○
藤田公述人 条件つき
賛成という
立場から
意見を申し述べさせていただきます。
まず、初めに総論的なことにつきまして触れまして、次に個別的な
法案につきまして
意見を申し上げさしていただきます。
第一次
臨調の報告が初めて出ましたのは昭和三十九年でございまして、それ以来何度も
答申が出ておるのでございますが、いままで結果的には単なる作文に終わりまして、無視をされてきたわけでございます。今回、第二次
臨調の第一次
答申が初めて取り上げられ、法制化され、政策化されるということは大変に価値のあることであり、そして
国民も甘えを排しまして、効率のある
政府、小さい
政府の確立によりまして活力ある社会をつくる、そういう点で大変私は評価をいたしておるわけでございます。しかしながら、今回の
法案は、基本的な点を討論することなく、緊急避難的な
財政再建に終わり、そして、そのしわ寄せが一部の弱い人にされているという点は反省を必要とするということでございます。
まず、今回の
財政再建を
内容といたしまするこの緊急避難的な立法の背景を考えてみますと、言うまでもなくオイルショック以降の
財政欠陥によるわけでございまして、公債依存度が五十四年におきまして三五・四%にも達している。今年度におきましてもなお二六・二%ある。公債発行残高は現在八十二兆円、GNPの三分の一にも達する、このような
財政危機の
状態にあるわけでございます。民間は、オイルショック以降ぜい肉を落としまして、減量経営を血の出る思いで進めてきたわけでありますけれ
ども、今回、
政府もおくればせながら減量経営に、ゼロ・サム・シーリングの
予算の
方針を立てて、その第一歩としてこの五十七年度のとりあえずの当面の
課題に当たられているということでございます。
しかしながら、ここで私が特に注意を喚起したいのは、現在の
財政欠陥は、オイルショック時のあのマイナス成長、その後数年のゼロ成長という中で、税の自然増収の伸びが非常に低いということがその主な原因であったわけでございます。そのようなことを考えますと、成長はいわば福祉の原資でございまして、今回のこれも、角をためて牛を殺すというふうなことがないように、成長を低めることがないような、そういう経済政策の
立場を十分考慮する必要があるということが第一点でございます。
それから、基本的なもう
一つのことは、なぜこのような緊急避難的な対応でもする必要があったかといいますと、これは高齢化が予想以上に加速度的に進行しておるということでございまして、ことしの九月現在の六十五歳以上の人口は御承知のように千九十三万人、総人口に占める比率が九・三というふうに、人口問題研究所、すなわち
政府の予測をかなり上回っておるわけでございます。そして、その主たる要因は、
高齢者の増加はほぼ予想どおりでありますけれ
ども、異常に出生率が低下をしているということにあるわけでございます。このままでまいりますと、
政府の予測いたしておりまする二十一世紀まで待てないで、
日本は世界最高の高齢化率に達するのでございます。
そこで、現在のような社会のいろいろな仕組みあるいは
行政の仕組みのままでまいりますと、あと二十年くらいで
日本は世界最高の税率あるいは
社会保険料率にならざるを得ない、そのような予測が立つわけでございまして、現在、
国民所得に対する
社会保障の比率あるいはGNPに対する
予算の規模あるいは就業者総数に対する公務員の比率、このようなものは国際的にまだまだ
日本は低い
状態なのでありますけれ
ども、そのような二十年後、二十五年後を見通しまして、いまのうちからこのような効率ある小さな
政府を目指すということに気づきまして、その第一歩をここに始めたということは、大変
意味のあることであるということでございます。
先ほど申し上げましたように、高齢化の原因が出生率の低下にある、いまの人々が子供を生まなくなった。戦前は一夫婦当たりの子供の数は五人であったわけでありますが、終戦直後三人になり、現在は一・七四人というふうになっておるわけでございます。したがいまして、この高齢化の
責任は、外圧でありますとかほかの人の
責任ではないのでありまして、すべての人の
責任でありますので、それぞれ
国民ができるだけ年をとっても働く、あるいは若い人はその扶養に
責任を持つという、そういう
国民の自覚というものが必要である。それにいたしましても、最近経済学で問題になっておりまするサプライサイドエコノミックスあるいはラッファー曲線というようなことからも、税金がだんだん高くなり
社会保険料が高くなりますと、だんだんと活力を失い、経済成長も小さくなり、かえって税収は下がるという、そういう法則があるのでございまして、そういう点からも、何とか増税なき高齢化の乗り切りということをいまから始める必要がある。そういう
意味で、今回がその第一歩であるということであれば、これは大変
意味のあることであると思うのであります。
