運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1982-05-14 第96回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年五月十四日(金曜日)     午前十一時二十二分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君    理事 奥田 敬和君 理事 川田 正則君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 渡辺  朗君       麻生 太郎君    北川 石松君       北村 義和君    小坂善太郎君       佐藤 一郎君    竹内 黎一君       浜田卓二郎君    堀内 光雄君       松本 十郎君    山下 元利君       井上 普方君    小林  進君       草川 昭三君    林  保夫君       野間 友一君    東中 光雄君       小杉  隆君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         外務政務次官  辻  英雄君         外務大臣官房審         議官      宇川 秀幸君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     澤田 和彦君         防衛庁人事教育         局教育課長   吉岡 孝雄君         防衛庁装備局武         器需品課長   鈴木 輝雄君         科学技術庁計画         局科学調査官  松田  朗君         法務省刑事局総         務課長     井嶋 一友君         外務大臣官房外         務参事官    遠藤 哲也君         大蔵省主計局共         済課長     野尻 栄典君         厚生省公衆衛生         局保健情報課長 入山 文郎君         厚生省援護局業         務第一課長   森山喜久雄君         通商産業省機械         情報産業局通商         課長      坂倉 省吾君         運輸大臣官房審         議官      山下 文利君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ————————————— 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   木村 俊夫君     堀内 光雄君   鯨岡 兵輔君     北川 石松君   楢崎弥之助君     小杉  隆君 同日  辞任         補欠選任   北川 石松君     鯨岡 兵輔君   堀内 光雄君     木村 俊夫君   小杉  隆君     伊藤 公介君     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力平和的利用における協力のための日本  国政府オーストラリア政府との間の協定の締  結について承認を求めるの件(条約第一三号)  過度に傷害を与え又は無差別効果を及ぼすこ  とがあると認められる通常兵器使用禁止又  は制限に関する条約締結について承認を求め  るの件(条約第一五号)  環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用  の禁止に関する条約締結について承認を求め  るの件(条約第一六号)  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生  産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の締  結について承認を求めるの件(条約第二〇号)  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生  産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の実  施に関する法律案内閣提出第七九号)      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  原子力平和的利用における協力のための日本国政府オーストラリア政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件に対する質疑は、昨十三日終了いたしております。  これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 中山正暉

    中山委員長 起立多数。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  5. 中山正暉

    中山委員長 次に、過度に傷害を与え又は無差別効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止又は制限に関する条約締結について承認を求めるの件、環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用禁止に関する条約締結について承認を求めるの件及び細菌兵器生物兵器一及び毒素兵器開発生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約締結について承認を求めるの件並びに細菌兵器生物兵器一及び毒素兵器開発生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の実施に関する法律案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  6. 高沢寅男

    高沢委員 櫻内外務大臣、OECD、ヨーロッパの御出張、大変御苦労さまでございました。まだお疲れは抜けていないかもしれませんが、これから審議にかかるこの軍縮関係の三条約一法案、非常に重要なものでございますので、われわれも一生懸命に審議をいたしますが、また大臣の方からもひとつ腹いっぱいの御答弁もお願いをいたしたい、このように申し上げて質問に入りたいと思います。  初めに軍縮を進めていくその外交あり方ということになりますが、当然政府政府レベル軍縮外交を進めていかれる、これは私非常に重要だと思いますが、同時にもう一つの問題は、今度は国民レベルから軍縮を求めるいろいろの運動がある。署名運動もある、世論の大きな盛り上げもある。私は、こういうふうに両面で物事が進んでいるのではないか、こう思います。六月の国連軍縮特別総会でも、国連加盟国政府代表が集まって会議をされる、と同時に、いわゆるNGO、非政府組織代表も集まってこの会議に参加される、こういう国連軍縮特別総会あり方も、おのずからそういう姿を示している、こう思うわけであります。  そこで一つお尋ねをしたい最初の問題は、現実にはそういう軍縮外交を進める日本政府立場であるわけですが、しかし毎年の予算編成等で見ると、年々われわれの言う軍事予算というものはとにかく拡大方向をたどっておる、こういうことであるわけです。そういう軍事予算拡大防衛力の整備と政府の方では言われますが、これはもっと生な言葉で言えば、要するに軍事拡大を進めておられる、そういう政府がしかしこの軍縮という問題に取り組んでいくということには私はある意味における矛盾があるんじゃないか、こう思うわけでありますが、そうすると、その矛盾の点をひとつ軍縮方向へぐっと乗り越えていくには、第二の要素の国民レベルにおけるこうした運動世論というものの重要性というものが非常にそこには出てくると思うのでありますが、こういう両面の、軍縮外交政府レベル国民レベル、こういう両面関係大臣はどのように御認識をされているか、最初の総論としてそれをお尋ねいたしたい、こう思います。
  7. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私ども防衛費拡大、これは日本の専守防衛についてどうしていくかという考慮の中から予算的に増加していくその傾向をとらえての防衛費増大、こういうことだと思いますが、最近の国際情勢を見て、残念ながら各国が低いレベル防衛費の均衡を保とう、特に東西関係でそうしようと言いながらも、そういう方向につきましてはなかなか話が進んでいかない、こういう中で日本もまた防衛努力をせざるを得ない、こういうことだと思うのでありますが、高沢委員のおっしゃるように日本被爆国である、そういう貴重な苦い経験を持っておりますから、国民の間におきましても、このような事態が再び起きてはならない、こういうことで広範な運動が起きておる。これはそれなりの非常に価値のあることだと思うのであります。したがって、そういう面は政府としても受けとめて、特に核の廃絶を目指す最も実効的な措置はどうしたらいいか、そういうことについて常に配慮をしておるわけでございますが、同時にこれらの運動政府に対する強力な支援になることにもかんがみまして、各団体の動きあるいは各政党の御意見等に謙虚に真摯に耳を傾けるというその努力はいたしてきておるわけでございます。  今回の第二回特別軍縮総会に臨むに当たりましても、そのようなことを念頭に置きまして、実効の上がる軍縮措置、特に核廃絶についてはどうしていくかということを配慮しておるわけでありまして、それらの点につきましてはしばしば本委員会において御説明申し上げてまいったところでございます。この上ともの御支援をお願いしたいと思います。
  8. 高沢寅男

    高沢委員 いまの点に関連いたしまして、今度の国連軍縮特別総会で東大の坂本教授がそういう提言を出されると私たちも新聞報道で見ているのですが、ジュネーブ軍縮特別委員会、これは要するに各国政府代表が参加した軍縮委員会ジュネーブで行われておりますが、あれに見合って各国の非政府組織、そういう代表による今度は民間レベル軍縮委員会というふうなものを設置したらどうかというふうなことを坂本教授意見として新聞でわれわれも拝見しておりますが、こういう点はいまのそういう民間の力を、民間世論軍縮のために結びつけていく、こういう観点からわが国政府としてはそういう提起がもし国際的な場で出されてきた場合にどういうふうに対応されるか。私の気持ちとしては、むしろ日本政府が積極的にそういう民間レベル軍縮委員会ジュネーブに設置することを提起されたらいかがか、こう思うのですが、いかがでありましょうか。
  9. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 民間レベルのそういう動き現実委員会組織にでもなろう、しよう、こういう場合に政府が一体どのように関与するのか。民間のそういう組織をつくるという場合に政府がそれは賛成だあるいは反対だと言う必要はないのではないか、政府としてはそういう委員会ができた場合にそれに対する理解を持つ。先ほど申し上げましたように、現に広範囲の民間レベル動きがあって、それらの動きについては政府としても謙虚に耳を傾けます、真摯に受けとめます、こう申し上げておるのでございまして、その委員会がつくられるについては直接どうこう言う必要はない、そういう場合に理解を持って臨むのでいいのではないか、このように私は考えます。
  10. 高沢寅男

    高沢委員 民間の声を真摯に受けとめる、こう大臣言われますが、私の印象としてはそれはどうしても受け身である、民間の方から出てくればお聞きしましょう、受けとめましょう、こういう点で大臣のいまのお答えはやや受け身である、こう私は思うわけでありますが、いずれにせよ、ジュネーブにそうした民間レベル軍縮委員会を設置しようというふうになるとした場合、この問題自体恐らく国連の場の議論の中で出てくる、こう思うわけでありますが、そうすると、そういう国連の場の議論に対して日本がイニシアチブをとる、あるいはまた他の国から議論が出た場合でも日本は積極的にそれを支持し、促進するというような日本政府としての立場はぜひ欲しい、こう思うわけでありますが、もう一度その点はいかがでしょうか。
  11. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 国連の場でどのような論議が行われるかはこの段階でなかなか想像しにくい点がございます。しかし、いずれにいたしましてもそういう動きにつきまして、現実委員会ができるとか現実にそういう相談が図られるとか国連の場でどなたかが民間でこういう動きは大変貴重ではないかとかいろいろ意見が出た場合、日本政府としてはすべてそういうことについて理解を示す、こういうことでいいのではないか、こう思います。
  12. 高沢寅男

    高沢委員 先ほど来大臣の御答弁がありますが、国連局長もさっきから手を挙げておられますが、国連局長、この点いかがでしょうか。
  13. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいま大臣がお述べになりましたそのとおりでございます。第一回特総最終文書におきましても、この軍縮問題というのは政府レベル、同時に各層の国民の声も十分聞くということがございます。この点は十分留意してまいるべきことと存じます。  一つつけ加えさせていただきたいことは、NGO活動政府機関活動はおのずと異なるものでございます。この点は明確にせざるを得ないと存じます。しかしながら、NGO活動は十分これを受けとめるということ、これは大臣がお述べになったことでございますので、私もその点はそのとおりであると存ずるのでございます。
  14. 高沢寅男

    高沢委員 軍縮問題を論ずるに当たって軍縮という概念と似た概念として軍備管理、こういうことがあるわけでありますが、この軍縮という概念軍備管理概念、この点の相互関連政府としてはどういうふうに認識されているか、お尋ねしたい。
  15. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま高沢委員がお述べになりましたように軍縮という言葉軍備管理という言葉がしばしば使われるのでございますが、それぞれの言葉意味合いが何であるかという点につきましては必ずしも明確な定義というものはないように了解いたしております。しかしながら、通常軍縮という場合には軍備縮小する、文字どおり軍縮と解される場合が多いわけでございます。他方軍備管理と申しますのは、軍備縮小するということは必ずしも含まない、しかしながら軍事力バランスを保つ、つまり安全保障を保つ上においては軍事力の適正なバランスが必要であろう、そういう意味軍備管理という概念が使われていると了解しているのでございます。  なお、最近におきましては、軍縮軍備管理相互に緊密な深い関係がございます。したがいまして、軍備縮小及び軍備管理という言葉で表現されている場合がございますので、つけ加えさせていただきます。
  16. 高沢寅男

    高沢委員 いまの御説明で、軍縮は要するに軍備縮小、これを縮めて軍縮、英語で言えばディスアーマメント、これは縮小というものは、進んでいけば結局最後はゼロに行く、そういう性格のものだと思います。一方、軍備管理、いま言われた相互バランスを持った、安全保障関係における、東西なら東西という関係における相互バランスの確保、こういうふうな意味軍備管理、こう言われましたが、このバランスという概念大変くせ者でありまして、相手がどうも自分より上回っているらしい、それならそれとバランスをとるためにはおれの方はもう少し拡大しなければいかぬ、こういう論理でバランス論軍備拡大を招いておるというのが現実の姿ではないか、こう思います。そうすると、バランスという軍備管理、このバランスを一応もし前提にするとすれば、そのバランスの上でお互いに同じパーセントで減らしていくという、バランス縮小バランスに持っていくという形にすればこれは軍縮というものに結びついていくということになろうかと思うわけでございますが、そういう点について、わが国政府としてはこのバランス論をどちらの方向へ一体持っていくお考えなのか、ひとつお尋ねをしたいと思います。
  17. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  本院及び参議院の各委員会におきましても鈴木総理大臣櫻内外務大臣から御質問に対して、この軍事力バランスというものをできる限り低いレベル、低位に持っていく、これが実効性の伴った軍縮のあるべき姿である、こういうことをしばしば述べておられるのでございますが、これが政府の考え方であるということでございます。
  18. 高沢寅男

    高沢委員 さて、そういう立場に立つ場合、第二次大戦後もう三十数年たちます。この三十数年の間に、第二次大戦が終わって国際連合というものが組織、結成された、その当初から国際舞台では軍縮問題がずっと論議されてきた、こういう経過がございます。  そういう経過の中で、戦後の三十数年を大きく二つに分けると、その前半の方ではいろいろ軍縮議論はあったが、それが何かの条約協定にまとまるというふうなことにはなかなかいかなかった。それが、六〇年代に入ってから、後の半分、この間にいろいろな、多国間あるいは二国間、こういう形の軍縮条約あるいは軍備管理条約というものができてきた、こう認識をいたしますが、いまの軍縮論軍備管理論というふうな立場で見た場合、その中に、本当にこれが軍縮条約だ、こう言えるものがどの程度あるのか。これは軍縮というよりはむしろ軍備管理条約にすぎない、こう認識すべきものが非常に多いのじゃないかと思いますが、その辺の評価をどういうふうにされているか、ひとつお尋ねしたいと思います。
  19. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいま高沢委員が御指摘になられましたように、私どもも、過去三十七年の国連の歴史を見る際に、いわばその前半と申しますか、一九六三年の部分核停条約が採択されました時点、それ以降の今日に至る時点、この二つに分けることができるのではないかと考えております。  御指摘がございましたように、六三年の部分核停条約の採択、この以後いろいろな多数国間あるいは二国間の取り決めないしは条約が定められておるのでございます。  例示をさせていただきますと、一九六八年にはNPT条約、核不拡散条約、これが採択されているのでございます。また一九七二年には、ただいま御審議賜っておりますところの生物剤毒素兵器禁止に関する条約が定められております。そのほか海底核禁条約あるいは宇宙条約等もございます。  他方、二国間におきましては、一九七〇年からSALTI米ソ間の戦略核制限交渉が開始されまして、一九七二年には条約が発効する。具体的には米ソ間のABM、それから米ソ間におきますところの核攻撃兵器制限という内容を持ったSALTIが発効を見たというふうなことがございます。  ただ、委員が御指摘になられましたように、こういった一連の二国間あるいは多数国間の条約ないしは取り決めがどの程度軍縮に貢献したのだろうかというお尋ねでございます。  これにつきましてはいろいろ評価があろうかと存ぜられるのでございますが、仮にNPTにつきましても、少なくとも国際条約によりまして五つの核保有国以外は核を持たない、持ち込まないという——核を持たない、つくらないということ、私が先ほど申し上げました持ち込まないというのは間違いでございますので訂正させていただきます。つくらない、持たない、このことが定められたこと、これはやはり大きな前進であったのではないかと思います。  また、後ほど詳細に御審議賜ると存じますが、細菌毒素兵器の全廃をうたった条約、これも価値のある国際合意であったというふうに認識いたしております。  この評価の問題、これはいろいろな角度から必ずしも一致するものでないかもしれませんが、やはり遅々とはいたしておりますけれども前進があった、かように評価してよろしいのではないかと考えております。
  20. 高沢寅男

