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1982-04-07 第96回国会 衆議院 運輸委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月七日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 加藤 六月君 理事 三枝 三郎君    理事 楢橋  進君 理事 宮崎 茂一君    理事 福岡 義登君 理事 吉原 米治君    理事 草野  威君 理事 中村 正雄君       阿部 文男君    久間 章生君       小山 長規君    関谷 勝嗣君       近岡理一郎君    浜野  剛君       林  大幹君    古屋  亨君       三塚  博君    山村新治郎君       井岡 大治君    伊賀 定盛君       小林 恒人君    関  晴正君       浅井 美幸君    辻  第一君       四ツ谷光子君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君  出席政府委員         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省自動車局         整備部長    宇野 則義君  委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   福島 静雄君         警察庁交通局運         転免許課長   越智 俊典君         大蔵省主税局税         制第二課長   新藤 恒男君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  道路運送車両法の一部を改正する法律案内閣  提出第七三号)      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  内閣提出道路運送車両法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻第一君。
  3. 辻第一

    ○辻(第)委員 道路運送車両法の一部改正案について質問をいたします。  まず最初に、今度の法律改正案目的と申しましょうか趣旨と申しましょうか、その点について簡単に言っていただきたいと思います。
  4. 飯島篤

    飯島政府委員 お答えいたします。  今回国会へ提出いたしました道路運送車両法の一部改正案は、運輸技術審議会及び臨時行政調査会答申で提言のございました、自家用乗用車新車初回の車検の有効期間延長初回の六カ月点検の廃止などとともに、ユーザー点検整備への参加を促進するための措置整備事業の運営の適正化を図るための措置などを盛り込んでいるものでございます。  なお、今回の一部改正案は、自動車の安全の確保公害防止面におきまして、現在の水準を維持しながら国民負担の軽減にも配慮し、また自動車ユーザー自動車保守管理についての自主性を極力尊重したものとなっていると考えております。
  5. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、昭和三十八年につくられた定期点検整備制度、その新設をされたときの趣旨目的についてお答えをいただきたいと思います。
  6. 飯島篤

    飯島政府委員 昭和三十八年の法律改正によりまして、定期点検整備制度法律の中にはっきり創設されたのでございますが、当時は自家用乗用車を含めまして自動車数が急激にふえていきつつあった。三十七年度の自動車数が三十年に比較して約三倍になる、それから事故件数も、三十六年に比較しまして五倍というような状況でございました。いろいろな種類自動車も出てまいりましたし、自動車高速化という技術開発も進んできたということから、自動車安全確保を図るために自動車使用者定期点検及び整備義務を課す等、その整備充実強化を図る必要があったということでございます。  この定期点検整備制度創設趣旨は、およそ自動車を使用する人はその自動車を常時整備された状態に保っておくべきことは、交通事故を防ぐための社会的な責務であり、自動車使用者に対し、一定期間ごと点検をし、かつ整備を行うことを義務づけて、使用者みずからをしてそれぞれ自動車保安確保に努めさせようという考え方であったわけです。
  7. 辻第一

    ○辻(第)委員 昭和三十八年に定期点検整備制度を設けられた。その当時、その改正の際は、罰則適用定期点検実施を図るということが行われなかったということだと思うのですね。ユーザー使用者自主性を本当に尊重するという立場が非常に貫かれていたというふうに考えるわけでございます。  これについては、昭和三十八年三月七日の参議院運輸委員会で、運輸省定期点検義務違反について、「この義務違反に対しましては、罰則適用をもってこれに臨むというほど強く義務づけるのはいかがかと存じまして、」云々、このように述べておられるわけであります。それともう一つ、これは三十八年七月五日の衆議院運輸委員会での質疑の中だと思いますが、「いままで四十九条で整備記録簿を設けさしておりましたが、それを今回やめまして、定期点検記録簿にいたしまして、この際罰則をやめました。しかしそのチェックといたしましては、検査のときにその記録チェックする、それで十分だと考えまして、罰則をやめた次第でございます。」、このように、それまであった罰則をやめて、罰則をつけないでやっていく、このようなことであったわけでありますが、それがどうして今回罰則適用するというふうに変わってきたのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  8. 飯島篤

    飯島政府委員 先生指摘のとおり、昭和三十八年の改正前は、四十八条ですべての種類自動車に対する整備勧告が規定されておったわけです。また四十九条で、バスを十両以上使用する者及び自動車運送事業者に対して自動車整備記録簿記載義務づけており、当該義務違反について罰則適用されることになっておったわけであります。  三十八年の改正に当たりまして、御指摘のとおり、当該罰則を削除したのでございますが、当該記録簿定期点検整備記録簿といたしまして、検査のときにその呈示を求めて定期点検整備義務履行状況チェックするということでやれるのではないかということだったようであります。何しろ、法律にはっきり定期点検制度を導入したということではありますが、その時点で直ちに罰則を検討するよりも、定期点検履行状況の推移をしばらく見ようという考えもあったというふうに聞いております。  昨日もいろいろ申し上げたところでございますが、今回、点検等指示制度というものを導入しようということでございますが、定期点検整備の一層の励行を図る必要があるということは、運輸技術審議会答申でも指摘をされておるところでございます。ユーザー自己責任に基づくものであるという基本はできるだけ尊重いたしまして、したがって、何回も申し上げますが、定期点検整備義務違反については直接罰則を科することは避けましたし、そのほか記録簿記載義務、備えつけ義務、それから点検指示違反等についてすべて罰則は避けたのでありまして、ユーザー自主性をぎりぎりまで尊重いたしまして、最後の報告義務違反過料という仕組みにいたしたわけであります。  この規定の趣旨は、あくまでも街頭検査等におきまして行政指導を実効あらしめたい、昨日の審議において申し上げましたように、むしろ指導啓蒙を図るための最低限必要な制度ということで新設しようとするものでございます。  繰り返しになりますが、この制度は、自動車使用者の自主的な定期点検実施確保ということをあくまでもねらいとするものでございまして、定期点検整備制度創設趣旨に反するものとは考えていないのでございます。
  9. 辻第一

    ○辻(第)委員 使用者の自主的な点検整備を尊重する、そういう立場での罰則適用というふうに言っておられるわけでありますけれども本質はそういうものではないと私は考えます。使用者自主性というものをそれは侵すものである、私はこのように考えるわけであります。  昭和四十七年に参議院野村一彦自動車局長答弁をされているわけでありますが、それは、「お説のように定期点検整備といいますのは、ユーザーの自主的な点検ということに非常に期待をしておるものでございまして、罰則がございません。ただ、これに罰則をつけて、これを強制するということは、私、二つの点から問題があると思いますが、一つは、法律技術的に、どういう罰則をつけるかということがなかなかむずかしいという点と、それからもう一つは、やっぱりこれはユーザー自覚にまってやるというべき性質のものであって、事柄性質上、そういう罰則になじまないのではないかということでございます。」こういうふうに言っておられるのですね。これは定期点検整備が必要だ、この定期点検整備というものが必ずしも徹底されてない、これはやはり罰則がないからではないか、もう少し強力な強制方法というものは考えられないか、このような質問に対してこのように答えておられるわけであります。この当時の野村自動車局長考え方、私はこれは大切な観点である、このように考えます。  このように、一度ならず二度まで罰則適用しないというような観点であったのに、今回は罰則適用というような方向に変わった、これは大変な矛盾であると思いますし、この点は大きな問題だ、こういうように指摘せざるを得ないわけであります。この昭和四十七年の野村自動車局長答弁についてどのように考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  10. 飯島篤

    飯島政府委員 定期点検について自主的な整備期待するというたてまえは、現在も何ら変わっていないわけでございます。したがいまして、ユーザーの車の保守管理についての意識高揚というものが前提にありませんと、今後この制度が十分機能しないということは言うまでもないところでございます。  それで、何回も申し上げますが、運輸技術審議会では励行策として三つの事柄を検討しろという提案がございました。ここで定期点検標章の……(辻(第)委員「私の質問は、前の野村自動車局長のさきの答弁についてどう考えておられるかということ」と呼ぶ)その説明との関連でいまお話ししているわけです。  この標章の制定について制度化することを検討すれば、いまお話があった定期点検義務違反そのもの罰則をつけるべきではないか、あるいはステッカーの貼付義務違反にも罰則をつけるべきではないかという議論に発展していきますので、そこまでいくのはいかがか、それでまさに法律技術的に定期点検義務違反そのものにずばり罰則をつけるということはいろいろ問題があるというふうに認識をいたしまして、それは見送ることにいたしたわけでございます。  それで、今回の点検指示制度というのは過料を科すことが目的ではございませんで、あくまでもユーザー自主性ユーザー自覚というものを尊重してぎりぎりの仕組みということで、街頭検査強化をしろという御指摘に対して対応したというものでございます。
  11. 辻第一

    ○辻(第)委員 どのように答弁をされようとも、本質使用者自主性を侵す問題であり、このような問題、事柄性質上、罰則はなじまないというふうに考えます。この点については、私ども、この罰則というものは撤回をされたいと強く要望するものであります。  次に、確かにいまの時点自動車の安全の確保、また公害防止という観点は非常に重要な課題であるということもよくわかります。私も、命や健康を守ることを仕事にしてきたという点からも、本当によくわかるわけであります。そして、現状を見てみましても、昭和五十四年で検査対象車両の死亡、重傷事故は、車両に原因した事故件数が年々減っておるようでありますが、まだ年間四百九十六件もあるということ、その割合は一・三%ということでありまして、これはこの数字に出てこないものもまだたくさんあるわけでありますから、大変なことだ。また、陸運事務所街頭検査をされるその検査結果でも、検査が行われた全自動車のうちの約二〇%が保安基準に不適合だ、こういうことを見てみましても、安全の確保の問題、またもう一つ公害防止の問題は、本当に重要な観点だと思うわけであります。  しかし、そうは言っても、定期点検の問題について罰則適用するというのはどうしても私は納得できない、なじまない問題ではないかとさらに指摘をしたいというふうに思うわけであります。そういうような罰則で強要するよりも、事の本質というのは、まずユーザーがこの問題を十分自覚をして、そして自主的に点検整備をしていく、良好な整備状態で車に乗るということ、これが一番大切な問題ではなかろうか。そうするためには、ユーザーやあるいは整備業者が車を点検整備しやすい条件をつくっていく、そういう自主的な努力を促すための措置というものがもっともっと重要ではないかというふうに思います。先ほど来お答えになっておりました手引書の問題だとか、あるいは検査項目簡素化の問題、あるいは記録簿整備の問題などいろいろおっしゃいましたけれども、さらにさらにその点について十分な対応をとっていただきたい、こういうふうに思います。  それから、そういう観点でいきますと、交換部品をもっと改善をする、あるいは整備保証制度というものをもっと充実させていく、あるいは整備業者の側で言えば、適切な料金だとか、それからユーザー点検を受けるときに、あるいは整備を受けるときに大体どれぐらいかかるのかということがわかりやすいようにやっていく、そういうことも本当に必要だろうというふうに思うのであります。私も大方十数年、車に乗っているわけでありますけれども点検整備が本当に必要だということの啓蒙と申しましょうか、そういうものが非常に不足しているのではないかと私は考えます。  このごろ自動車の性能も確かによくなってまいりました。耐久性もよくなって故障が減ってきたということで、われわれもついつい、いまそういう整備不良の事故というのはそんなに起こらないものだ、自動車というのは比較的安全なものだというふうに、知らず知らずの間に思い込んでいるという側面があります。  一方では、街頭を走っておりまして、酔っぱらい運転酒飲み運転の問題だとかスピード違反の問題、こういうものは街頭にでもいっぱいあって、ああこれは注意しなければいかぬなということが絶えず目につくわけでありますが、整備不良の問題についてはおおよそ目につかないですね。いわゆるそういう点での啓蒙と申しましょうか、指導というのは嫌な言葉ですけれども、そういうものがこれまで余りやられてこなかったということは私は否定できない事実だというふうに思うわけであります。  ですから、私は、先ほどいろいろ申し上げましたけれどもユーザー整備業者あるいはメーカーもいろいろなデータを公開するとか、交換部品改善とか耐久性のあるものにするとか、メーカーもさらにみずからの責任を全うするということも必要だというふうに思います。こういうことをもっともっと十分にやっていただく、そのことが本当に十分な点検整備がされて安全な運行ができる一番の保証であるというふうに思うわけであります。  今回の改正案については、罰則というようなことが、しかも突如として出てきた。私は、あれは三月だったと思いますが、運輸省からレクをお聞きしたときにはこの罰則の話が出てなかったような気がするのですが、突如として出てきたというようなこともあるわけであります。こういういろいろな点で納得できない。もっとそれぞれが力を合わせて、車を点検整備しやすい条件をつくる、そういう自主的努力を促す、ぜひそういうような措置を強力にとっていただきたいと強く要望するわけであります。  その点についての御見解を承りたいと思います。
  12. 飯島篤

