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1981-10-14 第95回国会 衆議院 行財政改革に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十月十四日(水曜日)     午後一時二分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 小渕 恵三君 理事 海部 俊樹君    理事 藤波 孝生君 理事 三塚  博君    理事 佐藤 敬治君 理事 山口 鶴男君    理事 正木 良明君 理事 大内 啓伍君       天野 光晴君   稻村左近四郎君       小里 貞利君    加藤 六月君       梶山 静六君    木野 晴夫君       高村 正彦君    齋藤 邦吉君       桜井  新君    塩崎  潤君       塩谷 一夫君    澁谷 直藏君       竹下  登君    玉沢徳一郎君       中村喜四郎君    橋本龍太郎君       松永  光君    三原 朝雄君       上原 康助君    後藤  茂君       沢田  広君    森井 忠良君       安井 吉典君    湯山  勇君       横山 利秋君    鈴切 康雄君      平石磨作太郎君    岡田 正勝君       寺前  巖君    東中 光雄君       小杉  隆君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 村山 達雄君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         総理府臨時行政         調査会事務局首         席調査員    山本 貞雄君         日本学術会議事         務局長     大濱 忠志君         公正取引委員会         事務局審査部長 伊従  寛君         行政管理政務次         官       堀内 光雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         管理局審議官  古橋源六郎君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 吉野  実君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局審議官    大竹 宏繁君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         科学技術庁計画         局長      下邨 昭三君         国土庁長官官房         長       福島 量一君         国土庁長官官房         審議官     川俣 芳郎君         国土庁地方振興         局長      柴田 啓次君         外務政務次官  愛知 和男君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房審         議官      矢澤富太郎君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省主計局次         長       宍倉 宗夫君         大蔵省理財局長 吉本  宏君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         国税庁直税部長 吉田 哲朗君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省管理局長 柳川 覺治君         厚生大臣官房総         務審議官    正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁医療         保険部長    入江  慧君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房審議官    大坪 敏男君         林野庁長官   秋山 智英君         通商産業大臣官         房審議官    斉藤 成雄君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省産業         政策局長    杉山 和男君         通商産業省基礎         産業局長    真野  温君         中小企業庁次長 木下 博生君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 永光 洋一君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 吉田 公二君         建設省河川局長 川本 正知君         自治省行政局公         務員部長    大嶋  孝君         自治省財政局長 土屋 佳照君         消防庁長官   石見 隆三君  委員外出席者         行財政改革に関         する特別委員会         調査室長    石川 健一君     ————————————— 委員の異動 十月十四日  辞任         補欠選任   佐藤  隆君     桜井  新君   丹羽 雄哉君     高村 正彦君   湯山  勇君     後藤  茂君   正森 成二君     寺前  巖君同日  辞任         補欠選任   高村 正彦君     丹羽 雄哉君   桜井  新君     佐藤  隆君   後藤  茂君     湯山  勇君     ————————————— 本日の会議に付した案件  行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一  環としての国の補助金等縮減その他の臨時の  特例措置に関する法律案内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  行政改革を推進するため当面講ずべき措置一環としての国の補助金等縮減その他の臨時特例措置に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺前君。
  3. 寺前巖

    寺前委員 まず最初に、防衛庁が進めておられますマイクロ中継施設建設の問題についてお伺いをしたいと思います。  青梅市に建設中の防衛マイクロ中継施設について、七月の初旬に保安林を伐採されるということが起こりました。これは森林法上違法だと思うのですが、どういうことになっているのか。違法だということになるならば、原状回復をさせるという処置をとらさなければならぬことになるというのが原則だと思うのですが、農林大臣見解を聞きたいと思います。
  4. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 御指摘保安林内における違反行為ということになるわけでありますけれども、これに対する監督処分権限につきましては都道府県知事が持っておりますので、適切な処置が行われるように行政指導をしていきたい、こう考えております。  詳しいことにつきましては、事務当局の方から説明を申し上げます。
  5. 秋山智英

    秋山(智)政府委員 お答えします。  監督処分中身には中止命令それから原形復旧命令造林命令等がございます。これらのものにつきましては、先ほど大臣が御説明申し上げたとおり、都道府県知事権限になっておりますので、私どもといたしましては、適切に行い得るように指導してまいりたい、かように考えております。
  6. 寺前巖

    寺前委員 適切だということは、一体現状がどういうことになっているのか。適切の中身は一体どういうことなのか、ちょっと説明してください。
  7. 秋山智英

    秋山(智)政府委員 当然原形復旧も入っております。
  8. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、七月十日に東京都が工事中止命令を出した。ところが、その後コンクリートパイル現地に運び込まれて、八月十九日から二十七日にそのパイルの打ち込み作業工事が行われました。その一方で、八月七日に農水大臣あて保安林解除申請書が出されて、大臣予告通知が九月の八日に出る。片方で中止命令が出る。適切な指導をしていきたいといま林野庁長官は言われたけれども、そこには原状回復という問題も含んでいるのだとおっしゃるわけだけれども、一方でまた解除作業が進んでいる。その解除予告通知でいきますと、東京都は九月十八日に今度は告示をやっていますから、一カ月間の縦覧期間を経て十月十八日には取り扱いが決定する方向が出てくる。そうして、その後十日間ですか、従来の形式でいうと確定告示ということの路線が引かれることになる。この間に関係者から意見書が出ていないということになったら、その道にずっと行ってしまう。一方の作業の方だけが進んでいくことになるんではないだろうか。  そこで、農水大臣に聞きたいのですが、ともかく違法行為としての中止命令が出た。そして、それに適切な指導をしなければならぬという方向それ自身において存在している。そういう中で、そういう告示を出しているのだけれども、ここには、現地の皆さんの意見によると、防災措置としてパイルを打ち込んだなどということを施設庁諸君が言うけれども、あれは基礎工事をやっているんです、明らかに中止命令以後にそういう行為をやるというのはとんでもないひどいことをやるではないか、こういうことを言われているわけです。とすると、農水省としては、私は、その後やっていると言われているこの疑惑に対してはっきりさせるということが重要だと思うのです。  同時に、このことの処置によってはとんでもない違法行為の上塗りをやるんだから、したがって、確定の時期が迫っているけれども確定をするというようなことではなくして、悪質な問題として処置をしなければならぬことになると思うのだけれども、その点はどうなっているんでしょう。
  9. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 違法行為でございますので、森林法違反に該当することは明らかでありますので、そのような点いろいろ調査いたしまして、その実態を明らかにして、法に定めるところに従って厳重に処置するように林野庁長官に命じてございます。
  10. 寺前巖

    寺前委員 防衛庁長官予算委員会川俣議員の質問に答えられて、こう言っておられます。保安林として指定されていることが判明したので、速やかに土砂流出防止措置を講じた上、工事中止するんだ——土砂流出防止措置を講じた上と、こういうふうにあなたはおっしゃったけれども現地東京防衛施設局諸君の釈明によると、こういうふうに言っています。現場には確かにコンクリートパイルを打ち込んだ、パイルそのものは本工事用のものだ、しかし、打ち込んだのは応急措置としてだけでは不安なので、地盤強化のために、すなわち土砂流出防止に役立つという現場判断でやった、結果的には中継所庁舎、鉄塔の基礎工事になっているが、打ち込んだ意図は土砂流出防備である、安全対策は幾らやり過ぎてもやり過ぎということはないはずだ——結果的には基礎工事になっているがと現場諸君ははっきりそう言っているんです。違法行為でやったものは直ちに中止をするという謙虚な姿から出発しなければならないのに、理屈をつけてこういうことを言っているという態度について、あなたは一体どういうふうに感じられますか。
  11. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  確かに予算委員会で先生御指摘のような御答弁は申し上げております。  そこで、今回の工事についてでございますが、掘削した場所土砂流出防止措置のために役立つ工事といたしまして、地形の整形、砂利敷盛り土下部の土どめ、そださくの設置等地盤を補強するためのくい打ち等の措置を行ったものでございまして、あくまで土砂流出防止措置のために役立つ工事一環として行ったものでございます。
  12. 寺前巖

    寺前委員 居直り的な態度がよくないと私は思うのです。行政改革を進める上において、まず謙虚に物事を見るという立場からしなかったら、ともかく来年度の予算を見ても防衛庁だけは別枠みたいにしてどんどん伸びていっているという事実から考えても、これは非常に重要な態度問題が含まれているから私はあえてこの問題を指摘したいわけです。  防衛中枢的機能ともいうべき指揮通信の充実のために昭和五十二年以来自衛隊の方で防衛マイクロ回線を、従来は電電公社通信回線に依存しておったけれども、直接やっていくんだ、防衛上非常に重要な位置づけをしてやっている工事なんだからとやかく言うな、こういう態度であるとするならば非常に重要だから、農水大臣、あなたの所管の問題です。きちんとまず範をたれなければならない政府機関の中において法に違反をしてやっていることについては、適切だという一般論だけではなくして、厳正な態度でもって対処するというふうにはっきりさしていただきたい。特に現地の人は、自動的に保安林解除告示はすべきでないですよということまであえて言っているのですから、確定告示を時期が来たからといってすぐにやるということはしませんね。その点を念を押しておきたいと思います。
  13. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 保安林というのは、国土を守り、民生安定のためにどうしても必要であるというところを指定をしてあるわけでありますから、これは条件が変化しない限り保安林解除はいたすべきではない、こういうことで指導をいたしておるわけであります。それを何らのあれがなく、この保安林を伐採をするというようなことがあれば、これはもう違法行為でございますので、厳重に関係防衛施設庁の方にも連絡をいたしまして、そうして、もし違反の事実がありとすれば、先ほど林野庁長官から申し上げたような処置を講じさせなければならない、こう考えております。
  14. 寺前巖

    寺前委員 林野庁長官確定告示を直ちにやるという条件下にはありませんね。
  15. 秋山智英

    秋山(智)政府委員 お答えします。  ただいま東京都庁も細部にわたりまして実地調査をいたしておりますし、私の方も現地へ参りまして調査をしております。したがいまして、その実態を十分把握した上で厳正に対処したい、かように考えております。
  16. 寺前巖

    寺前委員 緊急の問題として、昨十三日の午後横浜市金沢区の米海軍鶴見石油廠小柴貯油施設でのジェット燃料タンク爆発事故というのが起こりました。その被害状況について、これはどこでしょう、自治大臣説明されますか。——消防庁長官説明させてください。
  17. 石見隆三

    石見政府委員 昨日発生いたしました米軍小柴貯油施設火災の概況につきましては、現在までの段階におきまして、地元横浜市消防局からの報告によりますと、火災発生は昨日の十二時七分ごろでございまして、発災場所当該施設の六号タンクということに相なっております。このタンクは縦型の円筒のいわゆる地下タンクでございまして、最大貯油量は約三万二千五百キロリットル程度であります。発災時には航空機用燃料が大体二万四千キロリッターぐらい貯蔵されておったようであります。  消防隊消火活動につきましては、火災を覚知いたしまして後、横浜市の消防局から、ポンプ車あるいは化学消防車を初めといたしまして合計約七十二台が出動いたしまして、約四時間後の同日午後四時十五分に鎮火をいたしております。  出火の原因につきましては、これからの調査にまたなければならないわけでございますが、人的被害につきましては、消防に従事いたしました者二名が軽度の火傷を負ったということでございます。
  18. 寺前巖

    寺前委員 この貯油施設については、五年前の一九七六年八月二十六日の衆議院内閣委員会で私の同僚の中路議員が、米軍自身調査資料に基づいてということで、タンクが旧軍の施設を引き継いだもので老朽化がひどく、構造上欠陥があり、壁に裂け目や穴があいていて、二十四基のタンクのうち満足なのは二基、残りはすべて大なり小なり修理を必要とするという報告を、その内部資料から挙げて追及をしておられました。当時の防衛庁坂田長官は、国民の安全の立場から十分検討し、日米合同委員会施設委員会などの機関に諮りたいと答弁をされております。  その後どのような措置をとられたのか、御説明をいただきたいと思うのです。——防衛庁長官ですか。
  19. 吉野実

    吉野(実)政府委員 お答えをいたします。  そういうことがありましたので、施設庁といたしましては、日米合同委員会下部機関におきまして安全対策をとるように申し入れをいたしまして、内容を具体的にはどの程度までか承知しておりませんけれども工事を補強のためにやっておるという事実は確認しております。
  20. 寺前巖

    寺前委員 米軍施設であっても日本国内法を尊重するという責務があるはずです。国内では危険物の規制に関する法律やコンビナートの災害防止に関する法律などによって、タンクならば構造消火設備消火体制など細かくいろんな規定があります。当然これはやられているというふうに思うのだけれども横浜市の消防局米軍との間で、一体そこの問題についての調査をやられたことがあるのだろうか。横浜消防局に聞いてみますと、事実上治外法権の状態に置かれていて実態がつかめず、いまのままでは手の打ちようがないということを常々指摘をしておりました。一体今日まで消防局との間でここの施設が点検をされたことがあるのでしょうか。これは消防庁ですか、自治大臣、御説明をいただきたいと思うのです。
  21. 石見隆三

    石見政府委員 お答え申し上げます。  当該施設につきましては私ども横浜市消防局からの報告を受けておるわけでございますが、当該報告によりますと、御承知のように、去年の五月に横浜市消防局在日米軍との間で消防相互援助協約を結んでおりまして、災害発生時には相互に援助するということを内容とした協定を結び、今回もこれに基づいて消防隊が出動したような状況であります。  なお、ふだんの状況につきましては、御案内のとおり国内法が適用されていないわけでございますが、相互消防力をこのように提供いたしますと同時に、必要に応じまして地元市消防局米軍との間で必要な情報交換をするよう努力をしておるということを伺っております。
  22. 寺前巖

    寺前委員 あなたのいまの話では、構造消火設備がどうなっているのか。そこのところは日本国内法でこのごろ非常に厳しくなってきているのに、そこのところがどうなっているか、横浜消防局ではつかめないんで、困っているんだ。周辺住民諸君から不安だということが出ているけれども、私らではどうもならぬのやということを常々言っておったのだけれども、そこのところはメスが入っているのかどうかということを私は聞いているのです。
  23. 石見隆三

    石見政府委員 どの程度情報市消防局が了知しておりますか、私どもまだ確認をいたしておりませんが、ただいま申し上げましたように、常日ごろ必要な情報交換には当局としては努力をしておるというふうに承知しております。
  24. 寺前巖

    寺前委員 自治大臣、だからどういう構造——要するに国内法では厳しい構造がいろいろ指摘されるわけですね、消火体制をどうするとか、そういうことも含めて。そうするとそこの自治体が、米軍施設だからといって住民に直接関係するのですから、どうしたって一緒になってそこの施設がどうなっているかということを調査しないと不安で仕方がないというこの問題に対して、私は、今度の教訓から見ても、そこにメスを入れるようにする必要があると思うのですけれども共同調査をやるべきではないでしょうか。
  25. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 共同調査必要性は私ども認めますが、法的権限がいまのところございませんので、この点については話し合いを持ってこれから進めるようにいたしたいと思います。
  26. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、結局これからやろうということだ。あの坂田防衛庁長官のときに、このことがやはり問題になったのであります。そうすると、防衛庁長官、いま自治大臣はこれからやはりそれはやらにゃいかぬなということでやりたいと言われたのだけれども、結局前のあの段階から進んでいない、治外法権のままになっている。法的にはそうか知らぬけれども、やらなければならぬと自治大臣はおっしゃったのだけれども防衛庁長官、これは一体どういうふうに今後やりますか。
  27. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  施設、区域内の運営管理につきましては、公共の安全に妥当な考慮を払って米軍がみずから行っているところであります。貯油施設につきましても、米軍自身安全基準に基づいて安全管理を行っているものと承知しております。  なお、当庁といたしましては、周辺地域住民の生活の安全を考慮し、所要の措置がとられるよう、必要に応じ米側申し入れを行っているところでありますが、今後とも米側との不断の接触を通じ、安全の確保に十分努めてまいりたいと考えております。  なお、昨日事件発生直後協議会の機会がございましたので、午後一時半米側に対して、今回の事件発生に関しまして原因の究明と安全対策確保申し入れたところでございます。
  28. 寺前巖

    寺前委員 自治大臣は、消防の分野と相手さんとの間に法的にはないけれども、そこはやはり施設構造その他について日本にはこういう国内法があるのだから、一緒になってそこがうまくいっているのかどうか、責任あるようにしておく必要があるということをお認めになったのだけれども、あなたは自治大臣のおっしゃったことについて、そうだと言われるのか、そんなこと必要ないとおっしゃるのか、そこはどうなんです。
  29. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  そういう話し合いをすることは必要だと考えます。
  30. 寺前巖

    寺前委員 その次に、もう一つ聞いておきたいのですが、今回の被害の全容の調査被害を受けた人に対して、あるいは自治体を含めて全面的にそれを補償するのは当然だと思うけれども、それについて防衛庁長官はどう考えられるのか。  もう一つ、住民はこのように今日まで不安のままに置かれているので、こんな施設は撤去してほしい、こういう意見を持っております。これについて、あなたは検討して米側申し入れますか。
  31. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  被害に対しましては、防衛施設庁として適切な補償を行うようにいたす所存でございます。  また、地元から返還の要望が出ているということは承知しておりますが、この問題につきましては今後慎重に検討してまいりたいと思います。
  32. 寺前巖

    寺前委員 総理大臣、五年前にアメリカの内部見解として構造上欠陥がある、二十四基のタンクのうちで満足なのは二つだ、こんなことで置かれておったら大変だということが国会で問題になって、直さなければいかぬ。ところが今日まで、自治大臣がおっしゃったように、どうなっているのか消防局として手がつけられない。わからぬままに置かれているのでは、自治大臣としても責任を持てない、何とかそこをやれるように今後改善する必要があるという旨のお話があったわけだ。これが明らかにされてから五年たっているのだけれども、依然として治外法権でわからないままになっているということに対して、総理大臣はどういうふうにお考えになりますか。住民の撤去してもらいたいというこの気持ちにどうお答えになりますか。明らかにしてほしいと思うのです。
  33. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 米軍に提供しております施設、区域の管理運営は、米軍の管理下にあることは御承知のとおりでございます。五年前に、あの施設に対して不備な点があるのではないか、欠陥が指摘されておる。当時坂田防衛庁長官は、これに対して、米軍申し入れをして十分保安上心配のないようにしたい、こういうことでそれに対処をされたと聞いておりますが、今回の事故がどういう原因によって発生したものであるか。全然五年前と同じように、何らの改善策も講ぜられないままに、どういうところから事故が発生したのであるかどうか、こういう点は原因を十分究明をしなければならない点であろうかと思います。その究明の結果に基づきまして、先ほど防衛庁長官が申し上げたように、米軍に対して適切な措置を講じてもらわなければならない。また、自治大臣が申し上げたように、消防庁としてこれに協力をし、改善すべきものは改善をする、こういう点について十分措置を講じてまいりたい、こう思っております。  なお、関係周辺住民に対する補償の問題、今後のこれを撤去してほしいというような要望等につきましては、今後実情を十分把握した上で慎重に考えたい、こう思います。
  34. 寺前巖

    寺前委員 それでは次に、日本学術会議問題が臨調問題をめぐっていろいろ新聞紙上をにぎわせておりますので、この問題についてお聞きをしたいと思います。学術会議の事務局長、来ていますか。  ことしの二月の中下旬に、事務当局の方から、会計検査の結果として、国際会議へ代表を派遣するという従来の規定の取り扱いを変える文書をお出しになりましたね。
  35. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 文書と申しますか、そういう事務局としての意見をまとめまして会議体の方へ申し入れたわけでございます。
  36. 寺前巖

    寺前委員 その文書を見ると、簡単に言いますと三点。「代表を派遣する国際会議について」「本会議加入のものを優先的に取り扱う」二点「有権者の派遣は原則として行わないものとする。」第三点「外国出張及び旅費の負担について」「出張に要する旅費は、全額本会議が負担するものとする。」おおむねこの三点について、会計検査の結果としてこういうふうに変えるんだという旨のことをお書きになっていますね。
  37. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 御説明いたしますが、最近の会計検査の結果としてこういうものをまとめたのは伏見会長でございます。これは前書きがございまして——どもはあくまでもその三点について意見をまとめたにすぎないわけでございまして、それを添え書きといいますか、関係委員会に配付するに当たって会長が御自分でメモをつくられまして、その際の説明といいますか前書きとしてそういう表現を用いられているわけでございます。
  38. 寺前巖

    寺前委員 こう書いてあるよ。「最近の会計検査の結果として、事務局が代表派遣旅費の取扱いについて、基準案を提案しています。」と、事務局が提案していますと。会長さんは、したがって「従来の考え方とは相当の隔たりがありますので、」御審議願いますと言って審議にかけられた。会計検査の結果として事務局がまとめていますよ、こう書いてあるじゃないですか。会長がまとめたと、どこに書いてありますか。会計検査の結果としてこういうふうに提案していますと書いてあるじゃないですか。あなたは何でそんな詭弁を弄されるのですか。そう書いてあるでしょう、違いますか。事実関係だけでいいです。
  39. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 先ほど御答弁しましたように、内容についてはあくまでも事務局でございます。このメモをしたためられましたのは会長でございます。私どもの方は、会長に最近の会計検査の結果正式にこういうことになりましたということは御説明しておりません。  ただ、事実関係としては、昨年度来国会等でも、社会党の先生から、この学術会議の代表派遣の旅費の使い方について御指摘がございましたし、私どもの方も、これは誤解のないようにちゃんとしなくてはいかぬというような気持ちがありまして、やはりこの際、今年度の予算からそういう間違いのないようにやらなくてはいかぬということで、三役と申しますと会長、副会長でございますが、御相談しましたところ、それならばとにかく非常に重要なことであるからひとつ関係委員会に諮ろうじゃないかということで、会長としてはこのメモをしたためられたと思います。  ただ、これはあくまでもメモでございまして、本来でしたら内部でこういうものについても決裁をとるという場合もありますけれども、これは学術会議の場合は間々あるわけですが、会長、副会長がこういうものについて、メモ的なものを書簡をつけられまして関係委員会とか会員にお配りになるというようなことも間々あることでございますので、われわれの方としてもそこまではなかなか把握できないので、恐らく会長が頼まれたその文書を添付して配付したものと思われます。
  40. 寺前巖

    寺前委員 「会計検査の結果として」というのは、会長が会計検査の結果をお受けになったということをあなたはおっしゃるのですか。会計検査の結果を受けられたのはだれですか。
  41. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 この文書はあくまでも会長がつくられたものでございます。
  42. 寺前巖

    寺前委員 会計検査の結果を受けられたのはだれですか。
  43. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 会計検査を受けたのは学術会議でございます。
  44. 寺前巖

    寺前委員 だれですか、具体的に。
  45. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 それはあくまでも学術会議が会計検査を受けたわけでございます。
  46. 寺前巖

    寺前委員 学術会議が文書で会計検査の結果を受けられたのですか、結果報告はだれがもらわれたのですか。具体的に言うたら会長がもらわれたのですか、事務局長がもらわれたのですか、結果報告を文書で、あるいは口頭で。どこからだれがもらわれたのですか。
  47. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 お答えしますが、会計検査から正式の指摘はなかったわけでございます。(寺前委員「ない」と呼ぶ)はい。それをどういうかっこうで会長がどういうふうにしたためられたか、われわれの方はむしろそれを出された後に、何といいますかね、当惑というか困惑したという事情でございます。
  48. 寺前巖

    寺前委員 会計検査というのは、これはどこのことなんです、相手は。あなたは当惑していると言うけれども、会計検査結果をどこが言うてきたのです、相手は。
  49. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 会計検査のこの問題についての結果については、会計検査院から何も申されておりません。
  50. 寺前巖

    寺前委員 きわめて奇妙な話ですね。検査院は何にも言うていない、だが結果について言うてきたから、だからこういうものを会長が配られた、事務局は内規を変えることと文書を準備しただけだ。そうすると、この奇妙な会計検査の結果というのは、会計検査院でなかったらどこですか。出所の明らかでないものの結果で、何で学術会議諸君たちがわあわあ言って審議せんならぬのです。また、あなたのところも、それに合わせて文書を出すというのもおかしな話ですね。これはどういうことなんです。どこから持ってきたものをめぐってわあわあ騒がにゃならぬのですか。
  51. 金丸信

    金丸委員長 筋の通ったように簡明に話してください。
  52. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 いずれにしても、その内容につきましては事務局がつくりまして、それで添え書きと申しますか、メモについては会長がしたためられたものでございます。作成の主体が違うわけでございます。
  53. 寺前巖

    寺前委員 あなたは学術会議の事務局長じゃなかったのですか。事務局長というのは、ちゃんと事務的に全部学術会議の問題について、やはりきちんと問題点を指摘しなければいかぬでしょう。だから、何ぼ聞いておったって、だれが聞いたってわからない。会計検査院からは、そんなものは出ていない。ところが、会計検査の結果、検討、御審議願いたいというんだ。文書の内容が変わってきた。どこの会計検査の結果ですか、そこのところが聞きたいのだ。どこの会計検査の結果ですか。それは会長が勝手にやっておるのであって、それは勝手なことで、会長の頭の方がおかしいのと違いますか、こういうことですか、あなたが言っているのは。そういうことですか。会計検査の結果というのはどこから言うてきているのだ。会計が書いたのだから会長が受けられたというのだったら、会長がどこから受けられたのか。それは会計検査院でないということをあなたは知っておってこの文書が出されておったのだから、事務というのはそういうのを配るのでしょうな。そうしたら、会長さんこれはおかしなことですなとあなたは言わなければならぬことになるのじゃないでしょうか、どこもないところから来たというんだったら。どうです。
  54. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 お答えしますが、端的に言いますと、私どもはその会計検査の結果とかなんとかというそれにとらわれなくて、従来からこの問題について問題意識があった。したがって、それをまとめて会議体の方へわれわれの意見として申し入れたということでございます。したがって、メモとして会長が書かれたのは、恐らく強いて言うと会長が誤解されたというか、そういうことで、最近の会計検査の結果だったのだろうかというふうなことで書かれたのだろうと思いますし、われわれの方は検査の結果正式の指摘があったということの意識は全然ないわけです。
  55. 寺前巖

    寺前委員 そうしたら、会長が、会計検査の結果として事務局が取り扱いについて基準案を提案しています、結果として事務局が提案していますと会長が言っている。こう書いてありますよ。事務局が提案しています、結果として提案しています、結果として事務局が提案しています、そう会長が言っている。これはあなたはけしからぬ話なんですか。会長がそんなことを、私はそうなってへん、この文書自身がおかしかったのだ。ではそのときになぜあなたは訂正をやらないのですか。おかしいでしょう。あなたの言っていることは、うそを言っているのじゃないでしょうか。はっきりしなさいよ。自分がまとめたのでしょう、事務局が。
  56. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 私どもは、これはあくまでも会計検査の結果として事務局がまとめたのではございませんで、会長がそういう理解のもとにというか誤解のもとに、会計検査があって、では事務局がそういう提案をしたのならば、会計検査の結果そういうことに正式に指摘があったのかなと、あるいはそういうふうに理解しているのかもわかりません。私どももこの文書が出まして、会長にその点は確かめたわけです。会長、これは会計検査院から正式に指摘のあったものじゃありませんよ、むしろ国会で昨年の四月に社会党の先生方の方からこの問題について強く反省を求められております、やはり国費の使用でございますから、だれからも誤解のないようにしようじゃありませんかということを私はるる申し上げたわけでございます。
  57. 寺前巖

