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1982-04-21 第96回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十一日(水曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君    理事 奥田 敬和君 理事 川田 正則君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       麻生 太郎君    北村 義和君       佐藤 一郎君    竹内 黎一君       浜田卓二郎君    松本 十郎君       山下 元利君    井上  泉君       井上 普方君    河上 民雄君       湯山  勇君    林  保夫君       野間 友一君    東中 光雄君       伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 塩田  章君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務大臣官房審         議官      宇川 秀幸君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中南米局         長       枝村 純郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      加藤 淳平君         外務大臣官房審         議官      藤田 公郎君         外務大臣官房外         務参事官    遠藤 哲也君         大蔵省主税局国         際租税課長   河原 康之君         大蔵省国際金融         局投資第二課長 朝比奈秀夫君         国税庁長官官房         企画官     西崎  毅君         農林水産省経済         局国際部国際経         済課長     副島 映一君         通商産業省貿易         局長期輸出保険         課長      岡部  敬君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ————————————— 委員の異動 四月二十日  辞任         補欠選任   浜田卓二郎君     山下 徳夫君 同日  辞任         補欠選任   山下 徳夫君     浜田卓二郎君 同月二十一日  辞任         補欠選任   小林  進君     湯山  勇君 同日  辞任         補欠選任   湯山  勇君     小林  進君     ————————————— 四月二十一日  婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関す  る条約批准促進に関する請願外一件(中路雅弘  君紹介)(第二四八九号)  世界連邦実現等に関する請願大石千八君紹  介)(第二五三〇号)  同(長田武士紹介)(第二五三一号)  同(葉梨信行紹介)(第二五三二号)  同(和田耕作紹介)(第二五三三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  投資促進及び保護に関する日本国とスリ・ラ  ンカ民主社会主義共和国との間の協定締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一二号)  所得に対する租税に関する二重課税の回避及び  脱税の防止のための日本国インドネシア共和  国との間の協定締結について承認を求めるの  件(条約第一四号)  南極地域動物相及び植物相の保存に関する法  律案内閣提出第六〇号)  原子力の平和的利用における協力のための日本  国政府オーストラリア政府との間の協定の締  結について承認を求めるの件(条約第一三号)  過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすこ  とがあると認められる通常兵器使用禁止又  は制限に関する条約締結について承認を求め  るの件(条約第一五号)  環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用  の禁止に関する条約締結について承認を求め  るの件(条約第二八号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 昭和五十六年の五月八日に出ました日米共同声明の中の第八項に言う日本周辺海域空域というのは一体どこを指すのですか。これをまずお尋ねしたいと思います。
  4. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 当委員会を含めてほかの委員会でもお答えいたしておりますが、ここに述べられております海空域については、まず第一に周辺空域、これは防衛庁の方からたびたび御答弁いたしておりますように、航空自衛隊航空侵攻等に対処するために必要な範囲を一般的に指すということでございまして、サイトレーダー探知距離あるいは要撃戦闘機行動半径などによりおのずから制約されているものである、特に一定の空域を具体的に特定して考えているわけではないということを御答弁しているわけでございます。  それから海上自衛隊については、周辺海域における海上交通の安全を確保することを目的として周辺数百海里、あるいは航路帯を設ける場合には千海里程度目標として防衛力整備を図っております。したがって、そのような防衛力の中には海上自衛隊航空機も当然含まれておりまして、そのような観点から右の海域航路帯の上空において行動する海上自衛隊航空機整備に当たっているというふうにわれわれも考えております。  それがこの共同声明に述べられております周辺海空域内容でございますけれども、もう少し申し上げれば、要するに日本防衛するために必要な防衛力整備を図るに当たって、わが国の周辺海空域における自衛権の行使に必要な防衛力についてその整備に努力しているということを一般的に述べているわけでございまして、それ以上のものではないということでございます。
  5. 土井たか子

    土井委員 この問題は、昨年の五月段階で当外務委員会は言うに及ばず、内閣委員会、さらにはことしに入って予算委員会、各委員会で取り上げられていろいろ論議をされてきたところで、およそいま局長が答えられたようなことが種々問題になったのです。  さて、そこでお尋ねをいたしますけれども、いま御答弁の中にございました周辺海域について数百海里の範囲内、特定航路帯を設定する場合には千海里程度範囲ということを日本アメリカ側に対して正式に言われたときがあったはずなんです。公式文書としてアメリカに言われたことがあったはずなんです。これを公式文書としてアメリカ側に出されたのは一体いつごろの話なんですか。
  6. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 ただいまのお尋ねの件について、公式の文書として提示したことはございませんが、日米間のたとえば安保事務レベル協議等において、わが方の防衛力整備目標としてそういうことを述べたということはございます。
  7. 土井たか子

    土井委員 局長、あなた不勉強ですね。これは内閣委員会の席で当時大河原さんが具体的にはっきり答えられていますよ。いつごろかというのまで言いましょう。四十八年の六月二十一日の内閣委員会です。四十八年六月二十日付の文書で、公式文書ではっきりアメリカ側に対して申し入れをきちっとなすっておるはずなんです。どうです局長、少し勉強してください。
  8. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 六月二十一日の内閣委員会議事録を御引用になっているかと思いますけれども、その点につきましては、その前に一昨日の本委員会におきます御要求に基づきまして、六月二十日付の文書をもって本日、米側に対して申し入れを行い、申し入れ内容は次のとおりでございますということで、そこで五月二十九、三十日に行われた日米安保事務レベル協議の際の内容確認しているわけでございます。
  9. 土井たか子

    土井委員 それは公式文書でしょう。公式文書日本側からアメリカに対して申し入れをしているんでしょうが。これは事実に間違いありませんね。どうです。
  10. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 公式文書ということがどういうことを意味されるかということでございますけれども、要するに口頭で言ったその点をメモにして出したということでございます。
  11. 土井たか子

    土井委員 文書をはっきり外務省アメリカ側に対して出されたという事実には相違ない、そうでしょうが。口頭じゃなくて文書ですね。六月二十日付できちっと出されているということについては間違いがないのです。淺尾さん、あなたいろいろはぐらかすようなことを言われない方がいいですよ。これは率直に、素直にお認めになるべきだと思うのです。文書で出されたんでしょう。これは事実ですね。
  12. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 そのとおりでございます。
  13. 土井たか子

    土井委員 このときの文書というのは、結局ここに言うところの「日本周辺海域」というのが「数百カイリないし千カイリ程度」というふうに述べられていたので国会でこれが種々論議の対象になって、千海里までが日本周辺海域になるのかというふうな質問が相次いだために、「周辺海域について」ということで特に「これは周辺海域については数百カイリの範囲内であり、また特定航路帯を設定する場合には千カイリ程度範囲で検討していきたい」ということが文書の中ではっきりしたためられたという経過があると思いますが、これも事実ですね。
  14. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 私の理解もそのとおりでございます。
  15. 土井たか子

    土井委員 そうすると、ここに言うところの、「特定航路帯を設定する場合には千カイリ程度範囲で検討していきたい」こう言われているのですが、現在特定航路帯というのは設定されているのですか、どうなんですか。
  16. 塩田章

    塩田政府委員 設定されておりません。
  17. 土井たか子

    土井委員 そうすると、いま問題にされている航路帯というのは一体いつごろから具体的に問題になってきたのですか。昨年五月、鈴木総理が訪米されて共同声明アメリカとの間で確認をされて、プレスクラブでの具体的な発言によって設定されたのだというふうに見ていいのですか。どうなんですか。
  18. 塩田章

    塩田政府委員 去年の鈴木総理プレスクラブでの演説でも、あるいは首脳会談におきましても、特定航路帯を設定したということではございません。あくまでも、特定航路帯を設ける場合には一千海里程度が守れるような防衛力整備したいということでございます。
  19. 土井たか子

    土井委員 それを設定する場合にはという表現じゃないんですね、プレスクラブの場合には。日本周辺海域数百海里、シーレーン千海里とはっきり言われているのです。設定する場合にはなんというようなものじゃないですよ。具体的に言い切られてしまっているのですから。これはその時点で、すなわち千海里の航路帯というものを日本としては認めたというふうに理解をしていいのかどうかということについて、もう一たび、これは外務省どうですか。
  20. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 千海里程度航路帯ということは、その前に、先ほど引用になりましたところでも政府としては言っておるわけでございます。したがって、アメリカ側に対してこの場で新しい航路帯特定して言ったというふうには私は考えてないわけでございます。
  21. 土井たか子

    土井委員 新しくも新しくないも、プレスクラブでは千海里の航路帯ということに対してシーレーンという表現をとって言われているのですから、その問題を、先ほど特定航路帯を設定されていないと言われておりますけれども、しかし、あのプレスクラブでの鈴木総理の具体的な発言中身は、シーレーンを千海里にすると言われているのですから、そのことをはっきり認めるということに相なっているのではないかという質問をいま私はしているので、局長、そのことについての答弁はまだいただいていないようですよ。
  22. 塩田章

    塩田政府委員 航路帯を設定するということは、有事になりまして日本海上交通保護を行う必要がある場合に、その状況に応じて航路帯を考えるということになろうかと思います。したがいまして、当然平時におきましては特定航路帯をあらかじめ設定しておくというものではございません。総理がおっしゃっておるのも、その航路帯有事のときに設けます場合に、あるいは設けました場合に、それが一千海里程度防衛ができるような防衛力整備したいということを申しておるわけでございます。
  23. 土井たか子

    土井委員 大分に、いままでといまの御答弁というのはニュアンスが違っているのです。適切な日米防衛分担についてということで、総理はワシントンのナショナルプレスクラブ昼食会出席者質問に答えて言われた中身が、日本周辺海域数百海里、海上輸送路約一千海里というものを憲法上の自衛範囲として守っていくと言明されたのですよ。そのうち、いまのような答弁にいつ変わったのですか。事実は今日までそういうふうに来ているのです、プレスクラブ中身は。防衛分担中身についてはっきり言われているのですよ。どうですか。
  24. 塩田章

    塩田政府委員 私、別に総理演説と変わったことを申しているつもりじゃございませんで、総理プレスクラブ演説でも、少なくとも日本の庭先である周辺海域を自分で守るのは当然のことで、周辺海域数百マイル及びシーレーンについては約一千マイルにつき、憲法を踏まえつつ自衛範囲内で防衛力を強化するとの政策を推進しているというふうに言っておられるわけです。  したがいまして、現在防衛力整備するに当たって、その程度のことが防衛できるように防衛力整備していきたいという方針を述べられたわけでございまして、平素から航路帯が決まっておるとか、設定されておるとかいうことを言っておるわけではございません。
  25. 土井たか子

    土井委員 これはおいおい聞いていくことにいたしましょう。すなわち、いまの首相発言というのは、共同声明の第八項に言う「日本の領域及び周辺海空域における防衛力を改善し、周辺海空域について発言されたものであるというふうに理解してよろしゅうございますね、当然のことだと思いますが。
  26. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 御承知のとおり、このプレスクラブにおける質問というものは、その質問者が、日本は輸入のために海上交通路安全確保をみずから守るのか、それともアメリカに頼るのかということに対する御答弁でございまして、それに対する総理答弁が、先ほど防衛局長が答えたとおりでございます。それと共同声明との関連のお尋ねでございますが、ナショナルプレスクラブにおける演説そのものについては、往々にして共同声明と関係した演説をされることがございますけれども、これはまさにその場の質問に対しての回答ということでございまして、直接的に共同声明の八項、それから真っすぐ引用してということまではわれわれとしては考えてないわけでございますが、総理の頭の中にはもちろん、従来から言われている周辺数百海里あるいは航路帯を設ける場合には一千海里というものがあったと私は推測しております。
  27. 土井たか子

    土井委員 それじゃ、ちょっと別の角度からこの点についてお尋ねをしてみたいと思うのです。  この周辺海空域について、日本自衛能力向上アメリカ期待しておりますか。期待しているとするなら、なぜ期待しているのかということもあわせてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  28. 塩田章

    塩田政府委員 アメリカ期待をいたしておると思います。ことしの公聴会政府側の証人の証言を聞きましても、それから今度の伊藤ワインバーガー会談におきましても、一般的ではありますけれども、いまの日本海上防衛力整備ということにつきまして期待を表明いたしております。  それでは、なぜアメリカ日本のそういったことを期待するのかということでございますけれども、アメリカ側の立場に立ってみた場合に、日本にもし有事といいますか、日本が侵略を受けたという場合には、アメリカは当然安保によって日本に対して救援する義務を負っております。救援してまいります以上、そこで、日本自衛隊共同対処行動をとるということは当然考えられるわけであります。そういうことを考えました場合に、アメリカ側から見れば、共同対処行動をとる日本自衛隊がどういう防衛力を持っておるか、どういう運用構想を持っておるかということについて関心を持つのは私は当然だろうと思います。そういう意味においてアメリカ側日本に対していろいろな対日期待表明をいたしておりますが、その中の一環として海上防衛力につきましてもいま申し上げました海上シーレーンの方につきましての能力についてアメリカ側期待をしておる、こういうことでございます。
  29. 土井たか子

    土井委員 少しその中身についてもお尋ねを進めたい部面が出てくるのですが、少し概念を整理する意味で先にちょっと進みたいと思います。それは、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国ですね、中東地域、これは安保条約極東範囲に入りますか、いかがでございますか。
  30. 栗山尚一

    栗山政府委員 極東範囲に関する統一見解で累次申し上げているとおりでございますので、北朝鮮については極東範囲に入りません。中東につきましても従来、累次御質問がございまして、中東はもちろん極東範囲には入りません。
  31. 土井たか子

    土井委員 北朝鮮中東地域というのは、安保条約極東範囲に入らないというふうにきっちり言い切れるわけですね。それはおかしいのじゃありませんか。いままでそういう答弁は言われてきておりませんよ。答弁中身を見ますと、極東範囲についてはフィリピン以北ということに一応なっておりますけれども、しかし、極東地域内に脅威を与えるような問題が極東範囲外に、その周辺に起こった場合、この根源をなくするために行動する範囲というものは必ずしも極東地域内と限定する必要はないというのが政府統一見解でございますと言われておるのです。これはよく御承知のとおりだと思うのです。椎名さんの答弁です。でありますから、当時はベトナムの問題を取り上げての質問であったのに答えて、ベトナムフィリピン以北でないけれども、しかし周辺である、しかもその周辺に起こった事実が極東の平和と安全に至大の影響を持つものである。こういうことだから、ベトナムにおける行動はいわゆる安保体制の枠内における行動である。安保条約のたてまえから、これは当然日本がやる範囲に入っている、こう答えられているのですが、どうですか、したがって。いまの私の質問北朝鮮中東地域安保条約極東範囲でございますかと言ったら、範囲でございませんときっぱり言い切れないのですよ。きっぱり言い切る答弁は従来の統一見解をひっくり返した答弁にならざるを得ないのですが、あなたはひっくり返しますか、いままでの答弁を。
  32. 栗山尚一

    栗山政府委員 先ほど先生の御質問が、極東範囲北朝鮮中東が入るかという御質問でございましたので、入らないというふうにお答え申し上げたわけでございまして、先生よく御承知政府統一見解極東というものは「別に地理学力上正確に画定されたものではない。しかし、日米力両国が、条約にいうとおり、共通関心をもっているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。この意味で実際問題として両国共通関心の的となる極東区域は、この条約に関する限り、在日米軍日本の施設及び区域使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。かかる区域は、大体において、フィリッピン以北並びに日本及びその周辺区域であって、韓国及び台湾地域もこれに含まれている。」この統一見解は従来から一貫しておりまして変わりはございません。こういう意味におきまして、北朝鮮中東というのは極東範囲には入らないということを御答弁申し上げた次第でございます。
  33. 土井たか子

    土井委員 ただ、しかし、極東範囲ということについては、いまの御答弁の中でも言われているとおりに、極東周辺ということについての認識をどのように持つかというのはケース・バイ・ケースの問題になるのです。範囲は一定していないというかっこうになると思うのですがね。この点はそのように答弁をされてきているわけですから、そうして外務省の伊達さんもこのことに対しては答弁をそのようにされてきたわけですから、それはそのようにお認めになるでしょう。局長どうです、首ばかり振ってないで口で答えてください。
  34. 栗山尚一

    栗山政府委員 先ほど私が申し上げました統一見解にある、極東の平和と安全を守るために米軍行動する範囲は必ずしもいま申し上げました極東範囲に限られない、その周辺に及ぶことがあり得る、これは従来から政府が申し上げているとおりでございまして、私の先ほど来の答弁も別にその点を変えるというようなことで申し上げたものではございません。
  35. 土井たか子

    土井委員 極東有事のいわゆる極東安保条約極東というのは同じ概念と考えてよいかどうかという質問を先日予算委員会分科会の席で私はいたしました。そのとき、きょうも御出席塩田局長は、外務省が本来は考えるべき問題ではあるけれども、基本的に同じだというお答えをお出しになったわけであります。つまり極東有事極東安保条約極東は同じに考えるというふうに御答弁をされたわけであります。それは確認をいたしますが、塩田さん、そのとおりでしたね。
  36. 塩田章

    塩田政府委員 そういうお答えをいたしました。
  37. 土井たか子

    土井委員 ところで、外務省はこれをどう考えていらっしゃいますか。
  38. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 いわゆる極東有事における極東安保条約極東とは同じ範囲というふうに考えております。
  39. 土井たか子

    土井委員 その節、日本にとって平時の中には安保条約六条で言う極東有事事態は入っているという答弁塩田局長はされたのですけれども、もう少しその間の中身についての説明をきょうはお伺いしたいと思うのです。  日本について言うならば、日本平時の中に安保条約第六条で言う極東有事事態も入っているという御答弁だったのです。これはどういうふうにお考えになってあのような御答弁をお出しになったのか、事情を少しここで説明をしてくださいませんか。
  40. 塩田章

    塩田政府委員 私がお答えしたのは安保六条の事態日本にとって有事事態ではないということを申し上げたつもりでございます。
  41. 土井たか子

    土井委員 安保条約六条の場合は日本にとって有事の場合ではないというのは、もう少し説明をするとするならば、具体的にはどういうことをおっしゃっておるのですか。
  42. 塩田章

    塩田政府委員 そういうことになりますと、日本にとって有事とは何ぞや、こういうことになるわけでございますけれども、この有事ということも厳密な法律的定義があるわけではございませんけれども、われわれが日本にとっての有事といいます場合には、いままでお答えしてまいりましたのは、自衛隊法七十六条によりますところの防衛出動が下令された、あるいは下令されるというような事態日本にとっての有事というふうに申しております。  そういう点からいきますと、そうでない事態であれば、極東でどういうことが起こっていようと日本にとってまだ有事ではないという意味で私は申し上げてまいったつもりであります。
  43. 土井たか子

    土井委員 そうすると、いまの塩田局長の御答弁でも、もうひとつはっきりした御答弁ではないのですが、自衛隊法の七十六条が発動されない限りはいわゆる平時というふうに考えるということになるんですか、どうなんですか、日本にとって。
  44. 塩田章

    塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、この有事というのは一体何ぞやということを、まず定義を決めてかからなければ議論にならないのかもしれません。そこで私が申し上げているのは、私のといいますか従来防衛庁国会等お答えしてまいりました場合の有事とはどういうものかということで申し上げたつもりでございます。
  45. 土井たか子

    土井委員 有事というのは、すなわち日本が攻撃されるときを指すわけですね。攻撃されるとどういうふうな対処をなさるんですか、その節。
  46. 塩田章

    塩田政府委員 日本が攻撃を受けたという場合に、それが日本に対する組織的な計画的な侵略であるというふうに判断されるかどうか、これがまずあるだろうと思います。さらにまた、自衛権の行使の三要件に該当するかどうか。つまり、急迫不正な侵害であるかとか、他にこれに対処する手段があるかないかとか、そういったようなことあるいは第三番目の、相手方の攻撃以上の対処をすべきでないという、これは自衛権行使の三要素というふうに普通言われておりますが、そういったことを考えて、日本としましては防衛出動を下令するかどうかという判断を下すことになるだろうと思います。それは、当然御承知のように国防会議を経まして国会の御承認を得て、もちろん急を要する場合にそうでない例外規定もございますけれども、国防会議を経て国会の御承認を得て防衛出動が下令される、こういう手続になろうかと思います。
  47. 土井たか子

    土井委員 すなわちその防衛出動というのは自衛隊法七十六条の中身が発動されるというかっこうになるわけですね。そうでしょう。どうです。
  48. 塩田章

    塩田政府委員 そういうことでございます。
  49. 土井たか子

    土井委員 それはわかりました。  ところで、安保条約によって米軍日本の基地から出動するまたは軍隊の移動が行われる、こういう場合は日本はどうするんですか。
  50. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 いまの御質問安保条約五条の事態ではなくて、安保条約六条のことについての御質問であれば、これは日本として安保条約の六条によって米軍に対して施設、区域を提供しております。そこで、アメリカ側がその日本の施設、区域から戦闘作戦行動に出る場合には、これは事前協議の対象になるわけであります。そうでなくて、単なる移動ということであれば、これは米軍として日本の施設、区域から外に移動していくこと、これは自由である、こういうのが政府の立場でございます。
  51. 土井たか子

    土井委員 いま六条という条文だけをお挙げになりましたけれども、そうでなくて、勝手に米軍日本の施設、区域内から移動していくというのは、これは六条の対象外であるという意味も含めていまの御答弁はあったと思うのですが、昨年の末に、在日米軍司令官のドネリー空軍中将が横田基地内でいろいろと日本に対して要求をされる発言を公にいたしております。この中身を見ますと、これは問題点が非常にあると私は思うので、そういうことは具体的に言わないでおいて、少し先に問題を進めてみたいと思うのです。  いま六条による場合を局長は答えられ、さらに米軍が勝手に日本の軍事基地内から移動するというふうな場合もあわせて、これは六条外として御答弁になっているんですが、ドネリー空軍中将の発言の中には、沖繩駐屯の米海兵隊が中東有事で緊急展開するのは石油資源に依存する日本防衛に役立つというふうなことをちょっと発言をされている。緊急展開というのでも、これは防衛出動ということでなしに、勝手に軍隊が日本の軍事基地から移動するという形態においてなされる場合もあると思うのです。  さて、そういう問題も含めて極東有事研究ということをいま進められているわけですけれども、極東有事研究というのは、日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米協力のあり方についてどういうふうに対処するか、あらかじめ研究することを指して極東有事研究ということになると思うけれども、この点はいかがでございますか。そのように理解していいんでしょう。
  52. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 ガイドラインの三項に明らかに書いてあるとおりでございまして、「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合に日本米軍に対して行う便宜供与のあり方」について研究するのが三項の規定でございます。
  53. 土井たか子

    土井委員 そうして、いまそのとおりに極東有事研究をお進めになっているというふうに理解していいわけですね。そのとおりですね。
  54. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 いま土井委員極東有事というふうに言われました。また、そういう言葉がしばしば使われておりますが、このガイドラインに書いてあるのは、正確に言えば私が先ほど申し述べたことでございます。  その研究をしているのではないか、こういうことでございますが、一月の二十一日に初会合を開いたということでございます。
  55. 土井たか子

    土井委員 そういうコメントは不必要だと思うのですね。これはちゃんとガイドラインの中にも書いてある。「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」というのが三項でテーマになっているわけですから、このことに対しての研究をいま日米間で進められているということなんですよね。そのとおりでしょう。
  56. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 そのとおりでございます。
  57. 土井たか子

    土井委員 さて、中東地域有事になる、そうしてその有事事態つまり紛争が、日本の安全または極東における国際の平和及び安全に重大な影響があるという場合、安保条約によってもちろん米軍が出動するというかっこうになるわけです。そういうことになってくると、この場合の中東有事の際、日本のとるべき行動というのをどうするかということを研究することにもなると思うけれども、いかがでございますか。
  58. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 第三項の研究の、そのよって起きる、日本に与える影響が起きる地域特定していないということは事実でございます。しかしそこで述べてありますように、「極東における事態」ということでございますので、おのずから地域というものは制限されてくるのではないかと思います。
  59. 土井たか子

    土井委員 だから先ほど極東周辺についての質問をした意味があるのです。よろしゅうございますか。日本の安全または極東にその紛争が重大な平和を脅かす、安全を脅かすという状況になれば、これすなわち、やはり安保条約によって米軍行動する、すなわちこれは極東周辺の対処の問題になってくるというかっこうになるだろうと思うのです。したがってそういうことからすれば、いま研究対象にはなりませんと否定をされていないわけですから、しかもなおかつ、この日本以外の極東における範囲というものを限定していないという御答弁をなすったわけですから、当然これは有事研究の対象になっても無理はない、有事研究の対象にするということがあっても不思議はない、こう思われますが、そのとおりですね。
  60. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 これからどういうことをあるいはどういう地域を研究の対象にするかというお尋ねでございますが、いま、まさに研究に着手したばかりでございまして、今後この研究・協議の内容というものがどういうふうになっていくかということをここで申し上げる段階にはまだないわけでございます。ただ、加えさせていただけば、ここで言っているのは極東における事態日本の安全に影響があるということでございまして、それは先ほど来の条約局長あるいは私の御答弁から、おのずからそこにおいて研究・協議の対象になる範囲というものは限られてくるであろう、こういうふうに考えているわけでございますが、これはまだいまの段階では、とにかく着手したばかりということで、それ以上のことをここで申し上げるのはやや時期尚早であるというふうに考えております。
  61. 土井たか子

    土井委員 時期尚早とおっしゃいますが、そういうことに対しての研究をやり始めたときにはもう遅いのですよ。よろしゅうございますか。有事研究と称しながら極東有事の問題に対してはどういう研究をやるかというふうなことがはっきり限定をされ、国民にもわかるようにはっきり言われなければこれは困るのです。無限定であって、どこまでもエスカレートするくらい危険な話はないのですよ。まだそれは言う段階でないなどとおっしゃるけれども、すでに研究はなさりつつあるわけです。したがいまして、いまそういうことに対してお答えができないような研究なら初めからやめていただきたい、そのように私は言いたいと思うのです。どうです、局長
  62. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 この六条自体の研究を含めてガイドラインの研究についてはいろいろな枠組みがございます。それは土井委員よく御承知のとおりでございます。まず第一に憲法については触れない、あるいは非核三原則についても触れない、こういうことでございまして、さらに便宜供与のあり方は安保条約、その関連取り決め、その他の日米間の関係取り決め及び日本の関係法令の範囲内において一般的に研究しようという歯どめがかかっておるわけでございます。さらに、ここで研究・協議されたものは日米両国政府の行政、予算、立法上の義務を拘束するものではないということでございます。
  63. 土井たか子

    土井委員 そういうことを言われますけれども、このシーレーンの問題にいたしましても、首相のプレスクラブでの記者会見の席での御発言から後、アメリカ側では大統領自身が、アメリカのスイング作戦に呼応して日本としてはシーレーン防衛に対して役割り分担というものを持ってもらうのであるという発言がありますよ。したがいまして、そういうことからすれば、いま幾たび繰り返して局長はそういう御答弁をされようとも、その辺はまことにあいまいもことしていて、それ自身が玉虫色というよりも危険区域であると私は申し上げたいのです。アメリカ側のスイング作戦に対して日本のでき得る範囲というものを研究することになるのであるか、ならないのであるか、この点はどうなのですか。
  64. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まずここで研究・協議と言うものは、日本アメリカが直接的に軍事的な協力関係に立つわけではないわけでございます。それから、アメリカ側から見れば、日本極東の平和と安定のために役割り分担の一つの機能を果たしておれば、それ自身はアメリカの軍事力、現在日本防衛に割いている軍事力をほかの地域に割けるということは事実でございます。
  65. 土井たか子

    土井委員 そうすると、いまの御発言からすると、アメリカ側のスイング作戦に対して日本がどういうふうなことができるかという範囲も研究する対象に当然なってくるというふうになってまいります。そのように理解いたしますよ。よろしゅうございますね。
  66. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 いま土井委員の言われたことといわゆるガイドライン三項の研究とはおのずから性格が違うものでございまして、ガイドライン三項の研究というものは、あくまでも安保条約その他関連取り決めの枠内で便宜供与のあり方、それは日米が直接軍事的協力に立たない便宜供与のあり方を研究するものでございます。他方、土井委員の言われているスイング作戦と日本との関係、これはわが方の自衛力の整備の結果としてアメリカ側が余力を持つということになろうというのが先ほどの私のお答えでございます。
  67. 土井たか子

    土井委員 そうすると、いまの有事研究の行われている中身はあくまでガイドラインの三項という便宜供与に限定をした研究であって、それとは全く別に、日本自衛力の整備の上で米軍のスイング作戦に呼応してどういうふうなことをなし得るかということは別個研究されているというふうに理解してよろしゅうございますか。
  68. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 別個に研究しているかどうかという問題でなくて、私が申し上げたい点は、アメリカ防衛力あるいはアメリカの軍事力が手薄になっているところを、日本としては、日本周辺自衛力の整備の結果として、そういうことになるということでございます。
  69. 土井たか子

    土井委員 そうすると、これは結果としてそうなるということを大変力説されるのですが、首相は昨年の五月にプレスクラブ日本の庭先を守ると言われているのですね。日本のために庭先を守るということは、同時に、いまの御発言からすると、アメリカ側のスイング作戦のためにシーレーンを守るという意味にもなってくると思うのですが、これは論理の帰結からすると当然そうなると思うのです。どうですか、その点は。  後ろで首を横に振る人、やめなさい、あなた。
  70. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まず私から最初御答弁して、あと防衛の問題があれば防衛局長から答弁していただきますが、私の考えているところは、わが方の自衛整備というものは、従来から国会でたびたび御答弁しておりますように、わが国の防衛のために行っているわけでございます。その結果として、防衛力整備されれば、それは現在薄くなっているアメリカの抑止力をより向上させるであろう、そういうことを言いたいわけであります。
  71. 土井たか子

    土井委員 ここにある文書があるのですが、幾ら局長がそういうことをおっしゃっても、この中身で言っていることは非常に問題が多いと思うのです。  第二次大戦終了時約九百隻もの駆逐艦を有していたアメリカの海軍がいまどれくらいの駆逐艦やフリゲートを保有しているかというと、わずか百四十隻近くにしかすぎない。これでは現在持っている十三隻の空母の護衛や本土沿岸のパトロールだけで手いっぱいだ。アメリカの海軍が直接護衛できるのは、アメリカ本土とヨーロッパの間、アメリカ本土とハワイの間、そうしてアメリカ本土とアラスカの間、それだけだ。アメリカ海軍は多数の空母を持っているけれども、全般的な制海権というものは確保していると一応理屈の上で言えても、とても日本商船の護衛までは手が回らない。これが現実の姿だと言われているのです。  そうして昨日来これは新聞報道でも出ているわけでありますけれども、来年の、八三年度のアメリカの予算の分析報告書の中で、かつて国防総省の顧問として国防報告をまとめてこられたカウフマン教授が、同盟国の協力を前提とした対ソ戦略が考えられているということを強く示唆して、特に極東の例を挙げて、日本の場合を指して「第七艦隊や航路帯を守るのが目的で、その実施のために日本の協力が要請されている。」こうなっているのですよ。航路帯のみならず第七艦隊を守るという目的で日本の協力が要請されている。したがって、それからすると従来対潜哨戒機P3Cや護衛艦の増強を日本に対して要求してきたばかりでなくて、今度はF15などの迎撃戦闘機などの大幅強化というものがいよいよ必要だということをここで述べられながら要請をするというかっこうになってきているわけでありますが、こうなってくると、アメリカの世界戦略に日本はどう対処するかということをいま問題にし、自然、どれほど別枠であるということを言われようとも有事研究の中身としてこのことを研究せざるを得ない状況になってきていると思われるわけでありますけれども、どうですか。
  72. 塩田章

    塩田政府委員 いまお述べになりましたアメリカの海軍力でもってどの程度の海上防衛ができるかとかいまのカウフマン教授の最近の発言等新聞報道等は私も承知いたしておりますが、同時にアメリカの今度の公聴会における政府側証人の発言にもあるいはまた八三年の米海軍軍事態勢報告にもアメリカ海軍の基本的な任務としまして自由諸国のための海上防衛ということを言っておりますし、また公聴会の証言ではインド洋、南太平洋等のシーレーン防衛というのはアメリカの役割りであるということを言っておりまして、私どもはアメリカの考え方がそういう点で変わっておるとは思っておりません。アメリカは同盟国である日本のみならずヨーロッパの同盟国に対しても同じでしょうけれども、アメリカとしましては同盟国に対して確かにいろいろ役割り分担を求めております。それは事実でございますが、それに対する受けとめ方としまして、日本がかねてから言っておりますところの日本周辺数百海里、航路帯を設ける場合にあっては約一千海里はみずから守れるように防衛力整備していくということ、去年総理もおっしゃったこと、それをアメリカはまさに日本に対して期待しておるわけでございまして、それは先生のお言葉によればアメリカの戦略体制の中に入れられたのじゃないかというような御意見も聞くわけですけれども、そうではなくて、日本自身がかねてから日本防衛のために考え、かつ言っておることでございまして、そういう意味で私どもは従来から日本の立場は何ら変わっていないというふうに考えておるわけであります。
  73. 土井たか子

    土井委員 日本がみずから自国防衛のために従来から考えている線ということをおっしゃいますけれども、日本が受け持つ防空作戦の中にアメリカの艦隊の艦艇をバックファイアから守るというふうな構想は含まれているのですか、どうなんですか。これは役割り分担ということで同盟国に対してアメリカ側からの要求があることは事実である。そのとおりなんです。アメリカからすると同盟国たる日本に対して要求を持ってこられる中身としてこれは具体化されているであろうと私は思いますけれども、どうなんですか。
  74. 塩田章

    塩田政府委員 私どもが従来からアメリカの国防省関係者といろいろディスカッションをしてまいっておりますけれども、私どもが承知する限りにおきまして、先ほど申し上げました日本防衛目標防衛力整備目標についてアメリカ理解を示しておるということでございまして、具体的にアメリカの艦隊を守ってくれとかそういうようなことはアメリカは言っておるわけではございません。その点について私どもは何らアメリカの方針が変わったとかそういうようなことは聞いておりませんし、私どもとしては従来から日本の立場を繰り返し述べておるわけであります。
  75. 土井たか子

