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1982-02-23 第96回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十三日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 梶山 静六君 理事 野田  毅君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 後藤  茂君 理事 清水  勇君    理事 北側 義一君 理事 宮田 早苗君       天野 公義君    植竹 繁雄君       浦野 烋興君    奥田 幹生君       亀井 静香君    島村 宜伸君       泰道 三八君    中川 秀直君       中島源太郎君    野中 英二君       橋口  隆君    鳩山 邦夫君       松永  光君    宮下 創平君       粟山  明君    上田  哲君       上坂  昇君    長谷川正三君       水田  稔君    渡辺 三郎君       石田幸四郎君    長田 武士君       小林 政子君    渡辺  貢君       石原健太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         経済企画政務次         官       湯川  宏君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         通商産業政務次         官       原田昇左右君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省産業         政策局長    杉山 和男君         通商産業省基礎         産業局長    真野  温君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         通商産業省生活         産業局長    志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       高橋  宏君         資源エネルギー         庁石油部長   野々内 隆君         資源エネルギー         庁公益事業部長 川崎  弘君         中小企業庁長官 勝谷  保君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第三課長   真鍋 光広君         国税庁直税部資         産評価企画官  内藤  彰君         厚生省社会局生         活課長     浅野 楢悦君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ————————————— 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   八木  昇君     上田  哲君 同月二十三日  辞任         補欠選任   城地 豊司君     長谷川正三君 同日  辞任         補欠選任   長谷川正三君     城地 豊司君     ————————————— 二月九日  機械類信用保険法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二四号) 同月十七日  中小企業経営安定対策等に関する請願藤田  スミ紹介)(第七〇五号)  小売大資本店進出規制等に関する請願藤田  スミ紹介)(第七〇六号)  同(四ツ谷光子紹介)(第七〇七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森清君。
  3. 森清

    ○森(清)委員 私は、安倍通産大臣並びに河本企画庁長官が述べられました所信表明に関しまして、若干お尋ねをしたいことがございます。  まず第一に、安倍通産大臣に通商問題についてお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。  私は、自由主義体制、すなわちそれが経済体制としては資本主義体制でございますが、これが最善の体制であり、それらの国が集まって世界経済をなしており、一部共産主義体制もあるわけでありますが、そういう中にあってわれわれのこの資本主義体制自由主義体制というものを維持する上で、世界経済としては自由貿易主義というものが絶対不可欠である、このように考えるものであります。また、世界経済がそのような意味相互に流通もしながら発展するということが経済の繁栄につながり、また国際経済の中におけるわが国発展はそれなくしてはあり得ない、このように考えているのであります。  ただ、最近、一次二次の石油シヨック等が大きな原因でありますが、欧米諸国経済インフレ不況あるいは失業等に悩まされ、そうして大幅な国際収支の不均衡などの諸困難から依然として抜け出せない状況にあるわけであります。そういう中にあってわが国は、各種の施策よろしきを得て、非常によき経済パフォーマンスを実現しておるのでありますが、それがいわゆる輸出競争力が非常に強いということで、わが国が他国の貿易均衡原因である、このような情勢になりつつあるわけであります。  そのようなことから、欧米諸国におきましては、いろいろな名目はつけておりますが、少なくともわが国に対する関係においては、保護主義的な動きが高まっているのであります。それで、どのような名目にしろ、あるいは理由があるにしろ、このような保護主義というものが世界経済全体を沈滞させるということは申すまでもないことでありますが、このような中にあって、わが国自由主義貿易体制を堅持し、あるいは諸外国にもそのことをよく理解をしていただいて、自由主義諸国経済の再活性化に向かって最大限の努力をしなければならない、このように考えるものでありますが、この点について通産大臣の御決意のほどを伺いたい。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま御指摘のように、世界経済をさらに発展させるためにも、また、貿易立国を基調としておるわが国経済の安定、発展を図っていくためにも、自由貿易体制を堅持していくということは絶対必要であると思うのでありますが、しかし最近は、御案内のように、先進諸国の間で経済が非常に疲弊をいたしてきております。第二次石油ショックの後遺症からいまだ脱却することができない状況で、不況失業インフレ、そういう情勢が顕著になっております。  そういう中で、いわゆる貿易摩擦ということが非常に急をきわめてまいりました。日本アメリカの間、あるいは日本ECとの間、さらにまたアメリカECとの間、あるいはまたECカナダの間、世界各国でいま貿易摩擦が高まってまいりました。そして、この貿易摩擦が高まることによって、いわゆる保護主義的な傾向が生まれておることは大変残念に思っております。特にいまアメリカでは、アメリカ議会中心といたしまして、相互主義に名をかりたいわゆる保護立法が行われようという動きが顕著になっておりまして、自由貿易体制を守る上においても、大変危惧をいたしております。  私たちは、何としてもこの際は、こうした高まりつつあるところの保護主義を抑えて自由貿易体制を守っていくことが、世界経済の再活性化に一もつながっていくわけであるし、あるいは同時にまた、日本経済の安定、発展をもたらすものである、こういうふうな確信のもとに、あらゆる努力をして、この自由貿易体制を守り抜かなければならない、こういう決意を新たにいたしておるわけであります。
  5. 森清

    ○森(清)委員 そのような状況でございますが、実は先月、通産大臣日米加EC貿易大臣会合に御出席になられまして、わが国欧米先進諸国との間の相互理解を深める上で大変有意義な会合であった、このように考えるのでありますが、大臣はその際、わが国通商政策基本方針として、四つの原則を提示されたのであります。この御提案に対しまして、各国がどのような反応あるいは考え方を示したか、あるいはそのような会合を通じてどのような具体的成果が上がるとお考えになっておるか。  また、それに関連いたしまして、その後、大臣は、アメリカレーガン大統領を初め政界の首脳者と会われたのであります。これにつきましては、やはりわが国世界経済の中で占めている非常に大きな地位、あるいは日米間をとりましても相当大きな地位を占めているということと、さらにそのほか、後でも触れたいと思いますが、防衛その他の問題について、わが国と非常に緊密な関係にある大統領が、わが国政界に対して非常に強い期待を持っている、その中に安倍通産大臣が一段と役割りを担われているという認識のあらわれであろうかと思うわけでありますが、このような大統領を初め米政府首脳との会談において、どのような意見交換をされ、またそれがどのように位置づけられるか、大臣の御感想をお伺いしたいと思います。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 かねてから懸案になっておりました三極会談が一月の中旬にフロリダのキービスケーンで開かれまして、私も出席をいたしまして、アメリカブロック通商代表、さらにまたECのハフェルカンプ副委員長カナダ貿易代表等出席をいたしまして、現在の世界の直面しておるところの貿易体制につきまして忌憚のない意見交換をいたしたわけでございますが、その際、私から、現在の世界貿易体制、特に自由貿易体制を堅持していくためにはわれわれは四つの主張をいたしておるのだ。こういうことで、日本一国のみの安定、発展ということは日本考えていないんだ。世界の安定、発展なくしては日本の安定、発展というものもあり得ないというのがわれわれの信念であるし、さらにまた第二番目としては、自由貿易体制を守り抜いて保護主義台頭を何としても防いでいかなければならない、そういう決意をわれわれとしては持っておるんだ。第三番目としては、やはりこの経済摩擦の寄ってくるところの一つの根底には、いわゆる先進諸国家の経済の沈滞がある。そこで、こうした経済の再活性化を図ることが基本的にはやはり貿易摩擦を解消する道にもつながっていくわけで、そのためには、わが国としても産業協力であるとかあるいは技術協力であるとか、そうした協力体制の強化を進めて、そうして世界経済の再活性化のためにあらゆる努力を惜しまないものである。四番目には、同時にこうした貿易摩擦経済摩擦というのは、とかくやはり感情的になりがちであるし、あるいはまた政治的な対立に走りがちであるけれども、この際、われわれは冷静に客観的に話し合いをして、話し合いでこうした問題は解決をしていくことにひとつ努力をしようじゃないか、こういう呼びかけをいたしたわけでございます。  各国とも私のこの呼びかけに対しましては賛同いたしまして、特に、私がこの会合で述べましたのは、私が実は日本を出発する前に、アメリカ国会議員皆さんが多数お見えになりまして、その皆さん方とお目にかかった際に、アメリカのいわゆる相互主義というものがアメリカで大きく浮上して、議会でこれに関する法律を出さなければならない、こういうことを口々に言っておられました。そこで、特に相互主義、前向き相互主義については、ある意味においては理解できるけれども、いまアメリカ議会で検討されておるのは後ろ向き相互主義である。日本にあるいはその他の国に貿易に関する壁がある。その壁を一方的に判断をして、同じような壁をアメリカでつくっていこう、アンパイアなしにそうした制限措置をとろうということは、まさにこれは保護主義につながるものであるし、そしてこれは報復主義にもつながっていくことになってきて、それによって自由国家間の連帯と協調というものが壊れてしまって、世界はまた一九三〇年代に逆戻りするおそれがある、こういうことを私は特に主張いたしまして、これに関しましても、EC代表もあるいはカナダ代表も共鳴をいたし、アメリカブロック代表も、こうした相互主義動きアメリカ議会にあるけれども、われわれはそうしたトラの背に乗るようなことは何とか避けたいんだということで、政府としては、相互主義を貫く、相互主義を進めるという考えはないということをはっきり言明をいたしたわけでございます。  その他、いずれにいたしましても、多くの具体的な問題等についても率直な話し合いをいたしまして、私は、これによって代表の間の相互的な理解が非常に進んで、とにかくいろいろと困難な事態はあるけれど、保護主義台頭を防いで自由貿易体制は堅持していこう、こういう一点の約束といいますか合意ができたことは大変大きな成果であったと思っております。  同時にまた、アメリカのワシントンあるいは二ユーヨークに参りまして、レーガン大統領初め政財界の皆さん方にお目にかかりまして、そして今日の日米間のいろいろの問題について率直な話し合いをいたしたわけでございますが、特に貿易摩擦については、日本としても、これまで東京ラウンドの一律二年引き下げを行ったわけであるし、あるいはまた同時に輸入手続についても思い切った措置をとるべく努力をいまいたしておる。日本もせっかくいま自由貿易を守るために懸命の努力をしておるところであるし、同時にまた、こうした日本輸出超過という一つの大きな原因というものは、アメリカ金利高、これがまた日本円安というものにつながってきておるということも理解をしていただかなければならないし、あるいはまた、日本努力しているが、アメリカも同時にまたもう一歩の輸出努力というものが必要ではないかということで、われわれの努力とともにアメリカ側に対する要請も率直にいたしたわけでございます。  こうした一連の会談を通じまして私が感じましたのは、アメリカは、政府としては、何とか経済摩擦を避けるためには今後努力はしなきゃならぬけれど、しかし、アメリカ議会が、私が感じておりました以上に、非常に議会の空気が相互主義ということで高まっておりまして、どうもこのままいけば法案が提出をされて、そしてその法案が成立をするような状況に追い込まれるのではないか、こういうふうな実は議会についての非常な切迫感というものを率直にいいまして感じまして、実は帰国をいたしまして、政府あるいは与党の皆さん方にもそのことを率直に情勢判断として説明をいたしたわけでございますが、私が危惧感じておりましたような情勢になりつつあることを私いま非常に憂慮をいたしておるわけでございまして、さらにこれに対しては、今後ひとつ一層の努力を傾注していかなければならぬ、こういうふうに感じております。
  7. 森清

    ○森(清)委員 大臣、お時間がないようでございますから、ただこれはお答えは要りませんから、一つだけ申し上げておきたいと思います。  私は、特に日米間のこういう通商摩擦といいます史これを解決することを考えなきゃならぬわけでありますが、やはりアメリカ国内事情というものもわれわれ十二分に理解をし配慮を示していかなければならないと思うのであります。それは、一つにはやはり何といってもアメリカの、たとえば基幹産業である自動車工業というものがああいう状態になっているのが、日本自動車工業が強い、それが入っていったということであるというふうにアメリカ国民認識していることは、これは事実でありますし、そのとおりであります。そのほか、たとえば防衛安全保障の問題でございますが、昨年五月せっかくわが国総理大臣共同声明を発せられまして、ソ連の具体的な脅威、はっきりした言葉は書いておりませんが、そういう共通の認識を持ちながら、自由主義諸国の一員として日米安保条約体制、すなわち軍事同盟関係というものを強固なものにさらに再確認する。そうして日本防衛並びに極東の平和、安全の確保のために日本が適切な役割りを分担するということを相互約束し、さらに総理からは、日本の周辺の防衛についてはなお一層の努力をする、こういう公の約束をしてきたわけでありますが、そういうことについて、わが国対応が必ずしも十分であるかどうか、それは別といたしまして、アメリカの側から見れば十分な対応をしてないのではないか、こういう感じもあろうかと思います。  そういうことについても、これはわが国自身の問題でありますから、そういうことについても積極的に私はアメリカ議会なりアメリカ国民に対する理解を求めていかなければならないし、また、何といいましても、この秋には中間選挙があるわけでありますし、あの国はいわゆる世論の国であり、世論が政治を支配する国でありますから、われわれは、別に通商問題と安全保障の問題がリンケージする、またリンケージさせなければいけないということは、私は毛頭考えておりませんが、そういうことを含めてわが国も本格的にこの通商摩擦問題は解決していく、そして安定した日米間の通商関係を確立する、それが通じてはいわゆるEC等先進諸国との通商関係の展開にも役立つことであると思いますので、大臣、勇断をもってこの日米間の通商摩擦問題の解決に当たられますことを特に要望いたしまして、とりあえずいまの時間の通産大臣に対する御質問を終わりたいと思います。  それでは、続きまして河本長官、お見えでございますので、経済見通しにつきまして御質問をしたいと考えます。  世界じゅうの景気が非常に悪い、こういう中にあってわが国のみが非常によき環境にあると言われておるわけであります。したがって、来年度経済成長率も五・二%というふうな見通しをしておるわけであります。そういう中にあって、まず世界的な動きでございますが、昨年十二月にOECD見通しが発表されましたし、また、レーガン予算教書などでも、八二年度は前半はともかく後半になればよくなるのだ、こういうふうな見通しも出ておるようでありますが、世界全体の景気動向について、企画庁長官はどのような御判断をお持ちなのか、お尋ねしたいと思います。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず、世界全体の景気動向を見ますと、昨年の後半からことしの前半にかけては一番の大底でなかろうか、こういう感じがいたします。アメリカ、ヨーロッパもゼロ成長あるいはマイナス成長状態でございますし、日本も最近は内需が伸び悩んでおるところへ外需も思わしくない、こういうことでほとんど成長がとまっておる、こういう状態でございます。  しかしながら、第二次石油危機が起こりましておよそ三年を経過しようとしておりますので、ことしの後半から、世界各国政府もそれぞれの国の経済回復に向かうであろう、こういう発表をいたしておりますし、御案内OECD等におきましても、十二月二十三日には、OECD二十四カ国の平均の経済成長率は、ことしの後半には三%強の水準回復するであろう、こういう見通しを発表しております。来年もほぼそれと同じような水準が持続されるであろう、こういう見通しでありますし、アメリカ政府も先月来幾つかの教書あるいは報告等を出しておりますが、それらを見ますと、やはりことしの後半からアメリカ経済回復に向かって、来年は五・二%成長が達成されるであろう、このような報告を出しております。  巷間、アメリカ経済見通しであるとかあるいはOECD見通しに対して疑念を持つ向きもあるようでありますが、こういう経済の激動期でありますから、あるいは若干の景気回復見通しに時期のずれがあるかもわかりませんけれども、しかし、私は、大勢としては、やはり後半以降世界全体の景気回復の方に向かうというその方向だけは、大体間違いないのではないか、このように思っております。特に世界経済に最大の影響力を持っておりますアメリカ見通しにつきましては、幸いに物価も安定の方向に進んでおるようでございます。また、大規模減税がこの七月に第二回目の分が実施され、さらに来年は七月に第三回目の大減税が実施される、こういうスケジュールもございますし、あるいは二千二百億ドルに達する大規模軍備拡張にはある程度投資も必要であると言われております。また昨年来、エネルギー統制価格を排除いたしましたので、空前のエネルギー掘削ブームが起こっておる、こういう状態でもありますし、また先端技術投資も進んでおります。  そういうことで、アメリカ経済に対して悲観的なことを言う向きもあるのですけれども、私はやはりアメリカ政府見通しをある程度信用していいのではないか。また、アメリカ経済政策については、整合性がないということなどを言って批判する向きもございますが、私は、アメリカ選択としては、これまでのようなじり貧になるような政策選択するのか、あるいはここで大決断をして、一気に起死再生を図るのか、そういう決断をするのか、そういう二つの選択しかないと思うのでありますが、レーガン政権はその後者の選択をした。私は、この大決断の中から、やはり理外の理というものが生まれてくるであろう、そのように期待をいたしております。したがいまして、そういう背景の中におきまして、日本経済運営もある程度、これまで以上にやりやすくなるのではないか。現在は大変苦しい状態でございますが、後半以降に期待をいたしておるのが現状でございます。
  9. 森清

