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1981-10-15 第95回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十月十五日(木曜日)    午後二時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         稲嶺 一郎君     理 事                 大石 武一君                 鳩山威一郎君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 岩崎 純三君                 大鷹 淑子君                 秦野  章君                 細川 護煕君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 宇都宮徳馬君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        外務大臣官房外        務参事官     藤井 宏昭君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  栗山 尚一君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (欧州評議会に関する件)  (日ソ問題に関する件)  (中東問題に関する件)  (メキシコにおける南北サミットに関する件)  (対ソ経済措置に関する件)  (沖繩における米軍に関する件)  (日韓問題に関する件)     —————————————
  2. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査議題として、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 松前達郎

    松前達郎君 外務大臣に二、三のことをお伺いをいたしたいと思うんですが、最近、非常に外交日程が込んでいまして、大臣も大変御苦労されておられると思いますが、私ども、その活躍ぶりを外から拝見をいたしておりまして、心から支援をしていきたいと思っております、  最初に、今度、参議院の代表という形で、自民党加藤先生と二人で欧州評議会に出席してこいということで行ってまいったわけでありますが、この欧州評議会討議、これは討議された結果が各国を拘束をするようなものではありませんけれども、勧告権を持っておるんですね。この欧州評議会で、今回はアメリカ欧州の諸問題の関係を主体として討議がされた。ところが、来年の九月の欧州評議会の会期では、日本欧州の諸問題について、それを中心にして討議をしようということにしたいということでありまして、そういうことで、しかも日本情勢を、日本状況というものを十分承知してからこの討議を始めたいという意向が評議会側にあるわけで、九月例会期の前に四月中旬ごろ、日本に関するハイレベルのセミナーを行いたい、こういう提案アレイサ議長から二回にわたって私ども受けたわけです。これは私、非常にいいチャンスじゃないかと、日本を理解させるのに。しかも、評議会の中の討議を聞いていますと、だんだん日本に対する感覚というものが、とらえ方というものが、かつてのような状況から少し好転をしているような感じを私受けたわけなんで、この機会をとらえて、このセミナーに大いにわれわれとしては参加して、日本内容をわからせておいた方がいいんじゃないかと私は思います。特に貿易の問題、そういった問題がまた再燃する可能性もありますから。そういったことで、四月にセミナーを行うという旨の申し入れがあったわけなんですが、恐らく外務省の方にも正式に言ってくるんじゃないかと、かように思います。これについて、いいチャンスだということで、積極的にひとつ対応をしていただけないか、これを最初お願いをいたしたいと思います。これについてひとつ大臣、どういうふうにお考えか、御感想なり御意見なりお伺いしたいと思います。
  4. 園田直

    国務大臣園田直君) まだ外務省の方に情報入っておりませんで、事務当局でもわかっていなくて、私、初めて聞いたことであります。しかしながら、御発言のとおり、まさに日本としては願うべきチャンスでありまして、できるだけそういうことが実現するならば、この実現協力については、お指図を受けながら万全を期してやりたいと思います。
  5. 松前達郎

    松前達郎君 恐らくこれについては、外交ルートを通して連絡が来るんじゃないかと思いますので、ひとつその点もお含みおきいただいて、よろしくお願いしたいということであります。  それともう一つ、これもまた細かい話かもしれませんが、大変現地でいろいろ外務省出先機関等にお世話になったわけですが、非常に活動されておるわけですね。これは、人間人間話し合いというのが積み重なって相互理解が進んでいくんだろう、私は基本的にはそうだろうと思っておりますが、そういった活動が支障ないようにできるように、予算等もありましょうけれども、できるだけ御配慮いただければと、これは私の感想であります。これもひとつお願いをしておきたいと思います。  さて、それから今度は、南北問題等もありますけれども、その前に日ソの問題ですね。これもやはり南北問題あるいは日米関係と同じぐらい重要な、あるいはそれ以上かもしれません、非常に重要な問題だと私は思っておるわけですが、実は、九月の初句にモスクワに参りまして、ソビエトのルーベン民族会議議長、さらにデミチェフ——これは相当重要な人だと思いますが、デミチェフ文化大臣とか、あるいはチーホノフ首相ですね、こういう方とお会いしたわけなんですが、まあ日ソ関係というのは非常にいま冷え切った状況、これ以上悪くならないと思いますけれども、冷え切った状況に入っている中で、外務大臣日ソに関するいろいろな会談とか、そういうものを通じて私が感じるのは、最近少しその打開の道が開けるような、めどがつきそうな感じを私持ってきたわけなんですが、今後の日ソ関係について大臣としてはどういうふうに、余り具体的なことは必要ありませんから、どういうふうに発展さしていくべきであるかというお考えをお聞かせいただきたいのと、それからもう一つは、十月八日にシュレメチェボ空港でたしか外務次官とお会いになっておられるんじゃないかと思います。まあ、いろいろお話しされたんじゃないかと思いますが、その後、それに対する対応、反応等ありましたら、差し支えない程度でひとつお聞かせいただければというふうに思います。
  6. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本の置かれた立場、それから世界平和、こういうことを考えると、一番近くてしかも非常に影響の多いソ連日本との関係は、私も非常に重要だと考えております。そこで、意見が違ったり対立したりすることがあっても、話し合いの道だけはあけて、十分、意見が違えば違うほど理解し合うことが必要だと、こう思って時期をうかがっておったわけでありますが、先般国連総会で、御承知のとおりグロムイコ外務大臣と私と二年ぶりに会ったわけでありますが、その結果は、ソ連の方も日本と話し合うことを、期待しているとまではいかぬが、話し合った方がいいという気分があるように私は判断をいたしました。私は率直に言いました。そこで問題は、おれの方から頼んで話し合いしようと言ってるんじゃないよという——まあしばらくの間とだえておったものですから、お互いがこう何といいますか、ちょっとまだぎごちないところがありまして、さあ話そうというところまでいかずに、ようやく、それでは打ち合わして、今後、事務あるいは高級レベルの話をやろうというところまでつけたわけであります。  今度エジプトに国葬に参りますときに、途中で変更しまして、急遽モスコー経由になったわけでありますが、急速変更したわけでありますから、空港ではわずか一時間しかありませんので、連絡がつかぬと思いましたら、意外にも向こうから次官以下、極東関係局長など来ておりまして、非常な接待であります、そこで話がありました。  実は正直に言いますと、話し合おうということにはなったけれども、その後の話し合いがなかなかできぬと、どうなるんだろうという気持ちがあるように見受けましたし、これまた、そっちから話せ、こっちから話せと言っておったら長引くわけでありますから、私は次官に、ああいうかっこうになっているが、そこでどういう話をするか、どういうかっこうで話すか、こういうことを両方から切り出すのを待っておったのではこれは永久に話ができないから、ひとつ、そういうことについて両方で話し合おうじゃないかと。私の方では大使館を通じてやるから、あなたの方も事務的に、両方率直に意見を出し合って、話し合いの糸口をつくろうじゃないかと、これを外務大臣に伝えてくれと、こう言ってきたわけでありますが、いま二つ報告しましたことでおわかりでございますように、なるべく機会をとらえて話し合いを始めて、だんだんと正式な話し合いに持っていきたい。まだ、来年一月とかなんて期日は決まっておりませんし、議題等もわかっておりませんし、問題は御承知のとおりに、私は西独ソ連関係は好まじき関係だと、日本関係もこうあってほしいなと思っているわけでありますが、残念ながら北方四島の問題があるわけでありますので、ここでちょっと西独みたいにまいりませんけれども、これはこれとして、これを含みながら、話は始めていきたい、こう思っております。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 まあ、その努力が、多少その曙光が見えるようになって、私もムードとして感じておるわけですが、まあしかし、いまおっしゃいました北方領土に関してはがんとしてまだかたくなな線がありますので、これはまたどういうふうにするか、高等ないろいろな交渉の段階で解決する以外ないと思います。  そこで、今度はPLOアラファト議長が来日されて帰国をされたわけなんですが、外務大臣アラファト議長会談で、恐らく私、日本の今後の役割りですね、特に中東の平和をつくり上げるための努力という、そういった役割りというのは非常に大きくなってきているんじゃないか。中東和平あるいは今後の南北サミットも含めて、日本の国際的な立場あるいは国際的な役割りというものが、だんだんと重くなってきていると私は感じておるわけですが、メキシコのカンクンで二十二日から南北サミットが行われるわけですが、これに対する日本の主張といいますか、一つの課題として提起をしていくもの、そういうものがありましたら、ひとつ個条でいいですから、簡単にお願いします。
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) 南北サミットでは先般準備外相会議がありました。これで、私の方から提案をした南北問題が、現在のようなことでは、援助される方もする方もやや疲れぎみなところが、行き詰まりが見える。そこで、南北問題の基本は、対決を避けてお互い相互依存、連帯という精神世界平和という、ひいては世界経済向上という共通の目的のために、南、北が一緒になって力を尽くすということが南北問題の基本であるということを提案して、全会一致で採決されました。これが今度の会議基本になるわけであります。かつまた、これはいままでのサミットが、どうも事務当局準備をしました文章が基本議論されて、形式に流れるおそれがある。そこで、今度は自由討議ということを原則にしてやろう、各国首脳がおのおの自分の主張したいことを主張する、これを中心議論すると、こういうことでございまして、その議論の要点は、会議が始まるまでに必要があれば通報すると、こういうことになっておりますから、率直に議論をすることになると思いますが、日本の第一の目的は、率直に言って、南と北の調停役というのが日本一つ責任ではないかと考えております。特に、特別な関係にあるアメリカに対して、日本が南北問題に対する熱意を披瀝して、アメリカが積極的になるように努力することが日本の仕事だと思います、具体的に言うと、包括交渉ができるような方向に進めたいと、こう思っておりますが、今度の会議が議決や決議すべきところではありませんけれども、方向だけはそういう方向に持っていきたい。  なお、日本の国として主張することは、経済協力については大型プロジェクトよりも、さらにその国の国民の直接の生活や経済向上ということに役立つような農村開発あるいは農産物、食糧、こういうことに重点を置くというようなことでいくつもりでございますが、御承知のとおり、中東問題その他もいろいろ変化がございましたから、当然この間、それぞれの首脳と二国間の会談があります場合には、南北問題と同時に、中東問題も意見の交換がされるべきだと考えております。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 いわゆる南北サミットに提起されている内容の中に、グローバル・ネゴシエーションの問題がありますね。これはアメリカの方がどうもそれに対して余り乗り気じゃないというふうな報道もあるわけです。日本はそれを支持するというふうに伝えられているわけですけれども、この辺の問題も、南北サミットの今後の問題として非常に大きな基本的問題じゃないかと思うんですけれども、これについてはやはり日本としては、GN支持という形で推していかれるつもりかどうか、その点を……。
  10. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本は御承知のとおり、国連総会において包括交渉に入るべきである、したがって、国連包括交渉早期に開始されるようわれわれは努力するという正式の発言を行っております。同時に、そのときから米国に対しても強く要請をし、これに同調されるよう努力をしているところでございます。新聞の方は、ちょっとこう強過ぎて、アメリカがそれに反対している、だから、日本もそれに引き込まれるのじゃないかというような、と思われるような記事がありますけれども、しかし、まださじを投げるのは早いので、最後までわれわれは米国に対して、包括交渉開始方向へ少なくとも方向が向くように、努力をしたいと考えております。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 その方向でひとつ努力をしていただいて、一つぐらい日本がイニシアチブをとって、アメリカにもある程度説得できるというふうなことはやはり必要じゃないかと思うんで、ひとつその点御努力いただきたいと思いますけど、ただ、中東情勢といいますか、サダト大統領暗殺事件があった後、新しい今後の中東の動きというものをどういうふうに見てそれに対策を立てるかという、それは外交上の問題として、アメリカでも恐らく相当困難しているのじゃないかと私思っておるわけです。ですから、そういった面で、いまの問題も含めて、いろいろと紆余曲折があるかもしれませんけれども、日本としてはグローバルなネゴシエーションが必要であるということについての努力ですね、これをひとつ積極的に打ち出していただきたい、これを要望したいと思います。これから行かれるわけですから大変でしょうけれども、ひとつその点よろしくお願いしたいと思います。
  12. 戸叶武

