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1982-04-22 第96回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十二日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 唐沢俊二郎君    理事 今井  勇君 理事 大石 千八君    理事 丹羽 雄哉君 理事 深谷 隆司君    理事 金子 みつ君 理事 田口 一男君   理事 平石磨作太郎君 理事 米沢  隆君       小沢 辰男君    金子 岩三君       竹内 黎一君    戸沢 政方君       長野 祐也君    浜田卓二郎君       牧野 隆守君    山下 徳夫君       大原  亨君    川俣健二郎君       川本 敏美君    田邊  誠君       栂野 泰二君    中村 重光君       永井 孝信君    森井 忠良君       西中  清君    小渕 正義君       浦井  洋君    小沢 和秋君       菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 森下 元晴君  出席政府委員         厚生大臣官房会         計課長     坂本 龍彦君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省援護局長 北村 和男君  委員外出席者         議     員 森井 忠良君         外務大臣官房外         務参事官    遠藤 哲也君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   池端 清一君     大原  亨君   田邊  誠君     中村 重光君   塩田  晋君     小渕 正義君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     池端 清一君   中村 重光君     田邊  誠君   小渕 正義君     塩田  晋君     ――――――――――――― 四月二十一日  老人保健医療制度改善に関する請願外一件(  田邊誠君紹介)(第二四三九号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願(  小川省吾紹介)(第二四四〇号)  同(加藤万吉紹介)(第二四四一号)  同(川本敏美紹介)(第二四四二号)  同(田口一男紹介)(第二四四三号)  同(上田哲紹介)(第二四九九号)  同外二件(斎藤実紹介)(第二五〇〇号)  同(渡部一郎紹介)(第二五〇一号)  同(長田武士紹介)(第二五四二号)  同外一件(吉浦忠治紹介)(第二五四三号)  同(枝村要作紹介)(第二五七八号)  同(沖本泰幸紹介)(第二五七九号)  同(角屋堅次郎紹介)(第二五八〇号)  民営旅館業の経営安定に関する請願今枝敬雄  君紹介)(第二四四四号)  同(野中英二紹介)(第二四四五号)  同(宮崎茂一紹介)(第二四四六号)  同(住栄作紹介)(第二五〇二号)  同(渡辺省一紹介)(第二五〇三号)  同(愛野興一郎紹介)(第二五四四号)  同(保利耕輔君紹介)(第二五四五号)  同(細田吉藏紹介)(第二五四六号)  同(山下元利紹介)(第二五四七号)  同(渡辺省一紹介)(第二五四八号)  同(奥田敬和紹介)(第二五八一号)  同(亀井善之紹介)(第二五八二号)  同(川田正則紹介)(第二五八三号)  同(北口博紹介)(第二五八四号)  同(小宮山重四郎紹介)(第二五八五号)  同(塩川正十郎紹介)(第二五八六号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第二五八七号)  同(橋口隆紹介)(第二五八八号)  同(浜田卓二郎紹介)(第二五八九号)  同(森喜朗紹介)(第二五九〇号)  同(渡部恒三紹介)(第二五九一号)  同(渡辺省一紹介)(第二五九二号)  年金官民格差是正に関する請願田邊誠君紹  介)(第二四五六号)  身体障害者に対する福祉行政改善に関する請願  (田邊誠君紹介)(第二四五七号)  障害福祉年金受給者所得制限廃止に関する請  願(田邊誠君紹介)(第二四五八号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願  (田邊誠君紹介)(第二四五九号)  同(中路雅弘紹介)(第二四九六号)  在宅重度障害者介護料支給に関する請願(田  邊誠君紹介)(第二四六〇号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願(田  邊誠君紹介)(第二四六一号)  無年金脊髄損傷者救済に関する請願田邊誠君  紹介)(第二四六二号)  在宅重度障害者暖房費支給に関する請願(田  邊誠君紹介)(第二四六三号)  身体障害者の雇用に関する請願田邊誠君紹  介)(第二四六四号)  同(中路雅弘紹介)(第二四九七号)  労災重度被災者暖房費支給に関する請願(田  邊誠君紹介)(第二四六五号)  労災脊髄損傷者遺族年金支給に関する請願  (田邊誠君紹介)(第二四六六号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願  (田邊誠君紹介)(第二四六七号)  重度障害者福祉手当増額に関する請願田邊  誠君紹介)(第二四六八号)  旧々労災被災者労働者災害補償保険法適用に  関する請願(田邊誠君紹介)(第二四六九号)  同(中路雅弘紹介)(第二四九八号)  労災年金最低給付基礎日額引き上げに関する  請願(田邊誠君紹介)(第二四七〇号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願(山原  健二郎紹介)(第二四九五号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願天野公  義君紹介)(第二五三九号)  同(加藤紘一紹介)(第二五九三号)  理容師資格免許制度堅持に関する請願(澁谷  直藏君紹介)(第二五四〇号)  国立腎センター設立に関する請願中井洽君紹  介)(第二五四一号)  療術の制度化促進に関する請願外一件(小沢辰  男君紹介)(第二五七七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第三九号)  原子爆弾被爆者等援護法案森井忠良君外六名  提出衆法第一三号)      ――――◇―――――
  2. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び森井忠良君外六名提出原子爆弾被爆者等援護法案の両案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丹羽雄哉君。
  3. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 原爆特別措置法改正案と五党提案原爆被爆者等援護法案提案されておりますが、まず最初に五党提案について森井議員に一、二お尋ねしたいと思います。  提案説明の中で森井議員は、原爆投下国際法違反である、戦争に負けても、違法な行為をされたのだから当然アメリカに賠償要求できる、それを国は、日本国政府平和条約で放棄したのだから、被爆者国家補償を要求するのは当然の権利である、こういう組み立て方をしていらっしゃるわけでございますけれども、そもそも戦争状態においてどの行為国際法違反であり、どの行為国際法に反してない、こういう論議は余り意味がないことではないか、こういうふうに私は思うわけであります。戦闘行為に対して実効性があるとは思えない国際法の問題をあえて持ち出している根拠を、まず最初にお聞きしたいと思います。
  4. 森井忠良

    森井議員 戦時国際法というのは、戦争が始まりまして、そしてその交戦国を拘束する覊絆、法律でございます。したがいまして、もちろんこういった国際的な条約が締結をされる場合には、通常平和時に締結されることが多いわけでございますが、あくまでも紛争が起きた場合にお互いにこれとこれは守ろうではないかということで戦時を想定して戦時国際法というのはできたものでございます。したがいまして、交戦国の間では全く意味をなさないという議論には至らないと思っておるわけでございます。  それから今度の場合、私ども原爆国際法違反だと明確に位置づけておるわけでございますが、それは例のヘーグの陸戦法規、それを根拠にいたしております。これによりますと、毒ガスあるいは細菌兵器生物化学兵器といった大量、無差別に殺戮をする兵器はいけないということになっているわけでございます。これと原子爆弾と比較いたしますと、いま申し上げましたような爆弾よりははるかに残虐性の強い兵器だということで、私ども毒ガス生物化学兵器以上の兵器であるという位置づけをいたしまして、明確に国際法違反だ、こう位置づけておるわけでございます。
  5. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 私が議員にお尋ねしたいのはそういうことじゃないのです。確かに私も原爆は明らかに国際法違反である、この事実は認めるわけでございますけれども、その傷害作用の差はありますけれども、二十年三月十日東京に行われた焼夷爆弾によるじゅうたん爆撃、これも私は国際法違反である。それから浜松の艦砲射撃、これも無差別国際法違反である。私、決して国際法違反がいいということを言っておるわけではないわけでございまして、皆国際法違反によって行われている。それで国際法違反によって被害をみんな受けているわけでございまして、戦争によって被害を受けた大部分の国民補償しなければならない。  そこで問題は、一般戦災者戦災者の中には子供を亡くしたりあるいは片足を失ったりした方もおるわけでございまして、問題は、こういう戦災者とこの被爆者との間の関連をどうするか、これは私は大変むずかしい問題ではないか、こういうふうに考えるわけでございます。この区別をどういうふうにするか、もう一度お聞きしたいと思います。
  6. 森井忠良

    森井議員 よく言われるわけでございますが、戦争犠牲者にはさまざまな形態があると思うわけでございます。たとえばいまの例で申し上げますと、焼夷弾等によりまして無差別爆撃を受ける、そういう場合には家屋等財産被害も当然出てくるでしょう、それから身体、健康上の被害も出てくるわけでございます。私ども考え方は、財産被害は言いたいところだけれども、これはやはりいまの諸情勢から見ると財産被害まで要求するというのは非常にむずかしい。そういった観点から自制をいたしまして、健康被害あるいは生命被害に限って国家補償を要求してきたという経過があるわけでございまして、その気持ちは変わりません。  しかし、それにいたしましても、原爆被爆者といま御指摘になりましたような一般戦災者との関係におきましても、たとえば亡くなった方の遺族については同じようなことが言えるじゃないか、あるいは体に障害を受けられた方についても原爆被爆者と何ら変わらないじゃないか、そういった意見があるわけでございますけれども、私どもは、結論から申しますと、いずれも少なくとも生命身体被害については国家補償すべきであるという考え方に立っていますが、その中でもやはり緩急順序をつけざるを得ない。国の予算にも限界がございましょうし、国民的な世論からしてもやはり順序をつけるべきだろうということで、まず原爆被爆者救済に努力したい、こういうことで御提案を申し上げておるわけでございまして、先生すでに御案内のとおり原爆の熱線、爆風あるいは放射能による障害、こういったものは一般戦災者の方と比べて非常に厳しいものがある。しかも原爆の場合は一発の爆弾瞬時にして何十万という方の生命を失うというふうな残忍さがございます。かてて加えて、放射線障害をお受けになった方は、戦後三十七年たっていますがいまもってまだ原爆に起因するところの疾病で呻吟をしておられるわけでございまして、まずそういった方から救済をしていこうじゃないかという形で、順序をつけているわけでございます。  しかし、私どもとしては、いま申し上げましたように、たとえば遺族というふうな場合を考えますと、一般戦災者の方も原爆で亡くなられた方もそういう意味では同じような立場にありますから、弔慰の念をあらわす具体的な方法としては、やはり一般戦災者のことも当然考えてやらなければいけませんし、現に私どもは各野党と御相談をいたしまして、毎年参議院に戦時災害援護法という一般戦災者対象にした援護法案提案しておるわけでございます。
  7. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 被爆者に手厚い保護を加えるということについては、私も全く森井議員と同様でございます。  森井議員への質問はこの辺で終わらしていただきまして、次に厚生省にお尋ねしたいと思います。  被爆者に対する重要対策の一つとして、原爆投下によって亡くなられた方に対する弔慰金及びその遺族に対する遺族年金支給を要求する声が年年高まってきているわけでございます。原爆投下によって一瞬時に、または長い苦しみの末に亡くなった人たちに対し弔慰の念をいま新たにすることは、心情として私は当然のことではないか、こういうふうに考えておるわけでございますけれども、なぜこの弔慰金が出せないのか、その理由をお聞きしたいと思います。
  8. 森下元晴

    森下国務大臣 原爆被爆者対策は、被爆者原爆被爆による健康上の特別の状況に着目いたしまして、この特別の犠牲に対して広い意味における国家補償見地から相当の補償を行おうとするものでございます。原爆死没者やその遺族につきましては、このような意味における特別の犠牲を受けたものと認めることはむずかしく、これらの者に弔慰金等支給することは一般戦没者の方々やその遺族の間の均衡を失する、そういうことでいま御質問弔慰金支給は行っておらないというのが実情でございます。
  9. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 いま大臣一般戦災者との均衡という点を指摘しておったわけでございますけれども、しかしすでに被爆者が亡くなった場合は葬祭料として九万七千円ですか、これを支払っているわけですね。この葬祭料弔慰金とを区別する理由は何か。葬祭料をもうすでに支払っているならば弔慰金を支払っても決しておかしくないんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。不幸にして原爆投下によって亡くなられた方方に対して、弔慰金を出してそして弔慰の念を示すことを、私はそろそろ前向きに検討する時期に来ているのではないか、こういうふうに考えますけれども、もう一度この問題についてお聞きしたいと思います。
  10. 三浦大助

    三浦政府委員 私ども弔慰金葬祭料とは違うものだというふうに考えておるわけでございます。
  11. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 ちょっとそれでは答弁にならないわけですよ。要するに、葬祭料をもうすでに払っているから、弔慰金と私が言っておりますものと葬祭料区別はどういうふうに違うのか、これをもうちょっと明確に言ってください。
  12. 三浦大助

    三浦政府委員 弔慰金と申しますのは、亡くなった方に対して弔慰の念をあらわすというふうに考えておるわけでございます。それから葬祭料というのは、これはいろいろお世話をしてきて亡くなった方に対する、これは弔慰とはまた別の感じでございますが、まあ弔慰の念を表するという――申しわけございません、こういう不安な日常生活を余儀なくされております特別被爆者への国家的な関心の表明と申しますか、そういう意味でお支払いをしておるということでございます。
  13. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 余り答弁にならないような気がするわけでございますけれども、ひとつこの問題をきちんと被爆者が納得できるように、十分に勉強して、違う機会に再答弁をしていただきたいというように考えておりますけれども、この問題はこの辺で私はやめておきます。  それで、今度の改正案内容としては、手当額の修正を中心とする簡単なものになっておるわけでございますけれども、まず手当引き上げ額、あるいはその根拠についてお尋ねしたいと思います。
  14. 三浦大助

    三浦政府委員 今回御提案しました改正案の中身でございますが、これは原子爆弾被爆者福祉の向上を図るために、老齢福祉年金の額を基準として定めてございまして、被爆者に対しまして支給される各種手当の額をこの九月から引き上げるものでございます。  改正内容といたしましては、医療特別手当というのがございますが、一応この額の標準を健康管理手当に置きまして、健康管理手当老齢福祉年金の額を同一にしてございます。この医療特別手当につきましては健康管理手当の四倍プラス二千円ということでございまして、月額九万八千円が十万二千四百円ということでございます。  それから特別手当につきましては、これは健康管理手当の一・五倍ということで、月額三万六千円を三万七千七百円ということにしてございます。  それから三番目に、原子爆弾小頭症手当というのがございますが、これは健康管理手当の一・四倍で月額三万三千六百円が三万五千百円ということになっております。  それから四番目に健康管理手当でございますが、先ほど申し上げましたように老齢福祉年金とこれは同額で、月額二万四千円が二万五千百円ということになっております。  それから五番目が保健手当でございまして、これは月額二万四千円を二万五千百円、これは健康管理手当同額でございます。  以上でございます。
  15. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 いま局長からの説明で私ちょっと一つ疑問に思うことは、管理手当の額が国民年金法に基づく老齢福祉年金と常に横並びというか同額にしているわけでございますけれども、なぜ同額にする必然性があるのかということをまずお聞きしたい。  それからこれですと、いつもそうなんですけれども被爆者対策として老齢福祉年金が決まってから初めて各種手当を決めるというのでは、どうも積極性というか自主性に欠けているのではないかという気がするわけでございますけれども、その点についてどういうふうにお考えですか。
  16. 三浦大助

    三浦政府委員 この老齢福祉年金同額に考えておるという理由につきましては、これは国民的な合意を得ることができる妥当なものじゃないだろうかという考え方に立っているわけでございます。したがいまして、原爆被爆者に対して支給される各種手当の額につきましても、これは老齢福祉年金等他公的年金給付との均衡を考慮するという意味で、原爆手当趣旨とかあるいは内容を勘案して決めておるということでございます。
  17. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 いま均衡を配慮するということでおっしゃったわけですけれども、もともと、私これを調べてみますと、同じであったわけじゃないのですね。四十三年に特別措置法をつくった当初の制度特別手当が一万円、健康管理手当は三千円、そして一方の老齢福祉年金の方はたった千七百円だったのです。ところが四十九年になっていつの間にか健康管理手当老齢福祉年金同額特別手当は一・五倍ですか、一・五倍にするというようなルールというか、不文律というか、こういうものができ上がってしまったわけでございまして、これでいきますと発足当初は健康管理手当年金の二倍弱である。特別手当は十倍近くも実際はあったわけでございまして、これが同額あるいは一・五倍ということでは何か大幅に後退したような印象を受けざるを得ないわけでございます。特に医療特別手当はいまなお被爆の後遺症に悩まされている人たちでございますので、この算定基準そのものを私は見直すべきではないか、こういうふうに考えておるわけでございますが、いかがですか。
  18. 三浦大助

    三浦政府委員 私どもこの手当の額につきましては、先ほど申し上げましたように、公的給付との均衡を考慮していま考えておるわけでございますが、御指摘ございましたような医療特別手当の額につきましては、近距離被爆者の処遇について重点的に配慮すべきだ、こういう原爆被爆者対策基本問題懇談会意見もございまして、原子爆弾傷害作用に起因する負傷または疾病状態にある旨の厚生大臣認定を受けました被爆者であって、現に認定にかかわる負傷または疾病状態にある者に対して支給される手当といたしまして昨年度創設されたわけでございまして、今回その額を九万八千円から月額十万二千四百円にしたわけでございますが、この医療特別手当につきましては、今後とも私どもこの基本問題懇談会趣旨にのっとりまして、公的な給付均衡をも考えながら、これはこれからも予算折衝の段階で増額は図っていきたい、努力していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  19. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 それでは、次に所得制限の問題を取り上げたいと思います。  まず最初に、所得制限の基本的な考え方、あるいはいまどういう範囲において所得制限が行われているかについてお聞きしたいと思います。
  20. 三浦大助

    三浦政府委員 各種手当所得制限の問題でございますが、放射線障害の実態に即した救済措置を重点的に講じなければならぬという見地から、多量の原爆放射線影響によって現に健康障害のある被爆者に対して支給されております医療特別手当、それから原子爆弾小頭症手当、こういうものは所得制限を撤廃しておるわけでございます。その他の健康管理手当とかあるいは保健手当等につきましては、その給付対象者が現に健康障害がない、あるいはあっても放射線障害との関係が間接的でございますので、これは所得制限を撤廃することは私ども困難じゃないだろうかというように考えておるわけでございます。
  21. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 所得制限というのはたしか九六%まで認められて、それで四%がひっかかるということですね。いまこのことについてちょっとお話なかったわけでございますけれども、それはそれでよろしいのですね。
  22. 三浦大助

    三浦政府委員 御指摘のとおり四%でございまして、この額が大体二億六千万ぐらいに相当いたします。
  23. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 それで、問題はこの四%なんでございますけれども、この四%のために被爆者手続というのは大変めんどうくさいわけでございまして、三月の納税申告を済ませますとすぐに納税証明書を取って、そして特別措置法手続を備えなければならないということでございまして、これはいま行政改革が行われておりますけれども、まず行政簡素化に反するのではないか。  それからもう一点、なぜ四%というものを所得制限対象にしたのか、この数字の根拠をお聞きしたいと思います。
  24. 三浦大助

    三浦政府委員 前段の御質問ですが、これは広い意味国家補償という見地に立って救済をしておるわけでございますから、直接原爆放射線による健康影響があるという医療特別手当支給されておられる方、あるいは原子爆弾小頭症手当についてはこれは撤廃しておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように現に健康障害がない、あってもまたそれは非常に間接的なものであるということでございますので、これは広い意味における国家補償という面からでなくて、また別な面から考えなければならないのじゃないだろうかということで、所得制限をしておるわけでございます。  それからその額につきましては、私どももいろいろなほかの制度との均衡も考えながらやっておるわけでございますので、今後この点についてはまたいろいろ検討もしてまいりたいと考えております。
  25. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 いま局長答弁をお聞きしますと、私が質問したことに答えてないと思うのです。なぜ四%だけを所得制限するような根拠にしたか、要するに制限する理由はなぜかということをお聞きしているわけでございますけれども、これはなかなかむずかしいようですから、私はあえてこれ以上武士の情けでお聞きしませんけれども、ただいろいろ調べてみますと、かつて八〇%まで認められていたという時代もあるわけです。それからだんだん上がって九六%まで来たわけですね。もうあとわずか四%なわけですよ。現に医療特別手当あるいは原子爆弾小頭症手当、これも五十六年までは所得制限がかかっていたわけでございますけれども、五十六年から所得制限を撤廃しているわけです。先ほどから私が申し上げているように、被爆が原因で病気やけがをしたと認定されている人たちに対する特別手当あるいは健康管理手当については、たったの四%なんですからこの際思い切ってこれを撤廃する方向で検討することができないかどうかということを、まず一点お聞きしたい。  それから、それとともにこの被爆によって身体的、精神的、さらに社会的後遺症に非常に苦しんでいるわけでございますし、現に悩み続けている人たちも多いわけでございますから、これは所得にかかわらず公平に援護の手を差し伸べるということが私は真の思いやりのある行政施策ではないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、この点についてもう一回だけ御答弁願います。
  26. 三浦大助

    三浦政府委員 この所得制限の撤廃につきましては、私どももいままでもいろいろ努力をしてまいったわけでございます。原爆基本懇の答申でも「広い意味における国家補償見地に立って」という内容の報告をいただいたわけでございますが、先ほど申し上げましたようにやはり放射線による健康影響の特別な被害ということでございますので、そちらの方は所得制限は撤廃した。これは先ほど申し上げましたように健康障害がない、あるいは非常に間接的なものであるので、この辺区分したということでございますが、毎年毎年私ども予算の時期になりますとこれは当然検討もしておることでもございますので、先生の意を体して検討はさせていただきたいと思います。
  27. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 前向きに検討するということでこの問題についてはこれで質問を打ち切りますけれども、もう一点お聞きしたいのは介護手当の問題ですけれども、これも非常に深刻でございまして、重度の被爆者は常時介護を必要として、その介護費用の必要額を自分で負担しているわけでございます。実際に介護手当は出されておるわけでございますけれども、三万二千円で打ち切りということですが、広島県の調査によりますと、一カ月、三十日間介護を要した場合には大体二十二万四百四十円かかる。これは家政婦協会、この辺の調査によると思います。ところが、いま私が申しましたように、国から支給されるのはたったの三万二千円である。つまり、差し引いた十八万八千円有余が個人負担になるわけでございまして、これでは被爆者の方、特に重症の被爆者の方が安心して療養生活を送れるような状態ではないと思います。これも実態に合わせて前向きに検討をするべきではないか、こういうふうに考えますけれども、もう一度この点について。
  28. 三浦大助

    三浦政府委員 介護手当の額につきましては、生活保護の他人介護料に合わせて従来からその改善を図ってきたわけでございまして、今年度におきましても、一カ月当たりの支給限度額を三万二千百円から三万三千六百円に引き上げたわけでございます。  ところが、原爆被爆者がかなり高齢化しておるわけでございまして、介護手当の件数も年々かなり上昇してきておるわけでございますので、介護手当の重要性というものはこれからますます大きくなってくるのではないだろうかと私ども考えておるわけでございますので、今後、介護の実態を踏まえまして、改善に努力をしていきたいというふうに考えております。
  29. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 これからいろいろ改善していくということですけれども、この三万二千円というものの根拠は何ですか。
  30. 三浦大助

    三浦政府委員 これも、他の公的なものとの均衡を図る意味で、生活保護の他人介護料に合わせてあるということでございます。
  31. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 それは、生活保護と原爆で非常に苦しんでいる重症の方を横並びにするというのは納得いかないのですよ。この点を含めて十分にこれから検討していただきたい、こういうふうに考えております。  それから、ちょっと話が変わりまして、被爆者数に対する健康管理手当の受給率は地域的に非常に著しいアンバランスがあるわけでございます。私は厚生省から資料をいただいたわけでございますけれども、たとえば五十五年を見ますと、森下大臣のおひざ元の徳島県がずば抜けて高い、九四・一%でございます。ちなみに同じ四国地方を見ますと、香川が三六・四%、愛媛が三三・四%、そして高知が三六・〇%、いずれも三〇%台なんです。徳島県だけが九四・一%、こんなに高くて三倍もある。こういうアンバランスがなぜ生じるのか、この点についてお聞きしたいと思います。
  32. 三浦大助

    三浦政府委員 これは御指摘のように、徳島県が非常に高うございます。私ども健康管理手当の受給率にこうしてかなり差があるということは、被爆者の年齢構成とか、あるいは被爆者対策被爆者に対する周知徹底の度合いの違い、恐らくこういう要因が影響しているのではないだろうかというふうに考えております。  健康管理手当につきましては、支給の適正化を図るために、五十五年五月に各都道府県に対しまして、認定委員会を設置して指導するようにということを申し上げてあるわけでございまして、現在十八の都道府県で認定委員会をつくってございます。これは、年間二百件以上希望が出てくるようなところでは認定委員会を設置してやっていただきたいというふうにお願いをしてございまして、現在、二百件以上の申請がある県でまだ委員会をつくっていないところは兵庫県だけだというふうに承っております。
  33. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 地域的なアンバランスだけではなくて、私がいろいろ調べましたところによりますと、特定の医療機関が健康管理手当の申請用の診断書を多く発行しているという事実があるわけでございます。  たとえば、これもたびたび申しわけないのですが、大臣のおひざ元でございますけれども、徳島県の生活協同組合が経営するある病院、五十四年に徳島県で受け付けた百五十四件のうち、何と百五十一件までがその病院なんです。残りの三件だけがほかの病院。たくさん病院があると思いますけれども、百五十一件までがその特定の病院で発行している。  それからまた、長崎のある診療所は、五十五年に長崎市で受け付けた申請二万三千八百七十件のうち三千七十五件までを占めている。これは余りにも不自然な姿ではないだろうか。  厚生省はどういう監督指導をしているのか。さっき、認定委員会を設けてどうのこうのと言っておりますけれども、そういう問題ではないと思います。これは実態調査をしたことがありますか。
  34. 三浦大助

    三浦政府委員 これは私ども、特に細かい実態調査をしたわけではございませんが、先ほど申し上げましたように、出てくる比率を見まして余りにもアンバランスがあるものですから、五十五年に、委員会をつくってなるべく大ぜいの方でやってくれ、こういうお願いをしてあるわけでございまして、徳島県につきましても、私の最近聞いた報告でございますが、今度徳島大学の先生なども加えていただいていまやっておるという話を伺っておりますので、この非常に格差があるという問題につきましては、今後とも都道府県に対して指導をしてまいりたいと考えております。
  35. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 では次に、外国人の被爆者対策について取り上げてみたいと思います。  お隣の韓国では推定二万人の被爆者がいるというふうに聞いておりますけれども、それらの韓国人の渡日治療の実情とこれからの方針について、まずお聞きしたいと思います。
  36. 三浦大助

    三浦政府委員 御指摘のように、韓国には原爆被爆者が二万人ぐらいおるというお話を私どもは聞いておりますが、実際の被爆者が団体をつくっておりまして協会に登録されている方々は一万人ぐらいというふうに聞いておるわけでございます。  こういう在韓被爆者の方につきましては、これは人道的見地から、昭和五十五年以降に、両国政府で協定を結びました。それで渡日治療を実施しておるわけでございます。昭和五十五年度は、テストケースとして十名の方の渡日治療を受け入れたということでございますけれども、昨年の十二月一日に韓国の保健社会部と厚生省との間で、昭和六十一年までの五年間に在韓被爆者の渡日治療を受け入れるということでさらに合意を見まして、すでに十九名の方を、広島、長崎の原爆病院に収容して治療を行っておるわけでございます。引き続き、希望者あるいは原爆病院におきます収容能力等も勘案しながらこの事業は進めてまいりたいというふうに考えてございます。  御参考までに、その渡日治療で日本と往復する費用は韓国が持っていだたく、こちらの治療費、手当につきましてはこちらで持つ、こういうことになっておるわけでございます。
  37. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 韓国はそういうふうにいろいろ今後の渡日治療について話が進んでいるようでございますけれども、それでは、同じような状態に置かれております台湾の被爆者の実態はどうなっていらっしゃるか、これについて局長にお聞きしたいと思います。
  38. 三浦大助

    三浦政府委員 台湾につきましては、それぞれ台湾の中の国内問題として処理していだたくより仕方がないということでございまして、現在実態はまだ私どもはつかんでおりません。
  39. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 韓国についてはいろいろ援助の手を差し伸べている、台湾のことについては国内問題として処理していだたくということで実態もつかんでいないということらしいのですけれども、これはおかしいと思います。幾ら国交が結ばれていないといっても、台湾の被爆者をほっておくわけにいかないわけでございます。これは人道上の重大な問題である。先般も、大臣もよく御存じだと思いますけれども、台湾の日本兵に対する恩給、援護補償が大変大きな反響を呼んでいるわけでございますけれども、これは人命に関する問題だけにより深刻である、私はこういうふうに考えるわけでございます。一刻も早く解決しなければならない。  この問題については、国交を結んでないという点からいろいろ支障があると思いますけれども、国が前面に出なくても何らかの形で前向きに検討しなければならない、私はこういうふうに考えますけれども、これについて大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  40. 森下元晴

