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1982-06-02 第96回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年六月二日(水曜日)     午前十一時三十五分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君    理事 奥田 敬和君 理事 川田 正則君    理事 高沢 寅男君 理事 林  保夫君       石原慎太郎君    北村 義和君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       佐藤 一郎君    竹内 黎一君       浜田卓二郎君    松本 十郎君       山下 元利君    井上  泉君       井上 普方君    河上 民雄君       小林  進君    野間 友一君       東中 光雄君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 塩田  章君         外務政務次官  辻  英雄君         外務大臣官房長 伊達 宗起君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    村田 省三君         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   坂本 吉弘君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     —————————————  本日の会議に付した案件  過度傷害を与え又は無差別効果を及ぼすこ  とがあると認められる通常兵器使用禁止又  は制限に関する条約締結について承認を求め  るの件(条約第一五号)  環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用  の禁止に関する条約締結について承認を求め  るの件(条約第一六号)  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生  産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の締  結について承認を求めるの件(条約第二〇号)  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生  産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の実  施に関する法律案内閣提出第七九号)      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  開会に先立ち、公明党・国民会議所属委員に対し出席を求めたのでありますが、いまだに出席がありません。やむを得ず、議事を進めます。  過度傷害を与え又は無差別効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止又は制限に関する条約締結について承認を求めるの件、環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用禁止に関する条約締結について承認を求めるの件及び細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約締結について承認を求めるの件並びに細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の実施に関する法律案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 ただいま委員長からお話がございました三条約に関しまして一、二点御質問いたしたいと思います。  それに先立ちまして外務大臣の御意見を承りたいのでありますが、けさの新聞等でも報道せられておりますように、スウェーデンの元首相のパルメ氏を長といたしますいわゆるパルメ委員会報告書をまとめまして、^その中で、今日の状況の中で非核地帯構想が非常に重要だということで非核地帯構想を提案をいたしまして、今回の第二回国連軍縮特別総会に当たって国連総長にこの案を提示するというふうに伝えられているわけでございます。さきに衆議院、参議院本会議におきまして第二回国連軍縮特別総会に関する決議が採択されましたが、その中におきましても第四項におきまして非核武装地帯構想の推進について触れられているわけでありますけれども、これは当然のことでありますが、日本政府としても重大な関心を持っておられると思いますし、賛意を表せられるものだと確信をいたしておりますけれども外務大臣の御所見をまず承りたいと思います。
  4. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 パルメ委員会が第二回軍縮特別総会を前にいたしまして貴重な提言をされたということは、私もその価値を認めるものでございます。ただいま河上委員から特に非核地帯についてお触れでございますが、パルメ委員会提唱は、まず欧州においてそういう地帯を設ける必要がある、こういうふうに言っておると認識いたします。そして話し合いによってその他の地域においてもそれを広げていくようにと、こういうことでございまして、パルメ委員会の言われておるとおりに、そういうような手段によって非核地帯が拡大されていくことは、そういうことを目標にするということは大事なことではないかと思います。
  5. 河上民雄

    河上委員 いまの大臣の御見解でございますけれども、この非核地帯構想につきましては、もちろんヨーロッパから始めるというような意見もありますけれども、すでに中南米諸国におきましてはこれに関する条約もあるわけでして、そういうようなことから見まして、また、先般の国会におけるわが国決議各党全会一致でございますけれども、そういう点から見まして、やはり日本政府として、この問題についてもっと積極的に世界に訴える責任があるのではないか。今回の第二回国連軍縮特別総会はその絶好の機会ではないかと思いますけれども、その点につきましてもう一度外務大臣の御所見を承りたい。
  6. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現に、地域によってはすでに非核地帯条約のできておるところもございますが、それぞれ経緯があるのでございまして、まさにパルメ委員会指摘しておるとおり、話し合いによって非核地域を拡大していくように、これは大変現実的な提唱であると私は思うのであります。  また、国会における決議を踏まえて日本政府もそのような熱意を持つように、こういうことでございまして、非核地帯を設けることを目標にして話し合いを進めていく、それについて熱意を持つことに私はやぶさかではございません。
  7. 河上民雄

    河上委員 それでは、きょうは条約審査でございますので、いまの大臣の御見解を今後さらに一歩進めていただくことを期待をいたしまして、条約の内容について若干御質問をいたしたいと思います。  過度傷害を与え又は無差別効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止又は制限に関する条約、これをきょう審議することになっているわけでありますが、その第二条に「他の国際取極との関係」というのがございまして、その中に次のように書いてあります。「この条約又はこの条約附属議定書のいかなる規定も、武力紛争の際に適用される国際人道法により締約国に課される他の義務を軽減するものと解してはならない。」まさにこのとおりであろうと思いますが、ここにあります「国際人道法」というものはどういうものを指すのか、これについて外務省の御見解を承りたいと思います。
  8. 栗山尚一

    栗山政府委員 お答え申し上げます。  「国際人道法」というものの正確な定義につきましては、国際法学者の間でいろいろ議論があるところでありますけれども、この条約の第二条の「武力紛争の際に適用される国際人道法」というものにつきましては、私どもはこのように理解しております。  すなわち、御承知のように、いわゆる戦時適用される戦時国際法と申しますものの中には、もっぱら人道的な要請から武力紛争犠牲者、すなわち傷病者でありますとか、捕虜でありますとか、あるいは一般文民でありますとか、そういうものを保護するための一連国際法規というものがございます。その典型的なものがいわゆるジュネーブ条約であろうかと思います。  それからもう一つ、いわゆるへーグ法規と言われております、戦争のいわばルールと申しますか、戦争戦闘行為の方法、手段、こういうものを規制する一連国際法規があります。典型的なものはへーグ陸戦法規のようなものであろうと思います。そういうものの中で、人道的な要請からいろいろな戦闘行為適用されるルールというものがございまして、それと、先ほど申し上げましたもっぱら戦争犠牲者保護に関する国際法規、そういうものとを全体を総合いたしまして、これを「武力紛争の際に適用される国際人道法」、こういうふうに理解するのが一番正しい認識の仕方であろう、こういうふうに考えております。
  9. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、外務省としてはこれにつきまして、いわば広い意味法概念としてそういうふうに理解されておるか。それとも実定法をこれとこれというふうに確認をしておられるのか。もう一度そこだけ……。
  10. 栗山尚一

    栗山政府委員 もちろん私どもとしては実定法として理解しております。ただ実定法と申しましても、具体的な個々の個別の条約以外にも、慣習法として長年の間に確立してきて実定法としての性格を持っておるものも当然ございますので、そういうものも含めて広く理解しておる、こういうことでございます。
  11. 河上民雄

    河上委員 そうしますと、いま実定法として名指しをされました一九四九年八月十二日のいわゆるジュネーブ条約でございますか、これは当然中に入るのだろうと思いますけれども、これについては日本政府はすでに加入をしておる、こういうふうに伺っておりますが、いろいろむずかしい問題があるのですけれども、きょうはちょっと時間が余りありませんので、その中で一つだけ私は確認をしておきたいと思います。  いま言ったジュネーブ条約の第七章「特殊標章」第三十八条に赤十字標章について書いてございます。条約に参加する以上は国内法をそれに合わせていかなくてはならない、これは常識でありますけれども赤十字標章、これは大変小さなことのようでありますが、実は非常に重要なことだと思うのであります。これによりますと、赤十字乱用または不当使用を禁じているわけですね。それに当たる国内法が実際にあるかどうか。私ども、ごく普通に日常生活を見ておりますと、赤十字標章は普通の学校医務室に行ってもありますし、いろいろあると思うのです。たとえば日本自衛隊でこういう標章は使ってはいかぬとか使っていいとか、こういう場合はこうだとか、そういうような具体的なあれがあるのかないのか、これをちょっと伺いたい。
  12. 栗山尚一

    栗山政府委員 赤十字標章につきましては、すでに昭和二十二年に赤十字標章及び名称等使用制限に関する法律というのができておりまして、この法律によりまして「白地赤十字標章若しくは赤十字若しくはジュネーブ十字名称又はこれらに類似する記章若しくは名称は、みだりにこれを用いてはならない。」こういうことで国内法上の規制ができております。
  13. 河上民雄

    河上委員 それは自衛隊法などにもちゃんと明記されておりますか。
  14. 栗山尚一

    栗山政府委員 自衛隊適用があるとの明文の規定はこの法律にはございませんが、当然自衛隊にも適用があるというふうに思われます。
  15. 河上民雄

    河上委員 それはいまちょっと簡単な例を挙げましたけれども、普通の小学校医務室に行きましても赤十字と同じ標章が使われておる、これはわれわれ日常よく見るところでありますが、いま昭和二十二年に制限に関する法律ができていると言いますけれども、こういうようなことは実際に必ずしも厳格に行われていないのじゃないかという気がしますけれども、その点はいかがですか。
  16. 栗山尚一

    栗山政府委員 御承知のようにジュネーブ条約赤十字標章使用に関する規定は、武力紛争におきましてそういう条約上の保護を要求する権利を持たないものがそのような赤十字標章等を使って保護を受けようとするのを、そういう意味での乱用を防止するための規定でございますので、いま先生の御指摘になられた問題とは若干違うのではないかと思います。そのような見地から申し上げれば、先ほどの私が御答弁申し上げました国内法によりまして、このようなことがあってはならないわけでございますけれども、万一わが国武力紛争に巻き込まれたというような場合の規制というものは十分行われ得るのではないか、そういうふうに承知いたしております。
  17. 河上民雄

    河上委員 私が申しておりますのは、これにありますように平時からそれをやらなくてはいかぬとなっておるのでありまして、その点厳格に守られているかどうかということです。一般市民生活におきまして、また自衛隊法との関係においてそれが厳格に守られているかどうかをいま伺ったのでありますが、どうも昭和二十三年の法律があるからそれでいいのだというような感じでございまして、ちょっと私はその点不安を持つのでありますが、いかがでございますか。
  18. 栗山尚一

    栗山政府委員 先生指摘のようにジュネーブ条約に書いてありますことは「平時であると戦時であるとを問わず、この条約及びこの条約と同様な事項について定める他の条約によつて保護される衛生部隊衛生施設、」そういうもの以外は「使用してはならない。」こういうことでございまして、先ほどの自衛隊につきましては、先生質問のときに私十分お答え申し上げませんでしたかもしれませんが、自衛隊法の立て方というのは当然国内法適用除外になるものは自衛隊法の中で明記しております。いま私が調べましたところでは明記の除外規定がございませんので、この法律は当然自衛隊適用になる、こういうふうに御理解いただいてよろしいかと思います。  それから、先ほどの学校その他でわりあいと赤十字標章が自由に使用されておるのではないか、ジュネーブ条約との関係につきまして問題があるのではないかという御質問でございましたけれども、先ほどから申し上げておりますようにこのジュネーブ条約の第一条約で申し上げれば四十四条の規定、これはあくまでも先ほど申し上げましたような趣旨でできておる規定でございますので、先ほど先生のおっしゃられたようなケースというのはこの条約との関係で申し上げれば、私この赤十字法律を十分勉強したわけではございませんのでまことに申しわけございませんが、学校等でそういう赤十字の標識を使うということ自体は直ちにこの法律あるいは条約との関係で問題になるということではないのではなかろうかと考えます。
  19. 河上民雄

    河上委員 ちょっと外務省の御答弁局長の御答弁だけでは限界がまだあまりはっきりしてないような気がいたしますし、何か大変なことが起こったらいかぬのですけれども規定はあくまで平時からその点は厳格にしておく、だからこそそういう異常な事態が起きた場合にそれが権威を持つということなのでありまして、そういう事態になったときにあわてて厳格な線を引くというのではないのではないか、私はそういうふうに理解するのでありまして、きょうは余り時間がありませんからこれ以上強くは申しませんが、ひとつその辺はしっかり御研究をいただくとともに、これはあくまで平時からその点ははっきりさしてこそ初めて権威を持ち得るものだということを私はここで注意を喚起しておきたいと思うのであります。  なお、この国際人道法ということに関連してもう一つお伺いしたいのでありますが、今回の第二回軍縮特別総会に向けての国会決議の第五項に「国際人道法に反する化学兵器等使用開発生産及び貯蔵禁止並びに廃棄のための」云々となっておりますが、大臣、この化学兵器というものはやはり国際人道法に反するという御見解確認されますか。
  20. 栗山尚一

    栗山政府委員 化学兵器につきましては御承知のようにすでに一九二五年に毒ガスの使用禁止に関するジュネーブ議定書がございまして、一般的な認識といたしましては、このような化学兵器使用というものが戦時国際法と申しますか国際人道法と申しますかそういうものに反するということは国際社会一般的な認識として確立しておるものだというふうに理解しております。
  21. 河上民雄

    河上委員 それでは、きょうはちょっと時間が短くて残念でございますけれども、先ほど申しましたような点につきましてはなお今後明確なお答えをいただきたいと思っております。  なお最後に一問だけ、この三条約と若干関係あるのでありますが、当面の問題としていわゆるフォークランド島の紛争について、これを戦争と見るか紛争と見るか、なかなかむずかしい問題があるかと思いますが、国連安保理事会ではアルゼンチンの最初の行動について、これはよくないことだということになったと思うのでありますけれども、その後のイギリス行動につきまして国連においてどのようにしているか。イギリス側はみずからの出動の根拠として、これは国連憲章五十一条ですかを挙げているわけでありますが、それをよく読みますと、国連が実際的な行動をとるまでの一つの暫定的な処置としてそれが認められる、こういうことになっているわけでして、その後大分時がたっているわけですし、特に日本政府国連安保理事国一つでございますので、この問題についてどういうふうに処置をされておるか、または処置をされるつもりか、それだけ伺って私の質問を終わりたいと思います。
  22. 栗山尚一

    栗山政府委員 まず私の方から純粋な法律論としての考え方を申し上げます。  フォークランド諸島武力で占拠いたしましたアルゼンチン行為というものは、国連憲章の二条違反であるというのが私ども日本政府立場でございますし、安保理事会決議五〇二もこのような認識の上に立ったものであろうというふうに考えます。  次に、五十一条との関係で申し上げますと、五十一条はただいま先生指摘のように安保理事会国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間として加盟国自衛権行使を認めておる、こういうことでございまして、イギリスは従来から安保理事会イギリスがとっておる軍事行動についてこの第五十一条に基づいて報告をしておりますが、イギリス立場というものは五十一条に基づいた自衛権行使である、すなわち安保理事会決議五〇二で御承知のように平和の破壊が存在するという認定を行ったわけでございますが、その平和を回復するために必要な措置がまだとられるに至っていない、したがいましてその間イギリスとしては自衛権行使を五十一条に従ってとる権利がある、こういう立場イギリスはとっておるというふうに承知しております。
  23. 河上民雄

    河上委員 私が伺いたいのはその次でして、それじゃ安保理事会日本政府としてはどういう主張をし、また安保理事会方向をどっちの方向へ持っていこうとしておるのかということです。
  24. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  安保理事会におきましては、四月三日の安保理決議五〇二が採択された時点におきましてわが国はその立場を明らかにいたしております。五〇二の骨子は、敵対行為即時停止アルゼンチン軍フォークランド諸島あるいはマルビナス諸島よりの即時撤退、問題の平和的解決のための外交交渉の継続、この三点でございます。わが国はこの決議に賛成いたしておりますし、問題の平和的解決のために関係国決議趣旨に沿って有効な行動をとるようにということを訴えたところでございます。  その後の進展につきましては、御承知いただいておりますように、アメリカのヘイグ国務長官調停が成功しないということがございまして、その後を受けて国連のペレス・デクエヤル事務総長事務総長の権限において調停工作を試みた。これも実を結ばなかったわけでございますが、その後さらに安保理におきまして決議五〇五を採択いたしまして、その骨子決議五〇二の目的に沿うように事務総長がこれまでの努力を踏まえた上でさらに調停工作を継続するということでございまして、わが国はこの事務総長調停工作に大きな期待をかけ、またできるだけの協力をするということで対処いたしております。
  25. 河上民雄

    河上委員 もう時間が参りましたのでこれでやめますが、ひとつ大臣、今度はジュネーブにもまた国連にもいろいろチャンスがおありと思いますので、ただ見守るだけでなしに、安保理事会の一員として、日本政府としてできるだけ早くこうした不幸な事態解決のために努力をすることを強く望みまして、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  26. 中山正暉

  27. 小林進

    小林(進)委員 私は、この三条約一つ国内法案を見まして、何というつまらない、くだらない条約もあったものだと思った。しかし、これがいわゆる国連軍縮総会においでになる総理大臣に対するおみやげだから早く通せとなると、何でこれがおみやげになるのか、それもわからない。わからないのであります。率直に申し上げるけれども、こんなつまらない条約、これを読みながら、私はこの表面にちょっとメモだけさっさっとやってみた。メモだけでも、何だこいつは、米ソ二超大国のエゴだけからでき上がった条約じゃないかというのがまず第一番目だ。  それから、五十六年の四月十日以後四十八カ国が署名しているというけれども、批准したのが今日までメキシコ、中国、フィンランドたった三つだ、あとは署名だけですっぽかしている。これは一体どういうのだ。  それから第一、この兵器は、いわゆる過度傷害を与えまたは無差別効果を及ぼすという兵器は非人道的効果をもたらすおそれがある——何言ってるの、あなた。戦争それ自体がこれほど非人道的なものはないじゃないか。こんなことに賛成すれば戦争自体を認めることになる。実に矛盾しているよ。戦争は人道的だが、過度兵器は非人道的だという、これはそういう逆説も成り立つ理屈なんだ。ばかばかしいじゃないですか。  それから、わが日本専守防衛国だという、あなた方の言葉だ。海外には派兵しないと言っているのだ。それなら、わが日本に、こんな過度傷害を与える地雷だのこんなトラップをもし国内につくったとしたら一体だれが被害を受けるのか。日本国民が全部やられてしまうじゃないか。こんな兵器日本でつくれば被害を受けるのは日本国民だけなんだ。専守防衛、いわゆる海外派兵しないというたてまえから言えば、そんなばかなことを日本がやるわけないじゃないの、気違いでない限り。こんな条約は、専守防衛という原則がある限りは日本には実に無用の長物だ。なぜこんなものを夢中になって審議しなければならないのか。  それから、まだ言えるんだな。この協定の後ろに三つばかり書いてあるが、やれ最後は焼夷兵器使用禁止云々とか言っているが、それといまできてる通常兵器と殺傷を及ぼす比率は一体どれだけ違うの、その比率をひとつ言ってごらん。数字で出してくれ。数字を出さなければ、こんなものは目くそ鼻くその部類だ。  それから、特に私はこの条約に関連して言いたいが、第二次世界大戦でB29がわが日本の全都市を空襲をして何十万人を殺した、これは一体国際法違反じゃないのかね。それから広島、長崎にあの原爆を落とした、これは国際法違反じゃないのかね。もし国際条約を審議するというのなら、私はそこら辺から入ってもらいたいな。外務省、一体どうしているんだ。  今度も国際条約なんかの一いろいろ書いて国連事務総長に何とか管理を委託すると言っているのだけれども国連なんというものがこの条約を実行し違反したものに対して一体どれだけ効果があるのかね。いまわが党の河上さんが言っていたけれどもフォークランド一つでも、じゃかじゃかやっているが国連があのばかな戦争をなぜ停止できないのだ。何にも力のないのを露出しているその前に、われわれがこんな無意味条約を審議していなければならぬ理由は一体どこにあるんだ。昔の人の言葉に、「大宮人は暇ありゃ桜かざしてきょうも暮らしぬ」というのがあるが、これはまさにわが国国会などというものは、外務委員会などというものはその大宮人みたいなものだよ。桜かざしてこういう現実に即しない条約を審議しているという感を私はたまたま深うしたのであります。  けれども、いま承りましたらわが党もこの三条約には賛成するということでありますから、まず一時間質問を続けて、最後には残念だが賛成に参りたいと思います。  第一に、一つお伺いいたしたい。  まず、いま申し上げましたことからいって不満の一つは、第二次世界大戦後の一九六一年九月から米ソ超大国が軍縮を行うことに合意した、ここからやっと国連を中心にして軍縮に対する条約というものが日程に上っていった。それから出てくるものは全部米ソの息のかかったものだけなんだよ。言いかえれば米ソという超大国が合意しない軍縮条約というのは今日まで一つもないのだ。しかも、その米ソを中心にして作成された条約というものは、米ソがもう戦略的に、戦術的に、技術的に必要がなくなったものだけなんだよ。彼ら自身にはもう必要がないけれども、以下の小国、日本も含めて、そういう国だけを制約していこうという超大国のエゴのもとに軍縮条約はみんなでき上がっている。いま人類を脅かしているものは、日本も含め、まあイギリス、フランス、みんな含めて、この人たちがいま人類を脅かしているのじゃないのですよ、米ソの二つの超大国なんです。これが一番悪者なんだ。この悪者に被爆国としてまともに取り組むという姿勢がいま日本に一番必要なんだ。外務省に一番必要なんだ。外務官僚に一番必要なんだ。ところが、これを全部見ているとこの二つの超大国、特にアメリカ、これはこの前も言ったが、特にアメリカの中でも野党とか住民の意向を無視してレーガンとかマッカーサー——マッカーサーは違いますけれども、そういう時の権力者の意向に追随をしていこうというわが外務官僚の習性がある。その習性からこういうのが出ているから私は不愉快で不愉快でたまらぬのだ。一体どうですか。私がいま申し上げましたすべての軍縮条約というものは米ソ二つの超大国の発想から生まれているということに対して、外務大臣いかがですか。私の言うことにうそがありますか。
  28. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま小林委員が御指摘になられましたように、一九六〇年代以降成立を見ました数々の軍縮に関連する国際条約というものは米ソ両国のイニシアチブに基づくものが多い、そのとおりでございます。  私どもがこういった事実をどのように理解しているかという点につき申し上げさせていただきますと、軍縮と申しますのは現実の問題として現にそういった兵器を持っているあるいは持つ可能性が大きいという国が率先して行動に移るということなくしては実効性のある国際的な取り決めというものを導き出すことができないという事実がございます。かような意味で、私ども日本の軍縮に携わる者といたしましては、必要な問題につきましてはこういった米国あるいはソ連、その他かかわりの大きい国に対して積極的に軍縮について訴えていく、問題を提起していくということが必要であり、またそれが実効性につながる方策である、かように考えるのでございます。
  29. 小林進

