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1982-02-24 第96回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十四日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 梶山 静六君 理事 野田  毅君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 清水  勇君 理事 北側 義一君    理事 宮田 早苗君       天野 公義君    植竹 繁雄君       浦野 烋興君    奥田 幹生君       島村 宜伸君    田原  隆君       泰道 三八君    中川 秀直君       中島源太郎君    野中 英二君       橋口  隆君    鳩山 邦夫君       松永  光君    粟山  明君       上田  哲君    上坂  昇君       中村 重光君    水田  稔君       渡辺 三郎君    石田幸四郎君       長田 武士君    横手 文雄君       小林 政子君    渡辺  貢君       石原健太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         公正取引委員会         事務局審査部長 伊従  寛君         経済企画政務次         官       湯川  宏君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁調整         局審議官    大竹 宏繁君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         通商産業政務次         官       原田昇左右君         通商産業大臣官         房審議官    植田 守昭君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省産業         政策局長    杉山 和男君         通商産業省基礎         産業局長    真野  温君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       高橋  宏君         資源エネルギー         庁石油部長   野々内 隆君         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君         資源エネルギー         庁公益事業部長 川崎  弘君         中小企業庁長官 勝谷  保君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   滝島 義光君         労働省労働基準         局賃金福祉部福         祉課長     石岡慎太郎君         労働省職業安定         局企画官    廣見 和夫君         建設省住宅局民         間住宅課長   伊藤 茂史君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ――――――――――――― 二月二十四日  愛知県の地場産業振興センター建設助成に関す  る陳情書(第七  六号)  中小小規模企業経営危機打開に関する陳情  書外一件(第  七七号)  大規模小売店舗に対する規制強化に関する陳情  書外三件(  第七八号)  電気工事災害防止に関する陳情書外二件  (第七九号)  中小企業事業活動機会確保のための分野調整  権限に関する陳情書  (第八〇号)  アルミニウム製錬業の経営安定に関する陳情書  外一件  (第八一号)  同(  第一二六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  機械類信用保険法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二四号)  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水田稔君。
  3. 水田稔

    水田委員 すでに予算委員会なりこの委員会でも経済見通しについては質問されておるわけでありますが、きのうの予算委員会河本長官が、五十六年度の四・一%、見込みでありますが、どうもそれは落ち込みそうだ、こういう答弁をされておるようであります。まさに五十六年度もそうでありますように、五十七年度についても、五・二%の成長のうち恐らく一・四%くらいは相当程度政策努力が行われない限り実現見通しはきわめて困難ではないかと思うのであります。  そういう中で、これまで所信表明の中で出ております政策努力というのは、民間経済活力の活用あるいは個人消費回復を図る、あるいは民間設備投資、あるいは住宅産業等に対する対策ということが言われておるわけでありますが、個々に見た場合、大変むずかしい問題が多いと思うのであります。そういう点で、五十六年度の見通し、そして昨年のたしか五月だったと思うのですが、河本長官在庫の底入れができた、こういう見方をされたわけであります。いま出ております数字を見ましても、五十六年の十一月でありますが、まさに製品在庫というのは大変な落ち込みということで、その状態が今日、五十七年二月の段階でなお回復してないというのが現実の姿ではないだろうか。そういう点を踏まえて、いまの政策努力で五・二%の成長というのは実現できるのかどうか、私は大変疑問に思うわけでありますが、そういう点についての長官見解を伺いたいと思うのであります。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本経済のここ二、三年の流れをずっと見ておりますと、昭和五十四年に第二次石油危機が起こりましてから、一番深刻に日本経済にその影響があらわれ始めましたのが五十五年の夏ごろであろうと思います。そこで、政府の方ではこれはほっておけないということで、五十五年の九月に第一回の経済対策を決めまして、翌三月に第二回の経済対策を決めたのであります。財政の力が弱まっておりますから、そう強力な対策ではありませんが、幾つかの制約の中で考えられる対策を出しまして、景気回復を図りました。幸いに五十六年の中ごろから少しずつ上向き始めたのではないか、大体中ごろが大底であった、こういう感じがいたします。最近はようやく景気回復の足を引っ張っておりました在庫調整が終わりまして、一時期に比べますと在庫率も一〇%以上も下がっております。微弱ではありますけれどもスローテンポ回復方向に向かっておると思うのでございます。  しかしながら、五十六年の第三・四半期について見ますと、内需回復力が非常に弱いところへ持ってまいりまして、貿易予想外に落ち込んでまいりました。急速に貿易が落ち込んでまいりましたが、これはやはり世界経済全体が非常に悪い状態になっておる、そういう背景があろうかと思うのでございます。第三・四半期成長がどれぐらいになったかということにつきましては、目下作業中でございまして、しかとした数字はわかりませんが、ゼロ成長前後になっておるのではなかろうか、こういう想定が一応できるのでございます。そうしてみますと、第一・四半期が一・二%成長、第二・四半期が〇・六%成長、それから第三・四半期、第四・四半期が残っておりますから、いまの段階で断定的なことは言えませんけれども、ことしの経済成長目標四・一%というのは非常に厳しい状態になっておるというのが現状であろう、こう思っております。  そこで、五十七年度の見通しでございますが、御案内のような目標を設定いたしておりますが、幸いに世界各国政府、それから権威ある国際機関等見通しを見ましても、おおむね後半からだんだんと回復方向に向かっていくのではないか、来年はある程度の正常な姿に戻るであろう、こういう見通しが多く出ております。そういう背景もございますし、油の需給関係も安定をいたしておりますので、過去二年よりも経済政策を進めることは比較的条件が整っておるのではないか、このように思います。そこで、激動しておる世界経済の中にありまして、その変化に合わせまして、機敏でかつ適切な経済政策を今後展開をしていきますならば、政府目標は達成されるであろう、このように考えております。
  5. 水田稔

    水田委員 たとえば、具体的に民間設備の問題を考えてみましても、これは輸出産業についてはある程度の設備投資がありますが、大きなものを占めるものとしては電力設備投資があります。これはいまの電力需給状況を見て、全体のエネルギー見通しを見直しをしなければならぬというほどの状況であります。これは省エネなりエネルギーの転換ということで起こったわけでありますが、そういう点から見ますと、民間設備投資が大幅に伸びるということは、具体的な政策努力として期待をしても、これはむずかしいんではないかと思うのです。その点はいかがですか。
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 電力投資見通しにつきましては、通産省側から御答弁のあるのが適切だと思いますが、企画庁の立場から若干申し上げてみたいと思います。  電力設備投資につきましては、計画から完成までの間に非常に長時間が必要であります。火力発電水力発電原子力発電、それぞれによって事情は違いますけれども、おおむね七、八年から十年かかる、こういうことでございますので、一時期経済が落ち込んだからといって、あわてて設備投資を変更するということをいたしますと、将来の経済に直ちに、また景気回復した場合に支障を来しますので、やはり長期の計画に従って電力投資を、一時期景気が落ちましても投資そのものは落とさないように、ぜひ計画的にやっていただきたいということを私は強く期待をいたしております。
  7. 水田稔

    水田委員 一つ景気を左右する大きな要素としては、特に内需関係でいえば個人消資の問題があると思うのであります。  これは総理府統計でありますが、これを見てみますと、五十五年度が可処分所得マイナス一・一%、五十六年度が一月、二月、六月、七月、八月、九月、十月、これは全部マイナスで、三、四、五だけがプラスでありますから、年間を通じて恐らく最終的には二年連続マイナスということで出るだろうと思います。同じく総理府統計で見てみましても、五十一年度の実収入一〇〇に対して五十六年七月−九月で見てみますと、実収入が一三五・六%ですから三五・六%上がっておる。可処分所得が二九・五%。それに対して勤労所得税が一八七・二%ですから八七・二%ふえておる。その他の税、これは都道府県、市町村民税が主でありますが、倍になっている、二〇二・八%。社会保障費が一九六・七%。これはこの数字には出ておりませんが、これは物価指数に入りますから、たとえば公共料金等もこの期間に七〇%くらいふえておる。それから、収入ふえぐあいと税社会保障費というのは大変な開きがあるわけです。これは民間労働組合でも調査をしておりますけれども、全く同じ数字の傾向が出ておるわけであります。民間労組の場合は、五十二年を一〇〇として五十五年で比較して実質の可処分所得が二・四%目減りをしておる。これがGNP全体の五八%でありますから、これの回復ということを図らない限り国内の内需というのは動いてこない、こういうぐあいに思うのです。  具体的なこの数字を見て、これに対応する策というのは、一体何と何をやればこれが動いてくるのかということについて所見を伺いたいと思うのであります。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたが、第二次石油危機が起こりましたのは昭和五十四年でありますが、その最も深刻な影響が翌五十五年から出始めまして、五十五年、五十六年と、ただいま御指摘のございましたように、実質可処分所得停滞気味であります。時には落ち込む、こういう状態が続いております。自由に使える金がさっぱりふえないということでありますから、消費も拡大をしない。それからまた住宅投資も伸びない。住宅消費には中小企業は最も大きく関係をしておりますから、中小企業状態が非常に悪い、こういう悪循環が繰り返されておるのが現状であると思います。  そこで、可処分所得が伸びないということが経済運営をする場合に一番頭が痛い最大の問題でございますが、それではことしの見通しはどうかといいますと、先ほども申し上げましたように、後半からある程度世界経済回復につれてわが国経済活力回復する、このように想定をしておりますので、雇用者所得も五十六年度の実績よりは若干伸びるであろう。数字が必要ならば政府委員から後で答弁させますが、そのように想定をいたしております。過去二年間のような悪い状態ではなかろう、このように考えております。
  9. 水田稔

    水田委員 そういう期待をするようなことではなくて、この実態の中から政策努力としてやる場合、何を長官としてはお考えになっておるか。たとえば実質所得をふやすためには賃金を上げるという一つ方法がありましょう。しかし、きのうの清水委員の質問に対する答弁としては、これは労使で決めるものだ、通産の政務次官がそういうお答えをしておる。だから、これは民間で勝手におやりなさい、こういうことになるわけですね。ですから、政府としてやれる努力というのは、一体何と何をこれをふやすためにお考えなのか。私は長官のときどきの発言を聞いていまして、まさに時宜に適した発言を新聞でときどき見るわけでありまして、こういう実態があるわけですから、この中で、政策努力として景気回復の手だては一体何と何があるのでしょうか。お考えがあればぜひ聞かしていただきたい、そういうことであります。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 実質可処分所得をどう伸ばすかということにつきましては、考えられることは三つしかないわけであります。一つは、所得そのものが伸びるということだと思います。もう一つは、公的負担が重くならないということだと思います。それから第三は、物価が安定をするということだと思うのです。  第一の所得が幾ら伸びるかということにつきましては、特に春闘を控えまして、ベースアップ交渉等につきましては、労使交渉によって決めていくというのがこれまでのたてまえでございます。しかし、政府として指をくわえて見ておるわけじゃございませんで、政府としてなすべきこともございます。それはやはり産業全体の生産性が上がり、それから構造不況業種のようなものがありますと、その分野での赤字が出てまいりますから、大変やりにくくなるわけでございます。また中小企業状態が非常に悪いということでも困りますので、中小企業対策も強力にやらなければなりませんし、構造不況業種対策もやる。一般産業政策としては、生産性向上のためのいろいろな対策も積極的に考えていく。そういう産業政策を進めることによりまして、労使間の交渉が円滑に進むような背景をつくっていくということ、それが政府としての務めであろう、私はこのように考えております。  公的負担の問題につきましては、減税をすれば一番早いわけでございますが、しかし、五十七年度の実情につきましては、もう御案内のとおりでございまして、減税財政がきわめて窮屈でありますからできないという状態になっております。しかし、数年間税率が据え置きになっておりまして、実質所得税が非常にふえております。それだけ負担が重くなっておるわけでございますから、こういう状態が長く続いておるということは、経済上好ましくない、このように考えておりますので、政府としての考え方は、五十八年度以降できるだけ早い時期において減税ができるような、そういう条件を整備していく、こういう努力をしていかなければならぬ、これは大きな課題であろう、このように判断をしております。
  11. 水田稔

    水田委員 構造不況業種については、後でまた通産大臣にお伺いしたいと思うのですが、まさに長官が言われるとおりだと思うのであります。ですから、やれることは、一つは、GNPの一番大きな部分を占める個人消費については所得をふやすということと減税をすること。減税は当面できない、こう言う。私どもはいまやらなければ、来年になってやったところで、ことしか動かぬと景気というのは動かないだろう、こういうぐあいに思うわけであります。たとえば構造不況業種中小企業問題等についても、それほど大きな期待ができないとすると、あとは政策的にやるのであれば、公共事業をもう少しふやすかどうか。これは財政上なかなかむずかしい。いま七〇%上半期でとにかく前倒しでやったらどうか。しかし、予算全体がゼロシーリングなら、年度末になってきますと、補正を組むか何かしない限りは動いてこない。  大体その三つ考えてみても、何かを重点的にいじらなければ景気というのは回復しないのではないかと思うのですが、政府としては、たとえばいま政策努力でやる中小企業対策あるいは構造不況業種対策あるいは生産性向上等ということ、ベースアップの客観的な条件をつくるということをそれなりにやられても、それは具体的には労使の間で決まるわけですから、いまの日経連の考え方は、景気という問題は考えない状態で抑え込もうという考え方ですから、そう多くは期待できない。もちろん労働組合は黙っておるわけではありませんけれども。そして公的負担についてはやらないということですから、あとやるとしたら、景気浮揚ということになれば公共事業ということにならざるを得ないと思うのです。そこらあたりはいまどういう御検討をなさっておるのか、ひとつ御見解を伺いたいと思うのです。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま経済政策を進めます場合に非常に手詰まりになっておりまして、実は金融政策どももう少し機動的に運営をしたいのでございますが、何しろアメリカの金利が非常に高い水準で推移しておりますので、もう全然手を打てない。昨年の十二月に第四回目の公定歩合の引き下げをやりましたが、これも効果が出てこない、こういう状態でございます。財政につきましては、御承知のようなゼロシーリングという状態でございますので、これも力が大変弱くなっております。しかし、そういう中におきましても、五十六年度に比べまして五十七年度の公共事業事業量が減らないように、財投とか地方単独事業とか、こういう面で相当金額をふやしております。そして一般会計の分と合わせますと、若干金額もふえておりまして、仕事量そのものはおおむね横並びの水準を維持できるのではなかろうか、こう思っております。  そこで、いま考えられる方法といたしましては、この公共事業を技術的に可能な限り大幅に繰り上げて執行する、こういうことしかないのではないかと私は思います。住宅につきましては、五十七年度から幾つかの新しい対策を決めておりますが、この一部分の条件につきましては、すでに一月に繰り上げて現在実施いたしまして、五十六年度の最終の募集段階で新しい条件でやっております。したがいまして、残された道といたしましては、公共事業執行を大幅に繰り上げていくということ。後が困るではないかというような問題がありますけれども、後は後の問題でありまして、現時点がとにもかくにもお話にならぬ、こういう状態でございますから、いまのままいけばじり貧になってしまう。それを避ける方法といたしましては、とにかく技術的に可能な限り大幅な繰り上げ執行をやってみる、こういうことでなかろうかと思っております。
  13. 水田稔

    水田委員 一つは、住宅景気対策の柱にしておるわけでありますけれども、この住宅は五十七年度、百三十万戸を見込んでおるわけです。しかし、多いときの百五十万から百六十万戸がだんだん下がってまいりまして、五十五年が百二十万戸、五十六年が恐らく百十四万戸だろうというのですが、そうなった状態から百三十万戸ということでありますから、大変な努力がされなければ、この実現は不可能だろうと思うのです。これは単に税制上の土地対策を若干やったところで、土地そのものが大変な値段になっておるわけですからなかなか手が出ないのではないか。  いま住宅を建てるのがなぜ減ってきたのかということを考えてみますと、たとえば土地を含めての住宅値段というのが一般的に都市部で、東京で言いますと、相当周辺に行かなければ二千万少々のマンションというのはない。土地つきなら四千万、五千万ということですから、とてもじゃないが勤労者は手が出ない。私ども地方へ行きましても、土地をつけた住宅というのは二千万以上です。  これは見てみますと、支払いが二十五年から三十五年間にわたって、ボーナスのときも、全部を月で払うとすると、毎月十万円ぐらい払わなきゃならぬです。大卒の初任給が十二万ぐらいですから、二十万円の給料をもらうには大体七、八年から十年かかる。その連中が二十万の手取りで十万の住宅費を払って二十五年、三十五年の生活というのは、まさに人生住宅費を払うだけということになる。高度経済成長のときには残業手当で五万、六万というのはざらにあった。その当時は住宅が七、八百万あるいは一千二百万ぐらいですから、その金で払うことができた。それで四十八年のオイルショック、そして四十九年で大幅に賃金も上がったけれども、その後五十年以降というのは残業がほとんどなくなるというような不況状態が続いてきた。五十四年の段階で一部回復したように見えるのは、あれは電力料大幅値上げ前の仮需でちょっと持ち直したわけですから、その間の労働者状態というのはまさにその状態が続いておる。長い目で見て自分の生活設計をする場合に、いまは土地が上がって、土地つきの家あるいは都市部周辺地域でのマンションでも少なくとも二千四、五百万ということになると、公的な資金と同時にローンを借りる。そうすると、トータルで十万円近くのものを毎月払わなければならぬということになって、これはいまの労働者実態生活からはなかなか払えない。ですから、土地を含めての住宅の費用が上がったのと賃金とのいわゆる乖離が出てきている。いままでは買えるという気持ちになるようなところにあったのが、所得との関係で非常に乖離が出てきたところに一番問題があるのではないか。このことを解消しない限り、百三十万戸まで落ち込んだのがそれほど簡単に回復しないのではないかと私は思うのです。  同時に、世帯数住宅の数だけで言いますと、かつて足らないときは、そうは言っても、まだ無理をしてでも住宅を建てようということになりますけれども、いまは大体三百万戸余ってきた。質の問題では別でありますけれども、そういう点がこの住宅建設回復を非常におくらせておるのではないか。この数の余ってきた分は、これから世帯数がそれほど急激にふえるわけではありませんから、このことは住宅建設にいままでと違った条件が出てきておるということで、私がいま申し上げたような条件考えるとなかなか進まないと思うのですが、こういうことを踏まえて、長官としては住宅問題について、それでもなおかつ具体的に進め得るということであるならば、どういう条件でこれが伸びるというぐあいにお考えになっておるのか、まず伺いたいと思うのであります。     〔委員長退席梶山委員長代理着席
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 過去二年間住宅投資が非常に大幅に落ち込んでおりますが、その一番大きな原因は何かといいますと、これもいま御指摘がございましたように、所得が伸びないのに、住宅値段だけが非常に上がったということが最大の原因でございます。したがって、いま家をつくると、ローンの返済に大変苦しまなければならぬから、もう少し所得がふえるまでとにかくしんぼうしよう、こういう人たちが一年に二十万人とか三十万人とか出てきておるということが一番の原因であろうと私ども考えております。  そこで、今度住宅対策を積極的にいろいろ決めたのでありますが、その実情をよく踏まえまして、たとえば住宅金融等につきましては、ここしばらくの間所得が伸びませんから、そこで最初の五年間の返済は、これまでは三十年賦で返しておりましたが、五十年賦で返してよろしいとか、そのかわり六年目からは少しふやしなさい、また十一年目からはもう少しふやしなさい、こういう返済方法で若干の工夫をするとか、あるいは政府の貸出資金と年金とのあわせ貸し制度等を考えまして、この双方を使って借りた場合には、相当多額の金が借りられる、こういう制度も初めてスタートをさせました。  それからまた、ことしの百三十万戸の建設計画のざっと半分は建てかえだと思っております。したがいまして、中古住宅が建ちませんと計画がスムーズに進みませんので、中古住宅対策といたしまして、中古住宅を売って新しい家を建てる場合には、税金は一切取らないという制度もつくっておりますし、土地対策につきましても、幾つかの政策を今度新たに採用することにいたしております。考えられる対策といたしましてはほとんど全部前進させたつもりでございます。  民間見通しと違います一番大きな背景は、民間住宅投資見通しというのは、大体十一月から十二月の前半に出ておりまして、政府住宅政策を決めましたのは十二月二十八日でございます。だから、政府が五十七年度以降の住宅政策を何をやろうとしておるか、そういうことは全然考慮の外に置かれておる。ここが見通しの違いの一番大きな原因でなかろうかと思います。  それから、戸数が余っておるではないか、こういうお話でございますが、確かに算術計算でやりますと戸数は余るのです。しかし、日本の住宅の質は非常に悪うございまして、たとえば木賃住宅と言われる一番悪い条件住宅がございますが、この住宅だけでも全国に三百四十万戸もございます。東京だけで約百万戸。いまの実情ではとても住めないという状態でございますし、それ以外にも建てかえなければならぬ家が非常に多くなっておりまして、政府の昨年決めました第四期住宅建設五カ年計画におきましても、約半分は建てかえである、こういう想定をいたしておるのでございます。EC諸国から日本の住宅を見まして、日本人はウサギ小屋に住んでおるのだ、こういう悪口を言っておりますが、それはいま建てかえなければならない家が非常に多い、そこの部分だけを見ておるのではなかろうか、私はこのように判断をしておりまして、これからの住宅政策は半分またはそれ以上は建てかえになる、こういうふうに私ども考えております。
  15. 水田稔

    水田委員 いま長官の言われたように、建てかえあるいはウサギ小屋と言われる住宅の改良というのがいま大きな課題だろうと思うのです。なぜなら、景気回復考える場合、公共投資でも、土地を買う金といううのはもうそれで終わってしまうわけですが、建物を建てるというのは物が動くわけです。そういう点では、建設省おいでいただいていると思うのですが、いま二千万とか二千五百万というのを返済する場合には、所得の上で大変手を出しにくいという気持ちになる。しかし、五百万とか七百万という、いまから十年ぐらい前にはそういうことで建てられた。その時分は手が出せたわけです。ですから、増改築というのが、まさに建て直さなくてもいいけれども、子供が大きくなって一部屋欲しいとか、あるいは生活環境が変わってきますから、そういう中で内装をきちっとやりたい、あるいは防火の設備もしたいというようなことになれば、いま一般的に増改築では、これはいろいろなランクはありますけれども、普通のあれでいきますと二百七十万ということになっています。しかも、これは三十万以上ですから返済が十年ということになっているわけです。たとえばこれが五百万ぐらい借れて自己資金が百五十万か二百万あれば、これはまさに相当程度の手入れができると思うのです。ですから、特に全体の枠を広げなくても、その中での予算の枠内でいわゆる増改築に対する融資の枠を広げるということは、いま金を使わなくても枠の中で実際には物が動く。土地を買ってまでというと手は出ないけれども、それをやりたい。しかし、二百七十万では自分の金を足しても思うだけのものはできない。本当にわずかな改良しかできない。これは去年私も自分で半分やらにゃいかぬと思って、その書類をもらってきてみたら、こんなむずかしい手間をかけてこれだけの金を借りるのなら、ほかで工面しようという気になって別で工面しましたけれども一つはその枠の問題と、一つは手続の問題なんです。もちろん地震に対する耐震と防火という問題は厳重にやらなければいかぬけれども、これは新規に建てるのと同じだけの物すごい手間をかけて書類を出してやるわけです。そこらあたりはまさに行政の簡素化という点でいえば手続の問題。そして枠を広げて、即効的に、これならいまの勤労者でも手が出せるということになると私は思うのです。そういう点では、いま経済企画庁の長官もまさに増改築、建て直しというのが多いということでありますから、融資の面でもそういう配慮をすべきではないだろうか、こういうぐあいに思うのですが、いかがでしょうか。
  16. 伊藤茂史

    ○伊藤説明員 御説明申し上げます。  先生おっしゃいましたとおり、住宅の新設の戸数は昨年度と今年度と非常に低迷しておりますが、増築、改築、修繕といった工事につきましては、落ち込みはございませんで、たとえば着工統計で見ますと、五十四年度は二十一万四千、五十五年度も同じでございまして、五十六年度もさらにふえる。あるいは金融公庫の融資の実績を見ましても、最近改良融資がふえております。五十四年が六万件、五十五年が六万六千件、それから五十六年は十二月の途中でございますけれども四万九千件ほど参っておりまして、いまの趨勢でまいりますと、七万程度になるだろうというふうに見込んでおります。したがいまして、新設着工は落ちておりますけれども、増改築、修繕といったものはふえておると思います。  住宅政策の面から見ましても、既存のストックというものを有効に活用して、その物理的な耐用年数、経済的な耐用年数を十分生かして国民が御使用いただくということが非常に重要なことだろうと思うわけでございまして、そういった維持、修繕のための費用というものを、できるだけ円滑に資金を供給するということは、公庫融資の一つの大きな役目だろうと思っております。  先生御案内のとおり、今年度二百七十万ということで限度額決めておりますし、それから新設の工事あるいは購入融資の際の募集の方式と違いまして、常時受け付けというかっこうでいつでも御利用いただけるかっこうになっております。来年度は限度額も上がりますし、より使いやすくなるのではないかと考えております。今後とも住宅政策の立場からストックを十分に活用していくということで、そういった費用の資金の確保に努めたいと考えております。  それから、手続の面で御指摘がございましたが、住宅政策としての金融公庫融資でございまして、良質のストックあるいは設備等も質のいいものをしていただくということで公庫でいろいろ基準をつくっておりますので、その基準を守っていただくという面で、公共団体あるいは銀行にいろいろな手続面のややこしいことをお願いしておりますけれども、これはできるだけ簡素化ということではやぶさかでございませんが、そういった住宅政策からの要請をどうやって守るかという点で最小限のものをお願いしたいというふうに考えております。今後とも検討させていただきたいと思います。
  17. 水田稔

