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1981-10-23 第95回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十月二十三日(金曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 木村武千代君    理事 熊川 次男君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 鍛冶  清君       井出一太郎君    上村千一郎君       太田 誠一君    高村 正彦君       佐藤 文生君    森   清君       小林  進君    前川  旦君       沖本 泰幸君    吉田 之久君       安藤  巖君    林  百郎君       田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         法務政務次官  佐野 嘉吉君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君  委員外出席者         法務省民事局第         四課長     筧  康生君         法務省入国管理         局登録課長   亀井 靖嘉君         大蔵省理財局国         庫課長     福井 博夫君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十三日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     吉田 之久君 同日  辞任         補欠選任   吉田 之久君     塚本 三郎君     ――――――――――――― 十月二十日  スパイ防止法早期制定に関する請願(中村靖君  紹介)(第二七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月二十日  スパイ防止法制定促進に関する陳情書外十四件  (第二一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  供託法の一部を改正する法律案内閣提出第二  号)  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出第三号)      ――――◇―――――
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出供託法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉委員 供託法に関連してお聞きしたいのは、たとえば財政再建ということで、本法案では三年間利息をストップするということなんですが、同じ財政再建をやっておるフランスドイツの場合には、一体これはどういうふうになっているかということ。たしかフランスでは三分六厘の利息をそのままつけておるように思いますし、それからドイツでもつけておるのじゃないか、こう思うのですね。そこはなぜ日本だけそれをストップしなければならないのか、どういうことになっておりますか。
  4. 中島一郎

    中島(一)政府委員 諸外国制度、私どももできる限り調査をいたしましたけれども、必ずしも十分に調査が行き届いておりません。現在判明いたしております限度で申し上げますと、ただいま御質問にもございましたフランスでありますが、これは供託金庫という特別な金庫供託制度を取り扱っておるわけでありまして、その運用といたしましては、特別会計的な運用になっておるというふうに聞いております。確かに利率は年三%というのを維持しておるようでありますが、先ほど申しましたような供託金庫というような特別な事情、あるいはフランスの市中金利が約一八%であるというような事情も考慮しなければならないのではないかというふうに考えております。  それから、ドイツでございますが、ドイツの場合には裁判所供託所となりまして、供託金庫がやはりその保管の任に当たっておるということであります。利子利率は一・二%ということでありますが、有価証券供託あるいは貨幣を現物のまま保管する供託などにつきましては手数料を徴するというような取り扱いになっておるようでございます。  そういった点を総合的に考えまして、現在の日本の国情、特に法務局の財政事情から考えまして、この際、利子を三年間停止するということはぜひお願いしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  5. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまあなたの答弁の中に出てきたのは、利子利息という言葉が出てきましたね。それは利子利息というのはどういうふうに違うのですか。どういうふうに使い分けるのですか。
  6. 中島一郎

    中島(一)政府委員 私、両方使ったかと思いますけれども、同じ意味に使ったわけでございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉委員 それは英語ではそうですね、インタレストでしょう。日本ではどうして利子利息という言葉を使い分けているの。どうですか。造船利子補給法とかなんとか、ああいう場合は利子という言葉を使うでしょう。この場合には利息という言葉を使うでしょう。どういうふうに使い分けるのですか。その根拠はどこにあるのですか。
  8. 中島一郎

    中島(一)政府委員 よく調査いたしておりませんけれども法律、特に民法上の用語としては利息という言葉を使っておるようでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、私の言うのは、どうでもいいようなことですけれども利息という言葉から来る響き利子という言葉から来る響きと、何か違うような感じがするのですが、たしか利子補給ということを言いますね。利息補給ということは言わないでしょう。これはどういうわけなんですか。これは四課長の方が詳しいかな。どうなんです。
  10. 筧康生

    筧説明員 私も詳しくは存じておりませんけれども供託法自身利息という言葉を使っておるわけでございます。利子と申しますと、何か金銭消費貸借に基づく一定利率が定められておってそれに基づく支払いという、利息の中でやや限定した意味合いに使われておるのではないかというような感じを受けておりますけれども、あくまで感覚の問題でございまして、その両者が厳密にどのような違いがあるのかということは、私どもよく存じておりません。
  11. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、この前私が質問した中で、私の質問もちょっと足りなかった点があると思うのですが、たとえば弁済供託の場合に取り戻し請求権というのがあるわけですね。弁済供託弁済して、そこで法律上の効果が発生したというのに取り戻し請求権供託者にあるというのは、これはおかしいのじゃないでしょうか。
  12. 中島一郎

    中島(一)政府委員 弁済供託というのは、主として供託者利益のために設けられた制度でございますから、その後、供託者事情によりまして取り戻しを希望する場合には、取り戻しを認めております。ただし、その供託が有効という判断を裁判上受けたとか、その他供託が有効にされて弁済効果を生じたということを前提として法律関係が生じた上は取り戻しを許さないという制限を設けまして、両者利害の調整を図っておるわけでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉委員 私が聞いておるのは、供託によって法律的に弁済効果が生ずるというのでしょう、それならば取り戻し請求権というのがそこで発生するのはおかしいじゃないですかと聞いているのですよ。解除条件つきだとかなんとかということになれば、また話は別かもわからぬけれどもね。
  14. 筧康生

    筧説明員 これは、民法自身弁済一つ方法といたしまして供託による方法というのを認めるわけでございますけれども、その民法自身留保を設けまして、これは民法の四百九十六条でございますけれども、「債権者カ供託受諾セスハ供託有効ト宣告シタル判決カ確定セサル間ハ弁済者ハ供託物ヲ取戻スコトヲ得」というような規定になっているわけでございます。この規定は、取り戻し権の行使というものを一種の解除条件的なものと考えて弁済効力を認めているというように解されるわけでございまして、供託根拠づけるところの民法自身がそのような留保を設ける以上は、供託においてもその限りにおいては取り戻し権というものが存在することは、法律上認められるということになろうと思います。
  15. 稲葉誠一

    稲葉委員 なぜ民法ではそういう供託の取り戻し権というものを特に認めたわけですか。別にそれを認めなくたっていいのじゃないですか。供託所供託すればそこで弁済効力が発生するというなら、何もそういうような特則みたいなものを認める必要はないのじゃないですか。どういうわけで認めたのですか。
  16. 中島一郎

    中島(一)政府委員 先ほど申しましたように、供託による弁済効果というものは、供託者すなわち債務者利益のために設けられた制度であるということを前提にいたしまして、教科書などを読んでみますと、一たん債務者弁済効果を発生させようとして供託をしたのだけれども、その後、債務者経済状態などが変わってきて、そちらの方の弁済よりもさらに必要度の高い金銭の必要というものが生じたときには、取り戻してそちらに使わせるというようなことが書いてございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、供託所供託金を受け取るということは、債権者代理人という形でその金を受け取るのですか。その法律関係はどういうふうになっているのですか。
  18. 筧康生

    筧説明員 供託所供託金を受け取るという関係は、この間先生から御質問があったときにお答えいたしましたように、大変複雑な構造になっておるというように理解しておりまして、先回説明いたしましたように、いわば公法的な関係というものと私法的な関係というものが非常にミックスされたような関係になっておるわけでございます。したがって、供託所がこの弁済対象たる金銭保管いたします関係というものも、このような複雑な関係というものの影響を受けざるを得ないと思うわけでございまして、その中の一つといたしまして、とにかく供託制度というものを国家が設けましたるところの理由というものが、弁済制度一つの中に供託制度というものが組み込まれているということでございます。しかも・その供託によってどういう形での弁済効果を発生させるかということも、またこの供託制度と一緒に法自身一定効力を与えているという関係になっているわけでございます。したがいまして、先ほど申しましたように、現行の民法というのは、いわば債務者に対して一定留保をとどめた形で弁済効果を発生させるという形の、非常にペンディングな状態における弁済効力というものを発生させるという仕組みに法自身がなっておるということになっておると思います。したがって、それは先生が言われるような、債権者代理人というような形でもって金銭保管をするというような関係ではないのではないかと考えております。
  19. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、ちょっと話が別になりますが、たとえば刑事保釈保証金がありますね。あれは債権者が差し押さえすることができるのですか。どういうふうなんです。あれは一体だれが積んだことになるのです、刑事保釈保証金というのは。
  20. 中島一郎

    中島(一)政府委員 これは本人も積めることになっておったと思いますし、第三者も、少なくともある利害関係を有する場合には積むことができたと思いますので、その保証金供託する手続上の供託者が積んだことになるという取り扱いになろうかと思います。
  21. 稲葉誠一

    稲葉委員 保釈保証金供託ですか。違うんじゃない。やはり法律的にはそれは供託という言葉を使うの。
  22. 中島一郎

    中島(一)政府委員 供託という言葉は、不正確と申しましょうか、使うべきでないと思います。何と申しましたのでしょうか、私、刑事のことでよく知りませんが、提供というのでしょうか何というのでしょうか、提出というのでしょうか、そういう言葉であろうかと思います。
  23. 稲葉誠一

    稲葉委員 提出ですね。  そこで、普通、弁護士の名前でやる場合が多いでしょう。だけれども、それは、弁護人被告人との関係はどういう関係になるのですか。その弁護人名前で積んである金を、第三者被告人に対する債権の差し押さえはできるんですか。どういうふうになっているんです。
  24. 中島一郎

    中島(一)政府委員 あの場合の請求権、何といいましたか、私ちょっと刑事訴訟法の方、詳しくございませんけれども、取り戻しの請求権者は積んだ弁護人でございますから、弁護人に対する債権によって差し押さえすることはともかく、被告人に対する債権によって差し押さえすることは許されないという取り扱いになろうかと思います。
  25. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、それはどうしてそういうふうになっているの。被告人逃亡するとかあるいは証拠隠滅しないとかということのための保証金ですから、これを積んでいるわけですから、被告人に対する債権者が差し押さえできないというのはどういうわけなんですかね。
  26. 筧康生

    筧説明員 確かに保釈金制度というのは、保釈金を積ませるということによって逃亡を防止する制度でございますけれども、その金の出どころについては、必ずしも被告人に限らないというたてまえになっておるようでございまして、たとえば刑事訴訟法の九十四条の二項を見ますと、「裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。」というような規定になっておるわけでございまして、第三者でもってしても保証金を納めることができるということになるわけでございます。それは恐らく、もう純粋にその第三者被告人との人的な関係というものを予想するものだと思いますけれども、その金自身被告人のものでなくても、第三者から提供されたものであっても、そのことが被告人逃亡を防止することができるというような事情が認められるときに、裁判所が特別にこのような許可を許すということになるのであろうと思っております。したがって、この保釈金請求権関係というのは、その納付者と国との間に生じているものでございますので、被告人がこれの返還を求めるというようなことは出てこないというようになるんではないかと思います。
  27. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは被告人弁護人との関係というか、弁護人地位の問題にもいろいろ関係してきて、よくわからないところが非常にあるというように私も思うのですが、いまあなたが言うように、第三者が積むという場合には特別な許可決定が要るわけですね。そうでしょう。保釈決定というものは被告人に対する保釈決定でしょう。許可決定ですからね。積むのはやはり被告人が積むということになるのが原則じゃないかと思うのですね、便宜弁護人が積んでいますけれども。だから、そこのところの関係でどういうふうになっているんですか。被告人に対する債権者が差し押さえできないということもないんじゃないと思いますが、それをやられても困るという場合もありますけれども、私もよくわからない点で、常々疑問に思っている点ではあるわけですね。  それから、話は今度は供託に戻りますが、いまの日本の場合には金銭供託が中心ですね。もちろんですが、有価証券供託も行われておるわけですね。そうすると、有価証券供託で現実に行われているのは、どういうふうなやり方で行われているんですか。たとえば上場の株券でも、一部上場の場合でもいまの時価の半分ぐらいしかとらないとかなんとか、一つ規定みたいなものがあるわけですか。
  28. 中島一郎

    中島(一)政府委員 有価証券供託でございますが、まず弁済供託でございます。  弁済供託については、通常の場合有価証券供託というものはあり得ないということになります。  それから、裁判上の保証供託でございますが、これは裁判所が相当と認める有価証券、こういうことになりますので、裁判所が相当と認めて有価証券供託を許した場合には、供託所としてはこれを受け取らざるを得ないということになります。  それから、税務署長その他の者が相当と認めた有価証券供託させるということができるわけでありますが、その場合でも、供託所としてはこれを受け取らざるを得ないということになるわけであります。  それから、営業保証供託でございますが、営業保証供託によりましては、それぞれの根拠法令によりまして有価証券供託が許されるかどうか、その場合の供託を許される有価証券は何々であるかということが制限的に列挙されておるわけでございます。したがいまして、供託所としては、その制限的に列挙されております有価証券国債、公債、特殊債金融債社債等についてその供託を許すということになります。その場合の評価と申しますか割合でございますが、それも省令によりまして、それぞれの営業保証供託についてどの債権は百分の百あるいはどの債権は百分の九十あるいは九十五、百分の八十というようなことが決められておりますので、それに従って処理をするということになるわけでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、有価証券を預かった方は、預かった供託所、国ですね、国はそれに対してどういうような注意義務を負うわけですか。いわゆる善良な管理者注意という義務を負うのですか、負わないのですか。その場合、手数料を取った場合と取らない場合とでは違うと思うんですね。手数料を取った場合には善管注意義務を負うかもわからぬけれども、取らない場合には負わなくてもいいとか、そういうような分離というか、そういう考え方が出ているんじゃないですか。
  30. 中島一郎

    中島(一)政府委員 供託されました有価証券は国が保管管理をするという関係にありますので、その保管管理に当たる者は、通常公務員に求められる注意義務を払うべきものであろうというふうに考えております。したがいまして、善良なる管理者注意義務でありますとか、あるいは自己のためにする注意義務でありますとかというような私法上のと申しましょうか、民法上の注意義務でこのことを論ずるのは必ずしも適当でないというふうに考えますけれども、強いて民法上で言えばどういうことになるか、こういうことになりますと、善良な管理者注意義務ということになるのではなかろうかというふうに考えております。  その場合に、ただいま手数料を取った場合と手数料を取らない場合とで違うのかという御質問がございましたのですが、確かに民法規定によりますと、報酬のある寄託報酬のない無償寄託の場合には、注意義務に差があるような規定になっておりますけれども、先ほども申しましたように、国の保管管理下にあるものでありますから、それについては、ただいま申しましたような有償、無償による違いというものは出てこないんじゃないか、立法論としても出てこないんじゃないかというふうに考えております。
  31. 稲葉誠一

    稲葉委員 公務員通常払う注意義務というのはちょっとよくわからないのですが、そうすると、国債なら国債を預ける、そうすると利払いの時期が来るというときに片方が忘れている、積んだ方が忘れているというような場合には、それを通知しなければならぬ義務があるのですか、あるいはそれは義務じゃないけれども、いわゆる好意的にやるということも考えられるということになるのですか、それはどういうふうになるのですか。
  32. 筧康生

    筧説明員 有価証券供託されましても、その処分権といいますか、有価証券証券上の権利者たる地位というものはあくまで供託者のところに帰属しているわけでございます。したがいまして、この処分権あるいは利札の払い渡しを受けるというようなことに関しまする権利というものは、基本的には供託者のところに残っておるわけでございますので、その間にかかわりまするような注意義務というのは供託者自身が負うべきものであって、先生指摘のように、供託所あるいは直接管理に当たっております日本銀行利札の渡しどきが来たというようなことを通知するというような義務というものまではないのではないかというように考えております。     〔委員長退席山崎(武)委員長代理着席
  33. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、金銭の、弁済供託は別ですよ、保証供託の場合とそれから有価証券保証供託の場合と差異ができますね。それは法律的には、片一方は普通の不特定物消費寄託だし、片一方特定物だからということになるんだろう、こう思うのです。そこでそういう差ができる。そうすると、金銭保証供託の場合は利子をもらえるということは、やはりその権利として、いまの議論からいうと、有価証券の場合には利札をもらえるということならば、金銭の場合は、代替物だから所有権は向こうへ移ったとしても、やはり利子をもらえるというのは一つ権利として考えられてくるんじゃないですか。これはどういうふうに考えたらいいのですか。
  34. 筧康生

    筧説明員 有価証券利息でございますか、利札がついておるというのは、これは供託されます以前から、有価証券の発行に際しまして当然に付着しておるという関係になっておるわけでございまして、このことが供託をされるという事実によって左右されるものではないということは、きわめて当然のことではないかと思っております。したがいまして、有価証券が本来持っておりますところの性質がそのまま供託中においても続いておるということの効果として、利札請求権が生じてくるということでございます。  これに対しまして、金銭供託の場合に供託金利息を付するかどうかというのは、これは私どもがしばしば説明いたしておりますように、供託法が特に政策的に付与したものでございますので、これが権利の得喪ということを法律自身によって左右されるということもやむを得ないのではないか。たとえば同じ金銭預託にいたしましても、銀行等に預ける場合に、利殖を目的とする定期預金普通預金等については利息はつくわけでございますけれども、同じように金銭銀行に預けましても、当座預金あるいは先生がこの間御指摘になりました手形の不渡り処分を免れるための預託金、こういうものには利息はつかないということになっておるそうでございますが、これはやはり同じ金銭といいましても、その保管目的ということによって異にするということになっておるのではないかと考えるわけでございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、たとえば有価証券の中に、いま問題となっているのはゴルフ会員権がありますね。このゴルフ会員権はいろんな判例があったり何かしてよくわからないのですが、最終的なのは、東京高等裁判所判例の中では、ゴルフ会員権というものは有価証券として――供託できるかどうかは別ですよ、供託として認めているかどうかは別として、有価証券として認めるという立場をとっているわけですか。いまはどういうことなんですか。
  36. 筧康生

    筧説明員 ゴルフ会員権有価証券性というのは大変むずかしい問題だそうでございまして、現在、学説あるいは判例の上でもこれが確定的な立場であるというように言い得るだけのものがまだないというように私どもは理解しておるわけでございます。  ただ、若干その判例の傾向的なものとして私どもが理解しておりますところを申し上げますと、ただいま先生が御指摘になりました東京高等裁判所判例、これは東京高等裁判所昭和五十四年一月二十五日の判決だと思いますけれどもゴルフ会員権有価証券性を認めた判例でございます。しかしながら、他方幾つかの有価証券性を否定した判決もあるわけでございまして、たとえばその幾つかを指摘させていただきますと、高等裁判所の段階では、昭和五十五年十一月二十八日の大阪高等裁判所判決、あるいは昭和五十一年八月三日の名古屋の高等裁判所判決があるわけでございます。  そして現在、この点につきましての最も審級の高い判決として、昭和五十五年十二月二十二日最高裁判所第一小法廷判決があるわけでございます。これは刑事の事件でございまして、有価証券としてゴルフ会員権没取対象になるかどうかということが争われた事案でございまして、この判決は、有価証券として没取対象にならないとした高等裁判所立場を是認した判決でございます。  この一連の判決あるいは学説等の動きを見てみますと、まず、ゴルフ会員権というものにもいろんな種類のものがある、その事情によって有価証券性が認められるかどうかについても差異が出てくるのではないかということが指摘されておるわけでございます。しかしながら、最高裁判所の第一小法廷有価証券性を否定いたしました事案というのは、ゴルフ会員権として市場に出回っておるものの一つの定型的な形というものについて否定したという判断であるそうでございます。したがいまして、現在の判例のあるいは裁判例の流れといたしましては、なるほど有価証券性を肯定した判例もあるけれども、大勢としてはゴルフ会員権には有価証券性を否定するというのが流れとしては強いというところにあるのではないか、こういうふうに理解しておる次第でございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉委員 余り横道に入ってもあれですが、いまの最高裁の判決刑事判決でして、刑事の場合の有価証券を認めるか認めないかということと、それから民事上の有価証券の概念とは必ずしも同一ではないわけですね。それは、過失の概念が刑事で否定されたって、民事で肯定される場合が幾らもあるわけですから違うわけなんですが、アメリカでは、最高裁かあるいは連邦の裁判所かで、はっきりとゴルフ会員権というものは有価証券だということを認めておるのじゃないですか。
  38. 筧康生

