって
産炭地域社会の振興に寄与していくこと、こういう観点から今後ともあらゆる
努力と
協力を惜しまないで再建に取り組んでいく
所存であります。
本
委員会におかれましても、私
どもの
考え方を了とされ、全面的なお力添えを賜るよう切望する次第です。
特に当面、次の点について格別の御高配を賜るよう
お願いする次第であります。
その第一は、当面遺体収容を
促進しつつ、更生計画策定まで操業を
維持していける体制を確立すること。特にこのための四−五月の資金
確保が急務となっておりますが、この点で特別の御高配を煩わしたいと考えます。
その第二は、更生計画の中で真の再建が達成され、安全職場、安定職場が
確保されるよう特段の御配慮を煩わしたいと考えます。
その第三は、新区域である平安八尺層区域の
開発についての資金並びにその間に至るまでのつなぎ資金
対策など、物心両面にわたる御
指導、御援助を賜るよう
お願い申し上げる次第であります。
以上をもって
日本炭鉱労働組合としての窓見といたします。
ありがとうございました。