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1982-05-12 第96回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年五月十二日(水曜日)     午後一時三十分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 近藤 元次君 理事 東家 嘉幸君    理事 中川 秀直君 理事 中村 弘海君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 春田 重昭君 理事 中野 寛成君       伊東 正義君    植竹 繁雄君       越智 通雄君    北川 石松君       桜井  新君    塩崎  潤君       近岡理一郎君    野上  徹君       高田 富之君    田中 昭二君       和田 一仁君    三浦  久君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房会計課長         兼内閣参事官  鴨澤 康夫君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 吉野  実君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         法務大臣官房会         計課長     河上 和雄君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵大臣官房審         議官      勝川 欣哉君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局次         長       宍倉 宗夫君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         大蔵省理財局長 吉本  宏君         大蔵省理財局次         長       酒井 健三君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁直税部長 吉田 哲朗君         厚生省薬務局長 持永 和見君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 永光 洋一君         建設大臣官房会         計課長     梶原  拓君  委員外出席者         インドシナ難民         対策連絡調整会         議事務局長   色摩 力夫君         防衛庁防衛局防         衛課長     澤田 和彦君         防衛施設庁総務         部施設調査官  近藤 孝治君         沖縄開発庁総務         局参事官    山田 正美君         外務大臣官房外         務参事官    斎木 俊男君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         運輸省航空局飛         行場部長    栗林 貞一君         会計検査院長  大村 筆雄君         会計検査院事務         総局第五局長  丹下  巧君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 四月二十三日  辞任         補欠選任   和田 一仁君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     和田 一仁君 五月十二日  辞任         補欠選任   天野 光晴君     越智 通雄君   石田 博英君     北川 石松君   植竹 繁雄君     野上  徹君 同日  辞任         補欠選任   越智 通雄君     天野 光晴君   北川 石松君     石田 博英君   野上  徹君     植竹 繁雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その2)  昭和五十五年度特別会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その2)  昭和五十五年度特別会計予算総則  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書  (承諾を求  (その2)           めるの件)  昭和五十六年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その一)  昭和五十六年度特別会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その一)  昭和五十六年度特別会計予算総則  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書  (承諾を求  (その一)           めるの件)  昭和五十五年度一般会計国庫債務負担行為総調  書  昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調  書(その一)  昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十四年度政府関係機関決算書  昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書  (全所管)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和五十五年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和五十五年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)、以上三件の承諾を求めるの件、及び昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和五十六年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和五十六年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)、以上三件の承諾を求めるの件、並びに昭和五十五年度一般会計国庫債務負担行為総調書及び昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その1)、以上の各件を一括して議題といたします。  大蔵大臣から各件について趣旨説明を求めます。渡辺大蔵大臣
  3. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま議題となりました昭和五十五年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外二件、並びに昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外二件の事後承諾を求める件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十五年度一般会計予備費予算額三千五百億円のうち、昭和五十五年四月五日から同年十二月十九日までの間において使用決定いたしました一千三百九十九億九千五百三十五万円余につきましては、すでに第九十四回国会において御承諾を得たところであります。  その後、昭和五十六年一月二十七日から同年三月三十一日までの間において使用決定いたしました金額は、一千百二十億七千八万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、公立学校施設災害復旧に必要な経費等の四件、その他の経費として、国民健康保険事業に対する国庫負担金不足を補うために必要な経費等の二十三件であります。  次に、昭和五十五年度各特別会計予備費予算総額三兆三千四百四十三億九千五百六万円のうち、昭和五十五年十一月二十五日から同年十二月九日までの間において使用決定いたしました百十一億七千七十四万円余につきましては、すでに第九十四回国会において御承諾を得たところであります。  その後、昭和五十六年二月七日から同年三月二十七日までの間において使用決定いたしました金額は、一千八十二億五千四百四十万円余であります。  その内訳は、外国為替資金特別会計における国債整理基金特別会計へ繰り入れに必要な経費等特別会計の十一件であります。  次に、昭和五十五年度特別会計予算総則第十一条の規定により、昭和五十五年九月二日から同年十二月十九日までの間において経費増額決定いたしました二百三十六億二千五百万円余につきましては、すでに第九十四回国会において御承諾を得たところであります。  その後、昭和五十六年三月十三日から同年三月二十七日までの間において経費増額決定いたしました金額は、六百五十一億六千七百四十一万円余であります。  その内訳は、資金運用部特別会計における預託金利子支払いに必要な経費増額等特別会計の三件であります。  次に、昭和五十六年度一般会計予備費予算額一千六百四十二億円のうち、昭和五十六年五月一日から同年十二月二十五日までの間において使用決定いたしました金額は、四百三十四億四千四百八十八万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業に必要な経費等の十一件、その他の経費として、広島県選挙区選出の参議院議員補欠選挙に必要な経費等の二十三件であります。  次に、昭和五十六年度各特別会計予備費予算総額三兆七千六百五十一億四千六百八十七万円余のうち、昭和五十六年十二月八日から同年十二月十五日までの間において使用決定いたしました金額は、十二億五千七万円余であります。  その内訳は、農業共済保険特別会計農業勘定における再保険金不足を補うために必要な経費及び港湾整備特別会計港湾整備勘定における退職手当不足を補うために必要な経費の二件であります。  次に、昭和五十六年度特別会計予算総則第十一条の規定により、昭和五十六年九月十八日から同年十二月十五日までの間において経費増額決定いたしました金額は、八十五億九千四百二十五万円であります。  その内訳は、治水特別会計治水勘定における河川事業及び砂防事業調整に必要な経費増額等特別会計の七件であります。  以上が、昭和五十五年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外二件、並びに昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外二件の事後承諾を求める件の概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御承諾くださいますようお願い申し上げます。  次に、昭和五十五年度一般会計国庫債務負担行為総調書及び昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その1)の報告に関する件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十五年度一般会計におきまして、財政法第十五条第二項の規定により、災害復旧その他緊急の必要がある場合に国が債務負担する行為をすることができる限度額一千億円のうち、昭和五十五年発生河川等災害復旧事業費補助につきまして、昭和五十六年二月二十七日の閣議決定を経て、総額百四十三億二千八百万円を限度として債務負担行為をすることといたしました。  次に、昭和五十六年度一般会計におきまして、財政法第十五条第二項の規定により、災害復旧その他緊急の必要がある場合に国が債務負担する行為をすることができる限度額一千億円のうち、昭和五十六年発生直轄河川災害復旧費につきまして、昭和五十六年十二月十五日の閣議決定を経て、総額四億六千万円を限度として債務負担行為をすることといたしました。  以上が、昭和五十五年度一般会計国庫債務負担行為総調書及び昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その1)の報告に関する件の概要であります。  以上であります。
  4. 永田亮一

    永田委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  5. 永田亮一

    永田委員長 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  6. 井上一成

    井上(一)委員 まず私は、大蔵大臣に、去る六日、伊藤防衛庁長官が、国民は国、内閣政府などを行政主体として、甘え、ゆすりたかりの対象としか見ていない。国に対して求めるのは、ゆすりたかり、おねだりのようなことばかりだ、と話されたわけです。さらには、防衛意識を強調する、その強い意識の中で、一億一千七百万人の国民をつなぎとめるのは何なのか、防衛でなければならない、防衛国民連帯感のあかしとして新しい国家観をつくり上げねばならない、このように防衛懇話会講演をされたわけであります。このことが今日の国会の中で審議の停滞をもたらした大きな原因でもあるわけであります。  私は、率直に大蔵大臣が今回の伊藤防衛庁長官のこの講演をどのように受けとめていらっしゃるのか、まずはそこから聞いておきたいと思います。
  7. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 中身については余りよくわかっておりません。ただ、失言その他と言われたので、新聞に載っておりましたから、中は見ませんが、私は伊藤君にしっかりしろよと言ったのであります。だれがそれを言ったのか知りませんが、一部の新聞大蔵大臣激励と書いてあったそうでありますが、私はしっかりしろよと言ったことであります。
  8. 井上一成

    井上(一)委員 何をどのようにすることが大蔵大臣のしっかりせよというそういうことになるのか、また今回の伊藤防衛庁長官発言について大蔵大臣としてどのように受けとめていらっしゃるのか、その点についてお尋ねをします。
  9. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私のしっかりしろよというのはいろいろにとれるかもしれません。ともかく失言にならないようにしろとか、それから余りぐらぐらするなとか、いろいろとれるかもしれませんが、要するに私はしっかりしろよと言ったのでありまして、要は、私としてはその言葉遣いその他で、悪く言えば失言という点があろうかと思います。私としては伊藤君の真意はどうか知りませんが、要するに国民国家は同じものでございますから、国家は自民党のものでもなければ他党のものでもありませんし、国民のものでございます。したがいまして、国の財政というものは終局的には国民と同じものであるというように私は考えております。  したがって、何でも国に依存をするというような、ややもすれば高度経済成長時代の風潮というものはどこか間違っているのじゃないか。国に依存をするということは、そのときは依存をしたように思われるが、結局は自分たち負担をするということと同じことである。したがって、負担という問題を考えると、どういうように予算というものは使った方がいいのか、そういうような点から、やはり負担の問題を考えながら国に要求をしたりすることが必要ではないか、そう思っておるわけでございます。そういう一般論であります。
  10. 井上一成

    井上(一)委員 大蔵大臣、ではその伊藤発言に対して私の方から二点指摘をして、大蔵大臣見解を聞きましょう。  一点は、そのゆすりたかりというのは、主権を持つ国民を侮った思い上がり発想がそこにあるのではないか、私はこういうふうに思うわけです。これについては、大蔵大臣は、そのとおりだ、あるいはそうじゃないんだ、そうでなければこういうふうに考えているのだ、こういうふうに受けとめている……。  もう一点は、防衛意識余り強過ぎた。そういう路線の突っ走りが国民連帯感というものを防衛意識で結びつけようとしている。このことも私の立場から言えば問題だ、こういうことなんです。だから、国民連帯を結びつけるのは防衛でなければいけないんだ、防衛なんだという趣旨発言について、大蔵大臣はどう受けとめられ、またどのように考えられるか。
  11. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は端的に言って、ゆすりたかりという言葉が大体よくないですね。これは適当な言葉ではない。このことは地方によってなまりとかニュアンスとかは標準語からすればかなり違うかもしらぬが、そういうふうな言葉は妥当ではないと思います。しかしながら、私は同情的に考えておりまして、要するに団体等でいろいろな要求等がかなりございます。中には国会議員という立場から見れば必ずしも妥当でないという強い要求もあります。団体が参りまして、選挙のときに推すとか推さぬとか、そこまで国会議員に言うことはいかがなものであるか。これは決していいことではないと私は思っております。そういうものはゆすりではなくて一つの揺さぶり、揺さぶりかけるという言葉がありますが、そういうものも程度を過ぎるということは余りよくないことであるというふうに私は思います。  それから陳情その他で、ともかくたくさんのものを出せというようなことでかなり激しい陳情もございますが、これもやはり程度問題でございまして、国会議員国民の代表でありますから、それに要求することは何ら差し支えないけれども、それが陳情団の側でもかなり激しいやりとり等があって、そういう場面も私よく見かけますし、ぶつかったこともございますが、やはりそういうものも行き過ぎてはいけない、そう思っております。  それから、防衛連帯という問題については、防衛という問題は何といっても国民の支持がなければできない。私の考えは徹底をいたしておりまして、要するに、防衛装備というものは愛国のシンボルであると思っているのです。したがって、愛国というか防衛意識というか、そういうものがどの程度醸成されるか、それによって決まっていく問題でございますから、装備だけがずば抜けて先に進んでも、国民がついていけなければわら人形みたいな話になりかねない問題でもございます。  したがって、本当の真の防衛力とは、国民理解協力の上に立って、その施設なり装備なりがいざというときに国民と連係プレーして動けるようなものでなければならない、私はそう考えております。余り形だけが先に進んでしまうというのもいかがなものであるか。やはり常に国民理解協力を深めつつ、その上に立って防衛力というものが整備されて初めて国を挙げての防衛体制というものができるのではないか。そこは遊離してはいかぬ。だから、私はアメリカなどに参りましても実はそういうことをはっきり言っているのです。  アメリカ日本とは事情も非常に違いますから、日本には日本防衛力整備というものがあるのだ、だからその戦術というようなものについては先進国であるアメリカの意見などを大いに取り入れてやっていかなければならないけれども、日本国民が全く理解できない形のものは、幾ら金をかけても日本防衛に役立たないということでございます。では、日本国民全部一緒になれるかどうかということはなかなかむずかしいけれども、少なくとも大多数の国民理解できる程度のものというように考えておりますから、防衛連帯と一口に言っても装備だけで連帯感ができるものではない、そう思っております。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 装備に直接結びつけての答弁ですけれども、大臣、私は防衛をいわゆる国民連帯の手段に利用してはいけない、そういう発想に立ちたいわけです。さらには、防衛をすべてに優先させていくということは危険であるというのでしょうか、必ずしも妥当でない。もう一つは、国を愛する、国民がみずからの国を愛せる政治が必要である。そういうことになると、防衛意識というものは国民的合意、上からの押しつけでない下からの、国民から盛り上がっていくところに生まれてくるものである。そういうこと等、今回の伊藤発言というものは少し発想を誤っていた。  さらに、防衛意識が過剰過ぎて国民に十分な——さっき、ゆすりたかりの話で陳情団云々をとらえて話されました。それは大蔵大臣あるいは伊藤防衛庁長官の経験をなさったことなのかもわからないけれども、国民大衆が正当な行政需要を求めている、この声を率直に受けとめれば、私は、そんなに伊藤防衛庁長官が言いわけをするような趣旨での発言にはならなかったと思うのです。  それで、この問題について、大蔵大臣は答えにくいだろうと思いますけれども、私は、やはり平和憲法に対しての現職閣僚一つの挑戦の姿勢だというような表現もあります。確かにそう受けとめられます。しかし、要は、やはり伊藤防衛庁長官発言というものは間違いである。それからあなたが、しっかりせいよと当初に言われたことは、もっとしっかりとしたものをちゃんと現職閣僚はみずから持つべきである、政治家としての一つの理念、信念。そして善意に解釈するならば、舌足らずだ、誤解だ、不穏当な表現だと言っていますけれども、私は、それは本当にだらしのない、情けない、無責任な言いわけにすぎぬ、政治家はきっちりと自分なりの信念を披瀝すべきである、そう思うなら思うと。それを国会の場で論議すべきだと、私は大蔵大臣にそこを問いたいわけなのです。  私は、伊藤防衛庁長官みずから、これは謙虚に反省をしなければいけない、一言で言えば。言いわけなんてだらしがないじゃないか、現職閣僚で、そういうことなのですが、大蔵大臣発言されたものじゃないのですけれども、やはり現職閣僚の一員であるということ、今度は連帯した政府の責任、政府として、これは大蔵大臣伊藤防衛庁長官発言なんというのは、ケネディの発言をどのように引用しようが、財政状況の苦しい今日の行政の実情をどのように訴えようが、要は根本的に誤っている、私はこう思うのです。防衛論議防衛論議で、また機会をとらえて私は発言をしたい、質疑をしたい、装備云々も含めて。  きょうは、伊藤防衛庁長官発言それ自体について、やはり大きく反省をすべきであり、これは国民に対して大変失敬な、あるいは間違った認識に立っている、こういうふうに私は指摘をしたいわけです。大蔵大臣に重ねて、しっかりせいよと言ったことは、まさに私と同じような見解の中で激励をされた、激励というのでしょうか、そういうことを言われたのか。もっとしっかりせにゃいかぬというのは、もっとがんばれという、むしろ逆に、その伊藤防衛庁長官の考えている、意図していることに拍手を送ったのか。まさかそうじゃないと思いますよ、そうじゃないと思うけれども、そういうことであれば、この問題でずうっとこれから私の持っている一時間をやらなければいかぬが、そういうことはないと思うけれども、念のためにもう一度聞いておきます。率直な所見を大蔵大臣、話してください。
  13. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私が発言したわけじゃありませんから、私も、どういう真意でどういうふうな発言をしたかわかりませんが、要はしっかりしてくださいということ以外は特別につけ加えることはありません。大体私の前のお話を聞いておれば、全体として大体おわかりじゃないか。私は、別にゆすりたかりがいいことだからそういうふうに言いなさい、そんなことは言うわけがないわけでありますから、前の私が答弁した内容を聞いてもらえばよくわかるわけでありまして、それは言葉遣いその他十分に気をつけて発言しなければいかぬし、私はそういう意味のことを言っているわけであります。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 私の質問を十分に聞いておけば、もっと正しい答え、正しいというか本当に簡潔に、要領よく答えられるんですよ。言葉遣いの問題ではないということですよ。あなたは言葉遣いの問題としてこれをとらえているのですか。考え方の問題、意識の問題だとして私は質疑をしているわけなのです。何をおっしゃっているのです。あなたの、しっかりせいということは、どういう意識をあなたは持って、伊藤防衛庁長官と同じような意識なのかと私は聞いているのです。私の質問を聞いて明確に答えられるでしょう。そんなもの言葉遣いじゃないよ。
  15. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は長々と話しているわけですから、簡潔に言えば、あなたがおっしゃったような意味伊藤発言というものをとらえれば、それは穏当ではないということでありまして、私は、しかし必ずしもそういうような意味発言したのじゃないだろうという善意の解釈で物を申し上げたわけでございます。しかし、ゆすりたかりというような言葉を使えば、よくはとられないのはこれもあたりまえでありますから、もうちょっと別なことを考えて言ったのだという話も後から聞いていますからね。だけれども、それならそのようにもっとしっかりした発言をしてもらわなければ困るわけですから、しっかりしろと言ったわけであります。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 いま、何か後目の方では、われわれが受けとめているような認識で発言をしたのじゃないというふうに後で聞いたということですね。それならどういうふうにあなたに防衛庁長官は言われたのですか。
  17. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、新聞で見ただけでございますから詳しいことはわかりませんが、国民国家に何を求めるかよりも、みんな国民国家に何を尽くせるかということを言いたかったのだというように聞いておるから、それならそのようにはっきり言えばいいわけであります。そういうような意味のことで、私は、そういう意味ならば別に間違っていないし、しかし、ゆすりたかりというようなことを国民がと言えば、全体の国民のように与えることでありますから、そういうことはしっかりしてもらわなければ困るということであります。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 渡辺大蔵大臣が考えていらっしゃる国民連帯感連帯意識連帯を結ぶ糸、これは何に置かれていますか。
  19. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 国民連帯意識というものを何に置いているか、これはなかなかむずかしい御質問でございまして、きわめて抽象的な話でございますが、国民連帯して考えておることは、やはり国家の平和、安全それから生活の充実、こういうようなことが国民連帯意識としてあるのじゃないか、私はそう思っております。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 私は、このことで多くの時間をとりたくないのですけれども、伊藤防衛庁長官が、防衛連帯の糸にした、これはけしからぬと思う。むしろそれよりも、国民がいま生きていくことへのお互いの協力ということですね、そのことが平和であり、安全であり、そのためにそれぞれの個人がどうしていくべきなのか、そういうことならそれなりの論議があろうと思うのです。福祉の問題一つをとらえても、やはりどこかで弱い者が置き去りにされているというのでしょうか、切られている、あるいは切っていこうとする、別に行政改革全般を云々という意味じゃありませんけれども、やはり一人の国民といえども、生きていく、そのための声を大事にしていかなければいけない、それが、万人が全部そのことにおいて連帯を深めていく、やはりそういうことから始めていかないと、防衛防衛と言って防衛を上から大上段に構えて国民に押しつけていって、それが国民連帯意識なんだという観念は間違いだ、私はこういうふうに思うんですよ。それはいかがですか。
  21. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これももう私が長々先ほど言ったとおりでございまして、防衛というのは何なんだ、と。(井上(一)委員「一緒かどうかということで、もう長々と要らない」と呼ぶ)ですから、私は、防衛というのは、そんな武器をそろえるだけで日本防衛は成り立たぬのですよ。それはやはり国民の郷土愛とか連帯意識が全部一緒にならなければならぬ、そう思っております。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 このことについては、大蔵大臣、あなたは茶の間にすっと飛び込むだけの器量もある人ですよ。郷土愛とかどうとかいっても、いま生きられないような状態で行政が対応しては全く迷惑至極なのです。そういう意味では、あえて、いまの政府国民の真っ当な行政需要にこたえられているのかどうか、まずは足元から反省をした上で行政に取り組んでもらわなければいけない、こういうふうに私は思うのです。大蔵大臣は私の見解について、本当に本音では納得できると思うのです、さっきからの防衛庁長官の話も含めて。大蔵大臣だからちょっとそこは発言しにくいのだというところもあるかもわからないけれども、そういう意味大蔵大臣、やはりそういう行政需要に対して不十分であるという認識の上に立って行政を進めていただかなければ、私は国民の安全、平和はつくり出していけない、守っていけないというふうに思うわけです。防衛庁長官の発言は、私から言えば悪い見本だ、悪い見本だけれども、大蔵大臣国民から遊離しない行政をひとつ真剣にしっかりやってもらいたい、こういうふうに思います。  次に、先日、小坂運輸大臣が、関西新空港の問題について地元関係者との会合で、政府が全額関西新空港計画について負担するわけにはいかない、いわば地元負担という意向を明らかにされたわけです。小坂運輸大臣が地元負担の意向を明らかにされた、近い将来、渡辺大蔵大臣ともじかに話し合いたい、そういう意思が報道されました。大蔵大臣は、じかに運輸大臣からこういう考えの中で話し合いを持ち込まれた場合には受けるのか、あるいはこういう地元負担ということについての大蔵大臣見解はどうなのか聞いておきたいと思います。
  23. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これこそ私の方は意識がそこまでいってないわけであります。調査の結果がまだ出てないわけですから、もっと調査をしてその上でどうするかという問題で、地元負担とかどうとか具体的なところまで私の方はまだいっていないのです。そこをなにとして、泉州沖を基本として調査を進める、その調査の結果採算性その他環境、必要な経費、だれが負担するかという問題等はその後の問題である、そう思っております。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 まだ話し合いの段階でないということですね。わかりました。  それでは、今度は一般論として大蔵大臣にお聞きをしておきたいのですけれども、いま財政再建は税収の落ち込みでいろいろ大変な時期だと思うのです。そういう折に、このような大型プロジェクトについて、一般論として、いわゆる全額政府負担あるいは一部、半分とかは別にして一部地元負担、さらには全額民間資金、こういうケースがありますね。いまの日本の経済の情勢も含めて、より望ましいのは、一般論として、現状での現実的な施策としては、大蔵大臣、どの道でしょうか。
  25. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 全額政府負担ということはちょっと考えられないのじゃないか。それはみんな民間でやってくれればいいことには決まっておりますが、全額民間といっても、これもなかなかむずかしい話じゃないか。将来採算性の問題という根本問題がありますから、そういう点で、採算も何とかとれる、環境上も特別問題はないということになれば、できるだけ民間資金の活用というものは当然に考えていかないと、ここ五年、七年の間にやると言うからには現実的でないのじゃないかという気がいたします。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、民間負担の中でも、いわゆる債券引き受けのような形での官民協調、それと純粋な民間資金の負担、二通りあるわけですけれども、一般論として大蔵大臣としてはどちらを望まれますか。
  27. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これもまだそこまで考えておりませんが、極力民間資金の活用ということでも、政府がそれの利息をみんな払うとかなんとかいうのであれば同じ話ですから、政府が直接やったことと大差ないということになって、政府負担は非常に莫大になるということになるので、やはり民間資金の活用と言うからにはかなりのものは民間で持ってもらう、そのかわり、それで採算のとれるような、返済の財源になるようなものも与えていくとか、何かそんなことしかないのじゃないか。また、具体的に詰めておりませんから大阪空港に限定してどうこうということを申し上げる段階ではありません。一般論とすればそういうようなことが望ましいのじゃないかなという気がしておるだけであります。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 私は一般論として聞いたまでで、関西新空港については運輸大臣とは大分次元というのでしょうか取り組みのテンポが違うわけです。大蔵は、関西新空港については前々から非常にシビアな立場に立っておるわけですね。  今度はもとへ戻しまして、一般論でなく関西新空港の問題に戻します。地元負担のそういう話し合いが出てきたあるいは出てくる、そういうことは渋い大蔵との話し合いというのでしょうか協議というのでしょうか、そういうことへのスムーズな移行に入ることになるのでしょうか。
  29. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  先生のいまのお話でございますが、地元負担があるからないからこの空港をつくるつくらないという話の前に、先ほど大臣が申し上げましたように、この空港をつくりましたときに空港自身として採算に乗るのか乗らないのかということが基本でございまして、その採算に乗るか乗らないかという場合に、たとえば、先ほど来一般論として御議論がございましたように、どういう形の地元負担があった場合に採算に乗るとか、どの程度の地元負担があったときに採算に乗るとか、それがあっても採算に乗らないということになるのか、その辺との絡み合わせというのが基本にあるわけでございますから、地元負担をするからしないからといってこの問題が進行する進行しないということにはならないのではなかろうかと思います。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 大蔵がいま懸念しているのはやはり採算性の問題でしょうか。
  31. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 採算性の問題が一番大きいと思います。採算性の問題、ですから資金量の問題ですね。それから私どもプロパーの問題じゃないかもしれませんけれども、環境の問題等々、いろいろその他の問題があることは御承知のとおりであります。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 せんだっての十九日の決算委員会でも、鈴木総理は、航空審の答申を尊重して、さらには地元の意思を十分尊重してというような、関西新空港についてはお答えがあったわけです。現大阪国際空港はすでに欠陥空港として強く地元住民、さらには私どもも含めてその対応を指摘してきたわけでありますし、今日、最高裁判決後どういうような速やかな対応を優先してとられたか、さらには周辺整備について、これは私が北門の開放ということで当委員会でも再三申し上げたわけでありますが、運輸省としては開放にこぎつけるという約束はしているのですけれども、きょう運輸省の担当を呼んでおきましたので、ひとつ関連してお答えをいただきたいと思います。
  33. 栗林貞一