    筧説明員 アメリカの判例の中に、ゴルフ会員権証券取引法上の有価証券として認めました判決があるというように聞いております。     〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕
  39. 稲葉誠一

    稲葉委員 ここでの直接の論議じゃありませんからこの程度にしておきますが、なかなかむずかしいのですね。これは一体どういう権利を化体しているか、なかなかわからない点もあって、これは研究課題だと思います。  そこで、私がお聞きしたいのは、一つは、供託のときに一番困りますのは、仮差し押さえ、仮処分は簡易裁判所でも許しますね。ところが、供託所がその簡易裁判所と同じところにある法務局では扱わないわけですね。別のところの支部の法務局でなければ供託を扱わないということのために、非常に不便なことができているわけです。これがあちこちにあるのです。非常に多いですね。供託の場合は土地管轄がないわけですから、どこへ供託してもいいわけですね。それはそのとおりなのですけれども、いま言ったように、裁判所保証金の決定があっても、積むときにその裁判所の所属する同じ市ではできない、相当離れたところに行かなければならないということになってきておりますね。この不便をどうやって解消するのか、これが一つ。  それからもう一つは、供託所をどんどん廃止しているわけですね、どういう感じかよくわかりませんが。だから、大きな地方法務局なら地方法務局の本庁あるいは裁判所の支部のあるところの法務局あたりでないと、いま取り扱わないわけでしょう。いままで取り扱った弁済供託なんか、近所でやれば済むのに、遠くまで行ってやらなければならないということになっているわけでしょう。これは非常に不便なのじゃないですか。どういうふうにしてこの不便さをなくしていくのか、あるいはこれはしようがないというのか、そこら辺はどういうふうになっていますか。
  40. 中島一郎

    中島(一)政府委員 現在、供託は法務局の本局、支局、それから出張所につきましては法務大臣の指定する出張所において取り扱っておりますが、これは数がそれほど多くございません。五十数庁あるいは六十庁ぐらいであったかと思います。したがいまして、簡易裁判所の所在地にすべて供託所があるというわけにまいらないわけでございます。  それから、供託所供託受理の決定をいたしましても、供託金の受け入れを取り扱わないというようなところがかなり多くございますので、その場合には日銀の代理店に持っていっていただかなければならないというようなこともありまして、手数がかかるわけでございます。それから、弁済供託につきましては、ただいま御質問にもありましたように、確かに場合によっては遠隔の地に行っていただかないと供託の用が足りないというような例もあるわけであります。  その解決策といたしましては、供託所をふやすあるいは現金取扱庁をふやすということが解決策でございましょうけれども、時節柄そういうことも困難でございまして、若干の不便はがまんしていただきたいということになるわけであります。ただ、私どもといたしましても、国民の利便のために、あるいは裁判上の保証供託を迅速に行うことができるために、機会をとらえてその改善策を検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  41. 稲葉誠一

    稲葉委員 東京では、大手町の東京法務局、それから八王子でしょう。そのほかはどことどこにあるわけですか、供託金を取り扱うところは。
  42. 中島一郎

    中島(一)政府委員 本局、八王子支局、それから出張所につきましては武蔵野と府中、八丈島の三出張所で取り扱っております。
  43. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、東京都内の場合はほとんど大手町まで来なければならぬわけでしょう、いま交通は便利になったかもしれませんけれども。前は汚い供託所がありましたね、霞が関の裁判所の裏に。あれは汚くてひどいところで、歩くと何か床が抜けてしまうようなところでしたね。いま何に使っているのかな。あれは全法務の事務所に使っているのじゃないか。あれは汚いな。とにかくあそこにあったわけでしょう。便利でよかったわけですね。いま大手町だからそうは違わないけれども、そうすると、東京都内は大手町一つしかないわけですか。これは不便じゃないですか。どういうふうにやっているのですか。
  44. 中島一郎

    中島(一)政府委員 東京都内ということになりますと、先ほど申し上げました本局、支局、出張所が三つということで、五供託所がございますが、二十三区ということになりますと、東京法務局の本局ということになるわけでございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉委員 前にもあったように、東京高裁の場合だとか、それからこれはよくありますね、控訴提起に伴うあれとか、東京地裁とか簡裁とかあるわけでしょう。だから従前そこにあったわけです。それを大手町の方に、あっちの方がりっぱだからということで移したのかもわかりませんが、それは大して不便はないかもわかりませんが、二十三区の中で大手町一つというのは非常に不便のような気がするのです。だから、ほかでも取り扱わしてもいいんじゃないかと思うのですがね。それは今後の課題としてできるだけ――取り扱うこと自身は行政改革と関係ないと思うのです、ぼくもよくわかりませんが。  それから、いま局長が言われた、そこで仮処分決定や何かあっても、そこの法務局で取り扱わないわけですね。一々日本銀行の代理店まで行かなければならないというわけでしょう。日本銀行の代理店に行くと、あれは三時過ぎは大丈夫なんですか。それはどうなっているの。
  46. 筧康生

    筧説明員 日本銀行の代理店と申しましても、実際はすべてこれは市中の銀行でございますので、市中の銀行が店舗を開いておる時間ということの制限を受けるわけでございまして、その時間が何時であったか、私正確に承知しておりませんけれども、恐らく三時程度で店を閉めるということではないかと思います。
  47. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、法律のたてまえとは違ってくるんじゃないですか。供託なら供託を受け付けるというのは、法律のたてまえは五時まで受け付けるということになっておるでしょう。それが三時で日本銀行の代理店は大体閉めちゃって、中で整理や何かで仕事はやっておりますけれども、受け付けないでしょう。供託はどんどんおくれる。そうすると、仮処分なり仮差し押さえなりまた一日おくれる、こういうことになってしまうわけですね。日銀の代理店といっても、地方へ行くとみんな地方銀行ですね。そこら辺のところを話し合いをちゃんと進めてくれないと、供託する人は非常に困っちゃうのですよ。一瞬を争うときに非常に困るのです。これは何とか――銀行との話し合いですから、あなたの方で直接できないのかもわからぬけれども、ずいぶん困りますよ。金を下げるときもそうなんですよ。保釈の保証金をもらったり、あるいは供託の小切手をもらったって、その日に下げられないのですよ。時間が過ぎちゃってだめだというわけでしょう。  これは裁判所の場合ですけれども、法務省の場合ではないけれども、出納官吏というのは、支部へ行くと一人しかいないわけですよ。保釈の保証金なんか下げにいくと、その人が休んでいるときがあるのですよ。休んでいると、だめなんです。それはもらえないのです。地方の支部へ出かけて金をもらいにいくときに、一々その人がいるかいないか確かめなければならない。この前、葬式に行っちゃったというので、だめなんです。もらえないわけですよ。これは裁判所の場合ですけれども、そういうような不便が相当ある。本庁の場合は、出納官吏が会計課があって何人もいるからいいのですが、支部の場合は一人しかいない。その人がいないと下げられないというので、非常に不便なんです。これは裁判所の問題ですから、裁判所の方にお話ししますが……。  そこで、最終的な問題としては、この積んだお金が具体的にはどういうふうにして、どこへ集まって、どういうふうに使われているわけですか。それで利益――利益という言葉は悪いかもわからぬけれども、とにかく利益を上げていることは間違いないでしょう。具体的にどういうふうになっているのですか。お金だからいろいろごちゃまぜになってしまうから、このお金だけでどういうふうに使われているかということはわからぬかもしらぬけれども、抽象的にはわかるわけですね。これはどういうふうになっているの。
  48. 福井博夫

    ○福井説明員 国庫金の経理の関係の御質問というふうに理解いたしましたので、ちょっと御説明をさしていただきたいと思います。  現在の会計法のシステムによりますと、供託金として納付された資金につきましては、日本銀行に納められるということになっておりまして、会計経理上は政府の預金、言いかえますと、国庫金として収納される、こういうことになっておるわけでございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはわかっています。それなら何も大蔵省に来てもらわなくてもいいので、法務省でもわかるし、ぼくだってそのくらいのことはわかる。それが日本銀行へ納付されて、具体的に一体どういうふうに使われるのですかというのです。それは結局、金銭だから利用されて、利潤を上げるのでしょう。利潤という言葉は悪いかもわからぬけれども、いずれにしてもプロフィットを上げるのでしょう。こういうことですよね。
  50. 福井博夫

    ○福井説明員 国庫金となりましたものがどういうふうに使われているといいますか、利用されているかというような御質問かと思いますけれども、まず、その国庫の方の現在の状況を御説明する必要があろうかと思いますが、供託金は一種の一般部というようなところで実は会計されているわけでございますけれども、そういうところに底だまりのような形で入ってくるという形になっておるわけでございます。しかしながら、一方で税収、一般部の主な収入でございますけれども、それが季節的におくれて入ってくるというふうな事情もございまして、かれこれ合わせますと、国庫金といたしましては計算上かなり大きな赤字になるというような姿になっておるわけでございます。その赤字を埋めるために現在政府短期証券というものを発行いたしまして、私ども必要な準備資金を一定の水準に維持する、こういうような操作をいたしておるわけでございます。その結果、大体私どもの経理では、平均的に申しますと約四百億とか五百億程度の政府預金の水準が維持されているという姿になっておるわけでございます。  言いかえますと、供託金というものがあるおかげによりまして、この四百億円とか五百億円という水準の政府預金を供託金がある程度下支えしてくれているというような関係があるわけでございまして、この政府預金の四百億円、五百億円といいますのは、これは日本銀行に対する預金という形になっておるわけでございます。  日本銀行としてはこれをどうするかと申しますと、これは一種の預金でございますので、通常日本銀行の資金といたしまして、日本銀行の営業資金の一部としてこれを利用しているという姿になるわけでございます。結果として日本銀行の上がった収益につきましては、それがどの分が供託金によって上がったというようなことはなかなか計算できないわけでございますけれども、観念的に上がった収益といいますのは、日本銀行納付金という制度がございまして、国庫の方にその一部が返ってくる、こういうような全体の仕組みになっておるわけでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはよくわかるのですが、私の聞いているのは、供託金日本銀行へ集まってきて、それが日本銀行の収益の対象として利用されるわけでしょう。それが利益が上がれば、それが国庫納付金になるという形だと思うのです。だから結局、概念的に言えば、その金を、供託金が集まってくるのですから、その金を利用して結局は日本銀行それから国という形で、どの程度のものかはよくわかりませんけれども、利潤を上げているということは言えるじゃないか。そうなれば、当然そこで利息をつけるということもあたりまえのことではないか、こういう筋になってこなければおかしいのじゃないか、こういうことなんですね。それをただためて金庫にしまっておくなら、それは話はわかるけれども、そうじゃないわけですから、利用しているんだから、利用していれば利潤が上がるんだから、それを供託した人に還元するというのは当然のことではなかろうか、こういうように結論的には出てくるんじゃないかということを聞いているわけです。
  52. 中島一郎

    中島(一)政府委員 供託金も国庫金の一部として利用されまして、その結果といたしまして、利潤と言ってはなにかと思いますけれども、何らかの意味で役立っておると申しましょうか、負担の軽減に役立っておるということは事実であろうかというふうに思っております。  しかし、一方において、供託制度運用していくという意味におきましては、国も日本銀行もかなりの経費を支出しているというようなことでありますために、現在の供託金の滞留状況というものが固定的な状態であるという保証がない限り、国家財政にとってどういうプラス・マイナスになるか、プラスになるかマイナスになるかということについての保証もないということであります。  それでは、それをもっとよく綿密に調査をして、わからないなりにはっきりさせればいいじゃないかということになろうかと思いますけれども、そもそも供託制度というものは、あるいは供託金というものは、私ども何度も申し上げておりますように、利殖を目的とする、したがって、それを国としては運用してその運用利益供託者に還元をするという制度ではなくて、供託金を受け入れるということ自体によって供託者にある一定利益を与えておる、そういう制度でありまして、利息をつけてきたということも歴史的な事実としてはあったわけでありますけれども、それは政策的な配慮からのことであるということになりますと、国家財政が非常に厳しくて、法務局としては本来の法務行政の仕事の費用、経費、自然増の費用にも事欠くような状態になってまいりましたこの際は、三年間に限って利息を停止させてもらいたい、こういうことでございます。
  53. 稲葉誠一

    稲葉委員 時間もあれですから終わりますが、いまはたとえば供託するときに供託通知書、これはどこが発送するということになっているのですか。
  54. 筧康生

    筧説明員 これは供託通知書用の切手を貼付した封筒を供託者から供託所提出してもらいまして、供託所から通知をしておるというのが実情でございます。
  55. 稲葉誠一

    稲葉委員 そのときに特別送達でやるのですか、あるいは普通の書留でやるのですか、どういうふうにしてやるのですか。
  56. 筧康生

    筧説明員 これは理屈だけ申しますと、供託の通知というのは供託当事者である供託者がやってもいいという性質のものでございまして、私どもの普通の取り扱いといたしましては、通常の普通郵便で貼付されたものを出してもらうという取り扱いをしておりますけれども供託者自身がこれはぜひ書留にしてもらいたいということでその旨の切手を張ってくるというような場合には書留でもって供託通知書を発送するという、供託者の選択に任せるという取り扱いをいたしております。
  57. 高鳥修

    高鳥委員長 林百郎君。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 きょうは供託に関する審議の委員会でございますけれども、ただ、法務大臣もちょうどおいでになりますので、きょうにも差し迫っておる北炭の夕張炭鉱の注水の問題について一、二問しておきたいと思うのです。  これは人命にも関しますし、今後の捜査にも影響してきますので聞きたいのですが、この北炭夕張は、五十九名の家族から注水の同意書を取りつけたと報道されておりますが、これはあくまで注水に対する同意であって、これがあるからといって炭鉱側の刑事責任あるいは損害賠償責任に何の関係もないもの、こう理解しておりますが、法務大臣、いかがでしょうか。
  59. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 夕張に起こりました事件は、本当に痛ましい事故だと存じております。また、こういう事故が二度と起こらないようにしなければならないことは言うまでもないわけでございます。したがいまして、原因の調査あるいは刑事責任の調査、それもあわせて究明していかなければならない。また、そういう努力もなされていると思います。いまおっしゃいました事柄によりまして刑事責任がどうなるということとは別問題だ思います。ただ、火災が発生いたしまして相当な日時を経過しておりますので、注水したから事故調査あるいは刑事責任調査が困難になるという性格のものではないというふうに承知しているわけでございます。  いずれにいたしましても、大変な事故でございまして、痛ましい限りだ、こう思っております。エネルギー問題がこういう事態を招いたのじゃないかなという心配もいたしているわけでございますけれども、おっしゃいます原因調査刑事責任の究明につきましては徹底して行わなければならない。しかし、この後始末、なお相当日時を要するようでございまして、関係者から聞きますと、なお数カ月かかるのじゃないか、こうも言われているようでございます。しかし、問題の究明につきましては最善を尽くさなければならないと決意いたしているわけであります。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 法務大臣としてはごもっともな答弁だと思いますが、刑事局長も、いまの同意によって刑事責任や損害賠償責任は免責されるという関係にないということはお認めになるでしょうね。  それと、いま大臣の言われている捜査というのは、過失傷害致死とそれから鉱山保安法等に関して捜査されているのか。現状の捜査の模様、ごく簡単に言ってくれませんか。
  61. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 基本的には大臣がいまお答えになりましたとおりでございますけれども、細かい法律論的なことを申しますと、いまおっしゃいました過失致死とかそういう人命との関係では、同意という問題は関係はないというふうに思いますけれども、派生的な問題といたしまして、たとえば坑内におられる方が亡くなっておられるという場合には、死体遺棄罪というような問題も派生的に起こるかもしれない。そういうことにつきましては、若干同意という問題が影響してくるかもしれないというふうに思います。  それから、捜査の状況でございますが、警察が中心となりまして検察庁もそれに協力するという態勢で臨んでおるわけでございまして、まだ具体的な内容までは聞いておりませんけれども、いま大臣もお答え申し上げましたように、原因の究明につきましてはできる限りの努力を尽くしてやりたいという考えでおります。
  62. 林百郎

    ○林(百)委員 これは非常に重要な問題ですし、戦後三番目の大きな災害だといいますので、法務省としても刑事局当局としても、これは警察任せでなくて、やはり責任を負って全力を尽くしてやっていただきたいというように思うわけです。  もう一つだけお聞きしておきたいと思うのですが、将来仮に、不幸にして遺体が引き揚げられた場合に、当然解剖がされると思いますけれども、焼死者それから窒息死ではなくて、溺死という症状が出た場合には今回の注水の結果であると判明せざるを得ないが、もしそういうことが起きた場合の刑事責任は、同意書との関係でどうなるのか。こういうことがあり得るかあり得ないか、これは捜査をしてみなければわかりませんが、万一そういうことがあったとすれば、今度の同意書との関係はどうなりますか。大臣と刑事局長に。
  63. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま林委員仰せになりましたように、万一にもそういうことがあってはならないわけでございまして、そのためにも生存者の可能性の有無ということについて慎重な検討、配慮がなされなければならないものと考えておるわけでございます。したがいまして、そういうことは仮定論といたしましてもあり得ないということで考えていくべきものじゃないかというふうに思います。
  64. 林百郎

