○瀬崎博義君 私は、
日本共産党を代表して、
行革一括
法案に
反対の
討論を行います。(
拍手)
いま、
国民が強く望んでいる
行政改革は、真にむだのない、不正や腐敗もない、簡素で
効率的な、
国民に奉仕する
行政の確立であります。
ところが、臨調第一次
答申は、軍事費の大増強と、
福祉、
教育など
国民生活にかかわる諸制度の抜本的改悪を打ち出したのであります。その臨調
答申を実行に移すための
行革一括
法案は、
軍事大国化の方向へ国の歩みを変える突破口であり、やってはならないことを
行革の名を使ってやろうとするものなのであります。
そして、わが党が事実を挙げて追及した教科書会社の
政治献金などの不正、腐敗を正すことこそ真剣にやるべき
行革の
課題なのに、これはやろうとしないのであります。
日本共産党が本
法案に断固として
反対する
理由の核心は、まさにこの点にあるのであります。一部野党による部分的な修正や附帯決議の提起は、この
法案の持つ危険な本質を
国民の目から覆い隠す役目を果たしこそすれ、危険な本質をいささかも変えるものではありません。
以下、順を追って具体的に
反対理由を述べます。
反対する
理由の第一は、本
法案によって
国民生活が重大な犠牲をこうむり、
地方自治体が重大な打撃を受けることであります。
厚生年金等の
国庫負担率引き下げについて、
政府は、将来返済すると言いながら、その期限や方法を約束することはできないとの態度に終始しているのであります。六十年以降、赤字公債の元本返済に伴う第二の
財政危機のもとで、結局は
国民の
負担に転嫁されるおそれはいよいよ強まったのであります。
「一人一人の子供に行き届いた
教育を」の願いから発足したばかりの四十人
学級制の凍結は、
教育的見地を全く無視したものであります。
児童手当の所得制限強化によって排除される十四万人は、最も保護の手を厚く差し伸べるべき五人未満の零細企業に働く労働者と、零細な自営業者の子弟であることが、わが党の追及によって明らかになっているのであります。
政府の資料によっても、
地域特例かさ上げ補助率のカットによる痛手が、南九州、東北各県、北海道など、
財政力の特に弱い県に集中することが明確に示されております。しかも、カット額を
起債で補てんし、その
元利償還を交付税基準に組み入れることで、結局その
負担を全自治体に転嫁するのであります。
政府の
行革に
反対または批判の決議、
意見書を採択した
地方自治体議会は千三十六に達しますが、自治体の反発が今後さらに強まるであろうことを断言しておきます。
政府の無策によって住宅建設が極端に落ち込み、農業もまた
危機的
状況に置かれているときに、
住宅金融公庫、農林漁業金融公庫貸出
金利の引き上げ自由化に道が開かれることは、住宅費
負担に苦しむ勤労
国民、仕事難の中小零細業者、経営の成り立たない農民にさらに深刻な打撃を与えるものであります。
さらに、
行革特例を延長するのかどうかをただしたわが党の質問に対し、
政府は、この
法案は時限立法であるというあたりまえのことを繰り返すのみで、延長の可能性を
最後まで否定しなかったことは重大であります。わが党は、
国民生活に与えるこれらの犠牲を絶対に認めることはできません。(
拍手)
反対理由の第二は、
政府が
財政危機の原因を覆い隠し、
痛みは公平にとのうたい文句で、その責任を
国民に転嫁し、あくまで
財界の
利益を擁護していることであります。
今日の
財政危機は、歴代自民党
政府による大企業てこ入れ政策、とりわけ、第一次
石油危機以来の安易な赤字公債乱発に由来していることは明白であります。当時、この自民党
政府の
経済財政政策の誤りを真っ向から批判し、
国債増発に頼らない日本
経済と
財政の再建策を提唱したのは
日本共産党だけでありました。そのときのわが党の警告どおり、大企業の空前の大もうけの中で今日の
財政危機がつくり出されてきたのであります。
にもかかわらず、
政府・自民党は、今回、一括
法案と
補助金カットで、
福祉、
教育など
国民生活のための経費中心に四千億円余りの
支出削減を図ろうとする反面、大企業に対する
補助金削減を要求したわが党の質問に、中曽根行管庁長官が、「大企業罪悪主観に立つ話」と筋違いの
答弁で開き直ったことは、
財界擁護の最たるものと言わなければなりません。そして、造船、航空機など大企業への
補助金を逆に増額さえしているではありませんか。
また、
国民には、臨調
答申実施による新たな
負担増、
所得税課税最低限の据え置きによる実質
増税に加えて、五十八
年度、一般消費税型新税導入さえあり得ることを示唆していることは、三重の
増税を
国民に押しつけることになるのであります。
一方、何をもって不公平と見るか、見方が分かれると言って、三兆円を超える大
企業優遇税制の是正を回避する姿勢をとり続け、文字どおり大企業には「
増税なき」になっているのであります。まさに
財界による、
財界のための
行革であり、
国民には
痛みを、
財界にはもうけをということではありませんか。(
拍手)
反対理由の第三は、本
法案を
第一歩として、今後さらに抜本的な反動体制の確立を意図し、
軍事大国へ向けて国の歩みを全面的に変えようとしていることであります。
鈴木総理は、臨調
答申の全面尊重を繰り返し明言しております。第一次
答申は、この
法案に盛り込まれたことのほかに、老人保健法などによる老人医療の有料化、全労働者の賃下げにつながる公務員賃金の抑制、支給年齢の繰り下げと保険料連続値上げなどの年金制度改悪、
地域特例期限到来時における廃止を含む抜本的見直しを初め、
社会保障、
福祉、
教育を中心とした
国民生活の全分野に及ぶ全面的な制度改悪を提起しており、
政府の来
年度以降の
予算案や法改正で具体化されてくることは必至であります。
さらに、来年七月の基本
答申に向け作業を進めている臨調では、すでに防衛庁の国防省昇格、
都道府県制にかわる道州制、人勧制度の再検討、
国鉄、電電公社などの民営化の検討が公然と始められているのであります。
一方、
鈴木総理は、レーガン政権の強い要請に沿って、日本の防衛分担を質量ともに飛躍的に拡大する姿勢を改めて鮮明にしました。そして、来
年度において、一機百億円を超えるF15四十三機、P3C十七機を含む武器、航空機、艦船の新規発注で、後
年度負担を含めれば、実に今
年度比二〇%もの激増となる軍事
予算を組もうとしているのであります。日本を戦争の危険に巻き込む、
行革ならぬ
軍拡路線を絶対に許してはなりません。(
拍手)
反対理由の第四は、これほどの重要な
内容を持つ、しかも三十六本の法改正を、
政府と自民党が一括提案し、一括審議を強行したことであります。これは、
国会の審議権のじゅうりんであり、議会の形骸化に道を開くものであります。だからこそ、わが党は、
行革特別委員会設置
反対を貫いたのであります。
真の
行政改革の道は、すでにわが党が
政府にも申し入れた
国民本位の
行政改革、軍事費の大幅
削減、大企業向け
補助金の廃止、
削減、公共事業のむだと不正の一掃、天下り規制など特殊法人の腐敗構造の
改革、情報公開など開かれた
行政と、
国民奉仕の簡素で
効率的な
行政の確立、
地方自治の拡充、
不公平税制の抜本的是正以外にはありません。
私は、
鈴木総理に対して、根本的に方向を誤っている本
行革一括
法案を撤回し、わが党の提案に沿って一から出直すことを強く要求して、
反対討論を終わります。(
拍手)