    森下国務大臣 台湾在住の被爆者の方々の問題につきましては、まことに残念な問題である、人道的に考えましてもこれは何とかしなければいけない、私もこのように考えておりますし、韓国との間は国と国との話し合いで局長が御答弁したような措置がとられておりますけれども、台湾の場合は不幸にして国交がないというだけで放置されておる、私はまことに申しわけないと思う問題でございます。  そこで、外交上の問題もありますけれども、外交上の問題を飛び越して人道上の問題としてでき得る限りのことをいたしたい。そういうことで外務省等関係機関ともよく相談いたしまして、そういう個別的な例を私どもは積極的によく調べまして、また直接、間接的にそういう内容についていろいろお聞きいたしまして、いま御指摘のような人道的な立場で措置するように、お救い申し上げるような方向でするのがわれわれの義務である、そういうふうに前向きで考えておるわけであります。
  41. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 大臣から大変前向きな御答弁をいただいたわけでございますけれども、実態も知らないというのでは余りにも無責任である。大変お気の毒なことでございますので、大至急にまず調査をして、具体的に行政機関の段階でもこれを前向きに解決する方向で検討していただきたい、こういうふうに考えます。  それで、時間も大分なくなってまいりましたので、最後にお聞きしたいのは、いま世界じゅうに反核運動と申しますか、非核運動と申しますか、こういう問題が非常に巻き起こっているわけでございます。鈴木総理も六月に行われる国連の軍縮総会に出席して、唯一の被爆国としての立場から核軍縮を内外に強く求めるという御意向を固めているとお聞きしておりますけれども、この問題について大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  42. 森下元晴

    森下国務大臣 核をなくすということは人類の悲願でございますが、残念ながら、力の均衡と申しまして核保有大国が存在をしておる、これは事実でございまして、また世界的な傾向としても核を持つ国がふえつつある。日本は御承知のようにNPT、すなわち核拡散防止条約に調印、また批准をいたしまして、絶対にそういうものは持ちません、平和利用はもちろんやりますけれども兵器としては一切やらないという、世界的に強い誓いを立てておるわけでございます。それに増して核反対の平和運動が全国各地に起こっておる、また世界じゅうに起こっておる。これは当然でございまして、この問題については、もちろん厚生省を預かる立場としてもより積極的に進めなくてはいけない。  ただ問題は、やっておるのが自由主義国が主でございまして、世界全部で、たとえばソ連においても中国においても、どの国においてもこういう運動が当然あるべきであると私実は希望、期待をしております。
  43. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 私も大臣と全くその点については同感でございます。イデオロギーの問題はさておくといたしまして、わが国でも民間グループを中心としてこの非核の運動が大変な高まりを見せているわけでございます。こういうグループが、世界じゅうの人々に知ってもらいたい核の恐ろしさ、それから核兵器の廃絶を大変熱心に訴えるために、映画をつくったり資料展を行ったりしているわけでございます。これに対して広島県とか長崎県とか広島市、長崎市などでは非常に積極的に行っている。これは、先ほど大臣がおっしゃったように、イデオロギー等を抜きにして行っていることは事実でございますけれども、鈴木総理がみずから軍縮総会に出席して核兵器の廃絶を訴える、核軍縮を訴えるという立場にありながら、こういう問題に対しますと何か政府はこれまで関知しないというか無関心を装っているのか、その辺はよくわかりませんけれども、いずれにしましても非常に消極的であったのではないか、私はこういうふうに考えるわけでございます。  鈴木総理が現に国連軍縮総会に行って訴える以上、こういうことに国自身が積極的に手をかしてもおかしくない。別段アメリカに対してだけ反米運動をするのではなくて、ソ連の核兵器の増強も含めて――長崎市、広島市は別段イデオロギー的にやっているわけでございませんので、国自身が唯一の被爆国であるという立場から積極的に行ってもいいんではないか、こういうふうに私は考えるわけでございます。  この問題については外務省、総理府等いろいろございますけれども厚生大臣被爆者対策を担当する大臣でございますから、この問題について政府全体がもうちょっと前向きに立ち上がるような用意があるかどうか、この点について御意見をお聞きしたいと思います。
  44. 森下元晴

    森下国務大臣 世界平和は全人類の共通の願いでもございますし、わが国といたしましては、広島、長崎と人類史上初の被爆地を持っておりまして、イニシアチブをとるのは当然でございます。核兵器の使用のこわさ、悲惨さを積極的に訴えて平和のとうとさをアピールすべきである、このように思っております。
  45. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 たとえば民間グループ、あるいは議員の中でも軍縮議員連盟などが中心となって、たとえば国連のロビー等で展示会を行おうじゃないかとかいろいろな方法があるわけでございますが、国がこの問題について手をかすとかさないとではえらく違うと思うのです。各大使館を通じてこういう記録映画を世界の皆さん方に見ていただくとか啓蒙運動についても、日本が唯一の被爆国として世界各国に対して積極的に乗り出してもいいんじゃないか、こういう点を私はお聞きしているわけでございます。
  46. 森下元晴

    森下国務大臣 検討してみたいと思っております。
  47. 丹羽雄哉

    丹羽(雄)委員 ありがとうございました。これで終わります。
  48. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 次に、森井忠良君。
  49. 森井忠良

    森井委員 きょうは大変うれしい日でございまして、昨年に引き続きまして、自由民主党の与党の委員の御質問を受けました。しかも御質問なさいました丹羽先生は、いままた厚生大臣へも質問をなさったわけでございますが、私どもの気持ちとほとんど変わらない、こういう御質問と承りました。どちらかというと、いままで私ども被爆者援護法を出してまいりますと、与党の皆さんがかたくなにお断りになりまして、なかなか議論がかみ合わなかったわけでございます。しかし、自由民主党を代表して御質問なさいました丹羽理事は、本当に被爆者の立場に立って、あるいは大きくは反核、軍縮の立場に立って御質問をなさいました。心から敬服をするとともに、やはり与党の皆さんの中にもこういったすばらしい新進気鋭の政治家がおられるんだなということを感じたわけでございまして、その意味では非常に心強いものを感じます。  私どもは、毎年全部の野党の皆さんと御相談をいたしまして、原子爆弾被爆者等援護法を提案してまいりました。そして、昨年も一昨年も厚生大臣に対しましては、与党と野党で話し合いをするから厚生大臣の方も十分な理解と協力をしてもらいたい、こういう要求をいたしまして、歴代の厚生大臣もまさにそのとおりでございますということで、与党と野党の話し合いを歓迎をしていらっしゃいました。先ほどの御質問を聞きまして、繰り返し申し上げるようでございますが、非常に心強いものを感じました。  私どもは、政府がお出しになっております特別措置法改正案の対案という形で被爆者援護法を出しておるわけでございますが、率直なところ、私ども野党の背後にある国民の多くの方々の、一刻も早く国家補償の精神による被爆者援護法をつくれという、そういうお気持ちを背景にして出しているわけでございます。特にことしは、三月二十一日広島で二十万人の集会が開かれました。大きなテーマの一つに、被爆者援護法の制定というのが挙げられておるわけであります。まさに機は熟しつつある、こう申し上げていいと思うわけでございます。私どもも機械的に援護法を出しておるのではありません。それだけの重みを持って政府案に対置をいたしておるわけでございます。  せっかく丹羽理事のすばらしい質問の後でございますから、いま申し上げましたように、先ほどの丹羽発言が自由民主党を代表する理事の発言だという、そういう意味での重みも感じまして、私ども野党といたしましてもこの機会に十分話し合いをいたしまして、被爆者援護法の扱いについて相談をしたい、こう思いますが、厚生大臣は反対でしょうか、賛成でしょうか。
  50. 森下元晴

    森下国務大臣 これは、自民党を初めすべての政党といたしましては、この原子爆弾被害を受けた方々に対する考え方は、私は同じだと思っております。とにかく人類史上初の被爆者でございますし、また、戦争の悲惨さを象徴する広島、長崎の問題でございます。やはりこの問題は全国民ひとしく真剣に受けとめなくてはいけない、私はそう思っております。  厚生省も、いろいろ御指摘いただきましたように、援護法として国家補償でやるべきであるというような御質問もたびたび受けておりますし、私どもも気持ちの上ではそう思っておりますけれども、解釈としては、広い意味援護法、いわゆる国家補償的な考え方に立っていろいろ諸施策をやらしていただいておるわけでございますので、この点は、特にこの三月二十一日の全世界的な核禁止の問題まで広がっていこうというような問題も含めまして、厚生省としては、また従来と違った意味の感覚でこの問題を受けとめていきたい、このような気持ちでおるわけでございます。
  51. 森井忠良

    森井委員 与党と野党とがこの問題についてゆっくり話し合いをして、できれば成案を得たいと考えていますが、この点についてはいかがでしょうか。
  52. 森下元晴

    森下国務大臣 この問題は与党と野党で御相談ということで、政府としては干渉がましいことはいたしませんけれども、気持ちの上におきましてはそうあってほしい、そういう気持ちは持っております。
  53. 森井忠良

    森井委員 前向きな御発言と受け取らしていただきたいと思いますが、国民にわかりにくいので、この際申し上げておきたいのですが、審議を終えましていよいよ法案の採決に至る時期が来るわけでございます。そのときになりますと、私どもは政府案の対案として被爆者援護法案を出しているのですから、まず私ども被爆者援護法案について賛成か反対か採決しようじゃないか、政府案は言うなれば原案ですから、その後で採決をすればよろしい、これはもう議会運営の常識でございます。ところが過去何年か、そういう採決の仕方になっていないのであります。私ども、野党案をまず採決をしてくださいと申し上げますと、与党の方から、それは困る、与党が反対をして被爆者援護法案をつぶすことはまずい。これはひきょうなやり方なんですけれども、そうなっていまして、政府案を先に採決をするか、私ども原爆被爆者等援護法案を先に採決をするかということで、どちらを先に採決をするかという採決が行われるのです。こういう変な採決の仕方はないわけでございまして、私はこれはきわめて問題だと思うわけでございます。  私どもの法案が間違っているなら間違っているで、与党の方は反対をなさればいい。ところが、採決を嫌がられるのです。それだけ、若干手前みそかと思いますけれども、私どもが出します法案についても与党さんは恐らく悩んでいらっしゃると思うわけでございます。  先ほど丹羽議員が明確に、私に質問をされる形で原子爆弾国際法違反である、こうおっしゃいました。私は、政治家として非常にりっぱな御判断だと思うわけでございます。したがって、もうそこまで――いろいろ議論はありましたけれども原爆国際法違反かどうかということで、私どもは長年議論をしてまいりました。政府の答弁はこの委員会でもあいまいさを残しておりますし、わが党の大原議員質問主意書に対する答弁書では、国際法の精神に違反しておる、こういうふうなことであいまいさが残っておりますけれども、いずれにいたしましても、原爆国際法違反かどうか、これは被爆者援護法をどうするかという議論の一つの出発点だと思うわけです。それがいまの説明だと原爆国際法違反という点については認識が一致したわけですから、したがって国家賠償に至る論理の組み立て方は間違いない、意見の食い違いがないというふうにすら思えるわけでございます。  申し上げましたように、毎年本法案の扱いにつきましては、私ども野党が出しております被爆者援護法案は与党さんの意思表示を見る前につぶされてしまったという経過があるわけでございますが、そういった過去の轍を踏むことなくことしこそすっきりした形で――実は私どもの法案もうんと自粛いたしまして、昭和四十年代の終わりごろに出しました被爆者援護法案の中身は五千億以上の予算を要しておりました。年によっては六千億くらいの予算を要しておりました。  しかし、これでは与党の皆さんの賛成が得にくい、そういったことで私どもの主張はうんと自粛いたしまして二千億前後の予算を今日まで出してきたわけでございます。しかし、それにいたしましても何とか被爆者援護法をつくりたい、与党の皆さんにも歩み寄っていただきたい、そういう立場から、予算的にも圧縮をした法案を出してまいったわけでございます。御存じのとおり、すでに政府の特別措置法その他の、原爆医療法もございますけれども、現行二法に基づく原爆被爆者援護対策の予算は大方一千億になろうとしております。九百七十三億でしたか、ほかの関連の予算を入れますと一千億に近い、そこまで来ておるわけでございます。一千億と二千億なのですから、野党の方はまだ高いとおっしゃるなら、私どもは、いま二千百億ばかりの予算になっていますけれども、それはさらに譲る用意がございます。千五百億でもよろしゅうございます。この際お互いに歩み寄って、機はもう熟しておると思いますので、被爆者援護法をつくったらどうだ。  私も、ささやかな経験でございますけれども、毎年毎年被爆者援護法の制定を求めて他の野党の皆さんと腹を合わせて今日まで援護法案提出してきたわけでございますが、軽々しく扱ってもらっては困ると思うわけです。血のにじむような叫びなのです。厚生大臣被爆者援護法に対するあなたの認識をもう一度お聞かせいただきたいと思います。前向きな答弁を期待いたします。
  54. 森下元晴

    森下国務大臣 先ほども申し上げましたように、被爆者に対する考え方、また人類史上初めての悲惨な戦争犠牲、そういうことを考えました場合に、先ほども丹羽議員意見を述べられましたように国際法違反にもなるじゃないか、戦争の過程で毒ガスを使うとかまた悲惨な兵器を使うことは国際法違反である、その中に特に原子爆弾も含まれるであろう、われわれもそのとおりだと思います。  そういう意味森井議員からも国家補償援護法にすべきである、これはよく理解できまして、国家補償的な措置はさせてもらっておりますけれども、それでは足らぬじゃないかというお話でございます。それと、先ほどおっしゃいました社会党も含めて五党から提出の法案につきまして先に採決せいという問題も含めまして、そういう問題につきましては、国会の審議、特に社労委員会の審議でございまして、政府としては干渉できない立場でございまして、それは理事会なり皆さん方で御相談と申しますか協議をしていただくべき範囲の問題でございます。  ただ、私どもは、何遍も申しますけれども、気持ちの上におきましては、国家補償的なまた援護法的な気持ちを持っておることは当然でございますし、現在世界じゅうが軍縮また核反対、こういう中におきまして、思いを新たにして将来いかにしていくべきかということを考えていきたい、このように思っております。
  55. 森井忠良

    森井委員 歴代の厚生大臣からいたしますといまの森下厚生大臣の御答弁は、ある特定の方を除きまして、答弁としてはまあ前向きの方だと評価を申し上げておきたいと思うのです。  実はこの社会労働委員会、この一年ないし一年半ぐらいの間にずいぶん大臣がおかわりになりまして、私どもも若干の戸惑いがあるわけでございます。最初はかの有名な齋藤邦吉厚生大臣、これが第二次鈴木内閣で任命されたわけでございますが、これはどういうわけか例の富士見産婦人科の事件が表に出ましてあっと言う間におやめになってしまったわけです。その後、国連軍縮総会で名演説をなさいました園田直先生が厚生大臣におなりになりました。そして、その後は御存じのとおり大蔵省に非常に近い村山厚生大臣でございました。そして今度は、私どもが尊敬をいたします森下元晴先生が厚生大臣におなりになったわけでございます。  いま、若干の評価も交えながら、私最近の厚生大臣のお名前を出させていただいたわけでございますが、昨年原爆関係の法案を審議いたしますときは、たまたま園田厚生大臣でございました。     〔委員長退席、大石委員長代理着席〕 何といいますか、私どもがびっくりするほど園田語録というのが生まれてまいりました。  本委員会の議事録でも明らかになっておるわけでございますが、多分与党の中にはこういうことを言われる方はいないと思います、議院内閣制ですから。あの園田語録というのは、園田厚生大臣の国会での発言というのは、自民党を代表するものでも内閣を代表するものでもないよという悪口を言う人がある。これは与党にとってはきわめてけしからぬ発言だと思うのです。与党の方にはそういう方はおられないと思う。少なくとも鈴木内閣の有力閣僚であります厚生大臣が国会の場で御発言になり、そしてそれは当然のことながら速記を通じて議事録という活字になっておるわけでございます。  したがいまして、これは私どもだけじゃありません、学者、研究者もそうですけれども、立法の趣旨その他いろいろな解釈上の問題等につきましては、国会の議事録というのは大きく物を言います。もちろん、言ったとか言わないとかというときの証拠にもなるわけでございます。  そこで、森下大臣、恐縮でございますがもう二言三言御答弁いただきたいのですけれども、本委員会厚生大臣が御発言になりましたことは、あなたのきょうの発言も含め、歴代の厚生大臣の発言も含めて、当然これは内閣として一貫性を持ったものである、こういうふうに理解をしてよろしゅうございましょうか。
  56. 森下元晴

    森下国務大臣 同じ自民党内閣でもございますし、当然継続性もございます。ただ、発言の内容におきましてそれぞれ大臣でニュアンスの違う、考え方は同じでも発言の内容で違ったニュアンスの発言をされる場合も実はございます。  そこで、園田元大臣は私も尊敬しておる先輩の一人でございますが、私と同じように旧軍人でございますし、非常に戦争の悲惨なこともよく知っておりますし、あの時代の特に日本が戦争に負けた、特に長崎、広島に原子爆弾が落とされたというような事情もすべて知っておる方でもございまして、非常に理解も深いと思います。また同時に非常に前向きの御答弁をされてきた、これも当然だろうと私は思います。そういうことで私もそういう時代に生まれ育った者の一人としてこの戦後処理の問題等につきましては前向きの答弁をすることが非常に多うございますし、当然世代的にもそうあるべきだ。またこれは別に質問者に対しておもねるとか御機嫌をとるとかそういう気持ちでなしに、自分の本質として出る言葉でございまして、ただその中で多少感情的に少し出過ぎるなというような批判を私自身も実は受けることがございます。そこはよく玩味いたしまして、当然生かされるべき問題は、先輩の方々、大臣の発言の趣旨というものはよくわかりますから、これを継続してやっていく、これは当然だと思いますし、私も冒頭申しましたように、園田発言についてはできるだけ尊重していきたい、こういう気持ちは持っておるわけでございます。
  57. 森井忠良

    森井委員 園田さんを尊敬をしていただいておるということですが、できるだけというお言葉もございましてちょっと気にもなるものですから……(森下国務大臣「熟読玩味して」と呼ぶ)熟読玩味、なるほどいい言葉ですね。玩味、これも含蓄のある言葉ですから、議事録に基づいて、決して森下大臣を壁の方へずっと押しやるという気持ちはございませんので、政治家としての御答弁、それから園田元大臣に対します尊敬の念もおありのようでございますから、ひとつ肩の力を抜いて御答弁をいただきたいと思うのです。  これは去年の、五十六年四月二十三日の本委員会の議事録でございますけれども、わが党の中村重光委員原爆被爆者対策基本問題懇談会の答申の評価について質問をしたのに答えた園田厚生大臣答弁でございます。国家補償と基本懇の答申との関連について聞いておられます。  ○園田国務大臣 懇談会の結論は、第一に社会保障の理念から国家補償の理念にと大きくかじを切ったことについて私は評価をいたしております。いろいろ問題がその先に出ておりますが、一カ所も否定した個条はないわけであって、後は省略をいたしますが、そういうふうに基本懇の答申、それから国家補償の問題についてはそれ以外にもあるわけでございますが、どこを読んでも国家補償を否定したところはない、あるいは弔慰金等についても出すなとは一言も書いてない、こういうふうな基本懇の答申の読み方について当時の園田厚生大臣の御発言があるようでございます。  そしてその発言の終わりごろには   今後とも原爆被爆者の対策についてはその内容を充実強化をして、だんだんと被爆者の方々の御意向に沿うようにやっていくべきだという決意に変わりはございません。 こういうふうに断言をしていらっしゃいます。  森下大臣も同じでしょうか。
  58. 森下元晴

    森下国務大臣 園田元大臣の世代的な置かれた立場、戦争に参加した旧軍人としての考え方、またすぐ隣の県に長崎を持つ園田元大臣としては、そういうお考えがあって当然だと私は思っております。  私も考え方としてはよく理解もできますしそのように思っておりますが、いますぐに援護法に切りかえる、国家補償に切りかえるということにつきましては、一般戦災者の方々との見合いもございますし、その他国家補償的な問題が戦後処理の問題として次から次へと出てきておる情勢でございますし、そういう問題ともよく絡み合わして検討しなければいけない、こういう気持ちも持っておりまして、園田元大臣がせっかく御期待されるような前向きの答弁をされながらそのまま放置されておるということにつきましては、前大臣答弁でございますから私個人としては尊重して直ちに実行という一分の気持ちはございましても、いろいろな問題もこれあり、そう急にそのとおりいたすことには実は少し抵抗がございます。  そういうことで、この原爆二法等の問題につきましては国家補償的な考え方に立ってもうすでにやっておるわけでございますから、その点は御理解いただきまして、将来の問題として私も園田発言を尊重していきたい、このように思っておるわけであります。
  59. 森井忠良

    森井委員 中間で少しおかしくなったのですけれども大臣恐縮でございますが私の聞いたことに答えていただけばいいので、将来どうするかということは、これは園田元大臣の政治家の議論ですから、もちろんいますぐということではないわけでございます。  基本懇を読む場合に国家補償関係でどうかと言えば、基本懇の答申は国家補償を否定したところは全くない、こういう読み方でございまして、いま直ちにそれを将来にわたってどうするということはむずかしいわけでございまして、現に園田元厚生大臣も一遍に全部やるとはもちろんおっしゃっておられません。ただ、基本懇の答申は被爆者問題を論ずる場合に門戸、つまり国家補償ですけれども、門戸を閉ざしたものは一つもないという別の表現もあるわけでございます。  ですから、もちろん国家財政のこともありますしいろいろな問題もございましょうからいま直ちにということじゃありませんが、趣旨においては森下厚生大臣もそして園田元厚生大臣も変わりがない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  60. 森下元晴

    森下国務大臣 基本懇におきましても原爆二法等による給付や措置は国としてそれ相当の配慮をしてきたものであるというような評価もいただいております。そういうこともございますし、多少園田元大臣との、発言についてはこのとおりだと私は申し上げませんけれども、基本的な考え方においては同じでございます。
  61. 森井忠良

    森井委員 どうも恐縮です。もう少しおつき合いを願います。  次は弔慰金に関するくだりでございます。これも同じ議事録でございますけれども、これはわが党の大原議員質問に答えての答弁でございますが、園田厚生大臣がこういうふうにおっしゃっておられます。  まず懇談会の答申でありますが、この答申で  は、弔慰金の問題にいたしましても、その他の  問題にしても、否定はいたしていない。総理の  答弁も、困難であるとは言っておるが、それは  できませんという否定はしていない。こういう  ことで私の言っていることと逆行はしていな  い、こう思います。私、やはり原爆被災者の方  方は戦争災害者というよりも平和への殉職者だ  という考え方で見ておりまして、日本が軍国主  義にならない、戦争をやらないという決意を  し、かつまた世界に向かって訴えるための唯一  の殉職者というか、シンボルである、こういう  ことで私は原爆被災者の方々に対する問題は考  えております。こう書いてございます。ただ現状は非常にむずかしいという前提に立っておることは、その前後の文章でうかがえるわけでございますが、弔慰金なり、あるいは被爆者が殉職者というこの位置づけについてはどうでしょう。
  62. 森下元晴

    森下国務大臣 被爆者はまさに殉職者でございます。ただ、仕組みを変えていくことのむずかしさはいま森井議員からも申されておるとおりでございまして、しかし、なかなか大変でございますけれども、園田発言の中では、いまそのかじを切る一つの潮どきであるというような発言もあるわけでございます。そのとおりだとは申し上げられませんけれども、一つの考え方としてそういう方向に仕組みを変えていく時期が来ておるというふうに私は考えておるわけであります。     〔大石委員長代理退席、委員長着席〕
  63. 森井忠良

    森井委員 次に、これはやはり同じ日の委員会でございますが、私の質問です。これは原爆国際法違反じゃないかということで園田厚生大臣に御質問をいたしました。そういたしましたら園田国務大臣は、   原爆国際法違反であるかどうかということ  は、法制当局の解釈は聞いておりませんけれど  も、こういう前提がついています。  法制当局の解釈は聞いておりませんけれども、  これが明瞭な違反であることは当然であり、か  つまた使用した米国自体もこれに対する反省が  あるからこそ原爆について日本でとかく言われ  ることは非常に苦痛としているところでありま  す。先ほどの丹羽委員の立場と同じでございますが、いとも明確に厚生大臣としては、法制当局には聞いていないが、担当大臣としては国際法違反であると思う。ずばり正直に御答弁なさっていらっしゃいます。  私も政治家の端くれでございますから、閣僚の一人であります厚生大臣がそう言われたからといって、外務省なり内閣法制局なり、あるいは鈴木内閣全般のたとえば閣議を経た統一見解というふうにはもちろん受け取っておりません。また国会ですから、政治家のやりとりですから、四角四面なことは申しませんけれども、先ほど言いましたような背景がありながらも、園田さんとしては自分としては国際法違反と思う、こうおっしゃっておられるわけでございます。  この点についても見解を承りたいと存じます。
  64. 森下元晴

    森下国務大臣 私も国際法を実は読んでおりません。しかしながら、常識的に考えました場合には、国際法違反するような行為である。国際法には原子爆弾という言葉が入っておるかどうか知りませんが、恐らく入っておらぬと思いますが、それよりももっと程度の低いような、軽いような問題でも入っておるわけですから、当然入るべきであるというような見解は持っております。  ただ、国際法というのは、これはハーグ条約のことじゃないかと思うのですが、これは蛇足でございまして恐縮ですが、この中にはいろいろあるように聞いておりまして、この戦争が終わって捕虜を一方的に連れて帰って酷使したというシベリア抑留のような問題、実はこういうことと並べて私は申し上げたいと思うのです。一つだけ申し上げますと何かそれだけになりますから、余分なことでございますけれども、そういう問題も含めて、この世界戦争の中でいろいろな国際法違反的なことがあったと私は思います。その中の一つにこの原子爆弾という非人道的な兵器を使った、そして悲惨な状況を生じたということについては否定はいたしませんし、いま申し上げましたように、いろいろ国際法違反するような行為がアメリカだけではなしにほかの国にもあったということも私は申し上げたいと思っております。
  65. 森井忠良

    森井委員 そうすると、内閣法制局とか外務省とか四角四面なことは別にいたしまして、森下元晴厚生大臣としては、園田元厚生大臣と余り変わっていない、こう理解してよろしゅうございますか。
  66. 森下元晴

    森下国務大臣 個人的には余り変わっておりません。
  67. 森井忠良

    森井委員 もうこれで最後にしますが、挙げれば切りがないのですけれども、大事な部分だけ、重大な関係がございますからお聞きをしておくわけでございます。  次は、先ほどもちょっと大臣申されましたが、原爆被爆者一般戦災者との関係について、あるいは軍人軍属と原爆被爆者との関係についてお述べになったくだりがございます。  政府はいままで被爆者援護法をお断りになる理由といたしまして、御存じのように一つは身分関係論、特別関係論と言われておるものでございまして、軍人軍属のように軍と雇用関係のあった者、それにも特別権力関係、主従命令服従の関係にあった場合ですね。そういう場合が一つと、もう一つは一般戦災者との均衡論、これでお断わりになってきておるわけでございますが、最初の方の軍人、軍属、準軍属などと、それから被爆者一般国民との間の問題についてお触れになった部分がございます。これは率直に言いまして、従来の厚生省考え方、政府の考え方を大きく転換をさせる内容になっておるわけでございます。  これは日にちがかわりまして、五十六年五月七日、本委員会でございます。民社党の小渕委員質問にお答えになっております。園田国務大臣は、  戦争の様子が変わってきて、この前の戦争では初期は兵器を持って外へ出ていった人が戦闘に参加したわけでありますが、中盤戦以降はすべての人々が好むと好まざるとにかかわらず戦闘に参加させられたわけでございます。そういう意味で、国家との身分関係のみで格差をつけてやることは間違いであって、やはりすべての戦災者対象にして、その中で特別に被害を受けた、その被害の重度、軽度ということからやるべきであると考えておりますが、いままでの骨組みを変えていくことはなかなか大変でありまして、いまそのかじを切る一つの潮どきであると考えております。 こういうくだりがあるわけでございます。  申し上げましたように、私どももしばしば本委員会戦時立法等の状況について政府当局を追及をしてまいりました。もうあの戦争末期には、特に昭和二十年の六月になりますと、国民義勇兵役法なんというのが出てまいりまして、要するに、ちょうど沖縄の戦闘との関係もございまして、何としても全国一億国民を全部戦争に巻き込まなければならぬ、そういうふうなことで帝国議会で国民義勇兵役法というのをつくった、もう御存じのとおりであります。わが党の大原亨先輩はこの辺の事情は非常に明るいわけでございますけれども、そういったことを踏まえて、少なくとも戦争末期には、それが竹やりであったか、あるいは銃であったかは別にいたしまして、一億国民すべて兵役法と同じように、もうそれこそ個人で、集団で、いかようにでも集めることができる。当時の議事録によりますと、那須兵務局長は、一括で名簿を並べておいて、おい、ここ出てこいと言えば、それでもよろしい、職域の場合もある、町内会別の地域の場合もある。そこまで明確になっておるわけでございますけれども、その前にもちろん閣議決定等がございます。国民義勇隊に対する閣議決定等もあるわけでございますが、もう時間がありませんから、私はこの問題で議論を多くしようとは思わないわけですけれども、お互い戦争を経験している年代でございますから、改めて繰り返す必要はないと思うのですが、とにかく一億総戦闘参加という状態でございました。  政治家園田直厚生大臣は、そういった現実を踏まえられた上で、一般国民と軍との間に差異はなかった、したがって、これからは政府の考え方は大きくかじを切ろうとしておるところなんだ、こういうふうにおっしゃっておるわけでございます。このくだりにつきましても、明確な御見解を承っておきたいと存じます。
  68. 森下元晴