    水田委員 ぜひそうお願いしたいのですが、実はむずかしい手続のために、施主とそれから工事を請け負った者、それから地方公共団体のチェックとの関係でトラブルが大変起きるわけですから、そういう点も含めて検討をぜひお願いしたいと思うのです。答弁結構です。  もう一つは、増改築の小さな仕事について大手の業者がどんどん入ってくる。いま倒産会社の中で中小企業の零細な土建業者、建築業者というのが多いわけでありますが、そういう中で、新築が減ったものですから、そういう点では自分たちの生きる道というのを増改築に求めて零細業者が一生懸命努力しておる。そうすると、これは大手も仕事がない。もうけが少ないからといってどんどん入ってくるわけです。そういう形では零細が幾ら努力しても、これはどうにもならぬと思いますので、そこらあたりは、一つ分野の点で何らかの調整はできないものだろうか。これは深刻な問題として、地方の零細な、俗に言う大工さん、左官さんと言われる人たちがたくさんそういう意見を出されるわけでありますが、中小企業庁として何らかの方法はないものでしょうか。
  18. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 お答えいたします。  御質問のございました住宅金融公庫の融資を利用いたしました住宅の増改築に関します大手と中小の建設業者の受注状況につきましては、一件当たりの事業規模が、先ほどもお話がございましたように小さいこともございまして、中小企業者の受注が多いと思われますが、その実態が必ずしも明らかでございません。その実態等につきまして、事情を聞いた上で、今後建設省と協議の上対処してまいりたいと思っております。私ども中小企業庁の立場といたしましては、ぜひ受注が中小企業者に多くなるようにいたしたいと考えるわけでございます。  その場合には、魅力ある中小建設業者である必要がございますので、中小建設業の振興につきまして、中小企業近代化促進法に基づきます近代化、合理化を進める必要がございます。すでに五十三年、四年、五年、六年と、それぞれの関連の業種につきまして、土木工事業、管工事業、内装仕上げ工事等々それぞれの業種で指定をいたしておりまして、目下近代化、合理化を進めておりますので、魅力ある中小企業の建設業者ができ上がるとともに、先生御指摘の方向で進めてまいりたいと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、現時点は建設省とよく相談いたしまして、実態把握に努めたいと思っております。
  19. 水田稔

    水田委員 それでは、通産大臣にお伺いしたいと思いますが、長期にわたる不況状況というのは、まさにエネルギー問題に端を発した——日本は安い原油をエネルギーに使い、原料に使うという形で高度経済成長を果たした。それが二十倍にもなってきたわけですから、そのままの形で産業構造を維持することは困難です。そういう点の対策が大変おくれてきておるのではないか。もちろん民間の企業ですから、どういう方向へ日本の産業構造を持っていくかということは、それぞれの企業がやることでありますけれども、政策としては、きちっとした方向というもの、ある程度誘導政策というものが相当前に、第一次のオイルショック、第二次のオイルショックの時点からできておれば、この長期低迷というのは、少しは違っておったのではないかと私は思うのです。     〔梶山委員長代理退席、委員長着席〕  たとえば、アルミは御承知のように百六十八万トンから百十万トン、今度七十万トンにするということですが、それでもなおかつ七十万トンが国際競争ができるのかどうかというのは、そこに働いておる労働者も経営者も、いまの程度の対策では大変疑念に思っておるという問題があります。あるいは鉄鋼の助剤であるフェロアロイにしても、電力消費ですから、大変な高いものにつくから輸入物でいまどんどんやられておるということになると、鉄鋼は強い、こう言っておっても、助剤がやられると、鉄鋼そのものが揺らいでくるということになる危険性があります。あるいは紙パルプというのは、国際的な問題もありますけれども、国内的な問題でしょう。長期にわたる過剰設備を抱えた中でいろいろな跛行性が品種によってありますけれども、そういう問題を抱えておる。あるいは石油化学は、まさに油、ナフサが原料ですから、そういう点では決定的な影響を受けておる、こういうぐあいに思うわけです。  たとえば、普通の景気調整で見れば、カルテルを結んで在庫調整が済んだら、そこから徐々に需要に見合って操業率も上がっていく、こういうぐあいに見ておったのですが、一方では在庫調整がついても過剰設備を抱えておる。また国際的にアメリカが不況ですから、アルミにしても、本来アメリカの景気が普通に回復すれば、輸出余力はないわけですけれども、それがトン十万円も安い値段でどんどん入ってくる。あるいは化学製品にしても、国内景気が悪いものですから、EDCという形で日本へどんどん入れてくる。これは天然ガスですからナフサではとても太刀打ちできない。これは中間物と同時に製品で日本の輸出先にもどんどん侵食してくるという形になっておるわけです。ですから、こういう点では、油を原料にし、エネルギー消費産業に対する対策というのがきわめておくれてきたところに長期低迷、景気回復がおくれた原因があるのではないか。そういう点について大臣はどういうぐあいにお考えになっておるのか。  あるいはまた、たとえば石油価格について言えば、原料非課税と言いながら、いつまでたっても実際はできない。あるいは電力というのは原価主義、統一価格ということでやっておるけれども、きのうもちょっと話が出ましたけれども、九電力ごとによって違う。原発を持っている県では、その周辺電力料を安くする、そういういままでと違った形が出ているけれども、政策的な電気料金というのはなかなか手がつかないという、産業構造を転換していかなければならぬことに対応する政策というものがおくれてきたところに一番の原因があるのではないかと思うのですが、そういう点について大臣の所感を伺いたいと思っております。
  20. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま出ております基礎素材産業不況という問題に絡んでのわが国の政府の対応がおくれたんじゃないか、こういうことでありますが、一般的に見ますと、第一次石油ショック、第二次石油ショックを諸外国に比して日本は巧みに切り抜けてきたんじゃないかと私は思います。  ただ、最近の内需の不振というふうなこともありまして、構造的な問題がいま出ておることも事実でございますので、これらの問題に対しましては、全面的にひとつ取り組んで対策を講じていかなきゃならない、こういうふうに考えるわけであります。これは短期の面と長期の面とあるんじゃないかと思っておりまして、短期的な面につきましては、アルミに対しても、御承知のように具体的な関税の減免措置であるとかあるいは電力コストの低減措置であるというようなものを講じてまいりましたし、紙パルプ等については、不況カルテルの運用というものによって、これが対策をいま講じておるところでございます。その他の石油価格であるとかあるいは塩ビ、いろいろと不況業種がいま出ておるわけでございますが、そうした対策につきましては、個別に今後早急に対策を講じていかなきゃならぬ。  しかし、中長期的に見ると、これは日本の経済を支えている大きな基盤の産業でございますから、中長期的には、やはりいま特安法等もあるわけですが、そして来年切れるわけですが、そういう法律とも十分な整合性をとりながら、何らかの法的措置をひとつまとめて講ずる必要が近くなっておるんじゃないかというふうな感じが私はいたしておるわけでございまして、これらの諸問題について、いま産業構造審議会で鋭意検討を進めていただいておりまして、この答申を早くいただいてひとつ対処していきたい、こういうふうに存じておるわけであります。
  21. 水田稔

    水田委員 いま大臣が特安法の問題を言われたんですが、特安法は来年六月まででありますけれども、受け付けはもはやいまはやっておりませんから、いま適用されておるものはいいのですけれども、アルミなんかはいいわけでありますけれども、いいと言ってもそれだけで解決する問題じゃないのです。  そこで、この特安法というのはもちろん過剰設備の廃棄というのが中心的なものであったわけですね。いま大臣が言われたように、産業構造転換を迫られておるいまの状態の中で、所信の中でも、原材料、エネルギー対策、需給の均衡ということがうたわれておるのです。私どもはそれに雇用の安定を含めた総合的な対策でなければならぬと思うのです。ですから、単に特安法の延長ということではなくて、そういう総合的な対策、もちろん公取との関係はありましょうけれどもそこらあたりは少なくとも原材料、エネルギー対策、需給の均衡、雇用の安定を含めた総合的なものにぜひしてもらいたい、そういう対策を急いでもらいたい、そういうぐあいに御検討なさっておると理解してよろしゅうございますか。
  22. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは産業構造審議会でいま審議をしていただいておりますから、この答申を早くいただいて方針を確立したい、こういうふうに思っておりますが、いま私が不況産業実態を見まして考えなければならないと思っておりますのは、いまお話しのように、いわゆるエネルギー対策あるいは雇用対策、需給対策等も含めた総合的な施策が必要である。それはやはり法的な裏づけがないといけないのじゃないだろうか、こういうふうに思うわけであります。しかし、いまお話しのように、これは公取との関係、独禁法との関係、さらにまた税制あるいは金融制度、そういうものも含めたものであるべきですから、これを実現しようと思えば相当困難な事態、問題があるわけであります。しかし、いまこれだけの構造的な不況状況に追い込まれておりますから、中長期的には、やはりこれを取り上げていかざるを得ないのじゃないだろうか、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。
  23. 水田稔

    水田委員 ぜひそうお願いしたいのです。  ただ、私どもがいま検討の日程を聞いてみますと、来年の六月に特案法が切れる。どうもこれは来年の通常国会ぐらいでというようなことになりそうだという感じがして仕方がないわけです。たとえばアルミにしたって、石油化学にしたって、紙パにしたって——この間のアルミの対策でも、その程度のことで一体来年までこの一年がもつのか、海外物を入れてくるというような政策もあるけれども、その間とにかく本体の国内の企業はもたぬじゃないかというほど深刻な状態だったわけです。ですから、石油化学にしても、この一年、二年の問題じゃないのです。五十四年のときにちょっとだけ仮需でとにかく息をついたという一年があるけれども、五十年以降ずっと体質はもう弱ってしまっているわけです。そういう点から言うと、一日も早い対策が必要ではないか。たとえば六月ぐらいに答申が出るならば、秋にあるかどうかわかりませんけれども、臨時国会ぐらいにかけて、とにかく通産省としてはいま直ちにでも何とでも対策をしてやりたい、こういうような取り組みをぜひしていただきたいと思うのですが、そういう点は、日程的な問題、作業の手順についてはいかがでしょうか。
  24. 杉山和男

    ○杉山(和)政府委員 大臣がお答え申し上げましたように、基礎素材産業を、今後中長期的にどういう対策をとって、どう持っていくかというのは、わが国経済、それから産業構造上の現下の最大の課題であるというふうに私ども考えております。  その対策につきましては、各業種の実態に即しまして、産業構造審議会の各部会、小委員会等で鋭意御検討いただいておるところでございますが、各業種の対策が出そろった段階で、これらの対策につきまして、法律上の措置が必要なものはどれであるかというようなふるい分けをいたしまして、検討いたしまして、新しい事態に対応いたしましたものにいたしたいというふうに考えておるわけでございますが、対策が出そろうタイミングの問題というふうなものもございますし、それから基礎産業全体の対策としたいという考え方もありますので、非常に早くということはなかなかむずかしい面もあろうと思いますが、鋭意努力いたしたいと思っております。  ただ、対策は、現在の特安法あるいはその延長線上にあるもののみならず、ほかの法律でやるものもございますし、それから具体的な政策として、法律と関係なしにやっていくものもあるというふうに考えられますが、私ども、逐次答申をいただきながら、直ちにできるものは即時実行していくということでやってまいりたいと思います。  具体的には、大臣から申し上げましたが、たとえばアルミの諸対策、それから塩ビ、中低圧ポリエチレン等の不況カルテルの活用、それから電力消費産業におきますところの需給調整契約の見直し等を逐次実施してまいるということで、現に考えられるものにつきまして、直ちにできるものは直ちに実行するということで臨んでいきたいというふうに考えております。
  25. 水田稔

    水田委員 ぜひそういうぐあいにお願いしたいと思うのであります。  最後ですが、大臣の所信表明で、きわめて簡単に書いてあるのです。「行政改革は、現下の国民的課題であります。」「かかる努力の一環として、日本航空機製造株式会社を解散し、」とある。これはきのう清水委員からも質問いたしまして、私、御答弁、全く不満であるわけです。戦前の日本の航空機産業、輸送機はまだそれほどのあれはありませんけれども、航空機全体でいえば、ある程度国際レベルになっている。あの敗戦後の八年間の空白で、今日、諸外国との間に大変な技術の格差ができている。私は非常に残念に思っている一人であります。いま二千億円の産業として、非常に微々たる産業のように言われておりますけれども、日本がこれから産業構造を変えていく中で、非常に付加価値の高い産業であるだけに、これは重点的に伸ばしていく産業だと思っておりますし、そのための施策としてのあり方というのは非常に大事だと思うのであります。  私は、まず大臣に、日本の航空機製造の技術的な水準が国際的にどういうところにあって、将来一体どういう時点で国際的な競争ができるか。たとえば、かつての自動車がこれほど伸びるとは、通産省も見てなかったけれども通産省の中の一部には予測した人があるわけであります。そしてアメリカが大型の自動車に目を向けているときに、その間隙を縫って中型、小型で対抗していった。航空機についても、私はいまアメリカは決して最高ではないと思うのです。設計段階では相当な技術を持っておっても、実際のあの現場の労働者の質というのは、自動車でも一緒でありますが、大変落ちておるという実例を知っておるわけであります。そういう点から、将来、たとえばYXXの時代には、日本が航空機産業ではアメリカ、ヨーロッパに大体匹敵するものをつくり得るレベルに持っていくのかどうか、そういうことを含めた将来展望というものをどのようにお考えになっておるか、ひとつお聞かせいただきたいと思うのであります。
  26. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 航空機工業は、御存じのように、非常に付加価値が高い、典型的な知識集約産業でありまして、そのすそ野には非常に広い基礎素材産業等を擁しておるわけでありますから、今後わが国が技術立国として、産業構造上のいわば創造的な知識集約化を図っていく上で、非常に重要な役割りを果たすことが期待されておることは言うまでもないわけでございます。  その中で、わが国の現在の航空機工業の生産高は、年間で一二千億円弱でありまして、米国の約二十分の一、ヨーロッパの約十二分の一の規模であります。民間航空機の分野で、これらの欧米諸国に伍していける地位までにいかに到達するかということが産業上の課題でありまして、まだいま遠く及ばないという状況でございますが、この民間航空機は、国際商品としての特質を有しておりますし、世界市場への参入の可否が、こうした課題を達成する第一関門とも言えるわけでございます。  御承知のように、大型の民間航空機分野では、米国のボーイング社とマクダネル・ダグラス社の両社で世界市場の約八〇%を占めております。欧州ではエアバス・インダストリー社が一社という寡占状況にあるわけで、また航空機用のエンジンの分野でも、米国のプラット・アンド・ホイットニー社及びゼネラル・エレクトリック社あるいは英国のロールスロイス社の三社の寡占体制にあるわけでございます。こうした世界市場に日本の航空機工業が参入し、確固たる地位を占めていくためには、当面は国際的な共同開発プロジェクトにわが航空機工業の総力を結集して参画をし、最先端の技術開発の経験を修得するとともに、わが国の成果を高めていくことが必要である、こういうふうに考えております。このような開発実績を積み重ねることによって、将来は世界の民間航空機市場において、欧米主要メーカーに対し得る地位を確保することがわが国の航空機工業の自立発展の基盤ともなり得ると考えられております。いま非常に航空機工業はわが国においてはおくれておるわけでございますが、われわれとしては、技術立国を目標としておりますし、最先端技術についても非常に優秀な力を持っておるわけでございますから、これからの努力次第によっては、こうした世界の市場に参加できる。そしてまた同時に、欧米に匹敵する実力を持つことができるのじゃないか。そういう意味においては、将来は非常に明るい展望を持った産業ではないか、私はこういうように考えております。
  27. 水田稔

    水田委員 そうしますと、非常に将来展望を持っておられるとして、一方では簡単に行政改革。行政改革というのは、不要になったあるいは水ぶくれになったところは切るにしても、将来に大きな展望を持つものならもっと積極的な何らかのものが出てこなきゃならぬと思うのですね。そういう点からいって、たとえばいまわが国の技術水準からいって共同開発ということを言われたんですが、YS11というのは、一体飛行機としてどういうぐあいに評価されたのですか。一体失敗の原因は、あれは飛行機がよくないから赤字になったのか、そういう点はどういうぐあいにお考えになったのか、まず聞かせてください。そういう反省の上に、やはりこれからの開発というのは考えていかなければならぬと思うのです。
  28. 豊島格

    ○豊島政府委員 YS11は、当時のジェットでないエンジンの航空機としましては、技術的には非常に高い評価を受けたわけでして、現在でも百六十機が飛んでいるわけでございます。  ただ、幾つかの問題点があったわけでございまして、日本の航空機工業、民間航空機をつくるという経験が非常に不足しておったということもございまして、いわばコストの面ということにおいて、最近YXの共同開発等におきましては、性能、品質とともにいかにしてコストを切り下げるかということをいま経験しておるわけでございますが、そういう点において幾つか問題があった。それから、やはり民間航空機でございますから、自分で売っていくという世界市場における国際商品の売り方という点にも非常に問題があったと思います。  したがいまして、こういう貴重な経験を踏まえまして、今後の日本の民間航空機の開発につきましては、まず、非常にリスクも大きいし、市場確保ということからいって、先ほど大臣も御説明いたしましたように、国際協力ということでございますが、同時に、何といっても民間活力というものを基礎とし、それで効率的にやるということで進むことが非常に大事である。民間活力あるいは民間の商業センスということをどうしても入れていかなければいけない。しかし、開発ということになりますと、御承知のように、非常に金もかかるわけです。リスクも大きいということで、その段階におきましては、民間を主体としつつも国がそのリスクの一部を負担していく、こういうことで進めていくことが必要だということで、航空機・機械工業審議会で何回も検討した結果、新しい、従来の日本航空機製造のようなやり方ではない方式を編み出し、YXにおいてはそれを実行して、いわば試験済みといいますか、軌道に乗りつつある、このように考えておる次第であります。
  29. 水田稔

    水田委員 私は一つは販売ということに対する経験の大変大事な蓄積をここでやったと思いますね。これは解散するということになると、雲散霧消してしまうわけであります。コストの問題を考えてみれば、各国ともに、国策会社としてやるかあるいは国の援助ということで相当の援助がいっておる。開発に対するコストの点では、出資だけでやったという、後補助は出ていますが、その最初の出方のコストの見方というのが間違っておったのではないか。そういう点から、これをこのまま伸ばしておけば、違った形になっておったと思う。そういう反省の上にこれからの開発を考えるべきじゃないか。当然、今後の開発を考えた場合、相当な政府の援助、補助というのがなければ、これから航空機開発はできない。たとえばYS11というのは、非常に小さな飛行機ですが、これから開発されるものを考えたら、いわゆる国の補助も開発費もますます多額になっていくのは間違いないのです。このYSでさえ政府の出資が四十二億で補助が五十年までに二百七十億ということですから、これから考えられる次の開発は、補助率を半分にしたところで相当な額になってくる、こう思うのです。  いま日本の法律の中で、大臣も局長も皆、日本の航空機産業を開発したい、これはよりどころとなっているのは、一つは、製造の基準については航空機製造事業法、それから振興を図るというのでは航空機工業振興法というのがあるのですね。二本だけなんです。ところが実際にはこの法律はそのままにして、この法律に基づいて日航製には補助ができるわけです。ところがYXのところから、この法律に基づかない、いわゆる予算補助という形に変わっていっている。そしてその次のYXXというのは、五十七年度で十四億九千万円というのがすでに組まれる、こういうことなんです。ですから、本来航空機工業振興法で、日本の航空機産業というのは、発展を国としては方針としてうたってやっておるわけですから、それを違った形にYXX協会でやるとかということになれば、大変な政策の転換ですね。当然そのことは、国会の論議、もちろん予算だけじゃなくて、基本的なたてりというものを論議した上でやるべきじゃなかったかと私は思うのです。ですから、日航製というのは、法律の中にある商法の手続によって簡単に解散というのじゃなくて、少なくとも大転換をやるわけですから、いま大臣の言われたような、あるいは局長の言われたような方向をとるならば、一貫した開発の方向をとるならば、法律の中にちゃんと規定して、それで国民全体の税金の中で賄うわけですから、合意を求めた中での補助ができるような体系をつくるべきじゃないか、こういうぐあいに思うのです。ですから、大変大事なところで、基本的な国の政策ですから、その点が法律で、ちゃんと航空機工業振興法があるのですから、それを変わった方向に持っていくならちゃんと変えてからやるべきだ、私はそういうふうに思うわけでありますが、その点についての御見解を伺いたいと思うのであります。
  30. 豊島格

    ○豊島政府委員 日本航空機製造株式会社は株式会社でございますので、解散ということになりますと、商法上の手続でやるということになるわけですが、もちろん先生御指摘のとおり、国の航空機工業政策とも密接に関係しておるところでございます。したがいまして、この点につきましては、非常に時間をかけまして、いろいろな歴史的経過を経まして、今後の航空機工業のあり方につきまして、先ほどるる御説明申しましたように、民間を主体として、しかし、国は開発段階についてはリスクを負担する、こういうことで考え、そのような方向で進めたわけでございます。  なお、航空機工業振興法ですか、もちろんそれと日本航空機製造は密接な関係、まさに大きな柱になっておったわけでございますので、当委員会におきましても十分な御審議を経て、各方面に理解をしていただきたい、このように考えておるわけでございます。  なお、航空機工業振興法の改正問題といいますか、解散した後には、当然その規定がなくなるわけでございますが、その場合に、当然その条項は整理するということになろうかと思いますが、その時点で、さらに従来進めておる民間を主体とする公益法人ベースの開発援助ということにつきまして、あるいはもろもろのそのほかのことにつきましても、必要があればその段階で盛り込んでいく。現在、実際的にはいまのような方法でうまくいっておるわけですから、そういう段階でまた御審議いただくことになろうか、このように考えておる次第でございます。
  31. 水田稔

    水田委員 ひとつ一貫した、継続した、そして将来展望をちゃんと見通した国の政策、方策というのをちゃんと法律でやるべきだ。  先ほどありましたように、たとえばコストの問題、販売の問題というのは、確かに最初ですからいろいろな試行錯誤があった。そういう反省が次に生きていく。たとえばYXを全体の一五%で機体の一部をつくって、これはYS11で一番頭を悩ましたいわゆる販売というものはどういうぐあいに継続されるのか、販売のノーハウはどういうふうに継続されるのか。継続性は全くそこにはないわけですね。YXが済んだらYX協会はなくなってYXX協会、そういうようなことで一貫性のある開発ということには全くならないし、この中間報告を見ましても、こういうことを言っていますね。ずっと民間活力と言いながら「なお、将来、国自らの発意で実施するような大プロジェクトが出現した場合には、国自らが開発、生産、販売のリスクを負担する。」YS11という、まだ小さな分でも国がリスクを負担してやってきた。中間のやつは民間活力、大きくなったら国がリスクを背負うような形をしなければならぬ。非常にとぎれとぎれの開発の方法で、大臣が言われたような、将来日本の一つ産業の柱を背負うような産業に発展させることができるのかどうか大変疑問でありますし、同時に、商法上の手続で日航製を廃止して、その後、そこは削らなければいけないというようなばかげた話はないのですよ。私が言っておるのは、そういう形で、いま法律は振興法によって日本の民間航空機の開発を図ってきた。それを方向転換するならば、継続性のある形で、どういう方向でやりますということをちゃんと法律にうたって、法律改正をこの国会に出して、こういう形でこれからやります、いままでのYS11よりももっとたくさんの開発費が必要です、国の金をかけなければなりませんから、こういう形でやります——中間報告でも、ちゃんと将来大きい分なら国が全部リスクを負担する、こういうことになっておるわけですから、法律改正をやるべきだという私の意見と、一貫性を持った継続性、YSで金をかけて失敗した点もあるかもしれないけれども、すばらしい飛行機をつくったのですから、それの後継機を日本でやるという意欲を示すような形をぜひとっていただきたいと思うのです。その点、法律改正の問題と一貫性の問題については、ぜひ明らかにしていただきたいと思うのです。
  32. 豊島格

    ○豊島政府委員 先ほどもお答えした点でございますが、法律改正の問題につきましては、日航製の廃止そのものの手続としては特に要らない。ただし、航空機工業政策については十分この場で御審議していただくということで考えておる次第でございます。  なお、一貫性の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますが、日航製によるYS11の開発の経験を踏まえまして、いかにしたらいいかという結果、やはり民間活力を活用して、それに対して国がいかに対応するかということでございます。その点は開発段階のリスクが大きい。そこについては、いかにバイタリティーがある民間企業といえどもとても民間の力だけでは負担していくことができない。したがって、そこにつきましては、国としても相当の援助をする、リスクを負担するということでやっておるわけでございまして、すでにYXあるいはXJB、これはロールスロイスと提携して開発しておりますジェットエンジンでございますが、そういうものにつきましては、すでに民間主体とした公益法人ベース、そういう方向予算もお認めいただけ、すでに成果も上がるということで、いわばやり方も定着しておる。予算審議その他を通じまして十分御審議いただいておるものとわれわれは理解しておるわけでございますが、もちろん今後ともその点につきましてはいろいろと御意見も承り進めていきたい、このように考えております。
  33. 水田稔

    水田委員 時間がありませんから、これは改めて一般質問で十分時間をとって、もっと具体的な点を詰めてまいりたいと思います。  それから最後に、きのうも清水委員から質問しました製造責任の問題です。日本航空機製造株式会社というのは、政府が五三%の出資で、国が十分責任を持つということで諸外国に対する信頼があった。この間の日航の羽田沖の事故のような場合、当然そこには製造責任というものが出てくるわけでありますから、窓口をつくるということでは国際的な信用はなくなってしまうと思うのですね。  それから、大事なことは、日本政府が五三%出資した日本航空機製造株式会社が責任を持つということで、諸外国がYS11を買ったわけです。いまも責任を持っているわけですからね。だから、それが何だかほかのところの窓口でやりますということでは不安だし、そしてYXというボーイングが中心になって売る、一五%で機体の一部をつくったもので販売という、日本が戦後八年間の敗戦の空白の中で失ってきた、そしてYS11をつくるまでの間によその国がちゃんとつくってきた販路について、そういうものを積み重ねてきたものが中断されてしまうわけです。ですから、航空機製造の責任というものは、やはり何らかの形で明らかにする必要があると思うのです。窓口をつくるぐらいのことではだめだと思うのです。時間がありませんから一言だけ、きのうのような窓口をつくるということでなく、ほかに考えがあるのかどうか、それだけ聞かしていただいて終わりたいと思います。
  34. 豊島格

    ○豊島政府委員 昨日も若干お答え申し上げたのでございますが、製造者責任の問題ということは、設計、製造上の瑕疵に基づくものであれば当然あるわけでございます。その場合、日航製を民間にしてどうするかということでありますが、最も信頼のある機体社の中から一応それを受け持つべき窓口はやはりつくるということにしませんといけない。ただし、その場合の責任関係につきましては、YS11の事業を推進してきた国と民間とが協力をしてやっていくということで、その責任体制は完全にはっきりさせるわけで、これは内外に表明するわけでございますし、当然移管される企業は、国際的にこういう分野におきましても日航製に劣らず信用のある会社を選ぶということによって十分解決し得るものと思います。もちろん、繰り返しますが、国と関係した企業は、これに全面的にバックアップするということを前提としておるわけでございます。
  35. 水田稔

