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1982-08-04 第96回国会 衆議院 商工委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年八月四日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 梶山 静六君 理事 野田  毅君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 後藤  茂君 理事 清水  勇君    理事 北側 義一君 理事 宮田 早苗君       天野 公義君   稻村左近四郎君       植竹 繁雄君    浦野 烋興君       奥田 幹生君    亀井 静香君       島村 宜伸君    田原  隆君       泰道 三八君    中島源太郎君       野中 英二君    橋口  隆君       鳩山 邦夫君    松永  光君       粟山  明君    上田  哲君       上坂  昇君    城地 豊司君       中村 重光君    水田  稔君       渡辺 三郎君    長田 武士君       横手 文雄君    小林 政子君       渡辺  貢君    石原健太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         外務省経済局長 深田  宏君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業大臣官         房審議官    野々内 隆君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省産業         政策局長    杉山 和男君         通商産業省基礎         産業局長    植田 守昭君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁公益事業部長 川崎  弘君         中小企業庁長官 神谷 和男君         中小企業庁計画         部長      本郷 英一君  委員外出席者         参  考  人         (石油公団理         事)      松村 克之君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ――――――――――――― 六月十日  旅館業の経営安定のため大企業ホテル等につ  いて中小企業分野調整法による規制適正化等  に関する請願奥田幹生紹介)(第三八七五  号)  同(熊川次男紹介)(第三八七六号)  同(近藤鉄雄紹介)(第三八七七号)  同(福田赳夫紹介)(第三八七八号)  同(湯川宏紹介)(第三八七九号)  同(小沢辰男紹介)(第三九〇七号)  同(大塚雄司紹介)(第三九〇八号)  同(臼井日出男紹介)(第三九一八号)  同(加藤紘一紹介)(第三九一九号)  同外三件(鹿野道彦紹介)(第三九二〇号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第三九七〇号)  同(佐藤隆紹介)(第三九七一号)  日本航空機製造株式会社の廃止及び業務の民間  移管方針撤回等に関する請願清水勇紹介)  (第三八八〇号)  同(小林恒人紹介)(第三九二六号) 同月二十一日  旅館業の経営安定のため大企業ホテル等につ  いて中小企業分野調整法による規制適正化等  に関する請願木村俊夫紹介)(第四〇〇二  号)  同(長谷川峻紹介)(第四〇六二号) 七月一日  旅館業の経営安定のため大企業ホテル等につ  いて中小企業分野調整法による規制適正化等  に関する請願山本幸雄紹介)(第四二五一  号) 同月十四日  旅館業の経営安定のため大企業ホテル等につ  いて中小企業分野調整法による規制適正化等  に関する請願近藤元次紹介)(第四三一二  号)  同(鳩山邦夫紹介)(第四四二六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月三十日  工業用水公営電気等地方公営企業施設災害復  旧事業費に対する国の負担制度創設に関する陳  情書  (第三〇七号)  鉱害賠償済物件復旧措置に関する陳情書  (第三〇八号)  中小企業経営危機打開に関する陳情書外一件  (第三〇九  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  明五日の流通問題小委員会において、参考人出席を求め、意見を聴取いたしたいとの小委員長からの申し出があります。つきましては、小委員会参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 渡部恒三

    渡部委員長 通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する件調査のため、本日、参考人として石油公団理事松村克之君の出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 渡部恒三

    渡部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森清君。
  7. 森清

    ○森(清)委員 最初に、最近起こりました豪雨禍被害に対しまして、被災地皆さん方には、特に亡くなられた方には哀悼の意を表しますとともに、これからこの被害復旧その他に最大限の努力政府においてお願いしたいと思うのでありますが、特に当委員会関係しております問題につきましては、中小企業者の受けた被害に対してどのような処置をとるか、大変大きな問題であろうかと思うのでございますが、とりあえず現在政府のとろうとしている対策あるいはその効果ということについて、御当局からその御方針を承りたいと思う次第でございます。
  8. 神谷和男

    神谷政府委員 長崎中心といたします梅雨前線による集中豪雨並びに先般の台風十号、この集中的な降雨によりまして、長崎県を中心にいたしまして中小企業関係被害がかなり多く出ております。特に長崎県につきましては、中小企業関係のみで現在までの調査のところ、八百億強の直接被害があるというふうに推定をされておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、現在その被害状況を鋭意集計中でございますけれども激甚指定の要件は満たすものというふうに判断をいたしております。  したがいまして、他の公共土木あるいは農業関係指定までの作業にまだ若干の日時を要すると思考されますけれども中小企業関係の復興は一日も早く着手することが望ましいと考えておりますので、これらの資料を鋭意集計、整理をいたしまして、関係方面調整の上、中小企業関係のみ一歩先行いたしまして激甚災害指定を行いたいと考えております。でき得れば、来週中に閣議決定まで持ってまいりたいという方針で現在作業を進めておるところでございます。  この指定を受けました後は、御承知のような政府関係金融機関による三%の超低利融資あるいは信用保証別枠等金融面からの救済措置を直ちに適用するとともに、関係のもろもろの諸策におきまして、現行の制度をできるだけ活用して、中小企業の直接被害からの一日も早い復旧回復に対して、私どももお手伝いをしてまいりたい、このように考えております。
  9. 森清

    ○森(清)委員 それでは当面の経済の問題、それから五十七年度全般にわたります経済見通しの問題について、河本企画庁長官にお尋ねしたいと思います。  最近の経済は非常な不況でございますが、その経済をどのように見るかということについて、特に最近の政府経済見通しというのは、ある意味では、その努力目標を掲げるというか、あるべき姿を描くという経済見通しのある側面があるからそうなったのかもわかりませんが、しかし、やはり一定の数字を出して、そしてそういう姿をもとにして各種の計画がなされ、そしてまた民間のそれぞれの活動の方も、そういうことを一応頭に置いて経済運営をされると思うのでありますから、私は経済企画庁経済見通しというのは、やはり非常に重要なものであると思うのであります。  ところが、たとえば五十六年度経済見通しで申しますと、これは集約的にあらわれております国民生産を見ますと、五十六年当初の見積もりのときは、名目で九・一%の成長率を見込んでおった。昨年十二月に改定をいたしましても、それは七%の成長である。しかし、実際に三月終わってみますと、五・二%の成長に終わった。これは名目でありますが、実質成長率においても、当初は四・七%、それから十二月の改定見込みでも四・一%、実質は二・七%に終わったわけであります。  こういう見通しそごというのは往々にしてあると思うのでありますが、一九六〇年代から七〇年の初めまでは、大体高度成長期でありますが、そのときは常に過小な見通しをしておったわけであります。それからこのような低成長期に入りますと、過大な見積もりになるということでありますが、これは役所のいわゆる保守的な性格にもよるのでありましょうが、変化に対する見通しということについて非常に憶病であるのではないかというような気もいたすわけであります。そういう点を考えますと、今後非常にむずかしい経済運営あるいは財政運営がなされなければなりませんが、こういう経済見通しについてもう少し実態に近い見通しができないものであろうか、こういう感じがいたすのであります。  特に、五十七年度経済成長率相当高目に見込まれております。当委員会で、私は二月に長官にお尋ねしたときも、少し政府見通し五・二%というのは高過ぎるのではないだろうかということでお尋ねをいたしましたら、長官から、現状のままそのまま推移すれば、大体三・八%くらいな成長率になるという計算も出たんだが、そういうことでは非常な問題が起こってくる、どうしても政府施策を十二分にやって、そしてどうしても五・二%の成長率を維持しなければならないんだ、達成しなければならないんだ、こういうお話でございまして、私はそれについて別に異議を申し上げるわけじゃございませんが、そのときの大体民間でも三、四%というような成長率の予測であります。  そこで、現時点に立って考えてみますと、非常に問題があるわけであります。というのは、まず第一に、この五十七年度経済見通し基礎になりました五十六年度経済の姿というものについてすでに大きなそごを来しておる。名目GNPで言いますと、約五%程度低くなったわけであります。そこからどう経済が発展するかということでありますが、経済というのは連続して伸びておりますから、そのことで調整し直して、私の計算でありますが、単に五十六年度経済成長が低目に終わったということだけをとりましても、計算上五・二%という成長率は恐らく三%台に下がるのではないだろうか、こういう気がいたします。  さらにその上、この四月から六月までの景気動向、あらゆる指標はもうすでに出ておるわけでありますが、それを見ますと、たとえば住宅着工でありますが、政府はどうしても百三十万戸を目標にしているということでございましたが、少なくとも最近の着工実数を見ておりますと非常に低い、昨年よりか少し落ち込んでいるんじゃないか。昨年の百十四万戸に対してもさらに落ちるんではないだろうか、こういう危惧すら持たざるを得ないのであります。幸い物価が、特に消費者物価が安定いたしておりますので、消費者実質消費支出の増ということは、つい最近の指標にも出ておりますが、果たしてこれがどのように推移するかわかりませんが、多少そこに明るさがありますが、さらにたとえば設備投資、これを見ますと、大企業においても停滞をいたしておりますが、特に中小企業において非常な停滞をいたしておる、非常に落ち込んでいる。あるいは輸出入、特に輸出も非常に落ちておる。したがって鉱工業の生産出荷とも非常に落ちている。こういうことを考えますと、恐らくこの五十七年度の第一・四半期はほとんど成長率前期比ゼロではないか、ほとんど成長しないのじゃないか、私はそのように思うのであります。  そうすると、そういう状況を考えますと、政府で考えた五・二%の成長ということを維持するというか、先ほど申し上げましたように、通俗の言葉で言えば発射台そのものが低くなった。しかも少なくとも第一・四半期経済指標を見ると、非常に低いということを考えますと、恐らく五十七年度経済成長率は、このままで推移すれば二%台に落ちるあるいは二%も下の方に落ちるのじゃないか、このような感じすらするわけであります。  私は、やはり経済見通しというのは、先ほど申しましたように、目標を与えるということであるとともに、ある意味では正確な診断書をつくるという意味であると思うのであります。その正確な診断書に基づいて、いわゆる治療方針といいますか、そういうものが立てられなければならないのでありますが、強気な見通しをするということもいいのでありますが、やはり正確な診断がまず先行しなければならない、このように思うわけであります。そしてその病状に応じて、早期に、速やかに徹底した対策、すなわち治療を施すということが大変重要なことでありまして、経済は生き物でありますから、その行動がおくれればおくれるほど、診断が明らかであるにもかかわらず、その治療がおくれればおくれるほど病人の回復がおくれるわけでありますから、そういう意味においても、政府においても早急に診断を正確に行い、見通しを立てて、早期景気対策を打ち出さなければならない、私はこのように考えるわけであります。  そこで、これから経済は大体どうなるであろうかあるいはそれに対して特に景気対策の面からどういう基本方針で臨まれようとしているのか、これについて河本長官のお考えをお伺いしたいと考える次第でございます。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず、日本経済はいま世界全体のGNPの一〇%を占めております。したがいまして、世界経済と表裏一体の関係にある、こういう認識が必要かと思いますが、御案内のように、現在の世界経済状態は、第二次大戦後最悪状態にある、こういうように言われております。また一説によりますと、五十年ぶり最悪状態である、こういう説もございますが、いずれにいたしましても、昨年の後半からことしの前半へかけてが一番悪い状態だという認識においては一致しておると思います。それが、現にほとんどの国が、日本を除きましてマイナス成長にいまはなっておる。失業者も、御案内のように、OECD加盟先進工業国二十四カ国、昨年は二千四百万の失業者がございましたが、現在は三千万を超える失業者になっておる。きわめて厳しい状態になっております。  この原因は、御案内のように、第二次石油危機から起こったのでございますが、その後、アメリカの非常な高金利あるいはとめどもなく拡大をする世界軍拡競争、そういうものも加わりまして、そして世界全体の景気回復が非常におくれておる、こういう認識であろうと思います。  先々月七カ国サミットが開かれましたが、ここにおきましても、幾つかの議題がございましたが、最大議題世界経済の再活性化、つまり現在のような状態では各国の政権の維持もむずかしい、どうしても現状を打開しなければならぬ、どうすればよろしいかということが共通最大の課題になったのでございまして、そういう世界経済動きでございますので、昨年の秋ごろまでは日本経済は比較的順調に回復をしておったと思います。生産出荷もふえておりましたし、在庫調整もほとんど終わった、こう思っておったのですが、十一月ごろから輸出が減り始めまして、それが予想外の厳しい影響を各方面に及ぼしておるのが現状であろう、こう思います。  いま御指摘がございましたように、五十六年度経済成長は二・七%成長でございますが、ここには一つの特徴がございまして、年度間を通じて非常にでこぼこがございます。たとえば、第一・四半期は五%近い、プラス五%成長と言ってもいいぐらいの成長でございましたが、第三・四半期マイナス三%成長、年率に直しての話でございますが、そういう非常なでこぼこがございまして、そうして年度間を通じて三%弱の成長になる、こういう動きでございましたが、四−六の数字はまだはっきりいたしません。今月の末になりますと、大体のアウトラインがつかめようかと思います。正確な数字は九月早々になろうかと思いますが、一−三月だけを見ますと、三%強の成長でございまして、現在のところは正確にはわかりませんが、そう大きな変化はないのではないか、あるいはむしろ若干悪くなっておるかもわかりません。もう少し正確な数字が出てくるのを見たい、こう思っておるところでございます。  こういう世界経済の激動期でございますので、なかなか手際よく対策を進めるということもむずかしいのでございますが、さしあたって現在やっておりますことは、公共事業の思い切った前倒しということを進めております。八〇%近い前倒しでございますので、これはある程度効果が出てこようか、こう思っております。ただし、現在の経済特徴輸出が減っておりますので、これからいろいろな厳しい影響が出ております。  それからまた、中小企業状態が、先ほどもちょっとお話しになりましたが、非常に厳しくなっておりまして、中小企業投資が相当落ち込んでおるように思います。  それから、消費者物価が安定をしておりますので、実質可処分所得の方は二年ぶりプラスになっております。これが消費にどのような影響を及ぼしますか、もう少し様子を見なければ何とも言えませんが、現在のところは消費は若干伸びておる、こういう状態でございます。  いろいろな複雑な要素が入り込んでおりますので、九月早々には経済全体の動きを正確に分析いたしまして、政府部内で後半どのような対策を立てたらいいのかということにつきまして相談をすることにいたしております。  仮に、いま御指摘がございましたように、三%見当成長しかできないのだということになりますと、政府見通しは五・二%成長でございましたから、最終需要に換算いたしまして五兆とか六兆とかいう最終需要が不足する。五兆ないし六兆という最終需要を拡大すれば、そういう政策をとれば、五%成長は達成できる、こういうことになるわけでございます。これはもちろん政府投資とか民間経済全体を通じての話でございますが、したがいまして、これからの経済対策いかんによりまして、年度間を通じての成長がどこに落ちつくかということは、およその見当がつくであろう、こう思っております。
  11. 森清

    ○森(清)委員 この私の質問にはあえて長官から御答弁いただかなくてもいいのでありますが、私は経済を正確に診断するという意味からちょっと申し上げておきたいのですが、五十六年の暮れに本予算を編成するとともに、補正予算、それから改定経済見通しをしたわけであります。そのときに多少経済成長見積もりを低めたわけでありますが、そのときまですでにわかっておる数字といえば、五十六年の第一・四半期前期比一・四のGNP成長、それから第二・四半期が一・四、それから第三・四半期数字は全部出ておりませんが、実感的にはわかっておったはずでありまして、前期からそう伸びないだろう、こういう見通しはできたわけであります。ところが、それにもかかわらず、そのときに五十六年度そのものも非常に高い見積もりを最終的にはしたわけですね。そこで、改定名目で七%、実質で四・一%としたわけでありますが、この見通しをすると、私の単純な計算であるいは間違っておるかもわかりませんが、第四・四半期は第三・四半期に比べて大体七%ぐらい成長しなければそうならないはずなのであります。したがって、いかに異常なる急激なる成長を見込んだかあるいは猛烈なインフレになるという見込みをされたのかわかりませんが、結果としては、そういう見通しをされておるわけであります。経済見通しそのもの税収予算をつくったのではないと思いますが、きょうは大蔵省を呼んでおりませんからわかりませんが、その結果、税収見積もりでも、補正で三十一兆八千億、こういうことで予算補正したわけでございますが、決算を見ると二十八兆九千億円、大変な見積もり違いでございます。     〔委員長退席梶山委員長代理着席〕 この見積もり違いも、税収は、その当時でも九月から十月まで実績も出ておるし、経済も大体わかっておったはずであります。したがって、このように三十一兆八千億も出るはずがないと皆思っておるのですが、どういうことか、そういうことで補正予算を組んでしまって、そうしてやった。その結果、ここに税収で約三兆円のあれになってきた。これは実質赤字公債。それは決算調整資金をつぶそうと何をつぶそうと、経済効果において赤字公債の発行と全く同じ経済効果を生むわけでありまして、結局赤字公債を三兆円よけい発行したということになるわけであります。こういうことがその時点においてわかっておるならば——これは二兆五千億が三兆ということはあるいはわからぬかもしれませんが、大体その程度のことがわかるならば、やはり財政運営としても、あるいは国民に対しても、そういうことなんだということを、やはりはっきり示しておく必要があるのではないか、そういう気がするわけであります。  したがって、またいまから五十七年度決算を、数字が簡単でありますから税収入で言いますと、先ほどと同じように、決算額見積もりに対して三兆円もへこんだということを前提にして、大蔵省の見込んだとおりの自然増収率というものがあるかどうか知りませんが、単純な計算でありますから、それでやっても五十七年度は大体三兆三千億くらいの税収不足になるはずであります。しかも、先ほど申し上げましたように、それは五・二%の成長を予定してのことでありますから、それが仮に自然増収の率が半分程度に下がるということを仮定すれば、私の計算では五兆五千億財政赤字が生ずるということになるわけでありまして、これは単に計算上の問題ではなくて、実質経済に与える影響というものは大変大きい問題ではないか。したがって、この八月、九月の間に少なくとも早期経済運営全体の基本方針を早急に固めて、それに応じて的確なる財政運営金融政策、それから一般の経済振興対策というものを講じなければ、五十七年度経済というものは、財政を含めて異常なる状態に落ち込んでいくのではないか。昨年もそういうことを予想されたが、何かつじつま合わせ、数字合わせをしてごまかしたような感じが私はするわけでありますが、少なくともこのような危機的になった状態を考えるときには、もう少し数字で明らかになった点を明らかにしながら、国会及び国民の理解を求めながら、本当の意味でこの景気振興対策、そうして財政再建対策に踏み込むべきではないか、このような見解を持っておるわけであります。  これは恐らく長官は御答弁を求めてもあれでございますから結構でございます。長官はまだ何か次のお時間の御予定があるようでありますから、どうぞ次の方へ行っていただいて結構でございますが、御答弁いただけるなら……。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま景気と税収財政との関係につきましていろいろお話がございましたが、その基本的なお考えには私も同意見でございます。ただ、五十六年度税収の急激な落ち込みというものは、やはり第二次石油危機による一番厳しい影響がこの年にあらわれた、私はこういう判断をいたしております。第一次石油危機のときも、昭和五十年度に一番厳しい状態があらわれまして、約十七兆の税収予定に対しまして十三兆余りしか入ってこない、こういうことがございました。今回も、第二次石油危機影響が、石油危機の起こった年よりも五十六年度に集中してあらわれた、こういう感じがするのでございます。  ただ、五十五年度税収予定を年度当初ベースで見ますと、税の自然増収は約五兆出ております。それが五十六年度では税の自然増収は約一兆に落ち込んでおります。税の弾性値は〇・六くらいでございます。過去十年の平均は一・二くらいでございますが、高いときには一・九くらいの年もございました。近来にない最悪状態であった、このように思います。  そこで、先ほども申し上げましたように、いま緊急の課題は、何としても現在のような経済状態を一刻も早く打開していく、そうして経済の正常な活力というものを維持、回復するということが一番大事な課題でなかろうか、このように思います。これをやりませんと、税収が予定どおり入ってこない、大きな穴があくということでございますから、いろいろな面で大変な悪い影響が出てまいります。したがいまして、経済に活力を速やかに回復するということは緊急の課題だと思いますが、幸いに、数日前にアメリカ政府経済見通しを発表しておりますが、前半は大変なマイナス成長だけれども、後半はプラス四・五くらいの成長になるであろう、こう言っております。年度間は、前半がマイナスでありますからマイナス〇・七、こう言っております。もっとも議会の予算機構あたりは若干違う見通しでございますが、それにいたしましても、いろいろな国際機関の修正見通しの発表とかアメリカ政府見通しの発表等を見ますと、先ほども申し上げましたように、ことしの前半までは最悪状態である、後半からようやく世界経済回復期に行くであろう、こういう見通しが共通になっておりますので、えてしてこういう見通しは当たらないことも多いのですけれども、しかし、すべての見通しがそういう共通の方向を明らかにしておるということは、多少時間的なずれがあるとかあるいは回復のスケールが若干違うとか、そういうことはあろうかと思いますけれども、大きな経済の流れとしては、そういう方向に行っているのではなかろうか、このように判断をいたしております。世界経済がそういう方向に行きますならば、日本経済も非常にやりやすくなるわけでございますので、そういうことを十分分析しながら、先ほども申し上げましたように、後半、日本経済回復するようなそういう経済政策を進めるということが非常に必要なことでございまして、数字を分析しながら政府部内で調整をしたい、このように考えておるところでございます。
  13. 森清

    ○森(清)委員 それでは通産大臣にお尋ねいたします。  最近の景気の現状については、先ほど私からも御質問申し上げ、河本長官から伺ったわけでありますが、産業について直接担当しておられます通産大臣に、これらの景気の現状認識及びこの対策の方向について基本的な御見解をお伺いしたいと思います。
  14. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私もいまの河本経済企画庁長官と同じような認識を持っておるわけであります。最近の経済は、御承知のように、内需が低迷をしておるだけじゃなくて、輸出も急速に落ち込んでおります。こうした内外の動向が生産、雇用に大きな影響を及ぼしておることは御承知のとおりであります。  最近、通産省で各業界との懇談会をずっと開いてきておりますが、その感触を見ましても、輸出の落ち込みに冷夏の影響も加わって、六月後半以降景気の停滞色が急速に深まっておる。特に雇用面では、五十八年度新規採用を手控える動きが出ていることや、設備投資について、中小企業については回復の兆しがない一方で、堅調と見られておりました大企業におきましても、このままの状況が続けば、計画の減額修正が懸念される等の事実がはっきりしてまいったわけであります。  このような現状にかんがみまして、政府としても、公共事業につきましては上半期に七七・三%とする前倒しをやっておるわけでございますが、しかし通産省としても、今後ともこのようなわが国の経済現状を踏まえまして、下半期も息切れのしないように、何らかの措置を講ずるとともに、住宅投資の促進であるとかあるいは中小企業対策の推進等機動的かつ実効性のある対策を検討してまいらなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  15. 森清

    ○森(清)委員 それでは続いて、基礎素材産業について政府対策をお伺いしたいと思うのであります。  わが国の基礎素材産業は、組み立て加工業と相ともに、むしろわが国の経済成長基礎をなしたのは、まず最初に基礎素材産業が確立したことであろうと思うのでありますが、その後の石油エネルギー改革というようなことで、競争力も大変なくなっておるわけであります。しかしながら、わが国においては、立地条件その他から考えて、やはり基礎素材産業というもののしっかりとした育成が必要であり、安全保障の面から言っても、これはどうしてもなければならないと思うのであります。  基礎素材産業のわが国産業に占める地位その他については省略いたしますが、そこで、このような基礎素材産業の中で、特にアルミニウム製錬、石油化学でございます。御存じのとおり大変な問題であり、また数年来適切なる措置がとられてきたわけでありますが、しかし、必ずしもその政策も十二分には発揮しておらない。ますます深刻な危機がここに参っておるわけでございます。     〔梶山委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、さらにいままでの施策に加えまして、今後新たにどのような施策が考えられるのかあるいはどうしてもこういうことはしなければならないということがあろうかと思うのでありますが、基本的には、一定規模の基礎素材産業はわが国において必ず存置、維持するんだという強い方針のもとに、この基礎素材産業の確保といいますか、その点について通産大臣の確固たる御方針を伺いたいのでございます。
  16. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 基礎素材産業につきましては、いまさら申し上げるまでもなく、わが国の今日の経済を支えてきたわが国の基礎的な基幹産業であるわけですが、この基礎素材産業は、最近エネルギー価格の上昇であるとかあるいは内需の低迷によりまして、構造的にも大変力が弱くなってきておる。そうしてアルミを初めとして、たとえば紙パルプにいたしましてもあるいはまた塩ビにいたしましても、いま非常な苦境に立っておるわけであります。われわれとしてもこの基礎素材産業に対しましてはできるだけの対策は講じてきております。許される範囲内での対策は講じてきておるわけでありますが、依然として厳しい状況から脱却ができないという状態であります。そこで、御存じのように、産構審の答申等もいただきながら、この基礎素材産業全体に対しまして、やはり相当思い切った対策をこの場合講ずる、そして中長期的にわが国の基礎素材産業をやはり守っていくということが最も大事ではないか。これが崩れると、わが国の産業構造の基礎が揺らいでくる。経済全体の根幹に関するわけでありますから、何としても私たちは抜本的な対策というものもここで考えなきゃならぬのじゃないか、こういうような感じ基礎素材産業対策の立案をいま鋭意検討しておる、こういうところでございます。
  17. 森清

    ○森(清)委員 基礎素材産業は、そのような意味日本の産業構造上非常に重要なものでありますが、さらに、この基礎素材産業の性格上、工場立地は特定の地域に集中するというか特化するわけでございます。そういたしますと、その地域、これはこの前も私御質問申し上げたのでありますが、たとえば私の生まれた都市の新居浜市なんかは、その代表的な例でありますが、この地域の関連する中小企業あるいはその商店街その他大変な不況に見舞われるわけであります。このようなこともありますので、産業全体の構成上の問題もありますが、その上さらに、そういう特定の地域に集中的にそれがあらわれるということもお考えいただいて、ひとつ基礎素材産業の総合的な振興策といいますか維持策、これに格段の御努力を願いたいと思うのであります。  そこで、そういう問題にもさらに関連いたしまして、特にこれは中小企業問題でありますが、一般的にこういう構造不況業種に依存している地域につきましては、五十三年だったですか、いわゆる企業城下町法案と言われる特定不況地域中小企業対策法ができたのでございます。そしてそれは施策よろしきを得て大変な効果をあらわしておる、私このように考えるのでありますが、この一、二年見ますと、そういう意味で五十三年当時考えられた不況業種あるいは不況地域については、一応の対策を講じられ成功をいたしたわけであります。しかし、新たにそういうような問題も出ておりますが、とりあえずこの企業城下町法の運用の実績あるいは問題点等について、ひとつ中小企業庁長官ちょっとお教えを願いたいと思います。
  18. 本郷英一

