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清水政府委員 御質問は、
昭和五十年十二月の
中公審専門
委員会の
検討結果のまとめというところを視野にお入れになりまして、そして最後の
答申であります
昭和五十四年四月の
中公審自体の正式
答申ということまでを含めたところで、この
法案との対比というふうに御
指摘になっておられるかと思いますが、整理して申し上げますと、私
どもといたしましては、この
昭和五十年十二月の専門
委員会の
検討結果のまとめにつきましては、もちろんその
意味、趣旨、
検討の過程というものについては十分これを参考にさせていただいているわけでございますが、
中央公害対策審議会といたしましては、そのような蓄積、積み重ねを経た上で、正式に五十四年四月に
答申をしていただいているわけでございます。この
答申からスタートして
法案作成に進む、こういうことに私
どもの
立場はなるわけでございますので、その点から申しまして、この
法案の最終の姿と五十年の専門
委員会の
検討結果との間にはかなり開きがございますが、その大部分のものは五十四年四月の
中公審の正式
答申の過程におきまして、いわば
検討をさらに深めた結果、整理をされたと申しますか、結論を固められたということで整理されております。
中公審の正式
答申と
法案との間では、先ほどちょっといい面だけ言ったのではないかということでございますが、たとえば
対象事業ということにつきまして
発電所が入ってないというようなことが反面であることはもちろんでございますけれ
ども、
答申と
法案とは大筋は合っておりまして、
幾つかの点でちょっと申しましたように
評価できる、こういうことになろうと思います。
多少具体的に申し上げますと、五十年の専門
委員会の取りまとめの段階で、まず
対象の行為につきまして
一つの特徴がございました。それは、大
規模な計画自体をアセスの
対象にしたらどうかという
考え方を展開しております。しかし、この点につきましては、五十四年の
答申では、そのような大
規模地域
開発事業というようなものは、実際上はいろいろ銘打って出てまいりますけれ
ども、現在の
わが国の法体系の上ではその位置づけが必ずしも明確ではない。これに対する国のかかわり方も一義的に明らかではない。そういうようなことから、これを国の一元的な
手続ルールの
対象として取り上げるわけにはいかない、そのことは無理がある、こういう
見解を明らかに述べておるわけでございます。そのようなことから、
答申ではそれが入ってないということになろうかと思います。
それから、その点に関連して申し上げますと、五十四年の
答申では、都市計画にかかる
事業についても都市計画法体系の中で行うというふうな言い方になっておりまして、必ずしも
意味がはっきりはいたしませんが、どちらかというとアセス法の中でなくてそちらの方で手当てをしたらというような気持ちにうかがえるわけでございますけれ
ども、私
どものこの
法案では、その都市計画につきましてもこの
法案の中にむしろ取り込んだ形で
対応しておるというような違いがございます。
それから、その次に申し上げますと、
調査等の項目とかあるいは
調査等の方法ということに関連いたしまして、まず、五十年十二月の
検討結果の取りまとめにおきましては、このときの
考え方は、非常に特徴的な点は、あらかじめ示す項目というものは最小限にしておこうというようなことでございます。そして、
事業者が選択した
評価項目及び用いられた技術手法の妥当性については、本
制度の
手続を進める過程で
評価されていくことになろう、こういうようなことでございまして、この点が五十四年の
中公審の
答申になりますと、むしろ基本的事項を
環境庁長官が定め、そしてそれに係る指針を
事業を所管する
主務大臣が定めるということにして、その場合に
調査の
対象項目とか
調査の方法につきましてはできるだけ客観的、具体的に定めておかなければならない、こういう
考え方に変わってきているわけでございます。なぜそう変わったかということにつきましては、当然この
答申の中で説明してございますけれ
ども、それは、
事業者が適切円滑にアセスを進めていくということのためには、そのように明確にしておくことがいずれのサイドから見ても必要なわけでございます。そういう
意味におきまして客観的、具体的に定めておくことが大事だ、こういう
考え方を述べております。
このことがさらに関連をいたしますのは、この
評価の尺度ということでございまして、五十年の
検討結果のまとめの段階におきましては、必要とされる
環境質の水準をあらかじめ設定しておいて、それを基準として
評価する方式を推奨するものではない。事例ごとに専門的知見、地域社会のニーズや住民等の意向を把握した上でこれを見出していく
考え方に立つべきであろう、こういう
見解を取りまとめておりますけれ
ども、この点も五十四年の
答申ではむしろ大きく変わっておりまして、基本的な事項につきましては、
評価の尺度を可能な限り示しておくことが特に必要である。
評価の尺度としては、
環境基準その他これに準ずるものがある場合にはこれを用いる。これがない場合には既存の知見、事例等を参考とすること等により
評価することを基本とする、こういうようなことを述べておりまして、
検討結果との違いにつきましては、やはりこういうような説明をいたしております。事例ごとに専門的知見、地域社会のニーズや意向を把握した上で
環境保全水準を見出していくという
考え方は、
環境保全水準についていわゆる価値観の多様化というようなことからさまざまな
見解が述べられることになり、それでは、どのような判断に立ってそれを整理したら妥当なのかということ自体、
事業者としても非常に迷うことになるだろう、こういうようなことから言いまして、そのような発想では実際上
事業者としては運用できないであろう、こういうふうに説明をしておりまして、これも確かに現実的に詰めて
