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1982-05-14 第96回国会 衆議院 環境委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年五月十四日(金曜日)     午前十一時十四分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 中村正三郎君 理事 藤波 孝生君    理事 牧野 隆守君 理事 山崎平八郎君    理事 野口 幸一君 理事 水田  稔君    理事 岡本 富夫君 理事 中井  洽君       池田  淳君    山本 政弘君       木下敬之助君    藤田 スミ君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 原 文兵衛君  出席政府委員         環境政務次官  石川 要三君         環境庁長官官房         長       山崎  圭君         環境庁長官官房         審議官     大山  信君         環境庁企画調整         局長      清水  汪君         環境庁自然保護         局長      正田 泰央君         環境庁大気保全         局長      吉崎 正義君         通商産業大臣官         房審議官    平河喜美男君  委員外出席者         資源エネルギー         庁公益事業部計         画課長     荒尾 保一君         自治大臣官房地         域政策課長   藤原 良一君         自治省行政局行         政課長     中島 忠能君         自治省財政局交         付税課長    紀内 隆宏君         環境委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 五月十二日  環境行政確立に関する請願(中島武敏君紹  介)(第三七九七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十日  空き缶公害防止対策に関する陣情書(第二三  六号)  湖沼水質保全早期法制化に関する陳情書外二  件(第二三七号)  鹿児島県出水市にツル等生息地の確保に関する  陳情書(第二三八号)  飛行場等周辺騒音等公害対策に関する陳情書  (第二三九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境影響事前評価による開発事業規制に関す  る法律案土井たか子君外二名提出、第九十四  回国会衆法第五号)  環境影響評価法案内閣提出、第九十四回国会  閣法第七一号)  公害防止並びに自然環境保護及び整備に関  する件      ――――◇―――――
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  公害防止並びに自然環境保護及び整備に関する件について調査を進めます。  この際、ナイロビにおいて開催された国連環境計画特別会議について環境庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。原環境庁長官
  3. 原文兵衛

    原国務大臣 私は、国会のお許しをいただきまして、ケニア国ナイロビで五月十日から十八日まで開催されております国連環境計画管理理事会特別会合に、日本政府首席代表として出席いたしてまいりましたので、御報告いたしたいと思います。  本特別会合は、昭和四十七年、一九七二年、ストックホルムで開催されました国連人間環境会議の十周年を記念して開催されたものであります。本会合には、国連加盟百五十七カ国中百二十数カ国の環境担当大臣等を初め、国連機関からも多数の代表が参加しております。  私は、日本政府代表して十一日の午前に一般演説を行いました。その全文はお手元にお配りしてございます。  まず初めに、わが国における過去十年間の環境改善努力環境影響評価法制化など当面する課題を述べるとともに、今後とも環境保全施策はますます重要性を増すことを強調いたしました。  次に、地球的規模環境問題についての国際協力に関し、今日、世界人口の急増と人間活動規模の拡大を背景として、地球的規模環境悪化が進行していることについて注意を喚起するとともに、本問題解決のために若干の提言を行いました。  第一に、地球環境保全のため、国際機関条約等を通ずる国際協力の促進を図ること、第二に、開発途上国に対する援助に際し、環境問題に適切な配慮を払わるべきこと、第三に、地球環境保全のための調査研究活動を充実強化すべきこと、第四に、省資源、省エネルギーを促進すること、第五に、環境教育初等教育の段階から適切に行うことについて述べたのでございます。  さらに、二十一世紀地球環境理想像を模索するとともに、これを実現するための戦略を長期的かつ総合的な視点から検討する特別委員会新設提案いたしました。  この特別委員会は、世界トップレベルの見識と洞察力を持つ方々によりまして、現在、地球環境悪化が進行しておりますけれども、その原因とかその他についてまだ十分解明されていない点もございますので、そういう点について調査研究をし、そして二十一世紀に向かって、各国は、また国際協力においてどういうことをなすべきかというようなものをまとめて提言してもらうための特別委員会が必要でないかということを私ども考えまして、その新設提案いたしたわけでございます。  また同時に、この特別委員会がもし新設されましたならば、その成果実施していくために「環境の十年」ということを定めることを提案いたし、その「環境の十年」の中のしかるべき年を国際環境年として国際的に環境問題に対する関心を高め、そうしてそれによって環境保全を全うしていく、そういうような意味国際環境年を設けたらどうかというようなことも提案いたしたわけでございます。  私は、この合金を通じまして、環境保全の問題はもちろんわが国だけでなく世界各国に共通した大きな問題であることを再確認し、かけがえのない地球環境保全し、改善するための国際協力が一層推進されなければならないことを痛感した次第でございます。  この特別会合は、十八日まで続きまして、十八日に宣言等を採択して終了する予定になっております。  なお、日本がいま申し上げました特別委員会新設提案いたしました、それにつきまして、私は、会合が始まる前に、トルバ国連環境計画事務局長とも会っていろいろ話し合いましたし、また、日米会談を開きましてアメリカ代表とも話し合いました。そのほか、スウェーデンとか国連環境計画の初代の事務局長であるカナダ出身ストロング氏とかハンガリーの代表とかといろいろ話し合いましたが、必ずしも意見は一致しておりません。ことにアメリカ代表は、検討はさせてもらうけれども、いまこの時間ですぐ支持するというようなことはとても言えないというような発言もございました。ただ、これに積極的に賛成してくれる国々もかなりありますので、私どもはそういう国々とも協力しながら、やはり新設することが地球環境を将来に向かって保全していく上で非常に大事じゃないかと思って、今後も努力をするつもりでございます。  なお、私の代表演説は、先ほど申し上げましたようにお手元に配っておりますので、長くなりますから、一応概要だけを申し上げまして、御報告にさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)      ————◇—————
  4. 八田貞義

    八田委員長 次に、第九十四回国会土井たか子君外二名提出環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案及び第九十四回国会内閣提出環境影響評価法案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村正三郎君。
  5. 中村正三郎

    中村正三郎委員 本日は、自由民主党を代表いたしまして、政府提出に係ります環境影響評価法案について質問いたします。  環境庁長官におかれましては、国連環境計画管理理事会特別会合に御出席くださいまして、帰ってきてすぐの委員会でございまして、大変御苦労さまでございます。また、国連における環境特別委員会設置等を主張されましたとか、大きな成果をお上げになりましたことにつきまして敬意を表する次第でございます。  本題でございますが、わが国はかつて産業発展に伴いまして大変深刻な公害経験してきたわけでございます。その後、公害防止という社会的な要請を受けまして、政府また民間がいろいろな努力をされまして、それなりの成果を上げてきたわけでございます。この点につきましては、私ども環境委員会が昨年ヨーロッパ視察等を行いましたときにも、諸外国から、日本は非常に環境というものについて成果を上げてきた、公害で大変ひどいことを経験したが、環境対策についてももはや先進国になったというような評価をいただいてきたわけでございます。しかし、公害が発生いたしますと、自然環境破壊等が一たん起こりますと、その対策には多くの費用と年月を要するものでございますし、また、完全な回復は期しがたいものでございます。  こういった意味から、国民の健康で文化的な生活を確保するためには、環境汚染を二度と起こさないように、その未然防止を図ることが重要であると思うわけでございますが、そのために、規模が大きくてその実施環境に著しい影響を及ぼすようなおそれのある事業等の場合に事前事業者環境に及ぼす影響評価に係る調査、予測及び評価を行いまして、環境汚染未然防止しようという、環境影響評価を行うことがきわめて重要であると信ずるものであります。そして、いま法律による制度化を図る必要性がありはしないかと思うものでございますが、政府環境影響評価法制化について環境庁を中心に取り組まれてまいりました努力は、時を得たものだと信ずるものでございます。  政府案は長い年月をかけて慎重に検討されてきたものでございますが、これにつきまして先般来の委員会でいろいろな御意見があったようでございますが、そもそも世の中には一〇〇%完全なものというのはないわけでございまして、一〇〇%完全なものを理想として追い求めるということは人類の発展についても必要なこととは思いますが、それを追い求める余り現実的な努力を怠るということは許されないことだと思うわけでございます。われわれ政治に携わる者は、一歩一歩着実にその理想に近づくための現実的な努力を重ねるべきだと思います。この法案も、そういった意味からわが国環境汚染未然防止を図る上で一歩を踏み出すものであると考えるものであります。  そこで、先日の質疑の中で本法案について批判的な御意見もあったようでございますし、また、法案考え方についてこの際明らかにしておきたい点もございますので、幾つかお尋ねしたいと思います。この点につきましては、すでに四月二十三日の委員会で出たこともあり、重複する点もあると思いますが、重要な点でございますので、御答弁をいただきたいと思うわけでございます。  まず最初に、環境庁長官にお伺いするわけでございますが、先ほども申し上げましたUNEP会議に出て帰ってこられたわけでございますが、そういった会議における各外国のアティチュードと申しますか、環境汚染に対する対応というようなものも含めまして、この法案と類似したような法律各国の制定の状況でございますとか取り扱い、また、こういったものをいま日本環境の中で御提案になられました御決意といったものを伺いたいと思います。
  6. 原文兵衛

    原国務大臣 お答え申し上げます。  中村委員指摘のとおり、わが国公害防除対策あるいは環境保全対策国民の皆さんあるいはまた政府企業等も非常な努力を重ねまして、一時の危機的な状況は脱したかと思いますけれども、しかしなお、公害の面、環境保全の面においてこれからさらに十分にやっていかなければならない面がたくさんあるわけでございますが、とりわけ公害自然環境破壊を起こさないように未然防止を図っていくということはきわめて重要であると思うわけでございます。狭隘な国土に一億を超える人口を擁しているわが国でございます。また、さまざまな経済社会活動が営まれているわが国でございます。事業実施前に適切な環境影響評価を行うことはきわめて重要であると思うわけでございます。このたびのUNEP特別会合におきましても、私の代表演説におきましても、この環境影響評価法制化について日本も一生懸命いま取り組んでおるところであるという報告をいたしましたけれども各国代表も、環境に関する影響評価アセスメントについてはほとんど言及しております。そうして、今後この未然防止を図っていかなくちゃならないという点においてはほとんど各国とも共通した意識に立っておるわけでございまして、私どももますますこの必要性を痛感してまいったわけでございます。  中村委員指摘のように、政府提案も決して私は一〇〇%のものとは思っておりません。まだまだ不十分な点もあろうかと思いますが、未然防止をする上においては、一歩でも二歩でも前進をして、着実に前進をしていかなければならないという観点のもとに、ぜひ皆様方の御理解と御協力によりまして一日も早くこの法案を成立させていただくことが、わが国の今後の環境保全公害防止のためにきわめて重要ではないかと思っておる次第でございます。  いま申し上げましたように、各国とも環境影響評価についてきわめて強い関心と、また、その必要性を認識しているわけでございますが、各国の詳細な現状につきましては、局長からお答えさせたいと思います。
  7. 清水汪

    清水政府委員 アメリカあるいは西欧諸国におきまして、環境影響評価制度がかなり整備されつつあるということでございます。国によりまして形式等に若干の違いがあるとか、あるいはその手法に違いがあるということはございますけれども、大筋で申しますと、アメリカ、フランス、西ドイツ、スウェーデンというような諸国、それからカナダ、オーストラリア、ニュージーランドというようなところにおきまして、すでにそれぞれ環境影響評価制度法律あるいは閣議決定というようなことも含めまして樹立されているというふうに申し上げられると思います。それからさらに、ベルギー、オランダ、スイス等法制化検討中であるというふうに聞いております。こういうことからしますと、早晩、ヨーロッパ諸国のほとんどを含む世界先進主要国において環境影響評価制度確立されることになるだろうと考えられるわけでございますし、さらに、この点に関連いたしまして、OECDあるいはヨーロッパ共同体、ECの理事会というようなところにおきましても、すでに今日に至るまでの間に何回かこの環境影響評価制度確立ということについての提言あるいは勧告というような意見を出しているわけでございまして、そのOECDわが国もメンバーでございます。そういう趣旨にも沿って一日も早く制度整備努力いたしたい、かように存ずる次第でございます。
  8. 中村正三郎