    寺前委員 あなたは、会計検査の結果として書いたものじゃありませんよということを、この文書が書かれたそのときにそれをおっしゃったのですか。会長がしたためられたときにおっしゃったのですか。いつ言われたのですか、そんな話。
  58. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 この問題につきましては、先ほど御答弁申し上げましたけれども、何も公文書として出して内部で決裁——われわれが全部見て決裁をとって出すのでしたら、われわれはあるいはそのとき御注意申し上げる機会があったかもわかりません。しかし、先ほども申し上げたように、学術会議の場合は、まあ先生方がやっておられるので、大体何か意見がある、それについて書簡であるとか私文であるとかあるいは単なるメモであるとか、そういうものをつけられて、簡単に何かそういう検討資料につけられて発送するという場合も間々ございますし、それから最近の傾向として、特に会長、副会長とも、その内容については事務局は関与するな、手を入れるなというふうなことも私どももよく言われておりますので、そういう意向もありますので、大体職員の方もそういうことじゃないのか、それで結局メモをメモとしてタイプにして単純に発送した。  私どもは、発送した後、この問題につきましては、ちょっと話が細かくなりますけれども、ある会員とおぼしき人から……
  59. 寺前巖

    寺前委員 ちょっと待ってください、委員長答弁が違いますから……
  60. 金丸信

    金丸委員長 いま少し答弁を聞こうじゃないですか。
  61. 寺前巖

    寺前委員 質問をしている事項に対する答弁ではありませんから、委員長指摘をしてください。
  62. 金丸信

    金丸委員長 それでは指摘します。事務局長、もっとはっきりみんなにわかるように、国民にわかるようにやってください。
  63. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 とにかくはっきり言えることは、要するに内容につきましては私どもがつくりました。その添え書きのメモにつきましては、会長が、会計検査の結果そういうことを言われたのだなという理解といいますか、誤解といいますか、それに基づいてしたためられて、それが発送された、それをわれわれは後、見たという結果でございます。
  64. 寺前巖

    寺前委員 私の聞いている質問には一つも答えていない。私はこう聞いた。会長に事実は違いますよと言いましたと言うたから、だからそれはいつ言ったのだと聞いているのだ。それだけ。いつ言った。
  65. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 発送した後でございます。
  66. 金丸信

    金丸委員長 ちょっと待ってください。事務局長、発送はどなたがやるのですか。
  67. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 発送は事務局でやります。
  68. 寺前巖

    寺前委員 あなたは、不正確な情報の提供、不十分な説明によって、会長及び会員の判断を誤らせ審議を混乱させた、そういう立場はおとりになりませんでしたか。
  69. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 そういう立場はとっておりません。
  70. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、この会計検査の結果についてこういうふうに変わった、大変なことだといって内部諸君たちが大騒ぎになった。そうしたら、これについて、このようなことではどうにもならないというので、会として、学術会議関係者の間でこの書類をどうするかということで、運審においても検討され、両副会長が、会計検査院からあったのかなということで、会計検査院まで行かれました。そして、その結果に基づいて、会計検査院からないようなものをこんなことになってきたのはとんでもない話だということで、総会で本件が論議されることを避けたい。非常に配慮をされて、そして各部会長に、会長はこういうふうにまとめられた。事務局長から不正確な情報の提供、不十分な説明によって会長及び会員の判断を誤らせ、審議を混乱させたことについて今後このようなことのないように注意することが言明されたので、これを了承したい。あなたが言明したから、これでそれじゃ了承したい。配慮をもって会長は各部会長に説得をされたという事実があるのを知っていますか。
  71. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 当時のことはよく記憶にございません。
  72. 寺前巖

    寺前委員 驚きましたね。二月にこのことの文書が出て、そして運審において検討されて大騒ぎになっている。そして四月十四日に会長がこうやって部会長を説得している。ところが、それらのことは知らない。一体あなたはどこの事務局長ですか。そして、会長は、たとえ不正確な情報によったものであったとはいえ、判断を誤り、会員並びに会計検査院に多大の迷惑をかけたことを深くおわびし、今後十分注意していくつもりですと言って、自分の方に責任をかぶる態度をおとりになったのです。あなたというのは、まともな人間の言うことじゃないですよ、そのさっきからの態度は。  それでは、その次に聞きます。  先ほどの、あなたの方でまとめられたところの三つの問題。  まず第一に「本会議加入のものを優先的に取り扱う」、その中を見ますと、「本会議加入団体の総会等のうち七つについては過去五年間に一度も代表を派遣していない。」ということを事務当局として指摘をしておられます。この本会議加入団体が幾つあって、過去五年で七つについて代表を派遣しなかったその学術会議はどこですか。御説明をいただきたいと思います。
  73. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 御説明いたします。  その七つの件でございますが、これは私どもの方で外国旅費を支出していない国際会議ということで一応機械的に拾い上げたのが七つでございます。ところが、いろいろ考えてみますと、そのうちの四つにつきましては国内開催というふうなものもございまして、厳密な意味におきましては、この三つが、加入しておりながら五年間に、あるいはものによりますと十年もございますが、全然代表を学術会議から派遣しておらないということでございます。  団体名はよろしゅうございますか。
  74. 寺前巖

    寺前委員 あなたは人の話を少しも聞きませんね。何団体加入しているのか、これが質問の一つでしょう。あなた、もう一回、義務教育をやり直しになられたら……。そんな、質問が何を聞かれているかわからぬようでどうする。  私は、きのう調べたら、四十三団体、金を払って加盟していますということを答弁聞きましたよ。そのうちの七つだ。ところが、七つのうち四つまでが、いまの話だったら日本でやっているんだ。だから、学術会議の海外旅行の申請ができぬことになるから、これは自分でもおかしいなといまになって気づいたというのでしょう。お粗末な話でしょうが。加入しているところにまず出すべきだ、加入しているところで出していないのが七つあった。えらそうに文書を出してみたところ調べてみたら、いや、代表は出ておったわ、海外出張のための旅費申請がなかった。日本でやっておったら、だれも申請ないのはあたりまえや。お粗末もはなはだしい。  私は、この七つ、きのう聞きまして、全部これを調べた。何と、日本でやっているのが、いま言った東京東京、京都。それから総会を開いていないところ——総会を開いていないところへどないして行きますのや、あなた。行くあれあるかいな、そんなもの。申請する方がどうかしている。それから、加入金が非常に高くて、学術会議では金がないので、ほかの団体も一緒に入っているところが、学御会議の名前で出張はしなかったけれども、ほかのところが一緒に入っているからそこから出すという処理をした。結局、ずっと調べてみたら、二つだけ、確かに総会をやっているのに参加していない。そこはどこや。ところが、何とぞこの分野においては事業団体化しつつあるので、これはもうやめよう、他のところにかわろうということを、その分野の学者の先生の中で検討しているというじゃないですか。まともな話じゃ七つ行かなかったというのは全部が全部……。  あなたの提起された問題というのはきわめてお粗末であるということがこの結論から出てくるわけですよ。違いますか、あなた。いまの私の提起、違っておりますか。
  75. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 お答えします。  私ども、確かにその数につきましては数え違いございまして、それは後刻内部の運営審議会で訂正いたしまして、関係委員会でも訂正しておるわけでございます。  私どもは、あえて申し上げたかったのは、代表派遣につきましては内部でそういう要領をつくっておりまして、その要領では、こういう学術会議が分担金を支払って加入している総会についてはすべて最優先で出席するという原則があるわけでございますが、それがまた後に、どういう理由かわかりませんけれども、それには必ずしもとらわれなくてもいいというような同じ決定が出されているから、それはやはり明確にすべきじゃないかという趣旨のものを例として数字を挙げたわけでございます。趣旨はそういうことでございます。
  76. 寺前巖

    寺前委員 挙げてみたところが、事実は、尊重して代表が全部行っておって、いま挙げた七つについては、挙げてみたものの、それに当たらなかったという結果が出たということでしょう。わざわざ提起する方が当たっていなかったということになりますね。いいですね。
  77. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 必ずしも当たっていないということじゃございませんで、三つにつきましては、確かに世界工学団体連盟、地球大気開発計画、法学国際協会につきましては五年ないし十年、あるいはそれ以上全然代表を派遣していないという実態がございますので、御了解いただきたいと思います。
  78. 寺前巖

    寺前委員 私がさっき言ったように、日本でやっておったのは、あなたのこの記録によると、東京東京、京都と、三つの団体は日本国内だ。総会をやっていないところが一つある。他の団体と一緒にやっているから、学術会議としては予算が少ないので、他の分野から行くという処置がとられていた。残り二つについては、脱退の方向を考えなければならないという段階にある。これが客観的な事実である。したがって、七つの例をとったけれども、その七つの例は当たらない。  私のどこが違うているのか、違うているところがあったら説明に来てください。なかったらこの話は終わります。
  79. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 数につきましては、いま申し上げました三つございます。  なお、いま申し上げましたけれども内部で国際会議代表派遣要領というものが運審決定で行われております。これは三十九年でございますが、その中で、まず順位が書いてございますが、第一順位として……(寺前委員「そんなこと関係ない、質問していることと違うじゃないか」と呼ぶ)「日本学術会議が分担金を支払い加入している国際学術団体の総会には、代表を派遣するものとする。」とありまして、なお、同じ運審決定の四十八年で「学術会議が分担金を支払って加盟している国際学術団体の総会への代表派遣については、従来の経緯に鑑み、国際会議代表派遣要領の1の(1)」——先ほど申し上げました。「にかかわらず優先的に取り扱わないものとする。」ということになっておりますので、矛盾しているから、これはどうなんですかということを御意見を申し上げているわけであります。
  80. 寺前巖

    寺前委員 あなたは何でまともに答弁できないのですか。七つの団体の例を挙げられたから、七つの団体の例は指摘をしたわけです。私のどこが間違っているのかを説明願いたい、こう言ったのです。私のどこが間違っているというのは、いまの話では一つもなかった。間違いがあるということが言えないのでしょう。あったら出てきてください。なかったらこれで終わりやと言うのです、いいですね。  その次にいきます。——あるの。(発言する者あり)
  81. 金丸信

    金丸委員長 質疑を続行してください。
  82. 寺前巖

    寺前委員 次に聞きます。  中山長官、ことしの十月五日、参議院の予算委員会で、あなたは、六月にスウェーデンの王立アカデミーを訪ねて意見を聞いたら、日本学術会議の存在を知らない。また、ロンドンの王立協会、ここでも学術会議は知らない。こういうのが学術会議実態であるという答弁をされておりました。新聞記者との懇談なり、あるいは記者会見なり、いろいろな分野でも、新聞報道を見ていますと、大体この種のようなことをおっしゃっておりました。私の理解、間違うておったら出てきていただいたらよろしいし、なかったら、もうそのとおりで終わりますけれども、よろしいですね、予算委員会の……。
  83. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私が申し上げたことは間違いございません。
  84. 寺前巖

    寺前委員 ああいうように明確に学術会議の事務局長答弁すべきであります。  そこで、六月にスウェーデンの王立アカデミーを訪ねたらということになっているのですが、スウェーデンの王立アカデミーの人が、日本の学術会議の存在を知らないということは、言えた義理なんでしょうか。あなた、どう思われますか。いままでここの王立アカデミーと学術会議との間には全く関係ありませんか。
  85. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えいたします。  ちょうど学術会議調査課長を同行いたしておりました。学術会議調査課長であるという紹介を私がいたしましたら、学術会議とは一体何か、こういうことでございましたので、私は認識があるのかないのかということで、認識がないという確信を持ったわけであります。
  86. 寺前巖

    寺前委員 私、長官にそれは聞いているのじゃないのです。どんな関係が、いままでの間にありましたかということを事務局長に聞いている。
  87. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 特別に二国間交流はございません。
  88. 寺前巖

    寺前委員 特別に二国間交流はありません、そうでしょう。だけれども、去年の四月十四日に同アカデミーの事務総長バーンハード氏が学術会議を表敬訪問されて、会長、副会長と御懇談になっているという事実はうそですか。
  89. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 お答えしますが、会長のもとには……(寺前委員「事実ですかと聞いているの」と呼ぶ)いまのところ、私よく記憶はございません。
  90. 寺前巖

    寺前委員 記憶にないということしか、あなたにはない。昔の話を言っているのじゃない、去年の四月だよ。次に行きましょう。  その次、イギリスの王立協会へ行ったら、やはり同じことだ。イギリスの王立協会と日本の学術会議との間には従来何にも関係はありませんでしたか。
  91. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 突然の御質問でございまして、資料を持っておりませんので、ちょっと御答弁しかねますが……。
  92. 寺前巖

    寺前委員 日本の学術会議について、大臣が行ったら、知らぬというふうに言われたので、これは知名度が低いので大変だなと思われた。ぼくはそうだろうと思う、それだったら。ところが去年、事務総長がお見えになっておって、そう言われたら、通訳が悪いのか——大体、大臣が行かれるときに、事務当局の方は、あそこの総長は去年お見えになった方なんだから、ちゃんとあいさつをしてくださいよと言われるのか。あるいは全然お会いした相手が水準の違う人だというのだったら、それは知らぬことは何ぼでもあります。やはりそういう性格だ。  イギリスの王立協会については、学術会議というのは金がないから、外国との間に招待関係を確立しようと努力をしても、予算をいつも要求しても、できないんだ。その中で王立協会については、わざわざやっとこさ交流を決めたという経過があるのでしょう。日本学術会議の二十五年史を見たら、昭和四十五年に同代表団六名がやってきている。団長は副会長。ここの王立協会の副会長がその中に四名まで入っておられる。あるいはまた、ノーベル生理学賞をおもらいになった方もそこの中には入っておられる。日本の中でも交流ができない、わずかやったことのある、そこの協会が来ておるという関係にありながら、そこが知らないというようなことは、よくよく会った相手が悪いか、あるいは先ほどから言うようなことです。だから知名度が低いと言える例を挙げられたこの例というのは、そういう水準のものになるのと違いますか。  あなた、事務局長は、そのことすら、去年のことすら忘れてしまう。そうでしょう、ことしの二月のことでさえも、四月のあの会長さんのことですらも知りませんと言っていこうというのですから。そんなことで事務局長としての責任が務まるのか。会計検査の結果だと言って、事務局で準備したものを出しておきながら、あれは会長が勝手に書きよったのや、わしは知らぬのや、そんなこと、あなた天下に通用しますかいな。きわめて、あなたのとっている態度は重要だ。だから混乱もこの社会に出てくるのだ。あなたが不正確な情報を提供したさかいに、だからこうなったということを、会長さんが各部長さんをなだめるために、わざわざそれを引き取ってまで言っておられる、あなたが誤ったさかいに、こうやってひとつまとめてやってくれと。ところが、それすら、会長が勝手にやったので、わしはそんなこと言わへん、そんな不遜な態度がありますか。私は公務員の風上にも置けないと思いますよ。まして幹部職員として置いておけるような性格じゃないと思いますよ。  その次に、それじゃ、もう一つ聞きましょう。七月の十六日の日に赤坂プリンスホテルで「日本学術会議のあり方初め科学技術関係一般につきまして」ということで、総理府総務長官が各社論説委員の皆さんと昼食をともにされるような集会がありましたね。この集会について、日本学術会議のことについて大臣がお話をされるんですから、当然学術会議の会長さんや副会長さんは、こういうことがあるということを知っておられたんでしょうね。あなたも参加されたんですか、明らかにされたい。
  93. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 大臣の主催されたものでございますので、特には、そういう御案内はされておりません。私が、説明を予定されればということで出席したにすぎないわけでございます。
  94. 寺前巖

    寺前委員 あなた、日本学術会議庶務課長が連絡事務担当者になっているんですから、大臣がおやりになったということだけでは済みませんね。学術会議の事務局が担当と、ちゃんとその案内状には書かれていますね。持って回られたのも学術会議の皆さんですね。にもかかわらず、日本学術会議のことをお話しになるのに、会長さんや副会長さんが知らない状態のままでやっているということは、事務局長としておかしいと思いませんか。
  95. 大濱忠志

    ○大濱政府委員 庶務課長が、連絡と申しますか、内容については主として学術会議の問題もあろうかということで、学術会議についての疑問があるとすれば御連絡いただきたいという意味の窓口でございます。
  96. 寺前巖

    寺前委員 大臣が直接おやりになるんだったら、総理府でおやりになったらよろしい。学術会議のことを論じられるから学術会議の事務局をお使いになったわけでしょう。そうした学術会議の問題についておやりになるんだから、先ほどからいろいろな問題が起こっているんだから、大臣自身が、それまでにいろいろな記者会見をやっておられるんだから、学術会議の会長さんに、大臣がこういうことでおやりになりますよということをあなたはきちっと報告し、自分のところの事務局がそういうことをお手伝いするのですよということになるはずなのに、自分のところの会長さんは知らぬわ、総理府総務長官の、その事務の仕事で走り回るわ、一体どこの事務局だ、そういうことになるでしょう。  しかも、その会の冒頭に——何か質問があればじゃないです。あなたがまず最初に、大臣より先に、その席上でお話しになっている。ところが、そこの席上で、あなたはまたも、国際会議派遣代表は学会の依頼を受けて出張しており、JSCの出張ということを道具に使っている。この点は会計検査院より指摘されたので、事務局より改正案を出したが、会員につぶされた。きわめて遺憾である。あなたはまた、その種の発言をそこでやっておられる。だから新聞社の諸君たちは、そうかいな、それで会計検査院から指摘があったので、つぶされたのかいなと思う。だから現にそれが新聞に反映しているじゃありませんか。日経新聞を見たら、日経新聞の社説のところにちゃんとそれが書いてある。七月二十五日ですよ。  あなたは、会長は勝手にやっているのだ、会計検査の結果だ、検査院の方は知らぬのに、あんなことやっているのだ、注意をしたなんて偉そうなことを言っているけれども、何が結果としてだ。あなたはまたそこでやっている。あなたはペテン師ですか。あなたは一体何なのですか。(「ペテン師は言い過ぎだな」と呼ぶ者あり)ですかと聞いているのだ。あなたは学術会議の事務局長でしょう。自分のところの問題について、会計検査院からの指摘、会計検査の結果という問題についてあれほど問題になって、そこまで問題になってきているのに、なおかつまた、そういうような態度。全然会長も知らぬことをやっているということ自身がきわめて重大な責任問題があるのと違いますか。そういう態度が学術会議問題を混乱に陥れていく役割りをしているということになると私は思うのですよ。(「会長を呼んで、その内容を確かめた方がいいよ」と呼ぶ者あり)ここまで言うと、みんなは会長さんにひとつ出てきてもらって、本当のところどうだったのか聞かしてもらいたいという気持ちになるのは、ぼくはあたりまえだと思う。よくよくもって、これはひどい話になってきたと言わざるを得ないと思うのです。  さて、こういうふうにこじれさせてきた問題、十月九日の新聞を見ると「学術会議の改革案 臨調に検討要請 閣議決定」という情報がざあっと流れている。混乱をこれだけ広げておいて、そこに話を持ってくる、私は大変なことだと言わざるを得ないと思うのです。  そこで、その前ですが、中山長官に伏見会長が、改革案作成の中間報告を、小生の九月、十月の海外出張後申し上げるようにお約束を申し上げました。整理しつつある段階で、いまだに報告申し上げる段階に至っておりません。同時に、改革委員会がありますが、九月二十三日だけに委員会は、窮屈な審議予算の貧弱さからなりました。しかし、十月二十一日から三日間、会議において総会が開かれます。論点が整理されると思いますので、その総会後にお会いする方が適当かと思いますがというお手紙を長官の方にお出しになったようです。そしたら、これが報道関係では拒否報道などというような形になっている。報道がそういうふうになることについて、会長さんは、これはえらいことだ、ジャーナリズムが総理府長官と学術会議会長との間に対立関係があるがごとく、また、それをあおり立てるような記事を好んで載せておりますことは迷惑もはなはだしいことなんだ。だから、そういうふうにならぬように長官もひとつ御同意いただけるでしょうかと、切々たる訴えを、あなたのところに、会長さんは努力を表明しておられるわけですけれども、あなたはそういうふうに思われますか。
  97. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私と伏見会長との会談は過去二回ございました。それで私は、学術会議というものは、日本の科学者の内外に代表する機関、しかも独立性の非常に強い機関でございますから、学術会議の改革問題については、まず日本学術会議のお考えというものを十分お伺いすることが当然の理であると考えておりました。  そういうことで第八期から今期十二期、一期三年でございますから約十年以上、この改革委員会というものは学術会議の改革について内部で論議を続けてこられたわけでございますが、結論が出ない、こういうことでございました。  私は伏見さんに、どうかひとつ学術会議のお考えを教えていただきたい。私は所管大臣として、また会長は日本学術会議の会長として、きょうはお目にかかっているわけであるということを前提に、七月十五日の会談に臨んだわけでございまして、この会議も全部、伏見先生からの要事に応じて私の方でお目にかからしていただいたような次第でございます。  そこで伏見先生は、改革についてはいままで協議をしてきました。十年以上協議をしています。なかなか協議の結論が出ないのです。これはちょうどこういう言葉を使われました。人間というのは、自分の座っているいすを自分で持ち上げることはできないのだ、改革の結論が出ない。総務長官に言われて、これで改革ができるかもわからぬということを共同記者会見で述べておられるわけであります。  そこで、改革案全部がコンクリートになって出ないかもわかりません。それはそうでしょう。それでは十年間検討してきた主な点を私が長官のところに示してあげましょう。それではひとつ八月の末までお待ちしましょう、こう申し上げたら、いや八月では時間が足らぬ。それでは九月の末はいかがでしょうか、こう言いましたら、会長は九月の末なら大丈夫だ。手帳を出されて、いや九月は海外出張をしている。それではいつお帰りですか。十月の四日に帰ってくる。それではお疲れでしょうから、十月の七日か八日に、ひとつどうか会長の方から、いままで御検討いただいた主だったものをお示しいただければ、私ども勉強さしていただきましょう。こう申し上げて公式な会談を終わったわけであります。  そうして、私は十月七日、八日まで待っておりましたが、会長からは、もう学術会議におられるのにかかわらず、自分の私信という形でお手紙をいま書いてこられたように出してこられまして、お約束をしておられながら、自分の一片の私信をタイプで打って、その約束を破棄にされる。  日本の科学を振興するということでお互いに努力をしているわけでございますから、学術会議のいわゆる総会までは結論が出ない。この間の運営審議会でも、長官との話し合いが拒否された。こういうことであれば、その事実を、十分もかからぬわけですから、お越しいただいてお話しいただけば、私もいつでも、そのお話を承る準備をしておるわけでございますし、やはり日本がこれから生きていくのに、科学を振興するのに、もっと努力をせにゃいかぬという誠意と熱意が欠けておるのではないかということで、私はお返しをさしていただいたようなことでございます。
  98. 寺前巖

    寺前委員 それで拒否をされたというふうにおっしゃったけれども、事実の結果としてそういうふうになってきて、後々こういうふうにやりたいという願望を提起しておられるわけです。  ところが、これについて拒否をされたのだから、それではもう臨調でやれ、おまえのところではあかんのだと言わんばかりの報道が流れておりますが、自主的に改革案をそこまで持ってきて、その段階で整理ができるのだから、その段階でまたいろいろお知恵もかりてとおっしゃっておられるのだったら、自主的な改革案を尊重されていくようにしなければいかぬではないか。臨調に直ちに、行政改革のあれだ、これを検討せいと言って、もしもそちらの方に回されるということにされたとするならば、これはゆゆしき問題だ。ところが、新聞報道を見ると、総理は臨調に検討してもらうことが適切であり、その意見を待ち、その上で考えようという発言をされたというふうに流れています。  総理、まず第一に、先ほどからお聞きのとおりです。あそこの事務局長、これが学術会議の事務局長だろうか。会計検査の結果だと言ってみたり、あるいは総務長官が海外へ行かれて、行ったところで評価の問題が言われておるけれども、一番関係の深いところの諸君が、そういうことが言われるはずがないところでそういう話が伝わってくるとするならば、それもおかしな話だ。事務局長自身、事務局長としての責任を果たしていないことが混乱に導いているのじゃないだろうか、私は客観的に見てそういう感じを受けます。だから、そういうことを考えるならば、これを直ちに臨調に持っていくという性格ではないのじゃないだろうか。総理自身も、会長さんなり副会長さんなりを含めてお会いになって、真意をお聞きになるというような方向に、これは改善すべきではないだろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  99. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 この学術会議の改革の問題は、大分時間をかけて今日までいろいろ検討をされてきておる問題と承知をいたしております。中山総務長官がその問題につきまして伏見会長と二度にわたって会談をされまして、そして先ほど御答弁のありましたように、明確な話し合いがなかった、改革についての学術会議自身としての提案というものが示されなかった。いろいろそういうことを勘案されまして、中山長官から報告があったわけでございます。  いま寺前さんは、臨調にこれをかけるというようなことをやるのはおかしい、こういうことでございますが、本来臨調は、わが国の行財政全般につきまして御検討願うようにお願いを申し上げておるわけでございます。したがいまして、この学術会議の問題も例外ではございません。こちらから特別にこの問題をといって特記してお願いをしませんでも、臨調は全体の問題を審議、御検討願っておるのであります。したがって、学術会議立場から改革をすべきである、こういう点は改善をしなければいけないというような答申があれば、政府としては、それを尊重して改革に取り組みをせざるを得ない、こういうことでございます。
  100. 寺前巖

    寺前委員 ちょっと誤解があるようですから、もう一つ指摘しておきますが、自主的に改革がここまで来ている。内部から混乱させるような事態がつくられている。長官との間にもごたごたが始まっている。こういう事態の中において、自主的改革案というが、これが一体どうなんだろうかということも、面接会長さんなり副会長さんなりとお会いになって、どういう方向でこの問題を発展さしたらいいだろうか、そういう角度で見られるべきものを直ちに臨調に検討してもらって、そこからやり出すというふうにやるのが適当だろうか、総理大臣自身の出られる幕があるのではないだろうかという意味で私は指摘をしているのです。いかがなものです。
  101. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  先ほど先生のお尋ねで一点、それはロンドン王立協会で相手が知らなかったのじゃないか、こういう御意見でございますが、ハックスレー会長以下アカデミーのほとんどの幹部が出ておられまして、そういう席での会談でございますから、決していいかげんな話ではございません。  もう一点。ただいま総理と伏見会長が会われたらどうかという御提言がございましたが、真実をさらに申し上げますと、改革委員会の先生方から、八月三日に総務長官と会いたいという申し入れがございました。七月十五日の中山・伏見会談でこのことをお話し申し上げると、会長は、私以外の副会長とかいろいろな者と会ってもらっては困る、話がさらに混乱するからそれはやめてもらいたい、こういうことで、秘書官から、いわゆるお断りの返事を申し上げたような経過がございますので、そういう経過を踏まえての今日の結果が出てまいったということをよく御理解をいただきたいと思います。  さらに、もし学術会議の方々が所管大臣である私に改革について会いたいとおっしゃれば、どなたとでも私はお目にかかる用意がございます。
  102. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 中山長官から先ほど来るる御報告を申し上げておりますように、総務長官としてはこの問題については非常に努力をしております。伏見さんとも誠意を尽くしてお話し合いを願っておる、その報告が閣議でございました。私は、これは独立した機関でもあるし、できるだけ学術会議の自主的な改革案というものを尊重していきたいという中山長官の考え方で、時間をかけて会長とお話をしてきたその姿勢はよかった、こういうことを閣議でも評価をしたわけでございます。  しかし、それがどうしてもうまくいかないということになれば、臨調は国の行財政全般について審議、検討しておる機関であるから、それから答申があった場合にはこれを受けて、政府は尊重して所要の改革措置を講ぜざるを得ない、こういうことを申し上げたわけでございます。当然のことであります。
  103. 寺前巖

    寺前委員 自主的改革が実りますように、そこを今後ともあくまで尊重されることを希望しておきまして、次に行きます。  一括法案ですが、法案の第二章に、第二条から第七条、各年金制度への国庫負担の四分の一カット関係の問題が載っております。  歳出削減額が初年度で千九百億円というふうに私、この閣議決定が九月二十二日にされたときにいただいたのです。ところが、この千九百億円というのがちっとも合わないのです。そこで、関係する大臣に一体どういうことになっているのか。まず厚生大臣に、厚生年金と船員保険関係がおたくの所管だから、そこでの財政効果というのですか、四分の一カットが一体どんな金額になるのか。数字のことですから事務当局でも結構です。大臣からでも結構ですが、数字だけで結構です。
  104. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これは五十七年度ベースでございますが、厚生年金で約千八百億、船員保険で三十七億、これは五十七年度ベースでやっております。
  105. 寺前巖

