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1982-03-24 第96回国会 衆議院 運輸委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月二十四日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 加藤 六月君 理事 楢橋  進君    理事 宮崎 茂一君 理事 福岡 義登君    理事 吉原 米治君 理事 草野  威君    理事 中村 正雄君       阿部 文男君    関谷 勝嗣君       近岡理一郎君    浜野  剛君       三塚  博君    井岡 大治君       伊賀 定盛君    小林 恒人君       関  晴正君    浅井 美幸君       小渕 正義君    辻  第一君       四ツ谷光子君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君  出席政府委員         運輸大臣官房観         光部長     西村 康雄君         運輸省船舶局長 野口  節君         運輸省港湾局長 吉村 眞事君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省航空局長 松井 和治君         気象庁長官   増澤譲太郎君  委員外出席者         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   坂本 吉弘君         海上保安庁警備         救難部長    吉野 穆彦君         労働省労働基準         局労災管理課長 小田切博文君         労働省労働基準         局安全衛生部安         全課長     小俣 和夫君         消防庁震災対策         指導室長    松田 有弘君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     半谷 哲夫君         日本国有鉄道常         務理事     坪内 亨嗣君         日本国有鉄道常         務理事     竹内 哲夫君         参  考  人         (石油公団理         事)      松村 克之君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   中馬 弘毅君     甘利  正君 同日  辞任         補欠選任   甘利  正君     中馬 弘毅君     ————————————— 三月二十三日  脊髄損傷者に対する運輸行政改善に関する請願  (池端清一紹介)(第一五二五号)  同(岡田利春紹介)(第一五二六号)  同(北山愛郎紹介)(第一五二七号)  車検期間延長反対に関する請願外四件(左藤恵  君紹介)(第一六二三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  海運に関する件  航空に関する件  日本国有鉄道経営に関する件  港湾に関する件  観光に関する件  気象に関する件      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  陸運、海運航空及び日本国有鉄道経営に関する件等について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、港湾に関する件について、石油公団理事松村克之君に参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 越智伊平

    越智委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。関晴正君。
  5. 関晴正

    関委員 たくさん質問したいと思うのですが、先に国鉄関係の方に御質問をいたしたいと思っております。  国鉄当局は、今日いろいろと苦労を重ねておるわけなので、私も大変なところにあるということは承知いたしております。特に聞きたいことは、新幹線がこの六月に盛岡までやってくる、盛岡まで新幹線が通ると、いままで青森から東京まで来るその利便性が、それによって相当に失われる向きがあるのじゃないかということが実は心配であるわけです。盛岡までは速度が速められて結構だが、青森盛岡の間がどんな関係になるのだろうか。それがいままでより便利になるのか不便になるのかということで、大分心配があるわけなので、そういう関係のつなぎ。それから、これまでのもので廃止されるような列車、そういうもの等から見まして、それでも不便になるようなことはさせないのだ、せっかくスピードアップさせておいて、新幹線の通らない青森側に不便になるようなことはさせないのだという基本方針を持ってダイヤ編成するつもりでおるかどうか、また編成しておるかどうか。それらの作業はいつになって終わって、いつになって発表の予定になっておるのかというような点について伺いたい。  もう一つは、複線化の問題です。とにかく今日、青森弘前の間の複線化というものがおくれにおくれておる。私は、これは一刻も早くしなさいということをずいぶん要望してきておるのですが、このことについての計画はどうなっておるのか。特に、青森弘前というのは人口五十万を超えるところです。人口五十万を超えるようなところでいまもって単線というのは、国内のどこに例があるか。本線ですよ、支線じゃありません。  そういう意味において、その二つについて先にお考えをいただきたいし、お答えをいただきたいと思います。
  6. 坪内亨嗣

    坪内説明員 東北新幹線開業いたしました後の青森中心とした方々の交通の便でございますけれども、私どもとしましては、五十七年六月の東北新幹線開業時点におきましては、在来線の大幅なダイヤ改正というのは考えておりませんで、盛岡青森につきましては、現在のダイヤ計画をしております。そして、五十七年十一月、上越新幹線開業時点でございますが、これは東北線も含めまして全国的なダイヤ改正計画いたしております。  この内容につきましては、現在鋭意検討中でございまして、近いうちに確定をいたす考え方でございますが、盛岡青森間につきましては、新幹線開業によります時間短縮効果が十分に発揮できますように、盛岡駅で新幹線と接続をいたします盛岡青森間を結ぶ高速列車網整備するということで、十分この効果を享受していただくというふうに考えておる次第でございます。
  7. 半谷哲夫

    半谷説明員 お尋ねのございました奥羽線弘前青森間の複線化の問題でございますが、これにつきましては、青森弘前間のうちの弘前川部間六・三キロはすでに複線化されているわけでありますけれども川部から青森までが現在単線で残っておるという状況で、この区間複線化運輸大臣の御認可を五十四年にいただきまして工事にかかったわけでございます。  現在工事を実施いたしておりますのは、大釈迦と鶴ケ坂の間に大釈迦トンネルというのがございますが、この区間川部青森間のうちでも線路容量的に一番容量の短いところでありますので、この区間トンネル部でもあるということで手をかけたわけであります。現在工事中でありますが、この工事完成するまでにはもう少し時間がかかるかと思います。いまの見込みでは恐らく五十九年度になるのではないかと思っておりますが、まずは大釈迦トンネル一つ抜きまして、この新しいトンネル線路を切りかえまして、現在の大釈迦トンネル部は非常に地盤が悪くて保守に苦労いたしておりますので、その部分の改築をしたいということでございます。  ただ、全体の複線化につきましては、まことに残念でありますが、この数年来輸送量が減ってまいりまして、お客さんも貨物も減少しておるという傾向であります。御承知のような財政事情の中で、投資内容につきましても厳しく見直しを行いながら実施しているという状況でありまして、もう少し輸送量動向あるいは他のプロジェクトの関連等を見まして、今後この川部青森間の複線化の全体の進め方も検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  8. 関晴正

    関委員 そうしますと、新幹線の問題については、六月の開通時点においては変化がない、十一月の開通に当たっては変化がある。その変化の場合にはどういう変化があるのか、その変化があるとしても、いままでより盛岡以北住民には御迷惑をかけることはしない、青森県民にもっと利便になるものとする、こういうお考えで進めますか進めませんか、それが一つ。  その次には、いま青森川部間の複線化工事の問題で、五十九年度には何とかしたいというお答えがあったようでありますが、そのように確認してよろしいかどうかということ、先ほども申し上げましたように、実はこの間というのは、青森県都の青森市、大学のある学都の弘前市、この二つを結ぶ重要な幹線であるわけです。そして人口も五十万を超えているところなんです。先ほど客落ちが云々ということがありましたけれども、そういう単線であり、またダイヤ編成もよくないところからくる客落ちもありましょう、バスにとられているという向きもありましょう。したがって、急がないというのじゃなくて、よけいに急ぐという方向をとってもらわなければならない地点だと私は思う。幹線で、人口五十万もある地帯で、単線でのこのこ走っておるというところが全国のどこにございますか。わずか三十六キロの道のりを六十一分もかかるのですよ。こんな例が国鉄の中にありますか。そういうものを早く解消することが国鉄再建の道につながるのじゃないでしょうか。  そういう意味で、人の住んでいるところを重点的に複線化すべきなんです。人のいないところは複線化して人のいるところをおくらせるなんというのは、後先を間違っていますよ。そういう点でもう一遍きちんと、この方針について、また確かなるスピードをもってやるんだという御方針をはっきりさせていただきたい、こう思います。
  9. 坪内亨嗣

    坪内説明員 東北新幹線青森地区関連でございますが、先生おっしゃいますとおり、私ども、現在そういう考え方で鋭意検討を進めております。
  10. 半谷哲夫

    半谷説明員 先ほど、五十九年度に完成すると申し上げましたのは、大釈迦トンネル部分でございます。したがいまして、この川部青森間の全体の複線化完成時期というのは、現在時点では明確になっていない状況でございます。それは、いま先生から御指摘のありましたように、非常に重要な幹線であるということは私ども承知しているわけでありますけれども輸送量動向というものが、この線に限らずでございますけれども、なかなか見込めないという状況であります。また一方、財政的にも、投資内容というものを重点化し、最も必要とされるものからということを厳しく私ども見て投資をしているわけでございまして、決してこれでもうすべてやらないというわけでございませんけれども、しばらく様子を見させていただきまして、この複線化の時期を明らかにしていきたいと考えておるわけでございます。
  11. 関晴正

    関委員 ほかに重要なところもある、それでは一体国内で一番重要なところは、残されているところではどこなんです、五十万の人口を抱えているところで複線化がされないというところは。これ以上にまた重要度があっておくれているところがありますか、あったら教えてください。  あわせまして、ことしの複線化対策予算というのはどれだけ持っておりますか。持っている予算の使い方です、あなた方の方にある権能は。政治力のある方向で使うというのなら別です。青森県なんというのは、政治力のない方の模範でしょう。だから悪いものばかりやってくる、いいものは後からやっとくる、こんな姿なんです。新幹線盛岡まで来て、青森県の知事なんか、もう青森新幹線呼ぶのが自分の政治生命だと言って、かわいそうなぐらい走り回っている。私は、わが党の方針もありますから、これについてはローカル線を強化しろとか住民の足を守る方が先だ、こう言って、そちらの方に旗を振ってはおりません。旗は振らないけれども盛岡まで新幹線がやってくるのに複線化の仕事はいつになるのかわからない、大釈迦トンネルは五十九年度に完成だと言ったら、完成と同時にやりますということぐらいにされないのですか。青函トンネルならば何億、何百億、何千億かけておやりになっておりますよ。でき上がっても使うか使わないかということで難儀しているでしょう。そっちの方のスケジュールはなかなか運ばない。こっちの方は県民挙げて求めている要求です。しかも、だれが一体五十万以上の人口のところで、単線でのこのこしているのをじっとがまんしている国民がありますか。青森県民くらいのものじゃないでしょうか。そんなことに思いをいたしたならば、新幹線盛岡までやってくる、青森弘前間の複線化はまだわからない、そして盛岡以北はいつ新幹線が走るのかということになると、これは毛頭わからない。自民党の諸君たちが一生懸命がんばって、いろいろなことで御苦労されていることは聞いております。しかし、青森新幹線が来るなんというのは、馬の鼻先にニンジンをつけているようなかっこうじゃないのか。なかなか来ないのじゃないだろうか、こう思っていますよ。そういうようなことを見ますときに、この複線化のこと、それからダイヤ編成のこと。  もう一つダイヤ編成のことで言っておきたいことは、東北本線野辺地という駅から下北へ走る大湊線があります。朝の七時に青森を出て、約四十分で野辺地に着きます。その後四時間待たなければ次の列車が行かないのです、野辺地の駅から大湊へ行くのに。七時二十三分というのが走った後は十一時二十五分なんです。四時間ですよ。幹線において、幹線から支線に渡るときに四時間も待たせるような、四時間待たなければ汽車に乗れないようなこういうダイヤがありますか。  私は、この間むつ市長選挙がありましたので、青森から「しもきた」という急行に乗った。七時十二分です。「しもきた」という急行に乗ったから真っすぐ、一両や二両は下北に行くのだろうと思ったら、下北に行かない。野辺地というところで乗りかえですよ。そうして四時間待たなければならない。こんなばかなダイヤ、どこにありますか。何のためにダイヤ編成しているのです。お客さんのためにダイヤ編成はあるのじゃないですか。そうして、乗る人が不足になったからといって今度は廃止する、ローカル線の廃止だというところに持っていく。廃止するためにダイヤ編成しているのですか。お客さんを乗せるためにダイヤ編成しているのですか。それとも、バス会社に気がねしてダイヤ編成をわざと組んでいるのですか。このあたりが私には理解できないのです。そういうことも考えまして、新幹線盛岡まで行くときには——盛岡まではいいけれども鈴木総理のところまではいいけれども青森県民なんか歩いてこいというようなかっこう行政が行われた日にはかなわない。  この際、幸いにその名も高き国鉄総裁が来ておりますから、名は高く背は低きをもって鳴る高木さん、ひとつこの問題についてのお考えを明確にお答えしてください。
  12. 高木文雄

    高木説明員 盛岡青森との間の関係でございますけれども先ほど担当常務が申しましたように、盛岡開業は六月でございますが、これは一種の暫定開業でありまして、したがって一日に走ります本数が非常に少ないわけでございます。十一月の時点では最終的姿になりまして、大宮−盛岡間をかなり本数のものが走るようになりますので、この際に全部ダイヤ改正を行って、盛岡での乗り継ぎを工夫いたしまして、青森県の皆さんに対するサービスを、乗りかえはありますけれども、少しでも改善をすることに力を入れてまいりたいと思います。  第二の、いまの大畑線の問題、これはかねがね地域方々からも強く言われておるわけでございまして、現実にはお客さんの数が少ないということもございますけれども、一方においては、ダイヤのぐあいが悪いからお客さんが少ないのだということの御指摘を受ける。全国でも何カ所かそういうところがありますけれども大畑線については特にそういう点を前々から御指摘を受けておりますので、何とかならないか、もう少しいい方法はないかということで、これまたダイヤ改正というのはそうたびたび行われませんので、十一月時点のときに何とか研究してみてくれというふうに申しておるわけでございます。  いずれにしましてもこれは前々から、前の例の特定地方交通線問題が起きました当時から、地元からは非常に熱心に、おまえの方はダイヤのつくり方がまずいのだと言われていることを私自身もよく承知をいたしておりますので、また改めてよく目を向けていきたいと思います。  それから、奥羽線の方の問題につきましては、いまから三年ほど前に、いまのトンネル改良工事を行おうということにいたしました当時におきましては、いま御指摘ありますように、かなり人口が集まっている地域であるにかかわらず単線で残っているということでございますので、第一次的にはトンネル改良といいますか、もう一本つくり直しをいたしますが、それに続いて何か考えるべきではないかということで、私ども全国の中でもかなり優先度をもって考えてみるべき線区であろうかと考えておったのでございますが、御存じのように最近に至りまして、どうも借入金負担が大分大きなウエートを占めて、私ども経営全体にのしかかってまいりました関係もありまして、安全にかかわる工事でございますとか老朽車両の取りかえといった問題でありますとか、あるいは機械化等によって人手を軽減するための工事でありますとかということについては手を抜けませんけれども、その他の点については多少とも縮小ぎみに取り組まざるを得ないということであります。  いまの奥羽線の問題も、先ほど御説明申しましたような事情で、かねがね問題線区であるという認識は持っておるわけでございますが、いまこの時点で、いつごろどういうふうにして、どういうテンポでトンネル開通後のさらに複線化を進めていくかということをお答えできるだけの用意を持ってないわけでございます。  現在、全国複線のために使っております投資額はわずかに百億ちょっと、二百億よりは少ないというところでありまして、これだけの延長のところでそれだけの金でございますし、複線というのはキロ当たり大体十億円をちょっと超える投資になるものでございますから、現在のようにややお客様の減少ぎみ時点においては、線路容量がいっぱいになってそのために増発ができないという状態からは少し様子が変わってまいりましたものですから、別に奥羽線ということではなしに、いま全般として複線のための投資抑制ぎみにいたしておりますので、そこで歯切れの悪いお答えを申さざるを得ないということになっておるわけでございます。  ただ、先ほど来しきりと、そういう人口の多いところで単線のまま残っておるところはそんなにはないだろうという御指摘がございましたが、それはそのとおりでございます。そういう意味では、複線のために金を使うことができるような雰囲気でありますれば、その中ではかなり優先度が高いと考えておりますけれども複線化の金額の枠そのものを、これはやや意識的でございますが、抑え込んでおるものでございますから、はなはだ御迷惑をおかけし、かつ余り明確な御返事を申し上げられないのはそういう事情によるものでございます。
  13. 関晴正

