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1981-11-20 第95回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十一月二十日(金曜日)     午後一時二分開議  出席委員    委員長 野中 英二君    理事 梶山 静六君 理事 辻  英雄君    理事 原田昇左右君 理事 後藤  茂君    理事 清水  勇君 理事 北側 義一君    理事 宮田 早苗君       植竹 繁雄君    浦野 烋興君       島村 宜伸君    中川 秀直君       橋口  隆君    鳩山 邦夫君       水平 豊彦君    宮下 創平君       森   清君    渡辺 秀央君       上坂  昇君    水田  稔君       渡辺 三郎君    長田 武士君       小林 政子君    渡辺  貢君       石原健太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 六助君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    大竹 宏繁君         外務省経済局長 深田  宏君         大蔵省関税局長 垣水 孝一君         通商産業大臣官         房審議官    植田 守昭君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省基礎         産業局長    真野  温君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         通商産業省機械         情報産業局次長 宮本 治男君         通商産業省生活         産業局長    志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁公益事業部長 石井 賢吾君         中小企業庁計画         部長      杉山  弘君         中小企業庁小規         模企業部長   篠島 義明君  委員外出席者         文化庁文化部著         作権課長    吉田  茂君         厚生省社会局生         活課長     浅野 楢悦君         農林水産省経済         局農業協同組合         課長      古賀 正浩君         農林水産省経済         局国際部国際経         済課長     副島 暎一君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      山梨 晃一君         労働省労政局労         働法規課長   齋藤 邦彦君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ――――――――――――― 十一月十六日  武器等の輸出の禁止等に関する法律案清水勇  君外七名提出、衆法第二号) 同月十二日  アルミニウム産業危機打開に関する請願外四  件(井岡大治紹介)(第一五二五号)  同外三件(稲富稜人君紹介)(第一五二六号)  同外二件(上田卓三紹介)(第一五二七号)  同(枝村要作紹介)(第一五二八号)  同外五件(小沢貞孝紹介)(第一五二九号)  同外二件(大内啓伍紹介)(第一五三〇号)  同(片岡清一紹介)(第一五三一号)  同(春日一幸紹介)(第一五三二号)  同(神田厚紹介)(第一五三三号)  同外四件(木下敬之助紹介)(第一五三四  号)  同外三件(北口博紹介)(第一五三五号)  同外二件(古賀誠紹介)(第一五三六号)  同外二件(上坂昇紹介)(第一五三七号)  同外一件(近藤鉄雄紹介)(第一五三八号)  同(近藤豊紹介)(第一五三九号)  同外六件(佐藤観樹紹介)(第一五四〇号)  同(高鳥修紹介)(第一五四一号)  同(塚本三郎紹介)(第一五四二号)  同外六件(中井洽紹介)(第一五四三号)  同外三件(中野寛成紹介)(第一五四四号)  同外四件(西村章三紹介)(第一五四五号)  同外一件(三浦隆紹介)(第一五四六号)  同(橋口隆紹介)(第一五四七号)  同外五件(林保夫紹介)(第一五四八号)  同外一件(林義郎紹介)(第一五四九号)  同(原田昇左右紹介)(第一五五〇号)  同外一件(平林剛紹介)(第一五五一号)  同(広瀬秀吉紹介)(第一五五二号)  同外二件(藤田高敏紹介)(第一五五三号)  同外二件(細谷治嘉紹介)(第一五五四号)  同外二件(水田稔紹介)(第一五五五号)  同外五件(宮田早苗紹介)(第一五五六号)  同外一件(武藤山治紹介)(第一五五七号)  同外一件(森清紹介)(第一五五八号)  同外一件(山本幸一紹介)(第一五五九号)  同(横山利秋紹介)(第一五六〇号)  同(綿貫民輔紹介)(第一五六一号)  同外一件(渡部恒三紹介)(第一五六二号)  同外四件(渡部行雄紹介)(第一五六三号)  同外一件(市川雄一紹介)(第一七五四号)  同(森清紹介)(第一七五五号)  休廃止鉱山鉱害防止対策促進に関する請願(  林百郎君紹介)(第一六七一号)  同(清水勇紹介)(第一六七二号)  大型店出店規制強化反対に関する請願小沢  貞孝紹介)(第一七四七号)  同(西田八郎紹介)(第一七四八号)  同(西村章三紹介)(第一七四九号)  同(部谷孝之紹介)(第一七五〇号)  同(宮田早苗紹介)(第一七五一号)  同(横手文雄紹介)(第一七五二号)  同(吉田之久君紹介)(第一七五三号) 同月十三日  大型店出店規制強化反対に関する請願(中馬  弘毅君紹介)(第二〇九八号)  小売資本店進出規制等に関する請願(東中  光雄君紹介)(第二一七六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 野中英二

    野中委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺秀央君。
  3. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 きょうは、大型店の問題が最近いろいろマスコミやあるいはまたその他のところで取り上げられておりますので、私から、最近にぎわしておりますこの問題についての政府考え方をひとつ問い合わせてみたいと思いますし、また、私の考え方を申し上げてみたいと思うわけであります。  私は、わが国経済成長をなしてきたいろいろな過程、もちろん国際経済にも影響され、あるいはまた国際政治状況にも影響され、そしてまた国内政治のきわめて敏腕な指導の中でわが自由民主党の行ってきた経済政策が効を奏した、そういう政治的、社会的あるいは国際的ないろいろな要素の中で、世界に類をみない経済成長というものをなし上げてきたことは言うまでもないことだと思うのであります。しかし、その基盤は、国民勤勉性であるとか、あるいはまたエネルギーが安かったとか、いろいろなそういう条件の中で高度成長というものができたことも否めない事実ではありますが、同時に、そこには、ある意味においては消費経済と言われるものが基盤にあった。そして、そういうもののいわゆる底上げあるいはまたプッシュというか、そういう中に日本経済成長というようなものがなされてきた原因の一端もあったのではないかというふうに思うのです。  そういう点においては、最近の大型店問題というのは、いわゆる商業活動分野においての問題でありますが、しかし、この消費活動との関連性消費経済との関連性ということを無視してこの大型店問題を論じていきますと、大変実は危険なことになるのではないかと危惧するわけであります。  後ほど申し述べますけれども、もちちん大型店の功もあれば罪もある。しかし、そこのところを冷静に判断をして、政治がかじ取りを間違わないようにしてもらわなければならないと思うわけであります。  そうは言いながらも、現実、各地区で争いがある事実も、これは認めないわけにはまいりません。その争いにおける原因というもの、いわゆる集中豪雨的出店申請であるとか、あるいはまた中小都市における出店であるとか、あるいはまた、いわばお行儀の悪い商業方針というかモラルのない商業活動の中で、小売業人たちにきわめて一方的な不安だけ与えているとか、あるいは商調協が十分な機能を果たしていないとか、いろいろなことがあると思うのでありますが、しかし、法律があるわけであります。通産省として、一体この法律が生かされていると思っておられるかどうか、大店法の効果が出ているとお考えになっておられるのか、あるいはまた、ほかにももっと原因があると思われるのか、その辺のところをひとつまずもってお聞きをしておきたいと思うのです。  私は、法律観点から若干私の考えを先に申し上げておきますと、行政指導によって法律を生かすも殺すも、言うなれば行政当局の姿勢によるとも思いますし、あるいはまた指導力にもよると思うのです。たとえば十月の初めから全国都道府県に対して出店自粛の通達を出した。その段階から、すでに事実上の凍結というような形になってきている。もちろん、これにはスーパー側という当事者側の方が少なくとも協力体制にあり、自粛をしているという背景もあるのでしょうけれども十月から今日までは非常にうまく来ているのではないか、現にいまの法律で来ているのではないか。そういうことをも考えてみると、通産行政指導等によっては、現状における法律、すなわち自由経済を守る、そして経済活力を失わせないという範囲で、われわれが五十三年に改正をした現在の大店舗法効果を上げ得る素地があるのではないか。そんなことも実は私は思っておるわけでありますが、通産省としてのお考え現状に対して大臣、どんなふうに御認識をしておられるか、まず大臣のお考えをちょっとお聞きしながら、あとの問題について審議官からお聞きをしておきたいと思うわけであります。
  4. 野中英二

    野中委員長 議事の途中でありますが、この際、御紹介申し上げます。  本日午前、当商工委員会を訪問され、日独経済関係等について親しく懇談する機会を得ましたドイツ連邦議会経済委員会ベルナー・ドリンガー委員長御一行が傍聴にお見えになりました。御紹介申し上げます。     〔拍手〕
  5. 野中英二

    野中委員長 それでは、田中通産大臣
  6. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  私も、実はこの大店舗法につきましては、商工部会長をし、また商工委員もやっておりましてタッチをしておりましたが、まあまあこの法律で私はいいというふうに思っておりますし、問題はこの運用いかんにあると思うのです。したがって、この運用をどういうふうにしていくかということを主眼として私ども検討する。しかし、法律でございますし、時代というものもあるし、時代の推移、将来の展望というものもありますので、それは客観的な諸情勢によって、環境変化によって、私は法律がいつまでも同じものであらねばならないという考えは持っておりません。そこで、運用をやってみてそごを来す場合には、また検討し直すということもやぶさかではない。したがって、私ども、いま御承知のように大店舗問題懇談会というものをつくりまして、またさらにその中に小委員会をつくって検討をお願いしているさなかでございまして、一応その結果待ちの現状でございます。
  7. 植田守昭

    植田政府委員 ただいま大臣からお答えしましたように、現在の法律、いろいろとその運用その他につきまして御批判はあろうかと思いますけれども、いままでそれなりに効果は上げてきたというふうに私どもは思っております。しかし、現在またいろいろな問題が起こっているということも事実でございまして、そのためにいま懇談会でいろいろ多角的な面から御検討をいただいておりますので、その御検討を受けまして、今後のあり方については考えていきたいというふうに思っております。
  8. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 大まかに大臣は、いまの法律で大体運用の問題でやれるのではないかというお示しをいただきましたが、私も実はそう思うのであります。  最初の大型店舗法が施行されたのは昭和四十九年三月、十大都市を除いて基準面積千五百平方メートルで、その千五百平方メートル以上を規制するということでやっていたのが、昭和五十四年の五月、五百平方メートルまでのいわゆる売り場面積を引き下げた大店舗法改正したわけですが、このころの様子を私、ちょっと実はここにメモをしてきておりますので、申し上げてみたいと思うのです。  五十三年、いわゆるこの大型店舗法改正問題が起こった当時の届け出は二百四十三件ありました。五十四年には実はこれが何と五百七十六店舗にも申請がふえているわけであります。言うならば、法律改正をして規制しようというふうに政治の方の動きが出てくると、逆に申請駆け込みが行われる。今日では百六十七件ぐらいである、こういう数字が実は出ております。  だから私は、逆に大型店規制をやるぞと大上段に振りかぶると、むしろこれが、無差別とは言いませんけれども中小都市に至るまで、まずとりあえず申請をしておこうという既得権確保というか、いわゆる駆け込み申請に走っていくきらいがあり、そこには中小都市小売業者の、いわゆる小売活動における分野に非常な危機感を与えていくという結果を逆にもたらしているのが、こういう数字であらわれているように私は思うのです。  何といっても、自由競争を守りながら行政指導でやっていき、そして適切に消費者と住民のニーズにこたえていくという体制が最も望ましい体制であるように思うのです。そんなことで、大型店も今日の日本経済において少なくとも相当な業界成長してきている、相当というか大変な業界成長してきている。チェーンストア協会だけでも八兆円の売り上げに上っている。そんなふうな考え方からいたしますと、チェーンストア協会あるいは大型店というものが、いわゆる自由競争の中における葛藤というようなことではなくて、社会的あるいはまた公共的な使命感責任感、こういうことも考えていかなければならない産業分野成長してきたと言えると思うのです。  そんな観点からいたしますと、今日の大型店の、先ほど自粛協力をしているということを申し上げましたが、いままでの様子を見ている限りにおいては、どうもそういった社会的な責任ということが欠如をしている面がありはしないか。チェーンストア協会だけでも毎年の投資額は、これもお聞きをしたのでありますが、三千億に上るそうであります。投資効果は恐らくこの四、五倍くらいになると思うのですが、そうなると、一兆四、五千億の投資効果をわが日本経済に与えることになるわけです。あるいは売り上げ先ほど八兆円と申し上げましたが、その経済的波及効果考えていくと、恐らくこれは元売り、卸、そういう段階から考えていきますと、三倍から四倍くらいの金額に上っていくでしょう。わが日本経済の中で、そうなってきますと、この大型店すそ野、川上から川下に至るすそ野の方までずっと考えていきますと、この産業界の占める経済波及効果というのは、三十兆円にもなんなんとすることになると思うのです。  そういうことを考えていきますと、私は、この分野における一つ経済活動というものは、もっと真剣な業界同士責任感のあふれた共存共栄というかあるいはまた競争、そういうものの背景が培われていかないといけないと思うのです。そういう点で、実は通産指導が今日までいささか怠ったのではないか。いわゆるそういう産業成長してきた、何でも自由経済の中ですから、そういう大きな産業成長する過程には、若干の摩擦が起こるのはやむを得ないとはいいながらも、しかし、そこには行政指導という余地が残されているわけでありますから、通産省行政指導にいささかの怠りがあったのではないかと私は実は問いただしたいのであります。そういう点で、通産省としてどういう点が欠けていたと思われるか、どういう点を反省しておられるか、ひとつその点もお聞きをしておきたいと思います。
  9. 植田守昭

