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1982-05-12 第96回国会 衆議院 建設委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年五月十二日(水曜日)     午後一時三十分開議  出席委員    委員長 村田敬次郎君    理事 稲村 利幸君 理事 大塚 雄司君    理事 住  栄作君 理事 竹中 修一君    理事 木間  章君 理事 中村  茂君    理事 薮仲 義彦君 理事 林  保夫君       國場 幸昌君    桜井  新君       田村 良平君    登坂重次郎君       東家 嘉幸君    小野 信一君       前川  旦君    山花 貞夫君       横山 利秋君    瀬崎 博義君  出席国務大臣         建 設 大 臣 始関 伊平君  出席政府委員         林野庁長官   秋山 智英君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省河川局長 川本 正知君  委員外出席者         林野庁指導部長 鈴木 郁雄君         建設委員会調査         室長      升本 達夫君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   横山 利秋君     八木  昇君 同日  辞任         補欠選任   八木  昇君     横山 利秋君 同月二十三日  辞任         補欠選任   渡辺 武三君     近藤  豊君 同月二十八日  辞任         補欠選任   鴨田利太郎君     田原  隆君   桜井  新君     赤城 宗徳君   横山 利秋君     城地 豊司君 同日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     桜井  新君   田原  隆君     鴨田利太郎君   城地 豊司君     横山 利秋君 五月十二日  理事渡辺武三君四月二十三日委員辞任につき、  その補欠として林保夫君が理事に当選した。     ――――――――――――― 四月二十八日  治山治水緊急措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四七号)(参議院送付) 同月二十一日  住宅関係予算大幅拡充等に関する請願外三件  (中村茂紹介)(第二四五一号)  脊髄損傷者に対する建設行政改善に関する請願  (田邊誠紹介)(第二四七三号)  住宅宅地政策に関する請願中島武敏君紹  介)(第二五一九号)  道路整備促進に関する請願小渕恵三紹介)  (第二五五五号)  同(加藤紘一紹介)(第二五五六号)  同(東家嘉幸紹介)(第二五五七号)  同(村田敬次郎紹介)(第二五五八号)  同(藤田義光紹介)(第二六〇八号) 同月二十八日  離島振興法期限延長に関する請願逢沢英雄  君紹介)(第二六六四号)  道路整備促進に関する請願今井勇紹介)(  第二六六五号)  同(奥田敬和紹介)(第二六六六号)  同(佐々木良作紹介)(第二六六七号)  同(石川要三紹介)(第二七〇二号)  同外二件(佐野嘉吉紹介)(第二七一五号)  同(山崎武三郎紹介)(第二七一六号)  同(渡部恒三紹介)(第二七一七号)  同(津島雄二紹介)(第二七八三号)  同(中村喜四郎紹介)(第二七八四号)  地方住宅供給公社家賃制度改悪反対等に関す  る請願井上泉紹介)(第二七〇〇号)  同(阿部未喜男君紹介)(第二七〇一号) 五月七日  道路整備促進に関する請願外一件(倉石忠雄君  紹介)(第二八二七号)  同(田村良平紹介)(第二八二八号)  同外一件(近岡理一郎紹介)(第二八五四  号)  同(三池信紹介)(第二八五五号)  同(足立篤郎紹介)(第二八八二号)  同(天野光晴紹介)(第二八八三号)  同(石橋一弥紹介)(第二八八四号)  同(小里貞利紹介)(第二八八五号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第二八八六号)  同(浦野烋興君紹介)(第二八八七号)  同(稲垣実男紹介)(第二九二二号)  同外一件(金子一平紹介)(第二九二三号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第二九二四号)  同(中山利生紹介)(第二九二五号)  同(狩野明男紹介)(第二九四四号)  同(海部俊樹紹介)(第二九四五号)  同(金丸信紹介)(第二九四六号)  同(木村武千代紹介)(第二九四七号)  同(羽田孜紹介)(第二九四八号)  同(三木武夫紹介)(第二九四九号)  国民本位住宅政策実行に関する請願外十八件  (山花貞夫紹介)(第二八八一号) 同月十日  道路整備促進に関する請願稲垣実男紹介)  (第二九八七号)  同(稲村利幸紹介)(第二九八八号)  同(宇野宗佑紹介)(第二九八九号)  同外二件(小川平二紹介)(第二九九〇号)  同(太田誠一紹介)(第二九九一号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第二九九二号)  同(川崎二郎紹介)(第二九九三号)  同(木野晴夫紹介)(第二九九四号)  同(倉石忠雄紹介)(第二九九五号)  同(倉成正紹介)(第二九九六号)  同(栗原祐幸紹介)(第二九九七号)  同(近藤元次紹介)(第二九九八号)  同(佐藤守良紹介)(第二九九九号)  同(塩谷一夫紹介)(第三〇〇〇号)  同(瀬戸山三男紹介)(第三〇〇一号)  同(染谷誠紹介)(第三〇〇二号)  同(竹下登紹介)(第三〇〇三号)  同外五件(田村元紹介)(第三〇〇四号)  同外一件(東家嘉幸紹介)(第三〇〇五号)  同(野田毅紹介)(第三〇〇六号)  同(羽田孜紹介)(第三〇〇七号)  同(福田赳夫紹介)(第三〇〇八号)  同外五件(山本幸雄紹介)(第三〇〇九号)  同(渡部恒三紹介)(第三〇一〇号)  同(小沢一郎紹介)(第三〇四二号)  同外一件(加藤紘一紹介)(第三〇四三号)  同(狩野明男紹介)(第三〇四四号)  同外一件(瓦力君紹介)(第三〇四五号)  同(木野晴夫紹介)(第三〇四六号)  同(近藤元次紹介)(第三〇四七号)  同外三件(久野忠治紹介)(第三〇四八号)  同外一件(小坂善太郎紹介)(第三〇四九  号)  同(正示啓次郎紹介)(第三〇五〇号)  同(戸沢政方紹介)(第三〇五一号)  同外一件(羽田野忠文紹介)(第三〇五二  号)  同外二件(古屋亨紹介)(第三〇五三号)  同(山下元利紹介)(第三〇五四号)  同(小沢一郎紹介)(第三一〇一号)  同外四件(大西正男紹介)(第三一〇二号)  同(岡本富夫紹介)(第三一〇三号)  同外二十三件(加藤六月紹介)(第三一〇四  号)  同(小宮山重四郎紹介)(第三一〇五号)  同外六件(正示啓次郎紹介)(第三一〇六  号)  同外一件(近岡理一郎紹介)(第三一〇七  号)  同外四件(中西啓介紹介)(第三一〇八号)  同外一件(森下元晴君紹介)(第三一〇九号) 同月十一日  道路整備促進に関する請願逢沢英雄紹介)  (第三一四三号)  同(伊東正義紹介)(第三一四四号)  同(稻村左近四郎紹介)(第三一四五号)  同(浦野烋興君紹介)(第三一四六号)  同外八件(江崎真澄紹介)(第三一四七号)  同外一件(大野明紹介)(第三一四八号)  同外三十一件(大村襄治紹介)(第三一四九  号)  同(狩野明男紹介)(第三一五〇号)  同外一件(梶山静六紹介)(第三一五一号)  同(亀井静香紹介)(第三一五二号)  同外六件(亀岡高夫君紹介)(第三一五三号)  同外一件(久野忠治紹介)(第三一五四号)  同外二件(工藤巖紹介)(第三一五五号)  同(倉成正紹介)(第三一五六号)  同(小宮山重四郎紹介)(第三一五七号)  同(河本敏夫紹介)(第三一五八号)  同(斉藤滋与史君紹介)(第三一五九号)  同(田原隆紹介)(第三一六〇号)  同(竹中修一紹介)(第三一六一号)  同外三件(谷垣專一君紹介)(第三一六二号)  同外二件(渡海元三郎紹介)(第三一六三  号)  同(永田亮一紹介)(第三一六四号)  同外六件(早川崇紹介)(第三一六五号)  同(原健三郎紹介)(第三一六六号)  同(平泉渉紹介)(第三一六七号)  同(平沼赳夫紹介)(第三一六八号)  同(牧野隆守紹介)(第三一六九号)  同(松野頼三君紹介)(第三一七〇号)  同(宮下創平紹介)(第三一七一号)  同(武藤嘉文紹介)(第三一七二号)  同外二件(村田敬次郎紹介)(第三一七三  号)  同外十件(渡部恒三紹介)(第三一七四号)  同外二十件(渡辺紘三君紹介)(第三一七五  号)  同(相沢英之紹介)(第三一八三号)  同外二件(金子一平紹介)(第三一八四号)  同(亀井静香紹介)(第三一八五号)  同(竹下登紹介)(第三一八六号)  同(玉沢徳一郎紹介)(第三一八七号)  同(三塚博紹介)(第三一八八号)  同外八件(山田太郎紹介)(第三一八九号)  同外二件(浦野烋興君紹介)(第三二四〇号)  同外二件(唐沢俊二郎紹介)(第三二四一  号)  同(久野忠治紹介)(第三二四二号)  同(小坂善太郎紹介)(第三二四三号)  同(小宮山重四郎紹介)(第三二四四号)  同外二件(後藤田正晴紹介)(第三二四五  号)  同(近藤元次紹介)(第三二四六号)  同(田村元紹介)(第三二四七号)  同(近岡理一郎紹介)(第三二四八号)  同(佐々木良作紹介)(第三二四九号)  同(東家嘉幸紹介)(第三二五〇号)  同(野中英二紹介)(第三二五一号)  同外三件(畑英次郎紹介)(第三二五二号)  同外十二件(林保夫紹介)(第三二五三号)  同(山本幸雄紹介)(第三二五四号)  同外十三件(渡辺栄一紹介)(第三二五五  号)  公営住宅の、家賃等改善に関する請願外四件(  林保夫紹介)(第三二三九号)  脊髄損傷者に対する建設行政改善に関する請願  (中井洽紹介)(第三二七七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十日  住宅金融公庫制度改善に関する陳情書外一件  (第二一七号)  有明海沿岸地方地盤沈下対策推進強化に関  する陳情書  (第  二一八号)  中国横断自動車道建設促進に関する陳情書  (第二一九号)  四国開発幹線自動車道建設促進に関する陳情  書  (第二二〇号)  本州四国連絡橋尾道今治ルート建設促進に  関する陳情書(第  二二一号)  公共事業拡充強化に関する陳情書外一件  (第二二二号)  道路整備に関する陳情書外十九件  (第二二三号)  地方有料道路事業経営改善に関する陳情書  (第二二四号)  四国地方国道バイパス建設促進に関する陳情  書  (第二二五号)  国道一〇号バイパス建設促進に関する陳情書  (第二二六号)  国道三一一号改良促進に関する陳情書  (第二  二七号)  住宅都市整備公団九州支社の存続に関する陳  情書(第二二八  号)  公共物管理改善に関する陳情書  (第二二九号)  公営住宅入居収入基準改正に関する陳情書  (第二三〇号)  治水事業推進に関する陳情書  (第二三一号)  東九州縦貫自動車道早期着工に関する陳情書  (第二三二号)  九州縦貫自動車道早期完成に関する陳情書  (第二三三号)  第九次道路整備五カ年計画の策定に関する陳情  書外八十一件  (第二三四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  治山治水緊急措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四七号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 村田敬次郎