    関委員 何年度までにやるということははっきり言えない、こう言っておりますけれども、少なくともトンネルは五十九年度に完成できるというならば、五十九年度中に何とかかっこうをつけて複線の実を上げるように全力を挙げていただきたい。そうしてまた、言われているように、大体百六十億くらいかかるであろう、毎年四億では四十年じゃないか。そんなのんきなことでどうするんだ。じゃあ急いでやったらどうなるか、六十億かけて三年じゃないか、こういう計算が出てきます。そういう計算どおりにやってもらえるならば、三年以内に完成することもできるであろう。しかし、いままで四億しか出さない。その前は数千万ですからね。数千万から四億まできた。今度四億から六十億にして三年といったら十五倍にもなるものですから、パーセンテージからいけばなかなか高いことになるでしょう。しかし、計画を立てて、五十万を超える人口政治中心地、学問の中心地、この間をつなぐ大事な線路が、三十六キロ六十一分で走っているなんという姿を一刻も早く解消しなければならない。そういう点に留意されるならば、やろうとさえ思えばやれるはずですから、どうぞひとつ国鉄総裁、至るところからいじめられて、いろいろ頭も少し疲れているでしょうけれども、こちらの方については、大事な遠隔地を輸送してくれる大量輸送機関というのは国鉄なんです。これにまさるいい機関はないのですから、私ども国鉄を守る側でありますから、どうぞその辺を受けまして当たっていただきたい、希望を申し上げておきます。  まだまだ論じたいけれども、次回にしますので、国鉄関係者の方は以上で終わりますから、どうぞ。  次に、むつ小川原港の問題についてお尋ねしたい、こう思います。  むつ小川原港というのは、一体港であるのか港でないのかということから論じなければならなくなるわけでありますが、まず第一、むつ小川原港というのは港になっているのですか、なっていないのですか。そうして、いつ完成するのか、港と言えるような港になるのですか、お答えいただきます。
  14. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 お答え申し上げます。  むつ小川原港はりっぱな港湾でございまして、現在、六十年目標港湾計画を策定しておりまして、その計画に従って整備を進めておる段階でございます。
  15. 関晴正

    関委員 六十年の段階完成するとすれば、完成される姿はどんな姿ですか。
  16. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 目標年次におきましては、取り扱い貨物量を四千五百四十万トンと想定をいたしておりまして、そのために必要な施設といたしましては、五万トン級の水深十三メートルの岸壁を一バース、それから水深十メートルの一万五千トン級の岸壁を九バース、それから水深七メートル五十の五千トン級の岸壁を四バース埠頭用地を六十八万平方メートル、こういう形で鷹架地区整備いたします。それから、さらに新納屋地区におきまして、二千トン級の岸壁を七バース埠頭整備をいたす計画でございまして、これらの埠頭施設と泊地の静穏を図るための防波堤外港地区で三千八百七十メートル、北防波堤を四百メートル、南防波堤を四百五十メートル、内防波堤を六百二十メートルつくりまして、これを被覆する予定でございます。
  17. 関晴正

    関委員 昭和六十年度までに、いま言われたような港湾計画完成するのですか。それで、それにはどれだけの金がかかる予定になっておりますか。
  18. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 ただいま申し上げました計画は、港湾計画として現在決定をいたしております目標年次を申し上げましたので、現在の施行の状況から申しますと、完成時点は若干これよりも遅くなるかと思います。これに要します費用は、総事業費全部ひっくるめまして千七百三十億円でございます。これは、用地造成等もすべて含めた総事業費でございます。
  19. 関晴正

    関委員 現在の進捗度は何%です。
  20. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 現在までに投資をいたしました額は、公共事業で約百二十億円でございます。八%ほどになろうかと思います。
  21. 関晴正

    関委員 こんな状態昭和六十年度に完成を期待することが可能ですか。多少おくれるとこう言っているのですが、多少とはどのくらいのことです。わからなければわからないでいいです。お答えだけいただきます。
  22. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 先ほども申し上げましたように、現在の投資状況では計画目標年次には完成はできないかと思いますが、恐らくこの計画の執行は、その当時の経済情勢等を勘案して行うものでございますので、今後の経済情勢等を見ないと何とも確実なことは申し上げられませんけれども、あるいは五年とか五年以上のおくれになろうかと思います。
  23. 関晴正

    関委員 お聞きのとおりだと思うのです。昭和六十年に完成する、こう言っていながら、現在までの進捗度はと言うと、金でいきますというと八%もないところです。あと大急ぎで金を投じてつくってもらえるならば、これは幾らか早まるとしても、そう見ても五年ぐらいはおくれるであろうというのは、これは港湾局長のお話ですから、港湾局長で五年ですから、実際はもっとおくれるだろう。これは常識ですよね。  そこで、この問題についてがきょうの論の本質でありません。問題は、このむつ小川原開発の地帯に、言うなれば一日二百万バレルの石油精製というアドバルーンを上げて、あの地域に三十万の都市をつくるんだと言うて、そこにおる農民も、そこにおる漁民ものけのけといって、みんな土地売りと漁業補償を与えられて去らされたわけです。そうして、石油精製でも石油化学でもそこに来るのかと思って期待したんだが、何も来ない。そうして、つじつま合わせと言えば言葉は悪いけれども、余りにも、むつ小川原開発株式会社の抱える借金が千億も超すものだからかわいそうだというので考えたのが備蓄の基地でしょう。石油公団が備蓄の基地にするというので、一部土地の買い上げをしてくれて幾らか穴埋めになったけれども、間に合うものじゃありません。そういうことで、今日五百六十万キロリットルの備蓄基地ということで、いま土地造成とタンクづくりが行われております。このつくられたタンクに油が入るんだろうか、入らないんだろうかというのがまた関心事です。タンクはつくったけれども空タンクに終わるんじゃないだろうか、タンク造成業者がもうかればそれでいいというようなことになってしまうんじゃないだろうか、こう見られているんです。  そこで、そうもしておれまいということで急ぎに急いで、何とかオイルインをしなければならない。そのオイルインをするためにどうしたらいいか。港湾ができなければオイルインはできない。しかし、港湾ができなくてもオイルインをさせる方法はないだろうかというところで考えられたのがこの一点係留ブイバースでしょう。青森県の知事が備蓄会社の要請を受けまして、一点係留ブイバースというものを許可した。  私は、二年前、このむつ小川原港の港湾審議会における審議のあり方について、当時の議事録を出せと迫った。議事録は出せないと言った。そうこうしているうちに解散になってしまった。解散になって二年近くになって、このむつ小川原港の一点係留ブイバースにかかわる本格的な論戦をすることのないまま今日まで来てしまった。そうしているうちに、一方、県はこれを許可するということになってしまいました。県が許可するということは、後ろ盾に運輸省があるということです。ちっぽけな青森県の知事が、あの港に一点係留ブイバースをつくることにおいてのよしあしの検討能力があるとは思いません。したがって、一点係留ブイバースをそこに利用してよろしい、設置してよろしい、こういうサゼスチョンを当然運輸省がしたでありましょう。運輸省が一点係留ブイバースをよしとした根拠並びにこれが運営に当たっての、操業に当たっての予想される諸災害、そういうような対策あるいは予想される事故、そういうようなものについての予防対策、そうしてこれが利用される利用日数、そういうようなものについてどのようにお諮りをし、どのように結論づけておられるのか、伺っておきたいと思います。
  24. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 最初に、先ほど六十年と申し上げましたのは、実はおおむね六十三年でございます。ちょっと訂正をさせていただきます。  ただいまの一点係留ブイバースについてでございますが、この一点係留ブイバースの設置をいたしますための専用の許可が必要でございますが、これを港湾管理者であります青森県が許可をいたしました。この許可をいたします場合には、港湾管理者はいろいろ検討をするわけでございますけれども、まず第一点として、このブイバースをつくり、さらにそのパイプラインを陸上に上げてまいりますことが港湾の利用あるいは保全を著しく障害することがないかどうか、これをまず第一点として検討をいたします。そして、港湾計画の遂行を著しく阻害するものでないということを確認した上で許可をすることにされたわけでございます。  それから、またさらに、港湾法の五十六条に「港湾施設に関する技術上の基準」というのがございますが、この技術上の基準に適合することも港湾管理者は確認をされる必要がございますけれども、これも確認をされた上でことしの二月二十五日に許可をされたと報告を受けております。  それで、私ども運輸省といたしましては、この許可そのものについては特段の意思表示等をしてはおりません。しかし、ブイバースの問題は、すでに決定をされております港湾計画の中にもブイバース予定をされておりまして、この点につきましては、港湾審議会あるいは地方の審議会の審議を経ておりまして、適当であるという御判断をいただいております。その御判断によって私どもも適当であろうというふうに考えておるわけでございますが、現在この種のブイバースは世界各地でかなり多数利用されておる実績もございますし、十分に安全な使用にたえるものというふうに理解をいたしておるわけでございます。  それから、このブイバースの稼働率についてどのように想定をしたかという御質問でございますが、これは五十二年にむつ小川原港の港湾計画を定めましたときに、その港湾計画の資料として提出されましたブイバースの稼働可能率といたしましては、このバースに着標をいたしますための自然現象の限界を決めております。最大風速が毎秒十五メーター以下、それから有義波高という形での最大波高でございますが、それが一・五メーター以下、それから視程が一・八キロメーター、こういった状態でないと着標はできないという前提を置きまして、これをやっております。それから、さらにまた、荷役につきましては、平均最大風速が十五メーター毎秒、それから最大波高が先ほどの着標限界と同じく一・五メーター、緊急離脱限界は、平均最大風速が二十メーター毎秒、最大波高が二メーターに達したとき、こういった条件も定めておりますが、こういった条件を当てはめて稼働率を算定された資料がついております。これによりますと、入港可能の日数は一年間に約二百九十日、したがいまして、可能率という形で出しますと七九%強の可能率があるということで計画を御審議いただいて、御了承をいただいたわけでございます。  それから一方、ことしの三月に、むつ小川原の石油備蓄株式会社が施設の管理運営計画というものを発表いたしておりますが、この場合の入港着標時の自然条件も、ただいま御説明申し上げました計画の資料として採用されておりました数字と同じ、風速十五メーター毎秒、波高下五メーター以下、視程が一・八キロメーター以上という数字をとっておりまして、これによります着標条件というのは、港湾計画の策定時と大体同程度にとっておるようでございます。  なお、こういった条件をとって同社が予想をしております稼働の当初の目標値は、計画で採用しましたよりも厳しいと申しますか、稼働率を低目に設定して運用する考えでおるというふうに聞いておるわけでございます。
  25. 関晴正

    関委員 稼働日数の問題で、ただいまのお答えでは二百九十日というのが出たのですが、これはどこの資料でございましょうか。着桟率と係船率とは同じにならないだろうと思うのです。そういう意味でいきますというと、さきのあなたの方の調査では二百六十日と出され、そうして実際の係船の率から見ますというと百八十三日ぐらいになるであろう、こうあなたの方で出している資料にあるわけなんです。それをいつの間に二百九十日で七九%というようなことで物を見るようにしたのですか。どこでそういうふうにしたのですか。
  26. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 ただいま申し上げました二百九十日、七九%という数字は、港湾審議会の計画を審議いたしますときの参考資料に載せられておる数字でございます。
  27. 関晴正

    関委員 五十二年運輸省が作成した原油ブイバース調査報告書では、何と書いているか。「「年間を通じて平穏な日が少く、荒天時にはうねりと波浪のためブイ本体が相当に動揺する」とのべ、この施設に着桟可能な日数を年間二六〇日と算定し、又係留中荒天の影響をうけない日数を一八三日としている。つまり年間約半分しか着桟出来ない。いいかえれば五〇%の危険性がある事を示している。」そういうような問題分析をしているのに、港湾審議会に出されている資料というものは七九%というのは、それは余りひどいのじゃないですか。そういう点で物を見ますときに、欠けているものがあると思うのです。何が欠けていると思っていますか。
  28. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 ただいま先生御指摘になりました数字の調査報告書を現在手元に持っておりませんが、先ほど私が申し上げました数字、これは港湾審議会の席上に公式に配付された資料に載せております数字でございますので、それを御説明したわけでございます。
  29. 関晴正

    関委員 その数字の妥当性あるいはその数字のよって来るもの、それはまた後でもお知らせをいただきたいと思います。  そこで、私どもの問題にしたいのは、この一点係留ブイバースが世界各国でも使われている、こういうお話です。なるほど使われているでしょう。また、わが国でも沖縄にこの例があります。十年前に設置されましてりっぱに運営されている。私も見てまいりました。しかし、いずれもそれらの地点にはそれぞれの潮流、それから自然現象等に対する条件があります。むつ小川原港の沖合いにおける太平洋のど真ん中で、囲いもなく、入り江でもなく、吹き流しっ放しの太平洋に設置されるという例はないのです。それだけにこの荒海にこういうような施設を置くということについては、よほど検討されなければならない。この場所は大変深いところです。波も荒いところです。そればかりじゃありません。ここで一番問題にしなければならないのは、うねりです。うねりの調査とうねりの研究というものはどの辺まで至っているものですか。
  30. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 世界各地でこの形式が採用されておると先ほど御説明を申し上げたわけでございますが、先生も御指摘がありましたように、日本の場合には太平洋岸ではこれが初めてかと存じます。しかし、いわゆる外海、湾とかそういう遮蔽のないところで使っておる例としましては、日本海には例があるわけでございますし、全世界このタイプが二百数十カ所利用されておるわけでありますが、このうちの相当部分は外洋に面した部分である、これは私ども直接見てはおりませんけれども、そういうふうにデータでは承知をしておるわけでございまして、このうち北海にありますものなどはきわめて激しい気象条件にさらされておる。そして、水深等につきましても非常に深いところで、過酷な条件のもとで安全に利用されておるというふうに承知をいたしております。  日本海と太平洋との違いといたしまして、先生御指摘のうねりの問題があるわけでございますが、うねりにつきましては、運輸省では大体全国各地に拠点を設けてその観測をいたしておりますが、この地区につきましては、鷹架の観測所におきまして四十六年から五十年までの間、その波向き、波高、周期等の観測を実際にやっております。そのデータに基づきまして、さらにその太平洋全体のうねりの予測といいますか、そういうものをあわせてこの計画には利用しておると考えております。
  31. 関晴正

    関委員 とにかく、太平洋のうねりというものはまことに恐ろしいものだ。これが風速に比例したり、そういうようなものであればわりあいに把握も容易である。必ずしもそれに比例しないでうねりが発生してくるものだから、間々船体が真っ二つに割れる例があらわれているわけなんです。しかも、太平洋のむつ小川原の沖合いというものは、名だたる親潮、黒潮、そして津軽海峡から来る暖流、三つの潮がぶつかるところなんです。きわめて霧の多いところです。したがって、また遭難の事件数も記録的に多いでしょう。遭難の状況はどのようになっておりますか。これは海上保安庁の方から聞きたいと思うのですが、そういう意味において非常に遭難の多い個所であるということと、霧の発生率の多いところであるということと、あわせまして、うねりの強いところであるということを見るときに、ここで操業することの可否というものは相当に吟味されなければならないのです。そういう意味において、うねりの調査があるならば、調査資料を後でもよろしゅうございますからお届けいただきますが、海難事故の例はどのくらいになっておりますか。
  32. 吉野穆彦

    ○吉野説明員 昨年一年間に、この付近で救助を必要としたような海難は五十四隻発生しております。
  33. 関晴正

    関委員 ただいまの御報告にもありましたように、海難事故の大変に多いところなんです。こういうようなところに、そういううねりも強いところに、そして他の地域においてよしとされておるからここでもいいだろうというのは、私は甘いと思うのです。北海の荒海はこれ以上だと言うけれども、何を根拠としてこれ以上だとおっしゃったのですか。北海の荒海のうねりは太平洋の荒海よりも強いというデータがあってのことですか。
  34. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 北海と太平洋の場合の比較、これはいろいろ諸元にわたって比較をしないと、どっちとも申し上げられないと思いますけれども、北海の波というのは、波高に関しては世界的にかなり大きなものであるというふうに承知をいたしております。うねりの問題でありますから、波高のみならず波長とか総エネルギーの問題等がこの施設計画には考慮されなければいけないわけでございますが、私ども現在まで二百数十の使用例があり、それがかなりシビアな自然条件のところで安全に使われておるということでございますから、もちろんこのブイそのものの設計、これをアンカーしますアンカー施設の設計等については、十分なうねりに対する対策を考える必要はございますけれども、そういう十分な対策を講ずれば、この施設そのものは十分使用にたえるというふうに思っております。
  35. 関晴正