    水田委員 時間が参りましたので、終わりますが、少なくとも政府が五三%出資した日航製というもので築いてきた信用というものがここでとぎれてしまう。その後、日本が次に開発する、もちろんジャンボとかトライスターのようなものは無理にしても、中型なり小型で日本独自に将来はやっていくという構想は恐らく持っておられると思うのですね。そういう場合に、せっかく積み重ねた信用というものがそこで中断してしまうわけですから、そういうものも含めて、これは改めて商工の一般質問の中で時間をいただいて論議をすることにいたしまして、以上で終わります。
  36. 渡部恒三

    渡部委員長 中村重光君。
  37. 中村重光

    ○中村(重)委員 また商工委員会に戻ってまいりましたからよろしく。  きょうは時間をたっぷりいただけると思って質問通告をして、二十何名か省から御出席をいただいておるようですが、通産大臣は最後まで御出席のようですが、経企長官が何か十五分ということでどうにもしょうがないのですけれども長官、昨日清水委員外同僚諸君の質問に対してお答えになっておられることを、私なりに考え方がどうなのか理解できない点がありますから、ちょっとお尋ねしますが、予算委員会に対する質問も答弁も注意深く実は期待を持って私は伺っているわけですが、昨日は、経済成長が三・八%と試算をしていたのだけれども設備投資や雇用、住宅建設影響があるということで五・二%必要ということで計上した、そういう見通しを立てたということを言っているわけですが、これは確信があるということよりも、どうもいまの景気回復をやるためには、設備投資もやらなきやならぬ、雇用というものも、これは失業者がいま百二十六万、有効求人倍率も非常に低いわけですね。そのようなことから考えて、五・二%にしないとこれはどうにもならないんだということで五・二%というのを無理に試算をしたという感じがしてならないのです。その点は確信をお持ちでないんじゃないか。また、最近の情勢、五十六年度は四・一%というようなことはむずかしいということもあなたはお答えになっておられるようでございますが、率直にこの点ひとつ考え方をお示しいただきたいと思うのです。  それから、外国が三%の見通しである、ところがわが国は軍備などの点で有利な条件があるのだから五・二%は達成可能だということもお答えになっておられるわけですね。恐らくあなたは五十六年度、五十七年度の予算の防衛費の突出ということも、後年度負担問題等を含めて内心御不満をお持ちになっておられるのではないか。ゼロシーリングということでやっているんだが、七・五%防衛費を見積もっておったのに、貿易摩擦なんというものも、これはなかなか限界があるから無理だということで、七・八%程度の防衛費を無理に計上したという感じもあるわけなんで、あなたは外国——それはアメリカなんかその他の国とは比較にならないような防衛費であっても、日本の経済全体、財政力全体から見ると、今回の二兆六千億、後年度負担一兆七千億ですか、これは一時に出すわけではないでしょうけれども、あなたが言うほど防衛関係というものは、外国と比較をすると日本は有利だということにはならないんじゃないか。いわゆる日本の経済力と財政力という面からいってですね。これはあなたのお答えは少し甘過ぎるんじゃないかという感じが私はいたします。したがって、五十六年度、五十七年度の五・二%、内需四・一%、外需一・一%、私はとうてい無理だというふうに考えているのです。それらの点についてひとつお考えをお聞かせください。
  38. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済の推移をずっと見ておりますと、五十六年度の第一・四半期は年率に換算いたしまして四・八%成長であります。第二・四半期は落ち込みまして二・四%成長ぐらいになっております。第三・四半期につきましては目下作業中でございますが、輸出が急速に落ち込んだ、内需回復がおくれておるということ等もございまして、あるいはゼロ成長前後に落ち込んでおるのではなかろうかと実は心配をしております。まだ作業中でございまして、来月の中ごろになりませんと数字が出てまいりませんが、とにかく厳しい状態になっておるということであります。第四・四半期は六月になりませんとわかりませんので、五十六年度を通じての経済成長がどの辺におさまるかということはまだはっきりわかりませんが、しかし、取り巻く環境は非常に厳しい情勢にいまなっておる、こういう点は言えようと思います。  そこで、そういう背景から五十七年度経済成長五・二%は可能なのかどうかという問題でございますが、実は昨年の秋、経済企画庁の内部におきましても、このままの姿で経済がずっと推移をすれば一体どうなるか、こういうことを試算をさせましたところが、三・八%見当くらいになるのではなかろうか、こういう作業を内々にしておったことは事実であります。しかし、それではやはり雇用問題に非常に大きなかげりが出てまいります。約二十万人くらいの失業者がふえそうでありますし、税収も非常に落ち込む、あるいはまた国際経済摩擦は厳しく拡大をする、そういうことが見込まれますので、それである程度の政策努力を加えることによりまして五・二%見当の経済成長の達成は可能であろう、こういうことで五十七年度の経済運営の基本方針を決定をしたのでございます。  どういう点で工夫が加えられておるかと言いますと、一つは、まずわが国経済を取り巻く環境でございまして、ことしの後半以降、私ども世界各国政府並びにOECD等、権威ある国際機関の見通しと同じように、おおむね後半回復に向かうのではなかろうか、こう思っております。十二月末にOECDからは経済回復見通しについての発表がございましたが、ことしの後半はOECD加盟二十四カ国の平均は大体三%強の成長になる、いまはゼロ成長あるいはマイナス成長だが、その見当まで回復するであろう、こう言っております。アメリカ政府の先般の教書を見ますと、ことしの後半以降、だんだんと回復に向かって、来年は名目で一一%成長実質で五・二%成長に達する、こういうことを言っております。  こういう見通しは、ややもするとそのとおりいかないものでございますが、しかし、第二次石油危機が起こりましてからもう三年を経過しておる、こういうこと等を考えますと、第一次の場合も三年経過をして経済が一応軌道に乗った、こういうこと等もございますので、昨年、一昨年の調整段階はほぼ終わったのではなかろうか、このように私ども考えておるのでございます。  そこで、住宅政策とかあるいは公共事業とか、そういう面で予算でも相当な配慮を加えておりますが、引き続き世界経済の推移を見守りながら、情勢の変化に即応いたしまして、機敏で、かつ適切な経済運営を続けることによって政府経済成長目標を達成をしたいと考えております。  外国と日本の経済の違う点は幾つかございますが、一つは、まず失業者だと思います。ヨーロッパでは平均一〇%の失業者でございますし、アメリカも約九%弱の失業者であります。それからさらにインフレ率、最近やや下がっておりますけれども、それでも大体二けたインフレのところが多い、こういう状態でございます。インフレと失業が非常に厳しい状態でありますから、労使関係がきわめて不安定である、そういうことも言えようかと思いますし、またいまのような欧米の事情ではとても貯蓄などが伸びるはずがございませんで、アメリカなどは昨年は建国以来最低の水準に貯蓄率が落ち込んだ、こういう状態でございます。最近は幾らか回復しておりますが、これは減税等の効果もあったのだと思いますが、それでも六%そこそこである。日本は一九%でございますので、そういう点にも違いがございます。アメリカで金利が高い、背景はいろいろあろうかと思いますが、やはり国民の貯蓄率ということも一つの大きな背景になっておろうか、こう思うのです。そういう事情で、最近は投資も行われておりませんし——行われていないというわけではありませんが、投資が非常に少ない、こういうこと等もございまして、国際競争力等につきましてもわが国と外国との間には相当の差がついております。  だから、そういう点をいろいろ考えますと、日本の経済事情というものは欧米に比べて非常に有利な状態になっておる、こういうことは当然言えるであろう、こう思うのでございます。したがいまして、わが国といたしましては、日本の持っておるこういう有利な条件を生かしまして、そしてわが国が発展をしていく基礎的な条件である安定成長路線にわが国経済を定着させよう、これが政府経済運営の基本方針でございます。
  39. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまのあなたのお答えに対して私なりの考え方見解をただしていくと、これは時間が幾らあっても足りないわけで、改めてみっちりいまのお答えを中心にして質疑をしてみたいと思っています。  ただ、あなたのお答えを聞いておりましても、どうもOECDの加盟国の問題が、三%と上向きになっておるということを非常に強調なさって、どちらかというと国内の経済といったようなことについては従的な考え方を持っておるような感じがいたします。それは正しくないと私は思っているのです。ということは、経済見通しでも内需は四・一%、外需一・一%でしょう。そうなってくると、輸出依存というようなことを重点に置いた五・二%ということを考えることは間違いだと私は思う。やはり内需を四・一%ということに見通しを立てたのであるならば、それをどうして充足するかということに重点を置くのでなければ、またぞろ、日本は経済見通しをああしたけれども、やはり輸出依存、外需依存ということに重点を置いているのだというようなことで、貿易摩擦といったようなことについても、通産大臣が中心になって進めていくのでしょうが、これはむしろ反発すら招きかねないと私は思っているのです。  また、あなたがいまお述べになりました住宅の問題でも、この五十六年度だって政府見通しをはるかに下回って百十五万戸です。五十七年度百三十万戸ということに見通しを立てていらっしゃるのだけれども、これとてももうとうてい不可能だと私は思っています。十三年ぶりの落ち込みでしょう。四十二年当時が最低であったわけです。相当お金をつけたとあなたは言っているけれども、これはお金はつけてない。やはり依然として民間に多分に依存をしておられるということになる。そうなってくると、住宅がなぜ建たぬのかという最大原因は、なんといっても土地政策ですよ。何にもないでしょう、土地政策というものは。何があるのですか。もっと思い切った、建設大臣とも話し合いをして、都市の再開発の問題であるとか、あるいは調整区域には、教育とか社会福祉施設だけではなくて、公営住宅というものをどんどん建てさせていくとか、企業誘致もなかなか各都道府県もできないのだから、そういう工場を誘致する、企業誘致をするために造成した土地を、民間住宅用地として転換をしていくとか、いろいろな住宅政策というものを進めていくのでなければ、住宅の建設はとうていこれは絵にかいたモチで、質問に対してはいかにも前向きでお答えになるのだけれども、いままで私とあなたと前々国会から議論をしたことを考えてごらんなさい。残念ながら私の見通しが当たっているわけでしょう。いまだって、アメリカの高金利がそんなに長く続くとはあなたは考えておられなかったのでしょう。ところが現実はそうじゃなかったでしょう。結局円安という状態になってきているというこの現実をあなたは反省しながら、これからの経済政策をどう進めていくかということをお考えになって、強力に推進していくのでなければ、外需も貿易も頭打ちに現実になっている。これはいわゆる外需に依存しようと考えておっても依存できる状態ではない。内需も思うようにいかない。そうなってくると、日本の経済は失速してしまうという形になりますよ。そういう現実の上に立って、あなたはどうお考えになられますか、いかがですか。
  40. 河本敏夫

    河本国務大臣 これからの経済運営のうち、特に内需が中心でなければならぬ、こういうお話でございますが、私どももその点はまさに同じ意見でございます。  きょうは、実は十一時三十分までに答弁を終えろ、こういうお話でございましたので、十分お話ができないのを残念に思っておりますが、いまいろいろお話をお伺いいたしましたので、私は、また機会を改めまして、ぜひとも詳細答弁をさせていただきたいと思っております。
  41. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣、あなたにみっちりと、と言っても時間を制限されているのでどうにもならないのですが、貿易摩擦の問題についてまず第一にやはり議論をしてみなければならないのだろうと思っています。  貿易摩擦の問題について、あなたは三極会議においでになって、貿易問題というのは感情的にならないで冷静にお互いに意見を十分交換しながら、そういうことで円満に解決をしていこうということで合意したんだというふうに私は新聞報道等で承知をしていたのですが、相互主義の問題等法案続出といったような形で、かといって、それは議会だけの問題かというとそうでもない。やはりレーガン政権内部におきましても、議会のそういう動きを支援するというような動きが相当あるように考えているわけです。三極会議であなたはあなたなりの考え方を述べた、基本的な方向としては一致したというようなことで、多分に願望みたいな形に終わっているような気がするのですが、実際はどうだったのですか。今後の見通し等も含めてひとつお聞かせください。
  42. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この三極会議というのは前々から計画されておったわけでありますが、なかなか日本の政府部内においても話がつかないできておりまして、第二次鈴木内閣が実現をいたしまして、政府間の意見も統一して、私が出席をすることになりました。目的は、日本、アメリカ、ECの貿易の責任者が集まって、現在の世界貿易が直面しているさまざまな問題についてお互いにフランクに意見を交換しよう、こういうことでございました。それにカナダの代表も加わることになりまして、三極会談が四極会談といったものになったわけでございますが、その三極会談では、主としていわゆるいま世界が直面しているところの経済摩擦、これは御承知のように、日本とアメリカ、日本とECのみではなくて、またアメリカとECとの間も非常に激しいものがあるわけでございますが、そうした貿易摩擦によってだんだんと保護主義的な傾向が世界全体に出始めておる。  そこで、第一の課題は、保護貿易がこれから出ていくことをいかにして防いで、自由貿易体制を守っていくかということでございました。この点につきましては、とにかく各国の代表とも、過去の苦い経験から見て、どうしてもこれは防止をしなければならぬ、こういうことで基本的にもちろん一致をいたしたわけでございますが、その中で特に私も強調いたしましたし、ECの代表も強調したわけでありますが、アメリカの議会で非常な勢いで相互主義というものが出始めておって、これが大勢を占めて、法律が出されるというふうな状況にあるわけで、これは相互主義という名のもとにこうした法律が出ておるけれども、その法律の内容というのは非常に保護主義的なものになっておるんですね。これは危険であるということで、そうした相互主義問題に焦点を当てまして議論もいたしました。この点につきましても、われわれの危惧はECも同じように持っておりました。アメリカのブロック代表にも迫ったわけでありますが、アメリカのブロック代表は、議会が非常に主張しておるけれども、われわれ政府としては、トラの背に乗ると言っておりましたが、そうした危険な背中には乗りたくないんだ、しかし、議会の勢いはなかなか容易ならざるものがあるということを言っておりました。アメリカ政府は少なくとも相互主義というものには同調したくない、自由貿易を守っていこうという考えがあるということを確認いたしました。  同時にまた、先ほどお話がありましたように、こうした保護主義がどんどん出てきますと、どうしてもお互いの国の関係がぎくしゃくして、これはもう貿易問題にとどまらないで政治問題にまで発展をしていく。ですから、この問題は何としても感情的にならないで、話し合いでもって解決していかなければならぬ。これも各代表とも一致をいたしたわけでございまして、こうした基本的な点については一致いたしましたし、お互いに初めて会いまして、フランクな意見の交換をして相互理解というものは進んだと思うわけでございます。  何といいましても、いまの現実の姿は、そういう総論的な意見は一致しましたけれども、しかし、御承知のように、アメリカもECも一千万人以上というような失業者を抱えておるわけでございますし、特にまたそういう中で日本が経済の姿がいい。そしていま日本からアメリカに対しては百八十億ドル以上という出超、ECに対しては百億ドル以上という出超がある。こういうことから、現実の姿としては、いまの状態をそのまま置いておけば、いまの貿易摩擦というものがだんだんと激しくなっていくのじゃないか。そうしてお互いに努力はしながらも、やはり保護主義的な傾向が少しずつはびこってきておるというふうな危険を私は非常に感じておることも事実でございます。
  43. 中村重光

    ○中村(重)委員 いずれにしても、大臣、日本が経済犯罪人みたいな形で袋だたきに遭っているというのが現実ですね。それで結局相互主義でもってアメリカが言っていることは、米国並みに市場開放をしない国には輸入課徴金を課するというのが柱になっているようですね。そうすると、これはデータがあるわけですからおわかりですが、相互主義という形で経済犯罪人みたいな形で日本が言われなければならないということなのかどうか。いや、これはそうじゃないんだ、アメリカだってまだ開放していないもの、そういうものが残っているじゃないか、日本だけそう言われるいわれはないんだという考え方なのか。どうも受け身受け身で臨んでおられるのですね。あなたは確かに言い前があるんだろうと思う。日本の労働者は勤勉である、技術は優秀である、低コストで輸出ができるというのはそういう努力の結果なんだ、おまえさんたちの方は努力が足りないじゃないか、勉強しないじゃないか、自分の方は棚に上げて、日本だけを悪者扱いするというのはとんでもないと言いたいのか。であるならば、そのことを受け身で御無理ごもっともといったような低姿勢だけではなくて、あなたが言われるように、言いたいこと、言うべきことは言うのだ、そういうことを具体的な事実を挙げて話に対応していくということでないといけないだろうと私は思っておるのですが、そこらはどうなんですか。     〔委員長退席梶山委員長代理着席
  44. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 全くおっしゃるとおりであろうと思います。私も向こうへ参りましてから、会議の中では日本の立場は強く主張してまいりました。また日本の言い分もはっきり申してきたわけであります。たとえばアメリカやECから見ると、日本の経済がまさに極楽のようなことを言っておるわけでございますが、これは第一次石油ショック、第二次石油ショックを日本は懸命に乗り切ってきておるけれども財政にほとんどしわを寄せたような形で乗り切っておるので、いま財政一つをとって判断をしてもらえば、アメリカの財政あるいはECの財政と比べて日本がいかに危殆に瀕しているかということは理解をしてもらわなければならない。ですから、そういう面でひとつ全体的に日本の経済財政という姿から見てもらいたいということも申したわけであります。  同時にまた、いま貿易インバランスが拡大をしておるといいますけれども、その大半が、大半といいますか、一九八〇年がアメリカに対しては百億ドルぐらいのインバランスでありましたが、これが八一年には百八十億ドルぐらいになってきつつあるわけですが、これは円安というものによって輸出が大きく伸びていった、あるいはまた日本の石油の省エネルギー等が進んで石油の輸入が減少したというふうなことで輸入が減ってきた、あるいは円安ということで減ってきた。こういうことで、円安が大きな原因であることは事実であるし、その円安をもたらしたものは何かといえば、結局アメリカの高金利政策というものが円安をもたらしたわけである。これははっきりしているんだ。ですから、やはり基本的に、インバランスをどんどん拡大しているということを非常に強く言われるならば、むしろアメリカの高金利政策を改めてもらわなければならないということも主張をしてまいりました。これにはアメリカもほとんど反論ができないということでございました。  同時にまた、アメリカと日本との輸出の努力というものを比較すると、日本の輸出努力に対してアメリカの輸出努力が非常におくれておるのじゃないか。確かにアメリカの企業の中でも、日本の市場で成功している企業もあるわけでありますから、もっとアメリカが日本が努力していると同じような努力をすれば、日本の一億という大きな市場の中でアメリカの輸出がもっと伸びることは間違いない。そういう点も実は指摘をしてまいったわけでございます。  これに対しても、アメリカ側としては反論はしませんでしたけれども、とにかくアメリカは基本的には非常に経済が疲弊をしておる。アメリカの最も国の中心産業ともいうべき自動車産業一つをとってみても、クライスラーもまさにつぶれそうな状況にあるし、フォードも無配というふうな状況になっておる。そうして、それは多分に日本の自動車の膨大な輸出というものがそういう結果を生んだというふうな一つの感じを持っております。あるいはまた、日本がいろいろと関税の前倒しとか非関税障壁の改善等を努力をしておるわけですが、なかなかこれに対しては、ポケットに入れるものはさっさと入れてしまうわけですが、まだ何か日本がもっともっと大きな貿易の障害を持っておるのだというような一つの先入観的なものを持っておるような感じがしたわけでございます。その点はずいぶん誤解もあるわけですから、もっと徹底的に話し合えば相当私は理解が進むのじゃないだろうかということを痛感いたしました。  特にアメリカの議会が、これは十一月に選挙を控えておるものですから、議員がみんな選挙区の関係で、不況、失業等が起こってくるのは結局日本の輸出によるところの被害によるものだというふうな感じから法案をハインツ議員だとかダンフォース議員というような者がどんどん出しておるということでありまして、むしろ政府よりは議会が選挙を控えて非常な、何といいますか、いら立ちというものを持って、そしてそれは冷静に判断をすれば、私はわかる面もあると思うのですが、一種感情的になりながら、とにかく日本をひとついけにえにしようというような感じもむしろないではないような印象を、率直に言えば受けてまいったわけでございます。
  45. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたが言われることも、いわゆる選挙を前にしてというそういうものも確かにあると私は思うのですよ。しかし、そうばかりは見られないのだろうと思っているのですね。アメリカの世論調査をやったところが、輸入規制というのが六三%出ているということですね。ですから、私が質問してあなたがお答えになったことを国際会議にも行ってじゃんじゃん言うということだけで、やりとりだけで事が済むのかどうか。まあ言い前はあるけれども、日本としては、保護貿易になったんではどうにもならぬ。そういう意味での受け身みたいな形のものが出てくるのですね。これは置かれている日本の立場からだけ——私も、あなた何をしているのだといたずらにあなただけを責めるわけにはまいらない。日本の置かれている立場というものがどうしても受け身になるんだろうと思っているのです。それは理解できます。かといって、これは解決をしなきゃならぬ。そうなってくると、相互主義というものを、法律を制定させないという決め手は何があるんだ。貿易摩擦解消策というものは何があるのか。その点ずばりひとつあなたの考え方をお聞かせくださいませんか。
  46. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカの相互主義というものが非常に議会でいま勢いを占めておりまして、これが法案としてもうすでに出されておる。いままでになく有力な議員が参加をしておる、こういう状態でございますから、なかなか議会での動きは容易ならざるものがある。いままでとは違って、法案が成立する可能性があるんじゃないかという認識を私は持っておるわけでございます。しかし、この相互主義法案が成立をし、その結果、大統領が拒否権でも出してくれればいいのですけれども、果たしていまアメリカ政府がそういう拒否権発動というようなところまでいくのかどうか。これもなかなか私どもは判断がつきかねておるわけですが、いままでと違った議会の動きであることは事実でございます。したがって、これを阻止するには日本だけの力ではできないわけであります。やはりECあるいはカナダ、こうした諸国とともにアメリカのそうした動きを封じていかなければならない。そういう作戦が必要じゃないか。幸いにして、相互主義法案が成立すれば、被害を受けるのは日本だけじゃなくして、ECも非常に大きな被害を受けるわけでございますので、ECも相互主義には非常に反対をいたしております。カナダも反対をしておりますから、そうした国々とともに、連携を緊密にしながら、アメリカのそうした動きを封じていくということが基本的には必要じゃないだろうか、こういうふうに思っております。  同時に、アメリカの経済が悪いという、そこに一つの根本原因があるわけでございますので、そうしたアメリカ経済の再活性化のために、日本としてもできるだけの協力をしていかなければならぬ。産業協力なんかも積極的に進めていく。あるいは技術協力も具体的に推進をしていくということも必要でありましょうし、また同時に、いまお話がありましたように、議論をするだけで、議論に勝ったって、これはやられてしまえば終わりですから、その中で、アメリカがいろいろと指摘をしていますような、残された市場開放の問題につきましても、日本としてもできるだけの努力をするという姿勢は大事じゃないか。残された問題は、非常に制限されておりますけれども、そういう中でも、やはり努力は必要ではないだろうか、私はこういうふうに思います。そうしてできるものとできないものときちっとして、アメリカに説明をするということも今日の段階では大事なことじゃないか、私はこういうふうに考えております。
  47. 中村重光

