○鈴木強君 私は、
日本社会党を代表して、
鈴木総理並びに
関係閣僚に対し
質問をいたします。
質問に先立ち、過般の台風十五号等によってとうとい命を失われた方々に、謹んでお悔やみを申し上げます。また、重軽傷者、その他被害をこうむられました皆さんに心からお見舞いを申し上げ、再起の一日も早からんことをお祈りいたします。(
拍手)
さて、
質問の第一は、
総理の
政治姿勢についてであります。
鈴木総理、あなたが
総理に就任されてから早くも一年三カ月日に入っております。この間、大変な御苦労をされておりますことに対しましては感謝いたします。(
拍手)
〔
議長退席、副
議長着席〕
しかし、あなたの率いる
自民党は、常任委員長の独占や予算委員会における単独採決の強行など、与野党伯仲時代につくり上げたよき慣行を次々に打ち破り、議会制民主主義に逆行する態度をとられていることは、まことに遺憾にたえません。(
拍手)
今回もまた、
政府は、三十六法案を一括して
行財政改革特例法案として提出し、しかも新しく特別委員会を設置して一瀉千里に成立を図ろうとしているのでありますが、このようなやり方は、
国会における現行の専門担当委員会
中心の審議権を否定するきわめて非民主的なものでありまして、きわめて遺憾と言わなければなりません。(
拍手)
これらは、いずれも昨年六月のダブル選挙において安定過半数を確保した鈴木
自民党内閣の思い上がったおごりの
姿勢、力による対決の
姿勢以外の何物でもないと思います。(
拍手)
総理は、就任に際して和の
政治を
国民に公約されました。しかし、この一年間の
国会運営を見る限りにおいて、
総理の公約は守られておりません。
鈴木総理、あなたは最近、故吉田元首相の宰相学を勉強中だと聞きます。また、ある側近に、もう和の
政治は口にしないと語ったと新聞紙上に報道されていますが、
総理はいつから和の
政治姿勢から力と対決の
政治姿勢へと軌道修正をなされたのでございましょうか、明らかにしていただきたいのであります。(
拍手)もしそうでないというならば、今後は、
国会の安定勢力を背景にして野党と妥協はせず、強行突破も辞さないというような高圧的態度はとらないことを、ここで約束をしていただきたいのであります。(
拍手)
総理は恐らく、
国会運営のことは各党各会派間で十分相談の上でやってほしいと逃げの
答弁をされると思いますが、それは許されません。あなたは
自民党の総裁であり、かつ国の
総理であります。あなたの
政治姿勢の
基本にかかわる重大な問題でありますので、
責任ある御回答をお願いいたします。
質問の第二は、
仲裁裁定と人事院勧告の完全
実施についてであります。
三公社五現業職員に対する
仲裁裁定の
実施につきましては、
政府が
さきの
通常国会に一括議決
案件として提出したものでありまして、前
国会において速やかに議決すべきものであったにもかかわらず、
政府・
自民党は
国会運営の駆け引きの具に供するなどして、ついに継続審査
案件となり、今
国会に持ち越されたものであります。
そもそも
仲裁裁定は、スト権にかわる重大な労働者の権利でありまして、
早期完全実施が強く義務づけられているものであります。その
実施が今日まで遷延されていることは、公労法の精神を踏みにじり、労働者の生きる権利を無視するものであることを知らなければなりません。したがって、今
国会の冒頭において
仲裁裁定の完全
実施の議決を行い、実行に移すべきであると思います。この際、満堂の議員各位にもぜひ御協力をちょうだいいたしまして、実現をしていただきたいと思います。労働大臣の御
所見を承りたいのであります。(
拍手)
また、人事院勧告につきましても、三公社五現業職員と同様、
国家公務員のスト権を剥奪した
代償措置として人事院が設けられ、その勧告は完全に
実施されなければならないことになっています。人事院勧告につきましては、紆余曲折はありましたが、
昭和四十五年度以降は勧告が完全に
実施され、それが定着して今日に至っておるのであります。しかるに
政府は、今回、
財政再建と臨調答申の名のもとに人事院勧告を抑制しようとしており、いまだに完全
実施の方針を決めておらないのでありますが、これは人事院制度の否定であり、
労働基本権の無視だと言わなければなりません。
政府は、速やかに人事院勧告完全
実施の態度を決め、その手続をとるべきであると強く
要求いたします。