    植田政府委員 いままでお述べになりましたように、この業界は、最近大変急スピードで成長してきた分野でございます。あらゆる産業がそうだと思いますが、若い産業であればあるほどバイタリティーに富んでおりますし、そしてまた、その発展過程でいろいろなトラブルが起こりがちである。しかし、また逆に言いますと、そういったバイタリティーを変に抑えてしまいますと、今度は育つべき産業が育たないでしぼんでしまう。その辺が若い産業を伸ばすときの非常にむずかしい問題ではないかと思うわけでございます。  振り返りまして、この十年なり十五年なりの間にこの産業が非常に急速な発展を遂げたわけでございますが、その間におきまして私どもといたしましては、たとえば貿易自由化とか資本自由化というふうな日本経済のそれぞれのステップの中で、一方において国内商業分野をある場合には保護もしなければならぬし、ある場合にはまたこのバイタリティーを積極的に助長するという方向もとりながらやってきたというのが、いままでの状態であったわけでございます。しかし、最近におきまして、御指摘のように、いろいろなトラブル等が起こってきたことも事実でございまして、私どもといたしましては、一つの転換期に差しかかってきているのではないかということも感じるわけでございまして、そういった歴史的な転換の各段階における行政あり方もまた考えていかなければいけない。したがいまして、過去は過去といたしまして、これからはまたこれからの段階に応じた指導方針なり行政あり方というものを考えていかなければならない、こんなふうに考えております。
  10. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 いま懇談会をやっておられて、あるいは小委員会に入られているということでございますが、そういう中でどうやったらこの活力を維持していけるか、あるいはまたどうしたら小売業との共存共栄の道を探れるのか。それが今日こういう問題を起こしているから、いわゆる場当たり的に、あるいはまた張り子のトラ的にその問題にふたをするために法律改正をする、あるいはまた行政指導方針を変えるということではなくて、こういう一つ自由経済社会の中における活力というものを一番大切にしなければならない通産行政の中で、そういった基本考え方。これはたとえば大型店だけの問題ではないと思うのです。私は、あらゆる分野において出てくると思うのです。そういう意味でも一つの試金石ではないかという感じがいたします。そういう考え方で、大きな今後の通産行政あり方の中で、自由経済を守る、あるいはまた自由競争市場を守っていく、そういう基本的な考え方の中でこの問題の方向づけがなされてしかるべきだと思うのであります。大臣、お時間がないようで恐縮ですけれども大臣も御留任になられることを切に期待をいたしますが、どうあれ、この通産行政に大きな発言力を持っていかれるお立場であるわけですので、もう一度大臣の御決意を承っておきたいと思います。
  11. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、私は基本的には現在の法律でいいとは思っておりますが、環境、あるいはいろいろな国民ニーズ、あるいは諸情勢変化というものもあろうと思います。したがって、いろいろなトラブル現実に起こっておるわけでございまして、この法律をどういうふうに運営をしていくかということについても、本質的な問題が大きく浮き彫りにされつつありますので、先ほどから申しております大型店問題懇談会の小委員会で目下、一応届け出ではございますが、これを凍結の形で、その期間内に結論を出すということを言っておりますので、私としてはその答えを待って対処していきたいというふうに思います。
  12. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 大臣、結構です。どうもありがとうございました。できたらひとつ、そういう方針で小委員会あるいはまた懇談会をやっていきたいという大臣のお話ですから、御期待を申し上げておきます。  大型店出店に対して、さっき審議官から、指導の中でという話がありました。あるいはまた大臣から、法律運営面でというお言葉がありましたけれども一つルールを確立する方向であるということを、実はきょうの朝日新聞で拝見をいたしました。きょうの答弁と大体同じようなことで、そう食い違いはないと思うのですけれども、そこで基本的に考えてもらわなければならないことは、チェーンストア協会側にいわゆる当事者能力を持ってもらわないと、言うならば自粛あるいはルールをつくっても、この法律基本的に動かさないということになると、当然大型店あるいはスーパー側の物の考え方がどこにあるかということになってきます。これはやはり業界として、先ほどから申し上げているように、日本経済産業の中でこれだけ成長した分野として、その責任使命考えながら当事者能力を持っていただいて、そして小売業との問題、あるいはまた地域の経済に大きな混乱を起こさないような仕組みを考えていただくようにしてもらいたいと思う。  そのことを強く期待をいたしているわけですが、現に大型店小売業と同じ建物の中で商業活動をやっている分野があるわけですが、これが実に十万件にもなっているわけです。だから、言うならば大型店共存共栄をやっている。あるいはまたその大型店周辺考えてみると、その周辺小売業というのは、その恩恵に浴する分野も、これまた比較的あるわけです。そういう点を考えますと、この小売業との共存共栄ということは決して夢ではない。やり方あるいは行政指導、あるいはお互いのモラルの持ち方によってはやっていける。その道の模索を、私はいまこそしてもらわ  なければならないことではないかと思うのです。  現にフランスでは、ただ規制をすればいいということで規制をした。ロワイエ法という許可制で、七年前に規制をしたそうであります。これはある雑誌にあったことでありますが、実際それをやってみたところが、インフレの促進を招いたり、既存店寡占化を進行させたり、消費者にとってはまるで不便な商店街あるいは町ができ上がってしまう。むしろそういう許可制をとったことが小売業活力を失わしめる結果になったという事例が、パリ大学調査に明確に出ているそうであります。  フランス日本とは条件が違うと言ってしまえばそれまでですが、要は私、小売業皆さんにもぜひ御理解をいただきたいのは、この小売業近代化のために、相当な自立自助の精神を培ってもらいたい。ただ大型店が入ってくるから困るということだけでは、そしてしかも規制許可制をとれということだけでは、おのずと自分の首を絞める結果になりはしないか。統制経済や、あるいはまた、ある意味においては規制された経済社会というものをつくっていく、この出発をこんなことでつくり上げては、小売業のためにも不幸な結果になると私は思うのです。そういう結果を招いては困るので、われわれ自民党としては、中小企業政策の原点はむしろ小売業にあるとして、いわゆるマル経資金であるとかあるいはまた大型店対策の融資問題であるとかいうことを、中小企業対策あるいは小売業対策の一環として今日までやってきているわけです。  私は、そんな意味で、これは今度中小企業庁にお願いがあるわけでありますが、小売業皆さんに、そういう大型店が来る、その来る前に迎え撃つ態勢をつくり、要すれば小売業近代化、仕入れの合理化商店街の町並みの改善、そういうこともぜひひとつ真剣な考えの中からわれわれも政策として取り上げていきたいと思うし、また中小企業庁もそういう前向きの姿勢でとらえるような方向指導してあげるべきではないのか。元来そういう点においては、中小企業庁産業政策局と同じように、少なくとも指導、あるいはまた指導と言って悪ければアドバイス、助言、こういうものを非常に怠っていたのではないかと私は思う。そういう点で今後の中小小売業の育成のための中小企業庁方針も、簡略で結構ですから、時間がなくなってきたので、この際ぜひひとつお聞きをしておきたいと思うのであります。今日のいろいろな問題点の中で、大型店小売業の共存する道を何とか模索していく、努力をしながら考えていく、これらがいま懇談会で話し合っているベースでなければならないと私は思べので、あえてこの二つについてお聞きをしておきたいと思います。
  13. 篠島義明

    ○篠島政府委員 先生のお説のとおりでございまして、中小小売商業が大店問題あるいは消費需要の低迷ということで、非常に深刻な状態に遭遇していることをわれわれよく認識しておりますが、それだけに短期的な調整問題ではなく、やはり中長期的に本当に自助努力によって自活あるいは大店と共存共栄できるような強化策を何とか中小企業庁としてできるだけやっていきたいという決意でございます。  現在、小売商業振興法に基づきます低利の高度化融資によりまして、商店街整備計画あるいは店舗の共同化あるいは連鎖化事業等、数百億の金を投じまして助成しておりますが、それ以外にもいろいろ今後の中長期的な観点からどうやっていったらいいか、地域性を織り込みながら、ビジョンあたりについてもこの際、いままでと違った新しい考え方を導入する必要もあると思います。そういった点について鋭意あらゆる努力を傾注しながら、おっしゃるような中長期の小売商業の自活の道を一緒に切り開いていきたいというふうに考えております。
  14. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 通産省中小企業庁で、それぞれそういう方向でやっていくという大きな方向性が得られたことは大変ありがたいのでありますが、私は実は、この小売業を擁護していく、ある意味においては小売業の擁護という言葉ではなくて、むしろ中小小売業活力を失わしめないようにしていく、こういう前向きの考え方でとらえていくとするならば、一つには、きわめて大きな大型店自粛を促すと同時に、地方の地元資本による中小スーパー、これは二種関係になっているわけですが、これらの方は、むしろ将来の小売業者が目標として定めて努力していけるような一つ方向性の中で、通産省としては余り規制はしない方がいいのではないかというふうに思いますので、これはひとつ希望を申し上げておきたいと思います。  時間がなくなってきましたので、私は最後に、たとえこの話を通産で、あるいは商工委員会で何ぼやりましても、農協生活センターあるいはまた生協関係という二つの問題が、どうしてもこの大型店の問題の中には非常に大きなウエートを占めて問題点としていつも残っていくことでありますので、この点について農林省と厚生省にその考えをお聞きしておきたいと思うわけであります。  言うまでもなく、生協法第十二条で、組合員以外の者にその事業を利用させてはならないとあります。いままで厚生省としてこの第十二条、九十五条の組合の解散を命ずるようなことの事態にまで進展をしたことがあるかどうか、第百条の組合の理事もしくは監事が罰金を受けたようなことがあるのかということをお聞きしながら、五十三年の大店舗法改正のときに生協の自粛を求めたはずでありますが、その効果が上がっているかどうか、簡単にひとつ報告をいただきたい。  農協関係においては、農協組合法第十条第八項にありますとおり、一事業年度における組合員以外の者の事業の利用分の額は二割というふうになっております。二〇%、五分の一、これを超えてはならないということになっているわけでありますが、この農協の生活センター関係において、そういうものを農林省として注意勧告をしたことがあるか、警告をしたことがあるか。これも同じように、五十三年の法律改正のときに農林省に強く自粛を求めた経緯がありますので、その効果を簡単に報告をいただきたいと思います。
  15. 浅野楢悦

    ○浅野説明員 生活協同組合の員外利用につきましては、行政庁の許可を受けた場合に限り認めるということで、原則禁止になっておるところでございます。従来から員外利用の問題につきましては、原則禁止という趣旨を踏まえつつ、生協の店舗運営等に当たり、この原則を踏み外さないように指導いたしてまいったところでございますが、先生御指摘のように、五十三年の大店法、商調法の改正の折に、各協同組合法の趣旨にのっとり所要の改善を行うようにという附帯決議を国会でいただいたわけでございます。この附帯決議の趣旨を受けまして、生協の店舗の設置あるいは店舗運営につきまして、厚生省といたしまして改めて指導基準を定めたところでございますが、員外利用の点についてだけ申し上げますと、店頭等店舗の適切な場所に組合事業を組合員以外の者に利用させない旨の表示をする、あるいは必要に応じて組合員証の確認を行うという方法をとらせておるところでございまして、おおむねその効果は上がってまいっておろうかと思いますが、今後とも指導の徹底を図ってまいりたいと存じております。
  16. 古賀正浩

    古賀説明員 農協の購買事業につきまして、その店舗の設置や運営に当たりまして、いやしくも農協の理念を逸脱して、地元商工業者と無用のあつれきを生ずることがないよう節度ある事業態度をとるべきであるということは、先生御趣旨のとおりと私ども考えております。  農林水産省といたしましては、かねてからこの趣旨によりまして、店舗の設置に際しましては組合員の意向を的確に把握して、立地、規模、取り扱い品目を定めるということ、出店の紛争防止のため地元商業者の理解が得られるよう関係者の理解の増進に努めるということ、あるいは店舗運営に当たりましては過度の誘引行為を抑制すること等々につきまして、通達措置を含めまして従来から指導を行ってきておるところでございます。  しかしながら、いまだ一部地域におきまして紛争事例が見られておるというようなことははなはだ遺憾なことでございますが、今後、なお一層これらの指導の徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  17. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 どうぞひとつ農林省と厚生省、いまの点においては十分に今後指導監督、監視をしていただきたい。おのずとその分野というものが明確に法律に規定されている以上、いやしくも逸脱してはならないと思うのであります。厳しく御注文を申し上げておきたいと思います。  私、最後にお許しをいただいて、次の発言者から若干時間をちょうだいいたしましたので、お願いをいたします。  この法律効果がうまくいっていない一つの大きな理由としては商調協の機能が十二分に果たされていないということであり、これが今日こういう問題を惹起した大きな原因であることは否めない事実です。  そこで、通産省にお願いをいたしておきます。これは中小企業庁にもお願いをいたしておきますが、商工会あるいは商工会議所、これらの皆さんから、ぜひひとつそれぞれが責任体制の中でこの商調協をうまく機動的に活用して、機能を発揮していただいて、こういう問題が惹起せずに事前に解決するようなルール業界の方でつくってみられたらどうか、そういう指導をやられてみられたらいかがか。私は、あえてなまぬるいとは思いません。またできないとは思いません。ぜひ期待をいたしたいと思うわけであります。  たとえば、商調協が満場一致でなければならないというところに問題があるとするならば、私は、あえてこの分野における改正をしていただいて、これは多数決で、そしてそのことは、さらにその後の処理としては大店審で処理をしていくという運びでもよろしいのではないかというふうに思います。大型店の方は、今日これだけの国内経済活力基盤として、しかもその活力を吸収して、そして雇用の面で、設備投資の面で、あるいはまた自由経済を維持するという面において、あるいはまた輸入促進という日本の今日国際的に非難を受けている黒字減らしに対しての貢献、あるいはまた、私がひそかに調べてみると、いわゆる輸入促進のミッションにすべて大型店側が参加して真剣に努力している姿もあるわけです。どうぞひとつマクロ的なとらえ方の中でこの議論が行われるように願いたい。かつ、中小小売業のいわゆる小売活動に対して危機感を持たせずに共存共栄が図れるような方向性を、今日行われている通産省大型店問題懇談会の影山座長のもとにおいて、あるいは小委員会のもとにおいて、すばらしき方向性が得られますことを御期待申し上げて、若干私のお願いも含めた発言が多うございましたが、通産省、ぜひ御努力、御精励をお願い申し上げたいと思う次第であります。  以上お願いを申し上げまして、私の発言を終わります。ありがとうございました。
  18. 野中英二

