○瀬崎
委員 私は、日本共産党を代表して、
琵琶湖総合開発特別措置法の一部を改正する
法律案に対する反対討論を行います。
反対理由の第一は、今回の改正法案が、大企業本位、
開発優先の
琵琶湖総合開発事業の根本的な性格をいささかも変えていないことであります。
政府は、本改正法案提出に当たり、
琵琶湖総合開発計画に政令改正によって新たに
農業集落
排水処理施設
整備事業、畜産
環境施設
整備事業、ごみ処理施設
整備事業、水質観測施設
整備事業の保全四
事業を追加することとしていますが、これは部分的な改善として評価できるものであります。
しかし、
琵琶湖総合開発事業の根幹をなす、利
用水位をプラス・マイナス一・五メートルとし、下流に対し新たに毎秒四十トンの水を供給するという
計画には一切の見直しが行われませんでした。
この
琵琶湖の利
用水位プラス・マイナス一・五メートル、
新規利水毎秒四十トン拡大は、
昭和四十七年、経企、
建設、大蔵、自治各大臣、滋賀、
大阪、兵庫各府県知事、自民党政調会長間の申し合わせ事項として決定を見たものであります。この
考え方の
基本は、安い水の大量供給を求める大企業の要請にこたえて、下流に限度を超えた大幅な利水拡大を行う一方、それと引きかえに、
琵琶湖を抱える滋賀県には補償的な意味で大規模な
開発事業を実施するということでした。そこには水質、
環境保全の見地はみじんもなく、その証拠に、この申し合わせには
環境庁長官は含まれていなかったのであります。また、この申し合わせには、政府答弁によっても法的根拠はなく、行政的にのみ意味を持つものとされているのであります。
こうしたことから、わが党は、原点に立ち返り、保全の見地を含め、
環境庁も参加の上、四十七年申し合わせの見直しを実施するよう強く主張してきましたが、それが行われないまま法改正案の提出となったのであります。したがって、
琵琶湖総合開発事業の大企業本位、
開発優先の性格は根本的に変わっていないと断ぜざるを得ません。
反対理由の第二は、
琵琶湖総合開発事業が実施されたこの十年間に、赤潮の発生など
琵琶湖の水質悪化が進み、今回の改正法案によって、その水質悪化がさらに促進される危険の強いことであります。
琵琶湖の水質は、この十年間、あらゆる指標において測定結果が示すとおり、横ばいないし悪化の
傾向を示しているのであります。特に
昭和五十二年以降は、毎年大規模な赤潮の発生を見るというきわめて深刻な事態となっているのであります。
琵琶湖の
環境保全と水質の回復を目的としているはずの
琵琶湖総合開発事業の実施にもかかわらず、こうした水質悪化を示している原因は、肝心の下
水道建設の大幅なおくれ、湖周辺や
水源地帯における乱
開発、森林荒廃、工場等の有害
排水たれ流し等であります。
そもそも本法は、こうした原因を取り除く規制面の手段は何一つ定めていなかったのでありますが、今回の改正法案はこの点に何らの改善を行っておらず、また、実情に合わない大規模流域下
水道中心の
下水道事業計画の見直しも見送られているのであります。
こうした
状況のもとで、今後さらに
琵琶湖総合開発事業の
中心的
事業である水位プラス・マイナス一・五メートルを可能にするための湖岸堤や湖中堤、その上を利用する湖周道路、南湖、瀬田川の大規模しゅんせつ等の工事が進んで、自然浄化作用の最も重要な場所である湖辺、なぎさが破壊され、加えて、現実に一・五メートルもの水位低下が起こった場合の
琵琶湖の水質は、取り返しのつかない深刻な事態に直面することが予想されるのであります。
赤潮発生という深刻な事態に直面した滋賀県と県民は、
昭和五十四年
琵琶湖富栄養化防止条例を制定し、有燐洗剤の追放と工場
排水の窒素、燐の規制に踏み切ったのであります。これに伴う県、市町村の財政負担や中小企業の
排水処理負担、県民の努力に対して、政府は見るべき援助を何一つ行っていないのであります。
反対理由の第三は、高度成長政策の破綻に伴い、
淀川水系に関する
水需要予測と実態との間に大きなずれが生じてきているにもかかわらず、政府は
淀川水系水資源開発基本計画の見直しを実施しようとしていないことであります。
琵琶湖総合開発計画の上位
計画である
淀川水系水資源開発基本計画の将来
水需要予測は、四十六年−五十五年までに毎秒六十八トンの不足を予測し、これを
琵琶湖から毎秒四十トン、
淀川水系四
ダム開発で毎秒十一トン、不足毎秒十七トンとしていました。しかし、これを実績で見ると、全体では四十五年日量六百九十四万五千トンであったものが、五十二年日量六百九十八万三千トンとほとんど横ばい状態であり、特にそのうちの
工業用水については、四十五年日量二百九万二千トンであったものが五十二年には日量百五十六万六千トンと激減しているのであります。
政府は、
水需要の
現状に基づき、
琵琶湖の
環境保全と水質の回復を図るという
課題をも含めて、
淀川水系水資源開発計画の見直しを実施すべきであるにもかかわらず、これに手をつけようとしていないのであります。
最後に、
琵琶湖は
近畿千三百万住民の命の水がめであると同時に、日本を代表する
最大の湖でもあります。この
琵琶湖を守ることは国の重大な使命であることを特に強調しておきたいのであります。かけがえのない
琵琶湖を守るために、滋賀県民を初め
関係府県住民が犠牲を払い、協力し合って努力をしているときに、政府は国の使命の重大さについてもっともっと自覚すべきです。特に私は、貴重な
水資源の
開発について、
琵琶湖の
環境と水質が厳に保全される範囲に限るよう、政府に対し強く要求するものであります。
以上で政府提案の
琵琶湖総合開発特別措置法改正案に対する私の反対討論を終わります。