    森下国務大臣 一億玉砕というようなことが言われた戦争の末期の状況でございまして、すべて国内が戦場になったと同じような状況に気持ち的にはなっておりましたし、事実、国との雇用関係がなくとも、自発的に戦闘に参加する状況にあったことは事実でございます。それを、国との特別な関係があったから援護法でやる、また、そうでない人はだめだということにつきましては、その時代に旧軍人として存在しておりました私どもといたしましては、森井議員のおっしゃることはすべてよくわかるし、また、園田発言についてもよく理解はできるわけでございますけれども、実際問題として、一般戦災者の方々の中で国との特別な関係が生じておったかどうかという問題について認定するとか、また、それについて特別の措置をする、非常にむずかしい問題が実は出てくると思うわけであります。  そういうことで、この問題につきましては、一般戦災者の方々につきましては社会保障制度の中で対処していくほか現状ではする方法がない、そのように実は考えておるわけでございます。  この問題につきましては、一つの曲がり角に来ておるという園田発言もございますけれども、それをどうするかということにつきましては、なかなかむずかしい問題であるということで、よく勉強させていただきますけれども、いま直ちにそれを検討してその問題に厚生省が着手するという段階には至っておりません。
  69. 森井忠良

    森井委員 どうも大臣、私の質問を誤解していらっしゃると思うのでありますが、たしか、いまの御答弁ですと、一般戦災者については社会保障で云々というようなくだりがございました。誤解だと思いますけれども、私が聞いておりますのは、扱いをどうするというのは、もちろん、先ほども言いましたように、かじをお切りになったか切らないか、まだわかりませんけれども、認識の問題として、園田大臣の場合は戦争の中期以降と書いてあるわけですが、あえて私、申し上げましたのは、中期じゃなくても末期ですね、戦争の末期には、時間の関係で割愛をいたしましたけれども、先ほど申し上げましたような戦時立法もどんどん出てまいりまして、現実の問題としても、また軍の要請もございまして、一億国民の目もうんと変わっておった。現に沖縄で戦闘が行われておったという状況下でございますから、その当時の状況というのは容易に想像がつくわけでございますけれども、そういう場合に、軍人軍属等とそして一般国民被爆者との間に、戦争という観点から見ました場合にそう差はなかったじゃないかというのが園田さんの発言なんです。その点の御認識だけを伺っておけばいいわけでございます。
  70. 森下元晴

    森下国務大臣 個人的には同じ考えであります。
  71. 森井忠良

    森井委員 どうも大変失礼いたしました。前の大臣の発言を聞かれるというのは嫌なものだろうと私は推測しておるわけでございますが、何といいましても非常に大事な部分でございますから、どうしても聞いておきたかったわけでございます。  さて次に、今度は国会との関係についてお伺いをしたいと思うのですが、鈴木総理は、昨年の八月六日、広島の原爆慰霊式に御出席になりまして、そこで、その後だったと思うのですけれども、その前後に記者会見等を通じまして被爆者対策に対します一定の見解を述べていらっしゃいます。  その中で、鈴木内閣としては原爆被爆者対策基本問題懇談会の答申を踏まえて被爆者問題に対処してまいりたいという意見をお述べになっておられるわけでございます。  私は、基本懇の答申も、読み方によりますけれども、先ほど申し上げましたような、まあ大臣もお認めになりましたような読み方ならまだいいのですけれども、どうもそうではないんじゃないかという感じがしてなりません。  というのは、細部にわたって検討いたしますと、基本問題懇談会の答申とそれからわが社会労働委員会で与野党満場一致で決議をいたしました附帯決議とはかなりな食い違いがございます。総理はどういう立場でおっしゃったのか、そこはわからないわけでございますけれども、たとえば、昨年の附帯決議、これは五月二十一日でございましたけれども、ちょっと読んでみます。   国家補償の精神に基づく原子爆弾被爆者等援護法 もう一度申し上げます。   国家補償の精神に基づく原子爆弾被爆者等援護法の制定を求める声は、一層高まつてきた。また、原爆被爆者対策基本問題懇談会意見書も、被爆者援護対策は、広い意味での国家補償の精神で行うべきであるとの立場をとつている。   政府は、原爆被爆者が高齢化し、事態は緊急を要するものであるという認識に立ち、可及的速やかに現行法を検討して、これらの要望にこたえるとともに、次の諸点についてその実現に努めるべきである。 まず前文はこう書いてございます。  これは実をいいますと、「国家補償」という言葉が出ましたのが、たしか昭和五十二年の本委員会から初めて「国家補償」という言葉が附帯決議の前文についたと思うのです。それ以前は、もうどんなに出先の理事が合意をいたしましても、自民党の奥の院でどうしても判こがもらえない。だめだ、だめだと言って断られた。ようやく五十二年のときにたしか「国家補償」という言葉が初めて出てまいりました。そして五十三年以降はきわめて明確に「国家補償の精神に基づく被爆者援護対策について、」 これは五十三年の表現でございます。そして五十四年の表現になりますと、「国家補償の精神に基づく被爆者援護対策について、」という言葉が使ってありますが、「原爆被害者」という言葉は五十五年に出てくるのですね。これは五十五年の四月八日の本委員会の決議でございますが、ここでは「昭和五十三年三月の最高裁判所判決などにより、国家補償の精神に基づく原爆被爆者援護法の制定を求める声は、とみに高まつている。」そして「原爆被害者の老齢化が進むなど、」ということで、原爆被害者という言葉が出てきております。  私は毎年与党の皆さんと精力的な話し合いをいたしまして、附帯決議をつくってまいりました。本当に、時には徹夜になりかけたこともあるぐらい議論をいたしまして、いま申し上げましたように附帯決議をつくってまいりました。昨年の場合は原爆被爆者援護法、これは実は私どもが出しております法案の名前にもなるわけでございますけれども、中身についてはもちろんうたってありませんけれども国家補償ということで明確に位置づけをいたしております。  原爆被害者というのは被爆者以外の方が――これは大臣、ぜひお聞き願いたいところなんですけれども被爆者被害者は違うのです。たとえば、戦争中でございますから、昭和二十年の八月には学童の疎開というのがずいぶん行われておりました。両親は広島や長崎におる、これは勝手に移動できないのですから。逆に子供さんは危ないから疎開をする。子供は疎開で助かった。ところが、両親は原爆で亡くなった。その子供は原爆孤児であります。公衆衛生局長、あなたに一つも聞いてないから聞くのですが、そういう人は原爆被害者と私どもは位置づけていますが、あなたのお感じはいかがでしょうか。
  72. 三浦大助

    三浦政府委員 広い意味では原爆による被害者というふうに考えます。
  73. 森井忠良

    森井委員 広い意味も狭い意味もないでしょう。原爆が落ちた、被爆者ではないが、両親が死んで孤児になった、被害を受けておるでしょう。
  74. 三浦大助

    三浦政府委員 ですから、いま救済対象になっているのは放射能による健康障害という特別な犠牲を受けた者ということで、私どもいま救済を図っておるわけでございますが、いま先生がおっしゃったのは原爆による被害、広い意味で私は被害者というふうには思います。
  75. 森井忠良

    森井委員 大臣、そういう子供が、両親がいないものですから、まともに成長してくれればいいんですが、やけっぱちになって――結局その当時の孤児の救済というのはほとんど民間の手によって行われた。政府の手じゃないのです。こんなケースは幾らもありますけれども原爆乙女なんというのも結局一生棒に振ってお嫁にも行けない。もう時間がなくなりましたから申し上げませんけれども、そういった原爆被害者というのはたくさんある。  その孤児のごときは、結局少年院へ入って、それでも直らない。一人前のワルになって出所する。そして出所した上で今度はやくざの毒牙にかかってやくざに入る。それで広島にやくざが多いのかどうかわかりませんけれども、いずれにいたしましても、そういったふうに人生を一生涯台なしにした者があるのです。  ですから、一口で言いますと、あなた方は国会の附帯決議を軽く見ているんじゃないかということを私は言いたい。国家補償の精神というのは五十二年からついておる。去年もおととしも原爆被害者と明確に書いてある。意味すらあなたわからなかったじゃないですか。原爆被害者と被爆者意味が違うというのがいま初めてわかったような調子でしょう。  森滝先生のように、片目がつぶれても、つぶれた方の目は現在の二法ではどうにも救済ができない。残った片方の目が白内障になって初めて要治療ということで現行二法の対象になっておる。つぶれた方の目は全然対象にもなってない。  私は、大臣局長もおかわりになりましたから、毎年同じ質問をするようでございますが、これは緊急避難的に認識だけは新たにしてもらいたいと思って、私個人の質問はたくさんあるけれども、あえてこういった質問をずっと申し上げておるわけでございます。  一体これはどうなるんですか、附帯決議は。だてに作文をしたんじゃないですよ。基本懇の答申との関係でどちらを優先するのか。基本懇の答申と私どもが書いた、満場一致で決まった附帯決議とどちらを優先するのか。この際明確な答弁を願いたいと思うのです。
  76. 三浦大助

    三浦政府委員 私ども附帯決議を決して軽視するつもりはございません。それから基本懇の方の報告も報告として私ども尊重いたしておりまして、両方とも貴重な御意見として尊重していくつもりでございます。
  77. 森井忠良

    森井委員 そうすると、基本懇の答申と衆議院社会労働委員会あるいは参議院社会労働委員会の附帯決議とが矛盾をする場合は、国会の附帯決議の方が優先しますね。
  78. 三浦大助

    三浦政府委員 この被害の実態等もよく検討いたしまして、矛盾するようなところがありますれば検討課題として十分検討さしていただきますし、できるものは即座にやらなければいかぬものもございます。両方とも私ども尊重して今後努力してまいりたいと思います。
  79. 森井忠良

    森井委員 矛盾があるんですよ、読んでいただけばわかるように。「原爆被爆者援護法の制定を求める声は、とみに高まつている。」という認識の上に立って原爆被害者の問題についても扱っているのです。附帯決議には死没者の調査もしなさい、所得制限もなくしなさい、改善しなさいと書いてある。これは基本的には国家補償なんだ。基本懇の答申と比べますと矛盾する点が必ず出てくる。  あなたがもし矛盾しないと思うんなら、基本懇の答申と国会の附帯決議は矛盾しないとおっしゃって結構ですが、私の認識では矛盾をしておると思うので、その場合には国会の決議が優先しますねと聞いている。一言で、イエスかノーかだけでいいんです。
  80. 三浦大助

    三浦政府委員 私どもはこの附帯決議につきましてはできるものはできるだけ実現するように努力をしておるわけでございます。それで、矛盾するものにつきましては、両者の調整も図りながら、何とか被爆者のためにいい方向に行くようにということで努力しておるわけでございます。
  81. 森井忠良

    森井委員 厚生大臣の私的諮問機関と国会の与野党満場一致の決議とで調整をしなければならないの。国会軽視じゃありませんか。  大臣いかがですか。
  82. 森下元晴

    森下国務大臣 御指摘のように、厚生大臣の諮問機関でございます基本懇の御意見も尊重しなければいけませんけれども、やはり国の最高の国会におきます附帯決議をより一層尊重いたします。
  83. 森井忠良

    森井委員 じゃ、時間がほぼ参りましたから最後の質問ですが、最後に一問だけ放影研の問題について、きのう検討委員会をおやりになったようでございますが、広島の場合、放影研は、いまのかまぼこ兵舎のある、しかも広島のシンボルと言われますいまの地区、比治山というところですが、これはもうまずい、移転をしようということで、附帯決議等でいろいろ確認をしてきておるわけでございますが、移転の問題についてはどのようにしておるのか。広島大学の跡地と具体的に地元の連絡協議会等で意思表示もあったようでございますが、作業がきちっと進んでいない、その点がどうなのかということが一つ。  それから二つ目は、内容改善でございます。治療もしない、言うなれば象牙の塔といいますか、研究機関だけと言ってもいいわけでございまして、これは本委員会で今井筆頭理事を初め私ども現地調査もいたしましたけれども、やはり原爆病院の近く、そして広島の原対協ともあわせて被爆者のニーズにこたえるような改善をしていくべきだ、こういうことがあったわけでございますけれども、検討結果と、いま申し上げました移転等についての考え方を最後に承って、私の質問を終わりたいと思います。
  84. 三浦大助

    三浦政府委員 放射線影響研究所のこれからのあり方というのがいま問題になっておるわけでございますが、これは現在、放射線影響に関する研究体制のあり方検討会というものをつくって、いままで三回やってまいりました。これからもまだこれは続けていくわけでございますが、そこで、放影研といろいろな関連する研究機関あるいは原爆医療機関との連携強化あるいは役割り分担、こういうものをもう少しきちっと整然とやりていった方が効果があるのではないかということで、いまいろいろ御意見をいただいておるわけでございまして、その中で、放影研の移転問題につきましてもこの研究体制全般のあり方の一環としていま議論がなされております。もう少しお待ちいただきたいと思います。
  85. 森井忠良

    森井委員 終わります。
  86. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十七分開議
  87. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  原爆関係二法案に対する質疑を続行いたします。大原亨君。
  88. 大原亨

    大原(亨)委員 基本的な問題は最後に回しまして、各論的なところから入っていきます。午前中森井委員から基本的な問題についてかなりあったわけでありますが、私もそれらを踏まえまして最後に質問いたしたいと思います。  これはその質問に入る前ですが、私は予算委員会の分科会でも質疑応答をいたしました点をさらに詰めてみたいと思います。それは健康保険法、国民健康保険法、共済組合法、そういう一般保険法と、老人保健法と、それから原爆医療法の三つの法律関係であります。  老人保健法については、十月に実施するということで、審議も順調に行けばこの国会で通す、こういうことでやっておられると思うのですが、老人保健法が通らなかった場合、いまも総スカンでありますから、その場合には原爆医療法と一般保険法との関係はどうなりますか。
  89. 三浦大助

    三浦政府委員 私どもも十月一日で実施できますように最大の努力をしておりますし、そのようにお願いをいたしたいと思っております。
  90. 大原亨

    大原(亨)委員 できなかったらどうするかです。
  91. 三浦大助

    三浦政府委員 できないことまではまだ考えておりません。
  92. 大原亨

    大原(亨)委員 それでは、この前質問いたしました国家補償の精神に基づく医療法であるならば、これは戦傷病者戦没者遺族援護法その他と同じように、関連した一般疾病も根元から保険制度を外しまして全部国費の負担、こういうことになるわけであると考えますが、いかがですか。
  93. 三浦大助

    三浦政府委員 原爆対策は広い意味国家補償ということになっておりますので、これはそういう見地に立って行うべきものと考えております。基本懇の御意見にもございますように、放射線による健康障害の実態に即応する適切な対策を重点的に講ずるという趣旨でございまして、原爆被爆者に対する医療につきましても、そういう観点から認定疾病につきましては全額国庫で見る、それから一般疾病、かぜとか直接放射線に起因しない疾病につきましては健康保険が優先するということでやっておるわけでございます。
  94. 大原亨

    大原(亨)委員 本質的な議論は、国家補償の精神であるならば、これは特別法優先ですから保険の制度から外しまして全部見るのです。援護法というのはそういう仕組みになっているのです。しかしこれは、そういう成立の経過と、やはり他の方の予算を確保するという政策上の問題、そういう問題から、一般健康保険法を優先さして、その次に原爆医療法を適用した、こういうふうに政策上なったわけであります。  そこで、基本懇の答申も出たわけですが、これは言うなれば広い意味国家補償ということを認めておるわけですけれども、その議論は後にいたします。一般健康保険を七割ないし八割、被用者保険の家族でありますと八割ですが、その残りを原爆医療法でやっておるのを、老人保健法が通りますと、今度は老人保健法を一般保険法の上に優先的に適用する、こういう仕組みになっておるわけであります。それは間違いないですね。
  95. 三浦大助

    三浦政府委員 間違いございません。
  96. 大原亨

    大原(亨)委員 では、これは重要な問題ですから、そのときにそうでなしに、一般保険法の上に原爆医療法を適用して、そして七十歳以上も含めて三割、二割分は、被爆者については原爆医療法を適用するということになると、そうすると全部国の負担で三割、二割はやるということになりますね。そういうふうに一般保険法の上に原爆医療法を従来どおり重ねていくのか、あるいはあなたが答弁されたように、政府の老人保健法の制定、新法にあるように、老人保健法を適用して最後の一部負担だけを原爆医療法で負担をしていく。被爆者にとっては変わりはないという結果であります。しかし、法律の本質的な仕組みは変わってくる。第二段階の適用を優先的に原爆医療法にする。そうすれば、県や自治体の負担については文句は何も出てこないわけです。  しかし、そうでなしに、老人保健法を適用するという場合には、結果としては七割は保険者の負担、これが問題になっておりますが、これもこれからどうなるかわからぬけれども、残りの三割については、二割を国が負担して、五%、五%、県と市町村が負担する、こういう仕組みになっているわけですね。それはおかしいではないか。従来の国家補償の精神、原爆医療法の精神から言って、原爆被爆者がたくさん生活をしておる地域の自治体はそのために、原爆被爆者疾病にかかる率が多いわけですから、医療費がかさむわけです。ですから、それを自治体が負担するのはおかしいわけです。  全国民が負担するのが当然であるということから、予算上の措置で、政府の案のような場合であっても調整交付金を出して、そして調整交付金で自治体の五%、五%の負担分は調整をしていく、肩がわりをしていく、たとえば少なくともそういう措置をとらなければいけない、この二つの方法があると思うのですが、政府はどういう方法をとるのか、どういう考えを持つのかという点についてお答えをいただきたい。
  97. 三浦大助

    三浦政府委員 被爆者一般疾病医療につきましては、社会保険の一般制度を優先して適用するという原則に従って、老人の被爆者につきましては老人保健法を適用することになるわけでございます。しかし、今回の地方負担というものは老人保健法の中で発生するものでございまして、被爆者対策としての一般医療費支給制度の中に地方負担を導入したというわけではないわけでございます。  老人保健法におきましては、いま先生の御指摘がございましたように、老人の医療費を保険者、国、地方公共団体共同で持ち寄ることによりましてみんなで公平に負担していこうということでございまして、地方公共団体もこれに伴う権限と責任を負うわけでございますので、被爆者にかかわる地方公共団体の負担を国が肩がわりするということはできないわけでございます。  ただ、老人保健法の施行に伴いまして被爆者をたくさん抱えております県市、広島県市、長崎県市につきましては、急激な財政負担が生じますので、調整交付金を用意して激変緩和の措置をとろうということを考えておるわけでございます。
  98. 大原亨

    大原(亨)委員 つまりあなたは法律の議論がよくわかっていないよ、お医者さんだからやむを得ないかもしれませんけれども。よくわかっていないのだ、私が前からずっと質問していることについて。そのことについて私は繰り返しませんよ。つまり、国家補償の精神を入れるならば根っこからやるのが当然だが、少なくとも三割、二割については現在の原爆医療法と同じように国が負担すべきである。それは根っこの方は、国民健康保険は国も負担しておるし、市町村も負担しておるし、保険者も保険料で負担しておるわけですよ。これもやはりおかしいわけです。  本当の国家補償だったら、軍の関係とかあるいは援護法の関係とかと同じように、根っこからやるのが本当なんだ。認定被爆者についてはやっておるわけだ。認定被爆者はやっておいて、一般疾病、たとえば健康管理手当制度もある。そういうものは何かと言えば、放射能をたくさん受けた人は爆風や熱線だけでなしにその複合汚染によってやはり一般疾病にかかっても治癒能力、回復能力が劣っておる、加齢現象が強い、こういうことから特別の医療措置をとってきたわけであります。その精神から言うならば、三割、二割については、老人保健法を先に適用するのではなしに原爆医療法を適用すべきである、もとからやるのだが、少なくともそこからやるべきであるという議論が一つある。  それをとらないとするならば、いまのように、政府が組み立てておるように、老人保健法を適用して激変緩和の措置をとるのであるならば、そういうことを、これから三割の中で二割は国が負担をする、五%、五%を県市が負担する、その県市の分については国が措置をするということで、実質的に財政上は医療法を第二段階で適用したことと同じ結果になる二つの方法がある、その後者の方針をとったのか、私はこう言って質問をしているわけですよ。いかがですか。
  99. 三浦大助

    三浦政府委員 今回の予算措置は、老人保健法への制度の変更に伴って生ずる財政負担の増加を緩和しよう、こういうことを考えているわけでございます。したがって、広島、長崎四県市がいままで負担しないで済んできた部分、これは約三%になりますが、これはひとつ国の方で見てあげましょう。ただ、制度変更に伴ってある程度、二%分ぐらいは全国の市町村が責任を持つことですし、それから広島、長崎県でも原爆被爆者以外の老人もおりますので、このぐらいはひとつお持ち願えないだろうか。ただ、それは全国的に問題がございますけれども、広島、長崎につきましては非常に大変な負担になりますので、これをひとつ私の方でめんどうを見てあげましょう、こういうことでございます。
  100. 大原亨

    大原(亨)委員 それならばあなたの表現の仕方が、原爆二法、医療法の精神を、あるいは援護法決議の精神を踏まえた答弁になっていないわけだ。なっていないのだが、事実は事実として述べた。ただし、三%が適当であるかどうかというのは問題である。これは問題でしょう。三%の根拠答弁してください。
  101. 三浦大助

    三浦政府委員 三%の根拠と申しますのは、広島、長崎県市がいままで負担を免れてきたもの、つまり、いままで国で見ておったもの、負担を免れてきた分を私どもの方で見てあげましょうというわけでございまして、この部分が全部で約十二億になるわけでございます。その半年分でございますから、六億の財整調整をするわけでございまして、あとの二%、これは今度の老人保健法の施行に伴って新しく生ずる負担分、これにつきましては全国並みにそれぐらいは持っていただけないだろうか、こういうことでございますので、三%の根拠というのは、いままで広島あるいは長崎県市が負担を免れてきた分でございます。
  102. 大原亨

    大原(亨)委員 あなたの答弁でちょっとおかしいのは、免れた分などと悪いことをしていたように言うんだな。あなたの根本的な認識が悪いから、主管局長としてとやかくのことを言おうと思えば言えるけれども、これは話を進める。三%が適正であるかどうかはまた細かな議論をしなければならぬ。これだけで時間がかかる。  そこで大臣、この質疑応答を通じまして、激変緩和の措置というふうにとられた三%分の負担、これは県市の負担部分がいままでよりもふえる部分に相当する部面を三%というふうに線引きをしたんだ、こういう御答弁であります。この制度というのは、一年、二年とかいう臨時的な措置ではなしに、第一の措置をとるのか、あるいは第二の措置をとるのか、こういうことを私は言っているわけです。これは第二の措置をとったというのですが、この激変緩和の措置は予算上の措置として調整交付金としてこれからも制度として続けていく、こういうふうに理解をするが、よろしいか。
  103. 三浦大助

    三浦政府委員 私ども、これは年次的に段階を追って激変緩和を解消していこうということで当面三年ぐらいと考えておりましたけれども、これからの負担の状況、そういうものも勘案いたしまして、またこれから予算折衝その他のときにはいろいろ努力はしてまいりたいと思っております。
  104. 大原亨

    大原(亨)委員 いま局長はやや前向きな答弁です。これは一年、二年、三年間で終わるというよりも、長崎、広島各自治体は被爆者を抱えておる、人口等においてそうですが、それぞれ基本懇が答申を出しているのですが、地域的な社会福祉被爆者をお互いに守っていく必要があるというところがあるわけです。そういう独自の措置を政府の縦割りの行政の中でとってきておる、諸制度との間の地域における受けとめ方として、特別の被爆者対策をやっておるわけです。  これは努力をしておるわけですから、この問題の負担があるということを前提で考えるならば、激変緩和の措置が一年、二年、三年で終わるようなものではなしに、この制度の中で考えて、私が第一のカテゴリーと第二のカテゴリーの問題を議論いたしましたが、そういう趣旨からいっても、国家補償的な精神を背景とするという場合には、そのことによって自治体がたくさんの負担を負うということではなしに、これは基本的な問題として国が負担をする。調整をする、あるいは法律を仕組みを変える、第一か第二かの問題は別にして。  そういうことで引き続いてこの予算上の調整交付金の制度というものは制度として存続すべきであると思うがどうか、わかるという点についてひとつ前向きの明快な答弁をいただきたいと思います。(「これは問題だ」と呼ぶ者あり)これは前から議論しておることですから、こういう雑音には惑わされないで答弁してもらいたい。
  105. 森下元晴

    森下国務大臣 今回の老人保健法の御審議、参議院でやっておりますけれども、その中で地方負担五%、それが長崎、広島、四県市に大変な御迷惑と申しますか御負担をかける、これは事実でございまして、いま御指摘内容につきましては、負担増になります分については段階的に緩和をしていくというわけでございますが、この法律を施行さしていただきまして、その内容をよく検討いたしまして、大原委員の御指摘のような方向に調整をしていきたい。結果がまだ出ませんから、やってみないとわからないという点も実はあるように私は思います。ただ、考え方といたしましてはその方向で検討していきたい。これは法案がまだ通っておりませんので明言はできませんけれども、御趣旨はよくわきまえておるつもりでございます。
  106. 大原亨

    大原(亨)委員 これは老人保健法案があるなしにかかわらず、第二段階の政策的な――この前、法制局は政策的な問題だ、こう言ったのだから、法律的にどれが優先しなければならぬという問題じゃない、こういうふうにはっきり言っているわけだから、そのことは皆さん聞いておられるでしょう。ですからこれは政策上の問題だとするならば、あの老人保健法のような組み立て方をすることはいけないと思っておる。だからあの老人保健法はそこだけでもだめだ、こう言っておるのだが、百歩譲ってそれが通ったとしても、予算上の措置として激変緩和といったって、三年間で緩和できるわけはない、被爆者は現に存在するわけですから。それで被爆者の方々がなくなるということはないわけだ。治癒するとかということ等含めて、死没等を含めてなくなることはないわけですから、緩和措置というのは被爆者や自治体の立場に立って見た場合には、これは基本的な問題であるという点で、局長大臣はいまだかつてない前向きの答弁をされたと思うのですが、この点はそういう事実を踏まえて、いままでの経過を踏まえて、あるいは被爆者に対する補償を踏まえて、その立場を踏まえながら十分前向きで取り組んでもらいたいということを私は希望いたします。大臣の簡単な答弁を。
  107. 森下元晴

    森下国務大臣 ただいま御発言されました御趣旨に沿ってやっていきたい、このように思っております。
  108. 大原亨

    大原(亨)委員 原爆被爆者の中で認定被爆者は何人ありまして、その中でケロイド関係は何名ですか。
  109. 三浦大助

    三浦政府委員 いま医療特別手当支給している方は、昭和五十六年三月三十一日現在で二千二十八名いらっしゃいます。ケロイド関係の方はその中に百七十二名おられます。
  110. 大原亨

    大原(亨)委員 それで、医療特別手当疾病別受給者数というのは私もいただいておるのですが、医療特別手当疾病別と言うのは、俗に一言で言うと認定被爆者のことでありますけれども、それが二千二十八名ですね。これはこの二、三年の傾向を見てみますと、毎年ふえているのですか、減っているのですか。亡くなっている人を含めて、新しく認定される人はどういう状況でございますか。
  111. 三浦大助

    三浦政府委員 昭和五十五年度が二千二十四人でございます。それから、五十六年度が二千二十八人、四人ばかりふえております。このうち新規の受給者数というのは昭和五十五年に百名おりまして、昭和五十六年には百三十名ございます。
  112. 大原亨

    大原(亨)委員 そうすると、あなたはお医者さんで専門家だけれども、どういう方が新規に認定被爆者になるのですか。それは大体常識的というか傾向的でよろしい。
  113. 三浦大助

    三浦政府委員 医療特別手当疾病別の受給者数の中身を見てみますと、一番多いのは造血機能の障害の方でございます。――ちょっと御答弁を変えて恐縮ですが、昭和四十八年の六月から五十七年七月の間の原爆医療法の八条一項の現在の認定の状況を見ますと、認定総数が五百四件で、悪性新生物、がんが大体三二・三%を占めておりまして、だから一番多いわけでございます。それから肝臓機能障害が二九・六%、それから外傷性疾患が二五%ということでございまして、最近ふえているというのはがん関係の患者さんがふえているようでございます。
  114. 大原亨

    大原(亨)委員 認定被爆者は明らかに国家補償だというふうに最高裁その他も具体的に指摘をしているし、七人委員会もそういう意味のことを指摘をしているわけです。根っこから国が医療費を見ているわけです。それから医療特別手当、ことしは十万円、これは一カ月おくらしてけしからぬけれども、十万円ということになっているわけですね。十万円台に入ってきました。これは援護法とか国家補償とかいう場合には中心的な制度でありますが、私もしばしばやったのですけれども、その認定制度というものが問題ではないか。お医者さんが専門的にチェックしていくのはいいのですが、しかし疑わしい場合でもその可能性が強いものについては認定患者に入れていくようにしないと、実際上認定制度というものが生きないのではないか。  がんを中心に新しい患者がふえているということについては御答弁がありました。  たとえば、私が以前指摘をいたしまして検討していただくことになっているのですが、あるお母さんが原爆小頭症児を抱えておられるのです。原爆小頭症が認定患者の中に入ることは御承知のとおりこれははっきりしている。この中に一項目入っております。小頭症の患者を妊娠しておられたお母さんが放射能をたくさん受けたから原爆小頭症になったのであって、ですから母体も放射能をたくさん受けておられるが、原爆症という決まった概念はないのに、原爆認定の申請をしてもなかなか受理しない。受理されたときには、ついせんだってそのお母さんは死んだ、こういうことであります。原爆小頭症児を出産したお母さんはそのときすでに認定患者としてそういう観点で制度の適用を受けるような仕組みにしないと、認定患者というものが国家補償の精神に基づいて運営されるということにならないし、百歩譲っても、七人委員会のそういう答申の趣旨にも合わない。私が指摘をいたしました点は最近のそういう認定の方法について取り入れられておりますかどうですか、お答えいただきたい。
  115. 三浦大助