    野中委員長 鳩山邦夫君。
  19. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 私は、ちまたで話題になっております貸しレコード業の問題を取り上げまして、与党のみならず野党の先生方にも御理解をいただきたいと思うわけでございます。  ことしのレコード生産は、枚数で昨年よりも一三%ダウンをしておるということであります。昨年値上げをいたしましたから枚数が若干ダウンをするのはやむを得ないといたしましても、金額としても昨年を下回っているということは、なかなか理解に苦しむところでございまして、その原因通産省はいかがお考えでございましょうか。
  20. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生からお話がございましたように、ことしの一月から九月までのレコードの生産実績をとってみますと、数量で一三%、金額にいたしまして約三%弱、前年同期に比べまして減少をしております。  この売り上げ減少の要因につきまして、一つの見方としては、先生がいまおっしゃいましたように、一連のLPレコードの値上げ、そういった影響もあるのではないかという見方ももちろんございます。同時にまた、一方におきましては、貸しレコード店の進出が原因になっておる、こういう見方ももちろんあるわけでございます。ただ、いずれにいたしましても、いろいろな要因が重なっているのではないかというふうに存じておるわけでございます。  しからば、このうちどの程度が貸しレコードの進出によって減少したのか、これはなかなか定量的にはいまの段階ではむずかしゅうございます。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、そういうことでもございますので、この貸しレコード店の進出によりレコードの小売業者にどの程度の影響を与えているかという実態につきまして、調査をして把握してまいりたい、かように思っております。
  21. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 その調査は、開始をされるのはいつごろですか。それとも、もう調査を始められたわけでございますか。
  22. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 現在準備を進めております。今年度の予算を使いまして調査を行いたいというふうに思っております。
  23. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 答弁をいただいたのは局長でありますが、その傘下の山浦紘一文化用品課長は、業界紙のインタビューに答えまして、四十八年の石油危機直前にレコードの原材料が不足して業界が打撃をこうむったのに匹敵するほどひどい状況にレコード業界は追い込まれているのだ、それも貸しレコードのために、ということをおっしゃっているわけでありますが、局長課長の認識は大体同じでございましょうか、それとも若干異なるのでありましょうか。
  24. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 これは実態調査をしてみませんとなかなか定量的には申し上げられないわけでございます。ただ、予想として申し上げれば、恐らく地域によってもかなり差があると思いますけれども、やはり貸しレコード業の進出によりレコード小売店に対する影響というのはあるのではないかと私も理解しておりまして、担当課長と私の意見には食い違いはございません。
  25. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 くどい申し上げ方をしましたが、実際には貸しレコード業というものが法の網の目をくぐろうとするかのような形ではびこりまして、日本の音楽産業全体が大変な危機に立っているというのは常識的な見方だと思います。  貸しレコード業が近くにできますと、レコード小売店はまず生のテープが非常に売れるようでありまして、それがしばらくすると売れなくなる。そして今度は貸しレコードの袋というのでしょうか、紙袋を持った若い学生が頻繁にレコードの小売店にやってまいって、買うのではなくて、どんなレコードがあるか調べていく。ナンバーなどを調べていくのだと思います。私は音楽のことはよくわかりませんが、小売店へは調べるために行って、ああ、こんなレコードがあるのだなとわかったら近くの貸しレコード屋さんに行って、そのナンバーを告げて借りてくるというようなことで、近くにできますと、三割とか五割売り上げが落ちてしまうというのが実態であろうかと思っております。  そこでお尋ねしたいのは、日本レコード協会というところが通産省よりも先に詳しく調査をされておりますが、九月の調査によりますと、貸しレコード屋さんに入ってレコードを借りていった場合、何と九七・四%が、複製をするために借りていっていると答えているわけでございます。つまり、貸しレコード屋さんから借りて自分で聞くのではなくて、テープをとって返すということであります。この九七・四%という数字をどのようにお考えになるか。大体そんなものだろうとお考えになるか、いや、それは違うのじゃないかとお考えになるか、お答えをいただきたいと思います。
  26. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答えいたします。  この九七・四%がどうかという細かい数字の話になると、私もお答えに困るわけでございますけれども、ただ、一般的に申しまして、現在非常に録音機器が普及をいたしております。私の周囲を見回しましても、かなりの家庭でそれを持っておるという状況でございますから、かなり多くの場合におきましてテープがとられているであろうということは想像できると思っております。
  27. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 ただいまの答弁で確定をいたしましたことは、貸しレコード業というのはレコードを貸して聞かせる商売ではなくて、複製するために貸して料金を取る商売である、いわば個人録音の仲介業であるということであります。  著作権法三十条は、個人録音を認めております。しかし、反面、九十六条では、レコード会社固有の権利として複製権を認めております。したがいまして、貸しレコード屋さんが自分のところのテープを使って自分でレコードを複製してそれを消費者に売るとすれば、これは九十六条に明確に違反する、いわゆる海賊行為となるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  28. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答えいたします。  この問題は、著作権法の解釈の問題であろうと思っております。したがいまして、私からお答えするよりも、むしろ文化庁の方からお答えいただいた方が適当ではないかと思います。
  29. 吉田茂

    吉田説明員 先生御指摘のように、著作権法の第九十六条では、レコード製作者の複製権を規定しているわけでございまして、レコード製作者の許諾なしにレコードを複製するということであれば、それは九十六条に触れる、こういうことになるわけでございます。
  30. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 お聞きのように、海賊版を出すことは明確に著作権法に触れるわけでございます。  はなはだ申しわけありませんが、レコードがありませんので、このお盆をLPレコードであるとお考えいただきたいわけでありますが、たとえば貸しレコード屋が自分のところで、このレコードを回してテープを使ってどんどん録音をする、これを売れば海賊行為です。貸しレコード屋さんからテープは出ていって金が入ってきて、金とレコードが残るわけでありまして、消費者の方にはレコードの音の入ったテープが残る、こういう結果になるわけでございます。ところが、現在の貸しレコード屋さんの商売というのは、著作権法の関係がありますから、自分のところで海賊版を出して売るわけではなくて、レコードを貸して個人録音をさせるという形でございます。ところが、その貸した料金は当然取るわけでありますし、レコードも戻ってきます。レコードを貸し出して戻ってきた後は、貸しレコード屋さんにはこのレコードが残るわけであります。そして料金も入ってくるわけであります。そして消費者、レコードを借りていった方にこのレコードの音の入ったテープが残るわけでありますから、結果が全く同じである。だから、貸しレコード業というのは、私は明確に著作権法九十六条、レコード製作者の複製権に触れる問題だと思いますが、いかがでございましようか。
  31. 吉田茂

    吉田説明員 この点につきましては、現在レコードメーカー並びにレコード協会の方で、著作権法九十六条に規定するレコード製作者の複製権を侵害するとしての訴訟が提起されておるわけでございまして、係争中の事件でございますので、私どもとしては論評を差し控えさせていただきたいと思います。
  32. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 私の希望といたしましては、確かにいま裁判になっておりますから、司法判断が出てくるわけではありましょうけれども通産省としても、あるいは文化庁としても、その辺はある程度見解をはっきりと定めていただきたいと希望をする次第でございます。  そこで、これは通産省にお伺いをいたしますが、確かに現在はレンタル業とかリース業というのが大変はやっておるわけでありますが、一般のレンタル業、リース業とこの貸しレコードは同一視できない重要な問題を含んでいると思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  33. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答えいたします。  なかなかむずかしい御質問でございますけれども、貸しレコードの場合に、確かに借りた人が複製をとる、こういうことがかなり予想されるわけでございまして、片やその場合にもう一つ著作権法との関係が出てくる、こういうかなり入り組んだ関係ではないかと思います。そういう意味におきまして、物を貸すという点においては同じだと思いますけれども、さっき先生からおっしゃいましたように、その貸した物が後、複製という形で音そのものが残っていく、借りた人に残っていくという問題、このところに違う点があり、かつその点について、著作権の保護を目的といたします著作権法の規定がある、その関係をどういうふうに考えていくか、そういう面で非常にむずかしい問題があるという問題だと思っております。
  34. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 ただいまの問題は、実は著作権審議会第五小委員会報告書というこの膨大なものが出ておるわけでありますが、この中にも書いてありますように、世の中では著作権法に対する理解というのはほとんどないわけでありまして、それはテープレコーダーにも著作権法の内容的なものが書いてあるし、テープを買った場合にもテープにも書いてあるそうでありますが、一般国民がそれを見て、著作権法というのがあるのだからそれに違反しないようにしなくちゃならぬと思うことはめったにない、そんなふうにこの報告書は書いてあるわけでございます。そういう観点から考えまして、一般の国民の皆様方に、レンタル、リース業と貸しレコード業は全く違うのだということを私は知っていただきたいと思ってただいまの御質問をいたしましたところ、答弁の方も、重大な違いがあるのだとはっきりと述べていただいて、大変ありがとうございました。  それから、今度はこれが音でなくて、音を伴ったビデオテープの場合だったらどうなるだろうか。何らかの映画をビデオにおさめたものをだれかがため込んでおいて、これを一般の人に貸して料金を取る、そして、借りていった方はそのビデオを自分のビデオに撮り直すということをやった場合に、これはレコードの場合とどんな違いがあるか。これは文化庁さんだと思います、お答えください。
  35. 吉田茂

    吉田説明員 適用される法律基本的な構造は似たようなものでございますが、ただビデオの場合には、これは映画としての取り扱いがなされると思いますので、そうしますと、いわゆる頒布権という権利が働いてこようかと思います。
  36. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 これは委員の先生方に知っていただきたいと思って申し上げただけでありまして、結局映画の場合は、これを配るということ自体が著作権法に触れるわけでありますから、貸すんであろうと何であろうと、配るということがひっかかってくるわけですが、これが現在のところの著作権法のおかしなところでありまして、ビデオテープだとひっかかるのだけれども、レコードだと判断がむずかしいというところに大きな問題点があるのではないかと思っております。  そこでお尋ねをいたしますが、貸しレコード業というものを何らかの形で禁止するというような方法はないものでしょうか、通産省にお尋ねいたします。
  37. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、現在私どもは、貸しレコード業の進出によるレコード小売業に対する影響について実態を調査しよう、こういうことで準備をしておるわけでございますが、その調査を踏まえまして私どもとして対応を考えていく必要があるというふうに思っております。  ただ、いずれにいたしましても、この問題は著作権法上どのように取り扱われるべきかということが一つのポイントであろうというふうに思っておりまして、その辺も踏まえながら対応を考えていくことが必要であろうというふうに思っております。
  38. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 繰り返して申し述べますが、著作権法三十条というのは、何も営利ではなくしても、たとえばレコードをテープにとりまして、それを相当大ぜいの友達に貸してしまう、それほど親しくない友達に貸すということも三十条に触れる問題だと私は思っております。その解釈は当然のところだろうと思います。  問題は、営利の目的をもってレコードを貸すという行為でございまして、先ほど申しましたように、海賊版を発行するのと全く同じ行為が残るわけでありまして、これは法律上は、営利上の複製行為というのが一体どういうものなのかという、いわば定義づけの問題になるかもしれません。そこが恐らく現在の裁判で争われている最大のポイントだろうと思います。つまり、人に貸して金を取って相手にコピーを残すというのが、自分でテープをとって売るのと同じ複製行為なんだ、全く同じなんだというのがレコード業界の主張でありまして、これが裁判の争点になってくるわけであります。  そこで、現在のような貸しレコード業が著作権法九十六条の複製権に触れる違法行為であるという判決が出た場合にどのように対処をされるか、お尋ねをしたいと思います。
  39. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 一般論といたしまして、いずれにいたしましても、企業が営業活動をしていく際に法律に違反するような行為は認めらるべきでないというふうに思います。
  40. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 時間ですから終わりますが、この問題は重大な問題でございますので、どうか野党の先生方も御協力をくださいますようにお願いをいたします。  ありがとうございました。
  41. 野中英二

    野中委員長 後藤茂君。
  42. 後藤茂

    ○後藤委員 きょうは私、金属鉱業政策につきまして、特に長官とは初めてでありますけれども、ひとつお伺いをしておきたい二、三点がございますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  御案内のように、非鉄金属というのは国際商品でありまして、価格が乱高下をしてまいります。そのたびに本委員会におきましても、金属鉱業対策に腐心をしてきたわけであります。五十四年の暮れから五十五年にかけては少し愁眉を開くような価格動向に入ったわけでありますけれども、最近またどうも国際市況がよろしくありません。  たとえば銅を見ましても、五十五年の平均は五十三万二千円というところまでいったわけですが、現在は約十万円減の四十二万円というところに低迷をしておるわけであります。また、鉛にいたしましても同様でありますし、亜鉛についても厳しい状況にある、こういう傾向ではないかというように考えているわけであります。  最初に、この現在の非鉄金属の価格の動向を通産省としてはどういうように把握をされているか、長期の見通しは大変むずかしゅうございますけれども、これからの動向を大体どういうように展望なさっておりますか、その点を最初にお伺いをしておきたいと思います。
  43. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  先生からいま御質問のございました銅、鉛、亜鉛などの非鉄金属の市況の現状、またこれからの見通しはどうかということでございますけれども先ほどお話がございましたように、国内の建て値というのは海外相場に連動して決まっておりますので、非常に乱高下が大きいわけでございます。特に最近の価格動向は、亜鉛を除きますと非常に低いレベルで推移しておりますし、最近時点でまたさらに下降の傾向にあるということで、非常に心配をいたしておるわけでございます。  ただ、亜鉛は非常に高い価格にはなっておりますけれども、これは長期間にわたって非常に低価格でございましたために、鉱石の新規増産が十分行われなかったということで、世界的に鉱石が不足した結果として市況が高くなっておるわけでございまして、実需が別にふえたということではございませんので、市況高がそのまま経営面にプラスになるという状況ではございません。  そういうことで非鉄金属、全般的に悪いわけでございますけれども、今後の動向につきましても、先生御承知のように、ヨーロッパ、アメリカの経済が非常に低迷を続けておりまして、恐らく世界の景気全体が本格的な回復に向かうのはまだ相当先ではないかというふうに言われておりますので、そういう意味で、中長期的な問題は別といたしまして、近々相場が急速に回復するという材料はいまのところ見当たらないという状況でございます。そういう状況でございますので、本格的な需要回復期が至りますまでは恐らく市況が一進一退を繰り返すということで、今後とも弱含みの基調で推移するのではないか、かように見ております。
  44. 後藤茂