しかしながら、初めにも申し上げましたように、今回の緊急の立法にいたしましても、一部の圧力団体が動きましたところではたとえば補助率の引き下げが小さくとどまったとか、あるいは声なき声のそういう弱者層についてしわ寄せが集中しているというようなことにつきましては、これは社会的な公正からも許すわけにはいかないのでございます。
そこで、どのような視点から
財政再建を進めるべきか、あるいは
補助金の削減を進めるべきかということでございますが、まず一番目には、やはり現在存在しているのがおかしい、常識的にだれが考えてみても、そのような制度があるのがおかしい、そういう不公平な税制なりあるいは
社会保障制度の八つの制度の格差から取り始めるのが当然ではないのかと考えるわけでございます。
たとえば医師の
保険医の特別税制でありますとか、あるいは一昨年修正案が通って二十年で六十歳にするということにはなったわけでありますけれ
ども、公務員や公企体の人が
年金を五十五歳からもらう、しかも在職の
年金は、
厚生年金におきましては働いて十六万以上収入がありますと一銭ももらえない。ところが公務員あるいは公企体の職員の場合にはほとんど、幾らもらっても
年金はもらえるという、そういう不公平もありまするし、あるいは民間の
企業におきましては、支払い能力の点からどんどん退職金の支給率というのを減らしておるのでありますけれ
ども、公務員の場合には
高度成長時代に決めました支給率がそのまま適用されて、そして民間をはるかに上回る退職金が出ている。民間準拠ということでありますれば、これはそのような退職金につきましても民間準拠が当然ではないかと思うわけであります。あるいは高級官僚がいろいろな公団などに移る、そして二、三年勤めまして何千万かの退職金をもらうというようなことなど、いろいろあるわけでございまして、このようなことは本来あるべきものではないのでありまして、まずそのようなものから改めていくということに、緊急避難といたしましてもまず取りかかるべきではなかったのかというふうに私は考えるわけでございます。
それから、活力のある社会ということには
生活の安定ということが必要でございまして、自助を強調しながらも、やはりナショナルミニマムを全部の
国民に保障するということが必要でございまして、同じ一万円といいましても、百万円の所得のある人と一千万の人とでは、これは全く価値が違うのでございます。したがいまして、すべての人にナショナルミニマムを確保するという、むしろこちらの方を拡充するということが必要ではないのかということでございます。
それから、
補助金にいたしましても、活力のためにはどうしても
物価安定が必要でございます。
補助金を考えてみますと、
物価安定に役立っているそういう
補助金と、むしろ
物価を上げている
補助金があるわけでございます。たとえば国鉄などは私鉄の二倍の運賃である。本来であれば、これはもう倒産しているはずなのでありますけれ
ども、
補助金で存在している、そのために非常に高い価格になっている。あるいは米な
どもそうでございまして、このような面からまず改める必要があるのではないのかということを感ずるわけでございます。
それからもう
一つには、非常に重要なことでありますけれ
ども、
日本の生産性が高いということは海外からも大変注目をされて、
日本がオイルショックを乗り切った大きな原因とされておるわけでありますけれ
ども、公務員につきましては、そのような原価削減あるいは生産性向上というふうな意識が欠けておるのでございまして、民間では職場単位で五人、十人というふうにグループをつくりまして、そしてコストダウン、生産性向上、品質改善というようなことにつきましていろいろ知恵を出し合って、全員経常というのを展開いたしておるのでございまして、何とか私は、公務員にもこのような、民間でやっておりますような生産性向上運動を展開できないかと考えるわけでございます。
ですから、たとえば
予算を翌年に回しますともう
予算がつかないというようなことから、空残業でありますとか空出張でありますとか、あるいは三月になりますと道路が一斉に掘り返されるということで大変
国民に迷惑をかけておるのでありまして、単年度
予算ということはやはりいろいろな欠点があるのではないのか。そして、その生産性を上げて
予算を残したというような場合には、たとえばそれを何らかの賞与というような形で、成果配分というようなものを導入いたしまして刺激をしてはどうかというようなことを総論として申し上げたいのであります。
そこで、時間もございませんので、各論につきまして申し上げたいのであります。
まず、
厚生年金などの公的
年金給付の
国家負担率を現行の四分の三に引き下げるということは、これは先ほ
ども公述人が言われましたように、いわば国の
責任の回避という面があるのでございまして、そして、たとえそれを四分の三に引き下げましても、それは結果的には積立金の融資ということと同じでございますので、何カ年計画というふうに