    村田委員長 これより会議を開きます。  この際、御報告申し上げます。  すでに御承知のとおり、長年にわたり本委員会理事として御活躍されました渡辺武三君は、去る四月二十三日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。  ここに、委員各位とともに故渡辺武三君の御冥福を祈り、謹んで黙祷をささげたいと存じます。全員御起立願います。——黙祷。     〔総員起立黙祷
  3. 村田敬次郎

    村田委員長 黙祷を終わります。ありがとうございました。御着席願います。      ————◇—————
  4. 村田敬次郎

    村田委員長 理事補欠選任についてお諮りいたします。  現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 村田敬次郎

    村田委員長 御異議なしと認めます。よって、理事林保夫君を指名いたします。      ————◇—————
  6. 村田敬次郎

    村田委員長 内閣提出治山治水緊急措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。始関建設大臣。     —————————————  治山治水緊急措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  7. 始関伊平

    始関国務大臣 ただいま議題となりました治山治水緊急措置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  政府におきましては、現行治山治水緊急措置法に基づき、昭和五十二年度を初年度とする治山事業五カ年計画及び治水事業五カ年計画策定し、これにより治山治水事業計画的な実施を進めてまいりました。  現行の五カ年計画は、昭和五十六年度をもって終了いたしますが、一方、国土利用開発の著しい進展に伴い、山地及び河川流域においてしばしば激甚な災害が発生するとともに、各種用水不足は依然深刻であり、治山治水事業を一層強力に推進する必要が生じております。  このような情勢に対処するためには、現行の五カ年計画に引き続き、昭和五十七年度を初年度とする治山事業五カ年計画及び治水事業五カ年計画策定することにより、これらの事業を緊急かつ計画的に実施して国土保全開発を図る必要があります。  以上がこの法律案を提出した理由でありますが、次に、この法律案要旨について御説明申し上げます。  第一に、ただいま申し上げましたとおり、現行の五カ年計画に引き続き、昭和五十七年度を初年度とする治山事業五カ年計画及び治水事業五カ年計画策定することといたしました。  第二に、新たに治山事業五カ年計画及び治水事業五カ年計画策定されることに伴い、国有林野事業特別会計法及び治水特別会計法所要改正をすることといたしました。  以上がこの法律案提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  8. 村田敬次郎

    村田委員長 以上で趣旨説明聴取は終わりました。     —————————————
  9. 村田敬次郎

    村田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桜井新君。
  10. 桜井新

    桜井委員 私はこれで三回ほど実は質問のチャンスを延ばされてきたわけでありまして、どうも余り質問に闘志が燃えなくなってしまったのでありますが、せっかくいま大臣が新規の治水の五カ年計画提案理由説明されたことでありますので、二、三たださしていただきたいと思うわけであります。  まず最初に、ただいま大臣の方から提案理由説明もありましたが、過日「建設行政基本施策に関する所信表明」という中で、大臣がこのように申しております。「今日のわが国経済の課題は、物価の安定を基礎として、内需を中心とした景気の着実な回復を促進することにあります。」さらに飛んで、「昭和五十七年度を初年度とする第六次治水事業五カ年計画を新たに発足させることとし、現行住宅建設都市公園、下水道、海岸、道路及び交通安全施設の各五カ年計画とあわせ、国民生活維持向上国土安全性確保及び国土の発展に資する諸施設整備を、長期的視点に立って計画的に推進することとしております。」前段でこのようにうたわれて、さらにことしの建設行政の大きな柱を細目にわたって説明をする中で、第三に国土保全水資源開発について、災害列島の悪名を遺憾なく発揮した昨年の事実等についてるる説明した後、「このため、治水利水施設の一層の整備を促進し、国土保全と民生の安定を図るため、昭和五十七年度を初年度とする第六次治水事業五カ年計画策定し、重要河川、改修のおくれている中小河川及び都市河川整備並びに砂防事業等を積極的に推進するとともに、長期的な水需要に応じた水供給安定確保を図るため、多目的ダム、河口ぜき等の建設を促進してまいる所存であります。」と、大変多くの時間を割いて、私ははしょって要点だけ拾って申し上げたのでありますが、この基本施策についての所信表明で積極的な姿勢を打ち出されて治水に取り組もうとされておることについて、まず最初にこれを高く評価し、いま申し上げたように積極的にひとつ進めていただきたい、大いに期待を申し上げて質問に入らしていただきたいと思うわけであります。  最初に、昨年は大変な災害の年でございました。正月早々から終戦直後、二十年の大豪雪に続く豪雪だとも言われた豪雪が皮切りで、冷害、水害等相次いだわけでありましたが、その都度建設省河川局を先頭に、災害対策に積極果敢に対応していただいて民心を安んじていただいたことについては、これもまた心から感謝を申し上げ、評価をしておきたいと思うわけであります。  昨年もあれだけ相次いで災害があったわけでありますが、建設省の資料からいたしますと、昨年単年度だけで約四千三百億ほどの災害が起きたと示されております。それで、建設省だけではなくて国全体として見た場合には約一兆円にも上ると聞いておるわけであります。それに引きかえ、去年の災害を見てもおわかりのように、一歩間違えば大変な大惨事を起こしかねない状態の治水環境がまだ大変たくさんあるわけでありますが、今度の五カ年計画で示されておる数字十一兆二千億ですか、十一兆二千億という数字で果たしてこれが五カ年間に本当に国民が安心されるところまで対応ができるのかどうか、まずもってお聞かせを願いたいと思うのです。
  11. 川本正知

    川本政府委員 お答えいたします。  先生ただいまおっしゃいましたように、昨年は特に北海道、東北を中心にいたしまして全国各地災害が頻発いたしました。戦後、昭和二十年以降三十五年間災害を累計してみますと、五十年価格で累計いたしまして、公共災害、一般被害両方合わせて十八兆九千億円という大変な被害額に上っておるわけでございまして、ただいまおただしの第六次の治水事業五カ年計画の案でございますが、この投資規模の十一兆二千億円は新経済社会七カ年計画のフォローアップ、これとの整合を図りまして、ただいま申し上げたような最近におきます災害等の状況を考慮して、治水施設強化を図るよう政府案として設定しておるものでございます。  この投資規模は、昭和五十六年度までの第五次の治水事業五カ年計画投資規模七兆六千三百億円の約一・五倍に相当するものでございまして、これを遂行することによりまして治水施設等整備は相当程度推進できるものだと考えております。事業実施に当たっては、災害の実態あるいは用水不足の実情などを十分勘案いたしまして、緊急を要する事業から重点的に、また効率的に執行することによりまして、治水施設整備をさらに推進するように努力してまいりたい、そう思っておるところでございます。
  12. 桜井新

    桜井委員 河川局長の立場ではその程度の答弁が当然だろうと思うのですが、私は十一兆二千億でも決してまだ満足のいくものではない、あなたが最後に答弁されたようなことにはならぬと思うのです。せめてこれからは、この十一兆二千億が完全実施をされることの方が大事なんですから、そういう意味でいろいろ質疑をしてまいりたい、こう思っております。  次に、今度の五カ年計画策定方針並びに重点項目について、国民にわかりやすく説明を願いたいと思います。
  13. 川本正知