    ○後藤委員 そういたしますと、緊急融資制度が確立をされているわけでありますけれども、この緊急融資制度発動価格を、これまでの森山前長官の時代に、価格の動向を見ながら改定も考えていかなければならないのではないか、時期等についてははっきりと言明はされておりませんでしたけれども、この緊急融資制度で現在のところ問題点はないか、あるいは将来を考えていくと、発動価格等についてもやはり相当厳しく検討しておかなければならぬのではないか、あるいは基金の面につきましても、たとえば利子補給的な面は考えなくていいのかどうか、こういった問題に対しまして長官はどのようにいま見ておられますか。お答えいただきたいと思います。
  45. 山梨晃一

    ○山梨説明員 お答えいたします。  確かに先生おっしゃいますように、これから発動する時期がいつ来るかということは、われわれも関心を持ってウォッチしているわけでございますけれども、ことしの例で申しましても、来年も同じ予算枠を一応私ども要求しているわけでございますけれども政府保証枠といたしまして百二十五億円、これはことしも確保し、来年も同額で要求しているわけでございます。これは本当に市況が悪くなったときに発動されるというものでございまして、今年も実はこの六月末に約五十億、それから九月末に四十数億ということで、九十数億実際に融資発動したわけでございます。  この融資をするに当たりまして、昨年度まで銅については三十六万一千円、亜鉛につきましては十九万六千円という価格を基準にしておりましたものを、コストアップということを配慮いたしまして、今年度から銅につきましては四十三万四千円、亜鉛につきましては二十二万八千円というところまで発動価格をアップした、アップすることによって融資発動したという実績がございます。  来年度につきましても、これは来年のことでございますからどうなるかわかりませんけれども、発動すべき事態が参りましたらこの融資が実施できるようにということで、先ほど申しましたように貸付枠の要求をしているということがございます。  それから、利子補給財源でございますけれども、現在は御指摘のような利子補給財源、これは五十三年度の補正予算でついたものでございます。確かに利子補給財源そのものが若干不足しつつあるということでございますけれども、一方で、五十四年度の終わりころから価格高騰した時期に受けた拠出金がございますので、一応こういうものも含めまして利子補給財源に充てるということを考えている次第でございます。
  46. 後藤茂

    ○後藤委員 大変厳しい状況がなお続くと思いますので、せっかく緊急融資資金の制度ができているわけですから、タイミングよく、常に発動価格の面におきましても対処していただきたい、これは要望しておきたいと思うわけです。  私が特にこの点を申し上げましたのは、行革絡みで五十七年度予算につきましてもゼロシーリングということ、あるいは補助金の一割カットという枠組みがあるわけでありますが、そういたしますと、ともすればどうも一律的にすべてをカットされていくという傾向が出る危険性があるわけであります。やはり政策の優先順位というものをぜひひとつきちっと押さえておいていただいて、とりわけ金属鉱山の確保というものに対しても財政的、予算的な措置を誤らないようにぜひ要望を申し上げておきたいわけです。  そのことと関連をいたしまして、探鉱助成の問題です。これも予算と大変大きなかかわりを持っているわけでありますけれども、探鉱助成策は、私はこの委員会でもしばしば指摘をしてまいりました。ぜひひとつ探鉱助成というものは強化をしていくべきである。日本は資源がない国でありますから、その資源がない国で非鉄金属というものは大変有用な資源である、これを開発していくための制度というものはぜひ積極的に強化していってほしい、こう考えております。  その点と関連をいたしまして、金属鉱業事業団にいま名前を変えておりますけれども、金属鉱物探鉱融資事業団が設立をされたのが昭和三十八年五月でありました。その後金属鉱物探鉱促進事業団、そして現在の金属鉱業事業団に名前を変えておりますが、約十八年経過をしてまいりました。  この探鉱には、三段階探鉱をされているわけでありますけれども、私は、最近やっと大分成果が上がり始めている、こういうように聞いているわけであります。この十八年間の足取り、それから投資の額あるいは効果、こういったものに対しまして、少し歴史的に皆さん方がどのように把握されておられるか、最初にその点、これは山梨さんの方からで結構でございますから、お伺いをいたしたいと思います。
  47. 山梨晃一

    ○山梨説明員 お答えいたします。  先生おっしゃいますように金属鉱業事業団は昭和三十八年五月に設立されて以来、国内における金属鉱物の探鉱を促進するために、いわゆる三段階方式と申しますか、そのうちの第一段階と第二段階目を事業団が受け持っている。具体的には、広域地質構造調査及び精密地質構造調査というものを相前後して開始しておりますが、それ以来、国内における探鉱の中核的な推進母体として非常に重要な役割りを果たしてきているというふうにわれわれは考えているわけでございます。  金属鉱業事業団がこういう広域地質構造調査として取り上げます地域につきましては、鉱業審議会の答申を得まして作成した国内探鉱長期計画というものに基づきまして、現在までに全国で四十三地域におきまして広域調査に着手しておるわけでございますけれども、その結果、そのうちの二十二地域におきまして有望地域を発見いたしまして、これらにつきましては第二段階目に当たります精密調査というものをスタートさしているわけでございます。  この事業団によりまする広域調査及び精密調査、そしてそれから続きます企業探鉱、これは企業ベースでやる探鉱事業でございますけれども、こういういわゆる三段階方式によりまする探鉱の結果につきましては、すでに企業探鉱の段階にまで至って獲得している鉱量は、最近の国内の生産量をベースにいたしますと、銅で約十一年分、鉛及び亜鉛はそれぞれ約九年分の生産量に相当するような膨大なものを発見しているというふうに考えております。  なお、具体的な新規鉱山の開発または新規鉱床の発見の例といたしましては、昭和四十年代におきまして、秋田県に深沢鉱山という山が新たに開山いたしましたし、同じ秋田県の小坂鉱山とか釈迦内鉱山というところにおきまして新規の鉱床を発見しているということでございますが、さらに五十年代に入りましてから、同じ秋田県の餌釣鉱山というものが新しく山を開いているということのほかに、福井県の中竜鉱山でも新規の鉱床の発見をいたしているわけでございます。  一方、最近におきまして、金属鉱業事業団でやっているこれらの調査の結果、これはごく最近でございますけれども、今年度に入りましてからを含めまして、秋田県の北鹿北という地域、それから岐阜県の飛騨地域、鹿児島県の北薩串木野という地域におきまして非常に有望な鉱床を発見しておる次第でございまして、これら地域の今後の開発が期待されるところでございます。  なお、予算につきましては、大体最近は広域調査につきまして年間八億六千万円程度、精密調査につきましては年間約十億という予算を毎年つけていただいているということでございます。
  48. 後藤茂

    ○後藤委員 いまの御説明をお聞きしましても、約十八年ばかりかかってやっと最近、特にことしに入りまして、先ほど例示的に指摘されましたように、大変高品質の鉱山が見つかるようになってきた。これだけの努力をしていかないと資源というものは開発できないし、なお企業探鉱の段階に入っていかないと、実際に私たちはつかむことができないわけでありますが、それだけにこれは長官、ぜひお願いを申し上げたいのでありますけれども、えてして投資額に対する投資効果というものを大変短期に、せっかちに求めていきがちであります。  しかし、こうした探鉱というのは、五年から十年のスタンスで考えていかなきゃならない。しかも、三段階という、外国のように露頭を見つけてすぐに鉱量がある程度把握できるというような状況ではないわけでありますから、したがって、こうした探鉱につきましては、ぜひひとつ貴重な資源を開発していく、しかも長期に開発していく、固まりとしてあるのならいいですけれども、鉱脈も線状にある鉱脈だとか、非常にむずかしい賦存条件でありますから、ぜひひとつ鉱床の発見、鉱量の発見に対しまして、探鉱助成に対する財政的な措置というものについては積極的にひとつ取り組んでいただきたいということを、私は要望として申し上げておきたいと思うのです。  それから、本委員会でも、この前も実は取り上げているわけでありますけれども、わが国の鉱石というのは必ずしも低品位ではないのですが、しかし採掘条件が悪い。つまり、鉱山を取り巻く環境というものがどうしても割り高になるような状況であるために、品位は諸外国に比べてむしろ高いにもかかわらず、これを泣く泣くズリ鉱石として捨ててしまわなければならぬ。とりわけ単体の鉱山、単味鉱山というのですか、銅にいたしましても、銅だけより含んでいない、随伴鉱の鉱石を持っている場合はいいのですけれども、そうでないものはどうしても採算が合わないために、せっかく一定の品位を持っておるものも捨てていかなければならないという問題があるわけです。大変むずかしい問題です。しかし、私は、数少ない資源でありますから、この単味鉱山に対しても何らかの援助の手が差し伸べられないだろうか。たとえば明延等を見ましても、あれがもし随伴鉱としてのすずがなければ、あの優秀な鉱山というものも、いまの市況から見ますと立ち行かないのじゃないだろうかというような状況にあるわけであります。金、銀等を随伴してくれればなお結構でありますけれども、単味鉱山に対しまして、これは政治が知恵を出していくべき段階に来ているのではないかと思いますので、長官、いかがでございましょうか。幾つかあります。下川だとか中竜だとかあるいは神岡、細倉、八谷というようなところ、ついこの間は日立も閉山をいたしましたけれども、こういったところが鉱量がなくなってしまった場合、これはやむを得ない。それから日本のボーキサイトのように、たくさんあるけれども、これはもう完全に事業採算に合うようなものじゃない。これも別ですけれども、そうでない日本の鉱山というものに対して、政治的にどう対応していくのか、一回つぶしたらもう復活することはできませんので、長官、明確な答弁があるいはむずかしいかと思いますけれども、ぜひひとつ検討課題として、どう考えておられるかお伺いをしてみたい。
  49. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、日本の鉱石の場合は、必ずしも品位が悪いわけでないのに、なかなか開発がむずかしいという分野が確かに多くございます。それは確かに一面では地理的条件、それからまた鉱床の規模とか形状、さらには露天掘りができるかどうか、そういう掘削の方法とか、こういうことによっていろいろ条件が変わってまいりますので、そういう面の検討はもちろん必要でございますけれども日本のように非常に資源が乏しい国では、国内の資源を大事にする、国内鉱山というのは安定供給の基盤にもなるわけですので、そういう意味国内資源をできるだけ開発する努力というのは今後とも続けていかなければいけないのじゃないかというふうに思っております。  特に、単に鉱山開発、国内資源の利用だけではございませんで、国内の山の場合には地域経済の核としての役割りというようなものもございますし、さらに将来海外開発を進めていく場合の技術涵養の場にもなるというような、いろいろの面でメリットもあるわけでございますので、そういう点を総合的に勘案しまして、国内資源の有効活用を図る必要があるということで、従来から、先ほど来申し上げておりますような探鉱助成、それから経営安定化のための融資、さらには技術開発等につきましてもいろいろの施策を講じてきておるわけでございます。  いずれにしましても、これだけではまだ必ずしも十分とは言えませんで、今後とも新しい地域の開発については積極的に従事いたしますと同時に、新鉱床探査費の補助制度というようなものについて、実は今年度もその充実を図っておりますけれども、今後とも先生御指摘のような点を十分念頭に置きまして、探鉱施策についての一層の充実を図ってまいりたい、かように考えております。
  50. 後藤茂

    ○後藤委員 低品位鉱に対しましては、これからもまた機会があれば指摘をしたいと思います。ぜひひとつ積極的な対策を講ずることによって、すべての資源を回収するための対策を強化をしていただきたいということを強く要望を申し上げておきたいと思います。  それから、休廃止鉱山の坑廃水対策の問題であります。これは来年度から平年度の予算に入っていくと思うわけでありますけれども、この坑廃水には私どもも、自然汚染、他人汚染、それから当事者汚染の分離の問題が皆さん方の努力によりましてある程度できる、したがって、自然汚染なり他人汚染というものに対しては、ひとつめんどうを見ていきたいという対策が講じられることになったわけでありまして、その努力は多とするわけであります。  しかし、この対策で、私たちは、少なくとも国は二分の一ぐらいに強化していくべきではないかという指摘をいたしておりましたが、現在三分の一になっているわけです。財源が足りないというようなことも一つあるわけでありますけれども、これからの政策にいたしましても、二分の一くらいは他人汚染、自然汚染に対して国が責任を持ってやるという方向をぜひ追求していただきたい。これは要望として申し上げておきたいと思うわけでありますけれども、坑廃水に対する対策、現況を若干御説明をいただいておきたいと思うわけですが、いかがでしょうか。
  51. 山梨晃一

    ○山梨説明員 先生、実は坑廃水の担当は立地公害局の所管でございまして、きょうは担当が来ておりませんので……。
  52. 後藤茂

    ○後藤委員 それじゃ長官に、いま私が指摘をいたしましたように要望をしておきたいと思いますので、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  もう一点。特に非鉄金属の製錬関係については、電力を大変たくさん使うわけであります。とりわけ電気亜鉛等はかん詰めのようなものでありますから、アルミニウムと同じように、電力の価格が上がるということは直接コストに大きく響きますし、また採算に大きな影響を与えてくるわけであります。  私は、どうも電力多消費型産業という言葉が大変安易に使われているのじゃないかという気がするわけでありますけれども、電力多消費型産業の定義というのですか、概念というのですか、一体どういうものを電力多消費型産業通産省としては考えておられるのか、まず最初にそのことをお聞きをしておきたいと思うわけです。
  53. 植田守昭

    植田政府委員 基礎素材産業に、いわゆるエネルギー危機以来いろいろと危機に陥っているものがあるわけでございます。お尋ねの、俗に電力多消費型産業という言葉が出ているわけでございます。それはいろいろと産業としてはあろうかと思いますが、生産規模とかあるいは現在の不況に置かれている状況とか、もちろんコストに占める電力のウエートということは当然でございますが、そういった観点から、いわば現在の政策的観点からいたしますと、やはりよく言われます、先ほども御指摘のございましたアルミとか亜鉛とか、こういったところが中心的な問題、業種ではなかろうかというふうに私ども考えております。
  54. 後藤茂

