○小柳勇君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
政府から
提案されました行革を推進するための
補助金等縮減法案に
関連して、
総理ほか
関係閣僚に
基本的な問題をただすものであります。
私は、まず最初に、
総理の政治姿勢について三つの点を伺いたいのであります。
その一つは、この
臨時国会の冒頭における
代表質問で、わが党の同僚議員がH・J・ラスキの言葉を引いて、政治のよしあしを見るには、「老いたる者を見よ、そして幼き者を見よ」と、
鈴木総理に政治の哲学と理念の確立を求めたのであります。
総理、いかがでございますか。思い出していただけますでしょうか。約一カ月の間、
衆議院における
審議の過程で、そして
南北サミットに御出席の中で、この点お考えいただけましたでしょうか。
今回の
法案によります老いたる者、幼き者に対する
予算だけを見ましても、
昭和五十七
年度概算要求削減額約八千億円の中で、厚生省
関係が七八%に及んでおるのであります。まことに鬼の
鈴木善幸内閣と呼んでも差し支えない。
また、さる
臨調委員である財界人の話によりますと、
総理は、
臨調委員の方々が「中長期的な
国家戦略がないと仕事がしにくい」という
質問をされたのに対して「そう言われましても、私にはそんなものはないし、戦略のあるなしにかかわらず、
行政改革は断行しなければなりません」と言われたそうであります。私はこれは何か間違いであり、一国の
総理がこのようなことを言われるはずはないと思うのでありますが、
総理に確かめておきたいのであります。
国家の大
事業とも言うべき
行財政改革を断行するには、高い政治的理念と哲学が必要であり、
総理の強い指導性が望まれるのであります。巷間には、鈴木政権延命のための
行政改革とすら
批判している者がいるのであります。
総理の
行財政改革に対する理念をいま一度確かめておきたいのであります。
次いで、私は、
総理の御出席になりました
南北サミットについて若干の所見を申し述べながら、あなたの
基本姿勢と今後の見通しなどについて伺っておきたいのであります。
総理は、カンクンの対話
精神を今後に生かす道をどのように考えておられるか。私は、
総理が演説では
包括交渉の
重要性を強調されました。しかし、アメリカのレーガン大統領を説得することができなかった。米国の頑迷な姿勢に追随して、せっかくの
南北対話の機会に積極的な役割りを果たすことができなかった。まことに残念でならないのであります。途上国に自助を説きつつ、自分は米国追随では、独自の哲学、自主独立の政治は語れないのであります。とはいえ、私は、今回の失敗にかかわらず、
日本政府がさらに積極的な
努力を積み重ねることを切望するものであります。
総理並びに外務大臣の所見を伺います。
なお
関連して、
政府の平和と軍縮のための対外
経済援助の拡大と
原則の確立、そして日ソの貿易と
関係改善についても特に
総理並びに外務大臣の誠意ある
見解を求めたいのであります。
政治姿勢の第三点として、私は、今回の北炭の夕張新鉱で発生した惨事につきまして、犠牲になられた御家族に心から哀悼の意を表するとともに、
総理の所感を求めておきたいのであります。
この
災害は天災ではなく人災であります。また、
災害発生の直後に、林社長は、社員が坑内に取り残されておるにもかかわりませず注水を宣言するなど、まことに人間無視と保安軽視の態度をとり、怒りを禁じ得ない。いまはただ、坑内に取り残された方々を一刻も早く家族のもとに帰すことが
至上命題でありますが、救助に全力を挙げるとともに、亡くなられた方々の遺族補償と生活保障に十分尽くしていただきたい。特に、地域社会を守るために炭鉱の再建に全力を挙げていただきたい。
総理、
政府の
基本姿勢と、四万の人口を有する夕張市民の半数以上がかかわっておる再建問題について、誠意ある答弁を求めるのであります。
さて、本題の
行政改革について、私は所見を申し述べつつ、
総理、あなたの確固たる姿勢と明確な答弁を求めたいのであります。
もともと
行政財政改革とは何でありましょうか。それは、
行政財政の民主化であり、
時代の
要請を先取りする質的な
改革でなければなりません。言葉をかえて申しますならば、
国民の求めておる
行財政の
改革とは、政官財の三者の安易なもたれ合いによってもたらされた利権と汚職の構造にメスを入れ、清潔でしかも公正な
行政制度を確立し、
国民に信頼される
行財政をつくり出すものでなければならないと考えるところであります。
総理の犯罪とも言われ、
国民に大きな衝撃を与えた五年前のロッキード事件以来、
行政改革を求める世論の潮流は、何よりも、
政府と、これと癒着を強化する財界、そしてこれらに追随する官僚機構の徹底した
改革を求めてやまないのであります。事は、ロッキード事件に限りません。
行政の腐敗の根は、あの韓国のソウルの地下鉄工事の入札などの日韓
経済協力にまつわる疑惑を初め、海外の資源確保や
経済援助にかかわる拡大を見せ、
政府と
行政、そして企業の三者がもたれ合う利益の供与と還元の仕組みを
