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1981-11-12 第95回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十一月十二日(木曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員の異動  十月二十六日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     杉山 令肇君  十月二十九日     辞任         補欠選任      杉山 令肇君     岩崎 純三君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         稲嶺 一郎君     理 事                 鳩山威一郎君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 岩崎 純三君                 大鷹 淑子君                 中村 啓一君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        防衛庁防衛局長  塩田  章君        外務大臣官房調        査企画部長    秋山 光路君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省中南米局        長        枝村 純郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省中近東ア        フリカ局長    村田 良平君        外務省経済局長  深田  宏君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省北米局審        議官       松田 慶文君        外務省中近東ア        フリカ局外務参        事官       英  正道君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (対米武器技術輸出問題に関する件)  (米国の対日防衛力増強要請問題に関する件)  (戦域核問題に関する件)  (中東問題に関する件)  (軍縮問題に関すも件)  (南北サミットに関する件)  (日韓経済協力問題に関する件)  (朝鮮問題に関する件)     ―――――――――――――
  2. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 松前達郎

    松前達郎君 最近、貿易問題、アメリカ日本の間の問題、ECとも大分貿易問題が出ておるわけですけれども、それとどうも防衛問題というものがリンクして、非常に複雑というのか、アメリカ側にしてみれば単純かもしれませんが、そういったような何といいますか密接なリンクが行われるようになってきたような気がするわけなんですが、空軍中将ですか、ドネリーという人、この方が日本防衛力に関して記者会見をされて、そこでシーレーン防衛という問題、これに関連して、わが国港湾、空港を使う便宜供与を希望しているというふうな報道が行われているわけですけれども、また同時に、アメリカ戦略軍司令部見解も、限定核戦争可能性があるんだと、こういう発言もしているわけです。これはいままでは、大陸間弾道弾――ICBMの抑止力といいますか、核の戦略核としての抑止力、これはある意味で言うと使われない武器であるというふうな解釈が一部ではされておったわけですけれども、どうも最近見ますと、小規模な戦術核戦争というのが起こる可能性が出てきた、こういうふうに考えていいんじゃないか、これはミサイルのいわゆる正確度といいますか、命中率が非常に上がる、そういったような問題を含めて、どうやら使える核がどうも最近出現しつつあるというふうな感じを私は持つわけなんです。  それで、ヨーロッパあたりですと、これに対して、SS2〇のソビエト配備に関してアメリカ新型巡航ミサイル戦域核ミサイルパーシングII、こういったようなものをヨーロッパ配備するということに関して、ヨーロッパ各地でいま反対運動が起こっておるわけです。これはボンの集会を初めにして、各地でずっと起こってきておるわけですが、これを見ていましても、この運動そのものが、ただごく一部の人たち運動ということじゃなくて、西ドイツあたりは与野党ともこれに参加をしているというふうなこともありますし、非常に大きな問題として、ヨーロッパ人たちがこの戦域核配備についての心配をし出したというふうに私は思っていいんじゃないかと思うんです。これはヨーロッパだけの問題として片づけて、われわれは知らないぞというわけにはいかなくて、たとえばSS2〇の射程距離あたりを見ますと、四千キロから五千キロということになりますから、当然これはヨーロッパだけの問題としてわれわれは高みの見物というわけにはいかないんじゃないか、こういうふうに私は感じておるんですが、ロストウ米軍縮局長ですか、この人が、ジュネーブで十一月三十日再開の欧州戦域核交渉でもSS2〇の配備等に関して、ヨーロッパだけでなく、日本を含めて対応していくんだと、こういうふうな発言も行っているふうに報道されておりますし、またさらに、SS2〇というのがシベリアに配置されても、ヨーロッパとそれから日本と両方カバーできるようなことになりはしないかと、アジア寄り配備される可能性が強くなっている、こういうふうな発言もあるわけなんです。  ですから、恐らく核戦略というものが新しい時代にいま入りつつあるんじゃないかと私は感じておるわけですが、まず最初外務省お尋ねしたいのは、ソビエトの声明の中で、ときどきソビエトが言っていることですが、核を持たない国への核攻撃ソビエトとしては行わない、あり得ない、こういうことをソビエトが言っておるわけですが、核を持たない国への核攻撃ということで、核の配備とは関係ないわけですね。ですから、したがって、極東SS2〇を配備するということは私は明らかだろうというふうに思います。あるいはすでに配備されているんじゃないか。十一月の三十日にジュネーブで行われますヨーロッパ地域戦域核交渉、これについて、さっきちょっと申し上げたようにヨーロッパソビエトの間の問題ということよりも、総量規制という形で、こういう形で考えていくべきだと。これは恐らく日本外務省としても何らかの意思表示をされているんじゃないかと思いますが、この総量規制という問題について、外務省としてどういうふうに対応していくか、あるいは今後どう考えていくのか、その辺まず最初にお伺いしたいと思います。
  4. 門田省三

    政府委員門田省三君) お答え申し上げます。  わが国といたしましては、軍縮軍備管理を進めますに当たりましては、力の均衡を維持しながら、これをできる限り低い軍備水準で安定させていかなければならない、かように考えておるのでございます。したがいまして、一般的にはこのような目的に資するような軍備規制方法がとられるということが望ましいわけでございます。  ただいま御質問のございました総量規制という考え方米ソ戦域核交渉、来る十一月三十日から開催予定交渉を御念頭に置かれていることと思うのでございますが、このような総量規制考え方を含めまして、個々の具体的な規制の態様につきましては、まさに交渉が始まるやさきでございますので、第三国でございますわが国といたしましては、具体的なコメントをすることは差し控えさしていただきたいと思います。
  5. 松前達郎

    松前達郎君 総量規制という考え方になりますと、これはローカルな問題での話し合いじゃなくて、全面的な問題となって取り上げざるを得ない。こういうことになると思うのですね。ですから、ある意味で言うと実質的なSALTIIIに相当するんじゃないか、こういうふうに解釈した方がいいと思うのですが、戦域核の出現といいますか、配備ということが今後大きな問題になるということは、これは前にも委員会で私申し上げたかもしれませんが、わが国との関係がこれによって、非常に何といいますか、今後重大なアメリカ側の要求なり圧力なりが、これをもとにして行われるようになるんじゃないか、こういう懸念があるわけですね。六月に行われたハワイ会談報道等も見てみますと、アメリカ太平洋司令官が核の一核と言いますか、そういったミサイル配備について検討を進めているということを言っておるわけですね。  それからさっき申し上げたロストウ氏の発言も、やはり必要とあれば、アメリカが必要に応じて日本、というのはこれは向こうでちゃんと日本という名前入っていますが、及びその他アジア諸国巡航ミサイルその他の戦域核兵器を展開する、必要の場合は。そういうことをワシントンで話しておるわけで、この辺の問題ですね、これが今後われわれとしては非常に重大な問題になってくる。何も対岸の火事じゃなくなってくるわけです。これについてアメリカから防衛庁あたりに、何か意思表示ありましたか、いままでに。
  6. 塩田章

    政府委員塩田章君) ただいまの点は、ハワイにおきます防衛庁長官ロング大将の話のときに出たことは出ましたけれども、その後いまお尋ねのような、何らかの防衛庁に対する向こうからの接触があったかという点につきましては何にもございません。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 そうすると防衛庁として予測になりますけれども、たとえばアメリカでいま開発して大体開発し終わったトマホークというのがありますね。これが非常に新しい巡航ミサイル、超低空で飛んでくる。これの配備というのは、私は恐らく時間的な問題だろうと思うのですよ。こういうふうなものについても防衛庁としては、日本国内配備されるということじゃなくて、極東地域、海の上もみんな含むのですが、そういうところに配備されるであろうということは予測されますか。
  8. 塩田章

    政府委員塩田章君) いまのアメリカ側が言っておりますことは、そういった戦域核極東配備について検討をしておる、検討はしておるがまだ結論は出ていない。こういう段階説明があったわけですが、いずれにしましてもその検討がもし終わりますというか、ある段階にきた場合には日本側にも連絡があるということは、外務省の方にもお話があったようでございますが、それを待たないと、まあ私どもどういう内容になるかもちろんわかりません。ただ、御指摘のように、いま開発しております戦域核をいずれ何らかの形で配備したいということになるんであろうという、そういう一般的な推測ならそれはできますけれども、それ以上具体的なことはちょっと推測いたしかねます。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 それで、もう一つ防衛庁にお伺いしたいのは、これも報道で私読んだのですが、シーコントロールという言葉が最近出てきたわけですね。いままではシーレーン、さっき最初に申し上げたのは、シーレーンというのがいままで使われていたのが、どうもシーレーンが手に負えないから、あるいはシーコントロールに変わったのかどうかしりませんけれどもシーコントロールという言い方が出てきている。これの内容について、どういうことを考えておられるのか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  10. 塩田章

    政府委員塩田章君) シーコントロールというのは、この前衆議院での質疑で私がお答えした中に申し述べたわけですが、これは一般論としまして、各国がそれぞれの国の海上防衛力整備、運用していくというに当たって、どういう戦略的考え方を持って整備し、運用を図っていくかということにつきまして、従来からいわゆる各国で言えば海軍目標制海権確保ということが通常言われておったわけですけれども、その制海権確保という意味はやっぱりコマンド・オブザ・シーとか、コントロール・オブザ・シーと言いますが、要するに海洋を支配する、相手国海軍を徹底的にやっつけて海洋を支配するというのが究極の目標であったと思います。そういう考え方は、旧イギリス海軍とか、旧日本海軍とか、アメリカ海軍とかが追求したわけでしょうけれども、現在の時点でそういった考え方はとろうったって、実際問題としてとれない。米ソ海軍と言えども、従来の意味制海権というものはもうとてもむずかしいというぐらいに言われておりますので、現在の各国が、海軍力整備をするに当たってどういう考え方整備しておるかということにつきまして、それはシーコントロールという考え方がいま言われておると、それはバイタル作戦目的各国それぞれあると思いますが、各国それぞれの作戦目的に応じて、ある時期ある海域を、その国の目的に使えるようにしたいという意味でそういうシーコントロールという概念がい文言われておるわけであります。  日本の場合も、日本にとってのバイタル海上防衛作戦といえば、上陸阻止でありますとか、あるいは重要港湾なり重要海域の防備でありますとかということもございますが、やはり一つの大きなわが国の場合の作戦目標とすれば海上防衛と、シーレーンの防御ということになると思います。そういうことを考えますに当たって、いま申し上げたようにいわゆる昔流の制海権確保ということではなくて、ある時期ある海域を、自由に日本の船が使えるようにしたいというのが、やはり一つ目標ではなかろうか、そういう意味で現在言われておるシーコントロールという考え方日本の場合にも、そういう意味なら当てはまるという趣旨のことをお答えをしたわけであります。ですから、ある目的に従ってある海域を一定期間自由に使えるようにしたいという考え方であります。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 その自由に使えるということは、内容からいきますと、こちらの方が危険を感じない、したがってその海域を自由に使えるということは、逆に言いますと、その海域にある、何といいますか相手側の、敵国といいますかね。そのたとえば潜水艦とかいろんなものがあるとすると、そういうものを排除して自由に使えるようにする、こういうことになるんですか。
  12. 塩田章

    政府委員塩田章君) そのとおりでございます。
  13. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、今度は外務省北米局長にちょっとお伺いしたいんですが、これもけさの報道に出ていましたけれども武器禁輸原則の問題なんですが、事前に申し上げてなかったのであれですが、これは武器及び武器生産技術あるいは関連先端技術、こういうものの輸出を含めて禁じていると、こういうふうな三原則がいままであったけれども、これは日本としては政策であるから、安保条約によります第三条適用ということだと思いますが、安保条約による対米軍事技術協力というものは次元が違うから、これについては安保条約に基づいてできるんだというふうな意味発言報道されておりますが、それはそういうふうに解釈していいですか。
  14. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 昨日の衆議院外務委員会での質疑についてのお尋ねかと思いますけれども、まずアメリカ日本側にいま期待しているのは、武器技術そのものを従来一方的に日本に供与していた、それを両面交通にしたいと、日本からも受けたいという一般的な表明でございます。個別的にどういうものがほしいかどうかというまだ期待表明はございません。  そこで、武器技術を供与する際に考えなきゃならないのは、他方において禁輸原則、それから政府統一見解、さらに国会決議というのがございます。しかし、アメリカとの関係を考える場合には、安保条約あるいは相互防衛援助協定というものがあって、それは日本として条約あるいは協定としてアメリカ側に対して約束していることであるわけでございます。したがって他方政策であって、他方条約協定である、こういう趣旨を昨日の委員会で申し上げたわけであります。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、内容ということよりも考え方ですね。考え方についてはやはり条約先行と、条約の方が優先するという考え方で受けとっていいわけですか。
  16. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) あくまでもいま私の申し上げたのは、まだ政府統一見解であるとか、関係省庁でまとまった考え方でなくて、一つ考え方としてそういうことはあり得るんではないかなという気がするわけでございます。  なお条約協定関係については、私よりもむしろここにいる条約局長の方が答弁するのが適当かと思いますので、必要であれば条約局長の方から答弁させます。
  17. 松前達郎

    松前達郎君 じゃ、お願いします。
  18. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 補足して御説明申し上げますと、従来から申し上げておりますことは、安保条約あるいは相互防衛援助協定のもとにおきまして、アメリカから武器あるいは武器関連技術につきまして、具体的なあるいは国別的な協力要請がありました場合に、これに一つ一つ応じなければならないというような条約上の義務はこれはございません。しかしながら、他方におきまして、いま北米局長より申し上げましたような安保条約でありますとか、相互防衛援助協定というようなものは、一般的にそういう技術的な交流も含めて防衛分野におきまして相互協力をするということが前提になり、あるいはそういう一般的な義務を総合的に規定したものが置かれておると、したがってそういうものとアメリカのいま申し上げました防衛分野におきます技術交流というものを従来の一方的な流れから、双務的と申しますか、総合的な両面交通流れにしたいという一般的な期待表明というものが行われているときに、そういうものを条約との関連でどういうふうに考えていくべきかと、そういうことをいま検討中であるということを申し上げておるところであります。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 その問題は、今後の条約解釈ですね。特に安保条約中心とする問題として非常に重要だと思うんですね、この解釈の仕方というのは。極端なことを言えば、非核原則が一体どうなるかということと同じ、それに応用できる問題になると思うんですね。非核原則というのは、何といいますか、全く武器禁輸と同じような種類のものであるから、条約が優先するとなればこの非核原則もなし崩しに条約を盾になくなってしまう可能性もある。ですから、そういう解釈の仕方というのは非常に重要だと思うんですけれども、まあこれはまだまとまっていないということですから。そういう杞憂を持つものですからいま質問さしていただいたわけです。  それから、もう一つ外務大臣にお伺いしたいのは、どうも最近アメリカの議会がえらく日本に対して圧力をかけてくるわけですね。たとえばGNPの一%を軍事費に充てることを求める決議案、これが上院でも下院でも、下院の場合はザブロツキ、上院レビンという、その二人の議員から提出されておるわけですね。これは、まあいろいろ日本というのは一遍がくんと圧力かけないとだめだと彼らは思っているのかもしれませんけれども、どうもこれについて、これ以上いきますと内政干渉じゃないかという気もするんですね。パーセンテージがどうのこうのという問題とは別に、こういう行為といいますか、こういうことが行われるというのがどうも私ども腑に落ちなくて、余りこういうものが行われるとすると、前にも申し上げたようにアメリカ合衆国の日本州になっちゃうという感じがしてしようがないわけです。ですから、その点について、内政干渉に近い、あるいはそのものかもしれません、そういうことだと私は思っておりますけれども外務大臣はどういうふうにお考えでしょうか、この点。
  20. 園田直

    国務大臣園田直君) 壁頭発言されましたように、いま貿易均衡の問題とそれから防衛の問題がヨーロッパとの間でもそうであり、特にアメリカとの間で大きく問題になっております。しかし、これは、はっきりしなきゃならぬことは、防衛貿易の問題は全く別個の問題であって、別個に処理すべき筋合いのものであります。しかしながら、どうも言われる方は、その背景にこれが何か関連性があるような、これは私個人の意見かもわかりませんが、感じがいたします。  そこで、いま米国国会等で、いろいろ厳しい国際情勢のもとで、わが国を含む西側諸国防衛努力の強化について期待表明されていることは十分承知をしております。しかしながら、わが方もこういう国会動きについては、わが方の立場あるいは環境等を真に理解願える努力をしなきゃなりませんけれども、またこれは国会に出されただけでどうなるのか取り扱いもわかりませんから、その個々の問題についてどうこうは考えませんけれども、私はこれは米国圧力であるとは考えておりません。しかし、そういうことについては、われわれはそういうふうにならぬように十分注意をして、わが国防衛努力はあくまで自主的な判断で憲法等の規定のもとにやるべきであると考えております。
  21. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、きょうは中東和平をめぐる問題を中心に、アメリカ出方アラブ出方及びイスラエルPLO動きサウジエジプト動き、そういうものが非常にデリケートな形において動いておりますが、それについて園田外相はどう受けとめているか。特に中東和平世界的危機頂点として注目を浴びている際に、サウジアラビアファハド皇太子の去る八月に提案した中東和平に関する八項目案、これをどのように園田外相は受けとめておられますか。
  22. 園田直