    ○中村(重)委員 できるもの、できないもの、こう言うわけですね。結局、関税の一括引き下げ、いわゆる二年前倒しの問題がある。それから非関税障壁の撤廃。それだけで問題が解決をするのかどうか。非関税障壁の撤廃、市場開放の問題になってくると、勢い農作物の自由化の問題に、アメリカとしてもそれを非常に強く望んでいるということから、そこでぶつかってくるわけですね。あなたはいま、最大限の努力をしたい、こう言っていらっしゃる。そのあなたが努力をしようと言っている頭の中に何があるのか。いわゆる農作物の輸入の自由化、完全自由化でないにしても、努力の中において、相当開放しなければならないというものもあるのだろう。ところがこれに対しては、鈴木総理は、農作物の自由化、市場開放というものはもう限度なんだから、これ以上できないんだと言っている。そのことと、あなたが最大限努力をしようと言っておられることと、かみ合うのですか、かみ合わないのですか。  それじゃ、農作物以外に努力をするというものが何があるのか。いわゆる貿易摩擦、私は、輸出が頭打ちをしても、この貿易摩擦は解消しないだろうというふうに思っておるのです。たとえば自動車であるとかエレクトロニクス、いわゆる先端機器の問題あるいは工作機械の問題、日本が非常に強い。こういうものにアメリカは攻勢をかけてくるというようなこと。輸出規制であるとかいろんなこと。まあ自動車はある程度やっていらっしゃるわけですが、そういうようなものがあるのではないか。私なりにいろいろ考えているのですが、整理をして、農作物の問題、それからいわゆる輸出が頭打ちをしても摩擦は解消しない、こういうものを、何とか輸出規制等やらなければ解決しないのだというようにお考えになって、その考えの上に立って、最大限努力をしようと言っておられるのか。その点をひとつ抽象的でなくて具体的にお聞かせくださいませんか。
  48. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまのままで放置していけば——これは確かに日本としては関税の前倒し二年をやりましたし、これは思い切った措置でございますし、あるいはまた輸入手続の改善も、一月の末に六十七項目という、これも決断を持って処理したわけでございます。これに対してアメリカもECも一応の評価をしておりますが、まだまだ不満だということで、さらに市場開放を求めてきている。  そこで、問題はどういうところにあるかと言えば、それは一つは、彼らは、残存制限品目を自由化しろ、確かにこういうようなことに一つはあると思います。この点につきましては、政府としても十二月十六日の経済対策閣僚会議でいわゆる対外経済政策を策定いたしまして、そこには総理大臣も農林大臣も私も出席をいたして策定したわけですが、その対策として、いわゆる残存制限品目等についてはレビューをしながら検討を進めていく、こういうことも決定をいたしたわけでございます。したがって、私はそういう政府としての方針を踏まえて発言をしておるわけですが、しかし、だからといって、それじゃ二十七品目の中で、農産物は二十二品目、通産関係、御存じのように五品目あるわけでございますが、これがどの程度できるかということになると、これは確かにむずかしい問題が数多くあるわけで、ずいぶん努力をして二十七品目まで狭めたわけでございますから、ほとんどみんな困難な品目ばかりであることは、これは言うをまたないわけでございますが、そうした中でも、自由化はできなくてもある程度枠の問題では話ができるような問題もあるのじゃないだろうか。そういう点については、やはりテーブルにつくとアメリカが言えば、日本もテーブルについて、わが方の立場というものを主張しながら論議をする。そしてできないものはできない、やれるものはここまでやりますと、やはり論議をしていく。同じテーブルにつくということが私はこの際必要なことではないだろうか、こういうふうに思っております。  たとえば、いまアメリカが要求している農産物の問題については、一九八四年の三月三十一日まで一応日米間では協定ができておるわけでございますが、アメリカ側は、その協定は協定として、次の段階を早めるための前倒しをやるために、ことしじゅうにテーブルにつきたいということを申し入れております。そこで、わが国としては、そう簡単にも応じられない。ところがアメリカはそうしなければガットに提訴するというようなことも言っておるわけでございますので、われわれとしては、そうした問題については、もちろん農林大臣の判断もあるわけでございますが、テーブルにつくことは必要なことではないだろうか、そういうふうに思います。こうした残存制限品目については、テーブルについてもむずかしい問題があることはわれわれもよく承知をいたしておるわけでございますが、しかし、今度は革でもテーブルにつくわけでございます。テーブルにつくということは、こうした事態においてやはり必要なことであろう、こう思います。  そのほか、具体的には、たとえばサービス貿易の問題について、いま世界的にサービス貿易が非常に分野が伸びておるわけであります。物の貿易についてはガットできちっと一応の体系ができ上がっておりますが、サービスの分野についてはノンルールということでございます。そこで、アメリカ側はガットの中でこうしたサービス貿易についての一つのルールづくりをしようというようなことも要求しておるわけでございます。そうした考え方は、サービス分野のこれからのあり方というものを考えると、そういう協議に応ずることはやってもいいのじゃないかと私は思うわけでございますし、あるいはまた日本からの産業協力といった面もまだまだ積極的にやれる分野が残っておるのじゃないだろうか、私はこういうふうに思います。具体的にこういう席で言うのは大変行き過ぎているかもしれませんけれども、たとえばトヨタなんかがアメリカに進出するという一つの動きもあるというふうに聞いておるわけでございますが、こうした具体的な産業協力が実現をすれば、アメリカとの貿易摩擦については相当大きな解消策の一環になっていくんじゃないだろうかとも思うわけであります。  さらに、インバランス等の問題について、われわれはアメリカに、たとえば石油、アラスカ石油であるとか、あるいはアメリカの石炭であるとか、そういうものの日本に対する輸入を推進していくための具体的な交渉を始めるというふうなことも今日の段階においては進めるべきじゃないか。そういうふうに総合的に日本としてやれるべきことをやっていけば、私は保護主義というものを抑える大きな成果は出てくるのではないかと思っております。とにかくわれわれとしては、自由貿易体制が崩れれば、日本の貿易立国としての根幹が崩れてくるわけでありますから、自由貿易体制を守るためのあらゆる努力だけはしていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  49. 中村重光

    ○中村(重)委員 改めてまたお尋ねすることにいたしましょう。  公取委員長初め各省からお見えですから、もう時間もありませんし、御質問できない省もあるかと思いますけれども、あしからず御了承いただきます。  公取委員長にお尋ねいたしますが、医薬品の価格協定とやみ再販で十一月に立入検査をおやりになっておられる。公取委員長はメスを入れるところに非常にびしびし入れておられる。正直に言えば、食い足らぬところも、談合問題とかいろいろありますけれども、その点は今後ともむずかしい問題ですから御意見を伺うことにいたしますが、医薬品の問題、これは徹底的におやりいただかないと、社会悪ということだけじゃなくて、いまの行政改革、財政再建の問題とも重大なかかわりが実はあるというふうに思っているのです。  委員長、何しろ日本は総医療費の中に占める薬剤費が約四〇%です。アメリカが一二%ぐらいですよ。それから西ドイツが一五%ぐらいでしょう。日本はもう四〇%ですね、それはデータのとり方によって変わってくるところもあるわけですけれども。しかも、これは出来高払いになっている。いろいろな面において薬づけ医療というものがある。その背景をなしているものに製薬メーカーのカルテル行為なんというものがある。これはもう間違いないことです。徹底的にメスを入れて、うみを出す。これが正常な姿になってくると二兆円、三兆円の金が出てくると私は思っているのです。だから、この点は思い切ってやってもらいたいということを要請をしておくことにとどめたいと思っているわけです。  それから、時間の関係がありますからまとめて申し上げますが、化粧品であるとか商品等の抱き合わせ販売というのが依然として後を絶ちません。夏売る物を春に抱き合わせでやる。仕切り抱き合わせ、ぱっとその月に仕切りをして支払いをしなければならぬということになっている。若干改善した面がありますが、まだこういう問題は残っておるというごと、これらにもひとつメスを入れてもらいたい。電気製品も同様です。何回も私はこの委員会の場において、あなたにも徹底した改善策を求めるべきであるということを要請をしてまいりましたが、全く手をつけていないとは申しませんけれども、この点も依然として改善されていないということであります。この点についてお答えをいただきたいのが一点であります。  もう一点は、環衛団体その他、これは団体法関係中小企業にも関連をしてくるわけですが、環衛団体の問題でお尋ねします。  環衛業法の改正に基づいていわゆる適正化規程、これはこの法律案を各党話し合いをやって解決をいたしました際に、あなたもこれだけは問題であるというのは、カルテルが、いわゆる都道府県一本でカルテル行為を結ぶのを保健所別に結ぼうとした案がありましたのを直した。これは当時、現行法のとおりにしたわけでございます。しかし、適正化規程を認可するに当たっては、公取との話し合いというものがなければならない、そうしておられるわけで、それに相当な時間がかかるのです。ところが適正化規程に基づいて今度は当然組合協約というものを結ばなければならなくなっている。適正化規程の際、これはどうしても規程を結ばなければ過当競争になって、その及ぼす影響というものは、保健衛生、環境衛生等いろいろな面において及ぶであろうということから適正化規程は認可をされるわけでございますから、この適正化規程の認可に基づいて、当然インサイド、アウトサイドの問題がありますから、組合協約の認可というものを受ける。この際も公取の方と話し合いをしなければならぬことになっている。あなたの方の同意が必要になっている。要件は何か。要件は適正化規程の認可の要件と、それから組合協約の要件と全く同じなんです。そうすると、同じような要件、もう適正化規程の際に同意をしたのであるならば、それは何年もたった先なら別であります。引き続いてこれが行われる場合において、この組合協約の場合においても、また公取との関係においてそれができないというのが実態で、厚生省なんかに言いますと、公取がとうてい同意をいたしません。だから、もうこれは話になりませんというようなさじを投げた言い方すらするわけであります。それらの点に対してどのような見解をお持ちになっておられるのか、その点をお尋ねをいたしたい、これが二点であります。  もう一点は、いま通産省で進めてまいっております大規模小売店舗の方の規制の問題、けさの新聞には審査基準といったようなものが出されているわけでありますが、法律の範囲内、これは後で時間があれば大臣あるいは局長の方からお答えをいただくわけでありますけれども、私はこれは許可制でなければならぬという考え方の上に立っております。これは私だけでなくて、党の考え方であるわけであります。そうすると、小委員会あるいは審議会等を通じて、大店審の中におきましてもいろいろ議論をして、物差しみたいなものをおつくりになったようでありますけれども、どうも私の考え方、これはただしてみなければわかりませんが、法律からはみ出した、むしろ法律を全く無視してしまうといったような逸脱した方向すらあるのではないかという感じがしてなりません。したがいまして、行政指導というものにはおのずから限界というものがあるのではないか。これには、私はあなたも無関心ではおられないと思います。あなたは従来一貫して、行政指導というものを全く否定はしていないけれども、非常に慎重な態度をとってほしい、いわゆる法律でやってもらいたいのだというのが公取の態度であったわけでありますから、これらの点に対してはどのようなお考えをお持ちになっておられるのか、以上三点についてお答えをいただきます。
  50. 橋口收

    橋口政府委員 お尋ねのございました第一点の、主として化粧品業界における抱き合わせ販売の問題でございますが、これは昭和五十四年四月に当委員会で中村委員から御質問があり、それが端緒となりまして公正取引委員会においていろいろな角度から調査をいたしたわけでございます。その調査の結果によりますと、化粧品メーカーのうちの上位二社がいわゆるセット販売と称して、小売店が希望しないあるいは注文しない商品を販社を通じて他の商品と一体となって販売するという慣行があったようでございます。これは独占禁止法の不公正な取引方法に該当するおそれがございますので、五十六年の六月、そのような行為を行っているメーカーに対しまして改善措置をとるように指導をいたしたのでございます。指導を受けたメーカーからは、ことしの一月、すでにこのような販売方法を取りやめる旨の報告がございました。また、そういう販売方法をとっておりませんでした他のメーカーに対しましても、そういう注意をいたしております。今後の問題としまして、こういう事実が確実に改善されているか否かにつきましては、当委員会として今後とも関心を持ち監視に努めてまいりたいと思っております。  それから、家電につきましても簡単にお触れになりましたが、家電の流通問題につきましても、先生の御指摘等もございましていろいろ調査をいたしまして、いわゆる量販店と系列店との間の差別価格の問題、それから最近では、量販店からメーカーに対していわゆるヘルパーという販売要員を要請する問題等々があるわけでございまして、これは一部はすでに措置をしたものもございますが、いま検討をしている最中でございます。  それから、第二に御質問ございましたのは、環衛法の関係でございまして、環衛組合の適正化規程は、県の数で申しますと、すでに美容業につきましては六つの県、クリーニング業につきましては二つの県で認められております。何分にも認められました認可が、昨年の一番早いもので四月でございまして、あとは大体十一月ごろまでかかって認可をされておるわけでございまして、まずインサイダーにおける適正化規程の施行の問題がございます。それからその次の問題として、いま先生から御指摘のありましたアウトサイダーとの組合協約の問題が一つあるわけでございまして、おっしゃいますように、適正化規程の認可の要件と組合協約の認可の要件とは同じでございますから、インサイダーにつきましてある種の競争制限的な行為が認められた場合に、それと同じような条件をアウトサイダーに要請をして、アウトサイダーとの間で円満に話し合いができます場合に、主務官庁から協議がございました場合に、私の方でそう特に異論を唱えるという必要はないわけでございますから、円満に話し合いができて、厚生省から協議がございましたら、適切に対処をしたいというふうに思っております。  それから、第三の大型小売店についての問題でございますが、大型店問題懇談会報告に伴って、大規模小売業者の出店抑制指導というものが行われつつあるわけでありまして、この点につきましては、通産省から当方の見解も求められておったのでございまして、私どもの方からは、これはあくまでも大規模小売店法の運用の一環として行われるものだというふうに説明を聞いておりますし、また通産御当局からいろいろお出しになりました通達等を見ましても、その点は十分御注意になって表現をしておられるようでございますから、私どもは、この法の許される限界を越えないぎりぎりのところで対処しておられるのじゃないかというふうに考えております。  それから、実態問題でございますが、大規模小売業者の出店問題は、特定の地域に出店をするという問題でございますから、これは地域の特性もございますし、その地域においていろいろ競争が行われる可能性がある場合に制限されるということが問題になるわけでございますから、あくまでも個別性の強い問題でございますので、業界挙げて出店を抑制しようというような、抽象的な共通の意思が生まれるということはまずあり得ないことではないかというふうに思うわけでございます。しかし、通産御当局の行政指導によりまして、大規模小売業者間に出店抑制についてカルテルが生まれることがないよう十分注意をいたしておるところでございます。したがいまして、現状におきましては、大規模小売店業者の出店に対する行政には、それほど大きな問題はないというふうに思っておりますし、それから私ども見解で申しますと、先生の御意見と違うわけでございますが、許可制ということは適当でないだろうということは、この問題の生じました過程において、いろいろな機会に公正取引委員会の意見として申し上げておったところでございます。
  51. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、通産大臣から先にお答えをいただいた方がよかったのですが、外務省、建設省、労働省、大蔵省等がお見えになっておられるようでございます。  外務省には、韓国に対する援助の問題がずいぶん議論がなされておりまして、安倍通産大臣と櫻内外務大臣とで援助の中身に対する考え方に微妙な食い違いがあるというように、新聞報道の中で述べられておるわけです。そのとおりであるとするならば、私も問題があるように考えるわけです。韓国は、言うまでもなく中進国であるわけでございますから、ここに対する援助というものにはおのずから限界があるのであろう。これは河本経企庁長官民間主導という形で言っているわけですが、外務省は必ずしもそういう見解をおとりになっておられないということのようであります。この点に対しては、外務省の事務当局としてはどのような考え方をお持ちになっておられるのか。開発途上国と中進国とはおのずから扱いが変わってくるわけでございますから、これは政府開発援助というようなことは適当ではないと私は考えるわけであります。その点に対しての見解をお示しいただきたい。
  52. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  わが国の経済協力は、人道的な配慮、それから相互依存等の原則に基づいて行われておりまして、相互依存関係が特に深い日韓の場合、それ相応の配慮が必要であるというふうに感じます。  それから、ただいま御指摘ございました民間ベスの件につきましては、河本企画庁長官と外務大臣の間に意見の相違というものはないとわれわれは理解しております。これにつきまして、民間ベースを主体としていくという方向につきましては、われわれとしても全く変わりはないわけでございますけれども、同時にそれは、韓国に対しまして、特に韓国が現在のように政治的、経済的にいろいろ困難に逢着しております際に、その相互依存の深さから考えまして、政府ベースの援助を拡大することを排除しているものではないというふうにわれわれは了解しております。
  53. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣、これは直接あなたの所管ではないのだけれども、中進国の韓国、台湾その他の日本に対するところの経済貿易等の非常な追い上げがなされているというような点等も含めて無関心ではないと思うのです。韓国に対する閣僚会議にあなたも御出席になるわけですから、この問題については強い関心をお持ちになっておられると思うのですが、中進国である韓国に対する経済協力、援助のあり方はどうあるべきだとお考えになっておられるのですか、国務大臣としてのお考え方をひとつお示しいただきたい。
  54. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 韓国はいま政治的あるいはまた経済的、社会的に新しい転換期を迎えておりまして、そうしたもとで本年から第五次五カ年計画を発足をいたしておるわけでございます。韓国は隣国の友邦でございます。その韓国が経済的、社会的諸困難に直面をしながら新五カ年計画をいま発足をさせようという段階でございますから、その辺のところは私どもとして十分考慮をしながら、わが国の経済協力の基本方針のもとでできるだけの協力を行っていくことは当然のことではないか、こういうふうに私は考えております。そういう意味におきまして、最近行われました外務省を中心とするところの韓国とのハイレベルの会議でいろいろと協議が行われておるわけでございますが、われわれ政府は一体となってこれに対処をしておる、こういうことでございます。
  55. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣には、また改めてお尋ねをすることにいたします。  労働省に対しては、中小企業と大企業との賃金格差は一時縮小をしておったのですが、また格差が拡大しておるという事実があります。個人消費が伸びないという原因も、これは中小企業に働く労働者の低賃金という点に多分に原因があるということを考えなければならぬと私は思う。ましてや中小企業ではどうしても中高年労働者を雇用するという形になってくる。それらの点からいたしましても、中小企業と大企業との賃金格差の問題の解消策については、私なりに問題を提起して御意見を伺うつもりでございましたが、時間の関係がございますから、一つ考え方をお示しいただきたいということが一点であります。  もう一つは、身障者の雇用の問題であります。  最近、重度身障者を雇用するというような傾向が出てきたことは非常に喜ばしいと私は思っています。しかし、これは重度障害者を一人雇用いたしましても大幅な助成金があるわけでありますし、ましてや十人、十五人以上の身障者を雇用いたしますと、規模によっては一億円あるいは業種によっては七千五百万といったような助成金が支給される。そこで、これに魅力を感じるということで重度障害者を雇用する傾向は強まってきているが、そうでない重度以外の身障者の雇用率というものは非常に低い。その他、大企業等が雇用の基準というものを達成しない、これは多分に納付金制度あるいはヨーロッパ等におけるように、完全雇用の義務化をしていないところに問題があるということは否むことのできない事実であろうと思っています。私は、これらの点については予算委員会において、私の意見を交えながら初村労働大臣に見解をお尋ねしたいと思っていますが、いま私が申し上げた点について簡潔にお答えをいただきます。
  56. 石岡慎太郎

    ○石岡説明員 大企業と中小企業賃金格差是正の問題につきましては、何といいましても、中小企業に対するいろいろな施策によりまして、この経営基盤を強化するということが根本策であろうかと思いますが、労働省におきましても、最賃制の適切な運用その他によりまして格差是正に努めてまいる所存でございます。
  57. 廣見和夫

    ○廣見説明員 心身障害者の問題についてお答え申し上げます。  先生からいま御指摘のございましたように、重度障害者の方々の雇用は最近大分進んでまいっております。しかしながら、私ども身体障害者の雇用促進対策をいろいろやっておる中で、雇用率制度がやはり基本であるというふうに考えておりまして、とにかくこの雇用率を一刻も早く全般的に達成していただくことが第一の目標というふうに考えておりまして、そのための行政指導をやってきております。今後におきましても、この行政指導をさらに強めてまいりたいというふうに思っておりますが、具体的には、たとえば雇用の進んでおらない企業に対しまして雇い入れ計画をつくっていただく、そういう命令をする、あるいはまた、その計画が適正に実行されておらないときには、適正に実施するように勧告する、あるいはまた成績の悪い企業につきましては、安定所あるいは都道府県あるいは労働省の幹部みずから個別に指導していくというようなことによりまして、重度障害者を中心に、さらにまた、重度障害者のみならず、全般的な身体障害者の雇用の促進に一層強力な指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  58. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間がなくなりましたから、通産省、中小企業庁、資源エネルギー庁、これはいつも御出席をいただけるわけですから、恐縮ですが、次の機会にお尋ねをすることを御了承いただきます。せっかく御出席をいただきましたが、御理解を賜りたいと思います。  それから、建設省は、河本経企長官住宅問題に相当時間を割いて質疑を行う中で関連をしてお答えをいただく予定でございましたが、これは御承知のとおり、経企長官との質疑がほとんどなされませんでしたから、これまた次の機会にお尋ねをさせていただきます。  大蔵省も御出席でございますけれども、これも時間がもうございません。  ただ、個人事業主控除というのが、これも所得税の課税最低限と同じように五年間据え置きであるわけであります。二百二十万円、これを中小企業庁は絶えず引き上げを要求をしますが、にべなくこれが拒否されておる。今度もまた三百二十万円の引き上げを要求をいたしましたが、これもまたそれを拒否されて、二百二十万円そのままの据え置きになっておる。これでは、史上三番目という中小企業の倒産との関連というものも強く出てまいるわけであります。したがいまして、個人事業主控除の問題に対してどのような考え方をお持ちになるのか。  承継、相続税の問題に対しましてもお尋ねをしたいと思いますが、昨日もこの点については同僚議員から触れておられます。違った観点からお尋ねをする予定でございましたが、時間の関係がございますから、大蔵省には、国税庁からも御出席でございますから、また改めてひとつお尋ねをいたします。  いまの、お尋ねをしました一点についてひとつお答えをいただきます。
  59. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答えいたします。  青色申告をなさる法人につきましては、みなし法人課税制度という制度が設けられておりまして、事業者の方の選択によりまして、個人課税ではなくて、法人としての課税を受けることができるようになっております。その場合、形は個人でも、税制上は法人として扱う。事業主自身も、その法人から事業主報酬を受けることができるということになっております。、この場合、その事業主報酬の額につきましては、具体的な金額で上限が定められているということはございません。事業の種類あるいは事業主の働き、そういった面から見て適正な額である限りは、これは課税上あくまでもその事業主の方の給料として見るという制度になっております。——お尋ねは、そういう点ではございませんか……(中村(重)委員「事業主控除の問題を答えればいいのだ」と呼ぶ)事業主控除という制度は所得税にはございませんが……(中村(重)委員「大体、事業主控除は地方税だから、いまお答えになっているのでいいですから、それも聞きたかったのだから、続けて最後まで言ってください」と呼ぶ)地方税の問題は自治省の所管でございまして、私はお答えする権限はございませんのでお許しいただきたいと思いますが、国税についてお答えすることでよろしゅうございますか。……はい。  そこで、青色申告をなすっておられる方には、ただいま申しましたように、みなし法人課税という制度がありまして、それを選択なすった限りは、その事業主報酬という形で給料を受け取るという、いわば擬制をすることができるようになっております。その給料の額につきましては、お尋ねの中に二百二十万あるいは二百三十万、あるいは三百万という具体的な数字のお示しがございましたが、国税につきましては、そういった具体的な金額による制限は設けておりません。
  60. 中村重光

    ○中村(重)委員 事業主控除は、おっしゃるように、地方税であるわけです。自治省がお答えになることなんです。ただ、大蔵省との関係なく、事業主控除というものを自治省だけの考え方でやることはなかなかできない。これは自治体の財政的な関係、交付税との絡み等も出てまいりますから。したがって、大蔵省といたしましては、あなたの方の所管にはならないとは思いますけれども、十分関心を持って対処をしていくのでなければ、所得税の問題と、クロヨンとかなんとかいろいろ言われて、捕捉率は自由業の場合は非常に低いんだとは言われながらも、やはり個人事業というものは非常に苦しいわけです。したがって、倒産件数の中には出てこない倒産というのが非常に多い。いわゆる一千万円以下であるということ、そういうものもあるわけですから、この事業主控除に対する中小零細企業者の期待というものは非常に大きいわけです。したがって、大蔵省内部におきましても、このことは十分自治省と話し合いをしながら対処をしていただきたい、そのことを強く要請をしておきたいと思います。  では、ちょうど時間ですから、これで……。
  61. 梶山静六

    梶山委員長代理 午後一時十五分から再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後一時十七分開議
  62. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。北側義一君。
  63. 北側義一

    ○北側委員 まず最初に、貿易摩擦問題についてお伺いしてまいりたい、こう考えております。  大臣は、所信表明におきまして「現下の内外諸情勢を展望するとき、解決すべき課題」として「第一は、自由貿易主義の堅持と円滑な対外経済関係の構築、」このようにおっしゃっておられます。そこで、今日までの貿易摩擦を日米間で眺めてみますと、御承知のとおり、十年前には繊維の問題が出てきたわけです。その次には鉄鋼、カラーテレビまた自動車関係、半導体、このようにあるわけでありますが、これらの主要品目は、御承知のとおりすでに輸出規制や直接投資の相互乗り入れなどが行われております。私が昨年七月渡米した際に、特に自動車問題でございましたが、米国の業界の構造改善を行うために、その手助けとして一定期間しばらく時間を与えてほしい、こういう意見が主だったわけです。ところが最近の日米貿易摩擦、これを新聞報道等で見ておりますと、これらのいままでのいわゆる貿易摩擦であった個々の商品、これが対日貿易それ自体に変化してきたように私は考えるわけです。当然、世界的不況が長引いておりますので、貿易摩擦も拡大され、また不況の長期化による雇用の問題、これも非常に深刻になっております。そのような条件もありましょうが、アメリカ側の対日貿易に対するこれらの変化を通産大臣はどうお考えになっておられますか、それをお伺いしたいと思います。
  64. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 現在の日米間の貿易摩擦について言いますと、やはりいまお話しのように、個別問題というよりは、むしろ貿易収支の不均衡あるいは市場の開放性、そういったものが問題であろうと思っておるわけでございまして、貿易収支の不均衡につきましては、われわれとしては、わが国が貿易立国であるという立場をとり、やはり自由貿易の維持強化のために内需の拡大、そういうものを通じました貿易の拡大均衡を基本として対処していかなければならぬと思っておりますし、あるいはまた、市場の開放性の問題につきましては、これは先般の経済対策閣僚会議で決定をいたしました輸入検査手続の改善等を行うなどのいわゆる非関税障壁の撤廃に努力いたしておるわけでございますが、同時に、残された問題、残存輸入制限の緩和につきましては、諸外国の関心品目に留意しながら適宜レビューを行う、こういうことで閣僚会議で決定をいたしておるわけでございます。いずれにいたしましても、先進各国との話し合いを緊密に行いながら、自由貿易主義の維持、強化のために努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  65. 北側義一

