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1982-08-06 第96回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年八月六日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 片岡 清一君 理事 小泉純一郎君    理事 塩崎  潤君 理事 住  栄作君    理事 佐藤 観樹君 理事 堀  昌雄君    理事 石田幸四郎君 理事 中井  洽君       上村千一郎君    大西 正男君       後藤田正晴君    瀬戸山三男君       竹下  登君    竹中 修一君       浜田卓二郎君    粟山  明君       沢田  広君    中村  茂君       渡辺 三郎君    坂井 弘一君       岡田 正勝君    安藤  巖君       菅  直人君    小杉  隆君  出席国務大臣         自 治 大 臣 世耕 政隆君  出席政府委員         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省訟務局長 柳川 俊一君         自治省行政局長         自治省行政局選         挙部長事務取扱 大林 勝臣君  委員外出席者         参議院議員   金丸 三郎君         参議院議員   松浦  功君         参議院議員   降矢 敬義君         参議院法制局第         二部長     三宅 将夫君         参議院法制局第         二部第一課長  播磨 益夫君         警察庁刑事局捜         査第二課長   森広 英一君         自治省行政局選         挙部選挙課長  岩田  脩君         特別委員会第二         調査室長    秋山陽一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 八月五日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     石原健太郎君 同月六日  辞任         補欠選任   山本 幸一君     沢田  広君   石原健太郎君     菅  直人君 同日  辞任         補欠選任   沢田  広君     山本 幸一君   菅  直人君     小杉  隆君 同日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     石原健太郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案参議院提  出、第九十五回国会参法第一号)      ――――◇―――――
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  参議院提出公職選挙法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅直人君。
  3. 菅直人

    菅委員 この公職選挙法の改正について質問する機会を与えていただいたのですけれども、私の質問時間は三十分ということでかなり制約をされておりますので、できるだけてきぱきと質問を進めたいと思いますので、御返事の方もぜひよろしくお願いします。  まず、発議者の方にこの比例代表制という制度本質についてちょっとお聞きをしたいのです。  私が、この比例代表制というものについていろいろと見聞きをし、また、そういう本を読んでみると、多数代表制の場合には少数者意見が無視をされたり軽視をされたりする割合が多いので、そういうことがないように各党派得票率に比例した議席を配分する、それによって国民意思をより的確に反映させようというのが趣旨だというふうに理解しているのですけれども、まず、この理解について、それでいいのかどうか、発議者の方の御意見を伺いたいと思います。
  4. 金丸三郎

    金丸参議院議員 御説のとおりでございます。
  5. 菅直人

    菅委員 それでは、比例代表制というのがそういった趣旨だということはいま発議者もお認めになったわけですけれども、では、現行参議院全国制度というのはこの比例代表という基本的な考え方からして大きなひずみがあると言えるのかどうか。つまり各党派得票率議席比率が非常に大きくゆがんでいるというふうに見られておるのかどうか。特に地方区とか衆議院選に比べて、全国区の制度をこの観点から見てどのように判断されているのか、その点について御意見を伺いたいと思います。
  6. 金丸三郎

    金丸参議院議員 わが国全国区の制度は、八千二百万の有権者を基礎といたしまして、五十名の議員を選ぶという制度でございますので、世界に類例のない少数代表制度と申してよろしいのではなかろうかと思います。選挙の結果全体がそうであると言い切れるかどうかわかりませんけれども、五十の議席を選ぶということでございますので、結果的には御説のように小さな政党でも議席の獲得ができる比例代表的なものに近いのではないかという御意見がございますが、私ども、結果としてはそう変わってはいないと申してよろしいのではないか、かように考えております。
  7. 菅直人

    菅委員 そうすると、発議者みずから認められたわけですけれども、現在の全国制度というのは、国民意見を反映する仕方としては最も比例代表に近いといいましょうか、結果として近い形で反映されているというときに、ほかの制度ではなくて参議院全国区にこの比例代表制を持ち込もうとされる理由というのはどこにあるわけですか。
  8. 金丸三郎

    金丸参議院議員 このことはたびたび申し上げておりますように、有権者立場から見まして候補者が非常にわかりにくいということ、きわめて多額の経費を要するということ、選挙に伴いましていろいろの問題がございますということ、これは年来言われております全国区の弊害と私どもは考えまして、これを是正いたしますのには拘束名簿式比例代表制にし、政党本位選挙制度にした方がよろしかろう、このような考え方でございます。
  9. 菅直人

    菅委員 これは発議者だけではなくて自治省にもよく聞いておいていただきたいのですけれども、もう一度話を基本に戻しますと、ここに五十五年のダブル選挙各党派得票率議席占有率を計算してみたわけです。     〔委員長退席塩崎委員長代理着席〕 そうしますと、自民党の場合に、参議院全国区でとった得票数というのは四二・五%です。議席が二十一名、これは五十名のうちの二十一名ですから議席占有率は四二%。まさにぴったり合っているわけですね。他の会派についても四、五%の差はあるけれども、そう大きく参議院全国区は差がないのです、五十五年の選挙でもその前の選挙でも。では、同じときに行われた参議院地方区選挙自民党は四三・三%の得票率です。議席は何と四十八議席、七十六名中四十八議席ですから六三・二%の議席を占めているのですよ。つまり四三%の得票で六三%の議席地方区では自民党が得ている。ですから、社会党や他の政党は逆にマイナスが非常に大きくなっている。同じときに行われた衆議院選挙自民党が大勝したと言われておりますけれども得票率で言えば四七・九%ですよ。それが議席では二百八十四、つまり五五・六%の議席を得ている。  つまり比例代表という最も根本の理念を先ほども金丸議員は認められましたけれども国民意思に対してそれを的確に議会議席の数に反映させようという趣旨から言えば最も矛盾があるのは参議院地方区であり、場合によっては衆議院でもまだ大きく残っている。一番弊害の少なくなっている参議院全国区に、比例代表制という原理から言えば一番的確にそれが反映されている全国区にもたらす理由の第一義が何なのかという質問をしたわけですけれども、一番最初に言われた参議院の、つまり比例代表制本質との関係では、ここに導入することの意味はないじゃないですか。比例代表制本質らいったら、参議院全国区に比例代表制をもたらすことの意味はどこにあるわけですか。さっき答えられたことは、最初に言われた比例代表制本質の問題に関係のないことを言われているだけですね。有権者がどうとか費用の問題とか、これは後でまた問題にしたいと思いますけれども、もう一度この本質に立ち戻っての、参議院全国区にこれを導入しなければいけないと考えられる理由をお答えいただきたいと思います。
  10. 金丸三郎

    金丸参議院議員 比例代表制を採用いたしますねらい一つは、現在の全国区の選挙制度に伴います弊害を是正するということ、もう一つは、そういたします場合に、国民政治的な意思をできるだけ的確に国会に反映いたしますためには、政党本位比例代表制をとることがよかろうということからでございます。結果の数字がそう余り違わないという点もあるかもわかりませんけれども、その点はその点として、制度を改正いたしますために、全国区の制度の非常に言われております弊害を除去いたしますのには拘束名簿式比例代表制がよかろう、こういうことからでございます。  先般も申し上げましたように、党によりましてはブロック制に改めようというお考え、また私どもと同じように全国区に比例代表制を採用したらどうかという党が三党もあるわけでございます。私は、これは全国区の弊害をどのように是正するかということと、国政にどのように国民意思を反映するかという方法論についての違いではなかろうか、私どもはその方法論として比例代表制が適当であろう、こういうふうに考えたわけでございます。  地方区制度衆議院選挙区の制度は私どもは一応別個の問題だ、これも先般の御質問に際しまして私はお答えを申し上げました。地方区をどうするか、衆議院選挙区をどうするか、これはまた別個観点から私どもは論究して結論を得るようにしなければならない問題ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  11. 菅直人

    菅委員 この問題は一番本質的な問題だと思うのですけれども、結局は比例代表制の本来の趣旨ということではなくて、あえて言えば、それから派生するいろいろな効果なりメリット、デメリットの中のメリットを求めてこの提案をされたということのように聞けるわけです。  それでは、少し話を進めまして、今回比例代表制の中でも特に拘束名簿式を提案されている。これはつまり名簿をつくる政党拘束力が最も強い制度であることは発議者が書かれた本にも書かれているわけです。つまり政党化を、参議院については現実を認めるということではなくて、政党化制度的に強制するということになるわけですけれども、なぜ拘束式を提案されているのか、この政党化の強制ということが必要だと考えられているのか、それについて意見を伺いたいと思います。
  12. 金丸三郎

    金丸参議院議員 私は先般からお答え申し上げておりますように、参議院政党化がいわば自然の趨勢でございまして、全国区という制度を残して直接選挙という制度をとります以上は、政党化はもう自然の流れである、現実にそのようになってまいっております。  拘束名簿式比例代表制を採用いたしましたのは、自民党の中におきましても非拘束式名簿という案が大勢の時代もございました。しかし、非拘束式方法をとりますと、個人個人が現在と同じような選挙運動を行うことになりますので、現状と変わりがない、現在の弊害がほとんどそのまま残ってしまう、こういうことから拘束式の方が適当であろう、こういう結論になった次第でございます。
  13. 菅直人

    菅委員 いまの話を伺っても、政党化が自然の流れだ、自然の姿だと言われた。私はこれそのものも必ずしも納得できませんけれども、百歩譲ってそれを認めたとしても、それが自然の姿であるのと、今度のように制度的に政党化せざるを得ない、強制するというのとは、さらに大きく意味が違っていると思うのですね。この問題も、比例代表制という本来の趣旨、また拘束式という問題とあわせて、どうも本来の趣旨と結果的なねらいが非常にずれているのじゃないかということを感じるわけです。  そこで、さらに話を進めて、この中で政党要件というものを設けられて、無所属なり個人立候補というものを事実上排除している。これはどういう理由なのか。特に比例代表制という考え方からすれば、無所属とか一人一党を認めても、国民意見比率によって代表を送り出すという趣旨から言えば、必ずしもそれを認めたからといって相矛盾しないのではないかと思いますけれども、その点はいかがですか。
  14. 金丸三郎

    金丸参議院議員 私は、非拘束式比例代表制をとりますれば個人立候補もなじむと思います。しかし、党本位拘束名簿式比例代表制をとりますというと、論理の帰結として個人立候補を認めることば無理ではないか。と申しますのは、拘束名簿式比例代表制を採用いたしますと、やはり政党らしい政党基本になってまいらなければならない。政党要件というものを設けなければならない。わが国の判決でも、政党というのは一人では成り立たないのだ、政党と言う以上は複数の人が共同して政治的な活動をする団体でなければならない、こう言われております。仮に無所属立候補を認めますというと、一人一党を認めなければなりません。一人一党を認めれば、国会議員が五人とか三人とかということは無意味になってまいります。二人でもいいじゃないか、五人とか三人とかいう政党要件を決めることがいわばナンセンスになってしまいやしないか。だから、拘束名簿式比例代表制を採用いたしまして政党要件を決めますならば、たとえば一つ要件でございますが、国会議員が何人以上という要件を決めなければならない。そういう論理らいたしまして私どもは、個人立候補拘束名簿式比例代表制とはなじまない、こういうような結論でございます。
  15. 菅直人

    菅委員 いまの発議者論理というのは、私は発議者論理としてはまさにそのとおりだと思うのです。どういう論理になっているか、つまり現状参議院全国区は費用がかかる、これを何とかしなければいけない、それには同じ比例代表制でも拘束式をとらなければいけない、拘束式をとったら、これはそれとのバランスからいって無所属とか一人一党は認めがたい、こういう三段論法になっているのです。しかし、これは本来逆じゃないですか。  つまり、初めは金の問題、費用の問題から来ている。それがいつの間にか制度の問題になり、最後は個人立候補を認めるか認めないかというきわめて本質的な問題になってきているわけですよ。つまり、当面のいろいろな矛盾点を解決するために制度をつくり、さらにその制度に適応させるために個人立候補を抑えてしまうのも仕方がないという、何というのでしょうか、枝葉末節から本質を仕方がないと言っているようなもので、法律がこうなっているから憲法をこうやったって仕方がないよと言っているのと同じなわけですよ。私は、そういう意味で今回の理論というのは、あちこちの理論を全部囲いてみても、なぜ比例代表制を導入しなければいけないのか、拘束式を導入しなければいけないのかという本質論がなくて、枝葉末節のその議論から全部組み立てが成っているという意味で大変疑問を感ぜざるを得ないわけです。  そこで先ほど言われた現在のゆがみ、いわゆる費用が大変かかるという問題ですけれども、これは自治大臣にお尋ねしたいのですが、現在でもちゃんと法律を守れば、法定費用というのがあって、一定のルールに沿えばそれほど費用をかけちゃいけないと規定があるわけですけれども、本来お金をかけない、またお金がめちゃくちゃにかからない選挙制度というのは、そういうルールを守るというそのことからスタートすべきだと思いますけれども大臣はどうお考えですか。
  16. 世耕政隆

    ○世耕国務大臣 御指摘の点はよく理解するものでございますが、選挙というのは大きな政治分野の大変また重大な部門になるわけで、選挙を除いてはつまり議会制民主主義の中の政治というのは成り立たないと思うのです。その選挙でございますが、これは日常の政治活動となかなか区分できない分野がある。そういう点で、全国現行のものは、選挙に対してもそういった非常に分野が広いということ、個人の負担がなかなか耐え切れないということ等、いろいろなものが総合されて、その点の立場から考えていかなければならないのではないか。それがとりもなおさず法定選挙費用で上がるかどうかということにも立ち至ってくると思うものでございます。
  17. 菅直人

    菅委員 自治大臣がみずから法定選挙費用で成り立つかどうか疑問だみたいなことを言われることがどうかというのは、私は内閣として大変なことだと思いますけれども、私は昭和四十九年の参議院選挙のときに、昨年亡くなられた市川房枝さんの選挙責任者をやったことがあります。そのときに、ちょっと当時の資料を引っ張り出してみたのですが、四千百八十四人の人からカンパが集まりまして、千三百二十六万八千九百十七円のカンパが集まっていました。選挙費用として使ったのは三百九十八万六千五百六十七円、まあ四百万円。その後、いろいろな報告書なんかを合わせても六百二十五万円程度選挙をやって、たしか百九十三万余の得票で当選をされた選挙だったわけです。もちろんこれは、市川房枝さんという個人に対する非常な信頼が多くの国民の中にあったということですけれども、しかしこういうことは全くないわけじゃない。あり得ることだし、また、あってほしいことだと思うわけですね。それを逆に現状を半ば肯定した形で、ルールはあるけれどもそれはなかなか守れないのじゃないかななんということを大臣みずから言われるような形で、それで制度の根幹をいじり、場合によっては憲法に照らし合わせても疑問があると言われる一人の立候補を抑え込むということまでやっているというのは、まさに論理的に矛盾しているといいますか、逆の論理組み立てになっていると言わざるを得ないと思うわけです。  そこでもう一つ、少し立ち至ってこの条文の内容を含めて問題にしていきたいのですけれども、私はこの条文をずっと読んでみて一番感じたのは、政党というものに対して何か一つ法人格人格のようなものを概念的に持っておられる、または持たなければ成り立たないような組み立てがたくさんあちこちに見られるわけです。その点でお聞きしたいのですけれども発議者にお聞きした方がいいかと思いますが、政党というものをどのように考えておられるのか、一つ法人のようなものだと想定されてこの法律をつくられたのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  18. 金丸三郎

    金丸参議院議員 私は、わが国政党現実らいたしまして、権利能力なき社団、これに近いような団体から、数人の国会議員が話し合いをなさいまして、新しい政策を志向して新しい政治目標を達成していこう、こういうようなグループと申しましょうか、そういうものまでいろいろまだあると思っております。  私ども政党法をつくりますことがまだ少し時期が早いのではなかろうかというふうに考えておりますのは、わが国現状らいたしまして、少数政治家の方あるいは民間の有志の方が新しい政治を志されるという動きがございますので、こういうものはやはり私どもはそのような活動が自由にできていくようにしなければならない、こういうふうに考えるからでございまして、だから、大きなきわめて組織の整った権利能力なき社団と言えるような政党からきわめて少数政治家とか政治を志される方々のグループとかそういうところまでいろいろな団体がある、このように認識いたしております。
  19. 菅直人

    菅委員 いま、かなりよく整備されたものですら権利能力なき社団という言葉を使われたわけですね。私も、政党というのは、実際的には非常に大きな力を持ち、政治に対し、国家に対して大きな影響力を持っているけれども、それ自体というのは任意の団体であって、まさに言われるようなものだと思うのです。しかし、じゃこの法律がそれになじんでいるか。たとえば政党要件の中の一つ、四%条項というのを見てみると、たとえば私が前回の選挙で十五万票なら十五万票とった、それで、ほかの党の方が十何万票とった、じゃ合わせて新しい会派を組みましょう、政党をつくりましょう、それが合わせてみると四%になったからこれでいいんですかと聞いてみたら、いやそれはだめです。私は社会民主連合で出たから社会民主連合の票であり、ほかの党の方はほかの党で出たからほかの党の票だ、幾ら集まったってその票はもとの政党の票なんであって、四%条項に入りませんという答えなんですね。つまり政党の総得票数というのが考えられているわけです。政党立候補している形で票を得たような形になっているわけです。名簿そのものもそうですね。  それから、特に私は今回の法律で非常に奇異な感じがしているのは、前日まで名簿から外すことができる、除名とか離党で外すことができる。さらには投票日の十日前までだったら、四分の一を超える人が外された場合は同じ数までをふやすことができる。つまり差しかえることができる。極端に言えば、前の日になってああこの人とこの人が名簿にあるなと思ったら、投票日になったらなかったということがあるわけですね。それもすべて政党がやるんだからいいんだ、まさに政党人格を認めているような形で全部成り立っているわけです。私はここにもまさに、権利なき社団である、せいぜいよく言ってその程度人格的な要素しかないものにそこまで与えられているというこの法律の構成が大変に無理があると思うのですけれども、その点について一言見解を聞かせていただきたいと思います。
  20. 松浦功

    松浦参議院議員 お答え申し上げます。  金丸先生からお答え申し上げましたように、今回の拘束比例代表選挙政党に主体を置いております。政党というものは、先生指摘のように必ずしもきちっとしたものでないことは私どもも存じておりますけれども実態的には法人格を持っているに等しいような能力を持っている団体がたくさんあるわけでございます。政党本位選挙制度をとる以上、しかも法律名簿を提出できる政党というものを明定する以上、そのものを中心にして法律制度組み立てられていくというのはごく自然な考え方ではなかろうか、私はこのように思っております。  御指摘をいただきました、前日まで名簿の差しかえができる、こういうことでございますが、個人本位選挙の場合とは異なりまして、政党本位選挙では、除名とか離党とかこういった者がございました場合に、そういう者が載っておりますことはかえって政党本位選挙に逆行する考え方になりますので、選挙手続上可能な限りそういう者を抹消するという手続を認める方が適当であろうという判断でございまするし、また十日前までに名簿登載者の四分の一以上の者が欠けた場合、これは除名とか離党とかいう者がそうたくさん出るとは思っておりませんけれども、何か不幸な集団事件等でぐあいが悪くなるというようなことも考えられますので、そういう場合には名簿登載者数というものを選挙戦略によってどの程度立てるかという目標が狂ってまいるわけでございますので、それについては補正を認めるという考え方をとる、こういうことで規定をいたしたわけでございます。
  21. 菅直人

    菅委員 結局いまの話も先ほどの金丸さんの話とよく似ていて、こういう制度をとる以上は政党というものを一種の法人格的なものというふうに、法人的なものにみなさざるを得ないんじゃないか、非常に逆なんですね。現在の政党なり現在の政治団体のあり方がそうなっているからこういうものを導入するというんじゃなくて、こういう制度を持ち込む以上はそうやらざるを得ないじゃないか、実態に合わないかもしれないけれどもそうやらざるを得ませんと、まるで制度の方から無理やり政党実態を何か想定しているような、そうとしか聞こえないわけですよ。  余り時間もないので、もう一点この問題について。  私はこの法律で、この二百二十四条の三という項目を非常に注目しておるわけです。つまり名簿登載者の選定に関する罪」ということです。つまりいままで、たとえばある政党がこの人を公認しますといって、お金を受け取っているかどうかわからないけれども、公認をする、しないということでこういう規定が設けられたというのは私は知りません。今回は名簿に登載する権限を持っている人がそれによって請託を受けた場合は、この条文でもってまさに刑法の刑事罰を受ける。まさにこういう問題があっては困るわけですから、設けることそれ自体を否定的に言うつもりはありませんけれども、しかし一つ政治団体の、政党の内部での議論、内部での意思決定に対して、それに一種の収賄罪のようなものを設けたというのは、私は大変に、この政党実態というものといまの刑事罰というものの何というか非常にそぐわないものを無理やりにくっつけたという感じがしないではないわけですね。  私はこの問題はあえて指摘だけにとどめておきますけれども、じゃ選定について権限を有するというのは一体だれなんだ。幹事長とか書記長なのか、選対委員長なのか、そういう何かの選定の委員会なのか。そういう人が、たとえば、じゃ立候補するときには、地方区選挙もあるから、全国区は自分で選挙をやらないんだから何千万かずつ一種のそういう負担をしなさい、支援団体にもその負担をしてもらおうと基準を決めたときに、この条項との関係でどうなるのか。そういう点、この法律がもし施行された場合には一体どのような判断をするのかということを大変注目しておるわけです。  時間がないのでこの問題は指摘にとどめて、最後に三つだけ少し細かい問題をお尋ねをしておいて、私の質問を終えたいと思います。  一つは、個人名の投票が無効だというように言われておりますけれども条文で言えば一体どの条文でこの個人名の投票が無効だということを読むようになっているのかという点が一点。  第二点は、投票用紙等についてのあり方はまだ何も書かれておりませんけれども地方区全国区を別々の投票用紙に書かせるおつもりなのか、それとも一枚の投票用紙に書かせるつもりなのか、これが第二点。  第三点は、いま私どもは新自運という形で衆議院会派を組んでいるわけですが、たとえば新自由クラブ・民主連合という名前で名簿をつくったと想定したときに、投票者が新自由クラブとだけ書いたとか、または社民連、社会民主連合とだけ書いたという場合に、これは有効票となると考えられるかどうか。  この三つについて、最後に質問をしたいと思います。
  22. 塩崎潤

    塩崎委員長代理 松浦功君、簡潔に答弁をお願いします。
  23. 松浦功

    松浦参議院議員 三つお尋ねがございました。  一つは、個人名を書いたら無効だということだが、どこに条文があるのかということでございますが、四十六条の二項の後段に「同項の届出に係る名称又は略称を自書して、これを投票箱に入れなければならない。」と書いてございます。これは政党名または略称を書けということでございます。したがって、現在の制度個人名を書けと書いてあるのと同様でございまして、それ以外のものを書いた場合には他事記載ということになって無効になる、こういうふうに御理解をいただければ結構かと思います。  第二番目の御質問は、地方区の票と比例代表区の票は全然別々でございます。二票というふうにお考えをいただきたい。(菅委員「用紙が別ですね。」と呼ぶ)用紙が別でございます。  第三番目の御質問でございますが、新自由クラブ・社会民主連合、こういう名称を一つ政党としてお届けになられる、すると名称保護をお受けになりますから、これに類似した名称は、第三号要件に該当する十人だけで出るような団体でございますが、そういうものはこういう名前を名のれません。したがって、これを届け出た名称を前提として考えますならば、新自由クラブという投票も社会民主連合という投票も、選挙長の判断でございますが、有効とされるものと私は考えており、ます。
  24. 塩崎潤

    塩崎委員長代理 菅直人君、質疑時間は終了いたしておりますので、簡潔に願います。
  25. 菅直人

    菅委員 もうこれで終わりますけれども、大変実務的なことの確認をいただきましてありがとうございました。  ただ、一つだけ指摘するにとどめますと、四十六条にこう書いてあるから個人名が無効というふうに言われましたけれども、実際六十八条の二項に、次の場合は無効とするという表現がわざわざ設けてある中に、個人の記載が必ずしも他事記載というふうに読めないように私には理解をされるので、これは法律が動けばここで決めるのじゃなくて裁判所が判断するわけですから、必ずしも個人名が無効という判断をされるかどうか、この条文構成だと必ずしもそうなっていると一概には言えないのじゃないかと私は思いますし、また最初に申し上げましたように、この制度そのものが果たしていまの日本の参議院の持っている問題にちゃんとこたえるものか、大変に疑問だということを最後に改めて申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  26. 塩崎潤

    塩崎委員長代理 以上で菅直人君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  27. 沢田広

    沢田委員 いま議論もありましたが、民主政治議会政治ということで、現在は多数決制度が採用されております。そういう条件の中での選挙あるいは議会の民主主義を守っていく、大体大きく三つの言われている要件があると思うのでありますが、これは私が言うよりも、大体三つくらいどういう要件がそれには必要だとお考えになっておられるのか、提案者からまずお聞きをしていきたいと思います。-提案者、聞いていたのですか。同じことを二度言わせないようにしてください。  要するに、民主主義下における議会政治、あるいはそれを守っていくための選挙制度、それには幾つかの要件があると思うのですね。その幾つかの要件の中で、大きなものが大体三つぐらい言われている。多数決原理というものは、原則の一つだと思うのであります。しかしその中でも、今日まで百年以上の歴史をたどってきているそういう経験から、選挙のあり方というものに、まあ多くの柱がありますが、三つぐらい大きく言われているものもあるのであります。その点は、この選挙の原則というもの、あり方、やり方、そういうものについてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  28. 松浦功

    松浦参議院議員 お答え申し上げます。  私も、そういう深遠な理論に対してはお答えしにくいのでございますが、たとえば平等選挙であるとか直接選挙であるとか秘密選挙であるとか、そういった幾つかの重要な要素が選挙の体系の中において守られるべきものとして考えられるというふうに思っております。
  29. 沢田広

    沢田委員 多数決制、これも一つだと思うのですね。それから、公平というか公正、フェアでなければならぬ。やはり同じ条件の中において戦われるということが一つの原則ですね。それからもう一つは、やはり少数意見の尊重というのが民主主義の一つの原則だと思うのですね。どこの国においても、いわゆる一党の独裁が続くとテロが起こってきたり社会不安が助長されたりということで、やはり常に少数意見の配慮ということが民主主義を守る一つの大きな前提になっていると思うのであります。  ですから、選挙を考える場合には、まず公平でなければならぬ。お互いの条件を同一の条件にしなければならぬ。同時に、いま言ったような多数決の原理というものも一つの原則であります。しかし同時に、その少数意見を尊重していく仕組みをその中にどう取り入れるか、これも民主政治を守っていくための一つの大きな要件だと思うのですね。この点の考え方はいかがでしょう。
  30. 松浦功

    松浦参議院議員 全く御高説のとおりでございます。
  31. 沢田広

    沢田委員 だとすると、個人の場合は単純得票数であります。いまも議論になりました政党の条件というものには、私はきわめて問題があるような気もするのでありますが、一応それは後におきます。  それで、その政党の条件があって、今度は比例代表制になりました。比例代表になれば、三十があり十があり五があり三がある、こういう形になります。われわれの統計学的なものの中でもいろいろな統計学、一次方程式もあれば二次方程式もあれば三次方程式もある。あるいはモードというとり方もある。ですから、統計学的に見てより多くの国民意思議会の中に反映をするということは、単純なる計算ではないだろうと思うのです。だからその意味においては、上にいけばある程度割合が高くなる、ある一定限度以上いったら割合の比率が、まあ得票数が多くなければだめだとか、やはり上を詰めていくというような方法は当然考慮されなければならぬ。これは考え方の問題ですよ。方法はいま一応別にしますが、考え方としてはやはり一党独裁という形を常に避ける、こういう配慮が民主主義を守る一つの大きな前提です。これは恐らく、逆の体制になればあなた方もそういうことを言われるだろうと思うのですね。だから、常に少数意見を守れる配慮ということを民主主義の最大の原則に置かなくちゃならぬ。そういうのが選挙制度の場合には大変必要なんです。これは、われわれ労働組合の場合なんかにおいてもそういうことなんですね。ですから、完全連記というのをやめさせる、やはり制限連記をさせる、常に一部の少数者意見を反映できる仕組みというものを取り入れていく、それが国民意思を、一つの集約をしていける形、発言の場を与えるという、そういうことを必要としているんじゃないかと思うのです。これは政治一つの哲学だと思うのですね。ですから、いまここに出ているような、ドント方式のような単純に比率で割っていくのではなくて、やはりある程度上の方は歩どまりを考えながら少数意見が取り入れられる仕組みというものを採用していくということは、非常に基本的な要件一つだと思うのです。いま自民党が多数ですからこの方がいいと思っているでしょうが、あるいは世の中変わって逆になる場合もあるのですよ。逆になる場合もあったときにはやはりそのことが必要になってくる。私は必ず歴史というものはそういうものだと思うのです。ですから、お互いに常にそのバランスを考えながら、少数意見をやはり国会の場に受け入れていく条件というのは、どんな場合になっても考えていくことが必要になってくる、このことをまず認定してもらわないと、いわゆる政治哲学といいますか、民主主義を守る前提が崩れてしまうことになる。少数意見の抹殺ということは最大限に避けなくちゃいかぬ。これをもしやっていきますと、それは実力行使で対抗せざるを得なくなるわけですから、それはテロ行為になり、あるいはその他の破壊行為につながらざるを得なくなる、そういう排除の論理ではやはり民主主義は守っていけないということになると思うのです。この考え方だけ、まず一つ大前提になることですからお伺いをしておきたいと私は思うのであります。
  32. 金丸三郎

    金丸参議院議員 民主政治のもとにおきましては、できるだけ少数意見を尊重しなければならないというお考えは私どもも全く同感でございます。
  33. 沢田広

    沢田委員 それならば、ここに提案されておりますこの方法からサン・ラグ方式というようなもの、この一・四がいいかどうかは別問題です。一・五がいいかどうか、一・三がいいかどうかは別問題ですが、しかし、そういう一つ比率というものをある程度かぶせながら少数意見を吸収していける場をつくっていく、これは別に私は新自由クラブさんやいま言われた方々の立場でというのじゃない、政治の原理としてそういうことが必要である。あるいは極端な一部の人間でもときには必要であるかもしれない。そういう意味においてそのもの国民の声であるとすれば、その声を受け入れていく余裕というものを民主主義は大前提として持たなくちゃならぬ。ただ排除だけがすべてではないというふうに思うのです。  ですから、そのことだけをまず皆さんが前提として受け入れていただければ、ある程度その点について直してもらえる余裕を持てるのかどうか、今度は次の問題に入りたいのです。  そのことが民主主義を守っていく一つの大きな要素である。力で強引にやっていくことだけがすべてではないということをぜひひとつ提案者の方も御理解いただいて、今度は具体的な問題になってくると、おっとそうはいかないということになるのでしょうけれども、ともかく概念的に同一の土俵に乗ることが必要ですから、そういう意味においては少数意見を吸収できる条件をわれわれは配慮していかなくちゃいけない。われわれもいつ少数のものになるかわかりません。それはお互いの立場。だけれども、そういう意味において常に配慮するということがこの選挙法を考える場合の最前提の要件だと思うのです。その点いかがでしょうか。
  34. 松浦功

