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1982-07-02 第96回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年七月二日(金曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君    理事 川田 正則君 理事 井上 普方君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 渡辺  朗君       小坂善太郎君    浜田卓二郎君       山下 元利君    河上 民雄君       草川 昭三君    林  保夫君       野間 友一君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         外務大臣官房長 伊達 宗起君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中南米局         長       枝村 純郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     飛田 清弘君         法務省刑事局参         事官      原田 明夫君         外務大臣官房審         議官      藤田 公郎君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         厚生省援護局業         務第一課長   森山喜久雄君         農林水産省農蚕         園芸局果樹花き         課長      小坂 隆雄君         通商産業省通商         政策局南アジア         東欧課長    糟谷  晃君         通商産業省貿易         局農水課長  茶谷  肇君         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       深沢  亘君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ――――――――――――― 委員の異動 六月二十五日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     正示啓次郎君   北村 義和君     根本龍太郎君   竹内 黎一君     武藤 嘉文君   浜田卓二郎君     海部 俊樹君   林  保夫君     竹本 孫一君   東中 光雄君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   海部 俊樹君     浜田卓二郎君   正示啓次郎君     麻生 太郎君   根本龍太郎君     北村 義和君   武藤 嘉文君     竹内 黎一君   竹本 孫一君     林  保夫君 同月二十六日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     東中 光雄君 七月二日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     大久保直彦君 同日  理事井上普方君同日理事辞任につき、その補欠  として高沢寅男君が理事に当選した。     ――――――――――――― 七月一日  日韓首脳会談中止等に関する請願高沢寅男  君紹介)(第四一三三号)  同(高沢寅男紹介)(第四一八八号)  日本国平和宣言決議に関する請願土井たか子  君紹介)(第四一五二号)  世界連邦実現等に関する請願西中清君紹  介)(第四一五三号)  同(谷垣專一君紹介)(第四二〇九号)  同(武藤嘉文紹介)(第四二一〇号)  同(奥田敬和紹介)(第四二三八号)  同(奥田幹生紹介)(第四二三九号)  同(山本幸一紹介)(第四二五五号)  同(玉置一弥紹介)(第四二六九号)  同(森喜朗紹介)(第四二七〇号)  婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関す  る条約早期批准等に関する請願上原康助君  紹介)(第四二一一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月三十日  核兵器の全面撤廃及び軍縮の推進に関する陳情  書外十二件  (第二六八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  千九百八十年の国際ココア協定締結について  承認を求めるの件(条約第五号)(参議院送  付)  千九百八十一年九月二十五日に国際コーヒー理  事会決議によつて承認された千九百七十六年の  国際コーヒー協定有効期間の延長の受諾につ  いて承認を求めるの件(条約第七号)(参議院  送付)  日本国政府スペイン政府との間の文化協定の  締結について承認を求めるの件(条約第一七  号)(参議院送付)  日本国政府バングラデシュ人民共和国政府と  の間の文化協定締結について承認を求めるの  件(条約第一八号)(参議院送付)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事井上普方君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。ただいまの理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事高沢寅男君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 中山正暉

    中山委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上普方君。
  6. 井上普方

    井上(普)委員 先日来、サミットあるいはまた国連総会等々で大臣御苦労さまでございます。しかしながら、その後の情勢は非常に変化を来しておりますので、この問題につきましてひとつお伺いいたしたいと存じます。  まず第一番に、ベルサイユサミットにおきまして、対ソ経済制裁につきましてどのような話し合いが行われたのかお伺いいたしたい。少なくともアメリカ側主張、ECの主張あるいは日本の、まあ主張したのかどうか知らないけれども言い分、これらをひとつ概略でよろしゅうございますからお伺いいたしたいと思います。
  7. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 対ソ制裁と申しますか、東西関係の中で一つの焦点になったわけでありますが、アメリカは、公的信用供与ソ連に与えるということはそれなりにソ連の力をつけるものではないか、いまのアフガニスタンポーランドのああいうソ連圧力関係から言うと、ソ連に力をつけるようなことはいかがか、したがって、そういうことについてはひとつ制裁をするように考えたい。  なお、米側は、公的信用供与は、それは補助金をつけてそして輸出を認めるようなことじゃないかというようなことを言っておられまして、当時鈴木総理は、こういう問題についてはみんなが結束をしてやる必要があるんじゃないか、そのためには、サミット参加国のどの辺で意思統一ができるか、そこの辺が大事なところでないか、そういうような御所見も言われたように思います。  これに対してフランス、イタリアは、公的信用供与のみを対象にするということになると、それはわれわれの国が影響をもろにこうむるのであって、その辺は考えてもらわなければならない。  そこで、サミットの当初来最後までこの問題についての意思統一がなかなか困難を来しまして、ときには外相会議で検討するというようなことで、外相会議意思統一が大体できたのでありますが、本会議の席上におきまして、輸出信用について慎重を期するというような大体の方向が出たのでありますが、その場合、民間対象にはっきり入れるということになりますと、これは日本としてはそれに対応するに非常に困難を認めるのでありますから、私は、大蔵大臣から民間についてそういう制約を加えるということは日本としてはこれはなかなかできないというようなことから、最終的にはこの信用供与についての慎重を期するというようなことで足並みがそろって終わったというふうに記憶いたしますが、これはもう全く私の記憶に基づいておりますから、もしおわかりにくければ、さらに担当の者からお答えをしてもいいかと思います。
  8. 井上普方

    井上(普)委員 私も、新聞記事を拝見いたしますと、大体大臣がおっしゃられた線であろうと実は思うわけであります。  そこで、ベルサイユサミット公的信用供与については慎重を期さなければならないという大体の話し合いがついた、しかしながらこのたび六月に突如といたしましてアメリカ対ソ経済措置について強化を加えてまいりました。そうすると、ベルサイユサミットで話し合われたことは一体何だったのかということになって、意義がなくなると私は思う。この点については、どういうようなお考えでありますか、お伺いいたしたい。
  9. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 アメリカ立場から考えますならば、ヤンブルグパイプラインあるいは日本サハリン石油プロジェクトについては、サミットの申し合わせの上からいえば、これは慎重を期してもらいたいというのではないか。ところが、この当面の問題は、御承知のように、既契約のものでありますから、したがってその公的信用供与を制約するというような話が出た当時から、日本としては、一つにはヤンブルグパイプラインサハリン石油プロジェクト性格が違う、特に日本の場合はアメリカ側がこの開発に必要な資機材に対するライセンスを出さぬ、こういうことになってくると、それは日本に対しての影響がすこぶる大きいので、対ソ制裁なんだと言いながら何のために日本がそういう制裁のようなことを受けなければならないのか。こういうことで、サミットに先立つ日米会談首脳会談の折には、総理から、これは御配慮願いたい。それから私の場合でも、日米会談に臨んで、当時国務長官ヘイグさんに対して、やはりこれは考慮してもらいたい、あるいは副大統領が日本に見えた場合にも、この問題についてはるる申し上げておったのでありますが、残念ながらライセンスは出せないということになったわけで、しかしわれわれとしてはいま申し上げたようなことでありますから、その後ヘイグ長官辞任の面前に再考を促す書面を私から出しておりますし、今後におきましても、この問題についてはでき得るならば早急に再考を促したい、こういうことで対処しておるわけであります。
  10. 井上普方

    井上(普)委員 私が申しておるのは、サミットは一体何のために開かれたのかということなのであります。いやしくもサミットと称して麗々しく首脳会談が行われ、東西問題についても話し合われておる。しかし、それが済んだ一カ月もたたないうちに足元から崩していく、こういうやり方アメリカがとっておる。  これに対して、日本側としては、まあともかくヤンブルグサハリン性格が違うのだから、ひとつこの点はサハリンの方は認めてほしいというような要望を、アメリカにおべっかを使うといいますか、低姿勢でお願いしておるというような立場でしたのじゃないか、このよう私は思う。  いやしくも首脳会談において、公的信用供与につきましてはある程度慎重なる配慮をしなければならぬという合意が大体できておるようであります。しかし、信用供与についてはこうだということは、ヤンブルグパイプラインの問題等々については問題があったでございましょう。しかし、突如として、この間の制裁措置というのは、全くこれはきんちゃく切りがやっておるような外交アメリカはやっておるのじゃないですか。そういうようなことをやって、西側結束が非常に揺らいでおるように私には思われる。  私は、もちろんいまの西側外交というものにつきまして、これを全面的に肯定するものではありません。しかしながら、いやしくも国対国首脳会談においてやられたことが守られぬということでありましたならば、サミットなるものの性格それ自体について大きい疑問を持たざるを得ないし、日本政府としては、当然アメリカに対して、このことについて抗議を申すべきじゃございませんか。この点がまず第一点。     〔委員長退席愛知委員長代理着席〕  第二点。サミットにおきましては、アメリカ高金利に対しまして各国それぞれにこれを下げろという要求を出されたと思う。日本ももちろんその一員であったはずだ。しかし、これに対しては何ら処置を加えていない。特に日本各国が共同してドル高に対して対処するという話もまだ実行に移されず、ドルはどんどんと高くなっていっておる。そのことが世界経済を大きく阻害しておることは、私がいまこの際申し上げるまでもない。世界経済不況原因、あるいは世界経済成長が大きく阻害されております一番大きな原因はここにあるということは、もう私が申し上げるまでもない。このことについては何らさわっていない。サミットの議題としまして一番大きい問題は大体この二つでなかったか、このように思われる。  技術供与につきましては、ミッテランさんからの話で問題になったようであります。これらは今後の問題であります。とりあえずの問題としますと、その二つが大きい問題ではないかと私は分析する。しかし、アメリカはそれを全部、サミットで話し合われたことを守らない。このことに対して日本政府はどういうような態度をもって今後臨まれようとするのか、ひとつお伺いしたい。
  11. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま御指摘になっておる点は、今度のベルサイユサミットにおける各国間の争点であった、こう御認識いただきたい。ベルサイユサミットは、最終的な共同宣言でおわかりのように、世界経済の再活性化を目指す上に、科学技術の面で各国が大いに協力しよう、そういうことで作業部会を設けるということ、あるいは通貨の安定を期するとか、あるいは自由貿易体制の維持であるとか等々、いろいろ合意に達した点があるわけです。いまの争点は、いずれもただいまお話があったように、その後のアメリカ対応の仕方というものは、われわれとしてきわめて残念な点があるわけであります。  そこで、サハリン関係はなお再考を促すということで努力をしておるのでありますが、幸か不幸か、その真相はわかりませんけれどもヘイグ長官は私どもとの折衝をされた方であって、恐らく理解を持っておられたものと思うのです。辞任の経緯についてはそういうことも原因であったのではないかというふうに言われておって、そういうことからすると、残念ながら何か取っかかりを失ったような気がしておるわけでありますが、しかし、この問題は、総理初め、通産でも私でも、先方に対してるる、ライセンスを出さないと日本が不当に影響を受けるということを言っておるので、なお粘り強く今後再考を促していく考えでございます。     〔愛知委員長代理退席委員長着席〕  それから、高金利の問題、これは本当に真剣に論議の行われたところでございます。だから、それに応じて何らかのアメリカ具体的措置が行われることを期待しておるわけでありますが、ただ、論議の過程におきましては、アメリカはこういうことを言っておりました。高金利問題については、現にアメリカインフレも多少ずつおさまってきておる、それで、このインフレがおさまるならば、おのずから高金利政策を緩和していっていいものではないか、また、下期以降の景気回復の見通しが立つのであって、それらのことを御了承おき願いたいというようなことであったのです。  ただ、そういう論議の中で、当時から私が大変気にしておったのは、これはちょうど日本の日銀との関係のようなことを言うのですね。この問題については、政府というよりも連邦準備銀行考えである、こういうようなことを言われて、これを批判的に言うならば、いわば逃げの手を打っておられた事実もあるわけでございまして、現在この高金利問題がわれわれの期待するような方向に行ってないということについては連邦準備銀行がどう考えておるか。それからもう一つ、その後の中東中心とする、もうサミット最終段階にイスラエル、レバノンの紛争激化が起きました。そのために、こういう緊張が続くとどうしてもドルが強くなってきておる。そういう新たな国際情勢から起きておる影響がありますから、そういうことも考えて、日本としては現在非常に不当に円安になっておるということを残念に思っておるわけであります。
  12. 井上普方

    井上(普)委員 大臣人ごとじゃないのですよ。いやしくも約束したこと、これが守れない。しかも途中でヘイグ国務長官辞任した、こう申しても、やはり外交一貫性というのは、レーガン政権が存続する限りは約束したことは守ってもらわなければいかぬ。何らアメリカはやってないじゃないですか。  まず、この高金利の問題については、去年のオタワ・サミットにおきましても同じことを言ってきているのじゃないですか。しかもアメリカは、インフレがおさまって物価が鎮静化しつつある、この間の統計を見ますと、しておる。ところがやはり高金利を続けておる。これに対して日本政府あるいは世界各国が、この高金利に対して、アメリカやり方に対しては不届きだ、少なくとも鈴木総理は、世界経済活性化のためにはまずドル高を何とかしなければいかぬ、アメリカ高金利を何とかしなければいかんというのが中心じゃなかったのですか。しかもそれに対しては、昨年以来、約束はするけれどもレーガン政権は何ら手を打たない。日本は単にやってくれるであろうというような期待を持っただけでやられたんじゃ困ると思う。当然共同してドル高に対して介入するという約束ベルサイユ宣言ではできておりますけれども、何らやってないじゃないですか。アメリカはやろうとしないじゃないですか。  第二の点です。東西関係につきましては、公的信用供与についてのこの間の対ソ経済政策はまことに残念なことであったというだけでは済まないと私は思う。少なくとも一つの問題とすれば、サミット約束したこと、これを根本から覆すようなやり方をやっておること、これがまず第一点です。  第二点としては、それでは一体ライセンス生産をやっておる日本会社に対してこういう制裁が及ぶのかどうか。及ぶとするならば、日本主権の問題であると私は思う。少なくともライセンス生産をやっておる、しかもアメリカ会社子会社は、アメリカの言うことを聞いて日本の言うことを聞かない、日本にある会社に対してアメリカの言うことを聞かすということになりますと、日本主権の問題に相なると思う。この点はどのようなお考えでおられるのか、ひとつお伺いしたいのです。  以上、三点についてお伺いしたいのです。
  13. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 高金利の問題について、これはサミット各国が一斉にアメリカに対しての厳しい批判をしたことでありますから、アメリカ十分認識をしたということは、これは察するにかたくないのであります。  別に私は弁護するわけじゃないですよ。ただ、その後の情勢が一体どうなってきておるかということは、残念ながら中東情勢が一番響いておると思うのですね。それでドルが非常に強くなっておるという現状は、要はそれこそ生き物なんですね。だから、アメリカとしてもそういう影響を受けてドルが強くなっておるということにどのような対応をしておるのか。恐らくその対応の仕方が非常にむずかしいのではないかということから、日本としては米側が公式の場で言っておりますように、インフレ鎮静化経済の好転、そういう面からすればこの生き物鎮静化して金利が下がっていくべきものだ、こう思うのですね。だから、その点から言えば環境はできつつあると思うのですが、最近の傾向からすると、中東情勢がおさまりつつあるように思いますので、ここ数日の傾向を見ると少し円も回復してくる気配を見せておりますので、これはもう少し見守っていく必要があるんじゃないか、こう思うのです。  それからライセンス生産のことについて対ソ措置、これはアフガニスタンの侵攻、ポーランドに対するああいう圧力、こういうことはいけない、こういうことで日本も西欧と歩調を合わせて、そうしてソ連のこういう不当な行為を速やかに改めてもらおう、こういう方針に出ておることは、これは御承知いただけると思うのであります。その範囲ではいいのです。ただ、私どもが言うのは、特に日本に対して大きな影響を与えるようなことは、一体、それは対ソ措置なのか、日本に対する措置なのか、こう言って繰り返しサハリンの問題については異論を申してきておるわけでありますから、現在でもそのことは、ああいうアメリカからの通報は受けましたけれども、なお粘り強く再考を求めていこうということであります。  一般的なライセンス生産に対する影響、それは主権侵害ではないかという御所見でございました。この点につきましては一体どういう範囲でどういう問題が起きておるかという事実確認を私、しておりません。どんなふうに不当な、井上委員のおっしゃるがごとく、主権侵害するがごときそういう問題が起きておるのかどうかということについて、私、十分事実を掌握しておりませんので、この点につきまして私のお答えは控えさせていただきたいと思います。ただ、ライセンス生産がいけない、それは主権との関係がどうか、これは専門的なことでございますので、場合によっては政府委員からお答えさせます。
  14. 田中義具

    田中(義)政府委員 ライセンス生産の問題ですが、サハリンの場合は、サハリンプロジェクトについて必要とされているのはアメリカ輸出ライセンスでございまして、これは輸出ライセンスを与えるかどうかということはアメリカが決定できる問題でございます。これについてアメリカは、石油掘削技術に関連する輸出ライセンスは出さないということを昨年の十二月に決めまして、それで今回それをさらに再確認したということでございまして、そのことが日本主権の問題にどうこうということでは必ずしもないというふうに理解しております。
  15. 井上普方

    井上(普)委員 まず、私ちょっとわからないのですが、輸出ライセンスと、ほかのライセンスと二とおりあるような話なんですが、ここのところはもう少し説明していただきたい。
  16. 栗山尚一

    栗山政府委員 国際法的に見まして、私の理解しておる問題点お答えさせていただきたいと思います。  ただいま田中審議官の方から御説明申し上げましたことは、サハリンプロジェクトについて問題になっておりますのは、アメリカにあるアメリカ会社輸出ライセンスの問題でございます。ヨーロッパの方でいわゆるヤンブルグ計画との関係で問題になっておりまして、ヨーロッパ関係諸国が国際法的な観点から問題にしておりますのは、ヨーロッパにありますアメリカ会社子会社、すなわちヨーロッパ法人、資本的にはアメリカ会社子会社でありますけれども、法律的にはヨーロッパの国の法人でありますところの会社が生産した資材、機材あるいはそのライセンスに対してアメリカの法律を、すなわち輸出管理法を適用して規制をする、これが国際法的に申し上げますとアメリカ管轄権を域外に適用するという問題を内包しておりまして、この点が非常に国際法的に問題であって、場合によっては主権侵害ともいうべき問題を伴う、こういうことでヨーロッパ諸国アメリカに対して非常に抗議をしておる、こういうふうに理解しております。  ただ、そのようなアメリカの国内法を、いわばアメリカの国外にあります外国の法人である会社に適用するという問題は、わが方のサハリンプロジェクトに関する限り同じような問題はないというふうに、これまでのところ私は承知しております。
  17. 井上普方

    井上(普)委員 この輸出ライセンスというのはどんなことなんです。この点ひとつお伺いしたいのです。
  18. 栗山尚一

    栗山政府委員 これはどこの国でも同じでございますが、物資あるいは技術を海外に輸出しようとする場合に、その国の法律に基づきました一定の手続を得る必要がある。物によっては政府承認を得る場合が法律によって設けられておる。これはどこの国でも十分あることでございます。  そこで、いま私が申し上げました問題は、いわゆるヤンブルグプロジェクトとの関係におきましては、ヨーロッパにありますヨーロッパ法人ヤンブルグ計画実施のために必要な機材あるいは技術というものを輸出するに際して、アメリカの法律に基づいてアメリカ政府承認を受けなければならない、こういう問題が出てくる場合には、結果的にそのアメリカ輸出管理法に反しまして当該技術あるいは機材の輸出を行いますればアメリカの法律によってその外国法人であるアメリカ子会社が罰せられる、こういう問題が出てくるということでございます。
  19. 井上普方