    中村正三郎委員 いまの企画調整局長お話を伺いまして、各国、こういった一元的に環境影響評価法制化をしている国と、していない国とあるわけでございますが、世界の趨勢としては法制化をして手続を決めていこうというようなことだと伺ったわけでございますけれども、これは私ども去年OECDマクニール局長に会ったときも出た話でございますが、そういった状況と同じような話を聞いてまいりました。そういった中で、今度日本政府提案環境影響評価法案を出されたということは、いままでの何か外国の進んだ環境行政を後追いするのでなくて、世界の中でも大変進歩したことをやっている、このように私感じているものでございます。  そうした中で、二、三具体的な点についてお伺いしていきたいと思いますが、環境影響評価に関する現状というものも踏まえて考えてみますときに、わが国では地域ごと事業ごと環境影響評価が行われておりまして、これらの環境影響評価手続大変ばらばらでございまして、環境影響評価を行う事業者も迷うことでありますし、住民も困ることもしばしばあるというように聞いております。また、地方公共団体におきましても地域ごとに区々別々な条例要綱等が制定されておりまして、ますますばらばらな手続ができることになるのではないかということで、いろいろ支障が生じることを憂慮しているわけでございます。やはり統一的な法制化を国に強くそういう地方自治体からも要請されていると伺っているわけでございますが、こういったことに関しまして政府の御見解をお伺いしたいと思います。
  9. 原文兵衛

    原国務大臣 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、わが国におきましては、昭和四十七年の閣議了解以来、国や地方公共団体の行う公共事業などにつきまして、各省庁の行政運営とかあるいはまた地方公共団体条例等によって環境影響評価が行われてきておりますけれども、おっしゃるようにその手続はばらばらなものとなっております。そこで、国が実施し、また国が免許等で関与する大規模事業につきましては、環境影響評価法律で定めた統一した手続等によって行うことが、適正、円滑な環境影響評価を行うために必要であるとわれわれは考えている次第でございます。  なお、この問題につきましては、知事会市長会あるいは都道府県議会議長会あるいは市議会議長会等から、一日も早く統一的な環境影響評価法を制定すべきであるという要望もなされていることでございます。われわれも、一日も早くこの法案を成立させていただくことを心からお願いしている次第でございます。
  10. 中村正三郎

    中村正三郎委員 地方知事会等からの要請というものは、政府としても真剣に受けとめて考えていただかなければならないというふうに感じるわけでございます。環境影響評価法案内容につきまして、いろいろ先般の委員会でも御批判もあったようでございますが、政府は、中央公害対策審議会環境影響評価制度あり方について昭和五十年十二月に諮問を行われたわけでございます。そして、同審議会は三年以上かけて慎重審議の結果、昭和五十四年四月十日に答申を行っております。この答申環境影響評価制度あり方考える上で重要な資料となるものでございまして、できるだけこれを尊重することがこの諮問というものをした政府のお考えでもあるかと思うわけでございますが、一部には、この政府提出環境影響評価法案はこの中央公害対策審議会答申より後退しているのではないかとかいう話も聞くわけでございますが、果たして本当にそうなのかどうか。そこで、政府中公審答申との関係について、その主要な相違点等をお聞かせいただきたいと思います。
  11. 清水汪

    清水政府委員 中公審とこの法案との関係でございますが、まず第一に申し上げたいことは、政府がこの種の法案をつくります場合には、当然のことながら、いただいております答申につきまして十分これを尊重するという態度でこれに対処するということでございまして、この法案作成経過におきましてもそのことは申し上げられると思います。  それから第二点といたしまして、個々具体的に中公審答申の主な点とこの法案との対比についてかいつまんで申し上げたいと思いますが、まず、大きな流れといたしましては、中公審答申よりもむしろこの法案環境保全を十分に徹底しようという視点においていわば強化されている方が多いというふうに私ども考えるわけでございます。  その一つは、たとえば公告、縦覧というような手続にいたしましても、中公審答申では、事業者が自分のつくったものを公告し、縦覧に供するという手続考えておりましたけれども、これを知事協力を得ることにいたしまして、地方公共団体の長である知事がその進行、管理の責任を持っていただく、こういうようなことでより手続信頼性を高めるというふうに工夫をしたわけでございます。  それからもう一つ大きな点は、いわばセルフコントロールという言葉が当時からよく言われておりまして、今日でもこの法案を流れる一つの精神はセルフコントロールということがあることは言えると思います。思いますけれども、この法案は、中公審答申に比べますと、たとえば準備書をつくる、それから評価書をつくる、そうした後の締めくくりを免許等あるいはそういう許認可をする国の行政権限処分のところへ取り込むようにいたしております。つまり、許認可等処分をする際には、その主務大臣事業者が作成した影響評価書内容について十分に審査をして、環境影響環境保全公害等防止について十分な配慮がなされているものであるということを確かめた上で処分をする、こういうふうな法制にしております。これをよく横断条項というふうに言いならわしておりますけれども、このようになりましたのは、単にセルフコントロールということに任せっ放しではなくて、もちろん環境保全という公益目的を追求するのは政府の本来すべき任務でもありますから、そういう立場にかんがみましてそのような法制にしたということがございます。  そのほか、幾つかの点で違いが多少あるかもしれませんが、大きなところはそのようなところかと思います。
  12. 中村正三郎

    中村正三郎委員 ただいま御答弁がございましたように、前進した面もある、このように解釈するわけでございます。先日御審議のありました社会党案を拝見いたしますと、非常に広範囲な事業対象にしておられます。しかし、国の法律のみですべての事業対象として環境影響評価を行うことが現実的か、また効果的かという問題もあろうかと思うわけでございまして、やはり国全体の立場から見て一元的なルールで環境影響評価を行うことがふさわしいと思われる事業を取り上げて、その他のものについては地方公共団体が必要に応じて条例等で取り上げていくことが適当と思うものでございますが、この点の政府のお考えを伺いたいと思います。  また、そのことに関連いたしまして、現在、政府案には発電所が入っていないわけでございますが、大方の注目を集めているテーマでもございますので、この除外された理由等について政府の御見解を伺いたいと思います。  また、これに関連いたしまして、第二条第一項第十二号で、対象事業政令で決めることができるようになっているわけでございますが、政令でふやすかふやさないかということは、この法案の成立につきましてきわめて重要な問題であると私は思いますので、環境庁として、この政令によってふやしていく方針でいるのか、ふやさないで、いま法案に盛られた範囲内でやっていくのか、このことについて明確な御答弁をいただきたいと思います。
  13. 清水汪

    清水政府委員 三点ほどの御質問かと思います。  まず最初の、国の法律では、規模が大きく、その影響が大きいと思われるものということで、具体的には政令規模等を定めさせていただくという法律にしてございますが、そのような考え方でございます。  では、そういうようなことで、国の法律の直接の対象事業になっていないものについてはどうかという点につきましては、ただいま先生のお話にもございましたように、これは必要があれば地方自治体がその条例等において適切な対応をしていくということが期待できる、こういうことになろうかと思います。  それから第二点の、電力発電所対象事業から除かれているという点でございますが、これは、先ほどの中公審答申との説明のときにその点にまで触れるべきところを触れませんでしたのは失礼をいたしましたが、この電力事業につきましては、種々検討をいたした結果、この法制化はまだ無理であるということの結論に達しまして除外をした、こういうことでございます。つまり、この法律の基本的な考え方といたしましては、わが国におけるアセスメントがこの十年ぐらいの間にかなり経験も積まれてきております。そうして先ほどのような状況にあるわけでございますが、そうした経験、それから現在において、しかし一元的な法制度確立することの必要性、これらが考えられるわけでございますが、やはり法にいたします以上は、これが円滑に安定して運営されていくことが必要だ、そのような見きわめの持てるものについて対象事業にした、こういうふうな考え方でございまして、電力はそういう意味から除外されております。しかしながら、電力をこの法律対象から除外いたしたといたしましても、現に電力については通産省の行政指導によって評価が行われている、アセスメントが行われておりますし、そのようなことは今後も一層適切に行われることは十分期待できるわけでございます。  それから第三点といたしまして、十二号でございますが、これは一般に言われます包括条項といいますか、そういう性格のものだとしております。しかしながら、現実にこの十二号によっていま何を考えているかということをお聞きであれば、それはいまはございませんということを申し上げたいと思います。
  14. 中村正三郎

    中村正三郎委員 それでは、具体的でございますが、政令発電所を指定するというようなことはないというふうに解釈してよろしゅうございましょうか。
  15. 清水汪

    清水政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  16. 中村正三郎

    中村正三郎委員 ありがとうございました。  また、環境影響評価成果の行政への反映ということについて御質問したいと思います。  政府案の第二十条があるわけでございますが、「対象事業実施に係る免許等を行う者は、」「公害防止等についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。」ということになっております。この場合においては、アセスメントの「審査の結果を併せて判断して当該免許等に関する処分を行うものとする。」とされております。また、補助金の交付決定等を行う者は、交付決定に際してアセスメントの審査を行い、その結果をあわせて判断しなければならないものとするなど、同様の規定があるわけでございますが、この規定を設けられた理由と、もしアセスメントをやった結果、余り環境にはいい影響を及ぼさないというような結果が出たものであって、しかし、たとえば国民のためにダムをつくらなければならないとか、水需要とか、そういったことで、また農業用水でも結構ですが、つくらなければならない。しかし、アセスメントとしては余り好ましくないというような、背に腹はかえられないような結果が出た場合は、手続としてどのようになるのでしょうか。また、この二十条の効果と申しますか、存在理由というようなものもあわせて御答弁いただきたいと思います。
  17. 清水汪

    清水政府委員 この二十条を設けました趣旨は、先ほどもちょっと触れましたように、事業者を主体にして評価をしていくわけでございますが、いわば国の立場におきましてもその評価の適正さを担保しよう、確保しようというようなことで、いわばけじめをつけるという趣旨からこのような組み合わせにしたということでございますが、いま御質問のような具体的なケース、たとえばこの法律の中には、非常災害のような場合の復旧事業のようなものについてはアセスメント手続を適用しないというような一項がございます。これは一種の緊急避難的な意味の条文かもしれませんけれども、一般的には、やはり着実なアセスメントをして、そして将来に悔いを残さないようなことで事業に着手していただきたいというのがそもそもの趣旨でございます。  それで、この法文では、そのような点についての審査の結果をよく判断して処分する、こういう規定にいたしてございますので、その際におきまして、主務大臣において十分慎重にこの法の趣旨を酌んで処分に当たっていただきたい。また、いただくことは十分期待できる。それは、その途中で環境庁長官も当該主務大臣に対しまして環境所管大臣の立場から意見を申し述べるということもあるわけでございまして、その意見に対しても十分配意して処分するという規定ももう一つその後ろに設けてございますので、そのようなことから、ケースに応じて適切に処分されるだろうというふうに考えております。
  18. 中村正三郎

    中村正三郎委員 次に、条例との関係について御質問したいと思います。  環境影響評価制度の創設の意味として、統一した手続確立しようということが先ほどのお話にも出ているわけでございますが、このような法律ができたとしても、各地方自治団体が地方独自にいろいろな制度をつくり、上乗せもあるし、下乗せと言うのはおかしいかもしれませんが、下回りもあるかと思いますが、いろいろな制度をつくった場合に、事業者は国と地方の二つの制度によって地域ごとにまちまちに規制されるというようなことが起こることは考えられないか。また、県をまたがるような事業について、ばらばらではいろいろな支障が生ずることが懸念されるとか、いろいろなことがあるわけでございますが、本法案手続法であるということからいいましても、また、大規模な一定事業は国の手続で統一的に行うことはむしろ合理的である、このような趣旨からこの法案が出されていると思うのでございますが、こうした地方条例法案の拘束力と申しますか、関係について御答弁いただきたいと思います。
  19. 清水汪

    清水政府委員 その関係は明確でございまして、法律の上では第三十八条とそれから第四十二条というのがございますが、共通して申し上げますと、要するに、国の法律で一元的にいまルールをつくろうとしておりますが、この対象となっております事業については、条例でこれについて規定をするということはできない、こういうふうに考えております。したがいまして、国の法律対象としておる事業について、たとえばある手続の部分について条例が何かいわゆる上乗せをするということは認められない、こういうことでございます。  しかしながら、国の法律対象としている事業でないものについては、先ほどもちょっと申しましたが、必要に応じてその自治体が合理的な評価手続をつくっていくということはもちろん差し支えのないことでございます。ただ、その場合におきましても、法の三十八条で書いてありますように、影響評価手続ということでございますので、国が大きなものについてやっているその趣旨から考えまして、やはり整合性を要請したい。これは国の立場からの要請でございますけれども、合理的な要請であろうと私ども考えておるわけでございまして、自治体におかれましても十分その趣旨を酌んで対応していただきたい、このように考えているわけでございます。
  20. 中村正三郎

    中村正三郎委員 そういたしますと、地方自治体が、この適用業種に関しては、国のこの法律案に定める以上、と申しますか、より厳しい、もしくは緩い条例をつくって、それによってアセスメントをして、それを一つの審査に使うというようなことはない、法律的にもない、起こり得ない、こういうふうに解釈してよろしいのかどうかということと、地方自治体においてこの法律案に示された業種以外のもの、いわゆる横出しを行う場合には、この法律案に記載された趣旨にのっとって、はっきり言えばこの手続法に従うということはないかもしれませんが、この手続法の手続とそう相反しないことで条例をつくるんだというようなことにいま受け取れたのですが、そのように解釈してよろしゅうございますか。
  21. 清水汪