    関委員 この一点係留ブイバースは、当初は陸奥湾の中に置くという計画でありました。しかし、陸奥湾の中にこんなものを置かれた日には、油漏れがあったときに青森県名産のホタテがどうなるか、ホタテ漁業者の反対でここにというわけにはいかなくなって移ることになった。今度移る先はどこかというときに、いまの太平洋になったわけです。しかし、この太平洋だって、ここは日本における有数な漁場です。先ほど申し上げたように暖流あり寒流あり、そして日本海から来る流れもありで、まさに魚の宝庫なんです。この魚の宝庫である地域にこんなものが据えつけられて、これを利用して一朝事あった場合にどうなるかという心配です。船体が割れたとかあるいは船体が動きがとれなくなったとか、これはそれぞれ天気予報あるいは天候上についての観測もよくして、好天のときにオイルインをするから心配するなと言うでありましょう。だれでも初めはそうですよ。いつだって事故がないものと思ってみんなやるけれども、事故は起こるのです。汽車だって、ぶつからないと思ったって衝突するし、落ちないと思った飛行機が落ちてくるし、割れないと思った船が割れるし、ぶつからないと思った船がぶつかる。ましてぶつかる可能性の多い場所です。衝突の事故の多い場所です。そして、うねりの強いところです。操業中にそうしたうねりなり、一天にわかにかき曇った場合にどうして避難するだろうか。あんな大きなずうたいのものが、自力操船ができないままでどうなるだろうか。引き船にしたって押し船にしたって、そういうときになるとにっちもさっちも動きがとれない。手も足も出ないでしょう。オイルフェンスでちゃんとやりますなんて、ちゃんとやれるようなオイルフェンスの状態のときには何の心配もないのです。オイルが漏れるようなときには荒天です。コウテンのコウは荒いですよ。コウテンはよい天と荒い天と二つあるから間違わないように聞いてください。そういうときにはオイルフェンスなんてきかないのです。三十センチのオイルフェンスは、波はみんな乗り越えていきますよ。乗り越えないようなオイルフェンスにするといったら大変なものでしょう。何メートルかのオイルフェンスを使わなければならない。それは開発もされていないし、考えてもいないでしょう。事故のないときに起きた事故を想定してのことと、実際に起きた事故に対するこれまでの対策の例は幾多あります。図上の計画と実際がそぐわないという例は幾多もある。  そういうことを見ますときに、アモコ・カジス号の例ではないが、ここで真っ黒な原油が流れて、そして三陸沖の海岸が、東北地方の三県一帯にわたって汚れたならばどうなるのだろうか。漁場壊滅ですよ。そうした恐ろしい一つの事態も起こり得るであろうということを思いますときに、これは慎重の上にも慎重を期さなければならない問題だ、こう思うのです。  その上、青森県当局は、五十八年にオイルインする計画のもとでゴーサインをした。そのゴーサインをした時点において、あなた方の計画の港はできていますか。案内船や引き船や押し船、あるいはオイルフェンスの展張船なんというものは、この港の中に待機している状態でなければならないでしょう。待機の時点において、それもないままにオイルインだけさせるなんということが考えられますか。お答えいただきます。
  36. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 現在考えられておりますオイルインの時期、昭和五十八年の時点で、引き船等の着桟のための補助をするいろいろな船、それからオイルフェンス等のそういった器材を格納する場所、これらにつきましては現在最終的には決まっておりませんが、早急にその位置を決めたいと思っております。現在その可能な場所といたしましては、工事のための作業船を入れるための船だまりがございまして、この船だまりを中心にそういった作業用の船の常駐場所を考えてまいりたいと思っております。
  37. 関晴正

    関委員 とにかく、この問題については非常に疑問点が多いということ、また、検討しなければならない内容が相当にあるということ。したがって、港湾審議会において安易に通したであろうけれども——これは前の鮫島港湾局長のときであったと思います。あっという間にやられちゃって、私は「さめ悪いな」と言ったのです。あのとき忘れることのできない悪い言葉も使いました。それほどに私は、この問題については関心も持っておる。しかしながら、強引にやられているということを見ますときに、やはり容認するわけにはいかないと思う。  そういう意味で、先ほどの御答弁の中には、緊急の際はどうするのだ、自力操船以外に道がないという場合、一朝事ある場合、この大きなずうたいをしてどうなるのです。一朝事ある場合の想定がちゃんとしないと、よろしいと言うわけにはいかないでしょう。これについてのお答えをひとついただきます。
  38. 吉村眞事

    吉村(眞)政府委員 先ほど、着標の限界を風速十五メートル、波高一・五メートル、それから離脱の限界といいますか、それ以上になったら直ちに離脱するという限度を、風速二十メートル、波高二メートルというふうに御説明申し上げましたが、この程度の波でありますと、大きな船でございますからまだ十分安全に離脱し、避難ができるところを選んでおるわけでございます。  そういうことで、稼働率を犠牲にいたしましても安全なときのみに操業をするという考え方を貫いておるわけでございますが、先ほどもちょっと触れましたように、現在会社の方で発表しております運用の考え方によりますと、これよりもさらに稼働率を厳しい考え方で臨むつもりであるというふうに聞いておりますので、先生おっしゃるような、非常に危険な場合に至る前に船は離脱をするというふうに考えておるわけでございます。
  39. 関晴正

    関委員 稼働日数やあるいは一年を通じてどれだけの係留が可能であるかということについては、なおまた吟味をしなければならないところにあると思います。だがしかし、一般的に、先ほどのお話の中にも、新潟は冬は使わない、日本海の場合です、そういうお話もございました。日本海においても使用不可能とする日数が相当に多い。ましてや太平洋のことです。そうして、これを実際に使うのはやはり船員、海員です。これらの方々が、そんな危ないところに行くわけにはいかないということになると、これはボイコットされてくるでありましょう。おいでおいでと言ったって、そんな危ないところには行けませんよ、こうなるでしょう。それから、先ほど申し上げたように、緊急避難の方法についてもいろいろ問題がある。さらに、この問題については、あなた方が発表している内容にも、いろいろな点について心配点がたくさんあるわけなんです。それでもしゃにむにこれを認めて進めていこうというところに、何が何でも石油備蓄の方に手伝いしなければならないという一つの任務があるのでしょう。  私は、こんなことで急いでやって失敗して、その損害、被害が全部漁民に来る、漁民に来るということを一番恐れるわけです。ですから、その向きに対する措置についても、やはりきちんと、大丈夫だという判断がない限りはこれはとめるべきではないだろうかと思う。そういう点について運輸大臣、この一点係留ブイバースは太平洋のど真ん中、防波堤の中に初めはつくるつもりであったけれども防波堤の外にしてしまって、何らの囲いもない吹きさらしのところに置かれている。こういう一点係留ブイバースを、安上がりの港湾づくりのために仕方がないのだといって進むような姿勢、この方向というものはよほど気をつけなければならない、吟味の上に吟味を重ねる必要があるだろう、私はこう思うわけです。現実に青森諸君たち心配をして、こんなむちゃな行政をしゃにむに押してくるならば行政訴訟までも起こさなければならない、こう言うて考えている向きの人々もあるわけです。  そういう意味で、この一点係留ブイバースの許可に当たっては、もう県が許可をしていることであるけれども、今後この問題については国としても重大な関心を持って、指導すべきものは指導をし、また講ずべき対策も講ずる、そういう責任があるのじゃないだろうか、こうも思いますので、この際運輸大臣からも伺って、なおまた、この問題については次の委員会でさらに申し上げたいとも思いますので、この際、きょうの締めくくりの意味において、十分お聞きになった運輸大臣のことでありましょうから、ひとつお考えの点をいただきたいと思います。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕
  40. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 関委員のただいままでの、むつ小川原の一点係留ブイバースについての御指摘、非常に拝聴すべき多くの問題を提示されたと私は思います。  もちろん、行政的に見れば一応適法であり、かつ、これを推進することに問題はないということでございますけれども、われわれもまだその現場を見ておりませんし、特に太平洋のうねり、また海流のぶつかり合う地点であるという御指摘は、現地をよく知っていらっしゃる方でなければわからない点ではないかと思うのでございます。  さらにまた、もしも油が漏れたということになりますと、御指摘のような大災害を起こす可能性もあるわけでございまして、私は、県の申請そのものは適法であると思いますが、また、われわれはそれを承認する方向でございますけれども、なおこの実施につきましては、運輸省の担当官を現地にも出し、また種々の技術的な面についても十分検討した上で、慎重に推進を図るというふうに私は現時点考えておるところでございます。
  41. 関晴正

    関委員 参考人の方に一つお尋ねを申し上げたいと思います。  備蓄タンクがいまつくられておって、備蓄の量をあの地域においては五百六十万キロリットルとしてやっておるわけなんですが、現地においては、さらに備蓄の量をふやしてくれなんというような運動がまた起こっているわけなんです。これは、あの地域、石油化学や石油精製というような予定したものがほとんど見込みがないものだから、村に交付される金がまたありがたいものだから、何と驚くなかれ、あの村に十六億も交付金が出てくるものですから、一番貧乏な村だったけれども、いまや町村の中では一番歳入の多い村になってしまいました。ひどいものです。その味をしめたものだから、もっと備蓄の量をふやしてくれといって運動が起こっております。私のところにも来ましたが、私は、そんなことであの大事な地域をそうしてしまうことについては問題がありますよ、こう申し上げておいたところですが、今後ともあの地域に備蓄の量をさらにふやすという計画があるのかどうか。  あわせて、今日のわが国の備蓄の量は、量においては変わっておらないけれども、消費の量が変わっておるので日数の分はふえている、こう聞いております。九十日から百十日に、百十日からさらに百二十日になった、こう聞いております。これもまた省エネの結果でありましょう。量はふえず備蓄の日数がふえるということについても考えなければならない。また考慮すべき問題が一つあるかと思います。  あわせまして、あそこのところは重質油のタンクばかりになるだろう。あれは、重質油に対する対策としてあるいは中間分留のプラントを導入しようじゃないかというような話が出ておるのですが、私は、これはとんでもない、県民をまた愚弄する、要らない期待をかけさせるものだ、こうも見ておるわけで、石油精製の地域においては中間留分の分析のプラントを入れろというのはあるけれども、ああいうタンク場に何も来ないもんだから、さらにそういうプラントを導入したらよいだろうという話があるのだけれども、こんなことは全然考えられないことだろう、こう思っておりますので、その点についてお答えをいただければと思います。
  42. 松村克之

    松村参考人 お答えいたします。  むつ小川原のプロジェクトにつきまして、先生からいま御指摘ございましたように、さらに増量をしてほしいという地元の御希望があるという点については、私どもも伺っておるわけでございます。  現在、石油備蓄基地の立地につきましては、おかげさまで非常に順調に推移しておりまして、現在までに六カ所の備蓄基地について立地決定を見ているわけでございますが、それ以外の基地の立地につきましては、今後さらに全国的な観点から検討すべきであるというふうに考えているわけでございますので、当地区についてのいまの件につきましては、ほかの地区のプロジェクトとの関連も見ながら、さらに検討を進めていきたいというふうに考えております。  第二番目の御質問でございました重質油対策の件でございますが、私ども石油公団といたしましては、現在のところ、この重質油対策というものについて直接は関与していないわけでございますが、御質問でございますので若干申し上げますと、重質油対策と申しますのは、今後の石油政策上非常に重要な問題であるとも思われるわけでございまして、通産省が主体となって、今後重質油についてどういうふうに考えていくかということでフィージビリティースタディーを実施するのではないかというふうに伺っておるわけでございます。
  43. 関晴正

    関委員 いまの重質油の方についてのお答えは担当者じゃないということですから、これはまた改めてそちらの方に向けたいと思います。  質問を終わります。
  44. 宮崎茂一

    ○宮崎委員長代理 吉原米治君。
  45. 吉原米治

    ○吉原委員 同僚議員、大幅に時間を使ってもらいましたので、私はあと三十分余りしかございません。したがって、きょうは日本航空機製造株式会社の問題を集中的にお尋ねをしたいわけでございます。その前段に、佐世保重工の火災事故についてもお尋ねしたかったわけでございますが、残念ながら時間がございませんので、船舶局長お見えになっていらっしゃれば、御苦労さんでございましたが、次回に質問をずらさせていただきますので、お引き取り願って結構でございます。  そこで、私はきょう、主として日航製の廃止問題につきまして質問をさしていただきたいと思います。  昨年末、この会社の廃止、民間移管が閣議了解をされたやに伺っております。特にYS11機がいま世界で百六十機は使用されておる、そういう現状であるにもかかわらず、日航製が従来やってまいりましたプロダクトサポート、こういった業務を民間に移管するというようなことは、まさに言語道断な話じゃないか。今日まで国家的なプロジェクトとしてYS11機について研究開発をされて、いま現にYS11機はまだ百六十機も飛んでおる、そういう現状でなぜこれを解散をして、廃止をして民間移管をしなければならぬのか。私は、次の諸点からして民間移管は不適当だと思います。  その一つは、YS11機は就航以来十七年を経過しておりまして、老朽化対策はもちろんのこと、そのプロダクトサポート体制はより万全な体制をしいていかなければならぬ現状であるではないか。二つ目は、航空機・機械工業審議会、ここの答申によりますと、民間移管の理由として赤字が指摘されている。つまり、赤字を理由に国家プロジェクトを一体放棄していいのかどうだろうか、この問題についていささか疑問に思っておるわけでございます。  この点、今後YS11機のフライトの安全性というものを一体どのように確保されていこうとしておるのか、まず最初に運輸省にお尋ねしたい。
  46. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 お答え申し上げます。  YS11型機は、昭和三十九年に型式証明を取得いたしました航空機でございまして、現在就航しておりますボーイング727などと大体同世代の航空機でございます。  現在YS11型機は、御指摘のとおり全世界で百六十機が就航いたしておりますが、機材故障による異常運航の発生状況等を見ましても、千回の出発回数当たり一回未満というような数値になっておりまして、これはほかの機種に比べても遜色がないわけでございます。したがって、今後とも適切な点検整備を実施してまいります限り、機体の安全性については問題ないと考えておりますが、先生御指摘のとおり、現実に十七年経過した航空機であり、さらに毎年、一年一年と年を経ていくわけでございますので、航空機の経年化対策あるいは御指摘のプロダクトサポート体制というようなものをしっかりしていくことが大事でございまして、御指摘の昨年の民間移管の決定に際しましても、運輸省といたしましては、この継続的な安全運航に必要な技術支援体制の確保という、いわゆるプロダクトサポート体制の万全を期するということが前提になるべきであるということを各方面に強く要請をいたしまして、通産省におかれましても、その点につきましては十分御認識をいただいておるというふうに考えておるところでございます。
  47. 吉原米治

    ○吉原委員 運輸省としては、安全性の問題は決して無視はなさらぬ、むしろ安全第一、そういう方針であるのは私もよく承知をしております。  しかしながら、民間移管に伴ってより安全体制が強化されるというふうには実は思ってないわけでございまして、むしろ民間移管に伴って、当然移管される民間会社は営利を追求する会社でございますから、もともとこのプロダクトサポート業務というのは不採算業務だ、採算のとれない仕事だというふうに理解をすべきじゃないかと思いますし、今日までもいろいろ閣議におきましても、民間移行の可否について検討がなされてきておりますが、いずれも過去の閣議了解あるいは自由民主党の行財政調査会、あるいは五十二年の衆議院の予算委員会、また四十八年の商工委員会での当時の中曽根通産大臣の発言、こういう点をずっと見ておりましても、民間移管は不可能だ、したがって存続すべきだ、特にこの五十一年の自由民主党行財政調査会ではそういう結論を出していらっしゃるようでございますが、なぜそういう過去の審議の経過を無視して、昨年末に、民間移管が適当だ、こういう結論を出されたのでございますか。その点をもう一度航空局長お答え願いたい。
  48. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 ただいま先生御指摘のところにつきましては、民間移管を行うに当たって、主として本件を担当してまいりました通産省からまずお答えさせていただきたいと考えております。  日本航空機製造株式会社につきましては、先生御指摘のとおり、YSを製造いたしまして以降、今日まで百六十機余が世界に飛んでおるという現状にございます。しかしながら、昭和三十四年に本会社が設立されて以来百八十機を生産するに至ります間に、年々赤字が累積をしてまいりまして、昭和四十七年度の段階で、当時の金で約三百六十億円の赤字が見込まれたわけでございます。これに対して通産省の方で財政当局と十分相談をし、また航空機・機械工業審議会において御審議を願ったところに従いまして、結局、これ以上生産を続けるということはますます赤字を拡大するという前提に立ちまして、昭和四十八年度限りで生産を打ち切りました。その後、日本航空機製造はいわばこれに対するアフターサービスに特化させるということにいたしまして今日に至っておるわけでございます。  そのとき、同時に、昭和五十七年度未、つまり昭和四十八年度から十年間先を見越した十カ年計画をつくりましてその収支予想を立てましたときに、結局、現在の資本金の規模七十八億円に累積赤字の規模を持っていくというところに目標を置きまして、国、民間合わせて約二百数十億の赤字の対策補助金を四年間にわたって投入をいたして今日に参ったわけでございます。したがって、いわば十カ年計画の最終年度を近々に控えまして、私どもとして、この日本航空機製造株式会社を将来どのように考えるべきかという点につきまして、まず一昨年、航空機・機械工業審議会におきまして今後のあり方を検討してもらいました。そこで、日本航空機製造株式会社の業務の民間移行を検討すべきであるという答申を得、またもう一度、昨年同様の航空機・機械工業審議会におきまして、そうであるとすればどのような手順で、どのようなことに留意して民間に移行すべきかということをさらに御議論を願って、その結果に基づき、財政当局あるいは行政管理庁、そういったところとも協議をいたしまして、昨年末の閣議決定に至ったわけでございます。  その間、先生御指摘のように、YS11の安全運航問題は最大の問題の一つでございまして、審議会の審議におきましても運輸省御当局から非常に詳細に、仮にYS11の業務を民間に移管するにしても、これこれしかじかの点について十分注意すべきである、たとえば製造業者責任あるいは部品の供給体制あるいはエアラインに対する技術支援体制、そういった点について十分留意をすべきであるという御指摘を審議会においてもいただき、また行政庁の間におきましても、私どもに十分そういう点に留意して本件を処理するように御指摘をいただいておりまして、現在私どもといたしましては、それらの点に十分留意をしながら、民間の機体メーカーと日航製との間の話を進めさせているところでございます。  なお、最終的には、ある程度の方向が出ましたところで、いずれ個別ケースとして安全審査当局の御審査を受けなければならない、かように考えております。  安全運航面についてはそのような配慮をしつつ、しかしながら、昭和五十八年度以降の本会社の見通しを出しました場合に、本会社が年々経常的に約三億から四億円の赤字が出ざるを得ない体質にある。また一方で、YXと申しておりましたが……(吉原委員「簡単に」と呼ぶ)どうも済みません。767の開発業務に日航製の職員を半分ほど出向させて当たっておるわけでございますけれども、この開発がことしの七月末で終わる。そういたしますと、この開発要員を日航製に戻さねばならない。そのようなことを考えますと、赤字は私どもの見通しでも、年々七億ないし八億生じてくる。一方、わが国は、航空機開発について新しい機体ないしエンジンの開発に予算をつぎ込んでいく必要がある。かような観点から考えて、この際、業務として、まずその属性として民間においても行い得るかどうかを検討し、その技術的な支援を行い得るのであれば、臨時行政調査会その他においても、官業の民業への移行ということが大きな柱としてうたわれております現在、私どもとして、この業務は民間に移管して差し支えないものである、かように判断をした次第でございます。
  49. 吉原米治

