運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1982-02-24 第96回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十四日(水曜日)     午前九時四十一分開議  出席委員    委員長 西中  清君    理事 三枝 三郎君 理事 浜野  剛君    理事 安田 貴六君 理事 沢田  広君    理事 竹内  猛君 理事 永井 孝信君    理事 斎藤  実君 理事 玉置 一弥君       阿部 文男君    浦野 烋興君       太田 誠一君    北川 石松君       佐藤 守良君    関谷 勝嗣君       中西 啓介君    新盛 辰雄君       三浦  隆君    辻  第一君       伊藤 公介君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君         建 設 大 臣 始関 伊平君         国 務 大 臣         (総理府総務長 田邉 國男君         官)         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   世耕 政隆君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      滝田 一成君         警察庁交通局長 久本 禮一君         運輸大臣官房総         務審議官    石月 昭二君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省航空局長 松井 和治君         建設省道路局長 渡辺 修自君  委員外出席者         警察庁刑事局審         議官      大堀太千男君         警察庁警備局警         備課長     岡村  健君         防衛庁防衛局運         用第一課長   萩  次郎君         防衛庁衛生局衛         生課長     小畑美知夫君         運輸省航空局技         術部長     長澤  修君         運輸省航空事故         調査委員会事務         局長      中村  哲君         労働省労働基準         局監督課長   岡部 晃三君         参  考  人         (日本航空株式         会社代表取締役         社長)     高木 養根君         参  考  人         (日本航空株式         会社専務取締         役)      野田 親則君         参  考  人         (日本航空株式         会社常務取締         役)      萩原雄二郎君         特別委員会第一         調査室長    長崎  寛君     ————————————— 委員の異動 昭和五十六年十二月二十五日  辞任         補欠選任   後藤  茂君     竹内  猛君 昭和五十七年一月二十五日  辞任         補欠選任   加藤 六月君     佐藤 守良君   塚原 俊平君     左藤  恵君 二月二十四日  辞任         補欠選任   丹羽 兵助君     野中 英二君 同日  辞任         補欠選任   野中 英二君     丹羽 兵助君 同日  理事沢田広君同日理事辞任につき、その補欠と  して竹内猛君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  参考人出頭要求に関する件  交通安全対策に関する件  交通安全対策に関する件(羽田沖における日本  航空DC8型機墜落事故に関する問題)      ————◇—————
  2. 西中清

    西中委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事沢田広君から、理事辞任したい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 西中清

    西中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 西中清

    西中委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事竹内猛君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 西中清

    西中委員長 交通安全対策に関する件について調査を進めます。  まず、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  羽田沖における日本航空DC8型機墜落事故に関する問題について、本日、参考人として日本航空株式会社代表取締役社長高木養根君、日本航空株式会社専務取締役野田親則君、日本航空株式会社常務取締役萩原雄二郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 西中清

    西中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  7. 西中清

    西中委員長 次に、交通安全対策基本施策について、関係大臣からそれぞれ所信を聴取いたします。田邉総理府総務長官
  8. 田邉國男

    田邉国務大臣 今国会における交通安全対策に関する審議が開催されるに当たり、交通安全対策に関し一言所信を申し述べます。  今日、わが国における自動車保有台数は四千万台、運転免許保有者数も四千五百万人を超え、なお、年間それぞれ二百万の規模で増加しているのでありまして、まさに、本格的な車社会国民免許時代を迎えていると申しても過言ではありません。  一方、交通事故による死者数は、昭和四十六年以降連続年間にわたり減少を続けてまいりましたが、一昨年は一転して増加に転じ、昨年はわずかながら減少したとはいうものの、本年に入って再び増加傾向を示しております。また、交通事故発生件数負傷者数については、すでに昭和五十三年以降増加を続けており、交通事故による死傷者年間六十万人を超えるなど、交通情勢はまことに厳しいものがあります。このような情勢の中にあって、国民交通事故の脅威から守り、交通の安全を確保することは、大きな政治課題であると考えております。  私は、昨年十一月、総理府総称長官に就任し、交通対策本部長の重責を担うこととなりましたが、交通安全は国民福祉の根幹であるとの認識のもとに、交通事故増加傾向に歯どめをかけ、さらに着実な減少を図る決意であります。国民各位の御理解と御協力をいただき、関係省庁との緊密な連携を確保しつつ、総合的な交通安全対策を強力かつ着実に推進してまいる所存であります。  政府といたしましては、昭和五十七年度の予算編成に当たり、昨年決定いたしました第三次交通安全基本計画趣旨を踏まえ、関係省庁陸上交通安全対策関係予算調整を行い、交通安全施設等整備を初めとする道路交通環境整備交通安全思想普及安全運転確保交通事故被害者救済等各般にわたってきめ細かな配慮をした次第であります。  なお、総理府昭和五十七年度の事業といたしましては、交通安全思想普及活動推進及び交通事故被害者救済等のほか、沖縄県交通方法変更に伴う特別事業につきましても特段の配慮をいたしたところでございます。  以上、交通安全に関し所信一端を申し述べましたが、委員各位の深い御理解と格段の御協力をお願いいたします。(拍手
  9. 西中清

  10. 始関伊平

    始関国務大臣 交通安全対策に関する諸施策について御審議をお願いするに当たり、一言所信を申し述べたいと存じます。  御承知のとおり、わが国の経済、社会の発展に伴い、道路交通需要は、ますます増大かつ多様化しており、これに対処するため、政府としては、昭和五十三年度を初年度とする第八次道路整備五カ年計画に基づき、道路事業の積極的な推進を図っているところであります。  申すまでもなく、道路交通、特に自動車交通増加は、反面、交通事故の多発をもたらしております。  しかし、近年においては、関係者の懸命の努力によって、死傷者はピーク時に比し著しく減少しておりますが、その数は、昨年一年間でなお六十一万人余に及び、特に昭和五十三年以降、事故件数及び負傷者数については増加兆しが見られるなど、交通安全をめぐる情勢は依然として憂慮すべき状況にあります。  かかる事態に対処するため、昭和五十七年度は、厳しい財政事情ではございますが、より一層強力に交通安全対策推進を図ってまいる所存であります。  まず、道路を新たに建設する場合におきましては、交通安全対策基本法の精神にのっとり、交通安全施設等に十分配慮した道路整備することとしております。  次に、既存の道路につきましては、昭和四十一年度以降、交通安全施設等整備事業に関する計画により、総合的かつ計画的に交通安全施設等整備拡充を図ってまいりましたが、昭和五十七年度においては、第三次交通安全施設等整備事業五カ年計画の第二年度として、交通安全施設等整備を進めてまいりたいと考えております。この場合、特に弱い立場にある歩行者自転車利用者交通事故から守るための施設整備重点を置くこととしております。  さらに、道路改築事業におきましても、交通の安全を確保するため歩道等設置バイパス建設自転車専用道路及び歩行者専用道路整備等事業を行い、また、落石のり面崩落なだれ等の危険を防止するため、道路防災対策についても万全を期してまいることとしております。  また、踏切道における交通事故防止交通円滑化を図るため、引き続き、立体交差化等事業推進することとしております。この場合、多数の踏切連続する中心市街地等においては、これらを同時に除却する連続立体交差事業推進してまいることとしております。  次に、既成市街地居住地区あるいは歴史的に価値のある地区における交通事故防止し、居住環境改善を図るための事業中心商業業務地区等における道路交通の安全と円滑化を図るための事業通勤通学等のための自転車駐車場対策推進することとしております。  さらに、児童交通事故防止及び児童、青少年の心身の健全な発達に資するため、第三次都市公園等整備五カ年計画の第二年度として、都市における国民日常生活に密着した児童公園等の住区基幹公園都市基幹公園及び緑道計画的な整備推進を図ることとしております。  最後に、道路管理体制強化して、道路交通の安全の確保交通円滑化を図ることとしております。特に、道路法及び車両制限令に違反する車両の通行に対する指導及び取り締まり強化するとともに、道路交通に関する情報の収集及び提供について、体制強化拡充推進することとしております。  以上、交通安全に関する諸施策について所信一端を申し述べましたが、交通事故防止のため、今後一層徹底した総合的な交通安全施策を強力に推進していく決意でありますので、よろしくお願い申し上げます。(拍手
  11. 西中清

  12. 世耕政隆

    ○世耕国務大臣 私は、このたび国家公安委員長を命ぜられました世耕政隆でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  本日、交通安全対策特別委員会が開かれるに当たり、交通警察行政に関し、一言所信を申し上げます。  わが国における道路交通は、自動車による旅客輸送量貨物輸送量の飛躍的な伸びに象徴されますように、国民生活の中でますます重要な役割りを果たしており、また車両保有台数運転免許保有者数増加傾向は、今後とも根強く続くものと考えられます。  このような情勢に伴い、道路交通は一段と複雑多様化し、交通事故交通渋滞交通公害等道路交通を取り巻く諸問題が山積しております。  特に、交通事故発生件数は、昭和五十三年以降増加を続け、依然としてその減少兆しがなく、また、交通事故による死傷者数は、いまなお年間六十万人を超えるなどきわめて憂慮すべき状況にあります。  警察といたしましては、このような諸問題を解決するため、国民各位の御理解と御協力を得つつ、第三次交通安全施設等整備事業五カ年計画推進運転者行政の積極的な展開、適正かつ合理的な交通指導取り締まり実施等の諸対策を総合的、効果的に推進し、安全で快適な交通社会の実現に一層努力してまいる所存であります。  また、四千五百万人に及ぶ運転者免許証更新時における負担軽減を図るため、その更新手続簡素合理化等施策推進にも鋭意努めてまいる所存であります。  以上、交通警察行政に関し所信一端を申し述べましたが、委員各位の一層の御指導と御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。(拍手
  13. 西中清

  14. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 運輸省における交通安全対策について、所信を申し述べます前に、先日の日本航空機墜落事故に関し、一言申し上げます。  去る二月九日、羽田沖日本航空DC8型機が墜落し、二十四名のとうとい人命が失われ、百五十名に上る多数の方々が負傷されました。私は、運輸行政の最大の使命は安全輸送確保にあると確信しており、今回の事故はまことに遺憾に存ずる次第であります。現在、事故原因の究明に全力を挙げるとともに、日本航空に対し立入検査を実施しており、これに基づき必要な対策を進めてまいる所存であります。  今後、かかる事故絶滅を期するため、各交通機関関係者に対して重ねて安全総点検を実施するよう指示したところであります。  それでは、運輸省における交通安全対策に関し所信を申し述べます。  人命の安全の確保は、交通運輸に関する施策基本であります。  運輸省におきましても、交通安全対策を最も重要な施策の一つとして、全省の組織を挙げて取り組んでおり、私は、機会あるごとに、現場の第一線で仕事をされている交通関係者に対し事故防止を呼びかけてまいりました。  しかしながら、道路交通事故による死傷者は、依然として多数生じている上、減少傾向にあった発生件数も再び漸増する傾向にあり、また、鉄道海上及び航空交通は、一たび、事故が発生した場合には、多数の死傷者を生ずるおそれがあります。したがって、今後とも、総合的かつ長期的な視野に立って、交通事故未然防止するための各般にわたる対策を強力に推進していかなければならないと考えております。  まず、ますますふくそうし大型化する交通運輸活動の安全を確保するため、鉄道港湾航路空港などの交通基盤施設整備を行うとともに、年々高速化、大型化する車両船舶航空機等輸送機器自体安全性確保するため、これらの機器構造等についての安全性向上検査整備体制充実を図ることが必要であります。  また、事故未然防止するためには、交通管理のための体制を一層充実させるとともに、交通運輸関係する一人一人が安全確保の責務の重大性を自覚して行動するよう、関係者教育訓練に努め、安全意識の高揚を図ることが重要であります。  このほか、交通における安全性を高めるためには、安全面における技術進歩が重要であり、このための技術開発努力を傾注することが必要であります。  私は、以上のような視点から、今後の交通運輸における安全確保のための諸対策に取り組んでまいりたいと思っております。  次に、当面緊急かつ重点的に実施する施策につきまして、陸、海、空に分けてその概要を御説明申し上げます。  第一に、陸上交通安全対策であります。  まず、鉄軌道交通の安全につきましては、自動列車制御装置列車集中制御装置等運転保安設備整備強化するとともに、列車運転関係従事者に対する教育訓練を一層充実するよう強力に指導することにより、鉄軌道事故絶滅に万全を期する所存であります。  また、踏切道事故防止対策につきましては、踏切道改良促進法及び第三次踏切事故防止総合対策に基づき立体交差化構造改良踏切保安設備整備等を引き続き強力に推進してまいりたいと考えております。  次に、自動車交通の安全につきましては、自動車検査充実自動車整備事業指導監督強化、過積載及び過労運転防止のための指導徹底等を図るとともに、自動車安全性の一層の向上を図るため、保安基準改正等所要措置を講じてまいる考えであります。また、最近における自動車技術進歩使用形態変化等に対応した自動車検査整備のあり方につきましては、運輸技術審議会の答申の趣旨を十分踏まえて、関係方面調整の上、所要措置を講じていく所存であります。  さらに、被害者救済対策としては、自動車損害賠償保障制度の適切な運用を図るほか、重度後遺障害者のための療護施設整備交通遺児に対する貸付額の改定など自動車事故対策センター業務充実を図ることとしております。  第二に、海上交通安全対策であります。  まず、施設面対策としては、第六次港湾整備五カ年計画に基づき、港湾及び航路整備を着実に推進するほか、航路標識整備充実に努めてまいります。  次に、船舶運航の安全を確保するため、船舶運航に従事する者に対し、海上交通法規の遵守、運航管理徹底安全運航等指導強化するとともに、海上交通に関する情報提供充実及び強制水先制度整備推進することといたしております。  また、船員資格等に関する国際条約の批准及び船舶技術革新の進展に対応した船員制度の改革を推進するとともに、船員災害防止対策強化及び船員教育訓練体制整備を進めてまいる所存であります。  さらに、船舶安全性向上するため、検査体制充実するとともに、海上における危険物輸送及び貯蔵の増加傾向に対処して、所要安全基準及び安全審査体制強化を図ってまいります。  一方、海上保安庁においては、海上捜索救難に関する国際条約等に対応して、広大な海域における航行安全体制を確立するため、広域的哨戒体制及び海洋情報システム整備するとともに、海上機動力強化するため、老朽巡視船艇代替建造航空機増強等推進するほか、船舶交通のふくそうする海域重点を置いた航法指導取り締まり強化及び海上防災体制充実を図っていく所存であります。  第三に、航空安全対策であります。  第四次空港整備五カ年計画に基づき、空港整備推進するほか、航空交通の安全を確保するため、レーダー網整備を初めとする航空保安施設等整備推進するとともに、航空保安要員確保を図ることといたしております。また、航空事業者に対し、今回の事故にかんがみ、運航管理及び機材整備業務を一層適正化するよう強力に指導を行ってまいる考えであります。  最後に、交通機関の安全を初め一国民生活にとってきわめて重要な問題であるところの台風、集中豪雨、豪雪、地震等の異常な自然現象の早期、的確な把握とその予警報を行うため、静止気象衛生海底地震計整備等により、気象業務体制の一層の充実強化を図ってまいりたいと考えております。  以上、運輸省においてとろうとする交通安全対策概要について申し述べてまいりましたが、これらの施策実施につきましては、関係者の積極的な協力を得ることが何よりも重要でありますので、委員長初め委員各位におかれましても、何とぞよろしく御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
  15. 西中清

    西中委員長 以上をもちまして、関係大臣所信表明は終わりました。  次に、昭和五十七年度における陸上交通安全対策関係予算について説明を求めます。滝田総理府交通安全対策室長
  16. 滝田一成

    滝田政府委員 昭和五十七年度の陸上交通安全対策関係予算につきまして、お手元に配付してあります予算調書によりまして、関係省庁の分を一括して御説明申し上げます。  昭和五十七年度の予算総額は、一ページの上段に示しますように、九千五百五十一億二千五百万円でありまして、前年度予算額九千三百七十八億七千二百万円に比べまして一・八%の増加となっております。  各項目ごとに説明いたしますと、一ページの1、道路交通環境整備につきましては八千四百八十九億三千万円、対前年度比一、四%増を計上しております。  (1)の交通安全施設等整備は、第三次特定交通安全施設等整備事業五カ年計画の第二年度分といたしまして一千二百六十七億五千万円、対前年度比〇・八%増を計上しております。この内訳は、アの特定交通安全施設等整備、これは警察庁分でございますが百四十四億六百万円、対前年度比一一・三%減となっております。これは、交通管制センター信号機道路標識等交通安全施設整備に要する費用について補助するための経費でございます。  また、イの特定交通安全施設等整備建設省分)は一千百二十三億四千四百万円、対前年度比二・六%増の予算を計上しております。これは、歩道自転車道立体横断施設道路照明等交通安全施設整備に要する費用について、国が負担し、または補助するための経費でございます。  (2)の改築事業による交通安全対策事業建設省分)は四千五百三億三千八百万円、対前年度比〇・四%増となっております。これは、現道拡幅による歩道等交通安全施設設置並びに現道に歩道等設置が困難な区間における小規模バイパス建設等に要する費用について、国が負担し、または補助するための経費でございます。  (3)の道路防災対策事業建設省分)は八百三十九億七千百万円、対前年度比一・五%増となっております。落石なだれ等防止するための道路施設整備路肩整備交通危険個所局部改良等に要する費用について、国が負担し、または補助するための経費でございます。  (4)の踏切道立体交差化等は八百十四億四千四百万円、対前年度比二・二%減となっております。この内訳は、アの踏切保安設備整備運輸省分)が二十五億一千五百万円、対前年度比二七・九%減、イの踏切道立体交差化等建設省分)が七百八十九億二千九百万円、対前年度比一・一%減となっております。  二ページに移りまして、(5)の交通安全対策特別交付金自治省分でございますが、これは五百十七億三百万円でありまして、対前年度比二二・二%増となっております。これは、交通反則金収入額に相当する金額交通安全施設設置に要する費用に充てるため、地方公共団体に交付するものでございます。  (6)の基幹公園整備建設省分)は、第三次都市公園等整備五カ年計画の第二年度分といたしまして五百十二億三千七百万円、対前年度比〇・二%減を計上しております。子供の遊び場を確保するための児童公園等の住区基幹公園及び総合公園等都市基幹公園整備に要する費用について補助するための経費でございます。  (7)の緑道整備建設省分)は十二億五千四百万円、対前年度比三・〇%増となっております。これは基幹公園整備と同じく、第三次都市公園等整備五カ年計画に基づくものでございまして、路上における遊びや運動による事故防止し、市街地における都市生活安全性及び快適性確保を図るための緑道整備に要する費用について補助するための経費でございます。  (8)の居住環境整備事業等建設省分)は十二億一千五百万円、対前年度比八・六%増となっております。これは、居住地区内の交通事故防止し、または歴史的環境を保全し、あわせて居住環境改善を図るため、地区内街路等を体系的に整備する費用について補助するための経費でございます。  (9)の自転車駐車場整備事業建設省分)は、通勤通学のための自転車利用増大に対処するため、鉄道周辺等で行われる自転車駐車場整備に要する費用について補助するための経費でございますが、今後実施計画により定まるものでございまして、金額は未定となっております。  (10)の総合都市交通施設整備事業建設省分)は、都市商業業務地区等都心部、特に駅前周辺等における道路交通施設整備を総合的に実施するために要する費用について補助する経費でございますが、今後実施計画により定まるものでございまして、金額は未定となっております。  三ページに移りまして、(11)の市町村基礎体力つくり・スポーツ振興事業等(学校体育施設開放事業)(文部省分)は十億一千八百万円、対前年度比〇・五%増となっております。  2の交通安全思想普及につきましては二億四千九百万円、対前年度比〇・八%増となっております。  この内訳は、(1)のダンプカー事業者に対する交通安全指導のための経費総理府分)二千七百万円、前年度同額でございます。  (2)の交通安全思想普及推進事業等(総理府分)は、交通安全母親活動推進事業の委託費等一億一千万円、対前年度比一・八%減となっております。  また、(4)の交通安全教育指導等(文部省分)は、学校における交通安全教育の充実強化を図る経費等でございますが、対前年度比八〇・〇%増となっております。  3の安全運転確保につきましては四百十二億九千二百万円、対前年度比〇・四%減となっております。  (1)の運転者対策推進警察庁分)は六千二百万円、対前年度比二一・六%増で、教育環境の充実指導者の資質の向上等に要する費用について国が負担し、または補助するための経費でございます。  (2)の運転者管理センターの運営(警察庁分)は十五億四千七百万円、対前年度比二六・七%増で、同センターの電子計算組織等の運営経費でございます。  四ページに移りまして、(3)の交通取り締まり車両等の整備警察庁分)は二十億七千二百万円、対前年度比三一・四%増となっております。  (4)の暴走族取り締まり交通取り締まり体制充実強化警察庁分)は十四億七千万円、対前年度比一・五%減となっております。  このほか、主なものとして(8)の自動車検査施設の増設、民間車検を行う指定整備工場の監督体制強化等に要する経費運輸省分)三百四十三億三千百万円、対前年度比二・九%減等がございます。  4の被害者の救済につきましては六百三十八億二千二百万円、対前年度比九・四%増となっております。  (1)の救急業務施設整備自治省分)は一億六千二百万円、対前年度比一六・一%減となっております。  (2)の救急医療施設整備(厚生省分)は百十八億一千五百万円、対前年度比〇・三%増となっております。これは、救急医療の体系的整備を図るため、初期救急医療体制、その後方病院としての第二次救急医療体制、さらに重篤救急患者を対象とする救命救急センターとあわせて、広域救急医療情報センターの整備等推進することといたしております。  このほか、主なものといたしまして、五ページ(5)の通勤災害保護制度の実施(労働省分)は四百三十九億一千六百万円、対前年度比一四・〇%増で、通勤災害について被災労働者及びその遺族の保護を図るための経費でございます。  (6)の交通事故相談活動の強化総理府分)は三億七千六百万円、前年度同額となっております。既設の交通事故相談所の充実強化を図るための経費でございます。  (8)の自動車損害賠償責任再保険特別会計による補助等(運輸省分)は七十二億八千三百万円、対前年度比〇・六%増となっております。この内訳として、アの自動車事故対策センターに対する助成費は五十七億九千八百万円、対前年度比五・一%増で、この中には重度後遺障害者のための療護施設整備事業に対する助成が含まれております。イの被害者救済等は、交通事故相談業務、救急医療施設整備等に要する費用について補助するための経費で十四億八千五百万円、対前年度比一三・五%減となっております。  5のその他は調査研究費でございますが、総額で八億三千二百万円、対前年度比二〇・四%増となっております。  以上、昭和五十七年度陸上交通安全対策関係予算について御説明申し上げました。
  17. 西中清

    西中委員長 次に、昭和五十七年度における海上交通及び航空交通安全対策関係予算について説明を求めます。石月運輸大臣官房総務審議官
  18. 石月昭二

    石月政府委員 お手元にお配りしてございます「昭和五十七年度交通安全対策関係予算」と題した資料に基づきまして、御説明をさせていただきます。  最初に、海上交通安全対策関係予算でございますが、合計で千五十億七千三百万円を計上してございます。この額は、五十六年度に比べまして三十一億六千二百万円、二・九%の減額となっております。このように減額となりました主な理由は、五十六年度中に整備が完了した航路及び防波堤があり、港湾等の整備のための経費減少したためでございます。  次に、内訳、各項目について簡単に御説明をいたします。  まず、1の交通環境の整備といたしまして五百八億六百万円を計上してございます。  内訳は、(1)の港湾等の整備といたしまして、三百七十一億四千六百万円を計上してございます。これは、東京湾口、備讃瀬戸、関門航路等十三航路整備のための経費及び石川県の輪島港等十一港の避難港の整備のための経費のほか、釜石港、福井港等の防波堤、泊地の整備のための経費を計上してございます。  次に、(2)の航路標識整備等でございますが、灯台等の光波標識、ロラン・デッカ等の電波標識等各種航路標識の新設、改良、改修及び航路標識業務の運営を行うための経費として、百三十六億六千万円を計上してございます。  二番目に、2の船舶安全性確保といたしましては、一億二千九百万円を計上してございます。  内訳といたしましては、まず、(1)の船舶安全基準整備としまして二千六百万円がございます。これは、政府間海事協議機関、IMCOの勧告等に基づき危険物運搬船等に対する国内基準を整備する等、船舶の構造・設備に関する安全基準の作成を行うためのものでございます。  次に、(2)の船舶検査の充実といたしましては、一億三百万円を計上してございます。これは、船舶検査、型式承認等を行うためのものでございます。  三番目に、3の安全な運航確保といたしまして百六十四億七千九百万円を計上してございます。  内訳といたしましては、(1)の救難業務等の充実強化といたしまして四十一億四千万円がございます。これは、海難防止指導海上交通安全対策充実強化を図るとともに、安全な運航確保に必要な警備救難業務の運営を行うためのものでございます。  ページを繰っていただきまして、(2)の海上交通に関する情報充実といたしまして二十九億七千五百万円がございます。これは、海図の刊行等の水路業務及び海洋気象情報提供等の海洋気象業務充実のための経費でございます。  それから、(3)の運航管理の適正化等といたしまして、旅客航路事業者に対する監査、船員労務監査及び船員災害防止指導等のための経費二千六百万円が計上してございます。  それから、(4)の船員の資質の向上等といたしまして九十三億三千八百万円を計上してございます。これは、練習帆船日本丸の代船建造に着手する等、航海訓練所、海員学校及び海技大学校における教育訓練充実を図るとともに、船舶職員として船舶に乗り組むべき者の資格試験及び水先人試験を実施するほか、海上安全船員教育審議会の運営を行うための経費でございます。  四番目に、4の海難救助体制等の整備といたしまして三百七十六億五千九百万円を計上してございます。  内訳といたしましては、まず、(1)の巡視船艇・航空機整備等といたしまして三百六十四億八千二百万円がございます。これは、ヘリコプター搭載型巡視船一隻を含む巡視船艇十二隻の整備と、中型飛行機一機を含む航空機三機の整備等を行うためのものでございます。  それから、(2)の海難救助・海上防災体制整備といたしまして、海上防災体制充実強化及び通信施設整備を行うための経費十一億七千七百万円でございます。  以上が、海上交通安全対策関係経費でございます。  次に、ページを繰っていただきまして、航空交通安全対策関係予算について御説明申し上げます。  合計で二千八十七億五千七百万円でございまして、前年度と比べまして二十九億三千八百万円、一・四%の増加となっております。  それでは、その内訳、各項目について御説明申し上げます。  まず、1の交通環境の整備といたしまして二千十三億五千百万円を計上してございます。  内訳といたしましては、(1)の空港整備・維持運営といたしまして、空港施設及び空港航空保安施設整備・運営のための経費千八百三十五億八千六百万円がございます。  それから(2)の航空路の整備・維持運営といたしまして、航空交通管制施設及び航空路用航空保安無線施設等の整備及び維持運営のための経費百七十七億六千五百万円がございます。  次に、2の航空安全対策推進といたしまして七十三億四千七百万円を計上してございます。  内訳といたしましては、まず、(1)の航空安全対策といたしまして、航空機の耐空証明、機長路線資格審査、航空従事者技能証明等を行うための経費一億四百万円がございます。  次に、(2)の航空機乗員の養成といたしまして二十九億二千百万円、(8)の航空保安要員の養成として十四億二千四百万円がございます。これは、航空大学校及び航空保安大学校における操縦士及び航空保安要員の養成のための教育等の充実のための経費でございます。  それから、(4)の航空保安施設の検査といたしまして、航空保安施設の運用状況について航空機による飛行検査等を行うための経費十九億三千五百万円がございます。  さらに、(5)の航空気象業務の維持運営といたしまして、航空気象業務充実のための経費九億六千三百万円がございます。  最後に、3の航空交通の安全に関する研究開発の推進といたしまして、衛星航法に関する実験的研究等を行うための経費として五千九百万円を計上してございます。  以上が、航空交通安全対策関係予算でございます。  簡単でございますが、これをもちまして、海上交通及び航空交通安全対策関係予算の御説明を終わらせていただきます。
  19. 西中清