    ○本郷政府委員 特定不況地域中小企業対策臨時措置法の運用実績でございますが、五十三年十一月に施行されまして、特定不況業種としましてアルミ製錬業等七業種、特定不況地域としまして三十二地域その他関連市町村を指定しております。これら地域に属します中小企業に対する対策といたしましては、緊急融資を約四百三十億円、信用補完措置の特例といたしまして約百九十億円等を実施しております。そのほかの措置といたしましては、転換融資の特例、近代化資金の返済猶予、所得税、法人税還付の特例、減価償却の特例その他措置を講じたわけでございます。
  19. 森清

    ○森(清)委員 そのような諸対策によって五十三年の企業城下町法、大変な効果をあらわしたわけでありますが、特に新たにあらわれた地域もございます。この法律に基づいてもう少しひとつ通産省の中小企業政策として積極的に対応していただきたいと思うのでありますが、法律改正問題は後でまた触れますが、特に現行法の中でどのような措置が考えられるかあるいは施策を講じられるか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  20. 本郷英一

    ○本郷政府委員 先生ただいま御指摘のとおり、特に最近の経済状況からいたしますと、不況業種の状況は五十三年当時よりも深刻化しているものも多く見受けられます。また、地域的にも緊急に対策を講ずる必要が出てきておるというふうに見られる地域も相当数あるわけでございます。したがいまして、こういった状況を考えまして、これら最近の経済状態からいろいろ深刻な影響を受けている中小企業の経営の安定を図るために、特に緊急に対策を講ずる必要のある地域につきましては、現行法の中で新規業種、地域の指定及びすでに指定されております業種につきましても新しくいろいろ問題が広がっておりますので、新規地域の指定を現在内部で検討しておるところでございます。
  21. 森清

    ○森(清)委員 いろいろ検討をしていただいておるのでありますが、この法律はたしか来年で期限切れになるわけであります。したがって、特に来年度施策というものをこれから予算その他で考えていかなければならぬわけでありますが、そういうときに予算措置ともあわせまして、この法律というものを、いまのままで効果はあらわれておりますが、さらに積極的にといいますかあるいは幅を広げてといいますか、そういう点で積極的にやっていただきたい。単に期限の延長ということではなくして、内容を改善するという方向が望ましいのではないか。  特に不況が長引きまして、先ほど申し上げましたように、それが特定地域に集中をいたしております。もちろん一般的な中小企業振興対策というものは講ぜられなければなりませんが、その中で、特にこのような集中的に中小企業者自身の責任ではないところから来る不況というものが重なっておるわけでありますから、この点についてもう少し何かこの法律の趣旨を生かしながら、さらに追加してやる政策、あるいはこの法律そのもので行っても、たとえば業種の拡大であるとか地域の拡大ということは当然やらなければなりませんが、さらに追加政策ということについて、どのような御検討をなされておるか、あるいはさらにもっともっと積極的にやるにはどういうことを考えなければならないか、こういうことについて御当局のお考えを聞きたいと思います。
  22. 神谷和男

    神谷政府委員 御指摘のように、この法律は来年の六月で期限が切れるわけでございます。本法は第一次オイルショック後のきわめて深刻な不況、特に特定の業種に集中して起きました不況が地域中小企業に与える影響、これに対処するためにつくられた臨時措置法でございますけれども、その後、第二次オイルショックによりまして、再度甚大な打撃というものがこれらの構造不況業種に与えられたわけでございますので、構造不況業種を抱えた各地域の状況並びに関連する中小企業の受ける影響というのは非常に甚大なものがあるわけでございます。したがいまして、現在、もしこのような法律がなければ、ぜひとも次の通常国会でこういう法律をつくらなければならない状況にあると認識いたしておりますので、この期限切れを迎えます法律を延長しなければならないということは当然だろうと思っております。しかも、現在この城下町法と呼ばれております臨時措置法に盛り込まれております対策は、構造不況業種が受けた生産の大幅減あるいは工場の閉鎖といったようなものから受ける周辺中小企業の急激なインパクトに対する緊急的な措置、さらにはその地元のための企業誘致といったようなものを中心とした対策でございますけれども、緊急措置のみでその地域が回復するということは考えられませんし、現在のような安定成長期において、企業誘致のみで企業がどんどん地域に立地するということも考えられませんので、これらの対策はもちろんあわせ並行して強化していかなければならないと考えておりますけれども、さらに地元の中小企業そのものを振興していく、それによっていわゆる城下町を新しい姿で活性化していくことが必要ではないかというふうに考えておりますので、そういう観点を盛り込んだ形で新しい法律あるいは改正法、延長法を考えまして、いずれ御審議をお願いしたいと考え、現在企業庁内部、通産省内部で鋭意検討中でございます。
  23. 森清

    ○森(清)委員 私も昔は東京におりまして、いろいろな政策をつくったり考えたりしたことのある人間でありますが、今度現実に直に自分の地域で中小企業者とかその他関係者とひざを交えて話をしあるいは悩みを聞くわけでありますが、中央でお考えいただくこととそれを受け取る人との間に非常に認識の相違があるということが第一点であります。それにまして私は、われわれの努力も不足でありますが、せっかくいろいろこういういい政策をつくっていただいても、個々の中小企業者はもちろんでありますが、それを担当する市町村の体制あるいは県庁が、ほかの政策については比較的対応が早いのでありますが、中小企業対策はどうも不得手というのか何かおくれているような感じがするわけであります。  そこで、これは私の提案でありますが、一般的な商工行政というような観点ではなくして、特にそういうむずかしい問題に対応しているところについては、積極的に県庁のスタッフあるいは市町村のスタッフを教育していただけないだろうか、こういう感じがするわけであります。われわれも非常にもどかしい感じがするほど施策についての考え方がおくれているのじゃないか、こう思います。もちろん中小企業者自身がいろいろ考えて研究調査いたしておりますし、商工会議所あるいは商工会等で熱心な検討、勉強もされておりますが、なかなかその点について地域全体の整合性を持った中小企業対策ができない、これが実情でございますので、私は、特に集中的に問題の起こっているところについては、むしろ特別のチームでも中小企業庁につくっていただいて、きめの細かい御指導をひとつお願いしたいと思うのでありますが、長官から特にその点の御見解をいただきたいと思います。
  24. 神谷和男

    神谷政府委員 御指摘のように、中小企業問題はすぐれて地域問題でございますので、東京に座っておるだけできめの細かい十分な中小企業対策ができるものではございません。したがいまして、私どものスタッフにもできるだけ各地域に出向いて生の声を聞くように要請をいたしておりますし、私も東京から離れられる限りはできるだけ各地域を回るようにしたいと努力をいたしております。しかも、その場合にいわゆる指導的な方々の御意見はもちろん、その地域で事業を営んでおられる一般的な方々の生の声をできるだけ聞き行政に反映させていくようにしたいと考えております。  また、御指摘のように、私どもの行政を行ってまいるに当たりましては、通産局の協力はもちろんでございますけれども、都道府県、さらには市町村に積極的に活動していただかなければならぬわけでございます。御指摘のように、いろいろの御批判はございますが、各県の商工部、経済部等はむしろ中小企業部であるというような形で仕事をしていただいておると考えておりますし、非常に活発に動いていただいておるものと思っております。しかし、やはり特定の問題あるいは全国横断的な特殊な問題につきまして、地域だけの物の見方では十分でないということも御指摘のとおりでございますので、たとえばいま御指摘のような特定不況地域等に関しては、関係市町村の協議会といったものを構成して、私どもと御相談しながら、また各地域の特性を生かしながら、行政を協力して進めていくというようなことも必要ではないかとただいまのお話を承りながら考えておりましたので、そういうことも考えていきたいと思っております。  いずれにいたしましても、御指摘のような点を踏まえて、きめの細かい、各地域の状況といったものに適合した対策を講じていくように努力したいと考えております。
  25. 森清

    ○森(清)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  26. 渡部恒三

  27. 清水勇

    清水委員 最初に、経済見通しあるいは景気対策等について両大臣の所信をただしたいと思います。  六月の失業率が発表になりましたが、二・四八%、完全失業者が百三十七万人。率直に言って、私はこの数字をきわめて深刻に受けとめております。この春のこの委員会でも議論いたしましたが、その際、経企庁長官から今年度経済見通しに触れて、雇用問題について言えば、今年度失業者が減り雇用状況が改善される、こういうふうに言われていたわけでありますが、まさにそうした見通しに反する結果になっていると思います。しかしそれでも、たとえば現在が底であるということであれば、それなりの判断もできるわけでありますが、これまた最近発表された三菱総研の七−九月期の景況調査結果を見てみますと、中小企業等の景況はさらに落ち込むのではないか、こういう報告をいたしております。まさに今日の事態は三十年代初頭のなべ底不況に匹敵をするというか、それ以来の深刻な事態と見なきゃならぬと思うわけですが、まず、経企庁長官に何が原因でこうなったのかという所感をお示しをいただきたいと思います。
  28. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済現状はいま御指摘のとおりだと思います。雇用状態は非常に悪化をいたしまして失業者がふえておりますが、これは昭和三十一年以来のことでございますから、失業率は二十六年ぶりの高い水準である、こういうことが言えようかと思います。要するに、経済の力が弱くなりまして、そのために雇用の状態が悪くなっておるということでございますが、やはりその一番の原因は、私どもは、世界経済が戦後最悪状態になっておる、世界全体の購買力が激減をしておる、そういうことからさしものすぐれた日本の商品も売れなくなった、輸出が昨年の秋以降落ち込んできた、こういうことが一番大きな原因だ、このように考えております。  それから、そういう影響もございまして、国内では特に中小企業状態が悪くなっておる。中小企業設備投資ども相当大幅に減少傾向になっております。ただ、消費者物価が安定しておりますので、実質可処分所得は、年が変わりましてから若干ふえておる、これが現在の経済特徴であろう、このように思います。
  29. 清水勇

    清水委員 いま長官から、世界経済の予想以上の深刻な状況等の指摘もございましたが、これは正直言いまして、いま始まったことではなしに、この春予算絡みで審議をした当時から非常に懸念をされていた客観情勢ですし、また相対的に、貿易摩擦等を通じ、輸出はある意味でダウンすることは避けられない状況じゃないのか、こういうことも当時すでに判断をされていたはずであります。ですから、そういう状況の中で、たとえば政府見通しを立てているような実質五・二%の成長を達成をするためには、それにふさわしい内需拡大のための新政策というものが用意をされなければいけないのじゃないか。わが党は、当時、たとえば大幅な減税であるとかあるいは実質的に内需拡大に直接役立つ可処分所得をどうやって増大をするか、そのために幾つかの提案をした経過があるわけでありますが、政府側が受け入れられない結果、こういう事態になっているわけなんであります。  さてそこで、いまの長官のお言葉の中で、物価が安定しているし、実質可処分所得はふえている、こういうふうな言われ方があるのですが、私は必ずしもそうは見ていないのです。なるほど春闘等の場を通して名目所得というものがふえていることを否定をいたしませんけれども、しかし同時に、非消費支出部分、つまり社会保険料を初めとした公租公課のたぐいに至るものが予想以上にふえている。だから、実質賃金といいましょうかあるいは可処分所得といいましょうか、こういうものが決して言われるように実態としてふえていない。だから、なかなか消費が伸びない、こういう状況があると思うわけです。  今日の不況というものは、一面、消費不況というようなとらえ方もできるわけでありますし、そこがネックとなって中小企業製品が売れない。中小企業の倒産件数が一千五百件という危険ラインは今日的にはやや下回っているわけでありますが、実態としては、その深刻さかげんというものは、一千五百件という倒産件数以上のシビアなものを持っているのではないか、こんなふうなことを感ずるわけであります。  さてそこで、少なくともこのまま推移をしていくと、恐らく年度内に完全失業者は百五十万人の大台に乗ることも懸念をせざるを得ないのではないか、こういう心配を私はしているわけでありますが、そうなりますと、ますますもって不況傾向が再生産をされていく、こういうふうにならざるを得ないというふうに思うわけでありますから、今後の経済運営のあり方と、いま申し上げたような点について、具体的にどう打開をするのか、こういう考え方についてたびたび長官も所信を披瀝をされておられるようでありますが、この機会に明確に示していただきたい、こう思います。
  30. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在のような経済状態ですと、いま御指摘がございましたように、雇用状態は悪化の傾向が続く、こう思います。失業者はもう少しふえるのではないか、こういう感じがいたします。それから税収の方は、政府の考えておるとおりには伸びない、相当大幅にダウンをする。それから貿易摩擦はさらに拡大をする。そういう幾つかの経済上のトラブルが拡大をすると思います。  そこで、もうしばらくいたしますと、最近の経済動き数字的にはっきりしてきますので、それを分析をいたしまして、政府部内で、ことしの後半どのような経済政策を展開をすれば、先ほど申し述べましたような、いま日本が当面しております幾つかの課題を改善することができるかということにつきまして調整をすることになっております。来月中にはこの案がまとまるだろう、このように考えております。
  31. 清水勇

    清水委員 率直に言いまして、平常、河本長官かなり強気な経済見通しをなさっておられるわけでありますが、ただいまの発言を聞いていると、きわめてシビアな言われ方をされております。それだけ事態は深刻である、こういうことであろうというふうに思います。  私は、この機会に、五十七年度経済見通しに示されている経企庁の出した経済の主要指標が誤りであったとかないとか、そういうことについて、その責任を問うつもりもありませんし、五・二%という数字のよしあしを直ちに言うつもりはございません。しかし、率直に言って、誤りがあったから見直し等については下方修正をすればいいというような発想で当面対処をするということでは困る、こういうことを申し上げたいのであります。特に、最近のうちに分析をした結果がまとまるはずであるから、そこから秋口以降の対策をというお話があるわけでありますが、そういうのんびりした構えでは、今日的な事態に必ずしも適切に対処をしているということにはならないんじゃないか、私はこう思わざるを得ないわけであります。  そこで、いみじくも河本長官も安倍通産大臣も、これまで特に中小企業等を取り巻く環境が非常に悪い、先行きもさらに悪化をしそうである、景気浮揚のために公共事業費等を前倒しで約七七%方発注をしているわけでありますが、しかしそれゆえに、後半は息切れが起こるというような事態もあるわけでありますから、このままむろん放置をすることができない。そういう立場からも臨時国会の早期召集ということをしばしば提唱されておられるわけでありますし、わが党もそういう立場で対応すべきであろうということをかねがね言っているわけであります。  そこで、昨今伝えられるところによりますと、自民党の党内事情等によって臨時国会の召集の時期をかなり後にずらそうというような気配が感じられたり、また、この臨時国会の目標なり性格も、どうも臨調絡みのものにしたいというような構想もあるようでありますが、私は率直に言って、そうではなしに、速やかに召集に踏み切り、かつまた、不況打開国会といったようなそういう性格で対処をすることが非常に重要な課題なんではないかと思う。特に三十日に行われました臨調答申を踏まえて、マイナス五%シーリングという来年度予算編成作業がだんだん進められていくわけでありますが、それやこれやを通じて、全体的には行革デフレなどといったような意味合いのことが言われるようになったり、さらに先行きは縮小均衡政策が強化をされることによって、なお経済環境がシビアになっていくのではないか、こういうことが懸念をされまして、仮に投資減税などということを通じて中小企業設備投資を誘導しよう、こういうようなことを考えられたとしても、先行きの見通しの立たないような現在状況の中では、恐らく中小企業家にとって投資減税という政策にそれほどの魅力を感じない、これに飛びついて、それでは設備投資に走ろうなどというような機運が出てくるわけがない。こういうようなことなども思い合わせて考えるときに、いたずらに財政縮小均衡政策というようなものを金科玉条とするといったあり方、こういうものについても、この際、検討を加えてみる必要があるのではないのか、こういうふうに思うわけでありますが、臨時国会召集等との問題を含めて、この際、両大臣から所見を承りたいと思います。
  32. 河本敏夫

    河本国務大臣 上半期の対策といたしましては、もうすでに御案内のように、公共事業の思い切った前倒しをしております。七七・三%以上ということでありますので約八割、こういうかつてないような前倒しでございます。それに大きな成果が上がることを私どもは期待をしておりますが、金額的にこれを言いますと、中央地方を通じての公共事業が土地代を除きまして約二十四兆円ございます。上半期に十九兆円、下半期に五兆円、こういうことになりますので、上半期の前倒しを誘い水といたしまして、後半、民間経済の力が出てくる、そして公共事業の落ち込みを民間経済の力で補うことができるということでありますと、それは経済は順調に動くわけでございますが、もし民間経済が期待どおり力が出てこないということになりますと、十九兆という公共事業が五兆に減ってしまいますと、全体としての最終需要はどかんと落ち込んでしまって、経済に大変悪い影響が出てまいります。したがいまして、民間経済に力が出てこないということになりますと、当然何らかの形でこれを補っていかなければならぬ、こういうことになろうかと思いますが、残念ながらどうもただいまの状態では、十月以降民間の力が急速に伸びてくる、こういう感じはいたしません。正確な数字は、先ほども申し上げましたように、もう少したたないとわかりませんが、やはり何らかの追加対策が必要だ、こう思っております。  追加対策ということになりますと、金融政策はアメリカが高金利政策をずっと維持しておりますから、日本といたしましてはお手上げの状態でございます。したがいまして、それ以外の手段を考えていかなければなりませんので、考えられる対策といたしましては、公共事業の追加、それから住宅の動きはもう少し分析したいと思っておりますが、政府の考えております百三十万戸の建設、これは少し下回るのではないか、こういう感じもいたしますので、これを軌道に乗せるのにはどうしたらよいか、こういう問題もあろうかと思います。  それから、先ほど来何回か出ておりますが、中小企業状態が非常に悪くて、特に設備投資が落ち込んでおるということは、経済の足を非常に大きく引っ張っておりますので、この問題にどう対処するか、こういうことを政府部内で議論することになろうかと思っております。
  33. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま、率直に申し上げますが、おっしゃるように、経済状況は非常に悪いと私は思っております。生産にいたしましても、鉱工業生産の最近の状況はずっと毎月マイナスという状況でありますし、設備投資、特に民間設備投資にいたしましても、大企業の方は堅調だということも言われますが、しかし、その大企業の中でも設備投資計画で減額の動きがすでに出ておるということでありますし、中小企業に至っては、昨年に比べて設備投資が急速にダウンをしておる、こういう状況であります。さらにまた貿易も、これまでの日本を支えてきたわけですが、輸出についても六月、ドルベースでは八%以上ダウンしております。輸入も一一%マイナス、こういうことであります。雇用の方は、いまおっしゃるように、二・四八というような、わが国の統計が始まって以来のような失業が出ておる。こういう情勢でありまして、ですからこのままの状態でいきますと、わが国の経済が失速をするおそれすらあるかもしれない、私はこういう憂えを持っております。  わが国政府としては、そういう状況の中で、上半期公共事業前倒し等もやっておるわけでありますが、それだけでそれじゃ支えられるかといいましても、なかなかそうはいかないのじゃないか。ですから、下半期に対する明確な対策を打ち出す必要がやはりあるのじゃないか一これも早く打ち出さないと安心ができない。中小企業の経営者も、設備投資に意欲を持たないというのは、結局先行き不安だということでしょうから、やはり下半期に対する政府としての方針を明確に打ち出せば、それなりの効果は出てくるのじゃないだろうか、私はこういうふうに思うわけであります。やはり景気対策というのは、一番大事なのはタイミングじゃないだろうか、私はこういうふうな感じがするわけであります。  もちろん財政再建、行政改革、大いにやらなければならぬわけでありますが、やはりその基礎経済が安定をすることじゃないか。失速をしてしまってからではなかなかそうした財政再建、行政改革をやろうにも基盤が失われるということでございますので、やはりこの失速を防いで経済の安定を図っていくための総合的な、あるいはそれまでの間は個別的な対策も含めて対策を講じていく。ですから、時期を失わないということが大事であろうと思いますし、そういう意味では、国会が必要ということならば、国会の開会も、通常国会が終わって新しい国会の開会というのもお願いをする必要があるのじゃないか。しかし、これは政府全体で検討することでございますけれども、私はそういうふうな基本的な考え方を持っておるわけであります。
  34. 清水勇

    清水委員 どうも両大臣、言われることはよくわかるのですけれども、とりわけいま通産大臣からは、景気対策を考える場合にタイミングが大事である、これを失しては効果が発揮できない、私もそう思います。  そこで、ある意味で思い切った追加政策景気対策という観点で打ち出していかざるを得ない状況にあるのではないかと言われているわけなんでありますが、そうだとすればなおさらのこと、いま通常国会が行われているときに臨時国会をいつやるのだというようなことは、なるほど見方によれば不見識なのかもしれませんが、この通常国会自身八月二十一日まで続くなんというようなことも、まあ不見識というか余り前例のない異常な事態なんでありますから、そこで、そういうことも勘案をするときに、臨時国会なるものが早期に召集をされて、しかるべきタイミングを失わない手当てを講じていく、こういうことが非常に重要なのではないか。  たとえば、不況を反映をして歳入が予定どおり入らない。つまり歳入欠陥が起こる。だから少なくなった歳入で縮小均衡策をとる。そこからさらに全体として経済活動が鈍化をして、またまた歳入欠陥を増大をし、縮小政策を強化せざるを得ないなんというような悪循環をどこかで断ち切らなければならない。今日、確かに財政問題が深刻ですから、財政を投入して具体的に景気を引っ張ったらどうだという一面的なことだけを強調することはできないのかもしれませんが、現実的にはそういう大胆な発想というようなものもあわせて検討されてしかるべき時期なのではないか。特に、河本長官からは、臨時国会のくだりについて触れられておりませんので、そうしたことについての所信を含めてお答えをいただきたいと思います。
  35. 河本敏夫

    河本国務大臣 九月早々に、先ほど申し上げましたが、下半期の経済運営をどうするかということについて相談をすることになっておりますが、その場合に、補正予算を組むとか法律改正を必要とするとか、そういう内容が含まれますならば国会開会が当然必要になってまいります。そして先ほどから繰り返して申しておりますが、上半期はまずまず思い切った前倒しをしておりますから、息切れがする、あるいは断層ができるという危険性がありますのは十月以降でございます。ただ、できるだけ早く下半期の対策を明らかにしませんと、せっかく前倒しをしようといたしましても、思うように仕事が進まない。後半仕事がもしふえないならば、割り当てられた仕事をできるだけゆっくり消化していこう、こういうことになりますので、前倒し効果は出てこないのでございます。そういうこともございますので、できるだけ早く結論を出すことが必要でございますし、十月以降の息切れを生じさせないということのためには、私は、九月中に対策を立てなければならぬ、こう思っております。したがいまして、臨時国会の開会ということは、補正予算または法律改正を含む場合には当然九月中が望ましい、こういうことになろうかと思います。
  36. 清水勇

    清水委員 この際、一つだけちょっと追加して聞いておきたいことがあります。  いま、率直に言って円安問題が非常に深刻な影響をもたらしている。八月一日から一斉に、たとえばガソリンの末端価格が引き上げられる、そういう趨勢になっている。一般消費者なりユーザーというような立場から見ると、たとえば産油国がバレル当たり一ドルないしそれ以上の値下げをしているのに値上げをするとは何事であるか、しかも油をめぐる環境は、需給関係が緩和基調にあってだぶついているのじゃないか、にもかかわらず上がるとは何事なのだ、こういう素朴な疑問なども随所に提起をされるようになっている。  言うまでもなく、わが国は資源小国ですから、原料の相当部分を海外に求めなければならない。円安がそれに大変なおもしになっていることは言うまでもありませんし、それやこれやが全体としてわが国の景気の足を引っ張っていることも、また否めない事実であろうと思うのです。  そこで、円安の原因は何かということは、もうさんざん言われているからここで申しませんけれども、たとえばアメリカの高金利政策、つまり異常なるドル高といったことを抜きにこれを論ずることができないという一面もあるわけでありますから、この際、わが国政府としても、円安問題に絡めて、高金利政策の転換などについてもっと本格的な折衝といいましょうか働きかけをアメリカ政府に対してする必要に今日迫られているのじゃなかろうか、こういう感じがするのでありますが、通産大臣に承るのがいいかもしれませんが、いかがでしょうか。  特にこの際、円が実勢にふさわしい水準に落ちついて、たとえばこれが二百円であるのか二百十円であるのかということは別として、とにかく円レートの安定性が確保される、こういうことは非常に重要な課題であろうと思いますから、そうした点についても、政策的な観点から、必要があれば経企庁長官からもお聞かせをいただきたい、こう思います。
  37. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 われわれは、御承知のように、最近の円安の元凶がアメリカの高金利政策にあるということで、アメリカに対しましてこれが是正を迫ってきたところであります。これに対しまして、最近アメリカでも、御承知のように、公定歩合の引き下げが続いておりまして、高金利政策が少し是正をされつつあるという状況であります。そこで私は、この結果が円に非常に大きく響いてくるのじゃないか、こういう期待を持っておりましたけれども、依然としてまだ二百五十六円とか七円とかいう趨勢が続いておるわけであります。  私もよくその辺の実態はわからないのですが、やはりアメリカの高金利政策の是正が本物であるかどうかというところに一つの疑問もあって、なかなかこの円安が円高の方向へ、円高というか実勢価格の方向へ動いていかない、こういう要因もあるのじゃないかと私は思っております。しかし、さらに、いまも続いているところのアメリカの高金利政策がこれから漸次改まっていけば、この円安の状況は改善をされるのではないだろうか、私はこういうふうに思うわけであります。もちろん、内資の流出とか海外の政治不安とかいろいろとそういう要因もあるわけでしょうが、基本的には、いま申し上げましたアメリカの高金利政策に対するアメリカ政府の基本的な方針というものがまだどうも見きわめがつかないというところに円安の状況が続いている、円の相場の戸惑いというのがあるのじゃないだろうか、こういうふうに思っておるわけで、われわれとしては、さらにアメリカの高金利政策が是正されることを期待し、これからも求めていかなければならない、こういうふうに考えます。  同時に、わが国としても、ただ、アメリカの高金利政策の是正だけに頼るということでなくて、円の為替の価格がやはり実勢を反映するような方向へ持っていくように、わが国自体としてもできるだけの努力はしていく必要があるのではないか、しなければならぬ。これ以上続くということになれば、さらに一層の新しい措置等についても検討をしなければならぬ。やはり日本日本なりの努力も、アメリカに対して要望すると同時に、必要である、私はこういうふうに考えております。
  38. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま世界経済の足を一番大きく引っ張っております原因は、御指摘のとおりアメリカの高金利だと思います。アメリカは、これまで物価が安定をすれば金利は下げますと言っておったのですが、物価が安定したのに一向に金利が下がらない。最近は、財政赤字が大きくなったからだ、こういう説明でございますが、しかし財政赤字が大きくなりましても、一方でアメリカの預貯金がふえればクラウディングアウトという現象は起こらないわけでございますが、預貯金も思うようにふえない、財政赤字は大きくなる、そういうことのために、結局クラウディングアウトという現象によって金利が一向に下がらない、こういうことだと思います。そのことによってアメリカの経済も不況が続いておりますが、あわせて世界経済全体がこんなに落ち込んでしまって、先進工業国二十四カ国だけで三千万の失業者を抱えておる。歴史上かつてこういうことはなかったわけでございまして、これはもう大変な出来事だと思います。したがいまして、アメリカの高金利が是正されるようなそういう政策が進められることを非常に強く期待をしておるわけです。  もしその方向にアメリカの金融政策がいきますならば、日本は最近四カ月間消費者物価は二%台でございますし、おおむね安定をしておると思いますので、現在よりももっともっと低い水準に日本の金利水準を引き下げることは十分可能である。これは強力な景気対策にもなり得ると思うのですが、残念ながら、むしろ高目の金利水準に持っていかなければならぬ、こういう状態でございまして、この点は景気対策上からも大変遺憾に思っております。アメリカ大統領は大きな権限があるわけでございますから、預貯金もさることながら、あるいは赤字財政もさることながら、もし少し世界全体をにらんだ金融政策が展開できないものか。FRB、連邦準備制度理事会がおれの言うことを聞かないんだということを言っておりますが、そういう考え方は私どもは大変遺憾に思うわけでございまして、大統領がもっと指導力を発揮されることを期待したいと思います。
  39. 清水勇