    川本政府委員 国土保全開発を図りまして、国民生活の安定と向上に資するために第六次の五カ年計画策定いたしまして、これに基づいて治水事業並びに水資源開発事業といったものを積極的に推進することにしておるわけでございますが、第六次五カ年計画の案においては次の四点に重点を置いて推進したいと思っております。  まず第一点は、整備の立ちおくれが大変顕著でございます中小河川対策、その中でも特に水害が最近頻発しております都市河川治水対策をまず第一の重点に置いております。第二は、昨年も悲惨な人命被害を引き起こしました土石流の危険渓流に対する治水対策重点に置いております。第三番目といたしましては、全国の大河川重要河川については、河川はんらん区域内の人口であるとか資産に膨大な集積が生じておりますので、そういった重要河川整備重点を置きたいと思っております。それから第四点は、生活用水等需要の増大に対処いたしますための水資源開発並びに水の高度利用推進といったことを重点に置いて、事業計画的な、また強力な推進を図ってまいりたい、そう思っておるところでございます。
  14. 桜井新

    桜井委員 局長、いま御説明のことでわかりましたが、ちょっとつけ足すべき面があるのではないでしょうか。去年の水害でもそうでございましたけれども、各地でいろいろ深刻な問題を引き起こしております地盤沈下問題についてどう対応するつもりなのかということと、最後説明のあった水資源開発は、開発を進めていけば、需要に対してどの程度のところまで供給できるようになるのか、その目標をひとつ教えてください。
  15. 川本正知

    川本政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、地盤沈下、これは地下水の過剰なくみ上げによりまして起こった現象でございまして、各地地下水塩水化であるとか地下水位低下、そういった現象もあわせまして地下水の障害が発生しておりまして、社会経済上大きな損害が生じておるわけでございます。特にその中でも地盤沈下が、おっしゃいましたように公共施設機能低下をもたらしますし、一般社会生活にも影響が大きいということでございまして、建設省調査によりますと、現在地盤沈下を起こしておる地域、これは累計の沈下量が二十センチ以上あるいは最近の沈下量年間で一センチ以上といった地域を抽出いたしますと、濃尾平野など全国で二十六の地域に達しております。近年は全国的に年間地盤沈下量は減少しておる傾向にはございますけれども、関東地方の一部とか筑紫平野の一部などではなお著しい沈下が続いておるところもございます。そういったことのために、建設省におきましては国土保全あるいは水資源確保上重要な、そういった地下水の総合的な管理が必要だというふうに考えておりますけれども、全国地盤沈下地域において地下水位とか水質の観測といったもののほか、いろいろな測量調査を進めておりまして、技術開発も進めております。特に地盤沈下地域に対しまして、治水事業あるいは地下水用水規制に伴います代替の水源を確保する必要がある、そういった意味での水資源開発事業といったものをあわせて進めておりまして、いろいろな地盤対策事業というものを行っておるところでございます。  また、後段でおただし水資源開発目標でございますが、先生承知のように、水資源開発事業というものは計画から完成までに大変長年月を要しますので、長期的展望に立って計画的に実施していく必要があるわけでございます。第六次の五カ年計画におきましてはその整備目標は、長期水需給計画というのが国土庁を中心にして策定されておりますが、昭和六十五年の水の需要量年間約一千百四十五億トンと推定しております。これに対しまして所要水資源開発を行ってまいりまして、おおむね十年後には不安定な取水量現状程度に抑制したい。不安定取水と申しますのは、水が豊富なときにしか取れない水利権ということでございまして、渇水のときには取れなくなる可能性があるという不安定な取水量でございます。これを現状程度に抑制することといたしまして、この計画期間中に年間約三十六億トンの水資源開発してまいりたい、そういう予定で進めていきたいと思っております。
  16. 桜井新

    桜井委員 いま後段の説明でわかりました。あなたがおっしゃるように水資源開発というのは大変な時日を要しますし、住民の納得をいただくまでにも幾多の問題を含んでいるわけでありますから、せいぜい努力をして、ひとつ目標を達成するようにお願いしたいと思うわけであります。  前段のことについては重点項目の中に入ってないけれども、私は新潟県でございますが、これはわが県にとってもぜひ重点項目としてやっていただかなければならぬ環境にありますので、この地盤沈下問題も決しておろそかにしないようにひとつお願いいたします。  そこで次には、いまいただいた書類の中にもそういうことが出ておるのでありますが、今度の五カ年計画初年度に予定をしておった予算と、正式に五十七年度の予算要求の中に上がっておる予算との差があると思うのですが、どれぐらいですか。
  17. 川本正知

    川本政府委員 お答えいたします。  第六次の五カ年計画十一兆二千億円の総投資規模のうち、八兆二千五百億円というのが治水事業でございますが、それが年平均伸び率で申し上げますと、五十六年度事業費をベースにいたしますと九・四%という伸び率になるわけでございます。それで、一応五十七年度を年平均伸び率どおり伸びたという仮定をいたしまして事業費をはじきますと、一兆三千六百七十億円になります。五十七年度の現実の予算は、治水事業費が一兆二千六百三十二億円でございますので、先生おっしゃいましたずれといいますか、それは約一千億円のずれが生じておるということでございます。
  18. 桜井新

    桜井委員 昨年の災害のときも、災害対策特別委員会で私はこんなことを言ったことを記憶しているのでありますが、治山治水というようなものはいつも災害が起きてからばかりやるから、国民の気持ちとしては常に後追い行政、行政がいつも手おくれだという不満と批判があるわけであります。これは財政再建は大切でありますが、事人命にかかわる問題でありますから、最初から一千億の差があって、これで五カ年計画をやれるのですか。私はさっきそういう意味で非常に心配していたのですが、いまお聞きをして、そうなると思うのですが、これから仮にやるとすると、残伸率とでもいいましょうか、残った部分の進捗率をどれぐらいやったらいいのか、それから、その予算をとれる自信があるのかどうか、ちょっとあなたの見通しを聞かせてもらいたいと思います。
  19. 川本正知

    川本政府委員 現実に昭和五十七年度の治水事業予算、これが先ほど申し上げたような数字でございますので、五十六年度に比べて事業費の伸びでわずか一%の増でございます。先ほど申し上げましたように九・四%の五カ年の年平均伸び率でございますので、五十七年度の現実の事業費から、残りの事業費の五十八年度以降の伸びというふうなことを考えますと、一三%ぐらいの伸び率になるわけでございます。現在といいますか、昭和五十六年度までの第五次の治水事業の五カ年計画、これは総額で一〇〇%の達成率に大体なっておるわけでございますけれども、このときの計画の年平均伸び率が約二二%でございました。そういったものから比べますと、今回の伸び率というのは相当大幅に下回っておるわけでございますが、先生ただいまおっしゃいましたように財政再建ということがあるというふうなこと、また現在時点での財政の現状、そういったものから考えますと、その達成は容易なものではないというふうに感じております。しかし、治水事業国土保全ということと、国民生活の安全と向上に資するという一番基本的な事業といいますか、根幹的事業でございますので、そういった重要性、緊急性を考えまして、五十七年度予算におきましては大幅な前倒しというふうなことも現在実行しつつありますけれども、そういったものも含めまして、今後あらゆる機会を通じて計画の達成に努力してまいりたいと思うところでございます。
  20. 桜井新

    桜井委員 これもまたあなたのいまの立場ではせいぜい努力をしてまいります、こういう答弁しかできないのでしょうが、この前の第五次五カ年計画のときには、五カ年の前半でうんと稼いでいたわけですよ。だから、終わりに来て伸び率が落ちても何とか一〇〇%とあなたがいま報告したようなことになるけれども、今度の場合は、最初から逆に差をつけられてしまっているわけです。しかも、先ほどあなたの五カ年計画策定方針の御説明の中に、経済社会七カ年計画と整合性を持って計画した、こういう話がありましたが、これ自体をサミットの後で見直すと言っていますね、最近新聞に盛んに出ておりますが。あの七カ年計画の中の五カ年分を取り出してみると、公共事業が百・九十兆円ですか、それと匹敵して今度、いま漏れ聞くところによりますと、新経済五カ年計画をやる場合の公共事業は百五十兆円にも満たないだろうという見通しが言われているわけです。そういう中で果たして本当にやれるんだろうか、これじゃ全く国民をだますようなことになってしまうんじゃないかと私は非常に心配をしておるわけです。  そこでちょっとお聞きをしたいのですが、治山治水緊急措置法の第三条四項に、国土庁長官並びに経済企画庁長官と協議をするということになっておりますが、これはきょうの法律提案があって通らぬとそこまでは運ばないのでしょうが、しかし、この予算編成をする段階で、事務レベルで事前協議というか、打ち合わせぐらいはやられたんだと思うのです。その辺の模様と、そういう中から自信のほどを、私いま申し上げたように、経済五カ年計画の中で新しい五カ年計画をやるんだと言われておる、その場合にはかなりダウンされるだろうと予測されるわけですが、それでも今度の治水五カ年計画確保できるという自信があるのかないのか、そこら辺のことを……。
  21. 川本正知