    清水政府委員 そのとおりでございます。
  22. 中村正三郎

    中村正三郎委員 ありがとうございました。  まだまだ質問させていただきたいことがあるのでございますが、時間が参りましたのでこれで終わりますが、私、環境庁がこうしていろいろな御努力をされることに関しまして大変敬意を表するものでございます。いわゆる国連環境会議とか、こういった世界的な問題も重要でございますし、また、地球規模における環境汚染に対する対策、こういったことも重要でございますが、私は、やはり少し庶民に親しまれる環境庁になっていただきたいということを常々申し上げているわけでございます。日本人は、美には敏感であるけれども、醜には鈍感な国民ではないかと私は思うわけでございます。伝統的に美しいものを非常に大事にいたしますが、片や、私ども千葉県でございますが、海岸に行くと缶からやビニールの袋とか容器でいっぱいに汚されております。これは、首都圏から出て波に乗って流れ着いてくる、もしくは船舶から投棄されたものが寄ってくる。こういったものについて、実際に環境庁がいろいろやってくれて環境がきれいになったんだと身近に感じるようなこともお取り上げいただけば、こうしたいろいろな地球規模の問題を話すときとか日本環境アセスメント法案を論じる場合にも環境庁というものが非常に身近に感じられて、いま支持がないとは申しませんが、さらに支持も多くなるというように考えるわけでございます。  そういった面で、原長官御就任になられまして、空き缶の投げ捨て等を、原長官が指示されたものかどうか知りませんが、逮捕とまでいきませんが、警察で注意をされたというようなこともございます。また、外国等では、私の友人でアメリカに留学しておりましたのが、ハイウエーでたばこを投げ捨ててたばこがハイウエーにおっこったら、とっつかまりまして、そのハイウエーを一キロくらいの間を掃除をさせられたというようなこともあります。まあ、ユーモアのある罰則だと思いますが、そういった罰則をある程度やって、悪いことをした人は悪いんだ、汚染を出した人は悪いんだということを、工場とか特定しやすい企業とか、こういったものの排出物をつかまえるのじゃなくて、やはり個人もそういうふうにすべきだと思います。私は悪いことだと思うのです。そういうことをしたときには規制していくのだ、そういうことをやって、われわれの本当に身近な環境をきれいにする努力もしていただきたい、このように考えておるわけでございますが、こういうことに関しまして環境庁長官の御所見を賜りまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  23. 原文兵衛

    原国務大臣 空き缶であるとかあるいはビニール袋であるとか、いろいろなものが散乱をいたしておりまして環境を害していることはもう御説のとおりでございまして、私どもも、実はこの問題につきましては何とかしたいということで頭を痛めているわけでございます。もちろん取り締まりとか罰則でやるということが基本ではなくて、やはり私は本来は国民一人一人のモラルの向上ということが基本であろうかと思います。しかしながら、やはりそれだけではなかなか済みません。  私は、就任後間もなく、ことに交通機関、自動車等からの空き缶の投げ捨てというような問題は、ただ単に環境を汚すだけじゃなくて、非常に危険も伴うものであるので、こういう問題につきましてはやはりある程度の取り締まりはしなくてはいけないのだという考え方から、警察庁としても適切な取り締まりもしてほしいのだということを警察庁にもすぐ申し入れをしたわけでございます。その結果、警察庁も大変この問題について積極的になりまして、警視庁を初め何県かにおきましては、県警におきましても交通取り締まりの一つとして空き缶の投げ捨てというものに対して積極的に取り組まれまして、罰金とかいうような関係の取り締まりもしてもらっておるわけでございます。  なお、それ以外のものについての罰則を強化しての取り締まりというものはいかにあればいいかということは、これはなかなかむずかしゅうございますので、いろいろと研究をさしていただきたいと思っておるところでございます。
  24. 中村正三郎

    中村正三郎委員 今後とも環境汚染自然環境破壊未然防止のために政府の格段の御努力をお願い申し上げまして、質問を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  25. 八田貞義

    八田委員長 水田稔君。
  26. 水田稔

    ○水田委員 長官、先ほど御報告いただきましたように、ナイロビUNEP会議で、地球的な規模環境保全、そのための特別委員会新設あるいは国際環境年の設定など、非常に格調の高い、そしてまた環境問題に対して大変意欲的な演説をされてこられたわけであります。先ほども話がありましたように、同時に、私は、国内における自然環境保全についてぜひそういう意欲的な姿勢を今後行動で示してもらいたい、このことを要望いたしまして、法案の質問に入りたいと思うのであります。  なお、政府委員の皆さんには、きょう初めてでありますから、この法案というのは大事でありますから、慎重に審議をしたいという立場で取り組みますが、全体を一応触れたいと思いますので、答弁をできるだけ簡潔にお願いしたい。項目が多いものですから、そのことをお願いして、質問に入りたいと思います。  一つは、この環境影響評価法案というのは、提出に至るまで大変長い年月を要しておるわけであります。それは、昭和四十七年の「各種公共事業に係る環境保全対策について」の閣議了解以来、数えてみると九年かかっております。それから、法制化を言明した小沢長官以来でも六年目にしてようやく国会提出されたわけであります。この経過の概要というものを明らかにしていただきたい。  それから、法制化に当たって検討された諸問題の内容、そしてそれをどういうぐあいに処理されて法案として提出されたのか。まず明らかにしていただきたいと思います。
  27. 原文兵衛

    原国務大臣 水田委員のおっしゃるとおり、非常に長い期間かかってやっと政府案提出ということになったわけでございまして、その間についていろいろといきさつがあったこともあるわけでございます。  最初からの経過等につきましては局長から答えさせたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  28. 清水汪

    清水政府委員 政府におきましてこの環境影響評価法制化ということに具体的に取り組みをいたしましたのは、昭和五十年十二月、中公審に対しまして評価制度あり方について諮問をいたしました。それが非常に大きなエポックだと思います。もちろんその前段階といたしまして、検討委員会の取りまとめというようなことがございました。そういう準備作業を経ました上でこの諮問になった、こういうふうに申し上げられるかと思います。  そして、その審議会におきましては、慎重審議の結果、昭和五十四年四月に答申をいただきました。その答申に立脚いたしまして、法制化作業を環境庁といたしまして進めてまいりまして、各省との間でいろいろ調整に時間を要したことがございますが、その後の一つの動きといたしましては、翌年の五十五年三月から環境影響評価法案の取りまとめのための関係閣僚協議会が設けられまして、その場を通じまして鋭意政府内の調整を進めました。そして、同年五月には政府内の調整作業というものをおおむね終了いたしまして、そのいわば素案につきまして政府・与党との協議に入った、このような経過がございます。そのような協議が多少時間がかかったということでございますけれども昭和五十六年の四月になりまして結論を得まして、この法案を御提出申し上げた、こういう経過でございます。  この法案というものは、結局、わが国におきましては非常に新しい制度を設ける、こういうような面がたくさんございます。それから、環境庁が主務になって作成いたしております法案でございますけれども、その内容は、現行の各省の所掌事務と皆絡み合って非常に広範多岐にわたっております。そのようなことから、この程度に慎重な検討時間が必要であったということはやむを得なかったのではなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。  この過程におきまして、ただいまの御質問で、法制化に当たっての問題とその処理ということでございますけれども、かいつまんで申し上げますと、関係の地域をどういうふうにするか、あるいは住民の範囲をどうするか、あるいはその役割りをどう考えるかというような点が一つの問題のポイントであったと思いますし、環境影響評価の技術的事項ということについて、法律の上でどのように表現をするかという問題も一つの大きな問題であったように思います。それからまた、対象事業をどうするか、地方公共団体の位置づけをどうするか、これらの点がかなり検討に時間を要した点であった、こういうふうに承知をいたしております。
  29. 水田稔

    ○水田委員 この法案は、いま答弁もありましたが、環境庁所管事項なわけであります。だから、この環境委員会に付託されておるわけです。それから、大事なことは、環境問題について環境庁がこの法案でどういう権限を有することになるかということが一番大きな問題だと思うのです。  内容を見てみますと、必要な場合に長官が意見を述べられるというのがこの中で環境庁の権限で、大部分は主務大臣事業者にゆだねておる、こういうことであります。そうすると、環境問題について所管する環境庁がこの環境アセスメントについて適正な効果を上げる、そういう期待はできにくいのじゃないかという心配をするわけであります。この程度のこういうやり方のアセスメントの場合、開発に対して免罪符としてこの制度がむしろ利用される、あるいは環境行政にとってマイナスになるのではないかという心配があるわけですが、その点はいかがなものでしょうか。
  30. 清水汪

    清水政府委員 この法案を私どもが作成いたしましたときの一つの大きな趣旨は、セルフコントロールという考え方がございました。それは、現在の法案の中にも残っております。それで、環境庁といたしましては、極力前の方の評価準備書作成にかかるその段階から、きっちりと事業者のよりどころのようなものを明確に定めておきまして、そのルールに乗って以後の作業を展開していただくように、こういうところに非常な重点を置いてこの法案を構成しているということは申し上げられると思います。したがいまして、たとえば技術指針というものは主務省令で主務大臣が定めるということにしてありますけれども、その主務大臣が技術指針を定める前提になる基本的事項というものについて環境庁長官がこれを定めるということがまず出てまいります。そうして、そのことを前提にいたしまして各事業の種類に応じて主務大臣が指針をつくっていくわけでございますが、その指針については環境庁長官に協議をしていただく、このような構成になっているわけでございます。  そういうようなことが出だしのところでございまして、ずっと後にいきまして、その準備書の公告、縦覧、住民の意見、そういうことの経過を経ましてから評価書ができて、その評価書が送られてくるわけでございますけれども、その評価書につきまして環境庁長官がよくチェックをいたしまして、当該許認可主務大臣に対して意見を言う、この意見に対しては当該主務大臣はこれに十分配意して処分をしなさい、こういうふうに法律の上でも明らかにしてございますので、私どもといたしましては、これは環境の責任大臣である環境庁立場からいたしましても、十分適正な環境影響評価実施されるものというふうに申し上げてよろしいかと思います。これだけのことをやって、その内容がある意味できわめて軽易、安易なものであって、したがっていわゆる免罪符になってしまうのではないかというようなものでは毛頭ないというふうに私どもは確信をいたしている次第でございます。
  31. 水田稔

    ○水田委員 論議はまた別の機会にやりますが、まさに全体を流れるこの法案のたてまえといいますか、そういう点では、この委員会に付託され、環境庁所管の事項としては余りにも権限が薄いのではないか、そういうことだけ申し上げておきたいと思います。  次は、この法案ができる背景にあったものは、ずっと順を追って申し上げますと、中公審で「特定地域における公害未然防止の徹底の方策」これを昭和四十七年に出されて、それから「環境影響評価制度あり方について」の検討結果が昭和五十年に出され、「環境影響評価制度あり方について」の答申が五十四年といったように、報告答申が出されておるわけです。  もともと大規模開発というのが問題だということで、ずっと見てみますと論議が進んでいるわけですね。ところが、大規模開発には公共事業もやらなければならぬ、こういう話になってきておるわけです。ところが、実際にこの答申内容と比べてみますと、当然この法案の中に盛り込まれなければならないものが、大分抜けておるものがあるわけですね。先ほどの自民党の中村委員の質問に対して、いいところだけ言っているのですね。答申の抜けたところは全く言われてない。そして、五十六年四月に、中公審が総会で、政府がアセス法案対象項目から電源立地を除こうとしているのに反対、中公審答申内容については軽々しく変更を加えないことを強く望みたいという、答申を軽視することに対する異例のアピールを発表しておる。そういうことは全く先ほどは触れられていません。もちろん質問が違いますから、それよりよくなっているということだけ言われたのですが、そういう点の違いがあるわけですね。ですから、この答申とこの法案との、そういう点での欠けておる点、違っておる点、そしてなぜそうなったのかということについての理由を御説明いただきたいと思うのです。  それと同時に、答申等であったものでこの法案に盛り込まれていないもの、ここでは抜けた、入れられなかったのでしょうが、それは今後どういうぐあいにして対処していこうとお考えになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  32. 清水汪