国民の前に明らかにしてきたのであります。大企業中心の公共投資がすでに八十二兆円もの
赤字国債をつくり出し、
国民の肩にのしかかっているのがその具体的なあらわれであります。
総理、昨年の衆参同時選挙によって自民党が多数を獲得したからといって、第一に
改革されるべき構造的腐敗の実態を忘れられては困るのであります。
特に、政治資金の現況を見るとき、
政府与党と大企業との癒着はますますどろ沼の深みに入っているのであります。去る八月四日の各新聞は、全紙挙げて自民党各派閥に対する大企業の献金の実態を暴露しております。
総理、こうした暗い政治資金の現状を放置したままで
行政改革の
国家的
事業を遂行することは問題であり、無理があるのではありませんか。
国民の大多数を納得させるものにはならないと私は考えるのであります。少なくとも
行政改革を進める前提として、政治資金規正法の抜本的な見直し改正と、自民党の総裁として自民党の体質改善を断行すべきではないかと思うのでありますが、いかがでございましょう。
総理の
決意のほどを伺っておきたいのであります。
わが
日本社会党に対して、
行政改革反対の社会党などというデマと誹謗が流されておりますが、冗談ではございません。わが党は土光
答申が出る一カ月前に、すでに「
国民のための
行財政改革をめざして」という百七十一ページ一万語に及ぶ中間報告を世間に発表いたしました。それを
内閣総理大臣、あなたにも申し入れをしております。また、土光
臨調会長にも申し入れをいたしておるところであります。すなわち、
行政改革の目標は、何よりも平和を守り、
福祉を最優先し、分権自治を確立することであります。その
実施のために、民主、公正、
効率の三
原則で
改革を進めることを主張しているのであります。いま
国民世論の最大公約数がここに存すると確信するのであります。
その具体的方法としては、まず腐敗の構造を徹底的に
改革するとともに、一部の特権やむだをなくし、不公平な税制などを是正することであります。また、情報の公開
制度や
行政の監察
制度を確立し、閣僚や議員、高級
公務員の資産は公開制とし、あわせて
中央集権の閉鎖的な官僚政治を住民の参加し得る
地方分権の政治に改め、
国民生活に密接な
関連のある
福祉や教育などの充実を図っていくべきものと思います。
とりわけ、この
国会に
提出されました
政府の一括
法案、すなわち七項目三十六
関係法律を一本にまとめた
法案は、まことに失礼ではありますが、これは
行政改革の名に値しないものであります。五十七
年度予算概算要求のゼロシーリングの隠れみのでしかありません。
総理、あなたは、
衆議院での
審議過程での
批判を率直に受けとめ、
行政改革の理念と戦略を再構築されて、
国民のだれもがその内容を理解し、
協力し得る方向に転換すべきだと考えますが、いかがでございましょう。
臨調の第一次
答申において、
総理も繰り返し、
行政改革の理念の方向は、国内的には「活力ある
福祉社会の実現」を目指し、対外的には「
国際社会に対する
貢献の
増大」を図ることと言われました。
総理、あなたが「活力ある
福祉社会」を目指す以上、まず
政府は明確な将来計画なりビジョンを示すべきであります。単に「
民間活力の導入」とか「個人の自立自助」のみを繰り返していてもそれはむだであります。私は、そのために、社会的な長期的趨勢と
経済の
中期展望とを見据えて、
時代の
変化に構造的に対応していくのでなければならないと考えます。ところが
政府は、そうした認識も
展望も示してこなかったのであります。
また、
わが国が「
国際社会に対する
貢献の
増大」を図るためには、
政府は平和と軍縮の路線に徹し、いたずらに仮想敵国をつくらず、そして特に対外
経済援助の
増大に当たっては平和と民生安定の目的を厳しく遵守すべきでありますが、いかがでございますか。そのためにはいまの外務省の
行政機構の
改革こそ急務だと考えますが、外務大臣の
見解を求めます。
次に、行管長官にお尋ねいたします。
一月余りの
衆議院における
審議によって、
法案の形式はともかく、どのような問題がどのように整理されたのか。たとえば
年金基金への返済の方法や四十人学級計画の進め方などについて、具体的に正確に御説明をいただきたいのであります。
なお、
臨調の
基本方針でもあります「増税なき
財政再建」について、
政府の
基本姿勢を明らかにしていただき、そして特に実質的な増税になっております現在のこの実態をどう是正していくのか、これは
総理大臣に明快な答弁を求めたいのであります。
最後に、
人事院勧告について申します。
公務員のストライキ権のかわりに制定された
人事院制度が今日まで
公務員労使間の問題解決にどれほど尽くしたか、その役割りを高く評価しなければなりません。今
年度の
給与問題につきましても
民間に準拠して妥当公正に
勧告しているものと信じます。この
人事院勧告を尊重することは法治
国家の政治と
行政の基礎であります。
人事院勧告の即時完全
実施を鈴木内閣に強く
要請して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣鈴木善幸君
登壇、
拍手〕