    国務大臣園田直君) 中東問題はきわめて険しい、厳しいという懸念を持っているところでありまして、世界各地で紛争がありますが、どこの地域も慢性化したおそれがある。明年度火を噴くおそれがあるのは中東である。その一つはイラン問題で、いま言われました和平交渉の問題と、こう考えております。サダト大統領が亡くなった後、各国とも非常な緊張をしたわけでありますが、むしろそれによって一つの動くはずみが出たということもまた言えるのではなかろうか。一つサウジアラビアの八項目一つはキャンプ・デービッドのイスラエルエジプト関係エジプトサウジ話し合い、こういうことで、表面には出てきておりませんが、うまく運べば各関係者が話し合える方向にいく可能性も出てきた。しかしながら、楽観をするわけではありませんが、そういうふうに見ているわけであります。したがいまして、サウジの提案された八項目、これはアラブ諸国穏健派からは大体支持され、PLOの方も大体という感じの模様でありますが、モロッコで開かれる次の総会で果たして全会一致で議決されるかどうか、これはなかなか疑問であります。しかしながら、少なくとも米国、英国、日本、フランス、その他若干差はありますが、この八項目というのが将来の和平交渉一つ基準になっていくものである、こう考えているわけであります。
  23. 戸叶武

    ○戸叶武君 私も、将来の和平交渉基準になっていくのではないかというふうに受けとめておりますが、先ほど松前理事から質問がありましたように、アメリカ世界戦略というものは非常に一貫性があるようなないような、幾人かの大統領周囲のブレーンによって言うことが大分違うので、そこいらにアメリカに対する若干不信感というものがアラブだけでなく、ソ連からも、また世界各地から私は起きていることにアメリカも気づかないはずはないと思います。しかしいま、一定方向に定着するまでは強いアメリカとしてのがんばりを続けなければならぬというお感じで、アメリカ世界戦略においては、一九八三年を頂点としてソ連との話し合いの対決をやるというふうに見られておりましたが、エジプトサダト大統領が殺され、あるいはアメリカリビア近海におけるアクロバティックな航空機の撃墜、金のあるサウジアラビアにその撃墜の威力を示した飛行機を大量に買わせる。なかなか複雑多岐な動きをしておりますけれども、これがためにかえってアメリカ一貫性がない。あれもやってみよう、これもやってみようというふうにかじ取る人が非常に多くて、大統領もどのかじを握って動いたらいいか、時には戸惑っているていも見られるのでありますが、これは、大臣というより外務省の方ではどのようにこの動きを分析しておりますか。
  24. 英正道

    説明員(英正道君) 御質問、きわめて多岐にわたっておるわけでございますけれども、中東についての政策ということで申し上げますと、基本的には和平問題については、従来のキャンプ・デービッド合意に基づくエジプトイスラエルの間の交渉の成功を図るというところに当面全力を傾けていくと、こういうふうに理解しております。それから同時に、レーガン政権になってからは中東における戦略的な観点から、やはり対ソ考慮と申しますか、そういう戦略的な問題を重視しているという傾向が出ているやに見受けられます。
  25. 戸叶武

    ○戸叶武君 それはわかりますが、とにかくファハド皇太子の八月の八項目提案の中には、やはりエジプト自身も考えさせられなけりゃならない、じっとここで考えざるを得ないというようなそぶりすらエジプトの中に起きているのが事実で、キャンプ・デービッドの約束は守るかと言っていながらも、軽率に動きができないような状態に、アラブから、全体から孤立してイスラエルとキャンプ・デービッドの約束を守るために一応サダト路線を行くとはいいながら、サダト路線というものがエジプトアメリカの想像する以上にアラブ全体からの猛烈な反撃を受けているのが事実であって、これを無視して動きはできないと思いますが、園田さん、この辺はどういうふうに見ておりますか。
  26. 園田直

    国務大臣園田直君) いま中東のいろんな複雑な情勢にかんがみて、エジプトと他のアラブ諸国との関係が、近い将来急激に表立って変化することはないと思われますが、他方、これら諸国間の動きをしさいに検討しておりますると、関係改善の動きも見られるところでございます。かつまた米国にいたしましても、サウジの提案あるいはサウジエジプト関係、こういうものには十分関心と留意をしておるところであると考えております。
  27. 戸叶武

    ○戸叶武君 前のナセル大統領が、やはり割り切ってソ連と組んでアラブの問題を片づけようとして亡くなり、またこのたびサダトさんが、やはり自分を捨てて近代国家として中東に国をなしているエジプトイスラエルが、まず話し合って問題解決のめどを開かなけりゃならないという信念のもとに、体を投げうってそれに当たったが、その結果というものはあのような悲劇の幕で閉じたのであります。この教訓というのは、アラブ諸国にとっては私はやはり受けとめ方において大きな衝撃となっていると思うのであります。アメリカイスラエルを第一に守らなけりゃならないという点において固執し、かつてイギリスがバルフォア宣言及びローレンスを使ってアラビアの分裂を企図したときと同じように、アメリカがいまかつてのイギリスと同じようにアラブの分裂を策している張本人ではないかというふうな、憎しみとかなり誤解もあるでしょうが――目で冷ややかにアラブから遇されているのも事実で、それが証拠にキッシンジャーさんあたりでも、東南アジアあたりは歩いているが、火つけの張本人が中東には足場がなくなってしまったんじゃないでしょうか。権謀術策でもって力の外交で物がなし得るということの限界が来たことを、アメリカもやはり素直に受けとめなけりゃならない。結局、あのヤルタ協定のように、アメリカとイギリスとソ連とが結んでいくならば、対立はあっても世界を力によってあるいは核兵器によってコントロールできるというような、そうして国連がどんな決議をしようが、動きをしようが、国連には力がないじゃないかという形で押しまくった時代はすでに過去の時代となって、国際世論の中に孤立しているいまのアメリカソ連が、これからどう脱出するかということが今後の外交あるいは防衛、あるいはその国々におけるところの安全保障をめぐっての大きな課題だと思いますが、園田外務大臣はどのようにこれを見詰めておりますか。
  28. 園田直

    国務大臣園田直君) 御心配の点は私も十分わかりまするし、かつまたいままではそういう紆余曲折があったわけであります。楽観は許しませんが、われわれが期待している一つ方向へ、アラブ諸国エジプトも英国も米国も少しずつ動き出したという感じがしております。十月三十一日付エジプトの「オクトーバー」誌における新大統領のインタビューの中で、二つ重大なことを言っております。一つは、適当な時期が来たと判断すれば、意見の相違を解消させるべくサウジアラビアやほかのアラブ諸国を訪問する用意がある、こう述べております。もう一つはまたファハド提案、いわゆる八項目の提案を話し合いのベースとして適当な提案であるという旨の発言もしております。こういうことからしますと、それぞれの関係諸国の意見も十分知っているはずでありまするから、われわれの期待する方向へみんなが努力をするならば、そういう方向にいくだろうし、また努力をしなければならぬと、こういうことだと考えております。
  29. 戸叶武

    ○戸叶武君 いま、ざっくばらんに物を言う人にしては珍しく慎重な発言園田さんはやっておりますが、今日の段階においては、やはり私は園田外務大臣以上にレーガンさんは苦悩の限りを尽くしていると思うんです。軍の戦略のエキスパートと言われる人々は、核の問題は非常に秘密の部分もありむずかしい問題であるから、核を持っている国の、前にヤルタ協定を結んだアメリカ、イギリス、ソ連及び核保有国でありその関係製品の輸出をも行っているフランス等加えて、新しいヤルタ体制のもとにおいて国連軍縮総会においても、ここで問題を煮詰めて取り扱いをしなけりゃならないというような意見なり動きもあるように見受けられます。  こういうときに、その間を縫うてアメリカの軍部なり軍需産業と結んで、いままで日本の国土防衛の急務を説いた人たちの中には、とにかく総理大臣が憲法改正をやらぬと言明をしちゃったんでこれを崩すわけにもいかない。とすると外圧以外にない。アメリカではこのごろ英語でなくて日本語の「ガイアツ」という言葉がはやっているということをアメリカの大学の教授が、名前は遠慮しますが、きわめてレーガンに近い人たちからも、外圧をアメリカの方から加えてくれというような注文がしきりに日本の政治家からなされるということでありますが、私は、一国の外交、防衛の問題、安全保障の問題、国際連帯の協力の問題、そういうものは、きわめてソフトにいく場合においても、やはりその中心たるものは、外国の第五列及び外圧を求めて日本の国の主体性を失うような政治家に断じて任せることはできないと思うのであります。一国の、独立した国の権威というものは、主権というものは抽象的なものでなく、侍の気持ちを持ってやはり私は日本の国際的な危機を――徳川幕府における黒船に脅えて、屈して神奈川条約を結び、あるいは下田条約に屈したような腰抜け外交は真っ平だと思うのでありますが、園田さん、どうですか、この辺の診断のぐあいは。
  30. 園田直

    国務大臣園田直君) いかなる問題にいたしましても、あくまで自主的な判断で、自主的な決意と自主的な意識を持って解決することがきわめて大事であると考えております。
  31. 戸叶武

    ○戸叶武君 いま日本にとって大切なことは、外交は自分だけでやれるものでなく相互関係がありますけれども、なぜ正直に言うべきことを言わないか、そういうところに誤解が生ずるのでありまして、私はその点ではマンスフィールドさんはりっぱだと思います、別に私と同じ年の、親しい仲だからといってほめるわけじゃありませんが。  一つだけ忠告したのは、駐日アメリカ大使としてあなたはアメリカ人並みに日本人を考えて、こういうぐあいにアメリカでは国会その他において軍拡をもっとやらなきゃならないという空気が強いということを伝えているのにすぎないかもしれないけれども、あなたがアメリカの駐日大使としての言動で、これはあなたが間違っているというのじゃないであろうが、日本人のアメリカ通というのは、少し甘くて、腰抜けが多くて、アメリカの言うことを聞くことがアメリカとの親善関係には一番よいというので、マンスフィールドさんがこう言っているから、あの苦労人が言うことだから、われわれはこの言を尊重しなきゃならないという受けとめて、イエス・ノー、日本にとって世界にとって、それがためになるか、ためにならないかという判断をしないで、そういうイエスマンというのが特に外交官の子弟なんかには――外国で育って、語学が少しできて、哲学がない、文明史観を持たない、この外交の血のにじむような歴史をも知らない。それでいておっちょこちょいで、それなりに器用に英語を操って、この間も何とかというのが話題になったが、どういう人物かは忘れましたが、加瀬さんなんかもなかなか才気煥発な、重光さんのもとにおける秘書としてはりっぱな人であったが、やはりこういう国籍不明と思われるような一つ動きというものが、かつての外務官僚の名門の中からもちょいちょい出るというような体質、そういうものが私は――いまの外務省は大分違っています。けれども外務省の体質の中には欠陥となって、そういうアメリカ第一、日本は三か四に考えるような人が国際活動をすることはきわめて危険だと思いますが、外務省の当事者はああいう問題に対してやはりうやむやに問題を消しとめようとしているのか。新聞は率直に暴露し、問題をぎりぎりの点まで追及しておりますが、何事も新聞に頼まなければ問題が片づかないのかどうか。その辺を、これは大きな、スパイ取り締まり以上の問題です。日本人の体質を、病んでいるところの一病原菌をわれわれは摘出しなければならないと思うのですが、まあ形式的なお答えしかできないのかもしれませんし、警察当局においても、われわれがメスを入れても最高裁判所が問題点を軽く、同族意識、仲間意識によって問題を消しとめてしまうというような官僚全盛の時代がいま生まれてきている傾きもありますが、外務省の方は大丈夫でしょうか。
  32. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務省の方は一生懸命やっております。
  33. 戸叶武

    ○戸叶武君 一生懸命やっている努力を買うことにいたしますが、私はいま大切なのは、やはりいますぐに、一九四五年二月十一日、ルーズベルト、チャーチル、スターリンの間においてクリミアのヤルタで戦時中の軍事謀略協定として他国の主権を無視して、領土をソ連に与えるというような密約を結んだ――密約じゃない、後で暴露されているが、これがポーランドなりあるいは中国なりにどれだけアメリカに対する不信感を根強く持たせているかわからないということを、ソ連も含めてですが、考えたことが少しはあるんでしょうか。あの下田条約を引用して外務省の役人があれば書いたのではないでしょうが、中山太郎さんにも私は、君の考え方の一部にはなかなかいいところがあるけれども、北方領土の問題は、二月七日の下田条約を原点とするというような見方は、北方問題において幕府の中においてもどれだけ苦労して、ソ連の謀略を破るために、井伊掃部頭が殺された後においてもペテルスブルクに入って、グリニッジ天文台に掲げられていると同じような世界地図が帝政ロシアの天文台に掲げられており、それには北緯五十度以南は日本領土となっているという具体的な事実を突き詰めて、そうして竹内下野守、松平石見守というような人たちソ連にそのことを認めさせたからこそ、後年ウィッテがポーツマス条約においてこの問題に対して結論を下したのであって、敗戦外交をやった帝政ロシア、ソ連の人の中で、私はレーニンとこの日露戦争の後のポーツマス条約の立て役者であったウィッテ伯ほどりっぱな外交官は私は世界にも少ないと思うのであります。帝政ロシアのこのウィッテの原点に戻るべきである。また、他国の領土を寸土だに奪うことをしない、そのかわり自分の国も寸土だに割くことをしない。革命、混乱の中にあっても外交原則を高く樹立したウィッテのへそのあかでも私はいまのソ連の幹部にも少しなめさせてやりたいと思うのであります。原点に返れ。「光明に背面なし」という言葉がありますが、権謀術策でクルクルパーの外交を展開しているといつの間にか自分の頭も変になってしまうから、その辺をよくやはり診断してもらって気をつけるように、ソ連のためにもアメリカのためにも、気違いの隣ぐらいまではいいが、自分の考えが一番正しいというような迷信から解放されるような外交を、日本あたりでも相当協力してやった方が相手のためにもなると思いますが、まあこれで結びます。園田さんよろしくお願いします。
  34. 園田直

    国務大臣園田直君) 御意見の数々、十分拝承して努力をいたします。
  35. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま本当にたくさんのことが起こっておりまして、レーガン政権の軍備増強路線というのはまことに私は危険だと思うんですが、それに対応して日本もだんだんだんだんそれに引きずり込まれつつあるような気がいたします。たとえばヨーロッパ限定核戦争の問題、あれなどもヨーロッパ各地で反核の物すごい運動が起こっているほどなんですけれども、やはりレーガン自身が戦術核兵器を使ってヨーロッパで戦争することはあり得るということをまた認めている。それから中東地方には、サウジにAWACSその他のたくさんの武器を売りつける。そしてあそこに対ソ連包囲網をつくる。いま合同演習なんかやっている。その上極東戦域核を置くこともあり得るなどという、これはロストウの言ったことだったと思いますけれども戦域核を置くこと、つまり、ヨーロッパから戦域核を引き上げる、少し削除するならば極東に置くこともあり得るというようなことで、そのことについて、防衛庁はもちろんのこと外務省も相談に乗っていると。中国や日本戦域核を置くこともあり得るというふうな言葉を使っていますけれども、そこだけじゃないかもしれませんですね。韓国それから台湾なども考えられるんじゃないか。そういう非常に強い軍事路線の強化が進んでいるのに対して、日本がだんだんだんだんそれに対応しつつある。そして、外務省の中にもそれに応ずる一部の人たちがあるということを非常に私は危険な状況だと思っております。  それで、たくさんのことがあるんですけれども、短い時間ですから、きょうは対米軍事協力の問題、武器輸出の問題が昨日衆議院で問題になりましたので、もうそこにしぼってお聞きすることにいたしますけれども、先ほども松前委員から少しそのことに触れられておりましたけれども報道によりますと、昨日の衆議院外務委員会で淺尾北米局長は、アメリカに対する武器技術輸出は日米安保条約第三条によって可能であるというふうに答えられている。私、九月八日の外務委員会でこの軍事協力の問題をお尋ねしておりますが、いままでは余り安保条約三条のことは言われなかったけれども、今度は安保条約三条が根拠となってアメリカに軍事協力あるいは武器輸出までできる、あるいは共同開発もできるんではないかというところまでになっているような状況ではないか。外務省の中でそういう検討をしていられるんでしょうか。まず、その安保条約三条ですね、で、できるというふうにお答えになり、そして外務省はそのように考えていらっしゃるのかどうかを伺いたいと思います。
  36. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先ほども松前委員にお答えいたしましたように、政府としてはもちろんまだ統一見解もございませんし、外務省としてもこの問題について検討をしている段階でございます。したがって、確定的な意見ということを申し上げる段階ではございませんけれども、先ほどもお答えしましたように、武器の対米供与というものを考えるときには、他方において国内的な政策がございますし、しかし、アメリカとの関係では、やはり安保条約あるいは相互防衛援助協定というものがある。そこで、昨日、土井委員の方から、それでは安保条約の何条が根拠規定になるのかというお尋ねがございましたので、安保条約の中で根拠として考えられるのは第三条であるというふうにお答えしたわけでございます。
  37. 田中寿美子

