○大村
会計検査院長 昭和五十四年度決算検査
報告につきまして、その
概要を
説明いたします。
会計検査院は、五十五年十月十四日、
内閣から
昭和五十四年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて、
昭和五十四年度決算検査
報告とともに五十五年十二月十日
内閣に回付いたしました。
昭和五十四年度の
一般会計決算額は、歳入三十九兆七千七百九十二億二千八百十八万余円、歳出三十八兆七千八百九十八億三千百十七万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において、四兆八千七百十九億六千三百十万余円、歳出において、四兆六千九百三十八億九十六万余円の増加になっており、各特例会計の決算額の合計額は、歳入八十三兆七千八十二億千二百十三万余円、歳出七十二兆千九百五十九億三千五百十二万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において十一兆七千四百九十九億七百八十一万余円、歳出において九兆六千四百三十二億二百七十八万余円の増加になっております。
また、国税収納金整理資金は、収納済み額二十四兆三千百四十一億六千二百八十四万余円、歳入組み入れ額二十三兆六千百九十三億四千五百五十九万余円であります。
政府関係機関の
昭和五十四年度の決算額の総計は、収入十九兆四千八百二十一億三千九百二十二万余円、支出十九兆二千七百八億五千五百五十六万余円でありまして、前年度に比べますと、収入において一兆二千九百四十七億六千四百二十七万余円、支出において一兆五千三百九十五億五千九百三十五万余円の増加になっております。
昭和五十四年度の歳入、歳出等に関し、会計検査院が、国、
政府関係機関、国の出資
団体等の検査対象機関について検査した実績を申し上げますと、書面検査は、
計算書二十三万九千余冊及び証拠書類六千九百二十七万余枚について行い、また、実地検査は、検査対象機関の官署、事務所等四万二千余カ所のうち、その八・〇%に当たる三千四百余カ所について実施いたしました。そして、検査の進行に伴い関係者に対して、約千四百七十事項の
質問を発しております。
このようにして検査いたしました結果、検査
報告に掲記した不当事項等について、その
概要を
説明いたします。
まず、不当事項について申し上げます。
不当事項として検査
報告に掲記いたしましたものは、合計百五十七件であります。
このうち、収入に関するものは、五件、十七億七千九百五十万余円でありまして、その
内訳は、租税の徴収額に過
不足があったものが一件、十二億四千三百三十八円余円、保険料の徴収額に過
不足があったものが三件、五億千六百十六万余円、職員の不正
行為による損害を生じたものが一件、千九百九十六万余円。
また、支出に関するものは、百三十四件、二百十億八千百五十八万余円でありまして、その
内訳は、
予算経理に関するものとして、架空の賃金、旅費または
会議費を別途に経理していたものなど、並びに給与の支出及びその決算処理が不当と認められるものが四件、百九十八億二千八百五十八万余円、工事に関するものとして、予定価格の積算が適切でなかったため契約額が割り高になったもの、監督、検査が適切でなかったため設計と相違して施工したものが五件、七千百万余円、物件に関するものとして、物品の購入計画等が適切でなかったため不経済になったものが三件、四千二百六十五万余円、役務に関するものとして、契約処置が適切でなかったため支払い額が過大になったもの及び不経済に支払われていたものが五件、四千七百二十万余円、保険に関するものとして、保険給付金の支給が適正でなかったものが二件、一億千六百五十二万余円、補助金に関するものとして、補助事業の実施及び経理が適切でなかったものが九十九件、四億七千九百八十一万余円、貸付金に関するものとして、設備資金等の貸し付けが、貸し付けの目的に沿わない結果となっていたものが九件、一億五千七百五十九万余円、不正
行為に関するものとして、職員が、架空の旅行命令簿兼旅費支給
調書を作成し旅費を受領して資金を領得したもの、及び業務に必要な
会議を実施したとして架空の請求書を作成するなどして資金を領得したものが六件、八千百三十万余円、その他、隧道工事に伴う飲料水の渇水対策補償費の支払いが適切でなかったものが一件、二億五千六百九十万余円であります。
以上の収入、支出に関するもののほか、保管中の物品や郵便貯金の預入金等について職員の不正