    ○吉原委員 坂本課長は、私の質問以外のことまでも御答弁いただいておるわけでございますが、私がいま前段で、民間に移管するのは不適当だし不当だ、こういう理由を挙げておるわけでございます。通産省側は、赤字解消が優先であるかのような感覚を持っていらっしゃるかもわかりません。しかし、飛行機を飛ばす方の側の運輸省は、安全性というものを決して無視できないし、より重要視しなければならない。だから、採算性と安全性を同列に扱った場合には、当然、運輸省といえども通産省といえども、赤字だから安全性はどうなってもいいとは私は考えていらっしゃらないと思うのですが、いまの体制よりも、民間に移管すればより安全性が保てて、そうして年々相当額の補助金というか研究費というか、そういうものも出さなくて済む——一体民間のどこがどういう体制で引き受けてくれるのですか、その見通しがあるのですか。
  50. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 私の説明があるいはちょっと言葉足らずであったかもしれませんので、改めて説明させていただきますが、先ほど申し上げましたとおり、審議会における検討においても運輸省の御指摘を受け、答申において、製造業者責任の履行体制、運航者に対する技術支援体制、あるいは部品製造者に対する指導管理体制及び部品供給体制について、少なくとも現行水準を下回ることなく確保されることが安全運航の観点から必要であるという御指摘を受けておるところでございます。  したがいまして、現在これを担い得る担い手は、いわば技術的にも十分な体制が組め、また、国際的にわが国航空機工業の信用を維持できるという観点から、このYS11の設計及びその製造に携わった機体三社を中心としてこれを引き受けることが技術的に妥当ではないか、私どもかように考えて、現在日航製と機体各社との間で受け入れ体制について準備行為をさせているところでございます。  なお、経理面の問題につきましては、日航製が単独の事業としてこれを行います場合には、御指摘のように、採算のとれない赤字の累積する業務になるわけでございますけれども、民間会社におきましてはこれ以外に、たとえば767の開発及びその生産でございますとか、あるいは外国機の生産でございますとか、また防衛庁機の生産でございますとか、航空機事業全体として一つの収支を図っていくという立場に立っておりますので、これ自身取り上げればあるいは不採算の形態が続く可能性はあるわけですけれども、企業全体として総合して考えますれば、これだけの赤字を吸収し得る基盤がある、かように考えて、経理面からこのYS11のプロダクトサポートについて手を抜くことのないように、また抜かないで済む経理的な基礎がある、かように判断をしている次第でございます。
  51. 吉原米治

    ○吉原委員 時間がありませんので、ひとつ答弁は簡潔にお願いしたいと思います。  去年、五十六年二月の業界誌のコピーがあるのですが、この業界誌の中でも、全日空の常務である舟津さんという人が、日航製を廃止して民間移管をするというのはまことに不当である、そういう意味の発言をいたしております。たとえば、「わが国の航空工業の成長に大きな貢献をしてきた日航製を、どんな理由があるにせよ解散してしまうことは誠に早すぎる安死術を見る思いがする。」こういう発言もしておるわけでございまして、挙げて民間移管は適当でないという発言。あるいは四十八年の衆議院商工委員会の中曽根当時の通産大臣が、日航製はアフターサービスが終わったら解散させる、こういう発言も実はしておるわけでございます。現に百六十機も世界じゅうで飛んでおるYS11機が存続していく限り、アフターサービスが終わったなんということには今日時点ではならぬ。アフターサービスはむしろより充実強化していかなければならぬ時期であろうかと思いますが、一体アフターサービスは終わったという解釈を、いま通産省、考えていらっしゃるのか。わずか五機世界で飛んでおっても、このサポート業務は必要だという慣行がある。あるいはまた、ユーザーによっては契約の中にそういうことも入れておる、そういうケースもあるやに伺っておるわけであります。  何としても、百六十機も飛んでおってアフターサービスはもう必要がない、終わったんだ、こんな認識を持っておられるとすれば、YS11は国民の立場から言えば乗れない飛行機だということになろうかと私は思うのですが、この点の安全性については、運輸省は民間移管で十分安全性は確保できる、こういうふうにお考えですか、まず運輸省にお尋ねする。  それからもう一つは、移管後は一体どこが、だれが責任を持つのか。また、移管先も、機体各社ということで固定をされてないようでございますが、一体だれが責任を持つのか。そこは通産省でお答えしてもらいましょう。
  52. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 お答え申し上げます。  私ども先ほどの通産省からの御答弁にもございましたとおり、運輸省といたしましては安全ということに重点を置きまして、この日本航空機製造問題について通産省並びに先ほどお話のございました航空機・機械工業審議会等におきましても再三発言をしておるところでございまして、民間の移管先につきまして、安全運航の確保と使用者の立場に十分な配慮が払われる必要があるということで、関係筋に私どもの意見を申し述べ、この移管先に対しまして、今後運輸省といたしましても、製造者責任の履行体制なり技術支援体制なりにつきまして十分指導を行ってまいりますならば、現行水準を下回ることのない水準でのプロダクトサポート体制の確保ということは可能ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  53. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 先ほど先生御指摘の、舟津常務の御発言及び四十八年におきます当時の中曽根通産大臣の御答弁に関連して、簡単に答えさせていただきますと、舟津常務の御指摘は、安全運航に関しましてユーザーとしての御懸念を表明されたものとして、まことにごもっともな御指摘であるとは存じますが、先ほど来申し上げておりますとおり、民間機体会社の方で十分な引き受け体制を組みました場合には、その技術的な能力からして舟津常務の御心配のないようにしなければならないし、また行い得る。現在、日航製を通しておりますプロダクトサポート業務におきましても、実際にこのYS11の設計に携わり、かつ製造を行いましたものの中には、三菱重工、川崎重工、富士重工、かなり設計者ないし製造に経験がございます。したがいまして、現在のプロダクトサポート業務の中でも、設計にまでさかのぼり、あるいは製造段階にまでさかのぼってチェックしなければならないトラブルにつきましては、日航製を通してこういう会社で分析し、その対応策を練るという形でやっておりますことも考えまして、十分、ユーザーの皆さんの御懸念のないように、そういう体制を組まねばならないと思っております。  また、中曽根大臣の御発言以降、引き続き、民間移行の可否についていろいろな場所で議論が行われていることは御承知のとおりでございまして、私どももその都度、その段階における状況を申し上げてまいりましたけれども、今日まで一貫して日本航空機製造株式会社の民間移管の可否につきましては引き続き検討してまいったという経緯がございます。(吉原委員「じゃ、どこが責任を持つのか」と呼ぶ)  日本航空機製造のプロダクトサポート業務を引き受けました会社が、対外的には責任を持つという形になります。また、それに対して、現在機体各社が日本航空機製造に対して行っております技術支援というものを、そのまま新しい移管先に対しても十分バックアップするということが業界の内部で申し合わせが行われておりまして、したがいまして、プロダクトサポート業務をユーザーに対して提供する会社が第一次的に責任を持ちまして、また各部位の生産を担当いたしました各社が二次的に責任を持つ、そういう現在の体制とほぼ同様の体制を組み得るものと考えております。
  54. 吉原米治

    ○吉原委員 まだ移管先が明確でないということだから抽象的なお答えになるのでしょうけれども、機体三社といいますと三菱、川崎、富士重工俗にこの三社であろうと思うのですが、従来までやってまいりました、飛行機を組み立てる場合の胴体は三菱、主翼は川崎、尾翼は富士重工というふうに、それぞれ分担されておるようでございますが、一たん大事故が起きたような場合には、こういった従来のやり方による飛行機の組み立ての場合に、たとえば三菱が責任を持つというのでしょうけれども、その責任の持ち方ですね。  一たん不幸にして大事故が起きますと、これは相当の賠償金が要るわけでございまして、こういった一民間会社がそういう能力を持つのだろうかどうだろうか。世界の常識上言われております賠償金、一機墜落した場合の賠償金を支払うとすれば、年間の保険の掛金だけでも一億数千万円も要するものだ、こういうふうに言われておるのですが、この営利会社であるプロサポ業務を引き受けた会社が、一体こういった能力を持つものだとお思いでしょうか、どうでしょうか。
  55. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 先生御指摘の製造業者責任の体制につきましては、先ほど申し上げましたとおり、プロダクトサポートを引き受けた会社が第一次的にユーザーに対して責任を持つわけでございます。それから、先ほど指摘のように、担当いたしました各部位につきましては、それぞれの担当した会社がございます。しかしながら、ユーザーの便宜あるいは法定の問題その他を考えますと、日航製の業務を引き受けました会社が責任としてはそれにまず当たる。しかしながら、もちろん原告のサイドからいたしますと、現在のプロダクトライアビリティーの分野におきましては、単にサポートを提供している会社のみならず、その設計に携わった人も被告適格としてこれを要求し得るという状況にございます。したがって、その点は、仮に何らかの事故が発生し、かつ、それが製造業者の責任であるというところまで遡及されます場合に起こるそれぞれの事態に即して考える必要があろうかと存じます。  次に、仮定のケースといたしまして、製造業者までその責任を追及されたケースの補償の問題につきましては、先生御指摘のように保険を掛けるという形もございますし、また、いままでのYSのケース、またほかの製造業者責任の事故の場合を考えますと、通常はその運航しているエアラインに対する補償請求がまずございまして、それが製造業者の設計ないしは製造上の瑕疵に基づく場合という、第二段階としてそういう問題が起こってくるわけでございます。その点につきましては、民間会社においてまずこれに当たり、必要に応じて国もこれに対して支援をする必要があろう、かように考えておりまして、今後ユーザーがYS11を運航するに当たり、もし何らかの大事故で製造業者に責任が及ぶ場合には、国際的にも国内的にも国として万遺漏なきを期したい、かように考えております。
  56. 吉原米治

    ○吉原委員 だんだん時間が迫ってまいりますので、大変残念でございますけれども、もっと細かくただしたい点などがたくさんございますけれども、先に進みます。  ユーザーも挙げて非常に不安を持っておる、安全性は一体どうやって確保されるか、民間移管は時期尚早ではないか、こういうごうごうたる批判の中で強引に移管をされる。一体いつまでにその移管先を決める見通しがあるのか。ここはひとつ通産と運輸、なかんずく航空局、移管の基準を明確にしてもらいたい。これは考え方で結構ですから、ひとつ航空局長からお答え願いたい。  それから、今後の民間航空機開発体制、もうこれはやらぬというわけにはまいらぬと思うわけでございまして、安全性から見ましても、計画からプロダクトサポートまでの一貫性、あるいは過去の経験、ノーハウを生かしていくという継続性が必要ではないかと私は思うわけでございまして、いまのようにそれぞれ、日航製がYS11をやる、今度YX協会をつくってYXの開発をする、あるいはYXX協会をつくってまた別の新機種をつくる、こういう分断された一貫性のない、継続性のないやり方では、今後の民間航空機開発体制というのは至っていびつなものである、したがってこの安全性が非常に確保しにくくなる、こういうふうに懸念をするものでございますが、それぞれ運輸省航空局、通産省でお答えがあれば通産省、最後に大臣に、今後の民間航空機開発における安全の確保についての決意のほどをお伺いをして、私の質問を終わろうと思います。
  57. 坂本吉弘

    ○坂本説明員 先生の御質問のうち、今後の開発体制及び移管先の決定の時期の点についてお答えさせていただきます。  移管先の決定につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、現在日航製と機体三社との間でいろいろ受け入れ体制のあり方、組み方について検討をしておるところでございます。いずれある程度大筋について見通しが得られました段階で、また運輸省御当局による新安全運航上の御審査を得たい、またその御指導を受けた後最終的に検討してまいりたいということで、現在いつごろまでというふうに申し上げるのはむずかしい状況でございますが、閣議の了解では五十七年度末までに業務の移管を完了するということにいたしております、というところで現在のところ御勘弁願いたいと存じます。  また、今後の民間航空機の開発体制のあり方という点につきましては、今後とも航空機産業というものをわが国の戦略産業の一つとして育てていかねばならないという点について、各界の御賛同も得、通産省としてもそう考えております。その開発体制のあり方につきましては、一貫性あるいは継続性といったものができる限り確保されるべきだ、かように考えておるのは先生御指摘のとおりでございます。  ただ、昭和四十八年度にYSの生産を打ち切りまして以降、私どもYXと呼んでおりますボーイング767の機体につきましては、一応民間機体三社で財団法人の民間輸送機開発協会というのをつくりまして、それに対して国が開発段階におけるリスクを補助するという形でこの十年やってまいりまして、やっとことしの夏ごろこれが終わるわけでございます。  それで、私どもといたしましては、これの形態というものをいわば開発の体制として定着したものと考え、次のプロジェクトとして考えておりますYXXにつきましても、また同時に進めております、私どもXJBと呼んでおります日英エンジン共同開発のプロジェクトにつきましても、ほぼこういう形でやりたい。またそれが、一昨年、今後の航空機開発体制について御審議いただきました航空機・機械工業審議会の答申の基本線であろうか、かように考えておるところでございます。
  58. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 先生の御質問の第二点、民間移管についての基準はどうかということでございますが、先ほども御答弁申し上げましたとおり、運輸省といたしましては、民間に移管された場合のプロダクトサポート体制が現行水準を下回ることのないようにということを基本の考え方といたしておりまして、プロダクトサポート体制とは何かということも、先ほど申しましたように、製造者責任の問題あるいは技術支援体制の問題、また部品メーカーに対する指導管理体制の問題、そして四番目に部品供給体制の確保、この四つを私ども考えておるわけでございますが、これらの四つの問題点につきまして、何か定量的な基準を立てるということにつきましては、これはなかなか困難でございますが、私ども、そういう抽象的な四つの柱につきましてさらに細かいいろいろなチェックポイントを考えまして、できる限り細かなチェックをした上で判断をしてまいりたい、かように考えております。
  59. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 航空機製造が、特殊法人であろうがあるいはまた民間であろうが、われわれとしましては、あくまでもその安全性の確保ということが最大の重点でございまして、ただいま航空局長から御答弁申し上げたとおりの事態につきまして、全力を挙げて行政を推進してまいりたいというふうに思っております。
  60. 吉原米治

    ○吉原委員 残念ながら時間が参りましたので、きょうはこれでおきます。終わります。
  61. 宮崎茂一

    ○宮崎委員長代理 午後一時から再開することとし、休憩をいたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  62. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小渕正義君。
  63. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 まず最初に、私は、去る十八日に発生いたしました佐世保重工のタンカー火災事故についてお尋ねいたします。  本工、下請工合わせて十名の犠牲者が出たわけでありますが、これらの犠牲者の方に対しての御冥福をお祈りするとともに、早急なる補償対策等が実施されることを強く望むものであります。  まず最初に、今回の佐世保重工の災害の発生状況について、発生原因、発生時の状況、それからこれらの災害発生に対して運輸省としてどのような形で取り組まれたか、そういった一連の経緯についてお尋ねいたします。
  64. 野口節