    川本政府委員 経済企画庁の方とは、二月九日にこの新しい第六次の五カ年計画につきまして閣議了解がされておるわけでございますが、そのときに際しまして事前の協議を行っておりまして、当然ではございますが、経済企画庁の了解は一応得ておるというところでございます。それにつきましては、治水事業の五カ年計画の親計画でございますのが、先生おっしゃいました新経済社会七カ年計画でございます。これが五十四年から六十年までということで、七カ年計画策定されたわけでございますが、五十五年の末あるいは五十六年の末に二度にわたりましてフォローアップされまして、いまお話しのように全体で二百四十兆円の公共投資を一年半ぐらいおくらせる、六十二年の前半ぐらいまでおくらせるということで、最初の七カ年では百九十兆円の公共投資に抑えるというふうな見直しといいますか、フォローアップが行われたわけでございます。そういったものと今回の第六次の五カ年計画の十一兆二千億円の総投資規模というものは、整合性が図られておるという意味で先ほど申し上げたわけでございます。  経済計画の見直しがあるじゃないかという御指摘でございますが、それにつきましては、私どもも新聞の報道で仄聞している程度でございまして、もしも今後そういった見直しが先生おっしゃいますようにあるような場合につきましては、十分な治水投資額が確保できますように努力しなければいかぬ、そう思っておるところでございます。実は二百四十兆円の公共投資の中で、治水投資分というのは十四兆二千億という額にいままでの新経済社会七カ年計画ではセットされておるわけでございますので、そういったシェアをさらに拡大するように、新しい見直しが行われる場合には最大の努力を払ってまいりたい、そう思っております。
  22. 桜井新

    桜井委員 それは本当に国民の前に約束して公表するのですから、これは大臣も直接担当の官房長も全力を挙げて、私ども与党自民党としても全力を挙げてがんばりますが、これは一歩も引かないつもりでがんばっていただかないと、事は人命にかかわる問題でありますから、ひとつがんばっていただきたいと思います。  ここでちょっと細かいことに脱線をさせていただきたいのでありますが、先ほど重点項目説明の中で、都市河川のことについて触れられました。都市河川のことについては、洪水のたびに水上がりがして、排水が思うようにきかないという地域が相当たくさんございます。わが新潟県は、信濃川という大河川による土砂の堆積でできたところでありますから、なおさらそういういわゆるゼロメーター地帯みたいなところがたくさんあるのですが、その始まりは都市ではなくてたんぼであったわけです。だから、いま一級河川になっておるところも、その河川の排水が、平水のときには自然排水ができるけれども、洪水になるとポンプアップして人工排水をやるわけです。そういう施設が、いまだに土地改良や市町村の共同管理みたいなかっこうになっているところがたくさんあるわけです。  河川というのはもともとが民地であったところで、川が暴れて流れるものだからどこへ行くかわからぬということで、いまだに民地もかなりあるわけですが、最近はそういう民地の買い上げに大いに力を入れておりますね。そうしてちゃんとした管理をやることが河川行政で最も大切なことだと思うのでありますが、そういう観点からして、市街地のちょっと水が出れば相当の人家に影響を及ぼすようなところの施設がまだそういうかっこうになっておるということは、私は非常に残念なことだと思うのです。そして、これはやはり河川行政としては恥ずべきことだ、こう思うわけであります。こういった問題については、その土地改良や市町村が持っておるものだが、当然いまの新しい大きなポンプの性能のいいのに切りかえればもっともっと排水がきいて、そして災害を未然に防げるということは住民みんな承知しているわけですよ。ところが、幾ら市役所に頼んでも町村に頼んでも、そういった最後の負担金の問題があってなかなかやれない。そしてそこのポンプがそういう状態だから河川改修も思うように進まないということでありますが、三大都市圏に比べればかなり河川工事のやり方はあると思うのです。自然排水のできるところなら、横に広げるということはこれは大切なことです。これは河川管理上大切なことでありますが、自然排水のできない、どうせポンプアップするようなところは、新たに用地を買わなくても河積をふやす方法はあるわけです。すぐ下へ河床をどんどん下げていけば、平水時には何の関係もないことですから。そういったような工夫もしながら、都市河川の五カ年計画に当たって改めて見直すべきだ、そしてそういう処置をすべきだと私は思うのです。もし、いま皆さんが積み上げでやってきた五カ年計画事業の中に入っていなければ、これこそまさに調整財源を取り崩しても対応すべきだと思うのですが、せっかく重点項目の中に都市河川を挙げたのですから、このことについて考え方をひとつ聞かしてください。
  23. 川本正知

    川本政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいますように、最近の都市河川災害の頻発というのは大変なものでございますが、特に三大都市圏のみならず、地方都市の都市河川も、これまた人家連檐しておる区域を貫流しておるとかそういった河川でございますので、そういった河川の改修の必要性というものは、大都市の地域におきますものと同様で、もちろん重要なことでございます。  そのほかにまた、いまおっしゃったような土地改良の水路であるとかあるいは市町村が管理しておるような水路、そういったものもあるわけでございますが……(桜井委員「いや、私が言ったのは、かつては土地改良の管理河川だけれども、いまは一級河川になっているところです」と呼ぶ)すでにそういう河川にちゃんと指定されておるものの改修ということでございますが、これは人家密集地帯であるとしても、どうしてもポンプが必要だとか、当然のことになろうかと思いますけれども、あるいは川の断面を広げなければいかぬ、こういったことはこれは当然あり得るわけでございまして、そういったことでしか河川改修ができない、そういった対策が必要だというところにつきましては、当然いまおっしゃったような底を下げるとかあるいは横へ広げることも一つの手段といたしまして、断面を広げるあるいはポンプを設置するといった対策は必要であろうかと思います。  ただ、その工法につきましては、災害の実態でございますとか現場の状況でございますとか、あるいは市街地でありますとごみが流れてまいりまして詰まりやすいとかいうような問題もございます。いろいろな現象がございますが、そういった河川管理上の問題なども含めまして考慮、検討いたしまして、個別に計画、立案しなければいけない、そういうふうに思っておりますが、御指摘のような新潟周辺の河川、これにつきましても現地の実態に即しまして対処してまいりたいと思います。  また、調整費のお話が出ましたけれども、調整費につきましては、事業を促進していく中におきまして、これを使うことが当然必要だというふうな事態が出てまいりましたならば、積極的に活用を図るということの努力をしてまいりたい、そう思うわけでございます。
  24. 桜井新

    桜井委員 ぜひそういうことでお願いをしたい。  いま一点細かいことですが聞かしていただきたいのでありますが、河川管理をする場合に、治水という立場から、できるだけ川の障害物は少ない方がいいわけですね。そういう観点からしますと、利水者がつくる頭首工なんというものはできるだけ数を少なくして、そして効率的に灌漑排水をやっていただく、あるいは工業用水の利用を図っていただくということになるべきだと思うわけでありますが、どうも安易に、計画したものはすぐうのみにするような感じがしてならないわけであります。私は実は川魚の方の会長もやっておるので、いろいろそういう河川そのものの能力というか、生命というのがあると思うのです。そして、その河川の生命が保たれてこそ、本当の意味で生きた治水だと思うわけでありますが、こういったことについて、もっと河川管理者として具体的に水利権者に対して指導をやっていただきたい。  水利権というのは、私の認識が違えば指摘をいただきたいのでありますが、ただ取水トン数が幾らということが水利権ではないと思うのです。これはいつかも質問したことがあるのですが、やはり取水の地点と取水構造と取水トン数、これが三点マッチして、セットになって初めて水利権というものだと思うわけでありますが、そういった水利権者が、自分の持っておる水利権を執行することは結構だけれども、極力他の権益を侵害しないような配慮、利水者に対する河川管理者としての配慮があってしかるべきだと思うのです。この点、考え方をちょっと聞かしてください。
  25. 川本正知

    川本政府委員 いわゆる水利施設の新設とか設置、そういうものに伴いましては、当然のことでございますが、河川のあるべき姿といいますか、治水上あるいは利水上、あるいは河川の正常なあるいは公共の福祉の増進のための利用、そういったものに障害を与える、あるいは支障になるようなことがあってはならない、そう思います。一般にそういった設置の許可に当たりましては、水利使用の目的の妥当性あるいは工作物設置の必然性がどうか、そのほかにも、当然のことながら河川の流況あるいは他の水利使用の状況、河川の維持用水の状況、それから先ほどもおっしゃった魚類等への影響、こういったもろもろの事情に照らしまして、その取水が可能かどうかということを判断しなければいかぬ。また、工作物につきましても、安全性あるいは治水工事計画との整合性といいますか、他の河川管理施設への影響、川の洪水の処理能力への影響、そういう治水上のいろいろな影響面、そういったものに対する影響のおそれがないかどうか、そういったものを十分判断いたしまして厳格な審査を行っておることにしておるわけでございまして、いろいろと具体の事例をお考えのようでございますけれども、そういったものについても十分現地の状況に即しまして慎重に対応して、御心配のようなことがないように努めてまいりたいと思います。
  26. 桜井新