行為による損害を生じたものが十八件、一億五千三百三十四万余円ありまして、これらの合計は、百五十七件、二百三十億千四百四十三万余円となっております。これを前年度の百六十四件、四十五億五千六百九十六万余円に比べますと、件数において七件の減少、
金額において百八十四億五千七百四十六万余円の増加となっております。
次に、意見を表示しまたは処置を
要求した事項について
説明いたします。
五十五年中におきまして、会計検査院法第三十四条の
規定により是正改善の処置を
要求いたしましたものは八件、また、同法第三十六条の
規定により改善の意見を表示いたしましたものは一件であります。
このうち、会計検査院法第三十四条の
規定により、是正改善の処置を
要求いたしましたものは、大蔵省の、十円青銅貨幣の回収後の取り扱いに関するもの、農林水産省の、補助事業の実施及び経理の適正化に関するもの、通商産業省の、中小企業設備貸与事業における繰り上げ貸与料の取り扱いに関するもの、郵政省の、第三種郵便物の取り扱いに関するもの、建設省の、補助事業の実施及び経理の適正化に関するもの、除雪用機械の購入費補助に関するもの、中小企業金融公庫の、中小企業設備貸与事業における繰り上げ貸与料の取り扱いに関するもの、
日本道路公団の、高速道路等の新設工事における岩石土工工事費の積算に関するものであり、また、会計検査院法第三十六条の
規定により改善の意見を表示いたしましたものは、農林水産省の、農村地域の生活環境
施設の設置に関するものであります。
次に、本院の
指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について
説明いたします。
これは、検査の過程で会計検査院法第三十四条または第三十六条の
規定により意見を表示しまたは処置を
要求すべく
質問を発遣するなど検討しておりましたところ、当局において、本院の
指摘を契機として直ちに改善の処置をとったものでありまして、検査
報告に掲記しましたものは十三件であります。その
内訳は、北海道開発庁の、低水流量観測業務の実施に関するもの、
防衛庁の、物品増減及び現在額
報告書の記載漏れ等に関するもの、通商産業省の、石炭技術振興費補助金により取得した処分制限財産の処分に係る収入金の徴収に関するもの、
日本専売公社の、建築工事におけるコンクリートのポンプ車による配管打設
経費の積算に関するもの、
日本国有鉄道の、プレストレストコンクリート箱けたの製作及び架設工事におけるPC鋼棒等の組み立て費の積算に関するもの、空気
調整設備工事における矩形ダクトの製作取りつけ費の積算に関するもの、北海道東北開発公庫の、船舶資金の貸し付けに関するもの、
日本住宅公団の、宅地造成工事における機械土工費の積算に関するもの、募集案内書等の配布業務の委託手数料の算定に関するもの、
日本道路公団の、高速道路等の新設工事における鋼矢板の打ち込み及び引き抜き費の積算に関するもの、
日本鉄道建設公団の、青函隧道建設工事において貸与している蓄電池機関車の機械損料の積算に関するもの、年金福祉事業団の、業務委託手数料の算定に関するもの、
日本中央競馬会の、トータリゼータシステム保守
整備料の積算に関するものであります。
最後に、特に掲記を要すると認めた事項について
説明いたします。
この事項は、事業効果等の見地から問題を提起して事態の進展を図るために掲記しているものでありまして、
昭和五十四年度決算検査
報告には、次の二件を掲げてございます。
すなわち、農林水産省の、国営農地開発事業によって造成した農地の利用に関するもの、森林開発公団の、大規模林業圏開発林道事業の施行に関するものであります。
以上をもって
概要の
説明を終わります。
会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係
各省庁などに対して、適正な会計経理の執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、関係
各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう、望んでいる次第であります。
次に、
昭和五十四年度国有財産検査
報告につきまして、その
概要を
説明いたします。
会計検査院は、五十五年十月二十四日、
内閣から
昭和五十四年度
国有財産増減及び現在額総
計算書及び
昭和五十四年度
国有財産無償貸付状況総
計算書の送付を受け、その検査を終えて、
昭和五十四年度国有財産検査
報告とともに
昭和五十五年十二月十日
内閣に回付いたしました。