    清水委員 河本長官、結構です。ありがとうございました。  次に、ブロック書簡の問題に触れてお尋ねをしたいと思います。  きのうわが党に対して、かねて申し入れをしていたわけでありますが、政府からこの件についての統一見解なるものが示されておりますが、これを見ましても——見ましてというか聞きましても、依然として疑惑というものが晴れない、ますます疑惑というものが残るというふうに率直に感じているわけであります。統一見解の内容は、一口に言って、五月十一日付のブロック書簡に添付をされた文書、これは通産省が作成したものではない、こういうことになっているわけでありますが、しかし、これまでも、何月何日こういう経過があったなどということを通産側はしばしば公式、非公式に説明をされていたことを私も承知をしておりますけれども、大体そういう意味で、そういう立場での通産省の根回しをした方向で、いわばきのうの政府の統一見解なるものがまとめられたんだろう、こういうふうに考えられるわけであります。  そこで、まず私は大臣にお尋ねをしたいのですけれども、わが国の市場開放第二弾の決定と、これを明らかにする際に、第一弾のときには余りいい印象をアメリカ等に与えていないのであるから、この際、何とか首相声明などというようなものを出して第二弾の意義を高からしめようという立場であれこれと根回しをしたんだ、こういうことも言われているわけでありますが、重大な事実は、その間に、たとえば現実の問題として、市場開放第二弾の決定に際してのわが国鈴木首相の何らかの声明、その内容等について、直接ブロックなりUSTR筋と事前協議をしているという事実があることは、これはもう否定のできないことなんじゃないのか。これまで否定をするということになると、これは外務省が照会をしていろいろと情報をとっておられるんだけれども、そういうことまで否定をするというようなことにつながってしまう。ですから、くどくどとした釈明は要りませんけれども、その辺の事実関係をまず明らかにしていただきたい、こう思います。
  40. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、ブロック書簡の問題がいろいろと言われておりますが、なぜ問題になっているのか実はよく理解できないわけなんです。これは新聞等でも何か通産省が仕組んだようにも書かれておりますが、そういうことは全くありません。  いまお話しの第二弾を発表するに当たりましての総理大臣声明につきましては、これは実はいまお話しのように、第一弾をやったとき、どうもアメリカを初めヨーロッパ諸国の反響が悪かった。あれだけの思い切ったことをやったにもかかわらず十分な理解が得られなかった。こういうことで、第二弾をやる以上は、これはやはり効果的なものでなければならぬし、同時に、それだけの理解をあるいは評価を得なければならぬ。そのためには、やはりアメリカやあるいはEC等に対しても十分根回しといいますか、事前の十分な理解を求める説明が必要である、これは当然のことだと思います。私は特にこれは重点を置かなければならぬというふうに考えまして、実は五月六日に、私、中東訪問の報告とそれから十日過ぎに三極の会議が行われますので、その方針についての御相談を兼ねて総理とお目にかかりました。そのとき、総理の声明を出していただく必要があるのじゃないか、これは出すということが非常に諸外国の評価につながるのじゃないかということを私も力説をいたしました。総理からも、それは大変結構なことではないか、そういう方向でひとつやってみたらどうかというお話もいただきまして、私が事務当局に対して、そうした三極会議で説明をするんだけれども、事前に向こうから三極についての問題についての説明をいろいろと求められるだろうから、その際、いま考えておる総理声明の考え方、あるいはまた第二弾の、特に工業製品を中心とした第二弾の内容についても説明をしておくようにということを指示したわけでございます。  それに基づいて、通産省の方でUSTRに電話で連絡したと聞いておりますが、大体こういう考えで総理声明といいますか政府声明を出したいと思っておる、同時にまた、第二弾の工業製品を中心とした内容は大体こういうことを考えておる、まあ概略をUSTRに説明をして、そして私が十日過ぎに三極会合に参りますときに、ブロックさんとかボルドリッジさんとかあるいはまたECの幹部の皆さんに、いまわれわれがやろうとしておること、総理声明を出して、特にこれは工業製品を中心とした声明でありますから、これについてこういう決意でもってわれわれは臨もうとしている、また関税等についてもこうした思い切った措置をわれわれはとろうとしている、ぜひともこの日本の誠意と努力というものを評価してもらわなければ困るんだ、これはわれわれにとってはもう最後のぎりぎりの対策であるということを力説をいたしました。同時に、農産物についてはなかなかそう簡単にはいきませんよということもあわせて力説をいたしたわけでございまして、そういう意味で事前に、確かに根回しと言われればそのとおりでありますが、USTRに総理声明の内容については、事前に説明をしたことは事実であります。これはこれまでの外交交渉にしても、あるいは通商関係の交渉にしても、こういうことはしばしばあることであるし、こうしたことをやった結果によってあれだけの第二弾の評価を得ることができた、こういうふうに私は確信をいたしておるわけであります。
  41. 清水勇

    清水委員 私は、これまでのたとえば農産物の自由化問題に触れての通産省内の対応、なかんずく昨年秋以来本格化をしたアメリカの要求に基づく、あるいはアメリカ議会等における保護主義の台頭、こういうものを踏まえた貿易摩擦の解消をどう図るか、そういうような検討の中で、根本的に通産省は農産物の自由化あるいは市場開放体制をとるという必要性というものをしばしばあらゆる機会に強調している。  たとえば、私ここに幾つかの資料を持っているのですけれども、四月一日の朝日新聞に、これはスクープをされているわけですけれども、市場開放を渋る動きに反論をするという反論書を取りまとめ、公にしようという寸前に、これは与党の方でもこの時期にそういう文書が出ることは問題だというようなことで、結局日の目を見る文書にはならなかったわけであります。けれども、つまり工業製品の過大な輸出のいわばしわ寄せが農産物の輸入という形にあらわれるというようなことは困る、こういう農業被害者論は誤りなんだという立場の反論書をまとめる。あるいはたとえば皆さんの部下でありますけれども、「農産物輸入の自由化問題」という論文を「通産政策研究」なるパンフレットに執筆をして、あえて公表しておる。いまや農産物の自由化は時代の趨勢である、問題はそれによって生ずる影響をどうするかということが政策的なキーポイントじゃないだろうかなどといったような論陣も張っておる。あるいは皆さんが主導なさっておられる産構審の経済安保特別小委員会、これが四月の末に報告を出しているわけでありますが、たとえばそういう中でも、国内農業に対する保護水準を高めるのは避け、生産性向上により国内市場を開放していく、こういったようなことも取りまとめておられる。私は一事が万事とは言いませんけれども、一面同時期に、たとえば財界の中では公然と、コストの高い米をつくるのはやめたらどうだ、国際分業政策を強化をするような発想が展開をされている。つまりこれらを集約をすると、いわば工業の利益は国益なんだといった、こういう発想がどうも脈々と流れているんじゃないか。だから市場開放第二弾の際の首相声明等について、事前にUSTRとその内容について協議をした、電話でやったと聞いているというふうに大臣は言われているけれども、その協議の際に、一応通産省の考え方はこういうものでございますがいかがかというそういう文書が示されているんではないか、こういうふうに見られるわけなんでありますが、その辺はいかがなんでしょうか。
  42. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この総理声明というのは、わが政府があくまでも自主的な立場で行ったことであって、アメリカに協議をするというような筋合いでは全然ないわけです。ですから、電話で説明をしたというのは、ただ、わが国としてはこういう方向でやろうと思っておるということを説明をしたにすぎないので、協議といったようなしろものでは全然ないわけで、相談をしてやったわけでは全くないということをはっきり申し上げておきます。  それから、最近の市場開放対策、当面の対策の責任者は私であります。通産省の中で、もちろんいまお話しのような市場開放の諸問題についていろいろと議論がある、あるいは考え方があることは事実でありますが、当面の通産省を代表する責任者は私でありまして、私は、よく御承知のとおり、今回の第二弾の発表をするに当たりまして、その間ブッシュ副大統領にもお目にかかりましたし、ブロック代表にも会ったわけでありますが、そのたびごとにわれわれの市場開放に対する熱意、同時にまた、農産物については、これはもう日本の事情というものが非常に自由化というのは困難である、これは経済の問題というよりは政治の問題であって、これはアメリカだって同じことじゃないか、ですから、なかなかそう簡単には農産物はおっしゃるような自由化なんというものは困難ですよ、多くを望んでもこれはむずかしいですよということを言い続けておるわけでありまして、これはもう新聞等にもはっきり出ておりますから御案内のとおりでありまして、これが通産省を代表する通産大臣としての私の当面の市場開放対策に対する基本的な姿勢であったわけでございますから、議論は内部ではいろいろあったとしても、公式な責任者としての態度、方針というものはそういう方向で貫いてきておるということでございますから、御理解をいただきたいと思います。
  43. 清水勇

    清水委員 時間がありませんから、この問題をさらに続けるというようなことはなかなか困難でありますが、しかし、いまの、責任者である私はこういう考えだ、それはわかりますよ。私も二、三回、四月の段階にこの問題について大臣と会見をしてあれこれと申し入れをしたいきさつがある。その際にも承った。ただしかし、そういう時期にも現実に通産部内ではさっき私が指摘したようなことが、あるいは公にあるいは非公式に進められていることもまた事実なんです。だから、現実の問題として、事前の根回しという過程で、大臣の承知せざる次元で、たとえばいま疑惑として言われているようなそういう行為が残念ながら行われたということは、これはあり得るというふうに私は思うのですよ。これは見解の相違ということではなしに、私はそう思う。  そこで、外務省の深田局長に承りたいのでありますが、ブロック書簡が櫻内外務大臣に手渡されて、直ちに外務省は在米大使館を通じてUSTR側にその真意を尋ねられているわけですけれども、その辺の経過をちょっと聞かしてください。
  44. 深田宏

    ○深田政府委員 お答え申し上げます。  私どもといたしましては、ブロック書簡、添付の文書を含めまして、を受領いたしました時点で、これがどういう背景で出てきたのかということを一番中心に先方に問い合わせたわけでございます。特に、当時農産物の関係で農水省とも御協議しつつアメリカ側といろいろやりとりをいたしておりまして、そのやりとりの過程と若干平仄の合わない点など、詳細は申し上げかねますが、平仄の合わない点などもございまして、この辺を、アメリカは一体何を考えているのかということを尋ね合わせたという点が一つでございます。  また、通常の外交文書と違いまして、この書簡は外務大臣を含む複数の関係諸大臣に同時に発出されているということで、これもどういう考え方かなということを先方に問い合わせました。  また、総理大臣の談話案というものも添付されておりまして、これも私どもといたしましては、どうしてこういうものが出てきたのかということについて先方に問い合わせをいたしたわけでございます。  これに対して先方の説明は、内々のお問い合わせに対する内々のお答えということで、ぜひ大使館なり日本政府限りということで参考にしてほしいということでございましたので、詳細御説明することができないのは大変残念でございますけれども、農産物の点につきましては、日本側の主張、つまりその以前いろいろアメリカ側とやりとりいたしておりました経緯はそのとおりだということで確認を得ました。  また、複数の大臣にあてて一度に出たという点につきましては、これは非公式にアメリカ側の希望、考え方を何分の御参考ということで伝えたものにすぎないので、関係がおありと思われる諸大臣に同時に出したということであったわけでございます。  総理談話につきましては、先ほど通産大臣から御答弁がございましたように、通産省の方で案をおつくりになりましたものを、五月の七日と承りましたけれども、アメリカ側にお示しになっておられるというような背景があった次第でございます。
  45. 清水勇

    清水委員 そうすると、総理談話について何も事前にあれこれ言うことはない、電話でちょっと連絡した程度だといま大臣は言われたが、外務省の局長の答弁とはどうも基本的にその辺は食い違っておるわけですね、五月七日に通産省から文案を示してもらったと言うわけですから。  さてそこで、僕は重ねて深田局長にお尋ねをしたいのでありますが、通産省がつくったものを即添付文書にしたのではないのだ、仮にこういう前提に立って考えた場合でも、日本の総理大臣が行う市場開放宣言とも言うべき総理大臣声明の文案を、事もあろうにアメリカ政府の側からわが国の外務大臣以下の関係大臣に送達をして、これを参考にしてほしいというような言い方あるいはやり方というのは、アメリカという国がいかに超大国と言われる存在であるにしても、日本を属国扱いにし、日本の首相にいわば指図するということにつながっていく、そういう内容を持っているのではないか。これは恐らく世界の外交史上にだって例はないのだろうと思うわけです。つまり通産省が向こうへ渡した文案どおりの文書だったかどうかということは別として、そういうことが大統領の属僚とも言うべきUSTRのブロック代表から行われるということを外務省として一体どういうふうに受けとめておられるか。
  46. 深田宏

    ○深田政府委員 ブロック書簡そのものの性格につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございまして、日本側の御参考にという趣旨のもので、日本側にああしろ、こうしろという性格のものではございません。  総理談話の案がついていたこと自体につきましては、私限りの印象を申しますと、これは若干異例というふうに思います。また、その点につきましては、先方にどうしてそういうことであったのか、あるいは手続的に若干問題ではないかということは、ワシントン大使館を通じて申しておる次第でございます。  ただ、通産大臣からの御答弁にございましたように、これは日本側がそういうことを考慮しておるということを先方に御連絡になって、それを受けてのことでございまして、日本側でもしそういうことを自主的に——まさに自主的にでございますがお考えである、考慮しておられるということであればという前提でございまして、そういうものが全くなしに、こうしろということで突然出てきたというようなものではないわけでございます。
  47. 清水勇

    清水委員 深田局長も大変苦しい答弁をなさっておられるわけであります。これは私見で申し上げれば、異例である、こう言われているわけですが、私はその程度で済まされる性質のものではないのではないかと思うのです。いやしくも総理大臣声明の文案を示し、いかにこれを参考にしてほしいということであっても、こんなばかげたことをわが方が許容をしておくなんということは、いままでですら日米交渉を見ていると、しばしばアメリカの恫喝外交に屈するというようなことが言われていないでもない。そういうことを思い合わせて考えるときに、僕は、やはり厳しくアメリカ政府に言うべきは言う、抗議の必要があったらする、こういう毅然たる構えがなければ今後なめられますよ。こういうことが一つ。見解を聞かしてもらいたいと思います。  それからいま一つは、通産大臣は先ほど来否定をなすっておられるのです。だがしかし、朝日新聞を初め各中央紙も、この問題についてはかなりのスペースを割いて報道を続けられている。あるいは日本農業新聞のごときは、非常に膨大なスペースを割いて特集号を出している。それは何も中身がおもしろいとかおもしろくないからという意味ではなしに、少なくとも主権国家の主権が一面的にはこれによって侵害をされる、失われることを憂慮する、そういう性格も非常に強いわけです。  たとえば、大臣はゆうべ遅くに帰られたばかりですからごらんになっている暇はないと思いますけれども、最近号の週刊朝日によれば「売国通産省」とまで書かれている。私は、一連の報道が、たとえば事実に相違するうそ偽りなのだと言うならば、当該の新聞社に対して抗議をし、あるいは取り消しを求める、こういう行為がなされてしかるべきだと思いますが、どうもその辺もあいまいなんじゃないか。週刊朝日に関しては、何か言ったという話を仄聞をするけれども、僕はその辺に二重三重の疑惑が引き続いて持たれていくという一面があるんじゃないか、こう思うのです。その点。前段の点はひとつ深田局長に。
  48. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いろいろと新聞等にも出ておりますが、これに対して記者の諸君も私のところへ見えますから、これに対しては明確にお答えをしております。そしてまたわれわれが考えて間違った点は、これも指摘をしておるわけであります。  それから総理談話、総理声明については、これは日本側が何も考えてなくて、アメリカ側が突然として総理声明を出せということで文書で来たというようなことになれば、これは失礼千万な、まさに主権侵害というふうなことにもなりかねない話でありますが、この総理声明はあくまで日本政府が全く自主的にこれを作成をした、そしてその作成をした後において、アメリカ側にその内容について説明をした、これに対してブロックさんが参考までということで自分たちの希望を述べたということですから、おっしゃるように、何も主権がどうだとかあるいはアメリカが日本を属国扱いをするというようなことも書いてありますが、そんなことでは全くないわけで、総理声明に限っては、これは間違いなしに日本が独自に決めたものをアメリカ側に評価をしてもらわなきゃならぬということで、事前にその説明をしたということで、それに対して希望を述べた、こういうことでありますから、これはこれまでしばしばこういうような問題はあると思いますけれども、私は問題になる筋合いのものじゃない、こういうふうに考えます。
  49. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 ブロック書簡の性格は秘の親書ということでございますから、詳細な内容をリファーすることは差し控えたいと思いますけれども、総理談話の一案が添付されておったということは事実でございますけれども、その性格について申しますと、そのような案で総理談話を出すこと自体を希望したということではなくて、むしろ総理談話を出す際には、その内容が実効が上がるように、行政指導その他の実行を十分行ってほしいという希望との関連でリファーされておるということでございます。したがって、大臣からもるるお話がありましたように、総理談話についてこのようなものを出すということを要請あるいは申し越したというふうには私どもは承知しておりません。  また、週刊朝日その他に関する記事の問題でございますけれども、「売国通産省」なるものの表題につきましては、私どもも非常にこれは不当なものと考えまして、官房長から週刊朝日の副編集長経由で編集長に、同記事には事実に反する点があるということで非常に問題であるという抗議をすでに行っております。また週刊朝日以外の記事につきましても、告訴すべきものであるかどうかというような点も含めまして、慎重に検討しておるわけでございますけれども、事実に反する点につきましては、折に触れてその都度関係者等に指摘しておりますし、必要に応じて抗議を行っておるという状況でございます。
  50. 深田宏

    ○深田政府委員 文書の性格につきまして、先ほど来御説明申し上げた次第でございます。  また、総理談話の案というべきものがアメリカ側から出てきたこと、これが先ほど来御説明のありましたような日本側のいわばイニシアチブに基づくものであるということでもございますし、最終的に日本側で決定いたしました市場開放措置、総理大臣談話、これはいずれも自主的に決定を見たというようなことでございますので、日本の主権が侵害されるというような事態では全くなかったというふうに存じております。ただ、手続的にいろいろと唐突な点もあったというようなことは私ども感じましたので、それらの点につきましては、先方の注意を喚起した次第でございます。
  51. 清水勇

    清水委員 この問題についてのこれまでの政府側の答弁では、残念ながら私納得がいかない面が多々あります。しかし、きょうは時間が限られておりますから、改めてこの点は党の農産物対策特別委員会の立場もこれあり、追及を重ねていくということを申し添えておきたいと思います。  それから、いま通商局長の方から、週刊朝日に対してはこう言った、他の新聞についてもいま検討中である、こう言われておりますが、新聞が出てもうずいぶんなるのですよね、期間が。これはいつまで検討をするということなんでしょうか。そして現実にこれが推移をしていけば、やっぱり火のないところには煙が立たないのだというそういう意味での疑惑というのがこれは広がると思いますね。
  52. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 新聞記事の報道等につきましては、その表現の正確な記述等の問題も含めまして、それが法的に告訴あるいはどのようなアクションがとり得るものかということを検討しており、したということでございますが、従来私がここで申し上げたかったことは、その都度すでに折に触れてその新聞の関係者あるいは当局の人に抗議あるいは注意を促しておるということでございます。
  53. 清水勇

    清水委員 それではブロック書簡問題は以上で終わりまして、次に、先ほど委員もちょっと触れられておるわけでありますが、特安法のかかわりについて若干お尋ねをいたします。  率直に言って、二度にわたるオイルショック、これを通じてわが国の産業界には、素材産業のような日の当たらない産業と、加工組み立て産業のような日の当たる産業というものが構造的にできて、これが定着化をする趨勢にある。     〔委員長退席渡辺(秀)委員長代理着席〕 なかんずく、今日、素材産業を見てまいりますと、私がくどくど説明するまでもなく、エネルギー多消費型の産業が大部分であり、エネルギーの異常な高騰で打撃を受ける、加えて深刻な不況のあおりを受け、内需が不振にあえいでいるために、率直に言って、素材産業は存亡の岐路に立つなどというような形容が決してオーバーでないような状況にあるのじゃないか。  そういうことにかんがみて、来年の六月で切れる現行特安法、この存廃をめぐっていろいろと通産部内でも検討をされていると聞いておりますけれども、総じてこれまでの特安法は、一口に言うと、過剰な設備廃棄に対し信用供与をして設備廃棄の手続を促進をする、これに主として尽きていたと思うわけであります。いわば後ろ向きの対策中心である。そこで、今後予想される新特安法については、一体通産省はどうするつもりであるのか。たとえば非常にネックになっているエネルギー価格を、かねて議論になっておりますような、原価主義を手直しをして政策料金制などを導入をするなんという電力料金の問題などはどうするのか。その他仄聞をすると、業務提携であるとか共同事業であるとか等々いろいろの構想もあるやに聞かされているわけでありますが、その辺のことを少しまとめてお答えをいただきたい、こう思います。あんまり時間がないものですから、ひとつ簡潔に頼みます。
  54. 杉山和男

    ○杉山政府委員 ただいま御指摘のように、近来わが国の産業の中で基礎素材産業と加工部門が非常に大きな格差を生じてきたということは歴然とした事実でございますが、最近に至りましては、その加工部門の方まで輸出の伸び悩み、ダウンということで勢いが少しなくなってまいりました。それがまた基礎素材産業に反映しておるという状況で、私ども基礎素材産業の将来についてははなはだ憂慮すべき時代であるというふうに考えておるわけでございます。  その対策でございますが、産業界の自主的な努力の方向というのが一体那辺にありやということ、その辺につきましての関係各界のコンセンサスを得ながら、幅広い観点から、単に設備の秩序ある廃棄ということにとどまりませず、業界の再活性化ということのために一体どういう措置がとり得るのかということで、たとえば財政投融資、税制上の措置というものをも含めまして、総合的な立場からただいま検討を続けておるところでございます。  御指摘のありました特定不況産業安定臨時措置法、来年の六月末に期限切れということになるわけでございますが、その取り扱いを含めまして、法的措置の内容につきましても、基礎素材産業の再活性化を図るための対策の一環として、どのような措置が現行の制度に加えまして必要であるのかということを、ただいま検討を重ねておるところでございますす。
  55. 清水勇

    清水委員 そうすると、まだその構想の中身についてはここで御披露いただくほど進んでおりませんか。
  56. 杉山和男

    ○杉山政府委員 現行特安法の内容にもしつけ加うべきものがあるとすれば、先生御指摘生産の受委託あるいは生産の共同化等の事業の集約化などにつきまして、調整が必要であるのかないのかというふうなことになろうと思いますが、しかし、調整の具体的なスケジュールにつきましては、必ずしも独禁法の適用除外規定を大きくつくるというふうなことにこだわらずに考えておるわけでございますが、何分ともにかなり重要な問題でございますし、いろいろ御意見もあろうかと思いますので、私ども、本日産業構造審議会の総合部会が開催されますが、その総合部会のもとに基礎素材産業対策特別委員会というふうなものを設けていただきまして、それでそこには関係業界の方々のみならず、言論界あるいは学界それから労働界の識者の方々にお願いをいたしまして、十分な御意見を承って、その内容、方向を検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  57. 清水勇

    清水委員 私も、素材産業関係の労使の代表等からこれまでもしばしば実情が訴えられ、かつ陳情もいただいております。むろん通産にもいろいろ出されているのだろうと思いますが、概して、たとえば新特安法の制定に際しては、できるだけ独禁法の適用除外といったことについて深く配慮をしてもらいたいというような要望が強いように承知をいたしております。  ただ、その場合に、これは何といったって適正なあるいは公正な競争を排除するというような結果になったりあるいは共同事業に対する出資といったようなものが行われることを通しながら、あるいは業務提携といったようなことが行われる経過から、合併といったような寡占化が図られるとか、これは常々、五十三年の現行法の法案審議の際にも私もいろいろと指摘をした経過があるのですけれども、とかく独禁政策と産業政策というものが対立的に出てくるというケースがこの種の問題をめぐっては多いわけですから、この辺をどうするかということが、一面ではユーザーの、とりわけ末端消費者等にも利害が及ぶわけですから、これは十分な配慮が払われなければならないのではないか。そういう点で、すでに通産側と公取側との認識に多少の相違がうかがわれるというふうに思われるわけであります。意見がましいことは申し上げませんが、この際、公取の委員長から新特安法が今日検討されているのであるが、あるべき姿というものはこうではないかといった所信、所感がございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  58. 橋口收