    飯島政府委員 車の保守管理についてユーザー意識高揚大前提だという御指摘は、まさにそのとおりでございます。  いま、いろいろなことをおっしゃられたわけでございますが、記録簿につきましては、ユーザーのわかりやすいものにしようということで、記載内容を充実したり、様式を統一したり、保存期間延長というものも法案に織り込んでおるわけでございます。  それから、法案にはございませんが、運輸技術審議会で、定期交換部品交換時期の延長について、メーカー技術開発期待をして交換時期を見直してほしいということで、今後私どもメーカーに対して強く指導をしていきたいというふうに考えております。  それから、ユーザー整備をしやすいような環境づくりが必要であろう。要するに、今回の検査整備制度の検討に当たって一番問題になりましたのは、むしろ運輸技術審議会中間答申指摘があったように、整備事業者に対するユーザーの信頼の回復といいますか、それが最大の問題であろうということで、幾つかのことを中間答申指摘を受けたわけでございます。  一つ料金の問題、これについては、標準作業点数制を導入して各工場のレーバーレートを掛ければ料金が出てくるとか、基本料金表を掲示するとか、あるいは団体で全国の料金実態調査をして公表するとかいうことで、極力適正化方向に向けていく。それから、自分のところで整備した個所が悪くなった場合は、一定期間内は保証するという制度業界で検討すべきであるという指摘もいただいたわけでございます。私どもは、早速、関係業界努力方について強く指導をしているところでございます。  そういうようなことを前提とし、かつ、今回、マイカーの新車初回検査有効期間を延ばしたり、定期点検につきましては、六カ月点検について項目を大幅に簡素化する、新車初回の六カ月点検を廃止するというような改正をするかわりに、ユーザーの方でも、こういう定期点検というものについてもう一度よく考えていただきたいという気がするわけでございます。  御指摘点検指示制度というのも、目的はあくまでも指導啓蒙を図るためのシステムということで、やたらに過料を取るというようなことは昨日からも申し上げていないというところを御理解願いたいと思います。
  13. 辻第一

    ○辻(第)委員 再度お尋ねをいたします。  点検指示制度は、啓蒙指導する、意識を高めてもらうという観点だ、こういうふうにいま申されたわけであります。何回も申しますけれども、そういう観点は本当に納得できない。先ほど来申しました、もっと一般的な形での啓蒙というものについては、運輸省として何かお考えになっているのか、その点についてお尋ねをいたします。
  14. 宇野則義

    宇野政府委員 いま先生の御指摘になりましたユーザーに対します自動車保守管理啓蒙指導等につきましては、運輸技術審議会の昨年の中間答申におきましても実は指摘を受けておるところであります。昨年の中間答申の中では、現在、車のユーザー整備に対する不平不満が非常にある、御批判があるということを受けまして、整備業界はもちろんのことでございますけれども、国に対しましても指摘をいたしております。  具体的に申し上げますならば、「国のとるべき改善方策」といたしまして、それぞれの自動車関係業界を適切に指導しなさいというのがまず大前提としてあるわけでございますけれども、国みずから、そういういろいろな問題を起こすような整備事業者、特に指定整備事業者に対します監督の強化、効率的な監査を実施しなさいという指摘、さらには処分の厳正化ということも指摘を受けております。  それから、ユーザーに対しましては、適切な情報提供による指導啓蒙ということを言われておるわけでございまして、ついせんだって成立いたしました五十七年度予算の中でも、私ども、五十七年度におきまして若干の人を地方陸運局に配置いたしまして、それらの情報収集あるいは情報提供といった作業をさせたいと考えておるところでございます。
  15. 辻第一

    ○辻(第)委員 十分な対応をしていただきたいということをお願いして、次に移りたいと思います。  今度のそのような点検指示はどのような場合に行われるのか。たとえば、自動車技術のことについてよく御存じの人で、いわゆる良好な状態整備をされておる車でも、定期点検をしていないという場合はすべて機械的に指示をされるのか、あるいは随時整備はやっているけれども、六カ月とか十八カ月ですか、そういう点検はやられていないというような場合、どちらにしても良好な状態の車ですね、そういうものも定期点検をしていないということで機械的に指示をされるのかどうか、その点についてお答えをいただきたい。
  16. 飯島篤

    飯島政府委員 点検指示という制度は、街頭検査などにおきまして、定期点検整備記録簿の有無、記載内容というようなものを確認した結果、定期点検が行われていないことが判明をしたときに当該自動車使用者に対して行うというものでございますが、ただ、街頭検査チェックができる項目には限界がございます。主として外観から見てどうか——現実にはハンマーとか排ガステスターぐらいは持っていくようでございますが、詳しい中まではとてもわかるものではないということでございます。したがいまして、やはり一定項目について定期的に定期点検励行していただくべきであるという基本は維持すべきであるというふうに考えます。  ただ、もう一つお話のありました随時整備をやっておるような場合はどうなのかということは、まさに、この点検指示をいたしますのは、専門的な技術的な知識を持っております陸運事務所検査官でございますから、その辺は弾力的に当然運用することになると思いますし、そのように指導もしていきたいと考えております。  個々のケースによってなかなか判断のむずかしい場合も出てくるかと思いますが、基本的に、ユーザー負担が余りかからないような形で点検励行という最終目的、そしてこの制度自体指導啓蒙的なものであるという位置づけをいたしまして、その運用に当たりまして十分慎重にしてまいりたいと考えております。
  17. 辻第一

    ○辻(第)委員 いまおっしゃいましたように、その実際の運用については、指導啓蒙ということが一つの大きな目的であるので弾力的に運用する。そうなりますと、定期点検じゃなしに随時整備をしていて、そのことで良好な状態のものは点検整備指示をされないということも十分あり得るというふうに理解してよろしゅうございますか。
  18. 宇野則義

    宇野政府委員 具体的な作業といたしましては、街頭検査等チェックをする際に、その車の状態なり、あるいは定期点検記録簿記載内容等を通じまして確認するということになりますので、一概には申し上げられませんけれども趣旨といたしましては、先ほどお答え申し上げましたような趣旨運用を図ってまいりたいというふうに考えております。
  19. 辻第一

    ○辻(第)委員 それに関連してお尋ねしたいのですが、随時整備をしまして、そのことを点検整備記録簿ですか、それに書くという欄か何かあるのですか。
  20. 宇野則義

    宇野政府委員 今回の法律改正に基づきましてユーザーが車に携行することになりますところの定期点検記録簿につきましては、その内容を改めたいというふうに考えております。と申しますのも、定期点検実施記録、いわゆる車の履歴が、ちょうどお医者さんでいうところのカルテに相当するような形で、過去の整備履歴がわかるような形にしたいと思っております。  先ほど先生指摘の、随時整備というお言葉がございましたけれども随時整備には性格的に二つあると思います。  一つは、直接的にふぐあいを感じてその部分を工場に入れて手直しをする、こういうことがあろうかと思います。ただ、定期点検の場合には、六カ月点検にいたしましても十二カ月点検にいたしましても、その見るべき内容はそれぞれ項目が限定されます。したがいまして、随時整備の際に定期点検にかわるような内容チェックをされたかどうかということにもよると思います。したがいまして、先生がおっしゃいました随時整備というのが、定期点検にかわるような形の随時整備なのかどうかということも、当然、記録簿等にそれぞれ、手直しをした、整備をした、あるいは部品を取りかえた、こういう記録を残しておいてもらいまして、それを参考にしながら判断をしてまいりたいと思っております。
  21. 辻第一

    ○辻(第)委員 定期点検だけじゃなしに、すべての経過がわかるような、そういうことが記載できて、全般的に系統的に状況がわかるというような記録簿にぜひしていただきたいということを要望しておきます。  それから、今度の街頭検査での点検指示、これで実際のところ、事務量がふえるのはどの程度にふえるとお考えですか。
  22. 飯島篤

    飯島政府委員 従来、街頭検査というものにつきましては、春、夏、秋の交通安全運動とかあるいは年末年始の指導の時期とかいうようなときに、随時検査の繁忙時を避けながら、警察当局と協力の上で、整備不良車両、不正改造車両等の排除に努めてきておるわけでございます。  それで、今回の改正によりまして点検指示制度を導入するといたしましても、この街頭検査の際に有効な行政指導をしよう、さしてほしいというのが趣旨でございます。業務量として、そうばちばちと指示を出したり、いわんや過料を取るというような手続をとることは考えておりませんので、これをもって増員というようなことは考えていない次第でございます。
  23. 辻第一

