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1981-10-29 第95回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十月二十九日(木曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 山下 徳夫君    理事 今井  勇君 理事 戸井田三郎君    理事 戸沢 政方君 理事 湯川  宏君    理事 田口 一男君 理事 森井 忠良君   理事 平石磨作太郎君 理事 米沢  隆君       小沢 辰男君    木野 晴夫君       小坂徳三郎君    古賀  誠君       竹内 黎一君    谷垣 專一君       友納 武人君    中野 四郎君       長野 祐也君    丹羽 雄哉君       葉梨 信行君    八田 貞義君       浜田卓二郎君    船田  元君       牧野 隆守君    箕輪  登君       池端 清一君    金子 みつ君       佐藤  誼君    栂野 泰二君       永井 孝信君    大橋 敏雄君       塩田  晋君    浦井  洋君       小沢 和秋君    菅  直人君       柿澤 弘治君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         厚 生 大 臣 村山 達雄君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         厚生政務次官  大石 千八君         厚生大臣官房審         議官      吉原 健二君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省保険局長 大和田 潔君         社会保険庁医療         保険部長    入江  慧君         労働大臣官房長 松井 達郎君         労働省労政局長 吉本  実君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部公害課長  中島 治康君         法務省刑事局刑         事課長     飛田 清弘君         大蔵省主計局主         計官      篠沢 恭助君         大蔵省証券局流         通市場課長   野田  実君         国税庁直税部企         画官      谷  安司君         文部省大学局医         学教育課長   前畑 安宏君         厚生大臣官房審         議官      竹中 浩治君         厚生省保険局歯         科医療管理官  山本  治君         自治省財政局調         整室長     亀田  博君         日本国有鉄道常         務理事     吉井  浩君         日本国有鉄道共         済事務局長   足代 典正君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 十月二十三日  辞任         補欠選任   塩田  晋君     横手 文雄君 同日  辞任         補欠選任   横手 文雄君     塩田  晋君     ————————————— 十月二十六日  社会保障社会福祉予算の増額に関する請願(  藤田スミ紹介)(第三五〇号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三五一号)  老人医療費支給制度の堅持に関する請願鈴切  康雄君紹介)(第三五二号)  同(伏木和雄紹介)(第三五三号)  同(浅井美幸紹介)(第四五九号)  老人保健医療制度改善に関する請願永井孝  信君紹介)(第三五四号)  同外二件(井岡大治紹介)(第四一三号)  同(正森成二君紹介)(第四一四号)  同(吉原米治紹介)(第四六〇号)  社会保障福祉拡充及び建設国民健康保険の  改善等に関する請願鈴木強紹介)(第三五  五号)  同(永井孝信紹介)(第三五六号)  同(野坂浩賢紹介)(第三五七号)  同(井岡大治紹介)(第四一五号)  同(岩佐恵美紹介)(第四一六号)  同(加藤万吉紹介)(第四一七号)  同(沢田広紹介)(第四一八号)  同(瀬崎博義紹介)(第四一九号)  同(伊藤茂紹介)(第四六一号)  同(田中伊三次君紹介)(第四六二号)  同(中野寛成紹介)(第四六三号)  同(吉原米治紹介)(第四六四号)  銘柄別薬価基準の廃止に関する請願外九件(奥  田幹生紹介)(第三五八号)  社会保険診療報酬の再改定に関する請願外九件  (奥田幹生紹介)(第三五九号)  精神障害者福祉法早期制定に関する請願(小  沢一郎紹介)(第四一二号)  仲裁裁定完全実施に関する請願阿部昭吾君  紹介)(第四二〇号)  同(菅直人紹介)(第四二一号)  同(林保夫紹介)(第四二二号)  同(楢崎弥之助紹介)(第四二三号)  国民健康保険組合療養給付費補助金等に関する  請願外六十七件(奥田幹生紹介)(第四五五  号)  同外七十一件(砂田重民紹介)(第四五六  号)  同外七十七件(戸井田三郎紹介)(第四五七  号)  同外六十九件(湯川宏紹介)(第四五八号)  老人保健法案反対に関する請願田中伊三次君  紹介)(第四六五号)  同(田中伊三次君紹介)(第四九五号)  老人医療費有料化所得制限強化反対及び  保健医療制度拡充に関する請願永井孝信君  紹介)(第四六六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(鉄道労働  組合関係)(内閣提出、第九十四回国会議決第  一号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働  組合関係)(内閣提出、第九十四回国会議決第  二号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄動力  車労働組合関係)(内閣提出、第九十四回国会  議決第三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄施  設労働組合関係)(内閣提出、第九十四回国会  議決第四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄動  力車労働組合連合会関係)(内閣提出、第九十  四回国会議決第五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄千葉  動力車労働組合関係)(内閣提出、第九十四回  国会議決第六号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国電気  通信労働組合関係)(内閣提出、第九十四回国  会議決第七号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(日本電信  電話労働組合関係)(内閣提出、第九十四回国  会議決第八号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全専売労  働組合関係)(内閣提出、第九十四回国会議決  第九号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全逓信労  働組合関係)(内閣提出、第九十四回国会議決  第一〇号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全日本郵  政労働組合関係)(内閣提出、第九十四回国会  議決第一一号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労  働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤  作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」  )(内閣提出、第九十四回国会議決第一二号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労  働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤  作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作  業員」)(内閣提出、第九十四回国会議決第一  三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業  労働組合関係定員内職員及び常勤作業員(常  勤作業員処遇を受ける常用作業員を含  む。)」)(内閣提出、第九十四回国会議決第  一四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業  労働組合関係基幹作業職員常用作業員(常  勤作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期  作業員」)(内閣提出、第九十四回国会議決第  一五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全印刷局  労働組合関係)(内閣提出、第九十四回国会議  決第一六号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全造幣労  働組合関係)(内閣提出、第九十四回国会議決  第一七号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(アルコー  ル専売労働組合関係)(内閣提出、第九十四回  国会議決第一八号)  老人保健法案内閣提出、第九十四回国会閣法  第七四号)      ————◇—————
  2. 山下徳夫

    山下委員長 これより会議を開きます。  第九十四回国会内閣提出公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(鉄道労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄動力車労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄施設労働組合関係〉、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄動力車労働組合連合会関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄千葉動力車労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国電気通信労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本電信電話労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全専売労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全逓信労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全日本郵政労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全印刷局労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全造幣労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(アルコール専売労働組合関係)、右十八件を一括して議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。藤尾労働大臣。   —————————————  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(鉄道労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄動力車労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄施設労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄動力車労働組合連合会関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄千葉動力車労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国電気通信労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本電信電話労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全専売労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全逓信労  働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全日本郵政労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤  作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤  作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全印刷局労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全造幣労働組合関係)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(アルコール専売労働組合関係)     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  3. 藤尾正行

    藤尾国務大臣 ただいま議題となりました、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(鉄道労働組合関係)外十七件につきまして、一括して提案理由を御説明申し上げます。  昭和五十六年三月以降、公共企業体等関係労働組合は、昭和五十六年四月一日以降の賃金引き上げに関する要求を各公共企業体等当局に対し提出し、団体交渉を重ねてまいりましたが、解決が困難な事態となり、四月十六日から二十三日にかけて当事者双方関係当局または組合申請により公共企業体等労働委員会調停段階に入り、さらに四月二十三日から五月一日にかけて同委員会の決議または当局申請により同委員会仲裁手続に移行しました。  同委員会は、五月十六日、日本国有鉄道鉄道労働組合国鉄労働組合国鉄動力車労働組合、全国鉄施設労働組合、全国鉄動力車労働組合連合会及び国鉄千葉動力車労働組合日本電信電話公社全国電気通信労働組合及び日本電信電話労働組合日本専売公社と全専売労働組合、郵政省と全逓信労働組合及び全日本郵政労働組合、林野庁と全林野労働組合及び日本林業労働組合大蔵省印刷局と全印刷局労働組合大蔵省造幣局と全造幣労働組合並びに通商産業省とアルコール専売労働組合に対し、本件仲裁裁定を行ったのであります。  本件仲裁裁定は、職員基準内賃金を、本年四月一日以降、一人当たり基準内賃金の三・八一%相当額に二千八百八十円を加えた額の原資をもって引き上げること等を内容とするものであります。  政府といたしましては、現状におきまして、右裁定実施予算上可能であるとは断定できません。したがいまして、公共企業体等労働関係法第十六条第一項に該当するものと認められますので、同条第二項の規定により、国会に付議し、御審議を願う次第であります。  何とぞよろしく御審議の上、国会の御意思の表明を願いたいと存ずる次第であります。
  4. 山下徳夫

    山下委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 山下徳夫

    山下委員長 質疑及び討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(鉄道労働組合関係)外十七件を一括して採決いたします。  右十八件はいずれも公共企業体等労働委員会裁定のとおり実施することを承認いたしたいと存じます。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 山下徳夫

    山下委員長 起立総員。よって、右十八件はいずれも公共企業体等労働委員会裁定のとおり実施することを承認すべきものと決しました。  右十八件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 山下徳夫

    山下委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  8. 山下徳夫

    山下委員長 この際、関係大臣を代表して労働大臣の発言を求めます。藤尾労働大臣
  9. 藤尾正行

    藤尾国務大臣 ただいま御承認議決をいただき、まことにありがとうございました。  私といたしましては、本会議及び参議院での御承認が得られ次第、速やかに仲裁裁定実施されるよう努力する所存でございます。      ————◇—————
  10. 山下徳夫

    山下委員長 内閣提出老人保健法案議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。佐藤誼君。
  11. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は、いま審議している老人保健法案をめぐって、日本医師会政府つまり厚生省、それに自民党が密約したと言われる問題について質問したいと思います。(「そんなことないよ」と呼ぶ者あり)言われる問題です。  わが党の金子みつ議員が、去る十月十六日、行政改革に関する特別委員会でこの問題を質問していますが、答弁は何ら確証のないままに終わっております。  ここに「日本医師会雑誌」十月一日発行、第八十六巻第七号があります。この中に、九月十六日午後一時五十五分から二時二十五分まで開催された、日本医師会第六回全理事会議事録が載っております。これです。この議事録の中に、「老人保健法案の現段階とその対策の件」という項目で、理事会における理事の議論がそのまま掲載されております。  そこで、私はまず、その掲載されている議事録の一部を読ましていただきます。三十分にわたる膨大なものですから、全部を読むわけにはいきません。その主要な部分だけを読みます。  「老人保健法案の現段階とその対策の件」、これについて武見会長は次のようなことを述べております。   武見会長 その次の問題は大事な問題ですから私のほうから御説明申し上げます。   この問題に関しましては一部日経新聞などに出ておりますが、私と党の幹部と話し合いをいたしました。そして、二つの支払い方式医療機関がやることはとうてい事務的に処理できない。今度の改正点数表でやっていくということでございまして、これは先方も了承いたしましたし、厚生省も了承いたしましたから、出来高払い制は現在の点数表で行われます。登録人頭式は行われないことになりました。 第二点。   それから、老人保健機関の件でございますが、これは吉原審議官が担当でございますが、吉原審議官吉川会長と話をしたときに、吉川会長が日医としては選択の方法でいってもいいんだということを言われたというので、どうしてもこれをやめる意思はなかったんでありますが、会長意見を聞かないで、副会長意見厚生省が動くことはけしからんということで、徹底的に追及をいたしまして、彼はその非を認めまして、会長意見でこれは否定する。  そして、いままでどおりの保険医療機関がやるということに決定いたしましたから、老人保健機関はなくなりました。あんたと会ったの。こういう会話です。   吉川会長 その件で?いや、知りません。   武見会長 そう言ってるんだよ。   吉川会長 存じ上げません。   武見会長 どうもおかしいと思った。   吉川会長 おかしいですね。   武見会長 うっかり会えないぞ。会うとそういうデマ飛ばすから。そこをとっちめたのは斎藤邦吉さんがとっちめた。斎藤さんにも吉川会長と会ってこうなってますってえばってたそうだ。会長が承知してないのに何言ってるんだ  と言って斎藤さんにしかられたんですよ。   吉川会長 そんな重要な問題……。   武見会長 それで、ちゃんとそのとおりだということになってへこたれた。   そこを二つとってしまいますと老人保健審議会はもうあってもなくてもいいようなものになるわけです。そこで、老人保健審議会は私どもと関係なしに自民党田村医政研究会会長のもとでこれはっぷしてしまうということで、いまこれは議員同士で話が進められております。そういう段階でございますから、実質的には解決したものと私は思ってます。次に飛ばします。  「同法案を廃案にもっていくのがいまの政治力をもってしてはむずかしい。骨なし法案にするしかないと思う。」武見会長の言。「老人保健法案は、いま申したような形で解決の道がついてきたということだけ、御報告申し上げておきます。」  続いてずっとくだりがありまして、原田理事は次のようなことを質問しているのです。  「最後老人保健法案ですが、これは骨抜きになって通るというふうに理解していいわけですか。」武見会長「もちろんそうです。」  最後武見会長は、ずっとありまして、「いま申し上げたような点で出来高払い制度を健康保険と同じにやるということになりますと、老人保健審議会が料金決定できなくなりますから、これは中医協でやりますから、それから、診療内容中医協でやりますから、その点は変わってまいります。」  つまり、第六回全理事会議事録のさわりの部分です。私はいま老人保健法案審議に当たって、議事録の重要だと思われる部分、その部分だけを抜粋して読ませていただきました。  つまり言うなれば、私は次の三点が重要なこととして議論されたと思う。つまり支払い方式、これについては出来高払い制は現在の点数制で行う、そして登録人頭方式はとらないということをこの理事会で言った。二番目、老人保健機関、これはいままでどおり保険医療機関でやる。したがって老人保健機関は要らない。三番目、老人保健審議会、これは議事録のとおり言いますと、「そこを二つとってしまいますと」つまり私がいま言った支払い方式老人保健機関ですね、「そこを二つとってしまいますと老人保健審議会はもうあってもなくてもいいようなものになるわけです。」そしてさらに、老人保健審議会が料金決定できなくなりますから、中医協でやる、大づかみに言えばいまの三点です。このことをここで議論され、まとめられていると私は思うのですね。  このような老人保健法案の最も重要な部分が、法案審議以前に日本医師会自民党幹部が話し合いをし、了承されており、さらに厚生省も了承していると日本医師会第六回理事会議事録に記載されております。この件について厚生大臣はどう思うのか、どう考えるのか、これが一点。  それから第二点は、この議事録吉原審議官の……(発言する者あり)黙ってください。この議事録吉原審議官の名前が出ていますが、吉原審議官はこの件で日本医師会に会ったことがあるのかどうか。  以上二点について。
  12. 村山達雄

    ○村山国務大臣 ただいま委員がおっしゃいましたこの三点について厚生省が了承しておるという議事録だそうでございますが、そういう事実はございません。はっきり申し上げておきます。  それからこの三点でございますが、支払い方式につきましては社保審あるいは制度審におきましてこの見直しをするということを言われておりまして、それに基づいて出しておるわけでございますので、われわれとしてはこの老人保健審議会、この前もお答え申し上げましたけれども、これにいろいろなやり方、こういったものをたたき台といたしまして出して、御検討をいただくつもりでございます。  それから医療機関につきましては、これは法文にありますように、原則としては老人医療の取扱機関というものを法律上法制整備して書いておりますが、しかし辞退しない限り当然現在の保険医療機関が老人医療取扱機関になる、こういうシステムになっておりますので、この法文によりましても事実上現在の保険機関が老人医療の取扱機関になる、こういう仕組みになってございます。審議会につきましては、もう御承知のように、これは診療報酬の支払い方式の見直しの問題、さらにはヘルス全体の問題、こういったものを総合的に審議していただく、一つの機関でこの法案に盛られました各種のねらい、重要事項を御審議いただきたい、こう思ってこの審議会をつくっていただきたいということで、御提案申し上げておるわけでございます。
  13. 吉原健二

    吉原政府委員 ただいま御紹介のありました日本医師会理事会議事録に私の名前が出ておりますけれども、そのような事実については私全く承知をいたしておりません。
  14. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 まあ事実はない、事実は承知しておりません、簡単に言えばそういうことだと思いますが、なお続けて私質問していきます。  それは次の資料がございます。「日本医師会第七回全理事会速記録(抜粋) 昭和五十六年十月二十日」。第六回全理事会というのは九月十六日ですね。この第七回全理事会というのは十月二十日ですから、いまから九日前ですか。これは速記録です。  その中の議題として次の件があります。  「日医代議員渡辺真言氏」これは日医の東京都医師会の会長じゃないでしょうか。「以下七十六名による臨時代議員会招集請求の件」その中で武見会長は次のようなことを述べております。これも肝心なところだけ言います。  「老人保健法案に関しましては、御承知のように過去の全理事会において方針が決定し、」つまり第六回のことだと思いますが、「採択されていたはずであります。すなわち、機関指定をあらためて行わない、支払い方式を変更しないこと、それから自民党の中で老人保健審議会をつくらないことということで、全理事会は満場一致でこの決定をしていたことを思い出していただきたいと思います。」 こういうことを言っております。  それから次、ずっと行きまして、「そして、国会の内部におきまして、野党が日医ニュースを振りかざしまして、参議院でございましたが、日本医師会自民党との間で妥結ができているじゃないか、どういうことなんだということで自民党に詰め寄っております。村山厚生大臣はこれに対して明確な返答ができないで、しばしば沈黙の状態が続いたわけであります。」  中を飛ばしまして、「そして、老人保健機関をつくらないという約束はしてあるはずであります。それは審議段階解決していくということは自民党のほうで確認しているところであります。それから、また老人保健審議会もこれははっきりと田村元医政研究会会長が中心になりまして社会部会と話し合いをいたしまして、別建ての支払い方式はやらないということをはっきりと決定しているわけでございます。そして、診療内容もその他を決めます老人保健審議会、これは中医協と社会保険審議会を合わせて一本にしたものでありますが、そういうものは多大な権限をもつということで、これに田村元先生以下反対の態度をきちんと出しております。」こういうことであります。  これはいま申し上げたように十月二十日です。先ほど述べた第六回理事会内容をさらに確認する形になっていますね。この事実も否定されますか。このことに対してどう思われますか。
  15. 村山達雄

    ○村山国務大臣 先ほど申しましたように、厚生省としては知らないことでございます。  なお先ほど、厚生大臣はしばしば沈黙を守っておると申しておりますが、私は特委におきましてもこの種の質問をたびたび受けました。同じように、厚生省としては全然関知しておりませんということをその都度はっきり言明しております。
  16. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 なお、先ほどの議事録の中に自民党という固有名詞を使った政党の名前が出ておりますから、これに関連して申し述べます。  それはまだ非公式だと思いますけれども、私が入手したこの老人保健法案に対する自民党の修正案なるものがございます。それには次のようにあります。自民党修正案の骨子です。  「一、老人保健審議会は、行革簡素化の主旨から設置しない。診療報酬については、中医協意見を聞いて厚生大臣が定める。」 二番、「新しい老人保健取扱機関を設けず、医療給付は保険医療機関で行なう。」 三番、「一部負担のうち入院四カ月は三カ月とする。」 四番、「一部負担の支払い困難なものについては、減免措置を講ずる。」五として、「現在予算措置で行なっている六十五歳以上の寝たきり老人(障害一−二級)をこの法律の対象とする。」 この五点でございます。  この案が現時点で入手した資料として間違いないとするならば、この中で、いま私が述べたところの日本医師会理事会議事録ときわめて関係の深いのが第一項、第二項であります。  そこで、先ほど私は、日本医師会理事会の中心になったのは支払い方式老人保健機関老人保健審議会、三点だということを言いましたが、これと見比べてみますと次のようになると思うのです。つまり、老人保健審議会は設置しない、これは自民党案です。それは先ほどの理事会では、支払い方式老人保健機関、つまり二つをとってしまえば老人保健審議会はあってもなくてもいいことになる、このことに非常に符合している。  次に、「診療報酬については、中医協意見を聞いて厚生大臣が定める。」というのが自民党案なんです。日医の理事会議事録によりますと、老人保健審議会が料金決定ができなくなりますから、中医協でやるということとぴたっと一致するわけです。  次、自民党案の「新しい老人保健取扱機関を設けず、医療給付は保険医療機関で行なう。」これは先ほどの日医の理事会にある老人保健機関の取り扱い、つまりいままでどおり保険医療機関でやる、これは自民党案の「医療給付は保険医療機関で行なう。」ということとぴたっと一致します。老人保健機関は要らない、この日医の理事会のことは、自民党案の「新しい老人保健取扱機関を設けず、」ということと符合します。  私はこの二つを考えたときに、この日医の理事会議事録と、そして現在出されていると言われる自民党の案というのは余りにも符合する、このことに対して村山厚生大臣はどのように感ずるか。
  17. 村山達雄

    ○村山国務大臣 先ほど申し述べましたとおりに、審議会は私はつくっていただきたいと思っておるのでございます。  そしてまた、出来高払い方式についてもやはり見直していただき、いい結論を見出していただきたい。  それから第三点の医療機関につきましては、これはもう法律でもうたっておりますように、辞退しない限りは当然なるわけでございますので、これは実質的に変化はないだろう、われわれが出しております法案と実質的に余り変化がない、かように考えております。
  18. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それで、先ほどの日本医師会の第六回の全理事会、九月十六日、これは「日本医師会雑誌」に載っているわけですね。そして、これは市販されているものだと思うのです。ページで九百六十二です。ここに載っています。それから、先ほどの速記録は抜粋ですから、私がしかるべき機関から入手したものです。  そこで、厚生大臣は、この日本医師会理事会議事録というものを、事実はないということで否定されているわけですね。吉原審議官もそういう事実はないというふうに否定されていますね。その点どうですか、念のために。
  19. 村山達雄

    ○村山国務大臣 事実はございません。
  20. 吉原健二

    吉原政府委員 事実はございません。
  21. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 だとするならば、ここに日本医師会の雑誌として、私は権威あるものだと思うのです、素人ながら中身を見ていますけれども。その中に理事会議事録として、しかも市販されているわけです。どなたも買えるわけです。もしあなたが事実を、この議事録を否定されるとするならば、客観的に否定したという事実がみんなに明らかになるような方法をとらなければ納得できないと思う。  そこでちょっと先取りをいたしますが、去る十月二十七日厚生大臣の名前で、例の衆議院行財政改革に関する特別委員会委員長金丸信殿ということでこの点についての、つまりわが党の金子みつ議員の質問、冒頭申し上げたようにそのことについて理事会預かりになりまして、それの返事がここに来ていますね。また、いまあなた方は二人とも否定されました。しかし、考えてみればこの雑誌の中に具体的に厚生省とか吉原審議官という名前が出ているのですから、その疑われている人あるいは疑われている機関の代表が調べたけれども何もなかったというようなことで、これで社会通念として客観的にこの事実を否定したことにならないと私は思うのです。少なくともあなた方が否定されたことが客観的に実証をされるとするならば、この医師会の雑誌、編集者はもちろん、理事会あるいは医師会の代表者が、この事実は誤りです、この理事会の記録は誤りですということをはっきり言ってもらわなければ、当事者であるあなた方が幾ら否定したって客観的にそのことが否定されたことにならないと私は思うのですが、どうですか。
  22. 村山達雄

    ○村山国務大臣 政府を代表いたしまして厚生大臣である私がこの国会という公の場ではっきりないと言っているのでございますから、これは私は最も信頼をしていただく事実であろうと思うのでございます。したがいまして、この国会における言明が最も確かなものであるというふうにお考えいただきたいと思います。
  23. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 しかし、これは当事者であるあなた方が幾ら国会の場所で、言うなら疑いをかけられている皆さんがそれを述べたからといって、客観的にそれを否定したことにならぬと私は思うのです。やはり本当に否定されるならば、日本医師会のこの編集者、それから日本医師会の代表者にちゃんと否定してもらうという手続をとってもらわなければ困るわけです。  だから、あなたがそこまで言われるならば、この日本医師会の雑誌の編集者、誤りがあるかもしれませんから、それから日本医師会理事会を主宰している代表者、この方々を衆議院に参考人として呼び、そしてその真相を明らかにする。このことによって、あなた方の主張が正しいとするならば裏づけられると思う。そういう意味で、このことを明らかにする意味で、いま申し上げた「日本医師会雑誌」の編集者、日本医師会の代表者を国会に対して参考人として呼んでいただくことを私は要請いたします。委員長、取り計らってください。
  24. 山下徳夫

    山下委員長 佐藤君の御要請は後刻理事会を開いて検討いたしたいと思います。
  25. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 理事会を開いて検討するというのですから、ここで中断するわけにもいきませんが、私はもう一つ付言しておきますならば、参考人として呼んで事の真相を明らかにするということと同時に、本当にこれを否定されるとするならば、向こう側、つまり医師会の理事会側から、この事実を否定するという確約、否定したという事実経過、こういうものを公式の文書で「日本医師会雑誌」の編集者、日本医師会の代表者から厚生省あてにきちんと出してもらう。これが厚生省のいろいろなそういう疑惑を国民の前に明らかに晴らすことになると私は思う。このことをあわせて、理事会で検討されるならば、私は要望しておきたいと思います。  そこで委員長理事会の検討というのですが、これは事の真相が明らかになるかどうかということは、これから審議を進める上にきわめて重要だと思うのです。もし先ほど言ったようにこの医師会の理事会で決めたことが事実だということになれば、この審議すること自体が、変な言い方ですけれどもナンセンスに近いというようなことになりかねない。したがって、この理事会の検討というのはいつごろまでどのような形で出るのか、どうですか。
  26. 山下徳夫

    山下委員長 後刻と申し上げておきましたが、この委員会審議の過程を見ながら、きょうじゅうに理事会を開きたいと思います。
  27. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは次に、老人保健法案内容について幾つか質問してまいります。  第一点は、本法案の基本理念に、「老人の医療に要する費用を公平に負担する」とあります。新制度実施された場合、現行に比較して国、地方自治体、被用者保険、国民健康保険及び患者負担を区別した場合、その負担が軽減されていくのはどの分野で、加重されていくのはどの分野であるか、昭和五十六年度を基準にして答えていただきたい。
  28. 吉原健二

    吉原政府委員 まず五十六年度の試算で申し上げます。現行制度と新制度、試算Iを前提にして申し上げたいと思います。  公費負担分のうちの、国の場合は千七百五十億の増でございます。それから都道府県、市町村でございますが、それぞれ四百三十億の増でございます。  それから保険者全体で申し上げますと、千八百十億の減でございます。その内訳といたしまして保険料による負担分でございますけれども、これは各制度を通じまして二百八十億の減でございます。  それを被用者保険と国民健康保険に分けて申し上げますと、被用者保険の保険料の増が七百七十億でございます。それを制度別に申し上げますと、政府管掌健康保険が六十億の増、組合管掌健康保険が六百三十億の増、日雇健康保険が四十億の減、船員保険が十億の減、各共済組合が百三十億の増、こうなります。  それから国民健康保険の保険料でございますが、これは千五十億の減になります。  それから保険者に対する国庫補助でございますが、これは千五百三十億の減になります。  それから患者負担でございますが、患者負担は二百九十億の増になります。  それから、国民健康保険に対する臨時調整交付金、これは千九十億でございますが、これが新制度では必要性がなくなるということで、その分が減になります。  以上でございます。
  29. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 内部にわたった数字はそういうことだろうと思うのですが、国民の立場からいうと、先ほどの基本理念にもあったように、公平に負担を分かち合うという観点で見ていきますと、どの部分がふえてどの部分が減るのかということは、きわめて素朴な意味で関心があると思う。したがって、いまのことをずっと整理してみますと、結局新制度によって老人医療費の分担が割合、額とも減ったのは、国庫負担八百七十億、国民健康保険千五十億、これは明らかだと思う。ふえたのはどうか。都道府県、市町村八百六十億、被用者保険七百七十億、患者負担二百九十億、これだと思うのですね。そして、先ほども言われましたが、この被用者保険のうちふえるのは、政管健保の六十億、組合健保の六百三十億、共済組合の百三十億、これが事実だと思うのです。そういう見方で間違いございませんか。
  30. 吉原健二

    吉原政府委員 そういうことでございます。
  31. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうしますと、負担を公平に分かち合うということは言っておりますけれども、いまのように新制度が発足した場合に、その財政負担の行方をずっと探っていきますと、結局のところは国庫負担と国保が減って、患者や地方自治体や被用者保険、とりわけ組合健保、政管健保、共済組合の負担が増大してくる、また増大していく、これは事実だと思うのです。  国保が減るということは、これは結構なことだと思うのですよ。しかし、国保の医療費の四五%は国庫補助であるから、国保が減るということは、とりもなおさず国の負担が減るということです。国保の問題はいま言ったとおりなんですが、極論するならば、国庫負担が減って、負担がふえるのはどこかというと、結局老人でしょう、地方自治体でしょう、被用者保険の中でも組合健保、政管健保、共済という勤労者の負担。しかも、当然のことながら、それぞれの分野の負担がふえるということは、たとえば組合健保、政管健保、共済にしても、被保険者の負担、つまり保険料率がふえていく、こういうことになると思う。したがって、趣旨説明でも理念としては大変りっぱなことを言っているのですが、中身は、国の負担を減らしていって、その部分をいま申し上げたような分野に肩がわりさせる、負担させる、こういうことだと思う。その辺がそれぞれの関係者なり国民にはなかなかすとんと落ちない。  確かに、ヘルス医療を含めた一貫した老人保健ということに賛意は表してみても、財政の中身からいうと、国の負担を減らしていま申し上げた部分に負担を転嫁する、これは問題ではないか、こういう意見があるのですが、どうですか。
  32. 村山達雄

    ○村山国務大臣 現在の老人の医療に関しましては、やはり国民ひとしくその負担を公平に分かち合う、こういう観点でやっておるわけでございます。何よりも現在目に立ちますのは、御承知のように、国保の老人医療費に対する負担が余りにも多過ぎる。これが国保財政を非常に圧迫し、そしてまた一般会計からの繰り出し金その他を誘発いたしておりまして、市町村財政としては非常に苦しいところでございます。  現在、老人医療費を七十歳以上で見ますと、大体二兆五千億でございます。これは老人医療費支給制度だけではございませんで全体の医療費でございますが、これを一〇〇にいたしますと、そのうち国保だけで実に六〇%を負っているということでございます。ということは、ほかの被用者保険のところで若い人たちが、みんな卒業生がどんどん国保に入ってくるわけでございます。そういたしますと、どうしてもやはり老人でございますので疾病構造からいいましてよけいの負担がかかってくる。これが従来から非常な問題であったのでございます。  そういう意味で、今度は老人医療の分を各保険から、根っこから全部取り出しまして、これを一つの医療制度に仕組み直そう、こういうことでいろいろ考えた末、御提案のような形でやっているわけでございます。  したがいまして、国保の負担軽減分、それが減ることによりまして、自動的に国の負担もそれにつれて減るという結果なのでございまして、現に、たとえば公費負担とそれから普通の保険に対する国庫補助だけで申しますれば、国費、国の負担はふえているのでございます。二百二十億ぐらいふえるのでございます。  特に、臨調というものも御承知のとおりでございまして、老人医療費分、これは実は公費でやっているわけでございますから、実際のことを言いますと、その分は公費でみんな持っております。しかし、そのことによりましてやはり受診率が高まりますので、その分を特に臨調として老人分として見ておる分がございます。それから、いわゆる高額分、これは臨調のうちで老人高額分ということでございますが、大きく申しますれば、これは全部高額分で、保険負担でございますけれども、そのうち特に、市町村の国保財政が苦しいということで、その分を臨調でまた出しているわけでございます。それが全部この仕組みによりましてなくなりますので、臨調の千九十億というもの、老人分と、高額分のうちの老人分、それを合わせますと千九十億というものがなくなる。  だから、国庫負担が減ると申しましても、中身を分析しますと、公費負担分あるいは本来の四五%の補助の関係だけでは逆にふえるのでございますが、臨調分がなくなるので減るということでございます。言いかえますならば、今日の各医療保険の負担のバランスというものをこういう仕組みでやりますと、国保の負担が軽減されることによって国庫負担も自動的に減っていくということでございまして、国庫負担を減らすためにやったということでないことを御理解願いたいと思うのでございます。
  33. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 最後のくだりで、国庫負担を減らすためにやったのではないということをわざわざ厚生大臣はつけ加えましたけれども、これは、そういうねらいを持ってやったなどということは言わないにしても、結果的に見ればそうなっているのですよ。  だから私は、国民健康保険の負担が減るということについては、実情もわかりますから、これは理解できるのです。しかしそれが減れば、先ほど言ったように、国庫負担がトータルでは八百七十億も減るのですから、自動的に国庫負担も減るという形にしていってずっと計算してみますと、この国庫負担が減った分が、イコールじゃないけれども、先ほど言ったような市町村なり被保険者の中の勤労者の組合あるいは患者の負担に転嫁されてきているという、これは紛れもない事実だと思うのですよ。私は、この辺が国民の皆さんもなかなかすとんと落ちないという部分だと思いますので、私の意見としてこの部分は述べておきたいと思うのです。  次に、先ほど政管健保、組合健保、共済組合、この費用負担がふえるということを言われましたね。それで、その財源はどのように捻出するかという点で質問していきたいと思います。  それで、第一は、試算Iで見た場合に、昭和五十六年度は政管健保、組合健保、共済組合の保険料率はどれだけ上がるか。それから老人保険料率はどうか。また昭和六十年度の老人保険料率はどうなるのか。  以上です。
  34. 大和田潔

    ○大和田政府委員 お答えを申し上げます。  老人医療費に要する保険料率でございますが、これは昭和五十六年度の現行制度のままが政管健保千分の十・五、組合健保千分の八・二、共済組合千分の九・二ということでございますが、これが新制度ではどうなるかということにつきましては、政管健保が千分の十・七、組合健保が千分の十・三、共済組合が千分の十となっておりまして、政管健保では千分の〇・二増、組合健保が千分の二・一増、共済組合が千分の〇・八増ということになるわけでございます。  さらに昭和六十年でございますが、これが政管健保は、現行制度のままですと、老人医療費分が千分の十二・五、組合健保が千分の九・六でございます。新制度に移行いたします場合の計算といたしましては、政管健保が千分の十三・五、組合健保が千分の十二・五となっておりまして、老人保険料率の増加というものは、政管健保が千分の一、組合健保が千分の二・九ということに相なるわけです。これは推計ということでございますが、そういうような計算が一応成り立つわけでございます。
  35. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうしますと、端的に言いますと、新制度に変わることによって、先ほどから問題にしております政管健保、組合健保、共済組合は、その変わったということ自体で保険料率が政管の場合には千分の〇・二、組合健保は千分の二・一、共済は千分の〇・八直ちに上がる、こういうことですね。  それから、老人保険料率は、これは推定計算になると思いますが、政管健保が昭和五十六年度は十・七のものが昭和六十年には十三・五になって上がっていく、組合健保は昭和五十六年度千分の十・三が千分の十二・五に上がっていく、共済組合昭和五十六年度千分の十・〇が千分の十一・五、軒並みに政管健保、組合健保、共済組合という勤労者の保険料率はぐっと上がっていく、こういうことですね。
  36. 大和田潔

    ○大和田政府委員 保険料率が老人保険料率関係といたしまして上がっていくということは、先生おっしゃったとおりでございます。
  37. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そこで、私はその問題に焦点を当てて申し上げますと、御案内のとおり、いまの勤労者の実質賃金はマイナス、加えて所得税に対する物価調整減税はない、したがって所得税が増税されているということも事実です。さらに社会保険料も増大している。したがって、統計的事実を見ても明らかなように、勤労者の実質可処分所得は大変な低下をしている。これは次の三つの影響を与えていることは皆さん御案内のとおりです。  その一つは、勤労国民の生活はきわめて厳しいということです。二番目は、内需の停滞、それは景気の停滞につながっている。三番目は、物価調整減税がない、つまり勤労者の所得税が重いということと関連して、国の財政の自然増収がふえてきている。この三つだと思うのです。  こういうような状況の中で、いま申し上げたように政管健保、組合健保、共済組合、ともに勤労者です。勤労者の保険料率がぐんぐん上がっていく。これはいま申し上げたような勤労者の生活の厳しい状況に追い打ちをかけ、内需の停滞をさらに継続させ、まあ国家財政は別ですけれども、そういうようなことにつながっていくのじゃないか。  この辺のところをどう考えているのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  38. 村山達雄

    ○村山国務大臣 非常にむずかしい問題でございまして、実質成長率は日本がいまのところ五%台を走っておりまして、第二次オイルショック以降、先進国の中で比較的うまくいっているということは、もう御承知のとおりでございます。  いま勤労者でございますけれども、ことしの消費者物価の見通し、それから先般行われましたベースアップでいいますと、ことしはベースアップの方が多うございます。ただ、言われるところは、一つは時間外手当が思うように伸びていない。それから六月のボーナスは余り出なかったというようなこと。それから、おっしゃるように所得税のいまの構造からいいまして、賃金の伸びよりも伸び率で言えば負担が高い。しかし、これは実際のことを申しますと、可処分所得の実質値がどうか、これで計算するのが一番正しいのだろうと思います。  ですから、一般的に申しますれば、この保険料の問題は別にいたしますれば、いまの税率構造からいいまして、実質可処分所得が減るということは、全般的には私はないと思っております。ただ、これは大蔵大臣が答えたところでございますが、収入一千万以上のところの階級では、実質可処分所得は減になっておると聞いております。それ以外のところは実質可処分所得で増になっておる、こういうわけでございます。しかし、それは確かに経済全体あるいは財政全体がそれをもたらしているのでございまして、はかばかしく消費が伸びていない、それがいろいろな経済に影響を与えていることは、私もおおよそ承知しております。  しかし、そのことは直ちに処方せんはなかなかむずかしいわけでございまして、世界経済の中で相対的に日本経済がうまくいっておる。今後企業におけるその分配率がどうなるか、あるいはそれが消費者物価に影響しない範囲で実質分配率を上げることができるかどうか、この辺と大きくかかわっておる問題だと思うのでございます。したがいまして、その問題は、単に保険料の問題を超えまして、経済全体の問題だと私は思っております。世界の中では非常にうまくいっていることはもう間違いないと思いますが、しかし高度成長時代に比べますと、そこの点は問題点が出てきたなという認識を私も持っておるのでございます。  一方、保険料でございますけれども、これは言ってみますと受益者負担でございまして、そしてそれを保険制度ということで公平に分担しようということでございます。したがいまして、率として確かに上がるのでございますが、恐らく六十年のときの標準報酬がどうなるのか、これもまた保険料引きの実質可処分所得が最終的にどうなるのか、ここでやはり判断せざるを得ない。ですから、確かに率は上がりますけれども、最後は実質可処分所得がどれぐらい上がるのか、そのことによって生活はどうなるか、ここのところを見きわめないと、一概には論じられないと私は思っておるのでございます。
  39. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 この問題はそう深入りしませんけれども、ただ事実として勤労者が大変厳しい、生活が苦しいという状況の中で、紛れもなく保険料率が上がるというこの事実、将来も上がっていくだろうということだけは間違いないのでありまして、この点はきわめて勤労者にとっては問題の多いところだという点だけを指摘をしておきたいと思います。  次に、老人保健法における費用分担、つまり財政調整について質問してみます。  法第五十九条の規定によりますと、各保険者間の財政調整について次のようなことがありますね。つまり「二分の一以下の範囲内で政令で定める割合」によって、医療費案分と加入者案分を行うことになっている、こうありますね。  そこで、大蔵省と厚生省、両方に聞きたいのですが、この二分の一に線を引いたという理由は、なぜ引いたのか。それから二分の一以下というふうに下方だけに決めていった理由は何なのか、このことをお聞きします。
  40. 吉原健二

    吉原政府委員 まず二分の一という考え方でございますけれども、老人医療費全体の七割を各保険者から拠出をしていただくということを前提にいたしまして、それを具体的に各保険者にどういうふうに案分をしていくか、割り当てて出していただくかという基準でございますけれども、いろいろな考え方があると思います。一つは、保険に加入しておられる老人の方々の医療に実際にかかった額、簡単に申し上げますと医療費の実績ということでございますけれども、それを一つ物差しにする考え方、それからもう一つは、その保険の規模の大きさ、具体的には加入者本人それから家族を含めた加入者の数を物差しにする考え方と二つあろうかと思います。  そういったことで、従来のように実績だけで案分をする、割り当てるということになりますと、いままでのように国保の負担が非常に大きくなるという問題があるわけでございます。それから、全部加入者だけで、つまり保険の規模の大きさだけで案分をするという考え方もあろうかと思いますけれども、そうなりますと、実際にそれぞれの保険者の医療費の実績というものが全く反映されなくなってしまう。そういったことを考えますと、医療費の実績と、それから保険の規模の大きさ、加入者の数、両方の要素をもとにして案分をするのが適当ではないかということで、両方の要素を基準にして案分をすることにしたわけですけれども、その場合の案分率というものを関係審議会等でもいろいろ御議論をいただきまして、やはりそれぞれ二分の一ずつを要素とするというのを基準に考えて、それから出発をいたしまして、医療費の実績を二分の一とし、それから全部加入者案分ということになりますと医療費の実績率はゼロになるわけでございますけれども、その範囲内で決めることにしてはどうだろうかというのが関係審議会等での御論議の基本であったわけでございます。  それでは、じゃ二分の一の範囲内で一体具体的にどう決めるんだということにつきましては、一つは、現在の負担より急激に負担増あるいは負担減が出てくるということは避ける必要がある。それから、拠出をしていただく場合に、やはり実績の要素というものは相当考慮する必要がある。つまり実績の要素ということは、それぞれの保険者の企業努力といいますか、経営努力の反映でございますので、そういった要素というものは十分反映し得る拠出の案分の仕方でなければならないということで、厚生省といたしましては関係審議会の御意見を踏まえまして、実績と加入者の案分率というものをそれぞれ二分の一にするのが適当ではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  41. 篠沢恭助

    ○篠沢説明員 基本的な考え方は、ただいま吉原審議官からお答えしたことと変わっておりません。  老人保健制度というものが、現行制度におきます老人医療費の負担、これが老人の加入率格差で各保険者間でいろいろな不均衡が起こっている、これを是正いたしまして今後の高齢化社会の中で各保険者の老人医療費の負担の公平を図っていくということにねらいがあるということでございますので、加入者数による調整の部分というのを二分の一より少なくするということは適当でないというようなことが一つございます。したがいまして、その裏側といたしまして、医療費によります案分というのは、ここに規定されているように二分の一以下というふうに定めることにしたものと考えております。
  42. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そこでなかなかすとんと落ちないのだけれども、二分の一、二分の一、フィフティ・フィフティですね。厚生大臣は、この二分の一以下の範囲内で政令で定める、こうなっていますね。この割合を二分の一、二分の一と持っていく。つまり試算Iの負担割合でいくということを厚生大臣は言っているようでありますが、この点はどうですか。
  43. 村山達雄

    ○村山国務大臣 ただいま両方の事務当局から説明いたしましたように、やはり従来の実績、これはまた将来の経営努力にもつながるわけでございますので、医療費の実績というものを二分の一、それからいまの負担割合の調整を特に国保についてねらっているわけでございますので、激変緩和という意味でやはり二分の一、当分はそれでいくのが妥当ではないであろうか。しかし、今後老人の数が国保の方がどれぐらいふえてくるものか、ウエートだけで調整し切れるのか、二分の一というウエートの中で調整し切れるのか、あるいはウエート自体を少し動かさないと調整し切れないところも理論的には考えられるわけでございます。  したがいまして、当分の間は二分の一でいきたいと思っておりますけれども、やはり将来の状況を見まして、そしてウエート二分の一ずつだけでは調整し切れない。こういうときにはまたそれぞれ御審議を得まして、そして政令で変えられるような仕組みにしておいた方がいいのではないか、こういうことで御提案申し上げているわけでございます。
  44. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 この老人保健法案全体を財政的な観点から見ると、法第五十九条というのは、私は最も中心的な部分だと思うのです。したがって、以下、加入者調整率、引き続いて案分割合、この順序で聞いていきます。  それで、まず加入者調整率の方なんですけれども、老人加入率は現在までどのような推移をたどってきているか、今後の見通しはどう見ているか。二番は、政管健保、組合健保、共済組合、この老人加入率は現在までどのような推移をたどってきているか、今後どういうふうになっていくと思うか、ここをまず聞きたいと思います。
  45. 吉原健二