    井上(普)委員 いや、そういうことはわかっておる。あなたが先ほどからおっしゃっておる、輸出ライセンスは、これはアメリカの支配を受けるんだ、こうおっしゃる。輸出ライセンスとはどんなことか、そのことを聞いているんだ。たとえて言いますならば、アメリカからリースを受けて日本会社がこれをやっている、もうすでに去年の十二月以降、アフガン侵攻以前からリースを受けておる。これもリースはこちらの方が権利を受け取ってそして開発をやっておる。その機器にまで、そのライセンスに対して制裁を及ぼそうというのがアメリカ考え方。先ほど申しましたように日本アメリカライセンスを受けて生産しておるもの、これについてアメリカ制裁を加えようとするのは、これは私は主権侵害であり、EC諸国が言うのももっともだし、日本においてもそういうようなケースがたくさんあるように新聞記事では報道されておる。これについては主権侵害だと考えて今後も御処置をなさるおつもりなんですな。これが一つ。  もう一つは、リースを受けておる、こういうような状況に対してはどうするのか、この点ひとつお伺いしたい。
  20. 田中義具

    田中(義)政府委員 事実関係としまして、このサハリンプロジェクトについて問題になっているのは、実際に予定どおりサハリンで探鉱するためにアメリカから一定の機器をリースするという問題がありまして、その機器をリースするためにはアメリカ輸出承認が必要である、その輸出承認を出してくださいというのがこれまでの事実関係だったわけです。その輸出承認は実は昨年の十二月の大統領決定でそういう輸出承認はできない。なぜできないかというと、それはアメリカから見た場合戦略的物資と判定されている石油掘削機器に関連する機材であるから出せないということで、その輸出承認がずっと抑えられてきたわけです。それが今回の決定でも再確認されたということでありまして、もう一つのカテゴリーの問題、すなわちライセンスアメリカからもらって日本でもって生産する、そういう形態はこれまでのサハリン問題での日米交渉の中では必ずしも出てきてなかった問題です。ただ、今後そういうようなライセンスの問題が出てくるかどうかということについては事実関係をさらに調べてみなければわからない状況でございまして、現在までのところはそういう問題は出てきてなかったということです。
  21. 井上普方

    井上(普)委員 そうすると田中審議官、あなたは先ほど輸出ライセンスアメリカの制限を受けるのは当然だ、こうおっしゃったが、これはどうなるんだ。いまサハリンの問題はすでにリースは何年間として日本の石油公団がこれを獲得しておる。一たん契約をしておるものを、これをまたさらに適用させようということは、これは私は主権侵害になると思うのだが、その点はどうなんです。
  22. 田中義具

    田中(義)政府委員 輸出ライセンスと私、申しましたのと、それから輸出承認ということは、実は同じ内容でございまして、要するにアメリカから物を輸出するに当たってそれに承認を与えるかどうか、それが輸出承認であり、外国で言えばエクスポートライセンスということになるわけでございまして、その問題だけがこれまで問題になったということでございます。
  23. 井上普方

    井上(普)委員 ちょっと外務省当局に私は忠告しておく。言葉をいろいろと使う。わからぬような言葉、そのときそのとき、それは実にやっておるから、そういうようなことがあると、われわれは今後厳しくやるから、そのつもりでいてほしい。  いまの輸出ライセンスにつきましても二つ言葉がある。これは同じ言葉とおっしゃる。しからば、そのリースの面についてこれはどうなんだと言って私は聞いている。リースは少なくとも去年の十二月あるいはそれまでの間に日本会社と契約分と契約をしておる。貸してあげましょう。それについて輸出承認というのはそのときにもうすでに出されておると思う。それについてはどうなんです。
  24. 田中義具

    田中(義)政府委員 これはリースをしておりますので、これは毎年輸出承認を求めなければいけないという状況でございまして、去年まではそれをもらってきたわけですが、ことしについてもことしの探鉱のために必要な機材をリースするためにアメリカに対して輸出承認を求めたということでございます。
  25. 井上普方

    井上(普)委員 どうもあなた方のお話、通産省の石油開発課長が来られておるようだが、お伺いしておくのだが、きょうの新聞を見てみますと、通産省首脳、恐らくこれは次官でしょう。次官が定例記者会見で法律の域外適用は国際法の上からしてもおかしいということを的確におっしゃっている。まさに正論であると私は思う。  そこで、石油開発について、サハリンの問題についてはECと同じように、アメリカの企業のライセンスを受けて日本でつくった部分はかなり多いんじゃないですか。外務省はまだそういうふうな事実を知らぬらしい。事実はあるんですかないんですか。それからリースについては通産省としてはどういうようなお考えを持っておるのか、この点ひとつお伺いしたい。
  26. 深沢亘

    ○深沢説明員 お答えいたします。  先生御案内のとおり、今度の場合はサハリンの右北の方でオドプトとチャイウォ構造というのがございます。これにつきまして、要するに契約上で日本側会社が資機材等につきましてはこの開発のために供給しなければならないという義務を負っているわけでございます。  それで、今回問題になってございますのは二つのリグがございまして、それぞれにつきましてスペアパーツ、それからそこに載っけていろいろ地層の中の構造等々につきまして検査いたしますその機器類、それから具体的にはコンサルタントと申しましょうかそういった機器を操作する人を向こうに供給すると言いましょうか差し向けるべくいろいろこの中に義務があるわけでございます。  それで、先生の御質問にございましたように、石油掘削関係の機器類はかなりアメリカが支配的なと言いましょうか市場を持っているような実態でございます。それで具体的にはスペアパーツなんかにつきましての輸出ライセンス、それから機器類につきまして、たとえば電気検層装置なんかにつきましてはアメリカの企業がなかなか売ってくれません。それでおおむねどこでもそうでございますけれども、大体リースというようなかっこうでなってございます。そのリースは大体輸出の範疇にアメリカ法の中では分類されておりまして、それにつきましてのスペアパーツの輸出と同じようなかっこうでのライセンスが必要だというふうに承知しているわけでございますけれども、そういったものについての輸出ライセンス等を従来から要求していたわけでございます。  先生の御質問にお答えしますのには、大体アメリカの製品というのが今回のELの問題につきましてもかなり多うございます。中で一部それは日本品、具体的な、たとえばセメントとかそういったような資材につきましては日本品等もございますけれども、主要なところはやはりアメリカライセンスを得ないと向こう側に送れないというようなシステムになってございます。
  27. 井上普方

    井上(普)委員 大体の様子はわかりましたが、しかし、ここで外務大臣にお伺いしたいのです。  先般来、私はこのことについてお伺いした。あなたは対ソ経済措置につきましてはアメリカは理解を示してくれるであろうという期待ですべていままでやってこられた。しかし、現在になったら、こういうことでまだ相談をするんだと言いますけれども、事実サハリンで作業ができるのは、気候の関係でこの七月から大体十一月ぐらいまででしょう。とすると、一年間おくれる。そのうちにソ連側から、そういうようにやらぬのであるならばもう契約を破棄するというような話すら新聞紙上にちらほらと出てきている。とするならば、いままで投入した金は一体どうなるのか、それほどまでにともかくアメリカの無理難題、これの言うことを聞かなければいかぬのかという問題が私はあると思う。これらについては、日本政府としては先ほど来のお願いをするんだというような態度で物事を進めるべきじゃない、少なくとも強く要求すべきことは要求するという態度でなければならないと思うのですが、いかがでございます。
  28. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 今度のサハリンの場合はライセンスの必要な範囲、大まかに二百万ドルと言われているわけです。その二百万ドルライセンスが受けられないということがサハリン石油開発に、ただいま説明がありましたように非常に大事な分野の機器資材であるために、それが受けられなければ致命的であるということは言うまでもないのです。そういうことで、そのことは長年にわたる日ソ間の契約履行を妨げるのでありますから、それらの事情を話して、サハリンの問題については私の交渉相手になるヘイグ長官との間ではおおよそ理解点に達しておる。これはそういう感じを持ったということが甘いと言えば甘いかもしれませんが、しかし通産大臣にいたしましても、また総理にいたしましてもそれぞれ交渉をしておって、まあ私と同じ感覚を持っておったので、恐らくベルサイユサミット後に私どもはある程度のところで歩調を合わして、アメリカとしてもそれでやむを得ない、こういうことになればこのサハリンの問題もおのずから解決をする、こういうふうに判断をしておったわけでありますが、残念ながら、そういう事実なんですからはっきり申し上げますが、国家安全保障会議ヘイグ長官がニューヨークでグロムイコ外相との会談のさなかに開かれて、肝心の私どもが交渉相手にしておったヘイグ長官不在のままに最終的な判断が下った、こういうことで、これは本当にきわめて残念なことであります。しかし、従来の交渉経緯からいたしまして、なおこの点については冷静に交渉をする、こういうことで臨んでおるわけでございまして、別段お願いをするというような姿勢ではなく、言うべきことは言い、交渉の根拠については明白にしながら今日に至っておるということでございます。
  29. 井上普方

    井上(普)委員 大臣のお人柄で、ともかく強く要求してもお願いするというように私らには受け取れるのかもしれません。しかし、それはともかくといたしまして、あのような外交の経緯で、しかもレーガン外交をやっておる御本人の国務長官とお話をして理解に大体達しつつある、それをともかく一方的にこういうようなことをやられるならば、あなた、日本の外務大臣としてアメリカの国務長官とこれから話ができぬということになる。アメリカ外交は一体何をやっているんだということにもなりかねない。だれを交渉相手にやるのです。それじゃ直接レーガン以外に話し合いする余地はなくなってくる、このたびの問題はこういう問題も含んでおるわけです。  さらにはまた、西側EC諸国主権侵害であるといって強く要求しておる。私は、日本とEC諸国とは連絡をとり合ってアメリカに対して強く要求すべきではないか、このように考えるのです。といいますのは、先般もお伺いいたしましたときに櫻内大臣は、西欧とアメリカとの間がヤンブルグ問題で少しがたがたしておるけれども、こんなのは大局的に見れば大した問題ではない、協調はうまくいっているんだ、こうおっしゃったはずだ。しかし、サミットが行われた直後にこのようなことが行われ、サミットは一体何だったのか、西側諸国におきまして大きな論議を呼んでおるでしょう。最もアメリカに忠実だと言われておりましたイギリスのサッチャーでさえも抗議を申し込んでおる。日本に次いでイギリスが追随外交をやっておるはずなんです。日本はこの際、アメリカのこの不当なやり方に対しては強く抗議を申し込み、かつまたサミットでの約束を守らせなければならぬ、私はこう考えるのであります。そうでなければ麗々しいサミットなどはやめてしまったらいい。約束したことは守らせるような体制にしなければならぬと思うのであります。  まだいろいろと申し上げたいことがございますけれどもこの程度にしておきますが、いずれにいたしましても西欧諸国、特に西ドイツのごときはソ連との間の経済協力をやることによって、さらにはまた軍縮をやることによって東西の融和を図ろうとするのが基本的な外交政策、西ドイツにおいてもし戦争が起こる、事が起こるということになれば西ドイツは焦土と化すんだという考え方に立っておる。したがって、東西関係の緊張をいかにして緩和させるかということに腐心をしておる。日本も西ドイツと同じような地理的条件にあると私は思う。有事の場合には日本本土が焦土と化すのであります。あるいはまた日本国民が最も被害を受けるのであります。そういう関係からするならば、日本は積極的に東西の融和を図るべく懸命の外交努力をしなければならないと私は思う。いままでの日本外交方針それ自体がアメリカ一辺倒であり、ソ連を敵国視する、ここに私は戦争への危機というものが大きくあるのではないかと思います。したがいまして、アメリカの理不尽なるこのようなやり方に対しては強く抗議を申し込み、日本の国益を守るために、さらにはまた世界の平和を守るために東西関係をいかにして緊張緩和の方向に結びつけていくか、私は日本外交の基本はここになければならぬと考えるものであります。御一考願うことを強く要求いたしまして質問を終わります。
  30. 中山正暉

    中山委員長 土非たか子君。
  31. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣におかれましては、海外での御活動をこの会期中続々と行われておりますことに大変御苦労さまをまず申し上げたいと思いますが、先日、国連の第二回軍縮総会におきましても外務大臣が御出席になりまして、種々各国との間での軍縮に対する日本立場での御努力をなすったことに敬意も表したいと思います。私自身も、超党派の軍縮議員連盟の社会党代表の一員といたしまして国連に赴きまして、種々かの地において具体的に総理大臣を初め日本政府がどのような応対をされているかということを、部分的ではありますが、この目で見、そしてこの耳で聞いた一人でございます。  総会における総理日本を代表しての演説は、中身は大体結構だと私は思います。聞いておりまして少し退屈で長過ぎたという嫌いはありますし、もう少し血が通ったような演説であってほしいという気持ちはございます。国内では、平和を願ういろいろな団体からはもっと積極的に核廃絶に対し強い呼びかけを日本としてはすべきであったという意見もあります。私自身もそういう感想を持っている一人ではありますけれども、あの演説が演説どおりに実施されるということが何より肝要な問題でございますから、日本としては具体的な提案をどしどしすることに対してやぶさかではなかろうと私は思うので、きょうは外務大臣にそういうことを前提としてお尋ねと、この問題に対処なさる姿勢というものをお尋ねしたいと思います。  総理の演説の中に、「通常兵器の軍縮について申し上げます。軍縮の最優先課題が核軍縮であることは疑問の余地がありません。」というふうに核軍縮に対して問いただしをまずされながら、軍縮そのものについても、国連という機関に対して日本としては世界軍縮キャンペーンが実りあるものとなるように協力していく所存だということを具体的に言われているわけなんです。  そこで外務大臣、どうなんでしょう、軍縮に対して具体的提案を日本がする、このことに対しては努力を惜しまずおやりになることは当然だと思いますが、これはそのとおりに考えておいてよろしゅうございますね。
  32. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 軍縮、特に核軍縮に対してわれわれが努力をすることは言うまでもないことだと思います。そして過去におきましても、国連においてもあるいはジュネーブにおける軍縮委員会におきましても現実に行動をとってまいったところでございますから、完全軍縮の一環の中に核軍縮もあると思うのですね。ですから、通常兵力、核兵力を問わずこの軍縮のための努力をたゆまずやらなければならない。ただ、私どもがよく申し上げておることは、それに到達するためには実効ある措置一つずつ積み上げていこう、こういうことを日本としての現実の行動としては申し上げておるような次第でございます。
  33. 土井たか子

    ○土井委員 私は、軍縮がまず当面の肝心の問題だと思います。軍事力に頼ってやってまいりますうちに一たん戦争が始まってしまいますと、どのように抑えをきかそうといたしましてもこれは無理だということがまず言えますから、軍縮が当面の問題だということはだれしも疑いの余地のないところでございます。  ジュネーブ協定の第二議定書、日本は一九七七年の十二月十二日に署名をいたしております。その第二議定書の条文を見てまいりますと、「この議定書は、できる限りすみやかに批准されなければならない。」とその二十一条で規定をいたしておりますが、日本は署名をしながら批准をいまだにいたしておりません。日本は、できる限り速やかに批准をしなければならないというこの第二議定書の義務規定に従ってまだ批准ができないでいる国の一つであります。それだけの努力をやっていないということになるのだろうと思いますが、なぜこれは批准ができないのですか。いかがでございます。
  34. 栗山尚一

    栗山政府委員 ただいま御指摘のジュネーブ諸条約に対する追加議定書、これは第一議定書、第二議定書の双方がございますが、そのいずれに対しても、わが国はまだ署名をするに至っておりません。
  35. 土井たか子

    ○土井委員 第二議定書については、日本はまだ署名もしていないわけですか。署名はしているんじゃありませんか。署名はしていて、批准ができていないんじゃないですか。どうです、もう一度はっきり調べてください。そんな大事な話をいいかげんなことじゃ困りますよ。
  36. 栗山尚一

    栗山政府委員 第一議定書も第二議定書も、わが国は署名をいたしておりません。
  37. 土井たか子

    ○土井委員 どういうわけで署名ができていないんですか。
  38. 栗山尚一

    栗山政府委員 この議定書につきましては、まずわが国との関係から申し上げますと、第二議定書よりもむしろいろいろ意義があるのは第一議定書の方かと存じますけれども、いずれにいたしましても、第一議定書、第二議定書を通じまして、この条約は先生御承知のように一九四九年のジュネーブ四条約、特に文民保護に関します第三条約を補足強化するものということで、七四年から七七年までの外交会議で大いに議論をされて採択されたという経緯があるわけでございまして、特に第一議定書の方につきましては、戦争犠牲者の保護の強化という面、それから戦闘手段あるいは戦闘の方法、いわゆる伝統的なヘーグ法規をさらに補足強化をする、新しいルールをつくる、そういう面でそれなりの意義がある条約ではあるわけでございますけれども、御承知のように、会議におきましてはいろいろな議論、特に前段の戦争犠牲者の保護との関連で、いわゆるゲリラ戦争というものを念頭に置きつつ、民族解放戦争に従事する人たちを条約で保護する、こういう観点からいろいろな規定が設けられました。  規定が設けられるに際しては、いろいろな側面から議論がありまして、主張立場の違う国々の間での議論の結果、ある程度妥協の産物としてできた規定が多いということもこれまた事実でございます。その結果、法的に見ますと、それなりの意義はある反面、またいろいろ問題もございまして、各国政府あるいは国際法学者の間でも評価が分かれておるということが実情でございます。  その結果といたしまして、御承知のように条約を批准、加入するに至った国も、第一議定書につきましては二十一カ国、第二議定書につきましては十九カ国、こういうのが現状でございまして、しかもスイスでありますとかスカンジナビア諸国、その他若干の国を除きまして、いわゆる軍事的な主要国というものも全く入っておらない、あるいは日本の近隣諸国も入っておらない、こういう状況のもとにおきまして、わが国としてこの条約に入るべきかどうかということは、いま少し慎重に検討すべきであろう、こういうことで現在、署名あるいは加入の手続をとるに至っておらない、こういう状況でございます。
  39. 土井たか子

    ○土井委員 栗山さん、あなたからるる関係のないところまでの御説明を御丁寧に賜ってまことに恐縮なんですが、そんな時間的余裕は余りないのです。近隣諸国の状況とか、各国相互間でどういうふうなことが論議になったか、そんなことじゃない。日本としてどうなのかということだけおっしゃってくださればいいんですよ。よろしゅうございますか。  すでにこの第二議定書は発効しているんですね。一九七八年の十二月七日に発効している。この第二議定書の中に、こういう条文があるのはもう御承知だと思うのです。  十五条に「危険な威力を内蔵する工作物又は施設、すなわち、ダム、堤防及び原子力発電所は、それらの物が軍事目標である場合でも、それに対する攻撃が危険な威力を放出せしめ且つその結果一般住民の間に重大な損失を生ぜしめる場合には、攻撃の対象にしてはならない。」こうあるのです。  外務大臣、この条文は、日本としてはもちろん反対じゃないでしょう。この中に言っていることに対しては、異議を唱える理由は何もないと思うのだけれども日本としては、この中身に対しては、もちろん、それはそのとおりに考え、そういう立場で何とか努力してみようということだろうと思いますが、外務大臣、この点いかがですか。
  40. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまお示しのように、原子力発電所のような施設に対して攻撃をすることについて、追加議定書で禁止しておる。このことは、今度の第二回の軍縮特別総会において、鈴木総理が「平和的目的のための原子力施設の安全保障を確保する」ための国際的「努力に対し積極的に貢献して参りたい」、こういうふうにも述べておる次第で、文民の保護あるいは原子力平和利用活動に不安なきを期する観点から、大変結構な規定であると私は思います。
  41. 土井たか子