    ○戸叶武君 いま松前さんが言われたように、中東問題に対して日本政府はきわめて慎重な配慮を持って臨んできた模様でありますが、エジプトサダト大統領が殺された後における情勢というものは、アラブだけでなく、世界各国に非常に深刻なやはり危機感をたたきつけていると思うのであります。  この問題に対しては、私は去年の二月に、十分お話し合いを自由な形でできたところの、エジプト国会議長であり、前のカイロ大学の学長であった方と見解の一致すも点が非常にありまして、あの前にやはり、名前は遠慮しますが、エジプト国会で将来を期待されているパリ大学を出た外交委員長が、お使いのような形で私の意見を聞きに参りましたけれども、それは、やっぱりサダトイスラエルに飛び込んでいくことは、サダトさんとしてキャンプ・デービッドの約束を果たしたいという、体を張っての私は意気込みを感じますけれども、前と情勢が違う。アラブにおけるイラク原子炉イスラエルによって爆撃されたり、リビアにおいて、あの近海でアメリカのアクロバチックな演出というか、新鋭の軍用機で撃墜されるというようなことは、力のデモンストレーションかもしれませんけれども、アラビア全体に対して、前にアラビアバルフォア宣言あるいはローレンスによるアラブ分割に対する不信感、憎しみと違って、アラブの中から何か異端的なものが出てきて、今後どうなることかという不安感を醸し出しているから、私としては断言はできないいけれども、今度とめても、やはりこのエジプトイスラエル話し合いによって局面を転回しなければ中東の平和はかち取れないという、やむにやまれない気持ちはわかるけれども、危ないと感ずる者が大部分だが、聡明な議長は、政治的な何らの野望を持たず、虚心にアラブ全体の世界における位置づけを考えている模様だが、私が言う意味は、議長がどういうふうにサダトさんに注意していくか、それをお聞きしたいまでだと言いましたが、やはり園田さんはいち早くエジプトに飛び、そうしてあの善後処置に対してもてきばきと問題の転換を図った模様でありますが、いま日本は抜けに抜けない、抜けることのできない私は使命感を与えられておると思うんです。  これに対して、やはりいまのPLO議長日本に大きな期待を寄せて、私は責任感を担って、サダトさんとは違う角度だが、やはり話し合いによって問題を片づけようと、国連に、イスラエルの議席を奪うのでなく、やはりPLOの席を設けてもらい、そして平和裏に問題を片づけようという決意が、特に日本の孤立した形において、苦悩しているあのすぐれたリーダーに大きな私は精神力を与えたと思うんですが、それらの点に対して、現状及び将来への打開に対して、園田さんはどう受けとめておりますか。
  13. 園田直

    国務大臣園田直君) 中東情勢は、御存じのとおり、イラン内政イランイラクの紛争、アフガニスタン及び中東和平交渉と、こう考えてみますと、なかなか早期解決の見通しはつかず、不安定化の要因となっておると考えておりますが、その中の中東和平交渉についてのみ話をいたしますと、サダト大統領が亡くなったためにいろいろ問題が出てきておりますけれども、楽観するわけではありませんが、私は大筋に向かって逐次進んでおるという判断をいたします。  第一、今度選ばれた大統領は、内政についても外交についても、サダト大統領の路線を踏襲すると言っておる、なかなかまじめな、ある面においては、前の大統領よりも緻密な政治家であります。  かつまた、イスラエル総理大臣とも会いましたが、イスラエル総理大臣に私は率直に、中東和平一つの拠点をサダト大統領とあなたが分担してやっておられたが、サダト大統領が亡くなられた後、あなたの全責任にかかっておる、したがって、あなたの判断というものは中東和平に非常に大きく影響をするから、冷静にここは判断をして、ひとついま目の前にあるエジプトイスラエル自治交渉、これをサダト大統領が生存されておるときよりもさらに進んで積極的にやられたいということ。それから、もう一つは率直にイスラエルの今日の暴挙については私は支持できない、こういう点をはっきり申し上げ、次いでパレスチナに対する自決権、それからパレスチナはまたイスラエル生存権と、両方お互いに話し合うような方向で行ってもらいたいということを話したわけでありますが、イスラエル総理大臣は、年内にもサダト大統領が生きておられるときのような予定で自治交渉は片づけたいと、こういう話をしておられました。  楽観するわけではありませんが、各人が非常に心配をしておりまするので、この自治交渉サダト大統領が生きておられるときの方向で行くと思いますが、問題はその解決の問題でありまして、この自治交渉自治権を本当に認めるかどうかということは非常に大きな問題で、少なくともこのキャンプ・デービッドの合意に基づく自治交渉が話がつき、これが出発点となってアラブ穏健派エジプト、その他と話がつく、サウジアラビアが出している八項目というものが和平一つのたたき台となっていく、そしていつの日にかイスラエルエジプト、その他の関係国和平交渉の中にパレスチナも入る、こういう大体おぼろげな線でありますが、こういう方向へ持っていく以外には和平交渉はあり得ない、こう考えてくると、パレスチナ問題の解決中東和平交渉のかぎであると考えております。  そこで、わが日本公平中正、こういうことをきのう言っておきましたが、パレスチナとも話ができ、イスラエルとも話ができるようになったし、エジプトとも関係がある、及びこれとの関係のある西側諸国とも関係があるので、こういう意味において、この中東和平交渉に対する日本役割りというのは、非常にはっきりしてきた。これは日本は後ろへ下がらないで、役に立つ限りの力を注いで和平交渉努力すべきだと、こう考えております。
  14. 戸叶武