    田中寿美子君 それではお尋ねいたしますけれども安保条約三条というのは、一般的な意味での協力義務を定めているものです。武器・技術輸出、技術を輸出するというようなそういう個別的な、具体的なことについて定めたものではありませんですね。ですから、安保条約三条というものは、その前の相互防衛援助協定ですね、二十九年の。それにのっとって相互防衛援助協定に具体的に規定してあるものを、そこで簡単に概括的に言ったものであると、こういうふうに考えてよろしいですか。
  38. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) お答え申し上げます。  沿革的に申し上げますと、先生御承知のように安保条約三条というものは、アメリカの当時の議会の決議というものがございまして、バンデンバーグ決議と言われておりますけれども、これによりましてアメリカとしては、自国の防衛について自助努力をしない国に対しては援助をできない、しかしながら、そういう努力をする国に対してはアメリカとして防衛面での援助を行うことができると、こういう趣旨の決議がございまして、それを受けて、その趣旨を盛り込んだものが安保条約の第三条というのが歴史的には経緯でございます。それで、いま先生がおっしゃいましたように安保条約に先立ちまして旧安保の時代につくられました相互防衛援助協定の中でも第八条というのがございまして、これもやはり同じ趣旨の規定を盛り込んでおりまして、安保条約の三条というものが相互防衛援助協定のあれを簡単にしたものかという御質問に対しては、八条との関連で申し上げれば、沿革的にはそういうことでございます。
  39. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務省がつくられた、三十五年一月二十日に作成された「日米相互協力及び安全保障条約の解説」という本の中にそういうふうに書いてあるわけです。相互防衛協定に具体的に規定してある趣旨安保条約第三条で簡単にしただけのことであるというような解説が書いてありますから、いまおっしゃったような解釈をしていらっしゃるんだろうと思います。ですから、安保条約第三条によって日本アメリカに求められた場合に、軍事技術援財あるいは武器の輸出までもできるということの根拠に安保条約三条を使うというのは、これはおかしいんではないんですか。
  40. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 従来から申し上げておりますとおりに、本件につきましては政府の中で目下種々の角度から検討中でございますので、最終的な本件につきましての政府見解というものをまだ申し上げる段階にございませんけれども、いま田中先生御質問安保条約第三条との関連で申し上げますれば、先ほども松前先生に対してお答え申し上げましたように、確かに安保条約の三条というものは、アメリカから個別的な、具体的な協力要請というものがありましたときにこれにすべて応じなければならないというような条約上の義務を設けたものではない、これは相互防衛援助協定の第一条というものがございますが、これについても同様でございます。ただ、他方におきまして、たとえば安保条約の三条で申し上げれば「締約国は、個別的に及び相互協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」ということが書いてございまして、これは一般的な防衛分野における日米双方の協力の基本的な義務と申しますか、枠組みというものを定めておるものであろうと思います。したがいまして、たとえば防衛技術の分野におきましてわが国がそういうものに、アメリカの要請に一切協力しないというような場合には、この三条との関係でいかがなものか、そういう側面もあろうかということで目下検討しておる、こういうことでございます。
  41. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、安保条約三条で武器供与ができますというふうに意思表示なさったわけではないということですか。
  42. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 昨日も衆議院外務委員会の方で御答弁申し上げましたとおりに、この問題につきましては、政府全体としましての見解というものは定まっておりませんので、こういうものを根拠にこうであるとかああであるとかということは、いまの段階では申し上げられないということでございます。
  43. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、その安保条約三条を一人歩きさせて、そして日本は何でも協力できるんだというふうに持っていくようなことがあっては非常に大変だと思うからこういうことを申し上げているんであって、MDA協定の中でも、これも一条の一項で「援助を供与する政府が承認することがある装備、資材、役務その他の援助を、」「細目取極に従って、使用に供するものとする。」という規定がありますが、園田外務大臣も何度も、これは義務規定じゃないと、そう言っていらっしゃいますね。一方の政府他方に対してこれを提供しようというふうに決めた場合にはできる、こういうことでしょう。これも義務規定じゃないと思いますが、いかがですか。
  44. 園田直

    国務大臣園田直君) いま申し上げましたように、昨日出ました文章は政府見解ではございません。かつまた各省の間で研究をする、外務省の最終的見解でもございません。一つ考え方として研究している過程と、こういう文章でございます。  なおまた、これの結論については非常に重要な問題がありますので、いまおっしゃいましたような三条、それから日米の特殊関係、こういうものをどう判断していくか、こういう非常にむずかしい問題がありますから、十分検討していくつもりでおります。
  45. 田中寿美子

    田中寿美子君 私どもには武器輸出三原則もある。非核原則もある、こういう政治的な国民の意思、国会で決議をとったところの意思、そういうものよりは条約は優先させるんだというようなお答えがきのうあったようですけれども、これこそ全く政治判断にかかっているわけで、条約そのものはさっきおっしゃいましたように義務規定でもない、あるいはMDA協定義務規定ではない、これを提供するか否かは、政府がいま統一見解をつくろうとして協議中であるというふうに聞いておりますけれども、外務、通産、防衛ですか、三省でそういう考え方をいま協議していられる際に、このような考え方がアドバルーンのようにして出てくるということ、そのこと自体非常に重大なことだと思っております。日本という特別の平和憲法を持っている国、そして非核原則武器輸出三原則を持っている国が、法的な解釈をつけることによって、それは可能なんだというふうにこじつけていかれるということに対しては、非常に私は危険な状況があると心配いたしております。  で、九月八日に私がこの委員会で軍事技術供与の問題について質問をいたしましたが、そのときにいまの松田審議官ですね、在日米軍が地位協定第十二条に基づいて調達する場合には武器輸出三原則の適用外になっているというふうに言われたと思いますが、私はこれは大変な問題だというふうに申し上げておいたわけですね。だから武器輸出三原則という政治的な理念に対して、法律の方は優先していくんだというお考えだと思いますが、その地位協定十二条というそれをよく見ますと、資料をいただいて見たのですけれども、どこにも武器という文言はないんですね。そうではないでしょうか。
  46. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 十二条の一項で定めておりますのは、一般的に申し上げまして、「需品又は行われるべき工事のため、」について米軍が制限を受けないで契約することができるという契約自由の点が決められているわけでございます。後段で、その「需品」あるいは工事というものは両政府当局間で合意されたときは日本政府を通じて調達することができると。したがって、直接自由に契約してもいいし、日本政府が間接的に契約をしてもいいと、こういう定めがございます。そこに書いてあります「需品」というものはこれは非常に広い概念でございまして、そこに含まれるものは、武器、いわゆる武器というものも当然含まれるということは十分に考えられるわけでございます。その結果と申しますか、そこで在日米軍が調達した品目、それについて今度は在日米軍が輸出する場合、これは実は軍隊の特性として、その駐留している国の法律の適用をそのまま受けないで輸出することができるというのが一般的な考え方でございまして、その考え方を貫いて、国内法としても為替管理法から外してあるというのが現状でございます。
  47. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまとても重大なことをおっしゃったと思いますね。アメリカに対して軍事技術協力あるいは武器輸出ができるようにするために、いかに法的に理論づけるかということを一生懸命に外務省は研究していらっしゃる、あるいは防衛庁もそうかもしれませんけれども、それで十二条の第一項の調達自由の原則というのを見ますと、日本国で供給されるべき需品(サプライズ)、または行われるべき工事のため、とあります。第二項では、調達の調整というのは現地で供給される合衆国軍隊の維持のため必要な資材(マテリアルズ)、それから需品(サプライズ)、備品(エクイプメント)及び役務(サービセス)とありますね。そうすると、ただいまおっしゃった「需品」というものの中に武器も加えられるという解釈をしていらっしゃるんですか。
  48. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 協定解釈の問題でございますので私からお答え申し上げます。  先生御指摘のように、十二条一項で「需品」という言葉を使っておるのに対しまして、二項では「資材、需品、備品及び役務」というふうにさらに詳細に書いてございますが、ここで言わんとしていることは、合衆国軍隊が日本の国内におきましてその必要とする物品、いわば物品、役務を調達する場合に、一項においてはその調達先について制限を受けないということを定めたものであるというふうに私ども解釈しております。これは地位協定だけではございませんで、アメリカがNATO諸国と結んでおります同様の地位協定、この地位協定関連条文と同じ趣旨のものをこの十二条で規定したものでございまして、NATO諸国との地位協定と日米の地位協定とは若干表現が違います。NATO協定の方におきましては、まさに物品、役務と、グッズ・アンド・サービセスという表現を使っておりますが、言わんとしていることは日米地位協定におきましてもそれからNATOとの地位協定におきましても、先ほど私が申し上げましたような趣旨で同じ趣旨であろう、当然同じ趣旨でなければおかしいというふうに考える次第でございます。  それから、先ほどの北米局長から申し上げましたこととの関連で申し上げますと、一点補足させていただきますと、貿管令で、アメリカ軍が自分が持っておる資材、装備等につきまして、これを日本の国外に持ち出す場合にわが国の法令上の規制を受けるということは、これは軍隊の機能というものを不必要に制約するということにもなりますし、国際法的にもそれはおかしなことになりますので、これは一括して貿管令の規制から外しておる。すなわちアメリカがもともと自分が保有しておって日本の国内に持ち込んだもの、武器であろうとその他の装備、資材であろうとそれを持ち出すことは自由である。同時に日本の国内で調達したものも持ち出すことは自由である。これは事柄の性質上当然のことでございますので、そういうふうに国内法令上の規制は外しておるということでございまして、私どもといたしましては、先ほど来先生御質問のいわゆる対米武器輸出の問題と、いま私が御説明申し上げました米軍の調達あるいは調達した物資を日本の国外に搬出するという問題とは一応別の問題であろうというふうに考えております。松田審議官が御答弁申し上げましたことは、日米関係においてはいろいろ条約上特殊な関係がある、その一つの例としまして地位協定の十二条ということを例示的に申し上げたということでございまして、本件との関連でこれが非常に意味があるんだという趣旨で御説明を申し上げたものだというふうには考えておりません。
  49. 田中寿美子

    田中寿美子君 ということは、地位協定武器を提供するというようなことについての合意はしてはいないと、こういう意味ですか。
  50. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 私の御説明があるいは不明確であったかもわかりませんが、申し上げたかった趣旨は、日本におります米軍は、地位協定の十二条に基づきまして調達先について制限を受けないで、自分の必要とする物資、役務の調達が、できるということが第一点にございます。  第二点は、国内……
  51. 田中寿美子

    田中寿美子君 物資ですね、その場合の物資というのには。
  52. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) それは、もし武器の調達が必要であればそれは調達を行うということも当然十二条のもとでは予想はされておるだろうと思います。  それから第二点は、そもそも米軍が日本で調達したものであろうともともと持っていて日本の国内に持ち込んだものであろうと、そういう米軍が持っておる武器を含みます装備、物資、そういったものを日本の国外に持ち出す場合には、これは日本の国内法上の規制は受けないと、そういう法体制になっておるということが第二点でございます。
  53. 田中寿美子

    田中寿美子君 その地位協定に関してですけれども外務省のつくった「施設及び区域並びに合衆国軍隊の地位に関する新協定について」という資料によりますと、地位協定十二条二項はもっぱら「希少物資を対象」とするというんですね。希少というのはまれに少ないという大事な物資という意味でしょうね。その後の方を見ると、その「稀少物資」というのは、電気銅、アルミニウム地金、ニッケル地金、米、麦などが挙げられる。その第二項に言う「調達物資」というものはいま言ったようなものですね。それから「備品」とか「需品」などという言葉を見ますと、地位協定の十一条五項(C)には「軍事貨物」というような言葉があります。これはいまおっしゃったようにアメリカ軍が使う軍事物資を輸送したりなんかすることについてだと思いますが、それからそれの調達の問題かもしれませんけれども、地位協定についての合意議事録では「「軍事貨物」とは、武器及び備品」と定義しています。ですから、「備品」というのは武器とはっきり区別してあるんですね。さっき「備品」とか「需品」というものの中に含むこともできるというふうにおっしゃったけれども、「武器及び備品」というふうにして武器に関してはちゃんとそういう言葉を使っておるわけですね。ですから、さっき安保条約三条の解説としてMDA協定の中にあった「需品」というのは、これは武器解釈することができないんじゃないかと思うんですけれども、つまり外務省としてはそういうふうに解釈したいということで、いま一生懸命になって統一見解をつくるのに積極的に外務省の一部がそういうことをしていらっしゃるんじゃないかと思うんですけれども、どう保いうことですか。
  54. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 相互防衛援助協定の第一条は「装備、資材、役務」というふうに書いてございまして、この中に武器、いわゆる武器は含まれないんではないかという御質問があったかと思いますが、これは別に武器を排除しておるということでは毛頭ございませんで、先生御承知のように、まさにこの第一条一項に基づく「細目取極」によりまして、わが国アメリカから自衛隊の正面装備に必要なまさに武器の供給を受けておるわけでございます。  したがいまして、この第一条一項に書いてございます「装備、資材、役務」というものの中には当然武器、いわゆる武器と言われておるものあるいはその関連の技術というものも含まれておるということは、これは過去の条約の実施ぶりから言っても明瞭なことだろうというふうに考えます。
  55. 田中寿美子

    田中寿美子君 それだから、こちらからも武器を提供することができるという論理になるということになりますか。
  56. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 私の申し上げましたのは、相互防衛援助協定一条一項で言うところの「装備、資材、役務」というものの中に武器は入らないんではないかという御質問でございましたので、その中には当然武器も入る、いわゆる武器と言われておるものも予想されておるということを申し上げただけでございます。  それから、十二条の一項に基づきましてアメリカ日本の国内で調達するものの、いわゆるそこに書いてございます「需品」というものの中に武器と言われるものが積極的に排除されているというふうには私どもは考えておらないということを申し上げたわけでございます。
  57. 田中寿美子

    田中寿美子君 つまり安保条約三条、それから地位協定十二条、そして相互防衛援助協定という法的あるいは条約上、日本武器を輸出することもできるし、軍事技術の協力をする。こともできる、こういうことになりますね。
  58. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 実は、十二条と安保三条あるいはMDA協定というのはひとつ分けで考えた方がいいんじゃないかと思います。十二条は在日米軍が調達する、その際に「需品」を調達するときに契約自由の原則に基づいてやるのだということを定めてあるのが十二条一項でございます。それに基づいて今度は、日本で調達された「需品」を問わず、あるいはアメリカ側が持ち込んできた武器を国外に移すという場合には、これは一般国際法によって日本の国内法令、すなわちここでは外為令とか貿易管理令というのは適用を受けないというのが特例として設けられているというのが第一点でございます。  第二点は、いま問題になっている、在日米軍でなくてアメリカ側武器技術を提供することが可能かどうかということで、その点については条約上あるいは協定上、もし根拠があるというふうに考えられるならば、それはやっぱり安保条約三条であって、それを具体的に決めていくのが相互防衛援助協定の第一条になるんじゃないかというのが一つ考え方である。これも決してまだ政府部内で詰まった考え方でないということです。
  59. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう時間が来ましたから――十分にあれできませんでしたけれども、要するにいままではわりあいにぼかしていらっしゃいましたけれども、日米の軍事技術協力を非常にはっきりと打ち出してきて、その法的な根拠としては安保条約三条もあるし、それから相互防衛協定もある、それから地位協定十二条というのも前回の私の質問に対してのお答えでもあったわけなんですが、それらが法的な根拠になるというふうな考え方でもってまとめていこうとしていらっしゃるように思われますね。ですから、私は日本国憲法九条とか、それから非核原則だとか、あるいは武器輸出三原則とか、こういう非常に高い政治理念に立って、私たちはいまどんどんアメリカが全世界的に軍事力を強化させる方向に向かって大きな動きをしているときに、それに協力するための努力を一生懸命に法的な根拠を求めるというようなことをしないで、もっと高い政治的な理念に立つで、そして、いままさに世界じゅうまことに火がつきそうな危ない状況にどんどん進められていっているときに、日本は来年の軍縮特別総会に向かっても一体何を言うのか。ほんの一歩でもいまの危ない路線を押しとどめるための努力をするべき政治的な決断ということの方が大事なんであって、そういう条約や法的な根拠によって合理化させようというようなことはしないでもらいたい、こういうことなんです。園田外務大臣の御意見を伺いたい。
  60. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほどから申し上げますとおり、これは外務省としても最後の見解ではございません。いずれにいたしましても、条約、三原則その他の問題と日米との特殊関係の政治判断との問題がございます。これについてどのように持っていくか慎重に検討していきたいと考えております。
  61. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 初めに、日米関係の問題について少しく触れさしていただきたいと思います。  先ほど来、同僚議員からも御質問があったようでございますし、またそれに対するお答えもございましたようです。重ねて私からもお尋ねをしたいと思います。  このところアメリカ側から、おやおやというよりもどうなっちゃっているんだろうという大変さまざまな話題の提供が繰り返されて行われているようでございます。一体その真意というものはどこにあるんだろう。主として、日本側防衛力増強ということに視点をしぼったさまざまな考え方の提起があります。また一方においては、先ほども質問がありましたように、レーガン大統領みずからヨーロッパにおける限定核戦争はあり得るのだというような発言等々、こうしたアメリカ側考え方というものが、対ソに対する大変な脅威というものが背景にあるという、その上に立っての発想ということになるのだろうと思います。しかし、余りにも先鋭化し過ぎでいやしまいか、果たしてそれが本音なのか、また、日本に対するそれが願望なのか、あれやこれや言いたくありませんけれども恫喝なのか、一体何なのだろう、これはしばしば考えさせられます。  こういった、最近特に急速に米国の議会筋を初め、また米国政府筋においてもそういう高まりを見せながら、日本に対する手を変え品を変えの要求というものは、一体その意図はどこにあるのだろう。なかなかつかみにくい一面があるだろうと思います。  そういったことについても、先ほど恐らく、私ちょっと時間をおくれて参りましたので詳しい正確な答弁を伺っておりません、自主的に解決する以外にはないだろうというようなお答えであったようでございます。もし自主的に解決するということになれば、それがアメリカ側の要求に沿ったような自主的な解決なのか。しかし、いままでしばしば議論されておりますように、日本の国是とも言うべき諸原則がございますし、その前提に立った考え方を自どこまでも貫いた自主的な取り組みというものをこれからも続けていくのか。そういったことを整理しながら、この機会に外務大臣の率直な、そうしたアメリカのいろいろな動きを通して、展望を含めながらお答えいただければありがたいと思います。
  62. 園田直