    高沢委員 いま国連局長から、過去にできたそうした諸条約、諸協定評価についてお話がございましたが、私の気持ちからすれば、軍縮というこのわれわれの目標からすれば、いままでにできた成果成果としてもちろん認めるわけでありますが、きわめて遅々としておる、満足すべき軍縮になっていない、こう言わざるを得ないわけですが、それをこれからわれわれも大いに進めなければいかぬ、こういう立場でいま軍縮条約審議に入っているわけです。  その前提になる問題として、なおここでどうしても核の問題をお尋ねをしたい、こう思うわけです。  そこで、わが国核軍縮を求めていくという場合に、日本唯一被爆国である、広島、長崎の経験を持つ、そういう立場日本立場である、これはもう国際的にどこへ出しても、日本はこの立場を前面に掲げて核軍縮を求める、こういう立場であろうかと思います。同時にまた政府のお立場を見ると、もう一つ立場は、日本はいわゆる西側陣営一員として、西側陣営立場に立ってやっていく、こういう立場があるわけです。  さて、唯一被爆国として核兵器廃絶を求める、こういう立場と、西側といえばそこにはアメリカもあればイギリスもあればフランスという核保有国があります。ことに、日米安保条約によって日本アメリカと非常に特殊な結びつきがある。その核を持っておるアメリカ、これとの関係調整、足並みをそろえていくということは今度は西側陣営、こういう立場から出てくることになるわけです。私はこれは、日本の核問題に対する根本的な大きな矛盾になるのじゃないのか、唯一被爆国としては核兵器の一刻も早き廃絶を求める、西側一員という立場ではアメリカ核戦略を認めこれに協力をする、こういう関係大変日本立場として大きな矛盾ではないか、こう思いますが、この辺の御認識はいかがか、まず国連局長のお答えもいただきますが、また大臣にもここの基本論は御認識をお聞きしたい、こう思うわけであります。
  21. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答えさせていただきます。  ただいまお話がございましたように、わが国唯一の核の被爆国でございます。二度と核の惨禍を繰り返してはならないというのは、国民のひとしく抱く強い願望でございます。これをまず十分念頭に置く必要があろうかと存ぜられます。  他方国際間の安全保障国際間の平和というものが、現実におきましては軍事力バランスということによって支えられているということでございます。この場合、軍事力と申しますと、それは核兵器、非核兵器を含むあらゆる兵器体系の上に成り立っているということでございますので、やはり軍事力バランス安全保障国際間の平和ということを考えます場合には、核の抑止力ということも十分念頭に置かなければならない、こういうことでございます。したがいまして、私どもは核の廃絶、核の惨禍を二度と繰り返さないということを究極の目的、また強い念願として念頭に置きながらも、同時に安全保障、平和の維持ということも真剣に考えなければならないわけでございます。  こういう点から、一歩一歩実効性のある軍縮措置核軍縮措置というものをわが国は訴えてまいっているわけでございまして、具体的には核実験全面禁止という大きな課題をわが国は従来とも強く訴え、推進してまいっているのでございます。この核の全面禁止を強く訴える際には、御推測いただけますように、核保有国立場から見れば必ずしも容易に受け入れることができるかどうか定かでない問題でございます。しかしながら、わが国はこれが実行可能な方法である、手段であるという観点からこの問題を強く訴えているという事実もございます点、御了解いただきたいと存じます。
  22. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、よろしいですか。その核の抑止力バランス、こういう立場に立ちますと、相手がこうだからわが方もこうだ、これは先ほど申し上げました。そういうバランス論が結局実際は軍備拡大の結果を招いておる、こう思うわけですが、私は抑止論というこのこと自体をいまや見直すべきときが来ておる、こう思うのであります。これから私の見解を申し上げて、大臣の御見解をお聞きしたいと思うのでありますが、いまやそういう相手がこうだからわが方もこうだというような議論はもう成り立たぬ段階に来ておる。ということは、抑止論というものに立って核兵器アメリカアメリカなりに、ソ連ソ連なりに展開してやっておるわけです。ところが、最近その結果としてどういうあれが出たかというと、例の限定核戦争論であります。限定核戦争はあり得る、また可能だ、こういう議論が特にアメリカから出てまいりました。そうすると、その限定核戦争がもし起きるとすればどこがなるかというと、まず第一にヨーロッパということになるわけです。そこで、いままでヨーロッパの各国の人たちは、ソ連が来るかもしらぬ、それに対して抑止力としてアメリカ核兵器、これを受け入れて、そしてアメリカの核の抑止力ソ連の来るのを防ぐ、こういう議論がいままでの西ヨーロッパ諸国の防衛論、安全保障論の主なる考え方であった。ところが、いまやそれがいよいよ限定核戦争があり得るぞ、それはヨーロッパで来るぞ、こうなったときに、いまヨーロッパの人たちは、そうなったらもうすべては終わりであるから、それならば核の抑止力というこの考え自体を乗り越えて、そして核兵器というものをなくさなければ自分たちはどうなるかわからぬ、こういう議論がいまヨーロッパでずっと出ているわけであります。それは具体的には一方的核廃絶論、一方的核放棄論というようなものにもなって出てきているわけでありますが、さてその議論は今度は、考えてみると、このレーガン政権のいわゆる多数戦線戦略というのがあります。地球上のどこかで起きたときは、それをどこかのその場所に限定しない、ほかの地区にもそういう戦闘状態を拡大して、そして全世界的、全地球的な戦闘状態の中でソ連を包囲せん滅する、こういうふうなレーガン政権の戦略がありますが、私は、ヨーロッパで限定核戦争というものが本当にもし起きるときは、直ちに連動してアジアがやはり限定核戦争の戦場になる、こう思います。そのときに一体われわれ日本はどうなるかということをお互いに真剣に考えなければならぬ段階に来ておるということではないかと思います。  そうすると、この限定核戦争論というものが出てきたということ自体が、核兵器があれば抑止ができる、核兵器があれば戦争にならぬという考え方が、逆に核兵器があるから戦争になる、こういうふうにすでに論理は逆転しておると考えざるを得ない。その反省の中から、いまやその問題のアメリカの中でさえ一方的廃棄論が出ておる、こういう現状は、世界政治の流れが大きく変わる曲がり角へいまは来ておる、こういう段階ではないかと思いますが、ここで私は大臣に、従来わが国のとってきた核抑止論というものをいまや見直すべき段階に来ているのではないかという私の認識に対して、御所見を伺いたいと思います。
  23. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大変恐縮なことでございますが、最近の国際情勢の中で考えさせられることは、ソ連が非同盟国であるアフガニスタンに侵攻した、それから、その後ポーランドに対して明らかに圧力が加わっておる、それらの姿、これは原因としてはどこにあるかということについてはいろいろな考え方がございますが、国際的にデタントの空気が非常に盛り上がってきておる中にソ連が核戦力の増強に努力をしてきて、しかもそれは見通しとしては、一九八〇年代半ばには間違いなくソ連が優位に立つのではないか、そういう見通しを西側諸国で持つように至った。しかし、その間に現実的なアフガニスタン問題、ポーランド問題が起きてきて、これではいけないということから軍事力バランス論というものが起きてきた、私はこう思うのですね。  それで、高沢委員のおっしゃるような、その場合に限定核戦争論があったり、一方的廃棄論があったりしているではないか。それは、そういう論議の行われておるということはそれなりに念頭に置く必要があると思うのですが、現実的には一体どう処置していくのが最もふさわしいかということを考える場合に、やはり核の抑止力というものを考えておる必要があるんではないか。どうしても不均衡のおそれ、そういう傾向の中に積極的な行動をとってきたソ連の出方から、どうしても考えざるを得ないんだ。しかしながら、そうはいっても、そういうソ連現実の行動があるからといって、それじゃそれだけでいくのか、それはそうでない。それは、昨年のオタワ・サミットにおきましても、そういう傾向、そういうおそれというものを西側は認めながらも、であればあるほど対話の必要がある。そしてその対話の必要を訴えて、東西が明らかに対立している中にありましても、中距離核戦力の削減交渉あるいはSTARTの交渉をしようということが一方に動いているわけでありますから、それらを総合していく場合に、高沢委員は、いまや核の抑止論はどうかという判断に立たれておるが、私どもは、やはりこの段階では核の抑止力、軍事バランスというものはやはり考えなければならない。しかし、低いレベルに持っていくためのあらゆる努力を必要とする、こういう立場でございます。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、一種のお守り札のように、いつもアフガンとポーランドを出されますが、しかしこれは、アフガン、ポーランドのはるか以前からの、第二次大戦後の三十数年にわたる実は一貫した課題なんであります。そこでいま、八五年ごろにはソ連の核戦力は西側を上回るというふうなことを言われましたが、何かいますでにソ連は核戦力で西側を上回っておるという御認識も出てきたり、それが八五年になってみたり、私は、そのこと自体が大変、こんなことを言っては失礼ですが、いいかげんじゃないのか、こんな感じがいたします。  それから、もともとこの抑止論の出発点は、第二次大戦後、ソ連通常兵器で強い、通常兵器で強いソ連に対抗するにはこっちは核兵器を持たなければいかぬというような形で、ソ連がまだ核を持っていない段階からすでに核を抑止力としてという議論はもう第二次大戦直後からスタートしてきた抑止論であって、それが今度は、相手が強いから抑止力を持たなければいかぬとか、相手の核が上回るから抑止力を持たなければいかぬとかいうふうに、情勢がどうなろうと、結局核抑止力を持たなければならぬという議論、これだけは一貫しておるというふうなことで来ておりますが、私はこれはいただけない。やはり情勢の変化に応じてこの認識自体を再検討してもらわなければいかぬ、こう思います。いま大臣の言われた、相手ソ連がもし核で強くなってくるなら、なおさらその強くなってくる相手核兵器を使わせないように縛るというふうなことが当然ここには出てこなければいかぬのがわが国政府立場ではないのか、こう思うわけです。  そこで、きのう実は本外務委員会で、大臣きのうはお留守でありまして、宮澤官房長官が外務大臣臨時代理でこの外務委員会に出席いただきまして、わが党土井委員から、日豪原子力協定審議の中で、この核兵器の問題の質問がありました。それで、これは非常に大事なやりとりでありますから、私はきのう実は記録の部屋へ伺いまして、ちょっとその当時の記録を私なりにメモさせてもらったこれを持っておりますが、これによれば、要するに土井委員の御質問は、核の軍縮をしなければいかぬ、そしてその核軍縮という本来の目的が達成されるまでの間は核兵器使用あるいは使うぞという威嚇、こういうことは禁止されるべきである、そうではないですか、土井委員からこういう質問がありました。これに対して、きのうは宮澤外務大臣代理からは、そのとおりでございます、こういうお答えがあったわけです。私は、宮澤さんのこのお答えは、いまの情勢にまさに適した、正しいお答えをされておる、こう思うわけであります。大臣御不在中に、大臣の代理からそういうふうな、非常に大きく一歩前に足を踏み出した、われわれの期待されるお答えがあったわけですが、この点については、大臣は当然同じお考えであろうと私思うわけですが、いかがでしょうか。
  25. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、昨日の本委員会におきまして土井委員よりお尋ねがございました。この土井委員お尋ね、御質問及びこれに対しまする政府側からの答弁の具体的な内容につきましては公式議事録について確認させていただく必要があるわけでございますが、ただし、私どもでも速記録で検討いたしましたところは、ただいま高沢委員が御要約なされましたとおりであると了解いたしております。  答弁者、これは私どもの同僚の政府説明員から御答弁申し上げたのでございますが、土井委員の御質問を、国連決議に述べられているような核兵器使用禁止ということではなく、核兵器が二度と使用されるようなことがあってはならないとの一般的な心情をお述べになられたもの、かように受けとめさせていただきまして、そのようなお尋ね、これには、そのとおりでございますという賛意を表明させていただいたのでございます。この点、外務省の説明員のお答えが、御質問の御趣旨を正確に理解いたしておりませんでしたこと、まことに申しわけないと存ずる次第でございます。  核兵器使用の問題につきまして、政府といたしましては従来より、核の惨禍が繰り返されるようなことが二度とあってはならないとの考え方を申し上げておるところでございます。同時に、政府といたしましては、国際の平和と安全が核抑止力にも依存している現下の国際情勢にかんがみ、核兵器が二度と使われないようにするためには、単なる核使用禁止の宣言や、全面的な禁止条約締結を主張するよりも、まずは核兵器国の自制を求めつつ、核実験全面禁止と、実行可能な核軍縮を推進することによって一層効果的にその目的を達成し得ると考えており、従来一貫してその旨を申し上げてきているところでございます。以上の点は、宮澤長官の午後の本委員会での御答弁で尽くされていると考えるところでございます。御了承賜りたいと存じます。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 私は、国連局長それからまた大臣もお聞きいただきたいのですが、午前中土井委員が宮澤外務大臣代理にした質問、それに対するお答えということを記録によって先ほど申し上げたわけです。これはいずれ速記録がちゃんと活字の印刷になって出てくるわけでありますが、私はきのう記録の部屋でこれを写させていただいた。その限りにおいては文章に間違いはありません。  そしていま国連局長は、今度は午後こう答えたというふうなこともいま読まれたわけでありますが、このことは、そうすると同じ宮澤さんの午前の答えと午後の答えでは全く違う内容になっておるというふうに私は言わざるを得ないと思うのです。そして、この土井委員の午前中の質問をもう一度ここで言いますと、核兵器使用またその使用による威嚇、これはもうしょっちゅう問題になるのですけれども、これは核軍縮が達成されるまでの間は禁止されるべきであるという一般的考え方にはもちろん賛成されると思いますが、この考え方はどうですかと。これに対しまして遠藤説明員——どうも遠藤さん、あなたの名を出してあれですが、あなたは、お答え申し上げます。そのとおりだと思います。そしてその次に土井委員が、宮澤外務大臣代理も、それは当然にそのようにお考えになりますねと、こう聞いて、宮澤外務大臣代理、そのとおりと思います。こういうふうになっているわけです。このやりとりは、もうあれこれの解釈や説明の余地のないきわめて単純明快にして、そしてちゃんとはっきり内容の明確なやりとりであるわけですが、これを今度は午後の答弁ではこうだったといろいろ言われましたけれども、いまお聞きをすれば、その午後の答弁の中では、核不使用協定など当てにならぬ、それよりは実験禁止だというふうな言い方をされますが、これまたいまのそのこと自体が全く私はナンセンスな内容であると思うわけですが、こういう点について大臣、あなたのお留守中のことではあったわけですが、これは当然政府、内閣の一体性という立場があるわけでありますから、そういうお立場からひとつ大臣の御認識を聞かしていただきたい、こう思うわけであります。
  27. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 宮澤さんの御答弁については、ただいま高沢委員が速記をおとりになってのお話でございまして、そのことについては、またいま国連局長の方から詳細お答えを申し上げておるわけでございます。  私としてそれではどうであるのか、これについては、国会で、国連における八〇年と八一年の決議になぜ反対したのか。これは核兵器使用の決議ですね。しかもそれについては過去においては棄権もしておる、あるいは賛成もしておるのにどうしてだ、こういうことで、その際におきましては、現在の核の抑止力から考えて実効性のあることを考える場合に、核不使用決議に、現在の諸情勢から考える。これは皆さんの方から先ほども、いつもそういうことを言っておるという御批判もございましたが、八〇年、八一年の経緯は、アフガニスタン問題、ポーランド問題のこの経緯の中にあるのですから、そういう点から核の抑止力ということを考えなければならないので、核不使用決議については反対である、こういうことを申し上げておるわけでございまして、現在でも、通常兵器も含めての軍事均衡、そういう上から見ての核の抑止力というものは政府としては重視しておるわけでございまして、いま改めてこの核の不使用についてはどうか、こう御質問があれば、それはやはりそういう点についてこれは賛成しがたい、こういう立場でございます。
  28. 高沢寅男

    高沢委員 何か大臣、ちょっと時間の御都合があるわけですが、この問題やはり大臣がおられないとできませんので、何ならば大臣、御用を済まされてきた後にまたこの問題を続けるということにしましょうかか。何か大臣、時間の御都合があるんでしょう。
  29. 中山正暉

    中山委員長 では、その質問が一応終わられますまで、大臣、御在席いただきます。
  30. 高沢寅男

    高沢委員 きのう午前中の外務委員会、私は所用があって出席できなかったのです。午後の外務委員会はずっと出ておりました。  そこで、午後、土井委員と宮澤さんのやりとりは私、聞いておりましたが、そのときの宮澤さんのお答えは、核兵器というものは当然ないのがいいです、また使われないのがいい、こういう前提を述べつつ、しかし、日本現実アメリカと日米安保にあります、こういう関係の状況では、まだ核抑止力を否定するわけにいかぬというような趣旨のお答えは、確かに私は午後の宮澤さんの答弁としては私も理解し、記憶しております。しかし、そのときに、先ほど国連局長が言われたような、まず実験禁止がいいとかそれから持っている国の不使用の約束は余り当てにならぬとかというそのたぐいの宮澤さんのお答えは、全然そういうきのうの午後の外務委員会ではなかったと私は記憶しております。そういう点において、先ほど国連局長が読まれたその記録なるものは、私はそう言っては大変失礼ですが、これはまことに本当の記録であるのかどうか疑わしいと思います。  委員長、この点については、機会を得てまた理事会の場でそういう記録を十分精査するという機会もひとつ持ちたいと思いますが、いずれにしても大臣、ここでひとつ、いまの大臣のお答えであるわけですが、きのうの土井委員質問は、確かにいまの国際情勢はいろいろ情勢はある、しかし、そのことは一応おいて、論理上核兵器というものは禁止すべきものである。これは一つの論理です。その論理は、私の考えによれば、こういうものは絶対悪の兵器である、したがって、禁止すべきものである。こういう論理からすれば、その論理上禁止がまだできない間はこれは使ってはいかぬ、使用はいけませんというように論理上なるんではないですか、こういうふうに土井委員質問があって、そして午前中の段階では、そのとおりでございます、こういう答弁になっておるということでありまして、したがいまして、大臣、アフガン、ポーランドということは一応おいでおいで、私はこの場合の論理上の問題として、そうした鈴木総理もかつて言われた核兵器は絶対悪である、こう言われておるわけで、そういう立場に立っての論理上のお答えとして、禁止はする、当然禁止すべきだ、しかし、その禁止が実現するまでの間は使用はいけません、こういう大臣のお立場は私は当然あってしかるべき。じゃそのために具体的にわれわれはどういうことをやるかということはその上の問題である、こう思うのですが、大臣、いかがでしょう。
  31. 門田省三

    門田(省)政府委員 先ほど私から申し上げさせていただきました点につきまして、ただいま高沢委員から御指摘がございました。つまり、一番最後の結びで、私は、以上の点は宮澤長官の午後の答弁で尽くされていると考えておりますということを申し上げたのでございますが、この点につきましては委員の御指摘のとおりに、宮澤長官は必ずしも具体的に一つ一つ私が御説明いたしましたような点には触れておられないのでございまして、申し上げたいと思いましたのは、そういう考え方は宮澤長官の御説明の中に尽きておりますという趣旨で申し上げたのでございます。御了承を賜りたいと思います。
  32. 高沢寅男

    高沢委員 大臣いかがでしょうか。
  33. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 宮澤臨時代理と土井委員との一問一答について、どういう経緯に基づくものか、午前中の答弁あるいは午後の答弁との関連は、先ほどから国連局長が申し上げておるところで御理解をいただきたいと思うのであります。  ただ、私が核の抑止力ということを言っておる上から不使用について意見を求められれば、それは賛成というわけにはいかない。それで、軍縮ということを考える場合、それはわれわれとしては当面実行可能なところから考えていきたいという所見をしばしば申し上げておるところでございます。
  34. 高沢寅男

    高沢委員 それではいまの問題は、まだこれからこの軍縮条約審議はずっと続くわけでありますから、したがって、先ほど私が委員長に申し上げたように、きのうの午前、午後の外務委員会の宮澤大臣代理のお答えという記録については別途また理事会において精査させていただくということで、この問題はなお後へ残る問題として保留をさせていただきたいと思います。
  35. 中山正暉

    中山委員長 大臣御退席願ってよろしゅうございましょうか。
  36. 高沢寅男

    高沢委員 じゃ大臣暫時どうぞ。(土井委員委員長、私の方からもちょっと」と呼ぶ)ちょっと関連の発言よろしいですか。
  37. 中山正暉

  38. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど来、昨日の私の質問に関しまして同僚の高沢議員の方からのお尋ねが続いたわけでありますが、外務省側の答弁を私は先ほど来ここでお聞きをしておりまして、二転、三転、しかも私の質問の趣旨まで勝手につくっていただくようなかっこうであります。いいかげんにしていただきたい。こういうふうなやり方をやられたのじゃ、質問する意味がないですよ。委員長には、いま高沢議員の方からの申し入れがございますけれども、ひとつ理事会で正式に印刷になる以前に取り上げる問題になると思いますから、速記を起こしていただいた文章をお互いに討議の資料にしまして、外務省のきょうのけしからぬ答弁に対してぜひお取り上げをお願いしたいと思います。
  39. 中山正暉

    中山委員長 理事会におきまして速記録を取り寄せ、またいまの御答弁の速記録を取り寄せまして、検討をさせていただきたいと思います。
  40. 高沢寅男

    高沢委員 それでは、大臣御不在中は私、特定通常兵器条約についてお尋ねをして、また大臣が戻られましたらいまの点に関連する質問に戻りたいと思います。  特定通常兵器禁止条約の前文を拝見いたしますと、ここにずいぶんしばしば「国際法の原則」に基づき、あるいはまた「国際法の諸規則」に基づきというような言葉がずっと出ておりまして、そういう立場からこの特定通常兵器禁止するのだというような趣旨が出ております。また同時に、そこにはその禁止する兵器の性格として、「過度の傷害又は無用の苦痛を与える兵器、」こういうものは禁止するのだというふうなことがずっと前文に出ているわけですが、この場合の「過度の傷害」とか「無用の苦痛」というふうなものは一体どういう具体的な概念であるか、あるいはここで引用されておる「国際法の原則」、「国際法の諸規則」というものは具体的には一体どういうものを指しておるのかということをお尋ねしたいと思います。
  41. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  高沢先生の御質問の第一点でありますが、「過度の傷害又は無用の苦痛」というのは具体的にどういう概念かという御質問にお答えする前に、前文で挙がっております国際法の諸原則というものにつきまして簡単に御説明させていただきます。  この条約の前文に挙がっております諸規則、諸原則と申しますのは、前文第二項の「敵対行為の及ぼす影響から文民たる住民を保護する」、これが出発点であろうと思いますが、いずれにいたしましても、近代国際法と申しますか、近代におきます戦時国際法、これは御承知のように国際人道法という名前で呼ばれる場合もありますが、いずれにいたしましても戦闘行為あるいは敵対行為というものの中で、そういう際に文民一般というものをできるだけ保護すべきであるというのが人道主義、戦時国際法の根底に流れる人道主義の要請から出てきておる基本原則であろうと思います。  そこから出発いたしまして、いわゆるヘーグ陸戦法規の二十二条で言っております害敵手段を選ぶ権利は無制限ではない、すなわち戦闘行為を行うについて、敵を殺傷するためにはどういう手段を選んでもいいということではないのだという一つの基本的なルールというものがございまして、そこからさらに種々の戦時国際法の実定法としての兵器の制限条約がいろいろ歴史的には出てきておる、こういうことであろうと思います。  そこで、先生の具体的な御質問がありました「過度の傷害又は無用の苦痛を与える兵器、」これは先生御承知のようにヘーグの陸戦法規の二十三条に出てまいります規定と実質的に同様でございまして、これは具体的にどういうものであるかということにつきましては、あくまでも一般的な原則でございまして、個々の兵器に当たって考えなければいけないということでございますが、ここで言っております基本的な原則というものは、戦闘行為を行う場合に軍事的な利益と申しますか、軍事的な必要性というものだけから使用兵器の正当性というものを判断してはいけない。他方において、さっき申し上げましたような人道上の要請というものがありますので、そういうものとのバランスで、使用されるべき兵器の適法性と申しますか合法性というものを考えなければいけない。そういう基本的な原則としてこの条約に引用されておるわけでございます。  したがいまして、あらゆる兵器につきまして、この原則を適用した場合にどういう兵器が適法でありどういう兵器が不法であるかということを一般的に申し上げることはきわめて困難であろうと思いますが、この原則に基づきまして、戦前から若干の兵器の使用についての規制あるいは制限をしておる条約がある。セントピータースブルグ宣言から始まりまして一九二五年のジュネーブ議定書による毒ガスの禁止でございますとか、あるいは戦後におきましては、今回御審議をいただきます生物兵器禁止条約でございますとか、あるいはこの特定通常兵器使用禁止制限条約でございますとか、そういう個々の実定法に当たって判断するということでございます。
  42. 高沢寅男