    西中委員長 次に、昭和五十七年中における交通警察の運営について説明を求めます。久本警察庁交通局長
  20. 久本禮一

    ○久本政府委員 昭和五十六年中の交通事故及び暴走族の概況、それから五十七年中におきますところの交通警察重点施策につきまして、御説明をさせていただきたいと存じます。  まず交通事故の概況でございますが、資料を用意いたしておりますが、「昭和五十六年中の交通事故発生状況と暴走族の動向について」という資料の一ページに、その概況を説明させていただいております。  昭和五十六年中の交通事故でございますが、発生件数は前年に比べまして八千六百八十九件ふえまして、四十八万五千三百六十六件という数字が出ております。死者につきましては、幸い前年比四十一名減少いたしまして、八千七百十九人でございます。〇・五%の減少でございます。負傷者数は残念ながら増加いたしまして、前年比七千六百十三人増、六十万六千三百三十二人ということでございます。  一昨年、十年ぶりに交通事故による死者が増加いたしたのでございますが、昨年、関係方面の御努力もございまして、昭和五十五年に比べまして若干減少は見たわけでございます。しかし、御説明申し上げましたとおり、事故発生件数及び負傷者の数は、昭和五十三年以降、残念ながら増加を続けております。いまなお減少兆しを見ることができておりません。また、今後も車両保有台数、運転免許保有者の増加等を考えますときに、道路交通情勢は大変厳しいものがあるのではないかと考えておるのでございます。  昨年の交通死亡事故の特徴につきましては、資料の二ページから四ページにまとめて説明をさせていただいております。  まず、都道府県別に交通事故による死者数を、人口十万人当たりあるいは自動車一万台当たりの事故率で比較をいたしてみますと、依然として都道府県の間にかなり著しい較差を感じるのでございます。ちなみに、滋賀と東京では約四・二倍の差があるというような形で、この較差は依然として大きいということでございまして、これを詰めるのは大きな課題であると考えておるのでございます。  また、交通事故による死者を年齢別に見てまいりますと、若者の死者が増加をしております。特に、十六歳から十九歳までの年齢層の死者が一一・七%増加をしておりまして、これは一つの特徴として留意すべきではあるまいかと考えております。  事故の類型で見てまいりますと、横断歩道を横断中の事故、それから車同士によるところの正面衝突、あるいは出会い頭の衝突による事故車両が単独でぶつかって死亡したといったような事故が、一昨年に引き続いて増加をいたしておるという現状でございます。  いわゆる弱者と言われております歩行者、自転車乗用中の死者数は、幸いにいずれも減少いたしまして、特に、歩行者の死亡事故の全体に占める構成比は、統計の上ではいままでの最低になっております。  ただ、依然として、全死者数の四〇%強が交通弱者で占められておるというのは大変残念でございまして、私どもがひそかに期しておりました四〇の大台を割るということは、昨年も残念ながら実現できなかったわけでございまして、これは、諸外国に比べましてもかなり高い数字だという受けとめ方をいたしておるのでございます。  次に、暴走族の動向につきまして申し上げたいと思いますが、五ページ以下に要約をいたしております。  暴走族は、昨年の十一月末現在の数字で見てまいりますと、全国で七百七十グループ、四万六百二十九人ということでございまして、いずれも一昨年の同期に比べますと増加をいたしております。  グループの数は、これまでの最高でございました昭和四十九年の八百十七グループに次ぐ二番目の数字でございまして、人員については、これまでの最高ということになっておりまして、どうも、後から後から入ってくるという傾向は残念ながら歯どめがかかっておりません。  年齢別では、少年の構成比が若干減少はいたしておりますが、依然として七八・三%ということで、少年の占める比率は高うございます。  暴走族の蝟集走行いたします状況につきましては、共同危険行為等の禁止違反を初めといたしますところの道路交通法違反、並びにこれらの行為を助長いたしますところの各種の特別法犯の取り締まりを強くいたす、並びにこれらに対する行政処分を厳しく行っていくということを中心に、対策を強力に進めたつもりでございますが、現状としては、回数、参加人員、参加車両台数ともそれぞれ減少いたしまして、やや鎮静化の傾向が見られるのではあるまいかと考えております。  しかし、いま申し上げましたように、暴走族の勢力は増加傾向にございまして、また、行動の面から見てまいりましても、グループ相互間の対立抗争事犯あるいは共同危険行為、一般市民を巻き添えにしたような暴行事犯、傷害事犯が多発するといったように、一段と悪質、粗暴化の傾向がございます。  したがいまして、交通警察といたしましては、今後ともさらに強力に対策を進めていく必要があるものと考えておるのでございます。  次に、これらの諸情勢を踏まえまして、昭和五十七年中におけるところの交通警察の運営につきまして、資料に基づきまして御説明を申し上げたいと存じます。  第一は、実効ある運転者教育、きめ細かな運転者対策、高度研修施設建設計画推進などを内容といたしますところの、運転者行政の積極的な展開でございます。  特に、運転免許証の更新手続につきましては、運転免許証の即日交付制度の推進、日曜日に窓口を設けまして利用者の便宜を図ること、無事故無違反者に対しましては簡素な講習を実施して負担を軽減する、特別講習や特別学級を推進いたしまして負担の減少と効率的な講習の実施を図るなどを掲げまして、交通の安全を図りながら運転者の負担を軽減するために、更新に関する手続の簡素合理化のための諸施策を積極的に進めてまいりたいと考えております。  第二は、第三次交通安全施設等整備事業五カ年計画推進交通情勢に対応した合理的な交通規制等の推進歩行者自転車利用者が安心して通行できる交通環境の整備などを内容といたしますところの、道路交通環境整備に努めることでございます。  第三は、歩行者及び自転車利用者の保護活動を強め、交通秩序維持と交通事故防止のために必要な指導取り締まりを活発に行うこと、構造的な違反に対する背後責任の追及、これと並行いたしまして、事案の根源的対策推進するなどを内容といたしましたところの、効果的な交通指導取り締まり活動を進めてまいるということでございます。  第四は、暴走族対策強化でございまして、ただいま申し上げましたように、取り締まり等の強化、行政処分の徹底と再犯防止強化、暴走族対策会議等の活用などを積極的に図ってまいりたいと考えておるのでございます。  その他、高速道路における安全かつ円滑な高速交通確保交通安全教育等の推進などを中心にいたしまして、必要な諸施策を強力に進めてまいる所存でございます。  以上、昭和五十七年中における交通警察の運営重点等につきまして御説明をさせていただいたわけでございますが、よろしく御指導を賜りますようお願い申し上げます。
  21. 西中清

    西中委員長 次に、昭和五十七年度の運輸行政における交通安全施策概要について説明を求めます。石月運輸大臣官房総務審議官
  22. 石月昭二

    石月政府委員 昭和五十七年度におきます運輸省交通安全施策概要につきまして、お手元の資料、「交通安全施策概要」という小冊子がございますが、これによりまして御説明申し上げます。  この資料は、運輸省昭和五十七年度におきまして予定しております交通安全対策を陸、海、空の部門別にまとめたものでございます。目次を見ていただきますとおわかりのとおり、二部構成になっております。  第一部は、交通安全対策概要といたしまして、運輸省交通安全施策に関する基本的な考え方、交通事故の現状、それから交通安全対策関係予算のほか、各部門別に実施する交通安全施策概要を取りまとめたものでございます。  第二部は、部門別交通安全対策といたしまして、交通安全対策の具体的な内容、すなわち交通基盤施設整備輸送機器自体安全性確保するための諸対策交通の安全管理のための諸対策、あるいは交通安全に関する研究の現況といった諸問題をまとめたものでございます。  その概要につきましては、先ほど運輸大臣の所信表明の中で御説明を申し上げました。また、これら諸対策に関連する予算につきましては、先ほど交通安全対策室長と私から御説明を申し上げたとおりでございますので、詳しい御説明は省略させていただきたいと思います。  簡単でございますが、交通安全施策概要につきまして御説明を終わらせていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。
  23. 西中清

    西中委員長 次に、昭和五十七年度の建設行政における交通安全施策について説明を求めます。渡辺建設省道路局長
  24. 渡辺修自

    ○渡辺(修)政府委員 昭和五十七年度における建設省の交通安全に関する施策につきまして、お手元に「交通安全施策について」という資料をお配りしておりますが、これによりまして御説明を申し上げます。  まず、一ページの交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法に基づく事業等でございますが、交通事故による死傷者は、ピーク時に比し著しく減少しておりますが、その数は昨年一年間でなお六十一万人余に及び、特に昭和五十三年度以降、事故件数及び負傷者数については増加傾向が見られる等、交通事故は依然大きな社会問題でございます。このような事態を踏まえ、第二次交通安全施設等整備事業五カ年計画に引き続き、昭和五十六年度から第三次五カ年計画を発足させ、交通安全施設等の一層の整備拡充を図ることといたしております。  二ページにございますように、第三次五カ年計画におきましては、歩道、自転車歩行者道の整備を最重点推進するとともに、その他の交通安全施設についても、引き続き整備推進することとしており、また、新しい事業として、コミュニティ道路整備及び道路情報提供装置の整備を図ることとしております。  五カ年計画内訳は三ページ記載のとおりでございます。  昭和五十七年度の特定交通安全施設等整備事業については、四ページにございますように、この計画の第二年度として、約千五百五十八億円を計上し、交通安全施設等整備推進することとしております。  さらに、同じく四ページ下段にございます一般の道路改築事業による交通安全対策事業でありますが、小規模バイパス建設、現道拡幅などの交通安全事業として、昭和五十七年度は約六千四十二億円を予定しております。  次に、五ページにございます道路防災対策事業でありますが、昭和四十三年の飛騨川バス転落事故以来、重点的に危険個所の整備を図っているところであります。  昭和五十七年度は、防災対策事業費として約千二百九億円を計上しております。  次に、六ページから七ページにかけてございます踏切道立体交差化等事業であります。  踏切事故防止については、踏切道改良促進法に基づき、昭和五十六年度以降五カ年間において改良することが必要な踏切道を指定し、立体交差化事業等により改良を促進することとしております。  八ページにございますように、昭和五十七年度は、事業費約千三百四十七億円をもちまして、連続立体交差化事業六十八カ所、単独立体交差化事業四百十カ所及び構造改良事業六十四カ所を実施することとしております。  次に、九ページの大規模自転車道整備事業であります。  道路整備事業の一環として、昭和四十八年度から整備に努めているものでありまして、昭和五十七年度は、事業費約九十二億円をもって、継続事業四十一路線、新規五路線の整備を進めていくこととしております。  次に、十一ページから十二ページの都市交通環境整備事業についてであります。  まず、居住環境整備事業でありますが、昭和五十七年度は、事業費約二十四億円をもって、居住環境整備地区について二十二地区歴史的環境整備地区について四地区事業実施するほか、五地区について調査実施することといたしております。  次に、十三ページの総合都市交通施設整備事業でありますが、本事業は、地域の環状道路歩行者専用道、広場等都市交通施設を総合的に整備するもので、昭和五十二年度より街路事業実施することとしております。  次に、十四ページにございます自転車駐車場整備事業でありますが、都市における通勤通学、買い物等のための自転車利用増大に伴い、昭和五十三年度から、三大都市圏等で、地方公共団体都市計画事業により推進することとしております。     〔委員長退席、浜野委員長代理着席〕  また、十五ページの民間自転車駐車場整備については、昭和五十四年度に設立された財団法人自転車駐車場整備センターを中心として、民間自転車駐車場の一層の整備推進を図ってまいることとしております。  次に、同じく十五ページにございます駐車場整備事業でありますが、昭和五十七年度は、地方公共団体設置する都市計画駐車場について、地方債のほか、無利子資金貸付金として事業費約二十二億円を予定しております。  次に、十六ページにございます都市公園整備事業についてでありますが、昭和五十六年度から発足した第三次都市公園等整備五カ年計画に基づき、住区基幹公園都市基幹公園及び緑道整備推進することといたしております。  次に、十八ページにございます道路管理についてであります。  道路交通の安全を確保するため、不法占用物件の排除や地下埋設物に対する監査の強化及び共同溝の整備を促進することとしております。  また、大型車、重量車に関する事故防止対策でありますが、関係機関と密接な連絡をとりつつ、違反車両指導取り締まり強化してまいる方針であります。  さらに、二十ページにありますように、道路交通情報を迅速的確に収集し提供するため、財団法人日本道路交通情報センターを中心として、道路交通情報の収集、提供体制を一層充実してまいる所存であります。  次に、二十二ページにございます高速自動車国道における救急対策であります。昭和五十七年度は、約二十一億円を見込み、その拡充を図ることといたしております。  次に、二十三ページにございます道路交通の安全に関する調査研究であります。昭和五十七年度は、六億六千万円をもって、交通安全施設等整備に関連する調査研究を実施することとしております。  最後に、二十四ページにございます建設業者に対する交通安全についての指導でありますが、今後とも、交通事故防止徹底について強力に指導を進めてまいる方針であります。  以上で、昭和五十七年度の建設省の交通安全施策についての説明を終わらせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
  25. 浜野剛

    ○浜野委員長代理 次に、運輸技術審議会が去る一月二十八日、運輸大臣に行った「最近における自動車技術進歩使用形態変化等に対応した自動車の検査・整備のあり方について」の答申につきまして、飯島運輸省自動車局長から発言を求められておりますので、これを許します。飯島運輸省自動車局長。
  26. 飯島篤

    ○飯島政府委員 自動車検査整備のあり方についての運輸技術審議会の最終答申について御報告申し上げます。  運輸技術審議会は、昨年二月運輸大臣から「最近における自動車技術進歩使用形態変化等に対応した自動車の検査一整備のあり方について」諮問を受けて以来、自動車の安全の確保と公害の防止を前提としつつ、国民負担の軽減にも配慮して、専門的、技術的観点から審議を行ってまいりましたが、昨年十月の「自動車整備制度を巡る問題とその改善方策」についての中間答申に続き、去る一月二十八日、新しい時代に対応した自動車検査整備制度のあり方について、同審議会から最終答申が出されました。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕  最終答申の概要は次のとおりであります。  まず、自動車ユーザーの負担軽減配慮するとしても、自動車安全確保と公害防止はゆるがせにできないものであって、現行の検査整備制度の持つ意義は大きなものであるので、その基本は維持すべきであるとしております。  次に、点検整備制度については、次のとおりとするとしております。  仕業点検については、項目の簡素化を図ることにより、名称の変更の検討を含め、ユーザーが親しみやすいものとする。  定期点検については、自家用乗用車(軽乗用車を含む)については、六カ月点検は引き続き必要であるが、項目の大幅な簡素化を図る必要がある。  また、新車初回の六カ月点検については廃止する。  十二九月及び二十四カ月点検については、必要性が高いが、若干の項目の簡素化が可能である。  また、その他の自動車については、若干の項目の簡素化が可能である。  その他の事項として、点検整備へのユーザー参加を推進するために、必要な知識をわかりやすく説明した教則を国が作成し、広く公表する必要があること。  ユーザーによる車両の自主的な保守管理の利便に資するため、定期点検整備記録簿の記載内容の充実と保存期間の延長の検討を行う必要があること。  定期点検の励行を図るため、定期点検整備記録簿の整備の励行、街頭検査の強化等の検討を行う必要があること。  定期交換部品の交換時期の延長等、定期交換部品については、交換時期の延長等の措置がとられることが望ましいこと等を指摘しております。  また、検査制度については、次のとおりとするとしております。  検査証の有効期間の延長については、  自家用乗用車(軽乗用車を含む)の新車新規検査の検査証の有効期間については、自動車の性能の向上等に対応し、現行の二年から三年に延長することが可能であるが、継続検査の検査証の有効期間は現行どおりとすることが妥当である。  その他の自動車については、現行どおりとすることが妥当である。  検査の内容及び方法については、おおむね現行制度が妥当であるが、点検整備が確実に実施されている自動車については、一般的にユーザーみずからでも検査を受けることができるよう配慮する必要がある。  以上のほか、今回の答申に基づく制度改正により、零細工場がほとんどを占める整備事業の経営及び従業員の雇用に少なからぬ影響を与えるおそれがあるので、業界自身による自助努力はもとより、国においても適切な配慮を払う必要があること等を指摘しています。  なお、検査整備制度のあり方については、今後とも所要の資料の整備に努め、自動車技術進歩等に対応して適時に見直しが行われることが必要であると提言しています。  運輸省といたしましては、本答申及び中間答申の趣旨を十分踏まえて、所要措置を講じ、国民各層の期待にこたえるよう努力することとしています。  特に、道路運送車両法の改正を要するものについては、関係方面との所要調整を行った上で、今通常国会に改正法案を提出するよう努力いたしたいと考えております。      ————◇—————
  27. 西中清

    西中委員長 交通安全対策に関する件、日本航空DC8型機墜落事故に関する問題について調査を進めます。  この際、去る九日、羽田沖における日本航空DC8型機墜落事故でお亡くなりになりました二十四名の方々に、哀悼の意を表し、御冥福を祈り、黙祷をささげたいと思います。  全員御起立をお願い申し上げます。——黙祷。     〔総員起立、黙祷〕
  28. 西中清

    西中委員長 黙祷を終わります。御着席ください。  今回の航空機墜落事故について、松井航空局長より報告を求めます。松井航空局長
  29. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 日航機の事故概要並びにその後の措置につきまして、御報告を申し上げます。  まず第一に、事故概要でございますが、昭和五十七年二月九日午前八時四十五分ごろ、日本航空三五〇便乗客百六十六名、乗員八名、福岡発羽田行きDC8型機JA八〇六一号機が、東京国際空港に着陸のため、千葉県木更津市側から同空港C滑走路に進入中、同滑走路端側の護岸から約三百メートルの海上に墜落をいたしました。  乗客、乗員の被害状況は次のとおりでございます。  乗客、死者二十四名、重傷七十六名、軽傷六十六名、乗員、死者なし、重傷二名、軽傷六名でございます。  次に、運輸省が講じました措置につきまして御報告を申し上げます。  まず第一に、事故発生直後、運輸省羽田沖日航機事故対策本部を設けますとともに、羽田空港に現地対策本部を設置いたしまして、情報の収集、救難援助の要請等に当たらせました。また、直ちに航空事故調査委員会より委員及び調査官を派遣いたしまして、事故原因調査に着手をいたしました。  第二に、機体の揚収でございますが、二月十日早朝から作業を開始いたしまして、十四日までに機体の大部分及びエンジンの揚収を完了いたしました。また、昨二十三日朝までに残りの主翼の部分を揚収いたしまして、本日早朝ハンガー内に格納を完了いたしました。なお、作業の進捗に伴いまして、去る十四日午前九時からC滑走路を再開いたしまして、その後平常運航に復帰をいたしております。  第三に、事故の再発を防止するための措置でございますが、  まず第一に、日本航空株式会社に対しましては、事故後直ちに航空局長より、また二月十二日に改めて運輸大臣より、安全運航に徹するよう厳重に注意をいたしたところでございます。さらに、二月十五日から十九日にかけまして、同社の本社及び福岡空港支店に対しまして、運航並びに整備の面を中心に、航空法に基づく立ち入り検査を行ったところでございまして、現在、追加要求資料を含めまして、その結果の取りまとめに当たっておるところでございます。  第二に、日本航空を除きますその他の定期航空運送事業者各社に対しましては、事故後直ちに航空局長より、安全運航に万全を期するよう指示いたしました。  第三に、運輸大臣の御指示に基づきまして、二月二十二日より三月十三日まで、全航空事業者を対象といたしまして、臨時の安全総点検を実施中でございます。  なお、事故原因につきましては、航空事故調査委員会が現在鋭意その究明に当たっております。  以上、事故概要並びにその後の措置につきまして御報告を申し上げました。
  30. 西中清

    西中委員長 次に、高木参考人から、今回の航空機墜落事故の対応及び今後の安全対策等について、御意見を伺うことにいたします。高木参考人
  31. 高木養根

    高木参考人 日本航空社長をいたしております高木でございます。  去る二月九日、羽田空港沖合いにおきまして発生いたしました弊社航空機の墜落事故により、御乗客百六十六名のうち二十四名のとうといお命を亡くし、百四十二名にのぼる多数の方々に負傷を負わせるという惨事を引き起こしましたことは、まことに申しわけなく、衷心より深くおわび申し上げます。  なお、乗員につきましては、操縦席三名、客室五名、合計八名の乗員が乗務しておりました。重傷者はございますけれども、いずれも生存しております。  お亡くなりになられました方々の御冥福を心からお祈りいたしますとともに、御遺族の皆様方に対しまして深く哀悼の意を表し、負傷されました方々の一日も早い御回復を衷心よりお祈り申し上げる次第でございます。  これまで、私どもは、安全の確保を会社経営の至上命題といたしまして、全社を挙げて安全運航確保と、安全整備の完遂に取り組んでまいりました。その結果、昨年九月には百万時間の無事故記録を達成し、さらに次なる目標に向かって努力を続けてまいってきたところでございます。  しかしながら、今日このような事故を引き起こし、国民の皆様方に多大の御迷惑をおかけいたす事態に立ち至りましたことは、公共輸送機関に携わる者といたしまして、まことに申しわけなく、断腸の思いであり、ただただひたすらおわび申し上げる次第でございます。  事故の概況につきましては、先ほど松井航空局長より御報告がございましたとおりでありますが、当日、遭難現場におきましては、消防隊の方々を初めその他多くの関係諸機関の方々の御協力をいただき、迅速に御乗客の救出を行うことができました。この間、御被災者の救出並びにその後の救援活動に際しまして、各方面の方々からお寄せいただきました御協力、御援助に対しまして、改めて厚く御礼申し上げます。  御被災者の方々に対する応急措置につきましては、事故発生直後に羽田及び福岡に直ちに事故対策本部を設置いたし、御被災なさいました御乗客の救出、救援並びに御遺族、御家族のお世話に全力を尽くした次第でございます。しかしながら、突発的な事態のため、遺憾ながら種々至りません点もありましたことと、まことに申しわけなく存じております。  事故発生直後より、御遺族及び負傷されました御乗客に対しましては、それぞれ専任のお世話役を任命いたしておりますが、今後とも継続してその任に当たらせることといたしております。  さらに、将来にわたりまして、御被災者及び御遺族の皆様方のお世話に万全を期しますために、去る二月十五日付にて、羽田御被災者相談室を弊社本社内に、また羽田御被災者九州地区相談室を弊社福岡支店内に発足させ、すでに活動を開始させております。  私は、去る二月十四日より、御遺族の皆様方に直接おわびを申し上げますために、それぞれの御自宅にお伺いいたしてまいりましたが、御遺族の方々の耐えがたい御心痛とお怒りの御様子に接し、まことに申しわけなく、改めて深く責任を痛感いたしておる次第でございます。  御被災なされました御乗客並びに御遺族の方々に対しましては、御家族の皆様方の御納得が得られますよう、誠心誠意、速やかに補償問題の解決を進めてまいる所存でございます。  事故原因につきましては、現在、運輸省御当局におかれまして、航空事故調査委員会を中心に御調査を進められておりますので、真相の究明はその調査結果を待つといたしまして、私どもも、安全運航維持の観点から、事故の要因について、考え得る対策を洗い出しまして、緊急度を要するものから、直ちに具体的な対策を立て、逐次実行に移しております。  この機会に、JA八〇六一号機事故発生後にとりました緊急措置につきまして、次のとおり御報告させていただきます。  緊急対策の第一といたしましては、まず運航乗務員、客室乗務員、訓練生及び支店航務部門に対しまして、平常心を失わず、安全運航決意を新たに、再度、安全運航の原点に立ち返って、一層厳しく、徹底的な総点検と安全面強化充実を図るよう指示いたしました。  それから、第二に、特に運航乗員部におきましては、部会等を開催し、緊急な指示事項を徹底いたしますとともに、組織管理運航乗務員を中心に、成田及び羽田に当直制を設け、出発、到着運航乗務員に対し、安全運航に関する特別なブリーフィングを実施いたしました。  第三には、全運航乗務員の心身の健康状態を再確認するため、健康管理関係記録の総点検を行い、本事故関連既往症、または症状に関し記載ある者には、直ちに医師及び上司によるコンサルテーションを含む再検査を実施いたしました。  第四には、安全整備を維持するために主要な整備事項の再点検等、必要な措置実施いたしました。  以上、当面実施いたしました緊急安全対策につきまして申し述べましたが、私どもは、引き続き運航乗務員の健康管理体制、日常管理体制、及びコミュニケーションの改善強化徹底して行い、安全運航の総点検、故障対策の完全整備等さらに検討を進め、初心に立ち返って、事故絶滅に向け、全役職員一丸となって努力を重ねてまいる決意でございます。  何とぞ、今後とも御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
  32. 西中清

