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1982-10-12 第96回国会 衆議院 決算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十月十二日(火曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 近藤 元次君 理事 東家 嘉幸君    理事 中川 秀直君 理事 中村 弘海君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 春田 重昭君 理事 中野 寛成君       伊東 正義君    植竹 繁雄君       近岡理一郎君    長野 祐也君       高田 富之君    和田 一仁君       三浦  久君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君  委員外出席者         防衛政務次官  堀之内久男君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         通商産業省貿易         局為替金融課長 広海 正光君         会計検査院事務         総局第二局長  竹尾  勉君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十二日  辞任         補欠選任   桜井  新君     長野 祐也君 同日  辞任         補欠選任   長野 祐也君     桜井  新君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十四年度政府関係機関決算書  昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管防衛庁)〕  派遣委員からの報告聴取      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  本委員会は、歳入歳出実況等に関する実情調査のため、去る九月二十七日から九月二十九日までの三日間にわたり、北海道に委員を派遣いたしました。  その調査概要につきまして、便宜この席から私が御報告申し上げます。  派遣委員は、井上一成君、新村勝雄君、春田重昭君、三浦久君、それに私の計五名でありました。  調査概要を日を追って申し上げますと、第一日目の九月二十七日は、空路函館に赴き、さらに借り上げバス吉岡まで行き、日本鉄道建設公団青函建設局吉岡鉄道建設所に参りました。  青函トンネル建設工事概要説明聴取した後、海底工事現場を視察するため、エレベーターと人車に乗って、水深約百三十メートルの海底のさらに百メートル下の地点の掘削工事現場まで行きました。  第二日目は、函館から千歳まで航空機千歳から先バス日高浦河まで行きました。  その間に、競走馬関係で、日本種馬協会静内種馬場日本中央競馬会日高育成牧場その他の牧場を訪れ、馬の生産育成事情説明聴取し、また競走馬資質向上生産者負担軽減等に関する地元の陳情を受けました。  なお、本委員会でも問題になりましたハンザダンサーその他の優良種牡馬を見てまいりました。  次に、競走馬関係以外では、農林水産省日高種畜牧場に行き、乳用牛改良事業実態調査いたしました。  第三日目は、浦河からバス苫小牧まで戻り、苫小牧東部開発の現況を調査いたしました。  初めに関係当局からそれぞれの事業進捗状況説明聴取した後、苫小牧東港港湾建設苫小牧東部石油備蓄株式会社による国家備蓄のための石油タンクその他の施設建設等工事現場を視察いたしました。視察終了後、千歳より空路帰京いたしました。  これらの調査の結果を集約すると、以下のとおりであります。  一、青函トンネル建設工事はほぼ順調に進捗し、貫通も間近になっているが、完成後のトンネルの活用に当たっては、これまでの膨大な作業量経費をむだにしないよう、周到な計画を樹立すべきである。  二、競走馬生産育成については、優秀競走馬生産生産者負担軽減のためにも、中央競馬会助成の方法を検討する必要がある。  三、苫小牧東部開発については、一部に計画どおり事業が実施されているが、経済の低成長化企業立地先行き見通しから見て、計画にさらに慎重な検討を加える必要がある。以上が委員派遣報告でございます。  この際、お諮りいたします。  ただいま報告いたしました内容の詳細につきましては、これを調査報告書として、本日の委員会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書本号末尾に掲載〕      ――――◇―――――
  4. 永田亮一

    永田委員長 次に、前回の委員会における三浦楢崎委員質疑に関し、本日大蔵省当局から報告を受けることになっておりましたが、理事会において報告を受け協議の結果、重要問題につき、後日の委員会報告を受けて質疑を行うことにいたしましたので、御了承願います。      ――――◇―――――
  5. 永田亮一

    永田委員長 次に、昭和五十四年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管防衛庁について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として財団法人防衛施設周辺整備協会理事長長坂強君、常務理事菊池久君、以上両君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  7. 永田亮一

    永田委員長 それでは、まず、防衛庁長官から概要説明を求めます。伊藤防衛庁長官
  8. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 昭和五十四年度における防衛庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  まず、(組織防衛本庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は一兆八千五百二十六億二千二百万円余でありまして、これに高空における放射能塵調査研究等のため、科学技術庁から移しかえを受けた額九百万円余、科学的財務管理調査のため、大蔵省所管大蔵本省から移しかえを受けた額二百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移しかえを受けた額二十三億四千百万円余、前年度からの繰越額三十九億三千六百万円余等を加え、既定予算節約等による予算補正修正減少額十八億二千七百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一兆八千五百七十億八千五百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は一兆八千三百五十五億七千六百万円余、翌年度へ繰り越した額は六十九億六千二百万円余でありまして、差し引き不用額は百四十五億四千七百万円余であります。  昭和五十四年度予算執行に当たっては、「防衛計画大綱」に従って計上された予算を効率的に使用して計画を着実に実施し、実質的な防衛力整備を進めることを主眼といたしました。  以下、陸海空各自衛隊別にその主な内容を申し上げます。  陸上自衛隊につきましては七四式戦車四十八両、七三式装甲車六両を取得し、新たに昭和五十五年度取得予定の七四式戦車四十八両、七三式装甲車六両の購入契約をいたしました。  また、航空機は、観測ヘリコプター十機、多用途ヘリコプター二機、輸送ヘリコプター一機、連絡偵察機二機、対戦車ヘリコプター一機合わせて十六機を取得し、新たに昭和五十五年度取得予定観測ヘリコプター十二機、多用途ヘリコプター三機、輸送ヘリコプター一機、連絡偵察機三機合わせて十九機の購入契約をいたしました。  海上自衛隊につきましては、昭和五十年度計画護衛艦一隻、潜水艦一隻、昭和五十二年度計画中型掃海艇二隻、敷設艦一隻、昭和五十四年度計画調達に係る支援船五隻合わせて十隻を取得し、新たに昭和五十五年度以降に竣工予定護衛艦四隻、潜水艦一隻、中型掃海艇二隻、輸送艦二隻、海洋観測艦一隻合わ起て十隻の建造契約をいたしました。  また、航空機は、対潜飛行艇一機、救難飛行艇一機、練習機五機、計器飛行練習機一機、対潜ヘリコプター四機、救難ヘリコプター一機合わせて十三機を取得し、新たに昭和五十五年度以降取得予定救難飛行艇一機、練習機三機、計器飛行練習機二機、対潜ヘリコプター八機、救難ヘリコプター二機合わせて十六機の購入契約をいたしました。  航空自衛隊につきましては、要撃戦闘機十機、支援戦闘機十三機、高等練習機七機、初等練習機十二機、輸送機二機、救難ヘリコプター一機合わせて四十五機を取得し、新たに昭和五十五年度以降取得予定支援戦闘機五機、早期警戒機四機、高等練習機十一機、初等練習機十二機、輸送機一機、救難ヘリコプター二機、救難捜索機一機合わせて三十六機の購入契約をいたしました。  昭和五十四年度防衛本庁職員定員は、自衛官二十六万七千八百五十三人、自衛官以外の職員二万四千二百十六人、計二十九万二千六十九人でありまして、これを前年度職員定員に比べますと、自衛官については同数であり、自衛官以外の職員において二人の増員となっております。  また、予備自衛官の員数は、前年度同数の三万九千六百人であります。  次に、翌年度への繰越額六十九億六千二百万円余は、財政執行繰り延べ措置によって歳出予算執行を調整したこと及び計画または設計に関する諸条件等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額百四十五億四千七百万円余は、退職者が少なかったので退職手当を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  続いて(組織防衛施設庁経費につきまして御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は二千三百四十五億七千三百万円余でありまして、これに前年度からの繰越額百十一億二千九百万円余を加え、既定予算節約による予算補正修正減少額四千五百万円余、防衛施設周辺障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林水産省所管農林水産本省へ六億八千六百万円余、建設省所管建設本省へ十三億三千四百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は二千四百三十六億三千六百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は二千百七十億三百万円余、翌年度へ繰り越した額は二百四十八億二千三百万円余でありまして、差し引き不用額は十八億一千万円余であります。  支出済み歳出額の主なものは、調達労務管理費につきましては、アメリカ合衆国軍隊等が使用する駐留軍従業員労務管理離職者対策福祉対策等に要した経費百五十三億八千四百万円余、施設運営等関連諸費につきましては、防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律等に基づき、自衛隊施設及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定に基づく、提供施設維持運営等関連し必要な土地の購入及び借り上げ、施設整備、各種の補償障害及び騒音の防止措置飛行場周辺安全措置民生安定施設助成措置等に要した経費千六百七十九億三百万円余、提供施設移設整備費につきましては、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定による日米間の合意に基づき、現在提供中の施設及び区域の返還を受けるため、当該施設及び区域を集約移転するのに要した経費百五十七億六千六百万円余等であります。  昭和五十四年度防衛施設庁職員定員は、三千五百八人でありまして、これを前年度職員定員に比べますと、五人の増員となっております。  次に、翌年度への繰越額二百四十八億二千三百万円余は、財政執行繰り延べ措置によって歳出予算執行を調整したこと及び計画または設計に関する諸条件、用地の関係補償処理困難等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額十八億一千万円余は、駐留軍等労務者退職者が少なかったこと等により駐留軍等労務者格差給等給与を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  以上をもって、昭和五十四年度における防衛庁関係歳出決算概要説明を終わります。  なお、予算執行については、諸法規を遵守することはもちろん、最も効果的に運用するよう戒め、また綱紀の粛正にも留意し、国民の信頼にこたえるよう努力してまいったところでありますが、昭和五十四年度決算検査報告におきまして(組織防衛本庁P-2J型対潜哨戒機等用プロペラ部品調達及び断線式警報装置購入について不当事項指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。これについてはよく部内に徹底さ冠、将来このような過誤を繰り返すことのないよう適切な措置を講じますとともに、改善または検討を要するものについては、速やかにそのための諸施策を推進する所存であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  9. 永田亮一

  10. 竹尾勉

    竹尾会計検査院説明員 昭和五十四年度防衛庁決算につきまして、検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、不当事項について説明いたします。  検査報告番号一号は、P-2J型対潜哨戒機等用プロペラ部品調達所要量の算定に関するものであります。  調達実施本部及び海上自衛隊需給統制隊はP―2J型対潜哨戒機等機器修理用部品昭和五十三、五十四両年度に九億四百八十六万円で購入しておりますが、この中にエア・ディフユーザアンドクランプとプロペラドームがございます。  これらの部品P-2J型対潜哨戒機PS-1型対潜飛行艇等プロペラ構成部品で、プロペラを修理する際、傷みがひどく交換を要する場合の交換用として、エア・ディフューザアンドクランプ百十九個千二百七十万円及びプロペラドーム三十八個二千七百六十七万円合計四千三十七万円を購入したものであります。これらの部品腐食防止のため塗装を行い耐用年数の延伸が図られたことにより部品使用数量が減少しているのに、これについて配慮しないまま調達所要量を算定したため、調達数量のうちエア・ディフューザアンドクランプ九十五個、プロペラドーム二十五個が過大となり、総額約二千八百九十万円が不経済になったと認められたものであります。  また、検査報告番号二号は、断線式警報装置購入に当たり、導線の規格の検討が適切でなかったため不経済になったというものであります。  本件は、調達実施本部航空幕僚監部調達要求によって五十三、五十四の両年度受信機察知線及び導線の組み合わせから構成されます断線式警報装置購入したものでありますが、このうち導線につきましては、そこに流れる電流は微弱なものとなっておりますため電気設備の保安上の要請から通商産業省が定めました電気設備技術基準適用がないにもかかわらず、その適用があるものと解してこの導線心線径決定したため、その心線径が過大となり、ひいては購入価額が約四百五十万円不経済になったものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について説明いたします。  これは、昭和五十三年度総理府所管一般会計物品増減及び現在額報告書のうち防衛庁に係る分に、大きな記載漏れ等があったというものでございます。  本件は、航空自衛隊補給統制処ほか十二部隊等における物品管理状況検査した結果判明した事態でありますが、同自衛隊補給統制処(現補給本部)においてさきに述べました報告書の対象とすべき物品についての指示を各部隊等の分任物品管理官に対して適確に行わなかったことによるものであります。  そして、このことから同自衛隊の他の部隊等及び陸上海上自衛隊所有物品につきましても調査して、各自衛隊における所有物品実態を把握し、これを報告書に適正に表示するよう適切な処置を講ずる要があると認められましたので、当局見解をただしましたところ、防衛庁では、今後このような事態を生じないよう、五十五年八月、各自衛隊に対しまして、物品報告書に記載すべき物品の種類を具体的に示した通知を発するなどの処置を講じたものであります。そして、これに基づき五十三年度報告書記載漏れ等となっていることが判明いたしました物品につきましては、五十四年度報告書で調整いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。
  11. 永田亮一

    永田委員長 これにて説明聴取を終わります。     ―――――――――――――
  12. 永田亮一

    永田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  13. 井上一成

    井上(一)委員 まず、私は、最初に防衛庁長官に、人勧凍結なりあるいは社会保障予算が切り詰められるという逼迫した今日の財政状況を、閣僚の一員としてどのように受けとめていらっしゃるか伺っておきたいと思います。
  14. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御指摘をいただきましたように、ただいまのわが国の財政状況はきわめて厳しい状況にあるというふうに認識をしております。
  15. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、福祉関係を厳しくしなければいけない、そういうことに対しても長官ほどう御認識をなさっていらっしゃるでしょうか。
  16. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 厳しい財政状況の中で、福祉関係につきましても、他の諸施策との適正な関連のもとにそれなりの施策が進められなければならないというふうに考えております。
  17. 井上一成

    井上(一)委員 大蔵省に伺いますが、防衛予算決定についてはいろいろと議論があるわけであります。  ちなみに、昨年度でのいわゆる五十七年度概算要求については七・五%、そして、ベア分の算入が実は一つの焦点になるわけでありますが、昨年は五百八十億、二・四%でございました。これを概算要求に加えると九・九になるわけでありまして、最終決定については七・七五四、ベア分二・四を引くと五・三五四ということになるわけです。  いま防衛庁長官も、非常に厳しい財政状況であるという認識を持っていらっしゃるわけです。そういう中で五十八年度予算編成に当たられるわけでありますけれども、昨年と同じようないわゆる方程式、同じような取り組み方をしたとしても、五十八年度概算要求が七・三五%、それに、人勧凍結が云々されておりますけれども、この是非はいまは問いません、ベア分概算で五百億、二形、そういうことになりますと、七・三五から二%引いたら五・三五、いままでの仕組みから計算をしていくと、少なくとも最終決定は五・三五以下にならなければならない、そういうことになるわけでありますが、防衛庁長官十分認識をされていらっしゃるように、財政状況が非常に厳しい。そういう中での大蔵省見解、私は最終決定はもう五%台、むしろそれ以下になるくらいが相当だ、こういうふうに思われるのですけれども、ここでちょっと大蔵省見解を尋ねておきたいと思います。
  18. 窪田弘

    窪田説明員 ことし五十八年度防衛関係予算要求は七・三%でいただいております。昨年の経緯等は御指摘のとおりでございますが、ことしは給与改定見送りというふうな異例の措置がとられることになっておりますし、また、御指摘のように財政事情は去年より一層厳しいわけでございますから、七・三%の要求ではございますが、これをさらに一層御指摘のように厳しく圧縮をしてまいりたいと考えております。いま作業中でございます。
  19. 井上一成

    井上(一)委員 ということは、私が指摘をした数字は当然だという認識でございますね。
  20. 窪田弘

    窪田説明員 いままだ作業が始まったばかりで、具体的に五・何%ということではやっておりませんし、また、大蔵省が何%という数字を言いますとそこまではいいのだと逆にとられる問題もございますので、とにかく御指摘のように厳しく圧縮をしてまいりたいと考えております。
  21. 井上一成

    井上(一)委員 ということは、防衛庁概算要求で七・三五%という、これはまあアメリカからの強い要求があったというふうにわれわれは聞いているわけなんです。その事実関係も御承知であれば答えてほしいのですが、七・三五という数字に非常にこだわっていますけれども、そういうわけにはいかないという厳しい状況である、むしろそんなことは認められないし、去年の経緯からいっても五%台である、そういう認識、さらにはそれよりもより低く抑えなければならない状況だ、こういうことなのか、そういう認識でいいのかどうか、私はそう思っているのですけれども、そう受けとめてよろしゅうございますか。
  22. 窪田弘

    窪田説明員 七・三%の要求はいろいろな経緯があってまとまったものでございますが、しかし、防衛庁予算としても、たとえば国庫債務負担行為歳出だとかいろいろ増加要因がありますので、これ自体そうゆとりのあるものであるというふうには見られないのかもしれませんが、しかし、この防衛予算といっても、ほかとのバランスなしにそれだけ突出して、結局国民の納得を得られるものではございませんし、また財政事情は、五十七年度も六兆円程度の歳入欠陥が生ずる、また国債も非常に売れないというふうな非常に厳しい状況でございますので、やはり防衛関係予算も他の施策とのバランスをとって厳しく抑制していか、ざるを得ない、こう考えております。
  23. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、さらに大蔵省に、GNP比一%、この歯どめについては五十一年の閣議決定は今日も生きているという認識でよろしいでしょうか。
  24. 窪田弘

    窪田説明員 この閣議決定は生きておりますし、また、それに沿って努力をしてまいりたいと考えております。
  25. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、五六中業概要説明資料だとか、あるいは昨年末からことしにかけての国会審議を見ると、どうもこの一%の枠をうやむやにして、なし崩しにしていこうという動きがあるように思われるわけです。それで、私としては真意を尋ねたかったわけです。  そういうことになりますと、いわゆる低成長下におけるこの一%の枠と、「防衛計画大綱」の達成という防衛庁一つ要求の大きな柱、これが両立するのであろうかどうか。むしろ、「防衛計画大綱」を防衛庁の言いなりにどんどんやっていくと、一%の枠ははみ出してしまう。いま、一%の枠は厳守するというそのことはお答えをいただきました。そこらの兼ね合い、両立し得るのであろうか私は非常に疑問なので、さらにこの点についても尋ねておきたいと思います。
  26. 窪田弘

    窪田説明員 この一%に相当する額を超えないという閣議決定昭和五十一年の十一月でございまして、そのころから今日まで、経済情勢等もかなり変わってきております。成長率等も非常に下がってきておりますが、しかし、この閣議決定がある以上、私どもはこれを尊重してぎりぎりの努力をしてまいりたい。中期業務見積もり計画の性格も、これは防衛庁としていろいろお考えになる基礎でございますし、今後これを予算化していく上においては、やはりそういった大きな決定に沿っていくべきものである、こう考えております。
  27. 井上一成

    井上(一)委員 七月に五六中業概要国防会議の了承を得ているわけですが、経済成長の見直しを図るということで今日問題になっているわけですけれども、その経済成長の見直しを図る前に駆け込んでいわゆる承認を得たという、そういう駆け込み承認というような意味合いがあるのではないだろうか、この国防会議の了承ということについて大蔵省見解を問うておきたいと思うのです。
  28. 窪田弘

    窪田説明員 中期業務計画の性格、これは今回の決定につきましては前文に性格がついておりますが、これは防衛庁の中期にわたる防衛力整備の進め方に関する考え方の大筋を示すものである、こういう性格でございますし、また国防会議で、大蔵大臣もそのメンバーの一人でございますが、了承したのもそういう性格のものとして了承しておるわけでございまして、各年度予算編成に当たりましては、当然のことながらそのときどきの財政経済事情を勘案し、また他の諸施策との調和を図ってまいる考えでございます。
  29. 井上一成

    井上(一)委員 国防会議での了承ということは、それじゃ、単年度の一%の枠内の歯どめというものは厳守する、その中で防衛庁の出したそういう五六中業概要というものを認識している、こういうことですね。
  30. 窪田弘

    窪田説明員 五六中業防衛庁のお考えでありますし、一%の歯どめはいまの内閣の方針としてお決めいただいているものであり、また総理もぎりぎりの努力をしてこれを守っていきたいという御答弁をなさっておりますので、それに沿って予算も考えていくべきものだと思っております。
  31. 井上一成

    井上(一)委員 ことしの実質成長率の見通しが非常に悪いわけです。そういう中で名目成長率の数字がどう出るかわかりませんけれども、ひょっとしたら、ことしも当初の見通しから大幅なずれがあって、一%の枠というものがすれすれになるのじゃないか、〇・九八あるいは〇・九七、そういうふうに予測されるわけです。ひょっとしたら一%の枠を超えてしまうのじゃないだろうか、超えないように何か策はないだろうか、よからぬ策を考える――ことしの見通しを、結果的に一%を超えてしまったというようなことがあっては困るので、いまの時点でやはり細心の注意が必要だ、大蔵省ほどういう認識に立っていらっしゃいますか。
  32. 窪田弘

    窪田説明員 先般お決めいただいた景気対策後の成長率の見通しは実質で三・四、名目では大体六・二になると企画庁では言っております。来年はまだはっきりいたしませんが、かなり一考が苦しくなっていることは御指摘のとおりであります。しかし、そういう方針がある以上、それに沿ってやるべきだと思っております。
  33. 井上一成