    ○栗林説明員 先生お話しございました大阪国際空港周辺での対策の問題でございますが、先ほどお話しございましたように、昨年十二月に最高裁の判決もございました。私ども、その前から周辺の対策といたしましては、一つには発生源対策、これは低騒音機を導入するといったことをやってまいりましたけれども、これは今後とも鋭意努力して続けていきたい。それからいわゆる周辺住民に対する対策といたしまして、これは十二月十六日の最高裁判決に関連いたしましていろいろ実は要求が出されました。環境基準の早期達成の問題とかそのほか周辺整備の問題、いろいろございましたけれども、住民の方々と何回か話し合いをいたしまして、重点をしぼりまして、できるものから早くやっていこうということで誠意を持って取り組みつつあります。今後ともよく話し合いをしながら努力していきたいというふうに考えております。  それからもう一つ、先生のおっしゃいました北門の開放の問題でございますが、これは一昨年先生から御指摘がございまして、その後、国、地方公共団体あるいは警察も含めまして数回相談をいたしまして、昨年の夏に大体の方向が決まりまして、あそこは北門から出るところと入る、両方の交通があるわけでございますが、やはり交通の流れの問題、それからそれに関連した安全の問題から、当面は出る一方通行で門を開こう、将来は双方交通とする方向で検討していこうということで大体の合意ができまして、その線で整備をやってまいりました。飛行場内の道路については五十六年度末で大体完了いたしております。また、場外の道路につきましては池田市が実施するということで国も一部費用を負担するというかっこうで現在工事を実施中でございます。これができ上がりましてできるだけ早くということで、六月の下旬、六月の二十三日をめどに開放をということで努力しておるところでございます。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 現空港の欠陥空港としての対応をさらに十分推し進めてもらいたいということを要望しておきます。  次に、私はアパルトヘイトの問題について一、二尋ねておきます。  昭和五十三年の大蔵省告示第二十七号、それによると、日本はアパルトヘイト政策に反対する国連決議に従って政府が対南アフリカ共和国への直接投資を禁止しているというのがあります。現状はそのようになっているのかどうか、まずその点から聞いておきます。
  35. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 五十三年度から御指摘のようなふうになっております。
  36. 井上一成

    井上(一)委員 現状は守られているということですか。
  37. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 国連で調べました貸付金のリストには日本の海外における現地法人の名前が挙がっておりますが、今回先生の御質問に関連して調べてみたところ、残高がゼロでございます。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 私が質問するからその残高がゼロになったのか、私の調査では日本の資本がいわゆる第三国に別会社をつくって、その銀行が直接南アに対する融資等をしている、そういうことなんです。私は、そういう第三国に別会社をつくっているわが国の企業に対する行政指導はなされているのであろうかということも聞いておきたかったわけなんです。今日残高がゼロであるけれども、過去においてそういう経緯があったのかどうか、あったとしたら大蔵としてはどういうような行政指導をしたのか、そういう点についても答えてください。
  39. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 過去におきましては南アのボンドを引き受けたりなんかした例もございます。それで、今度調べたらなかったという意味は、かなり前からないわけでございます。  第二点の海外における本邦の子会社がそういうことをやっておる、居住者の場合、要するに日本の企業の場合は全く許可制になっておりまして、許可をしないわけでございます。そこでそういう海外の現地法人の場合に問題になってくるわけです。これらにつきましては、法律の観点からいいますと管轄権が及ばないわけでございますが、資本関係を通じましてそういうような行政指導を行うことが可能かどうか、たとえば五割資本関係があればかなり影響力があるわけでございますが、中には五%とか一〇%のものもございます。その辺、いろいろケース・バイ・ケースでございますが、何らかの方法によってそういうことのないように指導する可能性は検討したい、そう思っております。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は外務省に尋ねたいのです。  昭和四十九年六月五日に外務省の情報文化局は南アとのスポーツ、文化、教育交流の停止についてとの通達を出しているわけなんです。実は先日、これはいろいろと問題があったわけですけれども、世界ジュニアフライ級のタイトル戦が、例の、前の会長が金平氏である協栄ジムの渡嘉敷とメキシコのルペ・マデラとの間に日本で行われたわけです。このタイトル戦の主審にクリストドール氏が当たったわけであります。私の調べではクリストドール氏のわが国への入国は観光ビザで入っているわけなんです。通称観光ビザではそのようなことは行えないわけで、文化活動、公開興行等の目的の者が訪日する場合は特定ビザだとか——クリストドール氏はボクシング界では有名な方なものですから、外務省がどのような認識で観光ビザでの訪日を許したのか。この点について事前に外務省にはビザの種類を私は聞いたのですが、今日まで連絡がないわけです。私の調べでは、八二年二月十二日南アフリカ共和国在プレトリア総領事館において観光ビザが発給されている、こういうことなのです。この経緯はどうなのでしょうか。またそのような場合への対応、目的外での入国、そういうことについてどういう対応をされたのか、これは外務省に聞いておきます。
  41. 斎木俊男

    ○斎木説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり本年二月十二日、在プレトリア総領事館におきまして、若干姓名が記録簿においては違っておりますけれども、当該の人物と思われる南ア人に対しまして観光査証を発給したことは事実でございます。これは私どものとっております査証の発給制度におきましては、観光査証は南アの場合におきましても現地で出せることになっておりまして、かつその発給の基準というのは申請に基づいているわけでございます。もちろんその申請自身が、観光といいましてもその他の目的を示唆するようなものがあれば当然別の角度から検討するわけでございますけれども、この人物の場合には観光が目的である、それだけでございましたので、これに基づいて観光査証を発給したということでございます。  ただ、この南アの人の場合には、わが国の政策もございますので、観光査証を発給する際には一つの注記を付することになっております。これは英語でやっておりますので要旨だけ申し上げますと、この査証を有する者はいかなる形の国際会議あるいはスポーツ競技にも参加する資格がない、こういうことでございます。これは査証に明確に付されておりますので、本人にもわかっていたはずでございますので、どうもこれは本人が犯したミスであるというふうにわれわれは考えております。これに対しましては、しかるべき時期をとらえまして、本人に、場所がどこになるかこれはわかりませんけれども、本国に帰りておれば本国で厳重に注意をしたいと考えております。
  42. 井上一成

    井上(一)委員 事前に承知をしていなかった、観光だけだ、本人の申請、申告ということですけれども、私の方では勘ぐれば切りがないわけで、私はもう一度、申告を善意なものとして処置をした、しかし事実関係は、観光でなく禁じられているそういう行動があったわけですから、不法に入国をしているわけなのですから、これに対してはさらに十分な対応をするということですね。
  43. 斎木俊男

    ○斎木説明員 ただいまの点につきましては、入国自身が不法であったとは断定できませんけれども、本人が目的と称しておったのに反した行為をしたわけでございますから、その点につきましてははなはだ遺憾でございます。厳重に注意をしたいと考えている次第でございます。
  44. 井上一成

    井上(一)委員 私は、申告を善意という受けとめ方をすれば不法でないかもわかりませんが、南アからの入国、そういうスポーツ関係、興行関係についての入国は禁じられている、そういう観点からすれば正当でない手段を講じて入国した、こういうふうにも思うわけです。それは、ボクシング界に対するきっちりとした外務省の姿勢というものは伝えるべきではないだろうかと私は思うのですけれども、その辺はどうなんですか、本人にだけの注意、忠告なんですか。いわゆるわが方での受け入れ、そういう興行の主催者に対しては外務省は、これは経緯等もあることですから、何らかの措置が講じられるべきではないだろうか、こういうことなんです。
  45. 斎木俊男

    ○斎木説明員 御指摘のとおりと考えております。ただ、その点に関して申し上げますと、この方は世界ボクシング協会から派遣されてレフェリーを務めたようでございまして、厳密に申しますと、われわれがストリクトに禁じておりますのは、南アの代表としてスポーツ等に参加するという点でございますので、協会の方では必ずしも、あるいは南ア人ということで意識を持たれたかもしれませんけれども、これは世界ボクシング協会の方の派遣だからという点であるいは例外のように考えておられたかもしれません。この点は協会と御連絡いたしまして、要すれば、さらに認識を持っていただくように措置したいと考えております。
  46. 井上一成

    井上(一)委員 少し財政問題に入るのがおくれましたが、それでは大蔵大臣財政問題についてお尋ねをします。  先月の十九日に当委員会で、私の質問に対して大蔵大臣は、国債のとらえ方について「国債の多様化、消化の円滑化、こういうことを考えていかないと、」というような答弁があったわけです。国債の多様化ということについて何か考えていらっしゃるのか、大蔵大臣に聞いておきたいと思います。
  47. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これだけたくさんの国債が発行されますとその消化が容易でありません。したがって、何かうまい手はないか。中期国債等あるいは割引国債というようなものも多様化の一つでありますが、これについては割引債などは銀行が余り出すことを好まない。一方銀行にもかなりのシ団引き受けをやってもらっておるというような難点もあります。しかしながら、何かいい工夫があれば国民の皆さんから知恵をおかりをして今後の問題に備えたいということで、具体的にまだこれというように詰まったものはございません。
  48. 井上一成

    井上(一)委員 さらに五十六年度での税収不足が多額に上るというふうに報じられているわけです。現在とらえている、現時点での五十六年度の税収不足は一体どれくらいを見込んでいるのか。  さらに、赤字国債発行の増加を抑えていくというのでしょうか、赤字国債をこれ以上発行できない、そのことは財政再建あるいは政府が約束したことに背くわけですから。それで、現在税収で賄っている、いわゆる経常収支の中での投資部門を建設国債に切りかえて、経常収支、いわゆる税収を浮かしていこう、経常支出を抑えていこうというような考えがどうもにおうわけです。ここらは、まさかそんなことはないだろうと思いますけれども、この点もきっちりしておきたいと思うのですが、五十六年度の税収不足と、いま申し上げた赤字国債を食いとめる一つの便法として建設国債に切りかえていこうという考えを持っていらっしゃるのではないか、こういうふうに思うのです。
  49. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 なかなか税収の不足というのはよくわからない。正確に言えと言えば、三月の決算がまだ五月の申告がないからわかりませんというのが公式答弁。これは実際そのとおりなんです。しかし、仮にいままでの推移でずっと延ばしていけばという仮定がつきますと、昭和四十八年には二〇%よけいに税収があった、昭和五十年には二〇%見込み不足だったというようなものがありますが、それほど極端ではないだろう。大体数%と言ったのですが、だんだんこれが大きくなってきて、事によると一〇%、所定の予算見込みに対して一〇%ぐらいのものは、わからぬわけですから、あるいは心配されることもあり得るのじゃないかという人もあるわけです。  赤字国債の食いとめということにつきましては、一方、歳出の削減はかなりやっておりまして、五十七年度はともかく一・八%しか一般歳出は伸びてないわけですから、これを年度途中でさらに大幅にダウンといっても実際問題として非常にむずかしい。いま言ったのは五十七年度ですね。  今後の話でございますが、これはかねてから、井上委員指摘するのはいわゆるガソリン税とか自動車税とか、そういう話だと思いますけれども、そういうものが一般財源として使われるということは望ましいことである、私はそう思っておりますが、いままでのいろいろないきさつその他からなかなかむずかしい問題がある。私は望ましいと思っておるのです。しかし、非常に現実はむずかしいということも事実であります。
  50. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、私はガソリン税云々じゃないわけですよ。もっと具体的に戦時中の戦時国債を例に見ても、いわゆる防衛予算というものが建設国債で振りかえられていくことに私は危惧を抱いているわけなんです。だから、たとえば自衛隊の宿舎だとか格納庫だとかというものは建設国債でやればその分の支出は一応数字上は助かるから、そういうことで一般経常収支のバランスが崩れていくとそういうことを考えかねないわけなんです。そんなことはありませんなということ、そんなことは絶対いたしませんということならそれでいいわけです。大蔵大臣、いかがですか。
  51. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 技術的にまず最初に……。  先生のいまのお尋ねでございますが、建設公債の発行対象は御承知のように財政法四条で公共事業費、出資金、貸付金ということに決まっております。その公共事業費というのは一体何だということでございまして、この中に入るか入らないかという話になるわけでございます。公共事業費は何かということにつきましては、かねてからいろいろ国会等で御議論いただいておりますが、これまでのところ定説になっておりますのは建設的または投資的な経費、つまり経費支出の見合いが資産となって後々まで残るという、資産の見合いがあるということと、その資産があることによりまして国民全体が利益を享受することができて、回り回って国民経済の発展に資するものだ、こういうことになっておりますから、そういう線でいままでやってきているわけでございまして、いままでの考え方で申しますれば、自衛隊の関係の経費というものはこの中に入ってこないだろうということで入れていないわけでございます。  それで、これをいま直すのかということでございますが、私どもいまそういうことを検討はいたしておりません。
  52. 井上一成

    井上(一)委員 段取りが悪うなって、都合が悪うなるとすぐに理屈をつけて変えていきたいというのが役人の発想ですから、大蔵大臣、これは決してそういうことに流されてはいけない、こういう警鐘を鳴らしておきたい。それはこの一日の国債の発行等に関する省令の改正によって一年未満の国債発行を可能として取り組んだわけですね。これも歳入欠陥を補うという、一時しのぎだと思うのですよ。一時しのぎだけれども、そういうような対応をしていることについて。さらに、五十六年度の税収不足は一説には二兆五千億、大蔵大臣はいまパーセンテージで言われたわけですね。これはもちろん経済見通しが誤っていたということだけで片づけられる問題ではないわけですけれども、五十六年度の税収見込みを基準にして見積もった本年度予算はさらにその税収見込みにも当然その影響が出てくる。五十七年度予算もいわば減額補正が必要になるのではないか、こういうことについての見通し。  それらを踏まえた中で、大蔵大臣としては、経済政策を今後修正というのでしょうか、考え直さなければいけないというような立場に立たされるのではないだろうか、これは私の思いなんですね。こういう点について、あと時間ありませんから、ひとつわかりやすくというか質問のポイントをきっちりととらえてお答えをしてください。
  53. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結論から言うと、五十七年度は予算が発足したばかりで、まだ一カ月ぐらいの状況ですから、わからないというのが結論でしょう。しかしながら、経験値に基づいた推測としては、いま井上委員が御指摘のように、五十六年度の発射台が低くなればそれを土台に見積もった五十七年度も少し低くなるのじゃないかという心配があるのも事実でございます。もう少し様子を見ないとわからないということであります。
  54. 井上一成

    井上(一)委員 経済政策についてはいかがですか。
  55. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 経済政策について変更と言っても、日本の経済は世界の経済とつながっておりまして、世界の経済からかけ離れた経済を長く運営するということは、自由主義貿易体制をとっておる日本としては非常に不可能に近いことではないかと私は思っております。したがって、ここでまるっきり転換をするといっても転換のしようがない、方法がない、効果がない。踏み外すというと物価値上げということになりかねない。どちらがプラスかマイナスかということも考えて慎重に対処する必要がある。したがって、物価を極端に上げない。そのことはいけない。多少政府に犠牲があっても、この際は世界の経済が動き出さなければ日本だけが先へ飛び出してしまって動くというわけにはいかないわけですから、そういうような問題とのにらみ合いの中で考えていかなければならぬ、そう思っておるわけであります。
  56. 井上一成

    井上(一)委員 さっき言った、一日に改正された国債の発行に関する省令については一時しのぎではないだろうかということに対する答弁と、大蔵大臣、時間がありませんから、経済政策についてはいろいろの見地から検討が必要ではないだろうか。税収の落ち込みも国民所得、とりわけ賃金の抑制ということはむしろ税収の落ち込みにつながったと私はとらえているわけです。そんなことから考えて、急激に、一遍に急カーブを切れるようないまの体制ではないけれども、景気浮揚策というものについて大蔵大臣はしっかりと見定める必要があろうというふうに思います。  一日の省令改正と、もし大臣にさらにつけ加えてもらえるならば、経済政策についての見解を尋ねて、私の質問を終えます。
  57. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 省令改正の問題は政府委員から答弁させます。  経済政策の問題については先ほど言ったとおりでございまして、問題は、確かに名目的な賃金、名目的な物価が上がれば税収はふえます。狂乱物価のときなどは、思いがけない二〇%も税収がふえるわけです。税金は名目に課税するのであって実質には課税いたしません。一〇%賃金が上がって一〇%物価が上がればその人は何にもなりませんが、しかし税収はがばっと入ります。これも事実でございます。しかし、それでは国民生活は楽にならないわけでございます。  ことしは幸いに、景気は停滞しているとはいいながら実質的な賃金が少しでも伸びているということは、物価が予想外に低いために税収が伸び悩んだけれども、国民生活は安定しておって、春闘でもストライキもなく平穏に、全部世の中が静かであるということは、考え方によっては、物価が思ったよりも急上昇したよりも、その方が国民にとってはいいんじゃないかというような気が私はいたしておるわけであります。  したがって、それらの見合いで、名目的なことだけをやる気ならばやってできないことはないと私は思いますけれども、そのことは極端にやるとインフレをもたらしただけということになっても困ることでございますから、やはり世界の経済が半年、一年というタイムの中で底からはい出すという状況でございますので、日本もその間、こらえるべきものはある程度こらえていくことの方が無難じゃないか。しかしながら、私は景気対策をやらないという意味ではありません。効果のある景気対策は真剣に考えてまいりたいと思っております。
  58. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 省令の改正につきまして私からお答えを申し上げます。  国債の発行に関連いたしまして国債の発行等に関する省令というのが出ております。これは国債の発行の種類あるいは引き受けの方式、さらに告示、こういった事務的な規定を並べたものでございます。私どもは、今回若干整備をいたしまして、その中で国債の定義というものを直しまして、国債に関する法律に言う国債と申しますのは「一年以上のもの」というように書いてございましたものを、一年以上というのを外したわけでございます。そこで一年未満の国債が出せるようになった、こういうことでございます。ただ、私どもは、現実に一年未満の短期国債をいつどういう形で出すかということにつきましては関係者、特に国債の引き受け団等とも十分協議をする必要がございますし、いま直ちに短期国債を発行するということは考えておりません。規定整備ということで御理解をいただきたいと思います。
  59. 永田亮一

    永田委員長 新村勝雄君。     〔委員長退席、東家委員長代理着席〕
  60. 新村勝雄

    ○新村委員 私はまず最初に沖縄人身被害の補償について伺いたいのですが、昭和五十五年度一般会計予備費使用調書の十ページですね。沖縄における人身被害者特別支出金の支払いに必要な経費として五十五年度の予備費から四千九十二万八千円支出されておるわけであります。沖縄における返還前のアメリカ施政権下における人身被害に対して、政府アメリカに対する請求権を放棄して、そのかわりに政府が「実情を調査のうえ、国において適切な措置を講ずるものとする。」これが沖縄復帰対策要綱にあるわけですけれども、これに基づいて支出をされたというふうに考えますけれども、その所要経費総額幾らであるのか。それから、これが支給が大変おくれているわけですけれども、これが今日までおくれた理由をまず伺いたいと思います。
  61. 山田正美

    ○山田説明員 お答えいたします。  初めに所要額ですけれども、これは二億七千四百七十八万円ということになっております。  先生お尋ねの中でいまごろ処理するというのは遅いのではないかというような御趣旨だろうと思いますけれども、先ほど先生からお話がありましたように、これはいわゆる対米請求権問題に絡む問題でございまして、御指摘のような閣議決定に基づいて措置をしたところでございますけれども、対米請求権絡みの人身関係事案につきましては、実は大きく分けて二つございまして、講和条約の発効前におきます人身事案と、それから講和条約発効後におきます人身事案というふうになっております。  講和前の人身被害につきましては、復帰直後にすでにそういう実態が把握できたということから処理したところでございますけれども、講和発効後につきましては必ずしも実態を十分把握しておらなかったというようなことからいろいろな経緯がございます。  先ほど申し上げました講和前の人身被害について処理されました後、実は地元といたしまして、沖縄県知事それから県下の全市町村長を構成員といたします沖縄返還協定放棄請求権等補償推進協議会というものができておりまして、そちらの協議会から対米請求権に関連する各種補償の要請が出されました。これが三次にわたっておりまして、昭和四十九年それから五十年、五十二年、これで要求が全体として出そろったというような状態になっておりますし、そのほかに沖縄県の漁業協同組合連合会等からも漁業補償に関する要請等が提出されたわけでございます。政府といたしましてはこれらの要請につきまして実態調査を進めたわけでございまして、実態の把握が可能になった事案から順次その解決を図るというような方針で作業をしてまいりまして、昭和五十三年度から五十五年度の三年間にわたりまして漁業関係事案というものを処理いたし、引き続きまして昭和五十五年度に講和後の人身関係事案の解決を見たというような経緯になっております。
  62. 新村勝雄

