○森(清)
委員 それでは当面の
経済の問題、それから五十七
年度全般にわたります
経済見通しの問題について、
河本企画庁長官にお尋ねしたいと思います。
最近の
経済は非常な不況でございますが、その
経済をどのように見るかということについて、特に最近の
政府の
経済見通しというのは、ある
意味では、その
努力目標を掲げるというか、あるべき姿を描くという
経済見通しのある側面があるからそうなったのかもわかりませんが、しかし、やはり一定の
数字を出して、そしてそういう姿をもとにして各種の
計画がなされ、そしてまた
民間のそれぞれの活動の方も、そういうことを一応頭に置いて
経済運営をされると思うのでありますから、私は
経済企画庁の
経済見通しというのは、やはり非常に重要なものであると思うのであります。
ところが、たとえば五十六
年度の
経済見通しで申しますと、これは集約的にあらわれております
国民総
生産を見ますと、五十六年当初の
見積もりのときは、
名目で九・一%の
成長率を見込んでおった。昨年十二月に
改定をいたしましても、それは七%の
成長である。しかし、実際に三月終わってみますと、五・二%の
成長に終わった。これは
名目でありますが、
実質成長率においても、当初は四・七%、それから十二月の
改定見込みでも四・一%、
実質は二・七%に終わったわけであります。
こういう
見通しの
そごというのは往々にしてあると思うのでありますが、一九六〇年代から七〇年の初めまでは、大体
高度成長期でありますが、そのときは常に過小な
見通しをしておったわけであります。それからこのような低
成長期に入りますと、過大な
見積もりになるということでありますが、これは役所のいわゆる保守的な性格にもよるのでありましょうが、
変化に対する
見通しということについて非常に憶病であるのではないかというような気もいたすわけであります。そういう点を考えますと、今後非常にむずかしい
経済運営あるいは
財政運営がなされなければなりませんが、こういう
経済見通しについてもう少し実態に近い
見通しができないものであろうか、こういう
感じがいたすのであります。
特に、五十七
年度の
経済成長率、
相当高目に見込まれております。当
委員会で、私は二月に
長官にお尋ねしたときも、少し
政府の
見通し五・二%というのは高過ぎるのではないだろうかということでお尋ねをいたしましたら、
長官から、
現状のままそのまま推移すれば、大体三・八%くらいな
成長率になるという
計算も出たんだが、そういうことでは非常な問題が起こってくる、どうしても
政府の
施策を十二分にやって、そしてどうしても五・二%の
成長率を維持しなければならないんだ、達成しなければならないんだ、こういうお話でございまして、私はそれについて別に
異議を申し上げるわけじゃございませんが、そのときの大体
民間でも三、四%というような
成長率の予測であります。
そこで、現時点に立って考えてみますと、非常に問題があるわけであります。というのは、まず第一に、この五十七
年度経済見通しの
基礎になりました五十六
年度の
経済の姿というものについてすでに大きな
そごを来しておる。
名目GNPで言いますと、約五%
程度低くなったわけであります。そこからどう
経済が発展するかということでありますが、
経済というのは連続して伸びておりますから、そのことで
調整し直して、私の
計算でありますが、単に五十六
年度の
経済成長が低目に終わったということだけをとりましても、
計算上五・二%という
成長率は恐らく三%台に下がるのではないだろうか、こういう気がいたします。
さらにその上、この四月から六月までの
景気動向、あらゆる
指標はもうすでに出ておるわけでありますが、それを見ますと、たとえば
住宅着工でありますが、
政府はどうしても百三十万戸を
目標にしているということでございましたが、少なくとも最近の
着工実数を見ておりますと非常に低い、昨年よりか少し落ち込んでいるんじゃないか。昨年の百十四万戸に対してもさらに落ちるんではないだろうか、こういう危惧すら持たざるを得ないのであります。幸い
物価が、特に
消費者物価が安定いたしておりますので、
消費者の
実質消費支出の増ということは、つい最近の
指標にも出ておりますが、果たしてこれがどのように推移するかわかりませんが、多少そこに明るさがありますが、さらにたとえば
設備投資、これを見ますと、大
企業においても
停滞をいたしておりますが、特に
中小企業において非常な
停滞をいたしておる、非常に落ち込んでいる。あるいは
輸出入、特に
輸出も非常に落ちておる。したがって鉱工業の
生産、
出荷とも非常に落ちている。こういうことを考えますと、恐らくこの五十七
年度の第一・
四半期はほとんど
成長率前期比ゼロではないか、ほとんど
成長しないのじゃないか、私はそのように思うのであります。
そうすると、そういう
状況を考えますと、
政府で考えた五・二%の
成長ということを維持するというか、
先ほど申し上げましたように、通俗の言葉で言えば
発射台そのものが低くなった。しかも少なくとも第一・
四半期の
経済指標を見ると、非常に低いということを考えますと、恐らく五十七
年度の
経済成長率は、このままで推移すれば二%台に落ちるあるいは二%も下の方に落ちるのじゃないか、このような
感じすらするわけであります。
私は、やはり
経済見通しというのは、
先ほど申しましたように、
目標を与えるということであるとともに、ある
意味では正確な
診断書をつくるという
意味であると思うのであります。その正確な
診断書に基づいて、いわゆる
治療方針といいますか、そういうものが立てられなければならないのでありますが、強気な
見通しをするということもいいのでありますが、やはり正確な
診断がまず先行しなければならない、このように思うわけであります。そしてその病状に応じて、
早期に、速やかに徹底した
対策、すなわち
治療を施すということが大変重要なことでありまして、
経済は生き物でありますから、その行動がおくれればおくれるほど、
診断が明らかであるにもかかわらず、その
治療がおくれればおくれるほど病人の
回復がおくれるわけでありますから、そういう
意味においても、
政府においても早急に
診断を正確に行い、
見通しを立てて、
早期に
景気対策を打ち出さなければならない、私はこのように考えるわけであります。
そこで、これから
経済は大体どうなるであろうかあるいはそれに対して特に
景気対策の面からどういう
基本方針で臨まれようとしているのか、これについて
河本長官のお考えをお伺いしたいと考える次第でございます。