    土井委員 従来から日本の立場は変わらないとおっしゃいますけれども、防衛庁長官の発言が最近怪しいですよ。防衛大綱ではもうとてもシーレーンは守り切れないとか周辺海域を守るわけにいかないとか、そうしてやがてはそれを守ることのために日本の法制度を改変しなければならないとか、場合によったらこれは安保条約に対して交換公文を新たに出さなければならぬとかそういう発言すらあるわけでありますが、これはどういうわけですか。
  76. 塩田章

    塩田政府委員 防衛庁長官が最近の国会お答えの中で、「防衛計画の大綱」が達成したとした場合にシーレーン防衛ができるのか、こういう御質問に対しまして、それが一〇〇%できるのかというお尋ねであるとすればそれはむずかしいという意味のことを、そういう趣旨のことをお答えしたことは事実であります。これは私もかねてからいろいろな機会に申しておるわけでございますが、そのシーレーン防衛ということを、わが国の海上自衛力が整備されまして仮に「防衛計画の大綱」の水準に到達したとした場合でも一体一〇〇%守れるのかという意味においてお尋ねであるとすれば、つまりわが国の船は一隻も沈まずにすべて相手方の潜水艦をやっつけられるというような意味で完璧に守れるのかというお尋ねであるとすれば、それは困難なことであろうということはかねてからお答えをいたしております。また、逆にわが国の船がどんどん沈められて相手方に対して一矢も報いることができないかと言われると、それはそんなこともないだろう。したがいまして、結局そういうことは一体一〇〇%とかあるいは何十%とかというふうに数字的にあらわすことのできないことであろう。そこで私たちが言えますことは、現在の自衛隊能力でもある程度のことはもちろんできます。しかし、それが「防衛計画の大綱」の線に到達すれば大幅に能力が向上するということが言えるであろう、かつそれを期待して私どもは整備に努めておるということを申し上げておるわけであります。そういう趣旨で防衛庁長官もおっしゃったわけでございます。
  77. 土井たか子

    土井委員 それはシーレーンを完全に守ろうなんて、どれほど防備を持ったとしてもできることではないと思うのです。だからいまの御答弁というのはある意味じゃナンセンスな御答弁です。  時間の方も気になりますから、それじゃ、この夏に事務レベルの会議日米間で行われますね。予定されているはずであります。防衛庁長官が夏に行かれるのか秋に行かれるのか、その点は九月という線も出ているようでありますけれども、事務レベルがこの夏行われるはずであります。問題は、その事務レベルの段階でどういうことが話し合われるのかというのは実は大変大きなことになってくると思うのです。すでにアメリカ側から具体的にこのシーレーンに対しての日本の役割り分担や海域に対しての役割り分担というものが線ではなくて面に及ぶ、そうしてわけても第七艦隊をむしろ守るために日本の役割り分担こそあるのであるという方向で要求が出てくるということは必至だというふうな報道もなされております。日本側としてはこの事務レベル会議にどういう姿勢で臨まれますか。
  78. 塩田章

    塩田政府委員 例年やっておりますハワイにおきます事務レベル協議は、いまのところこの夏に行われるだろうと思っておりますが、それは何回も申し上げていることでございますが、元来この協議はあくまでも事務レベルの協議でございまして、議題を決めて特定のことを決めてくるといった性質のものではなくて、いわば日米の関係者が集まってフリーディスカッションをしようということが主題でございます。したがいまして、そこでどういうことを決めるということではございません。また現在のところ、そこでどういうことが話題になるかといったようなこともまだ決めておりません。そういう意味では、いまお尋ねの点につきましてどういうことが議論になりどういうふうな話し合いになるだろうということをまだ申し上げられる段階ではございませんが、この前ワインバーガー長官がお見えになったときに、一般的な期待表明をされたときに、いずれハワイのときにはもっと具体的な話をしましょうという趣旨の話があったことは事実でございますから、まあディスカッションの中でアメリカとしてはアメリカのいろいろ考えていることを言うだろうと思います。それに対して日本のわれわれのスタンスはどうかということでございますが、これはもうかねてから申し上げておりますように「防衛計画の大綱」の線に早く到達したいというわれわれの現在の防衛力整備の努力を表明しておるわけでございますが、これを繰り返し強調するというのが私たちの基本的なスタンスでございます。  いずれにしましても、フリーディスカッションでございますからどういうことが議論になるか、そういったことはまだわかりませんけれども、ディスカッション自体は大いにやってまいりたいと思いますが、基本的スタンスはそういうことでございます。
  79. 土井たか子

    土井委員 なおかつこの問題については大事な問題をお尋ねしたいと思うのですが、差し迫った事柄について二、三さらに日韓経済協力の問題でお尋ねをしたいんです。  報道によりますと、外務省、大蔵省間で四十億ドル韓国に提示するということが合意されたという旨があるのですが、これは事実ですか。
  80. 木内昭胤

    ○木内政府委員 そのような事実はございませんで、現在も大蔵省、通産省、経企庁、それに外務省の四省庁で相談中でございます。
  81. 土井たか子

    土井委員 そうすると、またこれは憶測記事というかデマ記事である趣旨を局長は言われているわけであります。大蔵省御出席いただいていると思いますが、財政当局としての大蔵省としてはそれなりの基本方針を持ってこの問題に臨まれていると思うのですけれども、どういう基本方針をお持ちになっていらっしゃいますか。そうして外務省との間で調整をどういうふうになすっていますか。
  82. 朝比奈秀夫

    ○朝比奈説明員 私ども非常に厳しい財政を担当しておりますので、韓国に対する経済協力につきましてもわが国の経済協力の基本方針のもとにできる範囲内で協力を行っていくということで検討しております。  先生の御質問のそのほかどういう基本原則かということでございますが、財政事情のほかに、私どもといたしましては他の円借対象国とのバランスとかODAが低所得国を中心に供与されるというような原則とか、あるいはよく新聞でも報道されておりますが、年次ベースで具体的プロジェクトの積み上げにより協力するというようなことを考えておるわけでございます。また韓国側からいろいろのプロジェクトの要請がございますが、そういったものにつきましても収益性の高いものにつきましては輸銀の資金とか民間資金とか、そういったものをもってやらしていただくというようなことが原則かと考えております。いずれにいたしましても、隣国の困難な経済事情を助けるためにできるだけ早く私どもとしては結論が出るように努力いたしたいと思っております。
  83. 土井たか子

    土井委員 ところで、かつて大蔵大臣はODA倍増というなら過去五年間の対韓経済協力実績をもとに計算したら八億ドルが上限だと言われたんですね。それが十億ドルになり、今回は報道によると十三億ドルを認めたというかっこうに大蔵省としてはなるわけなんですが、対外援助というのは総枠で問題にすることは本来できないんでしょう。積み上げ方式でなきやならないんじゃないですか。まず総枠を提示して、それから後でどういうことか中身を考えようなんということは許されないはずであると思いますが、いかがですか。
  84. 朝比奈秀夫

    ○朝比奈説明員 先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもといたしましては年次ベースでありかつ積み上げであるという原則は崩さないということで考えております。
  85. 土井たか子

    土井委員 この辺外務省としては、何だか総枠を提示することに躍起になっていらっしゃる感がなきにしもあらずです。それが非常にはっきりしてきているというふうに考えられるわけであります。  先日私が質問した当日に玉虫色答弁をアジア局長はされて、その日のうちに、後に中間回答と称せられるものを韓国側に提示された。ところが、これは韓国側もこれを拒否するという回答を持ってこられて、またいま韓国側の拒否回答を受けてもう一度再検討するというかっこうで事を運ばれている段階であるとわれわれは承知しているわけです。そうなりますと、この中間回答というのは第一次案、第二次案、第三次案、第四次案、ずっとあるのですか。これから何回でもこういうことを繰り返し繰り返し向こうに提示しても、韓国側は不満と言う。じゃもう一回考え直してみよう、六十億ドルに近づける努力をしよう、また提示する、また不満と言われる、また六十億ドルに近づける努力をしよう、こういうかっこうで事は進むと考えていいのですか。こんなむちゃな話はありませんよ、どうですか。
  86. 木内昭胤

    ○木内政府委員 わが国の経済協力の規模というものにはおのずから限界があるわけでございまして、先ほど大蔵省の方からも御答弁がありましたとおり、各国とのバランスというような面も考えて慎重に対応しなければならないということから見ますと、際限なく交渉がエスカレートするということはとうてい考えられないと思います。
  87. 土井たか子

    土井委員 そうすると、今回何だか関係省庁と取りまとめを急いでおられるようでありますが、新聞によるところの四十億ドルというのは、まだそんなことは考えていないという先ほど来の御答弁でした。このことをまとめて、いずれの形にしろ韓国側に提示されるのでありましょうが、これではまだ韓国側が気に入らないと言われるときは、これでこの問題は打ち切りになるのですか、際限なくしないとおっしゃるのですから。どういうことなのです。
  88. 木内昭胤

    ○木内政府委員 数字的に申し上げますと先ほど答弁申し上げたとおり、際限なくこれが続いていく交渉であるというふうには私ども考えておりません。ただ私どもとしては、できるだけ誠意を持って努力を重ねていくということかと存じます。
  89. 土井たか子

    土井委員 それは大体この経済協力と申しましても、貸す側は日本なんですよ、借りる側は韓国なんです。これをお互いが歩み寄るというのも、どうも本来おかしな話なんですね。貸す側が貸してくださいという側に対していろいろ遠慮をして色をつける、さらに色をつける。これでよろしゅうございますか、これでよろしゅうございますかというかっこうなんというのは、まさに主客転倒もはなはだしい問題だと思うのですよ。これに対しては際限なくやらない、常識的な線だとおっしゃいますが、それではお尋ねします。  それをどの辺に目安をつけてやろうというお考えかを承って、最後に大事なことが一つございますから、この質問をして私はきょうは終えたいと思います。その目安を言ってくださいよ。
  90. 木内昭胤

    ○木内政府委員 できるだけ早く決着させたいと思っております。
  91. 土井たか子

    土井委員 まあアジア局長はそういう答弁で済むとお思いになっていたら、そうはいかないであろうと私は思います。対韓借款の問題、これは非常にいま重大な段階だと言わなければならないのですが、常に韓国との間は緊密な関係にあるとか、隣国であるから特に配慮しなければならないということを繰り返し繰り返し外務省はおっしゃるのです。そういう友好関係を築く意味での経済援助ということになると、やはりお互いの国民が理解し合う、すなわち人権ということに対して大切にする、人権問題についてこの取り扱いを大事にしていくというのがその前提条件になると思うのです。  そこで、外務大臣よく聞いてください。これはいままでにずっといきさつがありまして、徐勝、徐俊植という二人のきょうだいが一九七一年に、当時は朴政権下でございましたが、陸軍保安司令部によって逮捕されて、兄の方の徐勝氏は無期懲役で大邦の矯導所において服役中なのです。弟の方の徐俊植氏は懲役七年の刑期を満了したにもかかわらず現在も拘束され続けているというかっこうなのです。このことについては御承知でしょうね。御承知かどうか、これをまずお尋ねします。
  92. 木内昭胤

    ○木内政府委員 徐きょうだいが依然として韓国内にとどめ置かれておるということは私ども承知いたしております。
  93. 土井たか子

    土井委員 さて外務大臣、いままでこの外務委員会におきまして、昭和五十三年五月段階では十日と二十六日の二回、六月に入って十四日、さらに昭和五十五年になって二月の十四日、五月十五日とたびたびこの件を取り上げて問題にしてきたのです。その都度園田外務大臣、大来外務大臣、各外務大臣から、これは人道上の問題だ、内政干渉にわたらない範囲でこの二人のきょうだいの処遇の善処方を韓国に対して申し入れしたい、そしてこちらの関心を相手に伝えたい、在日韓国人についてはこれは永住権を持っていらっしゃる方々ですから、したがって日本社会と密接な関係が現在あるので、日本政府としてもその処遇について無関心でおられないということをはっきり答えられているのです。とりわけ弟さんの方の徐俊植氏は一九七八年にすでに刑期が満了しておりまして、それにもかかわらず社会安全法の保安監護処分の適用を受けて現在なお監護所に拘束されているわけでありますが、これは実質的には懲役刑と大差がないのです。この処分は二年ごとに更新されることになっておりまして、目の前の五月二十七日にまたしても処分が更新されるのではないか、やがてそのときがやってくるわけでございますから、更新されるかされないかということを非常に憂慮する声が日本国内でもあちこちで上がっているのです。先日は、このきょうだいがかつて住まわれ、家族の方々が住んでおられる京都の市議会で徐きょうだい釈放の意見書が採択されるということでもございますし、また有識者の人たちがアピールを出されるということでもございますし、国会の衆参両院がこれに対して百名をはるかに上回る数多くの署名をされているという実態もございます。  そこで外務大臣に申し上げたいのは、過去に七年の刑を宣告された人が今日まですでに十一年にもわたって身柄を拘束されているわけでございますから、五月二十七日に処分が更新されればさらに二年延びて十三年の拘束ということになるのですね。韓国の国内法の問題もあろうとは思いますけれども、この問題については、純然たる人道上の問題として政府としても韓国に対しての申し入れを一層やっていただきたいと思うわけでありますが、大臣いかがでございますか。
  94. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 本委員会におきましてもしばしば御質問を受け、その都度善処方を申し上げておるのでありますが、いま改めて五月二十七日を控えての日本政府の姿勢を問われておるわけでございます。私といたしましては、この経緯にかんがみまして、日本政府としてやり得ることにつきましてはでき得る限り努力をしてみたい。お話しのように韓国の国内関係としてどういうことになっておるのか私に判断がつきませんけれども、しばしば問題になっておることでございますので、私としてもできるだけのことをいたしたい、こう思います。
  95. 土井たか子

    土井委員 これで質問を終わりますが、最後にアジア局長先ほど、日韓経済援助の問題は当分の目安は何ですかと言ったら、できる限り早期に解決したい、こういう話でしたが、できる限り早期というのはいつを指しておっしゃっているのですか。
  96. 木内昭胤

    ○木内政府委員 わが方内部の問題としましては関係省庁との調整も要するわけでございますし、また先方との考えの開きというものが非常にあるわけでございますので、その辺の調整にも時間を要するわけでございますが、これを着実にやりまして、その上でできるだけ早くという希望でございます。
  97. 土井たか子

    土井委員 そうすると調整ができない場合はどうなるのです。相手方の要求は相変わらず六十億ドル、日本側はとてもそれはできないとしていままで苦労に苦労を重ねてこられたアジア局長であろうと私は思うのですが、調整ができて早期に解決ということを言われる。そんなのは外務省の方なら恐らくだれでもが考えることですよ、私は考えませんが。この調整ができなかった場合はどうなるのです。
  98. 木内昭胤

    ○木内政府委員 わが方としましては調整に手間取っておりますが、調整を図ることは十分可能だと信じております。問題は相手方との関係でございますが、この点につきましては交渉の現段階でどのような進展になるか、これはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  99. 土井たか子

    土井委員 いつでもそういう答弁をしながらその日のうちに国会答弁に反してささっと事実を先行されるというのが常套手段でありまして、私はこれくらい疑惑に富んだ問題はないと思うのです。国民の目をごまかし過ぎますよ。  午後からもこの問題に関係する質問が続行しますから、午前中の質問はひとまずこれで終えたいと思います。
  100. 中山正暉

    中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後一時五分開議
  101. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。高沢寅男君。
  102. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は初めに、午前中土井委員から大臣に御質問いたしました日韓の経済協力、このことを付随的にひとつお尋ねをして、それからまた別なテーマに移ってまいりたいと思いますが、よろしいですか。アジア局長いませんな。——では、その問題は後にしましょう。  では、先に別なことからいたしましょう。  外務大臣も御承知かと思いますが、きのう、きょう、あしたと三日間、東京で日ソ円卓会議というものが開かれております。私もその円卓会議に参加する一員ということで実は参加いたしておるわけですが、この問題についてまず大臣に、この日ソ円卓会議というものを政府として外務大臣としてどういうふうに評価されておるかということをお尋ねしたいと思うのです。  この円卓会議日本側のいわば会議を準備した各団体、またその代表の人たちは、これはいずれも民間ベースの人たちということになっております。また相手のソ連側の方も一応政府代表ではなくて、それに見合う民間代表というふうな形で来ているわけですが、そのねらいとしては、いまの日ソ間のいろいろな懸案事項を前へ進めるには、もちろん政府間のベースでやらなければならぬということが最終的な結論になるわけですが、それを進めるためにも民間のレベルでできるだけの努力をしょう。それが最終的には政府間のそういう話し合いや協定に実を結んでいくようにしたい、こういう考えを持ってやっているわけでありますが、このことについての大臣の御認識をまずお尋ねをしたいと思います。
  103. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 日ソ円卓会議昭和五十四年の十二月に持たれて以来、今回は三回目と承っております。ソ日協会のグジェンコ会長、いま閣僚の地位にあられる方でありますが、その会長に見合って日本側では五団体、いずれも有力な皆様が会長になっておられまして、こういう顔ぶれで両国間で、民間レベルとは申しながらも非常に有力なこういう会議を持たれる。私はそれなりに非常な有益、有効なものである、このように感じておる次第でございまして、この会議を通じまして、高沢委員の言われましたような経済面またそのほかの面で、両国間の相互理解を深める上にこの会議が成果ある進行を遂げられることを期待しておるわけでございます。
  104. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣のその前向きの認識ということはよくわかりました。  そういたしますと、こういうことは大臣、いかがでしょう。あしたこの円卓会議が終わります。何か声明なりステートメントなり、そういうものを発表して終わると思いますが、この会議を主催いたしました、たとえば日ソ親善協会、この会長さんは自民党の赤城宗徳先生であります。あるいは日ソ議員連盟、この会長さん同じく自民党の石田博英先生でありますし、その他、対外文化協会の松前重義先生とか、あるいは日ソ交流協会の加藤琢治会長とか、あるいは日ソ貿易協会の横川正市会長等々、こうした自民党の方も含めてそうそうたるそういう方々が今回の会議を主催したわけでありますが、会議が終わった後、これらの日本側代表者の方と大臣が時間をとって会見をされて、その会議の成果を踏まえて、どういうふうに問題を進めるかということについてお話をなさる、そういうお考えがありますかどうか。私は、ぜひそうやっていただきたい、こう思うわけでありますが、いかがでしょう。
  105. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 円卓会議終了後に、会議の運営に当たられた日本側の代表の方が私に対して何か意見を申される、こういう場合に私はもとよりそれを拒むものではございません。謙虚に承る用意はございます。
  106. 高沢寅男

    ○高沢委員 よくわかりました。ひとつそのようにまたお取り計らいをお願いしたいと思います。  次へ進みますが、新聞報道でありますけれども、米ソ首脳会談の問題がいま動きつつあるやに見えるわけであります。アメリカのレーガン大統領は六月の国連軍縮特別総会の折にブレジネフ書記長と非公式に会ったらどうだろうか、こういうようなことを提案された、それを受けてブレジネフ書記長の方は、秋十月ごろに双方で十分準備をしておいた上で、米ソのしかるべき第三国でそういうような首脳会談をやったらどうだろうか、こういうふうな提案が出てくるというようなことで、こういうことが動き始めていることは間違いないと思います。これに対する日本政府の関与の仕方として、前にもこの委員会で希望を申し上げたわけでありますが、日本政府としても、この米ソ首脳会談が行われるとすればどうせ核軍縮という問題を中心のテーマにするということになるかと思いますので、この会談はひとつ日本の広島、長崎でやるようにということを御提起されて招請されたらいかがか、このように思いますが、いかがでしょうか。
  107. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 米ソ首脳会談につきまして、ただいま高沢委員の御指摘のように、米側からあるいはソ連側からいろいろ御提案があって、その機運が醸成されつつあることは承知をいたしております。また、本委員会でも所見を申し上げたことがございますが、これらの首脳会談が実現する上におきましてはある程度の両国間の準備が進んで行われるものである。ただ突然会われてもその成果を期待するわけにはいかないのでありますから、恐らくそういう準備が整って実現、こういうことになるのであろうと思うのでありまして、こういう会談が行われることにさような意味合いから日本としても関心を持ち、期待をいたすわけでございます。  ただいま高沢委員から、恐らく軍縮問題がテーマになることではないか、そういうことであれば広島でこの会議の実現を図ったらばという御提案でございます。大変御意見として結構なことだと思うのでありますけれども、それぞれ米ソのお考えもいろいろあることと思います。せっかくの御提起でございますので、私も耳にとめておいて、そういう取り運びを申し上げる機会があれば申し上げてみたいと思います。
  108. 高沢寅男

    ○高沢委員 この問題は、とにかく広島あるいは長崎という場所柄は特別な場所である、これは言うまでもないのです。したがって、そこでもし米ソの首脳が相会談をするということになれば、必ずその中から核軍縮の方向へ向かって積極的な、われわれの歓迎のできる結果が出てくること間違いない、こう思う立場からこのことを強く御要請申し上げているわけですが、どうかひとつ櫻内外務大臣も現代の坂本竜馬のつもりで大いに実現のために御努力を願いたい、このように考えます。  そこで、そういう平和安全の問題に関連いたしましてもう一つお尋ねしたいことは、先般日本の文学者グループが核兵器を廃棄してもらいたい、こういうことについての声明を発表して、その声明をアメリカとかソビエトとかその他世界の核保有国の元首というようなところに送ったということがあったわけです。それに対する回答として、ソビエトのブレジネフ、これは書記長というよりは最高会議幹部会議長、つまり国家元首という立場で回答が来て、そういう文学者グループの呼びかけに非常に積極的にこたえ、具体的に日本に対する関係としては、日本が核兵器を持っていない、またつくらない、持ち込んでいない。こういうふうな状況の日本に対してソビエトは核攻撃をしません、こういうふうなはっきりとした意思表示をしておる。こういうふうなことが回答の中で出ているわけであります。きのうからの日ソ円卓会議の中でも、ソビエト代表団長のグジェンコ氏はこのことを繰り返してソビエト側の態度として表明をいたしております。  そこで、ここで大臣にお尋ねしたいことは、ソ連は日本に対して核攻撃をしない、核攻撃の対象にしない。日本は非核三原則を堅持して、将来にわたって核兵器を持つとかつくるとか持ち込ませるようなことはしない。こういう両国お互いの立場を政府間のベース、外交レベルにおいて確認し合う、協定し合う、こういうことがいまなされるならば、私はアジアの平和のために非常な前進ではないかと思いますが、この点について大臣の御所見はいかがでしょうか。
  109. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 第一回の軍縮特別総会の最終文書の中に、御承知のような世界の人々が危険な現状を認識し、理解し、国際的良心が強まり、世界の世論が積極的な影響力となるということが書かれておるわけでございます。これを受けまして、わが国におきましても各種国民運動が盛り上がっておるそのさなかに、日本の文学者の有志が核軍縮のアピールをブレジネフ書記長にされた、こういうことでございます。ブレジネフ書記長がそれにこたえて返書を発出したことは承知しておりますが、その内容についての詳細は新聞報道等で知ったということでございます。そういうやりとりのことでございますので、いまここでその返書について私が何か申し上げるということが軽率に失してはいけないと思いますので、この際特に何か申し上げるということはお許しをいただきまして、ただいま申し上げましたとおりの第一回軍縮特別総会以来の経緯からいたしまして、こういう問題に対して私どもも真摯に受けとめていきたい、こう思っておる次第でございます。
  110. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま大臣は、世論といいますか、あるいは平和のための大衆運動と申しますか、そういうふうな関連についても述べられましたが、そうであればなおさら、いま日本の国内でも非常な勢いで核軍縮、そして戦争反対、こういう動きが拡大しておる。このことは一党一派が何々という立場を越えたそういう全国民的な運動として拡大していることは御承知のとおりです。同じ動きはヨーロッパ各国でもあるいはアメリカでも非常な勢いで拡大しております。そういたしますと、こういう国民の運動やあるいは世論というものを今度は政府が受けとめて、その実現のために決定的な一歩を踏み出すということであって初めてこれは実るわけでありまして、そういう点においてはブレジネフ書記長の回答を新聞で拝見した、こういうふうに大臣は言われたわけでありますが、その内容が事実であるとすれば私は非常に重要な内容であると思いますが、そうなれば今度新任された高島大使に早速訓令を発して、そういうブレジネフ書記長の回答というものはソビエト政府の態度、方針として一体どうなんだということを十分確認される、こういうようなことも必要ではないかと私は思いますが、この点いかがでしょうか。
  111. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほど世論の盛り上がりのことあるいは最終文書のことを申し上げたのでありますが、こういう民間の動き、世論の高まりというものはまたそれなりの価値を持っておるんじゃないかと思うのです。これをいま高沢委員のおっしゃるように政府レベルに乗せてどうということとは、私はおのずから角度を変えておく方がいいんではないかという気がいたします。一つの御提案ではございますが、文学者の皆さんとブレジネフ書記長との間の交換された文書である、また書記長もそういうお気持ちでその対応をされておるかもしれませんし、そういうことでございますから、いま御提案を直ちに私が外交ルートで確認してみてさらにどうということは少し御猶予をいただきたいと思います。
  112. 高沢寅男

    ○高沢委員 国民の世論と政府の対応を一味違えるといまおっしゃったのですが、私はそれはおかしいと思います。  たとえば非核三原則の問題にしても、日本の国民の圧倒的な、核兵器は持っては困る、つくっては困る、持ち込まれては困るという世論や運動があって、結局それが国会の決議にも実った。政府もこれを国是として、これは政府の不動の方針であるというところまでこれを受けとめてきているわけであって、したがいまして、そういう国民の世論や運動というものは結局最終的には政府の方針に受けとめられるということによってこれが国際政治の中で実現性を持ってくるということになるわけで、この点の大臣の認識はもう一歩前に進めていただきたいと思います。  それでは角度を変えて、仮にソビエトの側から外交レベルで日本に対して核攻撃はしない、そのかわり日本は非核三原則を堅持していく、この点において日ソ両政府間の協議あるいは協定をやりましょうというようなことがもし提起されたというふうになる場合、日本政府としてはこれにいかなるように対応されますか、お尋ねしたいと思います。
  113. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 高沢委員承知いただいておると存じますが、ジュネーブにございます四十カ国軍縮委員会におきまして核を持たない国の安全保障、つまり核保有国は核を持たない国の安全を保障する、核攻撃を行ったり核の脅威を行使しないということにつきまして作業部会を設けまして検討しているところでございます。これまた御承知いただいておりますように、第一回特総の際に核保有国はそれぞれの立場において一方的宣言をいたしておるのでございますが、その際の宣言の内容が必ずしも一致したものでない、ばらばらである面がある。そこで、このような重要な問題を国際的な場から統一的な形で合意を遂げようという試みがあるわけでございますので、仰せられましたような点を考える場合にはこのような軍縮委員会での動きを十分考えていく必要があろう、かように思うのでございます。
  114. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまのお答えは、要するに国際的に全部そういうことができたら日本も乗りましょうというふうなことではないかと思いますが、これは日本の安全の問題ですよ、日本の国民の生死の問題ですよ。そういうふうに考えたときに、ジュネーブはジュネーブでもちろん成功するようにしなければいけません。しかし同時に、それに先んじて——いま皆さんの言うところによれば日本に核攻撃をかける危険性があるのはソ連である、皆さんいつもそう言っているわけです。それならその危険のある相手と、核攻撃をしないという協定を日ソ二国間で取りつけることが、なぜ一体国際的なものを待たなきゃいかぬのか。私は逆に、そういうものが日ソ間でできる、ほかの二国でもどんどんできてくるということになるときにジュネーブの国際的な包括的なものもまた実ってくるということではないかと思いますが、この点大臣いかがでしょう。いまの点についての大臣の御所見をお伺いします。
  115. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまの問題は問題として非常に重要であることは言うまでもございません。また同時に、日ソ間におきまして政府レベルの話し合いをしようというときには非常に懸案事項のあることも御承知である次第でございますが、昨年の九月、国連総会の折に事務レベルの会議をしよう、こういうことで、これは本年の一月に実現を見ておるわけであります。また、外相会議を持とうということにつきましても、これは実務者会議の折にも先方にそのことを重ねて申し上げておる次第でございますから、幸いそういう外相会議でも持たれるということになりますれば、そういう際に腹蔵のない意見交換をいたしたいと思います。
  116. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういたしますと、いまグロムイコ外相が日本へ来るかどうか、向こうはいま検討中ということでどういう答えが出るか待っている段階と思いますが、来ましょうと答えが出て、そして外相会議が開かれる、その外相会議でいまの核攻撃をしません、そのかわり日本は非核三原則堅持、こういう話し合いの問題が出たらこれはお断りするような問題ではないですね。当然その話の協議の場に入っていくということになるかと思いますが、いかがでしょう。そのときはお断りになるのですか、いかがでしょう。
  117. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほど申し上げましたように会議で腹蔵のない意見交換をするということがまず第一だと思うのであります。この種会議を持たれるときには、議題等の整理も事務レベルでまずやるということが普通の会議のおぜん立てであると思いますが、きょうお話しの点はよく検討して、そしてそういう会議の実現というときには私もそのことを念頭に置いておきたいと思います。
  118. 高沢寅男

    ○高沢委員 この問題はなお今後へも残しておいてまた議論いたしたい、こう思います。  そこで、ここで一つお尋ねしたいのですが、きょうお聞きした情報によれば、けさ早く朝鮮半島で何か戦闘状態が発生したというふうなことをお聞きしたわけですが、そういう状況があるのかどうか、ニュースをどういうふうにキャッチされているか、お尋ねしたいと思います。
  119. 木内昭胤

    ○木内政府委員 けさの午前二時から七時にかけて朝鮮半島の軍事境界線におきまして撃ち合いがあったという報道はございます。これの詳報について現在確認をしておる段階でございますが、時たま起こることでございますけれども、境界線を越えて逃亡する兵士をめぐって撃ち合いが発色するケースが昨年もあったわけでございますが、けさのも恐らくそういった性格の撃ち合いではないかというふうに考えておりますが、なお詳細確認を求めておる段階でございます。
  120. 高沢寅男

    ○高沢委員 聞きようによってはよくあるケースだから、大して心配することはないというようなお答えのような感じもいたしましたが、しかし、私は、こういうものがどういう突発的な危機に拡大していくかということはまさに予断できない、こう思うわけです。そういう点において、朝鮮半島における南北の分断そして対立、そしていつ戦闘状態が起こるかわからぬという危険性、これを解消させるためにわれわれは対朝鮮政策を繰り返し主張してきていることをここでもう一度大臣にはひとつ十分想起していただきたい、こう思うわけであります。  さて、それに関連するこうした朝鮮半島の危険な状態のときに、その片側に対して日本が特別の肩入れをする、援助する、それが仮に軍事的なものでないとはいっても、そういうふうなことをやることがまた一体どういう朝鮮半島の緊張激化につながるかわからぬ、こういう立場から、私たちはいま進行している対韓国の経済援助問題を非常に憂慮している。きょう午前中は土井委員からもその立場でいろいろ御質問いたしました。それを踏まえて私、一つだけお尋ねをしたいと思います。  この対韓援助四十億ドル、こういうふうに伝えられているわけですが、私の考えでは、繰り返し言ってまいりましたそういう総枠方式はとってはならぬ、積み上げ方式でなければいかぬということにも違反してきている、こういう動きではないかと思いますが、午前中の土井委員の御質問に対しては、その辺は何かまだ検討中であるとか、まだ決定されていないというようなことを言われたようでありますが、しかし、いまの総理のもうこの辺で決断しなければというような声が出ておるということからすれば、こうした総枠決着方式というものになってくるんじゃないのか。対韓国問題では、金大中氏のケースを見ても、常に一種のこういう政治的決着ということでつけることを積み重ねてきて、そのことがどんなに日韓関係を害してきたかということの反省がいまだにないということを私は強く抗議し、そして警告もしなければならぬと思います。そういう上に立って、この四十億ドルというものが出されてくるときに、その中の各プロジェクトごとに、このプロジェクトは幾らの金額、このプロジェクトは幾らの金額というようなプロジェクトごとの金額、そしてこれに対しては金利は幾ら、こういうふうなことを全部示されて、そして全体としていま言われるこの六%にこういう計算でなるんだ、この辺のところをわれわれにも十分わかるようにぜひお示しをいただかなければ、私たちとしてもこの国会審議の責任を果たすことはできない、こう思うわけでありますが、この点についての大臣またアジア局長の御所見、いかがでしょうか。ぜひ責任を持って明らかにしてもらいたいと思います。
  121. 木内昭胤

    ○木内政府委員 けさも御答弁申し上げましたとおり、私どもとしましては、総枠提示という方式はとらないつもりでございます。個々のプロジェクトにつきましてなお一層のフィージビリティー調査等々を加えまして、妥当な結論が出ました場合には、これを両国の交換公文によって合意するわけでございまして、その際には金額それから金利等の条件もすべて明らかになるわけでございます。
  122. 高沢寅男