    ○北側委員 通産大臣が非常に貿易摩擦問題で御努力なさっておられることは、私もよく承知をいたしておりますが、やはりただいま私がお尋ねしましたとおり、この貿易摩擦問題というのは、個々の品目ではなくして、対日貿易それ自体に、アメリカ側が赤字を出しておる、ここらに非常に大きな原因があるのじゃないか、こう考えております。  先日、大蔵省が発表いたしました五十六年の貿易統計によりますと、米国との貿易収支は百三十四億一千万ドルの出超、このようになっております。これは年間の出超幅としては過去最高になっておるわけです。アメリカ側から見ますと、一九七六年以降大幅な貿易収支の対日赤字を出しておるわけです。  そこで、大幅な出超の原因となる日米貿易の商品構成、ここにやはり私は問題があるんじゃないかと考えております。たとえば農産物貿易はアメリカから日本へ一方通行です。また自動車、その部品、さらにその他の消費財、このような貿易は日本からアメリカに一方通行です。さらに、これらを品目別に見てみますと、米国の対日主要輸出品は大豆、丸太、メーズ、小麦、綿花、航空機、原皮、スクラップ金属、こういうものがあるわけです。日本からの対米主要輸出品を眺めてみますと、自動車、その部品、鉄鋼製品、ラジオ受信機、モーターサイクル、テープレコーダー、カメラ、金属製ファスナー、テレビ受像機、事務用機器、金属切断機、計算機等となっております。  このように、アメリカ側から輸入される商品、また日本側から輸出する商品、これを商品構成で見ますと、どうしてもアメリカの対日輸出品というのは、その主体が第一次産品になっております。ところが日本の対米輸出品は、付加価値の高い高度技術を利用した商品が主です。その相互の輸出品目から見て、日本の対米輸出の方がどうしても価値が高くなる、このことは考えられると思うのです。  このように考えてみますと、この日米貿易摩擦問題というのは、私の考えでは、これは早急に解決できる問題ではないなというのが率直な私の意見なんです。そういう点を考えられて、何か総理も記者会見で、ここに書いてありますが、世界経済の活性化を重視し、このようにおっしゃっておられます。この問題も非常にむずかしい問題を多々含んでおると思うのです。その点、どのようにお考えになっておられるか。
  66. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 貿易というのは、二国間というよりは、やはり多角関係の中で全体的には判断をしていかなければならぬと思っておるわけでありますが、日米関係で限って言えば、いま非常なインバランスが出ていることは事実であります。統計によると、アメリカの統計、日本の統計、いろいろとあるわけでございますが、百数十億ドル、アメリカ側から言えば百八十億ドル以上だ、こういうふうな状況になっておりますが、特に八一年度に大きく伸びたというのは、これはやはり円安が最も大きな原因じゃないか。その背景にはアメリカの高金利というものが存在をしている、私はこういうふうに思っておるわけでございます。しかし、このインバランスというのがアメリカ側にとっては非常な貿易摩擦を生む要因となっていることも事実でありますし、同時に、その中身は、いまお話しのように、アメリカから日本に輸出されるものは、航空機であるとかあるいはコンピューターを除いてはほとんど第一次産品である。そして日本からは自動車を初めとする先端技術を中心とする商品を輸出をしておる。こういうことでございますが、私は、日米間のインバランスを一挙に解消するというようなことは、これはとうてい不可能であります。また、日本がいわゆる貿易国家、加工貿易国家としてある以上は、こうしたインバランスもある程度はやむを得ないと私は考えておるわけでございます。しかし、工夫をすれば、この辺については改善を加えることはできる。これは基本的には、たとえば高金利政策が修正をされるということになれば円高が進んでいくでしょうし、これはまた輸出に対する一つのブレーキになってくることも事実でありますし、あるいはまた、アメリカ側としても、さらに一つの政策的な転換等も行って、たとえばアラスカ石油等の輸出に踏み切るということになれば、同時にまた、石炭等についてもアメリカは非常な埋蔵量を持っているわけですから、こうした石炭の輸出が可能になれば、その辺は相当改善ができるのじゃないか、私はそういうふうに考えておるわけであります。
  67. 北側義一

    ○北側委員 御承知のとおり、米国議会では相互主義法案といいましょうか、そのような諸法案が提出されておるわけです。ちょうど安倍通産大臣が三極会議に出席なされたその当時の相互主義法案に対するアメリカ政府側の姿勢というものと現在と、私は少し変わってきたような感じがするのです。その点、どのようにお考えでしょうか。
  68. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は三極会議に出席をし、さらにワシントン、ニューヨークでアメリカの政財界の首脳の皆さんとお目にかかりまして、いろいろと自由貿易のあり方について議論をいたしたわけでございますが、その中で感じましたことは、アメリカで相互主義という空気が非常に強くなっておる、それは議会で非常に燃え盛ってきておるということであって、アメリカ政府としては、やはり自由貿易を堅持していきたい、ですから、何とか相互主義、それも後ろ向きの相互主義にはくみしたくないというふうな発言がしばしばあったわけでございます。同時にまた、反面、われわれはそういうふうに考えているけれども、何としても議会がもはやとどめることのできないような激しい勢いになっているというようなこともしばしば警告をいたしております。私は、アメリカの政府というよりは、議会が中間選挙等も控えて、いままでになくこの後ろ向き相互主義法案に対して非常な情熱を燃やしておるというふうな感じをひしひしと受けて帰ってまいったような次第であります。
  69. 北側義一

    ○北側委員 江崎さん一行がいま行かれていろいろと日本の事情等御説明なさっておられるようですが、日本に対するアメリカ側の考え方にも少し問題があるのではないか、私はこう考えておるわけです。しかし、もしこの相互主義法案が通るようなことになりますと、非常に問題が出てくると思うのです。これはECとの関係もありますし、その点非常に関心を持って見ておかなければならないと私たちは考えておるわけです。  先般の六十七項目の非関税障壁、この改善を行ったわけですが、アメリカ側は対日輸出促進に役立つ措置は二十三項目にすぎないと言っておるわけです。これでは十分な市場開放とは言えない、こういう意味のことを言っておるようでありますが、実際問題として、総理も記者会見でおっしゃっておられるように、市場開放が四本柱のうちの一項目に入っておるのです。やはりこのままほおかぶりして過ごすというわけにはいかないのではないかというふうに私自身思っておるわけですが、この相互主義法案が成立するまでに、何らかの一つ対策というものを日本としても打たざるを得ないのではないか、こういう感じを持っておるわけです。それについてはどのようなお考えでしょうか。
  70. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカの相互主義法案につきましては、いままでと違って今度はアメリカの議会の相当有力な議員が賛成をいたしております。したがって、これらの法律案は通る可能性が非常に強くなってきていると私は心配をいたしておるわけであります。もしこうした法案が通って、そして政府がこれを受け入れるということになれば、これは自由主義貿易の根幹がこのことから崩れ始めるというような心配もあるわけでありますから、どうしてもこの相互主義法案を阻止しなければならない。日本だけではなくて、ECもこの相互主義法案に対しては非常に強い反対を表明しておるわけであります。あるいはさらに、その他の国々もそうでございますから、一緒になって阻止には努力していかなければならぬと思うわけでございます。  同時にまた、日本がこれまで努力してまいりました関税の前倒しであるとか輸入手続の改善であるとか、これについてはアメリカ政府も一定の評価はしておるわけであります。二十三項目というお話でありますが、確かにそう言ってまいりました。しかし、二十三項目も改善したということは、相当な思い切った改善措置でございます。それはそれなりの評価をしておると思うわけでございますが、しかし、アメリカの政府もあるいはアメリカの議会も、それでは満足できないというのがいまの彼らの考え方でございます。一層の市場の開放を迫っておるわけでございます。  それに対してわが国としても、経済対策閣僚会議で方針を打ち出しております。たとえば残存制限品目等につきましてもレビューをしながら検討を進めていくということを初めとして、残された問題については、やはり積極的に取り組んでいくという姿勢が必要ではないだろうか、私はこういうふうに存じておる次第であります。
  71. 北側義一

    ○北側委員 日米間の賀易摩擦の問題はこれぐらいにして、欧州の方でも対日貿易はやはり日本の方が非常に出超になっておるわけです。そこでいわゆる保護賀易というのですか、このような動きがEC間でも出てきております。特に新聞報道等によりますと、フランスがEC諸国に呼びかけて対策を練るような報道がされておるわけです。ECが日本に対して有効な手段をもし講じないならば、フランスは防衛上自国だけでも対日輸入規制を実施する、このようにフランス側では言っておる、このように新聞報道されております。市場開放については、ガットのダンケル事務局長も、日本側が抜本的な措置を早急にとるように勧告されておる報道も出ておったわけです。このように日米、日欧の貿易摩擦は来るところまで来たという感じを私自身は持つわけですが、ただいまの通産大臣のお答えを聞いておりまして、やはりその処置を速やかにやらなければ、関係方面いろいろございますでしょうから、なかなか大変なこととは思いますが、ひとつ御努力をお願い申し上げたい、このようにお願いいたします。  それと、これは貿易摩擦といいましても日本側から見た逆貿易摩擦というのですか、こういうものも日本にはあるわけです。ここらの点も金額的にはそう大きなものではないでしょうが、やはり主張する必要があるのではないか、こう考えております。たとえば塩化ビニール樹脂など、エチレンとか、向こうは燃料に安い天然ガスを使っております。国内生産価格ではもう全然太刀打ちできない、またアルミ製錬にしましても太刀打ちできない、これが実情ではないかと思うのです。そういう点も、私は大いに主張すべきところは主張しなければいけないのではないか、こう考えております。繊維についてもやはり同じじゃないかと思うのです。いわゆる発展途上国の綿布が入ってきて日本では減産を強いられておる、そういう状況であります。これらの業種については、通産大臣、どのようにお考えでしょうか。
  72. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本だけが残存制限品目を持っており、そして非関税障壁を持っておるだけではなくて、大いに市場開放を主張しておるアメリカにおいても制限品目がありますし、あるいはまたバイアメリカン政策であるとか、あるいは自動車に対する高率関税の適用であるとか、あるいはカリフォルニアのユニタリータックス制度であるとか、相当な非関税障壁を持っておりますし、特にヨーロッパ諸国に至っては、日本以上に残存制限品目がありますし、あるいはまた非関税障壁についても、むしろ日本よりはもっと大きく張りめぐらしておる、こういうふうな実情にあると私は思っております。  ただ、日本のそうした国々に対するインバランスが非常に大きいということを問題にしておるわけでございます。たとえば自動車なんかにしても、日本はアメリカとの間でも自主規制措置をとっておりますし、ヨーロッパ諸国に対してもとっておるわけでございますが、フランスとかイタリア等は、自動車に対してはむしろ輸入制限というような措置をとっていることも御承知のとおりでございまして、そういうことで、われわれも努力をいたしますが、やはりアメリカも、あるいは特にEC諸国も、日本に市場の開放を求める以上は、みずからも市場開放を努力することは当然であるし、われわれはこれを強く主張いたしておるわけであります。
  73. 北側義一

    ○北側委員 日本人というのは大体PRが下手なんですが、その点江崎さん一行が行かれていろいろと御説明なさっておられるようですので、日本の言い分としては、実情をアメリカなりECに対して率直に言っていく、そういう姿勢が非常に大事ではないか、こう思うのです。アメリカ国民やEC諸国の国民、特にアメリカあたりは中間選挙がありますので、どうしても議会筋の問題が出てくる。そこらをひとつ考慮に入れられて、相互主義法案等が成立しないように全力を挙げて御努力願いたいことをお願い申し上げます。  次に、経企庁長官がお見えになりましたので、五十七年度の経済見通しにつきましてお伺いしてまいりたいと思うのです。  大臣も所信表明で、五十七年度の経済運営について内需中心の着実な景気の維持、拡大を実現する、また物価の安定を図る、このような三点にわたっての基本的なお考えをお述べになったわけでありますが、振り返って五十六年度の日本経済、これは消費の拡大を中心に内需主導型の経済成長を目指しておったわけです。私、昨年この問題についてちょうど大臣に所信をお伺いしたわけでありますが、物価が安定すれば消費は伸びるであろうというお答えが出ておったわけでありますが、結果は内需主導型の経済成長ではなくして、外需主導型になってしまったわけです。物価の安定は消費拡大の一つの要因ではあろうかと思うのですが、これはやはり万能ではないということです。その点、この五十六年度の経済運営、これから見て当然五十七年度の経済見通しも作成されたと思うのです。その相違点、またその所感、それをまずお伺いしたいと思うのです。
  74. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十六年度経済見通しは、政府の当初見通しよりは相当狂っておりますが、その一番大きな原因は、雇用者所得の伸びが政府の当初見通しよりも相当に低い水準になった、こういうことでございます。大企業のベースアップは、御案内のように七・七%でありますが、中小企業で働いておる人たちが、中小企業の方がはるかに大きいわけでありますから、この中小企業の従業員のベースアップが相当低かったのではないか、こういう感じがいたします。そういうことで、ベースアップ雇用者所得とは直接関係いたしませんがやはり一つの大きな要素でございますから、雇用者所得の伸びに影響したのではないか。一人当たり七・五%見当と想定をいたしておりましたが、いまのところは大体六・二%見当におさまっておるのではなかろうか、こういう感じがいたします。そういう問題も一つございますし、それから何と申しましても、公的負担も相当重くなっております。物価は幸い安定したのでございますが、総合的に見た場合に可処分所得が伸び悩んだ。したがって、可処分所得が伸びませんと消費もふえない。それから住宅も建たない。また、住宅消費中小企業関係が非常に多いわけでありますから、中小企業の経営に悪い影響が出てくる。こういうどうも悪循環のような形になっておるのがいまの現状でなかろうか、このように判断をいたしております。
  75. 北側義一

    ○北側委員 大臣の言われたとおりだと私も思うのですね。私も実は労働省の毎月勤労統計、この現金給与総額の伸び、これを見てみますと、春闘の山場を越した六月の対前年同月比は七%、四−六月期の平均で六・四%、七−九月期が五・四%、このようになっておるわけです。大臣の言われたとおりだと思うのです。そうして、これを実質ベースで見ますと、五十五年を一〇〇とした実質賃金指数が四−六月期で九六・六、七−九月期で九九・四、八月八七・一、九月七五・七、十月七六・七、十一月が七九・七、このようになっておるわけです。いずれも五十五年の平均実質賃金指数を下回っております。  さらに、いま言われたとおり、公的負担の面も増加してきております。いわゆる家計から自由に消費に回せる可処分所得、これも総理府の家計調査報告を見ますと、実質ベースで六月以降ずっとマイナスが続いております。こういう状況ですと、幾ら物価が安定しましても、消費回復期待できないと思うのです。いま大臣が言われたとおりです。したがって、内需主導型の経済成長を達成するためには、どうしても物価の安定と同時に家計の負担を軽くして、可処分所得をふやす手段を講じる以外手がないと思うのです。いま私は数字を申し上げたわけですが、大臣も大体同じようなお考えのようです。その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  76. 河本敏夫

    河本国務大臣 そこで、ことしも昨年に引き続きまして物価対策を最重要な課題だ、優先課題だと思っております。政府見通しでは、消費物価は四・七%を一応想定しておりますけれども、しかし、それ以下の水準にできるだけ抑えたいということで努力を続けてまいります。  それから、公的負担の問題でございますが、これは、数年間減税をいたしておりませんし、わが国の場合は累進課税になっておりますから、この数年の間に税負担が非常に重くなっております。したがいまして、減税という問題が起こってきておるわけですが、残念ながら五十七年度は財政事情がなかなかむずかしい。そこで、いま私ども考えておりますのは、五十八年度以降の課題として、できるだけ早く減税ができるような条件の整備をすべきである。条件の整備とは何ぞやといいますと、一つは財源問題でありますし、もう一つ財政再建のめどを立てる、こういうことでございますが、そういうスケジュールをいま一応考えております。  ベースアップの問題につきましては、これは労使双方で決められる問題でございますので、私の方からとやかく言うべきことではございませんが、労使交渉が順調に進むようなそういう産業政策だけは政府として進めていく責任があるのではなかろうか、このように判断をしております。
  77. 北側義一

    ○北側委員 これは経済閣僚の一人であるというお立場でお答え願いたいと思うのですが、御承知のとおり、昭和五十七年度の公債発行残高は約九十三兆円、このようになると聞いておるわけです。その国債費に一般会計から充てる金額が五十七年度七兆八千二百九十九億円、財政再建が日本経済に与える影響、これは非常に大きな影響が出てくると思うのです。この赤字財政を立て直すには、一般の家庭におきましても企業につきましても、恐らく国でも同じだと思うのです。入るを図って出るを制すという会計原則がありますが、それ以外に方法がないのじゃないかと思うのです。そこで出るを制すというのは、やはりこれは私は行財政改革だと思うのです。  しかし、私の本音を申し上げまして、この行政改革だけで果たしてこのような膨大な赤字財政、これは財政再建ができるのかという疑問は皆さん率直に持っておられると思うのです。そうしますと、出るを制すの方がそうであるならば、入るを図る以外に手がないわけです。入るを図るには、ある人が言っておるわけですが、三つあるのだ。  一つは税の自然増収、これをふやしていくという方法、二つ目は一般消費税にかわる大型間接税の導入を図るという方法三つ目にはインフレ政策で赤字財政実質的に縮小していくという方法、恐らくこの三つしかないのではないか、このように言われておるわけです。  お聞きしますところによりますと、長官は、財政再建はやなり自然増収でやるべきであろう、このようなお考えを持っておられる、このように私は承知いたしておるわけでありますが、経企庁長官として、経済閣僚の一人として、この問題についてどのような方法が一番いいのか、それをどのようにお考えになっておられるか、それをまずお聞きしたいと思うのです。
  78. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府の方では、昨年の秋まで行財政改革という言葉を使っておりましたが、最近は、行政改革と財政再建は別問題である、こういう合意ができまして、行政改革は本来の目的のために行政改革をやる。したがって、行政改革ができたからといって、それで財政再建ができるものではない。財政再建はまた別の角度から考えていかなければならぬ、こういう基本的な考え方に立っていこう、こういうことにコンセンサスが一応できたのでございます。もとよりある程度の行政改革をやりますと、当然それによりまして財政上の効果も期待できるわけであります。しかし、御指摘のように、それだけでは財政再建はできるものではない。財政再建を進めるためには、相当大規模な税の増収というものが期待できなければならぬ、こう思っております。  そこで、税の大規模な増収が期待できる考え方としては何があるか。整理して言いますと、いま御指摘のような三つの課題があろうかと思いますけれども、やはり政府といたしましては、景気回復による税の自然増収を拡大していきたい、これを第一に考えるべきである、このように理解をいたしております。
  79. 北側義一

    ○北側委員 私も、やはり財政再建の方法としては、景気拡大による、いわゆる増収による財政再建が一番望ましいと思うのです。事実上、いわゆる一般消費税にかわる間接税の導入とか、こういうことはやはり国民の立場として猛反対が起こると思うのです。そうしますと、とる方法というのは、自然増収をふやして、そして財政再建に充てていく。当然これは長期の計画が必要だと思うのです。それ以外に方法はないのじゃないか、こういう考えを私自身も持っておるわけです。そのためにも、五十七年度の名目成長率八・四、実質成長率五・二、これはどんなことがあっても達成しなければならないのじゃないかと思うのです。  ところが、これからずっといろいろお聞きしてまいりたいのですが、これも非常にむずかしい諸条件がいっぱい横たわっております。ですから、いわゆる名目成長八・四、実質成長五・二に対応するような政策手段というものがなければ、これはなかなか達成できるものではない、このように私自身は考えております。     〔委員長退席渡辺一秀一委員長代理着席〕 名目成長率が三%程度違いますと、大体七兆から八兆違う、このように私は聞いておるわけです。ですから、先ほど来大臣も仰せのとおり、消費を支える家計の可処分所得が非常に大事になってくるわけです。ところが御承知のとおり、大半がこの五年間ほとんど横ばい。特に第四分位の所得階層は実質マイナスになっております。これは、ここにある資料で申し上げておるわけですが、いわゆる収人五分位階層別実質の推移、これの表によると、第四分位は大体実質マイナスになっておるわけです。それは、大臣が先ほど言われましたとおり、所得税減税が据え置きになっておる。租税の負担が増大しておる。たとえば社会保険料など非消費支出の増加が非常に大きい。財政再建の上から見ても、自然増収を増加するためには、やはりここで何らかの手が必要ではないか。そのために、私たちは減税という問題を取り上げて政府に迫っておるわけです。経済閣僚として、景気の維持、拡大に最大の努力を払っておられる長官として、この私の考え方について率直に御意見を述べていただきたいと思うのです。
  80. 河本敏夫

    河本国務大臣 アメリカはいま、御案内のように、ゼロ成長であります。経済が非常に落ち込んでおりますが、先般の一般教書、予算教書、経済報告等を見ますと、ことしの後半から経済回復に向かって、来年は名目一一%、実質五・二%成長を達成することが可能である、こういう政策を発表いたしております。  その景気回復の原動力といたしまして、アメリカ政府考えておりますのは、一つは軍備拡張による軍拡景気。第二は、大減税による経済効果。アメリカは所得税中心の国でありまして、昨年、所得税の五%、ことしの七月に一〇%、来年の七月に一〇%、これだけの所得減税をしますが、金額が非常に大きいわけであります。約七百億ドルの所得減税、こう言っております。そのほかに企業減税がございますので、ことしのアメリカの減税額は九百三十億ドル、こういう数字を出しておりますが、これは大変大きな数字だと思います。それから、最近やや下火になりかけつつありますけれども、昨年来統制を外しましたエネルギー開発、これは一つの大きなブームになっております。それと、先端技術に対する投資。この四つが景気回復の柱だ。一方で赤字は出ておるけれども、これだけの大胆な経済政策をやれば、理外の理というものが生まれてくる、こういうことを言っておるのであります。  それから、OECDは、ことしの後半、平均成長率が三%強、正確に言いますと三・四分の一平均に回復する、来年もほぼ同じ数字が続くであろう、こういうことを言っておりますが、いずれにいたしましても、アメリカやヨーロッパの経済と日本の経済とを比べてみますと、日本の方がはるかに有利な条件に立っておる、こう私は思うのです。失業問題とかインフレの問題、労使関係あるいは貯蓄率、金利水準経済の国際競争力、こういういろいろな点をどれ一つ見ましても、圧倒的に日本が有利な条件にあると思いますので、ヨーロッパ、アメリカが、以上申し上げましたような経済成長が可能であるということで、それぞれの政府並びに関係者がそういう目標を立てまして経済運営をしておるわけでありますから、はるかに有利な条件にある日本として、工夫を加えれば、当然五・二%成長は達成できる、こう私どもは思っております。そのためには内需の拡大をしなければなりませんが、内需としては、消費住宅民間設備投資公共事業貿易関係あるいは在庫投資、こういう一つ一つの項目につきまして、きめの細かい分析と対策が必要であろう、このように考えております。
  81. 北側義一

    ○北側委員 なるほどOECDですか、それはアメリカと比べますと日本はまあ有利だと思うのです。しかし、日本は日本の立場として、五十六年度経済見通しと実績、これを考えてみますと、やはり非常に変化しておるわけです。その変化した状況は、先ほど大臣が言われ、私もいろいろお話し申し上げたわけです。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、野田委員長     代理着席〕  では、いま大臣が言われたとおり、まず日本としては内需の拡大、これが非常に重要である。その内需拡大の一つの大きな柱というのは、いま大臣もおっしゃいました設備投資であろうと思うのです。経済企画庁の資料によりますと、中小企業、大企業別の設備投資動向、これを見てみますと、昭和五十四年は大企業、中小企業ともに設備投資が非常に活発だったのです。五十五年になりまして、中小企業が大幅に落ち込みまして、前年同月比では大企業の半分以下、このように低迷しております。五十六年度も横ばいからマイナスになっております。設備投資中小企業は落ち込んでいるわけですが、その分大企業の方は比較的堅調であった、このように言われておったわけであります。しかし、この資料によりますと、大企業の設備投資も五十六年一月から三月期がピークで、四月から六月期が前年同月比二一・九%、七月から九月期六・七%、十月から十二月期、これは予想として一五・三%、五十七年一月から三月期、これも予想として九・三%、このように大企業の方も一月から見ますとずっと落ち込んでいます。  また、ある新聞社の報道で載っておるのですが、主要企業五十社の経営者を対象として聞き取り調査をやった結果が発表されておるわけです。それによりますと、五十七年度において設備投資を行う企業のうち、工事ベースで五十六年度並みかそれ以下と答えた企業が五十社のうち約六〇%の二十九社、このように報道されておるわけです。このことは、大企業も設備投資については非常に慎重になっておることを示しておるのではな  いかと私は考えるわけです。  このように見てまいりますと、民間企業の設備投資の伸び率、これを名目一〇・五、実質七・七、このように見込んでおられるわけです。内需のいわゆる牽引車として大きく期待する民間設備投資が五十六年度実績見込み名目四・九しか伸びてないですね。そうしますと、名目一〇・五と四・九の間に差がずいぶんあるわけです。果たして民間設備投資政府がおっしゃるとおり見込みとして名目一〇・五、実質七・七伸びるのかどうか。先ほども申しましたとおり、名目で大体三%近く——一%ですか違うと約七兆か八兆違う、このように私は聞いておるわけです。そうしますと、これは経済成長率に非常に大きく影響してくるわけです。私は実際の問題として、こんな不可能な数字が出てくるんだろうか、あらゆる数字を眺めてみますと、こういう実感が出てくるわけなんですが、その点どうでしょうか。
  82. 井川博

    ○井川政府委員 設備投資調査にはいろいろな数字がございます。いま先生が言われた数字は、私も拝見いたしたことがございます。しかしながら、総じて言いますれば、大企業は設備投資意欲が強いし、しかも堅実にそれを実行しているというのが現況ではないかと思います。御案内のように、ロボット等々大変採用している、あるいは省エネ投資、合理化投資というふうな投資も行っているというふうなことで、大体において堅調だと考えていいと思います。  しかし、いま先生が挙げられました数字にもございますように、中小企業は低迷という状況でございまして、これは五十六年度、現段階におきましてもいい数字は出ておりません。したがいまして、見通しとしても決していい数字が出ていないというのが現状でございます。しかしながら、われわれといたしましては、調査をしたところ、これは中小企業庁の方のお話を承ってもそういうことでございますけれども中小企業自体設備投資意欲はきわめて強いものがある。これはいろいろな意味において、競争力強化、将来の企業経営基盤ということで、設備投資していかなくちゃならないという意欲はきわめて強いわけでございますが、一つは、景気の先行きの問題がございます。それからもう一つは、従来金利が非常に高かった。先生先ほど数字を挙げられましたけれども、従来、たとえば公定歩合で申し上げますと、五十三年、五十四年、御案内のように、三・五%から逐次上がりましたものの五%台という状況でございましたが、五十五年は九%になったわけでございます。そして五十六年は下がりましたものの六%、五・五%に下がりましたのは五十六年十二月、数カ月前ということでございます。各種金利関係、いろいろな推移を示しておりますけれども、まだ〇・七五の公定歩合追随率がまるまる下がっておるというわけではございません。そういう意味で、今後そうした金利も下がっていく。景気も逐次明るい見通しが出てまいりますと、そうした中小企業の横ばいないしゼロというふうな現在の計画が正常に復する、こういう考え方をとっておりまして、中小企業が正常に復しますと、先ほどの大企業と合わせまして、実質にいたしまして七・七%という設備投資は可能ではないかと私たちは考えておるわけでございます。
  83. 北側義一