    小林(進)委員 いずれにいたしましても、皆さん方の発想はいっでも大国、特にアメリカ追随主義です。何でも大きなものについていって御身大切にいこうというのが基本で、こういう軍縮や核に対してはわれわれは唯一の被爆国としてわれはわが道を行く、二超大国何ものぞ、おまえたちは世界の悪だぐらいの毅然とした態度が欲しいというのが国民の願いなんです。それがなくて、大国に追随をしていこう、これが私の不満の第一だ。今度提案している三条約もみんな米ソ主導型の軍縮条約、わが日本の独自性というものは何にも出ていない。  続いてお伺いしますが、日本国際紛争解決する手段として武力行使しないとする平和憲法を持っている世界の唯一の国だから、この点においては一番積極的に発言し得る立場にあるんですから、その日本が核兵器の廃絶を求めるということは、これは当面する人類の悲願なんですよ。この条約なんぞ一々言ったってしようがないけれども、この条約の中にあるブービートラップだとか地雷だとか焼夷兵器、そういう三つ過度兵器条約の中に述べているんだが、こういうものよりも、いま人類が一番要望しているのは核兵器の廃絶なんでしょう。ブービートラップなんというものはいま人類はそれほどおびえていないんだ。地雷なんといったものはだれもおびえていないんだよ。いまおびえているのは核兵器なんだよ。それを一番主張し得るのはわが日本でしょう。それを主張する権利も義務もわれわれは持っているのになぜそれをおやりにならないかということ、これをどうお考えになっているか、これが私の不満の第二点です。外務大臣、せめてこれくらいお答えくださいよ。
  30. 門田省三

    門田(省)政府委員 お尋ねの点につきましては従来もしばしばこの委員会においてございました点で、大臣からも、また先般は総理御みずからもお答えになられたというふうに私は記憶いたしております。つまり、ただいま小林委員が仰せられましたように、核の究極的な廃絶を目指してわれわれは努力すべきである、日本が訴える軍縮外交というものの中心は核の廃絶を目指したものである、言いかえれば核軍縮である、この点はしばしば答弁されているところというふうに私は理解いたしております。  ただ、その場合に、廃絶に向かう道のりはどうであるか。現実の国際社会におきましては実効性のある方法をもって一歩一歩前進していくということが結局は目的に沿うゆえんであるということから、わが方といたしましては核軍縮の実効性の伴うような方策を打ち出していくということにいたしている、この点は御了解いただいているところと存じます。
  31. 小林進

    小林(進)委員 君は国連局長と言っているんだけれども、君なんかがついているから外務大臣も前進的じゃなくて、だんだん後退的にならざるを得ないことで、嘆かわしい至りだけれどもね。  外務大臣は今夕お立ちになって、それからパリへ行ってサミットに出席されて、軍縮会議にも総理と一緒においでになると思うのだが、これに関連いたしましてぜひひとつパリでも軍縮会議でもこれから私の言うことをまともに主張してもらいたいと思うんだ。  それは米ソの指導者は、アメリカのレーガンもあるいはブレジネフもやはり全面的な核戦争というものは何とか避けなければならないと考えていることは事実だ。事実だが、その中のアメリカのレーガンの考え方は、これはアメリカ本土における核戦争は避けなくちゃならない。けれども、本土以外では、それがあるいは必要なときは、限定核戦争でときにはそれをやり得る場合も考えなくちゃならないという、こういう観点に立っている。これがおっかない。  いみじくもけさの新聞によりますと、例のスウェーデンのパルメが、これは、私はスウェーデンに行って親しく話をしてきましたがりっぱなものでございましたよ。このパルメが、彼がいみじくも言ったんだな。いわゆる核戦争の限定戦争なんというものはナンセンスなんだ。核戦争があればこれは無限に拡大していく。で、数字を挙げている。そのときにはアメリカの国民が一億五百万人から六千万人も死んでしまうというのだ。これは彼の科学的な推定から出るんでしょう。ソ連は五千万から一億人だというのだ。むしろアメリカよりもうんと被害が小さい。こういう発表をしているんだな。これに対していまのアメリカの国民でまだそのレーガンの政策を支持している者は、まあアメリカの本土においては核戦争はないんだ、われわれは被害がないんだ、アメリカ外でやるんだからということで支持しようというのが五〇%を超えているというんだね。これが、今度はアメリカ本土にもこの核の被害が及ぼすということになりますと、アメリカ国内における世論もぐっと変わりますよ。もうあなたがパリへ行っているころには、このパルメ報告書に基づいてアメリカにおいてはマクナマラだとかケネディあたりの主張がぐっと出てきて、レーガンの姿は見る影もなく薄らいでいく。そこをひとつ考えてこれからの旅を続けてもらわなければならぬが、このパルメ委員長報告に対する外務省所見をひとつ承っておきたい。
  32. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 レーガン大統領は限定核戦争はやるんだ、こういう御認識か前提を中心で御所論があった、こう思うのでありますが、私は、被爆国の日本から見て、限定核戦争が行われる、またそういうことを現実にレーガン大統領が考えておるというようなふうには考えない一人であります。  何といっても、このような核兵器使用による悲惨な状態というものが二度と起きてはならない、これはもうわれわれのかたい決意であるわけでございまして、また、どのような悲惨なことになるかということは多くの世界の人たちが認識をしておるところだ、こう思うのであります。したがって、限定核戦争はあるんだという前提には私は立たないわけでございまして、先般国会で、両院で決議をしていただきましたとおり、われわれが被爆国の立場から悲惨な核戦争を、仮に限定しようと、こうなりましても、それは本格的な核戦争につながるものでございまして、そういうことについては、われわれとしては繰り返しこのような事態を起こしてはならないというかたい決意で臨んでいきたいと思います。  ただいまパリへ行きあるいはニューヨークヘ行ってしっかりやってくるようにという小林委員のお話でございますが、もうそのとおりにやってくる考えでございます。
  33. 小林進

    小林(進)委員 けさも早々に起きてテレビを見ておりましたら、またレーガンが核軍縮会議の問題に関連して、やはりいま米ソの核兵器を現状で凍結することは、ソ連にむしろ利益を与えることに結果はなるのであって、それは賛成できない。あくまでも、やはりアメリカは核を優先的に持っていって、ソ連の現状よりもアメリカの核の数が優位に立ったその次に、いわゆる米ソの核軍縮の話し合いに入らなければという主張を依然としてやっているんですね。これは、やはり片方から考えれば、アメリカが仮にソ連の核より有利になった場合に、ソ連は黙っていわゆる劣勢のままに現状を維持しているか、そんなことはあり得ない。あり得ないからこそこの十年間、SALTの交渉において、おまえの方は質がすぐれているが、おれは量でいく、おまえの方は量がいいからというのでおれはまた質でいくと言って、あのSALT交渉はちっとも軍縮じゃない。全部軍拡に通じている。この競争は、いまのレーガンの主張を続けていけばさらに軍拡の道を進んでいくという、彼自身がこれは証明することになるんだけれども、これほど危険なことはない。これは人類の滅亡に通ずるんですよ。核の無限大の拡大競争だ。そういうことを、いみじくも日本外務大臣総理大臣外務省の官僚がこのレーガンの主張を認めるようだったら、われわれはこの国に生きている自信を失ってしまう。国籍を早く返上しなくちゃならない。それを私は申し上げているのであって、そういう間違いをパリからニューヨークに至る間においてひとつきちっと整理をしていただきたいというのが私のお願いです。  そこで、また本論へ戻りますけれども、この特定通常兵器禁止条約の前文に、「過度傷害又は無用の苦痛を与える兵器、」云々ということで、先ほど私が申し上げましたブービートラップだの地雷が入っている。この中で一体核兵器が入っているのかどうか。これは決まっているようなことでありますけれども、お伺いしておきたいのです。核の兵器は人道的でない、非人道的だとおっしゃるならば、この過度傷害、無用の苦痛を与える兵器の中に核兵器は一体入っているのか入ってないのか、外務省。時間がないのでひとつ早くしてくれ。
  34. 栗山尚一

    栗山政府委員 二つの点でお答え申し上げます。  一つは、この条約との関連で申し上げれば、表題に明記してございますように、この条約過度傷害を与え又は無差別効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止又は制限に関する条約でございますので、この条約の文脈の中では核兵器というものは対象になっておりません。  それからその次に、一般国際法の問題としまして、過度傷害を与えまたは無差別効果を及ぼすことがあるという兵器一般の中に核兵器というものが入るか、この御質問に対しましては、従来から政府がお答え申し上げておることの繰り返しになりますが、一般的に兵器規制に関しましては、人道的な要請と軍事的な必要性というものとのバランスでもって兵器規制を行っていく、その基準に照らせば、過度傷害を与え、無差別効果を及ぼすことがある、そういう兵器はできるだけ禁止していくべきだ、こういう考え方が国際法あるいは戦時国際法の根底にあるということは紛れもない事実でございますが、そういう原則に照らしまして核兵器というものが国際法上禁止されておるかということになりますると、実定国際法で禁止されているというところまで現在の国際社会は至っていないということは、従来から政府が申し上げておるところでございます。
  35. 小林進

    小林(進)委員 同じことの繰り返しになるけれども、それならば前文の中に麗々しく、過度傷害だとか無用の苦痛だとか、何でこんな美辞麗句を飾る必要がある。これは前文ですよ。条文の魂ですよ。それほど気のきいたことを言うならば、一番過度傷害を与えるものは、こんな通常化学兵器よりはもっと核兵器なんです。無用の苦痛を与えるものは、最大のものは核兵器なんです。一体なぜ被爆国の日本としてそこに焦点を与えて、それぞれの機関の中であなた方は論じないかと言っているのです。そこら辺が私が実にくだらない条約だと申し上げている理由なんです。  いま一つ外務大臣これからまたパリヘおいでになりますから、ついでにちょっとお伺いいたしておきますけれども日本は、国連の総会の場においても非核三原則を総理がお触れになるかどうか、私これは非常に興味を持って見ているのです。日本はあくまでも非核三原則を尊重するということをおっしゃるのかおっしゃらぬのか。これは必ず出てくると思いますがね。ならば、一九八三年までにアメリカは太平洋艦隊に全部トマホークを搭載することを決定しております。資料は全部ここにありますけれども、時間がないからやめますが、やっている。あくまで非核三原則を遵守するためにはトマホークを装備した太平洋艦隊がわが日本に寄港する、あるいは通過をする、この問題といやでもぶつからざるを得ないのです。トマホークを装備した、この日本の寄港をお許しになるとするならば、非核三原則はやめなくちゃいけない。法眼君、外務省の顧問だというのだが、これにも物を言いたいことがいっぱいあるけれども、きょうは言わぬでおきますが、彼の言うように非核二・半原則に変えなくちゃならぬ。あるいは非核三・五原則なんという主張をなすものもあるが、いずれにしろ非核三原則は成立をしない。非核三原則を守るとするならば、いわゆる事前協議の問題からわが日本の平和憲法の問題まで改めていかなければならぬという重大な問題になりますよ。ニューヨークに行かれて、一体どういう交渉を進めてどういう演説をされるのか、私はこれをまた改めてお伺いしておきたいと思うのです。いかがですか。
  36. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはもう言うまでもないことでございまして、総理であろうが私であろうが、非核三原則を厳守する。国会でも国是としてとまで決議が行われておるのでありますから、非核三原則を厳守することは言うまでもございません。
  37. 小林進

    小林(進)委員 それでは米太平洋艦隊のトマホークの配備に関するわが国の態度、核つきトマホーク艦船のわが国への寄港と事前協議及び非核三原則との関係を簡単に、明瞭にひとつ外務省にお聞きしたい。
  38. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お答えいたします。  まず第一点。アメリカがトマホーク、いわゆるクルーズを艦船に搭載するということは決定しております。しかし、核つきのトマホークは一九八四年からでございます。仮に核を積んだ核つきのトマホークが日本に寄港する場合には、もちろん事前協議の対象になります。日本政府としては従来からの非核三原則をもって、これに対処するというのが方針でございます。
  39. 小林進

    小林(進)委員 これは最も基本的な重大問題ですから、いま私は問題提起しておくだけですけれども、いまのような答弁で世の中渡れると思ったら間違いですから、これだけは警告しておきます。  次に、環境何とかという法律についてもお伺いいたしますけれども、これも原則は同じだ。私もこれを読みながらちょっと感じたのだけれども、この環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用禁止に関する条約細菌兵器と同じように国内法でなぜ縛らないのか。これを読んでみて不思議なんだ。私の考えだと細菌その他は民間その他に容易にできるけれども、環境改変の技術などというものは時の政府でなければできないな。だから民間その他は縛ってしまうけれども政府がおやりになることは野放しで自由でよろしいということなんだろうけれども、われわれ国民の側から見ると一番おっかないのは政府なんだ。憲法を守らないのも政府だし、そういう核を積んだ兵器の寄港を許すのも政府だし、その一番恐ろしい政府に対して国内法をつくらないで野放しにしておくというのは一体どういう意味なんだ。野放しならみんな野放しにせい。三条約みんな野放しにすればいいのだけれども一つだけは国内法を設けてあとは野放しにする。それはよその国も縛らぬからおれの方もまねして縛らないと理屈を言うかもしれないけれども、そんな答弁はだめだ。  それから第二番目で、この条約の寄託者は国連事務総長になっておる。そしてこういう条約をつくることによって兵器の管理体制、管理体制というのは国連の統制力といいますか、管理力を強めるということなんだろうけれども、先ほどから言っておるように、いまの国連にこれを寄託して、国連事務総長がどれだけ威力を発揮してこの条約の実行を迫る力があるか。具体的なその方法があったら教えてもらいたい。フォークランドに見られるとおり国連の力なんというものは何にもならぬじゃないかと思わざるを得ない。環境兵器と原子力兵器とどっちが危険かということぐらいはこんな条約を審議するときに第一番目の議題にならなければならぬのに、一体、日本の代表たちはそんなことは何も触れなかったのかどうか。これが不思議でたまらぬ。環境兵器の危険が出るならばまずそれに先んじて核兵器の危険というものは日本立場から堂々と論じなければならぬのにさっぱり論じられた傾向はない。これは不思議だ。  そういうことを幾つも思いながら質問を繰り返していくことにいたしますが、先ほども言うように、第一番目には米ソの共同提案の草案を得て作成されたというのだが、これに対して中国がわれわれの言いたいことをもって批判しておるのだな、これは入ってないのだけれども。中国はこの条約に反対して、その反対の理由にこういうことを言っておるのだ。これは世界の世論をごまかすものでしかなく、北極や南極の万年雪を解かすような遠い将来を問題にするよりもっと差し迫った問題があるはずだ。二つの超大国、二国の合意を世界に押しつけるのはみずからの軍備拡張を覆い隠し、核軍縮の行き詰まりの目先をかわす手段にほかならない。だから中国が反対だ。これは真実をうがっておりますよ。これは正論だと私は思うのだな。こういう言葉は中国をして言わしめないで日本政府をして言わせなければならぬ言葉なんだ。それは言ってないのだが、米ソの主導によって緊急な課題というだけのものでもないのだ。またいまの環境云々という条約は軍備競争のらち外にあるのだ。未来兵器規制にエネルギーを費やすのは今日の時代は正当でないと私は考えておるのだ。先の先まで至るような夢みたいな話なんだ。一体政府見解はどうか、承っておきたいのであります。
  40. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  小林委員仰せられましたように、この環境改変技術に関する国際条約というものの緊急性といいますか、われわれにとっての重要性というものについて、御指摘のございました核の問題と比較するとき、これは仰せのとおりに、はるかに核の問題の優先度が高いというふうに認識いたします。しかしながら、軍縮への道というものは非常に遠いものでございます。また、範囲も広いものでございまして、できるものから一つ一つ拾っていく、それを一つ一つ履行していくということ、これまた非常に意味のあることであろうかと思います。御承知いただいておりますように、核の問題につきましては、日本政府といたしましても国連あるいはジュネーブの軍縮委員会の場を通じまして、実行可能な道を探りうつ積極的に提案し、また発言をしているところでございます。その点御理解賜りたいと存じます。  また、国連がこの条約との関連で何ができるかというお尋ねがございました。この点につきましては、条約の実施につき疑義が、疑念が生じた場合には、まず当事国間で協議を行う、その次には専門家の協議会を開くということで、その後さらに国連の安全保障理事会に問題が上がってまいりまして、安全保障理事会におきましては、国連憲章に従って所要の対応措置をとるということに相なっております点、申し添えたいと思います。
  41. 小林進

    小林(進)委員 時間も迫ってきましたから、要約して質問いたしまするけれども、この条約の内容なんというものは何にもない。何にもないんだ、こんなものは。たとえば地震あるいは津波あるいは人為的による天候の変更、一体こんなことを実際にいまやっている国はありますか。研究の完成した国はありますか。あったらお聞かせ願いたい。  それから、なお、限定的にこんなことを決めるという、その客観的な基準というものは、一体具体的に何なんだ。ただ抽象的に津波だとか地震だとか天候の変異だとか言っているだけの話であって、何にも具体的な規制の基準はない。  それから、次にまたその環境兵器の研究開発に対する規制というものはこの条約に何にもない。これは研究だあるいは開発だということになれば、何をやってもよろしい、こういう逆説も生まれてくるわけであって、これは全くしり抜けだ。だから、言いかえればこんなものは軍縮条約に値する条約じゃないですよ。単なる注意規定だ、こんなものは精神的な訓示規定ですよ、と解さざるを得ない。それを、いまの国連局長か何かの話を聞いていると、いかにもこれは完全軍縮への道、一里塚のような、そんなような話をしているが、ばかもほどほどにしなさいと言いたくなるのですよ。  それに関連してなおお尋ねするけれども、一体これができ上がってから日本は五年間も、それほどあなたが言うようなりっぱな条約なら、国連での推奨決議の中の共同提案国に日本はなっているんだよ、共同提案国になっておりながら、五年間もこれを署名もしないですっぽかしておいて、いよいよいま国連の軍縮会議が目の前に来たからといって、あわてふためいて何とかこれをひとつ国会でよろしくなんというのは、これがまた実に不可解千万な話だ。  以上、どうなっているのか、ちょっと御答弁願いたい。
  42. 門田省三