    寺前委員 この関係を順次、国公共済、地公共済、私学共済、農林共済、ずっと、ちょっと言ってくれますか、それぞれの省の関係者
  106. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  私学共済の年金に対する関係でありますが、これは五十七年度が十五億七千万円、五十八年度が……(寺前委員「いいです、いいです、五十七年度で」と呼ぶ)トータルで五十四億九千八百万円であります。これは工十七、五十八、五十九の三カ年であります。  以上であります。
  107. 大嶋孝

    ○大嶋政府委員 地公共済の関係を申し上げますが、五十七年度で国費関係だけ申し上げますと五十七億八千万円、以下ございまして、三年間のトータルで百七十八億八千万円と推計いたしております。
  108. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  農林漁業団体職員共済組合の五十七年度の縮減額は大体四十五億と推計しております。
  109. 西垣昭

    ○西垣政府委員 国家公務員共済につきましては、五十七年度ベースで八十二億でございます。
  110. 寺前巖

    寺前委員 いま大体ずっと聞かせてもらいました。それで、厚生年金が千八百億で、あと船員保険が三十七億、国公共済がいま聞くと八十二億と言われますね。それから地方公務員共済教員分が五十五億ほどですか、それからその国庫分がさらに三億ほどあるんです。それから私学共済が十五億、農林共済四十五億となると、これは全体で二千四十億ほどになるんですよ。そうすると、一番最初にもらったときの千九百億と比べて見ると、これは百何十億円の違いが生まれてくるんですね。行管庁から私は資料をもらったんですが、百何十億も数字が違うてくると大きいんですが、これはどうなんでしょう。
  111. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それは五十六年度ベースで計算したものと、それから五十七年度の現実の概算要求と、その差でございます。一応最初のうちは、五十六年度ベースで計算すると、この程度の財政の節減効果になります。それがおおよそ千九百億、それから概算要求五十七年度ベースでやると二千億円ちょっとになりますが、これはこれで固まったわけではございません。さらに査定が入っていくわけでございますから、概算の数字がもうそれで動かないとか増加というのではなくて、さらに査定される、こう見なければなりません。そう厳格なものじゃございません。
  112. 寺前巖

    寺前委員 財政効果というのから見ると、公的保険で六億とか、児童手当で六十億とか、四十人学級で五十六億とか、こうなっているわけでしょう。そうすると、百何十億円も差が出るというのは、それはベースが違うからそうだと言うけれども、発表が千九百億と言うておいて、中身を見るとそういうようなところがさらに打撃を受けるということを考えてみると、この百何十億という金額、五十七年度ベースで見るとそれだけ実際はもっと多いんだということになってくると、私はこれは何か数字の取り扱いを、五十七年度はこうなるんだとか、再建特例期間中の姿を検討しているときに、各省は五十七年度ベースを知っていながら、大蔵省というのか行管庁というのか知りませんけれども、そこが百何十億円も違うような表を出しているということは、私はそれは何かだましているように聞こえて仕方がない。国民に犠牲は少ないですよと見せつけるようなものに見えて仕方がない。  そこで、次へ行きます。  厚生年金の国庫負担を五%カットするというのが出てくる。五十八年度は二千二百億になる。五十九年度は二千七百億、毎年二二%ずつこのカット分がふえていくようになるんですが、それは間違いございませんか。
  113. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これは推計でございますが、大体その程度になると見ております。
  114. 寺前巖

    寺前委員 十二日の厚生省の答弁を聞いておりますと、返済分は利息を含めて三年均等で毎年二千七百五十八億円、五年均等でも千七百七十五億円になることを認めておられます。しかも、昭和六十年度には五%分の負担が復活することになる。それでは、その六十年度の五%分の負担の復活という数字は、この試算数字を引き伸ばすと三千三百億円になると思うのですが、それでいいですか。
  115. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 従来まで出ました数字は、特例期間中に減額するものの推計をお出ししたわけでございまして、六十年度では減額する予定がございませんので、まだ数字を試算したものがございません。
  116. 寺前巖

    寺前委員 六十年になるともとの負担になるということになると、推計すると、ずっと二二%ですかずつふえるという計算になってくるから、大体想像つくのは三千三百億という数字になってきますね。試算すると大体そういうことになる。これはそれでいいのでしょう。何か間違うてますか。
  117. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 とっさのお尋ねでございますので、ちょっと私もそれほど暗算が強いわけでございませんのでお答えしにくいのでございますが、五十九年度で本来必要といたします国庫負担額が一兆一千億ぐらいになりますが、それを伸ばしますと六十年度におきましては約一兆三千億ぐらいになると思われますので、それの四分の一ということになりますから、ほぼそういう推算になると思います。
  118. 寺前巖

    寺前委員 大体三千三百億ぐらいに、二二%ずつ伸ばしていくとこうなってくる。そうすると、元利返済分とこの五%分がここからもとに戻るということになってくると、五年の場合でも五千百億円になるし、三年計算の場合でも六千億になる。共済年金や船員保険を含めると五年の場合は六千億で、三年ならば七千億、そういう数字になってくると思うのです。そうすると、これは非常に大きな金額をこのときにもとへ戻すということになったら、返さなければならぬということになってくるわけですね。  ところが、一方では国債費が十一兆円から十二兆円という問題が、新しい財政的な危機的段階が出てくる。物すごく国債費の存在も大きくなる。ところが、年金の借りておった分と年金の支払いの負担分を考えると、六千億とか七千億という数字が出てくる。そんなことで果たして返すことを可能にするような数字が出てくるのだろうか。  私は、そこで聞きたい。ともかく六十年度になったら、厚生年金で言えば二〇%という国庫負担、その段階には必ず戻すのですねというのが一つと、借りるには返す保証が明確でなければならない。     〔委員長退席、三塚委員代理着席〕 莫大な国債費とそれからこれがかさんでくるのだから、そんな保証を確実に保証することができるという見通しが本当にあるんだろうか。貸す側の厚生大臣、いかがですか。
  119. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これはこの法律に書いてあるとおりでございまして、三年後にはやはりもとの二〇%に戻すことにしております。また、運用収益を含めて返すことになっているわけでございます。
  120. 寺前巖

    寺前委員 なっているわけですと言うが、いまこっちが心配したように、そんな十一兆から十二兆円の新しい国債費を持たなければならぬ段階になっている。ところが年金の分野でも、そのときから六千億、七千億となってしまう。そんなことで責任を持てるのだろうか。その責任の保証は一体何だ。それが何にも出ないのだったら、その見通しは一体どうなるんだろうか。国民が責任を持ってこの姿を聞いているわけにはいかぬだろう。何ぼ聞いておってもこれはわかりません。  そこで次に発展させますが、中期展望では防衛費の伸びが五十七年度が六・三%、五十八年度は七・九%、五十九年度三・二%と低目に描いてみせているように私には思えます。ところが実際には、五十七年度は六・三%ではなくて七・五%という方向で概算が出てきている。しかも膨大な後年度負担がある。  防衛庁長官にそこで私は聞きたいのです。後年度負担の歳出化は五十八年度で一兆七百億円になるというふうにあなたは述べておられる。これは五十七年度概算に含まれる後年度負担の歳出化分七千五十二億円の五二%の伸びの増になるはずですけれども、その数字は間違いありませんね。
  121. 大村襄治

    大村国務大臣 五十七年度概算要求の際の数字をそのまま用いて計算すれば、そういう計算もできるということであります。
  122. 寺前巖

    寺前委員 数字のことでございますので、関係大臣にちょっと数字を渡しまして、そして論議をしたいと思います。よろしゅうございますか。——それではよろしく。  これは、その表を見ていただいたらわかりますが、防衛予算は五十六年度は二兆四千億で、後年度負担は六千二百四十六億円、人件費、糧食費、営舎費、油購入費など、そういうものを入れると一兆七千七百五十四億円、そしてGNPのそのときの一%相当額、これは新経済社会七カ年計画の数字を使わしてもらいまして二兆六千四百八十億円、こういう数字になっているわけです。  五十七年度の概算要求を見ますと、二兆五千八百二億円と七・五%ふえる、後年度負担が七千五十二億円、先ほど言ったとおりです。これは一二・九%の増だ。そのときに、後年度負担がもう決まっている、概算要求がそうだということになると、一兆八千七百五十億円、五・六%増が糧食費、営舎費、油購入費、そういうものになってくる。先ほどお認めになったとおりです。そうすると、これは人件費が一%と見込んで要求を組まれておりますから、もしも人件費を人事院勧告どおりの数字ということになると、そこに書いてありますように人件費分が一兆九千三百二十億円、こうなります。防衛予算の総額の中でここが二兆六千三百七十二億、こういう数字になります。  その次です。その次に、こうやって五十八年度をどう見るのかということになります。後年度負担は一兆七百億円と、こういうふうにもうすでにこれは言われました。これは五一・七%増になる。そのときのそれでは五・六%というものが、これがこのまま五十八年度も進んでいくという推計を立てるならば、減らすということがないとするならば、そうしたら、人件費一%含みで見ると一兆九千八百億円になる。これを人事院勧告のような形でふえるというふうに見るならば二兆一千二十億円ということになります。こういうことを考えると、防衛予算はその場合は三兆一千七百二十億円、五十八年度では、五十七年度から五十八年度にかけるところの防衛予算の伸びというのは、後年度負担で五一・七%増というのがある以上は、どんとふえてしまって、一%の人件費として見た場合で一八・二%、人勧どおりの姿で見るとするとそこでは二二・九%増になってしまう。すなわち五十六年度の伸びよりも二倍あるいは二倍以上にわたって五十八年度の防衛予算がふえていくという数字の結果になっていくと思うのです。この伸び率というものでそのまま五十九年度も推計をやる、六十年度も推計をやって、その一八・二%増ないしは二二・九%増で見ていったら、昭和六十年度には、一%の場合の計算でいくと四兆二千六百億円、人勧の数字でいくと四兆七千九百十億円、これが防衛予算の見通しになってくるというふうに思うわけです。特別に防衛予算をもっとふやすというのだったら話は別です。  そうすると、この四兆二千六百億円という防衛予算ないしは四兆七千九百十億円という防衛予算、それと、新経済社会七カ年計画に基づいたGNPの一%というのを四兆一千二百六十億円と見たら、鈴木内閣の間はそれはGNPの一%を超させませんということを閣議で決めておっしゃっておるけれども昭和六十年度になったならば、いまのこの発展方向を見ていたならば、その段階にはGNPの一%を突破する、そういう推計が出てくるのではないか。防衛庁長官、いかがですか。
  123. 大村襄治

    大村国務大臣 先生の御計算を拝見いたしますと、五十七年度概算要求を基礎といたしまして、前年度予算に対する増は今後も継続するという前提で御計算をされているようでございます。  私どもといたしましては、将来このような伸びが維持されるかどうかということは、今後の防衛力整備の方針にもかかわり合いのあることでございまして、五十八年度以降の防衛関係費がどのようになるかは、現時点で見通しを立てることはきわめて困難であると考えておるわけでございます。(寺前委員「この数字自身は」と呼ぶ)ですから、五十七年度の概算要求の数字は私どもの数字をお用いになっておりますからお答えできますが、今後の推計につきましては、私どもとしてはお認めするといいますか承認するわけにはまいらない、こう思います。
  124. 寺前巖

    寺前委員 総理は、鈴木内閣の間はGNPの一%を防衛予算で超えないということを一つの方針として閣議で決めてこられました。いま数字で説明いたしましたように、この防衛予算は、もう先に手を打って物を買っていくのですから、後から後年度負担分が出てきます。後年度負担というのが物すごいものになってきている。そうすると、糧食費や営舎費、油購入代、これは安くなるはずはないから、全体としてまたふえていく可能性がある。その点では、五・六%増という数字がこれよりうんと低まっていく傾向というのはどこから考えても出てこない。そうすると、防衛予算の全体の枠というのがこの後年度負担に拘束されて伸びていかざるを得ない。べらぼうな伸びをさせないように計算して、ことし並みの、五十七年度から五十八年度並みの一八・二%として見ていっても、もう六十年度には、鈴木内閣でないといえば別ですけれども、鈴木内閣の間は変えないと言っておったのですが、GNPの一%を超えるということになってくる。そうすると、それはもう絶対にさせないという方針から見るならば、F15とかP3Cとか、そういうような後年度負担のよけいかかるようなものにメスを入れなかったならば、GNPの一%を超えてしまう結果にいまの態度であったならばなってしまうのじゃないか。だから、本当に鈴木内閣としてそこに情熱を傾けてやるというのだったら、F15なりP3Cのところにメスを入れて、それで後年度負担がふえるような方向にならぬようにやりますということを言明されなかったならば、あの方針はつぶれてしまうと私ははっきり指摘することができると思うのですが、いかがですか。
  125. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 五十七年度概算要求、これは七・五%のシーリングで出されておるものでございます。これがこれからの予算の編成におきまして適正な査定がなされる、さらに正面装備につきまして、発注を航空機あるいは艦船等で行われる予定になっておりますが、その後年度の支払い、これもどのように年度はならしていくか、いろいろの問題がございます。また、人件費等においてもしかりでございます。そういうように、厳しく査定もし、後年度の支払い関係もなだらかにいくように、財政当局としては、財政再建のときでもございますので、あらゆる努力、工夫をこらしていくわけでございます。したがって私は、当面、私が申し上げておりますように、GNPの一%の中でちゃんとおさまるようにしていきたい、こう思っております。
  126. 寺前巖

    寺前委員 私は、この財政状態を見ても、総理が本当に、P3CなりF15なり、いまのような状態でやっておったならば大変なことになるということでもって、ここに大胆なメスを入れるということがなかったならば、財政的にも国民に責任を負う姿勢にならないということを指摘しておきたいと思います。  時間の都合がありますので、私は、厚生大臣に、児童手当について納得できないところだけを聞きたいと思うのです。  それは勤労者、いわゆるサラリーマンという言葉が使われますけれども、サラリーマンの中でも、五人未満の人と、あるいは厚生年金に入っておられるそれ以外の人たちとの間に差が出てくるという結果が、この児童手当の結果の中から出てくると思うのです。その五人未満の人が、厚生年金に入っていない勤労者がかなりたくさんおります。この人たちの中で、今度の所得制限の金額が下がったことをめぐってどれだけの人がもらえなくなるのか、その数字を説明していただきたいというのが一つ。  もう一つは、特例だというふうに言っても、ほかのサラリーマンと比べ、五人未満の諸君たちが児童手当を現にもらえないという事態は、差が生まれていることは事実だと思うのです。では何で差をつけたのか、御説明いただきたい。
  127. 村山達雄

    ○村山国務大臣 まず、第二番目の問題からお話しします。  児童手当につきましては、臨調の答申もありまして、国庫負担等の関係から、ある程度の所得制限をすることにいま考えているわけでございますが、これは被用者もあるいは自営者も同じでございます。現在四百五十万というのを三百九十一万にしようというわけでございますので、児童手当の面では大体同じものであるわけでございます。ただ、結果といたしまして、そういたしますと、厚生年金の関係で、現在大体対象数の七割しか適用になっておりません。これが四五%まで恐らく下がるであろう、こう見込まれますので、それで自営者と同様なところまで、これは国庫負担ではなくて事業主の拠出金でそこまで特例手当を出すことによりまして、今度の児童手当の所得制限の引き下げによる不合理を直そうとしているわけでございまして、法律上は一本でやっているわけでございます。  それから最後の給付率のところで、いまの被用者七〇%を特例手当を含めて八〇%にする。それで自営者の方はどうなるか。いまの五人未満はやはり自営者に含まれるのは御承知のとおりでございます。現行では大体九割でございますが、その結果、八割になるであろうということでございます。  なお、ちなみに申し上げますと、三百九十一万という数字は、大体六人の家族の平均給与、この辺をとっているわけでございます。  最後に、いま冒頭にお尋ねになりました自営者の支給率は一体どれぐらいになるのであろうか、あるいはどれぐらい受給者が減るであろうかというお話でございますが、実はこれは自営者と五人未満の人たちを統計的にとっておりませんので的確な数字はわかりませんが、いろいろな推計を加えますと、恐らくいままで五人未満の自営者の方はほとんど制限を受けなかったであろうけれども、大体普通の自営者の方よりは少しカバレージは上だと思いますが、今度はいままでよりは少し削られまして、私の荒っぽい推計でございますが、五%から一割ぐらいの人が今度の所得制限において落ちるのじゃなかろうか、その数は、いろいろ見方がございますが、五%ないし一割ぐらいで大体一万程度かなということでございます。
  128. 寺前巖

    寺前委員 現実に五人未満の企業の労働者と、それから五人以上の企業に働いている労働者との間には差が生まれる、この問題については私は理解することができない。  最後に、私はちょっと確かめておきたいことがあります。それは、この間学校教育の問題で、文部省は四十人学級で三百二十二人、三百人、三百人、そして六十年度から四千四百人、五千人というふうに、数字をずっと挙げられていきました。従来は政令に基づいて、児童生徒数の推移と学校施設の整備の状況によって計画を立てて教員数をやっておったから、教育委員会がうまくやっていけるようになったのだけれども、今度の法律によって財政を勘案するという一項が法律上入ったために、毎年検討しなければならぬということになってくると、この数字自身は大蔵省が大体そういうことで了解しているということの数字であるのかどうか、これが一つ。  それからもう一つは、養護の教員とかその他教職員の定数改善ということがあります。この分野では来年度は四百人という増が出ているけれども、再来年度その他については一体どういう計算になっているのかという問題、これが一つ。  それから、いまのあの文部省の計算を見ていると、これまで教職員の純増というのが一万人からになっています……
  129. 三塚博

    ○三塚委員長代理 寺前君、時間が来ましたので、結論を……。
  130. 寺前巖

    寺前委員 ところが、今後の姿を私、試算をしてみると、十年間に二万人ぐらいしかふえないことになってくる。特に五十八年、五十九年というのは純増分はマイナス千人前後の数字になってきます。こういうことになってくると、教員の自然減というのが毎年三%と言われているんだから、二万一千人からの自然減が生まれる。加えて、計算上純増が千人からのマイナスになってくると、結局のところ、二万人ぐらいしか教職員の採用というものができないことになってくるんじゃないか。従来は四万人からの採用をやっておったんだから、採用数が半分に減ってしまうのではないか。この数字は、大体の問題として間違いがあるのかないのか。とすると、この青年諸君たちに対する態度を今後どういうふうにやっていくのだろうか。世界の趨勢から見ても、四十人学級というのは……
  131. 三塚博

    ○三塚委員長代理 結論をひとつどうぞ。
  132. 寺前巖

    寺前委員 はい。四十人学級というのは、日本はあのサミットに行っても、それは二十年おくれと言われている。ところが、こうやって就職の方から見ても青年に未来を与えないし、子供たちの面から見てもそうなっている。これに対してどういうふうに見ておられるのか。私は四十人学級をひとつもっと早めるようにすべきだと思うが、文部大臣見解を聞きたい。以上です。
  133. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 四十人学級につきましては、予算委員会その他でもお答えいたしましたように、六十六年に至りまする間においてこれを調整し、この間の調整は必ずやるということを大蔵大臣からも言明されております。  あとの計数の問題は、政府委員からお答えします。
  134. 三角哲生

    ○三角政府委員 明年度、明後年度、三百、三百と、それからその後について、先日の社会党湯山委員の御質問に対してお答えしました数字は、私ども事務を担当する者のやるべき一つの試算、もくろみでございまして、これは大蔵省と協議を済ませたという数字ではございません。  それから、改善増につきましては、明年度四百人を要求しておりますが、それが一つのめどでございます。なお、財政再建期間終了後につきましては、その都度の教員の自然減等をにらみ合わせまして十二年計画を達成していこう、こういう考えでございます。  それから、教員の採用の問題でございますが、仰せのように各年によるアンバランスというのは当然あるわけでございますが、教員の自然減というものが、なお五十八、五十九年度は千人台でございます。六一年から自然減が四千人というようなことになりますので、それに合わせて退職予定者というものが、教員の年齢構成から見ましてここ数年の間は毎年二千人ずつぐらいふえてまいりますので、それをにらみ合わせますと、そんなに新規採用が激減するということはございませんで、私どもの試算では、ほぼ五十一年度の時点の状況に戻るということはございますけれども、そんなに需給状態がぐあいが悪くなるというふうには考えておらない次第でございます。
  135. 寺前巖

    寺前委員 ありがとうございました。
  136. 三塚博

    ○三塚委員長代理 これにて寺前君の質疑は終了いたしました。  次に、後藤茂君。
  137. 後藤茂

    後藤委員 私の質問の時間にちょうど総理と官房長官が欠席をなさる。一時間後にはお見えになるようでありますけれども、総理あるいは官房長官に対する質問は後刻にさせていただきたい。また、経済企画庁長官の方は今度は逆に一時間後には所用がある、こういうようにお聞きをいたしておりますので、皆さんすべておそろいになったところでやりたい問題が実はいっぱいあるわけでありますけれども、幾つか前後して大変恐縮でございますが、私の質問をさせていただきたいと思います。  なお、社会党といたしましては、すでに七名の委員が質問を総括的にいたしております。なるべく重複を避けて御質問を申し上げたいと思うわけですが、総務長官も何か所用があるかのようにお聞きをいたしておりますので、最初に、人勧の問題だけに限ってちょっと一言お伺いをしてみたいと思います。  昨日ですか、給与関係の閣僚会議を開くやに聞かしていただいておりましたが、これが十六日ですか、後日に延びた、こういうように聞いております。一体なぜそれが延びていったのか、人勧の完全実施に対してどういう考え方をいま整理をしておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  138. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  給与関係閣僚会議の日程がまだ固まっておらないというふうに私は考えております。この座長格と申しますか、官房長官の方から、日程が決まれば関係閣僚には連絡がございますが、私の方にはまだ連絡がございません。そのような状態だと御理解をいただきたいと思います。  もう一点のお尋ねは、人事院勧告に対する考え方はどうかということでございますが、八月二十五日の閣議におきまして、行財政改革に関する当面の基本方針という決定に基づいた考え方に立ちまして、私どもといたしましては、この大変厳しい財政事情の中で、給与担当大臣といたしまして、この十年間、慣熟した労使の関係、安定した労使関係というものが大変日本の社会に貢献をしているという原則に立ちまして、給与関係閣僚会議におきましても私は誠意をもって公務員諸君のために努力をしてまいりたい、このように考えております。
  139. 後藤茂

    後藤委員 誠意をもって努力をしようにも財源の問題がはっきりしない、こういうことで、その努力にも限界があるかのような発言でありますけれども、もともと最初の出発点が誤っているのではないか、かように私は考えるわけであります。  そこで、大蔵大臣にお伺いをしたいのでありますが、本来予算というのは、歳出の面につきましてはその年度に必要と考えられる経費というものはすべて年度予算に計上をしていく、にもかかわらずいろいろ災害だとかあるいは突然の出費、歳出等も出てくるわけですから、そういったものも織り込んでこれは予備費で計上していく、こういう総合予算主義といいますか、そういう観点に立って予算は組まれていくべきであろうというように考えるわけですが、この総合予算主義というものは、大臣、崩してしまっているのでしょうか、その考え方をひとつ最初にお聞かせいただきたいと思います。
  140. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 総合予算主義とは、年度間のすべての財政事情を見込みまして相互の優先順位を検討し、そうして予算を編成するという、一口に言えばそういう考え方でございますから、現在でも基本的な原則としては総合予算主義が維持されておる、こう考えていただいて結構でございます。
  141. 後藤茂

    後藤委員 原則的には維持されているということになりますと、政府の経済見通し等を見てみますと、物価の上昇が一応五・五%というように見込まれているわけでありますから、当然このアップというのは経費として織り込んでいかなければならない。確かに人事院勧告があるわけですから、物価上昇分がそのままアップ分に見合うということにはならないかもわかりませんけれども、これまでの予算委員会でもこのことは常に追及をされてきている問題ではありますが、少なくとも一%でとりあえず計上しておく、あとはどうするかということはひとつ情勢を見て判断をするということは、これは公務員の皆さん方の生活にかかわる問題でありますから、もともと予算編成の場合のそのあり方が間違っているのではないか。  そういう観点からいたしますと、いまもうすでに五十六年度予算は執行されているわけですから、来年度あるいは再来年度、経済見通しを立てて、そして物価上昇等をどの程度に見るか。その場合、単に政府だけではなくて、各種民間の調査機関というものがいま大変整備充実をされております。そうしたものが民間給与のベースアップ等についても一定の影響を与えていくわけでありますし、また、民間準拠ということになってまいりますと、人事院勧告のおおよその幅というものが見通せるだろうと思うわけです。それを一%で組むということではなくて、いま申し上げましたように物価上昇等あるいは経済情勢等を織り込んで、年度予算の当初に総合予算主義の観点に立って一定の率をこれから来年度、再来年度、織り込んでいく意思がおありかどうか、この点を明確にお答えをいただきたいと思います。
  142. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは何%見るかということについてはいろいろと議論がございまして、三%あればいいのか、いや、一%あればいいのかということになると、何%ならいいということはなかなか言えない。定期昇給分は見込みましょう、それからあとは財政に余裕のあるときは五%ぐらい見込んだ年もございます。四十四年から五十三年ごろまではそういうような余裕のある見込み方をして財源があった。財源があったというよりも、むしろ五十三年以降は赤字国債を財源としながら一方に借金を引き当てて、片っ方に人件費を見たということですね。  しかし、今回は赤字国債からは脱却していくという方針で、赤字国債の発行額を減らすという大原則の予算を組んでいるわけですから、あとは税収に余裕がどれだけ出るかという問題だけでございます。そういう点で財政上非常に厳しい。公共事業費等も抑制、アップ率ゼロというような状態の中だし、人事院勧告が幾らに出るかもよくわからない。前の年の十二月に予算を決めるわけですからね。そこで、ぎりぎり見込めるところ一%かということで一%というものを織り込んだわけでございます。  したがって、それでは将来、五十七年とか五十八年にかけて、またもっと余裕を見て何%ずつ入れるかということをここで約束しろと言われましても、これはちょっとお約束できない。ただ、われわれとしては、ともかく人事院勧告については、こういうものがいい慣行となっているんだから、財政事情の許す範囲内で極力これは考えるという努力をしておるわけであります。
  143. 後藤茂

    後藤委員 公務員の給与というのは、これはもう一番の必要経費だろうと思うのですね。一%計上した、その一%の根拠は一体何だったのか。経済状況というものが大変大きなファクターとしてかぶさってきておって、とりあえず一%なのか。今度の人勧は何%になるかは予測しがたいにいたしましても、おおよその見当を大臣としてはお考えになっておられたのではないかというように考えますだけに、一先の計上されました根拠というものをもう一度お聞かせをいただきたい。
  144. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、どういう計数に基づいて一%やったんだ、そういうことは別にないのです。要するに、いままでは二%とか五%というときがございました。しかし、財政事情が非常に厳しいという状況のもとで、ともかく二兆円国債減額というもので健全財政のスタートという段階予算を組んでおりますから、そこで余裕財源として一%しか組めない、当時の十二月の予算編成の過程ではそれぐらいしか見込めないという状態で一%を見込んだということでございまして、それ以上の数字的根拠があるかと言われましても、それはございません。
  145. 後藤茂