    ○戸叶武君 来年の国連軍縮会議を目指して、軍縮の成果を上げるべく、特に核兵器根絶を主張して内外に向かっても鈴木首相原爆投下の日に誓いを立てております。このことは、やはりわれわれが第二次世界戦争後の終末において、世界各国とも原爆投下等をめぐってあの残虐な戦争を再び起こすまいという誓いをつづって平和維持機関として国連宣言を出し、そうして国連をしてその機能を果たすべく国連を誕生させたのであります。  その当時の、再び戦争をしまいと、ノーモア・ヒロシマの合い言葉で日本をも慰めてくれた世界の心というものをわれわれはいまでもくみ取ることができます。にもかかわらず、国連のこの理想を母体として、そのモデル国家としてつくりあげられたところの日本国憲法を、国連宣言を否定し、あるいは日本憲法の前文並びに戦争放棄の九条を抹殺しようというような形を日本国民みずから率先してやるというようなことは、戦争かデタントかの問題について、終局的には決して理想主義でなくて、戦争によって問題は片づかないということははっきりしていながら、核兵器を発展させるためには大変な金がかかる、日本も仲間へ入れてこの責任分担をさせようというような形で、国連の存在を無視し、一九四五年二月十一日にクリミアのヤルタでつくった米英ソ三国の軍事謀略的秘密ヤルタ協定のあの体制を改めることなしに、国際的新秩序の方向づけを崩してしまった米英ソがいつの日にかヤルタ協定を自主的に破棄するというみずからの宣言をやらない以上は、また新たなヤルタ協定、場合によっては原爆を持ったフランスをも抱き込んでというような形がほの見えたところに、世界のこの核兵器競争がエスカレートしていくだけであって、この地獄への道を道連れとしてみんな連れていくというようなやり方には、世界各国が断固として反対するだけの気概を鈴木さんも示したようだし、園田さんも、このときこそ世界の中における日本使命感というものを、一度崩してしまったら再び積み上げることはできないという決意で私は進んでいると思いますが、中東問題で少しがたがた揺すぶられるんじゃないかと心配する人もありますが、揺すぶられてもこの不動の姿勢は、一貫した姿勢はあくまでも貫いていく御決意でございますか。
  15. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御発言のとおり、一貫した方針のもとに微力ながら努力をする所存でございます。
  16. 戸叶武

    ○戸叶武君 これは私は、与党の憲法改正のいろんないきさつがあったでしょうが、党綱領の中に入れられているというようなときに、そのことをも自民党としては無視できないかもしれないけれども、いまのような一党独占的なゆがんだ政治というものは、決してノーマルな議会政治意味しないのであります。このときにこそ、一国の総理大臣のみずからの見識においてやはり体を張って、鈴木さんも相当おとなしい人にしては私は前向きに張っていると見受けるのであります。やはり一度崩したら、再び日本国際社会に対して平和への道について語り合う権威というものは失ってしまい、また、せっかく平和機構としてつくり上げた国連が、米英ソ、あるいはときとしてはフランスあたりまで巻き込んで、あるいは中国は巻き込み損なったようでありますが、日本あたりも巻き込んで、そうして軍事的な圧力によって雌雄を決しようというような気構えだと、あたり迷惑な話です。  米ソにおいては妥協の線が一九六二年七月二十三日でしたか、あのキューバ事件のときに、あらかじめ米ソ間においては正面衝突をしないようにという密約が公然としてつくり上げられたはずであります。ソ連はそれに従って中国とも手を切って、アメリカと結んでいけば安全だという考え方で中ソ論争の展開となり、一枚板がひびが割れて、「三尺の懸氷一日に成らず」という中国独特の恨みを持ってソ連の信義を疑うようになったのですが、いまソ連のやっていること、アメリカのやっていること、これは憶測で断定はできないけれども、両者の方は安全地帯にいて一近所迷惑は考えないで、NATOなりあるいは中東なり、ベトナムなり韓国なり、何か薄気味の悪い一つの渦を巻いているのが私は事実だと思います。「光明に背面なし」という禅家の言葉がありますが、暗い権謀術策の密約をいつまでも守っていくというこのヤルタ体制は、ベルサイユ体制よりももっと、次の世界新秩序をつくり上げる時代に破棄されなければならない性質のものであります。私たちはアメリカの良識、ソ連の中にも見識人があるということを認めるが故に、内部からみずからの力でこれを解消し、グローバルな時代にそれにふさわしい新秩序をつくり上げようと、真理はいかなる権力よりも強い、コペルニクス的な発想の転換をいまやらなければ、アメリカソ連も地獄への道を歩まざるを得なくなるんだと思いまして、ときに日本もこの危機の救いの神様だというふうに見られる場合も、ソ連からもアメリカからもよけいな出しゃばりをするなという目でどうもブレーキがかからなくなっちゃったんで、日本さんこの辺をよろしくお願いしますというところまで来そうですか、どうですか。  やはりコペルニクス的な発想の転換なしには、あの現代資本主義をつくり上げたフローレンスのメディチ家の財宝の力、あるいは外征によって共和制を破ったカイザーリズムの横行、排他的なショービニスムによって自分たちのみが優秀で、富を積んで、奴隷を使って戦争をやっていこうというような気狂いざたの中世紀の暗黒の時代、それにコペルニクスは勝ってきたじゃありませんか、四百年もかかったけれども。真理は具体的であるほど強く勢いを加えるのであります。四百年の歳月、澄んだ眼を持ったニーチェが、自分が宗教を、神を信ずることができないと嘆いたのは、ドイツ人であってもスイスの理想郷の山紫水明の地に行って、権謀術策の暗い中世紀の暗黒の状態を見て叫んだ私は憤りだと思います。黙々としていまコペルニクス的な、いかなる弾圧にも屈しないで、地球はやっぱり動くんだ、キリスト教の神話的な魔術によって左右されるものでないと、四百年前に予言したそのとおり、四百年後には、いまローマ法皇でもコペルニクスの説が正しいということを認めた——認めなくてもいい、みんなが常識としてそれを受けとめたんです。コモンセンス、常識が最大の真理です。生活と結びついた、平和と将来に対する希望を与えるだけのコモンセンスが、常識が政治の中において具体的な回答としていま光を放つ時代が、光は東方よって私は到来したと思います。どうぞそういう意味において……。  それでは時間もありませんから、別な機会ヤルタ協定の自主的解消、一朝一夕にはできないけれども、そのくらいのことはアメリカソ連もさんざん悪いこともやってきたんだから、罪ほろぼしにやっぱりやっていくだけの土性骨がなけりゃ世界新秩序におけるリーダーシップは握れないと思うんです。世界から孤立することが一番こわいんです。どうぞソ連アメリカと、両方とも危なくって相手にはなれぬわと言って世界が嘆くようなきらわれ者にならないように、いまのところ思い切ったコペルニクス的な発想の転換を促すことが、いまPLOが過激だと言われても、知己日本を得て、そうして知己を得た感激の中に屈辱に満ちた立場をも忍んで、とにかく国連の場で話し合うというところまできたんじゃないですか。殺し屋じゃない。だれが殺し屋か考えてみるがいい。世界から、ソ連でもアメリカでも、だれにも相手にされないときのマンモスや恐龍のようなわびしさを考えてみたらいい。それを日本だけでなく、ポーランドからも、あるいはアラブからも、PLOからも、あるいはイスラエルからも上がってくるような役割を果たすことがいま日本の唯一の私は世界に対して方向づけをやる任務だと思いますが、どうぞそういう意味において、死ねというのは気の毒ですが、死ぬというふうに捨て身になると案外——園田さんもこのころはずいぶん悪口を言われるようになったから、悪口を言われるようになれば相当な大政治家になったことですから、それをくよくよしないで前へ前へ光を求めていってもらいたい。  それとやっぱり鈴木さんを見直したのは、大したものです。私は政党政派を抜きにして、社会党でも共産党でも、やはりふるさとを愛し、祖国に責任を持つだけの気持ちを持たない者には日本では政権を与えません。他を非難し、誹謗することは楽であるが、みずからそれだけの責任感を持って、やはりひとつのこの険しい時代に活路を開くというだけの精神を躍動させることを期待し、簡単でありますが……。  半分は激励です。本当に園田さん、死んでもいいかも永遠に生きること、りっぱな政治家としてやっぱり壮烈なひとつの態度を持って前へ前へと、逃げることは御免です。そういう点において、あなたは逃げられないたちだから大丈夫だけれども、どうぞこの危機を打開してくれるために、簡単ですが時間が制約されておりますから、これで結びます。
  17. 園田直