    ○新村委員 いまのお話では今日までおくれたことに対する御説明としては納得できないわけですが、補償を要する内容、あるいは総額については、これは相当の額に達するわけですけれども、人身被害についてはもうそんなに調査しなくてもこれは直ちにわかっているはずですね。それが今日までこんなにおくれておる。ほかの補償についても、これは早いほど結構なわけですけれども、特に人身被害、貴重な人命を失ったというような事例に対しては、これは可及的速やかに補償するのが政治としては当然の配慮でなければならないわけですけれども、これが同じように今日までおくれておるということですね。これはどうも納得ができないわけです。  それから、これは政府の方の資料によりますと、死亡は件数が百四十六で、それに対する支給額は一億四千八百八十五万九千円、平均をすると百二万、これは大変少ないですね。しかもその内容は、最低は七十三万から最高でも四百三十九万ということで、しかもこれが当時ではなくて現在、現在というか五十五年に支払われておるわけですから、それらの点をひとつ詳しく御説明をいただきたい。  それから、傷害も同じですけれども、特に死亡に対する一件当たりというのは一人当たりになると思いますが、百二万円という非常に少ない額になっておるその根拠をまず伺いたいと思います。
  63. 山田正美

    ○山田説明員 お答えいたします。  初めに、処理がおくれました点について、人身関係事案については特に優先的に措置すべきではないかというようなお話、まことにごもっともでございまして、対米請求権の処理の中で、これも地元の要請でございますけれども、全体の対米請求権の中で人身事案は優先的に取り上げてほしいというような御要望もございまして、全体的な対米請求権の解決に先立ちましてこの問題は処理をさせていただいたというふうな経緯になっておりますことを、一言つけ加えておきたいと思います。  なお、支給額の算定根拠というようなことの御質問だと思いますけれども、実は支給内容につきましてこれは特別支出金と申しておりますけれども、支給基準につきましては、先例であります講和前の人身被害に対する措置との均衡を考慮いたしまして、それに準ずる内容になっておるわけでございます。  補償の内容といたしましては幾つか種類があるわけですけれども、人身の被害を受けました場合に、被害者が負傷または疾病のために療養した場合に、その療養に対して支払いをする。それから、病気のため休業して業務上の収入を得ることができなかった場合、それから負傷または疾病の症状が固定をいたしまして、身体に障害が残ったような場合、それから御指摘の被害者が死亡した場合、それから暴行または脅迫によりまして姦淫をされたというような場合のそれぞれにつきまして、基準収入日額でありますとかあるいは療養日額等を定めましてこれを支給したところでございます。  それで、ただいま人身被害に対する先例といたしまして講和前の見舞い金の御説明をしたわけですけれども、われわれが講じました特別支出金の額というのは、講和前の人身被害に対する措置の単価を基礎といたしまして、それに物価指数それから賃金指数、そういうものによって修正をいたしました被害時点あるいは療養ないし休業した時点の単価を用いて算定をしているものでございます。死亡につきましても、たとえば千日分の休業した場合の額といいますか、そういうものを適正にそれぞれ計算しておりますし、死亡に至ります前に、たとえば療養をするというような場合には、そういう療養に対する費用につきましても、それを積算の基礎に入れているというようなことにしております。
  64. 新村勝雄

    ○新村委員 過去に対する均衡とおっしゃったわけですが、国が支出をするこういった種類のものについてはこれはいわば過去から現在、垂直的な均衡ですね。それに対して、現在の時点でもほかの趣旨で支出されておるものが何種類かあるわけですよ。たとえばいわゆる通り魔殺人ですね、これは本当に不慮の災害によって命を失うというような場合でありますけれども、これについては数年前特別立法が実現をして、現在実施をされておると思いますけれども、これによりますと、最高額では八百数十万、約九百万になっておると思います。それから風水害そういう天災によって支給される場合でも、この平均よりははるかに高いわけです。こういう同じ政府が支出をする補償的な支出金に大きな隔たりがあるということは国民としては理解ができないと思うのです。特に沖縄の場合には、被害の性格を考えましても、いわば内地の犠牲になって、内地の盾としてこういう悲惨な運命を迎えたわけでありますから、そういう点からすると、これはむしろ特別の配慮があってもいいのではないかと思うわけでありますけれども、それがほかの被害よりもはるかに少ない。こういう点、国民として、特に沖縄の方々にとっては大変納得しにくいやり方ではないかと思いますけれども、その点についてもう一回お伺いしたいと思います。
  65. 山田正美

    ○山田説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げたように、本件につきましては講和前の人身被害に対します措置、こういうような先例などがございまして、そういう先例との均衡を特に考慮して、このような算定をしたということになっているわけでございます。  なお、つけ加えさせていただきますと、そういう均衡というような問題のほかに、対象となった事案といいますのは、これはいわゆる外国人請求法といいますか、要するに米国が、まだ復帰前におきましてそういうような人身被害についての補償を一応制度上担保しておりまして、そういうような補償の措置をすでに一度行った経緯がございます。そうした補償の際に何らかの理由で措置されなかった、あるいはその措置が、したけれども内容が必ずしも十分ではなかったというような事案でございまして、なかなか立証——先ほど立証については非常に容易ではないかというお話がありましたけれども、やはりこの事案につきましては立証等非常にむずかしい問題がございまして、私どもとしてはできるだけ広く救済をするというような観点から、立証資料が必ずしも十分整わないというような事案の処理におきます算定基準、これは講和前の人身被害に対する算定基準ですけれども、そういうものに準ずることが適当であるというふうに考えた面もございますので、その辺も御理解いただきたいと思っております。
  66. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、死亡百四十六、傷害三百六十八ですけれども、この中にはすでに補償されておるものも含んでおるということですか。それから、これは前の米軍占領時代との均衡というようなことも言われていますけれども、それよりはむしろこれは日本国民に対する補償でありますから、他の支給金との均衡、あるいは沖縄の方方が受けたその原因ですね、本土の犠牲になってこういう方々は命を失われたわけでありますから、そういうことが果たしてどの程度配慮されているのか、これがはなはだ疑問なわけです。しかも、支給が講和後十年もおくれておる。しかもその間に物価のスライド等があったというお話ですけれども、物価のスライドがあってなおかつ最低七十三万ということですね。これではとても納得できないですね。そこらの点、もしも過去における金額が少なければこれは追加支給をしてもいいだろうし、あらゆる方法があると思います。過去に低いからこれも低くていいのだという理屈は通らないと思います。もう一回ひとつお願いします。
  67. 山田正美

    ○山田説明員 先ほど御説明した中で、米軍といいますか米国の措置したものという御説明をしましたけれども、その米国の措置した内容といたしましては、米国の制度から見て対象になるもの、こういうものについて措置をしたわけでございます。したがいまして、そこで一応措置をされているというものにつきましては原則として対象にいたしませんで、そこで漏れたものについて対象にしたということと、それから仮に米国の措置があった場合でありましても、それが日本の国内慣行等から見ましてちょっと低きに失するというようなものについては取り扱っております。したがいまして、一部すでに米国が処理した案件につきましても処理しているものもございます。  それから、先ほど講和前の措置につきまして、これが実はちょっと舌足らずで恐縮であったのですが、この件につきましては沖縄の復帰に伴う防衛施設庁関係法令の適用の特別措置等に関する政令というものがありまして、これは法律に基づいてそういうものができているわけですが、そこでいろいろと基準を決めまして、それに基づく省令を決めて、これは日本政府がこれについて措置したものでございます。したがいまして、考え方といたしましては、講和前の日本人の米国軍人等による人身被害に対する補償をする、それから講和後におきます補償をするということにつきましては、同列に考えてよろしいのではないかというふうに考えております。
  68. 新村勝雄

    ○新村委員 どうもわからないのですけれども、これは当時ではないのですね。昭和五十五年ですからもう現在に近い、ごく最近支払われている。しかもいまのお話では重複ではない、米軍の方から措置をされたものについては除いているというお話ですから、そうなってくるとますます平均百二万、最低七十三万という金額は、これはとても常識では考えられない額だと思うのです。     〔東家委員長代理退席、委員長着席〕 こういう、ほかの施策に比較をしても極端に少ない、均衡を失する、あるいは国民感情からしても、特に沖縄の方々から見た場合に全く不本意な措置、これはこのままですべて終わりということなんですか。それとも、これはさらに再検討をして適正なスライドをするなりほかの施策に均衡させるという配慮が当然あってしかるべきと思うのですけれども、そういった点は全くお考えがないのでしなうか。
  69. 山田正美

    ○山田説明員 ほかのいろいろな補償との比較のお話があったわけですけれども、私どもはこの問題は通常のお話のような、たとえば損害賠償の請求について法律上の根拠があり、その法律に基づいて損害賠償を請求するというような一般のケースとは同列に論じられないものというふうに考えております。それで、確かに時間がたちましたので、その金額的にはという印象をお持ちだと思いますけれども、繰り返して申し上げますが、同じ関連事案との均衡、こういうものをやはり考えてそれに準ずるものとして措置しなければいけないというような基本に基づいて措置をいたしましたので、お話の、これについてさらに見直しして、するのかということにつきましては、私どもこれで人身事案の出てきました事案については一応作業を終了するというふうに考えております。
  70. 新村勝雄

    ○新村委員 大蔵大臣にお伺いしますが、これは所管ではないと思いますけれども、内閣の有力な閣僚として、いまの沖縄人身被害に対する補償ですけれども、この沖縄の方々がこうむった被害というのは、国家行為によって行われた戦争によるわけですよ。しかもそれは戦争中のものではなくて、終戦になってから沖縄が日本に復帰するまでの間において行われたものです。そういう性質を考えた場合に、これは当然国の責任において補償をすべきであるし、また国の他の政策とも均衡のとれた内容、早く言えば額ですけれども、においてやるべきではないかと思うのですけれども、いまお聞きのようにこれは他の施策に比較をしてけた外れに少ない。通り魔殺人でも九百万くらいの補償が国から出るわけでありますけれども、これは平均しまして百二万、最低の場合には七十三万という非常に少ない額であって、しかも十数年前に行われた被害に対して現在十数年たってからほとんどスライドもなしにこういう低い金額で済ますということは、これは国の政治姿勢としてどうなんでしょうか。大臣からお伺いしたいのです。
  71. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり沖縄に対しましては、いまあなたのおっしゃったような観点から、いろいろな制度、施策等についてかなり手厚い施策を講じておると私は実は思っておるわけでございます。いまおっしゃっている話は、人身関係事案で講和前人身被害の分、つまり昭和四十七、八年度について防衛施設庁がつくったものと、講和後の人身被害で昭和五十五年基準で開発庁がつくったものとの関係等を言っているのかどうかわかりませんが、そういうような年次別なずれというものは多少はあるかもしれません。あるかもしれませんが、私としては政府としてもできるだけ沖縄の特殊事情というものを配慮をしてやっておるつもりでございます。細部につきましては事務当局から答弁をさせます。
  72. 新村勝雄

    ○新村委員 この件については納得できませんけれども、時間の関係で次の問題に移ります。  これもやはり五十六年度一般会計予備費使用調書の中の十一ページ、十二ページでありますが、スモンの訴訟に対する和解の履行に必要な経費ということで支出をされておるわけでありますが、このスモン訴訟、いわゆる薬剤の被害は大きな世論の反響を呼んだ問題でありますが、国の努力もありましてその和解作業は進んでいるわけでありますが、現在までのこの問題についての概略の経過、それから現在未済のもの、その今後の見通しを伺いたいのです。
  73. 持永和見

    ○持永政府委員 スモン関係の御質問でございますが、ことしの五月一日現在の状況をまず申し上げますと、ことしの五月一日現在まで提訴されました患者の数が六千三百十八人でございます。このうちすでに和解が終わって解決しておると申しますか、薬害被害として和解が終了しておる患者さんの数が五千四百三十四人でございます。六千三百十八人の提訴患者の方々がおられますが、提訴されますと、患者さんはスモンであるかどうかということを裁判所の指揮に従って鑑定をしていただきまして、その鑑定の結果スモンであることがはっきりいたしました患者さんについては、原告、被告それぞれ話し合いをして和解をすることになっておりますが、六千三百十八人の患者さんのうちにそういった意味で鑑定がすでに終わって和解をする対象となった患者さんが五千六百六十八人おられます。和解がすでに終わりました患者さんの数が五千四百三十四人と申し上げましたが、これに基づいて申し上げますと、提訴されました患者さんのうち八六%の方々はすでに和解が終わった、また和解の話し合いの対象となりました患者さんの数に対しては九六%の方々がすでに和解を終わった、こういうような状況でございます。  それで、未和解の患者さんが全体で八百八十四人おられます。このうち、先ほど御説明申し上げましたように鑑定がまだ終わっていない患者さんが六百五十人おられますから、こういった患者さんについては今後の鑑定結果によって和解の話し合いを進めていく、こういうことになるかと思います。  それから、鑑定が終わっていわゆる和解の対象の患者さんであるにもかかわらず、まだ和解が終わっていない患者さんが五月一日現在で二百三十四人おられます。こういった方々についての和解を私どもとしてこれから進めていくことになるかと思いますが、この二百三十四人の方々の内容といたしましては、鑑定の報告が出されておりますけれども、裁判所による和解の期日がまだ来ていない患者さんでございますとか、現在和解のために必要な証拠資料を収集している患者さんでございますとか、原告の患者さんの方が和解を拒否して、あくまで判決をかち取っていくというようなケースもあるわけでございまして、そういった意味合いで二百二十四人の方々が残っておるという状況でございます。
  74. 新村勝雄

    ○新村委員 二百三十四人残っておるわけですが、当初は国の方でも、これは製薬会社ですか、投薬証明がなければだめだという方針だったわけですけれども、この中には投薬証明がない人が相当いると思います。ですから、そういう人たちも一人残らず救済をするということが厚生省の方針であると思いますし、前にもそういう明確な御答弁をいただいておりますけれども、投薬証明のない患者に対する処置は万全を期することができるかどうか、これを伺いたいと思います。
  75. 持永和見

    ○持永政府委員 いま御指摘のいわゆる投薬証明のないスモンの患者さんの問題でございますけれども、この問題については裁判所においてもいろいろと意見が出されておりまして、五十五年の三月に東京地裁から所見が出されております。こういった投薬証明、立証を尽くしてもどこの会社のキノホルム剤を服用したのか特定できないといったような患者さんについては、国が三分の一、チバ、武田、田辺、そういった被告会社で三分の二という負担割合で和解すべきである、ただしかし、和解の基準金額でございますとか製薬三社間の負担割合等については別途協議するというようなことになっております。こういった東京地裁の所見につきまして、厚生省としては製薬会社に対しまして受諾方の勧告を行ってきたわけでございます。この製薬三社が五十五年の十一月にこの所見を受諾いたしましたので、こういった問題について解決への前進の道が開けたことになりますけれども、いま申し上げましたように東京地裁の所見におきましては、負担割合といった問題について裁判所においてなお協議するといったような問題が残っておりますので、こういった問題について裁判所にできるだけ早く協議をしていただくように、私どもとしても努力を重ねてまいりたいと思っております。  ただ、現実問題といたしまして、先ほど申し上げましたように日々刻々患者さんの和解が成立をいたしておりますが、いわゆる従来投薬証明がないというようなことで言われてきた患者さんにつきましても、原告、被告、それぞれ両方の立場からお互い努力をいたしまして、できる限りの立証を尽くす、あるいは製薬会社においてもできる限り協力をするというような形で和解の成立を見ている状況でございます。私どもといたしましては、当事者全員がそういったことでお互い立証についての協力をし合う、努力をし合うという形で問題が早期に解決されることを望んでおるわけでございます。  なお、先生御指摘のように投薬証明がないからということで和解が実現しないということがないように、厚生省といたしましては投薬証明がある、ないにかかわらず、スモン患者さんである限りにおいては和解を成立させるべきだというふうに考えております。
  76. 新村勝雄

    ○新村委員 ただいまのお話によりましても、二百三十四名の中には投薬証明であるとかそういうような客観的な立証がむずかしい方も若干いるのじゃないかと思いますけれども、少なくとも医学的にスモンであることが確定される場合には、そういうものがなくても一人の患者も救済から漏れるということのないようにひとつ万全の御配慮をいただきたいわけです。  それから、最近は大きいものはありませんけれども、かつてスモンであるとかサリドマイドとかいうような世間を驚かした大きな薬害問題が幾つかありますけれども、こういう医薬品副作用被害を根絶するための体制あるいは対策、これがその後どういうふうに整備をされておるのか、この概略を伺いたい。
  77. 持永和見

    ○持永政府委員 御指摘のように医薬品によって国民の健康被害が生ずるということは大変残念なことでございまして、私ども厚生省といたしましては、医薬品の副作用による健康被害を未然に防止するといった意味で医薬品の安全性を確保することが薬事行政の一番大きな課題だというふうに考えております。そういうことで従来もやってまいりましたが、いま御指摘のようにスモンの問題とかサリドマイドの問題とかいろいろな薬害がございまして、薬事行政上の安全性に関する規制をもっと強化すべきじゃないかというような声もございまして、これも国会で御審議をいただいて五十四年に薬事法の改正を行いまして、安全性確保のためのより一層の規制の強化を図ったところでございます。  具体的に主な中身を少し申し上げてみますと、まず新医薬品の承認申請を厳格にやるということが大きな問題だと思います。このために今回の改正法によりましては新医薬品の承認申請の際に添付される資料を明確化するというような問題だとか、あるいは新しい医薬品については一定の期間過ぎましたらまた改めて厚生大臣に再審査を申請して、再審査で安全性の問題、有効性の問題をもう一遍審査するというようなことを企業側に義務づけをいたしております。  第二の問題は、医薬品の副作用に関する情報をできるだけ収集し、これを医療機関にフィードバックすると申しますか伝達することが必要であると思います。こういった点につきましては、全国の病院、薬局を副作用モニターといたしまして制度を立てまして、そういった国内の副作用情報を収集いたしますとともに、WHO、そういった諸外国の副作用情報を収集いたしまして、この副作用情報に基づきまして必要な行政措置をとる、あるいはこういった副作用情報を全国の医療機関にフィードバックする、伝達をしていくというふうなことをやっております。  また、新しい医薬品については、先ほど申し上げました再審査までの期間は、当該医薬品の副作用情報を特に中心にいたしまして、企業側に、製薬メーカー側に厚生大臣への年一回の報告を義務づけいたしますとともに、各企業側が副作用について、重篤な副作用あるいは未知の副作用、そういったものが発生したとか、あるいは発生するおそれがあるというようなときには、即刻厚生大臣報告するようなことを義務づけをいたしております。  またこのほか、医薬品につきまして、医学、薬学の進歩に伴いまして見直しが必要でございます。こういった見直しを従来は行政措置としてやっておりましたけれども、これを法律上明確化いたしまして、医薬品を厚生大臣が再評価する、厚生大臣が範囲を指定いたしまして、その指定された医薬品について再評価をするというような形で安全性の確保を図っているところでございます。  それから、事後の、被害者が万が一不幸に出ました場合の対策といたしましては、先生御案内のとおり、被害者救済基金という制度をつくりまして、これも五十四年の薬事法改正と同時に法制化を国会で御審議していただいた結果できたものでございますけれども、そういったところで健康被害者に対する救済を行っているというような実態でございます。
  78. 新村勝雄

    ○新村委員 薬害の根絶にひとつ万全の御努力をいただきたいわけです。  次に難民の問題ですが、これがやはり五十六年の予備費使用調書に出てまいるわけですが、不幸にしてインドシナ難民の流出は今日においても後を絶たないわけであります。最近またふえる傾向にあるというふうなことも言われておりますが、これに対する国際的な責任を日本が果たすということからいっても、この問題について真剣に取り組む必要があると思うのですが、この問題について二、三お伺いいたしておきたいと思います。  難民対策については、予備費の支出、予算的には外務省と文部省、労働省あるいは法務省各省にまたがっておるのですけれども、この問題についての責任ある官庁はどこであるのか。特に一時滞在難民、この対策についてはまだ担当の官署も決まっていないというようなことも言われておりますけれども、この受け入れあるいはその後の対処をするに当たっての責任省庁はどこであるのか、伺いたいと思います。
  79. 色摩力夫

    ○色摩説明員 お答えいたします。  先生御指摘の点は、一つインドシナ難民対策の主務官庁はどこかという御質問かと思います。主務官庁というものはまだ決まっておりません。先生御承知のとおり、インドシナ難民対策は、わが国の近代史をひもときますと、非常に例の少ない、行政の対象として経験のないという新しい問題でございます。また、その中身から申しましても、各省庁の権限、各省庁の所管にまたがる複雑な問題でございます。そこで、わが国はできるところから行うということで、いままでその場その場の対処を重ねてまいりました。そして、現在振り返ってみますに、全体として合理的な体系があるかと申しますと、残念ながら御指摘のとおりございません。主務官庁、インドシナ難民対策、それから先生御承知のとおり、昨年わが国は難民条約に加入いたしました。つまり、難民条約上の難民行政整備しなければならない時点に来ております。したがって、政策として始めたインドシナ難民対策、それから難民条約に言う難民行政、これを相互一体のものといたしまして難民行政の合理的な体系がいま模索されているところでございます。  現在の姿を申しますと、先生御指摘のとおりインドシナ難民対策の定住に関しましては、外務省所管の財団法人、アジア福祉教育財団に委託して行っております。したがって、運営については外務省が責任を持っている体制でございます。ただし、そこで行われているいろいろな事業に関しまして、たとえば日本語教育に関しましては文部省、委託費の形で文部省が関与しております。また就職あっせんに関しましては、労働省がやはり委託費という形で事業を委託しております。また、一時滞在難民の対策に関しましては、現在のところ政府の事業としてやっているのは、入り口のレセプションセンターの運営だけでございます。これに関しましては、法務省入国管理局の関係でございますが、やはり委託費という形で同様のアジア福祉教育財団に委託して行われております。そういう関係で法務省も関与しております。  それでは、その後のレセプションセンターを卒業した一時滞在難民の方々はどうなっているかと申しますと、これは民間の善意の諸団体、カリタス・ジャパンとか日本赤十字社とか、その他の民間の運営する施設に収容されております。この分に関しましては、先生御承知のとおり、日本赤十字社に厚生省から、これは補助金の形でございますが、補助金を支出しております。そういう意味で厚生省も関与しております。ただし、これを総合的に難民対策の主務官庁はどこかといいますと、ございません。では政策の調整はどこがしているかと申しますと、これは内閣官房に十三省庁から成るインドシナ難民対策連絡調整会議というのがございます。そこで政策上の調整をするというたてまえになっております。したがって、先生御指摘のとおり、主務官庁あるいは主として責任を負うべき官庁はどこかということは、現在模索中でございます。これは急いで結論を出して、合理的な体系に持っていくための一番重要な課題と心得ております。
  80. 新村勝雄