    桜井委員 私は具体的なことを申し上げるつもりはございません。一般論として申し上げているのです。しかし、一般論できょうあなたが答弁したようなことが守られるように、問題が起きてからいや実は済みませんでしたなんという話にならないように、この点はひとつ頼みます。  さて、脱線はそれくらいにしまして本論に返らしていただきますが、先ほど来ずっと説明を聞いておりますと、今度の五カ年計画実施ということについては、いまこの厳しい財政見通しの中では私は非常にむずかしいと思っているのです。しかし、国民のこのことに対する期待は非常に大きいのであります。いま資料をちょっと見せていただいたのでありますが、戦後の災害による死亡者の数というのは非常に多かった。ところが、三十五、六年ごろからいわゆる治水対策、それから防災対策、そういったものがかなり行き届いてきたと見えて、不思議なくらい急速に死亡者、行方不明者の数が減っているわけですね。そういうことからしてもわかるように、国民は、後追い行政と言われる治山治水、これに対する期待、もっと早くやってくれという希望が非常に大きいわけでありますから、これはぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思うのです。私ども与党自由民主党としても、ただ大蔵が悪いのだ、総理が悪いのだということだけではならぬということで、いま財源の洗い直し等をしている。この間、一兆円減税のときに出てまいりました補助貨幣回収準備資金あるいは国債整理基金特別会計、外国為替特別会計その他もろもろの財源等は、どうせ一時的なものかもわからぬけれども、この際だから徹底的に活用できるものはする。そうした中で、なお足りないものは歳出を削減するとか増税をするかしかないわけであります。  そういう中で、財政見通しは非常に厳しいと私は思っておりますので、かねてから地方債として活用されております自然災害防止債の活用だとか、そればかりではなくて、いま自由民主党の中で防災国債のことで議論をしておるわけであります。ようやく小委員会から調査会まで上がって、調査会ではこれはぜひ関係機関に働きかけようというところまで来たのですが、これはいまあなた方の立場でははっきりしたことは言えないかもわからぬけれども、この際だから時限立法でも構わない、やはり財政法の活用ということは本気になって取り組むべきだと思うのです。そして水事業水資源開発のことについては先ほど説明をお伺いしたわけでありますが、目標が達成されたとしても不足分がまだ三十五億トンですか、ある、こういうことでありますから、そういう点から考えても、水源涵養とか治山治水という問題は非常に重要な問題だと思う。  それから、下流でそれを利用する立場の人たちは、多少水利用税というようなものを取られてもいいから水源だけは確保してくれということをわれわれに言うのですよ。そういうムードが出始めてきているわけです。だからこの際、そういった水利用税の創設というようなことについても前向きに検討すべき時期だろう。もちろん私ども与党自由民主党としてはこれを推進するように努力をしてまいるつもりでありますが、これらの財源見通し等について、あるいはその活用等について、どんなお考えをしているか、ちょっと聞かせてください。
  27. 川本正知

    川本政府委員 災害の額の大きさに比較いたしまして治水整備水準が大変低いということでございまして、そのためには、本来的には治水事業予算を拡大しなければいかぬ、それが第一のわれわれの努力目標でございますけれども、先ほどおっしゃいましたような自然災害防止事業債というようなものも五十三年度から創設されて、われわれも活用させていただいておるわけでございます。さらにそういったものの増額を図りまして大きく活用させていただきたい、そう思っております。  また、防災国債のお話もございましたが、防災国債の議論につきましても、私ども、貴重な御意見、御提案として受けとめておりまして、今後十分に研究をさせていただきたい、そう思っております。  また、水利用税の問題でございますが、水資源開発のための特定財源というふうなこととともに、水の節約のためにも役立とうかと思います。水利用税の検討ということも一つの大きなわれわれの課題であろうかと思っておりますが、ただ、その実現に対しましては、現行の流水の占用料が使用者からすでに払われておりますので、それに上乗せしなければいかぬというふうなこと、経済負担が増加するというようなこと、それから利水者からの税を治水事業に使うことの妥当性とか、既得利水者の反対等も当然考えられますし、多くの問題点が残されておりますので、われわれの方も引き続き部内で検討を重ねてまいりたい、そう思っております。  非常に貴重な御意見、ありがとうございました。
  28. 桜井新

    桜井委員 大分私が長しゃべりをするものだから時間がなくなってきましたが、いままでの一連の質問、答弁等をずっと聞いて、建設省の大番頭である官房長、大変だという状況は十分おわかりだと思うのでありますが、そういう中でいま前倒しを決めているわけですから、補正予算を組まなければ経済効果も出なければ、それから建設業者だって後は遊んでいるわけにいかないのですから大変なことになるわけであります。それらの見通し、それから考え方等についてお聞かせ願いたいと思うのです。
  29. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 いまお話しのように、今年度の公共事業につきましては上半期七七・三%契約、こういうことが決まったわけでございまして、これに伴いまして、下半期の事業量は、去年も促進の年であったのですが、去年に比べて約一兆、通常年度に比べますと、下半期約二兆円の事業量減、こういうことになるわけでございまして、われわれといたしましては、下半期の事業量をいかにして確保するかということに最大の関心を持っているわけでございます。したがいまして、去る四月九日の閣議におきましても大臣から御発言があったわけでございますし、また、四月二十六日に開かれました第一回の内閣の公共事業等施行対策連絡会議、これは次官で構成しているわけでございますが、この会議におきましても、うちの次官から下半期につきましては早急に強力な対策を構じてもらいたい、こういうことを申しておるわけでございまして、建設省といたしましては、この点につきましては今後とも最大限の努力を払う考えでございます。
  30. 桜井新

    桜井委員 最後大臣にお聞きをいたしますが、いまお聞きのとおりであります。それで、私どもがいま当たっている感触から言うと、大蔵省の補正予算に対する態度はかなり厳しいものだと思うのですよ。これは、大臣は私ら以上におわかりのはずでありますが、かなり厳しいものだと思うのであります。ただ、私は、この補正予算が景気にどれくらい影響するか、そして税収にどれくらい貢献するかなんという問題だけではないと思うのです。三大都市圏を初めとした工業立地の地域は結構でありますが、そういった産業のない地域、いわゆる地方ですね。特に農村はいま非常にひどい状態なんです。ただでさえ減反を強いられておる。そして日本経済は、発展過程ではいつもそうなんでありますが、発展したり後退するときに、いつも労働人口は合理化合理化で切っていく。一番先に切るのは、孫請、下請という順番に切っていくわけですよ。そういうものは全部地方から行っているわけですね。そういうのが切られる。そしてそのうちに、また自分の中でもなお耐えられなければ首切りをやる、こういうことになる。首を切られた連中は行くところがないからみんな地方に帰ってくるわけです。そういうところへもってきて今度は農産物自由化問題で、牛肉の自由化をするなんと言うものだから思惑で一遍に下がっちゃって、農村ではいま自殺者まで出ているような状況なんです。それはもちろん定職があれば一番いいけれども、そういうわけにはなかなかいかないわけですが、そういう疲弊した農村を救うには、昔から言われておるいわゆる救農土木事業的な発想で、公共事業でもばらまいてもらうしかないわけですよ。だから、単に財政再建がどうこうなんという問題ではない。事人命にかかわる大変な問題だと思うので、私はそういう意味で、自由民主党としてもどんなことがあったって補正予算は組ませなければならぬ、こう思っておるのですが、大臣の覚悟のほどをひとつ聞かせてください。
  31. 始関伊平

    始関国務大臣 最近の景気の動向等にかんがみまして、公共事業費の上半期前倒しが必要であるということにつきましては、予算案の審議中から閣議でも検討を始めたような次第でございまして、ただいま官房長から申し上げましたとおりの結果に相なりまして、ただいま建設省といたしましても、前倒しが円滑に行われるように全力を挙げておるところでございます。  上半期に七七%も使ってしまえば、下期の対策が当然必要になるということはもう火を見るよりも明らかでございまして、私も四月九日の閣議におきましても発言をいたしたのでございますが、大勢はそういう方向に進むだろう、補正予算でありますが、これは建設公債でやってもらいたいということをはっきり申しておいたわけでございますが、予算の前倒し施行、それから補正予算等の実施に当たりまして、いま桜井さんがおっしゃいましたように、景気の問題であるとかなんとかいうこともございますけれども、公共事業が切れるということになりますと、地域地域によりまして影響に深刻さの度合いが違うわけでございますから、全般の問題として確保しなければなりませんが、その配分に当たりましては、ただいま御指摘になりましたような事情を考えまして適正にやって、国内の各方面の御期待にこたえてまいりたい、かように存じております。
  32. 桜井新

    桜井委員 大臣の覚悟のほどはわかりましたが、事は非常に深刻な問題でありますし、重大な問題でありますので、せいぜいの御努力をひとつ期待しております。  次に、治水はそれぐらいにいたしまして、治山事業五カ年計画の方について林野庁にちょっとお伺いをしたいと思うわけであります。  時間がまだ十五分ぐらいございますか、十五分ぐらいひとつお願いをしたいと思うわけでありますが、最初に、昨年新潟県では二度にわたるなだれ災害による大惨事並びに濁沢の地すべり災害のときには早々に現地に直行いたしていただいて、非常にスピーディーな対応をやっていただきました。住民ともども心から感謝を申し上げます。  そこで、昨年もあれだけの災害があった、先ほども言ったように災害だけでも一兆円に上るかとまで聞いておるわけでありますが、日本全国の山間地やがけ地等の危険個所というのは一体どれぐらいあるのですか。それをまず最初に、これは指導部長ひとつ聞かしてください。
  33. 鈴木郁雄