    松浦参議院議員 金丸先生からもお答えがございましたように、少数意見を圧迫をしたり、これを排除したりということはとるべき姿ではないと思います。あくまで平等ということを旨にしていくということであろうかと思っております。
  35. 沢田広

    沢田委員 そう思うのだけれども、平等だということでこの単純計算が出てくるのじゃちょっとおかしい。この平等という意味はさっきも言ったように統計学的に言えばいろいろあります。単に算術計算で割る方法もあるし、あるいは等差級数というものもありますし、あるいはさっき言ったようないろいろな倍率の掛け方もあります。一位の場合は一でいく、一から十までの場合は、その次は一・二の比率でいきます。三十位以上は逆に今度は〇・幾らになりますか、そういうふうな物の考え方もあります。ですから、統計学的な方法としてはいろいろな方式があるから、その方式の採用についてはひとつ平等という議論じゃなくて、それも含めて平等の範囲に含まれる、こういうふうに解釈していいですね、その選択があるということ、少数意見を尊重していくためへの選択というものはあり得るというふうに。いかがですか。
  36. 松浦功

    松浦参議院議員 先ほど先生がおっしゃられましたように、この後にどういう問題が出てくるのかということになりますと、余り簡単にイエスとも言いかねるわけでございますが、少なくとも最低限平等ということを確保していくことが必要だ、そう思っております。  ほかの質問がございますれば、それに関連して先生のおっしゃるような御意図もこの法案の中に幾つか出てまいります。その点についても御説明を申し上げたいと思います。
  37. 沢田広

    沢田委員 では続いて、社会党が出しておりますサン・ラグ方式、これは修正されたものでありますが、こういう方法一つの例としてまず考えられないか。このとおりというんじゃないのですよ。このとおりというんじゃなく、もっと違う方法もある。五十名のうちの三分の一まではもう完全な得票でいってしまう。その次の三分の一は若干の数的な配慮、修正を使う。そして残りの三分の一については、さらにいまの差を上回るような等差級数をつける。こういうことも一つ論理としてあるわけですね三二分の一はあくまでも票でいきますよ、三分の一以下の場合はもうそれで終わりですから。その次はある程度等差的なものをつけます。その次にはさらに少数意見の尊重という配慮をしていきます。頭がたとえば五万であった場合に、片っ方は四万でいい、片っ方は四万三千でいい、わかりやすく言えばこういうとり方ですね。そういうような等差的に縮めていく方法もあると思うのです。いわゆる修正サン・ラグ方式がスウェーデンなりノルウェーなりなんかでやられているのは、いま申し上げたような少数意見の抹殺ということがかえって民主主義の破壊につながるという危険からそういうものの救済措置を講じているわけですね。ですから、そういう意味においての方法というものはやはり考慮すべきではないかという気がします。ですから、具体的に言えば、このサン・ラグ方式ではないけれども少数意見をどう取り入れるかという形について御検討いただきたい。これは具体的には党が後で出しますけれども、ひとつ御検討いただけるかどうか。     〔塩崎委員長代理退席、委員長着席〕
  38. 松浦功

    松浦参議院議員 御承知のように、今回本法案において採用しているのは比例代表でございます。したがって、あくまで公正に比例して案分するということが筋道であろうと考えております。したがって、単純比例という方法を考えてみたわけでございます。これはもう小学校の生徒にもわかってもらえる問題でございますので、それが一番いいと思って考えました。  ところが、端数の処理をめぐりまして、整数と端数とを分離して数学的に結びつけるということに無理がございまして、いわゆるアラバマのパラドックスという非常に妙な結果が出てきてしまう事例が出てまいります。そこでいろいろの方法を検討いたしてみましたが、単純比例の端数処理に伴う矛盾を解決する方法として一番比例代表に近い結果が出てくる方法がドント式であるということに結論を得ましたので、ドント式を採用することにいたしたわけでございます。先生も当然御承知のことと思いますが、サン・ラグとか修正サン・ラグとかいうのは、これは比例代表ではございません。小政党に意図的に有利になるように考え出した方式でございます。そういう考え方をとるかとらないかは、これは全く政策の問題であり主張の問題であろうと私は思いますけれども比例代表制度をとる以上は、やはりなるべく比例という形が出てくる方法がいいのではないかということでドント式を採用いたしたということでございます。  いまの問題で若干御説明の時間を許していただきたいと思いますけれども、単純比例でやりますと、実は現実の五十二年の得票数をもとにして計算をいたしてみましたところが、五十一の定数、まあ補欠があってくっつけた場合、五十一の定数といたしました場合に二名とれる政党が、五十二名の選挙定数ということで計算すると一名になってしまうという極端な矛盾が出てくるわけでございます。そのために単純比例方式がとれなかったということを御理解いただければ幸せでございます。
  39. 沢田広

    沢田委員 いまの話は、先ほどの数字にも出ていましたが、一名区の選挙になれば、落ちる票の割合というのはきわめて大きいのですね。千票の差であっても片っ方は落選、片っ方は当選、それが十選挙区あったら、これは比率の問題から見たらもう雲泥の差になってしまうわけです。選挙というものは一種の戦いであり、その中から民主政治を求めていくわけでありますから、一名区のところ等においてはそういうことが当然で、それが寄せ集まればいま言ったような現象が出てくる。これは県会や何かにはたくさん出てきている現象ですね。  ただ、いまおっしゃられたけれども、ドント方式がすべてオールマイティーだというふうに私は考えていない。もしあえて言うならば、こういうものはお互いの話といいますか、政治哲学の問題として、少数意見をどの程度考慮できるか、こういうことの配慮だと思うのです。ですからそういう意味においての配慮、たとえば譲ってドント方式を採用するとしても、なおかつ少数政党に対して配慮をしていくという心がけがこの案の中に含まれていかないといけないのじゃないかという気がいたしますので、今後、問題は党と詰めていただきたいと思います。  次の問題に行きます。順は不同になりますけれども、あと項目ごとにたくさんやっていきます。  まず、拘束名簿の中に含める人のイメージといいますか、どういう人が入るのだろうかということが一つ気になります。これは法律の中には全然入っていない、各政党にお任せですということになるわけです。  それから、その名簿に載っている人がどういう運動をするのかというと、ほとんど皆無に近い。極端に言えば、寝ている方が無難なんですね。選挙違反にもひっかからないし、運動は政党がやってくれるし、青島さんのことを出すわけじゃないが、外国にでも行っちゃっている方がずっと楽なんです、日本にいないで。寝ているか、外国に行っちゃっている方が、選挙違反にもひっかからなければ何にもならない。あとは政党が勝手にやってくれる、順番は自然に出てきてしまう、上の方にいる人はなおさら寝ていても大丈夫だということで心配もしないで済む、こういう形です。  やはり選挙である限り、候補者にある一定の国民に対する運動の義務というものは必要なんじゃないか、大前提として。私は何を考えるかということをいろいろ言う必要性はあるのじゃないか。それから、最低限の運動の基準というものを入れる必要はあると思うのです。皆さん方は提案者になってまだかくしゃくとされておる。政治家が物を言わないでがまんして蟄居している、穴の中へ入ってモグラのようにじっとしている、こんな姿が民主政治と言えますか。とにかく動かないことだ。動くわけにいかない、選挙中はいわゆる政治活動もできない、選挙運動は党がやる、こういう形の中に候補者が据え置かれたときには、候補者なんというものは全く床の間の置物みたいなものだ。出てくればほこりだらけになって、よほどほこりをたたかなければ使い物にならない、こういうことになってしまう。とにかくこの選挙法でいけばそういう形態が出る。もう少し脈々とした活気のあるものにしていく必要性があるのじゃないか。それには拘束名簿に載った人にある一定の連動義務を負わせる、こういうことが必要になってくるのだろうと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  40. 松浦功

    松浦参議院議員 ちょっと誤解をしておられるのではないかと思うのでございますが、名簿に載りました者が選挙連動を禁止されるということは一切ございません。法律の許す範囲で全く自由でございます。したがって、名簿に載せた者を選挙運動にフルに使うか使わないかは、党がお決めになられることだと思っております。少なくとも、私が仮に五十八年の選挙名簿に載るといたしますならば、私はやはり党の御指示に従ってフルに選挙活動をして歩くと思います。  その場合に地方区と違いますのは、松浦功、松浦功と言って歩くことは余り効果がないのでございます。私は名簿に載っておる松浦でございます、こういう考え方を持っております、私は自治省の出身でございますから、地方自治の拡充のために大いに努力をいたします、その私は名簿に載っております、したがって、ぜひ私を落とさないためにも自由民主党とお書きください、こういう運動を徹底的にして歩かざるを得ないと思っております。  ですから、先生がおっしゃっておられるのは、選挙公報とかあるいはラジオ、テレビ、こういったものしか今度の名簿式の選挙では運動を認めておりませんが、党で御主張のように、もうちょっと車を認めたらどうか、ポスターを認めたらどうか、こういうこととの絡みだと思うのでございます。それはあくまで党に認めるものでございまして、先生方の御主張も、個人にお認めになるわけではございません。ただ、算定の基礎を名簿登載者一人につき一台、こう言っておられるだけでございまして、これはあくまで党でございます。その車にだれを乗せるかは党がお決めになることであって、これは各党が、名簿に載っておる者にどういう者があるかということをお知らせいただくために、名簿登載者をフルに活用していくということを当然にお考えになっていただくものと思っておりますし、私は少なくとも自民党員としては、そういう考え方でやっていただくように幹部の方にもお願いいたしていくつもりでございます。  もう一つ候補者のイメージのお尋ねがございました。これは、名簿に載せるのは各党がお決めいただくわけでございますから、非常に国民にアピールするようなイメージのいい候補者が並ぶということは、それだけ国民から支持が得られるのだと思います。逆に言えば、得られるように各政党がイメージのいい候補者名簿に登載するということになろうかと思います。これは党の判断の問題というふうに考えております。
  41. 沢田広

    沢田委員 いまの範囲においてできるということは認めますが、それはあくまでも、参議院なら参議院地方区が当然行われているわけですから、あとは党の人数によって与えられた車、それの連呼要員になって乗って歩くということなんでしょう。しかしそれだって大変危険で、いつ選挙違反を起こすかわからない。  連呼をやって歩くならば、普通ならアルバイトの女の子ですよ。連呼ならばそういう形が出てきてしまう。そうすると、当然その中では相当本人の選挙運動というものは――名簿拘束者は候補者になるというふうに理解していいですか。
  42. 松浦功

    松浦参議院議員 法律上は、名簿登載者候補者の地位を持つものと思っております。
  43. 沢田広

    沢田委員 あちこち行ってしまいますが、そのイメージの問題でいままで議論されているのは、学識経験者、それから、有名というのは何が有名なのか中身はわかりませんけれども、有名である、有為な人材である、それから職能代表である、こういうような形の者を拘束名簿の中に登載者として入れる、いままでの速記録の中においては要件はこういうことになっているわけですが、これ以外に考えられているものはありますか、それともこの程度のものなんでありますか。
  44. 松浦功

    松浦参議院議員 お答え申し上げますが、なかなかむずかしい御質問でございまして、あるいは非常に大きな支援団体と深いつながりを持っておられる方というようなことも、選挙戦術としては一つ方法になろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、やはり有権者全般の方々から御支援が得られるようなという配慮、さらには、参議院というものを考えた場合に、各分野においてそれぞれ深い知識、経験を持っておられる方、こういったようなものも重要な要素として考えていいのではなかろうか、こんなふうに考えております。
  45. 沢田広

    沢田委員 そこで、これから後また細かくやっていきますが、そうすると政党任せである。これは法律ですから、国民としてはこういう枠の中から選ぶという政党に対する義務、政党に対する責任、そういうものは何ら法規制はないということですか。
  46. 松浦功

    松浦参議院議員 全くお説のとおりでございまして、義務はございません。そのかわり、先ほど来繰り返して申し上げますように、名簿登載者の選定のいかんによっては、非常に厚い支持が得られてみたり、あるいは予想したよりはきわめて少ない支持しか得られない、こういう形で国民意思が反映されてくる、こう理解をいたしております。
  47. 沢田広

    沢田委員 法案の方はこれからなんですが、じゃあえて申し上げますと、政党の届け出の中に、団体の届け出だけれども、なぜ政策は入らないのですか。政党候補者を選ぶ、政党選挙をするというのに、綱領と規約と三つ載っていますが、なぜ政策は含まれないのですか。政党選挙であれば政策で国民は選ぶわけです。綱領で選ぶわけじゃないのですよ。綱領は未来、二十一世紀にわたってまでの方針なんでしょうし、それから規約は党の内部の規約ですからね。国民に対するこれは何も、いわゆる会社でいえば定款みたいなものですよ。あるいはその他の役員会で決めたとか何で決めたなんという届け出も、これも別に問題になることではない。まあ議論は後でしますが、なぜ政策は入らないのですか、政策のない政党なんというのは何なのですか、これは。
  48. 松浦功

    松浦参議院議員 公の権力が政党の内部に立ち入ることは好ましくない、できるだけ自由であるべきである、これは基本原則だと思います。今回この届け出の中に書きましたことは最低必要限度のものを書いただけでございます。むしろ政党という実体を持ったものが自己の政党の政策を政治活動として宣伝しないなどというものは私はあり得ると思っておらないわけでございます。したがって、政策を届け出なくても日常の政治活動あるいは選挙運動期間中の自己の政党の政策、こういったものは当然法律規定にかかわらず声を大にしてあちらこちらで述べられるものというふうに思っております。
  49. 沢田広

    沢田委員 それはこじつけというものですよ。綱領だとか規約だとか、こんなものこそこれは当然なければ政党なり政治団体にならない。だけれども選挙をやる以上は少なくとも政策で争うのですよ。それぞれの党の、この政策で私の党を応援してください、松浦さんを応援してくれというのではない、この政策に御支持をいただきたい、減税をやりますよ、増税をやりますよということを青いながら、とにかく選択を求めるのでしょう。それが届け出の中に含まれていないなんということは、これはどう理解したって画竜点購を欠くというか、画竜までいかないですけれども、これは蛇ぐらいなんでしょうけれども、とにかく話にならないのだと思うのです。だから政党である限り政策というものが同時に添付をされて、その政策というものが条件になっていかなければ国民の選択の基準にもなっていかないだろうと思う。それはいわゆる自民党さんが長年の政権をとっている安易さがこういう法律になってきたのだと私は思うのです。とにかく新しい、生まれ出る政党であったとすれば、それはやはり政策が最高のものになっていかざるを得ないだろうと思うのです。だから国民もこれからはだんだん政策で選んでいく、人で選ぶのじゃないぞ、政党を選ぶのだから、その政党の持つ政策がいいか悪いかで選んでいく、こういうことになっていくだろうと思うのです。ですから、この政策の入らない、届け出の必要がないというこういう政党というのはナンセンスになるのじゃないかと思うのです。これは当然含めなければいかぬのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  50. 松浦功

    松浦参議院議員 繰り返して申し上げるようになりますが、政党というのは政策を掲げてその政策を実行していくということに本来の目標があるわけでございますから、これは何も届け出をしなくても、どの機会にもいろいろな機会があるわけでございます。特に政治活動というものは全く自由でございますから、国民の皆さま方に政党の政策を知らせるということは十分機会があるものと思います。  何か、古いがかりをつけるようなお答えになって恐縮でございますけれども、現在の個人本位選挙におきましても政策の届け出というのはないのでございます。これは沢田先生の顔がいいから投票してくれという選挙制度ではないのです。先生が何をお考えになり何党に属してどういう政策をお持ちになっておるかということに対して国民はやはり審判するというのは、個人本位選挙であってもそうだろうと思うのでございます。これも政策の届け出はさせておりません。選挙公報を通じて恐らくやっておりましょう。また政策というものはときどき変わることもあるわけでございますので、余りそう固定的にお考えをいただかないで、生年月日とか年齢とかいうものとは別に考えていただいた方がいいのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  51. 沢田広

    沢田委員 これはまた私も逆なでするようですが、だから二枚舌を使う政党が生まれてきたり、あるいは言ったことが守られない政党が生まれてきたり、今度は比例代表制拘束名簿式なんです。少なくとも、その全体の候補者を拘束するものなんです。この政策でこの人たちは今後国会で働くのです。これが国民に対する責任だと私は思うのです。それが政策がちょいちょい変わるから出せないのだということでは少なくともないだろうと思う。九十日がいいか悪いかは別問題です。九十日でできない政策なんということは私は考えられない。これが三年前に出せとか言うのなら無理だというふうにある程度言われても、しかし方針は私はあると思うのです。いまだってあるのだから。それは九十日の名簿を出すときに政策が出せないという論理は私は考えられないのであります。これは政党である限り政策は存在するのですから、拘束名簿でこの人たちのいわゆる国会活動をする基準はこの政策で活動をするのです、だからその政党が責任を負うのですということにならなければ、論理が合わないのじゃないかと思うのです。きょうはではこの問題は回答はお昼過ぎにしてもらいますよ。このままでいってまたお互いに逆なでし合ってもよくないですから、もう少し前進的に謙虚にひとつ御判断をいただくということが必要じゃないか。政策という文字を二字入れるか入れないかの問題ですから、それはひとつ考えていただきたい。  さっきの質問でいわゆる略称の問題があります。自民党は象さんを使ってうちは三矢の矢を使っている。これも一つのシンボルマークですから、マークということになりますか。略称というのは自民党は横暴かとかわがままなんという略称もあるかもわかりませんが、これは余談ですけれども。そういうことで、略称のつけ方というのはいろいろな略称のつけ方があります。それから社会民主党だとか民主社会党だとかあるいは何々党国民会議なんという長い会派名にもなっているところもあるわけです。そうすると全部書かなければだめなのかどうかとこれは不安になります。だから、これは必ず略称を使うに決まっておると私は思うのです。マル共とかマル社とかマル自とかこういうようなものに――マル自というと、新自由クラブと間違えるから、マル新とか、とにかくそういうような略称が使われることも一つの方向だと思うのです。それでこの略称という範囲とそれから中身をひとつ説明をいただいてお昼にしていきたいと思うのです。
  52. 松浦功

    松浦参議院議員 名称はきちっと決まりておるはずでございますので、これは御理解いただけると思います。  略称となりますと、やはりそれを簡略にしたもの、こういうことだと思います。私の党を考えますならば、これはまだ決まっておりませんけれども、届け出をどうするかは決まっておりませんが、自由民主党というのが名称でございます。自民党というのが恐らく略称と考えていい一つの言い方ではなかろうか、こう思っております。
  53. 沢田広

    沢田委員 ちょうど途中ですから、考えていただく時間でお昼にするということで、途中で終わります。
  54. 久野忠治

    久野委員長 午後一時より再開することとし、休憩いたします。     正午休憩      ――――◇―――――     午後一時十三分開議
  55. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沢田広君。
  56. 沢田広

    沢田委員 先ほどの懸案になっております、政党要件一つに政策を含めることは不可欠な要件であるという点について、御回答をいただきたいというのが一つです。
  57. 松浦功

    松浦参議院議員 お答え申し上げます。  食事をちょうだいしながらいろいろ考えてみましたが、政党がそれぞれの党の政策を宣伝するという機会はあらゆる機会があるわけでございまして、選挙管理委員会の方に提出する資料の中に政策を書かせるということになっても、それが直ちに表に出るという手続になるわけではございませんし、はなはだお言葉を返すようでございますけれども、これは政党の手によって、それぞれの本来の目的に従ってやっていただくべき筋ではなかろうかという前回のお答えを繰り返して申し上げざるを得ないような気持ちでおります。
  58. 沢田広

    沢田委員 これは昭和二十一年の当時、何らか案がありましたけれども、本来なら政党法という法律がつくられて、これは前にも質問があったようですからあえて私は重複を避けて省略したのでありますが、政党の果たすべき役割り、任務、義務、また園児的な中における地位、こういうものをやはりしっかりと法律の中に明記して、政党とは何ぞや、常に幽霊のごとく足がなくて何だかわけがわからぬ、こういう形であってはならぬのでありまして、その意味において政党法というものが制定されれば、それの中に必要の要件を当然具備しなければならぬ、こういうことになりますから、あえてここでまた綱領だとか規則なんか入れなくてもいいんだと思うのです。  ただ、その政党の基盤というか政党そのものが不明確な、あるいは政治団体というものが足がわりあい不明確な条件にある今日、その政党で選ばせるということになれば、やはり政策というものが裏づけにならないと、これは政党と一体のものですから、これは委員長、大変提案者はかたくなにそういうことを言っておりますけれども、本人自身としてはいまさら直すわけにもいかないし弱ったな、こういう気持ちでいるんだろうと思うのであります。  そこで委員長、後でひとつ御配慮いただいて、政党と不即不離にある政策というものが国民の前に提示されることは必要な要件であると私は理解をいたしまして、何らかの機会に発表されるだろうというようなことでは、若干法体系として十分とは言いがたい、こういうふうに私は思いますので、委員長がそのお取り計らいをしていただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  59. 久野忠治

    久野委員長 一応承っておきます。
  60. 沢田広

    沢田委員 承っておくだけではちょっと残念なんで、理事会等でお諮りいただいて、ひとつ御配慮いただかなければ、これ以上質問していっても意味がなくなってしまうので、政策と政党というものは要するに、先ほども言ったように人間の顔なんですから、その政策は、お能の面をかぶったようなかっこうをしていて実物は鬼だったというようなことになったのではこれは話にならぬのですから、その意味において政策というものは党を国民が選択する一つの大きな基準なんですから、やはりそれはある一定の、定款並みのものだと思うのですね。そういうようなもので扱われることが必要だと思うので、ぜひ委員長としては、私いまここでということは言いませんが、理事会等でお諮りをいただいて善処していただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
  61. 久野忠治

    久野委員長 沢田君の御発言につきましてはよく承りました。承りましたので、後日理事会にお諮りをいたしまして協議をいたしたいと思います。
  62. 沢田広

    沢田委員 若干前に戻ります。法制局来ておりますが、略称とは、先ほどもちょっと私がいろいろ言葉を挙げましたが、トレードマークあるいは愛称、そういうものを含むのかどうか、その点法制局の方からお答えいただきたいと思います。
  63. 三宅将夫

    ○三宅参議院法制局参事 お答えいたします。  略称とは名称を省略したものでございますので、いまの愛称とかトレードマークとかそういうものは含まないのではなかろうかと存じます。
  64. 沢田広

    沢田委員 若干続いてまいりますが、先ほどの候補者の資格要件の中で各政党がそれぞれの拘束名簿の中の人を選ぶ、選ぶ人柄も不明だし、それから一切この法律では何らタッチされていない、ただ包括的にその政党に委任している。その政党が、言うならば経理の上においてもあるいは組織運営の面においても、国民から認知をされるような形態になっているかどうか、そのことがやはり必要な要件になると思うのです。  たとえば、村落における政治団体というものは、この場合にはどういうふうになるのか。県段階は皆あるだろうと思うのです。それから、市段階もほぼあるだろうと思うのですね。村落関係、離島関係に行った場合に、この政治団体を構成する主要な構成員は、事務所もそうでありますけれども、何人がこれに対応するのか。日本の政党というのは、まだそこまで発達しておりませんから、個人の家であるとか何かになってくるのじゃないかという気がするのですね。一定の事務所を設けてある場所というのは、ほとんどないと言ってもいいんじゃないかと思うのですね。そのときに、個人の家を借りるとか何かをするようにならざるを得ないのではないかという気がするのでありますが、その点はどのように配慮されておられるのでしょうか。
  65. 松浦功

    松浦参議院議員 いわゆる地方単位の政党その他の政治団体のことだと思いますけれども、これについては、全く一般の政党と同じように考えておるわけでございます。
  66. 沢田広

    沢田委員 政党が確認団体として拘束名簿制の選挙をやります。その政党とはどの党を対象としても構いませんが、全国にそれぞれ確認団体の事務所を設けてやっていく、これは常識ですね。そういうことは考えていないのですか。これは政党が責任団体になれば、その政党がどこか、確認団体の事務所を都道府県に一カ所置くとここには書いてありますね。それから市町村段階には、これは置くとか置かないとか書いてないですね。そういう点については全国国民に訴えるわけでありますから、言うならば各行政単位ぐらいに確認団体の事務所は当然不可欠な要件になるのではないか、常識的に考えて。その点はどのように法制上は考えておられるのですか。
  67. 松浦功

    松浦参議院議員 お答えいたします。  各県に一カ所選挙事務所を設けられるという規定から、全国的な組織のみというふうにお考えかもしれませんが、先生御出身の埼玉県の中で国会議員五人さんお集まりいただいて、そこの組織も当然今度は選挙に参加できる。その場合には、埼玉だけで選挙運動をやったのでは票がとれないだろうから一カ所ずつ四十七県に設けてもよろしいよ、こういう趣旨でございまして、決して、全国的に網を張っておってそれぞれの組織の支部を持っておる、こういうことを要件とするとは考えておりません。
  68. 沢田広

    沢田委員 若干、私の方の質問が次の問題と関連してくるからその上だけ言ったのでありますが、たとえば選挙違反等の場合ですね。政治団体の確認団体政党である、もしくは主要な構成員である、一応こういうふうになっております。たとえばビラ張りがあったというような場合あるいはパンフの配布があったあるいは戸別訪問があった、それは政治確認団体の構成員以外は運動員ということになると解されるわけですか。運動員かお手伝いですね、いわゆるアルバイトのお手伝いということになる。確認団体の構成メンバー以外の人たちの扱いは、ここの場合どう考えておられるのですか。
  69. 松浦功

    松浦参議院議員 構成員以外は、当該政党の政策に共鳴して協力する運動員であってみたり、あるいは日当支払いをして動いてもらう労務者であったりということになるのではないかと思います。
  70. 沢田広

    沢田委員 いまの答弁は、法制局ではそういうふうに理解しておりますか。
  71. 三宅将夫

    ○三宅参議院法制局参事 お答えいたします。  ただいまの発議者と同様に考えております。
  72. 沢田広

    沢田委員 そうすると、ビラ張りみたいな場合は、直接貼付した者が広告条例その他の処罰の対象になるのがいままでの法律の適用でありますが、やや企画的なことあるいは計画的なことあるいはその指示を命じた者との関係等からいうと、それは運動員であるから罪は免れる、言うならばその確認団体が責めを負うものであるというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  73. 松浦功

    松浦参議院議員 選挙法のたてまえは、行為者を罰するというのが原則でございます。もちろん先生から御指摘がございましたように、違法行為を企画立案をし、指示した者、そういった者は共犯になる、これはもう当然のことだと思います。
  74. 沢田広

    沢田委員 続いて、第八十六条の二にあります拘束名簿の中にある立候補の届け出等となっておりますが、特にその最後の行に「当該選挙における候補者とする」、こういうふうに八十六条の二で規定をされております。そうすると、先ほど質問をいたしましたが、選挙運動の場合に候補者としての行動ということに拘束名簿の人はなるというふうに理解をするわけでありますが、そのとおり解釈してよろしゅうございますか。
  75. 松浦功

    松浦参議院議員 比例代表選挙におきまする名簿登載者は、候補者としての地位を持つものというふうに理解をして法律組み立てております。
  76. 沢田広

    沢田委員 候補者となれば、選挙運動の運動の分野条項でまた質問いたしますが、標旗を持たなければならないとかいろいろと制約条件がございますね。この場合は、この候補者としての条件は全般的に除外をされているということになるのか、ある一定の候補者としての要件というものがあるのか、あるいは一般の運動員との混合という問題は起きてこないかどうか。時には人の車に乗って運動してしまう。候補者でありながら他の候補者の車に乗ってしまう。これは運動員として、応援者として乗るということですね、標旗がないわけですから。あるいは、候補者としてやる場合には今度は標旗は持たなく、候補者でも自分の車は持たないですね。そういう候補者としての運動形態というものはどういうふうに描いておられるのでしょうか。
  77. 松浦功

    松浦参議院議員 個人選挙の場合における候補者と違いまして、先ほども申し上げましたように候補者と等しい地位は持つものの、選挙運動に関しては全く一般の者と同じ、したがって応援演説をするとか街頭演説の車の上に立つとか、これは所定の、定められた要件のもとにおいて自由に活動できる、こういうふうに理解をいたしております。
  78. 沢田広

    沢田委員 同じ法律候補者という名称の言葉を使いながら中身が違うということでは、若干問題が起きるんじゃないですか。同じ「候補者とする」というふうに法律で明記をされて、候補者としての制約というものを当然受けなければならぬ。あるいは、特別に除外規定というものが制定されなければならぬ。何らかのそのことがないと、やはり候補者は違う、これは運動員であり片方は候補者なんだという使い分けは若干問題があるんじゃなかろうかと思うのですが、いかがですか。これは法制局の方でお答えいただきたい。
  79. 三宅将夫

    ○三宅参議院法制局参事 お答えいたします。  個人本位選挙制度のもとにおきましては、立候補の届け出を選挙長が受理いたしますと、候補者は公職の候補者という法的な地位を取得するわけでございます。政党本位選挙制度のもとにおきましてもその点は全く同様でございまして、政党名簿選挙長のもとに届け出まして選挙長に受理されますと、名簿登載者法律上の公職の候補者という法的地位につくわけでございます。その点は、個人本位選挙制度のもとにおけると政党本位選挙制度のもとにおけると全く同様でございます。  いま先生お尋ねの、公職の候補者としての法的地位を有する者が選挙運動の上でどのように扱われるかという問題でございますが、その点につきましては、政党本位選挙制度におきましては政党政党選挙になりますので、選挙運動の主体が、これはもう先生御案内のように政党ということになります。それから、従来の個人本位選挙制度のもとにおきましては、選挙運動の主体は個人候補者個人候補者同士が争って選挙戦を戦うということになります。政党本位選挙制度のもとでは、先生御承知のように政党同士が選挙戦を争うことになりますので、公職の候捕者ではございますけれども選挙運動の主体として政党が行います選挙運動に党員として従事する、こういう形になるわけでございます。したがって、党員として事実上たとえば政談演説会で応援弁士になる、あるいは地方区に応援に出かけていくとか、それは党員として選挙連動に従う、こういうことで、個人本位選挙制度の場合とは本質的に違ってくることになるわけでございます。
  80. 沢田広

    沢田委員 政治活動は、磯間外は前はできていたのですが、今度時間外はできなくなりましたね。一般的な選挙運動は七時から八時までですね。しかし、政治活動は時間外も許されていたのですが、今度政治活動選挙期間中はできない、こういうことになったわけですね。この点は間違いないですね。
  81. 松浦功

    松浦参議院議員 これまでと同様でございまして、特定の形態の政治活動につきましては、たてまえとしてこういう行為は選挙期間中はできないということを規定いたしました。ただし、確認団体として認定を受けたものはこういう態様ならできるということを現行制度でも書いてございます。今回の法体系においても何らこれは手いじりをいたしておりません。従前と全く同じというふうに御理解をいただきたいと思います。
  82. 沢田広

    沢田委員 従前というのはこの間の改正後という意味ですね、この間改正して変わったわけでありますから。その前の従前ではないですね。
  83. 松浦功

    松浦参議院議員 お説のとおりでございます。
  84. 沢田広

    沢田委員 そこで、法制局から答えられた、候補者であって候補者でない、党員というものであるということになると、八時以後はいけないことにはなっていますが、個人の家を訪問するとかその他の運動は当然残される、こういうことも許される。一方では候補者であっていろいろな制約条件がある、しかし一方では、党の運動としての立場から見て制約されていない。選挙運動ということでは動けない、八時で終わりですが、それ以外の日常行動は八時以後も当然行える、あるいは個人演説会みたいなことば当然やれるし、あるいは個人の家の座談会等も当然できる、こういうことになると解してよろしいですか。
  85. 三宅将夫

