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1982-02-25 第96回国会 衆議院 災害対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十五日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 川俣健二郎君    理事 天野 光晴君 理事 工藤  巖君    理事 佐藤  隆君 理事 渡辺 秀央君    理事 池端 清一君 理事 木島喜兵衞君    理事 柴田  弘君 理事 横手 文雄君       植竹 繁雄君    大石 千八君       木村 守男君    佐野 嘉吉君       桜井  新君    笹山 登生君       田原  隆君    田村 良平君       高鳥  修君    高橋 辰夫君       近岡理一郎君    東家 嘉幸君      三ツ林弥太郎君    伊賀 定盛君       田中 恒利君    福岡 義登君       草野  威君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    渡辺  朗君       野間 友一君    林  百郎君       石原健太郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国土庁長官) 松野 幸泰君  出席政府委員         国土庁長官官房         審議官     川俣 芳郎君         国土庁地方振興         局長      柴田 啓次君         農林水産大臣官         房審議官    大坪 敏男君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   仁平 圀雄君         科学技術庁研究         調整局生活科学         技術課長    倉持 哲士君         法務省民事局参         事官      濱崎 恭生君         法務省刑事局刑         事課長     飛田 清弘君         国税庁徴収部徴         収課長     山本 市蔵君         林野庁指導部造         林課長     谷口 純平君         運輸大臣官房観         光部整備課長  高橋 克彦君         運輸省航空局監         理部監督課長  土坂 泰敏君         運輸省航空局技         術部運航課長  石井 俊一君         気象庁予報部長         期予報課長   菊池 幸雄君         労働省労政局労         働法規課長   齋藤 邦彦君         労働省労働基準         局監督課長   岡部 晃三君         建設省河川局砂         防部砂防課長  近森 藤夫君         建設省河川局砂         防部傾斜地保全         課長      関戸 研一君         消防庁消防課長 山越 芳男君         消防庁予防救         急課長     荻野 清士君     ――――――――――――― 委員の異動 昭和五十六年十二月二十五日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     田中 恒利君   渡辺 三郎君     福岡 義登昭和五十七年一月二十五日  辞任         補欠選任   瓦   力君     大石 千八君   毛利 松平君     稲垣 実男君 二月二十五日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     石原健太郎君 同日  辞任         補欠選任   石原健太郎君     阿部 昭吾君 同日  理事藤田高敏昭和五十六年十二月二十五日委  員辞任につき、その補欠として木島喜兵衞君が  理事に当選した。     ――――――――――――― 二月二十四日  台風第十五号による茨城県利根町の災害対策等  に関する陳情書  (第一〇四号)  災害対策促進に関する陳情書  (第一〇五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  昭和五十七年度防災計画及び災害復旧計画等の  概要について説明聴取  災害対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 川俣健二郎

    川俣委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事藤田高敏君が委員辞任されましたことに伴いまして、理事が一名欠員になっております。その補欠選任につきましては、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 川俣健二郎

    川俣委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長木島喜兵衞君を理事に指名いたします。(拍手)      ————◇—————
  4. 川俣健二郎

    川俣委員長 災害対策に関する件について調査を進めます。  まず、昭和五十七年度防災計画及び災害復旧計画等概要につきまして、政府から説明を聴取いたします。松野国土庁長官
  5. 松野幸泰

    松野国務大臣 昭和五十七年度における防災計画及び災害復旧計画等概要について御説明申し上げます。  わが国は、その自然的条件から、台風豪雨豪雪地震等による災害を受けやすく、また、社会経済の発展に伴い災害の態様も複雑多様化してきており、これらの変化に即応して、強力な施策を推進する必要があります。  政府といたしましては、防災基本計画に基づき、防災に関する科学技術研究推進災害予防強化国土保全推進、迅速適切な災害復旧実施等重点を置いて、その推進を図っているところであります。  特に、災害復旧につきましては、昨年は、豪雪梅雨前線豪雨、北海道における豪雨台風十五号等災害が多発し、その被害は例年に比して多額に上っております。これらの災害に係る復旧事業については、その促進を図ってまいります。  地震対策につきましては、東海地震対策として、地震防災対策強化地域における財政特別措置法に基づき、避難地避難路整備等地震対策緊急整備事業の円滑な実施を図るとともに、関係税制整備を行うなど、その対策を一層推進いたします。  さらに、災害応急対策の充実、都市防災性強化等大都市震災対策の一層の推進を図るため、南関東地域を対象として地震被害想定調査を進めてまいります。  また、災害対策を一層強力に推進するため、新たに国土庁防災業務課を、気象庁地震予知情報課設置することとしております。  昭和五十七年度においては、これらの災害対策の総合的な推進を図るため、総額二兆五百二十億円の予算を計上しております。  その内訳を申し上げますと、まず、科学技術研究につきましては、地震火山噴火予知及び雪害防除に関する研究並びに各種災害未然防止及び被害拡大防止に関する研究等推進することとし、そのため、予算額二百八十四億円を予定しております。  次に、災害予防につきましては、気象及び地震に係る観測施設消防施設通信施設その他の防災施設設備整備を図り、あわせて都市防災対策事業等推進するとともに、防災に関する教育訓練に努めることとし、そのため予算額三千百三十四億円を予定しております。  第三に、防災基本ともいうべき国土保全につきましては、長期計画に基づき、治山治水事業海岸保全事業農地防災事業等推進を図ることとし、そのため予算額一兆二千百八十八億円を予定しております。特に、治山治水事業については、昭和五十七年度から第六次五カ年計画を発足させることとしております。  最後に、災害復旧等につきましては、不幸にして災害が発生した場合に、災害の実情に応じて救助活動等必要な応急対策を講ずるほか、迅速かつ適切な災害復旧を図り、さらに、被災者に対する必要な金融措置を講ずることにより、復旧資金の調達の円滑化等を図ることとし、そのため予算額四千九百十四億円を予定しております。  これらの政府予算のほか、公社公庫等政府関係機関におきましても、それぞれ所要の予算措置を講じているところであります。  以上、昭和五十七年度における防災計画及び災害復旧計画等概要を御説明申し上げましたが、昭和五十七年度の防災対策につきましては、各省庁の協力のもとに万全を期してまいる所存でありますので、よろしくお願いいたします。(拍手
  6. 川俣健二郎

    川俣委員長 引き続き、災害関係予算につきまして、政府委員から説明を聴取いたします。川俣審議官
  7. 川俣芳郎

    川俣政府委員 昭和五十七年度の防災計画及び災害復旧計画等概要について補足説明を申し上げます。  お手元に資料を差し上げておりますので、それに従いまして御説明申し上げたいと思います。  まず一ページでございますが、五十七年度の災害関係二十省庁予算合計は二兆五百二十億円余に相なっておりまして、五十六年度の二兆五百四億八千二百万円に比較いたしまして約十五億円の増、ほぼ前年度並みの額が確保されておるところでございます。  防災関係予算は四つのカテゴリーに分かれるわけでございますが、まず第一に科学技術研究関係で、科学技術庁を中心にいたしまして合計で二百八十三億円余でございます。災害予防関係で三千百三十四億円余、国土保全関係で一兆二千百八十八億円余、災害復旧関係で四千九百十三億円余と相なっております。  ここで総括のところで申し上げたいと思いますことは、災害復旧関係についてでありまして、これは当初予算ベースの数字を並べておるわけでございますけれども、御案内のとおり、昭和五十六年中におきましては、台風十五号を初めといたしまして多くの災害が発生したわけでございます。それで、災害復旧進捗度合いと申しますものは、初年度に三割、次年度に五割、三年度で二割ということで、三年度間でこれを実施いたすことになっておりますけれども、災害復旧緊急性にかんがみまして、五十六年度の補正予算におきまして約二千六百億円余の追加がなされており、実質的には五十七年度で執行いたしますものが五十六年度に予算化されておるという事情があることを申し上げさせていただきたいと思います。五十七年度末におきましては、事業の約八割が完了するということに相なっております。  以下、各項目につきまして主な予算の計上の状況を御説明申し上げます。  二ページをお開きいただきます。科学技術研究関係でございますけれども、科学技術庁関係で百九十四億円余、それから、三ページにございますが、新規事業として、通産省関係で断層の活動性調査法標準化に関する研究、それから二つ飛びまして、高圧ガス設備災害防止に関する研究液化石油ガス供給事業安全技術開発、この三項目新規であります。  四ページに参りまして、建設省関係で十九億円余の予算が計上されておりますけれども、新規としては、雪に強い都市づくりに関する総合技術開発建築物防火設計法開発、これらが新規事業でございます。  なお、科学技術研究項目におきましては※印がついておる項目がございますが、これはいわゆる地震予知関係研究開発に要する項目でございまして、それをトータルいたしますと、四ページの表にございますように六十六億円に相なっております。ちなみに申し上げますと、前年度は六十四億円程度でございました。そういったことで、科学技術研究関係で二百八十三億円余が計上されておるところでございます。  次に、五ページ以下に参りまして、災害予防関係でございますが、まず国土庁関係におきまして防災週間行事というものがございます。これは実は現在九月一日に地震防災訓練実施いたしておりますのを拡充いたしまして、週間行事といたしたいと考えておりまして、これが新規事業であります。それから南関東におきますところの被害想定調査、これは昨年度に引き続いて行うものでございますけれども、これも前年度に比較して約一千五百万円の増額と相なっております。国土庁関係新規事業といたしましては、特別災害危険地域における防災計画指針策定調査がございます。  災害予防関係でほかに大きなものとしては、六ページに参りまして、通商産業省の百二十億円がございます。その主なものは、鉱山保安専用機器整備等、あるいは原子力発電施設保安監督指導等経費であります。  七ページに参りまして、海上保安庁関係で五百五十三億円余、巡視船艇、航空機、通信施設等整備に要する経費であります。気象庁関係で百七十四億円余、建設省関係で千九百二十七億円余、この中には三番目の都市災害対策総合評価手法樹立調査等新規事業も含まれておるわけであります。  八ページをお開きいただきますと、消防庁関係が百九十三億円余でございます。この主なものは、消防施設等整備に要する百三十五億円余であります。トータルをいたしまして、災害予防関係が三千百三十四億円余となっておるわけであります。  九ページをお開きいただきますと、国土保全関係がございます。この中で主なものは農林水産省建設省関係でありまして、農林水産省関係で二千六百五十四億円余、治山事業海岸保全事業農地防災事業等がございますが、治山事業関係重点保全地区総合治山事業という新規事業が含まれております。運輸省関係で三百九十一億円余、建設省関係で九千五十二億円余、これは河川事業ダム事業砂防事業等を含むものであります。以上、国土保全関係で一兆二千百八十八億円余と相なっております。  十ページに参りまして、災害復旧等関係で四千九百十三億円余ございますけれども、五十六年災の復旧費の扱いにつきましては先ほど御説明を申し上げたとおりでございます。  最後に、参考資料といたしまして、十一ページに公社公庫等予算概要をお示しいたしております。日本国有鉄道において鉄道構造物改良等五百六十八億円余、日本電信電話公社通信網確保等として九百三十一億円余。以下、農林漁業金融公庫住宅金融公庫日本私学振興財団、これはいずれも融資枠でございまして、農林漁業金融公庫の場合ですと災害復旧資金融資枠住宅金融公庫の場合ですと災害復興住宅資金等融資枠日本私学振興財団については私立学校災害復旧事業に対する融資枠ということでございます。  以上で補足説明を終わらせていただきます。
  8. 川俣健二郎

    川俣委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  9. 川俣健二郎

    川俣委員長 これより災害対策に関する件について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹山登生君。
  10. 笹山登生

    笹山委員 自民党を代表して、今回のホテル・ニュージャパンの問題について若干質問したいと思います。  まずもって、今回犠牲になられた方々の御冥福をお祈りしますとともに、残された御家族の方々に心から哀悼の意を表するものでございます。  この問題についてはすでに地方行政委員会質疑もなされておりますので、それとの重複を避けて、おおむね三つのポイントにしぼって関係各位の御意見を伺いたいと思うわけでございます。  まず第一は、基本的な問題提起をしたいと思いますが、今回の火災は五十五年十一月の川治プリンスホテル以来の大惨事であると同時に、この両者には共通点一つあるわけでございます。といいますのは、経営権移転間もなくの火災であるという点が非常に共通している。すなわち、川治においては四十七年にこれまでの金龍閣小黒太平氏が買収し、その後四十八年、五十五年の増築を経てその火災を引き起こした。一方、今回のホテル・ニュージャパンも、五十四年四月、大日本製糖経営権を手放し、横井英樹氏に引き継がれ、今回の火災を引き起こした。いずれも経営権移転した直後の火災であるというそのことは、私は偶然の一致ではないと思うわけでございます。すなわち、防災上の欠陥のあるホテルが、その防災上のいろいろな負担に耐え得ないで、またその具備ができないままに手放して、それをいわば投資資産として事業家が買収するという、そういうパターンが両者事故の根底にあるのではないかと予想をするわけでございます。  そこで、まず第一に消防庁にお伺いしたいわけですが、今回に限らず、このような経営権移転したいろいろなホテル等があるわけですが、その経営権移転した時点においての特別査察のようなものが果たしてなされているものかどうか。また、このホテル・ニュージャパンの場合、いわば実態——法人の名前はホテル・ニュージャパンでありますけれども、主要株主がかわった、実質経営権がかわったということですが、その移転時にどのような措置がなされたのか、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  11. 荻野清士

    荻野説明員 お答えを申し上げます。  まず、ホテル火災、特に川治と今回の惨事共通点として御指摘がございました経営権交代という点でございますが、確かに御指摘のとおり、両ホテルはそういった背景が指摘されるわけでございます。  そこで、消防当局として、こういったいわゆるトップの交代に即応しての予防査察状況いかんという点でございますが、今回のホテル・ニュージャパンにつきましては、横井社長経営権実質移行いたしましたのが五十四年の五月でございますけれども、その際におきまして消防当局は、前経営者当時からスプリンクラーの未設置という大きな問題を抱えておりましたので、それにつきまして新経営者としてどういう改修計画を持っているか、新しい計画を樹立するように指示をいたしておるところでございます。
  12. 笹山登生

    笹山委員 それで、今回の事故国際観光ホテルでの事故であります。川治の場合は国際観光ホテルでありませんので、客観的に見ればそれよりは経営体質がしっかりしているはずでございます。しかし、今回の事故を見ますと、防火体制にしましても、川治の場合と大して変わらないお粗末ぶりだということが言えるかと思います。  それで、運輸省にちょっとお伺いしたいのですけれども、国際観光ホテル金看板というものが必ずしもこれから信用できなくなる状況にあるのじゃないか。実際経営のサイドから言えば、この国際観光ホテルという金看板営業一つのブランド化している。しかも、この金看板は、経営移転とかそういう承継にかかわらず、更改なしに移転される。いわば一度登録されれば、それは極端に言えば未来永劫続くということでございます。整備法十一条に登録抹消条項というのが一応あるわけでございますけれども、いままでにこの登録抹消ケースがあったかと言えば、これは全然ないわけでございます。ですから、一応未来永劫そういうような登録制度であるということが言えるのではないか。  それともう一つは、整備法十一条に登録抹消条項があるわけでありますけれども、防災に関する事項はと言えば、別表第一の避難階段、そして照明に関する規定のみでございます。この辺、防災に関する規定というものは、整備法上非常に不備な点があるのではないか。それと、先ほども申し上げましたように、一たん登録されたら実質未来永劫のものであって、経営権移転があろうとなかろうと承継されていく、いわば登録がえがなされない。その辺、運輸省としてどう考えるか、お伺いしたいと思います。
  13. 高橋克彦

    高橋説明員 御説明申し上げます。  先生御指摘のとおり、国際観光ホテル整備法では、一たん登録されますと、営業廃止届が出されない限り登録は継続させるたてまえになっております。登録更新制度というものは、登録を継続させる要件が非常に大きく変わる可能性が非常に大きいというものにつきまして、一定の期間ごとにチェックするために行われているのが、現在のわが国法制度と考えております。ホテル登録基本的には施設について登録するものでございまして、その施設基本的な部分がそう大きくしょっちゅう変化するものではございませんし、また、その増改築等施設の変更が行われましたときにはその都度届け出をさせるということもやっておりますので、更新制度必要性というのは乏しいのではないかというふうには考えておりますけれども、今回の事故にかんがみまして、今後運輸省としてどういう安全対策登録ホテルにとっていかなければいけないかということについて幅広く検討してはまいりたいというふうに考えております。
  14. 笹山登生

    笹山委員 消防庁関係査察にしましても、国際観光ホテル登録につきましても経営権移転があるにかかわらず大したことをやられてはいない。これは非常に重大な問題でございますので、この事故を契機にして、一層の改善を望みたいというふうに思うわけでございます。  それと、第五条適用の問題につきましては、先日の地行委員会での質疑でかなり十分な審議がなされましたので、ここではごく簡単に触れたいと思いますが、法十七条一項のいわば消防施設等設置についての違反があった場合は、消防庁解釈によれば、十七条の四の命令によってその是正が図られるのが原則であって、法第五条の命令によって使用停止を命ずることは妥当ではないという見解が主流のように思われますが、その辺、いかがでございましょう。
  15. 荻野清士

    荻野説明員 消防法の体系は、いま御指摘がございましたように、まず設備設置につきましては法第十七条の四ということで措置命令を発する。それに従わない場合は六カ月以下の懲役または二十万円以下の罰金、こういうふうに相なっております。  一方、法第五条でございますが、使用禁止使用停止、この命令につきましては、御案内のとおり、火災発生危険ないしは発生いたしましたならば人命危険があると消防庁が認めた場合に発動するわけでございまして、それに違反をいたしますと一段高い一年以下の懲役、三十万円以下の罰金、こういうふうになっておるわけでございます。  したがいまして、立法のその並びの関係からも、いわゆる設備の不備に対しまして十七条の四の発動を一般的にまずやるべきではないかという解釈がされておるわけでございますが、具体ケースにおきまして、法第五条の要件にもかなう、いわゆる十七条の四では間に合わないというふうな場合も十分想定されるわけでございまして、まず十七条の四をというのは、いわゆる一般的な解釈であるというふうに考えております。
  16. 笹山登生