    高沢委員 この条約の後に議定書が附属してついておりまして、その議定書の第一では「検出不可能な破片を利用する兵器」というものが挙がっており、議定書の第二では「地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用禁止」というものが挙がっており、それから議定書の第三では「焼夷兵器の使用禁止」、こうなって、具体的に三つがここでは指摘されているわけですが、いま条約局長が説明されたそういう概念からした場合に、わが国政府としてはこのほかに禁止されるべき特定兵器としてこういうものがあるじゃないか、こういうものもあるぞというふうなお考えを何かお持ちなのかどうか。その点をひとつお聞きしたいと思います。
  43. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  当面は、ただいま御指摘ございました三つの議定書に盛られている特定の通常兵器を対象とする、これを十分実行に移していくことが重要であるという考え方でございまして、ただいまのところでは、さらにどのような通常兵器をこの条約の対象につけ加えるべきであるかということは考えておりません。
  44. 高沢寅男

    高沢委員 こういう兵器は禁止すべきだという新たなものが出てきた場合、この条約では、後でそうした議定書の追加ができるようになっていますね。そういう点においては、わが国は積極的にそういう追加をしていく、そして禁止範囲を広げていくというようなことについては当然お考えはあると思いますが、いかがですか。
  45. 門田省三

    門田(省)政府委員 今後の推移におきまして、ただいまお述べになられましたような状況が出てまいりましたときには、わが国といたしましても積極的にこのような特別通常兵器制限あるいは禁止協力してまいりたいと考えております。
  46. 高沢寅男

    高沢委員 第一条にはこの条約の「適用範囲」が規定されておりますが、これによりますと、「戦争犠牲者の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約のそれぞれの第二条に共通して規定する事態について適用する。」それからさらに、ここに括弧をつけて、「ジュネーヴ諸条約の追加議定書I第一条4に規定する事態を含む。」こういうふうになっているわけでありますが、ここに規定されておるこの「千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約のそれぞれの第二条に共通して規定する事態」というものは一体何を指すか。  それからもう一つは、わが国ジュネーブ条約の議定書には加盟していない、こうお聞きしておるわけですが、そうすると、ここには括弧書きの中で議定書のことまで触れられておるときに、わが国がこの条約に加盟するとき、実際のわが国にとっての適用範囲はどういう影響を受けるのか、そこのところが不明でありますから、ひとつ聞きたいと思います。
  47. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 まず、ジュネーブ条約の第二条に共通して規定する事態というものについて御説明させていただきます。  ジュネーブ条約のいわゆる共通第二条と申しますものは、国会の方に御提出申し上げております条約の説明書の四ページに具体的な規定ぶりが挙がっておりますが、簡単に申し上げますと、戦後いわゆる国連憲章のもとにおきまして、伝統的な戦争という概念が否定されておりますことは御承知のとおりでございますが、それにもかかわらず、現実には国家間の武力紛争が発生する。そういう国家間の武力紛争、すなわち国際的な武力紛争はすべてジュネーブ条約の適用対象になるのだ、こういう趣旨で定められたものでございます。したがいまして、第二条に共通して規定する事態というものは、その括弧の中をとりあえずおきまして考えた場合は、そういう国家間の武力紛争という事態には、戦争の性格のいかんにかかわらず、すべて適用があるのである、こういう趣旨でございます。  次に、括弧内の「ジュネーヴ諸条約の追加議定書I第一条4に規定する事態」と申しますのは、これも説明書には具体的にその規定ぶりを掲げさせていただいておりますが、これは一口に申し上げれば、先ほど申し上げましたような国際的な武力紛争でない、すなわち非国際的な武力紛争のうちで、いわゆる民族解放戦争と呼ばれておるものにつきまして、追加議定書のIというものが適用になるということを述べた規定でございます。したがいまして括弧内の「ジュネーヴ諸条約の追加議定書I第一条4に規定する事態を含む。」という意味は、先ほど申し上げました国際的な武力紛争のほかに、非国際的な武力紛争であっても、追加議定書で定義されておりますような、いわゆる民族解放戦争というものについても適用があるということでございます。  追加議定書については、先ほど先生が御指摘になりましたように、わが国はいまだこれを締結するに至っておりませんけれどもわが国が当事国になっておらない条約の規定自体、それが自己完結的なものであれば、そういう規定がほかの条約に引用されることはしばしばございます。一例を申し上げますと、昨年御承認いただきました難民条約の中でも、わが国が入っておりません欧州の難民条約の規定を引用した規定がございます。そういう場合がしばしばございまして、それ自体が自己完結的な規定であれば、それが日本が入っておらない条約の規定でございましても、それを引用することは別に差し支えない、法律的には何も問題が生じないということでございます。
  48. 高沢寅男

    高沢委員 大臣がお帰りになりましたので、もう一度先ほどのところへ戻りまして、大臣にまたお尋ねを続けたいと思います。  先ほど来、核の抑止力の問題でいろいろお尋ねをしていたわけですが、要するに大臣のお立場あるいはいまのわが国政府立場は、アメリカとの安保条約を結んでいる。アメリカは、その持てる核兵器をもって抑止力を働かせておる。この抑止力というものを日本政府としても認めていくんだというお立場だと思いますが、それはそれでよろしいでしょうか。まずそこからお尋ねしたいと思います。
  49. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのとおりでございます。
  50. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、そのアメリカ抑止力を働かせておる相手アメリカ核兵器があるから、向こうから来そうなやつを抑えておるという、その相手というのは、これは私は率直に言えばやはりソビエトということになると思うのです。これは、わが国ソ連を仮想敵国として見ているかどうかという議論と別に、実態的に、この日米安保条約、そしてアメリカ核戦略の展開、それはだれを相手に見ているかといえば、やはりソビエトを相手に見ておることは明らかな事実だと思います。そうすると、ソ連からの核が日本に向かって飛んでくる可能性、危険性というものに対して、アメリカの核で抑えておる。こういう抑止力議論は、下手をすると、まさに日本を巻き込む核戦争そのものにつながるということをさっき言いましたが、これはこれで一応おきましょう。  そこで、そういう核の抑止力というアメリカのものがあるから、相手から核兵器が飛んでくる心配はない、その危険はなくなったというような状態が出てくれば、このアメリカによる核の抑止力というものも当然必要がなくなるということになるだろうと私は思うのであります。そういたしますと、先ほど来問題の、国連における核不使用の決議−核兵器を持っている国は、いま五つの国であります。その五つの国が、お互いに核兵器は使わないという取り決めをする、約束をするというふうなことが本当に成り立ってくるならば、五つの中の一つであるソビエトも核兵器は使いませんというようなことになってくれば、その危険性に備えるというアメリカの核の抑止力も、わが国にとっては必要がないということになってくるのじゃないか、これは大臣お尋ねしておりますが、この点は論理上の問題としていかがでしょうか。
  51. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいまおっしゃられましたように、五つの核保有国が核を使用しないということを約束した場合に、そのような約束が実効性によって十分裏打ちされているかどうか、この点がきわめて重要な事柄であろうと考えられます。実効性があるかないか、実効性を確かめるための検証の問題等もあろうかと存ぜられます。
  52. 高沢寅男

    高沢委員 いまのような御議論に立てば、この特定兵器を使わないという軍縮条約を結ぶ意味は一体どこにあるのか。条約は結んだ、だけれどもある国はやるかもしらぬ、やらないということは検証されていない、それではこの条約意味がない、こうなります。あなたのいま言われた論理からすれば、われわれはここで特定兵器禁止とか、生物兵器禁止とか、環境破壊兵器の禁止とか、どれ一つ結んだって一体何の意味があるのだということになるわけですが、これはどうですか。そういうふうなことにはならぬのですか。いかがでしょう。
  53. 門田省三

    門田(省)政府委員 いま御審議いただいております条約、特に特定通常兵器につきましては、使用に関する禁止あるいは制限ということを対象にしております。そのねらいは、先ほど条約局長の方から申し述べましたように、文民等に対する無差別な兵器の使用ということを避ける、つまり人道的な見地に基づくものでございます。検証措置が定められていない、これは御指摘のとおりでございます。ただ、その場合にはやはり国際的な通念というものが働きまして、おのずと評価が出てまいるということ、さらには、この条約の適用というものにつきまして、一方の国が条約の命ずるところに従わないということであれば、他の国もやはり国際法上の通念として一定の行為をとることができるということになっているものと考えております。
  54. 高沢寅男

    高沢委員 人道上の問題等を引用して説明されましたが、核兵器こそまさに人道上の問題として使ってはならぬ、使うべきではないということになるのじゃないですか。いまの国連局長の説明の論理をそのまま受けとめれば、なおさら核兵器こそ使ってはいかぬという協定をさせるべきであるし、もしそういう協定がなされた場合には、私はそれこそ革命的な意義がある、こういうふうに考えます。  そこで大臣、この場合はひとつ大臣にお答えをいただきたいと思いますが、いま核兵器を持っている国の中で、私の承知しているところでは、ソビエトと中国は、持ってはいるけれども自分の方からは先に使わないということをとにかく明らかにしております。そういう立場を明らかにしております。これも当てにならぬと言えばそれっきりですけれどもね。そういうふうに、少なくとも中国とソ連は自分の方から使わないということを言っておるときに——あとイギリス、フランスはありますけれども、このイギリス、フランスはそう言っては失礼ですけれども、核を持っている国としてはプラスアルファの程度だと思います。やはり基本はアメリカであります。アメリカが同じように自分の方から先に核兵器は使わない、こういうふうなことがアメリカの宣言として、政府立場として表明されるということになってくれば、いままでに自分は先に使わないと言っておるものとあわせて、それならば五つの国の核兵器を使わないという協定というものは、私はまさに実現はできると思うし、それができたとき、いまの全世界で展開されておる核軍縮各国における運動の力等を見た場合には、これほど確実な平和のための保障はない、私はこう思うわけです。  そこで具体的に一つの提案として申し上げたいと思います。  わが国は核防条約に加入しております。この核防条約の中には米とソの核を持っている国が加入しています。イギリスも入っています。中と仏はまだ入っておりませんが、ともかく米ソ英という三つが核保有国として核防条約に入っておる。それ以外の核防条約加盟国は皆核を持っていない国が入っているわけです。  そこで、持っていない国は、持ちません、つくりませんということを明らかにし、国際上のそういう義務を負う形で核防条約に入っております。一方、持っている国は、核防条約に入っておるけれども、しかし、これらの国は、自分の持っておる核兵器をこれをやめるとかこれを使わないとかというふうな何らの義務を負うていない。ここにこの条約の根本的な大きな不平等性があるということが論議されてきたことは御承知のとおりです。そうすると、この核防条約の不平等性を埋めつつ、同時にいまの世界の平和に大きく貢献するための方法として、この核防条約加入の核保有国は核を持たざる国に対して核兵器を使ってはならぬということを義務づける条項を一項核防条約の中に新たに起こす。この核防条約の第八条によって、加盟国であるわが国はそうした条約の改定を提起する権利があるわけですから、そういうことをわが国立場として提起したらどうでしょうか。これができる場合には、米も、問題のソも、そしてイギリスも、こういうところが核兵器を使ってはならぬという大きな枠を受け入れることになってくるわけです。そういうことをわが国の積極的な国際外交のイニシアチブとしてやられたらいかがかと思いますが、大臣の御見解をひとつお尋ねしたいと思います。——参事官が手を挙げておりますが、後でまたぜひ大臣見解をお願いします。
  55. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生御指摘の核防条約の第八条に基づきましてそういった改正をしたらどうか、改正を少なくとも日本が提案したらどうかという御指摘はそのとおりであると思うのでございますけれども現実に核防条約には残念ながら中国もフランスも入っていないわけでございます。他方現実にいま先生御指摘の問題、すでに議論が行われておりますので、御紹介させていただきたいと思います。  御案内のジュネーブ軍縮委員会で、実はこれは一九七八年の第一回の軍縮特総の結果を受けまして、一九八〇年から非核兵器国の安全保障という問題を取り扱います作業部会が開かれております。ちなみにジュネーブ軍縮委員会は四十カ国でございますけれども、中ソも含めまして核兵器国五カ国全部入っております。そこで、この作業部会におきまして現在作業が行われているわけでございますが、二点ございまして、一つ核兵器国としてどういうふうな立場をとっておるか、現在とっておるかあるいは将来とるかという点をまずリストアップするということ、それが第一点。第二点に、もしそういうふうな結果が出ましたら、一体それにどういうふうな国際的な性格を与えるか、つまり条約にするのかあるいは宣言にするのかあるいは国連総会の決議にするのか等々、方法論というか国際的な枠組み、この二点につきまして現在審議が行われているわけでございます。日本は御案内のとおり今回議長国でございまして、議長国であると同時に非核兵器国としまして、本件には前向きに真剣に取り組んでいっておる次第でございます。
  56. 高沢寅男

    高沢委員 お約束の時間が来ましたのでこれで終わりますが、まだまだたくさんお聞きしたい問題がありますから、いずれまた後々の外務委員会で機会をいただきたいと思います。  そこで最後に、大臣、いまの遠藤参事官の御説明で、核兵器保有五カ国の入ったジュネーブ軍縮委員会でそういう議論をいましておる、こういうお話で、大いにそれが実るように御活躍、御努力を願いたいと私は思います。同時に、そこで実らせるためにも、一種のショック療法とでもいいましょうか、核防条約にそういう改正提起というふうなことを日本政府がやって、そういうことをはね返して、ジュネーブのここでまとめなければこっちでやるぞというような日本立場を打ち出しながらジュネーブ軍縮委員会を成功させる、五つの核保有国の核不使用の約束をうまくまとめていくという方向日本政府はがんばってもらいたい、こう私は思いますが、大臣、そのお答えを聞いて終わりたいと思います。
  57. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ジュネーブ軍縮委員会は、御承知のとおりに核保有国全部加盟をしておって、そこで作業部会が持たれまして、鋭意実効ある核廃絶に向かって、あるいは核禁止に向かって努力が行われておるのでありまして、日本もこのジュネーブ軍縮委員会を通じて常日ごろ努力をしておるわけでありますが、一段とその努力に努め、軍縮実効が上がるように努めたい。きょうは高沢委員からいろいろ御意見をちょうだいいたしまして大変参考になった点がございますが、それらを踏まえてジュネーブ軍縮委員会実効ある措置のとれるように努めてまいりたい、このように思います。
  58. 高沢寅男

    高沢委員 ひとつがんばっていただきたいと思います。  以上で終わります。
  59. 中山正暉

    中山委員長 草川昭三君。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  60. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  政府は、四十七年に署名をいたしました生物兵器及び毒素兵器開発、これの生産貯蔵禁止廃棄に関する条約の実施に関する法案がいま上程をされておるわけでございますが、いずれにいたしましても基本的な問題は人類の恒久平和でございますし、またこの崇高な人類の恒久平和のためには、いろいろな政治的、経済的な摩擦というのを防がなければいけないわけでございます。そのために、大臣も、プレサミットと言われましたOECDの閣僚理事会、あるいはまた通産の場合は三極通商会議、こういうふうな二つの重大な国際会議が終了されましてお疲れのところを御出席になっておられるわけでございますけれども、今回のこの一連の会議で、日本をめぐる貿易摩擦の解消のために、ヨーロッパなりアメリカを納得させるためにいろいろな御努力をなされたと思うのですが、本来の目的は達成されたのかどうか、まず最初に簡潔に大臣にお伺いしたいと思います。
  61. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 OECDの会議におきまして、いまお尋ねの貿易摩擦あるいは日欧あるいは日米の貿易不均衡というものがストレートに取り上げられたかというと、そういうことはなかったのでございます。議題は主として、一般的経済政策それから一九八〇年代の貿易あるいは農業貿易、非加盟国との関係をどうするかということが中心的テーマでございまして、それらの話の中で何か特に日本に対していまの貿易不均衡の問題でいろいろ批判があるかというと、それはなく、簡単に申し上げますならば、円が不当に安いのではないか、それに対して日本政府はどうこれから持っていくか、それについて内需喚起等の施策が必要ではないか、また、日本の市場開放というものにさらに努力すべきではないかというような論議の進め方で、もちろんそれはそれなりに経済摩擦の問題になるわけでございますが、どちらかというとアメリカの高金利政策に対する非常な厳しい批判が多かった、こういうことでございます。
  62. 草川昭三

    ○草川委員 いま市場開放の問題も出てきておるわけでございますけれども、いずれにしましても、次のサミットに基本的な問題を持ち越すことになると思うのでございますけれども、たまたま三極通商会議の方でも日本の市場開放策の第二弾として農産物を盛れという要求がかなり強いやに聞いているわけでございます。たまたま国会におきましても、衆参の農水委員会等では農作物の自由化の反対決議というのがなされているわけでございますけれども、このようなものを踏まえて外相としてはサミットにどういう形で臨まれるのか、この決議がどのような考え方になるのか、あわせてお伺いをしたいと思います。
  63. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 農産物の自由化、特にいま問題になっておりますのは残存制限品目の二十二品目、工業製品を除いた二十二品目でございますが、これは個別に十分論議を詰め、そして意見のある各国理解を求める必要はあると私は思うのであります。国会においても自由化あるいは枠の拡大反対、こういう単刀直入な表現でいろいろ私どもにも、ときに決議、ときに要請という形でございますが、しかし、個別に検討してまいりますならば、やはりその場合、日本として傾聴しなければならない点もこれは率直に言って出てくるのではないか、こう思うのであります。  今回、農業関係の問題はガットに持ち込もうというような動きがございましたが、それはOECD会議は了承をしなかったのであります。しかし農産物問題については、いろいろむずかしいことはあるが、しかしよく話し合いをしよう、そういう空気であったと思うのでございまして、問題は残っておりますから、サミットの場合でもあるいはこの問題が再び取り上げられるかと思いますが、そういう場合におきましても日本立場日本の農業の実態、そういうものについてはよく理解を求めることが必要だ、このように思っております。
  64. 草川昭三

    ○草川委員 本委員会での主題ではございませんのでこれで終わりますけれども、よく話し合うということだけで通ればいいわけでございますけれども、ひとつ慎重な対応が必要ではないだろうか、こう思っております。  それからもう一つ、これも先ほども話が出たようでございますけれども、六月の国連軍縮総会に国際平和研究学会という、これは民間国際的な先生方のお集まりの学会があるわけでございますけれども、ここが、今度の総会の中で米ソに対して一方的な核兵器の大幅削減を求めるよう主張すべきではないだろうかというようなことを単刀直入に言っておるわけでございます。これも非常に貴重な提案だと思うのですけれども、この六月の軍縮総会に臨む場合の政府の演説等でいろいろな議論があるようでございますが、この提案についてどのように考えられるのか、お伺いしたい、このように思います。
  65. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいま草川委員が御指摘になられました点は、先ほど高沢委員からお話がございました東大坂本教授の提案かというふうに存じます。私、その提案の具体的な内容をまだ拝見いたしておりませんので、ここで意見を申し上げさせていただくことは差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、そのような提案は、先ほども申しましたように核保有国自体によってどういうふうに受け取られるかという実効性の問題、これも十分考える必要があるのではないか、かように思うのでございます。
  66. 草川昭三

    ○草川委員 これは次の機会でいま少しこの問題を議論をするということにしまして、いまの程度の私どもへの答弁では非常に納得しがたい点があるわけでございますが、別の機会に譲って、本来の生物兵器開発等の問題について質問をしたい、こういうように思います。  この三つの条約にとりまして、私ども日本の過去の歴史、そしてその過去の歴史の中での反省点、特に生物兵器細菌兵器の場合は日本としても世界的にはかなり進んだ技術を持っておるようでございまして、国際的には批判をされておる諸条項というのはずいぶんございます。さらに、今日的な状況の中でこの問題にどう取り組むかという問題になるわけでございますが、微生物の問題だとか病理学の問題だとか遺伝子工学という問題が今日非常に技術の進歩、科学の進歩が出ておるわけでございまして、この進歩という問題が人類の幸福に役立つ反面、同じような技術、ノーハウといいものが生物化学兵器に使われるという点があるわけでございます。この点が非常に現実的な問題になってまいりますと重要なものになるのではないだろうか、私はこう思います。しかし、本条約の中で開発せず、生産せず、貯蔵せず、取得せずまたは保有しないという原則が確立されるということは、実は日本の全研究学者あるいはまたメーカーの方々が基本的なスタンスとしてこの問題を持たなければいけないわけでございますが、私は、これが単なるこの外務委員会なりの議論だけではまだ非常に不十分なような気がしてなりません。問題は、この実施に関する法律案がどのように運営されるのか、扱いをされるのかという点が問題になるわけでございますが、この実施法案を一元的に扱う省庁はどこになるのか、お伺いをしたいと思います。
  67. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  この条約の実施を一元的に行うという官庁はございません。
  68. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると、一元的に扱う官庁はな  いというわけでございますから、どこの省庁と共管でこれを扱われることになりますか、省庁の名前を挙げていただきたいと思います。
  69. 門田省三