五十三年度末の国有財産現在額は、二十六兆四千四百九十二億八千四百九十二万余円でありましたが、五十四年度中の増が二兆六千百八十八億千三百四万余円、同年度中の減が七千六百二十七億五千七十九万余円ありましたので、差し引き五十四年度末の現在額は二十八兆三千五十三億四千七百十七万余円になり、前年度に比べますと、一兆八千五百六十億六千二百二十五万余円の増加になっております。
また、国有財産の無償貸付状況につきましては、五十三年度末には、三千八百七十七億八千七百七十六万余円でありましたが、五十四年度中の増が五百四十七億千六百九十五万余円、同年度中の減が三百七十七億千五百十万余円ありましたので、差し引き百七十億百八十四万余円の増加を見まして、五十四年度末の無償貸付財産の
総額は四千四十七億八千九百六十一万余円になっております。
検査の結果、
昭和五十四年度
国有財産増減及び現在額総
計算書及び
昭和五十四年度
国有財産無償貸付状況総
計算書に掲載されている国有財産の管理及び処分に関しまして、
昭和五十四年度決算検査
報告に不当事項または意見を表示しまたは処置を
要求した事項として掲記したものはありません。
以上をもって
概要の
説明を終わります。
引き続きまして、
昭和五十四年度決算検査
報告に掲記いたしました主な
指摘事例について
説明いたします。
まず、不当事項のうち、収入に関する
指摘金額十七億七千九百万円の大部分を占めておりますのは、例年どおり大蔵省において租税の徴収額に十二億四千三百万円の過
不足が生じたというものでありますが、この徴収過
不足額につきましては、本院の
指摘後、いずれも徴収
決定または支払い
決定の処置がとられました。
次いで、支出に関する
指摘は、百三十四件、二百十億八千百万円となっており、これは前年度に比べて件数で十二件、
金額で百八十億九千万円の増加となっておりますが、
指摘金額が大幅に増加しましたのは、後ほど述べますように、
日本電信電話公社において、超過勤務手当の支出に関し、不実の決算表示をしたり、架空の未払い金を計上したものが、合わせて百八十四億四千五百万円の多額に上ったことによるものであります。
ここで、その主な事例について
説明いたします。
まず、
予算執行に対する基本的認識の欠如に原因する不適正な経理として、
日本電信電話公社の事例について申し上げます。
日本電信電話公社では、職員に支給する給与について基準内給与と基準外給与に区分されており、これを相互に流用するには公社法や
予算総則の
規定により郵政
大臣の承認ないし認可を得なければならないことになっております。ところが、公社では五十三年度において、労使協定による超過勤務手当の一律支給分が多額に上ったため、基準外給与の超過勤務手当に
不足を来し、基準外給与の中でやりくりしてもなお基準外給与が四十八億九千七百万円
不足することになりました際、必要な郵政
大臣の承認等を得ることなく勝手に基準内給与から流用し、一方、決算上は基準外給与の範囲内で
予算執行がなされたように虚偽の表示をしていたものであります。また、公社では、五十三年度の財務諸表に同年度の職員給与の未払い金として二百四十億六千六百万円を計上いたしておりましたが、このうち百三十五億四千八百万円は、翌年度以降の超過勤務手当の一律支給分として
予算外に支給するための財源に引き当てるため、架空の未払い金を計上したものでありまして、いずれも法令等に違背する不当な事態と言わざるを得ないものであります。
また、
日本電信電話公社の近畿電気通信局等において、出張の事実がないのに出張したこととして旅費を不正に支出したり、架空の名目によって
会議費を不正に支出したりなどして、これを別途に経理し、会食の
経費などに充当していたものが合わせて十三億三千二百万円に上ったほか、労働省の愛知労働基準局等においても賃金に関し同様に五千万円に上る不正支出の事態が発見されましたので、これについても掲記いたしております。
不当事項についてもう
一つ、
日本鉄道建設公団の事例を申し上げます。同公団では、四十八年度から新潟県十日町市地内において北越北線薬師峠隧道工事を施行しておりますが、この工事に伴い同市鐙島地区において飲料水源として利用している井戸に減渇水が生じましたため、公団では五十五年三月に、同地区に簡易水道
施設を設置するための費用等として、住民
団体との間に三億六千五百万円の補償契約を締結し、その全額を支払っておりました。ところが、十日町市では、すでに五十四年六月から公団の補償対象地区を含む鐙島地区の全域を対象に、国庫補助事業による簡易水道工事に着手し、同年十二月に完成、五十五年一月から給水を開始しておりまして、補償契約締結時には補償の対象とした工事は施工する必要がなくなっていたわけでありますから、公団は、国庫補助工事の対象とならない部分の水道
