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国務大臣(中山太郎君) 古賀
委員にお答えを申し上げます。
日本学術
会議は、御案内のように、連合軍の占領下であった昭和二十三年に法律によって設置をされた学術団体、その法文に示すところでは、いま先生御指摘のように、
日本の科学者を内外に代表する機関というふうに法律に明記されているわけであります。ちょうど今期で十二期目を迎えておるわけでございますが、御指摘のように会員数は二百十名、そうして第一部から第七部までございます。そして、有権者が十二期の選挙では約二十二万、こういうことでございますが、全国区と地方区に分かれておりまして、全国区は専門別で七十五、専門にかかわらないものが八十六議席、地方区が四十九議席ございまして、総計二百十議席、こういうことに相なっております。地方区は東北、北海道とか、全国区を七ブロックに分けまして七部会で選挙をやるわけでございますから、ちょうど四十九選挙が行われるわけでございますが、十二期の選挙ではそれが九〇%、四十九選挙区のうち四十二選挙区が実は無投票、つまり候補者が一人しかいないというふうな事態が起こっておりまして、二十二万の有権者の中で九割が候補者がそれぞれ一人しか立たないということはきわめて異常な事態だと私どもはこれに注目をしておるところでございます。有権者が果たして二十二万で全部
日本の学者を網羅しているかというところにも問題がございます。
この法律の規定で、学術
会議でこの選挙制度というものが自主的につくられておりますけれども、これは公職選挙法の規定は一切適用されません。全額国費で運営される学術
会議の選挙は、公職選挙法の規定を受けない。そして、選挙運動は学術
会議の選挙管理
委員会が決めた公報と立候補者のはがきだけで、ほかの選挙運動は電話による勧誘といえども厳重に禁止をされているというのが学術
会議の選挙の仕組みになっております。
そこで、この学術
会議の一部から七部までの有権者がどうであるかというと、各部が定員が三十名ずつでございますけれども、第一部が一万三千人、これは文学とか、哲学とか、史学の分野であります。第二部が法学、民事法、刑事法、
政治というところはわずか二千五百人。第三部の経済、商学・経営というのは四千百名。第四部の数学、天文学、物理学、化学、地学というところは一万六千名。第五部の工学が八万一千名。第六部の農学、林学、畜産、農業経済というものは一万九千名。第七部の医学、歯学、薬学、公衆衛生というものが、有権者が九万一千名になっておりまして、それぞれの各部の会員数は三十名で均一でございますけれども、有権者数は一番の最低が二千五百から一番多いのは九万一千と、実に大きなばらつきが出ておるわけでございます。
この有権者の資格は、実は非常に特殊なものでございまして、まず
日本国籍を有している者。それから旧制の大学を出て二年たった者、あるいは新しい大学令で卒業後二年の者。それから専門学校あるいはいろんな旧制専門学校、新しい短期大学というようなものを卒業して四年たった人、あるいは研究職を五年やった人。こういう背景の中で専門分野での研究で専門誌に論文が掲載された者。こういうふうな一つの、それと似通ったような仕組みにつくられております。
だから、実際に有権者たる資格者が
日本全体に何十万いるかということは実態の把握ができないわけでございまして、選挙の前の年になりますと官報に掲示をする、あるいは大学、研究機関、あるいはいろんな、たとえば
日本地理学会とか物理学会とかというようなところにお願いをして、どうかひとつ有権者の登録をしてもらいたいと、こういうことで登録をした人がいわゆる二十二万名出ておるということでございます。これを創設期の昭和二十三年の有権者は何人だったかというと四万人でございます。現在が二十二万人、ところが立候補者の方はどうかというと、昭和二十三年は九百四十四名立候補されておられます。最終の昭和五十五年に実施された選挙では、定員二百十名に対して二百四十二名、こういうふうないわゆる立候補者が出ておりますけれども、非常に立候補する人の数が減ってきた。
その背景には、一体どういうことがあるんだろうかということをいろいろ
調査をいたしますと、推薦母体が強力で大組織の応援がないと当選できない。だから組織のない学者はいかに優秀であっても当選ができないという仕組みになって、結論として出ておる。また第一線で研究に没頭しておる学者は、この選挙に出ようという関心は余り持っていない、こういうことでいろんな優秀な学者の先生方に意見を聞いてみましても、評価はきわめて低いわけでございます。
そういうことで、選挙の仕組みというものが全額国費で運営される一つの組織でありながら、これで果たして
日本の科学者を、外国に対しても国内に対しても代表する機関として実際にその価値というものが存在するんだろうか。こういうことからいいますと、最近の研究機関等の学者の意見ではきわめて低い評価しかいたしておりません。また、先般六月に、ノーベル賞の候補者を選考したりするスウェーデンの王立アカデミーを訪ねていろいろ意見を聞きましたが、
世界のノーベル賞を贈るロイアルアカデミーが
日本学術
会議の存在を知らない。また、イギリスのロンドン王立協会、これは一六〇〇年代にできた
世界で一番古いと言われるアカデミーでございますけれども、ここも
日本学術
会議は知らない。
こういうのが実は学術
会議の実態でございますけれども、これに対して実はその原因が一体どこにあるのかと、こういうことで、帰国後にこの実態
調査をいたしましたが、
日本学術
会議が海外の
国際会議に派遣している学者、そういうものは会員が二〇%、有権者から五〇%選んで外国へ派遣をしておると有権者は、御案内のように、学術
会議から派遣をされたことでございますけれども、それはあくまでも臨時の
委員的な存在でございまして、帰国後は
日本学術
会議と関係ない、こういうふうな
現実が実は存在しているわけでございます。国費を使い、大変な税の問題で苦しんでいる
国民の血税を使う以上は、やはり政府としては内外ともにりっぱな学術団体として評価されるような仕組みに思い切った改革をすることが必要ではなかろうかと、そのように
考えております。