    ○野口政府委員 佐世保重工で発生いたしました事故の概要について御報告をさせていただきます。  事故を起こしました船舶でございますが、船名がバラウニ号という船でございまして、これはインド籍の船舶でございます。船種は、油と鉱石を兼用して運んでおる船舶でございまして、大きさが総トン数にしまして約四万五千トンということでございますので、ごく普通の油、鉱石兼用船ということになろうかと思います。一九七〇年にユーゴスラビアで建造された船舶でございます。  次に、火災事故に至る経緯でございますが、三月十三日にこの船舶は定期検査及び改造工事のために佐世保重工に入りまして、ドックに入渠したわけでございますが、ドック関係の仕事を終わりまして十八日にドックを出て、佐世保重工の蛇島岸壁というところに接岸して機関室の工事を行っていたところでございます。十八日の十五時三十分ごろに機関室から火災が発生しまして、夜半まで燃え続けたということでございます。  被害の状況でございますが、この事故によりまして死亡者が十人、負傷者が二人出ております。死亡者の内訳は、佐世保重工業の従業員が四人、それから下請に入っておりました会社の従業員が六人でございます。負傷者の方の二人は、佐世保重工の従業員が一人、それから下請に入っておりました会社の従業員が一人、合計二人というふうになっております。  事故原因でございますけれども、事故原因につきましては現在まだ捜査当局で捜査中でございますので、詳細はまだ明らかにされておりません。ただ、伝えられるところによりますと、事故発生の当時、本船の乗組員がガスバーナーを使用して作業をしていたということが言われております。このガスバーナーを使用した作業というのが、この火災発生に何らかのかかわり合いがあるのではないかというふうに推察されております。  事故が発生した後、私ども、どういうふうにしたかということでございますが、私どもの九州海運局の本局及び九州海運局の佐世保支局というところがございますが、ここから係官を派遣しまして、現在事故の実態の把握に努めているという状況でございます。
  65. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 いまのお話の中に、事故が発生した発生現場についての御説明がなかったわけでありますが、エンジンルームの中で事故が発生したというふうに報道されておるわけでありますが、この点は間違いございませんか。
  66. 野口節

    ○野口政府委員 現在までに現場検証が行われ、私どもの係官も現場に参って見ておりますが、火災が発生したと思われる場所はエンジンルームの前端部付近ということで、エンジンルームの中の様子を申し上げますと、前半分の方が火災による損傷が非常に大きかった、後ろの半分の方はそれほど大きな損傷は見られなかったということでございます。
  67. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ただいまのは運輸省関係の報告でございますが、労働省の労働基準局としては、今回のこの災害の状況等についてはどのように実態を把握されて、現在までどのような対処の仕方をされてきたのか、その点の一連の状況を御説明いただきたいと思います。
  68. 小俣和夫

    ○小俣説明員 労働省といたしましては、現地の長崎労働基準局及び佐世保労働基準監督署におきまして、事故発生直後現地に係官を派遣いたしまして調査に当たりました。労働本省といたしましても、中央産業安全専門官を現地に派遣いたしまして調査に当たらせたところでございます。  災害発生状況につきましては、私ども把握しているのも、ただいま運輸省からのお答えのとおりでございます。
  69. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 発生後直ちに係官を派遣したと言われておるわけですが、そういう状況の中では当然災害発生以後の状況について、特に担当専門官として把握されたと思うわけでありますが、そういう現在まで労働省として把握した災害の状況とそれに対する一つの判断、そういうものがありましたらまずお聞かせいただきたい。
  70. 小俣和夫

    ○小俣説明員 事故の状況につきましては、三月十八日に定期修理中のインド船籍バラウニ号のエンジンルームから出火したということでございますが、火災の原因につきまして、現在現場検証等が行われている最中でございまして、確定したことは申し上げられませんが、現在までのところ、ガス切断によります火花が、漏れておりました燃料油あるいは残留しておりましたスラッジ、いずれかに引火をして火災の原因となったものと、このように見られております。
  71. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 当時のこの災害発生時、作業者は何名程度がその作業に従事し、その中で何名が負傷し何名が死亡した、そういったことまで触れて初めて災害の状況報告じゃないかと思うわけでありますが、全然そういったことを知らない人から見るなら、いまの両方の方の報告では災害の状況というのは本当に明るみに出ないような感じがします。  だから、時刻ははっきりいたしました。災害発生場所は、私の質問で初めてエンジンルームということがわかりました。当時そういった作業に何名の人たちが従事し、どういう形でそういうふうになったのか、そこらあたりについての把握されている状況をひとつ、労働省の方でも運輸省の方でも結構ですから……。
  72. 小俣和夫

    ○小俣説明員 ただいま申し上げましたように、現在調査中でございますので正確な数字は、いま申し上げる数字が必ずしも正しいかどうかはこれからの捜査にまつわけでございますが、現在まで私どもが聞いておりますところでは、当時エンジンルーム内に、佐世保造船所の労働者が二十五名、それから関係下請労働者三十六名、インド人船員が四名程度いて、計六十五名くらいが仕事に従事していた、このように思われております。
  73. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 現在、災害発生原因については捜査中であるということで一応それはわかりますが、しかし、何らかの形で、それが乗組員なのか、または従業員か、協力工の人かどうか、いずれにいたしましても、何らかの形でのガス溶接または電気溶接か何か、そういった火気使用できないところで火気が使用されたために発生した災害、こういうふうに大体判断されるわけでありますが、その点に対する判断はいかがですか。
  74. 小俣和夫

    ○小俣説明員 現在、ガス切断器によります火花が引火の原因になったということは、もう間違いないものと判断しておりますが、作業していたのがインド人船員であったという説と下請の労働者であったという説と両説ございまして、このいずれが正しいかはこれからの捜査にまつものといたしたいと思います。
  75. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 いずれにいたしましても、私、新聞報道その他を取り寄せて、その上に立っての判断で申し上げるわけでありますが、要するに、エンジンルームの中で、いま御報告ありましたように、本工、協力工を含めた俗に言う、一般的に言われている混在作業が行われておったのは間違いないわけですね。そういう混在作業の中で、しかもそういう非常に燃えやすい条件の中でありますから、当然火気使用は禁止されておらなければならないし、火気を使用する場合には、当然それに対する対策が講ぜられて初めて火気が使用されなければならない。これは安全規則からいって当然のことでありますが、そういった一連のものが守られない中でこの災害が発生したということは、これは事実関係から見て間違いないというように私は状況判断でするわけでありますが、その点についてはいかがですか。
  76. 小俣和夫

    ○小俣説明員 先生御指摘のようなことがあったのではないかと私ども疑っておりますが、現在捜査中でございますので、まだ確定的なことを申し上げる段階ではございません。
  77. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 災害が発生した際に、いろいろこういう機会の中で質問した場合に必ず戻ってくる答えは、現在捜査中でございますのでこれ以上の判断は申し上げられませんということでいつも逃げられるわけです。逃げるという言葉は不適切かもしれませんが、だれが、最終的にどのようなところで責任が負わせられるのか、それは別といたしまして、今回のような災害の発生した状況等を判断すれば、そういう意味ではもう明らかに労働安全衛生規則の違反であるということ、これは明白な事実だというふうに思うのでありますが、その点についてはどのように、お考えですか。
  78. 小俣和夫

    ○小俣説明員 先生御指摘のように、責任者がだれになるかというのはこれからの捜査にまたなければならないと思いますが、安全衛生規則違反が存在したであろうということは相当な確度をもって申し上げられるんじゃないかと思います。
  79. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 要するに、先ほど申しますように、ああいった作業現場の中では、当然安全管理責任者が常時その作業状況の中で作業の実態を把握しながら、そういう中で指導し監督すべきはずであります。どうも憶測でありますが、今回のこの災害発生の状況等から判断いたしますならば、管理者のそういった人がおらなかったのではないかという判断が私はできると思います。  その点はまだ詳細が判明いたしませんから申し上げかねますが、ただしかし、過去における一つの流れといいますか、推移からいたしまして私なりに申し上げるわけでありますが、皆さん、かつてSSKは、会社再建をめぐりまして非常にトラブルが発生したところでございました。労使関係においても、そういった意味での長期の闘争状態まで深刻になった経緯の中で今日の操業が維持されておるわけでありますが、当時、昭和五十三年ころ経営体制がかわりまして、来島どっくの社長であられる坪内社長がSSKの、佐世保重工の方の経営を肩がわりされて、それから徹底的な合理化を行われて再建をスタートされたわけでありますが、そういう合理化、再建の途上で労働組合から再三にわたって、このような人減らしだけでは安全管理上問題がある、したがって、労働基準局としてももっともっとこの実態を把握して、ひとつ会社に対して厳重な勧告その他やってほしい、実はこういった事例がかつて再建途上の中であったわけでありますが、その点は監督官庁としては承知されておりますか。
  80. 小俣和夫

    ○小俣説明員 御指摘のような点もあるのではないかと、現地の基準局及び監督署では再三にわたって監督を実施いたしまして、違反の是正あるいは災害防止についての指導を実施しておるところでございます。たとえば昨昭和五十六年におきましては、五回の監督を実施しているところでございます。
  81. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 いま申し上げますように、非常に徹底的な人減らし合理化を推進されたわけであります。そのために、当然置かなければならないような安全管理者もほとんどおらなくなってしまうような事態が発生しまして、そういう中で労働基準局に対しまして労働組合側から再三にわたってそういう強い要請を行ったという過去の経緯がございます。したがいまして、そういったもろもろの判断をいたしますならば、今回の災害もそういう意味ではやはり一つの大きな安全管理上の落ち度があったのではないかというふうに断定してもやむを得ないのではないか、私はそういう感じがするわけであります。  それで、もう少し突っ込んで申し上げますが、造船現場における災害発生状況、各社別のデータを見ているわけでありますが、佐世保重工は五十三年前と五十三年以後、要するに坪内体制の新しい経営体制に移行して、人減らし合理化が推進された以後と以前とにおける災害の発生状況が大きく異なっている。これは一つの数字的な傾向から見てもそういった見方ができます。五十三年以前の佐世保重工における災害の発生状況推移と、五十三年以後の佐世保重工における災害発生状況のそういう一つの流れ、推移を見ますならば、判然とこれが数字的に出ているわけであります。そういうこと等から考えまして、今回の事故というものが、非常に残念でありますが、そういう意味においては当然起こるべくして起こった事故ではないかという感じさえいたします。  特に今回の事故の状況の中で私どもの耳に入ったので申し上げますならば、長崎関係のああいった修繕関係の仕事をされている協力、下請関係の人たちの業者の中では、佐世保重工にはこわくて人を派遣するわけにはいかぬ、危ないところだ、そういうところだから、とてもじゃないが仕事を受け合ってやるようなところじゃない、そういうようなことが業者間でささやかれておったという事例も私は耳にしています。そういうことからいって、今回の事故は起こり得べくして起こった事故ではないかというような見方が非常に現地では強いわけであります。  その他いろいろありますが、災害の要因になりましたスラッジが、あそこの佐世保の場合には、修繕船は大体タンカー埠頭におきましては、まずスラッジ等を完全に除去してから初めてドック入りをし、そして作業、工事にかかるわけでありますが、そういうもののほとんど不完全な状態の中で行われているとか、ともかくいろいろ要因を挙げられて、とてもじゃない、あそこは危ない職場だというのが下請関係の人たちの定説になっていた、こういうことが実は私どもの耳にも入っているわけであります。  そういう点からいきますならば、先ほど労働基準局の方では、現地の方では再三にわたって立ち入り、いろいろ指導してきたと言いますけれども、実際にはそういう意味では、まだまだそういう指導といいますか行政指導が不徹底でなかったのか、こういうふうな感じさえするわけでありますが、その点に対してはいかがお考えですか。
  82. 小俣和夫

    ○小俣説明員 現地の所轄署におきましては再三監督をいたしまして、違反とかあるいは是正を指摘しておりますが、本件のような事故が起きてしまいますと、御指摘のように監督、指導不徹底でというおしかりもあろうかと存じますが、現地の署の職員といたしましては精いっぱい指導をし、監督をしてまいったということでございますし、今後このようなことが再び起きないように、なお一層の監督、指導に努めさせなければならないということは十分肝に銘じております。
  83. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これは五十七年の三月二十日の長崎新聞でありますが、この中で報道されておるのを見ますと、「三年で違反六十五件も 長崎労基局 SSKのズサンさ指摘」こういう見出しで二十日に報道されております。そういう中で、いまお話しがありましたような立入調査、定期監督を含めて五十四年に四回、五十五年に二回、昨年六回実施し、違反件数六十五件、作業停止命令三十八件、改善指導八十八件、そういうものが報道されておりますが、そういうことで行政当局としては努力されておることについては、あえてそれを否定するものではございませんが、指摘し、いろいろと指導しても、次から次に再々そういう問題が出てくる、そういう常態的な違反の状況について、ただそれだけで事足りるのかどうか。今回の事故を考えてみますならば、そういったことだけでは済まされない、もう少し強力なものを必要とするような状況にあるのではないか。そういった点について、現在の法体制の中では行政当局としてはこれ以上のことはできないというふうに言われるのか。もう少し思い切った強力な、こういう常態的な違反件数が発生するような事業所に対しては、もっともっと強力な指導が行えるような体制が考えられないのか、その点についての御見解をお伺いいたします。
  84. 小俣和夫

    ○小俣説明員 当然、これからの対処といたしまして、違反等がありました場合の司法処分の問題でございますとか、あるいは危険個所の作業停止とか、あるいは危険な器具の使用停止とか、そういう行政措置の強化あるいは監督の強化、こういったことで、従来に増して災害対策を進めさせるような行政指導及び行政監督をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  85. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 こういった災害が発生してから、また一つ改めてこれから新しくやりたいということでは本当は困るわけでありますので、そういう意味では常時努力されておるとは思いますが、これからの取り組みの一つの参考までに申し上げたいと思います。  実は、いま申し上げましたように、佐世保重工が坪内体制になった以後、災害発生状況が前と非常に変わった、非常に多発するような職場になったということを申し上げましたが、そういう意味で、あと一つ御参考に申し上げておきたいと思いますのは、同じく坪内社長が経営されておる来島どつくがあります。そういう来島どつくの中での造船事業所における災害発生状況を見ますならば、絶えず度数率からいっても強度率からいっても、大体上位五ランクぐらいのところに常時位置しておるような職場でございます。これは数字的に、従業員並びに協力社員の災害発生状況の業界の統計を見ましても、大体、一部違うときもございましたけれども、傾向的に見ますならば、常時度数率、強度率ともに五位ぐらいの範囲の中で、いつも上位を占めておるということが言えるのじゃないかと思うわけでございます。  したがいまして、そういった点から考えますならば、経営のあり方の中でこういった安全管理について手薄といいますか、安全管理という問題が、ややもすると安易にされておるのじゃないか。産業災害を絶滅する、そういった強いものが経営の基本の中にもっともっと入らなければいかぬのじゃないかなというふうに、こういった統計的なものから私は判断をするわけであります。  したがって、そういう意味で、せっかくここで貴重な、最近の修繕船関係の事業職場では、こういった事故が余り発生しないような状況の中にあって発生したということから、二度とこういうことがあってはならないということを考えますならば、行政当局においてもこの点をもっとシビアに見ていただいて、常時そういった災害の発生状況が、強度率、度数率、そういったもので悪いところは、何か特別指定事業所にしてでも徹底した行政指導を強力に行うという対策も必要ではないか、かように思うわけでありますが、その点はいかがですか。
  86. 小俣和夫

    ○小俣説明員 御指摘のように、経営と安全というのは一体となってやっていただかなければならないことであることは、もう当然のことでございます。  それから、これからの災害を減らしていくという上に、いろいろな意味で現在、悪い事業場につきましては特別安全管理指定事業場という制度もございますし、それから、下請を多く使っておりますのは総合安全管理指定事業場の制度がございます。現在でも佐世保重工業につきましては、総合安全管理特別事業場に指定をいたしまして、濃密な監督、指導を行える体制にはいたしておるわけでございますが、なお、佐世保重工と限らず、造船業の中で災害発生件数の多い事業場につきましては、そのような措置を強力に進めてまいりたいと思う次第でございます。
  87. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 そういった現在与えられている機能をフルに発揮して強力な指導をぜひやっていただき、二度とこういった災害が発生しないようにひとつ万全の体制をとっていただきたい、かようにお願いします。  それとあわせまして、船舶局にお尋ねいたしますが、御承知のように最近の船は非常に高度化しましたし、またLNGにしろ、LPGにしろ、いろいろと危険性をはらんだ荷を積むという形で、昔の単なる貨物を運んでおったという時代からいたしますと、船の持つ意味かなり変わっているわけでありまして、そういう点では非常に危険性の高い荷物を運ぶような船が最近はたくさんあるわけであります。  そういう現在の状況考えますならば、これから修理その他のドック入り等がある場合に何か一定の基準を設けて、ある意味においては高度な技術力を必要とした船でありますが、それだけにまた非常に危険な要素をはらんだような船でございます。何も船が危ないという意味ではないのですけれども、LPGとかLNGとかいろいろそういう特殊な、危険度の高い荷物を運ぶような船に対しましては、定期的なドック入り等をするわけでありますが、そういったときにはどこの造船所、事業所でも、ただ修理だからやればいいということじゃなしに、ある程度一定の基準を持って、そういう条件を満たしておるところでないと修理関係の仕事は扱えない、扱ってはいかぬ、それくらいの強い指導がないと、先ほど申しましたような危険性の高い船であればあるほど、そこらあたりの対策があってもいいのではないか、かように実は考えるわけでありますが、この点についてはいかがでしょうか。
  88. 野口節