    門田(省)政府委員 国内法案をお諮りさせていただくに際しての共管官庁は、科学技術庁、法務省、外務省、農林水産省、通産省、防衛庁、厚生省、文部省、この八省庁でございます。
  70. 草川昭三

    ○草川委員 八省庁にわたるわけでありますから非常に幅の広い影響を与えることになるわけでございますが、私が先ほど申し上げましたように今日の科学技術の進歩というのは常にうらはらでいくわけでございますから、よほど慎重な対応なり具体的な事例を挙げて罪刑法定主義というのですか、細かい内容を決めておかないと後で問題が起きると思うのでございます。  法務省にお伺いをいたしますけれども、この九条に罰則があるわけでございますが、この罰則は、他の類似法令というのでしょうか、たとえば通産省関係になりますか、武器等製造法なんかがあるわけでございますが、このような他の法律に比べまして適切な形の量刑になっておるのかどうか、あるいは類似法令は何か、お伺いしたいと思います。
  71. 井嶋一友

    井嶋説明員 お答え申し上げます。  御指摘のようにこの国内実施法案の第九条の第一項には生物兵器等の製造違反に対しまして「一年以上の有期懲役又は五百万円以下の罰金」という法定刑になっておりまして、九条第二項は生物兵器等の所持、譲り渡し、譲り受けの違反に対しまして「十年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」に処するということにしております。生物兵器等は御案内のとおり非人道的な効果をもたらします大量殺戮兵器であるということでございますので、一たんこれが使用されますと取り返しのつかない結果を招来するということになりますので、これを未然に防止するためにその製造あるいは所持、譲り渡し、譲り受けといったものを絶対的に禁止をいたしまして、その違反につきまして厳しい罰則を設けることが必要であろうということが考えられたわけでございます。  この九条の法定刑につきましては、他の類似の刑事罰則の法定刑を参考といたしましてわが国の刑罰体系の中で適合するものとしてその範囲を定めたものでございまして、私どもといたしましては決して重過ぎもしないし軽過ぎもしないというものではないかというふうに考えておるわけでございます。  そこで、若干この類似の刑事罰則につきまして御紹介申し上げますと、いま委員から御指摘のございました武器等製造法の三十一条二項には営利目的による銃砲の無許可製造違反に対しまして「一年以上の有期懲役又は一年以上の有期懲役及び三百万円以下の罰金」の併科という法定刑を設けております。なお、ちなみに非営利目的による違反の場合には「一年以上十年以下の懲役」になっております。さらに同じ武器等製造法では、銃砲弾といったいわゆる銃砲以外の武器の無許可製造につきまして「三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金」、「又はこれを併科」という法定刑を持っております。それから銃刀法の関係では、営利目的によります拳銃の無許可輸入が「一年以上の有期懲役又は一年以上の有期懲役及び三百万円以下の罰金」の併科という法定刑になっております。さらに拳銃等のいわゆる銃砲の所持違反、これが「十年以下の懲役又は百万円以下の罰金」ということになっております。さらに、爆発物関係では爆発物取締罰則によりまして、治安を妨げまたは人の身体、財産に害を加える目的でする爆発物の製造、輸入、所持などにつきまして「三年以上十年以下ノ懲役」というものを持っております。そのほかに、一年以上の有期懲役あるいは一年以上の有期懲役と三百万円の罰金の併科といったような類型のものは、これ以外にもまだございます。簡単に申し上げますと、麻薬あるいは覚せい剤の輸入あるいは製造、それから営利目的による麻薬の所持、譲り渡し、譲り受けといったものがそういった法定刑を持っております。  そういったわけで、こういった類似の刑罰法令を参酌いたしまして、要するに兵器の製造を未然に防止する、兵器の所持を未然に防止するということのために、製造あるいは所持、譲り渡し、譲り受けを禁止し、その法定刑として法案にありますような法定刑が適切ではないかというふうに判断をしたわけでございます。
  72. 草川昭三

    ○草川委員 いま具体的な問題で国内法の例が出ておるわけでございますが、いま御答弁なすっておみえになりますのは非常に明確にわかる事例でございますね。罪刑法定主義というのは非常にはっきりするわけですから、これこれしかじかの処分ができるわけです。しかし、今回規制対象になります研究、製造あるいは施設、これは各省にまたがるわけでありますけれども、特に生物学研究や医療、産業のために必要なものと、どのような形で対象外にするのか対象にするのかという問題が後ほど出てくるのではないか、こう思うのですね。また事実、この判断基準について非常にむずかしいからこそ各省庁との間の調整が難航したというように私ども聞いておるわけでございますが、結局これは明らかに兵器の形をとっていると見られる微生物や毒素を禁止対象にするということになると思うのです。しかし、明らかに兵器と判断をする、手りゅう弾だとか鉄砲の弾なんというのはすぐわかるわけでありますけれども、微生物や毒素というものはどのような形までが認められるのかないのか、あるいは研究所で研究をしておるのかどうかということになりますと非常にむずかしいわけでございますが、その判断基準はこの法令で十分かどうか、簡単にお伺いします。
  73. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘になられましたような、自由な研究等々を害するおそれがないのか、また判断の基準はどういうふうに考えるべきなのかということでございますが、この条約の一条一項にございますように開発生産貯蔵、取得、保有を禁じている対象は、一つは「防疫の目的、身体防護の目的その他の平和的目的による正当化ができない種類及び量の微生物剤その他の生物剤又はこのような種類及び量の毒素」と定められておりまして、言いかえますと、防疫のため、身体防護のためあるいは平和的目的のためでございます場合には、この生物剤開発生産、取得、貯蔵、保有等は禁ぜられていないということでございます。  なお、仮にもそのような規定の枠外で生物剤あるいは毒素が取り扱われるようなことがあり得るのかもしれないではないか、したがってそのような事態にどういうように対応するかというお尋ねであろうかと存じますが、この点につきましては、国内法におきましては主務大臣が報告を求めるということがございまして、そういった行政上の措置によって十分対応できる、かように考えているのでございます。
  74. 草川昭三

    ○草川委員 外務省としてはその程度の答弁になると思いますが、各主務官庁ということになりますと、これは具体的な事例というものが出てきた場合に大変な問題になると私は思いますし、あるいはまた過去の日本の歴史を見ましても、後ほど触れたいと思いますが、石井部隊の問題、細菌兵器の研究等についても当初の目的はそういうことではなかったわけでありますけれども、いつの間にか大量の非人道的なむごい事件というものが現実に起きたわけでありますから、私はよほど一つのけじめというものをはっきりしていくことが必要だ、こう思うわけであります。  そこで、きょうは余り時間がございませんから防衛庁にお伺いをいたしますが、防衛庁は技術研究開発計画というのをやっておられるわけでございますが、ここの中には三次防なり古い時代にさかのぼったときから、無傷の化学剤の研究開発というのをかなりやられているようでございますし、これも予算がついております。たとえば催涙ガスだとかLSD25の幻覚ガス等についての研究もなされておりますけれども、これは化学兵器ということで必ずしも生物兵器ではございませんけれども、いま防衛庁として生物兵器に類似をする研究はどの程度やられているのか、お伺いをしたいと思います。
  75. 澤田和彦

    ○澤田説明員 お答えいたします。  防衛庁、自衛隊におきましては、いま先生おっしゃいましたように、生物兵器あるいはこれに類似します毒素兵器あるいはいわゆる毒ガスという化学兵器、こういうようなものの製造というようなことの研究開発等は一切行っておりません。
  76. 草川昭三

    ○草川委員 ところが、自衛隊の教範というのがあるわけでございますが、これは14—2—3とかあるいは4—2だとか、ここら辺から化学兵器についてのいろんな教範というのですか対応が出ておるわけでございますけれども、研究開発はしてないけれどもこれに対する対応も全くなされていないわけですか、お伺いします。
  77. 澤田和彦

    ○澤田説明員 ただいまお答えいたしましたように、自衛隊が使う目的での研究開発というようなことは一切行っておりませんが、いわゆる化学兵器、毒ガスというものにつきましては国際法によって禁止されておりますけれども、しかし万一これを破ってわが国に侵略する国が使う場合もあるかもしれない。そういう万一の場合に備えまして、それの対応といたしましてたとえば防毒マスクでありますとか、そういうものの研究その他対応の研究というものはある程度いたしております。
  78. 草川昭三

    ○草川委員 そのある程度がどのようにエスカレートするかがこれは将来の問題になってくるわけであります。当然のことながら、一定の対応は自衛隊ですからやっていただかなければいけないという立場を私は持ちますけれども、いま触れましたように過去の歴史の中からは、このような答弁から相当エスカレートするわけでありますし、現在たとえば医薬品以外に自衛隊が購入をしている化学類似物質、これは化学類似物質の合成のために購入した薬品等があると思いますけれども、薬品名だけで結構ですから言っていただきたいと思います。
  79. 鈴木輝雄

    鈴木説明員 お答えいたします。  防衛庁では化学兵器防護のための器材の研究を行っていますが、この研究に使用するために化学剤類似物質の合成に必要な薬品を少量購入しております。五十六年度において購入したものでございますが、ピナコリルアルコール、それからジイソプロピルアミノエタンチオール、それから弗化ナトリウムなどでございます。
  80. 草川昭三

    ○草川委員 そのほかトルエン、ベンゼンもあるんじゃないですか。
  81. 鈴木輝雄

    鈴木説明員 そのとおりでございます。
  82. 草川昭三

    ○草川委員 私は学者ではございませんから、いまこの五種類の薬品名だけがどのように合成をされてどのようなものになるかわかりませんけれども、少なくともこれはかなり強烈な毒ガス等の製造になる原料だ、こういうように私どもは把握をするわけでございます。このようなものが自衛隊の中で研究をされるということになってまいりますと、たとえばこれが直ちに生物兵器になるかどうかは別でございますけれども、本条約で言うところの研究になるのかどうか。これは外務省の方にお伺いをしたいと思いますし、外務省でもそれぞれこのようなことについてはどう思うのかという研究がこの法案作成についてなされておると思うのです。いまのような研究が進むということは今回の条約には全く関係がないのかあるのか、お伺いをしたいと思います。
  83. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  本条約生物剤及び毒素を対象にいたしております。ただいま委員の御指摘のございましたのは化学剤でございまして、一応本条約とは関係がございませんのでその点御了承を賜りたいと思います。  なお、化学剤関係につきましては別途化学兵器の問題ということでただいまジュネーブ軍縮委員会において作業部会を設け、検討が行われているということでございます。
  84. 草川昭三

    ○草川委員 結局、化学兵器と生物兵器の違い、あるいは生物兵器といいましてもこれは細菌剤になるわけでありますから、その細菌剤を主とした生物兵器で攻撃をされた場合の除毒対策をどうしたらいいかとかいうような研究は当然のことながら防衛庁はやっておると私は思うのです。生物兵器に対する対応を防衛庁は全くやっていないということではないと思うのです。私は何回か言いますように、それがエスカレートすることが、除毒のつもりで研究しておったのを逆に攻撃側にその問題が回るのではないだろうかという歯どめをどこでかけるのか、あるいはその研究施設をどのように監視をしていくのか、それを心配しておるわけです。だから、やるならやってもいいけれども、ここまでですよとか、あるいはその研究所については第三者の方からいつも監視をしておるというような情報公開というようなものをきちんとしておいた方が将来のためにはいいのではないかということを私は申し上げておるわけであります。その点はどうでしょう。
  85. 澤田和彦

    ○澤田説明員 先ほども申し上げましたようにまず化学剤、いわゆる毒ガスに対しましては、万一これを使われました場合をおもんぱかりましてこれに対します防護、具体的には防毒マスクというようなものの研究、このために必要最小限度の化学剤のサンプル的な研究ということは行っております。しかし一方、いま直接先生が御質問になりました生物兵器、特にバクテリアとかウイルスというような微生物によります兵器というものにつきましては、防衛庁といたしましてはこういうものが使用されるということを具体的には想定したことはございません。それからまた実際問題といたしまして、いわゆる毒ガスの場合でございますと、たとえば古典的なホスゲンでありますとかマスタードでありますとかあるいは新しい神経剤系統のようなものも大体どういうものかということは公開の文献等でわかっておりますが、生物剤の場合でございますと、たとえば細菌、古典的なコレラでありますとかペストでありますとかあるいは炭疽病であるとか、ウイルスでございますと脳炎であるとかいろいろなものがあると思いますが、具体的にどんなものが使われるかも見当もつかない。各国がどんなものを持っているかというような情報もないというようなこともございまして、こういうものに対する特定の防護措置というものは研究もいたしておりません。強いて申し上げれば、ごく一般的に隊内で普通、隊員から伝染病等が出ました場合のそれに対する救護、治療措置というような一般的な治療方法はやっておりますが、いま申し上げましたように、いわゆる生物兵器に対処しますための研究、対処研究ということはやっておりません。
  86. 草川昭三

    ○草川委員 それから時間がございませんから、簡単にもう一つ防衛庁にお伺いいたしますが、いま防衛庁ではM6CN−DM刺激性手りゅう弾だとかM7A1型CN催涙手りゅう弾等たくさんの手りゅう弾が使われておるわけであります。いわゆる催涙弾でございますから、これは化学兵器でありますから本件とは違いますけれども、これをカバーしておるのはプラスチックだとか、それから非常に割れやすいものになっておるはずであります。これはもう一つの、本委員会にかかっております過度に傷害を与え、また無差別効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止または制限に触れるのではないだろうか。いわゆるプラスチック爆弾とボール爆弾等については否定をされておるわけでございますが、これに全く関係をしないのかどうか、簡単で結構でございますから、その旨だけ答弁してください。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  87. 澤田和彦

    ○澤田説明員 お答えいたします。  いま防衛庁が持っております中で、いま先生おっしゃいましたようにカバーといいますか、外側がプラスチックのものはあることはございます。しかし今回のいわゆる特定通常兵器禁止制限条約、これの議定書の一で禁止されておりますものは、人体内に入った場合にエックス線で検知することができないような破片によって傷害を与えることを第一義的な効果とするいかなる兵器の使用禁止するということで、そういうプラスチックの破片が体に突き刺さって、これで治療不可能な傷害を与えるようなことを目的とした兵器を禁止するということでございますので、そういうことを第一目的にしない、たとえば催涙ガスでございますとかほかの目的の兵器でたまたまカバーといいますか、外側のものがプラスチックだったという場合にはこの条約禁止に該当しないと解釈しております。
  88. 草川昭三

    ○草川委員 防衛庁が該当しないと認定されても受ける方は、内容の催涙ガスが目的なのでプラスチックの破片を肉体に突き刺さるようなのが目的でないと言っても、結果としてはそうなるわけでありますから、その判断をだれがするのですかということを私は先ほど来から言っておるわけでございまして、これはいまの答弁では私納得できません。それは決まることは決まりましても、これを無視しで進むことが私どもにとっては非常にこわいわけであります。それを、きょうはちょっと時間がございませんし本会議もあるようでございますからこの程度で終わりますけれども、これはいま少し真剣に考えていただかないと、せっかくの三条約の問題については有名無実になってしまいますし、何回か申し上げますように、これはいいだろう、これはいいだろうと一つの省庁がいくということについては疑問がある。このことだけを申し上げまして、あとの時間は、やはり同じように善意で日本が経済協力をしたのだけれども相手の国の一つの内部紛争の非常に露骨な戦闘行為に使われているという事例を具体的に上げて問題提起をしてみたいと思うわけであります。いまの議論の延長線だと言っていただいても過言ではないわけであります。  具体的な国はフィリピンであります。フィリピンはわが国とは非常に重要な関係にある国でありますし、フィリピンの沖を通りましてシーレーンがあるわけであります。あるいはルソン島の方には有名なスビック軍港もありまして、アメリカの第七艦隊の基地になっておるわけでありますし、また日本もここに百十一億の円借款で大型の造船所をつくっておるわけであります。  私は、この問題については過去の予算委員会でもかねがね問題提起を行ってきておるわけでございまして、このフィリピンという国に日本はあらゆる経済援助をやっておるわけでございますけれども、フィリピンでは、ミンダナオ島におきましてイスラム・グループが中央政府に対して公然と反政府運動をやっておることは皆さん御存じのとおりだと思います。いわゆるモロ民族解放戦線あるいはバングサモロ解放機構、いろいろな行動部隊があるわけでございますが、これは単なるゲリラではなくて、イスラムの国々の認知を受けておる組織であります。ですから、私は単純な反政府運動のゲリラ組織と認定をして問題提起をしておるわけではございません。事実この反政府運動に手を焼きまして、御存じのとおりイメルダ大統領夫人が一九七六年にリビアのトリポリで協定を結んでおりまして、過去十二年の間にこのモロ民族解放戦線の組織によって政府軍が約二万人ほど兵力を失っておるということを、和平とは言いませんけれども、この会談の中で言明をしておるぐらいに大きな組織でございます。  たまたまことしの一月に、これは国会でも問題になっておるわけでございますけれども、フィリピンの沖合いに日本の「へっぐ号」というのが立ち寄りまして相当攻撃をされたことがございます。それで、フィリピン政府が攻撃をしたのか、あるいはモロ民族解放戦線の連中がやったのかということが一時話題になりましたので、私どももそれなりに興味がございまして調査をしたわけでございますが、たまたまそのときにモロ民族解放戦線の副議長のディマス・ベンダトゥーという方から、われわれモロ民族解放戦線はバングサモロ解放機構と共同声明を出したい、この一月十五日にフィリピン空軍によって攻撃された「へっぐ号」についてはわれわれは全く関知しない、しかし一言言いたいことがあるという電報が参りました。そしてこの電報で、われわれモロ戦線は何ら関与していない、しかしそのことよりも、日本政府はフィリピン政府に対するあらゆる経済援助を中止をしてもらいたい、日本からマルコスに贈られたスピードボート、高速船はモロ人民の弾圧に非常に使われて、われわれとしては憤りを持つという言い方をしてきたわけであります。  そこで、私はこの問題について大変興味がございましたのでさらにその後のフォローアップをしたわけでございますけれども、その際、これも同じようにモロ民族解放戦線とバングサモロ解放機構の共同声明ということで、四月の十七日付で、ドクター・マカパントン・アッバスという方の名前で「日本政府に訴える」という手紙が来たわけであります。私は個人的にこういう手紙をもらいましても困るので、きょうこの委員会でわざわざ時間を割いてこれを読ませていただいて、日本政府にその対応を求めたいわけでございます。ちょっと長くなりますけれども読みますから、素直に聞いていただきたいと思うのです。   日本政府に訴える    モロ民族解放戦線、バングサモロ解放機構共同声明      ドクター・マカパントン・アッバス   去る一月十五日にフィリッピン空軍によって攻撃された日本船に関して、前回TELEXにて送った内容を再度確認する。   フィリッピン政府は、その船が武器等を積んでいたと言ってその行為を正当化しようとしているが、我々モロ民族解放戦線は一切関与していない。   日本政府日本企業は、フィリッピン政府とはきわめて親密な関係にある。   たとえば川崎製鉄は、我々のホームランドであるミンダナオ島に工場を建設し、環境を汚染している。   日本政府よりフィリッピン政府に送られたスピードボートは軍用船に転用され、その船二十五隻はモロ湾スル海にて我々に多大な損害を与えている。   日本政府は、経済援助という観点にたてば、マルコス政府の最大の後援者である。  腐敗したマルコスに対し、日本政府は援助を再考してほしい。   マルコス政府はすぐ終るであろう。なぜなら、マルコスは重病なのである。   又、我々モロ民族解放戦線は独裁者に対し、我々自身の為ばかりではなく、フィリッピンに自由を回復する為にも斗っている。   我々は、ベニグノ・アキノ元上院議員の指導の元に国民統一戦線を結成した。故えに我々は、共通の計画をもって、共通の敵、独裁者マルコスに反対する。   フィリッピン南部の問題を解決する唯一の方法は、フィリッピン政府が我々に受け入れられる、かつ、尊敬される政府でなければならない。その様な政府は正義のある正しい政府で、効率的で、アキノ氏のような人物の指導によらねばならない。彼は自由の為に約八年間獄中で斗った経験を持ち、彼はモロ人民の斗争を歴史的にも理解しており、フィリッピン政府の主権のもとに我々に完全自治を与えると約束してくれた。我々の自治を確立するために続けて斗う。  我々はトリポリ協定の実現の為に斗う。トリポリ協定は我々の基本的権利をもりこんだもので、我々の斗争を国際的に承認されたものである。日本政府もトリポリ協定を支持してほしい。   我々の地域が平和であるという事は、フィリッピンの平和というより、東南アジアの平和にも通じるはずである。   最後に日本政府に要望したい。   上記表明した事にそって、マルコス政府への援助を直ちに中止してほしい。もし我々の要請が受け入れられないならば、我々の地域に居る日本人と日本企業に対し行動を起す。この時は交渉もなく、妥協もありえない。なぜならば、アメリカ日本の二大国はモロ人民を抑圧するだけでなく、フィリッピン人民全体を抑圧している責任があり、攻撃する事は我々自身を守る事でもあり、又、世界に訴える唯一の方法であるからだ。 こういうきわめて重要な声明が出てきたわけであります。  私といたしましても、私個人の責任上これをどのように処理するか問題がございますから、あらかじめ通産省の方々、運輸省の方々あるいは外務省の経済協力の方々に、この問題について日本からどのようなスピードボートがどのような形でフィリピンに輸出をされ、あるいは経済援助をされ、あるいはどのような商品借款という形で出ておるのか、細かい調査を約一カ月近くやってきたわけでございますが、明確ではございません。  そこで、改めて、ないならない、あるならある、あるいは疑いがあるならあるでそれなりの対応をとることが必要だと思うので、この際、外務省あるいは通産省、運輸省、それぞれの立場から御答弁を要求するわけであります。
  89. 柳健一