    ○森(清)委員 そこで、わが国の五十七年度の経済見通しないし運営の態度でございますが、政府見通しによりますと、実質経済成長率五・二%、名目で八・四%でございますが、こういう経済成長を遂げなければ、わが国の雇用も一層悪化いたしますし、また国際経済的な関係から申しましても、さらに摩擦が大きくなる、こういうふうな配慮から、私はどうもこの経済見通しは少し強目に過ぎるのではないか。その強目に過ぎることが、実現する手段がいろいろあれば、これはもちろん結構なことでありますが、その点に多少危惧の念を持つわけであります。最近の経済成長率を見ましても、五十五年が三・七、五十六年が四・一でございますし、それを寄与度から考えますと、内需で五十五年が〇・四、五十六年が一・五、五十七年度は四・一程度に試算されるわけでありますが、こういうことを見まして、内需中心に大きな経済成長率を遂げるんだ、遂げなければならない、こういう観点からはよくわかるわけでありますが、恐らくそうなるであろう、またなるんだ、こういうことについては私は非常に危惧の念を持つわけであります。また、民間のいろいろな予測機関があります。これは予測をした時期なりの問題もありましょうし、また政府のとろうとする政策手段について十二分な検討もされておらないような点があろうかと思いますが、このような民間見通しに比べましても大きいし、また先ほど引用されたOECDの見込みなどに比べても相当大きいわけでありますが、私はそういう全体の経済の姿としてこうあらなければならないということはわかるわけでありますが、そのように——後で細部にわたってお聞きしたいと思いますが、全体の構造として五・二%の経済成長が必ず実現できるんだ、このことについての大臣の総括的な御判断を示していただきたいと思います。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十七年度の経済見通しを作成するに当たりまして、昨年の秋、経済現状のまま進めばどの程度成長になるかという作業をさせました。政府部内の作業に基づきますと、おおむね三・八%見当でなかろうか、こういう数字が出てきたのであります。これは現状がそのまま推移した、こういう前提に立っているわけでございますが、その場合に、それではどういう問題が起こるかということについても検討させましたところ、失業者が相当ふえる。それから同時に、内需回復しませんから、やはり貿易摩擦がさらに拡大をする。それから同時に、税収が相当大規模に減ってくるであろう。こういう幾つかの問題が出てきたのであります。そこで、いろいろな政策努力を加えた場合にどの見当までの成長が可能かという作業もいたしましたところが、五・二%見当の成長は十分可能である、こういう見通しが出まして、政府といたしましては、努力をすることによって五・二%成長は達成できるであろう、こういう前提のもとに経済見通しをつくったのでございます。  民間経済見通し、十五調査機関の平均をとってみますと、大体三・八%か三・九%ぐらいだと思います。しかし、そのいずれもが政府の五十七年度の経済政策あるいは経済運営基本方針あるいは政府の予算等が決まる前の発表でございまして、十一月から十二月の前半までの発表でございます。したがいまして、民間調査機関はいずれも政府の基本的な政策というものを全然加味していない、考慮の外に置いておる、こういう点に見通しの違いが若干出ておるのではなかろうか、私はこのように判断をいたしております。  それでは、この五・二%成長は達成できるかという基本的な考え方でございますが、私は、欧米経済日本経済を比べてみましたときには、やはり幾つかの相違点があると思うのです。たとえばインフレ問題あるいは失業の問題あるいは労使関係あるいはまた貯蓄率、またそれを背景とする金利水準、国際競争力、なおそういう経済条件のほかにもう一つ挙げますと、防衛費の負担の問題等もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、その前提条件が非常に違っております。もし日本欧米諸国と同じような経済条件にあるといたしますならば、私は、日本は欧米の成長と同じような水準あるいはそれ以下になるのではなかろうか、このように思いますが、幾つかの有利な点がございますから、そういう有利な点を十分生かしまして、そして経済情勢の変化に応じまして、機動的にかつ適切な経済運営を進めていくということにいたしますならば、これは十分達成可能な目標である、このように判断をいたしております。
  11. 森清

    ○森(清)委員 それでは、中身に入りまして二、三お尋ねしたいと思うのであります。  もちろん国民総生産の構成で大宗をなしておるのは、いわゆる普通のわれわれの個人消費でございます。これについて、物価が安定しているということ等で相当大幅な消費支出の増大が見込めるのではないか、こういうことが言われております。さらに一部の意見では、そのような消費支出をするにはいわゆる可処分所得をふやすために減税をしなければならないというふうな意見もあるようでありますが、五十七年度において減税をするような財政状況でないことはもうよくわかっているところであります。そこで、そういういわゆる個人消費の問題、それから特に民間住宅、これにも相当な期待をかけられておるようであります。ただ、この住宅の問題政府でやられる住宅建設については、非常に限られた手段しかまだ持っておらない。したがって、相当民間の自立的な投資意欲というものをかき立てなければならないわけでありますが、これは土地問題その他非常に広範な問題をはらんでおるわけであります。  さらに、一つの柱として民間の設備投資でありますが、これも大企業はもとより中小企業においても、このような景気動向政府は五・何%ということを言っておりますが、そうはいかないのじゃないだろうかという一般的な空気があることは間違いないことでありまして、そういう空気の中において、期待どおりの民間設備投資の増高が期待されるのかどうか、このような三点について、私は非常に危惧の念を持っておるわけであります。  しかし、これはいま大臣言われましたとおり、全体のわが国経済構造、欧米と異なる経済構造を持っておるということ、あるいは政府施策によってそれらが実現していくのだというお話でございましたが、これら一つ一つについて大臣のさらに具体的な御見解を承りたいと思うわけであります。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府の住宅政策の一番の基本は、昨年の三月二十七日に閣議決定をいたしました第四期住宅建設五カ年計画であります。五十六年度以降五カ年間に七百七十万戸の住宅を建設していこう、こういう計画でありますが、御案内のように、その半分は建てかえになっております。当時、実はいろいろな議論がございまして、構造的にそこまで住宅の需要があるかどうかということについてずいぶん政府部内で長期間にわたりまして議論がございました。しかしながら、先ほども申し上げましたように、半分を建てかえと見込んでおりますが、日本の住宅事情は、数では余っておりますけれども、たとえば木賃住宅のような共同生活をしておる住宅なども全国で三百四十万戸もございます。東京だけで約百万戸もありますし、建てかえなければならぬ家が非常に多いのではないか、このように私どもも考えております。ECあたりでは、こういう建てかえなければならぬ日本の住宅事情を見まして、日本人はウサギ小屋に住んでおる、こういう評価をしたのではなかろうか、こう思いますが、そういういろいろな議論を経まして第四期住宅建設五カ年計画が決定をいたしました。  ところが、その後、その計画が軌道に乗っておりません。非常に大幅に落ち込んでおりますが、この背景は、やはり価格と所得の乖離にある、これが最大の原因である、このように私どもは判断をいたしております。そういう現状認識に立ちまして、五十七年度は五カ年計画の目標までは回復はいたしませんが、ある程度回復をいたしまして、五十八年度には何とか五カ年計画の軌道に乗るような、そういう方向に持っていきたいという基本的な考え方から幾つかの住宅政策を決定をいたしたのでございます。  御案内のように十二月二十八日、予算の最終段階で、建設省が要求をしておりました以上の相当積極的な案がまとまったのでございまして、私どもは、この案が実施されることによりまして、いま落ち込んでおります住宅建設もある程度回復方向に向かうのではなかろうか、このように期待をいたしております。一部の条件はすでに一月に操り上げ実施することにいたしまして、一月以降の住宅募集で、いまその新しい条件で進めておりますが、いままでのところはある程度住宅建設が回復する傾向が見えておるように思います。相当な内容でございますので、もし必要とあらば政府委員から詳細説明をいたさせます。
  13. 森清

    ○森(清)委員 大体の傾向的なお話はよくわかった次第でございますが、わが国が財政といいますか国の施策をもって景気回復させる、あるいは長期的な安定的な成長を図るということについては、この財政再建との絡みもあるわけでありますが、いわゆる経常的な支出といいますか、そういうものはできる限り抑えながら公共投資を充実するということが一番必要じゃないか。これは五十七年度のみならず今後の問題でもあるわけでありますが、ということは、やはりまだ何といいましてもいわゆる社会資本は欧米諸国に比べてわが国は低い、私はこのように考えております。これは産業の基礎をなすのみならず国民生活の基礎にもなっておるわけでありますから、この充実を図らなければなりませんが、すでに政府で閣議決定ないし了解をした各種の五カ年計画あるいは何カ年計画というものもあるわけであります。財政再建との絡みもありましょうが、私は、財政の安定化を図りながらこれを着実に実施していくということで、今年度の五・二%、あるいは五十七年−六十年で大体五・一%程度経済成長が必要である、必ずしなければならないということが言われておりますが、やはり政府としてのとり得る手段の根幹的な考え方は、あるいは施策手段はそういうところにあるんではないかと思うのでございますが、この点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府は五十四年の八月に、昭和五十年代後半の新経済社会七カ年計画というものを決定をいたしました。その中身は非常に多岐にわたっておりますけれども、一番の中心は、七年の間に二百四十兆円の社会資本投資をする、こういうことであったと思います。しかしながら、第二次石油危機の影響が私どもの想定をしておりましたよりも予想外に厳しいということになりまして、フォローアップをいたしました結果、二百四十兆の社会資本投資は七カ年に進めることは無理である、七カ年にやれることはおおむね百九十兆見当でなかろうか、日本の社会資本投資が非常におくれておりますので、二百四十兆という投資は変更するわけにはいきませんが、これを八年半、一年半延ばして完遂しよう、こういうことを決めたのであります。その決定に従いまして、昨年の三月からことしの二月まで、合計十一の新五カ年計画が決定をされておることはもうすでに御案内のとおりでございまして、初年度こそ前年度に比べまして金額は横並びになっておりますけれども、しかしながら、なお四カ年残っておりますから、四カ年の間に若干当初の予定よりも工事量をふやせばこれは十分実行できる、こういう内容でございます。  いまのお話は、せっかく昨年の三月からことしの二月までの間に政府は正式に閣議の決定または一部は閣議の了解で幾つかの計画を決めておきながら、それを実行しないのはおかしいではないか、またこれらの諸計画を早く軌道に乗せるようにすべきではないか、そうすれば、公共事業によってある程度景気回復も進められるし、また日本のおくれておる公共事業を取り返すことも可能である、こういう御指摘であろうと思います。私は、まさにこの問題はこれからの最大の政治課題ではなかろうか、このように判断をいたしております。
  15. 森清

    ○森(清)委員 それでは、続いて石油エネルギー問題について御質問をしたいと思います。  これはもう皆さん御存じのとおり、わが国が非常な脆弱なエネルギーの供給体制になっておるということでございます。現在、世界経済が非常に落ち込んでいるといいますか、不況であり、また石油ショック以来省エネルギー考え方が普及しましたし、また、その技術も非常に進歩いたしまして、短期的には石油需給というものも非常に緩んでおるかに見えますが、やはり私は、長期的に見れば非常に厳しいものがある、このように考えるのであります。  そこで、この石油にほとんど大半依存しているわが国エネルギー構造、あるいはこれは世界じゅうそうでありますが、これについて特にわが国がその傾向がはなはだしいわけでありますが、どうしても石油代替エネルギーの開発、導入ということが急務であると思うのであります。そういう中にあって、いろんな技術の開発がやられておりますが、その技術について何年先になるのか非常に未確定なものも多いし、果たしてそれが経済的に成り立つかどうか非常に問題のあることが多いわけであります。また現実に、たとえば石炭という問題が出ておりますが、これについても、石炭に大量に頼るということ、それは結構でございますが、これも外国産でございますし、それに関しても石油と同じようないろんな問題もこれから発生してくるのではないか、私はこう考えるのであります。そういう中にありまして、技術的にもあるいはコストの面からいっても絶対に間違いのない代替エネルギーは原子力発電以外にはないんじゃないか、いま現在考えられる限り、原子力発電以外にはない、私はこのように考えるのであります。また、現在の発達した技術によりますと、十二分に安全であり失敗はない、このようにもわれわれは考えておるわけであります。  ただ、これについては国民の間に、これはそういう正しい情報が十二分に伝わっておらないということも一つ原因であろうかと思いますが、非常に誤解がある。そうしてまた、そういうことで原子力発電所の立地については、周辺の住民から非常に強い反対もあるようであります。しかしながら、これからわれわれがエネルギーをどうしても確保しなければならない。確保しなければわが国の産業が成り立ちませんし、産業が成り立たないということは、われわれの国民生活そのものが崩壊をするわけでありますから、これはどのような努力をしてでも当面は原子力発電、これの開発、そうして充実ということをしていかなければならないと思うのでありますが、これに関してエネルギー庁長官、来ておられましたならば、原子力開発の方向基本方針、あるいは国民に対してどのような認識を持たせる努力をしたらいいか、どういう方法をしたらいいかということについて、包括的な御見解を賜りたいと思います。
  16. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  いま先生から御指摘がございましたように、現在、石油需給その他は緩和はいたしておりますが、中長期的には日本の脆弱なエネルギー構造というものは変わりませんので、それに対応した形でのエネルギー政策を今後とも積極的に推進する必要があるわけでございますが、その中で特に先ほど御指摘がございましたように、原子力発電の立地促進ということが、今後の日本エネルギーの安定的な供給の確保、またコスト面での低減を図っていくという面からいいましてもきわめて重要であるというふうに考えております。  こういう観点に立ちまして、原子力発電の立地の推進に対しましては積極的な努力を払っているわけでございますが、特にそのためには、まず原子力について一般国民の間に心配されております安全性の確保については万全を期するということにいたしておりますし、またさらに、その安全であるということについて地元の住民に十分御理解をいただくということで、そのためのPR、広報活動、こういうものについても今後十分力を入れていきたいというふうに考えております。  同時に、そういうこと以外に、実際に現地に原子力発電所を設置するということになりますと、地元住民が受け入れやすい態勢をつくる必要がありますし、また原子力発電所の立地の場合には、とかく他の産業の立地と違いまして産業活動ないしは雇用の面についての効果が必ずしも十分でない、こういう面もございますので、この点につきましては、今後そのために必要な生活関係の施設の充実、それから産業施設を誘致するための関連施設の増強、さらにはその企業誘致に対して必要な施策等についても十分行えるような財源措置も講ずる、こういういろいろの措置を講じまして、今後とも積極的に原子力発電の立地の開発を促進する、これを中心にいたしまして、石炭、LNGその他の石油以外の代替エネルギーの開発、さらには新エネルギーの技術開発、こういうことを総合的に行いまして、脱石油を図りながら日本エネルギーの安定供給の確保を図ってまいる、かように考えております。
  17. 森清

    ○森(清)委員 方向はよくわかったわけでありますが、原子力発電の設置につきましては、ただいままでの立地状態を見ますと、原子力発電所ができているというだけのことになっておるわけであります。それについては、もちろん周辺市町村に対する財政的な問題その他十二分な配慮はなされていると思いますが、やはり先ほどお述べになりましたとおり、基本的には原子力発電所、別に送電コストがどうこういうことではなくして、やはりその原子力発電所と一体になって、そこに、その地域に確固とした形で産業が発展していく、こういうことが私は今後の原子力発電所の立地について一番大事なことではないかと思いますので、この点について十二分にこれからも、これはエネルギー庁だけではございませんで、関係各省、各局協力をしていただいて、原子力発電の立地がスムーズにいきますように格別のお願いをしたいのであります。  また、原子力発電につきましては、原子力発電そのものの中でいわゆる自主的な核燃料サイクルを確立しなければ、ウランそのものがわが国には産出をしないわけでありますし、また、今後世界的に見てもウラン自身も限界があるわけであります。こういういわゆる技術開発といいますか、そういう点についてももっともっと積極的に取り組んでいかなければならない。原子力発電に一番頼らなければならない国は日本であり、その次はフランスである、私はこのように考えるのでありますが、その中で、まだまだわが国はフランスに比べても取り組み方が少しおくれているんではないか、このような感じすら持つわけでありますが、こういういわゆる原子力発電そのものの技術開発について政府はどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  18. 小松国男

    ○小松政府委員 先生御指摘のように、原子力発電を今後進めてまいりますために一番重要なことは、その供給源としての核燃料の確保、さらにはその再処理問題を含めた自主的な核燃料サイクルの確立を図っていくということが非常に重要でございます。そういう観点から見ますと、現在の日本の核燃料サイクルの現状といいますのは、濃縮の問題にいたしましても、また再処理の問題にいたしましても、大部分を海外に依存するという状況でございますので、今後できるだけ早急に自主的な核燃料サイクルの確立を図っていくことが不可欠である、かように考えておるわけでございます。  こういう観点に立ちまして、積極的にその事業化を推進する必要があるわけでございますが、具体的には、たとえばウラン濃縮事業化につきましては、現在の原型プラント建設と並行いたしまして、商業プラントの建設のための準備を早急に進めていくということで、その施策も講じておりますし、また、商業再処理工場の建設といういわゆる第二再処理工場でございますが、この建設につきましても、民間の行う活動を積極的に資金面、技術面また立地面、こういう面で支援をしてまいりたい、かように考えております。  さらに、放射性廃棄物の処分問題、これも非常に重要な問題でございまして、現在試験的に海洋処分の実施の準備、また施設貯蔵による陸地処分の準備、その他そういう形での放射性廃棄物の処分についての試験研究、さらには具体的な実施体制の整備を図るということを行っておりますし、今後の原子力につきましては、その安全性、さらにコストの面、こういう面での技術開発が必要なわけでございまして、関連の技術開発については、今後とも積極的に取り組んでまいるということで、原子力発電を中心といたしました周辺の問題、さらには基本的な技術開発問題に取り組んでおる次第でございます。
  19. 森清

