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川本委員 私はまだそこまで聞いていないのですがね。先に
答弁をいただいてあれですが。
私は、明治以来今日まで一貫してわが国の
政府がとってきたいわゆる強制隔離といいますか、そういうらい予防のあり方、らい予防法、それが今日、偏見や差別を大変助長する役割りを果たしてきておると思うわけです。
世界の国々でもいろいろ法制化されておりますけれども、ノルウェーなんかはそういう強制隔離の政策をとらずに、完全にいわゆる撲滅する段階まで来ておる。わが国においては、当時いろいろな
状況があったとは思いますけれども、今日すでに、先ほどお話しのように、新薬が開発された中で、そんな後遺症が残るようなところまでいかなくても外来で治療をして完全に治るというような状態になっているにもかかわらず、現在
法律はそのまま強制隔離方式をとっておるわけです。私はこれは憲法違反だと思うわけです。
憲法第十一条には「國民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」こういう規定があることは申し上げるまでもないと思うのですが、さらに憲法第十三条では「すべて國民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に封ずる國民の権利については、公共の
福祉に反しない限り、
立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」と明記されておるわけです。私は、この憲法の崇高な
精神をハンセン氏病の
患者の人たちの上に一日も早く実現しなければいけないと思うわけです。現在ハンセン氏病の
患者の方々には、まだこの憲法の理念すら十分行き渡っていないんじゃないか。わが国の
行政の中には、このハンセン氏病
患者の基本的人権を踏みにじった上に今日の予防法が制定されておるんじゃないかと思うわけです。
御承知のように、最近新聞やテレビで報じられておりますように、アメリカやEC諸国との貿易摩擦とかいろいろ言われておりますけれども、現在わが国は、もう世界で第二位の経済大国だと言われておるわけです。また、これは外国に言われておるだけじゃなしに、鈴木内閣も、わが国の
政府自身もそのように認めておるのじゃないですか。そういう中で、世界で第二番目の経済大国にまで発展をしてきた日本、そして最近は、御承知のように後進国の援助だとかあるいは極貧国への援助だとか難民の救済とかいうことで、日本の占める役割りというものもやはり国際的にはだんだん大きくなってきておる。また、この間から中国残留孤児の肉親捜し等をやっていただいておりますけれども、そういうことでいろいろいままで戦後の問題を
政府は取り扱って一生懸命やってきておりますけれども、そういう中で一つ忘れられておるのは、私はハンセン氏病の
患者じゃないかと思うわけです。戦前の
法律そのままで、戦後二十八年に現在の予防法は改正されておりますけれども、その中を貫く
精神そのものはいわゆる強制隔離そのものであります。そういう中でいままでハンセン氏病
患者の基本的人権が踏みにじられていて、これに
国民は素知らぬふりをしておる。差別と偏見に満ち満ちた
行政、それをあたりまえのことのようにやってきておる。こういうところを私たちはひとつ一日も早く直していかなければ、世界の先進国と言えぬのじゃないかと私は思うわけです。そういう意味において、ひとつきょうはいろいろ問題を
指摘しながら私はお聞きをしていきたいと思っておるわけです。
そこでまず冒頭にお聞きしたいのは、現在のらい予防法というこの
昭和二十八年に改正された
法律、これは形骸化している、死文化している、こう言われておるわけですけれども、現に
厚生省はどのように考えていますか。
私は、この間国立療養所の松丘保養園の園長さんの荒川
先生の論文を手に入れました。この論文の中でもはっきり書かれておるのですけれども、「
昭和三十年にはらい研究協議会が誕生し、らい療養所の医務課長、事務長、
患者等の各種研究会が発足し、
厚生省は、これらの研究成果より、その方針を取り、予防法を百八十度逆
方向に空洞化する運営を
実施して今日に至ったことは周知の通りである。」こう書いてある。これは療養所の園長さんですよ。現在のこの予防法は空洞化しておる、死文化しておるということを
厚生省は認めますか。