返済計画を立てまして、そして
利子をつけて返済するのが当然ではないのかと考えるわけでございます。これが
高齢者の間では、いずれは給付費の切り下げあるいは
保険料率の引き上げにつながるのではないかという不安があるのでございまして、そのようなことのないように特にこの段階でお願いをいたしたいのでございます。
それから、
児童手当でございますが、これは三百九十二万円という
所得制限でございまして、これを被用者につきましても五百六十万まで上げて、そして支給率を八割にして非被用者と並べる、こういうことでございます。ただし、ここで問題でございますのは、よくクロヨンとかトーゴーサンとか言われますように、同じ所得といいましても所得の把握率が全く違いますので、このような単純な並べということは問題があるのではないかと思うのでございます。特にいまは、被用者の分につきまして
財政的な余裕があるのでそのような
特例として五百六十万、そこまで引き上げるということでありますが、その余裕がなくなったときにそれではどうなるのかということで、
児童手当の存続については特に御
配慮をいただきたい。このような弱い人につきましては特に
配慮をいただきたい。
特に、これは厚生大臣も述べられておりますように、人口政策としての
児童手当ではないのだということでございますけれ
ども、やはり現在出生率が異常に低下をしている。それがすべてのこのような
財政問題の、あるいは
財政負担の問題になり、これからますますそれが大きくなっていくというところに問題があるのでございます。そのような点からやはり、これはたかだか五千円でありますから、子供を育てるということは非常に大変でありまして、これに比べれば本当に焼け石に水にもならないのでございますけれ
ども、やはり子供を持つのは大変だから国が一部でも三人以上の子供については見よう、そういう精神的な支えにはなっておるのでございまして、何とか
児童手当の存続ということについて
配慮をいただきたいというふうに私は考えるわけでございます。
それから、
公立小中学校の
学級編制の
特例期間中の四十人学級の延長ということでございます。文部省の「昭和五十五年度 わが国の教育
水準」というあの報告書にもございますように、欧米に比べましてまだ教員一人当たりの生徒数の
負担は高いのでございまして、大体欧米は十五人から十九人ぐらいの間にあるのでありますが、わが国は二十人になっておるわけでございます。現在の小中学生、特に中学生でありますが、体も大きく早熟でございまして、とても四十人などという大ぜいを把握できない。校内暴力な
ども起こっておるのはそのゆえでございまして、現場の先生は非常な苦労をしておるのでございます。何とかこの四十人学級というものを一日も早く実行をしていただきたいし、また、とても四十人では把握ができないのでございますので、何とかこれをもっと、三十人というふうにひとつ実現の努力をしていただきたい。要するに、必要なところに金を回すということでなければならないということでございます。
それから、特定
地域のかさ上げ分につきましての六分の一の
補助金の
減額ということでありますが、これも現在の
生活環境を考えますと、特に
大都市圏において劣るのでございまして、このような
地域につきましては特別な
配慮が必要ではないかと思うわけでございます。
最後になりましたが、住宅
金融公庫の現在の五・五%、これが逆ざやになっている、だから六・五%を
財政投融資の利率が上回った場合には弾力的に引き上げるということでございますけれ
ども、現在わが国のサラリーマンにとりまして、何といいましてもまだ
一つ持てないものがあるのでございまして、それは言うまでもなく住宅でございます。そのために非常な苦労をしておるのでございます。それは言うまでもなく土地がばか高い。異常に、もう絶対的にも高いし、また賃金は七%ぐらいしか上がらないのに地価は年々一四%も上がっているということで、年々賃金が住宅に比べまして目減りをいたしておるのでございます。外国は大体二、三年分の月給で家が建つのでありますが、わが国は十年分もかかるということでございますので、何とかこの家が建てられるということについて研究をしていただきたい。そして、その五・五%というのがサラリーマンにとりましては非常な助けになっておるわけでございまして、何とか
金融公庫ぐらいはこの五・五%を据え置けないか。その逆ざやの財源といたしましては、たとえば地価が上がった分に対するキャピタルゲインなどを引き上げましてそれを回すというふうな、いわば構造内の変更ということについて
配慮をしていただきたいと考えるわけでございます。特に、現在サラリーマンが利用できまする
政府の
金融といたしましては、この住宅
金融公庫資金、運用部資金を財源とするこのもの、そのほかあるのでありまして、ひとつそのような調整についてもお考えをいただきたいと思うのでございます。
以上でございます。(
拍手)