    ○森(清)委員 そういう技術開発については、方針として非常に結構な方針でございますが、ちょっと前の質問に返ります。  やはり先ほど申し上げましたように、原子力発電所の立地につきましては、いろいろな施策を個々にやってもらうことが必要でありますが、そういうものを総合いたしまして、原子力発電所の周辺整備法といいますか、そういうふうな法律をつくって、そしてそれを基礎として各種の施策を展開する方がよい、このように考えるのでありますが、通産大臣、せっかくおいでくださいましたので、ちょっとこの法案について……。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま政府としましては、周辺整備については実質的な施策でいろいろと努力しておるわけでございますが、法的な整備が必要であるという御見解でございますので、これは実質整備を推進しながら、政府としてこれで十分かどうかという問題もありますので、ひとつ勉強させていただきたいと思います。
  21. 森清

    ○森(清)委員 ひとつ前向き、積極的に取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  それでは次に、私は、わが国の産業構造上の問題でございますが、いわゆる基礎素材産業について若干お尋ねしたいと思うわけでございます。  わが国は非常に安い石油をもとといたしまして、基礎素材産業が急速に発展をいたしました。それがわが国経済成長の原動力になった。これは否めない事実でありますが、その上に立っていわゆる組み立て加工工業が発達をしていったわけであります。ところがいわゆる石油ショック以来、この原料としての石油の値上がりというふうなことから、わが国は天然ガスも何も出ないわけでございますから、そういうことからこの基礎素材産業の基礎になっている原料、あるいはそれがエネルギー源に使われておる関係で、そのエネルギーを多消費する基礎素材産業というものが相対的に競争力がなくなるといいますか、そういう状況になっておるわけであります。  そこで、わが国がこのような安定した経済成長を今後続けていくためには、やはりわが国の産業の基礎になっておったこの基礎素材産業と組み立て加工工業というものをうまく整合性を持って進めていかなければならない、このように考えるわけでありますが、現在具体的に出ております、たとえば石油化学工業あるいはアルミニウム製錬業あるいは紙パルブ産業というようなものが非常に困難な状況に立ち至っておるわけでありますが、こういう基礎素材産業について通産大臣は、構造的な問題があるわけでありますが、今後どのように処していかれるか、基本的な方向をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基礎素材産業はいまお話しのように非常に苦境に立っておるわけでございます。これは内需の低迷等循環的な要因によるところもありますが、基本的には二度にわたるところの石油ショックによりまして、エネルギー、原材料価格が上昇をし、そのことによるところのコストが上がった。これを背景とした国際競争力の低下、過当競争の存在、国内需要構造の変化等の構造的な要因もあるわけでございます。  もちろんこの基礎素材産業というのは、経済活動や国民生活には不可欠な基礎素材を供給する重要な産業であるとともに、わが国の産業構造を支えるすそ野の広い基幹産業であることは申すまでもないわけでございまして、このために原材料、エネルギーコストの低減あるいは供給規模の適正化等の構造改善等を通じまして、これらの産業の基盤の強化を図ることによって基礎素材産業を立ち直らせることが、現在の産業政策上の最重要課題であると考えております。  こうした観点から、現在産業構造審議会におきまして、各業種ごとに対策の検討をお願いをしているところでございます。すでにアルミ等については具体的な対策も行ったわけでございますが、この審議会の検討結果が出てくるに従って、この答申を踏まえながらもろもろの対策を進めていかなければならない。これはこれからの日本経済を進めていく場合においても、あるいは国民生活を確保する上においても、どうしてもこの基礎素材産業というものの現在の苦境を脱却するようにあらゆる措置をやらなければならない、私はそういう強い決意を持っていま対処をいたしておるところであります。
  23. 森清

    ○森(清)委員 それでは、具体的に石油化学工業の現状あるいは今後の問題について二、三お尋ねしたいと思います。  これは十二分に検討もされ尽くされたことだろうと思いますが、この石油化学工業の原料であるナフサ問題でございます。  先ほど申し上げましたとおり、天然ガスが日本には出ませんので、どうしても石油からとれるナフサが石油化学工業の原料でございます。わが国は非常に安い石油をもとにしてこの石油化学工業が成り立ちましたので、世界的にも有数な強い産業になって、輸出力も非常に強かったわけでありますが、最近、石油価格の高騰によって、むしろ今度は競争力の非常に弱い工業になってしまいました。その結果、輸入が非常に急増するというようなことになっておりまして、石油化学工業の存立そのものが問題にされているのが現状でございます。  そうして、そういう中にありまして、私はそれは非常に問題があろうかと思いますが、たとえば石油精製会社が原油を輸入してナフサをつくるわけでございますが、石油税、これは諸外国に余り例がないような税金でありますが、もちろん石油関係の技術開発その他に使うわけでありますから、石油税そのものはいいわけでありますが、これは何といってもエネルギー対策という面が強いわけでありますから、この石油税について——国産ナフサに結果として課税されているかっこうになっております。恐らく年間二百何十億、三百億近いものだろうと思いますが、こういう問題もあろうかと思います。もちろんナフサそのものを輸入すれば免税でございますが、そういう点にも問題があろうかと思います。また、さらにそれが発展いたしまして、たとえばいまナフサは精製会社が輸入をしておりますが、石油化学工業自身が直接輸入するという道は閉ざされて——閉ざされるというのは、これは法制的なものではなくして、事実上世界に有名な行政指導によって閉ざされているわけでありますが、こういうものもさらに検討すべきではないかと思うのであります。  さらに、エネルギー対策としての備蓄の問題でございます。備蓄をしなければならない、これは当然なことでございますが、これはエネルギーとしての備蓄の問題と石油化学工業、それは石油製品あるいは石油自身であろうかと思いますが、この備蓄とは観点を変えて考えていってもいいのではないか。たとえば石油化学工業の場合でありましたならば、これは、エネルギーそのものでありますと、ある意味では瞬間的に消費してしまわれるものでありますが、石油化学工業製品というのは、中間生産品あるいは最終生産品という形で順に、そういう意味では広い意味の備蓄的なことができるわけでありまして、石油、ナフサとかその他、そういう形での備蓄を必ずしもしないでも、いわゆる経済安全保障といいますか、そういう観点からは差し支えない、このようにも考えるわけであります。  そういうことについてはいま現在、通産省でも十二分に御検討なさっておられることだと思いますが、石油化学工業については、こういう問題を一つ一つ解決して本当の意味で原料であるナフサを世界並みに安くするということでなければ、石油化学工業そのものが成り立ち得ない。これは最初にも申し上げましたように、石油化学工業、こういう基礎素材産業を、わが国の産業の中における位置づけという観点から考えて、この原料対策というものをどうしてもやっていただかなければならない。国際水準並みのナフサが確保されるような方向で御検討を願いたいと私は思うわけでございますが、それについて通産大臣のお考えを、これは前向きに検討していただくということで御見解をお願いしたいと思います。
  24. 小松国男

    ○小松政府委員 お答えを申し上げます。  先生御指摘のように、現在、石油化学工業が非常に窮境に立っておるということは、私どもも十分理解いたしておりまして、そういう状況の中で今後の石油化学工業対策のあり方につきましては、現在、産業構造審議会の化学工業部会を中心に鋭意検討が行われているわけでございますので、その一環といたしまして、私どもとしても、石油化学工業に対する原料供給の立場、エネルギー産業、特に石油産業の立場からどういう対応ができるかということで、現在、関係部局あわせてその問題についての検討を行っておる段階でございます。  お話がございましたように、最近特に石油需給が緩み、輸入ナフサもスポットなどの価格はかなり安いという状況になっておりますので、そういう意味で、価格面についても内外格差があることは事実でございます。ただ同時に、石油産業の場合には、連産品をいろいろつくります石油産業としての供給体制の問題がございますので、こういう問題を一挙に解決するということになりますと、石油産業自身の経営問題、さらには石油関連製品の安定供給の問題との関係も出てくる、こういうことで、こういう問題との調整を図りながらナフサについての価格をできるだけ下げる努力は今後もいたしていきたいというふうに思っております。  そのためには、国産につきましては、ナフサの得率をできるだけ下げる、ないしはナフサの今後の新しい用途問題も検討して、輸入ナフサの比率をできるだけ上げることも大事な対策だと思います。現に昨年後半、特に十−十二月は、すでにナフサの輸入の比率というのは四〇%以上、四五%ぐらいまで来ておりまして、そういう意味では、実質的に輸入ナフサの比重を高める努力は現在、石油業界、石油化学業界の協力のもとに行われておるわけでございます。特に輸入ナフサにつきましては、先ほどお話のございました石油税についても、すでに減免措置が講ぜられておるわけでございます。  国内ナフサ、特に石油税として課された国産ナフサの石油税の還付問題、これは先ほど先生の御指摘ございましたように、エネルギー対策財源との関係、他の関連製品への波及の問題、こういう問題がいろいろございますので、今後とも化学工業部会の検討の一環として、私どももそのあり方については鋭意検討をしていきたいというふうに思っておるわけでございます。  さらに、備蓄の問題につきましては、先ほど先生からも御指摘がございましたように、一般の石油備蓄と、製品としての、特に石油化学の原料としてのナフサの備蓄義務については、若干格差があってもいいんじゃないか、また考え方を変えてもいいんじゃないかというお話もございましたけれども、他の石油関連製品についても同様の備蓄義務を課しておりますし、日本の場合にはエネルギー構造が非常に脆弱であるし、石油の輸入依存度が非常に高いわけでございますので、石油について、他国とは違った意味での安全保障という観点からの備蓄が必要でございます。そういう観点で現在、石油については九十日、他の石油関連製品については七十日ということになっておりますけれども、こういう備蓄義務全般についてこれを緩和するということは、日本の現在の石油依存度の実態から見て、非常にむずかしいのではないかと思いますけれども、今後石油化学工業のあり方の一環ということで、すでにお話のございましたナフサの輸入の問題、税の問題さらには備蓄の問題につきましても検討を進めていきたい、かように考えております。
  25. 森清

    ○森(清)委員 次に、アルミニウム製錬業についての問題でございます。  これは非常な御尽力を賜りまして関税上の措置が今後とられることになって、一歩前進だと思うわけでございます。ただ、このアルミニウムの問題を考えますと、これはもう構造的にいまの電力料金ではどうにもならないというのが正しい認識であろうと思うわけであります。そこで、非常にむずかしい問題ではあろうかと思いますが、この電力料金、これは国際的な水準に下げろということを言っても、いますぐどうにもなるものではないとは思います。ただ、私は考えますのに、やはり電力というものは、これは公益事業中の公益事業であり、そしてまた、この電力料金の決定、これは原則があるわけでありまして、公平負担とかいろいろございますが、そういうことも考えながら、結局われわれの国民生活を最終的に確保するには、このような基礎産業が正常に動くということでなければ、われわれの国民生活そのものが破壊されるわけであります。  そこで私は、たとえば一般の電灯に対する料金と産業に対する料金のあり方というようなことについても、最終的にもっともっと国民生活を確保するという観点から考え直してもいいんじゃないか。特に、単に動力として使っているのではなくして、電気そのものが製品になるという産業については、私は公益事業としての全体のにらみももちろんあろうと思いますが、こういう中にあって、電力料金の決定の仕方の中にこういう考え方を入れて、最終的に国民生活が確保される、産業優先とかなんとか、そういう表面的な言葉ではなくして、最終的に国民生活を確保するために、日本の産業構造としてはどうなければならないか。それに対して各般のとれる措置、完全な自由競争、私企業に任している分野について、私は余り政府その他が介入することは、これは活力を阻害するものだと思っております。先ほど最初に申し上げましたとおり、自由主義体制の信奉者でありますからそれは申しませんが、少なくともわが国はこのような脆弱なエネルギー構造を持っている。それを解決するにはどうしても政府の指導がなければ解決できない。これは事実でございますから、こういう観点からも、この電気料金のあり方について、私はひとついままでの発想を少し変えていただいて解決方向を見出していただきたい。  これは恐らくお答えすることができないような問題だろうと思いますから、お答えは要りませんが、その前に、アルミニウムの製錬業についてのいままでの対策あるいは今後の見通し等について、お話を承りたいと思います。
  26. 真野温

    ○真野政府委員 アルミ製錬業の現状につきましては、もう先生十分御承知のところだと思いますが、いわば三重苦、一つは国内需要の停滞、一つは電力コストの上昇、あわせて国際的な需給不均衡によります輸入の日本に対する急増という問題のために異常な苦況に陥っているわけでございます。  こういう状況を受けまして、昨年春以来産構審のアルミ部会におきまして鋭意対策を検討いたしまして、昨年の十月に基本的な方向が出ております。それに基づきまして幾つかの対策を検討し、実施してきたわけでありますけれども、ポイントを申し上げますと、一つは長期的に見た日本のアルミ産業のあり方という意味で、特に日本の産業に対するアルミの安定供給という観点から、国際的な開発プロジェクトの推進とあわせて国内の製錬業の規模をどの程度に維持すべきかということについて検討したわけでございます。  その点については、御承知のように七十万トン体制ということを基本に置きまして、それにあわせまして電力費をいかに下げるか。これは具体的な個々の契約の面におきましてもいろいろ進展を見たわけでございますが、あわせていわゆる電力の石炭への転換というような措置を講ずる必要がある。さらに、今後の長期的なアルミ産業の新しい技術開発ということにも重点を置く、こういうような方向が出ておりますが、その中で改めて今度関税措置として今国会に提案いたしておりますのが、アルミの製錬業者の輸入する地金につきましての関税の免除措置でございまして、これによりまして、現在のアルミ産業の設備の規模を百十万トンから七十万トンに落とす。その落とす量に応じて輸入する地金の安定供給に資するための関税の免除措置を今度提案いたしておるわけでございます。
  27. 森清

    ○森(清)委員 それでは、中小企業問題につきましては同僚の粟山議員から御質問がありますが、私、ただ一点、こういうことについてお伺いしたいと思います。  実は、わが国の産業構造が、先ほど申し上げましたように、業種間に非常に跛行性がある。それがさらに地域間にあらわれるわけでありまして、特に数年前に、いわゆる構造不況業種につきましては、政府の積極的な地域対策を講じていただいて、大変な効果を上げたと思うわけであります。  ところが、いわゆる基礎素材産業の構造的な不況問題でございますが、一例を挙げますと、地域的に非常に集中的にあらわれておるところがあるわけでありまして、これは愛媛県新居浜市でございますが、ちょうどこの二つが主産業になっておるわけであります。工業統計によりますと、これは多少ほかのものもまじっておりますが、大半が、九十何%がそうであります。非鉄金属製造と化学工業で、新居浜市の最近の統計でございますが、雇用者数で両方合わせますと、全雇用者の四二%、出荷額で七七%、付加価値で六〇%というふうな高いウエートを占めておるわけであります。その二つ、たとえばアルミニウム製錬業はこの三月で閉鎖をすることになっておるわけであります。それから石油化学工業も減産といいますか、そういうことになっております。そういう中にありまして、地域経済が崩壊をしつつある、こういう非常に苦しい現状にあるわけであります。こういう点で、これはいまお答えの基礎産業局だけの問題でございませんが、中小企業庁あるいは全省挙げて、こういうふうに構造的な産業問題でありますから、一地域ではどうしようもない、こういうことでございます。  そういうことにつきまして、一例として新居浜市の例を挙げたわけでありますが、他の地域にもそれぞれこのような深刻な問題を抱えている地域があるわけであります。こういう問題について、通産省としての対策をひとつ積極的にとっていただきたい、このことをお願いする次第でございますが、通産省で何か御検討のことがございましたら、お示しを願いたいと思います。
  28. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から具体的な例をお挙げいただきましての問題の提起がございましたが、私どもも調べましたところ、新居浜市の状況につきましては、アルミ関連、石油化学関連、アルミ、石油関連中小企業関係、これが最も大きな問題点でございます。このように、アルミ製錬事業等の構造的な不況業種に相当程度依存している新居浜市の例等にかんがみますると、その地域の中小企業の事業活動は著しい支障が生じておるわけでございます。  昭和五十三年に、実は先生方の御審議によりまして特定不況地域中小企業対策臨時措置法、特定不況地域法というものを御制定いただきました。その結果、そのときは中小企業の経営の安定を図りますために、特別の緊急融資、信用補完の特例措置、税制上の優遇措置、さらに工場の新増設の促進等の総合的な対策を講ずるように言われてまいりまして、それを鋭意進めてきたわけでございます。  ちなみに、新居浜市は五十三年十一月に特定不況地域に指定されておるところでございます。ただ、この特定不況地域法は昭和五十八年六月三十日までの時限立法でございます。また、その主要な対策が特別緊急の融資と信用補完の特例措置等による臨時措置ということでございまして、一応当新居浜地区においては五十五年にほぼ完了をいたしたわけでございます。このため、現在におきましては、特定不況地域の中小企業者対策といたしましては、工場立地の促進対策のほかに、地域ごとの振興ビジョンを作成いたしまして、それに基づきます診断指導事業を行いますとともに、中小企業倒産対策貸付制度とか倒産関連特例保証制度等の倒産防止対策を活用している状況でございます。  ちなみに、新居浜地区は、西条市その他を含めまして、県当局の御尽力によりまして、産地振興ビジョンというものが機械器具の製造を中心にして作成されておりまして、目下それを推進中でございます。  このような状況にかんがみまして、構造不況業種の存在によりまして、地域全体が不況に陥っている地域ぐるみの中小企業の救済対策につきましては、特定不況地域法が来年の六月に期限が切れますことから、今後関係地方団体の意見も聞きつつ慎重に検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  29. 森清