    清水政府委員 御質問は、昭和五十年十二月の中公審専門委員会検討結果のまとめというところを視野にお入れになりまして、そして最後の答申であります昭和五十四年四月の中公審自体の正式答申ということまでを含めたところで、この法案との対比というふうに御指摘になっておられるかと思いますが、整理して申し上げますと、私どもといたしましては、この昭和五十年十二月の専門委員会検討結果のまとめにつきましては、もちろんその意味、趣旨、検討の過程というものについては十分これを参考にさせていただいているわけでございますが、中央公害対策審議会といたしましては、そのような蓄積、積み重ねを経た上で、正式に五十四年四月に答申をしていただいているわけでございます。この答申からスタートして法案作成に進む、こういうことに私ども立場はなるわけでございますので、その点から申しまして、この法案の最終の姿と五十年の専門委員会検討結果との間にはかなり開きがございますが、その大部分のものは五十四年四月の中公審の正式答申の過程におきまして、いわば検討をさらに深めた結果、整理をされたと申しますか、結論を固められたということで整理されております。  中公審の正式答申法案との間では、先ほどちょっといい面だけ言ったのではないかということでございますが、たとえば対象事業ということにつきまして発電所が入ってないというようなことが反面であることはもちろんでございますけれども答申法案とは大筋は合っておりまして、幾つかの点でちょっと申しましたように評価できる、こういうことになろうと思います。  多少具体的に申し上げますと、五十年の専門委員会の取りまとめの段階で、まず対象の行為につきまして一つの特徴がございました。それは、大規模な計画自体をアセスの対象にしたらどうかという考え方を展開しております。しかし、この点につきましては、五十四年の答申では、そのような大規模地域開発事業というようなものは、実際上はいろいろ銘打って出てまいりますけれども、現在のわが国の法体系の上ではその位置づけが必ずしも明確ではない。これに対する国のかかわり方も一義的に明らかではない。そういうようなことから、これを国の一元的な手続ルールの対象として取り上げるわけにはいかない、そのことは無理がある、こういう見解を明らかに述べておるわけでございます。そのようなことから、答申ではそれが入ってないということになろうかと思います。  それから、その点に関連して申し上げますと、五十四年の答申では、都市計画にかかる事業についても都市計画法体系の中で行うというふうな言い方になっておりまして、必ずしも意味がはっきりはいたしませんが、どちらかというとアセス法の中でなくてそちらの方で手当てをしたらというような気持ちにうかがえるわけでございますけれども、私どものこの法案では、その都市計画につきましてもこの法案の中にむしろ取り込んだ形で対応しておるというような違いがございます。  それから、その次に申し上げますと、調査等の項目とかあるいは調査等の方法ということに関連いたしまして、まず、五十年十二月の検討結果の取りまとめにおきましては、このときの考え方は、非常に特徴的な点は、あらかじめ示す項目というものは最小限にしておこうというようなことでございます。そして、事業者が選択した評価項目及び用いられた技術手法の妥当性については、本制度手続を進める過程で評価されていくことになろう、こういうようなことでございまして、この点が五十四年の中公審答申になりますと、むしろ基本的事項を環境庁長官が定め、そしてそれに係る指針を事業を所管する主務大臣が定めるということにして、その場合に調査対象項目とか調査の方法につきましてはできるだけ客観的、具体的に定めておかなければならない、こういう考え方に変わってきているわけでございます。なぜそう変わったかということにつきましては、当然この答申の中で説明してございますけれども、それは、事業者が適切円滑にアセスを進めていくということのためには、そのように明確にしておくことがいずれのサイドから見ても必要なわけでございます。そういう意味におきまして客観的、具体的に定めておくことが大事だ、こういう考え方を述べております。  このことがさらに関連をいたしますのは、この評価の尺度ということでございまして、五十年の検討結果のまとめの段階におきましては、必要とされる環境質の水準をあらかじめ設定しておいて、それを基準として評価する方式を推奨するものではない。事例ごとに専門的知見、地域社会のニーズや住民等の意向を把握した上でこれを見出していく考え方に立つべきであろう、こういう見解を取りまとめておりますけれども、この点も五十四年の答申ではむしろ大きく変わっておりまして、基本的な事項につきましては、評価の尺度を可能な限り示しておくことが特に必要である。評価の尺度としては、環境基準その他これに準ずるものがある場合にはこれを用いる。これがない場合には既存の知見、事例等を参考とすること等により評価することを基本とする、こういうようなことを述べておりまして、検討結果との違いにつきましては、やはりこういうような説明をいたしております。事例ごとに専門的知見、地域社会のニーズや意向を把握した上で環境保全水準を見出していくという考え方は、環境保全水準についていわゆる価値観の多様化というようなことからさまざまな見解が述べられることになり、それでは、どのような判断に立ってそれを整理したら妥当なのかということ自体、事業者としても非常に迷うことになるだろう、こういうようなことから言いまして、そのような発想では実際上事業者としては運用できないであろう、こういうふうに説明をしておりまして、これも確かに現実的に詰めて考えてみますと、やはりこういうことにならざるを得ないのではなかろうかというふうに思いますが、そのような説明で答申になっているわけでございます。  それからあと、準備書の作成とか評価書の作成というようなことにつきましては、作成の主体についての考え方が五十年の段階と五十四年の段階とで余り違いがないというか、つまり、五十年の段階では、許認可に係る事業にあっては許認可権者が見解書を作成するというのがございますけれども、これは、四月の中公審答申の方にはむしろそういうようなことについて触れておりませんで、準備書評価書事業者が作成する、単純にこういう形になっているわけでございます。これは、法案ではやはり同じようなことになっているわけでございます。  それから、公表とか意見聴取の手続でございますけれども、この辺のところは、当初の段階では、許認可に係る事業事業者に行わせることは必ずしも適切でないので許認可権者が行う、こういうようなことにしてございますけれども答申の段階では全部事業者がやる、こういうふうに整理をいたしております。しかしながら、これは法律の段階ではまた少し整理をし直しまして、さっき申しましたように、公告とか縦覧というような手続進行についてのいわば信頼性が問題になるような点については、むしろ知事を活用させていただく、こういうようなぐあいにしているわけでございます。  それから、住民の範囲について、これがやや大きく違っておるかと思いますが、検討の取りまとめにおいては、影響を受ける地域の住民だけに限定することなく、広く意見を求めるようにすることがいい、こういう考え方を述べておりますけれども答申においては、影響の及ぶ関係の地域の住民ということに整理をしてございます。その理由については、この制度の円滑で実効ある運用を図るためにはやはりそのように限定することが適当である、こういう説明をいたしております。  それから、公聴会の問題でございますが、五十年の検討結果のまとめにおいては、事業の主体は必要があると認めるときは公聴会を開催する。要するに、事業者が公聴会を開催するというような発想を提案しているように思われますけれども、これは答申の段階では、事業者に公聴会の開催を求めるということは適当でないということで、やめにしております。運用上、地方公共団体の長などが自分の意見を述べる場合に必要があって開催するかどうかということについては、当該自治体の判断にゆだねてもいいだろうというふうな言い方をしております。この説明といたしましては、公聴会というのは公的主体が行政処分等を行う際に広く意見を聞く制度だ、普通こういうふうに理解されているというようなことから、事業者は説明会等周知の措置、あるいは意見書による意見の聴取、それからこれに対する見解を明示するというような手続を行うことにしておるので、これで十分であろう、こういうふうに判断をしたわけでございます。法律の方では、やはりこの点は答申と同じような考え方に立っておるわけでございます。  それから、地方公共団体意見の反映ということでございますが、この辺のところは、国の主務大臣なり環境庁長官意見というようなところも、検討結果のまとめの段階、それから五十四年の答申の段階では、準備書をつくった後の段階で直接意見を言うというふうに構成してありましたけれども、この点は法律では一番最後の段階、評価書より後の段階で意見を述べるということに変えてあります。  それから、国の行政への反映、そういう表現で仮にくくらしていただくとすれば、検討結果の取りまとめの段階では、事業を決定、実施し、あるいは許可等を行うに当たっては、環境影響評価の結果を尊重すべきである。ただ、そういうものは許認可等の機関にどういうふうに絡ませていくか、その辺は法制面を含めて検討が必要だ、こういう指摘をしておるわけでございますけれども、五十四年の答申の段階では、環境保全上の意見を求めるための手続を主として定める制度とすべきであるということで、その意味するところは、いまの法案考えたような発想までは考えていないということだろうと思います。しかしながら、法案はその点を一歩進めまして、いわゆる横断条項という規定の仕方をとった。そして、セルフコントロールという流れではあるけれども、それにさらに国の立場からけじめをつけた、こういうことであろうと思います。  それから、訴訟に関する問題などが検討結果の取りまとめに書いてございます。これについては、たとえば行政訴訟の特例を設ける手続をやるべきだという意見と、そのような制度化は問題であるとの意見があったというふうに記述してございますが、中公審答申では、その点は既存の法律関係によるというふうにはっきり結論づけているわけでございますし、法律もその線に従っているということでございます。  それから、地方自治体条例等との関係でございますが、この点については、検討結果の取りまとめにおいても、国の制度対象にならない事業というものも、やはりこの制度の趣旨に照らしながらどういうふうにするかということについては検討をする、こういうような表現を使っております。それに対して、中公審答申では整理をいたしまして、対象事業以外について地方公共団体制度を設けることを妨げるものではない。しかしながら、これはやや具体的に実は書いてあるのですが、この場合においては基本的事項または指針に準じて定めるとか、国の制度で定める以上の負担を事業者に課することのないよう配慮する必要があるというふうに整理をしておるわけでございます。この点については、大筋としては法律答申の線に乗っかっているということが申し上げられるかと思います。  主な点の経過はそのようなことではなかろうかというふうに思います。
  33. 水田稔

    ○水田委員 昭和四十年代の破局的な公害が進んだ中で、環境対策は、もちろん環境庁ができて努力もいただいたわけですが、その支えになったものは何といっても国民環境を守ろうという意欲、そしてそのことはナイロビでの長官の演説の中の「国民環境に対する意識の高揚を背景」これがないとできぬわけです。それは、この法律で言えば住民参加の条項であろうし、あるいは抜けておると認められております発電所の問題、あるいは大規模な民間の開発など、この法案に対する不信というのはそういうところに集中してあると思います。これは後で順次詰めてまいりたいと思いますが、やはりそういう欠けておる点があるということだけ申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  この法案では、対象事業というのは十一種類に定めておるわけであります。なぜこれに限定したのか。これ以外でも、いま申し上げましたように大規模な開発であるとかあるいは発電所であるとか、そういう環境に著しい影響をもたらすものがあるわけでありますが、そういうものはどういうぐあいに取り扱っていかれるのか。  それから、今後この環境アセスメント制度の中にやはり一定規模以上の民間事業というのを取り入れていく、これは将来のあれですが、そういう考えがあるのかないのか。あるいは、それを取り入れていくとした場合に一体どういう問題が支障になると考えておられるのか。  それから、先ほども中村委員の質問に御答弁がありましたが、発電所が除外された理由は一体何なのか。それで、環境庁としては現在の通産省のやり方で十分と考えておられるのかどうか。  もう一つは、同じことについて、通産省おいでいただいておると思うのですが、通産省として、現在の電源立地の環境アセスメント手続現状のままでいいのか。今後、こういう発電所は入ってないけれどもアセスメント法案というものができることによってもっとやり方を変えていくということをお考えなのかどうか。後でまた横出し、上乗せの問題は質問いたしますが、発電所が抜けておることによって、これは地方自治体条例でやれるわけですが、各地方自治体が個別にやれば全く同じということにはならない。いまできておる地方自治体条例もあるいは要綱も大分内容は違うわけでありますから、そういうことになればむしろ困難な状況の方が予想されるのではないか、そういう心配もするわけですが、そういう点についても通産省はどのようにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  34. 清水汪

    清水政府委員 まず最初に、十一業種を特定してございますが、この考え方は、昭和四十七年の閣議了解がよく引き合いに出されますが、そのようなときからようやくアセスメントということについて本格的に取り組み始めてきたということが言えるかと思います。そうした今日までの経験を十分踏まえまして、そして法制化という形で、つまり一元的に法律の形によるしっかりした安定した制度にしていくことがもう必要だという要請もございますので、それらのところを勘案いたしまして、法制化して、それによって円滑な運用が図られる見きわめのつくものということから十一の事業をこの法律対象として特掲した、こういう考え方でございます。そういう考え方からいいまして、発電所につきましては、いままでの進んできた状況というようなところから見まして、これはこのような一元的な法律によるルールでやるとすればなかなかうまくいかない心配がある、こういうようなことが懸念されまして、その件について非常に慎重な時間をかけた検討をいたしました結果、法律対象にはしなかった、このような経過であるわけでございます。  それから、この法案に第十二号、いわゆるその他条項といいますか、包括条項を設けてございます。これは、このような一つの総合的な法律でございますから、予定外の必要性を生ずるということが当然あり得るわけでございますので、そのような場合に備える条項として設けさせていただいているわけでございますが、具体的な話としては、先ほどもちょっと申しましたように、いまそのことで具体的に念頭に置いているものはございません。  それから、これは民間の事業も入り得るかという御質問でございますが、それは当然に解釈としては入り得るというふうに考えております。ただ、いま申しましたように、具体的にはまだ想定しておるものがございませんので、仮に民間の事業を入れるとした場合には問題点は何か、それについてどうするつもりかという御質問もあったように思いますけれども、その点についてはちょっといま明確にお答えするのは困難ではなかろうかと思いますので、御容赦いただきたいと思います。  最後に、それでは電力事業についてはこの法案対象事業でないという点において、自治体が必要と思えば条例アセスメント手続を決めて、それを適用していくことができるという点につきましては、先ほど来そのようにお答え申し上げているわけでございます。同時に、さっきも申しましたように、通産省におかれましては、いままでの行政通達等の形でもって電力事業に対しましてアセスメントについてさらに指導をしていかれるということも続くわけでございます。私ども環境庁といたしましての電調審の立場は、これは環境の所管省庁という立場だと思いますけれども委員に入っているわけでございます。この立場から従来も十分に相談をし、必要な意見を申し上げてきておりますけれども、今後もこの点はそのように努力をしていきたい、このように考えております。
  35. 荒尾保一