総理のお
考えをお聞かせ願いたいのであります。(
拍手)
私は、ここで強調しておきたいのは、人事院勧告は民間賃金に準拠して決定されているのでありますが、その資料のとり方については最小限、現状
維持を厳守していただきたいのであります。人事院勧告の見直し論などが言われておりますだけに、大切なことでございますから、一言申し添えて
総理の御
所見をお
伺いいたします。
去る九月十九日、国税庁がまとめた
昭和五十五年度分民間賃金の実態調査によりますと、
昭和五十五年度は賃金引き上げ率が物価上昇に追いつかず、さらに
昭和五十三年度以降のノー減税で実質賃金が大きく減少しており、サラリーマンの生活は確実にレベルダウンしていることが明らかになっているのであります。このことは、三公社五現業職員や
国家公務員も全く同様だと思います。実質賃金低下と、依然として続く物価高の中で、
仲裁裁定と人事院勧告の
実施を待ちわびておる職員のために、一日も早く完全
実施の決断をされるよう強く要請いたします。
先ほどわが党委員長に
総理から御
答弁がありましたような、そんな悠長なものではございません。どうぞ、
総理の理解ある御
所見を承りたいのであります。(
拍手)
質問の第三は、
行政改革についてであります。
今回の
行政改革は、
社会党は総論賛成、各論
反対だとか、
社会党は官公労の支持を受けているから
行革そのものに
反対なのだとかいう批判や意見がありますが、これらはいずれも誤りであります。
社会党は、
高度経済成長期における
行財政の
肥大化の縮減という一般的
課題は当然と受けとめております。そして、次のような
行財政改革の
基本方針を決めておりますので、ここにその内容を明らかにして、
国民各位の理解を得たいと思います。(
拍手)ちょっと委員長の
質問ともダブりますが、御了承いただきたいと思います。
まず、何よりも平和を守ること、そして
福祉を最優先順位に置くこと、さらに、
行政ができる限り身近で処理され、住民の参加も可能となるよう、
分権、
自治の確立と効率化を図ることを目標に据え、この
立場に立って、政、財、官の癒着を断ち切り、
行財政を大
企業奉仕から
国民生活優先に大きく転換すること、不公平税制を
是正し、国の権限と財源を
自治体に大幅に移譲すること、
防衛費を抑制すること、情報公開とオンブズマン制度を確立して、真の
国民のための
行財政を推進することになっているのであります。(
拍手)
今回、第二臨調が答申した内容を見ると、
社会党が提起した大型プロジェクトの見直し、
特殊法人の役員
削減など、若干取り入れられているものもありますが、本質的には、われわれの主張と全く相反するものであることを明らかにしておきます。
すなわち、臨調答申は、
国家財政の赤字をなくするためにという理由のもとに、もっぱら
福祉、年金、医療、
教育、農業などを切り捨て、住宅金融公庫等の貸付金利の引き上げなどを求めているのであります。その反面、
財界の権利は温存され、大
企業優遇の不
公正税制の
是正には全く消極的で、
物価調整減税には一言も触れていないのであります。しかも、国が負うべき
責任を
地方自治体と
国民に転嫁して、予算を抑制すべしと言いながら、一方では
防衛費だけは聖域化して増加し、
軍事大国への道を開いたことはきわめて重大な問題と言わなければなりません。(
拍手)また、民間の活力や自立自助を随所で強調することにより、必要欠くべからざる
補助金までが切り捨てられているのであります。
総理は、
財政再建のためには、だれもが痛みを公平に分かち合わなければならないと言われていますが、その実は、弱者が手ひどく痛めつけられ、強い者は巧妙に痛みを逃れてしまうことになっております。臨調は、当面の
行革ということで、
政府の
昭和五十七
年度予算編成の歳出ゼロシーリングの下請をやらされたにすぎないと言えるのであります。(
拍手)
このような
行革にどうして賛成することができましょうか。全国の知事や市町村長がこぞって大きな不満の意を表明し、弱者や老人を
中心に、一般庶民大衆が強く憤激して
反対行動に立ち上がっているのは、けだし当然でありましょう。(
拍手)
政治は、平和を守り、
国民を幸せにするために存在するものであって、
国民を苦しめるためのものではありません。(
拍手)今回の
行政改革は、
国民を泣かせ、
地方自治体を苦しめるものであって、恐るべき