    ○高沢委員 私はいまのそのお答えもずいぶん人を食ったお答えだと思いますよ。総枠方式はとらぬということを繰り返しあなたはこの委員会で言われる。しかしその委員会のあった翌日の新聞を見れば、三十五か、いや四十か、こういうふうなことが外務省、大蔵省で論議されて、そして今度は鈴木総理の決断として四十で行け、こうなってきておる。これは一体総枠方式でなくて何ですか。また円借款にしても十五だ、十だという議論をしてきて、結局足して二で割るで十三だ、こういうふうなこともこれは一体総枠方式でなくて何ですか。  そういうふうに国会答弁は繰り返し繰り返し人をばかにしたような、総枠方式はとりませんと言いながら、現実の進行は一日一日総枠方式で進んでいるじゃありませんか。そして五月には外務大臣を訪韓さしてこれにもう政治的な決断で決着をつける、この決断というのは何ですか。いわゆる政治決着じゃないですか。こういうことが総理の指導で行われているという人をばかにした外務委員会の運営というものを、大臣、私はこれは強く抗議をしなければいかぬと思います。こういうことで今後も進むならば、われわれはこの委員会における条約審議にも責任が持てないということも出てくることを私は申し上げなければいかぬ。そうでなければこの人をばかにしたやり方はとめようがない。どこで歯どめをかけるか。われわれには適当なことを言って、事はどんどん進んでおる。五月に入ったら行きます、行ったらもう決着です、これではわれわれは国民を代表して国会でこの危険なことに歯どめをかけるということをどこでやるかという責任のとりようがありません。そうなれば、やりたくはないけれども、そういうことが進む以上はわれわれは今度は、関係はないけれどもいま国会に提案をされている条約審議はできませんというふうな立場も出てくることをひとつ御承知いただきたいと思うのです。そういうことで大臣、ひとつ御見解をお聞きしたいと思います。いかがでしょう。
  123. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私は機会あるごとに誠心誠意詳しく申し上げてきておるつもりです。それは先方から六十億ドルの経済協力の要請のあったことは事実ですね。しかしそういうことではいけないということから実務者レベルの協議をしていただきまして、日本の経済協力の方針あるいは積み上げ方式というものについての説明もして、一体その内容はどうなんですか、こういうことになって、韓国の方も十一のプロジェクトを示し、そして六十億ドルと申しますが、二十五億ドルは商品借款でお願いしたいし、三十五億ドルについては経済援助をお願いしたい、こういうことでこの十一のプロジェクトにつきましてもどういうことかということを全部検討してみた結果、中には収益性もあるからこれを協力基金でいくわけにはいかない、こういうことで輸銀にふさわしいものはこういうものじゃないか、基金の方でいけるものはこういうものではないか、それから商品借款については日本としては考えられない、こういうようなことを中間回答としてしたわけです。  しかし、それについて韓国側は、韓国のいまの経済状況などから商品借款を再度考えてもらいたい、それから基金だ輸銀だという振り分けをしたが、先方ではできるだけソフトローンのものにしてもらいたい、こう言ってきて、それをさらに今度検討をしておる。  しばしば総枠がどうのこうのと、それはその十一のプロジェクトを合計してみたらこうなるとかいろいろ推定の方法はあると思うのですよ。しかしながら、現在どれどれをやることに決めたということを言っておるのでもなければ、その振り分けについて同意をしたわけでもないのですから、だから大変恐縮ではございますが、新聞ではいろいろ書いても私どもはそういう話はしておらない。  それで、今後どういうふうに取り進めるのかといえば、いよいよ大体の合意ができて、それじゃこのプロジェクトについてはさらに検討して、初年度はどれぐらい必要であるか、こういうことになってくると、日本の方としては単年度、単年度方式ですから、だから恐らく推定で幾らということは出ても、いよいよ合意するときには、ことしの分はこういうことで合意しましたということ以外にないと私は思うのですよ。  だから、きょうは高沢さんに何か大変おしかりを受けたようなわけですけれども、私はいま言ったとおり一遍もお答えは変えていないと思うのですよ。しかし、両国の関係から、そして昨年来の懸案であるから、誠意をもって韓国にもこたえるし、それから日本の方の処理にしても妥当な線でこれを何とかすることが、これが両国のためにいいのではないか。  そして、最近新聞等があそこまで書いておることは私なりに何が原因か。それは鈴木総理も、いろいろやりとりをしながらここまできておるが、余り長引くのもどうか、まあ話をつけられるものであれば常識的に言われているところで君も考えてみたらどうか、そういうことを言われたのは事実なんです。だから、それがやはり今度の連休のあたりに何か話し合いがつきそうだというような観測である。また私も、その時期以降は私のいろいろな日程が、韓国の方で二、三日とるというのもなかなかむずかしい情勢でありますから、できればそういう時期に話が落ちつくならばこれはいいのではないか、こう思っておるところでございます。
  124. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう井上委員が来ておられまして、私は時間超過は大変心苦しいのですが、いま大臣のお答えの中で一音だけ再確認したいと思います。  単年度方式だ、だからことしは幾らだ、こういうことは出すけれども、五年間まとめて幾らだということはない、こういまおっしゃいましたね。そのことをそのように確認してよろしいですか。私は確かにそうなければいかぬ、こう思います。
  125. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これにはもう一つ私が申し上げることを、余り時間をとってもと思って言ってありませんが、この韓国の今度の要請というのは、韓国の持っておる五カ年計画の中で、いまの韓国の経済状況あるいは民生の安定の状況等から、日本としてできるこの範囲をやってもらいたい、応援してくれ、こう言うのだから、だからその提示されているものは五カ年計画か六カ年計画、まあ五カ年でやれなければ六カ年というものだと思うのですよ。だから、単年度でいくけれども、こう見ると五カ年の中の五カ年だな。それは私は否定はできないと思うのですね。その点は御了解願って、単年度主義ということは間違いございません。
  126. 高沢寅男

    ○高沢委員 確かに予算に組むのは単年度でしょうが、いまの御説明では、結局五年先まで総枠でこれだけだという約束をするということを大臣は述べられたわけで、それはまさに単年度主義と違うのですよということをきょうは指摘をしておきたいと思います。  もうすでに井上委員がおいでですから、ここで私は終わりますが、大変大事な問題ですから、先ほどのあなた方の出方によっては条約審議はどうなるかわかりませんよということをもう一度指摘をして、私は終わりたいと思います。
  127. 中山正暉

    中山委員長 次に、井上泉君。
  128. 井上泉

    井上(泉)委員 いま日本じゅうを揺り動かしておる大きな問題に、日米の貿易摩擦解消の中で農産物の自由化を強く要求をしてきておる問題があるわけですが、この問題について農林省はどう対処しておるのか、どうありたいのか、その点まず農林省から説明を受けたいと思います。
  129. 副島映一

    ○副島説明員 アメリカからは、三月初めの日米貿易小委員会におきまして、日本の残存輸入制限品目、農産物で二十二ございますが、これの撤廃を要求するということで、具体的にその話し合いを進めるための作業部会を設置したいという要請がございまして、これにつきましては、私どもも日本の農業の実情等を十分説明するいい機会であるということで、これに応じたわけでございます。それで、先般ワシントンで第一回目の日米作業部会という会議をやってまいりました。  ここでは、相変わらずといいますか、アメリカ側日本の残存輸入制限はガットの規定に反しておるということで、日本側のガット上の合法性に対する見解を聞きたいということで議論をしてきたわけでございます。私どもは、まずこれにるる説明をしてきたわけでございますが、結論からいいますと、日本側説明には必ずしも納得しないということで、あくまでガットに違反する残存輸入制限は完全撤廃をしてもらいたいという要求を強く繰り返してきたわけでございます。そして、完全撤廃ができなければ、ガットの場に持ち込んで再度話し合うほかはないというのがアメリカ側の態度でございました。  そこで、私どもとしては、この二十二品目全部の完全撤廃などということはとうていできかねるわけでございますので、ガットに行くというのであればガット上の討議も受けて立って、引き続き米国側と話し合っていきたいということにしておるわけでございます。
  130. 井上泉

    井上(泉)委員 生産者も消費者も、いまの農産物の自由化を要求することに日本が応じたら、これは日本の胃袋がアメリカに支配をされるということになるし、それで日本農業が崩壊をするということは、日本民族の重大な危機になるということで、これは消費者も生産者も各地で大会を開いて反対をしておるわけですが、農林省としては、要約するところは、そういう残存品目を解除せよ、自由化をせよということは日本としては受け入れることができない、こういう考え方に立っておるということを確認をして間違いないですか。それだけ簡単に答えてくれませんか。
  131. 副島映一

    ○副島説明員 日本農業の現状からして、自由化は困難であるという立場に変わりございません。
  132. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、前に農林大臣をやられた櫻内外相ですが、優秀な外務官僚とは違いまして、何ぼ外務官僚が優秀だといいましても、農政のことに関してはあなたに及びもつかぬでしょう。外交はあなたがいなくてもやれる、こう言っておりますけれども、事農政に関してはあなたが先覚者である、一番わかっている。それで、いまの農林省の言われておる、これ以上農産物の自由化を認めるということになると日本の農業の崩壊につながる問題であるということから考えて、外務省としては、大臣としては、これこそ毅然とした態度で、アメリカのこういうむちゃくちゃな要求を拒否すべきである、私はこういうように思うわけですが、大臣の決意を承りたい。
  133. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 日米貿易小委員会の決定に基づいて作業部会が行われて、そして日本側としては率直な意見を申し上げ、その結果物別れとなり、アメリカ側がガット提訴というようなことを言っておるわけでありますが、その後二十二品目の個別についての意見を言ってきておるという事実も申し上げなければいかぬと思うのですね。この辺は考えられないかとかどうとかいうことを言ってきておると思うのです。これは二十二品目ずっとごらんいただきまして、この基本としては井上委員のおっしゃったとおり、私も日本農業の実情その他、向こうに行ったときには農林大臣当時のことから全部さらけ出して言ったのですが、相手側もそれにはノーコメントで、それこそ何もよう言わなかったのです。しかしいまそういう物別れになった後に、また個別にいろいろ意見を言っておる。これをてんから、作業部会はああで、そういうことはもう一切聞けぬよということでガットへ持っていってしまうのがいいのかどうかというところにいま問題が残っております。
  134. 井上泉

    井上(泉)委員 いま問題が残っておるということと、それからいまの外務大臣の説明の中には、二十二品目において、これはこれだけ入れてもいいじゃないか、これはこういうのでもいいじゃないか、こういうふうなことが言外に、心にありはしないか。つまり、二十二品目は全部だめでも、これはよくないか、これはこれだけの量をふやしたらいいじゃないか、こういうふうな姿勢がうかがわれるわけですが、そういうふうなことではなしに、これは交渉の過程の中でどうなるかもわからぬけれども、やはり基本として、あくまでも日本の農業を守るために日本外交の方針としても、これ以上日本に対して農産物の自由化を要求してくることは無理でございますよ、それは私どもとうてい受け入れることはできませんよ、それぐらいのことをきちんと言い切って、その上に立って行動してもらいたい、私はこういうふうに思うわけです。その点は大臣は、自由化は困難であるとか、ガットの場で話し合いが行われるとか、あるいはサミットでは協議はされないであろう、こういういろいろなことを言われておるわけですけれども、やはり大臣としては、これ以上農産物の自由化を要求してきても、貿易摩擦の解消には、せいぜい全部やったところでも十億にも足らぬ金だし、こんなことは問題でない。十億に足らぬ金で日本の農業が崩壊するような、日本の国民がアメリカの食糧に支配されるような状態をつくり上げるということは断じてまかりならぬと言うだけの決意を持った外交方針というものを要求するわけですけれども、私十分でありますからもう終わりますので、その点についてひとつ大臣の決意をはっきりと答えてください。
  135. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 物別れですから、それから私はガットでいい、表現が悪いのですが、そこでやり合うと申しますか、いいと思うのです。しかしそのことがガット違反ということでくるわけでしょう。国際的な約束と違うじゃないか、そこが痛いですな。だからガット違反に持ち込まれてオール・オア・ナッシングのようなことがいいのかどうか。先方も物別れになってみたが自分の方の言うことも無理かもしれぬが、この辺は考えられないかときているものですから、それはここで一概に全然取り合わぬと言い切るわけにもいかない要素が若干あるのです。これは正直に言っておかないといけないと思うのです。しかし基本としては日本の農業をもうこれ以上痛めつけられたのではかなわない。個々の物資にしても地域農業の振興の上に必要なのだ、また各国でもなお日本を責めるけれども、君らの方にもあるじゃないか、それはもう大いにやり合っておるわけだが、さあこの物別れ後の扱いというのがなかなかむずかしいということも問題としてあることを申し上げておきます。
  136. 井上泉

    井上(泉)委員 終わります。
  137. 中山正暉

    中山委員長 次に、玉城栄一君。
  138. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、私もちょっと話を逆戻りさせて恐縮でございますけれども、日韓援助問題につきまして午前中から質疑が交わされておりまして、また本委員会でもずっと論議が交わされておるわけですが、私たちも聞いておってよくわからないわけです。私も会議録を日韓援助問題に限らずよく読みましたのですが、わからない面が多々あるわけでございます。それで、たとえば大臣御自身、この前は、訪韓される、いや、私はそういう考えはいまのところありませんとか、しかしちゃんと新聞にはそういうふうに書かれているわけです。委員会でのお話とわれわれ新聞で読むのと、全然理解できない面が多々あるわけです。  そこで、いまの三十億ドルか四十億ドルかわかりませんが、いずれにしても多額な援助を大体詰めておられるというようなことのようでありますが、午前中大蔵省の方は他の援助諸国にとって当然これはバランスも考えなければならないというような意味の御答弁もあったわけですね。具体的に四十億なのか三十億なのか、その辺がどうなるかよくわかりませんが、それは今後、わが国は各国に援助をしているわけですが、そういうところのバランスはそれでいいというふうに理解していいのかどうか。その辺、いかがでしょうか。
  139. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 玉城委員のおっしゃるように、これは相手があってのことで、だからはっきりいろいろ書かれるということが、本当は私にもどうしてこういうことが出るかとわからないぐらいで、交渉事ですから本来言えばわからないのが一番本当だと思うのですよ。しかしここでだんだん申し上げているように、いろいろ交渉の焦点というかそういうものが出てきておるということははっきりしておるので、その辺は先ほど来御説明を申し上げておるところでございます。
  140. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、たとえば仮に四十億ということになりますと、それは他の援助諸国とのバランス上はやはり均衡はとれているというふうに理解すればいいのですか。それともそういうレベルでこれからほかの諸国へも援助されるということになるわけですか。
  141. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 経済協力の基本の方針として、五年で過去の実績の倍に持っていこう、これは一つの大きな枠ですね。それからかねてよく言われるように、積み上げ方式、これも一つの枠だと思うのです。ただし、大枠の倍増と言ってもその倍増の中身がアジアに重点を置いておる、これも事実です。だから、いままでやってきたそういう実績も踏まえながら、基本の方針というものに基づいて経済協力の問題を処理していく、こういうことです。
  142. 玉城栄一

    ○玉城委員 私はほかの質問がありますので質問を変えますが、先ほど、例のけさ朝鮮半島休戦ライン両軍、北南衝突があったという、さらりとよくあることですというようなことだったんですが、これは朝鮮半島のそういう事態というのは、わが国にとって、そういう感じだけではこれは非常にまずいと思うのです。大臣、いかがですか。
  143. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 三十八度線で百万からの軍隊が対峙をしておる、そして昨年、一昨年あたりの紛争の状況を考えてみますと、われわれは朝鮮半島の統一、安定ということを望んでおるわけでありますが、現実にはなかなかそのトラブルがある。そして本未明の事件が起きておる、こういうことでありますから、質問者によれば、そういうことがきっかけで予想のできない事態もまま起こることがあるんじゃないかという御指摘もあったように聞き取りましたが、私は、ただ単純に三十八度線でのトラブルがあったんだということじゃなく、やはりこの問題については、朝鮮半島の平和、安定ということから、そのような事態が起こらないように、北朝鮮、韓国ともに考えてもらいたい。従来全斗換大統領あるいは北朝鮮側、いろいろな形で統一の提案があるが、それがすれ違いになっておることを非常に遺憾に思うのです。それから、三十八度線を挟んで軍事演習でもやるときには、お互いに視察団、その視察団という言葉は当てはまるかどうかは知りませんが、視察をするためのそれぞれ軍隊の人が来てもいいじゃないかというようなこともあって、そういうことも進めば空気もずいぶん違うんじゃないかと、いろいろと配慮をしておりますけれども、なかなかそれが進まない状況のもとに今回の紛争である、こういうことで、私はそれなりに心配をしておるところでございます。
  144. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間がございませんので、私は国連海洋法会議について、この間もお伺いいたしたのですが、ちょっとまたそれが大分経過していますし、その後の状況をちょっと詳しく御説明いただきたいと思うのですが、そのときこの会議の見通しはどうかというような意味について、全然見通し立たないというようなことであったのですが、しかしその後大分情勢は好転して、妥結の方向に向かいつつあるやにも聞いているわけですが、その辺ちょっと詳しく御説明いただきたいと思います。
  145. 栗山尚一

    栗山政府委員 お答え申し上げます。  ただいまニューヨークで行っております海洋法会議におきまして、最大の問題は、深海底開発の関係の現行条約草案に盛られております規定をどのように最終的に取りまとめるかということが一つと、それから条約が発効しますまでの間におきましても、そういう技術を持っておる国の企業等におきましては、やはり深海底資源の探査活動を続けていかなければならないという要請がございますので、その場合のいわば国際的なルールをどういうふうにしていくかということ、この二点が現在会議での焦点になっておるわけでございます。  それで、これらの問題につきましては、当初米国がかなり大幅な条約草案の修正というものを要求いたしまして、これに対します発展途上国の反発というものがありましたがために、会議の帰趨がどうなるかということにつきまして予断を許さないという状況でございましたが、その後、わが国その他各国の働きかけ等もございまして、アメリカもかなり柔軟な態度をとるようになり、かつまた発展途上国の方も交渉に応ずるというようなことになりましたがために、現在議長を中心といたしまして、発展途上国側、先進国側あるいは社会主義の国の側集まりまして鋭意舞台裏の折衝が中心でございますが、円満妥結のための最後の努力が行われておる。いま現在の時点におきまして非常に楽観的な見通しを申し上げるというわけにはまいりませんが、各国とも妥結のための非常に真剣な努力が行われておって、私どもといたしましては、その結果といたしまして国際的に受け入れられるような条約ができるということを強く期待しておる、こういう状況でございます。
  146. 玉城栄一

    ○玉城委員 ところで、いまお話のありましたアメリカは修正案を出しましたね。わが国も独自の修正案を出していますね。その日米間の修正案の違い、それをちょっと説明していただけますか。どういうところが違っておるのか。
  147. 栗山尚一

    栗山政府委員 これは非常に技術的な点にわたるわけでございますが、具体的には深海底開発を行ってまいります場合に、探査のために探査主体に対しまして認められる鉱区の範囲、この広さがどの程度であるべきかということにつきまして、アメリカその他の西欧諸国とわが国との間に若干意見の相違がございまして、ごく大ざっぱに申し上げますと、アメリカその他はかなり広目の方がよい、こういう意見であるのに対しまして、わが国の方は、マンガン団塊の賦存状況その他から申しまして、鉱区は若干小さ目にとった方がより多くの国あるいは深海底開発の活動主体に機会を与えることになるから、やや狭い方がいいのではないか、こういう観点からわが国は独自の修正案を出しておる、こういう状況でございます。
  148. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでわが国、われわれ含めてなんですが、その深海底開発に関する法案を議員立法でつくろうではないかという動きがあるわけです。その点について、外務省としてはどのようにお考えになっておられますか。
  149. 栗山尚一

    栗山政府委員 深海底開発のための国内法の整備を行う必要があるということにつきましては、政府としてもつとにそういう認識を持っておったわけでございますが、他方におきまして、海洋法会議におきまして全体の条約草案が妥結に至らない前におきまして一部の先進国がそういう国内法をつくりまして、どんどん深海底開発を進めていくという姿勢に対しまして、発展途上国側からかねてより非常に強い反発がございまして、そういうことも勘案しないといけない。それからまた実際問題といたしまして、海洋法会議におきまして深海底開発の制度というものがどういうふうに固まっていくかということを見きわめずして国内法をつくるということは、これはなかなか困難でございます。つくりましても、直ちにまたこれを条約に合わすように修正しなければいけない、こういう問題も出てきますので、タイミングといたしましては、政府としては、いま現在ニューヨークで行われております海洋法会議のある程度の帰趨を見きわめた上で国内法の体制を整備すべきである、こういうふうに考えてまいった次第でございます。したがいまして、ただいま、先ほど答弁申し上げましたような状況になりまして、まあ全体の空気としては何とか会議がまとまるのではないかという傾向が出てまいりましたものでございますので、そういう状況に照らせば、やはりこの際、わが国といたしましても国内法の体制を早急に整備すべき時期にいま来ておるというふうに私どもは認識しておる次第でございます。  したがいまして、先ほど玉城先生が御言及になりましたように、国会の方におかれて国内法制定のイニシアチブをとられるという動きがあるというふうに承知しておりますので、政府といたしましては、そういう国会側のイニシアチブというものに対しましては十分御協力をさせていただくようにお願いしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  150. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、当初大分憂慮されていました国連海洋法会議、何とかまとまるのではないか、各国、鋭意妥結に努力しているということで大分明るい方向にあるようですが、ただ、アメリカ側も柔軟になり、それから途上国側も話し合いに乗ろうと、いまいろいろな経過の御説明がありましたね。やはりこれは最終的にコンセンサス方式で、しかし、また事情によっては多数決で採決というようなこと、それに対してはアメリカ側がどう出るのかというような、そこまでの詰めはこれからでしょうけれども、どんなふうに見ておられますか。
  151. 栗山尚一

    栗山政府委員 基本的には先ほども私から御答弁申し上げましたことの繰り返しになりますが、若干補足させていただきますと、目下のところ折衝の焦点は、条約が発効するまでの間の深海底開発のルールをどういうふうにするかということに焦点が置かれておりまして、これがまとまりますればその次の段階として、今度はいよいよ条約本体の深海底開発関係の規定をどの程度手直しをするか、現在の草案をどの程度手直しをするか、こういうことに手順としてはなります。その段階がいわば過去九年にわたって交渉を続けてきました海洋法会議の正念場ということになろうかと思いますので、現在の段階で日本も含めまして各国とも何とかコンセンサスで条約を採択するということに持っていきたいということで鋭意努力をしておるところでございますので、多数決で押し切るとか、あるいはそれによってアメリカ会議から離脱するとか、そういうような状況はいまのところはどの国も考えておらない、みんな全力を挙げてそういうコンセンサスの方向でまとめるということに努力をしておる、こういう状況でございます。
  152. 玉城栄一

    ○玉城委員 では、そういうことになりましてまとまる、この条約が発効しますね、実際に動き出すのに期間はどのくらいかかるのですか。
  153. 栗山尚一

    栗山政府委員 これはなかなかむずかしい問題でございまして、仮に予定どおりまいりますれば、ことしの九月にカラカスで条約採択会議が持たれるということになっておりまして、ここで採択されますと、あとは各国のいわば国内的な批准手続という段階に移るわけでありますが、具体的に何年くらいかかるかということについての見通しを立てることはきわめて困難ではございますが、いままで一般に言われておりますのは、やはり条約が発効するまでには少なくとも五、六年はかかるであろう、こういうのが大方の観測でございます。
  154. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、わが国は海洋国家として国連海洋法条約にも当然加盟していくわけですね。そこで、加盟していった場合、この条約に言ういわゆる経済水域というものは当然日本海にも及ぶということですね。その辺はいかがですか。
  155. 栗山尚一

    栗山政府委員 先生の御質問の御趣旨、私必ずしも正確に理解したかどうかわかりませんが、いまの現行条約の草案が採択されますれば、各国とも二百海里までの排他的な経済水域を持つ権利が認められる、こういうことでございまして、現実に必ず二百海里まで線を引かなければならない、こういうことではございません。
  156. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、いまおっしゃるように二百海里経済水域設定は、わが国としてはこの条約が発効しましてどのように考えていらっしゃいますか。
  157. 栗山尚一

    栗山政府委員 現在は、先生承知のように漁業水域に関します暫定措置法によりまして二百海里までの漁業専管水域を設定できるという体制に国内法上なっております。御承知のように、太平洋側におきましては二百海里まで漁業水域を設定しておりますが、日本海側につきましては、御承知のような事情でそのようなことを行うに至っておりません。  将来、条約に加入し、条約を批准することになりまして、二百海里までの排他的な経済水域を設定できるということになった場合に、具体的にどういう線引きをするかということにつきましては、その時期になりましてから改めて政府部内において慎重に検討が行われるだろうというふうに私は予想いたしますが、現在の段階におきまして日本海側がどういうふうな線引きになるかということにつきましては、私はいまの段階ではちょっと御答弁できかねる次第でございます。
  158. 玉城栄一

    ○玉城委員 国際海峡、領海三海里、それで公海部分をいまあけて、あらゆる国の船舶を自由に通航させているわけですが、この条約に加盟した後は、この国際海峡についてもいろいろ規定がございますね、それはどんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  159. 栗山尚一

    栗山政府委員 国際海峡につきましては、御承知のようにいまの条約草案におきましては、従来の伝統的な国際法において認められております無害通航よりもより強い、いわゆる通過通航制度というものが規定されております。恐らくそのような形のままで条約がまとまる場合には、その通過通航制度というものがそのまま採用されるということになろうと思います。  他方におきまして、領海は十二海里までが認められる、こういうことになりますので、条約加入、条約批准の場合に、現在わが国が特定海峡においてとっております領海三海里凍結という制度をその後も維持するかどうか、あるいは十二海里まで広げまして、広げた部分につきまして、条約の規定に従いまして通過通航制度を認めるかということは、これは将来の問題でございますので、現在のところ、政府としてこうするという確たる方針は有しておりません。
  160. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この条約に規定している、おっしゃる通過通航制度を採用していく場合、よく言われます三海峡の封鎖、海上封鎖だとか機雷の敷設だとか、そういう通過通航制度でそこをあける、公海上についてもやはりそういうことはできるのですか。
  161. 栗山尚一

    栗山政府委員 お答え申し上げます。  現在の既存の海洋法関係の条約もそうでございますし、今度採択される新海洋法条約も同様でございますが、これは基本的にはいわゆる平時におきます海洋法秩序というものを定めたものでございまして、通過通航制度が適用される国際海峡におきましても、法律的には、沿岸国が自衛権行使のために必要な限度において、いわゆる有事の場合に船舶の通航を必要最小限度阻止するという、そういう国際法上の権利は新海洋法条約においても認められるところであろうと考えております。
  162. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまおっしゃるいわゆる有事の場合ですね。たとえば中東有事の場合はどうなんですか。海峡封鎖とか機雷敷設とか。
  163. 栗山尚一

    栗山政府委員 先ほど申し上げましたように、あくまでもそのような国際海峡におきます通航を阻止するということは、沿岸国の自衛権の行使の必要最小限度の範囲内でのみ認められることでございまして、これは現在においても三海峡封鎖との関連で政府が常にお答え申し上げているとおりでございまして、わが国が武力攻撃を受けまして、わが国自身が自衛権を行使する、そのような場合を除きまして、わが国が実力をもって海峡を封鎖するというようなことは認められない。また政府としてそのようなことを行うつもりはないということは、累次申し上げているとおりでございます。
  164. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、これは午前中もちょっと質問がございましたけれども、極東有事研究の対象の中に、極東周辺有事がわが国に非常に重大なかかわりがあった場合、そういう極東周辺有事研究ということもこの極東有事研究の中に入るのか。それをされているのかどうか、いかがでしょうか。
  165. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まず冒頭に申し上げておきたいのは、これから研究してまいりますので、その地域あるいはその内容、これについて、あらかじめここで、こういうものは含まれる、こういうものは含まれないということは申し上げられないわけでございます。あくまでもガイドラインの三項に書いてございますように、「極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合」、その場合に限っての研究ということしか申し上げられないというのが現状でございます。
  166. 玉城栄一

    ○玉城委員 そのお答えは午前中もお伺いしたのですが、そういう極東周辺地域における有事というものは、いま皆さんがされている極東有事の研究の対象にはしない、そういうことは考えられない、いま前提をいろいろおっしゃいましたけれども、そのように理解しておいてよろしいわけですね。
  167. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 この研究は当委員会その他でも申し上げておりますように、いつまでということを限っておりません。非常に息の長い研究でございますので、その研究の過程の中で、どういう状況になるかということをいまここで申し上げられないということをぜひ御理解願いたいということでございます。
  168. 玉城栄一

    ○玉城委員 否定をされないということはそういうこともあるということなんですが、いわゆる極東周辺有事、これは有事発生ということになれば中東地域も入りますわね。ですから、それはいまは何とも言えないというような意味なんですが、そうすると、そういうことも今後は研究の対象に入るとともないではないというふうに理解しておくべきなんですか。
  169. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 その三項を読んでいただくと非常に明らかに書いておりますが、「極東における事態日本の安全に重要な影響を与える」ということでございます。したがって、極東周辺地域に起こった事態日本の安全に重要な影響を与えるということでございまして、いわゆる「重要な影響」というのは、もう少し換言すれば、そのためにアメリカ軍が行動しなければならないという事態というふうにわれわれは考えております。
  170. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、いまおっしゃるようなことからすると、極東有事研究の対象の中には、当然いま私が申し上げたようなことも今後は考えられるということになるわけですね。
  171. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 私がここで考えられないとか考えるということを申し上げて、これからの息の長い研究で仮にそういうものを取り上げてきた場合には、当委員会に予断を与えるということでございますので、私としては先ほどの御答弁以上のことは申し上げられないわけでございますが、あくまでも三項の研究というものは、本来安保条約の六条に発し、かつガイドラインに基づいていくということでございまして、ガイドラインについては午前中もるる御答弁いたしましたとおり、いろいろな制約がついている。その制約の範囲内においてわれわれは行っていく、こういうことでございます。
  172. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで先ほど条約局長は、海洋法条約成立後海峡封鎖問題については、いわゆるわが国の有事自衛権の必要最小限度というようなことのみ許されるんだ、それ以外のことは考えられないし、そういうつもりもないというお話もありましたが、それはそのとおりやっていただきたいと思うのですが、ただ、いまおっしゃる極東有事研究という名のもとに、非常に広範な周辺有事のことも含まれた研究がもう行われているのではないかという心配が非常にあるわけですね。  そこで、いま例のリムパック82というものが行われていますが、これは報道でしかわれわれはわからないのですが、時間がございませんので簡単におっしゃっていただきたい。リムパック82の現在行われている目的。それからその最大のねらいとしているもの、作戦上どういうのをポイントとしてリムパック82が行われているか。その中におけるわが国海上自衛隊の役割りはどういうものなのか。とりあえずこの三つ。目的、ねらいとしているもの、それから合同演習の中における海上自衛隊の役割りですね。
  173. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 この御質問に対しては本来防衛庁が御答弁するのが筋かと思いますけれども、外務省として理解しておりますのは、リムパック82も前回のリムパックと同じというように承知しておりまして、その目的というのは、参加艦艇の能力の評価を行う。そして練度の向上を図ることである。そのために、対水上艦艇、対潜水艦それから対航空機等の各種訓練とともに、誘導式武器評価施設を利用した魚雷等の発射訓練をあわせ実施するというふうにわれわれは理解しておるわけであります。
  174. 玉城栄一

    ○玉城委員 報道によりますと、米海軍海兵隊敵地着上陸作戦訓練、いわゆる敵前上陸、そういう作戦訓練にわが国海上自衛隊が参加して訓練をやっていることは非常に行き過ぎ、こんなことができるのか、いわゆるわが国は専守防衛、そう言っておられるわけですし、集団自衛権の行使を前提にした訓練ではないかと非常に危惧をしているのですが、いかがですか。
  175. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 そういう報道があることは承知しております。しかし、現実にわが自衛隊がそういう上陸作戦に参加しているということは私たちは何ら聞いていないわけでございまして、先ほど申し上げたように、この訓練の態様、内容というのが対水上艦艇、対潜水艦、対航空機等の各種訓練ということでございますので、上陸作戦というのは先ほど申し上げたところからは予想されないことじゃないかと考えておるわけです。
  176. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは時間がございませんので議論できません。具体的にはそういう上陸作戦の支援をわが国海上自衛隊がやっていることは重大問題だと思うのです。  今度は、チームスピリット、米韓合同演習にわが国自衛隊は参加するおつもりがあるのですかないのですか。
  177. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 これは米韓の合同演習でございまして、外務省理解する限り自衛隊が参加するということは全く聞いていないわけでございます。
  178. 玉城栄一

    ○玉城委員 聞いていないということは、そういうことはないと理解してよろしいわけですね。
  179. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 私は、それに参加するということはないと思います。また、参加することは現在の情勢から見て妥当でないということだと思います。
  180. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、日米安保事務レベル協議、これがまた夏に行われる。午前中も質疑がありまして、防衛庁お答えはフリートーキングであってというようなお話があったのですが、この中に外務省も当然参加されるわけでしょう。例のACMIのこともそのときに話し合いされるのでしょうか。
  181. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 安保事務レベル協議は、玉城委員よく御承知のとおり、全く事務レベルにおいてフリーな意見の交換でございます。したがって、議題も定めないということでございます。ただ、従来の慣習から言えば国際情勢、特に軍事情勢それから日本防衛力整備及びアメリカの国防努力ということが大きな話題になるわけでございます。したがって、いま御提起になりました個別問題をその場で話すことは考えられないわけでございます。
  182. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題については私最後に念を押しておきたいわけですが、ACMIは、局長さん御存じのように沖繩周辺空域、現実には十六カ所の提供空域があるわけです。そこはもちろん民間航空機は入れないわけです。そのほかにも臨時で設定される場合もあるわけです。これは運輸省の管轄のようですが、そういう間隙を縫って民間航空機は那覇空港に離着陸しているわけです。たまたま今度米側の要求しているポジションは、それが集中している場所になっているわけです。それで運輸省は、民間航空の安全上非常に危険性がある、この場所は無理ですよということで、この間の御答弁では外務、防衛、運輸三省庁で場所については調整中である。しかし、その調整といいましても、あの米側の要求している場所を十数キロ移動しただけでは管制上危険が去るものではないということを言っているわけです。同時に、この問題はさっき申し上げたように民間航空機に非常な危険を及ぼすというようないろいろな問題もありますし、新たにこういう空域を設定されることについてはもちろん地元では猛反対です。事務レベル協議ではそういう個別の話はされないということですが、それも含めて、外務省とされてはそういうことをやっては困るということを強く言っていただきたいわけです。これは大臣から最後にお答えいただきたいのです。
  183. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まず私から御答弁いたしますけれども、この前の委員会で申し上げましたように、外務省としても運輸省及び防衛施設庁といま協議をしておりまして、玉城委員が提案されましたように民間航空の安全の妨げになるような空域の設定は困るというのが基本的な立場でございます。しかしながら、このACMIの訓練空域の設定それ自体も全くやめるということは安保条約を結んでいる立場からアメリカ側に言えない、こういう立場でございます。
  184. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣にいまの件でさらにお伺いしておきたいのですが、そういうことであの空域に設定するということは、技術的、物理的に非常に危険性がある。ですから、強いてそれは断れないというのであれば、完全に危険を伴わないような遠い空域でそういう戦闘訓練はやってもらう。米側の要求は嘉手納基地に非常に近いところという要求もあるわけですが、これは向こうさんの都合であって、そういうことは許されないと思うのです。それで運輸大臣も、民間航空機の安全上この空域周辺は非常に問題がありますからできませんということをおっしゃって、予算委員会でもちゃんとそのことをおっしゃっているわけです。外務大臣としてはどうですか。
  185. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 玉城委員から何遍かこの問題で御熱心に御心配の向きを承っておるわけでございまして、先ほど北米局長お答え申しましたとおりに、この問題について関係省庁で相談をする折に玉城委員の御所見もよく踏まえて善処してまいりたいと思います。
  186. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  187. 中山正暉