    吉原政府委員 七十歳以上の方の老人加入率の過去の推移というものを申し上げますが、各制度別に申し上げますと、まず四十七年当時がどうであったかということでございますが、政管健保二・八%、組合健保二・六%、それから共済は数字をつかんでおりません。国民健康保険六・五%、医療保険全体では四・五%でございました。  それから、各年次別に申し上げますと少し繁雑になりますので、その次五十年を申し上げますと、政管健保が三・四%、組合健保が二・七%、国民健康保険が七・二%、医療保険全体では四・八%でございます。  それから、一番最新の五十四年で申し上げますと、政管健保が三・八%、組合健保が二・八%、共済は三・六%、国民健康保険が八・五%、医療保険全体では五・四%でございます。  これが将来どういうふうになっていくだろうかという御質問でございますけれども、いま申し上げました過去の傾向でもおわかりいただけますように、全体として七十歳以上の加入率というものは各制度を通じて高くなってきております。全体の傾向としてはまさしく各制度を通じて高くなってきておりますが、各制度別に見ますと、何といいましても国民健康保険における老人加入率が著しい割合で高くなってきているということが言えると思います。今後とも大体そういった傾向は続くのではないかというふうに思っております。
  46. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それで大体の傾向、いまの答弁でもそうなのですけれども、いままでも四・五が五・四というふうに全体の老人加入率がふえてきていますね。恐らく、これからの高齢化社会を迎えてくる状況の中で、これはずっとふえていくだろうことは明らかだと思う。今度は各保険者間で見ますと、国保がふえていくだろうということも推定できると思うのです。問題は政管健保、組合健保、共済。政管は若干ふえておりますが、組合健保は過去二・六が二・八になった程度です。四十七年から五十四年という何年間かで見ますと〇・二%しかふえていない。共済は五十二年と五十四年を見ますとむしろ減っております。  ですから、過去の推移から将来を推計いたしますと、老人全体の加入率はふえていくだろう、国保はそれと同じような意味で相対的にふえていくだろう。ふえ方はいろいろありますよ。しかし、いま言った政管健保や組合健保や共済は、ふえるにしてもそんなにふえない、変わらないかもしれない。  そういたしますと、問題は、先ほど言いました加入者調整率に大きな影響が出てくる。たとえば組合健保の例をとれば、分子になるべき老人加入率がずっとふえていくでしょう。ところが、組合健保の中での老人加入率が変わらぬということになれば、それを推定して申しますと、これは調整率が大になっていくと思うのです。そうでしょう、組合健保。そうだとすれば、同じようなことが共済にも言える。そうなりますと、先ほどから議論しているように、組合健保や共済健保や政管健保は大変な負担になり、将来もなるだろう。それが、さらに調整率の数字が高くなっていけば当然またふえるということになる、私はそういう道をたどるだろうと思うのです、この調整率をずっと具体的な数字を当てはめると。  これは私はやはり問題ではないかと思う、この調整率のとり方。その辺どうですか、伺います。
  47. 吉原健二

    吉原政府委員 組合健保なり共済組合、それだけをごらんになればそういうことになるだろうと思います。しかし、問題は、各保険制度間で負担の公平、負担の均衡というものが全体としてどうなっていくかということが大事でございまして、組合健保、共済組合がそうなる一方、国民健康保険の負担の方は、現行制度のままにしておきますとますます負担が重くなってくるということでございます。つまり、国民健康保険の七十歳以上の加入者の割合が組合なり共済の割合以上に多くなっていくわけですから、このままにしておきますと国民健康保険の負担が現行制度以上に大きくなっていく、まさしくその点が問題でございまして、一つの保険制度だけを見るのではなしに、各保険制度全体を見て、バランスのとれた公平な負担というものをどうやって図っていくかという見地から、新しい制度というものを御提案申し上げているわけでございます。
  48. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 公平とかバランスということを言いますけれども、先ほど冒頭でも述べたように、財政全体の移り変わりからいえば、国民健康保険の負担が減る、相対的にそれに関連して国庫負担が減る。ところが患者の負担はふえ、地方自治体はふえ、被用者保険はふえ、しかも、被用者保険の中でもいま言った政管健保や組合とか共済組合はふえる。それは料率にも明確に出ている。将来もその率は上がるだろうと言っている。ところが、いま言った五十九条の加入者調整率、これに具体的な将来の推計の数値を当てはめていきますと、分子が大きくなって、分母が変わらないか分子ほどにはふえないのだから、当然その加入者調整率は大きくなっていくのです。そうでしょう。これは具体的には、政管健保、組合健保、共済について当てはまるだろう。そうすると、将来的にますますその負担が、つまり加入率の低いところの組合や政管や共済組合、こういうところがふえていくという、これはやはり中身をしさいに見ると大きい問題ではないか。  単に負担の公平と言うだけで、とどのつまりは、仮にこの調整率を見たって、国の負担だけ減るということになっちゃうじゃないですか。そういう問題を含んでいるということをあなたはどう考えますか。
  49. 吉原健二

    吉原政府委員 加入者調整率の低いところの被用者保険を中心にした負担がふえていくということはおっしゃるとおりでございますが、先ほど申し上げましたように、現行制度のままにしておきますと、国民健康保険の負担の方がはるかにいまおっしゃいました以上の割合で重くなっていく。  やはり老人医療費は、将来とも老齢人口の増加等がございますから、かなりのピッチでふえていくということは避けられないと思います。したがいまして、一方で医療費の適正化のための努力をすると同時に、他方でそのふえていく老人医療費を各制度間でどうやって公平に負担をしていくかということになりますと、医療費の実績による案分の仕方、負担の仕方、それから加入者の割合の変化、そういったものに対応して、現在国民健康保険と被用者健康保険では、端的に言いまして国民健康保険の方は約十%に近い加入率になっている。被用者保険の方は二ないし三%程度の加入率である。これを、大体老人の方が同じ程度の、全国平均の、まあ五%程度でございますけれども、五%程度の老人加入率を前提にした場合に、一体どのくらいな負担になるだろうか、そういったことを前提にして拠出をしていただこうということでございます。あくまでも、そのふえていく老人医療費というものを、各制度間で公平にバランスのとれた形で負担をしていただくためにこの新しい制度をお願いしているわけでございます。
  50. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は、この老人保健法案が施行されていったときに、客観的な事実としてどういう筋道をたどっていくだろうかということを申し上げているのですよ。そうすれば、私の述べたような結果になるということは、推計的に明らかだと私は思う。  その次に、関連して、先ほど保留しておきました案分の割合です。  これは五十九条に、たしか二分の一以下ですね。「二分の一以下の範囲内で政令で定める割合」こうなっているわけです。そうすると、二分の一以上になることはないですね。二分の一から限りなくゼロに近づいていく。先ほど厚生大臣は、いまのところは二分の一、二分の一でいくが、将来は二分の一がその範囲内でゼロに近づいていく可能性を示唆していますね。そうなりますと、二分の一がゼロに近づいていくということは、とりもなおさず、医療費の案分割合が減るということですね。そうでしょう。組合加入率の方が逆にウエートがふえるということになる。二分の一がゼロに近づいてくるのですから。下の方は二分の一からさらにふえるでしょう。そうなれば、当然組合加入率の比重が大になるということです。現行よりも少なくとも、政令の定める割合でいけば、二分の一以上にならないのです、二分の一以下なんですから。これは必ず加入者案分率のウエートが大になる。これは明らかです。  ところが、いいですか、そうなりますと、先ほど言った共済や組合健保や政管健保は、ただでさえふえるのに、加入者調整率でふえていく。推計でさっき言ったじゃないですか。しかも案分で加入者のウエートがふえたら、組合健保なり政管健保なり共済組合なりは、この五十九条によって将来ふえることはあっても減ることばないということです。そうでしょう。わかりますか、言っている意味。どうですか、その点。
  51. 吉原健二

    吉原政府委員 必ずしも私ども将来二分の一を限りなくゼロに近づけていくことを現在の時点で前提にしているわけではございません。現在は、やはり厚生省といたしましては、案分率を二分の一に決めることが関係審議会等の御議論の結果を踏まえましても妥当なのではないかと思っております。  ただ、二分の一とした場合に、将来老人の加入率というものがそれぞれ保険制度ごとに違ってまいります。いま大体の予想は申し上げましたけれども、将来それ以上の変化があるいはあるかもしれませんし、あるいはまた違った変化を示すこともあるかもしれません。老人医療費の動向がどうなるかということも、全体としてはふえていくと思いますけれども、全体のふえ方、それから各保険者ごとの経営努力なり企業努力によって各保険者ごとの老人医療費がどうなっていくのかということも、将来必ずしも予想どおりにはいかない要素もあると思います。  そういった事柄をいろいろ考えまして、現在は二分の一というふうに考えておりますけれども、将来のそういった加入者の割合、数、それから老人医療費の動向、そういった変化というものに適切に対応できるように、それはもちろん関係者の意見も十分お伺いしながら決めていくわけですけれども、将来そういった変化に弾力的に対応ができるようにということで二分の一とゼロの範囲内で政令で決めることにしておくのが適当ではないかというのが私どもの考え方でございます。
  52. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 非常に込み入った議論になっておりますのでなんでございますけれども、私は、確かにこの案分の割合を現状ではフィフティー・フィフティーにするという、これは先ほど厚生大臣が答弁されていますからいいのですが、しかし法律上はこの二分の一以下に持っていく可能性を持っているわけです、法律そのものとしては。     〔委員長退席、湯川委員長代理着席〕 まだ選択の余地があるわけです。そうなりますと、二分の一からゼロに近づけていった場合に、先ほど言ったように、老人加入率の低い、つまり加入者調整率の高い政管健保、組合健保、共済は負担がふえていくという可能性を持っています。ところが、今度は国民健康保険のようなところは、その二分の一をゼロに近づけるというだけで総体の保険料、全体の保険料が変わらなくとも自動的に下がるということです。そうでしょう。そうすれば、これはその部分を二分の一からゼロに近づけていくというのはいまのような結果をもたらすのです。  そうなりますと、先ほど厚生大臣は言われたけれども、健康管理に努めて、そして健やかな老後を送るというのが簡単に言ってこの趣旨でしょう。そうすると、健康管理に努めて、そして保険料負担を少なくする、そういうことに努力をしなくとも、案分の二分の一をゼロに近づけていけば、加入率の多いところの組合は負担が減るということなんです。わかりますか。そういう重要な案分の割合を政令の一片で決めるということは私は大きな意味で問題があると思うのです。これが第一点。  それから第二点は、二分の一以下の弾力条項はどのようなときに適用し、作動するのか。どう考えていますか。この二点。
  53. 村山達雄

    ○村山国務大臣 先ほど政府委員から言いました数字をもう一遍確かめてみますと、政管健保は四十七年老人加入割合が二・八、五十四年で三・八ですから一%伸びています。それから組合健保の方は二・六から二・八で〇・二%。それから国保の方が六・五から八・五で二%伸びています。平均で言いますと四・五から五・四で〇・九%伸びておるわけです。  いま調整しようとするのは、各保険の開差が平均に比べてどれくらいになっているかというところを見まして、そこでいまの案分割合、激変緩和あるいは将来の経営努力、こういうものを考えてやっているわけでございます。そして原則としては、大体ウエート二分の一でいけば多分いいだろう、こういうことでございますけれども、いまの比率がどうなってくるか、これはなかなか予測がつきません。平均の伸びに対して、そして国保の方がどれだけ伸びていくか、それから組合健保また政管健保はこれから雇用状況がどうなるのか、いつまで、何年まで雇用するのか、これとも密接に関係してくるわけでございます。  そういう意味で、ウエート二分の一だけで賄えるという保証がないわけでございます。したがいましてその意味で、負担の公平という、ひとしく持ってもらうという意味でやはり弾力条項を持っておった方がいいのじゃないか、こういうつもりで二分の一以下ということをやっているわけでございますけれども、もちろんそれはこれらの指数、それから実際の負担関係、こういうものを本当に見きわめまして、もし変えるとすれば理由のある変え方、皆さん、国民に納得の得られる変え方でなければ、どんな場合でもできないわけでございます。ただ、この数字で見ます限り、やはり弾力的にやっておった方がいいなというのでやっておるわけでございます。  それからもう一つでございますが、国保の負担と各保険の間の調整、それと国庫負担の関係でございますが、これは、御承知のように、国庫負担は本来で言いますと、公費負担分、各保険に対する国庫負担、これは法律で決まっているわけでございます。それだけで見ますと、この前大原委員が出してくれとおっしゃいましたもので見ますと、今後国庫負担は、いま八百七十億減ると言っておりますが、六十年では、ちょっと見てみますと、これが二百九十億しか減らないのでございます。これはなぜかと言いますと、臨調の千九十億というのは初年度だけの話でございまして、後は効いてこないわけでございます。したがいまして、初年度におきましては国庫負担については臨調の負担が軽減されるということはありますけれども、後は二年目から出てこないわけでございますから、後はもう各保険間の負担関係をどうするかによって国庫負担が決まってくるということでございます。国民健康保険の方が将来ずっと負担がならされてくる、それに従って国庫負担が自動的に来ているということにはならないということを御了承願いたいと思います。
  54. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 厚生大臣、いろいろ説明されるのはいいんだけれども、質問の流れに沿って答弁してください、時間がむだですから。  それで、先ほど申し上げましたけれども、例の二分の一の問題、弾力条項、これは、置くことの可否もさることながら、法律上そういう法律の中身にしておいて、選択の可能性としてこういうふうにするならばこういう問題が出るのじゃないか、こういうことを私は言っているわけです。つまり、二分の一以下ということで、二分の一を限りなくゼロに近づけていった場合には先ほど言ったような問題が出てくるのじゃないか、こういうことを言っているわけであります。  そこで、私は次に進みますが、二分の一以下と決めていますけれども、これを、二分の一を基準にして、こういうふうに上下に作動できる弾力条項にしたら不都合があるのかどうか、この点を聞きます。
  55. 吉原健二

    吉原政府委員 二分の一を基準にするということになりますと、いまおっしゃいましたけれども上下に幅が出てくるということになるわけでございますけれども、やはり実績案分率というものを二分の一より多くするというのは将来とも考えられない。そうしますと、多くすればするほど現行制度の不均衡をそのまま残すということになりますので、二分の一より大幅にして実績案分率をそれより多くするという考え方はとるべきでないのではないか。  また、いままで関係者、関係審議会でいろいろ御議論いただきましたけれども、そういう考え方は実はございません。二分の一を基準にしますけれども、二分の一とゼロの範囲内で決めるようにしたらどうだろうか、実は考え方としてはゼロ、つまり全部を加入者案分という議論もあったわけでございますけれども、大方の関係者のコンセンサスというものはそれぞれフィフティー・フィフティーで出発をするというのが一番適当であろうということであったわけでございます。
  56. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 どうもさわりの部分になかなか答えてもらえないのだけれども、二分の一以下ということになりますと、それを限りなくゼロに近づける、この法律上はそれ以外方法はないわけです。そうなりますと、さっき私の見方を言ったように、あなたも同意されたのですが、加入率の低い、つまり調整率の高いところは、そのことによって負担が大きくなってくる。ところが、国民健康保険のように加入率が高くて調整率の低いところで……(吉原政府委員「国保も高いです」と呼ぶ)いや国民健康保険低いでしょう。(吉原政府委員「逆な意味で高いです」と呼ぶ)  だからそういうことで、その場合は、先ほど言ったように、何と言いますか、医療費を少なくしなくたってそういうところは二分の一からゼロに近づけることによってこれは安くなるでしょう。これは事実ですよ。そうなりますから、後で計算してみてください。  そうなりますと、いまのような二分の一以下をゼロに持っていくというだけですとそういう問題が出てきますから、今度は二分の一以上、たとえば三分の二とかなんとかということはどういう場合に考えられるかということです。これはつまり医療費の実績の案分を高くするということでしょう。総体的加入率の案分を少なくするということでしょう。そうすると、たとえば将来国民健康保険なんか、いまはそういう状態だけれども、ところが加入者がどんどんふえていって加入者調整率がますます低くなっていった——そうでしょう、国民健康保険の場合。分子よりも分母の方がずっと大きくなっていったというふうになればそうなるでしょう。そうなりますと、これは二分の一をゼロに近づけるというだけになりますと、簡単に言うと加入率の多いところは大変得するわけです。ですからそういうような場合を想定した場合に、逆に医療費の部分のウエートを大きくする、案分を大きくするということだって、いまのところはなかなかそういう状況は想定できないけれども、将来考えられることではないのか。  そうなりますと、将来のことを考えると一方的に二分の一をゼロに近づけるというだけの条文ではどうなのかなという疑問を持つわけです。したがって、その辺はどうですか。非常にややこしい質問になっているのだけれども……。
  57. 吉原健二

    吉原政府委員 将来加入率なり医療費の動向を保険者別にどういうふうに見るかというところが、あるいは先生との考え方の相違点かもしれませんが、将来とも医療費の実績による案分率というものをいまよりも、二分の一よりも多くするというような必要性というのは出てこないのじゃないか。先ほどから申し上げております老人の加入率の各制度別の過去の推移、それから将来どういうことになるだろうか、過去の推移というものを将来大体同じような傾向が続く前提で考える限りは、実績の案文率を二分の一よりも低くする必要性は出てきても、それよりも一に近づける、高くするという必要性は出てこないのではないか。  そうかといって、私ども、限りなく二分の一よりもゼロに近づけるということを、先ほどから申し上げておりますようにいま前提にしているわけではございませんで、ゼロに近づければ近づけるほど保険者の実績、経営努力というものが拠出に反映をされない結果になるというデメリットも持っておりますので、これを全部加入者案分にする、つまり実績案分率をゼロにするということは将来とも全くあり得ないのではないか。  しかし、二分の一で将来ともずっと大丈夫かと言われますと、二分の一のままにしておきますとちょっと考え直す必要が出てくる、見直しの必要が出てくる可能性というものはあり得ると思います。そのときに、関係者の御意見あるいは老人保健審議会で十分御審議をしていただいた上で将来その案分率を変えるということも、むしろ弾力的に対応できるという仕組みに法律制度上もしておく必要があるのではないかということで、こういった考え方を御提案しているわけでございます。
  58. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は、この老人保健法の財政的にはきわめて重要な部分だと思いますが、ただこれが施行された場合の将来の推計的な問題点といいましょうか、そういう点で述べたので、これは客観的事実として勝算があるものじゃないものですから、議論としてはその程度にとどめておきたいと思います。ただ、五十九条一項、二項は私が指摘したような問題点を含んでいるというこのことだけは御理解の上、十分検討してもらいたいとその点では私は思います。  そこで、ずっと老人保健制度における負担割合であるとかあるいは財政調整であるとかいろいろなことを申し述べましたが、帰するところ、簡単に言うと負担の公上平ということの名において、結局のところ国庫負担とそれから国民健康保険、これは制度が変わることによって減っていく、しかし、患者、地方自治体、被用者保険、これはふえていく。しかも国民健康保険の医療費総支出の四五%は国の補助ですから、したがって総体的に言えば、先ほど厚生大臣も昭和五十六年度と六十年度と比較されましたけれども、いずれにしても国の負担が減るということは間違いがない。ところが、いま申し上げた三つの分野はふえていって、しかも被用者保険の中では政管健保、組合健保、共済組合が財政的にふえると同時に保険料率もふえ、しかも昭和六十年の具体的な推計数字でも保険料率はふえるだろうということが言われている。しかも法第五十九条によれば、一項、二項によりますと、先ほど申し上げたような三つの保険組合は、将来とも恐らく加入率がそう高くならぬだろうということを想定の中に入れておきますと、この加入調整率というものが大きくなっていくだろうということが考えられますので、したがって、組合の方の負担が財政的に多くなっていくだろう。加えて例の案分比率を二分の一からゼロに近づけていくとすると、さなきだに多いのにそれが加重されていく、こういう問題点を含んでいるのじゃないか。  したがって、結論から言えば、国民健康保険の負担が減るということはいいけれども、国の負担が減り、しかもいま申し述べたような分野にしわ寄せされていくということは問題があるのではないかということを私は指摘したい。  同時に、もう一つの問題は、高齢者のヘルスと老人の医療という一貫したシステム、そういうことを考えますと、高齢者のヘルスにしろ老人の医療にしても、たとえば老人の医療なんというのは病気といっても慢性的な病気ですから、完全に治すことはできない。つまり、広い意味で言うと健康管理なんです。そうすると、健康管理という観点に立つと、こういうものは突然起こったときにお互いに支え合うという保険制度には本来なじまないものだと思う。慢性的に病気があるのですから。たまたま急患でなったとなれば、お互いに支え合う保険制度はなじむかもしれない。しかし、老人保健法が言っているところのつまり高齢者の保健、しかも老人の医療、このことを考えますと、これは恒常的に必要なものなんです。たまたま何かの突発的な病気だとかなんとかということではないのですね。そうなりますと、いまも申し上げたように、本来危険を分かち合うという保険制度になじまない。むしろ私は、この老人医療法案の言っている趣旨から言うならば、これは保険制度ではなくて社会保障的な観点で財政を考えていかなければならぬのではないかと思う。  ところが、先ほど申し上げたように、財政的な面で見ていきますと、本来、社会保障的というならば国が負担しなければならない。ところが国の負担は減っていって、なじまないと言われる保険の部分だけがふえていくということは、私はいま申し上げたような健康管理という観点から言う上財政的にも問題があると思う。  もう一つの問題は、先ほど申し上げたように組合健保、政管健保、共済組合という勤労者、この部分がきわめて突出した部分で、将来も負担がふえていくだろうということを考えますと、いまの勤労者の置かれている状態から考えますと、問題があるのではないか。  私は以上の点を特に考えますし、とりわけこれは行革全体の絡みの一環の法律だと思うのですが、いまのように国の負担は減って勤労者の負担はふえていく。そうすると、国の負担が減った部分は、昭和五十七年度の予算なり将来を考えていきますと、これはいろいろ政策上の違い、選択上の違いがあるだろうと思うけれども、紛れもないのは軍事費は増大していますよ。そういうところにつながっていくのではないかという国民の疑惑がきわめて大きいわけです。  したがって、その辺を全体をながめたときに、老人保健法案の本来の趣旨、それに伴う財政のあり方、国家財政全体から見た予算との絡み、この辺を総括的にどう考えますか。
  59. 村山達雄

    ○村山国務大臣 非常にむずかしい問題だと思うのでございます。本来、医療に関する問題については、強制適用、国民皆保険ということから出発したことは御承知のとおりでございます。しかし、その後、本来の意味の公費負担の医療に加えまして、本来保険給付で賄われた部分につきましても、それぞれ老人福祉法によるところの老人医療という問題が出てまいりました。これが結局公費負担に変わってきた、こういう背景があるわけでございます。  問題は、それのうち保険制度でどれだけ賄うのか、それから当然のことでございますが、もしそうでないとすれば、納税者がどれだけ賄うのか、まさにそこの選択の問題にいくのでございます。今度の案は現行制度を基礎にいたしまして、ヘルスの必要なことはもう言うまでもございませんけれども、これを総合的にやっていく、これはまさに国と府県と市町村、それぞれの適当な配分比率で持ちまして、これは保険制度ではございませんが、そういうやり方、言いかえれば、それぞれの納税者が持つという仕組みにしまして、残る部分の配分について国保とそれからその他のものの負担を医療につきましてどうしたらいいか。いまの現実から申しまして、先ほど申しましたように、老人医療費の六、七割を国保が持っているわけでございます。人口比率で申しますれば四千四百万でございますから、とてもそんなにいかぬわけでございます。ですからそのバランスというものは現在の保険制度の中から出てきた問題じゃないだろうか、そう思いまして、可能な限り調整しようとしているのでございます。  私たちは一歩一歩、そういうことによりまして、税金で賄う部分、それから本来保険料で賄う部分、それから保険料で賄う中でどれぐらいの調整をしたらいいのか、そこを総合的に考えまして、そして現行では激変緩和という意味も加えまして、そしてまた、各党が言っておりますように被用者保険、地域保険、老人の医療、この三つに区別して合理的な制度を立てた方がいい、こういう御要望にこたえまして、われわれの乏しい知恵でございますけれども、できるだけの知恵をしぼって提案したつもりでございます。
  60. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 乏しい知恵と言われましたのですが、答弁納得はできませんけれども、時間の関係がありますから先に進みます。  それで、次は支払い方法です。老人保健法案では、支払い方法は老人保健審議会に諮問し、その答申を得て厚生大臣が決めるという仕組みになっているようですが、御案内のとおり、診療報酬支払い方式がどういう方式をとるのか、これは総医療費、ひいては各保険者の費用分担、それから保険料率、ずうっとつながっていくわけです。これは経験的にも明らかでありますし、またそうなるでしょうね。そうすると、この支払い方式だけがひとり歩きするということは考えられないわけです。これは全部関連しているわけです。つまり出口の方に何ら手当てをしないで入ってくる方の議論だけしたって、これはしようがないわけであります。適正に支出と収入のバランスをとればいいのですから、これはもうける株式会社と違うのですからね。  そうなりますと、出口の方の支払い方式については、この法律ができた後に老人保健審議会で決めるのだという、こちらの方にたな上げして、費用分担の方の財政の負担割合だとか調整だとかそういうことだけを決めていくというのは片手落ちではないのか。したがって、社会保険審議会の答申でも、現行出来高払い制度は見直すべきだという答申もあるのですから、やはり老人保健法案審議するならば、出口の部分支払い方式も正当に議論する。これは私は当然あるべき姿だと思うのですが、これは非常に大きな問題点だと思うので、どう考えますか。
  61. 村山達雄

    ○村山国務大臣 負担関係につきましては、御案内のようにこういうふうに決めたわけでございます。  それで支払い方式の問題、実を申しますとこれは医療資源の効率的使用という一連の問題につながるわけでございまして、私は三つ問題があると思っておるわけでございます。  一つは、現行でありましても、また将来支払い方式は変わりましょうとも、医療費の点数なり薬価基準というものを一体どういうふうに実勢を把握していくか、いかに適正にやっていくかという点数の問題が一つございます。  それからごく一部の人に見られますが、われわれはやはり患者と診療側の信頼関係の上に立たなければ、とてもじゃないが取り締まりだけでこの適正化はできないと思っているのでございまして、そのためには、信頼関係を基礎というからにはおよそ不正なものがあってはいかぬわけでございますので、それの厳重な監査あるいはそれに対応する厳正な措置というものが必要でございまして、審査方式の強化、特に審査機能の強化であるとかあるいは監督権限、監督を厳重にしていく、さらには通知制度を励行していく。またもし非違がわかったときには厳正に処分していく。これはやはり信頼関係を保つ上にどうしても必要な措置だと思っておるのでございます。  そういう二つのものは当然これから研究して進めてまいりますが、同時にまた、現在の出来高払い制度という支払い方式も考える余地があるのではないかということが社保審、制度審等で問題になりましたので、その点もあわせてやっていただきたい。  もう御承知のように、西独では団体の請負方式がありますとかあるいは英国では人頭登録制度があるわけでございます。現在の日本の出来高払い制度に比べまして、それぞれ長所短所があると私は思うのでございます。同時にまた、その国で果たしてなじむかなじまないか、この問題もあると思います。それならば、そのままできないにしても、それを日本に合うようにやって、そして医療資源の適正化を図ることができるかどうか、これが私は支払い方式を見直すというときのやはり大きな問題であろうと思うのでございます。  非常にむずかしい問題ではございますけれども、わが国のことも考え、そしてほかの国でもやっているわけでございますので、それをわが国で取り入れるとしたらどんな仕組みがあるだろうかということを真剣にこの老人保健審議会で御検討願い、またわれわれも大いに勉強さしていただきまして、いろんなたたき台を出して議論の場を提供さしていただく。  それも加えまして、最後はやはり医療資源の適正化、そしてまた患者に対しまして本当に適正な医療が実施できるように、むだがないように、こういうことをねらいながら、この支払い制度の見直しという問題には当たってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  62. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 支払い方式の見直しについてはということで言われたわけですが、私がまず冒頭聞いておるのは、いまの法律案の中では、法律ができてから重要な支払い方式について老人保健審議会にかける云々という、このことは問題があるんじゃないかと言っているわけです。つまり、これはバランスですからね。片一方だけ、法律ができたらほかのところでやります、こっちだけ決めてくださいという、このことをどう考えるのかということをなお念のためにもう一度。
  63. 村山達雄

    ○村山国務大臣 収入の方が決まったのに支出の方は決まらないのはおかしいじゃないか、こういう御議論だろうと思うのでございますが、そういう見方もございますし、私たちはやはり事実に即して、そしてむずかしい問題はむずかしい問題なりに扱わにゃいかぬ。そしてまた負担のバランスの問題は大体皆さん言われたところで合意を見ている。おおよその合意が見られていると思うのでございますので、今度のような案を出しているわけでございます。  支払い方式の見直しという問題は非常にむずかしい問題で、われわれ検討しますけれども、こっちを決めたからこれは不完全でもやるという性質のものではないんじゃないかというふうに、少し御意見が違うかもしれませんけれども、なかなかむずかしい問題でございますので、事実に即してやっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  64. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 納得できませんけれども、次に進みます。  先ほど支払い方式の検討に当たっての考え方といいますか、こういうことを幾つか述べられました。たとえば適正な点数であるとか、あるいは不正請求のないように審査の強化であるとか、それから出来高払いの云々ということも言われました。先ほど言われたことは私ももっともだと思うのですが、ただそれはいままでも何遍も社会労働常任委員会でも議論されたように、いま言ったような薬価基準の問題にしてもそれから不正請求の問題にしても乱診乱療にしても濃厚診療にしても、ずっともとを尋ねていけば、それがすべてとは言わないけれども、その大部分の原因はやはり現在の点数出来高払いという、ここに起因するということが大方の見方が一致している。さればどうするかという議論はこれからいろいろな議論の分かれるところだと思いますけれども、これはたしか私の記憶では、前厚生大臣の園田さんもそのことについては検討したいやの旨が言われたように記憶しているのです。私は、いまいみじくも厚生大臣が言われたことは、やはりいまの点数出来高払いでは問題があるということの指摘につながっているのだと思うのですよ。  したがって私は、先ほど厚生大臣が言われましたが、老人保健審議会支払い方式を諮問するに当たっては、十分現在の出来高払いを変えるということも含めて諮問し検討してもらう、こういうふうに理解していいですか。
  65. 村山達雄

    ○村山国務大臣 見直していただいて、これはもうこの方がいい、その結果として変わることはあるべしということでございます。見直しということは変更も含めて見直していただくわけでございます。
  66. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうすると、くどいようですが、そういう見直しを含めて検討をしてもらうということでこの老人保健審議会の諮問案を作成し答申を求める、こういうことですね。
  67. 村山達雄

    ○村山国務大臣 さようでございます。幾つかのたたき台を出していきたいと思っております。
  68. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それじゃ次に、保健事業について若干質問してまいります。  言うまでもなく、この老人保健法案の全体の制定の趣旨から言えばこの保健事業は重要な分野である、これなくしては法律本来の趣旨は生かされない、私はそういうように理解するのですが、どうですか。
  69. 村山達雄

    ○村山国務大臣 むしろ私に言わせますとそっちの方が一番大事な問題じゃないかと思っているわけでございまして、若いときから健康に気をつけていただき、そして国の制度として健康な老人をつくるための壮年時代からのヘルスの事業、これを伸ばしていくことによりまして活力ある社会に通じていきましょうし、老人の何よりの幸福でございましょうし、また同時に、長期的に見ますれば医療資源の効率的な使用につながってくる、こういう確信のもとにこれを考えているわけでございます。
  70. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そういう観点に立って重要な事業になるわけですが、この実施主体は市町村ですね。いま厚生大臣が言われたような重要性を受けとめる、重要な事業の実施主体である市町村にそれを遂行するような設備なりマンパワーなりの点でそういう体制があるのかどうか、この辺はどうですか。
  71. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 ヘルス事業につきましては、先生御指摘のようにマンパワーあるいは施設、設備等について十分な配慮がなされなければ実施できないのは当然でございます。したがいまして、私どもといたしましては、五年後の六十一年度を目標といたしまして年次計画的に整備を進めたいということで事業を考えているわけでございます。当面、マンパワーや施設整備の問題を含めまして、市町村におきまして不十分なところがないわけではございませんから、そういう点につきましては当然保健所が協力、援助をするという形で、地域の実態に応じてそういった整備を進めていきたいというふうに考えているわけでございます。
  72. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 具体的に言いますと、たとえば市町村の保健婦の実態など見ますと、その配置の数字、この辺はどうなっていますか、現在の市町村の保健婦の配置というか要員の状況というか。
  73. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 市町村におきましてはそれぞれ保健婦さんが配置されているわけでございますけれども、まだ未設置の市町村もあることもまた事実でございます。
  74. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私の得た資料によりますと、市町村保健婦の設置状況を見たときに、一人もいない、ゼロだというのが四百五十八市町村、一四・二%、一人というのが千六十八市町村、三三%、二人というのが七百八十四市町村、二四・三%。つまり一人以下というのが全体の四〇%なんですね。たしか六十一年まで五カ年計画のマンパワーの話もありましたけれども、こういういまの実態の中で、先ほど厚生大臣が言われた重要な事業というものが遂行できるような状況にあるのか、それに相応するような五カ年計画の中で、財政的裏づけやら設備、マンパワーが必ずうまくできるのか、この辺どうなんですか。
  75. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 まさに先生御指摘のように、保健事業につきましてはそういったマンパワーの設置ということも非常に重要な問題でございますが、しかし何といってもこういったものにつきましては、それぞれ専門の教育あるいはいろいろなことがありませんとそういった整備がむずかしいわけでございまして、私どもとしては、先ほども申し上げましたように、五カ年計画をめどにいたしまして逐次拡充していく、こういう考えでございます。  それからもう一つは、現在の保健所の能力をもってこれに協力、援助するという形で年次的に進めていきたいというふうに考えているわけでございます。
  76. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 いま年次計画とありましたが、この間の大原議員の保健事業の五カ年計画に対する答えとしての予算の裏づけを見ますと、五十七年度が六十五億円、平年度にならして四百五十億、昭和六十一年度は千四百億円の規模になる、こういうふうに聞いたのですが、その辺はどうですか。
  77. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先生のお示しのとおりでございます。
  78. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうなりますと、いまの市町村の保健センターなんかを見ましても、六十一年度は一千カ所整備というようなことがちらっと出ておりますが、いまたとえば六十一年度に千四百億の規模の予算を持ってきたって、三千二百七十くらいの市町村に分けますと大体一億にも当たらないのですね。ならしただけで言いますと、大体五千万程度です。この程度のことで、いま保健所に保健婦が一人もいないようなところがうまく施設、マンパワーが充実できるのか。その点、重ねてどうですか。
  79. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 ヘルスの事業は、直接的にはただいま申し上げました費用でございますけれども、そのほかに保健センターあるいは老人福祉センター、その他いろいろ施設がございまして、そういった関連施設も含めまして、できるだけ私どもの考えているヘルス事業の方向に持っていきたいというふうに考えております。
  80. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 持っていきたいという決意は出ているようですから、それ以上は追及しません。そこで、次に進みます。  都道府県は、「市町村に代わって、医療以外の保健事業の一部を行うことができる。」 第二十一条にこういう規定がありますね。保健所というような意味だと思うのですが、どのような場合にかわって都道府県が行うことになるのか。それから、「一部」とあるが、どのような事業を指して一部と言っているのか。
  81. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 法第二十一条のところで、都道府県は市町村にかわって保健事業を行うというふうになっております。これにつきましては、たとえば僻地、離島等に見られますように、要員あるいは施設、財政状況その他から見まして、当分市町村では非常に無理だと思うようなものにつきましては都道府県がみずから行う。また、精神衛生等、専門的に非常にむずかしいものにつきましても、これは市町村の実施がなかなかむずかしいものでございますから、これにつきましては都道府県がみずから市町村にかわって実施するということを想定しているわけでございます。
  82. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 答弁の趣旨としてはわかるのです。ただ、先ほど質問のお答えにもあったように、都道府県の実態を見ると、受けざらはさっき言ったような施設、マンパワーの状態、しかもいまの予算の推計としては千四百億。これらを勘案したときに、私は、この老人保健法案で重要事業といわれる保健事業が本当にできていくのかどうか、率直な言い方をすれば、何か財政対策で終わるのじゃないかという気がしてならないわけですよね。  しかも、いま言ったように、市町村ではなかなかできなかった、したがって都道府県が肩がわりできるんだからということで、代行の形で事が進められていって、市町村のヘルス事業の肝心のところが抜けちゃう、そういうことになりはしないかという懸念を持つのですが、その点どうですか。
  83. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 その点につきましては、私どもとしてもできる限り市町村に重点を置きまして整備を進めていきたいと思っております。  なお、ヘルス事業といいましても、医療と若干性格が違いまして、特に老人の場合、普通の体操のようなもの、あるいは文化、娯楽というふうなものも含めまして、生活と密着した老人のケアということが非常に大事なわけでございまして、先生御指摘のように、ヘルス事業の専門の予算は少ないのではないかということでございますが、もちろんこれは、多ければ多いほど手厚くできるわけでございますけれども、このヘルス事業の当面の予算というものを核にいたしまして、その他周辺の生活部門にヘルス事業というものを、正しい健康知識でカバーしていく、そういうふうな考え方でございまして、ヘルス事業というものを市町村でそういうふうに実施していくことがやはり非常に大事なことである、こういうふうに考えているわけでございます。
  84. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは次に第二十三条ですか、市町村は、医療以外の保健事業の一部を、老人保健取扱機関その他適当と認める者に対し委託することができる、こうありますね。  具体的にどのような事業を委託するのか。委託先はどのようなところを考えられるのか。それから、もし民間の医療機関に委託することになりますと大変高いということも、ケースによっては考えられるので、これら具体的な委託に当たっての、費用についての基準のようなものを考えているのか、この三点。
  85. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先ほどから申し上げておりますように、市町村がヘルス事業の実施主体であるということでありますけれども、もちろん、がんの検診でございますとか、ヘルス事業にもいろいろ専門分野がございまして、これはみずから実施することができない場合が非常に多いわけでございます。これにつきましては、地域の実情に応じまして、医療機関あるいは保健所、その他公共性の強い民間の検診事業団体等に委託して行うことができるというふうにいたしているわけでございます。  その場合の費用でございますけれども、これは当然国、県、市町村が三分の一ずつ費用を持つ。また、検診等につきましては応分の負担をしていただく、こういうふうな考え方をしているわけでございます。  その場合の費用の問題でございますけれども、これはもちろん地域の実情に応ずるわけでございますが、一応私どもとしては、現在のところ大蔵省の方に平均的な額というものを計算いたしまして、それでひとつやっていこうという考え方でいるわけでございます。
  86. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それで大変心配をしますのは、いま委託する先のことをいろいろ挙げられましたが、民間委託というふうになっていったときに、今日の医療の実態を見るといろいろ問題があるわけです。底を流れるのは、言うなれば営利主義ということだと思うのですが、そういう中でどんどんそういうところに委託されていった場合に、たれ流し的にそういうものに金がかかっていくのじゃないか。そうなった場合に、本来のヘルスの事業の姿からいって問題であると同時に財政的にも負担し切れない、そういうことに落ちてしまうのじゃないかということが考えられるので、その点を特にもう一度念のために私は聞いておきたいと思うのです。  それからもう一つの問題は、もちろんこれは市町村が主体ですから、市町村も施設、それからマンパワーを重視していかなければならぬと思いますが、同時に都道府県がかわるという部分もあるわけです。あわせて保健所の充実というものが必要ではないのかということ。特にこれは保健所法によっていろいろな趣旨があるのですが、とりわけその中でも第九条ですか、無料の原則というのがありますね。これなんかを活用しながら保健所の充実と相まった形で補完しながら充実するということが重要ではないのかなと私は考えるのですが、その点どうですか。
  87. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 全く先生御指摘のように、市町村におきますヘルス事業のうち特に専門的分野に関することにつきましては、できれば保健所で全部カバーしたいというふうな気持ちでございますけれども、実態といたしましては対象者数が相当に上りまして、これはとうてい不可能なことでございます。しかし、その重要な部分につきましてはできる限り保健所でカバーするという考え方に立ちまして、先ほど申し上げました五カ年計画の中でも保健所の整備ということに相当部分力を入れているわけでございます。  また、民間事業に委託する点につきましても、先生の御指摘のような御心配のないように、できるだけ公的な民間の検診事業というものにつきまして指導を強化してまいりたいというふうに考えております。
  88. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そこで、保健所にかかわりますが、この五カ年計画の中では保健所の職員の増員をどのように考えられておるのか。  それから、老人保健法に基づいての保健婦の増員はどういうふうに考えておるのか、この二点を……。
  89. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 マンパワーにつきましては、特に保健婦さんでございますけれども、六十一年度の最終年度を八千人というふうに考えて増員が必要であるというふうに考えております。そのうち既存の保健婦さんを二千人活用いたしまして、新規採用といたしましては三千人、また退職保健婦等の活用という点で約三千人、こういうふうな考え方で年次的に増員を進めてまいりたいというふうに考えております。  それから、そのほか医師、歯科医師あるいは看護婦、栄養士さん等につきましては、地域の医師会あるいは医療機関等の協力を得ましてそれを確保していくという考え方に立っております。  それから、いわゆる機能訓練、老人の方々にとりましては関節が不自由であるとか、あるいはいろいろな運動機能というふうな点が弱いということがございますから、そういった点でも特にその専門職種であるOT、PTというものを置かなければいけないということで、これにつきましては六十五人、また老人痴呆等精神衛生の問題が非常に重要化してまいりますので、新たに六十一年度には約四百人の精神衛生相談員を設置する、また必要な精神科医師の嘱託等についても考慮しているわけでございます。
  90. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は保健所の職員の増員のことを聞いているのです。私の方の資料では、五カ年計画で昭和六十一年の保健所の所要職員は、保健婦が八百五十、精神衛生相談員が百八十一、OT、PTが六十五、合計千九十六人、昭和五十七年度、第一次分として百四十七人の増員と聞いているのですが、その点どうなんですか。
  91. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先生のただいまの数字のとおりでございます。
  92. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それから保健婦の増員の点ですが、これは三千、三千、二千の合計八千人ということですね。それで、三千人は何か定員で、あとの三千人はパートで、あとの二千人は現行の保健所なり市町村からそちらの方に回すというふうに聞いているのですが、その中身はどうなっているのですか。
  93. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 三千人の新規につきましては、これは当然公務員として雇い上げていただく、こういうことでございます。あとの三千人につきましては、これは市町村の自由にお任せするわけでありまして、三千人をお雇いになる相当分についての補助金を確保する、こういう考え方をいたしております。
  94. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それで問題は、この中で新規に定数部分として三千人、これはそれなりにいいと思うのですが、退職した方を雇用するという、これはどういう雇用形態ですか。
  95. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 非常勤ということを考えております。
  96. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 非常勤、つまりパートですね、簡単に言うと。
  97. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 パートという意味がどういう意味かなにでございますが、必ずしもパートということではないというふうに考えております。
  98. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 まあパートであるか非常勤であるか言葉の違いだろうけれども、大体似たようなものだと思うのですが、先ほどから、市町村が重要な保健事業の主体であり、それを強化し軸にして、国民の老後の健康管理、ひいては全体の国民の健康を増進するのだという。こういう趣旨からいうと、その市町村の重要なヘルスの部分を担当する、これが三千何人がパートだということは、先ほどからの答弁の趣旨、意気込みからいうと問題じゃないかと思うのですが、ここはどうなんですか。
  99. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 確かに先生の御指摘のように、すべてそういうふうにするというのも一つの考え方でございますけれども、一方では、最近のいろいろな人員整理の非常にむずかしい点もございます。それからもう一つは、老人の方々の手当てが、先ほども申し上げましたように必ずしも病院における完全な看護というふうなものではなしに、老人の心やすい相談相手というふうな意味も含めまして、退職されました保健婦さん、看護婦さん、そういった方々の社会的経験、長年のそういった知識、経験というものを活用して、一度家庭にお入りになったわけでございますけれども、そういった方々が地域社会と密着されましてそういった老人の方々のケアに従事していただくということは、また別の意味で意味があるのではないだろうか、こういうような考え方で半分の三千人というのを雇い上げの費用といたしているわけでございます。
  100. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 地方の実情もありますし、いまの雇用状況もありますから、全然パートを否定するというわけじゃございませんけれども、いまのような全体の計画の中でパートがこのぐらいの比率を占めるということはやはり問題がある。これをゼロにしろということは実情に沿わないかもしれませんけれども、将来とも安定的に国の百年の施策としてやるのだとなれば、これはやはり正規の常用、常勤の保健婦をふやすというふうに考えるべきだと思うのです。この点をひとつ意見として申し述べておきます。  それから次に、ホームヘルパー、家庭奉仕員、これは計画としてはどうなっていますか。
  101. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 ホームヘルパーにつきましては、在宅福祉対策の中核とするために増員の計画をしているわけでございまして、五十七年度の予算要求におきましても大幅の増員要求をいたしております。先ほどから申し上げております保健婦さん方の御活動と相まちまして、連携を十分とって、寝たきり老人等に対しましてホームヘルパーの方々に御活動をしていただきたいというふうに考えているわけでございます。予算につきましては、増員の予算、それからまた派遣対象範囲の拡大等の予算要求をいたしております。
  102. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 その全体の五カ年の増員の人数、それから昭和五十七年度で予算要求した人数、この辺の内訳はどうなっていますか。
  103. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 昭和六十一年度に二万一千八百七十九人の増員ということを考えておりまして、当面五十七年度で四千三百七十七人の増員ということを考えております。
  104. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 第十九条だと思うのですが、「訪問指導」、その内容をどのように考えているかということなんですが、この訪問看護指導の体制について、たしか「保健婦その他の者」、こう書いてあるのですけれども、その他の者というのは具体的にどういう人を指しているのですか。
  105. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 看護婦等でございます。
  106. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうすると、ここで言うのは看護婦を指しているというふうに特定しているのですか。
  107. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 これはもちろん原則として保健婦ということを考えているわけでございます。
  108. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 いや、保健婦は法律に書いてありますから当然問題はないのですが、その他というのは看護婦というふうに特定の職種を考えているのですか。
  109. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 看護婦と保健婦の業務の問題については非常にむずかしい問題がございますが、訪問する活動につきましては、あるいは寝たきり老人等の看護につきましては、やはり看護婦さんにも活動していただくという考え方でいるわけでございます。
  110. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうすると、具体的に言いますと、問題は訪問指導の体制の問題ですね。そうすると、地域の事情なり老人の置かれている状況を考えますと、たとえば保健婦だけですべてが賄い切れるような問題でもないだろうと思うし、医療の相談員も必要だろうし、ホームヘルパーも必要でしょうし、看護婦も必要だろうと思うのです。それらが全体的にどういうチームワークをとって、そして全体的に保健事業全体の質を上げるかという、これが具体的になったときには地域では非常に重要な問題だと思うのです、ばらばらではなくて。  したがって、その辺の集団訪問体制とでも言うのかどうかわかりませんけれども、何かそういう横の連絡なり訪問の体制というのはどのように考えているのか、その点ひとつ。
  111. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 社会党の方からも御意見をお出しいただいておりますように、いろいろな職種がチームで十分なる活動をやるということは当然必要なことでございますが、当面いろいろマンパワーあるいはその他の条件等もございますし、今回の老人保健法案では保健婦の訪問指導、つまり保健指導を主として考えておりまして、その他の部分につきましては、状況によってこれをやっていく、逐次拡充していく、こういう考え方に立っているわけでございます。
  112. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 第五十四条ですか、市町村長は保健事業の対象者またはその扶養義務者からその費用の一部を徴収することができる、これは先ほど話があったのですが、この一部というのは大体どういう分野についてどの程度のことを想定しているのか。
  113. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 基本的にヘルス事業につきましては、先ほど申し上げましたように、国、都道府県、市町村で費用を持つわけでございますけれども、保健サービスを受ける機会を損なわない範囲におきましてやはり受益者の国民の方から一部負担をお願いする、こういう考え方に立っております。したがいまして、できるだけ無理のない範囲で原則として費用の一部の負担をお願いする、こういうことにしております。
  114. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 無理のない範囲というのは当然だと思うのです、無理のある範囲で徴収するなんてないのですから。無理ないというのは、総額で言うと大体どのぐらいの比率のことを考えているのですか。
  115. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 ヘルス事業と申しますのは、先ほどから申し上げておりますように、衛生教育、健康相談、健康教育等いろいろございます。そういった部門につきましては、もちろん無料というのは当然のことでございます。それは公的サービスでやるわけでございますけれども、たとえばがんの検診あるいは循環器の診断、こういったものにつきましてはやはり一部の負担をお願いするということで、検診事業につきましては三分の一程度の自己負担をお願いしたい、こういうふうに考えております。
  116. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 時間も迫りました。それで最後に厚生大臣に聞きますが、この老人保健法案の目的ですね、ここにもありますが、国民の自助と連帯の精神に基づき、国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、予防、治療、機能訓練に至る各種保健事業を総合的に行うとともに、以下ずっと書いてありますね。したがって、そのための費用云々は公平と言う。つまり、各種保健事業を総合的に行い、ヘルス、医療全体について国民の健康管理をする、こういう趣旨だと思うのですよ。したがって、もちろん老人を中心とした医療というか治療、これは必要なんですが、特にこの法案の重要な分野は各種保健事業を総合的に行う、とりわけ医療以外の保健事業、ここが非常に重要な分野だと思うのです。国民が非常に関心を持っておる部分だと思うので、先ほど担当の局長からいろいろ答弁はありましたけれども、厚生大臣としてこの部分の重要性は先ほど言われました。しかし具体的な施設なりマンパワーなり予算の裏づけ等を見ると、どのような形になっているか、まだはっきりしないのですよ。したがって、これは先の話ですから、これから逐次積み上げるという側面もあると思いますが、これは厚生大臣を中心とする各皆さんの意気込みといいますか、それから一つの計画立案の手腕といいますか、これに負うところがきわめて大きいと思うのです。  したがって、最後に厚生大臣のその辺に対する決意と意気込みとでもいいましょうか、そういうものを聞きたいと思います。
  117. 村山達雄