    笹山委員 ここで甲府地裁判例昭和五十年十二月二十六日にこういうことがあるのですけれども、法十七条一項の違反のほかに、建築基準法違反防火管理関係違反避難管理関係違反等の事実が併存する場合は第五条が適用される、そういうような判例もあるわけでございますが、このように、こういう事態が発生しておる現状から考えて、そろそろ法第五条適用の範囲を抽象的でなくて明確にすべきじゃないか。極端に言えば、いまの第五条適用は、言い方は悪いですけれども、消防庁なり消防署長の胸先三寸で決まってしまうような事態も考えられるわけでございます。そうであれば地域的に五条の適用が件数的にばらつきを生む可能性もあるわけでございますので、その辺、十七条の四との兼ね合いもございますけれども、その兼ね合いを前提にした上での前向きの考え方を検討していただきたいと思いますが、その辺について御見解をお伺いしたいと思います。
  17. 荻野清士

    荻野説明員 確かに御指摘がございましたように、第五条につきましては、いわゆる抽象的な危険性のみでは足りない、具体的な危険性の存在を要件とするというのが通常の解釈でございますけれども、御指摘のございましたように、現地の消防機関におきまして、しからば具体の事例が具体危険性ありと認定できるかどうかという点で、運用面判断等に苦慮するケースも予想されるわけでございます。したがいまして、私ども自治省消防庁といたしましては、全国の消防機関とともどもにその運用面につきまして今後十分検討をし、要件該当の場合につきましては、ちゅうちょなく適正な措置を講ずるということに努めてまいりたいと存じます。
  18. 笹山登生

    笹山委員 もうそういう甘い事態ではないと思うのです。そういう甘い事態でないということを認識して、ひとつ抜本的な取り組み方をお願いしたいというふうに思うわけでございます。  時間もございませんので、先に進みます。  警視庁にお伺いしますが、新聞報道によりますと、二十三日に曽根総監がこういう発言をしている。経営者刑事責任は追及さるべきだ、そういうような報じ方をしているわけですが、それは事実かどうか、また、警察の現段階での調査状況、これはどういうふうになっているのか、その辺をお伺いしたい。
  19. 仁平圀雄

    ○仁平説明員 警視庁におきましては、初動措置に引き続きまして、特別捜査本部を設置し、被害実態の把握とか、出火場所、出火原因、出火行為者の究明、火災発生時における避難誘導等の措置及びそれらに対する平素の教養訓練、さらに防火設備等の設置管理状況の実態解明等々を重点に、現場検証、関係者からの事情聴取等、所要の捜査を進めておる段階でございまして、現在までの捜査の結果、出火場所あるいは出火原因といったことにつきましては、ほぼ推定できる段階に来ておるわけでございますし、火災発生時の措置につきましても、適正を欠く面があったということが認められる状況でございます。さらに防火等の設備設置管理につきましても、いろいろと不備、欠陥が明らかになりつつある段階でございます。  しかし、現在まだいろいろと捜査を進めている段階でございまして、具体的にその内容を申し上げるわけにはまいらないわけでございますが、いずれにいたしましても、警察といたしましては、できるだけ早く、この事故関係刑事責任の追及に当たりましては、行為者だけでなく、管理者、つまりホテル経営に関する責任を有する者すべてを対象にいたしまして刑事責任の有無を明らかにしてまいりたいということで捜査を進めている状況でございます。
  20. 笹山登生

    笹山委員 いままで見たように、これまで人災だ、人災だ、人間的な側面が必要だと言いますけれども、その人間的側面というのは、ごく限られた防火管理者とか、そういう消防施設に付随するような人的側面を重視されてきたようなきらいがあるわけでございますけれども、私は、むしろ経営の中身とか経営者の資質というものまでも立ち入るような、そこが一つの遠因になっているような面もありますので、その辺をひとつカバーし得るような体制というものをつくっていただきたい。  特に消防法の中で、危険物等の流出に関しては三十九条の二、三において明記してあって、同時に両罰規定で四十五条で行為者のほかに法人または人に対しての罰則規定があるということから言いますと、五条ないし十七条と危険物等のそういうものと法体系のアンバランスがあるのではないかというふうに思うわけでございます。  今回は国際観光ホテル火災でありますけれども、それよりもこわいのはビジネスホテル火災であろうかと思います。その辺、ビジネスホテルに対する受け皿を運輸省で考えているようでございますけれども、ただでさえいまは第三次ホテルブームということで、地方都市でも、五万ぐらいの都市でもチェーンホテルブームである。昨年度中のオープンのホテルは四十に上る、五万七千室、チェーンに限ってみても今後三年間に百十七の新規オープンが予想される。いわば素人の方が土地を提供すれば中央のシステムが来る、あなたはすぐオーナーになれますと。そういう安易なホテルのオーナーがふえては非常に困るわけでございまして、いまの防火管理者というのはどうも権原のない防火管理者がいるということで、その辺のネックもあるようでございますが、今回の事件を契機に、むしろ経営者が防火管理者になるぐらいの、あれは講習を二日間ぐらい受ければいいわけでありますから、そのぐらいの徹底した対応をひとつ消防庁の方で検討していかなければ、またこれに続く人災というのはすぐ起こるに決まっている、そう断言してもいいというふうに思うわけでございます。  以上、経営上の問題を終わりまして、第二に構造上の問題でございますが、今回の事故はいわば落第生のホテルでございますので、落第生に卒業試験を課すようなことは、そういう細かいことを指摘するのは時間のむだですからやめるとしまして、一つだけ私は気がかりな点がありましたので、御回答願いたい。  それは、ホテルの現場を見まして気になったのは、ホテルの正面ないしくびれたところ、ロビーの部分、いわば大広間の部分というのがスカートのすそのように広がっているということでございます。このスカート状のものがはしご車の活動に対してかなり影響があるのではないかというような推測をしたわけでございます。ちなみに、昭和四十八年六月十八日の釧路オリエンタルホテル火災におきましても、同様なスカート状の構造になっていたようでありまして、建物の西側部分にしかはしご車が寄りつけなかった。そのため、五階から一名のみ救出するにとどまったという事実があるわけでございます。  それで、消防庁にお伺いしたいわけでございますけれども、はしご車の架梯可能の高さというのは、起立角度というか、そういうものと関係があるわけでございますけれども、ある物の本によりますと、建物から十メートル以上離れますと先端の荷重が百五十キロぐらいに達してしまって、それにリフターの荷重百キロが含まれると、もう人が実質余力五十キロの荷重しかないというような説もあるわけでございます。それが本当かどうかわかりませんけれども、ともかく建物から離れざるを得ないという、そういう邪魔物の部分があればあるほど、はしご車の活動には不便を生ずる。私、飛びおりの分布を見たわけでありますけれども、飛びおりの死亡者に限って言いますと、スカートの部分での飛びおり者がほとんどであります。きのういただきましたので見ましても、非常に多いわけであります。  しからば、はしご車のアクセスはどうかと言いますと、正面は七台ございますけれども、このスカート部分にある消防車は中台でございます。また、北の方ですが、これもやはりスカート部分には一台しかない、南は全くないということで、この辺のひさし等の出っ張りに対する対応といいますか、いまさらひさしを削るわけにいかぬでしょうから、はしごを常設するとか、そういうような対策がとられるべきではないかというふうに思うわけであります。  いまはスカート状のロビーの出っ張りを言ったわけでございますけれども、それに限らず、はしご車のホテルの客室へのアクセスといいますか、そういうものについてもう少し真剣に考える必要があるのではないか、これは私自身の私見でございますけれども、その辺、消防庁の御意見をお伺いしたいと思います。
  21. 山越芳男

    ○山越説明員 お答え申し上げます。  ホテル・ニュージャパン火災におきましては、通報がおくれたり、火の回りが早かったというようなことがございまして、消防隊が現地に到着いたしました三時十四分の時点におきましては、九階部分で約千平方メートル程度に火面が広がっておったという状況でございました。それで、消防隊といたしましては、全体として百二十三台出動いたしまして、うち、御指摘がございましたように、はしご車が十二台出動いたしております。それぞれ玄関といいますか、正面の道路側から七台、それから西側の道路とか駐車場側から四台のはしご車、合計いたしまして十一台を架梯いたしまして、人命救出と消火活動に当たったわけでございますが、特に御指摘ございましたスカート部といいますか、正面玄関の側に五階部分と三階部分の陸屋根がございまして、この部分につきましては、はしご車が九階、十階の部分に近接といいますか、近くは行きましたけれどもくっつけるというわけにはいかなかったことは事実でございます。したがいまして、消防活動といたしましては、三階と五階の陸屋根に上りまして、そこから放水をいたしたというような状況でございます。  私ども警防を担当いたしておりますが、消防活動の立場からすれば、それぞれはしご車がうまくつくことが大変結構なわけでございますが、全部の建物がそうではございませんので、消防機関といたしましては、それぞれ個々の建物ごとに警防査察を行いまして、ここはつく、ここはつかない、つかないところについては屋上からロープをどうするかとか、かぎばしごが使えるかとか、非常階段からどう進入していくかとか、それぞれの個々の建物につきまして具体的な警防活動を検討しているわけでございます。  以上でございます。
  22. 笹山登生

    笹山委員 四十メートルもあるはしご車を出動させて、八階、九階の客も助けられないようなみっともない体制というのは、ぜひとも改めていただきたいと思うわけでございます。  次に、これはちょっとマクロ的な問題になりますけれども、今回の被害者の中には、台湾、ハワイからの雪祭りツアーですか、そういう外人のパック旅行が入っていたわけでございます。その方が被害に遭われたわけでございますけれども、このパック旅行の問題というのは、旅行業者が安全なホテルか非安全なホテルかを選択する権限といいますか、機会がないわけでございます。皆旅行会社の意のままに、いわばマル適でないホテルに送り込まれる、そういう可能性もあるわけでございます。そこで、この旅行会社の二次責任というものもまた発生することになってくるのではないか、直にはいかないかもわかりませんけれども、そういう事態になってくるのではないかというふうに私は思うわけでございます。  いまの添乗員というのは団体の世話係で、安全のための添乗員ではない。避難誘導するような訓練を受けた添乗員でもない。いわば添乗員に対します安全教育の実施が必要でもあろうと思いますし、また旅行会社の旅行傷害保険の加入も義務づけられる必要があるのではないか。そのような関係でいま旅行業法の改正が進んでいるようでございますけれども、その辺、どのような検討をされているのか、運輸省にお伺いしたいと思います。
  23. 高橋克彦

    高橋説明員 今回の海外からの旅行団の中に、台湾から来られた方がかなり被害に遭っているわけでございますけれども、この方は台湾の旅行業者東南旅行社が主催いたしまして行った旅行でございます。そういうことで、今回の海外の旅行団は、外国の旅行業者との契約に基づきまして来邦したものでございまして、これを日本の旅行業者の東南アジアトラベルセンター、先ほど申し上げました東南旅行社の一〇〇%出資の会社でございますけれども、そこが外国の旅行業者の委託を受けましてホテル等の手配を行っているものでございます。そういうことで、この場合、旅行者との直接の契約関係は外国の旅行業者東南旅行社でございますので、日本の旅行業者の責任が直接問われることはないというふうに考えております。  一般的に、今回のようなホテル側のミスによる事故の損害賠償につきましては、旅行業者は宿泊のサービス提供について手配しているのみでございますので、宿泊サービス提供についての責任を有するホテル側において損害賠償の責任を果たすべきものであるというふうには考えます。  なお、先生の御質問にございました旅行業法の改正との関連でございますけれども、現在進めている旅行業制度の見直しにおきましては、旅行業者が募集して団体旅行を主催する場合で、旅行中に旅行者に生じた損害につきましてホテル等のサービス提供機関の損害賠償額が少ないときには、旅行業者がある程度の額を補てんすることができないかということを検討中でございます。
  24. 笹山登生

    笹山委員 国際観光ホテル、それに旅行業法の問題等に限らず、どうもこれまでの観光ブームの後遺症で、ともすれば観光を助長するための法整備はあるわけでございますけれども、安全なる観光のためのそういうような法整備は非常に不十分であるということも考えられますので、ひとつその辺の抜本的な対策を今後お願いしたい。  あと、細かい問題ですが、二点ほどございますので、時間が許す限り質問いたしたいと思うわけでございます。  一つは、今回のホテル・ニュージャパンは、一般の宿泊客のほかに、これは外国には多くある例でございますけれども、いわば長期滞在の形での事務所が入っている。ところが、この契約を見ますと、どうも賃貸契約というのがなされていない。私、調べたわけでございませんけれども、伺うところによりますとそのようなことも聞かれる。一般客の長期延長として扱われるようだ。そうなりますと、形態上は事務所があってホテルがあるということでございますから、いわば複合用途ビルということでございます。しかし、体裁上はホテルである、そういうあいまいな関係であります。  ここで気になりますのは、複合用途ビルについての防火体制というのは、過去の教訓で非常に整備されているわけでございますけれども、このニュージャパンにおける事務所に対する防火訓練というのは、果たしてどういうふうになっているのか。また、火元責任者というものがどういうふうに決められているのか。こういうような形態はこれからもふえると思うので、ひとつこの機会にその辺の消防上の問題というのも明確にしてほしい。特に防火設備設置等のような問題があった場合、占有面積がその分だけ借りた事務所は狭隘になるわけでございますから、この借りた事務所の方々とのトラブルもなきにしもあらずということで、その辺、ひとつはっきりした御見解をここらで示していただきたいというふうに思うわけでございます。
  25. 荻野清士

    荻野説明員 ホテル・ニュージャパンにつきましては、いわゆる消防法上は(五)項イという旅館、ホテルの用途ということに相なっております。  いま御指摘のございました複合用途防火対象物、すなわち用途が多岐にわたる場合でございますけれども、この場合も二種類ございまして、いわゆる経営者といいますか、消防法上は管理権原者と呼んでおりますが、それが複数にわたっております場合に、一定の場合はいわゆる一つのビルとして運命共同体でございますので、それぞれ自分の権原のあるところの防火管理をちゃんとやるということは当然といたしまして、その上に、ビル全体として共同防火管理を義務づけておるわけでございます。  確かに、今回のホテル・ニュージャパンにつきましては、(五)項イということでホテル・ニュージャパンに管理権原があるというふうに相なっておりますが、もちろん細部の実態については今後調査してみなければわかりませんけれども、同様のケースもございます。そういう共同防火管理体制をどうするかということは一つの課題でございます。しかしながら、今回のように、自分のことすらちゃんとした防火管理をやらないという方に、周りと一緒になってと言いましても、これは不可能でございます。御指摘の点もひっくるめまして、私どもは、まず自分のところの防火管理をきちっとやるということを大前提にして、共同防火管理体制の充実に努力をしてまいりたいというふうに存じます。
  26. 笹山登生

    笹山委員 では、時間もありませんので、最後に一点だけ、警備委託の問題をちょっとお伺いしたい。  今回の場合、警備会社への委託というのは一階、地下ですか、部分的に委託していたようでございます。逆に言えば、部分委託してあったがために、警備の範囲を果たして従業員がどの程度承知していたかということは非常に疑問なわけでございます。勘ぐって言えば、どっちも中途半端な委託であるがために、双方もたれ合いというか、双方依存し合い、そういうような無責任体制というのもあり得ることでございまして、こういう体制をどうするのかということが今後の問題になろうかと思います。最近できたホテルでは、夜間の従業員が非常に減少するということに対処しまして、防災センターのみ警備会社に委託するというところも出始めているわけでございます。そういうような関係上、今後もこういう外部委託の問題というのはふえるわけでございますので、ひとつ消防計画書上外部委託の契約内容というものも消防関係者が周知するようなシステムづくりをこれからしていく必要があるのではないかというふうに思うわけでございますが、いかがでございましょうか、消防庁
  27. 荻野清士

    荻野説明員 一定規模以上の防火対象物につきましては、御指摘のございましたように、非常時にどう行動するかというふうな役割り分担をひっくるめまして、避難誘導訓練等をどうするかといういわゆる自衛消防活動につきまして、みずから消防計画を作成しておるわけでございます。  そこで、お尋ねのありました人命安全に深いかかわりを持っておりますこのような防火管理業務を警備業者に委託する点でございますが、これにつきましても態様はいろいろでございまして、通常旅館、ホテル等の場合はございませんけれども、全面的に委託するというふうなものまで出ておる現状でございます。しかしながら、消防法上から申しますと、こういった防火管理の問題は根源的には管理権原者にございまして、法律上それを代行するという意味で、防火管理者というものにこれまた防火管理責任があるわけでございます。したがって、いかなる態様で他人に委託をいたしましても、それは内輪の話でございまして、消防法上の防火管理責任というものを免れるものではないというふうに考えております。  しかし、御指摘にもありましたように、最近ビル等の無人化という問題が急速に進行していることは事実でございます。特に夜間そういった傾向が多いわけでございまして、防火管理とこういった警備業との関係のあり方という点は早急に検討をすべきものというふうな考え方に立っておりまして、私ども自治省消防庁では、昨年九月に防火管理体制研究委員会というものを発足させまして、その中の分科会の無人化分科会で、旅館、ホテルのように一定の人員はいますけれども、それがお客の数と見合っているのかどうかというふうな問題も入れて、鋭意検討しているところでございまして、この検討を急ぎたい、いろいろ問題がございますが、何とか解決策を見出していきたいというふうに考えております。
  28. 笹山登生

    笹山委員 以上見ましたように、消防はハード、ソフトとも大事だと言われながら、今回の事故で、経営者個人の人的資質とか、その経営体質までチェックすべき法体系というのがないと、いわばエアポケットであるということが痛感されるわけでございます。  ここに私に対する一つの手紙があるわけでございます。これは今回の事故最後まで身元のわからなかった三浦寿子さんの父親から私に対する手紙でございますけれども、この中で三浦さんは、娘の命を奪われ、余りの歯がゆさに、娘を返せ、生かせと大声でどなりたいが、その向け先がない、その当てどころのない苦しみはひとつ私どもで終わらせてくださいと書いてあるのですよ。この三浦さんの訴えを無にしないためにも、また今後、天災を扱うべきこの災害対策委員会でこのようなお粗末な人災を扱うようなことのないように、関係者の方々の一層の御尽力をお願いしまして、私の質問を終わります。
  29. 川俣健二郎

