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安倍国務大臣 昨日全国の通産局長
会議を開いたわけですが、これは実に十月−十二月の経済指標を見ますと、経済成長が七年ぶりにマイナスに転じてしまった、こういう
状況の中で、特に
中小企業の
設備投資等非常に低調でありまして、このままほっておいたら
倒産もふえるのじゃないか。また
わが国全体の
景気の方も、このままの情勢でいきますと、非常に懸念が出てくる、経済の失速が起こるのじゃないかというふうな感じすら持ったものですから、やはりこれは全国的に
中小企業の
状況がどうなっているのか、あるいは雇用の実態がどうであるのか、あるいはまた住宅の着工の
状況、
地域の
景気全体の問題等ひとつ精細に総点検をする必要がある。そしてその結果を踏まえて
政府の中で
対策を講じていかなければならない、こういうふうに
考えたものですから、各通産局に指示を出しまして、通産局長
会議をやるので、それまでの間にひとつ十分な、徹底的な総点検をしてもらいたいということで
調査をいたしました。その結論を踏まえて、きのう会合を開いたわけでございますが、各通産局長とも、みずから各界各層の責任者に直接当たりまして話を聞くとか、あるいは通産局を動員して実態の把握に努めるということで大変な努力をいたしまして、その結果をきのう集約いたしたわけでありますが、全体的な意見としては、とにかく
企業で生産、出荷が伸び悩んでおる、収益が悪化をしている、こういうことから
企業経営者の
先行きに対する懸念が大変強まっておる、このことが
設備投資の慎重化とかあるいは雇用の手控え等をもたらす結果になりつつある、こういうような全体的な
不安感が出ておるというのが集約した意見でございます。
そういう中にあって、やはり依然として経済の跛行性というものが解消されていない。たとえば
公共事業を中心としておる北海道などは、非常に
公共事業が横ばいでありますから、経済全体が落ち込んでしまっておる。あるいはまた東京とか関西などにおいても、
景気のリード役であるところの加工組み立て
企業、これが輸出が不振のために伸び悩んでおる。ですから、非常に順調であった加工組み立て産業にもかげりが出ておる。またそれと同時に基礎素材産業、これは
地域に非常に結びついておる
企業ですが、この基礎素材産業が御案内のように非常に低迷を続けて、在庫は一巡をしているけれ
ども、しかし需要の不振ということから、やはり
経営的に大変な問題が出つつある。特に
中小企業につきましては、個人消費の伸び悩みとか
景気全体のダウンというふうなこともあって大変収益の悪化が続いておる。そういう中で、現在のところは急激に
倒産がふえるという姿にはないのですが、このままで行くと
先行き相当な
倒産が出てくるのではないか、こういう懸念を各通産局長とも表明をいたしております。
また、雇用ですが、いま日本の雇用関係は非常に安定をしておるのですが、新規採用が定年退職者等の自然減の補充程度に限られるということであって、そういう意味で非常に新規採用者が減ってきている。それから所定外労働時間についても横ばいまたは減少ということで、いわば
中小企業にも完全に赤ランプがついたというような意見も多かったわけでございます。
そういうことで、全体の意見としては、このままで放置すれば、日本経済が大変な悪い
状況に追い込まれるので、ここでひとつ相当思い切った
景気対策をとる必要がある。それは手だてとしては
公共事業の
前倒し、こういうことであろうけれ
ども、この
公共事業の
前倒しは、やはり早く思い切ってこの結論を出してもらいたい。同時に、
前倒しだけでなくて、やはりそれではこれから下半期をどうするかということに懸念が結びつくので、下半期の見通しをつけた
前倒しを思い切ってやってもらいたい。あるいはまた住宅着工等も、住宅政策を進めるということで大変な期待が出ておるので、そうした住宅着工、建設等もひとつアクセルを踏んでもらいたい。そういう情勢の中で
中小企業の
公共事業あるいは
官公需、そういうものにおけるシェアの
拡大を図ってもらわないと、
中小企業は本当に息切れをしてしまうというふうな要請がこもごも出されたわけでございます。もちろん
地域によっては、北海道は
公共事業に頼っておる、あるいはまた大阪、関西地区は
中小企業の問題が非常に厳しく出ておるとか、あるいは北陸、九州等では基礎素材産業、そういうものが大変不振である。
地域的にはそれぞれ特色があるわけですが、全体的にはいま申し上げましたように、全体的に
一つの不況ムードということで、
経営者に
先行きに対する期待感といいますか、迫力といいますか、そういうものがなくなってしまった。そこで何とかしてほしいというのが全般的な空気だということを強く、各局長がこもごも要請をしたわけでございます。私も、そうした要請を踏まえて、これからの日本の経済運営におきまして、五十七年度五・二%という見通しを一応持っておるわけですから、その目標に向かってこれから相当な、やはり
公共事業を中心とした
景気対策というものを積極的にやっていかなければならない、そういうふうな強い感じを持っておるわけでございます。