    ○土井委員 それはいま外務大臣が言われたとおりで、原子力の平和利用について、「人類の未来にとって不可欠なエネルギー源である」から、この「平和利用を促進することは、極めて重要」であって、「これを核拡散防止と両立させなければならない」という意味で、演説の中では総理が具体的に触れておられます。  残念ながら、原子力発電所に対して、政府がおとりになっている態度と、われわれ社会党が考えております態度は違います。違いますけれども、少なくとも日本においてはすでにそれは多数稼働いたしておりますし、御案内のとおり、原子力発電所に一発の通常兵器による攻撃がなされる、一発の爆弾が落ちたときどうなるかということを考えていくと、これは安全装置が破壊されると、原子炉が暴走を始めます。格納容器が破壊されたら死の灰が広範囲にばらまかれることになります。通常爆弾一発が落ちただけで、核攻撃を受けたのと同じ大被害を受けることは覚悟の上でなければならない。これはそこだけの問題にとどまらないわけですね。環境破壊という点からすると、さらに広範囲に及ぶということは考えておかなければならないと思うのです。大体、出力百万キロワットの原発が事故を起こすと、最大幅四十キロメーター、長さ千六百キロメーター、何と広い千六百キロメーターの地域が許容量を超える被曝にさらされるとも言われておりますから、そういうことから考えていくと、先ほど申し上げるとおり、軍事力を強化しながら、戦いが始まった、さあどうだと言ったって、そのときには遅いので、国民の安全保障というものは、軍事力を強化することによって保たれるとは私は断じて思っておりませんけれども、しかし、原子力発電所を攻撃の的にすることはしてはならない。危険な威力を放出せしめる、その結果、一般住民の間に重大な損害を生じしめるような施設に対して、それを攻撃目標、攻撃の対象にするということはしてはならないという、このジュネーブ第二議定書の十五条に言っている中身を、日本としては具体的な一つの提案として、国連で、このことを持って出て、提案国となることは、具体的提案として可能だと私は思うのですが、これはいかがなんですか。原子力発電所に攻撃しないということを、国連の最終案文の中に組み入れるというふうなことの提案ということもこれはできると思います。国連の場所でそういうことに対して日本は努力しようというのが演説の中身なんですから、口先ばかりでなくて具体的に何をするかが問われているときなのですから、具体的提案として日本としては提案国になるということは十分できるし、また、しなければならない、そういう問題があると思いますが、外務大臣、御所信のほどを聞かせていただきたいと思います。外務大臣どうぞ。国連局長はいいですよ。外務大臣どうぞ。
  42. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 事実関係、技術的な側面だけを私からまず御説明させていただきたいと思います。  ただいま土井議員からお示しがございましたように、原子力発電所の問題はきわめて大切な問題でございます。この点は私どもも十分念頭に置いております。総理の軍縮総会における演説の中において「とりわけ平和的目的のための原子力施設の安全保障を確保することが肝要であり、このための国際的努力が実を結ぶことを強く期待するものであります。我が国もこの努力に対し積極的に貢献して参りたいと思います。」という意図の表明をしておられます。これは、平和的目的のための原子力施設と申す場合、当然に、原子力発電所、これが重要な要因になっておるわけでございます。その安全保障を確保するということは、第一義的には、土井委員が明確にお示しになられましたように、そういう原子力施設、つまり御念頭にあるのは発電所でございますが、そういう原子力発電所に対する攻撃を禁止する、攻撃を行わない、これが安全保障を確保する上の最も重要な要因であろう、これも念頭にあるところでございまして、わが国が今後国際的努力が実を結ぶように積極的に貢献していくという意味合いとしましては、やはり国際的な合意、取り決めというものを結んでこれを国際的な義務として取り扱っていくということを目指しているのでございます。  以上、事実関係を御説明申し上げます。
  43. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣、いまのは事実関係に対する説明ですから、外務大臣から、やはりこれは政治的な問題なんです。日本に問われている大事な一つの課題としてやはり具体的提案をするということは各国に向かっての日本の責任ある姿勢だということになると私は思いますから、ひとつ政治的な外交問題の最高責任者として、外務大臣、御所信を承らしていただきます。
  44. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 原子力発電所の攻撃禁止について御意見を賜ったわけでございますが、私は御発言の趣旨について全く同感でございます。そこで、貴重な御意見といたしまして、わが国がどのように具体的な貢献をなし得るか、今後積極的に検討をしてまいりたいと思います。
  45. 土井たか子

    ○土井委員 積極的に検討という言葉というのは非常に便利でございまして、もう再々私たちはこの委員会の質問に対する答弁として聞かしていただいているのですが、今軍縮総会の国連の場においてどうなさるか、また、次の国連総会においてどうなさるか、そういう具体的な時期というものがやはりあろうと思うので、その辺をひとつ合わせて言っておいていただかないと、前向きで検討するとか、積極的に検討するというのをいつまでもお聞かせいただきそうな気がいたしますから、ひとつここでもう少しはっきり意のあるところをおっしゃっておいてくださいませんか。私はこれを具体的にお尋ねしているのですから、答弁もひとつ具体的なことをお願いしたいと思うのです。いかがです。
  46. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 従来の国連の運営の状況を見ておりますと、何分にも百五十七ですかの多数の国家を擁しておるわけでございますから、もう貴重な御意見で、それからいま申し上げたとおりに、積極的に貢献をしよう、こういう考えを持っておるわけでございますから、具体的に行動せよ、こういうことで、それも念頭に置いて、どのような決議がいいのか、あるいは合意に達する上にどのような案文等、いろいろあると思いますが、そういうことにつきまして、せっかく提案する以上は当然採択を目指す、また採択され得る当然の問題だとは思いますが、そういうことを含めてわれわれが今後積極的な努力をする、こういうことを申し上げておるわけであります。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、日本としてはその提案者となるということはもうはっきりいま外務大臣の御発言の中で受けとめることができたと理解をいたしておりますが、それはそのように考えてよろしゅうございますね。
  48. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいま大臣が申されたところに従いまして私の方から技術的な面を申し上げさしていただきますと、このようないわゆる純粋に軍縮的な問題、つまり技術的に非常に専門的な問題は、結局のところはジュネーブの軍縮委員会で取り上げられることになろうかと思われます。その場におきまして、わが国といたしましては、日本考え方を盛った提言、場合によりましては提案、あるいは志を同じゅうする国を募って共同提案国を含めての提言をする、そういうことも含めまして積極的にこの問題の推進を図っていきたい、かように考えている次第でございます。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 国連局長は事務的な御答弁をいまされているのですが、第二回軍縮総会に先立つ出外務委員会の席で、わざわざ総理の御出席を求めまして、外務大臣に対しても私たちは質問をさせていただいた機会がございました。その席で総理大臣はいまのジュネーブの場所とニューヨークにおける国連の場所を混同されたがごとき答弁があったのです。これは困る話でして、全然これはわけが違うわけですから。いま先ほどの外務大臣の御答弁は、国連でとおっしゃっているのですよ。この総理大臣の御発言も国連であったのです。よろしゅうございますか。国連を通じてわれわれは積極的に日本として協力をするということを具体的にしていきたいという提言をちゃんと演説の中でされているのですから、これを果たしていただかなければならぬです。外務大臣に再度この点を申し上げさせていただきますが、よろしゅうございますね。もう、国連局長、あなたはよろしいです。外務大臣どうぞよろしく。
  50. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 鈴木総理が今回の演説で積極的な発言をされておることでございますし、また、国連総会がこれらのことについて多数の国、あるいはもう恐らく全会一致ということになるでありましょうが、大体軍縮総会で方向が出ておれば、土井委員御承知のように、いま国連局長が御説明申し上げたように、ジュネーブの軍縮委員会はそれぞれ問題ごとに作業部会を持って国連総会で打ち出されておる方向を専門的に技術的に具体化しよう、こういう場でありますから、私は専門的知識に十分でございませんが、そういう作業部会合意に達するということは総会を受けてのことだから、総会でではないかと、こういうふうに念を押されましたが、私はその辺のところは特にかた苦しく考えなくとも、総会を受けての具体的行動、こういうことでいいのではないかと思いますが、しかし、よりレベルの高いのが総会のことでありますから、総会でさらにどのようなことをとった方がいいのか、そういうことがもう一つ前提としてあるならば、それはそれで積極的にやります。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 さて、大変気にかかるのは、核兵器不使用の問題がさらにあったのですね。これは当外務委員会でもこの国連総会に先立つ決議として、非常に決議に対して与野党の討議の的になったポイントでもあったわけですが、これには力を込めて、特に、二度と核兵器が使用されることのないようということを、私たちとしては意を含めて決議の中に盛り込んだことが今回の国連総会における総理の演説の中にも出てまいっております。「核兵器が二度と使用されることのないよう核兵器国をはじめとする世界各国が実効ある措置をとることを強く訴えるものであります。」こうなっておるのであります。  さて、そうなってまいりますと、今回のこの特別総会で核兵器不使用の決議案が出た場合、日本はまさかこれに対して反対することはよもやもうないだろうとだれしも思うところでありますが、これはいかがでございますか。これははっきりしておいていただきたいと思うのです。この辺は非常にあいまいで、いつもいいかげんなものだという国民の声がありますから、外務大臣、ひとつこの点ははっきりしていただきたい。  そして、それに対して一つ申し上げておきたいのは、一九六三年十二月七日の、日本の国内においては司法レベルでは核兵器使用は国際法違反という判決が今日に至るまで有効であります。ひとつこのことも念頭に置いて、それに対する御所信とあわせて国連における日本のとるべき態度、これをはっきりさせていただきたい。
  52. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先般来、衆議院、参議院の予算委員会が開かれまして、ただいま土井委員の御質問のような御趣旨で何回か御質問がございました。そしてそれに対しては、そのような決議が出た場合におきましては、そのときの提案国の考え方、あるいは国際情勢、そういうものを勘案しながら、また国会の決議を踏まえて結論を出したい、こういうふうにたしか総理は言っておられるわけでございます。そこで、そのようにひとつ御了承おきいただきまして、この国会の決議を踏まえてやる上におきましては、決議の中にも「すべての核兵器保有国に対し全面完全軍縮の一環として、」云々、こういうことになっておりまして、そして核兵器の廃絶を求める、こういうことでございます。したがいまして、全面完全軍縮の一環としてやるということになりますと、これも総理がしばしば申し上げておるように、実効ある措置一つずつやっていこう、そして核の廃絶を目指そう、こういうことでございます。  そういうわけでありますから、この核廃絶の第一歩としては、核実験の全面禁止であるとか、いまの保有の削減であるとか、今後の新規の生産の禁止であるとか、あるいは核不拡散条約をさらに普遍的なものにするとか、そういういろいろな努力をしながら核廃絶をしよう、こういうふうに総理も申しておられますし、私もそのように考えておる次第でございます。
  53. 土井たか子

    ○土井委員 大臣、その実験禁止とか削減計画ということを言われつつ不使用に対してあいまいな態度を今日もなおかつおとりになるというのは、底の抜けたたるに水を注ぐようなものであります。これは幾ら削減を言われようと、削減計画について実効性あるものを提唱されようと、また実験というものはやめてもらいたいと言われようと、現存する核に対して使用されればもう終わりじゃありませんか。まず不使用に対してどういう姿勢をとるかというのが、かのアメリカのニューヨークにおける全世界から集まった人たちの声だったということは、大臣自身がよく御承知だと思うのです。百万人を超える人たちが十二日にはニューヨークに集まって、空前のデモと集会の中では核兵器凍結を言い、核兵器の不使用を言っていましたよ。世界の世論はそういう方向に動いていっている。わけても広島、長崎、世界で唯一の被爆国と言われる日本の国は、一体この不使用の問題に対していままでどおりあいまいな態度をとり続けられるかどうか、われわれは注目をしているということを、議員レベルのフォーラムで各国の議員が得って討議するときに、われわれは名指しで言われたことを言っておきたいと思います。これは大変大きな問題なんです。ああでもない、こうでもない、核は存在するところに意味があるなんというふうなことを言いつつ核の削減を言うことがいかにナンセンスかを知っているのは国民であり、世界の戦争を嫌う世論です。そのことに対して背を向けながら、それでも私たちは核兵器の廃絶に向けて努力をしていると言ったって、そうは聞かないです。外務大臣、不使用に対して少し意のあるところをはっきりさせてくださいよ。それは外務大臣のある意味では政治責任です。
  54. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 土井委員のおっしゃっていることは私どもも十分よくわかるのであります。ただこれも、総理もそういうお答えをされておりますので、あえて恐縮ですが申し上げておかなければならぬことがございます。  それは、私どもは終始一貫核の抑止力ということを言ってまいりました。その核の抑止力ということになれば、使用するしないという問題は大変御批判を受けるわけですね、核の抑止力と。しかしながら、現実の国際情勢の中で核の抑止力は絶対にもう要らないのであるか、こういうことになってくると、非常に残念ながら、まずヨーロッパ地域におきましては東西関係で通常兵力が優位にある。こういうことから、フランスの、ミッテランにしても、イギリスのサッチャー首相にしても、核の必要というものをお認めになっておる。この通常兵力、核戦力、総合してそこに核の抑止力がある、こういうことであります。だから、そういう現実を踏まえてまいりますと、たとえばわが国が使用禁止に対して反対をしたじゃないかと、一九八〇年、八一年の決議に際しては厳しい御批判をちょうだいしたが、当時デタントで、その間にも兵力を増進したソ連が不幸にしてアフガニスタンの侵攻もしておる。そこに軍事力のアンバランスを背景にしてアフガニスタンポーランドの問題が起きておる。そういう現実というものがありますから、そこで総理も、そういうことについてはやはり理解をしておく必要があるのじゃないか、こういうことを申しております。  したがって、もし今度の核不使用の決議が出ますならば、そういう現実の姿も頭に置きながら、一体提案国はどういうことを考えて出しておるのだろうか、これは土井委員のおっしゃるとおりのそういう見地であるならば、もちろん私どもは賛成すべきだと思うのです。しかしながら、どっちかというと、東西の関係の中でいろいろな配慮がそこに加わりながらということになってくると、にわかに賛成し得ないようなあるいは状況があるかもしれぬ、こういうことから総理がその提案されたときの提案国の考え方、そのときの国際的な背景、それらのことを考えながら、同時に国会における決議を踏まえて考えます、こう申し上げておるのでありますから、その範囲でひとつ御了承願い、私はまた土井委員のおっしゃること、また土井委員のおっしゃっていることは国会でのお考えである、こう思いますから、そういうことをよく念頭に置いて善処する考えでございます。
  55. 土井たか子

    ○土井委員 それ以上その問題を言っても押し問答みたいなかっこうになりそうですが、外務大臣も核抑止を言う限りは核軍縮になり得ないという矛盾をよく御存じの上で苦しい胸の中の披瀝をいまなさっているように私は聞こえてならないのです。よくその矛盾は御存じだと思うのです。片っ方で核抑止を言いながら核軍縮をやりましょうと言ったって、それはちょっと二律背反もいいところなんです。その辺の矛盾もよく御存じの大臣ですから。  ただはっきりさせておきたいのは、今回そういう核兵器不使用決議に対して日本は反対という立場はもうよもやおとりにならない、これだけははっきりしていると思うのですが、いかがですか。
  56. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのような土井委員の御推定は、私も仮に外務大臣を離れておってもそういう推定に立つと思います。
  57. 土井たか子

    ○土井委員 おかしないまの御発言ですね、外務大臣の席を離れて……。そうすると、ましてや外務大臣の席におられればそういうふうに考えなければならない、そういう御意見の発露だろうといま受けとめて理解をさせていただきます。  さて、後に大事な問題を控えまして時間の方が来てしまって非常に残念なんですが、しかしこれは時間的制約も実は問題に対してありますから、ひとつ簡単に質問をずっと言って、それに対しての御答弁をいただくというかっこうで委員長、特にお許しをいただきたいと思うのです。  一つは、これは去る二十二日に前田駐韓大使と新しく外務大臣になられた李外相との会談がなされた節に、韓国側から提案をされたということが例の日韓経済借款の問題で報道を通じて私たちのところにも知らされてまいりました。円借款の増額であるとか商品借款に対しての供与というものがその要求の中身として出てきたということも言われていますが、これは事実でございますか。
  58. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 新しく就任をされた李外務長官が前田大使に対していろいろ考え方を述べられたことは事実であります。そしてその考え方に対しまして前田大使から、先般の柳谷外審の示したものがこれがぎりぎりの線であるということをその経過等を踏まえながら申し上げたのもまた事実なのであります。しかし、その場合に李長官は、この考え方はどうぞ東京へも伝達してもらいたい、こういうことでありましたために、提案とかどうとかということでなく、その考え方というものはわれわれの手元にも届いておるわけでありますが、私どもとしては、繰り返し申し上げておるように、先般柳谷訪韓というものは本当に最後のぎりぎりのところを話ししに行っておりますので、それ以上のことはない、また繰り返しそのことを先方に理解をしてもらおう、こう思っておる段階でございます。  なお、内容的について、円借款あるいは商品借款のお話などございましたが、ODAをもっとふやしてもらいたいとか商品借款の希望があった、そういうことは考え方としてお示しになった中にはございました。
  59. 土井たか子

    ○土井委員 いまの外務大臣の御答弁でこれは尽きていると思うのです。先日の柳谷さんが訪韓されたときの案が最終案であってぎりぎりいっぱいだから、日本としてはそれ以上のことは考えられないという姿勢で今後もお臨みになるということを私はここではっきり理解をさせていただきたいと思います。したがいまして、商品借款について要求が向こうから出てまいっているのが現実の姿、形だということが非公式にあるだろうと思いますが、よもや商品借款について供与なさるというふうなことはあり得ないというふうに考えておいてよろしゅうございますね、再度のだめ押しでございますが。
  60. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私どもがかねて、隣国の外務大臣同士がかわっても顔も合わせないというのはどうかというようなことを申しておりましたのが、先方も御理解を持って、今度日本を訪問される、こういうことでございます。その折には私ども考えました従来の経緯、内容、その他よくお話をして御理解を求める考えでございまして、現在、日本政府の方針として、韓国のような経済状況のもとでは商品借款については考えられないというその方針もはっきり申し上げる考えでございます。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 あと二点は、大事な問題なんですが、簡単に説明をして、そしてひとつ対処を要求したいと思うのです。  まず最初には、第二次大戦中に日本軍に徴用されて、軍務中の責任を問われて戦後南方各地で戦争裁判を受けた朝鮮の方々がいます。二十三名が南方で刑死をして、生き残った方々が昭和二十六年の八月に巣鴨のプリズンに移監をされてこられたのです。戦犯になったこの方々は戦後日本が独立をした後も科刑のときが日本人だから刑の執行は差し支えないということで日本政府にずっと拘禁をされ続けたのです。ところが、処遇の面では、日本国籍を有していないという面ですべての援護対象から外されてまいりました。  日韓条約が妥結をした後は日韓条約で一切は解決済みである、こういう姿勢でこの問題に対して取り扱いを進めてこられたようです。したがって、戦後三十六年が経過した今日においてもこの刑死された方々の遺骨も遺族のもとに送還されていないという状況でございまして、幾たびとなく遺骨送還に関する請願書が国会で受理され、そして採択されるということになってきたのでありますが、このことについて事態が全く今日に至るまで実は進展していないということを私は知らされたわけであります。五十四年には「韓国出身戦犯刑死者の遺骨送還に関する請願」というのが出されまして、社会労働委員会の方でこれが採択をされました。しかし、現在、東京の方にございます目黒の祐天寺にこの遺骨は安置されたままになっているようであります。その方々の遺族の方のお名前も、そしてその方々がいままでどういうふうな経過があったかということも、大体文書一切を私は用意をいたしておりますけれども、しかしそれについてるる細かく言う時間がないのは大変残念だと思います。  外務大臣、この案件は非常に大事な問題だと私は思いますので、ひとつ礼を尽くして遺骨に対して遺族の方々のところにお届けする、日本側はその責任が当然のことながらまずABCの問題としてあるだろうと思いますが、韓国出身戦犯者同進会というのがございまして、会長の李さんがこのことに対して年来ずっと政府に対して国会に対して請願をし続けてこられたというお立場にございますので、外務大臣の方から一度その事情などもしっかりと理解をしていただくということを私自身求めたいと思います。そしてこれに対してしかるべき対処を外務大臣責任持っておとりいただくように私は申し上げたいと思うのですが、これが一件。よろしゅうございますね。  続けて次の問題は、私たち大変心配をいたしておりましたが、例の日朝漁業協定は期限切れになってしまいました。したがって、出航を用意していた関係漁民の人たちは日本海北部などの漁場で操業することができない、非常に手痛い打撃を受けるということに相なっているわけであります。今五十七年一月二十五日の衆議院の本会議で外務大臣は、外交に関する施政方針演説の中で「北朝鮮との関係については、今後とも、貿易、経済、文化等の分野における交流を漸次積み重ねてまいる考えであります。」と明確におっしゃっているわけでありますが、これは今後どのようにお取り扱いをお進めになるおつもりでございますか。民間協定とはいえ、御案内のとおり、朝鮮側から日朝友好促進議員連盟が受け入れるということで団長が訪日されることに対して日本政府が拒否したということからこの問題は暗礁に乗り上げているわけでありますから、政府の責任がまずあるということを私はここで申し上げながら、外務大臣がどのようにお取り組みになるかを聞かしておいていただきたいと思います。  以上、二点。
  62. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 韓国出身戦犯者同進会の会長李大興さん、この方の昭和五十七年四月の請願書が手元にございます。また、ただいま詳しく経緯のお話がございましたので、この問題につきましては、私どもが御質問の御趣旨に沿ってどのように措置し得るものか、残念ながら私この件についてはただいま詳しく承ったわけでよく検討させていただきたい。  それから、北朝鮮水域における漁業の問題でございますが、お話しのように三十日で失効いたしたわけでございます。これには五月の下旬当時からちょっと経緯がございまして、従来継続をする場合に平壌へ行かれてお話し合いをしておるというそういう経緯がございます。そこで、日朝議連の皆様方とお話し合いしたときに、久野会長が向こうに行って継続の問題については話し合う、ところで実務者代表あるいは北朝鮮の代表団の受け入れについてはどうか、こういうことでございまして、それにつきましては、おいでになるということになれば、いつからいつあるいはどういう団の構成で、また実務者の方は漁業問題であることは言うまでもございませんが、一般的な代表団がどういうことでおいでになるか、そのときに私どもがよく検討して御返事を申し上げたい、そういうことを申し上げてまいったんでありますが、残念ながら六月三十日が参りました。そこで土井委員がおっしゃったように、現在北朝鮮に対しては経済、文化、スポーツ等のそういう交流をしていく。ただ現に国交がない、こういうことでいろいろ不便、迷惑をおかけしてはおりますけれども日本としてはいま申し上げたような枠組みの中で北朝鮮との関係については十分配慮していくということを申し上げておるわけでございまして、今度の漁業問題につきましても、すでに失効はしておりますが、そういう枠組みの中で考えてまいりたい、こう思います。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 時間が経過いたしましたことをおわび申し上げて、質問を終えたいと思います。ありがとうございました。
  64. 中山正暉