    門田(省)政府委員 政府といたしましては、軍縮関係条約につきましては、できるだけ早い時期にこれを受諾し得るようにするということで努力をしてまいってきたところでございまして、今回ようやく御審議を得ましてこれを国際的に受諾し得る段階に至りましたわけでございますので、何とぞよろしく御理解いただきたいと存じます。
  43. 小林進

    小林(進)委員 いまの私の質問にこれは答弁になっておりましょうかね。委員長も、委員長席に座って、あなた、ただ座るだけが能じゃないので、これはやっぱり答弁を聞いて、ジャッジマンですから、いいですか、その答弁やり直さしてくださいよ。これは五年間なぜ一体すっぽかしたかと聞いているのです。みずから共同提案国になってなぜ今日までそのままにしておいたかということを言っている。
  44. 中山正暉

    中山委員長 再質問ですね。(小林(進)委員「はい」と呼ぶ)門田国連局長
  45. 門田省三

    門田(省)政府委員 先ほど申し上げませんでございましたのですが、何分にもこの条約は科学技術的な側面が多いわけでございまして、各国がどのように対応していくかという点も眺めながら、どのようなインプリケーションがあり得るか、いろいろ考えていたということが今日に至りました理由の一つでございます。
  46. 小林進

    小林(進)委員 全く答弁にならないよ。  時間も迫ってきているから、個条で聞きますよ。いいですか。  第一番目には、この条約に該当する技術は世界にいま現存しているかどうか、これが一つです。津波を起こしたり地震を起こしたりというような技術が現存するかどうか、これが一つ。  それから、第二番目には、今日まで使用された改変技術、環境を破壊する改変技術は、みんな禁止の対象になるのかどうか。いいですか、これが二番目だ。たとえて言えば核兵器使用、放射性廃棄物の投棄、こういうことも一体対象になるかどうか。     〔委員長退席、稲垣委員長代理着席〕  それから、枯れ葉剤、ベトナム戦争でずいぶんこれ環境を破壊しましたよ。この枯れ葉剤の使用、一体これも禁止になるかどうか。  それから、戦争に対する最大の環境破壊という命題は一体肯定されるのかどうか。  以上の点をひとつ御質問しておきましょう。
  47. 門田省三

    門田(省)政府委員 まず第一のお尋ねでございますところの、この条約に言うような科学技術が存在するのかどうかという点についてでございます。  環境を変えるという意味合いから、たとえば降雨量、雨の降る量をふやす、これによりまして灌漑を促進するという手だてがございます。あるいはまた、寒いときに、ひょうが出て、冷害がございますが、こういったものをなくする。あるいは霧、これを散消するといいますか、霧を散らかすことによりまして、飛行場あるいは港における航空機の発着あるいは船舶の出入港を容易にする。こういう観点から、平和的利用を目的とする改変技術というものが研究されあるいは開発されているという事情でございまして、こういった意味では、環境に変化を及ぼすような技術は研究の段階にあるということが申せると存じます。  次にお尋ねのございました核兵器あるいは放射性廃棄物を海中に投入することあるいは枯れ葉剤、こういったものはどうかという点でございますが、私どもの理解するところでは、この条約におきましては、いかなる手段を使うかということについては触れておりませんで、自然の環境を人工的に改変するということが敵対行為に用いられ、惨害を及ぼすということはよくないというように規定しているものと理解いたしております。
  48. 小林進

    小林(進)委員 いまの御説明を聞いておると、どうもわからないんだな。環境破壊については、いかなる手段を用いるかは問題じゃないと言うんだ、そういう規定はないと言うんだ。これはちょっとおかしいんだな。  放射性廃棄物なんというものは、これも当面する大変な問題で、いま日本はどうもフランスに委託して廃棄物の再処理をやっているらしいが、フランスはもうそれをお受けするのをやめた、日本にみんな持ち帰ってもらうというような話も出てきて、これは日本じゅうが廃棄物の山になってしまうだろうという危険があるわけだが、これも含まれていないんだな。  そこら辺一番問題なのは、枯れ葉剤だな。これは手段じゃないですよ。枯れ葉剤をアメリカはベトナム戦争で用いた。これは手段として用いたのだから、あなたは関係ないと言う。そういう説明なのかどうか、私はちょっと聞き漏らしてわからぬけれども、枯れ葉剤がベトナム戦争使用されたその証拠が、いまも生々しく残っているのですよ。私はここでみんな見ているんだ。これほど環境破壊の物すごいものはないんだ。これはテレビのニュースショーでもこの実態が報告されて、これは広島の原爆のあの悲惨なるテレビ、写真と同様ぐらいに人心を恐れおののかしめた。  ここにもありますよ。「子々孫々まで破壊されたベトナム枯れ葉作戦 二十年後の恐怖」こういうふうに出ている枯れ葉剤の使用、これは一体環境破壊じゃないと言うのか。これほどの物すごい環境を破壊したものを問題にしないということが、アメリカに対して免罪符を与えたかっこうにならざるを得ないし、また今後の戦争においても、この枯れ葉剤の使用はもうノーズロース、御自由にお使いくださいという決定をこの条約によって行ったという結果にもなるわけだ。そういう意味において、一体日本政府はこの枯れ葉剤は環境破壊につながらぬとお考えになっておるのかどうか。これは非常に重大なポイントでありまするから、お聞かせを願いたいと思います。
  49. 門田省三

    門田(省)政府委員 先ほどのお答えが十分でございませんでしたことを申しわけなく存じます。  私が申し上げたいと思いましたのは、この条約では特にこういう手段、こういう兵器を使ってということは述べていないということを申し上げたのでございますが、ただいま承りました小林委員のお言葉に従ってお答えさせていただきますれば、仮に枯れ葉剤というものがきわめて大量に使用されまして、それが環境を大きく変え、その結果大きな惨害をもたらすということになる場合には、そのような枯れ葉剤の大規模な大量使用というものはこの協定の禁止の対象になる、かように解します。
  50. 小林進

    小林(進)委員 これは新しい答弁をいただきましたよ。この枯れ葉剤を、あなた多量ということをおっしゃったが、使えば、これはやはりこの条約に基づいて禁止の対象になるとおっしゃった。これはよろしゅうございますかな。何かいままでの私どもの情報では、枯れ葉剤は入っていないというふうに受けとめていた。で、アメリカは、いまの言葉じゃないが、当時はこの枯れ葉剤を使ったことに対して、これは対植物兵器であって環境を破壊したものではない、こういう言いわけをしてこの危機を逃がれた。こういう理屈がこの条約制定の論議の過程においてもアメリカ側から提出をせられて、結論においてはアメリカの威力の前に日本を初め小国が屈服をして、枯れ葉剤はこの中に含まれていない、そういう了解に達したと私は聞いているのだが、いかがですか。ちょっとあなたのお話と違うようだけれども
  51. 栗山尚一

    栗山政府委員 条約の解釈の問題でございますので、私から補足的に申し上げさせていただきますと、基本的には先ほど国連局長から答弁申し上げたとおりでございまして、枯れ葉剤の使用そのものがこの条約禁止されているということではないと存じます。しかしながら、枯れ葉剤も使用の態様いかんによっては、先ほど御答弁申し上げましたように、条約の一条で言うところの「広範な、長期的な又は深刻な効果をもたらすような環境改変技術軍事的使用」というものに該当する場合が当然あり得るということで、したがいまして、枯れ葉剤の使用そのものがこの条約によって禁止されているということはございませんが、使用の態様いかんによっては、十分この条約禁止の対象になっておる「環境改変技術軍事的使用」というものに該当し得るということは、条約の審議経過から見てもそのとおりでございますし、私の承知しておりますところでは、アメリカの軍縮庁が出しております文書でも、アメリカ自身もそういうふうに理解しておるというふうに私ども承知しております。
  52. 小林進

    小林(進)委員 条約局長がそれまで確信を持っておっしゃるならば、私もこれ以上の追及はやめて、これはネックにしておきましょう。皆さん方はちょいちょい巧妙に言葉を直してわれわれをごまかそうとされる習性をお持ちだから、ちょっとこの点はひとつネックにしておきます。  私に与えられた時間がもう参りました。残念ながらまだ質問の半分にも至らないのでございますけれども、お約束は守らなければなりませんからやめますが、ただ一問、細菌兵器の問題にも私は至らなかったのだが、先ほどもちょっと触れましたけれども、なぜ細菌兵器に関する条約だけ国内法を必要とするのか。あとの二つの条約には国内法は必要でないということは言っていることが一つだ。それはやはり兵器の大小あるいは規模によって差があるのじゃないかと私は思う。いま一つは、他国がやらぬから、他国に右へならえしてこんなことになったのじゃないかと思うが、私はこの点がどうも納得できない。  それからこの細菌条約で特にまた言いたいことは、主務大臣が一体だれかということもまだ明確になっておりません。主務大臣が一体だれであるかということも事のついでに伺っておきたい。  ちょうど時間が参りましたから、最後外務大臣に私はどうしてもお願いをしておきたいのですが、先ほども申し上げましたけれども、私はどうしてこれが軍縮会議に臨む総理大臣おみやげになるのかわからない。何かこんなものを決めて持っていくことが、いま本当に当面闘わなければならない核の廃絶、あるいは非核地域の設定、あるいは軍拡競争の停止——それは残念ながら軍拡に関する限りは、ソ連が現状において凍結しようという主張、これはケネディの主張でもあって、どうしてもそれを現状で凍結することはソ連に味方することであるというレーガンの主張は、これは国際的に受け入れられておりませんよ。受け入れられておらない。その問題を、いま皆さん方は、国連の軍縮に行ってこれをごまかしながらあの総理大臣の演説をやろうという構えをお持ちになっている。これはどんなに鈴木さんが名調子をやっても、この点が明確に打ち出されなければそれはだめですよ。核実験は、これは私はちょうだいいたします、このように申し上げました。この演説はいいです。地下核実験はあくまでも禁止するという主張が一本の柱だ。けれども同時に現状での核の製造をさらに拡大をしてアメリカがソ連を追い越すまでは軍縮会議に臨まれないなんというそんなばかげた主張を日本が支持するようだったら、これは日本の、鈴木さんの殺人行為です。私はこれをひとつきちっと明確にやっていただきたいと思う。  それから、やはり核不使用です。これはマクナマラ以下、アメリカにおいても世論は八〇%も支持しているんだ。先制核不使用、これはまた世界が全部関心を持って見ている問題です。そういう問題にも触れないで、おさおさと三つの原則だなんといって、余り軍備に金を使っているから五千億や六千億ドルはほかの方の新興国に使おう、この主張もいいですよ。いいけれども、そんなところに能力を費やして核の不使用だとか核の現状維持とか、これを縮小して廃絶に至るという中心的な議題、これを鈴木さんが言わないと、悔いを百年に残すということを私はひとつ厳重に外務大臣に申し上げておきまして、これに対する外務大臣の御見解を承って私の質問を終わりたいと思います。
  53. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 かねて申し上げておるように、軍事力のバランス、しかもそれはでき得る限り低いレベルに持っていきたい、そのためにはどうしたらいいか、現実に米ソの間で対話が行われることが必要だと思うのです。しかし、その面については中距離核戦力削減についても、また今度のSTARTの交渉についてもこれらは現実的に対話が行われつつあるし、また行われようとしておるわけであります。  この場合に、いま小林委員の一番言われることは核の不使用の問題だと思うのです。しかし、それについては、現在平和が維持されておるについては核の抑止力が効いておる、この核の抑止力というのは通常兵器あるいは核兵器を含んで、そして軍事バランスと言っておる上でのことであるわけでございます。そして日本としては核の廃絶、これを求めておる、そのためには現実的に廃絶される、そういうことを一つ一つやっていきたい、こういうことで、核不拡散条約を普遍的にやること、あるいは核兵器の前提になる核の実験をまずやめてくれ、そういうようなことを繰り返し申してきておるわけでございまして、日本が被爆国としてこの悲惨な体験、経験を経ておるというその立場からする核兵器の廃絶については、これはもう強く訴えることは言うまでもないところでございます。
  54. 小林進

    小林(進)委員 外務大臣の御健闘を心からお祈りをいたしまして、私の質問を終わります。
  55. 稲垣実男

    ○稲垣委員長代理 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  56. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林保夫君。
  57. 林保夫

    ○林(保)委員 本日議題となっておりますいわゆる軍縮三条約及び一法律案につきまして御質問し、またその背景について国連総会へ御出席される大臣に少し御注文もつけておきたい、このように考えております。  まず三条約でございますが、生物兵器禁止に関する条約については直ちにこのように条約の実施に関する法律案をつくるということになっておりますが、なお二つの方はそういう国内法についての措置がございません。必要でないものか、あるのか、あるいは将来やられるのか、その辺のところを事務的で結構でございますから、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  58. 栗山尚一

    栗山政府委員 お答え申し上げます。  三つ条約のうちいわゆる生物兵器禁止条約につきましては、御案内のようにこの条約が意図しておりますところは兵器使用禁止そのものではございませんで、その前段階の開発生産貯蔵禁止ということが目的でございます。しからば、その兵器開発生産貯蔵の当事者がだれになるのかということを考えてみますと、これは必ずしも国または国家機関が行うということばかりではございませんで、当然のことながら民間企業と申しますか、民間産業が規制の対象とならざるを得ない、こういう観点に立ちまして、この条約の実施のためには国内法がどうしても必要である、こういう結論に達しまして、現在国内法案条約にあわせて御審議いただいておる、こういう次第でございます。  ほかの二つの条約につきましては、これはあくまでもそれぞれの条約の対象となります兵器あるいは特定の技術の使用規制条約でございます。その場合に当然のことながら、そういう兵器あるいは技術の軍事的使用を行うことが想定されますのは一般に申し上げれば軍隊であり、わが国の場合は自衛隊ということになろうかと思います。  ところで、自衛隊につきましては、自衛隊法の八十八条の二項において「武力行使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあってはこれを遵守」するという規定がございます。したがいまして、わが国がこれら二つの御審議いただいております条約に入るということになりますれば、当然自衛隊につきましてはこの自衛隊法八十八条二項の規定適用になりまして、この条約禁止されておりますような兵器使用はできない、こういうことになりまするので、一応条約の実施を担保するという意味におきましては当面この自衛隊法八十八条二項の規定で十分であろうというふうに考えまして、国内法を別途つくるということは考えておらない、こういうことでございます。
  59. 林保夫

    ○林(保)委員 事務的にはそういう説明がつくかと思いますが、それはそれといたしまして、今回は生物兵器禁止に関する条約に伴う法律をやるわけでございますが、そこで私は二つ問題があると思うのです。  先ほど来御質問も出たかと思いますが、昭和四十七年四月十日にロンドン、モスクワ及びワシントンでこれが成立いたしておりますが、それがなぜ十年間もほっておかれてこういうことなのか。もう一つは、日本と同じように国連軍縮総会があることを契機にして同様に国内措置あるいは条約の批准というものをとろうとしている国があるかどうか。逆に言いますと、日本はちょっとあわて過ぎて、ほっておいたのにおかしいという点があります。これをひとつわかる範囲でお答えいただけますか。
  60. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、わが国は一九七二年の時点で署名をいたしているわけでございます。なぜこのように十年近くの期間を要したのかというお尋ねでございますが、先ほど条約局長の御説明にもございましたように、この生物兵器条約政府のみならず私人の行為にも多分にかかわっている側面がございます。生物兵器というものの内容、それを手がけておられる私人の方々、いろいろな態様がございまして、これを行政的にどのように防止の観点から適当な措置を講ずべきであるかという点、しさいに検討する必要があったということが一つございます。それと同時に、このような条約国内的に担保する上で他の国においてどのような措置がなされているかということも十分参考にして検討する必要があったわけでございまして、このような点について検討努力を重ねてまいっているうちに今日に至ったという実情でございます。  なおまた、わが国のように今回の第二回国連特総に備えて、これら軍縮条約の批准をそれぞれの立法府あるいは所要の機関において求めておられる国があるかどうか、この点につきましては、つまびらかにいたしていないというのが実情でございます。御了承賜りたいと思います。
  61. 林保夫

    ○林(保)委員 まさにそういうものこそきっちりと外務省が情報予算でもとって、国連総会に向けてどうやるのだというぐらいのところをひとつやってもらいたいという御要望をはっきりと私申し上げておきたいと思います。  それ以上に私は、戦後三十七年間、平和憲法のもとに武力を持たないというようなスタートから平和外交に徹していくのだと言う以上は、やはりそういうベースを踏まえてもっと早く、きょうまで待たないでやるべきことは当然やるということがやはり国際的な責務を果たすゆえんであったろうと思われます。経済摩擦における外圧以上に、そういうような条約そのほか国際的なやらなければならぬ実務的なものが非常におくれているという感じを私はこの二年来この委員会に属しまして禁じ得ませんので、その点ひとつ大臣、後の質問とも関連いたしますので、どうかお気におとめおきいただきたいと思います。  それから、その内容でございますが、今回出しております法律は政令によって主務大臣、そのほかいろいろ決めるようになっておると理解しておりますが、省庁といたしましてどこがどういう部面を担当されるのか、五省庁とも聞いておりますが、御説明願います。
  62. 門田省三

    門田(省)政府委員 国内法の中で報告を求めるという関連で主務大臣規定がございます。この点がただいまお尋ねのございました点と関連があると存じますが、主務大臣がどういう具体的な省庁の大臣になられるかという点につきましては、政令で定めることにいたしておりまして、この政令につきましては、ただいま関係省庁との間で鋭意検討を続けておりますという実情でございます。
  63. 林保夫

    ○林(保)委員 私が説明を受けておりますのは文部省、科学技術庁、農水産省、通産省、厚生省などでございますが、これには間違いございませんか。
  64. 門田省三

    門田(省)政府委員 最終的に合意を見ておりませんが、いまお述べになられましたそれぞれの省庁の大臣は、この主務大臣の対象として考慮されている方々だと理解いたしております。
  65. 林保夫

    ○林(保)委員 事務的な説明でそうなっておりますが、なぜ防衛庁が入らないのかという問題が一つあると思いますが、これはいかがですか。それと法務省も同じだと思います。外務省も同じだと思います。
  66. 門田省三