    ○林(百)委員 仮定論としても言い得ないのだけれども、しかし、生死はわからないのですから、あなた中へ入って、五十九名の人が全部いま亡くなっているということを認識したわけではないでしょう。これは外にいる者の想像と確率でもってやっているわけですから、万一の場合が起きた場合はやはりそれなりの刑事責任を負わなければならないのではないか、こういうように思うのですが、そこに今度の注水の問題が――第一、会社側では、事故が起きて十二時間目にもう注水というようなことを言って、これは家族の反対によって中止されているわけですから、それが家族の同意によって行われるという状態ですから、万一のことがあった場合には刑事責任はどうなるか。これは仮定の問題としてで結構ですから、御答弁願いたいと思います。  それから法務大臣、警察任せでなくて、やはり検察当局も責任を持って、全力を尽くして厳重な捜査をすべきだと思いますので、その方針をお聞きしておきたいと思います。
  65. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いまおっしゃいましたように、注水の問題も、会社当局としてそれ以外にはないという決意を早くしたようでございましたけれども、なお大事をとって延ばしてきたわけでございます。したがいまして、仮定を立てるにいたしましても、それがどういう姿であるかということは、本当に調査してみなければわからないことではないかと思うわけでございまして、簡単にいま仮定を立ててしまってどうこう言うのはちょっと早いのではないかな、こう思います。いずれにいたしましても、刑事責任は十分調査をしてやりたい。究明ということも将来のためには非常に大切なことだと考えておりますので、そこはそういうふうに御理解いただきたいな、こう思います。  また、責任追及の問題については、現に調査しておりますが、検察当局としても慎重に配慮していくように私からも求めておきたいと思います。
  66. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、この質問はこれで終わりますが、そういう仮定の問題と、あなたも中へ入ってみたわけではないのですから、万一そういう事態が起きた場合に、一体同意書というものがどういう性格を持つのかという問題。きょうのテレビなどで聞きますと、注水が行われますと事故現場が水没して、三カ月か、長ければ六カ月たたなければもとの状態に戻らない。完全にもとの状態に戻るかどうかは別として、少なくとも坑道に入るような状態にならない。といたしますと、坑道がどういうように崩れていたのか、あるいは専門家による現場検証等、捜査に関して欠くことのできないいろいろな証拠が隠滅されるおそれがあるわけですけれども、これに対してはどういう考えを持っておられるか。  あなたも私も中へ入ってみたわけではありませんから、これは仮定の問題で結構です。しかし、万一溺死したというような症状が出てきたという場合は、同意書はどういう性格を持つかということを、法理論としてで結構ですからここで言っていただきたい。それから、現場検証やいろいろなものは、三カ月から半年もたてば完全に消滅される危険がありますが、そういう場合、支障が起きておるにもかかわらずどういうように捜査が行われるのか。その点も一応聞いておきたいと思うのです。
  67. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 家族の方の同意と刑事責任の問題は、先ほども一応お答えしたつもりでございますけれども、先ほど林委員の仰せになったような意味での過失致死ということが問題になった場合には、直接は関係ないであろうというふうにお答えしたつもりでございます。  第二の、捜査の支障の問題でありますが、確かにこれはいろいろな面で支障が起こることも考えられるわけでございますけれども、反面、このまま放置しておいた場合に、また爆発が起こることもあり得るかもしれませんし、そうなりますとまた一層困難になるという問題もあろうかと思いまして、現在の判断で最善だという方法がとられた場合に、それに伴う若干の不便と申しますか、支障と申しますか、それはまたやむを得ないことではないかというふうに考えております。
  68. 林百郎

    ○林(百)委員 刑事局長、結構ですから。  それでは、供託の問題で質疑したいと思います。  法務省の民事局の一貫した考え方が、どうも供託金利息を付するべきでないというような御意見のようなんですが、そうすれば、ここで何も三年という時限を付さないで、供託そのものは性格上からいって利殖を目的とするものでないから利息を付せない、これは仮定ですが、そういう法の改正をしたらどうなんですか、皆さんの意見をずっと聞いていると。  そうでなくて、いままでのずっと一貫したこの立法のときの議会の議事録、それから民事局の考えは、利殖を目的とするものではないけれども、これが何らかの国家の資金繰りに利用されているのだから、その利用されている部分について供託者に返還するのは当然だという意見が一貫してあるわけでしょう。それを急にここに至って、この法案が出たから利息を付するのは本来の趣旨に反すると言うなら、むしろ利息を付せないのを三年なんて限らなくていいじゃないか。それはどうなるのですか。矛盾していると思うのです。
  69. 中島一郎

    中島(一)政府委員 私どもが申し上げておりますのは、供託金というのは利殖を目的とする制度ではございませんので、必然的に利息が生ずるという法律関係ではないということを申し上げておるわけでございます。したがいまして、利息をつけないでも憲法上の問題とかそういう問題は起こらないわけでありますけれども、八十年にわたって利息がつけられてきたという歴史もあり、供託制度を利用しやすくするという配慮から、国の財政事情が許すならば利息を付することが望ましいと考えておるわけでございます。  ただ、申し上げておりますように、昨今の国の財政事情というものは非常に厳しくて、特にゼロシーリングという言葉で端的に表現をされておりますように、私ども法務省あるいは法務局の予算というものが、既定の経費を一部削らなければ必要な経費をふやすことができないというような実情にあるわけであります。でありますから、私どもは既定の経費のうちで削れるものはないだろうかということでいろいろと検討もし、努力もいたしまして、削るべきものは削りました。しかし、まだそれでも登記でありますとかあるいは戸籍でありますとか供託というような、法務局本来の仕事を続けていくために必要欠くべからざる経費の増を賄うことができない。でありますから、やむを得ずこの供託金利息を停止していただきたい、それについては三年間という財政再建期間中に限ってお願いをしたい、こういう趣旨で申し上げておるわけでございます。
  70. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、これはいま問題になっておる行革の関連でこういう法案が出たというように解釈していいのでしょうか。そうなりますと、この供託金というのは、税金やそのほかの政府の掌握している金あるいは日銀へ預託されている金と違って、まだ民間の人の所有権というのが潜在的にはあるわけです。それは弁済供託にしてもあるいはそのほかの供託にしても、一定の時期が来ればその供託権者に行くわけなんです。だから、そういう民間人が潜在的に持っている資金の利息を犠牲にして、法務省本省ですか、あなたのおっしゃる法務省の方の仕事の予算がゼロシーリングじゃできない部分が出てくるからそれを埋める、こういう論理になるわけですか。  これは税金や何かとは違うわけです。これは完全に国の所有権になるわけじゃないので、潜在的には個人的な権利があるわけです。弁済期限が来れば、弁済供託金供託権者のところへ行くわけですからね。そういうのは税金とは違うわけでしょう。要するに、そういう民間人の資金に対していままでずっと利息をつけていたものを切ってしまう、そして法務省の必要な経費がゼロシーリングでは足りなくなるから、それを埋めるということになるのじゃないですか。
  71. 中島一郎

    中島(一)政府委員 最初に御質問がございました行革の関連かという点につきましては、行革ということをどういうふうに理解するかということにもよろうかと思いますけれども、私どもは、その行革に関連をして出てまいりました五十七年度の概算要求におけるゼロシーリングの方針というものが基本になっておるというふうに考えております。  それからその次に、供託金といっても、これは潜在的に民間の金ではないかという点でございますが、将来還付なり取り戻しなりということで払い渡しをしなければならない金である、歳入金ではないという意味においてはおっしゃるとおりであろうかというふうに思いますけれども供託というのは、比喩的に申しましたならば、供託をすることによって国の金になる、そして国としては、供託制度運用することによって司法秩序を維持するということが目的でありますけれども、それを利用する供託者に対してそれ相当の利益を与えておる、そういうものが供託制度本来の目的であり、姿であろうというふうに思うわけであります。それに利息をつけるかつけないかということは、これは何度も申し上げておりますように、供託制度を利用しやすくするための政策的な配慮から出たものである、こういうふうに考えておるわけでありまして、それは国の財政状態のいかんということによっても、利息をつけるかつけないかというようなこと、あるいは利息の額を、利率をどうするかというようなことにも影響をしてくるような、そういう性質のものであるというふうに考えております。
  72. 林百郎

    ○林(百)委員 供託者弁済供託をして一定の便益を得ているからといって、何もそれは国の金を出して、そして弁済供託の当事者の利益を図っているわけじゃないでしょう。供託者が自分の個人の金を供託をして、そして被供託者に便益を与えている。ただ、その中間で国が金を預かっているというだけじゃないですか。何も国がそんなに恩を売ることはないと思うのです。おまえたち利益を得ているんだから、利息なんか取るということを考えるのは不届きだなんてことを言う、そんな権限はないでしょう。民事局長の個人の金でも出しているなら、それでも個人の金です。税金なんかとは違うのですから。  そういうことを繰り返していると限りがありませんが、この供託法の三条をつくったときの、これは明治三十二年一月二十三日の衆議院ですけれども、帝国議会のころですが、このとき高須賀という委員の第三条を設けた理由はどうかという質問に対して、梅謙次郎という政府委員の答弁によりますと、「本条ハ民法商法等ノ規定ニヨリ供託ヲ為ス場合ニ於テ之ニ利息ヲ付セサルモノトスルトキハ債務ノ期限前ニ弁済ヲ為ス為供託ヲ為ス場合ノ如キハ債務者ハ謂レナク其ノ供託セシ金額ニ対スル利息ヲ失フニ至リ民法商法等ニ於テ便宜ノ為メ設ケタル規定ハ却テ供託者ノ不利ヲ来タスノ結果ヲ生スルヲ以テナリ加之現行法ニチハ曩ニ預金局ニ於テ供託金ヲ取扱ヒタル際ハ預金トシテ之ニ利息ヲ付セシヲ以テ別段ノ条文ヲ設クルノ必要モナカリシモ其ノ後中央ニ於テ取扱フコトトナリテヨリ供託金ハ当座預リノ性質ヲ有スルモノトシテ利息を付スコトトナレリ是又本条ヲ設クルノ必要ナル所以ナリ」。要するに、政府が預かるようになって、そしてそのころは当座預金の性質を有するものとして預かっておるんだから利息を付することとなったと、利息を付せなんでもいいけれども政策上付すんだなんということは、立法のときには政府は答弁しておらないですね。  よく、費用がかかる費用がかかるという質問があるのですけれども、これは当時の児島委員長政府委員質問しているのです。「第三条二供託ヲ受ケタル翌月ヨリ払渡請求ノ前月マテノ利息ヲ払フト定メタル理由如何」、要するに、預けた月とそれから支払う月には利息を付さない、こういう条項を設けたのはどういう理由かということに対して、政府委員は、「目下銀行預金ハ何レモ預入ト同時ニ利息ヲ付セス多少ノ時日ヲ経テ利息ヲ付スル慣習ナルヲ以テ本案モ慣習ニ従ヒ翌月ヨリ利息ヲ付スルト定メシノミ供託金ノ払戻ハ普通ノ預金ニ比シ取扱上頗ル手数ヲ要スルヲ以テ手数料ヲ見込ミ払渡請求ノ当月マテノ利息ヲ払ハス前月マテノ利息ヲ払フト定メシナリ」、要するに、払い渡しをする月の利息は払わないのだ、それで手数料は補っておりますというのが政府側の答弁なんです。  だから、立法の趣旨からいうと、きょう皆さんがこの問題について答弁なさっていることは、立法当時の議会の意思とは大分違ったことをおっしゃっていると思うのですが、どうでしょうか。
  73. 中島一郎

    中島(一)政府委員 いろいろの点が出ましたのですが、まず最初に、「当座預リノ性質ヲ有スルモノトシテ利息ヲ付スルコトトナレリ」というふうにおっしゃったのですが、この梅先生の発言は、「当座預リノ性質ヲ有スルモノトシテ利息ヲ付セサルコトトナレリ」、こういうふうに書いてあるわけでございます。そういう歴史的事実を前提にして、今回、明治三十二年に供託法三条を設けて利息を付することになった、こういう説明であろうかと思うわけであります。  明治三十二年に現在の供託法三条ができましたときの立法理由といいましょうか、考え方というものが、私ども実はその詳細がわからないわけでございます。確かに国会における質疑応答の、これは一部か全部かわかりませんけれども、それは残っておりますけれども、その真意と申しましょうか、そういうことが必ずしもよくわからないわけでありますが、明治二十六年から三十二年までの間において供託金は「当座預リノ性質ヲ有スルモノトシテ利息ヲ付セサルコトトナレリ」というふうに書いてありますところは、現在の私どもの考え方もこれに近いものがあるわけでありまして、供託金は預金ではないのだ、預金ではないのだから、必然的に利息をつけなければならないものではない、利息が当然に発生するという性質のものではない、しかし、それには利息をつけることができればそれが望ましい、ただ、その利息をつけるという場合におきましても、それからただいまおっしゃいました預け入れと同時にといいましょうか、受け入れと同時に利息をつけるのではなくて、多少の時日を置いて利息をつけ始め、そして払い渡しのときまで利息をつけるのじゃなくて、その前月までの利息を払う、そういうことも許されるのだ、こういうことになろうかど思うわけであります。  ここには、「多少ノ時日ヲ経テ利息ヲ付スル慣習ナルヲ以テ」と、こういうふうに書いてありますけれども、慣習は慣習として、そういうこともあろうかと思いますけれども、私どもは、したがいまして供託金については、預け入れのときから、受け入れのときから払い渡しの日まで利息を払わない、そういう利息の払い方も許される、こういうふうに考えておるわけでございます。
  74. 林百郎

    ○林(百)委員 大分自分の都合のいいように解釈しているのですが、私は、「預入ト同時ニ利息ヲ付セス」と読んだはずです。「付ス」なんて私読みはしませんよ。  しかし、少なくとも払い戻しの月の利息を払わない、「預金ニ比シ取扱上頗ル手数ヲ要スルヲ以テ手数料ヲ見込ミ払渡請求ノ当月マテノ利息ヲ払ハス前月マテノ利息ヲ払フト定メシナリ」、要するに、手数料を見込んでそういう措置をしているんだということをここではっきり言っているのです。それを、何かこうやると、現行法で利息をつけることは、手数料を払わなくてただでやることに対する見返りとして当然利息をつけなくてもいいようなことを言っていますけれども、ここでは、払い戻しの当月の利息を払わないことは、手数料を見込んでそうしているんだということをちゃんと言っているわけですね。  その問題と、時間がありませんので、次に喜多辰次郎さんの「供託法論」の四百三十ページを見ますと、「預金制度ニ於ケル今日供託局ハ直接ニ之ヲ利用セスシテ日本銀行ニ預入レ日本銀行ヲシテ有利ニ使用セシメテ之カ収益ヲ挙ケシムルカ故ニ其ノ対価トシテ日本銀行ヨリ支出セシメタル金額ヲ利息トシテ供託者又ハ権利者ニ支払ハサルヘカラス之レ即チ供託金ニ対シ利息ヲ付スルコトヲ要スル供託法ノ生シタル所以ナリ」、喜多さんもこう言っているわけですね。  要するに、日銀に預金することによって、日銀がこれを運用する。直接日銀が利用するのが一部か全部かは問題があるとしても、先ほど福井さんの答弁の中に、支払い準備金四、五百億といいますが、これは日銀の当座預金としてこれには利息をつけなくても、日銀はこれを運用して利息の取れるあるいは利益を得る資金として市中銀行に融資するとか、この金は運用はできるわけでしょう、常時四、五百億は持っているというのですから。これはどうなんですか。いや、これが全部供託金だとは言いませんよ。だから、この中に少なくとも供託金の一部がないとは言えないんじゃないですか。
  75. 福井博夫

    ○福井説明員 お答えいたします。  ただいまの四百億とか大体五百億くらいの当座預金でございますけれども、まず、これがどういうふうにでき上がるかということを、ちょっと先に御説明する必要があろうかと思います。  まず、この四百億とか五百億の当座預金をつくりますためにどういうことになっているかと申しますと、一般会計では、税収がおくれてきて歳出が恒常的に出ていく、こういう構造になっておりますので、一般会計のところを見ますと、実質的には常時相当大幅な赤字という姿になっておるわけでございます。しかしながら、それ以外に、たとえば特別会計におきましては、健康保険会計というようなところで、何といいますか一種の日銭が入ってくるというような会計もあるわけでございまして、そういったところが少し余裕金がたまっておるというような状況でございます。そういったこと。それから供託金もそういったたぐいの一種でございまして、一つの底だまりのような金がある。かれこれ合わせまして見ました場合におきましても、やはり全体としても大きな赤になっておるというような状況でございます。これを蔵券によって支えまして、四百億円、五百億円というのができ上がっておる。そういう意味におきましては、ずっと順序をたどっていきますと、四百億円、五百億円というところに一つ供託金というものが流れ込むではないかということは、理論的には確かに言えると思います。  それから、御質問の四百億、五百億でございますけれども、これは日本銀行に対する預金でございますので、通常の私ども銀行に対する預金と同様な法律的性格でございますので、日本銀行に預金された後は日本銀行の営業資金として使われておる、こういうような仕組みになっております。
  76. 林百郎

    ○林(百)委員 予算の歳入歳出の上に、観念的ではありますけれども、二兆円か三兆円の赤字が出る。その場合は蔵券を発行して日銀にこれを買わせて、そして一時的な赤字を埋めていく。これは観念的な数字になると思うのですが、そういう蔵券を発行する場合の赤字が――供託金の現在高はいま約千九百億ぐらいあると思うのですけれども、千九百億ぐらいの金、あなたが先ほど稲葉委員質問に答えましたけれども、その政府の持ち金の底流にはこれがあるわけでしょう。これは安定してあるわけですよね。弁済期が来ればどうなるかわからないが、安定してある。だからその分だけは蔵券を発行しなくても済むわけなんで、蔵券を発行すれば政府は五・六二五%の利息を払わなければならないから、だから供託金の分だけは蔵券を発行しないで済み、そのために政府は五・六二五%の利息を蔵券分は払わなくても済むじゃないですか。そういう機構というか運用になるんじゃないですか。そういう意味で、この供託金が政府の持ち金になるということは、やはり一定利益を政府に与えているということになるんじゃないですか。それが大きいか少ないかは別ですよ。福井さん、どうですか。
  77. 福井博夫