    後藤委員 こういったものは、いま一番そこの給与のところが犠牲になっていると思うのです。こういうようなものは当然必要でありますから、したがって今度の五十六年度予算の中でいま一番議論をされているわけですけれども、さあ一%組んでみた、しかし人勧の五・二三というパーセンテージが出てきているわけでありますから、こうした経験を踏まえて必然来年もこういう状況が生まれてくるわけです。そして公務員の皆さん方が大変心配をされるという事態が起こるだろうと思うんですね。  この経験を大切にしながら、大臣、ひとつ五十七年度予算のときには総合予算主義という原点にもう一度立ち返って、今回の予算の執行のようなことにならないように配慮する、当然予想される率というものは計上しておき、なおその前後の振れというものについては予備費等で措置をしていく、総合予算主義という原則は何としてもこれからも維持していきたいんだという角度からひとつこれからの予算編成にも入っていきたい、こういう立場での見解をお聞きしておきたいと思います。
  146. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 総合予算主義というのは、言いかえれば、よほどのいろいろな変わった事情が起きない限り、追加予算といいますか補正予算はやらないという考え方ですね。しかし、いかなる場合もやらないというほど、そうしゃくし定規にきちっとしたものでもない。原則的にはなるべくやらないということでございます。しかし、非常にこういうように経済の変動が激しいという情勢のもとで、不確実性の時代といいましょうか、本当に半年、一年先がよくわからぬ。円の相場にしたって、二百円ぐらいだと思ったら二百五十円近くまでいってしまうなんということもございますから、だれも予測がつかない。そういうような状況なので、全然補正はやらないということも言い切れないという現実もございます。  一方、総合予算主義なんだから、大体人件費というのはわかりそうなものだ、だから一%ぐらいで済むわけないじゃないか、この経験値から見てももっと組めという御主張だと思うのです。したがって、要するに定期昇給はよくわかっておりますから、これは見ましょう。今度の人事院勧告と申しましても、五・二三といいましても定期昇給を含めると七・五六ですか、六ぐらいになりますか、それぐらいになるわけです。特昇は別だそうでございますけれども。したがって、全然ベースアップを見込んでないというわけでは実はないわけでございます。一%はアップ分として定期昇給のほかに見ておるわけですからね。  問題は、それは最優先で、どんな困窮があっても、どんな事業も取りやめて国家公務員の給与ベースアップは最優先でやるんだという意思決定があれば、それはそういうこともあるでしょう。しかし、やはり税金を納めている人の立場、民間準拠といいましても、身分の安定という点では、公平委員会を持ったり、いろいろな点で国家公務員は一番身分が安定している。両院の決議で、行革でも生首を切ってはいかぬというようなほど、国会の最高機関もこれを支えているというような状態でございます。  したがって、国家公務員の給与は最優先で、あらゆる事案に優先して一番先に先取りしてしまえということも、果たして国民全体の理解が得られるかどうか、こういうことも非常に考えなければならない。しかし、一方、われわれとしては、国家公務員の問題につきましては人事院の勧告といういままでの慣行もございますから、そういうことも大事にして、いい労使関係を保っていきたいという両面を考えまして、そうしてともかくある程度のものはどんな苦しい中でもちゃんと積むものは積んでいこうということでやってきておりますから、予算編成の段階において何%を組み込むかということは、そのときに判断をさしていただきたいと思います。
  147. 後藤茂

    後藤委員 これは要望で、来年度の予算あるいは再来年度の予算編成の中で、いまのように絶対優先順位というものの位置づけをもっと明確にして、せっかく人事院勧告といういい労使関係をつくり上げてきているわけですから、それを崩していかない中で、当然定昇にプラス・アップ分というものは、経済状況を見ておよそ常識的に考えられる面がある。しかも、人事院勧告制度というものを崩していかないための予算編成というのを総合予算主義の立場に立ちましてぜひこれから実現をしていただきますように要望をしておきたいと思います。  それから、給与関係閣僚会議がこれから開かれるようでありますけれども、後でまた景気の問題で御質問をしたいと思うわけでありますが、最近いろいろな指標が若干上向きの動きにあるやに聞いております。しかし、可処分所得の伸びが低い、内需がどうももう一つ思わしくない、こういった状況の中で、大蔵大臣も、八月の税収の伸びを見ておりますと先行きが心配だということをしばしば本委員会においても発言をされております。  これから秋から年末にかけて、こうした内需拡大なり税収の伸びをどう見ていくのかということと関連をいたしまして、ぜひひとつ人勧の完全実施に対しまして、少なくともいま委員会をやっておって、これから閣僚会議等も開かれるわけでありますけれども、十二月のボーナス期の前にこれをきちっと完全実施して支払いをするという方向を打ち出していくべきではないか、大臣、いかがでございましょう。ちょっといま総務長官がいないものですから。
  148. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは、財政の見通し等についてわれわれはいまいろいろと配慮をいたしております。それと同時に、内部でも節約その他のことを実行さしておるというようなことで、給与閣僚会議等において引き続き慎重に検討してまいりたいと考えております。
  149. 後藤茂

    後藤委員 防衛庁長官が何か所用があって中座をしたいというようにこちらに言ってきておりますので、二、三点ちょっとお伺いをしておきたいと思います。  一つは、ここでも議論がなされているわけでありますけれども、GNPの一%以内に防衛費をとどめておきたい、これはどういう申し合わせといいますか、決定といいますか、いつごろ、どういう形でなされてきたのか、まず最初にお聞きをしたいと思います。
  150. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  昭和五十一年の秋に、防衛関係費を毎年度GNPの一%の範囲内で整備を図るという趣旨の閣議決定が行われたということを承知しております。
  151. 後藤茂

    後藤委員 この閣議決定は、これまたこれからは遵守すべき閣議決定なのか、情勢の変化等によって動くのか。特に、総理のオウム返しの答弁をお聞きをいたしておりますと、わが国の防衛費は必要最小限の防衛の費用を確保していくんだ、こういうように言っておりますが、この必要最小限とは一体どういうことなのか。
  152. 大村襄治

    大村国務大臣 わが国の防衛を図っていく上に必要かつ最小限の経費をいうものでございます。
  153. 後藤茂

    後藤委員 必要かつ最小限というのは、それぞれのとり方によって大変動くものだと思うのですね。そうすると、つまり必要最小限という認識に立ちまして、これこれの装備がどうしても必要である、こういう判断に立ちまして、結果的に装備というもの、あるいは防衛費というものを相当大幅に計上していかなければならぬということになりますと、GNP一%の範囲内でというのは崩れますか。
  154. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、必要最小限は諸般の情勢で変わる可能性もあるわけでございます。一方、対GNP一%というのは「当面」が付せられておりますから、現在も閣議決定として生きているわけでございます。私ども、この閣議決定を尊重しながら、今後の防衛力の整備を図ってまいりたい、かように考えております。
  155. 後藤茂

    後藤委員 念を押すようで大変恐縮でございますけれども、そうすると、五十一年にGNP一%は閣議決定されている。したがって、これは動かぬキーである。つまり、最近の緊張激化といいますか、あるいは脅威論だとか、西側世界の安全保障の一翼を担っていかなければならぬとか、いろいろなファクターを織り込んでいって、その上に立って必要最小限の防衛費、こういうように言われているわけですけれども、これは非常に動く要因をたくさん持っているわけですね。動くけれども、しかし片一方に閣議決定で一%以下というものがある。これは何としても守っていかなければならない。あともし必要最小限で計上してみますと、幸い——幸いと言ったらおかしいのですが、後年度負担に大部分を織り込んでいるから一%の中に入ってこない。しかし、これが後年度負担が予算化されてくるというようになってくる、あるいは必要最小限でもっともっと装備を強化していかなければならない、こういう事態になると、GNP一%以下という閣議決定に縛られているから、その装備の充実というものはできない。そのできないところは日米安保条約に基づいてアメリカの防衛に依存をしていくんだ、こういう考え方でございましょうか。
  156. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  この一%の閣議決定の少し前に「防衛計画の大綱」がこれまた閣議決定に相なっておるわけでございます。この大綱において、わが国の防衛力の整備につきましては、平時の考え方が示されているわけでございます。私どもこの点をまた守っていかなければいかぬ。そういうことでいま防衛力の整備を進めているわけでございます。  そこで、後年度負担でございますが、これも大綱に基づく中期業務見積もり、そういったものを基準としながら進めているわけでございますが、後年度負担の点につきましても、財政再建の厳しい折からでございますから、そういった点も念頭に置きながら毎年度の予算編成に臨んでまいらなければいかぬ。そして一%の閣議決定ということも念頭に置いて取り組んでおるわけでございます。
  157. 後藤茂

    後藤委員 必要最小限の防衛、GNP一%以下、さらに先ほど長官の言われた「防衛計画の大綱」、これは皆守るわけですか。一体どれは絶対に踏み外してはならないのか、すべてどうにでも動かすことができるのか、この点をひとつ明確にお答えをいただきたい。  何か企画庁長官が四時から退席されるというので、本当を言えばこの問題じゃなしにもっとほかへいきたいんですけれども……。というのは、私はGNPの伸びの見通しというものに対して若干意見を持っているわけです。いまのところは長官も、GNPの伸びが世界各国に比べて比較的高い、したがって、一%以内におきましても相当な防衛費を計上することは可能である、こういうようにお考えでありましょうけれども、私はそうはまいらないだろうと思うのです、これからの国際、国内経済を見通していってみた場合。  そうすると、閣議決定をいたしておりますGNP一%以内というものに手を触れていくのかいかないのか。いや、そうじゃない、日本の必要最小限度というのは、先ほど大蔵大臣もしばしば公務員給与の中で言われていて、私は荒っぽい議論だと思うのですけれども、公務員だけを最優先順位に置くわけにはまいらぬというような、大変不見識な物の言われ方をしているわけですけれども、この防衛費の問題に対しましても、ここのところは一体どこに置かれるのか。これをひとつもう一度明確にお答えいただきたい。動く要件が全部あるのか、それともこれだけはひとつ守っていく基準なんだ、原則なんだというところがあるのか。
  158. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  「防衛計画の大綱」の方は別に期限も付せられておりません。現在なお生きておりますので、変更を加えない限り、これを守っていかなければならぬと私は考えております。  それから、対GNP一%の方は「半面」と初めから付せられておりますので、未来永劫確固不動というものではないと考えておるわけでございます。御指摘のように、GNPの方の見通しが今後どうなるかという点とも関連がございますし、また毎年度の防衛費の中身とも関連があるものでございますので、そういったものを彼此勘案しながら、現在のところはやはり生きておりますので、その辺で考えなければいけないと私は考えております。
  159. 後藤茂

    後藤委員 どうも答弁がはっきりいたしません。たくさんの動かす要因があるような、守っていく決定のような物の言われ方をしております。一体歯どめをどこに置いていくのか、このことをぜひひとつ明確にしていただきたい。  いずれにしても、私たちは、こうした際限ない軍事力増強というものにだんだん歯どめがなくなっていくのではないかということを憂慮いたしておりますだけに、閣議決定の一%以下、このことは一つの歯どめになっている。そしてさらに、これだけ財政が厳しい情勢にある中で、この軍事費というものを突出さしていくということは、国家財政の観点からいってもできないだろう。装備等についてはもっと削減をしていくという強い考えを私は申し上げておきまして、長官はちょっと退席をされるようですから、一点だけちょっとこれに対する考え方もお聞きをしておいてみたいわけであります。  自衛隊が九月二十四日ですか、富士のすそ野であったかと思いますけれども、総合火力演習をされたようであります。たくさんの観客をこの演習に動員をして、そして実戦さながらの実弾射撃による演習をしたようであります。この演習に要した費用が一体幾らであったのか、お答えをいただきたいと思います。
  160. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  富士総合火力演習で使用しました実弾の量は約二十七万トン、金額は約一億一千三百万円でございました。
  161. 後藤茂

    後藤委員 一億一千三百万円が一瞬にして二十七万トンの弾薬とともに富士のすそ野に消えたわけであります。最近の、最近といいますか、演習の場合に、いわゆる実弾の演習とそうでない演習があるかと思うのですけれども、比率で言えるのかあるいは価格で言えるのか、私ちょっとその判断がはっきりいたしませんけれども、演習の場合、大体どういうような比率になっているのか、この点もお答えいただきたいと思います。
  162. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまのお尋ねに対しましてお答えいたします。  各種演習の目的において必要に応じて実弾射撃を行っておるものですから、個々の比率について一概に申し上げることはきわめて困難でございますが、最近の演習上の使用実績からしますと、実射訓練の比率はおおむね一五%程度である、さように承知しておるわけでございます。  なお、先ほど富士のときに、私二十七万トンと言いましたが、二十七トンの誤りでございますので訂正させていただきます。
  163. 後藤茂

    後藤委員 大変な、富士山が吹っ飛ぶんじゃないだろうかと思って実は心配したわけであります。  この間、これは日本経済新聞であったかと思うのですが、私読んでおりますと、「混成の悩みNATO軍」という記事が実は出ているわけです。ブリュッセルの尾林特派員の報道記事かと思いますけれども、この中で、実は「NATO加盟国は、いずれも深刻な財政難に直面している」が、その財政難に直面しておる中で軍事演習が先般行われた。全体で十三カ国三十万人の兵員が参加をした。長官、その記事の中にこういうくだりがあるわけです。「今回の演習では実弾射撃はいっさい省略された。戦車はライトを点滅させて発射したく合図をするだけ。実弾を発射できるような演習場がないというのが表向きの理由だが、ねらいが弾薬の節約にあるのはいうまでもない。」こういう報道があるわけです。  私たちもECの議員の皆さん方とここ何回か会議をする機会に私も参加をさせていただきました。確かにEC諸国あるいはアメリカの議員等も、日本防衛分担に対して、西側諸国の安全保障のために応分の負担責任を果たすべきであるということは、会議の席上でしばしば発言をいたします。しかし、個人的に食事の際等で話をしておりますと、実はNATO各国もこの軍事圧力には大変弱っているんだ、もうそういう時代ではない、こういうことを政治家の言葉として実は聞くわけであります。ライトを点滅して発射したことにする、こういう演習で、仮に皆さん方が得意の有事の際、果たして間に合うのかどうかというようなこともあるかもわかりません。  それ以上に、財政というのは大変厳しい。井上蔵相のあの昭和初期の、城山三郎の「男子の本懐」ではありませんけれども、やはり聖域ではないという軍事費に対して、公務員の皆さん方に対しても、あるいは福祉なり文教なり弱い人々へのこの財政配分に対しても鋭く切り込んでいくという段階で、実は世界各国がこの巨大な軍事費というもので国家経済が深刻な事態に陥っているのではないか。何とかしてやはり軍縮に持っていかなければどうにもならない。社会主義国のソビエトにおいてもしかりだし、またあの軍事超大国と言われるアメリカにおいても同じであろうと思う。これからは経済が低成長に入っていく、あるいはゼロ成長だ、マイナス成長だ、こう言われる中で、二千年以上も来ている人数がなお高度な兵器の開発と軍事豊の増大というものに血道を上げている、こういう姿というものは私は明らかに誤りだろうと思うのです。  世界の軍事費が年間五千億ドルだ、エネルギーの消費が年間七千億ドルだ、こういうように言われている。恐らくそれが逆転するのではないかという心配もされているわけです。そういう中で、ライトを点滅しながら発射したことにしているという、知恵と言うべきか窮余の一策と言うべきか、そういう状況の中で、わが国においては行政改革という名のもとにおける歳出削減を進めていきながら、その国会が始まる日になりますか、二十四日に国会が始まったわけですから、その日に、打ち上げ花火じゃあるまいし、富士のすそ野で大盤振る舞いをやっておる姿というものは、私には大変奇異に感じられるわけです。  外務大臣がいらっしゃいますけれども、軍縮会議に出られて、またこれからの軍縮の場に外務大臣は出られていくと思うわけでありますけれども、外務大臣の御見解はいかがでございましょう。
  164. 園田直

    ○園田国務大臣 お答えいたします。  防衛庁長官と外務大臣は職務が違います。防衛庁長官は、何かあった場合におくれをとらないように準備するのが防衛庁長官であり、外務大臣は、そういうことが起きないように外国との交際に専念するのが私の仕事でありますから、防衛庁長官と外務大臣意見が若干食い違うわけでありますが、私は、世界の軍備というものは、逐次、軍備競争による危険の脅威をのけるためにも、水準を下げながら軍縮、兵器制限によって低い水準で力の均衡を図ると同時に、同じ努力を米ソの対話に向けるべきだ、こういう方針でございます。
  165. 後藤茂

    後藤委員 長官、結構です。  時間がこの問題で大変経過をしてしまって恐縮でありますけれども、幾つか用意いたしておりましたのを少しはしょりまして、ひとつ大蔵大臣経済企画庁長官とそれから通産大臣にお聞きしたい。  最初に、長期プライムの利付金融債を十一月から〇・四%引き上げていきたい、こういう考えを大蔵省がまとめたという問題についてお伺いをしたいと思うわけでありますが、大蔵大臣、長期プライムの利付金融債の金利引き上げは、いまどのように作業といいますか準備といいますか、実際に十一月から〇・四%の利上げというものをお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  166. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 長期プライムレートは、説明をするまでもございませんが、長期信用銀行などが国債などの債券金利や長期貸出市場の実勢を勘案して決めるものでございます。長期信用銀行などとしては、九月の国債の金利を値上げをしたものですから、それに追従して利付金融債の金利と長期プライムレートを直ちに上げたいという気持ちはあったのでしょうけれども、いろいろなこういう景気動向のときでございますから、政府も何とかできることならば上げないようにしてほしいということで見送ったというように聞いております。  今後どういうふうにするかという話でございますが、利上げの見送りというものをいつまでも続けていくということにつきましては、長期信用銀行などは、利付金融債の販売の現状あるいは長期貸し出しの現状等から見て非常に困るんだということを言ってきておるわけでございます。     〔三塚委員長代理退席、藤波委員長代理着席〕 だからといって、これはもう全体の金利に影響いたしますから、政府関係金融機関の貸付金利のうち基準金利につきましては、民間のいわゆる最優遇金利、つまり長期プライムレートと同じ水準に設定するということを本則にしておるわけでございます。ですから、今後の政府機関の基準金利をどうするかというような問題については、長期プライムの決まり方等を見きわめた上で慎重に判断をしたい。よくわかったようなわからないような話で申しわけないわけでございますが、大蔵大臣といたしましては、いまの段階でそれ以上はっきり申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  167. 後藤茂

    後藤委員 みずからわかったようなわからぬような答弁になったということでは大変困るわけであります。私の認識としては、金利水準の決定というのは財政の観点からではないだろうと思います。景気対策の観点から決められていくというのが本旨ではないかというように私は考えるわけです。  そこで、経済企画庁長官にお伺いしたいのでありますが、この間発表されました年次経済報告によりますと、わが国の産業は業種別、規模別に跛行性が見られる。今般の金利改定の動き等を見ておりますと、いま大蔵大臣は、政府系、特に中小企業金融機関に対して果たして連動させるかどうか、大変意味深長な発言でありました。確かに中小企業は三月期ぐらいまではマイナスであったかと思いますけれども設備投資にいたしましても、あるいは生産性にいたしましても、やっとやや回復の方向に入ってきたのではないか。そうした中で、長期プライムの引き上げということに連動して政府系中小企業三公庫等の金利がまた引き上げられるということになると、心配な事態が起こってきはしないだろうか。経済企画庁長官は現在の景気をどのように考えておられるのか。それから、この長期プライムの引き上げということが特に中小企業に対してどういう影響を与えていくだろうか、こういう点につきましてお答えをいただきたい。
  168. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまわが国の景気動向は、大勢といたしましては、政府見通しのおよそ五%成長の路線をずっと進んでおると思います。ただ、貿易の方は非常に順調に進んでおるのですが、内需の関係が大変悪い、思うように伸びていない、こういう状態でございます。そういう要素がございますので、いまの段階では、できれば金利は下げてもらいたい、こういう強い希望を持っております。  ただしかしながら、アメリカの金利等非常に高い水準にもございますし、この影響がやはり日本にも及んでおります。そこで大蔵大臣もこの点いろいろ思い悩んでおられまして、先ほどのような御答弁になったのだと思いますが、やはり金融政策は内外の諸情勢を見ながら総合的に判断をしなければならぬ、こういうことがございますので、私どもといたしましては、できるだけ低い水準に置いてもらいたい、こういう強い希望を持っておりますけれども、この問題については総合的な判断も必要であろう、このように理解をいたしております。
  169. 後藤茂

    後藤委員 大蔵省の判断の基準では、大企業を中心に設備投資意欲が大変盛んである、こういうような背景がある、こういうように言っているわけでありますけれども、企画庁長官は、この点はどういうように理解されておりますか。  それから、もしこの長期プライムに連動して引き上げられてくるということになってまいりますと、せっかく少し動き始めた中小企業の設備投資意欲というものが、これまた芽を摘まれるだろうという気が私はするわけですけれども、この点、大蔵大臣と企画庁長官、こうした設備投資に大企業と中小企業に跛行性がある、地域性があるということが言われておるだけに、いかなる判断を持っておられるのか。  それからもう一点、大蔵大臣にちょっとお伺いをしておきたいのですけれども、報道を見てみますと、住宅ローンの金利については、住宅産業の不振というものが大変大きな圧力になってきておるので、これはひとつ考慮して、今回は据え置くかのような考えがあるやに聞いているわけです。これもはっきりしない御答弁になっては大変困るわけですが、中小企業金融に対する金利、それから住宅ローンに対する金利というものを長期プライムの利上げとの関係で一体どういうようにお考えになっているか。
  170. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 実は先ほど答弁をしちゃったわけでございまして、要するに、このプライムレートと、それから政府関係機関の貸付金利のうち基準金利、これは同じ水準にする。これはもう原則なんです。これは本則なんです。政府機関の基準金利はどうするのだということは、プライムレートの決まり方次第、それを見てから決めます。  ではプライムレートをどうするのだという問題については、いまのところ非常に長期信用銀行等が利付金融債なんかが売れないよとか、貸し出しの現状から見ても大変困るよということで、現行金利では困るということを言っているのも事実なんです。だからといって、はい、そうですがとそう簡単にもいかない。やはり景気の動向にもある程度配慮をしなければならないということで、したがって、われわれとしてはもう少し慎重に情勢を見きわめていきたいということで、余り具体的にどうだということを金利の問題についてこれ以上の答弁は、私はちょっと差し控えさせていただきます。
  171. 後藤茂

    後藤委員 私が大蔵大臣にこのことを強く申し上げますのは、九月の末に大蔵省の一応の考え方として、小企業経営改善資金貸し付け、いわゆるマル経というものの見直しもしていかなければならない、このマル経の金利も上げていきたいというような意向。それから最近、信用保証協会の焦げつきが大分目立ち始めてきている。これは中小企業の景気ともかかわりがあるわけでありますけれども、そのことから、回収金の少ない信用保証協会に対しては、中小企業信用保険公庫からの融資基金を減額するという罰則制の導入や、あるいは保険料率を六年ぶりに引き上げる方針だというようなことも聞くわけです。     〔藤波委員長代理退席、委員長着席〕 つまり、いま金利が一つの基準のもとにつくられていかなければならぬということと、政策的な配慮ということとは一緒にしてしまってはいけないというように考えるわけです。  そこで、通産大臣にお伺いをしたいわけでありますけれども、どうも一連の大蔵省の動きを見ておりますと、中小企業の制度金融なり、あるいは信用保証協会に対するこの融資基金を減額していくような動きなりを見ておりますと、一体いまの景気、いまの中小企業の実態というものをどういうように判断しているのかということに対して、大変危惧の念を持つわけであります。長期プライムの金利の引き上げが連動されるその外堀や内堀が全体につくられてきておる中で、何としてもひとついまの中小企業の各種制度金融等がそれに連動して引き上げられることは結構である、あるいはいやそれはもう大変な事態に立ち至るので政策的配慮が必要である、どちらの判断にお立ちになっておられますか、お伺いをしておきたいと思います。
  172. 田中六助

    田中(六)国務大臣 実は非常にむずかしい問題でございます。と申しますのは、現在の経済情勢というのは、一方で物価が安定、雇用がまあまあ世界で一番確立しておるというようなことがございますけれども、他方で景気が非常に不振で、素材産業などはどうにもならないというような状態でございまして、そういうさなかで財政再建という大きなテーマがあるわけでございます。財政再建は、御承知のように国債の発行を少しでも減らそう、特に赤字国債については、何とか数年以内にこれを消そうという至上命題がございます。つまり、二律背反の政策をどういうふうに一つにまとめていくかという現状ではないかと思います。  したがって大蔵大臣も、国債が売れない、国債消化の観点から本当は長期プライムレートを上げなければならないという立場は私ども十分わかりますけれども、それが直ちに政府金融三機関に響くというようなことは、たとえば中小企業の倒産でございますけれども、九月が発表になると思いますが、九月は昨年度より減っておりますけれども、それでも千四百二十二件でございます。そういうような状態でございますので、長期プライムレートを上げて、それに三機関の基準金利は連動しなければならないというようなことがございましても、三月に私どもは経済閣僚会議で、三機関に対して基準金利を〇・二下げた融資をやっております。  本当は、そういう中小企業の苦しい立場でございますので、バンクレートなり基準金利を下げてもらいたい、そうすれば個人消費その他非常に刺激して景気もよくなるんじゃないかという私どもの願望でございます。したがって、長期プライムレートを上げるという場合でも、三機関に対しまして現状を維持してほしいという願いを持っておるのが現在の私ども見解でございます。
  173. 後藤茂

    後藤委員 いま田中通産大臣の方から、最近の中小企業の、特に九月で倒産件数も千四百二十二というような数字も出ておりますが、やっと改善の兆しが見え始めてきたという中で、また高金利の方向に入ってくるということが心配であるという御説明がありました。  三月の公定歩合引き下げの際にも、中小企業三公庫は長期プライムが下がったときの前倒しをしているわけですね。後でじゃなしに、そういう政策をとっているわけです。ですから、私先ほどお聞きしましたように、住宅ローンの点については、こういう行革デフレ等々も言われている中で住宅というのは内需への非常に大きな活性化要因を持っておる、だからこれについてはひとつ見合わせていくというのははっきりしているのかどうか。それから中小企業の三公庫の問題に対しましても、タイムラグを置いて政策的な配慮を加えるという形をお持ちになるのかどうか。  どうもいまの答弁では、先ほど私が御指摘を申し上げましたように、いままでの大蔵省のいろいろな動きを見ておりますと、だんだんと中小企業に対する制度金融の金利を引き上げていこうとする動きにあるだけに大変心配をいたしておりますので、そういう政策的配慮というのが、今度の行革との絡みにおきましても、中小企業に対しては真剣に取り組まれなければならないのではないか。そういう観点から、もう二度いまの点に対して明確にお答えをいただきたいと思います。
  174. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 何回も同じ答えをして恐縮なんでございますが、金利は原則的には連動するのですよね。これはどうしても連動をすることが原則でございます。何か政策的に、それは利子補給をするとかどうかするというようなことで下げておるものもございます。問題は、九月の国債発行に当たりまして国債が売れない、国債が売れなければ毎月八千億とか七千億とかという収入が入らないわけですから、社会保障興でも文教でも公共事業でも政府の出費ができないという問題に直ちにぶつかってしまうわけです。したがって、月に数千億円の金をどうしても国債で集めなければならない。これができないということも、これは実際問題として大変なことなんです。  それはなぜかというと金利が安いからだ、金利を上げろと言う。それで国債の金利を上げると、先ほど言ったように長信銀のようなところで、政府のように信用ある人が高い利息を払って金を借りるならば、私の方が安い利息で金を借りるといったって金を借りられないじゃないか、少なくとも政府と同じぐらいの利息を認めてくれなければ私らの方へ金が集まらない、国の方へばかり行ってしまう、これも当然な話ですね。しかし、そうは言っても少しがまんしてくれぬか、工夫は一緒になっていろいろ考えるからと言ってやってきたわけですよ。しかし、これも限界がございますわな、原則と違うようにやっているわけですから。物には限界がある。こんなにしゃべっていいのかどうかわかりませんが、しかし限界がある。  したがって、どうするかということは今後の長期プライムの決まり方——やはり政府機関のうちの基準金利は運動というのが本則ですから。しかし、それをどれだけ別なことができるのだ。それでは政策的に、一般のものが上がっても、こっちは利子補給とか何かやって持てるほどの財政的に余裕があるのかということになりますと、公務員のベースアップすら、はい、そうですかと言うことを聞けないで大蔵大臣はしかられているわけですよ。そういう現状であるので、非常にむずかしい問題をいろいろ抱えておる。  したがって、もう少し慎重に検討させてください。政策的に、こういうときだから、もっと金利を安くして貸しなさい、住宅はもっと安くしなさいということは、私全部わかっているのですよ。わかっているのだけれども、また別なでっかい問題も絡んでいるということで、経済というのは本当にむずかしいものだ。そういうことでございますから、明確なお答えをしないで申しわけありませんが、これでも私はかなり誠意を持って、大臣としては少ししゃべり過ぎるぐらい話したつもりでございますので、御了承願います。
  175. 後藤茂