    井上(一)委員 巷間、非常に財政の逼迫した今日の厳しい状況の中にあっても、防衛予算だけは例外である、まさに特別聖域下の中に置こうという動きがあります。そんなことはないだろうと思いますけれども、念のために大蔵省としての御見解を聞いておきたいと思います。
  34. 窪田弘

    窪田説明員 先ほどもお話にありましたように、来年度の社会保障関係費も文教も、大事なものをみんな抑制せざるを得ない状況になると思うのです。その中で防衛関係費を特別扱いするという考え方はございません。防衛関係費も重要であるとほ思いますけれども、特別扱いする考え方はございません。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、いま一部では、基地周辺整備費を公共事業費の一部として認定して、防衛費の枠を外していこうという考えがあるようなんですけれども、そんなことは決してしてはだめなんです。それで、来年度予算で大蔵当局は、基地周辺整備費は防衛庁予算として当然計上されると私は思うのですよ。外すようなことはないでしょうねということをここで確かめておきたいと思います。
  36. 窪田弘

    窪田説明員 一部の雑誌にそのような記事が出ておりましたけれども、結局それはインチキでございまして、大蔵省も最近いろいろやりくりをしているために批判を受けることはございまして、私ども反省をしておりまして、そういうインチキはいたさないという考え方で、そういう考えはございません。
  37. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁防衛庁の立場で話をされるかもわかりませんが、予算の編成というものはそんなインチキをしてごまかすものではない。大蔵省がきっちりと国民に素直にわかりやすく予算を組み立ててほしい。  さらに、総合安保予算全体を低く抑えていこうという方針を持っていらっしゃるかどうか。総合安保予算と言えば各省庁に非常に関連をします。関連をしますけれども、要は、大蔵としてはすべてを抑えていきたいという考えを持っていらっしゃるのかどうか。この点も先ほどからの答弁で、聖域化をしないとか、一%の枠を守るとか、大体のみ込めるわけでありますけれども、最後で恐縮ですが、この点をひとつ確認をしておきたいと思います。
  38. 窪田弘

    窪田説明員 総合安保予算のはっきりした定義はないわけでございますが、国際協力、科学技術、エネルギー、そういったものはいずれもこれからの日本にとって重要なものだと思いますけれども、いまの財政事情から申しましてどれが特別ということではなかなかうまくまいりませんので、やはりそこは重点的なものとそうでないものとの区別は必要かと思いますが、しかし特別扱いということはなしにやってまいりたいと考えております。
  39. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、防衛庁長官に聞きましょう。  いま大蔵省見解というものが答弁の中で十分のみ込めたと思います。そして、厳しい財政状況だということもあなたは十分認識をなさっていらっしゃる。五六中業の試算では、一%の問題について期間中平均で一%という表現になっているわけですが、閣議決定を厳守していくということになれば、やはりここはシビリアンコントロールの原則に照らしても、期間中平均で一%というような表現は全く当てはまらないことであるし、ばかげたことであるし、大蔵省の言う各年度一%の枠、そして閣議決定を厳守する、そういうことから考えれば、シビリアンコントロールの原則に反しているのではないか。防衛庁長官、いかがですか。
  40. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど来先生御自身からも御指摘がございましたように、五六中業というのは防衛庁が「防衛計画大綱」に基づいて各年度概算要求等を作成する際の参考資料でございまして、当然のことながら、各年度予算編成を拘束するものではございません。そしてまた、閣議決定は正確にはこうなっておりまして、「防衛力整備の実施に当たっては、当面、各年度の防衛関係経費の総額が当該年度国民生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする。」とありますとおりでございまして、われわれは当然この決定については厳正に解しておりまして、現在のところこの閣議決定を変更する必要はないというスタンスで今回の概算要求にも当たっているわけでございます。
  41. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、期間中平均で一%という表現は当を得ていないということですね。妥当な表現でないということですね。
  42. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 そのまますぐお答えにはならないと思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、五六中業というのは正面の装備について比較的正確に見積もったものでございまして、防衛関係費というのはそのほかにもいろいろ後方関係経費、人件糧食費等も含むものでございまして^これらの問題についてはそれほど詳細な見積もりを行っていないわけでございます。それと、五六中業というのは年度割りをつくっておりませんで、したがって、その間のことがどうなるということと、毎年度概算要求GNP比との問題はすぐ連動するものではないと思います。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 何を言っているのですか。私の聞いているのは、GNP平均一%だという表現は妥当でない、さっきあなたも言ったように、閣議決定を尊重する、政府の統一した見解である、単年度予算でその枠の中でやるということであれば、期間中の平均で一%という表現は妥当でない、期間中の平均一先でということと、単年度一%の枠の中というのはおのずから違うのですよ、防衛庁長官、わかっていますか、だから、期間中平均一%という表現はあなたの答弁から考えて間違っている、そういう認識ではない、そうでしょうね、こう私は聞いているのです。はい、どうぞ。-防衛庁長官だよ。あなたはいつから防衛庁長官だ。
  44. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 ただいま大臣からも御答弁申し上げたとおり、五六中業というのは正面装備は比較的詳細に積み上げてございまして、この金額が四兆四千億円から四兆六千億円になっている。しかしながら、防衛庁でもって参考のためにこの五六期間中の防衛費全体について試算したものはございます。これは十五兆六千億から十六兆四千億ということになっております。ただ、この計算は必ずしも精緻なものでもございませんし、また、この対象期間中に今後の経済見通しがどういうふうに変動していくか、GNPの見積もりも浮動要素がございまして、必ずしも正確にGNPに対する防衛費の比率というものを見積もるわけにはまいらぬことはるる御説明をしているとおりでございます。  ただ、念のために現在の経済見通しあるいは現在の計画というものを前提にして計算すれば、この期間中のGNPというのは千六百十兆ですかになる、そういうものから比較して大体〇・九七%から一・〇二形くらいになるであろうということを申し上げているわけで、もちろん五十一年の閣議決定にあった一%云々というのは、当該年度予算と当該年度のGNPを比較するものであることは論をまたないところであるというふうに思っております。
  45. 井上一成

    井上(一)委員 委員長、私が答弁を求めた人に答弁をしてもらわないと……。防衛庁長官、私は長官に質問をし、長官からお答えをいただきたいのです。  だから、経済政策によってGNPのばらつきがあることもわかっているわけなんです。いまは非常に厳しい状況だ、その中でも一先の枠は守るのだ、そういうことになれば、当然期間中平均で一%云々ということは妥当な表現でない。厳しいときは防衛予算も含めて厳しく見積もりながら一%の枠、そういうことでしょう。期間中平均一%というこの表現は当てはまらないのじゃないですか。政府の統一見解閣議決定から考えてそうじゃないですか。
  46. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、五六中業というのはあくまでもわれわれの参考資料でございまして、GNP比の問題は毎年度予算と当該年度のGNPとの問題でございますから、この五六中業で期間中平均一%という表現は必ずしも妥当でないとは言えないと思います。
  47. 井上一成

    井上(一)委員 何を言っているのですか。それじゃ、閣議決定でGNP一%以内という枠があるわけですね。そして、各年度でそれを厳守する、まずこれは間違いないですね。
  48. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 閣議決定、単年度予算というのは厳守をしなければなりません。
  49. 井上一成

    井上(一)委員 単年度で厳守をしたら平均したって一%以内になるのだから、期間中平均なんていう表現は要らないでしょう。各年度一%の枠、こういうことでしょう。
  50. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 五六中業全体が年度割りをしておりませんので、各年度をどうという表現は五六中業については使えないと思います。
  51. 井上一成

    井上(一)委員 五六中業には年度割りはしていない、それは私もよくわかっています。年度割りはしていないけれども、急激な経済成長があればその予算もまた一先の枠の中で大きくなるでしょうけれども、しかし基本的に各年度一%の枠内を守るということには変わりありませんね。
  52. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 もちろん、そのとおりでございます。
  53. 井上一成

    井上(一)委員 ややもするとあなた方はならして、期間中で〇・九七あるいは一・〇二、そういうことであれば平均して一%の枠内だというようなこと、そのために期間中平均という表現を使った、私はそう思っているのです。しかし、各年度を守るということである。そういうことなら私は、期間中平均なんという表現は当てはまらない、各年度一%の枠の中で大綱達成のために整備をしていく、こういう表現でいいのじゃないですか。そう思いませんか、大臣。素直にそう思いませんか。
  54. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど来何度もお答え申し上げておりますとおり、五六中業全体が五年間の問題を取り上げているわけでございまして、年度割りをしておりませんので、どうしても表現上、期間中平均という言葉を使わざるを得ないと思います。
  55. 井上一成

    井上(一)委員 あなた方はなし崩しにしていこうという、そういう中に非常に危険性を感じるので強く指摘をしておきます。  次に、F16戦闘機の問題について尋ねていきますが、この配備についてはアメリカ側から、いつ、だれから日本側のだれに申し入れがあったのか、まず念のために聞いておきましょう。
  56. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 F16の配備につきましては、本年六月下旬だったと思いますが、在日米軍司令部を通してわが方、すなわち防衛庁、外務省等に対し、日本政府側の協力依頼という形での申し入れがあったわけでございます。
  57. 井上一成

    井上(一)委員 周辺の住民は非常に反対の意見が強いわけですけれども、それじゃ、青森県及び三沢市には、いつ、だれが、だれに配備したいという申し入れをなさったのでしょうか。
  58. 塩田章

    ○塩田説明員 青森県知事並びに三沢市長に対しまして、仙台防衛施設局長が十月一日に協力依頼方を申し入れいたしました。
  59. 井上一成

    井上(一)委員 私は、今回の三沢基地のF16配備の問題については、大変重要な問題だ、こういうふうに思うわけです。このような重要な問題は、国民に十分にその事実関係を知らせなければならない。政府は一体どういう形で国民に知らせたのか、この点についてお答えをいただきます。
  60. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 今回のF16の配備につきまして米側からの申し入れがあったことは、先ほど答弁申し上げたとおりでございますが、本件に関して大臣が訪米されるに際して政府側で慎重に検討した結果、わが国の平和と安全、ひいては極東の平和と安全にとってきわめて有効であるという認識のもとにこれを了承する旨の態度を決定したわけでございます。ことさらこの問題についてどういうふうにということではございませんが、その間において新聞記者にも発表し、それが公表されて新聞記事になっておることは御高承のとおりでございます。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 私の知る範囲では、九月三十日の各紙が一斉に報道したわけです。これはエルパソから、あるいはワシントンから、東京から、伊藤同行筋なりあるいは米政府高官筋、そういうようなことで、内容についても二十機から五十機だとか、あるいは四十から五十、一部には一部年内とかあるいは八五年以降だとか、それぞれ報道がなされたわけです。各社が書かれたこの報道というものは、国民がすべて目にするわけであります。     〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕  そういうことになるとこれほど重要な問題を、たとえば防衛庁が事改めて正式な記者会見、記者発表をして、記者諸君からの質疑も受け、あるいはそれに答え、あるいは外務省もそれなりの対応をちゃんとやって当然だ。そういうこともなされたのかどうか。なされなかったのか。それはしなかったと思うのです。そういう意味では、報道された内容がワシントンと東京なんというのは全く違う。ワシントンで記者会見したのか、東京で記者会見したのか。防衛庁国民に知らせるための一つの方法、手段として、このF16に関して本当に正しい判断をいただくためにすべてを全部にわかってもらうように努力をしたのかどうか、私は非常にそういうことが疑わしくなるわけです。この点についてはどうなんですか。
  62. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 本件の受け入れにつきましては、日本政府部内において慎重に検討した結果、今回の訪米の際に日本政府側の考え方を明らかにし、その結果を公表したわけでございますけれども、その前にいろいろ新聞記事に出たことは御承知のとおりでございます。私ども、本件については現地在日米軍からの申し入れがありましたけれども、なお細部にわたってアメリカ国防省当局との確認というふうなことも頭にありまして、そういうことから事前に、出発前にこういう申し入れがあるということを公表しなかったというものでございます。
  63. 井上一成

    井上(一)委員 先ほどからも申し上げるように、F16の配備については、国の運命を変えるかもしれないという非常に重要な政策決定になるかもしれない、そういうことを、防衛庁のやり方というのでしょうか、国民に知らせる、あるいはそういうことへの説明の対応がどうも非常に不明確、おかしい、私はこういうふうに思うのです。防衛庁長官、あなたのこんなおかしいようなやり方、これはもう反省をしますか。もっとやはりきっちりと記者会見をして、きっちりとしたブリーフをして、そしてより国民に理解を求める、わかってもらえるための取り組み、対応が大事だと私は思うのです。防衛庁長官の考えを聞いておきましょう。
  64. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御指摘のとおりの大事な問題でございますので、われわれ政府部内で相当長期間慎重に検討いたしました。私の訪米ぎりぎりまで慎重に慎重に検討したこともございまして、なおいまも防衛局長からお話しのとおり地元の御協力もこれから得なければなりませんので、今後とも地元の御協力を得るということを中心として、国民の御理解なり御協力を得るための努力を惜しむものではございません。
  65. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、六月下旬に在日米軍の司令官から申し入れがあって、それが十月の一日まで地元には知らされなかった。九月三十日に一斉に新聞報道がなされた。こういうことについて私は指摘をしているわけです。長官、少しやはり考えを改めてもらわなければいけませんよ、やられたことだから。あなたと同行した記者の同行筋、あるいは東京あるいはワシントンと、こんなけったいなぐあいで、内容についても同じところもあれば若干数字の違うところもある。こんなことが大変な問題になる可能性のある三沢の基地のF16配備について、こんなブリーフでいいのか、こんな発表の仕方でいいのか、これは反省しなければいけませんよと私は言っているのです。どうですか。
  66. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 今後とも地元の御協力、御理解を得るということを中心として、なお一層国民の御理解なり御協力を得なければならないというふうに考えております。
  67. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は、アメリカ側からF16配備の要請がいまもお答えがあったように六月の下旬だ、こんな重要な問題は当然防衛庁だけで決定することはできないと思うのです。当然あらゆる角度から検討されたと思うわけでありますけれども、どういうところと検討されたのか、ひとつ聞かしてください。
  68. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 今回のF16の配備の目的、規模、配備のスケジュールあるいはわが国の防衛に及ぼすところの影響等につきまして、広範な問題点がございます。そういう立場から、われわれ防衛施設庁を含めて防衛庁の部内はもちろんのこと、外務省あるいは財政当局あるいは関係筋とも十分調整をし、慎重な御審議をお願いしたというものでございます。
  69. 井上一成

    井上(一)委員 さっきから申し上げるように、日本の進路を大きく変えるかもしれないという大きな問題、官邸にはというお話がいまあったのですけれども、総理には報告をされたのでしょうか。
  70. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 私から総理にはこのことを申し上げまして、いまも申し上げておりますとおり、今後地元に御協力をお願いしなければならないが、日本政府として基本的に本計画に協力をするということをアメリカ側に返事をするということを御説明申し上げまして、総理の御了承を得ております。
  71. 井上一成

    井上(一)委員 それはいつですか。どのような場所で総理にあなたが了解を得ましたか。
  72. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 事務当局等では、いまも防衛局長からお話しのとおり、各省、特に官邸とも十分な御連絡をとっておりましたけれども、私自身が総理に申し上げましたのは、訪米の数日前でございます。
  73. 井上一成

    井上(一)委員 それは受け入れをするということを決めた段階、検討後の段階で、総理にいわば報告だけなのか、報告をして了承を得たのか。
  74. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 事前には十二分にお話を申し上げており、内々総理の御内意もあったわけでございますけれども、いよいよ私が正式にアメリカに行くことになったものですから、いま申し上げたような趣旨を数日前に総理と、申し上げたというよりも総理とよく打ち合わせをいたしまして、こういう方針で参りますということを改めて確認をしたということでございます。
  75. 井上一成

    井上(一)委員 外務省が検討の中に加わるということは私は当然だと思うのです。私は前の委員会でも外務大臣に幾つかの質問をいたしました。そのときに、とりわけ外交フィルターでの物事のとらえ方が国益に非常に微妙に影響する、そういうことで、ひとつ外務省がしっかりとした間違いのない判断をしなければいけないというようなことの質問の中で、外務大臣は、国際的視野に立って物事を判断すべきで、これがきわめて重要なことだというようにも言われているわけです。  そこで、検討に加わった外務省に尋ねます。政府の立場に立てば、F16配備をするということはそれなりのメリットがあると言うかもしれません。しかし、別の角度から見れば当然デメリットもあるわけであります。先ほどからも申し上げるように、国の政治、とりわけ外交的な面でアジアの緊張の根源にかかわる大きな問題になるかもしれない。そういうことから、その比重の大小は問いません。検討に加わって、何がメリットの大きさなのか、あるいは外務省としてはどういうデメリットがあると思っていらっしゃるのか。デメリット、メリットという表現で答えるのが苦しければ、こういう点については懸念される、こういう点については一定の評価がされる、そういうことでも結構ですが、外務省としての見解をひとつここで聞いておきます。
  76. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  本件、すなわちF16の三沢配備につきましては、六月下旬、在日米軍から防衛庁に申し入れがあると全く同時かつ並行的に外務省にも連絡∴申し入れがございまして、両省庁間でそれぞれの分掌分野、所掌事務に従いまして検討を開始したわけであります。また、その後も緊密に両省庁間で協議を続けた次第でございますが、申し上げるまでもなく、外務省の立場からの検討は二つのポイントがございます。  第一点は、日米安保体制の運用をつかさどる責任官庁として、この体制の運用上どういう意味を持ち、どういう問題点があるかという点でございます。  第二点は、井上委員指摘のとおり、本件が対外関係に与える諸問題につきまして、外交当局の立場からの検討が当然行われた次第でございます。  他方、防衛庁は申すまでもなく主として軍事的な観点からの御検討をなさったわけでありまして、この間、相互に連関いたしますもの、なかんずく安保体制の運用に係りましては、総合的な安全保障の見地から両省庁間の十分な協議を行い、かつ関係省庁及び内閣にも共同して説明し、検討結果をお伝えするということをしたわけでございます。  外務省といたしましては、安保体制の効果的な運用の見地から本件を見まするに、七一年に三沢に配備されておりました二飛行隊のファントムが撤退して以降約十年、この間における極東の軍事バランスは、わが方、すなわちわが国及び西側にとって不利な形で展開しておる現状にかんがみ、このF16の八五年以降の展開は極東における軍事バランス改善に役立つ、かつ米国の日本及び極東の平和と安全に寄与するというコミットメントの意思を明確にする、かくして日米安保体制の抑止力の維持向上に貢献する、そのような総合判断のもとにこれを前向きに受け入れるというふうに決定した次第でございます。  なお、外交上の配慮あるいは対外関係という点ももちろん考慮いたしたわけでございまして、本件が受け入れ決定となった場合に、近隣諸国を含め、あり得べき諸外国からの反応についても検討したことは申すまでもございませんが、それらを全部総合いたしまして、個々一々には申し上げませんが、極東の軍事力バランス回復という見地、安保体制の抑止力の向上という見地が、究極の結論として、外務省の判断としてまとまった次第でございます。
  77. 井上一成

    井上(一)委員 日米の安保体制の効果的運用という、それはいわばメリットの面だと思うのです。対外関係についてはいわばデメリットの問題。対ソ外交あるいは中国も含めて対アジア外交、いわゆる対ソ外交にどう波及すると認識されたのか、その点について聞いておきましょう。
  78. 松田慶文

    ○松田説明員 お答えいたします。  先ほど申し述べましたとおり、このF16のわが国への配備は、安保体制の抑止力の向上に資するものであります。すなわち、米国及びわが国のとっております戦略の根幹が抑止力の向上であって、その抑止力は当然のことながら極東における軍事力の現状を見据えての抑止力の向上でございます。そして、現在の極東における軍事力の実態認識いたしますならば、F16二飛行隊の八五年以降におけるわが国への配備が現在の不均衡を何がしか改善することには役立っても、それ以上にソ連その他御指摘のような諸国を刺激するといったことはない、そのような判断でございます。
  79. 井上一成

    井上(一)委員 効果的運用そのことは、いま言ったようにメリットだ。しかし、デメリットの分野、とりわけ対ソ外交にどう波及するのか。全く波及しないという認識なのか、いや、そうじゃなく、何らかの波及が恐れられる、しかし、それよりも抑止力の評価をしている外務省としては、今回の配備について了承を得たのだというのか、どうなんですか。
  80. 松田慶文