    川俣委員長 これにて笹山君の質疑は終了いたしました。  次に、池端清一君。
  30. 池端清一

    ○池端委員 私も、まず最初に、今回のホテル・ニュージャパン火災問題についてお尋ねをいたします。  犠牲者の皆さん方に心から哀悼の誠をささげたいと思うのでありますが、今回三十二名という痛ましい犠牲者を出したホテル・ニュージャパン火災についてのその後の調査が進むにつれて、数多くの人命を預かるホテルがまことに大変な欠陥ホテルであったということを知らされて、慄然たる思いに駆られたのは、決して私一人ではないと思うのであります。  これまで明らかになった事実によりますと、建設当時からの欠陥ホテルであった、こういう事実、それから数々の建築基準法違反の事実、さらにまた、多くの消防法違反の事実等々、まさに今回の火災は複合的な人災だ、こういうふうに言わなければならないと思うのであります。こういうような安全軽視の姿勢というのは、去年の北炭夕張新鉱における大災害、あるいはまた今般の日航機の墜落事故、これらにも共通して言えることでございまして、経営者の責任は厳しく問われなければならないと思うのであります。しかし、問題はそれだけで済まない、私はこう思うわけであります。経営の責任を厳しく追及すると同時に、行政にも問題がなかったのかどうか、あるいは防災に対処するための法律制度があるわけでありますけれども、これが有効に作動しなかったところは那辺にあるのか、その辺のこともきちっと把握をし、今後に備えていかなければならないと思うわけであります。  たとえば一例を申し上げますと、熊本の大洋デパートや大阪の千日ビルの大火災の教訓に学びながら、昭和四十九年に消防法の改正が行われました。そして、スプリンクラーの設置が義務づけられたわけであります。これも直ちにやれということではない、五十四年三月末まで五年間の猶予期間を置いてスプリンクラーの設置ということになったわけでありますが、実際にこのホテル・ニュージャパンにスプリンクラーの設置についての命令が出されたのは昨年の九月、地元麹町消防署からなされたということでございます。  こういう災害が起こりますと常に言われていることは、いや、事前に何度も警告しておった、再三にわたる査察を行い、勧告、命令を行っておったのだという言いわけだけがはね返ってくるわけであります。果たしてこれでいいのか。そういう言いわけだけでこの問題を処理しようとするならば、きわめて大きな問題がある、私はこういうふうに言わざるを得ないのであります。したがって、行政当局の責任の問題も含め、そしてまた法律、制度に欠陥があるならば、行政当局はこの国会に大胆にその問題点を提起すべきではないか、そういう法律上の整備もまた必要ではないかと思うのでありますが、これらについての見解を承りたいと思うわけであります。
  31. 荻野清士

    荻野説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がございました、今回の火災につきまして消防機関がとった措置、それが結論的に甘かったのではないかという御指摘でございます。たびたびの席で東京消防庁の指導の経過並びに措置命令のいきさつ等については御説明申し上げておりますので、これ以上弁解がましいことを申し上げるつもりはございませんが、私どもは、やはり消防機関としてできるだけの努力はしてきたというふうには考えております。しかしながら、結果といたしまして今回のような惨事になった、その対応をもっと迅速にという御意見でございます。そういう御意見、御批判に対しましては、謙虚に、かつ厳しく受けとめて、今後の消防行政の厳正な展開に一層の努力を重ねてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  32. 池端清一

    ○池端委員 先ほど申し上げましたように、同じことを災害の後に聞くわけであります。たとえば一昨年、昭和五十五年十一月の川治温泉のプリンスホテルのあの大災害の場合でも、当局は何と言っておったか。藤原町消防本部が査察実施し、防災上多くの欠陥があったため、防火区画を設けること、あるいは消防計画を作成することなど八項目にわたって改善命令を出していたのに、一年たっても実行されずにあの大災害を惹起するに至りました、まことに遺憾なことでございました、これもおととし言われているのであります。今回もまた同じことが言われている。  これほどの大災害を惹起しておって、もう言いわけだけでは済まされない、その先はやはりもっと突っ込んでいかなければならないのではないかと私は思うのであります。まさに人災であります。この人災の構造に思い切ったメスを入れる、行政当局の責任も含めてやらなければならない。したがって、現在の法律、制度に欠陥があるなら大胆に提起をすべきであると思うのですが、改めて見解をお尋ねいたします。
  33. 荻野清士

    荻野説明員 重ねての御指摘、御意見でございます。私ども具体的に今後どう対応するかという点につきましては、川治プリンスホテルの教訓にかんがみまして、昨年五月から全国的にやっておりますいわゆる「適」マークというものを速やかに全国で実施するということで、それに全力を挙げているわけでございます。その「適」マークといわばうらはらの関係になりますけれども、悪質な違反対象物に対します措置命令違反の場合の公表制度というものもあわせて実施するようにいたしておりまして、いま全国的には「適」マークの交付のための調査がほぼ終了しかけておるわけでございます。その「適」マークの交付とあわせて、以後は措置命令をちゅうちょなく発動し、それに違反する場合には公表、告発ということで断固たる措置をやろう、こういうことで先般二月十日付で再度通達をいたしているわけでございます。  そこで、法五条の発動の問題もあるわけでございますが、この点につきましては解釈具体危険性というふうなことに相なっておりまして、実は、もし発動した場合に、それが取り消し判決になりますと、その間の補償を当該地方公共団体がしなければならない。これは違法な命令をしたというふうに認定された場合は、損害を賠償するということは法のたてまえとして当然でございますけれども、そういうことに相なっております。したがいまして、私どもは、現地で具体違反対象物を立入調査をして発見した場合にいかなる措置をとるかという点で、法五条の運用についてかなりちゅうちょせざるを得ないという実態があることは率直に認めております。そこで、その点についての運用上の問題を消防機関が相寄ってひとつ早急に検討しよう、私ども自治省消防庁でも検討して、この線ならやってほぼ裁判で負けることがないというふうな具体的なところまで詰めて検討をいたしたいということで考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、いまの時点で、こういうことをいたします、ああいうことをいたしますと申し上げましても、全国に九百幾つの消防機関がございますので、私どももそれを身をもってお示しする以外にないという覚悟でございます。
  34. 池端清一

    ○池端委員 事は人命に関する問題でございます。したがって、いまお話がありましたが、ひとつ毅然とした態度で措置をしていただきたいということを強く申し上げておきます。また、法律に問題があるなら、われわれも立法府の一員としてやはりその問題に真剣に取り組んでいかなければならない責務を持っておるわけでありますから、われわれ自身も当委員会において真剣に検討を重ねることをお約束するものでありますけれども、行政当局としてもみずから大胆に問題を提起することがぜひ必要だろう、このような過ちを、このような大惨事を再び繰り返さないためにも、そのことをお互いに誓い合いたいと私は思うのであります。  そこで、今回の火災の要因、背景については、地行その他、いまもいろいろなやりとりがございましたので、私はひとつ観点を変えてお尋ねをしたいと思うのでありますが、横井社長の、先ほども触れました安全軽視の経営姿勢のほかに、ホテル従業員に対する徹底した人間性無視と言うべき労務政策、ここにも多く起因しているのではないかと思うわけであります。  ここにホテル・ニュージャパン労働組合からいただきました資料がございます。これによりますと、ニュージャパンがオープンしたのは昭和三十五年でございますが、オープン当時、社員は八百人いたわけであります。ところが、昭和四十四年には五百人、昭和五十年には三百人、現在はどうなっておるか。オープン当時八百人いたものが、現在はわずかに百四十名。もちろんパートタイマーその他がおりますから、その数を含めますと三百人ぐらいにはなりますけれども、正規の従業員、社員はわずかに百四十名でございます。そして、客室関係の夜勤者は一体どうなっておるかといいますと、昭和五十年前までは二十六名、ところが現在は九名、しかもこういう災害が起こった際の避難誘導に当たるのは客室ルームサービス二名、わずかに二名、こういう配置になっている。これはもう大変なことだと私は思うのであります。同じ規模のホテルでは、大体従業員は八百人程度、しかも、夜間でも客室一ブロックについて一人の係を配置するというのが常識でございまして、これと比較すると安全対策などないに等しいと言っても決して言い過ぎではないのでありますが、消防庁としては、この程度の人数で夜勤が行われておったという実態を事前に承知をしておったのか、また、最低この程度の規模のホテルではこの程度の夜勤者が必要だという配置基準というようなものはないのか、ひとつその辺の見解をお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  35. 荻野清士

    荻野説明員 まず第一点でございますが、それぞれのホテルで建物の構造等も違っておりますので、一概に比較はできないかと思いますけれども、御指摘のございましたようなニュージャパンの場合は百四十名の従業員、そのちょっと大きい程度の、ニュージャパンは二千九百名収容人員でございますが、三千三百人ぐらいが収容人員のある都内のホテルには従業員六百名というふうに私ども聞いておるわけでございまして、それらと比較しても四分の一というふうな従業員数ということでございます。  それから、第二点目のいわゆる夜間の旅館、ホテル等の最低人員規模ということでございますが、この点につきましては、やはり建物の構造なり、同じホテルでも使い方、消防設備のぐあい等で、一律に最低人員これだけと言うことがなかなか困難でございまして、現在のところは、それぞれの旅館、ホテルがみずからつくります消防計画の中で、自分のところの夜間体制はこうするということを自分で考えて自分で出す、それが消防機関が考えて少なければ指導でふやさせるという形態をとっておるわけでございます。  今回のニュージャパンにつきましては、ホテル側が届け済みの消防計画の中で、夜間の自衛消防隊は四十五名体制ということで届け出受理されておるわけでございます。したがいまして、東京消防庁の方は、四十五名体制であれば何とかやれるという判断のもとに受理をいたしたわけでございますけれども、御指摘のございましたように、当夜、正規の従業員はごくわずかでございまして、警備員その他の人を入れましても三十三名ということでございました。その点を消防当局が知っておったのかということでございますけれども、私どもが東京消防庁に確認をいたしておりますが、東京消防庁はあくまでみずからつくった消防計画、四十五名体制ということで遵守されておるというふうに理解をしておったと聞いております。  この点は、一々毎晩何名でやっているかということの立入調査までなかなか手の回らないところでございまして、この辺も、いわゆる計画計画、実態は実態というふうに使い分けられる防火管理者なり経営者なりの姿勢、と同時に、私どもに対しましても、こういう惨事が生じた、結果的にだまされておったのじゃないかというふうなおしかりがあるということは覚悟いたしておるところでございます。
  36. 池端清一

    ○池端委員 きょうは災害一般について御質問いたしますので、ニュージャパンの問題だけ深く突っ込むことはできないのを遺憾とします。また別途その機会を設けてやらせていただきたいと思うのでありますが、いまお話がありましたように、四十五名の届け出があった、それを信頼しておったというのであれば、何のための査察かということになるのであります。何も私は毎晩毎晩やれというようなことを言っているのじゃないのであります。査察というものは、そういう計画が出ているにもかかわらず一体実態はそれに本当にこたえているのかということで査察を行うわけでしょう。実際査察も何回もやっておりましたと言っても、そういうようなことであるならば、私はにわかに信じがたい。そういう問題点があることをここで指摘をしておきます。  そこで、これは労働省にお尋ねをするわけでありますが、先ほど私は人間性無視の労務政策が多くあるということを申し上げたのでありますが、今日、労基法違反なり不当労働行為として出されているものの実態は一体どうなっているか、その辺の事情について労働省から承りたいと思うのであります。
  37. 岡部晃三

    ○岡部説明員 ホテル・ニュージャパン関係の労働基準法違反のお尋ねでございますが、昭和五十四年以降、申告に基づきまして監督した件数が九件に上っております。そのうち、退職労働者から退職金の支払いに関する申告もなされておりまして、所轄監督署におきまして、これに基づきまして再三にわたって監督指導を行い、支払いを行うように是正勧告を行ったところでございますが、同社におきましてこれが是正勧告に従わずに、監督署において、本年の二月五日に、法人及び代表取締役横井英樹を被疑者といたしまして、労働基準法違反被疑事件といたしまして東京地方検察庁に書類送検をした事案がございます。  なお、この退職金の支払い問題以外にも、ホテル・ニュージャパンにつきましては、これまで、監督結果を見ますと、基準法に定めます労働時間の違反、安全衛生法に定める健康診断の実施違反、産業医の選任報告についての違反等々が認められたところでございまして、これらについてはその都度是正勧告を行い、是正に努めておるところでございます。  なお、退職金につきましては、これは分割払いの方法によっておりまして、九万九千円の手形二百七十三枚がまだ支払い期日が到来をしておりませんが、これの確実な支払いにつきまして今後十分に監視をする必要があると思っております。  また、五十五年末及び五十六年夏の賞与の一部合計二千十七万二千円余が未払いとなっておりまして、これにつきましても手形による支払いを行うというような形でございますが、この履行につきましても監視をしてまいりたいというふうに考えております。
  38. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 ホテル・ニュージャパンの労働組合から不当労働行為の救済申し立てがある件でございますけれども、現在、中央労働委員会に一件、それから東京地方労働委員会に五件がそれぞれ係属しております。  まず、中労委の方に係属しておる件でございますけれども、これは五十四年から五十五年にかけまして東京地労委に対しまして申し立てられた事件について、東京地労委が救済命令を出しました事件に対しまして、使用者側から再審査の申し立てがあるという事件でございます。  中身を簡単に申し上げますと、大きく分けますと三つに分類できるかと思いますが、一つは、団体交渉拒否に関する件でございます。それから、いろいろな組合活動等に対しまして社長の言動が支配介入ではないかという点が第二点でございます。それからもう一つ、組合委員長ら七名を懲戒解雇をしておりますが、これが組合活動を理由とする不利益取り扱いではないかということがございます。大きく分けますと、大体その三つぐらいになると思いますが、そのような件について現在中央労働委員会に係属中でございます。  それから、そのほかに、現在東京地労委に係属しておりますのが五件ございます。組合役員の配転ですとか、冬期、夏期の一時金について組合員を差別したのではないかという点、それからいろいろな社長の発言等が支配介入になるのではないかというような点、それぞれ現在五件東京地労委で審理中であるというふうに聞いております。  以上でございます。
  39. 池端清一

    ○池端委員 中労委、都労委の問題はそれぞれの機関で公正な審査が行われると思うのでありますからそれは別といたしまして、労基法違反の数々の実態、先ほどお話がありましたようなもののほかに、私どもの調査によりますと、すでに是正措置がなされたものではございますが、十三件ほどございます。非常に数多くの労基法違反の事実がある。しかも、中央労働基準監督署が是正勧告書を交付したけれども、ニュージャパン側は無視をし続けた。ことし一月末に労働基準署側が被疑者調べをしようとしたが、調書作成を拒むなどの事実があったという記事が、二月十三日の新聞に出ておるわけであります。係官に対しても聞くにたえない暴言を吐くといった事実もあるようなのであります。こういう問題を放置しておくわけにはいかぬと思うのです。これについて今後どのように対処されるつもりなのか、断固たる態度で対処されるかどうか、その辺をお尋ねしたいと思うのであります。
  40. 岡部晃三

    ○岡部説明員 労働基準監督機関といたしましては、法の厳正な施行ということに努めてまいるのがその本旨でございます。  先生お尋ねの被疑者調べの際にも、いろいろと遺憾な発言が聞かれたところでございます。しかしながら事実は事実として把握をいたしまして、これにつきまして法に基づきまして措置すべきことは措置をしていくということで、現に被疑事件が明らかなものにつきましては司法処分に付したというふうな状況でございます。今後、その他是正の行われない問題につきましても、一層この点につきまして厳正な態度をもって臨みたいというふうに考えております。
  41. 池端清一

    ○池端委員 本日はもう時間がございません。この問題は多くの問題を抱えておりますので、社会労働委員会の場を通して政府見解等も改めて承ってまいりたい、このように思っておりますので、次の問題に移らせていただきます。  次の問題は豪雪対策でございます。  昨年のいまごろ、五六豪雪対策で当委員会の皆さん方も本当に東奔西走、政府もその対策に大変な御努力をされたというその記憶は生々しいわけでございます。五十七年度予算案において豪雪対策、雪害対策についてどのような配慮がなされているか。去年の委員会では、無雪町づくり、あるいは雪に関する総合的な研究、あるいは地すべり対策やなだれ対策事業の積極的な推進、こういう問題等がいろいろ出されたわけでありますが、これについてどのように五十七年度予算案の中で対応しておられるのか、簡単にお答えをいただきたいと思うのです。
  42. 柴田啓次

    柴田(啓)政府委員 五六豪雪に際しましては、本委員会に大変いろいろ御配慮をいただきまして、数々の対策を前進させることができましたことを、深く感謝しているものでございます。  私どもこの五六豪雪の経験を踏まえまして、今後の雪対策について、ただいまお話がありましたように、たとえばなだれ対策、あるいは都市の流雪溝の整備等の除排雪の総合システムの確立等を目ざして、いろいろな予算強化をしているわけでございます。五十七年度の予算政府原案におきます主なものを挙げますと、公立学校の施設整備に五百三十億、あるいは僻地医療対策として四十六億、雪寒道路事業として五百六十七億、それから特別豪雪地帯の市町村道整備事業七十六億、それから労働省関係で冬期雇用促進給付事業に百七十三億、その他、私どもの所管しております特別事業あるいは定住構想推進経費等の事務的経費等を含めまして、前年度以上に推進を図っているわけでございます。  また、地域ぐるみの対策ということが必要だというふうに痛感をするわけでございますが、この点につきましても関係地方公共団体の間に非常に機運が盛り上がっておりまして、私どもその機運を生かしながら、克雪町づくりあるいはさらに利雪都市づくりという方向に向かって進んでまいりたいと考えております。
  43. 池端清一