    ○柳政府委員 お答えいたします。  まず、フィリピンに対します船舶の援助の問題でございますが、円借款ではプロジェクト借款での実績がございます。これはタグボートとかフェリーボートのたぐいでございます。  それから、技術協力といたしましてモーターボートを出したこともございます。(草川委員「具体的にちょっと」と呼ぶ)これはパンタバンガンの森林造成技術協力プロジェクトに対する供与機材でございまして、一隻でございます。これは、プロジェクトサイトにある植林作業を行うための日本人専門家の指導のもとに使用されるものとなっております。  それから、水産無償による漁業調査船、これはフィリピン大学の水産学部に出したものがございます。  それから、商品借款では実績はございません。  船舶に関しましては、以上のとおりでございます。
  90. 坂倉省吾

    ○坂倉説明員 私ども、輸出承認ということで、船舶については輸出承認はしておりますけれども、具体的に承認統計というのはとってございません。先生の御指摘は、ヤマハのフィリピン向けの高速艇の輸出、こういうことだったと思うのですが、そういう個々のデータの形では持っておりませんので、一応当該ヤマハ株式会社に問い合わせたところ、同社はいま調べておりますので、後日先生のところへ御説明に伺う、こういう報告を得ております。
  91. 山下文利

    山下説明員 ただいま先生から御指摘のございました内容につきまして、私どもではデータがございませんので、ヤマハ発動機に対しましてデータの提出を御協力願ったわけでございますが、おととい段階では御協力はいただけないということだったのでございますが、いま参ります直前に再度ヤマハにお願い申し上げましたら、データを整理して先生の方に御報告したいということを確認したところでございます。そういうことで御了承いただきたいと思います。
  92. 草川昭三

    ○草川委員 それで、いま、事実かどうかということについてお調べ願うということ、あるいはメーカー側も一回お見えになるということでございますから、本当にそうだとするならば、それがどのような形で、全く民間ベースで輸出をされておるものか。  それから、私も、高い国際電報料を払いまして向こう側に、具体的な内容を示せ、それでないとこの問題については対応できないというので照会等をしておるわけでございますけれども、たまたまいま外務省の方では、商品借款には対応するボートがないとおっしゃいましたが、いわゆるエンジンだけ輸出をされておる、商品借款として供与をされておるというようなことも若干伺っておるわけであります。いわゆるマリーンディーゼルエンジンであります。そのことも、ないのかあるのか、改めてお伺いをします。
  93. 柳健一

    ○柳政府委員 エンジンにつきましては、商品借款によりまして調達された実績がございます。これは推定でございますが、通常五馬力から五百馬力程度のものでございますが、過去において幾つかの例がございます。
  94. 草川昭三

    ○草川委員 結局、向こうの解放戦線の連中——連中という言葉を使って悪いのですが、そういう方々が日本政府はどういう形であろうと援助をやめろと言うことは非常にわかるわけでありますし、それがいまのお話等によりますと、マリーンディーゼルエンジンで、特にジャングル地帯の掃討に使われているわけでございますから、十分裏づけをされるということになります。  だとするならば、私どもはフィリピンの内政についてとやかく申し上げるつもりはございませんけれども、少なくとも、トリポリ協定というような国際的な一定の協定がなされておる一つの団体に対して、日本からの援助物資というものが弾圧用に使われており、そしてそのために犠牲になっておるということは、本条約をわれわれはいまここで議論をしておるわけでございますが、基本的な考え方に明らかに違反をすることになるのではないだろうか。外務省として今後このようなことを放置していて、いまいろいろな新聞等では、変革迫られるフィリピンとか、フィリピンの将来の問題についてはいろいろな情報が乱れ飛んでおるわけでございますが、一方のそういう組織に対してわれわれの援助というものが弾圧用に使われるということは基本的な間違いではないだろうか。商品借款そのもの自身がとやかく議論をされる段階であります。  われわれの経済援助というのは、相手国の民生安定なり社会的な向上なり、平和のためにともに喜び合うために経済援助をしておかなければいけないものが逆用されてしまっておるという事実に対して、どのような認識を持たれるのか、どのような対応を立てられるのか、これは外務省として、外務大臣はちょっとお疲れのところだと思いますけれども局長なり大臣から、時間ぎりぎりのところでございますので、ちょっと答弁をしていただきたいと思います。
  95. 柳健一

    ○柳政府委員 簡単にお答えを申し上げます。  商品援助につきましては、先生御案内のように、その商品の中身につきましては、事前に両国政府できちんと合意しまして、軍事目的に使われるようなものは一切排除しております。また交換公文におきましても、まさに御指摘のように、経済社会の開発のため、民生の安定のためということをきちんとうたっておりまして、そういう目的のために使うということを両国政府で合意してやっております。  なお、若干うわさに出ておりましたバコン・ラカスというものは、先方政府に確かめまして、はっきりと日本のエンジンではないということを確認してございます。
  96. 草川昭三

    ○草川委員 バコン・ラカスの問題については、私はいまこの委員会ではしゃべっていないのですよ。ですから、バコン・ラカスという一つの新しい力と言われるのは、舟そのものではなくて群ですね、グループを指してバコン・ラカスと言っているわけですから、その中には小さな舟艇もあるわけです。それに商品借款のディーゼルエンジンが転用をされておるのではないだろうかということなんですね。  私が心配なのは、「我々の要請が受け入れられないならば、我々の地域に居る日本人と日本企業に対し行動を起す。」という——おどかしかもわかりませんよ、脅迫かもわかりませんが、私どもとしては、そんなものに一々取り合う必要はないと言い切れない背景があるわけであります。いわゆる軍事政権であり、そして、私も昨年フィリピンへ行きまして、つぶさに現地の諸情勢を聞いてきておりますが、内政干渉の立場ではございませんけれども、決して安定をしているとは言いがたいわけであります。経済的にも非常に不安定な状況にある。それだけに、この民族解放戦線のこういうような声明というものを無視はできぬと思うのですが、その点どう考えられますか。
  97. 柳健一

    ○柳政府委員 御指摘の点は大変ごもっともだと存じますので、私ども、従来もそうしてまいりましたけれども、今後先方政府との援助の話し合いをするときに、最近は発展途上国との間の政策対応も大層頻繁になってまいりましたので、そういう機会を通じまして、そういう不都合なことが生じないようによく話し合って、実際上も向こうの政府に責任を持ってもらって、そういうことにならないように努力したいと思っております。
  98. 草川昭三

    ○草川委員 時間がございませんのでこれでやめますが、いま一歩現地の大使館に日本政府としても、そういうことが本当にあるのかないのか調べてくれぬですか。この内容について、調べて報告してくださいよ。そんなことがあったって、草川程度の議員がしゃべっているんだから黙って聞いておこうということでは、これは、もし事故があったときに困りますよ。  だから、私はあえてこの外務委員会の席をおかりをして、彼らはこういうことを言っておるんだということを申し上げておるのだから、もし、彼らが予告をしたけれども何らの対処をしないで、われわれはフィリピンにあるところの日本人なり日本企業に対して攻撃をしかけたということになったらどうしますか。それはあなたの方の責任ですよ。私は明らかに外務省に責任を預けておきますよ。
  99. 柳健一

    ○柳政府委員 できる限り調査いたしたいと思います。
  100. 草川昭三

    ○草川委員 本会議のベルが鳴りましたので、これで終わりたいと思いますが、ぜひ私の趣旨を体して、くれぐれもそういうことにならないように措置をされ、調査をされることを要望して、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  101. 中山正暉

    中山委員長 午後三時委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五十一分休憩      ————◇—————     午後三時十九分開議
  102. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡辺朗君。
  103. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは質問をさせていただきたいと思いますが、その前に、先ほどは本会議場におきまして渡辺武三さんに大変御丁重なる御弔辞をいただきましてありがとうございました。謹んでお礼を申し上げます。  三条約それから国内における実施についての法案、これを審議さしていただく前に、一、二お聞きしておきたいと思います。  一つ国連憲章でございますが、国連憲章をよく読んでみますと核兵器に一音半句触れられておらないわけでございます。憲章というものの性格からいって、今日の時点から見るならば当然それが盛り込まれていいのではないかと考えます、素人考えでありますが。今日の国連憲章起草に際してその問題が考慮されなかったのはいかなる理由があったのでございましょうか、まずその点お聞かせいただきたいと思います。
  104. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  国際連合憲章は、御承知いただいておりますように第二次大戦におけるいわゆる連合国が起案いたしましたものでございまして、すでに戦時中において起草されたものと承知いたしております。そのような事情にございますので起草の経緯、審議の過程等につきましてはつまびらかにいたしていないのでございます。ただ、申し上げることができますのは、これも御承知いただいているとおりでございますが、アメリカが原子爆弾の実験に成功いたしましたのは一九四五年七月十六日ということでございまして、時系的に申し上げれば国連憲章はそれよりも約一カ月前に署名されていたということで、すでに国連憲章はアメリカ核実験の成功以前に署名されていたということがございます。  なお、それでは国連が発足して以来憲章の改正問題を取り上げたという事実があるのではないか、そういう憲章改正を取り上げた際にこの問題に触れたことがあるのではないかというお尋ねかと拝するのでございますが、この点につきましてはただいままでのところ国連の憲章改正に関する討議において核兵器の問題を取り上げられたことはございません。  以上でございます。
  105. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 国連憲章の改定はたしか十八章だと思いますが、もはや国連の中においても大変重要な位置を占めるわが国でございます。ですから、わが国が発議し他の国に働きかけ、国連憲章の改正という問題をいろいろな角度からいま論議しなければならぬ。国連憲章そのものについてはたくさん問題点がございます。その中でも特に、先ほど触れましたように、核軍縮については平和へのイニシアチブということで、日本政府としては少なくともそのような方法で働きかけを開始される必要性があるやに私は思うのですが、いかがでございましょう。それについて日本政府としての御見解はどのようなものでございましょうか。
  106. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいまの御質問、非常に重要なものということで承ったのでございますが、核の問題をどうするかということは、軍縮という分野において国連において取り上げている問題でございます。いろいろな問題が絡み、含まれているということもございまして、従来重ねてまいりました努力にもかかわらず、おっしゃいましたような方向に必ずしも十分進んでいないという側面がございます。しかしながら、このことをもって憲章の中に核兵器の問題を直ちに取り上げていくことが適当なのかどうか。この憲章の問題は国連加盟国全体にかかわる問題でございます。憲章改正ということに当たりましてはいろいろ条件が付されていることがございます。したがいまして、そういった面をいろいろ考えますと、核兵器の問題は国連軍縮分野における活動を通じて対処していくべき問題であろうか、かように考えるのでございます。
  107. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまの御説明、さらに突っ込んでいろいろお聞きしたいとは思います。ただ、当初国連ができた時点においては確かに原子爆弾そのものもアメリカの独占物でした。しかし、その後ソ連も持つようになり、しかもそれが拡散していく、そういった拡散の危険性が今日において大きく存在しているというようなことを考えるときに、いま申し上げたような国連憲章の中にも盛り込んでいくということのイニシアチブをとっていく何らかの準備があってしかるべきだ、少なくともその点は準備はしていかれるべきではなかろうかと思っておりますが、この点はまた別個お時間をいただいて論議をさせていただこうと思います。  次にお聞きしたいのは、限定核戦争ということについてでございます。  世界の軍事情勢の研究機関として知られております国際戦略研究所が年次報告を発表したと言っております。その中では限定核戦争理論というものはもはや神話であると述べていると聞きますけれども日本政府はこの限定核戦争についてどのようにお考えでしょうか、どのような立場に立っておられますか、お聞かせいただきたいと思います。
  108. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  この限定核戦争といったものが果たしてあるのかどうかという問題につきましては、わが国においてもまた他の国におきましてもいろいろ議論がなされていることと承知いたしております。言われるところによりますと、今日のように核の生産、配備が非常に進んだ時点においては限定的なものにとどまらないのではないか、大きくエスカレートする可能性があるのではないかという議論もされているのでございます。私どもが考えますのは、核の抑止力というものは軍事力の一部をなすものであって、現実の事情のもとにおきましてはその存在を認めるべきである、さもなければ軍事力バランスに大きな変革が生じて安全保障の問題、平和の問題にかかわり合いを持つ、このような認識に立つものでございます。しかしながら、限定核戦争はないのではないか、抑止力ということは核戦争を意味するものではない、核戦争を抑止するものである、こういう認識に立っておるのでございまして、この意味では、核の限定戦争というものが実際に起きる、かようには考えていないのでございます。
  109. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 さらにちょっとその点について御認識をお伺いしたいと思います。  いまおっしゃったのは、抑止力としては認められる、しかしながら限定核戦争というものは存在しない、その存在しないと考えられる理由はどこにございますか。たとえばいまの国際戦略研究所の年次報告の中では、これは実際にどのように核戦争を限定するかという軍事ドクトリンについて米ソ間に共通の基盤ができておらないから、だから限定核戦争というものはあり得ない、あるいはまた核戦争を技術的にコントロールしていく指揮であるとか管理、通信あるいは情報、そういったシステムが、恐らく一発ぽんとやってしまったら機能しなくなるだろうというような理由が根拠になっているやに聞いております。いま国連局長はどのような観点から核限定戦争というものがあり得ないというふうにお考えなのでございましょうか。その点もう一遍ちょっと教えてください。
  110. 門田省三

    門田(省)政府委員 先ほど申し上げましたように、三十数年前とは異なりまして、今日におきましては、核の生産、配備というものが高い水準に達しておりまして、一たび核の使用があった場合に、果たしてそれが限定されるかどうか、これはきわめて疑問でございまして、その行く先はきわめて危険なものが予見される、こういったことが核兵器抑止力になっているわけでございます。したがいまして、核兵器はあくまでも抑止力として存在しているわけでございまして、こういった意味で、核戦争は限定的であってもあり得ない、かように考えるのでございます。
  111. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 以上のようなお考え方、私それなりに理解をいたします。それを踏まえまして、外務大臣、いかがでございましょうか。レーガン大統領が、ついせんだってでございました、六月末までに戦略核兵器の削減交渉を開始したい旨明らかにしておられます。その見通しについてどのようなものがございましょう。あるいはまた外務大臣としてどのようにお考えでございましょうか、御所見をいただきたいと思います。
  112. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 レーガン大統領が演説の中で、戦略核兵器の削減交渉を開始したい、そういう意向表明をされたことは、−私もこれを高く評価をしておるものでございます。  なお、これに対して一体ソ連がどのように対応してくるか、これが問題点でございますが、最近の動きを見ますと、ソ連側が第三国において首脳会談をしたいと言われたこともございます。今回の場合は、レーガン大統領が首脳会談をする内容にも触れての御発言でございますので、これに対してソ連側も当然何らかの意思表示があるであろう、このように想像をしておるわけでございます。現に中距離核戦力削減交渉が昨年の十一月三十日から行われ、一時中断しておる、こういう状況でありますから、これは米ソ間における首脳会談あるいは核問題についての対話というものは、今後におきましても、両国の意向がうまく一致さえすれば話し合いが行われるものである、そういうふうに見ております。したがって今回のレーガン大統領の提言というものは、それなりに重要なことだと思います。
  113. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、積極的に評価される、そしてまたいまおっしゃったように、米ソの首脳会談についても期待を持っておられる旨御意思の表明がありました。とすると、希望、期待を表明するだけではなくて、何らかの形で米ソ首脳会談が実現するように、私は日本政府としても積極的に推進役を買うべきではあるまいかと思いますが、それについて何らかの具体的なお考えはお持ちでいらっしゃいましょうか。
  114. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 核軍縮あるいは核の極東配備に対しての日本の考え方、こういうことについては機会あるごとに主張すべきである。実務者レベルにおいても、SS20の極東配備について日本側はそういうことは困るということも申してきておるのでございまして、また外相会議を持ちたいという意向も申し上げてございます。したがって何らかの形でさらに実務者レベルあるいは外相レベルの接触が行われるときには、当然この核軍縮に関しては、あるいはそのいまの核の軍事情勢に対して日本としての意向を示すということは、機会があればそれをやりたい、こういうふうに思っておりますし、またお尋ねの首脳会談を進めるということについて、これまた日本としての考えを言うべき機会があれば、それを申したい、こう思います。
  115. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣に後ほどもう一、二だけ御質問をさせていただきたいと思いますが、その前に、細菌兵器生物兵器、それと環境改変技術の軍事資料、この問題について質問をさせていただきたいと思います。  細菌毒素兵器ということについて、生物・化学兵器、これを一括して禁止すべきであるという意見があった。だけれども、これは切り離しをして、つまり化学兵器を切り離して生物兵器細菌兵器の方だけがいまここに出てきている。これはどうして切り離しがされたんでしょうか。本来なら一緒であるべきだと思いますけれども、これはなぜなのか、この点をまず聞かしてください。
  116. 門田省三

    門田(省)政府委員 その点はまさに御指摘になられましたように、化学兵器も含めて条約が作成さるべきものであったと考えております。事実一九六九年以来軍縮委員会におきまして化学及び生物の両方を内容とする禁止条約を作成すべく努力をいたしたのでございますが、化学兵器につきましては、特にその性格にかんがみまして検証の点でいろいろ複雑な問題がございます。他方生物兵器につきましては、実際には使用されていない、また、化学剤に比較しまして条約を作成する上において問題点が少なかったという事実がございまして、化学兵器についての成案を得るために生物兵器の成立がおくれる、手間取るということがあってはやはり好ましくないのではないかということから、ひとまず生物兵器を取り出しましてこれについての禁止条約をつくる、化学兵器の分野につきましては別途、同様の条約作成についての努力を重ねてまいるということで作業が進んでいるという実情でございます。  ちなみに、化学兵器に関しましては、一九七九年以来ジュネーブ軍縮委員会におきまして作業部会が設置されておりまして、わが国は化学兵器の禁止については積極的に参加いたしておりまして、申し述べました作業部会の第一回目の委員長にはわが国の大川大使が議長を務めるというような取り組み方をいたしておるのでございます。
  117. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 一、二関連してまた聞かせてもらいたいのですが、この条約賛成百十、反対なし、棄権一。フランスが棄権している。なぜだろうか、ここら辺を聞かせていただきたい。それから同時に、この条約の作成は昭和四十七年、効力発生昭和五十年。ことしは五十七年、何かずいぶん時間がかかっているように思います。それは一体なぜなのか、関連してお聞かせください。
  118. 門田省三