    ○森(清)委員 次に、基礎素材産業のもう一つの例でございます紙パルプ産業でございますが、これも大変な内需の低落で、著しい不況下にあるわけであります。昨年五月から不況カルテルを認めていただき、あるいはその他在庫調整を行ってきましたが、この不況カルテルはもう一応、この五月ですか、終了するということになりますが、私はやはり去年の状況と、現実には何ら改善を見ておらない、そういう状況でございますので、このカルテルの延長あるいはそのほかもう少しいわゆる需給均衡を図るということについて通産省御当局の適切な御指導、対策を願いたいのでありますが、これについてひとつ、これも大変な問題であり、この紙パルプも特定の地域に偏っている産業でございます。新居浜のことを言いましたが、ついでにそのすぐ隣町の三島、川之江というところは、これはほとんど紙パルプ産業が中心の町であります。そういうところにも地域的にも問題を生じておりますので、これについての、紙パルプ産業そのものの景気回復について、御当局の御見解を承りたいと思います。
  30. 志賀学

    ○志賀政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話がございましたように、紙パルプ産業は大変困難な状況にございまして、循環的な要因によります内需の停滞、これに対する対策といたしまして、特に需給の悪化が著しいコーテッド紙、上級紙、両更クラフト紙、この三品種につきまして昨年の五月ないし六月ごろから不況カルテルを実施してまいったわけであります。ただ、その後順次不況カルテルの効果が出てまいりまして、最近におきまして在庫調整がほぼ終わったということで、最近この三品種とも不況カルテルを一応終了したという形になっております。  ただ、しかしながら、その後もやはり均衡のある適正な需給関係を保つということは、これは大変大事なことでございまして、そういう観点から省内に紙の需給協議会というものをつくりまして、ユーザーあるいはメーカーあるいはその他の関係業界の方々を糾合いたしまして、その辺の御意見を十分承って、的確な需給見通しをつくって、それを業界にお示しする、いわゆるガイドライン方式をとりまして、そのガイドラインに従って適正な需給関係が保たれるように行政指導をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。
  31. 森清

    ○森(清)委員 ありがとうございました。以上で終わります。
  32. 渡部恒三

    渡部委員長 粟山明君。
  33. 粟山明

    ○粟山委員 私は、主として中小企業問題について質問申し上げたいと思いますが、最初に一つだけ大臣に、せっかく御出席でございますし、次の御予定もあるようでございますので、通産大臣質問を申し上げます。  先ほど、森委員からも質問がございましたとおり、政府の五十七年度経済成長見通し五・二%、一月二十五日の閣議決定でもなされたわけでございますが、そのうち四・一%が内需向けを考えているということでございまして、内需となりますと、何といっても中小企業景気という問題が非常に大きな分野を占めていると思います。御承知のとおり中小企業、それの従業員、また家族をまぜますと日本人口の六六%、約七千八百万というような大きな需要層でございます。しかも、中小企業の製造している物、販売している物、こういった物が直接消費に結びついている物でございます。そこで四・一%の内需経済成長をぜひ達成したい、していただきたいと思うわけでございますが、それには中小企業の振興というものが大変重要になります。  全体といたしましては、いろいろな案があるように承っております。簡単に申し上げますと、まず新聞等に出ております今度の春闘、これで八%以上も賃上げをして消費を刺激したらどうかというような問題がございますけれども、これはどうも中小企業の従業員はいまのこの不景気に賃上げということは大変むずかしいと私は思います。また次に減税、これも一兆円減税というような要求もございますが、これまたいまや財政再建という大変な命題を抱えている政府として、これも軽々にすることはできない。また金利引き下げ、これもアメリカの高金利等による影響等も考えますと、簡単にもうこれ以上の金利引き下げはむずかしい。そうしますと、残る方針といたしまして、先ほどの議論にございました住宅建設あるいは公共事業の前倒し、さらには官公需の需要を特に中小企業向けに引っ張ってこれないかというようなことも考えられるわけでございますが、この中小企業振興について何か即効薬、特効薬がないものか。その辺につきまして通産大臣の御意見を伺いたいと思います。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 五十七年度は、いまお話しのように、五・二%の実質的な経済成長政府としては目指しておるわけでございまして、その内訳は内需が四・一ということになっておるわけでございます。われわれとしては、やはり日本経済の安定成長を図っていく上においても、あるいはまたいま差し迫っておるところの経済摩擦を解消する大きな手段としても、どうしても内需の振興を図らなければならない、こういうふうに考えておるわけでありますが、その内需を振興する場合において、中小企業役割りというものは非常に大きいことは言うまでもないわけでございますが、現在の中小企業の景況というものは必ずしもよくない状況にあるわけでございます。したがって、この中小企業をいかに振興していくかということが日本経済のこれからの安定成長のかぎを握っておると言っても過言でないわけでございます。  そのためには、いまわれわれとしてはいろいろな中小企業対策というものを推進をしていかなければならぬわけでございますが、何といいましても、財政がこういう状況で、いわば手を縛られておるということですから、残された道というものは非常に限られておるわけでありますけれども、現在、中小企業対策として、いわゆる金融対策で中小企業向けの制度金融については、長期プライムレートよりは〇・三%も下げて実行しておる。いわば特別な措置をいたしておるわけでございますが、こうしたいわゆる制度金融によるところの資金の確保、それからまた、運用を弾力的に行ってこの振興を図っていかなければならないことは申すまでもないわけでございますが、いま同時に、お話のありましたような、五十七年度においては、予算が成立をすれば、いわゆる公共事業についても五十六年度にとったと同様の前倒し実施というものをやっていかなければならない。その中における中小企業の官公需の確保ということも最も重要な課題であろうと思っておるわけでございます。その他、下請取引の適正化であるとかあるいは倒産防止対策等々きめ細やかな対策をやっていかなければならない。幸いにいたしまして、五十七年度予算につきましては、皆さん方の大変な御努力によりまして、一応、この財政の逼迫した状況でありますけれども、中小企業対策の予算は確保いたしておるわけでございますし、あるいはまた、財政資金も前年度対比で伸ばしておるわけでございますから、こうした予算の実施あるいは財政投融資の弾力的な活用等を通じまして、いろいろと知恵をしぼって中小企業の推進、振興にはひとつ力を尽くしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  35. 粟山明

    ○粟山委員 わかりました。大変むずかしい時期ではございますが、ぜひ大臣の御努力をお願いいたします。  それでは、続きまして各論に入るわけでございますが、まず中小企業の相続税の問題について伺いたいと思います。  一般の相続税もここしばらく連続して非常に高くなっている。高くなっているというのは率が上がっているという意味ではありませんが、金額的に増加しているということが言われております。国税庁の統計によりましても、昭和五十年から五十五年を比べますと、昭和五十年で二千九百何十億、約三千億に対して昭和五十五年の相続税収入六千五百七十九億円、約二・二倍になっているということでありまして、特に五十五年度は前年比三一%相続税がふえている。一般的な問題はさておきまして、この相続税のために中小企業あるいは零細企業の相続がきわめて困難になって、いまや中小企業の世代交代期に、税金を納めるために事業所を売り土地を売って、しかも納め切れたいというような例がたびたび出ております。そこで、中小企業者といたしましては、何とか事業が継続していけるような承継税制度を創設してほしい、あるいは従来の相続税の特例を何か認めてもらえないか、こういう声が強いわけでございますけれども、昨年の税制調査会におきまして、五十七年度にこれを実施するというようなことはまだ無理であり、検討の余地があるけれども、五十八年度の改正を目指して五十七年度に検討しようという結論が出ていたと私は考えております。現在、中小企業庁として大蔵省とそういう面について打ち合わせ等が行われているかどうか、またこの承継税制についてどう考えるかをお伺いしたいと思います。
  36. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 先生御指摘のように、中小企業の承継税制改善の要望はかねてから強い要望として中小企業者から出されておりまして、それを受けまして一昨年の十月から中小企業庁で委員会を設けまして検討を進めてまいりました。これを受けまして、昨年の税制改正要求におきまして承継税制改善の要望をいたしたわけでございます。  その要望の中身を申し上げますと、第一が、中小企業者が相続いたします株式の評価方法を改善することというのがございます。これは中規模と小規模の同族会社の相続株式につきまして、新たに収益性によって評価する収益還元方式を導入して現行方式に加えるということでございます。第二の要求は、二百平米までの個人の事業用または居住用土地につきましての評価減が二〇%となっておりますが、これを七五%とする、この二つを実はお願いいたしたわけでございます。  先生、先ほど昨年末の模様をお話しでございましたが、党税調におきまして御検討を賜りました結果、党税調では「取引相場のない株式の相続税の評価」これは先ほど申しました要望のうち第一の要望でございますが、この相続税の評価につきまして、「取引相場のない株式の相続税の評価の改善については、昭和五十八年度の税制改正におい実施することができるよう検討するものとする。」というのが党税調の大綱の「検討事項」に掲げられております。  引き続きまして、政府税制調査会におきましては、相続税につきまして同じように、「取引相場のない株式等をどのように評価するかという技術的な側面と富の再分配機能を」云々、「専門家の意見を徴する等により幅広く検討を加えるべきものと考える。」という二つの答申をいただいておりまして、この二つの答申を背景に、私ども大蔵省の担当の国税庁の方と今後打ち合わせをすることになっております。目下、国会審議が進んでおりますので、一段落いたしますれば、国税庁の方からお話があるものだと私ども考えておりまして、両省庁、熱心に前向きに検討さしていただくように努力をいたすつもりでございます。
  37. 粟山明

    ○粟山委員 いまの長官のお答えで、中小企業庁としては、大変前向きで一生懸命やっておられる、非常に力強く感じた次第でございまして、先週、たしか十九日の本会議でも、通産大臣も前向きに取り組むという答弁があったようでございまして、これも大変力強く感じております。  しかし、それはそれとして、具体的になかなか困難な問題も多いかと思いますが、特に株の評価、これにつきましては、本当に現在中小企業は困っております。もうすでにあわてて、現在の経営者が代がわりをする前に事細かに贈与等の方法をとっていくべきじゃないかとか、いろいろ手段も講じられているやに聞いておりまして、各地の商工会議所で、それの手引きのようなものも検討しているというふうにも聞いております。  また、土地、資産等につきましても、いまのお話のようなわずか二百平米だけで二〇%レスというようなことでは余り大きな額にならない。ぜひこれをいま要望がありました四分の一にするとか、せめてもう少し繰り下げるとか、いろいろ考えていただきたいと思うわけでありますが、これにつきまして、国税庁の方は現在どういう考えを持っているのか、意見をひとつお伺いいたします。
  38. 内藤彰

    ○内藤説明員 相続税の財産評価は時価によると定められてございます。この規定に基づきまして、現行の評価方式は、土地、株式、預貯金、これは財産の種類を問わず共通の尺度でございます時価で評価するということにしてございます。これによって課税の公平が保たれるというふうに考えております。  最近においては、先ほども御紹介がございましたように、いわゆる中小企業の事業承継の問題の中で株式評価のあり方が議論されておるわけでございまして、また、税制調査会でも「五十七年度の税制改正に関する答申」におきまして、相続財産の評価のあり方について、「この問題は、取引相場のない株式等をどのように評価するかという技術的な側面と富の再分配機能を有する相続税の性格との関連をどう考えるかという基本的問題を含んでいるので、専門家の意見を徴する等により幅広く検討を加えるべきものと考える。」というふうにされておりますことから、国税庁といたしましては、現行の株式評価方式の基本を踏まえつつも、評価、課税の両面にわたりまして、実情に即し適正、公平な評価が図られますよう今後とも努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、先生御指摘の二百平方メートルまでの部分についての評価のしんしゃくについてでございますけれども、これは、この程度までの土地につきましては、いわば生活あるいは事業にとって必要最小限の部分でございまして、これらの基盤を維持するには欠くことのできない面積、処分については相当の制約を受けるということをしんしゃくいたしまして、このような取り扱いを行っているわけでございますけれども、先ほど申し上げました時価評価の原則というものに基づいて考えますると、執行面でやれる範囲としては、現在のところではこれが精いっぱいのところというふうに考えておるのでございます。
  39. 粟山明

    ○粟山委員 ただいま答弁いただきましたが、まず、その時価評価という問題でございますけれども、個人は、亡くなって、その相続によって富を再分配するという考え方は、確かに相続税というもの、税という問題からはそうも考えられるわけでございますけれども、この承継税の場合は、個人というより企業の存続ということで、一つは、企業がこの財産を承継して継続していくという考え方もあるのではないか、こう思うわけでございまして、単に時価といいましても、わずか数年で株の評価が二十倍にもなっているという例が非常に多いわけで、これでは中小企業、何としても事業を継続していけない危険が非常に多い。これはひいては従業員の問題にもなりますし、大変社会的な問題にもなると私は考えますので、この辺はひとつ国税庁としても、昨年自民党の税調で五十八年度から改正、実施を目指して検討してほしいとはっきり要望しておりますので、その点を踏まえてぜひ御検討願いたい。この辺、もう一度御意見をお伺いしたいと思います。
  40. 内藤彰

    ○内藤説明員 相続財産の中で土地というものの評価の額が上がっております。そういうことの影響を受けて、中小企業相続に当たりましても、御指摘のような問題というものが起こっておることは承知しておるわけでございます。国税庁は、時価評価の原則というものを受けまして、課税の公平、あるいはそれが負担の公平につながるわけでございますが、その点について、従来からも常に検討、改善を行っておりますが、今後とも中小企業の実態あるいは事業承継における課税の状況といった面をよく踏まえまして、適正な課税評価に努めてまいりたいというふうに考えております。
  41. 真鍋光広

    ○真鍋説明員 中小企業の承継税制につきましての重ね重ねの御関心ということにつきましては、主税局としましても十分承知いたしております。私どもも、先ほど来中小企業庁長官あるいは国税庁の企画官から申しましたように、党税調並びに政府税調の答申の趣旨というものを十分頭に置きましてやっていかなければいかぬというふうに考えております。  いずれにしましても、御要望の趣旨は中小企業ということでございます。しかしながら、相続税の中身といたしましては、一方では富の再配分というふうなことも重要な機能の一つでございます。さらにまた、そういったこともございまして、公平という観点がどうしても大事だということで、一つにつきまして、一つの業種といいますか、中小企業につきましてある種の特例的なことを認めるとなると、やはり横並びとの関係でいろいろ調整していかなければいかぬ。そういったことでもございますので、なかなかむずかしい問題がございます。そこらを政府税調答申なんかも、単なる評価の問題という問題と、もう一つは相続税制の基本問題にかかわる問題であるという言い方をしておるわけでございます。  いずれにしても、むずかしい問題ではございますけれども、私ども、先ほど来申しておりますように、答申の御趣旨を踏まえて今後検討してまいるということでございます。  いずれにしましても、私ども税当局サイドで検討しなければいかぬということは当然でございますが、同時にまた、中小企業者の経営者の皆様方のサイドでも、いろいろな承継の上での心構えといいますかがあっていいのじゃないかという面もございます。多くの方々はそういう点をうまくやっておられるように、十分考えてやっておられるように私どもは考えております。たとえば、事業承継をされる御子息に、あらかじめいろいろ考えながら贈与していくとか、あるいは自分が亡くなった場合に、きょうだいの間で分散してしまって、それがために承継がむずかしくなるということのないように、場合によりましては、死因贈与というのですが、あらかじめ贈与をやっていくというふうなやり方もございます。  いろいろ税当局でも知恵を出し、中小企業者の立場からもいろいろ知恵をあれして、とにかく課税の公平という中で何かいい方法がないか、十分答申の趣旨を踏まえてやっていきたいというふうに考えております。
  42. 粟山明

