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山崎昇君 そこで、総裁にお聞きします。
これは佐藤達夫さんの「国家
公務員制度」という本です。
昭和五十年の九月にあなたが序を書かれているわけですね。これの百六十ページに「
退職手当」の項がございまして、「
退職手当は、職員が退職(死亡による退職を含む。)した場合に、過去の勤労に対する報償として、かつ、退職後の生活の保障を与えるための給与として、その者(死亡による退職の場合には、その遺族)に支給される一時金である。」——「給与」と明確に前
人事院総裁は規定をいたしましたね。あなたがこれ序文を書いている。
そうすると、確かに性格の一端は勤続の報償としてということもあるが、「かつ」で点で切られて、かつ何かといえば、これは退職後の生活を保障するための給与である、その一時金である。給与だということになれば、これは勤労者の請求権の問題に
関連をしてきますよ。単なるその他の勤務条件ではありません。
そうなると、いまあなた方がこの
法律案を提案をしているわけなんですが、それまでの間に一体どれだけ
関連する労働組合と、俗っぽい
言葉で言えば団体
交渉を行ったのか。そういうものなしに、先ほど来
指摘されたような、四十八年と違ったようなやり方で、
人事院の一方的な調査だけでこの
法律案を提案すること自体に問題がある。ですから、この佐藤達夫さんの説が正しいとするならば、当然これは給与ですよ。
ですから、恐らく
片岡委員の方から
指摘されましたように、一体
人事院は
勧告をするんですか、しないんですか。二十三条に言う意見の申し出をするんですか、しないんですか。そういうことが具体的に起き上がってくるんではないんでしょうか。単なる——最も
関係のある勤務条件なんぞというしろものではないです、この
退職手当というものは。
人事院の
見解です、これ。あなたがこれ否定すれば別ですが。
もっと言えば、先ほどあなたも三つに大体集約した。私もそうだと思う。しかし、私の少しく調べたところによれば、勤続報償説というのは、かつて末広厳太郎という教授が主として言われたと言われています。それは、資本主義以前の伝統的な労働
関係に端を発して、のれん分けに類する伝統に由来するんだと。言うならば、でっち小僧から長く勤めて、のれん分けするために与えるものが
一つの退職報償金みたいな考え方であったというのが勤続報償説という内容をなしているわけです。
二つ目の賃金後払い説というのは、これはかつて電産が要求したといいます、電気産業労働組合が。そのときは労働基準法の二十四条とこれ
関連してくるわけですが、最近は生活保障説に近づいているけれ
ども、退職金は労働者が資本家に与えた剰余価値の中から支払われるものであって、労働者は当然受ける権利がある。だから賃金の後払いである。そういう
意味でこれが
一つの範疇として定着をしたと言われている。
三つ目は、御存じのように、ここにも書いておりますが、退職後の生活保障金の一時金として与えるべきものであるという
意味で、生活保障説というものに集約されてきている。そういう
意味で言うと、総理府が一貫して勤続報償説をとっておりますなんということ自体、誤まりとまでは私は言いませんけれ
ども、少し単純過ぎるんじゃないんでしょうか。
さらにこれ総務
長官、総府人事局参事官山口健治という人の本がある。これも
退職手当についてずいぶん書いてある。この人はどっちかと言うと勤続報償説に近い考えをとるが、しかしそれだけではどうにもならない、やっぱり後払い説も考えなけりゃいけませんと、簡単に言っておりますけれ
ども述べてある。
こういうことを私は考えると、この
退職手当の性格というのは、
一つは労働者が請求する権利を持っている給与である、それから長い間勤務してやめた後の生活保障であるということ、こういう点を考えると、先ほどのような、単純にただ民間とだけ比較して、そして私の先ほどの数字が正しいとすれば、もうすでに来年の四月以降になったら八・三%以上の落ち込みになる、民間のレベルより落ちる、こういう
法律をこの
国会で私は
論議するということは、本当にさびしい気持ちでいま議論しているわけです。
ですから本来ならば、何回も言うようですが、撤回して来年また再
検討してから改めて議論するのはいいんだけれ
ども、そこまでいかぬならば、やっぱり私が
指摘するようなことがあなた方そうだと思うなら、落ち込みをどれだけどこでどういうふうに救済するのか。
一つは、さっき弾力的なことを人事局長から話ありました。
一つは、
人事院総裁も私は決断してもらいまして、来年の三月で切れるものはせめてあなたやっぱり六十年の三月まで延長するという考え方ぐらい決断すべきじゃないでしょうか。総理府もまた
人事院をバックアップしまして、どうだ
人事院、やっぱりそれぐらいの通達を考えてみたらどうだ、こういうことになりませんか。どうですか、
人事院総裁。