    中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  65. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草川昭三君。
  66. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  まず最初に、中東、なかんずくイスラエルのレバノン攻撃の問題についての日本政府対応をお伺いをしたいわけでございますが、何か外務大臣は三十日の夜、イスラエルの大使を呼ばれまして、レバノンからの可及的速やかな撤退を求めるというようなことを言われておるようでございますが、私ども、いまのイスラエルの、国際法を無視したレバノンの攻撃というものは、人道上もこれは許すわけにはいかないという立場をとっておるわけでございますし、昨年もアラファト議長も日本にお見えになり、総理ともいろいろな意味での会見をなされておるわけでございまして、他人事とは思われない問題でありますし、中東和平の原点がこのパレスチナ問題にあるわけでございますから、日本を含めて西側諸国というものが、いままでイスラエルに対して余りにも寛容であり過ぎたことが今日のような結果を生んでおるのではないだろうか、私はこう思うわけであります。  伝えられるところによりますと、これは英国のロンドン・テレビにも放映をされたと伝えられておりますけれども、レバノンのベイルートにイスラエル側はミッキー・マウスの絵をかいた風船を飛ばして、その中に毒ガスを入れてあるようでありまして、子供たちがその風船をつかんで大変な被害を受けておるというようなことが英国のテレビでは放映されておるようであります。あるいは、いま国際武器協定でも禁止をされておりますところのアメリカ製のクラスター爆弾、破片が非常に小さく飛んでしまうというような爆弾も使用しておるというような抗議声明も出ておるわけでございますが、日本政府としてどのような対応をするのか、私は、もっと具体的に、政治的あるいは経済制裁を加える決議をとるべきではないだろうか。少なくとも、他の国々でこのようなことが起きた場合、フォークランド島等においてはいち早く経済制裁措置がとられておるわけでありますから、その均衡の意味からいっても、もっと厳しいイスラエル非難があってもいいと思うのですが、その点をどのようにお考えになられるのか、まずお伺いをします。
  67. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 イスラエル軍隊がレバノンへ武力侵攻をしておる、この事実につきましては、日本のみならず各国とも容認のできないところでございまして、御承知のような、安保理事会におきましては決議五〇八及び五〇九がされておるのでありまして、この決議の完全履行をわれわれとしてはぜひ実現をさせたい、こういうことで臨んでおるわけでございます。  現在の戦況がこれ以上拡大していきますならば、ベイルート全市がその惨禍の中に巻き込まれるわけでございますから、そのような事態が起きないように、こういうことで、三十日には関係諸国に自制を求める日本の声明を出したような次第でございまして、いかなる理由があろうとも、こういう武力侵攻ということは、これは絶対に排撃しなければならない。どうも最近、フォークランドの問題にいたしましても、今度の問題にいたしましても、安易に武力が使われる。イラン・イラク戦争も同様でございますが、このような風潮を何としても今後起こすような事態は絶対に避けなければならないという基本の方針で臨んでおる次第でございます。
  68. 草川昭三

    草川委員 もうあと一問お願いしたいわけでありますけれども、ぜひそのスタンスでさらに一層の具体的な措置があるような行動をとっていただきたいということを強く要望すると同時に、そのベイルートの中における日本大使館をPLO側のゲリラが占拠したという報道が若干流れておるわけでございますが、私どももベイルートへ何回か行きましたし、大使館にもお邪魔したことがありますが、山間の間の谷にありまして、一階がピロティー風になっておるわけでありまして、二階、三階、四階がたしか大使館だと思いますが、その大使館の中までPLO側が入っておるのか、玄関のところだけいるのか、報道によれば非常に問題のような報道にもなっておるわけなので、事実を明らかにされたい、こう思います。
  69. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 わが在ベイルート大使館員は、去る十二日に西ベイルートから安全地帯に避難したわけでございますけれども、その後、大使館員が再び西ベイルートに入りまして、わが大使館の建物のところまで参りましたところ、その建物の一階とそれから地下のガレージにPLOの武装した人たちがいるということを発見したわけでございます。先ほど御指摘のとおり、わが大使館の事務所自体はこのビルの上の方にございまして、その建物の中にPLOの部隊が入っているということではございません。しかしながら、いずれにいたしましても、そのような事態を発見いたしましたので、去る二十二日に、東京にありますPLO事務所のハミド氏を呼びまして、この点について注意を喚起した次第でございます。その後、二十九日になりましてハミド氏から、日本大使館を占拠した事実はないし、また今後もそのようなことはしないという確約を受けております。
  70. 草川昭三

    草川委員 では、次の問題に移ります。  実は日本の対外経済対策の問題でございますが、政府は東京ラウンドに基づいて関税の引き下げの繰り上げを初め残存輸入制限品目の問題とか輸入検査手続の改善等、いわゆる第一弾対策が行われてきておるわけでありますし、さらにサミットに向けて第二弾対策というものが打ち出されてきておりますが、私どもいろいろと漏れ承るところによりますと、農産物の問題等については究極的な自由化の要求が米側にとって非常に強いと言われております。その中でも、柑橘の輸入枠というものは昭和五十四年、一九七九年に一応の合意がなされております。本年の十月以降、十月じゅうに開始というように日米貿易小委員会等ではことしの三月九日に合意をしておるようでございますが、この十月に始まる柑橘の輸入枠の拡大の問題についてどのような対応をなされるのか、まずお伺いします。
  71. 深田宏

    ○深田政府委員 ただいま御指摘がございましたように、十月中の適当な時期に協議を始めるということでございます。協議まで若干時もございまして、現時点でアメリカ側の具体的な考え方ということが承知できておるわけではございませんけれども、ただいま御指摘もありましたように、アメリカ側としましては割り当て枠の拡大ということ、さらに究極的には完全な枠の撤廃ということをかねがね申しておることは事実でございます。これに対しましてわが方といたしましては、日本の国内の関係の方々、農業の実態、それからさらには世界的に自由貿易体制を守っていくということの必要等々を勘案いたしまして、農林水産省とも十分御協議の上対策を講じたい、このように考えております。
  72. 草川昭三

    草川委員 ではちょっと立ち入って、前回の東京ラウンド交渉の枠内での日米間の交渉での合意書を見ますと、一九八三年はオフシーズン、年間を含めて八万二千トンまで生鮮オレンジの輸入をするということに一応の合意を見ておるわけでございますが、その合意書の別紙d項というのを見ますと、輸入割り当てについては前文があるわけでございますが、「新たな貿易業者の参加のための公正かつ衡平な基礎に立って輸入機会を与えるような新しい方式のもとで運用される。」という内容がこの協定の中にはあるわけであります。これが記述をされた原因というのは一体何か、簡潔に言っていただきたいと思うのです。
  73. 深田宏

    ○深田政府委員 交渉当時ワシントン大使館でこの仕事の手伝いをいたしておりましたけれども、その時点におきましてアメリカ側関係者はオレンジの問題については日本側の流通機構の上でいろいろ問題があるのではないかというような点を指摘いたしておりました。ただいまの御質問、あるいはそういうことであろうかと存じますけれどもアメリカ側関係者がその当時日本の流通機構の問題を云々しておった、私、直接そういう経験もございますけれども、そのあたりに本当に問題があるのじゃないかというような話が確かにございまして、そういうことからただいまの条項が含められた、このように考えております。
  74. 草川昭三

    草川委員 それは当時具体的に日本国内では伝えられたことでございますが、日本の政官界とオレンジ輸入業者の癒着をあばいた告発レポートというのがアメリカの国内で関係者にばらまかれたという報道があったわけであります。その中で、ウルフ氏が交渉の中で日本側はしきりに生産者保護と言うけれども、それなら季節枠まで自由化しないというのは根拠がない、割り当てを変えるべきではないだろうかと主張したのです。ウォール・ストリート・ジャーナル紙五十三年十一月一日号にも、日本のオレンジ輸入業者、当時九十一の業者でございましたが、「ギャング・オブ・九十一」といったようなことが言われておるのを指すのではないかと思うのですが、当時日本の割り当て問題等についてかなり具体的な数字等が話題になったかどうか、これは通産省からお聞きしたいと思うのですが、どうでしょうか。
  75. 小坂隆雄

    小坂説明員 ただいま先生が御指摘になりましたCIAレポートについては私ども単なるうわさとしてしか承知いたしておりません。
  76. 草川昭三

    草川委員 CIAレポートという言葉を私はたまたま使ったわけでございますけれども日本のいわゆる輸入業者の割り当てというものについて大変強い不満があったということが中心になっていわゆるd項が書かれたことは事実だ、いま外務省の方からこういう御答弁があったわけですね。それで協定書の中にd項「新たな貿易業者の参加のための公正かつ衡平な基礎に立って輸入機会を与えるような新しい方式のもとで運用」してもらいたいということをわざわざ書き込んだというのは、日本側にとってもこれは非常に恥ずかしいことであり、逆のことで言うならば内政干渉であり、いろいろな問題があるわけですが、かなり具体的な問題提示があったからこそこのような文章が入ったのだ、私はこう思うのですが、その点は割り当てを担当しておる通産省に意見を聞きたいと思うのです。どうでしょう。
  77. 茶谷肇

    ○茶谷説明員 お答えいたします。  私どもとしては、そのときにそういう具体的な数字について向こう側から話があったというふうには特には聞いておりません。
  78. 草川昭三

    草川委員 そうしたらもう一回外務省にお聞きしますが、このようなことが書かれたのは、アメリカ側からどのような不満が出されておったのかお伺いしたいと思いますし、当時日本の輸入業者の中で輸入の割り当てを自由化すべきだという全日本柑橘輸入協会という方々は直接アメリカ本国に英文で陳情書を出しておるというようなこともわれわれは聞いておるわけでございますが、そのようなことがあったのかどうかもあわせてお伺いしたいと思います。
  79. 深田宏

    ○深田政府委員 先ほど申しましたように、その当時日本側の流通機構一般についてアメリカ側でその辺に問題があるのではないかという指摘がありました。これは事実でございます。また、昭和五十四年の一月前後でございますか、一部の報道等でアメリカ側にこれらの点についてメモがあるというようなこと、あるいは日本側のそれについての、ただいまも御指摘がございましたように関係の方々の御意見が開陳されたというような経緯はあるようでございます。ただ、先ほどの条項と一般的な形で関連を私いまお答えを申し上げましたけれども、具体的にどういう数字があって、それに基づいてこういうことが出てきたというようなその辺の細目までは私自身はつまびらかにいたしておらない次第でございます。
  80. 草川昭三

    草川委員 通産省も農林省もいま外務省の御答弁なすった程度のことは承知しておるはずですから、やはり国会の場ですから、あなたたち自身はそのときの担当者でないにしてもこれが今日非常に問題になっておるわけですから、正確なことだけはわれわれにも報告をしていただかないと問題が残ると思います。  そこで、一体オレンジの輸入によってどれだけ国内の業界に利益があるのか、あるいはまたアメリカ側の方から、一般的な形ではあるけれども、輸入価格と国内価格との差があるということをこのときの中では指摘しておるわけでしょう。アメリカ側が、輸入価格と国内価格には差が多過ぎるのじゃないかということを指摘しておるわけですね。それはどうですか。ちょっと確認しますが、外務省どうですか。
  81. 深田宏

    ○深田政府委員 具体的に記憶ははっきりいたしませんけれども、先ほどもお答え申し上げましたように、流通機構に問題があるということの一つの局面といたしまして、ただいま御指摘のありましたように価格のさやと申しますか、そういうようなところに非常に問題があるということを申しておったというふうに思います。
  82. 草川昭三

    草川委員 具体的にこれは農林省にお伺いをしますが、私どもがオレンジの輸入量、これは過去の実績を五十年から五十六年まで、それから輸入価格、そしていわゆる非関税障壁と指摘をされる卸売価格、これの差を調べてまいりました。農林省と事前にこれはデータを突き合わせをいたしました。  たとえば五十六年度は輸入量七万五千四百七十一トン、輸入価格キログラム百八十八円、卸売価格キログラム四百三円、これはいわゆる輸入価格に関税を、六月から十一月を二〇%、十二月から五月を四〇%、そして十七キログラム一カートンとして、一カートン当たり三百円と計算をいたしました。  それで、このいわゆる差というものを年間合わせてまいりますと、五十六年は百六億四千万円、五十五年が百一億四千万円、五十四年が四十二億七千万円、五十三年が六十九億九千万円、五十二年が五十二億四千万円、五十一年が三十二億九千万円、五十年が二十九億六千万円と言われる金額が、いわゆるアメリカ側から言うところの非関税障壁に相当する差になるわけでございますが、そのような数字は大体当たるかどうか、農林省にお伺いします。
  83. 小坂隆雄

    小坂説明員 オレンジの価格でございますが、自由化されている品目に比べて、国内の需給事情が厳しくなる傾向にあり、一般に相対的に高くなるというのは事実でございます。ただいま先生が、五十年から五十六年までの卸売価格からいわゆる輸入価格にCIF、諸掛かりを加えたものとの差を計算されたわけでございますが、それも一つの計算ではある、このように考えるわけでございます。  ただ、この差の中には、その後の流通経費なり輸入商社の人件費なり販売事務費等いろいろとかかっておるわけでございまして、すべてが利潤というものではない、このように考えております。
  84. 草川昭三

    草川委員 ともかく私が聞いたことだけ答えていただけばいいわけです。  そこで、問題は、アメリカ側の方からも指摘をしておるわけでございますが、輸入価格と国内価格との差があるということは指摘をしておるわけですよ。この問題がまさしく非関税障壁なんですね。ところが、その金額というものが、いま申し上げましたように年間百億を超すというような差というものが特定業者に優先的に独占をされているところに問題があります。  私は、たまたまここに五十二年と五十五年の業界の割り当て一覧表を持っております。これはいままで国会の中で通産省あるいは農林省は全然発表していないわけです、農林委員会等においては。私はたまたま持っておりますけれども、一番大きいのは藤井治商事一七・一三〇八というところまでの割り当てがあるわけであります。これはパーセントです。あるいは第二位はスマル貿易で、八・九四九二、西本貿易は七・四三一四、兼松江商が五・三九一八、以下ずっとあるわけでありますが、有名な、たとえば三井物産は〇・八二八七の割り当てしかないわけであります。あるいはその他の有名な商社等を見てまいりましても〇・幾つというような商社があるわけです。住友商事の場合は〇・三三四二でありますが、なぜこの藤井治商事が一七・一三〇八まで高いのか。五十五年の場合は一三・八七二一、このパーセントというのが小数点以下四けたまであるというのは、総割り当て量をキログラム単位にまで割り振らなければいけませんから、比率というものが小数点以下四けたまでいくわけですよ。小数点以下四けたまでいくということは、農林省も通産省も認めますね。これは割り当てが通産省ですからお伺いします。小数点四けたが正しいのでしょう。
  85. 茶谷肇

    ○茶谷説明員 割り当ての内容につきましては、企業の秘密ということでございまして、私どもでは遺憾ながらちょっとお答えはできないわけでございますので、御了承賜りたいと思います。
  86. 草川昭三

    草川委員 だから話になっておらぬのですよ。それがいま実は大変な混乱を呼んでおるわけでしょう。この藤井治商事というものを日本政府が甘やかしたために、いまとんでもない国際問題が起きておるんじゃないですか。  きょうはここに法務省もお見えになっておられますから、法務省の刑事局にお伺いをいたしますが、この藤井治商事というのは、いまから古い話ですが、昭和三十一年九月のころでございますけれども、競馬馬の不正輸入事件について、東京地検の刑事部は九月三日に、輸入商の藤井治商事の東京支店長藤井一雄氏、当時でございますけれども、この方がアメリカにずっと旅行していてなかなか日本に戻ってこないので、戻ったところでこれを逮捕したわけでございますけれども、拘置請求もしないでこれを釈放したという経過があります。地検当局はこの処置について東京高等検察庁、最高検の首脳にこれは相談をせず独断で行ったということが問題になりまして、最高検では当時の四日、首脳会議を開いて、東京地検の柳川検事正の報告を求めるとともに、佐藤検事総長は今後の徹底捜査を指示をしたということがあるわけであります。  まず、法務省にこの事実があるかないのかを簡単にお答え願いたいと思います。
  87. 飛田清弘

    ○飛田説明員 当時の新聞にそのような報道がなされていることは承知しておりますけれども、実際にそういうことがあったかどうかということはつまびらかにしておりません。
  88. 草川昭三

    草川委員 そんなばかなことはないでしょう。日本の国はそんないいころかげんな法治国家ですか。新聞には書いてあるけれども私は知りませんなんという答弁は、少なくとも国会では許されるべきものではないと私は思います。それは非常に重要な問題ですから、少なくともその事実があったかないかは、あなたも後輩として、とにかく本人が逮捕されたかどうかについては私は事前に政府委員室から通知をしてあるわけですから、逮捕された事実があるかないかだけでも明確に答えていただきたい。
  89. 飛田清弘