    後藤委員 大臣、十月二日に「当面の経済運営と経済見通し暫定試算」というのを出されたでしょう。これは経済対策閣僚会議ですから、特に先ほど私が御質問申し上げた大蔵、通産、経企、各大臣は、これに参加されているはずですね。この中で「なお回復が遅れている中小企業の設備投資の促進に配意しつつ、政府系中小企業金融三機関の貸付及びエネルギー関連設備投資に係る政府系金融機関の貸付の円滑な推進を図る等投資環境の一層の整備を図る。」ということを経済対策閣僚会議でついこの間、わずか十日ばかり前に決めているのですよ。  この「投資環境の一層の整備を図る。」という中身は、いま大臣が大変むずかしい、国債の消化状況も思わしくない、こういう中で長期プライムも上げていきながら、徐々に金利を高めていく方向へ持っていきたい、中小企業も枠外ではありませんよということでは、「当面の経済運営と経済見通し暫定試算」というものは一体どういうようになるのでしょうか。企画庁長官と大蔵大臣、大変御苦労ですけれども、もう一度お答えいただきたい。
  176. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、内需の勢いが依然として弱いものですから、こういうときにはやはりできるだけ低い金利水準が望ましいということでございますが、やはり国際的な情勢もあるものですから総合的な判断が必要だ、こういうことを申し上げたわけであります。  ただ、特に私が申し上げたいのは、大企業は資金調達をする場合に、非常に有利な資金調達が可能なのです。証券市場からいろんな形できわめて負担の軽い資金調達が可能である、そういうこともありますので、大企業の設備投資は計画どおり伸びております。ところが、中小企業の場合はそういうことは不可能であります。大部分は政府系の機関から借り入れをする、足らないものは民間から借り入れをする。そこで、近代化投資とか省エネルギー投資をやっておるわけでございますが、政府系金融機関の金利が上がりますと、これはそのままほとんど全面的に投資に響いてくる、こういうことにもなりますし、それから依然として民間の金融機関の貸し出し等も、いろんな裏面の取引がございまして、歩積み両建てなどもまだやまっていない。こういう状態でございますから、金利負担が非常に重い。金利負担が重いと投資が進まない、こういうことでありますので、先般の経済対策閣僚会議で決めましたいろんな経済対策でも、中小企業の金融対策、金利だけは特別の配慮が必要だ、こういう趣旨のことを決めていただいておるところでございます。  そういうことでございますから、これからいろいろまた金利水準も動こうかと思いますけれども、私どもといたしましては、そういうことを総合的に判断をいたしまして、中小企業の金利水準だけはできるだけ据え置く、こういう方向で工夫をしてもらいたい、そういう強い希望を持っておるということを申し上げておきます。
  177. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 民間の長期プライムはいま抑え込んであるわけです。国債はもう上げちゃってあるわけです。ですから、民間をいつまでも、何カ月これから抑えるかと言っても、できるだけ抑えるようにはいたしますが、これにも限界がございます。しかし、いま企画庁長官がおっしゃったように、政府関係機関については、財政の問題ももちろんございますし、やり方についてどういうふうな工夫があるかという問題もございますが、われわれとしても可能な限り抑え込んでいくように努力をいたします。
  178. 後藤茂

    後藤委員 少し明確——まあ明確ではありませんけれども、最初のあれよりも明確になった。あれほど田中通産大臣経済企画庁長官も——つまり中小企業どうこうじゃないのです。全体の景気を考えていく場合に、後でお聞きしますけれども、国債の消化だけが大蔵大臣の頭にあったのでは大変だということで、せっかくこういう経済閣僚会議の方針も決められておりますだけに、しかもこれが半年や一年前の方針じゃなくて、ついこの間決めたばかりでありますだけに、明確にひとつこの長期プライムの引き上げと中小企業関係の制度金融に対する金利のあり方というものは、政策的な観点からぜひ考えていただきたい。  そうでないと、いま倒産が少しふえていくのじゃないかという心配、さらにこれから、後で行革デフレの問題についてもお聞きをしますけれども、年末に入っていって、また中小企業の越年が大変むずかしいというような事態に追い込んでいくということになりますと、五十七年度予算編成に対しましても大変大きな圧迫要因になるわけでありますから、この点は政策的にぜひ——先ほど御答弁をいただきましたものを積極的、前向きな答弁と一応理解をいたしまして、次に移りたいと思います。  そこで、ちょっとお聞きしておきたいのですけれども、先ほどの御答弁の中で出ております国債の消化状況が余り円滑ではないのではないだろうか、こういうように私は判断をいたしております。六月と七月は十年ものの発行が休債になっておりますし、さらに八月には非市場性というのですか、私募債を発行してしのいで、九月は条件を変えてシンジケート団と交渉して発行している。そして表面金利も七・六から八%にしていく。応募者利回りが八・三六七くらいになるのでしょうか。いままでの七・九五九に比べますと、表面金利というものも上げていくということでしのいでいるわけですが、十月、これはもうすぐ発行になるわけでしょうか。九月と同じような条件でお出しになるのか。国債市場というものは一体どういう状況に置かれているのか、この点を聞いておきたいと思います。
  179. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 最近における国債市況の状況等について申し上げます。  国債の流通利回りは、五月初めから米国金利の再上昇、為替の円安等により高水準で推移をしてまいりました。九月に入って国債市況はやや回復をいたしました。特に十月に入ってからは、円高、米国金利の低下等を受けて市況は好転し、流通利回りはやや低下の傾向にございます。したがって、今後とも見通しとしては堅調に推移するのではないだろうか、そういうように見ております。  いままでの発行の状況は、ただいま先生がおっしゃったような状況でございます。  今後の消化見通しでございますが、十月のシ団引受十年債の決定によって、十一月以降の十年債発行予定額は三兆四千億円程度となり、ほぼ前年度ベース、去年並みぐらいに戻っていく、いままで悪かったけれども大体取り返してきたということであります。今後とも公社債市場の動向、景気対策との関連等、諸般の状況を十分に勘案した上で、シンジケート団とも協議を重ねて適正な国債の発行に最善の努力を尽くしてまいりたい。十月債は決まりましたということであります。
  180. 後藤茂

    後藤委員 四条債はどういうような考えをお持ちなんですか。四十七年の四条債の十年債が来年償還が来るんだと思いますけれども、これは本格的な借りかえに入っていくんでしょうか。  それからまた、新規発行というものも、これだけ国債市場が窮屈になってきていると私は思いますし、それだけに将来どういうお考えをお持ちなんでしょうか。
  181. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 国債の中身については、別に市場で分かれておるわけではないわけでございます。  委細については、理財局長から答弁させます。
  182. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 お答えいたします。  国債の償還の問題でございますが、これは実は昭和五十年度から大量発行が行われております。十年債でございますので、大量な国債の借りかえの問題は昭和六十年度から始まるわけでございます。したがいまして、来年度、再来年度は、償還額としてはそう多くございません。その程度であれば、通常の国債の発行、歳入金に繰り入れます国債の発行に上乗せをしまして、消化が可能ではないかというふうに考えております。問題は六十年度からでございまして、この借りかえをどうするかというのが今後の大きな問題でございます。
  183. 後藤茂

    後藤委員 この国債の消化をよりスムーズにしていくために長期プライムの引き上げ、金利の引き上げ等も考えられているでしょうし、先ほどの大蔵大臣のいろいろな御答弁を聞いておりましても、常に国債の問題が頭にあるようでございましたので、その点をお聞きしたわけです。  これはなお踏み込んでみたいと思っておったわけですけれども、企画庁長官が退席をされる時間が来たようでありますので、行かれる前に一点だけちょっと。本当を言えば、経済協力についてもお聞きをしたいわけでありますが、外務大臣もいらっしゃいますので、一つだけ行革デフレ関係の問題についてお聞きをしておきたいと思います。  このゼロシーリングが提示をされたころ、いわゆる行革デフレというものが盛んに新聞紙上等をにぎわしましたし、各界から、どうも行革デフレになるのではないかというような発言が相次いでおりました。しかし、それが七月くらいに入ってまいりますと、なぜか不思議に、政府サイドからあるいは経済官庁の方から、この行革デフレというものは箝口令がしかれたように消えていっているわけであります。  本委員会における大蔵大臣の御答弁をお聞きをいたしておりますと、行革の節減効果は二兆三千五百億円くらいというように言われておったと思うのですが、これだけの節減効果ということになりますと、やはり一定の大きな影響を与えてくるのではないか、こう私は考えます。しかし、河本長官はこの委員会で、現在わが国の経済は三百兆円近い規模となっている、原油のあの値上がりのときでさえも、それを吸収してなおかつ五%の成長を達成してきた、民間には活力があるので、二、三兆円のデフレ効果等は十分に吸収されると思うといった発言をなさっておられます。私はどうもそういうようには受け取れないのでありますけれども長官、いかがでございましょうか。
  184. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まだ最終的に五十七年度予算も固まっておりませんから具体的なことを申し上げることはできませんが、ただ、一般的な原則論を申し上げますと、財政規模がある程度圧縮をされる。その場合、やはり当然デフレ効果が出てくる。そのことだけを考えますと、そのように判断をされます。しかし、わが国の経済というものは、財政はその一部でございまして、やはり民間部門の方がはるかに大きい、こういうことであります。  そこで、たとえば民需の大きな柱になっております個人消費が少し伸びますと、これはもう三兆、四兆という需要の喚起は期待できますし、あるいは住宅投資なども、少し回復すれば、これも二兆、三兆というものがすぐに需要喚起につながっていく、民間の設備投資にしてもしかりだ、このように思います。したがいまして、やはりこの問題は国民経済全体の立場から考えていかなければならぬ。財政の力が若干仮に弱くなったといたしましても、民間の力が強くなってそれを補ってなお余りがある、こういうことでありますと経済成長は計画以上に進む、こういうことが可能だと考えておるのです。過去の例を申し上げますと、いま御指摘がございましたように、事実、第二次石油危機による非常に大きなデフレ効果、わが国の経済はこれを吸収いたしまして五%成長をずっと続けてまいりました。  そこで、やはりここで気をつけなければならぬのは、国民経済全体が力を失わない、こういう総合的な政策が必要だ、財政の力が仮に弱くなったとすると他の分野でこれを補っていく、こういう総合的な態度が必要だ、このように考えております。また、この財政の圧縮問題を部分的に考えましても、これを圧縮しないということになりますと、国債の増発でこれを補てんをするか、あるいは増税によってこれを補っていくとか、何とかそういうことを考えていかなければならぬと思うのです。そうすると、これまた別の意味でのデフレ効果が出てくる、こういう問題もございます。  そこで、幸いに日本の経済は、ことしは二百六十兆でございますが、来年はまだ最終的に数字は固まっておりませんけれども三百兆近い経済になろうかと思いますので、その三百兆の経済が力を維持拡大することができるということであれば、部分的な幾つかの問題点は十分全体にこれを吸収することが可能である、日本経済を目標どおり成長路線に進めていくことは十分可能である、このように理解をいたしております。
  185. 後藤茂

    後藤委員 長官、私一つ疑問に思っていることがあるのです。それは経済企画庁は優秀なスタッフを擁してあらゆる経済指標というものを直ちにとらえて、そしてそれをインプットしながらいろんな見通しなり計画なり指数なりというものをその都度お出しになりながら、国会審議の面におきましても貴重な資料として提出をされて、これまでこられていると思うのです。  ところが、七カ年計画フォローアップが一月になされてから、そして先ほども私が指摘しましたように、六月から七月の初めの段階くらいまでは各界で行革デフレ的なことを言っておったが、これをみごとに口をつぐんでいってしまう。そして、何が何でもしゃにむに一括関連法案を本委員会に提示をして、何はさておき歳出を切り込んでいくのだ、こういうようになされているわけです。恐らく私は、企画庁としてはケース1、ケース2、ケース3ぐらいにいろんな要件を入れていきながら、今度の行革、ゼロシーリング、五十七年度の予算編成、さらに五十八年度、五十九年度等を展望していきながら、経済はこういう方向になっていくのではないか、こういったものが一応数字的にははじき出されて、そしてそれがこの委員会におきましてもまず論議をされていかなければならないのじゃないか。それがそういう点が全くない。一体経済企画庁はこうした作業というものには手をとめて、国会の成り行きをじっとごらんになっておられるのかどうか。大変な経済の環境でありますだけに、私たちが審議をしていく場合、なぜこうやってゼロシーリングをやるのだ、なぜ歳出を弱い者の犠牲の上に切り込んでいくのだ、こういったことがさっぱりわからないわけです。  後で大蔵大臣にお聞きしますけれども、企画庁としては、この国会が終わって、さあ来年度予算編成という場合に、政府の経済見通しを立てていかなければならぬ、そのときに七カ年計画のフォローアップをもう一度していきたい、こういうことなのかどうか。長官、お急ぎのところで大変恐縮でございますけれども、この点だけ聞きまして、あとはもう大蔵大臣と総理にずっとお聞きをしてみたいと思います。
  186. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御承知のように、昭和五十四年に七カ年計画がスタートをいたしまして、その後第二次石油危機が起こりましたので、五十四年度と五十五年度、二カ年間公共事業が据え置きになりました。また引き続いて五十六年度も据え置きになった。こういうことで、ある程度見直しをしなければならぬということで、相当時間をかけまして、昨年の夏以降この一月まで関係各省の間で議論を尽くしまして、そしてこれまでの社会資本投資二百四十兆というのはとても無理である、やはりこれをやろうと思えば七カ年ではなくて八年半ぐらいかかる、七年間にやれるのはせいぜい百九十兆ぐらいであろう、こういうことを最終的に決定をいたしたのでございます。  七年の間に五十兆も社会資本投資が減るということは大変なことでございますが、幸いに民間部門の力が非常に強かったものですから、その分を民間部門で十分補ってやっていけるのではないか、こういう判断のもとに成長率はおよそ五・五%という実質成長は確保することができるであろう、こういう基本路線を最終的に決定をしたのでございます。ただいままでのところは、おおむねその線を進んでおると思うのです。これは毎年フォローアップをしながら微調整をすることになっておりますので、この一月に決定いたしました基本的な考え方は、いま変えるつもりはございません。しかし、七カ年計画に書いてありますように、フォローアップは続けまして、そして世界経済の実情、変化等に合わせまして、その都度実情に合ったものにしながら進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  187. 後藤茂

    後藤委員 長官、お急ぎですか。本当を言えばもう少しいろいろお聞きしたいのですけれども、もし差し支えなかったらいていただきたいと思うのです。  大蔵大臣にお伺いしたいと思うのですが、要調整財源の二兆七千七百億円というのは、どこから、どういうように出てきたのでしょうか。
  188. 金丸信

    金丸委員長 後藤さん、お帰りになってもいいですか。——河本長官、お帰りください。
  189. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これも何度かお答えをしておりますが、公共事業費を除いた臨調答申による削減額がおおよそ九千億、それから臨調答申によって公共事業費を、一応伸びることになっていたものをも伸ばさないということで節約されるものが八千五百億、それからゼロシーリングで上記以外に各省庁が実質的に削減するというように思われるものが約六千億円、こういうように考えております。  そうすると、どうせ質問が出るのでしょうから先に答えてしまってもいいのですが、それではあと四千億はどうなったのだという御質問だろうと思うのです。それでなければ二兆七千億にならないじゃないか。これにつきましては、これは前の中期展望では、人件費についてもある程度いままでの伸び率で伸びるであろうというようになっておりますから、そこのところがまだ出ばしゃって——出ばしゃってという言葉がどうか知らぬが、そこのところが結局さわっていないということなんですね。したがって、これは仮にどうするかという問題でございますが、どこかでそれに相応するものをさらにさらにいまから削減をしていかなければならない。それを削減をしていけば、二兆七千億の要調整額に見合うことになります、まだやっていないのが少し残っています、こういうことでございます。
  190. 後藤茂

    後藤委員 その臨調答申とかゼロシーリングとかというのが出てきているのですが、最初に二兆七千七百億円の要調整財源が必要であるという財政の中期見通しが出たわけでしょう。いまの大臣の御答弁だと、今度は後でこうこうこういうことで、その二兆七千七百億円という要調整財源を何としてもはじき出していかなければならぬということでの御説明であったわけです。私がお聞きしているのは、二兆七千七百億円というものは絶対動かしがたい数字なのかどうかということをお尋ねしているわけです。
  191. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは、いまのところ歳入の話をしないで歳出の話ばかりやっているわけですね。したがって、要調整額というのは歳入が増で消える場合もあります。歳出が切られて要調整額が要らなくなる場合もあります。どちらでもいいのです。したがって、思ったよりも税収がどんとふえると仮定すれば、その分だけ消えてしまうわけですね。しかし、来年は今年以上に物すごく景気がよくなって税金がどんどん入るというふうには、世界の経済大勢から考えられない。(「うまくやれよ」と呼ぶ者あり)うまくやれと言われましても、なかなかそれはそう自由になるものでもない。それでは来年の歳入の見通しはどうなんだと言われましても、これはもう少し後にならぬと、十二月ごろにならないと、来年度の見通しということも非常にまたむずかしいということでございます。したがって、いまのところはそれは入るものは入る、一応頭に置こうということになれば、増税はやらないわけですから、歳出で二兆七千七百億というものを切っていく。ですから、これは切り込んでいく。切り込みの仕方はいま私が言ったようなことになるのでございまして、二兆七千七百億というのが動くのかと言いますが、収入が予定どおり、一応中期展望どおりということになれば、やはり増税をしない以上二兆七千七百億をどこかで切らざるを得ない。これが半分でいいとか、二兆円でいいというわけにはいきません。そうしなければ、一兆八千数百億の赤字国債を少なくしていくわけですから、そういうのが動いてしまいますから、やはり二兆七千七百億はどうしても節減合理化あるいは抑制を図っていかなければならない額だ、こういうふうに思っております。
  192. 後藤茂

    後藤委員 大蔵大臣、必殺仕掛人みたいに最初に二兆七千七百億円という要調整財源という数字を出している。しかし、その数字の根拠というのは、あの「財政の中期展望」は大蔵省でいろいろ作業をされて、いわゆる自然体の推計なのでしょう。いろいろな将来の財政運営について何らかの具体的実行計画を示したというものでもないし、本試案は将来の予算編成を拘束するものでもないし、歳入歳出の過大であるか過小であるかは別ですよ、ただ自然体の推計をしたら二兆七千七百億円という要調整財源が出たのです、これも一つの参考にしておいていただきたい、試案なのだ、試みの案なのだ、こういうことなのでしょう、出発は。ところが、いま私も質問するためにいろいろ調べていってみますと、二兆七千七百億円が一人歩きしてしまっているわけです。私たちは、その二兆七千七百億円にしぼり込まれてしまって、何としても二兆七千七百億円をはじき出さなければならぬというわけで、大蔵大臣以上に心配させられてきてしまっているのではないか、そこに大いなる仕掛けがあるように実は思えてならないのです。だから、私は先ほど企画庁長官にも申し上げたのですけれども、自然体で中期展望が出された、何にもしないで数字を引き伸ばしていきますとこうなる、そして歳入歳出の差が二兆七千七百億円としてこう出てくるのです、これはこれとして試みの案ですから、こういうものがあったってちっともかまわぬと思うのです。  さて、その中で今度は政治だと思うのです。政策だと思うのです。今度はいつの間にか二兆七千七百億円というものが金科玉条になって、先ほど大臣が御答弁になりましたように、臨調の答申でどうだとかゼロシーリングでどうだとか、こういうことを後でくっつけていっている。この二兆七千七百億円というものはもう動かしがたいものだというような条件をつくり上げてしまっているのではないか。これは全く根拠薄弱だと私は思うのです。なぜなら、恐らくこれから七カ年計画のフォローアップをしていく、あるいは来年の予算編成のための政府の見通し等を立てていくというような中で、この面は崩れていくのではないか。もちろん大蔵省のことですから、それを崩さないようにいろいろなお化粧はするでしょうけれども、二兆七千七百億円というものは本当にどうしても動かしがたい数字なのかどうか。もしそれが崩れていくとすれば、いま審議している、いろいろ知恵をしぼっているということが皆崩れていくのじゃないか。つまり羅針盤がはっきりしていないじゃないですか。その羅針盤がどういう方向にやっていくのだということがはっきりしていない。ただ、赤字特例国債の圧力がかかってくるから、三年間でこれは何としてもなくしていきたい。それは私たち社会党も、年二兆円くらいのテンポで特例国債はなくしろ、そういうことをやるためには、不公平税制の是正とか、あるいは行政改革によるむだの排除でできるではないかという提起もしてまいりました。そういうような手だてをしないで、ただ二兆七千七百億円何としてくれるんだ、えらいことだということで迫ってきているというその根拠、立論が自然体でつくられてきているものが、いかにも実態を伴ってあらゆる政策を加味してでき上がってきた要調整財源のように印象づけられているように思えてならないのですが、いかがでしょうか。
  193. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それは五十六年度の予算を母体にしてずっと書かれているわけですね。これは自然体ですから、自然体でしかもいままでの施策、いままでの制度、それはそのままでございますよということになると経費はこういうようにふえていきますということが、いままでの制度のもとで後年度負担が推計されてここに載っているわけですね。一方国債費、つまり借金をしていますから必然これの元利払いが毎年出てくることも、ある年限の間わかっているわけです。それの費用がふえてきます。  それから、一応税収というものをある一定のGNPの伸びの前提のもとにはじいておりますから、税収が出るかわりにそれに見合って地方交付税もふえてまいりますということが出ているわけです。ですから、いままでと同じではこれだけの経費がふえます。税収もふえますが経費のふえ方が多いので、税収では賄うことができません。したがって、ここで増税をするか、それとも歳出を切り込むか、そのいずれかで、昭和五十六年度予算のように両方からいった場合もございます。  どうするのかというときに、五十七年度予算に当たっては増税はやらないという大方針が出されたわけです。ということになれば、自然増収が現在の見込み以上にもっと——税収が三十六兆九千、まあ三十七兆と書いてありますが、これが三十八兆も一十九兆も出るということになれば、要調整額は二兆七千億要らない。それは余分に出た分だけ少くて済んでしまうわけですね、経費を切らなくとも。(「そんな簡単な算術はだれだってできる」と呼ぶ者あり)これはその簡単な算術でできているわけなんです。だから、ごまかしは何もないわけなんです。だから、それはやらない、それは同じなんだということになれば、二兆七千七百億というものは、ふえていくものがあるわけですから、そのふえていくものを減らすためには制度、施策の変更をやらなければならない。現に現在出している法案も制度、施策の変更で、短期間ではあるが、そのものについては何千億円かというものは減るわけです。  それから、ゼロシーリングで各補助金その他についても各省庁も減らして概算要求を出しているということでございますので、からくりは何もないのです。それだけのことですから、二兆七千億を、仮にこれだけ減らさないということになれば、結局その分だけは歳入不足になる。その分を国債を一兆八千億のところを減額を一兆円にしてしまうとか、一兆八千億減額するなら増税で別に一兆円取るとか何かしなければ、これはバランスがとれない、それだけのことだと私は思います。
  194. 後藤茂

    後藤委員 私が御指摘を申し上げたのは、大蔵省は長い間かかって「財政の中期展望」の作業をしてきた。そして、いろいろな政策的要素を抜きにしてつくり上げてきた歳入歳出、その差の要調整財源というものの二兆七千七百億円というものが出たというだけでしょう。ところが、私がそれがひとり歩きしていると言うのは、一月にですか出されて、それから後今日まで、今度は大手を振って二兆七千七百億円がある。それに後から理屈がつけられてきているのではないかということを私は御指摘を申し上げたのです。したがって、いまの大臣の御答弁を聞いておりますと、私の質問の趣旨とかみ合っていないように思えてならないわけです。  そこで、私は二兆七千七百億円というものは金科玉条ではないという判断には立っているわけですけれども、ただ大臣がおっしゃるような形でいきまして、まず何としても特例公債というものは三年でゼロにしていかなければならない。これが一つですね。その次には、一応行政改革によってむだを排除していきたいということ。それからもう一つ、私たちが指摘をいたしておりますように、伸ばすべきものは伸ばしていくべきだ、そのかわり抑えるべきものは抑えていくべきだという観点に立つ必要があるかと思いますけれども、ここで問題になるのは、何回も大臣もお答えになっておりますように、どうも八月の税収の伸びが心配だ、これからはこの中期展望よりももう少し歳入というものが厳しくなりはしないか、そうすると当然いま御説明がありました中でやはり穴があいてくるということになるのではないか。その穴を一体どういうようにされるのか、お聞かせいただきたいのです。
  195. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 穴があいたときにどうするかという話の前に、何もしなければ要するに二兆七千億円歳出超過になります。だからするわけです。何もしなければそれだけ歳入が足りないわけですから、いろんな法律を出したり、シーリングをつくったり、切り込んだりして、それは何とかしてバランスをとらせようとがんばっておるわけですが、いま先生の御質問はそこから先の話でありまして、仮にいままでの税収の見込みという点からすると、中期展望に見込まれた三十九兆円弱の税収も危ないのじゃないか、そのときどうするのだというお話ですね。これはそうなっては本当に大変なのです。これは三つあるわけですね。  一つはさらに歳出をカットするか、もう一つは増税をするか、もう一つは国債の発行額を減らすものを減らさないかということしかない。それでは困る。やはり三年間で赤字財政からの脱却ということが大前提であるということになれば、そういう場合には一層の歳出の削減を図らなければならない。それは事業の取りやめとかいろんなことがあるでしょう。そういうような事態もあり得る。しかし、そうなっては困るから、われわれとしては景気の動向には十分に注意をしながら十分な配慮をしていきたいということは先ほど企画庁長官からもおっしゃっているとおりでございます。
  196. 後藤茂

    後藤委員 だから、その経済の動向をも配慮していきながら歳出を切り詰めていくということに限界というものが出てきた場合、歳入についてどういう考えをお持ちなのか。五十七年度はわかりました。これは安井委員の質問に対しても一応の答弁がなされております。五十八年度や五十九年度はどういうように考えておられるのか。
  197. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 皆さんからよく質問があるのは、五十七年度は要調整額二兆七千億ではないか、五十八年度は四兆九千億じゃないか、五十九年度は六兆八千億じゃないか、そんなにでっかいものを毎年毎年歳出カットができるわけがないじゃないかという御質問が必ずあるのです。  ところが、これはそうはならないわけでございまして、五十七年度の予算が要調整額ゼロになるといたしますと、五十八年度は、そのゼロになった、ここで中期展望で書かれたよりも小さくなった数字を土台にして、その後年度負担というものを計算し直すわけですから、伸び率が歳出はこんなに伸びてこないわけですね。それでも伸びがあるでしょう。したがって、それが歳入増でカバーできればそれでもよし、歳入増がそんなに見込まれないということになれば、やはり歳出のカットで小さな——そんな四兆九千億なんという数字はありませんが、それは歳出のカットで伸び方をゼロにしていくということならば要調整額は出てこないということになるわけです。一応われわれとしては歳出カット。行革等によって、まだ出てこない法案もあるわけですから、そういうものによって歳出の伸びを抑え込んでいく。伸びを抑え込んでいくというようなことができれば要調整額が出ないわけです。五十八年度もゼロシーリングで予算も伸びないということがもしできれば要調整額はないわけです。それができるかできないかということは今後の課題である。われわれはそれができるようにひとつやっていきたい。それにはまず五十七年度でモデルケースをつくってみなければならぬ。ですから、五十七年度が試金石になってくるわけです。
  198. 後藤茂