    ○村山国務大臣 委員御指摘のとおりに、医療以外のヘルスの方、むしろこの方が私は一番大事だと思っているわけでございまして、わが省ではその基盤整備あるいは必要な財政的措置については全力を挙げてまいりたいと思っております。ただ、これはかなり長期的な仕事になることはわかります。われわれは一生懸命やりますが、何より大事なことは、その地域の市町村長あるいは県の人たち、特にそこの住民の方によく理解していただいてどんどん積極的にアイデアを出していただき、またこのヘルスの事業に御協力願う、一緒になってやるんだ、私はこれが一番大事だと思っているのでございます。現に日本各地でその種の試みが行われておりまして、成功しているところを見ますと、本当にその地域の住民の人から、保健所も、また保健センター、市町村、非常な有機的連携をもってやっておる姿を見ているわけでございます。  その意味で私たちは何よりもやる気を全部起こす、これがこの仕事の成否を決定する一番大事なことであろうと思っておりまして、私たちも全力を挙げてやってまいる所存でございます。
  118. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 以上をもって質問を終わります。
  119. 湯川宏

    湯川委員長代理 本会議散会後直ちに再開することとし、この際休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後二時二十九分開議
  120. 山下徳夫

    山下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  老人保健法案に対する質疑を続行いたします。永井孝信君。
  121. 永井孝信

    永井委員 今回、厚生省老人保健法案の提案に当たりまして、その理念の中で健やかな長寿のためにこの法制化が必要であるということを言っているわけですね。この健やかなということがどうも言葉のとおりちょっとわかりにくいわけでありますが、現在のいわゆるお年寄りの医療の無料制度の適用を受けている七十歳以上の方々のたとえば有病率、病気を持っていらっしゃる方ですね、そうして現に治療を受けられている方々の数、これを大づかみでよろしいのでございますが、ちょっと初めにお聞きをしておきたいと思います。
  122. 竹中浩治

    ○竹中説明員 老人の有病率でございますが、毎年厚生省で国民健康調査を行っておりまして、それによります有病率でございます。この国民健康調査の場合、有病の定義でございますが、障害があるために何か治療を受けておる、あるいは治療は受けてないけれども、床につくかあるいは一日以上仕事を休んだというような場合に、この調査では有病という定義をいたしております。  この調査の結果、五十四年の調査結果によりますと、七十歳以上のお年寄り百人当たり約四十人、四十・一人が有病者であると報告されております。  それから治療を受けておられるお年寄りの割合でございますが、これもやはり厚生省が、毎年患者調査という調査を実施いたしております。この調査は、医療機関を対象にいたしまして、ある日一日、その調査日に医療機関に入院または通院しておられる方、こういう方の数を調べるわけでございますが、これも五十四年の調査によりますと、七十歳以上のお年寄り百人当たり約二十人、十九・七人の方が治療を受けておられるという数字になっております。
  123. 永井孝信

    永井委員 いまお答えいただきましたように、厚生省の調査ではざっと百人中四十人の方が病気を持っていらっしゃって、しかもその二分の一程度の方々がこの医療費の無料制度の中で治療を受けていらっしゃるわけですね。この実態の中で、健やかな長寿のためにと言われているわけでありますが、いろいろな理由があるのでしょう。いろいろな理由があるのだけれども、無料制度の中でも百人のうちざっと二十人程度しか実際に治療を受けていない、有病者の方々のざっと二分の一であるという実態からいって、これを、どんな理由があったにせよ一部有料化することによって、果たして健やかな老後のために治療を受けるお年寄りたちがふえるとお思いかどうか、これをひとつ聞かせてください。
  124. 竹中浩治

    ○竹中説明員 先ほどの御説明、ちょっと言葉の足りない点がございまして、大変恐縮でございますが、先ほど申しましたように、国民健康調査による有病率は百人中四十人、患者調査による受療率が百人中二十人ということでございます。この有病率に比べまして受療率が半分程度になっておるということでございますが、これは、実は先ほどちょっと申し上げましたように、患者調査の方は調査日一日、その日にまさに受診をした患者さんだけが勘定されておるわけでございます。したがって、調査日の前の日なり後の日なりに医療機関に行かれた方はカウントされていない。それに対しまして国民健康調査の有病率の方は、別にその日でなくても、そのときにお医者さんにかかっていたりあるいは薬をもらっていたりした人が全部有病ということでカウントされますので、そういう点でいまのような数字の差になったわけでございます。  なお、この国民健康調査でいま百人中四十人が有病だと申し上げましたけれども、この同じ調査の中で有病だと言われた四十人のうちどれくらいの方が病院なり診療所で治療を受けておられるか、同じ調査の中にございますけれども、それによりますと、その四十人の方のうち九三・三%、つまり有病者の九割以上、大部分の方が医療機関で治療を受けておられるという結果になっております。その点ちょっと先ほど説明を落としました。失礼いたしました。
  125. 永井孝信

    永井委員 もう一回お尋ねしますが、いろいろな調査の仕方あるいは時点の違い、そのために出てくる答えの数字に誤差が生じる。これはわからぬわけではありませんけれども、私の手元で調べた資料で見ましても、やはり病気になった方々全部が治療を受けられる状態にない。その受けることのできない理由というのは、いろいろな理由があるのでしょう。お医者さんに行くのはきらいだという人もいるだろうし、行きたくても動けないから、家庭でそのまま寝たきり老人になっていると言われるような人たちもいる。いろいろな方々がいらっしゃるけれども、現に無料制度が採用されている中でも、全部の人が治療を受けることができていない状態にある。だから、厚生省が言われるように健やかな老後を保障していくということからすると、どんな方法をとったにいたしましても、病気を持っている人たち全部が治療を受けられて、そして快適な老後生活ができるようにしていくということが本来の趣旨でなければいかぬ、こう私は思うわけですよ。  そこで私はお尋ねしているわけでありますが、有料化に持っていく、患者にも一部負担をしてもらう、この一部負担によっていまの七十歳以上の方々の受診率が上がるとお思いなるのか、下がるとお思いになるのか。それはこれからのことでありますから、下がったとか上がったとかという結論は言えませんけれども、厚生省はこの行政を推進していく上でどのように見ておられるか、推定で結構でございますからお答えください。
  126. 竹中浩治

    ○竹中説明員 今回お願いいたしております老人保健法の一部負担につきましては、私どもといたしまして無理のない範囲でお願いをしたいということでお願いをしておるわけでございます。私どもといたしましては、今回の一部負担によりまして必要な受診が妨げられる、大きく受診率が下がるというようなことはないと考えております。
  127. 永井孝信

    永井委員 これはあくまで推定のことでありますから、上がるか下がるか、結果を見てみないとわからないのでありますが、よく言われますね、医療の荒廃という言葉の中で、たとえば病院がお年寄りの人たちのサロン化しているとか、中傷誹謗的なことも入っておるのでありますが、そういうことがずいぶん世間の中で言われているわけですよ。そういう中で一部負担を本人がしなくてはいけないということになると、ちょっと診てもらいたいのだけれども行くのをやめようかということになるのが世間の常識じゃないでしょうか。私はそう考えるのですよ。  ですから、もしそういうことがお年寄りの人たちのいわゆる健やかな老後の生活のために、本来治療を受けなくてはいけないものの抑制の役割りを果たすことになったとしたら、これは厚生省の考えているような健やかな老後を保障していくという政策にそぐわないことになってくるのではないか、こう私はあえて申し上げざるを得ないと思うのでありますが、もう一言、この関係についてお考えをお聞きいたしたいと思います。
  128. 竹中浩治

    ○竹中説明員 先ほど申し上げましたように、今回考えております一部負担につきましては、もし過剰な受診があるとすれば、そういったものは御自制をいただく。しかし、必要な受診には妨げにならないようにということで、ごくわずかの一部負担をお願いすることを考えておるわけでございますので、私どもといたしましては、そういった面で大きな影響はない、受診率が下がるとか、あるいは必要な受診が妨げられるとかというようなことはないと考えております。
  129. 永井孝信

    永井委員 これはあくまで推定のことですから、そうでない、こうだということのやりとりをしておってもしようがありませんので、次に入りますけれども、現在の公費の負担制度昭和四十八年につくられたわけですね。この年は、私の記憶によりますと、政府は、とりわけ厚生省関係になるのでありましょうけれども、これを自画自賛して福祉元年ということを盛んに言いました。福祉元年という言葉は、公費負担制度が発足したことによって国民の中に一つの標語的な言葉まで生まれるような状態に広がっていったわけですね。その公費負担制度が、高齢者から見ると結果として一部負担ということによって後退させられることになる。このことについて、たとえば福祉元年に該当するような言葉ではどういう言葉を使えばいいでしょうか。ちょっと質問としてはおかしな質問かもしれませんけれども、この公費負担制度を発足されたときに政府福祉元年と言ったのですから、今度はこれが後退するときにどういうふうに読むのですか。
  130. 村山達雄

    ○村山国務大臣 新しい老人保健法を出すわけでございますが、私、今度の構想を見ておりまして、一言で申しますと中高年層健康促進法と申しますか、こういう言葉が一番いいんじゃないかと思うのでございます。
  131. 永井孝信

    永井委員 いま大臣が言われたようなことをそのように認知をするかしないかはこれからの厚生行政にかかっているわけでありますので、人が決めてくれることでありますから、その言葉どおりになるかならぬかこれから大変なことだと思いますが、私はそのことに関連をしてさらに問題を提起してみたいと思うのであります。  東京都を初めとしてたとえば京都、兵庫など幾つかの府県において、七十歳以前の段階から公費負担制度を取り入れているところがあるわけですね。たとえば私は兵庫の出身でありますが、兵庫県では六十五歳以上の方々についてはすべて無料とするという制度がかなり以前から発足をしているわけでありますが、これは福祉政策上からいって好ましいことなのか、すばらしいことなのか、あるいはそうでないのか、大臣ひとつお答えいただけますか。
  132. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いろいろな面から考えられるわけでございますが、少なくとも今度老人保健法が施行になりますと、このとおりになったといたしますと、七十歳以上の方々にも健康の自覚、あるいは行き過ぎがないようにということで無理のない範囲で負担をお願いすることになるわけでございます。そういうことから申しますと、そういう制度をひとつ御理解願いまして、なるべく国と整合性のある医療制度をとっていただきたい、こういうふうにわれわれは考えるわけでございます。
  133. 永井孝信

    永井委員 国と自治体の整合性を求めるということは非常にもっともらしく聞こえるのでありますが、社会保障制度をもっともっと発展させていこうとすれば、病気になった人が安心して治療を受けられるためには、本来病院なんというものは全部無料であってもいいと思うのですよ。それだけの余力が財政上あれば、全部無料であってもいいと思うのです。幾ら保険制度を取り入れて本人の負担を軽くすると言ってみても、長期療養すればそれだけ家庭の負担が非常に多くなってくる。これがたとえば病気を苦に一家心中なんという悲惨なことも起きている原因だし、あるいは金をかければ治ると思われる病気で、十分な治療が受けられなかったためにみすみす命を落とす例だってずいぶんあるわけですから、そうすると、国と自治体の整合性ということを幾らもっともらしく言ってみても、国がやっていることよりもよりすばらしいそういうことを自治体が創意工夫して行っていくということは、むしろ整合性云々以前の問題として、国の厚生行政の不十分さをさらに補充してもらっているわけでありますから、本来厚生大臣の立場からすればこれはすばらしいことだというふうに言って当然じゃないでしょうか。大臣どうですか。
  134. 村山達雄

    ○村山国務大臣 そのこと自体を見ますれば地方の単独事業でございますから、その部分をとらえてどうだとこうおっしゃればそれはいい面もあると思うわけでございます。しかしまた、制度全体というものも考えていただいて、その整合性あるいは緊急性、それらの点を考えて最も有効に地方の財源を使ってもらいたいものだ、こういう考えであります。
  135. 永井孝信

    永井委員 私はあえて申し上げるのでありますが、整合性ということも国の政策遂行上必要なことかもしれませんけれども、むしろ自治体が前向きに措置をしてきている。国民の立場からすればよい制度、こういうものは整合性を振りかざしてあえて後退させることのないように強く私は要望をしておきたいと思います。  そしてさらに、お年寄りの方たちの老人保健法案制定の問題に関していろいろな心配が寄せられてきているわけでありますが、たとえばある老人の叫びという中に、かつての無謀な戦争を行って戦火の中で国策遂行に骨身を削られて、そして戦後になって日本経済の復興、そして成長、これを文字どおり支えてきたのだ。これがいま七十歳以上の老人の置かれている、いままでの生きてきた人生の経緯である。そういう苦労をしてきた七十歳以上のわれわれに対して、一部負担を取り入れて十分な治療を安心して受けることができなくなってくるようなそういうことだけはせめて避けてほしい、こういうことを強く求めてきているわけです。これから高齢化社会を迎えるに当たって、七十歳以上という年齢からいくとどういう経験を持つ人であっても一緒だと思いますが、いませっかく公費負担制度ができて無料制度のもとに治療を受けている方々が、それが一部負担に変わってくる。その切りかえの現状に生きている人たちがとりわけ国策遂行上いろいろな人生の苦労をなめてきたということから考えると、余りにもむごい仕打ちじゃないのか。もちろん財政上のいろいろな問題は、すでに同僚委員からも午前中指摘されました。そのことも数字上の問題はあえて重複を避けて触れませんけれども、国政をつかさどっていく厚生行政の立場からいって、理念上今度のこの法案の提出ということは問題があるのではないかという気がしてならぬわけであります。  したがって、もっと別な角度から医療費の適正化はできないのか。その関係はどう検討されてこういう状態の法案を上程することになったのか、お答えをいただきたいと思います。
  136. 村山達雄

    ○村山国務大臣 現行制度と今度の制度の違いはおわかりのとおりでございまして、現在でも政管健保の一部負担がございますし、また公費、七十歳以上の老人の無料化につきましても所得制限があるわけであります。今度はそういうこと全体を取り払いましてすべての保険制度における七十歳以上の老人の方はすべて一律に扱う、こういう考えで出ているわけでございまして、一部負担を導入いたしましたのはおっしゃるような点も考え、確かに医療を必要とする人もできるだけかかりやすいように、そうかといってまた一般の世間で指摘されますように、言葉は少し悪いかもしれませんが、極端にいいますとサロン化がどうだとかいうような言葉もあるわけでありますので、その辺の軽重を考えまして、そしてかかった実費のごく一部をひとつお願いしたらどうか。それによって受診率が下がるというようなことがないように考えているわけでございます。  先ほど政府委員からも答弁しましたように、百人のうち四十人、そのうちお医者にかかっている方が九三%ぐらいだと思っております。そのほか売薬、あんま、はり・きゅう入れますと全然放置しておる病人の方は〇・九%、こういうことでございます。したがって、今度お願いしたことによって受診率が下がるかどうか。それからまた同時に、いま御指摘のサロン化というような問題につきましてはやはり中間施設というものを整備していく必要があるであろうし、両々相まって目的を達成するのじゃないかと思います。  それから、第二点の、しかし適正化についてはどう考えているのか、これは非常に重要な問題でございまして、やはり健やかな老人をどんどんつくっていただき、それによって本人並びに家族の幸せと、それから日本社会全体が長い目で見て医療資源を有効にうまく使っていくという観点に立ちましては、もとより従来からいろいろな工夫をしているわけでございまして、一つは診療費の点数の組み方あるいは薬価基準の算定の仕方、それからまた同時に医師と患者の信頼関係は私は一番大事だと思うのでございまして、いやしくも言ってみれば指導者階級にあります診療機関が、一部とはいいながら過剰診療であるとかあるいはやったこともない診療の費用を請求するというようなこと、これは断じて許されぬところでございます。そういう意味で、信頼関係を保つためにもこの点の審査、監査、調査、医療費の通知、こういったことを通じましてこの違反があった場合には必ず確かめる、そして厳正な措置をしていくということが必要でございましょうし、同時にまた、今度提案されました老人についての疾病の特異性からいいまして現在の出来高払い制だけでいいのか、あるいはほかにもっと工夫をして外国でもやっておりますようなことを日本でもなじむかなじまないか、その一部が取り入れられるかどうか、こういった点もひとつ検討に値する問題ではないであろうか。  いずれにいたしましても、それらの問題を総合的に推進することによりまして医療費、医療資源の適正化、それによりまして同時に最終的には中高年層の健康を増進したい、かように思って提案を申し上げておるわけでございます。
  137. 永井孝信

    永井委員 いま大臣の言われたことは私は非常に大切なことだと思うのでありますが、行革の第一次答申、この中にもこの医療費の適正化という問題が提起をされているわけですね。いま大臣の御答弁を聞いておりますと、行革が答申をしたこの医療費の適正化という問題について、短い時間でありますから無理もないと思いますが、すっとなでるように言われたのでありますが、私はむしろこの老人保健法案なるものを審議する前提の段階でこの問題にきちっとした整理ができて初めて新しい制度を取り入れることができると思うのですよ。あえて、くどいようでありますがその関係を申し上げてみますと、この「医療費の適正化」と指摘されている中の二項から五項、一つはいま言われたように薬価調査の問題、薬価基準ですね。二つ目には医療費の不正請求の問題、三つ目には高額医療機器の問題、五つ目にい一番われわれも問題にしている現行医療費支払い方式の問題点、いわゆる出来高払いの問題、この五つについていますっと厚生大臣の方で総体的な見解が述べられたわけでありますけれども、私はこれにもつともっと深いところまでメスを入れた議論というものが国会の場でなされていって、なるほど国民から見て医療問題について厚生省のやること、政府のやることについては信頼ができるということが確認をされて初めて、次の段階に入ることができると思うのです。  そこで、私は重ねてお聞きをするわけでありますが、去年の十一月二十八日に、例の健康保険法の改正案が臨時国会で成立したあのときでありますが、厚生省として、行革で指摘をされてきたような問題がすでにいままでずっと何回も何回も議論になってきておるわけでありますので、医療費適正化対策ということで発表されたわけです。これをあえてもう一回項目だけ申し上げますと、一つは医療費適正化のために指導監査の強化、二つ目には審査の充実、改善、三つ目には薬価基準の適正化、四つ目には検査の適正化、乱診乱療のもとですね、検査づけ、薬づけですから、検査の適正化、六つ目に医療費の通知の充実、七、その他と、こういうふうに七項目にわたって厚生省が発表したわけですね。  同じように去年の第九十二国会健康保険法の改正を取り扱ったときに、最終的に参議院の側で最後の場面で実は一つ一つ確認行為が行われているわけです。ここにもその資料を持っているわけでありますが、たとえばこの中に、一つの例で申し上げますと、出来高払いの問題についても当時の園田厚生大臣は、「診療報酬支払い方式について、登録人頭払い、あるいは国民医療費の一定率を限度とする総額請負方式などよく研究してみたい」このように実は答弁をされているわけです。これは一つの事例として私は申しているのでありますが、そう考えていくと、去年のこういう確認答弁がなされておって、そうしてそれを受けて、それまでわが党がいろいろ提言をしてきたことを受けてこの七項目の発表になったと思うのです。  まず、この七項目を発表した当時の厚生行政、その最高責任者であった園田さんからいまこの問題が議論をされているこの国会では大臣がかわられたわけでありますので、大臣としてまず初めに、当時こういういろいろなやりとりがあったこと、そうして、私いろいろな問題をいまから提起するわけでありますが、それに関連をしますのであえてお聞きいたしますが、園田厚生大臣の厚生行政に対する基本的な態度といいますか方針といいますか、それは当然のこととしていまの大臣が受け継がれていると思うのでありますが、そのことの問題と七項目の関係でその後どのように具体的に処理をされてきたか、お答えをいただきたいと思います。
  138. 村山達雄

    ○村山国務大臣 大きく言いまして支払い方式の問題、それから医療費あるいは薬価基準そのものの適正化の問題、それから過剰診療あるいは不正請求等に対するいろいろな審査、監査、指導、それから措置の問題、大きく言って三つあると思うのであります。  出来高払い制度につきましては、やはり問題意識として園田厚生大臣と同じような意識を持っておるわけでございます。諸外国にいろいろな制度があることも承知しております。そして、わが国の制度と比べますと一長一短あるわけでございます。また、わが国にそのままなじむかどうか、あるいはそれをわが国に適するようにするにはどうしたらいいかという問題もあるわけでございます。そういう問題を、今度この法案ができますと、老人保健審議会でわれわれもたたき台を出しまして御討議願いたい、そしてその長所をとり短所を捨てて何らかの制度が取り入れられるならばそのようにしたいと考えているわけでございます。  それから第二の問題の点数の改正あるいは薬価基準の問題でございますが、これはやはり技術を重んじて物の売買ではないのだということが中心でございまして、六月一日の診療費の改定に際しまして御案内のような改正をいたしました。薬価基準は一八・六%下げたわけでございまして、医療費ベースでいいますと六・一下がったわけでございます。それから医療費そのものにつきましても物と技術の分離ということで技術料を非常に重く見まして、人工透析に代表されますようなものあるいはその後におきます血液の自動分析というようなことがどんどん進んでおりますので、それはずっと点数を下げていくというような形で、全体として二%前後の引き上げにとどめたということは御承知のとおりでございます。  さらにその問題も進めていくために、今後薬価調査は年に一回必ず実施する、そしてまた薬価調査のやり方あるいは薬価基準そのものの算定方式もいま中医協にお願いいたしているわけでございまして、その実勢調査と薬価基準の算定方式、この両方相まちまして医療費の適正化、医療資源の効率的使用ということを目指しているわけでございます。  一部不当な請求をする者に対する手当てといたしましては、何といっても出発は審査から始まるわけでございます。したがいまして、審査の職員それから審査の専門委員をかなり増強させていただきました。  そしてなお、これはコンピューター化ができはしないかと実は考えているわけでございます。少し異常な申請があった場合にはコンピューターですぐこれはおかしいといってチェックするシステムをいま考えているわけでございまして、五十七年度から試行的に、トライアルに一部やってみたい、最終的には五十九年度までにこの問題を完成させたい、このようにいま予算措置を進め、すでにドイツにも参りまして向こうのやり方も勉強してまいりました。そしてまた部内でも、いろいろな研究機関と共同でいかなるプログラムを組むかということをいま検討中であるわけでございます。  また、監査、指導の問題につきましては、再々都道府県あるいは市町村等に対しまして協力方をお願いいたしまして、漸次その成果は上がりつつあると思います。  特にその中におきまして重要だと私が思いますのは、やはり医療費の通知という制度、これは直接的な一つの物証になるわけでございますので、これをぜひ励行していただきたいと思うのでございます。現在の施行状況を見ておりますと、まだその施行状況が不十分あるいはやっていないという市町村もあるようでございます。やはり自分のところの医療費の適正化につながる問題でありますので、どうかひとつ市町村その他保険者の、この通知制度を人ごとと思わないで、本当に国の将来にとって非常に大事だということでやっていただきたいと思っているのでございます。組合健保あたりになりますと非常に熱心にやっておられるのでございますが、やはり地域でございますと、ついいろいろな関係でその感触は薄いように思うのでございますが、これはやはり自分の問題だ、自分のところの住民の問題だ、こういうふうに考えてぜひ励行してもらいたいと思っております。  それからなお、高額医療機器の共同使用等につきましても、地域のオープン病院、医師会を中心としたようなところでいま盛んに進めているところでございます。  これらあらゆる施策を通じまして、医療の問題が大事であるだけにむだを省いていく、そうして国民の信頼を博していく、これが最も大事なポイントであろうと思って現在進めつつあるところでございます。
  139. 永井孝信

    永井委員 大臣に御答弁いただいたのでありますが、厚生省が去年発表した七項目を具体的に実施をしてきつつあるという御答弁でありますけれども、そういう過程で、失礼でありますけれども、あえて二番せんじ三番せんじと言っていいような中身の問題が臨調から答申をされる。本来、厚生行政がどんどんそれを前へ進めておれば、あえてここで臨調の中で同じような項目について、政府のしりをたたくというようなことにならなかったと思うのでありますけれども、遅々として進まないから二番せんじ三番せんじのそういう問題が提起をされてきたと私は思うのです。  そこで、これから進めていく厚生行政、いま幾つか言われました。七項目の問題について言えば、薬価基準の問題もある、不正請求を防ぐ問題もある、あるいは高額医療機器の問題もある、通知制度もある。これらをやるに当たって日本医師会の協力が絶対的に必要だと私は思うのでありますが、それは一言で言ってどうでありましょう。
  140. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これは何よりも医療機関の自覚が一番大事でございます。それは医師会のみならず、病院側においても同様でございますし、病院と申しましても私立病院から国立病院、みんなあるわけでございますが、この診療側の自覚という問題が何より大切だと思います。いかにこれを追っかけ回してみましても、これは役人だけふやすことになるわけでございますので、基本的にやはり信頼関係、そしてまた診療側の高度の自覚、これをお互いに育てていく。育てるなんと言うと生意気千万でございますが、私は当然のことだと思うのでございます。この信頼関係をいかにして確立していくか、そしてそういうことでお互いにむだな——むだと言ってはなんでございますけれども、なくてもいい監査制度をしくようなことはだんだん少なくなっていけばいいと思っておるのでございます。  幸いにいたしまして、最近の医療費の伸びを見ておりますと、かなり顕著に、伸び率が平準化しておると申しましょうか、私はずっと統計を見ておりまして非常にうれしく思っておるわけでございますが、なおむだがないとは言い切れないわけでございますので、この辺は念には念を入れまして国民の信頼を博したいものである、われわれはかように考えております。
  141. 永井孝信

    永井委員 そこで私はお聞きをするのですが、きょう午前中、私の同僚の佐藤議員からいろいろな問題が質問として出されました。例の医師会における理事会議事録も引用されて、いろいろな問題が提示をされました。佐藤議員が引用されました問題と同じものを私は引用するつもりはありませんけれども、しかし私は、きょうの午前中の大臣とのやりとり、審議官とのやりとりを聞いておって、片一方はこういうことを書いている、片一方はそんな事実はない、こう言っておられるわけですね。国会で大臣が政府を代表して答弁されているんだからそれ以上信頼するものはないじゃないかという言葉も聞きました。私は大臣のその言葉を信頼したいのです。政府を代表されているんですから、私は信頼したいと思います。しかし、大臣が言われておるように、あるいは審議官が言われておるようにそういう事実がない前提に立てば、日本医師会理事会の中でこうこういうふうに厚生省とこうあった、あああったということが医師会長の方から、最も協力関係になくてはいけない医師会長の方からそういうことの経過が発表されて、それが資料として全国に市販もされている。私もきょう手元に抜粋のコピーをとってきたんですけれども、そうなると、大臣の言葉をかりれば日本医師会長は大のうそつきということになりますね、どうですか。それを一言答えてください。
  142. 村山達雄

    ○村山国務大臣 新聞にいたしましても週刊誌でありましても、いろいろなニュースが入って、それぞれの見込みに従って、考えに従っていろいろな報道をしている事実は知っております。しかし、情報社会でございますので、私たちはそれを一々どれが確かであるかというようなことを言っているわけではございません。ただ責任ある者がそれはそういうことではないんだということを言っておりますので、どうぞひとつ御信用賜りたいと思うわけでございます。  私は医師会がどういう根拠に基づいて言っているのか、それはわかりません。したがって、うそつきであるとかなんとかということを断定する立場にはございません。
  143. 永井孝信

    永井委員 大臣がそんなことはない、こう言うためにいろいろな御答弁をされるわけでありますが、大臣やあるいは審議官あるいは厚生省の幹部が、医師会とそういうことの問題についてやりとりをした覚えがないのに、いわば世の中のレベルから言えばこのお医者さんというのは非常に高い教養を持った方々でありますので、それだけに医師会長がないことをそういうことでどんどん医師会の中へ流していって、いわば厚生省に対して不信感を医師会自体の中に持たしていく、こういうことになっていくとすると、厚生省と医師会あるいは保険医団体との協調関係というものは私は損なわれていくと思うのですよ。そのことを私はまず心配しているんです。大臣がうそをついているとばかり言ってないんです。大臣の言うことは、それは天下の大臣なんだから本当のことを言っているんでしょう。私はそれは信頼しますよ。だから、国会で答弁されることはいいのでありますが、しかしそういう厚生行政と切っても切り離せない関係にある医師団体のトップがそういうことを言うことについて、単に国会で大臣が答弁されただけで放置しておくことが、果たして今後の医療行政を円滑にやっていくことになるんだろうかと私は疑問を持つわけですよ。  そうしますと、私が言っているように、事実でないことを医師会長が言ったとすると、これはうそをついたことは事実なんですから、うそをついたことになるのですから、そうしますと、うそつきであってもそれを断定することはできない、ここで言うべきでないということではなくて、少なくともそういう医師会のトップに立つ人のやるべきことではない、そのことによって医療行政が損なわれてはならないという立場からすると、国会の答弁を信用する、信用しないという問題ではなくて、次元の違う問題として厚生省は何らかの手を打つべきではないか、私はこう思うのですが、どうでございましょうか。
  144. 村山達雄

    ○村山国務大臣 私がないと言っているのでございますので、ないのでございます。  よくありますが、新聞でもいろいろな報道があるわけでございます。その報道の取材源がどこにあるかわかりません。しかし、そうかといって、その新聞の記事を差しとめるとか、それからうそを言ったじゃないかとか、そういうことを一々言うことはかえって信頼関係でどうであろうか。今日の全体の社会を見たときに、やはり事実は自然に明らかになるわけでございますので、いま私がそういうことはないということを国会の場で言っているわけでございますので、皆さんそれで御信用いただけるでしょうし、またそれをもって足りるのではないだろうか、私はかように考えております。
  145. 永井孝信

    永井委員 くどいようですが、この問題、私は医療行政を進めていく上で非常に心配するんで、審議官も聞いておいてほしいんですけれども、出てきておる名前ではあなたは当事者だから。心配するんで私は申し上げるのですが、たとえばきょう佐藤議員が引用しなかったところで私はちょっと申し上げたいと思うのであります。それが事実あったかどうかということをここで確かめるという意味よりも、こういうことが出ているということで私は申し上げるのであります。  いま大臣が言われたように、薬価基準の問題に例をとりますと、昨年の九十三国会から九十四国会にかけてずいぶんこの社労でも議論がありました。そして当時の園田厚生大臣がこの薬価基準の改定をいたしますという言明をされて、六月でしたか、一八・六%でしたかね、薬価基準の引き下げを行いましたね。それはそれなりに国会の議論を通して大臣が約束したことをやってくれたんだから、私はそれでよかったと自分で思っているんですよ。ところがその問題までとらえて、この第七回の理事会、これは佐藤議員も言われておりましたけれども、日にちを言いますと十月の二十日であります。今月の二十日ですね。この第七回の日本医師会理事会で、武見会長が経過を報告しておるわけです。その経過の中にこう言っておるわけですね。「この前の薬価の切り下げのときに、一応の薬価の切り下げは厚生省で決めましたけれども、大蔵省がどうしてももっと薬価の切り下げをしろというので、ひどくねばりました。厚生省は非常に困惑をいたしまして、私にどうしようかという相談に来たわけであります。」こう言っておるわけです。向こうの、武見会長の言い分から言うと、厚生省が相談に行ったことになっているわけです。  「そして、ここで放り出してしまって決戦態勢に入るかどうかということの段階になりましたときに、私が、江戸のかたきを長崎で討たれる恐れがあるから、そういう態度は官庁同士でやるべきではないということを主張いたしました。そして、そのときやった手口というのは、」「やった手口」ここが大事ですよ。「やった手口というのは、お医者さんがほとんど使ってない薬で、」ちょっと注釈を加えますと、薬づけ、検査づけというのがずいぶん問題になりました。薬でもうかるからお医者がどんどん薬を出し過ぎるという世間の批判、これがこの国会で問題になったんです。ところがここで言っていることは、「お医者さんがほとんど使ってない薬で、下げてもちっとも痛痒を感じない薬を各社から選んでもらいまして、それを下げたことによって大蔵省を納得させたという、これは隠れた事実であります」 こう武見会長説明をしておるわけですよ。  私は薬価基準の引き下げ問題がこれだけ社会労働委員会で問題になって、そして園田厚生大臣が当時決断をして薬価基準を下げた。大臣の言い分で言うと、これも関知しないというのでありましょうけれども、協力関係でなければならない医師会の理事会でトップが堂々とそういう説明をするということは、これはもし言われているようにそういう事実がないとするなら、医師会が余りにも政治をもてあそび過ぎはしませんか。厚生行政をばかにしていることではありませんか。大臣、あなたがなめられておるのですよ、そういうことを勝手に言わせるということは。私はこのことがこれからの医療行政にとってきわめて大事なことだと思いますから、あえて申し上げておるわけです。  まだずっとさわりの部分を申し上げますと、「三年間薬価の引き下げをやらせませんでした。」  「やらせませんでした。」ですよ。厚生省がやらなかったんじゃなくて、医師会がやらせませんでした。「私がやらせなかったということは、薬価の中に含まれております費用が医師の実質所得として計算されている事実をこちらは十分に知っておりますから、」こう言っておるわけです。  厚生省が幾ら国民のためを考えて医療行政を進める、今度の老人保健法だってそうですよ、健やかな老後のためといって理念を掲げてやっておられる、いろいろなことをやるんだけれども、その医療に携わる医師会の側から見ると、せっかく厚生省が薬価基準を引き下げても、それは全く影響のないそういうものをわざわざ選んでもらって下げて納得させたんだ。三年間薬価引き下げができなかった。これは厚生省がやらなかったんじゃなくて、この言葉で言うと、医師会の会長が、「私がやらせなかった」と言っている。こういうことが単に国会の答弁だけで、大臣がそんな事実はありませんということだけで済みますか。  厚生省が医師会と無関係に医療行政をやる、あるいはお年寄りの健やかな老後のための医療を続けていこう、こういうことを言われたとしても、医師会との協力関係がなかったらできないわけでしょう。だから私は申し上げておるのです。単にそういう事実はなかったということだけでなくて、こういうことが堂々と理事会の中で言われていることに対して、政府はやはり何らかの措置をとるべきではないのか。私はこれは単に野党の立場から言っているんじゃないんですよ。これは与野党を問わずです。国会が冒涜をされ、厚生大臣、あなたがなめられ、あなたがなめられておるということは一国の総理がなめられたことになるんだから、ここはひとつきちっとした答えをしてください。
  146. 村山達雄

    ○村山国務大臣 まあ一つの物事が実現するまでには、関係者の方がいろいろな意見を持っておると私は思うのでございます。そしてまたそういういろいろな意見を吸い上げまして、そして一つの事実が貫徹していくのではないかと思うわけでございます。一つの事実が変わったときに、それは自分のせいである、あるいは変わらないのは自分のせいである、こういうことはよくありがちなことでございます。私たちも国会議員になっておりますと、公共事業をその地域に一つ持ってくる。そうすると、各議員さんはみんなおれがやったやった、こう言うのでございます。私はそれは否定しないのでございます。その議員さんはそれなりにみんな努力をしていると思うのでございます。  しかし、一つの事実ができますときにはそれらのものを集約いたしまして、そして責任ある当局が立案をし、そしてそれぞれの手続を経、最終的には国会審議を経て決まるわけでございます。したがいまして、それぞれの人がどれだけの自負を持っておられるか、それはその人々の考え方だと私は思いますが、一人の人の意見あるいは一部の人の意見で決まるような事柄ではない。やはりこの国会における議論というようなものが中心になりまして、そしてそれが大きな世論の形成につながり、そしてまた関係者がそれぞれ自分の立場で努力もし、あるいは少しは宣伝もあるかもしれませんけれども、そういうことの中で事実がだんだんよくなっていくんじゃないだろうか、そういうふうに考えるわけでございまして、人がどう言ったかということよりも事実がよくなることを望んでおるものでございます。
  147. 永井孝信

    永井委員 このことばかりで時間をとるわけにいきませんので、繰り返して余りやれないわけでありますけれども、大臣が言われているように人がどう言おうと事実は自然にわかってくるんだ、そんな悠長なことじゃないと私は思っているのですよ。私はさっきも言いましたけれども、何も野党の立場から大臣をいじめようとかあるいは厚生省をいじめてやろうと思って言っているわけじゃないのですよ。いろいろな行政とそれぞれの社会に存在するいろいろな団体、個人、いろいろな関係とこの政治というものはお互いが協力し合って進めていかなければいかぬわけでありますが、とりわけ厚生行政というのは、医師会や保険医の団体の方々を抜きにして医療行政というものは成り立たないわけですから、だから私は冒頭にお聞きしたわけです、医師会の協力が絶対必要ですねと。大臣はそのことは当然のこととして認めていらっしゃるわけです。  絶対協力してもらわなければいかぬその相手側がこういう態度をとったり、あるいはこういうことが事実でないとするならば、その事実でないことを医師会に加盟していらっしゃるお医者さん方にこの議事録を通して、この議事録は加盟会員の方々に全部配られているわけでありますから、そういうことを通して政府と医師会の関係にいわば亀裂を起こさせる、そんな状態を放置しておいて老人保健法を制定してみたりいろいろなことをやってみたりしても、うまくいくんですか。老人保健法を制定することも大事だが、この種の問題はこういう関係にならないように、私は名前を挙げて恐縮でありますけれども、かつて、いまの大蔵大臣の渡辺さんが厚生大臣のときに医師会長とずいぶんチャンチャンバラバラありました。どちらが正しいか間違っているかは別にして、そういう状態になってくれば、困るのは患者さんであり、国民なんですよ。そこのところを政治の姿勢として大切にしてもらいたいということであえて私は執拗に言っているわけです。  いま、一部の人でありましょうけれども、不正請求とかいろいろなことで医師のモラルが問題になっています。もし医師会長がいま言われているように事実でないことを言っている、そういう議事録を流す、いわば、私の言葉で言えば、うそをついている、大うそつきだということになりますと、トップがそんな状態で医師のモラルが確立できますか。単に厚生省と医師会の関係じゃなくて、必ずその影響を受けるのが患者さんであり国民全般であるから私はこのことをあえて執拗に申し上げておりますので、そのことをひとつ大臣としての立場から、くどくは要りませんが、もう一回答えてください。
  148. 村山達雄

    ○村山国務大臣 私は医師会なり診療側の協力を得るということは絶対に必要だと思っております。  それから第二番目に、自分のやったことについてどういう評価をするか、これは人によって非常に違うと思うのでございます。それを一々われわれが自分で自己評価をして、おれは八十点とった、あるいは七十点とった、いやおまえは五十点じゃないかということを一々言う必要はないと私は思うのでございます。要するに、そういうことに左右されずに、そういう意見も聞きながら事実を前進させていく、これが一番大事なことであろう、私はかたくそう思っておるのでございます。  そして、むしろその方が全体の信頼関係を得る上に最終的には大きくプラスになるんじゃなかろうか。一言、一言取り上げて言う——人間というものは自分に対するいろいろな評価がありますし、またある程度自信を持ってもらうことも結構でございます。しかし、そういうものが全体として社会の中でどういうふうに消化され、それが実際の制度改正に移っていくか、やはりそれがいい方に移っていくということを望んでいるわけでございます。
  149. 永井孝信