    ○飛田説明員 お尋ねが藤井一雄という方を東京地検が逮捕したかどうかということにしぼっての話ですので申し上げますと、法務当局といたしましては、これまでもそうでございましたが、たとえば前科がある人につきましてこの人に前科があるかというふうなお尋ねがあった場合にも、それがつい最近裁判で有罪になったような場合で公知の事実になっているような場合は別といたしまして、相当前の、もうみんなが忘れているような事実のようなことについて前科があるかと尋ねられますと、その人の名誉あるいは人権の問題もございますので、従来から前科の有無についてもお答えすることは差し控えさせていただいてきているところでございますが、いまお尋ねの藤井氏の問題につきましては、もう二十五年以上も前の話でございまして、しかもなおかつ、その藤井氏を起訴したことはないわけでございまして、少なくとも有罪にもなっていない。逮捕されたかどうかという問題でございますから、やはり有罪になった人についても申し上げていないわけでございますので、逮捕したかどうかということについても、そのことで有罪になっているわけでもないことでございますから、お答えは差し控えさせていただきたい、こういうふうに考えております。
  90. 草川昭三

    草川委員 だから、そういうときにしっかりとした態度をとっていないから、二十数年たっても同じような事件がいま起きておるわけでしょう。いま、片や競走馬の購入の問題等について日本競馬会を中心とし、さらにこれは今度の七月七日には決算委員会がそのために集中的に行われるわけでしょう。だから、明確にしないから、態度が不明確だからこそ今日のこういう問題になったのではないですか。競馬馬等の問題について、法務省は関心を持っていないのですか、持っているのですか。では、たとえば今日的な問題についてお聞きしたいと思います。
  91. 飛田清弘

    ○飛田説明員 法務省というよりは、むしろ検察当局が関心を持っているかというふうなお尋ねだと思いますが、検察当局は御承知のようにありとあらゆる事柄について、それが犯罪になるかどうかということについては常に関心を持っているわけでございます。  お尋ねの問題につきましては、新聞などの報道によりますと、関係方面においていろいろ事実関係調査なさっておられるようでございますし、その成り行き、あるいは具体的事実関係が明らかになるその過程におきまして、検察当局としてはその経緯を注意深く見守っている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  92. 草川昭三

    草川委員 私、たまたま、いま法務省という言葉を使いましたが、検察当局としての考え方をお伺いしたわけでございますから、いまの御答弁を、さらに私は、具体的に重大な関心を持って臨む、臨んでおみえになるというように受け取めて話を進めますけれども、私がなぜこのオレンジの問題等を取り上げるかといいますと、輸入業者はグレープフルーツ、レモン、オレンジという三つの問題を大体あわせて受けるわけでございますけれども、この藤井治商事に限ってオレンジの割り当てがきわめて高いわけであります。過去何回か、いま申し上げましたように二十数年前に競走馬の輸入の不正問題だけではなくて、オレンジの割り当てにも問題があるということで問題になったのですが、それがどうしたことか徹底的に解明されていないところに問題があります。しかもグレープフルーツの利益率というのはCIF価格に対して卸売は五十六年一・四九倍であります。同じく五十六年の場合に、レモンの場合は一・三三倍。ところがオレンジに限って、これが二・三三倍になるわけであります。そういう割り当てを受けて、一年間に約百六億。しかもそのうちの一七%の割り当てがあるとするならば、権利を持つだけで十七億の利益になるわけであります。しかもこの企業はわずか三十人であります。わずか三十人でこのような大型の利益が特定業者に認められるということが今日の構造的な腐敗を招くことになるわけでありますし、まさしくここを、アメリカ側日本をけしからぬ、こう言っておるのではないだろうか、私はこう思うのです。しかも昭和五十五年にはアメリカの要求に押されて、通産省は三十二社という会社を新規参入で認めました。ところが、この三十二社認めたのだけれども、実際の取引はわずか七社に集中をしておるわけです。これはこの通産省の行政指導なり農水省の指導というのは完全に踏みにじられておるわけですよ。三十二社認めた、ペーパーカンパニーでないというのを認めたのだけれども、いろいろな裏の圧力があって七社にしぼられた。しかもこの七社の中身は、ほとんどが有名な、高名な政治家との結びつきでこれが認められておるわけでありますから、こういうことが許される限りは、私は日米のいわゆる経済摩擦なり農作物の根本的な摩擦の解消につながらないと思うのです。  きょうは時間がこれで来ましたので、最後に一つ、これは外務省にお伺いをしたいわけでございますけれども、いま一度、この合意書の中の前文では、輸入価格と国内価格との差があるということをアメリカ側が指摘をしたということ、これこそまさしく非関税障壁だ、これを外務省としてどのように改善をしていくのかという方法は、少なくとも今度の十月までには出さなければいかぬと思うのですね。そして、この中にありますように、いわゆる輸入割り当てについては完全に消化をしてもらいたいと同時に、新たな貿易業者の参加のための公正かつ公平な基礎に立って輸入機会を与えるようにしてもらいたいというようなことを日米双方が合意をするというのは、外務省にとってもこれは恥ずかしいことなんですよ。そうじゃないですか。こういう恥ずかしい取り決めがいまなお実施をされていない。またこれが問題になったら日本根本的な姿勢が疑われると思うのですが、その点について外務大臣の答弁をお願いをしたい、こういうように思います。
  93. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在取り決められておるそのd項でございますが、そういうものがやはり取り決められておる以上は、公正に実施されなければならないと思いますし、また根本的には、ただいまだんだんと事実を前提にしていろいろ御質問がございましたが、そういう流通面におきまして疑惑を持たれるような事態というものはでき得る限り解消されて、そして市場開放の実が上がる必要があるということは言うまでもないと思います。
  94. 草川昭三

    草川委員 ぜひこの十月の交渉までには、日本の国内の調整ということもあるわけですから、外務大臣としても関係閣僚に厳重な問題提起をしていただいて、本件が国際的にも理解ができる対応をとっていただきたいということを申し上げまして、時間が来ましたので終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  95. 中山正暉

    中山委員長 渡辺朗君。
  96. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、早速お伺いをいたします。  先日、外務大臣アメリカにおけるカウンターパートであるヘイグ国務長官、突然辞任をされました。私などはびっくりした方でありますが、外務大臣はいかがでございます。予想しておられましたですか。
  97. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 全然予想をしておりませんでした。当日、マンスフィールド大使にお会いする機会がございまして、けさのニュースは本当に驚いた、サプライズ、こう言ったら、私も驚いたんだ、こういうことでございまして、恐らく何人も予想ができなかったのではないか。  ただ、しかし、従来レーガン大統領の周辺の中で、ヘイグ長官が、意見がときに合わないような、そういう状況があるということはニュースとしては伝わってきておりましたが、しかしそれが辞任を予想させるものであるということは考えたことはございませんでした。
  98. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実は私は、六月の二十五日に予算委員会総理に御質問をいたしました。そのときに、実は日本国民がいま一番知りたいと思っていることは、何か世界ががたがたしているように心配でならない、経済も政治も軍事上の紛争すら各地に起こっている、だからそのときに民主主義先進諸国においてどのような結束があるのか、その点についての御印象はいかがかというふうにお伺いしたところ、その点では、民主主義の国々、先進国においては、一つにまとまっておりますというお話がありました。そして突然今度は、その日の実は夕刻でございますけれどもヘイグ国務長官辞任という問題が起こった。私、びっくりをしたわけであります。  いまお聞きをいたしますと、外務大臣は何人もあのような事態は予想しなかっただろうとおっしゃいますけれども、いかがでございますか、実際に私が新聞その他で拝見するところによりますと、よその国においては、時期はいつとしても、遠からずこのような事態が来るであろうというふうな予測、推測が立っていたと言われます。外務大臣、びっくりされたと言いますけれども、びっくりされたことにいま世界はあるいはびっくりしているかもわからない。外務大臣がそのぐらいの予想をしておられなかったら、これは、総理だってあんなとんちんかんな、とんちんかんと言ったら恐縮でありますが、見通し、確信というものがわずか半日か一日しかもたない、そんな確信やら予想では、この国際情勢というものを見ながら乗り切っていく方針というものは打ち立てられぬではなかろうか。その意味で、外務大臣、もう一遍そこら辺について、どうなんですか、本当は予想しておられたんでないですか、いかがでございます。本当にびっくりされましたか。外交辞令でびっくりしたとおっしゃったのに、あなたもなるほどということで安心された程度でございますか。そこら辺をちょっとお聞きかせをいただきたい。
  99. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま御説明を申し上げましたように、レーガン大統領の周囲の中で意見の相違がある、そういうニュースは得ておるわけであります。しかし、それがレーガン政権のかなめとも言うべきヘイグ長官辞任につながるかどうかということにつきましては、私はそのようには考えておらなかったわけでございますが、しかし本日の段階になりますと、いろいろ取りざたされておること、あるいはその外交問題についてヘイグ長官自身が辞任の理由として一貫性を欠いたというようなことがいろいろ言われますと、やはり辞任については相当な背景があったということを認めざるを得ません。しかしながら、どちらかというと、じっこんにして、いろいろ交渉をしておるということになりますと、その対象の人が辞任する、それは結構だったということには人情としてもならないところでございまして、ましてやベルサイユサミット後の、これから日米間におきましてもいろいろな懸案を解決していこうというそういう段階でございまして、きょうも午前中御質問があったようなサハリンの問題などを考えてみますと、あれだけヘイグ長官に交渉しておったんだ、その交渉相手がやめられたら、これは大変手がかりを失ったなというような感じも持っておるわけでございますから、率直に申し上げまして、ヘイグ長官辞任ということはやはり私としては、いや突然のことであった、驚いた、こう申し上げておくのが一番適切だと思います。
  100. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま人情論を私は聞いているのではございません。また、一種のレトリックを聞いておるのでもございません。もっと肝心かなめなことは、いまも外務大臣おっしゃいました、ヘイグさんは、これはアメリカ外交政策のかなめであった、対外政策のかなめの人であった。それが辞任された。そうした場合には、中東問題であれ、対ソ戦略であれ、大きな変化があるのかないのか、そこら辺でございます。その点をお聞きしたいのでございます。
  101. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 単純に申し上げかねますけれども、しかし、辞任後の各種の情報からいたしますと、ヘイグ長官中東問題について意見の相違を生じておった、あるいは対ソ制裁関係においても意見が違ったんではないか、こういうことが取りざたされておるわけで、ヘイグ長官辞任の背景は政策面で相当ないきさつがあったということを認めてよろしいかと思うのであります。しかしながら、正式に後任のシュルツ長官の御就任がまだでありますから、新長官のもとでどのような考えが打ち出されるかということはいまだ明白ではございません。その意見の相違がそのまま表面化して、そしてアメリカ外交方針というものがある程度変化するかしないかということについてはこれからの問題だと思います。
  102. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、この問題について、本当はもうちょっとじっくり御意見を聞きたいし、それから私も申し上げたいと思います。なぜなら、これからシュルツ新長官になり、どのようなものが出るか、それを見てからだということでは困るので、外務大臣、本来ならば、わが国の方向としてはかくあるべしというものをやはりお訴えになるなり、それから、もっともっと強く発言をされるべきであろうと思います。そういう点、御要望だけを申し上げておきますが、時間の関係で、もし再度このような機会がありましたら論議をさせていただきたい。  さて、第二の点に御質問をさせていただきたいと思います。  それは、先般の国連軍縮特別総会の問題についてでございます。あの際に私、総理の演説はりっぱなものであったと思いますし、中身を読んで、なかなか感動させる部分が多々ございました。けれども、その中で気になったことが一つあります。それは、核兵器の廃絶あるいは撤廃という言葉が出ていなかったと思います。私、何遍も読んだんですが、あるいは見落としていたのかもわかりません。これは非常に慎重に軍縮という言葉は書いてあります。けれども、核兵器の撤廃あるいは廃絶という言葉が使われていないのは何か意味があるのでございましょうか、外務大臣、お尋ねをさせていただきたい。
  103. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  核兵器の撤廃あるいは廃絶という言葉がそのままこの演説の中に使われているかどうかというお尋ねでございますが、仰せのとおりに、その言葉そのものはなかったものと了解いたしております。しかしながら、この演説を通じて、総理がしばしば、わが国民を挙げての悲願でございますところの核の惨禍が二度と繰り返されてはならない、われわれが取り組む軍縮の最優先は核軍縮であるということ等、一貫する随所にあらわれた表現は、われわれとしては核の廃絶というものを目指して核軍縮を進めるべきである、この点にはいささかのためらいもなかった、かように解しております。
  104. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 門田さんのいまの御説明、これはまことにごもっともに聞こえますが、それでは私は別の角度から聞かしていただきたいのです。というのは、やはりこの問題はなかなか大事なところだと私は思います。核軍縮という言葉は使っているけれども、その位置づけが実はよくわからないからお聞きしているわけであります。たとえばパルメ報告が国連の軍縮特別総会の方に提出されました。そのときに、パルメさんはこう響いております。限定核戦争はイリュージョンである、幻想である。そのような考え方そのものも拒否すべきである。私が読んだ範囲においてはそのように言っていると思いました。大臣、その点はいかがでございますか。限定核戦争というものは理論的にもあり得ない、起こり得ないというふうにお考えでございますか、いかがでございますか。
  105. 秋山光路

    ○秋山説明員 ただいま御指摘のありましたパルメ委員会の報告におきまして、限定核戦争を行う構想というものはきわめて危険であるという御指摘がありましたとおりであります。核戦争はそれが限定し得るか、もしくは限定することはできないか、そういう問題にかかわらず、どんな場合でもこれが起こってはならないのであろうと思います。米ソの両国が昨年の十一月からいわゆる中距離核兵器の削減交渉に入り、去る六月二十九日からいわゆるSTART、長距離核兵器の削減交渉に入りましたのも、双方においていかなる事態が起こっても核戦争には至らない、これを回避したいという立場で始めたものと私ども考えております。
  106. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、それでいいのでしょうか。起こってはならない、これはみんなそう思っていると思います。あたりまえのことであります。これが限定核戦争であれ、まして全面核戦争といったら本当に大変なことだ。ただし、私がお聞きしているのは、起こってはならないということと、わが国政府としては限定核戦争なるものは理論的にも受け入れられないと考えておられるものなのか、それはあり得ることなんだというふうにお考えなのか、それを聞かしていただきたい。
  107. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 限定核戦争、そういうものは日本のわれわれとしても断じて考えないところでございます。しかしながら、現実のいわゆる核の抑止力の理論からいたしまして、先制不使用あるいは限定核戦争、そういうものを全部否定してしまって、そしてその核の抑止というものを考えると、それはどういうことになるかということになってくるのですね。だから私は、現実の面で考える場合と、それから理論的に考える場合とは違いますし、また核戦争というものが限定的だけで済み得るかということになれば、それは非常に危険なことで、そういう限定使用というものが全面的な使用になり得るということも当然考えられるわけであります。だからその核戦争というものは、日本としては被爆を受けた国として絶対に二度と使ってはならない、これはわれわれの信念として通していかなければなりませんけれども、しかし現実の軍事バランスの上から、たとえばきょうも申し上げたように、欧州地域における通常兵力が東西関係でどうか、こういうことになってきますと、そこに不安感があるためにフランスにおいてもイギリスにおいても核というものの必要性を言っておるわけであります。そのことはやはり核の抑止力というものが作用しておることだと思いますので、これは率直に言ってお答えのしにくいところがあります。現実とそれから理論的にあるいは理想論的にいろいろこれは分けて考えていかなければならない。しかし、われわれとしてこの苦い経験を経ておる、あの惨禍にさらされた日本国民として二度と核兵器が使われてはならないということに徹底していかなければならぬと思います。
  108. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 確かにおっしゃるようにお答えされにくい問題があるということは重々わかります。にもかかわらず、やはりここをきちっと定義しながら私どもは前に進めていかないと、本当の核軍縮あるいは核の廃絶ということもできないのではなかろうか。そういう意味で、だめ押しと言ったら悪いですけれども、定義の方を先に聞かせていただきたいという気持ちでお聞きをいたしました。いまのお答えを聞いておりましても、核抑止力は認めておられるということになります。そうしますと、理想は理想だ、しかしながら、現実には限定核戦争の可能性もあり得るし、当然したがってそんなものを起こさないためにも、相手が持っている核戦力に対してこちらも抑止するものだけは持っておかなければならない。そしてパリティの形をつくった上で削減する、そういう考え方が、私はこの間の国連における総理の演説の根底にあったのではないかと思います。そうしますと、これはどうしても核の廃絶とかあるいは完全にそれはなくしていくというような言葉は使うことができない。それゆえに使ってない。むしろ逆に、軍縮という軍備削減あるいは軍備コントロールの方、軍備管理の方に重点を置いた日本政府考え方だというふうに印象を持ちますが、外務大臣それでよろしゅうございますか。
  109. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は、核の廃絶は完全軍縮の一環の中にあると思うのです。だから、有効適切なことを一歩一歩やっていこうということを総理はかねがね申しておるわけでございますし、このパルメ委員会の報告を見ましても、「核兵器は具体的措置から始まる漸進的なプロセスを通じ廃絶されねばならない」とこういうことになっておる次第でございまして、私はこのパルメ委員会の報告の中のこのような指摘というものはまさに現実に即しておるものではないか。日本としては核の廃絶に向かって有効な措置をとりつつ一歩一歩廃絶に向かっていく、こういうことでございます。また現実に、ただいまお話のような核の抑止力の働いておる世界の実勢でありますから、したがってこの核の廃絶に向かっては米ソがいま中距離核戦力の削減交渉、またSTARTの交渉など現実にやっておるわけでありますから、もう早くその効果のある結論を出してもらいたい、それには、低いレベルの均衡ということをまず目指してやってもらいたいし、さらには廃絶に向かいまして、核実験の禁止であるとか、あるいは核不拡散体制というものの普遍的に行われるということ、あるいは少なくとも生産禁止とか、いろいろ具体的な措置があると思うのですが、核の廃絶に向かってそういうことを着実にやっていってもらいたい、またやるべきである、こういう見地に立っております。
  110. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この間ドイツの社民党で大会を開いておりまして、その決議文ができておりました。それを見ておりましたら、こういう文句があります。われわれは限定核戦争という考え方そのものを拒否するという言葉がありまして、私ども日本においてもそのような姿勢から進めていくべきであろうという感じを痛感いたしました。  ところで大臣ソ連のブレジネフ書記長は、東西の戦略兵器、あるいはINFはもうすでに交渉しておられるわけですが、東西の戦略核兵器制限交渉、これへの取り組みを表明した際に、アジアに展開したSS20については論外であるという言葉を使っております。これはどのようにお考えでございますか。つまり私が心配するのは、こちらの方が、あるいは相手方が同じようなものを持っているから交渉するので、持っていないものとは交渉しないぞ、論外だぞ、核抑止力の理論というものを認めるならば当然向こう側からそう言われるであろう。こちらの方はどうやってSS20を撤去させる形が実現できるだろうか、これについての外務大臣の御見解を聞かせてください。
  111. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 アジアにおけるSS20の問題を具体的にどう考えるか、またブレジネフ書記長の所見を言われておるわけでありますが、アメリカは、このような事態に対していわゆるゼロオプションということを言っておるわけであります。欧州地域のみならず極東においてのSS20も撤去してもらいたい、そうであればパーシングII、巡航ミサイル等の配備はしない、こういうことを言っておるのでありますから、私は、そういうことに対してブレジネフ書紀長はこたえなければいけないと思うのです。  また日本は、SS20について、日本自身としては自衛隊は専守防御を目的としておるわけでありますから、日本に対する直接攻撃の中で小規模のものについては自衛隊の専守防衛能力でこたえることができるでありましょう。しかし、従来から言われておるように、大規模になればアメリカに安保体制で頼らなければならない。ましてや核については、核の傘の下におるわけでございますから、それによって日本の安全を確保しておる状況下にあるわけでございます。したがって、この極東におけるSS20は論外である、別個である、そういう考え方には私どもはくみし得ないということは言うまでもありません。
  112. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 先般国連の総会の際に、外務大臣はグロムイコソ連外務大臣話し合いをしておられるはずであります。この問題についてはどのような形で論議を詰められた、あるいはこちらの意見を述べられたわけでございますか。
  113. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 グロムイコ外相に対しまして、核の問題につきましては、ただいま私が申し上げた中距離核戦力あるいは戦域核の削減交渉、これが現在米ソ間で行われておるが、これが成果が上がるように努力をしてもらいたい、SS20については、日本はこれに対して大きな不安を感じておるんだ、だからこういうものの撤去のための交渉というものの成果の上がることを期待するということを申し述べた次第でございます。
  114. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 先方の返事はどのようでございますか、重ねて、恐縮でありますが。
  115. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 どういう言葉か、はっきり覚えておりませんが、極東におけるSS20については、それは不安がない、こういうようなことを申しました。しかし、その後で、その文言の後で、いろいろ問題があれば、それはよく話し合う、こういうことがついておりましたが、われわれが不安に思っておるこの核の問題の交渉が成果が上がるようにということについての答えは、日本に対するそういう不安はないというような言葉を入れながらも、その後に、いろいろな問題について話し合おう、こういうような会談の流れであったと思います。
  116. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これは、不安がないどころか、逆に不安が大きくなってきているのが最近ではないかと思います。先般もシリーズで大規模な核実験がソ連において行われたということも言われておりました。あるいは新聞報道によりますと、北方領土においてソ連の軍備配置が強化されているやに報道もございました。そういう中でSS20の問題について心配はないというような言葉だけでは、これは困るので、粘り強い交渉をしていただきたいと私は思います。これは要望だけにしておきます。  さて、ところで、もう一、二だけ質問したいと思います。  それは、この間質問をさせていただきましたが、その際外務大臣は、ODA、政府開発援助、つまりひもつきでない、日本の平和戦略、国としての平和戦略の柱である開発援助、これについては、八一年度に減ったけれども、五年間で倍増というのは大丈夫かというふうにお聞きしたときに、五年計画なんだから、一年ぐらい落ちても、後で取り返せるというようなニュアンスで、大変楽観論を述べられました。実際、そうなんですか。  もしいままで五年倍増ということを実現するためには年率で八・七%ずつふやさなければならなかった。昨年落ち込んだ。あの落ち込んだ額を取り返してこれからやっていくとするならば、今後毎年二倍近いぺースで伸び率を大きくしなければいけない。外務大臣、その点大丈夫ですか。確信を持ってそのようにおっしゃいますか。
  117. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先般も御説明を申し上げたと思うのですが、二国間援助は大体順調に伸びておるわけであります。国際開発金融機関への出資、拠出が対前年比四〇%の減となったということが、これが渡辺委員の御心配な点である、こう思います。そこで、全体として、五年間で一体中期目標の達成ができるかできないか。私どもはこれはあくまでもこの計画に沿って、国際的に倍増方針を打ち出しておるのでありますから、それに全力を傾注してまいりたい。ただ、国際機関の関係につきましては、これは日本の意思だけでやり得ない面がございます。これは御了承いただけると思うのであります。  そういう面からしての影響で倍増がなかなかむずかしい、こういうことがあり得るかもしれませんが、しかし日本はあらゆる機会に、たとえば南北サミットの折など、あるいはASEAN外相会議などの折に、こういう国際機関への拠出というものがきわめて重要であるという立場を一貫してとってきておるわけでございまして、これらの面につきましてぜひとも改善をして新中期目標は達成をしたい、そういう目標を立てておる次第でございます。
  118. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣は大変重要なことをいまおっしゃったと私は思います。二国間の援助は順調に伸びています、むしろ多国間、マルチの形が減っています。これは大変重要な点だと思うのです。むしろ途上国が一番欲して期待しているのはマルチの形であって、二国間の形に重点が移行することではないはずであります。わが国の政策、外交方針の中において、私はその点はきちっと柱として今後も続けていただきたい。  そういう観点からもう一つ聞かしていただきたい点があります。  それは、つい最近ですけれども、タイ国に対して日米共同で援助をするという報道がございましたが、そういう事実はあるかどうかひとつ聞かしてください。まずそれが一つ
  119. 柳健一