    橋口政府委員 素材産業不況対策との関連におきまして、特安法の単純延長あるいは改正延長あるいは新法の制定等が伝えられておりますが、まだ通産御当局から正式の話を受けたわけではございませんので、公正取引委員会としての見解をまだ申し上げる立場にないわけでございますが、私どもの希望といたしましては、新しい対策をお立てになります場合に、仮に法律が必要だといたしましても、中身の濃いものにしていただきたいという希望を持っておるわけでございまして、独禁法との関係における調整だけの法律内容ということでは、一九八〇年代の産業政策としては物足りないという感じを持っておるわけでございまして、これは先生がおっしゃった内容とほぼ軌を一にいたしておるわけでございます。  ただ、独禁法とのかかわり合いで申しますと、現在の特安法は、御承知のように、設備の共同廃棄が主たる内容でございまして、それに加えて何らかの調整が必要になるかという問題があろうかと思いますが、いずれにいたしましても、独禁政策の立場からの審査を経ないような形での構造不況対策というものは、現在においては考え得ないということは言えるかと思うわけでございまして、新しい法律案が案として作成され、公正取引委員会に協議がございましたら、じっくり時間をかけて慎重に調整をいたしたいというふうに考えております。
  59. 清水勇

    清水委員 通産側に重ねてお聞きをいたしますが、いずれにしても、来年六月に切れる現行法にかわる新法を、通産側としては国会に提出をしていきたいという考えであるかどうか。それから、その際に、現行特安法と同時期に、ぼくらは企業城下町法みたいな言い方をしていた記憶があるのですが、特定不況地域中小企業対策臨時措置法でしたか、こういう現行法があるわけですが、これも来年六月に切れる。これについては、自治体等のニーズから言えば、地域振興絡みで、むしろたとえば地域指定等についてもっと弾力化をするなど、内容の拡充強化が求められているというふうにも承知をしているわけでありますが、そういう点とあわせてその取り扱いをどうするのか、この機会にお聞かせいただきたい。
  60. 杉山和男

    ○杉山政府委員 先ほど指摘がございましたように、基礎産業、特に石油化学、アルミ等を中心にいたしまして非常な苦況に立っておるわけでございまして、これはわが国の機械加工部門の基礎をなしているのみならず、将来の新しい産業の発展にとりまして、この部門が健全な技術開発力を有するということは、産業構造上非常に意味のあることであろうと思いますし、またコンビナート等の立地から見ましても、地域経済に非常に大きな影響を持ってくる。雇用の面に関しましても、たとえばアルミが八千人の従業員、これに対しまして石油化学十四万というふうに言われておりますが、雇用問題にも甚大な影響がある産業だと考えております。  これらの産業の現状から考えますと、私どもただいまのところで、先ほど申し上げましたような場におきまして、今後、総合的な対策を真剣にかつ慎重に考えざるを得ないというふうに考えるわけでございまして、法律の関係から申しましても、ただいまの特案法が期限切れになりましてなくなってしまってよいというふうには全く考えておらないわけでございます。その辺は先ほど申しましたような形で検討させていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  61. 神谷和男

    神谷政府委員 御指摘の城下町法につきましては、同法に関連いたしまして、現在各地域並びに関連した業種の実態の調査をいたしております。その結果といたしましては、従来指定されております業種以外にも問題の業種が御承知のようにございますし、さらに、すでに指定されております三十二地域以外の地域でもいろいろな関連で問題を新しく惹起しており、対策を早急に要請しておる声が非常に強うございます。また、従来指定されておる地域につきましても、状況がよくなっておるような状況にないことは御承知のとおりでございます。したがいまして、私どもは、この特定不況地域中小企業対策臨時措置法につきましては、期限切れの暁には、むしろ内容を強化いたしまして、先生御指摘のような地域そのものを振興させていくというようなものにさらにウエートをかけたものとして、これを引き続き強化拡充した上で、期限を延長あるいは新しい形で再出発させていかなければならないというふうに考えております。その際、業種に関連して見直すことは当然でございますし、また、御指摘のように、地域指定には基準がございますが、これに関しましてもなかなか厳しいのじゃないかというような指摘も各地域から受けております。したがいまして、これらは基準が先にあるわけではございませんので、地域の実情というものを見ながらよく検討してまいりたいと考えております。
  62. 清水勇

    清水委員 それでは最後に、新エネルギー関連で、NEDOに触れながら若干質問をして終わることにしたいと思います。  この春の当委員会での質疑の際にも、石油をめぐる状況が好転をしている、需給が緩和基調にある、だから一服をしているのではなしに、こういうときにこそ腰を据えてあるいは本腰を入れて新エネルギー開発等に特段の力を尽くすべきではないか、通産大臣も同感であると言われたし、私もついせんだって鈴木首相に行き会う機会もありまして、その点を指摘をした経過もございます。  そこで、感じている点を若干申し上げながら、小松長官から所信を求めるわけでありますが、どうも最近の状況を見ていると、石油代替エネルギーについては、原子力にはそれこそ力がいっぱい入っているけれども、新エネルギーの開発には及び腰なのではないかという感じがしてならぬわけなんです。たとえば先般改定を見た「長期エネルギー需給見通し」、従来のものは六十五年をめどに新エネルギー等で三千八百五十万キロリッターを目標にしていたはずでありますが、改定後はこれを一挙に半分以下の一千五百万キロリッターに下げる。私から言わせれば、何事かと言いたいくらいなんでありますが、これはどうしてそういうふうにべらぼうな改定をなさったのか、まず初めにその辺の真意を聞きたいと思います。
  63. 小松国男

    ○小松政府委員 いま先生御指摘の新エネルギーの研究開発、それからさらに代替エネルギーの開発導入について、最近の石油事情が緩んでいることにもかんがみて若干停滞しているのではないか、その象徴として「長期エネルギー需給見通し」の改定の中で、新エネルギーの数字が、いま先生御指摘のような形で減らされておる、これはどういうことかということでございますけれども、私どもといたしましては、新エネルギーの研究開発、さらに代替エネルギーの開発導入、これは現在のエネルギー政策のまさに三本柱の一本ということで、今後の援助措置、また促進のための対策についても万遺漏なきを期したいということで、しかも非常に長期のリードタイムを要する研究開発でございますので、短期的な需給の動向に左右されずに、積極的にその開発導入を進めたいというふうに考えております。  ただ、今回のエネルギーの長期需給見通しの段階におきまして、昭和六十五年度に実際にエネルギー供給の戦列に参加できる新エネルギーがどの程度になるか、こういうことになりますと、実際にはエネルギーが市場で使われる場合には、これは強制的に使わせるというわけにはまいりませんので、価格の問題が出てまいります。現在の新エネルギーの開発の段階、それからさらにコストの問題、こういうことを考えますと、たとえば石炭液化一つとりましても、最近の石油の価格動向その他から見ますと、コスト的になかなかむずかしいという問題がございます。こういう現状を踏まえて検討いたしました結果、この前の暫定見通しの三千八百五十万キロリットル、これが千五百万キロリットルというふうになったわけでございまして、中身としては石炭液化、太陽エネルギー、オイルサンド、オイルシェールその他の新エネルギーについていろいろのコストその他市場での供給体制を考えて、こういう改定をしたわけでございます。  これはそういう諸般の事情でなっておりますが、ただ、日本の場合には、石油依存度を脱却するためには、当面原子力、これは非常に大事でございますし、実際にこれは価格の面でも、コストの面でもコンペティティブなわけでございますが、将来のエネルギーの供給構造としては、新エネルギーに依存することが大きくなるであろうし、またそうならなければならぬという政策のもとに対策を進めておるわけでございます。特に、新エネルギーについて、六十五年度数字が減ったことによって、先ほど先生が御指摘のような政策面での停滞を問われる心配もあるということで、さらに紀元二〇〇〇年の数字もこの際入れております。その段階では、新エネルギーは六千五百万キロリットルということで、全エネルギーの中で八%程度の供給比率を持ってくる、こういう方向を決めまして、この方向に沿って新エネルギー総合開発機構を中心に、今後ともエネルギーの総合研究開発、特に新エネルギーの開発導入を積極的に進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  64. 清水勇

    清水委員 いま西暦二〇〇〇年の話も出たわけですけれども、いずれにしても、新エネルギーの開発というのは非常にリードタイムが長いわけですね。そしてこれが開発をされ実用化をされ導入されていく、そういう段階にならないとなかなかコストが下がらない、そういうこともあるわけですから、ただ単に、コストが高いから新エネルギーになかなか手がつかない、また消費者のニーズもそこへ向かないのではないかということを言うのではなしに、わが国の資源構造から言っても、どうしても太陽熱を初めとする新エネルギーの最大限の利用というものに政策的なウエートを置いていくということでないと、悔いを残すことになるのではないか。ですから、たとえば今日、来年度予算編成時期を迎えているわけでありますが、そういう意味ではより十全な新エネルギーに関する予算要求をしていくべきだと思うわけでありますが、その辺のこともひとつ承っておきたい。  それから、時間がありませんから、ついでに申し上げておきますと、二年前、まあもうちょっと早い時期ですけれども、いわゆる代替エネルギー法案を審議する際に、いわゆるNEDOというものが新エネルギーの開発導入の中核的な推進機関なんだ、NEDOに今後は新エネルギー開発の重点を移して、政府はこれを高く位置づけながら守り立てていくんだ、こういうことが言われた記憶があるわけでありますし、われわれも、せっかく新エネルギー総合開発機構と言うのですから、それにふさわしいものでなければならないという立場からいろんな注文をつけた記憶もございます。  だが、状況を見ていると、必ずしもそうなっていないんじゃないか、相変わらず工業技術院は工業技術院で補助金を出して新エネルギーの研究開発に当たらしている、何かNEDOとその辺ふくそうしているんじゃないか、こういう感じもするわけでありますし、今日的に見ると、NEDO自身は、新エネルギーの開発の一部を分担しているにすぎないのではないかといった感じもしないではない。これでは本来の看板に偽りありという感じになるものですから、この際、名実ともに新エネルギー総合開発機構にふさわしいような位置づけをすべきなんじゃないか、こんな感じを持っているのですが、いかがでしょう。
  65. 小松国男

    ○小松政府委員 まず、新エネルギー総合開発機構でございますが、これが実際にやっておりますのは、石炭液化、ガス化、それから太陽光発電、それらの新エネルギーの技術開発でございまして、原子力とか核融合とかいうものは、新エネルギー総合開発機構でやっているわけではございません。  ただ、先ほど先生御指摘ございましたように、新エネルギー総合開発機構を私どもつくりましたときは、日本の場合には、どうも新エネルギーを本格的に開発する、それから総合エネルギー企業というものもなかなかございませんので、NEDOにそれを期待したわけでございまして、新エネルギー総合開発機構といたしましては、石炭液化とかガス化とか太陽光発電、こういうものにつきまして、それぞれの分野、分野について非常に優秀な技術力または力を持っている企業を結集いたしまして、その長所を生かしながらそれぞれに研究開発を分担させる。それを分担させて、その中でそれぞれの研究開発管理をNEDOを中心に行って総合的な研究開発体制を進める、こういうことによりまして、民間ベースではなかなか開発が進まない、それからコマーシャルベースになかなか乗らない、こういう問題について積極的に国がNEDOを通じて金を出しながら、その研究開発を進めて、その開発を促進していく。そして特に一般の民間に任せたり、単なる一般的な補助金ということでは、こういう面の研究開発がどうしてもおくれてしまう、こういうことを考えまして、その促進を図る、それから積極的に総合的にこの研究開発を進める、こういうことでNEDOが発足したわけでございまして、その線に沿ってNEDOも着々とその成果を上げておりますし、今後ともその運用につきましてはいろいろと改善をしていかなければいけないというふうに思っております。特にいままではどちらかといいますと非常に基礎的な研究開発、パイロットプラント段階だったわけでございますが、これはどうしてもほとんど政府まる抱えというようなことでもやらなければいけませんので、今後は民間の活力もできるだけ出す。特にこれが企業化段階、こういうことになりますと、さらに総合的な企業のグループ体制、こういうことを管理しながらいろいろ進める。こういう意味でNEDOの実際のやり方もパイロットプラント段階からさらに企業化段階に至るに従いまして、いろいろと介入の仕方それから調整の仕方、NEDOの役割り、こういうものは当然違ってきてしかるべきである、かように考えております。  こういうことで、最近の代替エネルギー開発導入につきましては、特に先ほど先生の御指摘のように、エネルギー事情全体から見て、研究開発を進めるにはなかなかむずかしい環境になっておりますので、今回「長期エネルギー需給見通し」の改定を行いました際に、総合エネルギー調査会の中に代替エネルギーの政策問題を検討するための部会を特に設けまして、代替エネルギーの研究開発導入体制、特にその中でのNEDOの位置づけ、それから今後の研究開発に対してNEDOの果たしていくべき役割り、また今後の運用の改善、こういう問題についてもそこで検討して、先生御指摘のような心配がないように、積極的にこの新エネルギー総合開発機構を活用していきたい、かように考えております。  こういうことによりまして、日本のような脆弱なエネルギー構造の中でリードタイムの長い新エネルギーの開発導入を進めていく、こういうことで来年度予算につきましても、財政事情が非常に厳しいわけでございますけれども、この新エネルギーの開発導入については、決して後退しないように、ゼロシーリングの中でもむしろ助成をふやす、こういう方向で現在検討を進めております。
  66. 清水勇

    清水委員 特別な部会を設け、NEDOのあり方等についても検討している、私もその辺の事情は承知をしております。  そこで、一、二意見を申し上げて見解をお聞きしたいんですけれども、たとえば原子力行政について言えば、長官官房の担当審議官が配置をされていて、その下に幾つかの課があって、全体の調整がそこで図られるように行政機構上整備をされている。ところが、新エネルギーとか代替エネルギーと言われる分野についてはそれがないのじゃないか。だから総合的、横断的な調整機能を持つような、たとえば原子力担当の審議官を置いているような、そういう配置をこの際できないものなのか。あるいはいままでのNEDOの行き方というのは、実際には開発すべき具体的なプロジェクトを個々に民間に委託金を出してまる抱えの方式で研究を進めてもらっている、こういうところに尽きるわけなんですけれども、それだけでは民間の活力をぐっと引き出してくるというところまでどうもいかないのじゃないか。だから、たとえば場合によっては委託のほかに、出資をするとかあるいは補助金を出すとかといったやり方も加味させながら、これを総合的にしかるべく組み立てて、場合によっては民間にも一定のリスクを持ってもらいながら、文字どおり共同で新しい技術を開発していく、そして開発された技術についてはNEDOが、いま部会で検討しているというふうに言われましたが、そういう検討を通しながら、言うところの導入をどう図っていくか、そういう具体的な手段や進め方といったようなものについてもうちょっとエネ庁としてきちっとしておいてもらう方がいいんではないのか、僕はそんな感じがするわけであります。  また同時に、これは最後になりますが、部会がいま検討をし、骨子なるものが新聞によると報告をされておりますけれども、たとえばそういう中で開発テーマを今後は選別をして重点的にやっていくんだというようなことが言われている。それはそれで一つの方法でしょうけれども、だれがどこでそれを選別するのかということがつまびらかじゃない。せっかくNEDOを高く位置づけようとしているわけですから、たとえばNEDOの運営委員会等の中に専門委員会などを設けて、そういう場で選別作業等に当たらしていく。要すれば、全体として新エネルギーの開発については文字どおりNEDOが中核的な推進機関になり得るというような配慮もされてはどうなのかということを申し上げて、御所見をいただきたいと思います。
  67. 小松国男

    ○小松政府委員 まず、いま先生から御指摘のございました新エネルギー総合開発機構をもっと活用するためにエネルギー庁自身の機構にも問題があるのじゃないかというお話でございますが、現在新エネルギー総合開発機構が担当しているプロジェクトは、先ほど申しましたように、ほとんどパイロットプラント段階でございまして、これはかつてサンシャイン計画で進められたものをこの新エネルギー総合開発機構を中心に進める、こういう経緯があるわけでございます。こういうことで、現在工業技術院の中には担当審議官、担当開発官が置かれておりますし、産業技術審議会でこの問題も検討され、さらにこれを代替エネルギーの開発導入という総合エネルギー政策の立場からも検討する必要があるということで、今回、特に総合エネルギー調査会の中に代替エネルギーのための部会を設けまして、これと産業技術審議会を中心に識者の考えを聞きながら今後の政策を進める。それから機構的には、工業技術院、さらに私ども資源エネルギー庁、特にエネルギー政策ということになりますと、新エネルギーはあるいは石炭液化であり石炭ガス化でありあるいは太陽エネルギーの利用、こういうことで関係のところが非常に広くなるわけでございますので、総合的に調整していく、こういうことで機構面、それから審議の面でも新しい角度から今後の進め方を現在検討しているということでございます。  さらに、先ほど先生からお話のございましたように、パイロットプラント段階からさらに進んでいった段階で民間にある程度リスクを負わせるような体制も考えたらどうか。この点につきましても、企業化段階に進むに従いまして、当然民間の負担という問題も今後検討していく必要があるということで、この点につきましても、先ほど申し上げました総合エネルギー調査会の中の部会で検討を行っておるわけでございます。いずれにいたしましても、こういう問題につきましては、今後総合的な観点から政策を進める必要があるということで、産業技術審議会、総合エネルギー調査会が合同である委員会をつくりまして、それぞれの立場からの議論を進めるということでございます。  その段階として、こういう研究開発を進めてまいりますと、どうしても始めたプロジェクトを途中でやめるのはむずかしい。こうなりますと、財政の効率的活用という面からも問題が出てまいりますので、実際に進めているプロジェクトについての具体的な評価の問題、評価次第によってはあるものはやめ、あるものは促進する、こういう相当厳密な選別を加えまして、財政の効率的活用も図る必要がございますので、こういう点についても技術、政策両面からその評価をする必要があるということで、総合エネルギー調査会と産業技術審議会双方から特定の委員を選出した合同の委員会のようなものを設けまして、そこでそういう問題についても検討していく。こういうことでなかなか新エネルギーの研究開発の導入、その具体的な進め方はむずかしい問題があるわけでございますが、今後ともあらゆる面での御意見、知識をかりながら、私どもとしても今後の日本のエネルギー構造を支える一つの大きな柱でございますので、その開発導入については今後とも積極的に進めてまいりたい、かように考えております。
  68. 清水勇

    清水委員 終わります。
  69. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 上坂昇君。
  70. 上坂昇

    ○上坂委員 いま清水委員が景気の問題について質問をいたしまして、長官から大分詳しい御答弁をいただいたわけでありますが、その中で一つ私の考え方を申し上げてみたいものがあります。それは中小企業設備投資が非常にダウンをしているということであります。これを上向きにするという方策がいまのところない。九月ごろになれば、何とか一つの案が出るのではないかというようなお話でもありますが、私は中小企業設備投資は当分だめだと思います。というのは、中小企業のつくっている品物は大体において生活関連物資が多いと思うのです。特に小から零細にかけての企業がつくっている品物は生活関連の物資だと思うのです。いま国民の中に物を買う力がない、したがって品物が売れない、品物が売れないものをつくったらストックになるばかりであって損するばかりだから、これはつくるはずがない、つくらなければ設備投資なんか全然意欲がわいてこないというのは当然のことだと思うのです。先ほど聞いてみますと、物価が安定をしているから可処分所得がふえているのではないかというお答えもありましたが、可処分所得も決してふえてはいない、むしろ減っているというのが実情ではないかと思います。  そこで、やはり何といっても国民の所得を上げるということが大切で、そういう意味で農家の人たちの生活の安定をする、生産者米価だったら生産者米価の値上げをするということは、私たちが考えていることであるし、労働者の賃金、これも上がらなければ物を買う力は出てこない。公務員の人たちに対して仲裁裁定もやらない、人事院勧告が出ても実施しないということになってしまったのでは、ますます所得がなくなって、物を買う力は減ってくる、私はこう言わざるを得ないわけであります。そこで所得減税をやれ、こう言っても、増税なき財政再建であるからこれはとてもだめだ。こうなりますと、一体どこをやったらいいのかわからなくなってくる。  そこで私は、いまおりませんけれども、通産大臣も経済企画庁長官も、現内閣においてはまさに次のポストを、どうなるかわからないけれども、いろいろとうわさされている非常に実力のある方々である。したがって、そういう方々が本当に景気回復の決め手として所得減税を大幅にやるか、あるいは所得をふやす、いわゆる公務員の給与についても断固として仲裁裁定を実施する、人事院の勧告をそのまま行う、こういう決意をひとつ示していただくと、心配されているものがかなり大幅に緩和をするのではないか。そういうことによって中小商工業のつくっている物資が売れ、その物資が売れることによって設備投資動き出す、これに伴って今度は大企業がつくっている素材産業も動く、こういうパターンをひとつつくっていかなければならないのではないか、私はそういう考え方を持っておりますが、このことについて長官の御所見を承りたいと思います。
  71. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済活動全体が活発になりますためにはGNPの半分以上を占めます消費が活発にならないといけないわけでありますが、消費活動が活発になるためには、やはり所得がふえることが必要だというのがいまのお話でございますが、私もその点はまさにそのとおりだと思います。特に実質可処分所得が減るということは、これは全国民がある意味で貧乏することでありますから、全国民が貧乏しながら景気がよくなるということは考えられませんから、やはり全国民が豊かになる過程において経済活動が活発になる、こういう議論は当然のことだと思います。  ただ、先ほど実質可処分所得がふえていないというお話がございましたが、実は去年とおととしはまさにそのとおりでございました。しかし、この春以降ここ数カ月間は物価が二%台に安定をしておりますので、その消費者物価が急速に安定をしてまいりましたので、統計上は実質可処分所得は現実にふえておる、こういう統計が出ております。ただしかし、それは大したことではないじゃないか、こういう御議論であれば、これはまたそのとおりかもわかりません、そう大きな増加ということにはなっておりませんので。ただ、このために消費もややふえておるというのがいまの経済の一つの動きだ、こう思います。ただ、全体として輸出も落ち込んでおりますし、中小企業状態もよくないということでありますから、現在の経済活動は政府見通しよりも相当低い水準にある、こういうことは言えようか、このように思います。  そこで、さらに実質所得をふやすためには公共負担、特に減税が必要ではないか、こういうことが御議論の第一点だと思います。この所得減税の問題につきましては、御承知のように、いま衆議院の大蔵委員会で審議をしておりまして、政府の方は所得減税に対しまして見解があるのですが、現在はその見解よりも大蔵委員会の結論を優先します、そしてその結論が出れば、これを尊重いたします、こういうことをずっと申し述べておりますので、国民経済全体の立場に立って、国民経済に貢献できるようなそういう結論が出ることを現在は期待しておる、そして結論が出ればそれを尊重する、こういうことでございます。  ただ、今回の臨調の答申を見ますと、直間比率が非常にアンバランスになりまして、直接税の負担が大変重くなる、間接税のシェアが低くなる、こういうことになっておるので、直間比率全体を見直せ、こういう趣旨のことが書いてありますので、そういう見直し作業の過程において、この問題を解決することは十分可能でなかろうか、このように私は考えておりますが、これはもちろんこれから政府部内で相談をすることでございます。  それから、人事院勧告とか仲裁裁定制度につきましても臨調は言及しておりまして、こういう制度は臨調としても評価をしている、この制度は尊重したい、こういうことを言っております。昨年の七月の第一次答申は、給与総額を適正に抑制しろ、こういう表現になっておりましたが、今回はそういうことにはなっておりませんで、給与総額がふえないようにできるだけ努力をしなさい、そのためには人事管理を合理化しなさい、合理化の具体的な内容はこういうことをやったらどうですかということで、数項目が列挙してあります。それをやれば、人事院勧告を尊重をしながら、しかも全体としての給与総額がふえないような工夫も可能ですよ、こういうことが書いてありますので、こういうものの取り扱いをどうするかということにつきましては、まだ政府部内で議論を尽くしておりませんので、臨調の答申をこれからいろいろ議論をしていく、これがこれからの課題だ、こう思っております。
  72. 上坂昇

    ○上坂委員 物価が二%台で落ちついていて、可処分所得がかなりふえてきたという見通しがあるということですから、この際、まさに絶好のチャンスだと思うのです。こういう時期に賃上げをやって、そして所得をふやして物の買える力をつくっていくということでありますから、第二臨調も人事院勧告の尊重ということをうたっているわけでありますから、景気回復に非常な意欲を持っておられるお二人の大臣の中で、閣議の中でどうかぜひともそうした面での完全実施の方向に向かって御努力されることを心から願いたいと思います。  次に、第二臨調が出ましたから伺うのでありますが、民間の活力ということをよく言うのでありますが、第二臨調が言っている民間の活力というのは一体何を指しているのか、これについての御見解をいただきたいと思うのです。長官、いかがですか。
  73. 河本敏夫

    河本国務大臣 臨調の答申を読んでみますと、その目標とするところは、精神的には自立自助の精神を取り返せ、こういうことを書いておりますが、具体的には第一に、いまお述べになりました民間活力を背景として活力ある福祉社会をつくれ、こういうことを言っております。民間の活力を背景として、こういう趣旨は、要するに親方日の丸主義をやめて、自立自助の精神で経済社会全体が動くように、そういう方向に持っていけ、そうすると、力というものが出てくる、こういう趣旨でなかろうか、このように私どもは理解をしておりますが、さらに、臨調の第二目標といたしまして、国際社会への貢献、こういうことも書いてあります。  いずれにいたしましても、国際社会へ日本が貢献をすることができたり、それから活力ある福祉社会をつくる、こういうことになりますと、これはやはり相当活力のある経済というものが背景になければならぬ、こう私は思っております。
  74. 上坂昇

    ○上坂委員 活力ある経済、いまお話しで認識はわかりましたが、実を言うと、民間の中に現在そうした活力というものがあるのかどうかということが非常に問題ではないかというふうに私は思うのです。むしろ活力を失っているんではないかというふうに思うのです。  たとえば素材産業にいたしましても、もう設備廃棄する以外に何にもない。したがって、設備廃棄する以上は、今後の見通しの上に立って新法をつくるとか、あるいはまたそれに伴うところの特安法の問題、あるいは不況地域の雇用手当の問題にしても、そうしたものを充実させなければとてもだめなんだ、これ以上やったらどんどん失業者がふえるばかりなんだ、ますます経済停滞していってしまうではないか。したがって、国の政策といいますか、そうしたものに頼らざるを得ないというようなことになってきているのではないかというように思うのです。これは民間の活力というものが失われている証左ではないかというような感じが私はするのです。日本の基幹産業としてここまで日本の重化学工業を育ててきた、そのチャンピオンであった産業ですら、いまそういう結果になっているわけでありますから、民間の活力を引き出すとか民間の活力を利用するとかと第二臨調は軽々しく言うんだけれども、これは高度経済成長時代におけるところの認識の上に立ってそういうことを言っているんじゃないかという気が私はしてならないわけであります。どうもそういうような活力が出てこない、こういうように思いますが、その点はいかがでしょう。
  75. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまは世界経済最悪状態にあると私は思います。ほとんどの国が、いいところでゼロ成長、大部分がマイナス成長、こういうことになっております。日本だけは辛うじて三%成長が続いておりますが、こういう世界全体の動きを見ますと、五十年ぶり世界大恐慌以来の最悪状態である、こういう分析をする人もあれば、戦後最悪状態である、こういう分析をする人もございます。いずれにいたしましても、現在はきわめて深刻な状態にあると私は思うのです。  そういう世界経済の中にありまして、日本経済世界全体の約一〇%のシェアを占めておりますので、非常に大きな影響を受けております。直接の影響輸出が減退をしておるということでございまして、これだけ円安になりますと、もう少し輸出が伸びていいと思うのですが、全然伸びない。世界全体が購買力を失っておる、こういうことだと思います。  そこで、最近の国際会議がいずれも世界経済の再活性化ということを最大議題にして取り組んでいるというのが現状でございますので、現在の異常な状態からすべてを考えていくというのはいかがなものか、こう私は思いますので、とにかく現在の大変落ち込んだ異常な状態を一刻も早く打開していく、これが当面の先決の課題ではなかろうか、このように判断をしております。
  76. 上坂昇