    永井委員 時間がありませんから、これはこれ以上触れないことにいたしましょう。  しかし、大臣、一言だけ言っておきますが、委員会の質問に対して答弁をするときに、悪い言葉で言えば、歯車がかみ合わないままうまくすり抜けたらいいというものではないと私は思うのですよ。だから、厚生省がこの問題を本当に深刻に受けとめて対応してもらうことをあえて私はここで申し上げたい。どうも大臣の答弁はほかへほかへ問題を持っていってしまって、私の言っていることの意味をわかっておりながら言っているんじゃないかという気がするんです。だから、あえてそれを申し上げておきます。これはこれ以上触れません。  そこで、私は次に入りますが、いま私が取り上げようとしておるのは、この医療の荒廃という問題が正されないと老人保健法をつくってみても魂が入らないということになることを心配するから私は言うのでありますが、たとえば、大臣がずっと七項目にわたって答えられた中の項目の中身、進展度合い、これは事前に厚生省の担当の方々に私はお願いいたしまして、どういうことがやられたのかということをここにメモしていただきました。これは厚生省のメモであります。その中に、いま医療行政を監督する立場にあるだけに、指導監査の強化という問題について、言えば大臣として毅然たる態度で当たっていこうということが私の質問に対して述べられました。  この中を見てみますと、いろいろな問題があるんですが、たとえば「指導監査体制の強化を図っている」ということで医療指導監査官の増員を二人行っていますね。二人だから十分なことはできないですけれども、去年よりも二人。一昨年から比べると、一昨年が二人ですから、二人が四人になり四人が六人と、着実にふやしてきていることは私も認めます。医療専門員、これは非常勤でありますがゼロであったものが十人。そして医療事務指導官の増員、これが三十三人であったものが五十二人。国保指導監査専門医の方が、非常勤でありますがゼロ人から十四人になったわけですね。これは間違いございませんね。
  150. 大和田潔

    ○大和田政府委員 間違いございません。
  151. 永井孝信

    永井委員 そうしますと、この指導監査の人をふやすということと、実際問題としてその指導監査に当たる人たちが自分の職務を完全に全うするということが当然のこととしてつながっておらなければいかぬわけですね。これはちょっと後で触れますけれども、むしろこの指導監査官が完全に職務を全うできるようにすることがまず何よりも肝要でありまして、そうだとすると、いままでの経過の中でこの種の問題で疑惑を持たれたりというようなことがあったとするなら、これはまずそこから正していかなければいかぬということになりますね。この関係が一つ問題があります。  もう一つは、そういうことで指導監査をやってきたんだけれども不正が発生してしまった。そのために取り消し処分の件数が五十五年度で保険医療機関で三十四件、保険医で三十九件、こうメモがされておりますが、これは数字間違いございませんか。
  152. 大和田潔

    ○大和田政府委員 間違いございません。
  153. 永井孝信

    永井委員 そうしますと、まずこの取り消し処分の関係からちょっと問題提起してみたいと思うのでありますけれども、保険医の指定を取り消された場合、これはどういう条件で、たとえば期間的にはどういう期間で、言うならば再び保険医の指定がもらえるのか。いまの厚生省がとっている方針、これを簡単に言ってください。
  154. 大和田潔

    ○大和田政府委員 二年程度の期間というものを必要といたします。
  155. 永井孝信

    永井委員 保険医がもし不正を働いて取り消し処分になった場合に、保険局長は二年だと言われました。そうしますと、たとえばこの老人保健法案が制定されたとして、第二十八条では老人保健取扱機関について、都道府県知事に対して厚生省令で定めるところにより老人保健医療機関とならない旨を申し出たものを除いて、自動的に老人保健取扱機関となっていくわけですね。あるいは二十九条に同じ趣旨で保健医の取り扱いが示されていますね。  そうしますと、保険局長に聞くのでありますが、いままで問題になりました医療機関がずいぶんありました。たとえば齋藤元厚生大臣を辞任に追い込んだ芙蓉会富士見病院事件あるいは京都十全会系の病院、あるいは兵庫県の近藤病院、その他にも新聞をにぎわしたところはずいぶんあるわけであります。そういうところが保険医指定を取り消されたとして、取り消されているのでありますが、兵庫県の場合は裁判で争っているようでありますけれども、保険医を取り消されて、二年たったらいわば自動的に、本人あるいはその機関が申し出ない限り老人保健取扱機関になっていくわけですね。二年たったら保険医として再指定がされたとしますね、そうしますと、そこが都道府県知事に対して老人保健医療機関とならない旨を申し出ない限り、自動的に老人保健取扱機関あるいは取り扱いの保険医として指定されていくわけですね。これはどうですか。
  156. 大和田潔

    ○大和田政府委員 保険医療機関の指定というのは自動的ではございませんで、保険医療機関としての再指定の申請をやるということになるわけでございまして、その結果保険医療機関に再指定をされるという行為が一つある。再指定されましたらこの老人の指定医療機関としてスタートしていく、こういうようなかっこうになるわけでございます。
  157. 永井孝信

    永井委員 もちろん二年たって保険医に指定されるときはそういう手続が要るのでしょう。私が申し上げているのは、二年たって一定の手続が行われて保険医に指定された場合、今度は本人が、あるいはその機関が申し出ない限り、いま審議されているこの老人保健法のたてまえからいって、二十八条、二十九条からいきますと老人保健の取扱機関あるいは取り扱いの保険医になるのですねということを聞いているのです。
  158. 吉原健二

    吉原政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  159. 永井孝信

    永井委員 この保険医を取り消されたというところが保険医の再指定を受けるときに厚生省は当然いろいろな行政指導をされるんだと私は思いますけれども、少なくともそういう疑惑を持たれたり、そういう問題を起こしたところが二度と起こさないということの保証がどうやってできるかということによって、国民の医療に対する信頼を取り戻す道になるわけですね。これは端的に言ってどういうふうにされるのですか。
  160. 大和田潔

    ○大和田政府委員 それは私どもといたしましてはいわゆる監査以外に指導というものをやっておるわけですね。御承知のように指導は実は年々強化しておるわけです。この指導によりまして、そういった何と申しますか不正行為を行わない、正当な行為を行うような医療機関にするような指導を強力に行っていくというふうに考えておるわけであります。
  161. 永井孝信

    永井委員 そこで私は具体的な問題をちょっと聞いてみたいと思うのでありますが、まず私の地元にあります近藤病院の問題であります。  すでにいままで国会でも取り上げられたこともあるのですが、警察庁の方、見えていますね。  これは昭和五十五年の九月に大阪国税局が巨額の脱税容疑で神戸市北区有野町、私立近藤病院を査察した。これを受けて神戸地検が五十六年二月十二日に所得税違反の疑いで病院長を逮捕した。五十二年から三年間に十一億七千万円の脱税容疑が明らかになって起訴がされた。さらに地検の追及の中で、同病院と兵庫県国民健康保険団体連合会の幹部職員が共謀して三年間に三億一千万円もの水増し請求がされておって不正に受領しているということが明らかになってきた。しかもそのやり口は、三百枚以上の未審査のレセプトを審査済みの中に差し込んでしまった。きわめて計画的で悪質な行為だ。マスコミでもずいぶんそう騒がれました。その後さらに、兵庫県社会保険診療報酬基金事務所からも高額のレセプトの差し込み工作で、これまでに三年間に七億という診療報酬をだまし取った疑いもいま出てきている。  この事件の特徴は、近藤病院側が国保連や支払基金の職員などに賄賂攻勢をかけ、社会保険専任審査委員の医師など数人に顧問料まで払って、しかもその審査委員に夫人同伴で三泊四日の香港旅行、六十万円だと言われているのでありますが、招待をやっていた。大体このように新聞報道などでは言われているわけでありますが、これは地検ですから法務省ですか、この事件の概要は大体以上のとおりですか。
  162. 飛田清弘

    ○飛田説明員 お尋ねの事件についておっしゃった中には、報道だけによるものもございますし、起訴状によってもう一般に明らかになったこともございます。起訴状によって一般に明らかになった部分につきましてはこの場で答弁ができるわけでございますけれども、まだ一般に明らかになっていなくて報道された部分につきましては、これから検察官が公判で立証いたす内容にわたるところでございますので、直ちにいまおっしゃられたことがすべて事実かどうかということはお答えいたしかねますけれども、近藤病院の元院長の近藤直被告人らがいまおっしゃったような診療報酬請求書の審査及び支払い事務を取り扱う兵庫県国民健康保険団体連合会の職員と意を通じまして、審査を受けないで診療報酬を不正に受給していたという詐欺の事実で起訴されていることば、そのとおり間違いございません。
  163. 永井孝信

    永井委員 捜査の段階で支障になるようなことをなかなか御答弁できない、これは私も理解いたしますので、その中身を全部広げて言ってくれということまでは言いません。しかし私は、地検が捜査に入って逮捕者が出た、五人でしたか逮捕者が出て、そして容疑事実を検察庁として固めて起訴をされた。これはどう言ってみても一事が万事だということで、全国のそういう病院経営者あるいは医師が正義であったとしても、そういう一つのことが出てくると大臣、これは大変なんですね、医療行政に対する不信感が噴き出てくるわけですよ。  だから、その関係で私はさらに申し上げてみたいと思うのでありますが、その事件がこれからどう発展していくかということはその筋にお任せするとして、最前申し上げましたように、たとえばそういう不正が起きないように、医療指導監査官を増員したり医療専門員を新たに採用したり医療事務指導官の増員を行ったり、あるいは指導監査専門医を新たに措置したりしているのでありますが、もちろん、この事件の中身を全部ここで明らかにせいということは、法務省が言っておるようになかなかできないことでありますけれども、しかしそのことが結果として、もしそういう審査体制に不十分さがあったためにそうなっておったとするならこれは大変なことなんですね。だから、そのための要員をふやすということだけではなくて、その人たちが間違いなく正義の立場に立ってできるような、そのことの指導をすることがまず肝要ではないか、このことを非常に私は重視をしておるわけですよ。  このことについては、保険局長いかがでございましょうか。
  164. 大和田潔

    ○大和田政府委員 おっしゃるとおりであります。先ほどの事件が起こりましたときに、直ちに私ども保険局長名をもちまして各都道府県知事に対しまして、綱紀の粛正につきまして強い通知を出したわけでございます。全くおっしゃるように、こういったような事件が起こりますと行政に対する不信感というものをぬぐい去れなくなるということが非常に困ることでございます。私どもといたしましては、今後とも各機関を十分指導してまいりたい、このように思っております。
  165. 永井孝信

    永井委員 私の地元へ行きますと、私の住んでいるすぐ近くに近藤病院が経営している老人ホーム、万亀園というのですがありまして、その万亀園の問題も一時疑惑を持たれてマスコミをにぎわしたことがあるのです。ですから、札つきということになってしまっているのでありますが、しかしそのことで、むしろ東京におって感じるよりも地元に行くとこの問題は大変なんですよ。永井さん何とかしてください、もっと正義を貫き通してくれという要望が、私のところへずいぶん来るのです。  そういうことから、いま保険局長が綱紀の粛正をやかましく言われたというのでありますけれども、たとえばこういうことが、名前は言えませんけれども、関係者から私のところへも提起をされてきているわけであります。それはどういうことかというと、このレセプトの審査に携わった人たちの中に逮捕された人もいるわけですから、それは名前を言ってもいいのでありますが、しかしわれわれから見ると、逮捕されるに至っていない、検察庁やあるいは警察から見ればこれはその容疑がなかったのかもしれません、それはわかりませんけれども、言われていることは、逮捕されたりあるいはもうすでに関係官庁において処分がされて本人が諭旨免職の形でやめた人もいます、名前は一々申し上げませんけれども。その人たちに上から命令ができる、権限上の問題じゃなくて実態的に命令ができるような立場にあった人が、関係者の間で非常に疑惑を持たれているわけですよ。これは新聞にもそういうことの記事が出ました。  その疑惑を持たれておる人は、もうすでに大分お年を召していらっしゃいまして七十九歳にもなっていらっしゃるのでありますが、これはもちろんお医者さんで、厚生省の技官であります。昭和二十三年以来厚生省の技官としてその仕事に携わってこられているわけですね。昭和二十三年だから、いま五十六年ですからまる三十三年たっているわけですね。三十三年間そういう職についておられるから、絶対的な権威者になってしまっておられるようですね。私はその人と直接いろいろやりとりをする機会はまだありませんけれども、いろいろ関係者から聞いてみると、絶対的な権威を持っておられるということになっている。この人がいまその疑惑を持たれておるというのは、たとえば社会保険あるいは国保の審査委員の選任に当たっては、これは二年に一度行われているのでありますが、そのときどきの県の医師会長などの方方とともに決定をしていく、事実上決定していくという重要な実権的なものを握っておられるとも言われておるのです。この人が直接容疑をかけられておるわけではありませんが、内部では一番悪いのではないかとさえ言われているのです。その人のためにうそであればいいのですが、そういうふうに言われておるのです。この疑惑のある人に対して、すでに関係者といいますか、保険医の方方とかそういう方々から、この人を退任させるべきだという要望書も関係個所に出されているわけです。  このことだけではありませんけれども、近藤病院全体にかかわる問題、医師のモラルの問題で、正直申し上げれば厚生大臣にもその保険医団体の方々から要望書が出されているはずであります。そういう状況の中で、あえてこの人がさらに三十四年目に入るのですか、再任をされているということに、私はきわめて不純なものを感じてならぬわけでありますが、これについて厚生省、審査委員の方々をふやすとかそれは非常に結構なんですが、もっとふやしてもらわなければいかぬでありましょうけれども、まずその医師のモラルをきちっと確立する前に、審査官などをもっと厳しく監視せねばいかぬという情けない状態がもし事実あるとすれば、これは大変なことなので、その辺の関係について保険局長としてこれからどう対応されるかをお聞きをいたしたいと思います。
  166. 大和田潔

    ○大和田政府委員 一般論といたしまして、いま先生おっしゃいましたように支払基金の審査委員のモラルの問題、あるいはその他審査に関する何と申しますか学識の高揚といったようなものにつきまして、私ども並びに支払基金におきまして十分そういう指導を行っていくということは必要であると思います。  ただいま先生おっしゃいました当該技官でございますが、これにつきまして新聞報道等もあったわけでございますが、私ども兵庫県を通じまして調査をいたしまして、実はそのような事実はない旨、兵庫県から報告を受けておるわけでございますし、また先ほど先生もおっしゃいましたように、現在までいわゆる司直からの事情聴取というようなこともございません。そういうような意味におきまして、当該技官につきましてそのような疑惑はないというふうに私どもは信じでおるわけでございますが、私どもといたしましては、こういった疑惑というものが一般論としてもあっては困るわけでありますので、疑惑のないようにひとつこれからも関係諸機関に対しまして十分な指導を行っていくつもりでございます。
  167. 永井孝信

    永井委員 保険局長が言われておるように、兵庫県にそういうことを問い合わせてそういう事実がない——私は後でも申し上げようと思っておったのでありますが、そういう不正問題が検察の手によって摘発されたとか、あるいは脱税問題で言えば国税庁によって摘発されたとかという具体的な事例が出てきた場合、あるいは疑いを持たれた場合、その綱紀粛正を図るためにということでいろんな指導をされる。そうして、われわれが事実こういうことがあるのかとお尋ねをしたときに、その事実については調査をしていますということになる。その調査の仕方が、たとえばいま言われたように近藤病院の例で言えば兵庫県にお聞きになる。では兵庫県がどういう人を対象に調査をしたのかというところが問題でありまして、実際厚生省として調査をした対象あるいはその調査の対象になった人たちが、対象にふさわしい適切な方法であったかどうか、こういうことまで確認されていらっしゃいますか。
  168. 大和田潔

    ○大和田政府委員 調査の方法等につきまして、私ども指示をしたり確認したりしてはおりませんが、当然のことながら県におきまする担当部長というものが中心になりましてこういった調査を行っておるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  169. 永井孝信

    永井委員 調査でいろいろ出てきたのでありましょうけれども、それはまた後でちょっと申し上げますが、たとえば私がいま申し上げている技官の方について、いままでに地元でいろんな問題が起きてきた中に、ある大きな病院でありますが、この病院のレセプトの審査に当たって必要以上にといいますか不必要な内容で請求が減点されたということで、地元で大変な問題になったことがありました。これはずいぶん古い話です。もちろんその技官の人は昭和二十三年からやっているのですからね。この事件は昭和四十四年のことでありますが、直接審査に当たる人でない、役割りを持っていないその技官が、全部自分が抱え込んで審査をして他に手をつけさせなかったという事実も明らかになりまして、かなり長期間この問題についてやりとりがあって、結果的に一たん減点したものをもとに戻すということが行われたわけです。あるいは同じように昭和四十四年から四十五年にかけてでありますが、ある医師の絶対に不正請求はしていないレセプトについて一方的に減点がされてきた。  このことについて、それぞれその審査に当たっていらっしゃる方々に対しあるいはそういう機関に対して、異議申請をしたり再審査の請求をしたりいろんなことをやってきたけれども、結果的にそれが受け付けてもらえずにとうとう裁判ざたにまでなったという問題もあるのです。  私は、不正な請求があってはならぬし、不正な請求があった場合はそれを減点さすのは当然のことであって、不正を見逃すことがあってはならぬと思います。また、不正を見逃すほどそういう審査委員の方々の手薄な状態ということもわかるのでありますが、逆にそれが正当なものであっても、あえて言うなら自分の利益につながらないということから減点を強行するということがあってはならないと私は思うのです。  そう考えていくと、この審査委員のあり方というものについて、もう一回厚生省は厳密に個々人についてその資質まで調査するくらいのことをやって、審査委員に審査の業務に当たらせる、このぐらいのことをやってもらいたいと思うのでありますが、どうでありましょうか。
  170. 大和田潔

    ○大和田政府委員 いま先生おっしゃいましたが、個々の減点状況といったようなものまで把握してというようなところまで私どもなかなかできないと思います。一般論として、やはり審査委員につきましては人格高潔、綱紀の運営に問題がないというような方になってもらいたいということで努力はしておるところでございますが、なかなか、いま先生おっしゃいましたようなところまで私ども調査をいたしましてというわけにはいかないというふうに考えておるわけでございます。     〔委員長退席、湯川委員長代理着席〕
  171. 永井孝信

    永井委員 法務省の方、結構でございます。  そこで、私は最前にもちょっと申し上げたのですが、近藤病院が存在する兵庫県の保険医協会というところから、これらの問題について究明要請が出されたと聞いているのですが、お受け取りになっていらっしゃいますか。
  172. 村山達雄

    ○村山国務大臣 多分この前おいでになったのはその件じゃないかと思います。お話は聞いております。
  173. 永井孝信

    永井委員 そうすると、その要請についてまだ具体的に対応はされていないのですか。
  174. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま保険局長がお答えいたしましたように、早速そういったことについて兵庫県にその事実の有無を確かめたところ、兵庫県の方から、そういう事実はないということが公式の文書で来ております。それで訴訟問題は一応けりがついたものだと考えておるわけでございます。
  175. 永井孝信

    永井委員 この問題について、これも時間の関係で余り多くを触れることはできないのですが、いろいろ保険局長や大臣の答弁を聞いておっても、あるいは最前の医師会長との問題、ああいうことのいままでの経過を聞いてみても、私の感ずるところでは、指導監査の強化という厚生省の方針はあるんだけれども、その医療指導監査官などに対して監督すべき厚生省の立場からすると、私はまだまだ審査体制に手抜きや甘さがあるんではないか。不正請求が起きないような審査体制、あるいはその審査をすることを一つの権力化してしまって、それが悪用されることがあってはならぬ、こういう問題に対して監督すべき立場に、手抜きや甘さがまだまだあるのではないか、こういうふうに言わざるを得ないと思うのであります。したがって、少なくともこれからそういうことが疑惑として持たれないような対応をぜひしてもらいたい。  その一つは、審査委員の選出に当たっては、関係者のだれが見ても公正であるというふうな審査委員の選出方法、審査委員会の公正な運営、あるいは技官や専任審査委員への権力の集中の排除、これらについては何としてでもやってもらいませんと、いま出来高払い制度がとられている中だけにこのことを放置することはできない、こう考えるのでありますが、どうでありましょうか。
  176. 大和田潔

    ○大和田政府委員 審査委員の選任は、関係学識経験者であるとか医療担当者それから支払い側、そういったところからの推薦に基づくわけでございます。その推薦に当たりましては、厳正に選定をしてもらうということにつきまして私ども指導をしておるわけでございますが、そのような方向で先ほど先生おっしゃいましたような公正な審査が確保できるようなそういう人たちの選任につきまして、私ども今後努力していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  177. 永井孝信

    永井委員 大分時間が迫ってまいりました。次に進ませていただきます。  同じように、いま世間から指弾を浴びてきて、悪徳医といいますか、それの見本のように言われてきたもう一つの大きな問題に京都の十全会病院問題があります。  これは枚挙にいとまがないほど新聞でも書かれテレビでも報道され、私自身も前の国会でこの問題を取り上げているわけであります。厚生大臣は、前の園田厚生大臣のこの方針をそのまま受けて厚生行政を進めていく、大臣がかわったからといって何ら変わりがないということを最前私の質問に対して御答弁をいただきました。大臣がこの社会労働委員会で具体的な質疑に立ち会われるということはこの国会が初めてみたいな形になりますので、私はそのことで最前確認させていただいたわけであります。  たとえばこの十全会病院というのは、社会的に言われておりますのは老人処理工場だとまで言われておるわけですよ。そうして、ことしの一月二十七日に御承知のように厚生省から改善措置命令が出されました。これについて私も五月十四日にこの問題に関連をして質問をしたのでありますが、この一月二十七日の厚生省改善措置命令といいますか、これについて、むずかしいようでありますが、具体的簡明に言えばどのように措置がされてきたか、お答えいただきたいと思います。
  178. 田中明夫

    田中(明)政府委員 十全会系三病院につきまして、本年一月二十七日に京都府による勧告がございまして、その履行について京都府において継続的な指導を行うとともに、問題の発生する都度私ども指導をしてまいっておるところでございます。  勧告において指摘いたしました役員の刷新につきましては、本年一月三十日に役員の交代が行われております。人員の充足につきましては、定期的に報告を求めて指導を続けております。また、関連会社の株の処分につきましては、全面的に売却することに決まったという報告を受けております。  今後とも勧告の完全な履行につきまして京都府を通じて十分指導をしてまいりたいと思います。
  179. 永井孝信

    永井委員 けさの新聞報道によりますと、いま御答弁があったように、株の買い入れ問題について言えば、一応の決着がついたと実は報道されているわけです。この十全会が決着がついたと言われておるのでありますが、朝日麦酒の株を買い占めたその総株数は、私の承知しているところでは、いままでのずっと国会のやりとりからいろいろなことを聞きまして、約六千九百万株と理解をしておるのです。きのうからきょうにかけての動きを見ると、正確な数字で言うと六千四百五十万株と報道されているのです。そうしますと、十全会が買い占めた株と、今度旭化成ですか、その譲渡した株との差四百五十万株というのは一体どこへ行ってしまったのか。これはその一月二十七日に改善命令が出されて、京都府と協力していろいろな対応をされてきた厚生省としてそのことを把握されていますか。あるいは大蔵省の証券局、把握されていますか。
  180. 野田実

    ○野田説明員 先生おっしゃられますように、買い占めました株数は六千九百万株でございます。ただ、この差の約五百万株は大阪証券信用株式会社というところに担保に走り込みまして、大阪証券信用株式会社がことしの春に会社更生手続を開始いたしました関係で担保流れになりました。したがいまして、その差が起きたわけであります。
  181. 永井孝信

    永井委員 その問題について私の調べたところでは、例の問題になりました誠備グループと関係があると言われておるのですよ。誠備グループにその株を利益を上げるために預けて、誠備グループがああいう状態でうまくいかなくなったということから、いま言われたように担保に入っていったというふうに私は聞いておるのです。そういうことは御承知ありませんか。
  182. 野田実

    ○野田説明員 私たちが承知いたしております範囲では、いわゆる十全会グループが直接大阪証券信用に五百万株を持ってまいりまして、そこからお金を借りていたというふうに承知しております。
  183. 永井孝信

    永井委員 ことし一月二十七日に勧告されてからきのうの時点で、こういう問題に一応の決着がついたと言われておるのですけれども、九カ月かかっておるわけですね。決着がつくまでこの関係でいうと九カ月かかっておるわけです。少数株主の保護ということが規定の中にあるのでしょう。少数株主に対しても規定がある。そうして、その少数株主の保護規定のようなものがあるのですけれども、たとえばそういう株を買って次に処理をする、その間の保留期間というものが、名義書きかえとかいろいろなことがあるのでしょうけれども、その保留期間というものが六カ月だというふうに私は聞いているんですが、それは間違いございませんか。
  184. 野田実

    ○野田説明員 信用取引で買いました場合は六カ月で現引きをしますか、あるいは売却するかしないといけないことになっております。
  185. 永井孝信

    永井委員 そうすると、これは九カ月かかって処理をしたということになりますと、三カ月余分にかかっておるわけですね。いま言われたように信用取引だとすると、これは問題が残ります。  あるいは十全会の株取得は五十二年ごろから始まっていっているわけでありますが、十全会がその前に買った株の関係は一体どうなっているのか、これは御承知ですか。
  186. 野田実

    ○野田説明員 最初のお尋ねの点でございますが、その都度名義の書きかえを行っております。したがいまして、三カ月の差はございません。  そのほか十全会グループによりまして高島屋とかあるいは幾つかの銘柄が買われましたけれども、過去にすべて解決済みでございます。
  187. 永井孝信

    永井委員 この株がいわば大衆にも公開されているわけですから、開放されているわけですから、その売買ということはあって当然なことでありますけれども、仮にその保護規定なるものを盾にとってその間に——新聞の報道などで総合して考えてみると、香港ダラーであるとかあるいはアラブダラー、こういう外国の資金とつながりを持っているとも言われている。どこまで本当かうそかこれはわかりません、私は警察の側じゃありませんから。しかし、いずれにいたしましても、そういう香港ダラーあるいはアラブダラーなど外国の資金と接触を図っていって買い占めた株を高く買ってもらう。そこから利益を上げようということで、実際は厚生省や京都府の指導があっても処理ができるまで九カ月間もかかったのではないのか、私はそう見ているわけでありますが、それはどうでありましょうか。
  188. 野田実

    ○野田説明員 香港ダラーとかなんとかが関係あったかどうかにつきましては私どもは承知いたしておりません。九カ月かかりましたという問題でございますが、私たち証券市場を預かる立場といたしましては、どういう人によって買われましていつまで持っているかという問題につきましては、特にその買い方とかあるいは売却の仕方に問題がございましたら証取法上処置いたしますけれども、何カ月持っているかということにつきましては特に問題にいたしておりません。
  189. 永井孝信

    永井委員 きのうのきょうですから細かいことはわからないかもしれませんけれども、たとえば旭化成など住友グループがこの十全会の持っておった株を一体幾らで買い取ったのか、あるいは十全会からすれば売ったことによってかなりの利益を上げたのか、あるいは上げなかったのか、この辺のところはつかんでいらっしゃいますか。
  190. 野田実

    ○野田説明員 幾らで売却されたかということにつきましては詳細には承知いたしておりません。ただ買い占めをしました過去の株価を見ますと、かなり高い価格で買っていることは事実でございます。一般的には大体時価の前後を参考にしまして売却が行われるのが慣例でございます。したがいまして、これは推定でございますけれども、こういう場で推定を申し上げてはいけないのかもしれませんが、そんなにもうかっていないのではないかというふうに考えております。
  191. 永井孝信

    永井委員 もうかったかもうからなかったかはこれからいろいろなことを通してわかってくるのでありましょうけれども、しかし、病院とか医療行政の現場に直接携わっている人、そういうところが本来の医療と違って別なところに手を出してそうして金もうけを図る、それはうまくいけばこれはまた別の方向へ行くのでありますが、えてして、新聞でも社説なんかによく書かれておるのでありますが、最近の病院の問題で倒産件数がずいぶんふえてきましたね。その倒産件数すべてとは言いませんけれども、病院経営が、かつてのように病院さえ経営すれば金もうけができるという時代と違って、非常に厳しくなってきた。その倒産をしてきた原因というものを調べてみると、本来医療と無関係なところに事業で手を出す、あるいは放漫経営、この二つが倒産の両横綱だと新聞なんかでも書かれているわけです。私はそのとおりだと思うのです。  この十全会病院の関係もそうでありますが、株の買い占めという問題は、これは明らかに医療と無関係なところへ手を出し過ぎた。そして新たに事業に手を出すことをするために、その裏づけとなる資金を、それは銀行から借りる場合もあるのでしょうけれども、その資金を調達するために、いわばそこから不正請求とか乱診乱療、薬づけということがより加速をされてくる。うまくいかなかったらうまくいかなかったで、その失敗したものを取り返すためにこれまたそういうところに走りやすい。  結果として、そういう医療機関が医療以外のところに事業の手を伸ばしていくということが医療法人としては好ましいことではないのではないか。そういうところへどんどん手を伸ばしていくことが、結果的に医療そのものを荒廃させることにつながると思うのでありますが、これについて大臣どうでございましょうか。
  192. 村山達雄

    ○村山国務大臣 医療機関が個人であれあるいは医療法人であれ、その経営について不安定なものに投資し、それが倒産につながる、場合によると、またそういう資金をかせぐために不当な診療が行われるというようなことは、決して好ましいことではございません。
  193. 永井孝信

    永井委員 私は、たまたま一月二十七日のそういう改善命令が出されて、九カ月もかかって株の問題に一応の決着がついたと言われているけれども、事はそれだけで済まない問題だと思う。そういうことが二度とあってはならぬ。あるいはこの十全会病院が経営陣を一新して株の問題の処理を図ったからそれですべて信頼が回復できた、いわばいままでの汚点を残しておったところが全部除去されたということにはならぬ、こう考えますので、これはここでそういう立場から私は問題を提起しておりますので、あえて申し上げておきたいと思います。証券局の方、結構でございます。  そこで、私は大臣に最前から何回も申し上げておりますように、園田厚生行政を引き継いでいまやっていただいておるわけでありますが、この十全会病院の関係で、これは一つの非常に大きな例でありまして、他山の石とするためにもこの問題が議論されてきたわけでありますから、そういう立場で私はあえて問題を提起するわけであります。  ことしの五月八日に、わが党の武藤政審会長と、参議院側から当時社労委員長をしておりました片山議員、そしてきょうここにも見えておりますが、わが同僚の栂野議員、そして私、このメンバーが行きまして、当時の園田厚生大臣にこの十全会病院の処理について強く要望したのです。  その要望した中身でありますが、まず一つは、園田大臣が法に基づく迅速かつ厳正な医療実態の解明を行う、第二には、三省庁の閣僚協議会を開催して、協力を改めて要請します、そして第三として、医療法の一部改正案の早期提出を図ります、この三つをこのときは約束をしていただいたのです。私たちの申し入れに対して、そのとおりやりますということで実は約束をしていただいたわけであります。そしていまこの時点を迎えたわけでありますが、その五月八日の直後に私は同じく十全会病院の問題をこの委員会の席上で取り上げました。  全部を御紹介するわけにいきませんけれども、その十全会病院の問題を取り上げたときに、重立ったところを言いますと、園田厚生大臣が次のように答弁しているわけであります。どういう実態かということはなかなかっかみ切れない、だから、わからぬことを厚生省が責任をとるのか、どうやって事実を解明するのか、これは厚生省の仕事だ、こう言われておるわけですね。そして法務省や警察庁の方にもお世話にならにゃいかぬけれども、三省協議会なんかつくって迷惑をかけている、かけているけれども、しかしみずからの責任でこの問題の解明と対応をきちっとやっていきたいという趣旨の答弁を、私の質問に対して行ってもらっているわけであります。  そこで、警察庁もお見えいただいておると思うのでありますが、この三省庁会議に基づいて、厚生省が了承をされて、いわゆる私の提起しました水増し請求問題あるいは擬装入院問題、これらの問題についてその後具体的に解明がなされておりますか、お答えいただけますか。
  194. 中島治康

    ○中島説明員 五月十四日に御質問いただきました件につきましては、早速京都府警の方に指示いたしまして捜査をいたしております。しかし、現在までのところ関係する被害者あるいはその罪となる事実について確認いたしておりません。
  195. 永井孝信

    永井委員 厚生省の方はどうですか。保険局長が、私の質問に対して調査をやりますと明確に——保険局長、聞いていますか。明確に答えてくれているのですけれども、保険局長の答弁どおり調査がされたかどうか、答弁してください。
  196. 大和田潔

    ○大和田政府委員 いまの問題は病院におきます準職員を擬装入院させた、こういう問題であったかと思います。これにつきましては、ことしの六月二日でございますが、京都府の衛生部と福祉部合同で双岡病院に立ち入り調査を行ったわけでございます。実はその結果は、医学的に明らかに不当と思われる入院ではなかった、そういう報告を受けておるわけでございます。
  197. 永井孝信

    永井委員 医学的に正当な理由のない入院だったということですか。
  198. 大和田潔

    ○大和田政府委員 医学的に明らかに不当であるという判断をするだけの根拠のあるものではなかったという報告を受けております。
  199. 永井孝信

    永井委員 その調査ですが、最前私、近藤病院の関係でちょっと申し上げたのですが、その調査をするときにだれを対象に調査されたのですか。——時間がないのだからちゃんと答えてくれよ。
  200. 大和田潔

    ○大和田政府委員 これはこういうことでございます。十全会の三病院長を初めといたしましてその他職員、調査事項といたしましては準職員制度及び当該職員の入院状況、診療録及び看護記録等の点検、賃金台帳の点検、これだけをやっておるわけであります。
  201. 永井孝信

    永井委員 もしそれが正確にそういう人々を対象に行われておったとするなら、大変おこがましい言い方でありますが最前の保険局長のような答弁にはならぬと私は思うのです。なぜなら、私たち自身が何回も何回も十全会病院に足を運んでそういう該当者にも直接会ってお聞きして、私はこの前の問題を提起をしたのです。それが今度は厚生省の側で調査をされるとそういう事実がないということになると、どうやっても私は納得ができない。  京都府と京都医師会の間に協定というものがありまして、調査に入る場合あるいは監査というのですか、指導監査というのですか、入る場合には当該病院に事前通知をすることになっているようであります。これがこの前問題になりまして、十全会病院で不正行為が行われているということを情報としてキャッチをして厚生省が指導監査に入るのに、一般の通常の指導監査に入るときと同じように事前に通告をした。だから受け入れ側が全部事前に対応できるように準備をしたということが、この前の九十四国会では私の質問の関係で問題になったのです。不正の疑いを持たれておる病院もそうでない病院も同じように扱うということがあってはならぬということを当時園田厚生大臣が声を荒げて言われたわけですね。ところが、現実はやはりそういう実態に置かれているのではないか。だから、たとえば病院長、事務長あるいは管理者側の立場にある人たちを対象に聞くから真相がわからないということが、十全会病院だけではないと思うのでありますがずいぶん出てくると思うのです。そういう調査なら幾らやっても真相をつかむことができないのですね。  ここに一つ、その患者の方がいま人権侵害の申し立て書を京都府の人権擁護委員会に出すために準備をされた資料を、わざわざ私のところへ持ってこられているわけであります。これは弁護士との関係でそれぞれやりとりしたものの整理を、本人の言い分を聞いて速記録のように整理をしているわけでありますが、この中身を聞いてみる限り、私も現地へ行って調べてきたのでありますが、まさにこの前の九十四国会の五月十四日に追及しましたように、一方的にいどうもない人を病院のためだからといって入院させられた経過から始まって、全部このことが書かれているわけです。これを今度人権擁護委員会に提訴しようとしているのです。十全会の問題が一月二十七日に改善命令が出され、あるいは私の五月十四日の質問に対して園田厚生大臣が毅然とした答弁をされた。それからもし積極的な立場で対応が前進しておれば、いまこの人権擁護委員会に提訴しようかという動きは出てこなかったはずなんです。恐らくもう手続はとられているようでありますから、間もなく表に出てくると思うのであります。この人が言っているのはどういうことかというと、いまも働いていらっしゃる大ぜいの準職員の人たちのことを考えると、こうして人権侵害の申し立てを決意せざるを得なかったのです、こう訴えているわけです。  私の言っていることが一方的なのか、厚生省が調査したことが本当なのか、あるいはそれが一方的なのか。これはやはり単に十全会病院一病院だけの問題ではなくて、医療行政を進めていく上においてゆるがせにできない問題でありますから、あえて私はこのことを聞いているわけであります。もう一回そういう立場に立って再調査をこれからも続けていかれるか、あるいはいまの保険局長の答弁が絶対的なものだといってここで言い切ることができるのか、再度答弁してください。
  202. 大和田潔

    ○大和田政府委員 私どものところへ参りました報告というのはただいま申し上げたとおりでございますけれども、先生再度そのようなお話でございますので、また私どもとして再度府の方へ問い合わせてみたいと思います。
  203. 永井孝信

    永井委員 くどいようでありますが、被害を訴えている側にも会ってもらいませんと、調査というものはそういうものだと私は思うのです。警察庁の方もそういう立場でやっていただいていると思うのであります。加害者があれば被害者があるのですから、被害者があればどこかに加害者があるのですから、この双方からきちっと真相をつかむということをやってもらいませんと、病院側だけを調べて、あるいは厚生省が直接出向くのではなくて、府県のそれぞれ担当者を調査に行かせて病院側だけで聞いてくる、いやそういう事実はありませんでした、と。  また私はきょうここで触れる時間がありませんけれども、ほかにもあるのですよ。これは不当労働行為の問題もありますから、また改めて労働大臣も出てもらっているところで私はやろうと思うのでありますが、これはまた全く別の病院であります。同じようなことがあるのです。その調査というのは必ず一方的に偏り過ぎているから真相がつかめない。そういうことがあってはならぬ。あるいは一つの法人で複数の病院を持っているところがある。保険局長、十全会病院がそうだったのです。厚生省が事前に通告をしたため、逃げられてしまった。私から言えばうまく逃げられてしまったのですけれども。  そのときどういうことが起きたかというと、双岡とか東山サナトリウムとか三カ所もそういうものを持っているわけですから、基準に足りるような看護人の配置がしてないとか、あるいはリハビリのための施設や設備に対応するように十分な対応ができていないとか、いろいろな問題が事前の調査項目に挙げられておったために、調査に行くところへ、同じ法人が経営しているところから人も物も一挙に前の日に運んで、調査に行ったときにはぴちっとできているということがあったのですよ。私は現地へ行って調べてみてそのことがわかった。だからもし一つの法人で三つも四つも複数のそういう機関を持っているとするなら、疑いがあって調査に入るとか抜き打ち的に監査をするというときは、その法人の経営しているところは全部一斉に押さえるというくらいのことをやりませんと、相手側にずらかられてしまう。  私は、そういう調査の方法についても厚生省がきちっと対応していきませんと、これからの不正問題というものは後を絶たないのではないか、こう思いますので、これからその問題についての対応の仕方について改めて大臣の方から聞きましょうか。大臣のそういう決意についてひとつ言っていただけますか。
  204. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま委員がおっしゃっているようなことがあってはこれは大変なことでございますので、調査に当たりましては実効が上がるように、真相が明らかになるように、厳正に調査いたします。
  205. 永井孝信

    永井委員 もう一つは脱税問題。  国税庁お見えになっていますね。毎年、長者番付も出ますけれども、脱税がどれだけあるかということで発表されますね。国全体、あるいは地方へいきますと地方の単位ごとに、脱税のベストテンと言うのですかワーストテンと言うのでしょうか、出されますね。私、これを見ていつも不思議に思うのですけれども、所得番付でも長者番付でもお医者さんというのは上位にずらりと顔を並べるのでありますが、脱税でもずらりと並んでいますね。とりわけ医療機関と言われる法人として病院を経営されているようなところが多いのでありますが、その脱税の最近の傾向、細かい数字を全部並べるわけにいきませんので重立ったところでいいのですが、特に医療法人の犯している脱税の傾向をちょっと言っていただけませんか。
  206. 谷安司

    ○谷説明員 最近の数字はちょっとございませんで、これは五十四年分の所得税の業種別の調査事績でございますが、残念ながら、ただいま先生御指摘のとおりワーストの第一位が病院でございます。それから第四位に整形外科医、それから第五位が産婦人科医、第十一位が外科医、第十四位が小児科等、こういうふうになっておりまして、個人の場合、申告漏れ所得の多い業種に医者関係が相当入っております。それからまた法人の調査事績におきましても、医療・保健業というのがワーストの一番になっている業種でございます。
  207. 永井孝信

    永井委員 大臣、いまお聞きのとおりです。  私自身もあるいはわが党も、医師に与えられている税制上の措置についていろいろな角度から問題提起をしてまいりました。ある意味で言えば、医師という仕事が大切な仕事であるがゆえにいろいろな優遇措置も講じられているわけですね。その事のよしあしをここで論ずるつもりはありませんけれども、片方でそれだけ大切な仕事として社会にも認識をされて法的にも保護されている、そこが今度脱税という不当行為をどんどん行っていく。私がいままでずっとここで質問してきましたことの脈絡から言えば、医師に対する信頼感が損なわれていることがあったのでは健やかな老後の保障なんてできませんよということを私は申し上げているわけですね。仏つくって魂入れずということがあるわけで、だから私は具体的に近藤病院や十全会病院の問題をあえて再度ここで問題提起をしているわけであります。  そうしますと、こういう医師に対する信頼、病院に対する信頼を回復するために厚生省がいろいろな手を打たれてくるわけでありますが、私の見るところでは、そういう不正問題に限って言えば、まず国税庁が脱税に手をつける。近藤病院じゃありませんけれども、検察庁や警察がその事実を知って中身を調査をして、これが立件できれば起訴をする、その後厚生省が出かけていって指導監督をする、こういうパターンになっているのですね。私はこれは順序が逆じゃないかと思うのですね。私は、近藤病院の問題である審査委員の問題を取り上げました。その人に本当に容疑があるのかないのかということは、これは私に断定はできませんけれども、関係者がいろいろな疑惑を持たれることは事実です。これも私は一事が万事だと思っているのです。だからそういう医療機関に不正が起きないように、国民から信頼される医療行政として実を上げていこうとすれば、厚生省は指導監督という面に何よりも力を入れなくてはいけない。ここに七項目の問題やいろいろな資料を出していただきました。それぞれ前向きに対応されていることは私は評価いたしますが、そのことが具体的な施策の中で生かされてこないと実を上げることができないわけですね。だから、国税庁が脱税行為を摘発するそれ以前にそういうことが起きないようにしなくてはいけない、こう思うのです。  私はここのところがこの医療問題の一番のポイントではないかという気がするわけですね。だから、その辺の関係について大臣から最後にお答えをいただきたいと思うのでありますが、その前に警察庁の方にちょっとお聞きしておきます。  近藤病院の問題でいま検察庁が、これは法務省の指揮下に入っていますけれども、最前答弁されたように逮捕者も出してやっているわけですね。この近藤病院が三年前にすでに脱税で摘発されて、当時の近藤病院長の有罪刑が確定をして、執行猶予中に次のことが起きているわけですね。そのことについて、それとのかかわりといいますか、警察庁としても当然そういう問題までさかのぼって関心を持たれていると思うのでありますが、それはどうでしょうか。関心を持たれていますか。執行猶予中に起こしたことであります。
  208. 中島治康

    ○中島説明員 その問題については私の方は主管でございませんので、ちょっといま承知いたしておりません。
  209. 永井孝信

    永井委員 警察庁が直接所管でないということでありまして、法務省はもう帰らせてしまったので申しわけなかったのでありますが、厚生省にあえてお聞きいたしますけれども、前に脱税を犯して有罪の刑が確定をして、執行猶予中にまたいまの問題が起きてきたわけですね。国税庁も再度脱税を摘発された。巨額な脱税なんですね。脱税だけではなくて、いまはレセプトの問題のように不正な保険金の詐取という詐欺行為まで行っている。そういうことを考えると、十全会病院ではありませんけれども、厚生省が幾ら指導監査に入るとか指導をするとか言ってみても、果たしてそれできちっとできるのかという疑念を持たざるを得なくなる。  だから、そういう医療に対する不信をなくするために乾坤一てき、ふんどしを締め直してその医療の荒廃を防ぐ決意と、それからこれからの具体的な対応の仕方について、最後に厚生大臣からお聞きいたしたいと思います。
  210. 大和田潔