    ○福井説明員 供託金は、確かに現在千九百億からの底だまりがございますので、これらは先ほどちょっと触れましたけれども、他の特別会計の底だまり金と同様な性格でございます。したがいまして、ただいま先生おっしゃいましたように、全体としてこれをひっくるめて考えてみますと、理論的といいますか考え方といたしましては、確かにその供託金の底だまり分があるということによりまして蔵券の発行がそれだけ減少の要因になっておるということは、そのとおりでございます。
  78. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、民事局長どうですか。それだけ政府が利益を得ているんじゃないですか。五・六二五%の蔵券の利息を払わなくても、供託金分は常に安定した政府の持ち金としてあるわけなんですから、それがなかったら千九百億蔵券を余分に発行して、それで五・六二五%の利息を払わなければならないのです。何としてもこれを政府が利用しているということは否定できないんじゃないですか。何のためにもなっていませんということは言えないですよ。  それで、時間がありませんのであれですけれども、これは水田耕一さん、昭和三十七年十二月の「供託制度の研究」というのがありますが、これを見ましても、「供託は利殖を目的とする制度ではないから、供託金利息を付することは供託にとつて本質的なものではないが、国は右のようにして収納する利益供託当事者に償還すべく、供託金利息を付することとするゆえんである。」これも、国がそういうように利用しているから、だから本来は供託は利殖を目的とするものではないけれども、しかし国がそういうように利用しているんだから、その利用した分を当事者に償還すべく供託金利息を付するのはこういう理由だ、こういうことを言っています。  それから、時間がないのでいろいろ一貫して申しますが、私たちが調べた範囲では、法務省の民事局付の検事水田さん、それから法務省の民事局課長補佐の中川さんのあらわした「供託法精義」というのの二百十一ページを見ますと、「国庫金の出納保管については、国家機関による金庫制度を採らず日本銀行への預金制度を採用しているので、国庫金は日本銀行における預金となり、その出納上における支払剰余金すなわち国庫余裕金」になって、日本銀行は営業資金としてこれを運用する云々として、「供託は利殖を目的とする制度ではないから、供託金利息を付することは供託にとつて本質的なものではないが、国は右のようにして収納する利益供託当事者に償還すべく、供託金利息を付することとするゆえん」はここにある、こう言って、供託金は国が運用して一定の、多かれ少なかれ利益を得ているのだから、それを利息として支払うのは当然であるというのが民事局の一貫した歴史的な見解のようです。  それから、元第四課長だった稲葉威雄さんの論文「供託の法制上の諸問題」昭和五十二年一月から三月、上巻の三百五十ページの十という欄に、「他方では供託金寄託を受けた国家がその運用を委ねられ、そこから何がしかの利益を得ているとすれば、それを供託金について権利を有する者に還元するのが望ましい。」他の国家機関による保管になじむもの、たとえば裁判上の保証供託だとかあるいは選挙の供託金とは性格が違うのだ。「「保管金しには利息が付されないのに、供託金については利息が付される点に国民にとっての供託の存在価値があるともいわれている。」  皆さんのあらわした供託制度の文献を、まあ限られた部分でございますけれどもわれわれ検討した結果は、これは民事局としては一貫して、利息を付するのは当然だ、供託金を国が何らかの形で運用して、多かれ少なかれそれによって利益を得ているのだから、それを利息という形で供託権者に付するのは当然だ。これも四分二厘ごろから二分四厘があり、一分二厘になってだんだん少なくなっておりますけれども、それは民事局の一貫した考えじゃないですか。  それが、この法案が出たからといって、急に民事局の答弁が、中島さんの答弁が従来の民事局の伝統的な見解と違うのは、やはりゼロシーリングがバックにあって、それが圧力になっているからですか。正直に言ってください。それでそういう答弁をなさるのですか。いままでの民事局の歴史的なこういう文献はどうなるのですか。もしあなたの言うことがそのとおりだったら、むしろ利息は付せませんと法律をつくったらどうですか。おかしいですよ。  だから、正直にあなたはここで、いま行革の問題が国家的な問題になっており、予算もゼロシーリングという状態にありますので、不本意ですがこの利息はカットいたしますと言うのならわかりますよ。これは利息をつけないのがあたりまえだ、いままでつけていた方がおかしいのだ、手数料もかかるのにただでやってやったというように開き直るなら、むしろ根本的にこれを直したらどうですか。どうも一貫しないですね。
  79. 中島一郎

    中島(一)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、かつて民事局の職員であった者あるいは現に民事局の職員である者におきましても、御指摘のような論文と申しましょうか記述をいたしておることは私どもも承知をいたしておりますけれども、いずれも民事局としての見解ではなくて、個人として論文を書きあるいは記述をしておるというふうに理解をしておるわけでございます。  そういう性質のものでございますから、私ども、その一つ一つについて本人にその真意を確かめるというようなことはいたしておりませんので、果たしてどれだけの研究をし、どれだけの根拠を持って、しかもどういう程度の自信を持ってそういうものを書かれたかということはわからないわけでありますけれども、私ども現在考えておりますのは、本来供託金というのは国としては運用義務を負わされているものではない、しかし、実態といたしましては、これを利用いたしまして何らかの利益、というよりもむしろそれによって負担を免れておる、ただいま御質問にもございましたように、大蔵省証券ですか、蔵券を発行しなくてもいいという意味においての消極的な利益を得ておるということは、これは私どもは事実であろうというふうに思います。  しかし、供託金利子を付するかどうかということに関して判断いたします場合には、ただそのことだけではなしに、国が供託金制度を運営しておるというためには経費もかかっておる、手数料も取っていないというようなこととともに、国の財政状態がどうなっておるか、法務局の立場で言うならば、供託金をつけることによって法務局の仕事にどういう影響があるのか、あるいはこれをなくすことによって法務局の予算上どういう影響があるのかというようなことをもあわせて考えなければならないだろうと思うわけでありまして、今回私どもが法案を提出いたしました立場というものは、そういうものをすべて勘案をいたしましてこういう選択をさせていただいたということでございます。
  80. 林百郎

    ○林(百)委員 時間の関係で私の質問はこれで終わりますが、あなたは個人的な資格で論文を書いていると言われますけれども、私が引用したのは、たとえば法務省民事局局付検事水田耕一、法務省民事局課長補佐中川庫雄、これが個人と言えますか。そんなことを言ったら国民を欺罔することになりますよ。それから、稲葉さんのものも肩書きがちゃんとここに載っているのですよ、法務省民事局第四課長稲葉威雄と。こういうのはみんな個人的で、どこまで研究していたかわからぬ、中島局長の意見が最も権威的でアブソリュートだなんて、そんなことを言ったら、国民は、何を言っているのだ、そのときそのときで民事局の権威というのは変わるのかということになりますよ。やはり時の政策によってやむを得ずこうやるのだ、だから三年たったらまたもとへ戻しますというように、素直に言ったらどうですか。  法務大臣、どうですか。あなたは正義感が強いという評判もありますが、これは三年たったらもとへ戻しますか。
  81. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 現行供託法は、省令の定めるところによって利息をつけることになっているわけであります。それはそのままにして、特例三年間だけ、特別な事情がございますので利息をつけないようにさせていただきたい、こういう御審議をいただいているわけでございます。したがいまして、三年たてばまたもとどおり利息をつけたいというのが、われわれの基本的な考え方でございます。
  82. 林百郎

    ○林(百)委員 そういうように丁重に答えればまだいいのだが……。
  83. 高鳥修

    高鳥委員長 この際、安藤巖君の関連質疑を許します。安藤巖君。
  84. 安藤巖

    ○安藤委員 ただいまの議論でもはっきりしてきておるのですが、この供託金が国庫金の一部として運用益あるいは活用益、あるいは民事局長の答弁によると消極的な利益、そういうふうに利益が得られておるわけですから、たとえ三年間というふうに年限を限ったにしても、これは国民が供託をしたその供託金利息をつけないことによって国は不当に利得を得ていることになるのではないか、こういうのがどうしても出てくるのです。  そこで、私がお尋ねしたいのは、今度の三年間利息をつけないという法案をおつくりになるに当たって、供託関係者あるいは学者の方あるいは弁護士会等々に、これは中島局長がこれまで答弁なさったような政策的なものであって、もともと利息なんかつけるべきものではないのだ、こういうふうに考えているのだがいいかというようなことも含めて、意見をお聞きになったのかどうか、お尋ねをいたします。
  85. 中島一郎

    中島(一)政府委員 供託関係関係者ということになりますと、不特定多数ということにもなりまして、その関係者の範囲を決めるということも大変困難でございます。ただ、営業保証金供託につきましては、各監督行政庁というのがございます。そこで、営業保証金供託につきましては、各監督行政庁に対しまして口頭で供託法の改正の趣旨、内容を説明いたしまして、意見を聞いた次第でございます。それに対しては、いずれも特段の反対意見はないということでございました。  また、ただいま御指摘ございました日本弁護士連合会に対しましては、数回にわたりまして改正の趣旨、内容を説明いたしまして、当省の立場について御理解をいただいたというふうに考えております。
  86. 安藤巖

    ○安藤委員 いまいろいろ営業保証の関係については関係省庁にお尋ねになったということですが、これでは全くの片手落ちだと思うのですね。営業保証の供託関係者というのは、それは営業開始の要件ということで、それぞれの省庁が営業開始を認めるという関係にはあるけれども供託をする人と損害をこうむったときにそれを受け取る人と、これがあれですね。しかし、受け取る方は不特定多数ですからあれですけれども、やはりそういう業界の人たちですね。それから、賃料などの弁済供託についてはいろいろな団体もあるわけですから、やはりそういうところにお聞きになることが必要ではなかったかと思うのです。その辺のところが抜けている。  日弁連にということですが、日弁連に聞きますと、こういう法案がいま出されておるということまで、ごく最近まで知らなかったと言っているのですよ。だから、ごく最近になってからそういうことをおやりになったんじゃないかと思うのです。  この前筧第四課長は、たとえば賃料などの弁済供託について、供託する側はもともと払うものだから、利子がつくかどうかということには全く関係ないんだというふうにおっしゃったですね。ところが、実際はそうではなくして、これは今度出されました日弁連の意見書でも指摘しておるのですが、供託金利息が遅延損害金債権の一部の引き当てになっているんだというようなことも指摘しております。だから、利息がついていることによってその賃料の増額の問題、あるいは土地もしくは建物の立ち退きの問題について、供託をした賃料相当額の金額、それに利息が上乗せされているということが、いろいろ裁判上の和解の成立にとって非常にプラスになって、潤滑油の役割りを果たしておるというのも事実なんですね。だから、そういうようなことから考えると、まさに供託をする側にとっても利息がつかないということは大きな影響を与えると思うのですが、その辺はどういうように考えておられるのですか。
  87. 筧康生

    筧説明員 大きな影響があるかどうかということはさておきまして、御指摘のように、供託金利息がついておった方が、紛争の解決の場において一つの役立ち得るファクターとして機能しておることは否定できないと思っております。
  88. 安藤巖

    ○安藤委員 それから、日弁連の意見書のいま私が引用しましたことなんですが、この供託金利息が損害金債権の一部の引き当てとなっている、これを供託者、被供託者、だからこれは当事者ですね、以外の国が利息を取り上げるということは当事者間の権利関係に干渉するものだと意見を述べているのです。先ほど民事局長は日弁連ともいろいろ協議をして賛同を得ているんだというようなお話だったんですが、こういう疑問が提出されているのですよ。  これは権利関係に介入してきておるんだ、遅延損害金の一部になっておるんだ、それは先ほど言いましたように、それから答弁もありましたように、供託者、被供託者にとってその問題解決についてプラスになっていることがあるんだということになると、その問題解決のプラスの面もなくなると同時に、これは遅延損害金の一部の引き当てになっているとすると、それを取っ払っちゃう、なくしちゃうわけですから、まさに国が干渉することになるのではないかという意見があるのですが、これについてどう考えますか。
  89. 筧康生

    筧説明員 先ほど私が供託金利息というのが紛争解決の一つのファクターとして役立っておるのではないかと申し上げたのは、供託金利息が付されているという状況が、社会的にあるいは裁判上の紛争の処理の実態の中の解決要素のファクターとして、実際上そういう役割りを果たしているのではないかということを申し上げたわけでございます。  ただ、いまの法律議論といたしまして損害金になっているのではないかということになりますと、これはきわめて法律的な議論でございまして、そもそも供託金には利息を付するべきや否やという議論がまずその根底にあるということになるわけでございまして、私どもがしばしば御説明いたしておりますように、供託金利息を付するということが供託法自身が定め得るところの政策の問題であるということになりますれば、この立法府自身が法律の改正によってその利息一定期間停止するということは、これは何ら忌避されるものではないというように思われるわけでございます。
  90. 安藤巖

    ○安藤委員 まさにおっしゃるように、供託金利息をつけるべきかつけざるべきかという問題にも、これは到達する議論だと思うのですよ。そういう議論であるにもかかわらず、あえて日弁連がこういう意見を出しているのです。先ほど民事局長は、日弁連ともちゃんと事前に話し合いをして、ちゃんと了承を得ているというふうにおっしゃるから、現にこういうような意見が出ているではないかということを私は申し上げているのです。だから、こういうような意見については法務省当局としてはどういうふうに考えておられるのかということをお尋ねしておるのです。
  91. 中島一郎

    中島(一)政府委員 私、先ほど、日弁連には御説明をいたしまして御理解をいただいたというふうに申し上げたわけでありまして、御賛同をいただいたあるいは御了承をいただいたというふうには申し上げてないわけでございます。  日弁連といたしましては、保釈の保証金についてすら、現在利息がついておりませんが、それについて利息をつけるべきであるという要望をしておられる立場でございますから、従来利息をつけておりました供託金利息をつけないことにする、たとえ三年間にいたしましてもつけないことにすることに対しましては、これは御賛同ということにはならないだろうというふうに思うわけでありまして、国会において慎重審議を望むという意見書が出されておるように伺っておるわけでございます。
  92. 安藤巖

    ○安藤委員 了解は得ましたというふうにおっしゃったように私聞いたんですが、言った、言わぬの話になりますからそれはやめておきますけれども、そうしましたら、こういう法案を出しますというふうに申し入れをされたというにとどまるのじゃないかと思うのですね。日弁連の方からこれについて御意見をお聞かせいただきたいという申し出をされて、意見をお聞きになったことはないんじゃないかと思うのですね。だからこういうのが出てきていると思うのです。  これも反対だとは言ってない。慎重に審議してくれということ、全体の趣旨はそうですが、こういうような点について疑義があるということを指摘しておられるわけですね。だから、これに対して明快な回答はお出しになる必要があるんではないかと思うのです。だから、いま出されている、ほかにもあるのですが、この問題についてはどういうふうに回答をなさるつもりなのか、それで、いまこれについてはどういうふうに考えておられるのかをお尋ねしておるわけです。
  93. 中島一郎

    中島(一)政府委員 ただいまの点につきましては、先ほど筧第四課長がお答えをしたわけでありますけれども、確かに、利息をつけないことになりますれば、従来と差が出てくるということになります。でありますから、つけない場合にはつけないという法律制度前提として当事者間の紛争の解決を図っていただきたい、それがあるいは紛争の当事者に対しまして若干の御不便をおかけすることになる場合もあろうかと思いますけれども、その点は法務省あるいは法務局の苦しい立場をお考えいただいてがまんしていただきたい、こういう趣旨でございます。
  94. 安藤巖

    ○安藤委員 それでは日弁連の方は納得しないと思うのですよ。これは先ほどのお話にありますように、一つの法理論を展開しているのですよ。だから、この辺のところはしっかり詰めるべきだと私は思うのですよ。  時間がありませんから質問はしませんけれども、ほかにも、金銭供託よりも国債その他の有価証券による供託を奨励しているんだ、そうすればそちらの方で利息がつくからというお話ですね。しかし、全部が全部そうなるわけではないと思うのですが、有価証券供託になりますと供託所は受け付けないわけですから、供託有価証券寄託書というのをつくって、供託決定書というのもつくって、それを供託者に持たせて日銀へ行かせるわけですから、日銀は日銀で、またその利札管理とか証書の管理とか、いろいろお互いにめんどうなことがあるわけですよ。  だから、現金を供託される方も相当な数に上るだろうと思うし、しかも賃料等の弁済供託はすぐれて現金だと思うのです。そうすると、有価証券供託をした人は有価証券の方で利息がつく、現金の方で供託された人は、いまの場合三年間であるけれども、その間利息がつかない、この不公平を一体どうするのだ、こういう問題だってあるのですね。  だから、その辺のところは法務省の方できちっと詰めておられるのかどうか、非常に疑問に思うのです。だから私は、その辺のところをしっかり詰める、最初に申し上げましたように、それぞれの供託関係者、日本弁護士連合会等々に、あるいは学者の方を含めてしっかりと意見を聞いて、そしてもう一度出直しをされるべきではないかと思うのですよ。大臣、どうですか。
  95. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 財政再建の必要上、やむを得ず供託法の改正について国会の御審議を求めているわけでございます。供託法の改正案を提案するに当たりましては、事務当局から日弁連に対しまして、こういう提案をしたいという御連絡も申し上げているわけでございますし、私も日弁連の関係者の方々に、今度は大変御迷惑をかけます、恐縮ですという意思表示はしているわけでございます。いろいろなところに今度は財政再建で御迷惑をかけるわけでございますけれども、そういう御迷惑が及んでいくことは百も承知しているわけでございます。しかし、財政再建ということも非常に重要な課題であるからがまんをしていただけませんか、こういう立場にあるわけでございます。  前に安藤さんがおっしゃったのでしょうか、いろいろな問題があるじゃないか、裁判所保釈保証金には利子がついてない、これには利子がついている、手数料をどうするかとか、いろいろな問題があるから根本的に将来検討すべきじゃないかというお話がこの委員会で出たと思います。われわれもごもっともなことだと考えております、こう申し上げているわけでございます。  今回は、とにかく財政再建上やむを得ずこういうお願いをしているわけでございまして、多くの方々にひとつ苦痛を耐え忍んでいただけないでしょうかというお願いをしているわけでございます。
  96. 安藤巖

    ○安藤委員 もう時間が来ましたから質問を終わりますけれども、とにかくゼロシーリングだからがまんしてくれと言っても、法理論上通らない。あるいは国の不当利得あるいは不公平、こういう重大な問題が残っている以上は、がまんしてくれがまんしてくれと言ったって、それは通らぬと思うのですね。だから、その辺のところはしっかり議論を深めていただくということを強く要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  97. 高鳥修

    高鳥委員長 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五分休憩      ――――◇―――――     午後一時四分開議
  98. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林進君。
  99. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣にお伺いいたしますけれども供託されたお金というものは政府の金でございましょうか、人民といいますか、供託者のお金であるかどうか、そこら辺からひとつお聞かせ願いたいと思います。
  100. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 供託した人のお金だと思っております。
  101. 小林進

    ○小林(進)委員 ならば、供託したその人民、国民の金にいままで利息がつけられていたということは、国民の、供託者あるいはときには被供託者がその金を得る場合もありましょうが、いずれにしてもそれは関係者の一つ権利だ。利息をもらうということは大変な権利です。その国民の権利供託者権利を、無利息にするということは権利の剥奪であります。制限などというものじゃない、剥奪。そういう人民の権利を剥奪するというような恐るべき行為を、こんな安易な一条、二条の条文で軽く解決するなどということが、一体民主主義の世の中に、特に国際的にも基本的人権等が叫ばれている、こういう時代、時世においてそれが許されるものかどうか、私はそういうふうに考えるのでございますが、権力者の側としては――法務大臣以下お並びの方はみんな権力者、国家権力を振りかざして人民の権利を剥奪することは虫けらをひねるようにお考えになっているかもしれませんが、これが一つ権利の剥奪であるという私どもの基本的な想定が間違っているかどうか、お答え願いたいと思います。
  102. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 供託法供託金利息をつける、こう明定しているわけでございますので、その限りにおいて利息を受けることが供託者権利になっている、こう考えるわけでございます。しかし、その利息は省令で定めるということにされておりまして、三分六厘、二分四厘、一分二厘と下がってきたわけでございました。今回、予算編成上やむを得ずこれをゼロにしたいと考え、一たびは一括法案の中に入れてもらおうとしたわけでございましたけれども、いろいろな理由からこれは個別法案にすべきだ、こうなったわけでございます。その過程で、名目的利率に省令を改正して下げたいという考え方も一部にあったわけであります。しかし、私はあえて、一分二厘を下げるならゼロしかない、それは国会の御審議をいただいて、三年間だけは供託者にも一緒にがまんをしていただく、こうお願いする以外はない、こういうことで今回の提案になっているわけでございます。
  103. 小林進