    後藤委員 歳出カットの面だけにはえらい歯切れよくきちきち物を言われているわけですけれども、歳入の増加に対してはどういう考えをお持ちになるのかということをお聞きをしているわけです。  私たちはいろいろ案を提起をいたしておりますけれども、際限なく歳出カットはできません。生きた経済の中で、行革デフレについては十分に論議ができませんでしたけれども、大変な影響を持っている。労働大臣にも後でお聞きをしたいわけですけれども、臨調、土光さんのところで行革と雇用の問題を一体どう配慮していくのか、雇用の角度というものが全く欠落しているのではないかという認識を私は持っております。それだけに、歳入についてどういう考えを持っていこうとしているのか、重ねて御質問申しておきたいわけです。
  199. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 われわれは、景気の維持向上を図りながら、極力歳入の増加に努める、その歳入の範囲内で歳出を賄うという原則をもって対処したい、こう思っております。しかしながら、それは非常にきつい、そんなこと言ったって毎年抑え込まれていたのでは、月給だって毎年抑え込まれたらたまらない、社会保障費にしても毎年そんなに伸び率が低くては困るという声がほうはいとして国民の中から起きて、歳出をもっとふやしてくれという話が出れば、ふやすのには財源が必要なわけですから、それは御相談ということもあるでしょうが、その先々のことまで私は言うわけにはまいりません。私は、ともかく歳入に見合った歳出の予算をつくるということでがんばっていくつもりであります。
  200. 後藤茂

    後藤委員 この委員会で最初からお聞きをいたしておりまして、増税への環境整備のための大きなローラーがずっとかけられてきているように思うわけです。そうして、たとえば不公平税制の是正についても大変歯切れが悪いでしょう。不公平税制の是正に対しましても大変歯切れが悪い。そうして、この歳入の増加に対しましても、いずれ皆さん方、増税を選択しなければなりませんよ、こういう舞台づくりに一生懸命努力をされているように思えてならない。もはやちらちらと、たとえば物品税の範囲をもっと広げるだとか、あるいは付加価値税だとか、こういった声も大蔵省サイドからはしょっちゅう聞かされている。いろいろな観測気球が上げられてきている。だから、最初申し上げましたように、二兆七千七百億円という要調整財源という一つの柱を立てていって、そしてゼロシーリングあるいは行革関連法案で二千数百億円をはじき出している。こういう中で、しかし、五十七年度は何とか増税——実際は増税なきというのも安井委員から指摘をいたしましたように、実質的な増税がすでに勤労者にはかぶさっているわけでありますけれども、そういう予算編成の一つの環境づくりをしていって、さてこれから本格的な料理にかかりましょうという意図が大変明らかに見えてくるわけです。この選択肢をどういうように求めていくかという大臣の考えをもう一度簡潔にお答えをいただきたい、つまり歳入の面に対しまして。
  201. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私、何遍もお話をしているのですがね。私は要するに歳入の範囲でともかく歳出を賄えるように持っていきたいということであって、それ以上の歳出を出せと言われれば何かの歳入を考えざるを得ない。当然財源がなければ歳出にならぬわけですから、したがって、やはり財源の範囲でしか歳出しないというのが一番いいんじゃないか。もうそれでひとつやるということが、原則的にはだんだんそういうふうにするということになるのが一番いいんじゃないか、そういうことでございます。
  202. 後藤茂

    後藤委員 これ以上論議していってもすれ違いだと思います。  ただ、大変勤労者の方の重税感というものがふえてきているわけでありますし、それからまた、外需依存に対して内需にシフトしていかなければならないということも、これまた経済閣僚会議の方で方針をお出しになっているわけです。とすると、当然内需拡大のための方策を講じていかなければならない。そのためには、物価調整減税やあるいは思い切った減税措置というものをこれまた政治の方向としてどうしても早急に実施をしていかなければならない、この点を強く要望いたしておきます。  時間が経過してしまいまして、経済協力の問題について御質問を申し上げる時間がだんだん少なくなってまいったわけでありますけれども、総理は二十日から南北サミットに行かれるわけであります。総理のこれまでの発言をずっとお聞きをいたしておりますと、総合安全保障という言葉がしばしば出てまいります。この総合安全保障というのは経済協力との観点でどういうように理解されているのか。南北サミットに出席するに当たっての総理の基本的な考えをまずお聞きをしておきたい。
  203. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、七月にオタワのサミットで先進国首脳と話し合いをいたしました際に、総合安全保障の考え方を提唱いたしました。と申しますことは、世界の平和と安全を確保する見地から、とかく軍事力、防衛力の増強ということに傾斜をしがちでございます。しかし、わが国もアメリカに次ぐ経済大国ではございますけれども、そういう分野におきましては、世界の平和、安定に、自分を守る以上のことには貢献できない、こういう観点から私は総合安全保障というようなことを提唱いたしまして、経済協力、技術援助、そういう分野で日本は国際的な役割りを果たしていこう、こういうことを申し上げたわけでございます。  この対外経済協力の問題につきまして、言葉をかえますと、南北問題につきましてオタワ・サミットでは一応の方向というものは出ました。出ましたけれども、掘り下げてまいりますと、それぞれの国の事情もございまして、完全にこれが一致しておるとは私は見ておらないわけでございます。  わが国といたしましては、これはもう基本的にずっと今後も継承していこうとしておるのでありますが、第三世界、発展途上国等に対しまして、経済発展あるいは地域開発、そういうものに直接役立つようなもので協力をしていこう、それを通じてその地域の経済的、社会的な安定を図り、民生の安定と福祉の向上に寄与していこう、そういうことを通じて、とかく発展途上国で貧困だとか失業だとか、あるいは疾病だとか就業難だとか、そういうようなことから内乱が起こったり紛争が起こったりする、そういうことがないよう、ひとつその面で日本も協力していこう、こういうことを申し上げております。したがいまして、南北サミットにおきましてもそういう基本的な姿勢で南北問題に取り組んでいきたい、こう思っています。
  204. 後藤茂

    後藤委員 いま基本姿勢をお伺いしたわけでありますけれども、この総合安全保障政策というのを額面どおり受け取って、いま総理のお答えになったのを疑うつもりではありませんけれども、しかしどうも政治的なものに最近実態としては変身し始めてきているのではないかという心配を実はいたしております。とりわけ、恐らく今度レーガン大統領、つまりアメリカの考えも南北サミットの場で提起をされてくるだろうと思いますけれども、私が申し上げるまでもなく、アメリカは国際協力に対しましては最近大きく変わり始めてきているわけです。つまり国際機関を通した援助というものは削減をしていこう、二国間援助に重点を置く、しかもその二国間援助はいいものと悪いものに分けていく、こういう姿勢が大変強く出てきている。恐らく南北サミットでも、そういう発言なりあるいは要求が強く出てくるのではないかというように考えるわけです。しかも、紛争周辺国に対するこれまでの日本の経済援助、あるいは私も商工委員会で田中通産大臣にも御質問申し上げたわけですけれども、安易にナショナルプロジェクトというものをつくる、しかもそのナショナルプロジェクトというものが閣議了解とか閣議決定とか、大変恣意的にナショナルプロジェクトという名前がつけられている。つまり、こういったアメリカなり西側の立場に立った海外経済協力の面が徐々に最近総合安全保障という構想の中でシフトされ始めてきているのではないかという心配を実はいたしているわけであります。毅然として先ほど総理がお答えをなさったような形でこれからも取り組んでいくという、南北サミットにおいてもその日本の政府の姿勢というものを貫徹をしていくんだという見解で臨まれるのかどうか、一言で結構でございます。
  205. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほど申し述べたとおりでございまして、いま御鞭撻をいただいた方向で今後も努力してまいります。特に、南北サミットにおきましては、食糧の増産、農村の建設、そういう面に私は力を入れてやっていきたいということを強調したいと思います。
  206. 金丸信

    金丸委員長 後藤君、持ち時間の少しく延長を認めます。
  207. 後藤茂

    後藤委員 ありがとうございます。  円借款供与ですが、この円借款供与は、GNPの一人当たり大体千ドル以下ぐらいのところに円借款供与をされるというように私どもは承知をしておったわけですけれども、外務大臣、これは最近は少しこの数字が変わっておりましょうか。大体基準はどういうようになっているのか、それはどこで決められているのか、いかがでしょうか。
  208. 園田直

    ○園田国務大臣 お答えをいたします。  政府借款供与の対象はいま御発言のとおりでございまして、開発途上国、いわゆるGNP千ドル以下というのが原則でございます。しかしながら、相互依存あるいは需要等の関係で特別な場所には、いわゆる中進国という国にもこれをやるようなところが逐次出てきておりますが、これについては大幅な原則が壊されないように注意しながら実情に合うようにやっていきたいと考えております。(「例外がふえている」と呼ぶ者あり)
  209. 後藤茂

    後藤委員 いま例外がふえているではないかという発言がありましたけれども、例外がふえ始めているのですね。たとえば総理が一月にASEANに行かれまして、マレーシア等では二百十億円の借款ですか。ここは、これは五十三年度ですからもう少し上がっているんではないかと思うのですけれども、千百五十ドルぐらいだ、こういうように言われている。あるいは田中通産大臣が一月にメキシコに行かれまして三百億円の借款供与、これまたメキシコは千二百九十ドルくらい、こういうように言われている。だんだん千ドルが上方に修正をされ始めてきている。  私は一つ外務大臣にお聞きしておきたいのですけれども、韓国の場合は千三百十ドルあるいはもう少し高いのか、前後しているか、はっきりわかりませんけれども、そういう状況の中で例の六十億ドルという要求が出てきているわけです。これは、一つはいまの千ドル以下ということからどう判断するか。それから、この六十億ドルの要求というものに対して政府が一体どう考えておられるのか、二点について。
  210. 園田直

    ○園田国務大臣 いま話の出ております韓国は、GNP千ドル以上になっておるわけであります。しかしながら、これまた紛争周辺国という議論もありますけれども、わが国では紛争周辺国はパキスタン、タイ、いわゆる難民が出ているところ、これにトルコと三カ所指定してございますので、紛争周辺国としては当てはまりません。しかしながら、隣国で特別の友邦でありますから、できるだけのことはやるべきだと考えておりますものの、実際の問題からして、現実問題として六十億ドルということは、これは相談にならない数字であります。  お詳しいから簡単に申し上げますと、総理の御意向によって、苦しい中ではありますが、明年度は過去五カ年間の倍増をさらに倍増する、お願いするつもりであります。それが仮に国会で許された場合、大体元金は二百十二億ドルでございます。国連その他の拠出金を出して、その中の七割が二国間に使える金、その中の七割がアジアに使える金、こう考えてくると、アジアに使える金というものは五カ年間で倍増されても百億ドルそこそこでございます。その中の六十億ドルを一国にやるなどということは、これは当然理屈上からできないことでございます。
  211. 後藤茂

    後藤委員 もう時間がございませんので、これはまたの機会を与えていただければ大変ありがたいと思うのですが、一つ御要望を申し上げておきたいのです。  今度のゼロシーリングの中で、海外経済協力というのは一つの別枠にされている。私は短絡的に、これが大企業奉仕とか、そういう考えを持っているから申し上げるのではない。これからますます経済協力というものは進めていかなければならぬと思うのですが、先ほど総理にも御指摘を申し上げましたように、力あるいは軍事的要因というものがどうしてもかぶさってくる。それに対して毅然として断ってもらいたいということが一つと、それから援助の準備から決定まで特定の利益業界の意向を大変色濃く受ける性格を持っている。しかもこれが一つ一つ国会の場で論議をされるようなプロジェクトにならない。何か問題が起こったときに初めて国会の審議の場にのせられるということになるわけですから、相当慎重にしていかなければならないし、また援助資金の浪費というような問題も起こってきている。それから外務省は無償技術協力あるいは企画庁は借款、通産は民間ベース技術協力あるいは大蔵省は国際機関への出資、この国際機関の出資ということから、何か大蔵省としては海外経済協力の見直しをしてはどうかというような意見、大変不協和音がいっぱい出ているわけであります。  もう一つ私がこの問題で申し上げておきたいのは、つまりフォローアップというんですか、追跡調査というんですか、大変膨大な協力資金が人的、物的に出ていくわけですから、こういったものに対する追跡調査というものに対して、政府は四省庁が共管した問題だけに、とかくいろいろむずかしい問題があるだろうと思うのです。外務省としてもそういった機構等も考えていきたいというような話を聞いておりますけれども、これはもう答弁は要りません。ぜひひとつ追跡調査が十分にできるような、こういう体制を早急に確立していただきたい。これは一言でいいですから、その意思だけをお願いを申し上げたいと思います。
  212. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のことはきわめて重要な点でありますからただいまも実施しておりますが、さらに綿密に援助の効果の調査をいたすように努力をいたします。
  213. 後藤茂

    後藤委員 じゃ、二点だけちょっとお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。
  214. 金丸信

    金丸委員長 簡潔にやってください、時間が来ていますから。十分延ばしてある。できるだけ簡潔にお願いいたします。
  215. 後藤茂

    後藤委員 じゃ、一点だけちょっと……。
  216. 金丸信

    金丸委員長 はい、やってください。
  217. 後藤茂

    後藤委員 細かく実はお聞きしたかったわけです。零細補助金等の統合化、メニュー化の問題の中身についてお聞きをしたかったわけですけれども、やはり姿勢を正していかなければならないという中で、私「補助金便覧」をずっと見ておりまして、幾つか大臣も姿勢を正しておかれるべき補助金団体があるのではないかということを実は申し上げたいわけであります。  一つは約千七百万円ばかり補助を受けております日本農林漁業振興会、この会長が亀岡農林大臣であります。これは五十三年度から予算補助がつけられております。そのときは、いまの渡辺大蔵大臣が会長をなさっている。私は、大変大きな補助金だと思うのです。やられることは、農林水産関係の優秀な方々を表彰するということが中身のようであります。これは委員長、後で資料日本農林漁業振興会の——これは財団法人ですから基金等もあるでしょうし、それからまた、年間予算等もあるでしょうし、一体補助金がどの程度のウエートを持っているのか。それからまた現職大臣は、やはりこういった補助金を受けておる団体に対しては少なくとも姿勢を正すべきではないだろうか。  それと同じのが園田外務大臣日本釣振興会の会長をなさっておりますし、国土庁長官の原健三郎大臣が全日本釣り団体協議会の会長をなさっている。  こういうことは、結局は私たちが強く指摘をいたしておりますように——これは現職大臣だけをいま指摘をいたしました。ずっとこの役員を見てみますと、与党の皆さん方がほとんど顔を並べておって、それが集票マシーンになっているのではないか、あるいは政治献金の大きな母体になっているのではないか。こういうことに私たちは大変強く疑念を持っておりますだけに、大臣は少なくとも補助金を受けておるところからは一応身を引かれるということが必要ではないか。これだけ福祉だとか教育関係だとか、国民の弱い者に犠牲の転嫁をしていきながら、こうした行革の論議をしているわけでありますけれども、ぜひひとつこの点はお聞きをしておきたいと思うのです。  それから建設大臣の方にこれまた談合問題がございます。建設業者の談合問題で刑法では談合罪というのがあります。これは予定入札価格の上に行ったものが刑法にひっかかっている。下のものは大津判決等を見ましてもひっかからない。こういうことを見てみますと、これまた際限なく談合が行われている。しかもまた賦金が上納されているという実態、こういったものに対してそれぞれ関係大臣に対し所見を求めまして、私の質問を終わります。
  218. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 私の名前が一番先に出ましたので、一番先に御回答申し上げます。  御承知のように、この日本農林漁業振興会というのは、秋の収穫を一億国民全部で喜ぶいわゆる農業祭というものをつかさどる団体、こういうことでございまして、政治献金等とは全く無関係の団体でございまして、その間一年間農業関係にいたく功績のあった者を表彰してまいる、こういうシステムの団体でございまして、この点はひとつ誤解のないようにお願いをいたしたい。やはり土を耕し、種をまき、そして秋の収穫まで苦労をして、苦労の結果やっと収穫を得る。その再びを生産者とともに消費者も一緒になって東京でお祭りをするというその会長であるわけでございますので、その点はよくひとつ御理解をいただきたいと思います。
  219. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  談合につきましては、法令違反のないように厳正に指導いたしておるところでございます。  賦金につきましては、御案内のように、これは建設協会の運営費として支払ってきておったものでございますが、五十一年にこの制度は廃止されまして、現在は業者の経営規模に応じた年会費制をとっていると聞いております。いずれにいたしましても、誤解のないように今後とも指導してまいる所存でございます。
  220. 金丸信

    金丸委員長 これにて後藤君の質疑は終了いたしました。  次に、平石磨作太郎君。
  221. 平石磨作太郎

    ○平石委員 最後の質問となりまして大変御迷惑をおかけするわけですが、しばらく時間をいただきたい。私ども質問に当たりまして重複する点が出てくるかもわかりません。この点もひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。  まず厚生大臣に児童手当制度についてお伺いをいたします。この児童手当につきましては、過日の質問におきまして、わが党の正木政審会長から質問が出ております。なるべく重複しないように質問をしてまいりますが、要は、児童手当制度が生まれたが、この制度そのものを大臣は一般対策としての制度とお考えか、あるいは低所得者に対する対策であるとお考えか、お答えを賜りたい。
  222. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これは法律の目的にもうたっておりますように、特に低所得者に対する対策だとは考えられていない制度だと思っております。
  223. 平石磨作太郎

    ○平石委員 もう一点お伺いをいたします。  いま日本状況を見てみますと、だんだんと高齢化社会に突入してまいりました。高齢化社会ということは、お年寄りが多くなって若者が少なくなるということ。したがって、その若者が少なくなるのは、大臣御案内のとおり、いまの若い御夫婦は子供を産まないということ。そして過日指摘がございましたが、二・一から一・七、一・七六、さらには一・六四といったような形にまで落ち込んでくるという現状を考えたときに、日本の将来と民族の将来が非常に不安な状態になりつつある。しかもバイタリティーと若い力が失われていく、少なくなっていくというようなことについて大臣はどうお考えか、簡単にお答えをいただきたい。
  224. 村山達雄

    ○村山国務大臣 現在までの人口動態、それから人口問題研究所でやりました将来推計等を見ますと、おっしゃるように児童数はだんだん減ってまいるわけでございます。しかし、研究所で発表しましたものは五十一年ベースでの国勢調査に基づいて出しておりますが、それを見ますと、それほどでもないという数字が出ておりますけれども、いずれにいたしましても、五十五年度あたりがたしか二千八百万くらいだと思います。ちょうどここがベビーブームの子供のところでございまして、この後二千七百万台がずっと続いていく、こういうことでございます。ただ、全体の幼齢人口が生産人口に比べて大体ウエートが減っている、こういうことでございます。しかしまた、いずれ五十五年度の国勢調査に基づく将来推計が恐らく今度は詳しく出てまいるだろうと思いますので、それを篤とわれわれ注目しているところでございます。おっしゃるように、幼齢人口がとにかく相対的に減っておるということは一つの問題点だと思います。
  225. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま大臣からお答えいただきましたが、ちょっと私の言葉が足りなかったのですけれども、これは憂慮すべきことであると思われるか、それともこれはもう仕方ないのだ、そういうお考えなのか、ひとつ簡単にお答えをお願いします。
  226. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これはいろいろな環境、進学率が上がっていく、したがって結婚の年齢がだんだん上がっていく、しかし子供が産める期間というものはある程度決まっておるわけでございます。そういうことからいたしまして、年少人口というものがだんだん減っているわけでございます。これはしかし、経済全体の面から見ましてやはり最大の問題の一つであろう。この年少問題あるいは生産年齢の問題、この人口移動という問題は、経済あるいは今後の福祉社会のあり方あるいは給付と負担の均衡、こういったものを考える上の基礎データだ、私はこう思っているわけでございます。
  227. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私は、こういう状況を考えたときには、これからの発展ということを考えてみますと、出生率がだんだん落ちてくるということはまことに憂慮にたえないと思うのです。少なくとも人口が静止人口にまでは至ってほしい。そうならないと、これからの経済発展もおぼつかなくなってくる。そして高齢化社会に入ってくる。その高齢化のお年寄りを支えていくだけの力といったような面についても心配が生まれてくる、こういうように考えられるわけです。したがって、そういう立場からこの制度を見たときに、総理の御答弁の中には、廃止はいたしません、こういう答弁が出ております。したがって、その点についても総理も同じ御認識ではなかろうか、こういうように私は思うわけでございます。  ところで、そういう中で今回の行革のいわゆる答申が出てまいりました。その行革の答申を見てみますと、やはり低所得の人たちにこの制度というものを志向していくべきだろう、そしてこの財政再建の期間にやはり根本的な制度の見直しを行うべきだろう、こういう提言があっているわけです。  そしてもう一つ、この前の五十六年度あるいは五十五年度の予算編成のときでしょうか、大蔵大臣と厚生大臣が覚書を交換しております。その覚書を見てみますと、児童手当毎度については、制度の存廃を含めて所要の制度改正の実施を図るということが、これは自民党の三役の立ち会いのもとにそういう文書が取り交わされておるわけです。このことから見たときに、抜本的な改革というのはやはり廃止を目指せとの、そういう形での根本的な見直しではなかろうか、私はこういう心配があるわけでございます。  今回の処置を見てみましても、厚生省は一体何を考えておるのだろうか。この処置のやり方を見ますと、非被用者については三百九十一万円に所得制限を落としました。過去の経過を見ますと、五十三年以降所得制限はずっと据え置きでございます。そして今回三百九十一万にさらに強化を図る。これはまさに臨調の答申に符合した考え方である。そしてその一方で、特例給付という形で被用者に対しては五百六十万に緩和の処置をとっておる。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕 こうしますと、これは一体何だろうか。思想的に考えたときに、どの方向をとるのかというような、わからないことがここに生まれてくる。  厚生省の説明を求めてみますと、八〇%に合わすのです、こういうお話を聞きます。それは非常にいいことでございますから、私、一概にどうのこうのは申しませんが、この一方の五百六十万まで持ってきたことを見てみますと、臨調の答申にはそうでない行き方を考えておられる。そこにちょっと矛盾が出ておるのですが、いずれにしても、そういう形で八〇%は将来ともに維持していくのかどうか、この点をひとつ総理にお伺いをしたいと思います。
  228. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 児童手当制度はあくまで私としては存続をしていきたいということは、当委員会で申し上げておるとおりでございます。また、平石さんが出生率につきまして大変御心配をされておりまして、せめて静止人口の線までは守っていかなければいけないという御意見は、私も全く同感でございます。  ただ、私どもが考えておりますのは、今回児童手当制度に対しまして、こういう厳しい状況下におきまして所得制限をお願いいたしました。これは負担力のある方々にはこの際御協力をいただきたい、こういう趣旨でございます。そういう点を措置しながら児童手当制度は堅持し、そしてこの適用期間の終わるまでの間にひとつ児童手当制度というものを抜本的な改善をし、進めていきたい、このように思っておるところでございます。  ただ、私の所見を申し上げますと、出生率が低下をしておるというのは、先ほども厚生大臣からお話があったように、高学歴時代も一つの原因でございましょう。また、あるいは住宅等の生活環境の問題もあるでしょう。いろいろの問題がこれに絡んでおると思います。そして、ただ経済的に、それじゃ児童手当をふやせば、それで出生率が高まるかというと必ずしもそうではない。むしろ中流以上の家庭の方で出生率が低下しているというような傾向もございます。だから、総合的に勘案してこの制度というものは改善をしていかなければいけないのではないか、こう思います。
  229. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま総理の所見をお聞かせいただきました。私も、確かにこの制度だけで出生率が上がってくるとは考えておりません。やはり総合的な施策がそこに伴わないとこれは期待できないことでございます。  そこで、この前の正木質問でも申し上げたわけですが、抜本改正に当たって、これはもちろん委員会をつくって検討はするのでしょうけれども、やはりそれに対して申し上げておきたいことは、三人以上という現行制度は、いまの出生率からいいまして、さらに若い人たちの話を聞きますと、もう二人で十分だ、三人以上産もうと思っておる若い人はほとんどおりません。そして統計を見てみましても、確かにそのように落ちてはまいりましたが、三人以上の子供が一六%、これはその線がだんだん落ちてはおりますけれども、横ばい状態です。これはいわゆる第二ベビーブームのときだから、こうなっておると私は見ておる。それで、昭和二十五年当時は、三人以上の子供を持った世帯というのは四七、八%あったわけですが、それが現在一六%へ来ておるわけです。そうしますと、この児童手当という制度は、いまのまま置いておけば自然消滅をする制度です。もう先の見えた制度と言わなくてはなりません。  その面から考えまして、いま総理の御答弁をあわせ考えたときに、やはり二子まであるいは一子まで、一般対策として子供の健全育成には金は少ないのですけれども、見てあげるべきではないだろうか。そしてこの人たちが、将来若者になったときに高齢化社会を支えるお子さんたちです。今年の当初議会で申し上げたときに、渡辺大蔵大臣から、子供の扶養については税の控除もございます、さらに会社においては家族手当も扶養手当も出ておるのです、その上この児童手当では、納税者の立場から見たときに均衡を失するおそれがあるという御答弁をいただきました。私、この面もいいんだ、この面もよくわかるのでございますが、そうおっしゃるのなら、もう一つ二つ深く突っ込んで考えてほしい。  それは何かといいますと、子供を育てておる世帯と子供を育ててない世帯とでは、経済的にも精神的にも時間的にも大変な負担が違うておるわけです。そして子供を育ててない方々が年を召されたときに、それを支えてあげるお子さんたちです。私は養育世帯と養育してない世帯との均衡を考えたときに、苦労をして育てておられる世帯の方には社会的に評価をしてやるべきだ、その苦労に対しては、お金は少なくてもそれだけの評価はしてあげるべきではなかろうか、このように思うわけです。  したがって、この制度が将来消滅するだろうかというような状況を見たときに、私は、そのことを篤と抜本改正のときに参考にしていただきたい。そして、そのことがやはり国際的に見たときに、三子以上に対してはベトナムと南ア連邦とモーリシャスとわが日本だ、たった四カ国です。一子から行われておるのは五十七カ国、世界の常識から考えたときに、経済大国日本がこのようなことではおかしいのじゃないかというような気もいたしますので、篤とその点を申し上げて、答弁は要りませんが、終わらせてもらいます。  次に進ませていただきますが、次は、行革と福祉ということについて質問をしてみたいと思います。  今回の行革答申を見させていただいて非常に感ずることは、もちろん行政を身軽にするということ、そして効率化を図っていくということ、行政の信頼を回復するということはまことにりっぱなことでございまして、これは当然やっていかねばならぬ、このように考えるわけです。  ところで、そのためにやはり福祉というものが非常にきめ細かくここに指摘をされておるわけですが、私はこのことを見たときに、これから先の高齢化社会というものを考えてみますと、だんだんと社会保障的な要因がふえてくる、そしてそれには、国家財政にしろ、あるいは民間のそういった経済活動で生まれるところの民間資金にしろ、やはりこれからの高齢化社会を乗り切っていかねばならぬといういまの状況から見たときには、この社会保障、福祉といった面について、避けて通ることのできない大きな事実がお互いの肩にかかってくるわけです。そして、息の長い福祉というものを確立するためには、むだは排していかねばなりませんけれども、余りにもこれに対するいわゆる削減といいますか、対象に挙げて、非常に厳しく指摘がなされておるわけです。  一概にどうのこうのは申しませんけれども、一方では、活力ある福祉社会の建設ということを目指しての大きな理念もございます。そして自由経済社会の持つ民間の創造的活力を生かし、適正な経済成長を確保することが大前提となる、こうおっしゃっておられるわけです。その中で、これからの福祉というものを低成長下に入った今日どう描いていくかということ。しかも、息の長い高齢化社会を乗り切っていくためには、いままでずっと間口が広がってきた。これは社会にそれだけの要因があるから当然のことです。その広がってきた間口を浅くしていくのか、あるいは選択的に間口を狭めたもので奥深く福祉をしていくのか、どの方向にいまの社会の中でこれからやっていこうとするのか、その点はここにはあらわれておりません。当然そのことについては政府の方において検討をし、さらに将来を描くのであろう、こう思うわけですが、このままで置けば行革という名のもとにどんどん削減を受けるおそれがある。一方に、そういう要因に対する対応ができないほど切り込みをせられてくると大変なことになり、一方では、国民の生活を安定さすのが政治の一つの側面、社会不安のないようにするのも一つの側面です。これも大切な政治の課題。そういたしますと、どのようにするか、行管庁長官にお答えをいただきたい。
  230. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 福祉国家の理想というものは、やはりあくまで堅持していくべきであると思います。しかし、問題は福祉国家の内容でありますが、私は、昭和四十八年でありますか、福祉元年と言われまして、いろいろな福祉政策が展開され、特に地方の革新自治体等において福祉政策が特に強調されてまいりましたが、あの当時の発想の延長線でそのままいっていいかどうか疑問であると思っております。むしろここで改革を要するときに入った。と申しますのは、ある程度において日本の福祉水準というものは西欧に追いついてきておる。足りないものもありますけれども、平均的に見たら制度的にはほとんどそろってきておりますし、物によっては追い越しているものもございます。そういう意味において、世界の一流国の水準に体系的にもレベル的にも大体到着しつつあるという状態で、しかも八十二兆の国債という膨大なる借金を抱えている、こういう状態を見、そのほかいろいろな面を考えてみますと、福祉という概念をもう一回考え直す必要があるのじゃないか。  福祉と言うと、ややもすれば物質的手当てというものが考えられる。いろいろな施設や何かとか、あるいはお金のことが言われますが、やはり福祉の一番の基本は人間の自由それから創造力、生きがい、そういう精神性の保障というものがあるのではないかと思うのです。そういう意味において、われわれ自由民主党の観点からすれば、社会主義国家における福祉と自由主義国家における福祉というものは質が違う。われわれは、自由主義国家の福祉の方が高度の人間性に沿った福祉である、そういうふうに考えております。これは非常に重要な点で、そういう精神的な面というものをひとつもう一回見直す必要がありはしないか。  それから、いわゆる福祉国家というもののいままでの戦後の傾向を見ますと、惰性がありまして、ややもすれば甘えとかあるいはごね得とか、あるいはばらまきとか、そういうようなものに流れやすい。特に選挙で統治する人あるいは行政を行う人たちが出てくると、どうしても選挙に勝ちたいためにそういうふうに流れやすいのは、民主主義の普通見られる現象でございます。ある程度はこれはやむを得ません。しかし、やはり本当に困っている人、弱者を保護し救済するというところが本当の意味の福祉ではないか。  そうすると、真の弱者とは何ぞやという問題に遭遇するわけです。真の弱者という見分けが非常に重要な問題で、恐らく第二臨調におきましてもその問題が一番論議もされ、今後も論議される問題であるだろうと思います。そういう点からしますと、真の弱者については徹底的にこれをお助けしなければならぬ。これは医療においても、老後においても、あるいは教育においても、すべての面においてそうではないか。しかし、平均以上に達している人、あるいは平均的な部面のところまでいっている分については、国家財政全般を見たら、がまんしていただくところはがまんをしていただこうという点が必要なのではないか。  それから、いままでの延長線で申しますと、いわゆる西欧型福祉というものが頭にあったように思いますが、最近は日本型福祉ということが叫ばれてまいりまして、それが非常に大事なポイントになっていると思う。西欧型福祉といいますと、大体老後の老人ホームとか、公園でベンチに座って新聞を読んでいるとか、あるいは鳥を飼っているとか、釣りをやるとか、そういう静かな生活というようなものが頭に浮かんで、年金で保障されているということが言われております。しかし、日本型福祉というものは、そういう静かなものよりもむしろ動的な、生きがいであるとか、あるいは社会に貢献する場所を与えるというところが日本の場合にはさらに強調されていいのじゃないか。大体老人を見ていると、中小企業でも農業でも老人が第一線で働いておって、それがまた生きがいにもなっておるようであります。  こういう日本型の特色というものを生かしていく、会社なり地域なりあるいは血縁なり、そういうものに支えられてそれはまたできておるわけでありますから、そういう面も大いに尊重し合いながら日本型のものをつくり上げていく、そういうことがやはりわれわれの目標ではないかと思っております。
  231. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまのお説、私も反対ではございません。確かにそういった面において、私自身としても、総理がよく言う日本型福祉、これは一体何かわかりませんけれども、やはり真の弱者は何かということについても当然考えていかねばならぬことなんです。  ただ、私が残念なことは、いま非常にりっぱなお話もいただいて、私もそのことに反対ではございませんが、国際的に見たときに、まだまだ日本の社会保障費というのが少ないということです。これは未成熟な社会だからということも一面ございますが、そういった確かにそこの率というものがよそに比べたときに落ちておるという現実もひとつお考えをいただきたい。  そして、時間がございませんので急ぎ急ぎでございますが、この福祉というものの考え方です。これは経済的な面におけるところの考え方を私は申し上げるわけですが、精神的な面においては確かにいま長官のおっしゃったとおりです。そして、いままで福祉というものの原資がたくさん使われております。もちろん国家財政から見ましても大変なお金だ。わからぬことはございません。わからぬことはございませんが、やはりこのお金というのが経済を動かす大きな歯車であるということをひとつ考えていただきたい。  私はここに一つの資料として資料をつくってみましたが、日本の国民総医療費がざっと十一、二兆円かかっております。その十一、二兆円は全部、毎月毎月集めた社会保障といいますか、福祉のお金です。それが医療費としてお医者さんの窓口を通して出ておるわけですが、この中にはいろいろな問題が含まっておりますから、一概にどうのこうのは言いませんけれども、とにかく数から申しますと十一、二兆円。そして、それの三五%ないしは四〇%、四兆円程度のお金はいわゆる製薬メーカーに入っておるのです。そして、製薬メーカーはりっぱな大企業となって今日社会に貢献をしております。そういたしますと、この福祉の原資は、やはり経済を回し、成長の手助けをしておるお金だということです。  そして、いま私、厚生省の一般会計、特別会計等をずっと見てみました。数字が合うておるかどうかは知りませんけれども、やはり一般会計において、あるいは特別会計を合わせましても二十五兆ですか、ちょっとわからぬのですけれども、とにかくそれだけの大きな金が出ておる。二十五兆七千億のお金が出ておるということですね。これは数字が合うておるかどうかわかりませんが、とにかく二十五兆円のお金が出ておるということです。これは貯蓄に回るお金じゃないのです。ほとんどが使われて経済市場を回るのです。経済は経済だ、福祉は福祉だ、そして福祉というものは経済成長については、一部で言われるように、あるいは一部でときどき耳にしますけれども、余りこれは貢献はしてない、こういったような考えが社会の中に一部ございますけれども、決してそうでなく、生きた金として経済成長の歯車になっておる。このことを御認識をいただきたいのですが、総理どうですか、その点については。
  232. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私も、平石さんが御指摘になっておることはよく理解ができるわけでございます。仮に年金給付の面にいたしましても、あるいはいろいろの手当等の問題にいたしましても、これが健全な消費に使われました場合、これは個人消費の伸びにつながり、経済の振興に生かされるわけでございますから、社会福祉関係、保障関係が全部もう浪費的なものだというようなぐあいには見ておりません。  ただ、先ほども指摘がありましたように、医療の場合でも薬づけというような、そこにむだがあるのではないか、そういう面については、やはり福祉といえども思い切った改革、改善が必要である、こういう考えであります。
  233. 平石磨作太郎

