○渡部(一)
委員 けさの御答弁を聞いていなかった私はちょっと言いにくいのですけれ
ども、これまた
相当すごい答弁でありまして、
日本は通商によって成り立つ国であると言うなら、
日本のシーレーンは東にも西にも南にも北にも、そこらじゅうにあるわけですね。そして、
インド洋にもあれば、大西洋にもあれば、地中海にもあれば、むしろその辺は非常に重要ですよ。戦後、
日本の自衛隊が何にもしないのに、そういうシーレーンは守られた。海賊船一隻、まともに
日本を
攻撃した国はないという
状況にあったのは何なのか。それは戦争に巻き込まれなかったからであり、
結論的には、非常にあっさりした言い方で恐縮ですが、皆さんの御
努力もあったし、東西緊張もあったし、
均衡があったし、あるときは不
均衡があったし、それはもうたくさんの人の
努力は認めるとしても、結局戦争がなかったからであるとしか言いようがない。
だから、通商が大事であるから、戦争しながら通商を確保するためにシーレーン
防衛が必要だというような
議論は、これまた百年前の戦争を
考えておる
議論とほぼ等しいのだ。そして、百年前の戦争を
考えるのだったら、実際、本格的にわれわれが一番恐れなければならないのは何の戦争なのかというと、手近なところで、後進国から
日本が戦争をふっかけられたって、
日本の膨大な経済力を
考え、国力を
考えたときに、戦争のでき得る国というのはほとんどないわけですから、こういうのはもう来ない。われわれが最も恐れなければならないのは、目の前にある大国、ソビエト、あるいはいまは仲よくなっているけれ
ども中国というような近接大国がかかってきた場合こそ恐れなければならぬ。だけれ
ども、そういう近接大国が本当に戦闘を開始した場合には、ミサイルも持っていれば、核兵器も持っていれば、
航空母艦も持っているという国がやったときに、シーレーンは
防衛できるか。それは明らかにごまかしだと私は思う。
だから、
日本の通商を
防衛するためにシーレーンがあるのではない。それをいみじくも言っている人がある。それは、
ワインバーガーという人が、これで自衛隊ががんばってくれれば、
米国は南西アジアとか
インド洋とかに軍隊を実質的に転用することができる、だからありがたいのだと明瞭に言うておるじゃありませんか。
日本としては戦争に巻き込まれない方が得なんだ、戦争がないことが得なんだ、そのための平和外交をうんと前に出すのがシーレーン
防衛の第一の中の第一の作業である。だから、この問題は、シーレーンの言葉でまず
考えなければならぬのは、
世界の戦争に巻き込まれないように、日米が協力して一定の
安全保障能力を発揮しなければならない場合に、どういうふうに両者の間で協力し合いながら態勢をつくるかという話の中から出てくることであって、シーレーン
防衛のためにやっていることじゃ全くないじゃありませんか。
だから、私に言わせれば、シーレーン
防衛なんというのはうそなんだ。それは全くごまかしの用語である。そんないいかげんなせりふだから、
日本がたくさんあるシーレーンのごく一部だけを特別に取り出して
防衛するような奇妙な
議論になってくる。シーレーンを
防衛するなら、
世界のシーレーンを
防衛したらいいじゃないですか。何でフィリピンの横っちょあたりだけしか
防衛しないのですか。東の海面はどうなっているのです。北側はどうなっているのです。南はどうなっているのです。地球の反対側はどうなっているのですか。だから、私はわからないと言う。こういう用語で
説明し、
日本国民をごまかそうとするのはわからないと述べているのです。そうでしょう。そういうことが
防衛問題をわかりにくく、煩わしくさせる最大の理由だ。
そして、いま
アメリカは一これだけじゃ答弁しにくいだろうから、もう少し答弁しいいことを一緒にまぜて言うから、ちょっと待っていらっしゃい。いま
アメリカにとって必要なのは何か。いま
アメリカは予算が足らなくて、予算が大赤字です。見せかけは膨大な軍事予算を組んでいる。だけれ
ども、執行できてないじゃないですか。
アメリカは単年度主義の予算を組んでいるのですよ。去年、おととしの予算は、執行されてないじゃないですか。
防衛予算が大事だ、大変だからというので、福祉
関係予算を削って
防衛予算に回した。しかも、実際には執行していない。その予算をカットしてしまったじゃないですか。要するに、いまの時期、
アメリカは予算を緊縮させるために
世界の緊張を大声で言う必要がある。そして、その予算は実際には発効していない。
アメリカの軍需産業の大どころはいずれも、下請になる軍需産業家たちが倒産したため、特殊なロケットとか、特殊な核兵器の一部等を除いては発注不能ではないですか。だから、予算的に肩がわりさせられておるのじゃないですか、簡単に言えば。
だから、向こうがそういう予算の肩がわりの方式でくるなら、こちらも膨大な軍事予算を組みながら発効させない、執行しないというやり方で応戦するしかないじゃないですか。それを口車に乗って、シーレーンという言葉に乗っかって、そして
日本国民をおどかして予算を次から次へと大型に組もうとするのは、それは口車に乗り過ぎではないでしょうか、違いますか。私の言っていることは、私は
防衛庁の職員の諸君とも、
外務省の職員の諸君ともいろいろな話をしているから、私の
意見がここで単に述べたのでないことは、皆さんよくおわかりでしょう。こういうことを私が知っているということは、
外務省の中にも
防衛庁の中にもこういう
意見の持ち主がたくさんいることを示していますよ。そんなお粗末な
議論で、このシーレーンの問題をさもあるかのごとく
議論するというこのナンセンスさ、もうあきれ返って私は物が言えない。さあ、御答弁いただきたい。どういうふうに私をごまかすか、やってもらいたい。