    ○三宅参議院法制局参事 お答えいたします。  名簿登載者も公職の候補者であるわけではございます。だから、政治活動はもちろん法の定める範囲内において自由にできるわけでございます。たとえば連呼行為というようなことは法で定めました範囲内ではできる。ただ、政治活動でございましても法の規制には当然従うわけでございます。
  86. 沢田広

    沢田委員 答弁になっていない。  後で、政治活動の制限のところにいってまた重ねてやりますが、八十六条の二で候補者と決めておいて、一方で運動は候補者でなくてもいいのだという形、何らかの部分で漠然とした余地を残すということは法律の体系として望ましいことでないのじゃないかという気がするのです。やはり候補者であれば候補者としての地位、規律あるいは制約、そういうものが当然出てこなければならぬ。党がやるのだ。そうすると、逆に言いますと、個人活動は党が全部責任を負うということになりますか。無人格なんです。名目上は候補者、にするけれども事実上候補者でなく行動するのだ。とすれば、党の指示に従って行動する無人格のロボットであるということになるわけです。本人の意思は全然ない、また、候補者という名前、肩書きはくっつけられたけれども候補者としての実体はないということに運動面ではなるのでありますが、その辺はどう理解したらよいのでしょうか。これは法制局の方でどういう位置づけをされておるのかお伺いをしたい。
  87. 三宅将夫

    ○三宅参議院法制局参事 お答えいたします。  名簿登載者は公職の候補者ではございますが、選挙運動面ではどう位置づけられるかというお静ねでございますけれども選挙運動の主体は政党選挙運動を行うわけでございます。ただ、名簿登載者も公職の候補者でございますので、他の党員あるいは当該政党の構成員と同様に選挙運動あるいは政治活動に従うわけでございますけれども、いずれも法令の範囲内で従うわけでございます。
  88. 沢田広

    沢田委員 では逆な質問をしますが、してはいけないことは何なのですか。候補者としてしてはいけないことは何があるのですか。
  89. 三宅将夫

    ○三宅参議院法制局参事 お答えいたします。  候補者としては、政党選挙運動といたしましては、たとえば新聞広告とか選挙公報ですか、あるいは政見放送とか、比例代表選挙においては選挙運動は制限されております。また、政治活動の面におきましても、選挙運動期間中におきましては、現在の確認団体について認められている政治活動しか認められておらないわけでございます。公職の候補者といたしましては現行法で認められておる選挙運動しかできませんから、それ以外の選挙運動をすることは認められない。たとえばわが党にどうぞよろしくというような街頭演説をいたしましたりあるいはそういう文書図画とか、すべて選挙運動政党に認められておる選挙運動以外には認められておらないわけでございます。
  90. 沢田広

    沢田委員 結局運動員の域は出ない、こういうことですね。運動員の域は出ないということと解していいでしょう。運動員で、公職選挙法で定められた運動の普通一般の人が運動する以上のことはできない、これはあたりまえのことです。ただ、候補者と名前がついている者の制約は何かということを言っているわけですからね。
  91. 松浦功

    松浦参議院議員 先生もう十分御承知のとおりと思いますが、今回御提案申し上げております法案の考え方政党本位選挙でございます。したがって、選挙運動政党でございますし、投票用紙に書いていただくのも政党名でございます。したがって、政党選挙運動という観念が先行いたしますために個人選挙運動という概念はほとんどなくなってしまっております。  そこで、何が違うかと申しますと、本来の個人選挙における個人候補者としての考え方ではなくなってしまうわけでございまして、あくまで政党の構成員という立場で、法に許された行動はすべてとれる、こういうことだろうと思います。
  92. 沢田広

    沢田委員 これで時間をとりたくないので、若干の疑念が残っておりますが、今後の条項の中でまた出てきたらお伺いします。  そこで、次の第二項の第二号、先ほど申し上げた「政党その他の政治団体の綱領、党則、規約その他これらに相当するものを記載した文書」、届け出をするときにはこういうものが必要である。それから「前項各号の一に該当することを証する政令で定める文章」、こういうことになっております。  まず、そこで政策がなかったということをここで言ったわけでありますが、「その他これらに相当するもの」等の中身は何を意味しているものなのか、その点、どちらでも結構です、お答えをいただきたい。
  93. 松浦功

    松浦参議院議員 まことに細かいお尋ねでございますが、綱領、党則、規約というふうにはっきり明示していない「これらに相当するもの」しか持っていない団体もあろうかと思います。そういう場合のことを考えまして、「これらに相当するもの」というふうに書いたわけでございます。
  94. 沢田広

    沢田委員 「これらに相当するもの」等の判定はどこがやりますか。
  95. 松浦功

    松浦参議院議員 届け出を受けます選挙長でございます。
  96. 沢田広

    沢田委員 ではそれはそれで、いいか悪いかは別問題として次へ進みます。  細かいことで各条文になっていきますから、その点御理解をいただきたいと思うのですが、この宣誓書なのであります。「当該名簿登載者が誓う旨の宣誓書」、これは第五号もありますし、その「選定を適正に行ったことを当該機関を代表する者が誓う旨の宣誓書」、これはその「選出方法並びに名簿登載者の選定の手続を記載した文書並びに当該名簿登載者の選定を適正に行ったことを」宣誓をする。これはきわめて重要な項目なのであります。要すれば、この拘束名簿制の名簿の提出に当たってインチキはありません、ごまかしはありませんということを証明する宣誓書なのでありますが、その中身は大体どのようなものを考えておられるのか。ある意味においては偽造ということも起きるでありましょうし、出してしまってから、いや、ということも起こるでありましょうから、わざわざ宣誓書という言葉を使った意味、それからその位置づけ、その点お答えをいただきたい。
  97. 松浦功

    松浦参議院議員 これにつきましては、法律を御可決をいただきますならば、これらの細かなものについては様式等を定めるということを自治省で考えておるようでございます。
  98. 沢田広

    沢田委員 なぜ宣誓書が必要なのかという問題が一つ起きます。これは政党選挙である、そして政党がどういう人を選ぶのも自由であります、その中には干渉しません、これがいままでのたてまえだったと思うのですね。それをここへ来てなぜ宣誓書を出さなければならないのか、あるいは選出方法だとかその手続、こういうものを提出をしなければならなくなったのか。一切党に任せたとするならば、その登載の名簿を受け取ればもう文句はないのじゃないのですか。なぜこの項目を入れて宣誓書までとらなければならなくなったのか。前の答弁と比べて、どうもここへ来るとばかに厳しくなったみたいな形が起きているわけでありますが、その辺が矛盾するような気がしますのでお答えをいただきたいと思います。
  99. 松浦功

    松浦参議院議員 政党の行動についてはできる限り規制しないというのがたてまえであろうと思います。先生のおっしゃられるような考え方もりっぱな考え方一つであろうと私も存じます。ただ、今回の選挙法においては政党というものが国民意思国会に反映するための媒体として、選挙の中心としてきわめて重要な地位を占めております。私は、現在ございます政党は良識があるものとして考えてはおりますけれども、やはり最小限形式的に様式は整えておいた方がいいと思われる問題についてその条項規定したというふうに御理解をいただければ結構かと思います。
  100. 沢田広

    沢田委員 この宣誓書まで出させるということはまだ罰則の方まで見ておりませんが、何か罰則規定はありますか。規定の書類を出さなかった場合の罰則規定はあるのですが、宣誓書に偽りがあった場合の罰則規定はなかったと記憶するのですが、その点はどうなのですか。
  101. 松浦功

    松浦参議院議員 宣誓書を出さなかった場合の罰則というのはないわけでございまして、宣誓書が出てこなければ受け付けないことになりますから罰則はございません。ただ、虚偽がございますれば、これは罰則がございます。
  102. 沢田広

    沢田委員 これからまたむずかしい問題になりますが、第九十条へいきまして、いわゆる公務員の立候補なのであります。  これはほかの各項目にも関係してきますが、その県の知事を名簿の中に入れる、そして投票前で差しかえる、あるいはその県の首長を入れる、そして投票前で差しかえる、こういうことも法律のたてまえとしては不可能ではなくなってきているわけですね。それはいかがでしょうか。
  103. 松浦功

    松浦参議院議員 名簿は告示の日と翌日の二日間に届け出るわけでございますから、現職の知事さんをその名簿の中に入れて本人の承諾を得て届け出ますならば、知事の地位が飛びます。
  104. 沢田広

    沢田委員 しかしこれでは、公職を兼務することのできなかった者については、当選してから五日以内にその職を失うものとするとなっていますね。ですから現職で名前を掲載することは可能であって、当選をすれば結果的には五日以内に失う、こういうことになりますから、高級官僚の横滑りその他は別問題として、一番下の方に現職で掲載しておけばいいわけでありますから、当然当選する順位でないところへ入れておいて、万が一そこまでいったらば結果的には五日以内に辞職をするか、あるいは知事をやめればいいということがこの法律体系としては起きてきますが、いかがですか。
  105. 松浦功

    松浦参議院議員 先生がお尋ねの場合は、知事が名簿に載って、そして当選をしなかった後の繰り上げ補充の問題をお指しになっておられるのではないかと思うのでございます。
  106. 沢田広

    沢田委員 いや、違うのです。百三条をごらんになってください。「(当選人が兼職禁止の職にある場合等の特例)」と書いてありまして、第二項で、兼職禁止の場合の条件に欠ける者は「五日以内にその職を辞した旨の届出をしないときは、その当選を失う。」こうなっていますね。だから当選人が兼職禁止の職にある場合の特例ということで、現職であろうと何であろうととにかく立候補は可能です、現職の知事の名前を名簿の中に掲載することは可能になる、そしてそれは五日以内にいずれかを選択すればいいということにこの第二項ではなっていますね。  そうなると名簿の下の方にその県の知事の名前を入れておくことは、これは四百万円損するということになるかどうかわかりませんが、とにかく掲載することは可能である。しかも現職の知事を載せておいて、そして五日以内にどちらかを選択する。だから、これは公務員の立場の問題としてあえて言うならば、それは当然やめて載せなければならぬというのが筋道ではないかと私は言いたいわけであります。しかし、第百三条では兼職禁止の職にある者は五日以内となっている、こういうことを言っているわけです。
  107. 松浦功

    松浦参議院議員 百三条の二項のお尋ねだと思いますが、これは繰り上げ補充、更正決定等の規定でございますから、当選しなかった者が後に当選者となる場合のことでございます。いきなり今度の来年行われる選挙に知事さんを名簿に載せて出したというときは……
  108. 沢田広

    沢田委員 いや、第一項もあります。第一項は当然使えるのです。
  109. 三宅将夫

    ○三宅参議院法制局参事 お答えいたします。  いまの先生の御質問は、現職の知事が名簿登載者になる場合のお話だと思います。これは現職の知事は九十条の規定によりまして、ある政党名簿に載せて選挙長のところへ届け出まして、選挙長がそれを受理いたしますと、公職の候補者となりますので、現行法九十条によりまして、公職の候補者となったときは「その届出の日に当該公務員たることを辞したものとみなす。」とございますので、当然知事の地位を失うわけでございます。これは選挙期日前の話でございますけれども。  それで百三条の規定、これは選挙が終わった後で、名簿の下の方にある者が名簿の上位の者が亡くなったので繰り上げ補充するとか……(沢田委員「百三条の第一項」と呼ぶ)第一項もそうでございます。これも選挙が終わった後で当選人となった方が、仮に現職の知事であるかもわかりませんけれども、その場合は当選の告知をいたしますと、その日に知事の地位を辞するということでございまして、問題が二つございます。選挙期日の前に名簿に――立候補するのに、現職知事が立候補できるかという問題と、選挙期日が過ぎた後で仮に当選人となった場合は、その職を辞するかどうかという問題がございます。
  110. 沢田広

    沢田委員 とにかくしどろもどろで話にならないのだが、要するにこっちは公務員の退職なんで、一般の公務員が立つ場合はやめて出なければなりませんというのがいまの公務員法ですよ。公務員法でそうなっているのです、これは。だから、ここでいう立候補のための公務員の退職というのは、大体いかなる場合でもやめて出なければなりませんよ、公務員法ではそうなっている。第九十条はそういうことだ。  そこで第百三条になると、いわゆる議員または長と兼ねることのできない職にある特別公務員の場合のことがここには載っているわけだ。だからこっちは一般公務員なんだ。片一方は特別公務員のことを言っておるわけなんだ。特別公務員の場合については、当選してからその告知を受けた日にその職を辞したものとみなす、その当選の告知を受けて辞職をしたものとみなすというふうに兼職禁止になっておるわけです。だから、あなたの言っていることにはこれには該当しないのです。知事が該当するものがいいか悪いかは別問題ですよ。だけれども特別公務員をこっちは言っているのだ。だからあなたの答弁には該当しないのだ。こっちは、一般の公務員の場合は同時にやめなければならぬ、こういうことになっている。だからあなたの答弁ではそれは通用しないのだ。
  111. 播磨益夫

    ○播磨参議院法制局参事 もう少し具体的に申させていただきます。  まず先生の出発点でございますが、九十条がまずスタートになるわけでございますけれども、公務員はそういう立候補をいたしますれば、この九十条によりまして当該公務員……(沢田委員「それはわかるのだ、やめるのだから」と呼ぶ)退職するわけです。ただ、いまの特別公務員のことを先生おっしゃっておられますが、これは公職選挙法の八十九条というのがございまして、八十九条では在職中でも、普通はいま申し上げました九十条で立候補すれば自動退職になりますけれども、八十九条というのがございまして、立候補してもなお公務員として職を失わない場合がございます。具体的に申しまして内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、総理府総務副長官、政務次官、そのほかにもちょっと書いてございますけれども、こういうのが書いてございます。  それでその次の二項で、衆議院選挙で、在職中衆議院選挙がある、在職中参議院選挙がある……(沢田委員「そういうことを聞いていないのだよ」と呼ぶ)ちょっと聞いてください、これでございます。その次に、地方公共団体議員、首長、それがその選挙に出るときには首長は職を失わないで出れる、こう書いてある。ところが、これは首長の選挙ではございません、参議院選挙ですから。首長の選挙だったら職を失わないで出れるのです。首長の選挙だったら職を失わないで出られますけれども、これは首長の選挙ではございません。参議院比例代表選挙でございますから、原則の九十条に戻るわけでございます。名簿を出した途端に知事は失職するわけです。だから、百三条へいきましても百三条一項の適用はないわけなんです。兼職を禁止するもしないも、やめてしまっているから、兼職の禁止の対象になり得ないのです。
  112. 沢田広

    沢田委員 それだったら、百三条の第一項は必要ないじゃないですか。
  113. 播磨益夫

    ○播磨参議院法制局参事 だから、百三条の第一項は動きようがないのです。百三条第一項のこれは地方自治法で、関連の請負企業なんかの場合は地方自治法でもって職を兼ねることができない、こういうふうに書いてあるのです。だからそれとの関係でこういうのが一応出ておるわけでございまして、だからいまのお尋ねの知事に即して申し上げましたら、当該首長選挙ではございません。比例代表選挙でございますから、九十条の原則に戻りますから、名簿を出した途端に首長はもう知事の職を失いますから、兼職をするということはあり得ないわけです。名簿候補者になっておる、名簿登載者になっておるだけでございます。だから繰り上げて選択ということはございません。
  114. 沢田広

    沢田委員 そうすると、第九十条の公務員とは、特別公務員を含むものである。特別公務員というのは日雇い人夫も特別公務員にはなっているわけでありますが、とにかく公務員の中にこれは公務員及び特別公務員を含むものである、こういう解釈でよろしいですか。これは法制局の方で。
  115. 大林勝臣

    ○大林政府委員 これは現行法の解釈とも関連しますので私からお答え申し上げますが、八十九条以下の公務員の立候補制限あるいは九十条によりまして公務員が立候補をした場合にすぐ退職する、こういう規定とはちょっと違いまして、百三条は、要するに公務員の場合は立候補しようとすれば、特定の例外の方を除きますと、その途端に身分が吹っ飛びます。ところが、兼職禁止という方はまだほかにもおるわけでありまして、たとえば三公社とかあるいは公庫、公団の一定の人とか、こういう方は、議員さんと兼職できないという規定にはなっておるけれども、しかし現職のまま立候補はできる、こういう人もおるわけであります。そこで、その方が当選されますと、兼職禁止の規定とひっかかりますので、百三条の規定をわざわざ置いておる、こういうふうに御了解いただきたいと思います。一般の公務員、つまり立候補をしますとその途端に地位が吹っ飛びます場合には、そもそも百三条は関係がない。しかしながら、兼職禁止の規定はあるけれども、その職を持ったまま立候補できる方もおられるわけであります。そういう方が当選された場合に……(沢田委員議員または長でありますか」と呼ぶ)議員または長でもございます。たとえば三公社の中には、いろいろそういう公社法に基づきまして兼職禁止を決めておる規定があるわけであります。そういう場合が一番典型的な例だと思います。
  116. 沢田広

    沢田委員 それはもとなのであって、ここでは、議員または長と兼ねることのできない職にある者が当選の告知を受けたときはその職を辞したものとみなす、こう書いてあるわけですからね、第一項は。あとは繰り上げのあれです。ですから、いまあなたのおっしゃったことの中身は、要すればこれは議員または長と兼ねることのできない職にある者、たとえばいわゆる局長であった場合も、まあ局長は公務員だからいいが、特殊法人理事長であるとか、そういう者が該当するのだろうと思うのですね。あるいは該当するかしないか、これはその団体の決めることであるのかもわからない。とにかく現職で出られる者がここでは存在するということですね。そういうことですね、ここの意味は。それはどちらでも選択できるということになっているということ。  これはいまの答弁では私は納得しませんが、要すれば、それを悪用してくる可能性がきわめて強いということをここで私は気にしているわけであります。言うならば、その地域における有名人というようなものを名簿の中に入れてくる。それはもう当選は考えていない、しかしその地域の集票のために入れてくる。その地域の集票をするためには、前知事であるとかそういうような者が入ればなお結構だろうし、現知事が入ればなお結構だ。そういうことの道が開かれてくることに通じないかというのがこの第百三条の気になるところなのであります。そういう形でお互いが利用し合っていくというような形がとられてくると、いわゆる選挙の邪道になっていくのじゃないか。ですからあえて言うならば、こういう百三条等についてはもっと厳しくしていかないと、本来の姿にならない。届け出ですから、九十日前にやめるというような形にならないと、いわゆる正確な国民の判、断を求める名簿になっていかないんじゃないか。いわゆる便宜的なにせものが生まれてくるということに、だれでも考える知恵は同じですからね、これは。危い人は上の方に置いておいて、この人までというところを、やはりネームバリューのある人を置くということになるのでしょうし、自局党さんが考えているマイクなり宣伝なり放送なりは、タレントさんが放送に出る、こういうようなかっこうで選挙運動をやっていくということは、大体だれが考えても想像にかたくないのですよ。そうなると、当然名簿の後方にこういう人たちを、四百万の損害はあるけれども自民党さんは金に困らないだろうから、結果的には没収されてもいい、とにかく挙げておくということはプラスになる、そういう方法はある。しかし、これではそれに失うべきデメリットがない。だから、やはりデメリットを一方ではつけていかないと悪用のもとになっていくのではないのか、こういう私は判断をするわけであります。そういうことが絶対にないと言い切れるかどうかということですね。その点が答弁としてはどうなっていくのか。あるいは今後の検討事項になるのか、その辺お答えをいただきたいと思うのであります。
  117. 松浦功

    松浦参議院議員 どなたを名簿に載せるかは、先ほど来お答え申し上げているように、各党でお決めいただくことでございます。したがって、いまのように、全然当選させる目的がなく、当選の可能性のない下位順位に有名人を載せるということは法律的に禁止されているとは考えません。  しかし、いずれにしても、当該政党が提出した名簿がきわめてまじめな、この制度に沿った形の候補者であるかどうかということが有権者の支持を得るか得ないかということにつながってまいると思いますので、わが自民党としては、幾らお金があって、一人四百万取られたっていいからということで、そういう形のものを利用するなどという考え方は持っておりません。
  118. 沢田広

    沢田委員 とにかくあなたは持っていないでしょうし、良識派だと信じております。しかし、問題は、そういう知恵が出てくるという要件を持っているところに危険がある。悪用すれば悪用できるという要素があるというところに問題があるんじゃないのか。まじめな人だとばかり信じているわけにはいかない。だから、そういうふうになってくれば、貧すれば鈍するという言葉がありますが、やはりそういうようなことで、せっぱ詰まればそれぞれ選挙の戦術というものは非常にこうかつになっていくものでありますから、そういう場合の道をふさいでいくというか、そういう防波堤をつくるということが大変必要になるんではないのかということを私は申し上げたわけで、きょうの段階の時間ではあるいは詰まらないかと思いますから、今後の問題としてもう少し整理して、後で私の方にひとつ事務当局からお答えをいただくようにしていただきたい。もう少し整理していただきたい、こういうふうに思います。  それから続いて次にいきます。  いわゆる欠員補充の三年議員と六年議員の取り扱いであります。要すれば、比例拘束名簿で、今度六年でいきますが、三年の人が欠員があって、三年の人が何人か出てくる、その三年の人はどこに該当してくることになるのか、その点お答えをいただきたい。  いわゆる欠員があって、補充選挙で三年目の任期の人も、いまはいないかどうかわかりませんが、理論的には起こり得る可能性がある。その三年しか任期のない場合の人と、それから六年の場合の人との競合、それから取り扱い等についてはどのように考えておりますか。
  119. 松浦功

    松浦参議院議員 今回は名簿登載者から六年間の繰り上げ補充を認めておりますので、五十八年、来年初めて仮に行われるといたしますと、そこで欠員が生じました場合はそれぞれの名簿から繰り上げてまいります。ところが、名簿に繰り上げできる人がいなくなってしまいました場合は、それは欠員になるわけでございます。  たとえば御党で二十名名簿に載せておられた。十五名当選なされたけれども、六名が何か不幸によってお欠けになった。そうすると一人だけ欠員になります。それは次の六十一年の選挙に補欠選挙を合併して行うことになりますから、六十一年には五十一人の定員で選挙をやる。五十人は六年議員、一人は三年議員、こういう形の選挙に相なります。
  120. 沢田広

    沢田委員 それは名簿の上でどういうふうに処理されていくのか。そのときはまた改めて選挙をやるわけでしょう。選挙をやっていくわけですね。そうすると、三年議員というのが一名できるわけですね。その五十一名の一名はどこに、最下位の者になるわけですか。
  121. 松浦功

    松浦参議院議員 御承知のように、ドント方式で計算をしていきますと、各党別にそれぞれの整数で割ってまいりますから、一番最後の、一番少ない方、五十一番目の得票を割り出した結果、その政党へ属する、こういう形になります。
  122. 沢田広

    沢田委員 それは、解釈はわかりました。  それから、事務所を毎日移動できるというというのは、これは選挙の買収供応の一番犯罪の巣窟であるとまで言われてきているのでありますが、これが拘束の選挙制度の中においても、選挙事務所が一日に一回ずつ、大変な費用がかかるわけですね、これは。そういうことを意識しながら、一日ごとに選挙事務所を変えて、一日に三回変えていた人もいると言っているぐらいの話もあったけれども、そのたびに何百人かを集めて、ごちそうして、選挙事務所開きをやって、批判になったということもあるくらいであります。なぜ、この選挙事務所が一日に一回なんというふうなせせこましい、お人柄を見ると相当おおような、人徳円満なお方でいらっしゃるのですが、なぜこう一日一日に事務所を変えるというようなせせこましい選挙方法をつくられたのか、理解に苦しむのであります。もう少し、期間中に三回なら三回ぐらいにするとか、四回か五回ぐらいにするとかぐらいに制約されるのが今日的課題ではなかったのかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  123. 松浦功

    松浦参議院議員 比例代表選挙におきまする選挙事務所についても、ほかの制度における選挙事務所と同じ取り扱いをいたすことにいたしたわけでございます。一日に何回も動かすのはおかしいじゃないかというお説でございますが、その点については、現行法の考え方を一番よく知っております自治省の方からお答えをいただきたいと思います。
  124. 大林勝臣

    ○大林政府委員 現在、御承知のように、一日に一回を超えて選挙事務所を移動してはいけないという改正が昨年行われましたのは、先生が御質問の際にお述べになりました御趣旨のとおりでありまして、一日に何回も何回も移動をするたびにいろいろな経費をかけておるという弊害を除去するために各党で御相談いただきまして、そういう改正になったものでありまして、今回の改正もそれを踏襲されたものと承知しております。
  125. 沢田広

    沢田委員 だから、これの改正に当たって、なおかつ一日一回も少し多過ぎやしないか。三回ぐらいにとか五回ぐらいに、あるいは段階的に縮めるという配慮はなかったのか。とにかく一日一日動かしているだけだって大変な労力だし、費用も莫大にかかる。だから大体五回なら五回、離島もありますからね、ゼロだとは私言いません。離島もあるし、離れ選挙区もあるでしょうから、そういうようなことから見れば、五回とか、せいぜいそのぐらいにしぼるのが常識じゃないのか。こういうことでお伺いをしているわけなんで、これを毎日移動するというところに選挙違反の根っこがあるわけですから、それをある程度制約、改正ごとに幾らかずつ縮めていくという努力が行われなければならぬのじゃないかというふうな気がいたしますが、それはいかがですか。これは、提案者の方はそこまでは考え及ばなかったということですか。(松浦参議院議員「それは現行法で」と呼ぶ)現行法で、では提案者の罪ではないというふうに理解していきましょう。  それから、人気投票の公表の禁止なんでありますが、これはまたきわめてむずかしい問題だと思うのであります。これは新聞記者その他がやられる。罰則がなければ、こんなものは精神条文ですから問題はないのであります。「予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。」ここで言う人気投票とは、世論調査を含むのか含まないのか。あるいは抽出的な調査という、新聞社等が行っているものは含まないと解釈していいのか。人気投票という言葉も俗語ですね。ずいぶん俗語なんで、タレントの人気投票じゃあるまいし、選挙のときの人気投票という、人気という言葉を使うということ自身、私は良識を疑いたくなるのでありますが、そういう点で、これはどういうふうに考えておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。     〔委員長退席塩崎委員長代理着席
  126. 大林勝臣

    ○大林政府委員 これは古い条文でありまして、戦後、特に非常に新聞の販売競争というものがございました際に、次に当選をするような候補者はだれであるか、こういう往復はがきみたいな、投票用紙みたいなものを新聞の中に折り込みまして、それで販売活動の促進を図った、こういう時期がございます。そういう意味で、先ほどの御質問のような人気投票という言葉が法律の上にできたわけでありますけれども、要するにそこで禁止されておりますのは、投票の形式をもってそういった予想をするということが禁止されておりますわけで、投票の形式を伴わない、たとえば面接調査というものはその条文の中に入っておりません。
  127. 沢田広

    沢田委員 拘束名簿候補者は、全国を歩く国鉄の無料乗車証はもらえることになるわけですか、もらえないことになるわけですか。
  128. 松浦功

    松浦参議院議員 無料パスは今回の規定からは適用しないことにいたしております。
  129. 沢田広

    沢田委員 この第百四十二条に、はがきがあるわけであります。さっき言った国鉄は、拘束制の方はもらえないというのはわかりました。ところが一般の選挙の方では、これはいままでどおり無料になっているわけであります。はがきの方は有料で、この百七十六条に「交通機関の利用」としてあります。これには、一般の衆議院議員参議院議員選挙のときには交通機関は無料で、十五枚の乗車券を交付する。ところが、はがきの方は有料になっているわけです。これは統一性が必要なんじゃないか。どっちも、いまこれだけ行革で大変な騒ぎを起こしているときに、一方はただ乗りです、一方は有料ですというのも筋が通らぬ。だったらば、片っ方も無料にし、片っ方も無料にする。片っ方も有料にするんなら片っ方も有料にする、当然の経費にのせたらいいんじゃないですか。どの選挙報告を見たって、皆余って選挙をやっているという結果が出ているのです。足らないという選挙報告は一つもないのです。ですから、これは有料にして、国鉄も赤字で困っているわけですから、大いに利用して黒字にしてもらうためにこれは有料にしてもらったらどうか。そうでなければ、郵便の方も同じように無料にするか。同じ機関で、片っ方は有料です、片っ方は無料ですというのは、この時期に提案するに当たっては配慮が必要なんじゃなかったのかという気がしますね。だから、両方無料なら無料に思い切ってやる。でなければ、両方有料なら有料で選挙をやってもらう、そういうふうにひとつお考えいただけないのかどうか。
  130. 松浦功

    松浦参議院議員 一つのすぐれた御意見であると私も思いますけれども、今度の選挙運動はあくまで党が主体でございましてへ先ほども申し上げましたように、名簿登載者は党の機関として活動するわけでございますから、党にお支払いをいただいたらいいんじゃなかろうか、こういうたてまえで適用を異にした次第でございます。
  131. 沢田広

    沢田委員 だから、それはわかったと言うのです。わかったけれども、いままでの分についてはこの矛盾はちっとも直っていない。だから今度のはがきも、これは全部はがきですが、最小限度無料にしたらどうだ、数は減らすかどうかは別ですよ。でなければ、はがきなんというのはゼロにしてしまっていいんじゃないかという気もするのですよ。どうせ全部の有権者に行くわけじゃないんだし、なまじっか数が限られているためによけい苦労するのです。はがきを出さなければ票が入らないというようなことなら、はがきは全廃してしまう方がかえって費用も軽減できるし、また、はがきを出したから当選するかしないかというほどのウエートがあるのかと言えば、それほどのウエートはないんじゃないかという気がする。そういうような意味から見れば、全然ないんならないで選挙民の方も理解をするわけです。なまじっか入れるから、おれのところへ来ないという不満も出てくるわけです。全部出すわけにはいかない。隣の家へ行って自分の家に来なければやっぱり不満が出る。枚数を制限することがかえって選挙の公平を期することにならない、こういうことにもなりかねませんから、思い切ってこの文書図画の配付の中に入れて、はがきは出さないというふうに割り切った方がかえって公明正大な選挙になる、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  132. 松浦功

    松浦参議院議員 私どもが立案をいたしましたのは、全国制度弊害を矯めて拘束比例代表制度にしようということでありまして、衆議院その他の選挙について手をつけないということが原則でございます。その場合に、比例代表制度をとる際に、党が主体になって選挙運動をするので、こういうものば必要なかろうという判断をしたわけでございます。衆議院議員選挙における無料パスを廃止するということになれば、先生方におしかりを受けるようなことになりはしないか。また、十分御相談を申し上げなければ結論も出ない問題でございますので、その辺はひとつ御了解をいただきたいと思います。
  133. 沢田広