    国務大臣園田直君) ありがとうございました。  お教えをよく守って努力をいたします。
  18. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 初めに中東問題について若干触れさしていただきたいと思います。  中東和平あるいは中東紛争の解決ということは、その地域の当事者だけではなくして、私どもにとっても心から願う大きな国際政治課題であろうといふうに思うわけであります。今回のアラファト議長の来日はその糸口になり得るかどうか、あるいはなり得るかもしれないという印象を与えた出来事であったろうというふうに思うわけであります。  過日、外務大臣サダト大統領の国葬に参加をされ、そして多くの各国首脳とも会われ、とりわけイスラエルのベギン首相に会われて、いろいろと今後の中東のありようについてお話もされたというふうに伺っております。今回の来日が即新しい突破口足り得るかどうかはまだ時間の経過というものもございましょうし、なかなか言うべくして大変厳しい、むずかしい側面を持っているのではないだろうか。ただ、従来言われてきたことは、いまも御答弁にありましたように、パレスチナ自決権あるいはイスラエル生存権を認め合うと、そのためには双方の話し合いというものが何といっても不可欠な条件であろう、こういうことでありますし、また、それに期待を寄せることも大きなものがあろうかと思います。しかし、サダト大統領の死に対してのアラファト議長発言等を考えますと容易ならぬと。また、イスラエルにいたしましても、従来はこの生存権を認めないパレスチナを相手としては交渉をするつもりはさらさらないというような経過があるわけです。  もう六十数年来のこの問題でございますから、また、これが解決するためにも相当な時間がかかるであろうということは想像されるわけであります。しかし、いつまでも、だからといって手をこまねいてこのままでいるというわけにもまいらないかと思います。なぜならば、中東紛争はあるいは世界大戦への引き金にならないとも限らない要素を含んでいるからであります。したがいまして、今回の先進国家としては初めて鈴木総理や園田外務大臣に会われたアラファト議長にしてみれば、大きな期待感とまた日本に対するさまざまな協力というものを頭に描きながら帰国されたのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  まず、きょうは時間の制約がありますので、余り立ち入ったことは伺えないんでありますが、自決権といっても一体いかなる形態のものをそこに求めようとしているのか。恐らく領土を持たないパレスチナにしてみれば、やはり独立国家としての、そういうものをつくることの権利というものを認めなければこの問題の解消というものはあり得ないんではないだろうかということが一つ。  それからもう一つは、やはりアメリカが、特にレーガン大統領になってからパレスチナに対する姿勢が非常に厳しいということがいろんな形で伝えられております。従来はアメリカ・イコール・イスラエル、あるいはソビエト・イコール・アラブというみたいな図式が単純に考えられがちであったわけでありますが、そういう図式を乗り越えながら、なおかつ、やはり支配的な力を持っているアメリカに対しても、あるいはソビエトに対しても、そうした道を開くための何らかの手だてを講ずる必要があるだろう、そのための日本は介添え役になることはきわめて必要な役割りとして考えられるんではないだろうか。まず、この辺の突破口を開いてまいりませんと、中東和平というものは、常に言われておりますように古くて新しい問題を残しながら、依然として解決が阻まれたままに推移していくということを非常に恐れるわけであります。先ほどの御答弁にさらに一歩突き進んだ言い方かもしれませんけれども、まず、そうした二つの問題をどういうふうにいまお考えになっていらっしゃるか、お伺いします。
  19. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御発言にもありましたけれども、中東問題が世界平和にとって一番懸念すべき、しかも一番重要な点であることは、私も全くそのとおり考えます。したがいまして、いままでのようにエネルギーの供給源であるという考え方を捨てて、世界の平和という観点から日本は全力を挙げるべきだと考えております。しかしながら、中東地域に対する日本発言力は限度がありますので、これの調停役とか指導権とかという、そういう行き過ぎた考えは持たないで、いま先生がおっしゃいました相対立する関係諸国が、話し合いのできるような介添え役をやることが日本の本当の責任ではないかと、私もそのように考えております。  そこで、自治交渉の問題の自決権というのは、独立国家を含む自決権の問題でありまして、独立国家をつくるかどういうことをやるかは、これはパレスチナ人みずから決めることでありますけれども、少なくともその権利を認めるという自治交渉の結論が出れば、これを受けて穏健アラブ諸国、特にサウジアラビアの皇太子が出しました八項目などとつながって、ここでまた新たなる発展の段階で議論ができるわけであります。これが出てくれば、今度は当事者のイスラエルパレスチナが、一方は生存権を認め、一方は独立国家を含む自決権を認めて話し合いに入ると、関係諸国の西側、アメリカというものもこの問題に理解を示しながら恒久和平に向かう、こういうことが大体常識的に考えられる線ではないか。私はきのうも議長に申し上げましたが、日本中東和平については公平中正立場を堅持する。ということは、PLO議長に対してもお会いをして、率直にイスラエルの生存を認めなさいという話をする。同様にもっと強くイスラエルの総理には、いまの不当な戦闘行為は支持できない、非難する、そしてパレスチナ自決権は認めなさいと、こういう話をしている。こういうふうに関係諸国に公平にそれぞれ話を持っていって、そして話し合いができる介添え役をしたい、こういうことを言っておりますが、これが中心になって米国西側諸国に対するまた日本責任も出てくると、こう考えております。
  20. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 御承知のとおり、パレスチナと言った方がいいか、総称的にアラブと言った方がいいか、イスラエルの問題については、どちらかと言うと水と油みたいな環境の中で、その対立が続くまま今日まで推移してきた。いま確かにおっしゃるとおりだというふうに思うんでありますが、さて、じゃ具体的にどうなるかということになりますと、これは決して、先ほど私も触れましたように、拱手傍観できるような状態じゃなかろうというふうに思うんです。じゃ介添えなら介添えとして果たし得るこれからの具体的な方途というものは一体何があるのか。いま私も若干触れましたけれども、イスラエルとしても必ずしもいままでのアラブの出方に対しては好意を持っていない。むしろ憎悪を持っている。こういったことが、不信感がそれに増幅されてもうどうにもならない。それを解消するということは並み大抵のものではないだろうというふうに考える上から、やはりこの際にレーガン大統領を動かすことも、私は一つの大きな道しるべになるんではないだろうか。また、南北サミットではサウジアラビアの皇太子にも会われる予定だというふうに伺っております。もう和平提案として八項目がすでに考えられている。そういった中にも、恐らくいま問題になっているようなことが盛られているであろうというふうに思いますし、ただ、この機会に改めて確認しておきたいことは、せっかく先般アラファト議長が来日され、いろいろと総理初め園田さんとも話し合いをされた。その一番問題になる生存権についても、明確な答弁がなかったというふうに伝えられているわけであります。  こういったことが、来月モロッコでもって開かれるサウジアラビアあたりを中心とする和平会議まで待ってもらいたいという含みを持たしたのか、それとも、もうすでにそういう決意というものがあるんだけれども、やはり信義というものを重んずる上から、それまでちょっと待ってもらいたいというふうになったのか、この辺がやはり一つの突破口になり得る私はキーポイントではないだろうか。具体的にどうこうということよりも、実際に会われていろいろと話をされた。まあ非常に短い時間ですから、あれもこれもということを期待することの方がむずかしいと思いますけれども、しかし、しかるべき星は全部打たれたと思うんです。その打たれた星を通じて向こうの反応、そして今度、さらに重ねて申し上げるようですが、今後南北サミットでイタリアを除くオタワ・サミットに出られた首脳が全部集まります。特にその中でも、レーガン大統領に会われるということが大きなやっぱり中心課題になるであろう、絶好のチャンスだと思うんです。したがって、今回のこうした事柄を踏まえてもうすでに、これからどういう取り組みをするか、またどういう話をするのか、どういう提案をこれから考えて臨むべきか、いろいろと腹案というものがもうでき上がっているんじゃないだろうか。それをひとつ総ざらいして、改めてもう一回御答弁をいただければありがたいと思います。
  21. 園田直