    門田(省)政府委員 国内法報告を求めるという条項がございますが、その求める報告は、関係省庁の主務大臣がその監督下にある法人でこの条約の対象となるような生物剤の生産等を行っている者あるいはその監督下にございますところの事業体でこういう剤を使って業を営んでいる者等から報告を受けるということになっております。  このような観点からいたしますと、防衛庁の場合には、これはまだ最終的ではございませんが、他の省庁と比べてそういう報告を求めるような実態があるのかどうかという点がございます。それから法務省につきましては、もっぱらこの国内法の関連における罰則の適用という点においてその活動が期待されるわけでございます。外務省につきましては、先ほど申し上げましたような生物剤を取り扱っているような法人あるいは業として営んでいる事業体というものがその監督下にはございません。そういうことでこの報告を求めるという条項との関連における主務大臣には入らないというふうに考えております。
  67. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、お聞きのように、私はここまで未熟なものとはただいままで知りませんでした。主務官庁はどこだというのもちゃんと決まって、こういうことで報告はどうやるということがコンセンサスができて、要綱もつくってぴっちりおやりになることで法律を私は国会に出されたと思います。なぜこういう状況なのか。これでよろしいのでしょうか。
  68. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 今回国連での総理演説までに何とかまとめたい、こういうことで法案の提出を急いだことは事実でございます。ただいま御説明申し上げたとおりに、主務大臣は政令に託しておりますために、この法案提案までにはっきりしたことが決められなかったということはまことに恐縮でありますが、法案成立後に速やかに主務大臣の決定を行い、政令を出したい、このように考えておる次第でございます。
  69. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣率直にお答えになりましたけれども、先日もまた私この委員会で申し上げたと思うのでございますが、南極の動物相、生物相に関するあの問題も、どこがやるのだということを突き詰めていきますと、いろいろと皆さん率直に言って逃げちゃうのでしょうかね。それで外務省へ来たというような感じのものになっておりました。またこの問題も、いま承りましたように何かぬえのような存在でございます。一体どこがどういうふうにやってやるのかというその実施の細目まできっちり詰めているものではどうもなさそうなような感じでございますので、これは私は大変遺憾だと思います。  と同時に、外務省の事務能力の問題もあると私は思います。人数が限られた中であれだけの条約を持って全部やれというのは大体無理な話だ。これはざっくばらんに申しましてそういう問題でもあろうかと思います。大臣、この点もひとつよくお考えいただきまして、これからの外交をやる場合に、国際的なあるいは国内的な双方の問題でのきっちりとした対応をやるためには、もうちょっと考えていただかなければならぬのじゃないか。率直な印象をこのように禁じ得ませんので、ひとつ申し上げておきたいと思います。  それで、もう一つでございますが、先ほどお話になっておりましたこれを業とする者の報告義務を義務づけられておりますが、この業とする者というものは大体どのくらいの数あるのでございましょうか。その一点を事務的にお調べになった結果、御報告いただきたいと思います。
  70. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  たとえば農薬関係において業として農薬の製造をしておられる会社あるいは企業体というものがかなりの数に上るものがあるというわけでございますが、これは農水省において監督されているということでございます。また薬の製造の関係でもいろいろの面での多数の会社、企業体があるわけでございますが、これは厚生省の管轄ということで、具体的にそれらの数が幾らになるかについては、ただいま把握いたしておりません。
  71. 林保夫

    ○林(保)委員 私は、国連総会があるからこうだということで、それはそれなりにという大臣のあれもございますけれども、なおこういうものがきっちりしないで法律を通すということは本当にどうかなという感じがいたすのでございます。各省庁の討議の中で一体どれぐらい国内的な影響力が出てどうなるかというものがきっちりなくて——業を営む者の数ぐらいは出ておらなければ、こういうものをうかつに出すわけにはいかないのじゃないかということでございます。しかし、時間もございませんので、このことを大臣に御認識いただきまして、なお是正もしていただく、こういう注文をつけまして、次の問題に移りたいと思います。  こういう背景で、まさに国民の立場から申しますと、先般総理府の発表いたしました世論調査を見ましても、「戦争の不安」、「危険がある」二八%、「ないことはない」三二%で、「戦争の不安」が六〇%。五十三年十二月の調査は二一、二三でございますので四四%、大変ふえておる。そしてまた、私どもも汗をかいて署名を求めましたけれども、各団体が一生懸命集めてニューヨークヘ向けていまやっておる。また外務省の皆さんも、条件は不備の法律を出してでもやろうかということでしょうと思いますが、それほどまでに今度の国連総会に期待がかかっていると思います。とりあえず事務的に外務省がお調べになったもので参加は何カ国で、主要な十か十五カ国、だれが出るのだ、こういう情報を持っておられますか、承りたいと思います。
  72. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  参加国は国連の全加盟国百五十七カ国となることを予想しております。主な出席者につきましては、アメリカはレーガン大統領、英国サッチャー首相、西独シュミット首相、イタリアからスパドリニ首相、またベルギーからはECの議長国の代表という資格も兼ねてマルテンス首相が出席するというふうに承知いたしております。  議題は第一回国連特総の後の軍縮の状況についての検討、包括的軍縮プログラム、国連の役割りの強化、国際世論の動員のための措置等となることが予想されております。
  73. 林保夫

    ○林(保)委員 もう少し参加国のメンバーを教えていただきたいのです。ソ連はどなたか、中国はどなたか、インドはどなたか、カナダはどなたかとか、十カ国くらいと期待したのですが、わかっている範囲内で結構です、まだ決めてないところはそれで結構ですから、外務省の大変すぐれた情報網で集められた情報をぜひ聞きたいと思います。
  74. 門田省三

    門田(省)政府委員 ソ連につきましてはまだ通報を受けておりません。インド、中国についてもどなたがお見えになるか、まだ承知いたしておりません。なお、カナダにつきましても最終的にどなたが行かれるか、どのレベルになるか、まだもう少し期日が近づかないと決められないというふうに承っておるところでございます。そういうことでお尋ねのございました国々の代表について具体的に申し上げることができなかったわけでございます。御了承賜りたいと存じます。
  75. 林保夫

    ○林(保)委員 先ほど出ておりました議題の中でいろいろあるわけでございますが、軍縮十年の実施及び各国提案の検討というのがイ、ロ、ハ、ニのところへ出ております。これについては私は進んでいるどころか、むしろ逆に軍縮ではなくなっているという判断をしておりますが、外務省はどのような軍縮十年であったと御判断になっておるか、その一点だけ。
  76. 門田省三

    門田(省)政府委員 第一回特総におきまして最終文書もできておりますし、その後、包括軍縮プログラムについてジュネーブの軍縮委員会で作業をしていたわけでございますが、御指摘のございますように、目に見える形での成果は数え上げるに足るものはないと申さざるを得ないと思います。ただ水面下における努力によりまして、その基礎固めはかなり進んでいるのではないか。一例を挙げますと、たとえば全面核実験の禁止の問題につきましては、最近に至りまして、ようやく作業部会を設置するということについての進展が見られたということでございますが、この面におきましても、今回の作業部会の設置ということが一つの契機となりまして、将来の作業にはずみがついていくことを期待しているところでございます。  そのように、目覚ましい進展は必ずしもございませんでしたが、私どもとしましては、基礎固めはかなり進んでいるのではないか、かように観察いたしております。
  77. 林保夫

    ○林(保)委員 そこで、過日、二十九日に鈴木総理が内閣記者団と会見いたしまして、軍縮へ向けての新平和三原則を持っていくということが報道されておりますが、これについてどういうふうな内容かというのを事務当局御説明いただきたいと思います。
  78. 門田省三

    門田(省)政府委員 先日の内閣記者会見で、ただいま林委員が仰せられましたような趣旨を総理が御発言になられたということを新聞報道等にて承知いたしております。  僭越でございますが、私なりに総理が仰せられました三つの原則というものを解釈させていただきますと、一つは、やはり軍縮を通ずる努力ということが平和への道に通ずるものである。やはり兵器というものは平和のためにとっていろいろ問題があるものでございます。したがって、軍縮を進めるその場合にも、従来もおっしゃっておられますように、やはり核の軍縮ということを十分念頭に置いて考えていくということをお考えになっておられたのではないかと存じます。  それと同時に、そういう軍縮への努力だけではなくて、経済的、社会的な不安というものが存在していては平和の達成は望むべくもないという御認識から、軍縮によって生ずるであろう資源をまずは第三世界の経済発展、さらには世界経済の活性化という方向に向けていく、こういうことが平和に通ずる道であるというお考えかと拝察します。  それとあわせまして、やはり軍縮をしていく上には国家間の信頼というものが十分醸成される必要がある。また国際的な環境、雰囲気というものが、安心して生活していけるという安全保障の面が確保されたような国際環境であること、これが軍縮を進める上での一つの基礎になるというお考えであろうかと存じます。  私も、やはり国連が平和維持機能、本来の目的である平和と安全を維持するための機能を強化して、世界の国々が軍備の強化充実に奔走することなく安んじて生活をしていけるような国際環境ができる、これもまた重要な平和への道である、かようにお考えになっておられるものかと拝察するものでございます。
  79. 林保夫

    ○林(保)委員 いまお話しになった第三点の問題でございますが、国連の平和維持機能を強化する、そうしなければ国内で幾ら陳情あるいは署名運動をいたしてニューヨークに押しかけましても一向に空鉄砲に終わってしまう、こういう危惧を禁じ得ないわけでございます。  そこで、私は、そういう国民の期待を外交の専門的な立場からどのように——いまおっしゃったような最後の点で総理が言っておるのは、これは国連のことだろうと思いますが、軍備管理、軍縮に関する監察、管理機能、査察、検証を国連が担当し、軍縮に対する直接協力ができるような機構整備を進める、こう言っております。実はそのことを危惧いたしましたので、先般二十七日の本委員会で総理に敵国条項をどうするんだ、これを含めまして御質問を申し上げたわけでございます。努力するということでございました。しかし、なかなかむずかしいという専門的な立場もございます。ここに外務省のいろいろとお書きになられた資料もございます。そして、かつて愛知元外務大臣国連で敵国条項を取り上げられた。また先般は伊東外務大臣が、これは第三十五回でございますが、国連総会でいろいろ提起されておられます。その中で、いろいろございますけれども見てみますと、一番大きいのは敵国条項と拒否権の問題だと思います。これは努力してできるものなのかどうなのか。あきらめの言葉をきく立場の専門家もございます。ちょっと事務的に一言、時間がございませんので、できるのかできないのか答えてください。
  80. 門田省三

    門田(省)政府委員 拒否権は憲章上の重要規定でございます。これを変更することは非常に困難かと思います。ただ、努力を続けるということは、それなりの十分な価値があるというふうに考えております。
  81. 林保夫

    ○林(保)委員 それからまた、いろいろな問題がございますけれども、事実調査すらできないような国連にいまなっているということも問題だろうと思います。もちろん調査ができないわけですから、紛争調停そのほかできやしませんね。これじゃ幾ら国連国連と言ってわれわれが一億一千万総立ちで軍縮へ向けて、平和の願いを込めて本委員会をやりましても意味ない。しかし、これをやるのはやはり外務省の皆さん、プロの方じゃないとできませんので、十分そのことを踏まえられましてこれからの御努力をお願いしたいと思います。  なお、大臣、今度のサミットあるいはそれ以外の場でも結構でございますが、こういった問題を——敵国と言えば日本よりもドイツの方が印象が強いとも承っておりますし、いろいろ経緯はあると思います。しかし、なお五大国、米英中ソ仏ですか、ここらあたりが拒否権を持ち、さらにはそれらの意思のもとに国連がいまなお今日も動かされておる。このことをあらゆる機会において各国の協力を得ながらやる、やっていかなければならぬと思うのでございますが、外務大臣は今度の国連総会あるいはサミットそのほかの機会で、どういう形でこういった問題を政治的に御尽力なさるのか、御所信を承りたいと思うのです。
  82. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 言うまでもなく、国連憲章をいじる、こういうことから非常に困難性がある。日本は加盟の際に実質的に敵国条項から外れておる、加盟するわが国もまた迎える既加盟国もそのような趣旨であったのではないか、このように認識しておりますので、おっしゃることはよくわかることでございますが、どういう手段でやっていくかということになりますと、やはり事務総長に理解を得て、そして国連憲章をどうするかという機会には考えてもらうというのが適切な方法ではないかと思っておる次第でございます。
  83. 林保夫

    ○林(保)委員 ぜひひとつ、総理の御演説の中にもまた外務大臣がスピーチされておる中でも、やはり根本の問題であって、本当にいま日本ばかりではなくて世界の皆さんが戦争の心配をしておるわけでございますから、そういうことのないようにやるためにはこういう機関でなければならぬのだ、同時にまた、何といいますか、この議題のホの部分でございますか、「軍縮分野における機関の強化と世界軍縮会議招集の可能性を含む国連の役割りの強化」というのも、口頭禅だけではなしに実際に機能するような形へ御尽力を御要望申し上げて、きょうの質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  84. 中山正暉

    中山委員長 野間友一君。
  85. 野間友一

    ○野間委員 公明党が欠席するという異常な中での委員会、大変遺憾でありますけれども、正常化と切り離しての条約なり国内法の審議、私はそういうふうに確認をした上で質問をさせていただきたいと思います。  まず緊急の問題としてのビザの発給問題についてお伺いしたいと思います。  御案内のとおり、私も一昨日門田国連局長のところへ参りまして、特に第二回総会に出席予定の原水協関係の人たち、この人たちが中心のようですが、当時四百名前後というふうに言っておりましたけれども、ビザの発給がなされていない。特に、きょうの新聞報道等によりますと、ニューヨーク・タイムズを引きながら、拒否をした、その数が三百名というふうなことも報道されております。外務省はこれらの点について、アメリカ側が拒否したということなのか、あるいはそうでないのか、どういう認識を持っておるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  86. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  まず、ただいまお尋ねのございましたアメリカはビザの発給を拒否したのかどうかという点につきましては、私どもの理解するところでは、まだ最終的な結論には達していない、言いかえれば、はっきりと拒否をしたというふうには了解いたしておりません。
  87. 野間友一

    ○野間委員 いま外務省はそういう事態を踏まえて、これはぎりぎりタイムリミットが来ておるわけですが、どういうことをされておるのか、あわせてお聞かせいただきたいと思います。
  88. 門田省三

    門田(省)政府委員 本件につきましては、実は先週末の段階で関係者の方々から問題の所在点をお聞かせいただいた経緯がございます。私どもといたしましては、せっかくこの第二回特総の機会に国連に赴かれる方々でございますので御要望が達成されるようにということで措置をとったのでございますが、先ほど野間委員からのお言葉がございましたように、今週に入りましてさらに問題を私どもは十分把握さしていただく機会を得まして、引き続き、ワシントン及び東京の両サイドにおきまして、先ほど申し上げましたように、これらの方々の御希望がかなえられるようにできるだけの善処をお願いしたいということで懸命の努力をいたしているところでございます。そういうことで御理解いただきたいと思うのでございます。  なお、すでに御承知のとおりではございますけれども、ビザの発給はもっぱら発給国の権限に属することでございますので、そういう観点から、私どもといたしましては繰り返し繰り返して意のあるところを述べ、協力を求めるということで努力をいたしているのでございます。
  89. 野間友一

    ○野間委員 外務大臣、まだ出ていない人たち、これはNGOの正式なメンバーで、そして三千万に上る核兵器廃絶等の署名を持って向こうへ行って活動するという任務を持っておるわけですね。すでに新聞報道あるいはいまの局長答弁でも御案内のとおりなんですけれども、きょうないしは遅くともあしたというのがスケジュール。さまざまな人から零細なカンパを仰ぎながら具体的な計画を立てていろいろな段取りを進めておる。ところが、いまに至るもこういう状況なんですね。こういう状況を踏まえて考えてみますと、国連はニューヨークにありますから、これは米国へ入らざるを得ない、こういう関係ですね。だから、この第二回の軍縮総会に出るということをレーガン政権がいまなおビザを出さないということになりますと、軍縮国連総会の一つの妨害と見てもいいんじゃなかろうかというふうに私は思うのです。大変遺憾な状態が続いておりますけれども外務大臣としてどういう御認識を持っておられるのか、そして最大限これがかなえられるように全力を挙げての努力期待するわけですが、いかがでしょう。
  90. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 第一回軍縮特別総会の結果から見ましても、広く国際世論にこの軍縮問題を訴えていく、そういう運動というものが大事であるということは私も深く認識しておるところでございまして、第一回の軍縮総会にも相当多数の方々がお出かけをいただきまして国際世論の喚起に努めた次第でございます。今回もかねて来、相当数の方がお出かけをいただける、こういうことで、われわれとしても力強く感じておるのでありますが、最近になりましてビザがなかなか出ないということで、当初は手続が非常におくれて、そして多人数であるために困難を来しておるということを聞きましたので、これが速やかな発給のための特例を在日のアメリカ大使館、またワシントンにおける日本からの大使館を通じ、速やかにビザの出ることを要請してまいったのでありますが、なかなかその実が上がらずに、おっしゃるようなぎりぎりな段階に参っておりまして、私どもといたしましてはなお一層最後までの努力をいたしたい、このように思っております。
  91. 野間友一

    ○野間委員 事ここに至りますと、事務局レベルと申しますか、そういうレベルではあるいは間に合わないのかもわからないという懸念を私は非常に持つわけです。昨年の日米の首脳会談のときに、鈴木総理が、その成果の一つとしてレーガン大統領と直接電話なり連絡をとれるようになったというふうなことの意義を強調しておりました。今回のこの国連総会に行かれる人たちも、ただ一つの被爆国の国民として世界の国民に強く訴えるということの意義は非常に深い強いものがあるというふうに思うわけだし、鈴木総理が行かれる直前、外務大臣も行かれるわけですけれども、その直前のいまの事態ということも考え合わせて、これはいまも外務大臣の御答弁にもありましたけれども、ぜひひとつ強力に、そのホットラインと申しますか、そういうラインを通じて申し入れをして、実現できるように最大限の努力をということを再度お願いいたすわけですが、外務大臣の再度の御答弁をいただきたいと思います。
  92. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはすでに手続をとられておることでございまして、なお、鈴木総理の軍縮総会における演説の日も大体九日を予定しておる、こういうことも事実でありますので、この鈴木総理の演説に何とか間に合うように、今後一層の発給促進の努力をいたしたい、こう思います。
  93. 野間友一

    ○野間委員 ぜひそのことを強くお願いして、時間がありませんので、次に質問を進めたいと思います。  条約に入る前に、外務大臣に、軍事力の均衡論等についての御見解をお伺いしたいと思います。  四月五日の参議院の予算委員会で、これは総理がこういうふうに言っておりますね。「かねてからレーガン政権は、軍備の増強をアメリカが図っておるというのは、ソ連の今日までの軍備の増強に対応して均衡をまず保持しなければ軍縮の交渉も効果的に進まない、」こう述べまして、「そういう認識については私も認めるものである」あるいは「ある程度理解ができる」、いわゆる軍事力均衡論、これを認める、そういう答弁をされておるわけですが、これについて外務大臣も同様のお考えなのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  94. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私も同様の所見を持っておる次第でございます。単純に均衡論というのでありますが、どのようにして平和を確保していくか、そういう見地から、現実の考え方として均衡論の必要があるのじゃないか、しかしそれはでき得る限り低いレベルの均衡でいくべきではないか、そのためには両超大国の対話の必要がある、こういうことを申してまいりました。最近は中距離核戦力あるいは通常戦略兵器についての削減の話し合いが行われておる、あるいは最近行われるという状況にあるわけで、そういうことも踏まえて均衡論を申し上げておるわけであります。
  95. 野間友一

    ○野間委員 そこでお伺いしたいのは、新聞によりますと、レーガン大統領が核弾頭の増産計画について署名したという報道がございます。この計画は、見てみますと、五年から八年間に一万七千個の核弾頭を増産するというものであります。この計画は、去年、レーガン大統領が打ち出した戦略兵器増強計画、去年の十月二日のものですね、これに見合った核弾頭増産計画で、私はこれは軍拡そのものだ、こう考えるわけであります。  そこで、八〇年の国連事務総長報告であります「核兵器の包括的研究」、これによりますと、核弾頭についてちょっと調べてみますと、戦略あるいは戦域、戦術、このすべての核弾頭の数については、アメリカが二万五千から三万三千個、ソ連が一万一千個から一万五千個、こういうことが「核兵器の包括的研究」の中に数字としてあげられております。核弾頭の数は圧倒的にアメリカが優位に立っておるわけです。そうしますと、どうなんでしょうか、均衡論がもし前提としても、これだけ優位に立ちながら、しかもレーガン大統領がさらに核弾頭の増産計画を発表される、一万七千個さらにふやすということですね。だから、均衡論の立場に立ってもこれは支持できない、こういうふうに私は思うわけです。外務大臣にお伺いしたいのは、こういう増産計画について反対する御意思はお持ちなのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  96. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいま野間委員が御引用になりました国連事務総長報告の統計でございますが、弾頭数に関しましては、仰せのございましたとおりに、アメリカは二万五千から三万三千、ソ連は一万一千から一万五千というふうになっております。  他方、重量の点では、メガトン表示でアメリカは四千ないし八千メガトン、他方ソ連は七千から一万一千メガトンということになっておりまして、重量の点ではソ連の方がまさっていると観察されるものでございます。したがいまして、どちらをもってどういうふうに評価するかということは十分検討に値するのではないか、かように判断されるわけでございます。
  97. 野間友一