    門田(省)政府委員 フランス一カ国のみがなぜ棄権をしたのかというお尋ね、まことにごもっともな点であろうかと存じます。  フランスは、一九二五年のジュネーブ議定書が作成されるに当たりましては最も中心的な役割りを演じた国でございます。そういうことからすれば、なぜあえて棄権をしたのかという点は私どもも容易に理解し得ない点ではございます。この点につきまして、いろいろ当時の事情、審議過程を調べてみましたところ、フランス代表の説明によりますと、この条約にございますところの国連安全保障理事会の権能の部分、これが国連憲章に定めるところと若干の問題があるのではないかというふうな点から棄権をしたのだというふうに私どもは説明を受けているのでございます。  いずれにしましても、先ほど申し述べましたように、フランスは一九二五年の議定書につきましては中心的な役割りを果たしているわけでございますので、他の国と同様この条約には理解を示してくれることを期待しているわけでございます。
  119. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 わが国でおくれたのは今度はどういう理由があったのでしょうか。ずいぶん時間がかかっております。
  120. 門田省三

    門田(省)政府委員 失礼いたしました。  わが国の受諾がおくれております理由は、この条約は、政府のみならず私人をも拘束する内容を持っているものでございます。また、生物剤と申す場合にもいろいろな種類がございます。  このような重要な条約の規定を国内的に十分履行していく上におきましては、いろいろ関係の省庁とも御相談をしてまいる必要があったわけでございます。  また、この条約を受諾するに当たり、他の国がどういう国内措置をとっておられるのか、この点も十分吟味してみる必要があったわけでございまして、署名以来十年を経たわけでございますが、今回、国内法案の作成にこぎつけまして御審議を賜っているという事情でございます。  御理解賜りますようお願いいたします。
  121. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 細菌兵器生物兵器というのが最近において、近ごろにおいて使用されたりあるいは事故が起こったりというふうな事例はあるのでしょうか、ございましたでしょうか。
  122. 門田省三

    門田(省)政府委員 ございません。
  123. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 全然ないですね。私、どこかで、近所の国のようでありますが、細菌兵器の事故があったというようなことをちょっと聞いたことがありますが、それは本当にないですな。
  124. 門田省三

    門田(省)政府委員 先ほどございませんというお答えを申し上げたのでございますが、ただし、次のような事案はございます。  それは、報道によりますと、昭和五十四年四月にソ連のウラルの東側にございますスベルドロフスクという町の郊外の細菌兵器研究所で爆発が起こりまして大量の炭疽菌が流出した、その結果、数百人の死者が出た、かように言われているのでございます。これに対しましてソ連当局は、これは同地域における牛の炭疽病の流行であったということを発表しておりまして、細菌兵器研究所があってそこに事故が起きたというようなことは否定いたしております。  いずれにしましても、この点は確実に検証が行われていないということもございまして、これがどのような事実関係に立つのか、この点につきましては、実は、アメリカの方でそういったことが本当にあったのではないかということも申しておりますが、ただ、先ほど申しましたように、はっきりした証拠がございません。  そういうことで、先ほどこういう事件はないというふうにお答え申し上げた次第でございますので……。
  125. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これは、検証する方法がない。どこかでひそかにもしつくっていたとする、また、そこで事故が起こったとする、そうした場合に後の祭りでは大変でございます。そういうことを防ぐための生物兵器禁止条約であるはずだと思うのですけれども、罰則だとか何かというものはどういうことになるのですか。この条約が批准されるその後において罰則というものがあるのでしょうか、どうでしょうか。
  126. 門田省三

    門田(省)政府委員 この条約第六条にも規定があるわけでございますが、ある締約国がこの条約の定めるところに違反をしているという認識があった場合に、その締約国は問題を国連安全保障理事会に提起することができるという趣旨が第六条に書いてあるわけでございます。この六条によりますと、第一項でその関係の国は国際連合安全保障理事会に苦情を申し立てることができる。理事会はその苦情申し立てに基づきまして調査を行う、そして理事会は調査の結果を締約国に通知する。また第七条では締約国はこの条約の違反によっていずれかの締約国が危険にさらされているというふうに安全保障理事会が決定する際には、援助または支援を要請するその国に対して、国連憲章に従って援助または支援を行う。つまり国際的な協力によって義務の違反というものをただしていく、またはその義務の違反によって被害をこうむった国については必要な援助または支援国連憲章の趣旨の定めるところによって行う、かように規定されているのでございます。
  127. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間の点で、残念ながら、その問題もうちょっと聞きたいのですけれども、次に移ります。  たとえば環境改変技術軍事的使用禁止、こういうことなんですけれども、これの中身ももうちょっと知りたいのですが、一つだけ御質問しますけれども、これは賛成が九十六カ国で反対が八カ国あって、棄権が三十カ国もあって、しかも反対、棄権、そこら辺においてはなかなか有力な国、ここにおいてもフランスが、あるいはニュージーランド、アルゼンチン、そういうところが棄権しているというような事例がございます。この環境改変技術軍事的使用というものに対してお聞きしますけれども、なぜこんなにたくさん反対があり、それから棄権があったんでしょうか。
  128. 門田省三

    門田(省)政府委員 この条約審議過程におきまして、確かにいま御指摘のような点に関する問題が提起されていたのでございます。それはこの条約の第一条の第一項にございますが、この条約禁止する環境改変技術敵対的使用、その条件といたしまして、「広範な、長期的な又は深刻な効果をもたらすような環境改変技術」、こういう条件を定めているものでございます。言いかえますと、環境を改変するその技術の及ぼす効果が広範であり、長期的であり、あるいは深刻な、そういったものに限る。言いかえますならば、そういう広範なものでもない、長期的なものでもない、深刻なものでもないということであれば、この条約禁止する対象にならないということにこの条約が定めを行っているわけでございます。それでは徹底してないのではないか、こういう環境改変技術禁止するというのであれば、そういう制限的な形にする、つまりこういう場合は構わないというふうな徹底しないようなことでは十分な効果が得られないのではないかというふうな意見を持つ国がございました。結局、それらの国の考え方が入れられずに現実的なアプローチ、妥協といたしましてこの条約の第一条のような規定になったわけでございますが、その点、それらの国はそれなりの問題意識があったために、この決議案に関しましては棄権の態度をとった、かように理解いたしております。
  129. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 わかりました。時間の関係で次にまた進みます。それから、お答えは国連局長ばかりでなくていいですよ、どうぞほかの方にもお答えをいただきたいと思いますから。  次にもう一つ、過度に傷害を与え又は無差別効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止又は制限に関する条約についてお尋ねをします。  私、これを一番最後に持ってきたのは、いままでの二つのものと、生物兵器だとか環境改変技術の軍事使用だとかいうものと本質的にどうも性格を異にする条約ではないのだろうか、言うなれば、これは私は素人ですからわかりませんが、いま取り上げているものは、これは一種の陸戦法規あるいは戦争法規の一つにすぎないのだというふうに理解してよろしいですね。これはいかがでございますか。
  130. 門田省三

    門田(省)政府委員 一種の戦争法規、陸戦法規と御理解いただいて差し支えないものと存じます。
  131. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そうしますと、これはどういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。わが国は一九四九年八月十二日のジュネーブ条約、いわゆる四条約、これは加入しておりますね。そしてその後に、昭和五十二年六月に採択されている追加議定書I、これは未締結ですね。なぜだか、ちょっと不思議に思うのです。なぜならば、この追加議定書というのは、ジュネーブ条約の作成後の軍事技術だとかその発達あるいは武力紛争の態様が変化してくる、それにかんがみて諸条約、四つの条約の補完としてつくられたもののはずです。ですから、非常に重要なはずだ。にもかかわらずこれが未締結、大変片手落ちなものではなかったかと思います。その点まず聞かせてください。
  132. 門田省三

    門田(省)政府委員 この追加議定書Iは、いわゆる一九四九年のジュネーブ条約を補完するものであるという意味で注目すべき議定書でございます。ただその内容におきましては、いろいろ検討を要する事柄がございます。  こういうことも理由になっているのだろうと思いますが、ただいまのところこの議定書を受諾いたしておりますのは二十一カ国ということでございまして、受諾しておりますのは西ヨーロッパで四カ国、あとはアジア、アフリカ、ラ米の十七カ国ということでございまして、いわゆる大国、これがまだ加入をいたしていないという事情にございます。政府といたしましても、この追加議定書の意味合いをいろいろ検討いたします。また、こういう議定書はやはり多くの国によって受諾されるということが大切な事柄かと思われます。各国の動向等も見定めつつ、お尋ねのございました点、十分検討してまいりたいと考えております。
  133. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この条約の中身をいろいろ読んでおりまして、第六条「周知」というところがありますね。「締約国は、武力紛争が生じているか生じていないかを問わず、自国において、できる限り広い範囲においてこの条約及び自国が拘束されるこの条約の附属議定書の周知を図ること並びに、特に、この条約及び当該附属議定書を自国の軍隊に周知させるため自国の軍隊の教育の課目にこの条約及び当該附属議定書についての学習を取り入れることを約束する。」こういうことになっておりますが、これは条約局長いかがでございますか。実際に周知はこれからしていかれるのですか。  それからさらに、いままでの四条約はすでに加入しておられるならば、当然、この四条約についても周知徹底させるという努力はしておられると思いますが、端的に聞きます。自衛隊においては、そういうような周知徹底は行ってありますか。マニュアルはできておりますか。教範がありますか。
  134. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  マニュアル、教範までは私ちょっと所管外でございますので、承知いたしておりませんので、責任を持ってお答えいたしかねますが、ジュネーブ条約につきましては、防衛庁の中におきまして、自衛隊を含めて、周知徹底方を種々の機会に図っておるということは承知しております。  それから、今回のただいま御審議いただいております条約につきましても、これを締結いたしました後におきましては、防衛庁の方におきまして、自衛隊の内部におきましての周知徹底方を図るということを考えておるというふうに承知いたしております。
  135. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 重ねて条約局長、管轄外でわからぬでは、ちょっと困ると私は思うのです。なぜならば、ここには第六条「周知」ということで、きちっとある。そしてまた、いままですでに四条約日本は加入している。そういう中で、当然、それらは周知徹底させる措置があらゆる分野において、特に自衛隊の内部において行われていてしかるべきだと思います。そうでないと、たとえば俘虜虐待、捕虜虐待の問題であるとかあるいは難民条約の問題にも関連してくるかもわかりませんし、自国の戦争ではないのです、他国の戦争の問題においてすら、平和国家であるならば、そこら辺ちゃんと、日本がどういうふうに対処するんだというのは知っていなければいけないと私は思います。その点、管轄外だからわからぬではちょっと困ると思いますので、ひとつ至急に調べていただきたいし、もしいまおわかりであるならば、わかっている範囲内の周知の方法についてお教えいただきたいと思います。
  136. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  ジュネーブ条約につきましては、現在自衛隊の中におきまして、一般の幹部候補生の課程におきまして戦争法規の教育を行っておりまして、その中の一環といたしまして、自衛隊の幹部候補生に対しまして、ジュネーブ条約の内容については教育を行って、周知徹底を図るというふうに行っていると承知しております。  本条約、御審議いただいております特定通常兵器の問題につきましても、締結後は、恐らく同様の方法によりまして自衛隊の幹部候補生に対する教育を行うということになろうと存じます。
  137. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実はこれ、われわれかつての戦争の自己批判といいますか、そういうものの悲劇をいま顧みるときに、戦争中にはそのようなことを本当に教えなかったという問題があるわけですね。ですから、戦争犯罪というようなものについての、なぜ自分が責められるのか、将校なんかも意味がわからなかった、こういう場合があります。私の知る限りにおいては、今日においても、防衛大学校においては戦時法規の講座がある程度であって、マニュアルはつくられていない。教範はない。これはやはり戦争法規であり、いわば戦争のルールですからね。戦争のルール、何かずいぶん誤解を招くかもわかりませんが、逆に平和国家であればあろうとするほど、私は、そこら辺は周知徹底させ、ルールは重要視していくということの方が大事であると思いますので、この点重ねて私は、教範などというものもつくられる、周知方法をもっともっと広げていかれる、そういう点を要請しておきたいと思います。その点お願いします。  時間が参りましたので、最後の一問だけ外務大臣にお聞きして、それで質問をやめたいと思います。  それはどういうことかといいますと、軍縮というのを進めるのに、やはり一番障害になっているのは、何といっても国家間の相互不信でございましょう。一番典型的なのは、米ソの不信感だと私は思います。有効な検証手段がないとかというようなことが理由になる。さてそれでは、軍縮を進めるその前提となる信頼感醸成措置、前にも外務大臣に私はお尋ねしたことがあります。ひとつ本気になって、一遍、日本としてどうやったらいいのか考えてみていただきたい。北東アジア、極東の地域においては確かにむずかしいでしょう。複雑で多くの不安定要因も絡んでいるでしょう。しかしながら、わが国、米、中、ソ、南北両朝鮮、こういったものを含む地域において、地域レベルでそういった信頼感醸成措置というものは何らかの模索をするべきではないか。これについて外務大臣日本として何かをするべきじゃないか。地域ぐるみの共同措置、研究を開始してみようとか、少なくともそこら辺の前向きの姿勢はいただきたいと思うのです。大臣、いかがでございましょうか。特に昨年度も、国連の事務総長の報告によりますと、国家間の信頼感醸成措置についてはたくさんのリストが出ております。こういうこともある、ああいうこともある。日本がそれについて、極東の地域においてはむずかしいからといって黙っているだけでは、これは後ろ向きだと思います。その点お答えをいただきたいと思います。
  138. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は、第一回の特別総会後に、国際的な世論を喚起して軍縮が進められる、そういう環境をつくっていくという方向が打ち出されておると思うのです。私はこれが一番大事だと思うのです。  いまの地域的なことを考えると、そこにはやはり地域的な問題がどうしても頭に浮かんできますね。北東アジアで何か考えるという場合に、日本としては多年の懸案である北方領土問題などを抱えておる。こういう問題を解決して、本当に日ソ間の信頼、安定したそういう姿を実現したいというようなことになりますと、ちょっとつっかえるものがございますね。おっしゃっておるように、この地域に限らず、むしろ国際的に相互の信頼感を深めるためのあらゆる努力をする、そういうことについては、私は軍縮実現の前提として非常に大事なことだと思いますが、要は御指摘になったとおりに、不信感のあるということが問題でありますから、そういう点については広い国際世論の喚起で臨んでいきたい、このように思う次第でございます。
  139. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間が参りました。ありがとうございました。
  140. 中山正暉

    中山委員長 この際、昨日の外務委員会での土井たか子議員の質疑、そしてまた本日休憩前の委員会における高沢議員の質疑に対する内容について、土井たか子議員から発言を求められておりますので、これを許します。土井たか子君。
  141. 土井たか子

    ○土井委員 発言の機会に感謝します。  るるいきさつについて申し上げることはこの際差し控えまして、間違いがないように簡単に昨日のその部分について、私が日豪原子力改正協定質問に当たりまして述べた点、そして御答弁をいただいた点を速記を起こしていただいたことのその部分をひとつ読ませていただきたいと思うのです。外務大臣、後で外務大臣からの御答弁をいただきたいと思いますから、ひとつ読ませていただくことをお聞き取りをお願い申し上げます。  私の質問は、核兵器使用またその使用による威嚇、これはもうしょっちゅう問題になるのですけれども、これは核軍縮が達成されるまでの間は禁止されるべきであるという一般的考え方にはもちろん賛成されると思いますが、この考え方はどうですか、と聞いているのです。そうすると遠藤さんが、お答え申し上げます、そのとおりだと思います、といい御答弁をされて、そして重ねて私は宮澤外務大臣代理に対しても質問、宮澤外務大臣代理も、それは当然にそのよいにお考えになりますね。宮澤国務大臣、そのとおりと思います。以上が、これはその部分の速記の起こしをそのまま読んだという中身なんですが、この限りにおいては私は別に他意あって言っているわけじゃないので、理論的に考えて、考え方としてどうですかということを聞いているのです。この答弁を一度はっきりお答えになった以上は、やはり答弁には責任というのがあるわけですから、くるくる変えていかれるはずは私はないと思っておりますので、これはこのとおりだといまも私は思っているんですが、大臣、これはどういうふうにお考えになりますか。いかがでございますか。
  142. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 土井委員から私が質問を受けた、そして私の感じを率直に申し上げますと、われわれの理想である核の廃絶が達成されるまでの間、どのようにして核が現実使用されることがないようにするかということであろうと思います。この点についての政府の考え方は従来から申し上げているところでありますが、一般的考え方として、核廃絶が実現するまでの間、核兵器が使われることがあってはならないということについては、私も同様に考えます。
  143. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これははっきりきのうの午前の答弁どおり、昨日は外務大臣は外国の御所用のためにいらして、この委員会には御出席は無理な日程でございましたから、宮澤国務大臣が外務大臣代理ということで御答弁になったことを、きょうはさらにそのとおりであるということをこの席で再度確かめるというかっこうになったことをひとつはっきりさせていただけたと思います。ありがとうございました。それで結構です。
  144. 中山正暉

    中山委員長 野間友一君。
  145. 野間友一

    ○野間委員 大臣、大変お疲れだろうと思いますが、あとわずかでございますから、よくお聞きいただいて、明快な答弁をお願いしたいと思います。  議題となっております三条約一法案のうち、いまからお聞きしますのは、七二年につくられました細菌兵器及び毒素兵器開発禁止に関する条約に関連してお尋ねをするわけでありますが、先ほどの質疑の中にもありましたけれども、化学兵器が切り離されたままで生物兵器あるいは毒素兵器のこういう条約ができたわけでありますが、私は、いまの国際的な情勢の中で考えても、この化学兵器の禁止、これは国際的に最も切実な問題の一つであるというふうに理解認識をしておるわけでありますが、この点についての認識のほどをまずお聞かせいただきたいと思います。
  146. 門田省三

    門田(省)政府委員 化学兵器の禁止の問題は、非常に重要な問題でございます。特にこの化学兵器というものが第一次大戦において現実使用されたというふうなことにかんがみましても、こういった兵器の速やかな禁止体制の確立というのは必要であろうというふうに思うところでございまして、わが国は先ほどから申しておりますように、ジュネーブ軍縮委員会におきまして積極的に化学兵器の禁止ということを推進してまいっているのでございます。
  147. 野間友一

    ○野間委員 この条約の中に、化学兵器については第九条の規定がありますね。これはどういう趣旨のものであるのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  148. 門田省三

    門田(省)政府委員 この生物禁止条約は一九二五年の議定書に淵源を持つわけでございますが、残された一部であるところの化学兵器についても、われわれはできるだけ早くこの生物兵器と同じような禁止条約をつくるのであるぞということを確認した条項であるというふうに理解しております。
  149. 野間友一

    ○野間委員 「早期に合意に達するため、誠実に交渉を継続することを約束する。」こういうことになっていますね。これは大変強い締約国の義務を定めたものだというふうに私は考えますが、これは「約束する。」とありますね。いかがでしょうか。
  150. 門田省三

    門田(省)政府委員 仰せのとおりに「早期に合意に達するため、誠実に交渉を継続することを約束する。」ということになっております。
  151. 野間友一

    ○野間委員 読んで中身を聞いたんですよ。ちょっと質問をよく聞いてくださいよ。ですから、これは「約束する。」ということは、締約した国に対する強い義務規定ではなかろうかというふうに聞いたわけです。
  152. 門田省三