    ○松田説明員 ソ連との関係でございますけれども、外交上の配慮というものは安全保障ないし軍事的な相関関係なしに動くものではございません。特に極東におけるソ連との関係におきましては、この地域におけるソ連の軍事力の展開状況がわが国の対ソ関係一つの柱となっていることは申すまでもございません。たとえば現在のソ連の極東における空軍力について申し上げても、全ソ連の作戦機の四分の一が極東に配備されておる、またその内容も相当に近代化、高度化された第三世代のものが多い、また機数も圧倒的に多いといったことを踏まえて、これは後ほどまた防衛庁にお聞き願いたいと存じますが、そのような軍事バランス実態にかんがみれば、米軍が安保体制に従ってわが国に配備するというF16の二飛行隊の配備につき、これをたとえば刺激的であるとか、たとえばこれをもって極東の平和、安全に重大な脅威があるとソ連側から言われるといったがごとき実態はない。ないとするならば、それを踏まえて外交上もそのように判断するというのが私どもの考えでございます。     〔近藤(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 井上一成

    井上(一)委員 外務省は軍事力のバランスで平和外交を推進しようとするのか。むしろそうじゃないと思うのです。  アメリカとソ連との軍事力の問題は、私はここで聞いておりません。要は、ただでさえ、わが国がいわば隣国、日本海を隔てた隣の国であるソ連との友好関係を保持するのに非常に苦労をしている。F16の配備によってさらにソ連との友好関係に水が差されるのではないだろうか、あるいは中国を初めとするアジアの国々のいわゆる日本の軍国主義化への懸念が強まっていくのではないだろうか、外交フィルターで見ればこういう懸念が一つやはりあると私は思うのです。  そういう点を尋ねているのであって、そういうことも素直に、確かに外交フィルターで見ればそういう点もあります、しかし核抑止力の評価にいろいろな意味から踏み切りましたと言うなら、外務省としての立場というのもそれはそれなりに、私はその意見に賛成じゃないけれども了解をしたい。しかし、いま言っているようなことで本当に、松田さん、あなた外交ができるのですか。失敬だけれども、あなたは自治省から外務省に来られて、非常に優秀だ。しかし、そんなことで日本の外交ができるのかね。
  82. 松田慶文

    ○松田説明員 私個人に対しましてのお励ましは別といたしまして、ソ連との関係は、先生御指摘のとおり二面性がございましょう。隣国として、また世界の大国の一つとしてわが国が妥当、正当な関係を維持することはもとよりでございます。そして、従来から国交回復以来種々の関係を展開してきていることも申し上げるまでもございませんが、その友好親善関係を維持強化しなければならないという普遍的な原理とは別に、北方領土の問題あるいは北方領土における軍事力の展開の問題あるいは極東における異常な、過剰な軍事力の展開等々という別の一面があることも御理解いただけると思います。  対ソ関係について、私は職掌柄ただいま責任を持って申し上げる立場にございませんが、その後段の軍事的な問題を見据えての安全保障、これがまさに安保運用上の一つのかぎでございますので、その点につきましては、一面において前者の対ソ関係全般を考慮しつつも、後者の軍事的なバランス回復、安全保障の確保という点には十全の意を用いるという観点から、その全体的比較考量の中から今回の受け入れ決定に外務省として対処したというわけでございます。
  83. 井上一成

    井上(一)委員 前者、後者、それはよろしい。メリット、デメリット、そういうことに置きかえてもいいと私は思うのです。要は、今回の配備について私が指摘したソ連との友好関係、アジアにおける対日感情も踏まえて、第三国としてのわが国を見る見方、これはわが国に対する大事な評価ですね。軍国主義化への懸念、そういう問題も外務省はわかる、小さく認識をしているか、大きく認識をしているか、これはあなた方は大きく認識していないからこの配備に踏み切ったのだけれども、そういう問題があるということの認識は外務省も持っているのだ、認識をしているのだということは言えますね。そうでしょう。そういう懸念が全くないと言うのか、いや、私が指摘したそのことについてはわかります、大なり小なりそういう認識を持っていますということなのか。
  84. 松田慶文

    ○松田説明員 基本的には御指摘のとおりかと思います。私どもも、先ほどの御答弁で申し上げましたとおり、両方の側面を見て比較考量し、総合的に判断したことでございますので、その意味におきましては、ただいま井上委員指摘のとおり、もう一面も十分考えたか、それはそのとおりでございます。
  85. 井上一成

    井上(一)委員 特に教科書問題では外務省は文部省に主導権をやられた、今度もまた防衛庁にやられてしまうのじゃないか。そんなことを考えれば、外務省なんというのは一体何を考えて何をするところなんだ、外務省の仕事というのは一体何なのだ、本当にこういう外交という問題に力を入れて十分機能を果たしているのかといったら、大いに疑問ですよ。大きいか小さいかは別として、当然そういう問題が検討の中で議論をされ、そして外務省の見解というものがもっと表に出てこなければいけないと思うのです。私はそういうことをあなた方に指摘をしているわけなんです。  それじゃ、外務省は、この問題は安保条約で言う四条、随時協議によって行われた、これはそのとおりですね。
  86. 松田慶文

    ○松田説明員 安保条約第四条の随時協議と申しますのは、この条約の運用に関し必要に応じて随時協議するという、御指摘のとおりでございまして、その形式、態様に決まりはございません。運用上必要な協議を行うことを全体として四条の協議と観念することもできます。したがって、広い意味では四条協議の枠組みの一つとしての話し合いというふうに御理解いただいてよろしかろうと存じます。
  87. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、先ほどからも申し上げているように、三沢の配備というのは、場合によっては日米安保体制のあり方あるいはアジアの緊張の根源にかかわる大きな問題であると思うわけです。日本の進路を大きく左右するかもしれない、そういう大きな問題、そういうことに照らして、このF16の三沢配備については十分検討されてあなたは踏み切られたと思うのですけれども、その点についての見解、さらに伊藤防衛庁長官は先日の衆議院の安保特で、安保条約五条関係防衛庁の所管ですが、六条等の関係は外務省所管です、そういうことを答えられたそうなんです。そのとおりなんでしょうか。
  88. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 第一点の方は、私もこの問題は大変大事な問題でございますので、慎重に慎重に検討した結果、こういう決定をしたということでございます。何といってもわが国は日米安保体制の中にあるわけでございまして、日米安保体制の信頼性を維持向上するということがわが国の外交問題、また防衛問題でも大事なわけでございますから、そのことを勘案しながら今回の決定を慎重にしたわけでございます。  なお、後段の第二点目の問題につきましては、第五条、第六条の御質問がございましたので、第五条でわが国が防衛出動をしたという段階から防衛庁の責任なり役割りが生まれるという意味で申し上げたわけでございます。
  89. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、この基地対応の問題について、基地受け入れの報告とかそういう申し入れに対する窓口をなぜ外務省がやらなかったのでしょうか。
  90. 松田慶文

    ○松田説明員 外務省といたしましても、本件は当初から防衛庁と並行し、協力して仕事に取り組んでまいりました。決して防衛庁の陰に隠れて後からついていったということはございません。しかしながら、本件のいろいろな側面、たとえば将来この部隊の展開に伴う施設整備の面では防衛施設庁予算事項であること、あるいは地元との関係も、施設庁あるいは施設局を通じてのお話が従来からの政府の仕事の仕方である等々にかんがみまして、その分野に関しましては防衛庁にお願いすることとなります。また、政府部内、たとえば大蔵省との関係等は外務省と防衛庁協力して説明に当たっておりますし、なかんずく最高意思の決定としての内閣への連絡等も、外務省が防衛庁とともども当たっている次第でございます。
  91. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、松田審議官、対米関係等については当然外務省が窓口でしょう。
  92. 松田慶文

    ○松田説明員 これが通常の場合でございますれば、恐らく両面から返事をしたと思います。防衛庁が在日米軍ないしは太平洋軍、国防省というラインに連絡する、並行して同じ内容のことを私どもが国務省、大使館または在日米軍へ連絡するということがよくある仕事の仕方でございます。必ずしも常に外務省だけがすべての窓口になっているわけではございません。  繰り返しますが、並行して仕事をするのが例でございますが、今回の場合は、たまたま伊藤防衛庁長官の訪米、ワインバーガー国防長官との会談等々が予定されておりまして、米側に対する回答のタイミングもそれに合わせるということでございましたものですから、伊藤防衛庁長官の訪米の際にお願いしたという経緯がございます。ただし、この訪米にも外務省から責任ある者を同行させていただいて、御一緒に仕事をさせていただいております。
  93. 井上一成

    井上(一)委員 では、原則的には、国内的には大蔵あるいは施設のことは防衛庁所管で折衝していき、アメリカに対しては本来外務省がその折衝に当たり、国内的な対応をまとめる窓口になっていく。あるいは、私は今回も当然そうだと思うのですけれども、たまたま防衛庁長官が訪米されるからその折にという今回のその事情はわかりました。しかし、このことについては原則として外務省が窓口でなければならない、その認識はお持ちでしょうね。
  94. 松田慶文

    ○松田説明員 お答えいたします。  先ほど御答弁申し上げましたが、事柄によりまして、たとえばより外交性の高い内容の場合には外務省が単独で対米窓口になることが間々ございます。あるいはより軍事的分野の多いことにつきましては防衛庁にお願いすることもございますが、たとえば沖繩返還交渉……(井上(一)委員「そんなことは聞いておらぬ」と呼ぶ)いや、過去の例を申し上げますと、双方が分かれてやる、沖繩交渉のときには軍事交渉は防衛庁にお願いして外務省が協力する、全体は外務省が取りまとめるということがございましたとおり、いろいろの態様がございますが、外務省が基本的には対米関係の接触点になるべきであるという点は御指摘のとおりであり、かつ、そのように運用してきているつもりでございます。
  95. 井上一成

    井上(一)委員 あなた、外交性の高い云々なんて、こんな大変な問題を何と心得ているのだ。今回の問題は外交性が高くないのか。防衛庁長官がたまたま訪米するから、本来外務省が窓口だけれども、その機会に防衛庁長官にそういう報告をしてもらったのだと私は善意に解釈しておったのだけれども、あなたのいまの答弁で――本来はこれは外務省の所管なんですよ。そうなんでしょう。それを外交性が高い云々というようなこと、あるいは沖繩の返還の問題、要は、結論としてほこれは基本的には外務省だ。言いわけは要らないのだよ。弁解は要らない。これは外務省の所管であり、基本的には外務省が窓口になるのです。もちろん各省庁の協力を得ながらということはわかるけれども、何か防衛庁主導型で外務省がついていく、そんなことでいいのですというようなことでは、私は外務省の存在をむしろ否定しなければいけないようになってしまう。
  96. 松田慶文

    ○松田説明員 一般論を申し上げて大変失礼いたしました。本件に特定してお答え申し上げれば、これは外務省と防衛庁が事柄の内容に応じて受け持っていくべき問題ではございましょうが、なかんずく外務省の役割りが御指摘のとおり非常にあるということはそのとおりかと存じます。
  97. 井上一成

    井上(一)委員 当然そうなんですよ。防衛庁長官も六条関係のあれは外務省だという答弁をしているのです。基地受け入れの報告をなぜ外務省がしなかったのか、さらにこれから外務省は改めて外交チャンネルでそういうことに対して対応していく用意があるのかどうか、そのことをひとつ聞いておきましょう。
  98. 松田慶文

    ○松田説明員 お答えいたします。  本件を含めこの種の重大な問題につきましては、一に外交当局として、二に安全保障体制の運用事務局の立場、その双方を踏まえまして、誠意をもって積極的に対応するつもりでございます。
  99. 井上一成

    井上(一)委員 期せずしてあなたはいま、一に外交的配慮、そして二に安保体制の運用。外務省としては当然当初からそういう言葉が出てくる。防衛庁は防衛、軍事力の問題ということが外交にどう影響するかなんというのは二の次に考えるのだろう。むしろそんなととを考えずに、どんどん軍事力をふやしていく、防衛力をふやしていく、そういう流れになっているわけです。国際関係が複雑になればなるほど、外交の調整というのは非常にむずかしい。しかし、それだけに外交の一元化というものが大事であり、そのことが外務省の地位を高めていくと思うのです。  通産省が今度、あなた方外務省が頼りにならぬから、海外広報室をつくってそういうことをやろうという。いままでの答弁を聞いておったら、最後に、外務省が一生懸命やるということ、そういう意思がちらっとのぞけたけれども、それでなければ外務省なんか要りませんよ。あなた方が何にもやらないのだから、通産が言うのは当然だと私は思います。ああでもない、こうでもないと言って非常にかたくするのじゃなく、外交なんというのはもっともっとしっかりとした基盤というものをつくらなければいけないし、そういう意味で、ついでというわけじゃないのだけれども、あなた方がしっかりしてくれる、そういうしっかりしますということをこの国会できっちりと示していかなければいけない。ただ言うだけじゃなく、物事を一つずつ、いま言ったように、今回のF16配備の問題も、外務省がアメリカとの交渉には十分当たってその折衝をやり、所管を全うしなければならない。それでなければ防衛庁に外務省にかわる課をつくらなければいかぬ。  なかんずく通産にもそういうことが必要になる。通産に海外広報室をつくる動き等があるが、こういうことについても外務省はどういうふうに受けとめて、これからの取り組みをどう充足していこう、満たしていこうと考えているのか、このことこそまさに外交的配慮が必要になってくると思うのですよ。それが外務省の仕事だと思うのですよ、松田さん。あなた、そんなことは一つもここでは言わない。だから、そういうことをきっちりと国会の中で外務省の見解として言われることが、国民によりよく理解を求められる一つの方法であり、防衛庁に引きずられていってはいけない、そういう意味で、外務省の対応をもう一度念を押しておきましょう。
  100. 松田慶文

    ○松田説明員 ありがたいお言葉を多々いただきましたが、たとえば先般の臨調の外務省に対するいろいろなお言葉の中にも、外務省こそ日本政府の対外関係の全体の取りまとめの責任省庁として、防衛、通商を含めすべての分野で外交一元化という言葉のとおりにもつとしっかりした組織もつくり、しっかりした仕事をやるようにという御指摘、おしかりも受けた次第でございますが、私ども外務省といたしましては、国家行政組織の中で、その課せられております外交全般の責任官庁としての立場から、本件のみならず万般につきまして責任ある仕事をさせていただくよう今後とも邁進する所存でございます。
  101. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁に伺いますが、F16は核爆弾の積載可能な戦闘機である、そのとおりなのでしょうか。
  102. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 F16は、各種の資料によりまして核装備が可能であるというふうに理解しております。
  103. 井上一成

    井上(一)委員 今回の三沢配備のF16は、核装備をするおそれがあるのではないでしょうか。
  104. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 わが国が非核三原則を国是としており、アメリカも十分このことは承知しておるわけでございまして、そういうふうなことは考えられないというふうにわれわれは思っております。
  105. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、あなたがこの基地受け入れの返事をする前に、ワインバーガー氏に、核装備はしないという確約をとられましたでしょうか。
  106. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ただいま政府委員からもお答えを申し上げましたとおり、わが国は非核三原則という国是がございますし、そのことをアメリカ側も重々承知の上で今回の提案があったわけでございますから、私とワインバーガー長官との会談の際には、私から改めて確認をするようなことはいたしませんでした。
  107. 井上一成

    井上(一)委員 確約をしないなんというのは、あなた、無責任なんですよ。非核三原則の国是があるから云々という、あなた方の答弁はそれしかないわけです。核装備をしないという念を押したのか、いやいや、非核三原則。それはあなたが思っているだけで、言葉としてなぜ出さなかったのですか。
  108. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 当然わが国の非核三原則についてはアメリカ側も深く理解をしておりますので、当然のことながらそういう事態は起こり得ないという確信も持っておりますから、改めて確認をするようなことはいたしませんでした。
  109. 井上一成

    井上(一)委員 外務省に伺いましょう。  外務省は、F16が核装備をしないという確約をアメリカ側からもらったでしょうか。
  110. 松田慶文

    ○松田説明員 今回の折衝経過の中ではしておりません。
  111. 井上一成

    井上(一)委員 基地受け入れを認める。だから、核搭載可能機であるということもデメリットの一つなんですよ。あるいはあなた方はそれをメリットに置きかえるかもわからない。しかし、外務省がどうしてその確約をとらずに、念を押さずに、基地受け入れに防衛庁検討の中で賛成をしたのか。そんなことでは、三沢の市民はもとより、国民の大多数は納得をしませんよ。非核三原則を厳守するだとか、いや何だとか言ったって、具体的にこういうことについてどうしたか、どうするか、やはりそのことが議論になって、国会の中でそういうことをきっちりとしないととには、私はいまの日本の防衛費増強についても非常に恐れるわけなんです。なぜ確認をとっておかなかったのか。どうなんでしょうか。  外務省に、いまこそ外務省しっかりしなさいと、さっきからいろいろ申し上げましたが、とってないということだから、私はこれからでも遅くないと思うのです、これからでも遅くないから、やはり多くの国民の疑惑をほぐすためにも、核装備はしないという確約を、今度は防衛庁じゃなく外交ルートできっちりととるべきである、すぐやるべきである、私はこういう認識、こういう考えに立つわけです。外務省、いかがですか。このことが大事ですよ。
  112. 松田慶文

    ○松田説明員 先ほども防衛庁から御答弁がございましたが、日米安保体制の運用上、核の持ち込みが事前協議の対象となること、また、事前協議があればわが国はこれを受け入れることはしない、必ずノーと言うことが現在の日米安保体制の根幹の仕組みの一つとなっております。これは過去、安保体制二十二年の間、折に触れ米側と話し合い、確認をしてきておりますが、御記憶のとおり、一番最近は昨年五月二十日、外務大臣から在京米大使に対して、時の問題、すなわちライシャワー発言等々の関連で、改めて政府対政府で、日本国土への核の持ち込みが許されないことを確認してございます。したがいまして、今回三沢への問題で、核装備能力のあるF16ということを十分承知の上ではございますが、現内閣が昨年来確認しておりますこの新しい事象も踏まえまして、特段の確認はいたしませんでした。また、今回もこのままでよろしいかというのが私どもの現状における考えでございます。
  113. 井上一成

    井上(一)委員 何を言っているのですか、あなたは。外務省の仕事というのは何なのですか。だから、やはりそれはきっちりと、向こうだって、持ち込めないのだということを認識しておったら、持ち込みませんということは確約できるはずだ。それを言うことができないなんと言ったら、本当に外務省は要りませんよ。あなた方はだんだん国会で言われて、岩国の問題だってそうでしょう、何か問題が出て追い詰めるまでやらないというのだったら、外務省なんて必要なくなるわけです。  だから、この問題は、今日まではいろいろな事情で、あるいはいわば両国の信頼関係だと言われるかもわかりません。そういうことで確約はとってなかった。でも、非常に重要な問題だから、このことについては外務省が窓口になって、必ず約束を取りつけます、わざわざそのためにでもアメリカとの窓口をきょうにでも開けばいいのじゃないですか。
  114. 松田慶文

    ○松田説明員 御指摘のポイントは十分理解しております。しかしながら、先生も御発言の中にございましたが、安保体制は日米両国の信頼関係を基軸とするということはまさにそのとおりでございまして、従来もそうでございましたとおり、そういった信頼関係が崩壊するのであれば、もはや安保体制は持続できないのであります。そういった観点で私どもは、いまこの問題で、将来八五年配備の際に核の持ち込みはないでしょうねというがごとき確認は、この日米の根本の関係、安保体制の基軸、そして事前協議制が十分にかかっている現状においては必要はないと考えるものでございます。
  115. 井上一成

    井上(一)委員 何を言っているのですか、あなた。あなた方は信頼関係云々で常にごまかそうとしている。信頼があれば当然こういう約束はできるわけなんだ。安保体制が強力であれば、何ぼでもこんなことは約束できるわけだ。言えないということは、どうして言えない。外務省、これは大臣以下、なんですか、外務省はそういうことは言えないのですか。そういう仕事はできないのですか。窓口になっておって、アメリカとの折衝にそんなことはしなくてもいいなんというような怠けた、間違った考え方で、何が外交ですか。何を言っていますか。すぐにでもやるべきだ。
  116. 松田慶文

    ○松田説明員 繰り返しになって恐縮でございますが、やるべき必然性、必要性がないというのが私どもの判断でございます。それは、たとえば五十三年の御案内の日米防衛のための協力の中でも、双方の役割りが決められておりまして、米軍は自衛隊の能力の及ばない機能を補完する、あるいは米軍航空部隊は自衛隊の行う作戦を支援し、または航空打撃力を有する航空部隊の使用を伴う作戦を含む行動をとるというような仕分け確認をして仕事をしてまいりました。そのガイドラインの冒頭におきまして、事前協議制度、すなわち核の持ち込みを含む事前協議制度はそのまま堅持するということで仕事をしてきておりますし、この三沢の将来のF16部隊の運用に関しても、このような両国間の明確な理解、認識を踏まえたこととなります点を御理解いただきたいと思います。
  117. 井上一成

    井上(一)委員 ばかげた答弁で、私は大臣の出席要求して、この問題は外務省の所管であり、外務省の役割りというのはきりちりこういうものは確約をするのだということの答弁、あるいはそういうことをやらなければ、これはもうまさに、F16の配備なんというものは軽微なものだ、簡単なものだ、大したことないのだという認識ですよ。これは外務省なんか要らないということになる。  私はここで、時間も午後を回っていますから、委員長にお願いをして、審議官では答弁が十分できないだろうと思いますので、大臣に出席をしてもらって、この問題についての核装備をしないという約束を、外交ルートできっちりと確約をするという約束を外務省から答弁があるまで、私はこの質問を暫時保留します。
  118. 永田亮一