    沢田委員 こういうところの矛盾といいますか、それを変えていく、整合性をとっていくのが私は政治なんだと思うのです。それはいじらなかったというんじゃ、良識の府としての参議院の方の権威を若干落とすんじゃないかという気がするのです。良識の府であればこそ、言いにくいところもやはり言って、衆議院のわがままを是正するのも参議院の重大な役割りの一つなんでありますから、そういうことを参議院がしてもらわなければならぬが、いまのところは、今度は参議院のわがままをわれわれが一生懸命是正しようとしているので、どうも逆さまな感もあるのであります。そういうような意味においては、この辺はひとつ御検討をわれわれの仲間から今後さらにまた加えていただくことにいたしたいと思います。  続いて、全国比例代表制選挙公報の出し方であります。この公報の出し方については、これは事務当局にお伺いしますが、二十名出すところ、三十名あるところがあるのでありますが、いまの段階で考えているものについてお答えをいただきたいと思います。
  134. 大林勝臣

    ○大林政府委員 選挙公報の枠取りその他の問題につきましては命令に委任されておりますので、今後考え方を固めていかなければならぬと思いますが、一応法律の上では候補者数というものに応じて枠取りその他を決めるというようなことにもなっております。したがいまして、候補者数がどのくらい候補者数であればどのくらいのページ数とか枠取りとか、そういう話になってくるわけであります。そういう問題につきましては、適当な時期に各党の皆様方の御相談をいただきたいと私ども考えておるわけでありますが、一応スタイルといたしましては、従来の選挙公報のスタイル、こういうものは政策公報というふうなかっこうになりましても一応続けてまいりたい、こういうふうに考えております。
  135. 沢田広

    沢田委員 第百六十四条の五に行きます。街頭演説でありますが、「(比例代表選出)議員選挙においては、選挙運動のためにする街頭演説はこれを行うことができない。」さっき、これと候補者の運動の関連性をお伺いしたわけでありますが、この比例代表選出の参議院議員選挙以外の選挙においては、選挙運動のためにする街頭演説は、その場所にとどまってやれますよ。しかし、比例代表制選出の議員選挙においてはというのは、これはしかし同時に行われるのですね。地方区と同じですから大体同時に行われる。そうすると、選挙運動のためにする街頭演説は行うことができないということになると、運動員としては行うけれども候補者になるとできないということになるので、私は、寝ていることになるのじゃないのかというのが一番当初の発想になっていったわけであります。そうすると、比例代表選出の議員選挙は同時に行われるわけですから、選挙運動のためにする街頭演説、政治活動も、これは後になりますが、できないということになっている。政治活動もできないし、選挙運動の街頭演説もできないとすれば、戸別訪問以外になくなるんじゃないか。あとは飲ましたり食わしたりということになるんだけれども、まさかそれもないだろう。そうなると、あとは戸別訪問以外にないんじゃないかというふうに考えられるのですが、では、あとは何があって、街頭演説を禁止した意味はどこにあるのかということをお伺いしたいと思う。
  136. 松浦功

    松浦参議院議員 選挙区選出議員選挙比例代表選出議員選挙は一緒に行われるわけでございます。そこで、選挙区選出議員選挙において許される態様において、その個人選挙運動の中で比例代表選挙選挙運動にわたってよろしいという規定を設けております。さらに政治活動としては確認団体、これが比例代表選挙選挙運動に許された態様の中でわたってよろしいという規定を設けておりますので、それで足りると考えたわけでございます。
  137. 沢田広

    沢田委員 しかし、選挙運動は行うことができないとわざわざ規定した理由はどこにあるのですか。わざわざ街頭演説はできないという規定を入れた理由はどこにあるのですか。
  138. 松浦功

    松浦参議院議員 党がかねがね政策を掲げて展開をいたしておりますので、有権者の方々にはどの党の政策が私の気持ちに合うかということはそれぞれわかっているはずでございます。そういう意味で、個人の名前を浸透させるというような個人選挙運動的なものは必要なかろう、そういうふうに考えたわけでございまして、比例代表選出議員選挙として街頭演説はできない、こういうふうに書きましたけれども、それにかわるものとして、選挙区選出議員選挙の中で一緒にわが党に投票してくださいという運動ができるという規定も設け、また確認団体政治活動として認められる態様の中において比例代表選出議員選挙に係る選挙運動にわたってよろしいという規定を設けることによってこれをカバーできる、そういう意味で、明確にするために比例代表選挙単独のための街頭演説はできないという規定を設けた、こういうふうに御理解をいただけたら結構でございます。
  139. 沢田広

    沢田委員 そうすると、一番当初おっしゃられた、自民党松浦です、よろしくお願いしますということは選挙中は言えない。自民党をよろしくお願いいたします、社会党をよろしくお願いしますと言うことはできるけれども候補者である議員の、これは「議員選挙」と書いてありますからね。議員選挙においては、選挙運動のためにする街頭演説はできないということは、そういう意味に解釈してよろしいのですか。
  140. 松浦功

    松浦参議院議員 松浦功をよろしくと言って叫んで歩くことは有害無益でございます。松浦功と書かれてしまっては投票も無効になります。そういう運動の形態をこの選挙では考えておらないわけでございます。
  141. 沢田広

    沢田委員 それは松浦さんの場合は有害無益かもわかりません。しかし、非常に有益な人もいるわけであろうと思うのです。タレントさんなどが来れば、名前は入れないで結構ですが自民党さんをよろしくお願いします、きゃあと言えばきゃあ、こうこられる、こういうものもなくはないのですから、あなたは無益の方かもわかりませんけれども、そうでないものもあるわけですね。  ですから問題は、参議院議員選挙においては選挙運動の街頭演説ができないということをここでわざわざ規定した意味は何なのか、その本質を知りたいわけです。応援ならできるけれども街頭演説――「議員選挙においては、」と書いてあるのですから、比例代表制は党がやるのですから。そうすると、これは個人を示すものだろうと思うのです。だけれども選挙運動のための街頭演説はできないのですよとわざわざここで街頭演説の禁止規定を置いた理由はどこにあるのだろうか。
  142. 松浦功

    松浦参議院議員 ここで書いてございますのは、公職の候補者はという意味ではございません。選挙運動のためにする街頭演説を行うことができない、これは、私どもが考えておるのは、政党はという意味でございます。(沢田委員「そうなったらまたおかしくなるじゃないか」と呼ぶ)政党はと言ってはいけません、何人もということでございます。政党を含む何人もという意味です。
  143. 沢田広

    沢田委員 とにかくあいまいですな、答えが。みんなもわからないでしょう、何をここで言おうとしているのかというのがわからない。委員長、実質上の委員長みたいなものですから、委員長がこの辺の取りまとめをひとつしてもらって、後で理事会で御相談をいただきたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  144. 塩崎潤

    塩崎委員長代理 理事会で相談いたしたいと思います。
  145. 沢田広

    沢田委員 さっきの交通機関の問題は、有料にしたらどうかという問題も含めてひとつ御検討いただきたいと思います。  次に第二百一条の六、ここに「通常選挙における政治活動の規制」とあります。これは一般の選挙における規制をうたっているわけであります。それと、いわゆる全国名簿登載者の場合の宣伝カーの数がここに書いてあります。この宣伝カーの利用は党が全部運用する。候補者であるけれども候補者でない拘束名簿の人は、党の指示に従って行動するだけであって、そのことの規制は何もないというふうに理解をしてよろしいですか。
  146. 松浦功

    松浦参議院議員 お説のとおりでございます。
  147. 沢田広

    沢田委員 第二百一条の十一に「政談演説会及び街頭政談演説においては、政策の普及宣伝のほか、公職の候補者の推薦、支持その他選挙運動のための演説をもすることができる。」これは他の演説会場の禁止とか病院等があった場合の禁止ですが、この場合においてはすることができる。これは「政治活動の態様」となっております。これは「街頭演説の規定は街頭政談演説に適用しない。」というただし書きが入っております。  そこで、「政治活動の態様」として、これは選挙期間中の問題なのであります。「この章の規定による政談演説会及び街頭政談演説においては、政策の普及宣伝のほか、公職の候補者の推薦、支持その他選挙運動のための演説をもすることができる。」こういうふうになっております。前の方は、「通常選挙における政治活動の規制」、これが二百一条の六に規制が入っているわけです。二百一条の十一に、そこで括弧して「参議院比例代表選出議員選挙にあっては、当該名簿届出政党等の選挙運動」こういうことで政治活動ができるというふうになっておる。二百一条の六とこの拘束名簿制のいわゆる党、地方の場合はもちろん党がやるのでありますけれども、ここでわざわざ入れた理由はどこにあるのか、お伺いしたいと思います。
  148. 松浦功

    松浦参議院議員 これまでは個人選挙でございますから、いま先生の御指摘の個所は政治活動でございます。それが選挙運動にわたってしまうということが困るから、そういうものはできないということになっておったわけでございます。今度は政党主体の選挙でございますから、政党政治活動をやる中で党名を書いてもらう、党中心の選挙の中で御支援を願うということを禁止することはむしろ不自然じゃなかろうか、こういうことでそういう規定を入れたというふうに御理解をいただいたら結構かと思います。
  149. 沢田広

    沢田委員 運動の中身としては、宣伝カーは規制されている、マイクも制限されている、携帯マイクもだめである、そうなりますと肉声だけしかない、あとは個人の政談演説会、街頭演説はもう自由である、こういうことに解釈してよろしゅうございますか。
  150. 松浦功

    松浦参議院議員 お答え申し上げます。  それぞれの定めておりまする条項の範囲内において全く自由である、こういうことでございます。
  151. 沢田広

    沢田委員 党の名前でやれば、結果的には、何月何日政談演説会を開催いたしますというビラ、ポスターは――二百一条の六では、「政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類の掲示及びビラの頒布並びに宣伝告知のための自動車及び拡声機の使用については、参議院議員の通常選挙の期日の公示の日から選挙の当日までの間に限り、これをすることができない。」と書いてありますね。そして、片っ方はできると書いてありますね。それでは、これはどういう方法で知らせるという考え方なんですか。こういう催しがあるということを知らせる方法は、政党がやるためにはどういう方法なら政党はその周知徹底が可能なのでありますか。
  152. 大林勝臣

    ○大林政府委員 二百一条の六の前段に書いてございますことは、要するに、選挙期間中確認団体以外の政治団体は、ポスター、車その他は使えない、こう書いてあるわけでありまして、その後段のただし書きで、確認団体でございますれば、そこに列挙されてありますようなポスター、車、拡声機、こういうものは使える、こういう書き分け方になっております。したがいまして、名簿届け出政党は当然に確認団体になるという前提でありますから、そこに列挙されておるポスター、自動車、そういうものは政治活動あるいは選挙運動のために使うことができるということになるわけでございます。
  153. 沢田広

    沢田委員 そうすると、二百一条の六は、第二百一条の十一の運動は制約されない。第二百一条の六の「通常選挙における政治活動の規制」は適用はない、こういうふうに理解し、確認してよろしゅうございますか。
  154. 大林勝臣

    ○大林政府委員 二百一条の六では、政談演説会あるいは街頭政談演説は政治活動のためにやることができる、こう書いてあるだけでありまして、それではおかしいのでわざわざ二百一条の十一というものを設けまして、政治活動の政談演説会なり街頭政談演説において選挙運動をもあわせて行うことができると、プラスアルファをしているわけでございます。
  155. 沢田広

    沢田委員 「政治活動の態様」と書いて、これは選挙運動のために演説をするというのは比例代表制の場合だけでしょう。
  156. 大林勝臣

    ○大林政府委員 二百一条の十一の選挙運動にもわたることができるというのは、もう現行法でそうなっておるわけでありまして、従来の個人選挙でも、確認団体選挙期間中、政談演説会あるいは街頭演説におきまして選挙運動の演説もできる、こうなっておりました。
  157. 沢田広

    沢田委員 その点は私のあれですからいいです。  それで、結局二百一条の十一の場合には二百一条の六の規制は該当しない、だから自由にできるというふうに理解してよろしいですか。
  158. 大林勝臣

    ○大林政府委員 二百一条の六の前段で、こういうことをしてはいけないと書いてありますのは、あくまで確認団体以外の政治団体について……
  159. 沢田広

    沢田委員 「政党」と書いてありますよ。
  160. 大林勝臣

    ○大林政府委員 その「政党」というのは、一般的、全般的な政党のことを書いております。したがって、まず、選挙期間中は政党政治団体はそういった政治活動はできないと書きまして、ただし、その中で確認団体となった政治団体については以下のことができると、こうまた書いておるわけでありまして、したがいまして、確認団体については、そこに列挙されてありますような道具を使って政治活動あるいは選挙運動をすることができるわけでございます。
  161. 沢田広

    沢田委員 わかった。三の二は省略されてありますが、第三号、第四号等のことが可能であるという意味ですね。  それで、同時に私が伺いたいことは、それでは第二百一条の十一の選挙運動は、その第三号、第四号の範囲内に限定されるのかどうか、それ以上にわたることはできないのかどうかが伺いたいわけであります。
  162. 大林勝臣

    ○大林政府委員 二百一条の六で確認団体が行うことができますのは、二百一条の六に書いてあります限りにおいては政治活動ができる、政治活動のためにできる、こう書いてあるわけであります。  ところで、政談演説会において確認団体が所属候補者のことを全く何も言わぬというのはまことに不自然でありましょうから、わざわざ、本来は政治活動のための政談演説会ではあるけれども、あわせて所属候補者選挙運動もすることができるのですよ、こう書いてあるわけであります。
  163. 沢田広

    沢田委員 私、あと今度は具体的に聞いていきますが、たとえば駅頭宣伝を例にとりまして申し上げますと、ここにある二百一条の十一の選挙運動であれば、午前七時-午後八時に限定されるということになります、選挙運動ですから。それから、こっちの政治活動であれば時間の制限はないということになりますね。六時から出て行っていても構わないということも起こり得るわけです。これは前の選挙で大変苦労をしたわけでありますが、一方は六時から演説をし始めるが、候補者のいる車は七時でなければしゃべれない、こういうことが現実にあって、この間の選挙法の改正にもなったわけであります。あるいは、八時過ぎになると大体遠慮しますが、片っ方は八時半になってもやっているけれども、片っ方は八時でやめなければならぬ。こういう実態が、政治活動の限界といわゆる選挙運動との形態というものの違いが起きてくることは非常に煩わしい問題になるわけであります。だから政治活動の禁止というものが、ここで一つ規制ができたわけですね。それが今度、二百一条の十一で緩められてきたということになりますと、駅頭なら駅頭では、これは時間の制約はあるけれども街頭でできます。しかし、二百一条の六の中での制約は、そうするともう限定された車で以外はできなくなってくるということになる。しかし、朝六時に出すことは可能である、肉声でやる分には可能であるということなども起きてくるわけでありますが、その辺の調整とか考え方とか、そういうものについては、これは事務当局の方に聞くのでありますが、念頭になかったのか、今後考える条件なのか、それは考えたことなのか、加えた後の起こり得べき変化についてどう判断されているか。
  164. 大林勝臣

    ○大林政府委員 今回の改正が行われましても、確認団体の街頭演説あるいは連呼、こういうものは選挙運動におけると同じように時間的制限がございます。夜は八時までしかできない、こういう制限がございます。ただ、そのお手持ちの、恐らく新旧対照表であると思いますが、これは今回の改正に関係がない条文は省いておりますので、その表に入っておらないものがございます。現行法でも確認団体の時間的制限が選挙連動における時間制限と同じように規定してございます。
  165. 沢田広

    沢田委員 いや、時間のことを聞いたのは例を言ったのであって、この条項を入れたことによって、その起こり得べき変化については想定したかしなかったかということを聞いているので、したならしたでいいので、しなかったならしなかったでいいのですよ。時間のことを聞いているのは一例を挙げただけなんですから、その辺をきちんと答えてください。この条項を入れたことによって変わるもは何かあるのかないのか、その辺を答えてもらえばいい。
  166. 大林勝臣

    ○大林政府委員 変わるものはございません。
  167. 沢田広

    沢田委員 これは党内でも先般質問をされたようですから省略をいたしますが――省略するというのは罰則なんであります。名簿登載者の選定に関する罪、これは中村さんの方から質問があったと思うのでありますが、いわゆる党内に任せたという形の中で、「その権限の行使に関し、請託を受けて、」金をもらったとか何かをしたかいうことで「三年以下の懲役に処する。」ということは、党に任せた論理と相反するのではないかという一つは気がするわけですね、これは信用していないということですから。それから、「前項の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者」も同じである。これも信用していないということなのです。いままでの提案者の説明は、党に全幅的な信頼を置いて、善玉善玉の大善玉に置いて物事を言ってきている。ここへきて極端に、党は悪いことをするかもしれぬ、信用できない、だからここは罰則をつけるのだ、この発想はどうも逆さまになってきているのじゃないのか。また、そういう可能性を考えているのじゃないのか。考えたからこの条文が出た。自民党さんにはたくさんの派閥――わが党だってありますが、とにかく派閥がある。その派閥の中でのいろいろな問題で起こり得べきことを予想してここで法律に載せようという、ここはいわば天につばしている条文ということになっているわけなのでありますが、いままで政党に任せる体制をとってこられたあなた方としては、きわめて不自然な条文なのでありますが、いかなる心境にあるや、お伺いいたしたいと思います。
  168. 松浦功

    松浦参議院議員 できる限り政党の御判断にお任せするというのを基本としていることは、これまでるる繰り返して申し上げたとおりでございます。  ただ、今回の政党本位選挙というものにおける政党の果たす役割りというものは、きわめて重要でございます。そういう意味で、私どもは、政党の良識に期待しております。こういう事態が起こることは考えておりませんけれども国民に対して、やはり国民の信託を受けたという形に政党がなるわけでございますから、あり得ないことではございますが、形式的に襟を正すと申しますか、みずからを律すると申しますか、そういう趣旨で、こういうことはありませんよということを、むしろ天下に声明したいという気持ちで決めたというふうにお考えをいただけたらいかがかと思っております。
  169. 沢田広

    沢田委員 これは党内で処理し、党内で除名をするとかあるいは処分をするとか、刑事事件になるものは刑事事件で処理するということになると思うので、わざわざこの法律の中に入れなければならないかどうかということは、見せかけにしてもちょっとおかしいのではないか。やはり一般の刑事事件の例があるわけですから、刑法があるわけですから、刑法に触れて、総務会長がもらったとかあるいは幹事長がもらったとかということであったなれば、当然そういうことは刑事事件になっていくわけですから、こういう項目が果たして――自民党の中には必要性大いにありと感じたからあえて入れたのかもわかりませんが、どうもかえって屋上屋を重ねた嫌いがあるのじゃないのか。やはり一任するなら一任して世の批判を受ける、それが政党なのじゃないかと思うのです。だから、政党法をつくったときにはこの条文が必要になってくるのだと思うのです。けれども政党法のない今日、この中に含めるということは、かえって政党をみずからが誹謗し、みずからが地位を下げていることにならないかという気がしますね。その点は後、直るか直らないか、むずかしい問題があるだろうと思うのですが、一たん入れたことを削るということも若干むずかしいと思います。思いますが、しかし、これはもう一回考え直してみる必要性のあるものだという気がいたします。いかがですか、その感じだけお答えください。
  170. 松浦功

    松浦参議院議員 繰り返したお答えになりますけれども、今度この政党選挙の中で果たす政党の役割りというのは、有権者との間できわめて重要な地位を占めるものでございます。しかも、選挙という手続の中で主体的な活動をなすわけでございますから、公的な地位と申し上げていいほどの地位を持つものだと思います。そういう意味で、政党というものを私は良識があると考えております。こういう事態は万々起こらないと思っておりますけれども、みずからを律するのに厳であってよろしいのではなかろうか。また、国民の皆様方にも、こういうことも考えて間違いのないようにいたしておりますということを申し上げた方がいいのではないかという気持ちから規定した、こう御理解いただけたら幸せでございます。
  171. 沢田広

    沢田委員 そういうことであれば、それなりに有効に活用することが必要ですから、大臣をえさなどにしながら名簿の作成その他には当たらぬように、これは大いに与党としては配慮していただかなくてはならぬだろう、こういうふうな気がいたしますから、一言忠告して、次の問題に入ります。  次は、同じく刑事事件の処理でありますが、とにかく百日以内に選挙に関する罪はやらなければならぬ、こういうことで二百五十三条の二がつくられて今日に至っております。刑事局長来ていると思いますが、今日までこういう事件で、百日以内にこれをするように努めなければならぬという法律は、果たしてどの程度の割合生きてきたのか、その点の実際をひとつ御報告いただきたい。
  172. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 二百五十三条の二のいわゆる百日裁判の規定の運用状況でございますが、その実態までお尋ねがあるというふうに実は考えておりませんでしたので、具体的な資料の持ち合わせをしておりませんで恐縮でございますが、私の理解しております限りでは、これは裁判所が中心でおやりになることでございますけれども、裁判所とされましては、できる限りこの精神に沿うように訴訟の進行を進めておられるというふうに理解しております。現に百日以内に処理ができた事件も少なくないわけでございますけれども、事案によりましてはいろいろと争点等もございますし、また被告人、弁護人側で言い分もあるというようなこともございまして、事案の内容あるいは問題点等によりましては、このとおりにいかない場合も少なくない、こういう実情でございます。
  173. 沢田広

    沢田委員 とにかく、百日以内に終わったなんというのは、略式命令で終わった程度のものしかないのじゃないですか。実際の処理について、そういう簡単なものは別として、その他百日以内で終わった例というのは皆無と言っていいんじゃないですか。
  174. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど申しましたように、略式命令の場合は当然でございますけれども、一般の公判請求の事件におきましても、数は少ないかもしれませんけれども、この趣旨に沿った裁判が行われたことは実例がございます。ただ、同じようなことでございますけれども、裁判所なりあるいは検察官だけが努力いたしましてもうまくいかないような問題でございまして、私どもといたしましても十分な努力をいたしますが、関係者がたくさんあるわけでございまして、被告人あるいは弁護人側の御都合あるいは主張という問題も絡んでくるわけでございますから、十分にそのようにいかない場合もあり得るというふうに御理解を賜りたいわけでございます。
  175. 沢田広

    沢田委員 これは結論的には、守られない法律をつくるほど意味がないことはないのでありますから、裁判所の方の意向も聞くことは聞いて、つくってはみたけれどもちっとも実効の上がらない、守られない法律を、わが意を得たりなんという気持ちでつくっておいても意味がないのでありますから、もっと向こうが実行できるような期限というものを一応今後検討していく必要があるのじゃないかと思うのです。だから、百船と決めたのは、選挙の重要性の認識に立って速やかに対応していくことが、選挙民に対するわれわれの義務であるという意味でわざわざ百日を決めたわけですから、それが裁判所の方で守れないということならば、じゃどれなら守れるんだと、もう少しただしてみながら実効ある法律にしていく必要性があると思いますので、きょうの段階は、いままでの状況から見ると余りいい状況でありませんけれども、今後さらに御検討いただくことを要望して、次の問題に入ります。  法律の案文については、あと罰則の十万円がきわめて低いという感じがします。なぜ地方議員の供託金まで上げたのかという気もします。全国区制の問題だけを参議院ではやっていて、いろいろな条項を言ったら、それはもう全国区制と関係ない、普通の選挙だから、その点は事務所の一日なんというのもそのままにしましたというようなことでお答えになりました。ところが、供託金だけは地方議員の分まで倍額にふやして、よけいなことまでやっておられるような気もしないでもないのであります。なぜこれはついでにやったわけですか、なぜ比例代表制の方のものだけに限定しておかなかったのですか、この分だけなぜ上げたのですか。
  176. 松浦功

    松浦参議院議員 供託金につきましては、大体五年をタームといたしまして倍額に引き上げてきておるのがいままでの事例でございます。最近では五十年度に大体三・三倍に引き上げております。すでに七年経過をいたしておりますので、倍程度に上げるべきじゃなかろうかということで、すべての選挙について供託金を倍額にした、こういうことでございます。
  177. 沢田広

    沢田委員 では、なぜ罰金の方の十万円はそのまま据え置いているのですか。これも少し思いつきみたいなかっこうがあるじゃないですか。それだったならば、罰金の方も十万円を二十万円に上げるのが筋じゃないですか。
  178. 松浦功

    松浦参議院議員 これは同じ金額の問題でございましても全然別個の問題でございまして、罰金の金額につきましてはほかの処罰規定との関連を考えなければならない、その辺のことから簡単に私どもだけではいじれない、こういう判断をいたしたからでございます。
  179. 沢田広

    沢田委員 やはりこじつけですよ。これを直す以上は罰金の方も今回やはり直しておく。自動車の車検の科料だって十万円もぶったくるじゃないですか。それから見てこの選挙の罰金が、一方の供託金は倍にも上げておいて、罰金の方は据え置きでしらばっくれておる、それは論旨が一貫しないですよ。気がつかなかったのなら気がつかなかったと正直に言ってもらった方がかえっていいので、うっかりしたというのならうっかりしたと……。片一方を倍にしたのならば、片一方もやはり十万を二十万に上げてバランスをとるのが法律改正のときの常識じゃないですか。だから、うっかりしたというのならうっかりしたで、それ以上詰めようとしませんよ、同じ議員の仲間ですから。だけれども、それをこじつけられるとこっちも意地にならざるを得なくなるので、その点はひとつ正直におっしゃってください。
  180. 松浦功

    松浦参議院議員 ちょっとお言葉を返すようになりますけれども、金の問題ではございましても、供託金と罰金とはちょっと一緒にできないと思うのでございます。これは刑法の罰金とのバランスもとらなきゃならないと思いますし、大変な作業になりますので今回は省略をした、こう御理解をいただきたいと思います。
  181. 沢田広

    沢田委員 意地でも何とかここはとがんばっておられるお姿には心から敬意を表します。しかし、これは一つ法律なんですから、この法律の中の整合性というものをやはり確立することが必要なんでありますから、ほかの法律との問題で押さえてやっていったら、みんなちぐはぐな法律ばっかりできてしまいます。この間もサラ金法をつくりましたけれども、サラ金法の方では二百万ぐらいの罰金になっておるのですからね。そういうことから考えて、十万円という選挙に対する罰金の額を据え置いたということは、何か選挙に甘さがあるということを表示することになりかねないのです。それで、供託金だけは、これも税金みたいなものですが、上げていくということでは少し整合性を欠く。頭の脳の位置づけがどこか狂っているような気がしないでもないのであります。  時間がなくなりますから次の問題へ行きますが、次は地位利用の問題でお伺いをいたします。  名簿登載の中で一番気になりますことは、地位利用の禁止ということだと思うのであります。補助金、交付金の交付、融資のあっせん、物資の払い下げ、契約の締結、事業の実施、許可、認可、検査、監査その他の職務権限を有する公務員等影響力を利用、これが地位利用の禁止の中身になっております。そして、九十日前に名簿を提出する際には、少なくとも名簿に登載される人はこういう地位利用の禁止条項に当てはまらない条件下に置かれるべきであるというふうに思いますけれども、いわゆる候補者になるのは公示後であります。しかし、実質上は名簿に登載されれば候補者になったと同じ効力を持つものだと思うのであります。ですから、当然地位利用の禁止条項というものは適用されなければならぬと私は考えます。ですから、九十日前に、この九十日も若干問題があるのでありますが、九十日として、九十日前に名簿を出すときにおいては少なくとも地位利用の条件を持たない、こういうふうな条件下に置かれるべきであるという考えについてはいかがでありましょうか。
  182. 松浦功

    松浦参議院議員 候補者名簿の提出は九十日前ではなくて、公示の日または次の日でございます。したがって、名簿登載者ということになれば、その者に関しての地位利用というものは動いてくるということは当然だと思っております。
  183. 沢田広

    沢田委員 九十日はほかの条文でした。失礼しました。  もう一つは、発案者の考え方では、名簿提出が前日ということになると、承諾を得るわけですが、それまでは寝耳に水の人もいるわけですね。そうなりますと、あとは選挙運動がないとすれば政治活動しかない。どんな有能な人であれ、経験の豊富な人であれ、学者であれ、全国の地域も知らず、民俗、風土も知らず、どこの地区にどういう産業があるかを知らずして、当選してから勉強するんですということが果たしていいのかどうかという疑問が残るのであります。やはりある一定の期間は全国国民に接しながら、みずからの言うことも言いながら相手側の要望も聞いてあげる、北海道の寒さの中を歩いてもらう。どんな有能な憲法学者であろうと、経済学者であろうと、政治家となれば別の次元の問題だと思うのですね。ですから、有能な人必ずしも政治家で有能ではないということを言われるのは、そこの辺にあるんだと思うのですね。ですから、少なくとも名簿に登載される予定者はもう少し早めてもらって、そうして全国をある程度歩けるぐらいの余裕を持ってなってもらうという必要性があると思うのであります。また、そうでなかったら、ろくな参議院議員は出てこないですよ。居眠りする参議院議員しか出てこなくなってしまう。寝てたって当選するんだし、来てたって寝てても異状がないんだし、別に問題はないということになるわけですから、ますますそれは退廃的な傾向を強める以外の何物でもない。ですから、その意味において、事前にある程度の地域を歩く義務というものを持たせる必要がある、私はこういうふうに思いますが、いかがですか。     〔塩崎委員長代理退席、委員長着席〕
  184. 松浦功

    松浦参議院議員 これは各党にお任せをしてある問題でございますが、たとえば私ども立案者としてどういう過程を考えたかと申しますと、この法律案を成立させていただきますならば、できるだけ早く名簿登載予定者というものを決めることになると思います。そして、その予定者がそれぞれ個人政治活動あるいは党の機関としての政治活動に従事をする、あるいは個人考え方がどういう考え方であるかということを全国を回って説いて歩く、こういうようなことは当然行われると思いますし、またそれだけのやり方をしないと、なかなか当該政党名簿に対する多数の投票は得られないのではないか、こう考えております。
  185. 沢田広

    沢田委員 発議者の地位、役割りというのは果たして何なのだろうかという気がするのであります。これは委員長の方にもお願いしますが、発議者というのは提案者である、それだけにしかならないのでありますが、自民党の案を提出した発議者であるから当然自民党代表を兼ねている、そういうまた自負心も持っておられると思うのであります。  念のためでありますが、ここで答弁されたことに対して責任を持ってもらうということがまず必要だと思いますから、これは一番最初に確認すべきことでありましたけれども代表者から、この委員会において発言したことは、党と共同の責任を負うものである旨の宣誓をひとつお願いいたしたい。
  186. 金丸三郎

    金丸参議院議員 その任にたえられるかどうかわかりませんけれども、私どもも党として出したものでございますので、私どもが申し上げておりますことは党が申し上げておることと同じとお考えいただいて結構かと思います。
  187. 沢田広

    沢田委員 続いて、この拘束名簿制にすると長居をする人が出てくるだろうと思うのですね。やはり居やすいですからね。ですから、もうちょっともうちょっとということになりかねないし、そういうようなことで大体どの程度かで代謝作用を起こしていく役割りを持たなければならぬだろう、労せずして得るわけでありますから。言うならば汗みどろの、泥まみれになった、衆議院なんかもそうでありますが、いわゆる草をはむような苦しみというものを味わっていない人たちがずっと出てくるわけであります。戦争を知らない子供が大きくなってきたということと同じように、その苦しみを知らない者が出てくることはえてしてまた危険な条件を担うものであります。また、そのメリットもあるでしょう。金も使わないで出てくるわけですから金ももらわないでしょう。そういう意味においては、清潔な政治に一歩前進していくというメリットはあるだろうと思うのです。しかし、以後、幸いだなんて思って、またよけいな気を起こす人もなくはないかもわかりませんけれども、大体平均的なそういう方向がとられるところが比例代表制のよさだと思うのであります。  そこで、任期は二期ぐらいで新陳代謝をしていく。二期やったならばかわる。あるいは衆議院なんかでくたびれてきたらばひとつ参議院の方に回してくれなんて、こういうことだって起こり得るわけでありますから、ですから大体二期くらいで代謝をしていかないと、安易にこれが利用されますと政治の不信につながってしまう。私は冗談まじりに言っていますけれども、それはきわめて憂慮すべき状況が生まれないとも限らない。そういうことでありますから、やはり二期くらいで一期は休んでもらって、その次またなってもいいというくらいの制限はやはり入れておく必要があるのではないか。いま宣誓していただいたその範囲内において、この適用についていかがお考えになっておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  188. 松浦功

