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米沢委員 私は、民社党・
国民連合を代表して、ただいま終局審議を迎えました
老人保健法案につきまして、修正案並びに修正を除く原案に対し、賛成の立場で討論を行います。
御承知のとおり、今回提案されました
老人保健法の政府原案は、その目的と基本的理念に示されておりますように、
国民の自助と連帯の精神に基づき、
国民の老後における健康の保持と適切な
医療の確保を図るため、ややもすると治療の保障に偏重しておる現行
制度を改め、予防から治療、機能訓練に至る一貫した各種
保健事業を総合的に行うとともに、それに必要な費用は
国民が公平に
負担することを大きな目的としており、その趣旨につきましては高く評価できるのであります。
しかし、政府原案には多くの問題がありました。
その第一は、各保険者が共同で拠出する
医療費拠出金の案分の問題、すなわち財政調整にかかわる問題であります。
今回、
老人医療に要する費用につきましては、国、地方公共団体のほか、各保険者が共同で財源を拠出するという、多年懸案でありました財政調整が一部導入されますことは、従来の経緯から見ると画期的なことであり、関係者各位の御理解を多とするものであります。しかし、本法案第五十九条を見る限り、七十歳以上の加入者調整が政令の改変によっては際限なく進むことになっており、今後の
老人医療費の増高いかんによっては各保険者の経営努力を萎縮せしめ、場合によっては拠出金を
負担する被保険者の急激な
負担増を招来せしめる
可能性もあるわけでありまして、私どもは何らかの歯どめの措置が必要であるとの結論に達しました。したがって、修正交渉に当たりましては、保険者拠出金の案分率は、政令でなく、二分の一として法定化せよということを強く主張いたし、結局その実現を図ることができましたことは、大いなる前進であったと思います。
第二の問題は、一部
負担の導入の問題であります。
現行の
老人医療費公費
負担制度は、
所得制限はありますものの患者
負担はなしという
制度でありますが、これに今回新たに患者の一部
負担を導入するという問題は、財政上のこととはいえ、事柄上大きな論争を巻き起こしたことは当然であります。
元来、理屈からいえば、受診が必要であるかどうかを医学を知らない老人に判断させて自制を求めることはかなりむちゃな話ではありますが、たとえば老人が病院に殺到して、病院、診療所の正常な診療が阻害されたり、病院のベッドが慢性疾患の御老人たちに占拠されて、緊急重症患者の収容に支障が生じるなどの数多くの事例を考慮いたしましたときに、また
保険制度がまさしく健常者によって支えられているという事実を考えれば、個々の不満は数多く残るにいたしましても、私どもは無理のない範囲での適正な受益者
負担はある程度受忍することが、健全なる
医療保険制度の発展にはやむを得ざる処置ではないかと理解を示さざるを得ません。
しかし、その金額の多寡、低
所得者暦への配慮は当然あってしかるべきであって、私どもはこのような観点から、外来、入院とも一部
負担の額を提案の二分の一にすること、また入院については一部
負担徴収期間を四カ月から一カ月に改めること、低
所得者については一部
負担を免除する措置を講ずること、そして特に、現行の健保法上でも問題があるわけでありますが、
総合病院等において
診療科目ごとに一部
負担を課されることは高齢者にとって過重な
負担になることにかんがみ、その是正を求めるなどの修正要求を行い、その実現方に努力をいたしましたが、結局、外来時一部
負担を五百円から四百円に、入院時一部
負担の徴収期間を四カ月から二カ月に縮減、低
所得者に対しては減免措置を講ずる等の修正を果たすことができました。この際私どもは、不十分ではありますが、まずは一歩前進と評価し、内心じくじたるものを残しつつ妥協せざるを得ません。参議院段階での再修正を期待いたしたいと思います。
ただ、
総合病院等の
診療科目別一部
負担徴収の非は、政府におかれて早急に前向きに御検討され、その善処方を強く要請するものであります。
第三は、本法案における
医療給付の対象年齢の問題であります。
老人福祉法では、老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、もって老人の
福祉を図ることを目的として、六十五歳以上の高齢者に対し必要な保障を行っております。
この
老人福祉法の精神に基づくならば、今回の
老人保健法も、七十歳以上ではなく六十五歳以上の高齢者を対象として
医療給付を実施して初めて、整合性のある行政と言っていいと思います。残念ながら今回は、従来予算措置として実施しておりました六十五歳以上七十歳未満の重度の寝たきり老人を法的対象者に加えるだけで、私どもの提案は受け入れられるものとはなりませんでした。
ただ、ちなみに六十五歳以上を対象ということに修正いたしますと、保険財政上
老人医療費が約一兆二千億円
負担が増大することも事実でありまして、今日の厳しい財政環境を考慮いたしましたときに、対象者の拡大は今後の努力目標として政府が真剣に検討されることを要請してやみません。
第四に、これは本法案に関連する最大の問題点でありましたが、この新しく発足する
老人医療制度が一体どのような支払い方式で支えられていくのかという点が、その骨格さえ明らかにされないままに、財政対策のみが先行するということで大きな混乱を生じたという問題であります。
御承知のとおり、本法案の大きな柱である老人保健審議会の設置にっき、一時はその存廃さえ議論されましたが、本審議会の役割りの持ち方いかんによりましては本案の行政効果を左右する重大な問題が伏在いたしておりますことを考えましても、結局審議会が設置されることになりましたことは、きわめて当然なことだと言わねばなりません。
ただ、本
制度による診療方針及び
診療報酬については、中央
社会保険
医療協議会の意見を聞いて定めるよう修正されましたが、本
制度の創設による適切な
医療供給の体制とともに、
診療報酬のあるべき姿を求めることは、まさに重要な課題と言わざるを得ません。中底協の専門的な角度からの論議に
国民各居の意見が十分反映されることを期待して、賛成するものであります。
最後に、本
制度の目的を達成するためには、老人の健康維持にふさわしい
保健事業のシステム化、特別養護老人ホーム、在宅ケアなど関連
福祉サービスとの連携、保健
医療施設の整備
拡充、デーケア、ナーシングホーム等のいわゆる中間施設の計画的な
拡充、マンパワーの確保、保健所の機能強化、
医療機関の協力などの各般の施策の
充実強化と、それを裏づける財政的な配慮が必要不可欠であり、政府は、これらの施策の
充実強化に最大限の努力を傾注する義務があると考えます。
私は、本
制度の円滑な運営のため行政が果たすべき責務を誠実に実行されんことを強く要求し、賛成の討論を終わります。(拍手)