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政府委員(
森実孝郎君) 御指摘がございました中海干拓といわゆる南総開発、それぞれ現在進行
段階を全く異にしておりますので分けて御
説明さしていただきたいと思います。
私
ども、もちろん基本的には干拓事業は
国土の造成であり、また一方においては狭隘な経営
面積の拡大に連なるものとして
評価していかなければなりませんが、他方現在の米の需給
状況等を頭に置きまして、その
営農のあり方等については十分念頭に置かなければならないし、また同時に環境保全等との関係は十分調整して事を進めなければならないという認識を持っております。
中海につきましては、御案内のようにすでに
営農計画の
見直し作業に入っておりますし、また周辺の環境に対する影響につきましても、学識経験者で構成する
委員会を設けまして、中海、宍道湖の水質、生態系の影響
調査を行ってきております。いままでの報告では、干拓、淡水化、さらに汚濁の排除機能、これは潮だまりをつくったり、除塩ポンプをつくるということでございますが、こういったことで湖水の流れがよくなるとか、湖底まで酸素が届くということでプラスの面も
評価されております。しかし、やはり他の条件が同じであるとすれば淡水化が水質の汚濁をもたらしやすいということも、御指摘のように私はまた否定できないところだろうと思います。基本は、干拓が行われる行われないに関係なく、下水道の整備がどの程度この地域で進むかということにかかわる問題でございますが、私
どもやはりこの水質の問題には神経質に取り組んでいく必要があると思っております。その意味で、先般も環境庁長官からも今国会で御
答弁がございましたが、この問題につきましては、県、環境庁と十分調整をとりながら、やはり水質の
調査、必要な
対策ということにこれからも
配慮してまいりたいと思っております。
なお、ハクチョウの保護の問題について具体的に御指摘があったわけでございます。私
ども、これ実は沿革をたどりますと、ハクチョウが中海に去来するようになりましたのはそう古い時期ではございませんが、実はたまたま干拓工事の造成中から飛来してきたというおかしな経過があるわけでございますが、現にあるこのハクチョウの保護という問題については地元からも強い要望があり、また本来そういったものを行政もこれからは十分考えていかなければならないという原点に立っております。そういう意味で、実は関係県、鳥取県、島根県において環境庁の委託で基礎
調査が実施されております。
問題は、これから具体的な事業の過程でどう進めていくかという問題でございます。彦名地区約三十ヘクタールについて、現在ハクチョウの飛来している数が多いわけでございまして、これをまず当面は保護水域として、工事の過程において極力残していきたいと思っております。最終
段階においてどうするかという問題については、いわゆるハクチョウの去来いたします保護区域をどういうふうに設定するかということは、これから地元県でございます鳥取県、環境庁と十分相談いたしまして、どういう内容のものをどういう負担でやっていくかということを幅広く
検討させていただきたいと思っております。
次に、南総の問題についてお答え申し上げます。
南総はまだ実は事業に着手していない
段階でございます。すでに
新聞、テレビ等にも出ておりますので、国会ではまだ申し上げておりませんが、私
ども来年の事業化の予算を組むに当たっては二つの前提があるということをはっきり申し上げております。
一つは、いわゆる漁業補償についてしっかりしためどをつけていく、補償取り決めを結ぶことである。それからもう
一つは、実は南総干拓については、関係県と九州農政局で構成いたします五者
委員会を設けておりまして、この五者
委員会に大幅な縮小案を現在提示しております。問題は、この縮小案について関係県の同意が得られるかどうかということ。これが私
ども事業化についての二つの前提であるということを申し上げているわけでございます。
漁業補償の問題については、懸案の二漁協が片づいたようで、全体としてはかなり進捗を見ておりますが、まだ最後のゴールまでは来ておりません。それから五者
委員会での縮小案の
検討は現在進捗途上でございまして、一方においては、すでに話し合いのついた地区では漁業者も含めて事業の促進方の要望がございますが、やはりこういう二つの条件は十分見きわめていかなければならないと思っております。
なお、環境
評価の問題については、実はこれは長崎南部総合開発にかかわる環境影響
評価委員会という学識経験者で構成いたします
委員会をつくりまして、環境
評価書を取りまとめた経過がございます。これにつきましては、五十四年四月に取りまとめられたものを基礎として長崎県が県として公示いたしまして、すでに公告、縦覧、
説明会を実施して同意を得られた経過がございます。
私
ども、その意味においては一応の環境
評価についての実質的段取りは進めているということは事実でございますが、なお今後仮に事業化するとすれば、公有水面の埋め立ての免許という問題があって、それに環境
評価書をつけ、これについて当然利害関係者の
意見聴取あるいは関係市町村長の
意見聴取を行うわけでございますから、こういったことも十分見守っていかなければならないし、またその上に立って事業化を図るとしても図っていかなければならないだろうと思っているわけでございます。
内容につきましては、漁業の影響については、諌早湾につきましては漁業
生産はこれは当然消滅するということになるわけでございますが、有明海全体については、締め切り堤防付近の一部を除いては、それほど大きな影響はないという報告、
評価を受けているわけでございます。
水質につきましては、淡水湖の水質につきましては、結局諌早湾流域の将来の発展ということを考慮して予測をしなければならないわけでございまして、やはり適正な貯水管理の問題と、関係法規の遵守ということが問題だろうと思います。十分慎重に取り組ましていただきたいと思っております。