    西中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。太田誠一君。
  33. 太田誠一

    ○太田委員 今回の日本航空機の墜落事故に関連いたしまして質問をさせていただきますが、質問に先立ちまして、日本航空の墜落事故で亡くなられました二十四名の方々の御冥福を心からお祈りするとともに、御遺族の方々に対しまして心から哀悼の意を表したいと思います。  それからまた、いまだ入院中の方々も多数おられますので、そうした方々の一日も早い回復をお祈りする次第でございます。  この交通安全対策特別委員会の中で日本航空機の墜落事故が取り上げられますのは、きょうが初めてでございます。先ほど小坂運輸大臣からも所信の表明をいただいたわけでありますけれども、ここで、まず監督責任者としてのいまの御感想なり、御所見なりを改めてお伺いしたいと思います。
  34. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまの太田委員からの最初のお言葉でございますが、御冥福を祈り、かつ、一日も早い回復を祈るというお言葉、私も全く同感でございまして、こうした航空機事故の惨害の大きさというものを改めて痛感いたしておるところであります。  先ほども所信表明で申し上げましたとおり、特に高速化し、かつ、大量化している現在の交通機関においての事故というものは、これははかり知れない社会的な影響をもたらすということをよく踏まえたつもりでございまして、日本航空機のこの大きな事故にかんがみまして、一層、今後、交通安全については全力を傾けてまいりたいと思っております。  なお、日本航空のみならず、一般の航空その他鉄軌道、自動車船舶、すべてに関連しまして、今日までもいろいろと交通安全についての施策を省内において決め、運輸省としての努力を払ってきたところでありますが、なお一層こうした面に努力を傾けて、今後、国民日本輸送機関に対する信頼の維持回復、こうしたことに運輸省としては努力を重ねてまいる所存でございます。
  35. 太田誠一

    ○太田委員 運輸省航空事故調査委員会及び捜査に当たっておられる捜査当局にお伺いを申し上げますけれども、先ほど概略の報告がなされたわけでありますけれども、とりわけ中間報告の中でパイロットの異常操縦という点が指摘をされております。異常操縦と事故の間の因果関係、そしてその点を中心といたしまして今後の調査あるいは捜査の展望、どういうふうになっていくのかということをお伺いをしたいわけでございます。  そして、大体いつごろその結論が最終的に出されるのかということも、あわせてお伺いをしたいと思います。
  36. 中村哲

    ○中村説明員 航空事故調査委員会におきましては、事故の発生直後から、ほとんど全員の航空事故調査官を投入いたすとともに、多くの関係の方々の御協力をいただきまして、鋭意その原因の究明に努めてきておるところでございます。  何分にも、今回の事故の性格上、非常にその調査範囲も対象も広範にわたっておりますので、最終的な結論が出るまでには相当の日時が要るのではないかと思っております。  それから、事故の前日でございます八日の夜、事故機が事故当時と同じ乗組員によりまして東京から博多へ運航されておりますが、このときの飛行記録を見ましたところ、羽田を離陸いたしまして約四分後に、通常ならばスムーズな上昇旋回をいたすべきところ、急激に高度を下げており、直ちに回復の飛行が行われていた、こういう異常な飛行が記録されております。これが、乗組員のうちのいかなる者によって、どういう操作によって、こういった異常な飛行が行われたかについては、現在まだ調査中でございます。  事故当日のフライトの最後の段階でございますが、当該航空機最後の五秒間ほどで急速な降下をいたしております。通常、航空機といいますのは降下をいたしますとスピードが増すものでございますが、この場合には対気速度が減少しておるといったことが認められております。クルー、乗組員のいかなる者がたとえば操縦かんを押し下げたのか、あるいは逆噴射をかけたのか、その双方のいずれであったか等につきましては、そういった点も含めまして、いかなる条件でこういった飛行が行われたのかにつきましては、現在まだ調査中でございます。その他ボイスレコーダー、フライトデータレコーダーの解析もなお進めておる段階でございまして、現時点で、私どもといたしまして、事故の原因を云々するという段階には至っておりません。  いずれにいたしましても、この事故に対します国民的な関心の深さにもかんがみまして、私どもといたしましてはでき得る限り早く結論を出したい。かように考えておるところでございます。
  37. 太田誠一

    ○太田委員 展望を聞いておるのです。いつごろ結論を出すかを聞いたのですよ。
  38. 中村哲

    ○中村説明員 先ほどから申し上げておりますとおり、私どもの事故調査といいますのは、国際民間航空条約の規定に基づきまして、一つ一つの部品の調査から始まりまして、非常に綿密な調査をしなければならないことになっております。乗組員の健康状態、あるいは気象条件、あるいは残骸の分解調査、こういったものを全部いたさなければなりませんので、最終的な結論が出るまでには相当の日時を要する、こういうふうに考えております。
  39. 太田誠一

    ○太田委員 相当の日時を要するというのは、いつごろなんですか。
  40. 中村哲

    ○中村説明員 通常の事故調査の場合でございますと、六カ月から一年半ないしは二年くらいかかる、これが通例でございます。今回の事故調査につきましてもこの範囲内におさまるかと思いますが、いずれにいたしましても、できるだけ早く原因をきわめて公表をいたしたい、かように考えております。
  41. 太田誠一

    ○太田委員 捜査当局の方は。
  42. 大堀太千男

    ○大堀説明員 お答え申し上げます。  今回の事故につきましては、警視庁では、事故発生後、直ちに刑事部長を捜査本部長といたします特別捜査本部を設置いたしまして、捜査員六十七名を投入して、事故原因究明のため、乗務員、乗客等に対する事情聴取、事故機の検証など、主要の捜査を鋭意行っておるところでございます。  これまでの捜査の結果によりますと、今回の事故につきましては、機長の操縦ミスによる疑いが出てきておることは事実でございます。  引き続き、機長及び乗務員の事情聴取、あるいは事故機の検証を行うとともに、機長の健康状態についても、家族、医師、日航関係者等に対する事情聴取を行い、積極的に事故原因関係者の刑事責任の有無を明らかにしていきたいと考えておる次第でございます。  いつごろまでに明らかになるかということにつきましては、現在まだ捜査の過程でございますし、また、事故調査委員会の結果等も踏まえて結論を出さねばならぬと考えておりますので、いまここで、何カ月後に明らかになるという見通しにつきましては、お答えを控えさせていただきたいと思います。御了解いただきたいと思います。
  43. 太田誠一

    ○太田委員 高木社長にお伺いをいたします。  実は、私は福岡市に住んでおりまして、選挙区ももちろん福岡市でございます。毎週、火曜日の朝七時二十五分の飛行機に乗って、福岡から東京にやってまいります。事故機は私どもがいつも乗っておる飛行機でございます。たまたまあのときは、私はある事情がありまして日本航空には乗っておりませんでしたけれども、同じ時間の別の航空会社の飛行機に乗ってこちらにやってまいったわけでございます。  私、二月九日に事故が起こりましたときに、後すぐに、日本航空事故現場を、交通安全対策特別委員会でその日のうちに調査に参りましたので、ちょうど社長もそのときお見えになりまして、お会いいたしました。そして、事故の現場を見ますと、私どもがいつも一番前の席をとっていただきまして乗るわけでございますけれども、あの席がなくなっている。私、これを見ましたとき、もしふだんのとおりに、日本航空機に私があの時間に乗っていたならばもう自分は死んでいたんだなということが、まざまざと目の前に露呈をされている気がしたわけでございます。乗っていた方々はほとんど福岡市の周辺の方々でございます。東京と福岡の間を往復する飛行機だから、常識的に見ますと、東京周辺の方々も福岡周辺の方々も、同数の方がこの飛行機に乗っているんじゃないかというふうに、知らない方は考えるわけでございますけれども、実際問題として、この日本という国は中央集権国家なんであります。われわれ地方都市に住む者は、そこで生きていくためには、常に東京に出てきて用を足さなければいけないという状態にあるわけであります。官庁もしかりであります。役所もしかりであります。企業もそうです。そして、受験生の方々も同じ事情でございます。亡くなられた方々の大半は私とちょうど同じ年ごろの方々でございます。子供も小さいわけであります。企業の中ではどういう役割りを果たしているかといいますと、一番中堅の、仕事の重荷が一番かかってくる年代でございます。子供もいま父親を一番必要としている年代でございます。  高木社長も、あの事故の後福岡市に、御遺族の方々にお悔やみを言われるために回られたというふうに伺っておりますけれども、そのとき御遺族の方々はどんなふうなことを高木さん、あなたに言われましたか。お伺いします。
  44. 高木養根

    高木参考人 ただいま先生から御指摘がございましたように、あの三五〇便には、福岡ないしは北九州地区のお客様がほとんどでございました。御遺族、福岡県以外では長崎県に一御遺族、それから大分県一御遺族、それから大阪に一御遺族、横浜に一御遺族、こういうことでございまして、その他はすべて福岡県でございました。なお、横浜の御遺族につきましても、実はお亡くなりになりました方は福岡の事業所にお勤めでございまして、そういうことで、本当に、今度の事故では福岡を中心にします北九州の地方の方が大部分でございまして、私、どうしても御霊前に本当に心の底からおわびをし、また、御遺族に御弔問申し上げたいということで参りましたのですが、ただいま先生から御質問のありました、御遺族の方が私に対してどういうお気持ちをお持ちになっておられたかということを端的に申し上げますと、すべての御遺族と言ってもよろしいと思います、御遺族によりまして発言の御内容はいろいろと違いますけれども、まずやはり、航空事故というものによってかけがえのない最愛の方を失ったという非常に深いお悲しみと、それから、当時すでに新聞その他報道機関でいろいろと報道されておりました事故原因、推定の事故原因というようなことから、非常なお怒りを直接、私はしみじみと心に非常に強く感じましたということを御報告申し上げたいと思います。
  45. 太田誠一

    ○太田委員 私も、私の選挙で応援をしていただいた方々が、亡くなられた方々にも多数含まれておるわけでございまして、葬儀にも可能な限り参列をいたしてまいりました。  これは今泉さんという方でありますけれども、その御家族のお話を御葬儀のときにお伺いをいたしましたけれども、ひつぎに入った今泉さんがおうちにお帰りになったときに、奥さんが、小さな女のお子様と男のお子様がいるわけでありますけれども、帰ってきた、お父さんが帰ってきたよということを子供さんに言われたわけであります。そうしますと、小さな女の子が出てきて、お父さんお帰りなさい、お父さんお帰りなさい、と何度も言ったそうであります。私は、こういう小さな子供さんを残して亡くなられた方々、そして残された御家族の方々に対して、いまどういうふうに会社としてその後の生活のことを御心配されるのか、そのお気持ちをお伺いしたいわけであります。
  46. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  現在、先ほど御報告申し上げましたように、この羽田沖事故の御被災者の御相談室というものをつくりまして、本社に置いておりますが、同時に、ただいまも御報告しましたように、御被災者の大部分が福岡県でいらっしゃるということから、九州地区の御相談室というのを福岡支店内に置きまして、各御遺族に必ずお世話をする者を現在つけております。それでいろいろとお話し合いをさせていただいているというのが現状でございますが、先生の御質問の中には、賠償の問題についての考え方、これを一体日本航空ではどう考えているのだという意味もお含みになっていらっしゃるというふうに感じましたので、その点についてお答え申し上げます。  昨年暮れに、すでにこの四月から国内線の賠償額については限度を外すということを御認可いただいておりますが、三月末までは従来の約款に沿いまして一応限度が二千三百万円ということになっております。なっておりますけれども、ただいま申し上げましたような事情を含めまして、私どもとしましては、現在の約款の限度である二千三百万円という数字にはこだわらずに、御遺族の皆様と十分にお話し合いをさせていただきまして、誠意を持ってこの賠償の事に当たりたい、このように考えております。
  47. 太田誠一

    ○太田委員 御遺族の方々ともうすでにその補償のお話というのは始めておられるのですか。
  48. 高木養根

    高木参考人 はっきり申し上げますとまだいたしておりません。これは、大変悲しいことでございまして、私どもとしては、お話し合いを開始する時期を一応目安としまして四十九日経過後ということで、したがいまして、ほぼ四月の初めごろから具体的なお話し合いをさせていただこうかと考えておるわけでございますが、もちろん、御遺族の御事情によりましてもっと早く話し合いを始めたいという御希望のある向きにつきましてはそのようにさせていただきたい、そのように考えております。
  49. 太田誠一

    ○太田委員 いま、従来の限度額として規程に定められている二千三百万円という金額にはとらわれないというふうなお答えがありまして、安心をいたしましたけれども、四月になりますと何かこの限度額の改定がなされるというふうな話を聞いております。どのぐらいに今度は限度額を引き上げる予定なのか。四月の六日ですかね。
  50. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  これは四月の初めからでございまして、それで、限度額はなし、こういうことでございます。
  51. 太田誠一

    ○太田委員 いずれにいたしましても、亡くなられた方々の御遺族に対して十分ということはないわけでありますから、日本航空が対応できる限りの補償をお考えいただきますようにお願いをしておきます。  いま入院中の方はどのくらい残っておられますか。
  52. 高木養根

    高木参考人 お答えを申し上げます。  きょう現在の正確な数字はただいま持ち合わせておりませんが、二、三日前の数字で五十八名様でございます。
  53. 太田誠一

    ○太田委員 東京にまだおられる方も何人かおられると思いますけれども、御家族の方々の看護などに予定せざる出費がいろいろかかっていると思いますけれども、その辺はどうかされておられますか。
  54. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  この治療については、もちろんすべて会社負担でやるわけでございまして、御生存者、おけがをなされましたお客様の賠償につきましては、治癒されましてから後に賠償の話し合いをさせていただく。それまでは治療に専念をしていただいて、実際に完全に治癒をされたというときにこの賠償の話し合いを開始させていただく、こういうふうに考えております。
  55. 太田誠一

    ○太田委員 細かいことをお伺いしますけれども、御家族の方が往復をされたりこちらへ泊まられたりするときに、普通の御家庭ではその辺の出費が大変な負担になるわけですね。そういう細かいことをお伺いしているわけであります。
  56. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  今回の事故につきまして、もちろん御家族、御親族の方が多数東京にいらっしゃいましたし、あるいは往復をされました。特に御入院なさっている方については、御家族が往復をされるというようなケースもあるわけでございます。それで、これはなかなか細かくは申し上げかねるのでございますけれども、おおよそ、そういった交通費あるいは宿泊費というものについては、お近い方、御家族、御親族には会社で負担をさせていただいております。
  57. 太田誠一

    ○太田委員 先ほど補償交渉の窓口というお話をいただきまして、相談室を設けているということでありますけれども、これは、遺族の方々がその相談室に出向いてこられるということを前提にしておられるのですか。
  58. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  これは私どもの方から、相談室の者がそれぞれ、たとえばAという御遺族の方の係ということになりますと、もちろん電話で御連絡するようなこともあると思いますけれども、相談役の方から御自宅にお伺いをしていろいろとお話をさせていただく、これが原則でございます。
  59. 太田誠一

    ○太田委員 亡くなられた方の中にも、たとえば役所にお勤めの方は公務災害の規定が適用されますでしょうし、あるいは会社の使命を担われてそして殉職をされた方には労災規定などが準用をされると思いますけれども、それ以外の、そういった規定が適用されない方も中にはおられるというふうに伺っております。そういう方については別途御配慮をされる御予定はありますか。
  60. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  そういう方には別途お見舞い金というものを出すことを考えております。
  61. 太田誠一

    ○太田委員 それでは、少し事故の原因の点につきましでお伺いをしたいわけでありますけれども、機長が日本航空では管理職である。国内のほかの企業、あと二社がございますけれども、ほかの航空会社では機長は管理職ではないというふうに聞いております。今度のは、新聞に詳細な報道が先般からなされておりますけれども、機長が管理職であるということによって、機内での人間関係というのが実は余りうまくいってないのではないかという指摘もあるわけであります。副操縦士の方々以下は、言ってみればこれは機長から勤務評定をされているのではないか、勤務評定をされる立場にあるのではないかというふうに想像をされるわけであります。そういたしますと、機長に何か異常な行動があったとしても、それを副操縦士以下の方々が、本人に注意をするとかあるいは日本航空運航管理者に対して異常があったというふうなことをもし報告をした場合には、これは普通の会社、普通の社会考え方でいいますと、機長の心証を害ずるというふうにも考えられるわけであります。機長の心証を害するということは、自分自身に何か後で、しっぺ返しということはありませんけれども、いいことはないというふうに考えるのが普通でありまして、そういたしますと、機長に注意をしたり、あるいは異常な行動を運航管理者に対して報告をするというふうなことが規程上はうたわれていても、それが実際には実行をされないというのがほとんどではないかというふうに思うわけであります。  先般、日本航空機の羽田での墜落事故の前に、アンカレッジでもって機長が酒に酔って飛行機が墜落をしたという、やはり人為的なミスの事故がありました。その後、運航規程を改正をされたというふうに伺っておりますけれども、その運航規程の改正によって、乗員同士お互いにチェックをし合う、声をかけ合うという規定が中にあったとしても、それは、機長が管理職であるという制度のなせるわざで、なかなか効果を持ち得ないということはあるかと思います。  この点について今後検討をされる御用意はあるかどうかということをお伺いをしたいと思います。どなたでも結構です。
  62. 高木養根

    高木参考人 ただいまいろいろの点で御質問がございまして、専門的な点については別途別の参考人からお答えをさせていただきたいと思いますが、機長管理職制度を再検討する意向があるかどうかということについては、私どもとしては、現在の機長管理職制度というのは、会社の実情並びに機長のあり方というものから見てきわめて妥当な制度である、こういうふうに確信をしておりますので、これを再検討するというつもりはございません。
  63. 野田親則

    野田参考人 ただいまの先生の御質疑の、もう一つのポイントについてお答えします。  操縦席内で機長が部下の勤務評価をするのではないかという御趣旨の御質問でございますが、具体的には、副操縦士が経験簿とでも言うべき帳面を持っておりまして、これは原則として毎フライトごとに相手の機長がかわるものですから、新しい機長に前回までの状態を伝達する趣旨を主とし、もう一つは、副操縦士自身が自分で能力を伸ばしていくガイダンスといいますか、そういう目的を兼ねまして、搭乗のときに自分が持っておる経験簿というのをその日の機長に示し、それを受け取った機長が、その副操縦士のそのフライトにおける指導のポイント等を考えてフライトを実行する、そういった趣旨のものであります。  この制度について若干の誤解が現実にあったようでありますが、この趣旨を生かすべく運営してまいるというつもりでございます。  以上です。
  64. 太田誠一

    ○太田委員 つまり、いまの機長が管理職であるという制度は非常にいいんだということですが、私が指摘したような点はどうなんですか。いわゆる人間関係、機長と副操縦士、機関士の人間関係ですね。
  65. 高木養根

    高木参考人 ただいまも野田専務からも申し上げましたように、いわゆる機長がその乗務する副操縦士を勤務評定するというようなことはございませんで、所属するグループリーダー以上の上司が勤務評定をする、こういうことでございますので、機長とその他の副操縦士ないしはセカンドオフィサー、フライトエンジニア、これの間は、乗務します場合には当然機長が乗務中はいわゆるコマンダー、指揮者として、客室乗務員も含めてすべて機長の指揮下に入るわけでございますが、その間の意思疎通について、ただいま御指摘がございましたような、管理職であるために意思疎通がよくないというようなことは、私どもは考えられないと思います。
  66. 太田誠一

    ○太田委員 この間、事故のありました翌日の新聞やその翌々日の新聞に、高木社長もごらんになったと思いますけれども、パイロットの片桐さんがゴムボートに乗って平然としておられる姿の写真が掲載をされました。あるいは、その後バスに乗っておられる写真も掲載をされております。私、恐らく高木社長も同じ気持ちだろうと思いますけれども、大変ショックを受けまして、二十四人の方々が亡くなられた事故の責任者、刑事責任を今後追及されることになると思いますけれども、それは日本航空、会社としても同じだと思いますが、あのときに簡単に自分の責任を負うべき機を離れることができるというふうになっていたのかどうか、そこのところをお伺いしたいと思います。
  67. 野田親則

    野田参考人 お答え申し上げます。  緊急事態における乗員の責任及び任務について、基礎となるものは航空法でありますが、当社の運航規程では「緊急事態に際しては、機長は事態終了まで的確な指示を与えなければならない。」そういうこと。もう一つは「緊急事態に際しては、関係職員特に乗員は、最後まで事態克服に対する努力を怠ってはならない。」と定めております。この意味するところは航空法第七十五条の内容と同じ意味であります。  肉体的、精神的に旅客の救助活動を行い得る乗員については、その活動に最善を尽くしたものと確信しております。航空法及び運航規程違反はなかったものと考えておりますが、ただ、現在まで、会社がいろいろ乗員の行動について調べておる着水後の状況把握が、ことに機長に関してはまだ不十分でございます。さような事情から、こういう航空法並びに社内規程に照らして、機長の行動がどうであったかという判断をまだ下し得ない状態にございます。  その他の乗員、副操縦士は、機長のそういう状態を見て、自分がかわりに指揮をとるというつもりで行動したというふうに見ております。客室乗務員は、それぞれ期待されるような活動をいたしたというふうに、調査の結果、結論できると思います。航空機関士については、大変重傷でございましたので、この人は肉体的に活動が不可能であったというふうに考えております。  以上です。
  68. 太田誠一

    ○太田委員 陸上交通機関の場合は、国鉄の場合もそうでしょうけれども、人を傷つけたりあるいは死亡に至らしめた場合には、直ちに現行犯逮捕をするということになっているわけであります。今回のように二十四人の死者が出た、そして、ほとんどの方が何らかの重軽傷を負っておられるという日航機の墜落事故の責任者である機長に対して、逮捕をしないという理由はどこにあるのか、その根拠はどうなっているのかということをお伺いしたいわけであります。  もし、飛行機のパイロットであるということだけでもって、陸上のほかの公共的な交通機関は逮捕されるけれども、航空機のパイロットだから逮捕されないというのではおかしいわけですね。その辺、法的な差別というとなんですけれども、何か区別がなされているのではないかということをおそれるわけであります。ちょっとその辺を……。
  69. 大堀太千男

    ○大堀説明員 一般的に、航空機事故につきましては、陸上の交通事故と異なりまして、事故原因が複雑でありますし、事故原因の究明につきまして相当困難であり、また日時を要するものでございます。  先ほどもお答え申し上げましたとおり、現在鋭意事故原因の究明についで捜査をしておるところでありまして、確かに、現在までの捜査の結果によりますと、今回の事故につきましては、機長の操縦ミスによる疑いが強く出ておることは事実であります。  しかし、先生御案内のとおり、われわれ捜査をしておりますものにとりましては、事故原因というものを証拠に基づいて明らかにし、その後において逮捕するかしないかという問題は当然検討することでございますが、逮捕するかしないかということをあらかじめ予告し、あるいはしないということを予告するというわけにもまいらぬ事情がございますことは、十分御賢察いただきたいと思います。  以上であります。
  70. 太田誠一

    ○太田委員 もう一度重ねてお伺いしますけれども、陸上交通の場合には、人を傷つけたり死亡に至らしめた場合は、直ちに現行犯逮捕するということになっているのではないですか。
  71. 大堀太千男

    ○大堀説明員 お答えいたします。  いずれもケースによって異なりまして、陸上交通だからすべて逮捕をするということではございません。逮捕をする前提とすれば、当該被疑者が犯行を犯したことが明白であるということを、相当な疑いを持って私どもが把握しなければならぬということが前提でございます。  現在、今回の事故につきましては、その原因が何であるかということについて究明中でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  72. 太田誠一

    ○太田委員 陸上交通の場合も、そういうふうに、事故後すぐにドライバーに責任があるというふうなことが明白に立証できるかどうかといったら、立証できない場合の方が多いのじゃないかと思うのです。逮捕するか逮捕しないかというのは、ある程度推測に基づいてやるわけでしょう。その時点でもって事故の現行犯逮捕をするというときには、必ずしもこの人が責任者だ、この人に責任があるのだということをはっきりして逮捕するわけではないわけで、一〇〇%間違いないということは言えないわけでしょう。ですから、今度の場合に、機長が身柄を拘束されなければいけないということは現にあるのではないですか、陸上交通の場合のアナロジーで考えれば。
  73. 大堀太千男

    ○大堀説明員 お答え申し上げます。  現行犯逮捕の場合には、現に罪を犯したことが明白であるということについて現行犯逮捕をするわけであります。しかし、捜査は、一般論といたしまして、逮捕をしてやる場合あるいは任意捜査をしてやる場合、いろいろケースによってございますし、また逮捕の時期その他につきましても、いろいろな要素を検討しなければならないことは先生御案内のとおりでございます。したがって、今回の事故につきまして、何も差別をしておるとかいうことでは決してございませんで、現在、事故原因ということについて、あらゆる角度から鋭意検討をしておるわけでございます。  御指摘のとおり、もう一〇〇%クロだということがわからなければ何も手を出さないというものではございませんが、しかし、私どもとしては、まだ捜査を尽くすべきいろいろな点がございますことを御理解いただきたいと思います。
  74. 太田誠一

    ○太田委員 もう時間が参りましたけれども、ひとつここで、私も、最後に指摘をさせていただきたいことは、御遺族の方々はいまは悲嘆に暮れておられるところでしょうけれども、ともかく早く今後の生活について日本航空に相談に乗ってほしいという、日本航空に相談に乗ってほしいというよりも、むしろ、日本航空の方からイニシアチブをとって、補償をどうするかというような方向づけをしていただくことを望んでおられることと思います。そしてまた、傷つかれていま入院をされている方々の今後の生活につきましても、日本航空がそれを待っているということではなくて、むしろ進んで御意向を先取りする形でもって話し合いをされることを、改めてここでお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手
  75. 西中清

    西中委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時七分開議
  76. 西中清

    西中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。永井孝信君。
  77. 永井孝信

    ○永井委員 きょう午前中の委員会の冒頭に、運輸大臣と日本航空社長から、今回不幸にして起きましたあの羽田沖の事件について、一応陳謝の意思が表明されました。そうして、この委員会でも黙祷をささげるということで厳粛に行われたわけでありますが、私も冒頭に、お亡くなりになりました方々の御冥福を祈るとともに、いまそのけがのために苦しんでいらっしゃる方々の、一日も早い御回復を心から御祈念申し上げていることを表明しておきたいと思います。  そこで、もうすでにこの事故調査について具体的な活動に入っているわけでありますが、午前中の質疑を通して出てきました問題も含めまして、幾つか問題を提起してみたいと考えるわけであります。  まず冒頭に、あの事故が起きた直後、テレビを見ておりますと、事故が起きたということは九時ごろにニュースが入っておったわけでありますが、最初に二人の死亡者の名前がテレビのニュースで流れたわけであります。その中に機長が入っておったわけですね。最初は機長は死亡しておるということでニュースが流れた。そうして、しばらくすると機長は重体であるというふうにニュースが変わった。そうして、新聞の写真として報道されましたが、機長が元気な姿で、いとも安易な状態の中でボートから出てくるような姿で写っておった。こういうことも踏まえて軽傷だということが明らかにされた。そうして、その中で高木社長の方から、本人の心身症にかかわる問題も記者会見で発表された。こういう経緯をたどってきたわけですね。  なぜこういうことになったのか。死亡説が流れてからいまの病院に入院をしているという間の、三時間とも五時間とも言われているわけでありますが、その間、日航自体どういう対応をしておったのか、まず冒頭にお聞かせを願いたいと思います。
  78. 野田親則