    ○上坂委員 そこで、第二臨調が国鉄の民営論であるとか分割論というものを出してきているわけですね。分割して、最後に今度は民営に移すということでありますが、もし今度のような災害が私鉄の段階で起きたり分散をした形で起きてきたら、私はこれは皆やめてしまうのではないかという感じがしてなりません。  そこで、国鉄を分割して民間の活力を導入すれば、国鉄の赤字は解消するだろうというような発想でありますが、私は、そうした民間的な考え方をとるということであるならば、まず国鉄自体の経営に民間的な発想を入れなければならないというふうに思うのです。それが最初ではないかと思うのです。  私の民間的な発想というのは、国鉄というのは人を乗っけると思っているから間違っているのではないかというのが私の発想であります。というのは、国鉄は切符を売る商売であると思わなければならないのではないか。というのは、あれは前金で買うものでありまして、絶対に値引きはしないのであります。したがって、これを買うのには、本当にその価格どおりのものを持っていかないと買えないのですね。それが切符なんですね。しかも前売りなんです。そうすると、私は人を乗せようと思うからいろいろ問題が起きるので、切符を売る商売だということになれば、いま切符が売れないわけであります。売れないものについては、通産大臣いかがですか、品物が売れなければ、これは民間の感覚から言えば、ダンピングするまでもなくても値下げするしかないわけですね。だれだってそう考えるのです。商売をやっていればそういう発想になるのがあたりまえなんですね。それを高くして売ろうというのであるから、ますます切符は売れないし人は乗らない、こういうことになってしまうのではないかと思うのです。だから、国鉄を分割して、そして民営にするとかなんとかということを叫ぶのなら、まずその前に、国鉄の経営自体に対して、民間としての経営ならばこういうことをやりますよということをやらせてから、それから見なければいけないのではないかというふうに思うのです。  私は、国鉄が国営鉄道であったということは、やはりそれだけの理由があるからあったのであって、先ほど言ったように、この前のような台風があってずたずたにされたら、あれはもう完全に分割なんかしたら倒産だと思いますね。しかも十五兆円も借金をしょって、なおかつあの災害に遭ったら、これは倒産です。しかし、いま国鉄は倒産をしない、これはありがたいことに倒産しないのです。これはやはり国民の公的な足を守っているという国鉄特有の存在価値なんであります。そういう意味からいっても、国鉄に対して、いま、カラスの鳴かない日はあっても国鉄に対する攻撃がない日はないというふうに言われるくらいひどい目に遭っているのだけれども、やはりこれは国営でありますから、これは政府としては擁護をしなければならないと私は思うのです。新聞と一緒になって、報道機関と一緒になって国鉄をたたいていたのでは政府の責任は果たせない、私はこう思います。  そこで、先ほど言ったように、国鉄はまず切符を売る商売に徹すること、これが大切だと思うのですが、こういうものを通じて民間の考え方、民間の活力、民間の経営の方法というものを徹底させていくという形がまず行われて、その後でいろいろな問題が出てこなければならないと私は思うのでありますが、これは通産大臣、いかがでしょうか。
  77. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国鉄の経営に民間の手法を導入するというのは私も賛成であります。ただ、国鉄問題は、これは私がここで論ずる立場ではないと思いますし、せっかく臨調の答申が出ましたので、政府としてこれに対して、いずれ閣議でも説明があります。これを尊重してできるだけ実行していくという姿勢をとっておりますので、そういう立場でこれから全体的に、また国鉄も含めて対処していかなければならぬ、こういうふうに思います。
  78. 上坂昇

    ○上坂委員 余りいい答弁ではないような気がしますが、河本長官、いまの私の説についてはいかがでしょうか。
  79. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、今回の国鉄改革についての臨調の答申を高く評価しております。  まず、さしあたっていますぐにでも何か改革をやるべきことがあるのじゃないかというお話がございましたが、さしあたって十一項目の改革をやれ、こういうことを言っておるわけです。それからこれからの改革のスケジュールをずっと具体的に書いておりまして、私は、この機会をおいて国鉄の思い切った立て直しをやるチャンスはない、臨調の答申を尊重してやるべきだ、このように判断をしております。
  80. 上坂昇

    ○上坂委員 私の考え方については余り賛成していただけないようでありますから、この辺でやめておくことにして、次の質問に移ります。  備蓄の問題でありますが、長官、質問を終わりましたからどうぞ。  現在の備蓄の状況について簡潔に説明をいただきたいと思います。
  81. 小松国男

    ○小松政府委員 六月末現在でございますけれども民間備蓄が六千百二万キロリットルで約百四日分でございます。それから国家備蓄が千百五万キロリットルで十八日分、合計で百二十二日分ということになっております。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、森(清)委員長代理着席〕
  82. 上坂昇

    ○上坂委員 備蓄の量については、原油の九五%製品換算というふうに聞いておりますが、それでよろしゅうございますか。
  83. 小松国男

    ○小松政府委員 先生御指摘のとおりでございます。
  84. 上坂昇

    ○上坂委員 その次に問題なのは、石油備蓄というのは何を目的としておやりになっているのか、もう一回御説明をいただきたい。
  85. 小松国男

    ○小松政府委員 日本のエネルギーの中で石油の依存度というのは非常に高いわけでございまして、最近減ってきておりますが、それでも六四%ということでございます。しかも石油の供給につきましては、中東依存度が大きいとかいろいろの意味で、安定供給の面から問題がございます。こういうことで、しかもわれわれの生活また産業を支える意味で、エネルギーの供給に支障を来しますと、これは経済運営、われわれの国民生活に非常に重大な影響を与えますので、こういう観点から石油の備蓄を行う必要がある、こういうことで、民間備蓄につきましては、法律で九十日の義務づけをいたしまして、昭和五十五年以降大体九十日以上の水準が確保されておる。ただ、これだけでは十分でございませんので、さらに国家備蓄を進めるということで、国家備蓄につきましては昭和六十三年、三千万キロリットル、これを目標に備蓄の基地をつくり、そこに国家備蓄をしていく、こういう方向であります。ただ、現在まだ国家備蓄基地は建設途上でございますので、その間においても問題が起こることを配慮いたしまして、民間の船ないしは陸上のタンク、これを利用いたしまして、国家備蓄も先ほど申し上げましたような十八日分ということで進めておるということでございまして、エネルギーの安定供給のためには、これはぜひとも必要だというふうに考えております。  さらに、国際的にもIEAの場を通じまして、石油の安定供給、これは単に一国の問題ではございませんで、世界全体の問題、特にエネルギー消費国にとっては非常に大きな問題でございますので、各国について石油の備蓄、そういうものについての話し合いが進められ、その決定も受けて私どもとしてもその政策を進めておるということでございます。
  86. 上坂昇

    ○上坂委員 日本の産業の進展あるいは生活の向上といいますか、そういうものにとっていわゆるエネルギーの供給は欠かすことができないものであるということ、これは言うまでもありません。したがって、石油備蓄なり何なりを通じてエネルギーを確保していって国民生活を向上させていくということであろうと思いますが、そうなりますと、それにはまず中東等の情勢の激変が常に予想されている状況とか、あるいは非常に危険な戦争の状態も出てきておるというようなことが考慮をされているものだというふうに私は思います。  そこで、今度問題なのは、石油の方だけは確保したにしても、食糧の方は一体どうなっているかということを考えますと、日本の食糧の自給率というのはまさに三〇%台に下がってしまった。これが一たんとめられるか入らなくなるということになれば、そこで日本はもう石油どころの騒ぎではない。まさにお手上げである。しかも、どうも備蓄がない。いま農協の倉庫には古米あるいは新米はほとんどありません。古、古、古、古と鶏の食べるえさ米ぐらいしかいまのところないというのが実情であります。こうなりますと、石油ばかりふやしたって、食糧がないのに、一たん緩急があった場合には一体どうなるのかということになりまして、はなはだ心もとないと思うのであります。  そこで、私はいつも疑問に思っているのでありますが、通産省は石油には非常に一生懸命であるけれども、現実に人間の生産活動、そういうものをつくり出す食糧に危険が迫っていたのではもう生産どころの騒ぎではなくなる。食糧の自給といいますか、その方面にはどうも目を通してないのではないかという感じがするのであります。  そこで、大臣にお伺いしたいのですが、石油の備蓄ばかりやっていたのでは、食糧はどうなるかというのが私の考え方でありますが、いかがでしょうか。
  87. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 それぞれの省で役割りがあると思います。通産省は、いま工業製品であるとか石油、そうした問題について真剣に取り組んでおりますし、そうした責任を持っておるわけであります。そういう中で、石油というのは、食糧とともに国のいわゆる経済的な安全保障といった非常に重要な意味を持っておる、こういうことで、石油の備蓄に対して、いま申し上げましたように、全力を注いで対策を進めておるわけであります。
  88. 上坂昇

    ○上坂委員 ところで、先ほど清水委員からも出ましたように、アメリカのいろいろな圧力があって、市場を全部開放しろというようなことがあって、農作物は全部輸入をしなければならない、こういうことになりますと、日本の食糧自給率というのはいよいよ低下してしまって、これはまさにどうにもならないような状況になってしまう。そこに非常に大きな問題があるので、通産省としては、これは農林水産省だけの問題であるというふうに等閑視することはできないのではないか。むしろ農林水産省をバックアップして、自給体制の強化に努力をしていただかなければならない。それでないと、石油にばかり頭がいくけれども、食べる方にはさっぱり頭がいかないというふうに言われるおそれがあります。その点はいかがでしょうか。
  89. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろん食糧問題はエネルギー問題とともに非常に重要な課題であると私は思います。したがって、市場開放を進める場合におきましても、私としましても、工業製品等については徹底的な市場開放を進めたわけでございますが、一面において、農産物については、現在の日本の農政の実情、食糧問題の実態からして、自由化をこれ以上大きく進めることは困難であるということを対外的にも説明をして、理解を求めて今日に至っておる、こういうわけであります。
  90. 上坂昇

    ○上坂委員 いま食品産業というのは、実は十八兆から十九兆円の産業に成長しているというふうに言われておりますね。自動車産業が大体十六兆から十七兆ぐらいだと思うのです。そうなりますと、自動車産業よりももっと大きな産業になっている。したがって、食品産業あるいは外食産業としては、アメリカの安い食糧を入れてジュースをつくったりハムをつくる。つまり安い原料で安いものをつくればもっともうかるというような発想になってしまう。したがって、通産省が所管をしている側から農作物の市場開放という問題が出てくるというふうに考えられます。これは非常に重要な問題だと思いますので、この点についても十分調査をされまして、日本の食糧を本当に完全に確保できるような体制に持っていくために努力をしていただきたい。その次に石油備蓄をやった方がいいというのが私の意見なのであります。  そこで聞くのですが、石油需給の将来の見通しについてちょっと御説明をいただきたいのです。
  91. 小松国男

    ○小松政府委員 現在の石油需給の状況は、先生御承知のように、非常に緩んでおるわけでございます。これは先ほど来話が出ておりますように、経済が非常に低迷しているということが一つございますし、それ以外に省エネルギー、代替エネルギーの開発導入が相当進んだ、こういうこと。それから産油国以外の、いわゆるOPEC諸国以外の国の石油生産が相当伸びた、こういういろいろな事情が加わりまして、現在の石油需給は非常に緩和しておるわけでございます。  ただ、今後は、経済回復過程に向かうとか、さらにエネルギー需給全体につきましても、日本のような先進消費国の場合には、代替エネルギーとか省エネルギーの対策が進んでおりますので、石油の需要はそう大きくは伸びませんけれども、発展途上国とか産油国、こういうところの石油は今後とも需要が相当伸びてまいります。こういうことを考えますと、中長期的には石油需給はタイトになってくる。場合によっては供給ネックが出る心配もあります。それから先ほど来申し上げておりますように、石油自身、依存地域との関係で常に不安定な問題もございますので、中長期の問題とあわせて、短期的にも問題が必ずしも起こらないという保証はないわけでございます。  こういうことでございますので、私どもといたしましては、そういう中長期の需要動向に立ちまして、今後とも日本の場合には石油依存度を減らす方向でのエネルギー政策を進める、こういうことで政策を進めておるところでございます。
  92. 上坂昇

    ○上坂委員 石油製品ですが、一日当たりのいわゆる内需量は、七九年で六十九・七万キロリットル、八〇年度で六十二・五万キロリットル、八一年は五十六万キロリットルとなっているようであります。八一年度、昨年度は八〇年に比して九・八%の減になっております。先ほど民間備蓄の問題が出てまいりましたが、現在民間備蓄というのは、九十日の割り当てに対して百四日になっているということは、いま五十六万キロリットルと申し上げましたが、いわゆる一日の内需量を基準にしておられるのか、それとも政府が何か統計で出しておる六十二・五万キロリットルで計算をしておられるのか、ここのところをひとつ御説明をいただきたいと思います。
  93. 小松国男

    ○小松政府委員 民間備蓄の日数を計算する場合には、昨年の平均の消費量をとりまして、それに対して幾日分になるかということで九十日備蓄の義務づけは決まっております。そういうことで、昨年の消費がたしか六十二万ぐらいだと思いますが、それをベースに計算いたしますと、現在のものが六千百二万キロリットルで、百四日分ということでございます。
  94. 上坂昇

    ○上坂委員 そうしますと、五十六万キロリットルに内需量が減っているということになりますと、この五十六万キロリットルでやりますと、これは百四日どころの騒ぎではなくて、もっともっと備蓄日数がふえる、こういう計算になると思います。  そこで、八二年度、今年度について、たとえば八〇年度から八一年度の比較、あれと同じ減り方で物を見ていって、九・八%のマイナスであるとするならば、その分はあるいは石炭に移る、LNGに移る、いろいろそうした代替エネルギーに移っているからだと思いますし、もう一つは、省エネルギーの成果であろうと思いますが、九・八%減ということでありますと、五十万キロリットルになります。五十万キロリットル台で、これを分母にして見ますと、一日の需要量というものは、いまの民間備蓄ですら二百日を超すのではないか、こういう計算が出てまいりますが、これはいかがでしょうか。そういうことはないのですか。
  95. 小松国男

    ○小松政府委員 現在、上半期の石油の消費というのは、前年に比べて確かに落ち込んでおりますけれども、ことしの後半需要がどうなるか、これによって当然来年度の備蓄の九十日分を決める場合には、その数字によって決まってくるわけでございまして、私どもといたしましては、今年度の石油消費は、前半は非常に低水準でございますが、後半若干経済回復その他も見まして、石油の消費量は若干増大傾向に向かうと見ておりますので、先生が御指摘のような日にちに、現在の備蓄水準がその量をそのまま確保した場合になるというふうには考えておりません。
  96. 上坂昇

    ○上坂委員 先ほど経済企画庁長官から聞いても、どうもこの先経済回復見込みがない、設備投資もとてもこれは見込みがない、貿易も盛んにならないだろう。そうしますと、どこを根拠にして回復見込みがあるなんということが言えるのか。来月にならないとそういう結論は出ないのじゃないですか、どうなんですか。私はそこが疑問ですが。
  97. 小松国男

    ○小松政府委員 ちょっと舌足らずでございましたけれども、実は前半の消費が非常に落ち込んでおります一つは、在庫調整がございます。それで在庫を相当減らしておりまして、それが実際の需要にも非常に影響しているということでございますので、私どもとしては、大体上半期で在庫調整は終わって、下半期はむしろ実需がそのまま供給、生産というものに影響されてくるというふうに見ておりますので、そういうことで、それと合わせて経済も後半には回復のテンポに向かうのじゃないか。こういうことを総合的に判断いたしますと、前半の需要の低迷に比べて、後半は若干上昇基調に向かうというふうに考えているわけでございます。
  98. 上坂昇

    ○上坂委員 石油価格をとってみましても、ナフサの需要がますます減って、とてもいまは生産できるような状況にならない。むしろやむなく設備を廃棄しなければならぬというような状況になる。それからトラック業者にしましても、あっちこっちで倒産が出ていて、荷動きが全くないという状況なんですね。非常に大きく石油を使う産業そのものが現実にうまくいかないわけですね。アルミなんかもだめになってしまう。電気の方はどうかというと、もう余りぎみになっている。これからまた別な形が出てくるかもしれませんけれども、いまの状況ではそうですね。私は経済的にはそういう見込みは立たないような状況にあると思うのですね。したがって、ここ当分の間は五十万キロリットル台でやはり推移していくのではないか。そしてまた推移させる中で、石油の手当てをしたりあるいは天然ガスの手当てをしたりその他の代替エネルギーの手当てをするということが必要ではないかというふうに思うのです。  それに、いまOPECのいわゆる指示によりまして、日本は一日に六百万バレルしか輸入はなるべくしないようにということで抑えられておりますね。そうしますと、これは現在の四十九カ所の石油精製工場の日産能力五百九十四万バレル、これの七〇%の稼働率であるそうですから、四百十六万バレルになります。そうなりますと、この六百万バレルのうちで二〇%が製品輸入でありますから、その残りの四百八十万バレルということになりますと、大体いまの能力に合うような状況になってきている。ところが現実には石油精製工場は、皆さんのところにこういう要求をしているのじゃないかと私は思うのです。それは石油業界がいま非常に苦境に悩んでいるのは過重負担の問題である。要するに、三兆円に上る税金を石油から持っていく、それをわれわれは負担をしなければならないんだ、これが非常に大きな負担になっているんだということが第一点。第二点は、備蓄負担のエネルギー全体からの見直しを要求している。いわゆる石油にばかり備蓄負担を負わせているということが非常に経営を圧迫する。したがって石油以外のエネルギーの備蓄に対しても公平にやりなさいという要求が出ているのであります。三番目には、これらを通じて石油安定供給と整合性ある石油代替エネルギーの導入、こういう三点についての要求を出しているはずであります。  私は、もともと石油業界の安定経営を通じてエネルギーの安定供給というものを確保するということがねらいだから、つぶさないようにつぶさないようにと思って一生懸命てこ入れしているのが通産省の実態であろうと思うのですね。そういうことになりますと、この石油業界からの要求というものも、やはり十分頭に入れて考えなければならぬということになります。いま九十日でいいものを百四日も備蓄をしているということになりますと、十四日というものは、これはよけいなものであるというかっこうになります。そうすると、そのよけいな分については、国は一体どうするのか、これを国家備蓄の方に吸収したらいいのではないかというふうに考えるのですね。  しかも、いま石油業界ではどういうことが行われているかというと、実は設備廃棄という問題が現在出ておるわけであります。これはもう私が云々するまでもないと思います。いま六百万バレルの石油精製設備能力のうち、その一七%に当たる日量百万バレルを設備休止をすることはどうかということで、通産省、資源エネルギー庁がこれを決定をしておるということを言っているのであります。そうなりますと、これはますます石油を民間に備蓄をさせることはおかしなことになってくるのじゃないかという感じがするのです。そうすると、ますます負担が多くなって、それを耐える負担ができなくなれば、やはり非常に経営が苦しくなるのは当然であります。ですから、こういう状況を考えると、これからの見通しとして、六十年に二千万キロリットル、六十三年に三千万キロリットルというような国家備蓄の面を勘案しながら、全国で十一地区いま実地調査をやったりあるいは建設途上にあるところもあるわけでありますし、そのほかにもいろいろ探索をしているというような状況でありますが、これらを再検討をして、そして現在動きのとれない民間備蓄の面を十分手当てをして、民間備蓄で余剰になる分を国家備蓄の方に吸収をしていくことによって、お互いの立場というものの安定を図るということが必要ではないかというふうに思うのですが、それはいかがですか。
  99. 小松国男

    ○小松政府委員 いま先生御指摘のように、石油精製業界は非常な苦境に立っておりまして、そういう面から見ますと、確かに備蓄も経営面を非常に圧迫するようになっているわけでございますが、先ほど現在の民間備蓄の水準が百四日分というふうに申し上げましたけれども、これは法律上の義務づけは九十日でございますので、今後の動向いかんで民間としてはもちろん十四日分は取り崩しが可能なわけでございます。ただ、取り崩しが可能ではございますが、国家的見地からすれば、できるだけ備蓄の量は多い方がいいわけでございますので、そういう観点から、国家備蓄の方は逆に今後とも三千万キロリットルを一つの目標にしまして積み増していくという方針は、従来どおり続けていきたいというふうに思っております。  それから、民間の備蓄負担については確かに厳しい状況でございますので、現在も備蓄の石油の購入資金の融資、それからそれに対する利子補給というものをいたしておりますが、この備蓄対策といいますか助成についても、今後ともさらに民間の負担を減らす方向での対策を現在検討いたしております。こういうことで、民間にも負担をできるだけ減らす形で九十日備蓄を守っていただく、それから政府としては必要な備蓄をできるだけ早く積み増していく、こういう方向で石油の問題を解決していきたいというふうに思っています。
  100. 上坂昇

    ○上坂委員 時間が迫ってまいりましたから、ここでちょっととめておきまして、石油公団の方いらしておると思いますからお伺いをいたしますが、石油公団は、鹿児島県からの依頼によって志布志湾のいわゆる備蓄基地の調査をしたのかということが第一点。  それから、九月にそのフィージビリティースタディーの結果を一応公表されておるわけでありますが、これはどういうふうにいま解釈をしたらいいのかということが第二点。  それから通産省には、この志布志湾のいわゆる石油公団の調査については、その時点でどういうかかわり合いを持っているのかということをお尋ねしたいと思います。
  101. 松村克之

    松村参考人 お答えいたします。  志布志のプロジェクトにつきまして、石油公団が昭和五十五年度から五十六年度にかけましてフィージビリティースタディーを行ったわけでございますが、この経緯は、私ども先ほどからお話ございますように、三千万キロリッターの備蓄をするということで、国内の各地方自治体に御照会いたしまして、備蓄の適地というものを探したわけでございます。その結果と申しますか、鹿児島県の方からも志布志についてFSをやることについて御同意いただいたということで、私どもの方でフィージビリティースタディーをやった、こういう経緯でございます。  第二番目に、昨年の九月にフィージビリティースタディーを完了いたしまして、報告いたしたわけでございますけれども、御承知のとおり、このプロジェクトにつきましては、その対象地域が国定公園に一部含まれているということがございまして、鹿児島県の方が環境庁といろいろその国定公園との関連について調整をなさったわけでございますが、その結果、環境庁との間でFSの案から若干離れまして、これにかわる代替案というものを鹿児島県の方で御検討されまして、これを本年の二月に発表されたわけでございます。この代替案については、環境庁の方でも検討に値する案であるというふうに評価しておられるというふうに伺っているわけでございますが、その線に沿いまして、県が現在その代替案について環境アセスメント等の調査を進めている、こういうふうに聞いております。
  102. 小松国男

    ○小松政府委員 ただいま松村理事の方から経過についてはお話があったわけでございますけれども、通産省といたしましても、現在県と環境庁との間で改定案について、その環境問題を含めた協議が行われておりますので、その結果を見守るというふうに考えております。  ただ、いずれにしましても、本プロジェクトについては、公団としてのフィージビリティースタディーが一度行われまして、それに関連して、志布志地区に備蓄基地が必要である、こういう点につきましては、私どもも全国的な立場から考えました場合に、志布志の地域における、たとえばオイルロードの上にあるとか、それから港湾その他の施設が非常にいいとか、それから全国的な備蓄基地の配置とか、こういう面から見ますと、場所としては適当であるというふうに考えております。  ただ、いずれにいたしましても、環境問題というのは非常に大きな問題でございますので、現段階におきましては、環境庁と県における環境段階での調整問題を見守っておるというところでございます。
  103. 上坂昇

    ○上坂委員 そこで石油公団は、知識と経験の豊富な学識経験者等からなっている、いわゆるいまの立地可能性の調査を行った、もう一つは景観の分野における面から景観検討委員会等もつくってこれをやった、こういうふうに言っているわけでありますが、私が先ほどから問題にしている志布志湾というところは、非常に水産資源の豊富なところであります。したがって、国定公園だから景観だけを対象にしてやるとかということだけでやったのでは、私はいけないのではないかと思います。とにかく海の中に島をつくるわけでありますから、しゅんせつもするわけでありますから、そこへもってきて三十万トンのタンカーを入れる航路もしゅんせつをしなければならない。また沖合いのバースもつくらなければならないというような状況なんでありますから、あのそんなに大きくない湾は、私は必ず変化をすると思います。     〔森(清)委員長代理退席、委員長着席〕  そういう意味では、先ほどから言っているように、食糧が非常に不足をして、しかも二百海里の設定以来遠洋から駆逐されている日本の漁業としては、どうしても沿岸漁業に頼るしかない。そうすると、その沿岸漁業を振興させるということが非常に大きな問題であるわけであります。聞くところによりますと、魚礁をつくるからいいだろうとか、あるいはそういうものを設けていろいろ手当てをするから大丈夫だなんて話もありますが、一たん海流、海底の生態が変わってしまうと、これは魚の住むところでなくなってしまう。大変なことであります。しかも、あそこは湾でありますから、太平洋の外海にあるのとは違いまして、これはもう大変な状況になると思うのです。そうなりますと、何で好きこのんであそこの志布志湾に備蓄基地をつくらなければならないのかということが非常に疑問になってくるわけであります。むしろそうした食糧の確保の面からいっても、私は、そうした水産資源の豊富なところにおいては、それは確保していくということをまず頭の第一番に置くのでなければ、本当に日本を愛する心ではない、こういうふうに断言せざるを得ないのです、実際問題として。何でもかんでも未開の、全然手の入れてないところをつぶしていって、開発をすれば全部よくなるようなことを考えているけれども、これは全くの誤りであります。  この前酒田市では、日本一と言われる住金のアルミ工場が撤退したではありませんか。どんどんそういう状況になって、そんなに開発をしたからといっていいものばかりじゃないのです。むしろ自然に逆らわないで、できるだけ自然を保護することによって私たちが生活をするというところに、二、三日前の災害というものを防ぐこともできるのであります。そういう面からいっても、私は、志布志湾に対するこうした石油備蓄の基地を設定するということを頭に置く前に、それじゃなくて、先ほど言ったように、いま日本の石油の消費量も減っているんだし、そこのところは十分考えて、民間の経営にも安定を与えるような方策の中で、もう一回再検討すべきである、これが私の意見であります。  これは、私は石油公団にも不満でありますが、石油公団は、通産省から言われたから、あるいは環境庁から言われたから、国定公園だからと言って環境ばかりやっている。環境の中には海の中だってあるわけです。海の中の環境もやはり調査をしてもらわなければ困るわけであります。そういう調査はやっていますか。お答えを願います。
  104. 松村克之