    永田委員長 この際、午後一時十五分まで休憩いたします。     午後零時四十五分休憩     ―――――――――――――     午後一時四十分開議
  119. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新村勝雄君。
  120. 新村勝雄

    新村委員 最初に、大臣から防衛政策の基本姿勢についてお伺いをいたします。  大臣は、先般日米防衛首脳会議出席をされまして、アメリカといろいろ防衛について協議をされたと思いますが、その間のいろいろな報道等を伺いますと、従来の日本政府の防衛に関する基本政策あるいは考え方が変わりつつあるのではないかという印象を受けるわけであります。この点について、まず大臣の防衛の基本政策あるいは構想について伺いたいと思います。
  121. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 防衛の基本方針というお尋ねでございますけれども、これは従来から政府また私がしばしば申し上げておりますとおり、わが国の防衛は、平和憲法のもと専守防衛に徹し、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、さらに非核三原則を堅持することをその基本方針としておるわけでございます。
  122. 新村勝雄

    新村委員 伝えられるところによると、長官は、日米首脳会議を終えられての帰途、新聞会見でいろいろ見解を述べられておりますけれども、その中で「日米防衛問題が転換期を迎えており、従来の惰性で進めてはならない。」こういうようなことを言っております。それから、「日本が自ら悩み、考え抜いた防衛構想を新たに打ち出す時期に来た。」こう言ったと伝えられておるわけでありますけれども、これはどういう意味でございますか。
  123. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 わが国の防衛につきましては、いま申し述べましたような基本方針に基づきまして、しかも、あくまでもわが国の自主的な判断に基づいて、わが国の防衛のため必要な範囲で防衛力整備を図っております。また、今後もその方針でいなければならないと思います。  しかしながら、日米両国の一部に、わが国は米国の圧力によって防衛力強化を図ろうとしているのではないか、あるいは米国は日本に対し圧力を加えることにより好ましい日本の政策変更が得られると考えているといった議論も見られるわけでございまして、そういうことを私は念頭に置きながら、防衛問題に関する日米の相互理解を今後さらに深めていくことが重要であるとの認識に立ちまして、わが国の防衛努力に対するいま申し述べましたような一部の誤った見方を正し、わが国の防衛については、あくまでもわが国の自主的な判断に基づいて、みずからの防衛のため必要な範囲で行っていくべきものであるし、また、現にそのように行っているということにつきまして、国民の皆様方の御理解なり御協力を得る必要があるのではないかというような私の問題意識を、いま御指摘のような形で披露をしたつもりでございます。
  124. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、長官は、転換期にある、転換期というのは、従来の考え方あるいは従来の体制から変わるわけですね。転換というのは、延長ではなくて変わることですから、こういう変わる時期に来ておるというふうにみずからおっしゃっておるわけですね。そうしますと、いま長官は、日本のみずからの選択によって防衛体制をつくっていくとおっしゃったわけですけれども、従来はどうなんですか。従来の日本の防衛に対する姿勢なりスタンスといいますか、それはどうなんですか。
  125. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 防衛の基本方針につきましては、冒頭に申し上げましたとおりの基本方針を今後とも貫いていくわけでございますけれども、先ほどもこれまた御披露申し上げましたとおり、わが国の防衛努力につきまして、一部ではございますけれども、アメリカの要請があって、それに日本側が対応するというふうにとられておる、そういうような形は改めていかなければならない。あくまでも日本の自主的な判断によって、みずからの防衛のために必要な範囲で防衛努力を積み重ねていくべきであるということでございまして、もし御指摘のようであるならば、そういう形にぜひ持っていかなければならないということを申し上げたつもりでございます。
  126. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、長官のおっしゃることは、従来は対米従属、アメリカの軍事力の傘のもとに進んできた、これからはその姿勢なり方向を転換をして、自主的な防衛体制をつくる、こういう意味なんですか。
  127. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 従来も決して対米従属ということではありませんでしたけれども、対米従属とおとりいただくようなそういう議論が一部にあったわけでございまして、そういう議論が起きないように、あくまでも日本の自主的な防衛努力というものを打ち出して、そのことにつきまして国民の御理解を得る必要があるというつもりでございます。
  128. 新村勝雄

    新村委員 長官のお話とは逆に、最近の幾つかの事態を見ますと、ますますもってアメリカの世界戦略の一環を担う、一環に組み込まれていきつつある、こういう印象を受けざるを得ないわけです。たとえば先ほど論議になりましたF16の三沢配備あるいはシーレーンの問題、三海峡封鎖、こういうことは、長官のお考えからすれば、これは自主的な判断、それから日本の自主的な防衛の上からいってこういう結論が出てきたのかどうか、これを伺います。
  129. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 もちろん従来も日本の自主的な判断に基づいて行ってまいりましたし、これからも行ってまいるわけでございますけれども、また一方、わが国の防衛については、日米安保条約の信頼性をなお一層維持向上しなければならないという大事な面もあるわけでございまして、わが国の自主的な努力日米安保体制の信頼性の維持というものの総和の中にわが国の防衛努力というものを積み重ねていくということをぜひ国民の皆様方に御理解いただく、そのための努力をすべきだということでございます。
  130. 新村勝雄

    新村委員 長官の御説明では、日米防衛問題が転換期を迎えておる、どういうふうに転換していくのだということが全く不明確であります。この点について、日本がみずから悩み、みずから考え抜いた防衛構想をつくるとはどういう意味なのか、その内容をもう少し具体的にお話し願います。
  131. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 これは再三申し上げておりますとおり、防衛の基本方針は、平和憲法、専守防衛、あるいはまた近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならない、さらには非核三原則を堅持するというのがわが国の防衛の基本方針でございますけれども、その基本方針のもとに年来積み重ねておりますわが国の防衛努力、これからもやってまいります防衛努力が、先ほども再三申し上げましたとおり、アメリカの要請、それに対するわが国の対応というような形でとられる、そういう議論があるわけでございまして、そういうことは日米双方にとってもわが国の防衛努力のあり方にとっても好ましいものではありませんので、そういう議論はなくなるような努力をわれわれがすべきだということでございます。
  132. 新村勝雄

    新村委員 最近の諸般の情勢を見ると、日本の防衛体制といいますか、別の面では対外政策と言ってもいいのですけれども、これが一つの転換期にあること、これは長官がおっしゃるとおりだと思います。この転換期とは何か、どういう方向に転換をしつつあるのかということは、これは国民の重大な関心事であります。そういう意味で、三沢配備あるいはシーレーンの防衛、三海峡の封鎖というような具体的なそういう事実を長官はどう説明されますか。
  133. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 先ほど来大臣が再三にわたって御答弁申し上げておりますように、わが国の防衛は自主的な判断によって必要な防衛力整備していくことが大事であるということを申し上げているわけでございますが、シーレーンの防衛につきましても、わが日本の置かれた立場、四面を海をもって囲まれ、非常に面積の狭いところに大ぜいの人口を抱えている、食糧、エネルギーその他もろもろの物資を海外に依存しているというところから、わが国の生存と発展のためにも、海上交通の安全保護、シーレーンの防衛ということはきわめて重要であるということを申し上げておるわけでございます。海峡の防備、港湾の防備ということも、シーレーン防衛の一環として大事なわが国の防衛の施策一つではないかというふうに判断しております。
  134. 新村勝雄

    新村委員 そうすると、こういった事態日本がみずから判断をし、進んで選択をしていく道であるということであるならば、F16の配備もやはり日本のみずからの選択であるのか。どうですか。
  135. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 F16の配備につきましては、先ほど来御議論がありましたように、この六月の下旬にアメリカ側からの協力要請という形での申し出があったわけでございますが、これはあくまでもアメリカ側の判断としては、極東における米ソの軍事バランス改善すること、そうしてコミットメントの意思を確認し、もって日米安保体制の抑止力というものを維持向上させることが目的であるというふうに聞いておるわけでございます。  そういったアメリカの説明ぶりに対しまして、私どもとしては、日本政府の立場で種々慎重に検討しました結果、今回のこの措置は、日本の平和と安全、ひいては極東の平和と安全に寄与すること大であるというふうに判断をして、協力申し入れに了承を与えるという形をとったわけでございます。
  136. 新村勝雄

    新村委員 抑止力という点についてお伺いしますけれども、抑止力というのは、相手の戦力あるいは配備、それとほぼ同等のものを対抗勢力として、均衡する勢力として配置をする、簡単に言えばこういうことでいいですか。
  137. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 必ずしも相手と同等のものということではなく、結局、相手をして攻撃の企図を断念せしめるような措置、これが抑止力の本質であろうというふうに思っております。
  138. 新村勝雄

    新村委員 いま外務省の理論によりますと、世界の平和は核の抑止力によって保たれている、こういうような見解が外務省から出されております。その意味で言いますと、今回のF16の配備は、いわゆる核の抑止力の均衡ということを意味すると思うのですけれども、その点はいかがですか。
  139. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 抑止効果の重要な要素として、バランスということがあると思います。そのバランスの中には、核戦力のバランスもありましょうし、通常戦力のバランスもその中に含まれていようと思います。
  140. 新村勝雄

    新村委員 極東の、東西という立場からした戦力配備は、現在どういう状況になっておりますか。
  141. 新井弘一

    ○新井説明員 お答えいたします。  まず、陸上兵力について言いますと、極東所在のソ連軍は現在三十九個師団、約三十六万人、他方、米軍につきましては、現在約二個師団、基幹約五万五千人というふうに見ております。海上兵力について見ますと、ソ連太平洋艦隊、現在約八百十隻、約百六十万トン、これに対しまして、アメリカの第七艦隊は約六十隻、約六十五万トン。航空兵力について見ますと、極東ソ連軍は現在約二千百二十機、これに対して、米軍のそれは約八百機でございます。  特に航空兵力、三沢との関連でより具体的に補足いたしますと、ちょうど三沢から米軍Fファントム約七十二機が撤退しました一九七一年当時は、アメリカは極東に約二千三百機持っておりました。それが現在八百機であるという意味で、約三分の一に減っている。他方、当時、十年前でございますけれども、ソ連の場合は千人百七十機いまして、それが現在二千百二十機にふえている、そういう事実がございます。  以上でございます。
  142. 新村勝雄

    新村委員 その中で、特に核戦力の問題はどうなっておりますか。
  143. 新井弘一

    ○新井説明員 核戦力につきましては、ソ連の場合に、戦略核につきましては全体の三分の一ないし四分の一を極東に配備しております。それから、戦術核、具体的にはたとえばSS20あるいはバックファイア、これについても同じく三分の一ないし四分の一を極東に配備しております。
  144. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、今回の三沢配備というのは、抑止力がアメリカの側が不十分である、その抑止力を強化する、均衡を回復するという意味での配備であると言われておりますけれども、それはいかがですか。
  145. 新井弘一

    ○新井説明員 先生のお考えは正しいと思います。まさにアメリカはそのように理解しております。さらに補足いたしますと、アメリカが北西太平洋地域等に持っている兵力の数は戦後最低であるという認識がございます。このように非常にソ連とアメリカとのプレゼンスに懸隔が生じつつある、これを非常に憂慮しておるということでございます。
  146. 新村勝雄

    新村委員 そういう状況からすると、F16の配備は核戦力の補強と核の抑止力を回復するための配置だというふうに、これは素人でも考えざるを得ないわけです。しかも、F16は核装備ができる飛行機ですから、そういういわゆる戦略配置の一環ではないかと考えざるを得ないのですけれども、それはいかがでしょうか。
  147. 新井弘一

    ○新井説明員 アメリカ側はF16を配備することによって戦術空軍の改善ということを言っておりますが、との場合に核は含まれないというふうにわれわれはかたく承知しております。
  148. 新村勝雄

    新村委員 その核は含まれないということは、こっちだけの了解であるのか、アメリカ側の確認を得ているのか。
  149. 新井弘一

    ○新井説明員 あくまでも通常兵力の分野に限定されるということは、アメリカと日本の了解でございます。
  150. 新村勝雄

    新村委員 次の問題に移ります。  長官にお伺いをいたしますが、アメリカの空母の艦載機の発着訓練のために新たな協力を求められておるということが伝えられておりますけれども、その事実はあるのかないのか、その内容はどういうものであるか、伺います。
  151. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 新たなというよりも、ミッドウェー空母の艦載機のパイロットの訓練が円滑にいくようにぜひ協力をしてほしいという旨の申し入れなり話し合いが、今回の訪米の段階においてワインバーガー長官を初め二、三の責任者からありました。
  152. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、発着訓練の基地、飛行場を提供するということが今回の日米協議の一つの題目であったということですか。
  153. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 具体的に基地をどうというお話はありませんで、現在厚木でやっております訓練が今後も支障がないように、円滑にやれるように、そのことによって。パイロットの練度が維持できるようにぜひ御協力いただきたいという旨の申し入れでございました。
  154. 新村勝雄

    新村委員 この訓練は、現在はどういう形で、どこを使ってやっておりますか。
  155. 塩田章

    ○塩田説明員 現在は厚木、三沢、岩国の三飛行場を使って実施しております。
  156. 新村勝雄

    新村委員 そういたしますと、現在はこの三カ所を使ってやっておる。この三カ所を使ってやっておる訓練では不十分だということですか。そうしますと、新しい何かの協力態勢がなければいけない、こういうことですか。その内容はどういうことなのでしょうか。
  157. 塩田章

    ○塩田説明員 現在、ただいま申し上げました三飛行場で行われておりますが、アメリカ側から、先ほど長官の御答弁にもありましたように、距離とか天候とかそういった事情を考えまして、関東地方及びその周辺地区で新たな訓練施設提供を求めたいという趣旨の要望が参っております。
  158. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、その要望に対して日本ではどういうふうに回答しておりますか。
  159. 塩田章

    ○塩田説明員 防衛施設庁といたしましては、艦載機パイロットの練度を維持するために陸上飛行場を使って訓練をしたいというその必要性は十分理解をいたすものでありますが、訓練の集中をなるべく避けるというような配慮も必要であるということで、今回所要の訓練施設を見出すべく調査研究に着手いたしたいというふうに考えておりまして、昭和五十八年度関係調査のための所要経費予算要求しておる段階でございます。
  160. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、米軍のその要請は受け入れたということですか。
  161. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 日米安保体制の信頼性の維持向上のためにも、パイロットの練度の維持ができますように、その訓練が円滑にできますように、そういうことに協力をするということは申し上げてまいりました。
  162. 新村勝雄

    新村委員 これはある意味からすれば新たな基地の提供ということにも通ずるわけですね。いままでやっていないところを使用させるということですから、新たな基地の提供ということになるわけですけれども、これを受け入れるについての関係機関あるいは地方自治体、地元あるいはほかの関係官庁、こういうところとの協議なり連絡調整はどういうふうにやっておりますか。
  163. 塩田章

    ○塩田説明員 その点につきましては、先ほど私がお答えいたしましたように、五十八年度関係調査費を要求したいという段階でございますので、いま具体的にどの省庁と、あるいはどの地元とどういう交渉をしておるといったような段階にまだ至っておりません。至っておりませんが、調査が進んでくるに従いまして、御指摘のような協議は十分やっていく必要があるというふうに考えております。
  164. 新村勝雄

    新村委員 五十八年で一千万の調査費ということですけれども、この一千万というのは、どういう調査を、どういう範囲で、どういう方法でおやりになるのですか。
  165. 塩田章

    ○塩田説明員 現在考えられますことといたしましては、一応三つの方法が考えられるのではないかと思います。といいますのは、一つは、関東及びその周辺という米側の要望に沿い得る現在ある飛行場でできないかということが一つ、二番目には、新たな飛行場を設けることができないかということが一つ、それから三番目には、これは地元からも要望があることでございますけれども、海上に飛行場にかわるようなもの、まあ航空母艦のようなものの形のでかいものだろうと思いますが、そういったようなものが考えられないかということがいまの時点で考えれば考えられるわけでございますが、そういったようなことを逐一今度調査費をいただいた上で検討してまいりたいというふうに考えております。
  166. 新村勝雄

    新村委員 既設の飛行場といいますと、これは全国どこでもいいというわけにはまいりませんでしょうから、関東地方とか一定の範囲の中の現在の飛行場ということになるわけですね。それから、新設飛行場ということになると、これはなかなか大変な事業でしょうから簡単にはできない。また、つくるにしても数年はかかるでしょう。海上に浮いた飛行場をつくるにしても、これは数年かかるのではないか。そうなりますと、これはいつからこういう便宜を提供しなければいけないのか、それから、飛行場をつくるあるいは浮体をつくるという場合には数年かかると思いますけれども、その間はどこかを使わなければならないという事態になるのかどうか、その辺の事情はどうなんですか。
  167. 塩田章

    ○塩田説明員 いまの第一点の、いつからこれを提供することになるのかという点でございますけれども、これは現在もすでに提供はして、先ほど申し上げました三つの飛行場で訓練はやっておるわけであります。それを先ほど申し上げましたように、天候でありますとかあるいは距離といったような観点から別途に検討してほしい、こういう問題でございます。  先ほど私が申し上げましたような考えられる三つの案について今後検討していくということになりますけれども、同時に、いずれも先生御指摘のように、うまくいきましてもかなり時間のかかる問題でもあります。そういった点をどうするのかというようなことも当面の措置として考えていく必要があるということでございまして、両面からこの問題は対処していく必要があろうと思っております。  そこで、まず当面の方としてはどうするのかということでございますが、これは現在三つの飛行場を使ってやっておりますことを、可能な限り米軍の理解のもとに訓練期間を少なくするとか、あるいはわが方のいろいろな、各地によりましてお盆の行事でありますとか正月の行事でありますとかいろいろございますが、そういったときには避けてもらうとか、あるいは夜遅くは避けてもらうとか、いろいろな形を現在もすでに交渉しながらやっておるわけでございますが、こういった点については今後とも引き続き協力を求めていく必要があるというふうに考えております。  残りの、先ほど私が三つの検討を申し上げましたのは、いずれもやや時間のかかる問題でございますが、そういう問題につきましても、先ほど申し上げましたように、五十八年度予算がいただけますれば積極的に取り組んでいきたいというふうに考えておるわけであります。
  168. 新村勝雄

    新村委員 そうすると、政府としてこの問題について米側に、基本的にはそれを受け入れるという回答をされたわけですね。そうしますと、その内容、どういうふうな手続で、いつ、どこということについては、これは一切調査中ということなんですけれども、おおよそのめどなり、あるいは現在の飛行場を使うとすればどういう範囲のどういう条件のところを使うとか、そういうことについての考え方はまとまっておりますか。
  169. 塩田章

    ○塩田説明員 米側からは、先ほど申し上げましたように、関東地区並びにその周辺地区で代替施設がないかという申し出だけでございまして、それ以上具体的に、どこだとか、いつからだとか、そういうような申し入れがあるわけではございません。むしろわれわれの方から、先ほど言いました調査をやりながら米側と相談をしていく、こういうことになろうかと思います。  具体的に、いまのお尋ねはどういうスケジュールを考えているのかということでございますが、先ほど来申し上げておりますように、いまの段階は五十八年度調査費を要求している段階でございますので、具体的にどういうスケジュールで、どういうことを計画していくということをまだいまの時点で申し上げられるような案を持っておるわけではございません。
  170. 新村勝雄

    新村委員 それでは困るわけなんですね。先ほどからも論議になっておるように、三沢のF16配備にしても、忽然として国民の前にその事実が明らかにされたということで論議を呼んでいるわけですけれども、こういういまの問題にしても、あらかじめ十分国民の合意を得て――合意が得られるかどうかわかりませんけれども、合意を得るべく努力をして、どうしても避けられないものとすれば、最も合理的な形で進めなければいけないわけですけれども、どうなるかわからない。どうなるかわからないという状況で推移していって、ある日忽然と既定事実を突きつけられるということでは、非常に困るわけですよ。ですから、こういうことをお伺いしているわけなんですけれどもね。ですから、既設飛行場を使うという考えであれば、どの範囲の、候補地はどこなんだということをひとつはっきりおっしゃっていただきたいのです。
  171. 塩田章

    ○塩田説明員 先ほど来申し上げておりますことは、決して突然地元にお話をするというつもりではございませんで、この問題は何はさておいても地元の御理解がなければできないわけでございますから、十分時間を置いて御説明をし、御相談をしていかなければならない。どの方法をとるにしましてもそうだろうと思います。ただ、いまの時点で、どの飛行場であるとか、どの飛行場を考えておるというようなスケジュールを持っておるかと言われますれば、いまの時点では持っておりませんということを先ほど来申し上げておるわけでございまして、五十八年度予算の成立を待ってそういった問題に、つまり具体的な調査の段階に入っていく。その間には、もちろん地元とのお話し合いは十分していくというつもりでおるわけでございます。
  172. 新村勝雄

