○大村
会計検査院長 大変重要な難問題が山積いたしております折から、内閣初め
委員会において私どものこの問題につきましてここ数年何回となくお取り上げいただきまして、会計検査院といたしましても大変恐縮に思っておりまするし、このことはまた会計検査の重要性に対する御理解のあらわれと存じまして、大変ありがたく思っておる次第でございます。
私は、長い間財政会計の仕事に関与いたしましたし、産業開発金融の業務にも関与し、かつまた、この六年半、両院の御同意を得まして検査官の重責を汚しておるところでございますが、そういう経験に基づきまして、この際、私の見解を申し上げてみたいと存じます。
経緯につきましてはすでに御
承知だと思いますけれども、先ほど御
指摘のとおり、五十二年五月の衆議院の決算委の御
決議以来総選挙も何回かあり、内閣も何回か交代しております。——ちょっとくどいようでございますが、大変大事な点でございますから、その間の経緯を改めて申し上げます。
五十二年五月以来、特に五十三年、両院の与野党一致のもとに「会計検査院の権限の拡大」ということを御
決議いただいております。それを受けられまして当時の
内閣総理大臣より、会計検査院が速やかに検討を了して見解をまとめることを期待しているとのお言葉もございました。これを受けまして会計検査院は、その後政府の関係
各省と種々折衝を重ねながら、両院の御
決議に最小限度こたえるような案を五十四年五月、内閣に提出いたしております。その後内閣におかれましては、各歴代内閣ごとこの問題について私は真剣に御検討いただいたと存じます。
その後、本内閣におきまして昨年七月、立法措置は別といたしまして、肩越し検査に応じない機関が約三機関あるわけでございますが、その他の機関につきましては肩越し検査をやっておるところであります。と申しますのは、私どもの
会計検査院法は新憲法に基づきます
昭和二十二年の立法でございます。その後、現在見られるような政策金融機関が続々とできた次第でありまして、住宅金融公庫を除きましては融資先に対しての
調査権限を持っておりません。それが、各政策金融機関ができる前は政府が特別会計で直接融資でやっておりましたから、これは会計検査院が検査できるわけであります。それが今日のように特別会計ではなくて政策金融機関が融資することとなりまして、権限がございません。しかし、それぞれその資金は国民の貴重な租税資金で出資するとかあるいは補給金を出しておるとか、あるいは国民の零細資金をもととする財政資金をもって低利の政策融資が行われておるわけであります。決してコマーシャルベースの融資が行われておるわけではございません。そういう点から、独立機関である検査院の何らかのチェックが必要である。しかし、事柄は融資に属する事柄でありますから、肩越し検査でもってスムーズにこの二十数年間やってまいった次第でありますが、たまたまロッキード事件に端を発しまして、私どもの肩越し検査が必ずしも十分に機能していないということが
国会で
指摘を受けまして、五十三年におきましては両院において明確に会計検査院の権限の拡大を要請され、それに対して先ほど申し上げましたような当時の
内閣総理大臣からの要請の言明があったわけでございます。
それを受けましての私どもの現在の院法の内閣への提出、それが五十四年五月でございます。その後、昨年の七月に至りまして、現内閣におきまして、私どもの肩越し検査に応じられない若干の機関に対しても、それが合理的な理由があり、かつ、ほかの手段で事実の確認等が行い得ない場合には、肩越し検査に十分
協力するようにという指導通達をお出しいただいております。この点が従来と変わった顕著な点でございます。
したがいまして、肩越し検査という手段をもってやる限りは、いまや私どもに十分御
協力がいただけるものというふうに私どもは理解しております。しかし、何らかの不当な事態があり、それが十分な御
協力を得られない場合は、私どもといたしましてはこれは検査報告その他何らかの形で報告して事柄を明らかにして、また御判断をいただかなければならないと思います。
私どもの
立場は、憲法で与えられました独立機関としての大変重要な権能でありますから、ほかの
各省に間々見られますような縄張り意識というものはいささかも持ってはならないと
考えております。したがいまして、私どもは厳正公正に国民から負託されました独立権能のもとに少数精鋭で有効な検査成果を上げる。したがいまして、検査報告にも明記してございますように、検査個所につきましてわずか八%でございますけれども、そのわずかな
指摘のもとに十分に関係
各省においてその原因を究明していただいて、私どものただ一点の
指摘であっても、自分の所管のそれの何十倍に類する同じような
指摘につきまして内部点検をしていただきまして、正すべきは正していただきたい、かように
考えているわけであります。
たとえば、ある金融公庫におきましては、私どもの
指摘した結果、総裁の厳命のもとに十分に点検された結果、翌年は私どもの検査の結果、何らの
指摘事項がなかった、そういうような事例もあるわけでございます。(「簡潔に」「時間がないよ」と呼ぶ者あり)時間がないというお話もございますから……。このたびの、昨年七月の内閣の新しい指導通達に基づいてお認めいただきました肩越し検査の
協力通達、したがいまして、私どもが必要と認める、もちろん私どもは厳正公平な
立場で必要と認めるわけでございますから、関係機関におかれましても同意されると思いますが、そういう場合は十分に肩越し検査の権能を有効に活用することによりまして、しかし事柄は、いままで十分に肩越し検査に
協力していただけなかったところに初めてやるわけでございますから、やはりスムーズに行えるようにしたい、そのためにこれからは、いままで御
協力いただけなかった機関に対して新たにやります場合には、肩越し検査といえども検査官
会議にかけまして、果たして融資先まで肩越し検査をやる必要があるかどうか十分判断いたしまして、スムーズに肩越し検査を実施し、有効な検査成果を上げ得るように努めてまいりたいと思うわけであります。
それはそれといたしましても、会計検査院の憲法上の独立権能に関する事柄であります。また、従来のこの数年間にわたる経緯もございます……