    ○新村委員 難民条約が批准をされ、また定住対策としては外務省あるいは文部省、労働省と、各省で相当の施策はやっておるということでありますけれども、これは日本先進国として国際的な責任を果たすという意味からいっても、こういう不幸な人たちを助けるということからいっても、非常に重要な問題だと思うのです。ところが、依然として、どこで担当するか、その官署も決まっていないということでは大変心もとないわけでありまして、せっかく難民条約を批准をして、国際的にもどうやら難民対策で肩を並べることができるという条件はできても、やはりその政策を推進する体制がないということでは大変困るわけです。  特に一時滞在難民については、一部は日赤、それ以外は宗教団体ということでありますけれども、日赤については国から補助金が出ておるようでありますが、宗教団体は、性質上、国から補助金が出ないということですから、全く民間の宗教団体善意に頼って一時滞在難民の対策を対処しておるということでありまして、これでは国として大変不十分であるし、対外的にもまずいのではないか。さらにまた、先進諸外国に比較をして、日本は難民を受け入れる数の点からいっても、これはけた外れに少ないわけですね。そういう点、これは数が少ないということはほかにも原因はあるのでありましょうけれども、そういうことを考えた場合に、せっかく政府善意を持って、あるいはまた国会善意を持って条約を批准をしても、それに対応するだけの施策あるいは体制がないということ、これに対して今後どういう対処をしていくのか、伺いたいと思います。
  81. 色摩力夫

    ○色摩説明員 先ほど主務官庁あるいは主として責任を持つ官庁はいまだないと申し上げましたが、具体的に、現在その結論を出すために政府の行っている作業を若干説明させていただきますと、行政管理庁におきまして、難民行政に関する特別行政監察というのがことしの正月から行われております。私どもの承知しているところによれば、各省庁の担当部門及び民間の関与している諸団体、それからその現場に至るまで、行政管理庁の行政監察局が事情を聴取したり、あるいは独自の調査、あるいはいろいろな説明、いろいろな意見の聴取を行いまして、三月末に事務的な作業は完了しております。現在、事務的な段階では結論の詰めに入っているものと承知しております。そして、勧告という形で結論が出るのかと思いますけれども、その際の最大の問題点は、この際難民行政一般に関して主として責任を負う省庁はどこかということをはっきりさせることと了解しております。したがって、予定どおり作業が進行するといたしますれば、今月の末あるいは来月の初めぐらいにははっきり結論が出され、そのように合理化されるものと期待しております。  それから、第二の問題点、先生から、特に一時滞在難民の処遇に関していろいろな点で合理的でないのではないかという御指摘がありましたが、ある意味では先生のおっしゃるとおりかと思います。  御承知のとおり、難民は、日本に到着いたしまして、とりあえずの保護を受け、とりあえずの手続その他がありますが、そのためにいろいろな収容施設に収容するだけでは難民問題の解決にはなりません。当然のことながら、難民問題の最終的な解決は、当該国、たとえばわが国の社会が吸収しない限り難民問題の解決はありません。ということは、全国津々浦々の地域社会が地域住民として遇する、つまり吸収するというところまで確保されなければ、わが国における難民問題の解決はないわけでございます。したがって、難民対策を努力するのは、日本の社会全部である。中央政府だけではない。むしろ、民間、特に地域社会のいろいろな豊富なイニシアチブがあり、そしていろいろな形で解決に貢献するということが最大の眼目かと思います。もちろんその間におきまして、中央政府がやるべき役割りもございます。また、中央政府でなければやれない問題もございます。また、やった方が適当な部分もございます。  そういう意味で私どもがいま考えておりますのは、一つは、一時滞在難民の入り口の部分、つまり到着してとりあえずの保護、とりあえずの手続、とりあえずのカウンセリングと申しますか、そういう点について政府がやってしかるべきだ。そういう発想に基づきまして、御承知のとおり昨年度、予備費によりまして、長崎県の大村にレセプションセンターができました。これは政府が行っている合理化の第一歩かと心得ております。  ただ、それでは問題が実は解決しておりません。それは、その後難民の保護を担当している民間のいろいろな善意の諸団体が、こういう問題を最近は非常に強く提起して、政府に解決を迫っているという事案がございます。それは、一時ということで、つまり一時滞在の個々の難民の希望に基づきまして、第三国に行くまでの間預かるというたてまえでありながら、三年、四年たっても全くめどがつかない。諸外国の難民の受け入れ条件に照らして行けるはずがない。それにもかかわらず、日本に定住する意思は必ずしもない。そういう形で、いわゆる滞ってしまう、滞留している難民が、現在のところ一時滞在施設、千八百ぐらいの難民が滞在しているわけでございますが、その半分以上はそういう方々になった。したがってこういう方々は、非常に長い間の収容生活によってフラストレーションを起こしまして、トラブルのもとになる。あるいは新規に入ってくる人々、難民に対して、必ずしもいい影響を与えない。管理運営上非常に困るという声が方々に上がっておりまして、こういう人たちを分離し隔離して、異質の、性質の違う収容所をつくって運営しない以上、民間の努力も際限なく続けるわけにいかないのではないか、そういう意見が非常に強く述べられております。これに関しては何らかの対策を政府としてもいずれは考えなければいけないと心得ております。
  82. 新村勝雄

    ○新村委員 その中で、特に一時滞在難民で宗教団体、民間の団体善意依存している部分については、これは至急に解決しなければならぬじゃないかと思います。この点を含めてひとつ難民対策の確立をお願いしたいと思います。  時間になりましたので、農水省関係の経営移譲年金については別の機会にお願いをいたします。  以上で終わります。
  83. 永田亮一

    永田委員長 春田重昭君。
  84. 春田重昭

    ○春田委員 まず予備費の問題についてお伺いします。  五十六年度一般会計予備費(その1)で総理の外遊経費が、三億七千六百十八万三千円が計上されております。この種の経費は、過去からも私も指摘しておりますが、当初経費で計上できる性質のものであると私は思っておるわけでございますけれども、内閣としてはなぜいつもこういう形で予備費で処理しているのかお伺いしたいと思います。
  85. 鴨澤康夫

    鴨澤政府委員 お答え申し上げます。  この点に関しまして、従来先生からも御指摘をいただいておるところでございますが、実際の予算要求の手続と申しますか、そういうものとの関係で、毎年概算要求をいたします時点あるいは年末に予算案を決定いたします時点で、非常に不確定的な、内容の詰めがきちっとなされないというのが実態でございまして、そういう性質から見まして、どうもしっかりした予算要求ができない、あるいは予算編成の時期に額をきちっと詰めることができないという意味で、財政法二十四条に言っております予見しがたい経費ということではなかろうかということで、予備費でお願いをしておるという次第でございます。
  86. 春田重昭

    ○春田委員 予備費は、憲法八十七条を踏まえて、財政法二十四条に規定されました「予見し難い予算不足に充てる」これが使用目的でございます。確かに、訪問する国や期間等は正確にわからなくとも、総理が毎年外遊されることは間違いないわけですね。特に、サミットなどは翌年度の開催につきましては必ず事前にわかるわけでございまして、当初予算を組む前にわかる問題である、私はこう思っております。資源エネルギー、食糧のないわが国の大きな課題は外交であります。そうした意味からも、総理の外遊というものは、従来は国会明けか予算審議の前と大体決まっておりますので、私は、十分予見できる、こう思うわけでございます。若干の予算の幅はあるとしても、当初予算を組む努力はしていくべきである、私はこう主張したいわけでございますが、大蔵省としては、この点、どうお考えになっておりますか。
  87. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 この問題につきましては、春田先生、昭和五十三年に御議論をいただいておりまして、その議事録も拝見いたしております。  おっしゃるようなことがあるわけでございますが、先ほど総理府の方からお答え申し上げましたように、国際儀礼の立場から、金額的にまで詰めることがやはりなかなかできない。サミットにつきましても、最近でございますと例年あるというのが例でございますけれども、日程等がはっきりいたしませんものですから、どういうふうな積算をしていいのかということにつきましてはやはりわからないわけであります。  詰めていきますと、積算がきちんとしていなくても、たとえば一億なら一億とか、五千万なら五千万ということで、枠で積んでおいてはどうかという予算技術上の問題もあろうかと思います。しかし、そういうような枠取りの形で予算を組むということはきわめて例外的でございまして、予算は、私どもも各省からお話を承り、詰めてまいりますときには、すべて積算が一応はあるわけでございます。その積算をつくれないところで枠を載せておくという形は、それはそれなりにやはり弊害もあるわけでございまして、いろいろ考えてみまして、予見しがたいというのは、事柄よりもむしろ金額にウエートを置いた物の言い方でございますが、現在のようなやり方がまあまあよろしいのではなかろうかと考えております。
  88. 春田重昭

    ○春田委員 続きまして、会計検査院法の改正問題についてお伺いいたします。内閣の方は結構でございます。  院法改正要綱が検査院より内閣に提出されたのが昭和五十四年の五月でございますので、約三年経過しているわけでございます。この院法改正が国会に上程されない理由としては、会計検査院と関係各省庁との間の意見が隔たっている、これが大きな理由でございます。  その中で、特に大蔵省の抵抗が強いと私は聞いているわけでございますが、大蔵省としては、この院法改正の問題につきましてどういう御見解をお持ちなのか、また、院法改正ができなかった場合、会計検査院の充実強化はいかなる手法でやっていくお考えなのか、まずお伺いしたいと思います。
  89. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 お答え申し上げます。  会計検査院法の改正問題につきましては、この委員会でもたびたび御答弁申し上げたわけでございますけれども、私どもの考え方といたしましては、検査機能の充実ということについては何ら異存はございませんで、御協力申し上げたいという気持ちでございます。  ただ、政策金融機関というものの目的と申しますものがやはり自由主義経済の中での民間活動を助成し育てていくというような趣旨でのものでございまして、いわばこれは補助金とは全然異なった私契約の分野で、利子も払う、償還金も払うというような民間活動の助成というところに目的がございます。そういうところに立入調査、検査というような強制的な介入がなりますと、そういう政策目的を阻害するのではないかという疑問を強く持たざるを得ないということが基本的にございますほかに、いろいろと中小企業なり農林のような小さな融資先もございますが、そういう融資先が、契約の分野で立入検査があるのだというようなことになりますと、これまた心理的にも畏怖心と申しますか、恐れを持つようなこともございます。あるいはいま申し上げましたような中小企業とか農林業者とかは、そういう検査に耐え得るような帳簿を備える能力などもなかなかないということで反対が強い。そういうことを見ますと、全体として、政策金融を所管いたします省といたしましては、これの目的はやはり達成しなければいけないということで強い疑問を持たざるを得ない、そういうことで賛成いたしがたいということをずっと表明し続けてきたわけでございます。  しかし、先ほど申し上げましたように、私ども、検査機能の充実という点につきましては何ら異存はございませんし、これはまたこれなりの目的を持っていると考えておるわけでございまして、昨年七月二十三日付でございますけれども、内閣官房副長官から、肩越し検査への協力という指示がございました。これは、その指示によりますと、各省に対して出てきているわけでございますけれども、いわゆる肩越し検査に協力せい、こういうことでございまして、個々の検査の実情に応じて必要な協力を行う、その場合は、検査上、肩越し検査を行うべき合理的な理由等があればこれはやるということで、検査される方、検査する側、両者が納得いくものについては肩越し検査に協力するという指示がございまして、これにつきましては、私どもの方としても、関係の傘下の金融機関に協力するように指示を出しており、その姿勢でおるわけでございます。  内閣からのこの指示によりますと、そういう肩越し検査以外にも調査協力があったときには、検査の場合にも調査依頼までできる限りこれにこたえる、それから資料面でも協力するとか、そのほかの、肩越し検査以外の条項がございます。こういう面で協力すること、それから傘下金融機関を指示することによりまして、御要望の検査機能の充実と政策金融の目的とを両立いたさせたい、かように考えておるところでございます。
  90. 春田重昭

    ○春田委員 大蔵省所管の同じ金融機関でも、国民金融公庫等はいままで協力しておったわけですね。ところが、輸開銀につきましてはこの肩越し検査の協力を全然してなかったわけです。それが昨年の七月の内閣の通達、また八月の銀行局長からの輸開銀ないし国民金融公庫への協力依頼、こういうことで、今後は肩越し検査に協力していきます、こういうことでございますけれども、検査院としては、要するに院法改正が主題である、こういうことで現在までずっときておるわけでございます。政府そのものが肩越し検査に協力する、こういうことになりましたけれども、この辺につきましては、検査院としてはどう評価されているのですか。
  91. 丹下巧

    ○丹下会計検査院説明員 ただいま大蔵省の方から昨年七月の内閣官房副長官名での通知について説明があったわけでございますけれども、このことは、肩越し検査という形でございますけれども、政府関係金融機関の貸付先に対しまして会計検査院の調査が及び得るということを政府が正式に認めたというふうに考えられますので、この点では実質的に事態の進展があったというふうに考えることができるわけでございます。今後私どもも、従来肩越し検査について御協力を得られなかった金融機関につきましても、私どもに対しまして御協力が得られるということを期待しているわけでございます。
  92. 春田重昭

    ○春田委員 先ほど大蔵省は、要するに検査院の機能強化といいますか、検査充実については協力するという話がございますけれども、いわゆる院法を改正しないで現行体制の中でやっていきたい、こういうことですね。その場合、予算と人員の配慮はどうお考えになっておりますか。
  93. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 会計検査院の機能充実のためには、人員につきましても、御承知のように各省の定員につきましては行政改革の線で厳しい査定をいたしておりまして、大体総じて申し上げればネットで増員になるところはほとんどないわけでございますが、検査院につきましては、たしかネットで一人でございましたか二人でございましたか、とにかく増員をいたしてございますし、それから検査院の機能は、旅費でございますとか庁費でございますとかそういったたぐいのものはもちろんといたしまして、やはり今後機械を使った形での検査の近代化ということを考えていかなければいけないというので、その方面につきまして五十七年度予算におきましては特に配慮をいたしていたはずでございます。詳細な数字等につきましては、申しわけございませんがちょっといま数字を手元に持ち合わせておりませんので、後ほどまた申し上げたいと思います。
  94. 春田重昭

    ○春田委員 会計検査院の充実強化につきましては、過去の決算委員会では毎年度決議されているわけでございまして、特に昨年におきましては、予算、人員面におきましては十分配慮するという決議も出ているわけでございます。ただいまの説明では、そういう点で配慮しているという話がございましたけれども、私どもから言ったら十分な配慮じゃない。予算もわずかにふえただけでございますし、人員につきましても五十七年度は一名でございます。五十六年度が二名でございますし、過去六年間で七名しかふえてないわけでございます。他省が減っている中で検査院だけはわずかであるけれども純増している、こういう御意見みたいでございますけれども、決議の内容には決してこたえてない、そういう予算、人員面の配慮である、私はこう思っておるわけでございます。  検査院の充実強化は、行財政改革を目指す今日においては必要でございますし、特に五十五年度におきましては五百十億円、五十四年度につきましては五千七百二十五億円のむだなお金が指摘されているわけでございます。検査施行率も八%という非常に低いわけでございます。そうした中でこうした膨大なむだ遣いが指摘されておるわけでございますから、こうしたむだをなくするためにも、法改正を含め検査院の充実強化を早急になすべきである、このように主張しておきます。  第三点目に、貿易摩擦問題につきましてお尋ねしてまいりたいと思います。  政府としては、大体五月二十日、二十一日をめどに市場開放第二弾の作成をされていると聞いているわけでございますが、特にその解消策の目玉となります農産物のいわゆる自由化の問題でございます。せんだってジュネーブ協議におきまして、要するに関税の引き下げなどに日本側が応じれば、受け入れれば、アメリカとしても当面完全自由化の問題につきましては一時休戦してもよい、譲歩してもよい、このような報道がなされましたけれども、この関税引き下げにつきましては、大蔵省はどう対応なさろうとなさっているのかお伺いしたいと思います。
  95. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 農産物の関税引き下げ交渉につきましては、現在農林省の方におきまして種々政府・与党と御相談申し上げております。その対策を待ちまして、大蔵省と協議いたしまして政府としてよく対処したいと考えておりまして、目下まだ内容について申し上げられる段階でございません。申しわけありません。
  96. 春田重昭

    ○春田委員 この関税の引き下げの問題につきましては、昨年の十一月十六日ですか、パラグラフ在京米国公使の書簡によりまして、五十六年度から五十七年度におきましておおむね下がっている項目があるわけでございますが、農産物だけにつきましては、関税の引き下げが全然行われていないわけでございます。そういう意味で、ジュネーブ協議でそういう形で米国側が要求したのではなかろうかと思うわけでございますが、いま鋭意検討中ということでございますけれども、この問題がいわゆる市場開放第二弾の最大の目玉となっているわけでございますし、また米国の最大関心品目となっているわけでございます。どうですか、大臣、これは検討ということでございますけれども、いわゆる前向きの検討なのか、引き下げの方向で検討されているのかどうかですね。要するに、農水省としては完全自由化というのは、また量の拡大というのは反対であろうし、大蔵省としてはこの関税の引き下げというものはやはり反対だろうと思うのですね。その辺の接点が問題だろうと思いますけれども、これは米国の最大関心事だけに相当政府でも苦労なさっていると思いますけれども、前向きの検討なのか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  97. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 関税引き下げについては、この間、前倒し一括というものをやったわけでございます。そのほかの問題については新聞にどう出ているか知りませんが、引き下げるべきものがあれば下げるし、なければ下げない。あれば下げるということであります。
  98. 春田重昭

    ○春田委員 大臣、農産物に関しての引き下げなんですよ。わかっている人から言いなさい。
  99. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは大蔵省というよりも、むしろ原庁の方が利害が大きいわけでございます。もちろん税収という面については大蔵省が関係ありますが、それよりも、関税そのものは何でできているかということになると財源対策だけじゃないわけでございますから、いろいろな、国内の問題、外国とのバランスというようなものでつくられておるものであって、国内産業の保護というのも関税政策の一つであることは間違いない。したがって、農産物の関税引き下げについてはまず原庁である農林省がどういう考えを持っておるか、それを聞かないと、私から何ともお答えすることはできません。
  100. 春田重昭

    ○春田委員 さらに、大蔵省所管の問題としてはたばこの市場開放の問題があるわけでございます。これは約二十五、六万店のうち約二万店が外国たばこを扱っている、こういうことでアメリカ要求に対して一応こたえたわけでございますが、さらに米国の主張はこれ以上広げろ、販売店をふやせ、こう言っているわけでございますが、たとえば外国たばこの販売を希望する店があった場合はもう全面的にこれを認めていくのか、この辺どうでしょう。
  101. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、別に外国たばこを売ることを制限しているわけじゃございません。私は、店を広げろと言えばそれもあえて反対はいたしませんが、売れないことがわかっておって店を広げて、余ったときはどうするかという問題が決着つかぬというと、やたらに広げるわけにはいかない。カビが生えたたばこは売るわけにいきませんから、品質の落ちたものは専売公社が回収するとその分損になる。最初から売れないことがわかっていて配ったということになりますから、そういうことは財政、専売の上からはやりたくありません。したがって、アメリカの方で、御要望によって広げても結構ですが、売れなかった分は向こうの責任で引き取ってもらうというようなことなどを詰めていく必要がある、そう思っております。
  102. 春田重昭

    ○春田委員 さらに、たばこの広告宣伝活動の問題につきましてどうお考えになっているのか。  さらに、資本金融の自由化の問題につきましても要求しているわけでございますけれども、要するに大蔵省は、いわゆる欧州並みに十分自由化しているんだと反論なさっているわけでございますけれども、この点についてはどうお考えになっているのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  103. 高倉建

    ○高倉政府委員 お答え申し上げます。  たばこの広告宣伝の取り扱いにつきましては、一昨年十一月の日米合意によりまして、内外の共通の自主規制基準で行うということになっているわけでございます。この内外の共通基準というのは両国の業界で取り決めたわけでございますが、いろいろ規制をしているわけでございますけれども、現在、特にアメリカが言っておりますのは、金額を規制しているところについて、その後の放送料の値上がりその他を反映してほしいというような希望があるようでございます。この点につきまして、専売公社としても前向きで検討するということを考えておりまして、アメリカ政府に対しましても、さきの日米貿易小委員会の席上で、そういう公社の姿勢にあるので、もともと業界間の自主規制でございますので、業界同士でよく話し合ってほしいということを申しております。ただ、一部に広告宣伝を完全に自由にせよというような意見もあるやに聞きますけれども、いま世界各国どこを見ましても、たばこについての広告宣伝がフリーという国はないわけでございまして、その点は十分自制をしながらやっていただかなければならぬと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  104. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 金融の方の問題でございますが、銀行、保険、証券とあるわけでございます。個々の業界の問題は前回いろいろ説明をしたわけでございますが、マーケット全部の問題がこのごろ言われてきておるわけでございます。  そこで、きのうでございますか、国際金融局、銀行局、証券局と、それから証券会社、銀行と、そういうエキスパートのチームを組みまして、それでアメリカの方も歓迎するから来てくれと。ドイツも、大蔵省とやり合ったのですが、ぜひ来てくれというようなことで、ファクツにつきまして啓蒙をやろうということで、昨日出かけました。そして、基本的に私どもは、外為管理法の改正後、原理、原則自由になっているわけですが、向こうの感じは、円が安い、それは何かやっているのじゃないかというような感じがあるわけでございます。それで、日本の東京の資本市場というのはドイツの市場よりもはるかに大きな資本の出入りがあるわけでございますが、そういう事実が、急に最近そういうふうになってきているので、先方の認識がなかなかないというようなことでございまして、そういう認識を改めてもらうというような、両面があるわけでございます。個々の問題とそれからマーケット全体の問題、そういうようなことをやっております。
  105. 春田重昭