    国務大臣園田直君) いま発言された問題は非常にたくさんの意味を含んでおると思います。  そこで、まず第一に日米関係でございますが、先般御承知のように、在京の駐米大使のマンスフィールド氏が米国の新聞でインタビューを行っております。その中の一問一答は、いまの日米関係を非常によく言いあらわしておると思います。  その第一点は、日米関係はきわめて良好にいっている、うまくいっている、しかし、日米関係の間に起こる問題は次から次へと大きな問題が起こっておる、だから、この問題をお互いに努力をして冷静に処理することが必要である、こういうこと。  それから、経済問題とおっしゃいました防衛問題、これは全く別個の問題であります。関連してはならぬ問題であります。しかしながら、言う方では、やはりこういう背景の中には日米関係の大きな貿易均衡があるとわれわれは想像しなければならぬと考えておるわけでございます。かつまた、日本努力すべき貿易均衡、続いて防衛の問題、こういう問題についてはマンスフィールド氏は経過を追って説明しておりますがそのとおりでありまして、あくまで自主的な判断のもとにアメリカとよく相談をし合いながら、相互理解を深めながら日本のできる立場で、防衛力の強化及び防衛の自主努力、及び貿易の不均衡の是正、こういう一つ一つの問題を冷静に判断し対処していく必要があると考えております。  ヨーロッパの核交渉中心にした米ソのやりとり――核兵備をやるとかあるいは戦域核極東に持ってくるとかいろいろ意見がありますが、この米ソの軍縮交渉、兵器制限というものは簡単に一カ月、半月で終わるものとは考えておりません。相当両方とも長期の展望を持ってやっている。その交渉が始まる前からそれぞれ含みのあるやりとりをやっている。こういうことを冷静に頭の中に入れて一つ一つを判断していくべきであると、このように考えております。
  63. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 マンスフィールドさんの記者会見の模様を私も拝見しておるのですけれども、大分アメリカ本国と考え方がすれ違っておるんですね。一体どちらを信用したらいいのか。マンスフィールドさんのことも信用したい、さりとて、それじゃ米国議会筋だとか政府筋の言っていることはではまた信頼がならないのか。この辺に一つの亀裂があるんじゃないかということを非常に心配するわけです。これからもやはり、日米関係がいまおっしゃったとおり友好関係を持続するとするならば、こういった問題の解消というのはどうしても避けて通るわけにいかないというふうに思うわけです。  すでにもう衆議院外務委員会等においても問題になりましたように、最近騒々しいくらいですね、ロストウ軍縮局長を初めザブロツキだとかあるいはヘルムズであるとかニールであるとかレビンであるとか、手を変え品を変え、引っ込めたり出したり、引っ込めたり、私はそれはいたずらじゃないと思うんですね、その底流に何かある。そして日本側考え方を何とか防衛力増強の方に向けさせよう、そしてまたその反面には、経済問題をちらつかせながらということになりますと、やはり日本としては、これからアメリカとのいい関係を持続させる上においても非常に障害になりはしまいか。ですからいま、私は具体的な名前を挙げましたし、また、先ほどもそういう名前も挙がっただろうと私は思うんです。恐らく外務省としてもそういったことを等閑視するわけにはまいりませんので、当然いろいろな点から検討を加えられ、分析もされ、一体それが本当にアメリカが現在一つの世論形成の上でその代表としてそういうような発言をしているのか、ごくもう限定された、あるいはためにするそういう発言がなされているのか、その辺をどういうふうに御判断なさっているのかということを、やはりこの機会にお聞かせいただくことが、今後の判断の上に、非常にわれわれとしても役立つのではないかというふうに思うわけです。いかがでしょう。
  64. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 最近のアメリカの議会において、渋谷議員御指摘のようにいろいろな決議案が出ております。その決議案内容あるいは議事録を見て感じますことは、やはり一つには、そういう決議案を出した人の考えの中に、自分たちのアメリカの経済が必ずしもうまくいっていないということに対するフラストレーション、これが第一点。  第二点は、それを背景にして経済力が豊かであって非常に経済的にうまくいっている日本あるいはヨーロッパの国に対して、防衛問題でもう少しやってほしいという考え方、それから、その防衛貿易の問題というのはこれは本来リンクすべきものではないし、また論理的にリンクする問題ではないわけでございますけれども、やはり感情的にはさっき申し上げましたように、アメリカの議会の中でリンクしているというふうに見ざるを得ないんじゃないかなという気がいたします。  その出てきた決議案が、今後どういう経緯をたどっていくかということは、まだ決議案が出たばかりでございまして、中には取り下げられたり、あるいは外務委員会に付託されていずれ公聴会が開かれるというような情勢であるわけでございます。そこで、そのアメリカの議会の中でこういう声が出てきたことについて、やはり私たちとしては、それは一つの事実として受けとめて冷静に判断し、これに対処する道を考えていかなければならないであろうというふうに見ております。先ほど大臣が答弁されましたように、基本的に日米関係というのは非常に良好であって、いままですべて両者の間断なき対話で解決されてきたわけでございます。したがって、基本的には今後もそういう姿勢を貫いていくべきであろうということでございます。  きのうも参議院の行特で総理を言われましたように、これは政府アメリカ政府と話し合うということも必要だろう、しかし同時に、最近のように議員の交流が深くなっているということから、議員の方々の交流も深めて、アメリカについて日本考え方というものを十分理解していただければという答弁をされております。私たちも、各層における交流を一層深めることによって相互の理解を深めていくというのが、やはり長期的にこの日米間のいろいろな問題を解決していく一番基本的な考え方ではないかという気がいたします。
  65. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 淺尾さんおっしゃるとおりだと思います。私も素直にそう受けとめたいと思います。先ほど園田さんも、良好な状況が続いていると。良好な状況を続けさしたいがために、それをぶち壊すようなことがあってはならないということを非常に懸念するわけですね。恐らく、これからどういうふうに、いま言われたように決議案がどう具体化するのか、これはまあ推測の域を出ないわけでありますけれども、しかし、ああいったものが一つ一つ米議会筋でまとまり、そしてレーガン大統領が決定をするということになりますと、これは日本に対する影響は大変大きなものがないわけにいかない、ある。そういった場合に、一体どうなるのかということを非常に危惧しますし、また日米関係の良好な状態に水を差すようなことにむしろなりはしまいか。それも全部アメリカ側からであります。経済の失敗を、そのツケを日本の方に回すなんていうことは、これはわれわれとしてもいただけるしろものではないことは常識でございます。  ただ、これは昨日か一昨日かわかりませんが、衆議院の安保特で大村長官の答弁の中で、これは私の記憶違いかどうかわかりませんけれども、ここで確認しておきたいと思うんですが、やはり米国側の防衛力増強というものの要求をだんだんのんでいくうちに、GNP一%の枠を超えるかもしれない可能性があるような含みのある答弁がなされている。そうすると、いままで非核原則であるとか、憲法の枠内だとか、あるいはGNPの一%以内であるとか、いろいろそういうような確認をしながら今日まで、防衛力についての一つの歯どめを実は持ってきたわけです。それが今度だんだんエスカレートしていきますと、その歯どめが取り外されてしまうんじゃないか。その背景には、アメリカ側の手を変え品を変えの圧力というものをどうしてもある程度やはりのまなければ、今後の日米友好というものが保てないという判断もあるかもしれない、あるいはまた、一方において経済摩擦を解消できないという一つのおそれがあるかもしれない。それに道を開くためには、どうしてもある程度やらざるを得ないというその考え方、それと一方においては、アメリカと同じような考え方に立ってソビエトに対する脅威というもの、やはり現在の軍事力の状況を考えると、このままではとうてい自主防衛はできない、専守防衛はできないという判断によるのか。  そういったことに仮によったとしても、もう次から次へそういう枠を外されていきますと、大変な軍事強国への一つの道をやはり聞かざるを得ないんじゃないかという、やっぱりこの段階に来ますと人知れず心配せざるを得ない。しきりに極東有事なんということが最近取りざたされているようであります。やはりそういった極東有事に際しても、現在の専守防衛の能力では一体いかがなものであろうか。加えて、そこにアメリカ側から大変強い要求がある。そういうものを考えますと、先ほど申し上げたように、軍縮局長発言といい、また上下両院の議員の決議案の上程といい、これは必ずしもその場限りのものではなくして、これからもチャンスを見計らっては、また引っ込めたやつを出すかもしれない、あるいは出したやつをまとめるかもしれない。そういった場合、一体日本はどういう影響を受けるんだろう。恐らく皆さん方新聞報道、テレビニュースを見たり聞いたりしますと、そういう心配が出てくると私は思うんです。やっぱりこの際、きちっとこの辺を日本政府としても、ここまでは許容できるけれどもここまでは許容できないという、その都度その都度、その辺の意思表示というものをする必要もあるんではないだろうか。繰り返しのような質問の形態になりましたけれども、その辺を、重ねて外務大臣としての意のあるところをひとつお聞かせをいただければありがたいと思います。
  66. 園田直

    国務大臣園田直君) 日米関係はきわめて重要でありまして、これが現下のような情勢の中で日米関係に亀裂ができることは、単に日米間だけではなくて西側陣営にも大きな問題が出てくるわけであります。ひいては、これが世界の平和に影響いたします。したがいまして、これは大事であることが第一点。  第二番目は、日本米国ともっと密接に話し合いをして相互理解を深める。決して日本が経済だけ伸びていって、ずるく構えているわけではない。やるべきことはやっている。あるいは限界はこうである、こういういまおっしゃいましたようなことを、そのたびごとに政府アメリカの議会に理解を求める努力を、今後することがきわめて肝要であると考えております。
  67. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあこれ以上どうこうと言ってもなかなからちが明きませんし、こうだという明確な結論もなかなか出にくい問題だろうというふうに思いますね、アメリカ側出方というものもございますし。ただ、別の側面から考えてみた場合に、確かにいま米ソは軍拡の道を開いておることは事実であります。しかもそれは核軍拡であります。大臣御自身も、先般国連総会においてこの点を力説されたことを私自身も知っております。内容も拝見をいたしました。しかし、なかなか思うようにわれわれの考えどおり進まないというじれったさといいますかございます。  さて、ここで考えてみなきゃならぬことは、一方においてはいまそういう問題が日米関係に起こっている。それも軍備中心とした問題である。それをやっぱり今度は別の面から軍縮を叫び続けていかなければなりませんし、もうあらゆる機会に、日本の立場のみならず呼びかけていく必要があるであろう。ただ、これは私からあえてこの場で申し上げずとも、外務省の方ではもう篤と御存じのはずなんです。ジュネーブにある軍縮委員会は機能してないんですね、はっきり言うと、残念ながら。大川さんは獅子奮迅だ、話を聞いてみると。頭が下がるような思いでいま取り組んでいるというのを私は評価したい。けれども、もうどうにもならぬといういま状況のようですね。加盟国は四十カ国、ところが肝心の米ソはその中に入らない。SALTの問題にいたしましても、その四十カ国はみんな並んだテーブルの中で話し合うんじゃなくて、米ソはいつもらち外に置いて、その軍縮の問題でどんな話し合いが進められているのか、その中身は全然知らされていない。こういったことを、何らがこの糸口を、みんな話し合って軍縮の重大さというものを認識させる、どうすれば一体いいんだろう、何とか知恵が出ないものだろうか、こう思うのは私一人だけじゃないだろうと思うんです。ところが、いろいろ伺ってみますと、参加している国においても、軍縮に対する政治的なレベルといいますか、非常に低いというような点も指摘されているようでありますし、また、軍縮委員会そのものの運営の仕方にも問題があるんではないだろうかという点も指摘されているようであります。  もうすでにこういったことが明らかになっている以上、日本として軍縮の先駆を切って取り組むと、いままで政府は一貫してその点も表明されてまいりました。こういった点で、何とか軍拡への一つの歯どめがつけられないものかなという歯ぎしりするような思いの昨今です。この点は、来年の軍縮特別総会を迎えてなおのことだろうと思うんですけれども、ただ演説をした、それはそれなりの一つのぼくは影響力を持ってあろうと思うんです。しかし、演説をしただけで果たして軍縮というのは進むわけじゃない。いろんな、やっぱり特に非同盟国、そういった国々への一つの働きかけ等も必要になってくるでしょうし、いままでやってこられたことを踏まえて、まだやるべき道というものは、私は十分あるんではないだろうか。やはりそういったことをがっちりやりませんと、どこまでいっても野放図に軍拡へ行く。そうすると、波及的に今度は日本へもそれは及んでくる。さあGNP一%の枠は外されていく。そしてまた、外されたはいい、それに次から次へまた新しい要求が出てくるであろう。必ずエスカレートしていくであろう。それをやっぱり断ち切るためには、一方においては日米関係の対話の必要というものは当然、これは繰り返しやっていかなくちゃならない。一方において、やはり軍縮委員会というものがせっかく国際機関としてあるわけですから、そういったものを、もっともっと何か手だてを講じて考えられないか。かつて、われわれ一私自身も、たとえば日本にも衆議院、参議院がある、向こうにも上下両院がある、ただし日米議員連盟というのはないんです、はっきり申し上げて。だから、議員同士が話し合う、そういうきっかけをつくってお互いに話し合うという、そういう場面をつくることも必要であろうなということを考えたことがあります。しかし、それだけで果たして十分だろうか。何とか別な方法はないだろうか。絶えずやはり米ソという一つの大きな相対立する国に翻弄されちゃって、どうしても手をこまぬくか、遠くで傍観する以外ない。これが今日までの経過ではなかったのか、もし、知恵があったら教えてください。
  68. 門田省三

    政府委員門田省三君) お答え申し上げます。  御指摘がございましたように、軍縮に関します交渉は、事柄の性格上、遅々として進まないというのが実情でございます。ただし、その交渉の過程におきましては、真剣な話し合いが行われているというふうに了解しております。渋谷委員がおっしゃられましたように、わが代表は、機会あることにわが国の立場を強く訴えているのでございますが、その成果は必ずしも明らかにわれわれの耳に入ってこないというのがまた事実ではございます。しかしながら、わが国の基本的な考え方、つまり、究極的には核兵器の廃絶ということを目指し万がら、一歩一歩着実な形で軍備の縮小の方向に向かうべきであるという、この被爆国としての世界に対する訴えというものは、これはそれなりの浸透力を持っているものと私どもは考えておりまして、したがいまして、機会あるごとに強く訴えていく、根気よく続けていくということ、これは大切なことであろうと思っております。  具体的には、御承知いただいておりますように核実験の全面的な禁止、これを、わが国一つの重要な提案ということにいたしておりまして、従来ともこの点を強調してまいっているわけでございますけれども、ただいまニューヨークで開催中の国連総会におきましても、この問題が前進いたしますようにということで、志を同じくする代表とともに、包括的な核停止の問題をば米・ソ・英の三カ国のみにゆだねないで、作業委員会というふうな形で、可能ならばこのような場においても検討するというふうな一つの提案を行うべく努力をいたしておるという事実もございます。一歩一歩できるだけの努力をするということで根気よく続けてまいりたい、かように考えております。
  69. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、その点もう一つ確認をしておきたいんですが、この軍縮委員会に加盟している国々の間には、軍縮一辺倒じゃとてもじゃないけれども軍縮なんてものはできる筋合いのものではない。一方において軍備力を整備しながら、並行しながら軍縮という問題を考えていかないことには、本格的な軍縮論議には至らないだろう、こういうような考え方が非常に各国の間には多いということを伺っているんです。一見すると非常に相矛盾したような考え方ではあるまいかと思うんですが、その辺の考え方については、外務省としてどのように判断をされていますか。
  70. 園田直

