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小杉委員 私は、新自由クラブ・民主連合を代表いたしまして、ただいま本
委員会で議題となっておりますいわゆる行革関連特例法案について、賛成の
立場から討論を行います。
戦後三十六年、行政機構の肥大化や既得権益擁護の拡大によって徐々に管理社会化し、往時の活力を失いつつある
わが国の現状を憂い、二十一世紀を展望して、再びわが
日本民族がその自由な社会的活力を取り戻し、今後確実に予想される高齢化社会、
資源エネルギーの制約、
国際社会での責任分担の増大に対処するため、私たちはいち早く思い切った制度改革を含む
行財政改革の必要性を訴え、強くその実現を望んでまいりました。
第二次
臨時行政調査会の設置、
鈴木内閣の
行政改革に対する決意表明、行革
国会の開会など、
政府、
国会がおくればせながらも前向きの対応を始めたことは、私
どもの長年の
主張が国民の世論となり、実現への第一歩を踏み出したものとして歓迎をいたすものであります。
しかしながら、今回の
行政改革に対する
政府の取り組みは、私
どもの
主張するところと出発点を異にしております。すなわち、現在進められている
政府の行革は、今年度末には八十二兆円にも上ると見込まれている公債残高とその利払いが、大蔵省の「財政の中期展望」を見るまでもなく、財政の破綻につながるものとの認識から発しているという点であります。端的に言えば、こそくな金減らしで財政のつじつまを合わせることだけに焦点が当てられております。本来、
行政改革は国民の行政需要に的確かつ効率よくこたえられる行政システムを整備することであり、結果は同じになるとしても、単に財政の緊縮だけを目的とするものではありません。行政システムの整備に当たっての前提は、行政サービスの範囲と責任分野を明らかにすることであり、
鈴木内閣が掲げている簡素で効率のよい
政府の実現は、まさにその仕事の範囲と責任分担を決定するところから始められなければならないものであります。
しかるに、当
委員会の審議を通じて明らかになった
政府の
考え方は、中央
政府の地方自治体への不信感、中央官庁の権限への執着、民間の活力の軽視などによる相も変わらない中央集権志向であります。この発想が改められ、国の
政策の一大転換を行う勇気がなくては、真の
行政改革はとうてい達成されるものではありません。
臨時行政調査会の第一次答申は、この法案において一部具体化されようとしている「緊急に取り組むべき改革方策」とともに、「
行政改革の理念と課題」を明示しております。ここには、私
どもが最低限必要と
考える
行政改革に取り組む視点がうたわれております。私
どもが、このような
行政改革への取り組みの
姿勢をあえて申し上げるのは、今後の
政府の
行政改革にある種の懸念を持たざるを得ないからであります。
今回の法案は
行政改革の入り口にすぎないものであり、本格的な
行政改革への取り組みは、これから
臨時行政調査会の第二次答申及び最終答申を得て実施に移されるものとされておりますが、今後の
政府の取り組み方いかんでは、さまざまな圧力や既得権擁護の力に負け、
行政改革の名のみが
残り、国民の求める簡素で効率的な
政府はつくられないと思うからであります。
今回提出されている
法律案は、
行政改革の推進を冒頭に冠しているにすぎない一種の財政調整法案であり、国民各層の要求並びに私たちの要求にこたえたものとは言えず、急場しのぎの方策の感はぬぐい切れません。しかしながら、国家財政の危機がすでに国民生活にも重大な影響を及ぼしつつある
状況を
考えたとき、財政再建を緊急に達成し、かつ、国民に今年度に続く増税という形での新たな負担増を課すことを避けることも重要な課題であります。われわれがこの法案に賛成の意思表示を行う理由の
一つはここにあるのでございます。
財政調整法案としてこの法案をとらえたとき、手をつけやすいところ、圧力の少ないところに歳出削減が集中しているきらいがあります。このような傾向に歯どめをかけるため、われわれは、公明党・国民
会議、民社党・国民連合とともに、厚生年金の国庫負担金の繰り入れ等の減額補てんの明確化、住宅金融公庫貨付金利の据え置きの明確化など、すでに明らかにしております五項目の要求を取りまとめ、
政府の対応を注視してまいりました。私たちの要求に対する
政府の先ほどの答弁が言葉のとおり実行されることを重ねて要望しておきます。
さて、当面の緊急課題でありながら、今
国会において
政府が何ら手をつけることなく、われわれの要求にも拒否の
姿勢を変えない問題に税の不公平の拡大があります。所得税の課税最低限は昭和五十二年改正以降据え置かれ、給与所得者の負担増はきわめて深刻な問題となっております。財政再建期間中は減税はできないという
政府の対応は、歳入の確保の優先の前には、税の公平も国民の声も無視するという、何が国政にとって重要かを忘れた発想としか
考えられないのであります。
行政改革が国民の理解と
協力のもとで初めて成り立つことを改めて認識し、所得税の課税最低限の引き上げを含め、課税の公平確保のための具体的方策を強く要求いたすものであります。
これと同時に、増税なき財政再建を単に五十七年度だけのものではなくて、五十八年度、五十九年度も実行するため、ゼロシーリングの実施は五十七年度
予算編成のみにとどめず、五十八年度、五十九年度でも実施されることが必要と
考えます。
また、今後取り上げられるべき許認可事務の整理、
補助金等の整理
縮減、特殊法人等の見直し、中央省庁の統廃合などの改革に当たっては、反対や抵抗の強い部分を聖域化し、あるいは既得権擁護の圧力に屈することなく、国民全体の
立場に立って、毅然とした
態度と決意で臨まれることを要望しておきます。
最後に、かねてよりわれわれが
主張しているとおり、
行政改革に当たっては、国民に痛みを分かち合おうと呼びかける前に、
国会の改革、議員特権の見直しなど、みずから
姿勢を正すべきであります。みずから血を流すことなくして国民の納得と
合意は得られるはずがありません。これを肝に銘じ、お互いに国民の選良としてふさわしい
態度をとることを呼びかけたいと思います。
法案の内容には実が乏しく、
行政改革とは名ばかりとの
評価も可能ではありますが、財政危機を国民一丸となって乗り切るための第一歩として、あえて賛意を表する次第であります。千里の道も一歩からのたとえのとおり、
政府の積極的かつ着実な対応を強く要望し、私の賛成討論といたします。(拍手)