    ○春田委員 次に、グリーンカードの問題について若干お伺いしたいと思いますが、グリーンカード制度の廃止及び延期の見直し論議が非常に盛んでございます。この見直し論を主張する人たちにつきましては、グリーンカード制度を導入することによって、たとえば金への換物とかゼロクーポン債などに対する円資産の海外流出による国内経済の混乱、また国民総背番号によるプライバシーの侵害等、こういうものが起こるのではなかろうかということが指摘されているわけでございますけれども、大臣は現時点で、この見直し論の指摘事項につきまして、どうお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  106. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 見直しについては、いろいろなことを言う人がありますが、これは一長一短の問題でございますから、そういうような一長一短を総合的に考えた上で、総合課税にしなければならぬということでグリーンカード制が生まれたわけでございます。確かに、その間においてもっと整合性のとれた環境整備を同時に実施すべきであったと私は思います。したがって、それはまだ間に合うことでございますから、税率の見直しその他、同時実施でやれるようにしたらいいのじゃないか、後から追いかけて急行列車で行ってもいいのじゃないかということになれば、特別にこれをやめるとかどうとかする必要はないだろうと、そう思っております。
  107. 春田重昭

    ○春田委員 特に政府与党の自民党のグリーンカード対策議員連盟では、三百十六名ですか、の反対署名が集まったと言われているわけでございます。これらの方は、反対、いわゆる廃止ないし三年延期という説が非常に強いわけでございますけれども、大臣は、こうした関係者にお会いになって、そして話し合いを持つというお考えがあるのかどうかお伺いしたいと思うのです。
  108. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 陳情や請願ですといっぱい名前書く人がありまして、生産者米価値上げを支持するかしないかと言って持ってこられたら、大体陳情書にみんな名前を書きますよ、四百人でも五百人でも。ですから、名前を書いたからといってそれ自体、代議士さんもいろいろ立場がありますから、それ自体どうということは私考えておりません。まして、党の機関からは正式にまだ話がございませんので、いずれお話はしたいと、そう思っております。
  109. 春田重昭

    ○春田委員 このグリーンカード制度導入につきましては、すでに大蔵省を初め関係機関で、五十八年一月一日発足、五十九年一月一日実施の準備が着々と進められておると私は聞いておるわけでございます。もし伝えられているような見直しについて、この国会で決着がつかない場合、次の臨時国会でもしそういう問題が出てきた場合に、事務手続上廃止ないし延期の修正といいますか、そういうものは不可能に近いのではないか、こういう説もあるわけでございますけれども、大臣どうお考えになっておりますか。
  110. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 なるべく早く結論を出したい。もう法律で決まっておるのですから、結論を出したいと思っております。
  111. 春田重昭

    ○春田委員 先ほど大臣も御答弁された中で私もお聞きしたいと思ったことがあるわけでございますが、このグリーンカード制の実施とともに、高額所得者の所得税ないしまた住民税の緩和是正、また利子配当所得のいわゆる分離課税の存続という問題がやはり出てきておるわけでございますけれども、こうしたものも検討の余地があるのかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  112. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 世界の先進国が総合課税だというのですから、総合課税にすることは賛成です。しかし、総合課税にする以上は、世界の先進国の税率の最高限度日本の最高限度と比べてみなければならぬ。これはずば抜けて日本は、下の方は低いけれども上の方は高い。これも間違いない。ということになれば、そのまますることは、水は高い方から低い方へ流れるし、事業というのはやはり税金の少ない方へ行くのですから、これは国民経済に影響なしとしない。したがって、私としては、当然グリーンカードの実施までには税率構造の見直しは行わるべきものであると確信をいたしております。
  113. 春田重昭

    ○春田委員 このグリーンカードにつきましては、不公平税制の是正ということで与野党一致しまして、共産党さんを除いてですか、その他野党一致して、五十五年の所得税法の改正で決まったものであります。納税の不公平が問題になっている今日、このグリーンカード制につきましては当初方針どおり貫かれんことを私は要望しておきます。  最後に、五十八年度予算につきましてお伺いしたいと思います。  五十八年度のいわゆるシーリングの作業でございますが、大体いつごろから行う予定なのか。昨年はたしか六月五日の閣議でスタートが始まったと聞いているわけでございます。ことしは若干おくれるのではなかろうかと聞いておりますけれども、その辺どうでしょうか。
  114. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いつ出すかということにつきましては、まだ国会が続いているので、具体的に省内で相談している余裕が実はないということであります。しかし、いま私の頭の中では、去年は六月五日に出しましたが、ことしは、例年のように七月末ということはありませんから、シーリングの時期はその真ん中ごろか、どうなるのか、これから相談をしたいと思っております。
  115. 春田重昭

    ○春田委員 まだ基本方針が決まっていないということでございますけれども、伝えられますように五十六年度が二、三兆円の歳入欠陥、五十七年度も相当厳しいだろう、こういう中で、要するに五十八年度の予算への取り組み姿勢というものは相当厳しくなっていくのではないか。巷間、昨年のシーリングがゼロシーリングだったがゆえに、ことしはさらに厳しくなるということでスーパー・ゼロ・シーリングとかマイナスシーリングということがささやかれているわけでございます。鈴木総理も八日の茨城におきまして、記者との懇談の中で、マイナスシーリングについてはどうですかという話で、まだそこまで決まっていないということだったのですけれども、この点について大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思うのです。
  116. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 時期について、いつ出すかということはまだ決まっていない、去年と同じ六月五日といっても、きょうはもう五月十何日でございますから、それはちょっとむずかしいでしょう、それよりはおくれるでしょうということを言ったわけです。したがって、額の問題についてもまだ、ゼロシーリングにすることができるのか、もっとマイナスシーリングができるのか、一方伸びるものはどれくらい伸びるものがあるのか、これは大体見当つきますが、あとは経済見通しとの問題もございますから——物価はおととし計算したよりもきわめて予想外に鎮静している。これは予想外に上がれば税収も予想外に上がりますが、予想外に低いわけですから、これはよけいに入るというふうにはなかなか考えられない。そういうようなものを見直して決めていかなければならぬと思っておりますので、具体的内容については国会が終わり次第速やかに作業に入らなければならぬ、そう思っております。
  117. 春田重昭

    ○春田委員 五十七年度予算では、ゼロシーリングの中で防衛費やエネルギー対策費、対外経済援助等は別扱いされたわけでございますけれども、五十八年度予算方針ではその基調は続くものと考えていいのかどうか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  118. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは、去年はそういうものは別で、その他のものは人件費を含めてゼロシーリングの中へ押し込みますということをしたわけです。ことしも、御承知のとおり海外経済協力というような問題については、一般的に言えば、過去五年間の実績の倍にこれからしますということを世界に約束していますから、何も一年度でそれはする必要はないのですが、平均して言えば、一一、二%ずつ伸ばさなければ五年たって倍にならぬわけです。ことしは三%にして、来年も三%にして、再来年になったら二〇%ずつ伸ばすのだと言っても、そういうことができるかどうか。ということになれば、常識的に一般的に——一般的にですよ、まだ数字を検討してないからなんですが、一般的に言えばやはりそういうものはふやさざるを得ないのではないか。年金のようなものも、これも減らすといっても現実問題としてなかなか——物価が上がれば年金も上がる。いままでのように物価は上がらないとしても多少は上がる。それをさらに、片方でマイナスシーリングをしておいて、その中へ上がるものもはめ込むということになると、でかいマイナスシーリングをしなければならぬということになるのであって、現実的かどうかという問題もございますから、いまここで、そういうものは別枠にする、何ぼするというようなことは、そういうものを詰めてみないとお約束ができないというのが実態であります。
  119. 春田重昭

    ○春田委員 その中で特に関心のあるのが防衛費の問題でございます。特に五十八年度からは、56中業の業務見積もりでいま作業が進められているとおり、正面装備費がかなり繰り込まれてくるわけでございまして、報道等では、この五十八年から六十二年の五年間で約五兆円くらいの費用が要るんではなかろうか、こういうことが言われているわけでございます。そういう点でGNPの一%も、五十八年度は無理としても年度途中には突破するのではなかろうか、こういう予測もされているわけでございます。この防衛費の問題につきましては、いま56中業につきまして大蔵省と国防会議等でいろいろ検討されていると思いますけれども、大臣どうですか、GNP一%というのは昭和五十一年閣議で決まっているわけでございますけれども、渡辺大蔵大臣としては一%は守っていく、こういう決意があるかどうかお伺いしたいと思うのです。
  120. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 防衛の問題は、高度の政治的判断を要する問題でございます。しかしながら、財政当局といたしましては、御承知のとおり世界じゅうの不況というような問題、GNPの伸び悩みというような問題、物価の安定というような問題等もございますし、来年度予算はことしよりも一層厳しい予算になるということでございますから、それらの諸般を考えれば、それはいろいろな諸般の事情で、防衛費を充実したいという気持ちもないではありませんけれども、非常にむずかしい問題がたくさんございます。したがって、われわれとしては当面、一%を超えるような防衛費を認めることはできない、そう思っております。
  121. 春田重昭

    ○春田委員 時間が参りましたので、最後に意見だけ述べたいと思います。  五十八年度につきましては新型の、いわゆる大型の新税はないということで国会答弁されているわけでございますけれども、新税導入はないけれども、たとえば物品税、法人税等の既存の税体系を洗い直して増税の方向で考えているやに受け取れる大臣発言もあるわけでございます。いま日本経済は非常に低迷しているわけでございます。その低迷の原因は、個人消費の伸びを欠いているというのが最大の因でございます。その消費支出の伸びを欠いているのは、そうしたいわゆる所得税や物品税の増税より、可処分所得がマイナスになっているからであります。いま必要なことは、安易な増税ではなくして、大蔵小委員会にもかかっておりますけれども、そうしたいわゆる減税とそして徹底した歳出の削減、合理化であります。このことを強く大蔵大臣に要望して、時間が参りましたので私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  122. 永田亮一

  123. 和田一仁

    和田(一)委員 民社党の和田一仁でございます。  予備費の中で、沖縄における人身被害者特別支出金の支払いに必要な経費、こういう事項がございまして、これについてまずお伺いをしたいと思います。  この件につきましては、他の委員からも御質問がありましたので、なるべく重複を避けてお伺いしたいと思いますが、まず、説明の項に、この経費については「昭和二十七年四月二十九日から昭和四十七年五月十四日までの間に、沖縄においてアメリカ合衆国の軍隊等の行為等により、人身に被害を受けた沖縄の住民又はその遺族に支給する人身被害者特別支出金の予算不足を補うため」こういうふうに説明がされております。先ほども指摘がございましたけれども、大変古い、もうちょうど五月沖縄が復帰して十年になりますが、その復帰前さらに数年間にわたる大変古い事項ではないかと思うのですが、そういった事案に対して、これが全部こういった予備費から出されているとは私は思わない。支給する「予算不足を補うため」こうなっておるわけでございますけれども、なぜこういった古い事案に対して当初予算の中でこれが計上できなかったのかをまずお伺いしたいと思います。
  124. 山田正美

    ○山田説明員 お答えいたします。  この人身関係の支出金の問題ですけれども、これにつきましては、実はいろいろと事案の内容等につきましてもちろん審査する必要があるということになるわけですけれども、私ども地元といろいろと連絡をとっておりまして、沖縄県知事それから県下の全市町村長を構成員といたします沖縄返還協定放棄請求権等補償推進協議会という組織と十分相談をいたしまして、それでその組織を通じて人身被害についていろいろとどういう案件があるのかということについて要望をいただいております。従来出ておりました要望に基づきまして、一応一つの積算をいたしまして予算を計上さしていただいたところでございますけれども、その人身被害についてその後いろいろとPRをいたしまして、こういうような形で人身被害について問題のある方は申し出ていただくというようなPRを徹底をいたしました結果、予想以上にそういう案件が出てまいりました。そういうことから、当初の予算といいますか、既定予算だけでは不足ということになりまして、このような予備費の使用ということをお願いした次第でございます。
  125. 和田一仁

    和田(一)委員 そうしますと、当初予算にこれはずっと毎年毎年やっていたのではないと思うのですね、ある時期にまとめておやりになったと思うのですが、じゃそれはいつおやりになったか、そして本予算ではどのくらい計上されたかということもお伺いしたいと思いますけれども、その本予算に計上されるとき予測されておった件数と、実際に支出しなければならなくなった件数というのはどれくらい違ったのでしょう。
  126. 山田正美

    ○山田説明員 お答えいたします。  最初に予定いたしました予想の件数が、実は従来協議会から出ておりました件数から見まして、百二十九件という件数が出ておったわけですけれども、それにつきまして、予算計上としては五割増しということで百九十四件の予算を計上いたしました。ところが、実際に締め切ってみましたところ、申請件数が五百五十八件ありまして、そういうことから件数に違いが出てまいったというようなことでございます。
  127. 和田一仁

    和田(一)委員 件数が大変見込み違いということでございます。  それから、さっきちょっとお伺いしたのにはお答えいただけなかったのですが、百二十九件が当初考えられていた、それの五割増し百九十四件ですかに対して、いつの予算で、どれだけ計上されたのですか。
  128. 山田正美

    ○山田説明員 五十五年度予算でございます。(和田(一)委員「幾らですか」と呼ぶ)  予算の計上でございますが、当初予算で一億三千万を計上いたしまして、その後いろいろと別の既定予算の中で処理をいたしまして、それで足りませんでした分が予備費として四千万何がしというようなことになっております。
  129. 和田一仁

    和田(一)委員 一億三千万の予算で足らなくて、ここに対象になっている四千万余りの予備費ですが、そうすると、あと一億ぐらいは、どこかの分をこれは流用されておるわけですね。
  130. 山田正美

    ○山田説明員 既定予算の中で流用可能なものについてその分をお願いをいたしました。
  131. 和田一仁

    和田(一)委員 先ほどの御質問の答弁にもありましたけれども、件数と、それに支払われた一件当たりの額、大変少ない額でございますけれども、この支出を受けた、これは当人または遺族、こういうことでございましょうけれども、この額で了承をしているのでしょうか、どうでしょうか。
  132. 山田正美

    ○山田説明員 先ほど申し上げました現地の協議会も含めまして私ども了承しているというふうに理解をいたしております。
  133. 和田一仁

    和田(一)委員 これは、返還前のときに、米軍に対して補償を請求しておった、そしてその補償があった、それから、補償請求をしなかった、したがって補償もなかった、こういうものが混在しておるようでございますけれども、その辺はどうでございますか。補償請求をしなかった人、そして今度改めて政府の方からこういった支出金をもらった、そのとき補償をしてもらったがさらに今度また政府から支出してもらった、こういう人がおるようでございますが、その辺はいかがですか。
  134. 山田正美

    ○山田説明員 ただいまの、数字的に厳密にどのくらいというふうには申し上げかねますけれども、米国の関係で処理されましたものの中には、やはりいろいろとその事件の内容についての立証問題とかあるいは当時の情勢ですのでなかなか請求をしにくかったというような、そういう事案がむしろ多うございまして、そういうものについて、法律的な損害賠償の義務とかそういうこととは別に、このような支出金をいろいろと配慮をされたところでございます。
  135. 和田一仁

    和田(一)委員 そうしますと、これは結局その事故に対する補償ではなくて、何か性格的に言うと見舞い金というようなものである、そういうふうに理解してよろしいのですか。
  136. 山田正美

    ○山田説明員 見舞い金と申しましょうか、そういう定義をどういうふうに理解するかという問題がありますが、一応見舞い金的なものというふうに御理解いただいて結構かと思います。
  137. 和田一仁

    和田(一)委員 この問題についてはもっといろいろお伺いしたいわけなんですけれども、私はこういったものを沖縄開発庁が扱っているというそのいきさつもちょっとお伺いしたいと思います。  本来ならば、これは防衛施設庁が担当すべきものではないかと思うのですが、この件についてのみ開発庁がやっているというところはどういうわけでございますか。
  138. 山田正美

    ○山田説明員 どういうところで担当するかということについてはいろいろな考え方がございまして、こうでなければならないというようなことではないと考えますけれども、本件につきましてはこれを円滑に処理をするというような観点から、やはり沖縄県といいますか沖縄に関する問題を担当しております沖縄開発庁が、もちろん単独でこういうことをすべてやれるというわけでもありませんで、防衛施設庁等の協力を得ながらこれを処理することが適当であるというようなことで、沖縄開発庁で処理をさせていただいておるというようなことでございます。
  139. 和田一仁

    和田(一)委員 現在は沖縄の基地におけるさまざまな問題は施設庁の方が担当しておる、私はこう理解しております。同様に、ほかの基地に関してもやはり防衛施設庁の方でこういったことは全部やっておるわけでございますが、同じ基地の中でもやはりいろいろな問題が出てくる。特に最近私が非常に気にしておりますのが岩国の基地、ここでの事故、ごく最近も一つございましたけれども、こういった問題についてこれからちょっとお伺いしたいと思うのです。  岩国基地、これはもうそういう意味では完全に防衛施設庁の責任において、何か事故があった場合にはこれに対処する、そういうことだと思います。ことしになりましても、岩国基地の周辺においての航空機の事故が発生しておりますけれども、最近における航空機事故の発生の状況について、御報告をいただきたいと思うのです。
  140. 近藤孝治

    近藤説明員 最近、昨年九月以降、スカイホーク等のジェット機の墜落事故が三件発生してございます。一つは、広島県の作木村というところに昨年の九月九日にA4スカイホークが墜落いたしました。約二千平方メートルの立木等の損傷がございました。原因は現在米軍が調査中でございますが、補償については終了いたしております。  それから、同じく昨年の十一月五日、山口県の大島の北約二キロの海上にA4Mスカイホークが墜落いたしておりますが、これにつきましては原因は米軍が現在調査中でございます。海上でございましたので、特に被害は出ておりません。  それからことしになりましてA6のイントルーダーというジェット機が二月四日に山口県の由宇町の沖約五キロの海上に墜落いたしております。これにつきましても現在米軍が原因を調査中でございますが、これも海上でございますので被害はございませんでした。  大体そういったところが主なところでございます。
  141. 和田一仁

    和田(一)委員 航空機事故が基地の周辺で多発しているわけでございますが、岩国基地という基地が日本の安全保障上、防衛上どういう位置づけをされているか、日本防衛上どうしてもなければならぬ基地であるかどうか、その点について防衛庁の基本的な見解をお聞きいたします。
  142. 澤田和彦

    ○澤田説明員 岩国基地は自衛隊の基地と在日米軍の基地と両方あるわけでございますが、自衛隊につきましては現在海上自衛隊がPS1といいます対潜飛行艇と、それを救難用に改造いたしましたUS1と言っております救難飛行艇、こういうものを主力としました部隊を配備しております。これはもちろんわが国周辺海域等の防衛、それから洋上救難等に非常に重要な部隊でございます。それから、岩国基地に駐留しております米軍につきましては、アメリカの第一海兵航空団隷下に属します第十二及び第十五、この二つの海兵航空群、それとそれに対します支援部隊等がございまして、各種の戦闘機、それからただいま話に出ましたA4でありますとかA6というような攻撃機と偵察機というような戦闘航空機あるいはその他の航空機合わせて数十機配備してございまして、これは日米安保条約に基づきまして、わが国が侵略を受けました場合に、米国がわが国を支援してくれる場合に非常に大きな力になるところのものでございます。  それからまた、それと同時に、極東の平和と安全にも寄与する、こういう位置づけでございますが、特に海上自衛隊それから米海兵隊の航空機部隊がわが国の防衛に果たします役割りは非常に重要なものであると考えております。
  143. 和田一仁

    和田(一)委員 私がこの岩国基地の過去の事故をずっと調査しましたら五十数件、五十四件でしたか、あるのですね。この周辺の住民にとっては、これは大変危険な基地である、危ないという感じを持っておると思うのです。にもかかわらず、大変協力的にこの基地の使用についてうまくやってきている。こういうことを見ますと、最近地元ではこういった多発している墜落事故、あるいは物がおっこちる、こういうことに対して何とかこれをもっと安全にしてくれという要求は非常に強いわけです。そのために防衛庁としても調査をずっとしてきたわけでございますけれども、その調査がここへ来て終わった、五十六年度で一応調査が終わった、昭和四十八年から予備調査を行い、そして補足調査を行い、そして最近五十五年、五十六年と二年にわたって経済的な調査も行ったということでございますけれども、この飛行場をもう少し安全な方へ移したい、沖合いに移したい、こういう要望にこたえて重ねてきた調査、この結果についてそろそろ結論が出されてしかるべきだと思うわけでございますけれども、この点についてお伺いしたいと思うのです。  実は防衛庁長官が先般現地岩国に参りまして、そこでの発言の要旨を私拝見いたしました。その中にははっきりと、もういまや議論や理屈を言っている段階ではない、実行にスタートしなければならない、議論より実行という段階に来ているものと私はそう覚悟を決めております、こうはっきりおっしゃっておるわけです。調査は終わった、理屈を言う段階ではない、実行、実行にスタートというのは、まさに沖合い移設という要望にこたえてそれを実行する、こういうふうに私は理解しておるわけでございますが、その点はもう一度はっきりお聞きしたいと私は思うわけでございます。
  144. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 岩国飛行場の沖合い移設の問題ですが、詳しく先生から説明をされましたので多くは申しませんけれども、昭和四十八年に岩国基地を沖合いに移設することができるかどうかという調査を始めました、技術的に可能かどうかということを始めまして、技術的な移設は可能であるという結論は出たのですけれども、いかにせんお金がかかり過ぎる、こういうことで、再度基地の安全といいますか、住民に対する安全、障害を軽減するためにとり得る経済的、効率的な移設方法はいかにという調査を始めたわけでございます。  その調査が、委託調査ですけれどもこの五十七年の春に上がってまいりまして、いま防衛庁の中でこれを取りまとめておるところでございます。間もなくいたしますと取りまとめが終わりますが、その後で、われわれといたしましては必要に応じて、防衛施設庁の中に防衛施設審議会というのがありますので、そこにおかけをすることも考えております。何よりもその後でわれわれの方といたしまして、施設庁といたしまして出てきた調査結果に基づきまして考え方をまとめます。そのまとめたところに基づきまして関係省庁等との調整を終わる、こういうことを考えております。したがいまして、気持ちとしては前を向いておるわけでございますけれども、いろいろ調整をすべきところもありますし、もし前に進むというときに時間的おくれをとってはいけないということで、概算要求に間に合うようなテンポで仕事を進めているところでございます。
  145. 和田一仁

    和田(一)委員 先ほど、ことしは概算要求はいつごろが時期になるかという御質問もありまして、国会終了後速やかに作業を始めなければという大臣の答弁があったばかりでございます。     〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕 私は、長い間調査をされて、移設は技術的には可能だ、これはもういまの日本の土木技術をもってすれば可能なのは当然でございます。そしてさらに足らない、補足の調査もされた。それで大変お金がかかりそうなので、さらに経済的な方法はないかということまで調査をされて、それが終わった。いよいよその総合的な結論を出して、どうするかという大変大事な時期にいまかかっておるわけですね。したがって、ここで来年度予算に間に合うようにその方向づけを出されるかどうか、これは大変重要なことだと思うのですね。四十八年から今日までの長い間これだけ多くの事故を起こし、そしてさらに現在も大変危険な状態で訓練が行われている、あの基地が使われている、年間六万回近い発着をやっている、そしてその周辺には大変危険な状態がそのままである、こういうことを見ますと、私は周辺の人たちがよくここまで協力しこらえてきていたと思うのです。それも、かかってこの基地が移設されるという期待があったればこそだ、私はそう思うわけですね。そのいよいよぎりぎりのところへ参りまして、もし来年度の予算の中でそういう方向づけが全然出てこないということになると、これはちょっといままでのようなわけにいかなくなるぞ、基地そのものに対する住民の感情というものも十分尊重していただかないと、基地をもうやめてくれ、こういう大きな運動に展開しかねない、私はこう考えておるわけです。したがいまして、この問題については絶対に塩漬けにしてもらいたくない、凍結だけはしてもらいたくない、何としても少しでも来年度の中で前に向く結論を出していただきたい、こう思うわけなんですが、いかがでしょうか。
  146. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 先生のおっしゃるように、まさに結論を考えなければならないような時期に来っていると思います。われわれといたしましては、先ほど申し上げましたような手順で誠意を持って積極的にこの問題に取り組んでいきたいと考えております。
  147. 和田一仁