    野田参考人 お答え申し上げます。  私は当社の事故対策本部の応急処理局長という立場にありますが、事故勃発当時まだ本部におりませんでした。成田飛行場のすぐそばにおりまして、そこから引き返しましたので、本部に参加するのが若干おくれました。  ただいまの機長の生死に関する情報について、本部の記録を大急ぎで全部見ましたけれども、まず機長に関する情報としては、いま時刻を明確に覚えておりませんが、九時何分という九時台のところに、キャプテンは助かるという簡単な報告が前線から入ってまいりました。第二回は十時二十四分ごろでありまして、これは、空港支店の管理職が救助活動に参加しておりましたが、その者から、現場の消防庁の救護リストの中に機長の名前、漢字で片桐清二、三十五歳というのを見出しまして、これが救出者名簿という中にありまして、そして十時二十四分ごろ、機長は生存しているらしい、しかしどこにいるかはまだわからない、そういう第二報が本部に入りました。それと相前後して、報道では、死亡したという情報がもう報道されておりました。その辺から、本部としても機長の生死を調べるべくいろいろな調査を開始いたしましたが、事故勃発当初は救護というのが第一優先度でございますものですから、十分な手を回すことはできませんでした。  結論として、機長は船で陸上に運ばれて、そこからリムジンバス、大きなパスですけれども、その四台のうちの一つに乗せられて、東京空港の中の東急ホテルという臨時の負傷者の収容所、そこに運ばれました。その七階でしばらく時間をつぶしましたが、ホテルに到着した推定時刻は十時二十何分あるいは三十分、そういう程度と推定しています。それから、その待ち合わせをする大きな部屋でしばらくの時間を費やしているうちに、他の社員が機長を認め、医師に告げたということで、機長がそこにいるということが判明しました。そして、医師の診察を受けて、かなり重傷であるということがわかりましたものですから、七階の部屋から六階の重傷者を収容するホテルの一室に収容されました。十時半見当のときに救急車が参りまして、その救急車に収容されて、慈恵医大附属病院というところに副操縦士と相前後して到着、収容されました。病院に到着したのがほぼ十二時五十分ごろであります。そのころ、乗員の生死を確かめるために、方々に派遣されていた者の一人へ乗員でございますが、病院に待ち受けてそれを確認し、確かに生存しているということを本部に通報してまいりました。したがって、本部では十二時五十四分ごろ、確実に生存を確認したということになった次第です。その旨を、十三時十分からしばらくの間に、社内外の関係のところに報告をいたした次第であります。  以上、御報告申し上げます。
  79. 永井孝信

    ○永井委員 時間を追っての経過を説明していただければそういうことになるのかもしれませんけれども、私は、午前中の質疑にも出ておりましたが、航空法の七十四条あるいは七十五条によって規定されておりますように、本来機長が果たすべき役割り、任務を全く果たしていない、これは大きな問題でありますが、それとともに、本人がリムジンバスに乗って東急ホテルに収容された、その時点でも、なおかつ機長の方から会社の上司に何の連絡もとっていない。日航の社員の人が機長がいることを見つけて、ここにいるということが判明した。話としては全くふざけた話だと思うのですね。しかも、その機長が日本航空の会社では管理職という立場に指定されている。一体これでは、会社側の管理職に対する教育もどうなっておるのかということを問わざるを得なくなってくる。そのことは、たくさんの機長がいるわけですから、六百九名ですか、六百九名もの機長がいる、その大きな会社で、こういう大事なときにこういうことが起きてくるということは、まさに背筋に寒さを覚えると言っても過言でないと思うのであります。  言いかえるなら、慈恵医大病院に収容されるまでの過程で、日本航空として打つべき手があったのではないか。いわばこれは勘ぐりかもしれませんけれども、日本航空自体が、そのことを見る限り、言葉では救出に全力を挙げたと言っておりますけれども、乗客よりもまず事故を隠すことが優先したのではないかと疑わざるを得ない。この関係について、高木社長からお答え願いたいと思います。  なお、注文をつけて悪いのですが、ごく限られた時間でありますので、要点をごく簡潔に御答弁を願いたいと思います。
  80. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  機長のそういった行動につきましては、私自身きわめて遺憾に存じます。機長を管理職にしてありますことは先生御指摘のとおりでございますけれども、私としては、片桐機長の行動というのは日本航空の職員の中でもきわめて異例でありまして、他の者についてはそういうことはないというふうに信じておりますし、会社自身が、片桐機長の行動に関連して、特に何らかの意図を持ってやったことは絶体にありませんということを御報告申し上げます。
  81. 永井孝信

    ○永井委員 あわせて、これまた午前中の質疑に続いて申し上げるわけでありますが、機長が管理職であって、機内において他の乗務員との間にコミュニケーションができにくいという関係にあるのではないか、こういう太田委員の質問がありました。それに対して、そんなことはないという御答弁が午前中にされているわけであります。果たしてそうなんだろうか。機長は管理職である以上、たとえばこの事故の前日に、羽田沖の上空で急旋回をした異常運航が新聞でも報道されておりました。調査される段階ではこのことについても当然調査されていると思うのでありますけれども、もしそのときに異常な運航自体が事前に把握できておれば、その機長に対して何らかの形で会社側からチェックできたのではないか、こういう気がするわけでありますが、そのことがなかなか事前に把握ができなかったようにも私は聞いているわけでございます。ところが、その場合に、仮に機長が異常な行動に出た場合、他の乗務員がそのことを、ある意味で言うと内部告発のように、会社側に報告できるだろうか、私はそのことはきわめて疑問に思うわけであります。  たとえば、ここにかってのクアラルンプールでの事故のときに、会社側が事故調査報告書というものを出しているわけでありますが、その報告によりますと事故が起きたのは御承知のように昭和五十二年九月二十七日でありまして、そのときに、この航空事故調査の報告書の中に、前文は省略いたしますけれども、非常に重要なことを書いているわけですね。そのことをちょっと御紹介申し上げますと、「さらに重要なこととして、副操縦士が、発行されているカンパニーレギュレーションに違反した機長に対し、チャレンジを行わなかったことが上げられる。」ということが、報告書の中に書かれているわけです。なぜ副操縦士は機長に対して何も言えなかったのか。このことは、この当時の事故調査でも明らかにされているわけであります。  ですから、午前中の質疑で日航の参考人の方々がお答えになっていらっしゃることについて、機長と他の乗務員とが十分にコミュニケーションを図ることができていると確信しているという御答弁があったわけでありますが、果たしてそうなんだろうかという疑問を率直に持たざるを得ないわけであります。参考人の方に対しては非常に厳しい質問のようでありますけれども、問題が問題であるだけに、ひとつそこは割り切って受けとめてもらって、もう一度この関係についてお答え願いたいと思います。
  82. 野田親則

    野田参考人 マレーシアの事故についてお尋ねがございましたので、その点についてお答えします。  デシジョンハイトあるいはミニマム・デッセント・アルティチュード、要するに、最低高度まで下がったときにキャプテンでない副操縦士がそれを注意しなかったということが、この事故の一つの教訓でございました。  それで、そのことがなぜ起こったかということは、乗員が死亡しておりまして的確にはわかりませんが、いろんな状態から判断しまして、副操縦士の方にそういう事態の認識がなかったのではないかということをうかがわせるそういう節もございますものですから、この事故からは、そういうことが起こったらキャプテンに注意をするということと、そういうことになるのをよく注意するということと、両方が教訓として出てまいりまして、この事故事故対策の一項目として、そのようなやり方が自後会社のプロセジュアの中に入れられた次第でございます。
  83. 永井孝信

    ○永井委員 この問題については、後ほど時間の都合を見ながらさらにちょっと掘り下げて質問してみたいと思いますが、時間が限られておりますので、ちょっと他の問題について質問をしてみたいと思います。  これは運輸省、運輸大臣にお聞きしたいのでありますが、航空事故調査委員会というのがあって、それぞれ発令されているわけでありますが、その方々の略歴を見ると、非常に技術的な専門家で占められている分が多いのでありますね。ところが、今回の事故のように機長の人為的なミスということがいろんな健康管理上の問題にまで発展してきているという状況から見て、当然調査に当たる人々の中にやはり医学の専門家というものも入れるべきではないかという気がするわけであります。  きょう所信表明に続いて行われました施策の説明の中で、航空機乗員の航空適性管理を行うためと称して、「検査体制充実のため、航空身体検査医及び航空身体検査機関を逐次追加指定する。」ということも、この提案の中には盛り込まれているわけであります。そうしてまた、昭和四十四年四月の運輸大臣が行った「航空機乗員の航空適性の確保に関する具体的方策について」という諮問に対して出されております答申を見ましても、航空機乗組員の適性検査機関の設置を行うことが不可欠の要件であるという答申もされているわけでありますが、この辺の関係は現准どうなっているのでございましょうか。運輸大臣、ひとつ御答弁をお願いいたします。
  84. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 詳細につきましては政府委員からお答え申し上げますが、昨日も運輸委員会において御答弁申し上げましたが、確かにその部分が、まだ公的な機関の設立は欠落しておるわけでございます。  その理由は、やはり人材の確保という問題が最大の問題でありまして、特に心理学あるいは精神医学、そうした問題についての深い造詣のある方々を多数集めるということの困難性なども、その理由になっておるわけでございますが、やはりこうした問題について、運輸省としては、一つは、航空局長の諮問機関としての機関、あるいはまた運輸省航空局の関連のある機関等々を動員しながら、常時そうした問題についての補完的な検討を続けておったわけでございます。
  85. 中村哲

    ○中村説明員 前段の方の御質問にお答え申し上げたいと思います。  運輸省航空事故調査委員会は、委員長一名、委員四名で構成されております。科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者から、両院、衆議院及び参議院の同意を得まして、運輸大臣から任命されておるものでございます。  御指摘のとおり、この委員の中には医学に関する専門家は入っておりません。しかしながら、事務局には、航空医学の専門家は、医師でございますが二名常時併任されておりまして、事故が発生して必要な際には、いつでもこれらの医学専門家が現場へ赴くなどいたしまして、調査に当たり得る体制がとられております。今回の事故の場合には、この両名のほかに、さらに二名の航空医学の専門家でございます医師が、事故調査委員会の事務局に併任されまして、現在、これら四名の者が鋭意その専門分野にわたります調査を進めておるところでございます。  そのほか、専門の事項を調査させるための専門委員を置くことができる、こういうことになっておりまして、必要に応じましてこういった制度をも活用して調査の万全を期したい、かように考えております。
  86. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 先ほど大臣の御答弁申し上げましたことにつきまして、補足的に御説明申し上げたいと思います。  先生御指摘の昭和四十四年の航空審議会の答申のうち、その他の事項はすべて実施済みでございますけれども、御指摘の航空医学・心理学に関する検査研究機関の設置という項目については、まだ実施がされていないわけでございます。  しかしながら、先ほど大臣も御答弁申し上げましたとおり、この答申に書いてございますこの機関が行うべきとされております事項の、たとえば判定困難な場合の審査の問題でございますとか、身体検査基準の検討の問題でございますとか、これらは、航空医学の専門家を集めました航空身体検査証明審査会という会を活用して、ここで専門家の意見を伺うということで実施いたしておりますし、また、その他の航空医学・心理学の研究という部門につきましては、私どもの関係の財団法人等を通じまして民間に委託し、毎年度かなりの研究を行ったり、あるいは海外における身体検査基準の検討というようなものを逐次行っておるわけでございます。  しかしながら、今後、今度のような事故が起こりましたわけでございますので、この答申に書かれました検査研究機関というものをどういうふうにしたらいいのか、これは医学・心理学の高度の知識を要する問題でございますので、専門家の方々の意見も広くお聞きして今後検討してまいりたいと考えております。
  87. 永井孝信

    ○永井委員 なかなか十分に質問と答弁がうまくかみ合っていかないわけでありますが、時間の制限でやむを得ないと思います。  それで、とりわけ今回の事故に関連して私が重視している問題について、一つ二つ質問をしてみたいと思います。  まず日航自体の労務管理の問題でありますが、昭和四十七年ですか、機長が全部管理職に指定をされるという、世界でも例のない職制制度をとっているわけでありますが、このことについて、管理職制度は妥当なものであるというふうに、高木社長は午前中の質問で答えていらっしゃるわけであります。私はこれは非常に大きな問題だと思いますので、あえて質問するわけでありますが、日航がこういう問題について大変な状態にあるということをなぜ私が指摘せざるを得ないか、ちょっと申し上げてみたいと思います。  私の調べましたところでは、日本航空の労働組合は幾つかありまして、そのうち一番大きな労働組合が一万三千人。これは地上勤務者が一万一千五百人、乗務員が千五百人、これは客室乗務員でありますが、千五百人という大体の仕分けになっているわけであります。そうして日航乗務員組合が千四百五十人。客乗組合が二千八百人。これと別に、機長は管理職でありますから、六百九名いらっしゃるわけですね。ところが、労働条件なんかの話をして協定を結ぶということになると、当然一番組織人員の多い労働組合との交渉の経過というものが結論的には重視をされることになる、またそうなってきていると私は見ているわけでありますが、そうなりますと、地上勤務員が一万一千五百人もいる、そこの労働組合の意思がきわめて重く判断されるということになってくると、乗務員の労働条件がついついなおざりにされがちになってくる、こういうことを私は指摘せざるを得ないわけであります。  そこで、昭和四十七年に発足した当時、機長にアンケートをとった中身をここに持っているわけでありますが、その当時、機長のうちざっと五六%の人が、機長は管理職になるべきでないということをアンケートに答えているわけです。そうして、また最近、一九七七年でありますが、このときに全機長に意識調査、アンケート調査したものがあるわけでありますが、この中に五十何人かの機長が、組合員であるべきだとする意見を述べていらっしゃるわけであります。  その中で見てみますと、機長であるがゆえに十分な休養をとることを申し出ることができない、こういうことを訴えている人もいる。あるいは、たとえば会社の安全対策、この項目をちょっと御紹介してみますと、ある機長が答えているわけでありますが、会社の安全対策には、四十七年当時からの連続事故があったときの教訓が全く生かされていない。五十二年の連続事故の教訓も生かされそうもない。年末手当の回答やあるいは安全ブリーフィング資料を見ただけでも、真の事故原因を見ようとしていない。対策も立てようとしていない。口先で安全運航優先を言っている会社の行動の中には、何一つ安全運航優先の姿勢は見られない。このように、具体的な事柄は私はわかりませんけれども、アンケートをとると、そういう回答をしていらっしゃる方がいるわけであります。  あるいはもう一つ、これは全然別個の問題でありますが、たとえばいわゆる企業の経営収益を上げるためにということから、燃料の問題についても、内部告発的に機長がアンケートの中に答えている面があります。  たとえば木更津から羽田まで二百ポンドの燃料消費で進入すること、三万五千フィートの高度から着陸まで二千四百ポンドしか燃料を使ってはいけないこと、こういうことが会社の方針として義務づけられてくる。そしてその計算の基礎になっておるのは上昇の時間が実際より七、八分少なく見積もられていたり、降下する場合も多少少ない時間で見積もられていたり、実態と合わないことが間々にして多い。こういうことについて、補充燃料といいますかそういうものを請求した場合、会社側から、そういうものを請求するのならその理由を書いて上申してこいというふうに突っぱねられてしまったというようなことまで、いろいろな意味で、この多くの機長が内部告発的にアンケートに答えているわけです。  こう考えていきますと、機長を管理職にしたということは、単に経営上の政策というよりも、むしろ労務対策上の性格を持っていたのではないか、そういうことが機長に必要以上の労働条件の悪化をもたらせ、あるいは、心身症という病気はどんな病気かはっきりわかりませんけれども、そういう病気になりやすい環境というものがつくられてきたのではないか、こう考えるわけであります。この関係について労務担当の方から簡単にお答えいただけますか。
  88. 萩原雄二郎

    ○萩原参考人 お答え申し上げます。  機長管理職制度につきましては、すでに高木社長からお答えしておりますとおり、機長の職責の重要性にかんがみましてこれを導入したわけでありまして、労務対策上の問題ではございません。  また、機長の勤務条件につきましては、確かにその他の組合員であるところの運航乗務員と異なるものはございます。しかしながら、機長の勤務につきましては原則としてオペレーションマニュアル、運航規程に従って運営しておりまして、なおかつ、できるだけその他の運航乗務員と同様の運用基準を適用してやっておるということでありまして、機長が特に過酷な労働条件を強いられているというような事実はないと考えております。
  89. 永井孝信

    ○永井委員 過酷な労働条件を強いた覚えがない、こういう御答弁でありますけれども、この何人かの、何人かのというよりも数十人でありますが、数十人の機長がアンケートに答えている内容をつぶさに見てまいりますと、管理職にされたがゆえに労働条件の問題も改善をしてもらえない、こういう訴えがきわめて多いことを私は重視をしているわけであります。したがって、ある管理職の機長の方が言われているわけでありますが、管理職の機長を重視する会社方針というのは、技術者としての熟練度よりも、労務対策を優先させる考え方の端的なあらわれと受けとめているというアンケートも、この中に存在をしているわけであります。事実そういうことがないとすれば幸いでありますけれども、いまの日航の労使の関係から見る限り、その危惧を持たざるを得ないのが私の率直な感じであります。  人命を預かるこの大変な仕事に、少なくとも労使関係の問題が影を落とすということがあっては絶対にならないことだと私は考えるわけであります。この辺の関係については、きょうは時間が十分でありませんので、掘り下げて質問するわけにいきません。改めて別途そういう機会も持っていきたいと考えているわけでありますが、そういう労務管理の面から事故につながることのないような会社の経営施策というものを、私はぜひここで厳しく求めておきたいと考えるわけであります。  その次に、これまたきょうの午前中の質疑であったのでありますが、いま機長が入院をしている中で調査が進められておって、なかなか調査が進展をしない、結論が出るまでにはかなりの時間を要するということが表明されているわけであります。  陸上交通事故の場合と航空事故の場合の警察当局の対応の仕方にも、差があるのではないかという質問もありました。確かに一般的な常識で考えますと、陸上交通の場合、人身事故を起こして相手を死亡させたというような場合は、例外はないとは言いませんけれども、九九%近くは強制捜査に警察当局は踏み切る場合が多いと私は見ているわけであります。  今回の場合、もちろん事故調査については慎重の上にも慎重を期さなくてはいけないということはわかるのでありますが、場合によっては、人為的なミスであろうということの周囲の状況がこれだけたくさんある時点では、むしろ国民の前に強制捜査に踏み切るぐらいのことがあってもいいのではないか。あるいは、これが単に機長だけではなく、私が指摘しておりますように労務管理上の問題、あるいはもともとの日航が果たさなくてはいけない運航管理体制にもしいささかでも欠陥があってこういう事故に結びついておると考えるのであれば、そういう面についてもむしろもっと積極的な態度で警察当局は当たるべきではないかと考えるわけでありますが、警察当局の御答弁をお願い申し上げます。
  90. 大堀太千男

    ○大堀説明員 お答え申し上げます。  今回の事故につきましては、現在までの捜査の状況からいいまして、機長の操縦ミスによる事故の疑いが出てきておることは事実でございます。しかし、先生御指摘の陣上交通との対比から、これほどの大きな事故であるからぜひ強制捜査をすべきではないかという御意見でございますが、私ども、強制捜査をするかどうかということにつきましては、あらかじめどうこうということを申し上げる立場にございません。  現在、警視庁におきましては、引き続き事故機の検証あるいは機長及び乗務員に対する事情聴取を行い、また機長の健康状態についても、家族なり医師あるいは日航関係者に対する事情聴取を行いまして、航空事故調査委員会による事故原因調査結果等も踏まえて適切に対処してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  91. 永井孝信

    ○永井委員 時間がなくなってきましたので大変はしょって恐縮でありますが、運輸省自体も日常的に監査をされていると思うのでありますが、日航の場合に限らず、過去にも幾つか大きな航空機事故がございました。その都度運輸省当局は、安全確保のためにあらゆる努力をする、あるいは監査の中で厳しく問題点をチェックすると言ってきているわけでありますが、今回も不幸にしてこういう問題が起きた。監査体制をこれからも厳しくすると言われていますが、具体的にどのような決意で臨まれるのか、運輸大臣、お答えいただきたいと思います。
  92. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 大臣の所信表明にもございましたように、運輸事業安全確保ということは最大の使命でございます。私ども運輸事業を監督する立場にある者といたしましては、常にこのことを心がけ、関係事業者を指導監督してまいる必要性があることは、これはもう御指摘のとおりでございまして、私ども、法律の規定に従いまして、主要な事業所につきましては年一回、あるいは海外の事務所につきましては二年もしくは三年に一回というようなことで、安全性の確認検査を行ってきております。  私ども、十分な陣容とは申せませんけれども、常に安全確保ということを第一の使命と心得まして、今後の監査を通じまして厳重に事業者の監督に努めてまいりたいと考えております。
  93. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 このたびの日航機墜落事故に関連しましては、特に医学的と申しましょうか、そうしたような問題が介在するやに推測されております。こうした問題に対しては、従来のいろいろなシステムが必ずしも十分に作動していなかったというふうに思うのでございまして、今後は、こうした面につきましても、従来の安全管理安全対策をさらに幅広く、深く実践をしてまいりますが、同時にまた、先ほど来の御質問にもございました精神衛生面あるいは健康面、こうしたものにもできるだけ、安全確保のための領域を拡大して、御期待に沿う努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  94. 永井孝信

    ○永井委員 これで終わりますが、不幸にして亡くなった方に対する補償問題も、誠意を持って行うように私は高木社長の話を聞いたわけでありますが、もちろん金額面でこだわってはならぬ、これは当然なことでありますが、この補償の交渉をされる場合も、これが他の事故と違ってきわめて異例な状態で起きている、人為的なミスといいますか、そこには会社側の管理体制も厳しく問われるわけでありますので、その補償交渉を通してでも、会社側のその責任の所在が明確になるような、そういう立場での補償交渉が誠意を持って行われるように最後に希望しまして、短い時間でありますので十分意を尽くせませんでしたけれども、一応私の要望をつけ加えて、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  95. 西中清

  96. 竹内猛

    竹内(猛)委員 まず最初に、事故によってお亡くなりになった皆さんに哀悼の意を表し、同時にまた、治療中の皆さんの一日も早い全快をお祈りいたしたいと思います。  そういう立場から、私は、参考人の皆さんに厳しい言葉になるかもしれませんが、質問をしていきたいと思いますので、失礼の段はお許しをいただきたいと思います。  まず最初に、運輸省にお尋ねしますが、この種の事故はいままであったかなかったか、あったとしたらどの事故がこういう事故に値するか、それをお聞きします。
  97. 長澤修

    ○長澤説明員 お答え申し上げます。  今回の事故の原因につきましては、目下航空事故調査委員会におきまして鋭意調査中でございますけれども、最近の離着陸時の事故の例といたしましては、五十二年のクアラルンプールの事故及びアンカレジでの事故がございます。  クアラルンプールでの事故の事例に対します対策としましては、乗員に対する訓練の充実あるいは資格要件の強化等の措置を講じてまいりましたし、またアンカレジの事故の事例に対する対策といたしましては、乗員の状態のチェックに関する運航管理者の権限の明示、あるいは心身の状態に関する乗員の相互チェックシステムの導入、こういった措置を講じてきたところでございます。
  98. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そういうような事故があったにもかかわらず、かなり注意をしているにもかかわらず、今回はより以上の事故が起こっておるということで、はなはだ遺憾であります。  そこで、事故の原因として、きのうからそれぞれの委員会で質疑が行われておりますが、自然的現象、気象条件等々が原因しているということではない。また飛行機自体、機体にも問題はない。問題は機長の資質並びに精神状態、その管理、こういうところに大体集中していると結論づけられておるわけですが、この点についてはどうですか。
  99. 中村哲

    ○中村説明員 お答え申し上げます。  現在、本日午前中までに、機体の大部分が揚収されまして格納庫に納められたという状況でございます。ボイスレコーダー、フライト・データ・レコーダーにつきましても解析を進めておる段階でございます。したがいまして、現段階で事故の原因を云々するというわけにはまいらないかと存じます。  私どもといたしましては、ただいま先生がおっしゃられました気象条件、乗組員の健康状態、あるいは機体、エンジン、操縦系統の欠陥の有無、こういったことを含みます広い分野にわたりましての事実を集めまして、その事実の上に立ちまして真の事故原因を明らかにしてまいりたい、かように考えております。
  100. 竹内猛

    竹内(猛)委員 先ほど、この結論については大体半年ぐらいかかるというようなお答えがありましたが、今度の事故の場合には、亡くなられた方々の御家族の皆さんは大変お怒りになっておるということは、先ほどの社長のお話しのとおりですが、私どももこの点については同じ気持ちなんです。もっとスピードを上げて事故の原因を明らかにして、そして本当に再発しないように、そういうことを捜査の上でも、原因究明の上でもやる意思はないか。これは運輸省指導官庁としてしっかりしてもらいたい。どうです。
  101. 中村哲

    ○中村説明員 やっと本格的な調査が始まったばかりでございますが、この事故に関します国民的な関心の大きさ、深さにかんがみまして、運輸省航空事故調査委員会におきましても、でき得る限り早く真の事故原因を明らかにしまして、運輸大臣に御報告申し上げ、皆様に公表いたしたいと思っております。  なお、この間、わかりました事実につきましては、適当な機会を見まして逐次大臣に御報告申し上げ、公表してまいりたい、かように考えております。
  102. 竹内猛

    竹内(猛)委員 問題は、先ほどからも整理をされているように、片桐機長の資質と健康上の問題にある。その資質からすると、この機長の経歴から言えば、意外に機長になる時期が早かったと言われておりますけれども、これは正当な形で正当な訓練をして機長になられたのか、それとも何か特別な事情があったのか。その辺はどうです。
  103. 野田親則

    野田参考人 申しわけありません。いま資料を整えますので、それまでの間、大体のことを申し上げます。  片桐機長は航空大学校出身でありまして、したがいまして、採用時から事業用の操縦士という資格を有して採用されました。それが一つ。  第二に、当時はいまのようにパイロットの種類がセカンドオフィサーという制度がございませんでした。現在はセカンドオフィサー、その次にファーストオフィサー、それから機長という三段階の進み方をするわけでございますが、当時はセカンドオフィサー制度というのがないものですから、かなり早くファーストオフィサー、すなわち副操縦士になり、そういう過程を経て昭和五十四年に機長に任用されております。  その間の飛行時間等については後刻御報告できると思います。  要約いたしますと、同期に採用した人たちのグループでは速い方に属します。しかしながら、飛行時間は十分経験を経て昇格をいたしておるものであります。その間において、副操縦士の持つ小型双発機の教官の役目をかなりの期間やっております。これは初級のパイロットを養成するための教官の仕事であります。
  104. 竹内猛

    竹内(猛)委員 先ほど永井委員からもお話があったように、管理体制という立場から片桐機長等々の健康上に負担をかけるようなことが間々あったのではないか、そして特に心身的に疲労するような問題があったのではないかということが言われているけれども、これについて気のつくことはないか。
  105. 野田親則