    新村委員 現在ある飛行場で、この条件に合う飛行場、ですから、そこに決まる可能性のあるところはどことどこですか。
  173. 塩田章

    ○塩田説明員 先ほど来申し上げておりますが、米側は関東地方並びにその周辺ということを言っておるだけで、具体的にどことは言っておりませんし、また、われわれもいま、どこでどうだというふうなことを米側と相談しておるわけでは全くございません。  どの飛行場が可能性があるかというお尋ねでございますが、これも、実際に着艦訓練をやるのにどういう施設が伴って必要であるとかないとか、あるいは現在の滑走路の状態がどうであるとか、いろいろなことはやはり調べてからでないと、単に飛行場があるからそこを使えるというわけにはもちろんまいりませんし、そういった点はいまの時点で、せっかくのお尋ねでございますが、いまわれわれが頭の中にどういう飛行場を考えておるというふうにまだ申し上げられる段階ではないわけでございます。
  174. 新村勝雄

    新村委員 たとえば海上自衛隊下総基地というのがありますが、恐らくそこが最有力飛行場ではないかということで、地元が大変な不安を持っていま注目しているわけです。この飛行場が使われる可能性があるかどうか、具体的にお伺いします。
  175. 塩田章

    ○塩田説明員 先ほど来申し上げておりますように、米側から関東地区並びに周辺地区でという要望があるという段階であるというところでひとつ御了承賜りたいと思います。それ以上、いまの時点でどの飛行場がどうだという検討に入っておりませんので、いまの段階では、先ほど来申し上げておる段階にとどまっておるわけであります。
  176. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、これを決める場合には地元と十分相談をする、地元との合意がなければ絶対やらぬ、こういう約束ができますか。
  177. 塩田章

    ○塩田説明員 いずれの飛行場あるいはいずれの形で決まるにいたしましても、この種の問題は地元の御協力がなければできない問題でございまして、いずれにしても十分なお話し合いはしていく必要がある、これは肝に銘じておるわけでございます。
  178. 新村勝雄

    新村委員 大臣にお伺いしますが、米軍に対して米軍の訓練飛行場を提供する場合に、これは地元との話し合いを完全に遂げて、地元の了解、合意がなければ絶対にやらぬというお約束をしていただきたいのですが、できますか。
  179. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ただいま防衛施設庁長官からお話し申し上げましたとおり、仮に飛行場なり基地なり施設をつくる場合には、地元の皆様方の御協力がなければ、仮に決定いたしましても効果的な運用はできないわけでございますから、地元との十分な話し合いのもとに決定をさせていただくつもりでございます。
  180. 新村勝雄

    新村委員 地元の反対があれば絶対にやらないということですね。
  181. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 十分地元との話し合いをし、もし御反対ということであるならば、われわれの意のあるところを情理を尽くしてお話し申し上げ、十分な円満な話し合いのもとに決定をさせていただきたいと思います。
  182. 新村勝雄

    新村委員 もう一回確かめますけれども、ですから、地元の完全な了解がなければやらない、こういうことですね。はっきりおっしゃってください。
  183. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 完全なというのにもいろいろありますけれども、十分地元の御納得のいくようにわれわれの意のあるところを披瀝を申し上げて、十分な御納得をいただいた上で決定をしてまいりたいと思います。
  184. 新村勝雄

    新村委員 どうも歯切れが悪いのですけれどもね。先ほど施設庁の方では、現在の飛行場か、あるいは海上に浮体をつくる、あるいは新設の飛行場をつくるというようなことを言っておりましたけれども、この訓練の新しい施設提供すること自体が問題なんですね。現在は三カ所使っているといいますけれども、現在使っているのでもやはり国内ではいろいろな問題があるわけですよ。それをさらに地元の犠牲を強いて新しい施設提供するということ自体がこれは問題なわけですから、そこらの姿勢についてもう一回伺います。
  185. 塩田章

    ○塩田説明員 先ほど最初に申し上げましたけれども、米軍が駐留に伴いまして艦載機の着艦訓練が必要であるという、その訓練の必要性についてはわれわれも了解をして理解をしておるわけであります。そのためにどういう手段をとるかということでございますが、いま新たな施設提供、たとえば海上浮体物の提供なんかをすること自体が問題ではないかという御指摘がございましたが、もちろん私、先ほど申し上げました調査をいたしますという意味は、その調査費をいただきましたならば、そういった海上浮体物を仮につくるとしたらどういう問題点があるのか、適当であるのかないのかを含めてこれは十分調査研究をいたしたい、こういう趣旨でございます。
  186. 新村勝雄

    新村委員 現在の施設を使うことについては、まずこれは地元の納得を得ることは不可能でしょう。いまの千葉県内の基地でも、地元の市あるいは町が、議会の議決を得て、総理大臣及び防衛庁長官に絶対にそういうことのないように再考を願いたい、こういう決議を実はきょうしているはずです。千葉県議会でもやっているはずですし、下総基地の地元でもその議決をしているはずであります。ですから、長官はいま地元の納得を得てとおっしゃいましたけれども、地元の納得を得て基地をつくるということは全く不可能ですよ。ですから、この問題については現在の状況で最小限度の運用をしていただく、こういうことを米軍に伝えていただいて、基地拡張あるいは新しい施設をつくることについてはほとんど不可能だということを申し入れを願いたいのですが、いかがでしょうか。
  187. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先般、新村先生からも千葉県のことにつきましてお話を承っておりますし、承るまでもなしに、こういう施設が住民の方々に多大な御迷惑をかけておりますことは私も重々承知をしておりますので、先生御指摘のような点につきましては、私のみならず事務当局でも、再三再四アメリカ当局にも改善方を申し入れております。ただいま防衛施設庁長官がお答えをしたとおりでございます。しかし、また反面、わが国の防衛が日米安保体制ということを基軸として進められている以上、その面についての配慮も私どもは欠かすことはできないわけでございまして、そういう地元に対する問題、日米安保体制の信頼性の維持向上、そういう整合性のとれた施策というものをわれわれは進めていかなければならないという事情もぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  188. 新村勝雄

    新村委員 国民、住民の絶対的な反対、これを押し切ってこういうことをすることが日米の信頼を深めることになるのか、これは大変疑問だと思いますね。ですから、少なくとも現在の状況で事を進める、こういうことにひとつ何とか交渉を願いたいものです。先ほどのお話からしますと、これは何らかの施設をつくり、あるいは現在の飛行場を使って新しい基地をふやすということで行われるわけですから、これでは関係住民の深刻な不安と動揺を引き起こすことは必至であります。この点についてぜひアメリカ側にも地元の状況をよく説明をして納得をしてもらって、そういう基地の新設ということを阻止していただきたいわけです。ぜひお願いします。
  189. 塩田章

    ○塩田説明員 とりあえず現状においてわれわれの方から言えば改善を図ってもらいたいということは、しばしば先ほど申し上げましたようにアメリカ側と話し合いをしております。しかし、その一方、先ほど大臣からもお答えいたしましたように、訓練の必要性ということもわれわれは認めておりますので、先ほど来申し上げたような対策を調査費を組んで考えていきたいということを申し上げておるわけでございます。  先生、先ほど、地元との了解がなくて強行すればかえって日米安保体制の有効な運用といった点から逆になるのじゃないか、まさにそのとおりだろうと思います。したがいまして、先ほど来お答え申し上げておることは、十分な地元への御説明をし、御了解をいただいた上で取り組みたいということを申し上げておるつもりでございます。
  190. 新村勝雄

    新村委員 いずれにしても、地元の完全な了解を得ない限りはこういう施設は絶対に強行しない、それから、三沢の配備のように忽然としてそういう事態国民の前に示されるということは絶対に避けるべきでありますから、あらかじめ十分な手続をとって、また国民にも納得のいくような説明をして事を進めるということをぜひお願いしたいと思います。それをお約束していただきたいのです。
  191. 塩田章

    ○塩田説明員 突然にお話をするということでなくて、事前に十分地元への説明をする、そのための手続をとっていくということについては、この場でお約束できます。
  192. 新村勝雄

    新村委員 次の問題はいわゆる千海里防衛の問題ですけれども、これも大臣がアメリカで約束をされたそうでありますが、千海里シーレーン防衛というのはどういうことですか、その内容をお伺いします。
  193. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 シーレーン防衛というものの定義がはっきりとあるわけではございませんが、私どもは海上交通の安全を確保することがシーレーンの防衛であるというふうに理解しております。
  194. 新村勝雄

    新村委員 それが今度の首脳会談で新しく重要課題として浮かび上がったということは、これは先ほども申し上げたように、明らかに日本の安保体制あるいは防衛体制の新しい展開、変更を意味すると思うのですけれども、大臣はいかがでしょうか。
  195. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 海上交通の安全の確保ということは、われわれいわゆる三次防、四次防のころから、すなわち昭和四十年代からわが方の防衛力整備一つの大きな柱として考えていたわけでございまして、わが国の置かれた立場から見て、海上交通の安全を確保することは日本の防衛、日本の繁栄と生存のために必要であるという判断のもとに従来から重点を置いて整備をし、考えておったわけでございまして、今回新たに日米首脳会談によって突然浮上してきたというふうな問題ではないというふうに思っております。
  196. 新村勝雄

    新村委員 大臣、いかがですか。いまの説明は非常におかしいと思うのですね。千海里防衛というのは今回の日米首脳会談によって確約をされた。その研究等もこれからやっていくというふうに言われております。この構想と安保条約の関係ほどうなのか、また、その海域は地理的にはどういう範囲のものであるのか、それを伺います。
  197. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 今般、日米首脳会談あるいはハワイ協議におきまして、アメリカ側は従来われわれがとっておるシーレーンの防衛についての重要性を認識をしておるということ、そして、日本がそういった海上防衛というものを行うに当たって、憲法上の制約、自衛権の枠内で行うというふうな制約というものを十分承知した上でそういった政策をより一層推進されることを期待する旨の意見表明があったわけでございます。  私どもそういった考えのもとに現在防衛力整備を進めておりますけれども、海上防衛に限らず、日本の安全保障、日本の防衛については日米安保体制によって日米共同で対処するということになっておりますので、そういった立場からも、アメリカ側のいろいろな今回のシーレーンに関する共同研究というふうな考え方をわれわれも提案をしまして、一緒に研究をしようではないかということを申し入れたわけでございます。
  198. 新村勝雄

    新村委員 その地域はどこを具体的に指しますか。
  199. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 これも従来再三御説明を申し上げておりますが、われわれのシーレーン防衛についての地域というのはわが国周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイル程度をめどとして防衛力整備を進めておるということでございます。
  200. 新村勝雄

    新村委員 伝えられるところによると、一方の線はフィリピンに達する線、一方はグアム、その扇形の面だというふうに伝えられておりますけれども、そういうことに解釈していいですか。
  201. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 わが方の防衛力整備の目標として、ただいま周辺数百マイル、航路帯を設ける場合は千マイルというふうに申し上げましたが、この航路帯というのをどういうふうに設定するかということは、そのときの脅威、侵攻の態様によって一概には申せませんけれども、一般的に南西航路、南東航路というものが一つの考え方の中にある、それがいま先生の言われたフィリピン方面あるいはグアム方面の航路帯を指すものというふうに思っております。
  202. 新村勝雄

    新村委員 そうすると、その地域の中には独立国も含まれますね。それから、先端の方は独立国の領海に接するということになりますね。そうなると国際法上どうなるのか、それはどういうことですか。
  203. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 航路帯を南西に延ばした場合に台湾あるいはフィリピンがその周辺に含まれる、あるいは南東に延ばした場合にはグアム島にもう少しで届くというあたりが一千マイルということで、それ以外の独立国というものは承知しておりません。
  204. 新村勝雄

    新村委員 シーレーン防衛というものの内容ですね、これは常時はどういう哨戒なり兵力配置をするのか。平時あるいは有事によって違うと思いますけれども、防衛といいましてもどういうことをするのか。どの程度の哨戒をするのか、平時からどの程度の兵力展開をしておくのか、そういう具体的な点はどうなるのですか。
  205. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 シーレーンを防衛するに当たって、ただいまいろいろと御議論がありますような航路帯を設定してその航路帯を守るというのも一つの方法でしょうし、また、その航路帯をある種の船団を組んでその船団を護衛するという、いわゆるコンボイ方式というものも一つの方法であろうかと思います。さらにまた、こういった海上交通の安全を確保するために、単に航路帯なり船団を護衛するだけでなく、日本周辺における対潜哨戒あるいは海峡、港湾の防備といったものとのいろいろな作戦の組み合わせ、累積効果によってその効果を上げ得るものというふうに考えております。そのため、私どもとしては自衛艦隊を主軸としますところの機動艦艇部隊を四個隊群、約三十数隻、それから地方隊の護衛隊群を十個隊程度、さらには固定翼対潜機として十数隊の対潜機哨戒部隊というものをもってそういうことを行っておるわけでございます。  それから、先生御指摘の実際の哨戒はどうかということでございますけれども、平時における哨戒のあり方としては、日本周辺の海域というのを幾つかに分けまして、一日に一回あるいは二日に一回といった程度で哨戒をしている。これはいずれも日本周辺のせいぜい狭い範囲でございますが、そういったものを哨戒しているというのが現在の実情でございます。
  206. 新村勝雄

    新村委員 千海里防衛と言うからには、千海里の区域については日本が責任を持って哨戒あるいは防衛の分担をする、こういうように伝えられております。そうなりますと、憲法の解釈からして集団防衛体制ということになると思うのですけれども、海域分担という考え方が導入されたというふうに言われておりますが、その点はいかがですか。
  207. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 もちろん、わが国の自衛権の及ぼす範囲がわが国の領土、領海、領空のみならず必要な範囲において公海に及ぶことは言うまでもございませんけれども、いま先生御指摘のように、海域を分担して、ある特定の海域は海上自衛隊、わが日本政府が責任を持って防衛するというふうな、いわゆる集団的自衛権にまたがるような海域分担というものは一切考えておらない、こういうことでございます。
  208. 新村勝雄

    新村委員 大臣に伺いますけれども、日米協議のときに、海域を分担する、それで千海里については日本が分担をするというふうに決められた、そう伝えられておりますけれども、それはいかがですか。
  209. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ただいま防衛局長がお答え申し上げましたとおりでございまして、白米間で、今回の日米首脳会談でもそうでございますけれども、従来とも、千海里以内は日本側が責任を持ってやるというような話し合いは、今回もございませんでした。
  210. 新村勝雄

    新村委員 シーレーン防衛というのは、そもそも「防衛計画大綱」にはこういう構想はなかったのじゃないでしょうか。この考え方が入ってくるとすると、「防衛計画大綱」では足りなくなる、これを見直さなければいけないという事態になると思うのですが、その点はいかがですか。
  211. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 このシーレーン防衛、海上交通の安全確保ということは、昭和五十一年の大綱決定される以前、すなわち昭和四十年代前半の第三次防衛力整備計画あるいは第四次防衛力整備計画のころから私どもの防衛力整備一つの柱として考えておったわけでございまして、大綱を作成するに当たっても、こうした三次防以来の考え方を念頭に入れながら大綱をつくる。大綱の本文の中には、確かにいま先生おっしゃるようにシーレーンというそのものずばりの表現はございませんが、そういった考え方をもって大綱がつくられたというふうに理解しております。  それからもう一点、この大綱の水準が達成されればこのシーレーン防衛力は十分であるかというふうな趣旨の御質問でございましたが、私どもいま大綱の水準を達成するために五六中業というものを作成し、その初年度としての予算要求している段階でございます。その五六中業がもしわれわれの計画どおり達成されるならば、海上防衛力、シーレーンの防衛能力は相当に向上するであろうというふうに思っております。
  212. 新村勝雄

    新村委員 千海里防衛、シーレーンの防衛によって、これはそういう構想が出てくれば新たな兵力、新たな艦船の必要あるいは航空機の必要が、必ず出てくるわけですね。それなしに単なる計画だけのシーレーンということはあり得ないわけです。その点についてどういうふうにお考えですか。
  213. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 このシーレーン防衛というのを一〇〇%やれるとかやれないとかいうことになりますと、これは私どもの能力ではなかなかむずかしい点があろうかと思います。さりとて、われわれが持っている現在の防衛能力あるいは五六中業で達成するであろう能力で全く不可能というふうにも考えておらない。私どもとしては、五六中業が達成されればシーレーン防衛のための防衛能力というのは相当向上されるのではないかというふうに考えております。
  214. 新村勝雄

    新村委員 次に、長官にお伺いしますが、首脳会談で三海峡封鎖ということが日本の任務としてきわめて重要な一つの柱だ、こういう協議があったというふうに言われておりますけれども、その点はいかがですか。
  215. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 三海峡封鎖等についての具体的な話をしたことはございません。
  216. 新村勝雄

    新村委員 いま防衛庁の中で三海峡封鎖の問題が取り上げられておるということが言われておりますけれども、防衛庁としてはこの問題についてどうお考えですか。
  217. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 海峡を防備するということは、わが国の国土を守るために、わが国を防衛するに当たっても重要な問題でもありましょうし、また、シーレーンの防衛という見地から見ても、海峡の防備というのは非常に大事な問題であろうというふうに思っております。
  218. 新村勝雄

    新村委員 この問題について具体的にどういう考えを持っておられますか。
  219. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 この三海峡の防備に当たって、たとえば有事のことを考えた場合に、わが国に対して武力攻撃を加えつつある国の船舶の通航を阻止するということもわが国の防衛上必要なことが起こってくるということは大いにあり得ると思います。そのために、私どもとしては、との三海峡の通航を阻止するためには水上艦艇、潜水艦あるいは航空機、場合によっては機雷を使うというふうないろいろなことは考えられるわけですが、どういった方法でもってそういう施策を講ずるかというのは、一にそのときの状況あるいは侵攻の態様、そういったものによって判断されるべきであろうというふうに考えております。
  220. 新村勝雄

    新村委員 これをもしやるとすれば、対岸は外国なわけですけれども、外国との関係、それは国際法上の関係はどういうことになりますか。
  221. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 わが国が有事の際に自衛権行使の一環として通峡を阻止する、わが国に対して武力攻撃を加えつつある国の艦艇の通峡を阻止するということは、自衛権の行使の態様としてこれは当然必要なことでありますし、この点について外国に対し云々ということはないのではないかというふうに思っております。
  222. 新村勝雄

    新村委員 対岸の外国と全く関係なしにそこで武力を行使する、こういうことができますか。
  223. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 わが国の置かれた地理的環境から見て対岸の外国ということでございますが、必要に応じて必要な相談をすることも実際にはあるのかもしれませんが、いま個々にどういう場合にどういう協議なり相談をすべきかということを申し上げられるような状況にありません。ただ、わが国が侵略をされているときに、その侵略防止のために自衛の範囲内で通峡を阻止するということはやむを得ないというふうに理解をしていただけると思っております。
  224. 新村勝雄

    新村委員 大臣にお伺いしますが、対外的に無用の刺激を外国に与えるようなこういう防衛構想、これはよほど注意をしないといけないと思うのですけれども、千海里防衛にしても三海峡封鎖にしても、これは直接外国の領海なり領土とかかわり合いを持つ防衛構想だと思うのですね。そういう点で関係する諸外国との外交の関係、そういったことをどう考慮されておりますか。
  225. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 防衛の基本方針の御質問のときにもお答え申し上げましたとおり、われわれはわが国の防衛力整備するのに当たりましていろいろなことを心がけねばなりませんけれども、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならないということをわれわれも防衛の基本方針の中に入れてありますとおり、そういう方針で今後とも進んでいかなければならないと考えております。
  226. 新村勝雄

    新村委員 終わります。
  227. 永田亮一

  228. 井上一成

    井上(一)委員 けさほどの質問に対して、外務省の方の見解が内部的な決裁等の関係でおくれているそうですが、それが入りますまでに、私の方から防衛庁に二、三質問をしておきたいと思います。  九月三十日に東北方面総監部の総監が、高卒入隊者の半数近くに補導、非行歴があり、自衛隊は更生施設の役割りも担っていると発言しているのです。防衛庁の責任者としての長官は、この発言をどう受けとめられているのか、この発言を聞いた隊員の士気にも影響すると思われるのか、どういう受けとめ方をしていらっしゃるか、まず聞いておきたいと思います。
  229. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 私、正確に報告を受けておりませんので、補足は政府委員からさせますが、いま御指摘を受けたようなことは、恐らく総監としては、そういう青年もりっぱに自衛隊で訓練をし、りっぱな自衛隊員となっておるということを強調したものと思いますけれども、正確な表現を、私いま初めて承ったものですから、政府委員から答弁させていただきたいと思います。
  230. 上野隆史

    ○上野説明員 ただいま先生御指摘の件でございますが、私ども、現地の東北方面総監に問い合わせましたところ、必ずしも更生施設云々という発言は行っていない。何人かの記者が入っておられたわけでありまして、この発言につきましてそういう趣旨の取り上げられ方をしたのは一社でございましたが、十名近くの記者が入っておられた会見でもっていろいろやりとりがあった中でのこととして取り上げられた記事でございますけれども、繰り返しになりますが、更生施設云々という発言は行っていないという報告を受けております。
  231. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、アンケート調査で、シンナーだとか盗みだとかの経験者が相当数入隊をしている、こういうことは事実でしょうか。
  232. 上野隆史