    ○池端委員 次の問題は、昨年当委員会におきまして熱心な御検討の結果、森林被害、特に折損木や倒伏木の救済措置を講ずるための激甚災の法律の一部改正を行ったわけでありますが、これはきわめて画期的なことであったわけであります。この法律はほぼ一年たったわけでありますが、その運用の状況は一体どうなっているか、特に問題点と思われるようなものは出ていないのか、その辺の状況について承りたいと思うのであります。
  44. 谷口純平

    ○谷口説明員 お答え申し上げます。  当委員会の大変な御配慮によりまして、昨年五十六年四月に激甚災害法の一部改正が行われまして、森林災害復旧事業の制度創設を見たところでございますけれども、現在この制度を中心といたしまして復旧対策に鋭意取り組んでいるのでございます。五十六年度におきましては、予備費四十九億六千八百万円を使用いたしまして、復旧計画全体の六五%に相当する事業実施中でございます。五十七年度におきましても、引き続き計画的な復旧に努めることにしておりまして、五十七年度政府予算案におきましては、災害関連事業として、台風十五号関係被害も含めまして森林災害復旧造林事業費十四億一千百万円を計上しております。  この事業実施期間につきましては、緊急に復旧を図る必要性や必要労務の調達の可能性等を総合的に勘案いたしまして、政令におきましてそれぞれ作業種ごとに実施期間が定められておりまして、具体的に申し上げますと、倒伏木の引き起こしにつきましては五十六年度まで、それから被害木の伐採、搬出につきましては五十八年度まで、さらに跡地復旧造林につきましては五十九年度までということになっておりまして、現在これらの期間内に事業がおおむね完了できるものと考えております。  以上でございます。
  45. 池端清一

    ○池端委員 次に、特別豪雪地帯の指定の問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  昭和四十五年の十二月に豪雪法の一部改正が行われまして、特別豪雪地帯の指定ということが決定をされました。四十六年の九月二十七日に第一回の地域指定が行われて、これまで四回この地域指定が行われているわけであります。間もなくこれは三年経過しようとしております。いままでのデータをとってみますと、大体二年ないし三年間隔で地域指定が行われている。佐藤先生も国土審議会の豪雪地帯対策特別委員会でいろいろ御努力をいただいておるところでございますが、現状はどうなっているか、非常に強い追加指定の要望等も各地域で上がっておりますので、追加指定についての見通しはどうなっているのか、その辺の事情を承りたいと思います。
  46. 柴田啓次

    柴田(啓)政府委員 いまお話しのように、特別豪雪地帯という制度は議員提案によってこの法律の中に追加をされまして、またその運用につきましては、国土審議会の議決を経て内閣総理大臣が定める基準に従って行うことになっておるのでございます。  最近の改正の経過といたしましては、五十四年の三月十九日の国土審議会で基準の見直しを行いまして、五十四年四月二日、七十二の市町村を追加指定したわけであります。それまで二百七だったのが、七十二ふえまして、二百七十九になったわけでございます。  その際に、積雪の度合いの問題と、積雪による住民の生活の支障の程度、この二つの要件で指定基準を設けたわけでございますが、その際追加指定された周辺の市町村と、積雪の度合いにせよ、あるいは積雪による住民の生活の支障の程度にせよ、ほぼ同じでないかということで、指定に漏れた市町村から追加指定という強い要望が出ておりますことは、私どももしばしば伺っておるわけでございます。その件に関しまして国土審議会でもいろいろ御論議が出たこともございます。  ただ、指定基準を見直すということになりますと、具体的な資料の採用ということについて十分御審議をいただきまして、それに従って追加をするということでなければならないと思うのでございます。たとえば地吹雪の問題とか、いろんな問題があるわけでございますが、これらについても私ども勉強をしておりますけれども、今後新たな客観的な資料が得られることができて、指定基準に関する状況に変化が生じた場合には、審議会で調査審議していただいて、その上で対応してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  47. 池端清一

    ○池端委員 私の出身地であります北海道の一例を挙げますと、全道に二百十二の市町村がございますが、今日まで九十三の市町村が特別豪雪地帯の地域指定を受けて非常な恩恵を受けているわけでございます。  そこで、いま柴田局長からそういう御答弁がありましたが、私はちょっと長官にお尋ねをしたいと思うのであります。長官は幸いにも国土庁長官であると同時に北海道開発庁長官でもあられますので、この問題については十分事情も御承知だ。昨年の暮れも私は地元の代表と一緒に長官にもお会いした、こういう経緯がありますので御承知かと思うのでありますが、ちょっと見づらいかもわかりませんけれども、北海道の地図があります。この青い部分が特豪地帯でございます。黄色の部分は豪雪地帯なんですが、この特豪地帯の中で三カ所ばかりぽっくり穴があいているのであります。ここだけが穴があいている。  たとえば北海道の空知支庁管内では、砂川市、歌志内市、上砂川町、奈井江町の四つの市と町、それから上川支庁管内で申しますと、上富良野町を初めとする五つの市と町、ここがぽっくり穴があいている。ところが、きょうデータを詳しく申し上げる時間的余裕がありませんので申し上げませんが、積雪はいずれも七メートル以上、隣の町村と何ら変わるところがない。交通途絶の状況も、あるいは集落の分散度というものについても、ほとんど近隣の町村と変わらない。ところが、この地域指定を受けておりませんのでいろいろな面で均衡を失する、こういう状況になっておって、これが大変な問題になっているという状況なわけでございます。したがって、こういう矛盾や不合理というものは一日も早く是正をしていかなければならない。これは北海道開発庁長官の立場としてもぜひお願いを申し上げたいと思うのでありますが、長官の御決意のほどを承りたいと思うのであります。
  48. 松野幸泰

    松野国務大臣 ただいまお話を承るまでもなく、私も長官としていろいろ事情については説明を聞き、またいろいろな角度から調査もいたしておりますが、ただいま地方振興局長が申しましたように、十分検討いたしまして、是正するべき条件を見出すことができれば是正してまいりたいと存じますので、御了承いただきたいと存じます。
  49. 池端清一

    ○池端委員 もう少し歯切れのいい答弁を期待しておったのでありますが、不十分でありますけれども、時間がありませんので、私はこの問題は繰り返し巻き返しこの委員会で申し上げることをいまから通告をいたしておきますので、御承知おきいただきたいと思うのであります。  次に、二年連続の冷害凶作で農村は重大な打撃を受けているわけでありますが、一体ことしの夏はどういう気温になるのだろうか、ことしもまた冷夏なんだろうか、こういう不安というものが農民の皆さん方にいま渦巻いているわけでございます。そこで、ことしの気温状況はこうなるよという長期予報といいますか、こういうものを気象庁の方からひとつ明らかにしていただいて、農民の皆さん方に明るい希望を持たせていただきたい、こう思いますので、ことしのこれからの気温といいますか、そういう予報状況についてお尋ねをしたいと思うのであります。
  50. 菊池幸雄

    ○菊池説明員 ことしの気温の見通しはどうかという御質問でございますが、今夏の天候の見通しにつきましては三月十日発表の予定でございまして、現在検討中でございますので、検討の状況について御説明申し上げたいと思います。  まず、昨年、一昨年の北日本の夏の気温についてでございますけれども、一昨年は御案内のように明治以来の三大冷害年に匹敵する冷夏でございまして、七月、八月に異常な低温があらわれました。昨年は、七月は気温は高目でございましたけれども、八月、九月と低温になりました。しかし、その低温の度合いは一昨年ほどのものではございませんでした。  これまでの資料によりますと、夏の北日本の気温につきまして、一昨年、昨年のように一年目が非常に気温が低く、次の年も一年目ほどではないけれども気温が低い、そういう例を挙げますとこれまでに六例ございます。これらの例につきまして三年目の夏、ちょうど今年に当たるわけでございますけれども、三年目の夏の気温はどういうふうになっているかということを見てみますと、いずれの場合も平年並みか高目ということでございまして、異常な低温はあらわれておりません。しかし、一方では、一昨年から昨年にかけまして、年間を通じて低温があらわれやすい傾向が続いております。この傾向がなお持続するかどうか、それが予報の重要な点でございまして、目下鋭意検討を続けているところでございます。
  51. 池端清一

    ○池端委員 いまのところははっきりしないようでありますので、何とか三月十日を祈るような気持ちで迎えたい、こう思うわけであります。  最後になりましたが、有珠山の泥流対策でございます。  今日までいろいろ御努力をいただきましたことを感謝申し上げる次第であります。しかし、なお潜在土砂は数十万立方メートルとも言われている膨大なものでございまして、泥流の危険性なしとしない、こういう状況でございます。  そこで、具体的にお尋ねをしたいのでありますが、虻田町関係については、小有珠右の川についてすでに三号の砂防ダムが設置をされておりますけれども、これではまだ十分ではない。私もこの間、山に登ってまいりましたけれども、そういうふうに感じてまいりました。さらに補完的なダムが上流に必要ではないか、こう思いますが、これについて、ぜひ早急にこの建設をお願いをしたいと思うのでありますが、その用意があられるかどうか。  あるいはまた、壮瞥町については昭和川、源太川という二つの川がありますけれども、これについても早急に河川の改修あるいは砂防ダムの建設が必要だと思うのでありますが、これについての今後の具体的な見通し等について建設省にお尋ねをいたしまして、これで私の質問を終わりたいと思います。
  52. 近森藤夫

    ○近森説明員 小有珠右の川につきましては、昭和五十二年及び五十三年の有珠山の噴火以来、総額百三十億円に上ります砂防激特事業の中で積極的に整備を図ってきたところであります。昨年におきましては、外輪山の崩壊等の問題もございまして、五十五年より継続中でございました砂防ダムの施行のほか、新しく二基の砂防ダムに着手しており、これを完成させたわけでございます。  五十七年度におきましては、一番規模の大きい継続中のダムを完成すると同時に、最上流、これは有珠山との境界点になりますが、最上流にさらに一基砂防ダムの着手を検討しておるわけでございまして、右の川につきましてはこれで施設計画の余地がなくなると思いますので、この五基のダムをもちまして今後の土砂につきまして対応したい。そういたしますと、土砂が出てまいりましてダムの堆砂地が満杯になりましたときは火山等緊急対策砂防事業によりまして掘削を行いまして、下流地域の防災を図るということになろうかと思います。  また、お話がございました壮瞥町の昭和川あるいは源太川におきましても、最近の地震活動によります地殻変動で上流の荒廃が非常に進んでおるわけでございますので、昭和五十七年度よりそれぞれ砂防ダムに着手したいというふうに思っておるわけであります。なお、これでダムができましても下流全般の災害防除というようなことにはならないわけでございまして、下流河川の整備につきましてもなるべく早い機会に着手したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  53. 池端清一

    ○池端委員 ありがとうございました。終わります。
  54. 川俣健二郎

    川俣委員長 これにて池端君の質疑は終了いたしました。  午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十四分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  55. 川俣健二郎

    川俣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。柴田弘君。
  56. 柴田弘

    柴田委員 私は、最初に、午前中も論議がされておりましたが、ホテル・ニュージャパンの問題につきまして、今回の犠牲者の皆さん方に心から哀悼の意を表しながら御質問をいたしたいと思います。  今回のホテル・ニュージャパンの大惨事、これは、私は考えますが、もちろんホテル経営者の人命軽視の姿勢といいますか、そういったものも一つは大きな問題であるとは思いますが、いま一つ消防庁を初めといたします関係行政機関の取り組みの甘さ、欠陥行政というものがあったのではないかというふうに考える一人であります。  御案内のように、消防法が改正をされまして、昭和四十九年、ホテルに対するスプリンクラーの設置義務というものがなされました。これは五年の猶予を置きまして、昭和五十四年三月から設置をするということになっておるわけでございます。しかし、このホテル・ニュージャパンは、その後麹町消防署のいろいろな御指導があったということでございますが、結局昭和五十六年九月十一日に消防署がいままでの勧告から命令に切りかえた、こういうわけであります。五年の猶予期間を置きながら、しかもその後二年半たってやっと改善命令をされたということについて、私は、行政当局の取り組む姿勢の甘さというものをこの際強調せざるを得ない。すぐ手を打っておけばこういった大惨事は免れたのではないか、このように考えているわけであります。そういった意味においてこれは人災であるというふうに考えますし、こういった欠陥行政というものについて、まず第一に私は当局の反省を求めたい。その反省の上に立って、しからば今後こういう大惨事が起こらないようにどういった適切な手を打っていくか、こういった問題であろうかと思うわけであります。  まずお聞きしたいわけでありますが、この欠陥行政の甘さ、その反省、そして今後どう取り組んでいかれるか、ここでお伺いをしたいと思います。
  57. 荻野清士

    荻野説明員 お答え申し上げます。  旅館、ホテルの防火安全対策につきましては、一昨年の川治プリンスホテルのあの大惨事以来、直ちに全国一斉に旅館、ホテルの点検を行いまして、その不備事項の是正については厳正な措置を講ずるということで対処してまいったわけでございます。さらに、昨年五月には表示公表制度というものをこれまた全国的に実施すべく、関係市町村の消防機関に通達を出し、目下その作業が進められておるところでございます。  このように、私ども消防機関といたしましても違反対象物に対します厳正な措置というものに努力してまいったわけでございますが、その最中におきまして今回の惨事の発生を見ましたことは、まことに遺憾に存じておるところでございます。したがいまして、今回の惨事を教訓に、さらに消防機関によります予防査察を徹底いたしますとともに、すでに準備を進めております表示公表制度を一刻も早く全国的に完了するように督励を続けておるところでございます。  また、今回の惨事でも明らかなように、悪質な法違反対象物に対しましては、ちゅうちょなく法に基づきます強制力のある措置命令を発動し、それに従わない者につきましては告発、公表という断固たる措置、さらには第五条の発動も含めまして厳正な措置を講ずべきであるという考え方で指導いたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、消防行政の対応に甘さがあったのではないかという御意見、御批判に対しましては厳しくこれを受けとめ、謙虚に反省をいたしておるところでございます。
  58. 柴田弘

    柴田委員 反省の上に立って今後とも厳正な措置をしていく、こういうことでございます。  それで、消防庁はこの二月十日に全国の各自治体に対しまして、措置命令に従わない旅館、ホテルは公表あるいは告発など断固たる措置をとる、こういうような通達を出されたわけであります。現在、東京都内におきましても、不適のホテル、旅館は全体の三五・五%あると言われておるわけであります。この公表もしくは告発ですが、いまちゅうちょなくというお答があったわけでありますが、私が思いますのには、もういままでに何回となく指導され、あるいは査察も行われて、相当悪質なのがあるのではないか。二月十日に通達を出されたわけでありますから、きょうは二十五日、もう二週間たっているわけでありますね。そういった意味におきまして、より一層厳正な指導を求める以上は、しかもまた、ちゅうちょなくとおっしゃる以上は、悪質なものに対しては毅然たる態度でやっていかなければならない、こんなふうに考えるわけでありますが、こういった公表あるいは告発というものについてのより一層の突っ込んだ考え方をここで消防庁に求めたいわけでございますが、その辺はいかがでありましょうか。
  59. 荻野清士

    荻野説明員 御指摘のとおり、東京消防庁管内におきまして、今回の「適」マークの対象物件は九百六十一件、うち「適」マークの交付済みは六五%、残りの三五%、約三百幾つにきましては何らかの不備があるということはわかっておるわけでございます。  ただ、この不備事項の中にも、いわゆる消防法違反のものから、中には違反ではございませんが建築基準法上いわゆる既存不適格、当時の建築基準法では適法と確認をされたけれども、その後の新しい基準に合っていないというふうなものまで含めまして、私どもは人命安全の見地からとても「適」マークを張れないというようなものにつきましては、いわゆる法令には違反していなくとも「適」マークをお渡ししていないわけでございます。したがいまして、三百幾つある中につきまして、これはやはり違法でないものについて公表ができるのかという点になりますとなかなか問題がございます。したがいまして、東京消防庁では、今回の惨事にかんがみまして、直ちに二週間の予定でその不適合旅館、ホテルを中心にもう一度全部その後の実施状況も入れて総点検をいたしておりまして、それに基づいて、いわゆる悪質なものにつきましてはまさにちゅうちょすることなく措置命令がとられるというふうに私ども理解いたしております。ただ、それがその三百幾つのうちどの程度になるのかということにつきましては、まだ二週間の査察結果の細部を私ども伺っておりませんので、いまお答えできないのが残念でございます。
  60. 柴田弘

    柴田委員 続きまして、運輸省にお聞きをしていきたいと思います。  登録ホテルは、言うまでもなく観光客から信頼をされている、そして皆さん方が安心して泊まれるのが本当でございますが、残念ながら今回のニュージャパンの大惨事があったわけでございますが、現在の状況からいきまして、政府登録ホテルといえども、安全対策上不備なホテル、旅館が散在しているのではないかと思うわけであります。それで、ホテル・ニュージャパンの問題におきましても、こういった悪質な、安全対策上不備なホテルを放置しておった、政府登録ホテルとしてそのままにしておった、こういうことは運輸省にも責任があるのではないか、私はこんなふうに思うわけでありますが、その辺の御見解はいかがでしょうか。
  61. 高橋克彦

    高橋説明員 ホテル、旅館の安全防災の確保につきましては、基本的には、私どもといたしましては建築基準法あるいは消防法令に基づきまして建築当局、消防当局が所要の措置を講ずる責任を負うものであるというふうには考えております。しかし、運輸省といたしましても、登録ホテル、旅館に宿泊利用される方の安全の確保を図るという観点から、これまでホテル、旅館の新規登録の申請あるいは登録ホテル、旅館の増改築の届け出に際しましては、建築基準法に基づく建築物の検査済証の写し、あるいは消防法令に適合している旨の所轄消防機関の通知書を添付させて、登録ホテル、旅館の防火安全の確保に努めてまいっております。また、毎年実施される観光週間には、ホテル、旅館業者に一斉に安全のための自主点検を実施させる等行いまして、登録ホテルの防火安全にこれまで努めてまいったわけでございます。  しかし、今回のホテル・ニュージャパンのように、長期にわたりまして大幅に消防法令に違反している登録ホテルがあったということは、まことに遺憾なことでございます。私どももこの事実を厳しく受けとめまして、今後このような事故が再び発生しないように、必要な措置をとってまいりたいと考えております。
  62. 柴田弘