    和田(一)委員 伊藤長官は、先ほど申し上げたように現地でお話があったときに、五月の末ごろまでに調査結果を取りまとめて素案を作成いたします、六月中に審議会に諮問をいたします、必要があれば現地視察ということも行った上で概算要求の時期に間に合うようにこの結論をまとめていきたい、こういう意味発言をされております。これをぜひひとつ、間に合わないということでなく、間に合うようにひとつやっていただきたい、こう思うわけでございます。これは長官の現地での発言でございまして、このことは現地ではやはり非常に重く受けとめておると思うのですが、この点についてもう一回ひとつ御答弁願います。
  148. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 いま長官の発言の引用がありましたけれども、われわれといたしましては前向きに、誠意を持って、タイミングとしてずれることがないように一生懸命にやりたい、そういうように考えております。
  149. 和田一仁

    和田(一)委員 大変前向きな御答弁をいただいた、このように理解をいたします。ぜひそういう方向で、間に合うように御努力を願いたいと思うわけです。いままでは不幸中の幸いというか、余り補償を必要としないような事故、先ほどの御答弁の中でも、昨年、五十六年九月九日の山林に落ちた分、これは補償は済んだ、十一月の分あるいはことしの二月四日の墜落、こういったものは海中であったので住民への被害はなかった、こういうことのようでございますが、この飛行機の発着するその直下に大変たくさんの工場群がある、その工場群の中に非常に危険なもの、危険物あるいは毒物劇物、こういうものが大量に貯蔵されている、こういう状況の中で年六万回というような訓練が行われているわけでございまして、これが一回もしそういうところに落ちる、事故があったということになりますと、その補償は莫大なものになってくる、こういうふうに予想されるわけでございまして、もしそういう事態が起きてしまってからのことを考えますと、私は少々の無理をしても、予算的には大変苦しい昨今ではございますけれども、日本の安全保障の上からも欠かせない基地であるというお話であるし、そういう意味からもこれはぜひ前向きに検討していただかなければならない、このように思うわけでございます。  この五十数件のいままであった事故のうち、実に二十八件が飛行機そのものが墜落をしている、こういうことでございまして、物が落ちたあるいは模擬爆弾が落ちてしまったとか、すず箔が落ちたというような事故はもう非常にたくさんあるわけでございます。飛行機そのものが落ちたというだけでも二十八件もあるということでございますので、これは大変急がなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  調査の中でこの移設が、基本的には現在の基地からさらに沖合いに千五百メーター移設ということで調査が行われたようでございましたが、さらにそれが、それでは経費がかかり過ぎるというので経済的なやり方はないかということであわせて調査をされたようでございますが、その最初の千五百メーター沖合い移設というのよりさらに経済的な方法としての調査結果というものを、いま長官はどういうふうに報告を受けておられますでしょうか。
  150. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 実は今回の調査結果の取りまとめは、まだ私のところに上がっておりませんが、口頭でちらちら聞いているところによりますと、いままでは横にずらすだけではなくて縦にずらすといいますか、両方兼ねてやっていたような調査をやっていたというのですが、今度の調査は横にずらすだけの調査も含めまして二、三の調査をいたしました。結果は正確に聞いておりませんので詳しいことを申し上げるわけにまいりませんけれども、金額も当初のに比べて相当低い金額になるのではないかと私は期待をいたしております。
  151. 和田一仁

    和田(一)委員 思いやり予算とか、あるいは防音工事費とかそういうものもございますが、この民家防音工事費であるとかあるいは思いやり予算とかいうものももうだんだんと少なくしていっていいというような、そういうものの流用ということも考え合わせて、経済的な方法でできるだけお金をかけないで、しかしいまあるような危険なものを危険でないような方向へということは、これはぜひひとつやっていただかなければならぬ、こう思うので、きょう施設庁の長官から非常に前向きに御答弁をいただいておりますので、ぜひそれが実現されますように、私もまた機会を見ていろいろと御質問させていただきたいと思いますが、きょうは時間がなくなってしまいましてなんでございますが、この基地がもしそういった移設の問題が凍結をされたり塩漬けになったりというようなことになると、これはいままでと違った、住民の気持ちがぎりぎりのところへ来ているということを最後にもう一度申し上げまして、移設問題の促進について御考慮をお願いして、終わりたいと思います。
  152. 近藤元次

    近藤(元)委員長代理 次に、三浦久君。
  153. 三浦久

    ○三浦(久)委員 大蔵大臣にお尋ねをいたします。  五月の八日に三月の税収が発表されたわけですね。大体これから推定をいたしますと、五十六年度の税収不足というのは確定的。このことは大臣も認めておられます。大臣は四月八日の衆議院の大蔵委員会では数%の上ぐらい狂うのではないか、こういうことを言っておられましたけれども、きょうは一〇%ぐらい狂うのではないか、こういうお話ですね。     〔近藤(元)委員長代理退席、委員長着席〕  私どももこれはちょっと調べてみたのです。そうしますと、三月の税収というのは対前年同月比でもって五・四%の増です。三月末の税収の累計、これは二十四兆一千六百八十三億円。ですから補正後の予算に比べますと七兆六千六百三十二億円が不足をしているわけであります。そうすると、これを四月、五月の税収でカバーするとなると、四月、五月は対前年度同月比で五九・八%も税収が伸びなければならぬ、こういうかっこうになるわけですね。これはほぼ不可能。不可能に近い。ですから四月、五月の税収を対前年度比五・四%、いわゆる三月と同じように五・四%の増だというふうに見ますと、五十六年度は補正後に比べまして二兆六千百億円の税収の不足が生ずる、そういうかっこうになっております。先ほど一〇%前後というようなお話がありましたけれども、額にして大体どの程度の税収不足を見込んでおられるのか、お尋ねをいたしたいというふうに思います。
  154. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 ただいま御指摘の三月末までの税収の計数をもちましていろいろ仮定をいたしますと、いまの先生のお話のとおりでございまして、五・四%であれば二兆六千百億、そういうことになるわけでございます。ただ、現在までのところは三月まででございまして、三月決算の大法人の税収が五月末、今月の三十一日に入ってくるわけでございます。このウエートというものはかなり大きなものでございますので、それの入り方によってかなり大きく変動いたしますので、現時点で見積もりの計数といたしましてどの程度の減収になるかということにつきましては、まだ申し上げられる段階にはないわけでございます。ただ、現時点までの趨勢を機械的に伸ばしますと二兆四千億という数字がいろいろ新聞等に報ぜられたわけでございますが、機械的に計算すればそういう計数が出てくる、そういうことでございます。
  155. 三浦久

    ○三浦(久)委員 しかし、四月、五月というのはもう額が決まっているでしょう。ただ、取り込みが四月、五月とずれ込んでいるというだけであって、三月期決算で決まっているわけですから、そんな未確定というような問題ではないのですね。  それはそれとして、それではもう五十七年度に入っていますから、五十六年度の補正予算は法律上も組めないですね。組めないとなれば、どういうようにこの税収不足をカバーしていくのか。たとえばいろいろ言われていますね。不用額が幾ら出るかまだわからぬとか、そんなこともいろいろ言われますけれども、決算調整資金とか、それから国債の整理基金とか、補助貨幣回収準備資金とか、いろいろなことが挙げられていますけれども、どういう処置をなさろうとしているのか、お尋ねをいたしたいというふうに思います。
  156. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 おっしゃいますようにいまの段階ではどういう金額になるのか、定かでございません。一番大きい税収がいま御議論がございましたように減収になるといたしまして、幾らになるかわからない点が一つ。それから予備費の不用は確定いたしました。しかし、そのほかの金額、歳出の不用額というのも例年何ぼか出てまいりますので、これが幾らになりますかまだはっきりいたしておりません。それから、税外収入でございますが、これもプラスに大体なるのじゃなかろうかという気もいたしますが、これもプラスかマイナスかも含めまして定かではございません。  その辺のところがはっきりしてまいりますのが六月も下旬くらいになろうかと思いますが、そういたしましたときに全体をトータルいたしましてマイナスになったときにどうするんだということで、いまお話にございましたように、仮にマイナスになるといたしますれば、そのときに備えまして決算調整資金制度というのがあることは御承知のとおりでございますから、現在ございます決算調整資金の残高が約二千五百億ございますけれども、これを七月の末の決算の時点で整理をいたしますとしますと、使えるお金としましては大体二千四百億円くらいでございます。その中でおさまってしまえば一応はそれで問題がないわけであります。  さらにその金額の中でおさまらないようにマイナスの数字が大きいときどうするかということでございますが、それは決算調整資金に関する法律の附則に出ておりますように、国債整理基金から資金を繰り入れて決算をする、こういうことになってございますので、そのようなことで処理をするということになろうかと思いますが、いずれにいたしましても、来月六月の末から七月にかけまして決算の数字が大体どのくらいになるのかということが固まってきませんと、はっきりしたことは申し上げられないということでございます。
  157. 三浦久

    ○三浦(久)委員 大臣、一銭も一円に至るまでぴちっと確定するのはそうかもしれない。しかし、いまの段階でおおよそ二兆円以上とか二兆円から三兆円の間とかそういうようなことは予測がつくのじゃないですか。これだけ膨大な予算を皆さんたちが組んでいる。補正予算だって組む。そういう収入はみんな予測に基づいてやっているわけなんであって、ですから、いまの時点でそういう振れというのはかなり少なくなる。ですから、そういう時点で、いま五月十二日という時点で大体どのくらいだというふうに予想しているということは言えるんじゃないですか。さあさっぱりわかりません、それが二千四百億円の以内なのか以上になるのかわかりませんとか、そんな答弁じゃちょっと私は納得いかないのですね。それは皆さん方は専門家なんだから、大体このくらいの幅を見込んでおけば大丈夫だろうとかそういうことくらいはいま言えるのじゃないですか、どうですか。
  158. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 若干繰り返し的な御答弁にはなるのでございますが、五十五年度の例を見ましても、四月分、五月分で四兆八千億円、約五兆円近い税収がこの二月分で入っておるわけでございまして、こういう五兆円程度の大きな金額でございますので、現時点で予測を申し上げるのはなかなかむずかしいわけでございます。確かに三月期決算の法人の締めはほとんどもう終わっておるだろうと思われますが、しかし、会社の利益の決算の方針と税務の決算の方針とはまたいろいろ違いますし、それからまた、実際に申告税額が確定いたしましても、その分を五月末で納付していただけるのか、二月分延納するのか、三カ月延納するのか、そういう事情もございます。いずれにしましてもあと二十日間程度でございまして、そのタイミングが近ければ近いほどここで予測を申し上げるとかえってミスリードをいたしますようなこともございますので……(三浦(久)委員「間違ったときぐあいが悪いということだね」と呼ぶ)そういうことではございませんが、そういうことからいたしまして、ここは現在までの趨勢を機械的に伸ばしますれば二兆四千億円程度になる。そこくらいまででひとつ御了解をいただければと思うわけでございます。
  159. 三浦久

    ○三浦(久)委員 補正予算が成立してからわずか三カ月なんですよ。この三カ月の間にいまあなたが言われた二兆四千億円程度の税収の見込み不足が出てきた。これは一体どこに原因があるんですか。三カ月先も読めないのですか。本当のことを言うと三カ月先じゃないんだ、四月の八日には数%の上の方だけは不足になるでしょうと大臣が言っているわけだから。二カ月先も読めないというような補正予算の組み方をしているわけだ。これは一体どこに原因があるんですか。どういう理由でこんなふうに狂ってしまったのですか。
  160. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 確かに補正予算を御審議いただいてからまだ三カ月くらいでございます。その時点での計数の根拠といたしましては、大体十月、十一月時点での税収の実績を基礎にいたしまして、その時点での政府経済見通しの改定見通しを基礎に算定いたしておるわけでございます。補正予算を組みました実質的な時点といたしましては十二月中旬ごろでございます、大枠を決めましたのは。ただ、その時点ではっきりいたしております税収の実績額は、公式的に申し上げますと十月末の税収まででございます。御承知のように、五十三年度に決算年度の税収の所得区分を変更いたしました。その際、三月期決算法人の税収を現年度の分に加算することにいたしましたので、それまででございますと、十月、十一月の時点でございますと税収は実績としては半分程度判明はいたしておったわけでございますが、現在の制度でいきますと、その時点ではまだ二割、三割程度の税収から出発するわけでございますので、なかなか見通しがたい点もあるわけでございます。  ただ、その時点のいろいろな計数とか実績とかをつかみましてできるだけ正確な見積もりをいたすように努めたわけでございますが、たとえばその後急速に変化いたしましたような要素といたしましては、輸出の伸びがそれまでは政府経済見通しの改定見通しでも一七%くらいの伸びになるというようなことでございましたのが、年度の後半なり年末に至りまして急速に低下いたしまして、むしろマイナスになるというような非常に大きな変化があった。そういったようないろいろの変化がございまして、私どもとしてできるだけ正確に見積もったつもりではございますが、結果としてこういう数字になっておるわけでございます。  十一月、十二月、一月くらいまでは税収の伸びといたしましては一二%、一三%という二けたの伸びで、ある程度いい傾向を示してくれたんでございますが、これが二月から急速に落ち込みまして五%台に落ちている。これが四月の上旬になりまして判明をいたしまして、まさにこの一月くらいで伸びが三分の一になったことがはっきりいたしましたものですから、これはもう回復不可能かということで数%なり二兆四千億円程度のこれは避けられないのではないかということを申し上げておるわけでございます。
  161. 三浦久

    ○三浦(久)委員 いまあなたが言ったことは、それは補正予算をつくるときはそうだったかもしらぬけれども、二月の九日、十日予算委員会で補正予算審議があったでしょう、そのときにみんなわかっていることじゃないですか。ですから、わが党もその当時、二月の九日、十日の時点では法人税にしても十二月までしかわかってないから、一月から五月まで対前年同月比三〇・四%も法人税で伸びなければ補正後の予算に合わないじゃないかということを言っておるわけですよ。それからまた、全体の税収としても二九・一%対前年同月比でもって一月から五月まで伸びないと補正後の税収を確保できないじゃないかということは厳しく指摘しているわけですよ。だから、そんなことはみんなわかっていた。わかっていながら故意に税収の見積もりを高くしたのじゃないか、こういう疑惑を私は持たざるを得ないのです。というのは、大臣自身が、この五十七年度の予算が成立した二日後に、もう五十六年度の予算というのは数%、それも高い方の数%税収は狂うんだ、こういうことを言っているわけでしょう。結局、この補正予算審議のときに税収がもっと落ち込みますというようなことを言えば、五十七年度の予算の成立に影響するというような政治的な配慮から故意に税収見積もりを不当に高くして国会にもそのとおりそれを押し通してきたというふうにしか私は思えないのですけれども、その点どうですか。そんな不測の事態が二月の九日、十日以後発生したのですか。
  162. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 確かに二月九日、十日の時点でいろいろ御指摘は受けてございますが、この時点で判明しております十二月税収まででございますが、その当時は二けた台の伸びが一応確保されておったわけでございます。それからその時点でいろいろ御説明を申し上げてございますが、法人税でも大法人の伸びは二〇%以上の伸びを示しておる、それから自動車を中心とした物品税の伸びが数年になく非常に好調である、こういったような御説明をいろいろ申し上げまして、心配はございますが何とか補正予算どおりのものを期待いたしておりますということを重ねて確かに御答弁は申し上げておるわけでございます。  これが一月税収におきましてもなお二けた台の伸びは確保されたのでございますが、四月の上旬になりまして二月分の税収がある程度固まりまして、これを大臣にも御説明を申し上げた時点が四月六日、七日なんでございます。その時点で従来の一二、三%の伸びが五・数%という三分の一程度の伸びに急激に低下いたしたものですから、そういうふうな御説明をその時点で申し上げた次第でございまして、二月の時点でそういった事態を十分予測できたという御指摘につきましては、その時点ではなお補正予算のものを期待しておったということで、私どもとしても急激な落ち込み予測をできなかったことにつきましてはなお今後見積もりの正確度を高めるために努力はいたしたいと思うわけでございますが、これを予測しておって故意にこういう説明を申し上げたということはございませんので御了解をいただきたいと思います。
  163. 三浦久

    ○三浦(久)委員 官僚の中でも大蔵官僚は優秀だとか世上言われている。私のコメントは避けますけれども、そう言われているよ。たった二カ月先の予測もできないのですか。そんなことは考えられないじゃないですか。皆さん方の答弁を見ていると、一応逃げを打って、見積もりは見積もりでございます、歳入は見積もりでございますから、こういうことを言って逃げ道をつくっておるけれども、こんなに大きく補正後の税収の見積もりが狂ったなどということはいままであるのですか。ないですよ。私も調べてみたら、補正後二・二%減っているのがあります。これは四十九年だけですよ。これが一番大きな落ち込みです。それが一〇%近い落ち込みがあるなどという、それも補正後わずか二カ月、三カ月の間でですよ、こんな税収の狂いは前代未聞なんですよ。そうすると、これについては私はやはり責任とらなければいかぬと思うのだ。いや、見通しが悪うございました、これからそう見通しが狂わないようにやりましょうというようなことでは私は済まない問題ではないかというふうに思うのです。大臣もこの予算審議の中で、五十六年度の税収見積もり、福田さんが、責任を持ってやっております、こう言ったら、あなたも、部下のやっていることはわしがやっていることだ、わしが責任を持つのだ、こう言っておりますね。どういう政治責任をおとりになるのですか。
  164. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 大臣の前に一言、法律的な、計数的なことを補足説明させていただきますと、いまの御指摘の補正後予算に対しまして確かに四十九年度は二・二%の減収になっておるわけでございます。ただ、若干中身について申し上げますと、この当時は原則としては三月までの税収がその年度の税収だったのでございます。一部四月分も取り込んでおりましたが、大半は三月までの税収をもってその年度の税収としておったのでございますが、四十九年度に急速に景気が落ち込みまして、そのままでございますと大体八千億円程度の減収が見込まれたのでございます。これが比率としては五%だったのでございます。その時点でこれだけの、八千億の減収が生じますと決算を組むことが不可能になりますので若干制度を変更いたしまして、四月分もその年度の税収にするという変更をさせていただいて、これによって形式的には不足額は二・二%、三千三百億におさめたのでございますが、実質は五%でございました。しかもそれは三月までの分を年度の税収として計算して補正を組んだのにもかかわりませず実質五%程度の減収となったわけでございます。現在の制度で申し上げますと、現在は五月分まで入れました補正でございます。それが違っていいということではございませんが、一応そういう関係もありますということを御説明させていただきます。
  165. 三浦久

    ○三浦(久)委員 当初予算を組むときなら一年何カ月か前まで見通す、こうなるけれども、補正予算でこんなに狂っちゃいかぬですよ。だからこの補正予算審議のときに、おれが責任持つのだと福田さんも渡辺大蔵大臣も言われているのだ。それはやはり狂っちゃいかぬという前提があるから、わしが責任持つと言っているわけなんですよ。では、そういう政治責任をどうおとりになるのか、私はお聞きしたいのです。大臣、いかがでしょう。
  166. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 この見積もりの問題というのはなかなかわからない。いや、実際わからないのですよ。専門家がわからないのだから、私がわかるわけはないのですよ。いろいろ検討して、コンピューターを駆使してやっているわけですが、それでもわからない。当初に対して二〇%前後狂っていることがある。補正後補正後とおっしゃいますが、補正といってもしょせんは見込みの問題なんですね。  さあ幾ら補正するかという問題でこれは議論があった。もっと補正すべきじゃないかという意見もなきにしもあらず。しかし、それでは幾ら減額したらいいんだという具体的な数字を出してごらんなさいと言われたら、これは内部でもわからない。わかっているのは、要するに物品税、印紙税、源泉所得税というように毎月統計が上がってくるものが何とか十二月段階では十月ごろまではわかっている。法人税なんかは、九月決算というのが多ければいいのですよ。商法改正や何かでみんな三月決算にしてしまった。三月決算のものは五月申告ということですからね。(三浦(久)委員「それは納期だよ」と呼ぶ)いや、そうですよ、三月決算したら締め切って五月に申告出せばいいのですから、納税は五月まで。したがって、幾ら減額したらいいかということがわからないから、はっきりわかったものだけを減額しようということで、事務当局としては四千五百億円ぐらいは確実に減ると見て四千五百億円を減収に立てて赤字国債を追加発行することにした、これも事実でございます。  その後二月ごろになりまして、今度は十二月とか一月とかの税収の統計がだんだん来ると、法人税はわからないが、部分的に十二月決算なんかで法人税が非常にいいものも出てきた。もう一つは、いま言ったように物品税、特に自動車税というものが十二月、一月あたりぐんと出てきたので、これならばいける、再修正の必要なし、こういうように事務当局は自信を持っておったわけですよ。ところがその後、二月の統計というものが四月の何日かに出た。その段階では今度はがくんと落ちちゃった。私も実際のところびっくりした。  しかし、落ちちゃったものは返すわけにいかないということで、その段階で偶然に、予算成立後とぶつかったと言えば偶然にぶつかったのですよ。ですからその段階で見ると、こんなにへっこんじゃった、この調子でいけば、これはわからぬけれども仮にふえないで減りっ放しでいくとすれば、数%、しかも高い方ということを申し上げた。そこへ三月の統計が出た。これも依然としてよくない。しかしながら、四月はもう締め切っちゃっているわけですから、後は歳入が入るか入らぬかだけの話です。ですからこれについては、大きいのは法人の締め切りだけですね。したがって、もう伸びる要素というのは現実にはないわけですよね。     〔委員長退席、中村(弘)委員長代理着席〕 決算の仕方や何か、多少あります。決算の仕方でインチキをやられたのでは減ってしまうけれども、正確に出してもらえばふえる。それはそういうのはあるのです、五月までにまだ決まらない要素が。だから、簡潔に言ってもなかなか御理解いただけないから私は詳しく説明をしておるのです。  そういうことで、決して故意に意地悪をしてというわけではない。こちらもわからないわけですから、そういうことで五月になってこなければわかりません。しかしそれだけでは、ただ決算が出なければわからないわからないと言っても、これも不親切な話じゃないか。だから、仮に五月申告がいまの状況で続いてよくないとすればどうだ、こう聞かれますから、事務当局は正確ですから言わないのですよ。私は政治家ですから、そういうふうに聞かれれば、そういう前提があるのだからそんなに憶病になってもしようがないじゃないか。そうすれば、これは一〇%かな、それよりもちょっと減るかなというような心配もないではないという話をしただけのことでございます。私の方はかなりアバウトな話でございますから、前提があってお話をしております。事務当局の方は正確な話をしておるわけですから、そのつもりで御了承を願います。
  167. 三浦久