    野田参考人 特にございませんでした。
  106. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それでは、片桐機長の夫人が、神奈川県三浦郡の葉山町に自宅がありますが、そこに盗聴器が仕掛けられてあるということの幻覚から、葉山署に電話をするというような異常な状態があって、これはもうすでに新聞に出ているが、そういう問題について管理者に連絡をすると、それは聞いて知らぬふりをしたということが言われているけれども、これは事実かどうか。新聞にあることはでたらめで、ここで言われることが本当だと言われるのか。どっちですか。
  107. 野田親則

    野田参考人 昭和五十五年の暮れごろから病気になりまして、それは本人からの報告により、会社もそのことを初めて把握いたしました。それからの回復の過程に、大変しばしば、乗員健康管理室の医師とそれから当人の上司等いろいろな人が、本人及びその家族と頻繁な接触を保って病気の回復に意を用いて援助したということはございました。  先ほど幻覚症状云々とおっしゃいましたその件については、残念ながら、事故発生後の報道によって初めてそのことを知り、事故後その事実のあったことを確認できた次第であります。この辺が、私どもの健康管理の中で一つの問題点として、今後どうしたらいいかという非常に大きな問題と考えております。
  108. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それ以前にも、きのうもすでに運輸委での質疑が終わった後で、本人の既往の病気の経歴というものを余り大事にしない、そして二重帳簿をつくったというようなことが言われている。いやしくも、人の命を最も大事にしなければならない、われわれもまた飛行機に乗る場合にはそのすべてのものを信用し、信頼をして飛行機に乗るわけでありますが、その機長並びに乗務員が、資質において、精神状態においていろいろ問題があるということを隠すような事態、こういう問題が過去にあったとするならば、これはひとり片桐機長の責任ではなくて、会社の責任であり、同時に、それを監督している運輸省にも責任がないとは言えない。そういう点についてそれぞれどのように感じられるのか、その点をお聞かせいただきたい。
  109. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私といたしましては、現在、この事故の原因調査、この究明がきわめて重要なことであるし、また同時に、十五日から十九日にかけての日本航空に対する立入検査をいたしておりますが、こうした事態が明白になりまして、まとまり次第、適切な処置をとってまいりたい。しかしまた、こうしたことは人命に関することでもあるし、非常に重要なことと考えておりまして、今後二度と事故を起こさないように、あらゆる機関を動員して適正に対処してまいりたいというのが現在の私の心境でございます。
  110. 竹内猛

    竹内(猛)委員 労務管理の問題に関しても、すでに労働省から、日本航空では乗務員等の勤務時間管理等に問題があるとして、労働基準監督署から勧告を受けたと聞いている。この勧告の内容及び勧告によって指摘された事項に対し日本航空がとった処置については、労働省はどういう勧告をし、日本航空はそれに対してどう処置をされたか。
  111. 岡部晃三

    ○岡部説明員 日本航空につきましては、昭和五十五年六月に、成田地区事業所に対しまして所轄の監督署から、労働安全衛生法に定める衛生管理者の選任、産業医の選任、安全衛生委員会の設置、雇い入れ時の健康診断、それから労働基準法に定めます賃金台帳の調製についての是正勧告を行ったところでございます。  日本航空におきましては、この是正勧告を受けましてそれぞれ所要改善措置を講じたところでございまして、一部を除きまして是正が現在まで図られてきているところでございます。  一部是正がおくれている部分についてでございますが、たとえば安全衛生委員会の設置等につきましては一部労働組合からの委員の推薦がないこと等、それからまた、貸金台帳の調製につきましては、労働時間の把握を行うためのタイムカード記入に関しまして、労働組合が一部拒否闘争を続けているというような内部的な事情がございまして、そういう理由がございますが、なお法令の遵守を図る観点から、労働省といたしましては、労使間の話し合いが精力的に続けられるということを期待している段階でございます。
  112. 萩原雄二郎

    ○萩原参考人 先生御指摘の点に関しましては、ただいま労働省の方からお答え申し上げたとおりでございますが、特に、労基法の百八条につきまして、いわゆる賃金台帳に労働時間数、深夜労働時間数、延長労働時間数というものを記入していないということについて、五十五年の六月に大田、佐原の両労基署から勧告を受けました。  この問題につきましては、航空機の乗務員につきまして大変に勤務の特殊性がございます。労基法をそのまま適用することがなかなか困難な問題がありまして、航空会社におきましては、主に乗務時間を中心とした管理を長い間行ってきております。そういう関係から、いわゆる単なる労働時間ということではなくて、その整合性をどう図っていくかという問題、それから深夜時間というものにつきましても、国際線乗務の場合には特殊な事例もございますので、どういうふうに取り扱っていくべきか、また航空機の出発、到着時刻が特にまた国際線の場合には変動しやすいというような問題もありまして、いろんな問題があって、なかなか複雑かつ困難な問題であったわけであります。  この問題につきましては、労基署からは五十五年の九月までに是正をせよという勧告を受けたわけでありますが、このような問題から、猶予をお願いいたしまして、慎重に検討を行い、かつ、組合とも再三にわたりまして協議を重ねまして、昨年の十一月一日から、労基法の趣旨に沿って、乗務員についてタイムカード方式によって新たな時間管理制度を発足せしめました。  しかしながら、ただいまも労働省から御報告のありましたとおり、すでに一部の組合につきましてはこのタイムカードの完全記入を果たしておりますが、他の一部の組合につきましては、この制度に反対であるということで闘争指令を発しまして、タイムカードの一部の欄の記入を拒否している現状であります。しかしながら、この問題につきましては早急に解決しなければならないことでございますので、会社としましても、これから組合の協力を得まして、今後とも話し合いを続けて、早期に実施に移したいというふうに考えております。
  113. 竹内猛

    竹内(猛)委員 先ほどもいろいろ意見がありましたが、捜査当局はこういう問題について少し手ぬるいんではないか、こういう声があります。これをもっとスピーディーにやって、やはり亡くなった方々にもちゃんとあかしを立ててもらいたいという声がある。これに対して、先ほどからの答弁を聞いていると、どうも余り急がないようだ。慎重、慎重と言うだけである。それではやはりわれわれは気持ちが許さない。どうです。
  114. 大堀太千男

    ○大堀説明員 お答え申し上げます。  現在まで警視庁では、刑事部長を長といたします捜査本部を設置いたしまして、六十七名を投入していろんな方面につきまして捜査をしておるわけでございまして、これまでに、機長及び副操縦士につきましては、事故発生当日から十数回、それぞれ病院において、時間制限の上、医師立ち会いのもとに事情聴取を行っておりますし、また機体の検証につきましては、被害者の救助後現時点までまだ継続して行っておる状態でございまして、また、会社側のいろいろな管理責任が刑事上の問題として責任を問えるかどうかということにつきましても、会社の機長に対する健康管理状況であるとか、あるいは今回の事故に対する予見可能性といったような問題等を含めて、現在鋭意やっておる最中でございます。
  115. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう時間もありませんが、亡くなられた方々、そしてまた、現在治療中の方々に対するそれぞれの処遇につきましては、先ほどお話がございました、そしてまた、四月から新たに適用されるいろいろな方針も聞きましたが、これはぜひ、二千三百万円というものにこだわらないで、この四月から適用される新しいものを適用をして、本当にお亡くなりになった不幸な方々に対する、慰めと言えるかどうかわかりませんが、その手当てを手厚くしてほしいということを私は要求をしたい。  同時に、いま治療中の方々がいらっしゃいますけれども、この方々も、重い方もあるしそれぞれの方がありますけれども、それによってまた新しい課題が出てきようと思いますが、この方々に対しても、これも不慮でありますからぜひ手厚い処遇をしてもらいたいということ。  最後に、この責任を社長としては最終的にどのようにおとりになるつもりですか。
  116. 高木養根

    高木参考人 お答え申し上げます。  私は、現在とにかくこの事故の事後処理、ただいま先生からも御指摘がございましたけれども、御遺族の皆様あるいはけがをされた皆様に対して誠心誠意事後処理をしていきたい。それから、とにかくこういう事故を起こしたこの最大の責任は、二度とこういう事故を起こさないように、会社の安全体質、体制というものを再建していくことだと思います。そのために今後全力を尽くしてやっていきたいということを考えております。
  117. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は特に要求したいことは、この種の問題を今後繰り返さないために、監督官庁である運輸省、これは鋭意あらゆる努力をして、特に、機械技術だけでなしに、精神衛生、健康、保健あるいは労務管理、こういうような面についてあらゆる努力をしてもらいたい、そうしてこのようなことが再び起こらないように、それからこの責任というものをあるところに転嫁をしないように、やはり責任は責任としてきちっととってもらいたい、こういうことについて行政官庁としての運輸省のお答えを願いたい。
  118. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま委員の仰せられたことはごもっともなことであります。また、われわれもそうした面において今後はできるだけの努力をいたし、今回のようなアクシデントが起こらないように気を引き締めてまいりたいと思っております。
  119. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、最後に日航の会社にお願いをしますが、きょうここでお答えは要りませんが、会社の給与規程であるとか、あるいは勤務規程であるとか、それから、それぞれの機長がどういう待遇を受けていたのかというようなことについても実は知りたい。しかし、もう時間もないし、こういう場所でそういうことを明らかにすることはどうかと思いますから、それをぜひ、これは後日でいいですから明らかにしてほしい。そして、今後再びこういうことのないようにくれぐれもお願いをしたい。一緒になって力を合わせて、亡くなった方々の御冥福を祈ると同時に、再度こんなことが起こらないようにすることが償いだと思います。  終わります。
  120. 西中清

    西中委員長 次に、斎藤実君。
  121. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私は、まず冒頭に、今回の羽田沖の日航機墜落事故によります死亡者に対する心からの御冥福と、負傷者に対して一日も早く全快することを祈念をいたしまして、質問に入りたいと思います。  午前中の質疑を通しまして、今回の日航機の墜落事故概要と、日本航空高木社長から陳謝と、これからの安全対策についての説明を受けたわけでございます。また、同僚議員からも各方面にわたって質疑が行われました。  私は、まず最初に、今回の事故がパイロットの操作ミスだという疑いがきわめて強いということは、運輸省事故調査委員会報告書あるいは捜査当局からも説明がございました。私もそうだろうと思うのですね。ジャンボ機のように最大五百五十人の生命を預かって、あわやのときは最終的な決断を迫られる最終責任者である機長は、きわめて責任が重いと私は思うのですね。したがって、確かに機長は孤独だろうと私は思うし、それだけにまたストレスもたまると思われる。したがって、機長の健康管理航空機の会社にとっては最大の課題であり、至上命令だと思うのですね。そこに手抜かりがあった日本航空の乗客の生命軽視の責任はきわめて重いし、また、それを見逃してきた運輸省の行政責任も私は免れないと思うのですね。  そういう意味で、まず最初に、小坂運輸大臣、それから高木社長から、今回の事故についてのいかなる責任を感じておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  122. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 今回の事故につきましては、監督官庁である運輸省といたしまして、現在その事故原因につきまして調査中でございます。  一つは、事故調査委員会でございます。これは、メカニカルな面からさらに心理学的な面まで、非常に幅広い調査を行うわけでございます。もう一つは、日航に対しての今回の事故に対しての立入検査を実施しているところでございまして、いずれにいたしましても、この調査のまとまり次第、われわれは、それを基準にいたしましての適切な処置をとって、今後二度とこうした事故の起こらないように指導していくということがきわめて重要な責任であると考えておるところであります。  なおまた、事故調査委員会の報告は通常二年ぐらいかかるというのでありますが、しかし、今回の事故のきわめて特異な面、あるいはまた、航空に対する国民の信頼感というものに対して非常に大きな痛撃を与えた事故でありますので、事故調査委員会においては、特別な例でございますけれども、中間的に、ボイスレコーダーとフライトレコーダーによって得た客観的な事実を公表をさせていただいた、これも、一つのわれわれの責任であると考えて公表いたしたところでございます。
  123. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  私ども事故の当事者でございますので、この事故原因等について云々する立場にないわけでございますし、現に運輸省事故調査委員会においてこの事故原因その他についての探究が行われている過程でございますので、それは別にいたしまして、とにかく世間からこれだけ大きく機長の健康問題ということが問われておるわけでございまして、実は、私、過去におきましては、この事故が起こりますまでわが社の特に乗務員の健康管理体制というものには満幅の信頼を置いておりましたが、なおかつ、事実としてこういう事故が起こったわけでございますので、私の責任としてこれは非常に大きな責任を感じます。  そういうことで、早速に乗員の管理面、特に健康管理面、それから資格の管理面、あるいは日常の管理面ということについて早急に手を打ちまして、二度とこういう事故が起こらないようにするための体制整備というものを早急に整えるのが私の当面の大きな責任であると思いますし、同時に、わが社の今度の事故によりましていわゆる航空輸送というものに対する世間の信用が非常に傷つけられた、これは事実でございます。私としては、やはりこういった信頼の回復ということも、これを達成することも私の非常に大きな責任である、このように承知しております。
  124. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 調査委員会の中間報告を見まして率直に私は疑問に思うのは、先ほども報告がありましたように、八日の日、事故の起きた前日、このDC8型が羽田から福岡へ向かって飛んでいるわけですね。それで、羽田を離陸した後四分後に急激な降下をした、大変に異常な危険と思われる飛行をしたということが明らかになった。私は、前の日にこういう同じメンバーで異常飛行が明らかになったということは、事故の前兆だろうと思うのですね。これは素朴な疑問ですけれども、なぜこれがチェックできなかったかですね。  日航は安全報告制度というものも採用しておるわけですね。それで、副操縦士や機関士から会社に報告がされたのかされないのか。こういう異常飛行がなぜチェックできなかったのか。これについてどうお考えですか。
  125. 野田親則

    野田参考人 前日二月八日、三七七便の出発直後にそのような異常な飛行があったということは、事故調査委員会の中間報告のとおりでございますが、なぜそれを副操縦士以下がだれかに報告しなかったかということが、この事故の非常に重要な部分であると私どもも思っております。  前の事故の教訓にかんがみて、運航乗務員相互、それから運航管理者、そういう者が、乗員の心身の状態が任務遂行に十分であるということをお互いに確認しなければその便を出発させてはならない、そういうルールを前の事故の教訓にかんがみ入れたわけでございます。そういうことがこの二月八日の飛行に適用されていれば、何らかのかっこうでどこかに報告が来て何か手が打てたかもしれない。そういうことが事故調査の中で明らかにされることを望んでおります。  と申しますのは、ただいま会社としては、乗務員からその辺の事情を正確に聞いておるということにかなり制約がございまして、副操縦士からはある程度状態を聞いております。他の乗員、客室乗務員からも聞いております。そういうことから、本当になぜ報告をしなかったのか、しなかったとすればなぜしなかったのか、あるいは報告をするほどに感じなかったのか、その辺が事故調査の中で私どもの知りたい一つの重要なポイントでございます。  ただいままでのところ、会社が調べました範囲では、乗員がそういう点について本社等に報告したという事実はございませんでした。
  126. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これは率直に言って、いまの報告、御答弁で、パイロットに対する管理体制がきわめて不十分だということを私は証明していると思うのですね。  それから、定期航空便の機長の要件でございますが、技能証明、これは学科と実地の国家試験というものを通らなければいかぬということ、それから航空身体検査証明、六カ月ごとに検査を行う、こういう厳しい条件がついておるわけですね。  しかし、この片桐機長の場合は、昨年の十一月、心身症による慢性胃炎だとか自律神経失調症などと診断されて、休養しておるわけですな。この間、運輸省に出された身体検査証明書には異常なしというふうに書かれておる。私はこういう、実際に病気であり休養もしているというこの事実を隠して、運輸省に対しては異常なしという報告をしている、ここに私は事故の問題点が隠されているのではないかと思うのですね。ですから、日本航空は完全にこの規定に違反をしている。いかにパイロットの管理のあり方が万全でなかったかということをどういうふうにお考えになっているのですか、お伺いをいたしたい。
  127. 野田親則

    野田参考人 片桐機長は、昭和五十五年十一月十七日にロンドン−モスクワ間を乗務しまして、その次の便でラインモニターということが行われることになっておりました。ラインモニターと申しますのは、その機長の上司とかあるいは特に指定された他の機長が、当人の機上におけるすべての業務のやり方を観察しまして、そしていろいろな改善すべき点の助言をするといったような趣旨の、いわば上司による観察といった種類のものでございました。それを予定しておりましたところ、モスクワに着きましてから非常に体調が悪いというので、そのラインモニターにたえないということがありまして、本人はモスクワから日本まで乗務をしないで便乗して帰ってまいりました。それが、会社として当人の病状が把握された最初のきっかけでございました。  以後療養いたしまして、十二月八日でございますが、医師が航空身体検査を実施いたしました。そこで所定の検査項目が合格しまして、結論的に航空身体検査合格ということになりました。医師の説明によりますと、本人が当時患っておりました心身症の具体的症状は胃の病気ということでございます。休養することによってその症状が消滅し、航空身体検査の時期が来たので受けた、その結果合格になった、こういうことでございますが、この航空身体検査の検査項目とか、どういう点で合否を判定するかという中には心身症というものが現状では入ってはおらなかったということと、それから当時症状がかなり軽快になり、消滅したというようなことで、この航空身体検査証という検査では合格をしたというふうに報告されております。  その後、過程を経てだんだんと副操縦士の業務をやり、いろいろな観察経過を経て、機長の業務に復帰してよろしい、ただし国内線勤務であるというところまで、昨年の十一月に戻ってまいりました。その過程において何回か航空身体検査も受けており、また飛行技術の方のチェック、これも受けておりまして、それぞれパスしております。  そういうことで、航空身体検査というそういう制度上は合格をする。しかし、本人のいわゆる一般的な健康管理という面から見るとそういう既往症があり、そういう治療をし、そして治りつつある。慎重を期してときどき上司がラインモニターをし、回復が確実であることを確認するという過程において、この事故が起こりました次第でございました。
  128. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 特にそういう病歴のある機長さんは、一時治ったかもわかりませんけれども、そういう人に対してはやはり厳重にチェックをするという姿勢が欠けておったのではないかというふうに私は思うわけです。十分ひとつ、この点はこれから御注意を願いたい。  それから、今回の事故を起こした飛行機DC8型ですが、JA八〇六一の事故機はアメリカでパイロット訓練用として使っていたというふうに言われておるわけですが、訓練に使いますと相当酷使をするということで、日本航空が定期路線への投入直前に整備をした。ところが、中古飛行機ですからある程度の故障は予想はしていたと思うのですが、余りにもDC8型のJA八〇六一の飛行機は事故が多くて、日本航空整備史上例がない骨とう品的な飛行機だ、問題のある飛行機だ、こういうふうに聞いておるのですが、いかがですか。
  129. 野田親則

    野田参考人 ただいまの御指摘にお答え申し上げます。  このJA八〇六一という飛行機には二つぐらい特色があると思います。その一は、中古機としてイースタン・エアラインというアメリカの会社かち購入した飛行機であるということが一つ。第二は、いま御指摘のように、ある期間というか、かなり長い期間、ほかの飛行機も使っておりますが、この機体は特に長い期間パイロットの訓練に使用した、こういう二つの特色があります。  前者は、この一機にとどまらず数機、イースタンから買っておりますので、この一機に特有な条件ではございません。この八〇六一という飛行機は初めから購入した飛行機でございまして、イースタン・エアラインから買い取るときに、先方にオーバーホールをさせて買っております。並びに、日本航空の仕様に変更するというような作業もいたしております。それから、訓練には約二年半使用いたしました。  従来は、他の飛行機の場合には、これほど長い期間使わないでときどき循環をする。ある定期の整備に来たら、日本に帰ってきて他の飛行機がかわりにやるというやり方をしておりましたが、一つの飛行機をずっと使うことのメリットも片方ではあるわけでして、飛行機のいろいろな癖が全部、隅から隅まで一定の整備者にとってよくわかるということから、長年の経験から、機体を循環しなくても十分お守りができるという自信を持ちましたものですから、このような使い方をいたしました。  ただし、訓練の使用というのは非常に特殊でございまして、離着陸回数が非常に多い。ワンラウンドというのは、通常、上がりますと四時間ぐらい訓練飛行をして一回終わるわけですが、その間に二十回とか十何回とかそういう程度離着陸を繰り返すというようなことで、離着陸に使う部分は傷みが早うございます。反面、余り高度をとりませんものですから、胴体のように機内圧でだんだん疲労するというところはそれほど疲れがたまらないというようなことで、パイロット訓練に適した特有の整備をいたしてまいりました。  詳しいことは省略しますが、そういうことを経て、かなりの回数を稼いだものですから、世界じゅうの同機種の中で最も飛行回数、着陸の回数の多い飛行機になる前に訓練をとめまして、他の飛行機と交代させたわけであります。  この件については、実際に訓練で六千百時間飛びまして、回数が二万九千三百回という離着陸をやりました。時間は短いけれども回数が多いという使い方であったわけです。これをダグラス等で理論解析をしてもらいまして、通常の定期便で使ったら何回ぐらいの飛行に相当するかというような解析をしまして、機体の状態を判定し、基地において十分手入れをして定期便の使用に戻したわけであります。  同機種の中で、訓練の場合には用途が違うので、飛行機の特性がこの一機だけちょっと外れた傾向を示しますが、定期便に復帰してからの傾向は、同型機とほとんど同一であります。これと同じ飛行機が現在では五機、これがなくなる前は六機ございましたが、国内線に使っておりますが、その平均値とこの飛行機の値とはきわめて酷似しております。過去において訓練をやったということを示すような現在の状況はございません。  第二には、他の同型機も同じですけれども、時間的にだんだんと信頼性がよくなってきております。昭和四十八年ぐらいからずっと見ますと、緩徐ではございますが、年とともに少しずつ改善をしておる。  それからもう一つ、先生の御指摘のありました特殊な故障があったという件でございますが、確かにこの機体には珍しい故障がありました。例示でございますが、水平安定板を動かす油圧系統のケーブル、より線、針金のよったもの、それが切れたということがありました。この水平安定板は、動力は油圧で動くわけですが、その油圧の弁を操作するのはケーブルで動かしている。そのケーブルが尾翼の近くに行って、圧力のかかる壁を通過するところ、その付近で切れた件がありました。これは材料試験をしましたら、腐食性の物質がくっついて、その腐食によって切れたということがわかりました。この付近を何本もケーブルが通っておりますが、そういう切れ方をしたのはその特定の一本だけでありました。そういうことが判明した次第でございまして、この飛行機の他のケーブルにもそういうことはなかったというので、非常に特有の理由によって起こった、きわめて単独のケースであったという判断をいたしました。傾向性がないものであるという判断であります。  細かいことはまだございますが、時間がかかりますので省略いたしますが、これを要するに、訓練を終えてから定期に入る前に心配のない整備をし、その後の経過を見ても、他の飛行機と変わらない挙動を示しておるということで、御指摘のような非常に並み外れてトラブルが多かったということには該当しないと思っております。
  130. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これが中古機でいろいろな故障や障害があったということについてはいま御答弁がございましたが、航空機はわずかな故障でも致命的な事故に結びつくわけでございますね。したがって、利用者にとってはきわめて不安であり、重要な問題でございます。航空機の構造あるいは部品の不備あるいは構造的な欠陥については、ひとつ厳しく対処をしなければならないと思うんですね。  それで、このDC8型機のJA八〇六一、これは整備報告書でも明らかにされているわけですが、飛行時間が一万五千時間ごとにオーバーホールをするわけですね。油漏れ、フラップ、方向かじのワイヤ切れ、それから飛行機にとって重要な部分の故障が、現在日航で所有している老朽機の三倍以上に上っている。その数は一千五言六カ所にも上っているというんですね。今回の事故とは関係あるかどうかは、今度の事故調査委員会の結論を待たなければならないとしても、この事故を起こした航空機の故障修理の状況は、原因を究明するためにきわめて重要なデータだと思うんですね。  したがって、一千五百六カ所もいろいろな故障が見つかって修理をしているという、構造的に問題があるこのDC8型機のこういう飛行機自体は、今後ともずっとこのまま営業に使うのかどうかですね。これは老朽機としてこういう問題の飛行機は退役すべきではないかと思うのですが、この点について運輸省は、機材の安全対策上、これにかわる代替機を指導する考えはあるのかないのか。こういう機材に欠陥がある、しかも中古を買ってきて、練習用に使ったものにお客を乗せている、ここに問題があると私は思うのです。したがって、運輸省はこれにかわる代替機を指導する考えがあるのかないのか、まず運輸省にお尋ねしたいと思うのです。
  131. 長澤修

    ○長澤説明員 お答え申し上げます。  航空運送事業に使用します航空機の機材の整備の水準が高くなければならないということは、理の当然でございまして、それぞれの航空機はその使用の目的態様に応じまして、それに適した整備をして、常に良好な状態に保っておく必要があるわけでございます。  私どもとしましては、日常の運航によって出てまいりますいろいろな故障に対しまして、一定の間隔を設け、あるいは随時に内容を検査して、十分安全な状態にあるというときに、航空運送事業に適する航空機として使用することを認めておるものでございます。     〔委員長退席、安田委員長代理着席〕  御指摘のDC8−八〇六一につきましても、この飛行機は御指摘のとおり訓練等に使われておりますので、その過程におきましては、その訓練に対応する特別の整備点検を行わせておりますし、またその後も、一般に旅客機として使用された状態におきましても、その故障の発生状況等を常時チェックをいたしまして、安全な状態であるということを確認いたしております。  したがいまして、私どもといたしましては、現在安全上の面からDC8を早期に退役させるということについての特段の必要性は認めておりませんけれども、騒音対策等の問題もございまして、そういった面からは早期対策指導しているところでございます。
  132. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これはもう安全対策上きわめて重要な問題ですから、ひとつ慎重にやっていただきたいと思うのですね。安全上の検査なり、あるいは修理を十分にやったとしても、もともとがそういう訓練用の飛行機として使われ、私が指摘いたしましたように、故障が起きてもう一千五百以上部品を取りかえている。これはまた事故につながるのではないかと心配をするわけでございまして、後であのとき退役をさせておけばよかったなんということがないように、この点についてはひとつ十分に御配慮をいただきたい。  それから、警察庁にお尋ねをいたしますが、片桐機長等関係者から事情聴取をしているというふうに先ほど報告がされましたが、片桐機長に対して、業務上過失致死傷罪と航空危険行為処罰法違反容疑の強制捜査に踏み切る方針を固めたというふうに言われているのですが、日航の管理体制にも責任があったとして、同社の刑事責任の追及を検討しているというふうにも言われているわけですが、現在の捜査状況について伺いたい。  それから、捜査の結論はいつごろ出るのか、これもあわせてお答えをいただきたい。
  133. 大堀太千男