    ○野間委員 検討に値するかは別として、いま数字の問題について局長から答弁がありましたけれども、そうしますと、そういうことを前提として外務大臣にお伺いしたいのは、この増産計画について外務大臣、これはお認めになるのか、あるいは認めることはできないという見解に立たれるのか、この点について明らかにしていただきたいと思います。
  98. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 通常兵器、核兵器、それらを総合してどのような軍事力のバランスにあるか、こういうことから考えていかなければならないのであって、アメリカ側がこの近年極力主張しておることは、デタントと言いながら軍事力の増強をしてきて、このまま放置するなら八〇年代中葉においてはそのバランスが崩れる、それに対処しなければならない、こういうことを言っておる、そういう背景があっての今度の増強ということではないか、こう思うのでありまして、増強ということは好ましくございませんが、軍事力均衡の上からやむなくとられておる措置とするならば、理解をしなければならないと思います。
  99. 野間友一

    ○野間委員 そういうことになりますと、結局均衡論そのものは要するに、いろいろ言われますけれども軍縮ではなくて、こういう大きな増産計画について賛成するということに結びついていくわけで、私はこれは大変なことだと言わざるを得ないと思うのです。  次にお尋ねをしたいわけですけれども、この四月十五日付の新聞報道によりますと、ソ連の科学アカデミー極東研究所のドミトリー・ペトロフという教授が共同通信の記者との会見で、いま申し上げたアメリカ政府の計画——失礼しました。その前にもう一つのケースについてお伺いしたいと思いますが、第七艦隊を含めたアメリカの太平洋艦隊、これに核巡航のミサイルを積載する、これはアメリカの政府当局者は公式に何度も言っておるわけですけれども、そうしますと、外務大臣いかがでしょうか、これもソ連との均衡回復というようなことでやむを得ない措置と申しますか、支持をされるということになるのかどうか、この点についてはどうなんでしょうか。
  100. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は、第七艦隊に対する具体的にどの程度のことをするのかということを承知しておりませんので、ちょっとお答えがしにくいわけでありますが、ただ従来、よく第七艦隊という場合に、日本領土の周辺を守るもの、こういうような見地に立ってその戦力というものを頭に描くわけでありますが、どうも私の認識ではこの第七艦隊の守備範囲というものは現在相当広い範囲で、われわれの既成観念とは違うのではないかと思っておりますが、お尋ねの点については詳細を承知しておりません。
  101. 野間友一

    ○野間委員 決して否定はされることでなくて、肯定的ないまの答弁だと思うのですけれども、均衡論に立たれる限り、こういう巡航ミサイルの問題にしても、あるいは核弾頭の増産計画にしても、こういうものはやむを得ない措置というようなことも言われたわけですが、こういうことで支持をせざるを得ない、そうなりますと、均衡論と軍縮との関係ということから考えてみますと、外務大臣、たとえばいま申し上げた核弾頭の増産計画は、じゃ一体軍縮の第一歩という理解ができるのかどうか、あるいはそうでなくて、これは軍縮とは関係がないということになるのか、この点についての御認識はいかがでしょうか。
  102. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 野間委員の御質問を聞いておりますと、アメリカがいろいろ計画しておるものを持ち出して、現に軍縮の話が進んでおるのにこういうことはどうだ、端的に言えばそうだと思うのですね。しかし、私はお答えをするときにいつも申し上げるのは、各国ともに軍拡競争になってはいけない、したがって、低いレベルに均衡をすべきである、これはもう各国の願望であり、その努力をしなければならない。そして一方において対話を行おう。そしてお互いにこういう方法はどうか、ああいう方法はどうか、言い合っておる事実というものが一方にあるわけですね。それで今度のSTARTの交渉にしても、六月の下旬にはやろう、こういうことなんでありますから、その方も見て、そうしてその方が成功するように持っていく努力というものがいま軍縮特別総会を控えてのわれわれの務めではないか、このように思うのです。
  103. 野間友一

    ○野間委員 そこで、私、次にお伺いするわけですけれども、ちょっと先ほども申し上げかけたのですが、ソ連の科学アカデミー極東研究所のドミトリー・ペトロフ、この人が先ほど申し上げたアメリカ政府の配備計画に対しまして「ソ連は一、二年後には同様の対抗措置を取らざるを得ない」こう実は述べておるわけですね。これは新聞報道で大きく取り上げております。そうしますと、日本周辺が米ソの核ミサイルの配備競争のるつぼにされるということになってくると私は思うのですね。したがって、抑止力とかバランス論とかいう立場に立つ限り、片方が増強するとそれに対応してまた片方が増強する、この二つの超大国それぞれがそういう理論を前提としてそういう立場に立つ限り、とどまるところを知らない軍拡に進む以外にないのだ。だから、後からも触れますけれども、実際に国連での最終文書等にもありますが、均衡論に立つ限り軍縮というものは成り立ち得ない、こう言わざるを得ないと私は思うのですね。  そこで、そういう点から私はお聞きしておるのですけれども、それはお互いに縮小するのにはそれにこしたことはないわけですけれども、しかし現実のいまの状況は決してそうじゃなくて逆なんだということを、これは実際外務大臣認識されておるのだろうと思うのです。そういう点から一つの側面を確かに外務大臣言われましたけれども、いま現象的に起こっておりますこの二つの大国の軍拡、こういう点がとどまるところを知らないいまの実態からいたしまして、先ほどから申し上げておりますような極東における新たな緊張を醸し出すアメリカの計画には反対するということが軍縮と直接結びついたことであるというふうに私は思うのですけれども、この点について再度外務大臣に御答弁いただきたいと思います。
  104. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 野間委員がおっしゃるようなそういう御論拠というものがあることも認めなければならないと私は思うのですね。しかし、それに対して一体どう対処していくのかということを考えるときに、だから第二回軍縮特別総会がここで行われるし、あるいは超大国の双方がいろいろ提案をしておるのではないか。ですから、見通しとしてこんなことをやっておれば軍拡競争じゃないか。そういうところに持っていかないような国際的な世論も必要であるし、努力も必要であるということがいまやほうはいとして起きておる軍縮に対する各国の熱意であり努力だ、こう思うのです。ですから、それは野間委員のようなお立場でいろいろおっしゃっていただくことはいただくこととして、われわれはまたそういう努力をしていくということによって軍縮の実を上げていきたい、こう思うわけであります。
  105. 野間友一

    ○野間委員 私は、アメリカにしてもソ連にしても、そういうバランス論に立った政策なりやり方そのものについては、これは誤りだという観点からお伺いしておるわけで、そういう点から考えまして、ソ連ももちろんですけれども、具体的に私が申し上げたアメリカの増強計画、こういうものを均衡論に立つ限り支持せざるを得ない、当面の具体的なそういう問題に対する対処の仕方としてそうならざるを得ない、こう思うわけです。いままでの論議の中でもそういうことになっておると思うのです。  そこで、ちょっと角度を変えてお伺いしたいと思うのですけれども、「核兵器の包括的研究」、これではだからこそ力の均衡論を大変に批判いたしまして、これの放棄を呼びかけておるわけですね。その個所について一言引用しますと、こういうことを言っておりますね。「恐怖の均衡による相互抑止という行為は放棄されなければならない。抑止の過程を通じての世界の平和、安定、均衡の維持という概念は、おそらく、存在するもっとも危険な集団的誤謬である。」これは有名な言葉でよく引かれるわけです。これは私はそのとおりだと思うのです。外務大臣は包括的研究の中での均衡論についての評価、危険な集団的な誤謬である、こういう考え方をどういうふうにお考えなのか、これは尊重すべきだ、そのとおりだというふうにお考えなのかどうか、この点についてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  106. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 常に申し上げておるように、私どもは、現実に抑止力が働いておる、しかしその抑止力が野間委員が言われるような拡大競争に伴う抑止というようなことを考えるのではない、われわれとしては低いレベルでもっていこう、その努力をしなければならない、そしてその努力については、現にジュネーブの軍縮委員会におきまして現実的な作業部会が設けられて行われておる、こういうわけであります。そのさなかに第二回の軍縮特別総会が開かれるのであって、しかも国連加盟国全員がそこに参加して、改めて軍縮の必要性について各国がそれぞれの立場で強調する、こういうことなんでありますから、私はそういう面から取り上げていくならば、相互抑止というものを放棄する、そういうような現状ではないと思います。
  107. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、そういうお立場から考えまして、この包括的研究で私が引いたこういう評価については外務大臣はお認めになるのですか、どうでしょうか。
  108. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいま御指摘のございました御引用部分は包括的研究の第五百十九項に書いてある意見でございます。これは専門家グループによる一つ意見として私どもは受けとめているのでございます。
  109. 野間友一

    ○野間委員 専門家意見として受けとめておるということでなしに、これについての評価を私はお聞きしておるわけです。外務大臣、これは肯定されるのかどうか。誤りだというお考えなのかどうか。
  110. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は率直に申し上げてその所見を読んでおりません。だから野間委員がある部分を取り上げてお尋ねがあっても、私としてはお答えする方が軽率だと思うのでお答えいたしません。
  111. 野間友一

    ○野間委員 これは有名な文書。外務省はたしかまだ翻訳してないのじゃないですか。
  112. 門田省三

    門田(省)政府委員 翻訳を了しまして、過日印刷に付し、ただいま関係者にはお配りできる態勢にございます。
  113. 野間友一

    ○野間委員 外務大臣、そういう状況が一つのこれに対する外務省の姿勢のあらわれだというふうに思うのと、外務大臣、まだこれをお読みでないということ自体、私は、外務大臣としてはいかがなものかというふうに批判をせざるを得ない、こう思うわけであります。これは大変にすぐれた、それぞれの専門家が討議をしてつくったもので、私は非常に感動を受けて読んだわけですけれども、ぜひこれを読んで、そしてこういう本当に均衡論がどんなに危険なものなのかということをぜひひとつ認識をしていただきたい、こう思います。そうしますと、低い段階での均衡論なんというものは、実際に現実にこれは成り立ち得ないというふうに私は言わざるを得ないと思うわけであります。  それからもう一つですが、これは外務省が翻訳しておりますが、「軍縮問題と日本」というタイトルの書物ですね。第一回の国連軍縮特別総会の最終文書、「宣言」のところですが、ここでは「永続する国際の平和と安全は、軍事同盟による兵器の蓄積の上に築き得るものではなく、また、不安定な抑止力の均衡又は戦略的優越の教義によって支えられるものでもない。」これまた明確に述べておるわけであります。この点について、これは最終文書でありますが、これについての評価、御認識、これはいかがなものか、お伺いしたいと思います。
  114. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのお示しの文書については、それはそれなりの価値がある。ただ、私が繰り返し申し上げておるのは、現実の平和維持がどうなっておるかということから申し上げて、これは軍事バランスあるいは核の抑止力が効いておる、こういうことをいつも所見として申し上げておるわけであります。しかし、それがベストであるということを言っておるわけではないのであります。そのための軍縮の努力が各国において、またわが国は被爆国として一層の努力をしておるということでございます。
  115. 野間友一

    ○野間委員 先ほど挙げました二つの文書を引用したのは、これはいずれにしても国連の文書ということで、国連に加盟して、国連の中で個々に討議をし、これを支持してきた以上、やはりこういうものを評価して、こういうような前提に立った軍縮を進めなければならない。私はあくまで、均衡論等に立った軍縮というものは逆に軍拡にしかならないということを再度指摘をしておきたいと思うのです。  それから、これは赤城宗徳議員が「日ソ関係を考える」という書物を物にされまして、核抑止論については誤りだということをこの本の中に書かれております。こういうふうに言っておられますね。「防衛庁長官時代、わたしは、日本の安全は核の抑止力によって保たれていると主張した。」「しかし、近年になって、わたしは、この考え方を捨てた。核兵器によって平和と安全を保つという考え方が行きつくさきは、来る日も来る日も核戦争の危機におびえながら生きることだ、ということがわかったからだ。」これは二百二ページのところに書いてありますが、これは、私は読ましていただいて、大変傾聴に値することだと思うのです。しかも、防衛庁長官時代に唱えられた抑止力をいま捨てた、率直にこういうことを表明されておるということですね。これに対して外務大臣はいかがお考えでしょうか。
  116. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私どもは被爆国の国民の一人として、核の使用が行われる、そういうようなことを考えておらないわけであります。均衡論は、そういう均衡論の中で平和が保たれておる、もし均衡論が破れれば非常に危険である、こういうことから申し上げておるのであって、どなたも、ああいう悲惨な経験をなめておる者が、核が使用されてその被害を再び受ける、そういうようなことを考えておる者はないと私は思います。
  117. 野間友一

    ○野間委員 時間の関係でこの点については一応これで終わりたいと思いますが、そういう立場に立たれる限り、るる私もお伺いしたわけですけれども、軍縮が果たして現実的に縮小という方向に来るということよりも、逆に軍拡につながるということ以外にはないということを重ねて私は指摘を申し上げたいと思うのです。  時間がありませんが、条約について若干お伺いをいたしたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのは、一九二五年のジュネーブの議定書、それから本三条約のうちの細菌兵器禁止に関する条約、それから国内法ですね、この法律案、この三つ関係をどう読むというか、整合的にとらえるのか、とらえ方についてひとつお伺いしたいと思います。
  118. 栗山尚一

    栗山政府委員 お答えいたします。  まずジュネーブ議定書につきましては、これは御案内のように毒ガス等の使用禁止する条約でございます。この中で御案内のように、細菌学的戦争手段使用についても、毒ガス等と同じようにこの使用禁止する、こういうことを定めたのが一九二五年のジュネーブ議定書でございます。  そこで、今回御審議いただいておりますいわゆる生物兵器禁止条約につきましては、一九二五年のジュネーブ議定書使用禁止の対象になっておりますいわゆる細菌学的戦争手段のもとになりますところの、簡単に申し上げますと、もとになりますところの兵器開発生産貯蔵禁止を定めたもの、簡単に申し上げればそういうふうに御理解いただいてよろしいかと思います。  厳密に申し上げますと、ジュネーブ議定書の方は、細菌学的戦争手段、こう言っておるだけでございますから、いわゆる細菌よりもより小さいビールスでございますとか、リケッチアでございますとか、そういうものが果たして一九二五年のジュネーブ議定書使用禁止の対象になっておるかどうかということになりますと、法律的に若干あいまいな点があるかと存じます。  しかしながら、今回の生物兵器禁止条約におきましては、そういうものも含めまして全面的にこれらの兵器開発生産貯蔵というものを禁止しておる。この国内的な実施を担保するための国内法というものがただいま条約と一緒に御審議をいただいております法案でございます。
  119. 野間友一

    ○野間委員 そこの関係ですが、時間がありませんので詳細についてお伺いするわけにいかぬわけでありますが、しかし少なくともこの二五年の議定書、要するにこの細菌兵器、これの概念なり範囲に関しまして、この議定書の審議の際のいろんなものを読んでおりますと、たとえばマルタの代表が二十二回の国連総会でこう言っていますね。戦時における化学及び細菌手段使用禁止したのみで、微生物剤の使用まで禁止されておらない、こういう主張が実は出ておりますね。そうなりますと、これは二五年の議定書の中では微生物剤は含まれていないという一つの考え方なんですが、日本政府はこの点について一体どういう認識を持っておるのかということ。それから、この条約ではこういう表現ですね。「微生物剤その他の生物剤」ということで、微生物剤とその他の生物剤と、これは条約上明らかに分けてあるわけですね。ところが、法律案を見ますと、「「生物剤」とは、微生物であって、」ということで、生物剤即微生物剤、こういう定義が法律案の中では実はされておるということになりますと、議定書と条約国内法案、これとの関係で、生物剤の中でこれは一体どういうふうに解したらいいのか。この点も含めてひとつ答弁を願いたい。
  120. 栗山尚一

    栗山政府委員 一九二五年のジュネーブ議定書の対象になっております、いわゆる細菌学的な戦争手段というものと、今回御審議をいただいております生物兵器禁止条約の対象になっておりますものとの間に若干の、若干と申しますか、相違があり得るということについては、先ほど私が御答弁申し上げたとおりでございます。したがいまして、今回の御審議いただいております条約は、ジュネーブ議定書よりはより広い範囲のおよそ生物、微生物——条約の一条に定義しておりますようなものを兵器として使用する場合には、これが使用できないように、あらかじめその開発生産貯蔵禁止しよう、こういうのがこの条約趣旨でございます。  国内法につきましては、先ほど先生の方から、条約国内法の間にそごが、あるいは食い違いがあるのではないか、すなわち条約禁止されておるものが国内法で完全にカバーされてないのではないかという趣旨の御質問であったかと思いますが、私どもは必ずしも、必ずしもと申しますか、そのようには考えておりません。すなわち、国内法で申します生物剤につきましては国内法案の二条で定義がございまして、確かに先生おっしゃいましたように、微生物ということになっております。  しかしながら、それでは微生物以外の生物についてはどうかということになりますると、まずそういう微生物を媒介する媒介体としての生物というものは、御案内のように、法案の二条三項で規制の対象とされておりますので、この点については法案によって十分カバーされておるというふうに考えます。  しからば、微生物以外、あるいはさらにいま申し上げました微生物の媒介体として微生物を保有している媒介体の生物剤以外にまだ生物剤があるではないかという御疑問があろうかと思いますが、理論的に考えますと、確かにそのようなものは存在し得るということはございますが、私ども今回法案を準備いたしますにつきまして、この点につきまして専門家の方々の意見等を十分徴しまして、その結果、目下、当面の科学技術の水準等から考えました場合には、そのような生物剤が兵器として使用されるという蓋然性はまずないであろう、こういうことでございましたので、国内法につきましては、ただいま私から御説明しましたような規定のしぶりになっておる、こういうことでございます。
  121. 野間友一

    ○野間委員 例示リスト、これは要求して、もらったのですけれども、これの分類の仕方と、先ほどから言っておりますように、二五年の議定書以下、この条約あるいは国内法、それぞれがずれたと申しますか、分類の仕方そのものにそごがあることは否めないと私は思うのです。いま栗山さんも、問題があるやの答弁がありましたけれども、これはややこしいわけで、いま質問申し上げた中で一つお答えになっていないのは、マルタの代表の、細菌兵器の中で微生物剤は含まれていないという主張がありますね。これに対して日本政府はどういう態度、どういう認識でおるのか、その点についてひとつ答弁しておいていただきたい。
  122. 門田省三

    門田(省)政府委員 私の方から御説明させていただきます。  マルタの代表が、第二十二回国連総会で、細菌兵器は微生物を含んでいないのではないかというふうに述べたという御引用でございましたが、私どもの了解では生物剤というものがございまして、生物剤の中でもいわゆる微細なもの、小さなものということで微生物というものがございます。微生物の中にもさらに、その大きさによりまして、細菌と、それよりもさらに小さいウイルスあるいはリケッチアというものがある、かように了解しているのでございます。  もしマルタの代表の発言を私なりに理解させていただくことが可能であれば、そしてマルタの代表が言うところのものが、細菌というものは必ずしも微生物のすべてを尽くしているものではない、つまり微生物というのはウイルス、リケッチア、細菌、さらには真菌というものから成っているというふうに、私どもウ・タントの報告書から了解しているのでございますが、そうであるとすれば、細菌というのは微生物の一部を構成するものである。したがって、広く微生物を対象とする場合には、細菌のみならずウイルス、リケッチアも当然含むべきである。こういうことになりますので、マルタの代表の申し出たところも多分そういうことではなかったか、かように解します。
  123. 野間友一

    ○野間委員 もう時間がありませんので、最後に一言だけお伺いしたいのは、そうしますと、事生物兵器に関して言いますと、二五年の議定書なりあるいは本条約、そしてこれを受けた国内法によって、戦時平時を問わず、使用あるいは貯蔵等々、これはこの世から一切なくなるというふうに理解していいのかどうか。
  124. 門田省三