    ○荒尾説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、発電所はこの法案対象になっていないわけでございますが、通産省といたしましても、当然のことでございますけれども、電源立地に当たりまして環境アセスメント実施して環境保全を図ることが重要な課題であるということは十分認識いたしておるところでございまして、御案内のとおり、昭和五十二年の七月に省議決定を行いまして、さらにこれに基づきまして、環境アセスメント実施いたしますための調査要綱、周知要綱及び審査指針を決めておるわけでございます。この制度に従いまして、現在まで火力発電所につきましては二十六地点、原子力につきましては九地点、水力十一地点、地熱一地点、合計四十七地点につきまして環境アセスメント実施いたしてきたわけでございます。こうした成果は、ただいま御答弁ございましたように関係各省庁にお知らせをいたしまして、電調審その他でその成果が反映されておるという形になっておるわけでございます。  先生から御指摘がございましたが、今後どうするかということでございます。  私ども、従来の四十七地点につきましての環境アセスメントも、それまでの実績を踏まえながら、各種の技術的な知見その他を積み重ねをいたしまして改善を進めてきたつもりでございますが、今後におきましてもさらにそういった改善の努力を引き続き行い、着実な努力を進め環境保全に努めたい、また、電気事業者もその方向で指導いたしたいというふうに考えておるわけでございます。  それから第二の御質問の、条例による横出し等によって各地方公共団体等においてばらばらの手続が行われることが混乱を生じないかという御質問でございますが、先ほど御答弁ございましたように、この法案の三十八条の趣旨からして、基本的には余りばらばらの条例等が行われない、この法案の趣旨を尊重して条例が制定されるということになりますと、ばらばらの手続が各地方公共団体によって制定されないことを期待いたすわけでございますが、しかし、現実にある程度の差があるということもあり得るかと思います。現在におきましても条例を持っておる地方公共団体がございまして、私どもの省議決定に基づく審査要綱との間に差がある事例がございます。しかし、こういった事例につきましてはそれぞれの地方公共団体事前に十分に調整をいたしまして、そういった差異が大きな混乱を生じないようにいままで調整をいたしております。北海道におきましてそういった事例が現実にあるわけでございますが、今後におきましてもそうした事態が生じました場合にはできるだけ事前に調整をいたしまして、混乱が生じないように努力をいたしたいというふうに思います。
  36. 水田稔

    ○水田委員 この法律の実効を上げるためには、何といっても国民のこの法案に対する信頼、そしてまた与野党含めて本当に環境を守る、そういう協力関係が、長官のお好きな「ハランベー」が必要だと思うのです。そのためには、これは背景は明らかなわけです。中公審の皆さんが発電所が抜けたことを憤慨されるのも当然ですし、環境庁もこれは入れたいと思っておったでしょう。通産省もやらぬでもいいと言っておるのではない、自分のところでやりますとやっておるわけです。そして今度は条例ができれば、大体この法案に上乗せない状態で、それ以下のところで若干の差があるだろう。そういうものですから、本来それをやることによって国民の信頼をかち取ってやるべきだと私は思うのです。そういうことで、われわれとしてはこの問題というのはこの法案一つの柱になるのだ、これが抜けることと入ることによって実効という点では全然違ってくるということだけ、意見として申し上げておきたいと思うのです。  それから、この十一項目決まった中で、先ほど来申し上げております大規模開発というのが抜けておるわけです。その他ということで将来決めるかどうかというところでありましょうけれども、たとえば志布志の問題です。これは新大隅開発ということになって、大規模開発が入っておれば当然対象になる。しかし、この法律案でいけば、大隅の開発についてはこの法案には該当しないわけですね。いわゆる公有水面埋立法とか港湾計画によって個々に法律意見を言うということになります。それだけです。だから、あの地域の国定公園の自然環境ということを考えれば、当然全体で見なければならぬけれども公共事業という、そこの場面だけでしか見られないということになる。これはこの前論議いたしまして、長官がかわりましてから事実上ゴーサインを出して、長官がちょうど外国へ行っておられる間に現地では県が調査を強行しておるわけです。町当局へも、何の調査をするという話もないのです。もちろん住民にもない。漁協の一部には話があったのです。そういうことで、毎日のように紛議が起きておるわけです。そういう点から言えば、やはり大規模開発というのを全体的に見るということをこの法律の中で考えるべきではないか。  これは志布志との関係で、いま起こっておる事態を含めて、環境庁にもこの紛争については責任があると私は思うのですが、大規模開発が入っていないことによる新大隅開発計画、志布志港の計画、そして今度事実上のゴーサインを出された石油備蓄基地の建設というような問題との関係は心配ないとお考えになっておるのか、これでああいうものはやれますと。というのは、いままでは国定公園の区域変更にかかわるかどうかという別の法律の問題です。これは、自然公園法に基づくきちっとした法律がある。しかし、特別指定地域については手が出せるけれども、普通地域については県知事の権限ということで全く出ていない。そして、全体的な計画についてもこの法律には載っていない。だから、公有水面埋立法なり港湾計画によるものだけです。その場面だけが出てくると思うのです。ですから、大規模開発の具体的な例ですが、この法案とのかかわり合いなりあるいは現実に進む問題は、たとえば法律ができたとしても施行は二年先ですから、当面問題にならぬわけです。現実にこういう法案審議をされておるわけですが、対処の仕方が気持ちの上で大分違ってくると思うのです。そこらはどういうぐあいにお考えになっておるのか。  それから関連してですが、この前、私どもの土井委員の質問において、長官は前に鹿児島県へお勤めだったわけですが、相当前のことでありますから、そういう実態というのを一遍現地をごらんになったらどうですか。これは、いまこの法案審議するということでは大規模開発とは非常に大きな関係があるわけですから、原点に返るお気持ちでぜひ見ていただきたいと思うのです。そのときの答弁では、「今後どうかということでございますが、また日程等の関係もございます。今後のことはいろいろと考えていきたいと思っています。」こういう答弁をされておるわけです。あの国際会議の日程も済みましたし、アセスメント法案審議もいよいよきょうから入ったわけですから、そういう中で若干の日程を繰り合わせていただいて、ぜひ現地を見ていただいて対応ということを考えていただきたい。それが一つ。  もう一つは、そのときに法制局の答弁もいただいておるわけでありまして、これは法制局の味村政府委員が答えておるのですが、「私は実態を存じませんので、法文に即してしか申し上げられないわけでございますが、自然公園法の十二条の二項に「国定公園に関する公園計画のうち、」云々、それにつきましては「環境庁長官が、」「その他の計画は、都道府県知事が決定する。」と書いてございまして、十三条の二項で「環境庁長官は、国定公園に関する公園計画を廃止し、又は変更しようとするときは、関係都道府県及び審議会意見を聞かなければならない。」と書いてあるわけでございます。」と答弁されています。したがって、この事実を知らないから、逆に言えば、事実が公園計画に書いてあるならばこれは法解釈上問題だ、そういう解釈のできる答弁をしておるわけであります。きわめて重要な問題でありますから、あの委員会の際も、審議会に当然諮るべきではないかという質問をしておるわけでありますが、改めて審議会にお諮りになったらどうかということを申し上げて、お答えをいただきたいと思うのです。  以上三点、ちょっとお答えをいただきたい。
  37. 原文兵衛

    原国務大臣 志布志の現地視察をしたらどうかという御質問でございます。私どもは、この前土井委員の質問にお答えしたときもそうでございますが、志布志には絶対行かないというような気持ちを持っておるわけじゃございません。いろいろな日程の関係でこれから考えたいということを申しております。これからの日程につきましては、国会がいつまで続くのか、いろいろなこともございますし、今後の日程をいろいろと考えながら考慮していきたいと思います。  それから、いま法制局の政府委員答弁についてお話がございました。当時私もおりましたけれども、この問題では、いわゆる国定公園の変更の場合には審議会にかけるということでございまして、私どもはこの問題につきましては国定公園の変更にはつながっていないというふうに見ておるものでございますから、審議会にかける必要はないというふうに考えておるところでございます。  そのほかの問題につきましては、自然保護局長の方から若干のお答えをさせたいと思います。
  38. 正田泰央

    ○正田政府委員 御指摘法制局の方からの御答弁に関連して申し上げます。  自然公園法の国定公園につきまして計画変更をいたす場合に、法十三条二項で、必要な計画変更については環境庁長官審議会意見を聞いて変更いたすことになるわけでございますが、もとの計画決定につきましては、法律の規定に基づいて環境庁長官が決めます計画と都道府県知事が決めます計画と二種類ございますが、御指摘の展望所等は後者の方の知事の決定になっておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げました変更、廃止、そういった一連の取り扱いについては知事が行うというのが制度上の仕組みになっております。  あわせまして、審議会というお話がございましたが、都道府県、この場合は鹿児島県になりますが、鹿児島県の審議会に諮るという仕組みになっておりますので、御了承いただきたいと思います。
  39. 清水汪

    清水政府委員 大規模な地域開発計画についての考え方の問題を御質問いただいているわけでございますが、これは、中公審の問題として申し上げれば、先ほどもちょっと申し上げましたように、専門委員会検討取りまとめの段階ではこういうものもアセスの対象にしたらどうかという考え方を打ち出しておりました。答申の段階ではそれはいわば消えているわけでございますが、そのときの説明がございます。それは、先ほどもごく簡単に御紹介申し上げましたが、現在の各種の法体系あるいは行政機関の所掌事務の関係等からいいましても、非常に大きな、一つの包括的な内容を持った地域計画というものを、一つ法律で直ちに一義的にその取り扱い方を決めてしまうというようなことは実際問題としてできないだろう、これは率直に認めざるを得ないことだろうと思います。中公審答申もその点について理解を示したもの、こういうふうに考えるわけでございます。しかしながら、そうは申しましても、現実的には、各省、あるいは地方公共団体と中央省庁といったようなそれぞれかかわりのある主体との間の連絡とか協議の仕方、協議を持つというようなことは実際にも適宜いろいろ行われているわけでございますから、当面のところは、そういうような連携をさらに緊密にしていくということで対処していくということが実際的ではなかろうか、こういうふうに思います。  しかし、アセスの問題として考えれば、大きな規模事業がその中に幾つかある場合に、その事業をやることについては、たとえばこの法律が成立しておれば、この対象事業になる限りはそこにひっかかるわけでございますから、したがって、影響の大きいと認められるような事業については、アセスなしにはとにかく着手にはならないということはあるわけでございます。その点は、この法律でなくても、いままでの建設省とか運輸省あるいは通産省のすでに出している通達に該当するものあるいは条例等に該当するものについては、現にそういう姿になっているということは申し上げられるかと思います。  それから、志布志湾の石油備蓄基地計画について、現に鹿児島県がアセスメントに着手をしているという段階だろうと思いますが、これだけ重要な問題でございますので、その段階で、私どもといたしましても県当局の行うアセスメント内容が十分なものになるようにということは期待しておるところでございまして、そういう観点からいいまして、いわゆる行政指導ということになるわけでございますけれども、県当局がどういう手法でどういう内容アセスメント実施しようとしているかということについては十分注意を払っていきたい、そして、必要に応じて相談にも乗り、また助言も与えていって、いいものができるようにというふうに考えておりまして、現にそういう趣旨の接触は、これは事実上の接触ということでございますけれども、県当局ともいたしているということでございます。
  40. 水田稔