    松浦参議院議員 新陳代謝の問題については私どももそのように考えております。現在党内において、どういう形にするか、そういった問題も含めて検討をいただいております。また、老齢化という問題も片一方にはあるわけでございます。養老院になっては困ってしまいます。そういったこともあわせて検討をいたしておるところでございます。
  189. 沢田広

    沢田委員 非常に未知数が多くて、月を見ているよりも裏側の方がより大きいというような法案なんでありますから、すべて政党任せ政党任せということになって、どうしても多数党の横暴ということが今後生まれてくる危険性を非常に感ずるわけであります。あんな人が出てきたのか、こんな人が出てきたのかという意外性がより多く出てくる。今回は何か前回の得票数に応じて、選挙違反とかしないとか、そんなことはかかわりなしにどうも選んでくるような気もしておりますけれども、やはり拘束名簿制の将来を考えました場合には、より厳正でなければならぬ。そして拘束名簿制をとったからより国会が明るくなった、あるいはそれだけよけいに良識の府としての地位を保つようになったと、これは内容で決まりますからね、今後の。ここで失敗すると、これはもう民主政治基本が崩れてくることになりかねません。ここはやはり義理人情でなしに、クールな立場で判断してもらうことがきわめて大切だと思います。これは御列席の自民党の各議員にも申し上げる言葉でありますけれども委員長にも特にその点御配慮いただくことをお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。(拍手)
  190. 久野忠治

  191. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、私も各委員の質疑に引き続きまして、各般にわたって御質問を申し上げたいと思うのでございます。  前回、私は提案理由の骨子である金のかかる問題についていろいろと質疑を交換をいたしたわけでございますが、どうも余り十分なお答えがなかったというふうに思わざるを得ないわけでございます。特に自民党さんは金がかかるというふうに言われるのでございますけれども、もう一度お伺いするのでございますが、特に個人の金がかかるということを盛んにおっしゃるわけでございまして、前回立候補したのが全部で八十九名いらっしゃいますね。その八十九名のうち個人お金がかかった、これも幾らぐらいというようなことがきわめて問題になるんだと思うのですけれども、一体この八十九名のうちどの程度の人が、斎藤栄三郎さんがおっしゃったようないわゆる五億前後のお金を使っているというふうに思われ、それを排除するというためにこの法律改正を計画をされたわけでございますが、この点どういうような感じを持っていらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。
  192. 金丸三郎

    金丸参議院議員 先般もお答え申し上げましたように、参議院選挙と言わず、衆議院につきましてもあるいは知事選挙につきましても、現実選挙の準備のための経費、まあ選挙運動の経費、これがどれだけかかったかという調査は、私はなかなかむずかしいと思っております。  先般の立候補者は御指摘のような数字でございますけれども個人の金と申しましても、これはいわば個人本位に使われておる金、個人候補者選挙のために使われておる金という意味でございまして、個人が自分でお出しになった金という意味でないことは御理解いただけると思います。その金が幾らぐらいになるかということでございますが、斎藤栄三郎先生は御自分で明らかになさいましたのではっきりいたしておりますけれども松浦先生もお答えがございましたように、準備のためにパンフレットをいわば二百万部つくるというだけでも大変な経費でございます。いまはがきも一枚が四十円、印刷をして表にあて名を書いて百万出しますと大体六千万と言われます。はがき代だけでも六千万でございます。だから私は、四億、五億と仮に言いませんでも、あるいは二億とか三億とかいうような金は、一年、二年の間に相当な方がお使いにならざるを得ないのが現実ではなかろうか、このように思うわけでございます。
  193. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 ですから、この法律改正という意味において、私は、もちろんこの前御説明を受けたように、特例の人たちを、ごく少数の人たちのことだけを考えてというわけには改正はいかないわけでございますけれども、いまも申し上げたように、八十九名のうち相当数の人がと言っても、本当にそれは過半数を大きく超えて、それぞれが個人に投票せしむるために金がかかっているというようなことが具体的な数値の上で明らかになるのであれば、私もその主張を認めるにやぶさかではありませんけれども、どうもこの候補者の数から見て、自民党さんは八十九名のうち二十三名出していらっしゃるわけでしょう。そうすると、二五・八%ですよ。わずか四分の一の人たちの利益を守らんがためにあとの七四・二%の人たちの意思を無視しても改正をするというのは私は納得いかないわけで、そういう意味で、じゃ、一体社会党さんは一人当たりどのくらいかかっているというふうに想定をされるのか。あるいは民社党さん、共産党さんあるいは公明党、これは現実にどれだけ金がかかっているかということを認識せずして改正案を出すのはむちゃじゃないかと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  194. 金丸三郎

    金丸参議院議員 私どもは、この問題につきまして野党の方々にもいろいろと御意見を伺ったことがございます。責任のあるお方々でございます。そういうお方々の話を総合いたしまして、立候補者の少なくとも過半数は巨額の経費を投じて選挙をやらなければ実際に当選してこれない、私どもはこういうふうに感じております。
  195. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それならば、それはどこの政党の方がそういうふうにおっしゃいましたか。
  196. 金丸三郎

    金丸参議院議員 ここではそこまで申し上げるのは遠慮させていただきたいと思いますけれども、私どもがここ数年いろいろなお方々とお話をいたしてみました過程におきまして、自民党だけでなく、ほかの党におかれましても、個人本位選挙のもとでは、いろいろな支援団体が巨額の経費を要して大変御苦労なさっておられるということを承っておる次第でございます。
  197. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 本当はそこら辺が国民の皆さんの前に明らかにされなければ、私は法律改正の大きな根拠を失うと思うのですよね。しかし、これは多分に水かけ論になるわけであって、しからば金丸先生にお伺いします。  八十九名の立候補がございましたね。それで、この人たちが、どうもいままでの発議者先生方の御意見を聞いてみると、選挙にかける金の額というのはいずれにしても億単位であるというふうな御認識のもとに改正がなされているように思うのでございますけれども、それ以下、一億以下で選挙の準備活動が済んでいるという候補の人たちはこの八十九名のうちどのぐらいあるというふうに、これはきわめて重大な問題であって、仮に半数の人がそういうふうに金がかからぬ選挙をやったということであればこれは過半数じゃないわけでありまして、改正の趣旨というもの、理由というものはかなり意味が減退をしてしまうのじゃないかというふうに思います。現にわれわれは一候補一億円もかけられるような党の財政状況にはありませんよ。他党のことはいざ知らず、少なくとも公明党に関しては九名立候補せしめておるけれども、それだけの巨額の金はかけていない。それから諸派が三十七名立候補しておられるわけで、そうしますと八十九名と相対してみますれば、半数といかなくても少なくとも四〇%、公明党を入れれば五〇%からの人たちが金がかからぬような準備活動選挙に臨んでおる、こういうことは言えるのじゃないでしょうか。どういう想定をしていらっしゃいますか。
  198. 金丸三郎

    金丸参議院議員 前回は九十数名の立候補者があったようでございます。無所属の方々が三十名からございます。  一遍お答え申し上げましたように、無所属候補者で、純粋無所属で当選なさった方は御承知のように三名、中山千夏先生が革自運で出られて諸派といたしまして四名、わずかこれだけでございます。大多数の候補者はほとんど当選は、私どもから申しますとなかなか困難な状況でございます。だから候補者が九十数名ございましても、実質上の参議院選挙を戦われる方はそれよりずっと少ない数でございます。そして私は、各党でも立候補の準備の間でも全国を本当に駆けめぐられて準備をなさっていらっしゃる。それが原因かどうかわかりませんけれども、前回でも向井長年先生も、当選をなさりながら当選の決定までに亡くなられたということは、全国を本当に奮闘しておいでになった。その経費がどのようなふうにして賄われるかということは一々つまびらかにすることばできませんけれども、私は、斎藤先生が明らかにされていらっしゃいますように、北海道に行ったりあるいは沖繩に行ったりして会合を持ちますと、事前の準備から後の始末から連絡からはがきその他の通知から、本当に目に見えない巨額の金がかかっておるようでございます。これは一つ団体から御支出にならないでも、北海道の支援団体の方が北海道の経費をお賄いになる、あるいは沖繩では沖繩の支援者がお賄いになる、そういう経費をずっと積算いたしますと、一億、二億と言わず、やはり数億の経費が一年、一年半の間にかかっていらっしゃる。これが私どもがいろいろお聞きしました限りにおきましては実情ではなかろうか。だから、実際にわが国政治を動かしておられる政党の間で参議院全国区の選挙が戦われておる実情から考えますと、多くの方が非常に巨額の経費を要することに苦しんでいらっしゃる、このように判断をいたしておるわけでございます。
  199. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この議論は長くやるつもりはありません。しかし、なお金丸先生がそこまでおっしゃったとしても、準備活動に余り金をかけずに選挙をやっておる例もあるわけでございまして、むしろそこの金をかけない方に努力をすべきであって、金がかかる金がかかるというようなことで無制限にかけていこうというようなことでは、金権選挙という国民の批判のそしりを免れないと思うのですね。この点の話はこれ以上しませんけれども、少なくとも民主政治において少数意見を尊重するという立場から考えますれば、そういう巨額の金をかけないようにして、なおかつ少数意見立場に立つ人たちの立候補も可能な方向に努力すべきが、本来は改正の趣旨でなければならないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。その趣旨について別に反対はなさるまいと思いますけれども、なお私たちは金がかかり過ぎるというような観点に立っての改正についてはどうしても納得ができないわけでございます。こればかりやっておるわけにいきませんので、次の問題に移ります。  これは自治省の方にお伺いをいたしますが、いわゆる法律を作成する場合の技術的な問題で若干伺うのですけれども一つの事例として、百四十一条の二に「自動車等の乗車制限」があるわけでございまして、この趣旨というのはどういうことでしょうね。「自動車又は船舶に乗車又は乗船する者は、公職の候補者、運転手(自動車一台につき一人に限る。」と、自動車は動いている場合を想定しているんですから、その場合は運転手は一人に限るのはあたりまえのことで、二人で運転できるはずはないと思うし、「自動車一台又は船舶一隻について、四人を超えてはならない。」というふうに規定されていますね。えらい細かいことが規定されておるのですね。これはどういうわけでこういう細かい規定をしなければならぬのですか。
  200. 大林勝臣

    ○大林政府委員 選挙運動を長い間やってまいりますうちに、ややもいたしますと運動員の大量動員ということがそのときそのときに問題になっておりました。しかも従前、かなり昔でありますけれども、自動車の車種制限というものがない時代、こういったときにはトラックなんかを使いまして、選挙運動員をたくさん乗っける、あるいは街頭演説におきましても、人海戦術というようなことで非常にたくさんの運動員が動員される、そういうことがまた選挙の金のかかる弊害一つになっておるのではないかというようなことで、自動車につきましても車種制限をいたしましたし、それから、その中に乗車あるいは船の場合には乗船し得る者の数を制限してきたというのが従来の制度の歴史と承知しております。
  201. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 松浦先生、私に言わしめれば、こんなのは、自動車一台について四名以上乗せちゃいかぬとかそういうような規定というのは、交通安全の規則とか車両法とかそういうもので、これはもう車種さえ決めれば決まるわけであって、こんなのは改正のときに削るべきであって、こんな細かいことを法律事項でこのまま残しておくなんというのは、私は法改正をなさるごりっぱな先生方のやるべき仕事ではないと思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  202. 松浦功

    松浦参議院議員 先ほど来繰り返して申し上げておりますように、私ども比例代表制度の選挙について立案いたしました。現行制度との脈絡というものをすべてにわたって検討するだけの余裕がなかったことは事実でございます。その点は遺憾に存じておりますが、この自動車の乗車制限につきましても、これは議員提案でなされたもののようでございますので、ひとつ十分御検討をいただきたいと思います。
  203. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 議員提案でなされたものであれば、今回も議員提案なされたものだから削ったらいかがでしょうか。  いずれにしても、たとえば百三十九条の「飲食物の提供の禁止」、これなんかは、「弁当料の額の範囲内で、」「両者を通じて十五人分(四十五食分)」とか、ポスターあるいはビラ、このビラについては、百四十二条ですか、「第一項第一号及び第二号のビラは、長さ二十九・七センチメートル、幅二十一センチメートルを超えてはならない。」とか、細かい規定が実に法律条項として記載されておるわけですね。何でそういうようなことになっているのかということをいろいろ尋ねてみると、公職選挙法においては、とにもかくにもできるだけ法律で規制をした方がいいというたてまえでずっと来られたのだそうですね。それで、他の法律では当然政令で定めてもいいというようなことまでも法律条項でお書きになっている。これがいままでの経過である、こういうことなんですね。えらい丁寧なやり方をしておるわけでございますね。  そこで、この前のいわゆる坂井先生質問に戻るわけなんですけれども、私もあれについてはどうもいまだに納得ができないわけでございまして、いわゆる政党要件の問題、八十六条の二に関する問題なんでございますけれども、これはやはり非常に問題があると思うのですよ。衆議院を解散をした、そのときの条項というものを特定をしておかないとやはりいかぬのじゃないかという気がしてなりません。特にこの前、坂井委員が取り上げました解散時における衆議院をどう見るかという問題、これも非常に議論が分かれるところで、それで政令にゆだねるということですが、それは政令にゆだねることではないのじゃないか。自動車の乗員の数、弁当の数あるいはポスターのセンチの数まで決めているというようなことと比較してみると、余りにもずさんではないかということで議論が沸騰したわけでございます。  そこで、話を繰り返すようでございますけれども、この八十六条の二の十二、この「第一項第一号に規定する衆議院議員又は参議院議員の数の算定その他同項の規定の適用について必要な事項は、政令で定める。」とありますが、少なくともここに書かれた衆議院議員あるいは参議院議員というのは、それぞれの両院に議席を置く議員、そのように想定をしてこの文章はでき上がっていると思うのですが、いかがですか。
  204. 三宅将夫

    ○三宅参議院法制局参事 お答えいたします。  第八十六条の二、第一項第一号と同条の十二項の関係でございますが、十二項に言う「衆議院議員又は参議院議員の数の算定」は、八十六条の二、一項一号の「衆議院議員又は参議院議員を併せて五人」のその算定についてを想定しているものでございます。
  205. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いや、私が言っているのはその質問じゃなくて、これは参議院衆議院のいずれかの議院に議席を置くということを条件としてこういう条文を書いているんじゃないですか、こう伺っているわけです。
  206. 三宅将夫

    ○三宅参議院法制局参事 お答えいたします。  ちょっと質問趣旨を取り違えまして失礼いたしましたが、十二項の「衆議院議員又は参議院議員の数」は、現職の衆議院議員または参議院議員を原則としては想定して書いてあることば事実でございます。
  207. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この条文についてまさに問題指摘があったのは、解散時においてこれをどう判定をするかということなんですが、まさに八十六条の二の十二について言えることも、衆議院が解散をしたときに、その「数の算定」とあるわけですから、その数を数えるということですね。衆議院が解散されちゃうと、私たちの解釈では全くただの人であって、これは各方面の法律家あるいは法制局等の御意見を伺っても、解散をしてしまえばそれはただの人ですよ、特定の人じゃありませんということを申されておるわけで、これはそういう意味においては、衆議院が解散をされたということを想定しますと、ただの人なわけだから、解散時においては衆議院議員の数の算定ということはできないんじゃないでしょうか。解散されちゃってだれもいないのだから。解散というのは国の政治の最も基本的な手続一つでございますから、これはいろいろな政治情勢によって当然緊急に行われる場合もあるわけでございまして、解散されちゃった時点でどうして数を算定することができるのですか。ということは、それはいろいろな理屈はあるでしょう、理屈はあるにしても、そこにこの条文の無理がないか、無理があるんじゃないか、こう私は思うのです。条文の書き方は間違っているのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
  208. 三宅将夫

    ○三宅参議院法制局参事 お答えいたします。  解散の時点において衆議院議員でございました方は解散後は衆議院議員の身分を失うわけでございますので、そこで、この「衆議院議員又は参議院議員を併せて五人」という五人は、衆議院議員の身分がないのだから数えるのはおかしいのではないかという御質問であると思います。しかしながらこの制度趣旨を考えますと、発議者が何回も申し上げておりますように、政党要件はいわゆる政党らしい政党を外形的な基準で五人の国会議員というような形でとらえたものでございますから、仮に解散いたしますと、解散の時点で衆議院議員としての身分は失いますけれども、解散後四十日以内に総選挙が行われるわけでございます。その間に参議院選挙が行われる場合における政党要件をどう取り扱うかという、きわめて例外的な衆参同時選挙というような場合でございまして、そういう場合に、おっしゃいますように衆議院議員としての身分はございませんけれども、それを政党要件としては当然に議員として取り扱ってもよろしいのではないか。そういうものとして議員に加えることは、この制度趣旨から考えまして当然ではなかろうか。と申しますのは、実質的にこの制度政党要件、いわゆる政党らしい政党という政党要件の実質を変えるものではございませんし、また議員の身分を変更するものでもございません。解散によって身分を失った衆議院議員衆議院議員として取り扱うというものでもございませんし、単にいわゆる政党らしい政党をどのように把握するかという観点の問題でございますので、このような例外的な事項は当然政令で書くことができるという解釈をわれわれはしておるわけでございます。
  209. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 松浦先生にお伺いしますが、だからさっき私、自動車の例を挙げたでしょう。ポスターの例を挙げたでしょう。ビラの例を挙げましたね。みんな法律で書いておるじゃないですか。運転手一人なんていうのは、そんなこと決まっておることですよ。運行中の車が運転手二人要るわけ絶対ないんですから。そんなことも法律条項に書いておいて、それで前議員でございます、これは前議員と読まざるを得ないんですというような解釈ではだめなんじゃないでしょうか。これは大混乱ですよ。  だから、私どもとしてはこれを明確にさせる必要があるわけで、たとえば八十六条の二の一項一号についても先ほど来話が出ている「衆議院議員又は参議院議員を併せて五人以上有すること。」とありますけれども、やはりその下にただし書きをちゃんとつけて、衆議院が解散中である場合は解散の直前に所属した衆議院議員を合わせることができるとか、こういうふうに明確にすべきが、この法律を作成する技術上からいったって当然のことじゃないですか。いろいろな弁当何食分なんて規定していて、この前議員であるか現議員であるかわからぬような条項をそのままにしておくなんというのはおかしなことじゃないですか。これは改正さるべきじゃないかと思いますが、私の意見は誤ちでございますか。
  210. 松浦功

    松浦参議院議員 お答え申し上げます。  誤ちであるとは思っておりません。法律で書くことも一つ方法でございます。政令で書くのも一つ方法でございます。私どもは政令を選んだ、そういうことでございます。
  211. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは松浦先生にもう一度伺いますが、その書く書かないはおれたちの勝手ですよというのは、それはそれなりの理屈があるにしても、しかし弁当何食分なんていうことを法律条項にしておいて、議員であるか議員でないかという問題について政令にゆだねるということであれば、これはやはり事の重大さから考えて、ウエートから考えて、バランスを欠いているとは思いませんか。
  212. 松浦功

    松浦参議院議員 私どもはそのように考えておりません。
  213. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 全くの強弁だと思うのですね。  それでは、他の条項について申し上げたいと存じますけれども、公選法第五条の二の十項ですか、その中には「前項の規定委員の任期は、三年とする。但し、補欠委員の任期は、その前任者の残任期間とする。)にかかわらず、委員は、国会の閉会又は衆議院の解散の場合に任期が満了したときは、あらたに委員が、その後最初に召集された国会における指名に基いて任命されるまでの間、なお、在任するものとする。」というふうに「国会の閉会又は衆議院の解散の場合に」と明確にこの条項ではそういうふうに書かれておるわけで、公選法第五条の二の十項においては解散時を当然想定してつくっておるわけですよね。ならば、今度の改正案だって当然解散時を想定した場合の条項が入ってしかるべしというのが私たちの主張でございますけれども、これに対する御所見を承りたいと存じます。
  214. 松浦功

    松浦参議院議員 公職選挙法第五条の二第十項の規定は、任期が切れてしまったにかかわらず特別に次の国会の指名に基づいて任命されるまでの間は、任期がないのに職務を行うということでございますから、これはきちっと法律で書かなければ大変なことでございます。ところが、衆議院が解散になりまして、衆議院議員が三人おられた方が議員でなくなられた。先生のお言葉によれば、ただの人、三人がただの人になってしまった、この場合の問題でございます。私ども政党というものをつかまえておるのでございまして、それを外形的に国会議員の数でつかまえておるのでございます。ところが政党の中身は何にも変わっておらないのでございます。そこで、そういうことについての解釈規定を、解散があっても五人の中には算定しますよということを書くテクニカルな規定でございます。議員の身分を復活するわけでも何でもございません。そこで政令でもよろしいと私どもは考えております。もちろん、先生のおっしゃるように法律で書いていけないなどとは私どもは一言も申しておりません。私どもは政令でよかろうと思って政令で書いたということでございます。
  215. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 解散時において政党の態様が変わらないというふうにおっしゃいますけれども、それはそういうふうに特定することは困難であろうと思うのです。しかし紛らわしいことは事実じゃないですか。だから政令事項にゆだねるのでしょう。これは全然紛らわしくないのですか。紛らわしいから、あなた方も政令でまた新たに書かなければわからぬでしょうと言っておるわけでしょう。ならば、政令よりも法律で書くべきじゃないですか。弁当の数だけ書いておいて、おかしいですよ、そういう議論は。  それから、さらに、この十二の規定に関して申し上げるならば、たとえば地方交付税なんかの問題でもいろんな場合を想定しているのだと思うけれども、省令で特例を設けることができるとか、あるいは自衛隊法で、自衛隊の行う火薬類の製造、貯蔵その他の問題については「火薬類取締法の適用については、政令で特例を定めることができる。」特例で定めることができると書いているわけであって、単に政令ではありませんぞ、政令の中に特に特例を設けますぞというようなことが書いてあるわけで、そういうようなことをいわゆる法律をつくる上のいろいろな技術的な問題を研究してみると、そこら辺の問題を私ははっきりすべきじゃないかと思うのです。特に議員の身分に関する――身分と言うとあなた方、また怒られるかもしれませんけれども、少なくとも解散時においてはこれは議員じゃないわけで、それを算定することは困難なわけですから、解散時のことを想定して条文の中に改めて入れるべきが私は当然の処置ではないかというふうに思うのです。まあいろいろ議論は……(発言する者あり)そこら辺はまたひとつ理事会で詰めることにしまして、これはまたわれわれは、法律作成上の技術上の問題としてはここに重大な欠陥がある。現にそういった法制局のいろんな方面のあれを聞いてみますと、できるならばこれは書いた方がいい、その方がベターであるという御意見の方もたくさんおられますので、この問題についてはなおひとつ坂井委員質問を留保されておるわけでございますが、これをひとつ理事会においてお取り扱いをお願いをいたしたい、これは特に委員長に申し上げておく次第であります。
  216. 久野忠治

    久野委員長 はい。よくわかりました。
  217. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは次の問題に移ります。  ちょっと罰則に関連してお伺いをいたしておきますが、名簿登載者の選定機関、これはこの前伺ったように機関もあり得るし、個人もあり得る、こういうようなことでございます。機関というようなことになりますれば、政党活動をいろいろしているわけでございます。それからの機関に所属する複数の人たちあるいは機関の長、そういう人たちが選挙に関して名簿作成に際して「財産上の利益を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、これを三年以下の懲役」というふうにあるのでございますけれども政党というのは間々政治献金を呼びかけておるわけであります。個人献金は少ないということはこの前の委員会でも政府の方からそういうようないままでの状態が説明をされましたけれども、しかし依然として個人献金もあるわけでございまして、政治献金を呼びかけたときに政党政治献金を呼びかけた、たまたま候補になる人がそれに応じたというようなことになりますと、この罰則規定にこれはひっかかるのかどうか、この点についてどのような解釈をすればいいのか御説明をいただきたいと思います。
  218. 松浦功

    松浦参議院議員 条文の中にはっきり書いてありますが、対象者は「選定につき権限を有する者」でございます。「その権限の行使に関し、請託を受けて、」という条件がついておりますから、その条件に該当しない限り政治献金を受け取ること、出すこと、全くこの条文とは関係ない、こういうふうに考えております。
  219. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そうすると請託の意思があるかどうかはなかなか判定しがたいわけであって、たまたまそういうようなことで政党選挙資金が足らないというので、それぞれの地方区になろうとする人あるいは全国区の候補になろうとする人たちから拠出金を申し受けてもこれは必ずしも一概に該当するとは言えない、こういうことになりますね。
  220. 松浦功

    松浦参議院議員 この二百二十四条の三という規定は、これは比例代表選挙における名簿登載者の選定に絡んでくるわけでございますから、地方区の問題とは全く関係はないわけでございます。(石田委員「両方を申し上げたわけであります」と呼ぶ)地方区の方は関係ございません。したがって先生おっしゃられるように、政治献金というものはここに記載されている条件に該当しない限りにおいては全くこの罰則と関係ないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  221. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは供託金を拠出せしめた場合、今度は政党が供託するわけですから、それを拠出せしめた場合はいかがでありましょうか。
  222. 松浦功

    松浦参議院議員 全くこれは党内問題でございまして、この条文とは関係ございません。
  223. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは次の質問に移りますが、前回、政党有権者の人たちが投票して議員が確定した、その人たちが確定した後に他の政党へ移ったときに一体その有権者意思はどうなってしまうんだというようなことについて御質問申し上げたんでございますけれども、選ばれる側の人については、これは国会議員としての法律上の身分等もあって別に問題はない、むしろそれを規制すること自体がおかしいというようなことで、私たちもそれについて反論は申し上げませんでしたし、反論しようとも思わないわけですが、その有権者意思ということがないがしろにされてしまう点についてはどういうことでございましょうかということについては、余り理解の得られるような御答弁がありませんでした。憲法十四条の条文を見ても、国民は法のもとに平等であるし、人種、信条その他の問題によって政治的、経済的または社会的関係によって差別されないというふうにあるわけですから、そういうことを考えてみると、有権者意思というのは、投票した人の意思というのはきわめて尊重されなければならない基本的な人権ですね。それを、他の政党へ移ってしまったということになれば、これは政党選挙の体をなしていないんじゃないかという、どうしても私たちにはそういうふうにしか理解できないんですけれども、これは制度上やむを得ないんで少々有権者意思が曲げられてもこれ以上方法はないのです、有権者意思というものが制限されてもやむを得ません、こういうような意味合いなのかどうか、ちょっとそこら辺のところをひとつ……。
  224. 松浦功

    松浦参議院議員 お答えを申し上げます。  有権者意思を正確に継続的に反映することが望ましいことは当然でございますが、たとえばある政党で二十名の当選者の枠を得ておった、ところが当選者二十名の中の一人が離党した、別の党へ所属なさった、その場合に国会議員という身分の重要性、これはいろいろな考え方があろうかと思いますけれども国民の信託を受けて当然に選挙のときは正しい過程を経て選ばれた者でございます、そういう者の身分を失わせることはできない、こう私はお答えを申し上げました。先生もその点については争わないと言っておられるわけでございます。そういたしますと、他党に行きました方が元気でおられる間は欠員がないわけでございます。いかようにも選挙法上それを修正する道がないわけでございます。したがって、他党へ行ってもやむを得ない。若干有権者意思とは外れてくるけれども、それは仕方がない、こういう考え方でございます。  そこで、最後につけ加えさせておいていただきたいのでございますが、その他党に移った方がお亡くなりになったという場合には、その他党の名簿に載っておりまして当選しなかった方が繰り上がるのではなくて、もとの方から上がります。これで有権者意思というものは補正をされる、そういう考え方までとっておりますので、極力、技術的に可能な限り有権者意思を尊重しようとしているということについては、ぜひ御理解を賜るようにお願いをいたしたいと思います。
  225. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私どもは、それがなかなか納得できない問題でございまして、現にそれがいまの政界ではあるわけでございまして、そういう意味では、そう簡単にいかない。そういった意味では、この法律有権者の投票の権利というものが、私どもは阻害されるという表現をとっているわけですが、多少の矛盾はあるんだということでございますね、少なくとも。
  226. 松浦功

    松浦参議院議員 おしかりを受けるかもしれませんが、私は矛盾だとは考えておらないのでございます。矛盾ではなくて、これは制度的にそういう帰結にならざるを得ないということでございます。
  227. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それじゃ、同じような問題点があるところがありますね。これもすでに当委員会では話題の出たところではございますけれども、いわゆる九十五条ですか、ドント方式、規定をされておるわけですね。これによって考えてみた場合に、たとえば現在の無所属の諸君が新党を結成して、地方区五名、全国区五名の候補を並べたといたしますね。そうして選挙の結果、予想外に当選数が出て、八名分あったと仮定します。そうすると、この前の御説明でございますと、その三名分については他党へ回ってしまうわけですね。要綱ではいわゆるドント方式というふうに言われているのですが、その条文については、どうしてこの九十五条の中にそういうことを想定した条文をおつくりにならなかったのか、これはどういう意味でしょうかね。
  228. 松浦功

    松浦参議院議員 九十五条の二に、ドント方式という言葉を使わずに――新旧対照表でごらんになっておられますね。九十五条の二の四行目のところの「の数に相当する数までの各整数で順次除して得たすべての商のうち、」という書き方をしておりますので、これで名簿登載者の数まで割って、それぞれ答えを出しまして、その大きい方からとってまいりますという結果、仮に五名しか名簿を出さずに、枠は八名分あったとしても、その政党は五つになってしまって、その残りの三つは整数、商の多い方から他党へ回っていく、こういう結果になる、これは条文にはっきり書いてございます。
  229. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 これは私の質問の仕方が悪かったのかもしれませんけれども、いわゆる九十五条の二の一項においては、ドント方式と言われているものですね。この二項はドント方式じゃないんですね。ドント方式とは違うのじゃないですか。ドント方式というのはそういう趣旨じゃないのじゃないですか。
  230. 松浦功

    松浦参議院議員 これがドント方式でございます。ただ、その八名の枠を得られた政党が五名しか名簿に載せていない、そのため三名だけは論理的に欠員になるじゃないかというこの問題をどう処理するかということは、これは立法政策の問題だろうと思うのでございます。欠員のまま置いておきますというふうに書いて悪いということはないと私は思います。しかし、それはせっかく定員を定めてある選挙であるから、名簿候補者より当選枠が多くなるというようなことのないように、それぞれの政党においてお力をお考えいただいて名簿に御登載をいただけるだろう、こういう考え方で欠員を出さないという考え方がよかろうということでこの方法を採用した、こういうことでございます。
  231. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私は、それはどうもドント方式ではないのじゃないかというふうに思うんですけれどもね。では、ドント方式というのは、一体明確なそういうような規定というのはないというふうに、これはいままでの話を承っておりますと、いわゆる一で除し、二で除しというようなことで来る、それを各政党に割り当てるわけですから、これがドント方式というふうに思っておりましたけれども、確かに計算の方法はそうなるけれども、余った票はほかの政党へ行っちゃうわけだから、ほかの政党へ行くということになりますと、それが本当の意味のドント方式と言えるのでしょうか。これは私、よくわからないから聞いておるのです。
  232. 松浦功