    ○辻(第)委員 増員は考えていないというふうにおっしゃいました。しかし、実際上行政事務はふえると思いますね。当然ですね。ところが増員はしない、こういうことになりますと、勢い、これまでなさっている人の仕事が一層過重になるということになると思います。  私、陸運事務所へときどきおじゃまをするわけでありますが、本当に大変な人手不足の中で仕事をなさっている。痛切に感じます。こちらがこういうことについてもっと指導をしていただきたいということをお願いに行っても、お話を聞きますと、こんな少ない人数でこんなにたくさんの仕事をしなくちゃならぬ、そういう話を聞いたり、実際そういうことを理解いたしますと、そこから先お願いしにくいというような状況があるほど、少ない人数で大変な仕事をされておるというのが現状、だと思います。  たとえば検査官のお話を聞いても、本当に、一台の検査についてもきわめて短時間でやっておられる。あれで十分な検査ができるのかなというような、われわれも本当に、自分のこれまでの仕事の中で、短い時間に診断をするというのは、いまから思いますとぞっとするようなこともやってきたわけでありますが、そのことがいま陸運事務所の実際の姿ではないかと、私はこういうように思いますね。そこへこういう仕事がふえてくる、しかも増員がないということになれば、ますます問題が出てくる、こういうふうに考えるわけでありますが、その点についてどのようにお考えになっているのか。
  24. 飯島篤

    飯島政府委員 先生指摘の点も、確かに現場としてはいろいろ苦労をしているようでございます。ただ、検査については自動化を進め、一方で民間車検を拡大するということで対応をしておりますし、検査官以外に補助をするスタッフは、たとえば整備事業の監督をしている要員等も充てるわけでありますが、今後も極力業務の合理化、簡素化を図りながら対応をしてまいりたいと考えております。
  25. 辻第一

    ○辻(第)委員 街頭検査については、現行やっておられる程度でやられるおつもりなのかどうか。それから、現行ではどの程度やっておられるのか。その点についてお答えをいただきたいと思います。
  26. 宇野則義

    宇野政府委員 現在街頭検査は、警察当局の御協力をいただきながら実施をしておるわけでございますが、先生先ほど御指摘のように、自動車検査官が陸運事務所での自動車検査という本務を持っております。したがいまして、その陸運事務所におきます検査業務との関連をにらみ合わせながら街頭検査をやっておるわけでございます。主として交通安全運動の期間あるいは年末年始の総点検の期間等を活用することが多いわけでございますが、五十五年度の街頭検査の実績を申し上げますと、全国で延べ八百四十四回の出動をいたしております。それに参加いたしました陸運事務所の職員が一万六千六百十一人、こういう延べ数になっておるわけでございます。  したがいまして、今後、定期点検指導啓蒙あるいは普及徹底のための作業として、この街頭検査等を利用するわけでございますが、先ほど申し上げましたように、本務である自動車検査そのもの、陸運事務所におきます検査業務との関連をにらみ合わせながら、街頭において指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  27. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、現在程度の街頭検査をやられるということでございますか。
  28. 宇野則義

    宇野政府委員 そのとおりでございます。
  29. 辻第一

    ○辻(第)委員 現在程度でおやりになるということでございますが、それにしてもやはり検査官、大変人員不足、人手不足という状況でやっておられますので、十分その点も考慮していただきたい、重ねてお願いをしておきます。  次に、整備業者の問題についてお尋ねをいたします。  今度の法改正で、自動車整備事業にかなりの影響が出てくるということは明らかであろうと思うわけでありますが、この自動車整備事業をやっていらっしゃる方、大体私ども地元で見てみましても、零細な業者の方が非常に多いというふうに思うわけでありますが、全国的に見てみまして、そこへお勤めになっている人の数が五人以下の職場といいましょうか、工場といいましょうか、その割合はどれぐらいでしょうか。  そして、全体として全国でこの自動車整備事業に従事をされている従業員数はどれぐらいになるのか、お尋ねをいたします。
  30. 宇野則義

    宇野政府委員 先生指摘のように、自動車整備業は非常に零細規模の工場が多いわけでございますが、お尋ねの五人以下の工場の比率は、五十五年六月末の調査によりますと、全体の六八・二%が五人以下の工場になっておるわけでございます。  それから、従業員の数でございますけれども、二つ申し上げますが、間接要員を含めました従業員の数、これは全国で約五十七万人になっております。それから、そのうち直接の、私ども工員という職名で呼んでおりますが、工員数は三十九万三千人という数字になっております。
  31. 辻第一

    ○辻(第)委員 いまお答えをいただきましたように、自動車整備事業に携わっておられるところは非常に零細な企業が多いということでございます。ここへ相当な影響が出るということが予想される、こういう状態でありますから、もちろんその整備事業者業界自身による自助努力というものもこれは大切な問題だと思いますが、しかし国においても、需要が本当に減少してくる、こういうときには、中小企業に対する既存の助成措置の活用を含めて、適切な配慮をされたいというふうに思うわけであります。  この運技審の答申、ことしの一月の答申の中にもそのことが述べられているわけでありますけれども運輸省としては、この問題についてどのように対処をされようとしているのか、お尋ねをいたします。
  32. 飯島篤

    飯島政府委員 昨日来、この制度改正によって整備事業に大きな影響が出るであろうということは申し上げておりますので、省略させていただきます。  ただ、定期点検ですが、あの数字は、一方で実施率は現状程度、ところが現在若干下がりぎみの傾向がございます。  それから、整備需要が自動車の性能の向上によって年々減少する傾向にございますが、そっちの面も織り込んでおりません。  それはそれといたしまして、今回の検査整備制度改正に伴って影響を受けるものと予想されます自動車分解整備事業者につきましては、いま先生お話にありましたように、運輸技術審議会答申でも、業界自身の自助努力とともに国としても所要の措置について適切な配慮が必要であるというふうに指摘されているところでございます。  現在、御案内のとおり、整備業界は、近代化、合理化を図るために、中小企業近代化促進法に基づきまして構造改善事業を進めております。これをさらに強力に進めるということがまず前提になると思いますが、六十年次と思われます需要が際立って減少する時期におきましては、中小企業者に対する既存の助成措置といたしまして、一つは、中小企業事業転換対策臨時措置法に基づきます業種指定、これは中小企業近代化審議会に諮った上で運輸大臣が指定をするということになるわけであります。  それから、雇用保険法に基づく業種指定、これは、一定の要件に該当する具体的な影響が生じた時点で労働省の方で業種指定を検討してもらうということについて、基本的には了解をいただいております。  こういった、整備事業に対する影響が、マクロで見ているだけでは大分実態と乖離する。要するに業態別、取り扱い車種別、地域別にきめ細かくよく見てまいりまして対応してまいりたいと考えておりますが、今後需要が減少する時期におきます零細中小企業として担保力がないということにもかんがみまして、運転資金とか企業集約に伴う設備資金の借り入れについての債務保証というような仕組みについて、業界の自助努力を主体にして国が適切な措置をとる必要性について検討してまいりたいと考えております。
  33. 辻第一

    ○辻(第)委員 この問題に関連しての需要の減少だけではなしに、先ほど申しましたように、非常に零細な業者が多いわけでございます。そこへ自動車技術の進歩というのが非常に急速に進んでいるという状況の中、たとえば車はどんどんコンピューターがそこに取り入れられるという状況であります。こうなりますと、直接点検整備のところとは関係ないと思いますけれども、しかし、そういうものも、いわゆる検査整備する器具が業者としては必要だ、こういうことにもなろうかと思うのですね。こういう器具を購入する問題などについても、その資金の融資の問題など、そういう問題もぜひ運輸省としては十分配慮をして零細業者の経営を守っていく、そこに働いている労働者の労働条件を守っていく、そのために一層の御配慮をいただきたい、御努力をいただきたい、重ねて要望をしておきます。  最後に、私は今度の改正の問題について、自動車技術の進歩その他の状態の中でユーザー負担の軽減、そのことについての問題は評価をしているわけであります。しかし、自動車の安全の確保公害防止という重大な観点も本当にひしひしと感じるわけでありますが、それをもってしても罰則適用するというのはどうしても納得できないということで、これはぜひ撤廃をしていただきたい、重ねて要望をするわけであります。  そして、本当に最後に大臣にお尋ねをしたいのですが、きのう運輸審議会は、国鉄運賃を四月二十日から六・一%値上げするとの内容答申を大臣に提出をされました。この値上げは、五年連続した大幅な値上げであります。国民に直接大幅な負担増を強いるものであり、また物価に重大な影響を与えるものであります。私ども、きわめて不当なものだと考えます。こうした運賃値上げを認可すべきではない、この点大臣に強く要求をするものでございます。この点についての大臣の御見解を承りたいと思います。
  34. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま委員指摘の問題は、国鉄全般に対しての厳しい御批判と受けとめなくてはならぬと思います。  今度の運賃改定でございますが、五年連続値上げという事態は、これはまことに今日までの国鉄の経営の中で何ら改善するべきものがなかったことの結果ではないかと思うのであります。事実、国鉄の実損は、推計でございますが二兆円に及ぶ赤字が出ておるわけであります。こうしたものを国家財政の中から約七千八百億円の助成をいたしておるわけであります。しかし、国といたしましても、ただこの赤字補てんのために貴重なる国民の税金を使っていくということだけではどうにもやりくりがつかないわけで、結局全体としてのバランスを見る場合に、約千五百億円くらいの運賃増収によってさらにこれを補てんするという必要が出た結果の運賃値上げでございます。今日の国鉄の状態からいって、新聞も口をそろえて今度の値上げを、何たることであるという論評を加えておるのは、私も見て大変残念に思っております。問題は、やはりこうした連続的な運賃値上げというものを来年もさらにやる、あるいは再来年も、そのまた次もやるということであってはならないと思うのであります。できるだけの努力をふるって、また来年度の予算の際においては、運賃の値上げをこのような六%を超える大幅のものでないようにすることが、国鉄当局並びにわれわれに与えられた使命ではないかと思って、今後はそうした面についても十全の努力をいたすとともに、国民各位の御理解を賜りたいというふうに思っております。
  35. 辻第一

    ○辻(第)委員 以上で終わります。
  36. 越智伊平

    越智委員長 中馬弘毅君。
  37. 中馬弘毅

    ○中馬委員 今回の道路運送車両法の一部を改正する法律案ですが、これは行政改革論議の中から出てきているわけでございます。一昨年、中曽根長官が、国民の要望も受けてこれに取り組むということを表明されて以来ずっと審議が続いてきた結果、この法案となって出てきたわけでございます。ということは、行政改革が本来の目的であり、同時に、その行政改革によって浮いた分といいますか、それによる国民の負担の軽減ということもあわせて目的としたものであったはずなんですね。ところが、この内容を見ますと、どうもそのように見えないわけでございまして、本法実施によってどの点がどの程度行政改革になるのか、ここを少し御説明願いたいと思います。
  38. 飯島篤