    ○大堀説明員 お答え申し上げます。  現在警視庁で特別捜査本部を設置いたしまして捜査中でございますが、機長に対する事情聴取につきましては、事故発生当日から数十回、病院において時間を制限された医師立ち会いのもとに行っておりますし、また、副操縦士につきましても十数回、それぞれ医師立ち会いのもとに行っており、その他スチュワーデス等乗務員については、現在まで一応の事情聴取を行っており、また乗客、航空業務関係者についても一応の事情聴取は終わっておりますけれども、まださらに、事故機の検証等につきましては、事故発生当日検証許可状の発行を得て、現在も引き続きやっておるところでございます。  なお、現在までの捜査の状況では、機長の操縦ミスによる疑いが非常に強くなっていることは事実でございますが、会社等の機長に対する健康管理状況、あるいは今回の事故に対する予見可能性についても鋭意捜査を進めて、関係者の刑事責任の有無について明らかにすべく努力をしておるところでございます。     〔安田委員長代理退席、委員長着席〕  なお、御指摘の法律関係につきましては、考えられる法律といたしましては、刑法二百十一条の業務上過失致死傷罪あるいは航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律の第六条の過失危険罪というものが想定をされますが、これらにつきましては、なお関係者の事情聴取その他、捜査の結果を待たなければならない問題でございます。  なお、いつごろまでに結論が出るかという御質問でございますが、これにつきましても、いつまでということはいまこの席で申し上げる段階には至っておりません。一生懸命せっかく警視庁でも努力していることを御報告申し上げます。  以上であります。
  134. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 次に、日本航空運航規程の中で「乗員は、その職務の遂行にあたり心身に支障のない状態にあることを相互に確認しなければならない。」というふうに言われておるわけです。「相互に確認しなければならない。」というのは、これはただ単なる訓示規定ですよ。義務は何もないのです。むしろ履行義務を付与するといいますか、こういう形にできないのですか。これではお互いに確認をしっ放しで終わってしまう。ですから「心身に支障のない状態にあることを相互に確認しなければならない。」というのじゃなくて、こういう訓示規定ではなくて、こうしなさいという履行義務を付与すべきではないかと私は思うのですが、この点いかがですか。
  135. 野田親則

    野田参考人 当社の運航規程では「機長および運航管理者は乗員の心身が飛行に支障のある状態にあることが判明した場合には、航空機を出発させてはならない。」これが一つ。それから、乗員につきましては、いま先生がお読みくださいましたことが運航規程に入っております。また、運航管理者については「乗員の心身が飛行に支障のある状態にあることが判明した場合には、直ちに所要措置をとること。」「所要措置」ということが決めてあります。  いま御指摘の、報告義務というようなことを明瞭に書くことが必要なんじゃないかということが、社内でも大変議論されました。多分そういう方向に変わることになるだろうと、ただいまのところ考えております。  それから、現在どうやっているかと申しますと、乗員相互間では、機長が他の乗員を見て、健康は大丈夫かということをできる限りの方法で見て、大丈夫ですということですと、フライトプラン、飛行計画書に、その乗員の健康状態を相互チェックしたという意味で、機長がサインをするということになっております。ですから、機長が他の乗員を見て、他の乗員に健康に不適な場合があるとかないとかという場合にはよろしいのですけれども、機長側に何か問題があるというときにどうしたらいいだろうかということが、いろいろ社内でも議論された次第でございます。  そのようなことを全部あわせまして、今後会社がどういうふうに改めたらいいか、ただいま検討中という段階でございます。
  136. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今回の事故の負傷者、重傷者軽傷者も含めて、相当ショックを受けて後遺障害、むち打ちに相当なっているだろうと私は思うのです。  それで、陸上交通事故の場合には組織的に被害者救済措置というものが講ぜられておるのですね。たとえば後遺障害に対しては一級から十四級までありまして、一級が二千万円で死亡と同様な重傷者ですね。むち打ちは七級から十四級と分かれておる。最低の十四級は七十五万円というふうに。こういう陸上交通の場合には組織的な救済措置が講ぜられているのですが、今回の事故陸上交通と違いまして航空機事故ですから、相当むち打ちでやられているだろうと私は思うのですが、これらの方々に対してこれからどう救済措置をとられるつもりでおられるのか、御答弁いただきたいと思うのです。
  137. 高木養根

    高木参考人 ただいまの御質問に関連しまして、けさほども御質問にお答えしたわけですが、おけがをされました御乗客の皆様には、御回復なされてから、御全快されてから賠償問題をお話しすると申し上げましたのは、やはりただいまお話しのように後遺症の問題がございまして、後遺症が残ります場合には当然それぞれの段階に応じた賠償をする、こういうことを考えております。
  138. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 以上で質問を終わりますが、二度とこういう飛行機事故が起こらないように、また補償救済については十分な配慮を心から要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  139. 西中清

    西中委員長 次に、三浦隆君。
  140. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 亡くなられた方々の御冥福を祈りながら、二度と再び事故が起こらないことを願って、質問をさせていただきたいと思います。  初めに、警察庁に対して質問をさせていただきます。先ほど来から刑事責任の問題がかかっておりますが、私もこの機長の刑事責任の問題から入らせていただきます。  今回の片桐機長の行為というのは、航空法の六十九条あるいは同施行規則の百五十八条に書かれておりますように、もともと航空機に今回乗ってはならなかった人だと思いますし、また、同法七十一条の「身体障害」の規定にも該当するやもしれなかった方だと思います。  と同時に、七十四条の「危難の場合の措置」あるいは同七十五条の「危難の場合の措置」これにも明白に触れている疑いが強くて、百五十二条に言う「機長等の職務に関する罪」にも該当するだろうと思うのです。というのも、乗客救出ということを図ってからではなくて、むしろ一番初めのころに救命ボートで逃げ出してしまったというふうに伝えられているからであります。  また、同法八十五条で「粗暴な操縦の禁止」をされているのですが、これにも明白に該当して、同百五十四条における「機長等の職務に関する罪」に恐らく該当してしまうだろうと思います。という意味では、刑法二百十一条に言う業務上の過失致死罪に明確に触れていくのだろう、私はこのように考えております。  あるいはさらに、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律の二条あるいは三条、あるいはさらに六条への該当の疑いも大変強いと思います。ここではむしろ、業務上の過失だけではなくて、進んで未必の故意も考えられるのじゃないかと思うのですが、警察庁の御答弁をお願いします。
  141. 大堀太千男

    ○大堀説明員 お答え申し上げます。  現在までの捜査の過程の中で、先ほど来御答弁申し上げておりますように、機長の操縦ミスによる疑いが非常に強くなっておることは事実であります。しかしまだ、今回の事故が完全に機長の身体の不調による事故であるかどうかというようなことにつきましては、解明されてない部分が非常に多いわけでございます。  特に、先生御指摘の各種航空関係の罰条に反しておるのではないかということについては、現在捜査をしておりまして、当然そういった観点について、各種航空法を初め行政関係法律に違反をしている場合には、その責任の有無について明確にしていきたい、かように考えておるところでございます。  なお、機長の刑事責任につきまして、業務上過失致死だけではなくして未必の故意、故意罪が適用できるのではないかという御指摘でございます。  確かに、現在までの捜査状況から、機長の操作ミスによる疑いが強いことは事実でありますが、現在もなお引き続き、機長と乗務員に対する事情聴取あるいは事故機の検証、機長の健康状態等について捜査を進めておる段階でございまして、また航空事故調査委員会の調査結果等、総合的に判断をして、刑事責任を明らかにしてまいりたいと考えております。現段階で故意か過失かということにつきまして断定をする資料は持ち合わせておりませんので、御了解をいただきたいと思います。
  142. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 仮に故意あるいは過失が立証されたとしても、今度は、刑法三十九条に言うところの心神耗弱の理由によって処罰できない疑いが強いのじゃないかと私は思っております。実際には大変な事故を起こしていても、異常だ、異常だというふうに巷間伝えられておりますので、もし真実そうであったとすればこの三十九条によって彼は助かる可能性が強いだろう、一つにはそう懸念されます。逆に言うと、もし仮にそうした心神耗弱の理由によって助かるとしたら、それほどの人なのに、病歴あるいは既往症なしと、そうした申請をされたことの責任が、会社側にとっても大変大きなものになってくるのじゃないかと思います。  次いで、副操縦士の問題について質問をさせていただきます。  この副操縦士も、私は、刑法二百十一条の業務上過失致死罪に該当するのではないかというふうな懸念というか、そんな感じがいたします。  なぜかといいますと、昭和三十八年五月一日に大阪空港を飛び立った飛行機が、記録によりますと、その日は朝から天候が悪く、有視界飛行の同機は特別有視界方式でやっと離陸が許される、こうした大変な悪天候下の中で墜落事故を起こしたのですけれども、これに対して、本当に悪天候ということですから、あるいは不可抗力であるかもしれないにもかかわらず、大阪高裁の昭和四十三年十一月十三日付の判決によりますというと、「業務上の過失犯については、人の生命、身体に対する危険を伴う業務に従事する者に、特に重い注意義務を課する趣旨であるから、その注意義務の内容は、客観的標準によるべきものであって、行為者の主観的標準によるべきものではなく、行為者に業務上必要な注意義務をはたす能力がない場合でも、その責任は阻却されないと解すべきである」、大変きわめて厳しいわけであります。いわゆる行為者の主観的標準だけではだめだ、このように規定しているわけであります。  といいますことは、彼は機長の隣に座っていたのでありまして、そして、もし機長に大変異常が見出されたとするならば、機長、どうぞお疲れでしょうから休憩してください、お休みくださいと言うべきなのに、一言も彼は述べていないわけです。言うなれば、彼は、副操縦士として機長にかわって操縦するなど、何ら事故防止への対応策をとらなかったのです。そして、ただ不安な気持ちでじっと座っていたのです。あるいは、実際の事故が起こったときにあわててとめようとした、それだけでしかないわけであります。そういう意味では刑法六十三条に言う従犯の疑いもあると思います。  というのは、従犯の本質は正犯の犯行を容易にする点にある以上、正犯自身が支援されていることを認識しない場合であっても、客観的に正犯の行為を促進するに値した行為が行われたときは従犯は成立すると、こう書いてあるわけであります。すなわち、機長が大変神経過敏になっていらいらして大変異常で危なっかしい、そのときに、彼はまた隣に座っていて不安そうな顔で見るだけであった。交代を言ったのではなくて、ただ不安そうにして見ているだけであった。本人がおかしい気持ちを持っているときに、周りの人にまたおかしそうな顔で見られたら、ますます神経的に異常が高じるだけではなかったのだろうか。言うならば、正犯の犯行をむしろ容易ならしめる方にいった疑いすら強いというふうに思います。  しかも、彼は、前日もその片桐機長と一緒に乗って、テストであるかどうかは別として、大変に異常性を見出しておるわけです。と同時に、なおかつ、当日には、もう乗った最初から不安を感じて、常に機長を見守っていたと言っているわけであります。あるいはさらに、もう一人隣に座っている方も、安全バンドのベルトを締めないで、機長が何をするかわからぬというふうに、機関士の方も大変に不安そうに見ておったということですから、そうなると、副操縦士を置いたことの意味が大変疑われてきてしまいます。  先ほども質問にありましたが、アンカレジ空港なりクアラルンプールでの昭和五十二年の事故経験、そうしたものに基づいて、われわれは副操縦士なりの果たす役割りというものの大きさをよく知ってきたはずであります。また、そのように副操縦士自身が事故の報告、異常性の報告というものをむしろしなければならなかったところだろうというふうに思うのです。また、運航規程に対しても、これこれしなければならないといった幾つかの訓示規定がありますが、それに対しても彼は明確なる意思表示を何もしておらなかったわけであります。ということが、結果的には片桐機長のそうした事故へとつながっていったと思うのであります。  そういう意味では、警察の方はいま機長だけを取り調べられているようですが、むしろはっきりとした精神の異常を何ら行為として示さなかった副操縦士にも、気の毒ではあるけれども、大変に疑いが出てくるところだと思うのですが、これについていかがお考えでしょうか。
  143. 大堀太千男

    ○大堀説明員 お答え申し上げます。  現在、副操縦士につきましても、医師の立ち会いのもとに、限られた条件下ではございますが、十数回事情聴取をすでに行っておるところでございます。  ただ、いずれにしましても、航空操縦状態において機長と副操縦士とがどういうやりとりをしたのか、それにつきましてはまだ十分な事情聴取をする時間的余裕もございません。  そういうような状況から、まだ完全に解明されたという状況ではございませんので、現在、先生が御指摘のように副操縦士の責任について、いまそれは絶対副操縦士について責任がないということを申し上げる資料もございませんが、また完全に副操縦士に責任があると断定をする資料も持ち合わせておりません。現段階でまだ責任を問うかいなか申し上げる段階でないことを御了解いただきたいと思います。
  144. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これは個人的には副操縦士の方にはむしろ気の毒なんだと思います。しかし、機長一人ではなくて、副操縦士を隣に乗せている以上は、副操縦士を乗せる意味がなくては無意味だと私は思うのです。また、今回の事故を契機として副操縦士の任務の重さを改めて知っていただかなければならないだろう、こう思うのです。この点で、上司に対して、あるいはこの片桐さんという方に対して、機長に対して何か言いづらいんだという気持ちもあるかもしれませんが、そうした主観的なことで、言いづらいというふうなことでまたまた事故が起こってはえらいことになってしまう。先ほどの判例にもありますように、客観的な基準で物事は判断していただかなければ困るというふうに思うのです。  特に、副操縦士は、先ほど来言ったように、異常があった場合には恐らくレポートを提出することができるはずであるのに、こうしたことを怠る。あるいはまた、職務の円滑な遂行をと運航規程には書いてあるのに、警察の供述の中では、機長と口論したらしきことをにおわしたと新聞は伝えています。これは大変なことだというふうに思うのです。また乗員同士の健康状況の相互確認にしても、異常を知っているのにかかわらず、確認どころか、もうすでに知っていたにもかかわらず、こうしたことに対する措置がきわめてルーズであったそしりは免れないところだというふうに私は考えます。  と同時に、こうした片桐さんなりあるいは石川さんという人の運航、そうしたことによって事故が起こったことに対して、雇用者としての日航の責任はもちろん免れるところではないと思いますし、私は、社長さんから、二度とこうした事故は起こさないという強い決意の披瀝というものを改めてしていただきたいというふうに思います。
  145. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  私は、昨日来申し上げておりますけれども、今回十四日から九州に参りまして、各御遺族の皆様の御自宅を訪れまして、御霊前に深くおわびをすると同時に、御遺族のお悲しみ、お怒りに接しまして、弔問に参りましたのですが、本当に私の胸に突き刺さるような感じを受けてまいりました。本当にもう、気持ちからいいましても、二度とこういう事故は起こしてはいけないということを感じましたが、同時に、日本航空の最高責任者として、そういう立場からいいましても、会社の安全体制というものを再確立しまして、二度とこういう事故を起こさないような最大の努力をしてまいる決意でございます。
  146. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 社長は昨年就任されてまだ間もないことですから、ここでやめられて本当に責任をとるということではなくて、今回の事件を大変反省し、教訓とされまして、ひとつ二度と再び事故を起こさないようにしっかりがんばっていただきたいというふうに思います。また機長が管理職であるかいなか、これは問題ではないと思います。仮に管理職じゃなくたって事故は起こるかもしれないからです。また、機長の労働条件が悪いということも、調べたところ別にないようですから、むしろ具体的な見地の中から解決策を求めていきたいと思います。  さて、そうした運輸省あるいは日航に対して御質問する前に、警察についでに一つお尋ねしたいと思います。今回の事故警察庁はどのように対応されたのか、お尋ねしたいと思うのです。  陸上における自動車交通事故なんかの場合には警察の対応はきわめてみごとなんですが、海上における救助活動というものはわれわれによく知られてないわけです。今回の事故に関連しまして、警察がどういう救助体制を日ごろ持たれて、また今回の事故にどういうふうに対応されたか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  147. 岡村健

    ○岡村説明員 お答え申し上げます。  警視庁では、二月九日の午前八時四十六分、旅客機墜落の第一報を一一〇番で受けております。受けますと同時に、総合警備本部を設置いたしまして、機動隊、警察署の部隊あるいはレスキュー隊、アクアラング隊、航空隊等々約二千三百名を現場に急行させております。このほか、ヘリコプター六機、舟艇六十九隻等々可能な限りあらゆる資器材を投入いたしまして、乗客、乗員の救出、救護あるいは空港周辺の交通規制などの警備諸活動に当たっております。  やや具体的に申し上げますと、午前九時、東京国際空港に通ずる高速道路及び一般道路交通規制を行っております。また、航空機の活躍でございますが、おおとり三号というヘリが真っ先に現場上空に到着いたしました。その際、墜落機の主翼部分に負傷者がおられることを発見いたしまして、航空隊員一名が主翼におりまして、九時二十分ごろ、顔面から血を出しておられた男の方をレスキューホイストというつり具でつり上げまして、滑走路まで搬送いたしまして救助隊に引き継いでおります。この活動を皮切りといたしまして、おおとり三号は五名、おおとり一号は三名、はやぶさ五号は三名、ヘリコプターだけで十一名の救出に成功いたしておるところでございます。このほか、レスキュー隊あるいはアクアラング隊によりまして、機内で座席等に挟まれておりました乗客の救出、あるいは機体の下の方で海中に没しておる部分に潜水いたしまして、乗客の救助活動等も行っております。  このようにいたしまして、隊員の活躍まことに目覚ましいものがあったというふうに報告を受けておるところでございます。この間、打撲あるいは切り傷あるいは皮膚のかぶれ等々、軽傷ではございますが、三十五名の警察官が負傷しているということもございました。  以上でございます。
  148. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いま、今回の御報告を伺っておりますと、警察の評価を私は高めた救助活動だと思いますし、大変結構なことだと思います。今後もひとつ、人命尊重という見地から、より一層の救助体制充実とその活動に期待したいと思います。  次に、日本航空の方にお尋ねしたいと思います。  初めに社長さんにお尋ねいたします。  実は、日航法の改正が昨年行われたわけですが、それによりますと、八条の「補助金の交付」という規定が削除されておりますし、また、旧第十二条の三の「事業計画等に関する監督」というところの中で、一項では「資金計画及び収支予算」、あるいは二項では「事業計画及び資金計画実施並びに収支予算の執行について、」というふうなところなどが削除されているようですが、その趣意について簡単にお答えいただきたいと思います。
  149. 高木養根

    高木参考人 お答え申し上げます。  先般の日航法の一部改正の趣旨は、私として理解しておりますところは、同じいわゆる政府出資の国策会社でございますけれども、より自主的に、より民間会社的に、機動的に、弾力的に企業経営をできるように改正しよう、これが改正の趣旨、目的というふうに理解しております。
  150. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 特に、昨今のいわゆる国鉄の経営が大変ずさんであって、そのために大幅な累積の赤字を生んで、そしてせっかくの運賃収入の多くというものが人件費に取られてしまって、完全ないわゆる安全運行という点での費用が大変少なくなってきているということが大変心配されております。同じように、今度の法改正によって、その資金面のところが削除されることによってずさんな経営に陥らないように、慎重にひとつやっていただきたいと思います。  また、特に今回の事故を契機として、恐らく——日航法ができてから、民間色を強めたい、あるいはまた、赤字だから補助金をもらった、国の監督、規制が強まってくる、また弱めていきたいといった繰り返しというか、そういうことのようですけれども、今回の事故で再度運輸省からの監督、規制が強まる可能性も私はあると思うのですが、これに対して社長さん、いかがお考えでしょうか。
  151. 高木養根

    高木参考人 お答え申し上げます。  私ども航空企業に従事しております者にとりましては、会社の形態のいかんにかかわらず、安全体制の維持、安全ということは企業経営の前提でございます。そういう意味で、私どもは、先般の日航法の改正にも関係なしに、安全のための設備投資、資金投資というものについては最重点考えておりまして、今後もその線でやっていきたいと思いますし、そういう意味ではただいま先生の御心配いただいたようなことは起こらないのではないかというふうに考えております。
  152. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 この日航法がそもそもできましたときに、当時の石井運輸大臣の国会の御説明によりますと、この会社をなぜ国営か公社にしなかったかということに対して、政府は出資するとかいろいろ監督はいたしますけれども、これはできるだけ最小限にして、そこの経営者が思う存分にやれる状態にしておかないと、知ったかぶりをして役人がこれを監督したり指導したりすると、日本航空は伸びないのじゃないかというふうなことで、民間の色彩を大変強く主張されておったわけです。そんなことで、当初運輸省の監督条項というものがあったのですけれども、これがこの大臣説明というふうなことと関連して削除されたいきさつがあったと思います。  いま、国鉄は民間経営にしたらどうか、臨調答申はまだ見てないのでわかりませんが、いまの国鉄ではだめだというふうな発想も強く出てきているわけであります。たまたま日本航空が、せっかくそういう民間色を打ち出して、こういう事故を起こすことによって、だから民間の経営体ではだめなんだというふうにして、公共企業のような色彩へ逆行することのないように、ひとつこれからもがんばっていただきたい、このように思います。  それから、今度の事故を起こしました片桐機長に対する処分というのは、会社はどうお考えでしょうか。
  153. 高木養根

    高木参考人 お答え申し上げます。  社内的な懲戒規程というものがございますが、これにつきましても、私どもとしては、警察当局ないしは事故調査委員会の結論を待って考えたい、このように思っております。
  154. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次に、賠償の問題についてお尋ねいたします。  いろいろと後遺障害の問題その他もあるので先ほどの御答弁ではもう少し時間を待ってからというふうなお答えでしたけれども、いま運送約款における限度額、二千三百万でしょうか、もはやこうした約款にはとらわれないで、補償に対してはいわゆる青天井で誠意を込めてやるというふうなお気持ちをお持ちなんでしょうか。
  155. 高木養根

    高木参考人 お答え申し上げます。  一言で申し上げますと先生いまおっしゃいましたとおりでございまして、確かに現在はまだ形の上でいいますと限度額二千三百万が生きているということも言えるわけでございますけれども、会社の考え方としては、この限度額にとらわれずに誠意を持ってお話し合いをしたい、このように考えております。
  156. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 としますと、少なくても二千万や三千万ではなかろう、場合によっては五千万から一億と、幾らいくか私はわかりませんが、そのくらいいくかもしれないと思うのです。とするならば、普通の陸上の交通事故の場合もそうでありますけれども、後からというのではなく、いま困っている方が大変多いのですから、とりあえず二千万なら二千万は前払いという形でお支払いになる、後でもしその金額が一億なら差額の八千万は後ほど支給するということで、先払いというふうな発想をお持ちでないでしょうか。
  157. 高木養根

    高木参考人 お答えいたします。  実は先ほどもお答えいたしましたように、大体四十九日を経過して、ですから四月早々ぐらいからお話を開始したい。実は会社が考えましたのは、現在の御遺族のお気持ちをそんたくをしまして、この時期にどうも賠償の話ということを持ち込まれるということは、かえって御遺族のお気持ちに沿わないものではないか、こういう考えでおりますので、その節にも申し上げましたように、御遺族の方の事情で早くそういう話を開始したいという向きがございますれば、私どもはいつでも話を開始したい、このように考えておるわけでございます。
  158. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次に、この片桐機長の奥さんが、事故の起こる五年前ごろから、もう機長自身の私生活その他はおかしいということで、会社にいわゆる直訴というか、会社に異常を訴えておったというふうに聞きますが、これに対して会社は取り上げなかったんだとも言われております。そうした事実関係についてお尋ねいたします。
  159. 野田親則

    野田参考人 お答え申し上げます。  片桐夫人から聞いた、調べた話でございますが、昭和五十二年二月ごろ、夫の体調がよくないということで、当時の所属長に相談がありました。夫人の記憶は、夫と一緒に会ったと言いますが、会った方の上司は、両方一緒だったかどうか定かでない、そういう相談を受けたと言っております。その際、相談を受けた上司は、健康管理室の医師に相談したらいいという助言をしまして、そのようにしたということでございます。医師は、特に異常がないからがんばりなさいということを激励したということでありました。  その上司は、そのときの上司でもございましたが、その前に、片桐機長が副操縦士時代に、仙台の日本航空の乗員養成所において小型双発機の教官として勤めておった時代の上司でもございました。そういう事実がございまして、その後、この片桐機長は五十二年当時日本アジア航空という航空会社に移籍しておりまして、その片桐と会い、いろいろな話をしたそうですが、健康上の相談も受け、医師に診せるようアドバイスしたということを言っております。  以上のことから、五十二年当時の事実といたしますと、上司が相談に乗り、家族ともども相談を受け、お医者さんと相談をして、そのアドバイスを受けるということを申したということが事実でございました。
  160. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 時間もそろそろないので、ひとつ簡潔にお答えをいただきたいと思います。  次は、運輸省にお尋ねいたします。  まず、事故調査の報告につきましては、相当の日時あるいは速やかに公表というふうに言っておるんですけれども、できるだけ早くひとつ公表していただきたい。  この公表の場合に、場合によっては機長のプライバシーにかかわる問題もあるかと思うのですが、完全公表なんでしょうか、限定公表なんでしょうか。
  161. 中村哲

    ○中村説明員 航空事故調査に際しまして、関係者の方々のプライバシーをどこまで守るかというのは、国際的ないろいろな会議でも種々議論がされておりまして、必ずしも明確な基準は打ち出されてはおりません。  私どもの事故調査報告書におきましても、クルーのプライバシーと真の事故原因をきわめるということとの関係で、クルーのプライバシーにつきましてもできるだけ配慮しながら、真の事故原因をきわめていきたい、こういうふうに思っております。
  162. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 国際民間航空条約の第十三附属書に関してですが、その一の五、人員の情報(a)の航空機乗組員に関する情報によると、免状の有効性、資格、法令による審査等を記載することになっているわけですが、公表に当たっては、今回の事故にかんがみて、日航なり国側の責任というものを認めた立場で、そうしたことも踏まえて公表されるのでしょうか。
  163. 中村哲

    ○中村説明員 ただいま先生のお話にございました国際民間航空条約第十三附属書では、機長の病歴等についても調べて記載する、そういう形で報告書をまとめなさいということになっております。したがいまして、機長を含みます乗組員あるいは客室乗務員につきましても、訓練状況から勤務状況あるいは健康状態につきましてある程度は触れることになろうか、かように存じます。
  164. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いまのはむしろ医学及び病理学情報を記載するということについての答えになっているんだろうと思います。むしろそこで言うならば、事故調の報告では、乗組員の健康については現在調査中であり、事故との関連はいまのところ明らかでないと書いてあるのですが、健康であるかどうか明らかでない者を機長としていたことの、そうした制度的な欠陥なり責任の所在についてそこで書き込むかどうかということの問題があると思うのです。  それから、さきの人員の情報については、たとえば免状の有効性、資格、法令による審査といった場合の、この片桐機長に対する免状の問題なり資格の問題なり、あるいはそれが法令による審査の方法なりに過ちがあったかどうか、改善すべきものがむしろあるのじゃないかというふうな気がするから、そのことも踏まえて、反省を込めてこれこれの欠陥があったというふうなことを書くのかどうか、こういうふうな質問なんです。
  165. 中村哲