    ○小林(進)委員 それは規則とか省令とか政令とか、そんなことまで人民の権利が剥奪されるなどということになれば、これはファッショです。ファッショの政治ですから、それは断じて許されるべきではない。大臣の御答弁で、やはり国会の審議にかけて法律改正にまつべきだというそのお考えは、まあまあ、ややよろしい、こういうことになりましょうが、それにいたしましても、国会の審議にかけて法律改正の手段に訴えるということはそれはそれなりにしても、やはり人民の権利の剥奪であることは間違いない。  私どもは、立法府の一員としてわれわれが生涯をかけて守らなければならぬことは、民主主義下における人民大衆、主権者の国民の権利をどう守るかというのが、これが私たちに与えられた崇高な任務です。私どもはその任務を一瞬、一時間も放棄するようなことになれば、もはや国会議員としての自分の崇高な責任を見失った、議員としての堕落であると言わなければならぬ。その意味において、この法律の改正が、わずかあらわれてくるものは三年を通じて、あれは四十億弱の金であろうとも、自民党という政党から見ればまあ四十億ぐらいはどうでもいいじゃないかというお考えなのかもしれませんけれども、国民、主権者を代表する国会議員の立場からは、こういう権利の剥奪は金銭の大小にかかわらず断じてわれわれは許すわけにはいかない、こういう気持ちにならざるを得ないのであります。  金銭の問題ではなくて、与えられた人民の権利の剥奪であるということだけはひとつきちっと認識をしていただいて、おまえの言うとおり確かに権利の剥奪だということをお認めになりますれば、次の段階に質問を移りたいと思いますが、ここら辺をひとつ明らかにしていただきたい。
  104. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 御承知のように、昭和五十五年度から財政再建に取り組み始めたと思います。五十五年度に赤字国債一兆円減らしました。五十六年度に赤字国債二兆円減らしました。そのかわり一兆四千億円の増税をお願いしたわけであります。五十七年度も赤字国債二兆円程度は減らしたいと考えているわけでありますけれども、しかし増税はしない。そうなりますと、歳出の面で縮減していく以外にはないわけでございまして、増税で新たなる義務を国民に求めるか、あるいは国民がいままで受けておられたものをしばらくの間がまんをしていただくか、いずれの道を選ぶかということが今度の行政改革に取り組んでおります問題ではないか、こう私は考えておるわけでございます。そう考えていただきますと、一方的に権利の剥奪というふうには決めつけられなくてもいいのじゃないだろうかな、こう思っているわけでございます。  基本的に供託金について利子をつける、つけないの問題もありますが、いまつけているものにつきまして三年間がまんをしていただくということは、増税の道を選ばないで歳出縮減の道を選んで財政再建を達成したいということから起こってきている問題だという御理解を賜りたいものだと思います。
  105. 小林進

    ○小林(進)委員 法務大臣は総理大臣みたいなことをおっしゃいましたが、それは閣僚として内閣の一員ですから、国家全般の財政事情から見て、増税なき行革でございますから行政上やむを得ないというふうにもお考えになりましょうが、私は、そういう御答弁をちょうだいするについては、あなたは確かに行政府の閣僚として責任を持たれるが、一方では代議士として、衆議院議員として、立法府の一員として、この立法府を通じて主権者たる国民の権利を守り、これを伸長せしめていく、そういう責任をまたお持ちになっている。その意味においては二重の責任ある地位をお持ちになっていると言っていいと思いますから、余り行政府の方にばかり力を入れて、国が八十兆円も赤字になる、百兆円も赤字になる、利息もふえる、これじゃ国がもたないから、供託金などという名に基づいて国民の権利をすぱりすぱりと剥奪することもやむを得ない、そういう考えは行政府の責任者としてはある程度言っても、われわれと席を同じうする立法府の一員としては、どうも私はいただきかねる。その御答弁には賛成することができないのであります。  あくまでも、行政府自体が、赤字になったから行政府自体が血も出そう、涙も出そう、あるいは肉も切ろうというならばいいけれども。その意味において、話は違うが、外人登録法ですか、この次にやられるそうですけれども、こういうことは実は行政府自体の内部における一つ制度の改正といいますか、制度という言葉は別といたしましても改革に準ずるから、その意味においてはいま政府が担っている行政改革にはその言葉が当てはまっている。これが本当の行政改革。けれども、こっちの方の供託金なんというものは、行政自体が血も出さない、人民にしわ寄せして、国民の供託金利息をもらうという権利を安易に剥奪するという行為ですから、これは厳格な意味における行政改革にはならない。こんなものを称して行政改革なんとおっしゃるなら、これは世の中全く木の葉が沈んで石が流れるような話になってしまいます。逆であります。だから、これを行政改革などと銘打ってこういう国民の権利を剥奪することは、私はどうしても了承できない。  それにしても、いますっと供託をしているわけです。それがある日突然その供託金利息を打ち切る、これは無利息だ。そして今度はまたある日突然、たとえば六十年の四月一日からですか、自然に利息がついていく、その中間だけが無利息にされて利息を打ち切られるという形になるのでございましょうか。そういう形になりませんか。どうです。
  106. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 この供託法の改正案、国会で御議決いただきました暁には、来年の四月一日から三年間だけ利息をつけない、したがって、それ以前の分については、お返しする場合にも利息はつけるわけでございます。
  107. 小林進

    ○小林(進)委員 これ自体も、いま考えたらわかるように、実に安易なやり方ですよ、国の法律を厳格に審議しようという法務省が。供託金をいまずっと積んでいるんですよ。供託金はちゃんと日本銀行に眠っているんです。その金が、いまこの法律が通ると五十七年の四月一日からですか、ぽかっと利息がつかない。三年間こう眠って、六十年の四月一日になると今度はまた利息がついて歩き出す。山崎君、君笑うが、みんな聞けばだれもが笑う。そういう安直な法律運用の仕方といいますか、改正が行われていい、一体過去にそういう例がありますか。あったらひとつお聞かせ願いたい。こういうばかなことをやったことがあるという例があれば、お聞かせ願いたい。
  108. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 供託金について利息をつけなかったこともございますし、三分六厘の利息をつけておったときもございますし、いまのように一分二厘の利息しかつけていないときもあるわけでございまして、それぞれ一定の時期からそういう変化が一定の期間だけ行われておるわけでございまして、今度だけが例外だというふうには私は思わないわけでございます。
  109. 小林進

    ○小林(進)委員 それはまた私は後から資料を持って勉強させてもらいますけれども、たとえて言えば、財政的に不如意だし困難だから、これから先は、この法律が通ったら来年の四月から無利子にいたします、それだけの法律ならば前例なきにしもあらず、私はあったと思いますよ。それでまた、国家財政がよくなったから法律改正をやって、何月何日からまた利息をつけるようにいたします、そういう前例も私はあったと思う。ただ、一つ法律で長い旅をしているこの供託金の旅の中を、一定期間だけは自然に利息をつけないで休ませて、また自動的に利息がついていくなどという法律の体裁は、私は寡聞にして、いままでにあったとは考えられない。こんなことは考えられない。ここら辺にもみんな弁護士さんがいらっしゃいますけれども、少しぐらいはあなた方だって考えてみたら、こういう不可解な法律がいままで過去にあったなどとお考えになっている方は恐らくないんじゃないかと思いますが、あるとおっしゃるならばこれはよろしい、よろしいが、これはひとつネックにしておきましょう。  次にお伺いするけれども、長い旅の中で一定期間だけ、ひょっとそこへ来たら利息がつかなくなって、また先へ行ったら利息がつきますなどということをやることによって、本来の目的である行政改革の趣旨から見て、一体それだけで目的を達するということになるんですか、金額の問題は別として。事務を担当しているのは地方法務局ですか、その事務を担当している人たちの事務の繁雑その他から見て、ねらいとする省力だとか人員の削減だとか、あるいは手間賃が省けるとか、あるいはその点だけ簡素になるとかという、本来の行政改革に見合ったような成果がありますか。どうです。こんなことをやることによって、むしろ事務が繁雑になるんじゃないですか。
  110. 中島一郎

    中島(一)政府委員 現在、御承知のように一・二%の利率ということになっておりまして、五十三年の二月末日までは二・四%ということになっております。したがいまして、五十七年の四月一日以降に払い渡しをいたします場合には、二・四%のついた期間を持つ供託金もあれば、一・二%の利率のついた供託金を払い戻す場合もある、その両方がついた供託金を払い戻す場合もあるわけでございます。来年の四月一日以降、この法案が成立をいたした場合には、それに加えて利息のつかない期間を経過した供託金を払い戻す場合もある、こういうことになるわけでありまして、一見、事務が非常に繁雑のようにも見えますけれども、そうではございませんで、このままでまいりますと払い渡しの日までの利息を一・二%で計算すべきであったものが、来年の三月三十一日までの利息を一・二%で計算すればよいということになりますので、手数ということから申しましたならば、若干の省力になるということは事実でございます。  ただ、一方におきまして、利息がつかないということになりますと、従来現金で供託をしておりましたものをあるいは有価証券供託をするというようなことにもなりますので、有価証券供託の方が法務局側の手間としては現金供託よりも手数をとりますので、そういう意味で、プラスの面ばかりではないということになろうかと思います。
  111. 小林進

    ○小林(進)委員 私が問いたいのはそういうことなんです。一つ供託金に、いま言うように、五十三年以前のものは二・四%の利息で計算して、それが今度は一・二%になったから、今度はその供託金を一・二%でまた計算する期間が出てくるのだね。そこへまたこの法律が通るから、今度はまた一定期間はゼロの期間が出てくる。これが六十年四月になると、また今度は一・二%この利息がついていく。だから、一つ供託金によって二・四%、一・二%、〇%また一・二%と、三段階も四段階もこれを計算をしていかなければならない。だから、むしろ繁雑になるだけであって、省力にも何にもならぬじゃないかということを私は申し上げているのですけれども、そこまでこれはお互いに議論すればいいのです。  私は、この問題、もう時間ありませんからやめますけれども、こういうばかなことをおやりになる方は、それほど法務省というのは――まあぼくらにすれば、法務省なんというものは法律の番人だと思っている。せめてほかの省がやるにしても、法律を中心に守る法務省がこんなばかなことを持ってくるとはゆめゆめ考えていなかったということだけ私は申し上げておきます。一問は、疑問点だけ残しておきますよ。賛成したわけじゃない。  次に、第二問へ行きますけれども、これは日本銀行供託金はお受けになる。いろいろありますよ。お受けになりますが、現金は、例外がありますよ、それは二、三カ所かあるようだけれども、こんなことは言ってはいけませんが、普通は現金は日本銀行あるいはそれにかわるべき金融機関がこれをお受けするわけです。その供託金供託者から受けたときにこれがどんな方向へ動いていくのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  112. 中島一郎

    中島(一)政府委員 一括して国庫金ということになりまして、日本銀行の預金ということで預け入れられる、こういうふうに聞いております。
  113. 小林進

    ○小林(進)委員 そうなんですね。国庫金という形で日本銀行にいま預金されるわけだ。それを受けた日本銀行は、その供託金を一体どうしますか。これは供託金でございますからといって、金庫の中に入れて封印して動かさないようにきちんとして、そのままにしておきますか。一銭も、一万円札も一つ狂わないようにやっておきますか。日本銀行はこの国庫金として受けた金をどうしておりますか。日本銀行、いないの。どうやっていますか。
  114. 福井博夫

    ○福井説明員 日本銀行に入りました供託金は、政府預金という形をとることになっておりまして、日本銀行といたしましては結果的に国庫金としてこれを経理する、こういうことをやるわけでございます。
  115. 小林進

    ○小林(進)委員 大蔵省福井国庫課長の方に質問するが、日本銀行へ入った、それは政府預金として受けた。それは受けたんだが、供託金だといって封印して、そのままにしておくわけじゃないだろう。預金の中へ入れて、日本銀行がそれを活用するでしょう。応用するでしょう。普通の一般の政府から国庫金として受けた金と一緒のように、それは最も有効に運用されるでしょう。どうですか。
  116. 福井博夫

    ○福井説明員 国庫金に入りましてからの動きでございますけれども、国庫金といいますのは、結局税収もそこに入ってくる、それからまた特別会計その他の収入金もそこに入ってくる、そういう形で供託金もその国庫金の中に流れ込んでくるわけでございます。そういう意味で、国庫金全体の中の一部といたしましてこれが活用されているということになるわけでございますけれども、実際の国庫の状況を御説明いたしますと、税収のおくれというような事情が一方ではあるわけでございますので、供託金は確かに入ってくるわけでございますけれども、こういったものを総合的に全部取りまとめますと、全体としては、込みの姿でございますけれども、赤字の姿に実はなっておるわけでございます。それを蔵券という政府短期証券を出しまして、赤字では国庫は回っていきませんので、一定限度、たとえば四百億とか五百億が平均的な姿でございますけれども、そういうところに政府預金を押し上げているというふうな姿でございます。したがいまして、日本銀行運用しているというようなことを考えますと、この四百億、五百億、これが確かに日本銀行の営業資金の一部として運用されているわけでございますが、この四百億、五百億ができ上がる過程はいま申したようなことでございまして、いろいろな余裕金が込みになったりあるいは税収が入ったり、あるいはまた蔵券でこれを押し上げたりというような過程を通じましてこの四百億、五百億が形成される、それがまさに日本銀行に預金されていく、こういうような流れになるわけでございます。
  117. 小林進

    ○小林(進)委員 それじゃ、別の角度から聞きますが、一体日本銀行が国庫金を預金として受けて――込みだよ。何も供託金だけ別枠にして、別に使っているわけではない。込みにして、一本にして使っているわけだ。そこで日本銀行利益を上げている。上げているのだ。だから私は言うが、その結果、一体国庫に日本銀行が納める納付金が大体幾らくらいになっているか。それから、法人として日本銀行利益を上げている。これは政府にやはり法人税として取られる金は幾らか。それは最近のもの、五十四年度、五十五年度の分でもいいが、ちょっと教えてください。
  118. 福井博夫

    ○福井説明員 日本銀行の納付金のシステムにつきましては、実は国庫課の方で所管をいたしておりませんので、本日具体的な数字を持ってこなかったわけでございます。ただ、国庫課といたしましてその仕組みを御説明いたしますと、確かに四百億円から五百億円の預金が日本銀行にある。これは確かに日本銀行として運用しておるわけでございますから、その結果として日本銀行全体の収益金として収益の一部に寄与しているということは、そのとおりでございます。それからまた、そういう収益が供与された結果といたしまして、日本銀行納付金という形でそのまた一部が国の方に返ってくる、そういう仕組みになっていることも、そのとおりでございます。ちょっと具体的な数字はお持ちいたしません。
  119. 小林進

    ○小林(進)委員 時間の関係もなんですから、私が、これは数字が間違っているか知りませんが、大体日本銀行が国に納めている納付金は六千百六十六億円だ。そのほかに、いわゆる日本銀行が法人税の対象として納めている利益が六千六十五億円です。赤字なら納めないのです。日本銀行が年間を通じて法人としてこれほど莫大な利益を上げて、国に法人税として納めている。それは、全部じゃないが、いまも言うように政府から預かった金だよ。その金を活用し、運用し、貸し付けているからこれだけの利益が上がったのだ。その利益の中には、国から預かった金の中には供託金もちゃんと入っているのだ。あなたは供託金は赤字だ赤字だと言うけれども、そんなことを聞いているのじゃない。込みだと言ったのだから、込みになっているのだから、その政府から預かった金を運用することによってこの六千億何がしの金を集めているのだから、その上げた利益の中には供託金が入っているのだよ。  いいですか。政府から預かりましたけれども、税金の方はこれを活用して黒字になりましたけれども供託金の方はこれを運用しましたが赤字になりましたなんていう理屈は通らない、あなたが言うように込みで使っているのだから。込みで使った供託金も含めて日本銀行はこれだけの利益を上げているならば、その利益の中から一%や二%はその供託金預託した人たちに還元するのがあたりまえじゃないですか。供託金も含めてこれだけの利益を上げているのですよ。政府は日本銀行からこれだけの利益をふんだくっているのだから、そのふんだくった分からたった六億や十億――五十九年までいくと十八億とか言ったけれども、それに比べるのは六千億ですよ。日本銀行が政府から預かっている金で、法人税として払っている税金が六千億円。国庫はそれをまるまる取っているのですよ。日本銀行から取っている六千億の利益の中には供託金から生んでいる果実もちゃんと入っているのだ。ならば払うのがあたりまえじゃないか。それを払わぬとかなんとか、国は不当利得ですよ。二重三重の搾取をしているということになる。どうですか、私の言うことが間違っていますか。――大臣。
  120. 中島一郎

    中島(一)政府委員 これは私の所掌の事務ではございませんのですが、今回、供託法の改正案を準備いたします場合に、いろいろと私どもも研究をいたしました。日本銀行としてかなりの納付金を国に納めておるというようなことも知ったわけでありますが、その納付金の大部分は、日本銀行日本銀行券を発行するということ、それから手形割引をする、その他の日本銀行の営業活動によって結果として上がっておるものであるというふうに聞いたわけであります。営利を目的として活動をしたのではなくて、いろいろと金融政策をとりますために日本銀行が活動をする、その結果として収益が上がる、その収益から国庫に納付金を納めておるという仕組みになっておるということを聞いたわけでありまして、それと、供託金が国の預金として日本銀行に預金をされて、その預金が日本銀行の資金として運用されておるということとは、どの程度の割合を占めておるものであるかというようなことについては、私ども十分承知しておらないわけであります。  ただ、供託金を国が受け入れたことによって何らかの利益、それは消極的な利益であろうと考えますけれども、何らかの利益を上げておるというふうに考えましても、一方において、国が供託制度を維持運営していくためには経費も使っておるということもあるわけであります。しかも、その収支の状態というものは固定的に保証されておるかというと、そういうわけにもまいらないわけであります。そもそも供託金利息というものが、国がその供託金運用してその利益を上げて供託者に還元をする、そういう性質のものではございませんので、私どもはそこは切り離して考えたいというふうに思っております。
  121. 小林進