    ○鈴木説明員 ただいま先生お話のございました山地災害の危険個所でございますが、昭和五十三年と五十四年の両年度で総点検を実施いたしまして、その結果、全国で十三万一千カ所危険個所があることが判明いたしております。
  34. 桜井新

    桜井委員 そこで、今度の新規五カ年計画、これは治水の五カ年計画と同じようなことで、同じようなことを聞くようなことにもなりますが、その前に、いま十三万一千カ所ですか、その危険個所が、今度の五カ年計画でこれが完全実施をされれば一体どれぐらい消化をされるのか、教えてください。
  35. 鈴木郁雄

    ○鈴木説明員 五十三年、五十四年両年度に実施いたしました総点検の結果の危険個所につきまして、五十六年度までに四分の一強に当たります三万六千カ所につきまして事業に着手いたしております。新たな第六次の計画で二万カ所につきまして事業実施いたしたい、このように計画いたしております。
  36. 桜井新

    桜井委員 そうすると、今度の五カ年計画の全体金額というのは、国民の目から見ればこれも非常に不満足な数字であるわけです。しかし、これとて先ほどの治水五カ年計画と同じで、果たしてやれるだろうかという心配がまず先に立つわけですね。  そこで、治山計画の方も同じだと思うのでありますが、皆さんが計画した数字と、五十七年度の、今度予算に盛ってある数字とのずれは初年度でどれぐらいになっていますか。指導部長で結構ですよ。
  37. 鈴木郁雄

    ○鈴木説明員 第六次治山事業五カ年計画におきます事業規模、五十六年度予算額を初項といたしまして等伸率で試算しますと、初年度計画額が二千三百九十三億円になりまして、五十七年度の予算は二千百七十三億円でございますので、二百二十億円の差が生じます。
  38. 桜井新

    桜井委員 二百二十億円ね。これも大変なことで、先ほどの治水と同じようなことになるのではないかと大変心配をされるわけです。  そこで、今度の五カ年計画事業重点項目をどんなところに置いてやるつもりなのか。十三万カ所からある中で新規には二万カ所しかできないわけでありますから、一体どんなところに重点を置いてやるかということによって、国民の気持ちもかなり変わってこようというものだと思うので、その辺の説明をひとつ、これは長官に願います。
  39. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  私ども、最近の災害の発生状況あるいは水資源に対する要請がきわめて高い現状にかんがみまして、今回の第六次におきましては三点重点項目を掲げております。  その第一点は、やはり国土安全性向上という問題でございます。したがいまして、これまでの災害山地の復旧はもちろんでありますが、予防治山に重点を置きながら、山地治山対策を積極的に進めてまいるというのが第一点でございます。  第二点は、先ほど来出ておりますが、水需要のこれからの逼迫に対しまして積極的に水源地域の対策を進めてまいりたい。したがいまして、ダム上流の水源につきましては特別の工法と申しますか、二段林を造成するとか、その他いろいろな方法をとりまして、その機能の高度に発揮し得る方法をさらに導入してまいりたいと考えております。  第三点といたしましては、都市周辺にも関連がございますが、生活環境の周辺の保全、形成という問題がございます。したがいまして、これらの生活環境の災害防止と保健休養の機能を高めるという面に重点を置いております。  この三点を特に重点に置いてやってまいりたい、かように考えております。
  40. 桜井新

    桜井委員 そういった方針でひとつぜひやっていただきたいと思うのでありますが、真の治山を実現するためには、私は治山事業推進はもとよりでありますが、森林を整備し、資源、防災の両面にわたる総合力の発揮ということが最も重要ではないかと思うのであります。そういう点ではどういうお考えをしているか、聞かしてください。
  41. 秋山智英

    ○秋山政府委員 わが国の森林面積は、御承知のとおり大体国土全体の七割近くございまして、この森林のこれからの重要性というのはますます高まってくるわけでございますが、特に森林の内容を整備充実いたしまして、国土保全水資源涵養、さらには農山村の人たちの働く場をここで確保するという問題がございます。  そうしますと、やはりその機能、木材生産の機能あるいは水源涵養機能、国土保全機能というふうな各種の機能を高度に総合的に発揮し得るように持っていくということがきわめて重要でございますが、それのベースになりますのが先生御指摘のとおり治山でございます。これがやはり定住条件の整備の基盤になりますし、働く場の基盤になりますので、私どもまずはこの治山事業が、荒廃地はもちろん復旧いたしますが、さらに水源地域の森林性を図りまして、各種機能を高度に発揮し、さらにはこの地域の皆さんの生活の場の基盤を整備するということで、この定住条件の整備に極力努力をしていかなければならぬと思っています。  そこで、今回の第六次の治山事業におきましても、そういうところに重点を置いて進めてまいりながら、さらにはそれぞれの地域の実情に応じましてまず治山事業実施し、定住条件の基盤を整備し、そこに今度は働く場の造林、林道というような各種の林業施策を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  42. 桜井新

    桜井委員 大変いい計画をしていただいておるのでありますが、特に農業もさることながら、林業地域、山間地においては非常にほかの仕事がないものですから、あなた方がそういう生活面のことまで立ち至って配慮をしてやらないと、もうそこで働く人すらなくなってしまうというのが山間地の現状だろうと思うのですよ。そういう意味では今度の五カ年計画はまさしく、この災害列島と言われる日本全体を眺めた場合に、さっき説明いただいた数字を比較しておわかりのとおり、これは満足すべき予算ではないわけです。しかし、これはもう最小限としてもどうしても確保し、実施をしていただかなければならない予算だろうと思っておるわけです。そこで、治水と同じように、経済七カ年計画が仮に見直されて縮減をされるようなことがあったとしても、政策というものはやはり全部一律に減らすなんということじゃないのです。それは政策というものじゃないと思うのです、そんなのは小学校の子供でもできることですから。やはりそこにめり張りをつけるところに政策があると思うのです。そういう意味では私は、特に治山治水なんという問題は、先ほど始関大臣も言われたように、これは国家的な施策としてやるべきことだろうと思うので、仮に新経済五カ年計画ということで見直されたとしても、これもおたくの方も、先ほど言われたこの治山治水緊急措置法、これの中の三条四項ですか、経済企画庁と協議をするということになっておるわけで、いますでに建設省と同じようにもう事務的なすり合わせばやられておることだろうと思うので、これは国民に約束していることだから、ほかのところで縮減をするとしても、このことだけは絶対に守ってもらいたい、こう思うので、ひとつその覚悟のほどを聞かせていただきたいことが一点。  それから、ことしの補正予算については、これまた先ほどの治水と同じように、特に治水より以上に、治山の方は山間地の本当にわずかばかり残った人たちがこれに対応しているわけでありますから、しかもほかに職がないわけですよ。職がないわけですから、上半期にみなやられてしまって後追いがなかったら大変です。どうせそういう山間地というのは雪にも降られるところが多いわけでありますから、もう十一月の末にでもなれば働けないということでありますから、それまでの間に稼ぐだけ稼がなければならぬという人たちが張りついておるわけですから、そういう観点から考えて、単なる国家的な景気対策とか、あるいは税収欠陥とかというような対策だけで論議すべき内容ではないわけでありますから、そのことについても、これはどうしても補正は組んでいかなければ、七七・何%も前倒しされてしまって、あと一番肝心なときに、年の瀬を前にして仕事がないなんというばかなことをさせてはいかぬと思うので、この点についてもあわせて長官の覚悟というか、所信をお聞かせ願って、私の質問を終わりたいと思います。
  43. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今後の方針につきましては、建設大臣申し上げたとおりでありますが、特に治山につきましては、治山の重要性はもちろんでありますが、と同時に、先生御指摘のとおり、農山村の、特に山村地域の働く人たちの場でございますし、治山事業はどちらかと申しますと人による作業が多うございますので、景気浮揚、地域の発展のために非常に効果がある事業でございますので、それを踏まえまして、これからもあらゆる機会をとらえてこの予算確保に努力してまいりたい、かように考えております。
  44. 桜井新

    桜井委員 終わりと申し上げましたけれども、いまちょっと思い出したので一言つけ加えさせていただきたいのでありますが、最近、どうも建設省もやられっ放しでちょっと萎縮しているようでありますけれども、やはり国民に対して、本当にあの敗戦以来荒廃した国土をここまで持ってきた、これはやはり皆さんの功績は大いに胸を張って国民の前に披瀝していい問題だと思うのです。治山だって同じであります。そういう点から考えて、何か私どもが皆さんとの論議の中で聞いておりますと、たとえば先ほどの防災国債の問題の議論のときもそうでありますが、大蔵の前に必要以上に遠慮していると思うのですよ。これはやはり国民のためにやるのですから、何もあなた方が私腹を肥やすためにやっているのではないのですから、そういう意味でもっと誇りを持って、正しい要求については堂々と遠慮しないでやってくださいよ。特に最後にこのことをひとつお願いを申し上げて、質問を終わらせてもらいます。
  45. 村田敬次郎

    村田委員長 これにて桜井新君の質疑は終了いたしました。  次に、田村良平君。
  46. 田村良平

    田村(良)委員 私は、大渡ダムの災害についてのみに限定いたしまして若干の質問をいたします。御答弁はできるだけ簡潔にお願いをいたします。  来年三月未完成予定の大渡ダム工事が試験湛水中に、吾川村、仁淀村地区等に発生した大規模の地すべりと、また、試験湛水の状況につきまして真相を承りたいと思います。
  47. 川本正知