    中山委員長 次に、林保夫君。
  188. 林保夫

    ○林(保)委員 国際情勢一般の質疑でございますので、三点にしぼりましてお伺いしたいと思います。  その一つは、世界的にいろいろな問題が出ております中で欧州に対する日本の外交が大事なものになってきていると思います。そういう視点から、先般せっかくミッテラン・フランス大統領が参りましたのでこれの成果と、これからの対欧州、対EC外交の基本についてお伺いいたしたいのでございます。  まず第一は、実際に来られましていろいろな報道、さらには大統領演説を私もじかに聞かせていただいて、多くの困難な問題がありながらもなお先を見ようというような御提議もあったかと思われます。欧亜局長、それらの大統領訪日の成果を日仏関係あるいは日欧関係にどういうふうに取り入れていかれるのか、まず評価を伺いたいと思います。
  189. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 今回のミッテラン大統領の訪日は、フランスの元首、大統領として史上初の訪日であったという点にまず第一の意義が認められるかと思います。また第二点といたしまして、西ヨーロッパの中で従来比較的日本とは縁遠い、あるいは相互理解が欠如していた日本とフランスとの間に今後二国間の相互理解を深めようという合意ができたこと、これも非常に大きな成果だったと思います。第三点に、日仏間にはいろいろな経済問題もございますけれども、そういうものを乗り越えて、現在の世界が直面している大問題、たとえば南北問題あるいは東西関係等について忌憚ない意見の交換をし、かつ日仏相互の考え方がある段階までは非常に似ているということを発見できたこと、こういう点は非常に有意義なことだったと考えております。  特に第三の分野にかかわりますが、科学技術の面において日仏の協力を今後進めていこうというような結論を得たことは大変な進展であった、かように考えております。
  190. 林保夫

    ○林(保)委員 その科学技術の交流でございますが、向こう側から提案してきたもの、こちら側から出したもの、大変何か実りあるような感じで受けとっておりますが、具体的にどういうものがあったか明確にひとつお答えいただきたいと思います。
  191. 宇川秀幸

    ○宇川政府委員 お答えいたします。  話題になりましたものを中心に拾わせていただきたいと思いますが、かなりいろいろな科学技術協力というのは非常に特定、専門化された分野がございます。わりと広い形でお答えさせていただきたいと思います。  話題になりましたのは、ライフサイエンス、新材料の開発、海洋生物資源の開発、より具体的には日本海溝における共同調査、同時に話題になりました航空機、鉄道等でございます。あわせまして科学情報の相互交換の可能性についても話題になったと承知しております。  以上に加えまして、原子力の平和利用の分野での協力というものについて、今後さらに事務、専門レベルで詰めていこうということで両首脳間に一般的な意見の一致を見たと承知いたしております。
  192. 林保夫

    ○林(保)委員 いまおっしゃった中で、たとえば日本海溝の共同調査あるいは開発ですか、いろいろ問題がある点もございましょうが、そういった提議に対しまして、日本側はどの範囲で受け入れられるようなお話をされたのでございましょうか。
  193. 宇川秀幸

    ○宇川政府委員 お答えいたします。  私の承知いたします限りでは、こういう分野では協力の可能性があるのではないか、その他の分野もあるにしても、双方の力点の置き方、それからかなり得意の分野である、あるいは協力していける分野であるということで話題になった。恐らくはこのそれぞれの分野につきまして、さらに細目につきましてフランス側とも打ち合わせる機会を今後早急に持ちたいと思っておりますが、その中からかなり具体化ができるものが少なくないと考えております。
  194. 林保夫

    ○林(保)委員 報道によりますと、日仏間の文化交流について、こっちの鈴木総理が東京とパリに日仏文化会館を建設するよう提案した、このようなことが出ておりましたが、どういう提案をされたのでございましょうか。
  195. 加藤淳平

    加藤説明員 四月十五日の日仏首脳会談におきまして、鈴木総理より相互理解促進のために日仏間の文化交流を促進したいということ、それからミッテラン大統領訪日を記念するという意味で、文化会館を東京とパリに建設するということを提案されまして、この点につきまして両首脳間に原則的合意が得られたわけでございます。
  196. 林保夫

    ○林(保)委員 その日仏文化会館、向こう側は何かセーヌ川河畔に建設してはどうかというような積極的な姿勢を示したなどありますが、大体どの程度の規模でどういう内容のものをやろうとしているのでございましょうか。事務的な検討の結果をひとつ御報告願います。
  197. 加藤淳平

    加藤説明員 両首脳間の合意につきましては、原則的な合意ということでございまして、その後具体的にどういうものを建設していくか等につきまして、土地の問題を含めましてこれから両政府間で意見交換をし、協議をし、そして所要の調査をいたすということになろうかと存じます。
  198. 林保夫

    ○林(保)委員 貿易摩擦の問題は後で具体的に承ることといたしますが、なお今度のベルサイユ・サミットを控えまして、ミッテランさんと総理の間あるいは大臣との間でお話があったやに聞いております。そこでは、日本を、何と言うんですか、被告席に立たせるようなことはせぬけれども、なお議題として貿易摩擦問題を取り上げる、こういうようなことであったと思いますが、その詳細について御報告願います。
  199. 深田宏

    ○深田政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、フランス側といたしましても、特定の国を特に取り上げてこれを非難するというようなことは考えていないということでございます。他方、貿易の問題はサミット主要国にとって大変大切な時期に来ておりますので、協力という、お互いに意見を交換して将来の事態の改善を探求しようというような観点から貿易の問題も取り上げるということでございまして、この点については日仏間に意見の一致があるわけでございます。
  200. 林保夫

    ○林(保)委員 そのほかにアメリカの高金利の問題とかいろいろあったんだろうと思いますが、なおミッテランが来られていろいろな問題として出てきた中で、大変軍縮の問題についての見解がどうも日本総理や皆さんのおっしゃる話と、それからミッテランの方はむしろ大変厳しく見ている、軍縮総会にもわが国の総理は行かれるのでございましょうが、大統領は行かないという、これは立場の違いからそうかもしれませんが、事務的にはこの大統領の発言、そのほかを、軍縮に関してあるいは欧州の軍事バランスについてどういうふうに把握され、認識しておられますか。
  201. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 鈴木総理の方からは特に来るべき国連の軍縮総会に焦点を当てられて、できる限り低いレベルで均衡を達成する、そういう目標から、この来るべき軍縮総会にみずから出席されるということを言われたわけでございます。ミッテランさんの方の回答は、どちらかと申しますと、いまのヨーロッパの東西の均衡が非常に大きくソ連の方に傾いておる。通常兵器の面でもしかり。特に最近は核兵器の面でも非常にソ連の方が優勢になってきておる。したがってまず必要なことは、西側としてこの均衡を回復することである。この点に重点を置いて発言しておられました。同時に、個人的かつフランス社会党の信念、原則という形で、平和は均衡の中にしか存在しないということを繰り返し強調しておられました。
  202. 林保夫

    ○林(保)委員 そのようなやりとりがあったんだろうと思いますが、なおもう一つこの点で聞いておきたいのは、六月の軍縮特別総会が宣伝の場になるのは避けるべきだというような合意があったのか、あるいは一方的にどちらかが言ったのかと思いますが、どういう意味でございましょうか。
  203. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ミッテラン大統領がおっしゃられました趣旨は、来る第二回国連軍縮特別総会は非常に重要な会議である、したがいまして、その場では実行可能性のある具体的な軍縮措置が実りある形で討議されるべきである、こういう趣旨でおっしゃられたものと了解いたしております。
  204. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がありませんので、結論を急ぎたいと思うのでございますが、私はやはり今日のように世界情勢がこういうように複雑になってまいり、危機感も一面で高まるような情勢であるとすれば、欧州あるいはECとの外交関係をもう一度見直さなければならぬ時期に来ているのじゃないだろうか。このことは、昨年の五月でございましたか、鈴木総理アメリカから帰られて、アメリカとの間に日本は同盟関係、状態は余り変わらないのに言葉だけかもしれませんけれども——実体もだんだんと変わっていくのでしょう、というのをつくられた。そうするとどうも、地球上から見ますと、アメリカとの関係がより深くなって、ほかの国と落差が出てくるというような感じもしなくもございませんので、ECをどう規定するのだ、こういう御質問を大臣にいたしたこともございます。そういう経緯も踏まえまして、これからECとの関係をどのように深めていかれるのか、対応されていかれるのか。ECを同盟とは呼ばないと思いますけれども、どういう心組みで取り組まれていかれるのか、これはひとつ大臣に、これからの櫻内外交の一つのポイントにもなろうかと思いますので、御所見をお伺いできたらと思います。
  205. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ECはわが国と自由と民主主義の価値観を同じくしておるわけでございます。また、ECが東西対立の中できわめて重要な地理的関係にあるということ、そういうことからいたしますと、かねがね日米欧という表現で、世界の中の三つの柱の日米欧がうまくやっていく、そのことが西側の全体としてきわめて重要だ、こういうことでありますので、私もそのような考え方に立って協力できるものはしていく。  また、西側全体のいまの経済的な沈滞というものを打破する上におきましてどのようにして再活性化を期するか、こういう問題がございますが、こういう点については、今回のミッテラン大統領の訪日から、余り過去を考えずにもう一つ前へ向かって進んでいこうじゃないか、そういうことで科学技術の協力というようなところを志向したところに新しさがあると思いますが、日欧間においても同様な見地に立って、特に今度のフランスとのこの関連を重視しながら臨んでいきたいと思います。
  206. 林保夫

    ○林(保)委員 外交辞令だけかもしれませんけれども、いま大臣がおっしゃいましたようにミッテランさんも大変前向きに、世界経済の再活性化のために縮小でなく拡大でいこうじゃないか、競争でなく協力でいこうじゃないか、これは総理も言われておると思いますが、そういう方向が一つ出ていると思います。それからまた、向こうから来ておりましたアメリカのマクドナルド通商代表部の次席でございますか、私もお目にかかりましたし、ECの閣僚理事会の議長のチンデマンスさん、この人にもじかにお目にかかっていろいろ承りました。それから、アメリカから、上下両院の対日親善でございますか、あるいは貿易交渉で来たのかわかりませんが、たびたび来られまして私もお目にかかりましたけれども、皆さんのコンセンサスがそういうところに一致していると思うのです。縮小でなく拡大でいこうじゃないか。現に物の足りない国はいっぱいある。アフリカから東南アジア、発展途上国は、幾らでも、お米も要れば機械も要るし自動車も要る、こういうことでございましたが、大臣、今度のベルサイユ・サミットが一つの大きな関門になると思います。各国の期待もそこにあると思われますが、日本はなおはっきりと自由化するものは門戸をあけていかなければ対応できないと思いますし、なおその先を考えますと、そういう大きな長い目で見てのコンセンサスが必要だと思いますが、大臣はベルサイユ・サミットに対応してどのようなお考えを持っておられますか、御決意のほどをまず聞いておきたいと思います。
  207. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先般訪米をいたしましたときに、当面の問題としていわゆる経済摩擦がございます。これはこれで対応していかなければならない。一言で言うならば日本に市場開放が強く求められておるわけでありますから、サミットに臨むに当たりましては、そのことについての十分な対策の必要があると思うのであります。  しかしながら、サミットといたしましては、むしろそれよりも、先ほど申し上げた、特にミッテランさんが今度議長を務められるわけでありますが、議長国がもっと将来を考え、前向きに行こう、こういうことからのたとえば技術協力であるとか経済協力であるとか第三国への協力というようなこともサミットで大事な課題ではないかと思うのであります。  サミットに臨むに当たって、今回どういう問題を取り上げるかということにつきましては、近々第三回目の準備会が持たれ、もう一回持たれて、そして課題が決まると思うのでありますが、先ほどから出ておるような問題が多分課題に上ってくるのではないか。エネルギーの問題もありましょう、貿易の問題もありましょう。軍縮の問題が取り上げられるのかどうか。この再活性化の問題、それから科学技術の協力というような、たまたま日仏会談でいろいろ出てきたような問題が現在の国際政治、経済の中での問題点ではなかろうか。ただ、サミットの課題、議題というものは、最終的な詰めば準備会議でもう少しかかるのではないかと思います。
  208. 林保夫

    ○林(保)委員 ぜひそういう線で御努力いただきたいと思うのでございますが、一番生臭い問題としては、やはり日米間の経済摩擦があろうかと思います。言うならば、昨年、いわゆる劇的措置ということから始まりまして、選挙もあるということであれば、ことしの暮れがその時期でございましょうが、なおやはり早く片づけなければならぬ問題だ、こういうことで、いまも大臣は三回目の会議とおっしゃいましたが、そういうのを踏まえて、新聞報道によりますと、五月九日に一応日本側の姿勢を決めるということも出ております。  ひとつ経済局長、御苦労ですが、いままでの経過を、ちょっと長くても、五、六分とって構いませんから、日本がどういう問題をアメリカ側から要求されているのか、そしてまたいままで日本はどういうことをやるという約束をしたのか、これからどういう対応をされようとしているのか、ちょっと御説明をお願いしたい。
  209. 深田宏

    ○深田政府委員 日米間では、通商関係につきましてこの二、三年いろいろな案件が出てまいったわけでございますが、当面問題になっております日本の市場開放という見地からもいろいろな措置がとられてまいりました。  特に昨年の十一月三十日以降、総理の御指示もありましていろいろな措置をとってまいったわけでございますが、これらの日本側の措置がとられるのと並行いたしましてアメリカ側との意見の交換の場も何回かあったわけでございます。  最近におきましては、三月の九日、十日に日米貿易小委員会が開かれまして、その際、農産物等残存輸入制限品目の問題につきまして作業グループを設置するということに合意を見たわけでございます。  また、牛肉、柑橘につきましては十月中のしかるべき時期に一九八四年四月一日以降の対応についての協議をするということを約束いたしたことは先生承知のとおりでございます。その後、今月十二日と十三日に約束に基づきまして、残存輸入制限品目、特に二十七品目ございますけれども、そのうちの農林水産関係の二十二品目を中心に意見交換をするということで、ワシントンで作業グループの協議が行われました。農水省の佐野経済局長、私どものところの遠藤参事官等が参加したわけでございます。この際、アメリカ側はこれらの品目については基本的には完全自由化を求めるんだという姿勢をとりまして、この残存輸入制限のガットとの整合性、ガット条項というものがどういうふうに認められるべきであるか、あるいは認められないかということにしぼって議論をしたわけでございます。その際の議論は、したがいまして完全自由化か、しからずんばガットでの協議かというような展開であったわけでございます。  ところが十六日になりまして、アメリカ側からは、それはそれとして、と申しますのは、たてまえはたてまえとしてということであろうかと思いますが、具体的に日本側が現在五月のしかるべき時期に考えよう、措置をとろうと言っております市場開放計画の中に、やはり農林水産関係も含めてもらうことが望ましいという示唆を行ってまいっておりまして、その際、具体的にこれこれについては関税を引き下げてほしい、あるいはこれこれについては枠を拡大してほしい、あるいはライセンスの手続を改善してほしいというようなことを言ってまいりました。十二日に協議の主力が行われたわけでございます。十三日は品目論等でございましたので、十二日の協議の後、十六日にこのような発展がありましたものでございますから、日本側としましては、ちょっとこのアメリカの主張に、一体どこに真意があるのかということを若干戸惑っておるのが現状でございまして、実のところきょうの午後、東京の大使館の公使が私のところにその間の事情を説明に来ることになっております。その辺をよく確かめた上で次の対応を考えたいと思っておりますが、この残存輸入制限品目の問題は市場開放を考えるに当たっての非常に大きな項目でございます。そのほかにもいろいろな御存じの規格、基準の問題でございますとか、特定の問題、たばこの問題、ソーダ灰の問題等々いろいろございますけれども、非常に大きな項目でございますので、これについてどういう措置をとるかということをいま関係省とも鋭意協議を申し上げている、こういう状況でございます。
  210. 林保夫

    ○林(保)委員 新聞報道によりますと、その六項目というのは、ピーナツ、そば粉、柑橘類ジュースなどの関税引き下げ、二番目がピーナツ、パイナップルなどの輸入割り当て方法の改善、三番目がリンゴ、トマトなどジュースの輸入枠の拡大、四番目が牛肉の高価格部分の買いつけ拡大、五番目がリンゴジュースに使われる食品添加物の許可、六番目が牛肉についての関税の改善と課徴金の引き下げ、このように出ておりますが、このようなものでございましょうか。
  211. 深田宏

    ○深田政府委員 十六日に先方から申してまいりましたことは、基本的にはIQ品目、残存輸入制限品目の完全自由化ということが究極の目標である。しかし、その間日本側でも前向きの措置を積み上げてとってほしい、こういう前提で一応の示唆、つまりこれだけではないということを断って例示をするということで申してきたわけでございますが、その際触れられました具体的な品目、案件等の内容はただいま先生御指摘のとおりでございます。
  212. 林保夫

    ○林(保)委員 これは外交サイドから見た場合と、それから実際にこれらの業者あるいは生産を担当している部門から見た場合とでは大変な差があるわけでございますが、局長の御感覚としては予定どおり五月七日というふうに新聞では出ておりますが、その辺で一応の日本側の向こう側を説得させられるような対応が国内的に結論を得ていけるような見通しでございましょうか。いかがでしょうか。国民はこの点どうなんだということで大変心配しておるのです。
  213. 深田宏

    ○深田政府委員 何分関係の向きも多数おいででございますし、私の一存で見通しを申し上げるのは適切でないと存じますが、きょうの夕方も関係省の局長の協議をいたします等、毎日これから作業を積み重ねてまいりますので、現在のところは五月の七日を目標にしておるということは御指摘のとおりでございます。
  214. 林保夫

    ○林(保)委員 この問題に関連いたしまして、いろいろな国民の心配の中あるいは政府サイドあるいは各業界団体から出てまいりますもの、意見がいろいろ分かれて一口には言えないのでございますが、なおアメリカさんも何もやらないで——何もやらないとは言いませんけれども、かなりの経済政策の失敗あるいは窓口を必ずしもあけるのではなくて閉めるような感じの保護主義的な傾向を強めておりながら、なお日本にこういうことを言っておるのはおかしいじゃないかというような問題とか、何か日本は細かくアメリカの要請に対応してはいっているけれども、精神的に見たらミッテランの言われたような高い次元でやればいいんであって、余り細かく要らぬのだというような意見すら実は私どもの耳に入ってまいります。その辺局長、いまどのような御感覚で問題を認識され詰めておられるのでございましょうか。
  215. 深田宏

    ○深田政府委員 何と申しましてもアメリカとの関係はわが国にとりまして大変大切でございます。いろいろな意味で仲間でございますので、通商関係についても円滑に推移するようにということで努力を傾けているわけでございます。  その努力の一環としまして、いま御指摘のような個別の案件ということもこれは丹念に対処していかなければならないわけでございますけれども、もちろんいろいろな機会に双方の経済政策について端的に意見を交換するというようなことも含めまして各般の対話を行っているわけでございます。いまの努力はそのような全般的な日米関係上の対応の一つの局面であるというふうに心得ておるわけでございます。
  216. 林保夫

    ○林(保)委員 それと関連しまして、くどいようですがもう一つ。向こうはこうやってくれと言う。それでは日本側からこうやってくれというものは何か出しておられるのでしょうか、何も出していないのでしょうか。こういうことを問題にしておる人もおりますので承っておきたいと思います。
  217. 深田宏

    ○深田政府委員 先ほども申しました日米の貿易小委員会の機会等にも私どもの方から申しておりますことは、日本側がこうやっていろいろ努力をしている一方においてアメリカ側保護主義的な法律をつくるとか、そのようなことではとうてい日本側として甘受し得ないということでございますとか、あるいは州を中心にいたしましてのバイアメリカンの動きでございますとか、細かくはユニタリータックスとかそういうこともございます。またアラスカの石油についてアメリカの考え方はどうなんであろうかというようなこと、いろいろ含めましてアメリカに対する注文も多数出しておるのが現状でございます。
  218. 林保夫

    ○林(保)委員 アメリカの高金利政策、そしてまたアメリカの産業構造そのほかからいって、もう日米間のあれだけの貿易のアンバランスはとても解消されるようなものではないという意見すらやはり専門家の間にはあると思います。そしてなお今日、アメリカがバターやクリームなど自由化義務免除の十三品目を抱えておる、ECの域内においても農業保護のための課徴金などで輸入障壁などを設けている、こういう状況が世界にいっぱいあると思います。ならば日本も何か大きな提案をしてばさっと一挙一時に解決するようなものはないだろうか、これがいわゆる国民の期待でもあろうかと思います。  つきましては、大臣にそういった点を含めまして、日本だけがやらなければならぬということじゃなくて、こういう際ですからもう少し総理の声明ぐらい出したらどうだというような意見も、これはプロの専門家から私に外務省にこう言ってくれ、こういうようなことでも来ておりますが、大臣、その辺を政治の問題あるいは外交の問題として大きな視点からいかがお考えになっておられますか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  219. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま深田局長からお答えをいたしましたように、いま残存制限品目について日本がいろいろ言われる、その場合におきましては、アメリカのウエーバー品目はどうである、あるいはヨーロッパにおける農業産品に対する課徴金はどうである、これは当然日本としては主張すべきところだと思うのですね。それから、日本アメリカとの間の貿易の不均衡を言われる場合に、貿易の不均衡は不均衡ではあるが、一体アメリカの経常収支はどうなっておるのか。経常収支は黒字であるわけですね。であるとするならば、ただ単に日米間の貿易のみを問題とするのもこれは当を得ないことであるわけですから、それはそれでわれわれは主張していく。また、ただいま高金利の話が出ましたが、それが日本の内需喚起の上に支障がある、あるいは貿易収支の上におきましては、円安ということで、これが十円、二十円と改善されれば、すぐ何十億ドルという収支の改善になるということは言うまでもないわけでございます。  それから、米側がこの不均衡を改善するために努力をしようとするならば、アラスカ石油あるいは西部炭、やはりアメリカとしての努力をすべき点もございますから、表面には、日本に対する市場開放とか、日本がヨーロッパ、アメリカに対して集中豪雨的な輸出で、片や百億ドル、片や百八十億ドルの不均衡だということでございますが、他面いま言うような問題があることは、これはもう堂々と日本が主張していいと思うのですね。  そして最も大事なことは、経済全般が沈滞化しておる、これを改善するということによってこの不均衡問題にも寄与していくわけでありますから、どうしても経済の再活性化ということが大事な課題でありますから、これは昨年のオタワ・サミット以来、大体サミット参加国の間では合意されておるところでございますが、今度のベルサイユ・サミットにおきましても、こういう点からも主張すべきことはすべきではないか、こう思っております。
  220. 林保夫

    ○林(保)委員 そのとおり賛成でございます。事務当局の皆さんは大変苦労しておられて、板挟みになっておられて大変だろうと思うのでございますが、言うところはしっかり言ってもらって、しかも、物事は詰めれば詰めるほど縮小してしまうので、縮小均衡になってしまうということでなくて、何とか開けるような形で収拾をぜひお願い申し上げたいと思います。  それから、時間がございませんが、最後に軍縮の問題について聞かせていただきたいのです。いま日ソ円卓会議も開かれておりまして、この件についてもいろいろ聞きたいのでございますが、これはいまちょうど会議をやっておる最中でございますし、国益を踏まえましてやりませんが、なおそれらを含めて承りたいのでございます。  国連の軍縮総会は六月でございますか、今日それへ向けて、各政府、各国民あるいは団体、組織、機関がいろいろな対応をしております。それで、一体どういう成果がそこで出てくるのだろうか、やはりわれわれとしては、幾ら署名を集めましても、中に入ってやる人がどうやるかということで決まってしまいますので、国連局長はどのように御判断されておられるか、率直なところをお聞きしたいと思うのでございます。
  221. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ジュネーブでの軍縮委員会が約四週間来作業を続けております。今明日をもって委員会の作業を了するわけでございますが、その報告がニューヨークの国連軍縮委員会においてさらに検討されて、最終的に第二回特総に上がってまいるわけでございます。報告の内容をまだ受けておりませんので、この場で、何がどのように報告されるか申し上げる立場にはございません。  ただ、この場で申し上げられることは、今度の第二回特総に対しましては、世界的に非常に雰囲気が盛り上がっている、主要国からも最高首脳部が御出席になられましてそれぞれの立場を明らかかにされる、わが国からは鈴木総理大臣みずから御出席ということが明らかにされているところでございます。このような事柄からいたしまして、軍縮問題は非常にむずかしい内容をはらんでおりますけれども、にもかかわらず、最善の努力が払われるもの、また、そうでなければ各国の皆様の熱意にこたえられないのではないか、かように考えております。
  222. 林保夫

    ○林(保)委員 局長もごらんになられたと思いますが、過日、十八日でございましたか、新聞報道によりますと、大川氏がジュネーブ軍縮委員会議長を務める日本大使ということで出ておりまして、もう大変悲観的な、むしろそれが本当ではないだろうかと、言われることもまた、軍縮の性質から言うと当然だと私は思うのです。前には進んでいるけれども氷河の流れのようだというふうに言っておられまして、この記事は読む人によっては、もう大使は投げておるのかというような感じでございますが、現在までの軍縮がどのような形で——ここで結論だけ読んでみますと、「国際関係の悪化、米ソの信頼関係の欠如などの結果、第二次米ソ戦略兵器制限交渉(SALTII)が棚上げとなり、いろんな米ソ間交渉が全部ストップしている。昨年十一月の終わりになって、やっと中距離核戦力(INF)制限交渉が始まった。これが、いま唯一の明るい材料だ」とあって、明るいと書いているのはここだけですね。あとはもうほとんどむずかしい、むずかしい、こういうことで、過去のことをとらまえながらなお言っておられますが、実際にそれを担当され指揮されている局長としては、やはりそういう御認識でございましょうか、率直にお答えいただきたいと思います。
  223. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 軍縮の問題は、ただいま御指摘がございましたように、非常にむずかしい内容を持っておりますだけに、一足飛びに結論を得るというわけにはまいりません。  ただ、大川大使がインタビューをされたというふうに報ぜられております内容をいかに解するかという点につきましては、一言申し上げさせていただきたいと思うことがございます。  それは、大川代表は非常に熱心に軍縮の問題に取り組んでおる方でございます。特に、今月、議長という非常に重要な職責にございまして、第二回特総に提出する報告をまとめるという重要な任務を持っておられます。できるだけあれもこれもまとまった形で何とかまとめたいという熱意の余りに、御自身の期待に必ずしも沿っていないような現状であるということで申しているのでございまして、軍縮特総に対する期待が薄いとか、そういうことではないと思います。  たとえば、実験の禁止問題につきましても、最近におきまして米国及び英国が、検証及び遵守という点に限るという条件づきではございますけれども、核実験の全面禁止ということを前進させるために、作業部会の設置に同意するという進展もございます。これが最終的にどういうふうにまとまるか、まだ報告を受けていないのでございますが、何とか前進があるように、こういう期待を持っているのでございます。
  224. 林保夫

    ○林(保)委員 総理の新聞に出ております談話を見てみますと、この総会で軍縮問題を主張するに当たっては東西両陣営の軍事バランスを保ちつつ低いレベルに持っていく、こういうのを基本方針にして、軍縮による余力を第三世界に向けるべきだ、日本は援助をやる、こういうこと。さらには、日本は広島あるいは長崎の体験がございますので、日本しかできない発言をやるというようにもとれるのでございますが、大体どういう基調で総会で主張なさるのか、まずその辺をひとつ局長から御説明いただきたいと思います。
  225. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 総理が総会に臨まれるに当たりましてどのような御方針で対処されるかという点につきましては、今後総理の御意向を十分承りまして事務的に固めてまいりたい、かように考えておるのでございます。
  226. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、ああいうことでございまして、これからやっても間に合うことは間に合いますけれども、なおやはり基本姿勢が非常に大事だと思います。先ほどお話しになったように、期待が大きければ大きいほど裏切られたような感じになる、あるいは努力すればするほど何かむなしさを感ずるというのが軍縮交渉の現実の実態かもしれません。そこらあたりを突破口を切り開くのがやはり政治的な力でなければならぬと思いますが、大臣、それらを踏まえられまして軍縮総会でどのような主張を日本はやるべきだとお考えになっておられますか、またそうした努力についてもお聞かせいただきたいと思います。
  227. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 現実の東西勢力の状況からいたしますと、低いレベルの均衡に何としても持っていこう。この不均衡ということがややもすると非常に危険である。これはこれで現実政策としてこう置いておいて、やはり軍縮総会の場におきましては、ある程度の理想を持ちながら、しかし同時にこの軍縮特別総会でみんなの合意のできる方向へ持っていく、こういうところに今度の軍縮特別総会の重要性があるのではないか。日本としては核実験をやめてもらおう。これが核の問題の一番諸悪の根源です。この実験でもやらないということになればそれなりに効果があると思うのです。あるいは核拡散防止という条約にみんながこぞって参加して、そしてこれを普遍的なものにしていく、これも必要なことではないか。また今後考えられる恐るべき兵器などについてそういうものはもうやらないということも、われわれとしてはぜひそういう何かの決議でも条約でも実現したい。この軍縮の問題についていろいろ意見が出ておりますが、それらのものがぜひ実効の上がることをやるようにしむけていく、この必要があると思うのです。  今度の場合もう一つ、現に反核運動の各国における相当盛んな点がございます。これが前回の軍縮総会の最終文書のような、この本当の意味における世界世論の喚起というそういう方向へ持っていく。一部反核は反米だというようなことが言われておる、そういう意図的なものであってはいけないと思うのですが、しかしニューヨークの第二回軍縮総会を機に、そういう正常な国際世論の喚起が行われるということは、私は大変好ましいことだと思っております。
  228. 林保夫

    ○林(保)委員 わが党は中道四党一緒になりまして、国民の本当の声を伝えるべく、目下懸命に準備をいたしております。そういう姿勢でまいりたいと思いますし、大臣御指摘のようないろいろむずかしい点があると思いますが、やはりやる以上は両陣営でやってもらいませんと、本当の安定平和は来ないと思いますので、ひとつせっかくの御努力をくれぐれもお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  229. 中山正暉

    中山委員長 次に、野間友一君。
  230. 野間友一

    ○野間委員 軍縮特別総会の点について先ほどからいろいろ話がありましたが、きょうの新聞によりますと、国民運動推進連絡会議、これの発表で反核署名千三百万、これを突破したという報道が出ております。事このように、核廃絶を求める国民の声というものは、一億一千万の国民からして、これは未成年ももちろん含まれるわけですが、千三百万といったら、相当な数なんです。それだけ核の廃絶に向けての期待、要求が強いということであります。こういう切実な国民の声をきちっと受けとめて、特別総会の成功に向けて日本のやらなければならぬ責務は非常に大きいのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでありますが、そういうことを踏まえた上で、質問をいたします。  前回、国連の十六回総会、このときの核兵器使用禁止の宣言ですね、決議一六五三、この点についての質問をいたしたわけでありますが、残念ながら、そのときには答弁の準備不十分で、この宣言の賛否についての逐条審議、それに対するわが国の対応、これについては準備して、こなかった。そこからお聞きしたいわけですが、これは逐条審議をやったということの確認と、それにわが国はどう対応したのか。これをまず明らかにしていただきたいと思います。
  231. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お尋ねのございました決議は、第三十六回総会、昨年秋の総会に提出されましたいわゆる核不使用決議というふうに了解させていただきます。
  232. 野間友一

    ○野間委員 いえ、違います。一九六一年の十六回総会の一六五三決議ですよ、いま言ったのは。
  233. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 逐条につき、賛否を求めております。
  234. 野間友一

    ○野間委員 その逐条審議、そして採決の際に、これは前文、それから主文一項、二項あるわけですが、これに対してどういう態度をとったのか、ちょっと簡単に。
  235. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 主文一項、それから前文、決議全体に対しましては賛成、主文第二項につきましては棄権という投票をいたしております。
  236. 野間友一

    ○野間委員 そこでお伺いしますが、主文の一項(a)ですね。これはどういう中身になっておりますか。
  237. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 一項(a)は、核兵器の使用は、国連の精神、文言及び目的に違背するものとして、国連憲章に対する直接の侵犯であること。
  238. 野間友一

    ○野間委員 侵犯あるいは違反という文言も、これは外務省の資料に、もらった中にあるわけですけれども、これには「直接の違反である。」こういう文言になっていますね。これは間違いありませんね。
  239. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 そのとおりでございます。
  240. 野間友一

    ○野間委員 紛らわしいことを言わないでくださいよ。正確に、あなたの方からもらった宣言に基づいて私は聞いているわけです。  それから主文の一項(b)ですが、ここもその使用について「国際法の諸規則及び人道法に反するものである。」こういうことが宣言の中に明らかにされていますね。
  241. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 b項におきましては、核兵器の使用は戦争の範囲を逸脱し、人類とその文明に惨禍と破壊をもたらすものとして国際法の原則及び自然法に違背するものであることということでございます。
  242. 野間友一

    ○野間委員 多少文言が、表現がいまの読まれたのと違うわけなんですが、同じことで、「国際法の諸規則及び人道法に反する」ということについての文言があるわけで、いまの局長の話によりましても、あとたくさんありますけれども、それはそれとしてもちろん主文の一項の(a)及び(b)、これについてもわが国は採決の際に賛成の態度をとってきたということですね。
  243. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 賛成いたしております。
  244. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、これは議論の余地なく核兵器の使用については国連憲章の直接の違反であるし、また国際法の諸規則及び人道法に反するということを明確にわが国は意思表示をしたわけで、私はこの点については大変評価をするわけです。国連の場で国連憲章と核兵器の使用についての評価判断をなされたのはこれが恐らく初めてではなかろうか、こういうふうに思いますけれども、この点どうですか。
  245. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 いわゆる核不使用決議が国連総会に提出されましたのは一九六一年第十六回総会、これが初めてでございます。内容的にもまずこの関係で出てまいったという意味におきましては、最初のことだったと思います。
  246. 野間友一