    ○中村説明員 何分にも現在調査が本格化し始めた、こういう段階でございます。調査の進みぐあいによってはあるいはただいま先生がおっしゃられたようなことを書き込むことになろうかと存じますが、いまの段階でははっきりとは申し上げかねます。
  166. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 調査してではないのであって、もうすでに現実に事故は起こったんであって、しかもそれが人為的な事故であることがもはや明確になったわけなんです。だめな人が機長であったから事故が起こったのであって、だめなことはもはや明確なんです。そして、そういうだめな人をなぜ機長にしていたのか、そこのところの欠陥というか、そこのところの反省をしなければこれはだめだと思うのです。単なる形式的なことを幾ら書いたって、それではこれから二度と事故は起こしません、こんなことは何回言っても意味のないことであって、はっきりと国なり日航の非は非として認めて、その上でよりよき改善策というものを考えていくべきなんじゃないか。余りと言えば言葉とうらはらに反省がないんじゃないか、私はそんなふうに思いますけれども。
  167. 中村哲

    ○中村説明員 大変恐縮でございますが繰り返して申し上げさせていただきたいと思いますが、今回の事故調査につきましては現在やっと本格的な調査が始まった段階でございます。機体の残骸につきましても、けさ早朝、格納庫へしまい込まれまして、いま一定の形にそろえているというような状態でございまして、私どもといたしましては、機長の病気が今回の事故の原因であるというふうにはいまの時点では考えておりません。  一切の予断を排しまして広く事実を集めまして、その事実の上に立って真の原因をきわめたい、かように考えておりまして、調査が進むにつれていろいろなことがはっきりしてくるかと思いますが、その進みぐあいに応じまして報告書の中身も決まってくる、かように考えております。
  168. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 運輸省の組織令の七十二条「乗員課」というところでは、一号で「航空従事者技能証明及び航空身体検査証明に関すること。」とか、五号で「航空従事者の教育及び養成に関すること。」というふうな規定があります。本来、運輸省設置法の四条四十四号の四あるいは組織令のいま読みました七十二条一号、五号あるいは組織規程八条の九、五項の一号というふうなところでは、運輸省日本航空とのかかわりなり、あるいは片桐機長を踏まえてのいわゆるそうした人たちの資格証明に関することは、明確なる関連を持っているわけでありまして、一片桐機長個人の責めに帰することではなくて、運輸省に最終的な責任があると思うのです。と同時に、日本航空には雇用者としての責任があると思うのです。  ですから、いま調査中であるからというのでしたら、調査が終わって明確になった場合には、明確に、日航なりあるいは運輸省の方も、この事故の起こった現段階における制度的欠陥にも触れての報告書を、ぜひそういうことも記載してほしいというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  169. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま委員の申せられましたこともわれわれ十分踏まえて、今後の事故調査に対して対応してまいりたいと思います。
  170. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 それでは答えになりません。意を体してという抽象的な言葉ではなくて、はっきりと責任を認めて、明確に記入するかどうかということの質問なんです。大臣、お答えを願いたいと思います。
  171. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私はただいま申し上げたとおりの心境でございまして、いずれにいたしましても、客観的にこの事態に対して対応してまいりたいと思います。
  172. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 ちょっと時間がございませんので若干焦っておりますが、具体的な提案を一、二してみたいと思います。  いわゆる審査を受ける者に病歴を正しく報告する義務を課したらどうかというのが一つです。お医者さんにがかったときに、見てくれが悪ければ正しい診察も可能かもしれませんが、精神的な障害の場合には、初期の場合特に見ただけではわからぬケースも多いだろうと思います。そういう意味では、お医者さんにかかるときに、いわゆる乗組員の審査を受ける人は、自発的に自分はこれこれしかじかの症状を持っていると言うことを、義務づけたらいかがかというふうに思います。  それからもう一つには、指定医制度を現在もとっているのですけれども、現在の傷病年金、恩給などを見ましても、たとえば県ごとに国立病院の一、二を指定しているようです。同じように今回も、普通の民間の病院などではなくて、はっきりとした責任を持てる病院体制、国立病院に限る指定医制度というものへと見直しをされたらどうかなというふうに思います。いかがなものでしょうか。
  173. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 現在の航空身体検査証明制度につきまして、御説明する必要もないかと思いますが、現時点で国が指定しております機関が五十三機関ございます。また指定医は九十四名でございまして、いずれも先生御承知のような航空法の施行規則に基づきます厳格な要件に合致しておる、そういうふうに考えております。  なお、今後の身体検査証明制度につきまして、現在も審査会というものを設けまして、個々の医師の判定に苦しむような事案につきましての審査をしていただく機関がございまして、これは十数名の専門家の先生を網羅しておる機関でございます。  今後、こういう身体検査問題につきましては専門家の意見を聞く必要があろうかと思いますので、今後の改善の方向を含めまして、その審査会の御意見なども承っていきたい、かように考えております。
  174. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 最後に、時間ですので、防衛庁に一言だけお尋ねして、質問を終わりたいと思います。  航空法三十一条の身体検査証明ですが、自衛隊ではどのようにして身体検査基準に適合するか否かというふうなことを判断されているのか、あるいはその証明の方法をどうされているのか、あるいは今回のような異常が認められたような場合にどういう対処をされるのかという点が一つ。  あわせて、今度の事故に対して、先ほども警察庁にお尋ねしたと同じなのですが、自衛隊はどのように対応されたのか、お尋ねしたいと思います。
  175. 小畑美知夫

    ○小畑説明員 前半の健康管理についてお答えを  いたします。  防衛庁におきましては、パイロットの航空身体検査につきましては、航空身体検査に関する訓令がございまして、それに基づいて実施しております。その訓令では、身体検査の種類とかその対象者、検査項目あるいは合格基準、検査の担当者あるいは判定者等についての定めをしております。  健康審査の対象になりますのは、たとえば隊員から操縦士に選抜する際の身体検査、あるいは操縦士等に対しての定期的な健康診断というようなものがあるわけでございます。  検査項目といたしましては、たとえば身長とか体重あるいは胸囲、心電図等二十項目の検査基準、あるいは疾病といたしましては、胸部の疾患、心疾患、消化器疾患、精神疾患等三十数項目の検査が、疾病の不合格基準として網羅されておるわけでございます。こういう検査を受けなければ操縦士の資格を取れない、操縦を行うことはできないということになっておるわけでございます。  この身体検査に不合格した場合には直ちに飛行停止の処分があるわけでございまして、その結果、三カ月以内に心身の故障が消滅して操縦を行うのに差し支えないという医師等の判定がありましたら、再び業務に復帰することになるわけでございます。  また、航空業務に従事できない期間が三か月以上にわたって、回復の見込みがないという場合で、操縦に適しないという判断がある場合には、パイロットの資格の取り消しということもあり得るわけでございます。また、場合によっては一定期間その効力を停止するという方法で、防衛庁としてはやっております。
  176. 萩次郎

    ○萩説明員 先生お尋ねの後半の部分でございますが、自衛隊からさきの事故に際して出動しました部隊の規模は、ヘリコプター十機、艦船十隻、そのほか艦艇、ヘリコプターが十隻、十機ほど待機をしておりました。  人員としては、水中処分隊十四名が出ております。いわゆるフロッグマンと言われるものであります。  以上であります。
  177. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 では、時間ですので終わります。
  178. 西中清

    西中委員長 次に、辻第一君。
  179. 辻第一

    ○辻(第)委員 私は、今回の日航機の墜落事故について質問いたします。  まず最初に、今回の事故で亡くなられた方々に心からの御冥福、またけがをされた方々の一刻も早い回復を祈るものでございます。  それでは質問に入ります。  今回の事故後、一定の日にちがたちました。その中で、その原因は機長の異常行動というようなことがだんだん明らかになってまいりました。また、その機長の病歴も明らかになってまいりました。そのような状況の中から、なぜこのような機長を乗務させたのか、また、なぜ乗務停止中や精神科医の要観察判定というような状況の中で航空身体検査証明をパスしたのかということ。さらに言えば、日航の乗員管理や健康管理運輸省のチェックの状態、このような問題について、遺族や国民の怒り、疑問が非常に強いという状況でございます。  ある新聞の報道では、御遺族の一人は、殺されたも同じだ、「そんな機長を第一線で使っていた日航が憎い。日航の管理体制徹底的に調べて欲しい。夫が苦しみながら死んだのではと思うと、たまらない気持ちです」、このように言っていらっしゃる状況であります。  そこで、私は、きょう参考人としてお越しをいただいた旧航の方々にお尋ねをしたいわけでありますが、新聞でいろいろ病歴だとか乗務経過その他が報道をされております。私、それをちょっと整理してこういうものにしてみたのですが、本当にその病歴はたくさんございますね。  五十五年八月に盗聴器というようなことで幻覚症状があったというふうに言われております。それから、五十五年十一月十六日モスクワ−成田乗務、ここで疲れたということで乗務を中止した。その後、十一月十八日には成田で荷物を機内に置き忘れた。乗務に非常に重要なものが入っている荷物を置き忘れたにもかかわらず、注意をされると、また乗るからそのままにしておいてくれ、乗るはずがないのにそういうことまで言ったというようなことが言われております。それから、十一月二十六日には腹痛や吐き気を訴えて、乗員健康管理室にそのことを訴えてきておる。また、十一月二十七日には慢性胃炎ということで三週間静養の診断が出ている。これは乗員管理室ではありません、聖マリアンナ医大ですか、そこで心身症という診断を受けている。また、十二月四日には逗子病院で胆嚢炎ということで三週間安静加療の診断。十二月七日には快方に向かう。こういうふうに健康管理室で言っているようであります。  十一月十六日に疲れたと言ってモスクワ−成田線の乗務を中止してから一月ほどしかたたない十二月十五日までに、いま私が言いましたようないろいろな状況があったわけであります。  ところが、十二月十五日には航空身体検査証明が出されておる。十二月十七日には病状が回復をしてきた。このように健康管理室が見ているというような状況であります。そして、十二月十九日からですか、国内線の副操縦士として乗務をしておる。こういうことでありますね。  そこで、ちょっとお聞きしたいのですが、十一月十八日モスクワ−東京ラインのラインモニターをして成田へ帰ってきてから、荷物を機内に置き忘れた。このことについて日航は御存じなのでしょうか。
  180. 野田親則

    野田参考人 ただいまの点で、会社の記録によりますと、十一月十七日にロンドン−モスクワ間で……(辻(第)委員「恐縮ですが、できるだけ簡単に要点だけ……」と呼ぶ)わかりました。ラインモニターというのを予定しておって、それができなくて、便乗して日本まで帰ってきたということです。それで、そのときに、成田から出るときにいま御指摘のようなことがあったということは承知しております。だれかに頼んで自分が出たのか、その辺の事情ははっきりいたしません。そういう事実があったということは、現在把握いたしております。
  181. 辻第一

    ○辻(第)委員 そして今度は、五十六年になりますと、一月は全然フライトなしです。二月もフライトなし、三月は三時間ですか、こういう状態で、二月二日に聖マリアンナ病院へ通院している。二週間自宅静養。二月二十六日に一週間静養指示(健康管理室)。こういう状態ですね。それから三月五日には専門委同乗観察が必要。このように判定をされておる。そして十五、十六日に同乗観察をされたということです。三月二十日には精神科医の診察の要あり。このように判定をされたということでありますが、この精神科医の診察の要ありと判定された事実はありますか。——では、後で結構です。後でお答えいただきたいと思います。  そのような状態で、四月三日に副操縦士として乗務をしております。発着回数については、航空法の施行規則で、九十日に三回発着をしなければならないという規則がある。ところが、それを満たしていないのに乗ったということでありますが、その事実はどうでしょうか。
  182. 野田親則

    野田参考人 その事実はございました。二月ごろに三回の離着陸をやる条件が切れるということを予想しまして、三月ごろにそれができるようにフライトを計画いたしまして、三回のフライトが連続するようなパターンに入れました。ところが何かの手落ちで、そのうち二回のみ本人が離着陸をし、第三回は別の人が離着陸をしたというのが事実でございまして、そのことがおくれてわかったものですから、結果的にそういうことになりました。
  183. 辻第一

    ○辻(第)委員 それは航空法に反していることですね。
  184. 野田親則

    野田参考人 そうです。
  185. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、五月十八日、抑うつ状態、復帰まで一カ月と健康管理室は言っておるのですが、そういうことがあったのかどうか。それから、八月十日に自律神経失調症、抑うつ状態(健康管理室)。こういうことがあったのかどうか、その点について……。
  186. 野田親則

    野田参考人 事実をチェックする時間がございませんので後ほど御報告しますが、大体そのような事実はございました。自知神経失調は、汗が出るというようなことであったというふうに……(辻(第)委員「それよりも抑うつ状態……」と呼ぶ)それも抑うつ状態という表現がありましたが、その辺のところは後で調べます。
  187. 辻第一

    ○辻(第)委員 そして、八月十三日に副操縦士の制限勤務。こういうことになっております。  それで、五月には四時間しか乗っておらない。六月には全然乗っていない。七月に十五時間乗り出した。そして、八月には副操縦士の制限勤務。こういうことですね。それから、十一月十日に抑うつ状態は経過順調。国内線機長復帰可能。精神科医の経過観察必要。こういうような健康管理室の見解なんですが、この精神科医の経過観察必要という点についてはどうでしょうか。
  188. 野田親則

    野田参考人 十一月十日付の診断書によりますと、自律神経失調、抑うつ状態。その一、二とありまして、一については現在ほとんど症状の消失を見ている。二についでは順調な経過をたどっていることを認める。それから、十月六日付、精神科の竹山医師の意見書に指摘されているとおり、機長として乗務することは現在支障を認めない。しかし、路線制限としての国内線限定について今後段階的に緩和する方針である。そういう意見を述べております。
  189. 辻第一

    ○辻(第)委員 私が聞いているのは、精神科医の経過観察必要。そのところです。
  190. 野田親則

    野田参考人 「精神科医の」とは書いてございませんが、今後の経過観察の治療は継続することが必要である。そういうふうに書いてございます。
  191. 辻第一

    ○辻(第)委員 いまのところは、自律神経障害とかあるいは抑うつ状態というようなことから、経過観察必要ということであったと思います。そして、十一月十一日に査定委員会で承認をされ、国内線の機長復帰ということになっている。こういうふうに、いろいろ聞きもしながら、確認もしながら乗務をしたのですけれども、病気が起こって休んで、また少し乗って、また病気がぶり返して休養して、また乗ってと、本当にこれを繰り返しているのですね。五十五年八月の幻覚のこと、これはわからないとしても、十一月十八日の成田のこと、これはどう考えてみても正常な状況とは考えられないですね。それから、十二月二日には心身症という症状、五月十八日には抑うつ状態、八月十日にも抑うつ状態、そして十一月十日の時点でもさらに経過観察の必要ということですね。こういうように繰り返し繰り返しやっている。一過性じゃないのですね。そういうようなのをどうして十一月十一日に査定委員会が承認をして、国内線の機長としての乗務をやらせたのかということであります。ここのところには、本当に許せないきわめてずさんな健康管理と言おうか、管理がやられてきたと言わざるを得ないわけであります。このような判断をしてきたのは、だれが、どのような場所で、どのように判断をして決めるのか、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  192. 野田親則

    野田参考人 機長もしくは副操縦士が、ある六カ月以上乗務を中断している場合には、その復帰のときには査定委員会にかけることになっております。片桐機長の場合にはそれに該当しません。ときどきのチェックフライトをやっておりますものですから、長い期間をとっても六カ月以上に該当しませんものですから、現在の査定委員会の規則上は、かけねばならないというケースに該当しなかった。したがって、実態は査定委員会に報告をした、そして了承を得た、そういうかっこうになっております。
  193. 辻第一

    ○辻(第)委員 その査定委員会では、どのようにして、たとえば片桐機長の場合は機長乗務に復帰をさせるという点で、どのような基準でもって判断をされたのか、お尋ねをします。
  194. 野田親則

    野田参考人 このケースは、査定委員会でいわゆる審査というものは行われておりません。しからば、健康管理の医師とそれから当人の上司の部長、具体的にはDC8乗員部長との間で協議をし、いろいろな観察を通じて復帰可という結論を出し、それを査定委員会の場で報告をしたというのが実態でございました。
  195. 辻第一

    ○辻(第)委員 どのような判断で——私が先ほど申しましたような、繰り返し抑うつ状態とか神経症の状態とかが起こっているのですね。それをどうして、非常に重要な仕事である機長乗務に復帰をさせたのか。どうもその点がどう考えてみても合点がいかない。このような経過をずっと見てみましたら、だれでもこれは機長としての乗務は不適だと考えざるを得ない。専門家でなくてもそう考えるような状態だと私は思うのですが、なぜそのような状態で復帰させたのか。そこのところはどういうことですか。
  196. 野田親則

    野田参考人 お答えします。  昨年の夏ごろからコーパイロット乗務を続けている間の、その乗務の観察等が重要な判断基準になったと思います。そのほか、六カ月ごとのチェックフライト、査察飛行、そういうときの、社内的にグレードと申しますけれども、一、二、三というそういうのから見るとかなりいいところへいる。中ぐらいといいますか悪くないといいますか。そういうようないろいろな状態から総合的に判断したと思っておりますが、私はその場に関与しておりませんでしたので、それをやった本人に確かめなければ的確なところは申すことはできません。
  197. 辻第一

    ○辻(第)委員 本当にずさんな形でやられたというふうに思います。許せないことですね。そして、しかも経過観察の必要というふうに言われているのに、一月からこちらですか、健康管理室の診察も受けてないのですね。そういうふうな、機長乗務に復帰してしまえばもう後は知らぬ顔というような管理がされていたということだと思います。  時間がありませんので次へ移りたいと思いますけれども、航空身体検査証明、この問題を見てみましても、先ほど言いました経過の中で、五十五年の十二月十五日に、異常なしというのでしょうか、合否でいえば合ということになっているのですね。それから、五十六年の六月十日の航空身体検査証明も合ということ、それから十二月の七日の航空身体検査証明も合ということになっているのですが、私は三つとも問題があるというふうに思うのですけれども、ことに六月十日の航空身体検査証明については、この経過から見てまいりますと、指定医の方は、長年日航にお勤めになっていて、この十一月からの片桐機長のことについては十分把握できていると思うのですね。ところが指定医療機関からの医師、日航と契約をされているようですが、その方が主にやられたのかもわかりませんけれども、最後の証明をするところはその長くおられた常勤の指定医だと思うのです。よくその事情がわかる状態であるにもかかわらず、六月十日の航空身体検査証明には合、異常なしということですね。ちょうど、その六月十日の航空身体検査証明を書くまで一月にもならない五月十八日には、抑うつ状態、復帰まで一カ月。このように健康管理室は言っているようであります。それが一月もたたないうちに航空身体検査証明では異常がないなんていうことは、私はとんでもないことだと考えます。もちろん十二月の身体検査証明についても、前年の十一月から続いて五月の抑うつ状態に、さらに八月にも抑うつ状態、自律神経失調症、こういうのが健康管理室で把握されているにもかかわらず、同じところでやった航空身体検査証明には異常なしという形で、さらに十二月七日にもそのように出ている。こういうことを見てみますと、本当にきわめてずさんな形でやられている。  さらに言うならば、機長というのはそう簡単になれる仕事ではない、貴重な機長であるということで、なるべく病気を軽くして仕事につかせたのではないか、こういうことすら疑わざるを得ないような状況にあったと思います。  そして、この健康管理室は精神科の人は一人ですね。しかも一週間に一回ぐらい短時間来られるというような状態だと聞いていたのですが、そうですか。
  198. 野田親則

    野田参考人 乗員健康管理室の精神科の医師は契約では一週間に三単位ということになっておりまして、一単位は半日程度であります。したがって、一日置きに一週間に三回、この管理室に出てこられる程度でございます。
  199. 辻第一

    ○辻(第)委員 このような乗員の健康管理、ことに本当に重職を担っている機長の健康管理がこのような状態、しかも、その病気のときに一度副操縦士にして今度は機長乗務に戻すというところも、本当にずさんな状態でやられてきたということが明らかになったと思います。この点について高木社長、どのようにお考えになっているのですか。簡単にお答えをいただきたいと思います。
  200. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  先ほども御質問にお答えしましたように、私は従来、会社の乗務員に対する健康管理というものには満幅の信頼をおいておりましたが、今度の事故が起こりいろいろな事実が出てまいりまして、これは強化をしなければいかぬということを現在強く感じておるわけでございます。
  201. 辻第一

    ○辻(第)委員 運輸省としてはこの問題についてどのようにお考えになっておるのか。
  202. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 御承知のように、身体検査証明は定期運送用の操縦士にあっては六カ月ごとに提出してもらっております。その六カ月ごとということでは期間があきますので、私どもとしては、審議会の答申にも基づいて、各会社で先生御指摘の健康管理制度、健康管理室というようなものを設けて常時チェックをするという制度をとって、いわば六カ月置きの身体検査証明制度を補完する制度をつくったわけでございます。ところが今回こういう事故が発生して、調べてまいりますと、先生御指摘のように、日常継続的に行っている健康管理の実態が六カ月ごとの証明制度に反映されなかったという点について、私どもも深刻な受けとめ方をしておるわけでございまして、今後この常時観察する健康管理の制度と六カ月ごとの証明制度の結びつきというようなものについて、なおこの問題については医師の判断という問題が入りますので、素人だけで何か制度を変えるというのはすこぶる危険だと思いますので、専門家の意見も十分聞いた上で、その辺の制度の改善について検討をしてまいりたいと考えております。
  203. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、機長管理職問題について質問をしたいと思うのです。  けさからも何人かが御質問なさっているわけでありますけれども、航空機の安全運航にとってコックピット内のチームワークというのでしょうか、良好な環境はきわめて重要な要素であると考えますが、日航はどのようにお考えになっているのか、お尋ねいたします。
  204. 高木養根

    高木参考人 先生御指摘のように、私どもも、このコックピットの中における三人のクルーのいわゆるクルーコーディネーションは、安全運航の上で非常に大事な要素であると考えております。
  205. 辻第一

    ○辻(第)委員 この事故の前日の問題、もう何回も言われているわけでありますが、あの事故調べにも異常な旋回というふうにされているわけでありますけれども、そのような重大な問題をどうして副操縦士が報告できなかったのかという問題であります。報告できなかったような状態がコックピット内にあったのではないか。さきに社長は、コックピット内のチームワークは本当に大切だと言われたと思うのですが、そういう状況ではなかったと言わざるを得ないのであります。その点についてはどうお考えでしょうか。
  206. 野田親則

    野田参考人 当該クルーのコックピット内でのコーディネーション、お互いの連絡協調がどのようであったかということをうかがい知る資料は、現在会社には乏しいのでございますけれども、私どもが調べた範囲で申しますと、事故調査委員会の御発表にありました離陸直後の異常な飛行という部分では、副操縦士はこのように表現をいたしております。  当時、自分は右方向の空域の監視をしていた——副操縦士は右側の席に座っておりますので、右旋回でありますので、飛行機がこれから行く方の空域のアウトサイド・ウォッチ、外界の監視をしておった、その途中で非常に深いバンクであると感じた、傾きが非常に深いと感じたので、私は修正のかじをしましたと言っております。それから、機長大丈夫ですかということを問うたら、機長が大丈夫だというふうに答えた。それで、その間いろいろな計器等を十分観察する余裕はなかったけれども、自分は修正の操作は円滑にやったと思っているというようなことを言っております。
  207. 辻第一

    ○辻(第)委員 いま答えていただいたのは、少し私のお尋ねしたのと違う感じがするわけでありますけれども、チームワークがとれるような状態で事がやられていたというふうには私はやはり思わないですね。それから、その後でやはり報告がされていないということを見てみましても、私はそこのところに問題があるのではないかというふうに思うわけであります。  そのことは、クアラルンプールの事故に関してマレーシア民間航空局が勧告をしております。その趣旨は、危険な違反を行っているパイロットに対して操縦をしてないパイロットがその是正を要求できる、このような体制をつくれということだと思うのでありますが、そのようなことができなかったクアラルンプールの経験があるわけであります。この点についてどのようにお考えになっているのか。簡単に答えていただきたい。
  208. 野田親則

    野田参考人 クアラルンプール事故の後に、会社として大変努力をしましたことは、クリティカル・イレブン・ミニッツ委員会と言っておりますが、離着陸安全対策委員会とでも言うような性質のものをつくりまして、事故となったような問題をいかにして防止し得るかということに努力の焦点を置きまして、いろいろな改善を行ってまいりました。具体的には申せませんけれども、三十一項目ぐらいのものがありまして、順次それが、その後の飛行機の取り扱いの操作の中に繰り入れられてまいりました。それが今回の事故防止し得なかったということは、まことに残念なことだと思っております。
  209. 辻第一

    ○辻(第)委員 コックピット内でチームワークが十分とりにくい状況があった一番の問題点は、これまた何回も言われております機長管理職制度、この問題にあるというふうに私は考えます。その点で、機長管理職制度というものがコックピットの中のチームワークを乱しておるというふうに考えるわけでありますけれども、これまで、日航の社長を初めそういうことではないというふうに答えてこられたわけでありますけれども、それでは、会社側はそういうふうに言われるけれども、実際そこに乗っていらっしゃる副操縦士だとかあるいはセカンドオフィサー、あるいは機長もそうですね、そのような方がどのように思っていらっしゃるのかということが非常に重要なポイントだと思うわけでありますけれども、副操縦士の方々なんかは、機長管理職制度というもののために、いわゆる労使間の問題点がそこへ持ち込まれたという状況の中で、やはり言いたいことも言えないというような状況が醸し出されている、皆そういうふうに言っておられるわけでありますが、その点についてどのように考えていらっしゃるのか。簡単にお答えをいただきたい。
  210. 高木養根