    ○野口政府委員 御指摘のように、LPGとかLNGとか、そういう非常に危険度の高い貨物を積む船がこれから非常に多くなってまいりまして、これを修繕する機会も非常に多くなってくるわけでございます。  こういう船舶につきましては、いま先生がおっしゃいましたように、爆発性のガスが発生するということで、その安全確保については普通の船よりも一層注意してかからなければいかぬというふうに思っておるわけでございまして、たとえば危険物船舶運送及び貯蔵規則というようなものでも、そういうものを積んだ船についての取り扱いにつきましては、たとえばガスフリーであるとかガス検知であるとか、あるいは火気の使用の方法について非常に厳しい基準を設けているわけでございます。  これをドックに入れて修繕する場合につきましての安全確保につきましては、労働安全の問題としてその所管の官庁の指導を受け、その関係の法例の適用を受けて行うことになるわけでございますけれども、私どもといたしましても、事業を所管している官庁の立場からして、安全確保というのは事業活動の基本であると考えております。これまでもそういうことで厳しく造船所を指導してきたつもりでございますが、こういう事故を契機にいたしまして、また改めて一層厳しく指導してまいるようにしたいと思います。  それから、いま先生がおっしゃいましたように、そういう危険物を積んだ船舶の種類ごとに造船所の仕分けをしてはどうかということでございますが、これは実際問題として、この船はこの造船所に入ることができる、できないということを仕分することはむずかしいというふうに思いますので、そういうことも念頭に置きまして、十分造船所を指導してまいるようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  89. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 まあむずかしい問題でありましょうが、いま申されたような点については、労働省と一体となって、もっともっと強力な行政指導をできるだけやっていただくようにお願いするわけであります。特にこういった造船産業が不況になればなるほど、修繕船関係の作業、工事についての過当競争が発生しがちでございます。過当競争が発生することによってどうしても、どちらかというと、安全管理が結果的にはおろそかになりがちでございます。そういう点で、少なくとも会社の規模その他に関係なしに、完全なる安全管理が徹底しているような一つの事業所というものを、モデルならモデルにでもしながら、そういう指導を行うような形をしていただいて、ひとつ今後二度とこういった災害の発生がないようにお願いしておきたいと思います。  あわせて、最後にお願いしますが、遺族の補償問題でございます。これは労災法によっておのずから決まっておるわけでありまして、そういう意味でいきますならば、協力社員の人たち、要するに下請関係の人たちについて、労災適用の金額だけではスズメの涙程度しかないのじゃないかという気もいたします。これはそれぞれ会社関係がする問題でありますけれども行政の方でも特にそういった下請の人たちの遺族補償問題について、世間常識的な線で何とかそういったことが行われるように、そういった意味での行政指導もひとつお願いしておきたい、かように思うわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  90. 小田切博文

    ○小田切説明員 御説明申し上げます。  不幸にして十名の方がお亡くなりになったわけでございますが、まだ私どもの方へ正式に労災保険の請求書が遺族の方々から出てきておりません。正式にはそれを待ちまして、業務上外の判断、業務上であれば所定の給付をするということになるわけでありますが、いろいろの事情から考えまして、業務上であることはほぼ間違いないと言って差し支えないかと思います。そういう観点から、まだ請求は出てきておりませんが、私どもの方といたしましては、出てくれば即座にお支払いできるような体制を整えておりますし、また関係の事業場に対しましては、とりわけ災害直前の三カ月の賃金支払い実績がその後の労災保険の給付の基礎単価になりますから、その辺、資料整備をしておくように指導してございます。したがいまして、正式に請求が出てまいりますれば、元請であると下請であるとを問わずに一時金、それから場合によっては年金給付というような給付もあるわけでございますが、少なくとも一時金につきましては、即日あるいは遅くとも数日のうちにはお支払いできるのではないかと思っております。  それから労災保険、私ども公的な業務上の災害補償のための保険制度として運営しているわけでございますが、私どもの労災保険の給付水準、諸外国と比較してみましても決して水準的に劣るところはないというふうに考えておりますが、そうは申しましても公的な保険でございますから、全産業一律同じような給付ということになっているわけでございます。そういう観点から、それぞれの業種あるいは企業では、労使の自主的なお話し合いで上積み補償というような処置も講じられているわけでございますが、私ども現在聞いておるところでは、佐世保重工業につきましても、死亡の場合に千数百万円というような上積みの補償があるようでございますが、関係の下請の二会社につきましてもそれとほぼ比肩し得るような、企業内の死亡の場合上積み補償制度があるようでございます。私ども、基準法あるいは労災保険法の水準を上回る労使が自主的にお決めになりました企業内の補償でございますから、基準法などをバックにして履行を迫るというようなことはできないわけでございますが、労使の間の約束が十分果たせるかどうか、重大な関心を持って見守っていきたいというふうに考えております。
  91. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 そういう上積みが決まっておるところはいいんですが、今回の十名の中で四名は社員の方。それから六名の中で二名の方は、これは合同労組という組合がありますから、そこの中でいま申されたようなことがあると思います。しかし、残された四名の方、これは本当に新しいSSKが再建スタートしてから起こったような協力業者の人たちでございまして、実態はそんなものでないというふうに思われますので、そういう点含めてひとつよろしく御指導のほどお願いしておきたいと思います。  一応これで佐世保関係の災害のことについては終わりまして、次に、時間がちょっと超過しましたが、あと日米航空交渉問題について二、三点お尋ねいたします。労働省関係の方、御苦労さんでした。  御承知のように、日米航空交渉が決裂いたしておるわけでありますが、わが国としては、不平等条約の是正ということを一応中心に置きながら航空交渉に入っていく、以遠権の棚上げその他かなりの譲歩措置をとりながらも結果的には決裂したわけでありますが、この日米航空交渉の決裂の経緯等、新聞論調その他いろいろ報道関係で見てみますならば、非常に交渉のタイミングが悪かったんじゃないかということが、ほとんどの報道関係を見ても指摘されているようであります。  ということはどういうことかといいますと、アメリカにおける航空業界というものは非常に不況産業のトップ企業に陥っておるわけでありまして、そういう状況の中でこういった交渉が持たれたということが一つ、やはりタイミング的にまずかったんじゃないかという見方。それからあと一つは、日米の経済摩擦がいま非常にいろいろの問題を出されているわけでありますが、そういう最中にこういう問題をやった、交渉を行ったということもまた一つは非常にタイミング的に悪かったのじゃないか、今回の交渉決裂に対して大体こういうような論調が非常にたくさん見られるわけでありますが、こういった論調が、結果論でありますから何と言われてもやむを得ないかもしれませんが、そういう点から考えまして一つ。あと一つは、何といいますか、読みの甘さがあったんじゃないかということもいろいろ言われておるようなわけでありますが、この点について当局としてはどのようなお考えなのか、その点をまずお尋ねいたします。
  92. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 この三月十日から十九日までサンフランシスコで開催されておりました日米航空交渉、残念ながら最終合意を見ることなく終了いたしました。  この日米の航空交渉は、先生も御案内のように、一九七八年に交渉中断以来約三年を経まして、昨年の一月にホノルルで非公式に協議をいたしました。それ以来、昨年からことしの一月までで七回、今回の協議を含めて八回の公式、非公式の協議が行われたわけでございます。  確かに今回のアメリカ側の非常にかたい態度の背景には、現在の米国航空業界の不況ということがあったことは否定できないと思いますけれども、ただいま申しましたように、この交渉はたった一回きり行うわけではございませんで、非常に長い歴史を背負った、いわゆるマラソン交渉と言われるほど長い交渉でございます。たまたま今回そういう時期に遭遇したということは事実でございますけれども航空協定というものはほかの貿易摩擦というようなものとは全く異質の問題であり、また今次協議におきましても、日米両国ともきわめて技術的な、航空プロパーの問題で真剣な討議が行われ、残念ながら最後には合意はできませんでしたけれども、そういう客観情勢の悪さだけがこの交渉がまとまらなかった原因ではなくて、実はこの交渉のまとまらなかった原因というものの奥を探ってまいりますと、日本とアメリカとの考え方の相違というようなものが大きく出てきておるわけでございまして、先ほど先生、読みが甘かったではないかという御批判もございましたけれども、私ども、もちろん最大限合意のための努力をするというつもりで交渉に望んでいることは事実でございますけれども、しかしながら、今回の交渉で必ずまとまるというほど甘く考えていたわけではございませんで、非常にむずかしい交渉であるということを覚悟して交渉に臨んだわけでございます。ただ、できる限りこの日米間の懸案の状態を一刻も早くいい形に持っていくための最大限の努力をし、しかし譲るべからざるものは譲らないで最終的に合意が成らなかった、こういうことでございます。  したがって、先ほどの種々の御批判もございましょうけれども、私どもとしては最大限の努力をしたというふうに考えております。
  93. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 最大限の努力をなされたわけでしょうけれども、要するに、今回の交渉でまとまらなかった最大の要因が、日米双方のそれぞれの考え方の大きな相違ということに尽きるようなお話でありますが、そういうふうな違いというのは、大体ポイントとして要約するとどういうところにあるのか、その点をお尋ねいたします。
  94. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 まず、大きく申し上げて二つあろうかと思います。  一つは、現在の協定に対する考え方でございまして、私どもは、以遠権に象徴されるように、現在の日米協定では日米両国の権益は不均衡であるというふうに考えておりますのに対して、アメリカ側は、現行協定に不均衡はないという立場をとっておるということがまず挙げられようかと思います。したがいまして、以遠権なり路線権なりというところが私ども要求の重点でございますけれども、アメリカ側は昨年の一月の交渉におきまして、運賃あるいはチャーターの自由化と引きかえにある程度日本側の要求をのもうという態度を示したわけでございますけれども、その後アメリカ側の国内の自由化政策が余りうまくいかないということもございまして、かなり自由化に対する態度が変わってきた、そのために、自由化を強く要求することをしなくなってきましたために、逆に日本側に与える以遠権なり路線権の問題が非常に大きくなってまいりました。アメリカ側からすれば、これは日本側に対する非常に大きな譲歩であり過ぎるというような感覚が生まれてきた、これが一つの原因であろうかと思います。  それからもう一つ、両国の立場の相違は空港問題でございます。と申しますのは、アメリカ側は、日本がアメリカ企業に日本国内の空港をポイントとして与えながら、その空港の使用について、たとえば大阪空港におけるがごとく制限を加えておる、これは非常にけしからぬ、こういう立場をとっておりまして、私どもは、これは物理的条件でやむを得ない、したがって日米平等に取り扱うということでアメリカ側に説明をするわけでございますが、アメリカとしては、空港を制限するということがけしからぬ、したがって、もしも今後日本側が空港を制限するならば、アメリカ側はそれに対して対抗措置として日本企業のアメリカ空港の使用を制限する、こういう態度を出してきたわけでございます。私どもとしては、空港の条件というものは一朝一夕に解消できる問題でございませんので、極力アメリカ側に平等取り扱いということをもって説得したわけでございますが、アメリカ側としては非常に強く日本の空港条件の改善を迫った、これが両国の立場の大きく相違した第二点であろうかと思います。  以上で、二つの点が非常に大きく相違しているということを申し上げました。
  95. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ただいまのようなお話でありますと、これはかなり大きな相違点でございますから、ここもある程度時期を置いて開始をするような性質の問題じゃないかというふうな感じもするわけでありますが、そういった点で、これからは一体どのような推移の中で動くのか、これからの交渉の再開のめどといいますか、そういうものはいまのお話からいくと当分望めそうもないというふうな感じもするわけでありますが、その辺の見通し等についてはいかがお考えですか。
  96. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 今回の協議の際に、今後交渉をどうするかということについては、両国代表団で全く話し合いが行われておりません。したがいまして、今後交渉がどうなるかということについて、現在はっきりした見きわめをつけることは困難でございます。今回の交渉の結末を見ましても、やはり私どもといたしましては、しばらく冷却期間と申しますか、若干の期間をとることが必要ではないか、かように考えております。
  97. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それからあと一つ。伝えられるところでは、今回そういった交渉が決裂したということから、アメリカ側から何らかの形における制裁措置が発動されるのではないだろうかという、またそういう一つの見方もありますが、これらの制裁措置については現在どのようにお考えですか。
  98. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 アメリカ側が、ユナイテッド航空の乗り入れに端を発します制裁問題につきまして今後どのような態度をとるかということについては、現段階ではまだはっきりしておりません。昨年暮れに米国がとりました、わりに緩やかな制裁措置というものを復活するのか、あるいはさらにきつい制裁措置をとるつもりか、この辺のところはもう少しアメリカ側の態度を見守るしかないと考えております。ただ、もし仮にアメリカ側が制裁措置を加えてくるならば、これは私どもとしても、望むところではございませんけれども、それに対応した制裁措置をとる必要が出てくるというふうに考えております。
  99. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 当分の間、冷却期間を置く以外にないということで、再開の見通しが当面のところちょっとつかないようでございますが、これから以後の日米航空交渉についてのわが国の基本的な態度は一体どこに置かれるのか、この点をお尋ねするわけであります。要するに、今回の交渉の中で日本側としては、一歩も二歩も譲った一つの最終的にまとめるための方向を出されたわけですね。そういったものがこれからの日米航空交渉のベースになっていくのではないかという危惧の念も持たざるを得ないわけでありますが、これからの日米航空交渉におけるわが国側としての基本的な姿勢はどこにあるのか、その点、大臣の御見解があれば承りたいと思います。
  100. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 日米航空交渉のいきさつにつきましては、ただいま航空局長からお答え申し上げたとおりでございますが、基本的に申しますならば、やはり日米両国間における不均衡があるという認識をわれわれは持っております。そしてまた、この不均衡は、同時に日本のいわゆる権益というものが大変に侵されているという認識を持っているわけでございまして、結論的に申し上げるならば、これからの交渉の中におきましてもこうした不均衡が是正されること、そしてまた日米航空市場が均衡のある形の中で運営されるということ、この二点がやはり最大の眼目ではなかろうかと思っておりまして、私らは、今後はそうした問題の意識を失うことなく持ち続けながら、時の経過の中からチャンスを見て、先方との交渉が始まり得るならば始めても結構だというふうに考えておるところであります。
  101. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 いまのお話では、基本姿勢は貫くということのようでありますから、今回の交渉の中で最終的に妥協案として見せられたものが必ずしもベースにならないということで、そういうふうな意味でわれわれとしては理解しておきたいと思いますが、その点間違いございませんか。
  102. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 この三月十日から始まりました交渉の中で、相互に示し合ったもの、さらにまた、本年の一月に東京で行いましたときにテーブルにのせられたもの、こうしたものはそのまま存続をしていこうということが両代表団の間で最終的に合意をされたと聞いておりますので、いろいろな問題がそのまま、テーブルに残ったまま現在は決裂状態というふうに私は認識しております。
  103. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次いで、時間がありませんので一点だけお尋ねしますが、実はこの前、日航の羽田沖事故が発生しまして、それ以後いろいろと運輸省としては行政指導を日航側に対して行われたというふうに承っております。その中身についていろいろ御報告を受ける時間がございませんので、ただ一点だけお尋ねいたしますが、要するに、パイロットの人たちの適性検査、そういったものをより充実強化するという指導の方向も、その中で含まれておったというふうに思います。そういう意味での医師の増員その他いろいろあったかと思いますが、私なりにいろいろなお話を承っておるわけでありますが、こういったパイロットの適性検査の最終的な判断というものは、そういう企業より独立した機関の中に置かなければいかぬのじゃないか、いかに企業の中でいろいろそういう機構を整備し、機能を充実させたといたしましても、結果的にはやはり、企業内であるためにどうしても、これは人間的な関係その他いろいろな要素が絡んできますし、労使関係の問題とも絡んできますし、いろいろそういうことを含めると、どうしてもそういう意味における情的な判断をせざるを得ないような場面が起こり得る可能性があると私は思います。したがって、そういうものを的確に排除していくためには、最終的なそういう適性検査の判断は、企業より独立した何らかの機関の中で行うべきが本当じゃないか、かような考えを実は持つわけであります。そういった方向でこれからのそういったものは充実させなければ、指導しなければいかぬのじゃないかと思いますが、関係当局としてはこの考え方についてはいかがでしょうか。
  104. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 現在のパイロットの身体検査制度につきましては、国が一定の医療機関を指定いたしまして、その医療機関にお勤めになっておる医師の中からしかるべき方を指定して指定医ということにいたしまして、その方が証明をする、こういう制度になっております。  これは、本来、企業とは別の立場の方がそういう判定をする、こういうことで発足した制度でございますけれども、たまたま航空医学の専門家が少ないというようなこともございまして、私どもの指定いたしました医師が、日航の場合には日航の嘱託医にもなっておったということでございまして、今回の事故の反省といたしまして、私ども、現在、専門の医師の方の意見を聞いておりまして、その医師の方の御意見、まだ結論が出るところまでいっておりませんけれども、そういう日常の健康管理をする方が一番パイロットの健康のことをよく知っている方なんで、そういう方が指定医をいわば兼務するということは必ずしも一概に排斥はできないけれども、ただいま先生から御指摘いただきましたような、何か情実が発生する可能性があるのではないかという御批判も事実でございますので、先生のただいまの御質問の御趣旨に沿いまして、今後医師の意見を聞きながら、指定医と嘱託医の分離の方向でこの制度を改善すべく検討いたしてまいりたいと考えております。
  105. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ひとつその点は、いろいろな要因もありましょうけれども、ぜひそういった方向で強力な指導をお願いしておきたいと思います。  以上で終わります。
  106. 越智伊平