    飯島政府委員 行政改革ということで臨時行政調査会の第一次答申、そして先般の答申において、定期点検整備及び検査の問題が取り上げられたわけでございますが、この問題の取り上げ方は、一番重点がありますのは、国民負担軽減の見地から適切な措置を講ずるというのが臨時行政調査会の最も重点ではなかったかと考えております。  私どもといたしましては、運輸技術審議会におきます検討におきましても、臨時行政調査会中間答申指摘を当然配慮しながら、一方で安全、公害の水準を維持するということで御検討を願ってきたわけであります。  結論といたしまして、るる御説明申し上げているような、自家用乗用車については新車新規の検査証の有効期間延長あるいは定期点検について、六カ月点検については事項を大幅に簡素化するとともに、技術的な知識をお持ちのユーザーであればみずからでも実施できるような項目にする、あるいは十二カ月点検、二十四カ月点検についても項目を若干簡素化できるのではないかという御指摘、また、整備事業については、運輸技術審議会答申もございますが、臨時行政調査会の方で御指摘の「基本整備料金表の掲示、整備内容交換部品の説明等に係る指導を徹底し、ユーザーの信頼確保を図る。」という点についても、整備事業者の遵守事項というものを、新しい法律に根拠を置きまして省令でいろいろ定めてまいるということで、基本的に運輸技術審議会あるいは臨時行政調査会の御指摘の点はほとんどすべて織り込んだ形で今回の法案をお出ししたわけでございます。  ただ、行政改革という意味が、もう一つの国の要員あるいは経費増はどうかという点のお尋ねであれば、今回の制度改正によって、マイカーの新車初回検査有効期間が一年延長されるということになりました場合に検査業務量がどうかということになるわけですが、自動車の数は依然としてふえ続けていく傾向にあるということ、それから検査の要員が車検場の施設、コースに張りついた形で配置されているということ、それから車検期間の延長がございましても検査の業務量は当分波動をいたします。したがって、ピーク時に合わせた要員は確保しておかざるを得ないというようなことから、短期的にはその効果は顕著にあらわれるものではないのでございます。ただ、長期的には、現行制度等を前提とした場合に比べまして、検査要員の増加は年とともに抑制効果があらわれてくるというふうに考えております。
  39. 中馬弘毅

    ○中馬委員 何をおっしゃっているかはっきりわからない点がございまして、もう少し答弁を簡便にお願いしたいと思います。  具体的にお聞きしますけれども陸運事務所の現在の数と、そこの事務所員といいますかお役人さんの数をまずお願いいたします。
  40. 宇野則義

    宇野政府委員 お答えいたします。  先生お尋ね陸運事務所の数は、五十六年度末時点で申し上げますと、これは陸運事務所という名前になりますが、本所が五十三カ所、支所が二十五カ所それに出張所が二カ所でございます。  それから要員の数でございますが、検査の要員数は、五十六年度末におきまして千五十八人、それから登録関係の要員数が九百六十五人、そのほか管理要員、それから重量税要員、それから指定整備要員等がございまして、自動車検査、登録に関連いたします、あるいは指定整備工場に関連いたします要員数は合わせまして二千八百五十三人ということになっております。
  41. 中馬弘毅

    ○中馬委員 本法の実施によりまして検査官の増員は行われるのですか、行われないのですか。
  42. 宇野則義

    宇野政府委員 いま予定しております法律改正に基づく増員は考えておりません。
  43. 中馬弘毅

    ○中馬委員 逆に減員はないわけですね。
  44. 宇野則義

    宇野政府委員 考えておりません。
  45. 中馬弘毅

    ○中馬委員 では、少なくとも人員面における行政改革には何らなってないということは言えるわけですね。
  46. 宇野則義

    宇野政府委員 先ほど自動車局長からお答え申し上げましたように、今度の検査期間の延長に伴います制度改正は当分の間波動いたします。その関係で即効的にと申しますか、実施をしたからといってその効果がすぐ出てまいりませんので、長期に見ました場合に、これまでのような形で車が増加するということを仮定いたしますと、それに対する増員というものは抑制効果が出てこようかというように考えております。
  47. 中馬弘毅

    ○中馬委員 陸運事務所自体も、場合によっては都道府県に移してしまって要らないではないかという議論すらある中で、少なくともこれを存続さしていこうという形でございますし、場合によっては、後で御質問しますけれども検査官がこれだけの人数でこの法律を有効あらしめるためには、また逆に言えば何の効果もないということになってくるわけでございまして、その辺は少なくとも行政改革では一切ないんだということがはっきりしていると思いますが、大臣、どうですか。
  48. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 行政改革というのは、現状の機構と人員が減らなければならないというものではないんではないかと思うのでございます。特に今回の法改正は、ユーザー負担軽減と申しますか、新車についての車検の期間を一年延長するということが主体でございまして、その限りにおいてユーザーに対してのいわゆる負担の軽減と申しますか、そうしたものは実現するというふうに思っております。−先ほども申し上げましたが、陸運事務所その他においての人員の問題は、この車検制度改正によって当分いろいろと件数の変動がありますものですから、いまそれを予定して人員を削減するとかあるいはその他の合理化をやるということは、すぐにはできないということはやむを得ないことではないかと思っております。
  49. 中馬弘毅

    ○中馬委員 国民の負担の軽減ということを先ほどから何度もおっしゃいますけれども、具体的にどの程度ユーザー負担が軽減になるのか、御説明願います。
  50. 飯島篤

    飯島政府委員 国民負担の軽減になる要因としては、まずマイカーの新車初回検査有効期間の一年延長、それからマイカーの新車初回の六カ月点検の廃止、それから定期点検項目簡素化、先ほど申し上げましたように、六カ月点検について項目を大幅に簡素化し、技術的な知識をお持ちのユーザーであれば、みずからでも実施できるような項目に整理をするというような点が際立っておるわけでございます。  それで、マクロで見る場合とユーザーのお一人お一人で見る場合と二つあるわけでございますが、現在マイカーの車の使い方が、二車検目前に台がえされる方が平均的に非常に多いということで、仮に四年十カ月程度使用したときに整備料金がいま申し上げた要因、なお定期点検について検査有効期間延長するに伴いまして、一年目、二年目と二回が現在のいわゆる十二カ月点検というふうになりますが、そういったもの等を勘案いたしまして、平均的な整備料金前提として試算をしますと、四年十カ月の場合二十一万四千円ぐらい現在の制度であればかかるであろう。     〔委員長退席、楢橋委員長代理着席〕 それが制度改正後には八万二千円ぐらい負担が軽減されるのではないかというふうに考えられます。  それから、これをユーザー全体のマクロの見方をいたしますと、これが整備業界整備売上高の減少とうらはらになるわけでございますが、最大の軽減時は六十年度でございまして約二千七百億円、整備売上高に比して七・一%、制度改正実施後五年間の累計で約八千五百億円という売上高の減であり、国民負担の軽減であるという形になるかと思います。  なお、これ以外にメーカーに対して、現在の定期交換部品について見直しをして、中には一年ぐらい延長できるものがあるのではないかということ、それから、きちっと整備した上で陸運事務所に御自身で検査を受けにおいでになるという場合には、そういう体制を受け入れやすくしようということで現場を指導しておりますが、そういう場合であれば代行手数料等が軽減されるということになると思われます。
  51. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いまおっしゃった数字はあくまで理論的でございまして、確かに法律には六カ月点検はいままででも義務づけられております。しかし、実際にはこれをマイカーのほとんどの方は行っていないのですね。運輸省の調査では六一%だとか何かおっしゃっていますけれども、しかし、それはアンケート調査でのものだと思っております。私の周辺でいろいろな方に聞きましても、六カ月をちゃんとやっておられる方というのはほとんど皆無と言っていいかもしれません。ですから、現実から言うならば、これは今度六カ月を必ずやらなければならない形になってくるわけでございまして、逆に大変な負担増になるということをみんなも心配しておりますし、現実にその形だと思っております。ですから、先ほど大臣もおっしゃいましたような意味で国民負担の軽減にはもちろんならないし、むしろ、こんなところにまでなぜ政府が細かく指導したり、あるいは手を加えたりしなければならないのかというような意味から言えば、これは行政改革にももちろんマッチしたものでも何でもないと私たちは認識いたしております。  それで、四千万台の車のうち、千五十八人の検査官で何台が六カ月点検をしているかどうかというチェックができるのですか。
  52. 宇野則義

    宇野政府委員 定期点検実施の確認につきましては、街頭検査等を主体にいたしまして自動車検査官が実施をいたすわけでございますが、先ほどお答え申し上げましたように、これまでの街頭検査におきますところの実施実績を申し上げますと、全国で年間八百四十四回の出動であり、延べ出動人員が一万六千六百余人という要員が出て検査をいたしておりますが、それの対象になりました車の数は約十万台近くございます。
  53. 中馬弘毅

    ○中馬委員 一%にも満たないものしかチェックできないわけですね。しかし、これは義務づけられておるといいましても、実際には街頭でつかまえて見てみるだけだという形になるわけでございまして、この点、これを本当に実効あらしめようとしたら検査官はとうてい足らないわけでございまして、むしろそれを先ほどおっしゃったように増員するつもりは全くないということでございますと、たまたまつかまった者だけが不幸だといったような非常におかしなことになるのですね。  いまおっしゃいましたけれども検査官が街頭で走行中の車を停止させる権限があると思いますか。これは警察庁にお願いいたします。そういう権限があるのですか。     〔楢橋委員長代理退席、委員長着席〕
  54. 福島静雄

    ○福島説明員 お答えいたします。  警察の所管いたします道路交通法上は、検査官が車両を停止させる権限は規定されておりません。また、運輸省所管の法律につきましては、これは警察所管でございませんので、運輸省に問い合わせましたところ、そうした権限を定めた規定はないという回答を受けております。
  55. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ですから、運輸省独自ではこの法律だけでは車を検査することもできないのです。きっと従来どおり警察にお願いして、警察官と一緒にそれをとめてもらって、そのときに見るという形ですね。警察にまで迷惑をかける形になっているのです。その点はどうお考えですか。
  56. 宇野則義

    宇野政府委員 従来から街頭検査実施に際しましては、それぞれ地元の警察当局及び陸運事務所と協議の上で出動をいたしておるわけでございまして、目的自動車の交通安全、特に車両を対象にいたしました整備不良車の排除等のチェックということでございますので、交通警察当局といたしましても協力をいただいておる次第でございます。
  57. 中馬弘毅

    ○中馬委員 そういうことで、たまたま警察の協力も得てそういう街頭検査をやって、つかまった者だけが十万円という過料を取られるという形ですね。いまの例のネズミとりと称されるスピード違反の検挙にしましても、これは余りいい制度じゃないと思っております。何か別の方法があった方がいいんじゃないかと思っておるのです。といいますのは、それはたまたまつかまった者だけが損をする。そして、それはつかまった者も含めて警察に対する恨みだけになってしまうのですね。それと同じことがまたこういうことでできてしまうんじゃないですか。たまたまつかまった者だけが十万円の過料、これは陸運事務所に対するつかまった者としての恨みだけになってしまいます。こういうものは立法上おかしいのじゃなかろうかと思うのですけれども、大臣、いかがですか。
  58. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 いま委員は、つかまったらすぐに過料を取られるんだというような……(中馬委員「いや、そういうことじゃないので、誤解しないでください」と呼ぶ)そういうふうに聞こえましたけれども、そうじゃないのですから。見て、点検がない場合にはしなさいよということを注意するわけです。それで、その人が点検を受けて、受けましたよということを陸運事務所の方に通告してくれればいいということであります。  この過料という言葉はあれでございますが、御承知のように出生届とかあるいはまた転居届、さらに婚姻届等もやはり過料がついているわけです。一種の秩序罰というのであろうと思うのですが、この出生届その他は三万円と出ております。それだからといって、別に罰則でどうこうということはないのでございまして、ほとんど取られないのが通例だと思います。今度の過料という言葉はそういうような意味でございまして、要するにユーザーと申しますか、自動車を所有する人に自分で車の整備を大いにやってもらって、そして公害対策だとかあるいは自動車の安全というものについて大いに協力していただきたい、そうしたことを進めていくということが本旨でございます。この過料を科するということ自体がそんなに大きな意味合いのものではないのでございますが、その点が十分に御理解いただけないために、大変この過料の問題が焦点になっておると思うのでございます。いまも御説明申し上げたように、こうした、自分でやっていただきたいということの秩序を進めたいという意図でございますので、御理解をいただきたいと思っております。
  59. 中馬弘毅