    松村参考人 ただいま御指摘ございましたように、志布志につきまして、現在鹿児島県がアセスメントをやっているわけでございますが、このアセスメントの内容といたしましては、もちろん御指摘のございました環境庁との関係の景観の問題というものもございますけれども、そのほかに、当然やはり付近の漁場あるいは漁業活動についての影響がどうなるかということを十分検討の内容に含めているというふうに聞いているわけでございます。したがいまして、そのアセスメントの結果によりまして、私どもといたしましても十分これを、先生の御指摘のとおり慎重に検討していくつもりでございます。
  105. 上坂昇

    ○上坂委員 次の問題がありますから、結論として申し上げますが、私は、この志布志湾のいわゆる石油基地の設定計画については、これは再検討をして、やはりいまの石油の需給の見通し、あるいはその中での備蓄のあり方、石油業界全体の経営の安定、そうしたものを勘案をしながら、新しくまたそれにいわゆる食糧安定というもの、そういう視点に立って再検討することを私は要求をして、これは要望じゃありません、要求をして、この質問を終わります。  次に、大店舗の問題についてお伺いをします。  昨年、通産省がかなり厳しい指導方針を出されてから、ナショナルスーパーにおいても大型店の出店についてはかなり自粛をしてまいりました。ところが、一月に入りまして、これがもとに返りましてからは、いままでの既成の出店計画に新しい出店計画が重なりまして、非常に大きな問題がまたぞろ各所に出てきております。私ども調査では、現在約九十七カ所にこうした問題が生じているわけでございますが、これは全部出すわけにいきませんから、一つにしぼって出したいと思います。  広島のスーパーのフジの出店についてであります。このフジというのは地元資本であります。したがって、ナショナルスーパーではないからどこまで規制の対象にするかということになりますと、これはある程度考えなければならぬというような観点に立つかもしれませんが、現在、このスーパーフジの出店の問題につきましては、五条の提出の段階に来ているというふうに言われておりますが、現状の御説明をいただきたいと思います。
  106. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 スーパーフジの出店問題でございますが、御存じのとおり、五十三年に出店の表明をしまして後、五十五年の四月に三条の届け出が行われましたので、五十五年の五月から事前商調協が行われておりまして、一年三カ月、十七回の審議をいたしまして、五十六年、昨年の八月二十八日に全員一致で結審をいたしております。この後、本年の一月十四日に五条の届け出が行われたわけでございます。届け出が行われましたので、商工会議所の方は、今回の大型店についての指導方針がはっきりするまで時間をかけまして、今回の商調協改善措置が明らかにされた後に商調協を開いて行うということで、ことしの三月末に新しい商調協が編成をされましたので、以後正式の商調協の審議が現在までに四回行われております。四月二日、四月十六日、五月二十四日、六月四日と四回行われております。ここでは当面の大型店抑制対策の周知徹底、それから事前商調協での過去の審議経過、内容に関する説明などがなされております。  地元におきましては、昨年八月の事前商調協の結審以後に反対運動が表面化いたしておりまして、こういった反対運動がございますので、広島通産局は商工会議所に対しましてもいろいろ指導を行ってきております。指導の内容は幾つかございますけれども、この反対運動と申しますか反対者の主な主張の一つに、事前商調協の委員についていろいろ疑惑があるというような点もございますので、新しい商調協の編成に当たりまして疑惑を招かない構成にするようにいろいろ指導いたしまして、そういう商調協に編成をしたはずでございます。それからスーパーフジに対しましては、地元との話し合いをさらに徹底して行うように指導いたしております。それからまたいろいろ出ました疑惑につきましては、商工会議所に対して十分その事実関係を確認するように指導いたしております。  現在のところは、そういった指導のもとに事前商調協の経過、結審内容に関する説明、あるいはそれを踏まえた上で十分審議が行われるように指導いたしているところでございます。
  107. 上坂昇

    ○上坂委員 いま経過をお聞きしましたが、その経過の中で、通産省の方としても十分いろいろな問題はつかんでおられると思いますが、いま、地元との話し合いを実際に進めるようにフジ側に対して要請をしているということでありますが、この地元という範囲、一万三千平米でありますからかなり大きな出店であります。したがって、広島等の状況からしまして非常に大きな都市でありますから、どの辺までの範囲が地元という形に該当するのかどうか、これは非常にむずかしいところだと思いますが、影響のあると思われる商店街に対しては、できるだけ十分説明をするようにひとつ指導をしていただきたいと思います。  それから、商調協の審議の段階で委員が更迭をされたりなんかして、新しい委員が決まったようでありますが、実は商調協の委員に対して菓子折りを持っていったとか、菓子折りだけではなくて、実を言うと、菓子折りと一諸に封筒を持っていったとかいうような話が非常に出ておりまして、私のところにこういうテープ、私はもらったのだけれども返したという人のが吹き込まれておるテープもありまして、事実のようであります。  そこで問題なのは、通産省が「大規模小売店舗の届出にかかる当面の措置について」という通達を五十七年一月三十日付で出しておられる。この一番最後の項に「商業活動調整協議会における公正な審議の確保について」というのがありまして、「地元での出店説明等にあたり商調協委員の公正な立場が損なわれるような行為を行わないよう厳に慎まれたい。」こうあるわけであります。実はこれに抵触をした。フジ側ではそんなのは持つていかないというふうに言っているようでありますが、もらった人がいる限りにおいては、持っていったのは事実であります。その中に一緒にあった封筒の中に札が入っていたかどうかはわかりませんけれども、このテープによりますと、そういう人もいるわけであります。  そこで問題なのは、これをいろいろ調査をしたり通産局に要請をしたところが、通産局の役人が、菓子折りぐらい持っていくのは常識なんだから余り目くじらを立てない方がいいというような意味のことを言っているということであります。確かにわれわれも、お中元であるとかお歳暮であるとか、あるいはちょっと訪問するときにお菓子を持っていったり一升瓶を下げていったりすることはします。しかし、現実に商調協というのは本当に大変な仕事を負ってそういう検討をしている時期においては、出す方も出すべきではないし、受け取る方も受け取るべきではないと思うのです。  ところが、通産省の役人が、こういう段階でも菓子折りぐらいしょうがないだろうと言うのは、やはり非常な誤解を招く。その菓子折りの中に、大岡越前守のあれではないけれども、何十万か金貨なんか入っていたらこれまた大変であります。恐らくそういうことは重いからやらないだろうと思うけれども、封筒に入れて持っていく分には、札だから軽いわけであります。ちょっと置いてくればすぐわかる。簡単に受け取ることができるわけであります、だれにもわからないようにして。ですから、そういうことを通産省の役人が言うようでは非常に困るのであって、その点を十分注意をしてもらいたいと思うのです。  それから、大体通産省の役人で各通産局にいる人たちは、いわゆる中央の考え方というものをよく理解をしていないのではないかということが見られる。室長とかなんとかに聞きますと、そんなことはない、本当に十分指導していますというふうに言うのだけれども、本当に徹底した指導が行われているかどうかということになると、やはり疑問を抱かざるを得ない、そういう言動が多いのであります。これについては十分注意をして、地域の人たちを刺激をし、誤解を招かないようにひとつやってくれるようにしていただきたいと思うのです。これらについて何かわかっていることありましたらお答えを願います。
  108. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のとおり、商調協の審議の公正さが疑われるということは大変問題でございますので、各通産局を介しまして商調協の委員にもそういう点について十分自覚を図るよう徹底を図っているところでございます。過去においてもやっていたわけでございますけれども、最近も商業活動調整協議会の規則を定めました際に、その中で「委員は、常にその品位と信用を保持するとともに、公正かつ誠実にその職務を遂行しなければならないものとする。」「委員がこの規定に違反したと認める場合には、当該委員に弁明の機会を与えた上で、これを解職することができるものとする。」ということで、委員の職責の誠実な遂行をさらに解任ということで裏づけをしているわけでございまして、御指摘のとおり、私ども公正さが疑われないように十分徹底を図ってまいりたいと考えております。
  109. 上坂昇

    ○上坂委員 そこでもう一つ、新しい商調協ができたわけでありまして、これから本格的な商調協の審議に入るというふうに思いますが、前の事前商調協におけるところの審議そのものが、いま言った疑惑に包まれているのであります。したがって、どのような形での商調協が行われるかわかりませんけれども、前の三条出店届け、三条届けの段階に戻していわゆる審議をされるようにひとつ指導していただきたいと思いますが、その点はどうでしょうか。  それからもう一つは、商調協以外の人たちが入り込んで、そしていろいろとアドバイスをしたりあるいはむしろ会議をリードしたりするというような傾向が見られた、こういうことは新しい商調協においては絶対になくすように通産局を通じて指導されるように願いたいと思います。いかがですか。
  110. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、広島の商調協は新しい方針に基づきまして委員の入れかえをやっておるわけでございます。すでに五条の届け出がなされておりますので、この新しい委員に従来の問題点、経緯その他を十分説明をいたしまして、そこで十分な審議を行った上で最終結論を取りまとめるように指導いたしているところでございます。  それから、委員以外の者が出ておったではないかという御指摘でございますけれども、以前は商調協につきまして必ずしもそういった点で十分ルールが確立してなかった面もあるようでございます。広島の商調協の場合には、商調協に出ております商業者側の代表の一人、市商連の会長さんのところの専務理事が商業者の意見を代弁し得るという認識で、従来慣行として出席を認められていた事実があるようでございますけれども、御指摘のように問題がございますので、今後そういうことのないようにすでに措置をいたしております。したがいまして、新しい商調協で十分な審議が行われるということを期待しているわけでございます。
  111. 上坂昇

    ○上坂委員 それからもう一つ、いわゆる通産局の人たちが言っているのは、商調協が開かれると、まあ開かれなくても、とにかく三条の段階で商調協のある程度の結審が出ている限り、もう五条届け出だ、五条届け出が行われれば、四カ月たてば、これはもうやっちゃうんだ、大店審に回ってしまうんだ、こういう形に指導をしているというのか発言をしているようであります。そういうところから、商調協にかけたらもう終わりだ、商調協にかかったらもう出店の問題については解決なんだというかっこうになってしまって、これでは困るというところから、いわゆる商調協にはかけさせないようにすることが一番大切だという運動が現実に起こってきているわけであります。したがって、そういう運動体といいますか、そうした連絡協議会が全国的にできているわけでありまして、これらの人たちの意思を無視して、これからの出店問題についてスムーズに取り組むことはできないのではないかというふうに私は思います。  そこで、いま言ったような、何でもとにかく五条を届け出れば、もうあと四カ月で決まりなのだというような認識を与えないで、やはり十分に商調協でもこれを討議をする、あるいは地元とも十分に話し合いをする、そして理解を深める。その中で正しい判断の結審、結論を出していくというような形での指導をしていただくようにひとつお願いをしたいと思います。  それと、先ほど言いましたように、小売商業の連絡協議会といういままでと違った運動体、商店街を中心とした運動体があります。これは運動体ではなくて、むしろ大きな組織となっております。この組織に対しても、十分に通産省の意向あるいは通産省の考え方というものは理解できるように連絡をとって、そしていくようなふうにこれからしてもらいたいと思いますが、その点についてどういうふうにお考えになっておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  112. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘の点でございますけれども、小売商の意見というものが商調協に十分反映しなければならないという点は私ども全く同感でございまして、そういう意味で、商調協の審議の中で的確に小売商の意見が反映するように指導してまいりたいと考えているわけでございます。
  113. 上坂昇

    ○上坂委員 いま私が申し上げました小売連絡協というのは、大型店の進出に反対する全国地域小売商団体連絡協議会という団体であります。これは御承知だと思いますが、静岡市に本部がありますので、これとも十分の意思の疎通を図るようにひとつお願いをしたいと思います。  それから、最後になりますが、いまこうした問題が、広島一つを取り上げましたが、各地において出ております。このケースを類型別に分けてみますと、私は三つの段階があるのではないかというふうに思うのです。  一つは、これは最近起きております、地方自治団体が誘致をする、いわゆる都市再開発に基づくところの問題であります。これがいま非常に多くなってまいりまして、ここでのいわゆる四者協議であるとかというようなものが行われて、首長がどうであるとか商工会議所がどうであるかというような問題が出ております。これが一つのケースだと思います。  もう一つは、商工会議所や商工会が中心になっている問題が一つあると思います。これはいろいろ問題がありますが、たとえばそこの商工会議所の会頭が建設業者であって、すでに建物を建設することを請け負っているというケースがあったりいろんな問題があります。  もう一点は、商調協の進め方に非常に大きな問題がありまして、紛争が起き上がっているというケース、これはいま言いました広島のフジ等の問題になると思います。  こうした三つのケースにわたっていると類型できますので、これらのことを十分勘案の上に、これからの出店計画については十分な指導をしていただくようにお願いすると同時に、商調協のあり方については、特にやはり問題がございまして、先ほどから申し上げましたように、いろいろなお遣い物を持ってくるとか、いろいろな疑惑の中に置かれるということは、商調協が任意の団体であって、何ら法的な裏づけのない団体であるということ。それからもう一つは、その会議の内容というものは一切公表をされないで、だれがどんなことを発言したかということに対する責任を持つ必要がないというような問題があります。  そこで、こうした商調協のあり方についても、やはりこれは今後改正をしていく必要があるのではないかというふうに私は考えておりますが、これらについても所見を伺って、私は質問を終わりたいと思います。
  114. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 幾つかの点を御指摘になりましたが、地方自治体が都市開発に絡んで特に企業の誘致に努力をする、大型店の誘致に努力するという問題でございますが、これにつきましては、当然に大店法の精神にのっとりまして小売商業者の意見が十分反映されなければいけませんから、そういう意味で、そういう問題につきましては、市の方に指導してまいりたいというふうに考えております。  それから、商工会議所の会頭その他役員に疑惑を招く者があるようだという点、御指摘がございましたが、これは先ほど申し上げました商調協につきまして、その設置の根拠を実はせんだって通産省の省令で定めておりまして、この省令の中で、先ほどもちょっと申し上げました委員の職責その他を決めておるわけでございます。ですから、この商調協は一応通産省の省令に基づいてつくられておる。したがって、法的根拠は以前はなかったわけでございますけれども、一応手だてを講じたということになっております。  それから、その場合の、商調協の委員で審議する事案との関連の度合いに応じて、問題によっては審議に加わらないようにするというような問題につきましても、これはいろいろ地方の実情もありますので、一概には言えませんけれども、一応の基準を定めまして、これの徹底を図っておるところでございます。  その他、運営方法などで、先ほど指摘がありました、秘密主義ではないかという点でございますけれども、これは従来からいろいろ議論もございますけれども、やはりこの会議の議論がそのまま外に出るということは、審議における自由な発言を妨げるという意見もございますので、御指摘のように、他方で余り秘密主義に流れては困るという面もございますけれども、そういう点も勘案しながら、議論の結果がはっきりするように指導はしてまいりたいと思っておりますけれども、議論の個々の発言につきましては、公開するのはちょっと私どもいまのところは不適切ではないかと考えている状況でございます。  ただ、いずれにしましても、御指摘のありましたように、小売商の間にいろいろ運営につきましても議論のあるところでございますから、運営方法については、今後さらに改善の努力を重ねてまいりたいと思います。  以上でございます。
  115. 上坂昇

    ○上坂委員 終わります。
  116. 渡部恒三

    渡部委員長 長田武士君。
  117. 長田武士

    ○長田委員 通産大臣にお尋ねをいたします。  最近景気が非常に低迷をいたしておりまして、二番底からどうしても脱却できない、こういう状況でございます。通産大臣、中小企業を通して景気の停滞というのはどういう感触でございますか。
  118. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かにおっしゃるように、経済の情勢は悪いというふうに考えております。生産それから設備投資、貿易等すべて悪くなっておる。そういう中で、中小企業は特に設備投資の方は、御案内のように、昨年に比べますとぐんと落ち込んでおります。これは中小企業金融公庫、商工中金等で調べてみましても、その状態がはっきりと出ておるわけでありまして、これはやはり秋以降の景気がどうなるかということで、自信がないといいますか、先行きの見通し不安ということから、そうした投資がおくれておる、こういう状況でありますし、また基礎素材産業が悪いということで、下請産業であるところの中小企業にだんだんとしわも寄ってきておる、こういう状況でございますので、いま倒産の方は大きく出ておるという情勢ではございませんけれども、しかし、いま油断はできない、全体的にぐんと沈んでおるものですから、油断ができない状況ではないだろうか、そういうふうに考えて心配をいたしておるところであります。
  119. 長田武士

    ○長田委員 大臣は景気の現状につきましては、このままでは失速しかねない、歳出カットだけでは財政再建は無理である、景気刺激による自然増収を図るべきである、このような積極的な姿勢を示しておるわけであります。  そこで、現在の景気の実態は、いまお話がありましたけれども輸出それから在庫調整、これはまた積み増しがだんだんふえております。さらには中小企業の動向、鉱工業生産などにつきましては非常に予断を許さない、そういう状況でございます。また、大企業設備投資が非常に減額修正されるというような動きも実は出てきております。これはとりもなおさず経済の先行き見通しという点がどうしても不安が出てきておる。実際問題、設備投資しても、それだけ生産性を上げても、物が売れない、それでは設備投資した価値がないということで回収もできないということでありますから、当然悪循環ですから、そういう形になると思います。そこいら具体的な手の打ち方でありますけれども、どういうふうに考えていらっしゃいますか。
  120. 神谷和男

    神谷政府委員 御指摘のように、中小企業中心といたしましてかなり苦しい状況にございますし、特に、大臣から御答弁申し上げましたように、中小企業の中では設備投資の沈滞、低迷というのが非常に際立っておるわけであります。これは先生御指摘のとおり、経済現状、先行きに対しての確信が持てない、霧の中で動いておるような状態であるということでございますので、カメが甲羅に頭も手も引っ込めるように、全く身を縮めて、新しい技術を導入して前向きの設備投資をやるなどというようなことは考えもつかない、こういう状況になっており、また、この設備投資の減退そのものが景気の足を引っ張り、景気そのものを下降させておる、こういう状況にあるわけでございまして、現在わずかに期待の持てるものは、一つは物価の安定に伴う実質消費支出の伸びを期待していかなければいかぬわけでございますけれども、これもまだはかばかしくない状況で、回復の兆しがはっきりと手ごたえのあるようには見えておらぬわけでございます。公共投資前倒し効果は、七月−九月というのが大体一番効果の出る時期でございますので、この状況も見ていかなければならないと思っております。地域別に若干コンクリートブロック等動き出した地域もあると言っておりますが、また別の地域ではまだ全然感じられない、こういう状況にございますので、特に七月−九月の状況をよく見きわめ、いろいろな統計資料並びに生の声というものを聞きながら、下期についての判断をしなければならないと思いますが、やはり御指摘のように、いろいろ金利情勢もアメリカの高金利でなかなか動きがとれない、金融関係も打つ手そのものが縛られておる状況にございますし、さらには財政的にも歳入欠陥あるいは財政再建の途上にあるというむずかしい状況にございますので、どの手、この手もしかく簡単にはまいりませんけれども、しかし、やはり経済あっての財政であり、経済あっての行政でございますので、それらとの比較勘案、総体的なバランスをどのように考えていくのかというのが一番大事な問題ではないかというふうに考えております。  したがいまして、この七月、八月の状況というものを見きわめた上で、必要な対策というものは、その緊急度に応じながら、やはり非常な制約のもとにおきましても、総体的判断を持ってこれを判断し、決定していくということが必要であろうというふうに考えられるわけでございます。日本経済そのものがよくならないで、中小企業だけがよくなるということはあり得ませんので、そういう意味におきまして、私ども中小企業並びに商工関係の立場から景気の状況を判断しながら、この秋に予定されております政府部内の検討に臨んでいきたいと考えております。
  121. 長田武士

    ○長田委員 通産大臣、中小企業庁長官は七月、八月の様子を見たい、こういうことだろうと思いますね。そういう点で、経済は生き物でございますから、やはり後手に回るということが経済の大きな失政になりかねない、私はこういう感じがするわけであります。四月以降今日に至るまで景気の動向というものはほぼ見当はつくのだろうと私は思います。中小企業でとらなくてはならない方策、具体的に——実際問題臨調としては、増税なき財政再建、財政措置をやるにも選択の幅が非常に狭められております。そういう中でできる方策というものは具体的にどういうことがあるか。たとえば七月、八月を見て、もう八月ですから、八月の様子を見て依然として二番底から脱出できない、こういうことになりますと、当然手を打たなければならない、できる手というのはどういうことでしょうか。
  122. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま中小企業庁長官がお答えいたしましたように、中小企業だけよくするということはなかなか困難で、中小企業をよくするためには、やはり経済全体を押し上げていくということが大前提であろうと私は思います。ところが、最近は全体的な経済不振の中で、中小企業が弱ってきておるということでございます。  そこでわれわれとしては、四−六の経済指標が九月にははっきり出てきます。大体その方向は申し上げておるようにわかってきておるわけでありますし、それが七月、八月も依然として続いていくならば、いま上半期の、われわれとしてはたとえば公共事業前倒し等を進めてきておるわけでございますが、下半期どうするかといったような課題についても、はっきりした結論を八月の終わり、九月には出さなければ、中小企業の経営者にとっても自信が持てない、こういうことになるわけですし、あるいはまた住宅建設なども中小企業に非常に大きな関連があるわけでございますが、その住宅の建設の状況を見ると、どうもいまの状態でいけば百十四、五万といったらいいところだろうと思うのです。政府は百三十万戸と言ってきておるわけですから、百三十万戸建設するのと百十数万戸では中小企業に与える影響というものは非常に大きいわけでありますから、この住宅建設の状況が続くということになれば、われわれはあらゆる政策を考えて、そして百三十万戸は、それだけ日本経済の潜在的成長力というものはあると私は思うのです。ですから、百三十万戸を確保するように、改めてまた対策を打ち出すということも必要であろうと思いますし、それから下請産業、特に構造不況業種、基礎素材産業、この下請が相当なしわ寄せを受けておるわけでございます。そういう下請産業を守っていくためには、基礎素材産業に対する思い切った措置というものも考えていかなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  そうした方針とともに、いま中小企業はいろいろと具体的に厳しい苦しい状況にある。その倒産を防止するための措置であるとか、その他今日五十七年予算を活用しての中小企業の支えといったものは、全力を挙げてわれわれとして打ち出していかなければならない、取り組んでいかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。  中小企業に対する金利を下げるというようなことは、中小企業に大変活力を出させる一つのいい方法であると思いますけれども、いまのアメリカの高金利の状況がこうして続いておる、こういう状況では、いまのわが国の金利体系を変えるということは、われわれとしては、特に中小企業に配慮したいというような気持ちは持ちながらも、これはなかなかそう簡単にはいかない、こういうふうに存じておるわけであります。
  123. 長田武士

    ○長田委員 いま大臣から住宅建設の話が出ました。実際問題、私は百十万戸前後だろうという感じがするわけです。これも予算編成のときには、金利の問題あるいは融資枠の問題、建設した人に対する住宅の減税の問題も含めて、このような施策をいろいろ施したわけでありますけれども、依然として住宅建設は上向きにならないということであります。と申しますのは、われわれが考えているよりももっと景気そのものが深刻であるということが実態であると私は思うんですね。  そこで、この景気対策でありますけれども、私はその対策をする時期がきわめて重大だろうという感じがするわけであります。私は、景気対策は八月中に決めて九月の実施、このくらいの早い手を打たないと、経済はますます落ち込むであろう、そういう感じがするわけでありますが、通産大臣のお考えはどうですか。
  124. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かにいまおっしゃるように、景気対策というのはタイミングが非常に大事だと思うわけでありまして、私どもは早く何とかしなければならぬというような感じを持っております。しかし、経済指標等がはっきりするのが九月の初めごろでありますし、ですから、政府としては、九月の初めに四−六の経済指標がはっきりする、あるいは七、八月の経済の情勢がある程度つかめた、こういうときに経済全体の政策を見直して、そこで総合的な対策を打ち出していく、こういう方向にいま照準をしぼっておるわけでございます。われわれは、この政府全体の方針のもとに、九月早々には方策を決定をして、そしてもしそれが補正予算とかあるいは法律改正というようなことにつながっていくことになれば、臨時国会等も開いていただかなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えております。
  125. 長田武士

    ○長田委員 そこで、先ほど中小企業庁長官からお話がありました公共投資前倒し七七・三%ということで、その効果は九月ごろだろうということであります、契約は済んだところもずいぶんあるようでありますけれども。そういう意味で公共投資は七七%、約八〇%もの前倒しをしました。当然来年度あるいは秋口にかけて、この前倒しをするとどうしても後の部分が手当てがおくれてしまう、不足する、こういうことになりますけれども、公共投資前倒しの不足分、この点については追加は必要というお考えでしょうか。
  126. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 公共投資につきましては、上半期七七・三%ということですから、あと下半期残っておる分はわずかであります。ですから、そのまま下半期に移っていけば、上半期と下半期では大変大きな断差がついてしまうわけでありますので、われわれとしては、これでぐんと景気が持ち直して、秋は公共事業の力をかりないで、一挙に民間の景気が非常によくなっていけばいいのですけれども、そういうことはいま余り考えられない状況でありますので、少なくともこの秋、下半期に公共事業についてそうした断差が起こるとか息切れをするとかそういうことにならないようにしなければならぬ。その方向を決めるのは、九月早々には決めなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えます。
  127. 長田武士