    ○粟山委員 どうもただいまの答弁、いささか私は不満足でありまして、むしろそういう考え方となりますと、先ほどちょっと触れました、各地の商工会議所等でいわば相続税対策、逆に言うと、節税の勧めというようなことにもなりかねませんし、いろいろな問題が出てくると思います。  時間もございませんので、この問題は一応後日に譲りますけれども、五十八年度の改正を目指してぜひ本年じゅうにこの検討を十分詰めていただきたい、これを要望しておきます。  次に、大規模小売店問題について質問をしたいと思います。  ここ数年、大変な集中豪雨的なスーパーの大型店の出店につきまして各地に紛争が起きまして、昨年の十月でございましたか、一応凍結をし、いろいろな作業を経て本年の一月末にどうやら抑制的措置をするという方向で一応の決着を見たわけでございまして、その間における通産省の中小企業庁、大変努力をされてここまで持ってきたことにつきましては、その御努力を多とするものであります。しかし、まだまだ大変各地での紛争の種は残っております。非常に地域的に問題の多い問題でございまして、たとえば大型店側でも、第二種、五百平米に触れないすれすれの点で何とか進出しようというような動き、一方小売商店側でも、いまの抑制措置だけでは不満足で、何とか許可制に持っていきたい。したがって、静岡方式とか言って、実力で商調協を開かせないような方式にしようとか、いろいろな動きが出ております。しかも、もう一つ考えなければならないことは、消費者の利益ということも当然なことであります。それだけに、せっかくここで抑制的な措置、方針を決めたわけでございますから、これが十分浸透しやっていけるようなことをひとつ中小企業庁にさらに一層の御努力をお願いしたいと私は思います。  そこで、問題は細かな問題になりますけれども、もう一つ声が出ておりますのは、この大型店に関連しまして生協、農協、これの出店についてはいささかそのままではしり抜けではないかという声が強いわけであります。また私の地元等では、農協の場合は、どちらかというと農村地帯にあって、品ぞろえも農家向けであって、それほど問題になっている例はございません。しかし、生協となると、これは全くスーパーと同様な品ぞろえでございまして、ましてや宣伝、チラシ等を利用した員外利用の問題は、相当地元の商店街に影響を及ぼしております。  そこで、前回の大型店問題懇談会の報告にもございました、生協、農協については所管官庁と協議をして、この線に沿ったように進めるということになったと伺っておりますけれども、その点について十分な協議がなされたのか。また相手の厚生省、農水省がこれを認めて、同様な方針でいくことが確認されたのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  43. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 大店懇の答申におきまして、その三で、生協、農協の取り扱いについては以下のように申し述べております。「生協・農協の行う生活物質供給事業については、所管大臣に対し、各協同組合法の趣旨に則り、従来の通達の徹底を図るとともに、大型店出店抑制策を踏まえた出店の自粛の指導、法の許容する範囲を超えた員外利用の防止の徹底及びその実態把握のための努力を要請すべきである。また所管大臣と協議して、必要に応じ、生協・農協と中小小売商との話し合いの場の設定等の措置を講ずべきである。」ということになっております。  これを受けまして、この答申の後、鋭意関係省庁と中小企業庁の協議が持たれたわけでございまして、ただいままでのところ、おおむね以下のような話し合いが続いております。  第一は、生協、農協の大型店舗の設置に関しましては、この答申に出ました大型店出店抑制措置を踏まえた指導を行う。したがいまして、大型店の出店と同じような規制措置をいたすことになっております。小さな都市には原則として出ないとか、一応一定の規模以上出たところはどうするというようなことが決められております。そういうふうな基本路線に従っての抑制措置を指導するということになっております。  第二は、員外利用を防止するという点につきまして、従来から通達が出されておりますが、その徹底を図りますとともに、厚生省は、生協に対しまして員外利用状況を含めた組合事業の運営状況についての報告を求める。また農林水産省は、農協の員外利用の実態を把握するために、今後いろいろな点で努力をすることになっております。若干この差が出ておりますのは、現時点における実態の把握の程度の差に基づくやり方の差でございます。  第三は、都道府県に依頼をいたしまして、必要に応じて中小小売商と農協、生協との間に話し合いを持ちまして、紛争の円満な解決を図るための場を設置する。そして、このような話し合いの場を設置いたしまして、その中で合意がなされておらないというようなときには、指導のために県が入っていくというようなことも目下検討中でございまして、おおよそこの線で厚生省、農水省との間で話がついているところでございまして、答申の線で関係省庁話し合いを進めております。実施を図るつもりでございます。
  44. 粟山明

    ○粟山委員 きょうはこの問題について厚生省側からの出席もいただいておりますので、ただいまの件について厚生省としてもはっきり今度の抑制措置といったものを認めて、その線に沿った方向で行くということをひとつ確認願いたいのであります。  もう一つは、中小企業庁側として、今度は商調法を省令としてやることになりました。一定のルールがあるわけでありまして、このルールを徹底することが今後の紛争を防止する大きな方向でございますけれども、それでは厚生省として、生協が出店する場合に対するルールはどんなものがあるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  45. 浅野楢悦

    ○浅野説明員 お答え申し上げます。  生協におきますところの店舗の出店問題あるいは員外利用の問題につきましては、基本的には先ほど中小企業庁長官の方からお答えがありましたような線で、私どもその具体化に向けまして現在作業を進めておるところでございます。それで、いま先生の方から具体的に御質疑のありました店舗出店のルールあるいは員外利用の問題につきまして、やや具体的に申し上げます。  生協は、御承知のように、自発的な協同組織といたしまして、組合員の生活の経済的向上、文化的向上を図るということでございますけれども、やはり地域社会におきます一つの存在といたしまして、地域社会の全体の発展なりあるいは調和といったものにつきましては十分留意をしてまいらなければならないと思っております。したがいまして、具体的な出店に当たりまして、特に大規模店舗の場合でございますけれども、一般のスーパーにつきまして抑制措置が講じられるその具体的な内容等をよく踏まえまして、また生協の法体系の中でこれを円滑にそしゃくするということを念頭に置きながら具体的に対処してまいりたいと思います。  また、特に具体的なルールの問題でございますけれども、従来から生協の出店に当たりましては、地元の中小小売業者との話し合いのもとに、その理解を得て出店をするということは申しておるところでございますが、さらにこれを一つのルール化するという方向で、たとえば県段階におきまして、中小企業者と生協との話し合いの場を設定する、あるいは自主的な話し合いがつかない場合に、県が乗り出して紛争の処理に当たるというような具体的なルールをいま検討しておるところでございます。  また、員外利用の問題につきましては、先ほどチラシのお話がございましたけれども、員外利用を誘発するような広報宣伝等につきましては、従来から自粛の方向で指導いたしておりますが、今回の大型店問題懇談会の報告を受けまして当面・におきます対応策といたしまして改めて指導通知等を出すことを考えておりますけれども、その中でも、再度その趣旨の徹底を図るというような方向での検討をただいま急いでおるところでございます。  いずれにいたしましても、生協は先ほど申し上げましたようにへ自主的な組織でございますので、生協の自主性ということを重んじながら自主的な抑制措置、自粛措置をとらせるということを前提といたしまして、それを踏まえて、それを側面的に円滑にするような方向での行政指導ということに心がけ、問題の再発を避けるようにいたしたいと考えておるところでございます。
  46. 粟山明

    ○粟山委員 時間が残念ながらないので、質問はこれで最後にいたしますが、いずれにせよ、この生協あるいは農協にしましても、消費者を対象とした小売業であることは変わりないわけでありまして、この点につきましては、これが各地で中小小売業者を非常に困難な条件に陥らせることのないように、抑制的な措置ではありますが、せっかく今度の措置ができましたので、両省も協力してひとつこれを十分に浸透させるような方向でやっていただきたいと思います。  そうしてもう一つ、厚生省それから農水省も一緒に、この三者で定期的にこの問題については協議するというようなこともできればやっていただきたいと考えます。  時間がなくなりましたので、これを要望いたしまして終わりにいたしますが、最後に、三省協議という問題はどうでしょう。
  47. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 ただいままでのところ、農水省と、また厚生省との話し合いは進めておりますが、三者ともにどうするかということは、実は相談をいたしておりません。その後の都市計画のときに建設省とやることについては、これは協議会を今後どう進めるという案をまた策定いたしておりますが、いま先生から新しい御提案でございますので、どういうやり方で、いままでのようなバイタルでやるのがいいのか、グローバルでやるのがいいのか、そこらは検討させていただく。御趣旨の線はよく理解いたしております。
  48. 粟山明

    ○粟山委員 質問を終わります。
  49. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後三時三十分開議
  50. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。清水勇君
  51. 清水勇

    ○清水委員 まず、河本長官に承りたいのでありますが、私は率直に言って、現時点での実質経済成長率はゼロに等しいのじゃないかと感じているのです。内需が低迷をしている。昨年末以来、輸出が急減をする。かてて加えて財政再建という名のデフレマインドといいましょうか、そういうものが進行する。そうしたことを反映をして、たとえば十月に続いて昨年暮れにそれぞれ実績見通しを下方修正をされているわけですけれども、実を言うと、下方修正をした、たとえば四・一%の達成も、今日文字どおり危ぶまれている。私は、三%台になってしまうのじゃないか、非常に残念ですが、そういう感じが強い。  そこで、そういうものを基調にして見た場合に、たとえば五十七年度五・二%の実質経済成長を、これは願望として示すならばともかく、これを達成を期するという立場で見る場合、たとえば個人消費支出について言えば、五十六年度実績見通しの約二倍、住宅投資のごときは実に約十倍、さらに設備投資にしても三倍以上という伸びがなければ達成ができない、こういうことでありますから、これはまさに容易ならざることではないのか。きょうの本会議でも、見通しが甘いんじゃないかという指摘がございましたが、私は率直に言って、雇用、失業の問題一つ考えてみても、この五・二%は達成すべき目標である、こういうふうに押さえたいと思うわけです。だから、そのためには、よほどの政策努力が加えられなければいけないのじゃないか、私はそういうふうに思うのでありますが、まず基本的な考え方を長官から承りたい。
  52. 河本敏夫

    河本国務大臣 昭和五十六年度の第一・四半期の成長は一・二%であります。第二・四半期は少し落ち込みまして〇・六%。第三・四半期は、いま作業をいたしておりますが、ただいま御指摘がございましたように、内需回復がはかばかしくないところへ持ってまいりまして、外需が落ち込んでおる、こういうこと等もございますので、あるいはゼロ成長の前後になっておるのではなかろうか、こういう心配をいたしております。しかし、その指標は三月の中旬ぐらいになりませんと正確にわかりませんので、もう少しお待ちをいただきたいと思いますが、年度間を通じてどういう見当になるかということでありますけれども、第四・四半期が残っております。そこで、ただいまのところは何とも言えませんが、しかし、非常に厳しい状態になっておるということだけは言えようか、こう思っております。  そういう状態を受けて、五十七年度の経済成長五・二%成長は達成できるのか、こういうことでございますが、実は昨年の秋、五十七年度の経済見通し経済運営をどうするかということについて作業をいたしました際に、政府部内の検討では、現状がそのまま進めば大体三・八%見当でなかろうか、こういう数字が出てまいりました。しかしながら、その見当の成長の場合は、どういう問題が起こるかということ等についても検討をさせましたが、やはり失業者が相当ふえる、それから経済摩擦はいま以上に厳しく拡大をする、同時に、税収が相当落ち込んでしまう、こういう見通しが出てまいりましたので、それでは、いま日本の抱えております課題を解決することはできませんので、努力をすればどの見当まで可能かという作業も並行してさせましたところが、努力いかんでは五・二%見当の成長は可能だ、こういう結論が出ましたので、政府見通しといたしましては、今後政策努力倉機動的にかつ適切に行うことを前提といたしまして、五・二%成長という目標を設定をしたのでございます。  それで、いま世界経済状態は最悪の状態になっておると私は思うのでございます。OECD見通しなどを見ましても、後半からは回復するように言っておりますけれども、現時点は、ほとんど全部ゼロ成長マイナス成長である。アメリカもしかりでございますが、一説によりますと、一九三〇年以来の最悪の状態になっておる、こういうことも言われております。ただしかし、第二次石油危機が起こりまして、もうちょうど三年を経過しておりますので、ほぼ第二次石油危機による悪い影響の調整は終わりを告げておるのではなかろうか。そういうことで、十二月のOECD見通しでは、後半OECD参加国二十四カ国の平均成長率は三%強の成長回復するであろう、こういう見通しを出しております。来年もほぼその見当になるであろう、と。アメリカ政府は、御案内のように、ことしは、現時点では非常に悪いですが、後半から回復を始めまして、来年は五・二%成長、こういう見通しを出しております。最悪の状態にある現時点から見ますと、OECD全体が三%強の成長になったり、アメリカが五%を超える成長になったりするということはなかなか考えられないことでありますが、先ほど申し上げましたように、経済は動いているのだ、第二次石油危機から三年を経過した、こういうこと等を考えますと、多少の見通しのずれ等はありましても、私は、世界経済回復過程にあることは間違いない、このように判断しておりまして、わが国情勢の変化に応じて適切な政策を展開することによりまして、この目標を実現したい、このように考えておるところでございます。
  53. 清水勇

    ○清水委員 そこで、従来のわが国経済成長パターンというものを追ってみると、内需の不振を輸出でカバーをする、こういう傾向が非常に強かったわけですね。がしかし、言うまでもなく昨今の貿易摩擦一つをとってみても、あるいは御指摘のような世界の共通した不況、深刻な経済危機、こういうものと照合してみても、今後五十七年度において輸出にドライブをかけるというようなことはまず無理ではないのか。そうすると、好むと好まざるとにかかわらず、あるいは必然的と言っていいかもしれませんが、内需の拡大にしぼっていかざるを得ない。つまりわが国経済内需で引っ張っていかざるを得ない、こういうふうにならざるを得ないと思うのです。しばしば予算委員会で長官は、たとえば当面、公共事業の前倒し発注を考えたい、と。現在、財政再建の時期ですから、財政をつぎ込むということができない以上、まあそうせざるを得ないのかもしれませんが、しかし、公共事業の前倒しというものは、後半に来て息切れが起こるわけですね。それやこれやのことを考えると、結局内需の拡大と言ってみても、個人消費の拡大という点にかなりのウエートをかけなければいけないのじゃないか。個人消費を伸ばすというためには、言うまでもなく可処分所得をどう増加をするか、これに尽きるのだろうと思いますし、可処分所得が増大をし、個人消費が大きくなる、そこから民間の活力を引き出していくということが五十七年度経済運営の基本にならざるを得ないのだろう、こう思うわけですが、それならば、機敏、適切なる政策努力と言われるわけですけれども、そのために何を具体的になされるのか、このことがやはり問われなければならないのだろうと思うのです。  たとえばダイレクトにというか直接的にというか、減税などの場合には、相乗効果の点を含めて非常に有効需要を拡大するという要素がある。しかし、これを政府はやらないとおっしゃる。縮小均衡を展望するのであれば、それもいいかもしれませんが、やはり五・二%という拡大均衡を求めるということであるならば、当然有効需要に直接結びつく減税といった措置が、いままでの河本長官の理念から言えば、まず前面に出てこなければうそだと私は思うのですけれども、それが出てこないということはどうも腑に落ちないのです。その辺をちょっと承りたいと思います。
  54. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま日本経済の一番大きな課題は、落ち込んでおる内需をどういう方法で拡大していくか、これはもう御指摘のとおりだと思います。  そこで、GNPに占める内需の内訳を検討してみますと、個人消費がやはり五十数%になっております。それから民間の設備投資が約一八%、公共事業が約九%、それから住宅が約六%、在庫投資が約一%、大体こういう構成になっております。したがいまして、いま御指摘のように、個人消費が回復しなければ本当の意味内需回復しないではないか、個人消費が思うように伸びないのは実質可処分所得がふえないからだ、この問題一体どうするんだ、こういうお話でございますが、実質可処分所得を伸ばすためには三つの方法があると私は思うのです。  一つは、やはり所得そのものがふえないと、これはどうにもなりません。根っこの所得がある程度ふえるということがもう絶対の条件だと思います。それから、公的な負担が余りに重いということになりますと可処分所得は減ります。それから同時に、物価が安定をしておりませんと、これも可処分所得は期待どおりに伸びない、こういうことになりますので、物価、公的負担、それから所得の伸び、こういう三つの問題があろうかと思うのです。  いま御指摘になりました減税の問題でございますが、実は数年間税率をずっと据え置いておりまして、税の負担もここ数年の間に相当ふえております。だから、こういう状態が長期間続くということは、私どもも好ましい状態ではない、何とかしなければならぬ、こう思っておるのです。政府の統一した考え方といたしましては、五十七年度は残念ながら条件が整わないが、五十八年度以降の課題として、減税ができるような条件をできるだけ早く整備をしていこう、これは政府としての大きな課題である、こういうことを統一見解として先般まとめたところでございます。  それでは、減税できる条件とは何ぞやといいますと、それは財政再建のめどをつけて、同時に減税のための財源をつくり上げる、この二つだと思いますが、ただいまのところはそういう考え方でございます。
  55. 清水勇

    ○清水委員 財政再建が先か減税が先か、こういうことになるわけでありますが、問題は、私は減税だけを言っているわけでじゃないのです。先週土曜日でしたか、予算委員会で長官が日経連の賃金抑制政策について批判を加えられた。私は同感なんです。たとえば政府政府河本長官を先頭に、企業の側に対して、内需拡大のためにもできるだけの賃上げをやるべきである、これが望ましい。しかし、使用者団体というか財界というかそういう中には、企業の中では余り賃上げができないからできるだけ政府減税をやってもらいたい、これでカバーしてもらいたい、こういうような発想で双方が責任をなすり合っている。そんなようなことでは所得もなかなか思うようにふえないし、また減税を含めて可処分所得も伸びない、ぼくはこう思わざるを得ない。ですから、企業は企業でできるだけの賃上げをやる、また政府はそういう意味減税にこたえる、両々相まって現実の問題として可処分所得が向上し、かつ内需の拡大に裨益をする。内需が起これば、当然のこととして、そこから法人税等の一定の増収の道も確保されるわけです。ですから、私はそういう意味で——まあここで議論をしても、きのうでしたか、減税をやらないということを政府と自民党の首脳会議で決めたばかりのようですから、いや、きのうはきのうきょうはきょうというふうにならぬと思いますので、私はそれ以上のことは問いません。  しかし、そういう点で企業の側にも一定の注文をつけてもらわなければならぬけれども、政府としてもなすべき努力をすべきである。私は去年もこの場で景気見通し質問して、ことしはだめだが、来年以降何とかと言って減税について長官はおっしゃっておられたのだが、ことしになると、また来年以降、こういうふうな話になる。これがやはり結果として政策的に景気の足を引っ張っているのじゃないか、ぼくはこう思わざるを得ませんので、この点はひとつ再検討を煩わしたい。  通産大臣見えていないようですから、次官にこの際問うておきたいのでありますが、いま指摘をしたように、先週河本長官から日経連等の賃金抑制政策について一定の批判を加えられている。これは当然のことだと思うのですが、何と言っても業界なり企業に対しては通産省が一番強いのです。だから、そういう角度から、今日のきわめて厳しい経済情勢を打開するために、やはりそれ相応の、春闘に対応する、まあ勧告ということはできないと思いますが、示唆に富んだ一定の方向があってしかるべきではないか、こう思いますが、どうですか。
  56. 原田昇左右