    ○上野説明員 質問の中で、窃盗とかシンナーとかをして補導歴のある者がいるかという御質問がありました際に、総監は、それはないとは言えません、しかしながら、補導歴のある者でありましても、自衛隊に入っている間に人間的に成長してりっぱな隊員になっており、親などから感謝された例もありますという、その趣旨の発言はしております。
  233. 井上一成

    井上(一)委員 アンケート調査で、それらの経験者はどれくらいの割合になっているのでしょうか。
  234. 上野隆史

    ○上野説明員 薬物等を使用したことがあるかというそのアンケート調査、これはごく一部の部隊でかつてやったことがあります。その際に、あると答えた者が若干おります。
  235. 井上一成

    井上(一)委員 どれくらいを対象にして、その中でどれだけの比率でそういう経験のある人がいるか……。
  236. 上野隆史

    ○上野説明員 約八百名の者に対していろいろなことをアンケート調査を行った中に、そういう項目がございます。
  237. 井上一成

    井上(一)委員 その該当者はどれくらいの比率でしょうかと聞いているのです。
  238. 上野隆史

    ○上野説明員 これも、本人たちの意識ということで、必ずしも正確な数字ではないのではないかという前提でお聞き取り願いたいのですが、約一〇%前後でございます。
  239. 井上一成

    井上(一)委員 委員長にお願いをします。  私は、いまの自衛隊が八百人を対象にされたそのアンケート結果を、後刻調査項目等も含めて提出をしていただきたいと思います。  防衛庁長官、いまお聞きのように、自衛隊員の中には、覚せい剤にむしばまれていた、そういう人たちも何人かおるわけです。あなた方が防衛費の増強を叫び、あるいは防衛白書で愛国心、国を守る気概を説きながら、自衛隊員の質の面での目の行き届かなさということも、もう全く今回のアンケートで明らかになったわけです。予算を分捕って、高校生を、いわばいろいろな非行の中で新しい人生に踏み出す就職もなかなか見つからぬ、そういう青年を、無理やりの募集の果てに、今回のこのアンケートというものが期せずしてあらわしているし、あるいは総監の発言も、そこに私は何か自衛隊の体質というものがのぞかれると思うのです、非常に安易な姿勢で、員数だけを合わせたらいいという……。  さらには、そういう覚せい剤の汚れを知っている青年が、本当に国を守り、あるいはそういう気概を持ち――もっと極端なことを言えば、覚せい剤にむしばまれた青年に銃を持たして、そういうことであなた方は日本の愛国心だとか日本の防衛だとか、そんなことをまじめに論議ができると思っていらっしゃるのですか。長官、このアンケートを、そういう総監の発言も踏まえてあなたはどうお考えになりますか。
  240. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 人事教育局長からもお答えを申し上げましたように、必ずしも正確な数字ではないようでございますけれども、若干そういう過去に非行なり覚せい剤を使用した者がおるということは事実のようでございます。そのこと自体は遺憾でございますけれども、ただ、そういう過去に一度非行があった、あるいは覚せい剤の使用があったということだけでそういう青年たちを責めるということでなしに、そういう青年たちが非行なり覚せい剤の使用を悔いて、みずから防衛の第一線に立ちたいという気持ちなり情熱は自衛隊としても大事にしながらりっぱな自衛隊員として育ててあげることが、われわれは防衛庁なり国の大切な役目ではないかというふうにも考えております。
  241. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、総監が発言をされた流れも、いまあなたが答弁をされた流れも同じなんです。汚れた、いわゆる非行の経験、経緯のある青年を自衛隊でよくする、それだったら法務省の仕事です。更生施設をつくってそういう人間をりっぱにしてから自衛隊が受け入れるということなら、私は話はわかる。あなたのいまの考えも、総監の考えも、路線としては同じなんです。そんなことで本当に自衛隊の隊員の資質というものが論じられるか、私はそう言っているのです。過去に確かに非行の経験がある、それでもってすべてのその者の人生を左右してはいけないし、評価してはいけない。しかし、そういう青年はそれなりの更生施設でまじめに更生してから、隊員として自衛隊への入隊を本人の自発的な意思で決めるべきである、そういうことなんです。  あなた方が無理やり家庭訪問をして、もうどうにもならぬ、もううちでも往生しておる、どこかいいところがあればそこへ行ってもろうたら、そういう親には感謝をされています、それはそうかもわかりませんよ。しかし、物の考え方がやはり少し矛盾しているのじゃないですか、大臣。りっぱに更生した青年を自衛隊に勧誘したというなら私はわかります。たとえ何人かの青年であろうとも、非行に汚されている、そういう人たちを自衛隊に入れることによってそこで立ち直らすのだ、それじゃまさに総監の言う更生施設、何も十人の記者が云々じゃありませんよ、背景はこの新聞に報道されているとおりですよ。そこはいかがですか。
  242. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 更生施設といいますか、これはもう法務省なりの問題でございまして、このことについては私はコメントしませんけれども、覚せい剤を過去に一度や二度使用したということであって、現在それに汚染をされ、中毒をしているというような自衛隊員は一人もおりませんし、また非行も、現在非行をしようということでなしに、過去に一度や二度の過ちがあった、そのことの反省の上に、悔いて新しい人生を歩もうという方々が進んで自衛隊に入ってこようとする場合においては、それを自衛隊が喜んで迎えるということは当然だろうと思います。  また、その割合も、正確な数字ではございませんけれども、全自衛隊員がそうだということではございません。若干そういう者が過去においてそういう過ちを犯したというだけでございまして、全自衛隊員が覚せい剤なりそういうものの経験者だというわけではございませんので、その点もぜひ御理解を賜りたいと思います。
  243. 井上一成

    井上(一)委員 過日、北海道で自衛官が覚せい剤の汚染で逮捕されているじゃないですか。一人もおりませんなんて、そんなこと、よく言えますね。防衛庁長官、逮捕されているのですよ。一人もおりませんというのは……。
  244. 上野隆史

    ○上野説明員 大臣の御説明にちょっと補足させていただきたいと存じます。  先ほど先生の御質問は薬物とおっしゃいましたので、薬物を使用したことがあるという申し出をした者は約一〇%と申し上げましたが、この薬物の中には覚せい剤はもちろん含みますが、シンナーも含んでおります。そして大部分の者はシンナーであります。覚せい剤、これを使用した者は入れません。ただ、その覚せい剤を使用したかしないかということが身体検査ではわからない。現に打った注射の跡があるとか、きのうあるいはおととい注射をしたということであれば尿等にその徴候が出るということでありますけれども、一週間前に酒を飲んだことがわかるかわからないか、これはわからないわけでありますが、あたかも同様にわからないということでありまして、あくまで自発的な申し出に基づきましてのことでございます。その中で覚せい剤というのはきわめて率が少なく、大部分はシンナーでございます。  また、覚せい剤の所持あるいはその使用によりまして逮捕された例がある、これも先生おっしゃるとおりでございます。
  245. 井上一成

    井上(一)委員 とかく自衛隊は何か秘密主義に走りがちで、いまも私が指摘したように、シンナー遊び、あるいは覚せい剤の汚染、あるいは昇任試験の漏洩問題等が次々に明らかになってきたわけです。試験漏洩については最終的に制服組だけが処罰を受ける、あるいはそういう覚せい剤の使用についてもただ単に当事者だけが処罰を受ける、そのことですべて事の処理を終えてしまっている。決して私は責任の範囲を拡大しなさいとかそういうことで強調するわけじゃなく、やはり内局には累が及ばない形で物事の決着がついていく、こういうことは厳正な処分だと自信を持って言えるのかどうか。むしろ私は、そういうことは厳正な処分だとは思わないわけです。やはりそこにおいて責任のある人たちはそれなりの責任を果たしていかなければいけない、私はこういうふうに思うわけです。  とりわけ陸上自衛隊では、受験競争というのでしょうか、部隊管理の手段となっているようなのが実情ではないだろうか、こういうふうにも思いもするのです。事件が起きれば当事者だけ、制服組だけが問題の責任をとってそれで片づけていく、こういうところにやはり自衛隊の体質があらわれている、むしろもっと厳正な処分をしていくべきではないだろうか、こういうふうに思うのですが、防衛庁長官のこれからの取り組みも含めて考えを聞かせてください。
  246. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 処分は可能な限り厳正に、酷に過ぎるくらいやるべきだと思いますし、そういう方向でいままでも処分をしてまいりました。また同時に、先生御指摘のとおり、処分が処分ということだけに終わらずに、そういう処分の原因になった、理由になった事態が今後二度と再び起きないように、起こさないようなそういう効果がなければならないと思いますので、先生の御指摘のとおり、今後とも処分というものについては、そういうことが起きないような、そういう効果も十分考慮、勘案しながら処分の厳正を期してまいりたいと思います。
  247. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ防衛庁長官、試験漏洩についての最終的な処分、私がいま言ったように、制服組だけで内局には累が及ばなかったというふうに私は承知しているのですが、それが事実なのかどうか。そういうことが厳正な処分だとあなたは自信を持たれるのかどうか。私は、そういうことが起こったということについて、それはやはり内局側にも責任があると思う。だから、そういう点については防衛庁長官としてほどう考えていらっしゃるのか。
  248. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 今回の試験問題についての処分は、確かに内局には及びませんでした。今回の試験問題をいろいろ調査をしてみた結果、やはり根本は現場の管理に大きな問題点がございましたので、その点を主眼として処分をしたわけでございまして、私はいまでもこれが適正な、厳正な処分であったというふうに考えております。
  249. 井上一成

    井上(一)委員 あなたが厳正な、公正な処分だとおっしゃっても、しょせんこれはここだけの答えであって、本当に隊員の士気向上、あるいはまた責任の分担というか、責任を明確にするという意味では決して十分でないと私は思います。  さらに私は一点、F16戦闘機の行動半径について、地図上でもって明示をして私に提出をしてもらうように委員長にお願いをしたいと思います。よろしいですか。
  250. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 F16は私どもが保有している飛行機でございませんので、しかもこの行動半径というのはなかなか数字のとり方もむずかしゅうございますが、いま要望の点、委員長とも御想談しながら考慮したいと思います。
  251. 井上一成

    井上(一)委員 外務省の方は、けさほどの答弁はできますか。
  252. 松田慶文

    ○松田説明員 午前の質疑における井上委員の再度の御質問に対してお答え申し上げます。  三沢に配備が計画されているF16は核装備能力を有するものと承知しておりますが、わが国への核兵器の持ち込みについては、安保条約第六条の実施に関する交換公文により事前協議の対象であること、また、かかる事前協議が行われた場合、政府としては常にとれを拒否する所存であることは、政府が従来より明らかにしているところであります。したがって、三沢に配備が計画されているF16にわが国の意思に反して核装備が行われることは、全くあり得ないことであります。  他方、日米間においては安保体制の運用に関し常時密接な協議が行われており、F16の一九八五年以降の三沢配備についても今後種々の協議が行われることとなりますが、せっかくの御指摘でもありますので、適当な時期、機会に、米側として事前協議制度を遵守し、わが国の意思に反する行動はとらないとの従来からの確約を念のため再確認することといたしたいと存じます。
  253. 井上一成

    井上(一)委員 いま、機会をとらえてということでアメリカ側に申し入れをする。私は、できるだけ速やかに外務省としてそのいまの見解を伝えるべきであるということを強く要望して、私の質問を終えます。
  254. 永田亮一

  255. 春田重昭

    春田委員 何点か御質問申し上げますが、若干午前中の質問と重複する点があるかもしれません。極力避けるようにいたしますけれども、その点はどうか御了解いただきたいと思います。  まず、F16の三沢基地の問題でございます。  午前、午後にわたって相当論議されたわけでございますけれども、この三沢基地のF16の配備計画についても私は若干御質問したいと思いますが、今回の措置は、在日米軍また基地の縮小の今日、逆行するものである、こうした批判も出ているわけでございますけれども、何ゆえ今日こうした三沢にF16が必要なのか、まず簡潔にお答えいただきたいと思います。
  256. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 今回のF16の三沢配備につきましては、まず、最近の極東における軍事バランス改善を図ることが第一点、それからアメリカのコミットメントを確認するという意思表示、そうして、そのことによって日米安保体制の抑止力の向上を期するということが第三点というふうに承っております。
  257. 春田重昭

    春田委員 まあ基本的な目的はわかるわけでございますけれども、具体的には、このF16という戦闘機を持ってきたのはどういう意図があるのか。
  258. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 ただいま申し上げたように、極東における軍事バランス改善を図るため、いわゆる戦術航空機、F16という航空機は先生御承知のとおり、空対地あるいは空対空の両方のミッションを持った多目的の戦闘機でございます。そういった戦闘機を配備することによって、極東全般のバランスを回復し、抑止効果を高めようというのがねらいであるというふうに聞いております。
  259. 春田重昭

    春田委員 極東における軍事バランス改善ということでございますけれども、ということは、いわゆるバランスが崩れている、アンバランスだということですね。どこの国とのいわゆるバランスがとれていないのか、防衛庁はどう見ているのですか。
  260. 新井弘一

    ○新井説明員 極東におけるソ連軍の最近における劇的な増強ということがアメリカ側の念頭にあるということは、言うまでもないというふうに考えております。
  261. 春田重昭

    春田委員 ということは、アメリカのいわゆる対ソ戦略の一環として今回のF16はある、こう理解していいわけですね。
  262. 新井弘一

    ○新井説明員 基本的にはそのように理解してよろしいと思います。要するに、そういう意味でソ連との関係バランス改善するということでございます。
  263. 春田重昭

    春田委員 では、その真の目的は何か。新聞等で報道されていますのを総括してまとめてみますと、一つは、ソ連沿海州への攻撃である。二点目には、北方領土のソ連基地への攻撃である。三点目には、宗谷海峡封鎖のための配備である。四点目には、いわゆる韓国への派遣のための配備である等々、さまざまな憶測が出ているわけでございますけれども、防衛庁としてはどう分析しているのですか。
  264. 新井弘一

    ○新井説明員 本件をめぐっていろいろな方からいろいろな意見が出ているということは私も承知しております。しかしながら、私どもが確実に理解しているところによりますと、先生ただいまおっしゃいましたように、実際問題として極東におけるソ連の増強との関連バランスが非常に悪くなりつつある。  現実に、先ほども答弁で私、申しましたけれども、たとえば実際に十年前、極東太平洋地域にアメリカの航空機は二千三百機あった、それが現在八百機に落ちている。さらには、これに対しましてソ連の航空機約二千百二十、これもお答えいたしました。さらに、これも釈迦に説法でございますけれども、近年、特にアフガニスタン以降、アメリカの第七艦隊、これがアメリカの大西洋艦隊といわば順番にインド洋等に哨戒のために出ざるを得ないという状況になる。そうなりますと、たとえば空母一隻いなくなるということになりますと、搭載する航空機約五、六十機、それがそのままインド洋の方に移るわけでございます。  そういう意味におきまして、絶対的な量的な不足にプラス、アメリカ側からしてみれば兵力の運用の柔軟性に著しく支障を来すようになってきている、こういう基本的な認識があるというふうに理解しております。
  265. 春田重昭

    春田委員 長官は先月末訪米されたわけでございますけれども、この問題につきましては六月ごろ米側からそうした意思の確認がありまして、それぞれ検討した結果、長官が訪米されて合意された、こういうことですね。そのワインバーガー長官との会談の中で、この問題にさらに、いま政府委員から説明がございましたけれども、それ以上の何か長官に対する本当のアメリカの意図というものはどういうものであるという、その真意というものが伝わったかどうか、お尋ねしたいと思うのです。
  266. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 私から、基本的に本計画に協力をするということをわが政府として決めましたということをお伝えをしたわけでございますが、その時点で、われわれの決定を多とするというようなお話はございましたけれども、本件について米側からのそれ以上の説明なり発言は一切ございませんでした。
  267. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、今回の措置というものは、午前中にも井上委員から出ましたけれども、かなりソ連側への刺激を大きくするということで、私はマイナス面が非常に大きいと思うのです。かつて三沢基地にはファントム4Dが七十二機、七一年まで常駐していたわけでございまして、それ以後本当に平穏な基地になっていたわけでございますけれども、突然降ってわいたような今回のF16の大量配備なんですね。これは日米安保があるとはいえ余りにも過剰な措置ではないか。アメリカの世界戦略といいますか、極東戦略の片棒を担ぐ過剰的な措置ではないか。私は、非常に危険な道へ入り込むおそれがあるのではないかと心配するわけでございます。  そこで、このF16の性能からして、わが国の防衛の基本というものはあくまでも専守防衛である、このF16を配備するととによって、しかもこのように五十機もの大量の配備によって、いわゆる攻撃型になっていくのではないか、こういう心配をされる面もあるわけです。そうしたいわゆる危険な方向へ危険な方向へと一歩一歩進んでいく今回の措置というものは、まことに一歩間違えば大変なことになるのではないか、私はこういうことを主張しておきます。  さらに、今回のこの配備によりまして軍人並びに家族の方が相当この三沢基地に来ると思うのですけれども、大体何名ぐらいを想定し、それによる宿舎の費用等、また建設の費用等があると思いますけれども、これはどう考えているのか、お答えいただきたいと思います。
  268. 塩田章

    ○塩田説明員 現在までに判明いたしておるところで申し上げますと、米軍の軍人と家族合わせまして約三千五百人という人数がわかっております。それ以上、その関係のための隊舎がどのぐらい、宿舎がどのぐらい、そういったいわゆる施設計画についてはまだわかっておりません。現在アメリカ側に対して早く出すように照会中でございますが、現在の時点でまだわかっておりません。したがいまして、いまお尋ねのありましたその関係経費がどのぐらいになるであろうかというようなことも、現在の時点ではまだわかっておりません。
  269. 春田重昭

    春田委員 その費用負担の原則はどう考えているのですか。
  270. 塩田章

    ○塩田説明員 現在のところ、アメリカ側からの申し出といたしまして、今度のF16の展開に伴います経費のうち、隊員の隊舎でありますとか、あるいは宿舎でありますとか、あるいはそれに関連をする生活関連施設、こういったものについては日本側の協力をお願いしたい、こういう申し出がございまして、具体的にどういう数量でありますとか、あるいは建てる時期がどうでありますとか、そういう計画はまだない、こういう状況でございます。  ただ、その場合にも、私どもといたしましては米側の要求をそのままのむということではなくて、わが方の財政事情もこれありということもありまして、私どもの返事といたしましては、今後よく相談をしてやっていとう、基本的にはこの米側の展開を受け入れるという政府の方針は伝えたわけでございますけれども、具体的に日本側がどれだけの経費を負担するか、こういった話については今後の協議でやっていこう、こういうことでございます。
  271. 春田重昭

    春田委員 大体三千五百人ということは一千世帯以上になると思うのですね。一千戸の隊舎、宿舎が必要であるとすれば相当な費用がかかるわけでありまして、また、下水道とかそうした周辺整備等も要るでありましょう。新聞によりますと、大体四百億から六百億ぐらいの費用がかかるのではないかという形で書かれておりますけれども、これは従来の方針からいったならば、日本側としてはどれくらいの負担をしていくのですか。
  272. 塩田章

    ○塩田説明員 まず、経費の面で新聞等で報道がありましたのは私ども承知しておりますが、従来米軍の住宅を提供した場合に、まあ目の子で言いまして一戸当たり四千万円近くかかっておるということからいけば、先ほど先生がおっしゃいましたような四百億から六百億ぐらいの数字が出るのではなかろうかというような、話としてはあるということで、それが報道されたということでございますが、先ほど申し上げましたように、まだ米軍からそういう申し出があったわけではございません。  それから、従来の例からいきましてどういう協力をしてきたかということでございますが、これは従前、いわゆる俗に言いますところの思いやり的な経費ということで日本側が負担してまいっておりますが、私どもとしましては、今回の三沢の配備に伴います経費につきましても、そういった従前の思いやり、提供施設整備と言っておりますが、提供施設整備予算の中で、先ほど申し上げましたように、毎年検討しながら協議をして進めていくという考え方でおるわけでございます。
  273. 春田重昭

    春田委員 大体この全体の何割ぐらい日本側が負担していたかというのはわかりませんか。
  274. 塩田章

    ○塩田説明員 恐縮でございますが、現在、今度の展開に伴います全経費がどのぐらいかというととを承知いたしておりませんので、また、しかも日本側がどれだけ負担するかということもいまのようなことで決まっておりませんので、その割合を申し上げることはちょっと困難でございます。
  275. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、膨大な費用がかかるわけでございまして、仮に日本側が二分の一負担すれば、いわゆる三百億前後の負担になるわけですね。これは五六中業期間内でございますし、当然正面装備の費用が相当出ております。それ以上に後方支援費また人件糧食、この辺の負担の方に食い込んでくるわけですから、後でも質問いたしますけれども、いわゆる防衛費全体のGNP一%の問題と絡んできて、相当なわが国の負担になってくることはもう否めない事実なんですよね。そうした面でも大きな問題を残すのじゃないか、こういう点を指摘しておきます。  さらに、先ほども質問に出ましたけれども、地元の青森県ないし三沢市に了解なしで米側に合意事項を示して、そして後で地元に交渉していく、了解をとりにいく、こういうことがあっていいのですかね。地元に全然了解なしでこれは合意されたのですか。
  276. 塩田章