    柴田委員 運輸省は陸運局を通して、たしか私がお聞きしている範囲では、昭和五十五年に登録ホテルに対する総点検を行ったと思います。その結果、どうでしたか。
  63. 高橋克彦

    高橋説明員 一昨年十一月に川治プリンスホテル事故がございました直後、運輸省は十二月に、登録ホテル、旅館約二千軒ございますが、これに対しまして一斉に自主的に防火安全に関する総点検を行わせ、その報告を求めたところであります。報告を求めましたところ、消防当局あるいは建築当局の方から防火安全上問題があるというふうな指摘を受けたホテルが若干ございました。それで、それにつきましては、五十六年の二月あるいは三月にそれぞれ改善の措置をとるように通達をいたしたところでございますけれども、今回、ホテル・ニュージャパン事故がございましたので、再度、消防当局あるいは建築当局から指摘を受けたものに対しましては再チェックをし、かつ、その改善状況等を二月末までに運輸大臣あてに報告するようにという指示をしております。  それから、総点検の際に、消防当局、建築当局から重大な問題と思われる指摘を受けているものにつきましては、運輸本省及び陸運局が現在重点的に立入調査をいたしておるところでございます。
  64. 柴田弘

    柴田委員 まだ僕はそこまで聞いておりませんが、課長さんが答弁された。とにかく、二千軒ぐらい登録ホテルがあって、五十五年に総点検をされた。そして、いまお話があったように、五十六年の二月、三月にかけて防火安全上問題になるホテルにつきましては通達を出された、こういうことなんですね。そこまではいいわけですよ。問題は、その通達を出された結果、運輸省の方が消防庁等々との連携のもとに、その結論のチェックがどうなったかということを掌握をされていなかった、こういうふうに私は思うわけですね。そうですか。結論を、通達の結果というものを運輸省当局がきちっと掌握をされておったかどうか。もし掌握されておれば、ニュージャパンのような消防法違反する悪質なものが果たして政府登録ホテルとしてのうのうと今日までやってこれたかどうかという問題があると私は思うわけですね。その結論のチェックということはどうでしたか。
  65. 高橋克彦

    高橋説明員 先生ただいま御指摘のございました、指摘を受けたものについて通達を出した後、チェックをしていたかという御質問でございますが、私どもの方といたしましては、防火防災上の観点からの旅館、ホテルの安全措置というものにつきましては、基本的には先ほど申し上げましたように建築法令、消防法令により措置されるべきものというふうに考えておりまして、そういうことで自主点検をさせてその結果を報告させたということでございます。具体的にその後、たとえばホテル・ニュージャパンにつきまして昨年九月消防当局の方から措置命令が出ておりますけれども、これにつきまして、私どもの方は、遺憾ながら東京消防庁当局の方から措置命令を出したというふうな御報告はちょうだいしておりませんでした。
  66. 柴田弘

    柴田委員 いま私は二百ぐらいというふうに聞いておりますから言いましたが、運輸省から見て問題なのは、二千軒のうち正式に幾つあるのですか。
  67. 高橋克彦

    高橋説明員 ただいま正確な数字を手元に持っておりませんので、末尾までは正確に申し上げられませんが、消防当局、建築当局等から指摘を受けたというふうな報告をしておりますホテルは百九十数社でございました。そのうち、重大な指摘を受けたというふうな、たとえばスプリンクラーあるいは防火区画の不完全というような指摘を受けたというものは約五十でございました。
  68. 柴田弘

    柴田委員 そうしますと、いま御答弁がありましたように、この百九十幾つ、特にそのうちの悪質な五十、こういったものについて今後運輸省として政府登録ホテルとしてどう措置されるかという問題が出てくるのではないか、私はこういうふうに思うわけでございます。ホテル・ニュージャパン登録ホテル取り消し等の問題も含めまして、二月一ぱいに総点検をされる、こういうことでございますが、今後どういった措置をされるか、ひとつ明確な御答弁を承りたいと思います。
  69. 高橋克彦

    高橋説明員 私どもは、現在総点検を実施中でございます。特に、先ほど申し上げました重大な指摘を受けたと考えられるものについては、立入検査を地方陸運局及び本省で行っております。この結果を受けまして、私どもは、国際観光ホテル整備法に基づきます登録ホテル、旅館に対しましては、改善勧告、あるいは非常に悪質な、消防当局等から措置命令等を受けまして、何度も受けても改善措置がとられていないというふうなものにつきましては、取り消しも含めて措置してまいりたいというふうに考えております。
  70. 柴田弘

    柴田委員 それはニュージャパンも含めると考えていいわけですね。これは後で答弁してください。  それから、あわせて国際観光ホテル整備法の問題で簡単にお伺いしていきたいわけでありますが、これは昭和二十四年にたしか議員立法ということで公布されたというふうに私は思います。しかし、これは外人向けホテル整備推進ということに主眼を置いた法律でございまして、防火安全対策上あるいはまた今日の社会的なニーズというものにも合ってないのじゃないか、いまこういった議論があるわけであります。  それで、運輸省にお尋ねしたいのは、今日の時代の要請、社会のニーズ、こういったことにいわゆる昭和二十四年に公布されました今日の国際観光ホテル整備法というものがたえ得る法律であるのかどうか、この辺はいかがでしょうか。
  71. 高橋克彦

    高橋説明員 先ほど御説明いたしましたように、登録ホテル、旅館におきます防火安全上の確保ということにつきましては、基本的には建築法令あるいは消防法令によって確保されるべきものであるというふうには考えておりますが、登録ホテルが非常に不安全であるというふうなことは好ましいことではないというふうに考えております。したがいまして、今後登録ホテルにおける宿泊利用客の安全確保のための措置につきましては、幅広く検討していくこととしたいと思っております。その一環といたしまして、国際観光ホテル整備法の改正につきましても、必要であるのかないのか、あるいは必要があるとすればどういうふうにしたらいいのかということを検討してまいるつもりでおりますが、現在、その改正の方向について結論を得ているというところまではまいっておりません。
  72. 柴田弘

    柴田委員 整備法は、一度登録をいたしますと、消防法、建築基準法などの改正で防災安全対策が不十分なものになっていても、それだけでは手が出ない、相当な悪質なものでないと登録の取り消しはできない、こういうふうな仕組みになっておるわけでございます。私は、消防あるいは建築当局から警告や改善命令を受けたホテルについては、やはり一定のルールを定めまして、機動的にホテル名を公表したり、あるいは政府登録の抹消ができるようにする、こういった本当に政府登録という金看板実質的なものにしていく、やはりこういった法律の見直しというものがいま必要ではないかと考えるわけでありますが、この点についての御答弁、それから先ほどお願いいたしました、ホテル・ニュージャパンも今後の情勢次第によっては政府登録を抹消していくお考えであるのか、この二点、最後運輸省にお聞きしたい、こういうふうに思います。
  73. 高橋克彦

    高橋説明員 まず、ホテル・ニュージャパンに対します措置でございますが、ホテル・ニュージャパンに対しましては、消防当局から防火安全等のどのような指導が行われていたかというふうなことについて現在調査中でございます。何分、代表取締役の横井英樹氏が現在多忙ということで、実は私どもは事情聴取をしたいということで面会を求めておりますけれども、会えない状態でございますので、まだそちらの方はそこまで行っておりませんが、取り消しの処分を含めまして、今後きちんとしたことをやってまいりたいというふうに考えております。  それから、ホテル整備法の改正の問題でございますが、先ほど御説明申し上げましたように、運輸省として、登録ホテル旅館の安全確保のため講ずべき措置について今後幅広く検討してまいりたいと思っております。その一環として、ホテル整備法の改正の必要性の有無、あるいは改正するとしたらどういうことを改正するかということにつきましても、これから真剣に検討してまいりたいと思っておりますが、先ほど御説明申し上げましたように、その方向につきましてまだ結論を得ている状態には至っておりません。
  74. 柴田弘

    柴田委員 次の問題に入ります。運輸省消防庁は結構です。  科学技術庁のエリアになると思いますが、防災に関する研究の問題、きょうも国土庁長官から提案理由の説明がありましたが、防災に関する研究開発基本計画、この問題について私はお伺いをしていきたいわけであります。  御承知のように、これは鈴木総理が議長をいたしております科学技術会議が答申をいたしたものであるわけでありますが、今後十年間にわたって研究開発をしていかなければならない防災技術として、十七分野、四十四項目にわたり答申をいたしているわけであります。防災対策を効果的に進めるために、自然現象の解明、災害発生の予知災害防止などについてできるだけ科学的な技術というものを活用することは重要であると思います。防災技術の開発は、地震予知がかなり組織的に進められているほかは、現在各省庁がばらばらに取り組んでいるわけであります。今回、答申がこのように複雑多岐にわたる課題を整理し目標を示したことは、私は評価するにやぶさかではございません。しかし、基本計画が各課題の優先順位や資金配分などを具体的に示していないのは残念であります。  今日の財政事情から考えまして、すべての防災技術の課題に十分な資金を投入することはできないということは、私もよく理解をいたします。しかし、こういった課題にどれだけの資金を投入をすればどれほどの効果が期待できるか、あるいはまた、国の科学技術関係予算のうちどれだけを防災に回したらいいのか、このような問題を多角的に検討して、各課題ごとに資金面の裏づけをすることが本当の計画である、こういうふうに私は思います。しかも、先ほど申しましたように、今日のように財政事情が厳しい財政再建下の時代にあっては、なおさら私は必要であると思います。  お聞きしたいのは、この開発基本計画という答申を受けて、今後政府が早急にこの基本計画を資金面の裏づけを持った具体的な計画にしていかなければならない、こういうように思うわけでありますが、その辺の取り組み、プログラムがあればひとつ御説明をいただきたいし、果たしてこの答申が今回五十七年度予算にどう反映をされているのか、その辺を含めてお伺いをいたしたいと思います。
  75. 倉持哲士

    ○倉持説明員 御説明申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、災害に対して適切な対策を講じるためには、科学技術というものが非常に重要なわけでございますけれども、これも先生御指摘のように、昨年七月に科学技術会議防災科学技術推進に関する答申というものを受けまして、防災に関する研究開発基本計画というものが政府で策定されたわけでございますが、この計画に基づきまして国立試験研究機関、大学、民間等の相互の有機的な連携を強化いたしまして、総合的、効果的に研究開発推進を図っていくということが、この研究開発基本計画をつくられた最大の眼目だと思っております。  先生の御指摘の今後の資金計画等につきましては、この計画は先生御指摘のこういう部門につきまして重要な研究開発部門を掲げまして、これらにつきまして関係省庁にも積極的に推進していただくというお願いをしてございます。そして、こめ基本計画におきまして重点を置くべき研究開発分野というのを先ほど先生御指摘になりましたけれども、まず自然現象の解明と予知、予測、あるいは地変災害の防止技術ですとか、気象災害の防止技術、それから総合防災に関する科学技術、こういうように大きく四部門に分けまして、具体的に掲げているわけでございます。科学技術庁におきましては、この計画を踏まえまして、関係省庁の試験研究機関の科学技術に関する経費の見積もり方針の調整ですとか、科学技術振興調整費によります研究、あるいは国立防災科学技術センターにおきます総合的な防災に関する研究推進等を通じまして、防災に関する研究開発推進を図っているところでございます。  御参考までに申し上げますと、昭和五十七年度のこの分野におきます研究開発予算案は二百八十四億円になっております。
  76. 柴田弘

    柴田委員 それで、基本計画は今後具体化されていくと私は思いますが、やはり二つの点を重要視しなければいけないのじゃないかというふうに思います。  一つは、首都圏における直下型地震予知手法の開発ということであります。東海沖地震についてはかなりの観測体制の整備が進みまして、いま五十四年度から第四次五カ年計画に入っておるわけでありますが、相当な進行状態を見ておりますけれども、首都圏の直下型地震、もしこの東京に地震が起こったらどうなるであろうか、これは非常に大変なことであります。私も選挙区が名古屋市でありますので、名古屋は東海沖地震の範囲に入るわけでありますが、しかしそれはそれとして、そういった大都市に地震が起こった場合には非常に甚大な被害が出てくる。しかし、残念ながら現在の段階におきましては、こういった首都圏の直下型地震についての発生機構はまだ十分に解明されていないわけでありますし、あるいは交通機関による地盤の振動、軟弱堆積層の観測、こういったものは非常にむずかしいということで、その観測体制の整備が進んでいないというふうに思うわけであります。だから、こういった直下型地震の発生機構の解明あるいは観測体制といったものの充実をもっともっとしていかなければならない、私はこういうように思いますが、その辺についての御見解。  それから、いま一つは、基本計画にも言っております総合防災研究であります。これは地震予知から警報の発令、伝達、避難誘導、救急医療など、一貫した人間の視点に立った防災対策が必要であると答申が言っておりますが、私はそのとおりであるというように思います。現在、耐震技術、防火、住民避難などの調査研究というものはそれぞれの省庁にわたって手がけられているわけでありますが、この科学技術と心理学、社会学を含めたこういったものを総合的に研究して、被害を少なくしていくといいますか、限定をしていく、そういった研究体制というものを確立していかなければならない、こんなふうに考えておりますが、この取り組み、今後の方向、これをお聞かせいただければと思うわけであります。
  77. 倉持哲士

    ○倉持説明員 初めに、首都圏の直下型地震予知につきまして御説明申し上げます。  先生御指摘のように、発生機構あるいは観測に当たりまして非常に困難であるというような幾多の問題がございますので、研究開発がいま一生懸命に進められているわけでございまして、まだ地震予知の体制の整備までには至ってないわけでございます。私どもの国立防災科学技術センターにおきましては、研究開発の一環といたしまして、三千メートル級の深井戸によります首都圏の地下基盤におきます観測を進めております。そのほか、建設省の国土地理院におきましては、首都圏での土地の上下あるいは水平変動を監視するための精密測量というようなことを実施しておりますし、さらに気象庁、工業技術院の地質調査所等におきましても、地震ですとか、地殻変動あるいは地下水等の研究観測を鋭意進めておりまして、地震予知のための技術開発に努めているわけでございます。  さらに、昭和五十六年度から科学技術振興調整費というものが設置されましたけれども、その中で首都圏における直下型地震予知というような研究を取り上げまして、地殻変動観測システムですとか、あるいは高精度のレーザー観測、レーザー測距技術等の技術開発を進めまして、首都圏直下型地震予知に必要な技術を蓄積しているところでございます。今後とも関係省庁の協力を得まして積極的に進めてまいる所存でございます。  もう一点、総合防災につきまして御指摘がございましたが、総合防災につきましても、やはり五十六年度からスタートいたしました新しい総合防災システムに関する研究という研究開発テーマを取り上げまして、地震の早期検知、あるいは警報伝達システムの開発ですとか、二次災害拡大防止に必要な火災拡大予測手法の開発、あるいは避難誘導技術の高度化等、大地震時の総合防災対策に資するための研究開発を、これも関係省庁の協力を得て積極的に進めているところでございます。
  78. 柴田弘

    柴田委員 直下型地震の観測体制の整備というものがなされていないという御答弁があったわけなんですが、これは困難な諸問題があろうかと思いますが、今後ぜひとも前向きに取り組んでいただきたい、これをひとつ要望いたします。  あと時間がわずかになりましたので、最後に一点だけ質問をして終わりたいと思うわけでありますが、がけ崩れの防止対策であります。  御案内のように一都市化が進みます。地価も高いということで、だんだん危険地帯といいますか、丘陵地に住宅が建つようになってきた。建設省のパンフレットを見せていただきましても、昭和四十二年から五十五年の十四年間でがけ崩れが六千七百九十二カ所発生をし、亡くなられた方が千三十八人、負傷者が千百二十八人、家屋の全壊が二千九百六十九戸、半壊が九千三百八十七戸、こういった甚大な被害ががけ崩れで起こっている。そして、お聞きいたしますと、現在、全国的にがけ崩れの危険個所が六万四千カ所ある。しかも、そこに百万戸生活していらっしゃる、こういった状態であります。  だから、対策は、一つとして、こういった危険区域に指定されている地域の総点検をやっていらっしゃると思いますが、どの程度の降雨量があったならば危険となり、そのとき住民はどんな方法でどこへ避難したらいいか、そういった各地域の実情に合った一つの警戒の体制というものをもっともっとしっかりと確立をして、人命の安全を図っていくという努力。それからいま一つは、こういったところには人はなるべく住まわせない、そういったところに不幸にして住んでいらっしゃる方は、移転をもっともっと促進をしていく方途を講じていかなければいけない、こんなふうに私なりに考えているわけでございますが、このがけ崩れ対策基本的なお考え方について建設省にお伺いをしておきたい、こういうふうに思います。
  79. 関戸研一

    ○関戸説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、昭和五十二年の調査によりますと、全国でがけ崩れの危険個所が約六万四千カ所あるわけでございますが、工事面から申しますと、五十六年度末までで約一割の六千三百九十七カ所につきまして概成できる予定でございます。一方、工事面のみでなく、急傾斜地崩壊危険区域に指定いたしますと、いろいろな有害行為の制限とか、それから危険な個所につきまして防災措置の勧告とか、あるいは制限行為を行なった人に対しまして危険が伴う場合には改善命令を出すとか、あるいは災害危険区域に指定して、その中の人家の移転等の勧告も行っていくというようなことが発効するわけでございます。その中の一つとして崩壊防止工事を行っておるわけでございますが、五十六年度につきましては、五百十四億九千余万円をもちまして二千百七十二カ所について工事を行っております。五十七年度につきましても、現在のところ、五百十五億余万円をもちまして二千二百二十カ所の工事を行っていく予定でございます。  こういった膨大な個所につきまして、工事につきましては年間二千カ所余り着工する程度でございますので、総合的ながけ崩れ対策ということで、警戒避難体制の確立といった面について、先ほど先生おっしゃいましたような地域防災計画におきまして、避難場所とか避難経路とか、そういったものを市町村において決めていただきまして、ある雨量になったときには避難していただく。この雨量につきましては非常に地域性もございますし、地質的なもの、地形、いろいろなことが絡んでまいりますので、何ミリでどうということははっきりしないわけですが、一応標準的な考え方として、百ミリ以上降った場合には危ない、それから時間雨量にして二十ミリ以上降った場合には危ないというようなことで、現在市町村あるいは府県を指導しておるわけでございます。  こういった形で、工事につきましては遅々としてはかどらない現状でございますけれども、なお一層もちろん努力はするわけでございますが、少なくとも人命保護ということで警戒避難体制を確立していただくように指導していきたいと思っております。
  80. 柴田弘