施設等の設置に要する
経費一億八百万円について補償すれば足りるのに、現地について調査確認することなく、国庫補助事業と重複する部分等の
経費二億五千六百万円についてまで補償していたものであります。
次に、会計検査院法第三十四条または第三十六条の
規定により意見を表示しまたは処置を
要求した事項九件のうち、その主な事例について
説明いたします。
まず、農林水産省及び建設省の国庫補助事業に関する事例でありますが、国庫補助事業は、原則として補助対象年度内に完了しなければならないことになっておりまして、やむを得ない事情等により年度内に事業が完了しない場合は、必要な
予算の繰越手続をとり翌年度の
予算から交付することになっております。ところが、農林水産省または建設省の補助を受けて地方公共
団体等が事業主体となって実施している国庫補助事業について検査いたしましたところ、年度内に事業が完了していないのに、所定の繰越手続をとることなく書類上は年度内に完了したように作為して国庫補助金の全額を受け取っていたものが、五十三、五十四両年度の事業におきまして、農林水産省関係で二千八百四十三件、建設省関係で二万二千六百七十九件と多数見受けられました。そして、実際の事業完了時期について見ますと、事業年度経過後相当期間を要していたものが多く、中には翌年度の第三・四半期を過ぎても完了していないものもあったわけであります。
このような事態は、補助金適正化法等の関係法令に違背するだけでなく、交付済みの補助金が事業主体に長期間滞留する上、その後、補助事業の内容が変化し補助金の減額を要する事態が生じてもこれに対応することができないといったような実害も生ずるわけでありまして、国庫補助金の適正かつ効率的な執行が阻害されるのであります。
このような事態が生じているのは、地方公共
団体において補助事業を関係法令に従って実施しようとする
意識に欠けていたことによるものでありますが、補助金を交付する農林水産省や建設省の側においても、このような事態が発生している場合にそれに対して厳正な態度で臨む姿勢に欠けていたことにもよるわけでありまして、今後は補助金適正化法に基づく厳正な処置をとるなどして、このような事態の根絶を図るよう主務
大臣に対して是正改善の処置を
要求したものであります。
なお、この処置
要求に対する両省や地方公共
団体等の対応について五十六年中の検査でフォローいたしましたところ、五十五年度の補助事業については本院が
指摘したような事態はほぼ改善されているという結果が得られております。
次に、郵政省における第三種郵便物の取り扱いが適切でなかったという事例について申し上げます。
郵便法で定める第三種郵便物——これは御案内のとおり、
新聞、雑誌などの定期刊行物を内容とする開封の郵便物でありまして、料金は第一種郵便物に比べて二分の一ないし五分の一の低料金となっているものでありますが、この第三種郵便物として郵政省では五十四年度末で一万五千百二十八件を認可しておりますが、このうち二千三百五十六件について検査いたしましたところ、認可に当たっての審査及び認可後の監査が十分でなかったため、第三種郵便物としての法定要件を具備していないのに、低料金の第三種郵便物として取り扱っていたものが合計百九十八件ありまして、この百九十八件に係る五十四年度中の差し出し通数計千七百五万通を第一種郵便物として取り扱ったとしてその料金を
計算しますと、実際の収入額との間に七億七千八百万円の開差を生ずる状況でありました。
郵政省における第三種郵便物の認可件数、差し出し通数は年々増加する傾向にあり、一方、第三種郵便物の取り扱いに係る損益を見ますと毎年大幅な赤字を生じている状況でありますので、第三種郵便物として認可する際の審査及び認可後の監査体制を
整備するとともに、第三種郵便物で法定条件を具備しないものについては認可を取り消すなどして、適正な郵便料金の徴収を期するよう郵政
大臣に対して是正改善の処置を
要求したものであります。
次に、本院の
指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について
説明いたします。これは、会計検査院が検査の過程で不適切な会計経理を発見し、その是正改善の処置を
要求しようとして検討を進めている間に、本院の
指摘を契機として当局が是正改善の処置を講じたという事例でありまして、十三件を掲記いたしておりますが、その主な一、二の事例について