    ○後藤委員 私、申し上げるのは、確かに電力をたくさん使うわけでありますけれども、コストの面、加工費なのかあるいは総コストに占める割合なのか、その辺がちょっとわからないものですから、一体電力多消費型産業というものは何を判断基準にしているかということをお聞きしたわけでありますけれども、もう一度お答えをいただけませんでしょうか。
  55. 植田守昭

    植田政府委員 まずは、やはり製造コストに占める電力コストの比率というところが一つのポイントになろうかと思いますが、私、先ほど申しましたのは、政策的には、生産額の問題とか、そういったことも含めまして、どうしても問題になるという意味で代表的な二つの業種を申し上げたわけでございます。
  56. 後藤茂

    ○後藤委員 割合としてどの程度かということは、必ずしも明確ではないのですか。
  57. 植田守昭

    植田政府委員 数字的に何%ならどうというふうに必ずしも明確に定義はしておりません。
  58. 後藤茂

    ○後藤委員 数字的に定義を明確にしていくということは大変むずかしいだろうということはわかるのですけれども、指摘をいたしたいのは、たとえば電気亜鉛等についても、相当ぎりぎりまでいろいろな企業努力をしていると思うのですね。神岡にことしの夏、この委員会調査に行ってきたわけですけれども、私がかって神岡の鉱山に入ったときと現在とでは、坑内が非常に暗くなっている。電気等も節約に節約を重ねていっている。これはキャップランプをつけ、あるいは坑内を走っている車はヘッドライトをつけているわけでありますけれども、坑内が暗いということは、安全、保安の面からいってもやはり危険ではないかという気がするわけです。それほど節約をしておりましても、最近、神岡においてもあるいは東邦亜鉛等においても、人員削減を伴う合理化をしていかなければならない、こういう状況になっているというように聞いておりますし、また、亜鉛関係の七社の中間決算等見ましても、九十億円の赤字を計上せざるを得ない、こういうような状況にあるわけです。企業努力を幾らやりましても、電力料金が四〇%から七〇%も上がっていくということになると、製品コストに占める割合が非常に高いと、価格に転嫁することができない、しかも国際商品である、逃げ道がないわけですね。その逃げ道がない電力料金が高くなる中で、行政はあるいは政治はこれをどうしたらいいのか。もっと生きる道があるにもかかわらず、総コストに占める電力料金が多い、つまり電力多消費型産業である、そのために企業を閉じていかなければならない、あるいは鉱山を閉めていかなければならぬという事態が現に起こっているわけですね。私は、これに対して、政治が判断を逃げてはいけないのではないかという気がするわけであります。政府の方としては、一体この問題をどういうように考えておられるか、ひとつ明確に御答弁をいただきたいと思います。
  59. 植田守昭

    植田政府委員 お尋ねのように、エネルギー問題が大変変わってきまして、エネルギーコストの高騰、したがってまた電力料金が非常に高くなってきている、そういった影響を受けまして、特にいま御指摘の電力多消費型産業がコストに占める電力料金の割合が非常に高いということのゆえに非常な危機に陥っているということでございます。  私どもといたしましても、こういったいわば構造的なものからくる問題でございますので、各業種それぞれ共通的な問題がある、と同時にまた、しかし各産業の抱えた具体的、個性的な問題もあるわけでございますので、産業構造審議会等におきまして、それぞれの立場から御検討をいただいているというところでございます。アルミ等につきましては、御案内のように、すでに一つ方向も審議会では出ているわけでございますが、各産業につきましてそれぞれいま検討しているところでございまして、そういった検討状況を踏まえながら、かつ、そこの中にある共通性等も見まして、こういった産業におけるコストに占める電力ということあるいはそのほかの問題も含めまして、検討していきたいというふうに考えております。
  60. 後藤茂

    ○後藤委員 大臣お見えになっておられますので、きょうは明確な御答弁はいただけないかと思いますけれども、私が一番疑問に思っておりますのは、いま御指摘をした点なんです。  つまり、電力多消費型産業と言われるところが、電気料金が大幅に上がってきた、この製品コストに占める割合が非常に高いために他に逃げ道がないということでまいるという状況が生まれるわけですね。片一方、供給側の電力事業の方は総合原価主義で、かかったコストというものが料金に転嫁できる制度になっているわけです。片一方は、それが大変大きな要因でみすみす倒れていかなければならないという問題がある。公益事業法から電気事業法になって、九電力体制が今日果たしてきた役割りというものを私は一定の評価はするものでありますけれども、料金のあり方というものはこのままでいいんだろうか。約三十年ばかり経過してくる中で、どうも政策料金はとりにくい、電力の融通調整を活用すればいいじゃないかということだけでは済まない段階がいま来始めているんじゃないかと思うのですね。エネルギーの消費構造というものも大きく変わってきている、産業構造も大きく変わってきている、こういった段階で、大臣、いまの電力料金制度のあり方あるいは電力多消費型産業、総コストに占める割合が非常に高い、製品コストに占める割合が非常に高いものに対して、一体いまのような、ピーク時を外したときあるいは夜間、さらにはこの融通調整の料金を活用していきながらやれということだけでは済まない段階が来始めているのではないかと思いますので、ひとつ大臣のお考えをお伺いしたい。これからの問題としてこれは追求していかなければならない問題ではないかと思いますので、その点についてお伺いをしておきたいと思います。
  61. 田中六助

    田中(六)国務大臣 御承知のように、電気料金は電気事業法によって定められております。しかも、これは非常に設備投資のかかる事業でございまして、そのための利益金、配当金、あるいはそのためのリザーブのようなものはとっておかなくちゃいかぬし、ユーザーと申しますか、需要者の要求によってはいつでも供給し得るキャパシティーを持っておかなくちゃいけませんし、そういう点で他の産業とは違っておるわけでございます。したがって、すぐ右から左にというような間に合わせ方はできない、ある程度の原価主義、それから費用の分を含めたものを常に電気料金の中に加味しておかなくちゃいけません。  御承知のように、いまから十年ぐらい前までは一バレル二ドルぐらいしておった油が、現在は公式価格で三十四ドル、そういうようなすごい値上げでございまして、そういう点からも、日本の電力というのはその油に依存しておる率が多いだけにそういう結果になるわけでございまして、私どもは、代替エネルギーの開発導入というようなことで、LNG、原子力発電、水力、そういうものに大きくシフトしょうとして努力はしております。  したがって、そういう点でどうしても電力をたくさん食う素材産業あたりにはそのコストの面が加味されて、大変な不況になればなるほどその重荷がかかっておるわけでございまして、これはそういう一つの、一挙にして成り立たない、たとえば原子力発電所はコストが普通の火力発電の半分で済むといいましても、御承知のように運開するまでに十五年ぐらいかかる。それをせいぜい十二、三年にしようという努力はしておりますけれども、おしなべてそういうようなペースを持った電気料金をめぐる諸条件、諸案件でございます。したがって、短兵急に、さあ、その環境に合わせて、不況になってあるいはまた多消費というようなことで、右から左にというようなことがなかなかいかない点は非常に、こういう時代になりますと、ますます大きなへこみが出てくるわけでございます。  したがって、私どもは、長期、短期、そういう面でいろんな諸施策を進めておりますけれども、何とか電気料金の下がり得ること、たとえば円レート、円為替の問題もございますし、代替エネルギーの開発導入というようなことで、全力を挙げてこういうものに対処していかなければならない。すぐいまお答えが簡明にできないのは、やはり長期的な設備投資というものがカバーリングできないという点にあるんじゃないか。しかし、円レートの上下あるいは高さ、低さ、そういうものによってある程度のカバーもできますし、御承知のように電気料金はついせんだって、円を二百四十二円で計算しております。それが現在は二百二十円程度になっておりますので、そういう点も加味して、コストという点から考えなし得る点もございますし、そういう点は私どもも何らかの方法も講じていきたいというふうには考えております。
  62. 後藤茂

    ○後藤委員 この点は、もう少し議論を詰めていってみたいと思うわけですけれども、次の機会に譲りたいと思います。つまり、経済成長五・五%というものが本当にこれから望ましい成長率なのか、あるいは最近下がってきております弾性値を一体どう見ていくのか、あるいはエネルギーの消費構造というものがこれからどうなっていくのか。まさにいま一番、開発、開発で走っておったときに、ちょうど、ちょっと一服というわけじゃないですけれども、見直す段階に来ているだろう。そういう点で、ぜひこの料金の問題等に対しましても、さらに大臣もひとつ見直しの段階というものが来ているのではないかという観点から取り組んでいただきたいという要望を申し上げておきたいと思います。  最後に一点。私どもも、武器等の輸出の禁止等に関する法律案を国会に提案をいたしております。これはいずれ次の機会に十分に論議をしていただく法律案でありますので、そのときにまた詰めていってみたいと思うわけですけれども、ただ、最近大変心配をいたしておる動きがちょっと出てまいっております。  たとえば、新聞等にも公表されておりますけれども、対米の武器輸出についての基本的な考え方政府がまとめた、こういうような情報も聞くわけであります。これは外務省を中心といたしまして、防衛庁とそれから通産省との間で検討作業が進められてきた、こういうように報じられているわけであります。通産省はこの作業にかかわってきたのかどうか。  それから、同じこうした動きの中で、防衛庁の和田装備局長がさきの国会で、軍事技術の対米供与問題に関して事務的に関係各省庁と打ち合わせを行った、こういう答弁をしているわけです。この関係各省庁の中に当然私は通産というものも入っているのではないかと思うわけでありますけれども、こうした事務レベルの調整の折衝、打ち合わせがあったのかどうか、これが第二点であります。  さらに、第三点といたしまして、日米相互防衛援助協定の第一条に「装備、資材、役務その他の援助を、両署名政府の間で行うべき細目取極に従って、使用に供するものとする。」という規定があるわけでありますけれども、あくまでも、「使用に供する」かどうかということは政府の高度な政治判断にかかっているだろうというように私は考えるわけであります。冒頭に申し上げました基本的な考え方によりますと、武器輸出の三原則、たしかあれは三木内閣の時代でありましょうか、この統一方針の枠を超えていく対米武器輸出は次元の異なるものだという方向にどうも結論づけようとしているように思えてならないわけであります。前国会におきましても、武器輸出問題等に関する国会の決議がなされております。先ほど指摘をいたしました動きに対しましてまず政府委員の方からお答えをいただきまして、私は武器輸出の三原則はあくまでも堅持をしていくべきである、かように考えております。国会の決議というものを堅持し、憲法の理念というものを堅持をして対処していっていただきたいと私ども考えているわけでありますが、最後に大臣からこの点に対する明確な御答弁をお願いしたいと思います。
  63. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 第一点、第二点の、事務レベルでの打ち合わせ協議の問題について私からお答え申し上げます。  まず第一点の事務レベルでの協議問題でございますけれども、これは先生御指摘のように、通産省といたしましては、基本的に米国につきましても武器輸出三原則及び政府統一方針に基づいて対処する考えであることは当然でございますけれども、対米関係につきまして日米安保条約との関係という問題がございまして、これにつきましては外務省が検討を行っているという段階でございまして、その検討につきまして当省が参加しておるという状況ではございません。外務省の見解が出ますれば、それを踏まえてどういうふうに三原則との関係を考えるかということになるわけでございまして、事務的に協議が行われているという段階ではございません。  第二点の、防衛庁和田装備局長が九月に訪米する前に何らかの打ち合わせが行われたかという御質問でございますけれども、渡米前に防衛庁と当省との間で意見交換が行われたということはございます。その内容は、しかしながら、防衛庁のサイドからその協議に至りました経緯でございますとか、あるいはそのアメリカ側の背景でございますとか、そういうことについて説明がありまして、私ども通産省の方からは、武器輸出三原則及び政府の統一方針の内容を説明したという意見交換の問題でございまして、本件について何か新しい対処方針を打ち合わせたとかその結論を出したというようなものでは一切ございません。  以上でございます。
  64. 田中六助

    田中(六)国務大臣 ただいま私ども貿易局長からるる御説明がございましたが、通産省といたしましては、武器輸出三原則、政府の統一見解あるいは国会の決議というものはずっと尊重してきておりますし、将来ともこれは十分われわれが尊重しなければならないものであるというふうに思っております。  ただ、外務省の言う条約上の制約というものがやはりあるであろうという見解もございますし、目下そういう点の調査研究あるいは検討ということについては、先ほど貿易局長も言っておりましたように、事務当局レベルでは検討しておるようでございますが、その結論については私はいまだ報告を受けておりませんし、推移を見守っておる段階でございます。
  65. 後藤茂

    ○後藤委員 終わります。
  66. 野中英二

  67. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 私は、いま問題になっておりますアメリカの対日貿易摩擦にかかわる、つまり二十九品目の関税の撤廃を求めてきたものを中心とする対日経済要求、この問題を中心にして若干お聞きを申し上げたいと思います。  最初、型どおりの質問になりますけれども、伝えられるところによりますと、十六日、在日アメリカ大使館のバラクロフ公使から外務省にこの連絡があった、あるいは要求書が外務省に渡された、こういうふうに聞いておりますが、そのとおりでしょうか、少しその辺を詳しくお聞きしたいと思います。
  68. 深田宏

    ○深田政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、十六日にバラクロフ在京アメリカ公使から私のところにあてましての手紙が参った次第でございます。
  69. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これは後で質問をしてまいりますけれども、内容は、わが国の産業現状からいった場合にきわめて厳しいものになっておるわけでありますけれども、こういう具体的な内容がこの時期にわが国に対して要求される、こういうふうな状況については政府の部内としては十分に想定をしておったのかどうか、最初に外務省からお聞きをしたいと思います。
  70. 深田宏

    ○深田政府委員 在京アメリカ大使館と私どもの間は常時接触を保っておるわけでございますけれども、このほど十七日に関係の閣僚の皆様お集まりになりまして経済対策閣僚会議をお開きになるということを先方もかねがね承知いたしておりまして、その際の参考ということで、アメリカの希望、関心というものを表明したいということで今回手紙を送りつけてきたということでございます。
  71. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま局長の言い回しがちょっと微妙なんですが、アメリカが非常に深い関心を持っておるということを参考のためにわが国に連絡をした、この程度に受け取ってよろしいのですか。
  72. 深田宏