    ○塩田説明員 いまのお答えの前に、ちょっと先ほどの点でございますが、先生いま二分の一とかいうことになったらという仮定でお話しされましたが、私が先ほど申し上げたのは、施設関係日本側が負担してほしいという要望がある。その負担するものについては二分の一ということでなしに日本側でつくってほしい、こういうことでございます。それをどの程度日本側が受け持つかということでございますので、そのつくるものの二分の一を日本側が持つ、あるいは三分の一を持つ、そういう話ではございません。つくるものはまるまる日本側がつくるわけですが、全体的にどういう要求に対してどれだけつくるか、日本側が受け持つか、こういう問題でございます。  それから、地元に対してどういう対処で臨んできたかということでございますが、これは先ほどお答えしましたように、公式にはことしの十月一日に協力方を要請いたしたわけでございますが、先ほどの大臣の御答弁にありましたように、私どもといたしましては、特に防衛施設庁といたしましては、こういった種類の問題は地元の御理解がなくてはもう何もできないと言ってもいいぐらいのものでございますから、今後、全力を挙げて地元の方の御理解をいただくように努力してまいりたいということを考えております。
  277. 春田重昭

    春田委員 先ほどの問題でございますけれども、当然全部わが国が負担すればそれだけ財政負担になってくるわけですから、これまた問題だと思うのですね。  いまの後段の質問でございますけれども、長官は要するに地元の了解がなかったらできない問題だとおっしゃるわけでございますが、そうなれば、なぜ事前に了解をとらないのか、こう反論したくなってしまうわけですね。要するに頭越しに合意されたものを、決まったから県よ三沢市よ了解してくれ、逆じゃないですか。
  278. 塩田章

    ○塩田説明員 これは防衛施設庁というよりも防衛庁全体の問題でございますが、六月下旬に申し入れを受けましてから、先ほど来質疑応答がありましたように、慎重に審議して政府としての態度を決めてまいったわけであります。協議をしてまいったわけでありますが、その間、確かに地元にお話ししなかったということでございますが、そういった微妙な問題でもございますので、防衛庁長官がアメリカに行かれまして、さらに米側の意向を十分確かめた上で政府としての答えをしてくるということでございましたので、それより先に地元にお話しするということは確かにいたしませんでした。いたしませんでしたが、先ほど来申し上げておりますように、との配備の持つ意義を十分御説明いたしまして、ぜひ御理解をいただくように今後努力をしていきたいというふうに考えております。
  279. 春田重昭

    春田委員 六月に米側から伝えられて、長官が訪米されるまでに約三カ月間あるわけですね。その間、米側の真意がつかめないなんてあり得ないと思うのですね。それで地元には全然相談なしなんて、それじゃ通らないじゃないですか。地元青森県や、三沢市とか周辺の市町村、六カ村ぐらいあると聞いておりますけれども、どういう対応をとっているのですか。
  280. 塩田章

    ○塩田説明員 現在の時点では、先ほど申しましたように、十月一日に青森県知事、三沢市長、それから上北町長等六カ町村の村長さん、そういった方々に協力の要請をいたしているわけでございますが、地元はいずれの方も、地元としては大変大きな問題だから慎重に対処いたしたい、こういうような意向のように承っております。
  281. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、長官日米安保があるといえども、国内の協議といいますか、そうした事前の話し合いをやった上でやらなかったら、これは日米安保が優先なのか国内協議が優先なのか、よく考えてみたら全くの日本の自主外交はないですね。アメリカの言いなりのそうした外交政策と言っても過言ではないじゃないですか。事前に当たっていけば当然拒否されると思ったのですか。
  282. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 この問題につきまして、地元の対応につきましてはただいま施設長官からお答え申し上げたとおりでございますが、私どもとしましては、この問題について米側にさらに一層確認を求める必要があるということ、それから、今回の協力申し入れにつきましても、地元の問題はまだ残されているがということで日本政府の基本的な考え方を述べた、こういうことでございます。
  283. 春田重昭

    春田委員 いずれにしろ理解に苦しむ今回の防衛庁の態度だと思うのです。  さらに、この基地には民間航空機が飛来しているわけですね。東亜国内航空が離発着しているわけです。一日に十往復しているわけですけれども、今回のこの措置によりまして、自衛隊、民間、そして米国の空軍と、非常に複雑な様相を呈してくるわけでございますけれども、東亜国内航空は、七一年にファントムが撤退した後に七五年から運航しているわけですね。そういう面から、米国の空軍が引き払ったから民間航空が来たわけです。それが、突如こういう形で来た場合、民間航空の支障になりはしないか。当然私はさまざまな問題が出てくるのじゃないかと思いますが、この点、どう考えておりますか。
  284. 塩田章

    ○塩田説明員 現在私どもが承知いたしておりますのは、いま民間航空の御指摘がございましたが、民間航空のみならず、航空自衛隊も米海軍部隊も若干おります。そういった現在の運用から見て、今回の展開によりまして影響があるのかどうかという点につきましては、米側はそういった現在の運用体制には支障はないという前提で今回のことを計画しておる、こういうことでございます。  その点につきましては、もちろん今後さらに詰めていくわけでございますけれども、私どもも、民航の現在の運航あるいは航空自衛隊の現在の運航には差し支えない前提でこれを考えるというふうに考えております。
  285. 春田重昭

    春田委員 三沢には滑走路が一本しかないわけですから、五十機が配備された時点では、相当混雑といいますか、相当いろいろな問題が出てくるのじゃないかと思うのですね。そうした面も十分対応して臨んでいただきたい、こう主張しておきます。  続いて、五六中業の問題についてお伺いしていきたいと思います。この問題も先ほど質問が出たわけでございますけれども、若干質問していきたいと思います。  五六中業の質問の前に長官にお尋ねいたしますけれども、さきに総理が訪中されましたその訪中の前後にも、中国の指導者から一様に、日本の軍国化、軍国主義の復活の問題、それから日本の軍事大国化の問題等が指摘されているわけです。また、フィリピンのマルコス大統領もそうした意味のことを発言しておりますし、韓国の国防相もそうした発言をしているわけでございまして、こうした相次ぐ、アジアの指導者が日本の軍事大国化といいますか、そうしたものを非常に心配している、おそれているという点が最近見られるわけでございますけれども、長官はこうした発言に対してどのようにお考えになっておりますか。
  286. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 午前中から午後にかけて私からも再三お答えを申し上げておりますとおり、われわれは決して近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならないということがわれわれの防衛の基本方針でございますので、それらの点を今後とも十分御説明申し上げれば、われわれの方から申し上げますならば若干誤解に基づいた面もあるようでございますので、われわれの基本方針を今後とも粘り強く誠意をもって御説明すれば御理解いただけるものというふうに考えております。
  287. 春田重昭

    春田委員 粘り強い交渉で説得できるということでございますけれども、どうもいま政府がとっている行動と言っていることが矛盾しているし、また、本音とたてまえがあるように考えるわけでございます。わが国が軍事大国にならない歯どめとして、さまざまな制約なりいろいろな拘束的な条件があるわけです。たとえば非核三原則の問題、また武器輸出三原則の問題、また防衛費がGNPの一%を超えないという問題、専守防衛に徹するという問題、憲法の遵守、さまざまな基本的条件があるわけでございますけれども、これらの条件が年々といいますか、最近とみに変質してきている。最近の各種のアンケートをとってみても、非常に危険きわまりない防衛強化になっている、増強になってきていると、現に国民だって肌でそう感じているわけですね。  こうした批判というものが相当出ているわけでございまして、長官防衛庁という立場上いろいろな外圧等もあると思いますけれども、私は、まずはあくまでも自主的な防衛、アメリカに言いなりの防衛庁であってはならない、このように苦言を申し上げたいと思いますが、こうした条件がなし崩しに崩れかかってきているその象徴といいますか、シンボルがこの五六中業ではないか、このように思っておるわけでございます。  そこで、この五六中業でございますけれども、この五六中業は「防衛計画大綱」の延長線上にある、このように理解していいのですか。
  288. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 先般国防会議報告、了承を得ましたところの五六中業は、大綱の延長というより、むしろ大綱の枠内でその大綱の水準を達成する一つの過程であるというふうに理解しております。
  289. 春田重昭

    春田委員 五十一年の十月に決められましたこの「防衛計画大綱」は、要するに「防衛計画大綱」に示された防衛力整備はいついつまでには達成するということは示されてないわけでございますけれども、この五六中業期間に防衛力整備水準に達する、このようにお考えになっておるのですか。
  290. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 いまお話し申し上げたような五六中業というのは、昭和五十八年度から昭和六十二年度までを対象とする計画見積もりでございます。この五六中業がそのまま達成されれば大綱の水準をほぼ達成したもの、もちろん細部にわたって必ずしも大綱の水準に達成しない分野もございますけれども、大まかに言ってほぼ達成したということが言えるのではないか、厳密な意味での大綱の水準の達成ということになれば、またさらにそれから何年かの時日を要するのではないか、現在の五六中業を前提にすればそういうことになるだろう、そういうふうに思います。
  291. 春田重昭

    春田委員 五六中業期間中にほぼ達成される、こう理解していいわけですね。もう一度確認します。
  292. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 五六中業によって大綱の水準は概成、ほぼ達成するであろうというふうに考えております。
  293. 春田重昭

    春田委員 五六中業期間中にほぼ達成される、こうしたいわゆる枠をはめることによって、GNPの一%問題が、これは後で質問いたしますけれども、当然出てくるわけですよ。そういう点で私は、五十八年から六十二年まで防衛力整備をやっていくわけでございますけれども、何もほぼ達成しなくても、若干延ばして、あくまでも国の財政の枠の中で合理的、効率的にやっていかなかったならば、どうしても六十二年までにやっていかなければならないという枠をはめるがゆえにいろいろな問題、特に財政問題が出てくるのではないかと思うのですけれども、どうなんですか。六十二年までにほぼ達成しなければならないという約束をアメリカにしておるのですか。
  294. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 昭和五十一年の秋に作成された「防衛計画大綱」水準を達成するというのは、もうすでに七年ばかり前の計画大綱でございまして、私どもとしては最近の国際情勢の厳しさ等を考えました場合に、より早く達成したいという願望は持っております。しかしながら、国の財政事情その他の諸施策との調整調和というものを考えながら五六中業をつくったことでございまして、私どもとしてはこの五六中業は着実に達成したいというふうに考えておるわけでございます。  それからまた、この五六中業大綱を達成するという約束を米国にしたのではないかという御指摘でございますが、私ども日本防衛力整備というのはあくまでも日本が自主的に判断し、必要なものを積み上げていくという考え方に立って五六中業も作成したものでございます。
  295. 春田重昭

    春田委員 そこで、GNP一%問題について質問いたしますけれども、GNP一%という昭和五十一年十一月の閣議決定というのはいまでも変わらない、午前中そういう答弁がございましたけれども、再度確認していきたいと思います。
  296. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 ただいまのところ、この五十一年のGNP一%を超えないことをめどとするという閣議決定は尊重すべきものと考えております。
  297. 春田重昭

    春田委員 いまのところというのは、要するに五六中業期間も入っておるのですか。
  298. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 五六中業の達成に当たっても、そういうことを念頭に置いてぎりぎりの努力をしなければならないというふうに考えております。
  299. 春田重昭

    春田委員 長官は、五六中業期間中平均で一%以内である、このような発言をされたと聞いておるわけでございますけれども、平均一%ということは、後半になったら一%も超えるかもしれない、こういうことを含んでいるのですか。
  300. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 五六中業そのものが、再三お答えを申し上げておりますとおり、五年間の見積もりのようなものでございまして、それはあくまでも毎年毎年の予算概算要求を作成する場合の参考資料でございまして、そのことと毎年度予算編成とはまた別個の問題でございます。毎年度予算編成については、先ほど来申し上げておりますとおり、GNP一%に相当する額を超えないことをめどとして行うという閣議決定を継承しなければならないものと考えております。
  301. 春田重昭

    春田委員 ということは、昭和六十年、六十一年、六十二年度になってもGNP一%を絶対超えることはない、こう思っていいわけですね。
  302. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 ただいま大臣からも申し上げましたとおり、この五六中業というのは、今後数年間にまたがるところの防衛力整備についての大筋の考え方の了承を得たものでございまして、あくまでも防衛庁概算要求の参考資料であることが第一点。  それから、五六中業というのは、陸海空自衛隊の正面装備を中心にそういったものを比較的詳細に積み上げておりますけれども、いわゆる後方経費あるいは人件糧食費等についての厳密な積み上げというものをしておらないということが第二点でございます。  一方、GNPというのは、今後の経済見通しの変動要素等を考えますと必ずしも一定してないということから、今後のGNPと防衛費との関係をこの時点で一概にどうこうするというわけにはいかないのではないかというふうに考えておるわけです。  一方、われわれ今後の防衛力整備に当たってはこの五六中業を基本としますけれども、毎年毎年の予算の設定に当たっては、当該年度財政事情等を考慮し、他の施策との調和も考えながら、われわれとしてもできるだけ経費の節減、合理化に努めながら、一方では「防衛計画大綱」の水準を達成するということで今後相当努力をしていかなければならない。その過程におきまして、GNPに対する割合がどうなるかということは、現在の状況では、私どもとしてはこの五十一年に決定された閣議決定、GNP一%の枠というものをいま変える必要はないと思っております。
  303. 春田重昭

    春田委員 変える必要がないというよりも、変えてはならないという観点から防衛費を算出しなければいけないと私は思うのですよ。GNP一%という答えは、分母に当該年度国民生産、GNPが入ってくるわけですよ。その上に当該年度の防衛費が分子として出てきて、そして答えがGNP一%以内という形になるわけでしょう。だから、当該年度経済成長が鈍化して国民生産も落ちてきたら、当然防衛費もそういう形で調整をやったらいいわけですよ。そうしたら答えがGNP一%以内となるわけでしょう。なぜ、GNP一%を絶対守ります、こういう答えが素直に出ないのですか。当該年度経済成長は変動があります、防衛費も変動があります、そういう答えになるということは、結果的に一%を突破することもあり得るということを裏に含んでいるのじゃないですか。長官、これはどうなんですか。
  304. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 防衛局長からも、また私からもお答え申し上げておりますとおり、GNPが下方修正された場合を前提としてのお尋ねでございますが、それはまだいまのところ確たる見通しを得ているわけではございませんので、この時点でお答えをするということはきわめて困難だということを御理解願いたいと思います。
  305. 春田重昭

    春田委員 長官、そんなことを言っているのじゃないのですよ。GNPがたとえ鈍化しても、それに合わせて防衛費もスローダウンしたらいいじゃないですか。そうしたら、答えがGNP一%以内になってくるじゃないですか。五十一年の閣議方針のGNP一%を守るというこれさえはっきりすれば、調整できるじゃないですか。閣議方針はいまのところ守ると言っておるのでしょう。六十二年までそういう方針でいけば、防衛費をスローダウンしたらいけるじゃないですか。GNPなんか関係ないじゃないですか。答えさえはっきり固定すれば、当然それに合わせて防衛費を調整すればいいわけでしょう。どうなんですか。
  306. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 私どもといたしましては、昭和五十一年に御決定をいただきました「防衛計画大綱」、これも最近の国際情勢ということを考えた場合に、できるだけ早く達成したいという願望、期待を持っておるわけでございます。こうした願望、期待というものとGNP一%というものをどういうふうに調和を求めるかということで現在ぎりぎりの努力をしているということが、先ほど来申し上げている状況でございます。
  307. 春田重昭

    春田委員 ということは、いまの答弁は、五十一年当時と国際情勢が相当変わってきたのだ、したがって、結果的には一%を超えてもやむを得ない状況になるのではないか、そういうものを含んだ答弁ですか。
  308. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 GNPが将来どうなるか、あるいは防衛費の伸びが今後どうなるかについては、先ほども申し上げたとおり、両者とも不確定要素を含んでおります。そうした中で、われわれとしてはぎりぎりの努力を続けていくということでございます。
  309. 春田重昭

    春田委員 長官は、結果的にGNP一%を突破することもあり得る、そういうお考えを持っておりますか。正直に言って、正直に。
  310. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、いろいろ不確定要素もありますので、この時点で正確にお答えを申し上げますことはきわめて困難でございます。
  311. 春田重昭

    春田委員 あくまでも閣議方針は守る。GNP一%は守る。しかし、経済成長がどうなるかわからない。不確定要素である。これがスローダウンする。国民生産が鈍化する。そして防衛費は固定されているから、結果的に一%を超えても、それは結果論であってやむを得ない、こう考えておるかと聞いておるのです。
  312. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、不確定要素がたくさんございまして、それらを踏まえて正確な見通しを申し述べますことはきわめて困難でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  313. 春田重昭

    春田委員 GNP一%以内を守るということを明確に答弁できないということは、その裏に、そうしたGNP一彩突破もやむを得ないということを含んだ防衛庁の考え方だろうと私は思うわけです。このGNP一%の問題は、そうした防衛庁の考え方であれば、時間の問題で、私は必ず突破するのではないかと思う。  たとえば五十七年度国民生産は、当初、名目八・四%、実質では五・二%の経済成長率で、二百七十七兆二千億円と試算されているわけです。ところが、八日の経済閣僚会議では、名目が六・二%、実質で三・四%ということで下方修正されているわけですね。したがって、国民生産は二百六十七兆一千億円となります。したがって、五十七年度防衛予算は二兆五千八百六十一億円でありますから、当初の防衛費は割合として〇・九三でありますけれども、下方修正されたことによってコンマ九七%となるわけです。したがって、この期間中のGNPの伸びが仮にこのままでいったならば、いわゆる五六中業で試算しているように六%ないし八%の防衛費の伸びとすれば、やがて五十九年ないし六十年度には間違いなく突破することは、これは必然的に出てくるわけですね。  さきの経済閣僚会議でこの成長率が修正されたわけでございますけれども、当然それに伴って国民生産も下方修正されたわけでございます。当然防衛庁としてはそれらも試算されて今後のことを考えら、れておると思いますけれども、五十九年、六十年度にはどうなるか、防衛庁はどう分析されていますか。
  314. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 先般の経済対策閣僚会議におきまして、本年度経済成長が名目で六・二、実質で三・四ということになったわけでございますけれども、正式の本年度経済見通しというのは年末に決められるであろうというふうに理解しておりますし、現在まだ五十六年度、七年度のGNP自体も確定しておらないということでございます。  私どもといたしましては、現在すでにあるところの、政府として決定されたところの新経済社会七カ年計画あるいは五十六年度の政府見通しというものを前提にして計算をすると、先ほどもお答えしましたとおり、期間中五年間、どんぶりでございますけれども、GNPに対する防衛費の比率は〇・九七から一・〇二、こういうことを申し上げているわけでございます。具体的な各年度における比率というものは、まだこの五六中業自体が年度割りというものを持っておりませんし、一方、GNPにつきましても、ただいま申し上げたような事情から、いま直ちにその比率をどうこうするというふうにはならないのではないか、少なくも年末にそういうことが正式に決まるのではないかというふうに理解しております。
  315. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、一%突破は時間の問題ですよ。だから、はっきりと防衛庁としてはGNP一考を守るのだということになれば、先ほど言ったように防衛費を鈍化すればいいわけですよ。GNP一%が閣議方針としてある、これは堅持していただきたいということを特に要望しておきます。  それから、「防衛計画大綱」には、わが国の防衛というものは限定的かつ小規模の侵略に対処するため、こういう形で書かれておるわけでございますけれども、この方針は現在も変わっておりませんか。
  316. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 変わっておりません。
  317. 春田重昭

    春田委員 変わってないということでございますけれども、この五六中業のシナリオでは、この限定的小規模の能力をはるかに超えた整備が行われていくおそれがある。先ほども言ったように、完全にアメリカの世界戦略、極東戦略の中にはまった軍事大国化に進むおそれがある、きわめて危険な方向に進んでいる、このことを私は強く警告して、この問題については終わります。  時間がございませんので、最後に、日米軍事技術協定の問題に若干触れてみたいと思います。  この問題につきましては、前回の外務省の所管のときにも若干質問したわけでございますけれども、長官が訪米されました、その後櫻内外相も訪米されまして、再三米国側から強い要請があったみたいでございます。相当前からこの問題は米国から提案されているわけでございますが、そろそろはっきり答えを出す時期じゃないかと私は思うのですけれども、どうなっていますか。
  318. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 確かに昨年の六月に私の前任者の大村防衛庁長官と米側との話し合いの中からこの対米武器技術供与の問題が出てまいりましたので、一年数カ月になるわけでございますから、そり間、われわれもなるべく早く結論を出すように関係省庁間で鋭意検討してまいり、いまも検討中でございます。先般の私とワインバーガー長官の会談のときにも米側に申し上げましたように、わが国には武器輸出三原則及び昭和五十一年の武器輸出に関する政府方針というものがあり、また、他方において日米安保条約等に基づく日米安保体制というものがあって、この点について検討を進めてまいりましたけれども、まだ結論は出ていないということを申し上げ、今後日米間でさらによく考えて、いわば協議を継続してまいりたいというようなことで別れてきております。
  319. 春田重昭