    ○北側委員 いま言われたこともわかるわけですが、その問題はもうちょっと後ほど、大臣おでかけになったらいけませんので、先に大臣の方から。  次に、民間設備投資と同様に、大臣も仰せになっておられますとおり住宅建設、これが非常に内需拡大につながってくるわけです。そこで、先ほど来どの委員も皆おっしゃっておられるわけですが、五十六年度の実績見込み、これは経済見通しによりますと名目二・四、実質〇・九、このようになっておるわけですね。ところが五十七年度の見通しが名目一四・三、実質一〇・四、このようになっておるわけです。この問題は関連産業だけでも二・六倍の波及効果がある、このように言われておるわけですが、据野の広い住宅関連産業、これに対して非常に大きな影響力を持つわけです。実際問題として、どなたもおっしゃっておられますとおり、名目一四・三、実質一〇・四なんという数字がどこから計算されて出てくるのかという疑問を私自身も持っておるわけですが、もう何遍もお答えになっておられるかわかりませんが、再度お答えいただきたいと思うのです。
  84. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在、政府が進めております住宅建設計画は、昨年の三月二十七日に閣議決定をいたしました第四期住宅建設五カ年計画に基づいて進めておるものでございます。昨年の三月末、五十六年度を初年度といたしまして六十年度までに七百七十万戸の住宅を建てよう、こういうことを閣議決定をいたしました。その際にいろいろな議論がございまして、もう数も余っておるので、とてもそれだけの住宅建設はできないのではないか、こういう議論も一部にございました。しかし、日本の住宅の内容を調べてみますと、いい住宅もございますが、大半は住宅が非常に悪い。特に三百四十万戸もの木賃住宅というのがございまして、これはすべて寝るところは別ですけれども、それ以外は全部共同生活である、こういう状態の家もございますし、それから建てかえなければならぬ家が相当たくさんございますので、七百七十万戸とは言いながら半分は建てかえである、こういう内容にする必要があるということで、最終的にその数字を決定いたしたのでございます。もうすでにその時点では住宅建設は百二十万戸に落ち込んでおったのでありますけれども、あえて年間百五十万戸という数字目標として決定をいたしましたが、そういう背景からでございます。  五十六年度は、残念ながらさらに五十五年度よりも状態が悪くなっておりまして、現在のところは百十五万戸くらいになるのではないか、こう思っております。民間見通しも、五十七年度もほぼ同じような水準が続くのではないか、こういうことを言っておりますが、政府の方は百三十万戸でありまして、相当違っております。その違いは、民間見通しが昨年の十一月から十二月の前半までにほとんど出てまいりまして、政府予算がどう決まるか、住宅対策がどう決まるのか、そういうことは全然度外視して想定をされた数字でございます。つまり建設省が大蔵省に対して概算要求した段階での見通しでございますので、御案内のように、十二月二十八日に予算が最終段階で決定をいたしました際は、相当内容が違ってきておりまして、建設省も概算要求をやり直す、こういうことになりまして、相当思い切った政策を住宅金融あるいは土地政策さらには中古住宅対策、各方面にいろいろ積極的な考え方をまとめたのでございまして、私どもはこれらの対策を契機として、ある程度住宅建設回復するであろう、こう思っておるのです。事実、ことしの一月からの五十六年度募集の分につきましては、新しい金融条件で募集をいたしておりますが、昨年は四回募集をいたしましても、全部六〇%から九五%までくらい、満額にならないという状態でございましたが、現在のところは六万戸の募集に対しまして、最終的には相当オーバーするのではないか。まだ  一週間ほど募集期間が残っておる段階におきまして、もうすでに六万戸の募集に対して約七万戸見当の応募が来ておりまして、相当いい成績になっております。したがいまして、この五十七年度は、民間見通しと違いまして、政府見通しの百三十万戸見当はいけるであろうと私ども期待をしておりますし、引き続きまして、五十八年度には五カ年計画を完全な軌道に乗せたい、このように考えておるところでございます。
  85. 北側義一

    ○北側委員 第四次住宅建設五カ年計画、これを見ますと、大体一年平均百五十万戸見当を建てなければいけないわけですね。これを見ますと、公的資金住宅、いわゆる公的資金といいましても住宅金融公庫からの融資を対象とした公的資金住宅が非常に多いわけです。民間はやはり落ちております。これが実態ではないかと思うのです。三百四十万戸のいわゆる木賃住宅、これは建てかえ、なるほど建設省の方でもことしそういう助成の法案を出すようなお話を聞いております。しかし実際問題として、これは建築基準法とのいろいろな絡みがあるわけなんです。と申しますのは、建築基準法では、家を建てる場合には四メートルの道路幅がないといけない、このようになっておるわけですね。そうしますと、昔の農道の横にずっと建ったような木賃、いわゆる古い住宅、そういう住宅というのは大体建てかえを必要とする住宅。これは東京の場合でも大阪の場合でも同じなんですが、四メートル道路の幅をとりますと、家が建たないというような、非常に狭くなってしまう。そうしますと、ある程度全体的にやらなければいけないような計画を立てなければならない。そうしますと、そこに権利が非常にふくそうしておるから、なかなか合意が見られない。これは都市再開発事業であっても同じことなんです。そういう問題を見ますと、なかなか建てかえも大変ではないか。事実、私どもそう思っているわけです。また住宅金融、なるほど変えられました。今度状況も非常に変わりますが、しかし、これも二段階方式で、十年以降は金利が高くなるような内容がやはりあらわれております。そういう点を考えますと、こちらが期待するような状況で、いわゆる名目で一四・三、実質一〇・四なんというのはとても不可能だろう。これが大体、普通一般の常識ではないかと思うのです。  たとえば、いま大臣がおっしゃったことと同じようなことを、ある雑誌で大臣がインタビューの中でおっしゃっておられます。五十六年度は住宅建設が百十六万戸前後に落ち込んでいるが、五十七年度には百三十万戸程度、五十八年度には百五十万戸程度に回復を図りたい、百五十万戸とは昭和五十一年ないし五十四年までの水準だから、私はこの目標はさしてむずかしいとは思っていない、このように仰せになっておられるわけです。ところが建設業界、特に住宅産業業界、ここらの見通しをいろいろ調べてみますと、大体百五十万戸は絶対無理やと言うのです。大体、日本でも欧米並みに百万戸の水準になってきたのじゃないかという声が非常に多いわけです。そういう点、五十七年百三十万戸、五十八年第四次五カ年計画の中のいわゆる百五十万戸水準、これは大臣、いまも何とかいけるのじゃないかとおっしゃっておられるようですが、これは非常に考え方が甘いのじゃないかと思うのです。  と申しますのは、土地対策一つとりましても、地価の値上がりというのは、御承知のとおり物価水準よりずっと上をいっております。これは、たとえばいままでの公示価格にしましても路線価格にしましても、眺めておりますと、実際そうですし、また売買実例価格を見ましてもこれはそうなんです。やはり抜本的な土地政策というものを、これは大臣の所管ではないかもしれませんが、やはり内需拡大という面から見ますと、これは非常に重要な問題ですので、もう一度ここで何らかの対策を講ずるべきではないか。  たとえば、私は選択制宅地並み課税ということを言っておるわけです。東京にしましても大阪にしましても、土地はあいておるわけです。建てるだけの土地があっても、御承知のとおりなかなかそれを手放さない。宅地が供給不足である。需要と供給のバランスが崩れておる。やはり何らかここでやらなければ、いま大臣がおっしゃった、このような数字というものは絶対不可能だと私は思うのです。これは率直な私の意見です。そういう点、今後これを達成するためにどのような努力をなされるのか。政策的ないまの金融とか建てかえとか、これだけではとても無理だと私は思いますが、それを再度お伺いしたいと思うのです。
  86. 河本敏夫

    河本国務大臣 住宅が非常に落ち込んでおります一番大きな原因は、過去二年間実質、名目所得が伸びない、あるいは時には減少しておる、こういう状態であるにもかかわらず、住宅の価格が非常に上がった。この所得と価格の乖離、ここにあるわけでございまして、ほかにも理由はありましょうが、これが最大の原因だと私は思っております。  そこで、先ほど住宅金融のことを申し上げましたが、最初の五年間の支払い条件を非常に緩やかにするとか、たとえば五十年賦で返せるようにするとか、六年目からは少し所得もふえるでしょうから、少し返済をふやしてもらう。それから十一年目からは、いまもお話がございましたように、金利を少し元に戻して支払いもふやしてもらう。こういう実情に合わしたようなこともやっておりますし、それから年金融資とのあわせ貸し制度等も考えております。それから土地対策をもっと徹底してやれというお話は、これはもう私も賛成でございまして、今回もずいぶんやったつもりでおりますけれども、やはりまだ十分でない点が二、三ございます。その点は大変遺憾に思っておるのですけれども、しかし、昨年に比べますとことしは相当改善されると思います。  そこで、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、昨年は四回の政府住宅の募集に対して、いずれも相当大幅な落ち込みだったわけです。満額にならない。しかし、ことしになりましてから新条件でやっておりまして、三月一日には最終の締め切りを行いますので、政府住宅関係者などの意見を聞きますと、六万戸の募集に対しておよそ十万戸くらいな応募があるのではないか、去年と様変わりである、こういうことを言っておりますので、様変わりと言うとちょっと大げさでございますけれども、やはり政府幾つかの今回の前向きの政策によりまして、住宅投資に転機が来るのではないか、回復方向に向かうのではなかろうか、こう思っておりますので、この第一回の募集、もう十日もしますとおよその結果がわかりますので、ひとつ私ども期待をしておるところでございます。
  87. 北側義一

    ○北側委員 先ほど言いましたとおり、公的資金住宅の方は、昨年と比べて比較的、なるほど大臣おっしゃるとおり、ことしは快方に向かっておる、よくわかるわけです。しかし、いわゆる民間建設の住宅、これが伸び悩むと思うのです。すべてが公的資金住宅で建つわけではないのですから、この百三十万戸というのは。そういう点をよく考えていただかないと、これまた五十六年度と同じような結果になるのじゃないか。  最近聞くところによりますと、銀行あたりで住宅ローンの支払いのおくれが非常にふえてきたというのです。大臣、一遍統計をとっていただいたらよくわかると思うのですが、所得が非常に伸びが小さい。また実質的にはマイナスの面も出てきておる。残業なんかやっておって、残業費で何とかローンを払おうという人が払えないできゅうきゅうとしております。そういう実態がもう現に出てきておるわけです。  それと民間マンションですか、これが相当売れ残っておるのです。不動産経済研究所の調査ですが、昨年末の時点では、首都圏のマンションの売れ残りは一万九千戸、近畿圏で一万一千戸、これだけ残っておるというのです。大体そのマンション価格も、御承知のとおり、所得の方はここ五年所得税減税がないので、累進課税制をとっておりますので、伸び悩み。ところがマンション価格の方はぐんと上がっているのです、土地が高くなっているので。大体年収の平均六倍である、こう言われております。買いやすい価格は大体年収の四倍だ、こう言われておるわけですね。  そういう点から見ましても、内需拡大のためには、この住宅建設が落ち込んでしまいますと、どうしようもないわけですから、設備投資個人消費拡大と言ったって、正直申し上げていまのところはむずかしいと思います。あらゆる点から考えてみまして、やはり住宅建設民間設備投資、これが一つの大きな柱であろう、こう私は思うのです。  これ以上論議をしましても、時間がありませんのでやめますが、どうかその成り行きを見ていただいて、ひとつぜひとも新しい政策手段なりを考えていただきたい、そう思うわけです。そういう時期がもうすでに来ている、私はこう考えておるわけです。その点お願いしまして、大臣、結構でございます。  それでは、先ほど中小企業設備投資の問題ですね。その問題でお伺いをしてまいりたいと思うのですが、民間設備投資のうち半分近くを占めておりますのが中小企業設備投資です。あなたもおっしゃっておられたとおり、中小企業設備投資、これが非常に停滞しておる。このことは資料でも明確なわけですが、あなたが先ほどおっしゃったとおり、設備投資の意欲がないかといったらそうじゃないのですね。意欲はあるわけです。  たとえば中小企業庁の「設備投資実態調査」、これを見てみますと、設備の老朽化が進んでいる、老朽化がやや進んでいるという答えが合わせて全体の約七〇%。そしてそのうち、設備投資を情勢を見ながら実施したいというのが四六・四%、情勢を見ながらできるだけ早く実施したい、これは三五・一%、近いうちにぜひ実施したい、七・二%、こうなっているのです。私はこの数字から見ますと、情勢によっては中小企業設備投資を行いたい、こういう意欲が出ているのじゃないかと思うのです。ところがなかなかそれができないのは、一つは売り上げ、受注の見通しが非常に困難である、収益見通しが困難である、また生産能力に余裕があるなど、こんないろいろな理由を挙げておるわけです。この中小企業設備投資が停滞しておる現状、これをどうお考えになっておるのか。
  88. 井川博

    ○井川政府委員 いま先生がおっしゃったとおりじゃないかと思います。意欲は十分ある。ただ、やはり中小企業でございますから、先行きの見通しが明るくなりませんと一歩足を前へ踏み出さない、こういう状況だろうと思います。  実は来年度、五十七年度は回復をすると先ほども申し上げましたけれども、その場合に、われわれとしては二つの考え方がございまして、一つは、先ほどもちょっと申し上げましたが、昨年、  一昨年やはり金利が相当高かった。中小企業の方々ももう少し金利が安くなるんじゃないか、こういう期待がずっとあった、こういう感じがいたします。現段階、昨年末公定歩合が〇・七五下げられまして、長短金利それに応じて逐次追随していっているという状況でございまして、これがもう少し下がっていく趨勢にあろうかと思いますが、そうなりますと、当然中小企業の方々も金利としては大体手の届くところになった、こういうお感じがあろうかと思います。  もう一つは、やはり景気といいますか、実際上生産が上がっていくという状況にならないといけないと思います。ただ、この点に関しましては、先生御承知のように、一昨年の暮れでもう在庫調整は終わったとか、去年の初めで終わったとかいろいろ言われましたけれども、結局去年の半ばようやく在庫調整が終わったという状況でございまして、鉱工業生産指数でも、たとえば四−六月期は前期に対してマイナス〇・三でございましたが、七−九月期は一・六、それから十−十二月期は二・七、徐々に上がってまいっております。と申しますのは、在庫調整が終わって、出荷に相応して生産が上がってきておる。この情勢は中小企業も同じような状況かと思います。しかし、まだまだ上がり方が鈍いので、現段階では一歩を踏み出すところまではいっておりませんが、徐々にこういう状況が定着いたしてきますと、中小企業と  いうのは変わり身が早うございますので、現実に実際上の設備投資に踏み出す結果になるのではないか。実はこれはまだ申し上げられるようなデータではございませんけれども、機械受注統計で代理店扱いのものあたりが少しふえ始めている。実は、機械受注統計で代理店というのは、小さい中小企業相手の機械関係でございますが、そこらあたりが少しふえ始めている。しかし、これはいまそういうことで、大いに中小企業設備投資が伸びる前兆であると申し上げるほどではない、もう少し様子を見たいと考えておりますが、そういう状況、萌芽もございますので、今後そういう状況が定着いたしますれば、中小企業の投資が回復をする。回復をいたしますと、大体われわれが考えております伸び率というものが実現できるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  89. 北側義一

    ○北側委員 いまのお話も大体わかるわけです。しかし、私らの目から見ますと、余りにも経済見通し民間設備投資に対する見方が大きいのじゃないかというのですね、これも住宅建設と同じように。やはり先ほど来言いますとおり、住宅建設なりまた民間設備投資、これは成長率に非常に大きく影響してくると思うのです。たとえば中小企業設備投資実質経済成長率に対する寄与率、これを見ますと、五十四年度の一番盛んに中小企業設備投資が行われたときの増加寄与率が二一・六%、非常に大きいわけです。ところがいまあなたがおっしゃったとおり、中小企業というのは非常に変わり身が早い、全くそのとおりだと私は思うのです。ところが、先ほど来私が論議しておりますとおり、大企業の設備投資が、大体一月をピークに五十六年はずっと下がってきておるわけですね。中小企業設備投資は大体先行性がある、こう言われておるわけです。そういう点から見ますと、大企業は落ち込んできておる。先行性のある中小企業設備投資が、これはふえていくのだろうか、こういう疑問を持つわけなのです。  なるほどあなたがおっしゃいましたとおり、公定歩合もたしか昨年合計で一・七五ですか引き下げられておるわけですから、この効果は確かに出てくると思うのですね。それはわかるわけです。そういう点、もしあなたの方から見られて一体どれぐらいになったら効果が出てくるのか、いつごろになったら私たちに数字的に目に見えるのか、それはどうお考えでしょうか。
  90. 井川博

    ○井川政府委員 先ほど申し上げましたような金利の問題あるいはまた景気の先行きの問題というのがございます。したがいまして、景気の先行きについては、いま非常に暗いムードがございます。そこらあたりで明るい感じが出るのがいつごろかということになりますと、大変むずかしい問題がございます。  しかし、先ほど鉱工業生産の数字で申し上げましたけれども在庫調整が終わった結果、生産の対前期比とか前年比あたりもじりじりと少しずつ伸びている。そういう情勢がもう少したちますと、なるほど伸びていっているなという感じが出てくるのではないか。それがいつごろかというのはなかなか申し上げにくい。  同時に、今度は金利の問題でございますけれども、公定歩合に対する追随率というのがございまして、短期も長期もすぐには公定歩合を下げたからといって下げるわけではございません。これは先生御承知のように、長期あたりは借りかえのときということでございます。たとえば追随率というのは、総合をいたした場合に五五%ぐらいがまあ大体オーケーということになるわけですが、十一月末でまだ四五%ぐらい、こういう感じでございます。まだ一〇%ぐらい追随率が足りない。それから短期の場合ですと、八五%ぐらいでございますが、十一月末で七六%というふうなことで、まだまだ追随をしていくという状況がございます。これが十一月の数字でございますから、恐らく二月、三月ということになりますと追随率が高まっていく。こういうことになりますと、実感的に先ほど言った明るい感じが出てくるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  91. 北側義一

    ○北側委員 まだエネルギー問題等いろいろお聞きしたいこともあったのですが、時間が参ったようでありますので、これで終わらせていただきます。
  92. 野田毅

    ○野田委員長代理 宮田早苗君。
  93. 宮田早苗

    ○宮田委員 経済企画庁長官せっかくお見えでございますので、五十七年度の経済見通しについて二、三お伺いをいたします。  一月二十五日の閣議で「経済運営の基本的態度」というものが決められたわけでございますが、その際、五項目をもって五十七年度の経済成長率五・二%を達成するのだということのようでございます。まずその前に、五十六年度の経済成長率が、そのときの話し合いということから、ここに資料がございますが、四・一%になるであろうという予想が立てられておるわけでございますが、最近の新聞、さらには長官もその意見をお漏らしになったようですが、十月−十二月、言うならば、第三・四半期成長率はゼロあるいはマイナスということにもなりかねないじゃないかということが言われ始めているわけでございます。そうすると、五十六年度の成長率四・一%というのは非常にむずかしいのじゃないか、こう思いますが、まず五十六年度の結果について、どういう見通しを持っておられるものか、その辺からお伺いいたします。
  94. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十六年度の第一・四半期は年率に直しまして四・八%成長。それから第二・四半期は二・四%成長でございましたが、第三・四半期はまだ作業中であります。三月中旬になりませんと数字はわかりませんけれども、大体感じといたしまして、内需回復がおくれておるところへ貿易が非常に落ち込んだ、こういうこと等もございまして、あるいはゼロ前後の成長になっておるのではなかろうか、このように心配をいたしております。しかしながら、まだ正確な数字ではございませんので何とも言えません。また第四・四半期も残っておりますので、最終的な判断はできかねるのでございますが、しかしながら、非常に厳しい状態になっておるということは、私どもも認識をいたしております。
  95. 宮田早苗

    ○宮田委員 私が五十六年度の経済成長率ということをあえてお聞きいたしましたのは、御存じと思いますが、経済は連続しておるものでございますし、五十六年度そのままの景気が引き続いて五十七年度に向かうのじゃないかという懸念があるからであります。といいますのは、五十七年度が五・二%という見通しをもって進められるわけでございますが、この五・二%の内訳を大まかにいたしますと、内需が四・一%ですか、外需が一・一%ですか、そういう分け方がされておるようでございます。  問題は、五十六年度も、いままでは全くの逆でございまして、これを今度急に逆にしなければならない。理由はよくわかりますけれども、果たしてそれが可能となって五・二%の成長率を達成し得るものかどうか、この辺に大変な懸念を持つものでございますから、あえてその問題について大臣の見解をお聞かせ願いたい、こう思います。
  96. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年の秋、五十七年度の経済運営経済見通しの作業をいたします際に、部内でいろいろ調査をいたしましたところ、昨年の秋の水準がそのままずっと続けば、五十七年度は三・八%ぐらいの成長であろう、一応そういう見通しが出たものであります。しかし、そうしますと、失業者がなお二十万人ぐらいふえますし、それから経済摩擦はさらに厳しさを加えることになります。また税収も非常に大幅に落ち込みますので、それではある程度の政策努力を加えた場合に、どの見当までの成長が日本においては可能かということについてもいろいろ作業をさせました。その結果、五・二%見当の成長は可能であろう。同時に雇用問題税収の問題、経済摩擦の問題もある程度解決に向かうであろう、こういう結論が出まして、それで政府といたしましては、五・二%成長を達成していこう、こういう基本方針を決定したのでございます。
  97. 宮田早苗

    ○宮田委員 私どもも、五十七年度の経済成長率五・二%というのはぜひ達成をしていただきたいということなんです。ところがもう一つの厳しい要因として、素材産業が大変な不況に立たされておるということでございまして、わが国を今日支えてまいりましたのは素材産業だと私は自負をしておるところです。自動車があれだけ発展をいたしました。造船があれだけの大きな成長をいたしました。機械あるいは電機、住宅、その他すべてを素材産業が支えてまいりましたし、それの波及的効果というものが非常に大きく、よって今日の日本経済をつくってまいりましたが、残念ながら一昨年、昨年、今年と素材産業全体が非常に深刻な不況という立場に追い込まれてまいりましたし、長官も御存じのように、このたびの不況は単なる手直しでは回復し得ない不況というふうに私ども見ておりますだけに、これの回復なくして経済成長というものが目的どおり達成できるものかどうか。まずこの不況対策を綿密にやって、そしてこの建て直しを図って初めて成長率が完全に実現できるものと思いますが、後から通産大臣お見えと思いますので、その辺をお聞きいたしますが、長官としてのお考えをまず聞かしていただきたい、こう思います。
  98. 河本敏夫

    河本国務大臣 わが国の経済回復がおくれておりますので、各分野で非常に大規模な、しかも深刻なひずみが生じております。その一つが、いま御指摘のございました一部産業が構造的にどうにもならない、こういう状態になっておるということであります。それからもう一つは、中小企業状態が非常に悪い、こういう現象も出てきております。また、地域によりまして、たとえば第一次産業あるいは公共事業が中心の地域は非常に落ち込んでおります。だから地域、規模、業種による跛行性、ばらつき、これが当面最大の課題でなかろうかと思いますが、これらの問題を解決するためには、やはり全般の景気回復、需要の拡大、こういうことはもちろんやらなければなりませんが、それだけではやはり解決しませんで、これらのばらつきに対してはそれぞれの個別の対策が必要であろう、このように判断をいたしております。
  99. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一点だけお伺いをいたします。  それは、総理もこの前の本会議答弁のときにおっしゃったようですが、今度の五十七年度の経済成長を達成するための最大の要因は、民間の旺盛な活力に待つんだ、こういうふうに言われておるわけでございまして、活力の中心は投資ということになると思いますが、素材産業だって投資というところまでは行かないと思いますけれども、それができるような一つの方策を考えてほしいということ。あるいはまた、素材産業以外の基幹産業に対しまするところの投資活動が旺盛になるような、いわゆる政府の御指導といいますか、あるいはまた当局の指導というものが特に必要じゃないか。さっきのいろいろな質疑を聞いておりますと、中小企業にいたしましても非常に旺盛な意欲は持っておると言われましたが、旺盛な意欲があるだけに、その意欲を引き出す役目は当然に政府でございましょう。当局でございましょう。その辺を十分にひとつ小まめに配慮してほしいということ。要望が大半になりましたが、最後、その面についての大臣のお考えをお聞かせ願いたい、こう思います。
  100. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年の十月、五十六年度の経済運営の基本方針を決めましたが、その際も、不況業種に対する個別対策を強力に進めていこう、こういうことを政府として正式に決定をいたしております。したがいまして、先ほども申し上げましたように、全体としての内需の拡大策、景気回復策は、さしあたっては災害費の前倒しとか、あるいは公共事業の前倒し、こういうことを進めますが、同時に、強力な個別対策をそれぞれの分野ですることが政府の決定でございますので、通産省におかれましてもいろいろ御検討していただいておることだと思います。
  101. 宮田早苗

    ○宮田委員 長官、よろしゅうございます。ありがとうございました。  そこで、素材産業対策について通産省の方々にお伺いするわけでございますが、さっきも言いましたように、わが国の経済を今日まで支えてまいりました中心が素材産業であろう、こう思います。ところが最近の不況はかつての不況と違いまして、極端に悪化をしておりまして、このまま放置いたしますと総崩れになってしまうのではないか。     〔野田委員長代理退席、委員長着席〕 端的に言いますと、アルミ製錬あたりは真っ裸にされてしまうのではないか、こういうふうにも思われるわけでございます。そうなりますと、日本の経済も大変なことになりかねぬ、こう思うわけでございますので、この際、政府の小まめな対策を特に必要とするとき、こう思っておりますので、その点それぞれの面で質問をしよう、こう思っておりますので、端的にお答え願いたいと思います。  まず、お聞きいたしますのは、雇用問題についてでございます。特にアルミ製錬を中心にいたしまして、この業界では去年だけでなしに、おととしごろから要員を削減するための整理あるいは配転等々が、単なる一つの工場だけでなしに、全般的に行われてきたようでございまして、これが今日までどういう推移をたどっておるかということを通産省として掌握されておりますならば、ひとつお聞かせ願いたいと思っておるところでございます。何しろ通産当局といいますのは、雇用ということについての一つの中心でございますので、もちろん政策そのものは労働省とは思いますけれども、その辺無関係ではおれないと思いますので、当局の推移を掌握されておる範囲内で説明願いたい、こう思います。
  102. 真野温