軍事大国への道へ大きく踏み出すことになるものでありまして、とうてい
国民のコンセンサスを得られるものではありません。(
拍手)
総理、あなたは
政治生命をこのような
行革実現のためにかけるとおっしゃっておりますが、
政治生命をかけるところをお間違いではございませんか。(
拍手)よく
考えていただきたいのであります。御
所信を承りたいのであります。
以下、
行革に対して、具体的
問題点を指摘しつつお尋ねいたします。
その第一は、現在
わが国の
国家財政の中に、約八十二兆円にも及ぶ国債発行残高がございます。このうち約三十三兆円は特例公債になっています。このように国の
財政に巨額の赤字を生ぜしめた理由は何か、とのことを反省して、再びその轍を踏まないようにすることこそが、
財政再建のために最も必要なことだと思います。私は、歴代
自民党内閣の
経済政策と
行財政政策の失敗によるものだと思いますが、
総理はどうお
考えでしょうか、お
伺いいたします。(
拍手)
その
二つは、
総理は、
昭和五十七年度から三年間で
財政再建をなし遂げようとし、そのために、初年度の予算節減額として約二兆七千七百億円を予定しているのでありますが、残り二年間の
削減額は、それぞれ幾らくらいになるのでしょうか、プロセスを添えてお示しいただきたいのでございます。
また、今月二十五日のある研究集会で、中曽根行管庁長官は、
昭和五十八
年度予算編成もゼロシーリングを基準に行うとの
考えを明らかにしていますが、
総理もそのようにお
考えでございましょうか、お
伺いします。
その三は、
総理は、今後の
課題として
税負担の公平化への
努力を表明されましたが、早くも大蔵省では、
昭和五十八年度中にも大型物品税を導入する
方向で検討を進めているとのことであります。
物品税につきましては、すでに五十六年度に課税
対象にライトバン、VTRなど、新しく十二品目が追加され、税率の一部引き上げも含め、約七百七十億円の物品税が増税されているのであります。今後さらに適用範囲を一層拡大して、一般消費税の見返りにしようとされたのではたまったものではありません。
これでは
総理の言われる
税負担の公平化の
努力の表明に逆行することになります。
総理の表明された
税負担の公平化とは、具体的にはどのようなもので、いつからやるのか、明らかにしていただきたいのであります。わが党委員長への
答弁のような抽象的なものでは納得できません。特に、一般消費税の導入につきましては、従来の
総理御
答弁のとおり、導入しないと理解してよろしいでしょうか、
お答え願います。
その四は、
総理は、今回の
行革は、赤字依存体質から脱却して二十一世紀への足固めをするものであると言われていますが、
総理がいま頭の中に描かれておられます二十一世紀への足固めとは何か、そのプロセスを示していただきたいのであります。
総理は御就任直後、国を守るということは、単に自衛力だけでなく、食糧やエネルギーの確保等、総合的な安全
体制の確立でなければならないと力説されましたが、その後この御
所信の
具体化はどうなっているのでしょうか、お
伺いいたします。
その五は、今回
政府が提案した
行革関連法案によって
削減される予算額は約二千四百八十二億円でありまして、その内訳は、厚生年金等に対する国庫
負担の引き下げで千九百億円、公的保険事務費の国庫
負担停止で六億円、児童手当支給額の国庫
負担削減で六十億円、四十人学級の抑制で五十六億円、
地域特例の
切り下げで四百六十億円、その他となっていますが、いずれも
国民に犠牲を押しつけるものであります。今回の
行革が
国民生活に及ぼす影響を試算してみますと、
国民の
負担増は約一兆円に達し、
地方自治体の
負担増は約四千億円となるのであります。
ところで厚生大臣、厚生年金等の国庫
負担を三年間
削減することになっておりますが、このことによって、給付水準や保険料の
負担には影響はないものと
考えてよろしいかどうか、お
伺いをいたします。(
拍手)
また、
国民健康保険の給付費に対する国庫
補助金四〇%のうち五%及び児童扶養手当と特別児童扶養手当の国庫
負担分二〇%をそれぞれ都道府県
負担に転嫁しようとしています。
厚生大臣、これらの措置は、
財政再建期間中の臨時かつ応急的のものであるかどうか。
地方自治体の
負担する財源はどのようにして確保するのか、明らかにしていただきたいのであります。