    ○水田委員 本論ではないものですから、これだけ申し上げます。  安楽川以南は認めない、こう言っている。知事の方は、それはオーケーと言っていない、個々にやればできる、そういうことになる。それから、環境庁としては法律ができても個々のものに意見を言うだけということでいいのかどうかという問題がここにあるということを、一つだけ申し上げておきたい。  それからもう一つ審議会の問題につきましては、先ほど読み上げたところでこれは出ておりますから、後で会議録をごらんいただいたらいいと思いますが、「いま先生の御指摘のような問題がこの公園計画に記載されているのかいないのか、そこが問題であろうかと思うのでございますが、そこのところを私は具体的に存じ上げませんので、何ともお答えいたしかねます。」こう言っておるわけです。後、それに対して土井委員見解をずっと述べておるわけです。重要な問題ですから、これはぜひひとつ会議録をごらんいただいて、その点、もし環境庁に申し上げてもやらぬと言われれば仕方がないことですが、ぜひやるべきだ。しかし、委員の皆さんが意見を言うことができるという条項もあるものですから、そういう意味では、この志布志問題というのは、いま全国的な自然環境問題ということでは一つの原点の問題そういうぐあいに理解しております。ですから、それだけに、やれることはちゃんと全体の納得が得られる手段はとるべきだ、こういうことを意見として申し上げておきたいと思います。  次ですが、環境影響評価については、すでに地方自治体条例をつくり、あるいは要綱で制度化してやっておるわけであります。これが現状はどうなのか。あるいは、今後法律の制定との関連もありましょうけれども、現在検討しておる実態等はどの程度あるのか、それをお伺いしたいと思います。  それから、これまで運用してきているわけでありますが、地方自治体における条例、要綱の制度が円滑に運用されているのかどうか。環境庁としてはどういうぐあいにお考えになっておるのか、伺いたいと思うのです。  それからもう一つ、自治省の方に、自治省としては、これまでこういう環境アセスに関する条例なり要綱の制度化についてどういうぐあいに指導され、これからどういうぐあいに指導されていくお考えなのか。あるいはまた、当然これについての財政的な面もあると思うのですが、財政援助等については何らかのお考えがあるのかどうかを含めてお伺いしたいと思います。
  41. 清水汪

    清水政府委員 まず、地方自治体における条例、要綱などの制度化現状でございますが、これは、政府昭和四十七年の閣議了解アセスメントを推進していこうという方針を打ち出して、その際、地方公共団体においてもこれに準ずるようにということを要請いたしましたので、これが契機になりましてだんだんと進展してきたということが言えるかと思います。  現在までのところ、古い順に申し上げますと、川崎市、北海道、東京都及び神奈川県の四つの団体が影響評価に係る条例を制定しております。それから次は、条例ではございません、要綱等というふうに一括して申し上げられると思いますが、古い方から、福岡県を初めといたしまして、去年の段階まで十六の県及び指定都市がそれぞれ要綱等を制定しておりますので、これらを全部合計いたしますとちょうど二十ということになろうかと思います。  動向でございますが、昨年来私どもがつかんでおる状況を申し上げますと、言うなれば、その他の残りのすべての都道府県でも、環境影響評価を何らか制度化をしたい、あるいはその制度化についての検討をしているというような作業中の状態であるということが申し上げられるかと思います。指定都市一市を除いて制度化またはその検討を行っているということになるわけでございます。ただ、そうした地方公共団体におきましては、この段階まで参りますと、国の法律案がすでに国会提案されているということがよくわかっているわけでございますので、先ほど大臣からもお話のございましたように、むしろ一日も早く国の法律の成立を希望したいという態度を見せているわけでございます。  それから、すでに条例等を制定している地方公共団体においてその運営の状況がどうかという御質問がございました。この点につきましては、私どもからいたしますと、たとえば東京都、神奈川県はつい最近のことでございますので、それ自体の適用例はまだほとんどないということになろうかと思います。やや古い方の条例のレベルで申し上げれば、北海道、それから川崎市というものがあるわけでございます。現にかなりのケースについてこれが適用されているということは承知をいたしておりますけれども、それがうまくいっているかどうかというその成績評価にわたるようなことにつきましては、立場上、ここでそれに触れることも適当ではないと思います。  そういうことにかえまして一言申し上げれば、ケースによっては、自治体自体でもその運用に当たってなかなか苦心をしていることがあるというようなことも多少は耳にしておるわけでございます。
  42. 藤原良一

    ○藤原説明員 お答えいたします。  地方公共団体では、地域の環境影響を及ぼすおそれのある事業につきまして、現実にアセスメントを行うという場合が非常にふえてきております。したがって、自治省といたしましても、このような地方公共団体アセスメント行政に対しまして非常に強い関心を持っておるわけでございますが、ただ、条例等はその性格上自治体が自主的に定めることでございますので、われわれの方から積極的に条例を制定すべきだというふうなことは言えない立場にあると思います。また、実態上行っておりますアセスメント事業につきましても、立場上特に自治省として独自の方針を定めて具体的に指導するというふうなことは行っていないわけでございます。しかし、本法案で予定しております規模が大きくて環境に著しい影響を及ぼすおそれのあるような事業、こういう事業に関しましては、全国的、統一的な手続を早く定めていただいて実施していただくというのが望ましいのではないかというふうに考えております。
  43. 紀内隆宏

    ○紀内説明員 地方公共団体に対する財源措置についてお答え申し上げます。  まず、地方公共団体事業者として行うこととなる環境影響評価に要する費用につきましては、本法案の三十六条におきまして、国は「適切な配慮をする」と規定されております。自治省といたしましては、関係省庁に対しまして国庫において必要な財源措置を講ずるよう強く要請しているところでございますが、地方公共団体の負担することとなる額につきましては、国の予算措置等の状況を勘案の上、所要の財源措置を講じていく考えでございます。  なお、環境影響評価のシステムの中で地方公共団体またはその機関が行う事務に要する費用につきましては、制度の発足を見なければその経費の発生の状況がつかみにくいので、具体の状況に応じまして所要の財源措置を講じてまいりたいと考えております。
  44. 水田稔

    ○水田委員 地方自治体条例というのは、この法案内容的にも大分違っております。たとえば四自治体の条例を見ても、環境の範囲、住民の範囲、公聴会、説明会等の手続対象事業の範囲、事後アセスメントの有無など相当な差異があるわけですね。この法案ができれば、先ほどの御答弁にありましたように、いわゆる横出しは認めるけれども上乗せは認めないということになるわけですね。地方自治体独自に、その地域でそれぞれの特性に応じた実際の環境を守るための努力をしてきておるわけです。そういう実態の自主的な制度ということになるわけですね。ですから、そういう点からいうと、いわば横並びに恐らく指導されるのだろうと思うのですね。そうなりますと、地方自治の本旨という点から問題ではないか。自治権の侵害と言えるかどうか、そういう問題になるのではないかという気がするわけですが、環境庁は、そういう点について、法案ができた場合、条例なり要綱をつくっておる地方自治体をどういうぐあいに調整していくのか。  それから同時に、余り横並びということを強制的にやれば自治権侵害になるのではないかということについてどうお考えなのか。  もう一つ、自治省の方は、それぞれ自治体が自主的にやってきたことで一律的な指導はしてないということでございますけれども地方自治体本来の住民自治という原則から言えば、今度の法案によってそれが横並びに強制されていくということになれば自治権の侵害になるのではないかと思うわけですが、自治省はいかがお考えか、お伺いしたいと思います。
  45. 清水汪

    清水政府委員 今日問題になっておる環境影響評価制度確立、ことにそのことをいまや個々の行政措置とか地域ごとのやり方ということでなくて、国の立場から一元的に、かつそれを法律の形でもってルールをつくるということが要請されている、こういうことだろうと思います。それには、過去の経験、沿革、あるいは先ほど来ちょっとありましたような諸外国の趨勢というようなことが背景にあると思います。  そういうことから申し上げますと、まず第一点といたしましては、法律のレベルでできる範囲のことを一元的なルールとして確立をするということの重要性ということが特にこの際あろうかと思います。それは、そういう意味できわめて合理性のある要求であるということは申し上げられるかと思います。  もう一つ、この法律内容は、ごらんいただきましてもおわかりのとおり、アセスメントというものを展開していく場合のいわば手続ということを一つの大きな柱にいたしております、もちろんそれだけではございませんけれども。この手続ということの性格と申しますか、観点からいいましても、よく言われるいわゆる地域特性というようなことは余り縁がないことになる、そのようなことは申し上げられるかと思います。そういうようなことからいいまして、この法律がとっている考え方というものは、たとえば自治の本旨に反するというようなことは毛頭ないというふうに私ども考えておりますし、政府としてそういう見解を持っているわけでございます。  ただ、逆にここで特に申し上げたいことは、この法律の中で、たとえば調査、予測、評価についての技術指針を定めるという部分がございます。これは主務省令で定める。それに対して環境庁長官が協議に応じまして整合性なりを図っていく、こういうふうな仕組みにしてございますけれども、この調査、予測、評価という問題につきましては、たとえば事業の特性ということがよく言われます。それから主務省令という話が出てきているわけですが、同時に、単に事業の特性だけではなくて、その事業が展開されるその地域地域の特性という問題があるわけでございまして、調査したり予測したり評価したりするという問題のときには地域の特性ということは十分考慮に入れてやっていくことが必要であろう。そのような考え方のもとに、この法律を成立させていただいた上で指針等の準備を進めていきたいというふうに私ども考えているわけでございます。  したがいまして、総合的に申し上げれば、この法案のとっている態度というものは地方自治の本旨には沿っている、反するものではないということは御理解いただけるものと思います。
  46. 中島忠能

    中島説明員 この法案対象にされておりますのは、いままでよく御説明がございましたように大規模事業でございます。その事業のアセスをどういうふうな手続で進めるかということにつきましては、国会で十分審議をされまして一つの方針が決まるということになりますと、その方針に従って地方団体が仕事をしていくというのが通常だというふうに思います。いま環境庁局長から、地域特性というものが考えられる余地があるものについては政省令の段階で考えられるということも説明がございましたけれども、基本においてはやはり手続という性格からいたしまして地域特性というものにはなじまないものだというふうに考えております。したがいまして、国において一つの方針が決まりますと、それを地方が尊重して、それによって仕事をしていくということは自治権の侵害だというふうには直ちに結びつかないのではないかというふうに考えます。
  47. 水田稔

    ○水田委員 ただ、この法律が実際に施行された場合、実効を上げる場合には地方自治体の任務というのは非常に大きいものがあるわけですが、そういう点では、自治体の現実にやってきたこれまでの努力というのは大きく評価しながら、実際の法案について調整をする必要があるのではないかということだけ、意見として申し上げておきます。  それから、この法案は基本的には事業アセスメントと呼ばれるものだと思うのです。大規模あるいは国家的見地からの事業は、実際仕事をやる場合には、基本構想ができて、基本計画ができて、そして実施計画、こういう段階を経てやるわけでありますが、環境アセスメントというのは実際には実施計画の段階、いわゆる最終段階で初めてアセスメントを行うわけであります。その場合に、環境影響あり、こう判断されても、実際には若干の変更が加えられるかもしれないけれども、これで開発そのものをとめてしまう、場合によっては環境保全のためにとめてしまう、そういうことはできない、いわば事業を認める前提に立ってのアセスということになるわけであります。これは、中公審の四十七年の「特定地域における公害未然防止の徹底の方策」それから五十年の「環境影響評価制度あり方」、この段階までは、計画段階から環境アセスメントが必要、こういうぐあいに言っておるわけです。しかし、答申にはそこのところは抜けておる。そして、この法案でも抜けておるわけですね。なぜそれがなくなったのか。そして私どもは、そのやり方は段階で違うでしょうけれども、計画段階からアセスメント考えるべきではないか、こう思うわけですが、環境庁の御見解を伺いたい、こういうぐあいに思います。
  48. 清水汪