    ○柳政府委員 御指摘のとおりの事実はございます。  実は、先般、ASEAN拡大外相会議に出席のためにシンガポールを訪問されました櫻内外務大臣が、タイのシティ外務大臣との間で、東北地方でございますが、その農業開発につきまして可能な分野において日米が共同して協力するということについて意見の一致が見られております。
  120. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 第二番目に、この方針は先般のベルサイユサミット日本総理が、「昨年設定した新たな中期目標の下に、援助の拡充に引き続き努めております。」という言明がございました。今回の、いまおっしゃった日米共同でタイに対する援助をするというのは、何か新しい政策というものとして出てきたのでしょうか。特に「昨年設定した新たな中期目標の下に、」と言われるのは、五年倍増計画もあれば、もう一つは、日米共同声明の中に「世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を強化してゆく」ということがうたわれております。それに基づいた政策の展開というふうに解釈してよろしゅうございますか。
  121. 柳健一

    ○柳政府委員 お答えいたします。  まず第一に、日米共同プロジェクトの問題につきましては、実はかねてからわが国もそれから米国も、先進国すべてそうでございますが、それぞれの援助資金をできるだけ効率的に使っていきたい、そのためには相互補完的に助け合いながら、発展途上国の合意も得た上でやっていく、そういう考え方から、実はもう日米で援助企画協議をやりました三年前からこの話がございまして、ようやく今般実った、こういうことでございます。  それから他方、もう一つの方の世界の平和と安定にとって重要な地域に対する援助というのは日本の援助の基本的な方針でございまして、発展途上国の民生の安定、経済の安定、政治的安定が世界の平和と安定に貢献する、こういう考え方から援助を行っている、こういうことでございます。したがいまして、両方の間に関係はございません。
  122. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ちょっとお聞かせください。いままで紛争周辺国というのには、あるいは紛争を助長するような形での援助はしないという方針があったと思います。今回の場合は、「重要な地域」という中身でありますけれども、そこに日米で援助をしていくということになる。私はここで価値判断のことをいま吉っているのじゃないのです。いまあなたの頭の中にある、あるいは政府の政策の中にある哲学なり物の考え方を聞いているので、これがいいとか悪いとかは後で判断すればいいと思いますので、日米共同声明の中にうたわれた重要なる地域というのは、たとえばいまのようなタイは入るというふうに考えてよろしいですか。トルコは入るというふうに考えてよろしいですか。韓国はどうですか。時間の関係がございますので、一遍にこれは聞かしていただきたい点でございます。
  123. 柳健一

    ○柳政府委員 御指摘のとおりでございます。すべて入ります。
  124. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そうしますと、これは紛争や何かの周辺国あるいは分断国家、そういうところも入るということになりますと、大変戦略的な意味を持つ援助政策、これが日本としてはこれから推進する一つの目標になってくる。外務大臣、これはいままでの援助政策の大きな転換というふうに理解されますけれども、いかがでございますか。よろしいですね。
  125. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 渡辺委員がいま受けとめられたようなことは、日本政府はそういう解釈はしておらないのであります。たとえば昨年五月の鈴木総理とレーガン大統領との会談において、共同声明第九項に表明されておるところをごらんいただくと明白であると思うのです。「世界の平和と安定の維持のためには開発途上国の政治的、経済的及び社会的安定が不可欠であることを確認した。」援助政策の中で経済的、社会的不安があるということは、私はやはり考えていかなければならないと思うのでありまして、日本日本経済援助の方針といたしまして、そういう地域を念頭に置いてやっていく。その結果、先ほどの御質問のどういう地域が「重要な地域」に当たるかということについては、第一にはASEAN諸国、援助の実績をごらんいただきましても日本はこういう地域に重点を置いておるということは明白でございます。また、タイ、パキスタン、トルコというような地域における経済、社会不安を解消する上におきまして、こういうところにはやはり援助の必要があるのではないか、そういう見地において行っておるような次第でございます。
  126. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、こちらの主観ではなくて、どうもいままでの御答弁を聞いておりますと、客観的にはやはりわが国の援助政策は質的転換を遂げてきている、しかもどうもODAを見ても、マルチよりもバイの方へと重点が移行しつつある、ちょっと懸念をせざるを得ないというのが率直な感じでございます。これからもっと掘り下げていきたいと思うところに時間が来たという紙が回ってきましたから、この次にもう一遍、私はあるいは同僚の議員と相談をしながらこの点は詰めていきたいと思っておりますが、最後に一つだけお聞きをしておきます。  このように世界が紛争が多くなってきた。特にいまの中東情勢なんかしかりでありますが、そのときにわが国の国連分担金は世界二位になったと言われておりますが、事実でございますか。これはマルチの援助になるのでございましょう。また、その中で特にお聞きをしたいのは、国連の平和維持活動、たとえば国連平和維持軍あるいは監視団、そのようなキプロスなんかの例あるいはイスラエル、レバノンの間に置かれていたあの国連の監視軍、監視団の問題であります。あるいはパレスチナ監視団、こういったものに対する支出というものはどのような状態でございますか。
  127. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  国連に対するわが国の分担率は、ただいまのところ九・五八%でございます。順位について申し上げますと、現状ではアメリカソ連に次いで第三位でございます。これは分担率でございまして、いわゆる自発的拠出金、これは含んでおりません。  次に、お尋ねのございました国連の平和維持軍ないしは監視団に対するわが国の拠出状況いかんという点でございます。この拠出につきまして、サイプラスに関する限りは自発的な拠出になっております。その他の平和維持軍及び監視機構あるいは監視団に対する拠出は、分担率が適用されるということになっております。したがいまして、キプロスに対するわが国の拠出はただいまのところ約二%でございます。他方、その他の平和維持軍、監視機構ないしは監視団に対する拠出は分担率相当、つまり九・五八%、かように相なっております。
  128. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、そういうふうな平和維持機構、維持機能、こういったものに対する分担金、これは今後多くしていく、強めていくという考え方でございますか。そうではなくて、先ほども参議院において御答弁ございました、そしてその後でちょっと御修正もあったやに感じますが、要員派遣の方も考える、同時に二つの面を考えるということでございますか。お金の方で処理していく。平和維持機能強化という点については、日本の分担あるいは寄与すべきものは何だとお考えでございますか。
  129. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 たまたま先般来国連の平和維持機能の強化、これについて日本はどう対処するか。現在財政的な支援をやっておるわけでございますが、他に何か平和維持機能についてやり得ることがあるかないかということを検討していきますと、ナミビアの選挙の監視の場合、要員とか選挙監視に必要な資器材などは、これは考慮し得るものではないか。しかしながら、平和維持機能とは言っても平和維持のため平和維持軍、そういうものについては、これは武力行使を伴うので日本としては考えられない。しかし、国連監視団につきましては、これは憲法の上からどうこうはないけれども、現行自衛隊法からはできない。そういうことを申し上げておるわけでありますが、国連の平和維持機能の強化ということは大事なことでございまして、日本としてやり得ることについては、これは支援をするにやぶさかでない、そういう立場でございます。
  130. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間がないのでやめますが、外務大臣、やはりもうちょっとはっきりおっしゃった方がいいと思うのです。いまのお話聞いていても余りよくわかりません。つまるところ、ナミビアの投票箱を持っていくのがせいぜい平和維持活動の具体的寄与であるみたいなことになってくる。あとはお金を出すだけだということだと思います。それではこれは物笑いになるので、私は別に憲法を改正したり自衛隊法を改正するしない、そういう問題に論及する前に、具体的に何ができるのか。たとえば国連においても五大国の拒否権の問題、一体どう制限をしたらいいのか、あるいはまた、紛争が起こった場合に、国連事務総長の調査権限強化というようなものをどう日本が力をかして実行するべきなのか、実現させるべきなのか、私はそれらの問題について積極的な検討をしていただきますように要望をさせていただいて、この質問を終わります。ありがとうございました。
  131. 中山正暉

    中山委員長 野間友一君。
  132. 野間友一

    ○野間委員 最初に、いわゆる対韓援助についてお尋ねをいたしたいと思います。  四月の下旬、柳谷審議官がわが国の最終案なるものを持っていかれ、それが結局妥結に至らなかったという経過があります。その四月末の最終案なるもの、これはいまも変化はないというふうに私は考えておりますが、そのとおりでよろしいですか。
  133. 木内昭胤

    ○木内政府委員 現在も私ども四月末に柳谷外務審議官が韓国側に説明した考え方に即しておるわけでございます。
  134. 野間友一

    ○野間委員 その最終案なるものも総額四十億ドル、これはいまもいろいろ対外経済援助の話がありましたが、ASEAN五カ国の過去五カ年の円借款はトータルしますと十八億ドルになると思いますが、四十億ドルのうちで対韓国一国に対して新聞報道等では十五億ドル、こう言われておる、大変な額であります。これが安保絡みというふうに私は考えざるを得ないと思うのです。それはそれとしてきょうは別に置きまして、いまにわかに再燃しましたこの援助の問題について続けてお伺いしたいと思います。  六月の二十二日、新しく外務大臣になった李外相から提案があった、こういう新聞報道があります。これは新しい提案ということとして位置づけておるのか、それとも新聞報道では、これはもう新提案でもない、したがって、検討も回答の余地もないのだ、外務省首脳の話としての新聞報道等もあります。ですからこのいわゆる提案なるものをどう受けとめておるのか、お伺いいたします。
  135. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 李新外務長官は、就任後に、いまおっしゃった六月二十二日ですか、わが方の前田大使と話し合われました。その際、外務長官は御自身の考え方を種々述べられたようでありますが、前田大使は、柳谷外審当時に日本側が示した考え方、これについての経過、あるいは日本政府としてこれがぎりぎりの線であるという点についての詳細お話を申し上げたようでございます。これは、前田大使としては日本考え方を李長官に説明をし理解をしていただく意味合いのことであったと思うのでありますが、李長官は、自分の言ったその考え方はひとつ東京の方へも伝えてほしい、こういうようなことであったようでございまして、提案とかどうとかということでない、新しく就任された長官のお考え方、新聞等で提案というようなことも書かれておるようでございますが、前田大使もそうかた苦しく受けとめたものではないのであります。しかし、東京にもこの考え方を示してもらいたいということで、日本の方にもその考え方が示されました。しかし、その折に、これはひとつ秘密にといいますか内分でやってもらいたいという経緯がございます。
  136. 野間友一

    ○野間委員 新提案という言葉が適切かどうかは別にして、先ほど午前中にも外務大臣は提案の中身について触れられました。それによりますと、商品借款をぜひ認めてくれということ、もう一つば円借款をふやしてほしいということが中にあったという話がありましたけれども、この点について再度確認しておきます。
  137. 木内昭胤

    ○木内政府委員 六月二十二日に李範錫新外務部長官が前田大使に新長官としての考えを述べられたわけでございますが、それは柳谷外審が説明した考え方に対比いたしますと、より条件の有利な政府開発借款の割合をふやしてほしいということと、もう少し日本側は、商品援助はきわめてむずかしいということであるが、商品援助という側面も考慮してもらえまいかという考え方を述べられたことは事実でございます。
  138. 野間友一

    ○野間委員 さらに、決裂した時点、四月の末ですが、このときにもまだいわゆる六十億ドルについて韓国側が固執しておったということのようですけれども、新聞報道、あるいは私は直接外務省の担当官にも話を聞いたのですけれども、この点については、円借款あるいは商品援助というものとの絡みで必ずしも六十億ドルには固執をしない、言われておりますいわゆる四十億ドル、こういうことも含みを持ったそういう提案であったやに聞いております。これは新聞報道等にも出ておりますが、この点について再度お答えいただきたいと思います。
  139. 木内昭胤

    ○木内政府委員 四月末に決裂とおっしゃられましたが、なるほど日韓双方の考え方に大変大きな隔たりがあることは事実でございまして、しかし話し合いは継続していくという意味合いにおきましては、私ども必ずしも決裂であるというふうには考えてないわけでございます。  それから、六十億ドルとか四十億ドルということに言及されましたが、私どもとしましては、六十億ドルを供与するとか四十億ドルを供与するというやりとりはいたしておりませんで、これはあくまでもプロジェクトに即して、単年度主義で対応してまいるということは、これまで当委員会において御説明したとおりでございます。ただ、感じとしまして、どの程度のことならできそうか、どういうプロジェクトなら取り組めそうかということからおのずからにじみ出てきます一つの幅と申しますかそういうものにつきましては、必ずしも韓国側は六十という幅にはこだわっておらなくなったということははっきり言えるかと思います。
  140. 野間友一

    ○野間委員 そこでお聞きしたいのは、韓国側が新しく外務長官がかわって、いまのお話のような提案、これは新しい提案かどうか別にしてもあったということになりますと、そうしますと、この交渉の経緯からして、日本側にいまボールが投げ返されておる、日本側がそれを検討して回答するという、そういう段階として受けとめておるのかどうか、この点はどうでしょうか。
  141. 木内昭胤

    ○木内政府委員 どちらにボールがあるか、日本側に投げ返されたとか韓国側に押し返したということではなくて、明週月曜日には外務大臣と李範錫長官との会談が持たれますので、その際、櫻内大臣からは日本側考え方を御披瀝になるわけでございます。
  142. 野間友一

    ○野間委員 七月の五日に鈴木総理も外務大臣もお会いになる。これはアメリカからの帰りですね。もともと李長官が日本に寄られる、こういう日程ではなかった。わざわざ日本の方が要請をして、帰りに寄ってほしいということで寄られ、そして会われるということになったと思うのですけれども、この事実についての確認。だとすれば、これは要するにボールが投げかけられて、それを検討して、そして何らかの対応をこれに対してされるということに経過としてはなるんじゃないか、こう思いますので……。
  143. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはかねて私がいろいろ申しておりますので、お答え申し上げたいのですが、私が就任いたしまして御承知のように七カ月経過しておるわけであります。隣国の外務大臣立場からすれば、韓国の問題に大きな関心を持つ、そして両国の当事者が随時会って、いろんな懸案について話し合うということは私は常識的だと思うのです。ところが、国会の関係もございましたけれども、どちらかというと経済協力問題がクローズアップされておりまして、その問題を除いてはどうも両国の外務大臣の行き来は少しむずかしいというようなそういう情勢が、醸し出されておって、私は大変残念に思っておって、差し支えなければ、今度は日本側が訪問する番になっておるから、私がいつでも訪問したいということをかねがね申しておったわけであります。しかしながら、遺憾ながらその実現がなかなか行われないままに過ぎておりましたが、今回李新長官は訪米をされるということでありますから、その帰途日本に寄られてはどうか、こういうことを申しておりましたところ、それならばお寄りしましょう、こういう経緯のことでございまして、私は隣国の外務大臣同士ができ得る限り接触をするということは、これは当然なことであって、その一環として今度李新長官を迎える、こういうことでございます。
  144. 野間友一

    ○野間委員 そこで、会談の中身についてお伺いをしますが、午前中にも商品援助、これはできないし、やらないということを答弁されました。活字としても、これは五十七年四月二十六日の参議院の決算委員会、ここでも外務大臣は、「商品借款につきましては、これはやる考えは持っておりません。しかし、現在交渉中でございまして、この交渉が進むにつれましても、いまの原則を外れるということはございません。」明確にこういうふうに答えておられます。それからさらに、十一のプロジェクトについても円借款、個別のプロジェクトを審査して、そして対象となる。プロジェクトあるいは金額についても精査した上で出されたのが例の最終案、そうしますと、これは先ほどから相手側の意向についてもお話がありましたが、もし来られても、結局そのぎりぎりの最終案、これを説明して了解を求めるという以外に譲歩の余地がない。これは一連の交渉の経過からしても、いまの答弁からしてもそうならざるを得ない、こう思いますが、この点についてはどうなんでしょう。
  145. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまの御質問の線でよろしいかと思います。  しかし、いまこれでお客さんを迎えるんですから、そのお迎えした際には、先方も言いたいことをおっしゃるでありましょう、当方も当方の考え方を申し上げる、腹蔵ない意見交換をするということが、これが第一の原則ではないかと思うのです。ただ、お話しの筋合いにつきましては、これは柳谷外審が行かれましたときにも、日本として考え得るぎりぎりの線である、こういうことを申しておる内容として、商品借款については、これは考えられない、また困難であるということは先方に申し上げておるところであります。
  146. 野間友一