    ○平石委員 ちょっとくどいようで恐縮でございますが、「歳出百科」というのがございます。この「歳出百科」を見てみますと、これは大蔵省がつくったものですが、将来の展望がちょっと出ておるように思います。  この展望を見てみますと、現在この社会というものは、七十五年では四・六人、八十五年では三・八人で一人のお年寄りを養っていかなければならぬ、こういう前提に立っておるようであります。そして社会保障移転費の対国民所得比が現在大体一二・三あるいは一二・五、六といったところ、これがそのまま現状のままで推移すると仮定をいたしますと、大体二一ぐらいになるのじゃなかろうか、こういうことが数字に出ておる。そして一方で租税負担率あるいは社会保障費の負担率というものの対国民所得比においては、これは将来の日本というものの描き方がございません。ございませんが、こういう給付費についての社会保障としての対国民所得比を賄おうとするならば、一方に出ておるドイツあたりの大体四〇から五〇くらい、このくらいの負担にならないとここは賄えない。これは大蔵省がその点でそれだけのものを描いておられるのかどうか。これは大蔵大臣に聞きたいと思ったのですけれども、前に大蔵大臣やっておられた厚生大臣、ひとつ……。
  234. 村山達雄

    ○村山国務大臣 社会給付費を中心にして申し上げますと、確かにいまの社会保障給付というのは、いまのところまだそんなにはいっておりません。今年度の予算で多分一三・一くらい、二年前に比べますと、実績で言いますと五十四年度で一二・三くらいだと思っております。しかし、これはもう申すまでもございませんが、年金の成熟度が非常に遅いのでございます。ほかの点はほとんど、私は、いろいろありますけれども、大づかみに言って、もう給付水準としては国際水準に達していると思っているわけでございます。したがって、これからの人口動向から見ますと、七十五年には給付は大体二三・八から二四くらいいきますから、大体いまのドイツ並みになってくるわけでございます。  そういうことを考えますと、これはなかなか容易ならぬことでございましょうし、そして社会保障の負担は、いまちょうど給付が一三・一に対して一〇・一に上がっております。二年前は九・二だと思っておりますが、しかも、これはいま修正積立方式でそういうことになるわけでございます。  一方、税の方は御承知のとおりでございまして、ことしは二四%くらいでございますが、これがどういうふうになるか。したがって、いまドイツはおっしゃるように総合税負担で国民所得に対して恐らく五〇%程度であろうと思いますけれども日本の福祉型社会というときに、特に活力あるというときに一体どれくらいがいいのか。先ほど行管庁長官が非常に広い角度からこれからのあるべき福祉について申されたわけでございますが、その中で、給付と負担という問題から、純経済的に活力あるというのは一体どの辺が限界であるか、これはよくよく考えていかなければならぬでしょうし、これは何よりも国民自身が考えていく必要があるだろうと、われわれもそう思っておるわけでございます。
  235. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大蔵大臣がいまお見えになりましたが、大臣は、私の質問を聞いてなかったから、あるいはわかってないかもわかりませんけれども、この「歳出百科」に出ておるものを大体描いておられるかどうか、大体規模としたらその点へいくのだということを考えておられるかどうかを簡単にひとつお話しいただきたい。
  236. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 この間私は、いまのままでいくと、日本の老齢化のスピードが非常に早い、早いから最近における社会保障と租税の負担率が急スピードである程度大きくならざるを得ないという話をして、実はおしかりを受けたわけでございますが、実際はどうしても老齢化が進みますと負担を減らすということはむずかしい。どうしても十一人で一人の老人を抱えるときよりも、三人で一人の老人を抱えるときの方が負担が重くなるのは当然ですね、現実問題として。だけれども日本は経済の規模が非常に大きいという点がスウェーデンなんかよりも恵まれている点ではないかと思っておるわけでございます。なるべく負担は少ない方がいいわけでございますが、やはり十年、二十年とたちますと、好むと好まざるとにかかわらず、ある程度の負担は、私は、高福祉には高負担やむを得ないのでないかと考えております。
  237. 平石磨作太郎

    ○平石委員 将来の負担はある程度やむを得まいというお話がございましたが、大体ここに出ておる、給付においては、保障費は対国民所得比にして二一程度と、それから表示がございませんけれども、それを賄っていくとするならば、高齢化社会に入るのだから、当然そこには費用負担が出てまいります。その費用負担を賄っていかねばなりませんが、そういたしますと、やはりふえてくることは必定であろう。そして、そこにはやはりある程度の限界というものも考えなければならぬ。そこらの限界線をどのように持つかということは、非常に厳しいと思うのですけれども、お考えがあれば、大蔵大臣ひとつお答えをいただきたい。
  238. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これはもう国民の選択の問題でございますから、給付水準をうんと高めればそれだけの財源が必要になってくる。財源ということになれば、何らかの形の負担ということになるわけでありまして、私は、日本の社会においては、スウェーデンのような租税と社会保障負担で国民所得の七割も持つ、こういうようなことはとうてい容認されまいと思っております。  また、先ほどから中曽根長官がおっしゃったように、たとえて言えば老人の問題でも、親子で住みたいという人が日本では非常に多い。現実に農村等では親子で住んでおる。スウェーデンの場合は非常に少ない。もう六十五歳以上は原則的に老人ホーム、日本は原則的に各家庭ということですから、そこらの違いはかなり私はあると思うのです。そこで、四五から五〇というようなドイツ、イギリス、フランスくらいかな、やはり日本人というものはそんなに出したがらないのじゃないのかなという気もいたします。アメリカは三七でございますから、日本は新しいところで三四くらいのところでありますから、アメリカと日本の社会保障といったら、私は、実際問題といたしまして日本の方がはるかに進んでいると思います。年金などの全体としての負担は少ないけれども、個人個人のもらう金というものは、たとえば年金は簡単に言って日本とドイツは同じぐらいでございますから、しかも掛金が半分で、五年早くもらって、それで何年かよけい長生きするというのですから、年金会計が赤字になるのは当然なわけでございます。しかし、それもいつまでもそういうわけにはいかないということになってまいりますから、私といたしましては、やはりここでむだなものはなるべく整理をして、総理が言ったように、また中曽根長官が言ったように、本当に困った人を手厚く見る、それから医療費等も、余りもうけ過ぎみたいなものは社会保障費の分配としてはいかがなものか。こういうようなものは、やはり社会保障費の分配ですから、これは強制的に集めた金を払うわけですから、ある程度自動的に払うようなものだから、ここらでやはりもう善良な人とそうでない人の差別はある程度仕分けをしてもらわぬとなかなか負担に耐えかねるのではないか。そういうようなものも全部きちっと整理をしていけば、ヨーロッパ並みまでいかなくても、もっとめり張りがついて日本の国民も納得してくれるような社会福祉国家になれるのではないか。何%と言われましても、私もいまのところ自信がございません。
  239. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま大臣おっしゃっていただいたわけですが、これには方式もありますから、一概にどうのこうのはできませんが、大体いま大臣答弁の中に出ましたように、日本の方式と似通ったところは西ドイツ、ここらあたりが大体標準の線ではなかろうかというふうにいま大臣の御答弁をいただいたので、これはそこでおかしていただきます。  だんだんとそういう形で高齢化社会に入ってまいりますと、私どもは、確かに行革はやっていかねばならないけれども、一方でそういったように国民の生活を安定させるためには知恵をしぼっていかなければならぬということをもひとつ十分御認識をいただいて行革を進めてほしいと思うわけです。これでこの点については終わらせていただいて、次へ進んでまいります。  ところで、具体的な問題に入らせていただきますが、いま特に社会保障の中心となるのは何だろうかということになりますと、どうしても所得保障というもの——働けなくなる人、稼働力を失っていくという人、これがだんだん多くなってくる。これにはやはり家庭としてもあるいは対応しなければならぬでしょうけれども、とても個人の力だけでこれを見るというようにはまいらなくなってくる。そういたしますと、いま総理のお言葉にありましたように、親子が一緒に住んでいくということは結構なことであるし、またそれを望んでもおります。そしてまた、日本のいままでの歴史から考えたときに、やはりそうあるべきだろう、このように私も思うのです。  ところで、そういうようには思いますものの、総理府の統計がございますが、この総理府の統計を見ますと、だんだんとそういう考え方というものが薄れてきている。核家族化であり、さらには扶養の問題等、単なる社会福祉とかあるいは社会保障だけで律し切れない面がございますけれども、この老人の意識調査、生活調査というのが、総理府の官房老人対策室から出ているわけですが、これで見ますと、老後はどのようなことでもって生活を維持するかという資料でございますが、公的な年金というのが日本は六四・六%、これを期待しておるわけです。それからタイ国は四・一%です。それからアメリカは八二・一、イギリスが八七・七、フランスが七四・九、このように西欧先進諸国の方向にだんだんと日本がなりつつあるということ、そして援助をもらって子供などと家庭でというのが日本が二九・八、だから約三割はそういうことを考えておるわけです。この線は、いまおっしゃったように、やはり家族が一緒におるというようなお年寄りもおりますけれども、社会の状態はこのように変わりつつある。そういたしますと、若いときから働いて、そして厚生年金を掛けてきた、国民年金を掛けてきた、そしてこの年金制度は、あなたが年がいったときにこのように保障いたしますよ、これは契約です。だから、給付の内容につきましても、急激な変化ということはできないでしょう。確かに財政の健全化のためにはいろいろとむだは排していかねばなりませんけれども、個人がそのことを見込んで期待をして掛けてきた長年の保険料というものによって支えられた財政がうるさいからといって、その中でやらねばならぬけれども、個人にとりましたら急激な変化は大変なことになってまいります。そういうことから今日のこの年金会計、厚生年金、国民年金の現状はどうなのか、ひとつ厚生大臣にお答えをいただきたい。
  240. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま厚生年金の現状はどうなっておるかという話でございますが、新規裁定で、いまの雇用状態を見ますと大体平均三十年というところでございます。そういたしますと、モデル年金で十四万五千円くらいになるわけでございます。現実には、実際の平均で払われておりますのはもちろんそんなにはいってないわけでございまして、平均では大体十万から十一万というあたりでございまして、各国に比べて実際の支給額から見て少ないことはございません。ボーナスを含めまして普通の給与の大体四五%くらい、これがほかの国ではボーナス制度は余りありませんので、給与に対して大体四三から四四くらいのところであります。大体、実際支給額でもまずまずというところでございます。  国民年金の方は、まだ本来的な二十五年年金が始まっておりません。これで計算いたしますと、大体夫婦で現在四千五百円の掛金で十万円くらいもらえるという計算になりますが、いまのところは、ほとんど経過年金でございますから夫婦合わせて四万五千円くらいだろう、こういうことになるわけでございます。ですから、いまのところ水準はまずまずというところであろうと思っております。  今後の問題は、いまの年金財政がどうなっているか、こういう話なんですが、財政の方は御案内のように修正積立金方式でございます。したがって、いま年々四兆以上積立増がふえているわけでございます。ただ、これは長期にわたって計算しなくてはなりませんし、五年ごとに再計算をいたして是正を図っているところでございますが、長期展望をいたしますと、修正積立金方式でございますので、当然ある時期に来ますと収支とんとんになる、また、ある時期に参りますれば、このままでいけば積立金がなくなる、こういう計算が出るわけでございます。したがって、これをどのようにして維持していくか、これが大きな問題になってくるであろう。しかし、日本は外国と違いまして、その点はまだ先がございますので、われわれは本当に各方面から考えていかなければならない。給付と負担の関係は一体どんなものであろうか、こういうことを年金受給者のために本当に真剣に考えていかなければならぬと思っております。
  241. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いわゆる年金財政が非常に大変なことになろうか、こういうお話でございました。ところで、年金財政というのがだんだんと成熟化に従いまして受給者が多くなってくる、その一方でいわゆる加入者というものが現在から受給者がふえるようにふえていくか、こう見てみますと、そのようにふえてはまいりません。大体横ばい状態というような状況の中でどんどんふえていくので成熟化していくわけですが、それで一番差し迫った問題として出てきておるのが国鉄の年金だと思うのです。いわば成熟化した一つのモデルと言えばモデルですが、国鉄年金は会計は大変なことだと思うのですが、運輸大臣、その点についてひとつお答えをいただき、さらにどうしていこうと考えておられるのか、この点もあわせお答えを賜りたい。
  242. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 仰せのように、国鉄共済年金は非常に危機的な状況に現在なってきております。先ほどもお話にございましたように、いわば分母がだんだんと小さくなってまいりますし、国鉄は昭和二十三年、二十四年ごろは六十五、六万の従業員がおったわけでございますが、現有四十万を割ってきておるという状況でございますし、退職者は年々増加してまいりますし、これらが全部受給者になってきておりまして、そういう点において非常に特異な年金あかっこうになってきております。  昭和五十五年度末で見てまいりますと、成熟度は七四%でございまして、五十九年度になりますと一〇七%になるのでございまして、一〇七%と申しましたら、一人が一人以上を支えるということに相なってくるわけでございます。また、財政状況を見ましても、五十五年度単年度だけ見ましても百六十八億の赤字になってきておるのでございます。この状況でいきますと、昭和六十二年ごろになりますと、積立金すらも食いつぶしていくという状況になってまいる。私たちは非常に心配いたしております。でございますから、国鉄再建対策の一環といたしまして、こういう構造的な改革というものをぜひひとついたしていかなければならぬと思うておるのでございますが、それにつきまして、現在大蔵省の中に設けられております共済年金制度基本問題研究会というのがございまして、その中で鋭意研究していただいておるのでございますが、私は、この解決のまず第一段階といたしまして、せめて共済年金だけでも一本化してもらえぬだろうか、そしたら大分助かるがなという感じを持っておるのでございまして、その方向で要望もし、いたしておるわけでございます。
  243. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま大臣のお答えがございましたように、いま国鉄共済は大変な危機に当たっておると思うわけです。これは八つの制度がございます年金の中で一番先頭を切っておるというか古い。だから古いものはだんだんとそういう形になりつつあるわけです。  そこで、厚生大臣が所管をしております厚生年金と国民年金の会計内容を見てみましても、もうその後を追っかけておるということです。医療の場合は単年度で処理をいたしますけれども、少なくとも長期にわたっての制度であるから、厚生年金を見ましても六十五年、六十五年といいますともう九年先のことですが、九年先では、納める保険料と支出とを見てみますと、支出の方が多くなっておる。そのように、もう納める保険料では支出の方を賄えなくなってくる。そのために国庫負担という、保険料と国庫負担によって年金会計が賄われておるわけです。それでずっと保険料と国庫負担、さらに利子、それらを見てみましても八十五年、八十五年といいますとこれから三十年先ですが、八十五年が参りますと、収入と支出、さらには積立金、もう積立金が八十年から八十五年が来ますとなくなってしまいます。こういう状況がここへ出ておるわけです。  そして国鉄はいまどうしておるかといいましたら、大臣答弁にはございませんでしたが、保険料と国鉄の事業主としての負担金ではまだ足りません。だから、その上に追加費用というものを出しておるわけです。追加費用の負担。この三本立てでどうにかこうにかいま会計を維持しておるようです。ところで今回三十五万人体制に持っていく。問題はありましたけれども、地方ローカル線は切り捨てた。そして国鉄再建という大きな責任を大臣は持っておるわけですが、そういう中でこれから三十五万人にする。四十二万人の職員の七万人がこれから整理をされる。そうしますと、さらに年金会計に重圧がかかってくる。そうしたら、いま大臣の御答弁にありましたように何とかならぬだろうか、他の共済年金と何とかならぬだろうかと大臣が答えられたことが私はよくわかります。  そこで、私は申し上げておきたいのですが、このことは早くから提言がなされております。私どもも、昭和五十一年に福祉トータルプランを持ちまして、現在の八つの年金をそれぞれ共通した面を合わして、一本化まではまいらなくても、少なくとも被用者と地域におけるものは地域におけるものと、これは医療の問題ですが、とにかくそのように一本化を図っていこう、こういう提言がなされておるのですが、厚生大臣はこのことについてどのようにお考えか、ひとつお聞かせいただきたい。
  244. 村山達雄

    ○村山国務大臣 各種年金の一本化という問題につきましては、私は、究極的にはやはりその方向で考えるべき問題であろうと思っております。しかし、委員も御承知のように、実際問題としては、その背景、これまでの経緯、それから特に財政状況が全く違うわけでございまして、無理にこれを合併させますと、言ってみますと、いまにも破産しそうな会社と優良会社を強制合併させるということでございますので、株主あるいは債権者、こういったものに大変な不平が出てくることはもう当然でございます。したがいまして、それは一挙にはなかなかできないのでございまして、現実的には各種年金のいろんな格差がございます。格差を挙げたらほとんどもう限りないほどあります。そのうち合理的でない格差をまず是正していくということから始めるべきではないであろうか。そういうことをやりながら漸次均一化していく、その上でその問題を取り上げていくということの順序になりやしないだろうか。  それから、おっしゃる基礎年金、基本年金構想、これは公明党も出しておられますし、また制度審も出しておられるわけでございます。これも一つの見識であると思うのでございますが、何分にもそれには、基礎年金の定額部分はいわば税収で賄え、こういうわけでございまして、制度審が挙げておりましたのはいわゆる付加価値税のようなもの、こういったものでございますと、GNPに比例して知らず知らずのうちに入る、物価の上昇は一時限りだ、こういうことでございますので、理論的には非常にすぐれた意見だと思いますが、御案内のように、いわゆる一般消費税はやらない、こういうことになりますと、この財源の問題を一体どうして出すのか、こういった問題にも突き当たってくるわけでございます。しかし、一つの見識であると思っておりまして、われわれもその意見は十分参考にさせてもらいたい、このように思っているところでございます。
  245. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの点で総理もひとつお答えいただきたい。
  246. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 高齢化社会が急速に進んでおります中におきまして、所得保障としての年金制度のあり方というのは非常に重要な問題でございます。私は、各種年金を一本化すべきだ、こういう御意見は基本的に方向としては正しい、そういう方向を目指して進まなければならない。いま厚生大臣も申し上げましたが、しかしいま直ちにそれはなかなかできない。各種制度の中におきまして、負担の面でもあるいは給付の面でも相当格差がございます。また、年金の財政事情も違っておる、こういう状況でございますので、当面は各種制度の格差の是正、こういう点に努力いたしまして、そして将来これを一本化する、その際の基本年金制度というようなものもこれは十分検討に値する問題であろう、このように考えています。
  247. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これはいろいろと歴史もございますし、成り立った経過も違っておるというようなことがありますから格差が出てきておるわけです。したがって、そういった格差という問題をも解決をしていかねばならぬために、やはり一本化の必要があるのではなかろうか。そして、この一本化につきましては、いま総理も基本的には賛成である、こういう答弁をいただきました。  ところで、これについては、社会保障制度審議会が総理に対して、これ以外にない、こういう答申、勧告が出ておるわけですね。だから、総理もそれを踏まえてのことだと思うわけです。ところが、厚生大臣の私的諮問機関として年金制度基本構想懇談会が、厚生天田が諮問をいたしまして五十四年に答申を出しております。この答申を見ますと、やはり八つの制度を前提として財政調整を図るべきであろう、一本化についてはどうもと、こういったニュアンスの、やはり現行制度を維持した方がいいのではないか、そして財政調整を図ったらいいではないかというような、いわば公的な社会保障制度審議会が総理に出しておるものとちょっと違うわけです。全く違うと言ってもいい。  そして厚生大臣は、今回また、新聞報道によりますと、社会保障制度審議会ですか、これにどうしたらいいでしょうかという諮問をしておられます。厚生省は一体、いま大臣答弁はお聞きをしたのですけれども、この経過から考えたときに、どういう方向で一本化を目指してのステップとしてのものと考えていかれるのか、あるいは八つのものをそのまま存続をしていく、こういう形のものなのか、そして時期的には大体どの程度をめどにしておられるのか、ここらもあわせて、わかればお答えをいただきたい。
  248. 村山達雄