    門田(省)政府委員 そのとおりでございます。この条約は、開発生産貯蔵、取得、保有を禁じておりますし、さらに廃棄の条項も含んでおります。また、いかなる状況下においてもこれはそういうことでございまして、使用されないようになっていくわけでございますので、お説のとおりとお答え申し上げたいと思います。
  125. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  126. 中山正暉

    中山委員長 井上泉君。
  127. 井上泉

    井上(泉)委員 最初に、ビザの発給がなされていないということについて大臣が、努力したい、こういう願望的な発言をなされたのであります。私はそれに対して不規則発言で、すると言わなければいかぬと言ったのですが、大臣、どうですか、したいということと、するということと、言葉の実際面で大分違いがあると思うわけですが、どうして「したい」という願望の気持ちでそのことを言われたのですか。「する」という気持ちをもって言ったのか。どっちか。
  128. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは申すまでもなく相手があって、相手の判断が主になるのですから、当方のやり方次第ではビザが出る、こういう前提にはならないものですから、先ほどのようなお答えを申し上げた次第です。
  129. 井上泉

    井上(泉)委員 ビザが出る出ないでなしに、そういうビザが発給されるようにするということと、それができなかったからすると言ったのに、なぜおりなかったか、そういう質問が出たときにいまのような答弁をされたらそれでいいじゃないですか。それを最初から、相手の国のことだからどうなるかわからないから希望的な観測の発言で済ます必要はないんじゃないですか。
  130. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そう私は深く考えて申したんでないんで、ビザが出ないということは非常に残念である。だから外務省としてその問題に対する御要請があって、私どもとしても何とかして努力をしよう、こういうことで、言葉じりのところですから私はそういろいろ考えて申し上げてなく、これは努力をする、こういうことでございます。
  131. 井上泉

    井上(泉)委員 このビザの発給を要求することは理にかなった要求である。これが日本国民の不合理な要求であれば大臣はそういう受け答えはしないでしょう。当然の要求であるからそういう受け答えをし、アメリカ政府にも働きかける、こういうことでありますが、仮にこの三百人もの日本国民の入国を拒否するというような事態が生じた場合には、まさに日本国民としてはアメリカの国から非常な侮辱を受けた、日本国民の誇りを傷つけられた、アメリカの同盟国とまで言っておる日本の国民がアメリカに入国を拒否されたということはまさに国辱的な行為である、こういう点でアメリカに対して厳しく迫るべき筋合いだと私は思うわけですけれども大臣はこのビザ発給を要求しておる人は、当然の要求として、日本国民の正当な要求としてこれを受けとめておるかどうか、その点。
  132. 門田省三

    門田(省)政府委員 先ほど私から本件について申し上げる機会があったのでございますが、その際に申し上げましたことは、これらの方々の御要望がかなうこと、これは非常に望ましい、したがって、そういうことで善処していただきたいということを私どもはいろいろな形でアメリカ側に要望しているのでございます。  ただ、同時にもう一つ申し上げましたが、ビザを発給するということは、国際法上の事柄として発給する国のもっぱらの権限に属するものでございますので……(井上(泉)委員「それはわかってますよ」と呼ぶ)これをこうしろということは言えないことでございまして、この点は十分御了解賜りたいと存ずるのでございます。
  133. 井上泉

    井上(泉)委員 発給しろ、それは相手の国があるから。日本政府だってそうでしょう。だからそれを発給さすように、これは当然友好国としての日本国民が、そして今日、世界人類最大の課題の軍縮問題のその会議に参加するために行くんだから、これはぜひひとつ許可を与えてやってもらいたい、こういう公文書ぐらいは出すんですか。それともそういう公文書も出さずに、ただここで出してもらいたいという願望的な意見を申し述べるにとどまるんですか。どうですか。もう日がないんですから。
  134. 門田省三

    門田(省)政府委員 この場ではございません。すでに先週末以来、東京及びワシントンにおきまして、外交チャンネルを通じていろいろ申し入れているということでございます。
  135. 井上泉

    井上(泉)委員 その申し入れというのはどういう形の申し入れですか。口頭ですか、電話ですか、それとも文書ですか。
  136. 門田省三

    門田(省)政府委員 いろいろございます。直接担当の方に面会してお願いする、場合によりましては電話も使う、いろいろございます。
  137. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう日本政府の高級外務官僚として誠意のある交渉をして、それが受け入れられないということになると、あなたはどういうお気持ちになるのですか。
  138. 門田省三

    門田(省)政府委員 それはしばらく様子を見たいと思います。まだ結論が出ていないというふうに了解いたしております。
  139. 井上泉

    井上(泉)委員 それはしばらく様子を見るといったって、結論が出たらもうそれで済みでしょう。幸いにして旅券が交付されたらそれでいいけれども、されなかったときには、その結果を見てまことに遺憾千万じゃと言うたところで、これは後の祭りですよ。やはりこれに対しては、こういう旅券の交付をしてもらわないと困るというぐらいの強い意思を持ってやるのが私は日本国外交官としての、国連局長としての使命じゃないかと思うわけですけれども、あなたはそこまでは考えないですか。その点についてもう一回。
  140. 門田省三

    門田(省)政府委員 具体的にいつどなたがどなたにどうされたかということは、詳細にわたりますので差し控えさしていただきたいと思いますけれども、私どもといたしましては最大限の努力をしているということは申せると存じます。
  141. 井上泉

    井上(泉)委員 最大限の努力の結果がどうなるのか、その結果がよい方向に出れば、これは当然のことでありますけれども、悪い結果に出れば、これは日米間の友好関係に大きな障害になるということを私は心配をするものでありますので、なお一層努力をしていただきたいということを要望しておきたいと思います。  そこで、この条約は、先刻の小林議員の質問の中にも出たとおり、専守防衛を国是とするわが国がこういう条約を批准をするということは、何かしら私ども納得のいかないものがあるわけですが、そこで条約というものを締結をすると、これは締結した国同士の間だけでそれが守られて、締結をしていない国があれば、この条約違反をする行為をどのようにしても何ら国際的に指弾を受けることはないというのが条約趣旨でしょうか。それとも、やはり何十カ国が条約を結んだら、条約締結していない国だけれども、しかし条約の精神に沿って、たとえば環境改変技術軍事的使用というようなことはやらないということになるのが、これが条約締結国に対する当然のことだと私は思うが、これはどうですか。
  142. 栗山尚一

    栗山政府委員 御承知のように、基本的には国際法というものはまだ国内法と違いまして未熟でございますので、そういう意味で申し上げれば、条約ができました場合に、当初の間におきましては、やはり条約に入っておる国の間のみで拘束される。したがいまして、そこで禁止されておるような行為も、条約に入っていない国についてはこれを拘束することはできないというのが国際法の実態であろうと思います。しかしながら他方、これはもう先生承知のことかと思いますが、やはり時日がたちまして、次第に条約加盟国というものもふえ、その条約というものが単にごく少数の国の間だけで生きておるということではなくて、国際社会のほとんど大勢がこれを受け入れるということになりますれば、そういうものが一般国際法といたしましてやがては慣習法というものになってすべての国を拘束するようになる、こういうのが国際法の形成過程であろうと考えます。
  143. 井上泉

    井上(泉)委員 それで、日本がこの条約締結し参加することによって受ける利益というようなものについてはそれぞれ説明の中に書かれてあるわけですけれども、この条約をつくるのにも、これが「過度傷害を与え又は無差別効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止」、これは「過度傷害を与え又は」じゃなしに、やはりここに「殺戮」というような字句も当然入るべきである。この条約を結ぼうじゃないかという発案国はどこですか、寡聞にして承知しないのでお教えを願いたいと思います。
  144. 栗山尚一

    栗山政府委員 過度傷害を与え云々という通常兵器使用禁止制限に関する条約について申し上げますと、沿革的には国際赤十字が音頭をとりまして、この趣旨通常兵器使用制限に関する条約をつくろうということでイニシアチブをとったのが歴史的な経緯でございます。その後昭和四十九年に至りまして、スイス政府が主催いたしました国際人道法の再確認と発展に関する外交会議というのがございまして、ここで特定通常兵器使用禁止に関する条約の作成を試みたことがございます。しかしながら、ここでは残念ながら具体的な合意に至りませんで、さらに場を国連に移して、国連において議論が重ねられました結果、ただいま御審議をいただいておる条約ができることになったというのが全体の歴史的な経緯でございます。
  145. 井上泉

    井上(泉)委員 日本はいわゆる戦争を放棄した憲法というものがあるわけですが、そういう中でこの条約に加盟をするということは、裏返しをするならばやはり国際的に日本もこの条約に対する責任を負うということは、つまりこの条約違反した国に対する何らかの行為をするときにはその他の国と共同行動をとらねばならないという危険性を含んでおるものではないか、その点についてはいささかも心配ないのかどうか。
  146. 栗山尚一

    栗山政府委員 この条約に入りました場合、違反行為があった場合に何か共同行動をとらねばならないことになるのではないかという御質問でございますが、そのようなことはこの条約に全く規定がございませんで、この条約違反事態が仮にわが国との関係で起こりますれば、その違反の処理は一般国際法に従いまして相手国に対して損害賠償なり責任者の処罰を求める、こういう形で条約違反の問題は処理されるということになります。
  147. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、きょう審議をしておる三つ条約の中で一貫して流れるものは——戦争を放棄した平和国日本としてはこうしたことを考えることすら今日の日本の政治のいわば誤った方向ということを考えざるを得ないわけです。たとえば過度傷害を与え無差別効果を及ぼすこと、あるいは自然破壊をするようなこと、あるいは細菌兵器のこと、そういうようなものよりも比較にならない大被害をもたらす原子爆弾に対する絶対禁止という運動をなぜ日本政府が率先してやらないのか。これほど悪いものはないわけで、これは理屈なしに絶対悪である。これは、湯川秀樹先生もそのことを言われておる。ところが、だんだん大臣答弁等を聞いておると核抑止力がどうだとかいうようなことも言われるわけですが、こういう兵器はいかぬけれども核は必要なもの、こういう認識の上に立ってこの軍縮問題あるいは平和的な取り決め条項を考えておるのかどうか、私は大臣の核に対する認識をいま一度明確にお聞きしておきたいと思う。
  148. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 核については、現に日本が被爆を受けておるように使用された経緯がある、また核保有国が超大国以外にもある、そして超大国においては、われわれが被爆したそのものとは、天文学的数字の非常な威力のものを持っておる。そういう現実の中で世界平和は一体どういうふうに維持されておるのかということから、核の抑止力が働いておるとか軍事力のバランスがとれておるとか、そういうことが平和の維持に残念ながら現状においてはもとになっておるのではないか、こういうようなことから核に対する考え方、これからの核軍縮をどうするかということの問題が起きておると思うのです。だから、日本としては被爆国として核の廃絶を目標として何としてもそれを達成しなければならない、しかし他面ただいま申したような問題もあるので、まず低いレベルで軍事力の均衡をとるようにすべきではないか、また超大国の間の対話はやってもらいたい、そして現実にはその対話が行われておる、また行われつつある、そういう状況にある。そういう現実の面とわれわれが被爆を受けた体験からするところの何としても核兵器を廃絶したいという悲願、そこにギャップのあることは認めざるを得ませんけれども、だからといって核の抑止力が働いておるから核が使われるというようなこと、そのような事態がまたあっていいとかあるとかというようなことは考えない、核は二度と使われない、そういう見地に立って、そして現実的な核軍縮の進め方をどうするかということを繰り返し申し上げておるわけであります。
  149. 井上泉

    井上(泉)委員 その核の抑止力というものが現実に効果を発揮しておるという大臣見解でありますが、そのことが国際的な緊張緩和の上に役立つということではなしに、逆に国際間の緊張が激化する中で日本もその一役を背負うておるのではないか。被爆国日本としてはあくまでも核廃絶という大前提の上に立った行動を貫いていくべきだ、こういうように思うわけでありますが、時間がありませんのでこの核問題については次の機会にいたします。  この三条約を批准することに伴って武器関係というものには多少の影響が出てくると思うわけですが、現在日本生産をしておる武器にどういうものがあるのか、それがどういう状況であるのか、その点防衛庁に説明を願いたいと思います。
  150. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在御審議をいただいております三条約によりまして保持が禁止されておる兵器わが国自衛隊が持っておるものはございませんが、使用制限されておるもののうち自衛隊が持っておりますものは、一つは地雷がございます。地雷につきましては、対人地雷あるいは対戦車地雷あるいは水際地雷、こういったようなものを保有いたしております。それから焼夷兵器につきまして、自衛隊といたしましてはいわゆる携帯式の火炎放射機というものを持っております。それ以外は現在持っておりません。  なお、地雷の中で遠くの方から散布する遠隔散布地雷につきましては、現在保有いたしておりませんけれども開発中でございまして、近く保有することになろうかと思います。
  151. 井上泉

    井上(泉)委員 いま言われたその近く保有するのは、この条約が批准されると、もう保有してはならない兵器になるのじゃないですか。
  152. 塩田章

    ○塩田政府委員 遠隔散布地雷につきまして現在開発中であると申しましたが、これができましても、保持を禁止されておるわけではございませんで、使用について制限があるわけでございまして、当然その使用制限は受けるわけでございます。
  153. 井上泉

    井上(泉)委員 それで、保持をするのと使用をするのとは、これはまた——使用したら大変です。どんな兵器にしてもこれを保持するのは、これを実際に使うということになると人を殺識するわけですし、戦争状態になるわけですから、これは大変だと私は思います。そういう点で、兵器産業といいますか、日本の通産省にも航空機武器課というものが存在するわけですが、航空機武器課では、この条約の批准によってこういう武器を生産しておる産業界に及ぼす影響というものはどういうふうにあるととらえておるのか、御説明をいただきたい。
  154. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 お答え申し上げます。  ただいま防衛庁の方から御説明がございましたように、現在わが国生産をいたしております兵器のうち、この通常兵器使用禁止または制限に関する条約によってその使用の態様が規制されるというものは、防衛局長答弁のように地雷と火炎発射機でございまして、それ以外のものは現在は生産をいたしておりません。その背景といたしましては、御承知のとおり現在私ども、武器等製造法におきまして製造の許認可を行っておるのでございますが、それは運用において、防衛庁において調達される武器に限定されておるという状況にございます。
  155. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、通産省で航空機武器課とかいって物騒ななにが位置づけられておるということを非常に不可解に思う。これは課長の職権でどうということはないわけでしょうけれども、大体武器産業というものは日本でどの程度あるのですか。
  156. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 現在、武器等製造法におきまして武器の製造の事業の許可を受けておる企業がございまして、それは二十九企業でございます。
  157. 井上泉

    井上(泉)委員 金額的にどれくらいですか。
  158. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 生産額につきましてはただいまちょっと正確な数字を持っておりませんが、一応、防衛庁において毎年度調達される装備の調達費というのがわが国の武器産業の生産額をあらわすわけでございまして、最近の数字で申し上げますと、数千億にちょっと足りないような規模ではないかと思っております。
  159. 井上泉

    井上(泉)委員 これは別に防衛機密に属することはないと思うわけですが、国内の武器産業と称するものでやっておるのは二十九ということですが、これら二十九業者がそれぞれどういうものをつくっておるのか、こういう資料を出していただくことはできますか。
  160. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 武器の種類ごとにどういう企業が許可を受けているかという法律の運用の状況については、後ほど資料を差し上げたいと存じます。
  161. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、総理府が「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」というものをなされておるわけですが、これは総理府、この調査のなにはどれくらい印刷していますか。
  162. 村田省三

    ○村田説明員 お答え申し上げます。  報告書の印刷部数は三百部でございます。
  163. 井上泉

    井上(泉)委員 その三百部の印刷で、それを配付するのは主としてどこ方面へ配付しておるのですか。
  164. 村田省三

    ○村田説明員 報告書の配付先といたしましては、各都道府県、政令指定都市、そのほかに国会図書館等が主なところでございまして、それで大体半数以上の部数が配付されます。
  165. 井上泉

    井上(泉)委員 外務大臣外務大臣はこの防衛問題に関する世論調査をお読みになったのですか。
  166. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 十分記憶はしておりませんが、新聞紙上を通じて見ました。
  167. 井上泉

    井上(泉)委員 新聞紙上を通じて見たということですが、これの目的というのは、これにちゃんと書いてあるとおり「自衛隊に対する国民の印象、認識及び防衛に関する国民の考え方を調査し、防衛行政の参考とする。」ということです。都道府県、市町村に配って半数ぐらいいくと言うが、これは防衛庁は、一番大事なことだからもちろんお読みになったと思うわけですが、これをお読みになって防衛庁の塩田防衛局長はどうお考えになりましたか。
  168. 塩田章

    ○塩田政府委員 今回の調査結果の概要は、わが国の防衛体制のあり方とか自衛隊の必要性といったわが国の防衛問題の基本的な事項につきまして、前回の調査あるいは前々同等の調査、ずっと傾向を追って見てみますと、数字的には若干の変化はございますけれども、総じて言えば、前回と大体同じような傾向を示しておるというふうに思っております。  いずれにしましても、防衛庁といたしましては今後、今回の調査結果をさらに詳細に検討いたしますけれども、今後の防衛政策の推進に当たりまして、こういった世論調査に反映された国民の意思というものは十分冷静かつ客観的に受けとめて対処していく必要があろうというふうに考えております。
  169. 井上泉

    井上(泉)委員 総理府はこれを防衛庁へ何部ぐらい出しておるか、外務省へ何部ぐらい出しておりますか。
  170. 村田省三

    ○村田説明員 先ほどお答えいたしました報告書が三百部あるわけでございますが、そのほかに私の方で編集、発行いたしております月刊の月刊世論調査という雑誌がございます。これの六月号に実は掲載してございまして、間もなく出るわけでございますが、こちらの方は、私の方で買い上げて配付しておりますのは千三百部実はございます。これはほとんどのものが各省庁あるいは衆参両院議員の先生方等に配付するようになっておりまして、これで大体千部が配付されるようになっております。近くお手元に届くようになっております。
  171. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、自衛隊、防衛問題に対する世論調査の仕方が、いわゆる自衛隊をできるだけ謳歌するように、防衛力はできるだけ増強を求めるような視点から、本当に素直に国民の感情に問いただすというような取り上げ方のようにはこの中身を見ると感じないわけです。しかしあなたは、そういうことはない、素直にと、こういうふうに言われると思うのでありますから、そのことについては余り論議をしません。これは考え方の違いというか取り上げ方の違いが非常にあるわけです。  ところが、一番大事なことは、自衛隊は必要だということはいろいろ言うておるけれども自衛隊に親しみを感じない、こういう層がかなり多いわけです。これについて防衛局長は考えるべきものがなければならぬと思うのですが、どうでしょう。
  172. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども、今回の調査結果を踏まえまして十分詳細な検討を加えてまいりたいと申し上げましたが、御指摘のような点もまさに私どもとしては十分冷静、客観的に受けとめていかなければならない点でございまして、かねてから防衛庁の広報活動を通じましてそういった点に配慮をしておるつもりでございますけれども、にもかかわらず今回のような結果といったことにつきましては、今後とも十分留意して慎重に対処してまいりたいと考えております。
  173. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、この調査の中で、自衛隊はあった方がよいという理由の中に、「国の安全確保」のため、あるいは「災害派遣」のため、いろいろ条項があるわけですが、国の安全を確保するためということと、それから日本戦争する場合に、日本みずからが戦争を起こす、日本から相手に戦争をしかけていくということは絶対ないと言っても過言ではないと思うわけです。日本が相手からしかけられること、あるいは相手に、戦争当事者に引きずり込まれるということ、これ以外に日本戦争するというようなことは考えるべきことではないし、また絶対ない、こういうふうに思うのですけれども、防衛局長日本戦争に巻き込まれる場合はどういう点を考えておりますか。
  174. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、御指摘の前段の、日本がよその国に対して戦争をしかけることはない、これは専守防衛のたてまえからいいまして御指摘のとおりであります。逆に、日本戦争をしかけられる場合はどういう場合があるか、これはもちろんいろいろなケースが考えられますので、一概にここでどういう場合であるというふうに申し上げることはきわめて困難ではないかと思いますが、いずれにしましても、日本が先に戦争をしかけることはないということを、特にその点は御指摘のとおりだと思います。
  175. 井上泉