    国務大臣園田直君) これは私、国連総会でも発言をし国会でも発言した趣旨は、いま先生の言われた発言趣旨でございまして、いま軍備増強で競争している、これは恐ろしい懸念がある、したがって、これを何とかして軍備縮小、制限によって水準を下げながら、低い水準で力の均衡を保ちつつ、一方には話し合いを続けていく。これが、なまぬるいようで手がないようでありますが、各国が考える線であると考えております。したがいまして、いま米ソが中心になって軍縮に対する話し合いをやろうじゃないかというところまで来たわけでありますが、さて、これが始まって一カ月や二カ月や半年で解決するとはわれわれは考えておりません。いまのようないらいらした緊張した状態で、おっしゃいましたように、お互いに力の均衡を保ちながら、なるべく下げろ下げろ下げろと言いながら、当事者自体も軍備増強の終末点がどんなに恐ろしいかということが一つ。もう一つは、いまの軍備増強が米ソ両国にとってなかなか大変なことであるという実情がだんだんわかってきた。と同時に、米ソを除く他の国々の間には、いま先生のおっしゃったような気持ちが出てきておる。こういうものとかみ合いながら、いろいろ紆余曲折はありながら、年限を経ながら、何とかわれわれの期待する方向に行くのではないか。その見通しがついたころにようやく世界の平和に対する具体的な案が出てくるのではなかろうか。それまでは、知恵もないようでありますが、一生懸命に、繰り返しお互いに話し合い、米ソ以外の国々が連携をしながら努力をする以外にないと考えております。
  71. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ともかく、先ほど冒頭に申し上げたように、最近のレーガンの発想の中には、核の限定戦争はあり得るんだと、こういうような発想が打ち出されますと、これはわれわれ常識として、ソビエトを刺激することにもつながるでありましょうし、あるいは一番そういう危険の度合いの強いヨーロッパ等においては大変深刻なショックを受けるであろう、過日も西ドイツ、イタリーあるいはイギリスにおいて大変なデモも展開されるということで、非常に大きな抵抗運動があったこともそれを如実に物語っているのではなかろうかと思います。それだけにおっしゃるとおり大変むずかしい、時間もかかるかもしれない、いままでがかり過ぎてきたんですから、これからもかかるでしょう。ただ、良好な関係にあると言われている日米関係において、やはり何回も何回も機会を見つけて首脳会談を通して、いま確かに御指摘になられたように、軍拡をすれば一番困るのはアメリカ国民であり、ソビエトの国民であることは、だれよりも首脳者が一番よく知っていると思うんです。そういったやっぱり愚かなことをあえて続けなければならない、あるいはだれの助言もどこの国の助言も聞かない、あくまでもどこまでもそれを突っ込んでいくという考え方で決して私はないと思うんですね。  もうとにかく締めくくりがどうにもつかないというような状況の中で、そっちの方に血道を上げている。まあ近い将来、米ソ首脳が相まみえてこの問題がどこまで本気に議論され、具体的に軍縮への足取りというものがつけられるのかどうなのか、現状としては非常にむずかしい疑問が残る問題ではなかろうか。やっぱりそういう点では、いままで外務大臣としても持論がございますように、絶えずアメリカ側と接触しながら、ソビエトとの対話をできるだけ早くそこに実現をさして、そして軍縮への解決の道をつけて上げる、つける助言をする。これはどうしても、いままでも繰り返し私も申し上げてきたんだけれども、どうもサミットだとかなんかというときには、ちょこちょこっとお会いになるかもしれない、ちょこちょこっというのは大変失礼な言い方かもしれませんけれども。やっぱり本気になって時間をかけて話し合うべきじゃないだろうかというふうに私は思えてなるないんですが、将来どうでしょう。いま申し上げたような私の提言を通して、日米両国の首脳がこの一点に的をしぼってもいいと思うんです、話し合って、具体的に実現する方向へやっぱり日本が先鞭をつける、これは必要じゃないかなと感じますがね、どうでしょう。
  72. 園田直

    国務大臣園田直君) そのとおりだと存じます。
  73. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これはとにかくいま、変な話ですけれども、十一月末になると、やはり政界もいろいろとあわただしい状況になる。私はそういうことで一々揺り動かされてはならぬというふうに思うんですね。アメリカやイギリスやその他の国々を見ても、大体大統領だとか総理がかわるまで外務大臣というのはかわるものじゃないですよ、本当はね。一々それでもって政策考え方が変わっていったんじゃ本当は困る。困るのはだれが困るか、日本国民が困るであろう。まあそれは余談ですから、私の所感だけでも申し上げておきたいと思うんです。だけれど、あくまでもそういったことをだれがやろうとも貫いていってもらいたいなと、きょうは願望を込めて、最近いろんな問題が提起されておりますだけに、あえてそのことを申し上げておきたい。  次に、先般行われました南北サミットの問題について、私ども外務省からいろいろな資料もちょうだいしております。また、その後の経過についてもパンフレット等をいただいておりますので、その経過やなんかについては存じておるつもりでございます。ただ、端的に申し上げると、今後この南北の問題というのは、今回の初めての南北サミットを通じて一体どう展開していくんだろうな。この辺にもちょっと割り切れない問題というか、今回話し合いの場ですから一々結論めいたようなものが出るとはわれわれも期待はしておりませんけれども、しかし、せっかくそういう手がかりをつかんだそういう話し合いの場というものを、先般お出かけになる場合に私もお願いを申し上げたつもりでございますけれども、やはりこれが持続しながら、これも時間がかかる問題かもしれません、GNについてもアメリカ側は余りいい顔色をしなかったと。やはりわれわれが予測していたような結果になったわけであります。この南北問題一つをめぐりましても、これもやはり軍拡の問題と裏表になっております関係もございまして、これはやっぱり非常に深刻に日本としても考える必要があるんではないだろうか。したがいまして、率直に、今回の南北サミットについての、参加をされた大臣御自身の評価、そしてまた今後あるべき姿といいますか、それに対して日本政府としてはどう取り組むことが一番望ましいのか、こういった点をかいつまんでお聞かせをいただければありがたいと思います。
  74. 園田直

    国務大臣園田直君) 先般のメキシコにおける南北サミットは、時間が少なかったためと会議の運営が新しい方法をとったために、非常に活発に論議はされたが、整理その他のことについて十分の時間がなかったために、わりに理解されていない点が多いと存じますが、私から言えば、この会議は非常な成果があったと。その第一は、南北二十二カ国が一堂に会したということ自体に大きな成果がある。二番目には、これを決議であるとか一つ方向に持っていくという努力をしないで、各国首脳が非常に自由に討議をした。その討議をした結果、おのずから一つ方向が出てきたと、こういう意味。それからさらにもう一つ大きな問題は、これは渋谷先生でございましたが、行く前に、南北サミット軍縮の問題をもっと話したらどうかとおっしゃられたことを記憶しております。それから事務当局と一生懸命に直ちに準備をし、総理がこの点で発言をされて、これが口火を切った。この四点が私は成果があったことだと存じます。  そこで第一は、一例を挙げますとGN――包括交渉の問題で他の国々はこれに理解を示し、アメリカだけが反対して対立をして、それを何とかアメリカに譲歩させようとしたというのではございません。これはもうそのものずばりで議論が始まったわけであります。その議論はアメリカとというわけじゃなくて、やはり北と南の議論であります。たとえば一例を披露しますと、国の名前は言えませんが、世界銀行その他の銀行がある、これはわれわれ開発途上国のためにつくられた銀行じゃないんじゃないかと、先進国が自分の都合のためにつくった金融機関であるから、世銀とは言っておるが、実際われわれの開発に間に合わない、時間に間に合わない。いろいろな議論が上げられたわけであります。これは国連交渉になってから出てくる具体的な議論のつもりであったのが、それから議論が始まりました。これについては、日本を除く先進国はそれぞれ具体的に発言をしました。たとえばそういう議論を何回も言い合って、片方が言う、途端に片方が言い返す、また言い返す、こういう議論は初めてでございます。それを言ううちに、南の方は、なるほど自分たちの言うとおりにはいかぬという認識を持ったようであります。たとえば、いまの世銀その他はいまのままではなかなか自分たちの開発のためにはすぐに役に立たぬ点が多い、もう少し運営上、この銀行の目的が一般営利機関じゃないのだから、開発途上国の開発のためにということに重点を置かなきゃ困る、しかし、自分たちが言うようにこれを改組せよとか、あるいはこれと一緒に来た資本を自分たちの都合で凍結することができる、こういうことになれば、当然資本とか銀行の金が入ってこないんだなあと、そうなってくると、かえって自分たちはいまより辛いんだなあというようなそういう意見がだんだんと縮まってきたことは非常な成果であったと思います。  そこで、これらについては日本が調整役をするなどという大きなことではなくて、日本はカナダやメキシコと相談をし、相談もされつつ両方の言い分がお互いに理解できるような努力をしたわけであります。特に鈴木総理の言われたことは、われわれはいま先進国の中に入っているけれども、先進国に入った歴史はごく浅い、われわれは開発途上国であった、したがって、南の方々の御意見もわかる。こういうわけで、中国初めいろんな関係でわりに南の国々の方は日本の言い分を理解しやすい立場にあるわけであります。かつまた、先進国の方も日本の言い分はわかる、こういうことで役割りが果たせたんじゃないか。しかし問題は、国連交渉が始まった、国連という舞台の中でいまのような問題がだんだん煮詰められてきて、これを具体的にどうやるか、こういうことになるわけでありますから、それぞれの機関を通じてこれからが日本の走り回る役目は大きくなる。その場合、調停とか仲介とかそういう大きなことを考えないで、南の立場もよくわかる、また、現実の問題もわかる、こういうことで双方が一定の方向に行くような努力をする責任がある、こういうことが非常な成果だったと思います。これを外に売り出せなかったというのがなかなか残念でございます。  それからもう一つは、このような重要な会議でどこの国も、現場でも、帰ってからでも非常に評価をしております。南のそれぞれの大統領あるいはアメリカ大統領初めヨーロッパの首脳者も非常に成果があった、これからやっぱり国際会議、首脳者会議というものはこういうふうに率直に議論を言い合って、争いをした方がかえって本当の結論が出るんだぞ、かっこうだけ議論しておったんじゃ新しい時代はつくれない、こういうことを考えられたことが成果だと思う。  次に、渋谷先生から言われた軍縮の問題でありますが、だんだん言われてから研究いたしますると、いま南の国の累積赤字が計算の仕方がいろいろありますけれども、大体五千億ドルございます。これに毎年八百億ドル以上の金が上積みしていくわけであります。この上積みは大体は金利と石油の値段、こういうことになっているわけでありまして、これを理屈は詳しくは言いませんが、概略して述べますと、これが焦げつきになってくる、そうなってくると、五千億ドルの金がどこかで焦げつきが出た場合には経済パニックの発生が出てくる。これが出てくれば連鎖反応を起こす。ここに、過去の歴史からすれば戦争の原因がある。一方、また翻ってみると、年々各国軍備に使うお金はこれまた約五千億ドルでございます。ここらあたりにさっきおっしゃった軍備は逐次、辛いだろうけれども、少しずつ下げて、力の均衡はお互いに保ちながら話し合えという一方、下げたその金をこっちの方に回すということを考えるべきではなかろうかという口火を日本の総理が切られて、これまた非常に大きな反響を呼んだ。こういう意味で私は成果があったと思う。  ただ、残念なことは、まだあと残っておりますけれども、このサミットを今後、来年どうやるのかこうやるのかという、そういう具体的な問題を決めずに、その後でごそごそやっている。この点は残念であった。  以上、長くなりましたけれども御報告をいたします。
  75. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 非常に簡潔におまとめをいただいたと思うのです。やはり話し合いというものは何事によらず、それがいいか悪いかの結果は後から評価ができるわけでありますから。ただいま最後におっしゃったように、せっかくこれが一つのチャンスができたわけでありますので、将来いつとは限らずに、できるだけ近い将来この会議を再び開催するとか、それからその際にソビエトも参加することが望ましいのかどうなのか、この辺についてひとつこの南北サミットについての締めくくりをお答えいただきたい。
  76. 園田直

    国務大臣園田直君) 世界の必然性、当然の理論から言えば、すべての国々が参加することが望ましいことであると私は考えておりますが、今度のサミットではそこまで議論は進みませんでした。
  77. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはこちらからまた何かアクションを起こすというようなことは考えていませんか。
  78. 園田直

    国務大臣園田直君) 明年度からの問題を今後どうするかということは、それぞれ線は引っ張ってきてありますから、それぞれの国の代表者が話をつけてくることだと思います。  それから、いまのソ連の問題は直ちには議論にはなりませんが、ひそかに腹の中で考えている国々は相当多いと、こういうことでございます。
  79. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 あと残りの時間もわずかでございますので、まとめて質問を二つほどさしていただきたいと思います。  一つは再開された漁業交渉、これはさっきもちょっとお話があったんじゃなかったかと、ちょっと記憶忘れましたけれども、過日、プロコフィエフ教育相の来日がビザの問題で中止になった。こういったことが漁業交渉に与える影響というものは全く出ないか、それとも何とも言えないか、あり得るか、これは三つ答弁があると思うのですね。この辺をひとつお願いしたいということ。  それからもう一つは、せっかくきょうは村田さんもおいでになっていますが、村田さんにきょうは余りなくて申しわけないのですが、ただファハドが来月早々来日されますね。非常に重要な時期に来られると私思うのです。私は中東外交の新しい一つの口火を切るためのチャンスでもあろうというふうに私なりに評価をしております。そういったときに何を一体話し合うかということは、これからいろいろ詰めなければならぬ問題があるであろう。中東に対しても日本の取り組む政策が逐次濃度がだんだんだんだん濃さを増してきているんじゃないかという感じがするのです。いままでが薄過ぎたものですから。サダトの死去後きわめて激しい変化というものはないにしても、来年あたりいろんな形で変化が起こる可能性もないではない。イランにおいても、あるいはホメイニの問題が云々されておる等々のことがあると、また何かしら起こり得る可能性というものはないではない。あるいはイスラエルとの問題もまだ完全に解消しているとは思えない。エジプトとの関係もそうでございましょう。  そういったようなことを踏まえつつ、やはり鈴木総理としても大変意気込んでおられて、来年一月早々には中東訪問をいたしますというようなことをたしかおっしゃったように私記憶している。その後の官房長官か何かの談話で、現在のところは考えておりませんというふうに変わっちゃった。この辺一体どうなっちゃっているのだろう。しかもいまサファドがこちらへ来られる、チャンスである。やっぱりそれに機敏な対応を示すというのが、日本のこれは外交であってしかるべきであろう、こういった問題について、いま外務省としてはどのように判断をされて、そのサウジの皇太子が来られたときの対応というものをいろいろお考えになっていらっしゃると思う。何も油だけの問題じゃないだろうと私は思います。政治的な次元の上に立った問題あるいは経済的な上に立った問題等々、これは恐らく論点がしぼられると思うのですね。そういったことを、はしょりながらいま申し上げて大変恐縮でありますが、その二点についてお答えをいただいて私の質問を終わらさしていただきたいと思います。
  80. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) プロコフィエフさんの訪日中止問題でございますが、これは新聞で報道されましたとおり、わが方が従来の慣行に従って特定査証を出すということに御不満でお見えにならなかったということと存じますが、このようなケースに特定査証を出すというのは、かねてからの仕組みだったわけでございまして、従来はソ連側はこの点について何らの不満を述べていなかった、今回それが特にソ連が不満を示された理由というのは、私ども自身よくわからないわけでございますけれども、いずれにいたしましてもそういう性質の問題でございまして、これが日ソ関係の基本、日ソ関係の全般的な関係、漁業交渉を含めてでございますけれども、これに大きな影響を与えるということはなかろうというのが私どもの見方でございます。
  81. 園田直

    国務大臣園田直君) ファハド皇太子の御訪日はおっしゃるとおりでありまして、中東の問題、中東和平交渉中心はやはりサウジアラビアにあり、その濃度がだんだん強くなってきたと考えております。その際に皇太子がおいでになることは非常にありがたいことで、総理もそのおつもりでいろいろ考えられておられるものと判断をいたします。  総理の中東訪問というのは、行くとか行かないじゃなくて、いま検討中である。これはいろいろ情勢がありますから、一国の総理でありますから、行くと言っておいて行けなくなったら困ると、こういうこともありましょうし、いま検討中であるというのが正しい状態でありますけれども、皇太子がおいでになった後、それはいろいろ判断されるものではなかろうかと考えております。
  82. 立木洋