    ○村山国務大臣 厚生省の諮問機関である懇談会が申しましたのと制度審が言っておるのは一見矛盾するようでございますが、私は、必ずしもそうではなく、基本懇の方は、現実でいかに一本化がむずかしいかという点に重点を置いて言っておると思うのでございます。前段階の問題をまず言っておると思うのでございます。  私も、具体的には先ほど申しましたように、やはり各年金の間の格差を合理的にまずいかに直していくか、それから手をつけるべきであろうと思っておるわけでございます。財政状況の違うものが対等合併ということになりましたら、これは大変な話でございます。それは合併のときにもいろいろな比率の合併の仕方はございますけれども、いずれにいたしましても、それらの調整に当たっても、そういう現実的考慮も払いながら不合理な格差を是正していく、そのためにはやはり所管各省が持っておりますものをそれぞれ連絡し合いながらやっていかなければならぬと思いますが、何といっても統一的に論議をする場をまずつくる必要があろうかと思っておるのでございます。  そういうことによりまして、お互いの年金の事情、それから格差というもの、それから格差が何によって起きているのか、それが不合理であるのか、あるいは従来の積立金の状況、負担からいってやむを得ないのか、あるいは実際に共済年金あたりを見ますと、大体同じ年数で換算いたしますと一割から二割ぐらい上になっている。しかし、過去にやはり積立率はかなり高かったという事実もございますし、そういうものをしさいに分析いたしまして、これは不合理だ、これはどうだとか、そういう受給年齢の問題や何かが一番言われるわけでございます。こういったものは、また雇用情勢と合わせながら受給年齢の開始時期も調整しなければならぬし、そういったもろもろの問題が含まれておりますので、こういう不合理な格差を是正するために、何よりもまず第一歩として共通の議論の場を持つということが大事ではないか、私はそのように思っているわけでございます。
  249. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大分時間もかかるようです。したがって、それは大変問題が大きいからやむを得ないことではございますけれども、一つのステップとして、これからの年金というものが格差の解消に向かっては一つの共通部分を合わせていくというようなことから始めてほしいと思うし、めどについてのお話はありませんでしたけれども、こうなると、しばらくは八つのものが続いていくということもやむを得ないと思うわけですが、せっかちな統合ということはむずかしいかもわかりません。その点は十分理解ができるわけでございまして、そうなりますと、一応厚生年金その他については、いま私がちょっと触れましたように、財政的には非常に困難な状況になりつつある。これはもちろん高齢化に向かっておるからこうなるのですから、一概に大臣の責任ということでもございませんが……。  そこで、これから先、給付の水準を引き落とす、こういったようなことを考えるかどうか。それから財政維持のために支給開始年齢を引き上げていく。この前厚生大臣は一回出した——出したのかどうか忘れましたが、一回そのことが出ました。結局それは論議になりませんでしたけれども、そういうことが今後予想されるのだろうかどうだろうか、この点についてお答えをいただきたい。
  250. 村山達雄

    ○村山国務大臣 支給開始年齢の引き上げの問題は昨年の国会にも出させていただきましたが、いろいろな雇用情勢等の関係で通りませんでした。私も、やはり雇用情勢でさらに定年制が延長になる、あるいは再雇用が行われる、これとの整合性を持ちながらいった方がいいのではないかというように考えています。また、給付水準の切り下げというようなことは、いまのところ全然考えておりません。これはまだ非常に将来の問題で、年金制度全体としてどう考えるか、こういう非常に長期的な、恐らく一番老齢化の来るのは三、四十年後になると思いますが、そういうところに焦点を合わせながら、どうすべきか、こういう問題であろうか、かように考えております。
  251. 平石磨作太郎

    ○平石委員 給付水準の引き下げは考えてない、こういうお答えでございました。  そこで、高齢化社会に入ってだんだんとみんなの命が延びてまいりました。もうすでに七十八歳、あるいは男は七十三歳というように、八十歳になることはもう目の前です。そしてだんだんと高齢化に入ってまいりますと、当然そこには、個人のサイクルから言いましても、生きがいの面から考えても、長いこと働きたい。そして昔の六十歳といまの六十歳と比べてみますと、いまの六十歳は非常に若い。だから、こういう人たちがこれからの日本の経済を支えていく戦列から外れてしまうということは、国家経済から考えても、私は非常な損失だと思う。それと同時に、個人にとりましても、日本人は非常に勤勉である。そして仕事のないのが一番憂うつなんです。何でもいいから働きたいというのが一般の考え方であり、お年寄りの考え方であり、生きがいとなっておるわけです。  そういたしますと、国家経済から考えたときに、やはり定年というものは延ばしていかねばならない。これは社会の要請であると思う。そしていま行革が叫ばれておりますが、行政が身軽になることも結構だ。これはやらなければなりません。これも進めていかねばなりませんし、ここにも書いてありますように、痛い点があってもお互いに忍びましょう、こういうことも指摘がなされておるわけです。  そういう面から考えましても、やはり産業、経済の中でも、そういった定年延長、雇用の拡大、延長、現在働いておられる人は延長して働いていただく。そして新たに雇用もしていただく。お互いに産業、経済をやっておられる、支えておられる方々も、やはりそれだけの負担は当然のことではないかと私は思う。その面から考えて、労働省は、この面について雇用の拡大あるいは雇用の創出、そういう面で大臣努力をしていただいておるわけですが、いま定年延長はどのような状況にあるのか、大臣のお答えをいただきたい。
  252. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えを申し上げます。  お答えを差し上げます前に一つ申し上げたいと思いますのは、平石委員指摘のとおり、いま私どもの平均寿命というものは非常に延びてきておる。そのことは、私どもの肉体の力もまた伸びてきておる、こういうことでございまして、いまお互いが話のテーマにしております定年というようなことも、非常に寿命が短かったとき、そのときの、これはお休みを願いたいという一応の目安でございますから、まるっきり状況が変わっておるということを頭に置きましたならば、定年を延長するのはあたりまえのことでございまして、今日、残念ながらその途上にあるわけでございますけれども、やむを得ず六十年、六十歳というようなことを申しておりますけれども、それはあくまでも中途半端な中途的目標でございまして、この目標は、現在パーセンテージで言いますと大体五〇%に達しておる。あと一年もたちますと六〇%を超えるということははっきり言えると思います。  私は、こういったことと関連をいたしまして、私どもの定年制度といいまするものを一元的に六十歳とか六十五歳とかいうようなことを目標にして私どもが政治をやっていく、行政を展開していくということではなく、積極的に定年制度もひとつ二重に考えていったらどうだろうか、いっそ体の丈夫な方は第二次定年というようなことで七十五歳ぐらいまで定年を活用していくというようなところまでやっていかなければ、時代の要請にこたえられない、私はさように思いますので、目標を大きくとりまして、そのような政治にしていきたい、かように思っております。
  253. 平石磨作太郎

    ○平石委員 労働大臣に非常に勇断のある御答弁をいただきました。御案内のとおり、アメリカは七十歳でございます。そして世界の常識は六十五歳でございます。日本が先進国として七十五歳まで打ち立てていくということも、これまた大変な意義のあることであって、大臣のその勇断を実現するようにひとつ御努力を賜りたい。  そこで、働いて、そしてなるべくいわば年金財政にお世話にならないようにいくべきであろう。だが、どうしても職域から離れて年金生活に入るということになりますと、ここでいま日本状況を見てみましたら、少なくとも名目的には、形式的には開きがあるわけです。五十五歳定年を六十年、六十歳定年を目指して労働大臣はいま一生懸命やっておられる。そしてさらに、将来は七十五歳ぐらいまでも働いてほしい、こういうお気持ちがあるわけですが、現在は、悲しいかな、そこに十年ないし五年の差があるわけです。このことを先ほどの答弁の中で、厚生大臣は、そういう面もございましてという一部含んだ御答弁はありましたが、はっきりそこらあたりリンクして、個人のサイクルからいってもそのまま年金生活に入れる。そして海外では、定年ということでなくて、年金の支給開始年齢としての定年のようでございますので、そこらあたりも十分話し合ってやってほしいと思うわけですが、ひとつはっきりした御答弁を賜りたいと思うのです。
  254. 村山達雄

    ○村山国務大臣 お答え申し上げます。  均衡がやはり基本であることは、私も労働大臣と同じでございまして、そのためには、いま年寄りの方はずいぶん長生きされておるのですが、寝たきり老人であるとかいうことでございますと、これは本人にも不幸でございますし、また、いま言ったような目的に合わないわけでございますので、われわれが老人保健法を出そうというのは、健康な老人づくり、そしてそれが長く働けるということ、それはまた考えてみますれば、年金にそんなに頼らなくてもいいとか、あるいはまた医療もそんなには、一生かかって医療費も節減できる、本人にも幸せである、こういうことをぜひ実現したいと思っておるわけでございます。  それから、年齢との関係につきましては、やはりこれからの日本の社会は、当然元気なお年寄りの方を再雇用なり定年制の延長なりをしていった方が企業自身もいいに違いはございません。全然ずぶの素人を、初めての人を連れてくるよりも、なれた人を連れてくる方がはるかに本人のためにも働きがいがありましょうし、企業にとってもいいに違いないと思うのです。ただ、そのときに、日本の年功序列型賃金というものをどのように修正していくか、これは労使の関係でございますけれども、やはり日本人の知恵が働いてきて、それを採算的にも可能にする知恵が出てくるのじゃないか、こう私は思っているわけでございます。  なお、一言つけ加えさせていただきますと、やはり活力のある福祉社会というときに、すべてを公的年金に頼る、そういたしますとおのずから高負担になるわけでございます。貯蓄と負担との限界はどの辺がいいのかという問題は、私は大問題だと思うのでございます。確かに高齢社会になりますと、これは当然のことでございますが、負担がふえてくることはやむを得ないことだと思います。ただ、それをどの程度にするのか、貯蓄は減ってアメリカ並みの五%でいいのか、あるいは一〇%でいいのか、日本は可処分所得に対して二〇%、これは負担とは無関係ではないと思っておるのでございます。どの辺が活力ある点になるのか。そしてまた年金も、自分でやる貯蓄もありましょう。いろんなこともありましょうし、職域でもって企業年金もあるわけでございます。こういうあらゆるものを活用いたしまして、そして公的年金とあわせ将来設計が間違いないようにしていく。ここは程度問題で、どの辺がいいかということをこれからわれわれは新しい活力ある社会として求めていかなければならない。私は、最終的には国民の選択だと思いますが、そういった点をも十分に国民の皆さんから御論議していただき、そして妥当な結論を出したいものだ、かように思っているわけでございます。
  255. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私の聞いたことにお答えがなかったのですが、現在定年と支給開始とが離れておる。これを埋めるかどうかということなんですね。だから私は、先ほど引き上げは行いますかどうですか、こういうことをお聞きしましたけれども、これには明確な御答弁がありませんでした。いわゆる給付水準の引き下げは行いません、これは御答弁いただいた。開始年齢をどうするかということについてはお答えがなかったのですが、また再び前の大臣が出したようなことを近く出すつもりですかどうですか、引き上げについて。支給開始を引き上げ、六十五歳に延ばすということについて、やはりそういう予定がございますか。
  256. 村山達雄

    ○村山国務大臣 この点はさっきお答えしたつもりでございます。  私は、やはり雇用の事実の慣熟と並行してやるべきものだ、こう思っておりますので、いますぐ出すつもりはございません。
  257. 平石磨作太郎

    ○平石委員 次は、今回の法案についての話でございますが、だんだんとこの委員会が始まってから一番焦点になっておるのが三年間における国庫負担の削減です。これは返還をいたします、こう言って大蔵大臣も厚生大臣もともにお答えになっておるわけです。これは大変結構なことで、また当然のことであって、これにさらにというようなお気持ちがあろうかと思いますけれども、そういうお答えだけでどうも安心できないのじゃないかということがあるから、ほとんどの質問がそこに集中するわけです。私もこの点についてお伺いをしてみたいと思うわけです。  この返還については、もちろん法案提出の前にそれぞれの委員会、審議会に諮問をして、そして答申を得て提案がなされておるわけです。そこで、社会保障制度審議会へこの法案の諮問をしたときに説明に上がっております。国民年金弘報という機関紙でしょうか、広報紙ですが、これを読んでおりますと、「返済計画を提示 厚年等の国庫負担減額分 大蔵省は、九月四日の社会保障制度審議会で委員から要求されていた厚年等の国庫負担削減分の返還計画資料を提出、十日の全員委員会で説明した。」そして以下、一括支払い方式あるいは均等で払うとか、三年で払う、五年で払うといったような一つの方式が説明されておるようですが、これは大蔵省はこの記事どおり説明はしたわけですか、大蔵大臣
  258. 村山達雄

    ○村山国務大臣 審議会には私が諮問したものでございますので、私からお答えさしていただきます。  おっしゃるところは、三年あるいは五年あるいは一括、それを均等に払うか傾斜的に払うかというあの計算のところであろうかと思います。間違ったらごめんください。  あれは実は返還計画ではないのでございます。たとえばどういう形があり得るか、こういうモデルといたしまして、仮に一括払いであればこういう形になりましょう、三年払いであればこういう形になりましょう、それも傾斜方式ならばこうなります、あるいは均等方式ならこういうことに相なりますというモデルを出したのでございまして、あれ自身が返還計画でないことだけ御理解いただきたいと思います。
  259. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そうすると、私がいま読み上げたものは大蔵省が説明に上がった、こう書いてあるから、私は、大蔵省が説明をしたのだ、こういう認識でおったわけです。いまの大臣の御答弁によりますと、厚生大臣説明をした、こういうことですか。
  260. 村山達雄

    ○村山国務大臣 私が参りましたのは、諮問をお願いいたしまして、その後一時間余りいろんな御質疑を受けたわけでございまして、その後事務当局の方から、こういう試算をしてみよ、こういうことで大蔵、厚生両省の事務当局があの計算をモデルとして計算をいたしまして、私が全部報告を受けたわけでございます。
  261. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大蔵省はどうですか。おいでになりましたか。どうです。——いや、この法案を提出する前に社会保障制度審議会に諮問をして、そこの答申を得て法案ができておるわけです。その審議中に、やはり各委員から、この減額分については返還をしてもらわなければいかぬ、その返還についての計画を出しなさい、こういうことで、その返還計画を九月の四日の全体委員会において大蔵省が来て説明をしました、こう記事に出ておるわけです。大蔵省は説明に上がったのかどうか。
  262. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私はその審議会に出席いたしませんが、事務当局が出席をいたしました。私が報告を受けておるのは、いろいろ御質問があったが、委員の方から、仮に返済するとすれば、三年、五年とか、サンプル的なものをこしらえてみてくれというので、そういうような指示でつくってみたのだということであります。
  263. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私は説明に行ったか行かぬかということは問題じゃないのです。大蔵省も、この間からの大臣答弁を裏づけるものですから、当然社会保障制度審議会にも、お返しをいたしますという大蔵省の説明。当委員会においても、お返しをいたします、こう言うておるのですから、何も説明に上がったかどうかということが重大問題ではないわけなんです。  したがって、私がこれから言いたいことは、財政論議をやると大変時間がかかるのですけれども、ちょっと簡単に触れさせていただきますが、払う財源があるかないかということについては、これはもうおきますが、先ほどの審議の中での大蔵大臣のお答えの中にございましたし、いわゆる中期展望で見ますと二兆七千七百億、それが公共事業をそのまま横並びとして八千五百億円出します。それから臨調指摘に基づく各省の節減によって九千億、ゼロシーリングによって六千億、こういうことで何とかその調整を図っていきたいが、まだ数字が合いません。合いませんけれども、さあそこでこれを支払いをするということになりますと大変な後年度負担がかかってくるのですが、いろいろこれも深く入りますと時間がかかりますので申し上げませんけれども、そういった後年度負担がかかり、さらに私が心配することは、その二兆七千七百億というものが増税をいたしませんということですから、これを前提での論議ですから、当然足らない四千億についてもゼロシーリングということでさらに歳出カットに入るんじゃないか、いままでの答弁をそのまま素直にお聞きしますと。そうすると、約一兆円というものをゼロシーリングでもって歳出カットをしないと二兆七千七百億が出てこない、こういう結論に相なるわけでございます。それほどまで各省のカットを行って、そして八年、九年は増税云々ということは問題外ですけれども、論議をしておりませんけれども、私が五十七年度を見た限りにおいては非常な問題がある。そして増税をするのならともかくも、あと後年度負担というものが非常に大きくなる。一括払いという形でここへ資料が出ておりますが、五十九年度一括払いのときには七千四百二十一億九千万、これをお払いいたします、こういうことですが、これは確実に、いま申し上げたような財政事情であるけれども間違いないということですね。ひとつ確認をしておきたいと思います。
  264. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは一括払いいたしますと言ったわけではないのです。一括払いにすると、昭和六十年に払う場合には七千七百億円程度になります、利息がかかりますから。そういうことであって、ただ何年の分割にするか、あるいは一括に払えるほど財政事情がよくなるか、その当時の状況に照らさなければわかりませんが、いずれにしても年金財政を損なわないという約束がまずございますから、年金の支払いに支障のないように、財政に支障のないようにしながら、そのかわりこちらの事情も考えていただいて、そのときに五年払いがいいのか、もう少し長いのがいいのか、もっと短くてもいいのかは、そのときにひとつ御相談に応じてください、わかりましたということになっておるわけでございます。
  265. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時期は問題外として一応払う、こういうことですから、もういっそこの法律で明確に支払いをするという形にしたらどうですか。この法律を見ますと、もちろんいま大臣答弁にありましたように、財政状況を勘案して、何とかこう書いてありますが、適切な措置をとるというようなことですけれども、はっきりもう戻すということを明言したらどうですか。その点お答えをいただきたい。
  266. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私は法律の専門家ではないのでございますが、私が答弁したようなことは現在の法律で十分だと、専門家はそう言うわけなんです。厚生年金等の国庫負担繰り入れの減額分の事後措置について、法文としては差額の繰り入れのほか、利息の問題、それらの繰り入れ方式などを含む意味で、それを「適切な措置を講ずる」とされておって、これは特に最も代表的な差額の繰り入れというものを代表的に例示したものであるから、それで心配ない、代表例示として基本となる差額の繰り入れで十分である、こういうようなことなのでございます。あとは国会という公の場で大臣が約束をしておるわけですから、それが裏づけで、はっきりもっと具体的にわかりやすく保証したということで心配ない、かように考えております。
  267. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これは厚生省も大蔵大臣も、返します、返してもらいますとはっきり言うておる。それから社会保障制度審議会でも、お返しをいたしますという、時期は別としてモデルの支払い方式まで提示してあるのですから、それを素直に法律の上にあらわしたらいいと私は思うのです。それが「適切な措置」としか表現できないところに、やはり不安があるということです。したがって、やはりこの法律をはっきり変えるべきである、こういうように私は強く要求をしたいと思います。時間がございませんので、この点につきましては終わらしていただきます。  次には、物価スライドの繰り下げの問題です。これも制度審等でも大変論議があったようでございますが、この年金の物価スライドを五カ月ないし六カ月、厚年においては五カ月、あるいは国年においては六カ月、こういうように繰り下げよう。大臣の話によりますと、法律に示されたとおりにいたすのです、もとへ戻すのです、こういうことです。  ところで、こういう物価高の生活の中では、年金生活者はやはりそのことを予定しておるということです。そして一方、厚年、国年以外のそれぞれの共済年金あるいは国家公務員の共済年金、地方公務員の共済年金、いろいろございます。国家公務員の共済年金については、これは人勧の問題等がございますから一概にどうのこうのは言えないかもわかりませんけれども、私どもはこれの完全実施ということを言っておるわけでございまして、過去十年完全実施で行われてまいりました。そして四月にさかのぼるということでやってきたわけですが、今年も完全実施ということで、四月にさかのぼるということをやってほしいと思うわけです。そうしますと、この厚生年金、国民年金の方々は物価スライドがずっと落ちてくる。五カ月落ちるということになりますと、厚生省から出ておるモデル十四万五千円、これを大体五・五%の物価というように考えてはじいてみますと、五カ月で大体四万円程度少なくなるわけです。そういたしますと、国家公務員とか地方公務員とか、あるいは農業者年金とか、こういった方々との間に格差が生まれてくる、こう考えざるを得ません。農業者年金は同じようなんですね。これは取り消します。そういうことで、私は人勧がそのまま行われるということを前提にして申し上げておりますし、またそうしてほしいのですが、そういう格差までつくって物価スライドを行わなければならぬのかどうか、大臣にお答えをいただきたい。
  268. 村山達雄

    ○村山国務大臣 もう平石委員御承知のように、物価スライドの法律で定まっている時期は、厚生年金は十一月、国民年金は一月であるわけでございます。したがいまして、実は、ことしはそれぞれ六月、七月、福祉年金は八月、こうやっておりますが、これはいずれも法律で特別に規定を改めまして繰り上げているのでございます。  ところで、来年度はいわゆるゼロシーリングでございまして、厚生省としてはあらゆるところを見直していかなければならぬということでございます。当然増が非常に多いことは御承知のとおりでございますので、いわば政策増、われわれで言いますと政策増に属する物価スライドの時期については、来年一年は何とかひとつ法律どおりでごしんぼう願えないか、こういう気持ちで出しておるわけでございます。
  269. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大蔵大臣にちょっといまの点でお伺いしてみますが、大蔵大臣、人勧が従来どおり行われたとしたら格差が生まれますか、どうですか。
  270. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 人勧が生まれるかどうかよくまだわからないわけでございまして、仮定の問題でございますが、計数的なことは事務当局から答弁させます。
  271. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 いま先生おっしゃいましたように、共済年金の改定を従来のように四月からやるということでございますと、そこのところの違いというのは確かに何といいますか開くことになるかと思います。
  272. 平石磨作太郎

    ○平石委員 人勧が従来どおり行われましたならば当然四月にさかのぼって行われることになるわけです。それは物価が上がったことを見込んでできるわけです。そうしますと、厚生年金、国民年金は、物価は同じように上がっておるわけです。物価は同じように上がっておるんだけれども、これがずれ込んでくるわけです。ここに格差が生まれるか生まれぬかを聞いておるわけです。
  273. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 格差とおっしゃるその格差の観念がちょっとよくわからないのでございますが、私が先ほど申し上げましたのは、先生がおっしゃったように、従来は六月からやったものが後になるということだとすると、こっちはいままでどおりだということならばその差は開くのか、こういう意味にとりまして、そういうことでございますればそれは開くでございましょう、こう申し上げたつもりでございます。
  274. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういうことで開くと思います。したがって私は、この厚生年金、国民年金の物価スライドについては御一考いただきたい、こういうことを申し上げて次に進ましてもらいます。  そこで、厚生省の今回の概算要求の中から見てみますと、国保事業とかあるいは児童扶養手当、特別児童扶養手当、こういった経費について他方財政にひとつ肩がわりをしてもらう、こういうことが予想されております。これはいろいろ論議をしたいのですけれども、時間がございませんから簡単に申し上げますけれども、これをすることについて自治大臣と協議が成立しておるかどうか、厚生大臣にお聞きしたい。
  275. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これは臨調の答申もあり、それからわれわれは今度の行政改革というのは既存の制度を全部根本から洗い直せ、そして考えるべきものは新しい時代に向かっていままでの制度を見直せ、こういうことでございますので、厚生省のあらゆる分野を全部見直したわけでございます。そういうものとしてこれからどういう制度がいいであろうかということを改正する立場で全部洗い直したのでございます。そういたしますと、どうしても前から申し上げておるような理由からいたしまして、国保についてやはり一部負担していただいてはいかがか、あるいは児童扶養手当、特別児童扶養手当について、ほかにも例があることでもあるから一部負担してもらってはいかがか、こういうことを申し上げているわけでございますが、自治大臣とはいまのところまだ意見調整が済んでおりません。これは臨調でも言っておりますように、何といってもこれは財政問題であるからその財政状況が明らかになる予算編成のときまでにお互いに煮詰めて結論を得るようにしなさい、こういうことでございますので、そのつもりでおるわけでございます。
  276. 平石磨作太郎

    ○平石委員 当然地方財政に大きな負担となってまいりますので、大体、自治大臣との協議の上でこれが考えられねばならぬと私は思うし、実施の段階においては、地財法の関係から見ましても、新たな負担をなす場合は自治大臣に協議をし、了解を得なければならぬことになっておる。したがって私は、厚生大臣が、自治大臣との話はともかくも、とにかくこれをやるんだ、こういった考え方でこの概算要求に出てきておると思う。これを地方の負担で見てみましても、国民健康保険については二千四百十億円、これを財源も付与しないでそのまま地方に肩がわりをさすということについては、これは全国知事会にしろあるいは市長会にしろ決して喜ぶものではない。物すごい反対が出ております。自治大臣はどういうようにお考えなのか、協議が来た場合はどういう対応をせられるのか、自治大臣のお答えをいただきたい。
  277. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 この問題はきわめて地方にとりまして重大な問題でございまして、端的に申しますと、単にこれは国の負担を地方にツケを回すだけである、これは行革の精神に反するものではないか。それからまた、国民保険の制度の本質から申しましても承服のできない問題である。また地方団体自体は約四十兆程度の負債をいま抱えております。これの公債費の増額が目に見えておるわけでございます。そうした全般の事情から考えて、こうした措置はとるべきものではないとわれわれは考えておるのでございまして、この点は厚生省はもちろんそのほか関係筋に今後予算編成期におきまして十分御理解を得たい、その努力をしなければならぬ、こう考えておるところでございます。
  278. 平石磨作太郎

    ○平石委員 非常にりっぱな答弁をいただきました。  そこで、私はそれが十二月の予算編成時において大蔵大臣を交えての予算編成の中で、いま自治大臣のおっしゃったことが腰砕けにならぬようにひとつがんばってほしいと思うのです。そして、もしそういうようなことに相なることになれば財源を示してやらなければならぬ。だからそのお金をいわゆる地方交付税、これは結論を早う言って済まぬですけれども、基準財政需要額あたりである程度のものを賄ってやらないと地方は困るのではないか。  高知県の例を申し上げてみますと、高知県は県税の収入が大体三百五十億です。そして私がこの影響について知事さんにお聞きをしてみますと、いまおっしゃったそういった福祉関係でざっと五十億程度出てきます。それからかさ上げの六分の一、これの減額という形での地方への肩がわりというようなことを合わせますと大体七十億から百億出てくる。こんなものが現在の税源の配分の中で負担できるかどうか。常識的に判断したときに、とてもむずかしいと私は思う。  だから、そういった財源手当てを考えないで、ちょうどいま自治大臣の御答弁にありましたように、行政改革とは関係ないことをやっておる。行革というのは、さらの上に盛られたものをどう整理をするかが問題です。ところが、さらの上にあるのを地方へ持っていこうかということですから、これは行革とは関係ない、このように私は思う。したがって、もし仮に予算編成期にそういうことが決まるのであれば、税源を考えてやるか、あるいはそれができなければ基準財政需要額の中にこのことを見てやるということを考えるべきである。そういう点でどうですか、大蔵大臣。  それから行管庁長官、いまの点については、地方についても行政改革はやらなければなりません。それは当然のことですよ。だが、国からこうだからといってさらに盛ったものをそのまま持ってこられたのでは地方は困るのですよ。これは行革と関係ないですよ。ちょっと長官からお答えいただきたい。
  279. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 平石さんのお話も非常に理屈の通ったお話であると思います。また厚生大臣の苦衷もよくわかりますし、さらにまた自治大臣のお考えも、地方をしょっておって地方財政計画を見ていろいろ悩んでいらっしゃることもよくわかります。この暮れまでの間にそういう国の財政状況やら地方の財政状況やら諸般の情勢をよく研究し尽くして、その上で関係閣僚及び党とよく相談をして円満に決着をつけたらいいと思っております。またつけられるものと確信しております。
  280. 平石磨作太郎

    ○平石委員 総理はどうお考えか、ひとつ総理のお答えをお聞きして終わりたいと思います。
  281. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 これは私、当委員会で前にも申し上げておるのでありますが、この問題は、五十七年度予算編成の際におきまして、大蔵省、財政当局を交えましてはっきりと結論を出したい、こう思います。
  282. 平石磨作太郎

    ○平石委員 以上で終わります。
  283. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて平石君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十六日午前九時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十四分散会