    ○三浦(久)委員 大臣の弁解は長々と聞かしていただきました。しかし、あの予算審議のときに五十六年度の税収についてこう言っているのです。福田さんは、税収は私が責任を持って見積もっておりますので、その見積もりの責任は私にございます。それを受けて渡辺さんが、部下が責任を持つものは大蔵大臣が責任を持つのはあたりまえでございますから、私の責任において見積もっておると言って何ら差し支えないし、当然私が責任を持って決着はつけたいと思っております、こうおっしゃっていらっしゃるのです。そうすると、税収の見積もりについて責任を持つということでしょう。そうすると、それがいま言われたような理由で狂ったとしても、狂ったということはこれは大変なことなんですよ。そうでしょう。決算調整資金から出すとかいうことでしょう。これは財政民主主義という観点からいって、私は大変重大な問題だと思うのですよ。だって、本来なら補正でぴちっと組まなければいかぬ問題なんですから、狂いがなければ。補正でぴちっと組んで、それで国会審議を経た上で、そういう予算、金の出し入れの問題ですから、歳入歳出の問題ですから、これは国会で議決するというのがまず原則なんです。決算調整資金を使うなどということは、その例外です。また、国債整理基金から借りるとか、それは全く例外中の例外なんですよ。  ですから、これだけ大きな税収の見込み違いができているわけですから、見込みが違ってはいかぬから、あなたは責任を持つと言われたのです。いまの話だと、いや、こうこうこういう理由だったからしようがないんだ、おれは責任は持てないんだ、こういう話なんですか。責任を持つのですか。持つのなら、どういう責任を持つのですか。
  168. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは責任を持てないなどということを大蔵大臣が言うわけないですよ。それは責任を持つに決まっておるじゃありませんか。責任をどういうふうに持つかというと、それは穴をあけっ放しというわけにいかぬわけですから、仮に税収が不足になって、不足になったその部分の支払いがつかないという問題が出てくるわけですから、そうすると先に国債を発行するかという問題も一つあったでしょう、それがわかっていれば。わかっていないから、そういうふうなことがあるから、あらかじめ法律の制度の上で、経済の見通しというのはなかなかわからない。しかし、そういうときに困る問題がある。したがって、あらかじめ法律は準備をしてあるわけですよ。そういう予見しない問題が起きたときには、そういうものから充当して支払いに支障のないようにしてくださいよ。まずそういうことで支障のないようにする、これは一つの責任じゃありませんか。職務上の責任をちゃんとそういうことで果たしますということを言っているのです。  あなたは何か政治上の責任と言うが、政治責任というのは政治の問題であって、これは理屈じゃない問題だから、私は国会で過半数の人があなたやめなさいと言えば、それはやめるに決まっているし、自民党の中だって圧倒的多数の人が、そんなのは間違いで、いまだかつてないのだから大蔵大臣はやめるべきだと、私はやめますよ。言われなくたっていいんですよ。しかし、政治問題というのはそのときの環境の状況によって決まる問題でありますから、私はあなたに別に責任を持つわけじゃないよ。そういうことです。政治責任というのは、政治環境の中でおのずから決まる問題であるということであります。
  169. 三浦久

    ○三浦(久)委員 大臣、役人がそういうことを言うのなら私も納得しますよ。足りなくなった、さあ制度上は決算調整資金がありますよ、足りなければ国債整理基金がありますよ、まだ足りなければ補助貨幣の回収準備金とかなんとかがありますよ、それを使うのですよ、それが私は責任をとることですよ、そういうことなんですか。  そんなことは政治家である大蔵大臣渡辺さんの言うこととは私はちょっと思えないね。それはそうでしょう。政治責任をとるという意味でしょう、大臣が責任をとる。たとえば鈴木さんが五十九年度までに赤字国債をゼロにします、それができなければ私は責任をとりますというのは、政治的な責任でしょう。政治家が責任と言う場合には、政治責任を言うんじゃないですか。私は渡辺大蔵大臣というのは政治家だと思っていますよ。それもりっぱな政治家だというふうに言われているじゃないですか。それが決算調整資金を使ってやるからそれは処理したんだ、責任をとったんだ、そんなことはちょっと政治家の言うことじゃないと私は思いますよ。それはどうですか。
  170. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 あなたの責任というのは、何かやめればいいみたいな話だけ言っていますが、やめればいいだけで後はどうでも構わないというような、そんな責任はありませんよ。責任というのは、自分の職責をきちんと果たすことが最大の責任なんだから。私はそういうように思っておる。やめればいいというだけが責任じゃないと私は思いますよ。私がやめることによって穴がすぱっと埋まっちゃって金がぞろぞろ出てくるんなら、私はきょうにでもやめる。だから、私としてはそういう問題は責任を持ってやりますということを言っておるわけでございます。  しかし、幾らそう言っても政治というものは別な問題だから、大多数の人が渡辺大蔵大臣がやめたらうんと金が入るからやめろと言うなら、すぐ私はやめますよ。だから、私は責任を持って処理しますと。部下が言っても、部下がやることは大臣が言うことと同じですよ、私にかわって答弁しておるわけですから。専門家がわからないと言うのには、わからない理由があってなかなかわからない。だから、そういう人に責任をとれとれと言うから、その責任は私にあるんですということを申し上げただけです。
  171. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、責任をとるというのは居直るということなんですね。居直るということが責任をとるということですね。そういうふうにお聞きしておきましょう。  それからもう一つ。今度国鉄問題をちょっと聞きますけれども、第二臨調答申が国鉄問題に関して第四部会でそろそろ出そうなんですが、いま非常に客離れという現象が国鉄には見られるわけなんです。そのことが国鉄の財政を非常に圧迫しているという状況になっておると思うのです。  まず、いまの国鉄の財政の状況、たとえば過去債務とか支払い利子とか、支払い利子が赤字に占める割合とか、それからし客離れの状況、そういうものを簡単にちょっと御説明いただけませんか。
  172. 永光洋一

    ○永光政府委員 まず輸送量の推移でございますが、四十九年あるいは五十年ごろから見ますと、旅客につきましては若干コンマ以下程度の減がございますが、ほぼ横ばいに推移しておりまして、四十九年の七十一億人が五十五年度は六十八億人程度ということで、若干落ちぎみでございます。貨物につきましては、これはやはり落ち込みが激しゅうございまして、この数年間年率四、五%程度の落ち込みになっております。そういう状況でございます。  その中での大まかな財政状況としましては、五十六年度見込みとしまして、赤字が一兆一千五百四十一億というふうに一応見込まれておりますし、その際の長期債務の残高は、棚上げ分を含めまして十四兆四千億程度というような状況になっております。
  173. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それは五十五年度でしょう。五十六年、五十七年度の末になると十八兆円を超えるのですよ。十八兆四千億円ぐらいになるのです。  もう時間がありませんので、一問だけ伺いますが、運賃の値上げが客離れを招来しているということば言えると思うのです。ところが、予算を編成するときに、運輸省原案が出ますね。それはもちろん国鉄の運賃何%値上げというようなものも含んでおります。ところが、大蔵省はいつもこの運輸省の原案の値上げよりももっと上げろ、もっと上げろと言ってしりをひっぱたいているのですね。大蔵省原案が内示されるといつもそうなんです。五十五年度も五十六年度も五十七年度もそうなんです。ただ、最終的な政府案としては運輸省案と同じに落ちついているということはあるけれども、内示の段階ではいつも多いのです。多くない。——そうですか。私は、こういうことはすべきじゃない。特に閣議了解でも、やはり運賃の値上げ等々については国鉄の主体性をもってやらせろ、こうなっているわけですから、大蔵省がいろいろ金を出すという関係もあって、財政的にいろいろな観点があるだろうと思いますけれども、運賃の値上げについては素人なんだから、余り口出しをしてもらいたくないというふうに私は思うのです。それはいかがでしょう。
  174. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 いまお話しの運賃の値上げでございますが、基本的には、国鉄の客離れというのは運賃だけで客離れしているわけではないのですね。ただ、運賃の値上げというのが基本的に大きな流れとなっている客離れを増幅している面があるのではないか、これはそういうことはあるかと思います。  ただ、国鉄の運賃につきましては、御承知のとおり限界がございまして、その限界、法律的な限界の中で経営改善計画ではそれぞれ法定限度の範囲内で適時適切に改定を行う、こういうことになっておりまして、国鉄が毎年毎年、国鉄としては不本意な面もあろうかと思いますけれども、しかしそうかといって毎年毎年大きくなってくる赤字をみんな国民の税金にお願いするというわけにもまいらぬということで、国鉄は運賃の値上げをお願いしているのだと思うわけであります。  私どもといたしましても、その国鉄の苦しい状況もわかりつつ、同時にやはり受益者負担というのが基本的には国鉄の赤字対策の第一でございますから、その中で国鉄と相談しながら値上げをしてきておるという事実はございますが、いま先生がおっしゃいましたように、たとえば五十七年度の予算で、内示で国鉄の値上げ案よりも私どもがうんと値上げしろと言ったような事実はたしかないはずだと思います。
  175. 三浦久

    ○三浦(久)委員 ちょっと時間がありませんので、それはまた後で論争しましょう。  終わります。
  176. 中村弘海

    ○中村(弘)委員長代理 楢崎弥之助君。
  177. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大蔵大臣にお伺いをいたしますが、あなたの時代でなくて、聞かれなかったら聞かなかったで結構です。  防衛庁がシーレーン一千海里防衛ということを大蔵省に持ち込んで、それとの関連の装備が当然出てきますね。いままさにそうですけれども、防衛庁が大蔵省にその一千海里の航路帯防衛を持ち込んだのはいつの時点ですか。
  178. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ちょっといま事務当局とも相談をしてみたのですが、具体的にいつ持ち込んだか、ちょっと記憶にございません。
  179. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、まだ持ち込まれておるかどうかもわからないのですか。——私は二十分弱しかありませんから。  私は当然だという感じがするのですよ、持ち込まれたかは。国防会議で決まっていないのだから。そうだろう。総理大臣が昨年五月アメリカに行って、その一千海里のことを言ったけれども、国防会議で決まっていない。だから大臣は御存じないのだろうと思う、大蔵省も。
  180. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 まことに申しわけございませんが、事前に御通告いただければ調べてまいったわけでございますが、具体的に持ち込みが現実にあったかどうか、事実関係でございますので、ちょっといま調べておりますので……。
  181. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、調べて後ほど御連絡ください。  それでは先に進みます。リムパック82はたしか二月の末に自衛艦が日本を出発して、五月の上旬に帰ってきたと思う。つまり五十六年度と五十七年度にかけてこれは行われた演習である。このリムパック82に要した費用はどのくらいですか。     〔中村(弘)委員長代理退席、委員長着席〕
  182. 石崎昭

    ○石崎政府委員 ちょっと数字を出すのに手間取って失礼しました。約七億二千万円でございます。
  183. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっとそこにおってください、時間がないから。  燃料費はそのうち何割くらいですか。
  184. 石崎昭

    ○石崎政府委員 内訳は、私は詳細な資料を持ってきておりませんから、総額しかいま申し上げられません。後ほど、必要があればお答えします。
  185. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 後ほどとおっしゃるが、どうしたらいいでしょうか、委員長。五十六年度の予備費のこともやっているのでしょう。そうじゃないのですか、国庫債務負担の問題も。後ほどと言えばいいですよ、あしたでもあさってでも。じゃここで休憩しますか。
  186. 石崎昭

    ○石崎政府委員 後ほどと申し上げましたのは後ほどでありまして、可能な限り早く調べてお答えするようにします。
  187. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうしますか、委員長。きょう議題にかかっていることをやっているのですよ、私は。
  188. 永田亮一

    永田委員長 さしあたって質問を続けていただいて。
  189. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ほかの問題で。
  190. 永田亮一

    永田委員長 はい。どうぞ。
  191. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかりました。じゃ時間に制約なく、出てくるまでやりますよ。何時間でもやれるから。  それじゃ先に進みましょうか、ほかの問題に。いいですか。  今度のリムパック82で、ミサイルはどういう種類の、ミサイルの実射をやったか。何発やったか。
  192. 和田裕

    和田(裕)政府委員 リムパック82におきまして発射いたしましたミサイルでございますが、「しらね」からシースパローを一発、それから「たちかぜ」「あさかぜ」からターター各二発、計五発でございます。
  193. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 シースパローは一発幾らですか。
  194. 和田裕

    和田(裕)政府委員 一発約七千万円でございます。
  195. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ターターはどうですか。
  196. 和田裕

    和田(裕)政府委員 一発九千万円でございます。
  197. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 五発で幾らになりますか。
  198. 和田裕

    和田(裕)政府委員 暗算でございますが、七千万円プラスの三億六千万円でございますから、約でございますが、五億三千万円になるかと承知いたします。
  199. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 七億円から五億三千万引いたら、あと一億七千万しか残らぬ。それで全部ほかのことをやったのですか、リムパック82は。
  200. 石崎昭

    ○石崎政府委員 リムパック82に要した経費内訳はいま調べておりますが、御通告があれば詳細な資料を持ってくるところでありました。総額、さっき申し上げた額からミサイルの額を引いて、残りで全部、何と何が賄えたかというようなことは、さっき申し上げた理由で直ちにお答えできません。あらかじめおっしゃっていただけば持ってきました。
  201. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あらかじめと言うが、この予算に関係したリムパックのものを私は聞こうと思った。一々言わなければなりませんか。——では、それも残しておきますね。  装備局長、「しらね」が海事衛星のMARISATの装備をしましたね、道具をつけて。これはいつ装備をしましたか。
  202. 和田裕

    和田(裕)政府委員 突然のお尋ねでございますので、いまちょっと資料を持ち合わせておりませんので、早速調べてみたいと思います。
  203. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは、私、なぜ聞くかというと、「しらね」は今度のリムパック82に参加するについて、これは日本側の旗艦でしょう、急いでこれを取りつけて出発したのですよ。だから、リムパック82のことを聞くとたしか通告しておいたから、しかも装備局長だから知っておられると思って聞いておるわけです。  それでは、いつつけたか。予算は幾らか。五十六年度の予算に入っておったかどうか。それから、もう年度を越しておるのですが、要した費用は七億円とおっしゃったが、もしこれを超えたときはどの予算から出すのですか、これがはまらぬときは。
  204. 石崎昭

    ○石崎政府委員 予算の年度を越えた使い方という問題については、防衛庁は、内部では経理局の会計課と十分協議してやりましたし、大蔵省とも協議の上でやったことでありますが、実は御通告もありませんでしたし、私はそういう会計の細部については承知しておりませんので、必要があればこれまた後刻に譲っていただきたいと思います。
  205. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全部後で後でになりましたが、どうしたらいいでしょうか。
  206. 永田亮一

    永田委員長 続けてやってください。
  207. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いやいや、私、十五分の予定だからそれだけしか用意してないのですよ。ずっとやっていいならやりますよ。ところが、私が要求した塩田防衛局長も来ていないのです。  じゃ、ぼちぼちやりますか。MARISATというのはどういうものか説明してください。装備局長
  208. 和田裕

    和田(裕)政府委員 急なお尋ねでございますので正確を欠く点があるかと思いますが、私の記憶で申し上げますと、海事衛星でございまして、衛星によりまして、海の上を通航いたします船舶等に対しまして、その位置等を教えるために電波を使って作動する、そういった衛星システムであるというふうに記憶しております。
  209. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんなことでは説明にならぬのですね。まあ常識程度のあれですけれども、どうしましょうかね、一つ一つこうなるのですけれども……。
  210. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 先ほど調べてみますと申し上げました件、シーレーンの話でございますが、私の方にはまだ何も持ち込まれておらないということでございます。
  211. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの点はしかとはっきりさせておきたい。これはいずれ本格的な防衛二法のときに、時間がたっぷりあるそうですから、それだけはやりますけれども。いいですな。一千海里航路帯のことは予算の問題としても全然大蔵省には相談したことはない、これだけははっきりしました。あとはお待ちします。
  212. 永田亮一

    永田委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  213. 永田亮一

    永田委員長 速記を始めてください。  理事各位の協議に基づき、予備費に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。      ————◇—————
  214. 永田亮一

    永田委員長 昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四年度政府関係機関決算書並びに昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書並びに昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書の各件を一括して議題といたします。  大蔵大臣から各件について概要説明を求めます。渡辺大蔵大臣
  215. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 昭和五十四年度の一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書を会計検査院の検査報告とともに国会に提出し、また、昭和五十四年度の国の債権の現在額並びに物品増減及び現在額につきましても国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十四年度予算は、昭和五十四年四月三日に成立いたしました。  この予算は、厳しい財政事情のもとで経済情勢に適切に対応するとともに、できる限り財政健全化に努めることとして編成されたものであります。  さらに、災害復旧等事業費、国家公務員の給与改善費等について所要の措置を講ずるとともに、租税収入の増加等に伴い公債金の減額を行うこととし、補正予算が編成され、昭和五十五年二月十四日その成立を見ました。  この補正によりまして、昭和五十四年度一般会計予算は、歳入歳出とも三十九兆六千六百七十五億八千六百六十六万四千円となりました。  以下、昭和五十四年度決算につきましてその内容を御説明申し上げます。  まず、一般会計におきまして、歳入の決算額は三十九兆七千七百九十二億二千八百十八万円余、歳出の決算額は三十八兆七千八百九十八億三千百十七万円余でありまして、差し引き九千八百九十三億九千七百一万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計昭和五十五年度の歳入に繰り入れ済みであります。  なお、昭和五十四年度における財政法第六条の純剰余金は二千百四億千五百三十五万円余となり、その全額を公債または借入金の償還財源に充てることといたしております。  以上の決算額を予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額三十九兆六千六百七十五億八千六百六十六万円余に比べて千百十六億四千百五十二万円余の増加となるのでありますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れが予算額に比べて増加した額二千七百十億二千四百三十四万円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、昭和五十四年度の歳入の純減少額は千五百九十三億八千二百八十二万円余となるのであります。その内訳は、租税及び印紙収入における増加額三千三百三十五億八百四十八万円余、専売納付金における増加額七十七億五百四十三万円余、官業益金及び官業収入における増加額二十五億百五十二万円余、政府資産整理収入における増加額百六十九億二千百四十七万円余、雑収入における増加額五百七十九億八千百五十八万円余、公債金における減少額五千七百八十億百三十二万円余となっております。  一方、歳出につきましては、予算額三十九兆六千六百七十五億八千六百六十六万円余に、昭和五十三年度からの繰越額二千四百九十一億二千百八十二万円余を加えました歳出予算現額三十九兆九千百六十七億八百四十九万円余に対しまして、支出済み歳出額は三十八兆七千八百九十八億三千百十七万円余でありまして、その差額一兆千二百六十八億七千七百三十一万円余のうち、昭和五十五年度に繰り越しました額は六千三百四十二億千七百十九万円余となっており、不用となりました額は四千九百二十六億六千十一万円余となっております。  次に、予備費でありますが、昭和五十四年度一般会計における予備費の予算額は三千五百億円であります。その使用額は二千三百二十四億千三十三万円余でありまして、その使用につきましては、すでに、国会において御承諾をいただきましたので、説明を省略させていただきます。  次に、一般会計の国庫債務負担行為につきまして申し上げます。  財政法第十五条第一項の規定に基づき国が債務負担することができる金額は一兆三千三百五十八億九千四百四十六万円余でありますが、実際に負担いたしました債務額は一兆三千四十四億三千七十七万円余でありますので、これに既往年度からの繰越債務額一兆五千九百十二億四千九百四十七万円余を加え、昭和五十四年度中に支出その他の理由によって債務が消滅いたしました額一兆千七百十八億四万円余を差し引きました額一兆七千二百三十八億八千二十万円余が翌年度以降に繰り越された債務額となります。  財政法第十五条第二項の規定に基づき国が債務負担することができる金額は千億円でありますが、実際に負担いたしました債務額は二百二億四千七百七十三万円余でありますので、これに既往年度からの繰越債務額九十八億三千九百四十七万円余を加え、昭和五十四年度中に支出その他の理由によって債務が消滅いたしました額百三十七億三千六百七十七万円余を差し引きました額百六十三億五千四十四万円余が翌年度以降に繰り越された債務額となります。  次に、昭和五十四年度の特別会計の決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十八でありまして、これらの決算の内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  次に、昭和五十四年度における国税収納金整理資金の受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は二十四兆三千百四十一億六千二百八十四万円余でありまして、この資金からの一般会計等の歳入への組み入れ額等は二十四兆二千四百五十九億八千八十二万円余でありますので、差し引き六百八十一億八千二百二万円余が昭和五十四年度末の資金残額となります。これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。  次に、昭和五十四年度政府関係機関の決算の内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  次に、国の債権の現在額でありますが、昭和五十四年度末における国の債権の総額は七十兆九千七百九億二千八十二万円余でありまして、前年度末現在額六十兆七千六百六十七億三千四十五万円余に比べて十兆二千四十一億九千三十六万円余の増加となります。  その内容の詳細につきましては、昭和五十四年度国の債権の現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  次に、物品増減及び現在額でありますが、昭和五十四年度中における純増加額は三千七百五十一億二百二十九万円余でありますので、これに前年度末現在額一兆八千百八十五億八千五十一万円余を加えますと、昭和五十四年度末における物品の総額は二兆千九百三十六億八千二百八十一万円余となります。その内訳の詳細につきましては、昭和五十四年度物品増減及び現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  以上が、昭和五十四年度の一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書等の概要であります。  なお、昭和五十四年度の予算の執行につきましては、予算の効率的な使用、経理の適正な運営に極力意を用いてまいったところでありますが、なお会計検査院から、百五十七件に上る不当事項について指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  予算の執行につきましては、今後一層配慮をいたし、その適正な処理に努めてまいる所存であります。  昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書並びに昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書を、会計検査院の検査報告とともに第九十四回国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書概要について申し述べます。  昭和五十四年度中に増加しました国有財産は、行政財産一兆四千二百二十九億四千四百五十三万円余、普通財産一兆千九百五十八億六千八百五十一万円余、総額二兆六千百八十八億千三百四万円余であり、また、同年度中に減少しました国有財産は、行政財産四千七百三十二億八千七百二十一万円余、普通財産二千八百九十四億六千三百五十七万円余、総額七千六百二十七億五千七十九万円余でありまして、差し引き一兆八千五百六十億六千二百二十五万円余の純増加となっております。これを昭和五十三年度末現在額二十六兆四千四百九十二億八千四百九十二万円余に加算いたしますと、二十八兆三千五十三億四千七百十七万円余となり、これが昭和五十四年度末現在における国有財産の総額であります。  この総額内訳を分類別に申し上げますと、行政財産十七兆二千二百八十五億二千七百三十万円余、普通財産十一兆七百六十八億千九百八十七万円余となっております。  なお、行政財産の内訳を種類別に申し上げますと、公用財産十兆千六百三十六億五千四百七万円余、公共用財産二千九百五十億四千八百七十三万円余、皇室用財産三千三百一億五千七百三万円余、企業用財産六兆四千三百九十六億六千七百四十六万円余となっております。  また、国有財産の総額内訳を区分別に申し上げますと、土地七兆二千七百八十九億四千八百十四万円余、立木竹三兆九千百四十二億九千六十万円余、建物三兆四千五百十六億六千八百五十二万円余、工作物三兆二千三百二十二億五千四百四万円余、機械器具八億九千百十六万円余、船舶六千四百十四億六千五百四十一万円余、航空機七千百五十六億二千九百五十万円余、地上権等十二億六千六百八十九万円余、特許権等二十五億六千八百五十一万円余、政府出資等九兆六百六十三億六千四百三十六万円余となっております。  次に、国有財産の増減の内容について、その概要を申し上げます。  まず、昭和五十四年度中における増加額を申し上げますと、前述のとおりその総額は二兆六千百八十八億千三百四万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって増加しました財産は二兆七百十一億千九百八十五万円余、第二に、国の内部における異動によって増加しました財産は五千四百七十六億九千三百十八万円余であります。  次に、減少額について申し上げますと、その総額は七千六百二十七億五千七十九万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって減少しました財産は二千七百十九億五千九百五十六万円余、第二に、国の内部における異動によって減少しました財産は四千九百七億九千百二十二万円余であります。  以上が昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書概要であります。  次に、昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書概要について申し述べます。  昭和五十四年度中に増加しました無償貸付財産の総額は五百四十七億千六百九十五万円余であり、また、同年度中に減少しました無償貸付財産の総額は三百七十七億千五百十万円余でありまして、差し引き百七十億百八十四万円余の純増加となっております。これを昭和五十三年度末現在額三千八百七十七億八千七百七十六万円余に加算いたしますと、四千四十七億八千九百六十一万円余となり、これが昭和五十四年度末現在において無償貸付をしている国有財産の総額であります。  以上が昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書概要であります。  なお、これらの国有財産の各総計算書には、それぞれ説明書が添付してありますので、それによって細部を御了承願いたいと思います。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
  216. 永田亮一