    柴田委員 農水省、申しわけございません。冷害対策について御質問をと思っておりましたが、時間が参りましたので、これでやめます。次回にやらせていただきますので、よろしく。
  81. 川俣健二郎

    川俣委員長 これにて柴田君の質疑は終了いたしました。  次に、横手文雄君。
  82. 横手文雄

    ○横手委員 私は、けさほど大臣から御報告がございました災害復旧計画等概要あるいは各省庁予算に関する概要等について、まず長官にお伺いを申し上げる次第であります。  この示されました防災関係予算は本年度二兆五百二十億、昨年度に比べて十五億円の増加でございます。しかし、この中身を見たときに、特に予防関係といったところが昨年度並みか減額をされておるという状態であります。その中には、たとえば今日まで災害防止のために行ってきた事業が今年度で終わったということで大幅に減額をされたようなものもあるからだろうとは思いますけれども、しかし、けさほど長官がお述べになりましたように、自然災害、特に去年は大変な災害が起こってまいりましたので、昨年度予算の一般会計の中でその復旧作業に当たったわけでございますけれども、それでも足りなかった。したがって、先般出されました五十六年度の補正予算等につきましても災害復旧のための大きな金が出されたわけであります。それだけ被害が大きかったということは、それだけその地域の人たちが大変な目に遭ったということでございまして、今日までもいろいろと予防措置はとられてきたであろうけれども、しかしこの予算で見る限りでは、一体これでいいのだろうかという気がするのであります。  国民の生命と財産、いつ襲ってくるかわからない自然災害に備えて、その防災のために手を尽くしておくというのが政治の先取りであろうと考えます。こういった観点に立ちまして、けさほど示されましたこの予算全般等につきまして、まず国土庁長官としての所見をお伺い申し上げる次第であります。
  83. 松野幸泰

    松野国務大臣 御質疑にお答えする前に、災害復旧予算は、従来三・五・二ということに改善されておりましたものをさらに五・三・二ということに改正する方針を五十六年度で決めまして、いま御指摘のようにいろいろ予算措置をとったことは御承知のとおりでございます。したがって、五十六年度の災害については従来にも増して災害復旧の進度率は高くなりまして、実際は六〇%以上進度率を高めておることは御承知のとおりでございます。  そこで、五十七年度に対しての考え方でございますが、災害から国土を保全して国民の安全を守ることは国の基本的な責務であって、政府としては、治山治水対策を初めとする各般の災害対策計画的な推進に努めているところであります。  お尋ねの昭和五十七年度の防災関係予算についてでありますが、財政再建という厳しい状況のもとで、関係省庁において格段の努力がなされ、総額としては御指摘のように二兆五百二十億円で、前年度を若干上回っており、所要の額が確保されたものという考え方を持っております。
  84. 横手文雄

    ○横手委員 私は、いま御答弁をいただきましたようなことについてはそのとおりだろうと思います。しかし、災害は、けさほど大臣も御指摘になりましたように、去年は大変な目に遭ったのであります。国民の命と財産がたくさん失われた。世の中に、備えあれば憂えなしという言葉もあります。そういった関係で、全体的に見ると、復旧まで合わせてみると多少増額になっておるようでございますけれども、事防災関係についての予算が昨年度並みあるいは減額ということになっております。これらに対して、各省庁を総合的に推進調整される立場である長官の御所見をお聞きしたのでございまして、この点についてもう一遍答えていただけませんか。
  85. 川俣芳郎

    川俣政府委員 五十七年度の災害関係予算については、けさほどから大臣も御答弁申し上げておるようなことで、総額においては昨年度並みの金額を確保しておるわけであります。  ただ、御指摘のように、たとえば科学技術研究関係で申しますと、対前年比九九・五%、一億四千万ほど減っております。中身を見てまいりますと、たとえば科学技術庁関係ですけれども、地震予知研究等整備というのが昨年度はございまして、これが完成いたしましたので三億三千七百万ほど減っておるというような入り組みもございます。したがいまして、私ども全体としてながめて、各省庁とも重点的に取り上げるべき事項については十分な配慮が予算上なされているのじゃなかろうかと考えているところでございます。  国土庁といたしましても、災害関係の総合調整を図る官庁として、各省庁には、災害対策緊急性、重要性にかんがみてできるだけの予算を確保されるよう、常時お願いをしてきているという状況であります。
  86. 横手文雄

    ○横手委員 それでは、次に、きょうの御説明の中でも特に取り上げられた点ですけれども、長官の御説明の中でも「大都市震災対策の一層の推進を図るため、南関東地域を対象として地震被害想定調査を進めてまいります。」こういうことを述べられましたし、さらにこの予算の中でも、特に災害予防の項の中の国土庁の中で「南関東における大規模地震被害想定等に関する調査」、こういったことで御説明が行われたわけでございます。この地域はわが国の政治、経済、文化の中枢地であり、それと並行して人口、産業といったものも集中をしている、まさに日本の心臓部と言ってもいいであろう。こういったところに直下型地震が起こった場合に、一体どういう被害が起こるのであろうか、こういうことを想定をし、その対策を打ち立てていく、このことは大変大事なことであろうと私は思いますけれども、その内容は具体的にどういうことなのか、このことについてお尋ねを申し上げます。
  87. 川俣芳郎

    川俣政府委員 実は、ただいま先生がお述べになりましたような気持ちで私どもこの被害想定の調査を始めたわけでございます。事務所、事業所、住宅等がこの南関東地域には集中いたしておりまして、大規模な地震が発生をした場合には甚大な被害が予想される。したがいまして、同地域内の大規模地震被害想定を行いまして、その結果に基づきまして発災後の実践的な応急対策活動システムを検討する必要があるというふうにかねてから考えておった次第でございますけれども、このような考え方に基づいて、五十六年度から被害想定調査実施しておるわけでございます。専門の学者、先生等から成る被害想定調査委員会というのを設けております。この委員会の下に八分科会ございまして、それぞれ専門の分野で御検討いただいておるのでございますが、具体的な内容といたしましては、南関東域内一都三県につきまして、地質、地盤、市街地の現況等につきましてできる限りの即地的な調査を行いまして、関東大地震と同程度の地震が発生した場合におきますところの罹災者数とか倒壊家屋数、焼失面積等の推計を行おうということにしておるわけでございます。  なお、先ほどもお述べになりましたように、都市的な機能が高度化しておる地域でございますので、電力、ガス、水道等のいわゆるライフラインがどのように破損するか、あるいはターミナル周辺等の混乱、都市部に多くの人が滞留する、そういった場合に予想される社会的な混乱といったようなものについても調査項目として取り上げておる次第でございまして、五十六年度、五十七年度の二カ年度にわたってその概要を取りまとめてまいりたいと考えております。     〔委員長退席、池端委員長代理着席〕
  88. 横手文雄

    ○横手委員 私は、大変大事なことだというぐあいに思います。いまそれぞれの自治体でもこういったことが想定をされて、たとえば食糧の備蓄だとか、あるいはそれぞれのお店屋さんに対していざというときに協力を願うといった体制をつくったり、あるいは水がめをつくって水をためておくといったようなことが行われているわけであります。そういうところも、どのぐらいの被害が起こるであろうかということを想定しながら、それらの備蓄計画等も行われることでございましょう。  ただ、地震というのは発生をする時間によって全く変わってくる。そのときの気象状況、たとえば関東大震災のときには不幸にしてこの地方を低気圧が襲っていた、したがって余りめったなことではないけれども十メーター以上の風が吹いていた、しかも市民がみんな火を使うときであった、こういうようなことで、考えられないようなことが幾つか重なってあの大惨事を引き起こした、こういうことであります。したがって、この発生を夜中と想定をするのか、あるいは昼にするのか、あるいは夕方のラッシュアワーに想定するのかということによって、その被害の程度は全く変わってくるのではないか。そのとりようによっては、いま自治体でそれぞれ進められているいろいろの災害に対する備え、こういったものも根本的に見直さなければならないのではないかという気がするわけでございますけれども、今日まで進められてきておる地域の被害想定、それに対する備蓄体制、こういったものとの整合性等については一体どうなさるのか、お尋ねをいたします。
  89. 川俣芳郎

    川俣政府委員 各自治体におきましてもいろんな想定をいたしまして調査をしておることは、私どもも承知をいたしております。ただ、対象となります一都三県の区域内の被害想定を統一的にやったことはまだないわけでございまして、そういった意味合いで、統一的な調査の必要があろうというふうに考えております。  その被害をどの程度の地震を予想して想定するのかということがあるわけでございますけれども、ただいまお話がございましたようなことで、一九二三年に起こりました関東大地震は非常にレアケースであった、百のケースのうちの五%から一〇%の間ぐらいの確率しかないレアケースであった、不幸にして風が十メートル程度吹いておったということもあるわけでございます。  そこで、私どもは三つのケースを想定して被害想定をしようと思っております。一つは、関東地震と全く同じ条件で地震が発生した場合であります。それからもう一つは、季節は冬、曜日は平日、先ほども御指摘がありましたけれども、時間につきましてはラッシュアワーに入る直前といいますか、直ちにラッシュアワーになるといいますか、午後五時、風速につきましては四メーターというようなことでケース1を想定いたしまして、ケース2につきましてはこれを夜間に置きかえまして想定をするということで、三つのケースについて調査を現在やっておるわけでございます。  備蓄との整合性のお話がございましたけれども、私どもといたしましては、この被害想定が完了いたしました後で、先ほど申し上げましたように、応急対策システムの研究に取りかかろうと思っておりますものですから、その段階で、ただいまおっしゃいましたようなことは当然検討してまいらなければならぬと考えております。
  90. 横手文雄

    ○横手委員 私は、この点についてひとつ厳しい条件の中における想定、最悪の場合はどうかというようなことも十分に御検討をいただきたいと思うのであります。たとえば確率だけでこういうものを追っかけていくというのは大変危険なことのような気がするのであります。  私の選挙区でございます福井県の北陸トンネルで夜中に列車火災がございまして、多くの死傷者を出しました。あれを仮に確率で求めるとすれば、走っている列車から火が出るという確率は一体どれぐらいであろうか。それに加えて、掛け算でいくわけでございますので、トンネルの中で起こる確率はどうだ、しかも真夜中に起こる、しかも日本一長いトンネルの真ん中で起こる確率、これはもう確率を探していったらゼロだと思うのです。そんなことを想定できるはずがない。ところが、現実には起こったのであります。真夜中に、走っている列車、みんなが寝静まったところで、しかも北陸トンネルという非常に長いトンネルの真ん中でこれが起こった、こういう事実があるわけであります。これは机上論からいきますともうあり得るはずがない。どんな数字を使ってもその確率が重なるようなことはないというのが結論だろうと思いますけれども、しかし事実として起こったわけでございますので、そういったことを十分に踏まえながら、最悪の事態で起こったときに一体どうなのであろうか、避難道はいいのか、あるいは避難場所はいいのか、こういったことも十分に検討をしていただき、そのことがまた国民のあるいは地域住民の皆さん方の日常の心構え、加えて地方自治体としてのそれに対する心構え、こういったものにつながっていくようにぜひお願いをしておきたい。  何遍も申し上げるようでございますけれども、災害はいつ来るかもわからない、備えあれば憂えなし、こういうことでございますので、せっかくの御努力をお願い申し上げる次第であります。  こういった中で、私は次に具体的なことについて少しお伺いをいたしたいと思いますけれども、昨年の豪雪あるいは風水害、豪雨、こういったことでたくさんの災害が発生をいたしました。政府としても直ちにそれなりの体制をつくってその復旧作業に努めてこられたわけでありまして、先ほど長官からは、これをさらに早くするために前倒しでこの復旧に取り組んできた、そのために補正予算等においても国会の御協力をお願いをしてきたところだ、こういうようなことでございました。大変重要なことだと思いますけれども、それらの早期復旧のための予算措置あるいは進行状況、こういった全般的なことについてお伺いを申し上げます。
  91. 川俣芳郎

    川俣政府委員 先ほど大臣から御答弁がありましたとおりなんでございますけれども、五十六年災害で、公共事業関係で数字を申し上げますが、国費の所要見込み額が五千八百二十八億とされております。当初予算で五百二十億、予備費から二百四十四億、先ほどお話のありました補正でもって二千五百六十二億ということでございます。そこで、五十六年度中の進捗率は六割弱、五七%強になろうかと考えております。五十七年度におきましては、五千八百二十八億のうち千五百四十五億が予算措置されておりまして、五十七年度中の進捗率は約八四%程度に達すると考えております。
  92. 横手文雄

    ○横手委員 全般的にはそういうことで御努力をいただいておることを承知をしておるところでございますけれども、ただ、去年の豪雪によって、想定をされなかった被害一つでありました折損木の問題がございます。     〔池端委員長代理退席、委員長着席〕  杉の木、三十年木、四十年木が大変な被害を受けました。したがって、これは豪雪の救済措置等にも当てはまらない、まさに未曽有の被害であったわけでございまして、特に、私の選挙区でございます福井県は、その代表的な被害を受けたのでございます。親子何代にもわたって山に生きてこられた人たち、こういった人たちの暗たんたる気持ちも察するに余りあるものがございました。予想もされなかった大災害であっただけに、いまも申し上げましたように、今日までの法律をもってしてもこれは救済ができないということで、新しい法律ということであの中に議員立法として折損木に対する処理等を含めた新しい法律ができ上がったわけでございます。これに基づいていま地元でも鋭意復旧のために努力がなされておりますけれども、しかし、かつて経験したことのない災害であっただけに、その進捗状況にいろいろと問題が出てきております。  まず一つは、倒伏木の問題であります。木が倒れました、これを起こす、こういうことであります。これは、今日までも豪雪災害のときには倒伏木に対する補助金を出すということで行われてきたわけであります。常識的に考えて、雪が解けたらすぐ起こす、これはもうあたりまえのことでございます。これを一年間もそのままにしておいたのでは、木そのものがもうだめになってしまう。そして、二年もたってから起こしたのでは、これはまともな木にならないであろう。したがって、倒伏木というのは一年間で起こすというのは常識だ、こういうことで、事業計画も、雪害が起こった年にはもうどうしようもないわけでございますので、倒伏木についてはその翌年一年かかって起こす、これはもう一年で終わり、こういうことになっておるわけであります。  ところが、去年の場合には、先ほど来申し上げておりますように未曽有の災害であった。四十年木が途中からぽっきり折れるような、まあ当時いろいろな表現がなされましたけれども、何かもちの中に割りばしを突き刺したような形に山全体がなってしまう、こういうことでございますので、その倒伏木につきましてもいままでのようなものでは全然なかった。しかし、その復旧事業は一年であるために、地元では県も一生懸命になりまして、まず倒伏木を起こせ、それでこの地域については一年間でやるという計画を持って、そしてやってきた。これがもう期限が切れるわけですから、とにかく急げということで一応終わって、そしてこれの補助申請をやった。しかし、実際は手が回らずにまだ一、二割残ってしまったという実態があるわけであります。  これは先ほど来申し上げておりますように、もう一年間もたったのだからいまさら起こしてみてもどうにもならぬだろう、むしろそれは間伐の対象ぐらいにすべきじゃないか、こういう意見もあるわけでございますけれども、地域の人たち、親子何代にもわたって山を育ててきた人たちは、いまから起こしてもこれは成長する、こういうことで起こしたいという願いがあるわけでございますが、これに対する救済措置というものはないものなのかどうか、この点についてお伺いいたします。
  93. 谷口純平

    ○谷口説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話がございましたように、昨年四月に、未曽有の森林災害に対処するために激甚災害法の一部改正が行われまして、森林災害復旧事業という制度が創設をされたところでございますけれども、現在この制度を中心にいたしまして計画的な復旧に努めているところでございます。  御指摘の倒木起こしにつきましては、森林災害復旧事業一つの作業といたしまして、倒伏した樹木を引き起こすことによって森林の復旧を図るというものでございますけれども、樹木の整理上、被害後できるだけ速やかにこれを実施する必要があるというふうなことで、政令におきましても災害発生年度及び翌年度中に実施をするというふうに決められているのでございます。したがいまして、本作業は五十六年度をもって完了する計画実施中でございますけれども、これを一年間延長するということはきわめて困難であろうかと考えておりますが、何分御理解を賜りたいと存じます。
  94. 横手文雄

    ○横手委員 私は、具体的にその政令事項をこの際一年間延長したらどうだ、こういうようなことで申し上げておるのではないわけであります。これは常識的に考えると、おっしゃるように、倒れた木を一冬も三冬も寝かせたままに置くということには問題がある。だから、雪が解けたらすぐ起こせ。発生は年度末に大体起こるわけですから、その年にはできない。したがって、翌年の春先から起こしにかかるということであります。これは当然のことであります。したがって、ことしじゅうに全部起こしてしまえよ、それでなければ倒れた木は、もう一冬越したのでは使い物にならないし、あるいは起こしてみたところで成長するかどうかわからない、こういう前提に立ってこの一年というのが決められたのだというぐあいに理解をしておるわけであります。  そういうことで地元の人たちもこの一年間がんばってやってきたわけです。それでなければ、やらなければ倒伏の復旧作業ということで補助金も出ないということでございます。一生懸命やりました。しかし、二割ほど残った。それで、起こしたいというわけであります。これは大体四、五年齢級木というのですか、したがって、樹齢にすると十五年から二十年ぐらいということなんでございますしょうか、そういう木が特に残った。これは大変手間暇かかります。これはジャッキみたいなものを持っていって起こさなければなりませんので、手間暇かかる。だから、そういうものは後にしておけ、こういうことでやった。しかし、事業年度は一年しかないわけですから、済んで、それで補助金の手続は済んだけれども、しかしまだ倒れた木があるし、起こしたいということで、地元の皆さん方はそういう熱意を持っておられますけれども、これに対して、その作業に対して手をかしてあげる手はございませんか、こういうことをお聞きしておるのです。
  95. 谷口純平