    ○小林(進)委員 君の言っていることは、何を言っているのだかさっぱりわからないよ。答弁するなら、いま少し自信のある答弁をしてくれ。わかったようなわからないようなことを答弁して、よくそれで民事局長が務まるね。  ぼくは納付金の話をしているのじゃない。納付金ばかりではなくて、日本銀行だって公益法人じゃないの。公益性、特殊性もあるけれども、法人は法人なんだ。日本銀行は、片一方では経済活動をやるのですよ、利益活動をやるのですよ。国庫から預かった金を使って経済活動、利益活動をやるのですよ。時にはドルを買ったり時には円を放出したり、ただ、利益のための一般の金融機関とは若干性格が違うけれども利益活動をやるのです。やるからこそ、法人として利益を上げ、納付金と同じくらいの利益の果実を法人税として納めている。  その経済活動のいわゆるマネーの中には、込みで供託金も入っている。その供託金も合わせて、それを資金にして日本銀行は経済活動をやって、六千億円も利益を上げている。この利益をいま国は税金と称してまるまる取っている。まるもうけしておきながら、日本銀行利益、果実を生んだ供託金に対する利息までも争奪するということは、余りにも強欲非道じゃないか、二重三重の搾取になるのじゃないかと私は言っているのだけれども、君はこの言葉に対して、たらたらと、わかったようなわからないような理屈を言って、さっぱりだめです。小林進に対する答弁は、そんなことではだめです。いま少し勉強していらっしゃい。だから、この問題は留保しておきます。  ともかく、供託金の金も含めて日本銀行はこれほど経済活動をやって、こういう利益を上げているのだ。その上げた利益をまるまる国は取っておきながら、その利息さえも払わないということは、理論の上からいってもどうもけしからぬ。不当搾取だ、不当利得だ。国家はそんな不当利得を得てはいけません。この点を一つ申し上げておきます。これは次の課題にしておきます。  第三番目に、いま一言申し上げます。  これは先ほども少し法務大臣お触れになりましたけれども、なぜこの供託金を無利息にする法案を特別委員会に付託をされなかったかという問題です。特別委員会には、利息を削減するとか、交付金をやめにするとかだれかに肩がわりするとかという法案が三十六も付託されている。その特別委員会に付託されている他の法案と供託金の一部を改正する法律案と、本質的に一体何が違いますか。同じ性質のものじゃないですか。同じ性質のものであるにもかかわらず、一方は三十六も一からげにして特別委員会にぶち込んでおきながら、この供託法だけは法務委員会を開いてここに付託をする。これも理論が合わない。理屈が合わない。どうしてこんなことをやったのか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  122. 中島一郎

    中島(一)政府委員 単独法案として出すか、あるいは一括法案として出すかというようなことにつきましては、私どもといたしましても法制局と協議をいたしました。その段階におきまして、この供託法利子の停止の問題は、形式的に申しますと、臨調の第一次答申の中にそのもの自体としては取り上げられていないという意味におきまして他の事項と違っておる。そして実質的ということから申しましたならば、他の事項は、いずれも特定の行政目的を推進するための補助金その他を削るとかあるいは制限するとかいうような性質のものでありますが、この供託金利子の停止は、そういう意味においても若干性質を異にするというようなこともありまして、単独法案として御審議を仰ぐことになったわけでございます。
  123. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたは二つの理屈をお挙げになりましたが、まず前段の第一の問題について私はどうも納得できない。それは臨調の答申の中に入っていない、だからこれを分離したんだ、三十六の法案はそれぞれ臨調の答申の中に入ったからこれは一括して特別委員会に付議した、その理屈は一体何です。それほど臨調の答申というものは、特別扱いをしなければならぬ特別の理由でもあるのですか。一体、臨調というものは権威があり、それほど別個に扱わなければならぬほど重要な審議会なんですか。私は、臨調の性格といいますか、それをひとつお聞かせ願いたい。  時間がありませんから、いま一歩私は自分の考えを説明すれば、臨調なんというものは、国民の選んだものでもなければ国民から負託されたものでも何でもない。政府が、一つの行政改革なら行政改革でもよろしい、政府の責任において改革すべきその作業を進める上において一参考として意見を承ろう、行政はあくまでも政府の責任においてやらなくちゃいけない、その政府が進める行政の一つの参考意見として――そんなのは政府の諮問機関だよ。諮問機関として土光さんだか何だか知らぬけれども会長にして、九人の委員を選んで、そして諮問をしたというだけの話であって、こんなものは何も国民が選んだわけでもないし、国民に根が生えているわけでもない。国民に責任を負うわけでもない。そんな臨調などというものが出した答申は、政府が責任を持って行政を進める一つの参考意見として政府の諮問に答えただけの話なんだ。  それを何か神のお告げかのように考えて、臨調の答申だから特別扱いにして、別個の枠をはめて特別委員会に付託する。いわゆる臨調様々だ。今度の供託法の問題は、答申なすったことの中に入っていないのだから、別枠にして別扱いにするなんということは、理屈の上から見ても、扱いの上から見ても、これほど、別な言葉で言えば国会を軽視し、行政の権威をみずから失っているような言い方はないです。  臨調の答申であろうと、われわれが言う話であろうと、国民が言う話であろうと、政府が出した場合には政府の責任において出したはずだ。これは臨調のひもつきですから別にします、これは政府みずからが掲げたことだから別枠にしますなんという、そんな扱いが国会の場に持ち込まれてくること自体が大変な間違いだ。流れてくる水がどこからであろうと、政府というプールの中に入ったら、ちゃんと一本で出てこなければならない。行政改革の問題として、費用節約の面においてこれは一本に国会の御審議をいただきたいというのが政府の責任ある態度でなければいけない。  われわれ国会の場まで持ってくるについてもそういうような区分けをして持ってくるということは、政府みずからが自分の責任を回避しているんじゃないか。臨調などという、おれに言わせればへでもないものだ。そんなものを国会、立法府よりも権威があるような扱い方をしているというようにひがまざるを得ないくらいのこの扱い方が、私は気に入らないのです。どうですか。何でそんなことを言って区別をしなければならない理由があるのか、お聞かせいただきたい。
  124. 中島一郎

    中島(一)政府委員 臨調というのは、確かに政府が財政再建を進める上においてその具体的な方策について諮問をしたその委員会であろうというふうに考えております。ただ、政府としては、その臨調の答申を尊重して、そしてこれを実現に持っていくという前提で諮問をいたしましたし、諮問の結果出たものについてもそういう取り扱いをするということが前提になっておろうかというふうに考えるわけであります。  供託法利子の停止につきましては、これは形式的には、先ほども申しましたように、臨調の答申の中に盛られておらなかった事項でありますから、これをどういう扱いとして持ち出すかということは、政府として自由に決定ができる問題であろうかというふうに考えるわけでありまして、その法案の形式のいかんによって一方は政府の責任において出した、一方は政府の責任でないというようなことを申し上げているつもりではございません。これは全くすべて政府の責任において出すわけでありますけれども、その具体的な法案の取りまとめ方式というようなことにつきましては、これは政府の責任において決めさせていただいた、こういうことであろうかと思います。
  125. 小林進

    ○小林(進)委員 ともかくここにはあるのですよ。「行財政改革に関する当面の基本方針」というのがある。昭和五十六年八月二十五日閣議決定だ。その中に「法律改正を要する事項」といって大きな二がついているが、いま言われるように、その中の(一)中には、いわゆる臨調答申を七つの項目に分けて、そして三十六の法律を改正することになる。それで今度は(二)の方には、いまも言うように、「上記のほか、供託金利息を停止するための法律案及び外国人登録法」云々と言って、(一)と(二)と分けている。  だから、それが何かというと、第二番目に言うように、供託金は政府自体の金じゃない、供託金は国民の金だから若干の扱いを区別しますということは別として、第一の理由の中で、同じ節約をする金だが、片っ方は臨調の答申だから(一)の中に含めて入れるが、これは臨調答申にないんだからこっちの方は(二)にして、いわゆる区別の上にも区別をするというその考えが、いかにもいわゆる行政府として、内閣としての権威を失っているじゃないか。臨調の答申であろうと、政府自体が考えたことであろうと、官僚がもってしたことであろうと、行政上の節約をするなら節約する一本で、政府の責任で国会に出せばそれでいいじゃないか。一本で閣議で決めればいいじゃないか。  それを臨調の答申だからといって、わざわざ(一)、(二)に分けて同じことをこういう区別をしているところに、いかにも行政の権威を失ったようなみすぼらしさがある。ぼくの言葉で言えば、根性のいやらしさだ。土光先生の答申だからこれは特別(一)にして、こっちの方は拳々服膺して尊重しなければいけない、こっちの方は行政が持ってきて政府が考えた節約条項だから、これは(二)にして区別しておこうという、そういうさもしい気持ちが見えるようでいやだと言うんだ。同じ政府が一括しておやりになるなら、一括の条項でいいじゃないかと私は言っている。審議だって一括していわゆる特別委員会にちゃんと付議して、それでいいじゃないか。  まあ、これもあなたと議論したって議論が乾かないけれども、臨調という国民に足場を置いたわけじゃない、国民の負託を受けたわけじゃないそういう委員会を余り拳々服膺したり重要視したりして、みずから行政府の権威を失墜したり立法府の権威を失墜する、国民から見てそういうように思わせるようなことは細心の注意を払っていただきたいというのが実は私の質問の趣旨なんですよ。  これから私もひとついまの行政改革委員会に行って一席やらせてもらおうと思って党に申し込んでいるのですけれども、どうも中曽根君なんかの答弁を聞くと、物欲しげな、卑しげな答弁ばかりしているから、全くはたから見ても気が気じゃないのです、いやらしさが鼻について。臨調様々、臨調様々と、国民側から見ると、行政の上にも国会の上にもその上に臨調があるような、ともすると国民にそういう疑惑を持たせるような問答をしている。いやらしくてしようがない。  それで私は、行政改革特別委員会でもやらしてもらうけれども、ひとつ法務大臣にお伺いしたい。  法務大臣は、先ほどから言っているように、行政府の長でしょうけれども、やはり立法府の、国民の負託を受けた最高議員の一人でもありまするから、こういう閣議の席上で臨調答申とそうでないものを区別までして国会の審議に諮ろうなんというときに、素直にそれを認められたのか、一言私と同じような考えになって腰を入れてやられたのか、ちょっと私はお伺いしておきたいと思うのです。
  126. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 当初、法務省といたしましては、供託法の改正案を一括法案の中に入れてもらおう、こう考えたわけでございました。しかし、法制局の見解として、別建てが望ましいということでございました。一括する取り扱いは、国会運営からいうて例外でございます。常任委員会制度をとっておりますので、それぞれの法案には関係委員会があるわけでございます。でありますから、私は常道に従って、法制局がそういう見解であるならば、法務委員会へかけることが筋だ、また、野党の皆さん方もそういう御主張をなさっておったわけでございまして、したがって例外措置はとらない、本道を行くということで供託法の改正案を別建てにさせていただいた、こういうことでございます。
  127. 小林進

    ○小林(進)委員 いみじくもいま法務大臣のおっしゃった答弁は、私の言わんとするところなのです。おっしゃったとおりです。  いま特別委員会にかかっている三十六の法律は、たしか九つの常任委員会に付託せられて、そこで各委員会、各専門がそれぞれの委員会で血を吐く思いで審議を重ねてきた法案だ。それをたまたま国が財政で赤字を出して借金をしたから、そのために節約をするということで、その血を吐く思いで各委員会が全部審議をし尽くしてきたその法案を、一括まとめて、もとの委員会、常任委員会に付託しないで全部特別委員会に入れてしまった。新憲法下における国会というものの審議の中心は常任委員会制度です。常任委員会中心で動いているこの三十六年の、日本の新憲法下における議会のあり方をこれは否定しちゃっている。否定と言っちゃいけないけれども、その常任委員会制度を制限しちゃって、そして特別委員会に持っていって、全部それをぶち込んで安易な審議をやっているという、これは重大な間違いなのだ。  そんなことを与党を問わず野党を問わず、議員諸君がまた平気でそれに賛成しているというのだ。全く新憲法の趣旨、議会の本義さえも失っている。何といういまの議員諸君は勉強が足りないのだろうと思って、私は心から憤慨にたえなかったのでありまするが、いみじくもいま大臣が言われた。各もとの常任委員会に全部付議して、常任委員会でやるのが本当だとおっしゃった。そのとおりなのです。  その意味においては、この供託法を法務委員会に持ってきてやったのは正しい。他の三十六の法案もそれぞれの委員会へ全部行って、そこできめ細かく審議する。たとえば年金法の、五%を積立金から三年間その金を借りるとか、あるいは国民健康保険法の五%、政府の四割の補助金の五%を今度は地方自治体に出してもらうように法改正するとかということになれば、それはやはり社会労働委員会。あるいは、練って練って練り抜いて、十二年間で四十人学級をつくるという、やっとつくり上げて去年から実施されたそれを改正するというのなら、練り抜いた文教委員会へ行ってそこでその問題を審議するというのは、われわれは国会議員として立法府の正しいあり方を守るためには、そういうところに真剣な審議がいかなくちゃいけない。  それを、国が赤字になりましたからといって、いままで培ってきた常任委員会制度を全部否定してしまって、がらがらっとそんな安易なところへそれを持っていった。それを黙って見ているなんということは、私は残念至極にたえないのでありますが、法務大臣がいまいみじくも私の言わんとするところを若干賛成していただきまして、それは各常任委員会へ全部分割してやるべきが至当だとおっしゃった。ははあ、奥野さんもいいところがあるのだなと考えた次第でございますが、私は、この問題はこれでふたを閉ずるわけではない、行革へ行ってまたひとつこれをやりますから、これはその程度にいたしておきますが、いずれにいたしましても、一つの法案は法務委員会へ持ってきて、あとの法案は一括してまとめて特別委員会に付議したというこの政府の姿勢、この閣議の決定は決して正しいことではございませんから……。  しかも、こんなことを議論し尽くさないでいると、三年か五年たって、また国が赤字になった、国債を発行しました、財政が赤字になりましたからまたこれをやりましょうと言って、行政が失敗しては三年か五年か十年目には各常任委員会の機能を停止しては、こんなことを繰り返されたら、これは知らず知らずのうちに立法府の権威を全く失うことだ。だからもう大変なことなんだ。だから、この問題は各委員会で論じて、こういう特別委員会などをとってこういう審議をすることは、これが何もかにも一回だ、もう二度とやらないという確約をとらなくちゃいけない。これは法務大臣が確約することではない、総理大臣から確約をとらなくちゃならぬ問題でありますから、私はいまでは腹はそう決めておりますが、その点はひとつ正しく御認識をいただきたいと思う。  用意した質問がまだ半分くらいしか来ていないのでありますけれども、いずれにしましても、ここには「供託法の一部を改正する法律案に関する意見書」というものが弁護士連合会から来ておりますが、この中には、やっぱり私が言っているように、これは不当利得だと言っておりますね。この不当利得の方は、時間がないからやめましょう。  最後の一問で、これだけは聞いておこう。  同じ供託をしますが、その中で現金を供託すると五十七年の四月から一銭にもならない。ところが、国債やその他の有価証券供託いたしますと、これは従来どおり、国債には国債利率で、日本銀行に預けられようと国庫に入ろうと、ちゃんと利息がついて回るのですね。そうすると、同じ供託という制度の中でも、証券を預けた者はこの法律改正に何にも影響を受けないで、依然として果実を自分のふところへ入れることができる、現金を預けた者だけが、このとおり利息を切られて一銭にもならない。同じ供託でも有価証券と現金でこれだけの差別が生ずるということに、一体大臣は矛盾をお感じにならないのかどうか。いかがでございましょう。
  128. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 現在、有価証券供託されました場合には、その果実は供託者のものになっているわけでございまして、現金の場合には一分二厘でございますけれども有価証券の場合には、その有価証券の実体によりまして、六分であったり七分であったり八分であったり、回っていくわけでございます。その点は何ら変わりはないわけであります。また、現金の場合に手数料をちょうだいいたしませんと同じように、有価証券のものについても手数料は徴収していないわけでございます。  したがいまして、現実は供託者の意思に任せておるわけでございまして、その点は、この三年の間につきましても、供託者有価証券を選択できる場合に、有価証券を選択されることを拒否する考え方は毛頭ない。現実は現金と有価証券との間に違いが実質的にはございます。それは今後の三年間についても同じ状態が続いていくんだと御理解いただきたいと思います。
  129. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは、後で質問する人があるそうですから、時間も来ましたから理屈はやめましょう。  私は、いま新商売を思いつきました。大体、弁済供託とか保証供託という場合、供託は現金であろうと国債やその他の債券であろうとも、これは区別するような供託の種類はございませんね。どっちでもいいのが大体これは共通していますね。ところが、現金を預ければ三年間は無利子だ。債券であれば、国債、債券を持っていけばちゃんと利率が回る、年六分でも七分でも回るんだ。  そこで、私はこれからひとつ商売をする。全国の供託を扱っている法務省の出先に連絡をつけまして、現金を持ってきさえすれば、私はそれを国債なんかにかえる商売をひとつやりまして、そうしてそれを国債にかえて供託させる。そのかわり、それについてくる利息の三割は手数料として私にそれを払う。あとの七割はその供託者のふところへ入る。こういう商売をひとつ私はやろうと思いますが、これは法律違反になりませんね、どうですか。この営業は禁ずべき理由はありませんね。いかがですか。
  130. 中島一郎

    中島(一)政府委員 ただいまの御質問でございますけれども弁済供託につきましては、これは金銭供託ということになっております。なぜかならば、債務の本旨に従った提供をして、その提供が受領を拒否された場合に初めて供託が許される、こういうことになりますから、通常の債務におきましては、金銭その他を提供することが債務の本旨に従った提供ということになるわけでございまして、その金銭の受領を拒否されたためにそれを供託所供託するというのが、弁済供託の本流であるからであります。  それで、金銭有価証券供託が許されますのは、その他の供託営業保証供託あるいは裁判上の保証供託、選挙供託等でありますが、そういった場合の供託につきましては、金銭供託するも有価証券供託するも、これは供託者の自由でございます、もっとも裁判上の供託の場合には、裁判所が相当と認めて許可した場合に限るわけでありますが。ただ、その供託者の範囲というものは決まっておりますので、第三者である小林先生供託をするということは、これはその面で許されないことになるわけでありまして、供託者がそれを了解の上供託して、供託者の間でどういう契約が成立いたしますか、それは別問題といたしまして、どうも実際問題としてそういう商売は成り立たないのじゃないかというのが、私どもの考え方でございます。
  131. 小林進

    ○小林(進)委員 時間もなくなりましたので、あなた、私の営業に関する一番重要なポイントだったけれども、これはまた後日に議論を残してこれで終わることにいたしますけれども、ただ、弁護士連合会が、これは右の利益を国が不当に利得するものであるという見解です。それから、現金供託証券供託との間における均衡を失しているというこの議論は、私は肯綮に値すると思っています。  同時に、法務省というのは、繰り返して言いますが、法律を一番正しくつくり、かつ実行する省でなければいかぬ。それが三年間というあいまいな期間を設けて、国の財政が赤字だからといって、こういう出口も入口もわけのわからぬような安易な法律改正をやるなどということは、私は法務省自体のあり方から見ても重大な間違いだと思っている。ましてや国民の権利です。決して国の金じゃない。人民の権利だ。その権利として与えてあるものをこうやって剥奪することは、それは国民の権利をあくまでも守らなければならぬという立場からも、私は断じて賛成することはできません。  どうかひとつ、法務省に一片の良心があれば、早々にこの法律を撤回せられることを強く要望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。      ――――◇―――――
  132. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、内閣提出外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。
  133. 稲葉誠一