    松浦参議院議員 繰り返して申し上げるようになりますが、まさにこれがドント方式でございます。ドント方式というのは、これは算定の方式でございます。その算定の方式を文書で書けばこうなるということでございます。ただ、その過程において、先ほども申し上げましたように、いまのように名簿登載者と当選枠とが食い違って逆転をしてきた場合に、それを欠員にするかしないかということについてはいろいろ御議論のあるところだと思います。私どもは、欠員は出してはいかぬ、やはり全部定数五十名まで埋めるべきじゃないか、こういうことで、その場合にはドント方式で計算をする。その結果、先生がおっしゃるように、その政党の三名が別の政党に行ったような形に見えてくる。(石田(幸)委員「見えるじゃない。行っちゃうんですよ」と呼ぶ)行ってしまう、こういうことになるわけでございます。
  233. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そこになると、先ほどの有権者意思というものは一体どこへ行っちゃうんですか。(「戦術上の誤りだよ」と呼ぶ者あり)いま外野から声がありまして、戦術上の誤りで、党が悪いんだ、党があほや、こういうことでございますか。
  234. 松浦功

    松浦参議院議員 まあ粗っぽい言葉になって恐縮でございますが、いわば八人の枠が取れて名簿に五人しか載せていないということは、当該政党が三名棄権をした、そう言うとちょっと粗っぽい言葉になるかもしれませんが、感触としてはそういう感触になるわけでございます。棄権をしたのだから、その他の政党にドント方式で三人が割り振られる、こういうことに理解をいただくのが一番早道かと思います。
  235. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 大変きれいな言葉で表現をされましたので、これはやはり外野席に声があった、その政党があほである、選挙戦術を間違ったというような意味合いであろうと思うのでございますが、しかしいずれにしても、憲法との絡み、そこら辺のところを、実際に他の政党へ行ってしまうわけですから、そこら辺との絡みは、どういうような御見解をお持ちなんですか。
  236. 松浦功

    松浦参議院議員 国民政党を選ぶわけでございますが、その政党は五人しか議員は要らない、こう言っておられるという考え方もとれるのではないかと思うのでございます。そういう意味では、おれたちはもっとたくさん取るのだということで名簿登載者をたくさん挙げている政党に、ドント式で、商の大きいものから割り振っていくということは一つ考え方だろうと私は思っております。
  237. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 しかし私は、もう少し選ばれる側の権利というものが担保される法律であってしかるべきだと思いますね。先ほど来法律をつくる技術上の問題についていろいろ触れているのですけれども、そういうようなことが選ばれる側の都合によって書かれている。それで、どうしても法律をつくる技術上どうしようもないのだというようなきわめて乱暴な、有権者意思をひん曲げてもやむを得ない、そういう可能性もある、そういうようなことがそのまま残っておることについては私たちはなかなか納得しがたい、こういうふうに思うのであります。  それから、もう時間もありませんが、供託金の問題についてひとつ伺うのでございますけれども、供託金の意味ですね。この間お話を承ると、泡沫候補の乱立防止というようなことがあるということ、これもわからぬではないけれども、もう一つは、やはり経済的な差別を受けないという憲法上のいわゆる法のもとの平等という問題を考えたときに、この点はかなり考慮を払わなければならない問題ではないのか、こういうふうに思うのです。この点はどういうふうにお考えになりますか。
  238. 松浦功

    松浦参議院議員 供託金制度というのは、泡沫立候補の制限、それに加えて部分的には大きな公営費用の一部を分担していただく、こういう考え方からできておるようでございます。
  239. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、後段の方を先にいきましょうか。  公営選挙費用は前回どのぐらいかかりましたか。供託金没収の額はどのぐらいでしたか。
  240. 大林勝臣

    ○大林政府委員 前回の参議院選挙におきまして公営選挙費用でございますが、総選挙におきまして約七十六億、参議院選挙におきまして全国区が約二十億、それから地方区が約四十億、こういう数字になっております。  それから、供託金の没収でございますが、全国区につきましては、供託金没収額総額が三十二人ございまして合計六千四百万円、こういう数字になっております。
  241. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この実態らいきますと、全国区二十億に対して六千四百万ですから、公営選挙費用を補てんするといってもそんなに大きな意味合いはなかろう、三%ということですからね。私が心配をいたしておりますのは、確かに過去において泡沫候補の乱立という状況があったのですけれども、しかし、そういうものもいわゆる世論の力に淘汰されてだんだんと少なくなっていることは事実なんですね。これは一挙に二倍に上げられたのですけれども、そうすると、参議院全国区、これはもう政党が金を出すわけでございますからいいと言ってしまえばそれまでなんですけれども、そういうわけで、仮にどうしても参議院に出たいということになると十人そろえなければならぬ、四千万という金を用意しなければならぬというようなことになりますね。これしかちょっと方法がないのですね。個人がどうしても立候補したいというならば、いわゆる同じ意思を持つ人たちを十人糾合して、そしてその中の一人を当選せしめるような運動をするしか方法がない。そうすると、非常に多額な金を用意しなければならぬということになってくると、これで特定の金持ちしか出る方法がなくなってしまった、そういう状況が生まれてくるのですけれども、特にこれは供託金を倍額にされたというようなことも絡んでいたわけでありまして、この法律で五年ごとに見直しなんということになってきますと、二百万が今回の例によれば四百万になり、さらに五年後は八百万になる。そんなふうにもいかないでしょうけれども、いわゆる小グループの人たちがだんだん出にくくなる。供託金という制度、これの金額を上げることによってそういうような状況が出てくるのですけれども、この憲法との関連の問題について、そこら辺はやはり調整する必要がある。一体どういうようなお考えでここら辺を御検討になったのか、もう少し御説明をちょうだいいたしたい、こういうふうに思います。
  242. 松浦功

    松浦参議院議員 別に供託金制度自体が憲法に絡んでくるとは私は考えておりません。また、供託金という制度は、これは預けるわけでございまして、条件を満たせば当然返ってくる金でございます。取られてしまう金ではございませんので、その返もあわせて御理解をいただけたら幸せでございます。
  243. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 少数意見を持つ人たちについてはきわめて御冷淡な態度でいらっしゃるというふうに思わざるを得ないのですけれどもね。  最後に、この間話が出ましたね、選挙運動政治活動の区別の問題、これについてもう一つお尋ねをしておくのですが、いわゆる政治活動のときに、特に現実参議院選挙が近い場合に、政党に一票入れてくれと言うのは選挙違反である、政党を支持してくれと言うことについては選挙違反じゃないというような意味合いのことを言われておるのですけれども現実にそんなことが区別されているのかどうかというと、そうはいかないのですね。ここら辺の規定はもうちょっと考え直して、もう政党選挙なんだからね。それは、街頭演説をやったって、政談演説会をやったって、あるいはその前のいろいろな時局講演会をやったって、政党の幹部が出ていったら、今度はこういうふうになりますからぜひともわが党にひとつお願いしますよというぐらいのことは言いますわ。一票入れてくださいぐらいのことは言いますよ。そうだからといって、現、実はなかなか、そのことによっては選挙違反に問われるという状態じゃないでしょう。そこら辺のところはもう少し現実に即応した条項に改められた方がいいのじゃないか。そういう形式的な罰則条項を設けているというのは、かえって選挙に対する国民の信頼を損なうことになりやしませんか。そこら辺は変えられたらどうかと思いますが、いかがですか。
  244. 松浦功

    松浦参議院議員 私は、先生から質問を受けまして、どうだと言われたのでそう言っているのでございまして、これは余り深く突っ込めば突っ込むほどいろいろ問題が出てくるのでございます。特に私どもどうしてもそういう意味の御主張に賛成できないのは、参議院議員選挙というものは、今度の政党選挙選挙区の選挙と一緒であるわけでございます。それを一気にそういう形にいたしますれば、必ず選挙区選出選挙の方に非常に問題が起こってくる、そういうことを考えて言っているわけでございまして、私は、先生も十分御承知の上でお尋ねになっておられるものと思います。どうぞ御了解を願います。
  245. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 こういうような議論があったということは議事録に載るわけでございますから、警察の担当者の方々もそういうものをまたお読みになるだろうからそう変なことにはなるまいと思うけれども、いずれにしても、この改正案をおつくりになる場合にやはりいろいろな場合を想定して、より選挙が公正に行われるように、しかも国民の間に信頼性が増すような方向で改正をしていただかなければならないわけでございまして、余りあいまいな規定をお残しになるということは後で物議を醸すことになるだろうというので、御警告の意味でいろいろ申し上げておるわけでございます。皆さん方のやはり現実を見れば、たとえば全国区で五人しか立てないで八人分得票できるなんということはまあまあなかろうというようなことで、現実的な問題を加味してこの法律をおつくりになっているということはわかるのですけれども、いろいろ不備な問題についてはもうちょっと明確にされなければならないということを特に申し上げておきたいと思うわけでございます。  今回の質問はこれで一応終わります。(拍手)
  246. 久野忠治

    久野委員長 岡田正勝君。
  247. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 冒頭に大臣にお尋ねをいたしますが、あらかじめお手元に差し上げてありますように、私どもは今回のこの法案に対しましては反対の立場をとっております。その理由も先日申し上げた次第でございますが、その理由と全く同じような意味のことがきょうの朝日新聞にも出ておりまして、お手元にありますように、憲法学者有志二十一名から、まず第一点は、この法案が通ってしまったら政党強化を促進してしまうではないか。そうなると第二院としての参議院の存在理由はなくなってしまいますよということ。第二点は、有権者権利を制限することになりませんか。少数派の占め出しということは大変問題があります。第三点は、表現の自由と個人立候補を完全に不可能にしてしまう、これは大変問題がありはしないか。第四点は、各政党間の合意がないまま国民の意向も無視をして無理やり通すということは問題がありはしないか。以上四つの問題が各政党に申し入れがありました。大臣のところにあったかどうか存じませんけれども、本件についての担当の大臣として御見解をまず冒頭に承っておきたいと思います。
  248. 世耕政隆

    ○世耕国務大臣 私はその申し入れば直接受けなかったのでございますが、憲法学者の方々から申し入れがあったということは新聞で拝見しているところでございます。これらの述べられた問題点については私もこれを了解するものでございますが、いままでの段階で、憲法上で今度御指摘になられた問題点は、提案者においても十分いままで政党の内部で、それから政党間で、委員会その他国会の場所で、かなり突っ込んで検討されてきたわけでございます。それからまた、この法案を提案される以前にもいろいろな角度からかなり突っ込んで検討してきたものでございまして、私ども少数者意見というのはこれもまた貴重な意見だと思います。それらを含めまして、提案された今度の改正案は、提案者がいろいろ御説明しておられますように、提案の一番根拠になった部分、この部分が再三申し述べられておりますが、こういう点から今度の提案がなされたと思いますので、私ども、やはり選挙ができるだけ公平で公正に行われるべきことが民主政治において非常に必要なことなのでございまして、これらの少数者のいろいろな御意見も尊重しながらぜひとも御審議をいただきたいと思うところでございます。
  249. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 さすがは大臣でありまして、まことに公平なりっぱな御意見であります。  いま、次の質問でお尋ねをしようと思ったことでありますが、一部含めてお答えになりましたけれども、もう一度御見解を承っておきたいと思います。  選挙というものは同じ条件のもとで公平にそして公正に行うべきものであろうと私は考えておりますが、これに対する御見解と、いま一つは、民主政治の中では少数意見の尊重ということは忘れてはならない大事な問題であろうと思いますが、この問題についての御見解、二つを一緒にお答えください。
  250. 世耕政隆

    ○世耕国務大臣 御指摘の二つの点に関しまして、全くそのとおりであると存じております。
  251. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これからひとつ具体的に――私は反対ではありますけれども、しかしこれはもう力で議案となっておるわけですから、まあことわざで言いますが、無理が通れば道理が引っ込むという言葉が昔からありますね。私はまさに今回のこの法案はもうその典型的なものじゃないかと思うのです。たとえば、いま日本全国、赤なら渡っちゃいけませんよ、青なら渡ってもいいのです、黄色は注意ですよ、これは一億一千七百万の国民に徹底をしております。これがルールであります。しかしながら、その交差点に来た大ぜいのグループの人が、気勢を上げて、構うことはない、赤でもいいんだ、渡れというので、わあっと、みんなで渡ればこわくない、こういう式でどうも渡っているような感じがしてなりません。これは発議者がたびたび御答弁がありまして、返事に困窮をいたしましたならば、いやそれはいまの地方区の定数是正にいたしましても、ごもっともであります、中西案も出ておりましてごもっともであります、それはやらなければいかぬことであります、しかし各党間において十分に話し合いを煮詰めていただきましてと、必ず帰結するところはそういう答弁でお逃げになるのであります。ならば、この全国区の改正案もなぜ各党の合意を得ようとしなかったのか、一党だけの提案によって、一党だけの賛成によって、何で力押しに押し通そうとするのか、私はまさに力で通す、ルールも何もありゃせぬという感じがいたします。それは自民党のお考えとしては、いませっかく多数を持っておるときいまやらずしていつできるというような感覚があるのでしょうから御無理はないと思いますが、しかし、議案になった以上やむを得ません。以下、疑問の点につきましてお尋ねをいたしますので、簡潔にお尋ねをいたしますし、あらかじめ差し上げておりますので、ひとつどんどん明瞭なお答えをいただきたいと思います。  まず第一点は、投票は自書式ということになっております。これは新しく出てくるかもしれないいわゆる少数党のためにも――いわゆる自民党なんというものは全国の人が知っておりますね。実に大きな政党であります。だが、しかし、小さな政党が新しくできた場合には全国民にはなかなか周知徹底をいたしません。したがいまして、自筆式というよりは記号式、マルをつける、あらかじめ印刷しておいてマルをつけるというやり方の方がより親切であり、間違いが起こらず、選管いじめにもならず、私はその方が一番合理的であろう。発議者は事あるごとに合理、合理とおっしゃいますから、合理的な方法をおとりいただきたいと思いますが、いかがですか。
  252. 松浦功

    松浦参議院議員 お答え申し上げます。  記号式についても私ども検討いたしました。記号式がいいという意見の方もございました。しかし、最終的にはやはり自分で書くということが本当に国民意思を正確にあらわすことになるのではなかろうか、こういう考え方から自書式にいたしました。また、なお付随的には選挙理事務上にも問題が出てくるおそれがございます。そういうことから自書式を採用することにいたしました。
  253. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私は、これはぜひ御検討いただきたいと思いますが、いままでの各委員からそれぞれお出しになりました御意見の中にも、非常に紛らわしい名称というものが出てまいりますね。そういう場合に一体どっちをとるのかということは、それぞれの各選管におきまして開票の立会人がもうモメシチカエスといいますか、大変な難儀をするような問題があるのでありまして、普通の選挙でもそうですから、今回のように新しい制度をとった場合には、そういうトラブルができるだけ起こらない方法をとることが一番いい。それは自分の手で自分で書くことの方がより正確に意思をあらわす、これは本に書けばそのとおりです。しかしながら、実務上といたしまして、字を書くのにも大変困難を覚える人もあるのであります。そういう現実を無視して、自分の意思で自分の手で自筆をすることの方が正確を期することができるという通り一遍のお答えというのは、余りにも私は冷たいのじゃないかと思いますが、検討の意思があるかないか、もう一度お答えください。
  254. 松浦功

    松浦参議院議員 私どもも記号式投票というものにつきましてその価値の高いことは十分存じております。大体、記号式の投票というのは、少人数の候補者のある選挙においてとりまする場合には非常に有効適切な方法であろうかと思いますが、今度の政党選挙で一体どれだけ政党が出てくるかわからないわけであります。しかも、非常に紛らわしい名前でも出てくるというようなことになると、かえっていろいろ混乱のおそれもございます。そういった点を配慮して、私どもは、記号式投票というものを否定しておるわけじゃございません、非常に価値のあるものだとは思っておりまするけれども、今回の選挙においては自書式をとった方がよりベターではなかろうか、こういう考え方でおるということを申し上げておきたいと思います。
  255. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。いまお答えの中に非常に正直に出てきましたね。そういう記号式に賛成する意見もありましたと冒頭にお答えになりましたが、恐らく先生はその方じゃなかったかと思うのであります。なぜならば、ここで二回もいまの答弁で繰り返しておっしゃいましたが、少人数のときに記号式を用いるということは非常にいいことでございます、こういうことです。  しからばお尋ねいたします。先般、いままで行われてまいりました全国区におきましては、候補者数というものは前回が八十九名とおっしゃいましたかね、大体小百人、百人近くの人が出ておいでになるわけでございます。したがいまして、自筆式ということは当然必要であろうと思います。だが、今回の選挙の場合に、いまある政党、六つですね。それが今度は十以上出ると思いますか、百も出ると思いますか、常識から考えてあり得ないことではないでしょうか。そういう常識から考えてもあり得ない、いままでの個人の記名をいたしました全国区の数、約百名よりも十分の一にも減ってくる、いま答弁で言われたいわゆる小人数なんであります。その小人数を選ぶときには記号式というのは非常に合理的である、非常によろしいということをおっしゃっており、私はその価値を認めております、こうおっしゃっておるのですから、もう一遍ひとつ考えていただきたいと思います。
  256. 松浦功

    松浦参議院議員 私が申しておりますのは、市町村長選挙とか知事選挙とか数人で争われる選挙に一番向くと申し上げておるのでございまして、それでは逆にお伺いをいたしますけれども、一体今度の選挙で十以上にならないという保証を先生にいただけるのでございましょうか。私はそうは考えられないと思うのでございます。そういう配慮もいたしました上でということでございます。もしこの制度が確定をして、常に五党なり六党なりで争われるという段階が出てまいりますれば、またその機会には十分検討に値する制度だろう、こう思っております。(「明快、明快」と呼ぶ者あり)
  257. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私は名答弁とは思っておらぬのであります。いま私の方への質問がありました今回の選挙立候補すべき政党というものが十を超えないで済むと思いますかどうですかというお尋ねであります。  大体、議会におきましては、質問者に対して、議員に対して質問をするということは一番の非礼であるということは、長い御経験から御存じであろうと思います。しかし、お互いに仲間同士ですからそういう非礼はとがめないことにいたしまして、あえてお答えいたしますが、私は十以下でおさまるであろうという確信を持っております。  それから、首長選挙のような少人数を言ったのです、こうおっしゃいますけれども、私はそういうことを称して二枚舌と言う。数人とおっしゃるでありませんか。数人と十人とどれだけ違うのですか。私は百人と十人のことを言っておるのであります。そういうのをこじつけ答弁と言うのではないでありましょうか。このことについては時間を食いますから、どうも私の方に分がいいようであります、次に進ませていただきます。  次に、供託金の問題でありますが、今度の選挙はあくまでも個人選挙ではありませんよ、政党選挙をやるのですよ、こう言っていますよね、委員長。であるのに、名簿に出てきた個人の数に掛ける四百万の供託金を取るというやり方はおかしいんじゃありませんでしょうか。個人立候補するのじゃないのでございますからね。政党選挙を闘うのでありますから、一政党について、どうしても政党が信用できないということになるなら、その政党一つ分について幾らの供託金というのが本当じゃないでしょうか。政党というものは元来信用すべきものでありますから、本当からいったら、今回のこの改正案でいくならば、政党に対する供託金、いわゆる名簿に対する供託金というのは取るべきではない、取らない選挙だってあるのですから。取らない選挙だって現実に日本にあるわけです。町村会議員の場合は供託金ありませんね、でございましょう。前例がないわけではございませんよ。したがいまして、こんなごろっと様子の変わった政党選挙ということをやる限りにおいては、政党というものを、お互いの政党も信用し合ってもらわなければ、政党が信用ならない、政党の中でも泡抹政党があるかもしれぬというので供託金を掛けさせて没収する規定を置くなんということは、ちょっと非礼じゃないでしょうか。お答えください。
  258. 松浦功

    松浦参議院議員 法律上は五十名まで名簿提出をできるように、定数いっぱいまでできるようになっております。ところが、供託金制度というのは、先生御承知のように、泡沫候補の制限とそれから公営費用の一部を分担していただく、こういう精神からできておる。ということによりますと、公営につきましての分担も政党に一部お願いしたいという気持ちもございますし、また、さらに、本質的には名簿登載者をむやみやたらにいっぱいにしていただきたくないという気持ちも入っておる。泡沫名簿登載者と言うと問題だと思いますけれども、そういう考え方も入っておるというふうに御理解をいただきたいのでございます。
  259. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これにも余り時間をかけたくないと思いますが、いまのお答えを聞いておっても、私はどうもこれは矛盾が多いなと思いますのは、各政党による選挙ですよ、個人選挙ではありませんよ。したがって、各条項ずらっと政党、いわゆる確認団体による選挙しかできないように全部法案をしてありますね。個人というところは出てこないのですよ。個人というものは全然出てこないのに、ただ名簿に五十人いっぱい並べるか、ちょこっとしか並べぬか、半分ほど並べるが、そんなことは各政党の白山じゃありませんか。本来選挙は自由であるべきでしょう。それを五十名の枠いっぱい使ってもらうというのは好ましくありませんのでという、そんな発案者の恣意によって決めるべき問題ではないと思う。私は、もっと公平に政党というものはどうあるべきか、政党法をつくってないのですからこれはいたし方のないことでありますけれども、残念でありますが、ともかく政党というのはこういうことにしようじゃないかという一つルールをいまおつくりになろうとしておるわけですから、そのルールにはまる政党であるならば、五十名の名簿いっぱい使おうと何しようとそんなことは白山じゃないか。それをとめる理由なんか一つもない。だから私は、供託金をどうしてもゼロにするわけにはいかぬ、それは何ぼか取るようにしたいとおっしゃるなら、せめていわゆる名簿個人一人一人についての供託金ではなくして、政党選挙でありますから、政党に対して供託金をかける、こういう方式にぜひ改めていただきたいと思いますが、いかがですか。
  260. 松浦功

    松浦参議院議員 私どもは五十名出していけないということのようにお受け取りいただくと非常に困る、五十名お出しいただいて結構なんでございます。しかし、既成政党のようにりっぱな政党だけがこの選挙に参加するかどうかは保証できないわけでございます。そういうものが、一名しか当選の可能性がないのに二十五名載せてくる、こういうことになりますと選挙はいろいろ混乱をいたします。そういうことから、公営費用の分担という意味を含めてやはり一人当たりという計算をした方が適当ではなかろうか、こういう気持ちで定めたわけでございます。
  261. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは一つだけ意見を申し上げて、次に進まさせていただきますが、私どもはどう考えても、この法律案をお用いになるのでしたら、政党選挙に徹するんだということが大前提である限り、名簿の数掛ける何百万円というやり方というのは合理的ではない。発案者が常に好んで用いられる合理的という言葉からいったら合理的でない。そして五十名いっぱい使う、あるいは二十五名使う。一人しか通らぬのにぎょうさん書いて何ということだ、そんなことはその政党国民から指弾を受けるだけのことであって、何もほかの政党に痛いもかゆいもないわけです。五十名いっぱい書こうと書くまいと、それはその政党に任ぜられる、本来そうするべきじゃないんでしょうか。それが本当の白山じゃないんでしょうか。名簿の書き方まで金によってぐっと抑えつけようというやり方というのは、私は、金のかからない選挙をやるというたてまえからいってもおかしいと考えておるのであります。いま一度御勘考いただきたいと思います。  次に、供託物の没収の規定でありますが、当選者の二倍までは取らない、それ以外は没収しますよ、こういうことに書いてありますが、この二倍という根拠は何なのでしょうか。私は、小政党、特に少数派の人が候補を出して選挙を戦う場合のことを考えますと、少なくともこれは三倍ないし四倍ぐらい比率に変えておいた方がいいのではないか。二倍というのはそんなに根拠のあるものではないと私は思っております。三倍か四倍にお変えになって、少数派の人でも政党をつくって立候補することができるようなその素地をつくることが私ども既存の政党の役目ではないでしょうか。新しい政党の芽生えを摘んでしまうような行為というのはできるだけ避けた方がいいと思いますが、いかがですか。
  262. 松浦功

    松浦参議院議員 二倍ということにとりたてて申し上げる根拠はございません。常識的に二分の一とか倍とか、これが一番常識的な数字、そういうことで倍という数字を使ったわけでございます。
  263. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま非常に貴重なお答えがありました。常識的に考えてということです。しからば、この法案全体が常識で貫かれなければなりません。常識で貫いてください。きのうも私青いましたが、いま選挙区に帰って選挙民の諸君の意見を聞いたら十人が十人、全然例外はありません、十人が十人、広過ぎて体がしんどい、みんなに覚えられにくい、そして金が物すごくかかる、そんなことはあんたらの勝手じゃないか。それでその選挙をやめちゃって、そして地方区選挙に、それに悪乗りをしてと言っては言葉が露骨過ぎるかもわかりませんが、まさしく寝ていて選挙ができるんですから、地方区の皆さんにがんばれ、しっかりやれ、おまえらががんばってくれたらおれは通るんだ、そういうやり方でしょう。それ以外に手はないじゃないですか。やることがないんですから。そういうことで地方区の諸君だけを叱咤激励をして、その結果自分が当選できるわけでしょう。非常に見やすい話ですね。労せずしてこれは益を得るわけでしょう。  こういうやり方をしてまでなぜ百名の全国区の議員を確保しなければならないのかという国民の声は常識じゃないですか。アメリカの上院議員が日本の参議院議員と同じようなものです。人口が倍のアメリカが百名です。なぜ人口が半分の日本の参議院が二百五十二名でなくてはならないのか、これはもう国民から言わしたら非常な疑問を持っていますよ。しかも、行革が始まれば、やれ国民年金だ何だといって、いろんなことで犠牲を強いるようになるんでしょう。そのときに、行革は国会からひとつやってもらいたいという素朴な声が出るのは常識じゃないんでしょうか。  私は、そういう点で、ただいまの二倍というのは常識の判断であるというお答えでは、これも非常に合理的ではない、非常に不合理であるということだけを意見を申し上げておきます。  それから次の問題でありますが、新聞広告とか政見放送、それから選挙の公報、これは二十五名を限度ですね。そしてそれによってあとは応分に比例する、こういうことでございますが、私はこれもおかしいと思うのであります。政党選挙なんですからね。個人選挙でないんですから。個人選挙なら同じ枠内、いままでの個人選挙なら全部同じ枠内でやっていましたね。同じ時間でやっていましたでしょう。だから、個人選挙ならよろしゅうございますよ、個人選挙なら。ところが、今度の場合は政党選挙なんですから、自民党の枠も、社会党の枠も、共産党の枠も、新自由クラブの枠もみんな同じ枠で、平等に同一の条件で戦わすのが本当じゃないのでしょうか。人数が多いからばあっと紙面をとる、人数の名簿の届け出が少なければ紙面がうんと小さくなる、まるで虫めがねで見なければいかぬような。新聞広告をやってごらんなさい、恐らく自民党の広告ばかりみたいな感じになると思いますよ。そういうやり方は、私は、政党選挙としては公正ではない、非常に不公平であると思いますが、いかがですが。
  264. 松浦功

    松浦参議院議員 御意見十分承りました。
  265. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 発案者の方では、私の言う方が正しいであろうとお認めになったようであります。したがいまして、次に進ましていただきます。  当選後に離党や脱党あるいは除名というようなことがあった場合に、その人の議員の籍はいささかも変化はありませんと、こういうことですね。これは矛盾があるんではないでしょうか。その個人に投票したのではありません。自民党なら自民党という政党国民は投票をしたのであります。したがいまして、その自民党名簿にある限りそれは有効なんでありまして、その自民党というものから抜け出ちゃったら、これはもはや自民党ではないわけですから、そういう場合には議員議席は自動的に失うというようにすることの方が合理的じゃないんでしょうか。
  266. 松浦功

    松浦参議院議員 先ほどもこれに関する御意見がございました。私どもは、選挙の時点においてまさにその方は所属政党名簿に載っておって堂堂と当選したわけでございます。したがって、当選いたしました後は全国民の代表として憲法で言われる選挙された議員であります。そうなりますと、その人の身分を政党個人との関係で切り離すということは、いささか無理があるんじゃなかろうか、こういうことで私どもは身分に変動はないと考えております。そのかわり、先生がおっしゃられたように、離党された方が死亡なさったという場合には、A党からB党に移ったからといって、B党へ移ってから亡くなられた場合にはB党から繰り上げはいたしません。A党の方から繰り上げてもとのようにいたします。そういう考え方を持ってできる限り国民意思が正確に反映するようにという配慮をいたしておるつもりでございます。
  267. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これも時間を食いますから、私の意見だけ申し上げておきますが、私がいま旨いました、政党に対して選挙して、それで国民政党の名前を書いてその政党を信任したんですから、個人を信任したんじゃないのでありますから、だから、その政党が責任を持っておる名簿から抜け出たことになるんでしょう。いわゆる脱党する、離党する、除名するということは、抜け出たことになるんでしょう。名簿から抜け出たということは、名簿にない人なんですから、抜け出た途端に議席を失う、その方が私はより合理的だと思うのですがね。その点、いろいろな議員さんの御意見を承ってみましても、おかしなものだなと、そんなことをやったんじゃ非拘束と違うのか、拘束してないじゃないか、こういうことなんですよ。これは十分ひとつ御研究をいただきたいと思います、まだ時間のあることでありますから。  次に参りますが、名簿登載者の選定に関しまして罰則を設けてございますね。先ほどにもちょっと議論があったようでありますが、このいわゆる罰則を設けるということにつきましてちょっとお伺いをするのでありますが、請託を受けて、財産上の利益を収受、あるいは要求、あるいは約束をしたならば、三年以下の懲役または三十万円以下の罰金、こういうことになっておるのでありますが、この「請託を受けて、財産上の利益」云々ということを一体だれが、どうやって判定をするんでしょうか。
  268. 松浦功

    松浦参議院議員 これはわからなければ出てこないわけでございます。わかるというのは、いろいろな方法でわかってくるのだろうと思います。わかってきますれば、請託を受けたか、権限の行使に関して絡んでおったかどうか、それから財産上の利益の授受があったかどうか、これは当然いままでの犯罪行為と同じように、裁判所が最終的には認定する、こういうことだろうと思っております。
  269. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、この「権限を有する者」という範囲はどこからどこまででしょうか。
  270. 松浦功

