○栗田
委員 私は、きょう、いま問題になっております高等学校の「現代社会」の検定の問題について
質問させていただきたいと思います。
ことしの春の通常
国会で中学校の社会科の教科書が正誤訂正されたことで問題になりましたが、次の来年四月から使われる高校の「現代社会」は、検定が終わって見本本がつくられて、もうすでに閲覧されているわけです。全部で十六社二十一冊あると言われておりますけれ
ども、きょう私は、そのうちから七社の「現代社会」を比較対象しました問題でいろいろ伺うわけです。
七社と申しますのは、資料としてお分けしてあると思いますけれ
ども、お渡ししてある二つの資料の薄い方の表紙の一番左側にあります「
調査資料」と書いた下の段に書いてある七社です。実教出版、二宮書店、清水書院、一橋出版、東京学習出版、数研出版、三省堂、この七社の検定前の白表紙本とそれから検定後の見本本を手に入れまして、全部対比いたしまして、どこが変わっているかを逐一調べました。
その中で特に問題だと思われるものを問題別に整理しましたものがここにあります資料で、これは全部で七十三ページになりましたけれ
ども、これもごく問題だと思うものを抜き出し、特に問題別に対比したわけです。
報道などによっても、十六社二十一冊の分ですと一万件にも及ぶ検定修正がされていると言われております。また、ここにあるものもまだほんのその一部ですけれ
ども、七十三ページになります。この七十三ページを資料としてお渡しするのもちょっと大変なものですから、ダイジェスト版をつくりました。そのお分けした資料の厚い方の十五ページにわたりますもの、これが特にきょう引用しようと思うものなどを抜き出したダイジェスト版でございます。
初めに、この七社の教科書について「現代社会」の検定前と検定後を比較対照してみた全体の感想としましては、修正されている部分の分量がまことに多いということ、またその
内容もともに大幅な修正であるということ、このことに驚いたわけでございます。
そのうちの
一つの例を挙げますと、実教出版の「現代社会」ですが、これは手直しをされました字数だけで全体の二六%にわたります七十二ページ分、これは全部びしっとつけてまとめて計算して四分の一、七十二ページ分が入れかえられているわけでございます。しかも主に削除をされて、目次ごと変わって、
内容が大幅に変わっているという実に大がかりな訂正の例です。これは実教出版だけではなく、その他にもかなりこのようなものがありますが、特に大幅なものについてちょっと実態を私の調べた
内容で
最初に申し上げてみたいと思います。
いまお分けしてあります資料の薄い方の一枚表紙をめくった二ページ目からごらんください。「検定による書きかえの一例 実教出版「現代社会」の場合」というのがございます。この一枚目と二枚目、つまりページで言いますと二ページ、三ページ、これは大きな目次だけの書きかえの例ですけれ
ども、ごらんになっていただきますと、白表紙本目次「第1章 青年と自己探究」、「第2章
人間生活における文化と歴史」、ここまでは目次の変更はありません。ところが、第三章にまいりますと「現代と
人間」、左側の検定前は「1 情報化社会と大衆文化」、これは検定後も残っております。ところが、「2 大衆社会としての現代」、「3 国際社会としての現代」、「4 わたしたちの直面している
課題」、この目次はそっくり目次ごと
内容も含め変更されていまして、見本本では「2 人類と環境」、「3 人口・資源・エネルギー問題」というふうに大幅に変わってしまっているわけです。
それから、第四章を見ますと「現代
日本の経済」、この目次は全部変わっております。この「現代
日本の経済」の中身は、仕組みを歴史的に系統的に解明していると思われるような検定前の
内容ですが、「1 資本主義経済のしくみ」、「2 現代経済のしくみ」、「3
国民経済のしくみ」、「4
日本資本主義の発展」、「5
日本経済の構造」、こういう項目になっておりますが、検定後には何とこれがたった二つの項にまとまってしまっていて「1 現代経済の特徴」、「2
日本経済の発展とそのしくみ」、こういうふうに変わっているわけです。
そして第五章は、目次はそのままですが、「第6章 現代の国家と民主政治」、1はそのままですが、「2 民主政治の確立」、「3 各国の政治制度」、これが検定後には「2 民主政治の確立と世界のおもな政治体制」、こういうふうに変わっております。
ちょっと長くなりますが、いかに大幅な改訂であるかということで次のページも見ていただきますと、七章も大幅に変わっておりまして、たとえば「
日本国憲法と
国民生活」の第一項、「
日本国憲法制定の意義」、これが検定後には「
日本国憲法の制定と基本原理」に変わっていますし、三項の「議会制民主主義の発展」が「3 議会制民主主義の発展と政党政治」に変わり、「4 行政機能の拡大」、これが「4 現代行政と行政機能の拡大」というふうに変わり、「5 地方自治の確立」というのが「5 地方自治と住民福祉」というふうに変わっております。
それから第八章で「国際平和と人類の福祉」を見ますと「1 戦争がおこる理由」、「2 平和を保障する方策」というのが検定後には「1 国際社会と国際政治」、「2 国際連合と集団安全保障」というふうに変わっているというようなことで、あと十章でも「現代における諸問題」が「現代社会の倫理的
課題」というふうになっているわけです。
ちょっと詳しく申し上げましたけれ
ども、これをもう少し細かい中身で細目で見てまいりますと、またどんなに変わっているかということがよくわかります。
もう一ページめくっていただいて「第3章 現代と
人間」のその細目について比較してあるのをごらんください。これはたとえば第三章のうちの2、3、4の項がさっき御
説明したように大幅に変わっているわけですけれ
ども、その第三章では「2 大衆社会としての現代」ということで、検定前には「大衆社会の形成」、「ファシズムと大衆社会」、「大衆社会と現代」、「現代社会の諸問題」になっておりますが、それがそっくり検定後には「2 人類と環境」に変わって、「生態系としての環境」、「
人間生活と環境」、「環境の保全と回復」というふうになり、それから「3 国際社会としての現代」の中でも、「国際社会の形成」、「ファシズムと第二次世界大戦」、「二つの世界の対立と平和共存」、「戦後の世界経済体制」などというものになっていたのが、そっくりなくなりまして、「3人口・資源・エネルギー問題」というふうに変わっているわけです。「4 わたしたちの直面している
課題」、「四つの
課題」、「戦争の防止と平和世界の形成」、「人権と民主主義の確立」、「貧困と人口・食料・資源・エネルギー問題」、「環境の保全と回復」という四のところのほんの一細目にすぎないのが大きな三の項目になっている。そしてファシズムの問題などというものはほとんど消えていますが、これはこの実教出版だけではなく、他の教科書でもファシズムに関してはページ数が非常に少なくなったり、
内容が大幅に変わったり、消えてしまったりしているというのが特徴だったと思います。
その他そのあと第四章もございますが、時間の
関係があるので、これを読みませんけれ
ども、この実教出版の例
一つを見ても、まあ何という大幅な書きかえがされていることよと実に驚いたわけです。これはたとえば数研出版などでも、五十七ページから六十二ページにわたります第二章の「現代の経済社会と
国民福祉」のところが全部削除、書きかえになっておりますし、それから三省堂などでも「序編歴史としての現代」、これが全部削除、書きかえになっております。こういうまことに大きな、検定といっても項目そのものの、流れそのものの抜本的な
改定のようなものが今度やられているわけです。
そこで、まず
文部省に伺いますが、一体このような大がかりな検定による修正、これはどういう観点からおやりになった修正なんでしょうか。