次に、お年寄りに対する医療問題ですが、
政府は今日まで、七十歳以上の方々の医療は無料化の方針をとってこられ、御老人方に喜ばれております。ところが、今度は、老人保健法をつくり、外来者からは月一回五百円、入院者からは一日三百円の入院料を取り上げようとして、そのための法案が提出されています。現在全国では、七十歳以下の御老人に対しても、三十七都道府県と千三百五の市町村では医療の無料化を
実施しておりますが、これをやめろというのであります。長年御苦労願った御老人に対し、このような冷酷無慈悲な
政治は許されません。厚生大臣の御意見を承りたいのであります。(
拍手)
その六は、いま
国民が大変憂えているのは、
教育の右傾化と反動化と荒廃であります。そして、最も望んでいるのは、非行をなくす行き届いた
教育であると思います。この
国民の憂えや願いを無視して、今回の
行革では
福祉に次いで
教育が大きく切り捨てられていることはきわめて残念でございます。したがって、多くの
質疑をいたしたいのでありますが、時間の
関係で、ここでは
教科書問題に限ってお尋ねすることにいたします。
義務
教育教科書の無償制度については、今度の臨調答申は、廃止を含めた検討を打ち出していますが、無償制度はあくまでも堅持すべきであると思いますが、
総理の御
所見をお
伺いいたします。(
拍手)
昨年来、特に
自民党などから不当な
教科書批判がなされていますが、その結果、検定済みの
教科書が書きかえられたり、来年度から使われる高校の「現代
社会」に
圧力が加えられるなど、
教育に対する介入が激しくなっていることは許されません。
総理の御
所信を承りたいのであります。(
拍手)
その七は、現在
わが国の農業は根本的に破壊されており、当然の結果として穀物自給率は三〇%という、先
進国には例を見ないほど低下しているのであります。しかるに
政府は、食糧自給率の向上を
考えるどころか、逆に米の減反
政策を続けようとしております。
今度の答申では、水田利用再編
対策奨励金までもなくそうとしておりますが、これでは農民の方々の協力を得ることは絶対にできません。
政府は、今後の
日本農政についてどのような展望を持たれ、
行革を
実施しようとするのか。
また、農産物検査官制度については、人員の
削減のみを取り上げていますが、売り渡し後の米の流通段階での検査など、
国民の新たなニーズにこたえる制度面の活用についても検討すべきではないかと思いますが、
総理の御
所見をお
伺いいたします。
その八は、現在
地方自治体は、地方債と借入金で約三十九兆円の赤字を抱えております。その
財政はまさに火の車と言わなければなりません。そのため、
地域社会の発展と、これに伴う住民の多様化するニーズに十分こたえられぬのが現状であります。
今回の
行革により、各種の
補助金は
削減され、加うるに
国民健康保険、児童扶養手当、特別児童扶養手当等の一部国庫
負担金を含め、全体として約四千億円を背負わされることになると、地方
財政は深刻な影響をこうむり、
地方自治体に課せられた本来の使命達成は非常に困難となるのであります。
わが党は、このような地方
財政いじめの
補助金カットと、国の
負担を
地方自治体に押しつけようとすることには強く
反対いたします。
政府は、この際、長年にわたりわが党が
要求しております地方交付税率の引き上げなど、何らかの地方
財政措置を講ずべきだと思いますが、
総理の御
所信をお
伺いいたします。(
拍手)
最後に、
経済問題についてお
伺いいたします。
わが国の最近の景気の動向は、日銀などの見方によれば、景気は底がたく、緩やかに回復しているとのことです。しかし、中小零細
企業の倒産は依然として後を絶たず、その件数は月千五百件の多きに達しており、景気回復は低迷を続けていることを立証しています。また、特に住宅産業の不振が及ぼす影響は広範囲にわたっているのであります。いずれにしても国内景気のばらつきを解消し、景気回復のための
対策を立てることは緊急
課題ではないかと思います。
政府は、最近の景気の動向をどう見ているのか、またどのような景気
対策を
考えているのか、河本
経済企画庁長官から
お答えをいただきたいのであります。
以上をもって私の
質問を終わります。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣鈴木善幸君
登壇〕