    ○原田(昇)政府委員 お答えいたします。  清水先生御承知のように、賃金問題については労使の間で話し合って解決するというのが原則でございまして、この際、政府からとやかく言うというのはいかがかと思うわけでございます。ただ、もちろん清水先生のおっしゃるように、実質所得をふやすということは、確かに消費の促進の上に一つの大きな要素でございます。そういう点でわれわれもきわめて注目はいたしておるわけでありますが、最近大変いい面としまして、企業の従業員の実質労働時間が少しふえてきておるというところがありまして、これは残業等によってもたらされたのではないかと思いますが、そういう傾向が若干出てきております。  それからもう一つ、消費と貯蓄と分かれますと、貯蓄がたくさんどんどん伸びていって消費は余り伸びないというようなことでは、消費に回る分が少なくなるわけでございますが、貯蓄に回る分がそれだけ投資に回ってくれればいいし、あるいはまた、貯蓄の分が若干消費に回るということなら消費はふえるということにもなりますので、われわれとしては、その辺も十分注目しながら政策運営をやっていかなければならぬ、こういうふうに考えておる次第であります。
  57. 清水勇

    ○清水委員 この問題は、ここで議論をしても始まりませんので、それ以上は申し上げません。  いま河本さんから、景気を支えるもう一つの柱として住宅建設ということが言われているわけですが、率直に言いまして、五十五年度は建設戸数がかなり大幅にダウンをしたわけですけれども、五十六年度は五十五年度の実績をさらに割り込む結果になりはしないかということを、私は昨年もここでの論議を通じて申し上げたところ、そういうことはないと思うと言われておりましたが、残念ながら私が指摘をしたような結果になってしまっております。  そこで、五十七年度は、五十六年度実績、まあ伸び率は〇・九しかないわけなんですが、一〇・四%という非常に大きな実質の伸びを予定をしておられるわけです。そのために、政府は土地税制の見直しなど環境整備を図っているというふうに言われておりますが、土地税制の手直しなどという程度ではとうてい庶民が動かない、こう私は言わざるを得ないのであります。それよりも、たとえば住宅公庫資金が、臨調答申等もあって十年超の分については金利を五十七年度から六・五%に上げる。ここから来る建設意欲の減退の方がむしろ大きいのじゃないか、そういう感じがせざるを得ないのです。だからこの際、景気を支える柱として住宅建設に力を入れるというならば、住公金利の増率なんてことをやるのではなしに、これをもとへ戻すというような見直しが行われてしかるべきじゃないか。あるいは、いま民間のデベロッパーを中心に、御承知のように、土地投機あるいは宅地のつり上げが行われております。ヨーロッパなどへ行くと、先進的な国では、地方公共団体に土地の先行取得をさせる、一定の時期に造成をしていい土地を低廉に供給をする、こういうことをやりながら土地の騰貴を抑えるというような施策があるわけですけれども、わが国の場合にも、地方公共団体等の行う先行取得に対しては、たとえば金利の補給を行うとか、道路であるとか緑地帯であるとかいうような公益部分については分譲価格の中にぶち込まない、これは公共団体の負担という形にする、この分を国が一定の助成を与える、こういうようなことでもやりながら、全体として土地の値上がりを抑えていく、こういったような効果のある政策ということが考えられなければいけないのじゃないか。あるいはいま土地を求め、その上住宅を建てるということになると、三千五百万だ、四千万だという金がかかる。とても一世代じゃ返せません。そうだとすれば、せめてこの際、二世代にわたってこれを返済をしていく、マイホームが取得できるというような長期金融の見直しを一面では考える。つまりそういうように家を建てやすいような条件整備をするというようなことでも背景にないと、きょう、あすの間には合いませんけれども、そういう展望が示されるというようなことになりませんと、住宅建設もそう大きな伸びを期待できないのではないか、こう私は思うのですが、長官、いかがでしょう。
  58. 河本敏夫

    河本国務大臣 住宅建設につきましては、昭和五十一年から昭和五十四年まで四年間は平均毎年大体百五十万戸の家が建設をされましたが、五十五年になりまして百二十万戸強と非常に落ち込んできたのであります。五十六年度はまだ集計しておりませんけれども、百二十万戸を若干割り込むであろう、このように考えております。  そこで、住宅建設を軌道に乗せるということが内需の拡大、景気回復に非常に大きな力になりますので、昨年の年末の予算編成に際しましては、住宅金融、土地政策あるいは特に中古住宅に対する対策、そういうことを含めまして相当思い切った内容の対策をきめ細かく進めることにいたしております。当時業界などからも意見を聞きましたが、業界などから出されました前向きの議論につきましては、ほとんど全部採用したつもりでございます。昨年は四回にわたって公庫住宅を募集いたしましたが、どうも予定よりも応募が少ない、こういう状態でございましたが、ことしになりましてから、一月の終わりからいま募集をしておりますが、新しい条件で進めております。今回は相当成績がいいようであります。まだ相当日が残っておりますけれども、もうすでに予定の戸数を一二〇%超えておりますし、このまま行けば大体百六、七〇%ぐらいになるのではなかろうか、このように想定をされておりまして、政府の幾つかの施策によりましてようやく大底は抜け出すのではないか、住宅建設は回復方向に向かうのではなかろうか、このように判断しております。  民間の住宅見通しが五十七年度に大体百十万戸から百十五万戸になっておりますのは、政府と十五万戸ないし二十万戸見込みが違っておりますけれども、これは昨年の年末に政府の決めました住宅政策を全然考慮していない、ここに差がある、こう私は思っております。つまり民間見通しは十一月から十二月の前半にかけていずれも出た見通しでございますので、そこに相違があるのではなかろうか、このように考えておりますが、今回の措置によりまして、折り返し点にようやく差しかかったのではなかろうか、このように判断をいたしております。
  59. 清水勇

    ○清水委員 私の提起したことについてお答えのない部分もありますが、時間の関係もありますので、先へ進みます。  いま通産大臣もお見えですから申し上げておきたいのですけれども、いずれにしても、住宅が一軒新しく建つと需要の波及効果が十八業種に及ぶとさえ言われているわけですね。その意味では非常に影響が大きい。しかるに二年続きで大変に落ち込んでいる。五十七年度はそういう意味で言えば幾重にも住宅というものに対して、単に建設省の仕事だということではなしに、建設関係、合板にしても製材にしてもアルミにしても、そのために大変な不況にあえいでいるというような状況があるわけでありますから、通産についても十分ひとつ配慮を希望しておきたいと思います。  さてそこで、景気を支えるもう一つの柱として設備投資があるわけですけれども、率直に言って、今日中小企業をめぐる環境というのは非常に厳しいと思うのです。しかし、中小企業が安定的に推移をしていくということでなければ日本経済が立ち直れない。何せ五百八十一万事業所、三千四百万からの雇用を抱えているわけですから、このすそ野がしっかりしなければ、日本経済がその上にしっかり成り立つということにならないと思うのです。一昨年は約一万八千、去年は一万七千くらい倒産件数が出ているわけですね。この数というのは負債総額一千万円以上の分だと思うのですけれども、まずお聞きをしておきたいのは、一千万円以下の数字にはなかなかあらわれてこない倒産件数も膨大な数に上っていると私は見ておりますが、どうでしょうか、どのくらいの数になっていましょう。
  60. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 中小企業の小口倒産の実態の把握でございますが、昨年も当委員会で種々御検討を賜りまして、私ども昨年来新たな方向で小口倒産の把握を進めることにいたしております。  まず、一千万円以上のものにつきましては、東京商工リサーチと帝国データバンクで民間信用調査機関が精密な調査をいたしておりました。この数字が一千万以上の負債の倒産として出ているわけでございます。ところが一千万未満のものにつきましては、外形標準が把握しにくい上に、たとえば自主的な廃業、転業というような純粋経済的な倒産とは違うものもありまして、その区別がなかなかしにくいということがございまして、民間の方ではその調査を進めておりませんでした。そこで中小企業庁と中小企業事業団の予算によりまして、この民間調査機関の調査と並行いたしまして動向把握を進めることにいたしたわけでございまして、五十六年度からは、従来の調査対象都市百十一都市に対しまして、当委員会の御指摘もございまして二百十五都市と大幅に拡大いたしまして、小口倒産の把握に努めているところでございます。ちなみに、全国の事業所に対しますこの二百十五都市の事業所の比率は約六割でございますので、六割程度の小口の倒産がつかめておる。しかもこの中身は自分で廃業したものも含んでいるということも御理解を賜りたいと思います。  この数字でございますが、私どもは五十五年以来つかんでおりますが、五十六年度から二百十五都市になりましたので、その数字を申し上げますと、四月段階が九百二十七件、五月が八百九十件、六月が八百八十五件、七月九百二十四件、八月八百五十二件、ここらは倒産全体の数字が鎮静化した時期でございますが、九月以降から逐次上がってまいりましたが、いま手元は九月までの分析ができておりまして、九月の数字は千七十五ということで数字はふえつつあります。  ただ、大口倒産と小口倒産の比率等々を見てまいりますと、小口の倒産が逐次ふえておるということでございます。そのほか一千万以上の負債の数字を見てみましても、百万未満及び個人の方で負債総額一千万以上の倒産のシェアが逐次ふえているということ、急激にはふえておりませんが、じわじわとふえておるという数字が私どもの分析で把握されております。
  61. 清水勇

    ○清水委員 いずれにしても一千万円以上、それからなかなか捕捉が困難なそれ以下、合わせて相当な量が二年にわたって倒産をしている。過去の歴史には余りなかったことなんでありますが、これは中小企業担当大臣という立場で、こうした中小企業の倒産の多発というものの原因が大体那辺にあるかというところをひとつお聞かせをいただけないかと思います。
  62. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 数字の分析でございますので、事務当局からお答えをさせていただきます。  最近の小口倒産を含めた倒産の主要原因について見ますと、第一は景気回復のおくれを反映した販売不振、これが四三・一%でございます。次が、先ほども申しましたが放漫経営というカテゴリーの中に入って、設備投資が過大であったとか見通しが誤ったというようなもので一一八・三%でございます。そのほか連鎖倒産等は七%程度になっております。いずれにしても、大口は販売不振と放漫経営ということになっております。
  63. 清水勇

    ○清水委員 これは、中には放漫経営も多少あるかもしれませんけれども、企業経営者はいずれも大変苦労し、努力をしているのですね。しかしどうにもならない。つまるところは、内需が冷え込み、つくったものがなかなか売れない、こういうような不況というものが非常に大きな原因だと言わざるを得ないと私は思うのですが、そういう経済状況のもとで実質七・七%の設備投資期待をすると言われているわけなんです。これまでの設備投資の伸びというものは、その傾向をずっととらえてみると、外需依存型というか、つまり鉄であるとか自動車、電子機器とかというところに非常に活発な投資意欲が見られ、これが設備投資全体を引っ張ってきたということが言えるわけですが、今後はそのパターンが変わらざるを得ない。つまり非貿易財の供給というような部門で設備投資が行われていくということにならないと、中小企業などのところでかなり活発な設備投資が行われていくということにならないと、とうてい七・七%の確保なんということにはならないのじゃないかと思うわけであります。  この辺について、たとえばきのうでありましたか日経の調査なども出ておりましたけれども、民間設備投資調査を見ても、五十七年度の投資計画は実質で二・三%の増にすぎないと指摘をしているわけです。ですから、政府見通しとの間に大変な乖離がある。この辺を通産省としてはどういうふうに把握をしておられるのか。
  64. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 五十七年度の設備投資につきましては、内需の着実な回復見通しのもとに実質で七・七%、名目で一〇・五%程度の伸びが見込まれております。先生御存じのように、中小企業の設備投資は、過去の数字で申し上げましても、五十五年が全体の五三・六%、五十四年が五八・七%というシェアを占めておりますから、設備投資のうちの五割近くは中小企業が占めているわけでございます。したがって私どもは、この中小企業の設備投資も、内需回復が次第に伸展する、その結果、景況感の低迷が払拭されるということになれば、逐次この回復が図られるのではないかという気がいたしているわけでございます。  なぜかと申しますと、潜在的な設備投資について私どもが調べたところによると、中小企業皆さんは景況よろしきを得れば設備投資をいたしたいという希望が約九割を占めております。景気のいかんにかかわらず設備投資をしなくてもいいという感じの方は一一%程度でございます。したがって、環境が整いますれば、中小企業景気全体——全設備投資の半ばを占める中小企業の設備投資も進む可能性があるという潜在的な需要があることを調査で把握しているわけでございます。したがって、このように根強い潜在的な設備投資意欲に対しまして、本年後半に予測されます世界経済の逐次回復過程の見通し、さらには、内需振興策がじわじわとこう出てくるというようなことを見通しまして、中小企業の設備投資が今後進むことを期待いたしておるわけでございます。  ただ、中小企業施策といたしましても、及ばずながらそのための努力をしなければならないという認識を持っておりまして、ただいま私どもが考えております施策は、中小企業の設備投資資金は、長期プライムレートにしまして〇・三%の格差をつけております。昨年の三月段階では〇・二の差でございましたのを〇・三の格差をつけておりますし、必要な資金につきましては、五兆四千億近くの金額、昨年が四兆一千億でございましたので大幅の増をいたしております。資金につきましては十分確保いたしておりますので、全体景気がよくなればいつでも打って出れるという形になっておるのではないかと考えております。  そのほか中小企業皆さんにとって大変いまも需要が出ておりますのは、設備の近代化資金、機械類貸与、さらには高度化資金等々ございまして、これは大幅な申し込みがいま出ておりますので、こういうふうなものを的確に事務手続を早くいたしまして進めてまいることが必要である。  いずれにしても、急激な設備投資の増は望めませんけれども、こういうふうな潜在的な需要を背景に逐次設備投資が伸びるような努力をいたしたいと考えておるわけでございます。
  65. 清水勇

