○村上正邦君
質問に入ります前に、この
改正案に対し私の所感の一端を申し述べさせていただきますことをお許し願いたいと存じます。
本来
参議院は、衆議院とは違った視点で政治に取り組まなければなりません。すなわち
参議院こそ良識の府でなければなりません。それだけに深い理性と高い道義の政治
理念に立って、私心を捨てて国家百年の大計のもとに堂々と政策を論じ、院としての高い見識を示すことによって
国民の政治に対する安信感と信頼を得なければならないと私は
考えます。しかし、それとはほど遠い現実に直面し、私は内心じくじたる思いを持つと同時に、その解決策を模索してきた一人であります。
しかし、御承知のとおり
参議院の実態については、残念ながらミニ衆議院あるいは衆議院のコピーなどとの批判の声を耳にすることはまことに遺憾なことであります。私は、こうした現状を脱却するためには、
参議院の
選挙制度、とりわけ
全国区
選挙制度に根本的なメスを入れるときがきたのではないかと痛感するものであります。私
自身全国区
選挙を闘ってきた者の一人でありますだけに、その思いはひとしお深いものがあります。
現行の
全国区
選挙は、国全体が
一つの
選挙区であり、八千万人を超える有権者に対して
選挙運動をやらなければならないという世界でも最も類例のない
制度でありますだけに、
資金の面においても
候補者の精神的、肉体的消耕度においても想像を絶するものがあります。残酷区とも言われます現行
選挙制度の陰で、われわれは多くのりっぱな先輩が病に倒れるのをかいま見、また失ってもまいりました。これはまさに国家的な損失にほかなりません。さきの
選挙においては民社党の向井長年
議員が当選の報を待たずに開票半ばにして息を引き取られた悲しい出来事は、私の記憶に新しいところであり、同じ
選挙を闘った者の一人としていまも私の胸に熱いものが込み上げてまいるのでございます。このような犠牲を再び繰り返してはなりません。
加えて、
一般有権者にとりましても、現行
制度は
候補者をよく知りその政見を十分に聞くこともできないまま百人を超える
候補者の中から一人を選択しなければならないという、まことにわかりにくい
選挙となっておりますことも大きな
問題点であります。
こうした実情にかんがみ、わが自由民主党にあっては、昭和三十七年以来
参議院選挙制度の改革について
検討する正式機関を設けてこの問題に取り組んでまいりました。今回その
努力が
拘束名簿式比例代表制を採用する
改正案としてまとまったことは御案内のとおりであり、私は諸先輩の御
努力に深く敬意を表するものであります。同時に、私はこの
改正案の実現こそ
参議院改革の大きな第
一歩となるものと確信いたすものであります。
なお、私
自身現在の
制度によって選ばれた
立場でありますだけに、現行
制度の改革案についての
質疑は、謙虚の上にも謙虚な
姿勢で臨まなければならないということを肝に銘じて
質問に入らせていただく次第であります。
そこで、
質問の第一点でありますが、
改正案は金のかからない
選挙の実現を大きな目的の
一つにしておりますが、その点についてお尋ねしたいと思います。
事実、現行
制度のもとでは、私は与野党を問わず莫大な
資金を要することは必然であると思います。たとえば、単純に計算しても、百万票を目標にしたとき、その地盤培養行為としての後援会名簿は常識的に三百万以上を集めなければなりません。そのためのパンフレットの製作費用、さらに三百万名の名簿を対象にして一回はがきを出すと郵送料だけでも一枚四十円で一億二千万円を要します。これだけではありません。事前の告知ポスターの製作費、私の経験からいきましても
候補者が
全国各地を一通りあいさつするのには約二年間の月日を要します、これにかかるところの交通費さらに
全国的に設けられます後援会事務所設置に要する費用等々、後援会活動だけでも数億の
資金が必要となってくるのが通例であります。手弁当、カンパ、ポスターを張る人件費が奉仕にいたしましても金がかかることには違いがないものと思います。
こうした実態に対して、金がかかるのではなく、金をかける方が悪いのだという
意見もありますが、私はこれは逆だと思います。このはがき代
一つの例をとりましてもわかりますように、これは
全国が
一つの
選挙区で、しかも八千万に上る有権者を相手にしなければならないという現行
制度そのものに起因する問題であると思いますが、
提案者は金のかかる実態をどのようにとらえ、またその原因をどう
考えておられますか、お答えをいただきたいと存じます。