    ○長田委員 そこで、先ほど中小企業の問題で私はお尋ねしたわけでありますが、売り上げとか設備投資が極度に低下しているわけであります。そこで私は、中小企業の一つの対策といたしまして、まず政府金融機関の融資枠の拡大、さらには返済期間の思い切った猶予、さらには先ほど通産大臣は、国際金利が高いものですから、ここはちょっと無理だろうと言いますけれども中小企業向けの三機関の金利の引き下げ、これは留保分が多少あるのですよね。ですから、予算措置を含まない、法改正を含まないというものは、融資だってまだ枠は残っていますから、これはある程度拡大をする、あるいはいま貸し付けてあるものに対しては、ある程度延長してあげる、さらには金利についても留保分がありますから、ある程度下げてあげる、そういう対策というものは、臨時国会を待たなくても五十七年度予算でできるのじゃありませんか、通産大臣。
  128. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまも中小企業政府関係金融機関に対する金利体系は、御承知のように、一般のプライムなんかに比べますと〇・二%低い、特別な対策を講じておるわけでございますが、これ以上下げるということは、全体の金利体系に響いてくるものですから、なかなか通産省一存でもいきません。しかし、中小企業の実態、これからの状況等も見ながら、やはり考えるときは考えなきゃならぬと思いますけれども、いまの状況では、全体の金利体系にも非常に影響が出てきますので、ここでそれはやりますというようなことはなかなか言えないわけであります。  それから、金融の枠については、これは五十七年度分は五十六年度分に比べて十分あるわけでありますが、消化ができないということですね。要するに、設備投資等に対する中小企業の経営者の意欲がないものですから、中小企業金融公庫とか商工中金等に相談が去年に比べるとぐんと減っておるということですから、むしろ枠は余っておると言ってもいいのじゃないかと私は思うわけでございますから、枠の心配はない。ただ、中小企業の経営者にいかに先行きの希望を持たせて、中小企業も設備としては相当老朽化している設備がずいぶんあるので、更新のときに全体的には来ていると思うのです。ですから、そこであとは意欲を持たせて、そういう枠を消化してもらうということがむしろ大事だと思います。
  129. 長田武士

    ○長田委員 大臣、もう一つは貸付条件ですね。これは非常に繁雑でありまして、なかなか中小零細企業は条件に当てはまらない、そういう傾向が非常に強いのです。そこで、最近の中小企業、まあ零細企業でありますけれども、特に私が気の毒に思いますのは、高利に手を出して、手形決済のために二、三日というようなことで初め行くわけでありますけれども、実際問題資金の運用がつかない、そのために雪だるま的に金利がかさみまして、結局は膨大な借金を負う、その中で倒産をしていくというような非常に惨めな中小企業の倒産のあり方というものが非常に目立っております。  そういう意味で、いま金融機関等でも、銀行あるいはその他の金融機関で中小企業はお金が借りられない。というのは、資金は相当銀行自体はありますけれども、実際問題条件が合わないというようなことが大半の要素なんですね。資金はあるけれども貸せない。優良企業がなかなか借りに来ない。倒産寸前の、そんなことを言っては申しわけないですけれども、そういうところは金が欲しい、勢い無条件で貸してくれるそういう高利に手を出すのだろうと私は思いますけれども、貸付条件というのをもっともっと簡素化する。そういうことで政府の機関というものは、そういう中小企業を倒産寸前に助けてあげる。あした倒れるみたいのにすぐ貸すというわけにいかぬでしょうけれども、そういう手だてというものをやれば、高利によって雪だるまのように元利がかさんで、惨めな倒産の仕方をするということは恐らくなくなるであろう。聞いてみますと、三百万借りて一千万になってしまったとか、途方もない金額を要求されておる。こういう実態を見るにつけて、政府の三機関というのはもっともっと前向きにこういう条件というものを考えたらどうだろうかという感じがするわけであります。この点どうでしょうか。
  130. 神谷和男

    神谷政府委員 御指摘のように、現在、金融は一般的に言えばかなり緩んだ状況にございますけれども、小さなところはなかなか金が借りにくいという状況にあることは、これは総体的には御指摘のとおりだと思います。そのために、いろいろ諸先生の御尽力をいただきまして、年々確保し、条件を改善しておりますいわゆるマル経資金の有効な活用というものにも努めておりますし、いま御指摘のように、非常に苦しくなって倒産しそうであるというような企業に関しましては、倒産防止のいろいろな相談窓口においでいただきまして、いろいろ御相談した上で、体質強化資金その他のいわゆる政策融資といったものを活用しながら、何とかカンフル注射をして再起を目途にがんばっていただくというような方法を講じるようきめ細かな施策を推進することに努めておるつもりでございます。     〔委員長退席渡辺(秀)委員長代理着席〕  ただ、御指摘のように、個々の状況につきましてはいろいろな問題があろうかと思います。したがいまして、政府機関であるという面と金融である面の二つの側面を持っておりますので、どちらの面を強調するかによってなかなかむずかしい問題が起きてまいりますけれども、個別の状況に応じながら、担保の評価とか条件についてはできるだけ実情に即し、弾力的に運用していくように指導してまいりたいと思っております。
  131. 長田武士

    ○長田委員 中小企業の低迷が続いております中で、通産大臣、中小企業ではもう一つ実は大きな問題があるのですね。それは事業の承継税制の問題であります。私はこれは創設が非常に急がれておるのじゃないかという感じが強くいたすわけであります。事業をお父さんから継続される場合、相続税の負担が非常に重いのですね。これで中小企業は非常にまいってしまっておる。  そこで、五十七年度中小企業関係の税制改正においては、取引相場のない株式の評価の改善については、五十八年度から実施するという方向であるようでありますけれども、さらに一定の土地についての課税価格の軽減についてもぜひひとつ実行してもらいたい、私はこのように考えておるわけであります。これらが五十八年度に確実に実施できるのかどうか。通産大臣、この点どうでしょうか。本当は大蔵大臣に答弁していただくわけでありますが、中小企業政策の所管大臣でありますから、どう取り組まれるのかお尋ねをいたします。
  132. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 中小企業はわが国経済の活力を支える重要な存在である、そういう認識のもとに、相続税の支払いのために中小企業の円滑な事業承継が阻害されることのないように、税制面で措置されることがお話しのように必要であると思います。  昭和五十七年度税制改正におきましては、取引相場のない株式の評価方法の改善と個人事業者の場合の土地の課税価格の軽減を要望してきたところでございます。この結果、取引相場のない株式の評価方法の改善につきましては、五十八年度から実施する方向で検討をすることとなりました。現在、政府税制調査会に中小企業株式評価問題小委員会が設置をされ、この問題の検討が開始をされたところであります。  また、個人事業者の事業用財産の評価についても、事業承継の円滑化の観点から何らかの改善が行われるよう引き続き努力してまいりたい、こういうふうに存じます。  五十八年には何とかひとついま申し上げた方向を実現する、こういう決意で取り組んでまいります。
  133. 長田武士

    ○長田委員 それでは石油問題につきまして通産大臣にお尋ねします。  先日の新聞でありますが、これは十八日ですか十九日ですか、アメリカのシュレシンジャー元国防長官がテレビで放送しておりまして、それからジャクソン上院議員、二人が同じような意見を言っておるのですね。もうすでに通産大臣おわかりだとは思っておりますが、「シュレシンジャー氏は、ペルシャ湾岸産油国がイランとの和解を試み始めていることを指摘、イランが再び石油輸出国機構(OPEC)の有力リーダーになろう」という見通しを立てておるわけであります。さらに、「ジャクソン議員は、イラン、イラク戦争が直ちに石油事情にはね返る危険は少ないとしながら、イランの次のステップはクウェート、アラブ首長国連邦、バーレーン、サウジアラビアに向けられるとの懸念を示した。またこのため、ホルムズ海峡を通って輸送される石油供給が危険となり、米国及び先進工業国に重大な影響を及ぼすだろう」、このようにテレビで放送しておるわけであります。さらには石油価格についても、オクシデンタル石油会社の会長であるハンマー氏は、OPECは今後減産をして、その結果価格は上昇を続け、一バレル当たり百ドルになるだろう、このようなえらいことを言っておるのですね。この点については通産大臣、もうすでに報道を聞かれておると思いますけれども、所感をひとつお聞かせをいただきたいと思っております。
  134. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 中東の不安な情勢が続く限りは、石油の情勢の本当の安定というのはないと私は思うので、いまのイラン・イラク戦争もこれがどうなるかということは、世界の平和だけじゃなくて、世界のいまのエネルギーの問題に対しても直接的な影響がある。特に中東の不安が湾岸諸国にまで及ぶようなことになれば、これは一大事だと私は思っておるわけでございまして、何としてもこれを避けるための努力というのは、やはり今後必要である、こういうふうに考えます。  OPECにつきましては、御案内のとおり先般のOPECの総会が決裂をいたしまして、これは残念であります。そのために、いま一応石油の基準価格は維持しておりますけれども、決裂したことによって今後どうなるかということはにわかには判断できないと思いますが、全体的に世界の備蓄も進んでおりますし、あるいはまた省エネルギーが進んできておる、あるいは世界経済が不況である、こういうようなことで世界における石油の需給関係はいま緩んでおるわけなんです。しかし、これから中長期的に見れば、何といいましても、やはり石油資源そのものが限定されておるわけですから、そしてまたそれだけに価格も中長期的に見れば、やはりタイトに移っていかざるを得ないのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  同時に、先ほどエネルギー庁長官も言いましたように、いま在庫等があるわけですが、だんだんとこの秋あるいはまた来年にかけまして世界経済も好転するというふうなことになれば、それなりにまた石油の情勢もシビアになってくる、こういうふうに考えております。いま石油の需給が緩んでおるからといって安心ができる状態ではない、こういうふうに思うわけです。
  135. 長田武士

    ○長田委員 次に、訪問販売法について通産大臣に何点かお尋ねをしたいと思っております。  最近、訪問販売に関しては非常に複雑化しておりまして、多様化と申しますか、非常にそういう点、販売方法も多岐にわたっておるわけであります。そこで、それに対しましてトラブルが非常に発生をいたしております。東京都の消費者センターの資料によりますと、訪問販売に関する紛争や相談の件数は、昭和五十四年度が二千二百八十五件、昭和五十五年度が三千百五十三件、そして昭和五十六年度は四千三百二十八件と非常に急増いたしておるわけであります。  これらにつきましては、その内容を見てまいりますと、一般的には消費者が積極的に物を買う購買動機というものを持っていない。たまたまセールスマンにいろいろ説明をされて、そして買おうかなという感じで物を買うというような、こういう商法が多いわけであります。そのために不用で高額な商品を買ってしまったり、あるいは欠陥商品をつかまされてしまったり、こういうケースもあるわけであります。  こうしたことから、ことしの四月三十日には公明党といたしましては、訪問販売法の一部改正案を提出をいたしました。これによって悪質な訪問販売などから消費者を守りたい、私たちそういう念願でやったわけであります。大臣は、現在の訪問販売の実情、実態についてどのように認識をされておるのか、まずお尋ねをいたします。
  136. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 訪問販売にかかわる消費者と業者の間のトラブルにつきましては、当事者双方に問題が存在する場合が多いことから、当省としましても、訪問販売等に関する法律の厳正な適用を図るとともに、事業者の資質の向上、消費者の啓蒙を通じまして、当事者双方の資質の向上を図ることが基本的に重要であると考えて、その線に沿って種々の対策を進めておるところであります。
  137. 長田武士

    ○長田委員 訪問販売につきましては、住居にいながら商品を購入できる、そういう点では非常にメリットがあるように思うのです。その反面弊害も目につくわけであります。  今回、公明党の改正案は、特に弊害の大きな点を取り上げまして、その第一点といたしましては、住居における現金取引の場合はクーリングオフの対象になっていないのを、クーリングオフの対象としておるわけであります。現金で買ってもクーリングオフの対象になりますよということであります。  第二点は、通信販売における損害賠償の額の制限を訪問販売と同じように取り扱ったということであります。  こうした改正点については、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  138. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今国会における公明党の一部改正案につきましては、いまお話しのように、現金販売にもクーリングオフ規定を適用すること及び二として、通信販売にも損害賠償等の額の制限規定を置くことと承知をいたしております。  さしあたりの感じを申し上げますと、前者につきましては、そのような改正を行うと、余りにも取引の安定性を損なうおそれがあるのではないか。また二番目の問題については、通信販売は訪問販売に比べて契約の締結等に関して消費者のより自由な意思が働く余地が大きく、また消費者の苦情も少ないこともあり、過剰規制になるのではないか、こういうふうに思われます。  しかしながら、訪問販売をめぐってトラブルがふえているのも事実でありますので、今後訪問販売を一層適正化していくための一つの考え方として、慎重に検討していきたいと考えます。
  139. 長田武士

    ○長田委員 通産大臣、何か会議があるそうですから、私の質問は結構でございます。  私も、自由経済社会でありますから、余り法律で物を決めるのはどうかなという感じがするわけでありますけれども、しかし実際問題、これだけのトラブルが出てきておるというような現実は踏まえなければいけないという意味であります。そういう意味で、現在の訪問販売法はもうちょっと網が細かければという感じがするのであります。その点についてはどうでしょうか。
  140. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のとおり、訪問販売に絡む苦情がふえておりますので、これについて適切な措置が必要であるというふうに私どもも考えております。  ただ、これまで私どもが理解しておりますところでは、法律の手直しによって効果が上がるというよりは、むしろまだ法律の周知徹底を図るという面に努力する分野が多くあるように考えておりまして、そういう意味で私どもは、一方では消費者に対して先ほどのクーリングオフその他消費者保護の問題について十分徹底を図って賢い消費者になってもらう。あるいはまた販売業者につきましては、日本訪問販売協会をつくったりいたしまして、そこでセールスマンの登録割度を実施したりあるいはまた業界秩序の確立を図るなど事業者側の姿勢の適正化を図るということで努力をしておるわけでございます。  さらに、苦情などが出ました場合には、それについて的確に相談に乗れるように、通産省としては、本省、通産局、あるいは経済企画庁と連携をとりまして、各都道府県なり市なりあるいは主な町などで相談所をつくっておりますので、そういうところで処理をしていくということで、現在の訪販にかかわる問題点の対策というのは、まだまだ現状でやる余地がたくさんあるのじゃないかというのが現在の私ども認識でございます。
  141. 長田武士

    ○長田委員 私たちは現在の法律がやはり欠陥があるから提出したのであります。では具体的にやりますよ。内容からいきましょう。  この訪問販売法が成立して五年たちます。満五年です。先ほど来私が指摘しましたように、訪問販売等に関する消費者の苦情というのは年々歳々ふえているのですね。これは認めますか。減っていますか、ふえていますか、言ってください。
  142. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 調査機関によっていろんな数字があろうかと思いますけれども、通産省の場合、通産省の本省、それから通産局の消費者相談室で受け付けております件数で見ますと、五十一年が全体の相談の中で訪問販売に絡むものが四・七%であったのに対して、五十二年度は九・四、五十三年度は一一・三、五十四年度は一五・五というふうに累増しておりまして、五十五年には、二三・二%になっております。ただ、五十六年、昨年はやや落ちまして二一・六%という状況でございます。
  143. 長田武士

    ○長田委員 そのように、トラブルが依然として後を絶たない。法律はできたけれども、法律の徹底がうまくいってないとか、現在の法律で十分足りるということを言っておりますけれども経済取引において相対的に弱い立場にある消費者の利益を保護するために、毎年総理大臣を議長とする消費者保護会議が開催されております。それによりますと、消費者保護会議が開催されて、去年の十月でありますけれども、「消費者取引きにおける消費者利益の確保」という観点から「訪問販売の実態について総合的な調査を実施するとともに、訪問販売員の登録制度の普及のため、所要の措置を購ずる」としておる。こういうふうに言われておるのですね。  そこで私は、こうした消費者保護上の重要問題、特に訪問販売については、今後しっかりやらなければいけないということだろうと思うのです。この点はどうなんですか。
  144. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のとおりでございまして、訪問販売は私ども取り組まなければならない分野の一つである、特に重要な分野の一つであると理解しているわけでございまして、先ほど消費者保護会議の御指摘がございましたけれども、そういった線に沿いまして、先ほどの業界団体を設立するなどして指導を図っておるところでございまして、努力におきましては、私ども人後に落ちないつもりでございます。
  145. 長田武士

    ○長田委員 これまで地方自治体を初め公的機関及び消費者団体などから通産省に、法を改正してほしい、訪問販売法の政正要求が出されているわけでありますけれども、その実態あるいは改正内容、これについて言ってください。
  146. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 訪問販売法に関しましていろいろ出てきております要望は、大きくまとめますと、一つは役務、現在は役務が対象に入っておりませんので、役務も規制の対象に加えることとしたらどうだろうかという点。それから二番目が、先ほどのお話にありましたクーリングオフ、現在法律で御存じのように四日でございますけれども、これはもう少し延ばしたらどうかという点。それから三番目に、セールスマンの氏名、セールスマンが訪問販売をやりますときに、氏名を名のるということが法律上義務としてありますけれども、これが罰則がついておりませんで、罰則をつけたらどうかといったような要望が現在出されております。  ただ、私どもそういった要望と現在の運用の状況等の関連を調べる意味で、昨年消費者を対象といたしまして訪問販売取引適正化調査というので調査をいたしましたところ、法律の改正をやってくれという声は一割にも満たない、五・三%程度でございまして、もっと悪質な業者を公表してくれ、そういう制度をつくってくれというような要望、これは二割を超えておりますけれども、そういうことでありますとか、あるいは業界団体でもっと自浄努力と申しますか、自浄意識と申しますか、そういったものの高揚を図るべきである。要するに、法律と別の分野に問題があるといったような話でありますとか、あるいはセールスマンの登録制度をやるべきであるとか、これでも一五%ぐらいの声がありますけれども、そういったような販売業者の資質の向上についての施策の要望がかなり大きいわけでございます。  ですから、私ども、御指摘のように、消費者の苦情をいかに解決するか、消費者をいかに守っていくかという点につきまして、先ほどの法律改正の要望の点も含めまして、こういったいまのような調査消費者の声というのも勘案をいたしまして対策に取り組んでいきたいというふうに考えているわけでございます。
  147. 長田武士

    ○長田委員 いま私の手元に東京都の「訪問販売に関する最近の消費者紛争を解決するための提言」があるのです。これは五十七年、ことしの七月、東京都の生活文化局で出しておるわけであります。この提言は、「法改正により、現行法の不備を是正することが緊急に求められている」、そういうふうに書かれておるのです。そこで以下何点か主な改正要望点についてお尋ねをいたします。  その第一は、訪問販売法の規制対象についてであります。現実に行われております訪問販売の形態というのは非常に多様であります。通常の住居販売のほかに、ホームパーティー、家庭で実演の販売をする。それから職場訪販、キャッチセールス、路上で販売するのですね。それからアポイントセールス、呼び出し販売。それから催眠商法などといろんな方法があるのですね。この法の不備や盲点を巧みに利用いたしました販売方法というのは増加をしておるわけであります。このように多様化しました販売形態のもとで行われておりますいわゆる特殊販売、これに対しては現行法で十分対応できるのでしょうか。
  148. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますけれども、この訪販法の制定に先立ちまして、産業構造審議会の消費経済部会でいろいろ御審議をいただきましたときに、いま御指摘のありましたようなホームパーティーであるとかキャッチセールスというのをどうするかという議論がすでにございまして、そういった問題も取り組まなければいけないということで、現在の法律でそういったものも対応は可能なように法文の規定ができているわけでございます。  もう少し具体的に申しますと、現行法の第二条第一項では、訪問販売というものについて定義を書いてございまして、そこでは、販売業者が下記以外の場所で売買契約の申し込みを受け、または売買契約を締結して行う販売は訪問販売であるというふうに書いてございまして、下記というのは、営業所と代理店、それから「一定の期間にわたり、指定商品を陳列し、当該指定商品を販売する場所であって、店舗に類するもの」、この三つ以外の場所での取引というものが訪問販売に入るように書いているわけでございます。したがいまして、ホームパーティー、キャッチセールスといったようなものは、現行法で対応は可能であるというふうに私どもは考えております。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、野田委員長     代理着席〕
  149. 長田武士

    ○長田委員 それでは第二の問題としまして、時間がありませんから、まだ具体的にきょうは突っ込めませんけれども、現行法で規制対象となっております指定商品、これは限定されておるわけですね。したがいまして、商品で指定外のものについてはどうなんだろうという疑問が実はございます。現在四十三の指定商品群のほかに自動販売機、新聞などを追加してほしいという要望も実はあるのですね。加えまして、レジャー会員券、物品購入券等の役務も対象とすべきではないかという声も実は上がっておるわけであります。この点についてはどうですか。
  150. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 訪問販売法で指定をする商品はどういうものであるかという枠組みが法律の中にまずございまして、「主として日常生活の用に供される物品のうち、定型的な条件で販売するのに適する物品」ということになっております。いま御指摘の自動販売機ということになりますと、これはちょっと日常生活の用に供される物品とは言えないだろうと思います。そういう意味で、私どもは訪販法でこれをすくうのは困難じゃなかろうかというふうに考えておりますけれども、ただ具体的に、自動販売機につきましてはいろいろ問題があるものですから、行政指導をもう何年か前、五十四年から行っておりまして、クーリングオフ制度等の訪問販売等に関する法律と同様の措置を業界に要請をしておりますので、おおむねそれが守られている、不十分な場合にはさらに指導の徹底を図っていきたいというふうに考えております。  自動販売機にかかわるトラブルというのは、むしろその販売時の問題というよりは、ある期間、相当期間たちましてから販売実績が上がらないということによるトラブルなどが多いようでございまして、訪問販売法などで取り組む問題とはちょっと性質が違うんじゃないかという感じを持っております。
  151. 長田武士

    ○長田委員 第三には、セールスマンの契約勧誘活動、契約締結手続についての規制が不十分であるということですね。具体的に申しますと、一つは、訪問販売に当たりましてセールスマンの氏名等の明示方法の具体的な規定がありません。また違反に対する罰則がないということ。二つ目には、契約内容、商品自体にかかわる重要事項の書面及び口頭での告知義務が非常に不十分であるということ。また不実のことを告げる行為に対して禁止規定がない、こうした点についてはどういうふうに考えますか。
  152. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 セールスマンが訪問販売をしたときに、法律に反して氏名を明示しなかった場合の罰則の点につきましては、実は訪問販売法がその昔当委員会で御審議いただいたときにも御指摘が出ておりまして、そのときに通産省側と申しますか政府側の御説明では、罰則を設けると仮にいたしましても、対象行為の構成要件の確定がなかなかむずかしい、それから仮に構成要件をつくりましても、今度それの違反事実の確認、立証が非常にむずかしい、そういう意味で罰則担保にするのになかなか法的安定性、実効性、そういう議論でむずかしいのじゃないかというようなことを当方からお答えを申し上げております。その点につきまして、私どもも依然として同じ状況ではなかろうか。やはり教育をして、セールスマンが氏名を明示する、法律でもって、訓示規定ではありますけれども書いていることですから、それの周知徹底を図るということは当然やらなければいけませんけれども、それを法律で罰則をつければすべてがよくなるか、なかなかこれは解決にならないんじゃないかという感じを持っております。  それから、契約の重要事項の告知義務の件でございますけれども、これは現在の法律ですでにそういった重要事項につきまして、たとえば販売価格、代金の支払い時期、方法、商品の引き渡し時期などについては書面で交付するように義務を課してございまして、これには罰則もついております。したがいまして、一応現在の段階で告知義務は課されているのではなかろうか。さらに言いますならば、その書面の内容についても、クーリングオフ制度があることについては、赤枠をつけるとかいろいろ手当てまでしておりますので、あとは消費者にも十分勉強してもらうように努力をする必要があるんじゃなかろうかという感じを持っております。
  153. 長田武士

    ○長田委員 次に第四は、売買契約とクレジット契約との抱き合わせの販売について、クレジット契約の部分に対しては何ら特別の規制が及ばないということであります。この形態は、消費者の申し込みに基づきましてクレジット業者が販売業者に代金を立てかえます。そして消費者はクレジット業者に対しまして立てかえ金と手数料を分割して支払う、こういう形ですね。そのため消費者は売買契約上の問題を理由にして割賦支払いを留保することはできない状況であります。こうしたことから最近、クレジット契約の絡んだ紛争というのが出てきておるようであります。この点についてはどうですか。
  154. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のような苦情というのは、実は私どもも大変いま頭を悩ましている問題でございます。そもそも法律上、売買の当事者間の支払いと引き渡しができるように売り手の側で持っている債権を信販会社が買ってしまうわけでございますから、売買契約とそれからその立てかえ払いとの間が一応切り離されたかっこうになっておりますので、御指摘のように、苦情の処理というのはなかなかむずかしい状況にございます。  ただ、これまで通産省としてとってまいりました措置は、信販会社をいろいろ指導いたしておりまして、五十五年、一昨年の十月には信販会社が使用しております標準約款を改めさせまして、商品の瑕疵または商品の引き渡し遅延等が購入目的を達することができない程度に重大な場合には、消費者は信販会社に対して代金の支払いを拒絶してもいいんだということを約款の中にはっきり書くように指導いたしております。  ただ、まだそれだけではもちろん十分でございませんので、この点につきましては、どういうかっこうで取り組むのがいいのかということについて広く学識経験者の意見も聞きまして、対策を出したいと考えまして、ことしの六月から消費者信用産業懇談会というのを設けまして、抜本的な検討をいたしているところでございます。これにつきましては、この懇談会の結論が出ました場合には、恐らく先生の御要望にこたえられるような対策が出てくるものと期待をしているわけでございます。
  155. 長田武士

    ○長田委員 次に、訪問販売をめぐるトラブルのいわゆる救済体制といいますか、この問題であります。市区町村におきましては苦情処理体制、人員、情報が相対的に不十分でありまして、また事業者の対応が相対的によくないといった状況下で紛争の解決が非常に困難になっておる、そういう実情もあるようであります。  私はこうした現状を考えますと、市区町村が取り扱ったものでも、都の消費者被害救済委員会が扱えるように検討したらどうだろうか、あるいは今後国としましても、救済体制をどうしていくか、こういう問題も当然考えなくてはいけないと思いますが、この点どうでしょう。
  156. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 通産省が直接相談体制についていろいろ指導し得るのは、通産省本省にあります相談窓口と通産局の消費者相談窓口ではございますけれども経済企画庁あるいは国民生活センターあるいはまた各都道府県でございますとか市でつくっております消費生活センターにつきましても、種々こちらからも御連絡を申し上げ、また先方からお話がございます場合には、できるだけその御要望に沿えるように、これまでも努力してまいりましたし、今後も努力をするつもりでおります。
  157. 長田武士