    永田委員長 次に、会計検査院当局から各件の検査報告に関する概要説明並びに同検査報告中特に重要な事項について説明を求めます。大村会計検査院長
  217. 大村筆雄

    ○大村会計検査院長 昭和五十四年度決算検査報告につきまして、その概要説明いたします。  会計検査院は、五十五年十月十四日、内閣から昭和五十四年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて、昭和五十四年度決算検査報告とともに五十五年十二月十日内閣に回付いたしました。  昭和五十四年度の一般会計決算額は、歳入三十九兆七千七百九十二億二千八百十八万余円、歳出三十八兆七千八百九十八億三千百十七万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において、四兆八千七百十九億六千三百十万余円、歳出において、四兆六千九百三十八億九十六万余円の増加になっており、各特例会計の決算額の合計額は、歳入八十三兆七千八十二億千二百十三万余円、歳出七十二兆千九百五十九億三千五百十二万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において十一兆七千四百九十九億七百八十一万余円、歳出において九兆六千四百三十二億二百七十八万余円の増加になっております。  また、国税収納金整理資金は、収納済み額二十四兆三千百四十一億六千二百八十四万余円、歳入組み入れ額二十三兆六千百九十三億四千五百五十九万余円であります。  政府関係機関の昭和五十四年度の決算額の総計は、収入十九兆四千八百二十一億三千九百二十二万余円、支出十九兆二千七百八億五千五百五十六万余円でありまして、前年度に比べますと、収入において一兆二千九百四十七億六千四百二十七万余円、支出において一兆五千三百九十五億五千九百三十五万余円の増加になっております。  昭和五十四年度の歳入、歳出等に関し、会計検査院が、国、政府関係機関、国の出資団体等の検査対象機関について検査した実績を申し上げますと、書面検査は、計算書二十三万九千余冊及び証拠書類六千九百二十七万余枚について行い、また、実地検査は、検査対象機関の官署、事務所等四万二千余カ所のうち、その八・〇%に当たる三千四百余カ所について実施いたしました。そして、検査の進行に伴い関係者に対して、約千四百七十事項の質問を発しております。  このようにして検査いたしました結果、検査報告に掲記した不当事項等について、その概要説明いたします。  まず、不当事項について申し上げます。  不当事項として検査報告に掲記いたしましたものは、合計百五十七件であります。  このうち、収入に関するものは、五件、十七億七千九百五十万余円でありまして、その内訳は、租税の徴収額に過不足があったものが一件、十二億四千三百三十八円余円、保険料の徴収額に過不足があったものが三件、五億千六百十六万余円、職員の不正行為による損害を生じたものが一件、千九百九十六万余円。  また、支出に関するものは、百三十四件、二百十億八千百五十八万余円でありまして、その内訳は、予算経理に関するものとして、架空の賃金、旅費または会議費を別途に経理していたものなど、並びに給与の支出及びその決算処理が不当と認められるものが四件、百九十八億二千八百五十八万余円、工事に関するものとして、予定価格の積算が適切でなかったため契約額が割り高になったもの、監督、検査が適切でなかったため設計と相違して施工したものが五件、七千百万余円、物件に関するものとして、物品の購入計画等が適切でなかったため不経済になったものが三件、四千二百六十五万余円、役務に関するものとして、契約処置が適切でなかったため支払い額が過大になったもの及び不経済に支払われていたものが五件、四千七百二十万余円、保険に関するものとして、保険給付金の支給が適正でなかったものが二件、一億千六百五十二万余円、補助金に関するものとして、補助事業の実施及び経理が適切でなかったものが九十九件、四億七千九百八十一万余円、貸付金に関するものとして、設備資金等の貸し付けが、貸し付けの目的に沿わない結果となっていたものが九件、一億五千七百五十九万余円、不正行為に関するものとして、職員が、架空の旅行命令簿兼旅費支給調書を作成し旅費を受領して資金を領得したもの、及び業務に必要な会議を実施したとして架空の請求書を作成するなどして資金を領得したものが六件、八千百三十万余円、その他、隧道工事に伴う飲料水の渇水対策補償費の支払いが適切でなかったものが一件、二億五千六百九十万余円であります。  以上の収入、支出に関するもののほか、保管中の物品や郵便貯金の預入金等について職員の不正行為による損害を生じたものが十八件、一億五千三百三十四万余円ありまして、これらの合計は、百五十七件、二百三十億千四百四十三万余円となっております。これを前年度の百六十四件、四十五億五千六百九十六万余円に比べますと、件数において七件の減少、金額において百八十四億五千七百四十六万余円の増加となっております。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  五十五年中におきまして、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求いたしましたものは八件、また、同法第三十六条の規定により改善の意見を表示いたしましたものは一件であります。  このうち、会計検査院法第三十四条の規定により、是正改善の処置を要求いたしましたものは、大蔵省の、十円青銅貨幣の回収後の取り扱いに関するもの、農林水産省の、補助事業の実施及び経理の適正化に関するもの、通商産業省の、中小企業設備貸与事業における繰り上げ貸与料の取り扱いに関するもの、郵政省の、第三種郵便物の取り扱いに関するもの、建設省の、補助事業の実施及び経理の適正化に関するもの、除雪用機械の購入費補助に関するもの、中小企業金融公庫の、中小企業設備貸与事業における繰り上げ貸与料の取り扱いに関するもの、日本道路公団の、高速道路等の新設工事における岩石土工工事費の積算に関するものであり、また、会計検査院法第三十六条の規定により改善の意見を表示いたしましたものは、農林水産省の、農村地域の生活環境施設の設置に関するものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について説明いたします。  これは、検査の過程で会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求すべく質問を発遣するなど検討しておりましたところ、当局において、本院の指摘を契機として直ちに改善の処置をとったものでありまして、検査報告に掲記しましたものは十三件であります。その内訳は、北海道開発庁の、低水流量観測業務の実施に関するもの、防衛庁の、物品増減及び現在額報告書の記載漏れ等に関するもの、通商産業省の、石炭技術振興費補助金により取得した処分制限財産の処分に係る収入金の徴収に関するもの、日本専売公社の、建築工事におけるコンクリートのポンプ車による配管打設経費の積算に関するもの、日本国有鉄道の、プレストレストコンクリート箱けたの製作及び架設工事におけるPC鋼棒等の組み立て費の積算に関するもの、空気調整設備工事における矩形ダクトの製作取りつけ費の積算に関するもの、北海道東北開発公庫の、船舶資金の貸し付けに関するもの、日本住宅公団の、宅地造成工事における機械土工費の積算に関するもの、募集案内書等の配布業務の委託手数料の算定に関するもの、日本道路公団の、高速道路等の新設工事における鋼矢板の打ち込み及び引き抜き費の積算に関するもの、日本鉄道建設公団の、青函隧道建設工事において貸与している蓄電池機関車の機械損料の積算に関するもの、年金福祉事業団の、業務委託手数料の算定に関するもの、日本中央競馬会の、トータリゼータシステム保守整備料の積算に関するものであります。  最後に、特に掲記を要すると認めた事項について説明いたします。  この事項は、事業効果等の見地から問題を提起して事態の進展を図るために掲記しているものでありまして、昭和五十四年度決算検査報告には、次の二件を掲げてございます。  すなわち、農林水産省の、国営農地開発事業によって造成した農地の利用に関するもの、森林開発公団の、大規模林業圏開発林道事業の施行に関するものであります。  以上をもって概要説明を終わります。  会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係各省庁などに対して、適正な会計経理の執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、関係各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう、望んでいる次第であります。  次に、昭和五十四年度国有財産検査報告につきまして、その概要説明いたします。  会計検査院は、五十五年十月二十四日、内閣から昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書の送付を受け、その検査を終えて、昭和五十四年度国有財産検査報告とともに昭和五十五年十二月十日内閣に回付いたしました。  五十三年度末の国有財産現在額は、二十六兆四千四百九十二億八千四百九十二万余円でありましたが、五十四年度中の増が二兆六千百八十八億千三百四万余円、同年度中の減が七千六百二十七億五千七十九万余円ありましたので、差し引き五十四年度末の現在額は二十八兆三千五十三億四千七百十七万余円になり、前年度に比べますと、一兆八千五百六十億六千二百二十五万余円の増加になっております。  また、国有財産の無償貸付状況につきましては、五十三年度末には、三千八百七十七億八千七百七十六万余円でありましたが、五十四年度中の増が五百四十七億千六百九十五万余円、同年度中の減が三百七十七億千五百十万余円ありましたので、差し引き百七十億百八十四万余円の増加を見まして、五十四年度末の無償貸付財産の総額は四千四十七億八千九百六十一万余円になっております。  検査の結果、昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書に掲載されている国有財産の管理及び処分に関しまして、昭和五十四年度決算検査報告に不当事項または意見を表示しまたは処置を要求した事項として掲記したものはありません。  以上をもって概要説明を終わります。  引き続きまして、昭和五十四年度決算検査報告に掲記いたしました主な指摘事例について説明いたします。  まず、不当事項のうち、収入に関する指摘金額十七億七千九百万円の大部分を占めておりますのは、例年どおり大蔵省において租税の徴収額に十二億四千三百万円の過不足が生じたというものでありますが、この徴収過不足額につきましては、本院の指摘後、いずれも徴収決定または支払い決定の処置がとられました。  次いで、支出に関する指摘は、百三十四件、二百十億八千百万円となっており、これは前年度に比べて件数で十二件、金額で百八十億九千万円の増加となっておりますが、指摘金額が大幅に増加しましたのは、後ほど述べますように、日本電信電話公社において、超過勤務手当の支出に関し、不実の決算表示をしたり、架空の未払い金を計上したものが、合わせて百八十四億四千五百万円の多額に上ったことによるものであります。  ここで、その主な事例について説明いたします。  まず、予算執行に対する基本的認識の欠如に原因する不適正な経理として、日本電信電話公社の事例について申し上げます。日本電信電話公社では、職員に支給する給与について基準内給与と基準外給与に区分されており、これを相互に流用するには公社法や予算総則の規定により郵政大臣の承認ないし認可を得なければならないことになっております。ところが、公社では五十三年度において、労使協定による超過勤務手当の一律支給分が多額に上ったため、基準外給与の超過勤務手当に不足を来し、基準外給与の中でやりくりしてもなお基準外給与が四十八億九千七百万円不足することになりました際、必要な郵政大臣の承認等を得ることなく勝手に基準内給与から流用し、一方、決算上は基準外給与の範囲内で予算執行がなされたように虚偽の表示をしていたものであります。また、公社では、五十三年度の財務諸表に同年度の職員給与の未払い金として二百四十億六千六百万円を計上いたしておりましたが、このうち百三十五億四千八百万円は、翌年度以降の超過勤務手当の一律支給分として予算外に支給するための財源に引き当てるため、架空の未払い金を計上したものでありまして、いずれも法令等に違背する不当な事態と言わざるを得ないものであります。  また、日本電信電話公社の近畿電気通信局等において、出張の事実がないのに出張したこととして旅費を不正に支出したり、架空の名目によって会議費を不正に支出したりなどして、これを別途に経理し、会食の経費などに充当していたものが合わせて十三億三千二百万円に上ったほか、労働省の愛知労働基準局等においても賃金に関し同様に五千万円に上る不正支出の事態が発見されましたので、これについても掲記いたしております。  不当事項についてもう一つ日本鉄道建設公団の事例を申し上げます。同公団では、四十八年度から新潟県十日町市地内において北越北線薬師峠隧道工事を施行しておりますが、この工事に伴い同市鐙島地区において飲料水源として利用している井戸に減渇水が生じましたため、公団では五十五年三月に、同地区に簡易水道施設を設置するための費用等として、住民団体との間に三億六千五百万円の補償契約を締結し、その全額を支払っておりました。ところが、十日町市では、すでに五十四年六月から公団の補償対象地区を含む鐙島地区の全域を対象に、国庫補助事業による簡易水道工事に着手し、同年十二月に完成、五十五年一月から給水を開始しておりまして、補償契約締結時には補償の対象とした工事は施工する必要がなくなっていたわけでありますから、公団は、国庫補助工事の対象とならない部分の水道施設等の設置に要する経費一億八百万円について補償すれば足りるのに、現地について調査確認することなく、国庫補助事業と重複する部分等の経費二億五千六百万円についてまで補償していたものであります。  次に、会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求した事項九件のうち、その主な事例について説明いたします。  まず、農林水産省及び建設省の国庫補助事業に関する事例でありますが、国庫補助事業は、原則として補助対象年度内に完了しなければならないことになっておりまして、やむを得ない事情等により年度内に事業が完了しない場合は、必要な予算の繰越手続をとり翌年度の予算から交付することになっております。ところが、農林水産省または建設省の補助を受けて地方公共団体等が事業主体となって実施している国庫補助事業について検査いたしましたところ、年度内に事業が完了していないのに、所定の繰越手続をとることなく書類上は年度内に完了したように作為して国庫補助金の全額を受け取っていたものが、五十三、五十四両年度の事業におきまして、農林水産省関係で二千八百四十三件、建設省関係で二万二千六百七十九件と多数見受けられました。そして、実際の事業完了時期について見ますと、事業年度経過後相当期間を要していたものが多く、中には翌年度の第三・四半期を過ぎても完了していないものもあったわけであります。  このような事態は、補助金適正化法等の関係法令に違背するだけでなく、交付済みの補助金が事業主体に長期間滞留する上、その後、補助事業の内容が変化し補助金の減額を要する事態が生じてもこれに対応することができないといったような実害も生ずるわけでありまして、国庫補助金の適正かつ効率的な執行が阻害されるのであります。  このような事態が生じているのは、地方公共団体において補助事業を関係法令に従って実施しようとする意識に欠けていたことによるものでありますが、補助金を交付する農林水産省や建設省の側においても、このような事態が発生している場合にそれに対して厳正な態度で臨む姿勢に欠けていたことにもよるわけでありまして、今後は補助金適正化法に基づく厳正な処置をとるなどして、このような事態の根絶を図るよう主務大臣に対して是正改善の処置を要求したものであります。  なお、この処置要求に対する両省や地方公共団体等の対応について五十六年中の検査でフォローいたしましたところ、五十五年度の補助事業については本院が指摘したような事態はほぼ改善されているという結果が得られております。  次に、郵政省における第三種郵便物の取り扱いが適切でなかったという事例について申し上げます。  郵便法で定める第三種郵便物——これは御案内のとおり、新聞、雑誌などの定期刊行物を内容とする開封の郵便物でありまして、料金は第一種郵便物に比べて二分の一ないし五分の一の低料金となっているものでありますが、この第三種郵便物として郵政省では五十四年度末で一万五千百二十八件を認可しておりますが、このうち二千三百五十六件について検査いたしましたところ、認可に当たっての審査及び認可後の監査が十分でなかったため、第三種郵便物としての法定要件を具備していないのに、低料金の第三種郵便物として取り扱っていたものが合計百九十八件ありまして、この百九十八件に係る五十四年度中の差し出し通数計千七百五万通を第一種郵便物として取り扱ったとしてその料金を計算しますと、実際の収入額との間に七億七千八百万円の開差を生ずる状況でありました。  郵政省における第三種郵便物の認可件数、差し出し通数は年々増加する傾向にあり、一方、第三種郵便物の取り扱いに係る損益を見ますと毎年大幅な赤字を生じている状況でありますので、第三種郵便物として認可する際の審査及び認可後の監査体制を整備するとともに、第三種郵便物で法定条件を具備しないものについては認可を取り消すなどして、適正な郵便料金の徴収を期するよう郵政大臣に対して是正改善の処置を要求したものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について説明いたします。これは、会計検査院が検査の過程で不適切な会計経理を発見し、その是正改善の処置を要求しようとして検討を進めている間に、本院の指摘を契機として当局が是正改善の処置を講じたという事例でありまして、十三件を掲記いたしておりますが、その主な一、二の事例について説明いたします。  まず、防衛庁関係で物品増減及び現在額報告書に多額の計上漏れがあったという指摘であります。これは、航空自衛隊補給統制処ほか十二部隊等における物品の管理状況を検査した結果判明した事態でありまして、同補給統制処が報告書の記載対象物品の範囲について各部隊等の分任物品管理官に対して的確な指示を行っていなかったために、報告書に記載すべき物品二百六十六品目八百十八個百十億七千五百万円が計上漏れとなっておりましたので、航空自衛隊の他の部隊等や陸上、海上両自衛隊の所有物品についてもみずから調査して所有物品の実態を把握し、これを報告書に適正に表示すべきことを指摘いたしました。この指摘に基づき各自衛隊において調査した結果、五十三年度の報告書において、陸上自衛隊三千四百二十三個二百八十八億円、海上自衛隊三百三十一個百六十一億円、航空自衛隊六千九十二個七百一億円、計九千八百四十六個千百五十二億円の計上漏れがあったほか、海上自衛隊で千三百二十一個百二十一億円の誤計上があったことが判明いたしましたが、これらについては五十四年度の報告書においてすべて調整されました。  もう一つ、北海道東北開発公庫の船舶資金の貸し付けに関する指摘について申し上げます。同公庫では、北海道及び東北に就航し、同地域内における積み荷及び揚げ荷を主たる目的とする貨物船の建造または購入に要する資金を貸し付けており、貸付対象船舶には同地域で就航することを義務づけております。ところが、本院で公庫の貸付対象船舶のうち、五十四年度末現在ですでに就航している外航船十一隻、内航船三十隻、計四十一隻、貸付金額百八十五億三千五百万円について、同地域での就航状況を調査いたしましたところ、同地域での就航が著しく少なかったり、全く就航していなかったりしているものが外航船の全部及び内航船の相当数について見受けられ、このような事態が二年以上も継続しているのに、これに対して同公庫では適切な処置をとっていないものが八隻、これに対する貸付金額は四十八億二千万円に上っておりましたので、この点を指摘いたしましたところ、公庫では就航状況の把握方法や指摘したような事態が生じた場合の繰り上げ償還等の処置について具体的な取扱基準を定めたものであります。  以上説明いたしました事項のほか、事業効果等の見地から問題を提起するため特に掲記を要すると認めた事項として二件を掲記いたしておりますので、その概略を申し上げます。  その一つは、農林水産省が多額の国費を投じて実施している国営農地開発事業に関するもので、本院が十一地区の造成農地三千三百三十ヘクタールについてその利用状況を調査いたしましたところ、四地区において、受益者が造成農地の配分等を受けていながら未植栽のまま放置していたり、作付はしたもののその後の管理が不良のため雑草の繁茂に任せていたりしていて、多額の国費を投じて造成した農地がその効果を発揮していないものが一割を超える三百四十九ヘクタール、事業費にして四十八億円に上っておりました。  もう一つは、森林開発公団が実施している大規模林業圏開発林道事業に関するもので、同公団では、四十八年度から五十四年度までに十八路線について逐次着工しておりますが、その工事の実施状況について見ますと、完成予定期間の約半分程度を経過しておりますのに、五十四年度末の実績は施行延長で計画延長の一〇%弱、完成延長では三%弱といったように事業が著しく遅延しており、しかも、路線通過各地域の住民の要望が強いことなどもありまして、工事を部分的に実施したり、車両の通行に当面支障のない既設の林道についての拡幅改良工事を先行したりしておりまして、林業の振興等に貢献度合いの高い国道や県道と連絡する区間の工事を優先して施工していない状況であり、このため、せっかく完成した道路も、主として山村地域の生活道として暫定的に利用されているにすぎず、林業の振興にはほとんど寄与していない状況でありました。  このように、特記事項として掲記いたしました二件は、ともに多額の国家資金を投じて実施している大規模プロジェクトがその効果を発現していない事態でありまして、これらについては事業計画策定後の社会情勢の変化に伴う計画の見直しを行う必要があるものの、受益者側の事情等もありまして事態の打開が容易でないわけでありますが、この打開策については、関係機関はもとより各界において十分御論議いただきたいということで問題提起をいたした次第であります。  以上、概括的ではありますが、昭和五十四年度決算検査報告の主な事例について御説明いたしました。  以上をもって終わります。
  218. 永田亮一

    永田委員長 これにて昭和五十四年度決算外二件の概要説明聴取を終わります。     —————————————
  219. 永田亮一

    永田委員長 この際、資料要求の件についてお諮りいたします。  例年、大蔵省当局に対して提出を求めております決算の検査報告に掲記された会計検査院の指摘事項に対する関係責任者の処分状況調べについて、昭和五十四年度決算につきましてもその提出を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  220. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明十三日木曜日午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十七分散会