    松浦参議院議員 機関というふうに法律では善いてございますけれども、その機関はそれぞれ党がお決めになるだろうと思いまして、合議制とか独任制とか、そういうことを決めておりません。党ごとによって機関をお決めいただくと思います。したがって、独任制の場合には、その独任制の権限をお持ちの方が権限を持っておられる方ということになりましょうし、合議制ということで委員会をつくるということであれば、その決定権、多数決になるかどうか、参政権を持っている方でございますね、この方が当然権限を有する者、党大会を機関というふうにお決めになる場合もあろうかと思います。そうすれば党大会の投票権の行使権を持った方が権限を有する者、こういうこと。各場合によってそれぞれ認定されていくと……。
  271. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 かなりわかりかけてきましたが、いまの独任制ですね、たとえば党首が一人でお決めになる、あるいは幹事長一人に任せたというような場合にはわかりますね。非常によくわかります。ところが、機関ということになりますと、どっちにしても、複数と言っても、少ない複数じゃありませんね。少なくとも十人かあるいは大きいところになると、何百人というような形になってまいりますが、その場合に、その中のたとえばたった一人、余り大きく言ってはいけませんから、百人なら百人の機関の中のたった一人の人間にたとえばお願いをして、その人が請託を受けて財産上の利益を約束した、あるいは受けたというようなことがあった場合、その人一人がその罪になるのですか、その機関が罪になるのですか。
  272. 松浦功

    松浦参議院議員 この選定罪は機関を罰するものではございません。それぞれ個人でございます。権限を有する個人でございます。
  273. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、これは警察の方からお答えいただいた方がいいのかもわかりませんが、こういう問題が起きてまいりますと、発議者の方では、そういうことはおのずからわかってきますよと、どうやってだれが判定するのか、こういう質問に対しまして、そういうことはおのずからわかってくる、こういうお答えでありますが、たとえば百人おる機関があったとしますね。そういう中で、たとえばAさんならAさんという人に、おい、おれをぜひ名簿の中に入れてくれ、会議のときに主張してくれ、頼むと言って頼んだだけなら、財産上の利益はありませんから、これは問題はない。だが、そのかわり、あなたに百万円上げるとかいうようなことをやった場合には、これは明らかにいまのこの罪に該当すると思うのであります。ところが、こういうことが出てくるという場合は、本人がいわゆる約束をして、果たされなかった人が腹いせ紛れに当局に告発するということ以外には出てこないのじゃないですか。発覚しないのじゃないでしょうか。いかがですか、私は警察をやっておらぬからよくわかりませんが。
  274. 森広英一

    森広説明員 お答えします。  確かに現行法でも賄賂罪というのはございますが、そういうものが発覚する場合には、当事者と申しますか、関係者と申しますかこういう者からのそういう告発からわかる場合も多うございますけれども、それ以外のことからわかることもございまして、まだ立法化されていない法律案でございますので、なかなか的確に申し上げることは困難でございますが、いろいろな事柄からわかってくる場合もほかにもあるだろうというふうには存じます。
  275. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで私は非常に心配をするのでありますが、先ほどのIBMのFBIではありませんけれども、日本では許されておりませんが、おとりやわな、しかし、日本では許されておらぬと言っても、法律では許されておらぬのではないのですね、法律に書いてないだけなんです、ただ、日本の民族性としておとりやわなというものを大変嫌うということだけでありまして、それが不文律になっちゃって、日本では麻薬捜査以外はおとりやわなばかけてはいかぬということに解せられておるのでございますが、一つ政党をたとえば徹底的につぶそうという意図を持っておったとするならば、ある反乱軍が出たとしましたならば、そういう人たちがおとりやわなを仕掛けてその機関をぶっつぶすということだって可能ですね。それでいまの本人からの告発がなければ動かぬというのなら、これははっきりわかるのですが、それ以外でも、たとえば赤ちょうちんで一杯飲みよるやつを聞いた、そういう状況を聞いて、だんだん探りを入れていってみたら、どうやら臭いのが出てきたということになると――ほとんど政党の役員ですよね、機関構成員というのは役員です、その政党の役員を片っ端から当たっていく、調べていくというような形になってこなければ、事件の解明はできないのじゃないでしょうか。
  276. 森広英一

    森広説明員 犯罪があるということを捜査官が考えた場合には、捜査というのはいろいろなことをやりますから、いまのように、本当にもしこの法律が制定されて以後犯罪が行われたという確信が持たれた場合には、御指摘のようにいろいろな捜査をやることになると思います。しかし、お話しのように、だれかが仕掛けたそのわなで、いきなり警察が政党の方々を全部取り調べるというようなことはあり得ませんで、やはり警察の捜査というものは犯罪の実態に即して常識的に進めるものでございますので、そういったむやみやたらな捜査ということは行われないし、またやるつもりもないというふうに申し上げておきます。
  277. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これ以上はなかなかむずかしいでしょうから、御質問いたしませんが、発議者の方にそれではお答え願いたいと思いますが、たとえば、先ほどもちょっと出ておったようでありますが、私を名簿登載者のたとえば二十四番までしか通る可能性がないとしたならば、少なくとも二十番以内のところへ入れてください、そうすれば私は党へ一億円の献金をいたします、あるいは派閥の一番えらい人に献金をいたします、このようなことを言って党への寄附、党への献金あるいは派閥への寄附、派閥への献金ということを約束しましたら、これはどういうふうに理解をするのですか。
  278. 松浦功

    松浦参議院議員 党の幹部は構成員ではないという前提だと思います。政党献金でございますればこの条文には即ひっかかるということにはならないと思います。
  279. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこですよね。たとえば、名前を出して恐縮でありますが、鈴木総理や二階堂幹事長さんがその候補者を選考する機関の中には入っていないとします。ところが、その機関構成員の中には、たとえば何々派のいわゆる実力者とか、何々派の実力者という方は大方常識的には入るでございましょう、そういう機関構成員の一番トップでなくても実力者の方に、私を入れてくれたならば党へ献金をいたします、あるいは派閥へ献金をいたしますという約束は常識的にありそうな話じゃありませんか。その場合はどうなるのです。     〔委員長退席塩崎委員長代理着席
  280. 松浦功

    松浦参議院議員 権限を有する者との関係でございます。党の献金の問題はこの問題とは関係ございません。
  281. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それではもう一度言いますが、ここに書いてありますことは、頼まれた本人、AさんならAさん、頼まれた本人が自分のふところへ突っ込む分だけを言うのですか。はっきりと答えてください。
  282. 松浦功

    松浦参議院議員 買収の観念と同じように、ただいま先生指摘いただいたとおり、権限のある者が請託を受けて入れるもの、このようなものでございます。
  283. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、いま新聞紙上にもちょこちょことこのごろ書かれておりますが、たとえば、ある団体が、おれのところの団体から名簿の上位の中へ入れてくれるのなら党へ幾ら幾らの献金をします、幾ら幾らの寄附をします、こういうことがもうぼつぼつ新聞には出ていますね。こういう場合は、個人ではありませんから、個人のポケットへ入れるのでないのだから、それは全然関係ありません、しかし、結果的には名簿作成に対して大きなファクターとなっておったということがあっても、それは関係ない、こういうことですね。
  284. 松浦功

    松浦参議院議員 繰り返して申し上げておりますように、権限ある個人、これに金を渡すことでございます。関係ございません。
  285. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これはあるいは警察の方からお答えいただく方がいいかもわかりませんが、たとえばこういう場合はどうなりますか。いまだんだんしぼられてまいりまして、権限のある個人が私した場合にのみ初めてこれが効力を発生するのだ、こういうお答えであります。これで事態は明瞭になりました。さて、そこで、その個人がわざわざ、そうか、百万円くれるのかと言って百万円をポケットに入れるようなそんな単純な人はおらぬと思いますね。このごろはずいぶん知能犯が出ておるのでありまして、先般、銀座ですか、どこですか、ごみ箱の上に、このごろは忘れ物でもふろしきで一億円するような人がおりますね。小学生が拾って中をあけてみたら一億円あった。お父ちゃんびっくりした。ついにまるまるその人のものになったのでありますが、ああいう落とし物だってあるわけです。たとえばそういう落とし物の形をもってそれを拾うというようなことがあった場合には、本来なら、拾ったらそれは遺失物で警察へ届けなければいかぬのでしょうけれども、だれも見ておらなければこれはどうにもならぬのですね。やった者が勝ちですね。そういうようなことで私はどうも不安なことがあるのでありますが、たとえば、その個人なら個人に対して、個人にだって献金を受けるのを許された法律がありますね。個人の場合でも。後援会とかいろいろな名称がありますね。そういうのがあるのですから、政党に対する献金、派閥に対する献血、個人に対する献金も関係がないということになると、いわゆる財産上の利益を収受するといいましても、あくまでもそれは献金ですといったら、個人の場合も全部真っ白けということですね。
  286. 松浦功

    松浦参議院議員 これは、法律に書いてございますように、「権限の行使に関し、請託を受けて、」という条件がございますから、それによって判断をされることになるのだろうと思います。     〔塩崎委員長代理退席、委員長着席〕
  287. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この権限の行使という問題については、七年も八年も裁判をやっても決着がつかぬぐらいの状態でございますから、非常にむずかしい問題だと思うのでありますが、私は、政党がこういうような罰則を受けるというようなことは、機関要員といえどもそれは政党の人ですから、それが罰則を受けるということは余り感心できないなという考え方を持っておるということだけ申し上げておきます。  次に、比例代表部分についての公営化の問題であります。公営化の分で残るものと廃止されるものとが先日御説明がありました。ここで私はお尋ねをしたいのでありますが、許される新聞、それから公報、ラジオ・テレビの放送、これらはいずれもどの政党であっても同じ時間で同じ枠でやらをるように、いわゆる政党というものを公平に扱ってもらいたい、選挙政党単位でやるのですから、必ずそうしてもらいたい、そういう気持ちを持っておりますが、これは先ほど意見として申し上げましたので回答をいただきません。  そこで、具体的な問題ですが、これは選挙部長さんにお答えいただいた方がいいのでしょうか、私は公営の枠というものをできるだけ拡大する方向に持っていく方がいいと考えておるものの一人であります。そこで、一つの例を言いますと、たとえばポスターが、十人以上なら、七万枚、五人増すごとに五千枚ということが書いてございますね。こういう場合でも、公営掲示板というものをあとう限り設けまして、そして、五つかあるいは十ぐらい政党が出てまいります、そういうものを全部そこへ一覧してわかるように――大体これは全国の投票所の数とほとんど一緒じゃないのでしょうか。ほとんど一緒でしょう、数が。一県に割り当てたら大体千五百カ所ぐらい。大体投票所と同じぐらいの数になるのです。一カ所に公営掲示板を置きまして、そしてそれへ各政党が刷ったポスターを全部預かってそれを全部選管が張ってしまう。早い遅いのそんなことなしに全部選管が人を雇って張ってしまう。こういうやり方をしたら今度のなじめない新しい制度選挙というものに対して国民の理解が深まるのじゃないでしょうか。そしてこれも大した金はかからぬと思うのです。こじつけて言うならば、これも一つの失業救済になるのじゃないでしょうか。お答え願います。
  288. 大林勝臣

    ○大林政府委員 ポスター掲示を公営でやっておりますのが、現在、衆議院参議院地方区あるいは知事選挙、この三つに限られておるわけです。いま政党用の公営掲示板という非常に貴重な御意見でございます。従来からもあちこちでそういう御意見を承ったこともございます。ただ、現在、参議院地方区にしましても衆議院にいたしましても、一投票区当たり五カ所ないし十カ所、これは人口、有権者数に応じまして五から十の間の数が決まっております。大体平均をしますと一投票区六、七カ所ということでしょうか。そうしますと、全国に五万ほど投票区がございます。したがいまして、両選挙それぞれについて一回について三十数万個のポスター掲示場が全国に置かれる、こういうことになります。ただその前提といたしましては、公営掲示場にしか張れないという前提をとっておりますから、一つの公営掲示場には各党とも一枚ということになります。いまは候補者だれでも一つの掲示場に一枚、こうなりますね。その場合にこの政党ポスターというのは、現在御承知のように候補者数によって多い少ないがございます。したがいまして、一つの公営掲示場にどの政党は何枚とか、どの政党は何枚とかいうことになりまして、その配分が一体どうなるかという問題が付随して出てくると思います。先生のようにもう全く各党平等にやるべしという前提であればこれまた話は別でございましょうが……。  それからもう一つは、経費は相当かかります。現在選挙公営経費の中でポスター掲示場関係の経費が一番大きいウエートを占めております。
  289. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 非常に具体的な答弁でありがとうございました。  そこで、いま伺いますと、全国に公営掲示板に張るということになると大体三十数万枚必要であろう。いまここで法律案に出ておりますのは十名で七万枚、プラス五名で五千枚でございますから、はるかに数が違うわけですね。だけれども、これは発案者が七万枚とやっておるだけなんでありまして、いまわれわれがここで修正しようと思えば修正できるのでありまして、私がなぜこんなことを言うかといいますと、いままでの選挙であるならば一人当たり十万枚のポスターが許されておりましたね。したがいまして、およそ百人の立候補君があるといたしますと一体幾らになりますか、一千万枚出るわけでしょう。それで十人の候補者しか出さない政党といたしましても百万枚はいままでなら出せたわけです。それを一挙に七万枚にすとんと落とすんですから、乱暴だと私は思います。だから今度の新しい制度国民がなじむように公営掲示板というものを、金がかかってもそうやって各党のポスターをつくって、それはどこの政党が一番いいのをつくるか知りません。それは自民党が金を持っていますから一番いいのをつくると思います。だがそのポスターをみんなが見てわかるようにしていただく。そうすれば少数派の政党であっても同じような条件で選挙が戦えるというものであります。そしてその公営掲示場だけの三十数万枚ではいかぬのでありまして、やはり政談演説会その他の案内等をいたしますのにもポスターは必要でありますから、だからポスター全体の数としては従来出しておったように名簿候補一人当たり十万枚ということで、掛ける候補者ということにすれば百万枚程度のポスターは自由になり、そのうちの三五%を公営掲示場に張るというようなやり方ぐらいは今度の新しい制度をとる限り、大政党には何の不安もないでありましょうが、少数派を締め出さないという大政党の襟度からいってもやってしかるべしではないかと思いますがいかがでしょうか。
  290. 松浦功

    松浦参議院議員 政党は日常を通じ自分の政策を宣伝し、先生の場合でしたら先生の所属しておられる政党の名前を広め、私なら自由民主党の名前を広めるという形の活動をしておるわけでございます。そういう前提で、むやみやたらにポスターを張らないでも国民の皆様には選択の道がおのずから開かれてくるであろうという判断から十万枚のポスターというものは今回の制度では削ったということでございます。しかしこれにつきましては、私どもが考えておる案がベストであるとは思っておりません。社会党で御提案いただいておる案には、縮小をしながらも一部それが残っておるわけでございます。その辺の問題については慎重に御検討をいただけたら幸せだ、こう思っております。
  291. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私はあえて意見を申し上げておきますが、供託金のところになったら俄然個人単位で四百万掛けるのだとおっしゃる、それでこういうポスターのところにきたら俄然政党本位でございますとおっしゃる。どうも言うことが合理的とは思えないのですね。それで、本来個人でやるんなら百万枚も張れたものを一辺に七万枚にどばっと落としてしまう。そんなやり方をやって――既成政党はよろしいですよ。既成政党は十分名前が徹底しているからいいです。けれども新しい政党ができるなんということはもうおよそ望みはない。既成政党だけのエゴであると言われても仕方がない、私はそのくらいに思っておるのであります。十分御検討いただきたいと思います。  次に、確認団体に許されますところの政連カーでございますが、この政連カーがいまこの法案にありますように十人で六台、それぞれ何台ふやす、こういうあれがあるのでありますけれども選挙を公平にやる、公平に同じ条件でやらしてあげようというんなら、街頭演説を個人個人の街宣カーを持っていくんじゃないんですから、ということになれば、宣伝をする唯一の武器というものは何かといったら、七万枚のポスターと、そして確認団体の車しかないのですよ。ということになれば、選挙事務所を各都道府県に一カ所ずつ持ってよろしい、それでそれは毎日一カ所以内なら移動してもよろしい、そこまでの襟度をお持ちになっておるのですから、確認団体の政連カーも各県ごとに一台置いてもよろしいというふうにするべきだと思います。それでこそ同じスタートラインに着いたことになるのじゃないでしょうか。大きい政党が大きな力を持って選挙をやり、小さい政党はあくまでも縮こまって選挙をやらなければならぬ、これは公平な条件とは私は言いにくいと思うのです。そのくらいの襟度は大自民党は持ってもいいんじゃないですか。各県一台の政連カー配置についていかがですか。
  292. 松浦功

    松浦参議院議員 これも社会党から御提出した案の中にうたわれています。(「違う、それは違う、あれは候補者カーだ、社会党のは候補者カーだ」と呼ぶ者あり。)  確認団体の問題は選挙選挙と絡んでおる問題でございます。今回は手をつけないというのが原則でございますので、そのようにさせていただきます。
  293. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私が申し上げたいのは、自民党さんのように衆議院にもたくさんの議員を持ち、参議院にもたくさんの議員を持っておる政党もあれば、地方区候補者を立てることもできないような新しい政党もあるでありましょう。たとえばいままで全国区の参議院議員の中に無所属で出ておったような人たちが新しく政党をこしらえて戦おうとした場合、どうなさいます。地方区に立てるだけの余力はありません。ということになれば全国区だけの十人以上の候補者を有する名簿提出ということになりかねないではありませんか。ということになったら一体どこで戦うのです。地方区を持たなかったら街宣カーは一台もないのです。選挙の運動カーは一台もないのです。あるのは確認団体の宣伝カーだけでしょう。これは余りにも片手落ちじゃないでしょうか。私は、大きな政党なら政党らしく、少なくともドント方式を使おうというのでしょう、どんと来いぐらいの気分をもっと示したらどうですか。私はそのことを要求をしておきたいと思います。  時間がありませんので次に進ませていただきますが、選挙中におきまして政治活動として政党に入ってくださいという入党の勧誘あるいは政策の普及宣伝というものを戸別訪問の形で行ってよろしゅうございますか。
  294. 松浦功

    松浦参議院議員 入党の勧誘、政策の普及宣伝、それは別に選挙運動ではございませんから戸別訪問は禁止されていない。
  295. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 警察庁の御見解をお願いいたします。
  296. 森広英一

    森広説明員 選挙運動のために行われると認められない限りは自由でございます。
  297. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それではいま一つ突っ込んで申し上げますが、たとえ選挙中でありましても、たとえば民社党にお願いしますということを言わないで、民社党でございますがと言ってその家を訪ね、そして民社兄は増税には反対をしておる政党ですからよく認識をしてくださいと言うて、それで民社党に認識したら入党していただけませんか、入党がだめならせめて党友になっていただけませんか、こういうようなことを話をするのは警察庁の方はよろしゅうございますか。
  298. 森広英一

    森広説明員 選挙運動のために政党名を言い歩く行為というのは、御承知のように戸別訪問とみなされる行為でございますが、先生の御質問のように真実、政策の普及、宣伝あるいは党員の獲得という意図に出たものであれば、これは違法ではございません。しかしそれを装って実際は選挙運動、票を獲得するためにやっているということがその言葉だけでなくて全体的な状況から認定できる場合には、いまおっしゃるように違反になる場合がある、こういうことで考えております。
  299. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 わかりました。  それでは次でありますが、入党の勧誘、入ってください、それから民社党はこういう政策を持っております、ぜひひとつ民社党に入ってもらいたい、こういうふうに言う分には投票してくださいとか比社党をお願いしますとかいうことを言わない限り、これは選挙中ですから、そういう場合は本当、真実そうであれば一つも構わない、こういうことでありますから、そのとおり真に受けておきます。  そこで、次の問題ですが、各政党の機関紙がありますね。機関紙誌、理論誌、そういうものがあります。そういうものの通常とっていただいておるところへの通常の頒布、それからまた、新しく読んでください、新しくとってくださいという形で戸別訪問をすることも当然政治活動としてこれは許されておることであろうと思いますが、警察庁はいかがでしょうか、法制局はいいと言うんです。
  300. 森広英一

    森広説明員 確認団体の届け出機関紙を通常の方法で頒布することは全く問題ございません。それから拡張の運動をしていくこと、これは自動車等を使用した場合には一部制限ございますけれども、拡声機で自動車で宣伝して歩くような行為は政治活動一つとみなされますので、その政治活動の規制に従っていただかなければなりませんが、個人が歩いて個別に新聞の拡張をするということにつきましては制限はございません。
  301. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 警察庁も非常に明確な答弁をしていただきましてありがとうございます。  続いて、時間のある限り質問をさせていただきますが、たとえば〇〇党〇〇支部という看板というのは常時出しておりますね。県連とかあるいはどこどこ支部というのを出しておりますね。これは選挙中にいわゆる立て札、看板等は規制をいたしますよという条項がありますが、その中には含まれない、これは法制局も、制限されません、当然それはそれでいいのです、こう言っておりますが、全くそのように考えていらっしゃいますか。
  302. 森広英一

    森広説明員 政党の本部の事務所あるいは支部の事務所を表示する看板につきましては、規制の対象になっておりません。
  303. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは続いて、それに似通った問題でありますが、すでに張ってあるステッカー、こういう小さいのがありますね。たとえば民社党とかなんとか書いてありますね。ああいうステッカーとかシンボルマーク、民社党のマークがありますね、それからたとえば明るい世の中をつくりましょうとかいうようなふだん行われておる政策普及、宣伝のポスターがありますわな、そういうものは関係はありませんかと言って法制局に聞きましたら、政党名だけでは選挙運動と考えていません、自由でございます、しかし、選挙の直前あるいは選挙中にそれをやったらそれはやはり駆け込みポスターとみなされるおそれがあります、こういう御答弁でありまして、選挙中に張って回れば、これは駆け込みということがだれでも常識でわかります。だが、選挙より前に張ってあったのならそれは違反でも何でもないということになりますか。
  304. 森広英一

    森広説明員 大変恐縮ですが、ただいまの御質問の中で、ステッカー、ポスターということでございましたが、それは事務所を表示したステッカー、ポスターという御趣旨でしょうか。それとも一般的な……(岡田(正)委員政党名」と呼ぶ)政党名で事務所に張ってないわけでございますか。そういうものでございますと選挙運動用ポスターとは必ずしも言えないと思いますが、政治活動用のポスターでございますけれども、これは二百一条の六の制限を受ける、つまり事務所表示用のものについては制限ございませんが、ステッカー等もポスターの一つとみなされますので、ポスターの二百一条の六に定める制限の範囲内でしか期間中には張れない、こういうことでございます。  なお、期間前に張ったものについて期間中になった場合にどうするかという点につきましては、これは選挙管理委員会の方の御認定で撤去の問題があろうかと思いますので、そちらの方でお答えになろうかと思いますが……。
  305. 大林勝臣

    ○大林政府委員 それは個人選挙連動においてもよくありますことでありまして、国会報告演説会のポスターその他いろいろな平生の政治活動のポスター、これを直前に大量に張りますと、当然に選挙期間にすぐ滑り込んでまいります。こういうことは大変困りますので、その都度選挙管理委員会の方で御注意を申し上げておる、政党の滑り込みポスターにつきましても、同じような取り扱いをいたしております。ただ、事柄が事柄でございますから、いきなり撤去命令をかけるというわけにもなかなかまいらぬケースが多いと思います。あらかじめ御注意を申し上げておるという行政施策をとっております。
  306. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間が参りまして恐縮です。これでやめますけれども、ちょっと答弁が足りませんので、自治省の方のお答えをいただいておきたいと思いますが、直前に張ったものはいけませんよ、直前というのをどこまで言うのかというのがわからぬのです。だからその直前というのは捜査取り締まわ本部ができた時点から後のことを言うのか、それより前はいいのか、年がら年じゅうだめなのか、そこらをちょっと言ってください。
  307. 大林勝臣

    ○大林政府委員 そこら辺は、神様ではございませんからいつからいかぬというふうにはなかなか申し上げるわけにまいりませんが、たとえば事前運動にいたしましても、いつから事前運動になるんだというような話にもなります。結局そういうものは張られる時期、量、場所、そういうものを全部ひっくるめてこれだけの要素を総合すればこれは滑り込みそのものをねらったポスターではないかというような総合的な判断ということに相なろうかと思います。
  308. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間を超過いたしまして恐縮でありました。まだ質問が残っておりますが、また後日に譲らしていただきまして質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  309. 久野忠治

    久野委員長 安藤巖君。
  310. 安藤巖

    ○安藤委員 きょうは憲法の問題について質疑を申し上げたいと思います。  この問題につきましては、参議院でいろいろ議論をされてきておりますので、できるだけ重複をしないように質疑を申し上げたいと思うわけです。  まず、参議院で参考人の先生方がいろいろ意見をお述べになった中で、選挙制度というのは議会制民主主義の根幹にかかわるものだ、だからこの改正というのはやはり憲法を改正するのに匹敵するようなものだ、こういうような御意見があったのですが、そういうような重大問題だという認識を発議者先生方は持っておられるのかどうか、まず最初にお伺いします。
  311. 金丸三郎

    金丸参議院議員 選挙権自体が国民基本的な参政権でございますこと、わが国国会を国権の最高機関と憲法規定されておりますこと、そのような点から考えまして、選挙法の改正というのは憲法に準ずる非常に大切な法律の改正である、このように認識をいたしております。
  312. 安藤巖

    ○安藤委員 そして、これもいろいろ議論になって、当委員会におきましても議論されたところですが、そして発議者先生方もいろいろお答えになっておられるのですが、憲法第十五条の最高裁判例が全会一致で大法廷で認めておりますような基本権利だというその参政権の中に選挙権、被選挙権が含まれている。ところが、無所属、無党派の全国区における立候補、これを制限するということによって被選挙権の制限になる。となると、そういう人たちに一票入れようかなというふうに考えている有権者の人たちの選挙権も奪うことになる。あるいは、政党要件というのが改正案にあるわけですが、その改正案の政党要件に合致しない政党、これは後からもいろいろ議論をいたしたいと思っておりますが、これは三要件を満たさないから全国区の選挙に関しては政党と認めないということになってまいりますと、まさにこれは結社の自由の問題にもかかわるというようなことで、憲法二十一条の問題にもなってくる。やはりこれは基本的人権の規定にも大きなかかわり合いを持ってくる重大な改正になると思うのですが、だからその辺のところは十分御認識の上だと思うのですが、まずその点確かめておきたいと思います。
  313. 金丸三郎

    金丸参議院議員 そのような認識は私どもも十分に持っておりました。また、参議院の本会議委員会を通じまして非常に論議されたところでございますが、十五条の第一項と憲法の四十四条との関係、二十一条の結社の自由との関係につきましては、先般もお答え申し上げましたように、合理的な選挙制度をつくるということであれば、私どもはこれらの基本的な権利に関します制約も合理的な制約として憲法上認められるものである。また、私どもはこれが現在の憲法学者等の間におきましても通説と認めてよろしい、こういうふうに考えております。
  314. 安藤巖

    ○安藤委員 いまの御答弁の後半の部分につきましては、これからいろいろお尋ねをしていきたいと思うのですが、その前半の部分につきましては、私が申し上げました趣旨、大体同意見の御答弁をいただいたと思うのですが、そういうことになると、やはりこれは国民基本的人権に大きなかかわり合いのある問題ですので、やはりこの改正案を提案をなさるについて、各党間でいろいろ議論をして詰めるということはもちろん必要ですが、やはり広く国民に、いまおっしゃったような、こういう合理性があるのだというような点も含めて、国民意見を広く聞くべきではなかったかというふうに思うのですが、そういうような措置をおとりになったことはないと私も思っておるのですが、なぜそういう措置をおとりにならなかったのだろうかと、これをまずお尋ねしたいと思います。
  315. 金丸三郎

    金丸参議院議員 今回の改正に至る経緯につきまして、先般も御説明を申し上げましたように、私どもは第六次、第七次の政府の選挙制度議会におきましても全国区の改正の問題が論議され、その中では、結論ではございませんけれども比例代表制の方に移行していったらどうかという意見があって、また私ども自民党の中におきましては、申し上げましたように、非拘束式という考え方もございましたが、拘束式という考え方に変わり、地方区につきましては、緊急を要すると思っており、中西案として国会に提案をされた経緯もございますけれども、今回は実は五十五年の参議院選挙に間に合うようにしたらどうかということで鋭意検討いたしておりましたけれども、それには間に合いませんで、遅くとも五十八年の通常選挙から適用することにしたらどうであろうかということで鋭意検討を重ねて、昨年の五月、御承知のように、国会に提案をいたしたような次第でございます。  各党のおよその御意見は、私どももほぼ推察をいたしておりました。  国民に対する周知徹底という点につきましては、私ども国会における十分なる御審議を通じて明らかにされていってもそれでよろしいのではなかろうか、私どもは党の機関紙を通じましてできるだけ国民への周知には努力をいたしたわけでございますけれども、そのような経緯でございましたので、衆参両院の本会議委員会を通じて論議が国民に御理解をいただくというようなことでよろしいのではなかろうか。全国区の問題につきましては、大変問題が多く、ほとんどわが国の主要政党が改正を要する点については一致しておるわけでございますので、私ども国会の論議を通じて国民に御理解をいただく、こういうことでよろしいのではなかろうか、かように考えた次第でございます。
  316. 安藤巖

    ○安藤委員 自民党の内部でいろいろ検討をなさったということは、いまおっしゃったので、そういうことはあったんだろうとは思います。しかし、七次審でというようなお話もございましたけれども、それは御答弁にありましたように、議論がなされて、中間的な何かが出たという程度ですね。  私がやはり一番重視したいのは、先ほど申し上げましたように、憲法に保障されておる基本的な権利、これに対する重大な制約というものが盛り込まれておるという以上は、やはりストレートに一遍国民に、こういうものを出すんだがというような、そういうことをやっていただいて、国民らいろいろ意見を聞く、国民の信を問う、そういうような機会をどうしておつくりにならなかったのだろうかということを思っておるのです。たとえば総選挙のときにでも、自民党はこれから参議院全国区でこういう拘束名簿式比例代表制をやって、これからは政党名で投票していただくのですというような、そういう公約を掲げて選挙をやる、そして多数をおとりになったというようなのが一つあれば、まず一つのそういうような機会を国民に対してお与えになったということは言えるかと思うのです。  現在でも、一般有権者の皆さん方は、まあ相当関心の持っておられる方はごく少数だと思うのですが、比例代表制というのは一体どういうものだろうか、拘束名簿式というのは一体どういうものだろうかと、まだ多くの国民の皆さん方はよくわかっていないと思うのですよ。発議者先生の皆さん方は、もう比例代表制拘束名簿式、これが何たるものか、どういうものなのかということを一般有権者の皆さん方、国民の皆さん方が十分知っておみえになる、こういうふうに理解をしておられますか。
  317. 金丸三郎

    金丸参議院議員 私どもも十分に国民に周知していただいておるとまでは思っておりませんけれども、昨年の十月国会に提案をいたしまして、自来論議を続けていただき、また新聞にも賛成の御意見もあれば反対の御意見もあり、各方面でいろいろな論議が行われておりますので、最近では相当に関心も持っていただき、内容につきましてもある程度知っていただいておる、かように思っております。
  318. 安藤巖