    ○立木洋君 去る九日の衆議院の安保特で外務大臣が、最近のヨーロッパにおける平和運動の急速な高まりについて、これは一時のデモだとか、関係団体のみの運動とは判断できないというふうに述べられて、これが多くの国民感情のあらわれあるいは平和への羅針盤等々の表現を使って評価をされたということを聞いたわけですが、この運動が欧州で急速に高まってきた要因については大臣、どのようにお考えになっておられるでしょうか。
  83. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が発言しましたことはそのとおりであります。あの運動の中には、たとえば西独で言えば与野党ともに入っているなどということもいままでにない、一つの団体のデモではないと思います。このように急激に高まってきたというのは、やはり各国の人々が力の均衡というのは必要だとは言いながらも、世界に戦争を起こしてはならぬという平和に対する念願がこのような勢いになってきたんじゃないかと想像いたしますけれどもヨーロッパの問題でありますから具体的には余り突っ込んで申し上げない方がいいと存じております。
  84. 立木洋

    ○立木洋君 大臣はお避けになりましたが、やはり直接には戦域核配備の問題だと思うんですね。SS2〇がソ連の西部に配備され、それに対抗する意味でNATOとしては今度はやっぱり戦域核を八三年目途にして配備するということが一九七九年十二月NATOの国防総会で決定されたということから、こういう事態が起こってきた。これは大臣御存じだけれども、いまはお述べにならなかったというふうに私は思いますが、それで、戦域核の問題ですが、九月の末にカールッチ国防副長官がおいでになったんですが、戦域核の問題について、外務省との話し合いの中で触れられたというふうに報道されておりますが、正確な意味でカールッチ氏がどういう表現で戦域核の問題について述べたのか、外務省はどういう表現でそれに対して答えたのか、そこらあたりをひとつ正確にお答えいただきたい。
  85. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) カールッチ国防副長官と外務省の事務当局との会談の際に、まずカールッチさんの方から、欧州の戦域核交渉は十一月三十日に開かれる予定であるという話がございまして、この交渉というのは相当むずかしい交渉で、長時間要するだろうという話があったわけでございます。それに対して日本側の方から、欧州における戦域核の制限交渉というものは、ヨーロッパのみならず、ひいてはアジアを含め世界の安定に大きくかかわる問題である。そこで日本側としても、その戦域核交渉については当然注目しているところであるので、戦域核交渉が進展する都度アメリカ側から情報を提供してもらえぱ非常にありがたいというのがこの会談の内容でございます。
  86. 立木洋

    ○立木洋君 戦域核の問題について日本側話し合いがなされたというのは、大村防衛庁長官が訪米されるときに、ロング司令官あるいはワインバーガー国防長官等々との間で話し合いがなされたということが言われておりますが、外務省としてカールッチ氏以外にこの戦域核の問題でアメリカ側から通告があったり連絡があったり、あるいは話し合いがなされたということはこれ以外にございますでしょうか。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕
  87. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 正確を期すために、二つ実は問題があるわけでございまして、一つは欧州の戦域核交渉、これについては、先ほど申し上げましたようにカールッチ氏に日本考え方というか関心というものを表明したわけでございますが、この日本の関心の表明はすでにカーター政権時代にもう日本側としては外交チャネルを通して表明しているわけでございます。  それから第二の極東における戦域核配備、これについてはまだアメリカ側は何ら決めていないということでございますので、日本側としてこれに対して意見を述べたということは全然ないわけでございます。
  88. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど塩田防衛局長がちょっと述べられたんですが、配備するという状態になれば外務省の方にも連絡があるはずでございますからという趣旨のことをちらっと述べられた。だから、そのことについては話があったのかなかったのか。いまはまだ決まっておりませんのでと言ったけれども、それは向こう側が決まっておりませんのでということを外務省に連絡をしたのかしないのか、そこのところを正確にしておいてください。
  89. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先ほど防衛局長の答弁を私も聞いておりましたけれども、全くアジアにおける戦域核配備については外務省に連絡ございません。
  90. 立木洋

    ○立木洋君 決まってないという連絡もないわけですね。
  91. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) はい。
  92. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、ちょっと具体的にお尋ねしたいんですが、これは大臣にお答えいただければいいけれども戦域核である巡航ミサイル、これがSSNに配備されるというふうなことがすでにレーガン大統領の計画の中でも述べられているわけですが、この巡航ミサイル配備されたいわゆる潜水艦日本に寄港するような場合、あるいは日本の領海を通過するような場合、日本としてはどういうふうな対応をなさるんでしょうか。
  93. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) まず私から御答弁申し上げます。  御承知のとおり十月の二十日にアメリカ大統領アメリカの核の近代化について幾つかの発表をしております。その中で、既存の潜水艦の幾つかに核巡航ミサイル配備するであろうということを言っておりまして、それを受けて国防次官補がさらに補足説明をして、われわれは数百の核装備海上発射型巡航ミサイルを一九八四年以降一般目的潜水艦配備するであろう、これが現在の事実でございます。したがって私たちとしては、この巡航ミサイルについては、先ほど申し上げましたように具体的な配備アメリカ極東においてするというようなことについて何ら話もございませんし、またその前提として、この発表文にあるとおり、その配備が全体としてどうなるのかについて何ら決定はされていないわけでございます。したがって、そういう状況で日本への寄港、入港等についての対応ぶり云々ということは、ここでするのは時期尚早でないかというふうに私ども考えておりをする。
  94. 立木洋

    ○立木洋君 大臣いかがでしょう。
  95. 園田直

    国務大臣園田直君) そのとおりでございます。
  96. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、九月三日の参議院の安保保持で、私もここに出席しておってやりとりがあったんですが、同僚議員からこの問題について質問が出されました。そのときに大臣はどう言われたか、当然そういう時期が来ると私も予想しているというふうにお述べになった。その後本委員で、極東におけるいわゆる戦域核配備について大臣はどうお考えになりますかという私の質問に対して、ここに議事録持ってきていますが、長いので読み上げませんが、その中で大臣明確に述べられておりますように、私としては歓迎いたしませんし、歓迎するはずもございませんと明確に述べられているわけですね。そうすると、戦域核である巡航ミサイル配備された潜水艦SSNの日本に対する寄港だとかそういう問題が起こった場合には、あるいはこのポラリスと同様に認めないという立場をとるというふうに解釈してよろしいでしょうか。
  97. 園田直

    国務大臣園田直君) いまおっしゃったとおりの発言をしておりますが、さらにつけ加えて、米ソ両国がいまヨーロッパで制限交渉を盛んに主張しているとおりであるが、その延長としてヨーロッパでやめたからこっちへ持ってきてもらっちゃ困ると、こういうような趣旨のことを言ったと覚えております。これはだれでも喜ぶ者はいないと思うわけであります。また、ヨーロッパのいまの運動もそういうことから出ているわけであります。日本非核原則を持っておりまするし、これに対して歓迎はしない。事務当局も二回にわたってそういうことに対する懸念表明しているわけであります。
  98. 立木洋

    ○立木洋君 だから、これは何もそういうふうに決まってないんだと言ったって、アメリカの現実の動きというのは、先ほど来問題になってきましたように、極東における戦域核配備というのは何も排除されていないし、ロストウ発言ではございませんけれども、そういう趣旨意味発言も現に行われているわけですね。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 大臣自身も議事録ごらんになっていただいたらおわかりのように、そういう時期が当然来るものと私も予想していると責任ある大臣がお述べになっているんですから、この問題に対してどうすべきかということはお考えになっているだろう、当然日本非核原則である国是を守らなければならない大臣のお立場として。ですから私は、やはりそういう巡航ミサイル配備されたようなSSNが日本に寄港するというようなことになれば、いままでの大臣の御発言趣旨から見て、当然これはお断りになるというふうに考えるのですが、私の考えに無理があるでしょうか。
  99. 園田直

    国務大臣園田直君) 事務当局から言いましたとおり、これは当然事前協議の対象になります。その場合、いかなる場合もノーであります。
  100. 立木洋

    ○立木洋君 いや大臣、ポラリスというのは、核常時積載艦というのはこれは認めないんですよ。ところが、いままでのSSNというのは、攻撃型潜水艦というのは原潜と原潜でない型の潜水艦がありましてね、これは入ってくるんですよ。ところが、今度のこの巡航ミサイルという戦域核がそのいわゆる普通の攻撃型の潜水艦配備されるわけです。そうした場合に、ポラリスと同じような対応をおとりになるのかどうなのか。私は前何回もお尋ねしておるのでもう繰り返すまでもないと思いますが、いままで政府統一見解は、これはちゃんとはっきり書かれておりますけれども、常時核装備を有する外国軍艦あるいは常時核を搭載した軍艦の寄港は核持ち込みとみなすというふうに述べられてますね。一九七四年の十二月二十五日、参議院の内閣委員会で述べられました統一見解によりますと、「ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦によるわが領海の通航は、」云々としてですね、「許可しない権利を留保する」。つまり核の持ち込みである、こういうふうに言っているんですね。だから私は、いま巡航ミサイル配備されたいわゆるSSNが、「ポラリス潜水艦その他類似の」というこの「その他類似」に当たるのか当たらないのか。まずそのことを一つ。いかがでしょうか、淺尾さん。
  101. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) お答え申し上げます。  四十三年それから四十九年の統一見解におきまして、「ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦」というのは、先生いまおっしゃいましたように、ポラリス潜水艦のように当然核を装備しておるというふうに推定される軍艦と、そういうものについては一般国際法上の無害通航権というものは認めない、そういうものは許可しない権利を留保しますということを申し上げておるわけでございます。  事前協議との関係につきましては、四十九年の
  102. 立木洋

    ○立木洋君 いや栗山さん、巡航ミサイルのことについて答えてください。それから、類似に当たるのか当たらないのか。この解釈はもう何回もやってよくわかっているんです。
  103. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 私が申し上げましたのは、「ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦」というのは、ポラリス潜水艦のように外から見て当然核を持っているであろうと
  104. 立木洋

    ○立木洋君 外から見てですね。
  105. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 要するに、ポラリス潜水艦というのは当然核を持っておるというふうに想定されるわけですから、それと同じような潜水艦については無害通航とは認めない、領海通航は無害通航とは認めないということを申し上げているわけです。いずれにしましても、そういうポラリス類似の常時核装備を有する外国軍艦、アメリカ軍艦であろうと核搭載可能の軍艦であろうと、核兵器を積んでいる場合には、安保条約上当然事前協議を必要とすると。事前協議があれば、非核原則に基づいて日本政府はこれを認めないというのが従来から申し上げているところでございます。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 ですから私が聞いているのは、戦域核である巡航ミサイル配備されたSSNを、いわゆる常時核装備を有する軍艦というふうにみなして拒否されるのかどうなのか。それともそうではない、やはりこれも依然として、いままでと同じような攻撃型SSNにいわゆる核が装備されているか装備されていないかはわからないから、その都度問題にされるのであって、事前協議がない限り問題にしないという態度をとられるのか。この巡航ミサイルをいわゆる搭載した、配備した、これに対しての態度ですよ。どういう態度をとるか、淺尾さん。
  107. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 御指名でございますから私がお答えいたしますが、安保条約との関係で申し上げれば、安保条約というものは日米の信頼関係に基づいてそこで事前協議という制度があるわけでございます。したがって、アメリカ側がそのSSNに巡航ミサイルを積んできて、その巡航ミサイルが核であるということであれば、アメリカとしては誠実に事前協議の義務を履行しなければならない。その履行してきた場合には、日本側としては、従来と同じように、非核原則に従って日本の寄港について対処していくと、こういうことでございます。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 淺尾さん、巡航ミサイルというのはアメリカは何のために開発したのでしょうか。巡航ミサイルというのは何のために配備するのでしょうか、アメリカは。ちょっとお尋ねします。
  109. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私がアメリカがどういう意図で巡航ミサイル配備するかということをここで権威的に申し上げる立場でございませんけれども――先ほど実は十月二十日と申し上げたのですけれども十月二日の間違いでございますが、十月二日のアメリカ大統領の発表文、その他のアメリカ側の文献によれば、アメリカの核戦力がやはりソ連との関係において近代化及び増強を必要とすると、こういうことでございます。したがって、巡航ミサイルについても同じような考慮ということじゃないかと思います。
  110. 立木洋

    ○立木洋君 確かに巡航ミサイルというのは核、非核両用だと言われればそのとおりなんですよ。しかし、巡航ミサイルを製造した目的、それから巡航ミサイルをまた配備する目的、これはソ連戦域核に対抗すると称して配備するんですよ。その配備される巡航ミサイルが核を持っていなかったならばどうしてアメリカ核戦略を予備する戦力になるんですか、ならないでしょう。それは、通常兵器を積む場合もあるかもしれないけれども、核を抜いてしまったら巡航ミサイルはもう目玉抜きなんですよ。全く意味がないんですよ、そんなものを何ぼ配備したって。まさに戦域核である巡航ミサイルであるからこそその配備に重大な意味がある。これはアメリカ海軍の将官が言っていますよ。この巡航ミサイル配備海軍力の革命であると言っていますよ。革命という言葉は、これはいろいろな意味で使われますけれども、それほど重大視しているのがこの配備なんですよ。だとするならば、核を抜いてしまえば目玉抜きでしょう。つまり、先ほど栗山さん言われたように、外から見てわかるかわからないか、わからないんです、核か非核が、この巡航ミサイルは。ところが、まさに全く黒に近い灰色で核なんですよ。というふうに判断される状況にあるんです。それが組み込まれてきたSSNが日本に来たらどうしますかということを私は聞いているんですよ。そうでしょう淺尾さん、いかがでしょうか。
  111. 園田直

    国務大臣園田直君) しばしば答えますとおり、いずれにいたしましてもわが国との関係については、安保条約でいかなる核兵器も持ち込みは事前協議の対象である。事前協議が行われる場合には常にこれを拒否する所存と、こういうのが一貫した返事であります。  いま立木先生のおっしゃいましたとおり、これは政治的に申し上げますと、ざっくばらんに言うと、これはひとつの軍縮交渉をめぐって東西で両方が、片一方が戦域核はアジアに向けるぞと、こう言っている。それならおれは巡航ミサイルを配るぞと、こういう応酬をやっているわけであります。したがいまして、その巡航ミサイルは、御承知のとおり開発されるでありましょうけれども、まだ開発はされていない、いま開発の途中であります。これが終わってそれからどこに継ぎ込む、これをどこに配備するかと、まだ二段、三段、四段あるわけでありまして、片一方がこうするぞと、こう言ったから、アメリカの方は、それじゃ仕方がありませんと言わないでおれは巡航ミサイルでやるぞと、こう言うときに、日本の方がそれは来させぬぞと、こういう政治的なやりとりの中に巻き込まれることはいやでありまして、最後の言葉のとおりで御了解を願いたいと思います。
  112. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、大変いいことをお答えいただいたですな。大臣がこれ九月八日のこの外務委員会でちゃんと述べられているんですよ。「極東配備の問題については、これはまた一方ソ連の方も極東配備するという情報等もありますので、これが事実とすれば、ソ連極東配備アメリカ極東配備についても、われわれ意見を申し述べてきちんとしていくつもりでございます。」と、明確に述べられている。私は、アメリカ極東配備について、これは反対、ソ連極東配備これは反対、結構ですよ、やっていただきたいんです。巡航ミサイルがそういう形で来るんだから、ポラリス型とそれに類似する全く黒に近い灰色の戦域核なんだから、こういうものが来たら絶対にだめですということを大臣に言っていただけるだろうと思って、私は期待をしてきょうここのいま質問に立っているんですよ。どうです、絶対だめだと言ってくださいよ、どうですか。
  113. 園田直

    国務大臣園田直君) いまおっしゃったように、うまくまいれば非常にいいと考えます。ソ連の方にそういうことをやるなと、ソ連がやらぬそうだからアメリカもやるなと、われわれがこう言えるような環境を逐次つくっていきたいと考えます。
  114. 立木洋

    ○立木洋君 それじゃ松田さん、きょうわざわざ来ていただいたのは、先般の松田さんの発言でちょっとお尋ねしておきたかったのでお越しいただいたんですが、九月三日の安保特の委員会の席上で、私は非常に注目したのは、B52が台風でグアムから来合ときに、こういうふうに述べられているんですね。「従来から台風避難でグアムのB52が嘉手納へやってまいりました例はございますが、そのときもすべて核の搭載はないということを確認してございます。」と、「確認してございます。」という表現をお使いになった。ですから、私がお尋ねしたいのは、「確認してございます。」と言うんだから、どういう方法で核を搭載していないということをすべて。確認されたのでしょうか。
  115. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) お答え申し上げます。  御案内のとおり、安保条約の核に関する事前協議制度のもとにおいては、核の持ち込みに該当する場合はすべて事前協議の対象となることは先ほど来御論議のとおりであります。また、御承知のとおり米国政府安保条約上のこの制約を遵守することを繰り返し確認してございます。したがいまして、私が御指摘の答弁において、沖縄復帰後十年の間に何回かB52のグアムからの台風避難の例はあると申し上げましたのは、そのような場合に米側からは一回もすべてについて事前協議の申し出もないと、これを事実として踏まえた上でこのような答弁をしたものでございます。
  116. 立木洋