    国務大臣園田直君) まだまだ路線であるとかあるいは具体的な計画などはでき上がっている段階ではございません。しかし少なくとも、楽観はいたしませんけれども、また先生のお話の中に出てまいりました解決に向かって糸口が出てきたということだけは、私も先生と同じ意見でございます。PLO議長も、イスラエル生存権についてははっきりこうだという意見は言いません。それからイスラエル総理大臣も、自決権についてははっきりした返事はないばかりでなく、御想像のとおり、両方とも言葉は大分変わってきたが、内心の感情的なものは相当強いと私は両者の言い分をじっと聞いて考えているわけでありますが、しかしまた一方には、中東和平というものの重要性、それから社会の必然性、自分の置かれた立場等というものもだんだんわかってきて、そして何となしに、解決の糸口の方向へ向かって柔軟性が出てきたのではなかろうかと判断されるいろんなことはございます。かつまた、一方、イスラエルを一方的に支持しておったと言われておる米国におきましても、はっきり私は言えませんけれども、新聞に発表された点からだけ申し上げますと、元大統領のフォード、これは現政権についても相当影響力のある政治家であります。この人が帰国後、サウジアラビアの八項目はこれは評価すべきであるなどという新聞談話を言っておられることなどから想像いたしますると、やはり一つの必然性の方向に向かって、それぞれみんなが少しずつ理解というか、自覚をし始めてきたと、こういうふうに私はおぼろげ判断をしているわけであります。そこで、それが自覚をしてきてうまくいったら、日本は介添え役でうまくいこうというのではなくて、さらにそれを促進するように理解を求め助言をし、あるいは要請をしながら、関係諸国にそういう機運が、初速がついたとこう判断いたしますので、だんだんと進んでいくようにすべきであるということで、南北サミットでも、関係国の方々とお会いする場合には、南北問題が主でありますが、そういう問題の意見交換も当然すべきであると考えております。
  22. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 じゃ、この問題についての最後の締めくくりとして、今回のアラファト議長来日に伴って、いろんな意見の交換も当然おありになったでしょうし、特段に何か日本に対する協力を要請されたようなことはございましょうか。
  23. 園田直

    国務大臣園田直君) 私とアラファト議長との会談の締めくくりを一言で言いますと、日本国民は非常な好意を持って迎えた。あなたの言動、おっしゃったことなどは国民に対して非常にいい方の関心を持たれた。そしていまこうやって総理大臣外務大臣もお会いしている。これだけが非常な成果であり、大きな意義であって、それ以上一遍に欲をお出しになるといけませんよと、こう言ったら、向こうもそうだ、そうだと。合意はなくとも、会ったということが一番大きな成果だということが最後の詰めでございますが、少なくともこれによって今後の一つの諸問題についてのきっかけができたと思いますが、合意されたり、あるいは議長の訪問によって日本の政府がPLOに対するいろんな問題が変更することはあり得ません。向こうから特に要請されたこともございませんが、私が一時間余り話した、それから二人きりで話したということから判断しますと、やはりPLOの方にも、自分たちの真意を理解してもらいたい、その理解してもらうために日本も協力を願いたいというお気持ちはあったと思います。
  24. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 では、次に南北サミットについて若干やはり御出発の前に当たりまして触れさしていただきたいと思います。  先ほども同僚委員の方からもこれについて触れられたようでございまするが、南北サミットが開催されるまでの道程というものについて、大変苦労されたメキシコだとかオーストリア等の首脳がいるわけです。プラント委員会におけるその提言に基づいて、今後の南北の解消というものはいかにあるべきかということを取り上げ、そしてこれを具体化したという、まことに画期的な一つの試みであったろうというふうに私は思うんです。  ただ今回、確かに交渉ではなくして意見の交換である、お互いの認識をさらに深めよう。恐らくそういう発想に基づいて今回の——まあ八月の上旬にはその準備段階として外相会議があり、今回のサミットということになったと思うんです。願わくば、せっかくここまでお互い南北問題が平和に共存であり、相互連帯というようなわが国政府のそういう基本から考えましても、これは私は非常に大事なことであろうと思う。今後こういう話し合いの場というものが、たとえ交渉の場でなくても継続的に行われるものであるのか、あるいはこの今回の南北サミットで全部空中分解してしまうのか、大変その点を憂慮する一面があるんではないか。われわれとしてやっぱり、せっかくここまで一つの手がかりともなるべき南北問題解消への新しい一つ話し合いの場というものがつくられたわけでございますので、むしろこれを拡大する方向に向け、そして、そこでいろいろと検討をされた貴重な意見というものを集約して、あるいは国連という国際機関にそれを提言するというような、そういうこれからの行き方というものが非常に望ましいんではないかというふうに思うんですけれども、その点いかがでございましょうか。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕
  25. 園田直

    国務大臣園田直君) 今度のサミット——もう何回も申し上げておりますから、基本的な日本の態度であるとか、あるいはこの会議基本線は省略をいたします。  まず、必要なことから申し上げますと、御発言のとおりに、この会議は今度初めてとられる自由討議の形式をとっているわけであります。そうなりますと、いま先生がおっしゃったように、議論の言いっ放しで会議をやっただけだということになるおそれがありますので、私が重点事項通報方式という新しい案を提案したわけでありまして、それは各国首脳が、自分が言いたいという趣旨を議長に通報する、重点を通報する、議長各国にこれを知らせるということにしましたのは、議論をしてお互い意見の交換をしている間に、この会議で議決だとかあるいは何かを決める場所ではないが、将来国連で議決をするとか国連交渉を始めるとか、あるいはその他の場所で何かをやるとかという一つ方向を見出すということは確かに大事だろうと、こう思いますので、第一におっしゃいました意見の言いっ放してはいかぬ、こういうことは私も同様意見でありますから、これはそういう一つの目標を抱きながら、議決はしなくっても、そういう方向に二十二カ国の意見がまとまるようにやりたいと考えております。  それから次に、これを継続すべきか、あるいはもうこれで終わるべきかということは、いまのところ見通しとしては私は何とも言いかねます。正直言って、中にはもう今度だけで結構だという意見準備会議のときはございました。しかしそれは、南北問題に熱心な国もあれば、正直言ってちょっとありがた迷惑と言わんばかりの国もあったわけでありますが、その後準備会議をやるうちに、全会一致相互依存、連帯という一つの線でまとまったわけでありますから、空気は大分変わってきた。その後、心配されておつたアメリカも、国連総会の一般演説では南北問題だけを取り上げて演説するというところまでは変わってきたわけであります。したがいまして、準備会議のときと空気は違ってきましたが、やはりこういう会議は、今後続けてやるか、あるいは次の会議が開かれるまでに、何かここで議論したことが実行されているか、あるいはうまくいっているか、こういうフォローアップをするものをつくるか、これはぜひ御発言のとおり考えるべきだと思っておりますので、私も同様意見で主張をし、そういう方向に持っていきたいと考えております。
  26. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにそういう点はあろうかというふうに私も思うんです。ただ、初めてのやっぱり試みというものにはいろんな曲折があるだろうし、困難な要素というものも当然介在してくるだろう。ただ、国連みたいな場において、正式な国際機関においても南北問題というのは取り上げられつつも、具体的に少しもいままで進んでいない、そういううらみが非常に多かったわけですね。今回集まる国々にも、いろんな特徴があるようでありますけれども、こうした一つの試みというものを、やっぱり大事にしていくということも一つの道を開くことに通じはしまいか。実際にいろんな討議をされるその内容がどんなふうになるのか、その展開というものはいま推測することはとてもむずかしいだろうと思う。ただいままで伝えられている面では、いろいろ国によって態度がみんなまちまちである、いま多くを、もう御存じでございますからこれを一々取り上げません。  先ほど、調停の役を果たしたいということもおっしゃっておられる。そうしたまちまちである中にいま南が何を先進国に期待をし、協力を求めているのか。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 そしてまた同時に、先進国としては何がその要求に応じられるのか。こういったことをやはり話し合って具体化することだけでも、相当大きな私は意味があるのではないだろうかというふうに思えてなりません。そういったことを通じて一つの国際世論を形づくり、国連なら国連にそれを南北問題の討議がなされる場合に強力に支援をしていく。そういういろんなことがやっぱり想定されると思うんです。その点については、これ以上私もいま想像で物を言うわけにまいりませんし、また実際に臨まれる総理、外務大臣としてもあるいは場合によっては手探りでいろんなことを対応しなきゃならぬ場合も私はあるだろうというふうに思います。ただせっかくのこの機会に、先進国でもオタワ・サミットに出られたイタリアを除く各国首脳が集まる、あるいは中国の趙紫陽首相も参加をされる、ユーゴスラビアも参加をする等々、非常にバラエティーに富んでいるそういう首脳がお集りになる。これも一つ首脳外交といいますかを展開する上においては、これは、またとない一つチャンスだろうというふうに思いますね。この点について、いまいろいろとインドのガンジー首相にも会われるような予定も立てられているようでありますが、いま具体的にこういう方々とお会いになって何を話し合われるのか、差し支えなければ、その差し支えない範囲でもって、特に何を提言をし、また、どういうことについてこれから積極的に平和のために協力してもらいたいという、日本町としての要請をされるか。何かもうすでに準備をなさっているんじゃないかというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理と私の立場は違います。私はわき役でありますから、できるだけ多数の国の外務大臣とお会いをして、南北問題に限らずいろんな問題に、国家の問題と関係なしに意見を交換したいと考えております。  総理はまた総理で、できるだけ前もって枠をつくられぬように、行ってからできるだけたくさんの人に会いたいと、その場でお互いに相談して会おうじゃないかと、こういうことで、いま大体見当をつけられておるのは中国の首脳、それからインド、サウジアラビア、それからアメリカ大統領は、向こうの都合でまだだれとも約束はしておらぬようでございまして、これまた当然会うことになると思いますが、結局その後は総理の御意向でその雰囲気で会われるでしょうが、やはり南北問題が主であり、続いて二国間の問題であり、当然いまの中東問題等についての意見の交換もあり得ると思います。
  28. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に、わずかな時間ですべてを言い尽くせるかどうかわかりませんけれども、対ソ経済問題について一つだけここで確認をさしていただきたいと思うんです、  今月のたしか二日だったと思うんですが、アメリカは再び穀物輸出をソビエトに行うということを決定されたようであります。去る四月にもこうした問題がございました。対ソ穀物禁輸解除という点について、言うなれば日本に対して何の相談もなくいいわゆる頭越しにやった。そのとき、たしかマンスフィールドは、これはもうレーガン政権のミステークである、今後このようなことはしないというような釈明をされたというふうに伺っております。今回また同じようなことが繰り返された。事前に私はたしか通告がなかったんじゃないか、話し合いはなかったんじゃないかと思っております。  時間がありませんから、ずっと羅列していきますから、あと答弁一括してお願いいたします。  今回の米ソの合意というものをどういうふうに受けとめているのかが第二点。  第三点は、今回の合意によってアフガン事件以前に戻ってしまったのではないかというふうに考えられます。たしか総理は今月の一日の衆議院の本会議の答弁で、対ソ経済措置はアフガニスタン情勢基本的変化がないので変更しないというふうに述べられているわけです。その情勢基本的な変化というのは一体何か。  次に、アメリカがこういうような対応の仕方をした以上、日本としてもこれから同じ歩調で対ソ経済措置というものは緩和の方向へ向かうのかどうなのかという問題があります。もうすでにアメリカが核軍拡を強めるという、つい先ごろ発表がありましたB1であるとか、あるいはMXミサイルであるとか、見えない爆撃機であるとか、それより先に中性子爆弾の生産を決定をする、こういったような背景の中で、今回のいわゆる対ソ経済措置というものの緩和というものをどういうふうに受けとめたらいいのか。  この点、時間がもう若干経過しました中で御答弁をいただくのは本当に心苦しいのでありますけれども、以上一括してひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  29. 園田直