    ○中馬委員 別に誤解に基づいて言っているのではなくて、ちゃんと通告をしてからだということも承知しております。しかし、法体系として、法律のあり方として、こういうことが本当にいいのかどうかということに疑問を申したわけでございます。  いままで六カ月点検は実際には有名無実だったわけですね。これを、そういう意味で、十万円の過料まで科して義務づける理由をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  60. 飯島篤

    飯島政府委員 先生もうよく御存じのとおり、定期点検制度は、保安基準不適合車を未然に排除するという予防措置である点は強調いたしたいのでございますが、六カ月点検につきましても、項目は大幅に簡素化いたしましても、必要な点検をし、整備をするということは、安全及び公害の問題からやはりその励行が望まれるところでございます。  それで、今回の六カ月点検の扱いにつきましては、運輸技術審議会答申にありますように、技術的な知識を持っておられる方であれば、みずからでも実施し得る程度のものに簡素化をする。また、ユーザー参加を促進するということで、手引き等を作成するというような措置も講じているところでありまして、行政指導として、その励行方について街頭検査の際に啓蒙をするという措置はやはり必要ではないかと考えております。
  61. 中馬弘毅

    ○中馬委員 そのような指導であれば、わざわざこうして法律でやることはないので、こんなことまで法律をつくることに、いまの官僚制度に対する国民の批判というのが非常に集まっているのじゃないですか。  いまおっしゃったように、危険性といったようなことも含めて、それだけ必要があるのであれば、それこそ全車にステッカーでも張って、それがなかったら乗れないという形にするのならまだわかるのです。しかし、たまたまそういう行政指導的な意味だとおっしゃるので、先ほど言いましたように、実際につかまった者が十万円の過料だといったようなことになると、これこそ立法の形として非常におかしいのじゃなかろうかと思うのです。自分で自分の命を車に預けて運転しているわけですから、事故を起こしそうな車に乗るはずがないのです。一般の日常生活の中でもそういう場面はたくさんあるわけです。それをわざわざ全部法律にしたら、これは大変なことになるのですよ。  私も山に登っておりますけれども、山登りにしたところで非常に危険です。しかし、登る前には、持っていくものや装備の点検は自分でやりますし、ザイルあるいはアイゼンのとがりぐあいなんかも自分でちゃんと確かめてから登るわけでございまして、自動車だって当然そうなのです。そしてまた、それだけの自己責任を持たせなければいけないものであって、こうして法律でこんなことまでを決めることが果たしていいのかどうか。大臣、どうお考えですか。
  62. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 こういう問題を法律で決める、そうなりますと、どうしても罰則が付随いたします。特に自動車点検は、ユーザーそのものも、自分の走っている車が起こしている公害の影響とか、故障による他に対する迷惑とか、そうしたようなものを考える場合に、いま委員もおっしゃったように、自分自身の身を守るということの延長線上で、当然自分自身で大いにやっていただかなければならぬわけであります。しかし、なかなかそうもいかないところにどうしても行政指導を必要とするような面がまだあると思うのでございます。そうした意味において、今回もなるべく行政指導ということの範囲内で、ユーザー一人一人にこうした整備点検を大いにやっていただくという方向を誘導することがいいのではないだろうかというので、今回の法律案の骨組みが決まったわけでございまして、いまおっしゃるように、これを法律でばっちり決めろということになりますと、とても過料などということでは済まなくなるので、むしろそのことの方がよほど官僚的な雰囲気が強くなるのではないかと思うのでございます。
  63. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ドライバーというのは、自分で大体点検できるくらいなのがあたりまえだと私たちは認識いたしております。しかし、現実には、パンクしたら直せない、あるいはラジエターに水がなくなっているのもわからずに走っているといったような方が多いわけですね。多いとは言いませんけれども、そういう人もいる。そういう人に免許を与えていること自体問題があるのじゃなかろうか。そういうことを前提にしてこのような法律をつくるのじゃなくて、免許の与え方自体に問題があるのではないかと思うのです。  警察庁の方にお聞きいたしますけれども、先ほど申しましたような意味で、ただ運転だけできたらそれで免許を与えるというのではなくて、整備の面あるいはメカのことについてもう少しドライバーにちゃんとした指導なりをし、そしてそれの認定の上での免許ということにしなければいけないと思うのですが、いかがですか。
  64. 越智俊典

    越智説明員 お答えいたします。  自動車点検につきましては、交通の方法に関する教則の内容に盛り込んでおりまして、免許を取得しようとする者が自動車点検に関する知識を十分身につけているかどうかは学科試験によってチェックしております。現在、指定教習所における学科教習の中に、学科教習は全体で三十時限あるわけですけれども、構造の関係、点検の関係が五時限入っておりまして、免許を取ろうとする者につきましては、自動車点検についての知識を十分身につけるよう努めているところでございます。  問題の六カ月点検についてですけれども、現在の点検基準の内容はかなり高度なものとなっております。実際には整備業者に頼んでやってもらっているのが大部分ではないかというふうに理解しております。  現在のところでは、ドライバーが必ず自分で六カ月点検をしなければならないという仕組みにはなってないというふうに私ども理解しておりまして、したがいまして、現在、われわれ警察としましては、免許を取ろうとする者の教習の内容に、六カ月点検の具体的な内容、方法等までは取り入れておりません。ただ、運輸省の方針として、今後、六カ月点検項目簡素化したり、ユーザーに対して実施していく方針であるというふうに聞いております。その場合でも、四千五百万人の大量のドライバーに、一律にどの程度こういう点検に関しての知識を教えるか、運転者側の負担という問題もございますので、この辺を十分考慮しながら、今後の問題は慎重に検討していきたいと考えております。
  65. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いままでの四千万の方全部にいまからやり直せとはあえて申しませんけれども、今後免許を与えるときにはそのぐらいのことをするのが当然だろうと思っておりますし、その点の御検討をお願いしておきます。  一方でそう言いながら、運輸省の方は、この法律では自分でやっていただいて結構ですという形になっているのですね。  じゃ具体的に、手続的に言いますと、どういう形で自分でやったというのをチェックできるのですか。
  66. 飯島篤

    飯島政府委員 この定期点検の問題については、もう再三申し上げておりますように、基本的にはやはりユーザー意識高揚であり、いま先生指摘のとおり、自動車の構造、装置について知識を深めていただくという前提が必要かと思います。したがって、幾ら簡素化しても、車は技術の進歩によりまして高度化、複雑化する面もございます。したがって、大半の方は引き続き専門家に依頼するという方が率としては多いんじゃないか。  それから、いま御指摘ユーザー自身がやった場合はどうなのかということでございますが、今度定期点検記録簿についてユーザーが理解しやすいものに改正していく、自分でも書きやすいものにしようということで、御自身がやった場合には御自身で定期点検整備記録簿に、点検の結果、整備の概要等を、省令で定められる所要の事項を記載していただくということでございます。前提としては、やはり信頼関係で処理するしかない。ただ、現場では、専門家の検査官でございますので、いろいろ書類以外にもユーザーにお聞きをするということによって判断をするということになると思います。
  67. 中馬弘毅

    ○中馬委員 先ほど言いましたように、現状がほとんどメカのこともわからないドライバーが多いわけで、そういう人に免許を与えていることが問題なんですけれども、その人たちが、いまのおっしゃることであれば、自分でそういう知識も資格もないのに、ここは大丈夫大丈夫という形でやって、それでまた過ごせるということに、逆になってしまいますね。
  68. 宇野則義

    宇野政府委員 特に、六カ月点検内容につきましては、ただいまお答えがございましたように、現在の時点におきます合理的な項目に見直しをすることにいたしておりますが、その結果として、技術的な知識を有するドライバーはみずからでも実施できることになるという想定をいたしております。その実施の手助けにするために、今回の法律改正案の中でも、運輸大臣が、点検整備等に関する指導のための手引きを作成して公表することにいたしております。  この手引きの内容といたしましては、点検整備実施の方法だとか、あるいはその機能等につきまして、ユーザーにわかりやすいような手引書をつくる予定にいたしておりますが、そういうことをすることによりまして、ユーザーの知識なりあるいは認識なりというものを向上し、啓蒙してまいりたいというふうに考えております。
  69. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いま言いましたように、自分で自分の車に、また自分の命に責任を持つという形に、法律じゃなくて行政で指導されるということが本来の姿じゃないかと思うのですが、それをいま言ったような形で、何も実際の技術もないのに、ただつかまったときのために、お役所の目をごまかすためにそこにマル印を打つというようなことをむしろ奨励するような、体系になっていることを、非常に残念に思うのです。その点に対して一つ大きな疑問を呈しておきます。  と同時に、現実には先ほど申しましたようにほとんど行われてない六カ月点検というもの、これをちゃんとやれることを前提にするならば、四千万台全車に義務づけることになるわけですから、現実には点検整備いまはほとんどやってないわけですから、そうしますと、これがただ二年に一回の検査だったものが半年ごとになるわけですから、はっきり言えば、単純に言えば四倍、一部の人がやっていたということであれば二倍ないし三倍ということになるわけですけれども、それだけのものが整備工場に押し寄せる形になるのですね。それだけの能力があるのですか。
  70. 飯島篤

    飯島政府委員 先生のおっしゃるようになればいいのでありますが、現実の問題として、なかなか一挙にそういう状態になるということは期待できないと考えております。仮に相当実施率が高まったといたしましても、事故、臨時整備が減少をしていくということになると思われますし、それから整備作業量が今度の制度改正で減る要因がございますので、業界全体として、一応実施率が仮にかなり上がった場合でも、対応できるのではないかというふうに考えております。
  71. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いまのご答弁にもありますように、非常に矛盾したことを答弁せざるを得ないような状況になるわけですね。それだけ上がったら大いに結構ですということなんですよ。ということは、ほとんどの人はやらないだろうという前提に立っておられますね。そして整備工場に持ち込まない。ところがまた一方で、現在のドライバーの方々にはそれだけのメカはなかなかされないはずだというような、あっちこっちで非常に矛盾したことを御答弁せざるを得ないようなのがこの法律内容だということを指摘して、時間が参りましたから、あと、これに対して、いままでの審議を通じて非常に矛盾の多いところ、こういったことを柔軟に対応されますことをお願いいたしまして、質問を終わります。
  72. 越智伊平