    川本政府委員 お答えいたします。  大渡ダムにおきましては、五十五年の十一月から試験湛水を開始いたしました。水をため始めまして、段階的に水位の上昇、低下、そういった操作を行いまして、五十七年の四月十九日に、標高でいいますと二百四メートルの貯水池の常時満水位まで水位を上昇させたわけでございます。この年の四月十九日に貯水池の右岸の仁淀村の戸崎というところにおきまして、つけかえ村道を含みます斜面に地すべりが発生したわけでございます。次いで四月二十日には、左岸側の吾川村の鷲ノ巣の地区におきましてやはり国道の下の方に亀裂が発生いたしまして、地すべりが確認された。また、四月二十四日には右岸側の三島神社の下地区というところで確認されたわけでございますが、それについては、道路の路面にひび割れが認められる程度でございました。なお、五十六年の七月に貯水池の右岸の高瀬地区に小規模な変動が認められておりまして、対策工事を行いました結果、現在では地すべり変動は認められておりません。  また、試験湛水前から若干の変動が認められておりましたのが吾川村の大尾というところでございますが、五十六年十二月に小規模な表層すべりが認められまして、村道の路面に段差ができておりますが、これも対策工事を行いまして、現在地形の変状はおさまりつつあるところでございます。また、戸崎、鷲ノ巣、三島神社、こういったところに発生いたしました地形の変状は、その動きがいま次第におさまりつつありまして、現在貯水池の水位を徐々に低下さしておりまして、排土工事やあるいは水抜きボーリング工事、そういった当面の対策工事を実施しておるところでございます。
  48. 田村良平

    田村(良)委員 ただいま御答弁を求めましたが、この地区については、事前調査建設省側の方で地すべり対策の必要はないとしていたところでありまして、科学的知識や専門の調査機関を持たない住民にとっては、万全な防災工事の実施に対し、常に当局の一方的なデータで振り回される、こういう不安が大変ございます。今後の防災対策についてはどのような処置をされるか、承りたい。
  49. 川本正知

    川本政府委員 ダムの建設に当たりましては、貯水池の湛水に伴いまして発生するおそれがありますのが貯水池周辺の地すべりでございまして、こういったものを予測いたしますために、ダム本体の建設以前からも必要な調査実施してきておるところでございまして、現在の技術的水準に照らして妥当な範囲で地すべり対策を行ってきたところでございますが、その内容につきましては、先生おっしゃるようなことがあってはならないことでございまして、地元関係機関等にも十分説明を行いまして、地元関係者の協力を得た上でその対策を実施してきておるところではございます。今後も地元関係機関等と連絡を密にいたしまして、貯水池周辺の安全上支障のある地区につきましては、十分な検討を行いまして、対策が必要な個所、こういうところがありますれば、早急に対策工事を実施して安全の確認を行っていきたい、そう思っております。
  50. 田村良平

    田村(良)委員 私不思議に思いますのは、四十三年以来建設省直轄で工事が進められてきて、昨年春には堰堤も完成し、試験湛水の実施、周辺の環境整備等の工事もいよいよ最後の仕上げに入った段階、そして三月末完成する、その試験湛水中に地すべりが発生したということは、これまでの工事に大きなミスがなかったかということを懸念するものであります。  参考までに聞きたいのですが、一体この工事の請負業者はどなたですか。それから、工事の請負業者自体に工事上のミスがなかったか、これもあわせて承りたい。
  51. 川本正知

    川本政府委員 お答えいたします。  大渡ダムの堤体の本体工事は大成建設が担当しておりますが、先ほど来申し上げております貯水池の周辺の地すべりなどの対策につきましては、十四カ所で対策工事を実施してきたわけでございますが、これらの工事はおのおのの工事ごとに異なった施工者が担当しておりまして、それぞれの対策工事の施工に当たりましては、当然のことながら建設省から示しております仕様書に基づきまして施工することになっておりまして、また、建設省の職員も十分な現場の工事監督を行っております。さらには、工事が完成したときには、建設省の職員による完了検査を確実に行っております。対策工事を実施した地区につきましては、土地の所有者の承諾が得られなくて十分な対策工が行えなかったところが一カ所ございますが、その一カ所を除きまして地すべりなどの徴候は現在は認められておりませんで、これらの工事によってミスがあったとは考えておりません。
  52. 田村良平

    田村(良)委員 ただいま御説明がありましたが、現地においては、仁淀村別枝の戸崎山の地すべり、幅約百五十メートル、高さ約百メートルと、吾川村の鷲ノ巣の地すべり、幅百十メートル、高さ約七十メートル、この発生時期とダムの湖水の水位が二百四メートルに達して二地点の下部が水没した時期は偶然にもぴたり一致しておるようなことを伺いましたが、これはどういう関係になりますか、承りたいと思います。
  53. 川本正知

    川本政府委員 ダムの工事が完了いたしまして管理を開始するに先立ちまして、ダムや貯水池の周辺の安全の確認を行うために、水をためまして、その水位を上昇あるいは低下させまして確認をするというので試験を行いますが、そういうものを行いました後で供用を開始するという手順を踏んでおるわけでございまして、そういう操作をいたしますのを試験湛水というふうに称しておるわけでございます。先ほど申し上げたように、五十五年の十一月に試験湛水を開始いたしまして、五十六年の六月、昨年の六月には標高で言いますと百七十七・五メートルの予備放流水位に達しました。十二月には標高百八十八・五メートルという洪水期の制限水位までそれぞれ水位を上昇させまして、その後、予備放流水位と洪水期の制限水位の間で水位の上昇、低下といった操作を繰り返しまして、そして先ほど申し上げたようにこの四月十九日に常時満水位面まで水位を上昇させたものでございます。  今回の試験湛水後に新たに地形の変状が発生いたしました地区は、現在のところでは戸崎、三島神社下、高瀬、鷲ノ巣、大尾、そういった地区でございまして、その発生原因につきましては、試験湛水によります貯水池の水位の上昇といったものが起因していることも考えられますが、なお詳細な調査実施することにしておりますので、その結果を待って判断しなければならないと思っております。
  54. 田村良平

    田村(良)委員 ただいま御説明がありましたが、この点につきましては、大渡ダム工事事務所の須山工事事務所長が、試験湛水に発した出来事であり、水位上昇が原因であることはまず間違いがない、現場ではこのようにはっきり認めておられるわけですね。  大渡ダムは約六百三十八億の総事業費のうち、過去のダム工事に比べますとずば抜けた防災工事の費用が使われております。約六十五億と承知しておりますが、これが投入せられまして大規模地すべり危険地域の工事はすでに大体完成しているはずであります。それでなおかつ戸崎山や鷲ノ巣は調査対象から外されておったというようなことでございますが、一体要工事地域と不要地域はどのようにしてさび分けられたものか、この点をひとつはっきり御説明いただきたいと思います。
  55. 川本正知

    川本政府委員 大渡ダムの周辺地域といいますのは、貯水池の周辺はダムの建設に伴いまして部分的には地すべりが発生する可能性があるということで、その対策が必要であるということは大渡ダムの建設に先立つ調査によりまして十分承知しておったところでございます。そのために貯水池の周辺の全域につきまして必要な調査を行いまして、学識経験者などの意見を参考にして、現在の技術的水準に照らして妥当な範囲で地すべりの発生のおそれのある個所の判断をいたしまして、鋼管ぐいとかあるいは押さえ盛り土とか排土工とか、そういった対策工事を実施してきております。その他の個所につきましてもいろいろと調査、監視を続けておりまして、対策工事を実施いたしておりませんけれども、試験湛水によって実際に水位を変動させまして、安全性の確認を行うという手順でやってきたところでございます。
  56. 田村良平

    田村(良)委員 御説明を得て大体了承をいたしますが、さらに、この地区は、建設省の土木研究所の専門官が事前に現地踏査を行い、地すべりの危険なしと太鼓判を押した地域であると承っております。特に仁淀村の西森村長は、土木研究所の調査を信用してほしい、新しい村道ができたら防災の役目をするので、道路より上の方では影響を出しませんと村民を説得しまして要望を引っ込めさせたというような経緯すらあるのでありまして、ただいまのような御答弁ですと、建設省の将来の仕事に対する権威は失墜する。また、住民に与えた不安は非常に大きなものでありますから、いま一度明確に御答弁をお願いしたいと思います。
  57. 川本正知

    川本政府委員 地元の住民の皆様に不安を与えておるという現実については大変申しわけないと思っておりますけれども、先生お話しの土木研究所の調査、これは土木研究所だけではございませんで、先ほど申し上げた貯水池周辺の地すべり対策といったことで委員会をつくっておりまして、大学の先生方あるいはコンサルタントの地質調査業の方、そういったものを含めましてその委員会としていろいろ調査検討をしてきたところでございまして、先ほども申し上げたように、ダムの周辺全体が地すべりについてはやはり要注意地域であるということではございまして、絶対なかったとかいうふうなことではなかったと私は思っておりますけれども、そういったところでやはり今後の対策工事が必要かどうか、そういったことも含めて試験湛水によって判断していこうという趣旨でやっておったところでございまして、いろいろと今後地元の皆さんに不安のないような対策あるいは調査、そういったものを続けていかなければいけない、そう思っておるところでございます。
  58. 田村良平