    国務大臣園田直君) 本年の四月だと思いますが、米国が対ソ穀物輸出制限措置を撤廃したことは御承知のとおりであります。この際、米国が対外的に事前協議をしたと発表しましたが、わが方の総理は協議ではない、事前の通告であったとおっしゃったことは御承知のとおりであります。この撤廃に基づいて、その後米国ソ連との間で話し合いを行った結果、今度のやつは一年間これを延長するということが決まったわけでありまして、この四月の撤廃の具体的な行為として、今度の十月二日の問題が起こったわけでありまして、これについては、これ及び天然ガス等の問題は、幸い私が国務長官と半月に一回ぐらいの割りで会っております。この点は私はよく承知しておったわけであります。  そこで問題は、これがアフガニスタン関係の対ソ制裁とどう関連していくのかと、こういうことで、これはなかなかむつかしい問題でありますけれども一実はきのうですか、アラファト議長が来なかったら日本の新聞に大きく取り上げられるであったであろうと思われるのは、米国の農務長官の来日であります。これは農産物、穀物等について大体日本は八二年から四年まで枠を決めて話が決まっておるわけでありますが、それは承知の上で、何とかもう少し買ってくれる手はないかという相談で、これは同様韓国、中国だって豊作であって、アメリカの穀物を処理することに苦労されているようなことであります。  この問題を抜きにして——その豊作の農産物をどう処理するかということもアメリカ側の一つ判断の中にあったのではなかろうかと。一方は対ソの問題と、こういう絡み合いで出てきた問題で、なかなか一括してお答えするわけにまいりませんけれども、少なくともこれをもって対ソ経済制裁の撤廃とわれわれが言い切るまでには至っていない。したがって、今後情勢を見ながらケース・バイ・ケースでわれわれはやっていくが、アフガニスタンのソ連の行動は容認するわけにまいりませんから、これについては依然としていままでの方向でやるということでございます。
  30. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、時間が短いので端的にお尋ねしたいんですが、去る十三日の日に沖縄に駐留しております第三海兵隊のオムステット司令官が記者会見で発言されて、第三海兵隊の作戦展開の範囲は限定されていない、命令があれば、地球上どこであろうとあらゆる条件のもとで戦闘行動に出動するという趣旨の記者会見での発言がなされておるという報道を見たわけですが、これはどういう意味なのか、お確かめになられたのかどうなのか。あるいは、この問題に関して安保条約上あるいは事前協議制の上から見てどういうふうに御判断になっているのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  31. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いまお尋ねの件は、十三日にオムステット少将が発言し、それが十五日付の報道になっているという点の御指摘であろうかと思います。私たちは、もちろんその報道そのものについては承知しておりますが、オムステット少将が具体的にどういうコンテクストでその発言をしているかということについてはまだ承知しておりませんので、その内容についてここでコメントすることは適当ではないというふうに考えております。ただ、その新聞報道を読む限り、オムステット少将が言っているのは、在沖縄海兵隊の活動の能力というものについて言及しているわけでございまして、現実に在沖縄の海兵隊が極東あるいはそれ以上を越えてどこに出動していくということまで明確に述べているわけでございませんで、むしろ能力という点に着目して発言しているというふうにわれわれとしては了解しております。
  32. 立木洋

    ○立木洋君 もう、きょうここで議論する時間がないので強く求めておきたいわけですが、いままでもやっぱり在日米軍の司令官等との発言でいろいろ問題になったこともありますけれども、やはり安保条約上の極東の範囲という問題、それから事前協議制度があるという点については、十分に徹底さしておかないと大変な事態になるわけですから、これは、向こうがどういう意図で述べたかということを、私は新聞で見た限りですから、これを根拠にして淺尾さんにこれ以上責め立てるわけにはいかないかもしれないけれども、しかし、やはりその点をきちっとさしておく必要があるだろうと思うんですね。そういう点について、今後しかるべきときに、やはり十分に理解を徹底させるという点について、大臣の御所見だけお伺いしておきたいと思います。
  33. 園田直

    国務大臣園田直君) いまのあなたの御発言は御発言のとおりでありますから、今後、しかるべき機会をなるべく早く求めて、そういうことについて、こちらの意向は米国側によく徹底さしたいと思います。
  34. 立木洋

    ○立木洋君 これはまた話が変わりますが、問題が残されておりますいわゆる日韓交渉ですね、これについて大臣、見通しをどのようにお考えになっておられるのか、お尋ねしたいのですが。
  35. 園田直

    国務大臣園田直君) 日韓問題については、詳細は詳しく御承知でありますから簡単に申し上げますが、御理解願いたいことは、何か日本と韓国の言い分に差があって、これを両方から譲り合って理解し合わなければならぬというように解釈されている方もあるようでありますが、そうではなくて、日本の方はちゃんと経済協力基本的原則が決まっているわけであります。それに韓国から言われることがいま当てはまっていないから相談にならない、したがってもう一遍考え直してください、こういうのが今日の段階でございます。
  36. 立木洋

    ○立木洋君 どういうふうな見通しで、その交渉の事態が展開されていくかという点についてはまだ明らかではないんでしょうか。
  37. 園田直

    国務大臣園田直君) まだわかりません。私の方じゃなくて、韓国の方で日本経済協力三原則の原則、基本方針を理解されてどういうふうな相談があるか、向こうの相談まちであります。
  38. 立木洋

