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村田参考人 非常にむずかしい問題でございます。
第一に、
日本はいま自由主義世界の第二位の地位になってきたんだから、
日本が国際社会の中でもっとイニシアチブをとった活動をしたらどうかということの御
指摘だったかと思いますが、
日本がどういう
姿勢をとって国際舞台の中で外交その他あらゆる問題を展開していくかということは、これは私はひとえに国会がお決めになることだろうと思います。政治というものは、つまり外交も政治でございますから、国会においてどういうふうな方針をおとりになるかということは政治家がお決めになって、それに基づいて役人が働けばいいわけだと思います。
ただ、こういうことを申し上げますのは、私、戦争前、戦争の中をくぐってきた人間としまして、個人的なあれでございますが、何となく余り前へ出ていってまたたたかれたり憎まれたりしてはいけないのじゃないかというふうな、特に東南アジアその他におきまして、戦争による災害でずいぶん迷惑をかけてきているわけでございまして、そこへもってきて今度は少し金ができたからといって、大きな顔をしてにわか成金がいばるようなことをやったら徹底的にたたかれる、必ず控え目に控え目にいくべきであるという思想がございます。
同じような
意味において、
アメリカの場合は少し違いますが、
ヨーロッパあたりのように、非常に伝統的な文化を持ち、歴史を持っているところに行って、先ほ
ども申し上げましたように、これといって十分な徹底した
理解が得られていないような
段階において、たまたま
経済が優位であるからといって、余り一人前な顔をして言うと、この成り上がり者がなどと言われやしないかというような、これはあくまで個人的な感じでございますが。したがいまして、同じことを言うにいたしましても、絶えず相手方の立場を
考えながら非常に控え目に言うというふうなのが、いまいろいろなセミナー、会合等において
ヨーロッパの連中と接触しあるいは
アメリカの連中と接触しているときに、私個人としてとっている
姿勢と申しますか方法でございます。これが正しいかどうかは、今後の国政の
あり方に順応いたしまして、それによってまたその
姿勢というものは幾らでも変えていかなければならない、こういうふうに
考えております。
さらに第二の、知日派をもう少しつくることが必要であろうというお言葉でございますが、全くそのとおりでございまして、先ほど申し上げましたように、およそ
日本のことは知らない。高校の生徒に対していろいろなアンケートで調べましたときに、ECの国におきましても、
アメリカでも、
日本は中国の一部分であるというふうな回答がはね返ってくるという例が非常にございます。それから同時に、イメージがまだ非常に古いイメージでございまして、現在の
日本がどういう
経済であり、どういうふうな社会
情勢であり、どういうふうな労働の
状況であるかという問題についての適切なる解説がもっともっとなされなければならないと思います。
経済の問題だけが前に出ておりまするけれ
ども、それと同時に、いま申し上げました広い
意味における
日本の社会
状況、文化の
段階、そういうものについての解説をあらゆるルートを通じて、あらゆる方法を尽くしてやっていかなければならないと
考えております。
同時に、これは立教大学の西山
先生が言っておられるので、私は非常に同感なんですが、
日本のことを
日本語でばかり解説してもわからないよということでございます。
〔
委員長退席、森(清)
委員長代理着席〕
日本のことを解説するならば、世界にわかる言葉で解説しろということを言っておられるわけで、これはいままで全く抜けてきたところだと思います。言いかえますと、単にそれを英語でしゃべるとかフランス語でしゃべるということだけじゃございませんで、
日本の現在ありまする実態をどういうふうに解説していくか。それは国際的な言葉で国際的な意識で解説する必要があるということなんです。外国人にわかるような、欧米の文化と
日本の文化とは歴史的に非常な相違がございますが、彼らの頭で
理解できるような解説をしろということを盛んに言っておられるわけです。
たとえば終身雇用という問題がございます。
日本は終身雇用だからどうだという批判もございます。よろしい。しかしそういう場合に、いままでそれに対しまする答えは、あれは
日本における純風美俗である。
企業は一家族のごときものであって、終身まで雇って働かせていくことが純風美俗であり、労使間の協調の大きなゆえんである、こういう説明をしております。しかし、これでは向こうはわからないわけでございます。たとえば
アメリカのように、簡単にレイオフができる、あしたからおまえやめていいよとぽんとやれる、そういうふうなやり方の中においては、終身雇用は純風美俗と言ってもわからないと思うのでございます。それでは不親切だと思うのです。何ゆえに終身雇用がこのような形において出てきたかということの説明をしてやることが大事だと思います。
第一に、終身雇用という問題は、戦前はそれほどなかったわけです。戦後非常に大きく前に出てきたわけでございまして、何だといいますと、これは非常に立ちおくれておりました
日本の技術なり何なりというものを
アメリカから学び、それに追いついて追い越そうということで大変なことをやってまいりました。と同時に、
日本の学校の制度を、ドイツは敗戦の後におきまして、
アメリカの突きつけてきましたものを完全に抵抗して、いままでのドイツ式の学校教育の制度を残しました。
日本の場合は、
アメリカ式の教育の制度になりまして、御
承知のように大変な大学の数が出ております。しかも、この大変な大学の数が出て、大変なレベルの高い技術者が出てきたということは、たまたま
日本の
産業構造というもの、
日本の
高度経済成長を支える
一つのゆえんにもなったわけでございます。
いずれにしましても、そういう形で
企業が大変な人間を吸収していっている中において、
企業としては、まず電気のことを十年やらしたら、その後機械のことを十年やらせるというふうな転換をしてやらしております。そうでないと、それが二十年先になったときにおいて、管理職の相当な地位になりましたときに、総合を知った形でもってコーディネーションのできる運営をしなければならない。それだけの相当高い給料をもって雇って、十年、十年と違う分野の仕事をさせて、いわば
企業はそれだけの投資をしているわけでございます。したがって、それが三十年かそこらで簡単にやめてもらったのでは、
企業としては絶対にもったいないわけでございまして、これから定年延長の問題も出ておりますけれ
ども、さらにできるだけ長く働いてもらおう、これがすなわち終身雇用というものが発生してきた
一つの
原因なんだということを説明しますと、なるほどそうかとわかってくれるわけでございます。
比々皆しかりでございまして、このような現在の
日本にありますいろいろな現象というもの、存在する現実というものを国際語で語る、国際語で説明する、こういうことがこれから必死になって行われなければならない、そのことがいつの間にか外国に
日本というものをわかってもらえるゆえんであろうかと存じます。