    ○安藤委員 そこが問題なんですね。ある程度知っておってもらっておると思うというふうに思っておられるのですが、やはり私が言いましたように、圧倒的多数の国民の皆さん方にまだ定着しておりませんね、わかりませんね。来年の参議院の通常選挙でこれをやると言われても、国民の皆さん方は大きな戸惑いを持たれると思いますよ。だから、投票率の関係もこれは下がってくるのじゃないかという懸念をすら持っております。  これは何も一党一派の問題ではなくて、まさに議会制民主主義の根幹にかかわる問題ですから、そういう観点から申し上げておるのです。  参議院委員会における参考人の意見聴取の中でも、私どもはそれが最善だとはもちろん思っておりませんけれども、参考人の方、これはお二人の方が言ってみえておったのですが、第三者機関への諮問もしないで出されてきたというのはやはり問題だというような指摘もなさっておられるわけですね。だから、こういうような重大な改正というものについては広く国民に一遍よく聞いてみる、これをやはり考えるべきだと思うのですが、現時点でもそういうことはもうやらなくていいというお考えなのでしょうか。
  319. 金丸三郎

    金丸参議院議員 私どもは以前にも国会へ提案をしたことがございますし、議員立法として提案をいたすような考えでございましたので、あえて政府の審議機関を経ないでもよろしいのではなかろうか、またおおよそのわが国全国区制に対する考え方は方向としては一定の方向へおもむいており、その中で大きくブロック制比例代表制と二つに集約されておると申して私はよろしいのではなかろうかと思います。  現在におきましては、私ども参議院におきましても参考人の御意見を伺いましたり、公聴会で御意見を伺いましたり、また衆議院におきましてもそのような御措置をおとりになるようでございますので、そこで十分にいろいろなお方の御意見も再度お伺いをして、国会わが国の責任ある政党の皆様方で御審議をいただいておるわけでございますから、私はここで結論を出していただいてよろしいのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  320. 安藤巖

    ○安藤委員 第三者機関という参考人の御意見をちょっと紹介しましたのですが、金丸先生はすぐそれを政府機関というふうにおっしゃったのですが、別にそういうようなことだけを参考人の方々は言っておられるのではないと思うのです。だから、私がいま紹介しましたのもそういう趣旨で申し上げたのですが、わが党は、金丸先生どもよくおっしゃってみえるのですが、共産党さんも比例代表制には賛成しておられる、もちろん私ども比例代表制国民意思をより正確にいままでよりも反映するものだというふうに考えております。しかし、全国区制を比例代表制にするからといって、無所属、無党派を切り捨ててしまうということになれば、やはり無所属の方々をこれまでも支持してきた人たちを含めて、そういう人たちも国民ですから、そういう人たちの意思を国政に反映する道はやはり閉ざされてしまうのじゃないか。この辺のところは矛盾に感じておられませんか。
  321. 金丸三郎

    金丸参議院議員 無所属の方の立候補をどうするか、無党派層の方の投票意思をどのようにするか、どのように考えるかということが、今回のこの法律案をめぐりまして、衆参両院におきます重要な論争点と申しましょうか、問題点になっておることはそのとおりでございますし、私ども拘束名簿式比例代表制を採用いたしますにつきましても、一番配慮いたした点でございます。  私どもが途中において社会党の方々と意見を交換いたしました際にも、この点は非常に両方で意見の交換をいたした点でございました。私どもは先般来るるお答えを申し上げておりますように、現在の個人本位全国区の制度のもとにおきましては、いろいろ問題が多い。私は新自由クラブでも原則的には拘束名簿式比例代表制に賛成だという御意見を御発表になった時期があったように記憶をいたしております。そういたしますと、わが国の指導的な政党の多くが、少なくとも比例代表制あるいはほぼ拘束名簿式比例代表制に賛成である、私ども政治的な判断としては、そのように判断をいたしております。この制度を採用いたしますと、その結果といたしまして政党要件を設けざるを得ない。政党要件を設けるといたしますと、午前中にもお答え申し上げましたとおり、個人立候補を同時に認めるといたしますと、一人一党を認めざるを得ない。一人一党を認めますならば、では国会議員が三人、五人で政党という政党要件は無意味になってまいります。政党要件をつけることが無意味になってまいりまして、無所属もいい、個人政党もよろしいということになれば、二人でも政党として認めなければならぬじゃないか。そうすると、五人としていわば足切りをするようなことは意味がないじゃないか、こういうふうになってまいるわけでございまして、したがって、私どもとしては、個人の候補の立候補ができるだけしやすいようなこと、一面には制度としては参議院地方区個人本位選挙制度であり、全国区は政党本位選挙制度に切りかえていくということ、また各政党が所属の政党員でなく、政党員以外からもりっぱな方を候補者として選んで国民の審判を仰ぐことができるということにするということであれば、個人立候補で出ておいでになるようなりっぱな方も、各政党参議院に送り得るのではなかろうか。そういうようなことも考えあわせまして、個人立候補については、いわば政治的な考え方としては、私どもはやむを得ない、また法律論としては、るる申し上げておりましたように、私ども憲法の許容するところである、こういうふうに考えた次第でございます。
  322. 安藤巖

    ○安藤委員 いま政党名簿をつくるときにいろいろ配慮することもできるというお話もあったのですが、先日も議論いたしましたように、名簿に載せてもらうについては、あるいは順位を上の方に上げてもらうについては、いろいろ政党の中の派閥の力関係あるいはその党への貢献度等々ということで自民党さんの方でもいろいろ基準をお設けになっておられる、あるいはそういうこともいま検討中だという新聞の報道もございますが、そういうことからしますと、いままで無所属、無党派で出てこられた人が割り込む余地なんてもうほとんどないだろうと思うのですよ。一応話としては言えると思うのですが、実際問題としてそういうことはもう考えられないと思います。  それで、現行全国区制で無党派の人たちあるいは少数政党あるいは無所属の人たちは、地方区あるいは衆議院選挙区ではなかなか出にくい得票率ですね。だけれども金丸先生のいつも言っておられる八千何百万の北海道から沖繩までの広い選挙区から得票なさって議席を得て活動しておられる、そういう点については評価はしておられないのでしょうか。
  323. 金丸三郎

    金丸参議院議員 私は、全国から大変な得票を得て国会参議院全国区の議員として御当選になった方々は、国民の本当の信頼を得て当選なさったお方々だと本当に心から尊敬をいたしております。が、先ほど来申し上げておりますような理由、そういう人はきわめて例外の方でございますので、平均的な政治家ということを念頭に置いて制度をつくりますのには、私は拘束名簿式比例代表制が適当であろう、こういうふうに考えたわけでございます。  それから名簿の作成は、この次の五十八年と六十一年は、いままで選挙をおやりになりましてそれぞれの得票数といういわば実績が残っております。だから、この次とその次の名簿の作成と、いわば今後の第三回目の純然たる名簿候補者を選ぶ場合とは事情が変わってまいるという感じが私はいたしております。第三回目から各政党とも全くのフリーハンドで候補者を選ぶことができるようになる。それまでにどのような経験を各党でお積みになるかわかりませんけれども、四年たちますと全くフリーハンドで名簿をつくれるようになるわけでございますので、私は党歴とか党籍とかいうことにこだわらないで参議院の機能とか役割りとかいうようなことを考えて、そしていわば集票能力と申しましょうか、そういうことも必要でございましょうが、一面また人物本位、識見本位ということで候補者を選ぶ余地がいままでよりも多くなってまいるのではないか、こういうように考え、また期待もいたしておるわけでございます。
  324. 安藤巖

    ○安藤委員 小政党無所属の方々のいろいろ活躍しておられる、そして議席を確保しておられるという問題については先ほど申し上げたのですが、それに対していま御答弁をいただいたのですが、その人たちも無所属締め出しの問題については強く反対しておられるのですよ。ということは、やはりそういうような一定の役割りを果たしてきた、しかし今度はそれが全部シャットアウトされてしまうんだ、こういう問題としてとらえておられるのです。だからその辺のところもしっかり踏まえていただく必要があると思うのです。  そこで、それとの関連で、これは参議院での参考人の御意見ですが、これは全く新しい制度をつくろうとするわけでしょう、だから新しい制度をつくるのだったら寛容さというものがあってもいいのじゃないか、寛容さ、ゆとり、おおらかさですね。だからその辺の寛容さというものを持って一人一党、無所属立候補を認めるという態度をとってもいいのじゃないかという御意見もありました。なかなかいい意見だなと思うのですが、この前から私が指摘しておりますように、自民党さんの方のいわゆる、いわゆるですよ、党利党略でもってそういう寛容さを持つ余裕なんというものはもうさっぱりない、こういうことなのかなあと思えてしようがないのですが、そういう寛容さという点はお考えになったことがありますか。
  325. 金丸三郎

    金丸参議院議員 私どもも、個人立候補をなさる方がむずかしくなるという点につきましては、感情的には割り切れないような感じも実は持っております。が、制度をつくるということになりますと、やはり制度のあり方を冷静に考えてつくり上げてまいらなければなりませんので、るる申し上げましたように、現在のわが国全国区の直接選挙制度らいたしますと、やはり拘束名簿式に変えることが適当であり、それには政党本位とすることが適当であり、政党本位といたします以上は一定の政党要件を設けざるを得ない、こういうような結論になっておる次第でございます。
  326. 安藤巖

    ○安藤委員 割り切れなさをこういうふうにして克服してきたんだというような御答弁ですが、この点についてはやはり割り切れなさは割り切れなさとしてもっとしっかりとウエートを置いて、もう一度やはり考え直していただく必要があるんじゃないかと思うのです。  先ほどもお話がありましたが、憲法学者の人たちが声明文を出して、そして各党に要請をされたのです。私はそれを持っておりますが、念のためにほんのちょっとだけ引用させていただきたいと思うのです。  「国政選挙においては、国民の中の少数意見や勢力も参加し、広く国民に訴え、支持されて成長していくことも保障するところに、代表民主制の一つの重要な任務があることにかんがみれば、右法案は、」というのは、この自民党の改正案です。「国民主権や議会制民主主義の原理にも矛盾する問題性を含んでいることになる。」  こういう指摘がなされているのです。  だから、無所属、一党一派、少数政党切り捨てというようなことになると、いろいろ国民の多様な要求をひっ提げてそういうような少数政党、一党一派の人たちが成長してきて、そして国民意見を国政に反映するという大きな役割りをこれから果たしていこうとするその芽をも摘んでしまう、だから代表民主制の立場からしてもこれは重大問題だという指摘があるのですね。だから、その点もいろいろ御検討いただく必要があるということを指摘しておきます。  時間の関係がありますから、次へ進みます。  ところで、発議者先生方は、これは八月の四日の当委員会における質疑のときにも言うておられるのですが、憲法第二十一条一項が認めている結社には政党が含まれているというふうにおっしゃってみえております。だから、それを前提にしてお尋ねするわけですが、そうしますと、今度参議院全国区改正案では比例代表区ということになっておるのですが、ここには三要件を満たす政党でなかったら全国区の選挙に参加する資格を認めない、こういうことですね。となると、この関係においてはそういう結社の自由というものも、そういう政党をつくるということも参議院全国区にあなたのところは政党として認めないんだということですから、そういう点からいっても憲法二十一条一項に違反するんじゃないかというふうに思うのですが、その点はどういうふうにお考えでしょうか。
  327. 金丸三郎

    金丸参議院議員 憲法二十一条の結社の自由はいわば政治的な自由でございますが、私どもは、基本的には現在の全国区制の持っております弊害を除去して、そして新たに国民政治的な意思をできるだけ正確に国政に反映する制度として政党本位拘束名簿式比例代表制を採用する、これが憲法に容認される合理的な理由のある制度だ、かように考えますので、その結果として結社の自由の制約がございましても、私どもは合理的な理由による制約として憲法の容認するところである、かように考える次第でございます。
  328. 安藤巖

    ○安藤委員 参議院全国区の選挙については、政党要件に合致しなければ当事者適格を認めないということですから、これは合理性の範囲を逸脱している。合理性というもので憲法の許容する範囲だという理論が仮に通るとしても、その合理性の範囲をもう逸脱しているとしか私は思えないのです。当事者適格をとにかく認めないのですから、あなたのところは政党でないというのですから、だからどうしてもこれは問題だと思います。  その議論をやっておりますと、参議院でいろいろなされましたように、同じようなやりとりが続きますから私は次へ進みますけれども憲法四十四条の関係で、参議院でのやりとりを議事録で拝見しましたけれども、これは当然のことだと思うのですが、発議者先生方ばいまの憲法二十一条は結社をしない自由も保障しているということはお認めになっておられるわけですね。そして、それが信条であるということまでもお認めになっていると思います。うなずいておられるから同じ質問は繰り返さないことにいたしますが、そういうことになりますと、無所属だ、私は無党派だというふうに主張しておられる人たちを政党要件をもってこれを認めないというのは、憲法四十四条のただし書き、これに違反をする考え方ではないかというふうに思うのですが、この点どうですか。
  329. 金丸三郎

    金丸参議院議員 無所属立候補したいとか無所属として自分は政治的な行動を貫きたいとかいうことが信条に該当するかどうかということについては憲法学者の間でも意見が分かれております。有力な学者では信条という英語のクリードという字句から解釈して、そのような考えは一つ政治的な意見で、あるいは個人的な信念であっても憲法に言う信条には該当しない、こういう学者と、今日では相当な方がそういうものも信条と申していいのではないかという方とございます。両説ございますが、無所属政治的な行動を貫きたいということが信条に該当するといたしましても、合理的な選挙制度をつくる結果それが制約をされることになったといたしましても、それはやむを得ない制約である。合理的な選挙制度憲法で容認されるところであれば、そのような制約は憲法の容認する合理的な制約と言ってよろしい。したがって、違憲ではない。私どもはいろいろな学者等の説を見てみましても、そのように判断して間違いがなかろうと思います。  私ども意見に対してはもちろん反対の方もございますけれども、私どもが今日までいろいろ参議院でも御論議をいただき、いろいろな方の御意見を聞いてまいりましても、憲法論としては私どもはそれで間違いない、かように考えております。
  330. 安藤巖

    ○安藤委員 結局、参議院の議論それから当委員会における議論、発議者先生方の御答弁を拝聴しておりますと、憲法にそういう規定がある、しかしそれを法律でいろいろ規制をするについても合理的な範囲ということになれば憲法の許容する範囲だ、一口に言いますとそういうような論立てですね。  そこで、法律で決められるということを何度か繰り返しておられるのですけれども、明治憲法のもとでは、明治憲法を持ってきたんですが、選挙権というものは憲法には一言も書いてないのですね。それが現在の憲法ではちゃんと選挙権というふうに、まず十五条の参政権が出てきていますね。「公務員を選定」する権利、それから十五条の三項にもあります。それから四項にもあるし、それからよく出てきます四十四条関係等々にも出てくるのですが、現在の憲法選挙権というものを直接規定しているというふうに思うのですが、その点はどうですか。
  331. 金丸三郎

    金丸参議院議員 わが国憲法学説で選挙権に関します基本規定は、第十五条の第一項というのが通説でございますことは御承知のとおりでございます。  これは国民の参政権というところからそのような解釈になってまいるので、国民主権の原理、公務員を選定、罷免する権利、その具体的な最も第一順位に立つべき権利選挙権だ、こういう考え方からであることも先生もよく御承知かと思います。が、十五条の一項は原則的な規定あるいは宣言的な規定と私どもは考えておりますし、通説もそうだと思います。四十四条が被選挙資格及び選挙の資格と書いておりますように、そこには御指摘のように選挙権とはございません。これは憲法十五条の第一項を受けて四十四条で、法律で具体的な選挙権、被選挙権の中身を決める、私どもはそういうふうに解釈をいたしておるわけでございます。
  332. 安藤巖

    ○安藤委員 明治憲法は、先ほどもちょっと言いましたけれども、三十五条――貴族院は選挙じゃありませんでしたから、衆議院だけが書いてあるんですが、「選挙法ノ定ムル所ニ依り」というふうにあるわけです。だから、選挙法で決めることができる、こういうたてまえになっております。ところが、先ほどのお話にあるように、基本的というふうにおっしゃるのですが、まさに基本的でいいですが、ちゃんと参政権というのを十五条は一項で書いてあるわけです。参政権の中には選挙権、被選挙権が含まれるというのも学説の全部が認めるところだと思うのです。だから、ストレートに選挙権というのは憲法上の権利として現行憲法はうたっていると思うのです。だから、明治憲法のときは「選挙法ノ定ムル所ニ依リ」とあるから選挙法によって選挙資格、選挙権のあり方等々を決めることができた。現在の憲法は違うのですよ。選挙権は憲法上の権利ですよ。これを法律で変えることができる、制限することができる、規制することができる、これはやはりおかしいじゃないかと思うのですが、どうですか。
  333. 金丸三郎

    金丸参議院議員 現行憲法のもとにおきましては、選挙権は十五条の一項が規定いたしますように国民基本的な人権だ、こう申すべきでございます。しかし、十五条の一項は選挙ということは何らうたっておりません。公務員を選定、罷免するのが国民基本的な参政権だとうたって、それを受けまして四十四条で、法律で定めるとあるわけでございます。明治憲法の、選挙法で定めるという規定とは根本的には違っております。違っておりますけれども選挙権の具体的な内容は憲法の四十四条で、法律で定めるとはっきりと規定しておるわけでございます。だから、法律によりまして選挙権の内容とかあるいは制限とかが定め得るのだ、このように私は思うわけでございます。
  334. 安藤巖

    ○安藤委員 これは重大なことを金丸先生は言うておられると思うのです。その関係参議院における議論の中身をちょっと申し上げたいと思うのですが、これはことしの四月十四日の参議院の公選特委員会での金丸先生の答弁です。「わが国の過去を見ましても婦人には参政権が与えられておりませんでした。また納税資格が選挙権の要件であったこともございます。だから選挙権は法律によって定められるというのが私は通常の国におきます制度となっておると思います。」こういう答弁をしておられるのですね。私、そのとおりいま読んだのです。となると、これはまさかそんなことはお考えにならないと思うのですが、現憲法のもとでも納税額あるいは財産あるいは性別によって――婦人参政権がなかったとおっしゃっているのですね、法律で制限することができるというふうにお考えなんですか。
  335. 金丸三郎

    金丸参議院議員 現行憲法では、第十五条で「普通選挙を保障する。」と書いてございますから、財産によっては制限することば憲法上不可能、こう申してよろしいと思います。また、男女の性別によって左右してはならないということでございますから、これは婦人参政権を奪うと申しましょうか否定することもできないのだ。たとえば選挙権の年齢を二十歳にするか二十五歳にするか十八歳に引き下げるか、これは法律の事項でございまして、国会の立法行為によって極端に申せばいかようにでもできると申しましょうか、国会が最も妥当と考えるところで選挙権の年齢は定めてよろしいのではなかろうかと私は思います。  ただ、四十四条のただし書きに重要な規定がございますので、法律で定めるといたしましても四十四条のただし書きに従わなければなりませんから、明治憲法のもとにおきまするように、選挙法で比較的に自由に選挙のいろいろな要件が決められましたよりも現在では憲法による制約が厳しくなっておって、以前よりもいわば法律で裁量する範囲は憲法で狭められておる、こう申すことができるかと思います。
  336. 安藤巖

    ○安藤委員 それでは、現在の憲法が明治憲法と違って、憲法第十五条で先ほどおっしゃったように参政権を国民固有の権利というふうにしっかりうたってあるのは、どういうような趣旨からこういうことになったのかですね。明治憲法三十五条では、みんな「選挙法ノ定ムル所ニ依リ」ということで、全部法律に任しておったのです。それを今度明確に憲法にそのことを規定したというのはどういうような趣旨からだというふうに理解しておられますか。
  337. 金丸三郎

    金丸参議院議員 新憲法国民主権という大原則を採用したからだと思います。
  338. 安藤巖

    ○安藤委員 ですから、それは憲法の前文の冒頭からもそのことはきちっと書いてあるし、国民主権、主権在民というのは、おっしゃるように憲法の一番大きな趣旨一つですね。それならば、そういうふうに書いてあるけれども法律でいろいろ制限する、規定をすることができるんだということになると、やはりせっかくのそういうような趣旨が、また明治憲法下に逆戻りをして選挙法で決めることができるんだというような考えになっていってしまうんじゃないですか。私はそれを一番大きな問題にいま思っておるのです。とにかく法律で決めることができるのです、四十四条でございますというふうにおっしゃる。しかし、先ほどおっしゃったように憲法十五条の規定があるから、法律で決められる範囲は狭められておるというふうにおっしゃったですね。というどころの問題じゃなくて、逆に憲法第十五条できちっと決められている基本的な権利、だから、それを損なわないように四十四条で具体的に資格を決める、これが憲法のたてまえじゃないですか。  ところが金丸先生のお話ですと、合理的、合理的というふうにおっしゃるけれども、とにかく法律で決められるんだ、こういうことでしょう。法律で決められるというところに力点を置くということになりますと、明治憲法の三十五条になってしまうんですよ。「選挙法ノ定ムル所ニ依リ」になってしまうんですよ。だから私は、金丸先生参議院において、あるいは当委員会において、るる、再三再四にわたって、法律によって決めることができるというふうに言っておられるのを伺っておりまして、これはいいのかいなと思ったのです。  これはちょっと余談ですが、金丸先生はもちろん学校では旧憲法を勉強なさったと思うのですが、それでその辺のところがしっかりしみついておってそういうような考え方に立っておられるんじゃないのかなという懸念をいま感じておるのです。だから、これは大問題だと思うのですよ。まず十五条を踏まえて、基本権利だ、これを損なわないという範囲で法律で資格を決めるのですよ。そうじゃないですか。
  339. 金丸三郎

    金丸参議院議員 私は、憲法のたとえば十四条と比較いたしまして十五条の参政権は、先般来、自然権的な、超国家的な基本的人権ではないということを申し上げたことがございます。参議院におきましても、憲法の前文を受けて、第三章の規定から考えて、四十四条でもなかなか制約ができないんだ、自然権じゃないかという非常に強い御主張がございましたけれども、私はわが国の通説はそうでないと思っております。十五条はやはり政治的な権利を抽象的に宣言した規定であって、具体的な選挙権や被選挙権は四十四条で定めるのだ。旧憲法はいわば選挙権を与えるような考え方であったかもしれません。しかし、新憲法国民主権だから選挙権は当然持つんだ。しかし、具体的な選挙権というものはどうして決めるのかと言えば、国会法律で決めるのですよ、こう書いてあるのだと私は思います。だから、私は、何ら矛盾でもないし、むしろ多くの学者が私どもの考えと同じ考えをお持ちになっておる、この点は間違いないところだと思います。
  340. 安藤巖

    ○安藤委員 主権在民、国民主権の原則を踏まえて、現行憲法十五条が国民の参政権、選挙権、被選挙権を規定している。ですから、せっかくの憲法のその精神、その規定、これを損なわないように、積極的に生かすようにと言った方がいいのかもしれません、そういうように四十四条で資格について法律で定める、こうなっておるわけですよ。その点はいいのですか。
  341. 金丸三郎

    金丸参議院議員 私どもは、損なうとかなんとかいうのではございませんで、合理的な選挙制度をつくる結果、ある面の制約が生ずることは憲法上やむを得ないと申しましょうか、認められておるのだ、こういうふうに申しておるわけでございます。
  342. 安藤巖

    ○安藤委員 合理的、合理的とおっしゃるけれども、だから立法裁量とか、この国会でそれを法律によって決めることができるのだとよくおっしゃるのは立法裁量ということを言っておられる趣旨だと思うのですが、その立法裁量によっても、その合理的とおっしゃる中身によっても、やはり先ほど私が言いましたように、国民主権の大原則をこの国民の参政権という形で、選挙権、被選挙権を保障するという形で規定している十五条のこの国民権利、十五条で保障されておるこの権利、これを規制するとかあるいは制限するとかあるいは損なうとか、こういうような方向で法律で決めることはできない。立法裁量権だといったって、そこまで踏み込むことはできない、おのずから制約がある、これは当然のことだと思うのです。最高裁の昭和五十一年四月十四日の判決でもそのことは明確に言っております。だから、やはりそういう立場に立つべきではないのか。  金丸先生の御発言は、十五条に抽象的に書いてある、それを具体化するのが四十四条だとおっしゃるのです。そうじゃないのですよ。十五条にきちっと、国民主権の大原則に基づいて、権利として規定してあるのです。これを損なわない範囲でさらにそれを助長するというのか、しっかりと根づかせるというのか、制度化するというのか、そういう範囲で法律で資格を決めることができるというのが四十四条の解釈。そうでなかったらおかしいですよ。法律で決められると四十四条に書いてあるから法律で決めることができるのだ。しかもそれは合理的だと。無所属を切り捨てて何で合理的か。結社の自由をうたってある二十一条に違反して何で合理的か。選挙権、被選挙権を奪って何で合理的か。これは当然の疑問が出てくるじゃないですか。どうお考えですか。
  343. 金丸三郎

    金丸参議院議員 何遍も繰り返すようでございますけれども、私どもは、十五条の第一項は国民の参政権の基本原則を規定したもの、抽象的な国民の参政権を規定したもので、選挙の資格、被選挙の資格は四十四条が法律に一任しておるのだ、このように解釈するのがやはり自然だと思います。ただ、無条件かと申しますと、四十四条にもただし書きがございます。これは重要なただし書きでございます。それはただし書きの制約の範囲内において四十四条で憲法は具体的な被選挙の資格、具体的な選挙の資格というものは法律で定めると書いてあるものでございますから、それが定めるものが選挙権を制限するとか制約するとかいうことにはならないのではないか、私はかように思います。
  344. 安藤巖

    ○安藤委員 具体的に資格をどうするかということをやるのが、法律で決めるというのが四十四条、選挙権、被選挙権について。しかし、具体的にその資格を法律で定めるについては、憲法第十五条に規定してある国民基本権利である参政権、選挙権、被選挙権、これを損なうようなものであってはならぬ。だからこそ四十四条の後段のただし書きでこういう差別をしてもならぬということをもう一遍書いてあるのですよ、これは二十一条との関連もあって。だからそれを資格を定めるという――資格を定めるのですよ、これはあくまでも。権利をどうこうしようとする問題じゃないですよ。権利というものは選挙権、被選挙権、先ほど言いましたように無所属立候補を認めないというのは、被選挙権、選挙権を侵害するものです。そういうものを侵害しない範囲で法律で資格を定めることができるというのがこの規定ですよ、だれが考えたって。心得間違いです。だから私は、明治憲法的発想を金丸先生が持っておられるので、明治憲法第三十五条の、選挙法によってこれを定める、法律でこれは決めることができるのだ、その考え、立場に立っておられるのじゃないかと思わざるを得ないと言うのですよ。どうですか。
  345. 金丸三郎

    金丸参議院議員 繰り返しでございますが、十五条と四十四条、憲法の前文との関係につきましては、私の考えを申し上げたとおりでございます。十五条は大事な国民主権のもとにおける参政権でございますけれども、その具体的な内容は、四十四条で、憲法規定するところに従って法律で定めればよろしいのであり、選挙手続憲法のこれまた四十七条で定めるようになっておるわけでございますから、私どもは、これらを有機的な関連のもとに解釈をしてまいりますというと、私が申し上げるような解釈でも何ら選挙権を制約するとか、あるいは国民権利をどうとか、憲法上問題になることは万ない、かように思います。
  346. 安藤巖

    ○安藤委員 あしたの朝までやっておっても、見解の相違ということになろうかとも思うのですけれども、やはり確かめておきたいことがあるのです。  先ほど来おっしゃってみえておるように、憲法第十五条は、選挙権、被選挙権は国民基本権利であるというふうに規定をしている、これはいいですね。――うなずいておられるからいいのでしょうね。  それで、その基本的な権利を制限をするというのが四十四条あるいは四十七条によって認められておる、法律選挙権を制限をするのが。そういうふうにお考えなんですか。
  347. 金丸三郎

    金丸参議院議員 それにつきましては、法律の制定に当たりまして、国民のそのような権利を制約する合理的な理由がなければならない。私どもは、現行憲法政党政治を前提にしておるものでございますから、それに基づいた拘束名簿式比例代表制は合理的な制度である、その結果として国民権利のいわば制約がございましても、合理的な制約として憲法の容認するところである、こういうふうに考えておることは繰り返し申し上げたとおりでございます。
  348. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が来ましたからあれですが、そうすると、選挙そのものも四十四条によって合理的な範囲であれば制限することができる、そういうことですね。これは大間違いだと思うのです。ちゃんと明文で資格についてはと書いてあるのですよ。選挙そのものを制限してもいいとはちっとも書いてないですよ。ここが私が一番問題にしているところです。もう一遍御答弁いただいても同じかと思うのですが……。
  349. 金丸三郎

    金丸参議院議員 それでは訂正いたします。  憲法は、選挙権と何ら書いておりません。私は端的に選挙権と申し上げましたが、四十四条は被選挙の資格及び選挙の資格ということでございますので、その制約は選挙の資格に対する制約だ、こういうふうに訂正をいたします。
  350. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、やはり十五条が参政権を基本権利として認めている。参政権の中には選挙権、被選挙権がある、いいですね。  それで、先ほど来いろいろありまして、いまの御答弁で、四十四条は、選挙人の資格を法律で決めることができる、しかし、ただし書きの制限がある、こういうことですね。  そうなると、本改正案は、法律で資格を定めるどころではなくて、無所属立候補を認めないということによって選挙権、被選挙そのものを制限していると言わざるを得ぬですよ。いまおっしゃったことと違いますよ。はっきりしてきました。
  351. 金丸三郎

    金丸参議院議員 被選挙権というのも憲法にはないのでございます。被選挙の資格があるわけでございます。被選挙の資格と選挙の資格が憲法の四十四条ではっきりと書いてございまして、それは憲法四十四条の規定に基づいて、合理的な理由があれば制約することができる、こう私は申しておるわけでございます。先生がせっかく選挙権、被選挙権とはないじゃないかとおっしゃいますから、私は御説に従って、憲法に書いてないから訂正すると申し上げたわけで、これを通俗的な言葉で申しますと、選挙権なんです。通俗的な言葉で言えば被選挙権なんです。それを厳密に、選挙の資格じゃないかとおっしゃいますから、私は訂正すると申し上げたわけでございまして、実質は、選挙権と言い、選挙の資格と言いましても同じことでございます。
  352. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、これまで参議院でもいろいろ議論をされてきた、それから当委員会でも議論をされてきましたが、憲法第十五条、これは公務員を選定する権利ですね、「及び」以下は省略して。これは参政権だというのははっきりしておりますね。参政権の中には選挙権、被選挙権が含まれておるのだというのが通説の認めるところじゃないのですか。この十五条にそのようにしてうたわれている。だからこそこの三項にも「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」というような規定もあるのです。だから、やはりこの第一項は、選挙権、被選挙権を憲法基本的な権利として定めている、これは間違いないところでしょう。参議院の議論でもずっとその点は、発議者先生方、認めてこられておるじゃないですか。先ほどから抽象的とかいろいろ言っておられるのですが、最高裁の判例もあるし……。だから、ちゃんとうたっているのですよ。そして、その範囲で四十四条が、ただし書きの制限を受けながら、選挙人の資格を定めるだけなんですよ。四十四条で、選挙権というのは出てきておるのじゃないのですよ。ここが間違っておる。だから、その辺のところが、法律で決められる、法律で決められると言って、四十四条を振り回しなさるのが明治憲法的発想だというふうに私は言わざるを得ぬ、こういうことなんです。  時間が来ましたから、終わります。
  353. 久野忠治

    久野委員長 次回は、明七日午前十時三十分公聴会を開催することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十五分散会