考えてみますと、やはりこういうことにならざるを得ないのではなかろうかというふうに思いますが、そのような説明で
答申になっているわけでございます。
それからあと、
準備書の作成とか
評価書の作成というようなことにつきましては、作成の主体についての
考え方が五十年の段階と五十四年の段階とで余り違いがないというか、つまり、五十年の段階では、
許認可に係る
事業にあっては
許認可権者が
見解書を作成するというのがございますけれ
ども、これは、四月の
中公審答申の方にはむしろそういうようなことについて触れておりませんで、
準備書も
評価書も
事業者が作成する、単純にこういう形になっているわけでございます。これは、
法案ではやはり同じようなことになっているわけでございます。
それから、公表とか
意見聴取の
手続でございますけれ
ども、この辺のところは、当初の段階では、
許認可に係る
事業は
事業者に行わせることは必ずしも適切でないので
許認可権者が行う、こういうようなことにしてございますけれ
ども、
答申の段階では全部
事業者がやる、こういうふうに整理をいたしております。しかしながら、これは
法律の段階ではまた少し整理をし直しまして、さっき申しましたように、公告とか
縦覧というような
手続進行についてのいわば
信頼性が問題になるような点については、むしろ
知事を活用させていただく、こういうようなぐあいにしているわけでございます。
それから、住民の範囲について、これがやや大きく違っておるかと思いますが、
検討の取りまとめにおいては、
影響を受ける地域の住民だけに限定することなく、広く
意見を求めるようにすることがいい、こういう
考え方を述べておりますけれ
ども、
答申においては、
影響の及ぶ
関係の地域の住民ということに整理をしてございます。その理由については、この
制度の円滑で実効ある運用を図るためにはやはりそのように限定することが適当である、こういう説明をいたしております。
それから、公聴会の問題でございますが、五十年の
検討結果のまとめにおいては、
事業の主体は必要があると認めるときは公聴会を開催する。要するに、
事業者が公聴会を開催するというような発想を
提案しているように思われますけれ
ども、これは
答申の段階では、
事業者に公聴会の開催を求めるということは適当でないということで、やめにしております。運用上、
地方公共団体の長などが自分の
意見を述べる場合に必要があって開催するかどうかということについては、当該自治体の判断にゆだねてもいいだろうというふうな言い方をしております。この説明といたしましては、公聴会というのは公的主体が行政
処分等を行う際に広く
意見を聞く
制度だ、普通こういうふうに理解されているというようなことから、
事業者は説明会等周知の措置、あるいは
意見書による
意見の聴取、それからこれに対する
見解を明示するというような
手続を行うことにしておるので、これで十分であろう、こういうふうに判断をしたわけでございます。
法律の方では、やはりこの点は
答申と同じような
考え方に立っておるわけでございます。
それから、
地方公共団体の
意見の反映ということでございますが、この辺のところは、国の
主務大臣なり
環境庁長官の
意見というようなところも、
検討結果のまとめの段階、それから五十四年の
答申の段階では、
準備書をつくった後の段階で直接
意見を言うというふうに構成してありましたけれ
ども、この点は
法律では一番最後の段階、
評価書より後の段階で
意見を述べるということに変えてあります。
それから、国の行政への反映、そういう表現で仮にくくらしていただくとすれば、
検討結果の取りまとめの段階では、
事業を決定、
実施し、あるいは許可等を行うに当たっては、
環境影響評価の結果を尊重すべきである。ただ、そういうものは
許認可等の機関にどういうふうに絡ませていくか、その辺は
法制面を含めて
検討が必要だ、こういう
指摘をしておるわけでございますけれ
ども、五十四年の
答申の段階では、
環境保全上の
意見を求めるための
手続を主として定める
制度とすべきであるということで、その
意味するところは、いまの
法案が
考えたような発想までは
考えていないということだろうと思います。しかしながら、
法案はその点を一歩進めまして、いわゆる
横断条項という規定の仕方をとった。そして、
セルフコントロールという流れではあるけれ
ども、それにさらに国の
立場からけじめをつけた、こういうことであろうと思います。
それから、訴訟に関する問題などが
検討結果の取りまとめに書いてございます。これについては、たとえば行政訴訟の特例を設ける
手続をやるべきだという
意見と、そのような
制度化は問題であるとの
意見があったというふうに記述してございますが、
中公審の
答申では、その点は既存の
法律関係によるというふうにはっきり結論づけているわけでございますし、
法律もその線に従っているということでございます。
それから、
地方自治体の
条例等との
関係でございますが、この点については、
検討結果の取りまとめにおいても、国の
制度の
対象にならない
事業というものも、やはりこの
制度の趣旨に照らしながらどういうふうにするかということについては
検討をする、こういうような表現を使っております。それに対して、
中公審の
答申では整理をいたしまして、
対象事業以外について
地方公共団体が
制度を設けることを妨げるものではない。しかしながら、これはやや具体的に実は書いてあるのですが、この場合においては基本的事項または指針に準じて定めるとか、国の
制度で定める以上の負担を
事業者に課することのないよう
配慮する必要があるというふうに整理をしておるわけでございます。この点については、大筋としては
法律は
答申の線に乗っかっているということが申し上げられるかと思います。
主な点の経過はそのようなことではなかろうかというふうに思います。