    田村(良)委員 ただいまの御説明を聞きましたが、やはり土地に永住して長らく生活をしております住民の意見というものをまず第一に尊重してもらう。土木研究所を中心にして何とかかんとか言いますけれども、一番詳しく知っておるのは地元の人です。村の故老に聞くと大体わかります。あそこが危ない、雨が降ったらあそこがすべる、あそこが地すべりが出る、こういうことは住民がほとんど常識的に知っておるのでありまして、だから、地元住民と密接な連絡をとりつつ危険個所を点検し、安全対策を講じて、建設省と地元とが所長を間に入れまして十分に打ち合わせをして、不平不満のないようにしておけばこういう事故にはならなかったのではないか。弱いところがどこにあるかということを果たして建設省調査しておったかどうか、こういうことになりますと、こういう問題が起こってきますと、地元は建設省は信用がならぬ、大官を連れてきて調査したけれども該当しないとか、こういうことを言われたのでは地元の住民としては不安でなりません。だから結局、これからの対策としてはもう一遍住民とともに点検をする。住民に参加してもらわぬと、後から後から不平不満が出てきたのではかなわぬわけですから、この案件にこりて、ひとつ精いっぱい地元住民の代表の意見を聞いて完全な体制をしいてもらわなければならぬ、こういうように思っているわけです。  そこで、もう一つお伺いしたいのです。  今回の湛水の影響による地すべりの危険地域の現地について、須山所長の指摘した個所と地元の言い分とは、個所づけからすでに言い分に食い違いがございます、いま申したように地元の住民と接触が薄いから。工事事務所の方で五カ所で、地元は七カ所挙げております。住民は直接目に見える危険の実感や、また、住民の声をもとに指摘しておるのに、事務所側はこれまでと同様のあくまでも専門官の調査資料による対応をするということは、国の責任において住民に不安を残さない対策を講じますと明言した須山所長だが、結局は危険個所の地元との認識のずれを残したまま防災対策を打ち出した。果たして将来完全な防災対策が可能かどうか非常に疑問であります。この点について、いま一度責任ある対策をお伺いしたいと思います。
  59. 川本正知

    川本政府委員 今回試験湛水後に新しく貯水池周辺で地すべりなどの地形の変状が発生いたしました地区が、先ほど来申し上げておるように五カ所でございまして、先生おっしゃいます七カ所というのは、地元の方から大渡ダムの工事事務所の方へその五カ所以外の七カ所についても検討の申し入れが行われておるところでございます。現在地形の変状が発生しておる個所につきましては、今後さらに地すべりの挙動を観測しながら、慎重に貯水池の水位を次第に低下させまして、各種の調査を行って地すべりの全貌を把握いたしまして、さらに学識経験者の意見をもちろん聞くわけでございますが、先生おっしゃいますように、地元の村長さん、そういった方々の御意見も踏まえまして、早急に適切な対策を実施したいと考えております。  また、現在、先ほど申し上げたように、それ以外の七カ所といいますか、地形の変状が発生はしておりませんけれども、地元の方々から検討の要望のある個所につきましては、もうすでに傾斜計などを設置いたしまして、以前からやはりその挙動を監視しておるところでございまして、決してそこはなおざりにしておる、そこは必要ないとして何もしてないということではございませんけれども、そういった個所につきましても、今後とも同様に地元の村長さんや学識経験者の御意見も聞きながら判断いたしまして、対策が必要な個所ということにつきましては早急に適切な対策を実施しなきゃいかぬ、そういたしまして、貯水池周辺の安全を期していかなければいけない、そう思っております。
  60. 田村良平

    田村(良)委員 御答弁を承りましたが、それで地元から要望があった七カ所についてもあわせて防災対策上の厳重な検査をする、そして二度とこういう災害を繰り返すことがないようにしっかりした調査をする、こういうことは継続してやっていく、そして住民にもこの話をして十二分に安心をしてもらう、責任を持って調査しますから御心配なさいますな、こういうような積極的な姿勢を示してもらって住民にも安心してもらいませんと、おたくの仕事もやりにくいですよ、住民にしょっちゅう不安がられて、危ない危ないと言われたのでは。何やかやと文句ばかり出てくるということになりますとやりにくいから、やはり私はもう少し建設省も積極的に住民とタイアップして、住民が危険だというならば本当に危険なのかどうか、それで住民が危険だと言っておることはどういう理由で危険だと思いますか、あなた方の考えを述べる前に住民がどういう感じで言っておるか、あそこが危ないなということは長年の生活上の経験からきていることですから、それについてはどうして危ないんだろう、あなた方が来て見ただけではわからぬところが多いのですから、そういうことについてひとつ真剣な御検討を願いたい。そして住民から安心していいダムをつくってもらった、災害も二度と起こらなかった、よいことをやってくれた、こういうような調査をやってもらいたい、これらについて重ねて承りたいと思います。
  61. 川本正知

    川本政府委員 七カ所の地点につきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、今後とも必要な十分な監視を続けてまいりまして、対策が必要であるということになりますれば、それの対策も考えて実施をしていかなければいかぬ。その際にも先生が御指摘のような、地元の方々との意思疎通、連絡、そういったものを十分図りまして、信頼を回復できるようにがんばっていくように指示したいと思いますし、また、現地の工事事務所も、従来から地元の方々とは意思疎通を図っておるというふうに聞いてはおりますけれども、なお一層いまの御指摘を踏まえまして十分な徹底を図らせるようにいたしたい、そう思っております。
  62. 田村良平

    田村(良)委員 出先の所長がいろいろ心配をして、できるだけ騒がぬようにというようなかっこうでやりますと、ますます住民との間が離れていくわけですから、村長なりあるいは村議会の特別委員会なりに積極的に説明をして、そしてできるだけ接触を深くして、安心をして双方の協力のもとに仕事ができるように運ばぬと大変なことでありますね。ですから、やはり私はそういう基本的な理念といいますか、防災対策に対する理念がないと、集めて解説すると文句が出るかもしらぬからまあこれでやっておく、こういうようなことになりますと大変なことになりますので、そこはひとつ、この地区は非常に純真なところですから、本当に山村で純情そのものです。ですからどうかひとつ、そういう純情な住民であればこそできるだけあなた方も腹の中をぶちまけて、ちょっと心配だけれどもこれは説明せぬ方がよかろうとかいうようなことでなしに、ひとつ十二分に説明をして、御心配は要りません、あるいはあなた方の言われることを聞いた、こういうことで私たちも初めて知りました、それでは早速調査しましょう、こういうように言ったら住民は喜ぶですよ、われわれが注意したところを早速建設省はやってくれたと。ところが言うことは取り上げてくれぬ、調査は必要ありませんというようなことを言っておいてこんなことになりますと大変なことになります。ですからこの辺については重々ひとつ申し上げておりますので、今後もあんまりかわいそうな目に遭わさぬように、ひとつ所長を中心として双方の連絡を密にして、建設省の方ももっと、直接指導と言うと語弊がありますが、指導するように、いろんなミスがない、また行き違いがない、県と建設省に行き違いがあるというようなことでなしに、これだけの大事業をするのですから、相当大きな、歴史に残る仕事です。そういう事業をするのですから、係員とか所長に出先で任しておけばいいとかいうような問題でないですね。出先と地建と建設省と三位一体になって住民とじっくり取り組んでいく、そういう本腰据えてもらいませんとこの工事安全に完成しません。ですから、くれぐれも御注意を申し上げ、また今後の善後策を講じてもらいたいと思います。  それでは、制限されておりますので、時間も参りましたが、ひとつ、ただいまの質疑を通じまして、ダムという重大な事業ですね、多くの犠牲を伴う事業ですから、このダム事業について大臣はどういう御所見をお持ちか、ひとつ御意見を承って私の質問を終わりたいと思います。
  63. 始関伊平

    始関国務大臣 ただいま田村委員から、大渡ダムの完成後における試験湛水の結果としてあらわれてまいりました地すべり等による危険な現象について詳しく御指摘をいただきました。なお、それに関連いたしまして、防災工事の施工に当たって、多年にわたって現地の事情に詳しい地元の皆さんの意見を聞くべきではないか、また今後も、今後の対策の施行についても同様に地元の有識者の意見を聞くべきではないかという御指摘があったわけでございまして、大変御協力をいただいた地元の皆さんに御迷惑をかけたことについては大変申しわけないことと、遺憾に存じております。  ダムは、治水、利水、いろんな面で必要でございますので、一面から言えば地元には非常な犠牲を負担していただきながらあえて建設するわけでございますが、それにつきましては、やはり防災対策は非常に大事でございますが、これについては、学識経験者もおりますけれども、地元の、多年にわたって現地の事情に詳しい方々もおられるわけでございますから、そういう方々と隔意のない相談をしてやれというただいまの御意見は、ほかの場合にも十分留意すべきことだと思うのでございまして、今後御趣旨に沿うように善後策を講じてまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  64. 田村良平

    田村(良)委員 終わります。
  65. 村田敬次郎

    村田委員長 次回は、来る十四日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時散会      ————◇—————