    ○清水委員 予算委員会関係河本長官退席をされたようでありますが、いずれにしても五・二%を達成するというようなことは容易ならざる政策努力が必要だと思いますので、先ほど来私が指摘をしているような点にも十分今後、通産大臣おいでになりますが、留意を払っていただきたいということを御注文を申し上げておきます。  さて次に、貿易摩擦に触れて安倍大臣お尋ねをしてまいりますが、新年早々から三極会議、あるいはレーガン大統領以下米国の政府あるいは議会の首脳と会談をされたわけですが、大変御苦労さんでした。  そこで、アメリカ政府日本に対する要求等をどう受けとめているかということは、すでに午前中質問があったわけでありますから重複をして聞きませんが、以下若干のことを私の所見を申し上げながらお尋ねをしていきたいと思うのです。  貿易摩擦をどう打開をしていくか、これがいま大きな焦点になっているわけですが、その一環を担っていま江崎ミッションが行っておられる。近く天谷さんも大臣から言われて訪米をする。これから本格的な折衝にだんだん移っていくんだろうと思います。そこで、私はかつてキッシンジャーが言った言葉を脳裏に浮かべるんです。彼は、対日交渉に当たって、まずぶん殴れ、そうすれば日本は別なカードを出してくる。こう言っているんですね。大臣に対してレーガン大統領以下まあ至れり尽くせりと言われるような接待があったようでありますが、これはわが国の有力な大臣ですから、できるだけ重い荷物をしょっていってもらわなければならぬ、こういう配慮もあったんだろうと私は思いますが、しかし、帰国をされ、あれこれと相談を重ねられ、たとえば一月の末に至って、アメリカ側が要求をしてきている非関税障壁の改善措置をめぐって、九十九項目も要求をしているわけですが、そのうちの六十七項目まで何とか手をつけよう、こういうことを政府政府なりに政策配慮をされた。ところがこれに対して、たとえば米国の通商代表部のブロックであるとか、最近はマクドナルドであるとか、これらが口をそろえて、あの程度のことじゃ問題にならない、したがって、自分は相互主義法案を支持をするとか、あるいはガットに提訴をするとか、こういう一連の発言をしております。私ですら不愉快なんですから、訪米をされた大臣はもっと不愉快なのかもしれませんが、これもある面で言えばアメリカ一流の恫喝外交の片りんを示しているんじゃないかという気がしてならないのです。だから、つまり基本的なこの問題の解消のための交渉の姿勢、わが国政府としてはどうするのか、どういう姿勢で臨むのかということを衝に当たられる通産大臣にまずお聞きをしたいと思います。     〔委員長退席、野田委員長代理着席〕
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 世界の現在の貿易体制を堅持しながらいわゆる貿易の拡大均衡を図っていくためには、何といいましても、自由貿易体制というものを堅持していかなければならない、これはまた貿易立国日本としても絶対的に必要な要件であると思います。したがって、この自由貿易体制を今日の非常に厳しい情勢の中でもあくまでも守っていこうという合意が、やはりアメリカあるいはECその他の国々とともに必要ではないかと思うわけでございます。しかるに、アメリカ等においては経済が非常に落ち込んでおる。特に一千万以上の失業者が出ている。あるいはまた、ECにおいても同じように一千万以上の失業者が出ておるということから、保護主義的な傾向が生まれつつあることは事実であります。  特に、私がアメリカに参りまして直観をしたことは、アメリカ政府というよりは議会保護主義にもう走り始めた。相互主義という名をかりて保護主義的な法律を、今回はブラフではなくて本気に出そうとしているということを非常に痛感をいたしたわけでございまして、とれに対してわが国としても、総理を初めとしてわれわれも声を大にして相互主義に対する批判を行っておるわけでございますが、こうした法案の成立を食いとめて、お互いやはり自由貿易体制を守っていくためには、まず基本的にはいまの経済摩擦原因というのが、何といいましても先進工業国の経済が非常に悪いということでございますから、この経済の再活性化を図っていくために努力をしなければならぬ。そのための協力がもちろん必要になってくるわけでありまして、わが国としても、世界先進工業国の中では比較的経済は安定しておるわけでございますので、そういう中で産業協力であるとかあるいは技術協力であるとか、そうした協力を積極的に進めて世界経済の再活性化のための努力をしていくということであろうと思います。  同時にまた、わが国が非常に集中砲火を浴びておるわけでございます。それはわが国アメリカあるいはわが国ECとのインバランスが一つは非常に拡大をしておる。アメリカに対しては百八十億ドル以上になりつつある、あるいはECに対しても百億ドル以上になりつつある、こういうことがいら立ちの大きな原因である。もう一つは、日本がそういうインバランスが大きくなりながらも、依然としてやはり市場の開放に対して積極的な姿勢をとってない、こういう彼らの考え方があるわけでございます。インバランスの問題は一朝一夕に解決できる問題ではないと私は思います。一九八〇年と八一年の対米インバランスを考えてみますと、概略して言えば、八〇年には大体百億ドルぐらいだったと思いますが、これが百八十億ドルにもなっている。こういう一つのインバランスが大きく伸びた根本原因は、円安というところにあるわけでございます。これが非常に輸出の加速度をつけたということでありますが、しからば円安のよって来るところは何かと言えば、アメリカの高金利政策円安の大きなバネになったことは間違いないわけでありますから、そうした面については、インバランスの拡大がどんどん出ておるということに対して日本を責めるというよりは、まずアメリカの高金利政策を改めてもらう必要があるのじゃないか、私はそういうふうに思いますし、そういうことも主張してきたわけでございます。  そして日米間におきましては、どうしても国際競争力が日本の産業で非常に強くなっておりますから、そういう意味でのインバランスがある程度あることは当然のことであろうと思いますが、もう一つのいわゆる市場の閉鎖性については、わが国としても自由貿易を主張する以上は、できるだけの努力をして開放政策を進めていくことは当然のことであろうと思います。  そういう中で、実は関税、東京ラウンドの二年間の前倒しも思い切って行ったわけでありますし、あるいは御指摘がありましたような非関税障壁についても、特に輸入手続については六十七項目について改善をしたわけでありますから、国内でわれわれこれらの政策をまとめる上におきましてもずいぶん努力、苦労をいたしたわけでございますが、これはアメリカあるいはECも率直に評価をしてもらいたいと私は思います。  そして、いま新聞なんかではいろいろ出ておりますが、アメリカ政府の公式ないわゆるこれに対する評価というのは、私のところにもいろいろと来ておりますが、日本のこうした努力、苦心というものは評価をするのだということであります。これは率直に評価しておる。ただ、これだけで自分たちは十分ではないと思っている、まだ残された非関税障壁とかあるいは残存輸入制限品目とかいう問題があるのじゃないか、同時にまたサービス分野等については大変問題があるということを彼らは指摘しております。中にはずいぶん誤解もあると私は思うわけでございます。そうした残された問題について、われわれとしてもできるものはやる、できないものはできないと——農産物等についてもなかなかむずかしい問題があります。あるいは通産省の皮製品等についてもなかなか困難な国内情勢があることは御案内のとおりであります。やはりできないものとできるものとがあるわけですから、できるものに対しては、日本としても前向きに対処していくことが必要ではないだろうか、私はこういうふうに思っております。  そういうことで、日本側の立場を十分率直に説明していきながら、日本努力理解せしめる。同時にまた、アメリカあるいはECに対しても、言うべきことは言わなければいかぬと私は思っておるわけで、アメリカでも非関税障壁がないかと言えば、相当非関税障壁が、バイアメリカ政策であるとか、あるいは各州のユニタリータックスの問題であるとか、あるいはキャブシャシーなんかに対する高率関税とかあるわけであります。ヨーロッパなんかに至ってはもっと制限品目あるいは非関税障壁があるわけでございますから、そういうことをわれわれは主張しながら、とにかくこの問題を感情的にならないで、政治的対立に持っていかないで、話し合い解決していくことが必要ではないだろうか、こういうふうに思っておりますが、基本としては、自由貿易体制を守るという各国の合意と努力が必要である、こういうふうに思うわけであります。
  67. 清水勇

    ○清水委員 いま大臣からるる説明がございました。時間があれば、いまのお答えに触れて十分お聞きをしたいのですけれども、時間がありませんから、二、三にしぼってお尋ねをしたいと思います。  お尋ねをする前に、いま大臣もちょっと触れておられたんだけれども、たとえば対米貿易摩擦考える場合、無論いま言われているとおり、先方の言うべきことで当然に聞かなければならぬことには耳を傾ける、これはあたりまえだと思うんですね。わが国も過度な輸出依存といったものがあれば、これは反省して改める、これも当然だと思うのです。ただ同時に、いまも大臣ちらっと触れておられたんですけれども、たとえばアメリカ経済政策あるいは経済運営のあり方に、やはり今日の事態を引き起こす非常に大きな原因があるのじゃないか。たとえば八三一般教書も発表になっておりますけれども、毎年一千億ドル近い赤字を予定した積極財政を進めるとか、その反面ではきわめて厳しい金融引き締め政策を行う。それをやれば当然実質金利が高騰する、経済が不振に陥る、あるいは貿易収支が赤字になる、失業が増大をする。そこからいわゆる保護主義台頭なんということに、悪循環が反復されていくのは当然だと思うのですね。だから、そういう点について言えば——私も去年の秋、EC諸国を回ったんですけれども、どこの国に行っても、アメリカの高金利政策に対する非難がほうはいと起こっているわけですね。だから、わが国も正すべきは正す、アメリカ経済政策に誤りがあれば、これを指摘をして反省を促す、こういうことが経済摩擦の解消を進める交渉の中にあっても当然に行われなければ、片手落ちになるのではないかと私は思うのです。これが一つ。  それからいま一つは、いまの大臣の答弁の中で、たとえばわが国の市場の閉鎖性ということがアメリカから問われている。特に、米国側は農産物市場の閉鎖性ということを盛んに指摘をしていると思いますね。一月十四日に出ている米国側の要求事項の中でも、農業貿易の自由化を強調して、たとえば残存輸入制限品目の二十二品目を自由化しろ、こう言ってきている。これに対して、予算委員会でも議論があったようですけれども、私が聞いている限りでは、安倍通産大臣はこれに前向き対応をするというようなニュアンスを述べておられる。しかし、私はこれは非常に問題があるのじゃないかと思うのですね。  たとえば、御承知のように、かつてIQ品目、農産物について言えば八十三でありましたか、多数にわたっていた。しかし、市場開放体制というわが国政府の要請によって、現実のところ、これがぎりぎりの二十二品目にいましぼられている。残されている二十二品目というのは、わが国農業の基幹的な作目であったり、あるいは地域の重要な特産物であったり、これが自由化されることになれば、その部分の農業はまさに壊滅的な打撃を受けることは避けられない。だから、そういう歴史的な背景を踏まえて、ぎりぎりの線として二十二品目が今日残存している。仮にこれを取っ払ってみたところで、アメリカとの貿易額が六百億ドルくらいと見られるわけですが、恐らくその一%になるかどうかという程度のものなんです。アメリカとの関係はその程度のものであっても、たとえばこれを自由化をするというようなことになると、わが国の農業はまさに壊滅的な打撃を受けざるを得ない。ということになるとするならば、やはり通産大臣としても、こういう点について、単にアメリカ側の要求が強いから前向き対応するなどと言うと、どうもわが国の通産省は工業優位政策をとって、農業なんかどうでもいいというふうに考えているのかというような誤解を招きかねない。いまの大臣の答弁の中でもそうですけれども、アメリカだって、EC諸国を見ても、非関税障壁に限らず、この種の制限品目はそれぞれ持っているわけですね。また、現実の問題として、農業に対する保護政策というものを採用している。そういうものを通しながら食糧の自給などというものも国の安全保障との絡みで進めているわけなんですから、私はそういう点についで大臣の所信をもう一回、やはりシビアに対応する、こういうことを承りたいと思っているわけです。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま御指摘がございましたように、貿易摩擦を解消するためには、やはりお互いに言うべきことはちゃんと言い合うということが大事であろうと思うわけでございます。そういう意味で、いまのアメリカの高金利政策につきましても、これはEC諸国からも非常に強い批判が出ておりますが、わが国としても、しばしばいろいろなルートを通じましてアメリカ側にも指摘をいたしておるわけでありますし、まあアメリカ政府としても、いわゆるインフレを抑えるための高金利政策をとっておるわけでありますけれども、しかし物価の上昇率も一けた台にいまなりつつある。こういうことで、私はいつまでも高金利政策を続けておるような状況ではないと思っております。最近、多少金利も下がり始めておる。金利が下がれば、ストレートに日本の為替市場に影響が出てきて、円が直ちに高くなる。こういうふうな状況になっておりますから、このアメリカの高金利政策というのは、日本の為替市場にストレートにつながりがあるというのははっきりわかるわけでございますから、そういう意味におきましても、アメリカの高金利政策に対しては、アメリカがインバランスを大きく主張する以上は、やはりこれからもこの根本原因は高金利政策にあるということは、事あるごとに主張をし、修正を求めることは、私は大事なことであろうと思うわけでございます。  同時に、いま御指摘がございました、その他のいま残っておる日本の残存輸入制限品目、あるいはまた非関税障壁の問題でございますが、私自身が通産大臣として発言をしたわけではありませんで、これに対しては、実は十二月十六日に経済対策閣僚会議を開きまして、総理大臣出席をしまして、そして各閣僚も出まして、わが国としてのこれからの貿易摩擦に対する五項目の対策を打ち出したわけでありますが、その一項目に、いわゆる残存輸入制限品目についてのレビューをして検討を進める、こういうことで合意をしておるわけですから、私はその線に従って物を言っておるわけですから、これは政府全体の決定としていいのじゃないかと私は思っております。  そうして同時に、おっしゃるように、確かにわが国はさんざんな努力をして、残存輸入制限品目については二十七品目まで——農産物が二十二、通産関係が五品目というふうに二十七品目まで落としたわけでありますから、ヨーロッパ等に比べれば、われわれとしてはそれだけ努力成果を上げてきておるわけでございますが、しかし、対米関係ということになりますと、アメリカと比較をすれば、アメリカわが国に対してその残存輸入制限品目が大きな壁であるということを主張するのは、それはそれなりの理屈はあるわけで、アメリカ相互主義を主張する議員は、やはりそういう残存品目があってそれだけの壁をつくっておるから、われわれはそれに対応する壁をつくろう、こういうことを言っておるわけでございます。私たちはそうした相互主義を否定し、相互主義アメリカ全体を覆うことのないようにするためには、やはりわれわれとしてもできるだけの努力は重ねる必要はあるのではないか。自由貿易を主張する以上は、また自由貿易をどうしても守っていこうという以上は、やはり苦しい中でも、それなりの努力は必要であると思っております。  私は、農業問題までここで発言をするのはいかがかと思いますけれども、しかし、農業については確かにむずかしい問題があることも事実であります。いまの農業の実態からいうと、二十二品目、特にビーフであるとかあるいはオレンジであるとかいうものが自由化になれば、これは農村に対して相当な打撃が起こってくることも事実であろうと思うわけでございます。     〔野田委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、そういう中で、ただ自由化ということでなくて、たとえば枠についての話し合いをするとか、そういう道はないわけではないと私は思っております。アメリカが農産物に対して要求しているのは、私はアメリカでも聞いたわけでありますが、とにかく一九八四年三月三十一日までは協定ができておるわけであります。アメリカはその協定の改定の交渉をもっと早目にやろうじゃないか、ことしじゅうにでもやろうじゃないかという要求で、何をどうしてくれということは言ってないわけでございますが、そういうアメリカ側の提案に対しては、やはり自由貿易を守るという見地から一応検討をする必要はあるのじゃないだろうか、こういうふうに私は思っております。何が何でも全部残存輸入制限品目も自由化しろということを私は言っておるわけではないので、それにはやはりあくまでも国内産業の調整を図っていかなければなりませんし、そういう体制ができないで自由化に走るということは非常に危険でありますし、また、おっしゃるように、これを取っ払ったからといって、それじゃどれだけの貿易量がふえるかといっても、いまお話しのように、あるいは六億ドルだとか七億ドルだとか言われる程度でありますから——そんなものじゃないと思いますけれども、しかし、アメリカがそういうことに対して何といいますか非常に象徴的に考えておるということも、またこれは事実である。そうした象徴的に考えておることを一つの理屈にして相互主義法案をどんどん進めておるということも事実でございますので、この辺のところはわれわれとしても冷静に判断をしながら対処する必要がある、こういうふうに思っておるわけでございます。
  69. 清水勇

    ○清水委員 いまの点については、いずれ改めて三月に入って一般質問の折にもうちょっと突っ込んで、注文もございますのでお尋ねをいたしますので、それまで保留というか預かりにしておいてもらいたいと思います。  いずれにしても、先ほども申し上げたわが国農業の実情を、農林大臣をおやりになった貴重な経験をお持ちなんですから、十分踏まえて総合的に考えてもらう、こういうことを希望しておきたいと思います。  さてそこで、きのうでしたか、大臣、たまたま伊藤防衛庁長官の武器共同開発についての政府統一見解なるものに触れて発言をされておられるわけでありますが、武器の共同開発なるものの定義というものが防衛庁の長官が示されたやに私は見ているわけなんですが、まあ定義はわかったわけです。定義のよしあしは別といたしまして、言わんとすることはわかったわけでありますが、それに触れて通産大臣が、共同開発構想に伴い武器の輸出、技術の提供があれば、個々に即し三原則に基づいて対処をしていくつもりであると言われている意味がどうも私にはよくわからないのですが、これは何を言われようとしているのでしょうか。ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 武器並びに武器技術の共同研究開発の定義につきましては、伊藤防衛庁長官から予算委員会で説明をいたしたわけでございますが、この定義で御承知のように、本格的な共同研究開発からその他に至るまでを含んでおるわけでございます。したがって、武器の共同研究開発というものについてはいろいろの対応があるというふうに私は考えておるわけでございます。そこで、これに伴って武器の輸出または武器技術の提供が行われるということになりますれば、その部分について個々のケースに即して武器輸出三原則、政府方針に基づき対処することになるということであります。武器輸出の三原則あるいはまた政府基本方針というのがあるわけですから、そしてわれわれはそれによって武器並びに武器技術については輸出または提供はできないということになっておりますから、その基本方針を踏まえてこれに対応していくということでございます。
  71. 清水勇

    ○清水委員 そうすると、従来通産省が堅持をしてきた方針を変更するということではないわけですな。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 とにかく武器の輸出並びに武器技術の提供につきましては、武器輸出三原則それから政府基本方針を踏まえて対処していきたい。ただ、対米関係につきましては、安保条約との関連もありまして、いまこれのあり方について研究、検討をいたしておる、こういうことでございます。
  73. 清水勇

    ○清水委員 そこで、アメリカ向けについては目下検討中、こういうことでありますから、ちょっと注文をつけておきたいのですけれども、武器輸出三原則というのは、言うまでもなく非核三原則と並んでわが国のいわば国是である、内外に平和国家のあかしとしていわば表明をしたものである、こういう性格を持っていると私は思うのですね。これはずっと従来から堅持をされており、加えて五十一年に政府統一方針が付加をされた。ところが、その後ややルーズになったものだから、去年の堀田ハガネ事件を契機に改めて国会でも議論になり、いろいろの経過はございましたが、最終的に三月に衆議院の本会議あるいは参議院の本会議で院の意思を確定すると同時に、政府に対して重ねて三原則、統一方針及び院の意思を尊重するように、こう言っているわけです。ところが、これが去年の九月、大村・ワインバーガー会談を通してどうもまたおかしくなり始めてきている。というのは、大村・ワインバーガー会談の直後、宮澤官房長官が、いまいみじくも通産大臣がおっしゃっておられるように、対米向けの点については安保条約もこれあり、新しい課題として検討しよう、こう言っているのですけれども、これはどうもつまるところ、言ってみればアメリカわが国に対する防衛費の大幅増額要求、これには全面的にはこたえられない、相当程度こたえ得るにしても全面的にはこたえられない。ゆえに、たとえば武器三原則の運用を弾力化するなどということを通しながら、軍事技術の提供等についてできるだけ協力をしていきましょう、どうもそういう発想から宮澤長官が外務、通産、防衛三省庁にその点についての検討をゆだねている。伝えられるところによると、外務、防衛両省の条約優先論などという考え方に対して、通産の反発、批判がかなり強い。私は通産省なかなかきちっとしているということで常々敬意を表しているわけですけれども、そういうことを通しながら、いずれにしても、いま軍事技術の提供であるとかあるいはいま言う武器の共同開発であるとかいうもについては、対アメリカ向けのものに関しては少し規制を緩めてもいいのじゃないかなどというような発想が今後起こるとすると、これはまさに重大な政策変更になるわけでありますから、この点大臣からしかと所信を承って、私どもに安堵をさせていただきたい、こう思います。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まさにその点につきまして、実は通産、外務、防衛三省で協議、検討をいたしておるわけでありまして、いまだ結論に達してない、こういうことでございます。
  75. 清水勇