    ○立木洋君 松田さんね、「確認」というのはそういう場合にお使いになるんでは私はないだろうと思うんですよ。いままで外務省の、たとえば淺尾さんなんかがお答えになったのは、事前協議がございませんから核がないものと私たちは承知していますと、こういうふうに答弁をされているんですね。ですから、「確認」と言うならば、B52が来るときに核を積んでいませんかと言って日本側から聞いたのか、あるいはアメリカ側からこの飛行機が行きますけれども、核はないですよと言ってきたのか。そうした場合に、これは積んでいないということが確認されるんであって、ところがいままで外務省の中では、具体的に、どこに核の存否があるかということは一回もアメリカ側に確かめたことはございませんというのが外務省の立場なんですから、だから、こういう場合には「確認」と言うとちょっと誤解を生じるんではないかと思うので、私はお尋ねしたんです。
  117. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) まことに御指摘のとおりと存じます。私も率直に申し上げまして、このとき「確認」という言葉を使った後において御指摘のような感慨を持ちまして、何とか釈明、訂正の機会はないかと願っておりましたが、その機会を与えていただきまして大変ありがたいと思っております。
  118. 立木洋

    ○立木洋君 そういうことですから、松田さんどうも御苦労さんでございました、釈明をしていただきまして……。  それで大臣、最後に先ほどの問題で、この巡航ミサイルというのはやっぱり戦域核なんですね。そして、大臣も先ほど大変むずかしい問題だと言われ、政治的な問題だというふうに判断されましたけれども、これが極東配備されるということになれば、戦略上見ても実戦上見ても、これは核なんですよね、いわゆる巡航ミサイルSSNに配備されるという場合。だから、核がなければ、これは全く目玉抜きになるわけですから、事実そういう意味では核、非核両用と言いつつも、これは全く黒に近い灰色。だから、そうした場合には、日本としてはやはり非核原則を十分に守るという立場から、この潜水艦の寄港、領海通過については、私はよく慎重に検討してしかるべきだと思いますが、いまの結論が出なくても結構ですが、この問題については非核原則を守るという観点から十分に対処していくよう検討するという御答弁はいただけないでしょうか。
  119. 園田直

    国務大臣園田直君) 非核原則を守る立場から十分考慮いたします。
  120. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 一つ補足さしていただきますけれども、立木委員は、船に積むトマホークという型でございますけれども、これがすべて核であるというふうに認識されておりますけれどもアメリカの発表では五分の四は非核ということで、五分の一が核ということで、いずれにしてもまだ一九八一年と、こういうことであります。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 最後にそういうことを言われるとまた言いたくなるんですが、言いませんが、どうも済みません、終わります。
  122. 木島則夫

    ○木島則夫君 ヘルムズ提案からザブロツキ提案に至るアメリカ議員たちの要求は内容におのおのニュアンスの違い、表現の違いはあるとしましても、異口同音にもうこれ以上安保ただ乗りは許せないんだと、見逃すことはできないんだという点で一致をしていると思います。特にザブロツキ委員長は、日本政府防衛支出を少なくともGNPの一%の水準にまで高めるべきであると言って、その提案の理由の中で、日米共同声明で日本防衛力増強を約束していながら、その後も強大な経済力に見合う防衛負担をしようとしていない、この点を不満としているわけでございます。日米貿易の赤字が百五十億ドルに達しようとしているのに来年度の防衛支出がGNP比〇・八%台と、むしろ後退をしそうだというヘルムズ、ニール両提案の趣旨に沿ったものであることも言うまでもございません。しかも、そのザブロツキ提案の場合には外交委員長みずからの提案でありまして、下院内でほかにもこういったいろんな提案があったのを一つにまとめて提出をしているだけに、ヘルムズとかニール、この二つの提案に比べての重みというものははるかに高いというふうに私は考えております。ちなみに、現在日本防衛予算は、五十六年度予算で二兆四千億、御承知のとおり対前年度比七・六%増、GNPの〇・九〇六%であることも事実でございます。  そこで簡潔にお伺いをしたいんでありますけれど、アメリカ議会での相次ぐ防衛費をふやせという対日要求提案をどのように受けとめているかということ。ことにアメリカがしつこく言っておりますことは、日米共同声明で防衛能力改善をうたいながら、これに向けて一層の努力を続けると言っていながら、一向にその高度の経済力に見合った努力をしていないんじゃないかという、こういう言われ方に対しては、外務省としてどういうふうにまずお答えになるか、その辺をはっきりさしていただきたいと思います。
  123. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いま木島委員御指摘のように、今回のアメリカの議会に提出されたいろんな決議案の中には、確かに共同声明を引用したものもございます。それについてわが方としてどういうふうに対処していくか、これはアメリカ側が言おうが言うまいが、わが方としてはやはり防衛力整備というものは自主的に整備していくものである、これが基本的な考えであるわけです。もとより、アメリカ側日本側防衛力整備について関心を表明することは、いざというときに日本防衛するという義務を負っているということから、アメリカ側がこういうような懸念表明するということは理解できるわけでございますが、またもとに戻りますけれども、やはり防衛力整備というものは日本が自主的に決めていく問題である、こういうことでございまして、今後さらに安全保障の面においても、ハワイ会談、大村訪米あるいはカールッチの来日ということで、間断ない対話を進めているわけでございますが、日本側の立場については、いろいろな機会をとらまえてアメリカ側説明していくというのが基本的な方針です。
  124. 木島則夫

    ○木島則夫君 もう一度伺いますが、日米共同声明で防衛能力改善に向けて一層の努力を約束しながらこれを実行しない、この点について、もう一度お答えをいただきたい。日本がそういう立場にあるのか、その辺の解釈の違い、見解の相違。
  125. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ザブロツキの案はジョイントコミュニケの中で、日本の総理大臣は、日本がその防衛力の能力を高めるために一層の努力をするということを述べたということでございまして、ここで一層の努力を述べたということはいわゆる一般的なことで、どこまで日本がやるか、これは日本側が当然決めることでございまして、当時の首脳会談においてもアメリカ側は本件については一本件というのは防衛力整備でございますが、防衛力整備については、日本側の主権に属することであって、日本側がお決めになることである、こういうことを述べているわけでございまして、アメリカ側の方においても、この問題については日本がその置かれている環境のもとで、いろいろな制約の中で自衛力の整備を図っていくということについては行政府は十分理解しております。
  126. 木島則夫

    ○木島則夫君 外務大臣としまして、共同声明で一層の防衛努力をしようとしているのに、経済大国としてそれに見合った努力をしてないという言われ方に対して、外務大臣から言いただきたいんです。
  127. 園田直

    国務大臣園田直君) まず共同声明でありますが、総理大臣は「日本は、自主的にかつその憲法及び基本的な防衛政策に従って、」云々という約束をしているわけで、一層の改善を約束しているわけではなくて、一つの限界があるわけであります。これは米国の方でも了解をしているところであります。かつまた、その後日本防衛力の強化をいろいろやっている、たとえばいまGNP一%の話がありましたが、NATOの計算方式で年金あるいはその他を含めて計算をすれば、明年度の予算では日本の自衛隊の予算は一%をかすかすではあるが超えておるという状態まで強化する努力をしておる。かつまた、ただ乗りとおっしゃいましたが、日本はただ乗りはしておらぬつもりであります。
  128. 木島則夫

    ○木島則夫君 いや、私が言ったのではなくて、あちらがそういうふうに言っているんだと、こういうことですね。
  129. 園田直

    国務大臣園田直君) 向こうの方がおっしゃいましたけれども、われわれはただ乗りはしてない。やはり基地なり施設なり、あるいは在日米軍の駐留費の負担なり、いろいろあるわけであります。かつまた、貿易防衛の問題は、これは全然別個の問題でありまして、これを絡めて言われる感情はわかりますけれども、これは別個にちゃんとしなきゃならぬ問題であると考えております。これでいいとは思いません。日本は今後とも努力はしなきゃならぬけれども、それ相当の努力はしておる、こういうことを申し上げておるところでございます。
  130. 木島則夫

    ○木島則夫君 これでいいとは思わない、今後一層の努力をするというその部分には、どういった問題がこれから入るんでしょうか。
  131. 園田直

    国務大臣園田直君) これは今後、いろいろ問題が広範にございまして、具体的に申し上げればたくさんございますけれども、これは明年度、さらにその次というふうに逐次出てくる問題でございます。
  132. 木島則夫

    ○木島則夫君 その中には防衛費の増強――つまり、いわゆる防衛費は五十六年度が〇・九〇六%ですね、GNP比。こういったものをやはり五十七年度でそれから下げさしてはいけないというような努力もその中には入るんでしょうか。
  133. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本の置かれた立場、財政事情、こういうことも勘案してできるだけの努力はしなきゃならぬと考えております。
  134. 木島則夫

    ○木島則夫君 貿易均衡も同僚議員からいろいろ御指摘がございましたような状況であることを私はいま繰り返したくはございませんけれど、ステッセル国務次官が参りまして、アメリカの最近の防衛力増強の要請というものは貿易均衡問題が重要な背景だ、こう言っております。大臣は、防衛防衛貿易貿易、これがたてまえなんだ、こうおっしゃいますけれど、それにしては余りにもいまの状況が不均衡過ぎる、こういうことでございます。で、ガットの年次報告を見ましても、やはり日本の八〇年度の経済成長が四%で、その経済成長の負うところはほとんど輸出が主である、こう指摘をしておりまして、内需は〇・五%しかアップをしていない、こういうことを年次報告で言っております。元来ガットあたりでは日本に対しては好意的ではあったと思いますけれど、こういう具体的な報告が出ますと、やはりアメリカなりECに対して対日貿易不信、不満というものを助長さす、批判のよりどころになっていることもこれは事実であろうと思うわけでございまして、大臣としては――まあ細かいことはきょうは結構です、時間がございませんから――こういった貿易均衡というものが是正されれば、いわゆる防衛に対する執拗な日本防衛努力の要請というものがやわらぐ方向になるのかどうか。それはかかって貿易不信の、貿易の不均衡の解消にまず第一段階を置くべきなのかという、その辺の御見解もあわせて伺っておきたいと思います。
  135. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は言葉を注意して先ほど申し上げたつもりでございますけれども、おっしゃる方から言えば、米国の議会の方から言えば。国民の方から言えば膨大な日本の黒字と、それから日本防衛強化というものが感情的にどうしても絡んでくるということは私もわかります。しかし理論から言えば、防衛防衛貿易貿易、これは全然別個の問題だと考えます。ただし、これと対応するについては貿易黒字を何とかして減らすことがまたこの感情をやわらげる方法だろうということは当然おっしゃるとおりでございます。
  136. 木島則夫

    ○木島則夫君 あくまで両者は別個のものであるとはいいながら、この貿易面での摩擦がこれからも解消されない場合に、いろんなことがこれから起こる予想ができるわけでございます。その場合、一つの基本として、これは五十一年十一月の閣議決定の、防衛費というものはGNPの一%を超えないんだという原則は、これはもう動かしがたいものであるのか、あるいはアメリカのそういう要請がいろんな形で次から次に私はやっぱりここの一%に集中をしてくると思いますね、これから。そういうときに、これはあくまで大原則であって揺るぎないものであるというふうな考え方をとるのか。それはやはりスポットをもう一度当て直さなければならないという方向に行くのかどうか。その辺は大臣、いかがでございましょうか。
  137. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務大臣に対する御質問でございますから、私は外務大臣として答えさせていただきますが、GNP一%というのは軍事大国にならないという歯どめの意味でかけてあるこれは一%だということ、かつまた、かつてこの前の戦争で迷惑をかけた近隣諸国、特にASEAN、アジア、こういう国々ではこれを非常に注意をして見ておりますので、いまのところはGNP一%ということが大事なところだと外務大臣は考えます。
  138. 木島則夫

    ○木島則夫君 決してお言葉じりをとるわけではございませんが、いまのところとおっしゃった、そのおっしゃりようは何かお含みがございますのでしょうか。
  139. 園田直

    国務大臣園田直君) 含みはございません。
  140. 木島則夫

    ○木島則夫君 そうですか。  日韓関係ですが、特に経済協力問題について端的に伺いたいんですけれど、五年間に六十億ドルという要請は、一つは安全保障への見返りという性格が問題になっておりましたし、また五年間で六十億ドルという大きな額に対する問題でいま停滞をいたしております。膠着状態にございます。わが国の経済援助、海外援助につきましては日本としての原則があって、この原則にのっとってやることは当然でございますけれど、日本と韓国との間には過去の複雑な経緯もあり、この経緯を踏まえながらより緊密な友好関係が持続されなければならないし、私どもの立場で申し上げると全斗煥大統領が進めておりますいまの国づくり、清新にして活力のある国づくりを目指している。この韓国の態度、立場というものを評価をするというのが基本的な私どもの立場でございます。  さて、具体的な問題に移りますけれど、韓国では全斗煥大統領の体制のもとで一月から始まります経済五カ年計画について、この計画達成のためには日本からの借款が欠かせない条件であることは、これは当然の話でございます。したがって、六十億ドルという額を押し立ててきている韓国側にしましてもゴールがあるはずでございます。こういった状況を踏まえて韓国側から、これはあくまで私の個人の憶測でございますけれど、実務責任者が来日をして六十億ドルの中身についての説明もされるという話でございます。したがって、この問題を前進させるための話し合いの詰めという時期が十二月、つまり十二月が一つの時期と見られるという根拠もないではありません。  そこで外務省にお伺いをしたいんでありますけれど、六十億ドルは無理として、これを受けとめる姿勢で進むという基本姿勢であるのか。四十年の日韓協力のときもそうでございましたように、借款の中身としまして民間資金も協力の対象に含めることで、より具体的前進があり得ると私ども見てよろしいのか。さっきも申し上げた来年一月から始まる経済五カ年計画に日本からの借款が欠かせない条件であるというような、こういう向こう側のゴールを考えるならば、いつごろまでに決着を考えておられるのか。もう一度申し上げると、要は六十億ドルの額ももちろん問題でございましょう。先方からの要請の仕方、その性格づけなど確かに問題は多々ございますけれど、全斗煥大統領が清新にして活力のある新しい国づくりを目指しているという、こういう韓国の行き方に対して好意ある受けとめ方をしながら、できるだけの協力を惜しまないというのが日本の立場でなければならない、こういうふうに私どもの立場を表明した上で、いま私が申し上げた数点について具体的なお答えをいただければありがたいと思います。
  141. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 木島委員御指摘のとおり、できる限りの協力ということは、先般九月の中旬にソウルで行われました日韓定期閣僚会議におきまして、外務大臣、大蔵大臣ほか閣僚の方々と先方との共同新聞発表でうたわれたとおりでございます。したがいまして、継続協議ということで打ち合わせを見ておりますが、そのコンテクストにおきまして、私どもとしては実務者の来日を受けまして先方の五カ年計画の詳細をいつでも承る態勢にございます。これはできる限り早い時期が望ましいというふうに考えております。タイムリミットとしましては、明年の一月から始まります五カ年計画について十二月末までといったようなタイムリミットはございませんで、時間をかけて着実なお話を承れば、プロジェクトベースにのっとりまして先方の御要請をしさいに検討する用意があるわけでございます。額につきましては、これはこのような実務者同士の話の積み上げの上で初めて公にすることは可能になるのではないかと、かように心得ております。
  142. 園田直

    国務大臣園田直君) 先生、私しばしば申し上げているんですが、韓国の経済協力をやらぬとは一言も言っていないんです。隣国で、友邦で特殊な関係があるから、新しい五カ年計画にできるだけ協力するのは当然の責任だと、これははっきり各所で言っております。そこで、それについては経済協力の基本方針があるから、その基本方針によって私の方も積極的に相談に乗れるような筋道に早くしていただきたいと、こういうことを言っているわけであります。かつまた、金額につきましてもちょっと御理解を願いたいのは、何十億という金額があって、その中の内訳は何だと、こういうことじゃなくて、積み上げ方式でございますから何のプラントに幾ら、よかろう、何のプラントに幾ら、よかろう、それを総計算したら幾らになったと、こういう逆でございますから、これだけ御理解願えればありがたいと存じます。あとは事務局が言ったとおりでございます。
  143. 木島則夫

    ○木島則夫君 そういった実務者会談での内容の詰めができた場合に、次に予想されるのが首脳会談でございますけれど、こういったお見通しについてもお考えございましょうか。
  144. 園田直

    国務大臣園田直君) 首脳者会談は、日本の総理もそういう御意向を過去において述べられておりますし、それから韓国の大統領もそういう御意向を述べられておりますから、これはそういうめどがつけば両方で話し合って、首脳者会談というのはある時期には設定されると保存します。
  145. 木島則夫

    ○木島則夫君 ちょっと先走った言い方で恐縮でございますけれど、その時期については一月であるのかあるいは国会が終わった時点であるのかという具体的な伺い方までここでさしていただくと、可能性はどういうふうになりましょうか。
  146. 園田直