    ○立木洋君 それから、前回の日韓閣僚会議のときの共同新聞発表ですが、あの中でどうしても気になるのは、韓国の防衛努力に対して高く評価するという文言が初めて挿入されたわけですね。これは大臣も再々述べられておりますように、日米間には安保条約があるけれども日韓関係にはそういう問題はあり得ないということからしても、この防衛努力という言葉が、どういう形であるにしろ共同の文書で高く評価するという文言が挿入されたというのは、これはどういう意味なんでしょうか。
  39. 園田直

    国務大臣園田直君) これは書いたとおりに読みますと、「日本側閣僚は現下の厳しい情勢下において韓国の防衛努力が朝鮮半島の勢力均衡に寄与していることを高く評価し、」こういうわけで、脅威があるとか、緊張が極度であるとかという意味を書いたわけではございません。これは苦心の作でございます。(笑声)
  40. 立木洋

    ○立木洋君 この点で再々大臣が言われておりましたように、安保とりで論については賛成しないんだという立場を強く主張されておったわけですね。だけれど、いままでそういうほかの国といろいろ共同文書を発表される場合に、外国の防衛努力をどういう形にしろ評価するという文言が挿入された共同文書はあったでしょうか、アメリカは別ですよ。
  41. 園田直

    国務大臣園田直君) 事務当局では、いまのところ記憶はないそうでございます。
  42. 立木洋

    ○立木洋君 これはそういう意味で、私は韓国の場合に、安保とりで論にはくみしないということを強調されておるにもかかわらず、こういう他に例を見ない文言が挿入されたということの意味をどう解釈したらいいのかということが、そこのところもう一つ、真意をはかりかねる点があるんですよ。まあ私の考え方を言えば、それはまた論争になりますからあれですが、つまり、ずっと文書を見てみますと、やっぱり緊張が存在しているということがありますよね。それから朝鮮半島における平和と安全が日本及びアジアの平和と安全にとって緊要である、こういう文言も入っているわけですね。その上で、なおかつ力の均衡、勢力の均衡を保つ上で韓国の防衛努力が寄与しているということを高く評価するというこの文言をずっと読んでいきますと、結局韓国の防衛努力というのが日本に裨益しているというように判断されてこういう文言が入ったのかどうなのか、その点をちょっと確かめたいんですがね。
  43. 園田直

    国務大臣園田直君) これは解釈される方の思想や哲学にもあるわけでありますから、ここに書いてあることは、ちゃんとこれを打ち消すように、「日本経済協力基本方針のもとに」と、こう書いてありますから、基本方針とは軍事力の肩がわりはできない、積み上げ方式である、こういう方式でありますから、そこで御心配なさるようなことはなくて、ちゃんと歯どめはついておると考えております。
  44. 立木洋

    ○立木洋君 言葉を変えて聞きますが、そうすると、韓国の防衛努力日本の防衛に関して、つまり平和と安全に関して一切裨益していないというふうに言い切ってもよろしいんでしょうか。
  45. 園田直

    国務大臣園田直君) 一切何ですか。
  46. 立木洋

    ○立木洋君 裨益していない。
  47. 園田直

    国務大臣園田直君) おのおの自国の防衛に努力することは、それぞれ自国の防衛ばかりでなく、近隣諸国の平和と安定にも影響することは当然でありまして、日本も微力ながら自衛隊を強化をして自国の防衛をやっておることが、これまたお隣の国の安全と平和に貢献していることであると考えております。
  48. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、やはり韓国の防衛努力日本に対して裨益しているという点については否定なさらないわけですね。
  49. 園田直

    国務大臣園田直君) これは、お互いお互いが立って歩くことは、当然お互い責任であるという意味であります。
  50. 立木洋

    ○立木洋君 まあ大変苦心の作だと先ほど言われましたが、その気持ちはわからないわけではありませんけれども、しかし私は、やっぱり五月の日米首脳会談のときのあの中東問題に関する条項ですね、あれが日本に裨益しているというのは大変な後々問題がやっぱり残されておる。本当にこの韓国の防衛努力に対して日本がどういう立場をとるかということを最も求めたのが私は韓国だと思うんですよ。つまり、それがいまおっしゃられたようなことで、裨益しているという点については否定をなさらない。一切裨益していないのかというとそういうふうにも述べられていないわけで、この問題についてはきわめて微妙な点でありますけれども、私は事実上やはりそういう今度の共同文書の持っている意味合いは、今後の、やはり外務大臣がおっしゃられたように、本当にどういう立場でいわゆる援助の問題が問題になっていくかということによって、私は明確にされていくだろうと思うんですが、そういう意味で、再確認の意味でいわゆる韓国に対する援助の基本的な姿勢、その基本原則と言われる点をもう一度確認さしておいていただきたいわけですが、軍事問題にはかかわらないだとか、それからあるいは積み上げ方式でやるだとか、そういう幾つかの点についての基本的なお考え方をもう一度確認さしていただきたいんですが……。
  51. 園田直

    国務大臣園田直君) これは韓国ばかりではありませずに、日本経済協力基本方針の第一は、他国の軍事、防衛の肩がわりをする援助は相ならぬということが一つ。それからもう一つは、経済協力するについては両国が綿密に相談し合って、具体的にその効果があるかどうかを調査をして、そして一つの案件を決める、これを積み上げて持っていくという積み上げ方式であります。これが二つ。三つ目は、経済協力といいましても政府借款は元金がございますから、この元金がとても六十億などというものは相談に乗れる話ではない。  この三つの点が韓国との間では問題になっている点でございます。
  52. 立木洋

    ○立木洋君 私は、やはりこの共同文書の持っておる、今後にどういう影響をもたらすかという意味合いを重視しておきたいと思うんです。きょうはこの問題について深く議論するわけにはいきませんので、この問題については今後の事態を見ておきたいと思うんです。  それでもう一つサミットにおいでになるので外務大臣の御所見をお伺いしておきたいんですが、今度南北サミットが開かれることについては、先ほど大臣もおっしゃったように、つまり交渉の場所ではなくて自由に意見を述べ合うという性格のものであるように聞いておりますが、しかし、去年の夏でしたか、国連会議で、包括的な交渉の問題についてもいろいろやっぱり問題が残されてなかなかうまくいかない。いわゆるアメリカを初め幾つかの国がそれに対して阻むような態度をとってこられたというふうな事態があって、なかなか今度の場合でも、いろいろと注目はされておりますけれども、実際にどうなるのだろうかということが新聞紙上でも出されているわけですが、大臣のいまの時点でのこの南北サミットについての見通し、どういうふうになりそうか、なるというふうに判断されるのか、その見通しについてお尋ねしておきたいんですが……。
  53. 園田直

    国務大臣園田直君) これは新聞等にも書かれておりますが、私の感じでは、新聞に書かれておるのはやや強過ぎる見方をしておられるんじゃないか。確かに包括交渉についてはアメリカは消極的であります。しかし、国連総会のときから私は、その後数回にわたって、包括交渉に入るべきである、早期にこれは開始すべきであるということをいろいろ具体的に理由を挙げてアメリカの方に助言をし、要請をし、努力しております。最初はなかなかでありましたが、たびたび要請するうちにアメリカは、それはだめだという返事はなくなって、なかなかむずかしいぞということに変わってきた。したがって、若干状況は変わってきたが、だからといって今度の南北サミットアメリカがみんなと一緒に賛成というところまではまだいってない。これが正直な見通してございます。しかし、最後まで努力をするつもりでございます。
  54. 立木洋

    ○立木洋君 それじゃ最後に、これは、もちろん先ほど来南北サミットの場においてどういうふうに努力されていくかということはお述べになったわけですけれども、とりわけやはり日本の場合には、ただ単に南北の関係という問題が、発達した国々がおくれておる大変な国々にただ単に援助をするという意味合いだけではなくて、私はこれからのやっぱり世界経済のあり方を決める上での重要な問題点がある。そういう意味では、日本というのは資源の問題にしてもエネルギーの問題にしても、いろいろな問題を抱えておる点から見ますと、この南北サミットの問題に対してはやはりきわめて重視した立場が必要だろうと思うんですね、これからの日本経済考えるという点からも。そういう点で、私はこの南北のサミットの問題について、先ほど来大臣が強調されている点についてはぜひ努力をしていただきたいし、特にその点で、改めて大臣がお述べになりたいことがあれば述べていただいて、私の質問を終わります。
  55. 園田直