    ○谷口説明員 先生御指摘のように、森林所有者の心情といたしましては、長年手塩にかけた木でございますので、倒伏木を引き起こすことによってすべて救いたいというお気持ちがあるのは当然かと思いますが、私ども県あるいは県の試験場等から報告を受けております限りにおきましては、十年生を超えるような林木におきましては、非常に曲がりが大きいものだとか、あるいは倒伏してしまったものだとかは、外見上割れが見えなかったりいたしましても、その材の内部に日割れが生じておるとか、あるいは根っこが切断しておるとかいったようなことで、よしんば起こしてももとに復さないというケースが間々あるというふうに報告を受けておるのでございます。  それで、御指摘のようなケースについて、仮に引き起こしたといたしましてももとに戻らないといったようなものも多分にあろうかと存じますし、制度的に、先ほど申し上げましたようなことで五十六年度限りで助成の対象から外れてしまうわけでございますけれども、将来その森林所有者の方々の御努力によって、除伐等の段階でそれらを整理していただくのが実情に適した措置ではないかというふうに考えるわけでございます。何分御理解を賜りたいと存じます。
  96. 横手文雄

    ○横手委員 たとえば樹齢十五、六年ぐらいの木になって、そして倒れた、あるいは傾いた、これはその年に起こしてあげなければ、それを過ぎてからではまともな木にはならないよ、こういったようなことは現地の人が一番よく知っておるわけなんです。親子何代も木を育ててきたわけですから、この木はもう一遍立ち上がる、この木はだめだということで、これは現地の人が一番よく知っています。だから、その人たちが、残っちゃった、しかしあれも起こしてやりたいという気持ちでこれから取り組もうとされておるわけですから、そういうことで、いまさら起こしてももうどうにもなりません、だからこれは助成の対象にはなりませんと言われるのなら、起こして大丈夫という木を現地の人はよく知っておられるわけですから、何とかその点についての措置あるいは手助けの措置を考えていただきたいというぐあいに考えておるわけであります。  それから、いま一つは、雪解けも遅くなりましたので、去年一年間は倒伏木起こし、こういったことで追われました。したがって、山の片づけばまだほとんど進んでおりません。これから入るわけであります。問題は、三年間のうちにこれを終えなければならないということで、地元では、県の方でも一生懸命になって地元と一緒に作業をしておられるわけでございますけれども、この作業道の問題です。  私も現に見てまいりましたけれども、一本作業道がついた。そして一山片づけた。使えそうな木だけは森林組合の庭まで持ってきたわけでございます。それをさらに延長して奥の方を片づけるわけでございますけれども、一山片づけたらこの作業道はもう一遍手を入れなければならない、こういうことであります。ところが、この作業道の単価は幾らになっておるかひとつ教えてもらいたいのですけれども、それが間に合わない。だから、もう一遍手入れをすると次まで延びていかない。したがって、それじゃ大変なことになるから、補修については森林組合がこれを補修しなければならない、もう手が回りません、こういう悩みを訴えておられるわけであります。  後片づけのために助成もしましょう、作業道もつくりましょう、こういうことで約束をしたわけです。これは無限大にというわけにはいかないというぐあいに思いますけれども、林道みたいなりっぱなものをこの際つくれということには、地元としてはそういう希望はありますが、復旧のための作業道ということに限定すればなかなかそこまではいかないでしょうけれども、しかし一山片づけたらもうこの道はもう一遍手を入れなければどうにも使えない、こういう道路であるという事実、こういった状態にかんがみ、その予算単価等についてもう少し配慮してあげなければ、後片づけはなかなか計画どおりに進んでいかないという実態がございます。この点についてのお考えをお聞かせいただきたい。
  97. 谷口純平

    ○谷口説明員 お答えをいたします。  被害森林を復旧するために作設いたします作業道は、本来、当該被害森林を復旧するに必要な労務や資材の搬入等の目的でつくりますために、簡易な構造の施設として作設することにしておるのでございます。作業道の作設に当たりましては、従来から当該作業道の使用目的なりあるいは使用期間などについて十分考慮いたしますとともに、現地の地質条件等に即した規格構造を持った作業道を作設するように指導しているところでございます。今後さらにこの趣旨を徹底いたしますとともに、適正な単価の設定について県に対する指導を深めてまいりたいというふうに考えております。  御指摘のございました単価につきましては、全国平均が一メートル当たり開設単価四千六百円であるのに対しまして、福井県の場合はこの森林災害復旧事業にかかわる作業路は六路線ございますけれども、その平均が五千四百円でございまして、全国平均よりは上回っているという状況でございます。なお、六路線につきましても地域の条件がいろいろ違いますので、四千二百円から六千百円までというふうに分布をしておりまして、全国的に見ればかなり行き届いた単価ではないかというふうに考えております。
  98. 横手文雄

    ○横手委員 もう一遍確認しますけれども、一メートル当たりの単価は、作業道をつくるための直接費として、福井県の場合はメートル当たり四千二百円から六千百円ということになっておるのですね。
  99. 谷口純平

    ○谷口説明員 開設単価につきましては、直接的な作業費と、それから若干の諸掛かり費と申しまして間接経費が入っておるわけでございます。
  100. 横手文雄

    ○横手委員 ちょっとそこら辺、確認したいわけでございますけれども、すでにもう時間が参りましたので。  こういった悩みを持っておる。いま御答弁いただきましたように、地域の問題もございます。われわれも行って、いろいろ話をしたわけです。現実に今日まで進めてきた増林計画、三年計画あるいは五カ年計画というのもあるわけです。これも一方では進めていかなければならない。しかし、それをダウンして、その運びを落としてでも災害復旧に先に入っていかなければならない。人手が足りない。だから、よその地域からでも頼んできたいということですけれども、しょせん山の中でございますので宿泊設備もない。そういうことで、よそからもなかなか頼んでこれない。こういう悩みを持ちながら復旧にいま努めておられるところでございます。そういった点について十分配慮をしていただきたいし、配慮するというお約束でございますので、私も大変気を強くしたところでございます。  ただ、私は最後に一点、確認をしておきたいのでございますけれども、これは三カ年で復旧ということでございますので、そのことのために鋭意努力がなされているようでございます。しかし、現実に現場に入ってまいりまして、そして作業をしておられる皆さん方と指導される皆さん方ともお会いしてまいりましたけれども、これは三年ではなかなかのことだ、こういうのが特に作業に従事しておられる人たちの率直な意見でございました。しかし、私はその際、これは三年で切れるわけですから、三年以内にやってもらわなければ、あとは自分でやりなさい、こういうことになります、だから、どうかがんばってくださいというような話をしてきたわけでございますけれども、申し上げたような条件のもとに行われておるわけでございます。もしこれが倒伏木と同じような形で、まだ済んでないのにもう期限が来たから終わりましたという報告をして、それなりの助成をもらう、しかし、まだ済んでなかったというようなことが残ったのでは、これは日本の山を守るという立場から見て、大変不幸なことだというぐあいに私は思うのであります。  災害復旧が始まって二年目から、まだ二年実際に作業の年は残しながら、もし終わらなかったら、もうちょっと、あと一年ぐらい考えますよというようなことをいまから発言をするというのは、大変問題だと思います。しかし、その心構えみたいなもの——これは未曽有の災害であったわけてあります。未曽有の災害であったから、新たな法律もつくって救済をした。したがって、親子何代も山に生きてこられた人たちが初めて挑戦をする災害復旧でございますので、やってみなければならないという点がたくさんございます。こういった点について弾力的な考え方がおありかどうか、このことをお聞きいたしまして、私の質問を終わります。
  101. 谷口純平

    ○谷口説明員 お答えを申し上げます。  御指摘のように、森林災害復旧事業の中の被害木等の整理につきましては、災害発生年度とこれに続く三カ年度でございますので、五十八年度までということになっておるわけでございますが、五十六年度におきます被害木等の整理の実行状況は三四%でございまして、おおむねこの計画どおり実施できる見込みになっております。五十七年度につきましては、倒木起こしという作業が五十六年度をもって終了いたしますことから、全般的には労務に余裕が生じますので、被害木の整理に重点を置いて実施をすることが可能になろうかと考えます。  さらに、事業の進捗がおくれているような市町村につきましては、一般造林事業の労務との調整や、あるいはお話にございましたように、他の地域から流動化をして持ってくるといったような調整を講ずることによりまして、現時点では五十八年度までに計画どおりの実施が可能であると考えておりますけれども、今後の実施経過を見ながら、必要な指導なり助言を行って対処してまいりたいと考えております。
  102. 横手文雄

    ○横手委員 終わります。ありがとうございました。
  103. 川俣健二郎

    川俣委員長 これにて横手君の質疑は終了いたしました。  次に、林百郎君。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 最初に、運輸省と国税庁の方へお聞きしますが、ホテル・ニュージャパン、この補償問題についてはいまどうなっておりますか。
  105. 山本市蔵

    ○山本説明員 お答え申し上げます。  遺族に対する補償問題につきましては、国税庁といたしましては承知いたしておりません。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 運輸省は。
  107. 高橋克彦

    高橋説明員 御説明申し上げます。  私どもがホテル・ニュージャパンの方から聞いている限りにおきましては、まず死亡者に対しましては、一人二千万の損害賠償の提示をいたしたということでございます。これは日本人、台湾人、韓国人、いずれも同じでございます。それから、負傷者に対しましては、入院者に対して見舞い金として一人十万円を提示いたしました。なお、入院費、滞在費については、すべてホテル側が負担をしたということでございます。それから、通院者に対しましては、通院費を請求するように連絡してある。それから、上京、来日の費用あるいは帰国の費用、滞在費については、すべてホテル側が負担した、そういうふうにホテル側の方から聞いております。
  108. 林百郎

    ○林(百)委員 それで話はついたのですか。
  109. 高橋克彦

    高橋説明員 私どもの方で聞いております限りでは、韓国関係の亡くなられた方五名につきましては、昨日の夜、示談が成立したというふうに聞いております。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 公旅連の賠償責任保険には幾ら入っているのですか。
  111. 高橋克彦

    高橋説明員 交通公社協定旅館連盟損害賠償責任保険には一億五千八百万円、限度額一人三千万円。総額の限度額は、いま申し上げた数字でございます。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、二千万で三十二人というと、約六億四千万ぐらいですね。それで、公旅連の賠償責任に一億五千万円近くだと、あとはどういうような財源を支出するように言っているのですか、あるいは聞いているのですか。
  113. 高橋克彦

    高橋説明員 財源については、私どもつまびらかにいたしておりません。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 六億二千万近くのもので、保険が一億五千万で、あと五億近くのものについて何も財源について聞いていない。そうすると、運輸省としては、それは当事者に任せておくということで、あなたの方はそれに対する指示なり助言なり、何もそういうことはしないわけですか。
  115. 高橋克彦

    高橋説明員 先生御承知のとおり、民事上の不法行為に基づく損害賠償でございますので、政府がその損害賠償額幾らとか、あるいはどういうふうにしろというふうに申し上げることは、非常にむずかしいことだというふうに理解しております。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 むずかしいことは当然ですけれども、そういうことを放置しておいて、まあ五名は処理ができたというのですが、二十七、八名の人がまだ賠償金ももらえなくて、そして遺族を持っているということで、運輸省の方は、それは当事者同士だから私の方は知りませんということでいいのですか。
  117. 高橋克彦

    高橋説明員 私ども今回の事故の反省といたしましては、大きな客室を持っているホテルの損害賠償責任保険の付保額が、ホテル・ニュージャパンの場合は非常に少なかったということについて問題がありというふうに反省しております。今後、登録ホテル、旅館につきまして、損害賠償の保険の付保額等につきまして十分検討し、必要な措置を考えてまいりたいというふうに考えております。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 検討して、適当な助言をするということですか。これだけの収容人員があって、コンスタントにこれだけの人が泊まっている、万一のときに備えてこれだけの保険に入っていた方がよろしいだろうという助言を、運輸省としては所轄官庁としてなさるつもりですか。  それと、もう一つ、五名の方は話がついたというのですが、あとの人はどういうことで話がつかないのですか。
  119. 高橋克彦

    高橋説明員 ただいま御説明申し上げましたのは、今後、私どもの所管しております登録ホテル、旅館について損害賠償の保険の付保について十分考えてまいりたい、こういうことでございます。  それから、亡くなられた方の残りの方々についてどういう理由で話がつかないのかということにつきましては、私ども新聞ではいろいろ見ておりますけれども、ホテル側の方から、こうこうこういう理由で話がついておりませんというふうなことは、つまびらかに聞いておりません。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 結局運輸省というのは、死んだ人は死に損で、払ってもらえなければ仕方がないのだ、その範囲にとまっているということなんですね。それで所轄官庁、指導的な行政責任のある官庁と言えますか。  そこで、念のために国税庁にお聞きしますけれども、一体このニュージャパンの土地、建物、備品について、横井氏の個人の財産もあるでしょうけれども、どういうものがどのぐらいの金額で差し押さえをいま受けているのですか。自由に処分できるものが何か残っているのですか。
  121. 山本市蔵

    ○山本説明員 お答え申し上げます。  租税債権の確保につきましては日ごろ十全を期しておるところでございますけれども、お尋ねの点につきましては、個別事案の内容にわたることでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 何を言ってるんだ、あなた。差し押さえしたのでしょう、所得税の滞納で。幾らで差し押さえしたぐらい、どうして言えないのですか。そんなことは新聞にだって出ているじゃないですか。
  123. 山本市蔵

    ○山本説明員 お答え申し上げます。  御質問のような新聞の報道がありましたことにつきましては承知いたしておりますけれども、重ねて申し上げて恐縮でございますが、個別事案の内容にわたることでございますので答弁を差し控えさせていただきたいわけでございますけれども、一般的に申し上げまして、租税債権を確保する必要が認められる場合には、それに対処するため必要な措置をとることといたしております。したがいまして、御質問の点につきましては、個別事案の内容に触れることでございますが、その間の事情は御賢察願いたいと思うわけでございます。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 何を言ってるんだか、ちっともわからないね。滞納金が幾らあって、差し押さえを幾らしたくらいのことは、国税庁に行って——国税庁に行かなくても、国会で報告する責任があるでしょう。これだけの事故を起こしておいて、国税の滞納が幾らあったか申し上げることができません、差し押さえしたかどうか申し上げることができません。そんなことで、あなた、韓国の人や台湾の人がいるのに、日本の国会で、幾らの財産がまだあるか、自由に処分できる財産があるかどうか聞いても、答えもできませんなんということを言って、国際的な信義が保たれると思いますか。  ここにいろいろの差し押さえ名義が出ておりますけれども、新聞に出ているだけでも、給料の不払いで三億円ぐらいの差し押さえをすることを考えているとか、あるいは料理飲食税を約手で払ったけれども、それの一億八千万ぐらいの滞納に対してこれも差し押さえをするつもりだとか、あるいは従業員の所得税の滞納がこれだけあって差し押さえをする準備をしているとか、あるいは従業員の給料の支払いがなくてそれの差し押さえを準備しておるとか、金額まで全部新聞に出ているのに、どうして国会で言えないのですかね。  それじゃ、運輸省にお聞きしますが、従業員の給与の未払い金はどのくらいあるのですか、二月十五日現在で。
  125. 高橋克彦

    高橋説明員 従業員の給料と労働関係のものにつきましては、実は労働省の方がいろいろお調べになっておりまして、私の方では承知いたしておりません。
  126. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、あなたの方は一体このことで何を知っているのですか。言ってください。何を聞いても、知らない、知らない、知らないと言う。あなたの方の所管に対して誠実にニュージャパンが守っていたかどうか、あなた、ここで言ってごらんなさい。私が何を聞いても何もわからないで、何でそれで行政の監督ができるのですか、あなた。二月の給料は払われているのですかどうですか。そんなこと、あなたの方で行政的な指導権を持っているのだから、聞いてみたらいいじゃないですか。
  127. 高橋克彦

    高橋説明員 給料の支払い関係につきましては労働省の所管というふうに存じます。私どもの方では、先ほど申し上げましたように、現在のところ承知いたしておりません。
  128. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、この旅館について運輸省で所管している事項、それで運輸省としてはなはだ遺憾だったと考えているのは何ですか、そこで言ってみてください。どういうことが遺憾だったのか、遺憾がないのか、運輸省としては。
  129. 高橋克彦

    高橋説明員 私ども国際観光ホテル整備法によります監督は、外客の接遇の充実という観点から、旅館業法に基づく許可を受け営業をやっているホテル、旅館につきまして運輸大臣の登録を行うわけでございまして、そういう観点からいたしますと、防火安全上に関しましては、基本的には建築基準法令あるいは消防法令により措置されるというふうな法制度になっております。  私ども現在反省している点と申しますと、一つは、先ほど申し上げましたように、登録ホテルであるホテル・ニュージャパンにおいて損害賠償の付保額が非常に少なかったということでその支払い能力等に社会的な関心が寄せられているということについて、私どもの方としては今後十分考えていかなければいけない問題であるというふうに考えております。
  130. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、最小限度これだけは認めるのですね。会社側で損害賠償の責任があるのだ、しかし、川治温泉の例なんか見ると非常に緩かったので、こういう問題については重大な世間的な関心があるのだ、その点だけは、あなた、運輸省も認めるのですね。要するに民事的な、あるいは刑事的な責任はいま捜査をしている最中ですけれども、これは認めるのですか認めないのですか、運輸省は。
  131. 高橋克彦

    高橋説明員 ホテル側に責任があったかどうかにつきましては現在捜査中でございまして、私どもその責任の所在が那辺にあるかということについては現在の段階でははっきりと認識しておるわけでございませんが、社会一般から、ホテル・ニュージャパン経営状況等にかんがみ損害賠償の能力について疑問を持たれているというのは事実でございます。それでまた、ホテル・ニュージャパンが責任賠償保険につきましては一億五千八百万円の付保しかしていなかったということも事実でございます。そういう点から、私どもは今後登録ホテル、旅館につきまして事故が発生した際の損害賠償能力はどのようにあることが必要かというふうなことについて検討をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 これは幾らわからないところへ聞いててもしようがないわけですが、法務省の民事局長にお聞きしますけれども、普通こういう民事的、刑事的責任がある場合に損害賠償をするという場合には、どういう範疇の弁償をするのが正常な弁償の方法なんですか、ちょっとそれを説明していただきたいのです。
  133. 濱崎恭生