    ○野間委員 もしいまの時期にいま申し上げた主文一項の(a)及び(b)、とにかく(a)なら(a)でも結構ですが、これが出てきた場合、従前の六一年の当時の対応、つまり賛成、この態度を当然おとりになると思うのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  247. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お尋ねのございました点につきましては、このような考え方が具体的にどのような案文のコンテキストで出てまいるかという点も十分考えなければならないと存じます。第十六回総会の際には核の惨禍を二度と繰り返してはならない、核兵器が使用されるようなことがあってはならないというそういう強い希望、強い願望というものがこの決議案の中に反映され織り込まれたということでございまして、その趣旨においてわが国は賛成の態度を明らかにしたものと存じます。したがいまして、そのような関係であるということであれば、いまなお私どもも核兵器の惨禍は二度と繰り返させてはならないという確信には変わりないと存じます。
  248. 野間友一

    ○野間委員 ですから、これはいまの主文の一項(a)、核の使用は、国連の精神、それから字義及び目的に反するものであり、したがって、国際連合憲章の直接の違反だ、こういう立場、これは核兵器を使うということに対して国連憲章というそういう憲章から見た一つの評価、判断が、これだけがここでなされておるわけですね。それについていまもそのまま国連憲章違反というものは維持するということなんですか。多少何かいまあいまいなことがありましたので、確認しておきたいと思います。
  249. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 核兵器を使用することが国連憲章に法律的な意味合いにおいて違反するかどうかという点につきましては、別途の機会に責任ある担当者より御説明いたしておるところでございます。  ただ、ただいま申し上げたいことは、第十六回総会、いま御引用になっておられます決議が出た場合に、わが国が国連憲章との関係あるいは自然法あるいは人道という観点についての規定にその態度を明らかにしたその趣旨は、核の惨禍を二度と繰り返さない、核兵器が使われるようなことがあっては国連が目指す趣旨、目的に沿わない、まさにその点はわが方も共鳴し得るということで賛成をいたしたということでございまして、この点はただいまも変わらないということでございます。
  250. 野間友一

    ○野間委員 ですから、いまでも憲章に違反するということについては変わらない、いまいろいろな背景等について説明をされましたけれども、それはそれとしてもそういうことですね。  そうしますと、私お聞きしたいのは、当時、これについてイギリスが反対をするし、イタリアが修正案を出しましたね。核の使用について国連憲章に違反するということについては、そういうふうに自衛のためには核の使用だって許されておるんだというような立場からイギリスは反対し、イタリアが修正案を出しアメリカがイタリアの修正案に賛成する。そういう国連憲章に核兵器の使用が違反するのかどうかということが修正案が出て、大変な論議をされて、その上で日本政府はこの主文の一項の(a)、これについて賛成の態度を意思表示をしたという経過が実はあるわけであります。  その点からしますと、国連憲章に違反するというわが国の態度、これはもうきちっとここで明確に出ておりますし、それもいま依然として維持されるということになるわけですが、そうしますと、これについて言いますと、核兵器については三原則、つくらず、持たず、持ち込ませずですけれども、核の抑止力と、核兵器そのものはいかなる場合であれ国連憲章に違反するということとは矛盾するわけですね。この点についてどうなんですか。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  251. 栗山尚一

    栗山政府委員 先ほど国連局長の方から御答弁申し上げましたが、国際法、国連憲章を含みます実定国際法の問題として核兵器の使用が違法であるかということにつきましては、先般私から野間先生に御答弁申し上げたとおりでございまして、従来から政府は、核兵器の使用というものは、国際法のベースにございます人道主義というものから見て人道主義には反する。しかしながら、厳密に言って、いままさに先生が言われましたような自衛権の行使の一環としての核兵器の使用というものまでも実定国際法が禁じているということは言えない。これは従来から政府が一貫していろいろな機会に申し上げているとおりでございまして、この認識については現在も政府の認識は変わっておりません。
  252. 野間友一

    ○野間委員 それがおかしいのですよ。局長、いま申し上げたように、このときにすでに出ておるわけですよ。じゃ、そこを確認しますけれども、イギリスがあらゆる場合の核兵器の使用を制限することはおかしいとクレームをつけた。イタリアがそれに即してどういうふうに変えたかといいますと、憲章に違反する核兵器の使用はとわざわざつけまして、憲章に違反する場合と違反しない場合があり得るという修正案を出したんですね。アメリカはこれに乗っかったという経過があるわけでしょう。この経過だけひとつ確認してください。
  253. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  イタリア修正案には賛成いたしておりません。
  254. 野間友一

    ○野間委員 率直に言ってくださいよ。すぐ皆ごまかすんだよ。だから、六一年当時は、ずばり国連憲章に違反するということを明確に認めているわけですよ。しかも、これに対して修正案が出され、いろいろな論議があって、修正案に対しても賛成せずに原案に対して賛成をしておる。いまも国連局長の話がありましたけれども、そういう態度ですね。だから、そのことは明確に核の抑止力とは合わない、矛盾するわけです。この立場をいまも堅持して、国連の場で軍縮特別総会に向けて、唯一の被爆国でありますから、当然力を入れてやるべきである。ところが、その後、国連でのいろいろな諸決議を見てみますと、棄権から反対に変わっておりますね。棄権になったのは六七年、二十二回。それから、明確に反対になったのは三十五回、八〇年十二月であります。八〇年といいますと、この十二月ちょうどレーガン政権が誕生したとき、当選した後なんですね。ですから、このころからうんと百八十度転換して反対に回っている。ここにも対米追随の姿勢が明らかに出ているわけですね。この三十五回総会のときには逐条審議、逐条採決は私はなかったというふうに——いま首を縦に振りました。そうですね。だから、国連憲章に違反するかどうかの日本の意思表明は明確にされておりません。それをやったのは六一年のときだけだと思うのですがね。そういうふうに神聖な国連で一たん明確な意思表示をしながらあいまいにずっと後退して棄権し、そして反対に回る、しかも中身そのものは国連憲章に核兵器を使用することが違反するかどうかだけの問題ですね。法律上の判断だけが求められている。私は政治的な背景とか、だれがどういう背景でこれを提案したかということは一切言っておりません。そういうこと自体に対する政府の対応が六一年当時は非常に明確であったのが、棄権になり、反対になり、しかもいまの栗山局長の話によると、これは非常にあいまいで、従前から変わらないという答弁。そういう態度は二枚舌だ。そういう態度をとり続ける限り軍縮に向けての日本政府の役割りは十分に果たすことができない、このことを私は強調して、あと二十七日、二十八日あるいはその後軍縮に向けての質疑をやりますので、そのときにまた続けたいと思います。  次に、巡航ミサイルの点についてお伺いします。  いわゆる藤山・マッカーサーの口頭了解第二項ですが、ここでは「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」これが事前協議の対象となるということになっておりますが、ここで言う「中・長距離ミサイルの持込み」が事前協議の対象とされておる理由について、一言簡単に説明してください。
  255. 栗山尚一

    栗山政府委員 御承知のようにこれは一九六〇年の安保改定のときに、核兵器の持ち込みについてはわが国の意思に反してこれが行われることがないようにということで事前協議制度というものができて、その事前協議において「装備における重要な変更」という形で核兵器の持ち込みを事前協議制度のもとに置いたということでございまして、そこの「装備における重要な変更」とは何かということで藤山・マッカーサー口頭了解におきまして「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」、それが「装備における重要な変更」の意味であるということで日米間に了解されたということでございます。
  256. 野間友一

    ○野間委員 三十五年の四月の衆議院の安保特で、これは防衛局長ですか加藤さんが、核兵器専用のものは運搬用具といえども事前協議の対象になる、こういうふうに答弁しております。これは間違いありませんね、いまでも。
  257. 栗山尚一

    栗山政府委員 従来から御答弁申し上げておりますように、中長距離ミサイルということでICBMとかIRBMとか、そのようなものは核弾頭と切り離してあっても当然核兵器の一部とみなされるということから、そういうような従来の政府答弁があるというふうに承知しております。
  258. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、いま栗山さんも言われましたけれども、核弾頭が装着されていなくても、中距離であれ長距離であれ、ミサイルの持ち込みそのものが事前協議の対象になる、こういうことですね。
  259. 栗山尚一

    栗山政府委員 それが核専用のミサイルということであれば、そういうことでございます。
  260. 野間友一

    ○野間委員 この際お聞きしておきたいのは、この場合の中距離ミサイルですね。この中距離の射程というのは一体どのくらいなんでしょう。
  261. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 ここで加藤政府委員答弁しておりますのはIRBMということでございまして、IRBMについてはいろいろな種類がございます。したがって、この中で特定して何キロという答弁というものは私は承知してないわけでございます。
  262. 野間友一

    ○野間委員 衆議院の外務委員会昭和五十年に丸山防衛局長が答えていますが、何ぼと言っていますか。
  263. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 ちょっといま議事録を見ますから、お許し願います。——たまたまここに資料を持ってきておりませんけれども、私の了解では、IRBMというのは大体二千から五千の間、最近長いのは五千ぐらいになっている、こういうことでございます。
  264. 野間友一

    ○野間委員 巡航ミサイルについて聞くというふうに言ってあるわけですから、しかもプロでしょう、北米局長は、調べておいてくださいよ。  丸山さんの話はいまのと当たらずといえども遠からずといいますか、ミリタリーバランスによりますと千五百ないし四千マイル、キロにしたら二千七百キロから七千ですか、これが局長答弁なんですね。  そこでお聞きしたいのは、一九八四年以降レーガン政権がいわゆる攻撃型原潜に巡航ミサイルを配備するということが予定されておりますが、原潜から発射される対地トマホーク、この射程は一体どのぐらいあるのか、お答えいただきたいと思います。
  265. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 私の記憶が間違いなければ、千五百マイルというのではないかと思います。
  266. 野間友一

    ○野間委員 八〇年−八一年のジェーン年鑑ですが、ここには二千四百キロから三千二百キロ、こうなっていますね、対地用のトマホークですよ、どうですか。
  267. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 私たちが持っておりますあれでは、トマホークというのは約千五百海里ということでございます。
  268. 野間友一

    ○野間委員 次にお伺いしますが、この原潜から発射される対地トマホーク、これは対地攻撃用ですね、これはすべて核弾頭専用だというふうに思いますが、この点についてはどうでしょうか。
  269. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 これは当委員会その他でもお答えいたしておりますが、このトマホークは核及び非核両用でございます。
  270. 野間友一

    ○野間委員 いや、私が聞いておるのは、対地用の、対地専用ですよ。
  271. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 対地用についても核と非核と両方あるというふうに私は理解しております。
  272. 野間友一

    ○野間委員 恐らくあなたの言われるのは、あれじゃないですか、対地用の中距離ミサイル、それでなくて、それより足の少し短い八百キロですね、これが一つあるようですけれども、それを指して言われておるのじゃないかと思うのですけれども、通常の弾頭、これは八百キロのやつが一つあるので、これは私が聞いておるのじゃなくて、対地用の足の長い中距離用のミサイルはすべて核弾頭を装着しておるということではなかろうかということ、これについての質問です。
  273. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 繰り返しになりますけれども、通常の弾頭を載せた対地攻撃用についてもミサイルというのはあるわけでございます。ただ、距離は通常の場合と核弾頭搭載の場合によっては、その到達の距離というのは若干変わってくるということは言えるかと思います。
  274. 野間友一

    ○野間委員 だから、私が聞いておるのは、中距離ミサイルで対地用のものはすべて核弾頭を装着するものということではないか、ということです。
  275. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 いま委員お尋ねのは、その中距離あるいはIRBMというものはどういうふうに定義するかによって変わってくるわけでございますが、通常の弾頭は、先ほど申し上げましたように、若干距離が短くなり、核の場合は長くなるというのが、弾頭の大きさあるいは重さによって変わってくるのではないかと思います。
  276. 野間友一

    ○野間委員 私が聞いておるのは、対地用のトマホークですね、巡航ミサイル、これについて聞いておるわけですね。これは大変不勉強のようですけれども、グリフィス海軍作戦部副部長の七八年二月二十一日の米上院軍事委員会での証言がありますけれども、これは御存じでしょう。(「それはどうなっているのですか。そんな頼りない答弁じゃしようがないですね、委員長」と呼ぶ者あり)
  277. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 グリフィス証言は、トマホークをどういうふうに艦用に載せるかということを非常に事細かく絵をかき、そして技術的な点を含めて書いてあるというのがグリフィス証言の主な内容でございます。
  278. 野間友一

    ○野間委員 それには、地対地、艦対地それから潜水艦対地、これはどうなっていますか、弾頭は。
  279. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まず、地上攻撃用巡航ミサイル、これは地上目標を攻撃するために設計されている、米戦術兵器、核装備である、しかし通常弾頭のオプションの可能性もあるということを述べているわけでございまして、地上攻撃のクルーズミサイルとして、その後で、タクティカルウエポンあるいはニュークリアアームド等を述べているわけでございます。それからもう一つは、対艦攻撃用の巡航ミサイル、これも核装備のオプションを排除しているわけでないが、通常弾頭装備の戦術兵器であるということを次に述べております。最後に、このトマホークが積載される艦級、艦のクラスについて、このグリフィス提督が証言しているというのが、グリフィス証言の主な内容でございます。
  280. 野間友一

    ○野間委員 ようわかりませんね。これは書いてあることを事実を聞いているわけで、地対地の場合には弾頭は核、核だけでしょう。一つずつ確認します。
  281. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 それも先ほど申し上げましたけれども、核装備であるけれども通常弾頭のオプションの可能性もあるということを書いてございますので、やはり両用というふうに理解できると思います。
  282. 野間友一

    ○野間委員 そんなことないですよ。これはちゃんと核だけと書いてありますよ。艦対地もそうですよ。潜水艦対地もそうですよ。これは書いてあることは事実ですからね、事実について私は聞いているわけですよ。整理してください。質問できませんよ。
  283. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 いま私が申し上げたのはその日本語として申し上げたので、地上攻撃用巡航ミサイルは、地上目標を攻撃するために設計されているものであって、戦術兵器、核装備である。しかし、通常弾頭のオプションの可能性もある、というふうにこれは書いてあるわけであります。
  284. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ、また宿題にしておいて、これを整理しておいてください。その点については、次回にまた聞きたいと思います。いずれにしても、この巡航ミサイル・トマホーク、これはいま申し上げた対地用は、あなたはすべてじゃないというふうに言いました。私も八百キロ程度のものは、これはブルッキングス研究所の書き物、報告書を見ますと、通常の弾頭をつけたものもあり得るというふうにありますけれども、少なくとも中距離用のミサイルについては、対地用のものはそのすべてが核弾頭というのが、紛れもない事実なんですね。これはちょっと整理しておいてください。  そこでお聞きしたいのは、いまIRBMですか、そういう話がありましたけれども、少なくとも先ほどからの話でも、核弾頭が装着されれば、それは核弾頭は現に装着されてなくても、核専用のものについては事前協議の対象になる、こういうことをいま言われたわけですけれども、IRBM、こういうふうに一つのまくら言葉をつけて言われましたけれども、この巡航ミサイルの場合でも、いま申し上げたように、これが対地用のものであれば核弾頭を装備する。専用だという場合であれば、これは事前協議の対象に当然なる、核弾頭が装着されてなくてもですね。そういうふうに事前協議から論理的に出てくると私は思うのですけれども、その点について確認したいと思います。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  285. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 先ほど条約局長からも答弁してございますように、そこで言っている中距離弾道弾、これは弾頭とそれから運搬手段が離せないものということでございます。したがって、トマホークのように核・非核両用の搭載であれば、これは搭載する弾頭とそれから運搬手段とは切り離せるということで、地上配備のものとは観念としては違うというふうには考えられるのじゃないかと思います。
  286. 野間友一

    ○野間委員 しかし、それは事前協議の口頭了解の中にどんなに書いてありますか。核弾頭及び中距離ミサイル、それだけでしょう、違いますか。だから、先ほど栗山さんが言いましたけれども、核弾頭専用であれば、核弾頭を装備してなくても、いま言われたようにこの持ち込みは事前協議の対象になる。これは事前協議そのものの中から当然そうなるわけでしょう。また確認ですよ。
  287. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 核弾頭そのものは事前協議の対象になる、これは明白でございます。
  288. 野間友一

    ○野間委員 いや、だから核弾頭専用の中距離ミサイルの持ち込みについて聞いておるわけです。
  289. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 その運搬手段が、経済性等の理由から核をつけなければ意味がないというものであれば、これは当然藤山・マッカーサー口頭了解の対象になる事前協議の対象というふうにわれわれは考えておるわけです。
  290. 野間友一

    ○野間委員 巡航ミサイルはそうなっているわけです。これはまた続けてお聞きしたいと思います。  最後に、日韓経済協力についてお伺いしますが、きょうの朝刊によりますと、鈴木総理が記者団に対して、五月じゅうに決着をつける、すでに政治決断をしておるということを明確に述べでおられますが、この点については、外務大臣、間違いないと思いますが、いかがでしょうか。
  291. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほどお答え申し上げましたが、私には、各省庁をよく調整して、なるべく早くこの問題に結論をつける方がいいのではないか、そういうことで、特に内容等には触れておらず、いま申し上げたような趣旨の御指示でございました。
  292. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、当然のことながら、五月じゅうには何とか決着をつけたいということで作業を進めておられるということなんでしょうか。
  293. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 おおよそその見当でございますが、いままでにも非常に難航をしておりますので、果たしてそういう見通しになるかどうかは別として、できれば結論を得たい。いい、悪いは別ですが、結論を得たい。
  294. 野間友一

    ○野間委員 新聞報道を幾つかずっと見てみますと、金額的にはほとんど合っているわけですね。四十億ドルのことが何度も言われておりますが、円借款、それから輸銀、市中銀行等々、金利も含めて、ほとんどの報道が合っておるわけです。それによりますと、四十億ドルの大枠、それから円借款が十三億ドル、これはどうやら大蔵省あるいは外務省、いずれからも出ておるようですけれども、あとは金利とか経済協力の条件、こういうものの事務的な話だけはまだ残っておる。しかし、大まかと申しますか、それらの金額等々については、すでにもう政府内では決まっておるのだというのが大方の報道なんですけれども、その点についてはどうなんでしょうか。
  295. 木内昭胤

    ○木内政府委員 けさも御答弁申し上げましたとおり、現在関係省庁で鋭意調整中でございます。韓国側の希望されておるような状況にはなかなかいかないという意味で、調整が難航いたしております。
  296. 野間友一

    ○野間委員 調整が難航しておるということは、大蔵省と外務省との間で金額的に食い違いがあるということなのか、対韓国との関係で言っておられるのか。
  297. 木内昭胤

    ○木内政府委員 一つは関係省庁間、それから今後の問題としては、韓国との間に難航することが予想されるわけでございます。
  298. 野間友一

    ○野間委員 いずれにしても、その六十億ドルないしは四十億ドルにしても、額が非常に大き過ぎる。大蔵省の考え方でも、これは倍増計画で計算して五年間八億ドル、こう言われておる。ところが、十五億ドルになるのか十三億ドルになるのか、新聞報道等々にも出ておりますけれども、これは異常な突出としか考えられないわけですね。  そこで、対韓援助の方針、姿勢について最後にお聞きしておきたいと思いますが、西側社会の総合安全保障戦略を効果的に行うために経済協力を強化するのだということを、オタワ・サミットのときに鈴木総理が言われております。そういう基本方針、つまり経済協力は総合安保戦略の観点から行うということが明らかなようですが、対韓援助についても、こういう方針でやっておられるわけでしょうか。
  299. 木内昭胤

    ○木内政府委員 韓国の民生安定のために協力するというのが基本方針でございます。
  300. 野間友一

    ○野間委員 オタワ・サミットの際の鈴木総理発言、これが基本的な指針のようですけれども、これに基づいてやっておられるのじゃないのですか。
  301. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先ほど答弁申し上げたとおりでございます。
  302. 野間友一

    ○野間委員 それがわからぬから聞いておるんだよ。オタワ・サミットで言っておるでしょう。西側社会の総合安全保障戦略を効果的に行うために行うのだと、総理は言っておるでしょう。こういう基本方針に基づいてやっておるのかどうかと聞いておるのです。
  303. 木内昭胤

    ○木内政府委員 基本的には民生安定のための協力でございますが、西側諸国の民生安定ということも十分考えられるわけでございます。
  304. 野間友一

    ○野間委員 わけのわからぬことをぐずぐず言わぬと、はっきり答弁しなさいよ。時間がたってしょうがないじゃないですか。  結局、いろいろなことをごまかすけれども、われわれが見る限り、こういう金額一つとってみましても、総合安保戦略から実施しておるというふうにとる以外にはないと思うのです。そういう対韓援助というものは、いわゆる安保絡みかどうかということが再三論議されましたけれども、いまの答弁からしても非常に遠慮しいしい、ごまかしながら言われましたけれども、この金額からしても、やっぱり安保絡みとしか考えられないと思うのです。  もう一つ、最後にお聞きしたいのは商品借款の問題ですが、これについても、新聞報道等々では、これは行わない、これはいたしませんということが報道されております。この点については、中間の問題等々含めて論議がされましたけれども、この商品借款については、これはしないという方針はもうすでに確定しておるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  305. 木内昭胤

    ○木内政府委員 韓国側にはすでに、商品援助の困難なることは通じてございまして、この基本的な方針というものは容易に変えがたいというふうに考えております。
  306. 野間友一

    ○野間委員 終わります。      ————◇—————
  307. 中山正暉

    中山委員長 次に、投資促進及び保護に関する日本国とスリ・ランカ民主社会主義共和国との問の協定締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国インドネシア共和国との間の協定締結について承認を求めるの件並びに南極地域動物相及び植物相の保存に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯山勇君。
  308. 湯山勇

    湯山委員 私は、ただいま議題になりました南極地域動物相及び植物相の保存に関する法律案について質問をいたします。  最初にどうしても申し上げなければならないのは、この法律が今日まで日本政府によって処置されなかったということが諸外国に対して非常な不信感を与えている並びに大変な迷惑をかけている。と申しますのは、さきの南極条約協議国会議におきまして、南極地域における哺乳類、鳥類等の保護について合意がなされております。この合意は、十二でしたか十三でしたかの関係国全部が承認をしなければならない。日本の場合はこういう立法措置によって承認ということになるのであって、すでに他の関係諸国は全部これを承認しております。日本だけがおくれている。しかも、この合意措置がなされたのは一九六四年でございますから、もう十八年も前です。早い国は、南アフリカは六四年にやっております。それから、ソ連、アルゼンチン、ノルウェー、六五年にやっております。ところが、日本はようやく八二年というのですから、そういう任務といいますか責任を負ってから十八年かかっている。他の諸国が全部終わっているのに、日本がおくれたために、まだこの措置は効力を発揮していない。はなはだ日本にとりましては不名誉なことであって、これは外務省の国連局科学課で出している資料で見ましても「我が国の承認の遅れは、南極の自然環境保護について我が国が非協力的であるとの印象を他の協議国に与えており、我が国の対外関係上極めて望ましくない」とあります。私どものところへも早くしてほしいという関係者の要望がしばしば入っております。それから日本はこういうことについて不熱心だということにつきましては、イギリスその他の動物愛護協会等からも日本の動物虐待というようなことで幾つかの抗議——このことじゃなくて抗議も来ております。それらの根底にいまのような不信感があるのであって、私は鯨の国際協議において日本はけしからぬという批判をしばしば受けるそのもともここにあるのじゃないかとさえ思われます。一体何でこんなに外国に迷惑をかけて不信感を持たれるようなところまでできなかったのか。すでに他の国は全部やっておりますからサンプルもあるはずです。それからまた、どういう内容でやるかというのは、すでにこれよりもはるかに詳しいものがいまの各協議国の合意によって文書になったものも出ております。一体なぜこんなにおくれたのか、このことについて釈明を願いたいと思います。
  309. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおりこの措置が採択されましたのが昭和三十九年でございますから、それからもう十八年経過しているわけでございまして、この間に日本がこの措置を承認できなかったこと、このようにおくれましたことは全く申しわけないと思っております。すべて事情は先生御指摘のとおりでございますが、ただ、こういうふうにおくれました背景につきまして若干御説明をさせていただきたいと思っております。  まず一つは、南極という日本の領域外の地域にあるということ、それからこの地域がきわめて特殊な地域でありまして、国内法の内容を担保するのが非常にむずかしい状況にあるということでございます。  第二点が、南極の動植物に関係してまいります、これはちょっと申しわけない言葉でございますけれども日本の各省関係で申し上げますと、たとえば南極のアザラシにつきましては農林水産省、それから南極の観測につきましては文部省、それからいわゆる環境保全という観点につきましては環境庁、もし違反しました場合に罰則をかけることにつきましては法務省、それからこういったものをもしつかまえて日本に持ち込んでまいりましたときには大蔵省というようなことでございまして、所管官庁をどこにするかという点、それも一つの非常に大きな問題であったわけでございます。  しかしながら、いまこの時点になりまして南極条約に基づく国際協力というような観点からこの法律を外務省が主管しよう、外務省にとりましてはきわめて異例の国内法だと思いますけれども、外務省が所管しようということ、それからこういう特殊な地域でございますけれども、何とか勧告の中身を担保できる、こういうようなことが整いまして、今国会に御審議をお願いするに至ったわけでございまして、先生御指摘のとおりこのようにおくれましたことにつきましては、国内的にもあるいは対外的にも非常にまずかったと思っておりますが、何分にも今国会の御審議をいただきまして、一刻も早く承認という段階にこぎつけたいと思っておりますので、ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
  310. 湯山勇

    湯山委員 大臣にお尋ねいたします。  大臣が農林大臣をしていらっしゃったのは何年前でございましたか。
  311. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 七年ぐらい前だと思います。
  312. 湯山勇

    湯山委員 そのころは日本は法律をつくって承認しなければならないという条件下にあったわけでございますから、外務大臣にも幾らかの責任はおありになるのじゃないかというようにも思います。  いま参事官の御答弁で見ますと、結局日本の国内体制が一番大きな原因になっている。農林省あるいは文部省、環境庁、大蔵省、そこらのとにかく縄張り争いというのですか、無責任さというのですか、そういうことが今日こういう国際的な不信を招く大きな原因になっているということについて、大臣はどうお考えでしょうか。
  313. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま御説明がありましたように、各省庁間の意見の一致を見ずに所要の法律案がおくれたということが国際的に迷惑を及ぼしておるというこのことにつきましては、非常に責任を感ずるわけでありますが、今同外務省が主管となってこの法律案を提案することができましたことは、それなりにおくればせながらまとまったということで、これが国会通過を早く図りたいと念願しておるわけであります。
  314. 湯山勇

    湯山委員 おくればせでもどうにか間に合ったというのならいいのですけれども、間に合わないで日本承認するのを待っている。発効まではもう二年にもなります。それだけ全部の国が待たなければならない、非常に迷惑をかけている、これはおくればせのうちに入らぬのではないかと思います。  そこで、その根本ですが、これは日本政府にというか日本の国に国策として南極をどう考えるかという、その基本が確立していないためではないかということさえも私は感じますが、その点はいかがでしょうか。
  315. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  日本の南極に対します国策と申しますのは、基本的には昭和三十六年に発効いたしました南極条約、これは日本も締約国の一つであり協議国の一つであるわけでございますけれども、この南極条約に基づくのかと思います。  南極条約の趣旨と申しますのは、先生も御承知のとおり、南極地域を平和的に利用する、それからこの地域の環境というものを人類の将来の世代のために保存しておくということ、それと同時にこの地域の科学的調査国際協力によって進めていく、こういうことであろうかと思っております。日本もこの南極条約先ほど申しました締約国の一つといたしまして、南極条約の趣旨というものを日本の南極に対します基本的な政策として考えておる次第でございます。
  316. 湯山勇

    湯山委員 いまの方針でいかれることについては異議はございませんし、そうでなければならないと思います。その中でいま心配なことがたくさんあるのですね。基本的に平和目的のみに利用するということですけれども、例のフォークランドの問題、南極地域の領土権の問題でアルゼンチン、イギリス、チリが競合している。領有の問題でいろいろあるようです。特にイギリスとアルゼンチンはいまのような関係にある。  そこで、平和というものは常に強調していかなければなりませんし、そのための努力をしていかなければなりませんが、これに関連して一つだけお尋ねしたいのは、この南極条約の七条五項の(c)で、日本というよりも関係国は南極地域に送り込むための軍の要員または備品について他の締約国に通告を行うことになっておる。日本の場合は自衛隊の「ふじ」が参加しています。これはこの条項によって各国に通報、通告しておるのかどうか。
  317. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  南極条約七条五項の(c)には確かに南極地域に送り込むための軍の要員または備品については各国に通報することになっております。そこで、現在わが国の南極探険には御指摘のように海上自衛隊所属の砕氷船「ふじ」がこの目的のために協力しているわけでございますけれども、この南極条約で言う「軍の要員又は備品」というところにはわが国の自衛隊のように専守防衛を目的とするものも含めているというふうに考えていいのではないかと思います。すなわち、国防目的のために武器等を有して、場合によってはこれを使用することがあるという組織を一般的に、この条約の目的の上からはこれも含めて解するということで何ら差し支えないと思いますので、わが国といたしましては、この南極条約に基づきまして南極の活動につきましてわが国の計画を文書で各国に通報しておりますけれども、その際に砕氷艦「ふじ」が自衛艦であること及びその乗組員が自衛隊員であることも含めて各国に通報している次第でございます。
  318. 湯山勇

    湯山委員 いまのわが国の自衛艦あるいは自衛隊がこういうことに協力するのは差し支えないというような、こちらだけの解釈だと思いますが、それではこれは自衛隊の海外派兵ということにはならないのでしょうか。
  319. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 従来いわゆる海外派兵という場合には、一般的に言って武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することであるというふうに定義づけて御説明申し上げておるわけでございますけれども、そのような定義に関連して申し上げますと、「ふじ」の派遣というものは武力行使を目的としているものではないという点から海外派兵には当たらないというふうに解しております。また、国内法上も自衛隊法の第百条の四に特に規定してございまして、「自衛隊は、長官の命を受け、国が行なう南極地域における科学的調査について、政令で定める輸送その他の協力を行なう。」ことができるというように自衛隊法の中にも根拠規定を置いてございますので、これに基づいて協力をするということは差し支えない、海外派兵には当たらない、こういうふうに解しております。
  320. 湯山勇

    湯山委員 これは問題があると思います。と申しますのは、南極観測は海上自衛隊の固有の業務ではなくて、もともと海上保安庁がやっておった時代もあります。したがって自衛隊がやらなければならないということでもありませんし、それからまた南極観測についての法律は日本自衛隊法しかないのです。こういうことを考えてみますと、ここには疑義がありますけれども、これは専門家がいらっしゃいますから適当なときにやっていただくことにして、この点は私は指摘だけにとどめます。  そこで法律についてですけれども、南極地域定義、これは六十度以南とはっきりしております。が、その地域における禁止事項、行為の制限、これが第三条でなされております。この第三条の行為に違反した場合には第九条によりまして一年以下の懲役または二十万円以下の罰金に処せられるということになっておりますが、第三条の禁止規定の一項の一号で見ますと「南極哺乳類若しくは南極鳥類を捕獲し、殺し若しくは傷つけること又は南極鳥類の卵を採取し若しくは傷つけること。」こうありまして、その「南極鳥類」「南極哺乳類」というのは何かというと第二条で規定がしてあります。それで、その種類については、一体何と何とが南極鳥類であり何と何とが南極哺乳類であるかということは「外務省令で定める」ということになっておりますが、この省令というのは種類をずっと書き並べるということになるのか。日本だけ別なものをつくるわけにはいかないと思います、各国共通でなければならないと思いますが、これはどういうふうに示されるのか伺いたいと思います。
  321. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  この法律を御承認いただきました暁には外務省令でこの哺乳類及び鳥類につきましては次のような名前を明示することを考えております。まず哺乳類についてでございますけれども、合計七種類を考えております。これは……(湯山委員「言わなくていいですから」と呼ぶ)七種類でございます。それから南極鳥類の方でございますけれども、これは二十二種類を明示することを考えております。  ちなみに、先生質問の第二番目のほかの国の法令はどうかという点でございますが、たとえば私どもの調査しましたフランスでございますけれども、フランスにつきましてはやはり同様に明示してございます。ただ若干明示の範囲が違うのでございまして、フランスの場合は、哺乳類は三種類それから鳥類は七種類を規定しております。それからアメリカにつきましては……(湯山委員「時間がありませんからいいです」と呼ぶ)というふうに明示している国もございます。
  322. 湯山勇

    湯山委員 そこで、省令の原案があればひとつお見せ願いたいと思うのですが、その七種類の中に鯨は入っておりますか。
  323. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 鯨は入っておりません。
  324. 湯山勇

    湯山委員 鯨も哺乳類であることは子供でも知っていますし、しかもこれが統括的なもので鯨の協定とかなんとかというのはその部分的なものですから、今後の問題ですけれども、協議国の会議でやはり入れるという方向で進めていくべきではないかということを申し上げておきたいと私は思います。  次に、種名を七種類並べる。その中に、特に勧告措置によりますと、哺乳類では特別保護種というのがあります。これは特別に明示があるのですか、ないのですか。
  325. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 七種類の中には、先ほど申し上げました哺乳類七種類明示する予定でございますけれども、その中には、勧告措置の附属書にございます特別保護種につきましては明示いたしてございます。
  326. 湯山勇

    湯山委員 特別保護種という明示はありませんか。
  327. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 今後検討し、作成を考えております外務省令の中には、特別保護種という名称は使っておりません。
  328. 湯山勇

    湯山委員 特別保護種というのは、他のものと違いまして非常に厳しい規定がございます。たとえば、他のものであれば学術研究とか博物館資料とかいうものは適用から除外されますけれども、特別保護種はそういうのもオープンじゃありません。ことに博物館の資料などはだめである、ただやむを得ない学術上の目的のみという限定があるわけですから、これは明示すべきだと思うのです。何らかの形で明示しなければ、これだけの勧告措置にきちっとあって、各国とも守るものが日本で明示されていないということはよくないことだと思いますので、ぜひ御配慮を願いたいと思います。
  329. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先ほど答弁申し上げましたとおり、この特別保護種の二種類は——これは広い意味で三種類でございますけれども、三種類は外務省令の中には明示する予定でございますが、さらに先生御指摘のとおり、こういった特別保護種につきましてはこの法律の「適用除外」というのが第四条にございますけれども、そこで許可を与えますときには、これは非常に限定的に許可を与え、原則としてこれは許可しない、むしろきわめて例外的な場合にのみ許可を与えるということで、省令あるいは法律の運用に当たりまして、先生御指摘のような特別な配慮を払っていきたい、こういうふうに考えております。
  330. 湯山勇