    ○長田委員 さらに、先ほど審議官からお話がありましたけれども、クーリングオフ、これに対して、この期間については現在四日でありますけれども、諸外国の例を見ますと大体七日のようであります。そういう意味で、日本の場合も七日に直したらどうか、そういうことなんですけれども、この点はどうでしょう。
  158. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 クーリングオフの期間につきましては、この前訪問販売法の御審議をいただいたときにも御指摘があった点でございます。現在の四日というところに落ちついておりますのは、その前に割賦販売法に初めてクーリングオフの制度を盛り込んだときに、外国の事情その他勘案して四日程度でいいのじゃないか。というのは、余りこれを長くいたしますと取引の安定を害するわけでございます。そういう意味で、消費者を保護するのに必要最小限と申しますか、必要にして十分な期間というのは四日程度でないかというふうに認識をしてその日を選んだわけでございます。  ただ、その後海外ではいろいろなものが出てきておりまして、御指摘のように、長いものも出てきております。そういう意味で、四日がいいかどうかということにつきましては、さらに検討する必要があるのではないかという感じもいたします・けれども、ただ、現在の四日と申しましても、これは発信主義でございますから、クーリングオフができるということを記載した書面をセールスマンの方が当然渡すことになっておりますから、渡した日から四日以内に何らかのかっこうで、はがきでも文書でも発信をすれば、それでもう有効に成立するわけでございますから、いまの期間では短過ぎるとも言いにくいわけでございます。この辺の問題につきましてはなかなか微妙なところでございまして、取引の安定との関係をどういうふうに考えるか。いまのところ、私どもはいま直ちに変える必要があるとも思いませんけれども、今後広くいろいろな方の意見も聞いていかなければならぬ分野でないかと考えております。
  159. 長田武士

    ○長田委員 次は、訪問販売員の登録制度についてお尋ねをしたいのであります。  去年の七月一日から訪問販売員の資質向上と悪質なセールスマンを締め出そう、こういう目的で登録制度が発足をいたしたわけであります。社団法人日本訪問販売協会で行っております登録制度、この登録されましたセールスマンの数並びに対象事業の数、この点教えていただきたいと思っております。
  160. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 ことしの六月三十日現在で、日本訪問販売協会でございますけれども、登録されている人員は四十六万一千二百八十四人ということになっております。ここに加盟しておりますのがいろいろ団体で入っておりますので、この業種が何であるかというところがなかなか洗いにくいわけでございます。たとえば家庭訪販振興協会という団体でここに登録をいたしておりますけれども、そうすると、扱う品目は非常に広範になるわけでございます。一応どんなものが入っているかということの例示の意味で申し上げますと、化粧品、ミシン、日用雑貨、健康治療器械、エクステリアといったようなものがございますけれども、対象の品目は相当広範であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  161. 長田武士

    ○長田委員 現在、セールスマンは全国で百五十万とか百六十万とか実は言われておるようですね。いま四十六万ですか。そうなりますと三分の一程度。こういう点ではちょっと数が少ないように私は思うのですけれども、今後どういうふうにされるお考えですか。
  162. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 百五十万人という中には、たとえば証券の取引員と申しますか、そういった人も入っておりまして、私どもが掌握しておりますところでは、商品のセールスマンというのは大体百万であるというふうに理解をいたしております。したがいまして、いまのところやっと半分くらいということでございましょうか。この人たちの質を高めるためには、この登録制度というのを大いに利用していく必要があるわけでございますから、今後さらに登録が広く行われるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  163. 長田武士

    ○長田委員 いままで訪問販売法についていろいろお尋ねしたわけでありますけれども、まだまだ欠陥がございます。それで、私がいま申し上げたいのは、決して訪問販売が悪い、悪であるという意味で申し上げたのじゃないのです。まじめなセールスマンもたくさんおりますし、中には何か商品を変なものをつかまされたとか、そういう苦情も実は非常に多いわけであります。そういう意味で、やはり商取引というのは、お互いの信頼関係で初めて成立するわけでありますから、そういう身分証明の携帯とか、消費者の方もそれを要求する、あるいは片方の業者の方もきちっとそれを提示する、そういう信頼関係から商取引というのは出発しなくてはいけないという感じが私はするのです。そういう意味で、協会の方も大変努力されておることを私も理解しておりますし、また法改正も何点かしなくてはならないだろう、そういうことも私は強く感じておるわけであります。今後ともこの点ひとつしっかり行政指導をやっていただきたい。心からお願いを申し上げておきます。  河本長官、大変お待たせいたしました。これから長官にいろいろお尋ねをしたいと思っております。  長官は先日、物価問題等特別委員会におきまして私の質問に、このまま何らの対策も行わなければ、GNPにおいて五兆円程度の不足を生ずる、こういうふうに答弁をされました。二百七十七兆から五兆円ですから、二百七十二兆くらいで恐らく終わってしまうだろう、こういう発言をされたわけであります。そういう意味で、経済を失速させないためにも、この際、早急に有効需要を創出する政策、これはぜひ打たなくてはいけないだろうという感じを私は強く持っております。  そこで、まず各需要項目についての長官現状判断をお尋ねしたいと思っております。  まず第一番目に、長官は個人消費回復してきておるという判断をされておるようでありますが、これは物価が一%台に落ちついておることから実質消費が三%台、そういう結果になっているのじゃないかという感じが私はするわけであります。実は、この物価の一%台というのは、長官も詳しいわけでありますが、野菜等の生鮮食料品が五十五年に比べまして実は一〇〇を割っておるんですね。こんなことで物価が非常に鎮静化をいたしておるわけであります。これを除いた物価を調べてみますと、大体三、四%間にあるわけですね。そしていま安いと言われておりますところの野菜なども、先日の台風十号の影響で、けさの新聞によりますと大幅に値上がりしておる、こういうことであります。そこで物価の一%台というのは、こういうことになりますと、直ちに四、五%にはね上がってしまう。したがいまして、実質消費の支出が三%台ということでありますけれども、これは先行き非常に不安ではないか、そういう感を強く持つわけであります。しかも中小企業の売り上げ等は不振のままでありまして、こうした中で本当に消費は底がたいものと言えるかどうか、この点が第一点であります。まずお答えをいただきたいと思います。
  164. 河本敏夫

    河本国務大臣 物価は、いまお示しのように生鮮食料品が相当下がっております。それが消費者物価を低い水準にしておる一つの原因でございまして、食料品を除きますと、大体三%前後の消費者物価水準でなかろうか、こう思っております。しかし、それにいたしましても、相当低い水準になっておることは事実でございます。これが背景となりまして、実質可処分所得が最近はプラスになっておりまして、消費も若干ふえておる、こういう傾向でありますが、しからば、個人消費がある程度プラスになっておりますこの現状がずっと定着するのかどうか、これはもう少し様子を見ませんと何とも言えない。私どもはこれからの動きをよく注意してまいりたい、こう思っております。
  165. 長田武士

    ○長田委員 第二に、よく長官は個人設備投資、特に住宅は景気を低迷させている非常に大きな原因である、こういうふうに再三申されるわけでありますが、この目標であります百三十万戸はもう現在は到達できないであろう、大体百十万数千、こんなところでとどまるだろうという感じがいたしております。この点については、先行き見通しとしてはちょっと心配だなという感じがするのですが、金融の枠の拡大とかあるいは税制措置の問題、あるいはいろいろな形をやりましたけれども、依然としてこれは効果がないという感じがするのでありますが、長官どうでしょうか。
  166. 河本敏夫

    河本国務大臣 住宅は計画どおりまだ回復しておりません。ただ、第一・四半期を昨年と比べますと相当落ち込んでおりますが、昨年の第一・四半期は、御案内のように、六月に建築基準が改正になりまして、駆け込み着工が相当ございましたので、昨年の数字と比較しただけでは正確な動きは把握できない、こう思っております。しかし、全体としての動きは、政府計画よりも若干下回っておる、こういうことでありますので、今月いっぱいの動きを見た上で、ある程度の追加政策が必要になるのではなかろうか、こう思っております。
  167. 長田武士

    ○長田委員 第三に、大企業設備投資、この点も非常に思ったようにいっていないということであります。最近は減額修正の動きが非常に顕著になってまいりました。この点は長官、どういうお考えですか。
  168. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年の秋から輸出が落ち込んでおりまして、やはりこれも直接の引き金になったと私は思うのですが、大企業設備投資計画は減額するところが相当出ております。しかし、これよりも私どもが非常に心配をいたしますのは、中小企業設備投資計画が相当大幅に減るのではないか、こういう感じがいたします。民間設備投資全体としては、中小企業の方が多いわけでありまして、半分強が中小企業、半分弱が大企業ということでありますから、だから中小企業が相当大幅に落ち込むということは、非常に大きく経済影響を及ぼしますので、この動きをもう少し分析をいたしまして、いま必要なことは、やはり中小企業対策を相当しっかりやらなければならぬのではなかろうか、こういう感じがいたします。
  169. 長田武士

    ○長田委員 そのほか鉱工業生産の動向あるいは在庫調整、それからアメリカの景気の動向、これらの点は、長官はどう見ていらっしゃいますか。
  170. 河本敏夫

    河本国務大臣 わが国経済は、昨年の秋までは比較的順調に回復をしておりまして、生産消費も相当伸びる、それから在庫調整も進むということでございましたが、再び十一月ごろから生産出荷が落ち始める、在庫もまた再びふえておる、こういう状態になっておりますが、これは要するに、先ほど申し上げました輸出の落ち込みが直接の原因になっておる、こういうことだと思います。  そこで、輸出の落ち込みがなぜ生じたかといいますと、これはやはり世界経済が戦後最悪状態になっておるということで、日本の商品が大変優秀であり、しかも現在のような大幅な円安である。普通であれば相当伸びてもいいのですけれども輸出が全然伸びない。むしろ減っておる。こういうことは世界全体の購買力が激減をしておる、こういうことだと思います。  それからアメリカの経済は、昨年の第四・四半期、それからことしの第一・四半期、非常に大幅なマイナス成長になっております。最近は大体ゼロ成長ぐらいまで回復しておるようでありますが、しかし、何分にも非常に大きな落ち込みからの回復でありますから、まだなかなか好況感というものは出てこないのではないか、こう思いますが、数日前にアメリカ政府から発表になっておりますことしの下半期、それから来年を通じての成長率は相当高い水準を期待しておるようであります。アメリカ政府としては、ようやく調整期が終わって、経済は大規模な減税をてことして回復の方向に向かいつつあるのではないか、こういう見通しでありますが、アメリカ政府見通しもよく狂いますので、私どもはそのとおりいけば大変結構だ、こう思っておりますが、やはり高金利という非常に経済の足を引っ張る条件がございますから、この動きをもう少し見守っていきたい、このように思っております。
  171. 長田武士

    ○長田委員 次に、雇用の動向なのですけれども、最近、失業率が二十六年ぶりの高率を示しておる、あるいは有効求人倍率も悪化の一途をたどっておる、こういうことであります。完全雇用を実現する、それから福祉国家を建設するというのは政治の大きな命題であります。経済政策の究極の目的はそれであると言っても決して過言ではないと私は思うんですね。したがいまして、他の経済指標と異なりまして、雇用状況が悪化するということは、政策手段の誤りを意味するものである、このように言われても仕方がないと思いますね。  そこで、何よりも景気の回復を急ぐということが雇用に大きく影響してくるわけでありますが、最近の雇用情勢については、長官の御所見はどうでしょうか。
  172. 河本敏夫

    河本国務大臣 雇用の情勢も御指摘のとおりでございまして、二十六年ぶりの悪い状態になっております。失業者が、季節調整をいたしまして約二・五%前後になっております。日本は非常に人口の多い国でございますから、相当経済に活力がございませんと、どうしても失業者がふえるということでございまして、昨年の秋にことしの経済見通しを立てます場合も、三%程度経済成長が続くならば、失業者はどんどんとふえていくであろう、税収は逆にどんどん減るだろう、それから貿易摩擦は拡大をするであろう、日本はこの三つの問題に大変苦しめられる、こういう見通しがはっきり立っておりましたので、それで何とか政策努力を加味することによりまして、そういう問題が解決できる安定成長路線に日本経済を定着させなければならぬ、こういうことで、ことしの成長目標を設定したのでございますが、残念ながら、この政府目標からは、いまのところ相当下回っておると思います。大体三%前後の成長が続いておるのではないか、こう思っております。  先般の臨調の答申を見ますと、まずこれからの日本目標として、活力ある福祉社会を実現せよということが書いてありますが、活力ある福祉社会の中身は何ぞやといいますと、雇用問題がまず解決できなければならぬと書いております。それから国民の健康が確保されなければならぬ、高齢化時代に対して必要な政策が完備されなければならぬ、こういうことを書いておりますが、雇用問題が解決できるということは、相当な経済の活力の維持が必要だ、こう思うのですが、そこらあたりの関係は明確になっておりませんけれども、いずれにいたしましても、活力ある福祉社会の大きな柱の一つは、雇用問題の解決だ、このように書いてありますので、私どもも雇用問題を非常に重大に考えておるのでございます。
  173. 長田武士

    ○長田委員 そこで、このような中にありまして長官は、景気対策に非常に努力をされていらっしゃる。私もよく理解しておるわけでありますが、長官、この間も、経済指標が大体九月ごろ出る、八月いっぱい、八月の末、それ以後具体的に手を打ちたいということでございますけれども、具体的な手を打つその具体的な問題、いまどういうことをすればいいとお思いでしょうか。
  174. 河本敏夫

    河本国務大臣 これから相談をするわけでありますが、具体的な手といいましても、金融政策はいま全然お手上げの状態でありますので、やはりそれ以外の対策ということになりますと、上半期に公共事業の大幅な前倒しをしておりますから、下半期の公共事業の取り扱いをどうしたらよいかということについて判断をしなければならぬと思います。  それから、先ほど指摘の住宅投資でありますが、これはやはり景気に非常に大きな影響がございまして、波及効果も大変大きいですし、景気に対する即効性もございますので、何とかこの住宅政策政府目標を軌道に乗せる方法はないか、これも関係方面との調整の大きな柱だと思っております。  それから、先ほど指摘のございました民間設備投資、特に中小企業設備投資の落ち込みを防ぐために一体どういう対策があるのか、こういうことがこれからの検討の課題でなかろうかと思います。  もちろんそれ以外にも幾つか検討しなければならぬと思いますが、大どころとしてはそういうところではなかろうかと思っております。
  175. 長田武士

    ○長田委員 その中で、長官の持論の投資減税、これなんかは大きな柱になりませんか。
  176. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業設備投資を盛んにするということのためには、まず景気の見通しがはっきりしなければなりません。中小企業対策といえば、景気全体がよくなるということが最大の柱でございますが、やはり経済見通しをはっきりさせることが何よりも肝心だと思います。それ以外に考えられる中小企業に対する対策といいますと、長期で安定した必要な投資資金が供給されるということ、これも当然その前提条件だと思いますし、それから現在若干の投資減税制度がございますが、きわめて小規模でありまして、経済見通しが立つと同時に、いま投資をすれば幾つかの有利な条件がある、こういうことであれば、投資意欲を伸ばすことも可能でなかろうかと私は思いますが、その一つの柱として、投資減税などをごく短期間に限って実行するということは非常に有効な手段でなかろうか、このように思います。
  177. 長田武士

    ○長田委員 長官景気対策を考える場合は、私はタイミングというのは非常に大事だろうという感じがいたしております。いま、住宅の問題にいたしましても各種設備投資にいたしましても、経済の先行き不安というものがどうしてもつきまとっております。設備投資しても、それだけ生産手段をとりましても、果たして売れるかどうか、先行き不安というものが非常につきまとっているわけであります。そういう中にありまして、適切な手を打つ、先手先手の手を打つ、こういうことならば、経済に対する政府の取り組みというものに対しては国民も理解するわけでありまして、そういう点では、私はタイミングが非常に大切だろうという感じがいたしております。先ほども通産大臣には、八月中に検討して、九月に臨時国会を召集して手を打ったらどうかという話をしたのですけれども長官はどういうふうにお考えですか。
  178. 河本敏夫

    河本国務大臣 十月以降息切れが生ずるということになりますと、何のために上半期に大幅な前倒しをしたのか、むしろ前倒しなんかやらない方がはるかに有効である、こういうことにもなりますので、私は政策に整合性がなければならぬと思います。  そういうことから、上半期は御承知のように、公共事業を十九兆円契約をしまして、後半は五兆しか残っておりませんから、民間に力が出てこないということになりますと、何らかの最終需要の拡大をするための政策が必要になるわけでありまして、十月から落ち込みを生じさせないということのためには、やはり九月中に政策が具体化されることが望ましい、このように思います。
  179. 長田武士

    ○長田委員 いつも長官が問題にしております経済指標、これは八月の末から九月ということでありますけれども、実際アメリカは四月−六月期の国民所得統計なんというのはもう発表されているんですね。そういう点では日本の場合は九月にならなくちゃわからないということで、長官、こういう経済指標前倒しする方法はないものでしょうか。
  180. 河本敏夫

    河本国務大臣 アメリカは御指摘のとおりであります。四−六の期間も三、四回にわたって経済見通しを出しております。一番当初がプラス〇・二ですか、それからプラス〇・七、それから最近はもう少し高い水準のようでありますが、実際にはそのとおりになっておらぬようであります。  そこで、経済企画庁でもいろいろ研究をしたのですが、途中で大体これくらいだろうということは感じでおよそ見当がつきますが、しかし、それが最終の数字と余りにも大きな開きがあるということになりますと、政府の統計が信用なくなる、こういうこともありますので、アメリカのようなやり方では、どうももう一つ感心しない。  それよりも、現在作業がおくれておりますのは、昨年の中ごろに、四十五年の経済指標から五十年の経済指標にかえたわけであります。そのために一時統計が混乱をいたしまして、いつもよりは二、三週間、これまでよりは二、三週間最終の統計が出るのがおくれておりますので、そこでできるだけ早く作業の結果が出るように督励をいたしまして、いつか申し上げましたように、早ければ大体八月の終わりにおよその数字が掌握できるのではないか。正確な数字は九月の一日、二日ごろになろうかと思うのですが、アメリカ方式は一、二違いがある。日本はまだとてもアメリカ方式でやるような決断ができておりません。
  181. 長田武士

    ○長田委員 経済指標は正確なほどいい、これは当然であります。しかし、政府の立てる成長率目標とか物価目標、余り当たったこともないのです。国民は信用してないのではないかという感じが私はいたしております。  そこで、ことしの経済成長目標でありますけれども五・二%。先日長官は、このままでいきますと恐らく三%台、そういう発言を実はされておりまして、景気は二番底だ、こういう答弁がございました。たしか民間調査機関でも、大体一ポイントぐらいは落としておるようであります。  私は仄聞するところによりますと、五十七年度実質成長率五・二%、経企庁ではすでにこれの見直し作業に入っておる、そういう話も聞いております。長官の希望する景気規模、たとえば景気規模をどのくらいにするか、五・二%に近づけるためにはどのくらいの規模で追加予算をやらなくちゃいけないかということは、実は逆算すればおよそ数字が出てまいります。きょうはそれを詰めるのが目的ではありませんので、長官の希望するいわゆる追加規模ですね、これを含めてどうでしょう、それを実施されたといたしましても、五十七年度成長率は大体どのくらいになるとお思いでしょうか。
  182. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府経済見通し、五十六年度は二百五十五兆ぐらいの規模かと思っておりましたが、大体二百五十一兆ぐらいの規模に終わっております。それは結局、要するに四・一%成長が二・七%成長になった背景でありますが、五十七年度はスタート台が低い水準になりましたので、二百五十五兆から二百五十一兆という数字になりましたので、大体二百七十二兆ぐらいのGNPの規模になりますと五・二%成長が達成できるのではないか。当初は二百七十七と考えておりましたが、それより少し低くても五・二%の成長は達成できるであろう、こう思っております。  そこで、先ほど来申し上げておりますように、九月初めの段階で、そのためにはどの見当最終需要が不足するのかということをよく分析をいたしまして、そしてその不足分を全部、政府投資の拡大だけではなく、民間の力が出てくる対策も含めまして、最終需要が拡大するような方策をとりますならば、全体としての規模が五兆になりますか、七兆になりますか、そこは正確に分析しなければなりませんが、そうしますと、日本経済の規模は二百七十二兆になることは十分可能だ。ただしかし、そこまでやらぬでよろしい、何もそこまでやる必要はないということになりますと、当然それよりも低い水準になるわけでありまして、努力いかんによってはこの五・二%成長は十分達成できる力を日本経済はまだ持っておる、それをやるかやらぬかは政策の選択の問題だ、私はこのように考えております。
  183. 長田武士

    ○長田委員 ただ、景気を見ますと、長官、やはり財政の占める位置というのは非常に強い。そういう意味では、臨調では増税なき財政再建、このように言われておりまして、実際問題、財政を使って公共投資をする、それによって税収をふやす、そういう方法もあります。しかし、これだけの赤字国債を多発できない、じゃあ財政規模をもっと減らせということになりますと、勢い税収も減ってしまう。そういうことで両論あるわけでございますが、長官のお考えはどちらを選択されますか。
  184. 河本敏夫

    河本国務大臣 臨調のこの判断には私はずいぶん頭を使っておられる、こう思うのです。たとえば財政再建の基本方針は、増税なき財政再建ということでありますが、しかし、税に対する取り扱いなども、よく読んでみますと、非常に含みのある表現になっております。それからまた国債に対する取り扱いも、非常に含みがある表現になっておりまして、たとえば赤字国債につきましては、昭和六十年から返還が始まるから、それまでに赤字国債発行をゼロにするような工夫と努力をしなさい、このような表現になっておりますが、あわせて建設国債はこれと別個の取り扱いになっておりまして、建設国債については中長期的にだんだんと減るように考えていきなさい。  臨調の言っておる中期、長期とは何を指すかということでありますが、私の大体理解しておるところでは、中期というのは五年とか七年とか、そういう感覚のように思いますし、長期というのは二十一世紀を展望しての見通しのように思います。  それで、建設国債については減らさなければならぬが、これは中長期的に判断をしなさい、こういうようになっておりますので、ここらあたりの表現は非常に微妙になっております。したがいまして、できるだけ国債を出さないということは大変望ましいわけでございますけれども、しかし、私はいたずらに国債の金額だけに驚いてはいかぬ、こう思うのです。  やはり国債の発行高というものは、その国の預貯金の伸びが毎年どれくらいあるのかという預貯金の伸びとの比較である、GNPとの比較では正確な判断はできない、予算との比較でも正確な判断はできない、やはり預貯金の伸びが一体幾らあるのか、つまり一年の間にその国で国債を健全に発行できる能力というものは幾らの範囲か、こういう判断が必要でなかろうか、私はこう思っております。しかし、まだ最終的に政府の建設国債発行についての合意がまとまったわけでもございませんで、これからあらゆる角度から検討していって最終の結論を出さなければならぬ、こう思っております。
  185. 長田武士

    ○長田委員 私も長官意見には賛成なんです。日銀の調査報告「五十六年の資金循環」によりますと、国の財政赤字がすでに政府短期証券、TBでありますけれども、大量増発を招いている。潜在的なインフレ圧力を非常に警戒いたしておるわけでございます。この政府の短期証券によりますところの資金調達額というのは、五十六年には一兆三千六百億円に達しておるわけであります。これは前年度の比で見ますと五・六倍にも実は膨張しておるわけですね。しかし、発行残高は五月末までで十八兆円を超えております。これは史上最高を記録しておるわけであります。そうなりますと、財政インフレという問題が出てくるような感じが私はするわけであります。こうした日銀の警告といいますか提言といいますか、これに対しては、長官、どういうお考えでしょうか。
  186. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお述べになりました短期証券というのは、大蔵証券、外為証券、食糧証券、全部をあわせてのお話だと思いますが、その中で一番気をつけなければならぬのは、やはり大蔵証券だと思います。つまり税収のつなぎをするという役割りを果たすこの分野でございますが、御承知のように、ことしの予算ではその限度額が七兆二千億に拡大をしております。やはりこの取り扱いを気をつけませんと、実際上の赤字国債と変わらない、こういうことになりますので、よほど取り扱いが大事だと思いますけれども、いまの段階は幸いにこういう経済情勢、幸いと言ったらちょっとぐあい悪いのですが、いまのような経済情勢でございますから、これがインフレにつながるとかそういうことにはなっておりませんけれども、御指摘のように、この点はよほど警戒する必要があろうか、このように思います。
  187. 長田武士

    ○長田委員 実はきのう大蔵省は、長期国債の表面金利を現行の七・五%から八%に引き上げました。八月債の発行条件をこのように決めたわけでありますけれども、この引き上げは長期金利全般の大幅なアップにつながるのではないか。そうなりますと、景気低迷に拍車をかけるような結果にならないか。国債が売れない、〇・五%上げる、わからなくはないのですけれども、景気全体を停滞させる、そういう側面が非常に働くのではないかと思いますが、最後に長官にこの点をお尋ねしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  188. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本銀行の金融政策を見ておりますと、ことしの三月以降大幅な円安傾向に少しでも歯どめをかけたい、こういうことから短期金利を高目に誘導しておられまして、それがさらに長期金利に影響して、長期金利も高くなる、銀行預金はそのまま据え置かれておりますから、銀行の資金のコストは変わらないのですけれども、銀行としては、国債以外に有利な金融商品がどんどん開発されるものですから、その方に投資を希望される、国債を引き受けるのをいやがる、こういうことが出てまいりまして、七月は休債にせざるを得なかった。こういうことで、結局八月は〇・五%の金利の引き上げ、利回りの引き上げ、こういうことになったわけでありますが、もちろんこのために長期金利全体に影響が出てまいります。  ただしかし、現在の資金の需要状態を考えますと、長期プライムを上げましても、民間が借りる場合に、果たしてそのとおりすぐ行くかどうかということは、これは疑問だと思うのです。特に力の強いところはとても、コストが上がっていないのに金利を上げるということは皆承知しておりますから、そこは皆それぞれ交渉されまして、直ちにこれが長期金利の引き上げにそのままつながるということは言えないと思います。しかし、全体の流れから申しますと、こういう景気が非常に大切なときに金利が上がるということは、これは大変遺憾なことだ、こう思います。万やむを得ないと思いますが、そのこと自体は大変遺憾である。  ただ、特にこの際、中小企業が非常に厳しい環境下にありますから、中小企業に対してだけは特別の配慮が必要でなかろうか、私はこのように考えております。
  189. 長田武士

    ○長田委員 終わります。
  190. 野田毅

    ○野田委員長代理 次回は、来る六日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十九分散会