    三浦政府委員 原爆小頭症の赤ちゃんを産んだお母さんがいま自動的に認定患者になるということはないわけでございまして、認定疾病は医療審議会の御意見、専門の先生方の御意見で決めてやっておるわけでございます。もし何かの疾病がございますればこれは別でございますが、小頭症の赤ちゃんを産まれたお母さんが自動的になるということはいまはございません。  ただ、こういう方は非常に近距離被爆者でございますので、恐らく保健手当等支給されておるのじゃないかというふうに考えております。
  116. 大原亨

    大原(亨)委員 だからそういう疾病について原爆症は因果関係ありという判断に基づいて認定申請しておるのだけれども、審議会にかけるとずっと順送りになって死んだときに認定された、こういう例があったということを私は指摘したことがある。  ですから、たとえばそういう小頭症児を産んだお母さんはいろいろな症状が出てくるわけですけれども、その症状については、医者の固定的な概念による認定ではなしに、そのおそれがあるという観点で認定するというふうな枠の広げ方をしなければいけないのじゃないか。余り狭く狭くしておくと、人数は若干変わっている状況はありますけれども、ふえている状況もありますが、しかし、それは実情に即さないのではないか。  従来から問題ですが、健康管理手当対象となる十二の疾病厚生大臣が指定しております、関連疾病とも言いますが、そういう場合に、認定疾病の範囲に入れるという人がかなりいるのではないかと私には思われる。というのは被爆者から放射能をたくさん受ける立場にあった、距離その他の条件もそうですが、そういうことを考えた場合に、認定制度についてもう一回――いままでのマンネリ化と言ったら専門家は怒るでしょうが、それをいままでの経験に基づいて少し認定制度の幅を広げるという考え方を持つことはできないか。
  117. 三浦大助

    三浦政府委員 原爆小頭症の赤ちゃんを産まれたお母さんにつきまして、何か健康障害があれば別ですが、現在は健康であれば認定できないわけでございます。ただ、先生そういう御提案がございましたので、原爆医療審議会を開かれるときに、先生方に先生の御趣旨もお伝えいたしまして、一度御意見を開いてみたいと思っております。
  118. 大原亨

    大原(亨)委員 先ほどちょっと取り上げましたが、認定患者の中でケロイドの人が百七十二名、これはかなりの数を占めるわけです。熱傷瘢痕異状、ケロイドの方がふえているわけですが、どういうことを基準にして認定しておりますか。
  119. 三浦大助

    三浦政府委員 ケロイドを有する患者さんにつきましては手術をする、その手術をしますと当然治癒能力の障害が起こってまいりますので、これはそういう障害が生じるということで認定をしておるということでございます。
  120. 大原亨

    大原(亨)委員 たとえば原爆を受けて十回も二十回も手術をしても瘢痕が、傷跡がなくならないですね。やけどの跡がなくならぬでしょう。そういう人は何回やってもなくならぬので、ずっと手術を続けている人を一定の基準で入れているんですか。
  121. 三浦大助

    三浦政府委員 ケロイドにつきましては、そのケロイドそのものが認定対象になっているわけではございませんで、手術の結果、原爆放射線によると思われる治癒能力障害が生じるという方について認定しておるということでございます。
  122. 大原亨

    大原(亨)委員 従来言われました顔面とか体の外に見えるところとか、場所によっての判断はしておりますか、しておりませんか。
  123. 三浦大助

    三浦政府委員 ケロイドそのものにつきましては、場所に限らず認定をしておりません。この認定というのはあくまでも原爆によります放射線による健康障害ということでございまして、ケロイドというのは熱線による障害でございます。したがいまして、一般の焼夷弾を受けたということの関係等、いろいろな比較もございますので、ケロイドそのものについてはその場所のいかんを問わず認定はしておりません。(大原(亨)委員「していない」と呼ぶ)はい。現在認定はしておりません。
  124. 大原亨

    大原(亨)委員 場所によって、顔面とかそういう部分に、たとえば婦人でも男でもそうですが、顔面を、熱傷を受けましたら、何回も手術をしても治らない、他の皮膚を当てる、こういうようなこと等で、たとえば結婚できない、就職に差別ができる、こういうことも考えてそれに対する対策を立てるということを議論したことが一時あるわけですが、そういうことは考えていないわけですか。
  125. 三浦大助

    三浦政府委員 先ほど申し上げましたように、これは何回も手術をして治癒能力障害があってなかなか治らないという方については認定をしております。ただ、その場所による区別というのはしておりません。
  126. 大原亨

    大原(亨)委員 治癒能力障害があるというのはどういうことですか。
  127. 三浦大助

    三浦政府委員 要するに、放射線を浴びますとなかなか治りにくいということがございます。手術をしても、普通の患者さんと違ってなかなか傷もくっつきにくい、そういう治癒の能力障害、そういう方については救済をしておるということでございます。
  128. 大原亨

    大原(亨)委員 きょうは援護局も出てもらっておるのですが、そういう認定患者とかそういうケロイドその他で治癒能力の障害があるのは、援護法の適用あるいは障害の級の適用、そういうものは、この原爆医療法の結果というものはこれを見てやっておるわけですか。
  129. 北村和男

    ○北村政府委員 原爆を受けました軍人軍属等につきましては、援護法の障害年金遺族年金などの裁定を行いますに当たっては、その原因が原爆医療法によります認定疾病であれば、原爆被爆との関係に因果関係があると認定をいたしております。認定疾病以外の疾病により死んだというような場合につきましても、生前の治療、それから療養の状況等の客観的資料によりまして因果関係が認められる場合には、援護法によりまして処遇をいたしております。
  130. 大原亨

    大原(亨)委員 それでは認定問題につきましては、やはりいままでの惰性だけではなしに、原爆症とは何かということの研究は進んでいるわけですから、それらの成果を踏まえながら、実績を踏まえながら、ぜひこの改善措置をとってもらいたい。それは国家補償的な精神、国家補償の精神というようなことを口先で言ってもだめなんで、これはやはり原爆との因果関係についてはそんなに簡単に医学上解明されている問題ではないわけですから、これはいろいろな長い医学の経験を積んで出てくるわけですから、ぜひこの審議会の運営を含めましてやってもらいたい、こういうことであります。  それから次に、森井委員質問にあったわけですが、放影研のあり方の検討の問題です。放影研のあり方の検討の問題については三回目をやられたわけですが、これは何回ぐらいやりましたら済みますか。
  131. 三浦大助

    三浦政府委員 去年から始めましていままで三回、実はきのう三回目をやったばかりでございますが、これからひとついろいろ研究所あるいは病院の機能を有機的に連携していこうということと、それからお互いに役割り分担をひとつつくっていこうじゃないかということ、それからもちろん広島の研究所の移転の問題も含めましていま検討しているわけでございますが、きのう一応総論的なまとめをすることになりまして、これは部会長の方に一任されたわけでございますので、総論的なまとめは間もなく出てくるんじゃないだろうかと思っております。後それを携えて、ひとつ長崎と広島へ一度行って現実に現地を見てみよう、こういうお話がきのう出ておりました。  したがいまして、ひとつ五十七年度あるいは五十八年になりますか、とにかく早い機会に御意見をいただこう、こう思っておるわけでございます。
  132. 大原亨

    大原(亨)委員 これは三回ほど検討会は運営されておるわけですが、どうも密室の中でやられておる、こういう印象がある、こういうふうに言われておる。密室でやるのが多いわけでありますが、これはやはり被爆者意見等も聞いたらどうだ。というのは、放射線影響を研究しまして、そして治療とかあるいはいろいろな対策に役立てるということについては、やはり総合的にやれというのをしばしば本委員会でも決議しておるわけです。ですから、そのことを考えながらやってもらいたい。  でないと、歴史的にはアメリカとの関係で、これはアメリカの占領軍がつくったんです。ですから、モルモットだという、そういうことがずっとあるわけです。ですから、たとえばネバダで実験しますね、あるいは核を使うといういろいろな想定でやる場合に、この結果というものは生きておる、使われておる、こういうように言われておる。しかしながら、被爆者を本当に治療したりあるいは治療法を研究したり、政策をやる場合に、これは生かされておらぬというのが伝統的な意見ですからね。それは順次克服をされて、そして経営形態も変わってきたわけです。日米の口上書等で変わってきておるわけですね。  ですから私は、これは放影研のあり方をどうするかということは非常に大切な問題ですから、今井さんも行ってみえられたことがあるらしいですけれども、これは七人委員会も前向きにやっておるわけです。やはり唯一の被爆国であって、放射能の影響というのは、いまいろいろ質疑応答しておりますが、私どもの想像できないことがたくさんある、こういうことですから、二世、三世の問題を含めまして、影響については日本は唯一の被爆国として責任ある、独自のそういう研究と施策をとるべきである、こういう答申があるわけですから、これは委員会に直ちに入れるということ等ではなしに、被爆者等の意見等も聞いた上で、この問題については対処するようにしてもらいたい。  いかがですか。
  133. 三浦大助

    三浦政府委員 放射線影響研究所には地元の連絡協議会という組織があるわけでございまして、この中には被爆者の代表の方も入っておるわけでございます。したがいまして、被爆者意見を反映するということは、これはもう可能なことであるわけでございますので、十分私どもその辺の御意見も吸い上げながらひとつやってまいりたいと思っております。
  134. 大原亨

    大原(亨)委員 それから去年状況調査、実態調査の予算を組まれたわけですね、一千万円を超えて。この予算額と予算を使用された経過についてお答えをいただきたい。
  135. 三浦大助

    三浦政府委員 被爆者状況調査のことだと思いますが、これにつきましてはアンケート調査のようなもので、医療保険の加入状況だとか職業だとか収入、健康状況、健康診断の受診状況あるいは手当の受給状況、それから日常生活の状況というのは、これは六十歳以上の方々に対して行っております。それから被爆時の同居家族の状況、こういうことをアンケート調査のかっこうでいまやっておるわけでございまして、これはいま集計中でございます。まとまりましたら御報告申し上げますが、この中身につきましてはちょっとここに資料がございませんので、後ほどまた御報告をさせていただきたいと思います。
  136. 大原亨

    大原(亨)委員 それで一千三百万円を使ったわけですか。
  137. 三浦大助

    三浦政府委員 この予算は一千三百万円でございます。
  138. 大原亨

    大原(亨)委員 どういう目標で調査するのですか。それは何のために調査するのですか。
  139. 三浦大助

    三浦政府委員 この被爆者状況調査につきましては、被爆者の健康状況、それから生活状況、こういったものを調べまして被爆者がいま置かれている状態を把握したい。それでまた今後のいろいろな行政に生かしていきたいということもございますし、また広島、長崎両市が行っています復元調査とかあるいは被災調査、こういう被爆の実態を明らかにするような調査にも役立てていただきたい、こういうことでいまやっておるわけでございます。
  140. 大原亨

    大原(亨)委員 しかし、前あなたが答弁されたものは、現在の被爆者の生活状況を中心にアンケート調査をしておられるという答弁でしたよ。それでたとえば、復元調査その他というのは私どもが言い、かつ国会で附帯決議で何回もなっているように、被爆の実態、死没者の実態――死没者の実態すらわかっていない。いろいろなデータがあって、警察のなにもあれば、あるいは軍管区の発表もあれば、あるいは米穀通帳の問題もあれば、いろいろなのがあるのです。ですから、そういうことを含めて総合的に調査をするのではないのですか。どっちが本当ですか。
  141. 三浦大助

    三浦政府委員 何分大分前のことですからこの調査も非常にむずかしいわけでございまして、できれば私ども非常に詳しく欲しいわけでございますが、この中で健康状況とか日常生活の状況というものを何とかつかんでいきたいという気持ちでいまやっておるわけでございます。  また、この結果が出ましてもっと何かこういうことをやればよかったということもございましたら、これはまたその段階で考えてまいりたいと思っておりますが、非常に前のことでございますので、調査自身がまことにむずかしゅうございます。
  142. 大原亨

    大原(亨)委員 唯一の被爆国であるから被爆の実態について国は可能な限り完全に把握すべきである、こういうことで、たとえば全部の調査、死没者調査等をしようと思いますと、五十五年段階で国勢調査はもう済んでいるのですから全部の国民にわたって調査しなければいかぬ。そういうふうにケースワーカーも訓練しなければいかぬ。でなければ全体的な掌握というのはできないわけです、全部散在しているわけですからね。そうしないとダブってしまうわけです。それはなかなかしないと言う。何回も議論してしなかった。  であるとするならば、いままでのいろいろな資料を集計して、そしていろいろ科学的に、社会的に考え得る判断としてはこういう状況であったのだ、死没者はこうなんだ、第一段階での瞬間的な死没者や、順次こういうふうな段階に置かれてこうだったんだというふうなこと等については、少なくとも国としては、唯一の被爆国であると言うならば広島市や長崎市だけではなしに一つのデータを持つべきである。それは核の廃絶の上からも持つべきである、こういうことであったわけです。私はそういうことをやるのかなと思った。そうしたら、いまの質問やさっきの話を聞いていますと、現在の生存者についての生活を中心としたアンケート調査をやっておられる。  であるとするならば、将来医療法と生活援護等の関係を含めて、所得保障の関係を含めて援護法を考えるための基礎データを考えておられるのかどうか。死没者については死没者、生存者については生存者、こういうふうな目標で一千三百万円の予算を使われたのかどうかと私は問題点を持つわけですが、いかがですか。
  143. 三浦大助

    三浦政府委員 原爆被爆者の調査につきましては、被爆後三十六年経過しておるわけですから、なかなか正確な調査を行うということはむずかしいわけでございますが、今後ひとつあらゆる機会をとらえてこれはやってまいりたいと思っておりますが、何分五十六年度の調査結果を見て、また今後一体どのくらいいろんな調査が把握できるだろうかということも踏まえて、検討をさせていただきたいと思います。
  144. 大原亨

    大原(亨)委員 原爆医療法はかなり日本の制度としては進んだ制度なんですね。老人保健法も包括医療というふうなことを言う。保健ヘルスサービスということを言って予防から健康管理から治療からリハビリ、全部総合的にやる、こういう話です。これは健康管理についても所得保障を含めてやっておるわけです。それから、治療についてやっておるわけです。それから、たとえば在宅患者の看護についてもやっているし特別養護老人ホームもやっているわけです。しかし、それが本当に全体として有機的に役立っているかどうかということを、放影研の問題を含めて総合的に再検討する段階に私は来ていると思うのです。それがこの法案の持つ、いわゆる実質的な援護法的な問題の内容の一つの柱であると私は思うわけです。ですから、そういう点から言いますと、まだまだ問題点がたくさんある。  たとえば特別養護老人ホームで一生を終わるのか、これはおかしいのです。やはりリハビリテーションで帰ってこなければいけない。家庭復帰で、家庭で一生涯を終わるのが一番いいわけであります、在宅ケア中心で。  そうすると、介護手当とか家族介護の問題もあるし、ホームヘルパーの関係もあるわけですね。たとえばホームヘルパーの例をとってみますと、被爆者についてどういう状況でございますか。
  145. 三浦大助

    三浦政府委員 ただいま、家庭奉仕員の派遣事業の現況と申しますのは、これは日常のお世話を行っておるわけですが、主としてこれは老人福祉法によります老人家庭奉仕員の派遣によっていまやっておるわけでございます。被爆者の家庭奉仕員の派遣事業というのは、老人家庭奉仕員派遣事業によってカバーできない六十五歳未満の者を対象として補完的にやっておるわけでございまして、これからも少し各地の実情などを踏まえて強化をしてまいりたいと思っております。
  146. 大原亨

    大原(亨)委員 先進的な在宅ケアというものをやるというのであれば、被爆者も最後は原爆病院とか特別養護老人ホームで全うするのだというふうなことを考えるのは私は間違いだと思うのです。やはり最後はできるだけ家庭で元気で終わる。前の武見さんは健やかでと、こう言ったけれども、そう終わるのが理想であります。ですから、特別養護老人ホームも原爆病院も、リハビリテーション、機能回復訓練をやり、医療保障、所得保障と一緒に、在宅ケアの場合のホームヘルパー等も、たとえば週二日でなしに三日とか、所得制限についてもできるだけ緩和するとか、そういうこと等で先進的な制度をとりながら、これを全部に及ぼしていく、こういうふうにやらなければいかぬ。  いまのように頭があちこち分かれておるから中途半端な政策になっているということであります。いまの千三百万円の状況調査費の問題等もそうですが、本年はもう一文もないわけです。ですから、どうも七人委員会を契機にいたしまして、政府は熱意を失っておるのではないかと私は判断をせざるを得ない。  最後に、時間があと七分ですから七分間で終わりたいと思うのですが、大臣、私は森井さんの議論やその他ずっといままで議論してきたことを聞いていまして、内容の薄い厚いについてはそれほど決定的な問題ではなしに、なぜ被爆者の医療や所得保障について援護法的な考え方でできないのかと言えば――かなり進んでおるのですが、そういう国家補償的な精神で、政策の内容はともかくとして、やはり国は施策をしてもらいたいということは被爆者だけでなしに国民の願いです。  なぜかといいますと、私は二つあると思うのです。これは国家補償援護法をつくった経過が一つある。そのときに、きょうはもう話がありましたが、六月の九日からたしか十二日まで臨時帝国議会をやりまして、あなたおられたそうだけれども、方々で、沖縄が落ちて、東京空襲もあって、制空権は完全にとられて、本土決戦に臨む段階で、義勇兵役法をつくって、内務大臣、警察が握っておったやつを今度は軍が握って、一応総動員体制をとったわけです。どこまで発動されたかということで、へ理屈を法制局その他たれておりますが、そのころ生まれてもいなかったようなやつが言っているわけですけれども、それはともかくとしまして、そういう経過がありながら、全部の者に軍は命令できるような状況であったわけですが、それでなかったら軍刑法の適用があるような状況でありました。  なぜ、これが制度としてはいびつなものになろうとしているかというと、それは援護法をつくって恩給を復活しようということがあった。そこで、その前に援護法をつくったときに、準軍属の構想を入れざるを得なかった。そこで線引きをしなければいかぬ。  防空法関係についてはずっと進んでいって昭和四十九年に警防団、医療従事者を準軍属に入れたのですけれども、私も議論して、資料を出して、ついに入れましたが、しかし防空法全体については手を伸ばさなかったわけです。義勇兵役法ができておりましても、そういう問題については線を引いたわけです。それはなぜかと言えば、関係者が戦犯として占領中追放される、こういうおそれもあったものですから、資料を焼いたわけです。そういう経過があったものですから、どこかで線引きをしなければいかぬようになりまして、線引きをしたのが現行援護法であり、援護法との関係被爆者援護法ができないという関係が一つある。  もう一つは国際法違反の問題ですが、これはわれわれも長く議論いたしましたけれども毒ガス以上、細菌兵器以上のものであることはだれも認めるのです。以上のものが、なぜヘーグの陸戦法規や海空の法規によって国際法違反でないということが言えるかということ。そういうことは言えぬでしょう。それ以下のものが国際法違反であって、以上のものが違反でないとは言えぬわけです。そういう理屈はないわけです。はっきりしておるわけだ。  そのことは、昭和二十年の八月六日、九日が済んで、たしか十日でありますが、日本政府は中立国のスイスを通じまして正式の文書でアメリカに抗議をした抗議文があるのですが、その抗議文に明確に国際法違反の犯罪行為であるということを通告いたしまして、こちらの国際法上の権利の主張を留保した公文書があるわけです。しかし、占領中になりましてから、日本政府はそのことは言えなくなったわけです。国際法違反の犯罪行為であるということをはっきり日本政府は言えなかった。そこで、実定法がないから、原爆という具体的な兵器を決めたのがないから、これは国際法違反とは言い切れませんといって言い逃れて、そして今日のあいまいな国家補償のことになった。亡くなられた七人委員会の一人の田中二郎さんは公法学者でありますが、先生はその問題を持ったままで亡くなられたというふうに私は思っております。  唯一の被爆国である日本はいまや独立しているのですから、そのことをはっきり言って、そういう精神で法律をつくって、そして薄い厚いの問題いろいろあるだろうが、その精神を貫いて援護法をつくっていくということは、日本の一つの政治としての課題ではないかと私は思うわけであります。  その問題について、ひとつ最後に厚生大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  147. 森下元晴

    森下国務大臣 人類史上初めて広島、長崎に原子爆弾が昭和二十年の八月六日、九日と落とされたわけでございまして、もちろん私も、国際法違反する内容のものであるし、それだけの大きな犠牲者が出されております。したがって、いわゆる国家補償的な援護法による広い意味の措置をすべきであるということは、何回も国会におきまして、またこの委員会におきましても論議されておるところでございます。  ただ問題は、国家補償的な措置が一部されておるところもございますけれども、まだ社会保障的な内容のものもあるというような御指摘もあるわけでございますが、この問題は、やはり現在の核兵器が世界じゅうに充満いたしまして、核軍縮と、世界的に世論が起こっておる時代でもございますし、認識を新たにして、一つの曲がり角に来ておる現体制におきまして、この原子爆弾被爆者等に対する法律内容についても、私どもはいま御指摘のような方向で進めなければいけない、このように思っておるわけでございます。  ただ、一般戦災者の問題と非常に絡む具体的な問題等がございまして、そういう方々に大変御迷惑をおかけしておることは事実でございますし、もうかなり高年になっておりますし、いろいろな面でこの被害影響というものが後世まで起こらんとしているというようなことを踏まえまして、私も御指摘のような点におきましては前向きで検討をいたしていきたい、このように思っておる次第でございます。
  148. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 次に、中村重光君。
  149. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは午前中から同僚委員質疑を聞いていたわけですが、森下厚生大臣が非常に被爆者対策について情熱を持って対処していこうとする熱意は、率直に私は評価をするわけです。人柄も、私は商工委員会その他の委員会で長い間一緒に国会活動を続けてまいりましたから、その人柄がにじみ出ておるような感じがするわけであります。  ただ私は、森下厚生大臣も不本意だろうと思うのですが、原爆被爆者対策が、その性格からいって特別の措置が講じられなければならないという認識はお持ちになっていらっしゃるのだろうけれども、いわゆるゼロシーリングという形で被爆者各種手当というものが一カ月ダウンしてきたということですね。この点に対してどのような御見解をお持ちになっておられるのかという点と、いま局長も就任間近で、猛勉強されて答弁に立っていらっしゃるのだろうと私は思うのですけれども、先ほどこの老人保健法案の問題に対しましての答弁を聞いておりまして、大原委員から、免れたということは、何か悪いことをしたような感じじゃないか。私もあれは意外な答弁ですね。率直に言って、驚いていたわけですが、あなたの認識というものが大変間違っているというふうに思うのです。  これは、原爆裁判によっても御承知のとおり、原爆医療法というのは国家補償的性格を持っている。その医療法に基づいて認定被爆者は無償である。その他の被爆者にいたしましても、健康保険手帳と原爆手帳を持っていったら無償なんですよ。決して地元の県や市町村というものが免れていたのではない。国の責任においてやってきたということです。やらなければならなかったことをやったということですよ。その認識をあなたは踏み違えておられるということを反省を求めておきたいというふうに思います。  同時に、言葉じりをとらえるのじゃないのだけれども、十月から実施を期待している、よろしくお願いいたしますと、こうあなたは言われた。老人保健法そのものは政府の方針という形でやったわけですから、その点に対しては、私どもは反対なんだけれども、あなたがああいう答弁をされるというのは政府の立場というようなことであろうというように理解はしますけれども被爆老人に対しても同様な扱いをすることに対して、あなたは厚生省としては抵抗されなかったのだろうか。その点はお尋ねをしたいと思うのです。  抵抗したのだけれども、ゼロシーリングという大方針に基づいて押し切られたのだ、そういうことなのかどうか。これは大変重要な問題点であるわけですから、その点についてまず大臣から、あるいは局長からもお答えをいただきたい。前段は大臣からひとつ。
  150. 森下元晴

    森下国務大臣 昨年に比べまして、一カ月支給がおくれた、まことにこれは残念なことでございます。スライドはされましたけれども各種年金等においてもすべてそうでございましたが、実施時期が一カ月ずつおくれた、これは残念だと言わざるを得ないわけでございますけれども、当初ゼロシーリングの段階におきましては、もっともっと実はおくれておりまして、私ども全力を傾注いたしましてこの程度にとどめさしていただいた。決して自慢はできませんけれども、厳しい財政状況、それをすべての原因にいたすわけにはいきませんけれども、ごしんぼう願いたいという気持ちが偽らざる率直な気持ちでございます。
  151. 三浦大助

    三浦政府委員 先ほど県市が負担を免れていたという表現を私いたしまして申しわけありません。決して私は熱意がないわけでございませんで、ちょっと表現が不適切でございましたので、県市がこれまで負担していなかった部分、こういうふうに訂正をさしていただきたいと思います。  それから、予算折衝の段階の御議論ですが、新しい老人保健制度ができるわけでございまして、これはいろいろ中で議論はございました。ただ、これは非常に厳しい財政状況のもとにももちろんあるわけでございますが、広島、長崎は特に被爆者の方がおられるということで、それは全額見るべきであるという気持ちはございました。  ただ、新しい制度ができますと、たとえば広島市は七十歳以上の方の約半分近くまで、長崎市も半分近くまで被爆者の方がおられる。ただ県の方に行きますと、それが一五%ぐらいになります。そういうことで新しい制度が発足するについては、老人保健制度の中の負担だから、これはある程度、一部はいたし方ないのじゃないだろうか、こういういろんな意見もございました。落ちつくところは、結局県市がこれまで負担していなかった部分についてお世話をしてあげましょう、こういうことになったわけでございます。
  152. 中村重光

    中村(重)委員 今度県が三分の一を負担する。長崎県の場合五十五年度ベースで六億一千万円、それから長崎市が四億四千万円、合わせて十億五千万円の新たな負担を強いられることになったわけです。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕 五十六年になりますと、その額はふえる。五十五年度ベースでいくのだから、五十七年、五十八年とふえてくるのです。これは貨幣価値が下がることになるわけだから、そういうことになる。だから、激変緩和、この点に対してのこれから先の努力ということも御答弁になったわけだから、これは消してしまうということで努力されることが当然だということを申し上げておきます。時間の関係もありますので、このことについて多く時間をとれないのです。  それから、個人の一部負担なんですね。個人の一部負担は入院三百円、それから通院四百円、これは個人に負担をさせないという扱いをしようと考えておられるようだけれども手続的にはどうするのです。病院の窓口で一たん払って領収証をもらって、そしてそれを基金の方へ請求する。それが二カ月か三カ月後に返ってくる、そういう形になるのですか。
  153. 三浦大助

    三浦政府委員 国が現物給付ということは非常にむずかしいわけでございまして、いま先生のおっしゃったような方法になるわけでございますが、そうなりますと、市の方で非常に事務煩瑣になりまして、その辺のめんどうもひとつ見てあげようと思っておるのですが、それから市の方でもいま何とかそこら辺の改善の余地はないだろうかということで、市の方も考えておるようでございます。私ども原爆被爆者の方には、少しでもいろいろな負担がかからないように努力はいたしたいと思っております。
  154. 中村重光

    中村(重)委員 厚生大臣、お考えになってください。六十九歳まではただですよ、いいですか。手帳を両方持っていったら六十九歳までただ。七十歳になったら有料になっちゃうのですよ、これは。原則としてはそういうことになる。こんなばかげた話がありますか、このことを一つ頭にきちっと置いていただきたい。  それから三百円で一日だから十日入院しておったとすると三千円、通院で二カ月したら八百円でしょう。これを一たん病院で払って領収証をとって、その領収証を添付して窓口から基金の方へ請求する、そういう形になる。できるだけ便宜を図るようにしたいといういまのお答えなんだけれども、払ってまた返ってくるのだったら、それは何のために払わせるのです。必要ないじゃありませんか。車代を使って相当な時間を費やしますよ。  それだけに今度は役所の方も事務が複雑になるのですよ。行政改革、財政再建といって事務の簡素化を図っていかなければならぬのに、そんな逆行するようなやり方、それから国家補償的性格を持つ原爆医療法をじゅうりんするようなやり方、こんなばかげたことやっちゃいけません。このくらい矛盾したやり方はありませんよ。おやめになることが当然だと思う。これは一たんやって返すのだ。国としては負担の面においては別に関係はないのだから。  この点はいかがですか。
  155. 三浦大助

    三浦政府委員 先生のいま御指摘の点につきましては、たくさんの被爆者を抱えておられます地方公共団体につきましては、非常に大きな問題でございますし、また被爆者の方に不便をおかけするわけでございますので、この点につきましては地元とよく相談いたしまして、なるべく被爆者に不便の生じないようなことを考えていきたいということで市の方とも話してまいりたいと思っております。
  156. 中村重光