    稲葉委員 外国人登録法の一部を改正する法律案が、また出たと言うとあれですが、出たわけです。  そこでお聞きをしたいのは、大臣、聞いていていただきたいのですが、私は、文化国家とかあるいは民主主義国家とかという一つの尺度として、その国に在留する外国人に対する処遇がどういうふうに行われているかということによって、その国が本当の文化国家であるか、民主主義国家であるかという一つの標準になるというふうに考えるわけなんです。  日本の場合は、世界的にいろいろな歩み方があるわけですが、たとえば最初は外国人を敵視しましたね、敵視主義があるし、それからある段階を経て相互主義があり、それから内外人平等主義というようなところに到達しつつあるわけですが、いま世界的な中で見て、日本外国人に対する処遇がどういうところにあるかということ、これは局長からでも先にお答え願いたい、こう思うわけです。
  134. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいまの稲葉委員の御質問は、外国人が国内でどういう処遇を受けているかということに関するものだと思います。歴史的に見まして、日本の徳川時代は鎖国、これは明らかに外国人を敵視していた時代と言うことができようかと思います。明治に入りまして内外人平等が原則ということになって、今日に至っていると了解しております。
  135. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、内外人平等ということでいいのですか。そういうふうにあなたがあっさり言われたけれども、内外人平等でも何でもないのじゃないですか。それはあなた、ちゃんと最高裁判所判決もあるでしょう。そこにいろいろなことが書いてありますね。何か補足するところがありますか。
  136. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 内外人平等が原則であるということを申し上げたわけでございますけれども、もう少し敷衍して申し上げれば、私権に関しましては内外人平等、しかし公権上の権利義務に関しましては、これはどこの国でもそうでございますけれども、内外人は平等ではない面があるということでございます。
  137. 稲葉誠一

    稲葉委員 きょうは総論的なことをお聞きして、具体的なことは二十八日にお聞きをするつもりにしておりますので、総論的なことをお尋ねしますと、たとえば最初は外国人登録令でしたね、それと、外国人登録法ができて、その目的が第一条に両方書いてあるわけでしょう。その目的を比較してみると、一体どこが一番違いますか。
  138. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 旧外国人登録令の制定された昭和二十二年五月、当時内務省でございまして、そこから「外国人登録令解説」というのが出ておりますが、その当時の登録令の目的といたしましては、まず不法入国の発見であるとか防止であるとか、これを一つ目的としまして、もう一つ外国人の保護に関します国内各行政、たとえばその解説書によりますれば、住居の問題であるとか当時の食糧配給の問題であるとか、そういうものに基礎的資料を提供する、こういうふうに書いてあります。  二十七年に外国人登録法ができましたときに、その登録法は在留する外国人の公正な管理に資するということで、これから見ますと、旧外国人登録令と申しますのは、直接に出入国管理というものを取り締まると申しますか、それを含んでできておったわけでございますが、現在の登録法は、それを直接に管理すると申しますか、取り締まるという面は出入国管理令の分野に譲りまして、現在の登録は、持っておる資料と申しますか、それを外国人の在留管理の方に資するという形で、要するに資料を提供する、記録を提供する、こういう関係になっておるわけでございまして、その分につきましては、旧外国人登録令に比べまして、現在の登録法は直接の取り締まりというところから一歩下がっているんだ。  ただ、二番目に申し上げました各国内行政に資料を提供して利用してもらう、この問題は、現在の登録法においても現実に出入国管理の分野におきましてはそれを提供いたしておりますし、また、他の行政分野、特に社会保障の問題も多かろうかと思いますが、その分野に対しましてもその持っている記録を利用してもらう、こういう関係にあるということで、両者関係はもちろん基本的に変革はなかったんだろう、ただ、直接に取り締まるというところが現在の登録法が欠けている、こういうふうに理解いたしておる次第でございます。
  139. 稲葉誠一

    稲葉委員 外国人登録令の場合には出入国管理の入国や出国の規定も入っておって、それがいまの外国人登録法の中では外れて出入国管理令、それが今度は出入国及び難民認定法になったわけですね。そこで、外国人登録令と外国人登録法の第一条の目的を見てごらんなさい。管理という言葉が今度は入っているでしょう。ぼくは管理という言葉に非常にこだわるのですが、外国人登録法の第一条には管理という言葉が入っていますね。外国人登録令には入っていないでしょう。  それともう一つお聞きしたいのは、住民基本台帳法にありますね。これは日本人に対するものですけれども、これは一体どういうふうなことが書いてありますか。管理という言葉が入っていますか。
  140. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 住民基本台帳法にはもちろん管理という言葉は入っておりません。二十七年にできました現在の外国人登録法には、先生指摘のとおり管理という言葉が入っております。ただ、管理という言葉は、先般の通常国会で入国管理令の改正法案をお諮りしたときにも先生から御指摘いただいた点でございますけれども、これは二重の意味があるんじゃないかと考えております。一つはいわゆる規制面でございます。したがいまして、たとえば在留資格のない者は国内に入れないとか、それから在留期間を過ぎた者は出国してもらうとか、いろいろそういう規制する面があるわけでございます。他方におきまして、管理という言葉の中には行政サービス的な側面もあるわけでございます。入国管理令につきまして言えば、たとえば永住を許可するとか再入国を許可するとか、こういうことは先ほど申し上げました規制面とはやや違った面がございまして、これは私ども行政サービス的な側面と考えているわけでございます。  それじゃ、現在の外国人登録法はその二つの側面を持った管理にどう結びつくかということでございますけれども、たとえば不法入国者の規制とかそういうことにつきましては、もちろんこの外国人登録というものが非常な効果を発揮するわけでございますけれども、同時に、先ほどのサービス面について言えば、永住申請をするとかあるいは再入国許可を申請するとかいう場合には、その外国人は外国人登録証明書を提示してもらうということになっております。そういうことで、管理の両側面にそれぞれこの外国人登録法というものは関係があるというふうに考えているわけでございます。
  141. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは大臣にお聞きしたいのですけれども、住民基本台帳法はもちろん日本国民に対するものですね、これはあたりまえの話ですが。その主たる目的は第一条に書いてありますけれども、国民の利便を図るんだとちゃんと書いてあるのです。ところが、外国人になってくると、今度は管理をするということになってくるのですね。利便を図るということと管理をするということとは全く違う観念ですね、言葉響きは。それは管理の中にいろいろなサービスもあるかもわからぬけれども言葉響きとしては全体として非常に違うのですね。これでは内外人平等主義ということが原則だなんということが言えないのじゃないですか。それが一つですね。  とすれば、将来内外人平等主義に向けていくとするならば、特に日本の場合、戦前、明治四十三年、日韓併合で日本に来た朝鮮人、あるいは時期が違いますが台湾人、そういうふうな人が自分の意思によらずに平和条約のときに日本の国籍を離脱したわけですね。そういうふうなことから考えてみると、そういう人をたくさん含んでおる日本の対外国人政策といいますか、そういうふうなものは当然大きな変化をしていかなければいけないんじゃないか、平等主義へ向かって大きく歩んでいかなければいけないのではないか、こういうふうに私は考えるわけですが、そういう点についての大臣のお考えをお聞かせ願いたい。
  142. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先ほど事務当局から申し上げましたように、私的な権利と公的な権利、特に公的な権利といいますと政治活動の問題が入ってくると思います。選挙権、被選挙権というような問題にもまたがってくると思います。こういうことを分けなければならぬわけでございますけれども日本も国際人権規約、これを批准しておるわけでございまして、基本的には人類平等、こういう方向に進んでいく、そういう目標は持つべきだと思うわけでございますけれども、やはり私的な権利と公的な権利を分けて考えていかなければならぬのじゃないだろうかな、こう思っております。やはり相互主義でありますとかあるいは内外人平等でありますとか、物によってできる限り前進を試みようとしておるのが日本の姿だ、こう申し上げられるんじゃないかと思うのですけれども、前国会におきましても、国民年金でありますとか児童手当でありますとか、こういうものを外国人にも適用していくというようなところに踏み切っていったわけでございまして、私的な権利につきましてはできる限り内外人平等でいこうじゃないかという方向には来ているんじゃないだろうかな、私はこう思います。  住民基本台帳の方は国民の利便を図ると規定していながらも、外国人登録法についてはそういう姿勢が出ていないという御指摘がございました。管理という問題、規制だけ考えるわけでありますけれども、いろいろな場合に外国人を守っていかなければならないという場合もあるわけでございまして、身分関係、居住関係外国人についても明らかにして外国人の管理の公正を期していく。その場合に、管理は制限だけを考えているんだということでなしに、やはり外国人を守る面も考えながら行政運営が行われているんじゃないかなと私は思いますし、またそうしていかなければならないと考えているものでございます。
  143. 稲葉誠一

    稲葉委員 言葉にこだわるわけじゃないんですけれども管理というのはすなわち取り締まりというふうに、私どもの考え方からするとどうしても出てくるんですね。これはいままでの例からしてもそういうふうになるんじゃないか、こういうふうに思うのです。  そこで、いま言われたように、大臣は相互主義の話をされましたね。局長の方は相互主義の話はない。敵視主義から簡単に平等主義へ飛んじゃった、あなたの話は。だからぼくはおかしいじゃないか、こう言ったのだ。そんな経過じゃないでしょう。大きく分ければ敵視主義から相互主義、相互主義から平等主義。完全な平等主義へは日本はまだ行っていないわけですね。世界だってどこだって、行っていないと言えば行ってないかもわからぬですがね。  そこで、いつでしたか、最高裁の判決がこれにありますね。そのときには、何か社会的な合理的な理由がない限りやはり内外人は平等だ、憲法十四条の適用もあるんだ、こういう判決ですね、あの最高裁の判例は。昭和三十何年でしたか、何年の判例だかちょっと忘れましたが、最高裁の判例は、憲法第十四条はそのまま適用になるけれども、社会的、合理的理由があれば制限されるのもやむを得ないというので、適用になるということが原則に出ていますね。だから、制限というものは例外的な規定として厳格に解さなければいけない、こういうふうに私は思うわけです。  ちょっとよくわかりませんのは、この外国人登録法というものがなぜ国の事務でなければならないのかということですね。住民基本台帳、住民登録その他はもう市町村の事務ですね。ところが、外国人登録だけは国の事務として法務省は放さないわけだ。これは一体どういうわけなんですか。
  144. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 先ほど先生がお触れになりました最高裁の判決は、昭和三十四年のものだろうと思います。  次に、ただいまの御質問でございますけれども外国人登録法でも、この外国人登録は国の仕事であるということを言っているわけでございます。これは基本的にそのとおりでございます。ただ、国がその事務をみずから行うかあるいは機関に委任するかという点はございます。わが国の場合にはこれを都道府県知事及び市町村長に機関委任をしているということでございます。しかしながら、これはどこまでも国の仕事であることに変わりはないわけでございます。
  145. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、私の聞いているのは、外国人登録というものはなぜ国の事務でなければならないのか、地方自治体の事務として扱ってもいいのではないか、なぜ国の事務としてそれを取り扱うのか、そこに外国人を規制するというか管理するという実態があるからこそ、そういう必要性が出てきて国の事務として統一しているんじゃないですか、それを聞いているわけですよ。機関事務としてほとんど全部委任しているのでしょう。全部委任しているなら、地方自治体の事務として住民基本台帳と同じにやったらいいじゃないですかということを聞いているわけです。なぜ国が統一的にやらなければならないか、そこに疑問点がある。基本の問題を聞いているわけですね。
  146. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 先生がおっしゃいましたように、外国人登録法というものは、入管令の実施のために必要な情報とか資料を提供して、もって公正な外国人の管理に資するということになっているわけですけれども、この外国人の管理、これはいろいろな側面がありますけれども、規制面について言うならば、これは国の大きな仕事でございます。したがって、外国人の公正な管理という国の仕事に非常に密接な関係のある外国人登録、これは当然国が取り扱わなければいけないものだろうというふうに考えるわけでございます。  なお、外国人登録証明書というものは、外国人の地位を示す非常に重要な文書でございます。これが外国人の管理と非常に密接な関係のある文書でございます。これを定めている外国人登録法というものは入管令に非常に密接に関係がある。そういう意味で、両方とも国が責任を負わなければならない仕事であるというふうに考えております。
  147. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、あなたの言われているのは、現行法の解説なんですよ。私の言うのは、現行法の解説以前の問題として、なぜ国がやらなければならないのか、地方分権の時代になってきているのに、実際の事務は皆県や市町村がやっているのだから、そっちへ任したらいいじゃないか、何も国の事務としなくたっていいじゃないか、国の事務としている根本的な理由は何かということを聞いているのですよ。あなたの言われたことは、結局は日本の国内治安の対策上どうしてもそれを中央が握っている必要があるから、だからこれは国の事務としておるという意味が含まれているのでしょう。それでなければあなたの答えは出てこないのですよ。  あなたの答えは現行法の解釈をしている。私は、その前の、なぜ国の事務として取り扱わなければならないのかということ、それは一つの治安対策として全体を日本の中央で把握をしていなければいけないんじゃないか、そのことのためにこれが行われているんだ、国がやっているんだ、こういうふうに私は考えておるのです。それが一〇〇%かどうかは問題ですが、そういう面が多分にあることは間違いないんじゃないですか。これは大臣、どうですか。
  148. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いまおっしゃったような意味の改正も、今度の中で、たとえば不要になった外国人登録の写票を、いままでは国に送らせておったわけでありますけれども、市町村限りで処分してしまってよろしいというようにするわけでございます。  基本的にいろいろな仕事を、国の仕事にするか、府県の仕事にするか、市町村の仕事にするかということについては、やはり一つの基準がなければならないと思いますし、また経費の負担も、どこが経費を負担するかということについては基準がなければならない、そういうことは地方自治法や地方財政法に書いてあるわけでございます。  国が統一的な基準で処理しなければならない仕事は、やはり国の事務だと思うのです。その仕事を、国の出先機関を設けて処理させるか、府県にやらせるか、市町村にやらせるかはまた別途の角度で考えてよろしいと思うのでございまして、現在は国の事務であって、それを府県と市町村とに機関委任しているということになっているわけでございます。しかし、できる限り実務はもうこれからは市町村で全責任を持ってやってもらった方がいいんじゃないかという方向に向かっている、その一部が今回の改正案にも盛られている、そこは稲葉さんのお考えと合った方向をたどっているんじゃないかな、こう思います。
  149. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の聞いていることとお答えとが、合うところと合わないところとあるのですが、答えは違っても構わないですよ、それはあたりまえの話ですからね。質問者の答えと答弁者の答えが違うのはあたりまえの話なんですが、合ったというか、焦点が合ったところで答弁が合うならいいのですが、どうもちょっと食い違っている。  私は、現行法の前の問題の方で、基本的な考え方を聞いているのです。いま大臣が言われた、統一的に扱わなければならない仕事を国が扱うのだというのでしょう、それはそのとおりですね。では、なぜ外国人登録法は統一的に取り扱わなければならない必要性なり何なりがあるのか、こう聞いているのですよ。それはやはり外国人というものは中央政府が完全にコントロールして、状態を全体の把握をしていないと困るという考え方からきているのでしょう。一たん何かあったときに非常に困るという考え方からきているんじゃないですか。そういう面が一〇〇%だとは私は言いませんけれども、そういう面が多分にあることは間違いないんじゃないですか。だから管理という言葉が使ってあるし、片方は、日本の国民に対してそういう必要がないから、国民の利便を図るんだと書いてあるのです。結論はそこに出てくるんじゃないですか。そういうようにも考えられませんか、どうなんですか、それは。
  150. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいま大臣がおっしゃいましたことに特につけ加えることはないのでございますけれども、しかし、外国人の入国、滞在に関する問題というのは、国の大きな仕事でございます。国の事務でございます。ただ、国としては、たとえば日本は数十年ぐらい外国人の移民を認めないという政策をとっております。したがって、そういうことを目的とした外国人の入国は認めない、そういう取り扱いをしているわけでございます。こういうことは国としての大きな仕事でございますけれども、法をくぐってまた不法入国者というものが入ってくるわけです、表門から堂々と入ってこられないものですから。ところが、そういう人たちはできるだけ摘発をして本国に送り返さなければいけないということになります。これをやるためには、やはり外国人登録制度というものがないと、実効を期すことができないわけでございます。したがいまして、外国人登録法というものは国の仕事、国の事務ということになるわけでございます。
  151. 稲葉誠一