    越智委員長 午後一時三十分より再開することとし、休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後一時三十三分開議
  73. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林恒人君。
  74. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 一昨年の段階で、中曽根長官の現在二年の車両検査期間を三年に延長するという発言の中から、臨調を含めて行政改革という議論の過程を踏まえながら、もちろん臨調の中でも運技審の中でも、国民の負担軽減ということを中心として今回の一部改正提出されてきていると考えるわけです。すでに昨日の何人かの皆さん方の御質問の中にもお答えが出されてきているわけでありますけれども、国民の負担軽減という基本方針と、一部改正を提案するに当たって組み立てられました要綱並びに大臣の要旨説明との間には、定期点検整備記録をめぐって、過料の問題をも含めながら、若干の矛盾が出てきているのではないだろうかという気がいたします。問題点を整理する意味からも、基本的に一部改正を提案するに至った本質というものについて、あらかじめ大臣の方から明確にお示しを賜りたいと思っているのであります。
  75. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま委員が仰せられました各ポイントは、われわれもそれなりにいろいろと苦慮しているのが実情でございます。しかし、ユーザー負担を軽減するということが、車検の二年を三年にするということだけであるのかどうかという問題のとらえ方と、一方におきましては、車社会の中においての車自体の持つ社会的な影響、特にそれが一方においては公害あるいは安全、こうした水準との中において車検の二年を三年にするということをどう調和させるかというところが今回の問題を考えた場合の最大の重点であったと考えます。  一方におきまして、車検の検査をごくごく簡単にする、つまり自動車の機能及び機構がほとんど完璧であるという認識のもとに立って、そしてそれをほとんど点検する必要なしという観点から言うならば、それは無限大に簡素化できると思ったのでありますが、一方、公害基準さらにまた安全基準というものは厳としてあるわけでございますから、この公害基準あるいは安全基準というものと車検の延長というものとをどうやって結び合わせるかという問題で、先ほど来申し上げているようないろいろの苦慮があらわれたということが、この問題に対してのいろいろな答弁の中にややちぐはぐさが感じられるのは私たちはやむを得ないと思うのでございまして、その点は御了承いただきたいというふうに思います。
  76. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 一部改正の議論そのものが一定のところにとどまっているから、たとえば定期点検強化を含めて、いま大臣も言われておりますように、車そのものの安全性あるいは公害というような問題をも含めてこれからなくしていこうという、こういったところに議論が集中しているように思うわけです。  ただ、その議論だとすれば、車両の欠陥による交通事故が全体の事故の〇・〇七五%、この程度しかないということはもうだれもが認めているところでありまして、もちろん車を持っている人、ドライバーそのものも、みずからの安全といったものを考えないで車を運転をするということは通常はないのがあたりまえではないだろうか、こういう気がするのです。  ただ、逆の面で交通事故といったことを考えますと、この三十年間激増の一途をたどってきた。交通事故そのものがなかなか減少をしていかない。やはり車両法そのものを見直しをする際には、事故の減少とあわせてこれはどこに原因があるのかということを究明をしながら安全な車社会を目指していく、こういう基本施策がなくてはいけないのではないかという気がしてなりません。  ところが、残念ながら今回一部改正をしようと試みた部分の中では、自家用車の車検を二年から三年への延長といった問題といわゆる六カ月点検強化、加えてこれには罰則まで記載をされてくる、こういうことになっていることの矛盾を指摘する必要があるのだと思っているわけです。  きのう、わが党の吉原議員の方からも大蔵省に対する御質問があったわけですが、どうもすっきりしないのは、やはり重量税の取り扱いの問題、重量税そのものが新車三年になることによってどうなっていくのかという、これは初年度の問題だけではなしに、二回目の車検を受ける際の重量税の取り扱いはどうなっていくのか。これは三年間も二年間も同じではないんですよという論理からするというと、一回目は高くて二回目は安いのだ、こういう議論になるのかなとは思いますけれども自動車重量税の創設当時の性格、こういったものが非常に重要視をされているのだとすれば、ここらに対する見解を明確にお示しをいただきたいと思っているのであります。
  77. 新藤恒男

    ○新藤説明員 昨日も御説明申し上げたところでございますけれども昭和四十六年度に現在の自動車重量税法ができたわけでありますけれども、そのときにいろいろ創設の際にどういう税にするかということは議論があったわけでございます。そういう議論の中で、自動車重量税につきましては、いろいろな面で自動車が社会的に費用をもたらしておるという観点から、この自動車重量税というものを使用者にお納めいただくというかっこうでつくられたわけでございます。  その際の性格といたしましては、昨日も申し上げたところでございますけれども、車検を受けることによって走行が可能になるという法的な地位、そういうものの利益ということに着目いたしまして負担をお願いするということで、性格的に申しますと、やや専門的で恐縮でございますけれども、一種の権利創設税であるというふうな説明が当初からなされていたわけでございます。そういう性格で今日まで至っているわけでございますけれども、重量税の性格自体は今日におきましてもそういうものであり、この間に変化があったというふうには考えていないわけでございます。
  78. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 この分野では、そうするとユーザーの側の負担軽減というものは何もないではないか、こういう質問をすればどのようにお答えになるのですか。
  79. 新藤恒男

    ○新藤説明員 今回の車検法の改正考え方と申しますのは、許認可の簡素合理化という観点から見直されたものというふうに考えております。したがいまして、税の関係とは切り離した御議論であっただろうというふうに考えております。
  80. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 あわせてお金の関係について、これは必ずしもユーザーの側とは限りませんけれども、一、二お尋ねをしておきたいのですが、百二条に伴う手数料の納付という問題があります。  ここでも従来の金額と一部変わっているものがあるわけですね。「手数料を納付すべき者」特に「回送運行許可証の交付を申請する者」、従来は「一枚につき二千円」であったものが「六千円」になっている。これは一体ここだけが何を基準にしてこのように納付金の手数料の改正になったものなのか、これが一つ。  もう一つは、百六条に関連をいたしまして、「九十八条第一項の規定に違反した者は、三年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処」する。従来は「十万円以下」となっていたわけですね。これが五倍になる。  さらに、百六条の二の関係では、従来五万円の罰金と示されていたものが三十万円、六倍になるわけですね。  さらに、百七条関連で言うならば、従来「三万円以下の罰金」とされていたものが「二十万円以下の罰金」、この場合は約七倍に近い引き上げとなるわけで、それぞれ、これらの罰金額の引き上げというのは一体何を基準にして設定をされたのか。  加えて、百八条の関係もお尋ねをしておきたいのでありますが、これは「六箇月以下の懲役又は一万円」とあったものが、一万円が「十万円以下の罰金」、これはもう十倍ですね。  この五倍から十倍までの間で罰金額が改正をされる、これは一体何が基準であったのかということについて、議論の経過を含めて御説明を求めたいと思います。
  81. 飯島篤

    飯島政府委員 第一の、回送運行許可証の関連でございますが、現在有効期間が一月以内となっておりますのを三月以内に延長されるということに伴いまして、有効期間が一月のもの、二月のもの、三月のものが生ずるということになりますが、これらの有効期間の異なる回送運行許可証の交付を受ける人たち相互の負担の公平を図るという観点から、現行の有効期間が一月のものに係る手数料二千円を基準といたしまして、二月のものに係る手数料をその二倍、三月のものに係る手数料をその三倍とすることが合理的であるということで、この改正をいたしたわけであります。したがって、法定限度額を六千円といたしまして、政令において有効期間に応じ段階的に手数料の額を定めることといたすわけでございます。  次に、罰則条項の改正の問題でございますが、これは次官会議におきます法務事務次官の発言という形で、法律を新たに制定したり罰則条項に係る改正をする場合には、経済情勢といいますか、経済の実態に合わせて改正をするという方針が法務省の方から出されまして、法務省の方で一元的に検討した結果、先生がいま御指摘のような改正に相なったということでございます。
  82. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 次に、先ほど大臣からも基本的な考え方を述べておりますけれども、今回提案をされている新車三年、こういったことに伴って、安全確保公害防止、さらに車の維持管理の適正化、こういったことを踏まえて考えた場合に、特に改めてメーカーとしての、あるいはユーザー側の、あるいは整備業者の新しい分野での役割りというものに変化が出るのですか。
  83. 飯島篤

    飯島政府委員 自動車の安全の確保あるいは維持管理の適正化を図るためには、メーカー、販売業者、整備業者ユーザー、それぞれの立場に立って役割りを果たすことが必要でございます。また、実効を上げるためには、それらの相互間で緊密な協力関係を持っていくということが不可欠であるというふうに考えられます。  運輸技術審議会中間答申及び最終答申でもいろいろ触れておりますが、中間答申指摘があるように、メーカーは今後、自動車整備性の改善新車保証の充実等を行うべきである。第二に、販売業者は整備の必要性や整備費、税金等、維持管理に必要な経費についてユーザーによく説明すべきである。第三に、整備業者はわかりやすい請求書等の帳票類を使用したり、基本整備料金表の掲示による料金の明確化、それから標準整備作業点数表の活用による料金適正化整備保証制度の導入というものを検討すべきであろう。第四に、ユーザー料金整備内容について関心を持って、整備業者に対するそれらの確認、それから自動車状態についての十分な把握及び整備業者に対する的確な要求、点検整備に関する意識高揚というようなことが必要になってくると思われます。  今回の法律改正は、これらの答申指摘されたものを、その趣旨に沿って道路運送車両法改正に盛り込み得るものは盛り込んだということでございます。
  84. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 必要な事項について盛り込むべきものは盛り込んだというお話ですが、道路運送車両法昭和二十六年に制定をされ、二十七年に発効する段階で、自動車の保有台数五十万台程度、それから三十年たった今日、自動車総数は約四千万台と言われているわけです。自家用車そのものも二千三百万台を超えているだろう。こういう自動車社会が創出をされている中で、簡単に申し上げると、自動車使用者の構造は変化をしてきているだろう。ということは、非常に多くの庶民が生活交通として自動車を利用している、こういったことが言えるのだと思うのです。したがって、一部改正基本となる臨調の側の考え方やあるいは運技審の中での議論過程でも、国民負担の軽減、こういったことはきわめて重要な課題として取り上げをされたわけです。  しかしながら、実際はそのための措置がどの程度あるのか。午前中に同僚議員の質問の中で、新車三年になることによってユーザー側のどの程度の軽減措置となるのかという質問に対して、一定の数字は示されているわけですけれども、具体的に定期点検義務化、こういったものが明確にされる。本来義務化という問題よりは車社会における秩序をどう改革していくかというところに視点が置かれなくてはいけないのではないだろうか、このことを通じて社会の変革を獲得していくということ、そこに働く行政機関の重要な役割り、こういったものが目に見えてこなくてはいけないだろう、このように考えるのです。ところがいままでの政府側の答弁を聞いておりますと、そういった具体的なものはどうしても明確に示されてこない。一方では、最近週刊誌あるいは新聞テレビ等を通じて、車検そのものの一部改正というのは大改悪である、こういった論調すら随所に見られるようになってきているわけであります。そういう批判が渦巻く中で、ここは使用者、利用者がメリットとして受けとめられる部分ですよという目玉を一体お持ちなのかどうなのか、この点について御質問しておきたいと思います。
  85. 飯島篤