    ○清水委員 今国会はそういう態度で臨もうということになっておられるようでありますから、やむを得ません。  そこで、この武器問題の最後に一つだけ大臣の所感をお聞きしておきたいことがあるのです。  実はロックフェラー研究所の報告というのが昨年出ているのですけれども、それによりますと、日本は将来武器輸出国となり、米国の脅威的競争国となる可能性もあり、他国との競争には勝利をおさめるだろうなどというショッキングな内容が記載をされているのです。私は、率直に言って、仮にわが国が武器禁輸政策を放棄する、そして世界の武器市場に自由に参入をするといったことを想定した場合に、わが国の産業技術の面での潜在能力などから判断をしますと、ロックフェラー研究所の言うように、短期間に武器輸出大国になるといった可能性を秘めているのではないか。ですから、武器輸出問題についてはまさにきちっとしてもらう必要がある。かてて加えて、ただでさえ貿易摩擦でこういう事態を迎えているときに、武器でまで競争するなんということはする必要もないし、またあってはならないことだと私は思うわけです。そういう面からも武器輸出三原則などなど一連の方針を引き続き堅持をしていく、このことが平和国家たるわが国の使命ではないか、こういうふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 現にわが国としては、重要政策として武器輸出三原則並びに政府基本方針を持っておりますし、また国会の決議のあることも御承知のとおりでございます。そうした中において現在われわれが検討をいたしておるのは、日米間の武器技術についての提供、交流について三省庁間において検討しておる、こういうことでございまして、その結論にまだ至ってないということは先ほどから申し上げたとおりであります。
  77. 清水勇

    ○清水委員 この際に、先日の大臣の所信演説の中で日航製の廃止の問題について触れておられますから、基本的な一、二の点だけただしておきたいと思います。また、具体的な点は明日水田委員の方からお尋ねをいたしますから、お答えをいただきたいと思います。  率直に言って、政府が、もうわが国では航空機の開発をやめるんだ、こういう発想に立つならば、これは話は別なんですけれども、現実にYXXの開発予算に五十七年度十五億円ほどつけようとしている、こういう点から言っても、引き続き航空機開発のために力を入れていく、こういう態度であることは紛れもない事実だと思うんですね。そうだとするならば、つまり引き続き航空機の開発を続けていくんだとするならば、あの評価の高いYS11を開発をし、現在なお百六十機が世界の空を飛んでいる、こういうすぐれた技術なり、いまなおプロダクトサポートなどを通してさまざまなノーハウなどを提供をしている日航製の持つ技術集団といいましょうか、そういうものをどうして散逸をさせるような、そういう方向をとろうとするか、私はどうもわからない。歴代の通産大臣は異口同音に、蓄積された日航製の技術やノーハウを今後の航空機開発に貴重なものとして充当をしていきたい、したがって、その技術やノーハウも分散をさせるようなことは考えない、こういうことを言われてきている。担当局長もそう言っておられる。ところが今回五十七年度末をもってこれを廃止をする。長い間つぎ込んできて、一定の技術なりノーハウなりを確保したもの、これを失うということは、いかにもこれまでつぎ込んできた国費を浪費をするという結果になりはしないか。今日、たとえ行革ということが言われるにしても、航空機開発になお日航製の果たすべき役割りが当然ある。現にことしの七月で終わろうというYX協会に対しても一定な役割りを果たしてきている。ですから、この点、今回重大な方向転換をされようとしているのかどうなのか、どうも意味がよくわかりませんので、まず基本的に承りたい。
  78. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、私から基本的な問題について申し上げますが、この日本航空機製造株式会社問題については、今後の航空機開発体制のあり方も含めて、航空機・機械工業審議会におきまして非常に検討をいたしたところでありますが、その検討の結果を踏まえまして、昭和五十七年度末までに業務の民間委託を完了し、解散する旨の結論を得まして、閣議の了解を得ることにいたしたわけでございます。こうした閣議の了解を踏まえて解散ということに実は踏み切ったわけでございますが、今後とも民間航空機の開発は行っていかなければならぬわけでありますし、あるいはこれまで蓄積をされた貴重な技術、ノーハウというものは、これを生かし、育てていかなければならぬわけでございますし、そういう面については、民間体制をつくって行う、それに対しては、政府としても全面的な支援を行って、今後の航空機開発について支障のないような体制を図っていきたい、こういうふうに基本的に考えておるわけであります。
  79. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま基本的には大臣が御説明申しましたとおりでございますが、この将来の日本民間航空機産業をどう育てていくかという点につきましては、航空機・機械工業審議会で十分慎重な検討が行われまして、その結果、今後の日本の航空機工業のあり方というものは、民間のバイタリティーを活用してやっていくということを基本とする。ただし、開発段階においては非常にリスクが高いので、その点については、国としてもそのリスク、これは資金を含めてでございますが、分担していくということでやるという方針になったわけでございまして、もちろんそういうことでやっていくわけでございますが、その場合、日航製は従来YS11を開発してきた、こういう経験もございまして、この知識、ノーハウということは当然生かすということでございますが、この方式は、御承知のように、ことしの七月で終わりますYXの開発につきまして十分経験が生かされておるということでございまして、そういう方式がいわばわれわれは定着しておる、このように考えておるわけでございます。したがいまして、今後日航製が仮に民間に移管されるということになりましても、その職員の方々というのは、さらに今後YXX、またさらに何かあるかと思いますが、そういうところでやはり十分活躍していただくということが基本になろうかと思いまして、そういう意味で解散後の日航製の職員の身の振り方といいますか生き方につきましては、雇用主であります日本航空機製造がいろいろといまお考えいただいているわけですが、できるだけそういう航空機部門の民間の会社へ職をお移りいただきまして、その上で今後の開発段階におきまして、いろいろとまたプロジェクトごとに御活躍いただく、このような方向でわれわれも支援していきたい、このように考えております。
  80. 清水勇

    ○清水委員 いま基本的な点でどうも納得がいかないのですけれども、たとえばこれからも引き続いて航空機の開発を続けていくんだ、そのために日航製に蓄積をされた技術やノーハウを活用していくんだ、こう言われるわけでしょう。ところが現実には日航製は解散をし、廃止をする。これは結果としてその技術やノーハウは散逸をする、こういうことになら、ざるを得ないと思うんですね。現に、いままで通産の事務当局で進めている動きを見てみますと、まあ考えてみれば、商法の規定によって事務的、手続的に言えば、株主総会の議決を得れば解散をすることができるんだ、だから四の五の言わなんで、とにかく解散をする、そして、さてその職員をどうするのか、また技術やノーハウをどう生かすのかというような、ややボタンのかけ違いというような話がこっちにあったのだけれども、そういう感じがしてならないんですね。たとえば、現に百六十機、YS11が世界の空を飛んでいる。これについては、プロダクトサポートの仕事を民間に委託をする。しかし、仮に重大な事故が発生した場合に、プロサポの仕事を委託をされた会社がその責めを負うなんということは考えられないでしょう。当然その責任は政府がしょわなければならない、こういうことが一つあるのじゃないですか。それからさらに、たとえばYXXならYXXというこれから開発をすべき航空機を考えた場合、開発には大変なリスクが伴う。だから、どうしても政府が全面的にバックアップをしていかなければならぬ。バックアップの中には相当な資金も補助その他の形でつぎ込んでいくということになるのだろうと思うのですね。そうだとするならば、ちょうど日航製を一つの集団として活用しながらYXの開発に当たった。同じまうにYXX等の開発に今後当たるというような道がとれないはずはないし、またとることがいわゆる技術やノーハウを生かす道になるのじゃないか。ところがどうも解散ということを前提にして、臨調や行革の絡みでどこか一つ切らなければいけないからというわけで日航製をやり玉に上げるというような発想でこの問題の処理をしようとすると、やはりどうも悔いを後世に残すことになりはせぬか、私はそんな感じがしてならぬものですから、もう一回承りたい。
  81. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま御指摘の点幾つかございますので、それぞれ申し上げたいと思います。  第一に、商法の規定で解散できるということで、いや、そんな簡単なものじゃないということでございますが、その点は御指摘のとおりでございまして、手続としては、株式会社でございますから、当然そういう手続を踏むわけでございますが、日航製問題は航空機政策全般にかかわる問題だということは、われわれ十分理解しておるつもりでございます。そのために、審議会でも十分議論をして、今後の日本民間航空機工業のあり方について考えたわけでございまして、その結果、先ほど御説明したような次第でございます。もちろん、そういう重要な問題でございますから、この場でいろいろと御審議もいただいたり各方面の御理解をいただいて円滑に進めたい、こう思っておる次第でございます。  ところで、いま先生から御質問のありました、どうせ次から次へと開発していくときに、どうして日航製を解散しなければいけないのか、そういうことでございました。それをそのまま生かして、残して生かす方法があるのではないか、こういう御指摘であったと思いますが、その点につきましては、御承知のように、日航製は非常に赤字が出ておるわけでございます。それはともかくといたしまして、開発、生産、販売といういろいろな段階で、開発段階について申しますと、開発段階において要る人の数あるいは人の質というのは非常に違うわけでございまして、YS11のときも最初の非常に少ない段階からピーク段階で非常に多くなってくる、またさらに減ってくる。これはYXあるいはYXXについても同様でございまして、そういう開発段階についていろいろと政府が補助をしてやるにしても、どういうことが一応限られた財政の中あるいは効率的な資金の運用としていいかということになりますと、それはいわゆる民間にいた人々がそのプロジェクトごとに集まってやっていくということが非常に合理的であるわけでございまして、そういう観点から、たとえ国が助成するにいたしましても、そのような最も合理的な方法で効率よく、しかも大きな金を出してということを考えざるを得ないのではないか、このように考える次第でございます。  YS11の開発段階におきましても、必ずしも日航製プロパーの方だけではなくて、ピークの時期に関しましては、非常に多くの民間人が出向してきまして一緒にやったわけでございまして、そういう方法を、今後もYX方式で、財団法人でございますが、そこへ出してやっていくということが大事じゃないか。民間の知識の蓄積もございますが、日本航空機製造の職員の持っているノーハウというものも民間航空機会社や機体各社に移るということでそれが保存されるわけでございまして、それがプロジェクトごとに結集されるというかっこうでこのノーハウ、知識というものは生かされるべき問題か、このように考えております。  それから、第二のプロダクトサポートの件でございますが、先生御指摘のように、これは非常に大事な問題でございまして、百六十機いま飛んでおるということでございますが、これにつきましては、航空機工業審議会でも十分審議が行われまして、いわゆる製造者責任の問題、運航者に対する技術支援の問題、部品製造事業者に対する支援、指導の問題あるいは部品供給体制についていろいろ問題がございまして、これは少なくとも民間に移管することによっていままで日航製がやっていた程度より下がるということが絶対にあってはならない、こういうことが指摘されておるわけでございまして、これは日本の航空機工業の名誉のためにも当然のことであると考えておる次第であります。このため、日航製の業務の移転先に関しましては、まず技術的に十分それに対応できるという能力を有する適切な会社ということでいま選定されておるわけでございまして、この点に関しましては、日航製とYS11に参加いたしました機体各社の間でいろいろ調整を進めているということでございます。また、仮に移管するとすると、その移管した先においても十分その実施体制が図られなければいけないということでございますので、この点は航空安全当局とも十分協議を行って、プロダクトサポート体制が満足にいくようにということを考えておるわけでございます。  なお、機体各社の方からは、従来日本航空機製造がいろいろプロダクトサポートをやっておるときに、機体各社はそれぞれ支援をしていたわけですが、今後特定の民間の企業にこの事業部が移管されたとしても、ほかの各社も十分これに協力するという意向を表明いたしております。  最後に、先生御指摘のいわゆる製造責任といいますか、設計上、製造上の瑕疵が起こったときにどうなるのかということでございますが、この点につきましては、YS11の設計、製造に関与した関係者、これは国を含めて瑕疵に応じて賠償責任を負うということになろうかと思います。この点、民間移行に際しまして航空機製造という窓口がなくなるわけでございますが、その点の窓口をはっきりさせるということでこれに対処していきたい、このように考えておる次第でございます。
  82. 清水勇

    ○清水委員 時間が参りましたが、委員長及び委員皆さんにお許しをいただいて、最後に一つだけ簡単に聞きます。いまの点は、やりとりしていきますとまだ時間がいっぱいかかりますから、あした同僚委員にやってもらいます。  きのう通産大臣が予算委員会で、いわゆる九電力のあり方について見直しを示唆されるごとき発言をなさって、やや小なさセンセーションを起こされているので、その点だけお尋ねをしたいと思います。  私は、基本的には大臣の言われる方向に賛成なんです。あれこれとその理由は申し上げません。たとえば電力コスト一つをとってみても、九電力間に格差が現に生じておりますし、それが料金に不均衡という形ではね返っている。余剰電力の九電力間の融通というような問題があっても一定のロスが出る。電源立地をめぐっても何か各社競争でやる、そういう面でのむだなしとはしない。あるいは国策会社である電源開発株式会社の存在もあるわけでありますから、これやそれやを考えますと、今日九電力が果たしている役割りと機能は非常に大きい。それだけに、今後を思うと、九電力の現状体制で果たしてベターと言えるのかどうか、もっとベターな方向があるのじゃないか、こういうことはかねがね与野党を超えて意見のあるところだと思うのです。ですから、そういう意味では、八〇年代を展望されて大臣が積極果敢にああいう発言をされたということは非常に意味があると私は受けとめているわけです。  ただ、その中で一つ問うておきたいのは、たとえばわが国の産業を見ておりますと、優位産業を中心発展をするというような不均等発展の傾向が現にあらわれておるわけですね。基礎素材産業などの場合に、いま非常に構造不況に陥っている。その背景の大きなものとして、たとえばアルミにしても紙にしても何にしてもそうなんですけれども、格安な海外の電力コストを基礎とした製品と競争ができない、こういうようなことがありまして、たとえば政策電気料金制度といったようもなのが考えられないかとかねがね言われている。しかし、電力というものを売る場合には原価主義なんだ、こういうことが堅持をされてきているわけですから、そうしたことなどにも思いをいたしながら、総合的に電力供給体制といったようなものに触れておっしゃっておられたんだろうかなと思うわけでありますが、ひとつ所信を承って私の質問を終わることにいたします。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 きのうの予算委員会の答弁、多少舌足らずなところがあって誤解を招いた面もあったかと思うのですが、実は、九電力のあり方をどう思うか、こういう御質問がございました。これに対しまして私は、あの九電力分割当時から今日に至る経過を見ると、九電力が電力の安定供給の上に果たした役割りというものは非常に大きいということを評価しながら、基本的には今日の体制でこれからのいろいろな問題に対しても十分対処できるというのが私の考えでございますが、しかし、八〇年代のエネルギーの問題というものは、いまこそ需給が安定しているとはいえ、まさにいつ第三次石油ショックも起こりかねないというふうな情勢も起こってくるわけでございますから、そういうことを考えると、八〇年代はエネルギーについては非常に変動が予想される、そういう情勢の中にあって私たちは、やはりエネルギー問題というものは、もし一歩しくじれば、日本民族の命運にかかわる最大の政治課題である。したがって、エネルギー政策全体については、やはりこれから中長期にわたってのあらゆる面からの総合的な検討を進めていかなければならない、こういうふうに答えたわけでありまして、実は九電力について再検討するということじゃなくて、エネルギー政策全体について一般論として再検討を進め、検討を進めていかなければならぬ、こういうふうに申したわけでございますが、それが九電力等の再検討というふうに結びつけられたように思うわけでございまして、これは多少舌足らずの点があったと思うわけでございます。ですから、私は、先ほど申し上げましたように、やはりいままでの九電力の果たした役割り、そして今日も果たしつつあるその役割りというものは評価をしなければならぬと思うわけでございますが、ただ、いまお話がございましたような、これからのエネルギー対策、同時にまた、いまわが国の産業が直面している不況というふうな実情、これをどういうふうにして救済をしていくかということも、特に電力多消費産業についてはいろいろの角度から考えていかなければならない、こういうふうには思っておるわけでございますが、需給調整等も十分踏まえながら電力多消費産業の安定を図っていくためには最大の努力をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  84. 清水勇

    ○清水委員 終わります。
  85. 渡部恒三

    渡部委員長 次回は、明二十四日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十五分散会