    高木参考人 お答えいたします。  私は、昨日以来たびたびお答え申し上げましたように、もし仮にコックピット内で機長と副操縦士、あるいはその他のクルー、すなわちセカンドオフィサー、FEとの間に意思疎通が十分にいかないとすれば、それは必ずしも管理職制度があるからそうなんだということでなしに、それは別の理由によると思います。私は、何回もお答えいたしましたとおりに、管理職制度がクルーコーディネーションあるいはお互いの意思疎通、協調ということを害するとは考えておりません。
  211. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは再度お尋ねをするのですが、日航の管理職の方はそういうふうにおっしゃいますけれども、実際に乗っている副操縦士は、機長管理職制度のために意思疎通が欠ける、本当に自由に物が言えない状態だ、こういうふうに言っていらっしゃる。こういうことでありますので、そのことについては、そんなことではないと言い切れないと思うのですね。事実そういうふうに感じていらっしゃるわけでありますから。  きのうも、わが党の四ツ谷議員が言われたように、コックピットの中で機長が二十二項目にわたってチェックをする。その点については経験簿とかなんとかおっしゃっておりましたけれども、実際に副操縦士にしてみれば、それは管理職からチェックされておる、管理されておる一つの形態だ、内容だ、こういうふうに受け取って当然だというふうに思うわけであります。このような状態、しかも日航では、労使の問題がスムーズにいいっていない状況にあり、ことに不当労働行為で提訴をされておる問題がこれまでたくさんありました。また、労働基準局や労働基準監督署からいろいろと指導や勧告を受けられてきたという事実も、時間がありませんので詳しく申し上げられませんけれども、たくさんあった。そういう状況の中で、あのコックピットの中までいわゆる管理職、そして使用者対組合という形が持ち込まれてきて、自由に物が言えないような状況があるということは、否定できないというふうに思うわけであります。  そして、機長が管理職でなくても、ほかの航空会社ではきわめてスムーズにいっておるわけです。機長管理職制度をとっておるのは日航だけですね。そういう点から考えてきても、機長管理職制度というのはいますぐ廃止すべき問題ではないか。そのことが、あのコックピットの中で本当に安全な状態をつくることができる、スムーズな関係をつくることができる重要な問題であるというふうに考えます。社長、どうでしょう。二度と再びこのようなことが起こらないというためにも、機長管理職制度を思い切っておやめになる決断をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  212. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  私は、先ほど来申し上げておりますように、このコックピット内のクルーのコーディネーションは非常に大事なことでございますけれども、これに機長管理職制度が悪影響を与えておるとは考えておりませんので、今回の事故はまことに申しわけないわけでございますけれども、この機会に管理職制度を再検討するという考えは持っておりません。
  213. 辻第一

    ○辻(第)委員 重ねて意見を申し上げたいのですが、いま事故調査が鋭意進められております。もしもその中に機長管理職制度、このものがあのコックピットの中に労使の問題を持ち込んできて、安全な運航が阻害をされるということになって、それが報告書で指摘をされるということもあり得ることだと思うのです。そういう時点で、絶対機長管理職制度は変えないとおっしゃるのは私は不見識だと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  214. 高木養根

    高木参考人 お答え申し上げます。  私は、そういう仮定の問題にはこの際お答えできません。
  215. 辻第一

    ○辻(第)委員 いや、それは不見識であると思います。  それから最後に、事故調査委員会は、労働組合や労働者から調査をされるというか、お話し合いになったことはありますか。それはいかがでしょうか。
  216. 中村哲

    ○中村説明員 今回の事故に関しましては、現在までのところ話し合ったことはございません。
  217. 辻第一

    ○辻(第)委員 ぜひ労働組合からも意見を聴取して、調査の参考にされたいということを申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
  218. 中村哲

    ○中村説明員 先ほど来申し上げておりますように、事故調査が本格化し始めた段階でございますので、調査の進展ぐあいによってはあるいはそういうことはあろうかと思いますが、現時点では何ともお答えしかねます。
  219. 辻第一

    ○辻(第)委員 最後に、今度の日航の事故は本当に大変な事故だったと思います。日航として十分な対応をとっていただきたい。二度と再びこのようなことを起こさない、また御遺族や負傷なさった方には十分な補償をしていただきたい、強く要望をいたします。その点について社長決意のほどをお聞きしたいと思います。
  220. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  私としては、もう本当に誠心誠意、遺族の皆様あるいはおけがをされた御乗客の皆様と話し合いで解決をしたい、このように決意をしております。
  221. 辻第一

    ○辻(第)委員 最後に運輸大臣に、この問題について二度と再びこういうことを起こさない、その点についての決意のほどをお伺いしたいと思います。
  222. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 特に、高速大量輸送機関である航空機につきましては、安全ということがきわめて重要であることはもう論をまたないところであります。  今回、非常に不幸にして日本航空機が墜落をいたしました。このもたらす波及効果は大変大きなものがあると思いますが、非常に遺憾なことでございまして、われわれといたしましては、先ほど来高木社長も申しておりますが、二度とこうした事故が再現しない、再び起こらないように、現在運輸省の総機能を挙げまして日航の立入検査をいたしております。また同時に、事故調査委員会も全員この問題にかかり切りで努力をいたしておるところでございまして、実態がさらに解明されるにつれまして適正な処置をとり、そして、今回の事故を教訓といたしまして全員心を引き締めて安全運航努力をいたしてまいりたいと思います。
  223. 西中清

    西中委員長 次に、伊藤公介君。
  224. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 働き手を失ったりあるいは家族を失って悲しみに暮れている二十四家族御遺族の皆さんに心から哀悼の意を表し、重軽傷の皆さんの一日も早い回復を私も祈りつつ、あわせて、世界の日航として一日も早くその威信と信頼を回復することを限りなく願いつつ、同僚議員の質問も幾つかございましたけれども、私が最後の質問者でありますので、日航の皆さん、昨日きょうと続いて大変御苦労さまでございますけれども、具体的にどういう改革をしていくのかということを伺ってまいりたいというふうに思います。  すでに委員会の中で、片桐機長の病歴についてはそれぞれの立場で御指摘をいただいてまいりました。そして、繰り返すことを避けますけれども、心身症による慢性胃炎、あるいはこれが回復をして副操縦士、しかしまたそれが再発をした、そういう繰り返しをしてきたということがすでに明らかになってまいりました。いま遺族の方々も、こんな機長をなぜ乗せたんだという怒りが込み上げているところでありましょう。私どもも、一貫してこの委員会でのお話を伺っておりますと、いままで飛行機に私ども素人が乗るときに信頼をしていた日航というものに、どうももう安心をして乗れないという心配がますます深まってまいりました。  問題は、そうした問題点を今後どう処理をしていくかということが非常に重要だと思いますが、特に片桐機長の病歴が報告をされなかった。もし報告をされていればもう少し違った形、あるいは今度の事故を避けることができたのではないかというふうにも、まあ事故が起きてどんなに考えても遅きに失しているわけでありますけれども、日航の社長として、この報告がなされなかったという事実についてはどうお考えになっているか、まず伺いたいと思います。
  225. 高木養根

    高木参考人 お答えをいたします。  私はその組織の細部については承知しておりませんけれども、ただいま御指摘がありましたような点について、いずれにしても、この事故を起こしたこと、その後いろいろ調べて出てきたことから見ますると、健康管理についてやはり不十分な面があったということを認めざるを得ないわけでありまして、そういう意味で乗員管理につきまして、一つは健康管理の面、あるいは日常の管理の面、さらには資格管理の面というような各分野におきまして、この乗員管理の面を改善強化をしていかなければならないということを痛感しておりまして、早速取りかかっておるところでございます。
  226. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 結論的なことだけ伺いたいのですが、この病歴を報告をすべきであったとお考えですか、いかがですか。
  227. 高木養根

    高木参考人 この点につきましては医師の判断というものが一つの基準になると思います。そういう意味で、現在、私としてはその点について明確にお答えする立場にございません。
  228. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 私は医師の立場を伺っているのではなくて、すべての責任ある立場の社長さんとして、今度一連の指摘をされている片桐機長の病歴、そういうものの報告が必要であったかどうかということを、最高責任者としてぜひお答えをいただきたいと思うのです。
  229. 高木養根

    高木参考人 繰り返してお答え申し上げますけれども、その点については専門外の私には十分な知識がございませんので、確信をもってのお答えができません。
  230. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 それでは、監督官庁の運輸省はいかがでしょうか。
  231. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、身体検査証明制度は六カ月ごとの証明制度であり、その間を補完する日常の健康管理制度、この相互補完すべき制度が十分な運営がなされていなかったのではないかという反省をいたしておりまして、今後その辺のつながりをどうつけるかということについて、専門医の意見等もお聞きしながら改善すべき点があれば改善してまいりたい、かように考えております。
  232. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 専門的なことだというお話ですけれども、航空身体検査証明申請書ですね、これには三十二種類の病名が明記されております。今度の片桐機長の症状は心身症という非常に精神的な病名を指摘されているわけですが、今後はむしろこれに心身症も加えるべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  233. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 お答えいたします。  私も心身症という言葉は今度の事故で初めて知ったような次第でございまして、この既往歴の中に心身症というものを含めた方がいいのかどうかということにつきまして、私も素人でございますので何とも判断がつきかねますので、先ほど申しましたように、専門家の意見を聞いて、それを入れた方がよろしいということであるならば改善するのにやぶさかではございません。
  234. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 日航に伺いたいのですけれども、パイロットの精神的な重圧が非常に強いというのはあたりまえのことでありますけれども、日航のそうした。パイロットの方たちに対する健康管理が一体いまの体制で十分だとお考えになっているのかどうか。二千人の乗務員のうち六百人が機長だということですけれども、十人の医者が診ていられる。しかし、いま問題になっている精神科医はたった一人しかいないということですね。われわれ、何も精神的な病気でなくても、たとえばがんでも、いま普通のお医者さんに診てもらったらわからなかった、しかし次の病院に行ったら発見をされたというケースがあるわけでしょう。非常に微妙な精神的な診断をする精神科医がたった一人しかいない。しかも、どうもお話を伺っていますと、その診察も、本人と個別で、どうだ異常がないか、異常ありません——それは異常ないと普通の場合には言いますよね、異常があるなんて言ったら大変なわけですから。  私は、いまの日航の特に精神的な診断に対する体制というものが不十分ではないかと思うのです。いかがお考えでしょうか。
  235. 野田親則

    野田参考人 ただいま乗員健康管理室というところは、専属の産業医が一人、それからそのほかに非常勤の方が十一名おります。その十一名の中の一人が精神科の医師でありまして、その人は、先ほど言いましたように三単位ですから、一日置きに半日ぐらいここに見えるという程度であります。片桐機長の場合には、この精神科の医師にかかっただけではなくて、慈恵大のその他の医師にもかかっております。そういうことを一つ補足させていただきます。  なお、先ほど社長が申しました乗員健康管理体制充実するということの中には、いま先生の御指摘のような補強を考慮中であります。  以上であります。
  236. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 運輸省に伺いたいのですけれども、普通の場合は、常識的に考えれば今度のケースは非常にいい例だったと思いますが、パイロットを実際に資格を失わしめる、もう飛行機に乗せないという判断を社内ですることは、もう決定的なものがあれば別ですけれども、非常にむずかしいだろうと思うのです。いろいろなお話を伺うと、片桐機長は非常に優秀な方だったというお話ですけれども、何とかしてパイロットに残しておきたい、そういう社内の温情主義といいますか、そういうものがあってなかなか社内でチェックできないというきらいがあるのではないかと思うのです。これは常識的に考えてそうだと思うのです。しかも、会社で抱えているそういう医師の判断だけにこの判断を今後任しておいていいのかどうなのか、運輸省としてはどういう見解を持っていらっしゃいましょうか。
  237. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 お尋ねの機長の健康といいますのは大変重要な問題でございます。今回の事故によりまして、現在の制度にいろいろと反省すべき点が指摘もされております。私どもも十分現在の制度についての反省を含めつつ、専門家の意見も聞きまして、今後改善を要する点があるかどうか、まずそこを十分見きわめる必要があるというふうに考えております。
  238. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 今度の事故が起きて、実は日航の社内で健康診断のカルテの再チェックをされて、十二人の病歴が昨日の運輸委員会で明らかになりました。病歴があるのに報告をしていなかった。言ってみれば二重帳簿ではないかという非難の声も上がっています。こういう体制で一体きちっとしたチェックができるのでしょうか。これをちゃんと報告をする義務があるのじゃないですか。日航と運輸省にそれぞれ伺いたいと思います。
  239. 野田親則

    野田参考人 航空身体検査証の中に既往症を記入する欄がございます。一応の説明では、その既往症の記入というのは、申請者をよく知らない指定医が診察する、幾つもたくさん指定医がありまして、固定した指定医にかかるのじゃないような場合に既往歴の記入が有用であるというふうに聞いておりますが、日本航空の場合は指定医が健康管理医を兼ねております。同一人物であります。そして十五年くらい継続勤務をしているので、個人の既往については熟知しておる、そう言っております。記録もそのようになっております。したがって、仮に本人がみずから既往歴を書かない場合でも、健康管理室としてはそれがわかっておる。したがって、総合的な合否の判定には差し支えが現実に起こっておりませんということを言っております。  そういうことではございますが、こういうことを監督当局に報告すべきであるという御指摘、御批判をいろいろ受けておりますので、その点は御当局の指導を忠実に守るように将来改めたい、こういうふうに考えております。
  240. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 私どもの現在とっております身体検査証明制度、これは国際的な基準にのっとった制度でございます。ただ、この六カ月間というのは健康を保証する期間という意味ではもちろんございませんで、その期間内にもし身体検査基準を満足しないような形になった場合には、乗務ができないという規定が別に置かれております。既往症等の報告につきましては、やはり医師の判断というものが必要でございまして、既往症すべてを報告しなければいけないのかどうかというあたりにつきましても、素人の判断ではなかなかつきかねる面がございます。先ほど来申しておりますように、この制度全般にわたりまして専門医の意見も聞いて検討させていただきたいと思っております。
  241. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 私は、今度のこの片桐機長の病歴を考えますと、これは明らかにきちっと報告をすべきであったし、報告をして、監督官庁の中でもきちっとこういうものをチェックする必要があったと思うのですよ。これは、今後原因究明をしていかなければ最終的なことはわからないということは当然ですけれども、いままでの過程の中で、原因がどうであるということは別にして、安全確保の点から言えばこういうことはきちっと報告をさせる、そういう義務が運輸省にはあるのではないですか。どうですか。
  242. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、専門医の意見も聞きまして検討させていただきたいと思います。
  243. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 この問題は非常に重要な問題ですから、ぜひ早急に——大事な人命を預かってきょうも飛行機は飛んでいるわけですよ。こういうことをチェックしないで、医者に聞かなければわからないと言うが、いつ結論を出すのですか。こんなことはちゃんと報告させたらいいじゃないですか。危ないと思うパイロットをおろしたらいいじゃないですか。
  244. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 運輸省で求めておるものは、現実に日本航空なら日本航空で飛行機を飛ばせる、その操縦士の問題でございますので、日本航空の方でこれが不適格であるならばこちらには報告をしないというのが原則だと思うのです。ただ、その間で既往症があって飛ばしてもよくはないかという問題が出ると、これは非常にあいまいなので、運輸省としては、それに対応してはどうしても専門的な医師の判断を求めなければならぬというわけでございますので、局長からそのような旨を答弁したわけであります。  われわれとしましては、本来のそのようなやや瑕疵のあるような方はパイロットとして、機長として飛ばせないでほしいということはもちろん指導しておるわけであります。
  245. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 大臣の御答弁ですけれども、監督官庁というものは、日航が大丈夫だからと言うから役所もいいという考え方は、僕はおかしいと思うのですよ。日航は日航の会社の中でのチェックでしかないのですから、そういうチェックの体制だけで十分であるかどうかということを私は申し上げているのです。
  246. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 何も怪しげなものを全部許可しているつもりはないのであります。おっしゃるように、日本航空として自信を持って、機長としてこの人を飛ばせるという資格をもらいたいというのでありますから、一義的にはそれを信頼するわけであります。もちろん、その間に既往症その他が記入されておれば、その問題についてはそれとして十分対処をしていくということは、別に私ら監督的な責任を逃げるつもりもないわけでございます。
  247. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 日航を信頼してきたら事故が起きたんじゃないですか。そうでしょう。日航の報告を信頼してきたら現実に事故が起きているのですよ。だから、私は、日航だけにこの管理を任せておいていいのか、やはり監督官庁としてきちっとチェックのできる制度をつくるべきではないかということを申し上げているのです。しかもそれは、もう時間をかけている余裕がないのじゃないか。これだけの問題が起きてしかも事故が起きているのですよ。私は日航が安全のために全力を挙げていることは百も承知で申し上げているのです。しかしそれだけでは、やはり社内には温情もありましょう。これはどこの会社だってありますよ。このくらいだったら治った、何とかパイロットで残してやろう、それは当然ありますよ。しかし、そういうことで事故が起きたのだから、こういう機会に、二度とこういう事故を起こさないとおっしゃるなら、きちっと制度を改革すべきじゃないですか。医師に相談するのも結構ですけれども、医者にこんなことを相談しなくったって、われわれ素人だってわかるのですよ。事故が起きているのじゃないですか。監督官庁としてきちっとこの事故を受けとめて、ちゃんとした処理をやってください。亡くなった人は浮かばれませんよ。そうじゃないですか。
  248. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私は何も、今回の事故を隠蔽するとかそういう意図は全くございません。ただ、日本航空としても大きな責任は持って運営している航空会社でありますので、またそこの検査をしているのも歴然とした医師でありますから、その方々の申告というものに対して一応信頼するということは当然であろうと思います。それについてなお一段のしぼりをかけるべきであるということは今日の事態から見ますると必要なことであると思いますので、そうした方向をさらに将来においても検討してまいりたいと思っております。
  249. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 これ以上申し上げませんけれども、ぜひ役所としてもちゃんと監督をしているという立場で、二度とこういうことが起きないように速やかに処理をしていただきたいと思います。  それから、今度の一連の事故の経過を伺っておりまして、幾つかの不審点が明らかにされていたにもかかわらず、やはりチェックできなかったという問題が、われわれに非常に不安を依然として残しているのです。片桐機長が事故を起こした前日も、そして最後の飛行五秒前もいろいろ指摘をされているわけでしょう。そういうことがきちっとチェックをできなかった。そこで、こういう場合にはどういう経路でチェックをするのですか。そして、だれが最終的な判断をされるのですか。
  250. 野田親則

    野田参考人 申しわけございませんが、御質問のポイントがちょっと……。
  251. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 もう一度申し上げます。  たとえば機長、副操縦士、航空機関士、パーサー、スチュワーデスがいらっしゃいますね、そういう方たちが相互にチェックをする場合に、どういう形でチェックをするのですか。そして、これは危険だという判断は最終的にはだれが責任を持っておやりになるのですか。
  252. 野田親則

    野田参考人 飛行の前に全員が集まりましたときに、機長が指揮をして、通常私ども飛行前のブリーフィングと称するのをやっております。その過程の一部に乗員相互の健康のチェックというのがある。現状のシステムはそういうふうになっております。で、心身の状態が飛行完遂に適するということを運航乗務員が相互に確認をする。そのことを終えたならば、機長が飛行計画にそれが済んだ旨のことを署名するというのがいまのやり方です。  先ほども御答弁申し上げましたように、逆に機長がおかしいということを副操縦士その他が認めたときどうするかというあたりがはっきりしないじゃないかというのが、社内の議論でございました。この辺を直す、小さな改善にすぎませんけれども、そういうことを考えております。  それから、どのように報告するかというようなことも改善すべき点の中に入っておると思います。  現状はそのようにやっております。
  253. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 十二人のチェックをされたと言いますけれども、いまの再チェック、精密検査をされておる中には機長の人もいらっしゃるのですか。
  254. 野田親則

    野田参考人 十二人の運航乗務員の過去の病歴の記録からそれをもう一回チェックしたということを、昨日御報告申し上げたのですけれども、その内訳については、まことに申しわけないことではありますが、御理解をいただきたいと思いますが、現在の検査基準その他に照らして全部飛行適に入る人たちばかりでございますし、どういう職種が何名ということを申しますと、きわめて容易に特定の個人であるということがわかるものですから、そのような意味において、会社としては、職種の分類を公にするということをしないことで勘弁をしていただきたいと思っております。監督御当局には御報告申し上げます。
  255. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 それから、先ほどの問題にちょっと関連するのですけれども、たとえば機長に今度のような異常、事実異常が指摘されているわけですけれども、異常だ、しかし、副操縦士なりがどうもおかしい、こう思ってもなかなか、相手は上司ですから、よほどのことでなければ報告もできないし、余り指摘もできない、そう考えるのが自然だと思います。私自身は、正直に申し上げて、管理職制度そのものに問題があるとは必ずしも思っておりません、むしろこれは、それぞれの会社で、それぞれが責任をとれるという体制をつくるということが必要だと思っていますから。しかし常識的に考えれば、機長の絶対権力というか飛行機の中における物すごい力があるわけですから、すべての責任を持っているそういう機長に対して、当然自分の、人間臭い話ですけれども、昇進もあるでしょう、昇格もあるでしょう、あるいはいずれパイロット、機長にもならなければならぬという、副操縦士という言ってみれば部下が、上司に向かっていろいろなことをチェックするなどということは、不可能だと考えた方が私は正しいと思う。そうすると、いまのように何でも自由に報告しなさいと言っても、なかなか報告できないのじゃないかと思うのですね。いままで報告をされたということが、きちっとしたそういうデータでも残っていますか。そういう経過もございますか。
  256. 野田親則

    野田参考人 私が承知していますのはただ一つの例しかございません。ただし、運航乗務員相互のチェック、確認ということではなくて、客室乗務員から、機長が酒気を帯びているのじゃないかということを言い出されたケースがあります。その理由は、目が赤かったというようなことだったそうです。当該機長は、それなら自分でアルコールのチェックをすると言って、各支店にその機器が配備してあるものですから、それを使って、このとおり何ともないということを示して、みんなを安心させたという報告は聞いております。それ以外のケースで、乗員相互のチェックによって具体的にそういうケースがあったということは、まだ聞いておりません。
  257. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 それが正直なところだと私は思うのです。これは、お話を伺うと、アメリカにもそういう制度があったわけですね。アメリカでも社内申告制度というものがあった。しかし、ほとんど申告なんかないわけですよ。そこでアメリカでは、社内申告制度をやめて、NASAにそういう機関を設けて、むしろ第三者的なところに報告をしているという制度に変えたわけですよ。やはり日本のように人間関係が非常に強いといいますか、上下の関係がきちっとしている、特に日航のような体制の中ではなかなかむずかしいことではないかと私は思うのです。私は何といいますか、これは管理職制度そのものがとは思いません。必ずしもそう申し上げるつもりはありませんけれども、いずれにしてもこの制度はやはり変えないと、自由に言いなさい、何でも報告しろ、こうおっしゃっても、いまお話しのように報告はない。事実、今度の事故にいたしましても、片桐機長の不審な飛行あるいは不審な行動というものがこれだけ指摘をされているわけでしょう。しかし、そういうものが報告をされないで明らかにされなかったわけですから、やはりもう少しチェックができる制度をつくるべきだと私は思うのです。  これは日航と、それから、もしそういう制度をほかにつくるとすれば当然運輸省もそういうことをお考えいただかなければならないわけですから、おのおのお答えをいただきたいと思います。
  258. 野田親則

    野田参考人 先ほどの答弁は、飛行直前にやるお互いのチェックで出たのはそれ一件だと申し上げました。ただいまのお話を伺いまして、それに相当するわが社の例を申し上げます。  日本航空では安全情報収集制度とでも言うべき、セーフティ・リポーティング・システムというのを昭和五十二年七月一日から実施してまいりました。この制度の眼目は、大変言いにくいことは匿名でよろしいというので、匿名でもいいから報告しなさいということでありまして、悪くしたら事故になったかもしれない、あるいは事故の誘因になるかもしれない、そういう心配があったら、だれでも、だれでもというのは運航乗務員ですけれども、そういう経験を報告しなさい、そしてそれを周知すると経験を共有する、みんなの人がそれを教訓として利用することができる、そういう趣旨であります。これは、五十二年からことしの二月二十二日までに提出された総件数は、五十九件出ております。  それから、その中身の性質ですけれども、誤操作とか操作忘れというのが十八件、またそういう可能性があったものを含んでおります。また、航空交通管制の誤解とか管制の指示を逸脱したとか、そういったものがあります。それから乱気流がある。地上と機上との意思の伝達が悪かった。それから空港施設のふぐあい等々。中身的にはそのような中身を含んでおります。  この趣旨は、先ほどのアメリカのユナイテッド・エア・ラインズがNASAに報告するという制度があるということをおっしゃったのと同趣旨でありまして、なかなか言いにくいことでも言ってもらう、そして安全の向上に資するというつもりでございます。
  259. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 ただいまお話しの、本件のごときあるフライトにおける異常な運航について、相互の申告がしにくい場合に何か国の機関に申告するというようなことにつきましては、一々のフライトについてそういうようなものをお聞きするというような機関というのはなかなかむずかしい問題じゃないかと思いますが、そういう一々の問題ではなくて、ある問題について、会社内部ではなかなか言いにくい話を、何か申し立てをする機関というような趣旨かとも思うのでございますが、私どもも、外国の制度などももう少し勉強させていただきまして、研究させていただきたいと思います。
  260. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 先ほど同僚議員からも御指摘があった問題ですけれども、航空法施行規則百五十八条によりますと、機長は九十日間に三回の離着陸をしなければならない、こういうことになっておるわけでありますが、片桐機長の場合には、その経過の中にこの規則に当てはまらない時期があった。しかも、先ほどのお話を伺いましたら、三回という記録をしたのはミスであったということも伺いました。そうしますと、これがもし事実ならば、機長は資格を失うのではないのですか。失っていたということになるのじゃないですか。
  261. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 その時点において機長の資格を失うということではございませんが、航空法上の罰則がかかるということでございます。
  262. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 そのとおりですね。先ほど申し上げた航空法百五十八条違反をすれば、本人と会社には五万円の罰金が科せられるわけでしょう。そして片桐機長は技能証明が取り消されるはずですね。そして一年以内の業務停止になる。こういう規定じゃないのですか。
  263. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 御指摘のような、技能証明取り消しの事由になり得るということでございます。
  264. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 これは重大な問題ですよ。本人は資格がない、そういう人が乗っていたんでしょう。規則に合わない、乗れない人が乗っていたということですから、重大ですよね。運輸省、これはどうするんですか。
  265. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 御指摘のように、その時点の違反というのが今回の事故を契機にして判明したわけでございます。この問題につきましては、確かに御指摘のように重大な法違反でございますが、片桐機長につきましては、現在、今回の事故そのものに関しまして捜査が進められておるという状況でございます。今度の事故全般についての捜査とあわせて、その一環として考えていくべき問題だと考えております。
  266. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきますけれども、私は、限りなく世界の日航が早く信頼を回復してほしい、そして問題点はもう具体的に指摘をされてきたのですから、速やかにそれらの問題の処置をしていただきたい。これは日航にもお願いしたいし、運輸省にも強くお願いをしたいと思うのです。二度とこうした事故を起こさないようにと答弁をすることは幾らでもできますけれども、問題は、指摘をされた疑問点を具体的に解決をすることだと思うのです。ぜひそういう立場で、原因の究明、原因が明らかにされる結果を待たずに、速やかな措置を強く望んで、質問を終わらせていただきます。
  267. 西中清

    西中委員長 各参考人には、御多用中のところ、長時間にわたり御出席いただき、まことにありがとうございました。  次回は公報でお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時四分散会