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井上(普)
委員 私は、西ドイツはあるいはフランスは、自国の安全と繁栄ということを中心に物事を
考えられておる、そのように思われてならない。西側の諸国の繁栄あるいは安全というようなことではなしに、自分自身の安全のために、もし米ソの間に限定戦争でも起こるならば、一番先に被害をこうむり焦土と化すのは自国であるというのが西ドイツのシュミットの
考え方ではないか。西ドイツだけではない、もし米ソの間に衝突が起これば、限定戦争でも起こるならば、
日本も同じように焦土と化すのです。したがって、米ソの間における衝突が起こらないようにいかに
日本は腐心するか、これを
考えるかというのが
外交の基本でなければならないと私は思う。しかし、いまの
日本には、西側先進諸国の
国際的責任を果たすと言うだけであって、その平和への
努力が非常に不足しておることははなはだ遺憾とするものであります。
時間がございませんのでもう
一つ申し上げるならば、一体
アメリカは、
日本あるいは西ドイツを占領下にある国だぐらいの
認識ではございませんか。したがって、先日も、ホールドリッジなる国務次官補のごときは、
日本をあたかも侮辱するにもはなはだしい言葉を吐いている。
日米貿易不
均衡は、
日本の社会的な機構それ自体が何と申しますか
日米の
貿易不
均衡を来すのだ、こういうことすら平気で放言する。この問題について見るならば、
アメリカは、ホールドリッジなんかは、
日本は
日本語で言うのをやめて
アメリカ語を使えばいいぐらいにしか思っていないのではないかと私には
感じられてならない。
このホールドリッジの放言に対して、
外務省は何と抗議を申し込んだのか、一言もないではありませんか。
日本の
外交というのは、まさに
アメリカ追随の
外交であり、のみならず幕末から続いてまいった
日本の
外交の姿勢、すなわちその場を濁せばいいわ、一日延ばせばいいわということで、自分の言いたいことも十分に言ってないのが
日本外交の姿ではないかと私は思う。
日米の間に百三十年、四十年の
外交の歴史があるけれども、ただの一回だけ、
アメリカに対して対等に言葉を発したのは
昭和十六年だけだったと私は
感じられてならないのであります。
考えてもごらんなさい。
日本はこのような焦土の中から立ち上がり、資源もない。そこでわれわれは、
国民欣然一体となって勤勉に
努力をして今日の繁栄を来してきた。しかし、それに対して働き過ぎだ、勤勉過ぎるというような言葉をもって
アメリカは
日本に対してともかく攻撃をする。私は
アメリカの下院
外交委員長に言ったのだが、
アメリカは
日本に対してそういうことを言うが、一体キリスト教のバイブルにでも
日本は働いたらいかぬということが書いてあるのかと言いたくなるほどじゃございませんか。毅然とした
外交姿勢、しかも、それは自国の安全と民族の繁栄のためにという視点が薄らいでおるのではなかろうか、このような危惧の念を私は持たざるを得ない。いまの
外交方針に対して、はなはだ遺憾ではありますけれども、言わざるを得ないのであります。
時間がございません。結論だけ申し上げますならば、
アメリカに対して言いたいだけのことは言う必要がある、腹を打ち割って言うだけの姿勢を
外交当局は持っていただきたいということを私は申し上げたいのであります。
先ほど
櫻内外務大臣は、ヘイグ長官との間には交渉があったと言われたけれども、ある程度
日本人の通有性として、物事をその場その場ではっきりさせない、これが
アメリカが
日本に対して誤解をするゆえんではないかと私は思うのです。はっきり言うべきことは言い、向こうの
主張の正しさはあくまでも認める、こういう姿勢こそ、いま
日本にとって最も必要な話ではないかと私は思うのです。
でございますから、先日もワインバーガーが
日本に参りまして、シーレーンの一千海里の海域を
防衛することは
日本の公約である、こう言ったじゃありませんか。新聞記者諸君の前で言ったじゃありませんか。しかし、いま外務当局が、そういう
約束はないんだ、そしてまた、そういうことはできないんだということを言ったところで、向こうさんはそのように理解しておると言うのです。ここらあたりの解釈を一体どうするのか。煮詰めた話ができておりますか。一千海里の海域の
防衛を、ワインバーガーは
日本の
国際的な公約であると言っておるじゃありませんか。鈴木
総理は確かに新聞記者会見でそう言った。しかし、いま
日本政府はあれを公約と受け取っておりますか、そしてそれを実現する能力はいまの
日本にありますか。先ほども
防衛庁から参っておりましたけれども、とてもじゃないが、一千海里の海域の
防衛なんということはできやしないというのが本当の腹じゃございませんか。そこらあたりを明確に相手国に言うことこそ
日本外交をはっきりさすゆえんだと思うのでございますが、いかがでございます。