    ○真野政府委員 ただいま先生のお尋ねがございましたアルミ製錬業におきます雇用の情勢でございますが、私どもも最近のアルミ産業不況状態から、ひいては合理化、人員整理等に至る事情があるのは承知いたしておりまして、その推移について私どもも関心を持ってフォローしてまいっております。  最近の数字で申し上げますと、五十四年当時には、アルミ製錬業における事業所全体として約八千人の雇用者がございまして、それが五十五年には七千六百九十人ぐらい、五十六年には六千三百五十五人ということで、これはいずれも十二月末の数字でございますが、この間千数百人の雇用減でございます。なお、アルミ製錬業は、直接アルミ製錬業の部門に携わっておる職員についても、これより約二千名ぐらいそれぞれ少ない数字でございますが、千二、三百人の雇用減少が起こっておるという状況でございます。  特に最近では、昨年三菱直江津工場の休止がございまして、それに伴う労働者の配置転換なり整理の状況というのも、私ども事前にもどういう処理方針かということは聞いておりますし、その際に、できるだけ雇用の安定に心がけるように当該企業にもいろいろ話しておりますし、各企業ともその点については種々の配慮をいたしております。  実例で申し上げますと、三菱軽金属の直江津の場合には、約千名近い九百六十九名の従業員が昨年一月現在ございましたが、そのうち三百数十名は現地における鋳造工場で引き続き雇用しておりまして、六百名ほどの過剰人員があった。これについて自社の他部門への配転、社外出向、関連企業吸収、それから自然減と申しますか、定年退職等を含めまして種々整理が進んでまいりまして、現在約百五十人ほどの残存人員、これについてなお引き続きこういう新しい部門への転換等を推進しておる、こういうふうに聞いております。  ただ、御承知のように、アルミ製錬業そのものは、それぞれの地域、電力の安い地域に出たとかいろいろ事情がございまして、その地域からの雇用、その地域の方々が結構たくさんおられまして、そういう方々については移転等の困難等の事情もあり、先ほど申し上げましたような状況になっておりますが、企業としては同じような形で引き続きほかの職場を探すという努力をしておるように聞いております。  そのほか、最近いろいろ出ております合理化の状況につきましても、ほぼ同じような方針でそれぞれ計画を持って進めておりますが、その辺のこれから起こる状況については、方針としては同じような方針で動くと思いますが、現在のところ具体的にはまだ把握しておりません。
  103. 宮田早苗

    ○宮田委員 アルミ製錬等を含めます電力消費産業、さらには石油精製の過程の中で出ます中間製品を原料といたします、特にナフサを原料といたします石油化学工業等の設備は、今日過剰になっておるわけでございまして、これの早急な対策を検討すべきと思います。この点についてのお考え一つ示してほしいということと、もう一つは、この種の産業は、相当程度償却が進んだ老朽設備が供給の主体となっているものも多いわけでございますので、この点を含めた対策も早急に立て、出す必要があると思うわけです。また、これらを含めて特安法、これは来年切れるわけでございますが、ただ見直しだけでなしに、これに対する新しい法律をつくる必要があるんじゃないか。もちろん金融、財政等々を中心にした抜本的なものでないといけないと思いますが、いま申し上げましたようなことを踏まえて、お考えがありましたならばひとつ聞かしてほしい、こう思います。
  104. 杉山和男

    ○杉山(和)政府委員 先生御指摘のとおり、現在アルミ、石油化学その他の化学工業、それから紙パルプ産業と非常な不況に直面いたしておりまして、通産省といたしまして、この対策が最も重要な課題であるというふうに考えまして、省内挙げて勉強もいたしておりますし、また、たとえば産業構造審議会の各部会でこの対策の御審議をお願いしておるという段階でございます。  もう一つ、特安法の関係でございますが、私ども、これらの御審議いただいている対策が出そろってまいる段階におきまして、対策内容、これはいろいろその業種ごとにあると思いますが、取りまとめて考えまして、特に法律を必要としない事項ももちろんあろうかと思いますし、ほかの法律の体系で処理すべきものもあろうかと存じますが、現行の特安法、またその延長線上で考えるべき問題もあろうかと考えております。新しい事態に対応いたしまして、基礎素材産業全般の対策のためにどういう法律を用意すべきかどうかという点につきまして、おのおのの対策が出そろいます段階で鋭意検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、現在の基礎産業不況の原因というのはよく御承知と思いますけれども、私ども大体四つくらいの大きな原因があるんじゃないかというふうに考えておるわけですが、第一が、当然のことでございますが、油、電力料金というところを中心といたしますところのエネルギー価格の異常な上昇という点があると思います。  第二番目は、その結果ではございますが、国際競争力がなくなりまして、輸出をしていたものが外国製品に追いまくられてできなくなる、減少する、それから輸入がふえてくる。これはアメリカの景気影響等も多いと思いますけれども、そういう点があろうかと思います。  それから三番目に、各業界にあります特殊な日本的な過当競争体質というのも大きく災いしているんじゃないかというふうに考えます。  それから最後に、先ほど河本長官からお話がありましたような内需の停滞というので、特に基礎部門につきましては、建設関連公共事業あるいは住宅、それから個人消費の停滞に由来いたしますところの内需の停滞というので、いわば構造的な欠陥が露呈されてきておるということではないかと思います。  そういうふうな中で、御指摘の設備の問題でございますが、これは原因がただいま申し上げましたように、景気の面と構造的な面と両面あろうかと思いますので、各業種によって差があると思いますが、一般的に過剰設備を現出しているということだろうと思います。現在、アルミ等は御承知のごとく、特安法に基づきまして設備処理を遂行しておるところでございます。それから紙パ業界等も、私ども需要は逐次伸びていくと考えますけれども、過渡的に過剰設備を現出しておるということであろうと思います。紙パルプのごときは、たとえば行政指導によりまして設備投資は、言ってみれば一時的に休戦ということで新規設備投資は行わない、能力増強投資は行わないというような行政指導をしておるところでございますが、各業界の実態に即しまして鋭意検討いたしたいというふうに考えているわけでございます。  なお、わが国の国際競争力の根源というのは、設備の優秀さ、もちろん働く人たちの優秀さが根幹でございますが、設備の優秀さというところにあったというふうに考えますが、残念ながらアメリカ等と比べまして、むしろ向こう側の設備が若返ってきているのにこちらの設備が老朽化しつつあるということだと思います。その点は非常に危険な徴候でございますが、全体に設備の廃棄といったような撤退作戦の方にむしろ現在目を奪われておりますが、私どもそれと同時に、設備更新、新規投資が行われるようにするためにはどうすればいいかというのを産構審等を中心にして御検討願いたい、あるいは願っておるという段階でございます。
  105. 宮田早苗

    ○宮田委員 手おくれにならぬように特にお願い申し上げたいわけでございます。  ただいまの答弁のところで一番問題になっております電力コストの問題、もちろん大幅な低減というものを恒久的にはまだまだ十分検討しなければならぬと思いますが、当面の対策としては、アルミ製錬あるいはカーバイド、苛性ソーダ、紙パルプ、いまおっしゃったとおりでございますが、この電力消費産業について電力コストの大幅低減を当面何らかの形で図る必要がある、そのためには政府の施策が強力に欲しいわけでございます。この点について何かお考えを持っておいでになるならばひとつおっしゃっていただきたい、こう思います。
  106. 杉山和男

    ○杉山(和)政府委員 電力料金について、電力コストが上昇しているという問題につきましては、たとえばアルミニウムにつきましては、先ほど河本長官がおっしゃいましたところの昨年の秋に決めました対策に基づきまして、一方におきましては、製錬業者の輸入するアルミ地金関税の免除、と同時に他方におきまして、この対策の具体化といたしまして、共同火力、アルミの持っております共同火力からの負担をできるだけ軽減するということでやってまいったわけでございます。  さらに、現在直ちにできる対策といたしましては、需給調整契約のように、電力消費産業が負荷調整面で協力をする。使用者側が協力をするということによりまして、電力の供給を効率的に行う、効果的に行う。そのメリットを使用者に還元するという電力の需給調整契約の活用によりまして、電力コストを引き下げることが適当であるというふうに考えまして、目下それを指導中でございます。
  107. 宮田早苗

    ○宮田委員 原料用の国産ナフサの石油税負担分の石油化学工業への還付制度の創設、あるいは原料用輸入ナフサについて現在とられております石油税の免税措置をさらに延長してほしい、こういう要望が非常に強いわけでございますが、この点については何らかの考え方を持っておいでになるかどうか。
  108. 野々内隆

    ○野々内政府委員 石油化学工業が、御指摘のように、原料ナフサの値段が上がった問題あるいは天然ガスとの競合等によりまして、非常に問題になっておりまして、この対策につきまして、いま総合的に産業構造審議会の化学工業部会で検討中でございます。  御指摘の問題につきましては、一つは輸入ナフサにつきましては、従来から、石油税創設当時から免税制度を講じておりまして、これは毎年更新をいたしておりますが、五十七年度につきましては、引き続き免税について延長するということを考えておって、別途審議をお願いしているところでございます。  それから、国産ナフサについての石油税免除につきましては、そういう強い要望があるということは承知をいたしておりますが、他方エネルギー対策上非常に重要な財源にもなっておりますし、また他の油種とのバランスということもございまして、なかなかむずかしい問題があるかと思っておりますが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、産業構造審議会の全体としての対策の中で、この問題も含めて検討いたしたい、かように考えております。
  109. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つ輸入ナフサの問題についてでございます。  ナフサの自由化といいますか、自由にひとつ輸入をさせてほしいというのが石油化学七社からいろいろ当局の方にも申し入れとして出ておるようですが、この問題についてエネルギー庁の皆さんとして反論をされておるようでございます。この反論の理由として、連産品である以上、一部石油製品、ナフサの輸入が大幅に増大すると、他の石油製品の供給に重大な支障を生じるおそれがあるということからなかなかむずかしいような御意見が出されておるわけでございますし、もう一つは、輸入窓口が拡大されることによって、輸入業者に対するいろいろな指導がむずかしくなるのじゃないかというような意見が付されて待ったがかけられておるようでございます。この石油化学がいま考えておりますナフサの輸入自由化ということについて、できないものかどうか、通産省の考え方をお聞かせ願いたい、こう思います。
  110. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘のとおり、石油化学業界から原料ナフサの輸入につきまして要望が出ておりまして、私ども現在検討中でございます。いろいろな問題がありますことは先生いま御指摘のとおりでございまして、それ以上の説明は必要ないかと思っておりますが、ただ、法律上の問題解決ということよりも、むしろ現実の取引においてどの程度石油化学業界の要望が入れられるか、あるいはそれが石油化学工業の困難を救うために役に立つか、こういう観点からできるだけ現実的な解決を図りたいということで現在検討中でございまして、基本的には、先ほど申し上げました産業構造審議会の六月の答申までには結論を出したいと思っておりますが、それまでにも具体的な解決策があれば逐次実行していきたい、かように考えております。
  111. 宮田早苗

    ○宮田委員 質問の途中でございますが、通産大臣がお見えでございますので、大臣にぜひとも聞いておかなければならぬことがございますので、ひとつお聞かせ願いたいと思います。  といいますのは、二十二日の予算委員会におきましての質問に対する答弁として、九電力体制の存否を検討課題にするという考え方が出されたようでございますが、この真意、いろいろ関係ということはあるかと思いますが、まずその真意をもう一度お伺いしたいということが先でございますので、お願いいたします。
  112. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 九電力の問題と一般エネルギー対策のあり方の問題と多少ごっちゃにしたような形で私答弁した向きもあるわけでございますが、九電力体制につきましては、これは戦後、御存じのような形で発足いたしたわけでございまして、そしてこれまで非常に安定的に電力を供給するということで、公益事業としての責任を九電力が果たしておるんじゃないか。そしてこの九電力体制は、現在においてもわが国の経済、社会において非常に定着したものであるというふうな評価ができると考えておりますので、九電力体制そのものを改編をするというふうな必要はない、基本的にはないと私は考えておるわけですが、しかし、今後のエネルギー政策全体を考えていく上で、八〇年代というものがきわめて重要でございます。電力を含めまして、エネルギーの安定供給を確保するための諸施策につきましては、今後十分に検討をしていかなきゃならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
  113. 宮田早苗

    ○宮田委員 大臣のおっしゃったとおりと思いますが、九電力の再編に対する検討ということの前に、電力が一番関心を持っております、いま大臣のおっしゃったエネルギー政策ということが最大の課題ではないか。  その一つは、石油代替エネルギーという法案がつくられまして、この法案によって石炭開発というのが着々進められております。もちろんこれは当然のことでございますが、もう一つの問題として、原子力問題というのが、この法律の関係ではございませんが、石油代替エネルギーとして、また電力コストの問題も含めて、原子力発電の推進というものが大変必要になってきたんじゃないかと私は思う。ところがどうも原子力ということを言うそのものにちゅうちょを感じる。あるいはまたそのものに、何といいましても抵抗感を感じるという風評がございますだけに、この辺は当局としては十分にひとつ配慮していただかなければならぬ、こう思っておるところでございます。  まず、その辺から、原子力問題についてお伺い申し上げなければならぬことがございますのは、電源立地が思うように進捗しないというのが大きな問題と思います。もちろん今日、産業の停滞から電力需要の伸びが鈍化ということもございましょうが、これを進めていかないと、先々大変なエネルギーの枯渇につながっていくんじゃないかと思いますので、この電源立地の推進を強力に推し進めていきたいという気持ちがありますので、その問題について、大臣、ひとつ見解をお聞かせ願いたいということと同時に、水力も石炭火力もLNGも地熱等々もあるわけでございますが、その辺を踏まえた形でやっていただきたい。特に脱石油という問題がございますので、その辺を大臣としての端的なお考えを聞かせていただきたいと思います。
  114. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 エネルギー問題につきましては、御承知のように、昭和六十五年までに石油の依存率を五〇%にしたいということで努力を続けておりまして、ようやく五十五年度には七〇%を切るという状況まで参りまして、わりにその辺は順調に進んできております。そのための代替エネルギーの開発ということは、特に重要でございまして、いまの原子力発電であるとかあるいはまた石炭、LNGの利用、太陽熱の利用というようなことは、今後とも精力的に取り組んでいきたいと思っております。  予算措置も、現在の厳しい財政の中で特に配慮いたしてきておるわけでございますが、特にいま御指摘がありました原子力発電が、これは現在二十二基、千五百五十一万キロワットが運転中でございまして、総発電設備容量の一二%を占めておるわけでございますが、原子力は石油代替エネルギーの中核でもございますし、今後とも安全性の確保、信頼性の向上を図りつつ、地元の理解と協力を得て、開発の推進に努めてまいりたい。電源開発三法等も出ておりますが、さらに周辺の整備の問題等も含めて、いろんな角度から推進をしていかなければならない。そうして安全性とともに、国民の理解と協力を得るような体制を確立していかなければならぬと考えております。
  115. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つ原子力問題についてお伺い申し上げたいのは、原子力発電ということになりますと、どうもそれだけが焦点になっておるように見えますが、これを推進していく過程の中で、これに附帯するいろいろな工場、会社といいますか、処理機関というものが必要なはずなんでございます。廃棄物の処理、あるいはもう一つ大きな問題として、いつまでも外国に依存をしております使用済み燃料の再利用の再処理の問題。これはよそに頼っておるのじゃないかと思いますが、やはりここまで一つの国の基本として、この電力問題に対する石油代替の中心に置かれるならば、その辺も早くやっていかなければならないのではないか。言わざる、見ざる、聞かざるということでは問題は進められないと思う。ひとつ思い切ってやっていただきたい。この辺について、大臣、どうですか。
  116. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに、原子力発電を進める場合におきまして、核燃料サイクルの確立ということがその基盤でございます。特に再処理につきましては、資源の有効利用、放射性廃棄物の管理の観点から重要でございまして、現在では動燃の東海再処理施設のほか、イギリス、フランスに委託をしておるわけであります。この核燃料再処理の自立化のためには、商業再処理工場の建設がいま重点になっております。現在、日本原燃サービスが第二再処理工場の立地等につき準備をいたしておる段階でございます。政府といたしましては、この技術、資金、立地面での支援に全力を挙げて取り組む考えでございます。
  117. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、石炭問題についてお伺いいたします。  まず、国内炭についてであります。第七次の石炭鉱業審議会の答申によりますと、国内炭の生産につきましては、「現存炭鉱の安定的な生産の維持を基調としつつ、将来における年産二千万トン程度の生産水準の達成を目指す」こうなっておるわけでございます。国内炭の生産維持は、わが国のエネルギーの安定的確保のためには不可欠の要件の一つであると考えられますが、その第七次答申の初年度でございます昭和五十七年度の石炭対策の財源を見ると、確かに全体では千三百六十三億円になっておりまして、これを前年度と比較いたしますと、前年度が千三百八十七億円でございますから、二%の減少になっておりますが、石炭合理化安定対策、いわゆる生産維持のための対策費を見ますと四百八十一億円、五十六年度の五百四十二億円に比べますと一一%も減少しております。これでは現状の生産を維持し、あるいは将来二千万トンの生産規模を達成できないんじゃないか、こう思われますが、その第七次答申でも、その財源の確保については石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計によって確保すべきであると提言されておりますが、その点についてまずお伺い申し上げたいと思います。  もう一つ、これに関連して申し上げますと、二月四日付の日本経済新聞の記事によりますと、現在改定作業が進められています「長期エネルギー需給暫定見通し」では、国内炭の供給数量を明記することはやめにした、こういうふうな記事が出ておりました。これは二千万トン体制の看板をおろす意味につながるんじゃないかと思いますが、これは事実かどうか、その辺もお答え願いたい、こう思います。
  118. 福川伸次

    ○福川政府委員 お尋ねの石炭関係予算について御説明さしていただきますが、御指摘の点は、主として石炭の生産にかかわります石炭鉱業合理化安定対策費のことであろうと存じますので、それについてお答えさしていただきます。  御指摘のとおり、五十六年度五百四十二億円から五十七年度は四百八十一億円に減少はいたしておるわけでございますが、その主たる要因を見てみますと、新エネルギー総合開発機構が石炭鉱業に対しまして設備近代化の資金貸し付けをいたしております。その原資を従来は出資で賄っておりましたものを、財政再建期間中に限りまして民間資金を活用するということで、従来の政府出資から政府保証をつけました市中借入金、それに利子補給をつけるということに切りかえたためでございます。したがいまして、このようなことのために、その金額が約六十八億円でございますけれども、これが減少するということで、実質的に申しますと十分の予算の確保ができておるというふうに考えておるわけでございます。  ちなみに、いま対象になりました設備近代化資金融資の規模は、五十六年度百七十八億円から五十七年度は百九十八億円に増加をいたしておるわけでございます。したがいまして、このようなことで、財源をある程度余裕を持たせましたために、たとえばこの若返り工事ということで非常に重要になっております骨格構造の展開の補助金は百十四億円から百二十五億円にふやす。さらにまた、最近特に要請の強くなっております保安対策につきまして、保安の補助金は七十八億円から八十五億円にふやすというようなことで考えておるわけでございます。  ちなみに、そのほか石炭勘定でなくて代替エネルギー勘定ということの中で、今後石炭の資源開発の基礎調査を実施する予算を別途十八億計上いたしておりますし、また、生産関係の技術の中でも、海外ともども使えますような探鉱関係の技術は、一部石炭勘定から代替エネルギー勘定の方へシフトをさせていただいております。  こういった、いまの政府保証つきの市中借り入れにいたしました部分あるいは代替エネルギー勘定で充当することにいたしました部分を加えますと四・八%の増加、実質的には四・八%の増加の事業規模が確保できたということでございまして、現在お願いをいたしております石炭鉱業合理化臨時措置法等の延長と相まちまして、このような予算実質十分処理をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、もう一つ御指摘のございました日経の記事の点についての御質問がございましたが、現在「長期エネルギー需給暫定見通し」は改定作業中でございまして、この春にもこの見通しが出てくるというふうになっておりますが、どのようなかっこうで石炭の供給見込みを立てるかということにつきましては、現在企画専門小委員会で検討中でございまして、私どもは、第七次政策で御答申をいただきました八月の石炭鉱業審議会の答申の線に沿いまして、今後の対応も考えていきたいというふうに考えております。
  119. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、海外炭の問題についてお聞きをいたします。  石油代替エネルギー法案ができまして、海外炭の開発が促進されていると思いますが、相当量の海外の石炭に依存しなければならぬ立場にありますので、その一つとして、中国の石炭を八五年において一千万トンの約束をしたわけでございますが、これも思うように進展しない模様でございます。その中国炭の見通しは今後達成できるものかどうか、その辺をお伺いしたい。もし達成できないとするならば、何が要因でできないものかということを含めてお聞きをしたいと思います。
  120. 福川伸次

    ○福川政府委員 御指摘のとおりに、中国の石炭は一九八五年に一千万トンを供給するということで、かつて、一昨年でございましたか華国鋒首相が来日いたしましたときに言明をされ、その後、一昨年の日中閣僚会議でもその点が話題になったわけでございます。  現在、中国側といたしましては、第六次五カ年計画、これを策定作業中ということのようでございます。私どもといたしましては、従来中国側が言っておりました八五年一千万トンの対日供給ということには、十分これは配慮を払ってほしいということは再三申し入れておるわけでございます。そのために、実現に向けまして、先生も御高承のとおりに、探鉱開発に対しましてのバンクローンの供与あるいは輸送能力を拡充いたしますための円借款といったようなことで、それぞれの協力を進めておるわけでございまして、なおかつ、それが確実に出てくるように、日中間で専門家によります総合会議を設けまして、この中国の搬出の点につきましていろいろな助言も与えるという努力をいたしておるわけでございます。  中国側によりますと、ことしのなるべく早い時期に、この八五年の数字は詰めたいということを昨年言ってまいっておりまして、長期貿易取り決めの一環といたしまして、近々その辺の話し合いが行われるものと期待をいたしておるわけでございます。私どもといたしましては、ぜひ、従来の約束でございますから、実現をしてもらいたいというふうに願っておりますが、いまいろいろ取りざたされております問題を推測して申しますと、やはり輸送能力、鉄道あるいは港湾といったあたりの整備が果たしてどうであるかというような疑念が呈せられておるわけでございまして、そういった意味で、私どもといたしましては、いま申しましたバンクローン等々の資金協力、それから技術面等を中心にいたしましたシステム的な輸送体系の形成ということへの総合会議によります助言等を通じまして、ぜひとも実現を図るということで努力をいたしたいと思っておるわけでございます。
  121. 宮田早苗

    ○宮田委員 この中国のほかに、海外炭確保の多角化の一環といたしまして、また日米貿易の摩擦の緩和というものも含めて、米国の西部炭の輸入というものも期待されておりますし、また豪州等の開発ということも進められておるようでございますが、これの進捗状況といいますか、その辺の説明をしてほしいと思います。  といいますのは、海外炭開発に伴います附帯設備というものが相当数必要になってくるんじゃないかと思いますので、その辺も十分にひとつ加味していかないと、なかなか山の開発をいたしましても、思うようないわゆる石炭が入ってこないおそれもあるわけでございますから、アメリカなりあるいはまた豪州なりその他の関係でこの種の開発がなされておりますならば、それも含めた形で御説明願っておきたい、こう思います。
  122. 福川伸次

    ○福川政府委員 米国西部炭及び豪州炭についてのお尋ねでございますが、特に最近米国の西部炭が着目されてまいりましたゆえんは、西部に賦存いたしております膨大な一般炭、これは物によりましては品位のやや低いものもございますけれども、それをもう少し開発輸入することができないだろうかということでございまして、日本のユーザーあるいは商社もかなりの関心を示しておるわけでございます。  輸入炭は、輸入の一般炭は恐らく五十六年度中には一千万トンを超える規模に達するかと思っておりますが、特に最近米国からの輸入の増加は著しいものがございます。五十六年度で申しますと、たとえば四月から十二月まででございますと、百八十万トンの一般炭の輸入が米国から入っておりまして、これは一般炭全体の輸入の中の一九%ということでございまして、豪州に次いで大きな量にのし上がってまいっております。一方の豪州は、五十五年度で三千百万トン、五十六年度の四月−十二月で二千六百万トンということでございまして、これは全体の一般炭の輸入量の四四%程度でございます。したがいまして、まだ大宗は豪州に依存をしているということでございますが、米国の一般炭の輸入もふえつつあるということでございます。  しかし、その米国の西部炭でのいろいろな問題がございますが、一つは、米国の場合にはユタ州あるいはコロラド州というあたりが中心になっておりますが、これが海岸まで参りますのに一千マイル程度の距離がございまして、内陸輸送費がトン当たりで申しますと二十五ドルから三十ドルかかるということでございます。したがいまして、日本に持ってまいりましたCIF価格で申しますと、大体七十五、六ドル、七十六ドル前後になりまして、一般炭の全体の平均輸入価格が六十六、七ドルでございますから、十ドル程度高いということで、競争上一つの大きな問題ということに相なっておるわけでございます。  もう一つの米国炭の問題点は、いま先生の御指摘の港湾等を中心にいたしましたインフラの整備でございます。当然インフラを整備いたしますときには、環境問題等々の処理が必要になってまいっておるわけでございます。現在、西部炭は大体ロングビーチとロサンゼルスから搬出されておりまして、現在能力が大体五百万トンということでございます。これを通りまして、東南アジアを含めて日本に入るということでございまして、現在はフル操業ということで、これをどのように建設をしていくかということでございまして、これは私どもも、それぞれ民間のベースで現在フィージビリティースタディー等が行われて、それの整備をしていくということでございます。  いずれにいたしましても、米国の石炭は、そういった内陸輸送をどうやって大量輸送によって合理化していくのか、あるいは新しい輸送体系を技術革新によって見つけ出していくのか、さらにまた港湾等の整備を進めていくかということで、競争力のある条件をつくっていくということが肝心であろうというふうに考えております。そのために、現在民間ベースで日米石炭会議というものを行い、また個別のフィージビリティースタディーも着々進めているというのが現状でございます。  豪州炭につきましては、よく問題点が指摘されますのは、豪州の労働関係条件が必ずしも安定をしていないということでございます。さらにまた港湾能力がいっぱいであるということでございまして、現在かなり滞船が出るということで、買います場合にもある程度の負担増にならざるを得ない、こういう問題がございます。これにつきましても、現在ニューカッスルの第三ローダー等をさらに増強しようということで、日本の民間ベースで増強の工事を進めておるわけでございます。  基本的には、私どもも、豪州もこれからのメーンのソースになるというふうに考えておりますが、それぞれ豪州には労働力のネック等々が将来生じ得る可能性もございますので、さらにまた石油の教訓にまつまでもなく、できる限り供給源は多角化を図っていきたい。いま先生の御指摘の中国あるいは米国の西部炭、さらにカナダあるいは他の国々というようなことで多角化を図っていこう。同時にまた、いま御指摘のありましたようなインフラストラクチュアの整備ということで、コールチェーンと私らは申しておりますが、山元から向こうの内陸輸送、搬出の港湾設備、それに海上輸送、国内の受け入れといったところをシステム的にすることで、これもできるだけ民間ベースを中心にして、実需に合った形でぜひ展開をしてまいりたいというふうに考えております。
  123. 宮田早苗