    中村(重)委員 その点は大臣から答えてください、いま言ったようにはっきりしておるから。なるべく負担のかからないように、こう言っている。
  157. 森下元晴

    森下国務大臣 前段の問題でございますが、六十五歳から無料にしておる地方団体もございますし、六十八歳とか六十九歳、いろいろございまして、今回七十歳一部負担ということになりますと、途中が無料で七十歳になると途端に負担が要るという非常に矛盾した制度が出てくることは事実でございます。私どもとしては、地方自治体のことでございますから、干渉がましいこと、また強制的なことはできませんが、全国的に見ました場合、やはり七十歳からという地域もたくさんあるわけでございますから、大体国の方向に自主的に持っていっていただきたい、こういう実はお願いをするわけでございまして、この点はそういうような矛盾が起こらないようにやっていきたいと思うわけであります。  それから後段の問題でございますが、法の精神は決してそういう方々に御不自由、御不便はかけたくない、これははっきりしておりますから、運用面におきまして御迷惑をかけないように、いま局長も申し上げましたけれども、これは決して逃げの答弁じゃない。やはり長崎とか広島の場合においては、特殊なそういうような患者の方々でございますから、そういう点においては私どもも十分注意いたしまして、広い意味での国家補償であるということをよく胸の中にたたき込みまして行政をさせていただくというふうにやっていきたいと思います。
  158. 中村重光

    中村(重)委員 個人の医療費を一たん病院に払って、請求してまた戻してくるというのは、長崎、佐世保だけの問題じゃないんだ。全体の被爆者の問題なんですよ。これは明らかに被爆者だけじゃなくて、もうすべての人が実におかしなことをするものだなと。手帳二つ持っていったら六十九歳までただだから、それを七十歳になってから有料にするというようなことは、だれがこんなばかげたことを納得します。  勘ぐってみると、二カ月通院して八百円でしょう、それだけの金を請求するのにバス賃を使って、あるいは車を使って遠いところを役所に行って請求をするという手続がうるさいから、恐らく請求権を放棄するだろう、それをねらってこういう複雑なことをやらせようとしているんだ、そういう見方だってできるのですよ。被爆者はそういう見方をしているのです。ですから、こんな矛盾したやり方はおやめになる。それはいまの大臣の言葉を信頼いたしましょう。  次にお尋ねをするのですが、認定制度の問題については大原委員からもお尋ねがあったのですが、このいまの認定被爆者の数はお答えでわかったのですけれども、初め五、六千名いたのですよ。それがずっと毎年減ってきている。初めは申請をすると八割ぐらいまでは認めていたのです。あるいは九割ぐらい認めていた。ところが、ずっとそれが制約されてきて非常に厳しくなってきたのですよ。それは高年齢の人が多いから、重症でもあるから早く亡くなったという点もありましょう。しかし、申請をしてなかなか受け付けないから、受け付けても却下するケースが非常に多いから、したがって、先ほどお答えになったような数字になったのですが、最近の申請の状況はどうですか。
  159. 三浦大助

    三浦政府委員 最近の申請数でございますが、五十五年には申請が二百八十件ございました。認定件数は百件でございます。それから五十六年は、三月一日現在の数ですが、申請件数が三百件ございまして、認めたのは八十八件でございます。
  160. 中村重光

    中村(重)委員 お聞きのとおりです。前の記録を見ていただけばわかるんだけれども、八〇%ないし九〇%ぐらい認めていた。いまは三分の一、その程度にしか認めないほど厳しくなっているというこの事実を御認識をいただきたい。  そこで、平瀬七子と言ったら御記憶あるでしょう。本会議でも同僚委員がこの問題を取り上げましたし、私は予算委員会でこの問題を取り上げてきたのです。この平瀬七子という方は、七歳で被爆をして、百七十五ラドの放射線量の被曝をした。申請をしても却下をする、こんなばかげたことはない。ところが、手術をしたならば認めましょうということになっているわけなんですね。  私は企画課に行っていろいろ具体的な話をしておりますから、手術をすることが必要であるということについての医師の診断書をつけて、それで手術をしなさい、手術をした報告をする、認定をするというようなことを考えてくれておられるようですが、この委員会でそこまではっきり言っていいのかどうかわかりませんけれども、私の話し合いの感触という形で申し上げさせていただきます。ともあれそういうことで、認定をしなければならぬという考え方は診断書の面からは理解をしておられるようでございますけれども、実はその手術ができないのですよ。白血球が二千六百しかない。いわゆる白血球減少症と言うのだそうですね。  ここに医師の診断書、所見なんかもあるのです。さきは全部省略しまして最後だけ読みますが、「最近になり特に下肢循環状態が悪化し、左第三趾が部分的壊死に陥り激痛を生じるようになった。感染の可能性あり切断が必要と思はれる。」  これは医師の所見なんですよ。こういうことなんだ、これは生命の危険が迫っているのだ、手術をしないと感染をし切断だ、ところが白血球が二千六百だものだから医師が手術できないと言う、死を待つ以外にはない、こういうことになる。  だから、そういう手術という形式にとらわれてはいけないと私は思うのですよ。そういう症状であるというのであるならばやはりこれを認定するということでないと、先ほど大原委員とのケロイドの問題についての質疑応答を私も聞いておったのですが、余りにも形式にとらわれ過ぎているのですね。いわゆる治癒能力があり、手術をして治らなければ認定にいたしますというお答えがあったわけなんですね。これはもう治癒能力があるのです、手術をしないと足の切断もしなければならないのだから。しかし、手術をしようにも手術ができないという状態、これは医師の所見ではっきりしているわけだから、こんなものは弾力的に対応していくのでなければいけないと思いますよ。この点いかがですか。
  161. 三浦大助

    三浦政府委員 これはプライバシーの問題もございますので、余り細かくお話し申し上げませんが、この方は五月にもう一度審議会にかかることになっておりますので、また先生方とも相談いたしますが、いまは専門家の方々にお集まり願って御検討いただいておるわけでございます。したがって、純医学的な立場で認定をしておるわけでございますが、この方の場合、どうなりますか、よく御事情もお話しして、来月の審議会で先生に一遍相談させていただきます。
  162. 中村重光

    中村(重)委員 あなたからでなくてもいいが、これは一たん却下をして、どうなっているのかな、また申請が出てきているの。
  163. 三浦大助

    三浦政府委員 一回目の申請の受け付けが五十五年の九月でございました。それが却下されまして二回目の申請が五十六年の六月に出てきております。これがまた手術の要件で却下されまして、この三月一日に申請書が出てきております。
  164. 中村重光

    中村(重)委員 いまの答弁を前向きの答弁だと理解をいたしまして期待をします。そうしないと本当に生命の危険が迫っておるということ、これは事実なんです。そういうことで対処していただきます。  次に、大臣、地域是正の問題についてお尋ねをするわけですが、森井委員から議事録を読み上げて園田厚生大臣答弁というものの紹介をされたわけですが、実はこの地域是正の問題は、爆心地から南北が十二キロまでで、東西が実は六キロから七キロまでに長崎県の場合なっておりますね。五百メートル以上頭上で炸裂した爆弾だものだから、影響は全く同じようになっています。ただ、園田大臣もこれを指摘しておったのですけれども、初め行政区域で指定をしたというところに間違いがあった。長崎市という行政区域で指定をした。市がやるのじゃなくて国がやったのだから、そういう郡市別でやるべきではなかった。いわゆる影響というような形でやるべきであったのです。出発点が間違っておった。一回やるとなかなか是正がしにくいのですけれども、漸次是正はしてきた。  ところが、ある程度是正してまいりました段階で、広島は黒い雨の降った地域と言うし、長崎の場合は爆心地から十二キロという申請であった。そういうことで、広島も完全にはなっていないと思うのでございますけれども、長崎の場合は、ただいま申し上げますように、東西の六キロというものはわずかちょっと是正をされて七キロぐらいになっている。だから南北の十二キロと余りにも格差がある。ここで東西の地域の住民が納得しないというようなことですね。それと変わらないような形で影響も出ているわけです。  そこで、野呂厚生大臣は、広島、長崎で話が行われ一致したならば認めましょうとずっと言ってきたことは、厚生省としては行政権を持っているという立場から無責任である、これはやはり行政の責任において解決をしなければならないということで、広島、長崎両県知事にテーブルについてもらってこれを解決しようということで取り組んだのですけれども、いろいろとありまして、野呂元厚生大臣もこれを基本懇に持ち込んだのです。援護法の問題と同時にこれも答申をしてもらった方がいいだろうということで持ち込んだ。  ところが、まだ答申が行われる前に野呂厚生大臣がおやめになって、そして園田厚生大臣に実はなったわけなんですが、園田厚生大臣も、どうも基本懇だけではなくて、公衆衛生局、局長ほか審議官あるいは企画課長等々御出席になっていろいろ、これは全部かわりましたから遠慮なしに申し上げるのだけれども、いろいろな意見があったようです。基本懇の答申がどうも地域を是正することに期待が持てないような答申になる可能性もあるということで、当時の園田厚生大臣は基本懇に出席されて、ふたをしないでくれという要請をされて、出てきたのが実は、地域を拡大するとまた新たな矛盾が生じてくるのではないかという、そういう懸念の表明がなされる答申になっているわけです。  ところが新たな矛盾というのは起こってこないのです。十二キロ以上は広げません、こういうことになっているわけですよ。ですから、園田厚生大臣は、長崎市長に対しましても、あるいは当委員会におきましても、基本懇はやってはいけないとふたをかぶせていない、だからひとつ話し合いによってこれを是正することにいたしましょうという、実は解決いたしましょうという答弁になっているわけです。私はこの矛盾は是正をしていかなければならぬと思います。公正でなければならないと考えます。  この点に対する御見解、いわゆる野呂厚生大臣あるいは園田厚生大臣が前向きに対処してきたというようなこと等も十分判断をされて、またそうした当時の大臣、御承知のとおりまだ国会におられるわけですから、御意見も伺っていただいて、そしてこれには前向きで対処されることが当然であろうと私は考えるのですが、いかがですか。
  165. 森下元晴

    森下国務大臣 ことしの八月九日には総理も長崎においでになるようでございますし、こういう問題も恐らく現地でいろいろ御陳情また御説明等を受けられると思います。歴代の厚生大臣からいま御指摘のような御質問に対する御答弁、非常に前向きの御答弁があったようでございまして、私は科学性の問題についてはわかりませんけれども、一応過去の経緯からして、合理性がどの程度あるかということが一つの判断になるような感じがいたします。  ただ、基本懇の内容を見ますと、これは余り前向きの内容になっていないように私は感じるわけでございまして、これはあくまでも科学的な上に立って、また合理的な上に立って、早急に是正すべきは是正するというふうにしなければいけないと思っております。  そういうことで、結論的には、歴代の厚生大臣の御意見もよく尊重いたしまして、前向きで検討してまいりたいということを申し上げます。
  166. 中村重光

    中村(重)委員 いまの御答弁は、いままでの野呂、園田両厚生大臣考え方にいわゆる継続性というものを持った答弁であるというふうに私は評価をするわけです。  科学的とおっしゃるのですけれども、実は五十一年、五十三年当時、地表から土をとって二キロ置きに分析調査をやったわけです。ところが、もう三十五年たちますと、残留放射能があろうはずがないのです。あったら大変なんですよ、それは。ところが、長崎で言えば西山地区というところには、奥まったところですが、そこにはいまも高濃度の残留放射能があるというような検査の結果は出ているわけですが、むしろもっと非常に遠いところに、山の中なんかに残留放射能があるという検査のデータが実は出ているわけです。私も承知しておるわけです。その点を考えられなければいけないということ。  それからずいぶん前にいらっしゃった佐分利局長、この人が、いままでの地域の是正をしましたときに、たとえば長崎県で言いますと、西彼杵郡長与とか時津という町がある。そこを一部是正したわけですが、そのときの私の質問に対する答弁は、放射能の影響によって地域を広げたのではありません、いわゆる熱線、熱線の影響、そういうようなものでございますと御答弁になっておられるのです。ですから、科学的ということを言われても、当時であればこれはなるほど成り立ったかもしれませんけれども、もう三十年も三十五年もたったいま、科学的と言われてもこれはどうにもしようがない。やはり実態というものを踏まえていくのでなければならないと思います。  だがしかし、頭から十二キロということで政治的解決というのには私は無理があると思う。やはり関係の市町村、いわゆる十二キロの範囲の市町村から改めて申請を出して、その申請をしさいに検討して決定していく、そのことが正しいあり方であろう、私はかように思っているわけですが、申請がありましたならば、当然受理し、これを検討して、その可否を決定される、いわゆる前向きでこれに対処されるということが当然であろうと思いますけれども、この点をひとつ、手続的なことを申し上げましたから、あわせてそのことについてのお答えをいただきます。
  167. 三浦大助

    三浦政府委員 ただいま先生から、長崎県の長与村、時津村、これを特例地域に指定したその理由というのがお話しございましたが、これは風向きの関係と、すでに指定されております地域に比較して地形とか距離がおおむね同じであるということと、被爆直後に同じ地域におきまして多くの被爆者に対して救援活動が行われたことから、当時の住民の多くの方の体に放射能の影響を受けるような事情のもとにあったということに準じてこれは指定したというふうに、私は聞いておるわけでございます。  それで、それじゃなお市町村から申請があったらどうかというお話でございます。もちろん先生のお気持ちよくわかりますが、原爆基本懇でも、科学的根拠に基づくことなく被爆地域を拡大すると新たな不公平感を生み出すのではないだろうかという御意見もございましたし、またいろいろな放射能調査によりましても余り根拠がないような感じもいたします。しかし、いろいろ御意見もございますので、申請が出てきた場合にそれはそれでまた検討はさせていただきますが、私どももまた新たな不公平感を生み出すのではないかというおそれも持っておりますので、その辺どうぞ御理解いただきたいと思います。
  168. 中村重光

    中村(重)委員 大臣答弁を打ち消されるような答弁はおかしいと思うのです。公衆衛生局が対処してきたのは、私たちはこれについては意見はありません、ですからこの問題はどうかひとつ政治的に解決してほしいということに終始してきたのです。いま大臣が前向きの答弁をしたのに対して、あなたがいまのような、これに水をかけるような答弁をされるということは、最後は大臣と合わしたような答弁になったけれども、そういうようなことは適当ではありません。  それから、申し上げたように、佐分利さんの答弁の議事録をお読みになったらよろしい、私の質問に対して答えているから。  それから、その当時の指定の問題は、私は長崎市民でありみずから被爆者なのですから、実態は私があなた方よりもよく知っているわけです。だから、すべての実態と経過、そういうものを踏まえて私は質問をしているわけですから、そういうことでまじめに対処してもらわなければいけないと思います。  申請が出てきて、たとえば長崎県の西彼杵郡の多良見町というところは一たん書類を受けつけたのですよ、長与、時津が指定されたときに。ところが、書類が不備であるというので注意したのです。その書類は公衆衛生局にまだあるのです。返してもいないのですよ、注意をして補充書類を要求されただけで。そういうような経過もあるわけです。だから実態を踏まえて対処してもらわなければいけないと思います。  重ねてひとつあなたからお答えをいただきたいと思います。
  169. 三浦大助

    三浦政府委員 決して大臣の御答弁に水をかけるようなつもりはございません。申請がまた出てきた段階で検討をさせていただきます。
  170. 森下元晴

    森下国務大臣 事務当局の答弁は当然慎重を期する答弁になって、私もそれはそれで理解していただきたいと思いますが、過去の経緯もございますし、中村議員の長い間の御苦労、また御自分がみずから体験しておるということは尊重すべきでございまして、前向きで検討させていただきたいと思います。再度申し上げます。
  171. 中村重光

    中村(重)委員 原爆病院、これは大体計画のとおり完成をいたしますか。それと脳の検査をする機器、ずいぶん高価な機器のようでございますけれども、最近はマイクロコンピューターによって脳の検査をするわけでありますね。そういう機器は五億円もするということで、病院は手が出ないということなのですが、そういう機器を購入することに対しての国の助成金は当然あるのだろうと思うのです。申し上げたとおり原爆病院の完成が計画のとおり進むのか、そうした機器の充足に対してどのように対処されるのか、お答えをいただきたいと思います。
  172. 三浦大助

    三浦政府委員 原爆病院の機器の整備の国庫補助というのは従来から計画的に実施してきたわけでございまして、特に長崎県の原爆病院につきましては、移転改築に伴う施設整備といたしまして五十六、五十七年、二年間で合わせて約九千万円の補助を行おうとしておるわけでございますが、また中身を聞きまして、足りない分等がございましたら検討させていただきたいと思います。  マイクロコンピューターの話は、私、まだちょっと聞いておらぬものですから、一度調べさせていただきます。
  173. 中村重光

    中村(重)委員 病院の完成は計画のとおりですか。
  174. 三浦大助

    三浦政府委員 病院の完成は十一月でございます。
  175. 中村重光

    中村(重)委員 戦争犠牲者救済の問題についてさっき森井委員との間に質疑が行われ、丹羽委員からもこの点について触れられたわけですが、私がこの問題を取り上げますのは、じゅうたん爆撃というものもいわゆる国際法違反であることに間違いないと実は思うわけですし、その被害原爆による被害と同じように国家補償されるべきだと思う。実は基本懇で、原爆被爆者援護法の制定について、他の一般戦災者とのバランス云々というようなことについての意見が述べられているわけですね。だから、一般戦災者対策というのはどのような対策を進めているのか、また進めようとしているのか、そのことを、援護局からおいででしょうから。
  176. 北村和男

    ○北村政府委員 御質問の御趣旨は、一般戦災者対策について基本的にどういうことを考えているかということであろうかと存じます。この問題につきましては、従来、政府は一貫して次のような考え方を持っております。  さきの大戦は大変不幸な事態でございまして、わが国にとりましても未曽有な事態を生じたわけでございます。そういう非常に重大な戦争でありましたがゆえに、すべての国民が程度の差こそあれ戦争によって何らかの犠牲を余儀なくされたところでございます。こういうものについて完全に償うことは実際上不可能で、国民の一人一人の立場で受けとめていただかなければならないものだと考えております。一般戦争犠牲者に対しましては、従来からも、また今後とも、社会保障の充実、強化を図っていく中でその対策を講じてまいりたい、さように考えております。
  177. 中村重光

    中村(重)委員 いまのところ、一般戦災者に対しては何らの措置も講じていないのでしょう。いかがですか。
  178. 北村和男

    ○北村政府委員 一般戦災者なるがゆえに一般戦災者の損害を補てんすることはいたしておりません。先ほど申し上げましたように、社会保障の充実の中でその方々のハンディキャップの大きさに応じてそれぞれの施策でその対策を講じているわけでございます。たとえば身体障害になったというような場合には身体障害者の対策を強化するということで対処しているごとくでございます。
  179. 中村重光

    中村(重)委員 基本懇の答申が、一般戦災者との関連から、これとのバランスを崩さないようにというような形、そうとれるような答申がなされているということです。ところが政府は、原爆被爆者対策について特別の措置を講じろということに対しては、基本懇の答申の中にあったいわゆる近距離被爆者的な者、そういう特別の者に対しては前進した扱いをしているのだけれども各種手当の問題を取り上げましても、認定被爆者の問題を取り上げましても、非常に後ろ向きになっているということなんです。そしてもって積極的なこと、援護法の制定の問題等をすべきであるということに対しましても、先ほども厚生大臣お答えのとおり、いままでの歴代大臣答弁したことについては理解をできるし、いまの世代に生まれた者としてはその点を十分考えるというような非常に前向きなお答えはあるのだけれども、具体的になってくると、いま言ったようにむしろ後退の傾向が見られておる。それは一般戦災者とのバランスの問題だという基本懇の答申に逃げ込むような傾向があることを私は指摘しなければならないのです。  ならば、一般戦災者に対して特別の措置を講じておる、講じておるけれども原爆被爆者に対してもっと積極的なことをやるのに対してバランスが崩れてもならないからその点は配慮しなければならないのだと言われるならば理解できないでもありませんけれども、何にもやらないでおいて、いま言う身体障害者等の社会保障的なもの、これは当然の話なんで、何も一般戦災者ということじゃないのです。そういうように一方においては戦争犠牲者という形において何にも遇しないでおいて、そして原爆被爆者対策の前進に歯どめをかけるというようなやり方は、原爆被爆者対策の強化というものをできるだけ抑制していこうとする考え方、いわゆる逃げの行政措置としての扱いをしておるという指摘は免れないと私は考えるのです。だからしてこれをどうするのかということをお尋ねをしなければならない。  また、実際問題をお考えいただきましても、たとえば名古屋の杉山チサ子さんなんか両眼はほとんど見えないのですよ。両足も、手も不自由なんです。この人たち戦争犠牲者をこのまま放置するのかというのでその不自由な体で全国を回って運動をやっておられる。そしてこういった人たちが、基本懇の答申もあったわけだからと言って原爆被爆者人たちもこの戦争犠牲者と手を取り合って、そして基本懇の線に沿って対策を講じてほしい、こういう祈るような思いで努力をしておるということを無視してはいけないと私は思う。台湾軍人の問題にいたしましても、あるいはまた中国の戦争孤児の親捜しの問題等をお考えになってみても、涙なくしてあの姿が見られましょうか。そうした問題を解決をするのでなければ戦後は終わらないということを私は指摘したいわけなんです。  そういう一般のいわゆる身体障害者というような形だけの扱いではなくて、本当に原爆被爆者に私どもが特別の措置を要求するのは、野党全部がそろって援護法の制定を要求をしておるのは、丹羽委員質問に対して森井提案者代表からお答えをいたしましたような、これは特別のものとして処理しなければならぬという考え方から私どもはそのような提案をしておるわけです。同時に一般戦争犠牲者に対しても、基本懇のあのような答申もあったわけだから、それを受けた政府全体としての取り組みというものがなければならないと私は考えるのです。  その点はどうお思いになりますか。
  180. 北村和男

    ○北村政府委員 従前の政府の考え方は先ほどお答えを申し上げましたとおりでございまして、これは厚生省だけの考え方ではないわけでございます。しかしながら、先生いろいろ御指摘になりましたもろもろの問題からなお戦後が終わらないという御意見の方も多いということで、先般成立いたしました五十七年度予算におきまして、これは所管は総理府でございますが、戦後処理問題のための懇談会をつくって有識者の先生方の御意見をフリーに伺ってみようという御企画があるやに承っております。どのようなメンバーでどのようなことが御審議になるのか私どもは直接には存じませんけれども、そういう動きも今後十分見きわめて政府全体の考え方が取りまとめられるものであろう、さように考えております。
  181. 中村重光

    中村(重)委員 原爆二世の対策についてお尋ねをするのですが、同時に野党が提案をしております原爆被爆者援護法の問題、これを森井代表から丹羽委員質問に対してお答えをいたしましたように、予算総額も二千億だということですね。いまの健康管理手当等の受給率は七二%に達しています。ならば、私ども野党が提案をしたもの、いわゆる全体の被爆者に対して被爆年金支給すべしという数字、これはもう調整ができないはずはないのです。ですから、その点は森井委員質問に対してのお答えもありましたからそれ以上触れませんけれども、ひとつ十分真剣に対処してもらいたいということを申し上げておきます。  二世の問題ですけれども、これはいま任意でやっておられる。しかし、二世に対しまして強制した健康診断等をさせるべきであるということは私は申し上げません。いろいろな点もありますから、それは理解ができます。しかし、その診断、それから放射能の影響等々いろいろある場合は、やはり手帳の交付というものがなされなければいけないと思います。その点になってまいりますと法的根拠が必要になってくるであろう、そのように思うわけですが、その用意はありませんか。
  182. 三浦大助

    三浦政府委員 原爆二世対策につきましては、現在のところ、私ども健診いたしますと受診される方が大体一万一千名ぐらい来ていただけるわけですが、専門家の先生方が見ていろいろな健康障害があるというデータがまだございません。それから放射線影響研究所の方でも大きな研究の柱としてこの遺伝的影響その他の研究にはいま取りかかっておるわけでございますが、まだいまのところその成果が出ていないわけでございます。  私ども、この二世の方の対策といたしましては、二世の方に非常に健康面で不安を持っている方が多いというお話は聞いております。ただ、健診をしてみると異常がない。したがってむしろそういう不安解消のために何かカウンセリングのような制度を設けた方がいいのじゃないだろうか、こういうことをいま考えておるわけでございまして、もう少し動きを見て手帳の交付とかそういうことはやってまいりたいと思っておりますが、現在のところは私どもいま申し上げたようなことで検討をしておるわけでございます。
  183. 中村重光

    中村(重)委員 二世、三世の問題に対しましては私はもう事実をはっきりみずからつかんでいますから申し上げるのですが、私のいとこは私と一緒に被爆をいたしましたが、それが子供にも放射能、原爆症患者です。その子供が産んだまた子供が同じようなことなんです。これはもう確かに影響というものはあるわけですから、この問題は関係ない関係ないなんて言わないで、その点はひとつ真剣に対処してもらいたいということを要求いたします。  それから、被爆者の救護を行ったあるいは介護を行った人に対する手帳の交付ですね、これがどうも厳し過ぎると私は思うのですよ。厚生省が通達という形で出しているのでしょうが、放射能の影響を受けるような事情にあったものと思われる人というようなこと、そういう取り扱いをしているのですね。厚生省は何か百人ぐらい救護した状態ということを考えているようですが、広島、長崎の両県は十人以上、二週間以内看病して被爆者と接触した、こういう人を対象にして手帳を交付しているわけです。  ところが命令によって、たとえば救護鉄道に乗りましてそしてその運転手であるとか――運転手は運転をするわけだから車掌に対して、被爆者が乗ってくるからひとつ手厚く救護するようにという指示がなされたということもあります。それから被爆者が避難をしなければならぬものだからその避難をあちらこちらにするわけです。そういう場合に、当時は国防婦人会なんというのもあったわけですから、町長等がそういうところに命じて三人、五人というように看病をやらしたわけなんですよ。そうすると、一人看病しましても二、三日なんです。これは二次放射能の影響を受けやすい体質でもあったのだろうと思いますが、本人が寝込んでしまうという事例がある。そういったような人がこの厚生省の放射能の影響を受けるような事情のもとにあったと思われる人ということで非常に厳しい制限をしているものだから、実は広島、長崎でも十人以下というのは手帳の交付をしないのです、看病した人に対して。  私はこれも形式的過ぎると思います。だからそうではなくて、実態によってこの手帳交付をなさるべきであるというように考えます。  大臣もお考えになってみてください。入市の場合はそこを歩いただけでもう手帳を交付されるのですよ。恐らく七十年間は草木も生えないというようなその考え方の上に立ってああいう制度ができたんだろうと思うのです。通っただけで、極端に言ったら東京の人が長崎に行って、あるいは広島に行ってそこを通ったというだけで手帳が交付される。ところが、実際においてこういった被爆者を、重症患者を看病した人が、そして二次放射能を受けるような体質の人、また受けている人、こういう人に対して手帳が交付されない、こんなばかげたことがあってよろしいのですか。だから依然としてこういった問題があるということをお考えになって対処していくのでなければいけないと思います。いかがですか。
  184. 森下元晴

    森下国務大臣 そういう点につきましては実態に即しましてよく対処するようにいたしたいと思っております。
  185. 中村重光

    中村(重)委員 じゃこれをもって終わります。
  186. 今井勇

    ○今井委員長代理 次に、平石磨作太郎君。
  187. 平石磨作太郎

    ○平石委員 きょうの原爆二法の審議に当たりまして、われわれ野党五党が政府の原案に対する対案といたしまして原子爆弾被爆者援護法の提案をいたしておるわけでございます。この提案を私、過去をずっと調べてみますと、私の調べた範囲では四十七年の六十八国会以来すでに今回で八回に達しております。そのたびに審議未了とかあるいは撤回とかいったような形において処理されておるわけです。この過去八回の状況を見ましたときに、やはり政府はかたくなに被爆者援護法を拒否していらっしゃる。これはもう明らかな事実でございます。  この過去八回も出してきたこと、これに対して大臣はどのように評価されておられるのか、御所見をお伺いいたします。
  188. 森下元晴