    飯島政府委員 運輸技術審議会の検討に当たりまして、まず検査整備制度のあり方については、安全の確保公害防止、省エネルギーというものを前提としながら、国民負担の軽減及び行政簡素化にも配慮して検討を進めるということで行われたわけでありますが、臨時行政調査会でも、この運輸技術審議会の検討結果を受けて答申が出された経緯になっております。  その中で、国民負担の軽減という観点から、答申並びに今度の法律改正でどういう点が配慮されているかという点につきましては、まず、マイカーの新車初回検査有効期間の一年延長、マイカーの新車初回の六カ月点検の廃止、それから定期点検項目簡素化、特に六カ月点検については大幅に簡素化し、ユーザー自身が自動車の構造、整備について技術的な知識を持っておる方であれば実施できる程度のものにするということ、さらに、法律ではございませんが、今後定期交換部品交換時期の延長についてメーカー側で努力をしてもらうということ、あるいは完全に整備された車についてみずから検査場へ行って試験を受けることによる代行手数料の節約というような点が、国民負担の軽減につながるというふうに考えたわけでございます。  なお、六カ月点検項目簡素化については、今後省令段階で対応するということに相なるわけでありますが、基本的に今回の考え方ユーザー責任というものを明確に打ち出しておるとともに、ユーザー参加という観点を取り入れて、さらにそれを促進するために手引書の作成なども考えたわけでございます。
  86. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 現行の車検のあり方についてもずいぶん多くの議論がありましたし、マスコミなんかも相当大きな問題提起をしておるわけです。  たとえば、五十六年十一月二十六日サンケイ新聞、車検延長に伴って、これは十一月二十六日からずっと連載をされているのですが、空車検という問題が大変大きな事件として取り扱われているのです。最近ブラ日勤だとか空出張だとか、こういったことが問題になっていると同じように、車検についても空車検が行われておった。もうすでに御承知かと思いますけれども、札幌陸運局管内、北海道釧路市で車検裁判が始まったことを非常に大きく取り上げをしておるわけです。釧路の自動車整備センター、こういったところが何も車検業務をやらないで証明だけはどんどんやって、ぎっちり車検をやればせいぜい一日三台を限度とするのではないかと言われている、こんな状況の中で、検査員、整備員総勢八名の会社ですけれども、一日平均で九台のペースで検査更新手続が進められていった。こういった状態というのを、現状の車検でさえこういう問題点があるのに、六カ月定期点検、こういったものを制度化して具体的に管理監督ができるものなんだろうか、こういう疑問を持たざるを得ません。ここらに対する運輸省側の見解をまずひとつ明確に示していただきたいと思うのです。
  87. 飯島篤

    飯島政府委員 いま先生の御指摘になりました民間車検の不正事件というものをどういうふうに考え、どう対処しているかというお話につきましては、具体例として釧路市の自動車整備センターの件をお挙げになりましたが、残念ながら私ども、ほかにも幾つかの事例をはっきり把握し、それについて所要の処分をいたしておるのでございます。  まず監督につきましては、指定整備事業者、いわゆる民間車検業者の指導監督につきまして、監査、研修等を通じまして事業運営の適正化等の指導に努めておりますが、監査の体制は、二人制無通告という形で年間一工場平均一・七回実施をいたしております。それで、特に保安基準適合証の不正発行等の重大な事実が発生した場合には、特別監査を実施いたしまして、法に照らして厳正な処分を行っているところであります。また、いろいろなルートで情報の収集に努めておるわけですが、特に警察との連絡は緊密にいたしておるところでございます。  なお、こういった効率的な監査、処分の厳正化については、運輸技術審議会答申でも指摘されているところでございまして、今後とも指定整備事業者の監査なり自動車検査員の研修等について充実強化をして不正事件の防止を図ってまいりたいということでございます。  ちなみに、現在の指定工場に関する監査処分件数を申し上げますと、五十五年度において三万七百四十件の監査をいたしました。それで、処分件数は、指定の取り消し六、適合証発行停止四十七、検査員の解任九、是正命令一件、その他警告二千七百九十四件というような状況に相なっておるわけでございます。  それから、今度の制度改正に伴って六カ月点検励行確保されるのかという問題でございますが、先ほど来申し上げておりますように、まずユーザー定期点検の重要性についての意識高揚を図ることが基本でございます。それにつきましてユーザー点検整備への理解を深め、またユーザー参加を推進するということができるようにするための手引きというものを国等が作成することをこの法律案に織り込んでいるところでございます。そういった大前提を踏まえて、定期点検励行について記録簿整備あるいは街頭検査強化あるいは車検時における指導を含めまして、広報、啓蒙活動に今後力を入れてまいりたいと考えております。     〔委員長退席、楢橋委員長代理着席〕
  88. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 手引きをつくって啓蒙宣伝をやっていきたい、努力をしたいという考え方については全然わからぬわけではありませんよ。しかし、この空車検問題、五十六年十一月二十七日号、これには釧路陸運事務所、これは運輸省の出先機関ですね、ここの村上好邦所長は次のような談話を明らかにしているのです。「いまの民間車検制度は国と整備業界陸運事務所と指定整備工場との信頼関係の上に成り立っている。今回の事件はこれを逆手にとられたわけで残念だが、実際問題として書類審査の時にいちいち“本当にちゃんとやったのだろうな”と問いただすわけにもいかない。」そのために、書類上での審査で完全だとわかれば合格の判こを押さざるを得ない。年間を通じて大体一・七回平均で監査を行い、充実強化を図ってきたと言いながらも、こういったことをあなたたちの出先の責任者が明らかに言っているのですよ。手引きを出せばこれは何とかなるのですか。行政の責任は、手引きを出しましたから、こんなことで済むのですか、明らかにしてください。
  89. 宇野則義

    宇野政府委員 先生ただいま御指摘の北海道の事件につきまして、書類の形が整っておれば認めざるを得ないという陸運事務所長の談話が記載されておる件についてでございますけれども陸運事務所に持ってまいります保安基準適合証というものにつきましては、これは証明書だけでございまして、内容が不明でございます。したがいまして、その段階におきましては、その書類が様式的に整っておればそれを認めざるを得ないというのが手続上の問題でございます。  そこで、先生指摘整備工場との信頼関係の関連でございますけれども、そういう保安基準適合証というものを発行しないように監督をするということが私どもの行っております立入検査等でございます。その北海道の事例におきまして、残念ながらその間それが発見できなかったという問題はあろうかと思いますけれども運輸技術審議会等でも指摘を受けておりますが、監査のやり方等につきましてももう少し検討をし、効果のある監査を厳格に実施すべきである、さらには不正ということが判明した民間車検工場に対しては、いわば一罰百戒的な厳正なる処分をすべきである、こういう運輸技術審議会からの答申もいただいておるわけでございまして、私ども、日常の業務といたしまして陸運事務所が指定工場の監督をやっておるわけでございますが、早速その趣旨を徹底させるとともに、今後ともその点について十分注意をしながら行政的な指導監督をやってまいりたいというふうに考えております。
  90. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 処分をすればそれで事足りるという、そういう問題でないのですよ。私の質問趣旨は、行政として日常どういう適切な指導をしてきたのか、運輸省指導はなっておらぬのではないですかということをお伺いしているのですよ。そうじゃないんですか。いろいろな問題点があるんですよ。一つ一つ挙げれば切りがないくらい問題点はある。いまそれは挙げる時間もないから挙げようとは思わないけれども、今後の指導の中で、運輸省の、指導をします、一・七回にもわたって抜き打ち監査をやってまいりました。それでも悪さをする業者はいたんです。きちんと処分をしましたと言われたって、処分をすればそれで事足りるほど運輸省の出先は要員がたくさんいるんですか。運輸省の出先の要員よりは整備工場の数の方がうんと多いんじゃないですか。しさいにそんなところに手が届くわけがない。一年間三百六十五日もあるのに、一回や一・七回入ったからといって満度の監査ができるなんて考えている方がおかしいんですよ。何を考えているんですか。そういった部分で、これはもう好むと好まざるとにかかわらず車社会がやってきている。そういうときに運輸省として体制整備はできているんですかということを聞いているんですよ。
  91. 飯島篤

    飯島政府委員 今度の道路運送車両法の一部改正案に、自動車整備事業の運営の適正化という観点からいろいろな条項を取り入れてございます。  まず、整備事業の認証に際しまして基準がございますが、新たに、事業を適確に遂行するために必要な経理的基礎というものを加えるとともに、現在この法律に違反した場合だけしか欠格事由として挙げていないのを、他の立法例にならって、他の法令についても重要な違反がある場合は欠格事由になるというふうに規定を整備いたしました。  それから、分解整備事業者は、その事業場の設備及び従業員を認証基準に適合するように維持しなければならないという義務を明確に設けました。  また、分解整備事業者が遵守すべき事項を運輸省令で定めることといたしました。ここにおきまして、いま問題になっておりますいわゆる過剰整備とかあるいは手抜き整備あるいは不正改造の禁止ということを定めますほかに、基本料金表の掲示あるいはユーザーに対する整備内容の説明の励行というようなものを規定いたすことといたしております。また、分解整備事業者がいま申し上げたような事項を遵守していないと認めるときは、業務の運営の改善に必要な措置を命ずることができることといたしました。  さらに、自動車整備振興会の目的及び事業を充実いたすことといたしまして、自動車整備に関する自動車使用者等の苦情の処理にあわせまして、いま申し上げたような自動車整備事業の運営の改善に関する指導等も行わせることといたしておるところでございます。  今後、これらの規定の運用に当たって、先生指摘のような問題につきましても厳正に監督を強化してまいりたい。また、自動車検査員の研修につきまして、今年度予算において、一体今後どういう方法がいいかというようなことも勉強するような予算も計上いたしているところでございます。
  92. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 現行六カ月定期点検というのは指導されているわけですけれども実施率はどの程度ですか。     〔楢橋委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 宇野則義