    国務大臣園田直君) ありがとうございました。  初めて同じ意見のことを、激励いただきました。一生懸命努力をいたします。
  56. 立木洋

    ○立木洋君 違っている面ももちろんありますけれども、先ほど述べた点では賛成できる点がありましたので……。
  57. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 最近PLOアラファト議長が来日いたしまして、短時日ですけれども日本人にいろんな接触をしました。  首相及び外相も会われたわけですけれども、私の意見から申し上げますが、中東の安定ということは、これはもう世界でも非常に重要な問題であるし、日本にとっては、石油なんという問題を言わなくてもこれは非常に重要な問題であることは間違いないことであります。  このアラブ世界が分裂している。まあいろんな分かれ方がありますけれども、普通言われる急進派とか穏健派とかいう分類もございます。それからサダト大統領キャンプ・デービッドの話を行いまして、それでイスラエルと妥協するという線が出て以来、エジプトアラブ世界から孤立する。それについたものはスーダン、ソマリアそれからオマーンと、こういう国ですね、そういう分裂が一つある。しかしそれと同時に、やはり依然として急進派、穏健派という分かれ方があります。日本の中には、急進派とそれからいわゆる穏健派との間のみぞが相当深いように言う人もありまするけれども、しかし、事パレスチナの人民の主権回復の問題、祖国を回復する問題については、これは急進派も穏健派もひとしく一致しているように私どもには見えます。  今度アラファトさんが見えまして、そしてアラブ諸国大使の歓迎会といいますか、日本人も参加いたしてやりました。まあ私も出席いたしましたけれども、その司会は穏健派のモロッコの大使がやる。それから穏健派の諸国の大使がほとんど全部出ている。それから故サダト大統領の葬儀には、先ほど申し上げたスーダンそれからソマリア、オマーン以外は人を出していない、こういう状況ですね。サダトさんの死というものは非常に不幸なことでありまするけれども、やっぱりこれはだれが一体サダトさんを窮地に陥れたかといいますと、余りにもイスラエルの態度がキャンプ・デービッド精神に沿わない、一方的に強行な態度をとるということからサダト大統領アラブ世界から孤立し、それで、イスラム原理派というような強いアラブ主義者が非常な反感を持ったというところに原因があると思いますね。ですから、そういう基本的な認識を持って日本外交をやりませんと、これは将来間違える、必ず間違えるというふうに私は存じておりまするけれども、園田外務大臣はどう考えられますか。
  58. 園田直

    国務大臣園田直君) サダト大統領は鮮烈な政治生涯を凶弾によって終わられたわけであります。サダト大統領エジプト大統領としても中東和平のこの問題についても非常に精魂を傾けられた。特にイスラエルエジプトの三十年戦争をやめたということについては、これはやっぱり平和のために生きられたということだと存じます。  しかしまた、いまや中東和平というのはキャンプ・デービッドの合意がどのような合意に発展していくかということが、今後これが中東和平につながるか、あるいは障害になるかという分かれ道であることも事実であります。そういうときに新しい大統領にかわられたということを、災いを転じて福となす一つの転機にしなければならぬのが関係諸国及びイスラエルPLO責任じゃないかと考えております。
  59. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 三、四年前ですけれども、ブーメジェンというアルジェリアの大統領が来たことがありますが、そのとき彼と話したときに、現在のアラブの元首のうちでイスラエルを海に追い落とそうと思っておる者は一人もいないということを言っていました。ですから、アラブの方にはイスラエルというものの生存を許容して、そしてパレスチナ人に何らかの形で郷土を回復させるという思想はそのころからあったし、現在もあるし、そういう極端でない考え方ですね、海に追い落とすというような考え方は現在もなく、私は今度アラファトさんに会いまして、パレスチナ側、PLO側にはそういう考えがだんだんに定着しつつあるというふうに考えました。問題はむしろイスラエル、それからアメリカ、そういう側にあると私は思いますね。  最近のこれは新聞の報道ですからどこまで正確かわかりませんけれども、エジプトの盟邦であり、アメリカがいろんな軍事援助を行っているスーダン、スーダンの政府がリビアに対して予防戦争をやるんだというふうなことを言っているという、私はこれははなはだ危険なことであると思うし、それから日本はそういう点でPLOというものはできる限り現実の線で平和をつくるように努力するように説得するという姿勢ですね、政府の姿勢は。私はそれは可能であると思います。しかし、一方サダトさんを殺したのも、キャンプ・デービッド精神というものを全く無視するようなたとえばイラクを爆撃してみたり、レバノン南部に進撃してみたりするイスラエル姿勢にあるわけでありますが、そういう強行姿勢アメリカも支持して、そうしてスーダンが予防戦争をしてリビアをやっつけるかなんというようなことが新聞に出るような姿勢というのははなはだ私は遺憾なことであると思いますね。特に、アメリカ日本が良好な関係を続けていこうという以上は、はなはだ困ることであるので、そういうアメリカ姿勢に対して外務大臣日本国民を代表して率直に、平和のためにアメリカに忠言といいますか、それをされるべきだと、こう思いますが、どうでしょうか。
  60. 園田直

    国務大臣園田直君) 関係諸国、特に米国日本は特別の関係でありますから、中東和平が順調に進むように、しかも正当なことは正しくアメリカに助言をし、あるいは要請するつもりであります。個々の動きについては余り小さいことは私が口を出すべきことではないと考えております。
  61. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 いや、余り小さくないんですね。予防戦争という観念は、これは現在の普通の安全保障とか、普通の国際的な常識から言うとちょっと許しがたいことです。予防戦争ということになると核予防戦争ということにも通じまして、核先制攻撃ということにすぐに来ますから、これはやはり日本のような平和憲法を持ち、非核三原則を持ち、その背景であるあの惨たんたる敗戦、原爆体験を持っている国家というものは、そういうことに相当勇気を持って主張する必要がある、こう思います。小さいことじゃないんですね。ただ、レーガン以来アメリカが多少ヒステリックになっている傾向がありますから、ヒステリー患者という者は相当注意して取り扱わなきゃいかぬという観点から言えば十分慎重にやる必要はある、こういうふうに私は思いますけれども、どうでしょうか。
  62. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの問題は、私も記事では拝見しましたけれども、アメリカの政府がそういうことを発言したという事実は聞いておりません。
  63. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 事実でないことを私は祈ります。  それから韓国の問題、朝鮮半島の問題に触れますけれども、いまやっぱり緊張というものが局地的に激化して、そうして場合によると第三次大戦を起こすというような地域はそうたくさんはありませんね。ヨーロッパは比較的理性的ですから、これはなかなかヒステリーにはなるまいと思いますけれども、やっぱりヒステリー症状を起こすところは、日本などがしっかりして冷静であればいいんですけれども、日本にもヒステリー患者がいないことはないんですから、だから韓国——朝鮮半島ですね、朝鮮半島の緊張緩和と、こういうことが確立しないとこれは非常に危険である、一方は中東ですね。ですから、朝鮮半島の緊張緩和ということは日本外交の当面の重要な問題だと思います。政府が今度の経済援助の際に、安全保障の問題を絡ませないと言ったことを私は非常に賢明であると思っている。なぜならば、もしも安全保障の問題を絡まして実際上その武装力を強化する、戦闘能力も強化するというような方向日本が援助した場合には、やっぱり北方はそれを脅威と感じ日本自身の行為に対して決して好感を持たないと、それが緊張につながっていくということですから非常に問題なんですけれども、安全保障問題と絡めないという姿勢は私は非常にりっぱであって、鈴木園田外交というものは十分私は評価されていいと、こういうふうに思いますが、しかし一方において、やはりいろんな危険な動きがないことはない、何といっても南の事情というものは日本は非常によくわかっているんですけれども、北の事情というものはよくわかりませんね。私はたまに行くからまあある程度わかっているけれども、これだって十分理解しているかどうかわからないわけです。だから、北の事情というものに対して十分な日本外交当事者が知識を持つということが、これはもう非常に必要であると思います、ですから、そういう努力を私はすべきであると思う。私は、今度は中国とあそこに参りまして、それでいろんなことを話したんですけれども、非常な具体的な問題として朝鮮側が提案していたことは、北京まで来ているパキスタン航空が、平壌を通って東京に行くというような方向ができると非常にいいと言っていました。これは竹本政府の決意によってできることであり、パキスタンはこれに賛成しているし、中国も反対する理由はない。ですから、そういうようなのも日本の北朝鮮の実態を把握する一つの方途だと思います。非常に便利になりますからね。そういうふうなことをひとつ、それは一つの例ですけれども、それに対する具体的なお答えは私はきょうは要求しませんけれども、そういうことを、いろいろなことをお考えになって、北に対する外交的な触手というものをもう少しだんだん伸ばしていく。これに対して私は、アメリカが何とか言うべきじゃないと思いますよ。何とか言った場合に何にも言えない日本外交官があったら、これはどうかしていると私は思いますがね。そういうことなんですが、簡単にお答え願いたいと思います。もう時間が来ましたから。
  64. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言の趣旨はよく承りましたから、十分検討いたします。
  65. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時五十四分散会