    ○野間委員 きょうの新聞報道等によりますと、いまお話しのような方針なり態度とは違いまして、商品借款、これを認める。しかし、その内容を見てみますと、このプロジェクトに必要なたとえば労務費などに使うことを前提に自由裁量の円借款の供与、これを商品借款という呼び方で、報道ではいろいろと言われておるようですけれども、こういうことは一切ない、先ほどから大臣もおっしゃったわけですが、従前のぎりぎりの最終案、これを御説明されるということで、新聞報道等ではいま言われたようなことは書いてありますけれども、こういうことは一切ない、こういうふうに承ってよろしいですね。
  147. 木内昭胤

    ○木内政府委員 基本的には大臣がおっしゃられたとおり、商品援助はきわめてむずかしいという立場は、これは貫かれるわけでございます。けさの新聞報道につきましては、これは私どももその記事を読んでおりますけれども、その真意についてはまだ確認いたしておりません。場合によっては、いわゆる商品援助と違えて観念されるプロジェクトのローカルコスト・ファイナンシングという意味合いで出るコモディティー・エードということであれば全然考えられないというわけではないわけでございまして、ただし、その割合というものは、通常プロジェクトの多くて三割ないし一割という感じの数字になるわけでございます。ただし、現在まだプロジェクトにつきましてきわめて詳しく日韓で突き合わせておるわけではございませんで、大まかな、このプロジェクトならいけそうとかいけそうじゃないという議論の段階でございますので、その点に言及するのは時期が早過ぎるかと思います。
  148. 野間友一

    ○野間委員 どうもわけがわからぬですね。やはり日本語で聞いているわけですから、これは韓国の国会、アメリカの国会と違いますから、きちっと言ってください。  この新聞報道等を読みますと、たとえば労務費、これについて商品借款云々という報道があります。これはどういう絡みがあるのか、私はわからない。もしこれが事実であるとするなら、韓国で働く労働者の賃金を、何のことはない日本から支払ってやる、こういうことになるわけですね。こういうことば絶対許されないし、いままでもこういうことはなかった。方針とは違う、こういうふうに思うのです。その点で、いま木内局長、何かわけのわからぬことを言われましたけれども、その点どうなんですか。この新聞報道について、日本語でひとつ正確に、簡潔に答えてください。
  149. 木内昭胤

    ○木内政府委員 新聞報道の点につきましては、私どもまだ結論を出していないわけでございます。私が先ほど申し上げましたのは、経済協力を進める過程におきまして特定のプロジェクト、たとえばあるダムをつくる場合の労務費というものが、国内財政資金の欠乏から十分捻出できないという場合には、一割ないし二割ないし三割という限度におきまして他の国に対する経済協力を進める段階において出しておるという一般論を申し上げたにとどまるわけでございます。
  150. 野間友一

    ○野間委員 一般論だけであれば、なぜこういうふうに新聞報道、これは外務、大蔵、通産、経企四省庁の関係局長が集まって、関係局長といいますと、あなたも当然入っていると思うのですけれども、なぜこういうことが問題になり、そしてこのように新聞報道される。これはやはり韓国の経済援助についてもこれを使うということが前提で協議をされて、この報道がされたということじゃないですか。それが前提となっておるのじゃないですか。
  151. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、その点については、関係省庁何らの結論も得てない次第でございます。
  152. 野間友一

    ○野間委員 どうもはっきりせぬわけですけれども、こういう形で結局ぎりぎりの最終案だと言い条、新たな提案がまたここに、報道が事実とすれば、そうならざるを得ない。これはいままでの方針を変えることになると私は思うのですけれども、これは変えることになりませんか、外務大臣
  153. 木内昭胤

    ○木内政府委員 私どもが韓国側に申し上げておること、そして大臣を初め私どもが御答弁申し上げておりますことは、商品援助そのものとして韓国側に供与することはきわめてむずかしいということを申し上げている次第でございます。
  154. 野間友一

    ○野間委員 答え、かみ合ってないですね。いずれにしたって内資として向こうは支出しなければならぬものをこちらが援助するということになるわけですから、いままでの方針と違うわけですね。この点については、時間の関係もありますから、さらに詰めてこれからも論議をしたいと思うし、それでそのわけのわからぬ形で、こういう方向で臨まれるということになったら、これはまた新たな大きな問題が生ずるというふうに思いますので、その点、事前に申し上げておきたいと思います。  この韓国問題とのうらはらの関係で、これまた午前中も論議になりましたけれども、朝鮮民主主義人民共和国との民間の漁業暫定合意の問題であります。これは私も一員でありますが、日朝議連としても大変憂慮しまして、何回も論議をし、会議をし、そして政府にも申し入れをする。きょうの新聞にも出ておりますように、久野会長から政府に対して、この失効した責任がすべて日本にあるんだという抗議の談話がなされたと報道されておりますように、まさにそういう事態になっておるわけです。これはいまイカ釣りでシーズンとしても大変大事な時期なんで、これが六月末で失効したということは非常に深刻な問題であります。外務大臣、恐らく大臣の地元と申しますか、そちらの漁業関係者も非常に切実な要求をされておると思うのですけれども、これは年間約百四十億円くらいの水揚げ、しかも零細業者が中心だと思いますが、どう対応されるのか。朝鮮との間では国交が残念ながらまだということで、結局こういう漁業協定やら文化交流というもので一つ一つ積み上げていく、しかもこの窓口としての非常に重要なものが切れた。これは非常に大変な事態だと思うのですけれども、どうなんですか。どういうふうに打開をされるのか。日朝議連としては訪日団をぜひ入れろという要請もやっておるわけですけれども、いかがでしょう。
  155. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御承知のように、北朝鮮との漁業交渉につきましては、国交を持っておらないのでありますから民間での交渉、政府としてはその民間の交渉にもしできることがあるならばしていこう、こういうことでまいっておるわけであります。  今度の期限切れで従来と申しましょうか最近のことからいたしますと、この継続の話し合いは平壌で行われておりますね。そして、五月中旬、下旬の当時に日朝議連の方々は私のところに見えて、平壌へ久野会長が行かれてこの継続については話し合いをする考えです、しかし日本において実務代表団、北朝鮮の代表団というようなものを受け入れてもらいたい、そういうお話で、それについては、その使節団の編成とかあるいはいつからいつまでとか日程等、そのほかいろいろ具体的な事項がおありでありましょうから、そういうことについてはどうぞお持ちいただけば検討いたしましょう、それで、御承知のように日本政府は国交はありませんけれども、北朝鮮との間には経済、文化、スポーツ等、また人物交流というような面で交流をいたしておるので、そういう従来の枠組みの中でよく考えましょう、こういうことで本日に至っておるわけであります。しかし不幸にして六月三十日の期限が切れまして、民間団体においては北朝鮮の漁業水域からの引き揚げを指示したようでございます。  もう一つ問題がございましたのは、この期限切れの前に北朝鮮側がいろいろ申しておること、新聞などで声明されておることを見ますと、日本漁船が経済水域を越えて漁労をしておる、こういうことでそれらの漁船に対し警告をしておる、また拿捕をした、こういうことが繰り返されることはまことに直感である、そういう声明などが行われておりました。私は、そういうことがなく円滑に漁業の行われることを祈念しておったわけでありますが、とうとう最悪の期限切れということで、現在民間団体としてそれらの水域の漁船の引き揚げを命じたということで、非常に遺憾に思っておるところでございます。
  156. 野間友一

    ○野間委員 これは早急に政府としても対応を十分検討した上でできるだけのことをぜひやってほしい、このことを強く要望して、次に進みたいと思います。  次にお伺いしたいのは、参議院の予算委員会等で外務大臣が言われた中でのいわゆる国連平和維持組織、これへの自衛隊の派遣の問題であります。  この問題については自衛隊法の改正で可能だ、今後検討していい事項だ、こういう見解を表明されました。これについて、きのうでしたか鈴木総理が、鈴木内閣は自衛隊法の改正は考えていない。この答弁からいたしますと、事実上外務大臣の答弁が修正されたやに考えるわけであります。私は、これは憲法違反かどうか、これは法律論は別にいたしまして、お聞きしたいのは、自衛隊の国連監視団への派遣、これについて法の改正で可能だから検討していい事項だということですね。これはそのままいまでも外務大臣は維持されておるのか、それとも取り消しをされたのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  157. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この問題は事の経緯をごらんいただきますとおのずから判然とするところがございます。それは、秦野委員が国連の平和維持機能の強化について、そういう立場で御質問がありまして、平和維持軍についてはどうか、あるいは国連監視団についてはどうか、こういうことで、国連の平和維持軍については、これは憲法上許されません、しかし国連監視団については、憲法上はどうこうありませんが自衛隊法の改正の必要がある、こういうことを申し上げたのであります。ただ、当時の速記録を見ないとわかりませんが、秦町委員は平和維持機能を強化するというお立場でありましたから、賛同の御趣旨は、現在日本はただ財政上のことだけを考えておるが、もっとやり縛ることはないのかという見地で御質問であったと思うのです。したがいまして私の方も、ナミビアの選挙の場合などについては、この選挙が公正に行われるための監視のための要員、あるいはそのために必要な資器材、こういうようなものは現在でも考えられます、しかし国連監視団は自衛隊法の改正が必要ですよ、こういうことを申したのであります。
  158. 野間友一

    ○野間委員 改正が必要だからということと、今後は改正も含めてこれは一つの検討課題だ、これは正確に、私も議事録は持っておりませんが、新聞やテレビで拝見する限り、今後検討していい事項だ、こういうことを言われたようですけれども、これはいまでも維持されるのかどうなんでしようか。
  159. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この平和維持機能強化のためのどういう方途があるかということについては、これはいろいろな角度から研究、検討していいかと思うのであります。ただ、お尋ねの、そのための自衛隊法改正をするかしないか、こういう点については、総理が、同じ参議院の予算委員会で、自衛隊法の改正は考えない、こうおっしゃっておりますし、また私も、総理のおっしゃっておるとおりです、こういうふうにお答えしておりますから、この平和維持機能強化の上におきまして、自衛隊法を改正して国連監視団を送るという、そこまでの研究、検討をするかというと、それはしない、こういうことになります。
  160. 野間友一

    ○野間委員 どうもそこが微妙なんですけれども、そうしますと、自衛隊法を改正するかどうか、これは主管庁の防衛庁の所管事項なんで外務大臣がとやかく言われるものではないと思いますが、それはそれとしても、政策的な課題としては、外務大臣はこの国連の監視団、これへ自衛隊を派遣するということについては、これはすべきだという御意向、御意見をお持ちなのかどうか、この点はどうなんでしょうか。
  161. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは維持機能強化の上にそういう監視団のこともあるがこういうこともあるぞ、要は、平和維持機能強化について、日本としてもっとやり得ることがないか、こういう中に国連監視団の問題は、憲法上はいい、しかし自衛隊法の改正を伴わなければやれない、そしてその自衛隊法の改正ということは最高の責任者である総理考えない、こうおっしゃっておって、総理のそのような答弁の後で私は、総理の答弁のとおりです、こう申し上げておって、維持機能強化の中に自衛隊法を改正してまで国連監視団に協力をするということについては現在考えない、こういうことになります。
  162. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、こういうことでしょうかしらね。自分としては法を改正してまで国連の監視団へ自衛隊を派遣するということは鈴木総理の答弁もこれあり考えないけれども、しかし、法を改正してこの監視団に自衛隊を派遣するということ、そのこと自体をとってみますと、今後肯定的に検討していい事項だ、こういうようなお考えはいまもお持ちなのかどうか、この点はどうなんでしょうか。
  163. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 国連の平和維持機能の強化ということは好ましいことだと私は思うのですね。だから、その平和維持機能強化を一般的にどういう場合はどういうことをやれるというような、そういうことの検討、それは私はいいと思うのです。その中に国連監視団の問題が出てきますれば、それは自衛隊法の改正を伴うので日本はいまそういう改正を考えない、こういうことなんですね。
  164. 野間友一

    ○野間委員 どうもかみ合わないのですね。自衛隊法改正の方は別として、そういう方向で今後は検討していい事項だという積極的なお考えをお持ちなのかどうかということなんです。
  165. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いま御答弁申し上げたとおりなんです。平和維持機能強化ということの必要性はあるのですから、それについてどういう方途があるかは検討、研究していい、しかし自衛隊法の改正は、すでに総理が明白に言っておるのですから、そういうことは考えるか考えないかというのですから、考えない。
  166. 野間友一

    ○野間委員 この点については、また次回に継続してやりたいと思うのですけれども、自衛隊というのはもともと戦闘行動をするのを中心的な任務とする部隊ですね。だから、派遣先が戦闘を目的としないから憲法上問題がない、こうにはならないわけですね。いかなる形をとっても直接憲法違反の海外派兵に結びついていくのは当然だと思うのですね。こういう懸念があるから、歴代ずっと外務省は、こういう国連監視団、これへの派遣すら、この検討すらしない。検討以前の問題というのがそもそも外務省のいままでの方針です。この点については、さらに次回に続けてやりたいと思います。  最後に一つ、別の問題として、通産省にサハリン開発の問題についてお聞きをしておきたいと思うのです。  けさの朝日新聞によりますと、「対ソ禁輸 日本も拒否」「米措置主権侵害」、これは午前中にも質問がありましたが、英国に続いて日本も同じ方針と申しますか態度を通産省が表明したということを大きく取り上げられておりますが、この点についての事実の確認ですね、私はまずこの点からお伺いしたいと思います。
  167. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 御説明申し上げます。  ただいま先生の御質問の件は、昨日の次官会見のときに藤原次官から申し上げた点に関連することかと思います。次官が申し上げましたことは、今度のアメリカの決定というものはその法律的な効果を外国に及ぼすというところからいろいろな問題を持っているのではないか、国際法上の問題を持っているのではないかということを申し上げたわけでございます。
  168. 野間友一

    ○野間委員 新聞報道の中身は、これは藤原次官の発言として出ておりますが、たとえば、今回の米国の措置は乱暴で他国の主権侵害するときめつけたとか、法律の域外適用が認めがたいものである以上わが国の対応については言うまでもない、こういうことが書いてあります。これは、中身についてはほぼこのとおりというふうに理解していいわけですね。
  169. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 次官の発言の詳細は先生がおっしゃったとおりであるかどうかあるいは新聞に報道されているとおりであるかどうか、細かいところまでは必ずしもまだ確認してございませんけれども、次官が申し上げましたのは、先ほど私が御説明申し上げましたとおり、今回のアメリカの決定が外に自分の国の適用範囲を広げるという意味で異例な事態であるということで、通産省として非常に重大に受けとめておるということを申し上げたわけでございまして、通産省といたしましても、これから外務省と御相談しながら対応考える、こういうことを申し上げた趣旨だというふうに理解しております。
  170. 野間友一

    ○野間委員 どうも歯切れがよくないし、新聞報道からかなり後退した答弁しか返ってこない。これはけしからぬと思うのですね。きのうの英国の態度表明、そしてまた、恐らく外務大臣もきょうの朝日新聞の通産省の次官の記者会見での発言等もお聞きになっておると思いますけれども、これについてはどういう所見を持っておられるのか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  171. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 イギリスがただいま先生御指摘のとおり、アメリカの決定は受諾できないという強い態度を出したことはそのとおりでございます。ただ、いわゆるヤンブルグ計画、西シベリアの天然ガスの計画とサハリンの石油・天然ガス探鉱開発の計画とは、その性格を非常に異にしておりますし、かつ、アメリカとの協力の形態も非常に違うものでございます。現在サハリンの事業でアメリカからは直接アメリカの製品の輸入及びリースを行っているわけですが、それ以外にアメリカ会社ライセンス生産のものが含まれているかどうか、そういう細かい点については実情を調査している段階でございます。  いずれにいたしましても、ヨーロッパがこういう態度をとったからすぐそれに応じて日本が同じような態度をとらなければならないというような結論は出てこないのではないかと考えております。もうしばらく事実関係を明確にした上でわが方の態度を決めたい、かように考えております。
  172. 野間友一

    ○野間委員 何でそんなに遠慮しなければいかぬのですかね、必ずしもECがそうだからといって日本が同じような態度をとらなければならないのかどうか。逆に、これは本当に大変な事態なんでしょう。まさにレーガン大統領の言うがままに従うという態度にしかならない。まさにこれは、自主的な日本の判断、こういうものを回避した態度にしかならないと思うんですね。ECはきちっとそれなりに態度表明する、それに従って英国は具体的に態度を表明する。これに比べて日本政府はどうしてそんなに弱腰で何ともわけのわからないような態度しかできないのか、大変私は不満であります。  大臣、これはわが国の原油とか天然ガス、国益にも直接関係することでありますし、一方ソ連の態度として、もし継続してこの仕事ができないということになるとするならばこの計画そのものを破棄するということまで言っておる。これもきょうの新聞報道でもありました。大変な事態だと思うんですね。毅然として日本の国益、日本立場から物を言う、毅然としてアメリカに物を言う、これは当然ではないかと思うのですけれども、これはどうなんでしょうか、大臣
  173. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 野間委員のおっしゃるように、日本がしっかりやらなければならぬ。余り野間委員と意見が一致することはないですけれども、先ほどから承っておって、確かにこの問題について日本主張すべきことをしなければならない、そういう立場にございます。  それで、日本は、この措置が安全保障会議で出たその直後に、当時まだ辞任前のヘイグ長官に直ちに再考を求めておりますし、また、当時アメリカにおられた中川長官がヘイグ長官と会談をされまして、その折にヘイグ長官は、櫻内外務大臣にこの問題について自分はのどにとげが刺さっておる思いでおるということを言ってくれと、こういうような経緯があったのでありますが、ヘイグ長官が辞表を出した、こういう段階でありますので、私としては、シュルツ長官就任後また日本としての言うべきことを何らかの方法において強く申し出たい、このように思っておるところであります。
  174. 野間友一

    ○野間委員 時間がオーバーしておりますのでこれで終わりますけれども、またそういう推移を見ながら続けて質問申し上げたい、こう思います。  終わります。
  175. 中山正暉