    越智委員長 辻第一君。
  107. 辻第一

    ○辻(第)委員 三日前の三月二十一日に、北海道の日高地域中心としてマグニチュード七・三、そして浦河地域では震度六という地震が発生しました。大変な被害が出たわけでありますけれども、私は、まず最初に、負傷された方、被害を受けられた方に心からのお見舞いを申し上げて、質問に入りたいと思います。  この地震は、実際のところ予知できなかったようでございますが、マグニチュード七程度の地震というのは、しかも内陸直下型の地震というものは、現在の時点では学問的にも技術的にも予知できないようにも聞いております。また一方では、あの東海地震を予知するような体制ならば予知できるかもわからないという意見も聞いておるわけでありますが、気象庁、実際のところはいかがなものか、御見解を承りたいと思います。
  108. 増澤譲太郎

    ○増澤政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、今回起こりました浦河沖の地震のように、マグニチュードが七程度の中規模の地震につきましては、大変残念ながら現在では予知できかねる状態になっておりまして、たとえ東海沖のような観測網をしきましても予知できる技術を持っておりませんことを申し上げざるを得ません。     〔委員長退席、楢橋委員長代理着席〕
  109. 辻第一

    ○辻(第)委員 そういうような御見解でございますけれども、何としても予知できるような技術の開発や対策を将来に向けてとっていただくように、まず要望をしておきたいと思います。  このようなマグニチュード七程度の、しかも直下型の地震は、地震列島とも言うべき日本では、いつでもどこでも起こり得るというふうにも聞いているわけであります。日本じゅうどこでも起こり得るものなのか、それからこの程度の地震はどのような頻度で起こっているものか、お教えをいただきたいと思います。
  110. 増澤譲太郎

    ○増澤政府委員 いま先生御指摘のとおり、日本周辺は地震列島と言われるぐらい、世界の中でも地震活動の最も盛んなところでございまして、過去に起こりました地震の分布図から見ましても、マグニチュードが七くらいの地震はどこでも起こります。もちろん場所によって危険度には差がございますけれども、日本列島どこにでも、すべての地域に起こり得るものであるというふうに申し上げるべきだと思います。  それから、頻度でございますけれども、頻度は、平均しますと大体一年に一回くらいの割合で日本列島周辺では起こっております。
  111. 辻第一

    ○辻(第)委員 予知ができないということ、それから日本じゅうどこでも起こり得る、しかも一年に一回程度は起こる、こういうことであります。  私は関西の出身なもので、ことに奈良に住んでおるのですが、関西は余り地震を身近に感じません。国会の方に参りまして、関東はよう地震が来るもんやなということを実感として感じます。そして、地震に対する対策も関東の方はかなり進んでいるというのもこれまた実感として感じる、こういう状況であります。  今度の北海道の地震は、地震が頻々と起こる地域でありますので、その対策とか心構えが十分であったので被害が非常に少なく食いとめられた。ところが、もし大都会で、たとえば東京あたりで夕食時くらいにこの地震が起こったら死者が三万六千人も出るのではないか、ある新聞ではこういう報道もされているわけであります。そして、いま申しましたように予知できない、全国でいつでもどこでも起こり得るということになってまいりますと、一番大切なのはやはり心構えというのですか訓練、それから防災ということだと思います。その点について気象庁もこのごろは、前からかもわかりませんが、いろいろ啓蒙をやっていただいておるというふうに聞いておるわけでございますが、ぜひ啓蒙に御努力をいただきたい。そして、大変むずかしいことかもわかりませんけれども、予知できるような体制、あるいはそのような技術の開発に御努力をいただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  消防庁の方、お見えになっていらっしゃいますか。——  いまのような状況でありますので、まず防災ということが非常に重要な問題になってきていると思いますね。その中でも、まず最初に心構えというのですか訓練というのですか、そういうものが重要だというふうに私は思います。もちろん防災上のいろいろな手だても必要だと思いますけれども、その心構えあるいは訓練というようなものについての消防庁としての見解を承りたいと思います。
  112. 松田有弘

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  消防庁といたしましては、ただいま先生御指摘のとおり、国民の防災意識というものが行政のいろいろな施策と相まちまして高くありませんと、災害時には何ほどの効果もあらわさないということでございまするので、災害対策基本法に基づきます地域防災計画なりあるいは消防計画なりそれぞれの計画におきまして、そうした市民の防災意識の啓発あるいは災害訓練等総合的に防災行動力を高めるための施策を、都道府県、市町村を通じて、防災の日を中心といたしまして推進をしているところでございます。訓練等におきましても多種多様な、災害訓練もありまするし、震災訓練もありまするし、またそれらを総合した訓練も数多く行われているのが実態でございます。
  113. 辻第一

    ○辻(第)委員 いろいろ御努力をいただいているということはよくわかるのですが、現実の問題として、私の経験では、末端へ参りますと、いわゆる消防訓練なんというのはわりにあるのです。ところが、地震を想定しての訓練というのはまず覚えがありません。それから一般市民も、私の奈良あたりになりますと、地震というものは奈良では起こらぬだろうと、たかをくくっておるというような側面もあるのではないか、こういうふうに思うのであります。しかし、いつどこで起こるかわからない、予知できないということでありますので、防災、しかも心構え、訓練というものを一層充実させていただきたい。強く要望して、この地震の質問を終わりたいと思います。御苦労さまでした。  続いて、旅行業者と旅館の関係について質問をしたいと思います。  まず最初に、客室自動予約システムというのがありますね。大手旅行業者の幾つかは、旅館と契約をして一定数の客室を、業者のコンピューターで配客する自動予約システムというのでとっております。このシステムによる配客については、旅行業者の手数料は事実上二%程度以上上乗せされているというのが現状であります。このシステムの中に幾つかの問題点があるわけでありますが、私は二つの問題点を質問したいと思います。  一つは、旅館は、客があり大手旅行業者への提供客室があいていても、そこには泊められないために断らざるを得ないというようなことがあるわけです。反面、旅行業者は、配客できなかった場合の空室について全く補償の責任を負っていないというのも現状であります。この問題は民間契約の問題ではありますが、取引上の有利な立場を利用したこのような不公正な取引は問題があるのではないか、こう思うのです。宿泊予定日前一定期日以後も、旅行業者が押さえる客室については一定の空室補償をするなど公正な取引を行うよう指導すべきではないか、こういう点が一つ。  それからもう一つは、大手業者が常時一定数の客室を押さえているために、中小旅行業者あるいはその旅館も、大手旅行業者を通じなければ客室がとれない、そういう事態があります。また旅館は、提供客室以外が満員の場合、客を泊めるためには手数料を払って大手旅行業者へ提供した自分の旅館の客室を買わなければならないということもあります。このような不合理な状態によって発生する手数料分は、長期的に見ますとやはり旅行者にはね返らざるを得ないということであります。こういう問題ですね。  それで、国民旅行の健全な発展を図るという視点から見ましても、公正な取引が行われるよう旅行業者を指導されるべきである、このように考えるわけであります。  この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  114. 西村康雄

    ○西村政府委員 ただいまお話がございましたようにここ数年来、従来の方式と違いましてコンピューターで自動予約システムというのをつくりまして、旅行業者が旅館に対して旅客をあっせんする能力が格段とふえたわけでございます。現状を申しますと、大手旅行業者四社がこの自動予約をやりますし、そしてまたコンピューター以外でも、協定旅館というのはやはりそれぞれ何千軒かあるということでございます。  そこで、これはコンピューターシステムとコンピューターシステムでないものを通じていま問題の御指摘があったと思うのですが、旅館と旅行業者との間ではお互いに言い分がそれぞれいろいろとあるということで、商取引の問題でございますので、私どもはある程度事情承知しておりますが、直接その中でどちらが正しいと言うわけにはいかないということで、今日のところ見守ってきております。いまお話しのような問題もあるのですが、一方では、旅行業者に対して、ぜひ協定の相手方になってくれということを申し出る旅館が引きも切らないということで、やはり大手旅行業者の販売力が大きいので、自分が単独で、あるいは地方の旅行業者に頼むよりは大手の旅行業者を利用した方がはるかに客の回転率がいい、利用率がいいということでこういう現状になっているわけです。  ただいま御指摘の問題の仕組みでございますが、旅行業者が部屋の受け付けをしてお客さんにあっせんするのは、利用日の大体一年前ぐらいから始めております。そして、販売できなかった、客がつかなかった部屋を返すというのは、これはいろいろ旅行業者によって違うわけですが、大体平日分と休日及びその前日に分けまして、平日分については二カ月前から三週間前、あるいは五日前というのもございますが、それぞれそのときから旅行業者あるいは旅館が販売するということで、自由に販売できることにしてありまして、そういう形でやっております。ここら辺の日数については、先ほど申されましたように、旅館の方が実際に買い戻しをしなければならぬというような話の対象になるものでございますから、できるだけある程度前広に、もうお互いが自由に売れるような期間にしよう。ただ、旅館の方も全部部屋を頼んでいるのじゃないので、旅行業者が売れるだろうという部屋数を見込んでやっているのが実情でございます。したがいまして、この日数を早くから返せば、先ほど言われました補償の問題、空室だったから損したということで補償するという問題はないので、ぎりぎりまで押えておくと補償するという問題が生ずるかと思います。  それから、さらに払い戻しは、旅館側が旅行業者に部屋をある期間預けている形になるわけですが、その期間内にもう一回、自分の方にお客さんが来たからぜひ使わしてくれという場合に手数料を取られるというお話を聞きますが、それは実際は手数料なしで話し合いで決めるということになっているようでございます。  こういった大手旅行業者と旅館側との問題については、実は私どもも両方に呼びかけまして、常時合理化のための話し合いをするということで、かなり頻繁に両方がテーブルに着いていろいろと問題を言い合うことにしておりまして、ここら辺についても、たしか旅館側が何か条件を言っておるということはまだ聞いておりません。したがいまして、なおこういった協議を両者でやりまして、納得のいくような形が、私どもの方はそう遠くない期間に結論が得られると理解しております。
  115. 辻第一

    ○辻(第)委員 旅館や中小の旅行業者あるいは旅行者が、不当な条件にならないように適切な指導をお願いしたいと思います。  次に、適マークというのですか、一定の防災上の条件に合格した旅館等に消防機関が交付する適合マーク。これは全国的には三月じゅうを検査完了のめどとしているということでありますが、この春から本格的に適合マークが合格旅館に交付される、このように聞いています。ところが、この検査は、二階以下または客室定員三十人以下の旅館は対象外となっているために、これらの旅館では安全であっても適合マークが交付をされないということですね。ところが、旅行業者が旅館の代理契約やあっせん等を行う場合に適合マークの有無を条件とする、こういうことがありますね。そうなりますと、これらの小旅館は不当に不利な条件に置かれることになろうと思います。ですから、本来、適合マークの対象外のこれらの小さい旅館に対しまして、適合マークがないということでもって不利な扱いをすることのないように旅行業者を指導していただきたい、こう思うわけですが、簡単に答えていただきたい。
  116. 西村康雄

    ○西村政府委員 いまお話しのようなことで、二階以下の建物につきましてはマル適制度の適用がない。ところで、旅行業者に対しまして私どもが通達をしておりますのは、今回のマル適マーク以前の通達でございますが、旅行業者が継続的に送客をするという場合には、消防設備等の状況を十分調査した上で取り計らえということを言っているわけでございます。  したがいまして、今回の場合も、当然、マル適制度があるかないかということは調査対象でございまして、マル適制度の適用がないからということでこれは不安全だということにはならないということが第一です。  そして、適用対象でない施設についても、設備上どうかということは当然消防機関に聞くべきことでございますので、これは従来同様に引き続き聞いて、消防機関の意見をもとにして送客を決めるということで、消防がだめと言えばだめという態度で進ませるようにしたいと思います。
  117. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、旅行業者が発行する旅館券というのですか、クーポン券というのですか、これは料飲税等の税金を含めた金額になっているものが多いわけです。旅行業者と旅館との契約では、これらの税金を含めた額に対して手数料を旅行業者に支払うよう定めたものが見られます。  料飲税等は、利用者が納税者ですね。それから、旅館等の経営者が特別徴収義務者となっているわけです。このような場合は、旅行業者が報酬を得て特別徴収義務者である旅館経営者を代理して税の徴収を行っているということになるわけですね。ですから、旅客の便宜上、クーポン券を税金を含めた金額とするのは認められるとしても、それによって報酬を得るのは不適当である、このように考えます。そういうことがあれば改めるよう業界を指導されるべきである、こう考えますが、見解を伺いたい。
  118. 西村康雄

    ○西村政府委員 いまお尋ねのような事例につきましては、大手の旅行業者の発行しているクーポンについては、税金を明確に外すようにしております。  それから、中小である国内の全旅協クーポンと言われておるものでございますが、中小の国内旅行業者の参加しているもの、これにおきましても税金は手数料から除外することになっております。  したがいまして、私ども承知しているようなクーポンについては御指摘のような例はないわけでございますが、もしそのような事例を私ども発見いたしましたら、直ちにこれを是正させるようにいたしたいと考えております。
  119. 辻第一

    ○辻(第)委員 続いて、料飲税については、納税者の理解を高めるためもあって、旅館等の経営者は料金と料飲税を受け取ったときには、それを支払った者に対し料金及び料飲税の領収証を出すことが義務づけられております。地方税法百二十九条ということです。  ところが、特に主催旅行においては、旅行業者が旅館に対し、旅行者に領収証を渡さないように、こういうふうに要求する場合があるということであります。主催旅行といえども、旅行業者はあくまでも代理媒介というようなことであって、料金及び料飲税を支払った者はあくまでも旅行者であります。だから、法の趣旨からいっても、旅館の領収証は客に渡すべきものであることを旅行業界に十分指導さるべきであるというふうに考えますが、どうでしょう。
  120. 西村康雄

    ○西村政府委員 ただいまのお話でございますが、一般に手配旅行の場合には、これは当然のことでありますが、委託者に対して渡しております。  それから、主催旅行の場合でございますが、この場合は通常、団体による精算でございますので、個別の旅行者に対してそれを渡すということがないわけで、その点で誤解が生ずるのかと思います。ただし、セット旅行のように個人個人に対して提供する場合には、主催旅行の場合でも領収証を渡すことになっておりますし、そのように励行していると思います。
  121. 辻第一

