○宮本
説明員 お答えいたします。
便宜置籍船についての御
質問でございますが、便宜置籍船と申しますのは先生御承知のとおり、リベリアとかパナマのような、
船舶の
登録要件が緩やかで
外国人または
外国法人が所有する
船舶でも自国船として
登録できる国に置籍されている
船舶のうち、実質的には
外国人があるいは
外国法人が所有している
船舶を通常便宜置籍船、そう言っているわけでございます。これがどのくらいあるかという問題でございますが、まず実質的な船主はだれかということを判定することが一般的には非常に困難でございます。したがいまして、なかなかその正確な数字がワールドワイドにどのくらいあるのかということをお答えすることは非常に困難でございますが、海運界におきましては一般的には世界の船腹量の三割程度が便宜置籍船ではないか、そのように言われております。ちなみに、リベリアとかパナマというような先ほど申し上げましたような国に置籍されている船腹量は約一億総トンでございまして、世界の船腹量の約二五%に当たります。
次に、では
わが国の
関係する便宜置籍船はどのくらいあるのかという御
質問でございました。これにつきましては、
わが国の海運企業の
関係する便宜置籍船の正確な把握ということは、同様な理由で困難なわけでございますけれども、
わが国でいわゆる仕組み船と言われているものがございます。これはどういうものかと申しますと、
日本の海運企業が長期用船をする
目的で
日本の造船所の船台を
外国の海運企業にあっせんいたしまして建造いたしました
船舶のことを言っているわけでございますが、
わが国の便宜置籍船の多くはこれであると思われるわけですが、この仕組み船につきまして、
わが国の海運界の中の中核になります中核六社について調査したものがございます。これによりますと、
昭和五十六年央でこれら中核六社が持っている仕組み船というものはおよそ百八十隻、五百万総トンあるということがわかっております。
以上が、便宜置籍船の船腹量についての想定でございますが、次に、これらの便宜置籍船がどういう問題があるかということについて、あるいはその対策はどうかということについてのお尋ねがございました。
これにつきましては、便宜置籍船のかかわる問題についてはいろいろな問題がございまして、いろいろな国際機関で討議が行われております。大きく分ければ二つに分けられるのではなかろうかと思うわけであります。
一つは、便宜置籍船のもたらします弊害と申しますか、そういうものをどうして除去していくかという問題で、弊害と申しますのは、
一つは安全の問題、あるいは環境汚染の問題、あるいはそこで働く
船員の労働条件の問題、そういうものが非常に劣悪なのではないかという議論がしばしばなされております。これにつきましてはわれわれといたしましても、船がどういう船でございましても安全の
確保とかあるいは海洋汚染の防止とか、あるいは
船員の労働条件の向上とか、そういうことは図らなければならないことでございますので、
関係する国際機関におきまして
統一的な
基準を設けまして、
各国がその
条約に入りまして、一定の
基準をみんなが守っていくということで便宜置籍船のもたらす弊害をなくしていくということで現に努力が行われ、この問題はかなり改善している、解決の方向に向かっているのではないか、そのように
考えております。
それから、便宜置籍船のかかわりますもう
一つの問題は、
発展途上国から主として言われることでございますけれども、
発展途上国側の言い方によりますれば、先進国が本来海運についての
国際競争力を喪失しているにもかかわらず、リベリアとかパナマというような国に置籍することによって、あるいは安い
船員を配乗させるとかその他いろいろな手段を講ずることによって、本来
発展途上国が所有できるような船が先進国側にある、
発展途上国の海運の
振興が図られない、彼らの海運の進展を妨害しているものである、そういうような主張が行われているわけであります。これにつきましては、
日本を初めとして海運先進国の間では、そういう主張はとうてい容認できない、海運企業、国際海運の特色というのは、資本とか労働とかあるいは貨物の輸送とかということがいろいろな国にまたがって行われるということによって国際海運の企業としての特色があるわけでございますから、そういうことによってまた安い運賃で経済なり
国民生活の安定のために物が輸送されるということもあるわけでございますから、そういう原則はやはり保持されなければいかぬということで、そのような
発展途上国側からの要請に対しては見解を異にしているというのが、現在の便宜置籍船問題の状況でございます。
それから、今後どのように対処していくかということにつきましては、
発展途上国側の海運を
振興したいという要望はよく理解できるところでありまして、そのようなことにつきましては
途上国側のそういうような
基礎的条件を
整備することに先進国側が協力することによって徐々に解決を図っていくということが適切ではないか、そのように
考えておるわけであります。