    ○大和田政府委員 ちょっとその前に。御報告のきっかけを待っておりましたのですが、近藤病院に対しましては、ことしの九月十日及び十一日に厚生省、兵庫県と共同で監査を実施いたしまして、それでこの病院につきましては、保険医療機関の取り消しの処分をやっております。ただし、この近藤病院の場合、実は執行停止の申請がございまして、十月十四日に執行停止命令が出ております。それに対しまして私ども即時抗告をいたしておる、こういう事情でございますので、追加いたしまして御報告いたしたいと思います。
  211. 永井孝信

    永井委員 それでは、大臣の答弁をいただく前にそのことについて私申し上げるのですが、被告の座にある近藤前病院長が抗告をして保険医の取り消しの処分の取り消しを求めた、そのことによって保険医の取り消しが一応たな上げになった。この判決の後で被告の座にある近藤前病院長が、われわれは不正を働いていないのだ、特にレセプトの問題で言えば、これは故意に差し込んだのではなくて未審査のまま処理されただけのことであって、それはどうということないんだという趣旨のことを、新聞記者会見で問われてわざわざ発言をしているわけですね。  そういうことがどんどん許されていくことが問題でありまして、だから私はあえてこの医師のモラルという問題をきょうも執拗に繰り返して言うのでありまして、厚生省が県と一緒になって近藤病院にそういう指導監査をやられたということは、それはそれなりに対応されているのでありますが、いま言ったように底の底まで入るような指導をぴしっとやってもらいませんと問題の解決にならないということをあえて申し上げて、大臣の答弁をお聞きいたしたいと思います。
  212. 村山達雄

    ○村山国務大臣 私もお医者さんの友達を多く知っているわけでございます。これは私の感じでございますが、私の知っている限りでは、医療を自分の天性の職業と感じて一生懸命やっているお医者さんをたくさん知っております。そのために早く亡くなってしまうというようなお医者さんもたくさん知っております。また、およそ不正があったら医師会みずから告発しようというような医師会も承知しておるのでございます。  しかし残念ながら、いまおっしゃるような事例の多いこともまた承知しているのでございます。したがいまして、やはりその基本は、医療に当たる人たちの自覚を高めていく、ここに最大の重点があると私は思っておるのでございます。それであればこそ今度は逆に、もし違反があった場合にはそれぞれ、厚生省厚生省の立場で、厳正な保険法上の処置あるいはまた医師法上の処置を講じてまいる、また国税庁は国税庁で、脱税犯に対しては厳しくやる、検察庁は検察庁で、警察は警察でそれぞれの刑事犯等についてもまた厳正な処理をしていただきたいと思っておるわけでございます。  私たちは、さっきも申し上げましたように、医療費がこのところ大分落ちついてはまいりましたけれども、しかし、いやしくもそのようなことがあっては大変なことでございまして、最終的には、国民の税金であれあるいは保険料であれ、その負担の増高につながるわけでございますので、見逃すわけにはいかぬのでございまして、あらゆる方法を通じまして、そういうことがないように、国民と診療機関との信頼を高めるように、全力を挙げて努力する覚悟でございます。
  213. 永井孝信

    永井委員 最後に一言だけ。  保険局長、十全会病院の関係で言えば、再調査されることを言われたわけですね、人権擁護委員会に提訴することなども含めて私が申し上げたら。十全会病院の問題についてまだ真相がつかめ切っていなかったら、その真相をつかむためにももう一回調査をしてもらうことになっておりますので、その調査の問題については、問題提起をしたところに、この委員会を通してでもいいし、中間報告でもいいし、後できちっとしてもらうこともお願いしておきまして、質問時間が過ぎましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  214. 湯川宏

    湯川委員長代理 次に、大橋敏雄君。
  215. 大橋敏雄

    ○大橋委員 厚生省の皆さんに申し上げますが、厚生省は言うまでもなく、人間が生まれて、いや、生まれる前からでしょう、生まれて死んでいく間のいろいろな事柄を担当し、なかんずく社会保障、社会福祉を推進していく使命があるわけであります。その厚生行政の最高責任者であるのが、言うまでもなく厚生大臣だと思うわけです。  厚生行政、また社会保障、社会福祉の推進に当たっては、いろいろな制度ができているわけでありますが、中でも、年金そして医療、これが社会保障の二大支柱であると言われているわけですね。ところが、わが国のこの二つの制度を見てみると、二つとも、遺憾ながら大変心配する状態に陥っているわけですね。年金制度しかり、医療保険制度しかりです。  まず私は、この基本的な問題について大臣のお考えを聞いておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  216. 村山達雄

    ○村山国務大臣 おっしゃるとおり、年金、医療、この二つは、厚生省の中の行政の一つの中核をなすものでございます。  年金制度につきましては、もう御承知のように、私は、水準としてはまず西欧諸国に遜色のないところに来ていると思っております。それはモデル年金で計算いたしましても、また実際の支払われておる年金額の平均から申しましても、まずいいところに来ておると思っております。  しかし、問題はこれからでございまして、高齢化社会を迎えておるのでございます。現在のところ、医療、年金その他の社会保障水準は、国民所得に対しましてたしか二二・一ぐらいだと思っております。しかし、わが国の高齢化がこれから急速にやってまいるわけでございます。したがって、この高齢化が進みますと、まずその給付水準あるいはまたその負担、これが大体西欧並みになるということは、もう趨勢で明らかでございます。  特に、いま日本が一番世界で長生きになっておりますので、二十年から三十年過ぎますと、対国民所得の関係では、かつてないほど給付率も上がってまいりましょうし、負担率も上がってくると思っておるのでございます。それだけに、今後の年金水準というものを一体どうやっていくのか、それは果たして国民の負担にたえるのかたえないのかという問題が、三、四十年後に出てくると思いますけれども、われわれはそれをにらんでいく必要があるであろう。と申しますのは、年金というものは、ここで原資が尽きたから急に変えるということのできない性質のものでございまして、その中には、おのずからなる年々の格差というようなものはやはりなだらかにしていかなければならぬ、そういうふうに考えておるものでございます。  なお、年金につきましてそれならどうかと申しますと、もう先生御承知のように、官民格差という問題もございますし、各民相互間におきましてもいろいろな格差があるわけでございまして、その理由のない差別、一体どういうふうにしてそこを持っていくのか、これも大きな課題でございます。  医療につきましては、対国民所得費では大体西欧並み、ヨーロッパあるいはアメリカよりまだ少し低いのでございますけれども、しかしこの増高の傾向、これは二、三年前は十何%ということで国民経済の名目成長率をはるかに超えておったのでございますが、ここになりまして大分落ちついてまいりまして、大体経済成長とパラレルになりつつあるのでございます。  私たちは、医療につきましては、やはり医療資源の効率的な使用という観点、それからその受ける患者が高度医療の恩恵を十分に受ける、これは保険化の問題でございます。また、特に老齢化を迎えまして疾病構造の変化、これからいよいよ老人型の疾病が出てくるわけでございまして、この需要に十分こたえ得るような形にしなければいかぬであろう、こう思っておるわけでございます。
  217. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いろいろ御説明なさいましたけれども、要するにわが国の年金制度あるいは医療保険制度も、このままの状態でいくと崩壊せざるを得ないという非常に危機意識が持たれております。この辺でもう少し総体的な立場に立って、根本的な、いわゆる抜本改善をやる必要がある、これはもう識者の一致した意見です。  私は、なるほど根本的な、いわゆる抜本的な改善は必要だと当然思うわけでございまして、わが党といたしましても、年金制度ないしは医療保険制度の根本的な改革の政策はすでに公表いたしております。が、現実問題とこうした理想とはかなりギャップがあると思うのですね。たとえば、医療保険制度にいたしましても、現実に十三兆円という莫大なお金が動いているわけですね。そういう制度を、白紙に絵をかくような形での抜本的改善はまず無理だと思うのですね。年金制度しかりですよ。いずれにしましても、その制度ができたときからの歴史があり経過があります。あるいは期待権、既得権があるわけですから、そういうものを無視して、いかなる改善も私はできないと思うのですね。ということになれば、各党から出ているいろいろな政策の案があるわけでございますが、そういうもののいわゆる共通点といいますか、そういうものを探り出して、これならば何とかいけるのではないかというところに焦点をしぼっていかない限りは、いつまでたっても私はこの問題は解決しない、こう思うのです。  たとえば、年金などは、わが党はいま言った期待権、既得権、それを尊重しながら、どうやればいいかということで二階建て年金制度、すなわち基礎部分において各制度が共通できるものをまず確立しよう、その上に制度間におけるプラスアルファを積み上げていくのだという二階建て年金を考えました。また医療保険の問題についてもすでに発表しておるとおりでございますが、特にきょうは老人保健の問題ですから、医療問題に入っていきたいと思うのでございます。  わが国の医療保険制度は、御存じのとおり、国民皆保険制度になったのは昭和三十六年、それは地盤の緩いところに大きなビルを建てたような感じではなかっただろうか。言葉は汚いかもしれませんけれども、いわゆる欠陥だらけの医療制度の上に皆保険体制を急いだ、ここに私は問題があるのじゃないかと思うのですね。  それからいやおうなしにそういう姿で進んでまいりまして、やはりこれは根本的な対策が必要だ、抜本改善が必要だという声が至るところから出てきたようでありますが、昭和三十七年の八月ですか、社会保障制度審議会が行った答申、この答申を機に、医療保険制度の抜本的な検討段階に入ったと言われております。  それから二年たちまして、昭和三十九年の五月に、厚生省のいわゆる抜本改革の可能性を検討するための試案要綱というものが、当時の小林厚生大臣に提出されたはずであります。そして、そこまで考えておりながら、その次の年の四十年二月には、社会保障制度審議会、社会保険審議会に、厚生省は抜本対策を諮問するのではなくて、単なる保険財政のいわゆる赤字対策案を諮問しております。抜本改善をやらなければならないのだとわかっておりながら、手がつかないわけですね。そして両審議会からは、こんな場当たり的な内容ではだめだと、きわめて厳しい指摘が返ってきているはずです。  しかしながら、御存じのとおりに、医療保険をめぐる医療費というものは、もうとにかく急増していきまして、保険財政上からも言われるところの抜本改善は早期に実施すべきである、こうなってきたわけです。まさに天の声になったわけですね。  そして昭和四十一年に入って、いまの総理大臣である鈴木さんが厚生大臣をやっていらしたのですよ。そのときに、昭和四十二年度を目途に抜本改善実施するとの方針を明らかにして、各関係団体からの意見をどんどん聴取なさったわけですね。これはなかなか真剣に取り組んでいらっしゃるなと、私は一市民としてそういう姿を拝見いたしておりました。ところが、聴取をしたけれども、それがまとまらないうちに、いわゆる黒い霧解散が起こったわけですね。昭和四十一年十二月二十七日、衆議院は解散して総選挙に突入するわけでございますが、実は私はその選挙で初出馬して当選をさせていただき、この国会に来たわけです。そしてこの社会労働委員会に所属して、現在では他の委員会にまた入っておりますけれども、ほとんどこの社労で仕事をしてきたわけです。  ちょうど国会に参りまして、昭和四十二年は政管健保の累積赤字が二千億円、大変だということで厚生省も案を出してきましたけれども、それは臨時特例法案というものでしたよ。これまた場当たり的赤字対策案であったわけでありまして、もちろん野党の厳しい反対に遭いまして、これは廃案になるのです。私はなぜこれをこのように詳しく言っているかというと、後の質問につながるからです。よく聞いておってくださいよ。これは廃案になるわけです。  ところが、引き続いて第五十六臨時国会、いわゆる健保国会というものが開かれたのですけれども、廃案になったその案がそのまま提案されたわけです。当然与野党が真っ向から対決したわけです。国会は乱闘国会にまで発展しました。しかしながら、結果的には二年間の時限立法ということで決着されたわけですが、このときの与野党の攻防戦で、社会党の当時の委員長さん、書記長さんが更迭されるというようなお気の毒な事態も発生したわけです。  とかく医療問題、医療関係というものは、医師と患者とそして支払い機関との利害が微妙に相反することから、その意見の一致というものは非常に困難です。どこかにしわ寄せがいくわけですね。だれかがどろをかぶらなければならぬわけです。そしていわゆる三者三泣き、痛み分けというようなかっこうで決着されることが多かった。特に私が言いたいことは、医者の代表である医師会、それから支払い団体の大御所、組合健保、健保連、この二つは意見は大きく食い違うことが多いわけです。しかも、お互いに甚大な影響力を持っております。それだけに取り扱いが複雑ですね。  何はともあれ時限立法ということだったものですから、政府も与党の自民党さんもいよいよ抜本改正やらなきやならぬなと、ぐんぐん追い詰められてきたわけです。ところが、その時限立法が昭和四十四年の八月、期限切れの時期になったわけですけれども、このときも抜本改正案は出ないで、単なる延長法案が出てきたわけですよ。またしても責任追及、大混乱ですよ。しかし、結果的にはこの特例法案が、本法、いわゆる健康保険法の一部改正という形で、成立はしたのですが、そのときの厚生大臣が斎藤さんです。もう亡くなられたですけれども、その厚生大臣が責任を感じて、いよいよ社会保障制度審議会、保険審議会に抜本改正を諮問するわけですよ。  そしてその両審議会が答申を出したのが、制度審が四十六年の九月です。社会保険審議会は四十六年の十月ですね。これはまさに抜本改革の基本的な内容、方向をも明らかに示したすばらしいものです。まさに抜本改正のレールは敷かれたと言っても間違いはないと私は思うのです。そういう中に、老人医療のあり方も当然その方向が明示されておりました。こういうすごいりっぱな答申が出たにもかかわらず、政府はなお対策に乗り出さなかったですよ。  そして、昭和五十二年の十一月、国会審議に各野党からも徹底的にそこの問題を追及された。そのとき、いまの大蔵大臣をやっている渡辺さんが厚生大臣で、わかりました、もう医師会とか何会とかかに会とか関係なく、私の一存で抜本改善の道を明示しますと言って、その追及に答えて出てきたその答弁、あるいは方向というものが、十四項目にわたるものでございました。その走り書きをいまここに持っておりますけれども、私は、時間があれば、この十四項目が果たしてどんなに実施されていったかを聞きたいところですけれども、この十四項目一つ一つに、実施時期、あるいは立法しなければならぬものには立法時期というものまでも明示されているわけです。いいですね。  特にきょうは老人保健問題ですからそれを申し上げますと、十一項目目に「老人保健医療制度の整備」、これはまさに創設ですから、立法時期は「五四年度以降」としてあります。そして実施時期も「五四年度以降」としてあります。ということは、五十四年度にはやりますよという強い意思がこれには含まれていたことは事実です。しかしながら、その公約どおりには法案は出てこなかったのです。前国会の最終段階に、延長されたその段階でやっと出てきて、継続審議。そして今度、いまこうした審議に入ったわけでございますが、なぜこの約束は守られなかったのか、長引いたのか、まず聞きたいと思います。
  218. 村山達雄

    ○村山国務大臣 老人保健制度の確立につきまして五十四年に話が出、そしてその推進に尽力してまいったのでございますが、御案内のように、いま先生が御指摘されましたように、この問題は、現在の医療保険制度から全く切り離してやるということでございます。それだけに各保険間の利害の関係あるいは地方団体の利害の関係等々ございまして、いままで真剣に審議してまいりましたけれども、今日まで時間がかかってしまったということについてはおわび申し上げます。ようやく成案を得まして、そしてひとり老人の医療の問題だけでなくて、中高年層の健康促進という問題を同時に据えまして御審議をお願いする次第になったわけでございますので、どうぞひとつ御了承いただきたいと思います。
  219. 大橋敏雄

    ○大橋委員 とにかく先ほど言ったように、医療問題というものは非常に複雑な立場にあるとは思いますが、やはり厚生省がその推進の第一線に立っていかなければ、われわれも応援のしようがないのです。急速な老齢化社会の到来でありますし、老人対策についてのあらゆる面での根本的な見直しは当然のことであります。そういう中でのいわゆる予防、治療、リハビリテーションという一貫した包括的な体制をつくるということは当然のことでありまして、これは与野党問わずみんな意見が一致したところです。老人保健制度をつくろうじゃないか。全会一致です。  われわれ公明党も、この医療保険のあり方というものは、地域医療、それから職域医療、そして老人医療というこの三本立てでいくのが理想ではないかという方針を立てまして、すでに老人保健法案というものを、特に予防、リハビリテーションというところに重点を置いた一貫性のあるものをつくりまして、皆さんの御批判を仰いでいるところでございますが、いずれにしましても、この予防、リハビリテーションを国民が期待するような体制に持っていこうとすれば、それに要する人、それからお金、大変なものが必要だと思うわけでございますが、今回政府が提出したこの老人保健法の予防、リハビリテーションを含めた内容を実行していくには、その国民が期待しているようなことになっていくのかどうか、それをまず聞きたいと思います。
  220. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先生御指摘のように、予防、リハビリテーションというものを充実するためには、そのためのマンパワーあるいは施設、設備というものを十分に整えなければ実施できないことば当然でございます。厚生省といたしましては、五カ年後の六十一年度をめどといたしまして、これらのマンパワーあるいは施設、設備に年次計画的に取り組むということで、必要な財源につきましてはできる限り努力いたすということにいたしております。
  221. 大橋敏雄

    ○大橋委員 とにかくこの予防、リハビリテーション、これががっちり体制が整わなければ、この制度の重みはなくなるのですよ。ですから、これがあいまいな姿でもし進むようであれば、われわれは断じて賛成するわけにはまいりません。体制整備、その方針をもっともっと明確に示していただきたいのです。でなければ、老人保健の美名に隠れて一部有料化を促進したのだ、こういう悪名だけが残るんですよ、この法案は。  そこで、一つ具体的な問題としてお尋ねしたいのですが、病気イコール死の村と言われたある村が今日では日本一の健康村に好転した、大きな話題を呼んでいるわけでございます。これは岩手県和賀郡沢内村のことでありますが、このことを厚生省は御承知かどうか、聞いておきたいと思います。
  222. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 岩手県の沢内村におきましては、行政と村民が一体となりまして、積極的に健康づくりに取り組まれて、脳卒中死亡率を引き下げるなど非常に大きい成果を上げられたことは全国に知れ渡っているわけでございまして、厚生省としても非常に敬意を払っているわけでございます。今回の老人保健事業の計画に当たりましても、こうした沢内村の成果というものをできる限り取り入れて、りっぱな健康づくりにいたしたいと考えているわけでございます。
  223. 大橋敏雄

    ○大橋委員 最近国保の保険税を一三%も引き下げられたことを私は記事で知ったわけですが、こんなすばらしい村ですから、何か年間三千人ほど見学者が行かれているそうです。また、去る八月二十二日には第二臨調の調査団も視察なさったということが記事に出ておりました。  こういうすばらしい村ですから、あるジャーナリスト、中里憲保さんという人が、この大成果の陰には村立沢内病院の医師増田進先生を初め、村長さんや関係者の血を吐くような努力があったのだということで、この状況を細かく取材して報道しているわけですね。そこで、私はその記事をそのまま拾い読みしてみたいと思うのですが、私はそこへまだ行っておりませんけれども、厚生省、行くには行かれたのですか。
  224. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 私は残念ながらお話を聞くだけで行っておりませんが、厚生省の技官を派遣いたしまして、実情をつぶさに教えていただいております。
  225. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いまの記事を読ましてもらいますと、   医者の“金ヅル”とまでいわれる、年寄りと赤ン坊ばかりの村が、なぜ日本一、医療費のかからない村になれたのか。なぜ、村人たちは健康に自信がもてるようになったのか。奥羽山脈の山深い寒村で始まった、二十年近い健康確保のための闘いが、ようやく実を結んできたのだ。綿密な住民の健康データと、先手を打った健康管理とアフタケア。納得させ、安心させる医療……やはり、そこには勇気ある医者の血を吐くような努力があった。ということで始まるわけでございますが、そのずっと後の方にこういう記事もあるのです。   医療費の無料化が進んで、国民は気やすく病院へ行けるようになった。まず、最も病気をみつけやすい老人が、医者に吸いよせられた。病院の待合室は、老人サロンと化し、用もない老人が、医者に一、二分診察を受けると、半日はそこで時間をつぶすようになった。   食欲がない、体が重く感じる、夜眠れない……。年寄りなら当然の傾向も、すべて“病名”がつけられて、医者の“お客さん”とされていった。   当然のことだが、医療費は増大し、保険税はパンク状態になった。 こういうふうに言われております。  また、その次に厳しい言葉があります。   増田にいわせると、こんなことは、医者の保険点数かせぎ、儲け主義さえなくせば、容易なことだという。ここで増田先生が言った言葉ですが、   「薬屋の宣伝にのって、医者が薬を使いすぎるからですよ。国保財政の赤字は、受診側に原因があるのではない。医者の乱診乱療と、薬づけにあることを、もう、いい加減に反省すべきですよ。大学には論文至上主義のペーパー医者がおり、町には患者がふえると喜ぶ、金儲け医者がウヨウヨしていることが問題なんです」 こういう厳しい言葉も、同じお医者さんであるその増田先生の口から出ているわけですね。  また、その次のこの言葉を厚生省は知っているかどうか。知っていれば答えてもらいたいのですが、   村の診療所には、大学から三カ月交代で医者が来ていたが、「そのほとんどはひどいヤブ医者」(村の長老)だったという。   なかには、年をとりすぎて聴診器の音が聞こえない人や、麻薬中毒の医者もいた。空手狂の医者が、病院の壁をこぶしで突いてつき破ったりもした。いくつもの壁の穴から冷たい雪が吹き込む、という信じられないようなありさまだった。こんな状態では、村人と医者の間に、信頼関係など生まれるはずもなく、村の医療財政は、“破産”状態だった。   「このままでは村がつぶれてしまう!!」   後に『生命村長』と異名をとった当時の村長・深沢晟雄が、死にもの狂いで医者捜しに走りだした。 これは、敬称は略しますと最後の方に載っておりますけれどもね。そういう記事があるわけでございます。  技官が現地に行ったということでございますけれども、こういう状態もつかんできているかどうか。どうですか。
  226. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 ただいまのお話のようにそこまで詳しいことは私も聞いておりませんが、何といいましても、村長が大変な努力をされまして、病院医師の確保に努められた。そして、豪雪山村地帯あるいは交通不便の環境というふうなものを克服して、保健婦や栄養士さん等と一緒になって、村立病院のスタッフが積極的に治療よりも健康管理活動、健康づくりということに非常に力を注がれた結果が、今日の成果を来しているというふうに報告を受けております。
  227. 大橋敏雄

    ○大橋委員 このような、一面では非常に喜ばしい成果の内容でございますけれども、それが改善されるまでの実態というものは、なるほどこれでは医療保険というものは赤字になるはずだということが幾つもあるわけですね。これが、言われるところの抜本改善の最大の目星ではないだろうか。また今度の老人保健の最大の目標、予防あるいはリハビリテーションというものを重視していく立場からは、これはすばらしい参考になる内容ではなかろうかと思うのです。  具体的にどういうことをやったのか、つかんできていますか。
  228. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先ほども申し上げましたように、沢内村では医師を中心といたしまして、保健婦、歯科衛生士、栄養士、その他役場の方々、薬剤師さん、放射線技師さん、臨床検査技師さん、いろいろな方々が一体となりまして、分娩に始まります妊産婦健診から母親学級、乳幼児健診あるいは胃腸病検診、婦人科検診あるいは出かせぎ健診、結核検診、一般の健康相談、家族計画あるいは栄養教室、歯科衛生、農民体操あるいは総合成人病検診、糖尿病教室、実に幅広いいろいろな健康管理活動をおやりになっておりまして、それが今日の成功に結びついたものというふうに考えております。
  229. 大橋敏雄

    ○大橋委員 厚生大臣、ここの村は、確かに皆さんの死にもの狂いの努力の成果ではありますけれども、それには総体的な環境整備がまず図られたようです。それから、これは村がやるわけですけれども、たとえばナイター設備を持つグラウンドをつくってみたり、あるいは来年の十月には三億七千万円の工費をかけた農業者のトレーニングセンターも完成するようになっているそうでございます。言うならばこれは都会で大流行のアスレチッククラブの農村版というようなものだということが言われているわけですが、こういうふうに環境をどんどん整備していくことは、結果的には医療費の支出をどんどん低減していくことになるのだ。また、この沢内村では、いま答弁があったように、母子手帳から始まって学童手帳、成人すると成人手帳、満六十歳になると老人手帳、次々と手帳が追っかけていって、これらの手帳は過去の予防接種から検診、治療、リハビリまでのすべてを記録、村立病院には全村民の健康カードもファイルされていて、このデータは健康手帳よりさらに詳しく病歴、健康状態も記録され。住民の健康管理を村が全責任を負っているのだといまの太田村長さんがこの体制を自慢してお話しなさっておるようでございます。これはまさに今度の健康手帳のはしりだと思うのでございまして、この手帳のあり方をすでに教えていると思うのです。  こういうことを踏まえて厚生大臣の予防体制の整備に対する決意を聞かせてください。
  230. 村山達雄

    ○村山国務大臣 ただいま沢内村の事例を挙げて詳細な御紹介ありがとうございました。私もこの村の健康づくり、村を挙げて、地域を挙げてやっておった長年の成果が出ておるものだと考えております。  私自身も、沢内村ではございませんけれども、就任直後、長野県の佐久郡に参りました。数字で見ますとあれほどの成果ではございませんけれども、やはり大変なものでございまして、これまた医療機関、それから郡、市町村、保健所、それから何よりも住民が非常に一体になってやっている姿を見て実は感動したわけでございます。  そういう意味で、本当にこれは組織ももちろん大事であるけれども、みんながやる気を起こさないと、これは事によると絵にかいたもちになる。やはり精神が入らなければだめだということをつくづく感じているのでございます。  特に予防につきましては、これはもう大変なことでございます。今度はわれわれは壮年からやるのでございますけれども、もちろんその前におきますいろいろな妊産婦の健診あるいは乳児の健診等々、こういったものと連続あるものにいたしまして、そしてこれを実りあるものに絶対にしたいと考えておるわけでございまして、全力を挙げましてこのヘルスの事業を推進してまいりたいと考えております。
  231. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いま私が手にしているのは社会保障制度審議会の先ほど言った昭和四十六年の答申なんですが、その中にも「老人医療問題処理の指針」という中に「まず、問題を当面話題となっている範囲に限った場合次の三つが原則となる。」という書き出しで、一、二、三という内容が記されているのですが、その第三の中に、「どの型によるにしても相当金のかかる政策であることは明らかである。」これは今度の老人保健とはちょっと趣旨は違うのですけれども、いずれは総合的な体制をやらなければだめだということがその前にうたわれている。それに次いで、「どの型によるにしても相当金のかかる政策であることは明らかである。その多くを国庫補助に期待するのは当然としても、それと合わせてこの実施には若い世代が今よりも多くの負担をすることが予定されざるを得ないことは、忘れてはならない。」こういうことが言ってありますね。  その前に、これは第二の中ですけれども、「その他の大多数の老人のためには、日常生活と結びつく形での健康管理の充実に重点が置かれるべきで、必要があれば診療報酬上特別項目の設定を考えるのがよい。」つまり老人に限っての医療あるいは健康というものについては、その特殊性にかんがみて診療報酬も特別項目を設けた方がいいぞ、こうあるのです。  私は、わが党で、試案ですけれども老人保健法案を提示したときは、そこまで気がつかなかった。しかし、今度の厚生省案はさすがに専門家が出してきた案だなと思ったことは、老人保健審議会の設置がうたわれているわけですね。私は、これはなるほどなと理解したわけですけれども、念のために、何のために設置するのか、わかりやすい言葉でまず説明していただきたいと思います。
  232. 吉原健二

    吉原政府委員 老人保健審議会でございますが、いまお話のございましたように、新しい老人保健制度というのは、医療とヘルスというものを総合的、一体的にやっていこうといういわば画期的な制度でございまして、既存の制度の枠を越えた新しい制度でございます。そういった意味におきまして、この事業の運営につきましては、保健事業のやり方、それから医療、それから費用の負担、そういったさまざまな面につきまして総合的に、包括的に国民の方々の御意見を聞きながらやっていくということが必要なのではないかと思っているわけでございます。  そういう趣旨におきまして、老人保健事業の関係者とそれから学識経験者約二十名の方に委員をお願いいたしまして、いま申し上げました老人保健のさまざまな問題について総合的、包括的に御審議していただくという趣旨でこの老人保健審議会を御提案しているわけでございます。
  233. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私も、先ほど言うように、予防、治療、リハビリテーションという一貫した画期的な大事業になるわけですから、そういう意味から、その行政を円滑に推進していく上には、当然指示する本拠地になるものが必要であろう、これは理解できるわけですから、そういう立場からこの老人保健審議会を見ていくときに、ああこれも必要だなというふうに理解したわけです。  ところがきょうも午前、午後続いて社会党さんの方から質問がされておりますように、医師会との間にこの問題が協議されて、密約的に何かこれが削除されるとかされぬとかいう話がある。私たちもそういううわさはあちこちから聞いているわけです。本会議でも私はこれを質問したわけでございますが、総理大臣も厚生大臣も、そんなことはありません、きょうの答弁も、全くありません、信じてくださいということですから、私はそれを信じたい、こう思うわけですけれども、もう一度私も改めてその点を聞いておきたいと思います。
  234. 村山達雄

    ○村山国務大臣 先ほども申しましたように、われわれがいま老人保健審議会を廃止するとかあるいはそこでの支払い方式の見直しをやらないとか、そういう事実は全くございません。
  235. 大橋敏雄

    ○大橋委員 ただ一説には、いま行革が推進されておりますね。少しでも削っていこう、縮小していこうというときに、人も要る、金も要る、そしてそうした審議会等をつくれということになると、とてもこれは行革とは逆行だぞ、だからこれはつくらないで自主的にそれができていけばいいのじゃないかというような話も聞くのですけれども、行革というのは言うまでもなく不要不急、肥大化したものの行政に対する縮小あるいは削減あるいは調整等々、また削除することもありますが、本当に必要だというものあるいは緊急なものは当然設置してしかるべきだと私は思うのです。この点、いま言ったように医師会との密約はないとおっしゃるし、ならば国民的立場に立って大局観に立って英断を下してぜひともこれは設置してもらいたい。  ただ、私が一つ疑問を感じているのは、この老人保健審議会中医協との関係はどうなるのだろうかなということなんですが、いかがでしょうか。
  236. 吉原健二

    吉原政府委員 中医協健康保険等の診療報酬等について御審議をいただく機関でございます。この老人保健法におきまする診療報酬につきましては、既存の審議会、協議会といたしまして中医協があるわけでございますから、それを活用してはどうかという御意見も考え方もあろうかとは思いますけれども、やはり医療とヘルスというものを一体的にやっていくその中での医療のあり方というものを、老人の心身の特性というものを考えながら検討していただく機関としましては、新しいこの老人保健審議会で御審議願うのがより望ましいのではないかということで、老人保健審議会をお願いしているわけでございます。
  237. 大橋敏雄

    ○大橋委員 医師会の方から非常に反対の声が出ているのは、支払い方式の見直しというその一点にあると思うのですね。第一、中医協がそういう問題をやっているのじゃないかということから来ていると思うのですけれども、同じく先ほどの制度審の答申の中にこういうのがあります。  「保険診療と自由診療の調整 (一)現物給付方式の評価」という項の中に、「国民皆保険の実施によって、国民は医療を平等かつ速やかに受けることができるようになった。これは一つにはわが国の医療保険がほとんど差額徴収を認めない現物給付方式を堅持したからであった。特に入院治療の普及はこれなくしては到底考えられなかったし、また、ある時期まではこの方式をとったことが医療内容の向上に大きく貢献したといえる。」ここはいいのですよ。「しかし、医療の普及が進むにつれ、この方式の堅持は、いつの間にか保険医療の内容を次等にゆがめていった。保険医療における浪費は増大し、患者が受ける医療の内容をよりよくしようとする刺激が医療担当者から奪われることにもなった。このようになった最大の原因は、物と技術の分離が行なわれていない診療報酬体系の下で、出来高払い方式をそのまま継続してきたことにある。この意味において、支払い方式の問題は、診療報酬体系と不可分の問題として根本的に検討される必要がある。」こうあるのですね。  だから、言われるところの支払い方式等の診療報酬体系という問題は、当然中医協審議していくものである。しかし、今度出されている老人保健審議会の診療報酬云々というものは、先ほど当局が答弁したように、言われるところの中医協でやっているのとは少し状況が違うんだということでしょう。  この辺ちょっと大臣からお答えを聞いておきたいと思うのです。
  238. 村山達雄

    ○村山国務大臣 二点あると私は思うのでございます。  一つは、この支払い方式を出来高払いにするにせよ、あるいは仮に団体請負制度にするにせよ、やはり現行の点数制度というものは積算根拠として残るだろうと思うのでございます。したがいまして、その医療費を考えるときに、老人の疾病の特性というものを考え、そして物と技術との分離、これは中医協でもやっているわけでございますけれども、そういうものとして、いわば点数の合理化という面が一つやはり老人として検討されるであろう、こう思うわけでございます。それはまさにいま委員が指摘された点でございます。  もう一つ言っておりますのは、出来高払い制度であることは、それはある意味で言いますと保険サービス、十分なる高度の技術を、医療を保険に入れるわけでございますので、サービスは非常にいいんだ。その意味で日本人の健康がよくなるということには非常にプラス面があるけれども、ともすれば、一部の人たちがそれを利用して不正の請求をするまた動機にもなっておる。したがって、そういう医療資源のむだ遣いあるいは不正請求ということをなくすためには、外国で行われておるような団体請負制度というようなものが取り入れられるのかどうか、あるいは人頭登録制度のようなものが入れられるかどうか。もちろん日本の制度とそれらの制度の間には一長一短あることも当然でございますし、そしてまた、その医療体制がどうなっているかということ、それからわが国になじむかなじまぬか、こういう問題はもちろんあるわけでございます。そういう問題をも踏まえて、現在の出来高払いそのものを見直す余地があるかどうか、これも合わせ検討させていただきたい。  そこが、いままでの中医協はそこまではいっていないわけでございますので、そういうことを考えておるわけでございます。
  239. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いま申し上げました答申の中に、その次の項にもそういういま大臣がおっしゃったような問題に関連した字句がありました。それはそれとして、要するに、いままで私が申し上げましたように、社会保障制度審議会の昭和四十六年度の答申は、すべてを言い尽くしていると言っても過言ではなくて、むしろこれを手本に推し進めていけば、だれが聞いても納得できる改正が実現できるのではないか、このように実は思うのであります。  そこで、老人のサロン化現象といいますか、いろいろと批判されている問題があるわけでございますが、この言葉は老人医療が無料化されてから出てきた言葉であるわけですね。これは一体どこが悪いんだということですね。私はこんな状態になった根本原因というものは、老人を取り巻く環境の不整備にあったんだ、これ以外にない、こう考えているのですけれども、厚生省はこの点についてどういうふうに考えているかお尋ねします。
  240. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これは私はいろいろな原因があると実は思っているのでございます。  一つは、やはり従来の日本の家族制度というものが核家族になってきた、こういうところも大きく原因していると思います。いままでの三世代世帯というものがだんだん失われてきた、それで老人だけの単独世帯がふえつつある、これがいま社会の趨勢でございまして、しかしいままた三世代を望む声がだんだん出てはおりますけれども、少なくともいままでそういった傾向があった。老人が家族から、あるいは地域から、言葉は適当かどうかわかりませんけれども、疎外されたというところ、ここにも大きな原因があると思います。それからもう一つ、やはり完全な無料化制度がいいのかどうかという点も反省する余地があるのではないだろうか。それから第三番目は、それにしてもサロン化するということは、やはり老人がお互いにコミュニケーションをやるいわば中間施設のようなもの、こういったものが不足しておったというところにもあるんじゃないだろうか。  そういったもろもろの原因が重なって、そして言われるような、病院がサロン化してきたというような批判が生まれたのではないであろうか、こんなふうに考えているわけでございます。
  241. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要するに、答申の中にもこうあります。「第二は、その採択する政策が本格的であればあるほど、現有の医療供給力では消化し切れなくなる可能性が強い。特に入院については老人入院患者の必要に適応した特別の入院形態の開発とそれを役割とする医療施設を整備することは、この政策の採択には不可欠のことである。また、在宅の寝たきり老人患者のためには、それに適応した訪問医療サービスの仕組みを整備する必要がある。その他の大多数の老人のためには、日常生活と結びつく形での健康管理の充実に重点が置かれるべきで、必要があれば診療報酬上特別項目の設定を考えるのがよい。」ここにつながっていっているわけですね。  いま大臣もその点に十分気がつかれているようでございますが、いま不足している問題点を緊急に早急に整備充実していただきたい、これを強く要望しておきます。  それから、今回の法案において医療に関する費用負担についてでございますけれども、その三割がいわゆる公費で負担されて、残りの七割が各保険間でいわゆる財政調整が図られることになっているわけですが、これが実施されるとすれば、従来と比べて各保険間の変化はどのようになるのか、御説明願いたいと思います。
  242. 吉原健二

    吉原政府委員 五十六年度の試算によりまして申し上げたいと思いますが、現行制度とそれから試算の一の考え方で申し上げてみたいと思います。  まず、保険者全体の負担でございますけれども、現行制度と新制度を比較いたしました場合に、保険者全体といたしましては千八百十億の減になります。  それを保険料と国庫補助に分けて申し上げますと、保険料全体といたしましては二百八十億の減でございます。  被用者保険の保険料は七百七十億の増になります。その内訳を申し上げますと、政府管掌健康保険が六十億の増、組合健康保険が六百三十億の増、日雇健康保険が四十億の減、船員保険が十億の減、共済組合が百三十億の増ということでございます。  それから、国民健康保険の保険料は千五十億の減ということになります。  そういった保険者に対する国庫補助、それは国民健康保険と政管健保が中心でございますけれども、そういった保険者に対する国庫補助は千五百三十億の減ということになっています。
  243. 大橋敏雄

    ○大橋委員 ということは、従来その経営努力もあって豊かな保険者である立場の方が、貧しい保険者への拠出ということになっていくわけですね。言葉は悪いのですけれども、親方日の丸式といいますか、そういう感覚で、経営努力がなされてないじゃないかという指摘を受けている制度もちらほらあるわけですが、そういうことで、一般的な各制度間、保険間の財政プール、財政調整というものは厳しい反対の声がありました。これはとてもむずかしいぞという感じであったわけでございますが、今回のこの案が出されて、その関係諸団体の方々が、老人対策だ、老人を救済していく立場だ、しかも予防、リハビリテーションと充実されていくのならば、相当の拠出になるのだけれども、まあやむを得ないだろう、よし協力しようじゃないか、このような連帯の意識といいますか、そういう気持ちから、非常にありがたい姿勢を示してくださっているわけでございますが、その関係者の強い要望は、こうして私たちも今後の老人医療に対してあるいは老人の保健に対して精いっぱい協力申し上げますが、やはりむだはチェックしてもらいたい、きちっとしてもらいたい、そしてわれわれがこうして拠出をするしがいがある制度にしてくださいね、こういうことなんです。当然の要望だと私は思うのですね。  そこで、じゃあどういうことかと具体的に聞きましたら、やはりその期待の裏づけは老人保健審議会における審議内容だということでしたね。  ですから、これは、医療費のむだというのは、老人保健、医療保険に関係なく当然これはチェックしていかなければならぬことではありますけれども、いま言われたような立場の方々の要望もこれあり、もう一度この保健審議会のあり方について大臣から答弁をお願いしたいと思います。
  244. 村山達雄

    ○村山国務大臣 おっしゃるように今度は大変な財政調整をお願いするわけでございます。老人一人七十歳以上にかかります医療費は、現在の各保険とも大体同じでございますけれども、問題はその老人の加入数にあるわけでございます。保険財政が、どこが一体財政が苦しくなるか、そういうところを考えまして今度の試算Iのようなものを考えたわけでございます。  それにいたしましても、やはり負担を多くするところもございますし、また全体として医療費は、調整の有無にかかわらず、ふえていく傾向にあるわけでございます。それだけに、それが保険料で賄われるにしろ、国庫補助という税金で賄われるにしろ、やはり国民の負担でございます。これが本当に適正に行われなければならぬことは言うまでもございません。  そういう意味で、私は、今度できます老人保健審議会の持つ意義は重要だと考えておるのでございまして、私たちもできるだけの知恵をしぼりまして、審議会と一緒になって国民の皆様に御納得のいただけるような診療報酬のあり方を結論づけてまいりたいということで、懸命の努力をしてまいるつもりでございます。
  245. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今度の法案で、一番改悪だと言われておるところは一部負担の導入なんですよ。入院一日三百円で四カ月間、初診時は五百円だということなんですが、まずそうした根拠を聞いておきたいと思うのですけれども、どうですか。
  246. 吉原健二

    吉原政府委員 まず一部負担の考え方でございますけれども、現在の老人医療の無料化制度、お金の心配なしに医療にかかれるという点では大変よい制度でございますけれども、その反面、ややもすると健康に対する自覚を弱めている、あるいは無料であるがゆえの行き過ぎた受診を招いているというような御意見もあるわけでございます。そういったことを踏まえまして、新制度におきましては、老人の方々にも無理のない範囲内でどなたにも持っていただけるようなごくわずかな金額を負担していただきたいという趣旨でお願いをすることにしているわけでございます。  したがいまして、金額の根拠といたしましても、いま申し上げましたように、本当に必要な受診を妨げるようなものであってはならないということを第一に考えておりますし、それから老人の方々は収入の低い方も多いわけでございますので、そういった方々も含めてどなたでも負担していただけるような無理のない額であるということが第一でございます。  それから二番目に、実際にかかった費用のごく一部を持っていただくわけでございますけれども、実際にどの程度の費用がかかっているかと申し上げますと、外来の場合には一日一回で約三千円、月にいたしますと平均約四回ぐらい老人の方は外来にかかっておられるわけでございますけれども、そうしますと一月では約一万三千円ということになるわけでございます。それから入院の場合には、これは若い人も老人の方も大体同じ金額でございますけれども、一日約一万円程度の医療費がかかる、そういったことを踏まえまして、ごくわずか二、三%というような考え方で、五百円、三百円という考え方を出したわけでございます。  同時に、やはりもう一つ、健康保険の本人の負担が、御案内のとおり初診の場合に八百円、入院の場合に一月でございますけれども一日五百円。老人の方々にはそれより低い額でなければならない。そういったことを総合的に考えまして、五百円、三百円という負担をお願いしたいというふうに思っているわけでございます。
  247. 大橋敏雄

    ○大橋委員 実は、かつて公明党の試案として、部会案として発表した老人保健法案の中には、われわれも一部負担の考えを〇〇円ということで表現して出している。まだ党内の賛否両論があって決定した案ではなかったのですけれども、一応そういう試案を出した、私は部会長という立場でもあったものですから。  従来、医療保険というものは病気したときにのみ対象になるわけですね。だけれども、老人というのは病気にかかると大体手おくれだということがかなり多いのですね。やはり、私はこれは予防だ、あるいは一たん病気をしても軽く終わってそして社会復帰できる、こうした予防、治療、リハビリテーションという一貫性のあるものをつくる必要があるということで、従来は予防とかあるいはリハビリテーションというのは保険外になっておったわけですね。ですから、原則として自己負担になるわけでしょう。ここが本当の意味で充実されると、かかるお金もかからなくなる。そして重体となって濃厚診療を受けるよりも、予防して軽いうちに治して、健康維持を図っていく、これの方がいいな、では、こうした一貫したものが本当の意味ででき上がれば、いまいろいろな批判もこれあり、わずかなお金ならば負担していただくこともいいのじゃないかという考えで、実は〇〇円ということにしたわけです。  医療部門における一部負担の考え方も、決して言われるところの自主受診抑制、こうした姿になってはいかぬ。先ほどの岩手県の話ではないけれども、乱診乱療に陥らない程度のごくわずかな、これが幾らになれば妥当なのかは意見の分かれるところでございますけれども、われわれ公明党の医療保険の抜本改善の基本的な思想の中に応能負担の原則というものもうたっておりますし、私は、一部負担必ずしも最悪のものではない、ただし、これはそのかけ方、予防、リハビリテーションに対する体制整備に合わせて考えられていく問題であろう、このように思っているわけでございます。  実は、先ほども読んだのですけれども、制度審の答申にも、「相当の金のかかる政策であることは明らかである。その多くを国庫補助に期待するのは当然としても、それと合わせてこの実施には若い世代が今よりも多くの負担をすることが予定されざるを得ないことは、忘れてはならない。」こうありますから、そこで私たちも一部負担〇〇円ということで考えているわけで、この点はいまの政府案に対してはわれわれはそのままうんと言える状態ではないので、あなた方に言っても、これは出した方ですからどうにもならぬと思いますから、与党の自民党さんと折衝していきたい、こう考えているところです。  そこで、もう時間も迫ってきましたので次に移りますけれども、健康手帳の件でございます。  従来老人医療は七十歳以上、寝たきり老人は六十五歳以上を対象に規定していたわけですけれども、今度の法案を見てみますと、「七十歳以上の者その他必要と認められる者に対して交付するものとする。」こうあるのですけれども、六十五歳以上の寝たきり老人はどうなるのか、あるいは「必要と認められる者」は一体どういう者を言っているのかということをお尋ねしたいと思います。
  248. 吉原健二