    湯山委員 それはやはりみんなに知らせる必要があるので、この勧告措置も公示しておるわけです。知らないと、出してまたチェックされるということもよくないことなので、何らかの形でいまのように明示することをひとつ希望いたします。  その次に、しかも特別保護種でオットセイは二種類明記されております。アザラシは四種類ぐらいですか五種類ぐらいあって、一種類だけ特別保護種になっています。これはどういうわけでしょうか。
  331. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生御指摘の特別保護種として指定しておりますアザラシは、現在生存数が非常に少なくてかつ減少傾向にある種類である、こういうふうに承知しております。
  332. 湯山勇

    湯山委員 ロスアザラシだけが減少傾向にあるのでしょうか。ほかのアザラシはそうでないですか。
  333. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私どもが関係の専門家から聴取したところによりますと、先生御指摘のロスアザラシは確かにおっしゃるように減少傾向にあるわけでございますけれども、その他の種類のアザラシ、カニクイアザラシとかあるいはウエッデルアザラシ等々につきましては、まだ必ずしも減少傾向にはないというふうに承知いたしております。
  334. 湯山勇

    湯山委員 それは必ずしも当たっておりません。どの程度正確かわかりませんけれども、現在の調査によればロスアザラシは二十万頭ぐらいいる。しかしいまおっしゃったカニクイアザラシ、これはもう一千万以上もいるのじやないか。だから、これを除外するのはいいです。しかしウエッデルアザラシとかミナミゾウアザラシは、ロスアザラシの二十万に対して六十万とか七十万程度であって、これは当然保護すべきものだと思います。  そこで、私が申し上げたいのは、勧告措置そのものが完全ではありません。これだけ迷惑をかけておるのですから、日本は積極的な姿勢を示す必要がある。協議国会議のときに、次の機会にこの二種類はどうしても入れるべきではないかというような提唱を日本はすべきだ、こう思いますが、いかがですか。
  335. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 いま先生御指摘のアザラシでございますけれども、これはアメリカとかイギリスの観測隊の調査結果でございますが、ウエッデルアザラシは約百万ぐらいと言われております。それからミナミゾウアザラシが約六十万ぐらい、それからヒョウアザラシが約五十万頭ぐらい。  そこで、いま先生御指摘の点はまさにそのとおりでございまして、今後専門家の意見等々を聞きまして、もしこれが減少傾向にあるというようなことでございますと、これはやはり勧告措置の附属書の変更をして保護種をふやすということが必要かと思われますので、これは専門家の意見等も徴しまして、もしそういうことであればしかるべき協議国会議においてこれを関係各国と相談してまいりたい、こういうふうに思っております。
  336. 湯山勇

    湯山委員 私の意見としては、やはり百万頭というのは一つの区切りになるかと思います。他は一千万頭もいるのですから、百万頭未満のものはやはり特別保護をするということをぜひ提唱してもらいたいと思います。  その次です。三条の三によれば、特別保護地区に関して、これを採取したりあるいは傷つけてはならないということの前提として立ち入ることを禁止しています。立ち入らなければ採取もできないし傷つけることもできないのが原則であって、何か二重規定のような感じがしますが、これはどうお考えですか。
  337. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 確かに湯山先生御指摘のとおり、常識的に申しますと、立ち入らなければ採取できないということは全くそのとおりであると思います。しかしながら、他方、この特別保護地区というのは非常に貴重な地区でございまして、まあ特殊な場合以外はできれば本来の立ち入りもなるべく制限したい、こういうようなことから、採取をしないで立ち入るということも理屈としてはあり得るのでございまして、したがいまして両方を規制した、こういう趣旨でございます。
  338. 湯山勇

    湯山委員 これによって立ち入りは禁止しておるのですよね。だから、両方別々じゃなくて一体のものですから二重にする必要はないんじゃないかということを申し上げておるので、これは念には念を入れたというなら別ですけれども、そうでなければこれはむだなことではないか。
  339. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生のおっしゃるとおり、全く念には念を入れたという趣旨でございます。
  340. 湯山勇

    湯山委員 それだけ念には念を入れるべきものですから、さっきのアザラシの問題も念には念を入れてほしい。  次に、第三条二項についてです。ここでは、一般的に生息状況あるいは「生息環境に影響を及ぼすおそれのある行為をしてはならない。」という規定がございます。この規定について、前の勧告措置によれば相当厳重に規定がしてあります。たとえば犬を放しておいてはいかぬ、それからヘリコプターあるいは車両の運転、鉄砲を撃つ、これらについては二百メートルとか三百メートル以内ではいけないというような規定があるわけです。ところがこの法律では、それらについて別に何で定めるとかそういったような規定が何にもないので、これは何らかのそういう条文による明示がなければいけないんじゃないかという感じを持ちますが、どうでしょう。
  341. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生御指摘の三条二項でございますけれども、三条二項によりまして南極地域においては哺乳類あるいは鳥類の生息環境に影響を及ぼすおそれのある行為はしてならないということを規定してございまして、有害な干渉の防止ということをこの三条二項は規定しておるわけでございます。この有害な干渉の防止をどういうふうにして担保していくか、これは勧告措置の方にも合理的なというか、できる限りのことをやるという規定が第七条にございまして、ここにいろいろな規定が書いてあるわけでございますが、こういう規定を今度この法律が御承認いただきました暁には勧告措置とこの法律をあわせまして南極渡航者、主として南極渡航者というのは——現在のところ種類がきわめて限られるわけでございますが、この南極渡航者に対しまして周知徹底をすることにいたしまして、これらの担保というか防止を図っていきたい、こういうふうに考えております。
  342. 湯山勇

    湯山委員 その内容は大体勧告措置に準ずるようなものにして、しかも文書にして出すということと理解してよろしいですか。
  343. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 そのとおりでございます。
  344. 湯山勇

    湯山委員 次に、順序が前後しますけれども「適用除外」、四条についてお尋ねしますが、勧告措置ではこの法律にない項目がございます。それは許可証を出す発給目的として、人または犬に不可欠な食物を限られた数量で供給するということが許可される項目の中に含まれておりますけれども、この第四条にはそれが抜けておるわけです。日本人についてはその必要はないというようにお考えなのか。これは当然入れておくべきじゃないかということを感じますが、いかがですか。
  345. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生いま御指摘のとおり、この勧告措置にはこういうことは原則的というか例外的にいいと、こうなっており、他方日本の法案の方は一応禁止してあるわけでございます。しかしながら同時に、法案の第四条の第三号の規定によりまして、こういったような場合には例外的に外務大臣の許可を与えることができる、こういうふうに規定しておるものでございますから、書き方としては法案の方がやや厳しいかと思いますけれども、これはやはり勧告措置を受けておる法案でございますから、勧告措置の立法趣旨を体しましてこの例外的に許可を与えることはあろうかと思っております。
  346. 湯山勇

    湯山委員 そうではなくて、これは勧告措置もそうなっているわけですし、それから前に樺太犬を連れていったというようなこともありますし、それから人だってやはり缶詰めやそういうものだけではやっていけないということもはっきりしておりますので、当然の措置として認められるべきものですから、これはやはり条文に明記するということが私は正しいと思います。それがまたこの勧告措置の趣旨でもあるというように考えますが、その点はいかが考えられますか。
  347. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生の御指摘は全くそのとおりであると思うのでございますけれども、この適用除が必要なことで、どういう協議をするのか、一体、漠然としておってわかりかねます。これはどういうことでしょうか。
  348. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 第四条の適用除外の運営に当たりましては、ここに書いてございますように文部大臣——文部大臣は先生承知のとおり、南極観測隊の本部長を過去、ちょうど二十五年ぐらいにわたって推進してきたわけでございますが、そういうようなことで非常に南極地域に対します豊富な経験と知識を持っておるということでございますので、たとえばどういうふうな場合なら動植物を持ち込めるのか、あるいはどういうふうな場合なら、どういうふうな学術目的があれば、あるいは博物館あるいは科学研究のためであればどういうふうな採取ができるのかということを私どもは文部大臣と御相談して、その知識をかりて、それに基づいて運営していきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  349. 湯山勇

    湯山委員 もうちょっと具体的にいまの点。たとえばこういうものは文部大臣に協議するという、いまの二つの例ですね、それでどういうことになりますか。
  350. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 たとえば学術研究ともう一つは博物館用というのがございますが、学術研究にどういうふうな量が、どういうふうな植物あるいは動物が必要か、こういう点。それから博物館につきましては、どのくらいの量がどういう目的で必要とされるのか等、こういうことが文部大臣との協議事項の対象として考えられるかと思います。
  351. 湯山勇

    湯山委員 恐らく必要量の全部を賄うようなことにはならないと思うのです。むしろ文部大臣と協議すれば、文部大臣としては学術研究の立場ということから言えばできるだけ多い方がいいわけです。必要なものは十分なものが欲しい。そうなると、その点では外務大臣は文部大臣に必ずしも素直に合意できないという場合があると思いますが、そうかといって外務大臣が数量のチェックをするだけの——いまの櫻内外務大臣は別としても、他の外務大臣がそれをチェックするだけの機能をお持ちでしょうか。
  352. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 湯山先生承知のとおり、率直に申し上げて確かに外務省はそういったような南極の動植物に対する細かい知識経験等は持っていないわけでございますが、外務省としましても文部大臣と協議する次第でございますけれども、他方、実質的には関係各国のたとえば情報であるとかあるいは環境保全という観点等々も踏まえて文部大臣と協議していきたい、こういうふうに思っております。
  353. 湯山勇

    湯山委員 「ふじ」が帰ってきますね。二十日ですか、もう数日で帰ると思うのですが、今度は相当の研究材料を持って帰るはずです。どれだけのものを持って帰るかということはおわかりですか。
  354. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私の承知しておりますのでは、「ふじ」はたしかきょう帰ってくる予定でございます。いかなるものを持って帰ってきているのかは現在承知していないのでございますけれども、過去の観測隊がどういうふうな動植物を採集したかについての記録は持っております。
  355. 湯山勇

    湯山委員 後でも申し上げますけれども、今度は相当持って帰っておるはずです。南極観測そのものの主管が文部省であるとその協議というのはなかなかむずかしい問題もあると思いますので、この点は御注意だけ申し上げることにいたします。と申しますのは、南極基地、昭和基地の付近でも相当植物もあるわけです。それらについても外務省が果たしてどれだけおわかりかというのはなかなか問題だと思う。  そこで、それは一応それとして、この法律で私が特に問題にしたい点は、後回しにしておりました第三条一項の二号です。「南極地域に動物又は植物を持ち込むこと。」これは禁止されています。この点では問題が二つあると思うのです。一つは、南極地域に動物または植物を持ち込んではいけないと言うけれども、持ち込まなければいかぬものもあるのじゃないですか。と申しますのは、勧告措置にもありますように、南極地域の固有種が紛れて区域外へ行っておるようなのは返してやらなければいけない。ところがそれをやるとこの法律では罰金、懲役になるでしょう。動物を持ち込むことが禁止されていますから、けがをしているアザラシを外で見つけて南極地域へ戻してやる、そういうことをすればこの法律では罰金でしょう。
  356. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 いまの先生の御質問の点でございますけれども、勧告措置は固有動植物に限り持ち込みを禁じているわけでございますが、他方、法律におきましては、南極に固有な動植物であっても一たん外に出たものは規制する、持ち込みを認めない、こういうことになっているわけでございます。  それでこの趣旨は、確かに先生のおっしゃいますように、一たん持ち出したものももとに返した方がいいのだという趣旨は一つあると思うのでございます。他方、一たん持ち出したものは外部の汚染とかあるいは感染を受けておる可能性もある、そういうようなことで勧告の趣旨が南極に固有な動植物の保全を図りたいということから、固有であっても一たん持ち出したらもう持ち込ませずにそれでもって環境の保全を図りたい、そういう趣旨でこの法律の起草をしたわけでございます。
  357. 湯山勇

    湯山委員 それは大分違っておると思います。勧告措置では固有種以外のとちゃんと定義づけし外の運用に当たりまして、同趣旨になるように運営していきたい、こういうふうに考えております。
  358. 湯山勇

    湯山委員 私が申し上げたいのは、運用のものが多くなるということは決していいことではないのです。そのためには感情も働くでしょうし、それからよけいな手数もかかると思います。やはりこういうものはできるだけはっきり明記して、だれにもわかるようにしておくということが望ましいので、ぜひひとつ次の機会に御検討願います。  それから、この第四条の、適用除外の許可申請があった場合に外務大臣は「必要に応じ、文部大臣に協議する」とあります。これはどういうことてあるのです、固有種を戻すべきだ。だからいまのと違うのですよ。固有種以外は持ち込んではならないという非常に厳重な規定がここにある。この法律はそれが抜けているのです。だから二号は、「南極地域に動物又は植物を持ち込むこと。」がいけないのではなくて、やはり固有種以外を持ち込んではならないという規定にしないといけないのです。そうでしょう。
  359. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 生物の御専門の先生にこういうことを申し上げるのは私はきわめて恥ずかしいのでございますけれども、固有種につきましても、先ほど申し上げましたように外に出たら非常に汚染されてくる可能性がある、それを固有種でももう一回持ち込んでいくと、いわゆるその現場にずっとあります固有種に対しまして汚染をする可能性が起こるということから、一たん持ち出したものも含めて持ち込みはいけないのだ、こういうふうな規定になっておるわけでございます。
  360. 湯山勇

    湯山委員 それはいまの勧告措置とは違いますね。
  361. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 その意味では、勧告措置より若干広く規定をしたいというふうに考えておるわけでございます。
  362. 湯山勇

    湯山委員 南極の動物、植物を保護するという大前提から言えば、汚染しておるものというのはまた別でしょう。南極にいる鳥のキョクアジサシですか、ああいう南極と北極とを行き来しているようなものもあります。しかし、とにかく南極地域の固有種ですから、そんなに汚染地域へどんどん行くわけじゃありません。キョクアジサシなんか固有種とは言えないと思う。それはここの規定にはありません。ですから固有種というものはごく限られているもので、固有種というものの概念が不十分じゃないかと私は思うのです。
  363. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私の先ほど申し上げました答弁は若干不足というか、あるいはわかりにくかったかと思いますのでもう一度あれでございますけれども、植物などで一たん南極から外に出ましてもう一回入りますとやはり汚染される可能性があるということから、こういうふうに勧告措置よりは若干広く規定したのでございますけれども、確かに先生おっしゃる点もございますし、これは適用例外でもって、汚染されてないということがはっきりわかりますれば認めることができるというふうになっております。
  364. 湯山勇

    湯山委員 汚染されているかいないかをわからせるというのは容易ではありません。六十度よりも少し離れた、その境界に近いところにおれば当然戻してやるのが本当だと思いますので、ひとつ心得ておいていただきたいと思います。  いよいよ最後というか、非常に重要なことを申し上げたいのは、いまの動植物の持ち込みというのはこれは人がやることです。意識してやることですけれども、動植物というのは意識してやるだけではなくて、無意識のうちに入ってくるものが非常に多いのです。こういうことについて私は何らかの規制が要ると思います。と申しますのは、この勧告措置でも、持ち込みを許されたものについても、管理された状態、そうなった後の処置というのが細かく規定されておりますが、意識して持ち帰って入ったものは、管理された状態に置くこともできます、あるいはそれが不要となったときに安全に処分することもできますけれども、無意識のうちに入ってくるものが非常に多いのです。  これは植物の例で言えば、東京にあるタンポポ、いまたくさん黄色いのがありますね。あれは日本種か外国種かおわかりですか。
  365. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 申しわけございませんけれども、承知しておりません。
  366. 湯山勇

    湯山委員 ほとんど全部、九九%外国種でございます。日本種はもう見られません、都内のタンポポでは。それくらい、知らず知らずのうちに入ってきた生物というものは、環境がよければ物すごい繁殖をする。その例でよく知っておられるのはセイタカアワダチソウ、これもそうです。新幹線でお通りになったら、恐らくセイタカアワダチソウの見えないところというのはほとんどありません。それくらい繁殖力が強くて、相当高い山の上までも、御存じのクローバーも生えておれば、そのほかの植物もたくさん生えています。それから、動物だって同じです。蚊なんかも入ってくるおそれがあるし、その他南極の動物の中には、ユスリカというアカボウフラのようなものもあるのですから、入ったら繁殖は速いと思うのです。  そうすると、そういう人為的に持ち込むことについての規制はあっても、それが自然に入ってくることへの注意がこの中には何もないのです。私が驚いたのは、最近では、スペースシャトルに試験的に昆虫も入れておったのですが、外務大臣もよく御存じですけれども、あの中にいま問題になっているチチュウカイミバエが一匹入っていて、これもニュースになりました。こういうことで入るおそれのあるもの、ネズミなんかもそういう心配が多分にあります、船で行く以上は。それに対する注意というものがぜひ必要だということを考えます。この法律ではそれが抜けているのですが、その点はどうなさいますか。
  367. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生がまさに御指摘のとおり、確かにこの勧告措置自体あるいはそれを受けました法律自体というのは、意図的というか、ある行為でもって持ち込むあるいは持ち出すことを規定しておるわけでございまして、いま申されましたような無意識的に持ち込まれます動植物については、何ら規定していないわけでございます。  そこで、それではどうすればいいかという点でございますけれども、一つは、とりあえずでございますが、日本から南極地域に参ります観測隊員、それから旅行者が若干ございますけれども旅行者等、これらにつきましては、実際上どのくらいこれを守ってくれるかどうかという点は確かに問題でございますが、いま御指摘のようなよけいなもの、動植物を持っていかないように極力注意するということ、これがますとり得る措置かと私は思います。  しかしながら、これでは何らそれほどの効果が上がると思えませんので、この問題は実態調査を——これはやはり専門家の協力が非常に必要でございますけれども、専門家の協力を得まして、もしそれが非常に大きな問題であるあるいは問題になり得ることでございますれば、南極条約の協議国会議で各国の専門家に一度議論してもらうべきものではないか、こういうふうに私は思っております。
  368. 湯山勇

    湯山委員 私も実はそれを申し上げようと思ったのですが、参事官の方からおっしゃいましたので……。  日本はこの法律をつくることがおくれたために、諸外国にずいぶん御迷惑をかけている。そこで、先ほどアザラシでも申し上げましたが、それを含めていまのような点を日本はうんと強調して、諸外国がそれに対して同じように対応するように進めていく、そうすることが日本の信頼回復の道でもあるし、おくれたことへの罪滅ぼしでもあるというように思います。  そこで、いまのような点はなかなか一国だけでできることではありません。ひとつ諸外国に積極的に呼びかけて、そのような措置をとるように進めていく、そういうことを強く要望したいと思いますが、もう一度答弁願います。
  369. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 そういうふうな諸外国への呼びかけ、諸外国との話し合いの前に、やはり本件は、専門的な調査といいますか検討が非常に必要なんじゃないかと私は思っているわけでございます。したがいまして、そういうようなことも含めまして、先生の御趣旨は、私ども、全くそのとおりだと思いますので、承認がおくれました罪滅ぼしと言ってはあれでございますけれども、今後、この南極条約あるいは勧告措置のより適切な実施のために努力してまいりたい、こういうふうに思っております。
  370. 湯山勇

    湯山委員 いま申し上げたのは、意識的に動植物を持ち込むこと、それから、無意識のうちについそういう生物を持ち込むということによって南極の動植物相が損なわれるということに対する注意ですが、そういう生物じゃなくて、もう一遍われわれの周辺に立ち返って、人為的な汚染が南極地域でも進んでいるということについて申し上げたいわけです。それらについても何の規定もございませんけれども、すでにPCBの汚染があるということが、広島大学の医学部から、昭和五十四年一月に発表されております。  それによりますと、昭和基地南方の海上でウエッデルアザラシ一頭と、オングルカルベンというところですか、そのあたりでアデリーペンギンの雌が死んだのを氷の上で拾った形で、それを持って帰って調べたところ、アザラシにはPCBは見られなかったけれども、ペンギンには相当の濃度のPCBが見られた。これは〇・〇〇五ないし〇・〇〇一PPmが通常であるのに、このペンギンからは、一つ零の少ない〇〇七PPmのPCBが見つかっている。こうなりますと、これは地球上の人為的な汚染がすでに南極にも及びつつあるということであって、ほうっておけない問題ではないかというように考えますが、いかがですか。
  371. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 いま先生の御指摘の第十七次南極観測隊の調査結果のほかに、実は昨年の十一月からことしの三月にかけまして、東京水産大学の海鷹丸によりまして、これは大陸そのものではございませんけれども、南極海の調査が行われたわけでございます。この研究項目というか調査項目の一つといたしまして、汚染物質の分布に関する研究も実は行われているわけでございます。  その調査の結果、確かに先生の御指摘のように、この南極海域において、BHCとかあるいはDDT、それからPCBが検出されておるということを私どもも承知いたしております。  人類にとっての、汚染されずに残されている最後の地域である南極地域が、いまのままで、汚染されないままでその環境が保全されることは私ども非常に重要なことだと考えておりますので、これにつきましても、先生の御指摘、私どもも全くそのとおりだと思いますので、やはりもう少し調査を進め、これは文部省等に御協力を仰ぐ必要があるわけでございますが、調査を進めて、それに基づきまして次の、どういうふうにしたらいいかということを検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
  372. 湯山勇

    湯山委員 私どもの常識では、地球上で最も環境汚染物質が少ないのが南極だ、こういう理解をいたしておりました。ところが、いまの広島大学の発表もそうですけれども、愛媛大学の立川という教授とそこの助手がやはり海鷹丸で南極へ行って、その大気あるいは海水等の汚染状況を調べて帰っております。それによれば、いまお話しのように、PCBそれからDDTそれからBHC、こういうものが相当見られる。その中でもPCBは少ない方だというのが、いま広島大学の報告では、相当量のPCB汚染を持ったペンギンが見つかっている。特に多いのはDDTと言われております。これは、南半球で熱帯に近いところではマラリアが多いから、マラリア対策でDDTを使う、それが南極まで行っているんじゃないかという推測もできるわけです。  いずれにしても、この人為的な汚染がここまで来ているということは、これは南極の基地もだんだん拡大してきます、それからまた、南極での人間活動も拡大してまいります、そういうことを考えますと、このまま放置しておったならば、処女地である南極はたちまち汚染が拡大するし、また、その生物はそういうものにいままで抵抗力を持っていませんから、すぐ絶滅する。南極の昭和基地周辺でも何種類かのコケと地衣類が数十種類ありますけれども、それらだって、一ミリ太るのに何年かかるかというような成長しかしていないのですから、一たん汚染が進んできたときには、きわめて脆弱なものであって、絶滅のおそれが多分にある。そこで、これらの汚染からどう南極を守っていくか。いまのように、極以外の人間の住んでいるところで汚染が進めば、当然その被害も受けやすくなるわけで、その対策がきわめて必要ではないか。そう考えてまいりますと、このDDTなりPCBなり、そういったものの汚染から南極を守るというのは、これはもはや地球全体、人類全体、国際的に全部の国が取り組まなければならない問題ではないか、こう考えます。  そこで、こういう問題を国際的に提起して、南極をこういう人為的な汚染から守るという課題を日本は積極的に果たしていくということをしなければならないと思いますが、この点についていかがお考えでしょうか。
  373. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 このたび外務省がこの国内法律の主管官庁となったわけでございますが、まず御指摘の、南極の汚染を極力最大限に防ぐというような観点から、先ほど申しましたように学術的な調査、つまりこれは文部省なり運輸省、あるいは極地研等々の意見、専門的な意見も聴取いたしまして、それに基づいて南極条約の協議国会議、これではこういう問題も取り上げているわけでございますから、しかるべき機会にぜひそういったような専門知識あるいは調査も踏まえまして、本件について話し合いを呼びかけたい、こういうふうに考えております。
  374. 湯山勇

    湯山委員 最後に大臣にお尋ねいたしたいと思います。  外務省がこの段階で非常にふなれな法律と取り組んでこういう作業をされたこと、そのこと自体については私も評価するにやぶさかではございません。しかし、いまお尋ねいたしましたように、今日まで日本承認が遅延したことが、何しろ早い国と比べれば十八年もおくれておるわけですから、国際的な不信感につながり、それは単に学術だけの問題ではなくて、日本の外交全体へもそういうことが影響なしとしないと私は感じております。そうなりますと、おくれておった日本だけれども、いよいよ日本承認すればこのいまの勧告措置は効力を発揮いたします。その段階で、日本はもっとより積極的に、なるほど日本は本気でやっておるということが見えるような努力が必要ではないか。また、法律自体にも、その点から見るとなお検討し直していい問題もなしとしないと思います。  そこで、たまたま櫻内外務大臣がこのときに御就任になっておられた、このことはまた非常に大きな意義のあることだと思いますので、いま申し上げましたような意味において、この法律自体の、なお完備すべき点は完備していくのと同時に、南極の動植物、生物を保護するために、日本はうんと積極的に今後、この法律ができた機会に乗り出していくという決意を持っていただきたいと思いますが、大臣のお考えを伺って質問を終わりたいと思います。
  375. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 湯山委員から熱心な御質疑をちょうだいいたしまして、その間に、率直に申し上げましていろいろと勉強をさせられることがございました。  なお、十八年も遅延したことについての御注意をいただき、まことに恐縮をしておる次第でございますが、せめてものその罪滅ぼしにも、この南極における動物相植物相に対しての保護措置に万全を尽くすように、国内的措置はもとよりのこと、国際的にも日本が率先配慮するようにということでございますが、その御注意のとおりに、せっかくこの法律の主務官庁に当たる外務省でございますので、せいぜい督励をいたしまして努力をしてまいるつもりでございます。
  376. 湯山勇

    湯山委員 終わります。ありがとうございました。
  377. 中山正暉

  378. 土井たか子

    土井委員 ただいまの湯山議員の御質問に関連をいたしまして、一部重複する点が出るかもしれませんが、五、六点質問をいたしたいと思います。  南極条約の協議国以外の南極条約の締約国は、この勧告措置が発効しなければ受諾できないということになっていますね。この勧告措置は、日本承認していないために、いまも質問答弁がございましたように発効していない。そのためにほかの諸国は受諾したくても受諾できない状況になっている。そういうことも一つ前提に置いておいて、政府としては、この勧告を承認するために一体いつごろからいろいろな作業準備をお始めになったのであるかといういきさつを少し聞かせていただけませんか。
  379. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 本件につきましては、各国とも、この内容を国内法的にどのように措置するかということでかなり苦労したという経緯がございまして、その過程におきまして、私が記憶している限り、昭和五十年ごろ、日本政府といたしましても、当時まだ南極に行く国民がそれほど多くなかったということ、あるいは南極に行く方法等が非常に限られていたということがございましたので、国家公務員に対しては規制が課せられるということを前提にいたしまして、これを行政指導ということで何とかできないかということで各国に打診をした経緯がございます。その当時、打診をいたしましたところ、ほとんどの国はそれでいいだろうということでございましたけれども、一部の国が、そのような措置では不十分ではないかという意見を表明いたしましたので、その後、そういう方式による承認ということはどうもうまくないということになりまして、さらに国内法的な検討を進める必要があるということになったと記憶しているわけでございます。
  380. 土井たか子

    土井委員 そうすると、いまの御答弁からすると、五十年ころから日本としてはこの問題に対して国内措置の準備を始めていたというかっこうになるのですか。そうして改めて、国家公務員ということで、その資格については不十分であると外国から言われて、全面的にこれを考え直すということで、また作業は振り出しに戻していろいろと討議を始められたというかっこうになったわけですか。
  381. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 そのとおりでございます。
  382. 土井たか子

    土井委員 国家公務員であるということに対して外国からどういうふうな横やりが入ったのですか。もう少し詳しく、外国からのそれに対する批判の声の中身を聞かせてください。
  383. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 具体的な照会国からの反応すべてについて記憶しているわけではございませんけれども、当時各国に照会いたしまして、各国ともさまざまな国内的なやり方でこれを承認しているということがわかりましたので、多くの国についてはこれでいけるということだったのですが、たしかオーストラリアが、そういう方式ではやはり完全にこの勧告の措置を守られない場合も出てくるのではないかという点を指摘しまして反対をした、あるいは立場を留保したというふうに記憶しております。
  384. 土井たか子

    土井委員 それで、今回の法律案についての審議に当たりまして、国連局の科学課が珍しく自己批判めいた文書出しておられますね。「南極の自然環境保護について我が国が非協力的であるとの印象を他の協議国に与えており、我が国の対外関係上極めて望ましくないので、」大急ぎでこれまた今回の国会に提出したという向きが書いてあるのですね。  外国からいろいろ非協力的であるということの印象があって、わが国にそれが聞こえてきたからこういうことになったのだろうと思いますが、協議国間において、討議の席で日本は、一体どういうふうな批判、どういうふうなこれに対する意見というものをただいままで受けてきたのですか。具体的にどんな意見があり、どういう批判があったのですか。
  385. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 協議国会議の席上で、公に日本を名指しで批判を受けたことはございませんけれども、協議国会議の非公式の場等では、早くやれ、こういうふうなことを言われてきたわけでございます。
  386. 土井たか子

    土井委員 だけれども、遠藤さん、その程度のことでこれだけ殊勝なことをお書きになるはずはないと私は実は思うのですね。いろいろかなり手厳しい意見というものが出てきたに違いないと思うのです。  いま、この南極条約協議国以外の締約国で、この措置の効力発生を待っている国々にどういう国があると御承知おきになっていらっしゃいますか。
  387. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 南極条約の協議国会議は全部で十四であるわけでございますけれども、そのほかに、南極条約の加入国というものが全部で十一ございます。それで、これらの加入国は、この勧告措置が発効すれば、もし希望すればこれを受諾し得る、こういう規定になっていることは御承知のとおりでございますけれども、これらの加入国自体、南極条約に基づきますいわゆる基地活動を行っていないわけでございますけれども、やはり南極の環境保全という観点から、そうでないにもかかわらずこの条約に加入しているのでございますから、当然にこれらの加入国というのはこの勧告措置の発効及び加入に期待しているものだと思っております。
  388. 土井たか子

    土井委員 ということでしょうね。ですから、そういうことからすると、十一カ国がいまのところその加入に対して期待を持って、いままで中には、十八年間待ち続けた国もあるというふうに考えておいてもいいのじゃないかと思います。  さて、この南極条約の原署名国の中で、領有権を主張している国がありますね。何カ国であり、国名はどういう国々でございますか。
  389. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 南極条約の協議国のうち、領有権を主張しております国が全部で七カ国ございます。順番に申し上げますと、オーストラリア、フランス、ニュージーランド、ノルウェー、アルゼンチン、イギリス、チリ、以上でございます。
  390. 土井たか子

    土井委員 いま言われたとおり、七カ国、南極条約の原署名国の中に領有権を主張して譲らない国々があるわけなんです。これは、かつて当委員会におきまして南極条約を審議する節にも取り上げて問題にいたしましたけれども、南極条約からすると、領有権は主張できない地域なんですよ、お互い。いずれの国がこの南極というものをみずからの国の権原内におさめるかという、主権の及ぶ範囲として領有権というものを主張できないというところが特徴だと思うのですが、中には、領有権を主張して、しかもここに軍隊を送っている国もあるはずなんです。軍隊を送って、ここで基地をつくって、いろいろ南極の観測に従事しているというかっこうになっている国がある。それは御承知でしょうね。
  391. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 条約上におきましては、第四条におきまして、特に領土権の主張の問題について包括的に規定しているわけでございますけれども、その中におきましていわば領土権の凍結という状態になっておりますので、各国とも、領土権の主張は主張として有しながら、それをこの条約においては当面凍結をするという仕組みになっているわけでございます。  また、南極条約の第一条におきましては、確かに、軍事基地、防備基地の設置等は禁止されておりますけれども、「科学的研究のため又はその他の平和的目的のために、軍の要員又は備品を使用することを妨げるものではない。」ということを一条の二項で規定してございますので、各国ともこの条約の規定は十分に遵守した上で、軍の要員をそういう平和的目的のためにあるいは科学研究のために送り込んでいる、このように理解いたしております。
  392. 土井たか子

    土井委員 正確に言うと領有権の主張は事実関係としてはやっている、しかし主張は本来領有権は認められないために凍結されたかっこうになっている、こういうふうに表現するのが正確なんですね。  そこで、いま一条の問題に触れて、軍隊が平和目的でもっていろいろ調査研究に従事するということは妨げられないという趣旨のことをおっしゃられましたが、そうなりますと、先ほど湯山議員の御質問の中にもございましたけれども、日本自衛隊法の第百条の四で「南極地域観測に対する協力」ということについて特にこれを決めている条項がございますが、この自衛隊の観測について、「南極地域における科学的調査について、政令で定める輸送その他の協力を行う。」とございます。「その他の協力」の中身というのはどういうことになっていますか。
  393. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 自衛隊法の百条の四に「自衛隊は、長官の命を受け、国が行なう南極地域における科学的調査について、政令で定める輸送その他の協力を行なう。」こういうふうになっております。
  394. 土井たか子

    土井委員 ただいま私は、第百条の四と前置きをいたしまして、まさにいま遠藤さんの言われたところを申し上げて「その他の協力」という中身はどういうことでございますかとお尋ねをしているわけであります。
  395. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 失礼しました。  自衛隊法施行令の中に「一 船舶及び航空機により、本邦と国が南極地域に設ける基地との間において、同地域における科学的調査に従事する者及びその調査を行なうために必要な器材、食糧その他の物資を輸送すること。」「二 南極地域における科学的調査を行なうために必要な雪上車を設計し、及び試験すること。」こういうふうになっております。
  396. 土井たか子

    土井委員 南極条約の原署名国のそれぞれの国々がかの地において軍を調査研究のために従事せしめている場合は、各国にそれが通告されていると考えられますが、そのことはそのとおりでありますね。どうですか。
  397. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先ほども御答弁申し上げたわけでございますけれども、わが国の計画につきましてはこれを文書によって各国に通告しておりまして、その際に参加する船が海上自衛隊に属する自衛艦であること、要員が自衛隊員であること等はあわせて通報してございます。
  398. 土井たか子

    土井委員 そうすると、これはいまの御答弁からも言えることでありますけれども、自衛隊法に基づくこの行為は、日本の軍隊がそのような行為をとるという意味で各国にこの南極条約に基づいて通告されている、このように理解してよろしゅうございますね。
  399. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 要式行為といたしまして、軍隊の派遣等について通報する場合とその他の場合において違う要式をとっておるわけではございませんので、この計画を全般的に通報する際にその文書の中で、自衛艦である「ふじ」が参加するということ、要員である自衛隊員が参加することをあわせて通告している、こういうことでございます。
  400. 土井たか子