    井上(泉)委員 戦争の不安感といいましょうか、こういういろいろ条約を結んでいくと、日本戦争の中に巻き込まれる危険性というものがだんだん出てくるんではないかと感じるようになるのじゃないか、こう思われるわけですが、私は、大臣、アメリカとの関係にしても、日本の他の諸外国との関係においても、日本専守防衛の国であるし、そして平和というものを国是とする日本であるわけだから、一方的な国との関係だけを緊密に考えておったならば、これはそこに大きな危険性が伴うことになるし、むしろ本当に日本が中立の立場を堅持した中で平和外交を進めていくということが、戦争の危険から日本を守る道になると思うわけですけれども、その点について、こういう国民の世論調査で、戦争の「危険がある」、あるいはまた「ないことはない」というような国民の気持ちに対して、為政者として日本はそういう方向にはいきませんよというお答えを示していただきたいと思うわけですが、どうでしょう。
  176. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ことしはちょうど平和条約、また安保体制に入って三十年、この三十年を振り返っていただけば、国民が十分御理解をしていただけるものではないか。その間に、しばしば中立論というものもあったわけでございますが、日本が自由と民主主義の共通の価値観の上に立つ立場で、そして専守防衛で一貫し、国際紛争については戦争手段には訴えないという憲法を持ち、そしてその間に日本の安全をどう持っていくかというために安保体制をとってきた、こういうことで十分国民がこの姿勢を理解をしておるものと思っております。
  177. 井上泉

    井上(泉)委員 この「危険はない」と「危険がある」と思う理由の中に、日米安保条約があるから危険がある、こう思っておるのが一七%、それから日米安保条約があるから危険はないと思うのが二四%ということになっておるけれども、これは安保条約というものが日本のいわば安全を守っておるといういままでの政府・自民党の一貫したPRが、こういう回答にはなっておると思うわけですけれども、しかし、日米安保条約があるから危険だということは、私は軽視すべきことじゃないと思うわけです。安保条約があるから日本には戦争の危険がないということでなしに、むしろ安保条約があることによって、日本から戦争はしかけないけれども、アメリカがやる戦争行為日本が参加をさせられるということになりはしないか、そういうことが非常に心配をされるわけでありますが、そういう点について、アメリカから仕組まれた、アメリカに戦争に引きずり込まれることのないようにするためには、やはり安保条約というものをいま見直して、こうした国際的な条約をなにする際、そしてまたことに核保有国という、米ソの両超大国の関係米ソの核抑止力というようなことで核の使用、核の存在を認めるというようなことでないようにするためにも、私は日米安保条約というものは今日、検討すべき時期ではないか、かように考えるわけでありますので、この点について大臣見解を承っておきたいと思います。
  178. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 井上委員のお考えのような御所見の方もおられることは事実だと思うのですね。それで、今回の世論調査の上でそういう見地に近い方はどの分類か、それは日米安保があるから危険だという一七%の方々の中の御意見が近いのではないか、こう思うのでありまして、大体いまの日本の行き方、日本の体制というものには国民が理解を示しておるものと思います。
  179. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、私は、この世論調査はもう一貫して間違いのないことは、軍事予算、防衛予算というものはもうこれで結構だ、十分だというのが圧倒的多数である、そういう点から考えて、これから国の防衛予算というものはいまより以上肥大化していくという必要はない、そのことが専守防衛に徹した日本国の防衛の姿ではないか、こういうように思うわけですが、いまの国民感情にこたえるためにも防衛予算をこれ以上増大をするということなしにやっていくということを、これは防衛局長とかに質問をしてどうかわかりませんけれども、一応防衛担当の局として、防衛予算はいま以上肥大化することは好ましくない、国民感情もこうだから現在の防衛予算の線で抑えていく、こういうお考えをこの調査を見て抱いたのかどうか。
  180. 塩田章

    ○塩田政府委員 調査結果の数字等につきましては御指摘のとおりでございますから省略いたしますが、政府が現在行っております防衛力の整備というものは、申し上げるまでもなく、昭和五十一年の国防会議、閣議で決定されました「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準というものを私どもはいま現在目指して整備をいたしておるわけであります。もちろん、具体的な毎年毎年の施策といたしましては、そのときどきの経済財政事情といったようなもの、あるいは国の他の諸施策との調和を図るといったようなこともきわめて大事であることは申し上げるまでもございませんけれども、いま申し上げました「防衛計画の大綱」の水準に到達したいということで努力をしております私どもの防衛力整備の努力というものも国民の意識の動向に対しまして決して逆行するものではないというふうに私どもは考えておりまして、今後とも引き続き国民の御理解をいただきながら「防衛計画の大綱」の水準に到達するように努力を続けていきたいというふうに考えております。
  181. 井上泉

    井上(泉)委員 最後に、私は、よく国を守るために防衛予算をふやさなければいかぬ、防衛予算をこうせなければいかぬと、国を守る、国を守るということが通り言葉で出てくるわけですが、これは、国民にあなたは国を守る意思があるかどうかとお問いになった場合に、国を守る意思がないと答える国民は私はだれ一人としていないと思います。その国というもののとらえ方というものが私は非常に問題だと思うわけです。国を愛する、国を守る。私どもは当然日本国民として日本国を愛し日本国を守る考え方にあるわけですが、この調査を設定した総理府はどういう点から国を守るということを調査項目として取り上げたのか、そのことの御説明を承っておきたいと思います。
  182. 村田省三

    ○村田説明員 お答えいたします。  国というのはあくまでもわれわれ日本人の住んでいる国でございまして、この調査は三年ごとにずっと時系列的にやっておる調査でございまして、特別に意味があってのものではございません。
  183. 井上泉

    井上(泉)委員 その国というもの、日本国というものは日本国民が住んでおるこの国のことを言うでしょう。だから国を守るということは日本国民のためになることをしていかなければいかぬ。日本国民の生命、財産を守っていかなければいかぬ、これが国を守ることである。ところが、その反対に、国を守る、国を守ると言いながら国民の命を銃弾のもとにさらすようなそういうやり方をすることは国を守ることにはならないわけです。ことに日本戦争放棄した国である。そういう視点から、国を守るということに対する定義を、三年間ずっとやってきたとこう言うわけですけれども、いまこそ政府がこのこともはっきり、国を守るとはどういうことか、そのことについてのまたこの国会の中での論議というものは堂々論議をすべきことで、何か防衛予算をふやしていくことが国を守ることだ、自衛隊を強化することが国を守ることである、こういう考え方は大変な間違いである。私はその点から大臣に国を守るということについての大臣自身のお考え方をお聞きしておいて、時間が参りましたので私の質問を終わります。
  184. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 不幸にして日本に対しての侵略行為が行われる、こういう場合に、日本日本を守る上において専守防衛に努める、しかし、その専守防衛では事が足りない、そういう場合にはどうするか、相当数の兵力が日本に攻撃を加えてくる場合はそれは安保体制に依存する、こういうようなことで現在の日本に対しての火急の場合にどう措置していくかということを考えておるわけでございまして、これはいわば防衛上の関係になるわけでございますが、われわれ日本民族が日本を将来にわたってどのように守り発展をさせていくかということにつきましては、おのずから他の角度からも考えなければならない点があると思います。
  185. 井上泉

    井上(泉)委員 このことについてはまた次の機会で。  終わります。
  186. 中山正暉

  187. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 冒頭に外務大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、いま本委員会にかかっておりますいわゆる軍縮三条約は、内容については私どもも賛成すべき内容でございます。しかし、お話を漏れ伺うところによりますと、総理が国連演説の中で、この三条約日本国会で通して、ある意味ではまくら言葉にもお使いになられるというようなお話も伺っております。大体もう演説の内容はでき上がっているのではないかと思いますが、この三条約は総理の国連演説の冒頭にはすでにお考えになられているのでしょうか。
  188. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  国会での御承認が得られまして、それぞれの条約について、あるいは加入書の寄託あるいは批准書の寄託が実現するということが明らかになれば、これは非常にすばらしいことでございますので、お触れになるのではなかろうか、かように考えるのでございます。
  189. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 総理の国連演説でどういう形でこの三条約がまくら言葉になるのかわかりませんが、この三条約の内容は、すでに同僚議員からもそれぞれのお立場から御指摘がありましたとおり、そんなに何も新しい内容ではありません。むしろ国連軍縮会議を前にしていまさらという感を私は持っておるわけであります。むしろ十年間この程度の内容のものをたなざらしにしていたということの方が非常に不自然でありまして、今度の国連軍縮会議は、もう御案内のとおりかつてない非常に大きな国際的な広がり、注目の中で開かれる国連軍縮会議、しかも日本国内でも各地方議会が次々と議決をして、そして私どものいわゆる四党、中道、われわれ中道と必ずしも私自身は思っておりませんが、いわゆるマスコミで言われる中道四党、同盟の皆さん、すでに署名も一千六百万という、各職場だとか街頭で皆さんの反核に対する切なるそうした署名も続々と届いております。そういう中でこの程度の内容をいまさら、国際的に注目をされている国連軍縮会議日本の総理の演説のまくら言葉になる程度のお考えでもし皆さんが総理の原稿をお書きになるとしたら、私は国連軍縮会議における日本の総理の演説としては日本の国民は自分たちの気持ちがこの国際舞台で反映をされなかったというむしろ落胆の方が大きいのではないかというふうに思います。演説の中に一言入れることがいいとか悪いとかという問題ではなくて、今度の国連軍縮会議における日本の果たす役割りをしっかりひとつ受けとめていただいて、総理の歴史的な演説ができるように皆さんの知恵をしぼっていただきたいということをまず冒頭にお願いをしておきたいと思うのです。  さて、パルメ委員会非核地帯を拡大をする、考え方の上で新しい核の時代に対する有識者の方々の考え方というものを提示されました。  これはもう基本的な考え方ですけれども日本の特殊事情からいって、いまもしあるとすれば限定核戦争である、日本はこのままで核の傘の下にいて、世界の軍縮だとか広島、長崎だとかということだけで一体いいのか、新しい国際状況をつくり出す役割りをわれわれは果たす使命があるのではないかというふうに私は思うのです。そういたしますと、このパルメ委員会の核の抑止力のもとにおける国際的なバランスとかあるいは平和とかという考え方から、そういう抑止力ということではなくてむしろ核を持たない国の人たちが非核武装の地帯をできるだけ広げて、しかもそれを五大国に認めさしていく、そういう国際的な作業をむしろ進める、ある意味では先導役を日本は果たすべきではないかというふうに思うのです。  これは実は第一回の国連軍縮総会の最終文書でありますが、この中に「永続する国際の平和と安全は、軍事同盟による兵器の蓄積の上に築き得るものではなく、また、不安定な抑止力の均衡又は戦略的優越の教義によって支えられるものでもない。」こううたい上げているわけであります。  まず、外務大臣に伺いたいのですけれども、こうした抑止論、核の傘のもとにおける平和、こういう日本の置かれている状況をわれわれはこれからも肯定をしていくということではなくて、やはり新しい発想がいま求められているのではないか。しかも日本の独自性のあるそうした国際舞台における役割りを果たすべきときが、いまこそ来ているのではないかというふうに思いますが、まず、この抑止理論というものを外務大臣はどのようにお考えになられているか、伺いたいと思います。
  190. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 抑止論については、もう何遍もここで申し上げておるわけでございまして、世界の現実を直視する場合に、軍事力の均衡というものが平和を維持しておるのではないか、そして核の抑止力がそこに働いておるのではないか。これは現状に対する認識ですから、その認識の相違する方もあられることを否定はいたしませんけれども、しかし、東西の均衡の中で大きな戦争にならずに来ておるということも事実ではないかと思うのです。  しかしながら、そういう軍事力バランスということがややもすると軍拡競争になるのではないか、そういう一面がありますから、これについてはできる限り低いレベルの均衡にいくように、そして二つの大きな勢力の間の対話を欠かさないように、しからば、その低いレベルの均衡とか対話に対する努力というものはどうか、こういうことになりますと、現在米ソが、アフガニスタン問題、ポーランド問題などでいろいろな措置がとられている中に、しかし対話はしよう、こういうことで中距離核戦力の削減交渉、あるいは近くSTARTの交渉も始まる。こういうことでありますから、私はやはり現状におきましては核の抑止力が大事である、低いレベルのバランスというものも大事である、そして対話は繰り返して行わなければならない、このように認識しております。
  191. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 第二回の国連軍縮会議に向けて広島、長崎の大会が持たれたり、昨日は中道四党における国連軍縮会議に臨む団員を送る大会が日比谷公会堂でも持たれました。そういう中で、この広島、長崎の被爆者の方たちの声も、会場の皆さんに改めて広島、長崎の悲惨さを非常に切々と訴えられていたわけでありますが、日本がそういう立場国連の軍縮決議にも、この委員会でもずいぶん御議論がありましたけれども、そういう特殊な体験をわれわれは持っているのに、その日本の国が国連という国際舞台で軍縮決議にも、いままで当初は賛成、途中から棄権、反対。  私は櫻内外務大臣にもう一度ここで改めてお聞きをしておきたいと思いますが、なぜ棄権からレーガン大統領になって日本は反対に回ってきたのかということをできるだけ手短に大臣の御見解を伺って次の質問に移りたいと思います。
  192. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 不使用についての反対をいたしたのが八〇年及び八一年でございます。  この八〇年、八一年を回顧してみますならば、八〇年にはアフガニスタン問題が起こってきておるわけであります。八一年は、その時点がポーランド問題とどうであったか、昨年の暮れにはポーランド問題が起きておるわけでありますが、しかしこういう国際情勢というものは、遺憾ながら、東西勢力間でデタントが進められておる中に、ソ連がデタントと言いながらも軍事力を増強してある程度の力を持ったということを背景にしての第三世界に対する侵略である、あるいはポーランドに対する圧力を加えておる、こういうことから、これはそういうソ連の行動に対処して核の抑止力というものを考えるならば、これを使用禁止するということに賛成をするということはそういう現状からする核の抑止力に影響があるということで、したがって日本政府としてはそのときの国際情勢その他を勘案して、今後においてもそのときどきに考えていくということをこの委員会などで意思を表明しておるわけであります。
  193. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 米ソに対して明確に核を持つなということを日本が言えない、そういう日本立場がとれないという状況では国際舞台でなかなか説得力を持たないと私は思います。いずれにしても私どもは、そうした姿勢で今後も日本政府が、国際社会の中でも日本が、そうした非核武装の地域が少しでも広がるように、そしてむしろ持っていること自身がもうばからしいことだ、そう言えるような国際的な世論というものを高めるために努力を続けてまいりたいというように思います。  それでは、次の条約について少しお尋ねしたいと思いますが、環境改変技術条約でありますが、米軍がかねてベトナム戦争で枯れ葉剤や人工降雨などの気象操作に、ダム破壊あるいは特殊な大型トラクターによるジャングルの伐採作戦を行った、こういう事実を把握をしていられるかどうか、またこれらの技術あるいは兵器使用が環境兵器禁止条約禁止対象になるのかならないのか、お伺いをいたしたいと思います。
  194. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねのございました、米軍がインドシナ地域において枯れ葉剤の使用、あるいは降雨量の増大、またはトラクターのジャングルにおける使用、それによるジャングルの破壊、こういったことについて承知しているかどうかという点につきましては、そのような行動によって補給活動を阻害しようとしていたと言われているのでございますが、その効果がどういうものであったかということにつきましては明らかにされていないのでございます。したがいまして、それらの事柄がこの条約の対象となるようなものでありましたかどうかにつきましては、意見を述べることは差し控えさせていただきたいと存じます。  なお引き続き第二の点でございますが、このような行動がこの環境兵器禁止条約使用禁止となるのかどうかという点でございますが、この条約が定めておりますのは、自然の作用を意図的に操作することにより第二条で言うような変更を加えることを目的とする技術ということでございまして、それ以外のことを目的としました技術が付随的な効果としてその地域の生物相を破壊したということがございましても、ここに申すところの環境改変技術、これには当てはまらない、かように考えております。
  195. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 米軍がベトナム戦争で約十万トンにも上る枯れ葉剤をベトナムに空中から散布して、関東全域の面積にも及ぶそうした非常に広い面積、南ベトナムの二割と言われる国土を死の森にした、こう言われているわけでありますが、当時、アメリカでは家庭用の小袋を除いて枯れ葉剤が市場から姿を消した、日本から輸出した枯れ葉剤も非常に多く使われたと言われております。  これは本委員会でも同じ会派であります楢崎委員指摘をされた点でありますけれども、大昔の三井化学大牟田工場で枯れ葉作戦に使う除草剤を製造して米軍に輸出していた、こういう事実が指摘されているわけでありますが、改めてその事実関係を伺いたいと思います。
  196. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 ただいまの御指摘なんでございますけれども、私、航空機武器課でございまして、直接は基礎産業局ないしは農林省の物資であるかもしれません。突然の御指摘でございますので、まず事実関係確認をさせていただきたいというふうに考えております。
  197. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 事実関係はよくお調べをいただいて御報告をいただきたいと思いますが、この枯れ葉剤は当時ずいぶん報道もされました。空から密林が真っ白になるほどまくわけですね。そして当然その下にいる人たちは全部これを吸って体内へ入れてしまうわけですから、そのことが原因になって続々といわゆる奇形児が生まれてくるということで当時問題になりました。これはベトナム戦争で使われただけではないわけであります。イギリスのマラヤ・ゲリラあるいはフランスがアルジェリアの解放、インドネシアが東チモール、いずれも同じような形でこれを使用しているわけであります。これは、枯れ葉剤が非常に安い、武器としては非常に容易に使えるということだと思いますけれども、もし軍事的にこの枯れ葉剤が使われるということがわかっている、そういう場合にこの枯れ葉剤の日本からの輸出は、武器輸出三原則というものとのかかわり合いはどうなるのか、これは違反しないのかどうか、伺っておきたいと思います。
  198. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 かつて、先生指摘のようにベトナム戦争において米軍が仮にわが国から購入したものを使ったかどうかという点につきましては、米軍がどのようなものを使ったかどうかについても必ずしも明らかでないという状況のようでございますので、にわかに断定しがたいものがございます。  それから武器輸出三原則につきまして、さらに共産圏地域あるいは紛争当事国あるいは国連決議国以外に武器輸出の規制をいたしましたのは昭和五十一年二月二十七日以来でございます。したがいまして、過去の事実につきましては、その時点及びその物資の実態を調べました上で答弁をさせていただきたいと存じます。
  199. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 枯れ葉剤が軍事的な目的で使われるというときには、日本は輸出ができるのですか。するのですかしないのですか。
  200. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 武器輸出三原則におきまして規制をしておりますいわゆる武器の定義でございますが、軍隊が使用して直接戦闘の用に供するものということになっておりまして、具体的には貿管令の別表一九七から二〇五までということになっております。この二〇五におきまして、「軍用の細菌製剤、化学製剤及び放射性製剤並びに」云々ということがございます。もしある物資が軍専用のためにつくられたものであるということであれば、われわれが武器三原則で言っておりますところの武器に該当し得るわけでございますが、形式的に文言上これらの項目に該当いたしましても、それが他の目的にも使用し得る汎用的なものでございます場合には、武器輸出三原則上に言う武器には該当しないという解釈になろうかと存じます。
  201. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間をオーバーいたしましたので条約についての質問を終わりますが、いずれにいたしましても、第一回の国連軍縮会議で園田外相の演説がそれぞれの立場を越えて非常に評価をされました。マンモスはきばによって滅びるという外相の演説はその後も多くの方々に引用されてまいりましたが、ぜひ皆さんの知恵を集め、また国連の演説がよくいくということだけではなしにこうした舞台を契機にして日本がいずれの国にもそうした戦争物資を送らない、武器を輸出しない、そして核に対しては世界の最先頭に立って反核の運動を、そうした国際的な世論をつくり出していく、そういう力にぜひなってほしいというふうにお願いをし、外務大臣のまた現地での大きな成果を期待して質問を終わります。
  202. 中山正暉