    森下国務大臣 原爆被爆の問題につきましては人類史上初めての体験でございまして、現在高まっております核兵器の禁止の問題、また核廃絶の問題に日本といたしましては先頭に立って取り組まなければいけない問題である、こういうふうに思っておりますし、また歴代の大臣におきましても広い意味での国家補償の問題等非常に前向きで取り組んできたわけでございますけれども、実態は財政的な事情とかいろいろ事情もございまして進んでおらないという点も私もよく認識しております。  そういうことでございまして、戦後処理の問題としてもまた人道的な問題としてもよく御趣旨を踏まえまして、私どもいわゆる戦中派と言われる世代がまだ元気なうちにでもこの問題を早く片づけたい、被爆者の方に御安心を願いたい、それが将来日本が繁栄、発展していく道でもございますし、また世界平和に寄与する道でもある、こう信じておるわけであります。
  189. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま大臣のお言葉の中に、われわれ戦中派が少なくとも生きておる間に処理したい、それが世界平和に貢献する一つのゆえんである、こういう言葉が入っておりました。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕  ところで、いま私が申し上げましたように、過去このように提案がなされて今日に至っておりますが、これはただ単に大臣のお言葉としていまのお話を聞く、これは一つも解決にはなっていかないわけです。本当にそういったいまのお言葉の気持ちがこの政策の上に具現するかどうか、これが一つの問題点だと思うわけです。そしていま答弁の中にありましたように、特に今年は六月の国連の軍縮特別総会、これに向かっての核兵器の脅威、これに対するために反核の署名あるいは軍縮の署名等が全国各地に行われております。そしてまさにこれらに対する世論というものは、世界的な世論の中で日本も非常な高まりを見せておる今日でございます。そしてまた一方地方議会におきましても、私の調査の範囲内では九百七十五の地方議会においてこれらの反核、軍縮の意見書の採択あるいは決議等が行われておるわけです。  このように、いわば、まさに頂点に達したと言ってもいい今年の状況であります。その中で、総理は軍縮総会に出席をされてこれに関する演説もなされる、こういう大きな背景の中で今回の提案がわれわれ共同提案としてなされたわけですが、これは従来の共同提案に比してまことにまた趣の異なった、そして少なくとも政府自身がいま大臣答弁にありましたようなことを取り入れていくという一つの姿勢を今年は示すべきではなかろうか、私はこういうように感ずるわけです。  そこで、これをかたくなにいままで拒否したということについては、先ほどの答弁でお伺いをしておりますと、やはりアメリカの原爆投下は違法な行為である、国際法違反である、こういったことを個人の気持ちでは云々ということを大臣答弁されました。このことにつきましてさらに確認をしておきたいのですが、どのような、やはりそのとおりのお言葉をいただけるでしょうか。
  190. 森下元晴

    森下国務大臣 私は、この被爆者の問題、また原爆が長崎、広島に投ぜられた、人類史上初めての悲惨な状況が三十七年前にあったわけでございまして、この処置の問題は戦後処理の問題と同時に、やはり世界の平和をまた人類の繁栄を今後図っていこう、こういう大きな問題につながる日本の象徴的な政治問題、また行政的な問題、また社会の問題である、このように実はとらえたいと思っております。  そういう意味で、幾ら口先だけでこの法案についていろいろ申し上げても、なかなか気はあせれどもその実は進ますというのが過去の例でございまして、そのときはわれわれもいろいろ反省もございますし、もどかしさも個人的には実は感じておるわけでございます。いまやもう、国際的にも、また宗教界においてもあらゆる社会においても、この核の問題については大きな力になって世界じゆうに渦巻いておる。私は、自由主義国だけではなしにやはり共産国においてもやられておるとは思うのですが、同じようなテーマでこれを廃止しよう、軍縮をやろうというすべての人類がイデオロギーを超えて共通した問題として取り上げるべきである、実はこのように理解して、そしてわが国内においては、この原爆問題を中心に戦後処理の象徴的な問題として取り上げていくべきである、新たな感覚を持ってやるべきである。ことしの八月六日には、私は広島の方に参ることになっております。総理は初めて長崎の方においでになるということを考えましても、かなり政府としても前向きの姿勢で取り組むし、また国連でも、この軍縮問題、核の問題を恐らく総理は取り上げられるだろうと思いまして、こういう点でも大いに期待も申し上げたい。  そういう上に立って、先ほど申しましたように、これを象徴的な問題として戦後処理の問題を一日も早く片づけることが私どもに与えられた政治的な課題であるし、また一つの大きな使命でもある、このように実は思っておるわけであります。
  191. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまのお言葉で、大体の姿勢といいますか決意のほどはわかりました。  そこで、私はそういう姿勢、決意に何かもどかしさすら感ずるという中で、世界に唯一の被爆国として、しかもいま大臣のお話にありましたように、あらゆる国の核廃絶、このことを私どもも常に申しておるわけであります。したがって、そういう立場に立って、この唯一の被爆国である日本がそのあかしとして被爆者援護法をつくるのが至当ではないか、こういうように感じますが、いかがでしょう。
  192. 森下元晴

    森下国務大臣 そのとおりでございます。そういうことで、すでにもう国家補償的な、援護法的な考え方、広い意味考え方で、一部の問題については国家補償的な措置もさせてもらっております。  しかし、まだ中には社会保障的な措置をさせてもらっておる問題もございまして、先ほども何遍も申しましたが、一般戦災者の方々との見合いと申しますかそういうものもございます。また同じように、原子爆弾が投下されたことが国際条約違反する、ヘーグ条約違反、私もそのとおりだと思っておりますけれども、その他シベリア抑留の問題等、もろもろのいわゆる国際条約違反的な問題がまだたくさんございますし、そういう問題はきょうは出すべき問題でございませんが、戦後処理の中にはそういう種類のものもたくさん残っております。  原爆の問題がいまだ援護法として完全に救済の手を差し伸べる段階になっておらないということにつきましては、先ほど申しましたように、私も多少もどかしい気持ちながら、現実はそう簡単に前に進めないという実態も認めざるを得ないというような現在の心境、これは個人的な心境でございますけれども、そういう中にあるわけでございます。そういう意味で私は、過去は過去として、今後前向きで全力を挙げてこの問題にも取り組んでまいりたいということを申し上げます。
  193. 平石磨作太郎

    ○平石委員 話が堂々めぐりをして何にもなりませんが、いま私は、そういう背景、姿勢に立って、唯一の被爆国として、世界平和のための、いわゆる反核の一つのあかしとして原爆援護法をつくることが必要だと思うが、どうかということを聞いたのです。
  194. 森下元晴

    森下国務大臣 個人的にはそう思います。
  195. 平石磨作太郎

    ○平石委員 個人と公人とを使い分けられているが、同じ大臣ですから、少なくとも個人でそういうような意思があれば、これを大臣として政策の上に具現していくのがあたりまえだと私は思うのです。そういう使い分けだけで済まされると非常に困るのです。だから、心の中では、われわれ野党が出した共同提案に対しては、全幅的とは言わなくても、少なくとも援護法をつくりたい、こういう気持ちがあるのですが、これはどのように具現していくか、いつごろになるのか、ひとつまたお答えをいただきたい。
  196. 森下元晴

    森下国務大臣 精神と申しますか考え方は非常にりっぱな内容だと思いますが、やはりできる問題とできない問題と、そういう問題をよく検討させていただきたいと思っております。
  197. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、この基本懇の答申の中にございます「在り方」についてですが、これは四ページから五ページにわたってのところです。  従来国のとってきた原爆被爆者対策は、原爆被  害という特殊性の強い戦争損害に着目した一種  の戦争損害救済制度と解すべきであり、これを  単なる社会保障制度と考えるのは適当でない。  また、原爆被爆者犠牲は、その本質及び程度  において他の一般戦争損害とは一線を画すべ  き特殊性を有する「特別の犠牲」であることを考  えれば、国は原爆被爆者に対し、広い意味にお  ける国家補償見地に立って被害の実態に即応  する適切妥当な措置対策を講ずべきものと考え  る。こういう記載がございます。「社会保障制度と考えるのは適当でない。」こう言い切っております。それと、広い意味における国家補償見地に立ってやりなさい、こう言われておるわけです。  この「広い意味における国家補償」ということが私には余り十分にわからぬのですけれども、どういうようなことなのか、お話しをいただきたいということと、もう一つ、それなら狭い意味国家補償とは一体何かということについてもあわせお答えをいただきたい。
  198. 三浦大助

    三浦政府委員 先生御指摘のように、基本懇では、原爆被爆者対策は、社会保障ではなく、広い意味における国家補償見地に立って行われるべきものと考えているという表現がございます。この「広い意味における国家補償」というのは、原爆被爆者の受けた放射線による健康障害に着目いたしまして、結果責任として、戦争被害に相応する相当の補償を認めるという趣旨であるというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。  一般論として言いますと、国家補償というのは、国の活動によって生じた損害を国が救済する制度の総称であるというふうに私どもは考えております。社会保障というのは、社会の構成員が連帯してその日常生活の不安をカバーして生活の安定を図る制度をいうというふうに理解をしておるわけでございます。狭い意味国家補償という言葉は私どもは使っておりませんで、広い意味国家補償というのは、たとえば私どもは、この原爆対策はちょうど国家補償と社会保障の中間的な対策をとっているのではないかというふうに理解しておるわけでございます。  その中間的な対策と申しますのは、先ほど申し上げました原子爆弾の放射能による健康障害、これにつきましては非常に国家補償的な対策をやっておるわけでございまして、今度は一般疾病の方、これは原爆関係のない、また直接結びつけられないようなかぜとか下痢とか、こういうものについては社会保障の姿で対処しておる、こういうふうに私どもは理解しておるわけでございます。
  199. 平石磨作太郎

    ○平石委員 十分に理解ができませんが、いま局長がお答えになった、国の活動によって損害を個人に与えた、これは当然のことだと思うのです。私はさっき大臣にお聞きしたが、アメリカ軍の落とした原爆はいわゆる国際法違反の違法な行為である、それからいま局長がお答えになったのは、これは違法とかそんなことはもう関係なしに、国が行った行為に基づいて個人に迷惑かけた、損害を与えた、その結果に対する相当の補償である、いま局長のこういうお言葉であった。私は、その点はその点として了とするわけであります。  ところで、この違法であるというようなことについては百歩譲って一応疎外した形として論議を進めていけば、いま局長の言ったことは、損害を与えたんだから相当の補償をするというのがこの基本懇の記載の中にも出ておるわけです。そこで、私が先ほど質問の中で申し上げましたように、国の行為が結果そういうことに行われたということは、この被爆したということについては、これはあくまでも国の原因行為があるのだ、こういうことですね。これもひとつ確認をしておきたいのです。
  200. 三浦大助

    三浦政府委員 原爆投下について国に責任があるんではないか、こういう御質問だと思いますが、戦争というのは、当時国の存亡をかけての非常事態のもとにおいて国が何らかの犠牲を余儀なくされたということでございますが、それは、国を挙げての戦争によります一般犠牲としてわれわれ国民が受忍してきたわけでございます。したがって、国の戦争の開始、遂行というものが原爆投下を招いたといたしまして、国の行為責任を追及して、その法律救済を求める道が開かれていないことは、これは基本懇の報告にも指摘されているとおりであるわけでございます。  原爆被爆者対策につきましては、被爆者の受けました放射線による健康障害という特別の犠牲に着目して、その原因行為の違法性あるいは故意過失の有無にかかわりなくて、結果責任として戦争被害に相応する相当の補償を行ってきたんだ、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  201. 平石磨作太郎

    ○平石委員 局長、私の質問がちっともわかっていない。違法というのはのけて話をしているのですから。  それなら、戦争を行ったことは、国の行為でありましたか、どうですか。
  202. 三浦大助

    三浦政府委員 国の行為だと思います。
  203. 平石磨作太郎

    ○平石委員 アメリカ軍が広島に、長崎に原爆を投下したということは、国の行為に起因した行為でありましたか、どうですか。
  204. 三浦大助

    三浦政府委員 それも関係のあることでございます。
  205. 平石磨作太郎

    ○平石委員 国の行為に起因した、関係のある行為だということですね。  そうすると、いわゆる被爆を受けて損害があった。生命身体財産に損害がありました。これは国の行為との間に因果関係がありますか。
  206. 三浦大助

    三浦政府委員 因果関係はございます。
  207. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そうすると、この損害は国の原因行為だということですよ。私はそこを聞いておったのです、あなたに。だから、それが違法だ、どうだこうだ言うから話が混乱してしまう。  したがって、国のいわゆる原因行為である。そうすると、それに対しては、国は相当な補償をしなければならぬ、こうなるわけです。そこで、いわゆるその相当の責任というのは広い意味国家責任だ、こういうことになる。そうすると、広い意味と狭い意味があるが、何なら、とさっきから私聞いているのに、堂々めぐりしておる。  そこで援護局長にお伺いをしたいのですが、戦傷病者戦没者遺族援護法は広い意味国家補償ですか、狭い意味国家補償ですか。
  208. 北村和男

    ○北村政府委員 援護関係の法令におきまして国家補償と申しますのは、国が軍人あるいは軍属等で使用者関係にあった、その関係において損害をこうむったことについて国家補償をする、そういう趣旨のものでございます。
  209. 平石磨作太郎

    ○平石委員 はい、わかりました。  そこで、いわゆる国との間に雇用関係ないしは身分関係がある者に対して行う、これが狭い意味になるわけですね。
  210. 北村和男

    ○北村政府委員 ちょっと、広い意味、狭い意味という御質問にお答えを申し上げたとは解しておりません。私どもは、使用者関係にあるということで国家補償をするという趣旨を申し上げたわけでございます。
  211. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いわゆる広い意味というのは、この基本懇のこれに出てきたわけですから私はお聞きしておるのです。政府がどうしても援護法をしないから聞いていっておるのですから。  いま局長おっしゃったが、いわゆる身分関係のある者だけだ。ところが、この原爆を被災された方は身分のない方々です。そういたしますと、私の理解では、従来国家補償と言われておるものの法律は、いわゆる身分関係のある方々のみについてやってきた、このように理解するのが素直な理解の仕方だと思うが、どうですか。
  212. 北村和男

    ○北村政府委員 援護局の所管の問題とちょっと離れると思いますが、さっき私からお答え申し上げましたのは、国家補償という大きな概念がございます。そのうちで援護行政が担当いたしておりますのは、軍人軍属という、過去におきます国との使用者、被用者の関係にあった点に着目して国家補償を行っているというわけでございまして、一般的に申し上げれば、国がたとえば違法行為をして、それに損害賠償をするといったようなものもそういう意味での国家補償の一つであろうかと存じます。ただしこれは援護局の所管ではございませんので……。
  213. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私が言いたいのは、違法行為違法行為とおっしゃるが、違法行為でないとして話を進めておるのです。違法行為でなかったら国家補償はないという筋合いのものじゃないと私は思うのです。だから、したがって、いままでの法制の中では、身分関係以外に、国がつくっておる法制には、国家補償それ以外にはなかったと私は思います。  そうしますと、そのように理解をして進めます。そこで、狭い意味のいわゆる国家補償というのは、とにかく身分関係のある方々に対して行っておるんだということに一応できるじゃないか。そして、今度この原爆を受けた方々は身分のない方々です。この身分のない方々が国家補償を求めておるわけです。広い意味国家補償ならよろしいと答申は出ておる。そこで、この身分のない方々に対して政府は援護法をようつくらない、こういうことで、過去八回出したけれども、これは日の目を見なかったわけです。その拒否した理由というのは、大臣、個人的なことでなしに、広い意味のいわゆる身分がないからしなかったのですか。どうですか。
  214. 三浦大助

    三浦政府委員 国家補償といいましても、その中には、国の不法行為に基づく損害賠償あるいは国の適法行為に基づく損失の補償、あるいは国との使用関係に着目した国家補償、あるいは原爆被爆者のように、基本懇の御指摘になりましたように、結果責任に基づく国家補償といった、さまざまな形があるわけでございますが、その中で、原爆被爆者につきましては、援護法が非常にむずかしいというのは、一般戦災者とどういう区分をしたらいいだろうか、かえって不公平になりやしないか、この辺がいままでいろいろ議論されてきたところでございます。
  215. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、いま局長おっしゃったように、一般戦災者との関係で区分がむずかしい、だからやりたくてもなかなかできません、こういうことが本当は本音じゃないかと私は思う。  それなら、私はここで未帰還者留守家族等援護法との関係でまた一つお聞きをしたいのですが、援護局長にお見えいただいておりますが、この未帰還者留守家族等援護法という法律は現在も生きておる法律であって、この適用者がどのくらいありますか。ちょっとお知らせいただきたい。
  216. 北村和男

    ○北村政府委員 現在一人でございます。
  217. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そうすると、一人であっても当然法律ですから……。この法律は、いわゆる日本国籍を持っておる身分のない者に対して国家補償をしておるわけです。そういうことですね、局長さん。
  218. 北村和男

    ○北村政府委員 結論から申し上げますと、非常にイレギュラーなかっこうの状態が存在したということについて擬制をしたという感じになるわけでございまして、もっと詳しく申し上げますと、未帰還者留守家族等援護法に言う特別の状態と申しますのは、未帰還者が終戦後相当の年月を経過したのにもかかわりませず、自分の意思に反して、たとえばソビエト等の地域に残留を余儀なくされたという実態がございました。また、これらの者に対しまして、国が適法な外交交渉によって本邦に帰還させる適当な措置を講じることが事実上できなかった、そういう状態の場合にかんがみ、これらの状態にある人を、身分関係のない人も含めて国の責任で留守家族等に対して援護の措置を講じようとしたものでございます。  したがいまして、当時、そういう状態が解消しない時期におきましては、相当多数の方々がこの適用を受けたわけでございますが、その後外交交渉等が復元をし、自己意思で自由に帰れるということになりました結果、さっき申し上げましたように、現在では一人の適用になる、そういう状態でございます。
  219. 平石磨作太郎

    ○平石委員 この法律の第一条には「この法律は、未帰還者が置かれている特別の状態にかんがみ、」と、こうなっている。いま局長さんのお答えになりましたまことに異例の特別の状態にあるから、これは身分のない者であっても国が補償をいたしましょうという形でこの法律ができ上がっている。そうしますと、基本懇の出した「在り方」の中にこういうように出ております。  健康上の障害をもたらし、人間の想像を絶した地獄を現出した。そして、これがひいては戦争終結への直接的契機ともなった。 それから  この惨禍で危うく死を免れた者の中にも原爆に起因する放射線の作用により、三十五年を経た今日なお、晩発障害に悩まされている者が少なくない。原爆放射線による健康上の障害には、被爆直後の急性原爆症に加えて、白血病、甲状腺がん等の晩発障害があり、これらは、被爆後数年ないし十年以上経過してから発生するという特異性をもつものであり、この点が一般の戦災による被害と比べ、際立った特殊性をもった被害であると言うことができる。 と、こう書いてあります。  そうしますと、いわゆる一般の戦災を受けた方方、国の行為によって亡くなられた方もたくさんいらっしゃるし、あるいは身体障害を受けられた方もいらっしゃる。だからこの方々をどうのこうのと言う気持ちは私はございません。先ほどの質問中村先生もおっしゃっておられたが、ここへ逃げ込んでおるのではないかと私も言いたかったのです。この特殊性ということから考えたときに、未帰還者留守家族等援護法の特別の状態にあって、その身分のない者に対しても国の補償を行った、こういう事実から考えたときに、被爆者援護法をつくって、特殊的な状態原爆被爆者に対して援護措置がとれないものかどうなのか。大臣にお答えをいただきたいと思います。
  220. 森下元晴

    森下国務大臣 非常にむずかしい問題でございます。理論構成におきましては、基本懇でも広い意味国家補償、また狭いという言葉は使っておりませんけれども、現在の援護法、この間においてどれだけの違いがあるんだというようなことになるわけでございますけれども一般戦災者の方々との社会的な公正の問題も実はございます。その中に逃げ込むわけでございませんけれども、現在までは、以上のような観点から原爆被害者の問題につきましては広い意味国家補償、そういうような解釈でやってまいったわけでございまして、この取り扱いをいま直ちに援護法に切りかえることは非常にむずかしい、しかしながら前向きでひとつ検討もしていきたい、そういう心境におるわけでございます。
  221. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま広い意味国家補償ということでやってきましたと言うが、狭い意味では身分に限っておる。ところが、身分のないそういった特殊の状態に置かれた方々、特別の状況にある方々は、身分は国との間になくても国が補償するんですよ。これが私は広い意味国家補償だと思うわけです。だから、身分から拡大をしていく、身分のところから一般戦災者までは拡大はできないけれども、少なくとも特異なあの原爆、そして三十五年たった今日でも晩発性の障害に悩まされておるというこの特異な、特殊的な状態は、未帰還者援護法に言うところの特別の状態と一緒じゃないのか、ここに甲乙はつけがたいのではないか。  いままで国が行っておる狭い意味国家補償が戦傷病者戦没者遺族援護法であり、未帰還者留守家族等援護法が広い意味国家補償じゃないか。だから、それと軌を一にする原爆被害者についてはやはり援護法を制定して、そこに援護を強化することに従来から考えて何ら不都合はないはずだ、こう思うわけで、このことをお聞きをしたわけです。  大臣、広い意味でやりました、やりましたと言うけれども、広い意味内容はいま言ったことですから、ひとつお答えをいただきたい。
  222. 森下元晴

    森下国務大臣 いまここで明快な御答弁はなかなかむずかしゅうございます。よく検討さしていただきます。内容についてまことに示唆される内容を含んでおることをつけ加えさせていただきます。
  223. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私はいま言ったようなことで、現在までの法制の上からいってもできるんだ、こういうような気持ちがございますので、ひとつ大臣は勇断をふるって決断をしていただきたい。しかも今年は、前段申し上げましたように、軍縮総会に向かって非常な盛り上がり、そしてすべての国の原爆に対する反核という運動が盛り上がっておる今日ですから、大臣にひとつ御決断を賜りたい。強くこのことについては要請をするものです。これで終わらしていただきます。  次に、先ほど長崎の被爆地域の拡大の質問がございました。私もこのことについてやはり要望を見てみますと、長崎は東西に山があって、南北約十二キロの指定地域にしてほしい、こういうこと。それからその理由は、山によって爆風、放射能は遮られた。私も現地が十分わかりませんから、十分な説明ができませんですけれども、最近、被爆者の老齢化が進むにつれて指定地域外の人々で体の異常を訴えるケースがふえ始めている。被爆影響なのか何なのかはわかりませんけれども、非常に多いということです。それから、地域外にありましても爆風で壊れた家屋がある。それから、爆心地方面から汚染されたと思われる紙くずや燃え殻が飛散してきたということがあった。こういったようにずっと書かれておりますが、問題は、先ほども答弁の中にあったようですが、残存放射能があるかどうかということについて厚生省は過去二回の調査を行われた。その調査そのものについては、やはり残存放射能はないんだ、こういう結論が出ておるようです。  三十何年たってそういう残存があればそれこそ大変なことですが、そこに居住しておられる方々が体の異常を訴え、そしてそういった異常者がたくさん出てくる、こういうことであれば、こういう不安に対しても、やはり個々人の健康診断とかそういったものをむしろやって、追跡調査してみる必要があるのではないか。単なる土壌の汚染が残っておるかどうかだけでなしに、そういうことができないものかどうか、お伺いをしてみたいと私は思います。
  224. 三浦大助

    三浦政府委員 被爆地域、たとえば健康診断特例地域をいま拡大するということは、基本懇にもございましたように、また新しい不公平感を生み出すのじゃないかという御意見等もございましたし、また残留放射能調査でも特に異常があると認められなかったという結論がある以上、困難ではないかと思いますが、先ほど大臣からも御答弁しましたように、いろいろ検討はさせていただきます。  特にいまの指定地域外でいろいろな健康障害の状況があるということは、都道府県でつかめる段階でございます。私どもこの地域指定に関連していろいろな調査もしておりますが、特に現在、指定地域内における有病率と申しますか、それからその対照として指定地域外の有病率を比較してみても、特に余り有意の差はないということも聞いております。もし先生いま御指摘のようなことがあれば、一度地域の拡大ということの前に県の方に問い合わせて、何が原因か検討させて、調査させていただきたいと思います。
  225. 平石磨作太郎

    ○平石委員 ひとつよろしくお願いしたいと思います。  それから、先ほどの援護法へちょっと返ってきます。先ほど答弁の中にもございました総理府の中に戦後処理の委員会ができて、これには一応の調査費を盛って、シベリアの抑留問題あるいは台湾、朝鮮その他の万般の戦後処理についての協議会、懇談会がなされる。この中に厚生省被爆者援護法について積極的に話を持ち込んでいく意思があるかどうか、私は一言大臣にお聞きしておきたい。
  226. 森下元晴

    森下国務大臣 先ほどからも答弁しておりますが、私、個人的にもまた厚生大臣としてもこの問題については前向きでやっていきたいということでございますので、総理府の所管でございますけれども、でき得ればその中でそういう処理もさせていただくようにひとつやってみたいと思っております。
  227. 平石磨作太郎

    ○平石委員 以上で終わります。
  228. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 次に、小渕正義君。
  229. 小渕正義

    小渕(正)委員 原爆二法を中心にいたしまして、野党共同提案である援護法制定をめぐりましての質疑がずっと続けられておるわけであります。したがって、焦点はほとんどすべて共通的でありますが、まず最初に私は、先ほどの質疑の中でも若干出ておりましたが、原爆被爆者対策の所管省として大臣にお尋ねいたします。  大臣御承知のように、六月七日から第二回の国連軍縮総会が始まるわけであります。これに対しましては鈴木総理も出かけられる予定になっておるようでありますが、この軍縮総会に臨む政府の基本的な考え方を、所管大臣としてひとつお知らせいただきたい、かように思います。
  230. 森下元晴

    森下国務大臣 御指摘のように来る六月七日に第二回の国連軍縮特別総会が行われまして、各国が軍縮努力を一層強化するための契機となるものと期待しております。特にわが国は唯一の被爆国でもございまして、その体験は全世界の注目を浴びつつあるわけでございます。したがって、この問題は戦略の問題とかイデオロギーの問題ということではなしに、むしろ人道上の問題として核実験の全面禁止、核軍縮の促進、これを強く訴えるべきである、このように私は思っております。内容的にはいろいろ、反米につながるとか共産圏においては余りやっておらないとかいうようなことはございますけれども、これは世界人類すべてがこの問題に立ち上がらなくてはならないし、やはり日本という人類で初めて核の大きな犠牲の上に立つ国がイニシアチブをとるべきだ、私はこのように思っておるわけであります。
  231. 小渕正義

    小渕(正)委員 世界唯一の被爆国である立場から、人道上の立場から、特に核実験の禁止、現在国際的な大きな問題である核軍縮、そういう立場で積極的に主張していきたい、こういうことであります。そういうことでありますならば、被爆国の唯一の被爆地であります広島、長崎、この自治体の長、市長でありますが、こういう自治体の長がこの軍縮総会の中に出席して被爆地としての立場から世界に訴える、こういう機会をつくることはきわめて有意義な、また実効性のある問題ではないかと私は思うわけでありますが、この点についてはいかがお考えでございますか。
  232. 森下元晴

    森下国務大臣 この件につきましては、前回の軍縮総会でも、実はオブザーバーとして参加しておるように聞いております。御指摘のように広島、長崎は世界で唯一の被爆体験を有する都市といたしまして、原子爆弾の恐ろしさ、悲惨さ、また核軍縮と世界平和のとうとさを身をもって訴えることができる貴重な歴史的な地名でもございますし、また証人でもあるように思います。こういう意味で、両市の市長が今回の国連軍縮会議の場においてアピールできることは、世界平和にも大きく寄与できる、このように確信をいたしておるわけでございます。  ただ、広島、長崎の両市長をわが国の公式代表団に含めるにつきましては、軍縮総会が国家レベルの会議でありますことからむずかしい点もあるかと思いますが、御提案趣旨に沿いまして、これは外務大臣にもよくお話をしたい、このように考えております。
  233. 小渕正義

    小渕(正)委員 この問題は、確かに前回はそれぞれの市長が総会に出かけられていきましたけれども、傍聴される程度でありまして、それだけでも一歩前進だと思いますけれども、でき得れば政府の中の一員としてそういう総会の中でアピールできるようなところにまでぜひ積極的に取り組んでいただきたいし、所管は外務省でありましょうけれども、推進する立場は被爆者対策を所管されている厚生省が最も適切かと私は思いますし、いろいろ意見はございましょうけれども、ぜひこれが実現できるようにこれから一段の御努力を特にお願いをいたしておきたいと思います。
  234. 森下元晴

    森下国務大臣 外務省とよく話し合いをいたしまして、努力をいたしたいと思っております。
  235. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に、先ほどからいろいろ質疑の中で論議されておりますが、端的にもう一度お尋ねしたいわけでありますが、政府が現在、原爆被爆者に対してのいろいろな対策に取り組まれておるわけでありまして、その点については心から敬意を表する次第であります。  政府がこういった被爆者対策に取り組む基本的な考えといいますか理念というものはどのようにお持ちなのか、どのような理念の中でこういうものを取り組まれておるのか、そのものについてひとつお聞かせいただきたい。お願いいたします。
  236. 三浦大助

    三浦政府委員 被爆者対策につきましては、被爆者が受けました放射線によります健康障害という特別な犠牲に着目して、広い意味における国家補償という見地に立って被害の実態に即応した妥当な措置を講じていくというふうに考えておるわけでございます。
  237. 小渕正義

    小渕(正)委員 要するに、原爆被爆者対策を扱うに当たっての基本理念は、健康障害に対してどのように国としては諸施策をやっていくか、それが今回の被爆者対策の基本理念でございますか、もう一度。
  238. 三浦大助

    三浦政府委員 放射線によります健康被害に着目しておるわけでございます。
  239. 小渕正義

    小渕(正)委員 基本懇で、昨年出されました中でいろいろな取り上げがされておるわけでありますが、先ほどから論議がありましたように、広い意味での国家補償として取り組んでいっているということが指摘されておるわけであります。したがいまして、ここで基本懇が言っている広い意味での国家補償というのは、健康障害に対する諸施策をもって広い意味における国家補償という形でこれをお考えになられておるのかどうか。その点について、基本懇が言う広い意味での国家補償というものはどういうものを指すのか、先ほどの論議もありましたけれども、もう一度端的なところでお伺いいたします。
  240. 三浦大助