    国務大臣園田直君) それはいまの日本と韓国の話し合いが筋道に乗って、相談が軌道に乗れば、そこからいつごろかという政治情勢も考えて判断できることであって、何月からということは先に、逆に決まるわけではございません。かつまた、日本と韓国の政治形態は御承知のとおり違いますから、首脳者が会えば解決するという筋合いではないことだけは御理解を願いたいと思っております。
  147. 木島則夫

    ○木島則夫君 まあ、いずれにいたしましても、日韓両国は過去いろんな経緯もございますし、また全斗煥大統領が進めております新しい国づくりという、そういう立場も、日本は温かい立場で好意的な見方をしながら協力をしていっていただきたい。もちろん、日本の守るべきところはきちっと守っていかなければいけない、これは当然であることをもう一度付言をさしていただきます。  最後に、ちょっと唐突になりますけれど、エジプト大統領への訪日招請というのはいまも続いているんでしょうか。と申しますのは、サダト大統領がお亡くなりになったために、アラファト議長の来日とバランスをとるという形での大統領の訪日はさしあたって不可能となったわけでございます。エジプト大統領への訪日招請は依然として生きていると考えてよいのかどうか、ちょっと唐突かもしれませんけれども教えていただきたい。
  148. 園田直

    国務大臣園田直君) 唐突な御質問ではございません。私、前大統領の国葬に参りましたときに、新大統領とお会いしました。そのときに、エジプト大統領に対する日本においで願いたいという招請は消えたものではございません。大統領がおかわりになりましたから早急にはめどは立たぬと存じますが、なるべく早い時期にというごあいさつはしてございます。
  149. 木島則夫

    ○木島則夫君 私は、サダト大統領の路線を継承し、発展をさせてほしいと願う立場からすれば、やっぱり適当な時期にムバラク大統領の訪日を招請することは、そのような方向へのムバラク体制を守り立てる効果があるというそういうことも踏まえて、中東和平への日本の果たすべき役割りの一環ではないかということでいま伺ったわけでございます。まあ、これは私の感想でございますので、この感想を述べて質問は結びといたします。  ありがとうございました。
  150. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 外交でございますから、まあ外国とのいろんな関係を調整する、あたりまえでありまするけれども、しかし何よりもやっぱり日本人の国民感情、それから日本国民の広い意味の利益ですね、これを考えなきゃいかぬと思います。  私は、実は世界で一番現在必要なものは軍事費を減らすことだという、これは強い信念を持っております。それで軍縮議員連盟をつくるだけではなしに、私自身軍縮研究室というものをつくりまして、そして軍縮に対していろんな検討やら、あるいは人々の意見やら求めているわけですけれども、最近までに論文を募集したんです、短時間に。軍縮に対する提言という論文を募集しました。その論文は原稿紙にして二十枚から三十枚というものですから、これは相当大変です。それを募集しましたところが、五百四十八通集まりました。それを読んでみますると、やはり日本人が現在の、まあ軍拡に無理やりに持っていく動きに対して非常な心配をしている。それで、年は大体九十二のおじいさんから十五くらいの女の子までいるわけですが、この現在の軍拡風潮はまあ世界を覆っているわけですけれども、レーガン政権になってから。しかし、そういうことが日本にどういう影響を及ぼすかと、また再びあの大東亜戦争で敗戦にまで来た、そして広島、長崎で原爆を受けた道、そこに行くんじゃないかという心配をみんな持っているんですね。戦争経験のない二十代の人、十代の人も思っている、大変心配しているということです。  そこで、私は質問を申し上げたいんですけれども、どうも新聞を見ていると、アメリカ国会とかアメリカ人が盛んに、とにかく日本に軍拡を求めている。で、安保ただ乗り論とか、経済大国のくせに軍事費が少ないじゃないかとかなんとか言って盛んに日本軍備の拡張を求めているようです。どういう軍備の拡張を何のために求めているかという説明は十分じゃありませんけれども、とにかく軍拡を求めていることは間違いないようですが、アメリカ政府が正式に日本政府に対して軍備の拡張を求めているんですかどうか、私はお聞きしたいと思います。外務大臣、ひとつ……。
  151. 園田直

    国務大臣園田直君) まず第一に、先般の日米首脳者会議の共同声明、それからその後国防長官同士の会談において、厳しい現下の情勢で米国自体がこれに対して均衡の平和、力の均衡ということで軍備増強している、したがって日本もこれに見合うだけのできるだけのその努力をしていただきたいという意見の表明はございました。
  152. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それ以外にはございませんか、具体的に。
  153. 園田直

    ○国務大垣(園田直君) それ以外には具体的に外務省には話はございません。これは、具体的な話は防衛庁にあったと思います。
  154. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それでマンスフィールド大使が、われわれは日本に軍拡を求めているけれども、余り強要的な姿勢はおもしろくない。ということは、やっぱり防衛というものは日本独自な問題ですから、外国が余りに強要的な姿勢をとるということは、まあ本当を言いますと日本人の素直な国を守るという意思を損なうという点があるから――まあ、マンスフィールド大使というのはなかなか、私も知っていますけれどもね、よく政治を知っている人ですからそう言ったと思いますが、そういうことに対してどう考えられますか。
  155. 園田直

    国務大臣園田直君) マンスフィールド大使は、政権がかわってから少し遠慮はしておられますが、ちゃんと正しい意見を言われる方であって、この方はやはり米国を本当に愛していらっしゃる、同時にまた他の国々に対しても愛情がある、こういうりっぱな方だと思っております。かつまた米国の大使でありますから、若干のあれはありますけれども、やはり御意見は正しい意見を言っていらっしゃる。特に、圧力をかけてやるべきじゃない、自主的な判断で相談ずくでやるべきだということは、やはり日本人の特徴をよくとらえていらっしゃると、こう思います。
  156. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 ザブロツキ発言があったわけですね。これはあのアメリカ国会の空気を反映していると思いますが、ザブロツキという人ももう決して乱暴な人じゃ私はないと思っていますね。  それで、先ほどから大臣が言われている、貿易問題とそれからこの軍事予算をふやすという問題は、全然これはもう別な問題であるというのは、全くこれは賛成であってね、やっぱり外国のたてまえというものを崩しましていろんなものを混同しちゃうと、しまいに癒着みたいなことになってよくないんであって、このいろんなアメリカ貿易赤字の問題と日本防衛費を増額するという問題を混同するという考えに対しては、今後とも信念を持って外務省全体に主張していただきたいと、まあ、こう思いますね。  それで、朝鮮の問題に入りたいと思うんですが、日本が第二次大戦に参加し敗れまして、そして朝鮮半島というものは日本の植民地であった。それから三十六年たっているわけでありまするけれども、第二次大戦の直後には統一朝鮮ができそうであった。それが当時の国際的事情で結局二つの朝鮮ができたわけです。しかしながら、当時の国際的事情、つまり東西冷戦と言われた事情、それから日本アメリカの占領下にあった事情、そういう特別な事情はありまするけれども、本来ならば日本の外交は朝鮮半島全体を視野に入れて行うべきものであるというふうに私は一貫して考えているんです。まあ韓国に対して日本は植民地時代にいろいろなことをしたと、そういう痛みや恨みが残っているのだから韓国に対して特別に考えなきゃいかぬ、これはもう当然なことでありまするけれども、その同じことは北の半分に対しても言えるのであって、これはやっぱり戦後三十何年たちまして朝鮮戦争の創痍も大体においていえていいときですね、無理にあばき立てれば別ですけれども。そういうときに、南北両方見ないで南だけを見る外交というものは、アメリカの方にもいろんな反省はそのうちに起こってくると思いますけれどもアメリカに対するこれは気がねが主ですか、それとも日本政府の独自の判断によるものですか。これを承りたいと思います。
  157. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 日本政府といたしましては、もとより南北対話の進展を期待しておりますことは宇都宮委員御承知のとおりでございます。  この問題は、第一義的には南北当事者が自主的に取り進められるというのが南北の関係者の希望でもあり、私どももそのように判断いたしておりますが、わきからできるだけ南北対話の環境が醸成されることを期待いたしております。そういった判断につきましては、これは何もアメリカの影響によって云々されるべき事柄ではなくて、日本独自の判断によるものでございます。
  158. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 前伊東外務大臣、あの方は韓国に行って、そして二つの朝鮮の間を何とかうまくいくようにやったらどうだというような発言をしたと、そういうことが言われていますが、その事実はありましたか。
  159. 園田直

    国務大臣園田直君) この前の関係閣僚会議では具体的にそういう話をする余裕はございませんで、ただこちらの希望を述べただけでございます。
  160. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 伊東前外務大臣はそういう話をしたと言われておりますが、アジア局長とうですか。
  161. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 伊東外務大臣は、朴東鎮外務部長官に会われましたとき、それから三月に全斗煥大統領の就任式典に出席されましたときにも、その南北対話の望ましいことに言及されております。  園田大臣は、八月の外相会談で盧信永長官が来日されましたときにそのことについて言及されておりますが、閣僚会議のときは、先ほど大臣御答弁のとおり、時間的な制約もあり、事柄が経済協力に集中いたしたために、そこまで話に至らなかった経緯がございます。
  162. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私は九月の初句に北朝鮮に参りまして、そして金日成主席と四度目の会談をしてきたわけですが、金日成さんは、四度とも言っているのは、南北の軍備が大き過ぎてつらいという話をしていましたね。それから、われわれは米ソという二つの大国というものより、もっと第三世界として独立して、そして戦争するなら米ソ勝手にやったらいいじゃないか、われわれは第三世界として独立性を保てば、恐らく米ソもくだらぬことはやらぬだろうというようなことを言って、そして現在の全斗煥政権とも少なくとも予備会談はしたいような、そういうようなことでしたが、彼も大分年とりましたから非常に落ちつきを持ち穏やかになってきていましたが、そういうことに対して外務大臣はどう考えられますか。
  163. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほどから申し上げますとおりに、朝鮮半島の安定あるいは両方の緊張緩和というものは、これは極東の平和、日本の平和にとってきわめて大事でありますから、両方が話ができるという環境ができることを望んでいるわけでございます。
  164. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 局長もひとつ言ってください。
  165. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 宇都宮委員御承知のとおり、北朝鮮は昨年の労働党大会におきまして高麗民主連邦共和国のアイデア、構想というものを打ち出しておるわけでございます。その内容につきましては私どもも承知いたしておりますが、かたがた先ほど御指摘のとおり、全斗煥大統領も本年の初頭、それから六月に再度、とにかく無条件で話をしようじゃないかということを提案されておるわけでございます。いろいろな構想がございますが、私どもとしましては、やはり実務家レベルであるか、あるいは閣僚レベルであるか、いずれにしましてもとにかく話し合いが始動するということが最も望ましいんじゃないかというふうに期待しておるわけでございます。
  166. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 予備会談はしたいと、こう言っていましたが、同時に現在の全斗煥政権は、光州事件の血のにおいがするからどうもやりにくいということと、朴政権よりももっとアメリカのかいらい性が強いと、こういう批評もしていましたが、これに対してはどう考えられますか。
  167. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) いろいろな御判断もあるかと思いますが、それはそれとしまして、とにかく構想の言いっ放しということではなくて、着実に話を開始されるというのが最も実際約ではないかと、かように考えております。
  168. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 そこで、例の対韓援助の問題に入るわけですけれども、相当大きな金額を言ってきている。いずれにしても、政府になりますと税金を払う方じゃなくて取る方ですから、お金の額は大まかな、大きなことは言えるわけですけれども、国民の税金ですからよほどこれは意味がなきゃいかぬわけですね。もちろん、中進国と言うけれども、やはり日本の植民地であった地域ですから、単なる中進国、後進国という立場じゃなしに、また古い民族のおつき合いの歴史があるわけですから、韓国に対して、非常に経済的に困っていればそう余り差別立てずに、この国とこの国とを差別して、こっちはいいから援助する、こっちは悪いから援助しないというんじゃなしに、公正な援助をするということはこれはいいと思いますけれどもね。ただ、六十億ドルというのがいろんな日本の援助のやり方から見、それから朝鮮半島全体の情勢から見て、これはもう明らかにめちゃくちゃなほど大きいということは、私は言えると思います。そして、特にこれがむちゃくちゃに大きい理由は、つまり、われわれは軍備をもって犠牲を払っておまえたちを守ってやるんだから出せというような言い方は、これはもう決して愉快じゃない。ですから、政府が安全保障問題と経済援助の問題は切り離してやるべきだと一貫して主張された態度は、もう当然ですね。これは混同したら大変です。特に安全保障を強調いたしますと、とにかく朝鮮半島の戦争を予想しての援助ですからね。もし戦争が起こった場合には、要するに朝鮮民族同族の殺し合いにお金を出したということになりますからね。この点は、日本のアジア外交の大きな展望から言って、特に北と中国との関係なんかもありまするし、日本の援助が安保に絡む。そして、それが場合によっては戦争を予想することですから、朝鮮民族の再び殺し合いになるということがないような、そういう出し方をしなきゃいかぬということを私は切望しているんですが、どう思われますか。
  169. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) これまで韓国に対する経済協力は、農村の振興であるとかあるいは社会経済開発、福祉等の面を志向いたしてきでおるわけでございまして、それなりに効果はあったものと考えております。  今後も日本の経済協力の基本方針、すなわちそういった分野に行き渡るように、慎重に取り運ぶべきものというのは当然の御指摘だと思います。
  170. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それが朝鮮半島の安全という名目で出されて、そしてもしも戦争が起こった場合に、朝鮮民族にとっては同族の殺し合いのために出したということになるんですから、これはもう非常に明確にしておかなきゃいかぬ、こう思いますね。どうですか。
  171. 園田直

    国務大臣園田直君) その点は十分注意をして、今後検討いたします。
  172. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 北朝鮮の問題は、広い意味日本の安全の問題と私は非常に関係があると思います。それはちょっと前になりますが、この五月に鄧小平副首席と朝鮮問題について話したことがある。そのときに彼は言っていました、レーガンの南朝鮮を軍事的に援助するあの政策は利口じゃないということを言っていましたね、これははっきり言っていましたよ。それはどういう意味がといいますと、要するに、金日成は八時間で行けるモスコーに二十年間行っていないんだと。われわれは金日成の心境を一番よく知っているけれども、いまのようなアメリカ政策が続くと、たとえば戦術核兵器のようなものをどんどん援助するようなそうういう政策が続くと、そうするとモスコーに行かざるを得なくすると、それは利口じゃないじゃないかということを言っていましたね。これはアラブ問題なんかとも関連して言っていましたけれども。やはり恐らくいままで友好関係にあり、現在でもあるそういう中国にとっては、中国との友好関係が破綻するような北との政策アメリカがとるということは非常に困るんじゃないかというふうに感じました。もしもそういうことから、つまり、かつてあった中ソの軍事的一枚岩なんというものが復活しますと、恐らくアメリカのペンタゴンも日本を守ってあげますよということは言えなくなると私は思うんですね。ですから、朝鮮政策というものは日本の安全の上から言って非常に大事である。これはもう十分考えなければいけません。そういう時期になったら韓国軍が多少の増強をする、あるいはうんと増強してもほとんど日本防衛としての意味は果たさない時期もあり得るということを考えなければなりませんからね、非常にこの朝鮮問題はそういう意味で重要であると思いますが、木内さん、どう考えますか。
  173. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 朝鮮半島の情勢というのはきわめて微妙なバランスの上に成り立っておる。したがいまして、非常にむずかしい、世界でも一つの大きな困難な国際問題であることは委員御承知のとおりでございます。かたがた、北朝鮮にいたしますれば、中ソ対立の間にありまして一方ではソ連他方では中国ということで、きわめてむずかしい局面に日夜さらされておるわけでございまして、その間をきわめて微妙な対応を迫られておるというふうに私どもは判断いたしております。
  174. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 もちろん中国、ソ連という問題もありますけれども、南の圧力というものが何といっても一番問題なわけです。それによって北に対する、二つの国に対する対応も微妙になってくるわけですけれども、私は今度平壌を見たのです。それで、これは住宅なんかの建設状況、それから文化施設の建設状況などを見ますと、せっかく朝鮮民族が建てた――美しい都会ですよ、平壌というのはね。それを戦火によってもう一度たたきつぶすということは、これはもう人間のヒューマニズムから言って私は許されない。それからこの北朝鮮自身もああいう建設の仕方をしていって戦争をするとは考えられぬと私は思いますが、とにかく朝鮮半島の緊張緩和ということが、日本の朝鮮政策の核心になると思います。これはもうアメリカさえ納得すれば非常にいいことだと思います、日本のためにも、朝鮮半島のためにも、あるいは世界の平和のためにも、アメリカのためにもいいと思いますが。そういうことについて、ひとつ外務大臣、どう思われますか。
  175. 園田直

    国務大臣園田直君) 朝鮮半島の安定が本当の意味において日本の平和と安定に重要なことは、もう私も十分考えておりますので、そういうことを基本にしながら今後進めてまいりたいと思います。
  176. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 終わります。
  177. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時三十九分散会      ―――――・―――――