    ○深田政府委員 米国と日本との間では、かねがね日本側の出超が非常に大きくなっておりますので、その意味におきましては、世上摩擦と言われるような状況が存在しておったわけでございます。したがいまして、アメリカ側としましては本件について非常に深い関心と心配と申しますか、事態を憂慮しているということはあったわけでございます。  ただ、この手紙の性格ということにつきましてお答え申し上げれば、先ほどお答えいたしましたように、日本側に要求書を突きつける、こうしろああしろということではなくて、日本側でいろいろ御検討になっておるということを伺ったのでアメリカ側の考えを申し述べたいということでこういう手紙を用意したんだ、こういうことでございます。
  73. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 わかりました。  そこで、経企庁長官がお見えになっておりますからお伺いをしたいわけですけれども、いま外務省の深田局長の方からもお話ございましたが、もちろん、これまでアメリカのみならずECとの間でもいわゆる黒字減らし、あるいは貿易摩擦というふうに言われるような問題で政府は重大な関心を持って対策を進めてこられたと思います。具体的には、いまのお話にもございますように、十七日、この関係閣僚会議を開かれて今後の検討項目をいろいろと協議をなさったようでありますけれども、その前にも貿易是正の対応策という形で、河本長官を中心に、わが国ではアメリカの今回の要求がある前に、たとえば輸入促進をどうやるかというふうな問題、とりわけ非関税障壁と言われるものの内容の改善、あるいは物によっては撤廃、こういうふうな形でいろいろと対策を進めてこられたと思うわけですけれども、今回の十六日の具体的な、いま深田局長がお話あったような書簡といいますか、それを受けてこれまで進めてこられた内容を相当大幅に変えていかなければならない、このようなお考えなのでしょうか。あるいは、その書簡が来る前にすでに検討しておった内容について日本側としてはそのまま進めればよろしい、こういうふうなお考えなのでしょうか。そこをちょっと、基本的な問題なので河本長官の方からお伺いをしておきたいと思います。
  74. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 政府では先月の初め、今年度の後半の経済運営をどうするかということについでいろいろ相談をいたしまして、その方向を明らかにいたしました。  内容は御承知と思いますが、繰り返しますと、貿易の黒字幅が非常に大きくなっておりますので、これを拡大均衡の方向に持っていこうということが一つ。それから、内需が相当落ち込んでおりますので、内需の拡大について一連の対策を立てましょうということ。それから、住宅対策、これが計画どおり進んでおりませんので、住宅対策を軌道に乗せるようなそういう配慮をいたしましょう。こういうことを中心といたしまして下半期の経済運営基本路線を明らかにしたのでございます。言い忘れましたが、物価の安定ということがあくまでこれらの政策の前提になっておりますので、物価対策ももちろん重要だということが表明をされております。  さて、その基本方針に基づきまして、十月の初め以来関係各省でいろいろ作業を進めておりましたが、稲山ミッションなども十月の終わりにヨーロッパから帰ってこられまして、政府もその報告を受けました。ヨーロッパの方では、およそ百億ドルを超える貿易の黒字が出そうでありますし、アメリカの方も百五十億ドルを超える黒字になりそうだ。事態はますます急を要する、事態の解決は急いでやらなければならぬ、こういうことになりましたので、総理の方から、これらの貿易諸問題を経済対策閣僚会議で至急に議論をして何らかの対策をまとめるようにと、こういう指示がございまして、そこで去る十七日に第一回の会議を開いたのであります。  たまたまその日にアメリカから外務省へ手紙が届いたということでありまして、いま外務省から御説明がございましたように、参考の資料にしてもらいたい、こういうことであったそうであります。  したがいまして、私どもは、外務省に届いたアメリカの手紙をある程度これからの作業の参考にしながら全体の対策をまとめていきたい、このように考えております。
  75. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 私どもというよりは私が認識しておりましたのは、この具体的な書簡、もちろん入手しておりませんから、つまりアメリカ側のきわめてシビアな要求、どうもこういうふうに受け取りがちでおったわけでありますけれども、いまのお話を承りますと、たまたま経企庁長官を中心にしながら経済関係閣僚会議がこれからさらに具体的に貿易摩擦の問題あるいは黒字減らしの問題等を協議していくその時期に合わせて、アメリカ側では、まあニュアンスの問題はありましょうけれども一つの参考として検討してもらいたい、こういうふうな意味だというふうに理解をするわけであります。  それを前提としてこれから若干御質問を申し上げたいと思いますが、この内容を大ざっぱに見てまいりますと、一つは、農産物など幾つかの品目の輸入枠の撤廃、完全自由化といいましょうか、こういう内容、それから二十九品目に及ぶ関税の撤廃、さらに非関税障壁の排除といいますか、改善といいますか、大きく言えばこの三つの項目から成っていると思うわけであります。  しかも、このいずれもがわが国にとってはきわめて重大な問題であります。ただ、非関税障壁の撤廃の問題については、あるいは改善の問題については、これはもうこれまでも政府部内でいろいろ、どういう内容に持っていけるかというふうな検討は進められてまいったと思いますし、幾つかはすでに改善措置がとられておるものもあると思います。ですけれども、とりわけこの二十九品目の関税の撤廃というふうな問題については、これは私から申し上げるまでもなく、この品目にかかわるわが国内産業の状況、これを一つ一つ検討してまいりますと、わが国の産業それ自体にきわめて重大な影響を与えるものが相当ある、こういうふうに見ざるを得ません。したがって、アメリカ側の、たとえば参考にしてもらいたいという希望、これは相当強いものだと思いますけれども、そういうものがあったとしても、これに対処するわが国の施策というものは、大きな目で見た場合に、貿易摩擦を回避する、あるいは黒字減らしについて大きく一歩進めるというこの方向性はわかりますけれども、しさいに一つ一つ見てまいりますと非常に重要な問題を抱えておるのではないか、私はこういうふうに思うわけであります。  時間の関係もありますから、幾つかの問題について、各省からお見えになっておりますので最初お聞きしたいと思います。  最初に農林水産省。この中で完全自由化を求められておるたとえば牛肉あるいは柑橘類、さらにまた関税撤廃の品目に指定されておるものが幾つか農水省関係でございますけれども、これに対してはどのようなお考えを持っておられるのか、あるいは農水省自体としてどういう対策が可能だ、こういうふうにお考えになっておりますのか、その点最初にお伺いをします。
  76. 副島暎一

    ○副島説明員 アメリカの要請につきましては、一べつしましたところ、非常にむずかしそうなものが多く並んでいるように思われます。私どもとしては、来月上旬に予定されております日米貿易グループの場におきまして、先方の主張を十分聴取いたしました上で、その対処ぶりを慎重に検討したいというふうに考えております。
  77. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 非常に一般論、抽象論でございますけれども、時間の関係から、私、牛肉の国内生産の状態であるとかあるいは輸入の現状であるとか、そういうふうなものを逐一ここで細かな数字を挙げてやりとりしようとは思いませんが、端的に言ってお答えをいただきたいと思いますのは、これが完全自由化された場合あるいはまた書簡の中で挙げられているこの品目についての関税を完全に撤廃をする、こういうふうな状態になった場合に、国内の農業政策として耐え得るのかどうか、一体こういう状況に応じ得るのかどうか。これはこの品目だけじゃございません、全体の日本貿易バランスの問題はありますけれども、農水省としての明確なお答えをいただきたいと思うのです。
  78. 副島暎一

    ○副島説明員 確かにむずかしい内容の要求が並んでおりまして、にわかに応じ得る事態にはないというふうに考えております。特に牛肉、柑橘の問題につきましては、東京ラウンドでも合意された線がございます。八四年度以降については輸入枠もまだ決まっておりませんで、その点について八二年度末ごろに再度協議をするというふうになっております。先月、農産物会合がアメリカとの間で開かれた際にも、先方からその協議時期を繰り上げてもらえないかというような話もあったわけでございますが、やはり東京ラウンドの合意は尊重されるべきであるというようなことで応対しておるところでございます。
  79. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、若干中身に入りますけれども、コンピューター関係についても、これは関税の撤廃要求の中に挙げられておるわけであります。  この問題については通産省からお聞きをするわけでありますが、言うまでもなくコンピューターについては、わが国の業界といいますか産業界は非常にいい状態をいまは保っておると思います。しかし、この問題も、いまの農水省の話ではございませんが、東京ラウンドで最終譲許税率というものが決められて、そして、それを頭に入れながら、わが国のある意味では戦略産業という位置づけを持っていま産業活動が行われておりますが、もし今回アメリカが言うような形で関税の完全撤廃というふうな状況になれば、これは大変な状況が起きるのではないか、こういうふうに私は考えております。これはもうすでに深く御案内でありますから一々申し上げませんけれども、そういう状況は必至である、こういうふうに考えておるわけであります。とりわけコンピューター及びその周辺の装置の問題については、輸出額と輸入額を見ましても、入超になっておることは御案内のとおりであります。特に対米関係ではその傾向が強い。さらにまた、アメリカが今回言っているような完全撤廃という形になれば、確かにいま関税の面ではアメリカ側が安い、こちらが高い、こういう状況はあります。しかし、東京ラウンドの譲許税率で考えてみますと、その段階ではむしろアメリカよりも日本の方が低くなる、こういうふうな取り決めが合意されておるわけでありまして、そういう状況の中で完全撤廃を求めるということは、非常に一方的ではないかというふうな感じがしてなりません。しかも、いままでも言われておりますように、この問題についてはお互い相互主義で解決をしなければならない問題だというふうなコンセンサスができておると思うのであります。  さらに、時間の関係がありますから続けて申し上げますと、日本アイ・ビー・エムの輸出分も、わが国から他国に対する輸出分に含まれておるわけでありますから、そういうふうな中身もあわせて考えてみますときに、これは決して日本が集中豪雨的にほかの国に出しておって、そしてほかから入れないのだというふうな状況ではないと思うのですね。こういう問題についてどのようにお考えでしょうか、通産の方からお伺いをしたいと思います。
  80. 宮本治男

    ○宮本(治)政府委員 先生ただいま御指摘のありましたような問題について、われわれも十分認識しているところでございます。いま御指摘になりましたように、コンピューター産業日本の創造的知識集約化の中核でございますし、日米の技術格差、販売力格差というものは、先生もいま御指摘のような実態だろうと思います。  それからまた、先生も御指摘になられましたような、東京ラウンドで合意されました関税引き下げの早期実施というのを現在実施中のところでございますので、こういう問題も含めまして慎重に対処してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  81. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 全部の品目をもちろん申し上げるつもりもございませんし、時間もありませんけれども、もう一つ、クラフト紙の問題についてぜひお伺いをしておきたいと思うわけであります。  正確な資料を持っておりませんから、もし正確な文書をお持ちになっておればお答えいただきたいと思うのでありますけれども、この完全撤廃品目の中でクラフト紙というふうに言われておるようでありますが、これはやや抽象的であります。もっと詳しく正確な書簡が入っているのかどうかわかりませんけれども、いま日本の紙パルプ業界は、クラフト紙の製造も含めて大変な状況にあることは、私から改めて指摘するまでもございません。特にクラフトの中で、クラフトライナーがこの中に含まれているのではないかというふうな考え方もあるわけでありますが、この点をまずお伺いしておきたいと思います。  このクラフトライナーの点について言えば、特安法による設備処理が五十四年六月から五十八年を目途にいま進められつつある。非常に業界の中で努力が進められておるわけでありますし、また紙パ全体が、これも言うまでもなく公取の生産調整カルテルが行われており、さらにまた延長も行われておるものもありますし、紙業界全体が大変な状況の中にある。こういうことの中で輸出入の状況を見ますと、必ずしも直ちに大打撃というふうな形になるかどうかは別としまして、相当重大な影響を及ぼすことは指摘するまでもないと思うのですね。この点に対しては一体どのようにお考えか、これは通産省の生活産業局長ですか、お答えいただきたい。
  82. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答え申し上げます。  アメリカ側から参考として示されたものの中に、クラフトライナー等についての関税の撤廃ということが触れられております。  いずれにいたしましても、先生からもお話ございましたように、紙パルプ産業全体が現在不況でございますし、また特に段ボール原紙につきましては、特安法に基づく特定不況産業といたしまして、構造改善、過剰設備の処理というようなことを実施しているわけでございます。このクラフトライナーと申しますと、段ボール原紙製造業に非常に深いかかわり合いがあるわけでございますから、私どもといたしまして、そういった現在の紙パルプ産業全体の非常な困難、特にまた、段ボール原紙製造業におきます構造改善を実施中であるという実態、そういったことをよく踏まえまして慎重に対応を考えていくことが必要であるというふうに思っております。
  83. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま二、三の品目だけについて申し上げたわけでありますけれども、いずれもいますぐに、あるいはいますぐということでないにしても、できるだけ早い機会に関税を完全に撤廃をする、こういうことがいかに困難であるか、大変なことであるかということはうかがい知れると思うわけであります。  私は、そういう点から言えば、二十九品目という多品目についてアメリカ側が関税の撤廃を要求するというのは、希望としてはわかりますけれども、何か見方によっては、手当たり次第、片っ端から関税を完全に撤廃してくれというふうな意味にさえ聞こえる、そういうふうな気がするわけであります。しかも、これは日本とアメリカだけの問題ではなくして、言うまでもなく、アメリカに対してそういうふうな状況になれば、貿易摩擦はアメリカだけじゃございませんから、ECとの関係もございますから、そういう点で及ぼす影響というのはまことに大きなものがある、こういうふうに言わざるを得ません。  そういう点で考えますと、これはせっかく東京ラウンドで一定の合意を得た一つの譲許関税率というものを目標を決めて行われておるわけでありますから、そしていま実行税率といいますか、暫定税率が実際行われておるわけでありまして、それぞれの品目についての最終税率をどうするかということは、十分な話し合いの中で合意されている問題でありますだけに、幾らアメリカが強く要求しても簡単に応ずるというわけにはいかないだろう、こういうふうに考えておるわけであります。しかし、一方においては大変な貿易黒字があって、このままでいけば保護貿易主義を誘発しかねない、こういうふうな実態にあることもまたある意味で理解ができます。  そういうふうな状況の中で、これから十分に各品目ごとに詳細な検討を加えられるとは思いますけれども、ひとつ今後の方向といいますか、基本的な考え方をこの際再度、河本長官にお伺いをしたいと思うわけです。
  84. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 アメリカの基本的な貿易政策は、自由貿易だと思います。アメリカ政府もたびたび、保護貿易的な傾向は排除しなければいかぬ、自由貿易の原則を確立することが世界経済の繁栄につながる、こういうことを言っております。ただ、二国間貿易が余りにも大きなインバランスになりますと、貿易の収支というものはグローバルで考えなければならぬというのがアメリカの基本的な考え方ではありますけれども、そういう政府考え方とは別に、アメリカの議会あたりでも、これまでも何回か騒ぎが起こりました。年末から年初へかけましてアメリカの議会は休みになりまして、各議員が選挙区に帰るわけでありますが、やはり選挙区から来月の一月、二月には帰ってまいりますので、私どもが心配いたしておりますのは、やはり議会で何らかの動きが出てくるのではないか、こういう感じも心配でございます。  そういうこともございますが、同時に、二国間で百五十億ドルを超える黒字が一年間で発生するということはやはり問題だと思いますので、いまの書類はアメリカからの参考意見ではございますけれども、やはり抜本的に対アメリカ貿易をどのようにしたらいいのかということにつきましては、真剣に検討する必要があろうかと考えております。
  85. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 大蔵省、お見えになっておると思いますのでお聞きをしておきたいと思いますけれども、きょうお見えになっておりますのは関税局長でございますが、十七日の閣僚会議で、今後検討すべき対策の項目の中で、これは一つの大きな目玉になるかと思いますけれども、外貨貸付制度、この問題が出ておるようであります。正確な名前はちょっとわかりませんが、緊急輸入外貨貸付制度、こういうふうに言うのでしょうか、この創設について検討を進めたいというふうな項目がありますけれども、これについては大蔵省の考えはいかがでしょうか。
  86. 垣水孝一

