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国務大臣(
園田直君) 先般のメキシコにおける
南北サミットは、時間が少なかったためと会議の運営が新しい方法をとったために、非常に活発に論議はされたが、整理その他のことについて十分の時間がなかったために、わりに理解されていない点が多いと存じますが、私から言えば、この会議は非常な成果があったと。その第一は、南北二十二カ国が一堂に会したということ自体に大きな成果がある。二番目には、これを決議であるとか
一つの
方向に持っていくという
努力をしないで、
各国首脳が非常に自由に討議をした。その討議をした結果、おのずから
一つの
方向が出てきたと、こういう
意味。それからさらにもう
一つ大きな問題は、これは渋谷先生でございましたが、行く前に、
南北サミットで
軍縮の問題をもっと話したらどうかとおっしゃられたことを記憶しております。それから事務当局と一生懸命に直ちに準備をし、総理がこの点で
発言をされて、これが口火を切った。この四点が私は成果があったことだと存じます。
そこで第一は、一例を挙げますとGN――包括
交渉の問題で他の国々はこれに理解を示し、
アメリカだけが反対して対立をして、それを何とか
アメリカに譲歩させようとしたというのではございません。これはもう
そのものずばりで議論が始まったわけであります。その議論は
アメリカとというわけじゃなくて、やはり北と南の議論であります。たとえば一例を披露しますと、国の名前は言えませんが、
世界銀行その他の銀行がある、これはわれわれ開発途上国のためにつくられた銀行じゃないんじゃないかと、先進国が自分の都合のためにつくった金融機関であるから、世銀とは言っておるが、実際われわれの開発に間に合わない、時間に間に合わない。いろいろな議論が上げられたわけであります。これは国連
交渉になってから出てくる具体的な議論のつもりであったのが、それから議論が始まりました。これについては、
日本を除く先進国はそれぞれ具体的に
発言をしました。たとえばそういう議論を何回も言い合って、片方が言う、途端に片方が言い返す、また言い返す、こういう議論は初めてでございます。それを言ううちに、南の方は、なるほど自分たちの言うとおりにはいかぬという認識を持ったようであります。たとえば、いまの世銀その他はいまのままではなかなか自分たちの開発のためにはすぐに役に立たぬ点が多い、もう少し運営上、この銀行の
目的が一般営利機関じゃないのだから、開発途上国の開発のためにということに重点を置かなきゃ困る、しかし、自分たちが言うようにこれを改組せよとか、あるいはこれと一緒に来た資本を自分たちの都合で凍結することができる、こういうことになれば、当然資本とか銀行の金が入ってこないんだなあと、そうなってくると、かえって自分たちはいまより辛いんだなあというようなそういう意見がだんだんと縮まってきたことは非常な成果であったと思います。
そこで、これらについては
日本が調整役をするなどという大きなことではなくて、
日本はカナダやメキシコと相談をし、相談もされつつ両方の言い分がお互いに理解できるような
努力をしたわけであります。特に鈴木総理の言われたことは、われわれはいま先進国の中に入っているけれ
ども、先進国に入った歴史はごく浅い、われわれは開発途上国であった、したがって、南の方々の御意見もわかる。こういうわけで、中国初めいろんな
関係でわりに南の国々の方は
日本の言い分を理解しやすい立場にあるわけであります。かつまた、先進国の方も
日本の言い分はわかる、こういうことで役割りが果たせたんじゃないか。しかし問題は、国連
交渉が始まった、国連という舞台の中でいまのような問題がだんだん煮詰められてきて、これを具体的にどうやるか、こういうことになるわけでありますから、それぞれの機関を通じてこれからが
日本の走り回る役目は大きくなる。その場合、調停とか仲介とかそういう大きなことを考えないで、南の立場もよくわかる、また、現実の問題もわかる、こういうことで双方が一定の
方向に行くような
努力をする責任がある、こういうことが非常な成果だったと思います。これを外に売り出せなかったというのがなかなか残念でございます。
それからもう
一つは、このような重要な会議でどこの国も、現場でも、帰ってからでも非常に評価をしております。南のそれぞれの
大統領あるいは
アメリカの
大統領初め
ヨーロッパの首脳者も非常に成果があった、これからやっぱり国際会議、首脳者会議というものはこういうふうに率直に議論を言い合って、争いをした方がかえって本当の結論が出るんだぞ、かっこうだけ議論しておったんじゃ新しい時代はつくれない、こういうことを考えられたことが成果だと思う。
次に、渋谷先生から言われた
軍縮の問題でありますが、だんだん言われてから研究いたしますると、いま南の国の累積赤字が計算の仕方がいろいろありますけれ
ども、大体五千億ドルございます。これに毎年八百億ドル以上の金が上積みしていくわけであります。この上積みは大体は金利と石油の値段、こういうことになっているわけでありまして、これを理屈は詳しくは言いませんが、概略して述べますと、これが焦げつきになってくる、そうなってくると、五千億ドルの金がどこかで焦げつきが出た場合には経済パニックの発生が出てくる。これが出てくれば連鎖反応を起こす。ここに、過去の歴史からすれば戦争の原因がある。一方、また翻ってみると、年々
各国が
軍備に使うお金はこれまた約五千億ドルでございます。ここらあたりにさっきおっしゃった
軍備は逐次、辛いだろうけれ
ども、少しずつ下げて、力の
均衡はお互いに保ちながら話し合えという一方、下げたその金をこっちの方に回すということを考えるべきではなかろうかという口火を
日本の総理が切られて、これまた非常に大きな反響を呼んだ。こういう
意味で私は成果があったと思う。
ただ、残念なことは、まだあと残っておりますけれ
ども、このサミットを今後、来年どうやるのかこうやるのかという、そういう具体的な問題を決めずに、その後でごそごそやっている。この点は残念であった。
以上、長くなりましたけれ
ども御報告をいたします。