    土井委員 わざわざあわせてという表現をされるところは、やはり外国からの軍隊がかの地にあって調査研究に従事するという活動にも協力をしているわけなんですね。したがって、そういう意味を持ちまして、日本自衛隊に対しては外国に通告する節、外国から見れば、軍隊としてこの調査研究の問題に対する輸送とかその他の協力を行っているという意味での通告を受けたというふうに理解されていると思われますが、いかがですか。
  401. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 この条約におきます一条二項で「軍の要員又は備品を使用することを妨げるものではない。」という規定の適用、あるいは七条の五項c項で、軍の要員または備品を送り込む際には通告するということ、そういう観点からのこの条約の目的からして、自衛隊がこの条約の適用上軍隊に当たるということについては各国とも疑念を持っていないと思いますし、私どももそのように解しております。
  402. 土井たか子

    土井委員 この法律を見てまいりますと、罰則は一年以下の懲役または二十万円以下の罰金になっているわけです。どういう規準で一年以下の懲役とか二十万円以下の罰金としたのかちょっとわからないのですが、その点の説明をいただけませんか。
  403. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 確かに先生御指摘のとおり、たとえば南極海域のアザラシをつかまえた場合の罰則、これは漁業法の適用を受けているわけでございますが、二年、五万円というふうになっているわけでございます。他方、この法律ではこの法律の禁止に対する違反につきまして、一年、二十万、こういうふうになっているわけでございますが、法律案に規定いたします罰則はその法律案がつくられますときのいわゆる社会常識等を勘案して決められたものでございまして、この法律案の罰則がそれ以前の比較的類似しておる法律における罰則と若干異なることは仕方ない場合もあるのではないか、こういうふうに思っております。  なお、この法案の罰則につきましては、法務省と非常に慎重な協議を重ねたわけでございますけれども、現在のいわゆる社会常識、それからもう一つはこの法案と非常にカテゴリーを同じくしております自然環境保全法という法律がございますが、この自然環境保全法の中の動物の保全等に対する法令において決められておる罰則というのがこの国内法の罰則と同じになっておるわけでございます。
  404. 土井たか子

    土井委員 いまも少しお話の中で出たようでございますが、一昨年承認した南極のあざらしの保存に関する条約というのがありますね。締約国は、自国民または自国を旗国とする船舶が南極地域海域でアザラシを殺さず捕獲しないということに対して同意しているわけですが、この条約を実施するために何らか必要な措置をとらなければならないはずなんです。これはどういうふうな措置がとられたのですか。
  405. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 本件につきましては漁業法と水産資源保護に関する法律と、この二つの法律において手当てがなされているわけでございます。
  406. 土井たか子

    土井委員 指定漁業の許可及び取締り等に関する省令というのはどうでしょう。これはこの問題にひっかかりませんか。
  407. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 指定漁業に関する政令を改正して、この条約の実施に万全を期すということになっております。
  408. 土井たか子

    土井委員 それを見ますと、第百六条のところで罰則がございまして、「二年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」こうなっているのですね。そこでちょっとお尋ねしたいのですが、先ほど自然環境保全法等々の関連するところから、法務省とも御相談をなすって、この罰則についてこれではいかがかというのでこういうふうに設けたといういきさつについての御説明がございましたが、南極地域海域においてアザラシを捕獲した場合は、二年以下の懲役もしくは五万円以下の罰金となるわけですね。南極地域の陸域においてアザラシを捕獲したり殺したり傷つけた場合には、一年以下の懲役または二十万円の罰金とこうなるわけですね。同じアザラシを海域で猟獲した場合と陸域で猟獲した場合とでは、罰則にこのように違いが出てくるのですよ。自然環境保全法の問題を基準に置いてというのじゃ、どうもバランスを欠いている問題に対して説得性のある理由説明にはならないと私は思うのです。どういうわけでこういうふうに差ができているのですか。
  409. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 一つの理由でございますけれども、法律案がつくられました時点におきます社会常識等々も勘案していわゆるこの罰則規定を決めたものである、こういうふうに承知しております。
  410. 土井たか子

    土井委員 海域の方が重く陸域の方が軽いというのが社会常識でございますか、ある意味では。これは二年以下の懲役というのが海域の場合、陸域の場合は一年以下の懲役ということになっているのですね。罰金というのは、これはどちらかというと体罰に比べますと、体刑に比べますと二の次の問題でありますから、そういうことからすると、どうも海域についての方が重罰ということになるわけですね。これが常識ですか。
  411. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 海域とかあるいは陸域の問題よりかは、この法律案ができましたいわゆる時点というか、できました時期のいわゆる社会通念といいますか社会常識が勘案されたものでございます。
  412. 土井たか子

    土井委員 そうすると、いまはその常識は変わっているのですか、変わっていないのですか、どうなんです。もし変わっているとするならば、これは手を染めなければなりませんよ。
  413. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 確かに捕獲される対象を考えてみますと同じアザラシということになるわけで、陸上と海域でなぜこれほど変える理由があるかということだと思うのでございますけれども、ただ法律を実施する側面から考えますと、海域におけるアザラシの捕獲というのは、わが国の漁船においてわが国が十分に船長の監督のもとに行われている漁労のもとで捕獲されるという意味で、その行為自体捕捉しやすいという面があるのに反して、南極大陸におけるこの法律の実施については、いわば間接的な、直接に管轄権を行使し得る場合だけではないという意味において、この条約の実施上ややそういう意味では困難を伴う、そういう見地からつくられる法律については、体罰については一年が適当であるというのが法務省と協議いたしました結果の結論でございます。  ですから、法律の実体に即して体罰というものが決められるので、確かに現象的には陸と海の同じアザラシをとるのになぜ体罰が変わるかという御疑念かと思いますけれども、この立法の背後にはそのような理由を考えまして法の運用の差の側面をとらえて、このように体罰の年限を変えたというように承知しております。
  414. 土井たか子

    土井委員 なかなかその辺はいわく微妙でありまして、船だったら監督がよく行き届くけれども、陸域だとその点目が届かないからというふうにもいまの答弁聞こえるのですよ。そういうふうな理由だというふうにも聞こえるような御答弁なんです。どうもそういうことからすると、ちょっと憲法十四条から考えて「すべて國民は、法の下に平等であって、」という法の適用に対して平等性が問われる、立法に対しても平等性が問われる。そういうことからすると、いまの御答弁の御趣旨というのはもう一つちょっと釈然としませんね。ただ、陸域の方が目が届かないということも含めてそれならばちょっとお尋ねを最後にしたいのです。  この法律案を見ますと、日本の主権が及んでいない南極地域日本人の行動を規制するということが必要になってくるのですね。その実効性をやはりはっきりさせなければならぬ。これは先ほどおっしゃったとおりで、陸域ではよくその点の統制といいますか管理といいますか、それが行き届かないがごとくに御答弁されますから、それはまさに実効性を確保しようとすると、日本人の行動規制に対しては困難だということが一応は大前提として考えられていいのじゃなかろうかと思いますが、法律案の第七条を見ますと、南極地域に渡航する者について「この法律の要旨の周知を図るため、適当な措置をとる」ということになっているのですね。どういう措置をおとりになるつもりなんですか。七条の周知だけで十分であるとは言えないと思うのですがね。
  415. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 実はその点非常に困難をきわめました点でございまして、いまのところ周知徹底につきましては次の措置を考えております。  まず一つは、南極に行きます人間といいますか、行く人の種類といたしましては、一つは観光旅行者、もう一つは漁業関係の人、三番目がこれは順序不同でございますけれども、観測隊員、大体三種類ぐらいに分かれるのじゃないかと思うわけでございます。  そこで、観測隊員につきましては、これは文部大臣の管轄下にある観測隊でございますから、その観測隊員に対してこの勧告措置及び法律案中身を周知徹底せしめるということでやっていきたい。  それから一般旅行者でございますけれども、これは幾つかの方法がございまして、一つは旅券申請の段階、これは都道府県の窓口等々でこの勧告措置あるいは法律案をやさしく説明して周知徹底せしめる。それからもう一つは、実はいま南極旅行をやっております会社というのは日本でエージェント一社でございます。アメリカで二社であるわけでございますが、この一社のエージェントあるいはその他のエージェントに対しましても、こういう措置ができた、こういう法律案ができたということを周知徹底せしめたい、こういうことを考えております。  それから漁業者につきましては、これも同様な措置が考えられるわけでございますが、現在の漁船団で南極の陸地に近づける耐氷構造を持った船は持っていないわけでございますが、しかしながら、いわゆる南極海に一般的な意味で出漁します漁船には、多くの場合漁業監督官が乗っておることでもございますし、これらにつきましては農水産省を通じまして措置を担保していきたい。  最後に考えておりますのは、こういった動植物を殺してあるいはつかまえて持って帰ってくるときには、税関でもってこれを押さえる。  こういう以上申し上げたような幾つかの措置でもってこの実効性を図りたいと考えております。
  416. 土井たか子

    土井委員 時間です。終わります。
  417. 中山正暉

    中山委員長 次に、玉城栄一君。
  418. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間も遅くなってまいりましたので、大急ぎで質問をさせていただきたいと思います。  最初に、日本・インドネシア租税協定についてお伺いをいたしますが、最近インドネシア政府が相次いでわが国への輸出入品に対し規制強化措置をとって関連業界をあわてさせているわけですが、エビのトロール漁は来年一月一日から全面禁止、丸太の輸出も八五年来で、打ち切り、こういうようなことなんですが、その辺の事情についてまず最初にちょっとお伺いしておきたいのです。
  419. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  最近、たとえばエビトロール漁業につきましては、インドネシア政府は、一九八三年一月からインドネシアの全海域でトロール漁業を禁止する方針を決定いたしました。現在、わが方関係企業と話をいたしまして、インドネシア側に申し入れを行っております。  それからもう一つ、一九八二年の一月からインドネシア政府は、一定額以上のインドネシア政府調達を受注した外国企業は、これと等価の非石油産品を輸入する義務を負ういわゆるカウンターパーチェスという制度を導入することを決定いたしました。これについてもインドネシア側と話をしております。
  420. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題は後でまた、時間の関係もありますから、お伺いします。  それで、まず、わが国と対インドネシア関係の現状について伺っておきたいのですが、一つは日本、インドネシア間の輸出、輸入額とその割合について、二点目、インドネシアに対する投資額、進出企業数について、それから三番目に双方の人的交流、留学生あるいは研究者等について、三点まとめてお伺いいたします。
  421. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 インドネシアとわが国との貿易でございますが、昭和五十六年のわが国の対インドネシア輸出は四十一・二億ドルでございまして、これはわが国の総輸出の二・七%を占めております。それから、同じくインドネシアからの輸入は百三十三億ドルに上りまして、これはわが国の総輸入の九・三%を占めております。  それから、インドネシアに対する投資額でございますけれども、これは昭和二十六年度から五十五年度までの累計で四十四億二千四百万ドルに上っております。それから、進出企業数は二百五社が合弁でございまして、そのほかに石油開発探査会社が十二社ございます。  それから人的交流でございますけれども、日本人のインドネシアへの渡航者数は五十五年は六万一千六百七十九人でございまして、五十六年には六万六千五百五十二人でございます。一方、インドネシア人の日本への渡航者数は、五十五年は一万七千八百五十四人、五十六年は二万四千三百六十八人でございます。
  422. 玉城栄一

    ○玉城委員 次に、二重課税回避のための租税条約をわが国が締結をした国はもうすでに三十二カ国ですか、三十四ですか、それはお答えではっきりおっしゃっていただきたいと思うのですが、今回締結するインドネシアとの租税協定は、ASEAN諸国とわが国が結ぶ最後の租税協定になると思うわけであります。わが国からの投資額や貿易額あるいは企業進出の多いインドネシアとの間の条約締結が一番最後になった理由について伺いたいと思います。
  423. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 今回のインドネシアとの租税協定は三十三カ国目の租税協定になります。  これがおくれた理由でございますけれども、一つはインドネシア側の事情がございます。インドネシアは、御存じのとおり、スカルノ時代は外資等につきましてかなり閉鎖的な政策と申しますか、そういうものをとっておりまして、一九六七年にスハルト大統領が就任いたしました以降、状況がだんだん変わってきたわけでございますけれども、そういうこともございまして、ASEAN諸国の中でこの種の租税協定を諸外国と結ぶのが最もおくれた国でございます。  たとえば一例を挙げますと、マレーシアはイギリスとの間に租税協定をすでに一九四九年に結んでおります。それから、シンガポールも英国との間に一九四九年に結んでおります。タイはスウェーデンとの間に一九六二年に結んでいるフィリピンはスウェーデンとの間にやはり一九六六年に結んでおりますけれども、インドネシアが租税協定をオランダと結びましたのが一九七四年でございます。というように、インドネシア自体の政策といたしまして、租税協定を結ぶのが遅かったということが一つでございます。  それからもう一つは、日本とインドネシアとの交渉でございます。この交渉自体がいま申しましたインドネシアの事情から遅く始まったわけでございますが、これは一九七一年から交渉が始まりました。ちなみにシンガポール、タイ、マレーシアにつきましては六一年から、フィリピンについては六六年から交渉を開始しております。この七一年から約十年かかりまして妥結してわけでございますが、これは日本とインドネシアの租税協定における交渉の中身で若干意見の対立があったからでございます。その対立点は、一つはインドネシアの定義、それから国際運輸業の所得の取り扱い、それからみなし外国税額控除の範囲、この三点が特に対立いたしまして交渉は延びたということでございます。
  424. 玉城栄一

    ○玉城委員 それから次に、租税条約締結の現在、日本の進出企業や個人等についてインドネシア側でどういう租税及び税率が課税されているのか、また日本側では同一の法人、個人に対してどういう二重の課税がかけられているのか、お伺いいたします。
  425. 河原康之

    ○河原説明員 お答えいたします。  租税条約の対象税目にありますように、インドネシアでは法人税、所得税それから利子、配当、使用料税というのがわが国進出企業にかかってくる税金でございます。法人税の場合には段階的な税率になっておりまして、二〇%、三〇%、四五%と、それぞれ所得別に税率が違うという税になっております。それから利子、配当、使用料というのは、これは別の税目になっておりまして、これに対しては二〇%の税金がかかるということでございます。それから個人につきましては、インドネシアに一年以上住むという個人は、インドネシアの居住者になりまして、インドネシアの税率、これは現在のところ五%から五〇%の累進税率でございます。それによってかけられる。それから外国人につきましては、インドネシアで得た所得だけが課税されることになります。インドネシアの居住者になりますと、その居住者がどこで稼ごうと全部の所得に対して課税されるというような、大体日本と同じような形態の税制になっております。  それからあと一点でございますが、日本で同一所得に対してどのような課税があるかという点に関しましては、日本の進出企業がたとえば支店の形態をとっている場合には、それは日本の法人でございますから日本の法人税がかかるということでございます。そしてインドネシアでかけられた税金については、ある限度額を設けまして、そこまでは税額控除をするというシステムになっております。それから進出企業が現地法人になった場合には、これはもうインドネシア法人でございますから、インドネシア法人としてインドネシアで課税され、日本で稼得する所得については日本の法人税がかかるということでございます。  大体以上でございます。
  426. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この条約締結されますとわが国としてどういうメリットがあるのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  427. 河原康之

    ○河原説明員 国内法的には一方的に税額控除制度があるわけでございますが、向こうの税金がたとえば二〇%ということになりますと、その分が日本の税金から引けるかどうかという問題が起こってきます。これはどういうことかといいますと、二〇%というのは、そのグロスの金額に二〇%がかかるものですから、いわゆるネット課税じゃない関係上、経費を引いておりませんので、たとえば経費が九〇%かかるとかいうことになりますと、二〇%のグロスの課税、これが引き切れないといった事態が起こります。  それから、租税条約上はそういった税額控除の制度だけではなくて、いろいろな各種の規定がありまして、たとえば文化交流を促進するとか、人的交流を促進するとかといった規定を設けております。  それからもう一点は、租税当局間の協議とか情報交換とか、こういった規定も設けておりまして、税金の問題が非常に向こうの当局とフランクに話ができるという基盤が与えられるものと思われます。
  428. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この協定租税に関する脱税の防止も対象にしているわけですが、第二十六条の規定からして、単なる情報交換だけでは企業の脱税行為の防止に効果が上がるかどうか、少し疑問に思うのですが、このインドネシアも含めて、海外進出企業の脱税に関する調査とか、そういうことについて現在どのようにしてやっていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  429. 西崎毅

    ○西崎説明員 お答え申し上げます。  まず最初に、海外取引に関する課税関係、国税庁でどのように処理しているかという点について若干御説明申し上げますと、御承知のとおり、海外取引というのは、わが国にあります法人等が海外といろんな形で取引をするというものでございますが、その際に価格を操作するとか、経費を操作するとか、そういうようなことで所得を圧縮するというような行為がまま見られるわけでございます。それからさらに、海外に置いております支店あるいは子会社、こういうところでいろんな操作をやりまして、それで全般的に税の負担を軽くする、こういうようなことを企業はやっている場合がございます。したがいまして、私どもが調査をいたします際に、こういう面につきましては特に重点的によく見るということでやっているわけでございますが、しかしながら、海外取引というのは御案内のように非常に複雑であるという面に加えまして、われわれが税務調査をやる場合に、これは非常にわれわれ部内の言葉で恐縮なんでございますが、反面調査といいまして、平たく言いますと、取引の相手先に当たって調べる、こういうやり方をやるわけでございますが、海外とやっておる場合には、いろいろ主権の問題等ございまして、こういう調査手法が大きく制約されるというようなことがございます。これでわれわれも悩んでいるわけでございますが、各国の税務当局すべてこれに悩んでおるわけでございます。  ところで、ただいまお話しございました条約上の情報交換の規定というのは、ある意味ではこの問題を解決するための一つの方法になるわけでございまして、これは非常にすでに全世界的に効果も上がっておりますし、さらにいま私の承知している限りでは、この制度をもっと活用して、いろいろ税務行政の推進を図ろうという機運が全世界的にあると承知いたしております。それからまた、これは余分なことでございますが、こういう規定があるということ自体がある程度牽制効果を持ちまして、企業の方で自粛するというようなこともあるようでございます。  ところで、わが国でございますが、わが国も、すでに情報交換の規定を持っている国がたくさんございます。こういう国との間でこの規定を活用いたしまして、すでにかなりの成果を上げておるわけでございますが、今後とも外国政府と話し合いまして、一層その量あるいは質、この両方の面でこの制度の活用を拡充いたしまして、それで税務調査の充実を期したい、このように考えておる次第でございます。
  430. 玉城栄一

    ○玉城委員 しっかりやっていただきたいと思います。  そこで、この協定はOECDモデル条約に沿って作成をされたということでありますが、特にOECDモデル条約と異なっているところがあるのか、この協定、異なっているところがありましたら、ちょっと御説明いただきたいと思います。  また、他のASEAN諸国との租税条約と比較をして特に異なっている点があるのか、重立った点で結構ですから、概略御説明いただきたいと思います。
  431. 河原康之

    ○河原説明員 お答えいたします。  わが国の租税条約締結方針といいますのは、できる限りOECDモデルによりたいということでございますが、何分にも先進国間のモデルとして作成された関係がありまして、開発途上国は源泉地国課税といいますか、そこで生まれた所得についてできるだけ課税したいという希望を持っておるわけです。そこで、条約交渉ではその点が問題になりまして、今度のインドネシアとの租税条約においてもそういった問題が話し合われたわけです。  結果的に言いますと、OECDモデルに比べて、若干恒久的施設というかの定義が広くなっております。これはOECDモデルの場合には、できるだけ根拠がしっかりしているところから課税を始めようということなんですけれども、たとえば在庫保有代理人だとかそれからコンサルタントサービスを行う者については、それは恒久的施設とみなすというような規定が入っております。  それから投資所得につきましても、税率的にいきますと、OECDモデルの場合にはたとえば使用料については〇%ということになっておりますけれども、この条約では一〇%ということになっております。これは日本租税条約方針も一〇%ということでございまして、そこからは乖離しておらない。  それからOECDモデルにない条項を持っております。これは教授条項とかそれから政府間交流計画に基づく芸能活動からの所得、そういったものについて免税措置を講じておりまして、文化交流を促進させたいというそういったあれがあります。  それからもう一つは、インドネシアが行う投資促進措置を日本側として側面から支援するという意味で、みなし税額控除という制度をこの条約は持っております。  それから他のASEAN諸国との租税条約との比較でございますが、内容的にいきますと、投資所得の税率が若干違ったところがございます。ただ、全体的には大体同じような感じが出ておると思います。先ほど説明しましたように、みなし税額控除につきましても、他のASEAN諸国との間でもその制度を導入しておりまして、大体バランスがとれているのじゃないかというふうに考えております。
  432. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、一九八〇年の国連経済社会理事会では、先進国対発展途上国のモデル条約を作成しているわけですが、最近になって特に国連で対発展途上国モデル条約に取り組んだ趣旨や両方のモデル条約の主なる相違点についてもお伺いしておきたいと思います。
  433. 河原康之

    ○河原説明員 お答えします。  OECDモデル条約は六三年に作成されておりまして、一九七七年に改定されて、新OECDモデル条約ができ上がっております。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕  これにつきましては、発展途上国の方から先進国寄りであるという批判がありまして、それでは先進国と発展途上国とのモデル条約というものをつくってみようじゃないかという話が一九六八年ごろから起こりまして、国連の中に専門家グループというのをつくって、ずいぶん長く検討が行われまして、一九七九年に完成されております。  国連モデル条約とそれから新OECDモデル条約との相違点でございますが、これは先ほど説明しましたように、たとえば恒久的施設の範囲が若干広くなっておるとかそれから国際運輸業所得については、OECDモデルの場合には相互免税という考え方になっておりますが、国連モデルでは二つの選択肢を設けておりまして、航空機については、これはもう相互免税ということで両方同じなんですけれども、海運所得については課税権を留保することもできるといった内容となっております。それから、先ほど投資所得の制限税率でございますが、これは国連モデルではパーセントが入っておりません。これは二国間の交渉マターであるというふうになっております。違いは大体そういったところでございます。
  434. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、今後わが国が発展途上国との租税条約締結する際に、あるいは改定する際にこの国連モデル条約を取り入れようという考えでいらっしゃるのか、いかがですか。
  435. 河原康之

    ○河原説明員 わが国の租税条約締結方針は、OECDモデルに準拠して交渉を開始するということでございますが、先方の意向によりまして適宜国連モデルを導入するということでないと交渉が妥結しないということもあります。したがいまして、そういったことも従来とも行っているわけですが、今後もそういった交渉の中で取り入れられるものは取り入れていきたいというのが基本的な方針でございます。
  436. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、現在わが国は、東欧圏諸国との租税条約についてはルーマニア、チェコスロバキア、ハンガリーと締結しているわけです。昭和五十五年二月に署名をし、四月に国会承認されたポーランドとの租税条約がいまだ発効していないことについて、その理由をお伺いいたします。
  437. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘のように、ポーランドとの租税条約につきましては昭和五十五年二月に署名されたわけで、四月に国会の御承認をいただいたわけでございますけれども、その後、日本側としては手続を済まして直ちにポーランド側に批准書交換を申し入れたわけでございます。ただ、先方がその時点におきまして国内的な事情があって批准手続が進捗しないという事情がございましたので、現在まで批准書交換が行われないままで参りました。本年の三月になりましてポーランド側から、国内手続を了したので批准書交換の日程について相談したいということを言ってまいりましたので、現在その日程について検討中ということでございます。
  438. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、ソ連、中国とわが国の租税条約締結されていないのですが、それはどういう状況にあるのですか。ちょっと御説明いただきたいのです。
  439. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 両国とも目下租税条約の交渉中でございます。
  440. 玉城栄一

    ○玉城委員 交渉中ということですが、たとえばソ連の場合、交渉はいまどういう段階にあるのか、どういうところが問題点になっているのか、そしてその締結されるめどはいつごろなのか、それは中国も含めてですが、その辺どうなっていますか。
  441. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 中国の方につきましてはアジア局の方から御説明をさせたいと思います。  ソ連との租税条約につきましては、五十五年の十月の三日間モスクワにおいて第一回交渉が行われております。第一回交渉におきましては、相手側の租税に関するいろいろな制度について意見交換を行うということ、それから基本的な枠組みにつきまして話し合いを行ったというわけでございます。第二回の交渉の時期等につきましては外交チャンネルを通じて相談しようということになっておりまして、種々の情報交換は外交チャンネルを通じて現在も行われております。  以上のような状況でございますので、まだ交渉妥結のめどを立てるまでには至っておりません。
  442. 玉城栄一

    ○玉城委員 ソ連の方から租税条約について中断してきた、いろいろな理由があるのでしょうけれども、それはいいのですが……。それはわが国の方から早くやろうじゃないかということなのか、あるいはソ連側の方からそういう締結についての申し入れがあったのか。もしそうであるならば、ソ連側の考えはどういうことでそういう申し入れがあったのか、その辺もちょっと説明をしていただきたいと思うのです。
  443. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 本件につきましては、最近のモスクワあるいは日本における双方の経済活動がかなり行われているということにかんがみ、日ソ双方からその必要性を認め、交渉が行われているということでございます。
  444. 玉城栄一

    ○玉城委員 わが国としてはどういう姿勢で対応していらっしゃるわけですか、その交渉は。余り積極的でないとか消極的でないとか、こちら側の対応はどうなんですか。
  445. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 本件につきましては、ソ連側のいろいろな租税制度等複雑な面もございますので、そういう点を十分に意見交換をした上で協定の妥結に持ち込むということでございますけれども、基本的には積極的な姿勢で臨んでおります。
  446. 玉城栄一

    ○玉城委員 調印についてはめどが立たないということをちょっとおっしゃっておられたと思うのです。ゆっくりやろう——いま積極的とおっしゃいましたね。大体いつごろというめどもないでただだらだら交渉というわけでもないでしょう。その辺はどうですか。
  447. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 御承知のようにソ連は社会主義国として特異な体制をとっておるものでございますから、そういう意味でソ連の税制面についていろいろと確認をする必要がある面がかなり多いというふうに承知しております。ですから、そういう面を具体的に詰めた上で条約内容を固めていくという作業がまず必要でございますので、現在、第一回交渉においてもそれが行われましたし、外交チャンネルを通じまして先方の関係当局とこのような具体的な内容について意見交換を進めるという形で進捗しているわけでございます。こういう具体的な枠組みと租税内容等を十分確認した上で条約の交渉を進めていくという段階にございます。ですから、基本的に積極的ではありますけれども、そういう実務的な面でやはり詰めるところは詰めなければならない。特にソ連の社会主義体制の特異性というものもございますので、そういう点から若干時間がかかっているということでございます。
  448. 玉城栄一

    ○玉城委員 これはインドネシアとの租税条約ですからね。ただ、聞くところによりますと、年内、早期妥結を希望している。それは、いま御存じのとおり日ソ関係いろいろぎくしゃくしていますので、これが一つ役割りを果たすといううがった見方もあるわけですけれども、それは年内ですか、そういうことでもないわけですか。
  449. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 本件につきましては、きわめて実務的な条約でございますので、一般的な日ソ間の政治的な関係というものとは関係なく交渉は進められているわけでございます。いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたような先方の複雑な体制を解明していくという必要がございますので、年内に妥結の見通しが立つかどうか、ちょっと現在ではその自信がございません。
  450. 玉城栄一

    ○玉城委員 実務的はよくわかりますけれども、やはり租税条約は政治的問題と関係ないとも言えないと思うのです。  まあひとつそういうことで日ソ関係の改善の一助にもなるということであれば、やはりわが国としても積極的に対応していただくことを希望いたします。  今度は中国の方ですね。
  451. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 中国との間では、昨年の一月に第一回の交渉を北京でいたしまして、昨年の六月に東京で第二回をいたしまして、三回目を二十日から北京で現在交渉中でございます。これは中国にとりまして最初の租税協定でございまして、なれという面では若干あれでございますけれども、先方も当方も非常に熱意を持って早期に妥結したいということで、現在北京で交渉中でございます。
  452. 玉城栄一

    ○玉城委員 この協定三条の用語の定義の規定の中で「「インドネシア」とは、インドネシア共和国の法令において定義する領域並びに大陸棚及び隣接水域の一部であつて、国際法に基づきインドネシア共和国が主権、主権的権利又は他の権利を有するものをいう。」と書いてあるわけですが、群島水域はここに言うインドネシアの中に入るのかどうか、その辺を御説明いただきたいのです。
  453. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 この定義条項につきましては、先ほど説明申し上げました中に含まれておりましたように、交渉の大きな問題点の一つでございましたけれども、この定義の中にインドネシア側が主張しております群島水域に当たる水域、これは含まれているというふうに解しております。  ただ、これを若干敷衍して御説明申し上げますと、群島水域自体については日本側はこれを政治的には支持をするという表明を以前しております。それは昭和五十四年にスハルト大統領が訪日したときに新聞共同発表で、わが国は、群島国家原則としての重要性を理解し、インドネシアが海洋法会議の海洋法条約草案にのっとった群島水域制度を自国に適用するという政策をとるのであればこれを支持するということを表明いたしまして、政治的にはこれを支持するという立場は表明したわけでございますけれども、法的に見ますと、まだ群島水域というのは国際法上確立していない制度であるというふうに考えているわけでございます。ですから、法的にいわゆるインドネシアが主張している群島水域がこのインドネシアの法令に基づく領域に含まれるというふうに解するわけにはいかないわけでございますけれども、この条項をごらんいただきますとわかりますように、「国際法に基づきインドネシア共和国が主権、主権的権利」を有するもの、たとえば大陸棚及び隣接水域の一部というものであれば、これはそういう概念にはインドネシアの主張している区域は含まれると解して差し支えないと考えております。これは、たとえば二百海里水域の漁業水域は現在もうすでに国際法上確立した概念でございますし、それから大陸棚について沿岸国が主権的権利を行使し得るというのももう国際法上確立した概念であると考えられます。そのような両方の観点からいたしますと、このインドネシアの主張する群島水域に当たる水域がこの全般的な定義のインドネシアの中に含まれるというふうに解することは実態上何ら問題がない、このように解しております。
  454. 玉城栄一

    ○玉城委員 このインドネシア側の主張する群島水域というものが国際法上まだ確立されていないという御説明があったのですが、そういう確立されてないという状態にあるのですが、そういう状態でありながら二国間でこういう租税条約を結んでおくということは、後で問題にはならないというふうに理解しておいていいわけですか。
  455. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 その点は先ほども御説明したところでございますけれども、国際法に基づきインドネシアが主権を主張し得る水域というものをここでは定義しているわけでございますから、その国際法上確立していると日本側認めない群島水域というものは、法的にこの条約認めたということになってないというふうに私どもは考えております。ですから、この大陸棚及び隣接水域という概念の中にそれが含まれるということは国際法上何ら差し支えないわけでございますので、租税を徴収するという目的のこの協定の運用上、そのような水城がインドネシアという領域に含まれるということで運用されても、これは日本の群島水域についての法的立場に影響を与えるようなことは一切ない、このように考えております。
  456. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、かねてからわが底力要求している日本漁船のインドネシア群島水域の通航問題について、現在インドネシア側の態度はどういうものか、その問題点をちょっとお聞かせいただきたいのです。
  457. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 インドネシアは昭和五十年四月の国防治安大臣の決定を根拠といたしまして、インドネシアの群島水域を通航する漁船の通航路としてロンボク、マカッサル海峡を通る一本の航路しか認めておりません。これに対しまして、自来わが国はさまざまな機会にインドネシア側に対して、わが国としては伝統的に太平洋とインド洋の漁場の間を移動するために同水路のいろいろなルートを通航してきたわけでございますので、それを認めるよう交渉してきておりますが、現在までのところ、インドネシア側は国内治安問題等を理由といたしましてこれに応じていないというのが現状でございます。
  458. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、最初冒頭にもお伺いしたのですけれども、向こうの政府がわが国への輸出入品に対する規制強化等、業界もいま大変あわてているという言い方で申し上げたのですが、すでに日系合弁企業の船は締め出されたり、丸太の輸出禁止は八六年というようなことで、関係者の方からエビ漁のように操業許可期限内に当初の条件を根本的に変えられてしまうのでは日本企業は安心して投資ができないというような声もあるわけです。これは政府も含めて対応が非常におくれていたのではないかというような声もあるのですが、その辺については外務省としてはどのようにお考えになられるのですか。
  459. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 インドネシア政府は最近もいろいろな措置をとっておりますし、本件の漁船の通航路にいたしましても、必ずしも日本の意に沿うような政策をとっていないということが間々見られることは御指摘のとおりでございます。これに対しまして日本の対応がおくれておるということはございませんで、対応はそれぞれ迅速に、かつきわめて高いレベルでインドネシア側と話し合いをしておるわけでございます。たとえばただいまの漁船の通航ルートの問題にいたしましても、一九七六年以降福田総理、それから大平総理鈴木総理、昨年は鈴木総理のインドネシア御訪問の際等々、歴代の総理のレベルあるいは外務大臣レベル等でインドネシア側と話をしております。たとえば七九年にスハルト大統領が訪日いたしました際の共同新聞発表におきましても、「双方は、また、日本漁船のインドネシアの群島水域内の通航問題を討議することで意見の一致を見た。」というようなことも合意しております。わが国といたしましては、インドネシア側に対してあらゆる機会にわが方の立場というものを述べておるわけでございまして、先方の理解を得ていくように従来からも十全の努力をしておりますし、今後とも努力を重ねたいと考えておる次第でございます。
  460. 玉城栄一

    ○玉城委員 次に、日本・スリランカ投資保護協定についてお伺いします。  わが国日本が初めてこういう投資保護協定締結した相手国はエジプトであったとも承知しておるわけです。これは昭和五十三年ですね。この投資保護協定の運用状況は現在うまくいっておるのか。いかがですか。
  461. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 日本とエジプトの投資保護協定、これが御指摘のように日本として最初の投資保護協定でございますけれども、これは昭和五十二年に署名いたしまして、さらに昭和五十三年一月に発効いたしたわけでございます。  その後の状況でございますけれども、昭和五十二年度から五十五年度の四年間において七件、合わせて一千五百三十八万ドルの対エジプト投資が出ております。これはどの程度投資保護協定の効果によるものかにわかには即断いたしかねますけれども、この結果が日本の対エジプト投資に貢献したということは言えるのではないかと存じております。
  462. 玉城栄一