    清水政府委員 計画段階からということにつきまして、先ほど来引用いたしております昭和五十年の専門部会の検討結果は、実は表現が必ずしも明確でないわけでございます。「計画・事業」というような、計画というのと事業というのを、ある意味では同列にとらえているという感じもいたします。  そのようなことから考えてみますと思いつくことがあるわけでございまして、私ども法案でも、たとえば港湾計画というようなもののとらえ方をいたしておりますけれども、たとえば都市計画というようなとらえ方、あるいは高速道路というものになりますと、この法案の場合でもどこでとらえるか。いまでも整備計画の決定というような段階でアセスメントをとらえておりますけれども、したがって、物の性格、その事案の性格によりましては、計画という段階でアセス自体の手続対象にするというとらえ方は現にいままでもありますし、そういう意味でそういう言葉が並んで出てくる。しかしながら、そうでない場合は事業自体の実施の前段階ということでとらえる、こういうことであろうかと思います。ですから、検討結果のメモの段階がそういうことであったと思いますし、それから答申は、先ほど来申し上げているようなことで、事業実施前ということで整理いたしておりますけれども、この場合でも都市計画なり港湾計画というものは、計画という段階でとらえるということがあるわけでございます。  もう一つ申し上げられることは、いずれにいたしましても、抽象的な計画というものではアセス自体が余り実のあることができないわけでございますので、アセスをどの程度の具体的な段階でやるか。つまり、事業実施する前でございますから、ある意味ではそれも事業計画でございますが、その事業計画の内容が相当程度に具体的に煮詰まって、それに立脚して環境への影響について具体的に調査したり予測したり評価することができる程度、そういう状態のときにやる、こういうことになろうかと思います。そういう意味でございますので、計画と事業ということの御議論につきましては、私どもとしてはそう実質的に違いはないのじゃないかというふうにも思います。  それからもう一つ、お言葉の中にございました、段階が後になればなるほどいわば身動きがつかなくなるというような御懸念を提起されておられます。その点は、おっしゃることは非常によくわかるように思うわけでございまして、今後このアセスメント法を運用していく私ども立場からいたしますれば、仮にもそのようなことにならないように、これは単にこの法の運用というだけでなくて、環境庁といたしまして、常日ごろから各省との関係もさらに緊密にしていく、そういうようなことで、この法の十全な運用を確保していきたい、このように考えております。
  49. 水田稔

    ○水田委員 いま局長が言われましたように、後になればなるほど、とにかく一部の修正だけで、意見をつけて認めざるを得ないということになる。そういう点では、実効の上がるアセスメントという点から、やり方というのは今後の課題としてでもぜひ考えてもらいたい、こういうことだけ申し上げておきたい。  それから、先ほど志布志の問題で触れましたけれども、大規模な地域開発計画というのが抜けておるわけであります。今後、大規模開発についてどういうぐあいに対処されるお考えなのか、ひとつお伺いしたい。  それからもう一つは、地域開発計画というのは、きょう建設委員会でも、関連で、いわゆる治山の関係で、大規模開発によって荒らされることに対して、税金をかけてまた治山治水をやらなければならぬという問題の質問をされておるわけでありますが、同時に、それは環境だけではなくて、大規模な地域開発というのは、その地域のさまざまな経済的、社会的な影響あるいは安全という問題等も含めてあるわけですが、そういう点では、健全な地域社会の発展という問題で、環境アセスメントだけじゃなくて、別の面からの適切な評価を行うべきではないかという考え方もあるわけです。その点についても、お考えがあればひとつお伺いしたい。  二点についてお答えいただきたいと思います。
  50. 清水汪

    清水政府委員 大規模計画についての一般論的なことは、重複いたしますので避けさせていただきます。  具体の地域の大規模開発計画というようなことで申し上げますと、これまでのところでも幾つかのケース、むつ小川原とか本四架橋というようなケースにつきましては、ある意味では、そういう計画を総合的に考えるという段階においても、環境影響評価の問題につきまして、環境庁としても言うなれば指針のようなものを示すとかいうようなかかわり合い方をしてきた実績があるわけでございます。ですから、今後におきましても、そのような総合的な、あるいは内容が非常に多岐にわたるような一つの大計画というものにつきましては、それぞれの主体が政府の中においても各省にまたがる場合があるでしょうし、また、地方公共団体もかかわり合いを持つことがありますので、やはりその主体の間でお互いに緊密な連携を保ち、かつ、全体としてその影響評価については総合的な把握ができるような配慮はしていくことが必要ではなかろうか、そのように考えておりますが、そのような考え方から、環境庁としてもその立場において努力をしていく必要があろう、このように考えております。
  51. 水田稔

    ○水田委員 もともとアセスメント法案をつくらなければならぬという出発点は、やはり大規模開発が出発点ですからね、この点は発電所とともにこの中に抜けている大きな柱だ、私どもはそういうぐあいに考えておるということだけ申し上げまして、次へ進みたいと思います。  環境問題というのは、これまで実際に法律がないわけでありますから、地方自治体が大変努力をして、大きな役割りを果たしてきたわけであります。ところが、この法案によりますと、都道府県というのはある程度の役割りを与えるが、市町村がどうも軽く扱われておる、こういうぐあいに見えるのですが、一体なぜなのか。  それからもう一つは、川崎、横浜、名古屋、神戸といった政令指定都市については、公害を抱え、しかも条例等もつくって努力をしておるところが多いわけでありますから、そういう点では、法案上、都道府県と同じような扱いにする何らかの配慮をすべきではないか。これは、中公審の附属資料にも政令都市についての扱いは書いてあるわけでございます。  それからもう一つは、自治省にもお伺いしたいのですが、この法案による市町村の役割り、あるいはいま申し上げたように政令都市の問題等について都道府県と違った扱いになっておるわけですが、そういう点について自治省としてはどういうぐあいにお考えなのか。  以上をお答えいただきたいと思うのです。
  52. 清水汪

    清水政府委員 この法案は、対象事業としまして、規模の大きい、影響が広範囲に及ぶというようなものを具体的には念頭に置いているわけでございます。そのようなことから考えまして、地方自治体における考え方といたしましては、知事を中心にしてこの手続の流れを確保していこう、こういう発想を持っておるわけでございます。ただ、しかしながら、御指摘のように、従来からもそうでございますが、環境行政の展開におきましては、県だけでなくて市町村においても大変に御努力をいただいていることは十分認識をしておるわけでございまして、そのようなこともありますので、市町村長の意見もやはり酌み上げていくことが必要だろうということから、知事意見をまとめてお出しいただく前段階といたしまして、知事は市町村長の意見を聞く、こういうふうに市町村長を位置づけているわけでございます。  それから、そのようなことでございますので、この手続の流れとしては十分なものであろうと思いますが、もう一つお話の、市の中で政令市についてもう少しその地位を上げてやったらどうかという御趣旨の御質問があったように思いますけれども、この点については、いま申しましたようにかなり大規模、広範囲ということからこの手続考えているということでございますので、やはりここは斉一的に知事のレベルでルールをきちっとするということで、その方が整合性があり、はっきりしていいだろう。それから逆に、市長自身の持つ御意見というものは、いまも申しましたように反映をしていただくわけでございますが、その意見を反映するという立場においては、これはまたその意味において一般の市と特に区別をするといういわれもないだろう、このように考えられるわけでございまして、そのようなことからこういう法律の姿にしているということでございます。
  53. 中島忠能

    中島説明員 何回も申し上げるようですけれども対象にしておる事業というものが非常に大規模なものである。そして、それによって環境に対して与える影響というものの地域的範囲を考えた場合に、いま環境庁局長から御説明がありましたように、やはり都道府県というものが重要な役割りを担うというのは非常に自然な考え方ではないかというふうに思います。  ただ、質問の中で指定都市の話がございましたけれども、指定都市にどういう役割りを与えるかということでございますが、その場合に、指定都市の行財政能力というものに着眼して機能分担を決めていくか、それとも指定都市が管轄する地域的範囲というものに着眼する必要があるのか、こういう二つの考え方があるだろうと思います。私は、この法案を見ましたときに、指定都市について特段の扱いがされてないというのは、恐らく環境庁の方が指定都市の管轄する地域的範囲というものを非常に重要視されたのではないかというふうに思いますし、また、そのようにお考えになって一般の市町村と同じ扱いをされたというのはごく自然な考え方だろうというふうに、これもまた思います。
  54. 水田稔

    ○水田委員 この法案環境アセスメントというのは、「目的」のところに「公害防止及び自然環境保全」これについて行うとなっているわけでありますけれども、実際にそこに住んでおる人たちにとっては、快適な生活環境を保障されるということが必要であります。したがって、自治体が今日までやっておる制度では、日照の阻害、電波障害、産業廃棄物の処理、文化財保護、動植物の生態系への影響、安全性など、地域の特性に応じた生活環境や社会的、文化的な環境を幅広く取り入れておるわけであります。こういう点について、当然住民の側の環境アセスメントというのが求められておると考えるべきだと思うのです。この点は、この法律案の「目的」のところには、先ほど言いましたように「公害防止及び自然環境保全」ということだけなんです。典型七公害とそして自然といいますか、そういうものだけでいいのかどうか、その点についてどういうぐあいにお考えか、お伺いしたいと思います。
  55. 清水汪

    清水政府委員 おっしゃいますように、この法案公害対策基本法で考えております公害あるいは自然環境保全、こういうような現在の公害行政の職掌の立場から物事を考えているということが一つ言えるかと思います。そういう意味から、たとえばいま御例示になりました中では、日照とか文化財とかいうものについてはこのアセスメント法案でも問題の対象にはいたしておりません。  しかしながら、この点につきましては、一つはこういう点を申し上げられるかと思います。  政府全体といたしまして、国民の快適な生活環境なり生活条件の確保に向かって努力をしていることは言うまでもないと思いますが、そのような努力は、やはりそれぞれの省庁の立場に分かれてみんな分掌されているというのが現実の姿だろうと思います。そういう意味から申しますと、たとえば日照についてはすでに建築基準法でその問題についてのルールが法制度上も確立されている、こういうようなことであれば、これは恐らく、いまの公害対策基本法の中で公害という概念のもとにそれを取り入れていないとしても、国の施策全体を通じてはそのことに配慮を払っていないわけではないということは十分申し上げられるわけでございます。文化財についても同じようなことが申し上げられると思いますが、そのようなことから、私どものこの法案では一申しましたように典型七公害並びに自然環境保全ということについてそのアセスメント対象にする、こういうことに割り切ったわけでございます。
  56. 水田稔

    ○水田委員 次に、環境影響評価書は事業者知事及び住民の意見について検討した上で作成されるようになっております。この法案をずっと読んで、この評価書でこれらの知事や住民の意見が公正に取り入れられているという保証は一体あるのだろうか。この法案というのは事業者セルフコントロールが柱になっておる。したがって、この評価の公正さを確保するためには、少なくとも環境影響評価書に対してさらに自治体や住民が意見を述べられるようにすべきではないか。  また、準備書評価書のいずれかの段階で学識経験者の意見が反映されるようにすべきではないかと私は思うわけです。現在の社会情勢の中で、開発事業実施に当たって環境影響評価事業者セルフコントロールにゆだねて、チェックできるシステムというのが欠けておったのでは、とにかくアセスメントをやりましたということだけで事業計画を正当化してしまう、そういう危険をはらんでおるのではないかという懸念をするわけであります。そういう点についてひとつお答えいただきたいと思います。
  57. 清水汪

    清水政府委員 この法案におきましては、事業者セルフコントロールという考え方もかなりの程度入れてございますけれども、それだけでないという基本的な構造につきましては先ほどちょっと申し上げましたが、いまの問題で申し上げれば、事業者は住民の意見なりあるいは県知事意見なりというものに対して自分の見解を書きまして、そのことを評価書の中に書き、評価書という形で公示、縦覧されるわけでございます。そのような関係で行われる以上、これは当然事業者としてもその前段階における住民なり知事意見に対しては誠実に対応するということは十分期待できるところだろうと思います。  しかしながら、単にそれだけでなくて、その後の段階で評価書についてはそれぞれ行政権を持っております主務大臣が審査をいたします。そうして、環境に対する配慮が十分なされるものであるかどうかということをチェックいたしますし、同時に、その時期におきましては環境庁長官もその評価書について審査をし、チェックをいたしまして、かつ、意見主務大臣に対して述べる、こういう構成にいたしておりますので、御懸念のようなことはまずないのではなかろうか、この手続で十分な手順を踏んでいるというふうに申し上げられるかと思います。
  58. 水田稔

    ○水田委員 実際に環境影響評価をやるのは、事業者が全部その能力を持っているわけじゃないのですね。実際にはいわゆる環境コンサルタントといいますか、アセスメント屋というのですか、それらがやるわけです。それで、実際にはそれは資格も別に規定されているわけではないわけですね。それからもう一つは、調査した基礎的なデータというのが全部公表されるわけでもないわけですね。そういう点から言えば、いわゆる住民によくわかる資料の公開ということも必要なんではないか。場合によったら、環境コンサルタントについてのある程度の資格なり、あるいはそれがごまかしであったときの責任等も明確にしないと、そういう点の保証というのは、いま御懸念はないと言われたけれども、懸念は残る形でいまアセスメントが実際上はやられておると思うわけですね。その点についてどういうぐあいにお考えになるか。  それから同時に、こういう問題は国民の支援が背景になければならぬし、そのことは、長官も言われておるとおり、そのことによって今日の公害対策が進んだわけでありますから、一般的な情報公開の要求も大変強くなってまいっておるわけです。ですから、アセスメントの適正な実施という点から考えても、情報公開という一般的な動きとの関連も含めて、アセスメントに関する基礎データの公表といいますか、そういうことをやるべきではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  59. 清水汪