説明いたします。
まず、
防衛庁関係で物品増減及び現在額
報告書に多額の計上漏れがあったという
指摘であります。これは、航空自衛隊補給統制処ほか十二部隊等における物品の管理状況を検査した結果判明した事態でありまして、同補給統制処が
報告書の記載対象物品の範囲について各部隊等の分任物品管理官に対して的確な指示を行っていなかったために、
報告書に記載すべき物品二百六十六品目八百十八個百十億七千五百万円が計上漏れとなっておりましたので、航空自衛隊の他の部隊等や陸上、海上両自衛隊の所有物品についてもみずから調査して所有物品の実態を把握し、これを
報告書に適正に表示すべきことを
指摘いたしました。この
指摘に基づき各自衛隊において調査した結果、五十三年度の
報告書において、陸上自衛隊三千四百二十三個二百八十八億円、海上自衛隊三百三十一個百六十一億円、航空自衛隊六千九十二個七百一億円、計九千八百四十六個千百五十二億円の計上漏れがあったほか、海上自衛隊で千三百二十一個百二十一億円の誤計上があったことが判明いたしましたが、これらについては五十四年度の
報告書においてすべて
調整されました。
もう
一つ、北海道東北開発公庫の船舶資金の貸し付けに関する
指摘について申し上げます。同公庫では、北海道及び東北に就航し、同地域内における積み荷及び揚げ荷を主たる目的とする貨物船の建造または購入に要する資金を貸し付けており、貸付対象船舶には同地域で就航することを義務づけております。ところが、本院で公庫の貸付対象船舶のうち、五十四年度末現在ですでに就航している外航船十一隻、内航船三十隻、計四十一隻、貸付
金額百八十五億三千五百万円について、同地域での就航状況を調査いたしましたところ、同地域での就航が著しく少なかったり、全く就航していなかったりしているものが外航船の全部及び内航船の相当数について見受けられ、このような事態が二年以上も継続しているのに、これに対して同公庫では適切な処置をとっていないものが八隻、これに対する貸付
金額は四十八億二千万円に上っておりましたので、この点を
指摘いたしましたところ、公庫では就航状況の把握方法や
指摘したような事態が生じた場合の繰り上げ償還等の処置について具体的な取扱基準を定めたものであります。
以上
説明いたしました事項のほか、事業効果等の見地から問題を提起するため特に掲記を要すると認めた事項として二件を掲記いたしておりますので、その概略を申し上げます。
その
一つは、農林水産省が多額の国費を投じて実施している国営農地開発事業に関するもので、本院が十一地区の造成農地三千三百三十ヘクタールについてその利用状況を調査いたしましたところ、四地区において、受益者が造成農地の配分等を受けていながら未植栽のまま放置していたり、作付はしたもののその後の管理が不良のため雑草の繁茂に任せていたりしていて、多額の国費を投じて造成した農地がその効果を発揮していないものが一割を超える三百四十九ヘクタール、事業費にして四十八億円に上っておりました。
もう
一つは、森林開発公団が実施している大規模林業圏開発林道事業に関するもので、同公団では、四十八年度から五十四年度までに十八路線について逐次着工しておりますが、その工事の実施状況について見ますと、完成予定期間の約半分
程度を経過しておりますのに、五十四年度末の実績は施行延長で計画延長の一〇%弱、完成延長では三%弱といったように事業が著しく遅延しており、しかも、路線通過各地域の住民の要望が強いことなどもありまして、工事を部分的に実施したり、車両の通行に当面支障のない既設の林道についての拡幅改良工事を先行したりしておりまして、林業の振興等に貢献度合いの高い国道や県道と連絡する区間の工事を優先して施工していない状況であり、このため、せっかく完成した道路も、主として山村地域の生活道として暫定的に利用されているにすぎず、林業の振興にはほとんど寄与していない状況でありました。
このように、特記事項として掲記いたしました二件は、ともに多額の
国家資金を投じて実施している大規模プロジェクトがその効果を発現していない事態でありまして、これらについては事業計画策定後の社会情勢の変化に伴う計画の見直しを行う必要があるものの、受益者側の事情等もありまして事態の打開が容易でないわけでありますが、この打開策については、関係機関はもとより各界において十分御論議いただきたいということで問題提起をいたした次第であります。
以上、概括的ではありますが、
昭和五十四年度決算検査
報告の主な事例について御
説明いたしました。
以上をもって終わります。