    ○宮田委員 開発された海外炭を大量に輸入をするために、並行してわが国におきます置き場、コールセンターを建設促進することが不可欠であろう、こう思っておるところでございますが、釜石とか苫小牧とかあるいは北九州で言いますと響灘等々には大体でき、稼働はしておりますものの、早くこれに手をつけて広げていかないと、片一方で開発し、その後受け入れても置き場がないというようなことでは困ると思います。同時に、経済不況状態でございますだけに、景気浮揚のためにもコールセンターを早く開発する必要があると思いますが、その辺についての考え方をお聞かせ願いたい、こう思います。
  124. 福川伸次

    ○福川政府委員 先生御指摘のように、コールセンターは、たとえば響灘あるいは一部原料炭ヤードを利用いたしましたもの、あるいは小規模のコールセンターがすでに稼働いたしておりますが、大規模なものといたしましては、これから苫小牧でありますとかあるいは宇部でありますとか幾つかのものが計画をされておるわけでございます。  コールセンターは、御承知のように輸送の合理化、ストックパイル機能、それからまた石炭火力の立地促進とかいったような幾つかの効果が期待されるわけでございまして、これは土地造成あるいは輸送施設等々がそこに設置されるわけでございます。景気の浮揚力にどの程度力があるかという点につきましては、これはいろいろ御論議があろうかと思いますが、これから非常に息の長い投資を要する部門でもございますので、これからの長い目で見た石油代替エネルギーの開発ということから、このコールセンターの設置というのは需要に見合って着実に実行していかなければならないものというふうに考えておるわけでございまして、五十五年度から創設いたしました開発銀行を通じます長期低利融資、これを活用をいたしまして、五十七年度もその設置促進を図っていこうというふうに考えておるわけでございます。  当然その場合には、電力を初めといたしまして、ユーザー業界との連携ということが非常に重要になってまいるわけでございまして、そういった実需に合った形で、できる限りこの設置の促進を図って、受け入れ設備に遺憾のないようにしなければならないと考えております。
  125. 宮田早苗

    ○宮田委員 石炭問題は非常に重要な問題でございますので、できるだけ小まめな御配慮をしてほしい、こう思います。  次に、電力問題で中心になりますのは、これは大臣にお聞きいたしますが、料金問題についてでございます。  電力料金の問題につきまして、特に最近素材産業の中の電力消費産業の方々の料金に対するいろいろな要望というのが非常にたくさん出てきておるわけでございまして、根本的には燃料あたりの問題を解決しなければまた解決はできないと思います。さらには事業法云々という問題もございましょうが、当面不況産業の中の電力消費産業の救済のために、この料金問題について何らかの方策、また大臣としてお考えがございましたら、ひとつ端的におっしゃっていただきたい、こう思います。
  126. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま電力消費産業は大変苦境に立っておるわけでございます。これに対して何らかの対策を講じていかなければならない、こういうふうに考えるわけでございますが、この電力料対策としては、現在それらの産業の負荷調整能力に着目して、需給調整契約を活用することによって電力コストの低減を図っており、また四月には更改期が来ますから、図らなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。
  127. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、最初の質問の続きに入らしていただきますが、ナフサの輸入自由化という問題についてお問いいたしましたから、この次は、原料用国産ナフサの石油税の負担分の石油化学工業への還付制度の創設とか、原料用輸入ナフサについて現在とられております石油税の免税措置の延長——これはさっき質問いたしました。失礼いたしました。  石油企業の経営の悪化が今日だんだんにまた叫ばれてきておると思います。これは石油企業の引き取り原油を優先的に国家備蓄の対象にしたらどうか、こういう話もあるし、また要望もあるわけでありますが、この辺はどうですか。
  128. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御承知のように、わが国の石油はほとんど九九%輸入に依存いたしておりますので、これの備蓄というのが非常に重要な対策になるわけでございますが、現在、民間備蓄を九十日、それから国家備蓄につきましては三千万キロリットル、これは昭和五十五年度の消費量から考えまして四十五日分に相当するわけですが、これが当面の目標ということになっておりまして、これが六十三年度には達成可能かと思います。したがいまして、そのときには百三十五日分が持たれるわけですが、昨年現在でIEA加盟国の平均が百七十日になっておりまして、まだまだわが国では備蓄が国際水準に達していないという問題がございます。  御指摘の、民間の持っております原油について国家備蓄に振りかえられないかということでございますが、民間備蓄につきましては、申し上げましたように、九十日の備蓄というものを義務づけておりますので、まずそれまでは持つ必要があるというふうに考えております。国家備蓄につきましては、いま申し上げました三千万キロリットルを目標に毎年順次積み増しを行っておりますので、その段階で、御指摘のような点についても勘案をしてまいりたい、かように考えております。
  129. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つの大きな問題は、円相場が最近急激に乱高下しておるわけでございますが、石油製品価格の変動を調整する意味で、国及び業界の拠出によります基金を設立をして、一定範囲以上に円相場が下落した場合は、それによる為替差損の一部を基金により補てんをするとか、同じく上昇した場合は、それによる為替差益の一部を基金に拠出するというようなことなど、為替リスクの調整制度を創設する、こういう案もあるわけでございますが、その辺はどうですか。
  130. 野々内隆

    ○野々内政府委員 石油のコストの中で原油代が八〇%以上を占めておりますので、御指摘の為替相場の変動というのが石油のコスト変動要因で非常に大きな部分を占めております。このために、何とかする必要があるということで、昨年石油審議会の中にそのためのワーキンググループを設けまして御審議をいただいて、年末にレポートをいただいておりますが、その中で、御指摘のような基金についても検討がされてございます。そのほか、為替変動準備金というような、いろいろな点について検討がなされましたが、一長一短ございましてなかなか採用がむずかしい。特に、為替差損益と申しますのは、片道で五千億円ぐらいの変動がございますので、それを何らかのファンドなどで埋めるというのは非常にむずかしいというのが結論でございまして、そのレポートの結論では、まず何らかのリスク対策は絶対やるべきである、その方法としては、石油会社各社が自主的に輸入金融について円金融化あるいは為替の予約というようなことをまず行う、それから為替の差益はでぎるだけ積み立てておいて、差損のときにそれによって変動を防いでいこうというようなこと、こういうことを自主的に行うというのが石油審議会の出されましたレポートでございまして、その線に沿いまして、昨年未来石油企業の方で対策に着手した、こういうふうに理解いたしております。私どももできるだけそんな方向に動くように期待をし、必要な指導をいたしたいと思っております。
  131. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後でございますが、せっかく通産大臣お見えでございますので、特に素材産業全般についてでございます。  素材産業全般について、ナフサを主原料といたします石油価格の問題とかあるいはまた電力消費産業、この素材産業自体、さっきも河本長官にも強調いたしましたが、わが国を支えてまいりました重要な産業でございますが、その素材産業が今日大変な苦境に追い込まれておると思います。このまま放置しておきますと真っ裸にならなければならぬ、こういうときでございますだけに、通産大臣期待するところが産業界、労働界含めて非常に大きいわけでございますので、その辺を十分に配慮して、当面の対策あるいは中期的な対策あるいはまた長期的な対策等々を十分に小まめにやってほしいということを要望として申し述べまして、私の質問を終わります。      ————◇—————
  132. 渡部恒三

    渡部委員長 質疑の途中でありますが、この際、内閣提出、機械類信用保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。安倍通商産業大臣。     —————————————  機械類信用保険法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  133. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 機械類信用保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  機械類信用保険制度は、中小企業の設備の近代化と機械工業の振興に資することを目的として、昭和三十六年に発足した国営の保険制度であります。発足の当初は機械類の割賦販売のみを保険の対象としておりましたが、その後、ローン保証販売及びリース取引を保険の対象に追加し、今日に至っております。  本保険制度は、発足以来すでに二十年以上を経過いたしておりますが、この間、中小企業向けの機械類の信用取引に伴う対価不払いのリスクを保険することにより、機械類の健全な流通を促進し、中小企業の設備の近代化と機械工業の振興に大いに貢献してきております。  今回の法律改正の趣旨は、本保険制度を拡充し新たにコンピューターのプログラムに係る割賦販売、リース等による取引につき信用保険を行うことであります。  わが国のコンピューターの設置台数はすでに米国に次いで世界第二位となっておりますが、コンピューターを活用するために必要なプログラムの流通は諸外国に比べ著しくおくれております。これは近年プログラムの価格が上昇し、これを即金で購入することが困難となっていることが一因でありまして、今後はプログラムの割賦販売、リース等の信用取引が増加するものと見込まれております。しかしながら、中小企業にはまだ信用基礎の確立していないものが多く、割賦販売業者やリース業者等も中小企業に対して長期間にわたって信用を供与することをちゅうちょする例も数多く見られます。  このため、プログラムの割賦販売、リース等による取引に伴うリスクを保険する制度を確立し、中小企業の信用力を補完するとともにプログラムの流通を促進することがぜひとも必要であります。  次に、本法律案の要旨につきまして、御説明申し上げます。  第一に、法律の目的に中小企業の経営管理の合理化及びソフトウエア業の振興を加えることといたしております。  第二に、保険の対象にプログラムを加えることに伴い、割賦販売契約等についての定義規定の整備を行うこととしております。  第三に、保険契約の相手方としてプログラム作成の事業を行う者等を加えることといたしております。  その他、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  134. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  135. 渡部恒三

    渡部委員長 引き続き質疑を行います。石原健太郎君。
  136. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 河本長官は、所信表明の中で、目下の経済情勢のもと、一番大切なことは内需を喚起することだ、そしてまた、そのためには個人消費を伸長させることが非常に大切であるけれども、それを阻害しているのは実質所得の伸び悩みだ、このような趣旨を再々おっしゃられているわけであります。     〔委員長退席梶山委員長代理着席〕 日本の総世帯数の一三%を占めます四百六十万戸からある農家、そしてその世帯員数というのは一八%からになるわけでございますけれども、この農業に従事する人たちの所得というものは、伸び悩むどころか大きく落ち込んでおるわけでありまして、農業所得昭和五十四年度に五・八%、五十五年度は一五・五%も落ち込んでおるわけであります。五十六年はいささか回復するかもしれないと言われておりますけれども、その回復というのも大きく落ち込んだ後の回復であって、五十三年ぐらいと比べますとまだまだ大きく落ち込んでいる、こう言わなければならないと思います。そしてまた、景気回復状況長官は、大都会周辺ではまあまあだけれども、北海道、東北あるいは九州、中国などにおいてまだまだ緩慢である、そのような御発言であります。そして、いま申し上げたような地域は、五十五年度に作況が非常に悪かった地域とぴったり一致しておりまして、北海道では平年の八一%、東北が七八、中国で八三、九州で八八、こういった農業がきわめて不振であった地域において景気回復がおくれている。  こういう状況を見ますときに、個人消費回復させて内需を盛り上げるためには、何といっても農家の経済状態回復することがきわめて大切じゃないか、このように考えるのでありますけれども河本長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  137. 河本敏夫

    河本国務大臣 やはり内需の拡大には、その前提条件としまして、可処分所得がふえるということがぜひ必要だと私も思います。自由に使えるお金がふえなければ物は買わない、こういうことでございますから、実質可処分所得が伸びるということがその前提条件になると考えております。  いま農家所得のお話が出ましたが、やはり農家の所得も伸びることが望ましいわけでございます。いま統計で農業所得を見ますと、農業所得そのものの伸びは非常に低い。しかし、農外所得を合わせますと、農家所得勤労者世帯とほぼ同程度の伸びを示しておる、一応こういう統計が出ております。
  138. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それは農業全体を見ますと、東京のすぐ横で農業をされて、だんなさんは会社に勤めたり役所に勤めたり、そういう方もあるわけでありますけれども、北海道とか東北あるいは九州といったような主に農業に生活を頼っている地域、そういったところを見てみますと、農業経営形態というのは、一町歩以上あるいは二町歩以上、その程度の人たちが多いわけであります。ちなみに、五十五年度の、一・五ヘクタールから二ヘクタールを経営している農家の経済余剰というものは四〇・三%も落ち込んでいるわけであります。そして二ヘクタール以上の農家の場合には一八・六%落ち込んでいる。景気回復がおくれていると言われる北海道とか東北、九州あたりの農業というものを見ますときには、やはりこのような四〇%も落ち込んでいるのを速やかに回復させるということが景気を盛り上げる上にも大切じゃないかと思うのでありますけれども、いかがでありましょうか。
  139. 河本敏夫

    河本国務大臣 国全体の統計を見ますと、農業所得が二一%、農外所得が七九%、こういう構成になっておりますから、私が先ほど答弁をしたとおりだと思いますが、いまの御指摘は、東北と北海道は専業農家が非常に多いから話は別だ、こういうお話だと思います。  現在の景気動向を見ますと、地域別のばらつきがございまして、そのうち東北地方と北海道地域が相当悪い、こういう状態でございますが、これはやはり第一次産業に依存しておる部分が非常に多いということと、それからもう一つは、公共事業に依存しておる、こういう経済構成になっているからだと思います。  私どもといたしましては、景気全体の回復対策ももちろん大切でございますが、現在ばらつきの非常に深刻に出ております、構造的に不況になっている業種とかあるいは中小企業とか、あるいは地域的に経済状態が非常に苦しくなっている地域とか、こういうところに対しては、やはり特別の配慮が必要でなかろうか、このように判断をしております。
  140. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうしますと、業種別、地域別ということになりますと、その業種別の中には農業ということも、当然これは何とかしなくてはいけないということで入ってまいると理解してよろしいのでしょうか。
  141. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年と一昨年は異常気象等がございまして米の収穫が少なかった、こういうこと等もございまして、農家経済をある程度圧迫した、こう思っております。しかし、地域対策ということになりますと、農家だけに特別の対策考える、こういうことではございませんで、たとえば公共事業執行等について若干の配慮をする、こういうことでなかろうかと思います。
  142. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 先ほど長官は、業態別、地域別というふうにおっしゃられましたので、私は農業というものを一つ産業として取り上げてみたわけでありまして、何も農家だけに何とかしろというような意味で申し上げているわけではないのであります。  それから、五十五年版の日本経済の現況を見ますときに、「鈍化した個人消費」という項目で、なぜ個人消費が伸びないかという中に、一番目に「冷夏による天候要因」、二番目に「耐久消費財のサイクル」、三番目に「実質所得の低下」というようなことが挙がっておりまして、その後に、「冷害と農家経済」、そして「こうした被害は、農家所得の減少をもたらし、農家消費の低下となって消費需要を低下させる原因となる。」このように経済企画庁自身が、冷害が起こって、農家の経済が低迷して消費も伸び悩むという判断をされているわけであります。それからまた、最近の地域経済の現況を見ましても、各所に農業の不作が影響を与えている。  せっかくこのようにいろいろ調査をなされ、分析をされて、農家の経済の落ち込みが日本経済の足を引っ張る一つの原因になっているというような判断をなされているわけでありますから、それに対する対策というものは当然お立てになっていくべきだと考えるのでありますけれども、どのような対策を持って臨まれるおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。
  143. 井川博

    ○井川政府委員 いま先生が引用されましたように、消費等につきましては、たとえばおととしの冷夏、暖冬等によって農業が大変不振であったというときには、まず農業地帯自体が商店街が売れ行きが非常に少なくなっている。そういたしますと、今度はそういう暗い空気というのが全般に広がっていくという意味において、非常にその地域全体の消費影響するわけでございます。  先ほど大臣から申し上げましたように、ただ全国ベースで見ますと、実は農業所得は農家の二割でございまして、八割は農外所得でございます。したがって、全般的にはやはり農外所得である雇用者所得その他俸給等の伸びがどうかということによっても変わってくるという面があるわけでございます。  実は、来年度につきましては、農林省ともいろいろ打ち合わせをいたしたわけでございますが、われわれが基礎にいたしました来年度の農林漁業生産指数の感じでは、たとえば五十五年度につきましては、先ほど先生もおっしゃいましたように、伸び率としてはマイナス四・七、この年は農林漁業生産指数は対前年大変落ちたわけでございます。今年度については〇・六とややプラスにはなっているけれども、余りよくはない。と申しますのは、いまお話もございました、特に地域性がございますけれども、天候不順、災害等々の影響があった。しかしながら、来年につきましては、農林漁業生産全体についても三・五程度の伸びは期待していいのではないか。ただこの場合に、それは大きい水準かと言われますと、昭和五十年基準にいたしまして一〇四・七でございまして、五十五年度の落ち込みをやっと取り戻すか取り戻さないかというふうな状況でございます。  こういう状況に加えまして、先ほど申し上げましたような全般的な景気上昇ということは、一人当たり雇用者所得の上昇等々を通じて農家の所得も確保していくということが必要ではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  144. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 五十年度に比べて一〇四・七というふうにおっしゃられたかと思うのでありますけれども、この打ち続く災害で、農家の場合にはもう災害復旧資金とかなんとか借りられる限度いっぱいのお金を借りているわけです。それで一年だか二年の据え置き期間が済めば、もう返済していかなくちゃならない。だから三・五%程度の伸びでは、借金返すのにこれよりはるかに多く返さなくちゃならないわけですから、消費に回す分なんというのは全然出てこないわけであります。  それで、過去の例を見ますと、単年度で米価が三〇%ぐらい値上がりしたような年もあるようでありますけれども、いま本当に農業が成り立つか立たないかの瀬戸際に際しまして、三・五%程度の伸びと見ているのは非常に認識が甘いのじゃないかと私は思うのであります。そしてまた、先ほど農業所得が大変落ち込んでいると申し上げましたけれども、一方、租税公課、諸負担というのは、五十四年度で一五・四%上がって、五十五年度は一二・七%も上がっているわけです。こんなことで農家の人が生活して——まあ食べてはいけるでしょうけれども、世間並みの生活がしていけるのかどうか。生活局長さん、いらしていたらちょっとお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  145. 井川博

    ○井川政府委員 生活局長は参っておりません。しかしながら、従来各種の農業対策があるわけでございまして、それぞれに応じてそれらの農業対策を発動するという前提になっておるわけでございます。もちろん農業の生産指数の伸び、先ほど三・五というのは大変低うございますが、実はこのところ農林漁業生産指数の伸びはそう高くは出ておりませんで、たとえば五十三年度は一・四、五十四年度は対前年度〇・五、五十五年度でがくんとマイナス四・七対前年で落ち込んだわけでございまして、五十七年度について三・五とある程度の伸びを見込んでいる。かつまた、農林省としては大体これは確保できるのじゃないか、こういう相談の上、これを前提にいたしたわけでございます。
  146. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 いま日本経済で一番大切なことは内需の喚起で、また個人消費を伸ばすことだ。そのような観点から、私は少しでも企画庁長官のお考えが進んでいくようにと、そう願って発言しているわけでありまして、そのために農家がもう少し豊かになれば、使う分、消費の方に回せる分もふえてくるのじゃないか、私はこう考え先ほどから申し上げているわけであります。そして、現にこの地域経済の現況なんかでそのことがちゃんとはっきりしているのに、三%程度の伸びだ。これは米価というのは五十二年から五十五年の間でたった三%しか上がっていないし、乳価というのはこの四、五年全くの据え置きですね。農家の実際の手取りというのは、牛乳なんかの場合はかつて百十円程度であったものが、今日は九十何円くらい、六円くらいに下がってしまっている。  調査局長さんにお尋ねしますけれども、この地域経済の現況というのを、せっかく次官の方や局長さんあちこち行って地域の声をお聞きになっているわけですけれども、十業種からあちこちで聴聞されているようですが、これに何で農業が入っていないのですか。農業というのは、企画庁から見れば産業とはみなされていないのでしょうか。
  147. 井川博

    ○井川政府委員 ちょっと調査局長参っておりませんが、業種別の調査をいたしますときに、事農業ということになりますと、土地に密着している。かつまた天候に大変左右されるというふうな問題がございます。したがいまして、われわれ景気の動向を調べる場合に、そういう特殊性を持っているというふうなことで、そこの中からははじかれておる。しかしながら、農家の全般的な経済状況あるいは動向ということは、いろいろな意味で大きい影響がございます。特に物価等々の影響にはきわめて大きい問題でございますので、経済企画庁全体としては十分農家経済については注目しているということでございます。
  148. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 最初に申し上げましたように、一八%からの国民が農業に何らかの形で関係を持っているわけでありますから、せっかくこういう調査をされるときにも、経済企画庁というのは、やはり日本の経済全般を見なくてはならないのに、そこにぽこんと農業というものを除外していたのでは、これはかたわの調査になるのじゃないか、こんなふうにも考えられますので、余り農林省任せにされないで、農林省任せでもいいかもしれないけれども、何か農林省もどこかに遠慮している。恐らく経済企画庁あたりに遠慮しているのじゃないかと思うのです。先ほど申し上げたように、米価にしろ乳価にしろ、さっぱり値上がりしていない。それで日本の食糧はちょっと高いのじゃないかなんというような声もよく聞かれて、企画庁あたりも物価の抑制も大切だというようなことから、なるべく農産物についても価格を抑えたいと努力されているのじゃないかと思うのですけれども生活費に占める飲食費、これはフランスでは四〇%も飲食費が占めていますね。それからイギリスで二九・九%、日本は二九・二%で、外国と比べても日本の食べ物、飲み物がそう高いということは決して言えないと思うのです。雑費というのを見ると、日本は四八%も雑費に回せる分があって、ここに出ている範囲内では世界で一番自由に使えるお金が多い。  そんなこんなを見ますときに、やはり私は、ここで三・五%ということでなしに、もっと大きく、まあ将来また農家の経済回復して余裕が出てきたときには、ある程度また値下げするというようなことはあるいはやむを得ない面もあるかもしれませんけれども、ここ数年は、農家が消費に回せる余裕のあるほどの価格にすべきじゃないか、かように考えるわけでありますけれども長官、いかがお考えでしょうか。
  149. 井川博

    ○井川政府委員 生活費に占めます食費の割合、これも生活局長分野でございますけれども、参っておりませんが、それはそれぞれの国の食生活の態様によっていろいろ違うと思います。わが国の場合も、たとえば終戦直後というふうなことになりますと、これが五〇%以上を占めておりましたけれども生活が安定をしてまいりますに従って、順次シェアを下げていった、こういうところがございます。しかし、一般的に見て、国際的に言われておりますことは、たとえば日本の場合に、肉といったようなものをとると、海外の場合と比べて非常に高いというふうなことで、いろいろ問題になることがございます。しかし、これは私は、日本は土地が狭い、そのために土地に密着している農業の問題あるいは地代、家賃、ホテル代というようなのが相対的に高くなる、そういう面があろうかと思います。したがって、そういう面全般的に国際的な観点の中で考えていかなくちゃならないんじゃないかというふうに思うわけでございます。
  150. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 ですから、その三・五%程度の伸びということでは何ともしようがないから、考え直してみる必要があるんじゃないかというふうに申し上げているんですけれども、いかがなんでしょうか。
  151. 井川博

    ○井川政府委員 一般の鉱工業生産の伸びも大体五十七年度五%程度というところでございます。農林漁業水産指数が対前年の伸び三・五というのは、ここ数年考えました場合に、相当程度の伸びではないかというふうに考えているわけでございまして、農林省の方としても、大体そういう考え方で、五十七年度の農林漁業行政を進めたいということを申しております。それによって、やはり農家の所得もそれ相応に上昇していく。また消費も、去年、ことしということで、災害等で低迷した面がございますけれども、明るい方向へ向かっていくというふうな考え方を持っておるわけでございます。
  152. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 先ほど申し上げましたように、災害復旧資金や何かで、農家はそういったことの返済に追われて精いっぱいで、とてもその程度のものでは消費の拡大につながるものは出てこない。そしてまた租税公課は毎年一五%も一二%も伸びていっている。その中で所得は五十年度に比べて一〇四ぐらいにはなるだろう。その程度のことでは、私は、消費の拡大にもならないし、日本の農家の人たちの生活というものも、国民の生活が安定してうまくいくようにというようなことに気を配るのも経済企画庁の役割りだと思うのですけれども、そういったことからも趣旨にそぐわないのじゃないか、かように考えますけれども、いかがでしょうか。
  153. 井川博

    ○井川政府委員 農林省なりあるいは生活局長調査局長が参っておりますと、いま先生の言われた各種データについてもそれぞれお答えできるのかと思います。実は私、先生のそういう御趣旨の御質問と承知をいたしておりませんで、単に経済見通しの中の農林漁業の生産指数をもとにお話し申し上げておりますけれども、農林漁業について大体相当程度の伸びを見込んだという前提でございますので、これでわれわれとしては適正なものであろうというふうに考えるわけでございます。
  154. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうしますと、私がいろいろ挙げた数字というものは、経済企画庁としては納得できない数字である、そういうふうにお考えになるわけですか。私の言っている数字に対してどうお考えになるかをお聞かせいただきたいと思います。
  155. 井川博

    ○井川政府委員 そうではなくて、食費の比率であるとかあるいはそれぞれの業種別の調査等、先生データに基づいてお話をされているわけでございまして、それは真実であろうと思います。しかしながら、農家経済というのは、全国ベースで見ますと、先ほど申し上げましたように、二割が農業所得、農外所得が八割という状況である。しかも、その農業所得について、農林水産指数については、第一次石油ショック以降相当高い伸びを見込んでおるというふうなことでございまして、全般的に申しますれば、大体適正な段階ではないか、こういうふうに申し上げているわけでございます。
  156. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 私は全く正反対に、適正でないと考えますので、ひとつ河本長官も、いずれは総理におなりになれば、単に経済の一端だけじゃなくて、日本国じゅう全体、また農業のことなんかにもいろいろお心配りをいただかなくちゃならないわけでありますので、どうか私の真意をおくみ取りいただいて、いま一度その点に御検討を加えていただけたら大変ありがたいと思います。  質問終わります。
  157. 梶山静六

    梶山委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十七分散会      ————◇—————