    ○濱崎説明員 民事責任に関する限りでお答え申し上げます。  本件に関しましては、宿泊契約に基づく債務不履行責任の追及ということで、ホテル側にその安全に宿泊させる義務の懈怠があるということであれば、それと損害との間に因果関係があれば損害賠償の請求をすることができる、その規定によって損害賠償の請求をするということになるわけでございます。
  134. 林百郎

    ○林(百)委員 損害賠償の請求の内容は、どういうものとどういうものがあるのですかということを聞いているのです。
  135. 濱崎恭生

    ○濱崎説明員 もし民事上の責任があるということになれば、事故によって被害者がこうむった全損害について損害賠償責任があるということでございまして、人身事故に関して言えば、治療費、得べかりし利益の喪失あるいは慰謝料、そういったすべての損害について賠償の責任があるということに原則としてなるわけでございます。
  136. 林百郎

    ○林(百)委員 警察庁の仁平さんにお聞きしますけれども、これはあなたの方は捜査しているわけですが、これだけの不法な欠陥ホテル経営していて、そしていろいろの助言があったのにそれも聞かない、消防庁の言うことも聞かないという場合には、当然管理者本人にも責任が及ぶ、これは判例もたくさんありますししますけれども、それは当然でしょうね。
  137. 仁平圀雄

    ○仁平説明員 このたびのホテル・ニュージャパン火災につきましては、出火行為者の刑事責任の追及はもちろんでございますが、いま御指摘のように、管理者側の刑事責任の有無についても明らかにすべく捜査をする方針でございまして、現在、管理責任の対象と考えられますところの避難誘導だとか消火訓練、そういう訓練とか事前の教育の状況、それから防犯設備等の設置、維持管理につきましては、消防法上の防火管理者を初め、管理責任を有する者すべてを対象に捜査を進めまして、刑事責任の有無を明らかにするということでやっておるわけでございます。
  138. 林百郎

    ○林(百)委員 運輸省、いま言ったように、警察当局も、これだけの欠陥ホテル経営し、それから消防庁のしばしばの警告も聞き入れない、それから行政的な処分を背景としての消防庁の警告も聞き入れないという場合には、当然、民事的な責任はもちろんですが、刑事的な責任もあるという観点で警察庁は捜査していると言っているのですね。あなた方が監督しているホテルでそういう重大な責任を負っているというときに、それに対して、犠牲になった人たちに対する適切な慰謝の方法なりあるいは賠償の方法なり、全力を尽くしてこれを果たすべきである。ことに国際的な関係がありますからね。  ここに運輸省の人が二人来ていますが、どっちがえらいか知らないけれども、どっちに聞いても、ちっともわけのわからないようなことを言っていますが、一番えらい人から、ここでひとつそれを言ってくださいよ、われわれの方も監督官庁として責任を感じますから、そういう問題の処理については助言をするつもりですと。高橋光部整備課長、土坂監督課長——石井運航課長というのはこれは飛行機でしょうけれども、ここには監督とかなんとかやるような人がいるのですけれども、ちょっとここで言ってみてください。そんな気持ちは全然ないのですか。
  139. 高橋克彦

    高橋説明員 先ほど申し上げましたように、補償問題は民事上の問題でありますので、被災者ホテル側との間で解決を図るものであると考えておりますが、運輸省といたしましても、ホテル・ニュージャパンが誠意をもって被災者と折衝し、円満に解決してほしいというふうには考えております。
  140. 林百郎

    ○林(百)委員 あなた、考えてだけいたってしょうがないじゃないですか。監督ができないというなら、そういう行政上の助言なりするかどうかということを聞いている。あなたが幾ら頭の中で考えていたって、何の足しにもならない。そういう助言をする意思があるのですか、ないのですか。——もうあなたに聞いたってしようがないから、いいです。もう聞きませんよ。そんなことで、あなた、運輸省ホテルに対する監督権があるなんて言ったって、国民は信用しませんよ。こういう国際的な重要な関係があるときに、後始末について運輸省は何も知りません、それは民事的な関係です、当事者で何とかするでしょうと、ほったらかしておいていいのですか。三十数名の人が亡くなって、家族の者にとっては本当に泣いても泣き切れないような気持ちじゃないですか。それに対して監督官庁が一言も物を言わないなんて、そんな監督官庁なんてものはなきに等しいものですよ。  日航の方で聞きますが、日航の方は賠償関係はどうなっているのですか。
  141. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 旅客に対する損害賠償につきましては、運送約款に定めがございます。現在、二千三百万円が限度というふうに定められておりますが、これは今度四月一日から限度が撤廃されるということがすでに確定しております。しかしながら、日本航空としては、限時点では二千三百万円が限度でございますけれども、その限度にこだわらずに誠意をもって遺族と話し合いをしたい、こういうふうに申しております。
  142. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、まあ日航の方の保険関係がありますけれども、このほかにもし慰謝料だとか、あるいは得べかりし利益がこういうことだということで、あなたの言われた範囲を超えて要望がある場合には、その話に応ずる意思はあるのですか。
  143. 土坂泰敏

    ○土坂説明員 いま申し上げました損害の範囲は、得べかりし利益、治療費、それから慰謝料、すべてを含んだものでございます。したがいまして、そういうものが二千三百万円を超えることになれば、それに誠意をもって応じるようにしたい、こういうことでございます。
  144. 林百郎

    ○林(百)委員 それから、この問題で一つお聞きしたいのだけれども、この片桐機長の病歴について社内のカルテと運輸省へ出してある報告とが二重で食い違っているという事実が言われているのですが、こういうことはあったのですか、たとえば心身症というような状況、あるいは神経症というような症状について。
  145. 石井俊一

    ○石井説明員 お答えいたします。  運輸省の方へ提出されました身体検査の申請書にはそういうものがあったかないか、いま調査中でございます。私は直接その担当じゃございませんので、ちょっとよくわかりませんが、調査中でございます。
  146. 林百郎

    ○林(百)委員 何を聞いてもみんなわからないような人ばかりきょうは出席しているのですけれども、今回の事故の後、乗務員たちの社内のカルテをチェックした、ところが、十二名の心身症や神経症の病歴を持った者がいたことを発見した、こういう事実はあるのですか。
  147. 石井俊一

    ○石井説明員 いま先生お尋ねの件につきましては、去る十五日から十九日まで立入検査をやったわけでございますけれども、その中で鋭意調査をいたしまして、現在その結果を取りまとめ中でございます。いま詳しく精査中でございます。
  148. 林百郎

    ○林(百)委員 詳しく精査中ということは、どういうことなんですか。社内で持っているカルテと運輸省へ出した報告書とを照らし合わせて調べているということなんですか。それとも、十二名のカルテを調べたところが、心身症や神経症の病歴を持った者がいた、しかしこれが運輸省へ報告がしてあるかどうかということを調べているというのか。何を調べているというのですか、鋭意調べているということは。
  149. 石井俊一

    ○石井説明員 カルテ等を調査中でございます。
  150. 林百郎

    ○林(百)委員 カルテのどういう点を調査しているのですか。たとえば、心身症だとか神経症というようなものを記載する欄があるかどうか、そして、あるとすれば、この心身症や神経症は医者が記載するのか、本人が記載するのか、それはどういう制度になっているのですか。
  151. 石井俊一

    ○石井説明員 その点につきましては、またおしかりを受けるかもしれませんけれども、ちょっと詳しく存じ上げません。恐らくそのカルテには医者の診断はもう入っていると思いますけれども、本人のそういう記載があるかどうか、ちょっと私、存じ上げません。
  152. 林百郎

    ○林(百)委員 カルテを医者が記入するというならば、何をいま調査しているわけですか。あなたの言うことはちっともわからないけれども、ちゃんと医者のカルテがあるとすればいいじゃないですか。調査しなくてそれでわかるじゃないですか。ただ、それが運輸省の方へそのまま報告されているかどうかという点を調査するというなら、それはまたわかります。社内にはこういうカルテがあるのに、運輸省の方の、乗務員としての適格性があるという証明のためのそういう申請をする、その申請との食い違いがあるということを調べることならわかりますよ。しかし、社内にあるカルテを調べるといったって、医者がカルテをつくるのですから、何も調べることはないじゃないですか。それとも、その中に心身症や神経症の症状が記載してあるものがあるかどうかを調べているということなんですか。何を調べているのか、ちっともわからない。
  153. 石井俊一

    ○石井説明員 運輸省の方へ提出されます申請書とそのカルテとの相違、あるいはカルテの中にそういう心身症とかその他の病歴がきちんと記載されておるかどうか、そういうもののチェックでございます。
  154. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、いままであなたの方はこういうことを調べてなかったのですね。そして、運輸省から航空身体検査証明書というのをもらって運転をさせていた。だから、カルテをよく調べてみると、あるいはいままで機長であった者の中に心身症や神経症の病歴があった者がいるかもしれない、よく調べてみなければわからない、こんな不安定な状態なんですか、日航の乗務員に対する健康の管理というものは。事件が起きてから調べてみなければだれがどんな病状を持っていたかわからないというような状態で、われわれの乗っている飛行機をいままで運転していたのですか。
  155. 川俣健二郎

    川俣委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  156. 川俣健二郎

    川俣委員長 速記を起こして。  石井運航課長
  157. 石井俊一

    ○石井説明員 私は直接の担当ではございませんので、詳しいことはちょっとわかりかねます。
  158. 川俣健二郎

    川俣委員長 では、委員長から林君に提案しますが、担当者が来ていないので、後日、先生の方につまびらかにしていただくように。  それから、答弁者は、担当でないなら担当でないで通す。担当課であるがまだ調査してないという態度なのか、その辺、はっきりしないから、今後注意してください。  審議を続行いたします。
  159. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、これはわかりますか。今回の事故の前日の二月八日に、片桐機長が大島の上空で異常な急旋回の飛行を行っている。これは石川副操縦士がそう言っているのですが、こういう事実があったことは知っておりますか。
  160. 石井俊一

    ○石井説明員 運輸省の方には報告は届いておりません。また、私どもも立入検査で、たとえばそのフライトが終わりました直後の福岡におります運航担当者等に聞いた時点では、そのような事例は報告されておりません。
  161. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、片桐機長というのは五十五年十一月から約一カ月間、心身症で休養していた。それで後、十二月十八日から副操縦士として国内線の定期便に勤務していた。この際、客を乗せた定期便で精神科の医者が同乗して、監視つきで復帰のテストを二回ばかり実施していた、こういうことは知っておりますか。
  162. 石井俊一

    ○石井説明員 お答えいたします。  今回の立入検査の結果、その事実は判明しております。
  163. 林百郎

    ○林(百)委員 医者が同乗して復帰のテストをやるということは、どういうことなんですか。それほど心配な状態だったということなんですか。
  164. 石井俊一

    ○石井説明員 病気になりまして、長期にわたりまして乗務を中断した者が、回復し、一応地上においての検査の結果、診断で問題なしとされましたような乗員、あるいは通例の定期的な身体検査におきまして所見が付されたようなときには、一応実際の乗務の環境においての変化はないかどうかというようなことを確認するために、安全サイドをとって、医師が同乗して乗務の前後及び乗務中の乗員の状態をチェックするということにしております。  まず最初に、操縦席の後方のいわゆるオブザーブ席、ここに座りまして、次いで副操縦士業務を実施いたしまして技量の回復を図った上、機長にするということで、医師が同乗いたしまして十分そこら辺を観察して、より安全を期するということでございます。
  165. 林百郎

    ○林(百)委員 これは仁平さんの方へお聞きしますけれども、いま言ったような状態で、航空身体検査証明申請書も社内にあるカルテと運輸省へ出しているものとが同じものかどうかもわからない。それから、副操縦士は、事故の前の日にすでに大島上空で異常の飛行を行っていると言っている、あるいは昨年の十二月十八日から副操縦士として、医者が同乗し監視をして安全状態がどうかというようなことを見ていた、これは専門家の人たちに聞くと、こんなことは考えられないと言うのですよ。飛行機の副操縦士に医者がついていて、ことに精神科の医者がついていて、この人は精神的に正常か異常かなんということを見なければ安心して運航させることができないなんということはあり得ないと言っているのです、これは私の方もちゃんと専門家からいろいろ情報をとっていますがね。  こういう状態を放置して、乗務員の健康の管理が非常に手抜かりで、しかも飛行機というような人の生命を預かる非常に重大な仕事に関係しているものでありますので、これは単に航空士だけの責任ということではなくて、会社についても当然民事上、刑事上の責任を一応問わなければならない状態だと思いますが、そういう観点で捜査を行われていますか。
  166. 仁平圀雄

    ○仁平説明員 今回の日航機の墜落事故につきましては、現在までの捜査の結果では、機長の操縦ミスによる事故の疑いが強くなっているわけでございますが、いま御指摘のように、日航側の管理責任の問題についても捜査を進めておるわけでございまして、機長に対する健康管理の状況、あるいは本件事故に関する予見可能性等につきまして捜査を進めまして、関係者の刑事責任の有無を明らかにしたいと思っております。
  167. 林百郎

    ○林(百)委員 では、あと二つぐらいで終わりますが、仁平さんも御承知のとおり、運輸省に対して虚偽の申告をした場合には罰則もありまして、もしカルテに心身症やあるいは神経症の既往症なりあるいは現在症があるのに、航空身体検査証明をもらうための申請書にそういうことを記載してなかったと言えば、これは罰則もございますので、当然刑事的な責任も、いまあなたが答弁されたようにそういう観点からも捜査をしなければならない。幾ら大きい会社だからといって、会社の責任を逃していいということにはならないと思いますので、そういう観点で捜査してもらいたいと思うのです。  最後に、結論ですが、法務省の飛田さんは、いま警察でそういう観点で捜査していますと言うが、法務省の刑事局としても当然そういう観点でこの問題の処理に当たる、もちろん警察の捜査の結果をいろいろ参考にすると思いますが、そういう観点で捜査する御意思があるかどうかということと。それから、濱崎さんですか、そういうことになりますので、これは単に機長の賠償責任ということでなくて、会社側の賠償責任、ことに慰謝料だとか、あるいは得べかりし利益の補償だとか、あるいはそのほかの民事上の責任が発生してくると思いますけれども、この両点について、警察はそういう観点で捜査をしているということを聞きましたので、法務省側からその見解をお聞きしておきたいと思います。
  168. 飛田清弘

    ○飛田説明員 現在までのところ、まだ検察庁に事件送致があるわけではございませんので、送致以前のことについては何とも申し上げられないわけでございますけれども、検察庁におきましては、警察当局といろいろ連絡をとっているようでございますし、また事件が送致されましたらば関係証拠を十分検討いたしまして、刑事責任の有無を十分明らかにした上で、責任があるものについては適正に処理したい、こういうふうなことが検察の姿勢であるというふうに考えております。
  169. 濱崎恭生

    ○濱崎説明員 民事上の日航の責任につきましては、一般原則を申し上げますと、旅客運送契約に基づきまして、商法五百九十条の規定によって、旅客の運送人は自己またはその使用人が運送に関して注意を怠らなかったということを証明しない限り、その旅客が運送によって受けた損害の賠償責任を負うわけでございまして、その賠償の範囲というのは、先ほど火災事故について申し上げましたとおり、治療費、得べかりし利益の喪失あるいは慰謝料等のすべてに及ぶということになるわけでございますが、しかし、先ほど運輸省の方から御答弁がございましたように、本件の運送契約につきましては、運送約款によりまして責任額の制限があるということでございますので、一般的に申し上げれば、その約款の規定が優先的に適用されるということになろうかと思います。
  170. 林百郎

    ○林(百)委員 約款で不十分だ、慰謝料としてこれだけのものを上乗せしたい、あるいは得べかりし利益をこれだけ上乗せしたいという場合は、当然民事訴訟によって請求の権利があることは言うまでもないでしょう。約款は約款ですよ。
  171. 濱崎恭生

    ○濱崎説明員 基本的にはそういうことではございませんで、旅客と航空会社との間で特約によって損害賠償の責任限度額をこのようにするというふうに定めれば、原則としてその契約は有効ということになりますので、その約款の制限を受けるということになるわけでございます。まだ約款の内容を私どもつまびらかにいたしておりませんけれども、もしそういうことであれば、その責任限度額を超える損害賠償請求権はないということになろうかと思います。
  172. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっとそれはおかしい。たとえば自動車保険なんかありますね、自動車保険なんかで、一応賠償の契約額は決まっていますよ。しかし、それで不満の場合は、訴訟によって慰謝料なり、得べかりし利益なり、あるいは後遺症なりの請求権は当然あるのじゃないですか。そんな権利までその契約によってすべて抹消するということはないでしょう。改めて示談なり何なりにすれば別ですよ。そうでなければ、あるじゃないですか。
  173. 濱崎恭生

    ○濱崎説明員 一般の交通事故につきましては、被害者と加害者との間にあらかじめそういう制限をするという約束はないわけでございますが、本件航空事故の場合については、そういう制限の約束があるというふうに承っております。そして、本件の場合に、その約款の規定によって制限されることになるかどうかということにつきましては、約款の内容、趣旨あるいは事実関係に基づいて、個別的、具体的に判断されるということになろうかと思います。
  174. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、委員長、これで終わりますが、私の賠償問題についての質問にほとんど運輸省の方から責任ある回答がない。ことに賠償問題は、国際的な関係もありますししますので、非常に重要だと思うのです。外交的な関係にまで響いてくることがあると思いまして私は質問したわけですが、全然答弁が私の質問の内容に触れておりませんので、委員長のお計らいで理事会でまた御相談くださって、適当なときに質問を許していただきたい。それをぜひひとつ御了解を得たいと思います。
  175. 川俣健二郎

    川俣委員長 ただいまの林君の申し出は、後日理事会で協議いたします。   これにて林君の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十二分散会