    三浦政府委員 原爆被爆者が受けました放射線によります健康障害という特別の犠牲に対しまして、結果責任として被害に相応する相当の補償を認めるべきであると私ども解釈しておるわけでございまして、この相当の補償というのは、国民的な合意を得ることができる妥当な範囲において放射線障害の実態に即した妥当な対策を重点的に講じるという趣旨であると考えております。
  241. 小渕正義

    小渕(正)委員 要するに、そうしますと、原爆被爆というのは、端的に申し上げますならばあの原爆によって被爆した、その被爆の状況が放射線という特殊な状況の被災であった、それであるから原爆被爆者については特別の犠牲、こういうふうに基本懇がはっきりそういうような形でこの問題を理解している、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  242. 三浦大助

    三浦政府委員 御指摘のとおりでございます。
  243. 小渕正義

    小渕(正)委員 行政としては問題をなるべく小さくしてとらえていかれようということについては心情的にはわからないでもありませんが、私はこの基本懇で盛られている内容は、原爆被爆がそういった放射能を帯びたそういう被爆であったから特別の犠牲、ただそれだけを指して言っているというふうには理解しがたいわけであります。放射能による被爆というのも確かに一般戦災と違った特別な被害というか犠牲でありますけれども原爆が招いたあの異常な破壊力に基づく異常な惨劇といいますか、大量殺戮を生じ、すべて廃墟に化していったああいった異常な、いろいろ先ほどからも論議されておりましたが、原爆という異常な状態を指して特別の犠牲というふうに私どもは受け取るべきだ、私はこのように基本懇の「特別の犠牲」というものを理解しておるわけであります。どうも厚生省当局は、ただ原爆の中における放射能が普通の戦災と違うから特別の犠牲だと非常に狭義に物事をとらえてしまっているような感じがするわけでありまして、そこらあたり必ずしも基本懇ではそのようにはっきりと行政が定義されるような内容じゃないという理解を私はするわけでありますが、その点、いかがでしょう。
  244. 三浦大助

    三浦政府委員 ですから完全な補償あるいは完全な賠償とは私ども区別して考えておるわけでございます。そこがむずかしいところでございまして、たとえば焼夷弾あるいは普通の爆弾によりましてもいろいろな被害が出てくる、そういう一般的な戦災被災者との関係をどうするか、こういう問題もございます。  したがいまして、この中で言う「相当の補償」というのは、放射線による健康被害という特別な被害に着目して広い意味での国家補償をしなければならぬというふうに私ども考えておるわけでございます。
  245. 小渕正義

    小渕(正)委員 念のためにお尋ねいたします。  基本懇のどこの条項を指してそのような御解釈をされておるのか。
  246. 三浦大助

    三浦政府委員 「原爆被爆者対策の基本理念及び基本的在り方について」という冊子がございますが、そこの五ページに書いてございます。  そこの五ページの下半分の(3)というところから、「ところで、広い意味における国家補償見地に立って」というところがございまして、それで、   第一に、国家補償見地に立って考えるというのは、今次の戦争の開始及び遂行に関して国の不法行為責任を肯認するとか、原爆被爆者が違法な原爆投下をしたアメリカ合衆国に対して有する損害賠償請求権の講和条約による放棄に対する代償請求権を肯認するという意味ではなく、今次戦争の過程において原爆被爆者が受けた放射線による健康障害すなわち「特別の犠牲」について、 ということがございますが、そこのところを私ども意を酌んでおるわけでございます。
  247. 小渕正義

    小渕(正)委員 基本懇の中では非常に問題をしぼられまして、最終的な結論は、国家補償の必要性は認めながら、しかも「特別の犠牲」ということは認めながら、逆に公平の原則という一つのものを持ってきまして問題の整理を行っておるわけであります。そういう意味で、私が申し上げたように、前段におきましては必ずしもそういうことじゃなしに原爆そのものに対する一つの特異性ということに触れられておるわけでありますが、やはりそこらあたりが援護法の制定をめぐりましての論議の分かれ目だと思うわけであります。  したがいまして、先ほどから厚生大臣の御答弁の中で、援護法制定のそういった被爆者の切なる声、そういった期待、そういうものについては心情的な理解はできるということで、私人としてはいろいろの御意見も出されておったようでありますが、そういう中で、できることできないこと、いろいろともう少し整理して考えてみたい、これは援護法制定の問題ですが、そういう御答弁があったように私は理解したわけであります。  そこのあたりは、たとえば予算的に問題なのか、それともそういった一般戦災者との関係の中での整理で非常に問題なのか、その他まだ何かほかにあるのか。大臣が先ほどの御答弁の中で十分そこらあたりの問題整理をもう少しやってみたいということをおっしゃられたわけでありますが、これはあくまでも個人的な見解じゃないと思いますが、いかがでしょう。その点、あわせてお願いします。
  248. 森下元晴

    森下国務大臣 先ほど御指摘のような趣旨の御答弁をさしていただいたわけです。できること、できないこと、急にできること、急にできないこと、いろいろあります。その理由は、やはり財政的な問題もあります。それから、この援護法に基づくということになりますと税金においてそれを支払わなくてはいけない。そうなりますと、やはり社会的公正と申しますか、アンバランスの問題が出てくる。そういうことを踏まえて実は申し上げたわけでございます。  それから、これはちょっと時間をいただいてつけ加えさしていただきますけれども国家補償、社会保障、個人補償といろいろございますけれども、広い意味の「特別の犠牲」ということには精神的な要素もかなり入っているんじゃないかと私は思うのです。いわゆる文明社会が生んだ当時の最終兵器と言われる原爆、これが長崎、広島に落とされたというところに深い意味がございまして、私少し欲張って言わしていただくならば、これは文明社会が生んだ一つの悪である、言うならば国家補償以前の、大きな意味の人類の補償問題につながるんだ、そのように思っております。だから、冒頭小渕委員がこの軍縮会議へ長崎、広島の市長を参加させると言った意味はそこにあるような感じがするわけですね。国内だけの問題ではなしに、世界的な、地球的な一つの意味を持っておるというふうに実は解釈いたしまして、ちょっとつけ加えさしていただくわけでございます。
  249. 小渕正義

    小渕(正)委員 具体的な問題としてお尋ねいたしますが、現行制度の中で国家補償的な性格を帯びたものとそうでないものとはどういう内容なのか、区別してひとつそのことをお知らせいただきたいと思います。
  250. 三浦大助

    三浦政府委員 たとえば放射線による障害健康障害を受けた方に対しましては、これは認定患者と言っておりますが、これは全額国費で見ておるわけでございます。ですから、そういう方々に対する特別医療手当等につきましては、これは原爆小頭症手当もそうでございますが、所得制限も撤廃してございます。  それから社会保障的な施策としては、たとえばこの被爆者の方がかぜとか下痢、そういう病気にかかったといたしますと、これは原爆放射線影響によるものではないわけでございますが、そういう方につきましても、これは保険が優先いたしますが、自己負担分については国庫で見ておる。しかもこれはまだ所得制限がかかっておる。  こういうふうに、一方で広い意味国家補償的な対策がございますし、片方で社会保障の対策がなされておる。そういう意味で、この法律国家補償と社会保障のちょうど中間をいく対策をとっておるんじゃないだろうか、こう思うわけでございます。
  251. 小渕正義

    小渕(正)委員 基本懇の答申が出されましてから、まあ行政当局としては歓迎されたのかどうかわかりませんが、いずれにいたしましても、基本懇答申が出まして国家補償ということが一つの明確な流れとして出てきたわけですね。そういう中でこの原爆被爆者対策というものがどのように変わったのか。いままではあいまいとした社会保障的要素の中でとられてきたこれらの諸対策が、基本懇答申によってそこに明らかに一つの国家補償的な流れが大きく盛り込まれたわけでありますから、当然従来の諸対策から一歩前進した中における取り組みがなされなければならないし、また当然そうしなければならないと思うわけでありますが、そういう意味においてどのような取り組みの大きな変わり方が出てきたのか、その点をお尋ねいたします。
  252. 三浦大助

    三浦政府委員 基本懇からいただいた意見書は、今後の被爆者対策のあり方といたしまして、一つは近距離被爆者に対する処遇を向上しなさいということが言われておるわけでございます。それから二番目には、原爆放射線の研究体制をもっと整備充実すべきであるという御意見がございます。それから三番目には、被爆者相談事業の拡充、こういうことを指摘しておるわけでございますが、政府としてこれを受けまして、昨年度以降、医療特別手当、それから原爆小頭症手当を創設いたしました。また、これらに対する所得制限も撤廃してございます。それから増額保健手当の新設をしておりますほかに、原爆放射線影響に関する共同研究の実施とか、あるいは被爆者相談事業の増員、こういういろいろな施策にまた新しく取り組んできておるわけでございまして、これからも基本懇の趣旨を踏まえて原爆被爆者対策の充実を図っていきたいと考えております。
  253. 小渕正義

    小渕(正)委員 いまも挙げられましたそういった諸対策は、国家補償的な一つの性格の中で行っているというふうに理解されておるのかどうかですね。
  254. 三浦大助

    三浦政府委員 認定患者に対します施策あるいは近距離被爆者に対する施策、こういうものは広い意味での国家補償という見地に立って私ども推進しているわけでございます。
  255. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に、先ほどからも被爆者対策について特に援護法制定の問題をめぐりましての質疑が展開されておったわけでありますが、老人保健法の取り扱いをめぐりまして先ほど来より質疑がありまして、大臣の方は前向きに問題処理を図っていかれるような趣旨の御答弁があっておりましたが、要するに被爆者団体またそれぞれの地方自治体の中でこの老人保健法問題をめぐりましては、原爆二法はこの老人保健法の枠外に置いてくれ、こういうのが本来的な主張であります。  なぜならば、今回の、制定はまだ見ていませんが、老人保健法の現在審議中の中身でいきますと、もちろん個人負担その他については、手続的な問題があることは抜きにいたしまして、個人的には本人負担には一つもならないような措置になると思います。ただ、しかしながら、今日まで国家補償的色彩を持って国が見ておられた治療の費用について、現在審議されている老人保健法でいきますならば、あれが制定されるとするならば、今日まで原爆二法についての医療費の負担は地方自治体にはなかったわけでありますが、それがもろに地方自治体にかぶってくる。だから、そういう意味国家補償的なこの原爆二法についての色彩が薄らいでいくのではないか。国がめんどうを見られぬようになってしまうのではないか。個人的な、被爆者との関係では手続的な問題がいろいろあるかもしれませんが、それは一応抜きにいたしましても、そういう財政的な裏づけの面で見ますならば、地方自治体が大きな負担を背負うことになって、国としては七十歳以上の老人保健の対象になった被爆者人たちについてのめんどうも見ないことになってしまう、これが実は大きな焦点になったと思います。  もちろん、厚生省の方ではその分については何がしかのお金は、地方自治体の方に十分見ていきましょうというようなお話がされておると思います。しかしながら、該当地方自治体にとりましては、それが当面はそういう形であるかもしれないけれども法律上そういうものに対する最終的な保証措置は何もない。そういうこと等の兼ね合いから、原爆被爆者については老人保健の対象から外してもらいたいというのが真意であるわけですね。  そういう点について先ほど来より前向きに考えましょうという御答弁をいただいておったわけでありますが、そういった問題点を十分理解された上で何らかの処置を講ずるということで理解していいかどうか、その点いかがですか。
  256. 三浦大助

    三浦政府委員 御指摘の地方負担につきましては、被爆者医療制度の中に地方負担を導入するということではないわけでございまして、被爆者一般の病気について優先的に老人保健法を適用する、こういうことになるわけでございます。したがって、被爆者の方には全然負担がかかりませんが、御指摘のようにいままで市が負担しなくてもよかった医療費の三%分は国で見てあげましょう、ただ新しい老人保健制度でできる二%分につきましては、これは全国的な制度でございますのでこのくらいはひとつ御負担いただけないか、こういうことでございます。  ただこの場合、老人保健法と原爆被爆者のあれを別にいたしますということが果たしてメリットはどうなのだろう、デメリットはどうなのだろうという問題がございます。特に原爆関係は指定病院がございまして、この数が限られておるということもございまして、かえって老人医療という面で、果たしてこれが被爆者の方々に対してメリットになるのかなという心配も一部にございます。  ただ、先ほど御指摘がございましたようないろいろな手続上の問題につきましては、県市と相談いたしましてそういう不便が生じないような措置は、私ども全力を挙げて講じていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  257. 小渕正義

    小渕(正)委員 長崎とか広島とか被爆者が集団的におられるところは、手続的な問題では本人にはさほど負担をかけないでの処理の仕方ができると思うのですね。しかしながら、今回この老人保健法がもしも施行されるとするならば、そういった長崎とか広島以外の地域での被爆者の方々の手続的の面で、これは被爆手帳を窓口に出せばすべてオーケー、お金を出さなくてもいいということにはならぬと思いますし、そういう点で非常に繁雑な問題が出るわけです。現行の被爆手帳でさえも、ああいった保健手当管理手当支給の場合においても、東京都内とか千葉とかいろいろこういうところへ来ますと、何回か足を運んでいろいろなところへ行かないとできないような繁雑な状況になっているわけでありますから、それにかてて加えて、そういった老人保健法ができることによってこれが別扱いにならないということになりますと、実際の行政サイドから見ましても、やはり被爆者に対する温かい施策としてはそこらあたりもきめ細かい配慮がぜひ必要だ、かように思うわけでありまして、そういう点で、いまの考えられておる内容からいきますならば、どうしてもその点は解決、解消はむずかしいと思います。  そういうところから、この被爆手帳を持っておるお年寄りに限ってはこの老人保健法と別枠の対象にしてくれという素朴な声になって出るわけですから、その点何らかの、そういう手続的に繁雑なものにならないように被爆者の方たちに対してもっともっと温かみのあるような行政ができないものか、ぜひ篤と工夫していただきたいと思いますし、先ほどお話がありましたような財源の地方自治体への負担増の問題、これはぜひ何らか解決してもらわないことには、当面は何とか解決したといたしましても、これは永続的にこれから出てくる問題でありますから、ぜひこの点は前向きに考えていただいて、せっかく原爆二法、医療法が国家的な補償の性格が少し取り入れられてきたような状況の中で、それが薄められるようなことだけはぜひ避けてほしいという立場からお願いを申し上げた次第であります。  次に、先ほど来の被爆者対策の中で、先ほどの質疑の中でもお聞きしておったわけでありますが、被爆者対策について広い意味での国家補償的性格を盛り込まれた対策に取り組んでいくということをしながらも、実質的には逆に一般戦災者との関係でということで、基本懇の中でもそういった公平の原則ということがうたわれておるわけでありまして、お話を承っておりますと、ややもすると一般戦災者との見合い、兼ね合いということだけに重点が置かれて何か物事を見られているような感じがどうしてもするわけであります。  したがいまして、私、昨年のこの社労の中でもお尋ねしたのでありましたが、しからば国が一般戦災者に対してどのような状態なのかということについては全然考えてないということがありまして、そのときの質疑の中で、一般戦災者の方で身体的な障害を受けた人が大体どの程度おるのか、少なくとも、重傷その他、身体的な障害の程度もあるでしょうけれども、一応そういった実態は把握してないかどうかということをお尋ねいたしましたところ、昨年でしたが、六月か七月ごろには調査が終わりますという御答弁を実はいただいておるし、議事録を見てもはっきり出ておるわけでありますが、その状況をお知らせいただきたいと思います。
  258. 北村和男

    ○北村政府委員 先ほど来いろいろお答えを申し上げておりますように、厚生省が直接所管いたしておりますのは、私どもの国と使用関係にあった軍人軍属の問題、それから一般的な身体障害者の施策というものをやっておりまして、一般戦災についてのものは所管の問題はいろいろございますが、昨年来いろいろお話がございまして、一般戦災による障害者はどのくらいいるかというお尋ねでございました。これは社会局の関係でございますが、私ども身体障害者の実態調査を行っておりますので、便宜その中に、身体障害者であることは間違いないのだけれどもその発生原因が戦災によるものという一項を入れまして、間接的な調査をいたしたことでございます。昨年先生からお尋ねがございましたときには集計中でございましたが、これがまとまりました。戦災障害者は約七千名でございます。
  259. 小渕正義

    小渕(正)委員 この七千名というのは、身体障害者として認定されている方の中で原因が戦災によるという方々ですね。そうしますと、そういった障害の程度というものについての大まかな分類か何かありますか。まだそこまではできていませんか。
  260. 北村和男

    ○北村政府委員 それぞれ身体障害者全般の調査の中での調査でございますから割合はわかっております。したがいまして、恐らく御質問の御趣旨一般身体障害者のたとえば障害の程度と戦災による障害の程度とどういう差があるかというようなお尋ねであろうかと思います。それぞれ各項目について比較をいたしてみますと、戦災障害者につきましては一級から三級までの障害を有する者の割合が約六九%でございまして、一般身体障害者の約五〇%に比べてやや高い傾向がございます。
  261. 小渕正義

    小渕(正)委員 この基本懇の答申が出ましてから、一般戦災者に対するまた逆な意味での関心が出てきたわけですね。これは厚生省側から見ますと好ましいことかどうかわかりませんけれども、わが国の戦後処理という問題で眺めますとどうしても、まだほかにたくさんありますが、こういった一般戦災者に対して国としてどう取り組んできたのか、何をしたのかということが問題になるが、残念ながら戦後三十数年になっても何もされていなかった。ようやくこういう実態の調査が初めて出されたという程度でございまして、そういう中でございますから、政府としてはこういった実調状況の中で原爆被爆者対策一般戦災者との見合いの中で、対比の中で物事を考えていくということはきわめて遺憾であるし、後ろ向きだと私は思います。  基本懇の中でもそういった内容について国家補償的な立場で国としてめんどうを見ていかなければいかぬということが十分盛り込まれているわけでありますから、そういう従来よりもはっきりした面は面としてとらえていただいて、そうして考えていただかないことには、戦後処理として全然手をつけなかった、そうしてようやく一般戦災者身体障害的な状況がやっとわかるような今日の状況でございますので、非常に取り組みがおくれているわけでありますので、そういうものとの対比で原爆被爆者対策の問題を議論されて論じられたりいろいろ考えられると、これは非常に後ろ向きの行政の姿勢じゃないかと私は思います。  今日まで被爆者対策につきましてはいろいろな関係者の努力によりましてやっとここまできたわけでありますが、そういった点についてはずっと先ほどの御質疑を聞いておりまして、いま厚生大臣としていろいろ前向きな御発言があったわけでありますが、足元を見てみればわが国はそういう意味で戦後処理についてまだまだ非常におくれている面があるということをぜひ頭の中に置いておいていただいて、しかもそういったおくれた面と比較して何でも物事を考えないように、その点だけは大臣にお願いしておきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。
  262. 森下元晴

    森下国務大臣 お説のとおり戦後処理の問題の中でも一番重要な問題でございますし、特に国際的にも非常に脚光を浴びておりまして、人類の平和、繁栄という問題にまでつながる重要な問題でございますので、この問題につきましては小渕議員の仰せの御趣旨をよく生かしまして前向きで早急に検討、実行に移すようにいたしたいと思っております。
  263. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に、被爆者の高齢化についてお尋ねいたしますが、御承知のようにもう戦後三十七年経過しておりますから、被爆者は逐次高齢化していっているわけであります。ちょっと私の手元に資料がございませんでしたのでお尋ねいたしますが、被爆手帳を持たれている方で大体年間どの程度の方がお亡くなりになっておるのか、その数をお知らせいただければと思います。
  264. 三浦大助

    三浦政府委員 原爆被爆者の死亡者数でございますが、五十年には四千八百十八人、五十一年が四千七百五十二人、五十二年が四千九百二十九人、五十三年が五千百十六人、五十四年が五千二百四十人、五十五年が五千五百二十一人というふうになっております。
  265. 小渕正義

    小渕(正)委員 いまの数字でもおわかりのように、年が改まってくるに従いまして、お亡くなりになっている方がわずかの数字でありますが漸増している傾向にあるわけであります。いま被爆者対策の中で最も緊急に取り組まねばならない問題といたしましては、被爆者の老齢化に従いまして養護ホームといいますか、そういった施設が非常に少ない、これが緊急に考えて対策を立てなければならぬ課題だと私は思うのであります。  長崎を例にとりますと、こういった高齢化の中でもう常時寝たきり的な人たち被爆者の中で大体八千人ぐらいはおられると見られているわけであります。それで、そのうち大体一割、一〇%程度は常時何らかの施設の中で入院されておる、そうして治療、看護等を受けられておるわけでありますが、残りの方たちは自宅でそれぞれ寝たきり的な中で、要するに自分のうちが潜在病院みたいになっておられるわけでありまして、こういった老齢化に伴いまして実はそういう問題が非常に大きくクローズアップされてきておるわけでありますが、これらについては当局としてはその実態をある程度調査されたのか、把握されておるのか。その辺の状況を私ちょっと数字を出して申し上げたのでありますが、そこらあたりの全体的なものについて何か当局として把握されておられればその状況を御説明いただきたいと思います。
  266. 三浦大助

    三浦政府委員 被爆者の方の老齢化というのは大変深刻な問題であるわけでございまして、いま七十歳以上の方が二割ぐらいではないかと思っておりますが、御指摘のようにそういう養護ホームも数が少ないかもしれませんが、なかなかこの入れかえも少ないのも実態でございます。数は少ないのですが、五十七年、ことしの六月に開設するのもあるわけでございます、これは広島市でございますが。私ども、なるべくこういうものもふやしていきたい。また年寄りがふえますとやはり相談事業といいますか、そういうものも重要になってくるのじゃないだろうかということで、今年度そういう方面の増員もいたしてあります。  ですから、やはりこの原爆被爆者のお年寄りの対策というのはこれから重点を置いてやっていかなければならぬというふうに私どもも思っております。
  267. 小渕正義

    小渕(正)委員 広島では一つ増設の状況にあるということでございましたが、長崎でも、昨年ですか、「かめだけ」という原爆被爆者専門の特別養護老人ホームが完成したのであります。その他いろいろありますが、こういったところはすべていつも満床で、あくのを待って次から次へと入る。そのために何カ月も待たされているという状況でありますし、また、長崎市内あたりにおける大きな病院の入院設備のあるところはこういう被爆者人たちが入院されてほとんど満床、そういう状況にあります。したがって、先ほど言いましたように、自宅での寝たきり老人が本来ならばそういう施設の中で治療を受けられるべきであるのにかかわらず、残念ながらなかなかそういう機会に恵まれない、こういう深刻な問題があるということが一つ。  それからあと一つは、少しお元気になられた場合のリハビリテーション施設がいまのところ全然ないわけです。長崎を例にとりますと、そういったお年寄り専門のリハビリテーション施設がないので、長崎にも一つぐらいこういうものを早くつくってやらなければならないような状況に置かれておるわけであります。  これからの被爆者対策の中で、目の前に迫っているこういった緊急的な一つの大きな課題がございます。そういった施設をつくる、増設する、そういったものについてはどうしてもお金との兼ね合いが出てきます。そういう点ではひとつ大臣の方でこういった実態を十分御認識いただきまして、これからも緊急にこの問題に対する解消策を講じていただきたいと思うわけでありますが、その点、いかがでありましょうか。
  268. 森下元晴

    森下国務大臣 よく実態を認識いたしまして、緊急にお説のように対処していきたい、このように思っております。
  269. 小渕正義

    小渕(正)委員 その点はややもすると、被爆者対策手当その他いろいろ――それも確かに必要でありますけれども、もっとこういった角度からの対策を充実させていただく、これこそまさに、一般戦災者との見合いとかなんとかということを考えなくてもいい、しかも大きな切実な問題ですから、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  最後になりましたが、先ほどから地域是正の問題が同じ長崎選出の中村先生あたりからも触れられておりました。大先輩であり、長い問この問題を機会あるたびにお願いしているわけであります。これは私、分科会の中で大臣にお願いしたわけでありますが、大臣、これは見られたことございますか。これは救護所の施設とか、黒い雨が降ったとか、どこにどういうものが落ちたとかいうものなんですが、それを見られてもおわかりのように、現行の地域指定というものが不均衡ということは一目瞭然であります。  先ほどから、基本懇の答申の中で科学的な合理性あるものに限る、そうしないといたずらにまた不公正を生んでくるんだということが触れられておるのでと言われておりましたが、これの地域を設定したとき自体が科学的、合理的根拠なしにやられておるわけであります。あの原爆を落とされた直後からたとえば一年後、三年後、五年後、それぞれの地域における残存放射能その他いろいろそういう科学的なデータがあってやられたならまだ皆さん納得するわけでありますが、そういうものはなしに行政区域を単位にしてやられているわけでありますから、どうしても説得性がない。したがって、長崎県、これは単に地域の人たちだけでなしに、県市を挙げて県民世論としてこの問題の是正を実は大きくお願いしているわけであります。  その地図を見ておわかりのように、原爆が落とされたときのいろいろな破損状態、いろいろなものが飛散してきたときの状態その他、そういうものが現在でも資料として残っているわけでありますから、厚生大臣としても、この点は十分お読みいただいて、理解されているというふうなお話が先ほどありましたが、ぜひ前向きな対処の仕方をお願いしたいと思います。  そういう中で、私は、たとえ被爆者援護法の問題が前進していくといたしましても、この問題がなおざりにされておっては被爆者対策は終わりじゃないと思います。したがって、その点、そういった性格のものであるということでぜひ御理解いただきたいと思います。  最近、地方自治体の中でも、この問題について何とか自主的に考えられないだろうかという動きも実はございます。したがって、ただ国にお願いするだけではなしに、地方自治体としてもこの問題を自分たちみずからの手で何とかできないのだろうか。もちろん、いま地方自治体も、それぞれ財政逼迫の折ですからこれはきわめて困難な問題でありますけれども、しかし困難な問題であるといいながらも、自分たちの手でも何らか前向きな解決策はないものだろうかということで実は模索もいたしております。  したがって、そういうことを十分御勘案いただきながら、ひとつぜひこの点は、私前回の委員会でも申しましたが、せっかく鈴木総理が戦後二回目の総理大臣として長崎の原爆記念日の式典に来られるわけです。久しくお願いしておったが、時の総理大臣が長崎まで来られるということはなかなかむずかしかったのでありますが、三木総理に次いで、今度鈴木総理が二回目として久しぶりにお見えになりますから、せめてそういった機会には、長崎県民、市民の大きな世論であるそういった問題に対して大きな期待がございますので、何らかそういったものに対しても解決の曙光が見られるような前向きな対処策をぜひお願いしたいと思います。その点、厚生大臣、よろしくお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
  270. 森下元晴

    森下国務大臣 さきの質問にもお答えいたしましたように、総理も長崎においでになる、そういうときでもございますし、地域拡大につきましても前向きで検討していきたい、このように思っております。
  271. 小渕正義

    小渕(正)委員 では、質問を終わります。
  272. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 次に、小沢和秋君。
  273. 小沢和秋

    小沢(和)委員 まず最初に、野党共同提案の代表提案者であります森井議員にお尋ねをしたいと思います。  被爆者の長年にわたる運動を背景にして、去る四月の八日に野党が共同して原子爆弾被爆者等援護法案提出したわけであります。これまでも繰り返しすべての野党が共同してこの法案を提出しているにもかかわらず、政府がこれを受け入れようとしないことを私は大変残念に思っているわけであります。  そこでまずお尋ねをしたいと思いますのは、現行二法とこの法案が基本的にどこが違うのか、どうしてもこの法案を成立させなければ被爆者が本当の意味では救われないというのはどういう点なのか、御説明を願いたいと思います。
  274. 森井忠良

    森井議員 今度の原爆被爆者等援護法案には共産党からも提案者になっていただきまして感謝をしております。また小沢議員は賛成者のお一人でございまして、これまた大変うれしく思うわけでございます。各党派それぞれ考え方は違っておるわけでございますが、お互いに譲り合って一本の法案を出すということは並み大抵の苦労ではおさまらないくらい大変なことだと思うわけでございます。幸いにいたしましてオール野党で提案をしたわけでございまして、大変喜んでおるわけでございます。  お尋ねの点でございますが、何といいましても政府案は社会保障の枠を出ていない、それに対して野党案というのは国家補償の精神で貫かれておる、こういうことでございます。政府案によりますと、いま申し上げましたように根底に社会保障ということがあるものですから、たとえば過去にさかのぼれない、原爆で亡くなられた死没者への弔慰あるいはまた遺族への遺族年金等々を支給をすることがどうしてもできない、そういうふうな問題が出てくるわけでございます。被爆者の皆さんには、国の戦争責任というものを明確に認めた上で国が責任を持って補償してもらいたいという強い要求があるわけでございまして、その根底には、いま申し上げましたとおり国の戦争責任をまず明確にすべきであるということがある。御存じのとおり日本の軍国主義が起こした侵略戦争ですけれども、その反省の上に立ってやはり国家補償すべきであるというのが野党案の基本的な考え方でございます。ですから、野党案でいきますと被爆者のニーズに的確にこたえることができる。  けさほど来の議論でも申し上げておりますように、アメリカの原爆投下は明らかに国際法違反である、しかし原爆投下を誘発したのは日本の政府が起こした戦争である、そういった考え方に立って、被爆者援護法をつくることによって二度と再び被爆者をつくらないという立場で私どもは御提案を申し上げておる次第でございまして、その点が違っております。
  275. 小沢和秋

    小沢(和)委員 ことしは六月に第二回国連軍縮総会が開かれるわけでありますけれども、この総会で日本政府が果たすべき責務と役割りとの関連でも、この法案の提出は大いに意義があるのではないかと私は考えますが、いまのことに関連して引き続いてお尋ねいたします。
  276. 森井忠良