    宇野政府委員 六カ月点検、十二カ月点検実施率は、五〇ないし六〇%程度でございます。
  94. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 五〇ないし六〇%の定期点検を一〇〇%に近づけていかなくてはいけないわけですね。車検でも、先ほど指摘をしたように問題があります。定期点検に対するユーザー側の認識を含めてまだまだ脆弱なものがあるにもかかわらず、せいぜい五、六〇%程度しか定期点検を受けていないという、こういう実情の中で過料まで示されたこの一部改正というのは、私は大変大きな問題があるように思うのです。こういうことになるから、したがって過料前提にしておきゅうをすえることによって車社会の秩序を維持していこう、こういったところに矮小化をされてしまうのではないか、こういう危惧の念を持たざるを得ません。  いずれにいたしましても、そういった問題の整備の仕方ではなしに、せっかく一部改正をするわけですから、運輸省がやがて一部改正をした後に行うであろう省令ないしは通達の中で、これこれの具体的な指導をしていきたいと考えているといったものは、つまびらかにこの委員会審査をされている段階で示されるべきだろうと思うのです。そういったものがほとんど見受けられないことについて問題の提起をすると同時に、できるだけ早い時期にそういう問題点を解消されることを要望しておきたいと思うのです。  次に移りますが、現行の分解記録簿あるいは保安基準適合証、保安基準適合標章、こういったものが大蔵省印刷局で印刷をされているわけです。さらに自動車定期点検、分解整備記録簿、こういったものについては業界が印刷をしてそれぞれの業者に配付をしている。それから六カ月点検実施した場合のステッカー、こういったものについては同じように定期点検整備促進協議会ですか、こういったところがそれぞれ運輸省の承認を求めて作成をされている。これは私は一元化の必要があるのではないのか、正確な意味で車社会における秩序を維持していく、こういう立場ではこの一元化の必要があるのではないかという判断をするのでありますすが、今回の一部改正に伴ってそういった考え方はおありですか。
  95. 宇野則義

    宇野政府委員 ただいまお尋ねのございました分解整備記録簿あるいは定期点検記録簿等の取り扱いについてでございますけれども、今回の法律改正の中で、分解整備記録簿あるいは定期点検記録簿の様式を統一するということを織り込んでおるわけでございます。これは、分解整備記録簿工場用でございまして、現在整備業界の団体であります振興会が作成して整備事業者に頒布しておるところでございますが、今後この様式を統一してそれをどういうふうに配布するか、あるいはその方法、料金等が適正なものになるように関係業界指導してまいりたいというふうに考えております。  なお、定期点検記録簿の方はユーザーが保管するものでございまして、これは実際に新車が販売される段階でメーカーもしくはディーラーが、整備手帳といいますかサービス手帳といいますか、そういうようなものの中に折り込んでユーザーにお渡しをしているのが現状でございます。これにつきましても様式等の統一を図ることにいたしておりますので、その適正な取り扱い方について今後指導してまいりたいというふうに考えております。  なお、定期点検のステッカーにつきましては、先ほど御指摘のように、定期点検推進協議会の名のもとに私ども指導いたしまして、現在これの促進運動の中の一環としてステッカー運動をやっておるわけでございますが、これの制度化につきましては、先ほど来御説明も申し上げましたけれども、法定化するのはいかがかということから、法定化をしないことにいたしておりますけれども、今後これらの取り扱いにつきましても十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  96. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 可能な限り行政が中心となって責任体制というものを明確にしていく、そして精いっぱいの努力を関係各省が積み上げることによって、車社会の中における秩序を維持確立をしていくという基本理念がなくてはいけないのだと思うのです。その意味では、今回この一部改正の中で第九十五条「自動車整備振興会」、こういったものについても一部補強し、その任務の一端を正確に担っていくぞ、こういうお考えのように読み取っているのでありますけれども自動車整備振興会の強化策としてお示しになった基本的な考え方は一体どこにあるのか、この点について質問しておきたいと思います。
  97. 飯島篤

    飯島政府委員 今回の改正に当たりまして、業界団体としての整備振興会の充実強化について規定を整備するという点につきましては、先ほど御説明をいたしたところでございます。どちらかといいますと、いままでの整備振興会は会員に対する技術指導が中心であった傾向がございますが、今後は整備事業者が行いました整備作業内容整備料金等に対しますユーザーの苦情等を適切に処理し、ユーザーの信頼性の向上を図っていくということが望ましい。現在も一応は設けております苦情相談窓口の利用が、いまのところPR不足もあり、一般的に整備業界全体についての御批判が強くなった時期でもあるせいか、必ずしも十分でございませんが、はっきり団体の仕事であるというふうに位置づけて、今後ユーザーサービスにも努めてもらおうということでございます。  それから、自動車技術革新に伴います新機構、装置に対する技術的な指導及び整備環境に対応いたしました事業経営へ改善に関する相談等に積極的に応じることによって事業運営の適正化を図らせたい。また、整備に関します技術的資料の作成によりまして、整備事業者だけでなく、ユーザー等にも広く啓蒙を図って、整備知識の普及向上を図らせることにいたしたいということでございます。  今後、この振興会が、会員に不正を行う者が出ることのないように適切な指導をすることを期待しております。今後そういった事件などが万一出てくるというようなことになりました場合には、私どもの方で振興会の責任を厳しく問いただし、また、所要の指導をしていくということにいたしたいと考えております。
  98. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 運技審の答申の中でも示された部分なんですけれども、陸運局認証工場あるいは指定工場、こういったものがありまして、それぞれに責任分野を明確にしながら今日まで整備事業を行ってきた、こういう経緯だと思うのです。ただ、何回となく問題となってきたものは、これは運技審の中でも意見が出されたやに伺っておりますけれども、いわゆるもぐり業者といったものが横行しておって、こういったところで整備点検をしたことをめぐる問題がマスコミに取り上げられたというような経緯も何回となくあるわけですが、こういったもぐり業者に対する運輸省としての取り締まり方針、特に具体的に対策を考えられているのかどうなのか、質問しておきたい。
  99. 宇野則義

    宇野政府委員 先生御承知のように、自動車分解整備事業は陸運局長の認証を受けなければならないということになっておるわけでございますが、そういう資格を取らずに、先生指摘のようにもぐりの未認証のまま営業行為を行うというケースがなきにもしもあらずでございます。したがいまして、私どもの方といたしましては、それらの未認証の工場に対しましては、正規の国の分解整備事業の認証を受けるように指導をしているところでございます。しかしながら、指導に従わずに認証を受けないで引き続き分解整備を行うというような行為を行う場合には、告発等によりまして所要の処分を検察当局にお願いしておるわけでございまして、今後とも未認証工場に対しましては、このような方針で対処してまいりたいというふうに考えております。
  100. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 日整連が中心になって、定期点検整備促進協議会というものができ上がっているわけですが、こういったところからも幾つか問題提起がされている分野で、たとえば分解検査、こういったものをめぐって、石油業界がこういう仕事に乗り込んでくる、あるいはディーラーも一枚組み込む、さらにメーカーも乗り込んでくる。非常に無秩序に整備という業種にあちこちから乗り込める、そういう体質が持たれ始めているのではないか、こういう危惧の念を持たざるを得ません。  具体的に、運輸省の側としては、整備というのは非常に大事なお仕事という認識をされるのだと思いますけれども一つは、ここらをめぐって見解を明確にしていただきたいことと、今後の整備業界総体に対する運輸省としての取り組み方などについても見解を伺っておきたいと思うのです。
  101. 飯島篤

    飯島政府委員 自動車の安全の確保公害防止という観点から、整備業界が果たしている役割りというものは非常に重要なものであると認識をいたしております。  この業界は、御案内のように、中小零細業者が大部分でございます。それで、経営基盤がきわめて脆弱であるということで、こういった問題を解決するために、まず、中小企業近代化促進法に基づきます構造改善事業というものを現在進めて体質の強化を図っていく必要があるということで、現在、業界自身の自助努力にあわせまして、私どももこれを支援しているという状況でございます。  それから、新しい形で分解整備事業にいろいろ進出の動きがあるのではないかということでございますが、そのお話の中で、ディーラーにつきましては、御案内のように、すでにかなり整備事業を行っておるところでございます。  石油業界でございますが、ガソリンスタンドで現在六カ月点検をやっておりますが、これは、いまのお話にありました促進運動の一環として、ガソリンスタンドが六カ月点検という形で自主的に入ってきているということでございます。従来から、認証工場になりたいというお話で、いろいろ要望が出ておるのは事実でございますが、こういう制度改正が行われることによって整備事業に重大な影響がある時期でもありますので、その辺をいろいろ配慮しながら対応してまいりたい。ただ、認証制度でございますので、一定の基準に合致しますれば基本的には認めざるを得ないという仕組みになっておるわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、認証基準の一部改正等もいたしたところであり、そういう規定の運用、さらに、他業種から整備事業へ進出する場合に、特に大資本の系統で出てくる場合は分野調整法という法律がございます。正確には中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律というものでございますが、この趣旨に基づきまして、進出する側と整備業界団体との相互の話し合いの場を設けまして、協調した形で問題の解決について関係者を指導してまいりましたし、今後も指導してまいりたいと考えております。  この業界をめぐる新しい動きについては、大体いま申し上げたようなことで対応してまいりたいと思います。
  102. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 どうも答弁が長々となって、何を言っているか、ようわからないのだけれども運輸省としての整備業界に対する、日整連に対する具体的な指導についての考え方はわかりました。  そこで、一つ最後に問題があるのでありますけれども、日整連は、昨年末以降、各都道府県に対して、私が調査をした範囲内では全都道府県だと判断をいたしますけれども、過般、与党である自由民主党の中に自動車整備議員連盟というのができ上がったのを契機にして、各都道府県にも自動車整備政経懇話会というものを組織しなさい、こういう指導通達が出されているわけです。この中にはきわめて具体的に、自由民主党の中にこういったものができ上がったのを機にして、整備業界の地域における政治土壌を確立していくために、身近な自由民主党国会議員の先生とひざを交えて懇談をし、政治感覚を醸成するとともに、業界実情に対する理解を深めていただきたい。このことを称して多くのマスコミから、まさにこれは与党、自民党政府、業界癒着体質を露呈したものではないかという批判が出ているのです。ただ、具体的にこの指導文書の中で、与党、政府自民党ということまで記載をされて指導されている政経懇話会のあり方について、運輸大臣はどのように御判断をされているのか、明確にしていただきたいと思います。
  103. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま委員からのお話のございましたそうした懇話会の存在を私は実は存じておりません。それは、マスコミに出たということを聞かされた程度でございます。運輸省といたしましては、そうしたことは業界自体の判断であると考えますが、厳正、公平に万般の問題に対して対処をしてまいる、そのことだけははっきりと申し上げておきたいと思います。
  104. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 時間ですからこれ以上は申し上げませんけれども、存じておらないという言い方が通用するのかどうなのかという問題、これは委員会ですから、私はそれなりに調査をし、資料も入手をして問題提起をしているわけです。こういう現実がある中でこの車両法の一部が改正をされる、そして六カ月定期点検というものが法制化をされていくという、さらに過料という問題までついて回るという、こういったところに大きな問題があるわけです。  これは、後ほどまた時間がありますから、その際にきめ細かく一字一句を取り上げて御質問をすることにして、きょうはこれで終わりたいと思います。
  105. 越智伊平

    越智委員長 次回は、来る九日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十一分散会