    吉原政府委員 健康手帳の交付対象でございますけれども、七十歳以上の方には全員交付をする、それからいまのお尋ねの六十五歳以上の寝たきりの老人の方にも全員交付をしたいというふうに思っております。それから四十歳から六十九歳までの方々につきましては、健康診査の結果精密診査が必要だ、あるいはその結果さらに要注意の方々、そういった方々に健康診査の結果の記録などをいたしまして、それから同時に日常の健康管理上気をつけるべき点、そういったものを記載したものをお渡しするということを考えているわけでございます。
  249. 大橋敏雄

    ○大橋委員 では、あとの人に対していつごろになると大体全部に行き渡るように考えているのですか。
  250. 吉原健二

    吉原政府委員 私ども将来は四十歳以上の方、健康診査を受けた方、できるだけ全員の方々に健康手帳を交付して、それを日常の健康管理に役立つような方向に持っていきたいというふうに思っておりますけれども、当面四十歳以上の健康診査の対象者全員で四千四百万人という大変大きな数でございますので、さしあたってはいま申し上げましたように、健康診査の結果本当に要注意あるいは特別な健康管理が必要な人に限ってお渡しをしてやっていきたい。いつごろかという御質問でございますけれども、将来はそういうことを考えているということでお許しをいただきたいと思います。
  251. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今回は健康教育あるいは健康診査ということで保健に大変力が入ることになっていくわけでございますけれども、それにつきましても、いまの会社に勤めている方々、いわゆる職域における方は会社のそうした保健事業の恩典に浴してさらによくなっていくであろうと思いますけれども、それに比べて地域の方はかなり格差が出るのじゃないか、こう思うわけでございます。むしろ職域と地域との格差の拡大になっていくのじゃないかなという心配があるのですが、その拡大の防止と解消策について考えを聞かせてください。
  252. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 今回の法案では、保険者の方に対しましても、加入者の老後の健康保持のために必要なヘルス事業につきましては積極的に推進してもらいたいという趣旨の責務を課しているわけでございます。したがいまして、各保険者に対しましては、所管の部局を通じましてこのヘルス事業を促進するよう特に力を入れてまいりたいというふうに考えております。  その場合、被用者でありましてもこのような職域保健事業のサービスを受ける機会を得られないというような人も出てくるかと思いますが、それにつきましては市町村が行う保健事業で積極的にこれをカバーしていく、こういうふうにいたしたいと思っております。  また、市町村間の格差の問題につきましては、保健所の機能の協力というふうな点でできるだけ市町村の格差がないように努力してまいりたいと思っております。
  253. 大橋敏雄

    ○大橋委員 厚生大臣、今度の実施主体は市町村になるわけですが、やはり市町村にはかなり財政事情のアンバランスがあると思うのですね。そういうことで、せっかくこういう一貫した法律ができていくわけでございますので、ひとしく公平にこの恩恵に浴していけるような手当てが必要だと思うのですね。特に厚生大臣にこの点の考え方を聞いておきたいと思います。  もう時間が迫ってまいりましたので、最後に、これは事務当局からの説明で結構ですけれども、今回の法案が仮に——どうなるかわかりませんよ。仮に実現するとしましたときに、各市町村が国保の問題で、財政問題で非常に悩んでおるところが多いわけでございますが、こうした地方自治体に対するメリット、デメリットといいますか、どの辺が非常に有効な関係になっていくのか、また痛みが出てくるのか、そういう点も含めて説明願いたいと思います。
  254. 村山達雄

    ○村山国務大臣 ただいま御指摘になりましたヘルスの関係で各市町村間で格差が出るのではないかという点につきましては、私たちも実は心配いたしているわけでございます。そういうことがないように、これから計画を緻密に立てさせていただきまして、そうして必要な援助はやっていく。また、先ほど政府委員から述べましたように、保健所あるいは保健センター、こういったものを十分に機能を発揮させまして、その間の技術的な格差をなくしてまいりたい、かように考えているわけでございます。  何回も繰り返すようでございますけれども、何よりもやはりみんなが一緒になってやる気を起こしていただく、これが一番大事だと私は思っているわけでございまして、これを幸いに通させていただきますれば、われわれは関係団体、府県はもちろん、市町村あるいは保健所、こういったものに十分なPRをし、また国民の一般の方にも御理解をいただくように、鋭意努力してまいるつもりでございます。
  255. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今度の行革関連法案審議を通じてもかなり浮き彫りになってきた問題として、国が地方に肩がわりさせる問題がかなり指摘をされておりました。行革は当然やっていかねばなりませんけれども、単なる肩がわりはよくない、また、こうした老人保健法案実施につきましても、市町村に無理がいくような形に絶対にならないように配慮していただきたいことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  256. 湯川宏

    湯川委員長代理 次に、米沢隆君。
  257. 米沢隆

    ○米沢委員 審議促進ということで夜の十時までやろうとは決めたものの、大変ですね。本当に御苦労さんでございます。  先ほど来、るるいろいろな質問が出ておりますから、重複する部分があるかもしれませんけれども御容赦をいただきまして、持ち時間内で御質問をさせていただきたいと思います。  まず大臣にお伺いをしたいのでありますけれども、御承知のとおりこの法律は過去の老人保健医療についてのさまざまな答申、建議、報告を受けて、大げさに言えばおよそ十年近い歳月をかけてようやく形を整えた法案でございます。そして、この法案に対し、現在さまざまな評価や批判が行われておりますけれども、この法案が長い臨月を経て生まれ、よってこれから何をもたらそうとするのか、まずこの法案が誕生するに至った動機、背景、そして今後この法案が老人医療の分野で受け持つであろう役割りについて、大臣はどのようにお考えであるか、聞かしていただきたいと思います。
  258. 村山達雄

    ○村山国務大臣 まずこの法案を提出いたしました背景でございますが、御案内のように日本は戦後三十六年の間に、言ってみますれば世界一長寿国になったわけでございます。しかしながら、つぶさに見てみますと、やはり余り健康でない寝たきり老人というのが三十万人もおるということでございますし、そしてまた地域との融和がうまくいかない、あるいはまた医療の関係でも必ずしも十分ではない、そうして、どの保険制度に入っているかによりましてその負担が非常に違う、こういうようなことが言われているわけでございます。  そこで、何よりも人間の幸せというのは、私は、長寿と同時に健康で長生きするということでなければならぬと思います。そのことが本人の幸せだけでなくて、その家族の幸せにも通じますし、また国民経済的に見ましてもこれは最も重要なことであろうと思っているのでございます。  そういう意味で、今回は単なる医療という問題を超えまして、何といってもやはり若いときからの健康づくりというものに着目しなければならぬ、そういう意味で、総合的なヘルス事業をやりたいというのが第一点でございます。  第二点といたしましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、現在の各種の医療保険制度の中で困っているのはどこかといいますと、老人をたくさん抱えておる保険会計が困るのはもう当然でございまして、各保険会計の老人一人当たりの医療はそんなに違っておりません。ただ、数だけがその保険財政に対して非常な圧迫を加えているわけでございます。こういったことを考えますと、その費用の持ち方につきまして、どうしてもやはりある程度の国民の納得の得られる範囲で調整が必要であろう、こういうことで、いまだかつてない方式でございますけれども、いわば拠出金制度ということによりましてその間の負担の調整をしようとしたわけでございます。  同時に、第三点といたしまして、医療資源を節約するということはあらゆる面で必要でございます。特に老齢になりますと一人当たりの診療費が四倍以上もかかるわけでございますので、これは最終的には国民の負担に帰するわけでありますので、その医療資源をどのようにして節減するか、これをひとつ篤と専門の審議会で検討していただきたい。そのために老人保健審議会というものをつくりまして、以上三点の総合的なヘルス対策、それから費用分担のあり方、同時に医療資源の節約、こういう三点を審議していただきたい、これが提案いたしました背景でございます。
  259. 米沢隆

    ○米沢委員 ただいま大臣から御答弁いただきましたが、言葉は違いますけれども、私どももそういうものが背景となってこの老人保健法が誕生したと理解をいたします。一つは、やはり強烈なのは、医療資源の節約という言葉で表現をされましたけれども、財政的な動機というものが大変大きな原因であろう。もう一つは医療の正しいあり方といいましょうか、御承知のとおり老人が殺到して病院、診療所の正常な診療が阻害されたり、あるいは病院のベッドが慢性疾患の老人たちに占拠されて、緊急重症患者の収容に支障が生じる、こういう現象、あるいはまた老人一人当たりの医療費が約三十万近くもかかっておりますし、おっしゃいましたように他の年齢階層の三、四倍も消費しておるわけでありますから、そこにひょっとしたら乱診乱療はないのかという医療費の適正化という観点からメスを入れる、そういうような要請もあったのだろうと思います。  同時にここで注目すべきことは、言葉の使い方は完全ではないかもしれませんけれども、医療保障のあるべき姿、ややもすると治療に偏した現在の医療体制から、予防、治療、リハビリという形で包括医療というような形に一歩踏み込んだ、そういうふうに私たちは理解をしておるわけであります。したがって、この三つの動機のうちに今後どこに重点が置かれていくのか。その置き方によって、この法案が単に財政対策にすぎないという批判をこうむるか、それとも包括医療、いわゆる医療保障の本質をやっと腰を上げて厚生省はやり始めたというふうに評価されるのか、そういう分かれ目になってくるのではないかという気がいたします。  私はこの法案を見ましたときに、法律の趣旨は先ほど言いましたように予防からリハビリまで、いわゆる包括医療の制度化への第一歩と見ましたけれども、内容を見る限り、いわゆる予防、保健事業、リハビリ等の機能訓練については、マンパワーも含めて現実の姿と、あるいは厚生省が示しておられる将来予測を見ましたときに、包括医療を目指すにしては余りにも貧弱であると言わねばならないと思います。この点が本法案を評価する際の最大のポイントの一つであると私は思っておるわけでありまして、私の所論に対して大臣の所信を聞かしてもらいたい。
  260. 村山達雄

    ○村山国務大臣 三つの目的はそれぞれ関連して司いる問題であることは言うまでもございません。しかしどこが一番画期的であるかといえば、いま米沢委員が言われた包括医療に最重点があるんだろうと私は思うのでございます。ほかの拠出金の出し方、こういったものは計数の関係でございますのでかなり具体的に示されておりますので、条文で言いますとそこに条文の数が一番多いのでございますけれども、しかしこのヘルスの関係、これは法律事項になるよりも、より多く運用問題であり、ビジョンの問題であり、今後の財政的裏づけの問題であり、そしてこれから広範に皆様の御意見を吸収してまいらねばならぬ。現状ではまだそこまではいっておりませんので、条文の数としては恐らく少ないのだろうと思いますし、これから皆さんの御意見を聞きながら、われわれも勉強しながらこの点を精力的に詰めていかなければならぬと思っておりますけれども、三つのうちで何が一番大事かといえば、やはりおっしゃった総合医療の問題ではないかと私は考えております。
  261. 米沢隆

    ○米沢委員 そこでこの法律を見ましたときに、先ほど申しましたように、そしてまた大臣が重点を置かねばならぬということでおっしゃいましたように、包括医療というものに一歩足を突っ込んだ、そして老人医療費を国民全体で調達しよう、そういう試みがある。私はそれは評価すべきであると思います。しかしながら、老人医療に関する重要な部分を、明らかにされている部分もありますけれども、ほとんど審議会に任すという形になっている。特に本法案と密着不離の問題として論議がなされております支払い方式のあり方の検討が、この法律の成立後に持ち越されているということ、これが何か困難の大きな要因のような気がしてなりません。  正直申し上げまして、いま本法案の修正の話が各党間で進められつつありますけれども、万一この修正案が詰まって、技術的に修正点が整理をされたといたしましても、でき上がった法律がどのような支払い方式で支えられていくのか、その方法いかんによっては老人医療に大きな影響を及ぼすという意味で、果たして老人の適正な医療が確実に確保されるのかという意味で、それが不分明なままで制度だけが見切り発車されることになる。支払い制度云々の議論は法律成立後、老人保健審議会であれ、あるいはまた中医協であれはっきりするかもしれませんけれども、それは少なくとも国会マターから離れていくということになれば、修正後の法律に賛成すべきか反対すべきか、われわれはハムレットのような心境なのでございます。  したがって、この制度を支える支払い方式が一体どのようなものに落ちつくのか。先ほどからの議論を聞いておりますと、決して極端な方向にはいかない。しかしながら少なくともどういうかっこうでおさまるのであろうかというくらいのものはある程度念頭にないと、法律はつくった、制度はできた、しかし、という問題にわれわれはぶつかってしまうわけでございます。言いたい気持ちは、白紙でいく、老人保健審議会で専門家の皆さんに徹底的に議論してもらって結論を得たら、それを採用するというような言い方が一番いいかもしれませんけれども、そういう余りにも大まかな議論になっていきますと、この制度を本当につくっていいものかどうか。つくったからといって、本当に有効に働くような法律になるのかどうかという判断の材料としては、先ほどから言いますように、支払い方式が一体どんなところで落ちつくのかという、少なくとも厚生省は勉強されておるはずですから、ある程度のことは言ってもらいたいと思うのでございますが、大臣いかがですか。
  262. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いまこの法案では老人保健審議会審議を待つことになっておりますが、これは決して厚生省が逃げておるわけでもありませんし、そしてまた審議会任せ、あなた任せでやろうというつもりでも全然ございません。問題がそれだけむずかしいんだ、真剣に考えれば考えるほどむずかしい問題だから衆知を集めてやろうということなのでございます。老人の疾病が普通の若い人たちの疾病と違う性質を持っておるということば当然考えられるわけでございます。そしてまた、現在やっております現物給付、出来高払い方式、これにもたくさんいいところがございますけれども、また欠点のあることも多くの人が指摘しているところでございます。そしてまた、外国で別の制度をとっておることももう周知の事実でございます。しかし、わが国にそのようなことがなじむかどうか、これについては残念ながら本当に真剣な議論が行われたのだろうかどうか、私は少なくともまだわからぬのでございます。そしてまた、それを考えまして、そのうち外国どおりでないにしてもこういう方法があるじゃないか、こういうことをこの画期的な法律を機会にいたしまして真剣に論議をいたしていただきまして、日本の最高水準に集まっていただいて集中的に御論議を賜って、そして国民の納得できる医療費節減、同時にまた老人医療に適したやり方を採用していきたい、かように思っているわけでございまして、逃げているわけでもございませんし、また案がないからといいましても、やはりスタートすべきものは事柄の性質上スタートすべきであろう、かように考えて提出いたしているわけであります。
  263. 米沢隆

    ○米沢委員 この法律の中で、老人保健審議会を設置するというのは目玉ですね。その老人保健審議会が設置された場合、議論される重要事項の一つとして、診療報酬のあり方等が掲げてあります。したがって、これは言わずもがなでありましょうが、この法律は、できますと、支払い方式の再検討、言い方を変えれば出来高払い制度の見直しを完全に意図しておるというふうに考えていいですね。
  264. 村山達雄

    ○村山国務大臣 その問題を十分論議していただきたいと考えているわけでございます。
  265. 米沢隆

    ○米沢委員 特に厚生省がこのような法律を作成したその意図は、いま御返事いただきましたように支払い方式の検討を徹底的にしてもらうということでございますから、その背景となりますのは先ほどの総論でも申し上げましたように、医療費の増高が頭が痛い、特に老人医療の増高が頭が痛い、特に老人医療の中では慢性疾患で療養に長期間を要すると見なされている問題に対し、現在のままの支払い方式を適用したら医療費は大変なことになるぞという気持ちが、特に医療保険上の危惧があるということであると考えていいですか。
  266. 村山達雄

    ○村山国務大臣 もう少し言わしていただきますと、実際にかかる医療費を抑えるつもりはないのでございます、必要な医療費につきまして。それこそ私は、言ってみますれば医療制度の発展につながるものだと思うのでございます。しかし、それだからといって、もしむだな医療費を使うという結果になっては、それが税金であれ保険料であれ、負担する人にとりまして大変なことになるわけでございますので、そういうむだは詰めていきたいということでございまして、慢性なるがゆえにその医療費を詰めたい、そんなことは考えていないのでございます。
  267. 米沢隆

    ○米沢委員 ということは、敷衍をすれば必要な医療は従来どおり確保する、しかしむだがあるとすればむだをなくすような支払い方式をつくっていきたい、こういうことでございますか。
  268. 村山達雄

    ○村山国務大臣 そのとおりでございます。
  269. 米沢隆

    ○米沢委員 いま伝え聞くところによりますと、特に老人保健というものに着目して支払い制度を議論するとすれば、やはり老人の特性に基づいて何か支払い方式が検討されるのではないかという結論からこういう議論になっておるわけですね。そうなったときに一番問題なのは、適正な医療は確保し、むだをなくす支払い方式をつくり上げるということでございますが、果たしてそんなものができるものであろうか。下手をしますと、でき上がった場合医療費の節減みたいなものにはなったとしても、ひょっとしたら老人の皆さんの医療を質的に落としてしまうのではないかという危惧は、大事なものとして常に念頭に置いてもらわなければならぬことだと思いますね。老人を尊重するか、それとも金を大事にするかと言ったら、やはりわれわれの立場としたら老人の医療を徹底的にしてもらうということを選択しなければならない、これはみんなもう当然のことだろうと思います。したがって、老人の特性に着目して、何か適正な医療は確保しながらむだを省くような支払い制度をつくろうということが現実的に本当にできるのかなという気が私は正直言ってするのでございます。  下手をして、財政対策にはなったけれども老人医療の質的な切り下げにつながったということであれば大問題であるが、その点、大臣の所見を聞かしてもらいたい。
  270. 村山達雄

    ○村山国務大臣 米沢委員と全く同じ考えを持っておりまして、もし医療サービスが老人に十分でなくなるようなことがあれば、それはもう角をためて牛を殺す以上の問題であろうと考えているのでございます。
  271. 米沢隆

    ○米沢委員 現在の出来高払い制度にいろいろな問題があるということから出発してこういう議論になっておるわけでありますけれども、従来から出来高払いというものはいろいろな問題がある。確かに医療を保障するという意味ではすばらしい制度だと私は思いますね。ところが一部にそれを悪く利用する人がおり、ひょっとしたらそれが医療費増高につながっていくのではないか、その病だけは治していかねばならない、これはもうかなりの時間こんな議論がなされてきて、そのかわり議論はなされるけれどもほとんど進展をしなかった。  一体これはどういう理由からいままで出来高払い制度というものに問題点が指摘されながら手がつけられなかったのか、この点をちょっと聞かしてもらいたい。
  272. 大和田潔

    ○大和田政府委員 現行の出来高払いのメリット、デメリットはすでにもう何遍も大臣からお答えをしておるわけでございますが、これにつきましては、敷衍して申し上げますと、現行の出来高払いの長所というものもある、短所もあるわけでありますが、やはりわが方といたしましては現段階におきましていろいろと努力をしてきたことにつきましてはひとつお認めいただきたいと思うのであります。特に現行の出来高払い方式で問題とされております、診療行為の数が多ければ多いほど収入が多くなるので、薬をたくさん出したり検査をたくさん行うといったような欠点が言われておるわけでございますが、それらに対しましては薬価基準の大幅な改定を行ったところでございますし、それから指導監査につきましても、再々申し上げておりますように努力を重ねてきておるところでございます。そういったようなことで、私どもといたしましては現行の出来高払い方式のデメリットをためていく、直していくという努力はしてきたわけでございますが、先生おっしゃるようになかなか十分な効果は一挙には上げられないわけでございますが、積み上げてまいってきておるわけでございます。
  273. 米沢隆

    ○米沢委員 問題は、出来高払いの問題点を解消する努力をされてきた、しかし今回の法律を契機に、老人の特性を見ながらその老人のところだけ何かやろうという、そこがわからないのですよ。ちょっと聞かせてもらいたい。
  274. 吉原健二

    吉原政府委員 支払い制度出来高払い制度全体の問題につきましては、先ほど保険局長からお答え申し上げましたように、従来もその短所を少なくする、補うというような形でさまざまな努力を続けてきたわけでございますけれども、今回新しい考え方で老人医療の特別の制度をつくろうとするわけですから、全体は全体として、あるいはそれとは別に老人の心身の特性、いろいろなものがございますけれども、その特性に見合った診療報酬なり支払い方式を研究していきたい。すなわち全体の出来高払い方式との関連も十分考えながら、老人の心身の特性というものを十分踏まえた最も適切な支払い方式を研究していきたい、それで実施をしていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  275. 米沢隆

    ○米沢委員 老人の特性に着目するということでちょっとお伺いしたいのでありますが、先ほどから何回も話になっておりますように、出来高払い制度のメリットというものは個々の患者の個々の医療ニーズに対してきめ細かく対応し得ること、かかる診療行為をそれぞれ評価して対価を払うことについては、私は大変すばらしい制度だと思います。と同時に、疾病というものは同じ病名であったとしても、年齢によったりあるいは性別によったり、生活環境によったり、病歴等によって疾病の態様はかなり千差万別であろう。ですから、その千差万別な病気に対して必要な診療行為をしたそのものに対して、一律に評価するような話があることはやはり問題である。これは残念ながら技術料という感覚は全然見当たらなくなるからでございます。  ところで、昭和五十二年十月二十六日に出されました老人保健医療問題懇談会の意見書によりますと、老人の心身上の特性について、「老人の疾病は、高血圧性疾患、脳血管疾患、心疾患など長期慢性化しやすいものが多く、また、幾つもの疾病が同時に存在し、更に、生理的老化と疾病が共存するため複雑な症状が現われやすい。」こう書いてあります。  そこで、この老人の心身上の特性に着目して何か支払い制度を考えようとされるのでありますけれども、こういう文章を読みますと、逆に普通の人よりも老人の疾病は複雑なものであるという感じがしてなりませんね。それゆえに、まさに個々に診療し個々にその対価を計算するという出来高払いの方が本当は逆に合っておるのであって、それを一、二の三でまとめてみたり、あるいは慢性疾患で何かまとめたりするような、あなた方が考えていらっしゃるようなことが本当にやれるのだろうか、やれるような感触が実際あるのでございますか。
  276. 吉原健二

    吉原政府委員 先生おっしゃるとおりでございまして、老人の場合には若い人と違って非常に個人差があるのがまた老人の心身の特性だということも言われておりますし、医療というものはそれぞれの患者さんの個人の状態、症状に応じてきめ細かく適切な医療が行なわれなければならないという点が一つ老人の医療を考える場合に大事な点だろうと思います。  それからもう一つ、いまもお話ございましたけれども、循環器系の病気が多いということとの関連でございますが、やはり薬とか検査というものよりか日常の生活指導なり生活管理というものが大変大切でございます。そういった意味におきまして、薬を出さなければ収入が上がらないというような診療報酬ではいけないのではないか、やはり生活の指導、生活の管理、そういった面での技術というものが診療報酬の中に評価されるようなこともあわせて考えていかなければならないのではないか、そういったさまざまな問題、視点がございますので、そういったことにつきまして、老人保健審議会で専門家の方々にお集まりいただきましていろいろ御検討いただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  277. 米沢隆

    ○米沢委員 いまの話はちょっと筋が違うのじゃないかと思うのだな。老人の心身上の特性はまさに複雑怪奇である、そういうものに本当ならば普通の人以上に細かな診療をやってあげねばならぬ、にもかかわらず今度は老人の心身上の特性に着目して何か合理化しようというのでしょう、むだを省けるようにしようというのでしょう、支払い方式で。そんなものが本当はできるのかと聞いておるのです。そういうできるような感触をお持ちなのですかと聞きたいのだな。
  278. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これは私も専門家ではありませんので、私の感触だけ申し上げます。  確かにおっしゃるように一つの病気だけでなくていろいろなものを持っておる、あるいはまた機能低下というものが一緒にやってくる、こういったことから言うとかなり複雑なものになるということも事実でございます。また一方、これはある循環器の大家がおっしゃったのでございますけれども、薬よりもむしろ食事の方、保健婦の生活指導、この方が大事ではないかと言う権威のあるお医者さんもおるわけでございます。そしてまた病気によりましてはリハビリとの関連をつけなければならない、こういうものもあるのでございます。  確かに複雑な要素もありますけれども、それらを詰めてまいりますと括弧でくくれる部分も事によるとあるのではなかろうか、非常に複雑な面とそれから括弧でくくれる部分と両方あるのではなかろうか。まあいろいろな考えはありますけれども、それはとうてい私たち素人が判断すべき問題ではなくて、やはり日本のその方面における各方面の権威の話を聞いて、そしてしかるべき診療体系を樹立する必要があるであろう、そういう意味で実は、ある意味で申しますと非常に謙虚に考えて、われわれはこの老人保健審議会で十分論議を尽くしていただく。そしてまた各党によりましては外国の制度がいいという人もあるわけでございます、事実として。それが果たしてそうであるのかどうか、この点もやはり十分吟味しなければならない。そういったもろもろの問題を含めまして、そしてこれから老人医療の診療体系というものを本当に謙虚に、そして現時点において最も正しい診療報酬体系を樹立していただくために、あれは頭からいかぬとか、これはどうだとかいうことを初めから独断的に決めないで御審議を煩わしたい、こういう気持ちで提案申し上げているわけでございます。
  279. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、現行の診療報酬体系の問題は二つあると思います。  先ほどから言われておりますように、出来高払い制度そのものは決してすべて悪いものではないと私は思います。しかし、そのメリットを生かしていくためには、医療の専門技術というものが医の倫理によって裏づけられて適用されるということないしは適正に制御された形で適用されるということ、このことが前提だと私は思うのですね。  第二の問題は、先ほどからこれも出ておりますように、何しろ薬剤とか医療用の原材料を使えば使うほどマージンが上がる、診療報酬がふえるというような物に依存したものであって、口を酸っぱくして技術を重視せよと言うにもかかわらず、努力はあったかもしれませんけれども、一向にそのあたりが伸びてこないものだから、結果的には物を使えばもうかるという残念ながら悪利用しやすいような制度になってしまっておる、この二つが現在の診療報酬体系の大きな問題点だと私は思うのです。  そこで、一つは、診療報酬体系の中で技術料を重視しろという議論が重ねてあったにもかかわらず一向に進んでいない。私は、一回時系列的に、現在の診療報酬体系の中でどういうかっこうで技術料が重視されるようになったのか、簡単でいいですから流れを話をしてもらいたい。そして、この前の六月の医療費改定のときにはかなり技術料が評価されたと世間では言われておるのだけれども、一体胸を張れるようなものであったのかどうか、中身も含めて説明してもらいたい。
  280. 大和田潔

    ○大和田政府委員 技術料、これはおっしゃるように私どもといたしましては、現行の出来高払い方式というものにつきましてこれを前進させるには、物と技術の分離、技術の適正評価というものが必要でございます。どのようにして技術料を評価してきたか、そういったものを時系列的に例示的に申し上げますと、たとえば手術料でございます。  これは昭和三十六年七月には一二%、それから四十二年十二月に約八〇%、四十七年二月に甲表では約四〇%、乙表では約一〇〇%、四十九年十月には約四〇%、五十三年二月には約三〇%の引き上げを図っておりますし、今回の改定におきましても約四〇%の引き上げを手術料という技術料について行っているところでございます。さらに改定の際に新たに開発された技術の導入を図ってきておるところでございまして、今回の改定におきましても、いわゆる非常に人口に膾炙されておるところのレーザーメス、これを手術の際に加算する。新しい検査の導入等というものもございますが、レーザーメスの際の加算といったようなことも行ってきているわけであります。  これはそのような方向につきまして、今後とも技術料の適正評価を行いまして、中医協におきます御審議を踏まえながら対処していきたいと思っているわけでございます。  今回の診療報酬の改定におきましては、技術料の適正評価をどう考えていくか、これは私どもといたしましてはかなり技術料の適正評価を行ってきた。物と技術の分離、これは薬価基準の大幅改定とも伴いまして物と技術の分離、技術料の適正評価というものをやってまいったと考えているところでございます。
  281. 米沢隆

    ○米沢委員 いま手術料等を中心にしての引き上げの御説明をいただきましたが、いまヘルスが重視される時代になっておるという観点からすれば、たとえば健康相談だとか食事療法だとか慢性疾患に対する健康管理の指導だとか、そういうものの技術料は一体どうなってきたのですか。
  282. 大和田潔

    ○大和田政府委員 具体的な数字は持ち合わせませんが、理学療法、リハビリテーションの点数の大幅な引き上げを行ってきております。また慢性疾患指導料の引き上げというものも行っておるわけでございます。それから入院時医学管理料といったようなものの改定ということも行っておるわけでございまして、いま先生おっしゃいました有形無形の技術料の評価というものを今回かなり行ったものというふうに考えております。
  283. 米沢隆

    ○米沢委員 政府の答弁を聞いておりますと、着実に技術料を評価しながら診療報酬体系を変えてきた、したがって物を余り使ってももうからぬような診療報酬体系に近づきつつあるというふうに聞こえるのだけれども、そう思っていいんですか。
  284. 大和田潔

    ○大和田政府委員 そのような方向で努力をしておるところでございます。
  285. 米沢隆

    ○米沢委員 それにもかかわらず、不正請求等の原因になる診療行為、あるいはまた何しろ物を使えばいいという診療行為が横行しているという認識ですか。
  286. 大和田潔

    ○大和田政府委員 先ほど来申し上げておりますいわゆる欠点と言われるものが、ただいま先生おっしゃいましたように物を使うことによって診療報酬点数を上げられるというふうな問題もございます。数多く使うことによって点数を上げられるといったようなこともございますので、それに対していろいろな措置、手段を使って改善するような方向に努力をしている、こういうことでございます。
  287. 米沢隆

    ○米沢委員 技術料を重視した診療報酬体系に変えていく。それもかなり努力をされてきた。それならば、今後も技術料を重視する診療報酬体系を一生懸命追っていったならば制度を悪利用するような人は退治できる、そういう方向での仕方が一つありますね。しかし、そういうことでやっていったとしても、ちっとも限界がわからない。したがって、この際一挙に変えるかあるいは部分的に変えるか、出来高払いを基本にしながらちょっと変えるか、いろいろな選択幅が出てきますね。  しかし、いま政府の答弁をずっと聞いておりますと、いわゆる診療報酬体系の是正とか支払い方式の再検討の結果出てくるものは、現行の出来高払い制度に技術料あたりを大事にする診療報酬体系を、一面努力をしながらも何か組み合わせることによってむだを省いていく、そういう大まかなアウトラインが引けるのでございますけれども、これは答えを聞き間違っておりましょうか。
  288. 大和田潔

    ○大和田政府委員 現行の診療報酬支払い制度、私どものいまやっております診療報酬支払い方式につきましては、先生おっしゃいますように技術料の適正評価、物と技術の分離ということで適正化をしていきながら、それでもなおかつ問題になりますような不正な、医の倫理にもとるような行為につきましては、それをなくしていくような努力をするという意味におきまして、先生のおっしゃっておられる方向と同じ方向にわれわれは努力をしておる、こういうふうに言えると思います。
  289. 米沢隆

    ○米沢委員 しかし、医の倫理にもとるようなことをさせない制度なんというのは一体あるものだろうかと思うんですね。     〔湯川委員長代理退席、戸井田委員長代理着席〕 制度は決して生き物でもありませんし、しょっちゅう動いているものでもありませんから、幾ら制度がよかろうとも、それをうまく利用しようという人がいる限りどんないい制度をつくってもだめだと私は思うのです。結果的には制度が悪いか人が悪いかとなったら、確かに制度はそのものとして純粋に制度自体の改変を積み重ねていかなければなりませんけれども、一面それを利用する人が変わっていかなかったらどんなりっぱな制度をつくってもだめだ。新しく老人保健審議会で検討に検討を重ねられて何か支払い方式が決まったとしても、それはそれなりにうまくやろうとすればやれますよ、制度だから。そういうところに私は何かむなしさを感ずるのでございます。  いま御承知のとおり人頭割とか請負制とかいうものを導入したらどうかという御意見もたくさんありますし、われわれもいろいろ興味があって勉強させてもらっておりますけれども、しかし、これとて制度を悪利用する人が依然としておるとするならば、それは確かに財政は節約できるような体系ができたとしても、手抜きをされる可能性がある。老人医療を質的に落としてしまう可能性が実際あるわけですね。したがって、結論的に帰着するところは、やはり医の倫理というものが確立されない限りどんな制度をつくっても悩みは尽きない。お医者さんと患者との信頼関係、お医者さんと保険者との信頼関係の確立なくして私は医療を論じられないという結論に到達するのでございます。  この問題は過去においてもいろいろなところで論じられてき、私も何年か前にこの医の倫理の話を質問したこともございます。しかし、本当に一部ではあるけれども、残念ながら毎年毎年出てくるあのような事件の報道等を聞きますと、何をかいわんやという感じがするのですね。したがって、この問題は昔から指摘をされておるけれども、この際もっともっと力を入れる、医師会なら医師会自体の自浄作業というものをもっと強めてもらう、そのことをお願いもしなければなりませんし、行政指導できるなら行政指導もしなければなりませんし、いままでの努力以上に何かやれるものはないのだろうかということをいつも私は考えるわけでございます。  同時に、このことはさかのぼればやはり医学教育にも大きな問題があるのではないか。大学における医学教育にひょっとしたら問題があるのじゃないかという声がこのごろとみに高まってまいりました。お医者さんなどに大学病院のインターンを終えて入ってきた医者の感想を聞きますと、まるでコスト意識がないと言うのですね。全体の医療経済という感覚はほとんどないといってむちゃくちゃに言う人もおります。それは一部かもしれません。しかしながら、医の倫理だとか医療コストを頭の中に入れて常識的に医療をやってくれるお医者さんを育てるということは、まさに学生のころから始まらねばならない。  ひょっとしてその前の議論かもしれませんけれども、少なくともお医者さんという専門職にっき社会的には崇拝される皆さんが、残念ながらいろいろな事件を起こしていく。あれを見ておりますとやはり医学教育をもうちょっとまじめにやってもらいたい。本当に問題がないのであろうか。現在の医学教育のカリキュラムあたりを一体——少なくともお医者さんの倫理の高揚に資するようなどういう講座がありあるいはまた生徒と先生との関係でどういう交流があるのか、文部省に一回説明してもらいたいと思っておるのです。
  290. 前畑安宏

    ○前畑説明員 お答えをいたします。  先生御指摘のように、医学のカリキュラムにつきましては、医療の高度化あるいは医学の進歩に照らしまして不断に改善をする必要があろうかと考えて、平生から関係者に指導しておるところでございます。  ただいまお尋ねのございました倫理の問題につきましても、各医学部におきましては、医師としての最低限の知識、技能の習得とともに、医師の倫理観の確立に努めておりまして、たとえば医学概論といったような科目を設定をいたしまして、これは六割の大学で実施をいたしております。ここで医の倫理の育成に関連する科目をカリキュラムに取り入れておるところでございます。  また、御指摘がございましたように少人数教育の問題につきましても、臨床実習におきまして少人数教育を重視をするということで対処をいたしておりますし、さらには六年間の一貫したカリキュラムというものを考えまして、早い時期からたとえば解剖学等、医の倫理に非常に重要な関連を持つ科目を設定をするといったようなことで対処をいたしておるところでございます。  特に最近の無医大県の解消計画に基づいて設置をされます医科大学におきましては、地域の切実な要求にこたえるという設置の趣旨に照らしまして、地域住民の期待にこたえるような医師の養成に努めておるところでございます。
  291. 米沢隆

    ○米沢委員 まるで一生懸命やっているから関係ないというような感じだな。医の倫理とか、まさに社会学だ、普通の常識学、そういうものを教育する時間は一体一年間にどれぐらいあるの。
  292. 前畑安宏

    ○前畑説明員 それぞれの個々の時間については現在資料を持ち合わせておりませんが、先ほども申し上げましたように、医学教育の改善につきましては不断に検討すべきことでございまして、現在も各大学を初め学会等におきましてカリキュラムの検討作業がるる進められておるところでございます。先生御指摘の問題につきましても、そういった全体としてのカリキュラムの中で十分検討されるべきと考えております。
  293. 米沢隆

    ○米沢委員 たとえばいまの医学部教育を見ておりますと、確かに医療が高度化したり、いろいろな高度な技術を駆使して医療に携わるという社会情勢もありましょうけれども、少なくとも、何しろ検査づけになるような教育なんですね。何もかも高度医療をかけて、何もかも調べてみよう、薬は多量に使う、検査は多量にやる、そういう医学教育なんですよ。その頭がそのまま続いていきますから、検査は余りするなとか薬は余り使い過ぎるなと幾ら言うてもこれは無理ですわ。  確かに高度医療というものを近代医学の一つの大きな成果として医療に役立ててもらうことはいいですよ。しかしそれは限度がある。現在の医学教育というものは何しろ高度な医療機器で人間の体を輪切りにしながら検査していく、大きな大学ですからみんないい機械を持っていますが、そんなものを利用することはみんな覚えておるのですよ、検査することも覚えておるのですよ。その人が卵から大人になって出てきたときには、それが医学だろう、それが医療だろうと思いますね。私はそういうところもすべては否定はしません。しかし、何しろ機械を使えばいい、検査すればいい、薬を使えばいい、そういう医学教育に文部省としてもメスを入れることが大事なことだと私は思いますよ。厚生省もそういうものはやはり言わなければいけませんよ、結構でございますじゃだめですよ。  だから、いま年とったお医者さんと生まれたてのお医表さんと、検査量、薬の使い方についてちょっと調べたことがありますか。特に悪意でしなくても善意であったとしても、それは使い方は全然違いますよ。一回調べてもらいたいと思うのだな。  そういうものが大きな背景として医学教育の中に流れておるとするならば、これはむずかしいけれども、何らかの形で医学教育のあり方も考えることが必要ではなかろうか。これは本当にむずかしいけれども、使い過ぎなさんなぐらいのことは言えるようなお医者さんの先生がおり、それを受け入れる学生がおってもらわないと、こんなところで老人保健法なんかを幾ら論じたところで私は全然問題にならないという感じがするのですが、厚生省、何か見解はありませんか。
  294. 大和田潔

    ○大和田政府委員 医の倫理につきましては私どもも本当にお願いをしたいわけでありますが、私どもの指導監査の問題についてもう一言申し上げますと、従来は不正という行為、水増しであるとか架空といったようなものについての指導監査ということであったわけでありますが、五十四年からいわゆる濃厚診療、現在問題になっております、論議の的になっておりますような医学常識から見て異常に商い医療を行っておるという濃厚診療に対しましても、私ども指導監査の対象にするということで通達を流して指導しておるわけでございますが、そういったような面の努力をこれから強めてまいるということによりまして、ただいまのような問題に対する解決に努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  295. 米沢隆

    ○米沢委員 監査も結構ですけれども、大変むずかしい問題だけれども、私はやはり大学の教育カリキュラムの中でそういう問題点を十分に意識した改善を積み重ねてもらいたい、そのことだけ私は約束してもらいたいと思うのです。
  296. 前畑安宏

    ○前畑説明員 先生まさに御指摘になりましたように非常にむずかしい問題でございまして、大学の付属病院に対しては地域住民初め高度な医療を求めてたくさんの患者が集まるわけでございます。現実にそういう面からあるいは先生御指摘のような問題があればそれば正さなければいけない問題でございますので、先生御指摘のようなことはたとえば医学部長会議等によく趣旨を伝えまして、検討すべきものは検討させていただきたい、このように考えております。
  297. 米沢隆

    ○米沢委員 もう一つ問題は、これも私もある人から聞いたのですが、たとえば大学病院というのは確かに研究という任務があることは事実です。しかし、一般診療所と同じような診療行為をすることもたくさんございます。ところが、大学病院でやったコストと民間の病院でやったコストとは、まあ病気という同じ名前で呼んでもちょっとは違うかもしれませんけれども、相対的に大学がやると高いのですよ。それだけコスト意識がないのだな、親方日の丸だから。そのあたりも一回調べてもらいたいと思うのです。確かに研究という崇高な使命もある。しかし、実際は研究とは関係ない治療もたくさんありますよ。それを民間と比べてごらんなさいよ。これはコスト意識がないことがもう歴然として出てくるはずだ。一回調べて、調査した資料をもらいたい。  もう一つは、大蔵省呼んでいませんけれども、保険会社が、入院したら一万円出します、二万円出します、五千円出しますという、あれは差額ベッドは当然であるというものの上に成り立った保険でしょう。二十日間入院すれば金を出します、十八日じゃだめですなんと善いてあるものだから、入院することなくてもあと五日も寝ておれば保険会社から入院費として一日二万円の金がもらえるのだから先生お願いしますわ、これはよく聞きますよ。そんなものは本当に大きな医療費のむだですね。差額ベッドを当然のこととして、私的な保険機関が、入院されたら何ぼ出しましょう、あんなものも少しは関心を持って見てもらいたいと思うのです。  自分たちのなわ張りだけでの医療の適正化ではなくて、まだこれはいろんなものがたくさんあると思う。大学の問題もあれば、そういう保険の問題等々、自分のなわ張りのからを破って、いかにして医療費というものが消費されていくのか、適正化するためには、ただお医者さんをこうしたり医療機関をこうしたりという、内を向くものも大事でありましょうけれども、外を向く適正化対策というものも、いまこんなに複雑な社会の中では私は大変重要なことであろうと思うのです。  一回そのあたり検討してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  298. 大和田潔

    ○大和田政府委員 ただいまのような問題につきましては、私ども検討したいと思います。
  299. 米沢隆

    ○米沢委員 さて、この支払い制度の問題に関して最後になりますけれども、先ほどから何回も申しておりますように、今回のこの老人保健法の中身を見ますと、いわゆる包括医療というものに足を踏み込んでおりますけれども、問題は保健とか予防というものと治療というものと財源の調達がちょっと違う、別だ、こういうところが支払い制度を議論するときに大きく混乱させる原因になっておるのではないかと思います。  もともとこの法律が目的としますような包括医療の実現のためには、当然それは診療報酬のあり方にかかってくるものがたくさんあると思いますよ。たとえば予防、治療、リハビリというものが包括医療だとするならば、これも治療と予防とか保健なんというものの魔は本当はないのですね、特に老人病なんというのは。そういう意味では、境を隔てて、こっちの方は保険財政、こっちの方は公費負担だとか、まだそのはざまに、診療報酬体系に組み入れられた部分がたくさんありますけれども、残された部分がたくさんありますね。同じ包括医療をやるとするならば、予防も治療もリハビリも一緒になった診療報酬体系をつくることが本当の筋なんじゃないか。ところが仕組みが、いろいろ各保険者に対する負担の問題等もありましょうけれども、残念ながら医療の方だけは保険でやって、こっちの方は別建てになるというその端境、学際、そのあたりの問題がやはりありますから、支払い制度を議論する場合に、何か医療の方だけ向いて、何しろ医療適正化だけを考えて支払い方式を何かやろうとしておるんだというように見られても無理がないのではないか、そう思うのですけれども、どんなものでしょうか。
  300. 吉原健二