    中山委員長 井上普方君。
  203. 井上普方

    井上(普)委員 従来国連におきまして、化学兵器生物兵器は一体として論議されてきたと思います。それが四十七年でございますか、国連細菌兵器ですか生物兵器だけ分離せられた。そしてまた分離せられて審議がされておる。しかもこの条約の第九条におきまして、化学兵器禁止条約を合意するよう交渉継続を約束しておるのでございますけれども、いまだに化学兵器につきましてはどうも条約ができてないし、国連におきまして合意ができてない、こう思うのでありますが、その後十年間たっておるわけなんです。化学兵器についての審議は一体どうなっておるのか、この点の経緯をひとつお伺いしたいのです。
  204. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  井上委員指摘のございましたように、生物兵器につきましては十年前に署名が行われたということで、他方化学兵器につきましてはいまだに国際条約の成立を見るに至っていない、そのとおりでございます。  わが国は、化学兵器もあわせまして、化学兵器生物兵器双方の国際条約をつくるということでジュネーブの軍縮委員会でいろいろ活動をしておりますし、化学兵器について申し上げますならば、一九七四年にはわが国独自の提案も行っているという背景がございます。また、三年前におきましては、化学兵器条約をつくるための作業部会の設置、これにようやくこぎつけたわけでございますが、その第一回の作業部会の委員長には日本の代表が委員長になるということで、一口で申し上げれば、ジュネーブにおける軍縮委員会におきまして積極的に化学兵器国際条約成立を目指して努力いたしているのでございます。ただ、繰り返しになりますが、作業部会の設置、いまやちょうど三年目に入っているわけでございますが、まだ条約案の成立、案文の作成という段階には必ずしも至っておりませんで、現状では一応合意を見た点についてひとまず案文の形にするというところまで立ち至っているというのが実情でございます。
  205. 井上普方

    井上(普)委員 生物兵器は十年前に条約ができた、化学兵器についてはできない、どこにその原因があるんですか。そしてまた、化学兵器生物兵器を分離した理由は一体どこにあるんです。
  206. 門田省三

    門田(省)政府委員 化学兵器国際条約化がおくれている主たる原因といたしましては、検証問題が複雑であるということにあるように了解いたしております。また、生物兵器が一足先にと申しますか化学兵器と分離した形で国際条約化された理由といたしましては、生物兵器の特性つまり生物兵器というものは使用されたことがない、また生物兵器というものが多くの国によってすでに廃棄されているあるいは生産されていない、持たれていない、そういうふうなことも手伝いまして、また生物兵器が持ちますところの特性、つまり即効性が必ずしもないといった問題とか、長期的にこれを保有することが困難であるとか、あるいはまたそのもたらす影響が非常に広範囲にわたるということで、ひとり敵方のみならずみずからにもはね返ってくるような効果を持つ等々の理由から、生物兵器については直ちにと申しますか、早期に国際条約化がし得るという点についての合意があったことによるものでございまして、もし化学兵器と歩調を合わせるということになりますと生物兵器の実現というものがそれに引きずられておくれるということになりまして、これは望むべきところではないということから、生物兵器化学兵器から分離させましてひとまず国際条約化した、かように理解いたしております。
  207. 井上普方

    井上(普)委員 いろいろ理由を言われましたが、まず第一番が、生物兵器化学兵器を分けた理由は、化学兵器は検証がむずかしい、こうおっしゃられた。それでは反面考えれば、生物兵器は検証がやさしい、こうおっしゃるだろうと思うのです。どんな検証の方法があるのですか、ひとつお伺いしたい。
  208. 門田省三

    門田(省)政府委員 一つには、条約の第四条におきまして、締約国に対しまして、この条約国内において遵守、履行するために必要な憲法上の措置をとるということを定めております。第二には、問題が生じましたときには国連の安全保障理事会におきまして国連憲章に従って措置をとるということが定められておるわけでございます。  一昨年、一九八〇年にございましたこの条約の第一回再検討会議におきまして、それぞれ締約国はこの条約が発効して以来満足すべき状況で推移しているという認識を明らかにいたしておりまして、生物兵器に関する検証の点につきましては、国際的に一応といいますか満足し得る体制にある、そういう認識がある、かように解している次第でございます。
  209. 井上普方

    井上(普)委員 私は、それは憲章上検証ができるという理由にはならないと思う。その締約国国内国内において憲法上の制約をやれ、あるいは国連憲章上これで検証ができるんだ、とめておけばできるんだ、こういうのでは検証ができるわけがない。検証というのは、各締約国が、あの国もやってないぞ、われわれもやってないぞというのを物的証拠をもってできることでなければならないと思うのです。これでもって憲章上検証ができるから、その国の国内法であるいはまた国連憲章上でこれはできるんだから検証ができるというのは私は納得できません。しかもそういう理由のために化学兵器条約がおくれておる、それは私といたしましては理解できない。幸いにいたしまして、ジュネーブの軍縮委員会において作業部会の委員長わが国の外交官がやられておるようなので、さらにひとつ奮発していただきたい、このことを私は強くお願いする次第であります。  続いて、わからないところがたくさんあるが、それよりもう一つ先に申しましょう。  憲章上の検証ができておる、できるはずだ、そして八〇年の国連におきましてはこの条約は満足すべき状況にいっておるとおっしゃいますけれども、ことしのアメリカの予算委員会におきまして、予算作成上におきまして、生物・化学兵器についてアメリカは生産を再開するための予算が通っておると私どもは新聞報道で承っておるのですが、この点いかがですか。
  210. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいま御指摘になられました点は、アメリカにおける化学兵器、複合化学兵器、通称バイナリーと申しますが、これの生産開始のことであろうかと存じます。  このバイナリー、複合化学兵器につきましては化学兵器でございまして、御承知いただいておりますように、いまだこれの生産貯蔵等々を規制する、禁止する国際条約がございませんということで、このアメリカの化学兵器の再生産の決定ということが既存の国際条約に抵触するという関係にはないのでございます。
  211. 井上普方

    井上(普)委員 そのバイナリーというのは一体何なんです。そんな言葉は私は初めて聞くのだが、どういうことなんです。バイというから生物でしょう。
  212. 門田省三

    門田(省)政府委員 複合、二つを合わせるというふうに一応解してよろしいのではないかと存じます。二つの化学剤を合わせまして一つのいわゆる化学兵器としての効果を持つものになる、そういうものでございます。
  213. 井上普方

    井上(普)委員 それが化学作用で二つを、無毒なもの一つずつ合わせたことによって、それがバイという意味だろうと思うのだが、くっつくことによって一つの物質ができるんでしょう、化学兵器が、化学物質が。それがとめられぬというのはどういうわけなんです。ずっと前のジュネーブ国際協定でもあるんじゃございませんか。
  214. 門田省三

    門田(省)政府委員 一九二五年のジュネーブ議定書は、毒ガスその他細菌手段による兵器戦時における使用禁止するということになっておりまして、使用禁止を定めているわけでございます。このことは生産あるいは貯蔵、配備等につきましては規制をいたしていないということでございます。
  215. 井上普方

    井上(普)委員 これはちょうど兵器のカンニングですな。二つのものを組み合わせたら、いつでもともかく化学兵器になる。それはこれからもたくさんあるでしょう。それはあなたカンニングじゃないか。それに対して日本政府は抗議でも申し込みましたか。こういうのはジュネーブ議定書違反するものじゃないかということはおっしゃいましたか。どういう立場でいま臨んでおられるのです。
  216. 栗山尚一

    栗山政府委員 化学兵器使用されるべきではないという一般的な原則はあると思います。しかしながら、ジュネーブ議定書の問題として申し上げますと、ジュネーブ議定書につきましてはアメリカ、ソ連を含めまして非常に多くの国が留保しております。ごく簡単に申し上げますと、いずれも相手が使った場合には自分の方も使うぞ、こういう形の留保がなされておりまして、この種の留保というものは遺憾ながら兵器制限禁止関係の諸条約につきましては一般的に広く従来から行われておる慣行でございまして、あらゆる場合、相手が使った場合も、自分を含めて、あらゆる使用禁止するという条約というのはなかなかできないというのが実情でございます。したがいまして、ジュネーブ議定書につきましても、各国とも非常に多く、いま申し上げましたような形で留保しておる現状でございまして、その限りにおきまして違法あるいは条約違反、議定書違反というわけにはまいらないと思います。いわんや、その使用に至らない前段の生産ということ自体をとらえてジュネーブ議定書違反であるというわけには法的にはまいらないというふうに考えております。
  217. 井上普方

    井上(普)委員 いまおっしゃっておるのは、大筋においては間違っておると思いますよ、日本政府立場としては。わが国世界の恒久平和を願い、かつまたその目的のために国連に入っている、そしてまた、そういうような非人道的な兵器というものは使うべきでない、またつくるべきでもない、こういう立場わが国の外交というのは進んでおるはずだ。いまのおっしゃっているのであれば、まさにアメリカが抜け穴をいかに使っておるかということを容認しているにすぎないじゃありませんか。アメリカがそのような化学兵器をつくっているというのは、これはもう周知の事実になっている。欧州においても大問題になっている。それに対して、日本がこれに対しての抗議を申し込まない、ここに日本外交の対米追随政策があると私は言わざるを得ないと思うのです。少なくとも、そのバイナリーなる化学兵器、こういうものをつくらしてそのままそれを容認しておく日本政府それ自体が一あれは二つ合わせばいいんだから、あるいはジュネーブ議定書の抜け穴を使っているんだからいいでしょうという態度、これは日本の国是にも反するゆえんであると思うのですが、いかがですか、櫻内外務大臣。もういいよ、役人どもは。
  218. 門田省三

    門田(省)政府委員 ちょっと事実関係を……。  アメリカは、ニクソン大統領の際に、一九六九年の時点で化学兵器は持たないということを明らかにしまして、七〇年代に入りましては生産を停止したのでございます。他方、一九七七年から、ソ連との間で化学兵器の包括的な軍縮交渉をしようじゃないか、そうして国際的な取り決めを結ぼうということで、交渉を数年にわたって行ったのでございますが、その時点におきましては、アメリカは化学兵器を持たない、したがって交渉をする場合にも足場が十分でないということで、実りある交渉ができなかった。やはり交渉をするためには自分たちも持たねばならないという認識があったので、この際それを再び生産する、ただし、ソ連の方で話に応じてくるということがあればいつでも生産は中止するし、もし生産したものがあればそれは廃棄するという意向を明らかにいたしておるので、この点をつけ加えさしていただきます。
  219. 井上普方

    井上(普)委員 幾らあなた方はアメリカと同盟国と言っても、私はそれは認めていないけれども、それは、盗人にも三分の理屈があるということわざがあるけれども、その盗人にも三分の理屈にも該当しないよ。ましていわんや、日本の外交というものは恒久平和を願い、かつまた人道的な、もし起こったにいたしましても人道に反するような兵器は使うべきじゃないという基本原則、それをかの国があえて生産に踏み切っておるのに対しては、これは注意するか抗議をするかするのこそ、あなた方の言う同盟国の立場じゃないですか。ただ実りある交渉ができないからそれで持っているんだなんと言う。先ほども申しましたが、盗人にも三分の理屈があるという、これと余り変わらない、これよりももっと低劣なる理由だと私は思う。外務大臣、どうです。こういうような事柄について、あなたはどうお考えになるか。日本外交のあり方として、この行き方に対しては私は大いなる反省を日本外交に求めたいと思うのですが、いかがでございます。
  220. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本政府立場としては、化学兵器の製造禁止ということはしばしば委員会でも申し上げておるところでございます。今度、軍縮特別総会に臨むに当たりましても、実効の上がる措置として、また検証可能な措置をとりたい、こういうことで、核兵器の製造の前提になる核実験はまずやめてもらいたい、核不拡散体制を普遍的にしたい、そしてもう一つ、御指摘化学兵器禁止ということを明らかにしておるわけであります。  ただいま、井上委員の御質問に対しての応答がございましたが、これは現実の動きの中で現にアメリカがいろいろアメリカの考え方を示しながら生産をする方針を持った、これに対しての御批判だと思いますが、日本政府としては、化学兵器禁止ということは明白にしてまいっておるわけであります。
  221. 井上普方

    井上(普)委員 だから、あなた方に言わすと、日米はこれは同盟国なんです。その同盟国がそのような非人道的な化学兵器を製造しつつある、これに対して日本政府としては一体どういう立場をとるか。それは、化学兵器は反対でございますと声を高らかにおっしゃることも必要でしょうが、しかしあなた方が言われる同盟国がそれをつくろうとしておる、いや、つくっておる、いままで一たんやめておったものを。これに対してあなたは、日本政府は一体どうあるべきかということを私はお伺いしている。しかも、先ほど、ジュネーブの軍縮委員会において作業部会の委員長日本の外交官がなっておる。そしてまた、条約までもつくろうとしておる。そのところにおいて、アメリカがそういうような化学兵器をつくっておる。いままでやめていたのをつくる。これこそ鈴木首相でも絶対悪だろうと思う、この絶対悪をやめさすような努力日本政府としてするのは当然じゃございませんか。それに対して抗議でも一遍でもやったことがあるかと言えば、やったこともなさそうだ。ここに私は日本の外交がアメリカ追随だと言われるゆえんがあろうと思うので、まあ外務大臣は鈴木総理と一緒に国連に行かれる、この点はひとつアメリカに対して強く反省を求めるような行動をとっていただきたいことをお願いするのでございますが、いかがでございます。
  222. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本政府化学兵器禁止ということを繰り返し申し上げておって、日本政府の姿勢というものは明白だと思うのですね。ただ、いま井上委員のお尋ねは、アメリカが生産を開始する、それには、使用しないということを前提にしておるようであります。また、ソ連が化学兵器を保有しておるということを明らかにして、それに対してのいわば対抗措置的なことをとっておる、これはこれでアメリカがその生産を再開したという理由を公にしておるわけでありますが、そのことによって日本政府化学兵器禁止立場というものについて、これは変更はございません。また、このことは繰り返し強調しておるところでございます。
  223. 井上普方

    井上(普)委員 私は、アメリカに対して要求しろということを申しておるのでありますが、これに対して御返事がない。まことに遺憾であります。このことは、政府としましても国連の場において、一たんやめておるのを、そういう絶対悪の兵器生産することに対して強く抗議することを日本政府としては要求することを私は外務大臣にお願いすると同時に要求いたしたいと存ずるのであります。  それから、もう時間もございませんが、いろいろとこの法律になり、あるいは条約になりいたしておりますので、言葉の定義というのは、これはかなりむずかしいのじゃないだろうか、このように思う。生物剤とは一体何なのだ、毒素とは一体何なのだ、この点、第二条におきましてですか、条約におきましてはその定義がないのでありますが、法律におきましては定義をいたしておるようであります。  そこで「この法律において「生物剤」とは、微生物であって、人、動物若しくは植物の生体内で増殖する場合にこれらを発病させ一死亡させ、若しくは枯死させるもの又は毒素を産生するものをいう。」こうなっているんですな。これは、私には理由がわからない。どういう意味かわからない。増殖する場合で、発病させる、発病というのは一体どういうことを発病と言うのですか。発病という定義をひとつ、私も医者の端くれなんだ。ひとつこの定義が、しかも条約の方には定義がない。これはどういうことなのです。
  224. 門田省三

    門田(省)政府委員 発病させるというのは、要するに、人、動物にとりまして、その体内に生物剤が入って増殖する結果、人あるいは動物が病気にかかる、そういうことを意味するものと思います。
  225. 井上普方

    井上(普)委員 その病気にかかる理由、病気にかかる、それなら病気になるというのはどういう状態を言うんだ。私は、これは非常にむずかしいと思うんだ。これは苦心の作だろうと思うが、ここらあたり、法律にするならば、未熟な法律じゃないかいなと思いながら、実はこれを見ているんだ。定義もわからない。毒素を産生する、毒素とは何だ。英語で言うトキシンですか。
  226. 門田省三

    門田(省)政府委員 そのとおりでございます。トキシンでございます。
  227. 井上普方

    井上(普)委員 トキシンにしてもいろいろと種類がある。トキシンと言えるものか、言えないものか、医学的には非常にむずかしいところがある。たとえて言えば、いまここに、一昨日、「生物兵器禁止条約との関連における主な細菌剤及び毒素」というリストをもらった。それでこう見ていくと、ニューカッスル病とか、いろいろ問題が出てきている。それで、病原体が生物と言えるのか、あるいは鉱物と言えるのか。生物と鉱物との境目、無生物と生物との境目、こういうものがいまたくさん出てきているんですよ。国際的にも、たとえて言うならば、たばこのモザイク病なんというのは、これはもう御存じのとおり、活動をやめてしまったら結晶になるんですからね。これは無生物になる。適宜の時代が来れば、環境が変化すれば、これは生物として繁殖するんだ。こういうような病原体まで出てきているんだ。ここらあたりは、私はどうも、条約ならともかく、条約というより国内法をつくる以上、もっと詳しい定義をしておく必要があるんじゃなかろうか、こうも思います。しかし、ここらあたりは将来問題になるから、もしこの法律違反した場合には、懲役十年か、あるいは五百万円以下の罰金とかなんとかいうことが書いてある。だからここらあたりの定義をもう少し的確に、定義というよりはその言葉の解釈を、これは時間がございません、きょうやるのでございますが、後々、国際情勢のときでもよろしゅうございますが、あなた方の考え方をまとめてひとつ御提示になっていただかなければならない。法律はつくった、さあ裁判所においてがたがたせられたらかなわぬので、ここらあたりを明確にさせていただきたいと思うのであります。  それからもう一つ、先ほど問題になっておりました法律の方の第五条に「主務大臣」とある。そしてまた第七条に「この法律における主務大臣は、政令で定める。」こうあるのだが、この「主務大臣」というのはだれだれなんだ、これは小林議員が質問したのだけれども、御答弁になっていない。ここらあたりは、政令は一体どうなっているのか。用意はできているのか、この点とあわせてお伺いしたい。
  228. 門田省三

    門田(省)政府委員 第七条に引用してございます政令につきましては、ただいま関係省庁と鋭意検討を行っているところでございます。
  229. 井上普方

    井上(普)委員 大体法律をつくるときには、この法律に定める政令というのはおおよそこれぐらい、こういうものでございますと言って国会に提出するのがルールなんだ。これから各省庁との間で検討いたしますという法律は初めてお目にかかる。これは当局の怠慢としか言いようがございません。  そこで問題になりますのは、これを見てみますと、第三条に目的が書いてあって、「その他の平和的目的をもつてする場合に限る」ということが書いてあり、かつまた、第五条の報告義務のところでは、「業として生物剤又は毒素を取り扱う者に対し、その業務に関して必要な報告を求めることができる。」これは製薬会社であれば厚生大臣だということはおおよそ想像はつきます。しかし、これは製薬会社だけじゃないと思う。そうなったら一体どこになるのだ。あるいはまた、これは大学でつくるという場合もある。私立大学でつくるという場合もある。こういったときには、一体主務大臣はどこになるのだ。これは罰則もついているのだから、国民にとっては重大な影響を及ぼすところなんだ。だからここらあたりははっきりさせなければならない。にもかかわらず、政令はまだ検討中でございますと言って出してこられたこの法律というのは、まさに欠陥があると言わざるを得ない。  時間が参りましたりするので、私は引き続きこの問題については次の国際情勢の審議の際にひとつ明確にさせていただきたいことをつけ加え、この程度に終えたいと思います。その際に私はもう一度この問題については質問いたします。
  230. 中山正暉

    中山委員長 これにて各案件に対する質疑は終了いたしました。
  231. 中山正暉

    中山委員長 これより各案件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、過度傷害を与え又は無差別効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止又は制限に関する条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  232. 中山正暉

    中山委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用禁止に関する条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  233. 中山正暉

    中山委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  234. 中山正暉

    中山委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の実施に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  235. 中山正暉

    中山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各案件に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  237. 中山正暉

    中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十三分散会