    森井議員 まさにそのとおりでございます。思い起こしてみますと、五十三年に行われました第一回の国連軍縮総会におきまして、当時の園田外務大臣が歴史に残るような名演説をなさっております。そして核軍縮について切々と訴えておられますが、核がいかに悲惨なものであり、非人道的なものであるかといった点を強調されるとともに、日本の国内のことについても言及をしておられます。つまり、世界初の被爆国――世界唯一の被爆国という説もありますが、いまは唯一ではなくなっておりまして、御存じのとおり南太平洋地帯では新たな被爆者が生まれておりますから、私は世界唯一という言葉は使わないのですが、世界初の被爆国日本はいまもって三十数万の被爆者の方々が呻吟をしていらっしゃる、これは大変なことなのだということを切々と訴えておられたわけでございます。  ことし六月、二回目の軍縮総会があるわけでございますが、鈴木総理が出席されるに当たりましても、園田前外務大臣が国連の第一回の軍縮総会でそういった被爆者がおられるという現実を強調されたわけでございますから、少なくとも、被爆者の問題は日本政府としてここまで国家補償で手厚くしておりますよと世界に対して言えるような対策を持っていっていただきたい。その意味では、私どもオール野党で提出をいたしましたこの援護法案というものの意義は非常に大きいと私は思っておるわけでございます。
  277. 小沢和秋

    小沢(和)委員 もう一点お尋ねしますが、昨年同趣旨の法案が提出されておりますけれども、ことしはどういう点が変わっておるか、この点だけもう一遍お尋ねします。
  278. 森井忠良

    森井議員 基本的な流れは変わっておりません。各野党の皆さんの御意見もお伺いをいたしました上で提出いたしましたが、国家補償の精神に基づく被爆者援護法ということで流れは変わっておりません。  ただ、そういった中におきまして、国民年金法等の改正案あるいは戦傷病者戦没者遺族援護法の改正案といったものを政府はこの国会へ提出なさっておられるわけでございますが、その点の金額を変えております。  具体的に申し上げますと、被爆者年金の最低金額というのは老齢福祉年金に合わせておるわけでございまして、二万四千円が二万五千百円になっておることは御案内のとおりでありますが、そういうふうに横並びで改善をいたしております。それから最高の金額は戦傷病者戦没者遺族援護法で支給される最高金額を計上しておるわけでございまして、これの引き上げがございましたので、それにならって引き上げたということでございます。
  279. 小沢和秋

    小沢(和)委員 どうもありがとうございました。  そこで大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、この原爆被爆者援護法のようにすべての野党が繰り返し提案をしております法案というのは恐らくはかに例がないと私は思います。政府もこういう野党の動きに影響を受けておりまして、原爆特別措置法などでもある程度の改善が行われていることは事実だと思います。しかし、先ほどもお話がありましたように、何といっても根底が社会保障という枠を出ない考え方であるために、どうしても被爆者の救援には大きな限界がある。  そこでどうしてもこの野党の共同提案に、これは同時に被爆者の声でもあると思うのですけれども、これに謙虚に耳を傾けて、この際、援護法の制定に踏み切るべきではないかという強い要求を込めて大臣に私は御質問を申し上げます。
  280. 森下元晴

    森下国務大臣 原爆被爆対策は、被爆者の受けた放射能による健康障害という特別の犠牲に着目をいたしまして、広い意味国家補償見地に立って、被害の実態に即応して措置対策を講ずべきであると考えておるわけでございます。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕 したがいまして、特別の事情にない原爆死没者遺族に対して補償を行う等を内容とする被爆者援護法を制定することは、一般戦災者との均衡上非常に困難である、このように考えておりますし、ただいま森井議員からも代案を説明されましたが、傾聴すべき御意見もございますけれども、全般的には賛同しかねるというようなことで、広い意味国家補償見地に立って、その内容的におきましては国家補償的な問題も含んでおりますし、また、一部には社会保障的なものも含んでおるということでございます。
  281. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そういう答弁の枠を出ないということを私は大変残念に思いますけれども、これについてはさらに今後議論を重ねていくということにして、質問は先に進めたいと思います。  そこで、今回の政府の改正案についてであります。今回の改正案医療特別手当など各種手当の引き上げが行われる、この点では改善であると思いますけれども、この給付の実施を昨年に比べて一カ月おくれとしていることは、臨調路線の具体化として容認することはできません。被爆者の皆さんにしてみれば、一昨年十二月に原爆被爆者対策基本問題懇談会の報告で失望させられ、今回またこういう後退によって失望させられる、本当に重ね重ね失望させられる事態だと思うのです。そこで、前にも私、国民年金等のことでも質問いたしましたけれども、この各種給付の実施月を昨年より一カ月おくらせた理由は何か。やはりこの法案についても改めてお聞きをしたいと思います。
  282. 森下元晴

    森下国務大臣 一カ月おくらさざるを得なかったことはまことに残念なことでございますが、昨年の夏のゼロシーリング、いわゆる財政難におきまして、大幅におくれる、また、おくらさなければいけなかった、そういう内容を私ども全力を挙げまして一カ月おくれにとどめさせていただいた。幸い、スライドの方は物価に合わせまして変えてもらったわけでございますけれども、一カ月のおくれは、財政情勢厳しいようでございまして、まことに申しわけないと思いますけれども、この程度のことはごしんぼうを願いたいということでございます。
  283. 小沢和秋

    小沢(和)委員 恩給や年金などの給付の削減も是認できないということは私この前も強調したわけですが、とりわけ被爆者に関する給付をこういうふうな横並びで削減をするということは、私はとうてい認めることはできません。来年度の予算編成では、厚生大臣はいままで繰り返しこの一カ月のおくれを復元するように奮闘するとおっしゃっているのですが、この手当類についても同じ考え方でおられるか、念のためお伺いをいたします。
  284. 森下元晴

    森下国務大臣 奮闘努力いたします。
  285. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それでは次に進めたいと思います。  きょうは私は、特に第二回国連軍縮総会に関連をして幾つかお尋ねをしたいと思っております。  被爆者の方々は、被爆者に対する援護措置の抜本的な強化を望むと同じ切実さで、もう二度と被爆者をつくり出すな、核戦争をやるなという強い願いを持っていると思います。しかし、現実の世界は米ソを中心にますます核軍備の拡大競争が激しくなっております。  私は、第一回国連軍縮総会の最終文書に基づいて、ワルトハイム事務総長が一昨年の国連総会に提出をいたしました「核兵器にかんする包括的研究」というのをごく最近読みました。これによると、今日、地球上には四、五万発の核兵器が存在し、その爆発力の合計は広島型原爆の百万発以上に相当するというふうに述べられております。  大臣にお尋ねしたいのですが、これは、地球上の全人口一人当たり、高性能爆弾にしたら何トンぐらいの量に当たるか御存じでしょうか。
  286. 森下元晴

    森下国務大臣 世界人類を三十遍ぐらい絶滅できるだけの保有をしておる、それだけの力を持っておるというように聞いております。
  287. 小沢和秋

    小沢(和)委員 おっしゃるとおりで、大体男も女も、大人から子供に至るまで、もうすべての人類一人当たり、この高性能爆弾に換算すると三トンという量が蓄積されているということで、まさしくいま大臣言われたとおり、もう何遍も何遍も全人類を皆殺しにできる量であります。しかも、最近は命中精度が飛躍的に向上しておって、いわゆる大陸間弾道弾、一万三千キロも飛ぶようなものが目標の二百メーター以内に落ちる。だからもう百発百中というような精度を持つようになっているわけですね。しかも今日なお、米ソを中心にして核兵器がどんどん生産され続けているわけであります。  こういう状況の中で第二回国連軍縮総会が開かれるわけでありますから、これはもう被爆者だけでなく、わが国の国民全体がその成果に非常に大きな期待をしておると思うのです。  ここで外務省にお尋ねをしたいと思うのですが、最近になりまして、二十日までジュネーブで軍縮交渉委員会が聞かれておったわけでありますけれども、過去四年間を振り返ってみると、ほとんど進展がなかった、だから、今度の総会は余り期待できないというようなことが新聞のトップのニュースになったりするような状況でありますけれども、これは事実かどうか、現在どういうような進展状況なのか、こういう、ほとんど進んでないとすればどうしてそうなっておるのか、この辺の点について簡潔に御説明をお願いいたしたいと思います。
  288. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私、外務省で現在軍縮特別総会を担当しておるものでございますので、先生の御質問に対して簡潔にお答え申し上げたいと思います。  ジュネーブの軍縮委員会、実は四月の二十一日に終了いたしました。その軍縮委員会で取り上げられております中身は幾つかあるわけでございますけれども、全面核実験の禁止、これが一つでございます。それからもう一つは、化学兵器の禁止に関する条約の問題。それからもう一つは、これは若干未来兵器的なんでございますけれども、放射性兵器の禁止に関する問題を取り上げておる、これが三つ目でございます。それから四つ目が、非核兵器国の安全保障に関する問題。次が核軍備競争の停止及び核軍縮に関する委員会。それからもう一つは、これは包括的軍縮計画と申しておりますけれども、これに関する問題。最後に、宇宙空間における軍備競争防止のための措置をとる問題と、全部で七つの議題がございます。  実は、こういった問題を検討しますにはどうしても作業部会が必要でございますから、若干順不同になりますけれども、非核兵器国の安全保障に関する作業部会、化学兵器に関する作業部会、放射性兵器に関する作業部会、最後に包括的な軍縮計画に関する作業部会、この四つの作業部会が設けられておるわけでございます。  先生お尋ねの進捗状況でございますけれども、率直に申し上げましてこういった軍縮、ことに先生御指摘の核競争の恐しさ、それからもう一つは、これは実はかなり補足的な理由でございますけれども、世界じゅうで軍備にどのくらいの金が使われておるか。これは実は昨年、国連が委嘱しました専門家の研究があるわけでございますけれども、それによりますと大変な金が使われておるのです。一分間に百万ドルとかいう数字が上がっておりますが、いずれにしましても非常な金が使われておる。  そういうようなことから軍縮の必要性は恐らくだれしもが痛感しておることだろうと思いますけれども、他方、国家間の不信といいますか相互信頼がないということから、ジュネーブでの軍縮委員会もなかなか進まない。ことに国際情勢も厳しいということで非常に困難をきわめておったわけでございますけれども、今回の軍縮委員会を通じましてあるいは一つの成果と言えるのかもわかりませんのは、実は核実験の全面禁止の点でございます。  日本は、核競争の歯どめをかけるという一つの方法で核実験の全面禁止を過去数年唱えてきたわけでございます。そのためにはどうやってそれを条約化し、取り決めを結んでいくのかということから、このジュネーブの軍縮委員会で作業部会をつくろうということを前々から提案してきたわけでございます。ところが現実にはなかなかそれは難航をきわめました。しかし日本はそれにもこりずに繰り返し繰り返しこの提案をしてきたわけでございますが、今回やっと、たまたま軍縮代表部の日本大使が議長をしていたときであったのでございますけれども、最後の段階で米ソが作業部会を設置することに合意をしまして、昨日二十一日にこの軍縮委員会が終了したわけでございます。  しかし、まだこれは作業部会の設置でございますから、今後どうやって憲章なりその条約を守っていくようにさせるのか、政治的な問題に加えましてそういった技術的な問題も非常に多くありますので、まだまだ予断を許さない状況でございますけれども、一つの進歩ではあった、こういうふうに思っております。
  289. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いま唯一の進歩と言えるんじゃないかというのが、結局核実験禁止についての作業部会ができたというぐらいのことで、他は推して知るべしというお話のようです。  そこでもう一度、特に核の問題にしぼってお尋ねしたいと思うのですけれども、核兵器の禁止の問題についてどうしてさっぱり話が進まないのか、どの辺に問題があるのか、もう一遍御説明いただきたい。
  290. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私は、核兵器の禁止の問題につきましてなかなか話が進まない最大の理由というのは、やはり国家の間の相互の不信という問題であろうと思います。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕 つまりどうやって条約をつくり、それが守られているかどうか、その検証の問題、そういうようなことにあるのではないかと思っております。
  291. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私どもが聞いているところでは、核兵器の保有大国である米ソがまず交渉してからということになったけれども、結局それも八〇年から交渉が中断したきりになっている。そういうことにも端的に象徴されているように、核兵器保有国である米ソがこういう核兵器禁止などについて全く取り組む熱意を見せないというところに一番の問題があるというふうに聞いているのですが、そうでしょうか。
  292. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 核大国というのは米ソ中心でございますから、結局米ソがお互いに不信感がある、こういうようなところから交渉自身なかなか進まない。たとえば先ほども申し上げましたように、全面的な地下実験、核実験の禁止の作業部会、やっと創立にこぎつけたわけでございますけれども、なかなかむずかしい状況にあると私は思います。  そこで、私どもというか非核兵器国、ことに日本なんかが中心になりまして、米ソに対してこういうことを訴えていく責務がことに日本にはあるか、そういうふうに考えております。
  293. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いまあなたが日本の役割りに言及されたことに、私は全く賛成なわけであります。唯一の被爆国であり、また平和憲法を持ち、かつ非核三原則を国是とするわが国が積極的な役割りを果たさなければならないと思うのですけれども、その点で具体的にお尋ねをしたいと思うのは、それではいままでにどういうような役割り、努力を行ってきたかということですね。国連では日本はしばしばアメリカの投票機械などというような批評をされたりするほどアメリカと共同歩調をとっているわけですけれども、核問題では態度、立場というのは決定的に違わなければならぬはずだと私は思うのです。一方は世界最大の核大国、そして世界戦略の武器としてそれをいつも振りかざしている国、日本はいま申し上げたように唯一の被爆国、余りにも立場が違うわけですね。日本が具体的にどういうような努力、役割りを果たしているでしょうか。
  294. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私ども兵器の究極的な廃絶、これが目標であるわけでございますが、その前段階あるいは前々段階といたしまして、具体的な点からとにかく究極的な核廃絶に向かって進んでいきたいという第一歩としまして、とにかく核実験というのをやめれば、さっき申し上げた核兵器の競争停止あるいは縮小等につながるのではないかということから、とりあえず核実験を全部やめよう、こういうことを先ほど申し上げたように繰り返し訴えてきたわけでございます。これにはなかなか核兵器国はそう簡単にいかないということで非常に長い時間がすでにかかって、先ほど申したように、繰り返しになりますけれども、やっと作業部会の設立にこぎつけたわけでございますけれども、今後はこの作業部会を通じまして、日本は一刻も早く核実験の全面停止に至るように努力してまいりたい、こういうふうに思っております。
  295. 小沢和秋

    小沢(和)委員 ジュネーブでの国際交渉委員会の中でそういうような努力をしたということは、それ自体としてはわかりましたけれども、国際連合という全体の舞台の中で日本がどういう努力をしてきたか。最近よく言われることですけれども、ここ十年ぐらいの間に、かつては核兵器の禁止に日本が積極的に賛成しておったものが棄権に回り、近ごろでは核兵器の禁止そのものに反対の意思表示をしたこともある。むしろそういう方向が最近ずっと強まってきている。こういう点でも、むしろ唯一の被爆国という立場から、この点でもアメリカに追随するような傾向は非常に強まっているのではないかという印象を私などは持つわけですけれども、その点いかがでしょうか。
  296. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先ほど申し上げました核実験の禁止につきましては、これはジュネーブが交渉機関でございますから当然ジュネーブでそういうことを言ったわけでございますけれども、同時に国連総会におきましてもこれは繰り返し言っておりまして、今度の六月の総理の演説、これは具体的な中身につきましては目下検討中でございますけれども、ここにおいても繰り返し総理の口から核実験の禁止を強く訴えていただきたい、こういうふうに考えております。  それから第二番目の先生御質問の国連の決議案、核不使用、核を使わないという決議案でございますが、これにつきまして日本政府が過去十年、あるいは二十年ぐらいでございますけれども、投票態度が変わっているじゃないか、こういう点でございますが、この投票態度が変わりましたのは、実は決議案の中身というのがある段階で非常に変わってきておる点が一つあるわけでございます。もう一つは、そのときどきの国際情勢、こういうようなことから変わってきたわけでございます。  しかしながら、日本政府の基本的な態度自身は全く同一でございまして、核兵器は究極的には廃絶されなければいけない、そのためには実効ある措置を積み上げていく必要がある、こういうふうな態度は一貫して日本政府がとってきている態度でございます。
  297. 小沢和秋

    小沢(和)委員 先日私は外務省発行の「軍縮問題と日本」というパンフレットをいただいたのです。この中に「わが国の基本的な考え方」という項がございますが、これを見ますと、「軍備管理・軍縮に積極的に取り組んでいくことは、わが国の平和外交の重要な一環」、特に核軍縮を最優先課題というふうに書いてある。このことは結構なんですけれども、同時に同じ部分に「国際の平和と安全が関係国間の力の均衡によって大きく支えられているという現実は認めざるを得ません。」というくだりもあるわけです。これはいわゆる米ソの核兵器の力の均衡が平和を守っているという認識だと思うのですけれども、これを現実として受け入れる限り、核軍縮への取り組みというのはどうしても大きく制約されてこざるを得ないのじゃないかと思うのですね。  実際この力の均衡という論理がどういうふうな作用を国際社会の中で果たしているか。いまレーガンは、アメリカはソ連より核兵器で立ちおくれているから均衡を取り戻さなければ核軍縮に応じられないと言って、核軍拡を進めておりますし、ソ連のブレジネフの方は、アメリカがせっかく成立している核兵器均衡を壊すような増強をやるからと言って、これも自国の核軍拡を正当化しているわけですね。核兵器のこういう均衡論というのは、結局のところ無限の核軍拡の論理にならざるを得ないのじゃないかと思うのです。日本がこれを認めたのでは核軍縮に積極的な役割りを果たすことはできないんじゃないでしょうか。
  298. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私どもは、現在の国際社会というか国際政治の枠組みが力の均衡によって維持されておるということは認めざるを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、この均衡レベルがどんどん上に上がっていくことは、先生御指摘のとおり非常に危険な状況でございます。したがって、その均衡レベルを下に下げていかなければいかぬ。縮小均衡という言葉がいいのかどうか、あれでございますけれども均衡レベルを下に下げるべきだということで、その均衡レベルを下げるための軍備管理なりあるいは軍縮というものが必要であろうか、こういうふうに考えております。私は、それは非常にむずかしいあれがあるわけでございますけれども、一歩ずつやっていくことは可能であろう、こういうふうに考えております。
  299. 小沢和秋

    小沢(和)委員 さっき私はワルトハイム報告を読んだというふうに申し上げたんですが、その中で「抑止の過程を通じての世界の平和、安定、均衡の維持という概念は、おそらく、存在するもっとも危険な集団的誤謬である。」というふうに断じているわけです。そしてさらに、「平和維持の方法として、核抑止の均衡という概念に信頼をおきつづけるかぎり、将来の展望はいつまでも暗く、脅威にみちたままであり、この展望の基礎となっている壊れやすい仮定と同じように不確実なままにとどまるであろう。」と警告をしているわけであります。  ここに述べられているとおり、力の均衡という立場に立つ限り核軍拡競争の重圧が世界じゅううにのしかかって、世界じゅうの国民の生活が軍備のために犠牲にされるだけでなく、結局は人類破滅の核戦争に突き進まざるを得ないんじゃないかと私は思うのです。いままでこういうふうに軍拡競争が起こって、最後に戦争にまで行き着かなかった例はないと私は思うのです。  いまあなたは縮小均衡の道を一生懸命探っているというお話なんですけれども、こういう核軍拡競争が近い将来軍縮へと転換するような可能性はあなたはどういうところに発見しておられるわけですか。そういうことはないんじゃないですか。
  300. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生おっしゃったように、確かにレベルを下げるということは非常にむずかしいことだろうと思っております。しかしながら、レベルを下げていく努力をしなければいかぬということで、先ほど申しましたように、全面核実験の禁止であるとかあるいはそれに続きまして貯蔵の禁止とか、そういったような実効的な措置を一歩一歩とることによって可能であると思いますし、それを追求していかなければいけない、私はこういうふうに考えております。
  301. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、いまあなたが言われるような縮小均衡、核軍縮の方向に全体として向かわせていくのは結局のところ世論の力ではないかと思うのです。ワルトハイムのこの報告の中でも、そういう強力な世論の創出ということを強調しているわけです。  御存じのとおり、いまわが国でも核戦争の脅威に対する国民の不安が非常に高まってきて、署名運動などでも核禁止の署名が千数百万集まったとか、広島に二十万の人が結集したとかいうような状態になってきておりますし、ヨーロッパなどでも核配備反対の史上空前の大集会があちらでもこちらでも行われるようになって、このことが米ソ両核大国の態度にも、若干だけれどもやはり影響を与えていると思うのです。  こういうような国際世論をもっともっと大きく盛り上げていくことが米ソ両大国あるいは核保有国に対していまの軍拡競争にブレーキをかける決定的な力じゃなかろうか、日本の政府もそういう大きな国際世論を巻き起こす一つとして行動していくことが必要じゃなかろうかと私は考えるのですが、その点はどうお考えですか。
  302. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 いま先生御指摘のとおり、軍縮に向かいます国際世論が非常に大切なことは、第一回の軍縮特別総会のあの最終宣言にも入っておるわけでございます。鈴木総理は、第二回軍縮特別総会に出席するに当たりましては、市民団体を含めて国民の皆さん方の声を聞いて特別総会に向かいたい、こういうことをすでに言われておりますけれども、私どもも世論というものが軍縮の原動力といいますか、理想主義というのが原動力であるということはそのとおりだと思います。しかし、それを踏まえて、いかにして現実的に実効的な軍縮を進めるかということを私どもとしては探求してまいりたい、こういうふうに考えております。
  303. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、こういう国際世論を代表する形で、唯一の被爆国日本の総理大臣、鈴木首相が第二回国連軍縮総会で発言をしてもらいたいと考えているわけです。  ところが、最近鈴木首相は、アメリカと同一歩調でこの第二回国連軍縮総会に臨むというような趣旨の発言をしたというように私伝え聞いているのですけれども、先ほどから申し上げているとおり、アメリカと日本とはこの核問題については決定的に立場が違わなきゃならぬはずだと思うのですね。これはアメリカと同一歩調というふうに発言などしておらないというなら、それはそれで結構なんですけれども、私は、こういうことでは幾ら核軍縮を呼びかけたとしても、もう一方の相手であるソ連などは初めから耳を傾けるはずはないのじゃないかと思うのですが、そういうことは言っておりませんか。
  304. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私の承知する限りでは、そういうことは承知しておりません。
  305. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それじゃ、国連軍縮総会に臨むに当たって基本的な態度というようなことについてすでにあちこちで発言があっているのじゃないですか。その点、どういうことを言っておられますか。
  306. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私から申し上げるのもいかがかと思いますけれども、ことに核軍縮の重要性、それから、申し上げましたような国際状況等々を踏まえ、かつ日本の特殊性、これは被爆体験あるいは平和憲法、非核三原則、こういうことを踏まえまして日本独自の立場で国連軍縮特別総会に臨みたい、こういうふうに私ども事務レベルでは検討しておるところでございます。
  307. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そうでなくちゃいかぬと思うのですね。私は、首相が今度どういうことを訴えるべきかということを私なりにも考えるわけです。核兵器被害がどんなに悲惨なものであるかということを改めて政府の立場で訴えていただきたいし、また、ただ総会などで発言するだけでなく、これを機会に政府として、映画とかパンフとかパネル展とか、いろいろな手段があると思うのですが、全世界に広島、長崎の被爆の実相を強く訴えてほしいと思うわけです。そして、唯一の被爆国の立場から核兵器の使用全面禁止協定の締結を呼びかけていただきたい。  それからさらに、第一回軍縮総会で園田外務大臣が非核武装地帯の設置を提案しているわけですけれども、日本は非核三原則を国是とするという点ではまさに非核武装地帯そのものではないかと私は思うのです。だから、このわが国の立場を明らかにして国際的な承認と保障を要請すべきじゃないか。いま外務省として首相の演説内容について検討されつつあると思うのですが、いま私が申し上げたような点についてどうお考えでしょうか。
  308. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 まだ具体的な演説の中身というのは検討中でございまして、いかんともちょっとお答えしがたいところがあるのでございます。しかしながら、先ほど私から繰り返し御説明申し上げましたように、核軍縮を中心としてまずその第一歩として核実験の全面的な禁止、核不拡散防止条約体制の強化、それから、これは核とはちょっと違いますけれども、非常に最近恐ろしくなりつつあります化学兵器の禁止、さらにそういったような軍縮から浮いてきますお金を低開発国の人々の生活水準の向上に向けたい、これはいわゆる軍縮と開発という問題であろうかと思いますけれども、そういった点を一応の骨子としまして目下検討中でございます。先生の御意見は十分に拝聴させていただきたいと思います。
  309. 小沢和秋

    小沢(和)委員 外務省への質問はこれで終わって、その締めくくりとして大臣に二点ほどお尋ねをしたいと思うのです。  首相が全世界に対して核軍縮を訴えても、それと矛盾するような政策を日本の国内で進めるのでは、私は世界が信用しないのじゃないかと思うのです。日本がいまアメリカの核戦争政策の一翼を担って急ピッチに軍備の拡大を行って福祉などにしわ寄せをしておる。特にいま問題になっておるように被爆者への手当改善などまで一カ月もおくらせる、こういうようなことでは、これは国際的に核軍縮の説得力がないのじゃないかと思うのです。  それで私は、軍事費を削って福祉の後退分を取り戻すように、厚生大臣として閣議などで強く主張すべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  310. 森下元晴

    森下国務大臣 福祉予算をふやせという御意見はよくわかります。しかしながら、核軍縮の問題とは少し方向が違うような感じでございまして、わが国は御承知のように非核三原則を打ち出しており、またNPT、核不拡散条約にも入っておりますし、批准もすでに終わっておりますから、世界じゅうどこから見ましてもわが国は、軍縮はもちろん、核に対しては、みずから持たない、また持ち込まないというような問題まで含めて、模範たる存在におるわけであります。  ただ、御指摘の日本が中心になって世界に呼びかけて軍縮を叫ぼう、そして平和を守る模範的な国になろう、こういうことは、私は、日本が当然平和国家としてやるべきことである、またイニシアチブをとるべき問題と認識しておりますし、閣僚の一人としてこの点は大いに努力もしてみたい、閣議等でも発言もしてみたい、このように思っておりますけれども、ただ、一つ私は気にかかっている問題がございます。  やはり世界の平和を守るためには、自由の上に平和があるのだ、この認識を持っておりまして、そのためにはどうしても軍縮の世論が世界じゅうから巻き起こってもらわなくてはいけない。何か自由主義国だけそういう問題があって、そうでない国が案外――やっておるかもわかりませんけれども、われわれの耳に入っておらない。そういう意味で何か反米一本やりのようなことではいかぬし、もちろん米ソ両大国、それからお隣の中国も核の開発をやっておりますけれども、NPTには入っておらない。また、この間参りましたフランスも入ってくれておらない。だからまだまだ世界じゅうのそういう大国と言われる国が認識が少ないというような実情もわれわれはよく認識しないといかぬと思います。  要するに、日本は唯一の被爆国でございます。せっかくの軍縮会議もございますから、そういう意味で総理にも大いにわが国の立場を声高らかに訴えてもらいたい。そういうことにおいては御指摘のとおり、私も閣議等で発言をいたしたいと思っております。
  311. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いま大臣は、世界的に見ても日本が最もそういうことを呼びかけ得るような資格のある状態だというふうに言われたのですけれども、いまわが国は世界じゅうでも恐らく防衛費の増加率という点でいったら最大のテンポで伸ばしていっているのじゃないですか。去年遂にその伸びは福祉費を軍事費の方が上回る、そしてことしになったらはるかに上回るような状態になっていってしまっておるわけですね。そして全体としてそういう軍備の拡大というのはアメリカとの約束に基づいて、広い意味でのアメリカの世界戦略の一翼をちゃんと担わされるような、P3Cとかを持ってやらされるような状況になってきている。私はこれは決して模範的な状態だとは言えないと思うのです。しかし時間がありませんから余り論争はしません。  最後にもう一点お尋ねをしたいと思うのは、全世界に向かってこういう核軍縮を唱え、広島や長崎の惨状を訴えながら、一方では、教科書の検定で核兵器被害について書いた部分を削らせたり、あるいは最近も、自治体議会が核兵器廃止の決議をするのを慎重にと言ってブレーキをかけたりしている。こういうようなことが諸外国に伝わったら、私はこれもまた世界じゅうの不信を買うのではないかと思うのです。大臣も閣僚の一人として、こういう世界じゅうから不信を買うような行為についてはしないようにということを閣議などで強力に主張していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  312. 森下元晴

    森下国務大臣 人道的な立場から訴えるのはいいと思いますけれども、いわゆる戦略的またイデオロギー的にこの運動が利用されることは私は感心しない。やはり純粋な人道的立場からこの運動を続けるべきである。そういう観点に立ってやっていきたい、このように思っております。
  313. 小沢和秋

    小沢(和)委員 終わります。      ――――◇―――――
  314. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  高齢者に関する基本問題小委員会において、老人介護に関する問題調査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願うことといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  315. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る二十七日火曜日正午から理事会、午後零時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会