    吉原政府委員 私どもも最初老人保健制度を立案しましたときに、実は厚生省の考え方は、いまおっしゃいましたように、医療とヘルス、予防事業、リハビリを含めて、財源もあわせて一本でやったらどうだという考え方を持っていたわけでございます。その考え方で実は社会保障制度審議会にもお示しをして御審議、御議論をいただいたわけでございますけれども、やはり財源まで一緒にしてやるのはどうだろうか、医療は医療、それから健診なり予防なりリハビリテーションといったヘルスの面は従来どおり公費でやってみてはどうか、やるべきではないか、こういう御議論が強かったわけでございます。したがいまして、制度の運用といたしましてはできるだけ具体的に、包括的にやっていきたいと思っておりますけれども、費用の負担の面につきましては、医療は医療、それから保健事業と分けて考えるということにしたわけでございます。  おっしゃいますように、特に老人の場合には健康と病気の間の中間というものが非常にはっきりしません。連続的なものでございます。そういった意味におきまして、医療サービス、それからその他の保健サービス、いろいろな面で連携をとりながら一体的にやっていく必要があると思います。費用の面では区別をしておりますけれども、実際のサービスの面ではできるだけ対象者の心身の状況なり家庭の状況に応じて一本で総括的にやれるような体制、やり方というものを工夫していきたいというふうに思っています。
  301. 米沢隆

    ○米沢委員 余り時間も残っておりませんが、各論を二、三御質問したいと思うのです。  この老人保健法の目玉は審議会をつくるということだったと思いますね。ところが、たとえば九月に自民党が出された「老人保健法案の疑問に答える」というものの答えの中にも「行政改革推進等の面から既存の審議会を活用してはどうかという考え方もありますので、今後国会で十分審議をつくしたいと考えています。」という大変含みのある書き方がしてありますね。そして、結果的には、いま修正交渉をやっておる中では、やめてはどうかというような提案がなされたり、あるいはやめることも含めてちょっと相談させてもらいたい、こういうような議論になっておるわけですね。大変大きな目玉であったにもかかわらずここらはどうも消される運命になりつつありますけれども、もし自民党さんがおっしゃるように、老人保健審議会というものはもうやめたということになったときに、診療報酬体系の議論は中労委の場に移りますね。その他のここで予定した事項というものはどういうところで議論されることになるのですか。
  302. 吉原健二

    吉原政府委員 ただいまの御質問でございますが、私どもまだ修正のお話し合いが進んでいると、あるということは承知しておりますけれども、それがそうなった場合にどうなるかということにつきましては検討いたしておりません。  ただ、老人保健審議会をこの法案ではお願いをしておるわけでございますけれども、やはりこういった行政改革の時期、行政簡素化のときに新しい審議会をつくるのはどうだろうかということも実は十分検討をいたしたわけでございます。  診療報酬については中医協という機関との関係、それからヘルスにつきましては、公衆衛生全般につきまして公衆衛生審議会という審議会もございますし、それとの関係、それから費用の面につきましては既存の社会保険審議会なり社会保障制度審議会との関係、そういったものも十分検討いたしましたけれども、やはり先ほども申し上げましたけれども、この新しい制度は既存の制度の枠を超えた総合的な制度でございますので、そういったものを総合的に御審議いただく機関としては、既存の制度よりもむしろ新しい審議会を設置をして、そこでやっていただくのがより望ましいのではないかということで、こういった形で御提案をさせていただいているわけでございます。
  303. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほどの私の話の中で中医協を中労委と言ったそうでございまして、訂正をさしていただきます。  今度は費用負担の問題ですけれども、時間がありませんから端的に申し上げまして、いわゆる法律第五十九条の「二分の一以下の範囲内」と定めたこの意図ですね。先ほども質問になっておりましたけれども、これから先老人医療費が増高するであろう、そのときには、当初は二分の一でやるけれども、どんどんふえていく可能性は確保しておきたい。それも政令で持っておきたい。大体政令にされてろくなことないな。国鉄の運賃だとかみんな法定事業が政令化される。今度の住宅金融公庫とか農林金融公庫等、あれも法定化されたらイコール上げられるということですね。弾力化されたり政令にされたらろくなことはないですね、結果的には。したがって、この財調のやり方も、「二分の一以下」というのも、これは大蔵省がうるさかったのじゃないかと思うんだな。何か印刷ミスで「以下」ぐらい取ったらどうかと思うのですね。  私は、この際、いま修正をやるとするならば、二分の一で固定する、政令じゃなくて法定化する修正に応じてもらいたいと自民党に折衝しておるのでありますが、政府の見解はどうですか。     〔戸井田委員長代理退席、戸沢委員長代     理着席〕
  304. 村山達雄

    ○村山国務大臣 二分の一でスタートするつもりでございますが、先ほどもお話し申し上げましたように、老人の数がずっとこれから、恐らく国保はずっとふえてくるんじゃないか。そのときはどれくらいふえるかということが予測つきません。それで、レートが二分の一でとりあえずはスタートをするのが妥当だと思っておりますが、それで果たしていいかどうかという保証がないわけでございます。そういう意味で、政令は信用がないようでございますけれども、われわれは確実にそういうバランスを考えながら、もちろん的確に実情に応じて運用さしていただくということを条件にいたしまして、弾力性を認めていただきたい、こういう提案を申し上げているのでございます。
  305. 米沢隆

    ○米沢委員 だから、適切に運用をすると言いながらどんどん幅が広がっていく、そのことが問題なんだ。したがって、確かに政令は、それはやりやすいですよ、皆さんは。いま官僚はみんな政令にしてやろうとしている。少なくとももし問題があるならば、法定化しておって、また再提案すればいいじゃないですか。何にも不足ないでしょう。どうなんですか。
  306. 吉原健二

    吉原政府委員 いま大臣からお答えいたしましたとおりでございまして、考え方といたしましては実はいろいろあったわけでございます。二分の一が一番望ましいという考え方と、それから逆に、二分の一ではなしにもっと加入者案分の率を高くしてはどうかという議論もございました。しかし、現在の時点では二分の一で出発するのがいいのではないかというのが関係審議会での大多数の御意見だったということを踏まえまして、実は私どもとしては二分の一で出発をするということを考えておりますけれども、将来、やはり加入者の動向あるいは老人医療費の動向が年々変わってまいります。  で、この費用の持ち方というのは、それぞれの保険者がお互いに持ち寄ってみんなでやっていこうというわけですから、お互いの合意が変わってくる。それぞれの将来の加入者の動向なり医療費の動向で合意の点が、やはりそれは変動的な、変化する要素がございます。そういったことも考えまして、私ども、政令で将来変更する場合に、厚生省として勝手に変更するということは考えておりませんで、やはり関係者の御意見なりあるいは老人保健審議会の御意見を聞いた上で弾力的な対応ができるようにということで政令事項にさしていただいたわけでございます。
  307. 米沢隆

    ○米沢委員 余りそうかたいことを言うていると、この法律は通りませんぜ。  もう一つは、今度は負担金は各保険者ごとに計算するのでしょう。保険者が小さい規模のときにはかなり振幅が激しくなる可能性があると思うんですね。こういうものに対して何か対策を持っておられますか。
  308. 大和田潔

    ○大和田政府委員 これは御承知のように、この老人保健制度は保険者ごとの老人医療費の負担の公平を図るということが目的の一つになっておるわけでありまして、各保険者の拠出金はこういった観点から一律のルールによりまして割り当てられるものであるわけでございます。今回の新制度によります保険者の負担増というのは、こういった負担の公平というそういう考え方に従ったものでございますので、先生おっしゃいますような問題はあるかもしれませんが、どうかその辺は御理解をいただきまして、一律のルールということで負担をしていただきたいというふうにお願いをいたしたいと思います。
  309. 米沢隆

    ○米沢委員 一部負担についてもここでもう何回も議論がなされておりますが、金額はどうだこうだということは割愛させていただきます。  一つ問題なのは、一部負担はたとえば外来は月五百円だ、これくらいなら払えない金じゃないだろう、こういうような発想でございますけれども、実際は御承知のとおり、たとえば総合病院に行ったらあれは診療科目ごとに五百円を払わなければいかぬのですね。いまの健康保険法でもそうですけれどもね。老人というのは、先ほどから議論になっておりますように、いろいろな病気を共存させておるわけですね。胃が痛かったり神経痛で痛かったり頭が痛かったり、いろいろするわけでして、内科にも行かねばいかぬ、外科にも行かねばいかぬ、脳神経外科ぐらいにも行かねばならぬ、皮膚科にも行かねばいかぬ、そういう人が実際はおるわけです。ですから、たった五百円だとおっしゃいますけれども、同じ病院に行きながら、科目が違うだけでそのたびごとに五百円取られたら、五、六千円はすぐ使いますよ。  そういう意味で、初診料五百円なんというこの五百円は、病気に着目するのか、その老人個人に着目するか、病院という建物に着目するか、何か整理して、本当に一回ぽっきり五百円ならまだわかる。しかし、行くたびごとに五百円、五百円、五百円、こうやられたんでは、それはパチンコ代がなくなる。そのあたりをぜひ検討してもらいたいと思うのです。  それから自分の病気を治そうとするならば、ぴたっとくる先生に会うまでやはり回りますよね。そういう方々にも、何か五百円掛ける何回かになるんじゃないか、そういう理屈がいろいろあるわけでございまして、ぜひこれはトータルで一回御検討いただきたいと思うのです。どういうようにお考えですか。
  310. 吉原健二

    吉原政府委員 先生のおっしゃることもよくわかります。わかりますが、外来に月に一回五百円お願いをしておるわけですけれども、その場合に、やはり事務的にちゃんとやれるかどうかということも考えなければなりません。そういったことで、現在診療報酬の請求なり支払いはレセプト単位に行われておることは、先生御承知のとおりでございます。レセプトが医療機関ごとに、それから総合病院では原則として診療科目ごとに、こうやられているわけでございます。したがいまして、健康保険の初診料もそういった形になっているわけでございます。それに合わせまして、老人の場合にも、外来はレセプトごとに五百円という考え方でいかざるを得ない。それでなければかえって医療機関側に非常に繁雑な事務をお願いすることにもなりますし、実際問題としてちゃんとした法律の運用ができないということがございまして、そういう考え方に立っているわけですけれども、しかし^一つの病気で、ある科からほかの科に回されたというような場合、たとえば内科から外科というような場合に、これはそれぞれ別個にいただくのではなしに、一つのレセプトで処理をし、一部負担は五百円一回ということでやりたい、やるべきだというふうに思っております。
  311. 米沢隆

    ○米沢委員 レセプトの事務上の手続がうるさいから仕方がないのだというのはちょっと承服できないな。事務手続が大事なの、老人の初診料が大事なの。もう一回やり直し。
  312. 吉原健二

    吉原政府委員 やはり一部負担をお願いする以上きちんとした運用ができなければならないということも、私どもとしては考えているわけでございます。先ほど申し上げましたように、診療科目を異にしましても全部レセプトを一本にするわけに実際問題としていきません。それから医療機関が変わったときに、それも合わせてということが実際問題としてはできないということがございます。そういったことで、おっしゃることもよくわかりますけれども、やはりレセプト単位でやらざるを得ない。その点は御理解をいただきたいと思います。
  313. 米沢隆

    ○米沢委員 わかったら素直にやることがいいことなんですよ。これはもう平行線ですからやめましょう。  それから、最後になりましたけれども、いわゆる医療以外の保健事業の実施ですね、最初の総論で申し上げました。まさにここに重点がこれから本当に置かれていくかどうかによってこの法律の評価も変わるだろうし、まさに包括医療が生きるか死ぬかのやはり分かれ目になるであろう。しかし、この実施の基準という第二十四条を読みましたところ、「医療以外の保健事業の実施の基準は、事業の種類ごとに、市町村の人口規模及び財政事情その他地域の諸事情に配意して、厚生大臣が定める。」これはこう書かざるを得ないのかもしれませんけれども、財政事情だとか人口規模だとかいろいろな諸事情を勘案してこんな制約をつけられたら、結局余りしたくない、金があったらしていきましょう、ちょっと努力して、いままで以上にちょっとくらいはやりましょうというくらいにしか見えないのですね。  保健事業はこんなことをやります、検査はこんなことをやりますといろいろ出されておりますけれども、あれを見ていると確かになまぬるい。現に保健婦なんてもう足りないのだ。マンパワーの問題ですからそう簡単にできるものじゃないですよ。そういう意味では、もっと実施に必要な施設の整備、マンパワーの確保、一回ぴしっとした五カ年計画なら五カ年計画をつくってもらって、絶対に財政的な裏づけは持ってくるのだということをはっきりしてもらうことが大変大事なのではないか、私はそう思うのですね。  その点を一つ聞かせてもらいたいということと、それからもう一つは、御老人が病院にたくさん入って余り抜けたがらない。これは病気のせいもありましょうけれども、ナーシングホームだとかデーケアとか、ああいう部分が足りないからですね。本当ならば、そこでお世話になったら入院なんかしなくてもいい人が実際は入院しておるのですよ。現にいろいろな調査によって出てきていますね。歩行可能で余り看護も要らないような人が入院のベッドを五割ぐらい占めておるとか、こんな資料を読んでおりますと、やはり周辺対策がおくれておることによって病院が老人に占拠される、これはゆゆしき問題だ、そう思うのでございます。  しかし、それを充実していくためにはやはり金が要りますね。だから、施設そのものを個体としてとらえて数がどうだというよりも、いま必要なのはその連携ですね。うまく連携し合えるかどうかというシステム化が一番大事だと思うのです。人と施設とうまいこと連携しながら、システム化をしながら足りないところは逆に補っていく、そういう指導というものが大変必要なのではないか。  同時に、これは声を大きくして言わなければなりませんが、保健所の占める役割りというのはこれから非常に大きい問題ですね。したがって、保健所の機能の強化等々政府としてどういう予定をされておるのか聞かせてもらって、質問を終わりたいと思います。
  314. 吉原健二

    吉原政府委員 保健所等につきましては、後から公衆衛生局長からお答えをさせていただきたいと思います。  この二十四条の実施の基準でございますけれども、ヘルス事業、これは市町村が実施主体になって、市町村の地域の実情、それから市町村長さんのいろいろな創意工夫、そういったものによってやっていただきたいというふうに思っているわけでございます。ところが、実際問題といたしまして市町村は人口の規模がさまざまでございますし、財政事情ということも書いてございますけれども、地理的な状況、それからその市町村の区域内の社会的ないろいろな資源の有無、多寡、みんなそれぞれ三千二百の市町村で事情が異なります。そういった事情がございますので、一律に国が基準をつくっても、それをすぐにすべての市町村でやれということが実際問題としてむずかしい。そういったことで、そういった事情も配慮して基準をつくり、その地域の事情に応じて市町村にやっていただく。全体として五年くらいの計画を立てて、市町村のレベルが同じようにそろうように持っていきたいという考え方を基本的に持っているわけでございます。  それから、ナーシングホームでありますとかデーケア、そういった中間施設の必要性、これは私どもも十分承知をいたしております。どういった施設がいいのか、また現行の施設で足りるのか足りないのか。現行の施設、現在の既存の施設を機能を変える、あるいは強化することによって対応できる面も多々ございます。そういった面も含めまして検討し、これからそういった中間的な施設の整備を進めていく、これが大変大切な課題だと思っております。     〔戸沢委員長代理退席、湯川委員長代理着席〕
  315. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 保健事業につきましては、先生の御指摘のとおり、マンパワーあるいは施設、設備につきまして十分整備をいたさないとできないということでございまして、私どもとしては五年後の六十一年度を目標にいたしまして年次的にこれを整備する決意をいたしております。  特にマンパワーにおきます保健婦につきましては、市町村あるいは保健所の保健婦を強化する、またOT、PT、その他の精神衛生相談員等の職種につきましても増員の計画をいたしております。  また、その基盤整備といたしまして、市町村の保健センターあるいは保健所等につきましても、施設、設備につきまして年次的に強化をいたすつもりでございます。  また、先ほど先生御指摘の福祉施設等あるいはボームヘルパー等福祉のマンパワーとの連携につきましても、老人保健法案を契機といたしまして、地域ぐるみでこういった老人の方々をケアし、また健康づくりというものを推進していくという考え方で強力に指導してまいりたいというふうに考えております。
  316. 米沢隆

    ○米沢委員 それにしては今度の予算なんか見ていると大変少ないですね。同時に、この法律をうまくやっていこうとすれば、市町村の役割りというものが大変重要なことでございまして、財源を含めて自治省あたりとはうまく話は進んでいるのでしょうね。
  317. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 これにつきましては自治省とも話し合っておりますし、現在大蔵省に補助金ということで予算要求をいたしておるわけでございます。
  318. 米沢隆

    ○米沢委員 これで終わりますけれども、国鉄の方、わざわざ来ていただいておりまして、質問できませんで済みませんでした。また次の機会に……。
  319. 湯川宏

    湯川委員長代理 次に、浦井洋君。
  320. 浦井洋

    ○浦井委員 どうも大臣、御苦労さまです。  前回に引き続いて保健、ヘルスの方の問題について質問をしたいと思うわけです。  最初に、要綱の段階では保健事業というのはすべて市町村が主体でやるということになっておったわけなんですが、出てきた案を見ますと、市町村は国保並びに被用者保険の被扶養者、こういう人が対象になる、被用者本人は原則として職域でやるということになって、非常に一貫性がなくなった感じがするわけなんですよ。本来の姿としては、やはり市町村が責任を持って全住民きちんとやるというのが望ましいのは皆さん方もよくおわかりだと思うのですが、なぜこういう形に後退をしたというか変化をしたのか、その辺のことを総論的にちょっと聞いておきたいと思います。
  321. 吉原健二

    吉原政府委員 考え方としましては、市町村が四十歳以上の方全員に対してヘルス事業を一元的にやっていくという考え方もあろうかと思います。実は厚生省もそういった考え方でどうだろうかということで、厚生省の第一次試案もその考え方に立っていたわけでございます。しかし、これも社会保障制度審議会で御審議、御議論があったわけでございますけれども、この予防事業なりヘルスの事業は、従来、市町村だけではなしにそれぞれの保険者ですね、健康保険なりあるいは組合健康保険の保険者の保健施設活動なり福祉施設活動として相当程度行われてきた、今後も大事な仕事としてやっていくつもりである、それをなぜ市町村で一元的にやらねばならないのかという御議論があったわけでございます。その場合の費用は一体どうなるのか。それから会社等では、先生御案内のとおり、性格は違いますけれども、事業者としての責任の健診ということも行われているわけでございます。  したがいまして、私ども、市町村で全部一元的にやるという考え方もあるとは思いますけれども、やはり予防事業なり検診事業というものが効果的に実効的に行われていくためには、現在のようなシステム、つまり保険者としての活動とそれから市町村としての活動、いわば大きく分けまして二本立ての活動ということになるわけですけれども、その二本立ての仕組みでやっていくのがいいのではないか、審議会の御意見もそうだったわけでございます。そういったことでこういう形にさせていただいたわけでございます。
  322. 浦井洋

    ○浦井委員 いまの審議官のお答えで、審議会の委員の方からいろいろな意見が出て、相当程度職場でも行われてきておる、だから実効的にやるにはこれが最も効果的ではないかということなんですが、そうなってくると問題は、相当程度というのはどの程度行われてきたのかという問題になるわけなんです。  これは健康保険法の中にある保健施設事業ということに含まれるだろうと思うのですが、中高年齢者の疾病予防という形でやられてきておるわけですね。一体どれくらいの状況で行われてきたのですか。五十五年度の数字あるいは五十六年の予測、五十七年はどういうような要求をしておるか。
  323. 入江慧

    ○入江政府委員 政府管掌健康保険について申し上げますと、五十六年度、今年度二十二万六千人を予定しておりますが、最近希望者が非常にふえてまいりましたので、来年は七割増しの三十七万人程度について健診をすべく予算要求をしているところでございます。
  324. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、これに頼ってやるということで、五十七年度を初年度として六十一年度はどれくらいやられるのですか。
  325. 入江慧

    ○入江政府委員 大変申しわけございませんが、そこら辺は私どもまだ積算しておりません。
  326. 浦井洋

    ○浦井委員 積算しておられないというのは、したらぐあいが悪いのだろうと私は思うのですがね。政管健保の被保険者というのは現在千四百万ですね。間違っておったら言ってください。そして四十歳以上の被保険者というのはほぼ六百万だということですね。そういうことで、いまお答えになった五十七年度要求として七割増しで四十四億、人数として三十七万人、そうですね。そういうことであれば六百万人のうちの三十七万人ですから六%程度ですか、こういうことになるのです。これが五十七年度。六十一年度までは目標は立てておらぬといいますか、積算はしておられない。  一体政管健保の被保険者の老人保健法に盛られておる保健事業の健康診査というのはどうなるのですか。これで済みですか。
  327. 入江慧

    ○入江政府委員 先ほどちょっと数字を間違えましたので、初めに訂正させていただきます。五十七年度は三十八万五千人要求しております。  それで、四十歳以上の被保険者六百五十万人に対して少ないではないかという御指摘でございますが、それにつきましては、前回もお答えしましたように、私どもは全国の社会保険事務所から管内の適用事業所に対しまして希望者を出してくれということで呼びかけておりまして、それの実績がいまのところは二十二万余ということでございます。ところが、先ほど申し上げましたように、五十六年度になりまして希望者が大分ふえてまいりましたので、五十七年度は七割増しの要求をしているわけでございます。それで、六十一年度の目標はどうかということでございますが、それは今後の動向を見なければいけませんけれども、私どもの心づもりとしましては、一応四十歳以上の被保険者の三分の一程度まで拡充していきたいと考えております。
  328. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣、どうですか、この法案の目玉として保健事業をやられる、その中の最大の目玉が国民全部四十歳以上の健康診査、健康診断をやるということだと思うのですが、肝心の、地域の問題は後で言いますけれども、職域で六十一年度になってもせいぜい三分の一程度しかできぬということでは、これは初めから絵にかいたもちというか、絵にもかけぬということになりはせぬですかね。  簡単にひとつ大臣、その点についてどう思っておられるか。
  329. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これはできるだけ伸ばしてまいりたいと思いますけれども、やはり現実にはどれぐらい応じてくれるか、希望者をどういうふうに持っていくか、これも予算ばかりとりまして不評が立つようでも困ります。われわれはこれからその点を大いに普及、宣伝いたしまして、拡充するようにしたいと思っております。
  330. 浦井洋

    ○浦井委員 これは、応じてくれるか応じてくれないかというような被保険者の側の問題ではなしに、その辺も見越した上で政府として施策を立てる、それの基本的立法をするというはずであるわけなんですが、もっと責任を持ってもらわなければ困る。私は、大臣の言葉に反論をしておきたいと思うのです。  特にそれに関連して、今度は政管健保で、零細企業の場合、健康保険に入っておらない。そうすると、そこの被用者であるけれども、地域の国保に入るということになりますと、これもかなり膨大な数ですね。この数はわかりますか。世帯主として国保に加入しておる人で被用者の人というのは、大体どれぐらいおられるのですか。
  331. 入江慧

    ○入江政府委員 ちょっと古い数字で恐縮でございますけれども、五十年度で私どもが推計しました数で約三百四十万人、いわゆる五人未満事業所の従業員は三百四十万人程度と推計しております。
  332. 浦井洋

    ○浦井委員 それは四十歳以上ですか。
  333. 入江慧

    ○入江政府委員 失礼しました。この三百四十万人は、年齢構成までちょっと調査しておりません。
  334. 浦井洋

    ○浦井委員 私が言う数字で間違っておったら訂正してくださいよ。世帯主と家族を合わせると、国保四千二百万人ですね。そして世帯主数としては千五百万人と言われておる。その中の三分の一ぐらいが被用者でありながら国保に入っておる人だ。だから世帯主数としてはまあ五百万人、四十歳以上の人はそれの半数以上か、そこらぐらいになるというふうな計算を私はしておるのですけれども、大体この数字にほぼ間違いないですか。
  335. 入江慧

    ○入江政府委員 ちょっと私どもそういう数字を持っておりません。
  336. 浦井洋

    ○浦井委員 古いですけれども、いま言われた三百四十万人の数字、まあほぼ同じような結果が出るだろうと思うのですよね、おたくの方で数字を持っておられないかもわからないが。こういう人たちは仕事に行っておるわけでしょう。そして健康診査ということになれば、恐らく年に何回か、一週間ぐらい健康センターとかあるいは保健所が代行する場合には保健所、そこでやりますから来なさい、日曜日はお休みだということになる。中小零細企業に勤めておるわけですから、そういう人たちは果たして健康診査を受けられるのか。受けられないことはもう目に見えておるじゃないですか。  こういう人たちを、大臣、お話を聞いていてようおわかりだと思うのですが、一体どないするのですか。
  337. 村山達雄

    ○村山国務大臣 その問題は、政府部内でもいろいろ審議したわけでございますが、あるいは職種にもよるのじゃないかとも思います。私のくにの状況で申しますと……(浦井委員「余り細かいのはいいです」と呼ぶ)職種によりまして、たとえば、サービス業のようなものでわりと昼休みがあいているとかいう人はあります。それから機械工業で機械は休めないというものもあるわけでございまして、そういうところがやはり大きな問題になってくるだろうと思います。  それにつきましては、やはり地域の方で何とか対応しまして、時間を延ばすとか、あるいは少し朝早くやるとか、何かその工夫をこらす余地があるかなということをいま相談し合っているところでございます。
  338. 浦井洋

    ○浦井委員 何とか対応したいということでいま相談し合っている、それで、法律は早う成立させろ、成立させろ、そんなことでは、そのこと一つ取り上げてもきわめて不十分だと私は思うわけなんですね。  それから、これはすでに出たかもわかりませんけれども、地域で健康診断、保健事業をやる、職域でやる。職域の場合にはこれはすべて健保財政から出すということになりますよね。地域の場合には、法案に書いてありますように公費負担、こういうことになりますと、不公平といいますか、とにかく財源的に整合性が悪いですよね。そういう点で、政管健保というのは、先ほどから言っているように、中小零細企業の人が多いわけですから、やはり財政的に健康保険におんぶするということではなしに、少々無理でも国の費用を捻出してでも、いま金の問題でないと言われたのですけれども、やはり金という受けざらを用意して積極的に呼びかけるというようなことをやらぬと、五十七年度でもせいぜい六%、六十一年度で三分の一、これは全く夢みたいな話で、そこまでいかぬですよ。こういうことをやる気はないですか。
  339. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 政管健保の問題は大変むずかしい問題でございまして、私どもとしても、全体のヘルス事業が、現在、たとえばがんの検診ですと二〇%になっておりません。そういうわけで、全体像を考えまして、先ほど大臣も言われましたけれども、この政管健保のそういった問題について、市町村のヘルス事業でできるだけそちらの方でも一緒になってやっていきたい、両方で進めていきたい。いま先生おっしゃるように、理論的にそれがびっしりいけるとよろしいのですけれども、何分ヘルス事業というのはまだまだ発達がおくれているというような状況でございまして、私どもとしては、政管健保のヘルス事業と、それからそのおくれているところについてはどうしても市町村のヘルス事業の中に含めて、両方でカバーしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  340. 浦井洋

    ○浦井委員 具体性のない、雲をつかむような話で、事実としては、先ほど私が指摘をしたように、職域では、政府でさえも六十一年度三分の一しか予定しておらない。これでは初めから絵にかいたもちになる、そうであってはならぬという立場で私は質問しておるのですよ。だからそこは、この法案が成立しようがしまいが、やはり保健事業なるものはやらにゃいかぬと私も思いますよ。もっといまの制度を充実させるべきだと思うので、これは前向きに取り組んでいただきたいと思う。  しかし、それをやっていくためにはさまざまな問題があるわけですね。たとえば、保健事業の地方負担の問題で、これ、また超過負担のことが出てくるだろう。ちょっと読み上げてみますと、保健所の事業を取り上げてみてもたくさんの超過負担がいまでも発生しておるわけですね。最近の地方六団体の要望書を見てみましても、昭和五十一年度、保健所職員について見ると、国庫補助対象職種の職員が二万五千五百七十一人、それから国庫補助対象職員がそのうち二万一千五百七十九人、八四・四%になるわけですね。だからそれを差し引くと、三千九百九十二人の職員というのはまるまる人件費超過負担になる。こういうかっこうになるわけです。人件費だけ見ましても、そこに書いてあるのでは、全国で三百十八億三千六百万円の超過負担、率にすると四六・七%。だから、保健所の人件費の三分の一を国が負担するというけれども、実際には二二・七%しか国は見ていないというような数字が地方六団体から私どものところに来ておるわけです。保健所関係を言うてもそういう超過負担が現に発生しておる。  ところが、先ほども言いましたように、老人保健法が成立すると否とにかかわらず、保健事業を進めなければならぬ。保健事業を進めるのは、主体は市町村でしょう。そうなってまいりますと、市町村は、保健所の主管である県よりもまだまだ財政的にアンバランスであり、困窮の度を加えておるというような状況の中で、果たしてこの保健事業全体が絵にかいたもちにならないという保証は全くない。先ほども指摘されたように、条文の二十四条であるとか、あるいは附則の二条というようなところでは、ざるになっても仕方がないですよというようなことを保障してやっているような条文までつけておられるわけですから、厚生省の決意のほどもよくわかるわけなんですけれども、私たちは先ほどから、この前も言っておるのですけれども、この法案は撤回してもう一遍出直してきなさいと言うておるのですけれども、こういうところにもその根拠の大きな一つのものがあるのだということを指摘をしておきたいわけなのです。  だからやっぱり金なんですよね。市町村の財政事情がどうであろうとも全国一律に実施できるようにやっぱり国が責任を持って人なり金なりを注ぎ込むというような方法を、そういう手当てをしなければならぬ、絶対に超過負担みたいなかっこうでいまの保健所みたいな現象を発生させてはならぬ、このように私は思うわけでありますけれども、その点はどうですか。
  341. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 確かに先生お話しのように、ヘルス事業はマンパワーあるいは施設、設備等が十分に整備されませんと十分な事業ができないことは当然でございます。しかし一方では、マンパワーの問題につきましては国全体の非常に厳しい人件費の問題等もございます。しかし、その中でぎりぎり私どもとしては、この老人保健法案を契機にいたしまして市町村の保健婦を初めその他職員の増加ということも要求をいたしておるわけでございますが、これにつきましては、やはり物のように必要なものを金でばっと買うというふうなわけにはなかなかマンパワーについてはいきませんので、この点は先生も専門家でございましてよくおわかりいただけると思いますが、どうしてもこれは多少長期的視点に立ってやっていかないとなかなかむずかしい点がございます。したがいまして、朝ほど来申し上げておるわけでございますけれども、一応六十一年度、これからの五年後というのを目標に定めましてある程度の整備計画というものを強力に推進いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  342. 浦井洋

    ○浦井委員 大体そういう答えしか返ってこないですよね。それでもう一つ、今度は角度を変えてちょっとお聞きしますと、やっぱり地域の保健事業の場合ですけれども、健康診断の受診率を高めることが大事ですよね。現在で大体いろんな既存の制度でやられている数字を厚生省に教えてもらったのですが、循環器系で一五%、それから胃がんとか子宮がん、主な検査対象がこれですよね、これがそれぞれ七%ぐらいであるわけなんです。にしかすぎないと言う方が適当ですよね。これをどう高めていくかというのが保健事業のポイントである検診事業のまたポイントだろうというふうに私は思うわけなんです。  それにはやはり地域から盛り上がっていくようなボランティア的な要素も含めた住民代表も入れた協議会的な組織が必要だと思う。確かに厚生省もそういうふうに考えられたのだろうけれども、これも、要綱の段階では老人保健推進協議会というものが入っておったわけなんですが、これが提出された案では抜けておるわけなんです。これは何で抜けたのか。これは厚生省にしては私は老人保健推進協議会というのはよい案だと思うのですよ。それが抜けておる、落ちておるわけなんです。これは何なんですか。
  343. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 確かにヘルス事業につきましては地域社会挙げて推進しなければなりませんので非常に協議会が大事だということでございますが、老人保健推進協議会のほかに、実は従来から保健所の運営協議会、これは市町村長でありますとかボランティアの方でありますとか婦人会の方でありますとかいろんな方が入っていただいて、十万人目の中のいろんな方に保健所運営問題に御意見をいただいている。また、昭和五十三年度に国民健康づくりを始めましたときに市町村に市町村健康づくり推進協議会を置いて、これも専門家だけではなしに地域社会のいろんな健康に関する指導者の方々にお集まりいただいてその推進に御協力いただく、こういうことになっているわけでございます。  したがいまして、やはりこういった行政改革の折から、新しく老人保健推進協議会を別枠でつくるのではなしに、従来の保健所運営協議会、それから市町村の、市町村健康づくり推進協議会——保健所運営協議会はすでにもう全保健所にございますが、市町村の方はようやく八三%に達しております。これをできるだけ一〇〇%に持っていきまして、地域のいろんな方々に参画していただいて、そこでこの老人保健推進協議会の役割りのようなものも担っていただいたらどうか、こういうふうに考えているわけでございます。
  344. 浦井洋

    ○浦井委員 そういう考え方はある程度理解できるのですけれども、それなら保健所運営協議会というものがきちんと機能しておるかというと、私の知っている範囲では全く形式化してしまっておる。医師会の代表も入ってはおりますけれども、全く形式化してしまっておる。そういう実情であります。  だから、本当に保健事業を進めていこうということであれば、少々ある意味ではダブってもこういうものをつくっていかなければ——何か自治省から横やりが入ってこれはつぶされたのだというようなことも聞くわけなんですが、事実そうですか。
  345. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 私どもは、そういうことではなしに、先ほども申し上げましたように行政改革の折からできるだけ一元的にしかも広い意味でやっていこう、こういうふうな考え方で市町村健康づくり推進協議会で行うというふうにしたわけでございます。
  346. 浦井洋

    ○浦井委員 いずれにしても、保健所というのはいま中二階だとか斜陽であるとか言われておるのですが、保健事業を推進していくためには、やはり市町村であるとか健康センターであるとかあるいは保健所などがかなりマンパワーをそろえてチームを組めるわけですから、主にそこでやらなければいかぬわけですよね。それを、これは後で触れますけれども、医療機関に委託をするということになると、統計もとりにくいし実態がつかみにくいという点で、いろいろ不備な点がいままでの実績から証明されておると思うのです。そういう点ではやはり保健事業をやっていくためにも保健所を充実させていくということが必要だと私は思うので、これはひとつ公衆衛生局長がんばっていただきたい、このように要望しておきたいと思います。  それでもう一つの問題は、たしか老人保健法案の五十四条だったと思うのですけれども、保健事業についても費用徴収をするということになっていますね。これは健康診査ということに限ってお尋ねをいたしますけれども、健康診査の場合に費用徴収というのはどういう方法でやるのですか。
  347. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 これは国、都道府県、市町村の割合で費用を負担するわけでございますけれども、その費用のおおむね三分の一をめどにいたしましてヘルス事業をお受けになる方から御負担いただく、こういうふうに考えているわけでございます。
  348. 浦井洋

    ○浦井委員 余り詰めていくと局長に立ち往生されると困るので私から言いますけれども、簡単な問診とか血圧とか検尿とかいうのはこれは無料なんですよね。そうですね。そしてそのスクリーニングでひっかかった二次検診の人について精密検査をやる場合に三分の一ぐらいは自己負担をしてもらいましょう、こういう案なんでしょう。ただし、七十歳以上のお年寄りは、これは医療の方に入るのですかね、だから無料だ、それから低所得着は無料だ、こういうふうに理解してよろしいですか。
  349. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 この問題については実は大蔵省と話し合いの途中でございまして、いまのところ確定したことをちょっと申し上げる段階にはないのでございますが、一応いまのところ予算としては丸めた形で大蔵省の方に費用負担の話をしているわけでございます。
  350. 浦井洋

    ○浦井委員 だから私が言ったことはそう的外れではないということになりますね。
  351. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 私個人の考え方としては、そういうふうな考え方でいきたいというふうに思っておるわけでございます。
  352. 浦井洋

    ○浦井委員 大蔵省に予算要求している段階だから言えない、それで法案だけは審査してくれというのはおかしいんですね。  そこで具体的に尋ねますが、今度は子宮がんと循環器、胃がんというように主な項目が入りますね。胃がんの場合を例にとって尋ねますけれども、現在各地で行われておる胃がんの、まあ施設、検診であったりあるいは車の検診であったり、その徴収額というのは大体幾らぐらいになっていますか、原材料費相当額というのは。
  353. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 これは種類によって違いますが、一応循環器の二次検診の場合でございますと、平均して五百円くらい、高いところでは千円程度徴収しているところもございます。  胃がんにつきましては、車検診で二百円から千八百円くらい、こういうふうになっております。  また子宮がん検診につきましては、車検診で二百円から千八百円、こういうふうになっております。
  354. 浦井洋

    ○浦井委員 そういうような状態の中で、今度この老人保健法案に関連をして、胃がんの場合で結構ですが、大蔵に要求しておられる単価は一体幾らなんですか。
  355. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 約三千三百円程度でございます。
  356. 浦井洋

    ○浦井委員 胃がんの場合に、費用徴収額は局長は二百円から千八百円と言われたのですけれども、私が聞いたのでは、大体神戸市でも千円、それから平均した額として八百円ぐらいというふうな厚生省の答えをもらっているわけです。  そうなると、いま大蔵省に要求されておる単価が三千三百円、その三分の一は被検者負担ということになりますと千百円が被検者負担、残り二千二百円を三分の一ずつ国、県、市で分けて負担するということになるわけですね。そうしますと、局長が言われた千八百円というのはまれな数字だと思うのですけれども、平均して八百円ということになれば、これはむしろ老人保健法が施行された場合の方が被検者の負担は一般的にはふえるのではないか、現行より高くなるのではないか、このように思うわけです。
  357. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 これにつきましては従来から予算措置でやっておりまして、主に保健所、検診車というふうなことでやっておりまして単価が低かったわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、私どもとしては現に二〇%にも達しません状態を飛躍的に増大していきたいということになりますと、これはやはり医療機関の御協力を得なければいけないということで、実は先ほどからも余りすっきり申し上げられませんのは、そういった点についてどういうふうにきめ細かい単価の設定をするかというのはこれからの課題でございまして、一応丸めた形で大蔵省には持っていっておりますけれども、実態としてヘルス事業を進めるためにはどういう形がいいのかというふうな点では、まだまだ実は大蔵省との話し合い中なものでございますから、一応私が申し上げましたのは平均値ということで御理解いただきたいわけでございます。
  358. 浦井洋

    ○浦井委員 私が言いたいのは、こういう事業を拡充させなければいけないときに、たとえ百円といえども二百円といえどもいまよりも高くなるような状態に置いたのでは、これはせっかく受診率を上げようといったって逆に下がると思わざるを得ぬわけですよ。だからその点をよく注意をしてやらなければならぬのではないか。  それから、六十一年度に地域は五〇%達成でしょう。そうなりますと、いま局長言われたように、医療機関に委託せざるを得ぬというかっこうにならざるを得ぬと思うのです。これも時間がないので私が読み上げますけれども、大体循環器でいまそういう施設検診、車も含めまして公共でやっているのは六、委託が四、これが六十一年度には逆転をして四対六になる。胃がんの方もいまは委託は少ないけれども、かなり委託をせざるを得ないだろう、こういうお話なんですが、これはそうですね。
  359. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 どうしてもこれからの方向といたしましては、従来のように保健所、検診車だけで一部の地域だけがやるというのでは、これはなかなか伸びませんし、また現在の価値観多様化の時代に、こういった検診事業というものをもっと人間的に見ていくという点からいたしますならば、どうしても医療機関というものの御協力を願わなければなりませんが、医療機関では、検診車でいままでのように熱心な地域社会が何百人というのをごっそり集める、そういうふうな形ではなかなかやりにくくなるわけでございまして、そこの点で単価の問題が非常にむずかしい問題になってくるわけでございます。
  360. 浦井洋

    ○浦井委員 そこで、いやな単価の話に入りますけれども、胃がんの場合に医療機関に委託をするということになりますと、これは間接撮影方式なんですか。いま直接撮影方式で大概の医療機関はやっていますね、診断自身は。どちらでやられるのかという問題ですね。間接撮影装置というようなものは、これは普通の医療機関にはないわけです。それならどうやってそういう医療機関に委託するのかという問題が出てくる。  それと医療機関でやるということになると、比較するものとしていまの診療報酬の点数を挙げてみますと、間接撮影であっても乙表で五千五百五十円になる。この費用を一体だれがどういう割合で負担するのかという問題が出てきますよね。それから直接撮影でやるとして、普通に一般的にやられておる方法で診療報酬点数を計算してみますと、千三十九点、一万三百九十円ということになる。これくらいのプライスでないと、委託するといっても委託手数料をこれくらい出さなければやれないということは、もうわかり切った話なんです。  こういうようなことを一体どうするのかという問題が出てくるわけです。これは局長、どう答えられますか。
  361. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 医療機関の委託も当面は間接撮影を中心に考えているわけでございまして、もちろん直接撮影でも結構だということでございますが、単価の問題につきましては、先ほどからも申しておりますように一応集団検診というたてまえをとっておりますから、個別の健康診断の単価とは若干違ってもよろしいのではないか。まことに役人的なことを申し上げますが、やはり私どもとしてはどうしてもコストという点、人手という点、いろいろ考えまして、そういった点についてはもう少しこれから詰めていきたいと考えておるわけでございます。
  362. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣、いまお話を聞いておられておわかりになったと思うのですが、一番肝心の保健事業のところで、しかもそれの目玉である健康診査についても余り細かく詰めてないのです。まだ方針が決まってないわけなんです。大きな問題点があるわけなんです。こういうことで保健事業が一体やれるのかという保証が全く私は見出せぬわけです。  だから、いまの話をまとめてみますと、いまやっている検診車や施設検診でも下手したら場所によっては被検者の負担がふえるかもわからぬ。それから自治体の超過負担がふえるかもわからぬ。そうすると受診率は低下していく。医療機関の委託はふやさざるを得ぬ。医療機関の方は面接でやれば一万円もかかる。間接撮影でやっても五千五百円もかかる。これをどこがどれだけ負担するのかというのは厚生省として全然決まってないわけでしょう。大蔵にいま予算要求中ですと言う。こんなことで果たして保健事業が広まっていきますか。  私はこの法律があるないにかかわらず保健事業というのは大事だと思います。この前も強調したように、沢内村であるとか高知県の野市町であるとかあるいは長野県の八千穂村であるとか、やはり医療費無料化とそれから徹底した保健事業とが車の両輪になって、重症率が下がり死亡率が下がり、特に沢内村では国保の掛金も下げたわけでしょう。これが医療費抑制の最大の目玉ですよ。保健事業についてもそれをやれる担保がないじゃないですか。  大臣、どうですか。
  363. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これからの新しい仕事でございますので、いろいろ試行錯誤をしていかなければならぬと思います。  それから、仰せのように財源の関係、それからいま診療機関に頼るとしたときに、一体どれだけ格安にやっていただけるのか、いろいろな問題があると思うわけでございます。  私が先般行きました長野県では、実はお医者さんが大変な犠牲を払っている事実を知ったわけでございます。そういうことで、いろいろなことがありましょうとも、やはりこの仕事が大事だということで関係者一同知恵をしぼり、また金も効率的に使って、そして何とか進めたいと思っております。いま浦井委員から非常に亜門的な、私にもよくわかるのでございますが……(浦井委員「わかりますか」と呼ぶ)よくわかります。わかりますが、なかなか、いまそれではお前すぐ答えを出せといっても急には出ない問題でございますので、それらの点を十分に参考にしながら、そしてできるだけ円滑に、そしてまた、場合によりますと地域の実情に沿いながら着実にこの水準を上げていきたい、いま申し上げられることはそれくらいのことでございまして、熱意をひとつお買い取りいただきたいと思います。
  364. 浦井洋