    ○辻(第)委員 旅館や旅行者のいろいろな権利を守るような点でぜひ一層の御努力をいただきたい、このことを強く要望して、次の質問に移りたいと思います。御苦労さまでした。  次に、国鉄の問題に移りたいと思います。  まず最初に、運輸省にお尋ねをいたします。国鉄運賃の連続値上げと客離れという悪循環が繰り返されているわけでありますが、ことし四月に予定されている旅客平均六・一%アップ、通学定期は一九・二%アップなどの値上げ計画があるわけでありますが、大手私鉄との競合区間などに限って運賃割引や値上げ幅の抑制をしているだけであり、これでは、ごく一部の路線での少しばかりの客離れ防止が期待されるだけで、圧倒的部分国鉄線では利用者負担が強められ、客離れが強められるという状況であります。  とりわけ重大なことは、毎年連続して繰り返される運賃値上げや、一向に改められないサービスの問題などのために国鉄に嫌気が差す、こういうような状況のもとで、国民の国鉄離れが一層進む、そのことが国鉄経営や財政に深刻な影響をもたらすということであります。また運輸審議会の公聴会でも、この運賃値上げに賛成の人までが、通学定期の割引三%引き下げは反対をしている状況であります。割引三%の引き下げといっても、値上げと相まって、実際は約一九・二%の大変な値上げになるわけであります。私どもは、このような運賃の値上げ、大幅な通学定期の実質の値上げということは許せないというふうに思うわけでありますが、このような状況のもとでの運輸省の国鉄運賃値上げ申請の認可に当たっての基本的な考え方、それと、特に通学定期の割引率三%の引き下げ、言いかえれば一九・二%の値上げをそのまま認めるのかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  122. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 お答えを申します。  国鉄の再建の問題を考えるに当たりましていろいろな角度がございますが、従来言われておりますいわゆる三本柱、これは、まず国鉄自身が徹底した経営努力を行う、経費を節約し増収を図るという経営努力、これがまず第一番でございます。さらに第二番目といたしまして、国鉄経営努力の及ぶ範囲外のいわば構造的な問題、これにつきましては、政府がいわゆる助成等を行いましてこれの解決を図るということでございます。しかしながら、第三番目といたしまして、こうした二つの措置を講じましてもなおかつ、国鉄経営というものに着目をした場合は、運賃の改定によりまして利用者にも負担をお願いしなければならないということが第三番目の柱として考えられてきたわけでございます。  昭和五十二年におきまして、いわゆる運賃弾力化法というものが運賃法の改正によりまして成立をいたしました。以後毎年、先生の御指摘のように、法律の許容範囲内におきまして運賃の改定が実施をされてまいったことは事実でございます。毎年改定をいたしました形の結末といたしまして、御指摘のような、大都市におきます大手私鉄との運賃格差というような姿が現実に一つの問題として浮かび上がってはまいっております。しかしながら、なお地方におきましてはこれが逆な現象で、国鉄運賃の方が中小私鉄あるいはバスなどに比べましてまだ格段に安いというような状況でございまして、都市と地方という両面にいわば国鉄運賃が逆転現象を生じておる。ここに長い歴史を持っております国鉄全国一律運賃制度というものの見直しをする時期が来たのではないかというふうにも考えておるわけでございます。さしあたりまして、運賃改定に当たりましてはこうした点も十分考慮し、きめの細かい工夫を行って、単なるフラットな値上げということでなしに、いろいろと工夫をこらして値上げをする必要があるというふうに考えておる次第でございます。  ただいま先生の御指摘の通学定期の問題でございますが、現在、通学定期割引率が七四・三%、まだかなり高率の割引が残されております。他の公営の鉄道あるいはバス、そうしたものの通学割引制度の非常に低いものに比べまして、かなりまだ高いということは事実でございまして、その結果、国鉄の財政問題におきましても、そうした公共負担というものが圧迫要因の一つであるということにもなっておるわけでございまして、これの是正を徐々にしてまいりたいということでございます。今回も三%の是正を考え、七四・三%の割引率を七一・三%にダウンをしたいと考え国鉄が申請をしてまいってきております。  基本的な方向としては、私ども、やむを得ないところではないかと思いますが、なおこれらの問題につきましては現在運輸審議会に諮問をいたしまして、運輸審におきまして慎重審議、十分な検討をいま続けておる最中でございまして、これの御答申を待ちまして私ども認可をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  123. 辻第一

    ○辻(第)委員 国鉄の赤字の根本的なところにメスを十分入れないで、安易に運賃の値上げが繰り返されておるということは私は許せない。しかも学生の定期約一九・二%、非常に大幅な値上げになるという点についても、私は許せない問題だということを再度強調をして、次の問題に移りたいと思います。  次に、国鉄の赤字問題に関連をして、設備投資の問題で国鉄にお尋ねをいたします。  いまのような借金による設備投資をいつまでも続けられるのかどうか、この点が一つ。そして、五十六年五月二十一日の経営改善計画で示されている収支試算、これでは昭和六十年度の利払い額は幾らに見込んでおられるのか、お尋ねをします。
  124. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 国鉄経営に当たりまして、利子負担が経営を圧迫する大変大きな要因であるということは、私どもも十分に認識をいたしております。したがって、経営改善計画の中でも、設備投資については極力抑制をしてまいりたいという方向考えておるわけでございます。しかしながら、一方においては、国鉄は装置化あるいは近代化が大変におくれている部分、それから車両あるいは設備等の面におきまして老朽化あるいは陳腐化が進行している、また、大都市圏におきましても輸送需要に対応していく必要があるというような、もろもろの必要性はあるわけでございますけれども、しかし、いま申しましたように、この過大な設備投資というのは経営を圧迫する要因でございますので、私どもとしては、必要最小限にとどめてまいる方向考えておるわけでございます。  それから、六十年におきます設備投資による利子負担は、今後一兆円程度の投資を毎年続けていくということを前提にいたしますと、七千七百億円ぐらいの額になるのではないかと見ております。
  125. 辻第一

    ○辻(第)委員 その国鉄の収支試算での六十年度の計画を見てみますと、私ども計算をいたしますと約九千八百億、このような利息になるわけであります。とても七千億ぐらいで済む問題じゃないと思います。九千八百億といたしますと、昭和五十五年度の約四千八百億に比べますと約倍であります。それから、六十年度の営業収入は四兆三百億と見込んでおられるわけですが、これから見ますと約四分の一。それから、六十年度の損益は九千九百億と計算されているわけですが、それとほぼ一致する大変な利息であります。このよう利息を払って、国鉄経営再建、赤字克服がどうしてできるのかということであります。大変な借金による設備投資を続けてこられたし、まだこれからも続けられようというのが現状ではないか、こういうふうに思うわけであります。  次に、運輸省にお尋ねをするわけでありますが、昭和四十三年の十一月に政府が国鉄財政再建推進会議なるものをつくられ、そこからの意見書では、「再建期間中における国鉄の設備投資については、国鉄の役割、財政状態等を勘案し、次のとおりとする。(1)設備投資額 約三兆七千億円」とあるわけであります。十年間の設備投資が約三兆七千億、このように見込まれたわけであります。  ちょっと資料を見ていただきたいと思うのでありますが、委員長よろしいですか。
  126. 楢橋進

    ○楢橋委員長代理 どうぞ。
  127. 辻第一

    ○辻(第)委員 ちょっと資料を見ていただきたいと思うのですが、まず、ちょっと違うのですけれども、このようなグラフの、政府関係機関決算書より、国鉄決算中工事勘定における支出済額のうち、建設関連利子を除く純工事額をグラフにしたわけでございます。その利子を除く工事額が一番上までということになりますね。それから、そちらでいいますと薄墨になっている分ですね。これは対四十五年比卸売物価上昇率を掛けた工事費の推計ということになるわけです。逆に、黒い部分が対四十五年比卸売物価上昇率を超える工事費、こういうことになるわけでございます。  これを見てみますと、昭和四十八年にぐんと工事費が伸びました。そしてまた、五十三年からぐんと伸びたということですね。四十五年からは大体十年間に三兆七千億と言っておられたわけでありますが、五十五年、十年後には、現実は一兆一千三百四十七億、こういうふうにとんでもない過大な投資になっているということであります。そして卸売物価上昇率を超える分を見てみますと、上の黒いところですね、相当な額になるわけであります。で、皆さん方に渡したこの黒い部分を足してみますと、二兆一千八百六十一億というふうになって、これを単純に七・五%で利子を計算して掛けますと、千六百三十九億、こういうふうに過大の投資のために利息がふえておるということが言えるというふうに考えるわけであります。  次いで、昭和四十八年の政府の国鉄再建計画では、あの有名な列島改造に乗っかって設備投資額は十兆五千億に本当に大幅に拡大をされた、こういうことであります。そして、この工事費の抑制、さっきも言われましたけれども、このグラフを見てみましても非常に高いところで横ばい、ごくわずかにまたふえていますね。こういう、言うならば高値安定というんですか、大きく増大したレベルで横ばいというような状況になっているわけであります。  このように、国鉄財政のことを考慮しないと言ってもいいような膨大な計画を立てて、そしてそのような過大な投資を行ってきた、このことについて運輸省としてどのように反省をされているのか。また、いま申しました、工事費の抑制と言いながらも高値安定というような状況をどのように認識されているのか、お尋ねをいたします。
  128. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 詳しい中身につきましては国鉄から御答弁申し上げますが、大づかみな数字でお答え申し上げますと、第一次の再建計画の十年間三兆七千億に対しまして、これが実績では四年間続いております。四十四年から四十七年まで、合計いたしましてその間の投資額が一兆六千億ということになっております。パーセンテージが四五%でございますから、四割でございますと大体計画どおりということであるわけですが、若干、五%程度これがふくれ上がっておるということが事実であろうかと思います。  次の四十八年度からの新しい再建計画の十年間の投資予定額は、おっしゃるとおり十兆五千億という金額になっています。これは三年間続けられました。四十八年から五十年度までの三年間で投資額が二兆一千億でございまして、約二割程度でございます。三年間で二割ということでございますので、これは予定計画よりは少ない投資であったというふうに概括して言えるのではないかと思います。
  129. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 十年間で三兆七千億ということで、それに対してその後かなりオーバーした、過大な投資を行ったのではないかという御指摘かと存じますが、ただいま鉄監局長から申し上げましたような四十四年から四十七年まで、それから四十八年から五十年までと、それから五十年代の前期の経済計画対応ということで三年間、これらを全部合わせますとちょうど十年になるわけでございますが、トータルいたしました投資額は六兆二千億円でございます。  先生から、卸売物価指数に基づいてということで修正をされたということを前提にお話があったわけでございますけれども、私ども物騰率をどう見るのかということではありますが、卸売物価指数あるいは人件費の上昇分、こういうものを見てまいりますと、四十五年度を一といたしますと、五十三年度では二・〇七という数字でございます。そうしてみますと、大体物価上昇率程度の増加であるというふうに考えてみてよろしいのではなかろうかというふうに思っております。
  130. 辻第一

    ○辻(第)委員 昭和五十五年度の日本国有鉄道監査報告書、ここの附属資料の国民経済指標というのに卸売物価指数というのがあるんですね。消費者物価指数もありますが、この卸売物価指数——建設をするわけでありますから、私はやはり卸売物価指数の方が適切ではないかということで、これを基礎にしてやったわけでありますけれども、その方が本当に適切ではないかということであります。そうなりますと、先ほども申しましたように大変な、過大とも言うべき投資がやられてきたということは歴然たるものがある、こういうふうに思うわけであります。  そこで、次に話を移したいのですが、国鉄の輸送シェアの低下は本当にすさまじいものがあります。もう一つお渡ししました資料で見ていただけばよくわかると思うのですけれども昭和三十五年旅客シェアは五一・六%だったのが、五十五年は二四・七%になりました。また、貨物のシェアでは三十五年が三八・六%だったのが、五十五年には八・四%、これに至っては四分の一以下ですね、こういうふうになっております。私どもは、エネルギー問題あるいは公害の問題あるいは交通事故の問題、いろいろな問題を勘案し、国鉄の大量公共交通機関としての役割りを本当にもっともっと高めなくてはならない、この点で一貫して主張してまいったところであります。  ところが、国鉄さんの現実は、昭和五十六年度のいわゆる運輸白書には、「三十年代を通して積極的な設備投資を行った。」また「四十年代前半には、引き続く経済の高度成長により国内総輸送需要が伸びる中で、三十年代後半から進んでいた旅客輸送におけるモータリゼーションの進展と貨物輸送における自動車、内航海運の発展に起因する輸送構造の変化は、更に顕著なものとなった。」と記されております。さらに、「一方、第一次石油危機以降、我が国経済が安定成長へと移行したことを反映して、国内総輸送需要は旅客、貨物とも伸びが鈍化した。特に国鉄については、四十九、五十、五十一各年度の運賃改定、航空輸送の著しい発展、高速道路の相次ぐ開通等により、それまで比較的順調な伸びを示していた優等列車輸送量が、五十年度をピークとして減少傾向に転じたため、旅客輸送量全体もほぼこれと同じ幅で減少し、また、貨物輸送量も引き続き減少傾向となっている。」このように記されているわけであります。  言うならば、このことは、このように国鉄の輸送シェアが低下をしているということをあたかも当然であるというような立場で考えていられるというふうに考えるわけであります。私ども考えとこれは大きな違いがあるというふうに思うのです。そして、このような状況の上に国鉄の輸送シェアが大きく低下しているということをさっき申しました。  それから、公的投資に占める国鉄投資のシェアは、ほとんど変わっていないですね。もう一枚の資料の下の方を見ていただきますと、昭和三十五年が九・一%、これは公的投資に占める国鉄投資の割合ですね、それが四十五年には七・八%、それから昭和四十八年にはまたうんと上がりまして九%、それから大体七%程度でずっと来ているわけですね。上の方のなにを見てみますと、実にみごとに国鉄の輸送シェアが低下をしておる。ところが、国全体の公的投資に比較して国鉄投資というのはほとんど並行したような状態で来ておるわけですね。  こういうことを見てまいりますと、第一次石油危機の後、昭和四十八年ごろから景気対策のために国鉄投資を飛躍的に拡大をしてきた、こういうやり方をしてきたことをどのように考えておられるのか。また、今後も国鉄の財政を無視して、国の景気対策やあるいは公共投資のレベルを維持するために、国鉄を利用してこのような国鉄投資のやり方を続けていかれるつもりなのかどうか、運輸省にお答えをいただきたい。
  131. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 先生御指摘のように、工事費によりまするいわば借金、それに伴う利子の増大という問題は、国鉄経営上、大変な圧迫要因としてあることは事実でございます。こうした点に着目いたしまして、国といたしましてもできるだけの助成措置を講じ、あるいはまた特に最近では、工事費をできるだけ抑制をする、そして抑制をする中で重点的な配分を行うというふうにいたしておるところでございます。  最近の工事費約一兆円は、これを大きく分けまして、三分の一が安全投資考えていいと思います。何といいましても、お客さんを運ぶわけでございますので、安全面におきましてはこれは欠くことができません。残りの三分の一は、いままで建設をしてまいりました東北新幹線、これがやはり相当ウエートが大きいということで三分の一を占めております。最後の残りの三分の一は、近代化、合理化あるいは大都市の輸送対策といったようなものに割り当てておるわけでございまして、非常に財政的にも大変な中で一兆円の投資をやるということは、普通の民間の会社ではなかなかできないことではございますが、いわば公共的な輸送という面での安全輸送等の点に着目いたしますと、こうした程度の金額の投資はどうしても必要であるということでございまして、経営改善計画の面におきましては、それでもともすればふくれ上がるであろう投資につきましてもできるだけ抑制をし、名目一兆円の横ばいで六十年まで一応の試算の前提としているというところでございます。重点的かつ効率的に投資をやっていきたいというところが、今後の投資の基本的な考え方でございます。
  132. 辻第一

    ○辻(第)委員 最後に、私、いまるる述べてまいったわけでありますが、このような本当に過大な借金による投資を続けてきた、そのことが深刻な国鉄の赤字の大きな一因をなしているということであります。しかも、そのことが、建設業者や大企業の仕事を確保するために国鉄に過大な投資を行わせる、あるいは大企業の景気対策に国鉄を利用する、こういうところに本当にメスを入れなければ国鉄の再建はできないというふうに私は考えるわけでありますが、この点についての運輸大臣の所見を承って、質問を終わりたいと思います。
  133. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 いまの御質問の趣旨がよくわからないのですけれども、しかし、国鉄が依然としてなお公共性の高い輸送機関であるということは、これは間違いない事実でございます。また、したがって、いま問題になっておることは、公共性が高いからといって野方図に赤字財政を放任していいということではない、そこに現在の経営改善計画の大きな眼目があると思うのでございます。  私らは、何も一企業集団のために国鉄を運営しているつもりは全くないのでございまして、やはり公共性の高い国鉄を、より安全に、しかも需要のニーズに合った形で運営していくということを最高のねらいとしているわけでございまして、今後はやはりできるだけ早く、現在のおびただしい赤字体質を改善するということを経営再建計画の中で実現をしていくということを柱としながら、なお、より公共性の高い輸送機関としての再建を企図しておるということをお答えいたしたいと思います。
  134. 辻第一

    ○辻(第)委員 いまの大臣の御所見、私は納得できません。いまのようなお考えでは、本当に国鉄の再建ができるのか、私は心配をせざるを得ないというふうに思うわけであります。もっと謙虚に正すべきところは正し、反省すべきところは反省して、しっかりとしたメスを入れて、国鉄再建のために努力をしていただきたい。強く要望して、私の質問を終わります。
  135. 楢橋進

    ○楢橋委員長代理 次回は、来る三十日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二分散会