○佐藤三吾君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
地方公務員法の一部を
改正する
法律案に対し反対の
立場から討論を行うものであります。
戦後の
わが国の
公務員制度は、ごく一時期を除けば、マッカーサー指令による政令二百一号以来きわめて不当な状態に置かれたまま今日に至っております。
憲法で保障された
労働基本権が、個別法たる
国家公務員法、
地方公務員法等で否認されている状態は、自衛隊の存在と同様に
わが国憲法がいかに軽視されているかを物語るものであります。
政府及び
自治体当局と
公務員労働者との間の労使
関係が常にぎくしゃくし、正常な
関係の
確立がなされていない根源は、まさにここに由来していると言えます。
本
改正案による
公務員の
定年制問題は、こうした基本問題の裏返しの問題であります。
公務員労働者の
定年制は、
わが国公務員の
社会的地位と任務が戦前の天皇制奉仕から根本的に転換したことに見合って、
憲法が求める理念を
公務員制度に実現する具体的問題として議論されなければならないのであります。にもかかわらず、自民党
政府は、これまであるときは
財政再建の便法とし、またあるときは
行政整理を事として、そしていままた
行政改革の露払いとして
定年制を提案するなど、この問題をきわめて
政治的に歪曲化しております。それゆえに、過去
定年制法案は廃案を余儀なくされたのであります。
今回もまた、こうした
公務員制度のあり方に何ら触れることなくその成立を図ろうとすることは、決して正しい態度とは言えません。
公務員労働者をスケープゴートとして進める
政府の
行政改革が、民主、公正、効率的な
行政の実現という
行政改革とは全く無縁なものであることをみずから証明するものであります。
以上のような基本的
立場から本
改正案を見ますと、
幾つかの重大な問題が
指摘されるところであります。
第一は、すでに申し上げたように、
定年制を
公務員制度全体を改革するという視点からではなく、木に竹を接ぐがごとき態度で
導入しようとしていることであります。
地方公務員法は、その制定当時の議論に明らかなように、近代酌
公務員制度の理念としては
定年制を明確に排除することを立法
趣旨として制定されたのであります、この
地方公務員法に
定年制を持ち込むことは、こうした
趣旨及び
制度に抵触するものであり、仮に持ち込む場合においては、
地方公務員法の根幹をなす
身分保障、
労働基本権、
政治的権利などとのかかわりにおいて再
検討されるべきものであります。これら重要事項を不問にしたままひとり
定年制を
導入しようとすることは、全く不当な
措置と言わなければなりません。
第二に、本
改正案は
定年制度が重要な勤務条件であることをきわめて軽視していることであります。
重要な勤務条件の一つである
職員の退職に係る事項は、本来、民間におけると同様に、労使間の団体交渉により、双方の合意に基づいて決定することが原則であります。しかしながら、本
改正案においては
本人の意思や条件とかかわりなく一方的、画一的に
法律でもって退職を強制しようとするものであり、近代的労使
関係の基本原則から容認することはできません。
もちろんこうした
主張は終身
雇用を意味するものでないことは御
承知のとおりであります。たびたびの
政府答弁でも明らかなように、労使間合意による現行の勧奨退職
制度において円滑な新陳代謝が図られていることは実態的にも証明されております。すなわち
退職管理においても団体交渉によることが最も有効であり、かつ、
労働基本権保障にも合致するものであり、この面からも本
改正案の根拠はないものと言わざるを得ません。
第三に、本
改正案は
地方自治の
本旨とは両立し得ないものであります。
本
改正案による
定年制の実施は条例によることとしておりますが、
定年年齢など基本的な事項について、そのほとんどが国を基準としていることから、
自治体の条例制定権は単なる手続規定とされ、その
自主性は著しく
制限、
制約されているのであります。
地方自治法を空洞化するがごとき、こうした法制定は、今回の臨調第一次答申による行革関連法案を
指摘するまでもなく、
政府がいかに
地方自治を軽視しているかを示すものと言えます。
以上のような基本問題に加え、私は、本
改正案が、創意ある
人事管理という団体自治の面のみならず、住民自治の発展にとっても不可欠な要因である
職員の自発性、創意性を損ない、住民と
自治体職員との協調と緊張
関係を失わせるであろうことは目に見えたことであります。それは結局
国民生活における
自治体の役割りを低下させていくであろうことを強く
指摘しておきたいと存じます。
以上、
地方公務員法の一部を
改正する
法律案について反対の
意見を申し上げ、私の反対討論を終わります、