    門田(省)政府委員 そのように了解しております。
  153. 野間友一

    ○野間委員 これはアメリカは締約国になっておると思いますが、いかがでしょう。
  154. 門田省三

    門田(省)政府委員 アメリカ生物兵器の締約国になっております。
  155. 野間友一

    ○野間委員 この程度のものなら局長、一々後ろに聞かぬでもさっさとお答えください。  そうしますと、九条による誠実に交渉を継続することの約束、強い義務規定かどうかという問いに対してはそうだと答えがありましたけれども、当然アメリカもこの九条の規定に従ってそれぞれ誠実に交渉の継続をする義務を負っているわけですね。  そこで、外務大臣にお聞きするわけですが、衆参両院の予算委員会等でも何度も論議になりましたけれども、レーガン政権が化学兵器生産再開に踏み切った問題であります。これは冒頭にも申し上げましたけれども国際的に化学兵器を禁止するという強い要請、同時に締約国でありますアメリカにとってみても、この条約の中身からしても、この化学兵器の生産再開そのものがこれらに違反すると考える以外にはないと私は思いますけれども、その点についての大臣認識をお聞きしたいと思います。
  156. 門田省三

    門田(省)政府委員 化学兵器についてただいま規定しておりますのは一九二五年のジュネーブ議定書でございます。このジュネーブ議定書は、戦時における化学兵器の使用禁止を定めておるということでございまして、開発生産等については触れていないということでございます。したがいまして、アメリカが化学兵器を開発生産するということがございましても、このジュネーブ議定書との関係におきましては抵触をいたさない、かように考えております。
  157. 野間友一

    ○野間委員 本条約アメリカ関係ないのでしょうか、どうでしょうか。
  158. 門田省三

    門田(省)政府委員 まことに恐縮でございますが、御質問……。
  159. 野間友一

    ○野間委員 七二年につくられた生物兵器等の禁止に関する条約について言っておるわけです。
  160. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  アメリカはこの第九条によって、化学兵器に関する国際条約締結のために継続的に努力をすることについてはこの条約上拘束されるわけでございます。しかし、化学兵器の開発生産については本条と関係はないということでございます。
  161. 野間友一

    ○野間委員 いや関係があるでしょう。先ほどからずっとお尋ねしておりますように、この禁止協定条約ができるように締約国は誠実に交渉を継続することを約束するということの重さをいまずっとあなたにお聞きしておったわけです。ですから私は、この九条による規定から、また同時に当面緊急の課題であります化学兵器の全面禁止という時代の要請、国際的な要請、その両方から考えて、アメリカのレーガン政権下の化学兵器の生産再開はおかしいではないかという点から質問しておるわけです。外務大臣に私はお聞きしたわけですけれども……。これは何度も予算委員会その他でも論議されておりますね。外務大臣、いかがですか。
  162. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この第九条によれば——署名国であり締約国はこの九条を尊重する立場にあると思います。したがって、このことはソビエト連邦、アメリカ合衆国、いずれも同様の立場にあると思うのですが、ソ連は継続的な化学兵器の増強に努めておるということも御承知のところだと思います。米国としては、あくまでも抑止力の確保のためにやろう、こういうことで、しかし化学兵器の使用については最初に米国または同盟国に対して使用されない限り、これを使用しないということを述べておるわけでございます。  そして、この九条の読み方といたしましては、生産及び貯蔵禁止並びに廃棄のための効果措置等について早期に合意に達するため交渉を継続する、そういう目標を置いて早期に合意に達するため交渉を継続する、これが締約国の九条に対しての責務だと思うのでありますから、さような点からいたしまして、私は特に米国だけに対しての問題になるというようにはとり得ないと思います。
  163. 野間友一

    ○野間委員 私もアメリカだけに責めを問うという立場からの質問ではないわけで、問題は、ソ連であれ、アメリカであれ、こういう国際的な世論からも、またとりわけ条約の九条からも誠実にこういうものの開発生産がなくなるように努力しなければならぬという責務を負っておるにもかかわらず、現実にはこれが開発され、生産されておるということ自体に対する外務大臣評価なり認識を私はお聞きしておるわけです。  ですから、私は、ソ連がこれを持っておるかどうかよくわかりませんけれども、仮にソ連生産品は貯蔵しておると仮定しても、それがゆえにアメリカにもこれが許されるということでは決してないと思うのですね。どちらにしても、こういうものはなくしていくという立場からそういう発想なり認識があってしかるべきだと私は考えますが、外務大臣いかがですか。
  164. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 一般的に申して、この条約の文言どおりに締約国が努める必要がある。したがって、いずれの国も生産貯蔵禁止並びに廃棄のための効果措置について早期に合意に達するよう交渉を継続する。私は交渉をしてないというようには聞いておらない、皆それぞれ努力をしておるものと思うのです。
  165. 野間友一

    ○野間委員 問題は、交渉がずっと従前からいろいろ国連の中でも問題になって、公式、非公式にも続けられておるわけですけれども、化学兵器をつくりながら九条を履行すると言っても、これは空虚なんですね。私は、九条の趣旨からしても、化学兵器についてはつくるべきではない、こういう立場に立つべきだと思うわけです。  そこで、再度お聞きするわけですが、御案内のとおりの化学兵器、アメリカで決めましたのは五年間に六十億ドルですか、これについて私はやめろと言うべきだ、それに対して恐らく外務大臣は、いやソ連がつくっておるじゃないか、だからアメリカだけに一方的に言うのは片手落ちだというようなことを言われるかもわかりません。私は、そうではなくて、それはそれとしてソ連に対して物を言うというのは当然だと思うのですが、アメリカに対してもソ連に対しても物を言う、これが大事だと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  166. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほどから繰り返し申し上げておるように、締約国が、申し上げておる目標に向かって交渉を継続するということが責務でありますから、それを努めてもらいたい、こう思います。
  167. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと大臣、化学兵器を使うことは当然ですけれども、その開発生産すること、特に具体的に私が申し上げておるように、レーガン政権が決定をしてこれから生産に入るということについて、これをやめろということを要求されるかどうか。いかがでしょうか。
  168. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いまのこの条約に伴ってそういうことを言う日本立場は生じてこないと思います。
  169. 野間友一

    ○野間委員 それでは条約を離れていかがでしょうか。
  170. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 条約を離れた場合は、アメリカアメリカなりの所見を明らかにしておるわけですね。その所見というものが日本側として同意のできないものであるかないかということが問題なのであって、その点についてはソ連の継続的な化学兵器の増強、それによるソ連の優位性に対する危機感による対ソ軍備管理交渉の行き詰まりなどを配慮しながらアメリカが一応その生産措置をとった。しかしながら、それを使用するについては、自国及び同盟国に対する攻撃のない限りはそういうものは使わないということを明言しながらやっておるんでありますから、そういう点からいたしますならば、日本としていまアメリカのとっておる措置をとやかく言う考えはございません。むしろ条約上の交渉を継続して合意に達するということの方に力点を置きたいと思います。
  171. 野間友一

    ○野間委員 いまのお話を聞いておりますと、外務大臣は大変レーガン政権の決定を弁護する立場からの答弁であります。しかも、その中でいま私気になったのは、化学兵器についてソ連の優位性といういまの御発言がありました。これはいま初めてではなくて、ことしの予算委員会の中でもいろいろとそういうことを言われております。  そこで、関連してお聞きしますけれども、そうしますと、その化学兵器についてもいまの時点ソ連の方がアメリカに比べてたくさん持っておる、いま優位性という言葉がありましたけれども、そういう認識日本政府は持っておるのかどうか。いかがでしょうか。
  172. 門田省三

    門田(省)政府委員 さきにアメリカは化学兵器の生産を停止したわけでございます。その後、数年前からソ連との間に化学兵器についての包括的な禁止交渉を進めてまいったのでありますけれども、やはり話が実際的に進んでこない、アメリカは化学兵器を持たないわけで、それでは話にならないということで、今度の生産再開に踏み切ったというふうに了解しております。また、アメリカは今度の生産再開を実施するけれども、これによってソ連側と化学兵器の削減あるいは禁止方向での話し合いがつくのであれば、いつでも生産を停止するなり、またすでに生産を行っている場合にはこれを廃棄するということを明らかにいたしております。
  173. 野間友一

    ○野間委員 ソ連は大体どのくらい持っておるというふうに考えておるんですか。
  174. 門田省三

    門田(省)政府委員 その点はつまびらかにいたしておりません。
  175. 野間友一

    ○野間委員 そうしましたら外務大臣、いまソ連の優位性という話がありましたけれどもソ連が優位だという評価、判断ですね。これは化学兵器についてのいまのお話がありましたけれども、化学兵器についてアメリカよりもソ連は優位に立っておる、そういう評価をされたわけですね。その評価をされた根拠なり理由は何なのか、お聞かせいただきたいと思います。
  176. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 別に日本がそういう評価をしておるんではないんです。アメリカがそういう主張をしておるということを申し上げたんであります。
  177. 野間友一

    ○野間委員 アメリカのそういう評価については櫻内大臣はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  178. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それに対してどうこう言う材料は持っておりません。
  179. 野間友一

    ○野間委員 ですから、どうこう言う材料は持っておらぬじゃなくて、御見解をお伺いしておるわけですね、外務大臣。  アメリカ生産再開に対して、あなたはアメリカが、ソ連の方が優位だ、優位性を持っておるということを言ったというわけですね。ですから、それに対しては何ら判断する材料がない、それは私は無責任だと思うんですね。  あなたは五十七年二月十六日の参議院の予算委員会の中で、「アメリカ措置を見ますと、ソ連の継続的な化学兵器の増強によってもたらされているソ連の優位性、これにいかに対応するかということが問題点の一つであると思うのであります。また、ソ連は自国の化学兵器の生産貯蔵等の実情については明らかにしておりません。そういう際でありますから、」云々というふうにありまして、ここでは明らかに外務大臣は、「ソ連の継続的な化学兵器の増強によってもたらされているソ連の優位性、」こういう評価、判断を実はされておるわけで、アメリカがそう言うからということだけではなくて、ここには明らかに外務大臣の判断があるわけですね。そういうふうにお考えなんじゃないでしょうか。しかも同じところで、「やはりこの分野における勢力均衡の上からどうか、このように見ておる次第でございます。」ここまで踏み込んだ発言をされておるわけですね。五十七年の二月の参議院の予算委員会ですね。いかがでしょうか。
  180. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 あなたは、いま私の発言のある部分を取り上げられておるわけでありますが、私がいまここではっきり申し上げておることは、また国連局長が申し上げておるように、生産開始に至る経緯、またアメリカのとっておる見解、そういうことによって生産をする、また生産後にとる措置も言っておる。それに対してわれわれが理解をしておって、そのことについてどうこうというそういう立場はとっておらないのだ、理解を持っておるわけなんであります。
  181. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、理解を持っておるとしいうことはそれを肯定をされておるということも含んでおるわけで、これは私は大変問題だと思うんですね。  質問を変えますが、今度の国連の第二次総会において鈴木総理は、この化学兵器の禁止、これについて、わが国立場として一つの大きな柱として訴えたい、こういうことを言っておられますが、これは外務大臣、そのことについては同じお考えでしょうか。
  182. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 第二回軍縮特別総会に臨むに当たってどのようなことを総理が言われるかにつきましては、まだ決定をしておるわけではございませんが、しかし先般来の国会の答弁を通じて、化学兵器の禁止ということにつきましては、これは総理としておっしゃる、そういうお考えではないかと私は思いますし、私もまた、今後化学兵器のようなものについてはこれは禁止されるべきものだと、そのように考えております。
  183. 野間友一

    ○野間委員 そこでお伺いしますが、鈴木総理大臣は国会の場で明らかに、この化学兵器の生産再開の、レーガンですね、これの問題に関連しての質疑の中で、やはりいま申し上げたように廃絶を訴えるということを明確に述べられておる。同時に、これはあらゆる機会を通じて主張したいし、レーガンに対してもこれは主張しますということを明確に述べられていますね。これは間違いありませんね。
  184. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いま総理の発言の速記録、それを私は持っておらないのでありますが、もし速記録をもとにして御発言であるならば、総理のお考えを示しておるものと思います。
  185. 野間友一

    ○野間委員 国連局長、あなたは国連の最高責任者ですから、事務当局としてこの条約審議について、当然こういうものは全部整理されておると私は思う。いかがですか。
  186. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいまお尋ねの議事録の部分については、資料を持ち合わせておりませんので正確にお答えすることはできません。
  187. 野間友一

    ○野間委員 それは怠慢ですよ。この点についての審議をやっておるわけでしょう。化学兵器については九条にちゃんとあるわけですからね。国会で何度も論議されておるわけでしょう、化学兵器については。すぐ後ろへ聞いてくださいよ。
  188. 門田省三

    門田(省)政府委員 至急取り調べたいと存じます。
  189. 野間友一

    ○野間委員 それでは取り調べさせてください。ここに持っていますから、これを見てもいいのですよ。言いましょうか。三月十六日の参議院の予算委員会で寺田参議院議員に対する鈴木総理大臣答弁です。
  190. 門田省三

    門田(省)政府委員 突然のお尋ねでございましたので準備いたしておりませんでした点、おわび申し上げたいと思います。ただいま取り寄せておりますので、御猶予いただきたいと思います。
  191. 野間友一

    ○野間委員 それでは確認をいま並行してやっていただきたいと思いますけれども櫻内外務大臣は、議事録でそうあるならばそうおっしゃったと思う。実はそうあるわけで、後でまた確認してもらいたいと思いますけれども、外務大臣、これからいたしますと、総理は軍縮一つの柱としていま申し上げたように化学兵器の禁止を具体的な問題として考えているということ、「あらゆる機会に主張していきたい」ということ、この「あらゆる機会に」というのは、その前に「今度の軍縮総会において」云々から始まるわけですけれども、同時に、レーガンの政策に反するという点からもいろいろ論議が進みまして、それに対しても、レーガンに対しても主張するということがずっと文章としてつながっておるわけですね。これは後でまた確認してもらったらいいのですけれども。そうしますと、私は、少なくともこの予算委員会の中での鈴木総理の姿勢を見る限り、化学兵器の生産再開に関連してのこういう論議の中で、少なくとも国連の場であるいはレーガンさんに対して化学兵器の禁止については言う、あらゆる機会に主張していきたい、こう言っておるわけですね。大臣、あなたはいまの答弁では大変後退した、これを肯定するような答弁をされましたけれども鈴木総理は明らかにそういう答弁をされておるわけですね。いかがでしょうか、これよりあなたは後退されるのですか。
  192. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 別に私が後退しておるということもございませんし、化学兵器の禁止については賛成であるということを申し上げておるわけであります。ただ、その化学兵器の禁止についての扱いについての総理の意図がいろいろ述べられておる。あなたは速記録を中心で言われておるが、速記録に書かれておることであるならばそういうお考えを総理は持っておられると私もそれは察するわけですけれども、しかし、よく皆さん方の御質問のときに、ある部分だけで御質問等もありますから、そういう点から、大変恐縮でありますが、慎重に政府委員もお答えしておる、こういうことです。
  193. 野間友一

    ○野間委員 それは結構なんです。私も決してうそやごまかしでこの場で申し上げているわけじゃないので、後で確認していただいたらよろしいのですけれども、私はこの立場をさらに進めて、外務大臣は、きょうの答弁と先ほど私が引きました五十七年二月十六日の参議院の予算委員会でのソ連の優位性の問題の御発言、これとは明らかに違う。少なくともいま鈴木総理と同じ立場に立たれるとするならば、アメリカの化学兵器の生産再開そのものがわが国の方針であります化学兵器の禁止という立場と相矛盾するという立場から答弁されており、レーガンに対してもあらゆる機会を通じてどこででもこの点を主張するということは、アメリカの化学兵器のこの問題に対して否定的な評価をされておるということをあらわしておるわけですから、大臣はその点については総理と同じ立場だというふうにおっしゃいました。だとするならば、その立場をとられるならば、アメリカの化学兵器の生産再開についても、これはいけないということを言われるべき筋合いのものである、私はこう考えますが、再度お答えいただきたいと思います。
  194. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは私の言っておることを十分理解していただきたいのです。化学兵器の製造禁止ということについては私も何ら異論がないわけであります。あなたのきょうの御質問は、この条約に関連して九条から出発しての御質問ですから、したがって、九条は九条として交渉を継続するということが眼目ではないか。  それから、アメリカ生産を再開したという点については、先ほどから私または政府委員がお答えをしておるような経緯に基づいておるものである、そのことを言い、またそのことについては私が理解を持っておるんだ、しかし基本的に一体化学兵器はどうだ、こうなってくると、それは禁止するのがいい、こういうことです。
  195. 野間友一

    ○野間委員 どうもはっきりせぬわけで、この点についてはさらに整理して別の機会でお尋ねをしたいと思いますが、いかがですか、もうわかりましたか。
  196. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいま取り寄せ中でございます。
  197. 野間友一

    ○野間委員 それでは私の持ち時間が参りましたので、あと二点お尋ねしておきたいと思います。  一昨年の三月三日から二十一日までジュネーブでいわゆる再検討会議が行われて、ここで最終宣言を出されましたね。第九条の評価については、この会議は、「この条約の署名のため開放されてからすでに八年が経過しているにもかかわらず、いまだにこの合意が実現されないことを深く遺憾とする。」ということが最終宣言の中に書かれておるわけです。ですから、冒頭から一貫して私がるる申し上げておりますように、いまの情勢からしても、またこの条約の九条の趣旨からしても、どうしても化学兵器の禁止については早急にやらなければ問題だ。具体的にそれがどんどん進んでおる。軍縮どころか軍拡の方向に進んでおるという点の憂慮をしながら私は聞いておるわけで、そういう点からも、いまアメリカに対して物を申す、あるいはソ連に対しても物を申す、こういう立場を堅持していかなければならないのが日本政府の態度ではなかろうか。その点について明確な答弁がないのを大変遺憾に思うわけであります。  もう一つ、最後に要求ですけれども、これは化学兵器に関連してですが、二五年のジュネーブの議定書のいわゆる細菌兵器、それから今度の細菌兵器生物兵器あるいは毒素兵器それからいわゆる毒ガスですね、こういうものがどういうふうに分類、分けられるのか、どういうものが具体的にあるのか。この前のジュネーブの議定書の国会審議のときには、一定の一覧表みたいなものを例示したものが国会に出されました。私は今度の場合も、事前にこの生物兵器等の開発等の禁止条約に関連して一覧表をもらっておるわけですけれども、これは非常に大事な問題だと思うのですね。これは、後でまた国内法との関係等々についても一定の概念矛盾がありますからお聞きしたいと思いますが、私は委員長を通じまして、いま申し上げたように二五年の議定書に言う細菌兵器それから毒ガス兵器ですね、それから今度の申し上げた生物兵器禁止条約ですね、これに言う生物兵器細菌兵器毒素兵器というものの例示をひとつ表にして当委員会に出していただきたい、ちょっとその点についてお願いしたいと思います。
  198. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいま御要求のございました資料を作成して提出させていただきます。
  199. 野間友一

    ○野間委員 とりあえず、きょうはこの程度で終わりたいと思います。
  200. 中山正暉

    中山委員長 東中光雄君。
  201. 東中光雄

    ○東中委員 外務大臣にお伺いしたいのですが、三月二十二日に櫻内外務大臣がレーガン大統領と会われた。そのときにレーガン大統領の方から、米国の考え方は、西側が十分強くなるという前提が一方にあって初めて意味ある核軍縮が可能になるということだ、その意味日本防衛努力は本当の軍縮交渉に重要な影響を与えるのだ、こういう趣旨の発言があったと、これは括弧入りで報道もされておるわけでありますが、そういう見解に対して外務大臣はどういう立場を表明されたのかどうか、お伺いしたいと思います。
  202. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 東中委員お尋ねの件が、外務大臣が訪米されたときにレーガンとの会談でそういう話が出たということであれば、今回の櫻内大臣とレーガンさんとの会談では防衛問題については話は出てないというわけでございます。
  203. 東中光雄