    稲葉委員 そういう説明でわかりますよ、そういうことは。結局、外国人登録法というのは、不法な入国者や何かを発見する一つ目的を持って制定されているものだ、こういうことになるわけですね。それも一つ目的ですよ。私は全部とは言いませんよ。それは一つの国として、独立国家として当然なことかもしれません。だけれども、そういう面が非常に強く日本の場合は出ているのです。だからこの次の通常国会にこの改正法を出すというのでしょう。その中で、罰則が全部同じで、ずっと幾つも並んでいますね。あれなんか本当に二枚づけなんですよ。ぼくもいろいろなつくったときの話を聞きましたけれども、二枚づけで、携帯義務から何から全部一緒くたの刑にしているのでしょう。一年または三万円以下の罰金でしたっけね。そういうふうにしているわけでしょう。これはもうずっといろいろな軽重があるわけですからね。  そこで考えられるのは、日本においての内国民待遇というか、自分の意思によらないで日本人になり、自分の意思によらないで日本人から離れた人が日本にはいますね。約六十万いると言われておる。その中で、たとえば日韓条約によって協定永住を得た人とかそういう人もいますね。それから一二八もいるというわけでしょう。そういう人にまでなぜ外国人登録証の携帯義務を課さなければいけないのかというわけですね。取り締まりから言えば、そういう人とそうでない人と区別するのは実際問題としてなかなかむずかしい、むずかしいからなかなか技術的にそうはいかぬと言うかもわからぬけれども、理論の上、理念の上から言えば、そういう人は日本の責任において便益を与えるべきで、外国人として登録証の携帯を義務づけて、それを持ってなかったら逮捕する。現に逮捕しているのが相当ありますよ。そういうふうなことまでしなければならぬということはおかしいのじゃないか、それは適当な区別というか、設けてもいいのじゃないか、こういうふうに私は考えておるのですね。その点についてはどうですか。
  152. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 外国人がわが国におります場合には、みんな旅券とかそういう身分を証明する文書を携帯しなければいけないことになっております。これはどこの国でもほぼ同じような制度をとっているわけでございます。ところが、この旅券には、身分関係ははっきりしても、居住関係は必ずしもはっきりしない、そういうことが書いてないわけでございます。さらに、わが国におりますいわゆる朝鮮半島の出身者は、その旅券さえも持ってないという人が大部分でございます。しかも現在、先ほどから申し上げておりますが、不法入国者というものの数は必ずしも減ってない。やや減りつつある傾向は認められますけれども、後を絶っているわけではございません。そういう状況におきまして、朝鮮半島出身者、いわゆる長期在留者につきましても携帯義務を課すことによって、私どもとしてはこういう不法入国者の取り締まり、規制というものに完全を期したいと考えておるわけでございまして、現在そういう人たちに携帯義務を免除するということは考えておりません。
  153. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは通常国会で、外国人登録法の全面的改正というとおかしいのですが、そういうふうなものが行われる。それで、問題点が幾つかありますね。指紋の問題もあるし、期間の問題もあるし、罰則の問題もある、いろいろありますが、これはこの次に具体的な事例を挙げてお話をさせていただきたいと思うのです。これは法務省の責任でないと言うかもわからない。きょうは警察呼んでいませんから、この次呼んでいますから……。  たとえばことしの九月に、東京にアジア文化会館というのがあるでしょう。アジア人の留学生が集まっているところです。今度穂積五一先生が亡くなられて追悼会がありましたね。あそこに来ておる中国人の人ですから、まだ日本へ来たばかりで日本の状況がよくわからぬわけですね。そしてあそこから後楽園まで行ったのかな。そうしたら、顔を見てどうも中国人らしいというので、警察官が職務質問するでしょう。そして、夏だから、自転車で行ったものだから上着を着てないから、外国人登録証明書を持ってないわけですね。そうすると、逮捕しちゃって手錠をはめて、本富士署に一晩泊めているのですよ。いまその内容を調べさせています。こういうようなことをやっているが、それはあなた方の意思ではない、法務省としてはそんなことをやるつもりないのだと言ったって、現実に扱うところの警察当局はもう完全な一つの敵視政策をとってやっているわけですよ。  たとえば、後楽園で野球があるとします。そうすると、名前を挙げちゃ悪いから名前を挙げぬけれども、ある人がいる。それは国籍は日本じゃない。その人が野球をするときに、コーチャーボックスに入っているというかベンチに入っている。それはポケットに外国人登録証を入れているのですか。そんなもの入れてないでしょう。どこかロッカーに入れてあるかもしれぬし、また恐らく持ってこないでしょう。そういう人たちに対してやらないでしょう。やらないでいて、大分古い事件かもわからぬけれども、たとえば朝鮮人の学校で、女の先生が、夏暑いからというので、教員室へ上着を脱いでその中に外国人登録証を入れてしまっておいたわけです。そうすると、講義しているときは、女の人だから上着を着ないで、夏だからやっていたわけです。そうしたら、そこへ警察が入っていってつかまえているんでしょう。それで罰金五万円だか、竜ケ崎で取られています。その他尼崎の例とかあります。それから、いま小平で朝鮮学校の帰りか何か、いろいろな質問をして告訴を受けている事件なんかあります。  だから、あなたの方としてはそこまでの考えはないとしても、実際は警察がいまの携帯義務違反というものを非常に厳しく見て、これはないというとあらゆる場合に非常に困るから、これはもう絶対残してくれ、警察の方ではこういうようなことを言っているのでしょう。外国人登録証の携帯義務に対して、罰則もそのことによって現行犯逮捕ができるようにしてくれ、こういうことを警察の方ではあなた方に強く言っているのじゃないですか。その点はどうですか。
  154. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 警察の方から携帯義務を免除しないでくれ、そういうものを廃止しないでくれという申し出を受けているかどうかということでございますけれども、そういう事実はございません。と申しますのは、今度の通常国会にお諮りしようとしております登録法の基本問題に関する改正案の中で、私ども自身携帯義務を全部廃止しようということは考えてないからでございます。ただ、今日まで携帯義務の年齢として十四歳以上ということになっておりますけれども、果たしてこの年齢をもう少し引き上げることができないかどうか、そういう点についての検討をやっております。法務省としては法務省なりの案は持っておりまして、その案に基づいて現在先生が御指摘になったような政府の関係省庁と協議をしている、こういうわけでございます。
  155. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、内外人平等ということ、憲法十四条も日本にいる在留外国人に適用がある。最高裁の判例が出ていますね。それは例外というか、制限条項は確かにありますよ、社会的、合理的理由がある場合を除くとか。それがない限り適用される、こういうわけですね。そうすると、内外人平等ということに反するような問題は、それぞれたとえば外国人が土地を所有する場合だとか、鉱業権を持つ場合だとか、あるいは水先案内人になる場合だとか、いろいろ制限がありますね。それらを一つ一つ具体的に私は吟味していく必要がある、こう思うのです。  一体どれが公法上の権利か、どれが私法上の権利かということは、なかなかわからないですよ。たとえば鉱業権というものを見たときに、一体公法上の権利なのか私法上の権利なのかといっても、それはどっちに理解したらいいのですか。あれは鉱業法の六条か何かで制限しているんじゃなかったですか。たしか六条だと思いましたが、鉱業権というのは一体どっちの権利なんですか。なぜそれを制限しているのですか。将来これは廃止する方向に向かっているのですか。一つ一つたくさん問題があるのです。一つ一つ今度ゆっくり聞きますけれども、いまのところ、さしあたり鉱業権の問題だけ聞いておきます。これはどういうふうになっていますか。
  156. 中島一郎

    中島(一)政府委員 鉱業法の十七条という規定がございまして、その本文におきまして、「日本国民又は日本国法人でなければ、鉱業権者となることができない。」という規定になっております。
  157. 稲葉誠一

    稲葉委員 これはどういうわけで鉱業権は外国人が持てないということになっているのですか。
  158. 中島一郎

    中島(一)政府委員 鉱業権というのは国が付与するという大前提に立ちまして、国益というようなことから外国人には付与しないということになっておるのだと理解しております。
  159. 稲葉誠一

    稲葉委員 国が付与するにしても、それは受ける方から見ると、それじゃ公法上の権利なのですか。国が付与するものはみんな公法上の権利ですか。それは内外人平等との関係でどういうふうに理解したらいいのですか。
  160. 中島一郎

    中島(一)政府委員 内外人平等と申しましても、先ほどから問題になっておりますように、敵視時代から相互主義というような経過を経て現在に至っておりますので、そこにまだ過渡的な段階というものもあろうかと思うわけであります。  土地にいたしましても、あるいは鉱業権といったような国益に非常に重大な利害関係のある権利につきましては、外国人については制限ないし禁止するという段階から、徐々にその制限を解き、禁止を外すという方向に進んできたかというふうに理解するわけでありまして、土地につきましては、外国人土地法ということで法律はありますけれども、その実質をなすところの勅令その他の規則は存在しないという段階になっておりますが、現在、鉱業権につきましてはなお禁止の状態のまま続いておる、こういうふうに理解いたしております。
  161. 稲葉誠一

    稲葉委員 外国人登録法でなくて外国人土地法の問題ですね。これは政令があって除外規定があって、これこれの者は所有できるという形になっているのじゃないですか。だから、あらゆる権利がみんなそこへ入っているのじゃないですか。あなたの言ったのは逆じゃないかな。
  162. 中島一郎

    中島(一)政府委員 外国人土地法の一条という規定は原則を定めておるわけでありまして、相互主義を前提といたしまして、「勅令ヲ以テ帝国ニ於ケル土地ニ関スル権利ノ享有ニ付同一若ハ類似ノ禁止ヲ為シ又ハ同一若ハ類似ノ条件若ハ制限ヲ附スルコトヲ得」ということになっておりまして、外国人には政令をもって禁止あるいは制限をすることができることに法律ではなっておりますけれども、この法律に基づいて制定されておりました政令はいずれも廃止されまして、現在のところは禁止あるいは制限はございません。
  163. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、きょうはこの程度にしておきますが、いま問題になっている外国人土地法というのは、外国人はだれでも日本の土地を所有できるのですよ。現在そうなっているのですよ。だから、鉱業権だけそれができないのはおかしいじゃないかという議論も出てくるし、水先案内人とかいっぱいありますよ。一つ一つ吟味していかなければならないと思うのですが、また別の機会にします。  そこで、よくわからないのは、たとえば住民基本台帳法、これを見ると登録及び公証ということが入っているのですね。外国人登録法では登録だけでしょう。その意味がよくわからぬのです。登録という意味は、一体どういう意味なのですか。登録という言葉は、どういう法律行為で、どういう効果を発生するのですか。
  164. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 登録の意味でございますが、私どももこの登録につきまして部内で研修を行う場合に、登録というのは一体どういうふうに考えればいいかということで、教材をつくったりするときに常に検討したわけでございますが、先生のおっしゃられるような公法学上の意味として公証、通知というふうに分けてこの問題を考えるというよりも、外国人登録法の登録というのはまさに登録だけのことだ、その中で証明書を出すとかという場合に、公証に関する事務というふうに理解していくのがよろしいのではないか。というのは、登録ということはかなり広うございまして、原簿に登載するということもありますけれども、それではそのこと自体公法学上の公証とか確認とか通知とかよく言われる中のどれに当てはまるかということについては、適切なものがないのではないかと考えておる次第でございます。
  165. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなた方の出した資料では、よくわかりませんが、登録と公証とを区別しているでしょう。住民基本台帳法では登録及び公証を目的としているというか、そういう任務を持っておるということが書いてありますね。外国人登録法の場合は登録だけでしょう。公証という概念は入ってこない、こういうふうにちゃんとあなた方の解説書には書いてあるわけでしょう。そうすると、登録というのは一体何なのですか。事実行為なのですか。具体的にどういうことなのですか。どうもよくわからない。
  166. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 いまの先生の御指摘の問題点につきましては、話が先ほど来のところに若干戻るかと思います。というのは、登録の中でいま一般の外国の方が登記であるとか金融であるとか就学であるということで利用しております登録済み証明書というのがございますが、この登録済み証明書というのは、いま先生の言われた一種の公証といいますか、こういう人がここに住んでいるという証明書でございますが、この登録済み証明書を発給する場合、この問題が起こったのが昭和三十七年と記憶いたしておりますが、このときに、要するにこの登録済み証明書の発給ということが登録事務であるのかどうか。  というのは、これが登録事務でありますと政令で手数料を取る、こういうふうになるわけでございますが、市町村の方で昭和三十七年ごろから、在日する外国人の中から登録済み証明書、そういう証明をしてもらうことが非常に必要になってきたという声があり、その事務がふえてきた。そうすると、市町村の方としても手数料というものをそこで考えるけれども、これが固有の登録事務ということになれば、地方自治体の方で手数料を取るということは地方自治法でできない。そこで、自治省と法務省でその問題について協議いたしまして、このときに、この手数料は条例で定めて取って差し支えないという自治省の見解が示された。  そのときに、登録済み証明書というのはそれでは一体どういうことなのか、これは登録固有の業務でないということから、いまその登録、公証というのはその点ではどうなのかという御質問に対しまして、そのときから登録事務として登録済み証明書を出すということが固有の事務でない、それは登録原簿にある記載というものを利用して利便を図るということであって、それはむしろ市町村の住民行政の分野に入ってくるのではないかというふうな考えでその手数料問題というのは解決されたという経緯からしまして、いま先生の言われる登録と公証という関係、これはもとの登録の目的とかそういうことにまた返っていく問題になろうかと私思いますが、現在登録と証明という関係は、いま申しました手数料をめぐっての問題からしても、一応そういう性格のものだと申し上げることができるかと思っております。
  167. 稲葉誠一

    稲葉委員 時間の関係もありますが、住民基本台帳法の記載の内容と外国人登録法の内容で非常に重要な点が違っておりますね。外国人登録法の方では非常に重要な点が付加されている。たとえば職業と勤務先が付加されていますね。なぜ職業と勤務先というものを外国人登録法に書かなければならないのですか。職業が変わった、勤務先が変わったといって勤務先を一々訪ねていって、それがちょっと変わっておれば、そこで逮捕したり何かするということが現実に起こっているでしょう。この二つを書いておるということは、はっきりとした敵視政策のあらわれですよ。平等主義に反するものなのですよ。  これは率直に言って、法務省としては余り賛成していなかった。職業と勤務先は、行政監理委員会の中でも最初入っていなかったでしょう。許認可の事務のときに、かかったときに入っていなかったですよ。それを公安委員会、警察の方からあれが出て、どうしても入れてくれというので、法務省は反対したけれども、この二つを入れたのですよ。取り締まりの便宜のために入れたのでしょう。これは経過から見てもはっきりしているのです。これはこの次ゆっくり聞きますから、あなたの方で研究しておいてください。確かに許認可の事務のときも、監理委員会の中に最初第一次案には入っていなかったのです。私も覚えております。だから、これは職業とか勤務先まで書く必要はないのですよ。本当にこの二つを種にして管理体制を強化していくという行き方をとっているのですよ、実際の話。これは店へ来るわけですよ。店へ来てそこにいないと、いまどこへ行っているのだと言うでしょう。職業が変わったというと、すぐそこへもうあれするというわけです。住居だと、いま自分のうちでなくて勤務先に住んでいるとなると、今度は住居が変わったとかなんとか言うし、勤務先が変わったというと、一々それを調べ回ってやっていくという行き方でしょう。これは明らかにいかぬですよ。これはよく考えておいてほしいのですが、またこの次やりましょう。  今度はこの法案、私はよくわからないところがあるのですが、この法案で写真が三葉だったのが二葉になるとか、いままで登録原票の写票を二葉作成していたのを一葉だけを作成すればいいことになった、こういうわけですね。三を二にする、二を一にする、それから要らなくなったのは返さなくていい、こういうのですが、そのことによってどれだけの金が一年間、あるいは三年間でもいいのですが、浮くという言葉は悪いのですが、あれされることになるわけですか。
  168. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 今度お諮りしております三項目の改正のうち、ただいま稲葉委員がお取り上げになりました写真を三葉から二葉あるいは二葉から一葉、この部分につきましては、委託費が減るということはございません。ただ、そのほかの、たとえば都道府県が写票を今後は保管しなくてもいいということにいたしますけれども、その点と、それから不要になった登録証明書を法務大臣へ返納する義務、そういうものを必要なくする、この二つの措置をあわせまして、来年度の予算で申し上げますと、約一億九千万円ほどの財政支出の節減が見込まれるわけでございます。
  169. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまあなたの言われた都道府県知事が保管をしなくていいことになったというのは、提案理由で言うと、ストレートにはそれは書いてないんじゃないですか。ストレートには書いてない。よく裏を読むと第二のところに書いてあるようにとれるけれども、どういうふうになっているのですか。
  170. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいま申し上げましたのは、登録法で言いますと第四条の第三項でございますけれども、「都道府県知事は、送付を受けた当該登録原票の写票を分類整理しておかなければならない。」この項を廃止するということをお諮りしております。具体的にはそういう規定でございます。
  171. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の言うのは、提案理由の説明に第一、第二、第三と書いてあるでしょう。その第二の中に、あなたのいまおっしゃったことは、裏返して読めばわかるけれども、ストレートに出てはいないでしまう、こう聞いているのですよ。
  172. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 このお手元に差し上げてございます法律案関係資料の法律案要綱の二をごらんくださいますと、そこに「都道府県知事の行うこととなつている写票の分類整理事務を廃止すること。」ということが書いてございます。そして引用してある条文は、登録法第四条と第十六条ということになっております。
  173. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはわかりますけれども、提案理由の説明の中にそれがストレートには出ていない。これをただ法務大臣に一応送付すれば足りるというように書いてあって、その裏を返して読めば、知事の方はいいのだ、こういうふうにとれるから、結局同じことになる、こういうふうに思うのですが、提案理由の説明の中には、法律案要綱そのままの形では、いまあなたのおっしゃったようなことは書いてないのじゃないかな。だから、法務大臣に送付すれば足りるということの中に、知事の方には送らなくてもいい、こういう意味が入っているわけでしょう。そういうふうにとるのじゃないの。
  174. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいまの点でございますけれども、提案理由説明の二ページ目に、「第二」としてその真ん中あたりに、「都道府県知事への写票の送付及び都道府県知事が行うこととなつている写票の分類整理事務を廃止することといたしております。」という点で、この点を触れておるわけでございます。
  175. 稲葉誠一

    稲葉委員 わかりました。写票の送付ということは後にまとめて書いてあるわけですね。  そうすると、これでよく知事会からも出てきますし、市町村会からも決議に出てくるのは、国の仕事ならば全額国で持ってくれということが盛んに出てきますね。委任事務でやっているけれども、いわゆる超過負担になって非常に困っているというようなことの決議が何回か行われているわけですね。これは知事会の決議、それから市町村会、これは全部の市町村会ではなかったような気がしますが、市町村会の中でもそういう決議がされていますね。その点の費用関係は今度どういうふうになるのですか。
  176. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 外国人登録事務に要する経費負担の問題につきましては、私どもといたしましては、これまで委託費の増額に努めてくるとともに、この登録事務の簡素合理化を図りながら、その具体的なあらわれとして、今度も都道府県の写票保管義務を廃止するわけでございますけれども、実態に即して超過負担が生ずることのないよう努めてきております。これからもそういう事態が起きないように努めていきたいと思っております。
  177. 稲葉誠一

    稲葉委員 私が聞きたいことの第一点は、今度の法案で市町村なり何なりの負担が超過負担にならないということがはっきり言えるのですか、言えないのですかということ、これが質問として第一ですね。  それから第二の質問は、来年度、五十七年度は一億九千万、これはわかりましたけれども、これは三年間というあれじゃないからずっと続くのだと思いますが、五十八年、五十九年、毎年大体同じ金額でいくということなんでしょうか、これが第二の質問です。  それから第三に、この金はどこへどういうふうに使うわけですか。たとえば供託利息を廃止するということ、これは三年間ですか、これは法務局の方のいろいろな費用や何かに使うわけでしょう。この金はどういうふうに使うということになっているのですか。
  178. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 たとえば、都道府県知事が保管しなければならない写票の保管義務を廃止するということに伴いまして、それでは超過負担の問題はどうなるかということでございますけれども、この保管事務に必要な経費は来年の予算から削るわけでございます。したがって、予算面では超過負担の問題には関係がございません。仕事も減るし、委託費も減る、そういう関係になっているわけでございます。  それから、第二の御質問でございますけれども、都道府県が保管している写票の廃止、それから不要になった登録証明書の返納義務を廃止する。これは恒久的な措置でございまして、三年間の時限的な措置ではございません。来年度は合わせて約一億九千万と考えておりますけれども、その後もずっとこれは恒久的に廃止してしまうわけでございます。  それでは、第三の質問でございますけれども、この浮いたお金を、予算はどうなるのかということでございますけれども、私どもとしては、その予算をほかのわれわれのこういう目的に使うというふうには、予算上、そういう措置はとっていないわけでございます。来年度からその分の委託費の要求をしないということでいるわけでございます。
  179. 稲葉誠一

    稲葉委員 では、この程度で質問を終わるのですが、そうすると、これは一億九千万、大体同じような数字でしょうね。多少違うかもわからぬけれども、大体同じような数字でそれだけ削減が行われる。その金は、供託金利息の場合は、これはあからさまに言えるのか言えないのかは別として、民事局関係のいろいろな、ゼロシーリングになるからそれによって困るような費用がありますね、そういうようなものに使われるという話ですね。それはそれで結構なんですが、そうすると、この浮いた金は、法務省関係なり入管関係なりの予算の中に繰り入れられるということなんですか、あるいはそれとは全然関係ないということになってくるわけですか。
  180. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 この分の一億九千万の委託費というものは、来年度の要求からは私ども落としているわけでございます。他方におきまして、来年は特例永住措置が一月一日から発足する、あれがずっと続きますし、それから難民の認定業務であるとか、これも一月一日でございますけれども、来年度いっぱい続く仕事でございます。こういうものの経費がかかります。したがいまして、ゼロシーリングの枠内で、一方においてこういう委託費の減で浮いた分は、ほかの予算、ふえる仕事の予算を要求するということによって、結局ゼロシーリングのつじつまを合わせている、そういう関係でございます。
  181. 稲葉誠一

    稲葉委員 終わります。
  182. 高鳥修

    高鳥委員長 次回は、来る二十七日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二分散会