    ○浦井委員 熱意をお買い取りくださいといっても、現実には法案を出して、いまもどこかで修正案や何かで何かやっておられるわけでしょう。何でそんなに急がなければいかぬのかということですね。こういうふうに保健事業一つ取り上げましても、これはまだマンパワーの問題をやってないのですね。マンパワー、これは人の手がそろわぬわけです、保健所にしても保健婦にしても、OT、PTにしても。これは公衆衛生局長、一番心配されておるところなんです。それでそんな状態を露呈しておりながら、何で与党としてこの法律案を修正してでも通したいのか。なぜそういうふうに拙速を尊ばれるのか。私は、一向に解せぬわけであります。こういうものはもう一遍出直して、そして本当に国民の立場に立って成功するのだということをはっきりと見通しを立てた上で出直してくるべきだ、そういうふうにさえ、この論議を通じてでも私は強く感じておるわけなんです。  いま保健事業を尋ねてきたわけですけれども、どうもこれはやはり絵にかいたもちに終わりそうな感じで、十分な手当てもできておらないようだし、あるいは展望もはっきりせぬし、一方では、この前大臣にいろいろお尋ねしたように、お年寄りに一部負担をかける、国庫の財政は軽減するかもしれぬけれども、自治体自身の財政にばかなり負担がかかる、あるいはけさ方来いろいろ話が出ておったように、健康保険の被保険者にもやはり保険料というかっこうで負担が重くなる、こういうようなやり方で無理やりに老人医療費、ひいては総医療費を抑え込むというような方向というのは、私は間違っておると思う。  やはり医療費に部分的にむだがあるということは、私もこれは認めるにやぶさかではないわけなんです。しかし、こういうかっこうで無理やりに抑え込むやり方というのは間違っておる。やはり、もっとほかに本当にむだだというような面がないだろうかということを真剣に考えてみなければならぬのではないか。お年寄りが朝起きたら診療所や病院の待ち合い室に行って、そこがサロンになっておる、そんなことを言ってお年寄りに負担をかけていくというようなやり方は、絶対にとるべきでない。もっと別な面があるのだということで、ひとつ私は例証として、六月一日に行われた診療報酬改定、薬価の引き下げと同時に行われたわけですけれども、それが発端になっていまいろいろと歯科、歯医者さんで問題になっておるポリサルホンの義歯床の問題あるいは検査器具の問題、こういうものを少しそういう観点で、ここに本当にむだがあるのだという観点でお尋ねをしてみたいと思う。  これは保険局長にお尋ねするわけですが、ポリサルホンというのは金属床にかわり得るものだということで保険に導入をされたということなんですが、その金属床であるための特性というのはどういう点なんですか。どういう特性を備えておかなければならぬものなんですか。ちょっと専門的になるかもわからぬですけれども。
  365. 大和田潔

    ○大和田政府委員 まず、これは堅牢であるということはもう当然であります。それから薄さ。堅牢で薄い、それでこわれにくい、こういうことなんですね。こういったもので、これは金属床に類似しているということが言えるわけでございます。
  366. 浦井洋

    ○浦井委員 局長、そこの認識が間違っておるのですよ。単に堅牢である、強いというだけではだめなんですよ。いろいろな言い方があるわけですけれども、たとえば植物でたとえてみますと、カシの木のように強い、それである程度の力が加わると折れたり曲がったりするというような強さであるというのが、これが金属床の特性なんですよ。ポリサルホンの場合は、これはひずみやたわみがあって少々の力が加わっても曲がったり折れたりせえへん、そういうことなんです。どっちも強いという点では一緒なんですが、そういう差がある。ここを局長は御存じないのか、意識的に混同されるのか知らぬが、強いんだ。それで薄いというのも、そういうポリサルホンのようなかっこうでそのままたわみやひずみがあって薄くなっていったら、そのたわみやひずみはますますひどくなってくる。これが害を与える、こういうことなんですよ。  そういう点で果たしてポリサルホンというのは——これは学者の見解、もう世界じゅうの見解なんです。それでポリサルホンというのばそういうような本当に金属床にかわり得る特性を備えておるかということをもう一遍尋ねたいと思う。
  367. 大和田潔

    ○大和田政府委員 その点につきましては、薬事法による製造承認申請の際の添付資料であるとか、あるいは日本歯科大学における研究結果といったようなものを見まして、さらに日本歯科医師会とも相談をいたしました。日本歯科医師会も、これは金属床にかわり得るものである、こういう判断をいたしたわけでございます。その結果、採用をいたしたわけでございますが、ただ、この問題につきましてどうして急いで入れたか、こういう問題について、これはバックにつきまして一応お話を申し上げておいた方がいいかと思いますが……(浦井委員「いや、それは後で尋ねますから」と呼ぶ)それでは、そういうことで……。
  368. 浦井洋

    ○浦井委員 日本歯科大学新潟歯学部ですか、これは学校のできたいきさつから言って、おかしなかっこうになっておるのですよ。初め、高専だということで申請をされて、知らぬ間に歯学部、歯学校になっておる。そこには、やはり新潟に木暮山人という人がおって、そこにしょっちゅう出入りしておる。そういう関係があるのです。ここで少々のデータが出た。実際は大したデータではないのです。出ていても、これは信用ならぬわけです。  それから日本歯科医師会と相談をされたということですけれども、これは大問題ですよ。私、ここに独自のルートで入手した資料を持ってきておるのですけれども、ちょっと尋ねますけれども、日本補綴歯科学会というのはどういう学会なのか、御存じですか。
  369. 大和田潔

    ○大和田政府委員 お答えになるかどうかわかりませんけれども、当然補綴を行う専門家の集団である学会である、こういうふうに申し上げたいと思います。
  370. 浦井洋

    ○浦井委員 それは、文字を読めばそう響いてあるわけですからね。山本管理官もおられますけれども、日本補綴歯科学会というのは日本歯科医師会の、言うたら下部機関ですよ。だから日本歯科医師会の内部にある一つの学会であって、そして補綴の専門家が集まっておるという点では日本で唯一最高の学会だ、こういうふうに言われているわけですね。各歯科大学の教授がずっと集まってきて学会の理事をしておる、こういうことですね。間違いないでしょう。
  371. 大和田潔

    ○大和田政府委員 先ほど先生がおっしゃいましたように、これは日本歯科医師会の下部機構であるということであろうと思います。
  372. 浦井洋

    ○浦井委員 下部機構でなしに、唯一最高の学会なのですよ、文字どおり、歯科医師の歯科医学界の中では。それで、歯科医師会の中に入っておる。  そこの日本補綴歯科学会に、ポリサルホンを導入する際に、日本歯科医師会なり、あるいは念を入れれば厚生省なりがどうでしょうかと、こういう最高の権威の集まりであるところに、補綴の部分ですから聞かれたのですか。
  373. 大和田潔

    ○大和田政府委員 私は、先ほどの議論からいきますと、この補綴歯科学会の上部機構である日本歯科医師会に御相談を申し上げてまいったわけであります。その結果、これは金属床にかわり得るものとしていいものではないかということで導入をしたということであります。
  374. 浦井洋

    ○浦井委員 そこで、私が入手した資料でいきますと、その日本補綴歯科学会は、ポリサルホンの導入については、これの検討打合会が開催されたのが六月の二十四日であった。そこで初めて知った。それまでは日本歯科医師会からも何にも連絡がなかった。  こういう状態は一体どういうことなのでしょうね。常識ではちょっと考えられぬわけなのですね。その守備範囲であるごと、金属床にかわり得るものだと称してポリサルホンが義歯床として導入される、保険適用になるというようなことを、日本歯科国師会が自分の下部機構である日本補綴歯科学会に何にも相談していない。ちょっと考えられないわけなのですよ。  それから、それと比較しますと、今度の歯科の診療報酬改定の中で、口蓋裂というのが入ってきたですね。この場合はどういう手順でやったわけですか。かなりな手順を経ておられると思うのですよ。
  375. 大和田潔

    ○大和田政府委員 これも日本歯科医師会と御相談を申し上げながら進めてきておるわけであります。
  376. 浦井洋

    ○浦井委員 これは、それは厚生省の容喙する問題ではないと言われるかもわかりませんけれども、口蓋裂患者の矯正を保険に導入するか否かについては、日本歯科医師会は今度は、自分の下部機構である、補綴学会と並びの矯正学会に対して諮問をしておる。そして答申書を得て、その結論として「口蓋裂児の矯正治療は、一学会、一矯正歯科医の誠意と努力をはるかに越える厳しい事態である」とし、「さらに国家的観点に立った対策の推進」を期待する、こういう文章までつけて、それで結果としては今度の診療報酬改定で口蓋裂の処置が入っておるわけですね。保険に導入されている。そういうような手はず、手順をやっておるのに、このポリサルホンの義歯床の導入については、歯科医師会の中で、自分のところの内部の補綴学会に全く相談しておらぬ、こういうような現象が出ておる。  こういう事実は保険局長御存じですか。
  377. 大和田潔

    ○大和田政府委員 それは私どもは、先ほど来申し上げておりますように、学会の上部機関である日本歯科医師会と御相談申し上げておるわけでございまして、日本歯科医師会が学会にどのように御相談されたのかあるいはされなかったのかということにつきましては、日本歯科医師会の御判断というふうに私どもは考えておるわけでございます。
  378. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、先ほど、学術論文も発表されて云々というようなことをちょっと保険局長言われたのですけれども、ポリサルホンについて、これまで学会発表があるのかという問題ですが、これはどう認識されておりますか。
  379. 大和田潔

    ○大和田政府委員 これは、先ほども触れましたように、日本歯科大学で物性試験をやっておられるわけでございます。その物性試験の結果、ポリサルホンが金属床に非常に近いというような結果が出ておるわけでございます。もちろんこれ以外に、薬事法上の承認がなされますときの添付資料ということは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、強いて学会というふうに申し上げますならば、いま申し上げましたような日本歯科大学におきます物性試験というものがあるというふうに申し上げられるわけであります。
  380. 浦井洋

    ○浦井委員 物性試験があるだけですよね。臨床試験というようなものはないわけですよね。私、その実験的研究、これは山口大学ですが、物性試験のは持ってきていませんが、六例ほどある中で、臨床データというのは一例だけなんですよね。  この補綴学会の中にございます補綴保険問題検討委員会の報告が七月二十三日に出された。これは山本管理官もよく御承知のように、医科歯科大学あるいは日歯大、日大歯学部、こういうような、日本で補綴の権威者であると言われておる人が十人足らず集まっておられるわけなんです。そこでこのポリサルホン導入の問題について意見を言われておるわけなんです。  ちょっと読み上げてみますと、   ポリサルホン樹脂については、いずれの委員もこれを実際の症例に使用した経験はない。   また、学会機関誌である日本補綴歯科学会雑誌に、論文または症例報告として投稿掲載されたことも日本補綴歯科学会の学術大会、例会、地方会において公表されたこともない。   したがって、この材料が補綴用材料として適正なものかどうかについては、現時点ではいずれの委員も見解を表明できる論拠をもっていない。 日本で最高の補綴の専門家が集まって、しかも日本歯科医師会の内部の一つの機関であります、これがこういうことまで言っておられるわけなんです。まさにこれは、この補綴学会では、ポリサルホソというのはまないたの上にのっておらぬ、こういうことなんですよね。  それで、局長がこの前特別委員会でも答えておられるように、これは先ほども言われたように、いろいろな物性の研究報告がある、あるいは沖歯科要材は七千百三十ケースにわたって開業医にアンケートを求めておるというようなことを言われるだろうと思うのですけれども、そのアンケートにしても、これをよく調べてみますと、時期から見てポリサルホンが対象のものではないのですよ。その前の段階のポリカーボネートなんですよ。もうそれしかない、そういう結論にならざるを得ぬわけなんです。  それから、局長がいま言われた論文というようなものも、先ほど私言うたように、その材質の物性についての実験データであって、臨床報告というようなものは、私ここに持ってきておるこの一例しかないわけなんです。  こういうことで、何で急いでこの保険導入をされたのか。非常にこれは、もう歯科医師やらあるいはいろいろなマスコミも含めて、何かあるんと違うかというようなことを考えるのは、私は当然だと思う。  それで、この補綴の専門家の先生方の集まりはさらにこう言われておる。   この材料を使用した症例が某歯科雑誌に掲載されたものをみると、歯科補綴学専門の立場で、なお検査、検討を必要とする事項が残されていることは明らかであり、保険適用材料として、このものが全般的に使用されることには慎重でなければならないことが指摘できる。   いわんや、ポリサルホン樹脂を使用した義歯が、金属床義歯に代わる材料的特性をもつとは断定できない。 これは意訳をすれば、ポリサルホンは金属床にはかわり得ないんだ。ポリサルホンが金属床にかわり得るんだというのは、ある学者に私直接聞いたのですけれども、これは世界で初めて出た意見である。ということは、珍説である、珍しい説である。それをなぜ、週刊誌なんかによると短時間の間に一部の人間で相談して、強引に中医協に答申をさして、そして保険の適用をしたのか、私はきわめて疑惑に満ちたものだと言わざるを得ない。どうですか。
  381. 大和田潔

    ○大和田政府委員 そこで、なぜ急いだかという御質問でございますので、いよいよその急いだ理由を申し上げなければならぬわけでございますが、これは御承知のように歯科の保険外負担の導入ということにつきまして……(浦井委員「それはもうわかっている、よう聞いている、よろしいです」と呼ぶ)いや、ここではまだ初めてでございますので、保険外負担の導入ということにつきまして、これはすでに昭和五十二年八月の厚生省と日本歯科医師会との間の合意というものに基づきまして、これは当然この両者の合意によりまして、それは患者に対する、国民に対するサービスの向上ということでございますが、これを三段階に分けて推進していく。第一段階については、十項目中の九項目は導入された。第二段階がいよいよ今回の六月における医療費改定に際して導入をしなければならぬ。そこで、金属床が第二段階の対象になるわけでございますけれども、これは非常に財政的に金がかかるということで悩んでおったというところで、その金属床に非常に近いものが出た、こういうことでございます。  それで、先ほど先生がおっしゃいましたようなことで、これはポリサルホンについては果たして金属床にかわり得るものかどうか、そういう疑問の一つとして適応症かどうかという問題がある。適応症につきましては、私どもは、確かにこれは適応症がある、たとえば口の中が非常にまだ可変的なものであるといったような場合にはこのポリサルホンは適応症ではなかろう、これは固定したものだというときに適応症になるであろうということは申し上げておるわけでございまして、適応症に応じてこのポリサルホンの義歯は使いなさいということになっております。しかも、これはすでに自費診療として行われておるわけでございまして、これは自費診療でやります場合にはかなり高額なものである。それを保険導入することによりまして患者の利便というものを進めた、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
  382. 浦井洋

    ○浦井委員 それは特別委員会でずっと局長がくどくどと言われたことをここで繰り返された。そういう意見を踏まえて私はこの質問を始めたわけなんです。もとへ戻すことはないわけなんですよ。  それで、こういうことなんですよ。これは局長は御存じないかもわかりませんが、昭和三十三年にやはりレイニング工法、射出成型というかっこうでポリウレタンが登場したことがありましたね。このとき、このポリウレタンというのは結局もうあかんということになっておるわけなんです。  ある雑誌をちょっと読み上げてみますと、確かにレイニング工法でポリウレタンを使うと非常に強いという理工学的に特質を持っておることがわかった。   しかし、臨床応用してみると、不思議なことに重大な欠点が出てきたのである。理工学的に優秀ではあったが、臨床的には不適であったわけである。それらの点を列挙すると、   1、人工歯(レジン歯)が義歯床に接着しない(したがって保持孔が必要)   2、通常のレジンと化学的に接着しない   3、陶歯が使用できない   4、義歯床がたわむ さっき言いましたゆがみ、ひずみ、たわみ、こういうもの。これと同じ現象が、同じ欠陥を持ったものとして再びここでポリサルホンで登場してきておるわけなんです。だから、いろいろな先生方に意見を聞いても、陶歯が使えないとかあるいはリベースができない。これは反論されるかもわからぬですけれども、あるいは大臣、年齢とともに歯茎というのはどんどん萎縮していって変わるわけなんです。当然それに義歯床が適合しておらなければいかぬ。それには、不適合になってきたら割れなければいかぬ。  ところがこのポリサルホンは、たわみ、ゆがみ、ひずみがあるために割れないわけなんですよ。いつまでたっても適合しているように本人は思う。そうすると骨吸収が起こってきて、あごの関節が変化する、こういうようなことも予想される。こういう危険なものを何で導入したのか、こういう問題になってきておるわけなんです。  そこで私はもう一遍大臣にお願いしたいのですけれども、本当に私の話をまじめに聞いていただいて、もういまこのポリサルホン問題というのは問題が非常なところにまで波及しておるわけです。そしてその中で、やはりここで一つ制度的な欠陥として言えることは、私は薬務局には尋ねなかったのですけれども、五十五年の七月に歯科材料として許可をされる。これは歯科材料として許可をされておるだけなんです。それで今度は、ついこの間の六月一日に保険に適用される。薬であれば、それなら臨床テストをどこでやるか、臨床的にどうなのかという検討があるわけなんですが、歯科の場合にはそれがないわけなんです。だから、理工学的に薬務局で通れば、あとはもうほとんどノーチェック、ノーマークで、保険局で中医協に諮問を出して答申を得れば、そうしたら保険適用になる。こういう制度的な欠陥が歯科の場合にある。ポリサルホンはそれの一つの該当物なんです。それに利権があるとかなんとか、いろいろなうわさが飛んでいます。これは私、きょうは触れませんけれども、こういう点をやはり改めていただきたい、こういう問題であります。それが一つ。  それからもう一つ、本当にむだがあるのだという問題でありますけれども、これは先ほども社会党の永井委員が取り上げられたわけでありますけれども、近藤病院ですね。この近藤病院で非常に脱税だとか不正請求が見つかって、それで本人はいま保険医の取り消し、それに抗告をしておるというようなかっこうでありますけれども、近藤病院の問題に関して最後にしばらく尋ねたいのですけれども、兵庫県からの報告なり、あるいは国保連合会、兵庫の基金についての国や中央基金の監査の結果は一体どうなっているのか、ちょっと報告していただきたい。
  383. 大和田潔

    ○大和田政府委員 近藤病院につきましては、九月の十日及び十一日に、厚生省は兵庫県と共同で監査を実施いたしました。  それでこの近藤病院に対する措置につきましては、内容を分析いたしましたところ、不正また不当の診療や請求が明らかになりましたので、兵庫県知事は、九月二十八日地方医療協議会におきまして保険医療機関の指定取り消し及び近藤医師の保険医の登録取り消しの諮問に対しましてその旨答申がございましたので、十月十五日付で行政処分を行ったところでございます。  ただ、相手方のこの処分の取り消し、この執行停止の関係でございますが、その申し出に対しまして五十六年十月十四日、神戸地裁より執行停止の命令が出た。それに対しまして兵庫県は、十月二十一日、即時抗告を行っておるわけでございます。  以上であります。
  384. 浦井洋

    ○浦井委員 私、それに関連して尋ねたのは、県ではどうだったのか、国保連合会ではどうだったのか、基金ではどうだったのか、この報告を聞いているわけです。
  385. 大和田潔

    ○大和田政府委員 大変遺憾なことでございますが、確かに職員に関しまして不正が発生をいたしたわけでございます。  これは、まず近藤直外病院職員一名と兵庫県の国保連職員二名が共謀して、無診査のレセプトを診査済みのレセプトに挿入して国保分の診療報酬を不正に受給してきたとして、八月五日起訴されたという事実がございます。  そこで、それに対する措置でございますが、国保連の職員につきましては、すでに起訴されております二名につきまして、五十六年八月三十一日付で懲戒免職の処分を行ったわけでございますが、さらに管理監督が不十分であったといたしまして、管理者等八名に対しまして、停職から戒告までに至る処分を九月十日に行っておるところでございます。  それから支払基金でございますが、支払基金につきましては、調査をいたしました結果、レセプト差し込みといったような事実はございませんでしたが、係の忘年会等におきまして若干の寄付を受けておるというようなこと、あるいは数名の職員につきましてゴルフの際、これはもちろんプレー代としてその職員が自己負担をしておったようでございますけれども、しかし、そういったようなことに対しましてやはり厳正な処分をするということで、手続を経て適正な措置をするという報告を受けております。これは具体的な措置はまだ行われておりませんけれども、そういう予定であるということでございます。  県につきましては、国民健康保険課の吏員一名でございますが、これにつきましては、やはりゴルフが関連しておるわけでございますけれども、その回数十何回かにわたりましてゴルフコンペに参加した、その際会費といたしまして一万円程度を払っておるわけでございますが、どうしても不足分が出て、その不足分を近藤が負担をしていたということがわかりましたために、その職員につきましては九月二十八日付で訓告処分を行いました。同人は責任を感じまして、九月三十日依願退職をいたしております。  それからさらに、保険課の職員が二名おりますが、これもやはりゴルフコンペに参加いたしまして、この費用につきましてはその都度負担をしておったわけでありますけれども、公務員の信用を傷つけたというような行為でございましたために訓告処分を九月二十六日に行っておるわけであります。  以上でございます。
  386. 浦井洋

    ○浦井委員 もう時間が来ましたけれども、いま大和田局長から、近藤病院に関連した行政あるいは国保連合会あるいは兵庫の基金、こういうところでいろいろと病院と癒着をしておるという事実が明らかになってきておるわけです。私は、ことしの五月の十四日だったと思うのですが、大和田局長にこの問題について質問したら、大和田局長は、金品の授受については新聞に報ぜられているような事実はないという回答が兵庫県から参っておるというふうな答えであった。その後かなり事態が明らかになってきておるわけで、きょうは正直に大和田局長は答えられたわけであります。  やはり先ほどのポリサルホンの問題といい、多少むだの方向は違いますよ、しかしポリサルホンの問題についても、拙速でああいうものを導入をして、保険の金をいわば浪費をするというかっこうになる。こちらの場合はもうもろですよね。審査、監査を厳格にする、あるいは通知書運動をやるというようなことを言うても、肝心のこういうところがこういう問題を起こしておるようでは、これは全く効果もないわけなんです。だからそういう点で、癒着、不正、腐敗あるいはいろいろな疑惑というものははっきりと明らかにして、行政としてもえりを正していかなければいかぬ、このように私は強く大臣に要望したいわけなんです。  だから、最後にその二つの問題について大臣の——私は、ポリサルホンの問題については一遍大臣が直接乗り出して、どうなんだということでよく調べていただいて、もう一度この保険導入の件についても再検討するぐらいの態度をとられてもよいのではないかと思うのですが、そのことも含めて、最後の答えを賜りたいと思うのです。
  387. 村山達雄

    ○村山国務大臣 近藤病院に関連いたしまして、関係者に不正があったということはまことに遺憾でございます。これから医療機関と患者の信頼関係が大事なときでございますので、さらにこういう点は戒心いたしまして、もしわかりますればやはり厳正な処分を励行してまいりたいと思います。  ポリサルホンの問題につきましては、るる保険局長から事情を述べました。また、その適応症についても言っているわけでございます。しかし、浦井先生から専門家の立場で御指摘もございますので、十分参考にさせていただきたいと思います。
  388. 浦井洋

    ○浦井委員 終わります。
  389. 湯川宏

    湯川委員長代理 次に、菅直人君。
  390. 菅直人

    ○菅委員 老人保健法につきまして、前回の審議のときにも幾つかの点について御質問申し上げたのですが、まだいろいろな面で大きな疑問がありますので、ちょっと方向を変えてお尋ねをしたいと思います。  特にまず第一点としては、この老人保健法の場合に、実施主体がいわゆる市町村になっているわけですけれども、そういう意味で、いわゆる市町村や都道府県から見たときに、この老人保健制度というものがどういうふうな形で、負担を含め、また仕事量を含めて、自治体で行うことができるのかといった点を中心に幾つかお尋ねを申し上げたいと思います。  まず、負担の問題からいきたいのですけれども、医療費、いわゆる療養に必要な費用の問題からして、市町村にとってどういう負担増になり、そしてどういうところで負担減になって、最終的に市町村としては医療費についてその負担の面ではどういった影響が出るかについてお伺いしたいと思います。
  391. 吉原健二

    吉原政府委員 五十六年度の試算で申し上げますと、試算Iを前提にして申し上げたいと思いますが、現行制度と比べました場合に、市町村の負担は四百三十億の増になります。公費の部分で市町村の負担がこのようにふえるわけでございますけれども、市町村が運営をしております国民健康保険の面におきましては、国民健康保険の保険料が一千五十億円程度減るということになっております。これは実質的な意味での市町村の負担減になるのではないかというふうに思います。
  392. 菅直人

    ○菅委員 いま国民健康保険が一千五十億円の減になると言われたのですが、現在国保の特別会計に対して、市町村がかなり赤字部分を補てんするために一般会計から繰り入れているということが言われているのですが、その各自治体、いわゆる市町村、場合によったら都道府県を含めて国保特別会計に一般会計から繰り入れている総額がおわかりですか。
  393. 大和田潔

    ○大和田政府委員 昭和五十六年度予算ベースで申し上げますと、国保特別会計の一般会計からの繰入金は千六十九億五千九百万という額が出ております。それから都道府県からの補助額は四百五十三億九千九百万ということになっております。
  394. 菅直人

    ○菅委員 そうすると、この国保において千五十億が軽減されるということは、考えようによれば、都道府県の補助金を変えないとすると、いまのレベルで自治体や市町村は千六十九億ですからほぼ同額と考えれば、一般会計からの繰り入れが、自治体自体によってもちろんいろいろ変わりますけれども、トータルで考えれば、ほぼなくても済むというふうに考えていいわけですか。
  395. 大和田潔

    ○大和田政府委員 いわゆる単純な計算をいたしますと、そういうようなことになるわけでございます。
  396. 菅直人

    ○菅委員 もう一つ別な面からこの千五十億ということを考えたときに、こういう計算ができるでしょうか。国保の保険者の一世帯当たりの負担減というのがどのくらいになりますか。
  397. 大和田潔

    ○大和田政府委員 これも五十六年度について申し上げますと、現在国保の一世帯当たりの保険料は約九万一千円となっておるわけでございます。五十七年度におきまして、現行制度を前提とした場合、これが約十万円になるという推定が行われるわけでございますが、老人保健制度が五十七年十月から実施されました場合には、約九万六千円程度になる、こういうふうな推計が行われておるわけでございます。
  398. 菅直人

    ○菅委員 そうしますと、大体一世帯当たり年間四千円程度の負担減にこの千五十億がなるということだと思いますが、いま経済的な負担のことを申し上げましたけれども、医療費以外で事務費、さらには保健事業にかかる費用、これもだんだん変化をしていくと思うのですが、こういうところで市町村の負担増なり減というのはどうなりますか。
  399. 大和田潔

    ○大和田政府委員 額ではなく、どんな事項がふえてどんな事項が減るかというようなことのお答えでございますが、たとえば増加する仕事といたしましては、国保被保険者である老人保健対象者の抽出作業であるとか、あるいは老人医療費拠出金等の納付に関する事務というようなものがふえていく。それから減少する事務としては、老人保健対象者レセプトの内容審査とか療養費の支給に関する事務といったようなものがございまして、非常にラフな言い方で大変恐縮でございますけれども、そういう事務量の増減という両要素が見込まれますために、大体国保の事務量はほぼ変化がないのではないかというふうに考えられるわけでございます。
  400. 菅直人

    ○菅委員 それでは、まとめて都道府県の問題も同じようにお伺いしたいのですが、都道府県について医療費ないし事務費を含めた負担増、また負担減があれば負担減、それから仕事量の問題で、同じような面で説明をいただきたいと思います。
  401. 吉原健二

    吉原政府委員 都道府県について申し上げますと、現行制度と新制度を比較いたしました場合に、市町村と同様、五十六年度の試算で四百三十億円の増ということになります。  ただ、先ほどのお話との関連で申し上げますと、都道府県が市町村の国民健康保険に対する補助を行っているわけでございますが、その補助の分が何ほどか減るということになるのではないかというふうに思っております。
  402. 菅直人

    ○菅委員 仕事量についてはどうですか。
  403. 吉原健二

    吉原政府委員 都道府県の仕事量は、現在とおおむね変わりはないというふうに思っております。
  404. 菅直人

    ○菅委員 いまの市町村、都道府県の話をまとめてみますと、市町村、都道府県は、医療費においてはそれぞれ四百三十億円の負担増になるけれども、国保の会計が千五十億負担減になるから、それをどういう割合かで市町村、都道府県の負担減につながれば、トータルとしてはそれほど大きな負担増にならないのではないかということなんですけれども、私多少心配するのは、各市町村において、経済的負担の問題もそうなんですけれども、特に事務量を含めて、いま十分に聞いていませんが、今回の保健事業の費用の問題を含めて、果たしてどういうふうになるのかということを、市町村段階でもまだ十分把握してないように思うのですけれども、果たして、特に今回七十歳以上の、国保だけではなくて、政管や組合健保や共済に入っているあらゆる人たちの支払いの責任を市町村がかぶるということで、費用的にはともかくとしても、作業事務として、うまくやれるのかどうか、そのあたり自治省としてはどういうふうにお考えですか。
  405. 亀田博

    ○亀田説明員 まず、今回の制度の基本的な考え方で、私どもの立場でございますけれども、先ほど来厚生省の方から御説明がございましたように、費用的には公費負担を国と地方公共団体で分け合っておるわけでございます。したがいまして、現行の制度との比較によりますと、この制度の創設によって地方団体の負担というのは当然ふえることになっておりまして、先ほど来御質問がございました、現行で行っております補助の制度というのは国保に対する補助制度でございまして、必ずしも老人分という意味ではございませんので、私どもは、そのまま軽減につながるとは考えられないところでございますので、一応純増ということにまずなるわけでございますが、この制度老人医療費につきまして保険者間の負担の公平を図るために行われるものでもございますし、先ほど来の御質問にもございましてお答えがありましたように、従来から国民健康保険の財政の問題が非常に問題となっておりますのが、今回、その点につきましては保険料の負担の軽減につながるということは言えると思いますし、また、新しい制度の地方公共団体の持ち分というのが、現行の老人医療費制度を基本的にその考え方を変更しない割合でなされていることでもございますので、私どもとしては、費用負担の問題につきましては、やむを得ないものというふうにはまず考えておる次第でございます。  しかしながら、先ほど来明らかにされましたように、一時に多額の負担増になるわけでございますので、必要な財政調整の措置を講じてほしい旨を、関係省に対して私どもとしては要請をしておるところでもございますが、いずれにいたしましても、地方団体の円滑な財政運営には支障を生じないように、適切な対処をしてまいりたいと考えております。  それから、経費にも関係をするのですけれども、事務処理体制等につきましては、いろいろな支払い事務等につきましては委託することができる旨の根拠規定等もございますので、これから厚生省の御方針を承りながら、私どもとしては誤りなきように対処をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  406. 菅直人

    ○菅委員 いまの自治省の見解、多少ニュアンスが厚生省のあれと違うのですが、当面の老人保健制度創設において純増の負担がかなりある、間接的には負担減になる部分もあるかもしれないけれども、ということで、これがどういう形で各個別の自治体になされるか、いまのあれで多少不安なんですね。  もう一回ちょっと厚生省の方にお聞きしたいのですけれども、もちろん負担増は、そこに住んでいる七十歳以上の方の医療費の五%ということですから、ストレートにもう間違いなく来る。負担減の方はトータルで来るわけで、各自治体においてこれがうまくマッチするのか。それとも、各自治体の中では、この四百三十億に相当する部分をやはり一般会計から出さなければ仕方ないんだと思うのですが、そのあたりは、ちょっといま自治省の方と厚生省の返答のニュアンスが違うような気がするのですが、どうですか、厚生省
  407. 吉原健二

    吉原政府委員 先ほど申し上げました四百三十億円の増になる市町村の負担、負担額全体といたしましては、新制度で五十六年度で千二百四十億が市町村の負担になるわけでございますが、これは市町村の公費の負担、一般財源の負担ということになるわけでございます。
  408. 菅直人

    ○菅委員 ですから、それが負担増になったときに、各自治体にとって先ほど言われた千五十億の負担減と相殺される構造になるのか、それとも、先ほどの自治省の方の見解では、これは国保全般にわたっての負担減にはなるかもしれないけれども当面は純増になるという見方ですけれども、その関係はどういうふうになるわけですか。
  409. 吉原健二

    吉原政府委員 個々の市町村によってかなり事情は違う面があろうかと思います。四百三十億の公費の負担増についてもそうでございますし、千五十億の国保の保険料相当分についても市町村の事情によって相当違ってくる。これはあくまでも全体的な姿でございまして、御案内のとおり三千二百余りの市町村で国保の保険料の状況、それから一般的な財政事情、かなり違いがございます。一般的に言いますと、国民健康保険の保険料が非常に多くの市町村で相当程度の軽減になるだろうと思っております。公費の部分がどうなるかというのは、必ずしも一概に言えないと思いますけれども、平均して、全体的に現在の負担が実質三%になっておりますけれども、新制度では五%の負担増になるというふうに思っております。
  410. 菅直人

    ○菅委員 それからもう一つ先ほどの問題で、事務処理を委託することができるので何とか誤りなきようにという自治省の見解ですが、これは前回質問しました拠出金の問題とも多少関係するのですけれども、たとえば国保について、果たして国保の保険料の把握などが確実に行われているんだろうか、あるデータによれば二割近い所得把握ができていないといったような問題があったり、それから支払いのチェック、審査についても国保について非常にルーズだということが一般によく言われているわけですが、今回老人保健制度新設によって、ある意味ではこれまで国保の保険者であった市町村があわせて老人保健全体を見るわけですけれども、そういった点、これまで国保についてもかなり問題があったものがこういう形で七十歳以上全体の責任を受け持つということで果たして事務処理がうまくいくのだろうかということが非常に心配されるわけですけれども、その点については厚生省としてはどういうふうに考えておられますか。
  411. 大和田潔

    ○大和田政府委員 これにつきましては、十分適正に行われるように指導していくということを申し上げる以外にないと思うわけでございます。
  412. 菅直人

    ○菅委員 たとえば、これも全般にかかわる問題ですが、いま厚生省の方も通知運動の促進をかなりやっておられて、国保についてもかなり通知運動が進んでいると聞いているのですが、政管や組合健保に比べると通知運動の進展も都道府県によっては相当でこぼこがある。これまでも相当指導されてきたと思うのですが、そういうことも含めて、果たして厚生省の指導というのがそういったかなり具体的な事務作業、それから審査などにまで確実に及ぶのかどうか、これまで以上に及ぶための何か手だてがこの老人保健法の中に含まれているのか、それともこれまでの国保に対する指導と同じような形での指導にとどまるのか、そのあたりはいかがですか。
  413. 大和田潔

    ○大和田政府委員 先生、医療費の通知のお話が出ましたので申し上げますと、これにつきましては、各自治体におきましてはかなり医療費通知を行っておるわけであります。すでに七〇%行っておるわけでございます。これはやはり各地方公共団体におきましても、現今のような医療費の状況に対しましてどのように適正化をするかということの自覚というものが非常に高まってきておる結果だとは思いますが、現段階で七〇%、これはさらに今年度におきましては、もう全部の市町村が行うような強力な指導をしておるわけでございますが、これにつきましては、かなり効果が達成できるようなところまでいくのではなかろうかというふうに私どもも考えておる次第でございます。
  414. 菅直人

    ○菅委員 もう一回念を押しますけれども、この老人保健制度という制度の中で、特にこういった事務処理についてこういう手だてがあってできるのだとか、それから、通知運動のことが出ましたのであわせてお聞きしたいのですが、今度の場合、老人保健について、老人の部分についてもし通知をやるとすれば、それは自治体が、実施主体がやることになるのですか、保険者がやることになるのですか。
  415. 吉原健二

    吉原政府委員 いわゆるお知らせは、老人保健制度におきましては実施主体である市町村がやるということになります。
  416. 菅直人

    ○菅委員 お知らせというのは、いわゆる通知運動に相当するものも含んでということですか。
  417. 吉原健二

    吉原政府委員 そのことでございます。
  418. 菅直人

    ○菅委員 そういった点で自治体から見た老人保健制度のあり方、それがどういう影響をするかということを幾つかお聞きしたのですが、かなり大きな制度変更で、自治体も戸惑っている面がかなりあるのではないかと思いますので、もしこれが実施される場合の準備期間等について、多少拙速な感じがするということを申し添えたいのです。  もう一つ、問題を変えまして、前回、私の質問の中で二つのことをお聞きしたわけです。一つは、いまも問題にしました支払いの審査の問題を含めたレセプトのチェックについてお聞きしたのと、もう一つ、拠出金の負担がどういう形で各保険者の負担になってくるかということを多少お聞きしたのですが、前回、私の通告に入ってなかった関係で保険局長おられませんでしたので、改めてお聞きしたいのです。  今回の拠出金の負担で、試算I、試算IIがあるわけですが、まず組合健保に関して、試算Iの場合に負担増が千分の幾つになるか、また試算IIの場合には幾つになるか、それをあわせてもう一度お答えいただきたいと思います。
  419. 大和田潔

    ○大和田政府委員 試算IIは、実は私、手元に計算をしてないのでございますが、試算Iにつきまして申し上げたいと思います。  試算Iによりますと、健保組合の負担増が五十六年度ベースで千分の二・一ということになるわけでございます。
  420. 菅直人

    ○菅委員 政管についても試算I、試算II、わかれば両方あわせてお願いします。
  421. 吉原健二

    吉原政府委員 政管で申し上げますと、試算Iの場合、五十六年度でございますけれども千分の〇・二の負担増、試算IIの場合には千分の三・二の負担増でございます。それから組合健保の場合ですと、試算Iの場合千分の二・一、試算IIの場合には千分の八・二の実質負担増になります。
  422. 菅直人

    ○菅委員 いま、試算IIの場合に組合費が八・二と。私の計算によればこれほどまではいかないで五・幾つになるのではないかという感じもするのですが、八・二といえばもっと大きいわけです。これは組合の場合ですと、平均が試算Iで二・一、試算IIで八・二ということでしょうから、そうするとそれの前後に相当のばらつきがあるわけですね。各保険者、組合の場合ですと、各組合のばらつきぐあいについては相当把握をされているわけですか。組合にとっては負担がたとえば何%くらい、大体千分の五以上だとか三以上だとか、そういうことの把握はどの程度されていますか。
  423. 大和田潔

    ○大和田政府委員 先ほど申し上げましたように、私の方といたしましては、試算Iということを前提にして幾つか作業といいますか、試算をやっておるわけでありますが、まだ健保組合につきましてごく一部の試算ということになりますし、その前にまずモデル的なことをやってみたらどうだろうかということで、ちょっとそこで検討してみたわけでございます。  まず、この拠出金につきましては、その可変要素といたしましては、標準報酬月額の高低、七十歳以上の加入者割合、それからその保険者における医療費の多寡という三つの変動要素があるわけでございますけれども、これを標準報酬とか医療費につきましては不変といたしまして、七十歳以上の加入者割合が変わったらどうなるかといったようなことで試算をしてみたわけでございます。  それで、七十歳以上の加入者割合だけ異なる平均的ないわゆる健保組合で試算をしてみますと、加入者割合が全組合平均では二・九%になる。それのおおむね半分、つまり若い組合でございますが、ということは拠出金が多いということになるわけでございます。その場合にどれぐらいの負担増になるかということになりますと、大体千分の四・七とか八とか、千分の五弱でございますね、そういうような負担増になる。それから、逆にその加入者割合が平均のおおむね二倍である六%ということになりますと、逆に千分の三程度の負担減になる、こういったようなことが言えるわけでございます。  それで、これがモデル的な計算でございますけれども、それを実地にたとえばよく御承知の、これは名前を挙げるわけにはいきませんけれども、財政窮迫化している石炭関連企業といったような場合の例をとりますと、そこでは加入者割合が五・四%になっている。そこではむしろ千分の三程度が負担軽減される、こういうかっこうになる。また逆に、その加入者割合がかなり低いという例が一つございまして、東京に所在いたします総合健保組合の例でございますけれども、加入者割合が、これは平均二・九のところが一というのが見つかったわけでございます。一%のところで見ますと、その当該総合健保組合の負担増というのは千分の三・二という計算になっております。  したがいまして、どうもいろいろ見てみますと、かなり多い拠出金というところでも、加入者割合が一%というのが恐らく一番多いグループになりやせぬかと思うのですが、その場合の負担増でもせいぜい千分の五か六というような感じになる。もちろん財政窮迫組合の場合は、むしろもらい分というのがある組合が幾つか出てきているというような感じの、言うならばテストという形になるわけでございます。
  424. 菅直人

    ○菅委員 ちょっといまの数字おかしいところがあるのですけれども、私が聞き間違いがなければ、加入者割合が多いところ六%程度あるところが千分の三軽減になると言われましたか。
  425. 大和田潔

    ○大和田政府委員 そのとおりでございます。千分の三程度の負担減になる。
  426. 菅直人

    ○菅委員 ちょっとおかしいんじゃないですか、いわゆる全体の平均が五・七ですから。二・九というのはあくまで組合の平均ですから、五・七が平均ですから、六というのは全国平均とほぼとんとんということになると、こんなに軽減になるのですか。
  427. 吉原健二

    吉原政府委員 大変恐縮でございますが、先ほどの数字に誤りがございましたので訂正をさせていただきます。  試算IIの場合の政管健保の負担増でございますが、先ほど三・二と申し上げましたが、千分の二・二の間違いでございます。  それから組合健保の場合、先ほど八・二と申し上げましたが、千分の五・四の間違いでございます。  おわびいたします。
  428. 菅直人

    ○菅委員 後十分で余り時間もないのであれにしたいんですけれども、どうもまだ把握が十分にされてないんじゃないか。特に試算I、試算IIというのが、これは前回も今回もいろいろな方が私も含めて申し上げたんですが、いわゆる試算Iになるか試算IIになるかというのは、現在の厚生省としては当面試算Iの計算でいきたいけれども、試算IからIIまでの幅というのは政令事項という形で、政令でいつでも変えられるというのがいまの法案になっているわけですね。そういう中で、たとえば試算IIであれば、いま言われた数値をとっても、組合健保の場合に平均千分の五・四の増になる。これが平均ですからさらにその前後に幅があるわけですけれども、たとえばこれは個人的見解で構わないのですが、千分の五・四なんという負担をもし平均的に組合健保がかぶった場合に、果たしていまの料率でやっていけるのかどうか。いまの料率、もちろん上限が決まっているだけですけれども、たとえば一つのめどとして、政管と同じ千分の八十五程度でやっていけるのかどうか、その点どうですか。
  429. 吉原健二

    吉原政府委員 組合健保の場合でございますが、現在の組合健保の全体の平均的な保険料率は、千分の七十九・五でございます。政管健保の方が現在八十四でございますから、かなり低いわけでございますけれども、老人の分だけで比較をしてみますと、現在でも組合健保の場合は、老人のための保険料率を計算いたしますと、千分の八・二程度でございます。それが五十六年度の試算Iでございますと、千分の十・三になるわけでございます。一方、政管健保について申し上げますと、全体の保険料率が千分の八十四でございますが、老人医療に充てられている分を計算いたしますと、千分の十・五でございます。これが試算Iの場合ですと十・七になる。つまり老人に対する拠出分だけで比較いたしますと、現在政管健保と組合健保は、組合健保が千分の八・二、政管健保が十・五と二以上の開きがあるということでございますが、新しい制度におきましては、それぞれ組合健保が十・三、政管健保が十・七でございますから、ほぼ並んでくる。まだ組合健保の方が低いということになります。
  430. 菅直人

    ○菅委員 それは試算IIでもですか。I、II同じようにということですか。
  431. 吉原健二

    吉原政府委員 いま申し上げましたのは、試算Iの場合でございます。
  432. 菅直人

    ○菅委員 時間もなくなりましたので、申し上げたいことば、前回も少し申し上げたんですが、拠出金の負担の計算がかなり平均値的には出されているわけですけれども、いろいろな保険者によっては相当の過重になってくるんじゃないか。そうした中で、特に試算Iでモデル計算をされているわけですけれども、試算IからIIまでは政令事項ということに、もしこのまま通るようなことになると、大変に各保険者の保険料率に与える影響が莫大でありまして、この前の審議のときに大原委員の方からもありましたけれども、果たしてこの拠出金を賄うための保険料の引き上げというのは一体どういうことになるんだろう、そういう点で大変に不安があると思いますので、こういった点、拠出金の方式そのものも含めてもう一度ぜひよく検討していただきたいと思うわけです。  そういった点で、もう時間もなくなりましたので終わりにしたいと思いますけれども、とにかく今回の老人保健法を見て、いろいろなことが余りにも拙速に行われているんじゃないか、実際に本当にやったときにうまくこれでいくんだろうかというこなしがまだまだ不十分であるという感じが大変に強くするということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  433. 湯川宏

    湯川委員長代理 暫時休憩いたします。     午後九時十分休憩      ————◇—————     午後九時二十六分開議
  434. 山下徳夫

    山下委員長 これより会議を再開いたします。  以上をもって、本案に対する予定された質疑は終局いたします。     —————————————
  435. 山下徳夫

    山下委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出老人保健法案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願うことといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  436. 山下徳夫

    山下委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後九時二十七分散会      ————◇—————