    ○玉城委員 うまくいっているということを言わんとされていらっしゃると思うのですが、昭和五十四年九月にジャヤワルデネ大統領が訪日をされた際に、大平総理との共同コミュニケが発表されたわけです。その共同コミュニケの第十項には航空協定締結したい旨の表明がされておるわけです。五十四年九月ですから現在三年近く。その航空協定の交渉というのは現在どういう状態にあるのか。  もう一点、同じくこの共同コミュニケの九項では「教育・文化交流を促進する旨の決意を新たにした。」というふうに書かれているわけですが、文化協定締結するような機運が現在わが国とスリランカとの間にあるのか、そういう用意があるのか。その辺の事情を二点お伺いいたします。
  463. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 航空協定につきましてお答え申し上げます。  航空協定でございますが、その前提となります直行航空便を設定いたしました場合の需要があるのかどうかということを調査しておる段階でございまして、昨年の十二月には政府の航空調査ミッションがスリランカへ参りまして調査をしております。現在のところ、スリランカと日本の間では、日本人がスリランカを訪問いたしましたのは五十五年ベースで一万一千五百二十六人、それからスリランカの方から日本に参りました人は六千九百六十九人という数でございまして、できる限り航空協定を結んで直行便をもたらしたいというのが一般的な希望でございますけれども、実需があるのかどうかというところをいま調査しているという段階でございます。
  464. 玉城栄一

    ○玉城委員 では、こういう航空協定の交渉についてはしばらく考えていないということになるわけですか。
  465. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 航空協定の交渉は、実需があるという状況でありますれば一般的には前向きに検討していきたいと思っております。ただいま申しましたように、昨年十二月に政府ミッションが参りましたけれども、さらに本年四月には、スリランカと日本の両国の航空企業間の協議が行われる予定でございます。これらを通じまして、需要を確かめた上で航空協定を結んでいくという方向に進んでいきたいとは存じております。
  466. 玉城栄一

    ○玉城委員 この協定の第九条には、協定の発効前の投資財産等にもこの協定を適用することになっているわけですが、いままでにスリランカへの民間投資の額はどれくらいになっているのか、この協定締結によってスリランカへの民間投資がどのくらい促進されると期待していらっしゃるのか、お伺いいたします。
  467. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします前に、航空交渉についてはただいま私の方から答弁申し上げましたけれども、文化協定につきましては情文局審議官からお答えさせていただきたいと思います。
  468. 加藤淳平

    加藤説明員 文化協定についてお答え申し上げます。  文化協定につきましては、現在のところ、スリランカと日本との問での文化交流の実績が非常に上がってきておりまして、昨年の実績を見ましても、たとえば留学生十九名というようなかなり大きな受け入れができております。したがいまして、スリランカとの間に文化交流を進める上に文化協定がなければ非常にぐあいが悪いという状況ではございません。したがいまして、いま直ちに文化協定を結ばなければならないという状況ではございませんけれども、文化協定を結ぶことが望ましいという機運が盛り上がってまいりましたときには、私どももちろん前向きに考えたいと思っております。
  469. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  本協定の九条は、御指摘のとおり、協定発効前に受け入れられた投資についても適用される旨規定しております。それがどの程度あるかという御質問でございますけれども、当然のことでございますが、本協定がいつ発効するかということによるわけでございますけれども、一番最近の統計によりますれば、わが国の対スリランカ直接投資額累計は、昭和二十六年度以降昭和三十六年三月末までで千百万ドルでございます。件数は三十八件でございます。  それからもう一つの御質問でございますけれども、本協定締結によって対スリランカ投資が増大し発展するどの程度の可能性があるかという趣旨の御質問でございますけれども、スリランカはわが国にとって比較的なじみが少ない国でございますけれども、御承知のとおり、八五%という大変に識字率が高い発展途上国でございまして、投資環境としては非常にいいものを持っておるという国でございます。現在までのところ、ただいま申し上げましたとおりの実績でございますけれども、この投資保証協定ができましてさらに投資の先行きの安定性と申しますか、それが確保されるということになりますれば、わが国の民間においてもさらにスリランカに対して投資を行っていきたいという気持ちが増大するものと存じます。  したがいまして、今後どの程度の額が出ていくかということは、推測は困難でございますけれども、この協定がわが国とスリランカとの間の投資、特にわが国からスリランカに対する投資に大変にいい影響を及ぼすというふうに考えております。
  470. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、同じく共同コミュニケの八項には、スリランカの経済社会開発の一環としましてコロンボ港拡充計画がありまして、この計画に対してわが国は一昨年十月でしたか、交換公文で七十六億円の円借款を供与しているわけですが、その進捗状況、現在どういうぐあいになっているのか、御報告をいただきたいと思います。
  471. 藤田公郎

    ○藤田説明員 ただいま御指摘のように、七十六億円までの円借款の供与の交換公文を一昨年の九月に交わしたわけでございますが、現在日本側のコンサルタント、これは日本港湾コンサルタントと申しますが、この手によりまして入札書類の作成を行っておりまして、間もなく入札が行われるという状況になっております。  恐らく先生御心配なのは、若干おくれているのではないかということかと思います。本来の予定ですと、本年の七月ぐらいには着工するような計画で進めていたわけでございますが、若干先方との話し合い等々で手間取りまして、これから入札書類が完成しまして実際の工事着工に至りますのは本年末、約半年くらいおくれるのじゃないかという感じでおります。ただし、これは工期が一応二年間ということになっておりますので、本来の交換公文で予定しております期日までには十分間に合う状況でございます。
  472. 玉城栄一

    ○玉城委員 時期のおくれもそうでしょうが、その必要性がありましてスリランカの経済社会開発に資するためということでされたと思うのですが、もう一つ問題点は、このコロンボ港には現在三万五千人の港湾労働者が荷揚げ作業に従事をしておると聞いておるわけです。その機械化をすることによりまして百分の一の三百人程度のオペレーターで一切処理ができるような状態になるということで、この計画が完成すると残りの約三万四千七百人をどこに吸収したらいいのか、いわゆる失業問題なんですが、それはどのように考えていらっしゃるわけですか。
  473. 藤田公郎

    ○藤田説明員 このコンテナ専用埠頭は、現在コロンボ港が非常に混雑をいたしておりまして、満杯状態ないし船待ちも必要とされるという状況下におきまして、在来の埠頭をそのままにしまして新しくコンテナ埠頭をつくるということでございますので、いま御指摘の港湾労働者の雇用問題自体は、いままでの在来埠頭がそのまま残りますので、コンテナ埠頭に新しい雇用機会が与えられるという形になります。ただ、機械化をされたものができますので、それほど、この三万五千が倍になるというようなことではないと思いますが、三百人といういま御指摘がございましたが、このコンテナ埠頭の建設によってどのくらいこの雇用が造出されるかというのは、実は日本の場合には、先生承知のように非常に機械化が進んでおりますので、全く同じ規模のものを日本につくりましても、コンピューター等々で非常に省力化が進んでおりますので、二百人とかいま御指摘の三百人とかというオーダーかと思いますが、このコロンボ港の場合にはコンピューターももちろんつくるわけではございませんので、それほどの少ない人数ではないんじゃないかと思われます。したがいまして、御心配のように現在の雇用者が失業するという問題はないということだけ御説明いたします。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  474. 玉城栄一

    ○玉城委員 このコロンボ港の近代化、そのためのわが国の援助、それによる失業問題というものは心配ないということであれば非常に結構なことですが、いずれにしましても、援助はしたわ、りっぱにしてあげたわ、失業は出たわということで、後は知らんぷりでは、この問題ではないということですが、いずれにしても、アフターケアというものは親切にやっていただいた方が、本当にその国のためになるのじゃないかと思うわけであります。  それでは次に、これは昭和四十九年四月の取り決めに基づいて、スリランカの遠洋、沖合い漁業の開発に必要な機関、漁労等の技術者を養成するために高等水産講習所が設立をされ、わが国から昭和四十九年度に六千五百二十一万円の機材供与を初め、昭和五十五年までに計二億四千百六十八万円に上る技術協力を行っているということですが、現在どういうふうに運営をされているのか、お伺いいたします。
  475. 藤田公郎

    ○藤田説明員 お答え申し上げます。  ただいま委員御指摘のように、昭和四十九年より六年間、わが国からこの高等水産講習所に対する技術協力を行いました。そのために専門家が延べ人数で五十七人、受け入れ研修員数二十八名。それから、いま先生御指摘の機材に加えまして、一億五千万円相当の練習船も寄贈いたしておりますので、合計にしますと約四億円程度の規模の機材が供与されていることになります。  この六年間の供与期間が終わるに際しまして、種々スリランカ側と話し合いを行いました結果、もうあと一年協力期間を延長してもらいたいという非常に強い要望が先方からございましたので、結局一年延長いたしまして、昨年の四月、スリランカ側に引き渡しを行いました。  先岳御心配になっておられるのは、恐らくその過程、特に初期でございますが、いろいろ問題がございましたのは、この水産講習所の卒業生が就職がきちっといくかどうか、それから機材の管理不備、それから日本側の専門家が参りまして、引き渡した後先生になってくれる方を養成するわけですが、なかなか人材難というようなことがございまして、当初の数年間は種々問題がございましたが、その後、鋭意スリランカ側も努力してくれました結果、事態は非常に改善されておりまして、本年、つい先々月になりますが、二月にわが国から経済協力の評価ミッションというものを送りまして、この高等水産講習所以外のプロジェクトも含めまして評価を行いました結果、就職状況も、もう一〇〇%卒業生は合弁企業等々にいま就職している、ないしはアラブ産油国等々への就職も行われているということ、それから機材の管理状況も非常に良好である。それから、日本側の専門家が教えましたスリランカの先生方が、りっぱに先生として活躍しておられるということで、結果は非常に良好な成果で運営をされているという報告がなされております。  以上でございます。
  476. 玉城栄一

    ○玉城委員 この高等水産講習所は、将来はスリランカの大学に昇格をさせていくというような話、そういう方向であったようですが、それはどうなんですか。それが一点。  いまおっしゃいました卒業生、合弁企業に働いているとか、あるいは産油企業に行っているとか、あるいは学校の先生をやっていらっしゃるとか、水産業界に一人も従事していないということがあるのですが、そういうことはあるのですか、ないのですか。向こうの水産業界に一人も就職していないというような話を聞いているのですが、いかがですか。
  477. 藤田公郎

    ○藤田説明員 第一の点でございますが、この高等水産講習所、本来の目的は、スリランカに複数ございます国立地方漁業センターの機能を強化していこうということも非常に大きな目的だったわけでございますが、この点ではかなりの成果を挙げている。すなわち、この高等水産講習所の先生以外に、そういう地方漁業センターの中堅技術者として活躍をしているという状況がございます。  それから第二番目の、現地の水産会社には余り就職していないということでございますが、私いま申し上げました四月の評価ミッションのメンバーが特にこの就職状況については重点的に評価をしてまいりまして、いままでの卒業生が七十二名、昨年の四月までで七十二名の卒業生が出ておりますけれども、この大部分が合弁企業に採用され、ないしはアラブ産油国に行っているという報告を受けておりますので、その現地の会社に行っているかどうかということまでは、実は報告を受けておりません。
  478. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまのスリランカの問題、現地からわが国に対する非常な苦情めいたことも聞いておりますが、もう時間も来ましたので、この委員会の場でなくて、御要望もしておきたいのですが……。  委員長、もう一つあるのですが、これはまた、あと次回、短い時間でよろしいですから……。きょうは、これで終わります。
  479. 中山正暉

    中山委員長 東中光雄君。
  480. 東中光雄

    ○東中委員 日本・スリランカ投資保護協定についてお伺いしたいと思います。  外国の投資は、進出先で活動する場合に進出先の経済主権に従うというのがこれは当然のことだと思うのですが、まず一つ、原則の問題としてお伺いしたいと思うのですが、どうでしょうか。
  481. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 わが国の企業が外国に投資をいたします場合には、その国に適用されております法律等に従って事業活動を行うべきであることは当然でありまして、そういう見地から、現地の主権に従うということはお説のとおりだと思います。
  482. 東中光雄

    ○東中委員 一九七四年の十二月十二日の第二十九回国連総会で、諸国家の経済権利義務憲章が採択されたわけですが、いわゆる新国際経済秩序というものがつくられて、その後の発展途上国の経済主権確立に強い方向づけをしてきたと思うのです。二十九回国連総会で採択されてその後発展してきている新国際経済秩序、日本はこの決議には棄権したと思うのですが、いまどういう態度をとっておられるか。これは原則的な問題でもありますので、外務大臣にお伺いしておきたいと思うのです。
  483. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私からとりあえずお答え申し上げます。  いま先生御指摘の一九七四年の憲章でございますけれども、この憲章全体につきましては、日本はこれは棄権をいたしております。  それから、投資保証協定等々の関係の項目は、実は権利義務憲章の第二章の第二条であるわけでございますが、この中でまず第二条の第一項は、天然資源の恒久主権を規定しているわけでございます。それから同条の第二項は、実は三つに分かれておるわけでございますが、これはまさに外国投資の規制を規定しておるわけでございます。第二項のa項で投資受け入れ国の法令に基づいて外国の投資を規制し得るということを規定をいたしております。それからb項で投資受け入れ国の法令に基づいて多国籍企業の活動を規制することを規定しております。それからc項でございますが、外国人資産を国有化する上での紛争解決手続等を規定いたしております。  そこで、この規定に対します日本の立場でございますが、先ほど申し上げましたように、この憲章全体につきましては日本は、確かにこの憲章は開発途上国と先進国との経済関係の健全な発展を促進するべきという点はあるのでございますけれども、同時に開発途上国の一方的な主張を余りにも取り入れ過ぎておるというような点に疑問がありまして、これは棄権をいたしております。それから第二条、これは投資の規制でございますけれども、まず第一項につきましては日本は反対をいたしております。それから第二項、これは(a)、(b)、(c)とございますが、(a)につきましても反対、それから(b)につきましても反対、(c)につきましても反対の態度をとっております。
  484. 東中光雄

    ○東中委員 この憲章は賛成が百二十カ国で、全体として言えば反対は六カ国である。百二十カ国の圧倒的多数で議決されているわけですが、いま御答弁ありましたように、経済的権利義務についての第二章の第二条一項について反対しているのは、日本を含めてわずか九カ国。それから第二項(a)について反対しているのは、日本を含めて十カ国。二項(b)は、反対しているのは日本を含めてわずかに四カ国。そして、二項(c)は反対十六、日本が入っている。百二十カ国あるいは百三十六カ国が採決に加わって、日本は常に少数でこの問題については反対をしているということなんですが、まず第二条の第一項「使用及び処分することを含む完全な恒久主権を有し、かつそれを自由に行使する権利を有する。」これはなぜ反対しなければいかぬのか、まず一項についてお伺いしておきたい。
  485. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 いま先生おっしゃいましたように、この第一項でございますけれども、恒久主権そのものは確かにそうなんでございますけれども、この憲章の規定の書き方が余りにもいわゆる発展途上国に一方的である、こういうような観点から反対した次第でございます。
  486. 東中光雄

    ○東中委員 この一項を読みますと、「いかなる国家も、その全ての富、天然資源及び経済活動に対し、それらを所有、使用及び処分することを含む完全な恒久主権を有し、かつそれを自由に行使する権利を有する。」もっともなことを書いてある。あたりまえのことだと私は思うのですけれども、一方的であるとかなんとかいいますが、どこがどういうふうに一方的なのですか。
  487. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 いま先生御指摘の第一項でございますけれども、天然資源の恒久主権につきましてはまさにそのとおりでございますけれども、第一項の、いかなる国も、すべての富、天然資源及び経済活動に対して、こうあるわけでございます。そこで、すべての富、経済活動に対して、という点につきまして日本政府は反対という態度をとったわけでございます。
  488. 東中光雄

    ○東中委員 「対し、それらを所有、使用及び処分することを含む完全な恒久主権」、これはそれを含まない完全な恒久主権なんかありゃせぬのだから、結局恒久主権そのもの、あたりまえのことを書いてあるわけですね。だから、あえて発展途上国に対して敵対的な態度をとっている、百二十カ国以上が賛成しているときにそういう態度をとっているとしか私には思えないわけであります。  第二項の(a)についても、外国投資を規制する、その他いろいろありますけれども、これも発展途上国でなくてもあたりまえのことを書いているんじゃないかと思うのですが、なぜ反対をされたのですか。
  489. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 そのa項でございますけれども、外国投資が受け入れ国側の国内法を遵守すべきことは当然のことでございます。しかしながら、外国投資に対し受け入れ国が恣意的な措置や投資国の差異によって差別的な措置をとる等の権利の乱用がもしあったような場合の歯どめがかかってない、こういうことから先ほど申したような態度をとった次第でございます。
  490. 東中光雄

    ○東中委員 これも権利の乱用をするなんて書いてないですよ。乱用するようなことになったら困るから、それは乱用させなければいいことであって、これも世界の大勢に対してあえて独占資本主義国家としての挑戦をしておるように言わざるを得ない。b項、c項についても同じことだと思うのです。新国際経済秩序というものがこういう発展途上国の経済主権を認めていくという立場から打ち立てられてきておるわけですから、これに対してその当時反対しただけじゃなしに、いまもそういう態度を貫いておられるとすれば、やはり国際的な問題があるから、外務大臣にこういうことについて、これは基本的な日本の姿勢の問題にもかかわってきますので、お伺いしておきたいわけです。
  491. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 正直に申し上げますが、この諸国家の経済権利義務憲章の制定、これは私、勉強しておらないのであります。ただいま御質問に応じて私なりに判断をいたしましたことは、開発途上国と先進国との経済関係の健全な発展を促進するものであるべきである、そういうたてまえの上に立って、果たして妥当であるかどうかというようなことから、ただいま答弁がありましたようなことで、あるいは反対、あるいは棄権をした、こういうことではないかと思いますが、まことに恐縮ながら、いま申し上げたとおり、にわか勉強でございますので、お許しください。
  492. 東中光雄

    ○東中委員 投資協定は、こういう国際的な、あるいは国連総会の決議、そういうふうな線に沿ってやはりやられなければいかぬものだろうという意味でお伺いしておるわけであります。  具体的に協定の第五条の三項で補償について出ておりますが、「補償は、収用、国有化若しくは制限又は収用若しくは国有化と同等の効果を有するその他の措置が公表された時」云々と、こうなっていますが、ここで言っている「収用、国有化」これはわかりますが、「若しくは制限又は収用若しくは国有化と同等の効果を有するその他の措置」これは一体どういうことなのか、まずお聞きしたい。
  493. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 この条文に言います「制限」につきましては、収用、国有化の場合はかなりはっきりわかるわけでございますが、制限という場合には、国とか公共団体が一定の目的のために事業者の所有している物資または権利を一時使用したり、あるいはその権利の行使を一部制限したりするというような形によって、正常な事業活動を行われないようにするというような内容を含んでいる。いわば権利の制限に当たることを指しているものでございます。
  494. 東中光雄

    ○東中委員 「収用、国有化若しくは制限又は収用若しくは国有化と同等の効果を有するその他の措置」。だから、収用、国有化というのは二回出てくるわけですね。「同等の効果を有するその他の措置」、何のことかさっぱりわからないです。もう少し……。
  495. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 どうも舌足らずで失礼いたしました。制限につきましては、そのようなことで、正常な事業活動が行われないような権利の行使の制限をするというようなことでございますけれども、収用もしくは国有化と同等の効果を有する措置という場合に、明らかに収用とか国有化とは言えないまでも、正常な事業活動を妨げるという結果になる措置を生じしめるような、それにつながるような措置について言及しているわけでございまして、たとえば投資受け入れ国によって、恣意的な出資制限であるとか、あるいは資本とか経営者について、これを現地化しろというような要請が行われる場合であるとか、あるいは外資政策をその国が変更することによって特定の業種の事業活動が行い得ないようにするというような形で、いわば外国企業がその国において正常な活動を行い得ないような制限を課せられるというような場合を指しているわけでございまして、その結果外国企業が撤退せざるを得ないような制限を課されて、結果的には収用とか国有化と同じような形になる、そういうような制限を受ける場合のことを指しているわけでございます。
  496. 東中光雄

    ○東中委員 制限というのは、投資企業が事業を進めていくのに支障を来すような、一時的にあるいは部分的に事業活動が規制をされることだというふうにいま言われたと思うのですが、一つ例を挙げますと、たとえば進出企業が公害発生源になる。そういう場合は、その国は主権の行使をして当然公害規制をやるということはあり得ますね。公害規制をやられることによって仕事ができなくなる、ここに言う制限を受けるというふうになった場合、相手国はやはり補償しなければいかぬのですか。制限というのはそういう場合も含むということになるのか。要するに、相手国の法律なりあるいはそこの政府の施策として、その企業に対してだけじゃなくて、一般にやっているように制限をする、規制をするというふうな場合を含むようにどうもこの「制限」という言葉を入れると見えるのですが、そういう点はどうなんですか。
  497. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 この条項の基本的な目的は、収用、国有化というきわめて明確な場合を定めているわけでございますけれども、そのような場合に事業を保護するという観点からできているわけでございますけれども、それでは十分でないという場合もあり得るということで、そのような収用、国有化ということに直ちに当たらないまでも、それに該当するような、いわばかなり重い制限といいますか、そのような場合を想定して規定しておりますので、合理的な国内法をある国が制定して、その企業にその国内法をほかの企業と同じような観点から適用するという場合には、必ずしもこの制限に当たると解さないで済む場合が多いのではないかと思いますし、そのような場合までもこの協定に言う、まあ具体的な場合に即して考える必要がございますけれども、そのような場合までも制限と言う必要はないのではないか。そういう意味では、弾力的な運用が可能な条項であろうというふうに考えております。
  498. 東中光雄

    ○東中委員 あなたの言われていることだったら、「収用、国有化又は収用若しくは国有化と同等の効果を有するその他の措置」というふうに書いておけば、それで十分なんですね。いまのあなたの答弁はそうなんです。それとは別に「収用若しくは国有化と同等の効果を有するその他の措置」ということまで書いてあるのに、その上にわざわざ「国有化」と並べて「制限」ということまで入れるというのは、そもそもさっきの国連総会のこれに反対した、何というか、相手方に対して経済主権を、あるいは主権を侵害していくような、そういうものがここににじみ出ているように思うので、そこのところはやはりはっきりしなければいけないのではないかということです。なぜ「制限」ということをわざわざ入れたのか。あなたのいまの説明では、「制限」を入れた理由の説明にはなっていない。
  499. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 後段の「収用若しくは国有化と同等の効果を有するその他の措置」というのは、より根本的に企業が撤退を余儀なくされるような状態を指すものだと考えますので、ここに置いてあります「制限」という言葉は、むしろ一時的にあるいは部分的に、先生も御指摘になりましたように、一時的に部分的にその権利の停止があって、企業活動が阻害されるというような場合を想定して置いた表現でございます。これは各国ともいろいろな表現で置いてありまして、たとえば直接的、間接的に事業活動を阻害するというような表現を使っている場合もございますし、何らかの形で、収用、国有化ということだけではなくて、それには至らないまでの事業活動を阻害する措置でも、その概念に類するようなものについては、このような表現を使って規定している例が多いわけでございます。
  500. 東中光雄

    ○東中委員 結局、環境汚染源、公害発生源ということで規制をされるという場合ですよ、そこだけ入れるというのじゃなしに。もちろんそんな恣意的なことは現代国家ではあり得ませんから、一般の相手国の企業に対すると同じようにそういう制限をやってきたという場合は含まないというふうに日本外務省としては解釈しておる、理解しておるということでいいのですか。
  501. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 一般的にはこの条約によりまして、事業活動につきまして内国民待遇、最恵国待遇が与えられておるわけでございますから、そのような中におきまして国内法を適用されるということに対しては、当然それが予想されるべき事態であると思います。先生がいま御指摘になりました環境保護の見地からの国内法というわけでございますけれども、これが具体的にどのような内容のものになるかによって最終的な判断は必要かと思いますけれども、一般的には、そのように国内的な、合理的な理由に基づいて必要とされる措置をとるための国内法が当該企業に適用されるという場合は、この制限という中には当たらないというふうに解されるのではないかと考えております。
  502. 東中光雄

    ○東中委員 一時的または部分的に事業活動ができない場合であっても、ここに言う「制限」ではないことがあり得る。そうすると、概観的に言えば、一時的、部分的に経済活動ができない場合は、普通は制限と言うのだけれども、この条約に言う「制限」に入らない場合があるということをいま言われたのですか。そうすると、同じ結果が起こっておって、制限になる場合とならない場合、補償する場合としない場合、それは決めなければいかぬわけですが、客観的な基準は何ですか。
  503. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 いまのような状態は、その企業と国の関係におきまして、具体的なケースに従って解決されるべき問題であろうと思います。ですから、この協定の中には協議条項等も入っておりますし、その事態が発生したときに、その事態に即して、それに適応した解決が図られるものと考えております。
  504. 東中光雄

    ○東中委員 それは事態に即して解決しなければいかぬので、事態に即して解決するについて何か客観的な基準がなかったら、そのときに恣意的に力関係で決めていくのだったら、これは非常におかしいことになるから、その基準は何ですかと聞いているのです。
  505. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 このような規定が置かれましたのにはそれなりの目的がございますから、この規定の目的に即しまして、その条約解釈の上で当該措置がこの制限に当たるかどうかということが解決されなければならないと思うわけでございます。ですから、客観的な基準を前もって設定しておくことはなかなかむずかしいのではないか。いかなる条約の適用においても、このような場合に客観的基準をあらかじめ合意しておくというのは、もちろんそういう方法もあり得ると思いますけれども、かなり困難な方法ではないかと考えております。
  506. 東中光雄

    ○東中委員 あらかじめ合意するとか、そういうことを私は言っているのじゃないのですよ。こういうものをやる場合には、要するに経済侵略になるかならぬかということが問題になってくるわけでしょう。そういう場合に制限という条項を入れて、しかしその制限という概念を考える場合は、部分的、一時的な営業の続行が不可能になった事態、これは概観的にそうですね。しかし、補償の対象になる制限になる場合とならない場合があることは先ほど言われたとおりなんです。そうしたら、その補償の対象になる制限は、一体どういうところに線を引くのかということは、この文章自体の中にも内包されたものとして観念しておらなければ、非常に不都合な事態になる、全く恣意的になってくるということを私は言っているわけです。
  507. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 そういう意味では、この協定そのものがむしろ日本からの投資促進するという観点から、スリランカの要請にもこたえまして結ばれたものでございますので、この条項の交渉過程におきましても、このような条項を置くことが事業活動の保護につながるという判断が双方にあって入った条項でございますし、その運用につきましては、やはり双方が協議しながら行っていくのが条約の仕組みでございますので、先生がいまおっしゃられたような対立的な観点から、この条文についてきっちりした基準をつくっておいて、それを運用していくというのは、やはりこの協定締結した根本的な精神に反するといいますか、根本的な精神からすれば、むしろそのような形でぎりぎりとした適用というよりも、実態に合った運用をしていくのが、双方の締約国の意図であろうと思いますので、そういう観点から、協議条項等を通じて、そういう場合に、まさに友好的にこれを解決していくという方向になるのではないかと思っております。
  508. 東中光雄

    ○東中委員 それは、そうせざるを得なくなるだろうというだけのことで、ぎりぎりしたということを言うんだったら、「制限」というような言葉まで入れ、そして「補償は、遅滞なく行われなければならず、かつ、支払の時までの期間を考慮した妥当な利子を付したものでなければならない。」これこそぎりぎりしますよね。そうでしょう。だから、一方では、取る方はぎりぎりしておるのですよ。  それで、どこまで取るのかというのは、まず「制限」はもう全部取るのだぞ。しかし、どうも条理からいって、たとえば公害の発生源で規制されたからといって補償を取るのじゃぐあい悪いと思った分だけは譲歩する。こういう態度が発展途上国——それは投資促進を相手方は希望しています。しているからといって、そういう姿勢で乗り込んでいくのがそもそも問題だ。だから、先ほど冒頭に言った国連の総会決議の趣旨からいっても、世界の大勢と逆行しておるような、経済力に物を言わせたこういう姿勢が出ているということを私は言っているわけなんです。それはやっぱりはっきりすべきだと思います。これは何遍繰り返しても一緒ですから、もう言いませんが……。  ところで、いま読みました「支払の時までの期間を考慮した妥当な利子を付したものでなければならない。」これはエジプトとの協定にはない。この協定で初めて出てきたんですが、なぜスリランカは——「社会主義共和国」と書いてあるからやったんではないとは思いますけれども、どういうことなんでしょう。
  509. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 エジプトとの協定におきましても、合意された議事録の1におきまして、「協定第五条にいう補償には、国際法に基づいて適当とみなされる延滞支払金を含むことが確認される。」という条項が入っております。それで、利子という言葉を使った条項は具体的にはないわけでございますけれども、これは利子と同じことを意味しておりまして、エジプトの国内法上、利子という言葉を使うことには反対である。それから国内法上あるいは宗教上の慣習等もあるようでございまして、それからして利子というような言葉を使うのは反対であるということでございましたので、実体的に同じことを議事録の中に記載したという経過がございます。そういうことで、条文上は利子という言葉があらわれておりませんけれども、実体的な面においては、双方の条約に差異がないわけでございます。
  510. 東中光雄

    ○東中委員 エジプトの方は合意議事録の記載で、しかも「国際法に基づいて適当とみなされる延滞支払金」、これはようわかります。ところが、これを見ると、「妥当な利子を付したものでなければならない。」これこそまた、ぎすぎすしておるんですね。だから、それは実体的には同じだというふうに言われるとは思いますけれども、国際法に基づいて適当とみなされる延滞支払い金、それなら、なるほどおくれたんだから払わにゃいかぬなとわかりますね。妙なことをしたものだなと実は思っておるわけであります。この協定を見ておると、非常に高圧的な感じがするんですね。  それから次に、スリランカとの関係でお伺いしたいのですが、日本の進出企業は、外務省の南西アジア課の「最近のスリ・ランカ情勢と日ス関係」、ことしの三月に出されたものによりますと、直接投資は三十八件、合弁で三十六件ということであります。そこで、日本貿易振興会の八二年海外市場白書で、スリランカ政府が大きな期待を寄せている加工区への進出はおくれているということを言っているわけですが、この加工区外への進出はずっとふえているわけですね。これはどういう理由でそうなっているんでしょうか。
  511. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 御指摘のとおり、一九七八年にスリランカ政府がつくりました自由貿易地帯に対する投資は現在までに三件でございます。これは特に、昭和五十六年九月末現在の数字でございますけれども、全体の数字が百五十一件ということに比べますと、日本からの投資が少ないということは御指摘のとおりでございます。  なぜかということでございますけれども、これには特に三つくらいの理由があると思います。一つは、これはいわゆる自由貿易地帯外と共通でございますけれども、なじみが少ないという点が一つでございます。それから第二の点は、さらにこの自由貿易地帯自体ができましたのが最近でございまして、その自由貿易地帯についてのなじみがさらに少ない。これは冒頭のなじみと申しますのはスリランカそれ自体でございますけれども、そういう点だと思います。  特にそれでは自由貿易地帯外との関係について言いますれば、やはり自由貿易地帯は、たとえば法人税を十年間免除する等々の特定の恩典を与えるかわりに、原則として輸出義務を課しておるわけでございます。したがいまして、ここに進出していく場合には輸出をしなければならないという義務が課せられるわけでございまして、そこでスリランカに投資をして輸出をするということについてのなじみがなおないということによって、現在までのところ三件。三件は、電気製品製造販売それから金属の装身具の製造販売それから陶磁器の製造販売でございますが、この三件にとどまっているというふうに考えます。
  512. 東中光雄

    ○東中委員 時間だそうでございますので、まことに残念でございますが、質問はこれで終わります。      ————◇—————
  513. 中山正暉

    中山委員長 次に、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府オーストラリア政府との間の協定締結について承認を求めるの件、過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止又は制限に関する条約締結について承認を求めるの件及び環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用禁止に関する条約締結について承認を求めるの件の三件を議題といたします。  政府より順次提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣櫻内義雄君。     —————————————  原子力の平和的利用における協力のための日本   国政府オーストラリア政府との間の協定締結について承認を求めるの件  過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止又は制限に関する条約締結について承認を求めるの件  環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用禁止に関する条約締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  514. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま議題となりました原子力の平和的利用における協力のための日本国政府オーストラリア政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、オーストラリア政府との数次にわたる交渉を経て、昭和五十七年三月五日にキャンベラにおいて、両国政府の代表者の間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定の主な内容としまして、両国政府は、両国間における専門家及び情報の交換、核物質等の供給等について協力することとなっております。また、この協定により規律される核物質等は、核兵器その他の核爆発装置の開発、製造のために使用してはならず、また、軍事的目的を助長するような態様で使用してはならないこととしております。さらに、この協定により規律される核物質等の管轄外移転、再処理等は、一定の規制のもとにのみ行われることとしておりますが、再処理につきましては、予見可能かつ実際的な規制の仕組みが設けられております。  この協定締結によりまして、ウランの供給先として今後重要性を一層増すと考えられるオーストラリアとの間の原子力の平和的利用における協力関係をさらに発展させるための基礎が整備されることとなり、これは、核拡散の防止のための国際的努力及びわが国の核燃料サイクルの長期的、安定的な運営及び発展に資するものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止又は制限に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和五十五年十月十日に、ジュネーブで開催された国際連合会議において採択されたものであり、過度に傷害を与えまたは無差別に効果を及ぼす通常兵器使用禁止し、または制限することにより武力紛争における文民等の一層の保護を図ることを目的としているものであります。  わが国がこの条約締結することは、武力紛争の惨禍を軽減し、通常兵器の分野における軍備管理の強化及び軍備縮小を促進するための国際協力に資する見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約について御承認を求める次第であります。  最後に、環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用禁止に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和五十二年五月十八日にジュネーブで作成されたものであり、広範な、長期的なまたは深刻な効果をもたらすような環境改変技術軍事的使用その他の敵対的使用を効果的に禁止することにより、このような使用が人類にもたらす危険をなくすことを目的としているものであります。  わが国がこの条約締結することは、わが国の安全保障の強化に資するとともに、軍備管理の分野における国際協力に貢献し、軍備縮小を促進すべきであるとのわが国の主張をさらに推進する見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  515. 中山正暉

    中山委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る二十三日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十九分散会      ————◇—————