    垣水政府委員 実は私、関税局長でございまして、外貨の問題につきましては国際金融局長が担当いたしておりますので、責任あるお答えは申し上げることができないわけでございますが、私が聞いておりますところでは、前回の黒字減らしのころには、外貨が月の貿易量の数倍に相当するのがあったわけでございますが、現在は二・何倍という程度で、決して外貨といいますか、外貨準備が多いわけではないということでございまして、幸いにして最近円高になってまいりましたが、ここ一カ月の間でもドル売りの介入をいたしたりしたこともございまして、いま外貨準備を使っていろいろなことをするということは、むしろ外貨準備が減るということで、円安要因になるのではないかというような心配をしているということを、実は横から聞いておりまして、私、申しわけございませんが、関税局長として責任ある答弁ではございませんが、一言申し上げさせていただきます。
  87. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 担当じゃないそうでありますからこれ以上お聞きしませんが、これも横から見られてのお答えで仕方がないかもしれませんけれども、輸出の調整金といいますか、最初課徴金というふうに言われておったようでありますが、調整金、この問題についてはどのようになったのでしょうか。これも最初に大蔵省からお聞きしたい。
  88. 垣水孝一

    垣水政府委員 輸出調整金という問題について、なぜそういう議論が大蔵省内部から起きたかということは、ただいまも申し上げましたように、輸入といっても実際問題として輸入するものが非常にむずかしいということ。輸入する対象物が少ない。それから輸入する方法が、いまの外貨の問題等もなかなかむずかしいということで、EC等が本当に求めているところは、稲山ミッションの御報告を聞いておりましても、そのミッションの方々の中でいろいろ御意見は違うわけでございますが、むしろ輸出を抑えるべきではないかというような御意見の方もあるわけでございまして、当面の急場を救うためには、実は円が安過ぎて輸出が出ているのじゃないかというような問題も指摘されたりする等を考え合わせますと、この際、輸出が急激に伸びている、集中豪雨的に伸びているようなものについては、そこからある程度の金額をいただいて、それを内需といいますか、不況産業その他内需に振りかえる。そこが技術的にはなかなかむずかしい問題があると思いますが、そういう点でECの批判というものが、日本は五%成長しているというけれども、外需で成長しているのじゃないか、われわれの失業を踏み台にして成長しているのじゃないかということにこたえるためには、ある程度輸出を抑えて内需に振り向ける方策として、たとえばこういうことがいかがかということが省内の議論になったわけでございます。  それに対しまして、渡辺大臣は、課徴金というといかにも輸出を罪悪視するというような聞こえもあるから、むしろ輸出正常化調整金というような名前にしたらどうか。しかし、いずれにしても輸出に金をかけるといっても、それは罪悪視するのじゃない。輸入に輸入関税がございますが、これは別に輸入を罪悪視しているわけではございません。したがって、輸出入の調整をするために関税類似の金額を取り上げることが理論としてはあり得るのじゃないかということで、むしろ輸入だけではなかなかべまくいかないので、輸出をある程度調整する一方便としてはこういうことも考えられるのではないかというようなことで、しばしば新聞記者等におっしゃったと私は了解しております。
  89. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 時間も残り少なくなりましたが、外貨貸付制度、それから、いま大蔵省の垣水局長の方から若干その経過の説明がありましたが、輸出調整金の問題、こういう問題について、今後の対外経済対策として進められる際にどういうふうなお考えを持っておられるか、これは河本長官にお聞きをしたいと思うわけです。
  90. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 輸出がどんどん伸びていくという一つ背景は、国内で物が十分売れないというところにあろうかと思うのです。国内で物がどんどん売れれば輸出も減るわけでありますが、なぜ国内で物が売れないかというと、それは国内の景気が悪い、内需が弱い、こういうところに原因があろうかと思います。だから、私は、この貿易摩擦を解消する一番大きな、有力な対策というものは、内需の拡大をしっかりやるということだと思いますが、これは若干の時間もかかりますので、いろいろな議論が出ておるのだと思います。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕  ただ、いまの輸出調整金というのは、変動相場制でありますから、それは技術的に大変むずかしいことでもあります。もうすでに相当な円高になっておりますから、この問題は多分立ち消えになったのではないかと思いますけれども、念のために申し上げますと、ことし初めからだけでも円は五十円幅で動いておるということであります。非常に激しい動きをしておる。過去三カ年を見ますと、百円幅で動いておるということでありますから、変動相場制のもとでは技術的にこれはむずかしいという問題もありますし、そういうことをやりますと、それじゃ私の方でちょうだいいたしましょうということで、相手の方でも日本品に対してそういうことを始めるのではないか、こういうことにもなりかねないと思います。  それから、世界全体がやはり自由貿易ということを望み、それを守り、貿易の拡大均衡によって世界全体の経済の繁栄を取り返したいという方向で進んでおるわけでございますから、保護貿易、縮小均衡、こういう方向につながる考え方はできるだけ避けてもらいたい、こういう感じがいたします。  それから、外貨貸し制度の問題は、いまも大蔵省からお話がございまして、いろいろ御説明のような事情はあろうかと思うのですけれども、しかしながら、いま緊急事態である、貿易戦争がまさに始まろうとしておる。アメリカはとてもこういう状態では承知しない、ヨーロッパもこれじゃ困る、こういうことでまさに貿易戦争が始まって、そうしてそこから世界経済の衰退につながる保護貿易が起ころうとしておるというときでありますから、非常事態でありますから、やはり非常事態としてのある程度の判断をしていただきまして、前回とは違いますけれども、むずかしい問題はありますけれども、外貨貸し制度によりまして全体としての黒字幅がある程度減ることが肝心だ。  つまり、私は、いま日本は二つの問題を抱えておると思うのです。グローバルに、非常に大きな国際収支の黒字が出ておるということ、そこに一つの問題があろうかと思うのです。それからもう一つは、二国間、特にEC、アメリカとの間に大さな不均衡があるということ、この二つの問題があるわけでございまして、これは緊急事態であるということを考えますと、そういう観点から総合的な判断をしていただくということが望ましい。しかもまた、貿易の拡大均衡が達成されませんと、経済はうまくまいりません。いまのような状態だと、貿易の拡大均衡がやはり経済の回復の前提条件だ、こう思うのであります。経済がうまくまいりませんと税収もがた減りになってしまいますし、それじゃ財政再建もできないということでありますから、そういう総合的な判断をぜひお願いしたい、このように考えております。
  91. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 時間が一、二分超過いたしてしまいまして申しわけございませんが、いまやめます。  たとえば、非関税障壁の問題につきましても、これは先ほど来申し上げましたように、進められるものは徹底的に進めていただく、このことは必要だと思います。ただ、具体的に中身を見てみますと、たとえば国内の薬事法あるいは高圧ガス取締法であるとか、食品衛生法であるとか、あるいは労働安全衛生法であるとか、さらには家畜伝染病予防法とか、それから植物防疫法、こういったきわめて重要な法律にかかわる問題が非常に多いと私は思うのです。特にこのことだけを取り上げるわけじゃございませんけれども、植物防疫法の問題なんかを考えてみましても、いままではないと言われておったチチュウカイミバエなんかがカリフォルニア州であのような状況であります。ですから、物によってはもっと輸入検査を厳しくやらなければならないという性質のものまで中にはある。したがって、これを撤廃するについては、もちろん一々慎重な検討をなされると思いますけれども、どうかひとつその点はお忘れのないように申し上げておきたいと思うのです。  時間が超過して大変申しわけございませんが、こういう重要な段階でありますだけに、最後に一言通産大臣から、今回のアメリカ側の書簡に対して、基本的には日本国内産業を守る、こういうふうな点、そして同時にまた、これはわが国だけがよろしいというものであっては通用しませんから、そういう意味で大変対策のしにくい、苦慮すべき内容だとは思いますけれども通産大臣というお立場において一言考え方を述べていただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  92. 田中六助