  176. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 限られた時間ですので、まず一、二問だけ。  先ほども御質問がありましたけれども、日朝の民間漁業協定、六月の三十日で切れたわけでありますが、昨年の夏に来日をした玄団長の発言内容が政治的なものであるということを理由にして、この団長の入国ができないという事態になってきたわけでありますが、その後、外務大臣と同じ政党であります久野日朝議連の会長がじきじきに参りまして、できるだけの対応をということで努力をされてきたわけでありますが、私も、日朝議連の理事の端くれとして、一緒にそれらの問題に取り組んでまいりました。  発言の内容については若干問題があるということも承知をいたしておりますが、一体それほどの実害があったのかどうか。また、直接漁民の方々の被害ということもありますけれども、一月の二十五日でしたか、外務大臣の演説の中にも、北とのいろんな交流を積み重ねていく、こういう演説もされておるわけでありますが、そうしたことを踏まえて、一点は、それほど実害のある内容であったかどうかということをできるだけ手短にお話をいただいて、今後の見通し、どういう段取りでこの問題に臨むのか、また当然起きてくるでありましょう漁民の漁業保障というような問題は将来どうするのかということをまずお尋ねしたいと思います。
  177. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 六月三十日で有効期間が終わった、それによって漁業者に大きな影響が出ておるということはきわめて残念なことでございます。  伊藤委員は十分御承知のように、この問題で政府が関与する余地というものはないのでありまして、ただ民間の交渉にどのように協力をするか、こういうことで、それにつきましては、いま日本政府は北朝鮮との間において経済、文化、スポーツ等の交流、人物の交流について考えていこうということで、最近では北朝鮮の要人の方の入国についてもビザを発給しておるというように柔軟な姿勢をとっておるわけであります。また、最近の数年間をごらんいただきますならば、年々人物交流というものはふえておる傾向にある次第でございます。  いま特定の方を挙げての御質問でございますが、非常にデリケートな段階でございまして、現在日本政府としては、北朝鮮側で実務者の代表団を送る、あるいは経済関係で代表団を送るということであれば、その日程、目的あるいは人員、そういうようなことについてよく検討させていただきましょうということを申し上げておる次第でございます。
  178. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうすると、玄団長の受け入れもあり得るわけですか。民間の努力を積み重ねてきたわけですから、政府はいま答弁いただいたとおりそれに協力していただければいいわけですから、玄団長の入国というものも許可になる、こういうように受けとめてよろしいのでしょうか。
  179. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま申し上げておりますように、いまきわめて重要な段階にあり、民間の皆様方も苦慮し、あるいは日朝議連の方も苦慮しておるところでございます。しかも、五月下旬当時には、従来の慣例でこの継続は平壌において行われる、こういうことで久野議連会長もお出かけの予定であったのが、これが予定どおりにいっておらない。そのおいでになる当時に、代表団の受け入れはどうか、こういうことで、これについてはいま申し上げたとおりに、期間あるいは目的、代表団の人数や顔ぶれ等をお申し越しいただけばその際よく検討する、こういうことを申し上げておるのでありまして、先ほどから申し上げましたように、特定の方を挙げてどうだこうだということについては、この際お答えはしかねる、こういうことです。
  180. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 まあ当面の問題もございますけれども、南北のいろいろな微妙なところで不本意ながら北をだんだん遠ざけるという作業だけは、そういう結果にならないように十分御配慮いただきたいというふうに思います。  それから、次の問題ですけれども、いま国民の皆さんに非常に大きな関心を呼んでおりますアメリカのIBM社の産業スパイ事件について伺いたいと思いますが、すでに逮捕者あるいは逮捕状が出ておりまして、きょうの夕刊を見ますと、逮捕状が撤回をされて召喚状に切りかえられるというような記事が出ておりますけれども、まず大臣に率直に今度の事件をどんなふうにお考えになっているか伺いたいと思います。
  181. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この事件についての米側の発表ぶりを見ておりますと、他の事件の関連から今度のスパイ事態を把握した、そしてFBIを使っての捜査をしたということでございます。したがって、米側におきましてもこれは一般的な一刑事事件としての扱いでございまして、日本政府としてもその扱いで今後とも臨んでいきたい。ただ問題は、先般の起訴によりまして、その中の該当者が日本国内におられる方がございますので、その結果、司法共助の問題などが起こり得る可能性があるわけでございます。  ただいまお尋ねのどういう措置をとったかということにつきましては、担当の方からお答えをさせます。
  182. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いまお尋ねの件でございますが、御案内のように六月の三十日、アメリカの連邦地裁のサンホセ支部で大陪審が開かれまして、日立のアメリカにいる方、それから日本にいる方、及び日立製作所それ自身に対する起訴が決定されたわけでございます。  外務省としては、いま大臣が答弁されましたように、この事件はあくまでも一つの刑事事件という立場に立って、冷静に事態の推移を見守っている。そして、この問題が日米間の政治問題にならないようにということで、日本側としてもアメリカ側と同一の見解に立っているわけでございます。  それでは、外務省はその間何をしたかということでございますけれども、本件が発生して以来、どういう経緯でこの事件が起きたのかということについてのアメリカ側の報道その他を通しての情報の収集、それから在留邦人保護という観点から、在サンフランシスコの総領事館がこれらのアメリカにおいて逮捕された方々について、他のアメリカ人に対するのと違った、不当な行為がなかったかどうかというような在留邦人の保護の見地から、日々事態の推移を児守りながら適切な手を打っているというのが現状でございます。
  183. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 現地の領事館は関係者から事情聴取をしたという経緯があるのですか。
  184. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは、あくまでも総領事館の一つの任務でございます在留邦人の保護ということから、関係会社あるいは関係者の方々に会って、アメリカ側の逮捕その他に係る行為について差別があったかどうかということに中心を置いて話を聞いているわけでございまして、中身にまで立ち入ってその話を聞いているということではございません。
  185. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日本側の逮捕された、そして保釈金を積んで出られた、こういう関係者を呼ばれて聞かれているのか。それから、アメリカ側の方からその事情を聞いているのか。どの程度向こうで事情聴取をされているのか、わかる範囲内で。
  186. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まず、日本側でございますが、日本側については、先ほど来お話ししておりますように、領事館において領事担当といっておりますが、在留邦人保護の担当の責任者がおります、その領事が関係の方々に会って、アメリカ側の逮捕その他の点で何らかの差別的な行為があったかどうか、そういうことを中心にして聞いているわけでございまして、中身にまで、中身といいますか事件の中身にまで立ち入って在サンフランシスコの総領事館が聞くということは、これはサンフランシスコ総領事館の任務の遂行を超えるものでございますので、あくまでも在留邦人の保護という観点から話を聞いているわけでございます。
  187. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 これからその経緯を見ないとわかりませんけれども、日米の犯罪人引き渡し条約との関連で、召喚状にいたしましても二十二日までにという期限があるわけですから、引き渡しをするかどうかという問題が起こり得るわけでありますが、その要請が現在までに来ているかどうか、まず聞きたいと思います。
  188. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お尋ねの要請は、現在のところ一切ございません。
  189. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 法務省は、当然将来のいろいろなことに備えていろいろな準備をされていると思いますが、外交ルートを通じて今回の大陪審の評決内容を正確に掌握する必要があると思っております。どの程度掌握をしているのでしょうか、すでにその詳細な内容を入手しておりますか。
  190. 原田明夫

    ○原田説明員 お答え申し上げます。  ただいままでに御質問にございますように、法務省の立場といたしまして、外務省を通じまして今回、大陪審からなされました起訴に係る起訴状と申しますかインダイトメントの内容につきましては承知いたしております。
  191. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 ついでに伺いたいのですが、今度盗品移送共謀罪ということになっているわけですが、この日米犯罪人条約の中には四十でしたか、幾つか列記しておりますね。日本で言うとどこにこれは当てはまるのですか、どういう罪ということに。
  192. 原田明夫

    ○原田説明員 御承知のとおり、犯罪人引き渡しという問題になりますと、第一義的には日米間の犯罪人引き渡し条約及びわが国の犯罪人引渡法に基づいて所定の手続が取られることになるわけでございますが、この場合に一つ問題点として引き渡し請求に係る犯罪がどういうものであるかということは当然要件として十分に検討する必要があるわけでございます。その場合に、具体的に犯罪事実に即しまして判断するということが肝要でございます。したがいまして、必ずしも罪名にとらわれたと申しますか、罪名に拘束された判断をするということではございませんで、あくまでも具体的な請求に係ります事実を当てはめてみまして、それが日本で行われた場合にどのような評価を受けるのかという観点から検討するわけでございます。現在、私どもで承知しておりますのは、大陪審から回付されました起訴の内容だけでございますが、これはいわばエッセンスでございまして、その中身が具体的にどういうことなのかということまでを十分に判断いたしませんと、具体的に日本の法令に照らしてどのような罪になるのか、あるいはならないのかということにつきまして判断することはできないわけでございます。したがいまして、現在入手いたしております米側の資料からだけでは、これがわが国の何に当たるのかということについて明確なお答えはできないことを御了承いただきたいと思います。
  193. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私は、今度のこの事件は企業と企業との問題であるという考え方だけでなしに、今度のアメリカのおとり捜査の一連のやり方を見ておりますと、アメリカの基幹産業というものを守ろう、あるいは日本の進出にストップをかけよう、そういう見えない力を無視することはできないというふうに思います。  私どもは、短い時間の中に、ヨーロッパではスイスの時計あるいはドイツのカメラ、そういうものに企業は太刀打ちをしてきました。アメリカのいま最も大半な部分、IBMのコンピューターですね、あるいは航空機産業、そういう産業の部分で日本との熾烈な競争がある。今度のこの事件を一つの契機にして、やはり問題は、日本アメリカとのきずなというものを強くしていくなら——こういう形でしか企業間の競争ができない、また日本の置かれている立場も非常に資源に恵まれない国でありますから、これからはこういうような問題がさらに起き得る可能性がある。政府としては高度な技術をお互いに提供し合える、日米間でも、あるいは日本ヨーロッパの先進諸国ともそういう正規な形でその対価はちゃんと払う、そういう行政指導あるいは政府の取り組みというものがいま問われているのではないかというふうに私は思うわけでありますが、最後に外務大臣に、今後の行政指導を含めた御見解を伺って終わりたいと思います。
  194. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 伊藤委員のただいまの御発言は大変価値あるものだと思います。  先般のベルサイユサミットをごらんいただきましても、今後の世界経済活性化のためにどういう方途を考えるのか、こういう中で一番高く評価されたのが科学技術分野の問題でございます。ミッテラン大統領が非常な熱意を持って先進諸国間の科学技術の協力また開発、そういう見地に立たれたわけでございますが、そのために本年末までに作業部会で結論を出そう、こういう段階でございます。  日本アメリカが緊密な関係にあることは言うまでもないのでありまして、特に今後におきましては、科学技術分野における協力や共同開発というものを重視していかなければならない。それが両国の関係をより友好適切なものにするものだと思うのでありまして、今回のスパイ事件は事件として、これは刑事事件として解明いたしますとともに、両国間のために技術提携、協力はどうあるべきかということを真剣に考える時期だと思います。
  195. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 終わります。
  196. 中山正暉

    中山委員長 愛知和男君。
  197. 愛知和男

    愛知委員 質疑に入ります前に委員長にお願いしておきたいのですが、私の質疑は三時から始まるはずだったのがこんな時間になりましてはなはだ残念であります。理事会でそれぞれ各党の時間を決めて、それに基づいて、ルールに基づいて委員会をやっているわけでありますから、きちんとそれを守るように委員長からよく各党に申し入れをしていただきたい。  また、きょう大臣は後、外交案件があるようでございまして、後が抑えられておりますから私の時間全部は消化することができないようでありますが、そのできなかった分は後にまたやらせていただくということをまず委員長にお願いを申し上げておきたいと思います。  そういうわけで、大変時間が限られておりますからほとんど内容のある質問ができないかと思いますが、最初に、せんだって行われましたベルサイユサミットの前に日米首脳会談が行われました。そのときにレーガン大統領から日本総理に対しまして幾つかのお礼の言葉があったと報道されております。その一つに、日本の防衛費の問題について、今年度の予算において財政状態が苦しい中で日本は努力してくれてありがたかった、こういうような話があったと聞いております。私はこのことに対して、今年度の予算の防衛費に関してアメリカが非常に高く評価しているということはそのとおりだと思いますが、しかし、予算ができたのが四月で、予算ができて二カ月たっていまごろありがとうと言うのは、ありがとうというお礼の気持ちの中に、実際は、引き続きこれからも防衛努力をしてもらいたいということを込めて言ったのではないか、こう思うわけであります。御承知のとおり、来年度の予算というのはまだ少し先の話ではございますが、その予算編成の第一歩である概算要求のシーリングというのがいま大変課題になっておりまして、そろそろ決定がなされようとしておりますが、そういうことなどをにらみながらレーガン大統領が言われたことではないか、こんなふうに考えるのですが、大臣いかがでしょうか。
  198. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日米の関係からいたしまして、米側日本の防衛の進め方について関心を持つということは、これは当然考えられるところでございます。したがって、日本がきわめて厳しい財政の中で防御努力をしておる、そういう点について大統領が認識をされた言葉ではなかったかと思います。日本としては、憲法の制約、また防衛大綱に基づき自主的に進めておるのでありますから、今後におきましても、同様の見地に立って日本の防衛努力は続けられるわけであります。その間に、日本の財政上から日本の努力を多とした、こういうことでございまして、私は、この大統領の言葉があるなしにかかわらず日本日本として考えていくのが防衛の進め方である、こう思います。
  199. 愛知和男

    愛知委員 せんだって私アメリカに行く機会がございまして、テネシーとかアーカンソーとかいう、アメリカの中で言いますといわば田舎と言えるような地域を訪問して、そこでごく一般的なアメリカの庶民の方々とディスカッションをするような機会があったわけでありますが、そういう話の中で私も非常にびっくりしたのは、アメリカの国民が、日本が国際社会の中でしかるべきことをやってないんではないか、よく言われるただ乗りということでありますが、こういう気持ちを持っているということを非常に痛感をいたしたわけであります。いま日米関係で貿易摩擦の問題等が非常に話題になっておりますが、貿易摩擦の問題というのは、ある意味で言いますと、アメリカの中でもある特定の地域に限られた人たちがこの問題に非常に関心を持っているということでありますが、しかし、日本のただ乗りというこういう対日感情、日本に対するこの気持ちというのは、貿易問題と少しスケールが違う、アメリカの国民一般にある気持ちではないか、こういうことをそういう私の経験の中からしみじみ感じたわけであります。  昨年からことしにかけての防衛費、日本は七・七五%伸ばしたわけであります。これをことしから来年にかけてどうするかということ。最終的には今年の末に予算の編成、政府の原案ができる。そういう中でその形がはっきり示されるわけですが、その第一歩でありますシーリング、このシーリングを設定する場合に数字を出さなければなりません。その数字の出方によっては、アメリカ人の持つ、この末端までに行き渡っております日本のただ乗り、こういう意識、これは去年からことしにかけて非常に防御努力をしたというようなこともありまして余り表面化しておりませんが、潜在的には非常にそういう気持ちを持っているアメリカ人、今度のシーリングの数字によってそれに火をつけてしまうという危険もあるわけであります。したがいまして、防衛費に関するシーリングをどう設定するかということは、単に予算の問題だけではなくて外交上のきわめて大きな問題である、こんなふうに思うのであります。予算は最終的にはまだまだ時間の余裕があるとはいうものの、シーリングでありますから、シーリングを決めてしまったらそれ以上にはならないわけでありますから、そういう意味で言いますと、大変大きな意味があると思います。大臣はその点についてどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  200. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本が自主的に防衛努力をいたすことは言うまでもないことでございます。きょう閣議の席上におきまして、大蔵大臣が昨日の政府・与党のいわゆる十一人委員会での説明ぶりをお話しになりましたが、五十八年度予算はマイナスシーリングを予想するきわめて厳しいものであるが、しかし特定の項目については別扱いにする、こういうことで、その別扱いは本年と同じような考え方に立ちたい、こういうことでありますから、愛知委員御心配をされておりますが、第一段階の防御費が別扱いになるということはこの発言で明らかであると思うのであります。しかし、それが何%になるかということについてはこれからの問題でございまして、防衛庁が中心で御努力を願いますとともに、外交上の見地から必要なことがあれば私も発言をいたしたいと思っております。  もう一点、愛知委員が言われました米国の国民世論の問題でございますが、これは皆様方の御努力によりまして米国民の認識が改められておるようでございますが、これについては外務省としてはもっと広報活動を活発にいたしまして、日本がいわゆるただ乗り論の範疇にあるものでないということについては明白にしてまいりたいと思います。
  201. 愛知和男

    愛知委員 大臣がいま言われましたように、来年度の予算で特別な項目として防衛費を取り上げるということについては、ぜひそうしなければならないと思いますが、特別な項目だと言うだけではなくて、問題は数字であります。去年からことしにかけての七・七五%以上の数字でシーリングが設定されませんと、これは外交上大変問題になるのではないか、このように思いますので、防衛の問題でありますから防衛庁がやる仕事だということではなくて、これは大変大事な外交上の課題であると思いますので、外務大臣あるいは外務省におかれましても、そういう観点からもこの問題の取り組みについては、傍観者といいますか主役ではないということではなくて、ぜひ中心になって取り組んでいただきたい。お願いをいたしておきます。  フォークランドの紛争が終わりましたが、そのフォークランド問題、一連のこの事件に関連して日本外交でも多くの教訓を受けたのではないかと思います。きょう実はその点についてお伺いをしたかったわけであります。  さらに、昨年PLOのアラファト議長を日本に呼ぶ、これは政府の招待ではなかったわけではございますが、PLO議長が日本においでになった際に総理とか外務大臣がお会いになるということから、日本のPLO政策というものが非常に世界的にも証拠になったわけでございますが、レバノン紛争後のこのPLOに対する日本の政策、考え方がどういうふうに変わってきたのかというようなことなどについて質疑をしたかったわけでありますが、時間でございますので、各担当の局長さん、わざわざお越しをいただきましたが、次の機会にこの点をお伺いすることにいたしまして、きょうのところはこれでやめさしていただきます。  ありがとうございました。      ————◇—————
  202. 中山正暉

    中山委員長 次に、千九百八十年の国際ココア協定締結について承認を求めるの件、千九百八十一年九月二十五日に国際コーヒー理事会決議によって承認された千九百七十六年の国際コーヒー協定有効期間の延長の受諾について承認を求めるの件、日本国政府スペイン政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件及び日本国政府バングラデシュ人民共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件の四件を議題といたします。  政府より順次提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣櫻内義雄君。     —————————————  千九百八十年の国際ココア協定締結について承認を求めるの件  千九百八十一年九月二十五日に国際コーヒー理事会決議によつて承認された千九百七十六年の国際コーヒー協定有効期間の延長の受諾について承認を求めるの件  日本国政府スペイン政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件  日本国政府バングラデシュ人民共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  203. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま議題となりました千九百八十年の国際ココア協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、千九百七十五年の国際ココア協定にかわるものとして、昭和五十五年十一月十九日に、ジュネーブで開催された国際連合ココア会議において採択されたものであります。  この協定は、緩衝在庫の操作によって国際市場におけるココアの価格の変動を防止し、もって、ココア生産国の輸出収入の安定を図ること及びココア消費国への十分な供給を図ることを目的としております。ココア協定として最初の千九百七十二年の国際ココア協定以来締約国となっていたわが国がこの協定を締結することは、ココアの価格の安定に寄与するとともに、開発途上にあるココア生産国の経済発展に引き続き貢献する等の見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百八十一年九月二十五日に国際コーヒー理事会決議によって承認された千九百七十六年の国際コーヒー協定有効期間の延長の受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和五十年に作成されました現行の千九百七十六年の国際コーヒー協定は、国際市場におけるコーヒーの価格の変動を防止し需給の均衡を図るための仕組みにつき定めておりますが、この現行協定が昭和五十七年九月三十日に失効することとなっておりますので、昭和五十六年九月にロンドンで開催されました第三十六回国際コーヒー理事会において、その有効期間を一年間延長することが決議されました。この有効期間の延長は、現行協定の修正または更新についての交渉に時間的余裕を与えるとともに、現行協定のもとでのコーヒーに関する国際協力を継続するためのものであります。  わが国がこの有効期間の延長を受諾することは、安定的なコーヒー貿易の維持に資するとともにコーヒー生産国の経済発展に引き続き貢献するとの見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この有効期間の延長の受諾について御承認を求める次第であります。  次に、日本国政府スペイン政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国とスペインは、ともに古い歴史と文化遺産を有する国であり、両国間ではこれまでも種々の分野において文化交流が行われてきております。両国政府は、このような文化交流をさらに促進するため文化協定締結することとし、交渉を行いました結果、昭和五十七年三月五日にマドリッドにおいて、両国政府の代表者の間でこの協定の署名を行った次第であります。  この協定の規定内容は、戦後わが国が締結した各国との文化協定とほぼ同様であります。  この協定の締結により、両国間の文化関係に基本的な枠組みが与えられ、スペインとの文化交流が今後一層安定した基礎の上に促進されることが期待されます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  最後に、日本国政府バングラデシュ人民共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  バングラデシュ人民共和国は、従来からわが国との文化協定締結に熱意を示してきておりましたが、わが国としても、この熱意にこたえ文化協定締結交渉を行いました結果、昭和五十七年二月十日にダッカにおいて、両国政府の代表者の間でこの協定の署名を行った次第であります。  この協定の規定内容は、戦後わが国が締結した各国との文化協定とほぼ同様であります。  この協定の締結により、両国間の文化関係に基本的な枠組みが与えられ、バングラデシュ人民共和国との文化交流が今後一層安定した基礎の上に促進されることが期待されます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  以上四件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  204. 中山正暉

    中山委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る七日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十七分散会      ————◇—————