    清水政府委員 まず第一点のアセスメントの基礎資料の公開と申しますか、そのことが情報公開の動きと絡むではないかという御質問でございますが、この点につきましては、たとえばこの法案手続におきましても、評価準備書というものについてはこれを縦覧に供します。この準備書というのは、現在でもいろいろ行政措置によって行われている準備書がございまして、御案内のことと思いますけれども、相当大部な詳しいものであるように私思います。かなりのものはその中にちゃんと記載されていくのではなかろうか。それからさらに、今度はこれについて説明会をいたすわけでございますので、住民が必要とするような重要な情報、データにつきましては、その過程でまず十分に公開されることになるのではなかろうかというふうに考えております。  それから、もう一つの御質問のアセスメントを請け負うような専門の業者あるいはコンサルタント会社というものが実際にはいろいろの計算作業のようなものをやりまして、それが集積されて評価書が形成されるのではないか、ところがその人たちについては格別の法的な位置づけというものがはっきりしていないのではないか、その点については何か今後真剣に考えていく必要があるのではないかというような御趣旨の御指摘があったように思いますけれども、この点につきましては、実は環境庁といたしましては、公にはそのようなことについて御答弁を申し上げたことはいままでないと思います。ただ、そういうことではございますけれども、私は、個人的にはいまのポストに着任いたしましてからアセスメント関係の方々と何人かお会いもしてみました。そうして、できるだけそういう人たちの能力水準と申しますか、それからまた公の、これはつまり公法上の手続としてこのアセスメント法というのは手続を展開するというものでございますから、そういうことに関与するのにふさわしいような性格づけというようなことはやはり今後は考えていくことが必要かもしれないなというような感想は抱いたことがございます。しかしながら、これは全くまだ私の個人的な感想でございますけれども、さらにいまのような御指摘もございました。これは、しかしながら特定のそういう資格要件のような立法をするということは、これまたそれ自体としていろいろ大変な難問が別途あろうかと思います。今後のいわば勉強課題ということで受けとめさせていただきたいと思います。
  60. 水田稔

    ○水田委員 大事なことは、いろいろな詳しい評価書なりあれが出されるということですが、その調査した基礎のデータというのが真実かどうかということが判断する場合一番大事だと思うのです。そういう意味での公開を要望したわけでありますから、ぜひ御検討を願いたいと思います。  同時に、アセスメントに関してはやはり住民の意見というのが柱になると考えられておったけれども、だんだん法案になってみると、住民の意見というのはきわめて不十分な法案になってしまっておるわけです。ですから、たとえばアセスメント評価書ができても、関係住民を限定してしまうと、関係住民を非常に狭い範囲にしてしまえば、その中に専門家がおるとは限らぬわけですね。これは、実際問題としては基礎データが公表されない膨大な評価書を十分チェックできる能力がない。住民の意見は聞いたんだというようなことで、実際にアセスメントの機能が果たせるのかどうかという問題があるわけです。  したがって、私は、地域住民という範囲これについては、もともと五十年段階の専門委員会報告までは、環境保全団体等、あるいは住民について専門的な知識を持った人たちの協力が得られる条件というのは、本当の意味での住民の意見を聞くのならそういう意見の聞き方をしないと不十分になると思うわけです。ですから、その点については、この法案は本来の環境アセスメント、住民が理解と納得のできるそういう運用にはどうしてもならないという疑念が残って仕方がないわけです。その点についての御見解を伺いたいと思います。
  61. 清水汪

    清水政府委員 この住民の関与の問題は、非常に大事な問題だと思っております。この法律では、御案内のとおり、準備書が公告、縦覧されまして、それから事業者による説明会が住民に対して行われます。その後、住民から意見書の提出を期待いたしているわけでございますが、ここで期待をいたしております住民の意見といたしまして、基本的には、その地域に生活をし、いろいろ経験を持っておられる方々のいわば肌身に感じた生活情報といいますか、環境情報、こういうものを御提供いただき、それによって事業者としても自分の行う影響評価について万全を期していこう、そういうような趣旨のものと考えているわけでございます。  そういうことでございますので、その地域よりも以外の方々の意見を聞くかどうかという問題になりますと、それは、いまここで申し上げている住民の意見ということとはもう一つ別の観点の問題にならざるを得ない、こういうふうにも言えるかと思います。中公審の慎重な検討の結果におきましても、一応関係の地域というものを限定し、その住民に対して説明をした上でその意見を聞くということで十分であろう、こういう御判断をいただいたわけでございますので、法案もそれと同じ立場をとらしていただいているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  62. 水田稔

    ○水田委員 住民の意見というのはこの法案一つの大きな柱、根幹をなしておるものであります。それと同時に、基礎データがきちっと公表される、これがないと実際には住民の意見も聞き取ることもできないし、それから、範囲を限定するということがこの法律の運用上住民の理解が得られるようなアセスメントにはなかなかならぬということだけ申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  一つは、個々の事業アセスメントだけでいいのかどうか。一定の地域の将来にわたっての環境の汚染負荷要因を配慮した地域環境管理計画というのは一体必要ないのかどうか。地方自治体ではそういう点に着目した取り組みもなされておるようであります。環境庁としては、この計画についてはどういうぐあいにこのアセスメント法案との関係で位置づけようとなさっておられるのか、お伺いしたいと思います。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  63. 清水汪

    清水政府委員 地方公共団体におきまして、地域環境管理計画というような表現で、いろいろのことについて勉強しようあるいは調査しようというような動きがあることは私どももよく承知をいたしているところでございますし、私ども自身といたしましても、これからの環境行政のビジョンと申しますか、方向といたしましては、足元の公害の防除の徹底にさらに努力するということにつけ加えて、今後は環境の姿というものを予見的、総合的に把握して遺憾なきを期していくことが必要であろう、そういう認識を持っているわけでございます。  したがいまして、認識において別段の問題はないわけでございますけれども、ただ、これは逆に言えば、全く一つのそういう物の考え方と申しますか、そういう理念的な面が強い問題だろうと思います。個々の自治体においては、理念もさることながら、それをたとえばある範囲に限定いたしまして、水辺の緑の活用というようなことで、それを快適環境づくりと称する、あるいは地域環境管理計画の一つのスタートだというふうに受けとめているところもあるようでございますし、あるいは、もう少し何か大きな環境状況について事前的に把握するというような手法を検討しているところもあるように思います。  こういうことは、やはりだんだんと進んでいくことが考えられるわけでございますが、さしあたってこの法案との関係ということになりますと、この法案は、そのような環境全体に対する住民なり公共団体の意識が徐々に熟成し、推移していくということが一方にある、そのことは別にそれを否定するわけでもそれと矛盾するわけでもない、そういう立場から、大きな規模影響が大きいと思われるものについては、それぞれの個々の事業について遺憾なきを期するという意味未然防止制度確立しようということでございますから、これは言うなれば、全体を大きくつかまえようという理念と矛盾するわけでもございません。ある意味では両立するということが言えると思いますし、それから次元がやはり違うというような関係にある、こういうふうに理解をいたしております。
  64. 水田稔

    ○水田委員 環境アセスメント評価基準ですね、これまでに「環境影響評価の運用上の指針について」四十九年六月二十七日の中公審の中間報告、その後環境庁が取りまとめました「環境影響評価に係る技術的事項について」これはまだ案ですが、いままで出たものはこういうものでありますが、評価基準というのはこれを踏襲して定めようとなさっておるのか。  それからまた、基本的事項と主務大臣が定める指針にはそれぞれどのような事項が盛り込まれるのか。  また、指針というのは一定不変ではなくて、その時代の要請なりあるいは知見がふえてくる、科学技術が進歩する、こういうことによって見直しを行う必要もあるだろうと思うのですが、その点についてのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  65. 清水汪

    清水政府委員 この法律を成立さしていただきますと、技術指針は、事業の種類ごとにこれを所管する主務大臣が省令の形で定めるということになっております。その前提としては、それらに共通するような事項については、環境庁長官が基本的事項ということでこれを定めて告示する、こういうような手続にいたしております。そういうことでございまして、その指針を主務大臣が定めるときに環境庁長官が協議を受けるということになりますが、すでに私どもがいままでの努力の過程でいろいろ指針的なもの、つまりマニュアルというようなことも言っておりますけれども、技術指針のようなものを作成し、これをいわば参考ないし行政指導の形で地方公共団体等にも提供をいたしているということがございますが、その内容自体は、今後、いま申しましたような手続実施する過程で、さらにそれをいいものにしていくと申しますか、検討を加えていくということによって、正式に指針なりが決まっていくということになろうかと思います。  それからさらに、その指針というものは将来科学的知見等の進歩発達とかあるいは経験の蓄積ということによって改定されていくことが必要であろうという御指摘につきましては、私どももそれはおっしゃるように考えていくべきものというふうに思っております。
  66. 水田稔

    ○水田委員 時間が余りありませんので、あと二つほどで終わりたいと思いますが、環境庁長官意見というのは評価書の段階で主務大臣に対して述べられることになっている。これは中公審答申の趣旨とは違っておるように思うのです。それは一体なぜなのか。  それから、長官の意見許認可に当たって配意される、従来は配慮でしょうけれども、配意されると特別な言葉を使ってあるのですが、具体的にはどういうぐあいに反映されるのか。  それから、事業者事業実施に当たって長官の意見等に基づく適切な環境保全上の配慮を行わなかった場合に環境庁はどういう措置がとれるのか、その点はいかがでしょう。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  67. 清水汪

    清水政府委員 おっしゃいますように、中公審答申と変わっている大きな点の一つが、この主務大臣なり環境庁長官なりの意見を述べる時期の問題でございます。これは、当初の環境庁の事務的原案はどちらかというとセルフコントロールという方の色彩がより強かったということであったと思います。しかしながら、いろいろ各省と相談、検討いたしてみますと、それではなかなか国としても十分な責任を果たしたことにならないのではないかという議論にだんだんなってまいりまして、そこで、途中の段階で意見を言って、あとそれについてのチェックがきかないのはかえってまずいのでというようなことになりまして、途中の段階の出番をやめまして、最後の段階で意見を言うということにいたしました。  その場合に、環境庁長官意見を申したことが十分尊重されるのかどうかという点の御疑念かと思いますけれども、この点は、この法律の中でも主務大臣環境庁長官意見に十分配意して審査をする、こういうことになっておりますから、この法の趣旨は十分尊重されるものと考えておりますし、それは、環境庁長官の地位というものが、環境庁設置法等を引用するまでもなく、環境についての総括的な所管大臣であるというような地位でございまして、そのような地位を持った環境庁長官がここで意見を言うということですから、そういう意味の重みがある意見ということは十分各省においても御理解をいただけるところ、このように考えるわけでございます。  それから、事業者が守らなかった場合はどうするかということでございますけれども、この点につきましては、許認可処分ということで拘束されていくわけでございますから、そちらの主務大臣のお立場からも十分その監視監督が行き届くだろうと思いますし、この法律自体でもいわば趣旨を明確にしておりまして、事業者自身も自分が公表した評価書に記載した防止対策について十分誠実にこれを実行するようにしなさいということを法律の上で明示しているということでございます。私どもも、通常の例で申しましても、具体の案件につきまして各省に対してアセスの結果についての御意見を申し上げるときでも、やはりそういう点の配慮をいまの場合でもしておるわけでございますけれども、今後におきましてもそういう点についての配慮もしながら運営をさせていただきたい、このように考えております。
  68. 水田稔

    ○水田委員 これまでの大規模事業のときにいろいろ約束したことが後になって守られないということは、実際にたくさんあるわけです。私どもどこということを申し上げませんけれども、訴訟になったものもあるわけですね。ですから、そういう点では、手続を経て実際に事業に着手された後に、評価書あるいは環境庁長官意見あるいは許認可に当たって付せられた環境保全上の条件が遵守されているかどうかということを十分監視する必要があると思うのです。いま、環境庁長官という立場で付しておる意見だから守られるということですが、そう甘いものではない。いままでの開発優先という考え方があるから、要らぬことを言うてくれるなという見解もあるかもしれませんからね。それから、わからなければいいということがないとも言えない。そういう点では、守られておるかどうかの監視をどうやっていくかということが大事なことだろうと思うのですが、その点はどういうぐあいに対応なさるお考えか、お伺いしたいと思います。
  69. 清水汪

    清水政府委員 いまも申し上げたことと多少重複するわけでございますけれども、今度の法体系では、許認可処分をする段階でチェックが統合されております。したがいまして、そのような許認可処分を受けた後で事業実施するという以上は、事業者としては当該主務大臣の監督下でその事業を遂行することになるわけでございますから、そのような観点から十分なチェックは行われるものというふうに考えるわけでございます。
  70. 水田稔

    ○水田委員 本会議が始まりますので、以上で終わります。
  71. 八田貞義

    八田委員長 次回は、来る十八日火曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時五十六分散会