○下邨
政府委員 この組みかえDNAの実験というのは非常に重要な、先の
見通しの明るい研究だということでございましたが、安全の問題ということについても十分配慮して検討していかなければならないということで、昭和五十四年に組みかえDNA実験指針というものが決められたわけでございます。その安全確保に関します基本的な要件をここに書いたものでございます。
この組みかえDNAの実験につきましては、その後世界各国でいろいろな研究が進められておりまして、数多くの知見が得られております。また経験が得られておりまして、それに基づきまして科学的な評価をされたということでございます。当初想定されていました潜在的な危険性が顕在化するというような可能性はきわめて小さいということが明らかになってまいりました。
ヨーロッパやアメリカにおきましては順次指針が緩和されてきておりまして、
わが国におきましても、現行の指針が実情に即さないのではないかというようなことが言われておりまして、そういう要望がございますので、昨年の四月に、文部省におきまして学術審議会で組みかえDNA部会の下にその検討小
委員会を設置いたしまして、この指針をどういうふうに改定したらいいかというようなことについて検討が始められたわけでございまして、ことしの一月にその中間取りまとめが公表されました。
私
どもといたしましては、
科学技術会議のライフサイエンス部会におきましてそれを検討するわけでございますが、その下に組みかえDNA技術分科会というものを設けてございまして、ライフサイエンス部会とその技術分科会と両方で、
わが国全体の組みかえDNAの研究推進という見地から、学術審議会の小
委員会の中間取りまとめ、あるいは各界から寄せられました
意見、産業界もございますし、各省からもございます、そういうような
意見を十分考慮いたしまして、最近得られました知見と経験に基づきまして検討を重ねまして、今回の改定案を取りまとめられたわけでございます。七月二十九日の部会で結論が出されております。
その審議の過程の
議論といたしましては、いろいろな
意見が出ているわけでございますが、たとえば遺伝子を提供することができる微生物、これはわれわれの
言葉で言いますとDNA供与体と申しておりますが、そういうものの範囲をどこまで認め得るのか得ないのか、そういうところをどこに線を引くかということが一番問題であったわけでございます。また、遺伝子を移しかえてもらう方のものでございます、これはわれわれの
言葉で言いますと宿主と言っておりますが、その宿主といたしましてどういう新しいものを追加し得るのかという検討がございました。
その中で一番浮かび上がってきましたのが、動植物の培養細胞を用いる実験というのが果たして安全にやれるかどうかということでございます。その辺の実験施設の安全の水準をどういうふうに、どのレベルにすればいいのかというような
議論、それからさらには組みかえDNA実験の安全確保の基本といたしまして、その実験に用います微生物の
一般的な取り扱い手法と申しますか、そういうものを
規定する必要があるのではないかというようなことで検討をされたということでございます。
そういう検討の結果、現在の指針では、宿主といたしましては大腸菌、酵母菌、枯草菌という三種の菌の中で、その中でも特定株について宿主—ベクター系として認められているわけでございますが、それぞれのどこからDNAを持ってくるかということで、物理的な封じ込めの基準というものが違っております。P4からP1までございましたけれ
ども、それを全面的に見直しまして
安全性を検討した結果、二段階ないし一段階施設基準を下げても十分
安全性が保てるというような結論が出たわけでございます。
それから、DNAを取り出すことができます微生物とかウイルスの
種類につきましても、先ほどのような
議論の末大幅な追加になっております。また、宿主−ベクター系として新たに動植物の培養細胞というものを使うことができるようにいたしております。それから、その他実験従事者に対しましても標準取り扱い手法というものをどういうふうなものでやりなさいとか、あるいはみずから自己健康管理というものを義務づけるとかというような点について追加をしたというのが今回の改定でございます。