    田中(六)国務大臣 あくまでわが国の通商政策といたしましては、保護主義貿易を排しまして貿易の拡大均衡、つまり自由主義貿易を国の基本方針としていかなければなりません。したがって、それにはどうしたらいいかということが基本方針で、そのためには時として緊急避難的なこともしなければなりませんし、緊急対策をとらなくてはいかぬ場合もございます。そういうことをずっと練り歩いたその結果は、結論としてはあくまで貿易の拡大、わが国の産業発展というようなことを頭に置いて対処していきたいと思います。
  93. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員長代理 渡辺貢君。
  94. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 河本経企庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。本来ならば少し時間をかけて意見を述べ、論議をしなければならないと思うのですが、時間の制約もございますので端的にお聞きをいたしたいと思います。  二点でありますが、まず第一の問題は、きょうも同僚議員から若干の御意見もございましたが、経済関係閣僚会議等を開いて、八一年度後半の経済見通しを検討されていらっしゃるわけであります。成長は四・数%、しかし、その四分の三は外需に依存をする。内需は四分の一というふうに言われております。また大臣のお話の中でも、貿易摩擦の拡大、欧米との関係でも二百五十億ドルのインバランスがすでにできておる、こういうことでございますが、経済白書などでは、日本経済はきわめて良好なパフォーマンスのもとに置かれている、こう指摘されております。  しかし、私たちは、単に貿易摩擦が大きいとかあるいは外需に依存しているのが悪いということだけではなくて、こうした結果が日本産業構造の上にも大変重大なひずみを及ぼしてきている、これを考えなければならないと思います。  たとえば最近の経企庁の調査あるいは日本銀行の短期観測などによりましても、昨年の同期に比べて大企業の生産活動はプラス六一%、しかし、中小企業の場合にはプラス三・二%と半分くらいであります。あるいは製造業を見た場合に、大企業の設備投資は昨年同期に比べてほぼ一〇%前後のプラス、ところが中小企業の場合にはマイナス一五%からマイナス二〇%。日本経済産業構造が大変奇形的になってきている。二極分化とか破行性というふうに言われているわけでありますけれども、そういう点で、今日の日本経済の見通しというだけではなくて、こうした経済を支えている産業構造等についての基本的な認識を第一点にお伺いいたしたいと思います。
  95. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 日本経済の状態は、おおむねいまお話しになりましたとおりだと思います。全体としてはほぼ五%成長路線を進んでおりますが、内需が非常に弱いということであります。  その原因は、個人消費が予定どおり伸びない、伸び方が非常に低いということ、それから住宅投資が落ち込んでおるということ、それから大企業は比較的いいのですけれども、中小企業の状態が比較的悪いということ、こういうことが背景になりまして、内需の伸びが非常に弱くて経済成長としてはややひずみのある形だ、このように考えておりまして、先ほどもちょっと触れましたが、貿易摩擦を解消するのにも内需の拡大が何よりも必要である、このように私どもは理解をいたしております。
  96. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 大臣とある意味では基本的に一致すると思いますけれども、内需の拡大という問題であります。  最近経企庁も調査をされまして、景気のかぎを握るのは個人消費だ、こういうふうな調査が散見をされております。ただ、経済関係閣僚会議等の対策を見ると、どうも一般的で、具体的な踏み込み方がないのではないかというふうに思うのです。特に内需を拡大していく場合にも、勤労者の実質収入がマイナスである。特に中小企業、商店主の収入の低下、あるいは中小企業で働く従業員の給料の相対的なダウンというのは目を覆うべきものがある、こういうふうに言われているわけであります。  そういう点で、内需を拡大していく上でも消費需要を喚起しなければいけない。そうなると、所得の増加という問題も必要でありましょう。あるいは、最近大臣も主張されているわけでありますけれども、適正な金利の問題があろうかと思います。また租税負担や社会保障等の負担が、実質所得のマイナスに大変拍車をかけてきている、こういう試算もされているわけでありまして、内需を拡大していく上でも、こうした総合的な施策、同時に中小企業に対する積極的な助成、さらに軍事費の増大などが、ある意味では産業構造を非常にへんぱなものにしていく、あるいは再生産にブレーキをかけている。これはアメリカの経済を見ても同様でありますけれども、そうした点で見直しもしなければならないと思うのですが、そうした施策をどう進めていくかという点について御見解を承りたいと思います。
  97. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 個人消費の伸びが非常に低いということはいま御指摘のとおりでございまして、その理由は所得の伸び悩み、ここにあるわけであります。特に可処分所得が伸びない、自由に使える金がふえてこない、こういうことであります。それが個人消費の伸び率の低下につながり、また預金の伸びの低下につながっておる、こういうことでございますから、やはり所得が伸びる、特に可処分所得がもう少し伸びるということが、いまの日本経済の回復に非常に大きな課題だと思います。  ただ、それじゃどうして伸ばすかといいますと、これは幾つかの問題がございまして、その幾つかの問題を一つ一つ克明に解きほぐしていかなければなりませんし、なかなか急にあすからでも解決できる、こういう問題ではございませんので、これには若干の時間がかかろうか、こう思っております。  それから、重ねて私から申し上げておきたいと思うのですけれども、住宅が昨年来、計画よりも三十万戸近くも落ち込んでしまっておりますが、これもやはり所得が伸びない、ここに原因があろうかと思います。一方で住宅価格が非常に上がったけれども所得は一向に伸びないので、いまのような収入では家を建てても数年間は困るばかりだから計画を延ばしましょう、こういうことになっておるのだ、こう思います。  それから、金利の問題についても御指摘がございましたが、この点も私は御指摘のとおりだと思います。  それから、中小企業の問題は通産省からもお答えがあろうかと思いますが、中小企業に対する特殊の対策も必要ではありますが、内需全体が回復をいたしますと仕事の量がふえるわけでありますから、中小企業の問題は大半解決するのではないか。やはり仕事がないということが、中小企業が非常にいま弱っておる一番大きな原因でなかろうか、このように考えております。
  98. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 幾つかとるべき施策があるという御意見でございましたけれども、ぜひそういう点について、国民の立場あるいは中小企業の立場から、ひとつ積極的な推進を図っていっていただきたいというふうに思います。  少し具体的な問題に入りたいと思いますが、通産省にお伺いいたします。  これは八月十九日の日刊工業新聞にありましたけれども、たとえば「トヨタ自工の部品導入 今期も単価引き下げ 各社に合理化を喚起」これを見ますと、大体上半期で前年同期に比べて単価はマイナス一%、このまま推移すると二年間でほぼ五%の単価の切り下げになるのではないか。これは自動車産業でありますけれども、部品メーカー、関連する中小企業としては、大変大きな痛手を受けるわけであります。  特に日本産業の底辺をなしております素材産業、素形材産業を見た場合に、たとえば銑鉄、鋳物産業でありますけれども、これは各種の銑鉄、鋳物を機械あるいは器具産業に供給するという点で大変重要な役割りを持つ産業でして、ほとんどが中小企業、しかも地域的に見ると産地を形成しているわけでありますが、鋳物産業など全国の生産額は約一兆円前後を上下しております。こういう中で、昭和五十四年度に施行されました産地中小企業対策臨時措置法に基づいて、いろいろ振興ビジョンが立てられて技術革新への努力が始まっていると思うのですが、特に川口等の鋳物産業におけるそうした技術革新の努力や現在の到達点等について御説明をいただきたいと思います。
  99. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、五十四年度以降三カ年にわたりまして、産地中小企業の振興のために現在までに百九十八産地の中小企業を指定いたしまして、新製品の開発、人材の養成、需要開拓といったようなものにつきまして、国の方からもその事業に対して補助をして差し上げているわけでございまして、当初の予定でございますと、全体の計画は五年間で終了ということでございまして、そのうちの補助は政府としては三年目までということで考えておりましたのですけれども、産地の方々にこういった振興事業につきましての非常に強い熱意がございます。都道府県もまたその熱意を強力に支援したい、こういう態度をとっておられますので、私どもの方でも、五十四年度に指定をいたしました産地中小企業につきましては、ちょうど四年度目に来年度は入るわけでございまして、こういうところの中小企業に対しましてはできるだけ御援助をして差し上げたいということでございまして、来年度の予算要求の中で財政当局に対しまして、四年度目以降の補助につきまして現在要求をしているところでございます。したがいまして、五年間終わってみませんと、いまのところ全体の事業としてどうかという評価は下せないわけでございますが、いままでのところ、各地とも非常に皆さん熱心に取り組んでおられて相当の成果を上げている、こういうふうに判断いたしております。
  100. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 大変積極的な姿勢でありますけれども、たとえば現在進めております新技術の開発、コールドボックス造型法ですか、この技術開発によってかなり精度の高い、すの入らない鋳物製品を生産することが全体の計画の中で可能だ。ちょうど三年目でありますけれども、先日もお話を聞いてみますと、ほぼ試作の段階だが実際上これを実用化するとあと二年ぐらいは必要ではないか、こういうお話なんですね。そういう点で、三年終了段階でさらに実用化に向けての努力が始まると思いますが、ぜひひとつ積極的な御施策を要望申し上げたいと思います。  さらに、鋳物の場合ですと廃砂の問題これも大きな問題でありますし、それから新しい労働力をなかなか雇用できない。現在平均年齢が四十八歳で、もう七十歳以上の方もいらっしゃるということで、技術革新とあわせて後継者人材養成もこれからのビジョンの中に含めていきたいと、大変意欲を持っていらっしゃるわけであります。たとえば一つの組合でワンプロジェクトということで終わって、これもやりたいのだというふうになった場合に、そうした指導やしかるべき助成等が可能なのかどうか、ぜひそういう道も開いていただきたいというふうに考えるわけでありますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  101. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 先生御指摘の三年度目以降の助成でございますが、これは私どもといたしましては、五年間の計画期間の全期間を通してやらないと実効が上がらないものという意味におきまして、特に新製品、新技術を開発いたしました場合の実際の生産段階への応用、新製品の販路の確保といったような点を中心にして、四年度目以降の助成をして差し上げたいというふうに考えております。  先生御指摘のような、さらに人材養成といったようなものもあわせてやりたいがということでございますが、御案内のような財政事情のもとで、当初予定していなかった点につきましても延長して補助をするという方針でいきますので、なかなかそこまでは手が回らないというのが実情でございますが、それ以外にもたとえば地場産業振興事業といったような、これは特定の業種だけではございませんで、県の中にあります幾つかの経済圏域ごとに、その圏域内の中小企業全体の総合的なレベルアップを図ろうという事業でございます。そういう事業に対しましても補助を現在いたしておりますので、あるいはそういう事業の中であわせてやっていただくというようなこともお考えをいただく必要があるのではなかろうかというふうに考えております。
  102. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そういう点では個々にかなり具体的な問題もあろうかと思いますけれども、ひとつぜひよろしく御努力いただきたいと思います。  時間もありませんが、冒頭触れましたように、鋳物あるいは鍛造、ダイカスト、軽合金など、わが国のほとんど中小企業でありますが、こうした素形材産業の産地法に基づく指定などでいま努力が始まっているわけですけれども、全体としてこういう産業をどのように発展させるか、そういう八〇年代の積極的な政策課題もあろうかというふうに思うわけですが、そうした点について、大臣あるいは局長から一言お述べいただきたいと思います。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  103. 豊島格

    ○豊島政府委員 鋳造、鍛造、プレス加工などは、先生御指摘のとおり、機械工業の基盤を支える非常に重要な産業でございまして、今後とも近代化あるいは技術開発の推進、人材養成等の諸施策を展開していくことが必要なことは申すまでもありません。しかし、このためにはいろいろな方法がございまして、個別の分野の特質に応じた対策というのが一つございますが、いま先生の御指摘のような共通点もある、あるいは互換性もあるということで、素材産業という観点から総合的な政策が必要であると私ども考えておりまして、現在省内におきまして素形材問題総合委員会というものを設けておりますが、その中で素形材産業ビジョンをつくる作業を行っておるところでございます。そのほかにもつい先般、素形材産業若手経営者の会というのを設置しておりまして、また新しい考え方、新しい対応ということで、このような会を通じて将来像あるいは必要な施策ということも検討していくことにいたしております。
  104. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 ひとつそういう点、努力をいただきたいと思うのです。  機情局だと思いますけれども、わが国の時計産業、シチズン、セイコーなど、世界のブランドとして通っておるわけであります。今日ではスイスを抜いて世界第一位になったというふうに聞いておりますが、簡単に日本の時計産業現状を、事業所の数等、どのくらいの関連の業者、中小企業を持っているのか、あるいはそこで働く労働者の数などを御説明いただきたいと思います。
  105. 豊島格

    ○豊島政府委員 時計につきましてはウォッチとクロックとございまして、ウォッチの生産について、完成品といたしますとたとえば香港のようなところで組み立てをやるのもございますので、必ずしも日本は一位ではございませんが、機能部分、ムーブメントその他若干その部品もございますが、そういうものでいきますと八千八百万台で、スイスをわずかに抜いて五十五年一位になったわけでございます。クロックにつきましては、これは八〇年でございますが五千九百万台、圧倒的に一位でございます。金額にいたしますと、ウォッチは五十五年三千八百四十億円でございまして、クロックが千二百八十億円、合計五千百二十億円という大産業になってきております。  いま先生御指摘の企業数については正確な数字を記憶しておりませんが、ウォッチにつきましては六社、その中にはデジタルをやっておる二社というちょっと違うのがございますが、六社ございます。大体関連企業は一社当たり百ぐらいある、このように考えております。
  106. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 大変精密機械であって、しかも世界的にも日本の時計産業の地位が高くなっている、近代的な産業として発展しているわけでありますが、若干の労働問題について労働省にお尋ねをしたいと思います。  これは、埼玉県の比企郡の小川町というところにあるオガワ製作所という、シチズン、セイコーにほとんど部品を納めている部品工場ですが、この親企業というのは狭山市にある山本製作所で、山本製作所の一〇〇%出資の会社なんですが、従業員は約二百人くらいおります。  ところが昨年の十月に、中小企業の下請単価の問題やあるいは金融の問題、またいろいろ中小企業を発展させていく上でも労働者の総意、力を合わせて中小企業を守っていく必要があるだろうということで、百二十名が参加して労働組合ができたわけなんです。  ところが、その後経営者側は組合に対して、組合脱退の問題であるとか、深夜一時、二時まで家に来る、あるいは親戚に、友人に、家族にというふうに圧力がかけられるなど、不当労働行為が相次いでおります。あるいは二十八歳の婦人が工場長代理におどかされて、かまで傷を負うというふうな問題が起きる。地労委からも、そういう問題についての改善の要望が出される、あるいは労働省の川越基準監督署からも指導がある。これは三六協定の無視の問題であるとか深夜残業の問題であるとかいろいろありますけれども、いずれにしても大変深刻な労使の紛争が続き、主として経営者側からそういう事態が引き起こされております。  去年の十一月二十六日の浦和地裁熊谷支部の不当労働行為をやめろという仮処分の決定、十二月八日、川越の労働基準監督署からの「法定労働条件の確保について」という勧告、同じく十二月二十六日埼玉地労委からの要望書、ことしの四月二十三日、浦和地裁熊谷支部での同じような形での仮処分決定、さらに六月九日、これは先ほど申し上げましたように、婦人が傷を負うということで傷害に対する支払い命令が出ているということであります。現在、地労委でも審問が続けられておるわけでありますけれども、わずか一年間でこれだけの仮処分やあるいは裁判の支払い命令が出される、要望書が出される、監督署の指導が入る、にもかかわらず、ほとんど改善されていないのが現状であります。そういう点で、労働省としてどのようにこの事態についてお考えであるのかが一点。  もう一つは、もう相当長期にわたっております。小川町の町議会では、労使関係の正常化を求めるという地域の皆さんから出された陳情書も満場一致で議決をされている状態でありますけれども、こういう点についてひとつ積極的な指導を進めていただきたいというふうに思うわけでありますけれども、労働省の側からの答弁をひとつ。
  107. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 ただいま御質問いただきました小川町の製作所の問題でございますけれども、一般論から申し上げますと、労働者に団結権が保障され、不当労働行為を使用者がしてはならないということは当然のことでございまして、言うまでもないことでございます。  ただ、本件につきましては、現在地方労働委員会でいろいろ審理をしていただいております。それが不当労働行為になるかどうかということは、独立した専門機関であります労働委員会で御判断をいただくということになっておりますので、不当労働行為の件につきましてはそういうことで労働委員会の結論が出るのを見守っていきたいと思います。  ただ、いろいろと都道府県の労政機関等に組合等からお話があるようでございますし、また県自体としましても、必要に応じましていろいろ事業主等に対して指導も加えているようでございます。今後、都道府県の労政機関ともいろいろ連絡を密にしまして、そういう意味で不当労働行為ができるだけ行われないように、あるいは紛争の解決ができるだけ早く済むようにということで努力をしていきたいというふうに思っております。
  108. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 もう一つお尋ねしたいと思うのですけれども、全国に約三千七百万人余りの未組織労働者がいるわけですが、こういうふうに労働組合をつくるとすぐ干渉を受けるということで大変苦労をしているわけでありますが、労働省の見解としては、こうした未組織の労働者が組合に参加をされる、組織するというのは、やはり基本的な労働権を確立する上でも大事ではないかというふうに思うわけでありますけれども、その辺についての所見をちょっとお伺いしたいと思います。
  109. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 ただいま御質問いただきました件でございますが、これもまず一般論から申し上げますと、労働者に団結権が保障されているということは当然のことでございまして、それはそういうことでございますが、しかし、具体的に労働組合を結成するかどうかということは、そこに働いておられる労働者の方が自主的にみずからの責任で判断をし、また決定すべきことではないかというふうに考えておるわけでございます。  それで、具体的に政府としまして、こういうところで労働組合をつくったらいいのではないかとか、そういうような指導はいかがかと思いますが、いずれにしましても一般論といたしまして、労働教育の面でいろいろな施策をやっておるということでございます。
  110. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 最後に、ひとつ労働省の積極的な施策を望みたいと思うのですが、通産省、こういう精密工業で世界でも特に最高と言われる時計産業の中でこういう事態が起きている。ある意味では日本産業の恥部だというふうにも思うわけでありますけれども産業政策の上からもひとつしっかりした政策的な指導を要望しておきたいというふうに思います。時間もありませんし、答弁は結構でございます。  それから、私どもで大店法の問題で法案大綱も発表いたしておりますが、きょうは時間もございませんので、またの機会にさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  111. 野中英二

    野中委員長 次回は、来る二十六日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十二分散会