    春田委員 通産、外務、防衛三省で検討されていると聞いているわけでございますけれども、大体いつごろをめどに結論を出そうとお考えになっているのですか。
  320. 木下博生

    ○木下説明員 いま大臣からお答え申し上げましたように、昨年六月以来検討を続けてきておりますが、まだ三省庁間において検討が終わっておりません。私どもとしてはできるだけ早く結論を出したいと考えておりますが、まだいつごろまでということをはっきり申し上げられない状況でございます。
  321. 春田重昭

    春田委員 どうもわからないのは、軍事面ではアメリカが圧倒的な優位を誇っているわけですね。それがわが国にいわゆる技術を提供しろと言うのは何を提供しろと言っているのか、その意図というのはどういう点にあるのですかね。
  322. 木下博生

    ○木下説明員 確かに先生がおっしゃいますように、過去においては、特に軍事技術の関係では日本側が一方的にいろいろ技術の提供を受けてライセンス生産をやるというようなことでずっと来たわけでございます。ただ、御承知のように、最近の日本の産業技術というのは急速に進歩しておりまして、したがって、アメリカと日本の技術水準を比べた場合に、それが急速に近づいているというような状況がございます。したがいまして、アメリカとしては、日本の技術の中でアメリカとしても参考にできるものがあるのじゃないかというようなことでこういう要請をしてきたのだと考えておりますが、具体的にどういうものを向こうが希望しているかということについては、アメリカ自身もはっきり言っておりませんので、具体的な点はわからないわけでございます。
  323. 春田重昭

    春田委員 では、アメリカ側の具体的な意図がわからないで検討できるのですか。
  324. 木下博生

    ○木下説明員 アメリカ側としては、もしそういうようなことができるようになった場合には、そこで初めて具体的に話を詰めていきたいという考え方でいるのではないかと思いますが、まず基本的な物の考え方として、いままでの一方通行を双方通行にしてほしいというようなことを言っておるわけでございます。
  325. 春田重昭

    春田委員 どうもはっきりしないわけでございますけれども、先ほども長官がおっしゃったように、一方では日米安保があり、一方では武器輸出三原則がある、こういう中でいま模索し、検討しているのだ、こういうことでございます。  きょうは通産省の方がおいでになっておると思いますけれども、この武器輸出三原則厳守ということで、外務、防衛は前向きの検討をされるかもしれませんが、通産省はそうしたいわゆる三原則がある以上、これはそうは安易に乗ることはできないと思うのですね。その点、通産省としてはどうお考えになっておりますか。
  326. 広海正光

    ○広海説明員 武器技術の提供の問題につきましては、武器輸出三原則、それから五十一年の武器輸出に関する政府方針に準じて対処するというのが従来からの政府の方針でございます。したがいまして、本件検討する場合にも、この三原則、政府方針というものに準拠をいたしまして判断する必要があるわけでございます。しかしながら、他方、米国との間には日米安保条約を基礎といたします日米安保関係というものがございますので、この両者をともに検討する必要があるという考えで関係省庁と検討を進めているわけでございますが、先ほど来答弁されておりますように、まだ結論が出ていないというのが現状でございます。
  327. 春田重昭

    春田委員 長い間検討をされているわけでございます。これも憶測かもしれませんけれども、いろいろな意見が出ているわけです。もう三省の間では検討を終えてあとは発表の段階である、いろいろな複数の案が内閣官房の方に送られている、こういう話も出ているわけでございますけれども、この点、どうですか。
  328. 木下博生

    ○木下説明員 ただいままでいろいろ御説明申し上げましたように、武器輸出三原則の関係、それから他方、日米安保関係、この二つの問題を考慮して、その間をどういうふうにするかということで三省庁間で検討を続けております。したがって、まだ結論が出ていないという状況でございますので、具体的にこういう案でどうだろうかということで政府上層部に上げたというものではございません。
  329. 春田重昭

    春田委員 いずれにしても、長官は、日米安保がある以上、ある程度基本的には応ぜざるを得ないのじゃないか、このようにお考えになっているのですか、正直言って。検討中だということでございますけれども、原則的にはやはり何らかの条件をつけて、制約があったとしても応ぜざるを得ないのじゃないか、このように長官自身はお考えになっているかどうか。
  330. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 目下検討中でございまして、その結論をいま私から申し上げることはできませんけれども、ただ、私が日米首脳会談で得ました感触は、アメリカ側が両面通行といいますか、両面交通について大変強い要請をしておったことは事実でございます。
  331. 春田重昭

    春田委員 それ以上答えが出ないみたいですからこれで終わりますが、最後に大蔵省の方にお伺いします。  五十八年度概算要求、各省マイナスシーリングの中で防衛費は七・三五%という伸びでございまして、私たちは防衛費突出と言っているわけでございますけれども、こうしたいわゆる防衛費が七・三五%伸びたということは特別扱いとして考えているのかどうか、これが一点。  今後さらに詰めていかれると思いますけれども、他省庁との関係からかなり詰めていくのじゃないか。福祉、教育が相当抑え込まれておりますから、この概算要求よりももっと厳しくしていくのじゃないかという意見もあるわけでございますけれども、この二点につきまして最後に御答弁いただきたいと思います。
  332. 窪田弘

    窪田説明員 前段の特別の扱いではないかというお尋ねでございますが、それはそうではございませんで、防衛関係費のうち半分近いものを占めております人件費、それから国際的な約束で来年度支払い期限の来るもの、こういうものはマイナスにしろと言っても無理なので一応例外扱いをいたしました。その結果、防衛関係費の要求の伸びが七・三%程度になったわけでございます。  ただ、第二点でおっしゃいましたように、来年度予算は非常に厳しゅうございます。税の見込みもだんだん悲観的になってまいりますし、国債も発行が非常にむずかしいということで、財政再建のためにはやはりかなりこの要求から切り詰めていただかなければならないと思っております。その場合、やはり特別ということでなくて、痛みは平等に分かっていただくということでないといけないのではないか、こう考えております。
  333. 春田重昭

    春田委員 大蔵省にお願いといいますか、要求したいわけでございますけれども、いま防衛費は、五六中業に伴う予算というものが来年から始まっていくわけでございます。五六中業は、御存じのとおりかなり後年度負担が出てくるわけですね。五年契約ということで、初年度は全然支払わなくてもいいし、一年目に若干払って、そして後年度にどっと負担が来るような、そうした仕組みになっているわけですよ。だから、あの防衛庁予算を見ればかなり抑え込んだように思いますけれども、いわゆる後年度には相当な負担が来るわけですね。私から言えばそうした予算上のまやかしみたいなことがされているわけでございまして、こうした、当然予算化したのだから後年度ふえてもやむを得ないじゃないかという理論は、私は通らないと思うのですね。そういう点でも、今後の五十八年度、五十九年度以降の予算化に対しては、十分その点もメスを入れながら予算をつくっていただきたい、こう思うわけでございます。最後にその点だけお答えいただいて、質問を終わります。
  334. 窪田弘

    窪田説明員 確かに御指摘のように、来年度防衛庁の御要求でも後年度負担が二兆五千億近くになっていると思います。ただ、これは航空機とか艦船が一、二年度でできないという性格のものでありますので、後年度にある程度負担が送られることはやむを得ませんが、御指摘のように、後の年度予算がそれで圧迫されるということでは問題でございますので、そこもよく気をつけて編成に当たってまいりたいと思っております。
  335. 春田重昭

    春田委員 終わります。
  336. 永田亮一

    永田委員長 和田一仁君。
  337. 和田一仁

    ○和田(一)委員 きょう私はシーレーンの防衛の問題についてお伺いしたいと思っておりますが、その前に、ずっと朝から委員会に入っておりまして政治の大きな動きをつかんでおりませんでしたが、ただいま連絡が入ったところによりますと、鈴木善幸総理大臣が退陣の表明をなさったということでございます。これはやはり政局の大きな動きになるわけでございますけれども、いま日本の総理大臣が退陣表明をなさったというこの時点における防衛庁長官としての見通し、こういう見通しがあったのかどうか。  われわれとしては、これは大変びっくりしております。と言うのも、私はこれからシーレーンの防衛の問題について伺おうと思っておりました。これは鈴木総理として、昨年渡米をされて、そしてその際、ワシントンのナショナル・プレスクラブで千海里防衛の決意が表明されたわけでございます。それから大変大事な日米間あるいは世界の安全保障にとっての大きな意味合いが問われるようになってきた、こういう問題でございます。その鈴木総理がいま辞意を表明された。これを踏まえて、私は、鈴木総理の辞意表明と、それから、あわせましてこのシーレーン防衛について、防衛庁長官としての見解をもう一回ここでお伺いしておきたい。  そして、これが大事なだけに、防衛庁長官としてこれからこのシーレーン防衛に一体どういう取り組みをしていかれるか、その御決意のほどもまず初めに伺わせていただきたい、こう思います。
  338. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 重大な政治の動きにつきましての情報は、私もいま先生と全く同じ状況でございまして、いま私も若干のメモで知ったわけでございまして、突然のことでもございますし、また、大変意外でもございましたので、ただ驚いておるということしか申し上げられません。  それから、シーレーンの問題につきましては、これは再三事務当局からもお答えを申し上げておりますとおり、わが国の防衛力整備が始まって以来の一つの防衛構想でございますので、今後ともその構想を着実に進めるために、そのための防衛努力を着実に進めてまいりたいという気持ちには変わりはございません。
  339. 和田一仁

    ○和田(一)委員 このシーレーンの防衛ですけれども、一体シーレーンとは何だという定義からいろいろ論議をされてきたわけでございますが、それも委員会その他を通してだんだんと明確になってきているのではないか、こう思います。きょうの委員会も含め、またさきの参議院の委員会でも防衛庁見解等が示されまして、大分はっきりしてきた、こう思うわけでございます。  従来は、シーレーンと言えば日本への輸送のルート、海洋国家として食糧を初めその他の資源、いろいろなものを海外から運んでくる、そういう食糧その他の資源の輸送ルートで、主に日本の南東、南西の航路帯というものがあるのだ、これを中心とする船舶保護、こういったものがシーレーンだという大まかな考え方があったわけです。それが最近はっきりしてまいりまして、先ほども御答弁の中にございました、海上交通の確保というお言葉を使われましたけれども、そういう意味で特定の航路帯、一本あるいは二本の航路帯を示すのではないのだ、こういう御答弁だったと思います。シーレーンというのは、つまりシーレーン・イコール航路帯ではなくて、航路帯というものがむしろシーレーンの中の一つの形態である、こういう解釈をとられているのだと思うわけです。  これは、最近そういうことが私どももはっきり認識できるようになりましたけれども、初めのころの日米間のこのシーレーンのとらえ方というものには大変ギャップがあったのではないか。つまり、線でとらえているのか面でとらえているのか、こういう意味で大きなギャップがあったように思うのです。つまり、アメリカ側が言っているのは、グアム以西、フィリピン以北、こういった北西太平洋がシーレーンだ、こういう言い方をしておったと思うのですが、こういう意味でシーレーンそのものが解釈として当初アメリカ側が言っていた面的なものへとだんだん広がってきたような気が私はするわけですが、この点がそうであるかどうか。  それからもう一つ、白書の中では、先ほどの御答弁もあるように、三次防、四次防のころからこういったものは一つの柱としてちゃんと考えていたということを言っておられます。それは海上交通の保護という言葉で統一をされておったわけですが、その海上交通の保護ということが、先ほどの御答弁のように、決して一つの線をあらわすものではない、こういうように考えられるという御答弁でございましたので、これは先ほど言ったようにアメリカが要請しているような面的な防衛にだんだん近づいてきたというふうに解釈してよろしいのかどうか、これが一つ。  それから、いま一つは、今度はこのシーレーンの性格の問題ですけれども、われわれ国民生活にとって必要な日常の物資、こういうものの海上交通保護、これだけではなくて、その輸送ルートの点でも、御答弁の中に、継戦能力の保持もそのシーレーン防衛の目的の一つである、こういうふうにはっきりとお答えもされておるわけでございまして、そういう意味では、これは大変面的なとらえ方、質的にも性格的にも継戦能力の保持、こういうことが加わっているのだな、こういう理解をいましておるわけでございます。  長官は、シーレーンの防衛、これは断固確保し、守っていかなければならぬ、こういう御決意で引き続きやる、こう言われたわけでございますけれども、この二点について、もう一度シーレーンの防衛のそういった意味での意義をお聞かせいただきたい、こう思います。
  340. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 シーレーンの防衛ということが単なる航路帯を意味するものでなく、海上交通の安全を確保することであるということは、いま先生からの御指摘のあったとおりであろうというように私ども理解しております。そういう意味合いにおいて、アメリカ側と日本側に考え方、認識にギャップがあったのではないか、こういう御指摘でございますが、私どものいわゆる政府当局者としてはそういう認識のギャップというものはなかったというふうに考えております。  それから、第二点の質問でございますが、このシーレーン防衛の重要性の理由として、地政学的にわが国が生存し、発展していくために必要であるのみならず、有事の際の継戦基盤、継戦能力の維持のためにも必要であるということ、これまた私どもそういうふうに考えております。
  341. 和田一仁

    ○和田(一)委員 いまのお答えですと、このシーレーンの問題がこの夏の日米間の協議の中でテーマになったときに、そういうとらえ方のギャップはなかった、こうおっしゃったわけですが、そうすると、これはどういうふうに両者で合意をされておったのですか。大変広範囲に、グアム島以西フィリピン以北、との北西太平洋、この面的なシーレーンについての防衛を問題にしているのだと思いますが、それでよろしいわけですね。
  342. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 今回のハワイ協議におきまして、アメリカ側は、このシーレーンの防衛というのは日本にとってきわめてバイタルな問題であるということ、そして、そのために日本が従来とってきた政策というものは正しい方向である、まさに日本の防衛にとってきわめて重要な問題である、しかし、そのために現在の海上自衛隊防衛力なりというものが十分ではないように思うというふうな指摘がありましたけれども、グアム以西、フィリピン以北といった海域の指定というものはなく、あくまでもわが方のシーレーン防衛というのはわが国の自衛のために個別的自衛権の範囲にとどまるものであるということを認識し、かつ、防衛力整備の目標として周辺数百海里、航路帯を設ける場合には千海里をめどとして行っているということを認めた上での発言であったということでございます。
  343. 和田一仁

    ○和田(一)委員 さらに、その後、シーレーンの防衛に関して日米共同の研究をやろう、こういう約束をされてこられたわけでございますけれども、それでは、このシーレーン防衛に関して日米共同の研究をいつごろから、どういうメンバーで、どこでおやりになるのか、まずその辺からお聞かせをいただきたいのです。
  344. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 従来、日米防衛協力のための指針、ガイドラインというものがございまして、この枠内において日米共同対処のための作戦計画の研究というものを進めてきたわけでございます。今回のシーレーン防衛につきましても、そうしたガイドラインの枠の中で共同作戦計画、いわゆる安保条約第五条に基づくところの、わが国に対する武力攻撃があった場合の日米共同対処計画の研究の一環としてこのシーレーンの防衛の研究をしようということになったわけでございます。この共同研究につきましては、ハワイ協議で話題になって以来、現在私ども防衛庁と在日米軍との間で、どういうふうなメンバーでどういう形でやろうかという内々の話を進めている状況でございまして、日米ともにできるだけ早く対処をしたいという希望は持っておりますが、この時点でいつからというふうに具体的に申し上げるような段階にはまだないということでございます。
  345. 和田一仁

    ○和田(一)委員 十月ごろに着手したいというような長官の談話もあったようでございますけれども、できるだけ早くというような準備がいまされておると聞きますが、千海里シーレーンの防衛のアメリカの方のとらえ方は、単に日本の安全保障のためだけではないのだ、むしろ全世界の戦争抑止のための力になる、同時に地域的な抑止力の維持にも役立つのだ、そういう西側防衛全体の大きな戦略の一つとしてとのシーレーン防衛ということをとらえているのではないか、こう思うわけです。ですから、この共同研究をやるということになりますと、こういった位置づけの中で日本は共同研究をなさるのかどうか。いや、そうではないのだと言えば、それではどういう立場で共同研究をなさるのか、その辺をお聞かせいただきたいのです。
  346. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 アメリカが一般的に最近における国際情勢、ソ連のたゆみなき軍事力の増強というものを背景にいたしまして、アメリカの軍事力がグローバルに展開をしている、そういった意味合いから特定の地域についての配備が薄くなるというふうな考え方があろうかと思いますが、あくまでも今回のシーレーンの防衛についての共同研究というのは、日本の防衛のために、日本の自衛のために、日米共同作戦計画というものをそういう研究する場でやろうということでございまして、それ以上のものでもないわけでございます。その点、御理解を賜りたいと思っております。
  347. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そうしますと、これからの話でございますけれども、その共同研究の中で扱われる中身について一体どういうシナリオが考えられるのか。日本としてシーレーン防衛によって守られるべき目標とか、そういうものの設定がきちっとあって、それに対して日米共同の研究をやるのか、その点はいかがでしょうか。
  348. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 今回、ハワイ協議におきましてこのシーレーン防衛に関する共同研究の話に及びました際に、日本防衛力あるいは五六中業で達成される防衛力をもってしても十分ではないのではないかというふうな指摘があり、その際、彼らが日本の立場に立って研究した結果そういった能力が不足しているという指摘があったわけでございます。  私どもとしても、現在、五六中業等におきましてシーレーン防衛能力の向上というものに鋭意努力をしておりますけれども、必ずしも十分とは思っておらないということがございます。そういったことから、アメリカが指摘するというふうなこともございましたので、アメリカの指摘する根拠、たとえば脅威の分析をどういうふうにしているのか、あるいは侵攻の態様をどういうふうに考えているのかということについて精密に日米間で話をする、研究をしていく必要があるのではないかというふうに考えて、この共同研究を申し入れたということでございます。
  349. 和田一仁

    ○和田(一)委員 これは日本有事の場合にどうやるか、こういう共同研究をされるわけでございましょう。しかし、先ほど私、申し上げましたように、アメリカのとらえ方は、日本の安全保障だけではない、世界戦略の中でこのシーレーンを位置づけているということですから、たとえば中東有事、こういったときにでも千海里シーレーンの防衛が必要だ、こういう判断を恐らく下すのではないか。そうなってくると、当然中東地区に何かあれば、そのことによってアメリカの軍事物資の補給路切断ということがこの海域で起こり得る、これが一番弱い部分だ、したがってこれが非常に大事なのだ、こういうとらえ方をしているのですから、ここで中東有事の場合なんかにはこれが防衛されなければ意味がない、こういう考え方を持つのではないかと思うのです。それで、もしこの防衛をやるとなれば、これはもちろん集団自衛権の問題になってくるわけでございます。  そして、この中で私が非常に気になるのは、いまも御答弁の中にございましたように、アメリカが指摘している、つまり、千海里防衛を本気でやってもらう、日本もやるということになると五六中業では不十分だ、こういう見方をされているわけなんですが、そういったことを踏まえた上で共同研究をされて、そして、結果としてやはり不十分だ、五六中業を概成してもこれは足らないということになれば、そこで新たに防衛力整備増大が問われなければならない、そういったことの結果がやや見通される今日において、との共同研究の結果がそう出たときにそれに対応せざるを得ないだろう。対応していくことのためにさらにこれは相当準備も必要だし、ある意味では大きな防衛政策の転換がここで考えられてくる、こういうような感じがしてならないわけです。そうなりますと、先ほど申し上げましたように、これはアメリカがとらえている位置づけというものにもだんだんと歩み寄っていくのではないか、こう考えますけれども、いかがでしょうか。
  350. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 今回のガイドラインに基づく共同研究というのは、あくまでも日本に対する武力攻撃が加えられた場合の共同対処計画の研究ということでございまして、言うまでもなく現在の防衛力というものを基礎にしたストライクプランといいますか、オペレーションプランといいますか、いわゆる対処計画の研究ということでございまして、将来の防衛力整備に直接つながる問題ではないわけでございます。  先生の御指摘のような御心配が、研究の段階でこれでは足らないのではないかというふうなことがあるいは出ても、それは日本防衛力整備というものを進めるに当たって、単にとのオペレーションプランというか、対処計画だけが前提でなく、もっと別な要素、すなわち財政事情であるとか国際環境であるとか、そういったもろもろの総合的な立場というものを勘案して決められるべき別個の次元の問題であるというふうに考えております。
  351. 永田亮一

    永田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時四十分休憩      ――――◇―――――     午後四時五十分開議
  352. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十一分散会      ――――◇―――――