    ○東中委員 何かどうも禅問答みたいな話ですけれども、レーガン大統領の側から、レーガン大統領自身が直接櫻内さんに言うたのかどうかは、私は立ち会うていませんから知りませんので、櫻内外務大臣が訪米されたときに米側からレーガン政権の核軍縮というものに関連しての考え方として、西側が十分強くなるということが前提だという考え方を明らかにされて、そして日本防衛努力は本当の軍縮交渉に重要な影響を及ぼす、そういう考え方が表明されたのではないか。アメリカ側のそういう考え方に対して、日本の外務大臣はどういうふうにお考えになっておるかということをお伺いしておるわけであります。
  204. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大分時間も経過しておりますから、いまの御質問のようなことが米側から言われたものか、あるいはまたどういう報道になっておってそれを東中委員がどういうふうに受けとめられておるのか、なかなかこれは急なことですから責任ある御答弁がしにくいのです。  というのは、もう一つ申し上げますと、私はアメリカに行って防衛問題等の論議をするということについては、当時ワインバーガー国防長官は不在であって、それでその問題はない、そういう環境の中にあったわけです。ただ、アメリカを訪問しておる際でありますので、国防省に国防長官代理としてどなたかがおられる、こういうことから表敬訪問はしておるわけでございますが、日本側が、私が防衛問題について云々するということはなかったのであります。特にその際は、ワインバーガー国防長官は、ちょうど私がこっちに来ているときに日本においでになって防衛庁長官と話される、そういうようなこともございましたので、防衛問題について何かあったのじゃないかとか言われてみても、またどういうものでお尋ねなのかわかりかねるので、ちょっとお答えしにくいのです。
  205. 東中光雄

    ○東中委員 具体的な話はどうあったかということで言えば、時間もたっておるからというお話もありますので、では考え方自体についてお伺いしたいと思うのです。  レーガン政権の考え方としては、いま大軍拡をやっているわけですね。核兵器の問題についても、昨年の十月一日でしたか戦略核兵器のB1を初めとして大増強計画が発表されている。軍事予算にしても大増強であります。そして一方で、核軍縮ということはやはり言っているわけですね。これは、何人も納得させられないような非常な矛盾を持っておるわけですけれども軍縮に向かって軍拡をやるんだというふうな現実の施策がとられておるわけですので、そういうことについて日本の外務省としては対米関係でどう思っていらっしゃるか。特に、防衛努力をすることがそういう軍縮に向かって役立つんだ、西側軍備力を増強することが軍縮実効あらしめる前提条件なんだというふうな考え方が通用しておるとすれば、これは非常な矛盾であると同時に、私はそういう軍縮の名によって際限のない軍拡競争がやられるということについて強い批判的見解を持っておりますので、外務大臣はそういう動きに対してどうお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  206. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まずアメリカの考え方について申し上げますと、一九七〇年代においてアメリカ軍備に使ったお金と、それからソ連軍備増強に使ったお金というものは非常な差があるわけでございます。その結果、アメリカ側から見ていると、少なくとも現在のままの趨勢でいけば一九八〇年代の中葉においては、戦略部隊のみならず通常兵力の面においてもソ連の方が優位になってくるという認識のもとで、カーター政権の末期からアメリカとして国防力の充実を図っているわけでございます。それと軍備管理との問題でございますが、これはヘイグ長官も再三言っておりますけれども、たとえばヨーロッパの戦域核交渉において初めてソ連が戦域核交渉に乗ってきた背景には、やはりNATO諸国がヨーロッパにおいて戦域核を配備するという決定を七九年の末にしたわけでございます。そこでソ連は初めて軍備管理の交渉に乗ってきたということでございますので、やはりある程度軍備管理交渉をする際にはアメリカ側あるいは西側としての力を持っていなければなかなか交渉には入れないし、またその結果も出てこないであろうというのがアメリカ認識であるわけでございます。私たち、少なくとも私が見ておりますれば、それは歴史的にはある程度正しいのではないかというふうに考えられるわけです。  それと、いまもう一つ東中委員が言われました日本防衛努力をすればそれは軍縮云々ということでございますが、日本防衛努力あるいは自衛隊の勢力というものは現在、世界の国々の対象になっている軍備管理というものとはむしろほど遠いものではないかというような気がするわけでございまして、日本の自衛隊の整備というものは、通常兵器であれ、あるいは核戦力であれ、現在東西間でこれから話が行われ、あるいは行われている軍備管理の対象とは直接には関係ないのではないかという気がするわけでございます。したがって、日本防衛力をつければ軍備管理交渉が進むという考え方は、少なくとも私はとっていないわけです。
  207. 中山正暉

    中山委員長 東中議員にあらかじめお知らせいたしますが、外務大臣は二十分ころにお出ましでございますので、ちょっと時間が延びておりますから、次の御予定がありますのでそのつもりでひとつ御質問をお願いしたいと思います。
  208. 東中光雄

    ○東中委員 どうも最後にしわ寄せされるといつもこういうことになるのですが、まあ、おくれておりますから急ぎます。  日本軍事力の増強、防衛力の整備というのかもしれませんけれども、表現は別としまして、それはアメリカ西側軍備体制というふうな中で、端的に申し上げますならばアメリカの補完戦力だというふうにアメリカ自身が議会で言っているようですね。ことしの三月一日から開かれた一連の対日公聴会で、米下院の外交委員会アジア・太平洋問題小委員会でウエスト国防次官補が証言をしています。これは北米局長御存じだと思いますが、「米国は日本がどのような特定の防衛力増強に着手することを望んでいるか。どのような任務と目的に対してか。米政府は、日本防衛力増強をこの地域における米軍事力の肩替わりと見なしているか、それとも米軍事力を補足するものと見なしているか。」云々という質問に対して、フランシス・ウエスト国防次官補は、「米国は、鈴木首相が日本の法的権限内にあると言明した使命、すなわち日本自身の領土、周辺海空域、および一千マイルに及ぶ航路帯の防衛という使命を実行するため、日本防衛力を増強することを望んでいる。日本が北西太平洋をきちんと防衛するこの能力を持つならば、それはこの地域における米軍事力を補完するものとなるだろう。」だから、総理大臣の言ったことを実行してもらえばこの北西太平洋地域における米軍事力を補完するものとなるだろう、こういう見解を公式に言っているわけです。だから、いま北米局長が言われたこととは違うわけです。アメリカ軍事力を増強することが軍縮交渉に役立つということを言って、そして西側あるいはアメリカ軍事力を増強する、日本軍事力の整備は鈴木総理大臣の言っている線でいけばアメリカ軍事力を補完するものとなる、こういうふうに公式に言っているわけですから、そういうものとしてアメリカとの関係日本軍備整備あるいは鈴木総理の首脳会談における発言というものは見られておるということだと思うのですが、アメリカ側のそういう公式の見解に対して外務省はどう思っていますか。
  209. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 東中委員が提起された問題は二つあると思うのです。  一つは、私が先ほど申し上げたように、アメリカが戦略部隊について近代化を図り、脆弱性の窓を狭めようとしておる、それは、一つの目的は、ソ連との軍備管理を有効に進めるためであるということは言えると思うのです。  それから第二のウエスト証言、これは三月一日の恐らくソラーズ小委員会における質疑応答でウエスト国防次官補が答えたことだと思いますけれども、そこで明らかになっているのは、アメリカは何も日本に対して肩がわりを求めているものではない、あくまでも日本鈴木総理の言うように憲法の範囲内あるいは基本的防衛の範囲内で自衛力を充実してほしい、しかし、その結果、現在アメリカが手薄になっている地域における状況の改善には役立つであろう、こういうことでございます。日本はあくまで自衛のためにやるわけでございますが、結果論として確かに手薄になっているアメリカ軍備あるいは兵力というものをそこでは補うといいますか、ということは結果論としてはそういうふうに言えると思います。
  210. 東中光雄

    ○東中委員 そうではなくて、米軍事力の肩がわりとみなしているか、それとも米軍事力を補足するものとみなしているかという質問に対して、それはこの地域における米軍事力を補完するものとなるのだ、こう言っておるわけです。結果においてそうなるというものじゃないのです。それは全体としてそう言っておるわけであります。ですから、この点は外務省だけに言ってもしようがない面もありますけれども、そういう位置づけで、核軍縮ということを言っておりながら、実は軍拡の道をどんどん進んでおるということになっておるということを私たちは強く批判をしたいわけです。  それで、核軍縮に関連してお聞きしておきたいのですが、いま世界じゅうで核軍縮あるいは核廃絶あるいは反核の運動が起こっておるわけですけれどもアメリカ議会でも核兵器に関する決議案がいろいろ出されております。それで、軍縮のための軍拡というふうなことではなくて、反核決議としての、たとえばケネディ・ハットフィールド決議案というのがいま出されておりますね、この中身は核軍備競争の完全な禁止、それから核実験生産及び開発の凍結、それから相互の実証できる縮小の達成ということを求めておるわけですが、これは軍拡によって軍縮という考え方ではないというふうに一応見れるわけですけれども、このケネディ・ハットフィールド決議案について日本の外務省はどう考えておられますか。
  211. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私から御答弁するのが筋合いかどうかわかりませんけれどもアメリカ議会の決議案についてという御質問でございますので、お答えいたします。  いま東中委員が言われたように、アメリカの議会で、ケネディ・ハットフィールドのような決議案もございます。それと、アメリカ政府立場を支持するウォーナー・ジャクソンという決議案もございます。あるいは、パーシー上院議員が提案して、SALT、現在はSTARTと名前を変えましたけれども、その交渉を促進する決議案、いろいろ出ております。したがって、アメリカの中にもいろいろな考え方がある、それは事実であろうかと思います。  その個々について、日本政府立場で、公の立場でコメントするということは、アメリカの議会で出ている議論でございますので、差し控えたいと思うわけでございますが、二つの流れがあるということは事実でございます。しかし、過去の歴史から見ていると、ある程度の力というものが背後になければ軍備管理の交渉ができなかったというのも、また歴史の事実ではないかなという気がするわけでございます。
  212. 東中光雄

    ○東中委員 ということは、日本政府はやはり力の均衡論に立っていると。何もこのケネディ・ハットフィールド決議案を私は金科玉条に言っているわけじゃないので、こういう考え方、いまの時点で凍結をする、いまの時点でとめるという、そこから縮小へ向かっていくという考え方に対して、とにかく拡張して、力の均衡に立って拡張して、それで軍縮をやるんだ、軍縮をやるために拡張するんだ、こういう力の均衡論による軍拡競争ということになったのでは、いよいよ危険な方向に行くし、現にいま行っておる。そのどちらの立場に立つのかということを聞きたいわけですが、いま北米局長お話では、具体的にコメントしないけれども、その均衡論の立場に立つやに聞こえたのですが、外務大臣、その点はどうでしょう。
  213. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 北米局長がお答えをしているように、アメリカ議会で幾つかの、一言で言うならば核軍縮決議案のようなものが出ておるわけですね。そしてまた、その決議案については、米政府あるいは国会においていろいろ論議されておるということも事実ですね。そこで、いまこの決議について何か意見を求められても、そういう経過中のものについて私どもがいろいろ言うのはどうか、こう思うのであります。個々の決議そのものについて、それはそれなりの所見はありますけれども、しかし、その決議は一体米議会でどういうことになるのか、いま向こうでも論議しておるのですから。だから、これはやはりいまお答えするのには不適当じゃないか、こう思います。
  214. 東中光雄

    ○東中委員 私は、この決議案を支持するとか支持しないとか、どの決議案を支持するとか支持しないとかということを、日本の外務省として見解を出してほしいと言っているわけではないのです。  私の言っている趣旨は、ケネディ・ハットフィールド決議案というのは、とにかく核軍備競争の完全停止、要するに現状で停止をする、で、縮小する、こういう方向の流れの一つ代表として私は言ったつもりなんです。そうじゃなくて、力の均衡論の立場で、本当に軍縮をやろうと思ったらある程度の力を持たなければだめなんだという、力の均衡論の立場軍縮を言っておったら、これは実際は軍縮じゃなくて軍拡競争、際限のない核軍拡競争になっていく。現にいまそういう方向に向かっている。日本政府はどちらの立場に立たれるのですかということをお聞きしているつもりなんです。力の均衡論の立場に立っておられたら、そういうことに結局なってしまうじゃないかということを言っておるわけであります。その点、日本政府アメリカ議会の中の個々の論議に意見を差し挟んでほしいということで言っているわけじゃございませんので、外務大臣、そういう点で、大きな筋でお伺いしたいのです。
  215. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 東西軍事力バランス、それが平和維持の上に好ましいという見解をとってきたことは事実であります。そのことは私も国会の答弁でしばしば申し上げておるところでありますが、しかしながら、さらに申し上げておることは、それができる限り低いレベルで均衡のとられることが好ましいということを申し上げ、そしてさらに、米ソ間では現に中距離核戦力削減競争の話し合いが行われておるではないか、また、最近においてはSTARTの話し合いをしようということではないか、それらの成果日本としては大いに期待をしておる、こういう立場でございます。
  216. 東中光雄

    ○東中委員 結局、軍事力均衡論に立っている限りは、これは際限のない核軍拡競争になるということを指摘をし、縮小均衡というようなことは、いまのところ停止する、禁止するというところから出発しなければ一それは交渉を実効あらしめるために、力の均衡、それでソ連の優位、アメリカはさらに優位になる、こういう論では、これは軍縮にはならないということをはっきりと申し上げておきたいわけです。  時間がありませんので、もう一点だけお聞きしておきたいのですが、いわゆるロストウ証言についてであります。一九八一年の六月二十二日の米上院外交委員会でのロストウ発言について、ことし四月二十六日の沖特で、わが党の瀬長議員がいろいろお聞きをしたわけですけれども、そのとき、「その証言それ自身が最近発表されたわけでございます。私たちとしては、まずその議事録を取り寄せて、それに基づいて態度を決定する。なぜならば、どういう文脈の中で言ったかということが重要でございます。」こういう答弁を淺尾北米局長からされておるわけですが、その会議録はすでに国会図書館にも来ております。外務省、当然持っておられると思うのでありますが、その証言によりますと、ペル上院議員の「米ソの全面核戦争において、あなたは、どのくらいの実質的度合で両国の生き残り」があると見ているのかという質問に対して、ロストウ軍備管理軍縮局長官が、その答えの中で、「生き残りの危険に関する限りでは、私は、あなたの質問への回答は、核戦争がいかに大規模なものかにかかっていると考えている。」全面核戦争ということでの質問に対して、どの程度の規模かにかかってくるのだと言って、「日本は、ともかくも、たとえどんなに我々が核攻撃をしたことを後悔しているにしても、ともかく日本は核攻撃後に生き残っただけでなく繁栄した。でも、それは、戦争の成りゆきを通じて起こった。」だから、広島、長崎で攻撃を受けても日本は生き残っただけじゃなくてさらに繁栄をしたのだ、こんなことをロストウ軍縮局長官が公式に言っているのですね。あの悲惨な世界で初めての広島、長崎への攻撃について、日本は、核攻撃後にも生き残っただけでなく繁栄しているのだ。だから、限定核戦争になっても構わぬのだという論理で弁解をしているわけですが、その辺について会議録を見て態度を決めたいというふうに答弁されておりますので、いかにどういう態度を決定されたのか、まずお伺いしたいと思います。
  217. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま東中委員が御引用になったとおりでございますけれども、一点だけ、ロストウさんが言っているところは、日本は結果的には核攻撃の後、生き延びたのみならず繁栄した。これはわれわれが当該核攻撃をどれほど遺憾に思ってもそうだったのであり、またわれわれは現に——現にというのは現在です、現にこの核攻撃をまことに遺憾に思っているという言葉があるわけでございます。  それからさらに先に進んでいただけばわかりますけれども、核の交戦が行われた場合の悲惨さというものは十分自分は承知している。それゆえにこそ、私は核戦争及びそれ以外の戦争を一切防止するという政策を進めるのに寄与したいと強く決意した次第である、こういうことを言っているわけでございます。  したがって、当時新聞に報道されたところとは大分ニュアンスが違うというのが事実でございます。そうは言いながら、日本を例に引いたということについては、われわれ日本人としては必ずしもそれは首肯できないということは事実でございます。
  218. 東中光雄

    ○東中委員 えらい持って回った話ですが、要するに、日本は生き残った、逆に繁栄しておるじゃないか、限定核戦争をやったってそういうふうになるのだから心配要らぬということなんですよ。表現の仕方としては、なるほど非常に後悔している、遺憾に思っているというようなことを言っていますよ。それはよかったとはなかなか言えぬでしょうけれども、限定核戦争構想を一方で打ち出し、それから巡航ミサイルの配備を言い、そして核戦争になったら一国の人民は生き残れるのか、規模がぐんと大きくなっているのだからというふうな質問に対して、日本を見てみなさい、広島、長崎は生き残っただけでなしに繁栄しているじゃないか。こういうことを言わせておって、しかもこれは一個人の見解じゃなくて、国会でのアメリカ政府のしかも担当の長官の証言でしょう。それもアメリカさんの言うことだからもう何でもいいのだということじゃ私は済まないと思うのですが、ひとつはっきりとした意思表示をすべきだと思いますがね。
  219. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 東中委員は、このロストウの証言をとらえて、ロストウが限定戦争を肯定しているというふうにとっておられますけれども、先ほど私が読んだところからも明らかに、あくまでも  ロストウの任務というものは核のみならず、通常戦争を防止する抑止力、それが軍縮庁長官として  の役目であるということを言っておりますし、最後のところで、大規模な紛争が発生すれば、それは欧州地域であれあるいは極東であれ、核戦争につながるのを防止するのは困難なことであるということを言っておりまして、限定戦争というものは実はできないのだ。一たん核の敷居を越えてしまえば、それは核の交戦になる、こういうことではないかというふうに私は理解しておるわけです。
  220. 東中光雄

    ○東中委員 この質問で、人類のことごとくではなく、核戦争の攻撃を受けた一つの国で生き残れるかどうかということを聞いているのですということを言うて、それに対してロストウ長官、「そうですか。核戦争でいかに多くの人が死んだかについての残酷な統計上の計算がある。ある仮定によると、推測は、一方は、一千万であるし、他方は  一億になることを予想している。しかし、それは人口の全体ではない。」だから生き残る者がおるのだ。そんなことをのうのうと国会で答弁しているのですね。そういう感覚がこわいというふうに思われないのですか。
  221. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま東中委員が御引用になったことに対して重ねてペル上院議員は、しかし、あなたはこの種の問題をずいぶん考えられたわけでしょう、こういうことを重ねて聞きまして、それで、それに対してロストウは、そのとおりずいぶん考えました、そして軍縮庁長官として自分が受ける役割り、それは核戦争その他の戦争を防止するのだということを言っているわけでございまして、ロストウは軍縮庁長官としてその任務の重さというものをここで十分自覚しているというふうに私は理解しているわけでございます。
  222. 東中光雄

    ○東中委員 その最後に言うておるところもちょっとニュアンスが違うようですね。北米局長は英語に達者なんで、私は英語さっぱりの方なんですが、どうも私もいまそういう点についてはよく考えている。「だから、核戦争や他の種の戦争を含め、阻止できる政策を実行しようと決意している。」それはそうでしょう。戦争をやるために戦争の準備をしているというのじゃないと思うのですが、「我々は、今少なくとも、ヨーロッパ戦域や、日本あるいは他の利害がからんだ場合の極東において、大規模な戦争が核に及ぶことを阻止することが困難なシステムのなかに組みこまれた核兵器をもっている。」そういう中で巡航ミサイルも配備をするという方向をとっているのだということになるのですし、それはレーガン大統領が二回にわたって言った限定核戦争構想、あり得るというその線に沿ったものじゃないですか。そういう政策を進める上で、広島や長崎は大したことない、生き残ったんだから、繁栄しているんだから。こういう論理というのは断じて許せないということを私は言っているわけです。その点をはっきり申し上げて、時間が過ぎておりますので、質問は終わりたいと思います。
  223. 中山正暉

    中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会